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1957-10-12 第26回国会 参議院 社会労働委員会 閉会後第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年十月十二日(土曜日)    午前十時五十分開会   —————————————   委員異動 本日委員木下友敬君、藤田藤太郎君、 大矢正君及び赤松常子君辞任につき、 その補欠として竹中勝男君、松澤靖介 君、坂本昭君及び山下義信君を議長に おいて指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     阿具根 登君    理事            勝俣  稔君            高野 一夫君            山本 經勝君    委員            紅露 みつ君            谷口弥三郎君            寺本 広作君            片岡 文重君            坂本  昭君            竹中 勝男君            松澤 靖介君            山下 義信君            中山 福藏君            竹中 恒夫君   国務大臣    厚 生 大 臣 堀木 鎌三君   説明員    大蔵省主計局法    規課長     小熊 孝次君    厚生政務次官  米田 吉盛君    厚生省公衆衛生    局長      山口 正義君    厚生省保険局長 高田 正巳君    厚生省社会局長 安田  巖君    厚生省医務局次    長       堀岡 吉次君    厚生省医務局医    事課長     坂本貞一郎君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○社会保障制度に関する調査の件  (福岡水道の四エチル鉛による汚  染に関する件)  (郵政省所管診療所に関する件)  (中共地区からの里帰り者帰国に関  する件)  (身体障害者年金対策に関する  件)  (社会保険医療費の一点当単価問題  に関する件)   —————————————
  2. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) それではただいまから社会労働委員会を開会いたします。  委員異動を報告いたします。十月十二日付をもって赤松常子君、木下友敬君、藤田藤太郎君、大矢正君が辞任され、その補欠として、山下義信君、竹中勝男君、松澤靖介君、坂本昭君が選任されました。   —————————————
  3. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 社会保障制度に関する調査の一環として、福岡水道の四エチル鉛による汚染に関する件を議題といたします。  政府側出席者を申し上げます。堀木厚生大臣山口公衆衛生局長山野理財課長内閣法制局第二局長野木新一君、以上の方が出席しておられますので、お含みの上、御質問を願います。
  4. 山本經勝

    山本經勝君 この委員会福岡市の四エチル鉛井戸水汚染の問題を取り上げて参りまして、で委員会から議員派遣をいたしまして、実情調査をし、そうしてその結果については、御報告を申し上げた通りであります。その後、再度取り上げまして、問題の重大性にかんがみまして、現地対策の強力な推進等を見守って参った状態であると同時に、並行してこの莫大な予定しない経費の支出に対しまして、国が国の責任において見てやる、また、やるべきであるという私ども主張をして参ったのでありますが、その後、なかなか時日が経過しましてもまだ結論に到達しておらぬというのが現状のように聞いております。そこで、まず問題の焦点となるのは、この水道布設によって、井戸水汚染した危険な水を使わなくて済む、二万数千人という多数の市民の恐怖の状態に陥っておるということを救うために、水道布設するのが一番完全な対策である、こういうことから、現地におきましては、市を中心にしまして水道布設が行われた。この工事も非常に進捗して参り、それから一方その間の応急対策としては、市民に対する給水あるいは汚染源発掘、あるいはまた、その井戸水水質検査、こういったような応急対策が進められたことも御承知通りであります。これらに要した費用、つまり応急対策に要した費用が大体三千三百万円である。また、申し上げますこの汚染地区布設する恒久的な対策としての水道問題この水道布設するために八千万円の起債が要求された。ところが、聞くととろによりますというと、この八千万円のうちで六千万円は起債を認められたが、あと二千万円は実は認められていない、こういうような実情のように承わっております。これらの点につい、その後、厚生省でどういうふうな指導なり御協力を賜わったか。あるいはまた、その資金の問題について再三お願いを申し上げておったように、国か国の責任であるから、第一次的には国の責任であるということが確認されて、でありますから、そうしますと、そういう実態に基いて厚生省中心にして大蔵省あるいは自治庁と話し合っていただくようにお願いしてある。その結果についてまず冒頭お聞かせをいただいてそうして逐次内容について検討を進めたい、こういう考え方を持つしおります。でありますから、厚生大臣なりあるいは局長の方からでもけっこうでありますから、その後の閣内にわけるお話し合い、関係各省間のお話し合いなり、意見の調整なりあるいは申し上げるような補助金あるいは国の責任において処理するという資金捻出方法等について、その後の経過をお聞かせ願いたい。
  5. 山口正義

    説明員山口正義君) ただいま問題になりました福岡市の四エチル鉛による飲料水汚染対策の問題でございますが、山本先生から御指摘になりましたように、本委員会でもしばしばお取り上げになりまして、本委員会として調査団も御派遣になり、私も随行したのでございます。対策として、応急対策恒久対策と二通り措置がとられましたこともただいまお話しの通りでございまして、応急対策のうちで、まず市民の不安を取り除きますための検査状況でございますが、最初は検査能力が十分でございませんでしたので、非常に遅々としておりましたが、その後、検査能力かどんどん進んで参りまして、ただ当初は二千軒ばかりを調べる予定でございましたが、現在までのところ、すでに千六百近く調べまして、大体範囲もこれ以上拡大する心配がないというふうに見通しがはっきりいたしましたので、一応検査の方はとめているわけでございます。問題はそれをあとどういうふうにして対策を立てていくかということでございまして、応急対策はとりあえず給水車、それから給水だめというようなものを作って各戸に配給するということをやっておったわけでございますが、一方先ほどお話がございましたように、恒久的な対策として水道布設を計画したわけでございまして、その水道布設がどんどん進みまして、現在までのところ、太い管は大体布設が終って、まだ細いところが少し残っておりますが、全体から見ますと約八〇%でき上ったというところでございまして、その恒久対策が進むに従いまして、応急対策としての配水措置というものは漸次引き下がるという措置を講じているわけでございまして、まだ全部恒久対策に乗り移ってしまうというところまでは参っておりませんけれども福岡水道局当局の話によりますと、今月中には水道布設を大体終って、各戸への給水栓は、とうていそこまでは参りませんけれども応急対策的な給水車とかあるいは共用栓というようなものを、共用のためを取り除くことができるというような状況でございます。  そこで、問題は先ほどお話がございましたように、応急的な措置としてトラックの購入とかあるいはヒューム管購入、そのほかのいろいろな検査費用、それから臨時に使用いたしました人件費等について三千三百万円ほどかかっております。それから水道の恒久的な布設費用としまして、市当局としては八千万円要求しておられるわけでございます。それに対して、自治庁と私の方といろいろ折衝相談し、自治庁の方でも現地いろいろ要求を審査されて、そうして大体六千万円という査定をされて財政措置を講じられ、そして現地水道が現在布設されているという状況でございます。  そこで、これは原因が四エチル鉛というような特殊な物資によるものでございますから、この前からお話がございましたように、終戦時における軍隊行為原因するものであるというような問題につきまして、この前も御報告申し上げましたが、私どもの方で援護局の中に軍関係の方もおられますので、そちらの方から当時の軍関係の方方のいろいろな手づるをたどって調査をしていただいているわけでございまして、非常に十数年前の問題でございますので、いろいろたぐって参りますのに困難を感じているのでありますが、現在までいろいろな手を用いて情報を集め、また、面接等をやってもらっているのでございますが、まだはっきり当時どういうふうにしてそういう事態になったかということがつかめないという状況でございます。そこで、この問題を国家賠償として取り上げるかどうかという問題がこの前から当委員会でも御議論になったところでございまして、従いまして、私どもの方では、まず第一に、この問題が国家賠償対象になるかどうかということで、内閣法制局あるいは法務省の訟務局、それから大蔵省主計局法規課、こういった方等といろいろ材料を持ち寄って相談して参ったのでございますが、現在までのところ、先ほど申し上げましたように、当時の軍隊行為原因するということがはっきりいたしませんので、これを国家賠償として取り上げるということは現段階ではなかなかむずかしいというような結論に到達しているのでございまして、法理論的な問題につきましては、専門の方も見えておられますので、その方から必要によって御説明があるかと存じますけれども、私ども事務的にいろいろ折衝いたしました結果はそういうところになっております。そこで、問題はあと臨時的に要した費用をどういうふうに福岡市に対して国が心配するかという問題になってくると思うのでございますが、それが国家賠償という線でということがむずかしければ、ほかの行政的な措置考えていかなければならないと存じます。また、関係者と折衝あるいは相談をいたしております際に、福岡市当局が、行政当局がやりました行政費につきまして国家賠償ということでいくのは、国の損害賠償理論というものは成立しないという理論でございますので、別の方法でやっていかなければならない。別の方法と申しますと交付税とか、補助金というような問題になってくると思うのでございます。現在までのところ、主として今まで国家賠償という線が成り立つかどうかというようなことで、いろいろ資料を持ち寄って相談をいたしておりましたような次第でございますが、交付税をどうするか、あるいは補助金をどうするかというような問題はこれから監督官庁相談したい、そういうような考えでございます。
  6. 高野一夫

    高野一夫君 今公衆衛生局長の御説明があったわけでございますが、これは私、山本委員と二人が調査団になりまして、現地をつぶさに視察してきて、その結果並びにわれわれとしての結論等については前の委員会で申し上げた通りであります。それで、今公衆衛生局長お話では、応急対策に要した費用、この問題についてまだ自治庁あるいは大蔵関係と話がつきかねておる、こういうお話であって、私としてはしばらく委員会に出てなかったのでその後の様子を知らなかったわけでありますが、まことに意外な感じがするのであります。そこで、われわれ、山本委員と私と参りまして、現地状態をつぶさに調査いたしました結果、当時応急措置として市が支出した金があった。それを精細に点検をいたしましてさらに水道の施設が完備するまでの間の応急対策はやはり継続されなければならぬ。それを概算入れまして、約四千万の金が出るはずだ、こういうわれわれは見通しをつけておった。そうすると、四千万になるかならぬかはこれは厚生省自治庁大蔵省で詳細に御検討になればけっこうであって、幾らになってもわれわれはそこまでの詳細なる断定的の判断はせないわけでありますが、かりに四千万円としてこれを市の責任において相変らず支出すべきか、国が出すべきか、こういう点については現地で十分吟味し、この委員会でも一応吟味いたしたわけであります。そこで、たまたまこの問題は福岡市内に起った問題であるけれども、これは明らかに四エチル鉛を使った燃料を埋没している、そこから出てきたということはこれは学問的常識から当然考えられるので、その根源がいまだに突きとめられない。これはかりに民間会社がこういうものを保有してどこか山に入れた。それが地下水に浸透したというようなことは、当時の事情からまた、民間会社実情からいたしましてとうてい考えられない。厳密に言いまして、これは西部軍の基地のあったところに当時発掘作業をやっておりましたが、タンクが埋められてそれがこわれて地下水に浸透したものであるということは、これはもう科学的に何人も私は異存はないはずだと思う。そこで、今局長お話で軍の責任、軍の関係原因においてこれが起ったものかどうかということがまだ疑問である。だから、国家賠償とか補助するということの話がきまらぬのだ、こういうようなお話があったので私は申し上げるわけでありますが、厚生省としては、この水道問題については、自治庁大蔵省に対して主導的立場において責任をもって措置されなければならない厚生省であると思う。その厚生省のお考えとしていまだなおかつ、これは軍の責任において起った問題であるということの判定ができかねるとお考えなのかどうか。これは私ははっきりした見解を伺わなければならぬと思う。
  7. 山口正義

    説明員山口正義君) ただいま高野先生から御指摘のように、当時四エチル鉛を使用するということは、一般の民間では常識考えられないことでございまして、軍が使用しておったのであろうということは当然考えられることでございますが、私ども関係省と折衝いたしました際に、軍がどういうやり方でそこに埋没したのか、あるいは貯蔵しておったのかというような点がはっきりいたしませんと、国の損害賠償責任ということがなかなかはっきりつけにくいというような法制局なり法務省のお考え方もございます。それからもう一つは、先ほども申し上げましたように、福岡市側が使いました行政費につきましては、国の損害賠償理論は成り立たないというふうに言われます。それで、別に福岡市が支出いたしました費用については、交付税とか補助金というようなことを考えなければならないのではないかというふうに考えるわけでございまして、それで、これは当初から私ども臨時費——臨時費と申しますか、応急対策費につきましては、これは予想しなかった問題について福岡市が支出したのでございますので、自治庁に対しては特別交付税の問題にしてほしいということを申し入れて、自治庁でもその点は考えてもらっているのでありますけれども、しかし、特別交付税の問題は年がかわってからいろいろ検討されるということになります。また、額の問題もありますので、私どもの方としては、これが軍隊の貯蔵、直接軍隊がそこに貯蔵したかどうかは別として、軍隊が使用しておった四エチル鉛という物質によるものであるということは、先ほど高野先生も御指摘になりました通りでございますので考えられることでございますが、それによってこういう事態が起りましたので、福岡市にとってはみずから招いた問題でなしに、一種災害のように考えてもいいのではないかというようにも考えられます。私どもはこういう、ほかに先例がございませんので、なかなかむずかしいのでございますけれども一種災害とみなすようなことで国が補助考えるというようなことも一つの道ではないかというふうにも考えられるわけでございます。そういう点についてはどういうふうな形でやるのか、補助金特別交付税と二本建てでいくのかどうかということにつきましては、一つ大蔵省自治庁とさらに相談して、できるだけ早く結論を得たい、こういうふうに考えておるわけであります。
  8. 高野一夫

    高野一夫君 軍の原因であることが科学的その他情勢上はっきりきまるということになるならば、国家賠償という問題について相当深く考えられる、こういうふうに今の御説明の言葉からは、においが出るように考えられる。ところで、燃料関係のいろいろなタンクを埋めたあの地域に、あちこち埋めてあるそれを、かりにタンク発掘されたといたしましても、おそらくそれはすでにもう腐った、崩壊したタンクであろうと思う。中身はおそらくない、みんな地下水の中に埋没してもうすでにしみ通ってしまっておる、掘り出してみてタンクが出てきたところで、果してその中から出たものかどうかということもわからない、こういうことも言えると思うのです、それは学問的にいえば。それはすでに現在、タンクが残っていない、だからタンクがこわれて腐って出たのかどうかわからないが、こういうふうなことをいっていたのではこれは始末にならない、とうていきまりがつかない。そこで、常識的に考えて四エチル鉛を使っていたか、だれが使っていたのか、これは当時どういうふうに使っていたのか、それがどういうものか、どこに埋められていたのかということはわかっているので、だから現在埋没しているものを突きとめ、あるいはそこのタンクから出たものであるとわかろうとわかるまいとにかかわらず、これが軍の持っておったタンクから出てきたものであるということは、これはおそらく私は常識ある者は考えて、あるいは学問的に考えても百%間違いのない断定を下していいのじゃないか。だからそこでいまだに原因がわからない、原因がわからないのに幾ら突きとめたところでわかりっこないから、あるいは裁判でやるようにいろいろな面からの証拠材料を集め、話を総合した上で結論を出すよりほかはない問題じゃないか、そうすれば当然われわれ現地調べに参り、局長も一緒においでになったわけだけれども、その後の情勢から判断いたしましても、当然これは国の、軍の責任において軍がこういうことをやらせようと思ってやったわけではないが、その結果は、当時軍のやったことがもとになって今日の災害が起っておるのだと考えてごうも差しつかえないのではないか。それを考えるのにはいろいろな条件が整備されなければならぬということになれば、いつまでたっても原因が突きとめられない、そこでわれわれはとうてい我慢がならないのであって、そこで国家補償ということが法理論的にどういうことになるかわかりませんけれども、こういう問題は政治的常識考えて、行政的常識考えて御判断願わないというと、私は永久にわからない問題じゃないかと、こういうふうにしかなるまい。そうすれば、ここで国家補償するというのか、災害補助をやるのかということは、いつまでたっても話はつかない、この辺は水道関係責任者である厚生省として、私は学問的にいろいろな証拠材料をお集めになって、それで責任のよって来たるところは御判定になってしかるべきじゃないか、とっくに御判定のあったものと考えておった。そこで、今の御説明はきわめて学者的慎重なる御説明であるから、それはそうとして了解はできまするけれども、政治的問題の解決としてはこれは、百%軍の処置によって原因されて起ってきた問題である、こういうふうに判定政府はなすべきである、こういうふうに私は考える。そこで、法理論からいって軍の何といいますか、国家賠償ということに解釈上ならぬとするならば、災害対策でどうか、こういうお話でもあるが、われわれとしてはどっちでもいいと思う。国家賠償理屈が成り立たんければ、災害対策でも決してかまわない。これは風水害があれば、諌早にあっても、熊本、鹿児島にあっても、一地方天変風水害に対して国家補助金を出すのである、従って、福岡地方の一地点にこういうふうに思いがけない天災といいますか、災害があった場合に、当然これに災害対策補助金を出すのは私は国家として当然の任務ではなかろうかと思う。従って、その損害賠償で、国家賠償理屈が立たなければ立たないで、場合によってやむを得ないというならば災害対策でお出し願う。交付金の中からどうこうなんというそういうなまやさしいものではなくて、そういう特殊の災害、特殊の風水害、それと同じような意味においてでも、災害対策として国家は当然これに災害対策補助金として一定の額を支出するということは私は当然だと考えるのでございまするが、これについて堀木厚生大臣は、この問題については前大臣以来の問題でございまして、はなはだ御迷惑かもしれませんが、どういうふうにお考えになるか、一応の御見解を伺っておきたいと思います。
  9. 堀木鎌三

    国務大臣堀木鎌三君) 実は私が山口君に——ここにいる今答弁しました政府委員に、今ちょうど高野さんが言われるようなことを言っていたわけなんでございます。ただ私としては、前大臣のときに起りましたとはいえ一実は今日までその問題がきまっておりませんことが、山本さんその他からの御質問の要旨だと思います。また、高野さんも法律論についてはともかくとして、ともかくも実質的に福岡市自身の財政上の負担にならないように問題を処理すべきでなかろうかとおっしやることは、私も同感でございます。ただ、せっかく各党あげて現地調査された問題が、事実上遷延いたしまして今日に至っておりますことは非常に残念でございますので、至急解決をいたしたいと、こう考えております。
  10. 山本經勝

    山本經勝君 高野委員の方からの御質問に対して山口局長さんのお答えですが、この応急対策費といいますか、三千三百万円のことですが、これについてと、さらに六千万円の起債申請が出たのですが、現にやっている塩原を中心とする水道管線地域、さらに引き込みがこれからやられる状態ですが、それを大体起債申請してある八千万円、ところが、起債の問題は自治庁関係の問題ですから、そこでいろいろ御検討をいただいているのですが、八千万円のところへ六千万円、ところが六千万円を入れてもさらに二千万円不足する、この水道局長承知のように、非常に散漫な人口の密度なんです。いわゆる引き込み対象となる住宅、農家等がばらばらにあるので、この管線を引いて引き込むというのが大へんなんです。水道局の方のお調べでは、大体一戸当り二万円、最小限度二万円程度の引き込み費用がかかる、しかもその引き込んだ水道もいわゆる水道料金徴收によって、自分水道局財政の中で切り盛りができていくという状態ではなくて赤字になるという実情である、この点なんです。八千万円をかりに起債認可されてやったとしてもこれは赤字である、向う十カ年間の赤字を背負っていかなければならぬという実情にある、それは今高野委員からお話のあった、四エチル鉛被害によるものである。そうすると、この一応認可になっておりますが、六千万円は六千万円といたしましてもなお二千万円足りない、しかも向う十ヵ年間は膨大な赤字を積み重ねていくことになる、その赤字は四エチル鉛被害によるものである。それから三千三百万円はいわゆる御承知のように、全くの応急対策水道布設されるまでの応急措置あるいは給水その他の事務経費を含めた経費である、ですから合計いたしましても八千万円のうち、二千万円の認可になっていない部分、結局今なっていない部分と、それからさらに向う十カ年間の赤字を背負っていかなければならぬというものを予想しますというと、相当額のいわゆる補償方法考えてもらうかあるいはそうでなければ国がその責任を持ってもらう。こういうことになってこないと、さっき局長のおっしゃったように、予想しない問題である、あらかじめこういうことが起らんのだ、あるいは市の責任に属するものである、あるいは市民責任に属するものでなくて、原因が今申した通りであって、今までもこの委員会でしばしば議論をいたしましたように、第一次的には国の責任であるということは、大臣初め関係当局からは一致して言われておる。ですから、その第一次責任において考えられることは、財政負担にならないような措置が講じられなければ、ただいまの堀木厚生大臣お話もありましたように、いわゆる地方公共団体自分責任でないことが明らかであるとするならば、少くとも国の責任においてやるという意味で、この財政負担にならぬような方法を講じてもらう、それはある姿であって、今までもその点について大体意見の一致した点ではなかったかと思う。そうしますと、あとの折衝といいますか、協議というか、あるいは各省間の意見の調整をして、しからば結果的においては形あるいは名目のいかんにかかわらず、地方公共団体負担にならないような財政措置が講じられる。こういうことが当然最終的には必要であるということになってくると思う。もう一つは、原因の究明ですけれども原因の究明というものはやはり重要なことであろうと思う。ところが、原因の究明ができないからということが理由になって、遷延されていくという姿では、今度は負担をされている地元の住民といたしましては大へんな問題だ。予想もしない施設をして、しかも一応申し上げますように数千万円といいますが、約七、八千万円の負担を事実上しておると思う、私の想像ですが。さらにこれが引き込みの問題になってくると、地元に大きな問題になってくる。個々の農家なり住民はこう言っておる。私たちが自分で井戸を使えなくしたのではない。少くとも四エチル鉛のようなもの、それは使ったことはない、そう言うのですが、井戸水汚染して使えなくなった、そうして今度は自分水道を引き込んでやらなければならぬ、こういうことは耐えられぬぞという強い声が上っておる。ですから、そういうふうにして考えていきますというと、それに対しても市は何らかの考慮を払わなければ、さていよいよ管線はできたが、いよいよ引き込みになりますというと、一もんちやく起りそうな形勢ですから、ですからそういう市の負担あるいは行政上の約束を、やはり原因が第一次的に国の責任であると言われるならば、それに対する何らかの措置がしかも敏速になされなければならぬと私は思うのですけれども、大体趣旨においては高野委員の御質問と同じようですが、なかんずく今申し上げたような点を局長の方から御解明を願って、私さらにつけ加える点があれば、いつごろにはそういう意見が得られるのか、そこら辺をもう少し突き進んで御説明を願いたいと思います。
  11. 山口正義

