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説明員(
亀井光君) 近江絹糸の争議の概況につきまして御説明を申したいと思います。この会社は御承知の
通り、去る昭和二十九年の大争議以来、企業再建のために三菱銀行を幹事銀行としまする協調融資銀行団が
結成されまして、この会社の再建が進められていたのでございます。その間、一部の株主から金融機関が経営を行なっているのは独占禁止法違反であるとして、昨年の十一月公正取引
委員会に三菱銀行の不当企業支配排除という
申し立てを行なったのでございます。これに対しまして、同
委員会から本年の五月二十二日に至りまして水野、神前正副社長は退陣することという、そのほか二、三の条項を付しました勧告が出されたわけでございます。この勧告を受けまして、水野社長及び神前副社長を含む重役陣が一斉に退陣をいたしまして、六月二十九日の株主総会で新たに山内社長以下会社の重役陣が
決定されたのでございます。で、このような新経営者陣に対しまして、三菱銀行を初めとする銀行団は、現在の経営陣では信用ができないという
趣旨から、生産に必要な資金の融資を拒否したのでございます。そのために同会社は原綿の購入もできず、八月七日に彦根、大垣、富士宮の三工場で操業の停止が起ったのでございます。次々と原綿の不足から操業の停止が行われて参ったのでございます。この事態の悪化に伴いまして山内社長は、杉大阪商工会議所会頭にあっせんを依頼をしたのでございますが、その後あっせんの過程において山内社長は
辞任をいたしております。で、杉大阪商工会議所会頭は山内社長のあっせん依頼を受けましてあっせんに乗り出したのでございまするが、九月十六日に至りましてついにあっせんは不調となって打ち切られたのでございます。
これらの情勢のもとにおきまして、
労働組合は、九月四日中労委に次の四つの事項をあっせん事項としてあっせんの申請を行なったのでございます。
一つは、休業の場合において一〇〇%の給与を保証すること、二つは、解雇の反対、三つは、工場の分割反対、四つは、現重役陣というこの四つのあっせん事項に基きましてあっせんの申請をいたしたのでございます。また、そのうちに九月二十四日になりまして、会社は九月分の賃金の半額支給を
組合側に通告いたしました。その通告を受けた
組合側はこれを不満としまして、九月二十五日は午前零時から各工場で出荷説得
行為——出荷の拒否でございますが、それから本社、営業所におきましては業務の拒否の無期限ストに入ったのでございます。現益におきましての操業
状態は大体全体で二割弱でございまして、紡績工場におきましてはほとんど全面停止になっておりまして、スフ紡
関係の一部並びに加古川工場の化繊
関係の業務が一部動いておるのでございます。
九月二十六日に中労委におけるあっせんの
委員会が開かれました席上、会社側から生産の今後の計画、あるいは会社再建の計画としまして能率の悪い長浜、岸和田両工場を閉鎖する、で、二番目は企業縮小に伴いまして約千三百人の人員整理を行うという再建の案を骨子としましてあっせん
委員にあっせんを依頼をしたのでございますが、このことは会社みずからのやるべきことであるということで、中労委としましては中労委の舞台で労使の
団体交渉をこの問題について行なってはどうかということを勧告いたしました。労使それを受けまして
団体交渉が中労委において行われたのでございまするが、この問題はその後二十八日に第一回の
団体交渉が行われましたが、進展をしなかったのでございます。その間、近江絹糸におきましては、
組合は十月二日に大阪市の中央公会堂におきまして決起大会を開催をいたしております。また、十月八日に至りまして近江絹糸の
労組は中間を開きまして、このような事態に立ち至ったのは、経営者・銀行団の責任であって両者の責任を追及し、生活を守るための戦いを進めるという基本的な態度を確認しまして具体的な方針として、
一つは銀行団に社会的責任を追及し、融資の再開を要請する、二つには無能力者である夏川一派の退陣を要求する、三つには石田労相及び中労委にあっせんの促進を要請する、四つは全繊に生活資金を要請するというふうな決議を行なっておるのでございます。また、九日には
組合員が
労働省、大蔵省を訪れ、それぞれ争議の早期解決を要望いたしております。こういう事態におきまして中労委におきましては、引き続きあっせんが継続されておるのでございます。
労働省としましても、この問題が労使
関係の問題として今後大きく発展をしていくおそれもございますので、労働大臣といたしましても、この問題の解決につきまして何らかの措置をとりたいということで、目下その方法を
検討をいたしておる段階でございます。
以上でございます。