運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1957-09-12 第26回国会 参議院 社会労働委員会 閉会後第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年九月十二日(木曜日)    午前十一時開会   —————————————   委員異動 本日委員片岡文重君、松永忠二君及び 占部秀男君辞任につき、その補欠とし て坂本昭君、木下友敬君及び森中守義 君を議長において指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     阿具根 登君    理事            勝俣  稔君            山本 經勝君    委員            草葉 隆圓君            紅露 みつ君            榊原  亨君            谷口弥三郎君            横山 フク君            木下 友敬君            坂本  昭君            藤田藤太郎君            森中 守義君            山下 義信君            田村 文吉君            竹中 恒夫君   国務大臣    厚 生 大 臣 堀木 鎌三君   説明員    文部省大学学術    局長      緒方 信一君    厚生政務次官  米田 吉盛君    厚生省社会局長 安田  巖君    厚生省保険局長 高田 正巳君    厚生省保険局医    療課長     館林 宣夫君    水産庁漁政部長 新澤  寧君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○社会保障制度に関する調査の件  (生活保護に関する件)  (広島厚生事業協会の経営する精神  病院に関する件)  (熊本県水俣市に発生した奇病に関  する件)  (社会保険医療費の一点当単価問題  に関する件)  (中共地区引揚者対策に関する件)   —————————————
  2. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 開会いたします。  委員異動を報告いたします。九月の十二日付をもって片岡文重君、占部秀男君、松永忠二君が辞任され、その補欠として、坂本昭君、森中守義君、木下友敬君が選任されました。   —————————————
  3. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 社会保障制度に関する調査の一環として、一般厚生問題に関する件を議題といたします。  生活保護に関する件を問題といたします。質疑を願います。
  4. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 厚生大臣は見えていないようですが、入院患者特別実態調査というものを最近おやりになっているようですけれども、この内容を見てみますと、非常に深く個人の私事まで入っておられるような気がするのです。たとえばこうあげてみますと、いろいろの問題が出て参ります。たとえば警察との協力の問題、または信書開封する—信書に対してまで厚生省監督行政を伸ばしていくというようなこと、こういういろいろの問題が出てくるのですけれども、このような調査はどういう意図でおやりになっておるか。それをまずお聞きしたいと思います。
  5. 米田吉盛

    説明員米田吉盛君) ただいま仰せになりましたような警察との協力と言いますか、それから信書秘密を侵すような調査、そういうこと自体目的としてはやっておりません。何かのこれは間違いだろうと思います。  入院患者特別実態調査をいたしたことは事実でございますが、これは被保護患者でございます。  御承知のように、被保護患者に対しては公けの国費を支給しておるわけでございます。われわれといたしましては、公けの国費が公正妥当に使われるということについて責任を持っておるわけでありまして、そういう意味から被保護世帯調査をいたしまして、その世帯状況に応じまして、一ヵ月に一ぺんあるいは三カ月に一ぺんと、その状況によりまして調査をいたして、処遇の適正を期すると、こういう考え調査をいたしております。入院患者につきましては、医療機関が、ある場合には遠隔の地にある場合が相当多うございまして、これに加えまして福祉事務所の手不足と、こういうこともありまして、今申しました一般の被保護世帯に比較して調査が行き届いておらないうらみがございます。これでは必要な指導であるとか、援助というようなことが、世帯人員の変動、収入増減等に応じた保護の適正な実施を確保しがたい。こういうような点から、患者の実情を的確に把握いたしまして、被保護世帯全般処遇適正化をはかる。こういうような考えで若干調査いたした事実はございます。
  6. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私がもらった……調べました調査表というものを見てみますと、その中にたとえば出身世帯知人等からの仕送り援助及び特殊郵便年金の受給の状況、こういうことを調査されるそうですが、これがやはり個人信書開封というような問題にまで発展をしていくと思うのです。で、小づかい、雑費の支出状況とかいろいろたくさんの項目がありますけれども、こういう郵便信書、そういうものを開封して事前に見なけりゃならぬということ、もう一つ突っ込んでいきますというと、たとえば扶助を受けている人が、友人から多少の援助、カンパなんというのが来るのです。そういうものまで全部差っ引いてしまう。非常に極端なやり方生活保護入院患者にはやっておられるように聞くのですけれども、そういう実態について一つお聞かせを願いたい。
  7. 米田吉盛