    説明員山口正義君) 高野先生からのおしかりを受け、大臣からもお小言を受けたのでありますが、今まで国家賠償という線に少しこだわり過ぎていろいろな材料を集めて、関係各省と折衝に手間取っておりましたのでございますが、くどいようでございますが、国家賠償の線になりますと、福岡市に対するいろいろな問題、それから各個人に対するいろいろな引込線の問題なんかございますので、そういう問題もございます。まあ御趣旨のありましたような線について、あとで申し上げますようなことを進めて参りますけれども、さらに国家賠償の、各個人に対する国家賠償の問題が成立するかどうかというような点については、さらに別の角度で検討して参りたいと思います。当面の問題の、福岡市が支出いたしました、あるいは今後支出を予想されますものに対して、国がどういう形でそれを補なっていくかという問題につきましては、福岡市のこの地区における水道だけを切り離して考えますと、今後十ヵ年間に相当赤字が出るということは私の方でも材料をもらっておりまして、まあこれをもう少し検討してみなければ事務的には何とも申し上げられないというところでございますが、福岡市は別に今後全地域を、市域をひっくるめての大きな水道の新規計画、拡張計画を持っておりますので、自治庁の方ではそれともにらみ合せて、全体の、福岡市全体の水道計画の一環として、いろいろの問題を処理していくということも考えなければならぬのではないかというふうに私ども考える。また、自治庁の方もそういうふうな考え方を持っているわけでございまして、そこで、それらの福岡市の水道財政計画というものを今後拡張していきます場合に、どういうふうになるかということを掘り下げて検討しなければならないというふうに考えるわけでございます。ただ、従いまして、その際に額がどういうようになるかというような問題は、さらに検討しなければならぬと思います。  それからもう一つ応急対策にいたしましても、まあいろいろ中を洗ってみますと、いろいろな問題も出てくるというふうに、こまかい問題が出てくるというふうに考えております。まあいずれにいたしましても、そういうこまかい問題は、具体的な数字的な問題は別といたしまして、ただいま大臣からもお答がございましたように、福岡市にとってはこれは予測しない事態でございますので、これを災害対策のような格好で、私ども厚生当局としてそういうふうな考え方関係各省と折衝して、できるだけ早く結論を出したいと、そういうふうに考えておりますいつまでにそれでは結論を出すかというお尋ねに対して、はっきり今月中なら今月中ということは、なかなか相手のあることでございますから申し上げかねるわけでございますけれども、できるだけ早く結論を出すように持っていきたい。今まで国家賠償という線に少しこだわり過ぎておりましたので、横道を食っておったような感じもいたします。そういう意味でできるだけ早く結論を出すようにいたしたいと考えております。
  12. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  13. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 速記を起して下さい。
  14. 山本經勝

    山本經勝君 大体の方向としては、御説明実情は私も地元でありますためにわかるわけであります。で、きょう、大蔵省の方の主計官の方がお見えになっていただいているのですが、お見えになっていますか。
  15. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 見えています。
  16. 山本經勝

    山本經勝君 では大蔵省の方にお伺いしたいのですが、問題はやはり金の問題、先ほど説明をお聞きの通りなんですが、行政経費として市が支出した分に対する補償方法はない、こういうふうな法規上の解釈になるという御説明もあったのですが、問題は一応原因がどうあるかということですけれども、起った被害が、しかも現状から判断して四エチル鉛というものは民間で使っているのではなくて、軍が当時航空燃料として使っておったということははっきりしておりますし、それを製造したのも軍である、こういう関係もありますから、そこで私どもは一応国家賠償に該当すると考えますけれども、その現在起っている、しかも市が支出をした経費負担が耐えがたい大きなものになっていますから、それを国が何らかの方法で見てやろうという具体的な話し合いがなされたように聞いておるのです。そうしますと、大蔵省が結局は金の支出を最終的には承認をして出していただく道を講じてもらう、こういうことになると思うのですが、その場合に、どういう具体的な方法考えられるのか、たとえばここで私は金額を議論しているのじゃなくて、支出する場合にどういう方途を講ずればいいか、こういう点は一つ大蔵省の方としても、関係厚生省や、あるいは自治庁間でも話し合われていることですから、御意見があろう、見解があろうと思うのでありますが、それを一つお聞きしておきたいと思います。
  17. 小熊孝次

    説明員(小熊孝次君) お答えいたします。この問題につきましては、厚生省の方から国家賠償の問題として一応御相談を受けております。これにつきましては、先ほど公衆衛生局長の方から御答弁ありました通り、やはり国家賠償として考えます際には、その事実関係が明らかでないと、これはもう問題にならぬわけであります。その点につきまして、今までいろいろ厚生省の方からお伺いしたところから見ますと、この事実関係相当因果関係というものがどういうふうになっているかという点につきましてはまだはっきりした証拠と申しますか、そういうものは出て参りません。われわれといたしましては、国家賠償によって払うということは、現在の段階としては無理である、このように考えておる次第であります。まあ一応先ほどお話が出ておりますように、その当時四エチル鉛は軍しか使用しておらなかったということでございますが、とにかくその後相当の期間がたっておりますので、その間に当然いろいろな人為的あるいは物理的、あるいは自然的な変化が生じてきたものか、そういうような関係も究明してみなければならぬ、こういうふうに考えている次第でございます。国家賠償が無理であるということになった場合におきまして、どういう措置を講ずるかという問題につきましては、これも先ほど公衆衛生局長の方からお話がございましたように、われわれとしても一応原省でございます厚生省の方から国家賠償ということでお話がございましたので、その方面の検討をいたしたわけでございます。その他の対策につきまして、どういうふうにするかということは、厚生省自体の方から具体的な案が参りました際におきまして、十分検討いたしたい、このように考えておる次第でございます。
  18. 中山福藏

    ○中山福藏君 私はこの際、大臣の御意見を一つ聞いておきたいと思います。大体国家賠償なんかということは一つの法律問題でありまして、相当因果関係原因を、最後の断定を待つということになれば五、六年かかるのです。これは政治というものは生きておる人間の処置をされる、生命権をいかに擁護するかということに大体厚生省の問題はかかっておる、それを今日まで国家賠償なんかという回りくどい議論が行われたということは、私はどうもふに落ちない。当然災害救済ということでこれは政治的に問題を処理しなければならないと考える。ところが、今公衆衛生局長お話によりますというと、関係各省に一応相談して、あるいはまた、福岡市全体の水道布設の問題というものもからみ合せてこれを一つ考えてみたい、こういうことでは、これは浮草問答に終るわけです。私はそういうなまぬるいことは一つたな上げにして、おれはこうするのだ、厚生大臣としてこういう考えを持っておるのだという線を打ち出してもらわなければ、これは委員会は何をしておるのかわからぬ、そういう点を一つはっきりしてもらいたい、これをお願いします。
  19. 堀木鎌三

    国務大臣堀木鎌三君) 法律専門家の中山さんがおっしゃる通り法律論になれば今大蔵省関係官から言いましたように、私は四エチル鉛は当時軍より使っていなかったことは確かだと思いますし、しかし、因果関係の中断があるかどうかとか、あるいは挙証責任がどうかという問題に入って参りますと、十数年たっておりまする今日におきまして、これは非常に事実関係のむずかしい問題が出て参ると思います。私はおっしやる通り法律論というものは裁判所でやることかもしれませんし、また、大体の行政上の判断の材料法律論として考えられれば、その問題を頭に置きつつ行政上の問題として早急に解決しなければ困る問題である。いずれにいたしましても市といたしまして、また、市民といたしまして自己の責任に全然ないことでこういう事実が起ったということでございます。先ほどおくれまして申しわけございませんと申し上げましたのは、今おっしやるような趣旨を頭に入れつつ申し上げた事柄でございます。従いまして、私としては、関係各省の係官において解決が困難とみましたときには、三省の大臣相談いたしまして早急に解決したい、こういうふうに考えております。
  20. 山本經勝

    山本經勝君 先ほどの小熊さんのお話ですが、問題は大蔵省としてはお聞きのような状況のもとであるのだから、金をつまり財政的な行政経費負担できないと言われるのか。そうじゃなくて何らかの方法で支出をして福岡市の窮状を助けてやろうというお考え方なのか、その点をしぼってお答え願いたいのですが。
  21. 小熊孝次

    説明員(小熊孝次君) お答えいたします。先ほど申しましたように、補助金を出すにいたしましてもあるいは特別交付金でございますか、何かの財政援助をする、こういうような場合にいたしましても、それはやはりどういう名目で、どういう理由で出すのか、あるいはその場合の金額の問題もございましょうし、あるいは相手方の経済能力の問題もございましょうし、そういういろいろな問題が具体的な厚生省からの提案がございました際にはいろいろ問題があると思います。それはこちらといたしましては、厚生省が一応主管官庁でございますので厚生省の方のお話があった際にそれについて具体的に検討したい、このように申し上げて、今直ちにこういう方法でということは直ちに今の段階としては言えないのであります。
  22. 山本經勝

    山本經勝君 ただいま小熊さんもお聞きになった通りで、厚生大臣としては早急に何らかの手を打ってそして福岡市の窮状を打開してやりたい、こういう親心を示されていると思うのですよ。そうしますと、厚生省の方からお話があれば大蔵省としてもお考えになるのだ、ところが、そのお話がこの前からありたわけです。それが遷延今日に至ってなお解決がつかないのみか、現地では新しい問題が起きようとしている。管線ができたのに水が来ない。こういうふうになっているのが実情です。家には水がまだ来ない、管線はでさたが。それがじんぜんこの形で日が過ぎたのでは地元の方ではたまったものではありませんから厚生大臣としは、すみやかに解決をつけよう、ところが、解決をつける方法としては私はたとえばたくさんはないと思うのですよ。つまり補助金にしてもらうか、国が負担するというのならそれは国家賠償にするのが当然だと思います。しかしながら、それができないというここであれば、そういう方法補助金なりあるいはその他の災害に対する救助の方法考えるなるなり、何らかあるでしょうが、いずれにしても形としては補助金です。補助金としてたとえば八千万なら八千万、六千万なら六千万という要求があれば大蔵省としてはそれは出さなければならぬとお考えになっているのか、その辺をはっきりしていただかないと話が進まない。これは私は議員間でいろいろ話し合っているのですが、それでは、臨時国会も近いのだから必要があれば特別立法をしてもいいじゃないかという御意見も承わっしいる。しかし、それにいたしましてもなかなか簡単には参りませんので、現状は申し上げるようにようやく不安は取り除かれたけれども、あとで水道をほんとうに利用する住民の側に立ってみれば、問題が残っている、こういうことになっている、やはりそこら辺でこの際は、大蔵省として、厚生省から話があればそれによって協議するのじゃなくて、補助をするなり何なり、その方法は別といたしましても、何らかの協力をしてやるべきであるとお考えになっているのかどうか、そこら辺がはっきりしないと話は進行しないと思うのです。もう一度、その点をお答え願っておきたい。
  23. 小熊孝次

    説明員(小熊孝次君) 先ほど来申し上げますように、厚生省の方から具体的なお話がございましたらすみやかにこれを検討いたしたい、このように考えているわけでございまして、実は先ほど来申しておりますように、国家賠償という問題の方を検討いたしておりまして、その他の方法につきましては、まだこちらとしてはもちろんでございますが、厚生省の方から具体的な話は出て参っておりませんので、この際直ちに私の方からこういう案でということ、あるいは具体的にということは直ちに申し上げかねる、この点は御了承願いたいと思います。
  24. 高野一夫

    高野一夫君 大蔵省の方としては、厚生省が主管庁だから、厚生省の方のいろいろなデータが出され、見解を聞いた上でないと何とも言えない、こう言うのは事務当局としてはやむを得なかろうと思うのでありますが、先ほど中山委員の御質問に対しての大臣の御答弁があり、私の質問に対するその前の御答弁があって、堀木厚生大臣の御見解並びに決意というものが、本日初めてここではっきりわれわれはつかめたわけです。それでもしも事務当局の間においてこの問題が解決できなければ、関係大臣と早急に相談を進めたい、こういうお話でありました。また、その前段において、これはこの問題として早急にこの対策は早くきめなければならぬ問題だとこう考えておる、こういうお話もあるのでありますから、これがいつごろになりますか、大よその時期的の見当を大臣から伺って、そうしてその結果をあらためて委員会で伺うことにして、本日はこの辺で、すでに大臣の御見解がはっきりした以上は、その線に沿うて一応折衝を進めていただく、こういうことでどうですか。  そこで、私は一応大臣に伺いたいのでありますが、大よそこれはすでに七ヵ月たっておる問題でございまして、先ほど公衆衛生局長は、福岡市の他の水道施設についても計画があるから、関連して考えなければならぬ点があるという話ですが、それは私は反対なのでありまして、他の一般的の水道施設の計画はあろうとなかろうとにかかわらず、この問題はこの問題として、地域も広大な地域にわたって、しかもそのはっきりした地域があって、きまっている問題でございますから、この問題はこの問題として特別に早急に解決策を講じていただかなければならぬと思うのであります。あらためてこの点についての大臣の御見解と、それからただいま大臣のわれわれのお尋ねしたことに対する御答弁の中にあった、事務当局に急いで解決させる、それができそうもなければ、関係大臣の間で話を進める、こういうお話でありますが、大よそいつごろその結果について御報告を承わることができるるか、お話になってみなければわからぬだろうと思いますけれども厚生大臣としての御決意からくる見通しを伺っておきたい。
  25. 堀木鎌三

    国務大臣堀木鎌三君) 率直に言って時期を問われるのが一番困るのです。これは高野さん自身の自問自答のうちに入っていると思うのですが、なかなか時期を決定するのは困難だろうというお話なんですが、しかし、この問題はすでに相当長い間の懸案なんですから、私としては一体半年もこんなことで考えていては申しわけないとい気がするのであります。(「その通りです」と呼ぶ者あり)でありまするから、少くとも今までのような……、ただ、国家賠償国家賠償でないかというふうな見地から法律論がはっきりきまると、非常に範囲は楽になると思いますが、しかし、法律論をやっていて半年も考えているようなことでは、行政事務をわれわれが預かっていく上に責任をとるわけにいかない、もっと早くきめるべきだというふうに考えます。正確にいつということを申し上げることは非常に困難でございますが、あまりかからないと申し上げても御承認になりますまいと思いますが、ともかくも何カ月というふうな月を数えなくていいようにして解決いたしたい、こういうふうな考え方で今おります。
  26. 高野一夫

    高野一夫君 十一月一日から御承知通り臨時国会が始まります。その前に休会中にさらにこの委員会は開かれることと思うのでありますが、休会の最後に委員会を開く、その場合に大よその結論といいますか、こういうふうに話がまとまったがどうだと、金額のいかんは別として、そこまで各大臣との話し合いがついたと、こういうことはできそうに思いますが、その御報告を聞くことはむずかしいでしょうか。
  27. 堀木鎌三

    国務大臣堀木鎌三君) 予定されておりまする臨時国会に解決しなかったら大へんおしかりを受けるだろうと心の中にひそかに思っておりまするから、それに間に合ってきめたいものだということは、私自身としては考えております。
  28. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 速記をやめて。    〔速記中止〕
  29. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 速記を起して下さい。  それでは本問題に対する本日の調査はこの程度にいたしたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  30. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 御異議ないと認めます。   —————————————
  31. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 次に、一般厚生問題に関する件を議題といたします。質疑を願います。
  32. 勝俣稔

    ○勝俣稔君 簡易保険診療所を所々に施設できるような話を聞いておるのですが、政府としてはこれはどういうようにお考えになっておるか厚生省側としてはどういうお考えでおるのかということをちょっと伺いたい。
  33. 堀岡吉次

    説明員(堀岡吉次君) お尋ねの簡易保険の診療所の問題でございますが、現行法が昭和二十五年に施行されて、それから予算としましては昭和二十九年及び三十年度の予算で簡易診療所があちこちに設置されております。それから本年度中に建設を予定されているものは、前年度の繰り越しでございまして、和歌山、小松島、宮崎、清水、千葉、この五つが予定されております。これは現行法の建前からいたしますというと、診療所は届出制度でありますし、それから簡易生命保険法等の法規、それから現行の医療法等の法規から見まするというと、それが法律の上から違法であるというふうなことはちょっと現在までの解釈では出てこない。ただ問題は、現在社会保険診療報酬の点数に従いまして、診療費をこの診療所が計算いたしておりますが、健康保険法に基くところの保険の医療機関の指示は受けておりません。従って、いわゆる健康保険法に基く保険診療はいたしておりませんが、もちろん簡易生命保険の被保険者、それから郵便年金受取人等のために行なっておるわけでありまして、一般的には開放しておるわけではありませんから、その際の単価なり、点数のきめ方は健康保険法によりてきめておりますが、その単価は現在八円ということで郵政省令によりまして規定されております。その点は現在あちこちで問題が起っておりまして、特に和歌山市におきましては地元医師会と郵政当局との間にこの問題をめぐって紛糾が起っております。現在法律上は厚生省の所管として法規の上からこれをどうしろこうしろという法的根拠はないものですから、法律上はどうのこうのとは言いませんが、事実上はこの問題について郵政省と折衝いたしております。なお、郵政省からは簡易保険局の次長名をもちまして、特に問題がありました和歌山市の地元の医師会に対しまして、この単価につきましては和歌山のこの施設の開設が明年になりますので、その開設までは適当な考慮を払いたいということを言っております。一応その点は事務当局の方としては最終的などう直すのだという決定まではいっておりませんが、郵政省としてはそういう考えを持っております。現在のところは、くどいようでございますが、法律上の建前としてどうこうという指示権を厚生省が持っておるという建前になっておりませんものですから、御不満かと思いますが、事務的な解釈としてはそういう見解を持っておるということを一応申し上げておきます。
  34. 勝俣稔

    ○勝俣稔君 簡易保険の被保険者の健康であるとか、保持のために郵政大臣の権限で作ることができるというふうに、法の方ではなっておりますが、簡易保険でやって、そこへ持ってきて今度は今のような調子になっているというようなところに私は矛盾がきやしないか。それから今の単価の問題はもちろんのことであり、そのほかに診断料が無料であり、指導料が云々であるとか、こういうようなことをやっておったなら、実際簡易保険をやっていく問題につきまして医療体系というものは一体どうなるのかということを、私は慎重にお考えを願いたいというふうに 考えております。
  35. 堀岡吉次

    説明員(堀岡吉次君) お話の問題は当然考慮すべき問題でございまして、これはまあたまたま政府の特別会計の、この特別の事業の生命保険が行なっておるということで、非常な問題になる性格が強うございますが、一般的に会社の事業主等が病院等を建設される、そういう場合においてもこういう問題はあるわけでございまして、将来の国民皆保険の問題になりました場合は、医療体系全般の問題としては当然再検討を要する問題と考えております。なお、この点につきましては、郵政当局においても今後のこういうものの増設計画なり運営なり一既存のものもありますが、それらについては当然慎重な考慮を払わなければいかぬということも向うとしては言明いたしております。これにつきましては、勝俣先生も御案内の通り、私が申し上げるのはおかしいのですが、この診療所のみならず、たとえば三公社五現業等の作っております病院が一般に非開放であるとか、あるいは料金のきめ方が一般の現在の社会保険の単価より非常に低いというふうな問題、あるいは特殊の、たとえば共済組合等の病院でありまして、それがその所属する職員の被保険者等の診療に従事するのみならず、一般の患者の診療に従事するというふうな問題、それらの問題もひっくるめて全体として医療機関の体系的な問題として考えなければならぬし、また、現在その点については考慮を払っております。厚生省責任官庁でありますから当然のことでありますが、郵政省におきましては、その点はわかっておるということでありますので、将来の問題としては、根本的な体系の整備を立案をして十分その措置を講じなければならぬと考えております。
  36. 勝俣稔

    ○勝俣稔君 今の簡易保険に入ることは非常に簡単なことであり、ですから私はどこでも今のようなものを認めていく一そういう形式、形を認めるということは、どこでもできるのじゃないかというように考えるのでございますから、きょうは郵政省の方がお見えになっているでしょうか、お願いしておきましたが……。
  37. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 郵政省の簡易保険局長の成松君を呼んでおりますが、まだお見えになっておりません。
  38. 勝俣稔

    ○勝俣稔君 それでは、いずれのまた機会にか、今そちらの厚生省側からのお話で大体わかりましたけれども、いずれの機会にかまた本件については御質問したいと思います。
  39. 坂本昭

    坂本昭君 関連して質問。ただいま次長が官公立病院の医療体系について計画を持っているということを漏らされましたが、現在厚生省は持っているというふうに私思えません。それでこれも一つ期限を切って、厚生大臣はなかなか期限を的確にお切りになられますから、国立病院並びに国立療養所を含めて官公立病院の今後のあり方についての計画をお示しをいただきたい。
  40. 堀岡吉次

