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説明員(高田正巳君) それではお手元に御配付を申し上げました「社会保険医療の診療報酬の算定
方法並びに点数及び単価策定方針の概要」こういう冊子がございますので、これに大体の内容を要約して書いてございまするので、便宜これに従いまして御
説明を申し上げたいと存じます。
〔理事山本經勝君退席、
委員長着席〕
まず、今回の診療報酬の改訂を
考えまして、私
どもの
事務当局の方針をまとめましたものが、この最初に書いてございますが、「保険医療の適正を期し、国民皆保険を推進する基礎的条件を整備するためには、常に保険医療における医療技術の向上と医療内容の改善を図ることができるようその診療報酬の算定について十分な考慮を払うことが必要である。」かように
考えまして、まず、診療機関の院長といいますか、さような医師の生計の問題につきましては、専門技術者としてふさわしい
生活内容を維持していただけるようにという点と、それから経費その他の面につきましては、医療施設及び医療用器材についても医学技術の進歩に応じて必要な整備と更新が加えられるというふうなことが必要でございまするので、それらの点をも加味いたしまして、後刻御
説明を申し上げまするように、大体現行の診療報酬に比し、おおむね八・五%程度引き上げることが妥当であろう、こういう結論に到達をいたしたわけでございます。
次いで、この増額を機械的に現行の一点単価をその程度だけ引き上げることによって処理いたしますることは、現行の点数におきまする不合理を、何と申しますか、加重いたすような結果にも相なりまするので、点数を合理的に是正いたしたい、その上でこれらの増額分を配分いたしたい、かように
考えた次第でございます。で、その際に、私
どもといたしまして、
基本方針といたしましては、まず、この医療の技術を高く評価するという点と、それから、かねがね現在の社会保険その他の社会医療面におきまする請求
事務の非常なめんどくささというものを
医療機関の側から訴えられておりまするので、まことにご
もっともな点でございまするので、これらの
医療機関の
事務的な
負担をできるだけ軽減したい、こういう点とを大眼目に
考えたわけでございます。請求の
事務を軽減いたしますると同時に、いわゆる基金の審査の
事務というふうなものをも徹底的に簡素化することができるようにということに配慮をいたしまするとともに、さらに
事務的な観点から診療報酬の一点単価はまるく計算のしいいように十円ということにいたした次第でございます。
なお、これらのことを
考えて、具体的な案を作成いたしまするに当りましては、そこに書いてございまするように、臨時医療保険審議会あるいは中央社会保険医療協議会、診療報酬に関連のあるこれらの協議会におきまして、あるいは審議会におきまして、今日までいろいろと御審議をいただいている部面があるのでございます。最終的な結論はいずれも出ておらないのでございますが、中間的な御報告をいただいている面もあるのでございまして、それらの御報告なりあるいは御審議の過程を通じまして現われましたいろいろな御意見を、私
どもとしましてはできるだけ取り入れて慎重を期してやる、こういう
基本的な方針でできているわけでございます。
さてこの二番といたしまして、診療報酬の方を一体どの程度に押えるべきか、結論的にはおおむね八・五%という結論を出したわけでございますが、これの過程でございます。これの過程がその次に二ページのところから書いてあるわけでございますが、
一般診療所におきまする昭和二十七年三月の医療経済
調査をもとといたしまして、三十三年の年間平均まで延ばしました。そうして諸経費の物価の値上りあるいは医療の規模が拡大しておりますので、それらの点も配慮いたしまして、それぞれの算定をいたしたものでございます。二十七年の三月の医療経済
調査というものは、これはすでに皆様の過去のいろいろな御審議の過程において、お耳に入っておりまする
調査でございまするが、これは診療担当者の団体にも全面的な御
協力をいただきまして、
厚生省が
調査をいたしたものでございまして、今日使い得る資料といたしましては相当権威の高い資料であろうと、かように確信をいたしているわけでございます。
さてこの医師の所得でございまするが、これはそこに書いてございまするように、まず二十七年の三月に医師の生計費支出、
世帯支出というものが
調査されておりまするが、その三万三千円という額に、まず他の
一般の消費支出というものがどの程度上昇をしておるかということを