    説明員(堀岡吉次君) 計画を持っていると申し上げたつもりではなかったのですが、あるいはそういうことを申し上げましたかもしれませんが、そういうふうに申し上げましたらお取り消し願わなければならぬと思いますが、そういうふうなことを考えなければならぬということで現在いろいろの案を作っているのですが、これがいいという案を別に決定した案は持っておりません。ただそういう方向にこれは官公立病院だけでなしに、一般の医療機関全般も含めましてでありますが、将来の国民皆保険と日本の医療体系というものとの結びつきを考究しなければならぬということで鋭意研究中でございます。まあ期限のところはちょっと勘弁していただきたいと思いますが……。
  41. 坂本昭

    坂本昭君 厚生省は怠慢ですね。
  42. 堀岡吉次

    説明員(堀岡吉次君) 現在その方面についてはいろいろの医療機関が、種種雑多なものがたくさんございまして、もちろんお話に出ました国立病院、国立療養所等につきましてもそういうことを考えなければならぬということで、そういうことも含めて研究しているところであります。
  43. 竹中勝男

    竹中勝男君 引き揚げ、並びに里帰り問題について厚生大臣にお尋ねいたします。  この問題については、すでに外務委員会においても、あるいは厚生大臣の所管のところにおきましても、相当今まで取り組んで参りましたので、新しい問題を、時間の節約の意味もありますので、主として新しい問題だけにきょうは限って質問いたしたいと思います。言うまでもなく、この未帰還者を何とかして調査し、これを日本に帰ってもらいたい、帰還したい、帰還さしたいという政府及び民間の非常な熱意があることは当然のことでありまして、ただいま帰っております里帰りも、政府の未帰還者名簿、こういう膨大なものが五冊できておりますが、この未帰還者調査の中にある人たちなのであります。これはむろん祖国にあたたかく迎えらるべき人たち、また、あたたかく処遇さるべき人たちでありますが、しかるに、数日前、大臣及び党三役の到達した結論として発表されたところによりますと、逆に里帰りに対して明瞭な一つの差別的な待遇が結論として出てきておるように考えられます。戦犯も、一般帰国者も、里帰りもこれは本質的に違ったものではないのであります。未帰還者で、帰ってきた者なのであります。ところが、戦犯受け取りには船を出すけれども、里帰りのためには船を出さないというのが政府の方針なんです。なぜ戦犯と里帰りと別種に考えられるのですか。まず第一点をそこにお伺いしたい。これは北京協定と天津協定で二回にわたって確認されておる。戦犯、帰国者並びに里帰りというものは同一に扱うという体制になっております。政府はこれをどうして差別的に考えられるのか、厚生大臣にお伺いいたしたいと思います。
  44. 堀木鎌三

    国務大臣堀木鎌三君) 戦犯並びに引揚者につきましては、これは日本の国籍を持ち、日本に永住しようという考え方で参る人であります。従いまして、私は本質的にはやはり違うものだというふうに考えざるを得ないのではなかろうかというふうに考えております。沿革的に見ましても、従来ともそういうことにつきましては、大体私は慣行的にもそういう問題がきまっているのではなかろうかというふうに考えおるのであります。
  45. 竹中勝男

    竹中勝男君 国籍が、日本の国籍がないからということがまあ一つの理由、それから慣行的にそうだというのが一つの理由。ところが、国籍は全部日本にあるのです。これに国籍があることになって中国の国籍は持っていないのです。すなわち、里帰りは全部日本人なんです。これが戦争末期において軍に捨てられ、日本国の保護の外に置かれ、死の一歩手前、中国人の保護を受けて中国人と結婚して生活を立ててきた人たちなのです。この人たちはやはり戦犯及び一般帰国者と同じ戦争犠牲者です。自分の帰国の意思を持ちながら帰る機会がなかった、それが祖国に帰ってきたのですからこれは私は何ら差別すべき筋合いのものではない。ただもう一度向うにそういう事情のもとに、やむを得ざる事情のもとに向うに渡航するわけなんです。帰るわけなんです。で、これは言うまでもなく、私は引揚援護法に準じて取り扱うべき日本国民であると思う、引揚者であると思う。まあこれはこの点も厚生省は大体そういうふうに認めておられるために、帰りの旅費をこれに与えようという一歩前進した考え堀木厚生大臣は持っておられるわけです。それで厚生大臣もそういうような帰還者と差別して、特に里帰りを冷遇する意思のないことははっきりしているわけです。ところが、これの帰還に対して向うに送り帰すということは、これは中国紅十字会と日本の三団体との間に協約ができております。国交未回復の日中両国の間では、人道問題はただ一つ、中国紅十字会と日本の平和三団体、そこが唯一の窓口なんです。この窓口が決定した協約に従って里帰り婦人というものは送り帰さなければならない、それにもかかわらず、厚生省の今度発表された案というものは、この婦人たちが戦犯の引き取りと別に考えられているということは私にはわからない。なぜ釈放戦犯の引き取り、帰国者の引き取りと一緒に、さらに天津に待っている里帰りの日本人を、帰還者を迎えようとしないのですか、その点をお伺いしたい。
  46. 堀木鎌三

    国務大臣堀木鎌三君) 法律上の国籍は確かに私はおっしやる通りだと思いますが、本人の意思を見ますと、いわゆる里帰りの方は向うに永住しようという考え方のもとにおいでになる、それからこっちの戦犯並びに一般引揚者は、これは日本に帰ってここで日本人として永住しようという考え方を持っておられるので、実質的な差は認めざるを得ないのじゃなかろうかということを考えるのであります。と同時に、私はもう初めから御承知通りに、日本の、現在国内においでになる一時里帰りの方に対しましては、責任をもってお帰しするように手配をいたしますということを三団体とお約束をいたしております。ただそのお帰しする方法に、船をチャーターする場合もあるだろうし、あるいは配船する場合もあるだろう、あるいは従来の船のいわゆる航路を変更してもらって、向うの指定される塘沽に送り帰す場合もあるだろう、しかし、それらについては、私はおまかせを願って、三団体との交渉上もおまかせを願っているというふうに考えております。そういうふうで、船の都合をいろいろ考慮いたしましたので、今回は外国船によって八百数十名の方がお帰り願いたい、こういうふうな考え方でおるのであります。しかし、船の都合から考えますと、戦犯につきましては八名がはっきり数字を示して引き取りにこいという先方の意思でありますから、それに対してじんぜん日を送るわけにもいかないから、特別に練習船を当てて特別な配慮をいたしたい、こういう考え方で運輸省と交渉いたしましたような次第でございます。ただ不幸にいたしまして、最初に考えましたようには物事が解決つきませんので、戦犯の引き取りがおくれておる、こういうふうな状況と了承を願いたいのであります。
  47. 竹中勝男

    竹中勝男君 政府のお考えの中では、練習船をなるたけ早期に、もう九月の初めからなんですから、一日も早く釈放された戦犯を日本に引き取るということが、これは当然なことでありますが、いまだにその配船ができない。しかもまだ、今予定されておった大成丸という船は十一月中旬でないと配船ができない。こういうことは実に同胞に対する冷酷な扱いだと私は考える。ことにまだ戦後一度も日本に帰らない、しかも日本の政府が名簿まで作って、向うに早く帰してくれ、調べてくれといって要求しておる同胞が天津に待っておる。日本に帰りたい里帰りも待っておる。その人たちを連れてこれないような船を計画したという政府考え方には、私は非常な冷酷な、わざと事を曲げた考え方があると、私は考えますが、この点について、今ここで追及しても仕方がないので、結果をよくしたいと私どもは思っておるのですが、その大成丸を十一月中旬に出す。しかし、これは百人くらいの人しか乗れない。そうして引揚者もこれに乗せて帰すことは、おそらく一部分しかできない。里帰りも一部分しか、ほとんどこれに乗せられない。また十一月二十日には、バターフィールドを出す。借りてやる。これもおかしなことですが、これは行くだけの船で、帰りに里帰りもそれから引揚者も帰還者も乗せることはできない。ほんとうに、お伺いしたいのですが、まだ千人くらいのおそらく日本に帰りたい人が、戦後初めて帰りたい人が、祖国に帰りたい人が、戦争の犠牲として今日まで放置されておる同胞が中国にいる。たくさんいるのじゃない。限られた数です、これは。その人たちを日本にあたたかく迎えようというお考えがあるのですか、ないのですか。大臣にお伺いします。
  48. 堀木鎌三

    国務大臣堀木鎌三君) どうもおしかりを受けるのですが、十分私のことはよく御承知だと思う。初め私が、まあ紅十字会が三団体を通してこの問題を処理したいという御意向でございますので、私は三団体と最初お目にかかりました。そのときは里帰りを向うに帰すか帰さぬかということが、その非常な問題だった。むろん帰すことは日本の意思として当然考えておるのですが、帰す方法も塘沽に船が寄れるようにするかどうかという問題は非常に問題だったのです。初めから実は三団体とわれわれの間におきましては、引揚者につきましては、里帰りにつきましては船賃すら全部自費で持っていただくというのが従来のお約束でありました。従いまして、私としては、まああなたを初め各種の方面から御要請が強いことにかんがみまして、経過は経過として、ともかくも現在国内におられる八百数十名の里帰りの方はお帰しして、船に乗せてお帰ししますということを申し上げたような次第でございます。従いまして、それについて私は誠意をもって解決に当ったと思うのであります。ただ戦犯八名という問題につきましては、はっきりしたものが向うから参っております。しかし、一般引揚者に対しては、実は何名ということは、向うから先方の通知を受けておりません。最初の話の場合には、一体配船するかしないかが問題だから、その問題をきめたら向うと交渉を開始しようというのが三団体の御意向でありました。従いまして、私としては、ともかくも数が少くとも、戦犯だけの八名というふうなお知らせだけは、戦犯を引き揚げるためにわれわれとして引き取りに参らなければならない。従いまして、苦労して運輸省と相談をいたしまして、十月八日に進徳丸を出帆してもらう手配をいたしました。しかるにそういう決定をいたしましたが、なお三団体の方でいろいろ問題がありまして、さらに会合を重ねたのでございます。そのときには第一回の会合のお約束を私は満たしたのでございます。しかし、これで悪いとおっしやるなら、少くとも一般引揚者について三団体はどれだけの数字があるのかお知らせ願っていいのじゃないかという話をしたわけでございます。しかるにその問題に関連しまして、いまだ私どもとしては了知いたしておりません。そういうふうな情勢から考えれば、八名を主にいたします練習船を早急に間に合わせて出そうというための意図は、私としてはできるだけの手段を尽すという観点に立って処理をいたしたという処置だと考えておる。ただむしろその際に、その後、三団体には不幸にして、お帰しするが、向うの言っている期限内に問題が解決しないので申しわけないから、その点も、先例もあるし、あわせて向うと御照会を願いたいということを言っているのであります。私としては率直に言えばおしかりを受けましたが、できるだけの手段、方法を尽してこの問題の解決に当って参り、そして第一回の三団体とのお話し合いに対する責任は、私は尽して参っている、こういうふうに考えているような次第でございます。
  49. 竹中勝男

    竹中勝男君 私はむしろ堀木厚生大臣が非常な誠意を持って、熱意を持ってこの問題の解決に取り組んでいることについてはだれよりもよく知っている一人でありますが、しかしながら、結果的に見ると、まあ大臣責任者の地位におられますけれども、日本の政府厚生省というものは進徳丸を最初持ち出して、実はこれは成立しなかった。これは二十五人しか乗れない船で、これはとうてい向うが承諾するはずがない。相手があるのですから、相手があるところに交渉しつつあるのですから、これは相当なやはり帰還者があるとわれわれは見なければならぬ。厚生省がもしそれをはりきりそれじゃ幾人あるかということを知った上で船を配船されようとするのであるならば、三団体を通して問い合されたらいいわけです。けれども厚生省はそれも問い合せてないのです。配船の都合があるから未帰還者、一般帰国者及び里帰りがどのくらいあるかということを問い合せられれば、向うは知らせてくると思うのですが、問い合せてない。うっかり問い合せたら、相当あるので、相当大きな船を出さなければならないということを、むしろおそれておられるのではないかと思う。それで、この現在の計画は、これはすでに発表されているのですから、広瀬試案というものが大体厚生省の案となっているようですが、大成丸が十一月二十日ころ、それから同じ日ごろにまた里帰りのバターフィルドを出す、なぜ同時に二そうの船を出さなければならないのですか。同時に二そうの船を出す必要は私はないと思う。しかも船がないのじゃなくて、一生懸命探せば適当な船がいつでも出せる。たとえば興安丸にしてもあるんです。これは悪意にとれば、里帰りをもう二度と日本にこれ以上帰らすまいという日本の政府の意図がどこかに隠されておるように私は考えざるを得ない。日本から向うに行く旅費は持つと言われますが、これは引揚援護法によっても、向うからこっちに帰るときの旅費を出さるべきなんです。自由に帰りてこいと言われますけれども、事実そういう手段はありません。船は四万円以上かかります。飛行機だったらまだまだかかります。何千人の生きるか死ぬかわからないときに中国人と結婚したような婦人たちが、そう自由に日本に帰ってこれるものでない。そうすれば、実に冷たくこれらの人はもう帰ってこなくてもいいというこれは意思表示のようにも、裏からとれば——そういうようにとりたくないけれども政府の動いているやり方を見ると、そういうようにとれる。そこでなぜ、船がないではないと思いますが、その配船をしないのですか。そして、向うは三団体との約束上、戦犯釈放者と一緒に一般帰国者及び里帰りも日本に運ぶということを約束しておるのですから、これが成立しないような配船の仕方では、おそらく向う承知しないだろうと思う。相手があることだということ、相手と話し合いをしなければ日本だけが独自にこういう決定をしていくということは意味がないということを考えていただきたいんですが、大臣の配船を、なぜこういう回りくどい、しかも外貨が少いときに外国の船まで雇わなければならないか、なぜ帰りの人を乗せないということがはっきりしておるような バターフィールドを使おうとしておるのか、そういう点を明瞭にお伺いしたい。
  50. 堀木鎌三

    国務大臣堀木鎌三君) 実は三団体の方は、今おしかりを受けたほど政府の意図を誤解してはおられません。三団体と私が交渉して参りまして、率直に申して、私どものこの問題の処理に当っての意向を、私はそう、何と申しますか、曲ってお考え願っていないということを確信しているのでありますが、私ども当初計画いたしましたのは、今里帰りの八百数十名の方をお帰しする、それははっきり約束した通り私は実行しなければならぬという考え方のもとに、船繰り等を考えまして外国船を利用しようという考えになったのであります。ただ、おっしやる通り、外国船につきましては、利用できる期間、時期というものがございますので、非常におくれる。この点は申しわけないと思いますが、従いまして、おくれるならば何とか利用できる船——練習船などを利用したい、こういう考え方で練習船を選んだわけでございます。で、私どもの進徳丸は、確に定員は少いのであります。私ども承知しておるところでは、五十人の定員でございます。しかし、向うが戦犯八名をお示しになって、それを受け取りにこいというお話に対しては、何としても早くこたえたい、こういう考え方でやったわけであります。従いまして、ただ三団体を通じて紅十字会と交渉いたしてもらいたいという基本線をくずさないためになかなか進まなくて、十月の八日すでに出帆しておるはずの船が出られない状態であります。そのためにじんぜん日を送りまして、さらに練習船を利用するという時期がおくれて参って、今おっしゃったように、時期的に見ると大体同じような時期になってきたという状況であります。初めの計画は決して同時に二隻を出すという考え方ではなかったのであります。ただ、三団体の方がその問題につきましていろいろと問題を提起されてまとまらないために、たまたま結果的にはそうなったということであります。  なお、里帰りについて非常に何じゃないかというお話でありますが、これは里帰りにつきましては、私ども最初から中共との間の便船を利用していただきたいという線があったのでありますが、今国内においでになる八百数十名の方は何とかしてまとめて早くお帰ししたい、こういうふうな考え方がもとになりまして、御承知通りのような処置をいたした次第であります。率直に申しますと、第一回の会議でその配船をするということがきまりましたら——三団体と私たちの第一回の会議では、そういう腹さえきめれば、向うの人数についても問い合せができる、それでなければ問い合せもできないというお話で、私どもは、本来から言えば、三団体がすでにそういう点についてお問い合せになり、御返事が来ておるべきはずのものであると、こういうふうにすら考えるのであります。
  51. 竹中勝男

    竹中勝男君 すでに五月に帰って、冬の用意も秋の用意もない里帰りが、十一月末まで秋風にさらされなければならないという状態、持っておる金も使い果しております。非常に同胞に対する十分のことができていないということは、これははっきり国民が認めております。また、戦犯がすでに釈放になって天津に数カ月待たされておるということも、日本の政府がなぜ一日も早くこの戦争犠牲者を受け取りに行かないかということも、国民は非常に不満であると思います。しかしながら、三団体と中国との協約によりますと、戦犯だけを切り離してないのです、先ほど言ったように。一般の帰国者、里帰りも、あらゆる考慮を払って努力するという協約があるわけなんです。そうしたら、戦犯と同時にこれは考えるべきです。事実天津に帰国を待っておる藤田元中将が家族に送った手紙によりますと、同じ天津に帰国を待っておる日本人と離れて自分だけが先に帰るようなことは自分は耐えられないと家族に言っております。こういうように、中国における日本人の戦犯は非常に丁重に扱われ何ら不自由がないから、われわれ戦犯も一般帰国者と帰途を一緒にする日を待つとすら言っておるのであります。そういう状態にあるにもかかわらず、十一月の末にならないと出せない、しかも全員は乗せられないような船を出す、あるいは片道だけ行って帰りには積んで帰れないような外国船を出す、こういうような考え方は、これはきわめて不親切な、不適当な考え方だということは、これは国民がひとしく認めるだろうと私は思います。その点、先ほど大臣の御答弁のありました中で、大体どれくらい帰還者があるか、里帰りがあるかわからないから、小さい船を先に選んだ、進徳丸を選んだと言われます。また、大成丸は百人程度の船です。とうてい向うの希望を果すことはできませんが、大臣は、三団体は、里帰りについてどれくらいあるかということを問い合せてくれと言えばいつでも問い合せるということを三団体は言っておりますが、問い合せられたらどうですか。
  52. 堀木鎌三

    国務大臣堀木鎌三君) 何か、里帰りと、日本に引き揚げてくる人を一緒にお扱いになっているように思いますが、私どもとしては一緒に扱うつもりはございません。これははっきり申し上げます。それから戦犯を受け取りに参りますことについては、私は全力を尽したつもりでおります。国民の御批判もあえて受けたいと思っております。この点は私としては全力を尽したつもりでございます。私が三団体に申し上げましたのは、戦犯及び一般引揚者は、いわゆる日本に帰ってくる人、そして永住する人、いわゆる一般引揚者は何人いるのかわからない。一体船を配船しろとおっしやるならば何人ぐらいいるかということはお問い合せ願いたいということを、私一は、それははっきり申し上げておきますが、しかし、里帰りの方について配船をしなくちゃならないというお約束は三団体に対していたしておりません。ただ現在国内においでになる方については、どうしても送り帰すだけの責任はとりますということを申し上げてあったのであります。従いまして、非常にお言葉を返すようでありますが、一般里帰りの人につきまして、私どもが戦犯、一般引揚者と同様の処置をとらなければならないということは、三団体も私はまだおっしゃっておられないと記憶いたしております。現在の日本にいられる里帰りの方をお帰しすることについては、お約束をいたした通りしょうという考え方で問題の処理に当って参ります。一般引揚者のために配船するということは今のところ私どもとしては考えていないのであります。できるならば現在中共との間の便船を御利用願いたいという考え方をやはり持っておるわけであります。
  53. 竹中勝男

    竹中勝男君 時間が相当経過しておりますので、まだまだお伺いしなければならない重要なことがありますが、これはまた十六日に外務委員会があるようですから、その席で外務大臣厚生大臣にお伺いをしたいので譲りますが、一言、最後にお伺いをしたいことは、これは相手のあることなんです。相手というのは中国紅十字会なんです。今、国交が未回復の間ですから。それから三団体が一九五三年北京において、一九五六年天津において結んだ協定によりますと、これは、戦犯の釈放、一般帰国者の帰国及び里帰りの帰国ということを三団体は協約をしておるのであります。これは別々のものではないのです。本質的に一つのものです。すなわち、日本の政府もたびたび中国にこれを要求しておるのです。日本人の行方不明者を調査してくれということをたびたび申し入れておるわけであります。日本人が日本に帰るというのですから、日本が血眼で探そうとしておったところのものが幸いにわかって日本に帰ろう。ところが、日本に帰るには中国でそういう状態で、中国人と結婚をした。しかし、日本に帰りたい、こういう人は一般帰国者と何ら、日本に帰る、日本に帰ってくるという道程までは変りがない。ただ向うでそういう事情で、向うの人と結婚しておるからまた帰らなければならないというだけのことです。これは日本人なんです。向うの籍には入っていない、入れていないのです。これは日本人なんです。そこで、回りくどいことを考えられないで、それはその過程を追うために、最初は政府は先般も受取船を出さぬ。便船で帰ってこいというのを引き下げて、それでは進徳丸を出そう。進徳丸では小さ過ぎるから、それでは大成丸を出そう、こういうふうに三度も変ってきているのです。いろいろな事情がだんだんわかってくるにつれて変ってきている。私は厚生大臣が熱意をもって、誠意をもってこれに取り組んでいることはよく国民も知っておりますが、しかしながら、なぜこういう回りくどいことをしなければならないか。結局は里帰りを乗せて、八百人の里帰りを乗せて、そうして戦犯を引き取りに行くようにならなければ、おそらく向うは戦犯の帰国ということが非常に困難になるだろう、こうすれば冬になる、そういうような状態に、相手があることを忘れてはならないと思うのです。これは話し合いもしなくてはならない。これは人道問題の解決は総理も、厚生大臣も、外務大臣も、これはやる責任を持っている。これに幾ら親切にしても、これはどこの国からも非難を受ける問題ではないのです。日本のために、また、まさに政府責任においてやらなければならないことなんです。これは遠慮することはない。何も外国船を雇って送り帰すというようなことを考えなくたっていいのです。だから結局においてはこの八百人の人を、少くとも乗せて向うに戦犯の引き取りに行くというところに落ちつかなければ、この問題は解決しません。しないということは、この三団体と紅十字会との協約を変えなければならない。これを変えるのは電報では変えられません。やはり向うに三団体が行って、この協約を変えるということにならなければ、里帰りの問題は、厚生大臣考えているような取り扱いにおいては解決ができないということははっきりしております。この点について、もう一度この大成丸を十一月二十日ごろに出すという、先のこと、しかもそれが全体が乗れないような船を出す。そういうころまで、おそく、ゆっくりかまえられる必要はない、考えてはいけないと私は思うのですが、早急にこの問題を解決するために、三団体の希望しておる、また、北京政府、紅十字会が希望しておる協約に基いたその処置を一つさらに考慮していただきたいと思うのですが、これが最後案だと言われるのですか。それともさらに考慮する余地があると考えられますか。どうぞその余地をもって、さらに相手方との交渉に乗り出していただきたいと思います。
  54. 堀木鎌三

    国務大臣堀木鎌三君) いろいろのお言葉ですが、私の処理しようとする意思と実は違った表現だけは私は認めるわけにいかないと思うのでありますが、率直に言って、私は三団体の方が私に御返事をちょうだいする段階だと思うのです。三団体の方は、率直に言えば、私は三団体と最初からお約束したことは、これは実行したのです。この間、三団体も、私に要求されることは、なるほどお前はしている。しかし、外国船を当てなくてもいいじゃないか。日本船で帰す方に考えられないか、こういうお話だけなのです。しかし、その船の選択は私は私におまかせ願ってけっこうな話じゃないか。その上で三団体の方が、一応私が最初に約束したことを履行するならば、向うと交渉にお当り願って、私に御返事あるべきなのです。そういう点につきまして、私はそう考えて物事を処理して参りたい。今の段階はそういう段階であるということを御承知願いたい。
  55. 竹中勝男

    竹中勝男君 ちょっと確認をしておきたいことがありますが、それでは三団体が、その外国船をチャーターして、外国船を利用することについては反対だと言っておることを厚生大臣は承認の上で、さらにそれではどうするかということについては三団体と交渉を続けようと言われることを確認いたして、私の質問を終ります。
  56. 堀木鎌三

    国務大臣堀木鎌三君) 速記をもしも何でしたらつけないで……速記をお残しになるならお残しになるような程度に御答弁いたします。
  57. 竹中勝男

    竹中勝男君 腹を割ったことを一つ率直に。
  58. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  59. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 速記を起して。
  60. 勝俣稔

    ○勝俣稔君 実は身体障害者のうちで特に盲人の問題でございますが、全盲の、こういう人は実にお気の毒の次第でございまして、大体、はり、きゅう、あんまのような仕事をしておるのが、最近においては晴眼の人が非常にそういう方面に出て参りまして、ことに婦人の晴眼のあんまさんというものが相当ある地方でははびこっておるような状態でございまして、実にかわいそうな状態であるのでありまして、私はこの全盲の人に政府はいろいろの年金のようなことを考えておられるようだけれども、この問題に対して真剣に一つ考えになる意思がおありであるかどうかということを伺いたいのでございます。
  61. 米田吉盛

    説明員(米田吉盛君) 御承知のように、一般の年金を考えておりますので、それとあわせてやはりこの問題も結論が出ますように調査をいたしたい、こういう考えでございます。
  62. 勝俣稔

    ○勝俣稔君 年金の問題は、なかなか調査々々で参りまして、政府相当資金も要るでございましょうが、ほんとうにこれは私は全盲の人だけは……今のように職場をとられ、順々に追い詰められていくというような関係になっておりますから、一つぜひそれはお願いいたしたい。  なお、全盲の人のあんまに対する先取権と申しますか、特別なる配慮をおとりになる意思があるかどうか、この点を一つ局長でもよろしゅうございますから……。
  63. 安田巖

    説明員(安田巖君) 特別措置と申しますと、先取権と申しますと……。
  64. 勝俣稔

    ○勝俣稔君 つまり晴眼の人をある意味合いにおいて制限する。あるいは全盲の人の方はほんとうにあんまの研修の事業について便宜を見てやるとか、これは社会問題だろうと私は思うのであります。
  65. 安田巖

    説明員(安田巖君) 今お話のように、盲人といたしましては一番大事な職業、ほとんど唯一の職業と言っていいあんま、はりきゅうにつきまして、目の見える人が最近はだんだん出て参っておりますが、中には女のあんまなども、たくさん出て参っております。だんだんと盲人の職場を侵されておることはおっしやる通りなんでございます。それでいろいろ私どもといたしましては、できればこれを盲人だけの専業にでもしたいくらいな気持でございますけれども、しかし、憲法の規定等から考えまして、それもできかねる状況であります。医務局でこういったあんま、はりきゅうの養成機関の問題ありますとか、あるいは許可等の仕事をやっておりますので、十分打ち合せをしまして、気持だけは今おっしゃるような気持を持ちたい、こういうふうに考えておるわけであります。
  66. 坂本昭

    坂本昭君 ただいま社会局長のお答えになった問題は、現実の問題として今非常に深刻な事件を各地に起しております。御承知通り、盲学校のような、設備の点において、また、教育の点において整ったところ以外に、指圧の養成学校というのがあります。これの内容がきわめて基準にかなっていないものがある。しかもそういう施設が各地に続発する傾向があります。しかもそれに対して各県の当局ははっきりした線でそれを押えていっていない。私はこの問題は確かに医務局長の権限に属するものだと思うのでありますが、きょうは時間がありませんから、あとの、午後のときでもあらためて医務局長に御質問いたしたいと思います。
  67. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) それでは午前中はこれで休憩に入りたいと思いますが、午後は二時から再開いたします。    午後零時五十四分休憩    —————・—————    午後二時十八分開会
  68. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 再開いたします。  午前に引続き身体障害者年金対策について質疑を願います。
  69. 坂本昭

    坂本昭君 午前中に身体障害者、特に目の不自由な方の生活が、正常者がどんどんとあんま業を営むことによって、その生活が追い込まれているということについての質問がありました。実は現在指圧養成所というふうな名前で全国に三十カ所程度そういう養成機関があって、そこでは正常者にあんまの資格を得させるための教育が行われているのでありますが、その養成所の内容が比較的不備であるにもかかわらず、養成所の名前において、正常者があんまの資格を得るような教育が続けられている、かつ、そういう範囲が全国において広げられつつあるように私は見聞しております。それについて、社会局長のけさの答弁では、これは医務局の方の所管に属するので、医務局長とも相談してお答えしたいということでございましたが、医務局のそれに対する御見解を承わりたいと思います。
  70. 坂本貞一郎

    説明員坂本貞一郎君) ただいま御指摘の、いわゆるあんま師、はり師、きゅう師、柔道整復師というような養成施設のことだろうと思いますが、あんま師の養成施設につきましては、御承知のように、「あん摩師、はり師、きゅう師、及び柔道整復師法」というのがございまして、その法律に基きまして、養成施設の指定及び指導監督を厚田大臣がやっておるわけでございます。ただいま御指摘のように、全国にこの養成施設が約三十二カ所くらい現在のところあります。その三十二ヵ所の養成施設のうち、いわゆる晴眼者と申しますか、正常な、俗で申します目あきの者がやっておるものが相当あるわけでございます。盲人だけを対象とした学校というのは、現在のところ約十ヶ所足らずございます。それで、ただいま御指摘のように、正常者が、いわゆるあんまというような業をやりまして、盲人の方をだんだん圧迫しつつのるのじゃないか、こういう御意見のように承わったわけですが、この点につきましては、従来から、私どもできるだけ盲人といういわゆるハンディキャップを持った者の職業として、非常にあんまというのは重要な職業でございますので、できるだけ盲人の方がそういった正常者によって圧迫されないように努力をしておるわけでございます。最近の傾向といたしましては、晴眼者を対象とした学校というのは逐次ふえつつあるわけでございます。従って、私どもとしては、現在のところ、ただいま申し上げましたように、盲人だけを対象とした学校というものをできるだけ健全なものとして育成しいきたいというふうな趣旨からいきまして、学校の指定基準と申しますか、そういうものが省令できめられております。非常に不備なところが多々ございまするので、できるだけこういう不備な点を改めまして、りっぱな学校に育てていく、こういう観点から指定基準、いわゆる省令を改正するということを考えております。近く成案を得るのじゃないか、こういうふうに考えておるのであります
  71. 坂本昭

    坂本昭君 近く成案を得るというような状態では、私は間に合わないと思います。ことに、現在の基準でももっと厳格に私は取り締ることができると思います。にもかかわらず、取り締っていないということは、結局、目の見えない、身体不自由者という者は、生活力も、また、政治力も非常に弱い、その弱い人たちを積極的にかばうという意思が厚生当局に欠けているのではないか、実はそれを私は疑うものでございます。そういう点について、成案を実は作りたいと思っているという程度では、ちょっと私は納得できません。もっと積極的に、現在の基準でさえも沿わない程度のものは、身体障害者の生活を守るという意味において、もっと厳格に法を適用して、取り締っていっていただきたい、さらに、場合によれば、指定を取り消すとか、それだけの積極的な意欲をお持ちになるかどうか、一つ確かめておきたいと思います。
  72. 坂本貞一郎

    説明員坂本貞一郎君) まことにごもっともな御意見で、私どもも、従来から、決して指定基準というものを甘く解釈して運用しているわけではないのでありまして、結果的に見まして、晴眼者だけを対象とした学校がふえつつあるということは、まことに遺憾なことであると思います。この学校、いわゆる養成施設を指定するについて、地方に審議会がございます。その地方の審議会でも、先ほど十カ所ぐらい申請が参ったわけでございますが、大部分不備なところがございますので、ほとんどの学校がパスしなかったという実例もございまして、今後は、できるだけ御趣旨に沿うように取り締りを徹底していきたい、指導監督を十分にやっていきたい、こういうふうに考えております。
  73. 坂本昭

    坂本昭君 今の、申請に対してパスさせていない、つまり、現状では、保留の形に置かれているのです。ところが、この申請したところの養成所では、現実にはどんどん教育をやっている。それは、もうあなたの方で御承知だと思う。やりながら、正常者が、アルバイトとして、身体不自由者のあんま業を現実に圧迫しているという事実は、これはあなた御承知だろうと思いますが、いかがでございますか。
  74. 坂本貞一郎

    説明員坂本貞一郎君) 現在ある、いわゆる養成施設が非常に不十分な運営をやっているということにつきましては、私どももそういう実例を聞いております。そして、都道府県を通じて、あるいは本省から直接参りまして、いろいろ指導監督をやった実例もあるわけでございまして、ただ、ただいま御指摘のアルバイトというような形において、生徒がいろいろなことをやっているという点でございます。これも、確かにそういう傾向が一部の学校に見られるわけでございますので、いろいろな方法手段を講じまして、私ども、そういった実習という名目でアルバイトをやるということのないように指導をやっているわけでございます。全国の学校の中には、あるいは、十分目が届かないために、この辺の取り締りが徹底していないということがあるようにも聞いております。最近、警察当局の方も、この点につきまして、学校の実習という名目で不正なアルバイトをやっているということについて、徹底的に取り締りをしたという事実もございます。今後、こういうことにつきましても、十分関係方面とも連絡をとりまして、指導監督いたしたい、かように考えております。    〔委員長退席、理事山本經勝君着席〕
  75. 坂本昭

    坂本昭君 ただいまのお言葉を私は厚生省の方からお聞きしたのでは、はなはだ不満なのでございます。というのは、なるほど職業の選択は自由でございます。だから、あんまをやるのは、めくらがやろうと、目あきがやろうと、それは自由だという考えは起きます。生活にさえ困っておればいいじゃないか、ところが、現在、厚生省としては、かなり取り締っていると言われますが、各県の実情では、そこまで積極的に取り締っているようには見受けられません。むしろ目あきの人でも、生活に困っている場合には、あんま業で生活できるならば、それもやむを得ない、法律的にそれを取り締ることができない、そういうように行政的な見解を持っておるように見受けられます。といいますのは、結局、身体障害者に対する国の保護をどういうようにやっていくか、さらに、積極的に言えば、身体障害者の雇用の問題、就職の問題、こういうことと直接私は関連してくると思う。これは、もちろん今度は労働省の問題になるかもしれませんが、これを推進していく母体になるのはやはり厚生省でなければならぬと思います。その母体にならなくちゃいけないあなたがそういうような考えでは、これは、なかなか身体障害者の生活を守るということは、私はとうていできないと思う。それ以上こまかくお尋ねしませんが、身体障害者の生活を守るという意味で、イギリスあるいは西ドイツにおいて、非常に広く使われているところの身体障害者強制雇用法、こういう法律を、労働省、厚生省一体になって作られて、たとえば、あんま業は身体障害者でなければいけない、あるいは国会のエレベーターを操作する人は、イギリスと同じように、身体障害者でなければいけない、あるいは今度自動車駐車場法というのが先般の法律で通過しました。イギリスでは、駐車場の番人は全部身体障害者でなければならないというふうに規定があるわけです。こういうことを推進していくための考え、特に強制雇用法を厚生省としては作っていくというお考えがあるかどうか、それだけ一つお尋いたします。
  76. 安田巖

    説明員(安田巖君) 身体障害者の生活をどういうふうに守っていくかということについては、いろいろやり方があるわけでございまして、終局的には今のお話の雇用割当法と申しますか、あるいは強制雇用法と申しますか、そういうものを行う、あるいはけさほども勝俣委員からお話のありました身体障害者、ことに重度の身体障害者に対する年金制度、いろいろあると思います。私どもも実際身体障害者の更生指導ということをいろいろやってみましても、御承知のように、府県に更生指導所がございます。それから中央にも国立の更生指導所がございますけれども、やはり何といっても一つの限界があるわけでございます。大体障害が大きければ大きいほどそういったことを感ずるわけであります。今、坂本委員が御指摘になったようなことは、確かにこれはそういった制度をやっていく場合においては、少くとも前提にならなければならないような重要な問題でございますので、私ども常々考えておるわけでございます。  年金につきましては、けさほど政務次官から話しましたようなことで、せっかく研究をいたしております。それから雇用安定法につきましては、二、三年前非常にそういう問題が出たのでありますが、所管がやはり労働省だというので、労働省でいろいろ御研究願ったわけであります。厚生省といたしましては、できるだけそういったような制度のできることを希望いたしますが、そこにはまた労働省の方でいろいろお立場がございますので、私どもの方はそういうことを推進されるように努力いたしております。また、今後とも十分そういうことにつきましては労働省と交渉いたしまして努力いたす考えでございます。
  77. 坂本昭

    坂本昭君 局長さんのお考えはほぼ推察されますが、どうもそういう面で厚生省の力がはなはだ弱いことを私は遺憾といたします。もっと積極的に身体障害者あるいは生活困窮者を守るという面の努力をしていただきたい。きょうはもう時間の関係でこれ以上申し上げませんが、今の身体障害者のあんま業などの問題は、基本的にいえばこれは厚生省がもっと弱い者の味方になって働らいてもらいたい。もちろん今の政府では弱い者の味方にはなりませんので、その点ではとてもだめだろうと私は初めからあまり期待はしておりませんが、特に来春から売春防止法の実施に伴って、その間隙を縫ってくるところの要素がもうすでに始まりつつある。これは現実の問題として基準を作るとか、成案を実は練っておるとか、そういうのんきなことを言っておれば、目の見えない人たちは生活のどん底に追われてしまいます。そうして一面において、盲学校などにおいて必要な教育をやって、十何年間もかかって全然目の見えない人だけにやっと生活の道を与えておきながら、しかもそういう人たちの働く場所がなくなって、しかも美しい目の見える人ばかりきて占領してしまうということになれば、これは大きな社会問題だと思うのです。そういう点で厚生当局の取り締りを厳にするという、口だけではなくして、実際にやっていただきたいということをお願いいたします。  やはり同じ問題に関連して、次に社会局長さんに、同じ困窮者の問題で、生活保護のことについて二点ほどお尋ねいたしたいと思います。  その一つは、今月の初めから米価が値上げになりましたが、それに伴って生活保護の基準の引き上げがどんなふうに行われておるか。また、その予算的措置はどういうふうに行うつもりか、補正予算を組むような意図はないか、そのことをまずお尋ねいたしたい。
  78. 安田巖

    説明員(安田巖君) 十月一日から米価改訂が行われましたので、生活保護の基準といたしますというと、標準五人世帯を基準額で米が百二十一円、月額違ってくるわけでございます。従来の額にそれだけ足したものを、今後は生活保護の基準といたすことになりました。それは九月二十八日に社会局長名で都道府県知事に通知いたしまして、十月一日からすでに行われておるわけでございます。それに対する予算措置でございますけれども、平年度に直しまして、つまり一カ年を通じますというと三億四千九百九十九万九千円になりますが、ちょうど半分でございますから一億七千五百万円、これはつまり国が出す八割の補助金相当するわけでございます。一億七千五百万円というものは、今の生活保護の予算から申しますと、すぐそれを予備費で出すとかあるいは補正予算どうとかいう問題でございませんから、このままずっと送って参りまして、そうして三月なり二月なり、足りないという見込みがつけば、もちろんすぐに予算をつける手当をいたすわけでございます。とりあえず私どもといたしましては、十月一日から改訂通り実施いたしておるわけでございます。
  79. 坂本昭

    坂本昭君 あとで、それだけの米価の値上りの分だけ生活保護が不徹底になるということの起らないように、この点は一つ責任をもってやっていただきたい。ただ私が心配するのは、従来の政府のやってきたやり方を見ますというと、まことに生活保護に対して血も涙もないのですね。先ほどの、身体障害者に対しても、積極的な意欲をもって守らないと同じように、非常に冷淡で、たとえば、先般来生活保護の実態調査を非常に厳しくやっておる。しかしながら、その反面において、この間うち日刊紙、週刊紙をずいぶんにぎわしたところの事件が続いて出ておるのです。たとえば、詳しく申し上げませんけれども、高崎の福祉事務所の主事が女の子を殺した事件、それから高崎市の養護施設渓声学園の非行、それから前橋の児童相談所における非行、こうした保護矯正を直接担当しておられるところに多くのこういう犯罪、間違った行為がある。保護せられるべき人を保護しなければならないのに、殺したり暴行を加えたりする、こういうことは現在の政府がとっている保護行政の中に思いやりがないということを表わしておるのじゃないか。これについて私はあとで大臣の御見解も承わりたいと思うのですが、局長のこういう福祉関係職員の非行について、その原因がどこにあると思われるか。また、その原因をいかにして排除したらいいか、御見解を承わりたい。
  80. 安田巖

    説明員(安田巖君) その前に、予算を少く引き締めるのじゃないだろうかという御心配でございましたが、そういうことは私どもは毛頭考えておらないのでございまして、要るだけのものは予算を組むという考え方、また、途中で足りなくなれば、それだけのものは当然要求しなければならぬ、こういう考え方でおりますからして、決して御心配になるようなことはいたさないつもりでございます。  それから、先ほど指摘になりました高崎市の福祉事務所のケース・ワーカーの問題でございますが、実は午前中私資料を持ってきておったのでありますが、午後は米価の問題だけかと思いまして、置いて参りました。大へん申しわけないことでございまして、御承知のように、福祉事務所と申しますのは、県が持っております福祉事務所と、市は、自分が保護の実施機関として福祉事務所を持っておるわけでございます。やはり問題は、いい人をどうして得るかということが一つの問題、それからやはりそれに対する訓練と申しますか、そういうことが大事なことだと思います。今は福祉事務所のそういった現業員につきましては、大体市部が八十五の保護世帯に対して一人を置かなければならぬ、郡部では交通が不便でございますから、六十五世帯に対して一人置かなければならぬというように法律に規定がありますけれども、実際はそういった市でありますとかあるいは府県等におきまして財政上の都合等でまだ一〇〇%充足率を示していないということ、これはやはり負担が過重になるという点で私は一つの欠陥だと思います。  それから福祉主事になりますのには、資格を要求いたしております。これはもうそう高い資格ではありませんけれども、しかし、一応の資格を要求いたしておるのでありますけれども、そういう資格がある福祉主事つまりケース・ワーカーの資格率というものは、やはり七〇%か七五%くらいで少し落ちておるわけでございます。こういうことを考えまして、今後は充足とそれから資格を持ったりっぱなものをそこに充てるということに努力をいたしたいわけでございます。そういった現業員になって後のイン・サービス・トレーニングというようなものも私ども心がけてやっておるつもりでございますけれども、今後そういう点に十分力を注いでいきたい。ただ残念なことでございますけれども、やはりこれが市の職員であり、県の職員でございますから、その点がなかなか厚生省の思うようにならない。できますならば、私どもはこういった職員に対して人件費の財源が交付税交付金でなくて、やっぱり保健所のように国から補助金でもいくというような形になりますと、その辺がまた言いやすいのじゃないか、あるいは県の方もやりやすいのじゃないかということを考えております。いずれにいたしましても、事件そのものは、ほんとうにこれは申訳ないことでありまして、今後そういう点につきまして十分気をつけて参りたいと思います。
  81. 坂本昭