考えまして、その倍率をかけ、さらに三万三千円という生計費の中には、これは支出でございますので、貯蓄等に回ったものは表現されておりませんので、まあ逆に申せば、過去の貯金を食いつぶしたというものも入っておるわけでございますので、しかし、貯蓄に回ったものもこのほかにあるわけでございまするので、その貯蓄に回されたであろう金額をそこに見込んだわけでございます。そうしてその伸びを見まして、一・一〇七というものを乗じまして加算いたしました。
その次に、さらに
稼働時間というものの延長というものを
考えたのでございます。その後大体二十七年当時の
患者数というものが、おおむね診療所平均といたしまして、二十三人余りでございましたかの
患者でございましたが、今回私
どもが現在の姿を推定いたしましたものにおきましては三十八人程度の
患者になるということでございまして、これは相当忙しくなるわけでございまするので、その忙しくなるのをどの程度見込むかということは論議のあるところでございまするけれ
ども、これを大体
患者数の増加の二分の一程度というものをこれに加えたわけでございます。かくいたしましていわゆる
個人立施設院長、
言葉をかえて申しますると、いわゆる開業医師でございまするが、そのあるべき所得を大体六万九千九百五十五円、七万円ばかりのものに押えたわけでございます。これを全施設の公立診療所等も数もございまするので、全施設に平均いたして
考えますると、五万九千四百六十二円ということに相なるわけでございます。
次は所要経費でございますが、そこに詳しく各経費の費目について、その計算の過程が書いてございますが、所要経費を、従業者の給与、この中には医師もあり、看護婦もあり、その他の従業者もおられるわけでございますが、その従業者の給与すなわち人件費とそれから衛生材料費、給食材料費及び
一般の経費というふうに四大別をいたしまして、二十七年以後の伸びを計算いたした次第でございます。従業員の給与につきましては、全国勤労者賃金の上昇率一・五七というものを加算いたしました。さらに、当時から従業員がふえておりまするので、そのふえた人員を乗じて推計をいたしております。さらに、賞与の問題をも加味いたしてこの数字を出しておるわけでございます。衛生材料費中、投薬、注射の薬品そのものの
費用につきましては、三十年に社会医療
調査を私
どもの方でやりました。この点につきましては、二十七年の
調査を使っておりません。と申しまするのは、これは御存じのように、使用薬品の使用頻度というようなものが変って参りまするので、できるだけ新しい
調査をもとといたしまして、昭和三十三年の
稼働点数と三十年の社会医療
調査の一施設当りの点数の比率を乗じて伸ばしております。その他の衛生材料費、包帯とか、脱脂綿とかいうような全部のものでございますが、これは消費卸売物価指数の上昇率及び
患者数が増加いたしておりまするので、その
患者の増加率をそのままかけてございます。給食材料費は、消費者物価食料指数の上昇率及び一施設当りの
入院患者数の増加を乗じております。
第四番目の経費でございますが、これには光熱給水料
事務費、通信費、雑費というふうなものがあるわけでございますが、それぞれの料金の値上り率をかけました上に、さらに、比較的固定的な経費でありまするけれ
ども一
患者が伸びれば若干の伸びはあるはずだということで、
患者の増加率の三分の一を乗じて加算をいたしております。
被服費につきましては、被服費の上昇率と
患者の増加率そのまま及び職員の増加率の二分の一を加算いたしました。
会議費、図書費、旅費等は、雑費指数の上昇率及び従業者の増加率というものを加算をいたしたわけでございます。
修理費につきましては、その二分の一を材料費、残りを賃金といたしまして、そのおのおのの上昇率をかけまして、さらに、まあこの辺はだいぶ問題がありますが、
患者がたくさんになれば修理費もたくさんかかるであろうということを加味いたしまして加算をいたしてございます。
不動産賃借料、火災保険料、租税中、固定資産税あるいは法人税等の費目につきましては、そこに書いてあるような大体以上申し上げたような指数をそれぞれ適当な、そのものに適当な物価の上昇率を見まして推計をいたしておるのでございます。なお、徴収不能額いわゆる若干の焦げつきがあるわけでございますが、これにつきましても、二十七年の三月にその額を
調査をいたしてございますので、
稼働点数が伸びればそういうものも多くなるであろう、また、一部
負担も少し多くなりましたので、さような点を配慮いたしまして、これらの額の増加率を乗じてございます。借金の利子も、これに
稼働点数が多くなれば借金もふえるであろうということを前提にいたしまして、その増加率をかけておるのでございます。
最後に、減価償却費でございますが、これはいろいろなことで、いろいろな方面できまっておりまする耐用年数というものをそのまま使いますることはいかがかと存じまして、特に医学、医術の進歩に即応して、医療に