    坂本昭君 今の原因については、率直に言ってたとえば定員が足りない、予算が足りない、そういうことを局長は言われたのですが、これは与党の方にもよく聞いておいていただく。そうしてまた、保健所のような行き方にしなければならないという御意見も出ておりまするが、先ほどまあ米価の引き上げに伴って決して政府の実際引き締めたりはしないということを言われましたが、実際のところはこれほど現在の生活保護法の行政というものは、予算的にも行き詰まっておるわけです。行き詰まっておるわけですから、それに米が上ったからといってそいつを現在の政府が補うほど私はそれほど親切だとは期待しておりません。結局それはどこかへしわ寄せされてそのしわ寄せされたところへいろいろな問題が必ず起ってくると思うのです。局長さんまあ決して迷惑はかけないと言われましたけれども、現在この定員が足りないあるいは資格の十分でない人を雇っているという現状を私はもっと率直に打ち出していただきたい。特にはなはだ遺憾に思うことは、こうした現象が起ってくることの中には、この厚生省当局のいわば局長さんにも私は責任があると思うのです。というのは、こういう少い予算でしかも生保の実態調査をやる。きびしくそれを末端へ流す、やれ、やらなかったならばこれは公務員として不適格である。そういうようなきびしい指令、命令を出して、そのためにこの被保護者もあるいは病人も非常な苦しみをなめる。また、その行政を扱っておる人の中には、いろいろな煩悶を持つ人もあるし、また、中にはこれを悪く利用して今のような犯罪や非行を起すことにもなるし、この点でただその金が足りないということだけで局長がその責めを免れようとするならば、私どもはこれはもってのほかだと思うのです。というのは、これは何も、あとで大臣に伺いたいと思っておりますが、社会局に関する行政だけではありません。保険局に関する行政もすなわちこの統制的な非常にお役人的な行政が今日の厚生行政というものを支配している。それについての反省と自覚というものは当然お持ちになっていただきたい。そうしなければ、ただ金だけの問題だといって済まされることじゃないと思うのです。金がなくてもわれわれとしてでき得る行政というものがある。その辺の自覚を十分局長がお持ちになられないということは、これは私は遺憾だと感じます。
  82. 安田巖

    説明員(安田巖君) いろいろ御忠告をいただきましてありがたい次第でございますが、私のその予算の点でお話ししましたのは主として市でありますとか、府県におきます人件費の問題を申し上げたので、生活保護費そのものについて予算が足らなくて、その予算が足りないことを、当然保護すべき方々の上にしわ寄せをするということは私はもう断じてするつもりはありませんから、もし必要であればその予算は当然とるべきだと思っております。ただこういった公的扶助制度の場合は御承知のように、どこの国でもやはりミーンズ・テストということをやりますから、その際にいろいろとやはり問題が起きるのでございます。アメリカのようなところでもやはりいろいろ役所をだまして、そうしてその保護を受けるというような問題がたくさんありまして、ある州におきましては保護台帳というもの、これは秘密にしなきゃならぬのでありますけれども、その秘密性までもやめてしまって、一般に公開する。そうすることによって、あれがもらっているのじゃけしからぬじゃないかというようなことで、いわばこれは福祉行政としては自殺でありますけれども、そういうことをやった州が二、三あるということであります。そういうことで日本の場合におきましても、まあいろいろ問題があることは事実なんでございまして、私どもとすればたびたびそういった世帯に接して、ただ相手がうそをついたかどうかということを調べるためではなくて、指導しなきゃならぬという規則になっておりましても、手が足りなくてなかなか行けないというようなこともありますので、年に一回は必ず一つ調査をするということによって、まあそういった指導という目的も達しますし、同時にまた、間違ったものがありました場合に、少い場合にはたくさん出す、たくさんの場合には減らさなきゃならぬというふうなケースを見つけておるようなわけでございます。なかなかやってみますというと、これは人間と人間の関係でございますから、いろいろこれは問題がございます。ことに最近はその福祉事務所の人が調べにきたら、こういう質問があったならばこういうふうに答えたがいいとか、こういう場合にはこういうものを隠しておいたらどうだというようなことまで明細に印刷物にして配っているようなところもございまして、必ずしも坂本先生のおっしやるようなことばかりでもないわけなんで、いずれにいたしましても、とにかくこれはそういった保護を受けるような立場にある人でございますから、何と申しましても親切にすること、相手の立場をよく考えてやるということだけは常々言っているわけでございます。そういったようなことがございますので、決して予算をそこへしわ寄せするというようなつもりは毛頭ない、ただ執行に当りましては数の多いことでございますけれども、これは一つでもそういった手違いのないようにということを目標にいたしまして訓練をいたし、指導をいたすつもりでございます。
  83. 坂本昭

    坂本昭君 いろんな、何といいますか監査受験要領というようなものを配っているというようなことの御指摘は、果してこれは局長さんとしてあまり適当な言葉だと思わないのですが、私も監査をしちゃいかぬという文句を言ったことはないのです。しかし、土地の顔役やボスがたまたまこの生活保護というものを悪用してきた例は比較的多いと思うのです。そういうものを徹底的に排除するという意味において監査をやらなければならぬということはいいのですよ。しかし、国民の大多数は、これは厚生省指摘しておられるように一千が人のこの低所得層がいるのですね。この人たちが自分の生活を守るためにいろいろと隠したり何したりしている、このいじらしい行動は、これを悪意のものと理解されるようでは、これは行政の根本思想が私は狂ってくると思うのです。この点は一つ局長さんのお考えを改めていただかないというと、そういう局長さんの御指示によって動くところの各末梢の福祉主事は、どうしてもこれ命とかしこまり、承わってやりますというと、きついことになり、そしてそれを悪用して職権を乱用すると、いかなる非行為にもなる。私は、その点を一番おそれているのです。実は、これは起きた三つの事件からも有名になりましたけれども、今後こういうものが続発する地方が私は十分あると思うのです。そのため非常にこれを心配して、この原因並びにそれを排除する処置、特に私は、これは厚生省自身が、予算が少いとかいうことで片づけないで、もっと積極的に処理していただきたい。そのことを私は要求しているのでございまして、現在、これは四国のある県で療養所に入っている人たちが、安静度四度になりますと、夫婦で入院しているから、もう奥さんの方は出なさいと……。で、今住宅扶助が、四級地だというと三百六十円ですね。娘さんが工場で働いているから、娘さんから五百円もらって八百六十円で自分で家を探してそこへ移りなさい、移らなかったら保護を打ち切りますよ……。結核の回復期の御婦人が自分で家を探すということもなかなか困難だ、いわんや八百六十円で家を探すということもとうてい不可能だと思うのです。ところが、それがその地方の指導的な福祉主事のやっていることなんです。これが一歩いけば、患者さんの方が自殺するかもしれませんよ。場合によっては、患者さんが自殺しなかった場合には、職権の乱用ということを私はここで主張するわけではありませんが、非常な危険が全国各地にあると、そのことを私は非常に心配するわけなんです。さらに、実際にこの末梢の事務を扱っている人にはいい人があります。実は私、地方自治研究集会でいろいろなケース・ワーカーの人が自分の悩みを訴えられているのを少し読んだのですけれども、山形県では、收入認定をきつくするというと、自立更生することができない。そこで今度は生活指導に重点を置くと、收入認定が甘くなって、監査官にしかられる。実は、しかるのは局長さんなんですね。それで、結局非常に悩んで、どうしたかというと、神経衰弱になって自殺をしてしまったという例がある。これは山形県です。お調べ願いたい。これははっきりと記事に載っております。こういうふうな、人を殺さんで自分が自殺をしたというような例も、これは公表されたものですから間違いないと思うのです。と同時に、今度はそうでない場合には、ケース・ワーカーに対して査察指導員が絶えず目を光らしているから、結局ケース・ワーカーは査察指導員に迎合して、自分の意思に反したようなことをやるようになり、これは本人が語っているのですが、私は、ケース・ワーカーをしていたときに、ケース・ワーカーは役人である前に一個の人間であり、ワーカーこそ彼保護者の味方でなければならないと言ったために、ケース・ワーカーの職を追われた——これは千葉県の例です。こういうふうな例が各地にあるのです、実際に。で、こういう問題を、私は、日本の官吏にも非常にまじめな人がおると、先ほどあげた三つの犯罪や非行をやった、こういう悪いことをする人もあるけれども、もっとよい人もある、しかし、みんなが非常に悩んでおる、この悩みに共感を持ち、そうして行政の指導官として、局長さんがもっと的確な指導、愛情のこもった指導をしていただきたい。特に、この末端の人に対する指導についての御見解をあらためてお聞きしておきたいと思うのです。
  84. 安田巖

    説明員(安田巖君) 私が先ほど申しましたように、特にそういう保護を受ける立場にある人は、いろんな意味で何というか劣等感を持ちましたり、あるいは悲観したりするような傾向があることでもございますから、福祉事務所の方の扱いが、ほんとうに何げないしぐさをしたり、何げない言葉が相手の心に鋭く突きささるということがございまして、そのためにせっかくのケース・ワーカーの仕事がだめになるといったことはよくあることでございます。そういった点をよく考えて、相手の気持になって仕事をするようにということを申しておるわけであります。ただやはりこの仕事をいたします場合には、生活保護法をごらんになりますとわかりますように、やはり一つの最低基準というものがございますから、その基準を離れて、そうしてあまりそこに自由裁量の余地を残すということになりますと、甲と乙との間に非常な不均衡な保護をする、逆に言うならば、国民の中で違った標準の生活を保障するというようなことがまま出てくると思うのであります。そういう点もやはり生活保護法から申しますと気をつけなければならぬことです。要は、一つは基準の点が非常に問題になるわけでございますから、そういった今申しましたようなことを、私どもはそういった仕事をいたす者に注意いたしておるつもりでございます。
  85. 坂本昭

    坂本昭君 結局私は、結論は基準の問題になってくると思うのです。そうしてそう勝手に行政が自由裁量にまかされたのでは困るのですね。結局こういういろいろな問題があるということは、今日のこの基準というものが間違っているのではないか、私はそういり反省をしていただく必要があると思うのです。実際に今の研修会のこの記事を読みますというと、厚生省できめている基準額によって家族八人が一万一千円の最低生活費で生活をするにどういう品物をどれだけ食べるかという調査をした発表が載っております。それによりますと、今の基準だけの食生活をしますというと、保健所の栄養士のカロリー計算で千八百カローにしかすぎない。そして八人家族のうち子供四人が病気にかかっておる、その三人が肺結核である。そういうケース・ワーカーの報告が出ているんです。ということは、末梢で働いている人は、この基準が適当なものでない、そういうことを考え、そしてその中で非常に悩んでいるわけです。悩んでおられぬのはつまり局長さんだけじゃないかというと失礼ですが、やはりもう少しこういう面で、基準について新しい目で御検討を私はしていただきたい。来年度の予算の折衝も始まっておると思いますし、今までのありきたりの自由民主党の政策によることなくして、この末梢で働いている人たちの実際のデータを基礎にした基準を一つ作っていただきたい。それだけの勇気はお持ちだと思うのですがね、局長さんは。
  86. 安田巖

    説明員(安田巖君) 基準の問題につきましては大へんむずかしい問題でございまして、そういった最低生活というものをどういうふうに考えるかということですが、これは純粋に理論的にだけ考えるということは、こういう場合にはあり得ないので、やはり社会的な生活水準というものが問題になるわけです。そういたしますと、それは国民全般の生活水準というものとやはり並んだものであるということになる。そこで今お話になりました食費につきまして、坂本委員お話のようなことも私どももいつも考えているようなわけでありまして、実はときどき栄養研究所に頼んでは一級地、二級地でもってどういう献立ができ、どういう品物ができるかということは研究いたしている。それではっきりやれるということがわかりますので、私どもはそういう基準にいたしておりますが、しかし、これは上にいけばいいにきまっておりますから、できるだけのことは私どもはいたしたい。ことに食費以外の点でできるだけ私どもは増したらどうかという気持をいつも持っておりますが、せっかくいろいろいい御注意をいただきましたから、なお、この上とも研究させていただきたいと思います。
  87. 山本經勝

    ○理事(山本經勝君) 本問題に対する本日の調査はこの程度にいたしたいと思いますが、御異議ございませんか。   (「異議なし」と呼ぶ者あり)
  88. 山本經勝

    ○理事(山本經勝君) 御異議ないと認めます。ちょっと速記をとめて。    〔速記中止〕
  89. 山本經勝

    ○理事(山本經勝君) 速記つけて下さい。  次に、社会保険医療費の一点当り単価問題に関する件を議題といたします。  御質疑を願います。
  90. 松澤靖介

    松澤靖介君 この問題について大臣に二、三お伺いしたいと思います。  前国会において、健康保険法等の一部改正の審議の最中におきまして、あるいはまた、その付帯決議におきましても、崇首相並びに神田厚生大臣は、単価の引き上げを行なって、医者の待遇を改善をするということを言明されたのでありますが、これは要するに医療経営を通じまして、採算し得る経営費と医者たる生活水準とが保障されて、そうして今後実施されるであろうところの国民皆保険の一大支柱を強力にしようとするその建前のもとにおいてお考えなさったことと思いますが、さように堀木厚生大臣もお考えになっておるのかどうか。
  91. 堀木鎌三

    国務大臣堀木鎌三君) 単価の引き上げによってお医者さんの待遇の改善をはかりたいというお話でござましたが、この単価自身が率直にいえば実態的な診療行為そのものについて表わしているのではなしに、単価と点数は、私は不可分の関係に立っておると思うのでありますが、適正な診療報酬を算定することによって、お医者さん自身の待遇が改善され、医術が向上し、それが国民に及ぼしますことは、私自身も希望いたしておるところでございます。
  92. 松澤靖介

    松澤靖介君 ただいま堀木厚生大臣のお述べになったことによりますと、単価という概念そのものが、今まで考えられた単価の内容とは異なっておるように思われますが、私は単価の内容、概念というものは、これは医療におけるところの経済的要素を多分に含んだところの一つの尺度である。そういう意味において、過去においても一円の値上げ、あるいは五十銭の値上げに対しましても、非常な問題点が多かったのであります。簡単に結末に達し得ない状態が過去の歴史に徴しまして私はわかると思います。  この点について、昭和二十六年の十二月において、ここにいらっしゃる谷口先生の医師会長時代におきましても一円五十銭のその値上げに対しましてもなみなみならぬいろいろの各方面の努力があったと思います。そういう意味でただ単に今、堀木厚生大臣のおっしゃったような単価の内容とするならば、私ははなはだ不可解に存ずるものでありますが、堀木厚生大臣先ほども申したような意味合において単価というものをお考えになっておるか、もう一ぺんお伺いしたいと思います。
  93. 堀木鎌三

    国務大臣堀木鎌三君) 二十六年のときの単価の引き上げの問題の経過についてはおっしやる通りだと思います。そうして従来ともこの単価というものが一つの基準になりまして算定の基礎になって参りましたことも事実でございます。でありますから、実は私どもがこの単価問題考えるときに、従来の関係との相関関係においては単価そのものが相当重要性を帯びておるということは十分考えられますが、しかし、この単価を考えますときに診療行為の対価と申しますか、そういうものは必ず点数との総合において考えられておるということも私は事実だと思うのであります。そういう意味において御答弁申し上げたような次第でございます。
  94. 松澤靖介

    松澤靖介君 そうしますと、単価の内容というものは、今までの単価の内容とは異なったところの新しいところの単価の概念といいますか、内容を今後おとりになるのであるか、私はその点についてお伺いしたいと思います。
  95. 高田正巳

    説明員(高田正巳君) 私からお答えしたいと思いますが、従来の単価には特別な意味があり、今、厚生省がごらんに入れておりますような案では単位の意味が変ってきたのかというような御趣旨の御質問かと存ずるのであります。従来の単価には今、先生が御指摘になりましたような意味を持たせて考えられる部面もないわけではありませんが、実情はすでにやはり一つの計算単位ということの方が、むしろ何と申しますか、妥当な考え方であろうかと思うのであります。今回これをまるまるいたしましたのは、その他の面をも考えまして、あるいは事務の簡素化でございますとか、なるべくわかりやすいようにというふうな要素、これがすなわち保険のような非常に膨大な機構におきましては、事務の簡素化ということも実際問題としては非常に大きな意味を持って参るのでございますが、さような要素をも入れまして、むしろこれをまるい単価にした方が使いやすいと、こういう意味でああいう案を私ども考えたわけでございます。従来の十一円五十銭、十二円五十銭、あるいはこれを引き上げた、まあかりに一円なら一円、二円なら二円引き上げた、そういうふうなはしたのついたものであれは、あるいはそういうふうな引き上げたものであれば、そこに特別な何らかの経済的な意味を持ち、今回のようなまるいものであればもう全然その意味を失うのか、性格的に根本的に変ってくるのかというふうに考えますと、私はそうではないと思います。しかし、従来の単価にも持っておりました計算単位としての性格が、今回は非常に強く、むしろその方に重点を置いてものを考えておると、まあかように御説明を申し上げたらよろしいかと存ずるわけでございます。
  96. 松澤靖介

    松澤靖介君 私は単価の尺度として経済尺度であるか、あるいは計算尺度であるかということは非常な重大な意義があると私は考えます。すなわち給与が上った場合に、すなわち今までの単価ですとそこに経済要素というのがいろいろあって、給与が上ったからそれにスライドして単価を上ぐべきである、あるいは物価が上ったからそれにスライドして単価を上げるべきであるというような要素がそこに生まれてくるはずである。ところが、今回のごとき、ああいうまる単というような言葉でもって、計算が簡易になるというような言葉で動いておるけれども、さような意味の単価の性質のものでは私はないと思う。それだからこそ端数をつけたり、あるいは計算がしにくいというのは、これは当然のあり得る私は単価の性質のものだと、かく考えております。それにかかわらず、計算がしやすいとか、しやすくするとかいう意味においてまる単にして、そうして計算単位にするということであったならば、今までの経済尺度と離れて、私はなお進んで支払方式が一変するというような非常な大変革を来たすものではないかと、かく考えておるのでありまして、軽々しくさような案をお出しになったということに、その軽卒に対して私は少からず不満足を感ずるものでありますが、この点に対して厚生大臣はいかにお考えになっているか。ただ 単に計算は単価かける点数という、そのことだけで診療費というものはいいというふうなお考えであるのかどうか、私はこの問題は非常な重大な問題だと思うがゆえに厚生大臣にお伺いいたします。
  97. 堀木鎌三

    国務大臣堀木鎌三君) 経済尺度か計算単位かということに割り切ってものを考えたわけでもございません。今度のあの診療費を出します場合には、やはり従来の十二円五十銭、十一円五十銭とのつながりを十分考えまして、そして単価を簡明な状態に引き直したということは事実でございます。それでなければ今おっしゃったようなベース・アップの問題のときに非常に支障があるじゃないか。今回諮問しておるのも、そういう計算の基礎を明らかにいたしまして提出いたしておるわけでございます。ただ私が申し上げたのは、診療行為そのものに対してどういう経済的価値と申しますか、対価がいいかという場合には、常に両方の相乗積において考えられて参ったということを申し上げたんで、過去とのつながりは今回私としては十分公明にごらん願うように従来のつながりも明らかにして提出したのでございます。
  98. 松澤靖介

    松澤靖介君 ただいま単価が十円とおきめになったその経済要素というものはどういうものであるか、それについての御説明を願います。
  99. 高田正巳

    説明員(高田正巳君) あるいは先生の御質問にぴたりとお答えになるかどうかあれでございますが、先生の御意見によりますると、従来の単価というものは賃金や物価に比例して上げたり下げたりするというようなものであるというふうな、しかるに今回のように十円というふうなまるい単価になると、そういう意味がなくなると思うというふうな仰せでございまして、今回の十円にどういう経済的な意味があるかという御質問かと思います。なるほど経済単位としての意味も持ち、また、計算単位としての意味も持っているのが私は単価であろうかと思うのです。従来の単価が経済単位だとはかりに申しましても、しからばその単価の中の幾らを賃金ベースにスライドするのか、あるいは物価にスライドするのか、こうなりますと、そのうちの何をとってスライドするかという議論もあります。これは全然ルールも何も立っておらないわけでございます。そうして、しかもまた、医療行為によりまして、その単価と点数をかけましたその総額の中におきまして、物価にスライドすべき部面と賃金ベースにスライドすべき部面と、含み方がみんな違っておるわけであります。たとえば初診療というようなものはこれは技術料でございますので、これはまあどっちかと言いますと賃金ペースというようなものに従ってスライドすべき性格を持っている。ところが、極端に物の方のものになって参りますと、これは物価にスライドするということになりまするけれども、その中間に両方含んでいる医療行為の大部分、そういうふうなことになりますと、従来の単価といえどもなかなかそう簡単にそのスライドの原理原則がつかまえることのできないようなものになっておるわけでございます。従って、そういうものに何らかの一つのルールを見つけたいというふうな趣旨で、まあいろいろ臨時医療保険審議会等でも御論議があったわけでございますが、その辺になかなか適当な結論が早急には出なかったというような事情があるのであります。従来の単価でもさようなわけでございまして、従いまして、もうすでに単価はそのままで点数の方の改正もちょいちょい行われているのでありますが、そういう意味では先生の仰せのような経済単位という性格を持っておるという見方もありまするが、同時に、計算単位の性格も非常に持っている、だんだんむしろ計算単位の性格の方が強くなってきているというふうに、まあ私ども考えておるのであります。  それで今回の私どもの十円という単価になりますると、これもまあ似たり寄ったりのものでございますけれども、この方はむしろ計算単位の方の性格をやや強く持っている、こういうふうに言えるかと思うのであります。しからば大臣仰せになりました十一円五十銭、十二円五十銭、これの平均単価の十一円七十七銭、こういうものと今回の十円単価とのつながりを明らかにして案をお示ししてあるという大臣のお答えでございましたが、それは私どもの案の中でごらんをいただきまするならば、従来の単価でかりにあるとすれば、診療所平均の一ヵ月の收入が十四万七千百二十五円でございます。それがいろいろ物価の上昇、賃金ベースの伸び、患者の伸びというふうなものを考え経費を積算いたし、さらに医師自身の生活費についても妥当なところと認められる金額を加算いたしますと、それが十五万幾らになる。これとの比率をとりまして八・五%というワクの拡大という結論を出しているわけでございます。従いまして、そこに従来のものとのつながりをも明らかにいたしまして、従来の点数をそのままに固定をして考えるならば、その引き上げの額がおおむね一円になる、こういうことで明らかにいたしまして、今回の案を御提示申し上げておるような次第でございます。
  100. 松澤靖介

    松澤靖介君 単価の決定ということに対しましては、私自身も非常にむずかしいものであるということは局長からお聞きしなくともわかっておる次第でありますが、何せ臨時調査会においてもすでに六年を経過しましても、いわゆる御用学者であると言われる人々と、あるいは一橋大学の先生方との御議論とか、いろいろの審議はなされておっても決定ができない。あるいは今回の単価の結果を見ましても、あるいは公務員では二十円とか、あるいは十七円とか、あるいは十八円四十六銭とか、いろいろとこれはその決定というものもまちまちである。まちまちであるということそれ自体が非常にむずかしい、非常にむずかしいけれども、その内容がいわゆる技術というかそういりものが、あるいは医療行為というものがきめるのに非常にむずかしいものであるという一つの示唆を与えるものであって、先ほどの単価そのものがそうであるから不合理であるという結論は出ないと私は思う。そういう意味において簡単にしたから、あるいは点数をいじったからそれで合理性が加わったというような議論には私はならないと思うのです。かえって今後ただいまの点数を少しいじったということに、あるいは妥当性が見られるような点が出てくるかもしれぬけれども、今後数年たって、あるいは何十年たった場合において、その点数をいじった場合に何ゆえにいじったかというその理論的根拠というものは、私はただいまの十円にした、まる単にしたということに対する根拠がなくなるのではないか、これを心配する者でありますが、これらの点に対してどうお考えになりますか。
  101. 高田正巳

    説明員(高田正巳君) 私ども考えておりますことは、十一円五十銭、十二円五十銭というふうな単価は不合理であって、十円の単価が合理的だということを実は考えておるわけではないのでございます。単価というものは、それは十一円五十銭、十二円五十銭というふうなものを単価にするという考え方も十分成り立ちます。しかし、同時に十円というふうなまるい扱いにして、これを非常に計算単位的な色彩の強いものにするという考え方も成り立つのでございます。その単価そのものにはさして意味があるわけではない。どちらをとってもいいわけでございます。しかし、私どもといたしましては、この際まるい単価の方が窓口の事務におきましても、基金その他の事務におきましても、あらゆるところでこれが便宜があるから、その方をとったのでございます。従って、十円単価には何ら合理性がなくして、従来のようにはしたのついた単価ならば合理性があるのだということにはなりませんということを申し上げておるつもりなのであります。決して十円単価が合理的であって、片一方のはしたのついた単価が不合理だということを主張しているわけではない。ただ意味のありますのは単価に点数をかけたこの医療費の、それぞれの医療行為の評価額というものが意味を持ってくる。それから医療行為相互の バランスといいますか、その評価額の比較というようなものが意味を持ってくるのでありまして、その単価そのものに、十円の単価そのものに特別な意味があるというわけではないのであります。その点は先ほど来の御説明申し上げたことが、あるいは誤解を呼びましたかもしれませんけれども、そういうつもりなのでございます。
  102. 松澤靖介

    松澤靖介君 私は単価というものは、あくまでも経済的分析の上に立って、そうして理論的根拠がそこに置かれていなくちゃならぬというような見解を持っています。十円にしたから、それじゃその分析はどうであるかとお聞きしましても、それは点数をかけたものが医療費であるというような話であって、私はそういうお答えに対しては納得できないと思います。そんなら十円にして、そうしてたとえばアッペの手術料が四百点である、そういう場合においてその技術と物との考え方は、どういう工合にお考えになっているかというその御説明が果してできるかどうか。私は一点単価というものは、十円であろうが十一円五十銭であろうが、いろいろな経済的要素がこれこれと今までのようなものであったならば、私は説明はある程度できると思う。そういうことに対してどうお考えになりますか。
  103. 高田正巳

    説明員(高田正巳君) たとえばアッペが何千円、何が幾ら、その中にはどれまでがコストであって、どれだけが技術料であってどうというふうな分析、そういうふうな説明ができるかという仰せでございますが、私どもの大体の考え方は、二十七年の十月の調査におきまして大体各医療行為のコストというものは調べておりますので、これは御承知通りでございます。その資料が一つのもとになりまして、先般国会にも御報告いたし、ただいま医療協議会でも御論議をいただいておりまする新点数表がその考え方の基礎の上に立ってできておるわけでございますが、それにつきましても当時の御議論で十分御承知通り、そのコスト計算というものは、技術料部面におきましては、時間計算で技術料の計算をし、従って同じ時間のかかる医療行為であっても、その医療行為の相互間には難易差というものがあるから、そういうふうなものを考慮しなければならないのじゃないかというふうな御批判が当時あったのでございます。それらのものは、今回の甲表におきましては、その後専門家の御意見等も中間的に拝聴することができましたので、加味をいたしまして提案を申し上げているような次第でございます。さようなわけ合いでございまして、これらの非常に多く医療行為一つ一つについて内訳をこまかく御説明をいたすつもりもなく、また、することもできませんけれども、ただ大きな考え方としましては、そういうふうな考え方をいたしておるわけでございます。しかしながら、私どもの計算の過程は、先般御報告をいたしましたように、一ヵ月の一診療所当りの稼働点数が幾らになるということを計算をいたしまして、そうしてそれだけの医療行為を行うのに一診療所当りどれだけの経費が必要であるかということを二十七年の三月の資料から伸ばしまして、そうしてさらに医師の生活費というものとを考えて、それを現在の単価で計算をいたしました十四万七千円というものとの比較をして計算をいたしておる。そういう計算の過程をとりまして、そうして点数の方の配分におきましては単価を十円ということにいたしまして八・五%、すなわち総医療費といたしまして従来の一〇〇と八・五万を加えた一〇八・五%というものをどういうふうに配分をしていったらいいかというふうな作業をいたしておるわけでございます。その作業の過程におきまして、今申し上げましたように、大体の考え方は先回のいわゆる新医療費体系に基く新点数表の考え方を非常に参考にしておるけれども、その後得られました技術の難易差ということにつきましても今回は配慮を加えて甲表というものができ上っておるわけでございます。乙表はそれとは全然別でございまして、現行の点数を単価を十円に直しまして、そうして点数の方の操作をいたしまして、さらにそれに平均的に一割なら一割、一割五分なら一割五分というものをかけていくと、こういう計算過程をとっておるわけでございます。
  104. 松澤靖介

    松澤靖介君 ただいまおっしゃったこと、私前にお聞きしましたアッペのことは、十円に単価をしたということの不合理を申し上げるために申し上げたので、今までの単価という概念が正当妥当なものであるという考えのもとにおいて、それなら十円というようにした場合において、アッペの場合においてのいわゆるものの考え方説明できるかということを申し上げたんですが、それはそれとして、この次の時間も……、お前はこれくらいにしてほかの人に譲れという命令がありましたけれども、もう一つ、お伺いしたいと思うのですが、実は甲案、乙案をお作りになって実際に請求書に照らし合せておやりになった経験といいますか、やつたのかどうか、その点お聞きしたいと思います。
  105. 高田正巳

    説明員(高田正巳君) ちょっと今の御質問を聞きのがしたんでございますが、おそれ入りますが、もう一度……。
  106. 松澤靖介

    松澤靖介君 現行と比較しまして厚生案を実際の請求書に照らし合せて、結果がどうであったかということを御検討になったかどうかということです。
  107. 高田正巳

    説明員(高田正巳君) 私どもはごらんに入れました点数表は、三十年三月の社会医療調査というものでございまして、これにおきましてかつて今までこういうことが日本では一ぺんもやられなかったのでございますが、医療行為の頻度というものをいや二十七年三月に調査をしておるわけでございます。それで三十年三月の社会医療調査におきまして、さらに各医療行為の頻度を非常にこまかに調べておるわけでございます。それにこの資料はすでに公開されておるものでございまして、中央医療協議会の専門部会等でいろいろ御検討になり、これを御利用になって御議論になっておるものでございます。そういう公開の資料に当てはめまして今回の点数を当てはめてみますると、おおむね八・五%という総医療費におきましての増加になる、こういう検定をいたしておるわけでございます。ところが、実際に当てはめてみるとそんなにならぬじゃないかという御議論が非常に出ているわけです。それにはまあいろいろなあれがあるのですが、まず除かなきゃならぬことは、実は当てはめ作業が非常にめんどうで、まあいろいろ間違いがあるということがまず一つなんでございますが、そういうふうなものが間違いがないといたしまして、これが実際に総医療費におきまして八・五%の増加にならないということにかりになったといたしまするならば、これは一医療機関ではだめでございます。相当統計的な各医療機関でさようなことになったといたしますならば、考えられますることは、三十年三月から今日までにおきまして医療行為の頻度に変化があるということ、この医療行為の頻度に変化があるということは、これは当りまえのことですが、その頻度と同じようなパーセンテージでふえておりますればぴたりと出るわけでございますが、そのバランスというものがくずれておりますと、これは若干変って出るという結果になります。ところが、私どもといたしましては、案の精神は八・五%現行のものより平均で増すということがねらいでございますので、もしそういうことがありまするならば、これは十分に各方面の資料を持ち寄って、これを検討をいたしまして、それが確かに食い違っておるということでありまするならば、これは技術的な問題として補正をいたして参りたい。かように考えております。その間にできるだけオープンな作業といたしましてそういうことをいたしたい、こう考えておるわけでございます。まあその考え方の経緯なりあるいは今後のやり方等につきましては今申し上げたような次第でございます。
  108. 竹中恒夫

    竹中恒夫君 単価問題についていろいろと大臣にお尋ね申し上げたいことがあります。御承知のように、単価問題は国民にとっては最大な関心事であり、今日国民的な世論がずいぶん沸騰しております。また、政治問題化してきておるようでもあり、中にはそのなされる議論もきわめて感情的なような場面も見受けておるわけですが、多くの場合その議論が焦点をはずれて肝要な基本的な事項を忘れておるように私は考えるのです。そこで、厚生大臣が、いよいよ国民皆保険を実施するという岸内閣なり当該大臣として決意なさって着々とやっておられる今日におきまして、皆保険を前提とする医療報酬金の算定については私重大な点において欠けるところが世論等の上から見るとあるように思う、そうした点に——幸いに大臣、なければけっこうなんですが、そういう意味合いでお聞きしたいのです。  まず第一点といたしましては、申すまでもなく、第二次大戦の終了直後からお互いわれわれ日本人が、世界的に医学が非常な進歩をしたということに対してわれわれ驚異を感じておる、医学が進歩したことによって結核の死亡率は御承知通りのことであり、平均寿命も延びたということで、全くこれは進歩した臨床医学の私は恩恵であり、まあ人類の凱歌であると言い得るのです。こういうような大きな人類に寄与するような近代医学の応用をするのには、当然私は費用が要ると思う。完全な治療をしようとすればするほど費用が要るわけなんですが、従って、よりよき向上への態勢をする上においては、どうしてもその内容の上から言って費用に出し惜しみがあってはならぬと思う、この費用につきましてはもちろん国のことも、国庫のことも考えなければなりませんし、国民の総所得も考えなければならぬと思うのですが、少くとも他のいろんな国家予算の上から考えて、この大きな人類の幸福をもたらした医学の進歩を、今後も必要に応じて十分な範囲内において治療を行わすということをなさる上においては当然大臣としても相当大きな決意なり、強い信念をお持ちいただかぬというと、皆保険というものは行き詰まると思う。今日、医療審議会において議論されておりますものも、結局経済問題に端を発して議論が私はなされておると思う。出す方と出させる方というような関係から、とにかく経済問題に端を発して議論がされておるように思う。少くとも私は今の単価なり点数が不合理なために、あえて単価だけとは申しません、点数も不合理でしょう。従って、単価なり点数が不合理なために医療がゆがめられておる。このゆがめられたための医療の低下があるのでありまするが、こういうことを財政の面から考え合わせて、一体厚生当局としては一大勇猛心を持って予算の配分についてなさる決意があられるのかどうか。これが私は一番根本問題だと思う。蛮勇をふるって閣議においていろいろなさることもあるでしょうし、あるいはまた、国会の名において予算審議の過程においていろいろ議論が出ると思うのですが、少くとも大臣としては、どういうようなお考えをお持ちになっておるのか、決意をお持ちになっておるのか。まず最初にそういう意味合いで医学の進歩に対して感謝の気持をもってこれを考えてもらいたいと思う。御所見を承わりたいと思う。
  109. 堀木鎌三

    国務大臣堀木鎌三君) 今、竹中委員の言われましたように、最近の医学、ことに臨床的な面における医学の進歩というものが国民の生活に取り入れられなければ、国民の福祉は何と申しますか、保たれないだろう、こういう観点に立って考えましたので、早急にこれらについて御検討を受けたい。同時に早急に解決しようとすれば、現下の情勢では、あえて事務局案というものを早く出して皆さんの御批判を待ちたい。率直に申しますと、こういう案を先に出しますということは、私はどっちかといえば少し異例的なものであると思いましたが、ともかくも公開の席で御論議を願いたいという意味で出しました。それもやはり時期的な関係からみまして、一日も早くそういう結果が得られるような方向に向って少しでも進みたい、こういう関係で出しにのでございます。率直に申しまし、今度の点数、単価につきましては、各方面からいろいろ概念的な御批判があります。しかし、私どもとしては、それだけではものの解決にはならないというふうに考えてこういう方法をもっておるのでありますが、私のちょうど一番今苦労をしなければならないというところを御質問でお突きになりました次第でございます。これだけの問題にしても、予算上、支出の増というものは、今回予想される予算上においては、予算の編成の上においては、相当と申しますより非常な困難さが生ずるのでなかろうかということを考えまして、むしろその点について日夜苦慮いたしております。しかし、私としては、厚生行政をあずかっておって、この面において国民に寄与したいと思えばこそ、少し無理だと思う本案を実は出しておるような次第で、むろんこれについて私としては相当の決心を持って出しておることは事実でございます。
  110. 竹中恒夫

    竹中恒夫君 どうか、私の申し上げましたのは、決して医師に感謝の念をもって皆保をしろうというのでなくして、医学の技術を尊重して、これが進歩に対して施され得る恩恵に対する感謝の気持を持って厚生行政をやってもらいたいということであり、御苦心のほどを察するのですが、苦心を察する意味において私一つ力づけを申し上げたいと思うのですが、それは前国会において神田厚生大臣がいろいろと語られた論議の過程におきまして、単価値上げに対する財源の点を質問したことがございます。そのときに稗田厚生大臣は、岸総理にも話をしてある。岸さんが幹事長時代からのこれは問題であって、よく岸総理ものみ込んでおる。当時の大蔵大臣の池田さんも了承してくれておるし、閣僚の懇談会においてもこの話はしてあるのだから、財源については自信があるということをおっしゃっておられる。もちろん、今回閣僚の顔ぶれは変っておりますが、一応そういう経緯がございまするので、どうか御遠慮なく大幅に主張してもらいたいということを申し上げておきたいと思います。そこで、その次の問題として私お聞きしたいのは、実はこれは非常に私は厚生省の数字に不安を持っております。で、昨年ですか、毎々申し上げましたように、六十六億の赤字が出るだろうということで、その声を背景にしてわれわれは健保改正案というものを論じたわけです。その声を背景とすることによってあの改正案が通ったようにも考えられる。事実は四十八億円の黒字が出たというように、当時の厚生省の予算の見方、見通しというものはきわめて今から考えればずさんであったと申しまするか、私どもから言いまするならば、あぜんとするような感じを、これは率直に持つのです。また、今回の八・五%のワクの拡大が、最初は新聞紙上には百七十一億円とか二百十七億円とかいうようなことで表現をされておりました。最近はそうでなくて、二百十七億円だというようにまた計算が変っておるわけです。もちろんこれはそろばんの持ちようで、各種保険がございまするから、その包括のいかんによって変るだろうと思いますが、やはり新聞紙上等に発表された数字がそう動くということは、やはり赤字の数字が違ったと同じように、私はこの数字に不安を持つわけです。これは逆算しますと、百七十一億円の八・五%を増する場合の総医療費というものは、二千七十七億円くらいになる。ところが、二百十七億円になりますと二千六、七百億円になる。医療費の増額自体がまことに当局の踏みようはあいまいなような感じを持つわけです。  あるいはまた、もう一つ問題としてお聞きしたいのは、この三十二年度は健保改正によって財政効果が著しく出てくると思う。そういたしますると、今年度は前年度に比べてより以上に余裕があって、黒字が少くも百億円出ろだろうというようなことが巷間いわれておるわけなんですが、そのような乙とも考え合されまして、そうして今回の医療報酬金のワクの拡大について相当考えたとは思うのですが、一々申し上げました数字そのものが実は不安なんです。そこでこれを前提としてお聞きいたしたいことは、この昭和三十一、年度の保険勘定はどういうような結束になるかということ、これはもちろんむずかしい質問ですが、あまりこの前のように、六十億も七十億も見込み違いのないような範囲内でお聞かせ願いませんというと、医療報酬金のことを論ずるに当って重大なポイントだと思う。むずかしい質問でございまするが、これは大臣でなくてけっこうですから、局長でも御答弁願いたいと思う、
  111. 堀木鎌三

    国務大臣堀木鎌三君) 御質問のおっしやることはよくわかります。ただ、非常にありがたいのでありますが、実は御承知通りに、国際收支が非常に悪くなって参りまして、なかなかそれが好転しないということから、前内閣時代に考えましたこともある程度の制約を受けるというふうな事態になって参りました。で、むろん前厚生大臣及び現総理が言いましたことも承知いたしておりますが、非常に私はこの経済の変転に伴う予算編成の方針の変化というものを心配しておりますような次第でございます。しかもこの案が各界から御賛成を願わないと、いよいよ世論の支持すら少いということになっては大へんであるというふうになどしては考えておるような次第でございます。  それから第二段の、赤字赤字だと言いながら、なおかつ黒字になった但険財政の分があるじゃないかというふうにおっしやるのであります。私も実は当時議員として赤字赤字だ、実はその言葉通り厚生省に入り込みますと、従来君たちは赤字だ、赤字だと言っていたのが黒字になるのだが信用できないというので、しきりに私自身はひねくれました。しかし、何分専門家でもございませんし、就任も期間的に浅いことでございますから、十分だとは申しません。しかし、今おっしゃいました二百十七億であるとか、百七十七億だと思いますが、百七十七億として発表するときにも、私が発表したわけではございませんが、その点についても私自身も一応はこれは現在の状態から現在のものを考えると、百七十七億、三十三年度に引き直して従来の医療費の増加等の趨勢を加味して参りますとこうなるから二百十七億というふうな事柄でございますが、しかしながら、最後に一番おっしやいますように、財政的な三十三年度の予算といたしましてこの問題をどう処理するかという問題になりますと、おっしゃいますように、最近の保険勘定がどうなっているか、それからこれらの問題を財政的にどう処理するかという問題が一つの大きなポイントだと思います。結局その推定が正確にできませんと、これを財政上どう配分するかというふうな問題がコンクリートに上ってこないわけでございます。これは御指摘通り非常に重大な問題である、こういうふうに考えておりますが、保険勘定の現状につきましては、まだ私自信をもって数字を申し上げるだけ勉強ができておりません。そういう点で政府委員からお答えさしていただきます。
  112. 高田正巳

    説明員(高田正巳君) 今大臣が仰せになりましたように、百七十七億と二百十七億の関係は三十二年度のたとえば政府管掌の医療費というものが予算できまっております。あるいは生活保護法の医療給付費もきまっております。そういうふうな三十二年度の数字で八・五%を見込みますと大体百七十七億になる。従って、その際の総医療費は今先生が仰せになりましたように、たしか二百七十七億になる。ところが、三十三年度になりますと、御存じのような恒常的な医療費の若干の伸びもございますし、それに国民皆保険計画で被保険者がどんどんふえて参ります。そういう計画がございます。そういうふうなものを全部入れますと、元金がたしか二千四百十何億という推計をいたしております。それでそれらのたとえば政府管掌の分につきましては、今大蔵省に来年度の政府管掌の医療費として予算を要求してこれから折衝するところでございます。約二千四百幾らになりますので、それだけふくらがりますので、八・五%の金額もふくれ上ってくる、こういうわけでございますので、その点は大臣の仰せになりました通りでございますから、さらにつけ加えさしていただきます。  それから三十二年度の健保財政、これが一体どういう見通しであるかという御質問でございますが、これは非常にむずかしい御質問でございます。本日いろいろな資料から一応の判定を下すべきものと思いますが、さような資料を持って参っておりませんけれども、私の大体の勘といいますか、そういうふうなもので申しますと、三十二年度におきましては、三十一年度とは事情が違いまして経済界の若干の模様が違っております。それから被保険者の伸び方も三十一年度とは違っております。従いまして、いろいろ歳入、歳出の両面を見ました場合には、私は大体とんとんといいますか、あるいは少し黒が出るかもしれない、三十二年度だけで見ますと。しかし、そう大きな黒が出るというふうに楽観はいたしておりません。それらのことにつきましては、詳細な資料に基きまして一応見通しをつけ、それを基礎にして三十三年度を見通しまして、今一応の予算を組みましたわけでございます。これは御存じのように、もう少したちまして、できるだけ新しい資料を整えて最終的な見通し大蔵省との間にきめたい、こういうふうなつもりでおるわけでございます。
  113. 竹中恒夫