関係する器材、施設というようなものとしましては、耐用年数は長くございましても、新しいものがどんどん出て参りますので、さようなことを勘案いたしまして、そこに書いてございますように、
一般の医療器具機械等は十五年、それからエキス線装置、エレクトロというようなものにつきましては六年に短縮をいたして、ここで設備の陳腐化というようなものをも含めて更新し得るような配慮を加えたわけでございます。
かようにして一口に申せば、物価の値上りとそれから規模の拡大と両方とを加味いたしまして、あるべき姿の所要経費を推計いたしましたところ、十万百七十円と出たわけでございます。これで先ほど御
説明をいたしました全診療所院長平均の五万九千四百六十二円と、ただいまの十万百七十円とがこれが一診料所当りの平均
収入になるべきである、合計いたしますと、月十五万九千六百三十二円ということに相なるわけでございますが、これが平均
収入になるべきであるという金額を算定をいたしまして、現在の単価で計算いたしました十四万七千百二十五円というものに比較をいたしますると、八・五%程度の増加になるわけでございます。かような過程をとりまして、あるべき医療費の値段というものにつきまして、私
どもの
考えを現行の八・五%程度引き上げということに結論付けた次第でございます。これによりまして、いわゆる開業医の所得は、そこに書いてございますように、平均七万円弱ということになりまして、二十七年三月の当時の
世帯支出三万三千何がしと比べますと、およそ二・一倍の増ということに相なります。これは現在の所得というものとの比較ではございません。その当時の
世帯支出と比較いたしますと二・一倍の増ということになります。大体
一般勤労者の増加率が約六割ということでございまするので、これを大幅に上回る結果となりまして、いわゆる待遇の改善を所期し得るものと私
どもは
考えるわけでございます。
資料にありまする次の表は、ただいま申し上げましたことを各費目に分けまして金額に表示をいたしたものでございます。
その次の表はいろいろの指数を使いましたので、その指数の表を御参考までにつけましたわけでございます。
その次のこれは
個人立施設院長の生計費の推計の計算の過程を詳しく書いたものでございます。
さて以上のような経緯によりまして、現行の医療費というものは八・五%程度値上げをすべきであるという結論に達したわけでございまするが、しからば、この新しくふくれる増額分をいかにして払っていくかという点につきましては、これは大へんゲラ刷りでございまして恐縮でございますが、ページが一ページと打ってあるかと思います。そこに書いてあるわけでございます。この点数表の問題につきまして、私
どもの今回の案の
一般的な基礎となっておりまする点が
一般的事項というところに書いてございますが、まず、第一に甲表、乙表という二つの点数表を作りまして、保険
医療機関にいずれかを御選択を願うという案の中身になっております。もちろん御選択を願うということでございましても、きょうは甲表、あすは乙表ではこれは大へん繁雑になりまするので、一年間はお選びになったものを同じく続けていただくということに相なるわけでございます。
それから二番目に先ほど申し上げましたように、単価は甲地、乙地とも十円ということにいたしました。それから現行の甲地、乙地の地域差の問題でございますが、これは実は私
どもの希望といたしましては、廃止をいたしたいというふうに
考えておったわけでございますが、なかなか一時にさようなことをいたしまするにつきましては、相当な無理も生じまするので、その差を現在の八%あまりからおおむね五%程度に差を縮めるということに案の中身はなっております。そうしてその
方法といたしましては、そこに書いてございまするように、従来の申地にありました
医療機関につきましては療養担当地域手当ということにいたしまして、外来
患者については一カ月の診療件数一件につき三点、
入院患者につきましては入院日数一日につき三点を加算するという
方法によることにいたしたわけでございます。
さて、この甲表、乙表の中身の何と申しますか、要約したようなものがそこに例示とともに上っておりまするが、甲表、乙表とも御
承知の
通り、非常に膨大な点数表になるわけでございまして、その要約がそこに書いてあるわけでございますが、甲表と申しまするのは、私
どもはこの甲表のような点数表というものが望ましい姿であるというふうに
考えておるのでございます。それでこの甲表の中には、先ほど申しましたように、技術の尊重ということ、それから
事務の簡素化ということが相当程度加味されておるわけでございます。それで甲表は、この診療報酬を
基本診療料と特掲診療料とに大別をいたしました。
基本診療料におきましては、件数払い的な思想を若干加味いたしておりまして、初診時
基本診療料、再診時
基本診療料、入院時の