    竹中恒夫君 今大臣から大へん御丁寧な御答弁をいただいたのですが、その中でいろいろ国際情勢、それらのことがあって、前国会で岸総理並びに厚生大臣なり大蔵大臣考えたこと、あるいは閣僚で話し合った事柄が必ずしもそうすっといかぬというような、何というか、非常に気の弱いといいまするか、悲観的な御意見、私は非常にその点は不満であります。仰せのように、あの今年二月、三月ごろは神武景気とかなんだとかということであったのですが、そういうことを言うておる時代にすでに神武景気でないような情勢が当時あったわけであります。今年度の国庫自然増收も一千億円からある。これを減税に回そうかどうしようかということであります。そこで、私は最初質問申し上げたように、人類の幸福をもたらすような最大な医療ということは何をおいても実行しなければならぬのでありますから、一千億円以上の余分の——余分と申しまするか、自然増收があったことについては、これを大臣としては何とかその中から取るんだというくらいの熱意を持っていただきませんと、どうも国際情勢が悪化したのだから、もうそう言うてもというような消極的なことでは私は困る。それで強く交渉してもらいたいと思います。(「賛成」と呼ぶ者あり)
  114. 堀木鎌三

    国務大臣堀木鎌三君) 竹中委員のおっしゃったことは、私は私の信念としては、考え方としては、率直に申して、われわれ自身が立てる政策が、財政上のいろいろな理由をあげられるでありましょうが、しかしながら、年とともに国民の幸福を増進するというふうに、私の政治目標は指導されなければなりません。今おっしやいましたような事実についても、私自身も胸の中にはいろいろと考えておりますのでありますが、決心のほどは竹中委員のおっしやることと全然同感であります。    〔理事山本經勝君退席、委員長着席〕
  115. 竹中恒夫

    竹中恒夫君 それからこれは非常に重大なこれまた質問なんですが、実は私が調べたのではないのでございます。ある団体のパンフレットによっての質問なんですが、八・五%のワクをお広げになるのに、かりに二百十七億円が要る。この二百十七億円の負担の割合等についてはもうぼつぼつきめる段階だということをこの前、厚生大臣はおっしゃった。そこで、私は二百十七億というものを基準にして非常にものを考えておられるようですが、ある団体の。パンフレットによりますというと、単価を一円値上げすることによる国の負担は六億円にすぎないのだというような。パンフレットが出ております。ごらんになっただろうと思いますので詳細は読みませんが、少くとも法定額の国の負担と一円引き上げて直営医療機関に入る收入との差引をすれば、政府のおっしやるような国保と政府所管とで六十何億という金は要らぬのだ、六億くらいしか要らぬのだということが書かれてあるわけですが、そのこまかい計算は私は存じませんが、そういうことが公けにされておるのですが、一体その程度のものであるのかどうか。どういうようにその点は考えておられるのか、この機会に財源がないことによって医者に満足が与えられないのだということでありまするならば、こういう点も当然御考慮なさるべき筋合だろうと思う。その点をお伺いしたい。
  116. 堀木鎌三

    国務大臣堀木鎌三君) 六億、まあ率直に申しますと、私今事務当局先ほど保険局長から御答弁申し上げましたように、最近の保険勘定の内容をできるだけすみやかにできるだけ正確に早く出したい、過去のものだけを見ておっては判定がつかないから、その点は早く出してもらう、それによって実はいかに配分するかをきめなければなりません。そして配分によっては財政上の負担というものもはっきりきまって参らなければなりませんが、財政上の負担をきめます場合にも各方面で御要望がありますように、できるだけ国民の負担を少くする、被保険者の負担を少くするという考え方に立ってものを処理しなければならぬ、こう思っております。二百十七億といい、百七十一億といいます場合にも、これが財政上の負担にそっくりなるわけでないことは御承知通りなんでございまして、何らか実はこの数字がすべての被保険者の負担になるのか、あるいは国の財政上の全部の負担になるのかという内容を御存じでない一般の方には、非常にこの数字が私は不安を与えたような気がいたしております。しかし、それらにつきましては、まあ六億というのは、私は少し少いじゃないか。少しどころではない、よほど少いのじゃないかという気はいたしておりますが、ここで数字を上げて御答弁するだけの実は自信が、まだほんとに合理的な数字ができておりませんので推定だけを申し上げるよりほかない。しかし、そうなっては先ほど保険局長のおおづかみにと言わざるを得ない、この方が大臣らしゅうございますかもしれませんけれども、もう少しお待ちを願いたいと思います。
  117. 竹中恒夫

    竹中恒夫君 そこでもう一つ大臣にお聞きしておきたいことは、私はこう思うのですが、皆保険を今実施なさろうとしているのですが、一体今の日本の国力で、ゆがめられた医療保険は別として、正しい皆保険というものが今の日本の国力でできるという信念をお持ちになっておられるのでしょうか。私自身は相当経済面から考えて、国の財政の上から、あるいは国民所得の上からいって非常に困難ではないかと思うのです。特に地ならし工作が十分できておらぬと思うのですが、やはり拙速主義であくまでもこれはやらなければならないのだというお考えなんでしょうか、相当無理があると思うのですが。
  118. 堀木鎌三

    国務大臣堀木鎌三君) 今の問題に関しましては私も非常に問題点があるとは思いますが、ただ現状から見ますと、保険に入っている者と入ってない者の年額支出をいたしております医療費というものに大へんな差がある。そういたしますれば、やはり私どもとしては四カ年なら四カ年の計画に従ってこの問題にわれわれの政策の重点をおいていくのがほんとうではなかろうか。むろんその基礎的条件になります、今問題になっておる診療報酬もその一つでございますが、医療体系にいたしましても、あるいは無医地区、お医者さんのいられない地区すら相当あるというふうな問題から見ますと、従来のスピードで参りましては、基礎的諸条件がなかなか整わないうらみがあるというような点がありますので、私どもは今までよりもスピードをより上げていかなければならない、基礎的諸条件を上げていかなければならないという観点に立って、今後、三十三年度の予算はもとより、今後もその問題の解決の促進方をはからなければならない、こういうふうに考えておるのであります。と同時に、今おつしやいました国民経済力の関連性においても種々なる問題がございますが、施策を推進すると、毎年医療費が、うんと国民負担がふえるという考え方に立つわけには参りません。御承知通りに、結核対策のごときは私は強力に推進すれば、結局相当国民の医療費の負担は少くなって参るであろう。また、医学の進歩は必ずそれを見出すに相違ないということを確信いたしておりますので、単に国民の現在の何と申しますか、経済状態というもの、あるいは現在の医療費そのものだけにとらわれることはいけないのじゃないか。もう少し大きく言いますれば、結局医術の進歩は総額においては国民負担を軽減するものだろうと考えて、諸般の政策を一日も早く進めたいというのが私の考え方でございます。
  119. 竹中恒夫

    竹中恒夫君 そこで諸般の政策をお進めいただくことはけっこうなんですが、結局国民皆保険なり、あるいは社会保険というものをとらえて考えればそうなんですが、保険收入の総資金というものは国民の所得にあるわけなんですね。私は今各般の諸施策を考えてということは非常に卓見だろうと思います。あえて社会党さんのお先棒をかつぐわけではございませんが、国民の所得を上昇させるということにならなければ、かようなことは困難であり、ことに五人未満の事業所なんかそうですが、そこで完全雇用の問題、あるいは最低賃金制の問題等について、あなたの方の与党でも相当考えておられるので非常にけっこうだと思いますが、そういう総合的な仕組みの上に立って皆保険を考えていただかないと非常にむずかしいと思う。今そういう御答弁がありましたので、この点についてはもう質問はいたしません。そこでもう一つ根本的にお聞きしておきたいことは、大体医療というものを保険でまかなうということは、これは非常に無理だと思う。保険というものは、保険料を取って、その範囲内の收入でもってまかなう。昨年もそうでありましたし、ことしもまたそういう傾向でございますが、A東京57という悪性インフルエンザが先般はやる。その他悪疫が流行したりして、予測しない事実が当然出てくる。一定準備金をかりに持っておられましても、予測しないような悪疫が流行する。六百万人、七百万人のワクチンをすでに厚生省は用意しておられるというようなことで、ことしの冬に備えておられるようごございますが、そういうようなことを考えましても、あるいはまた、病気は予測ができないという点を考えましても、医療を保険的方法のみによって解決する、国民皆保険をするということは非常に私は危険だと思う。やはり医療保障という観点からして国がよほど踏み切った援助をしなければ、保険的方法にのみ依存してこれが社会保障制度の一環であり中核であるということは非常に無理があると思う。こういう点においても考え方をよく検討してもらいませんというと、皆保険というものがうまくいかぬと思うのですが、その点についての御所見を承わりたい。
  120. 堀木鎌三

    国務大臣堀木鎌三君) 私考え方竹中さんのおっしやるのとちっとも違いません。ただ問題は、どこまでそれを実施に移すかの責任に私があると、こういうふうに考えております。実は相当むずかしい問題だと思うのですが、三十三年度の予算要求に当っても、国庫の負担という問題については相当考慮いたして現在要求いたしております。現在の厚生省は何でも国庫負担に押しつけるんじゃないかという悪口も言われますが、ある程度の限度までは国庫負担というものをやはり考えなければいけないのだろうというふうに考えております。それからもう一つは、やはりこういうものですから、一時々々の原因だけでもって一喜一憂しないで、見通しが早く立て得るような、確固たる見通しが立て得るような基礎に立ちたいものだ、こういうこともあわせて私は考えております。
  121. 竹中恒夫

    竹中恒夫君 そこで、今お答えの内容にもう一つ突き進んで入るようになるのですが、国民所得というものは頭打ちしておりますね、大体において。七兆何千億円ということで頭打ちしておる。ところが、医学はどんどんと進んでいく。そうすると、来年一カ年間の間に、医療費というものがまた増大する。この増大したものを行政措置その他の不自然な方法でこれを準備金の関係いろいろな関係からしてやられたのでは、国民に大きな不幸をもたらす。私はこの国民所得の上昇の率と医学の上昇の率とのギャップは、これはどうしても国に持ってもらわないと、国民に課するわけにはいかない、もう所得は頭打ちしておるのですから。そういう点から考えましても、厚生省は十二分な予算獲得をしてもらいませんと、皆保険というものはうまくいかぬと思う。時間がないとおっしやるのですが、私はまだ相当たくさん質問したいと思っている。たまに発言を許されているのに、そうせかれては困るのですが、そこで私はその次にお聞きしたいことは、皆保険は開業医制度を公的医療機関と同時に二つを活用するのだという御答弁をこの前なさっておられる。それは当然なことであり、開業医制度というものは世界にも類のないわが国の醇風美俗として患者との血のつながりがあるわけです。ですからこの開業医制度というものをやはり育成し、温存していくという観点に立って皆保険制度というものをおやりいただきませんと、これは大きな私は問題が出てくると思う。今回の皆保険になりますと、これは全く医療革命と申しますか、医療界にとっては全く革命なんです。この革命を平和革命に終らすのには、やはり開業医制度というものの本体を十二分におつかみになって、そうして私は医療担当者の理解得、心を得なければ私はうまくいかぬと思う。  ところが、まあこれからいよいよ本論に入ろうと思うわけですが、幹事案についての不足を申し上げるわけですが、そういうことを考えた場合において、果して今回の幹事案というものが医療担当者なり開業医というものを中心考えられたものか、あるいは国立病院の赤字対策としてお考えになったのやら、実はそれは極端に皮肉な言いようですが、私から言わしめますならば、甲表というものは、厚生省所管の病院の赤字対策に単価を上げただけではワク内操作でやりにくい、民間医にも悪影響を及ぼす。従って、病院に都合のいいように点数だけの改正によってやれば比較的うまくいくのじゃないかというようにさえとれるのです。これはそんな腹ではないとおっしゃるでしょうが、しかし、結果から見て計算、試算してみるとそういうことになるのです。ということは、現に国立病院あたりの単価の、経営単価というものが出ておりまするが、大体一点単価に換算いたしまして一円七、八十銭の赤字が国立病院では出るのです。経営単価と徴收単価との間に……。これもある団体の資料なんですが、はっきりと昭和三十二年度において国立病院が一点当りの消費額は十三円五十六銭要るという計算になるのです、支出の上から請求点数を割りますと……。そうして経営単価が十一円七十銭で、結局一円八十六銭国立病院では赤字になるというようなことが出ております。こういうことから見ますと、ちょうどこの一円八十六銭というものは八・五%にまた相当するわけです。どうも皮肉にものを考えるというと、全く国立病院対策と言うよりほかに言いようがないというようなことにもなるわけです。私はそれ以上申し上げませんが、開業医制度をあわせて皆保険に持っていくのだという限りは、そういう点についての思いも十二分にいたしてもらわなければいかぬと思います。  そこで、もう一つ大きな問題なので大臣にお聞きしておきたいのですが、いろいろ保険がある中で政府共済の保険の問題なんですが、政府共済の保険料は御承知のように非常に安い、千分の二十八から千分の三十四というような程度であって、一般の千分の六十五から比べてとんでもない半額以下の保険料でもってやっておられるわけなんです。特に厚生省はこういう赤字だなんだと言いながら、去年からことしに比べてまた保険料率を下げておられるというようなことは、はなはだ私おもしろくない傾向でありまして、やはり医療の恩典、国の行う医療保険の恩典というものは、国民が法の前には平等でなければならぬと思う。官僚優先ということでは私は皆保険というものは成り立たぬと思う。それぞれ各政府の各種の共済組合というものには歴史があり沿革があり、いろいろと財政的の余裕もあらわれることはわかっておりまするが、皆保険をやる場合においては当然こうした点も考えなければなりませんし、給付の条件が違ってきているのです。まあいろいろとその間に錯綜したような複雑多岐であって、医療担当者側から見ましてもこういうものを一々治療するのに給付の条件の違う人を取り扱うというのは非常に困難を感じておりますが、やはり皆保険にするに当って厚生省としては各種保険を統一するというような考え方でなければ、国民は割り切って、官僚の方だけは保険料が安いとか、官僚の方だけが非常にいい条件の医療をしてもらえるのだというようなことでは、私は皆保険の実が上らぬと思う。案外そういう険路が厚生大臣のひざ元にあるということを私は感じるわけなんです。各種保険の統合統一というようなことは考えておられるのか、いやそれはとてもむずかしい問題でさじを投げておられるのか、一応そうした点をお聞きしておきたいと思います。
  122. 堀木鎌三

    国務大臣堀木鎌三君) 政府共済並びに政府関係機関の共済組合、共済関係の医療費の問題、こういう問題に関しましてはお説の通り、いろいろの社会政策的な意義から発達して参りましたので、必ずしも何と申しますか、他の違った要素がずいぶん入っている。そのためにそういう問題が起って参っていることも私存じております。しかし、率直に申して私としては、やはり政府一つの方針のもとの適正医療費を算定し、そうして保険団体と被保険者との負担というふうな問題についても合理性をおいた考え方に立って、そうして組合員自身の生活という問題は他の方面で本来解決すべきものであろうということは考えております。おっしやる通りに、これを総合的に解決するのには相当困難な問題があるということは考えます。しかし、いずれをとっても実は相当の困難、いろいろな問題に逢着いたしております。困難だからということでなしに、私としては合理性ある方向に向わなければならないのじゃなかろうかというふうに考えておるような次第でございます。前段についてはもう私の答弁までお答えを願っておりますのでお答えする必要はないと思います。と思いますが、率直に申して私どもこういう公的医療機関の経営のみを考えて今回の適正診療費というものを算定いたしましたわけではございません。あの算定の内容をごらん願えば当然この趣意でやったのだなということはおわかりになるので、竹中さんもどうも十三円五十銭と十一円七十銭だというふうに数字をおあげになりましたが、この点私つまびらかにいたしておりませんが、少くとも今度の作業の過程におきましてはそういうことを考えていたしたつもりはございません。これだけを申し上げます。
  123. 高田正巳

    説明員(高田正巳君) 補足させていただきます。大筋は大臣お答えになった通りでございますが、千分の三十幾つという共済組合の料率はたしか私どもが払っている料率でございまして、政府管掌でいえば三二・五に当る分であるように私は——今みんなに聞いてみたのでございますが、どうもそのようでございますから、そうでありますと、どうもちょっと今のお話とは変ってくるわけで、その点はもう一度よく調べましてまたこの次までに調べて参りますが、たしかそうであろうと思いますが、その点一つ御了承いただきたいと思います。
  124. 竹中恒夫

    竹中恒夫君 いずれにしても非常に官僚が優先しておられるということは事実なんです。数字は少し違うようですけれども、これをごらんになったらわかると思います。じゃこの次に見せていただきましょう。  そこで幹事案について少しく内容に入ってみたいと思うのです。幹事案をお作りになるについては、きわめて困難な条件下に、文字通り苦心惨たんなさったということはわかるのです。各方面への刺激を避けて、あんまり八方美人的に物を考えておられるのじゃないかとさえ私は考えられるわけであります。結局精細巧緻をきわめておると一言にして言えると思うのです。が、あまり巧緻をきわめ過ぎておるので、狡猾な知恵の狡智に通ずるくらいの巧緻さを持っておると考えられるのです。それにもかかわらず、先般御用学者といいますか、厚生省に非常に好意のある某博士が新聞に出しておられるように、甲、乙二案を厚生当局が示すことは自信の欠除を示しているものだ、そういうことでなくて、技術尊重に徹せよということを言っておる。これは公正な立場の方が言うので、われわれも全くそういうふうに思う。自信のある案をお示しにならないと、今回のように甲、乙両案を出すということはこれ全く政治なんだ。事務局の高田さんなりあるいは厚生省の次官なんか政治をしてはいけないので、事務局は事務局として絶対これなんだというのをお出しにならないと、甲表、乙表どっちをとれというのは政治的な行き方だと思う。あまり八方に気を配りすぎてそういうことをなさるということは、前委員会で、ここで問題になったように、医者も迷えば患者も迷うと思う。盲腸になった場合に甲表の先生に行けば高くつく。乙表に行かなければいかんということで、いろいろなことで被保険者の家族は半額持つわけでありますから、ずいぶん迷うと思うのです。こういうようなことは根本的に幹事案といいますか、事務局案というものはそういう点から落第じゃないかという感じが実はしておるわけです。そこで、お聞きしたいことは、そういう経過はやむを得ませんが、一体今回八・五%のワクをおきめになった基礎的なものは、医師が三万三千五百二十四円という二十七年三月の経済実態調査に基礎をおかれまして、そうしてこれに基礎をおいて勤労者消費支出の上昇率の一・四五をかけたり、あるいは貯金の一・一〇七をおかけになっておきめになったのですが、その元となる三万三千なんぼは、これがいみじくもあなた方おっしやるように、皆保険を前提として専門技術者にふさわしい生活を維持し得る報酬金を与えあるいは医寮施設その他を改善し得るようなものであるという程度の三万三千じゃないと思う。ということは、二十六年十二月のあの単価はきわめて低いということで医療担当者は不満を持って、四つの付帯条件をもってこれをのんだ。それから三月、四月たった二十七年三月の経済実態調査による三万三千というのは、これは今申しましたような、御当局言われるような条件を充たし得るものでないにかかわらず、それにただ機械的に勤労者の賃金べース・アップだけをスライドなさったのでは、八・五%というのは私は足らぬと思う。専門技術者の生活を維持するものであり、医療内容を充たし、施設を完備し得るものでないと思うが、それはどういうわけなんですか。やはり三万三千の二十七年当時のあれが適当であるということでスライドなさっているのですか。
  125. 高田正巳

    説明員(高田正巳君) 事務当局案の内容についての御質問でございますから、私からお答え申し上げたいと思いますが、まず前段の二つ選択制で出しましたことについてのおあげになりましたようないろいろな批判がありますことは、私どもよく承知しております。しかし、私どものほんとうの気持は、たとえば自信がないのであろうとか何とかいうような御批判もありますが、実はそうではないので、これこそがやはり施策のあるべき姿だというふうな、政治的配慮も除きまして、事務当局自身もそういうような考え方をいたしている。それはなぜかと申しますと、医療機関というものの姿をじっと見ますと、非常に経営形態も姿も違うのであります。いろいろなものがあるのであります。そうしてまた、その中において行われております医療行為も共通的なものもございますけれども、また、違うものが非常にある。従って、そういうふうに非常に違う医療機関というものを頭におきまして物を考えました際には、むしろ一本の支払方式でなければならぬとこだわることの方がむしろ無理があるのではないかというふうに感じられているのでございます。現に外国にも全然医療機関の種別によりまして違った支払い方式をとっているところがありますことは御承知通りでございます。そういうふうな観点から、むしろこの際一本にいたしますとかえって無理が出てくるので、むしろ二本にしてそれを選択制にすることの方が医療機関のいろいろな姿に対する実情に即したやり方ではあるまいか、こういうふうなことは、御批判はいろいろあると思いますけれども、私ども考え方を申し上げてみればそういうところでございます。なおまた、医療機関の方が迷うじゃないか、患者の方が迷うじゃないかということにつきましては、医療機関の方はこれはどちらか大体お選びをいただくというのでございますから、これは医療機関それぞれの自分のところの実情に即してお選びをいただけば、これは特別お迷いになるということもないと私は思うのでございますが、しかし、患者の方から甲表のところと乙表のところへ行くと違うじゃないかという御批判、これは確かに成り立ち得る御批判だと思います。ところが、その現実の問題で考えてみますと、たとえ支払いの方法が一本でございましても、同じ人間が同じ病気を抱えて甲の先生と乙の先生にかかった場合には、払ってくる金は違うのでございます。それは先生によってやり方、方針も違いますし、これが医療の姿であろうかと思います。それがまた医療の特殊性であって、また、認められなければならぬところであろうと思います。現在でも同じ病気で医療機関によって一本で払う場合にも違う、同じ人間が同じ症状を抱えて両方に行ったとしましても違い得るのであります。そういう点を考えますとき、もう一つはこの前の委員会でも私ちょっと申し上げましたのですが、なるほど払い方は違うけれども、たとえば盲腸の手術をして十日間ほど入院しておって、出てきた、あるいは結核でずっと入院しておって、引続き入院しておる、その一ヵ月分の費用、いろいろな症例を実は具体的に試算をしてみたんであります。そういたしますと、もちろん若干の違いはございますけれども、甲表によりましても乙表によりましても、全体に払うお金は大体一致してくるのでございます。そういうふうなことから申しましても、また、一本であっても違うのだということから申しましても、それらの点はさほどこの案の致命的な欠点ということにはならないのではなかろうか、かように私ども考えておるわけでございます。
  126. 竹中恒夫