基本診療料というものを三つ設けたわけでございます。そうしてそれぞれの初診時、再診時あるいは入院時に普通多く行われるであろう
一般的な診察、投薬、簡単な検査、注射、処置、理学的療法、それから入院の場合にはいわゆる入院の
費用、そういうふうなものを一括して支払いをいたすことにいたしたわけでございます。しかしながら、医療の内容は非常に複雑多岐でございまして、これらの
基本診療料でとうてい解決し切らない多くの医療行為があるわけでございまするので、別に特掲診療料を掲げまして、それらの医療行為が行われた場合には、それらのものを加算して支払うということにいたしたわけでございます。特掲診療料につきましては、いろいろそのあとの方に書いてございまするように、いろいろな種類のものがたくさん掲げられるわけでございます。なお、この甲表におきましては、投薬、注射等がございました場合には、
事務の簡素化の観点から、従来個々に支払いをいたしておりました注射の手数料あるいは調剤の調剤手数料、あるいは従来入っておりました潜在技術料というふうなものは皆一括して
基本診療料としてお支払いをいたすことにいたしまして、薬剤そのものの
費用は
事務の簡素化の観点より、六十円未満の薬剤につきましては、平均単価で支払いをいたすということにいたしたわけでございます。従って、薬剤そのものの
費用は、別個に平均単価で支払いをいたすというわけに相なるわけでございます。各
基本診療料というものを設けますることによって、今の薬剤そのものの
費用を平均単価で支払いをいたしまするというこの二つのことによりまして、私
どものただいま手元にありまする資料から推算をいたしますると、請求
事務は従来に比しまして、投薬料
関係は九〇%以上、注射料
関係はおおむね八〇%以上、処置料
関係は八〇%以上がこの請求
事務の
事務的
負担が軽減されるものというふうに
考えております。なお、さようなわけ合いでございまするので、審査というようなことにつきましても、ほとんど審査の必要がないというふうなことに相なっているわけでございます。
次は、なお具体的には甲表、乙表の中身につきましては、そこにおもなものを書きあげてございまするので、これによって御
承知をお願いいたしたいと存じます。
つけ加えて申し上げておきますることは、この甲表におきましては、中央医療協議会の専門部会で各科の大先生がお集まりになりまして、手術の面につきましては、技術の難易差というものにつきまして御検討をいただいておりますが、最終的な結論ではございませんけれ
ども、一応中間的な御報告をちょうだいをいたしておりまするので、それによって手術の難易差というものを加味いたしております。
それから乙表の方でございますが、この方は甲表と違いまして、非常に現行の点数に近いものでございます。ただ違いまするところは、診療報酬総額の引き上げ分をもちまして、従来診療報酬が低額であった診察料、入院料、手術料、検査料のほぼ一割程度の引き上げを行うことといたしたのでございます。すなわち、増額分を医師の技術を伴いまする部面に配って参ったということにいたしたのでございます。従いまして、従来の点数表とあまり相違がございません。さらにこの
方法でいきますると、点数表の変更によって減収を来たすという
医療機関はないということに相なるわけでございます。みんなふえるけれ
ども、そのふえ方にほんのわずかな相違があるということでございます。
なお、この医療行為の相互のバランス、ことに手術等におきましては、従来の点数に表示されておりまするそのバランスをそのまま機械的に、そのバランスをとったままで、従来のものに一割増しとか何とかいう、ごく機械的な
やり方をいたしておるわけでございます。なお、この歯科の場合におきましても、大体このような方針で甲表、乙表ができておるわけでございますが、ただ歯科におきましては、若干歯科の特殊性がございまするので、その面が
一般の診療の方と異なっておるのでございます。
それから一番最後に調剤料のことでございますが、これは従来六円という、一日一剤分六円ということで、若干二十七年の
調査からいきましても低過ぎるところにきめてございましたので、これを八円ということに増額をいたすことにいたしております。大体この甲表、乙表の中身は域上の
通りでございまするけれ
ども、この表を両方併用いたしまして、
医療機関の御選択にまかせるという
態度をとりましたのは、理想と現実との調和をさような
方法で求めたというふうに申し上げたらいいかと存じます。甲表ばかりにそれが理屈として私
どもが望ましいと言いましても、現実の
医療機関で甲表にいくことはいかがであろうかというふうな
医療機関もたくさんあられると思いますので、現行の点数とあまり隔たりのない乙表というものを選択制としておいたと、かように私
どもは
考えておる次第でございます。一応少し長くなりましたが、御
説明を終らしていただきます。