    竹中恒夫君 時間がないから、そういう詭弁を弄しておられるのなら聞く必要はない。そういうことは議論をすればきりがないことで引例そのものが的確じゃないのです、あなたのおっしやることは私の言うことと。同一の医者、一つの病気でこちらへかかっても医者が変れば料金は違うということを、甲表、乙表に対する反論に用いることは適例ではないと思う。それをやっておってはきりがないので、もう三つ、四つ聞きたいことがあるので答弁はかえっておことわりして、あとお聞きしますが、幹事案によると、事務負担を非常に大幅に軽減したとおっしやるが、私は事務負担というものはそう軽減されてはおらないと思う。むしろおそらくこの事務負担の軽減は釣銭が要らぬということだろうと思うのですが、どういう意味なんでしょうか。われわれは書く場合には普通に考えた場合には事務的には医者というものはカルテの記載は点数で書く、請求を点数で書く、別に十円に単価をまるめたことによって事務的な簡素化ということには考えられない。もしこれがほかにあるなら御説明願いたいと思うこと。それからもう一つ、審査事務が非常に簡素化されたとおっしゃるのですが、審査は小さな県では審査員が二人か三人しかおらないのですが、そうすると、甲表の審査員と乙表の審査員と分れてやらなければならない、分れてやらずに専門でやると、点数の計算に混雑を来たす、審査の方は簡素化されたんじゃないと思う。複雑化されて、間違いを起すようなことが往々にして私はあると思う。でむしろおっしゃるように、審査の簡素化は甲表のように当局の理想の線に沿うたものについてはほとんど審査を要しないのだ、概算払い的な考え方で審査を省略し得るのだというふうな考え方のようですが、これは保険法によって、請求書は審査しなければならぬということがきまっておる、法律できまっておる、そういうふうな点においての矛盾を感ずるわけです。事務の簡素化と審査の徹底的な簡素化ということについての御説明を願いたいと思うのです。
  127. 高田正巳

    説明員(高田正巳君) 事務の簡素化の方につきましては、単価を十円にしたことは一本どれだけの簡素化になるかというようなことでございますが、これはまず医療機関の窓口の支払いの場合に、半額をとるというふうな場合に非常に計算が容易であるということと、それから基金やその他で支払いをいたします場合にも容易になるであろうという気持がいたしておるのであります。それから甲表におきましては、基本診療料ということでいろいろな普通行われるであろう初診時、再診時あるいは入院時の処置とか、それから注射とか投薬とかの技術料なんかも一緒に払ってやりますので、それからさらに、薬におきましては六十円以下の薬は平均単価で払う、従って、たとえば投薬の場合には幾ら、それから皮下注射の場合には幾ら、それから筋肉、静脈注射の場合には幾らというふうに平均単価で払いますので、どういうものをさしたとかどうとかいうような、請求明細書に従来備考のところに非常に詳細に書いていただきましたのでございますが、そういうふうなあの書き方がうんと減ってくると思うのでございます。そういうふうな意味でこれは歯科の方におきましては、再診時の基本診療料ということを考えておりませんで、従来の処置料としてやはり払うという形をとっておりますので、歯科の場合には一般よりは事務の簡素化の程度が少いと思いますけれども、一般におきましては今の基本診療料という形をとりましたことと、それからもう一つは平均単価で払うということによりまして、請求事務が、明細書の内容が非常に簡単になってくる、こう私ども考えるのであります。  それから審査の問題でございますが、そういうふうな中身でございますので、従来は何をさしてどうだというふうに一々中身の審査をするわけでございますけれども、そういうふうな請求書で、平均単価で薬価でも払うということになりますと、基本診療料と薬価は平均単価で払うということになりますと、この請求書の記載自体も非常に簡単なものになって参ります。従って、それを見たところが書面審査はできなくなるといいますか、必要がなくなる。たとえ三十円の薬を打ちましても、十五円の薬を打ちましても、幾らという一本の値段で払うのでございますから、そういう点で審査事務も甲表におきましては非常にこれは少くなりますることは、これは十分想像ができるわけでございます。それでかえって基金でめんどうになりはせぬかというお話でございますが、これは請求明細書を色分けにでもしておきまして、甲表と乙表とを別にしておきまして、甲表の方は見なければならぬところだけはどんどん見ていく、乙表の方は従来と大体同じような請求の仕方でございますから、従来と同じような審査をやっていくということでございまして、そのために審査員を分けたりあるいは審査が事務的に非常にめんどうになるということは、これは現実の問題としてないかと私ども考えます。
  128. 竹中恒夫

    竹中恒夫君 次に単価についての問題なんですが、松澤委員相当いろいろと論議なさりておられるので重複は避けたいと思うのですが、しかし、私もあくまでも点数単価方式というのは、単価というものの構成要素の中に賃金なりそれから技術料なりその他のいろいろな要素が入ってくる、点数の方には先ほどやはり入っているようにおっしやいましたが、点数の方には医療技術のバランスを現わす点数と、それから注射に関する限りは使用薬価の点数が加算されておりまするが、多くの場合において点数というものは決して経済価値を裏づけるものじゃない、私はそう考える。そうでなかったら点数単価方式という意義はない、それならば現金標準方式なんです。そこで私は議論をする時間がないので差し控えますが、もう一つこの点でお聞きしたいのは、少くとも点数単価方式の単価を十円とするということはこれは現金表示方式なんです。そうなってくると、支払い方式の私は変更だろうと思う。一種の支払い方式の変更となりまするというと、これは当然社会保険審議会に諮問する厚生大臣としての私は義務があると思う。中央医療協議会におかけになるのは報酬金に関する問題でございまして、支払い方式のような、健康保険の運営の大綱に関する問題は、当然社会保険審議会におかけにならなければ順序が違うと思う。特に社会保障制度審議会の答申を見ましても、あるいは社会保険審議会の答申を見ましても、七人委員会の方の御意見を見ても、現段階においては現在行なっておる点数単価方式以外に他に方法がないから、これでいくよりほかに仕方がなかろうという答申なり意見が出ているわけです。そうすると、その意見を無視なさって支払い方式を変えられるということでありますならば、私はこれはそういう各審議会とかいろいろな機関の意向をもこの際踏み越えられてなさるわけなんだから、当然そういった方面の了解も得、その上で私はこれは考えるべきだろうと思う。と言いましても、これの根本は点数単価万式というものが、単価を十円にまるめられたことが支払い方式の変更じゃないということであれば議論は別ですか、私としては明らかに支払い方式の変更だろうと思う。当然、で、そうした点について、そういう手続をとらなくてもいいのかどうかという点についての大臣の所見を承わりたい。なお、点数単価方式についての単価問題議論はまた後日に譲りまするか、私の言うことを前提として社会保険審議会にかけるべきだろうと思うのですが、大臣はどうお考えになるのですか。
  129. 高田正巳

    説明員(高田正巳君) 支払い方式と申しますと、件数払いあるいは点数単価方式とか人頭請負式とかいろいろな分け方がございますけれども、結局点訳単価方式というのは点数に単価をかけて金額を出すのだというやり方をさして点数単価方式と言っておると思います。従って、今回の私どもの改正案はやはり点数単価方式の中であろうと思います。点数単価方式というものの甲の改正であるというふうに私ども考えております。それからこの社会保険、臨時医療保険審議会等で現行の点数単価方式を一時に、いろいろ非難はあるけれども、一時に変えることは困難であろうというふうな中間報告が総会に報告されておりますが、あれは何も点数はそのままにおいて単価だけを変えなければならぬというあれじゃございません。いわゆる点数単価方式とかあるいは件数払い方式とかあるいは人頭請負式とか、あそこにずいぶん並べてございますが、支払い方式がそういうふうな非常に大きな変革を来たすにはこれはなかなか今直ちにはいかぬだろう、こういうことでございまして、決して現在の点数はフィックスにしておいて、単価だけを変えなければ何もできないし、それでなければ困難だという御趣旨はこの審議の過程を通じてない、私はそういうふうに考えております。たとえば料率を上げまするとか何とかというようなあるいは給付率を変えてしまうというようなことが起って参りますれば、社会保険審議会にこれは当然かけなければならぬと思いますけれども、ただいまのところ、この支払い方式の問題だけで社会保険審議会を経て医療協議会に臨むという必要はない。むしろ関連の問題として適当なときには社会保険審議会にもいろいろ御報告をしたり何かする時期はある、そういうふうに考えておるわけでございます。
  130. 竹中恒夫

    竹中恒夫君 そういう御答弁になりますると、議論が深く進んでいかなければならないのです。実は支払い方式の変更になるのです、僕らから言わせれば。というのは、単価を十円にまるめられたということは、いろいろな面から考えて便利になさったわけなんですが、そうして見ると、今後経済情勢の変動によって、医療報酬金をスライドして値上げするという場合に、従来の単価点数方式でありますれば、単価をさわればいいのです。点数の不合理は別なんです。物価変動とは別なんです。もし不合理があれば、各科間のアンバランスだとか、各科内のアンバランス、難易差のアンバランスというものは、これは経済変動に全然関係がない。点数はしいて言えば、先ほど申し上げましたように、その点数の中で、しいて言えば注射に関するものだけは薬価の変動等によってありますが、大部分の点数の構成要素というものは、そういう経済的なものは入っておらない。だからそうなってくると、点数単価方式というものの単価をフィックスしちゃいけない。今の表でしたら、今後単価の値上げというようなことはもうできない。封じてしまうわけだ。そうして経済変動でスライドする場合に一体どうする。七百からの点数項目をどうするのです。賃金指数も上ったものもあるでしょうし、また、場合によっては資材が上ったものもあるでしょう。いろいろなものが動いてゆく、その上る率がみな違うのです。その違ったものをどうかみ合せて七百の点数表にぶち込むか、これは難作業も難作業でとうてい考えられない。これはどうしても私は十円にまるめられたことによる御答弁でありまして、私は明らかに十円にした限りは、これは全く点数単価方式を揚棄なさって、そうして現金方式に変えたと断定せざるを得ない。どう考えても点数構成要素の中にはいろいろな物価に対するスライドする要素はございません。単価にこそいろいろな要素があるわけです。先ほど御答弁の中にありましたが、単価の構成要素は御承知のように、今井メモをごらんになったらわかるように、あるいは前々国会、二十四国会以来の厚生省がお出しになったあのデータでおわかりになるように、資材が何パーセント、光熱費が何パーセント、いろいろなことがあなた方の方のデータに出ている。それによってスライドできると思うのです。点数の方でスライドなさるのは一体どういうふうなことによってスライドなさるのかということになる。これは議論になりますと、もう夜を徹してもやれませんので、私は別の機会において、これは点数単価方式の、支払い方式の変更であるという建前でもって今後も臨みたい、かように考えております。  で、その次の問題なんですが、実はもうたくさんありますので、特に最後に、ほかは割愛いたしますが、お聞きしたいことは歯科に関連いたした問題なんですが、歯科におきましては技術料を——技術というものを今度非常に高く評価なさったということなんですが、歯科における技術というのは補綴があるわけです。補綴が一番むずかしい技術なんです。この補綴の技術の評価の工合が非常に私は不合理であると思う。これはもうこまかいことになってくるのであまり申しませんが、ただこういうことだけをお聞きしておきたいと思う。甲表の生命とするところは、物と技術の分離だとおっしゃる、甲表はね。物と技術の分離をすることは、つまり技術料を高く評価することによって甲表は成り立ったというわけで、乙表の方は従来の点数はさわらずにワクを広げるだけ広げた、こういうことです。ところが、実際において、歯科における手術料は、甲表においては逆に一、二割減っている。甲表が技術料を高く評価すると言いながら、甲表においては減っている。それから乙表では逆に手術料が一割ふえている。よくごらん下さい。私の見たところではふえている。それからまた、そういうふうなことであって結局手術、補綴等技術の評価が甲表が乙表より低いというのは、一般の方はそうでなくても、甲表は技術料を非常に正当に高く評価したという考え方をもって、そのまま歯科に持ってきたとおっしやりながら、点数表を見るとそうなっておらない。同じ義歯なら義歯をいたしましてもそうなっておらない。そういうことで私は奇異に感じている。ですからうたっておられる文句と具体的な点数とが合致しないという点について、私は奇異に感ぜられますので、そうした点については今直ちにどうこうという御答弁はできぬと思いますが、よく御研究願って、やはり正しい合理的な技術評価をなさるということでなければ医療担当者は納得しないと思う。こうした点についてとくと御研究願いたいと思う。  まだ四、五点御質問申し上げたいのですが、谷口先生が私のあともうちょっとというお申し出もありますので、私はこの程度で保留さしていただきます。
  131. 谷口弥三郎

    谷口弥三郎君 時間がありませんから、私も一点だけお聞きしておきたいのであります。今回の厚生省から出されましたいわゆる事務局案なるものは先刻来もお話がございましたように、昭和二十七年三月のいわゆる医療経済調査ですか、というものを土台にしておやりになった。なお、その上に専門部会の方面の答申など加えて大いにそれを尊重しておやりになったということは何度もお聞きしておるのでございますが、実は昭和二十七年三月の医療経済調査というのは、これは完全なものじゃない、かなり不的確なものであるという説明になっておるのでありますが、そういうのを土台にして、しかも専門部会というものの方面から聞きましても、専門部会では難易差、あるいは診療行為の問題の点数をきめるということも非常に不可能であるから、困難であるからして、完全な結論はでさなんだというようなことをその際にお話になっておるというようなことを聞きますと、それを土台にして非常に汗水たらして御研究になったというのは、少し基礎材料が薄弱でなかろうか。ことにこの診療行為でございますとか、あるいは難易差というようなものは一朝一夕にしてできるものではございませんで、少くとも数年間もかからねば、なかなかできにくいものでございましょうし、しかも各科のエキスパートが出合ってこしらえますると、また、各科のアンバランスを繰り返さなければならぬというのですから、これはかなり日にちのかかるものであるにかかわらず、厚生省は今度事務局案としてお出しになったのは、とにかくこの前から国民皆保険とか言われておるので、早く一つ踏み台でもこしらえてお出しになろうというおつもりで出したので、大いに拙速を尊ばれてお出しになったのだろうと思いますが、これは以前からも申しておりますように、昭和二十六年のときに単価も現在あります単価は暫定単価であるので、あの暫定単価だけは一つこの際には急に上げるようにして、点数改正は、いろいろの方面の方々と御研究になってお出しになる方がよくはないか、そういうことを申しますと、非常に基礎をぐらつかせて相済まぬと思いますけれども、そういうように私は考えるのですが、その点だけをきょうは……あとでこまかいことはまたこの次の機会にお尋ねするとしまして、そこだけをはっきりと御説明を願っておきたいと思います。
  132. 高田正巳

    説明員(高田正巳君) 二十七年三月の医療経済調査が必ずしも完全なものでない、そういうものについて、基礎にして第一点の御質問でございますが、いろいろ批判といいますか、それはあると思いますが、二十七年の三月調査というのは谷口先生も御存じのように、これは医師会でも全面的に協力していただいてできた調査でございます。これだけ大規模の、これだけ権威を持った調査というものは実は私どもはその後持ち合せておらないのでございます。従ってこれが完全なものとはあるいは言えないかもしれませんけれども、これにまさるものがないということでこれを用いるよりほかに方法がなかった、こういうことであろうかと思います。もちろん新たに調査関係者と協力してやり直すというふうなことをすれば、これは一番いいと思いますが、これにはそれをやりまして、集計をいたし、分析をいたしますには、およそ一年も二年もかかる、こういうことでは急いで何とか診療費の引き上げという改訂をやりたいというわれわれの意図に沿いませぬのでございますので、この資料によったわけでございます。  それから第二点の専門部会の難易差について、技術の難易差についてはという御質問でございますが、これは参考にいたしましたので、もちろんその責任は私どもにあるわけでございます。最終的な御報告ではございません。あくまでも中間報告でございます。ただその第三部会でございますが、これの事情を聞いてみますると、各科の代表者が出られまして、その科の、たとえば産婦人科なら産婦人科、外科なら外科のバランスにつきましては、これは一応まあ大先生におやりいただいたわけでございますので、一応いっておるわけであります。ところが、科相互の間の調整というものについてまだ若干の問題が残っておるやに私どもは拝承しておるわけでございますが、しかし、私どもといたしましては、まずこれが私どもが手に入れ得る一番権威のあるものでございます。これを私ども責任におきまして参考にいたしまして、内容はその通りでございますけれども、参考にいたしまして、今回の難易差をつけたのでございます。さようなことでございまするので、いずれも他にいい方法があるならば、それによりたいと思いまするけれども、この二つによるより方法がない、こういうことで考えたわけでございます。  なお、単価だけを引き上げて点数はそのままにしておけという仰せでございますが、その点は私どもといたしましてはやはりこの際点数もあわせて考えるべきだという立場に立っております。また、それは前二十六国会における付帯決議の御趣旨でもあろうか——点数、単価、双方にわたって付帯決議が論及しておられますので、御趣旨であろうかと私ども考えております。
  133. 坂本昭

    坂本昭君 資料を一つお願いいたしたい。これは保険局長さんでなくて厚生大臣にお願いしたい。大臣が直接間接所管される国立病院、療養所、社会保険病院、全部じゃありません、代表的なものについて、その経営の実態と関連して、一つ国民の前にガラス張りの明瞭な資料を一つ臨時国会までに出していただきたい。お約束できましょうか。全部じゃありません。もし何なら私は直接医務局長なりと相談いたします。
  134. 堀木鎌三

    国務大臣堀木鎌三君) どの程度の表を作るかということですが……。
  135. 坂本昭

    坂本昭君 全国の全施設じゃなくていいのです。  それから先ほど社会局長にお尋ねしたことで、大臣が不在でしたので、一つ簡単に御答弁いただきたい。実は御承知通り、高崎で福祉関係のいろいろな犯罪事項がございました。それについて社会局長にお尋ねしましたところが、主として財政的な理由によって、特に地方財政が困難なので、たとえば高崎の福祉事務所などはケース・ワーカーが欠員でございます。そのために行き届いたことができないためにいろいろとまずいことが起っている。また、十分の人を得ることができない。そういうことのためにはなはだ遺憾な事件が起った、こういうことでございましたが、第一に地方行政の面を改良して、もちろん今度の犯罪、これは厚生大臣の直接の責任でなくて、むしろ地方行政の責任でしょうけれども、それに関してちょうど保健所の国庫負担をやって特に来年度あたりは能率を上げるように大臣考えのようでございますが、保護行政、それから福祉行政に対して、財政的な面でどういうお考えがあるかということが一つと、それからもう一つは、健康保険にも関係がありますが、保険の審査、監査に非常に職権を乱用するのですね。この乱用の傾向が特に厚生行政の中で私は強くなってきているように思う。これは非常に残念なことであって、政府は小中学校に修身科を復活するように希望しておるようですが、むしろ政府としてはこの点で、こういう非常に大事な行政をあずかる人に対して、はっきりした方針を政府自身が持たなければならない。その財政の面と、それから行政関係、特に末梢の行政官に対する心がまえの点における大臣のお考えを伺いたいと思います。
  136. 堀木鎌三

    国務大臣堀木鎌三君) 実は地方財政をあずかる者からみますと、常に言われることは、実際厚生省はいろんな方針を書くけれども、結局地方財政相当大きなしわ寄せをしてくるのだ。それではこの際、こういう地方財政の苦しい際にやり切れない問題であるということを、これはずいぶん私どもも聞かされております。私としては三十三年度以降、地方財政を緩和する意味において、すべての問題を解決して参りたいというのが基本的な方針でございます。  それから第二の現場第一線の行政が、それは厚生省責任であろうとなかろうと、およそ厚生行政の一環として行われる場合に一番大切なことは、現場の実際の機関が、趣旨目的に従ってほんとうにやれるような資格のあるもの、また、実際施設的にも整備しているかどうか、この問題が私一番大切だと思ったのでありますが、従いまして、就任以来一番考えておりますことは、現実に毎日国民の生活に接触している第一線機関というもののあり方をぜひ見て、そうしてこれが正しいあり方で運用されていかなければならない、その欠陥ありとすれば、われわれがそれを補う方途を講じたい、こういうふうに考えておる次第であります。夫は就任早々第一歩にそれをやりたい気持だったのですが、いろいろなことに追われまして、その意を果さないで昨日から実はスタートいたした、まことに申しわけないと思いますが、しかし、それに関しましても従来ともその点に私は非常に欠陥があると思いますので、ぜひ努力をして参りたいし、おっしゃるようなほんとうの方針を示して適従するところを知らしめて、それと同時にそれをやり得るような資格があるということが一番大切だと思います。これは所によって相当いい所もあるし悪い所も実はあるようでございます。しかし、いずれにいたしましても、今後の私の主たる重点は、地味であるが、その点が一番大切だ、こういりふうに考えております。
  137. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) では本問題に対する本日の調査はこの程度にいたしたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  138. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 御異議ないと認めます。本日はこれにて散会いたします。    午後五時四分散会