    説明員米田吉盛君) それでは政府委員から。
  8. 安田巖

    説明員安田巖君) 先ほど政務次官から御答弁申し上げた通りでございますが、被保護者につきましては、普通の場合は、大体その保護されております世帯状況によりまして、たとえば月に一ぺんは行っていろいろと打ち合せなり調べをするというようなこと、それから三月に一ぺんくらい回ってみるものもありますし、それから半年に一回くらい回ってみるものもございます。これは本来ならば毎月一回くらいは回ってみまして被保護世帯の生計の状況であるとか、稼働能力であるとか、あるいは本人のその後の環境の変化であるとか、あるいはまた、稼働能力がありまして就職先があるような場合にはそういったことについても指導をするというようなことをいたすことが、実は生活保護建前になっておるわけであります。しかし、まあ福祉事務所ケース・ワーカーが思うほどおりませんものですから、結局それを分けまして、先ほど申しましたような一月に一ぺんであるとか、三月に一ぺんであるとか、それから六ヵ月に一ぺんであるとかいうような大体の区分をいたしまして、各世帯を回っておるような現状でございます。ところが、入院患者につきましては、まあそういう点がどうもうまくいっていない、今までは。そこで毎年九月には各被保護世帯は全国に一斉に各戸に回るようなことをこの十年ばかりやっておるわけでございますけれども、その中で今度は入院患者につきましてもやはり同様な調査をするということでございまして、他に意図はないわけであります。そこで、まあ一月や二月入院したものを私どもの方で一々調べに行くということではないのでありますけれども、中には二年になる、三年になる、四年になるようなことがありますから、そういったような方々に対しましてはいろいろと本人にお会いできるならばお会いして、そうして仕送り状況であるとか、あるいは本人の収支の状況であるとか、あるいはまた、病院の場合には一部負担もございますから、一部負担が多いのであるか、少いのであるかというようなことも行ってよく調べて、多い場合にはそれを減らさなきゃならぬ。少い場合にはそれを増すと、こういったようなことをやるわけでありまして、そこで一般世帯におきましても、本人収入があるかどうか、あるいは他からの仕送りがどうであるとか、あるいは扶養の義務の関係がどうであるとかというようなことは一般世帯についても現在調べておりますから、やはり入院患者につきましてもそういうことを調べるという趣旨でありまして、決してそれを他の方法によって信書秘密を害するとか、そういったような方法調べるという趣旨では毛頭ない。本人から、そういうことを調べる。こういうことは一般世帯と同じであっていいんじゃないか、こういうふうな趣旨でございます。
  9. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 それでは信書秘密を、勝手に開封するというようなことではやっておられないわけですね。
  10. 安田巖

    説明員安田巖君) そういうことは、これは毛頭やってはいけないことでございますし、それからこれは法律上もできないことなのでございますから、そういうことはやらない。特に私ども通牒といたしましても、調査上の注意事項として、そういう基本的人権を侵害しないように、あるいは患者心理を十分しんしゃくして、調査態度であるとか、言葉について懇切丁寧にしろ。こういうことを私ども指示をいたしておりますし、それからまた、県でそういうケース・ワーカーを集めました機会には、調査を始めるときには十分そういうことを注意しておるような次第でございます。
  11. 坂本昭

    坂本昭君 生活保護法建前の上から言って、国費をもって保護をしているのですから、その実施が適正であるかどうかということを事務的に検討するということは、これは私はけっこうなことだと思うのです。それについては何もあえて反対申し上げようとは思いません。しかし、先ほど次官は、処遇適正化ということを言っておられましたけれども、結果的には、今局長信書を開いて見たり、あるいは警察官を同行してやるということが、決してそれが目的ではないので、そのような行き過ぎはさせないようにしていると言うけれども、実際の現状では、検査に行く人は病室に入って、あるいは床頭台をあけたり、あるいはその中にどういうものが入っているか。あるいは病院の当事者のところに行って書留の手紙がいつ来ているか。月に何べんくらい来ているか。そういうようなことを実際にやっているのであります。そして、その結果どうなるかといいますと、だんだんと生活保護引き締めという形で、たとえば一般病院には結核の室床がどんどんできておる。空床ができておるということは、患者が減ったということではなくて、そういう生活保護引き締めが強く行われる結果としてできておるのであって、なるほど先ほど次官並びに局長説明のように、処遇適正化事務的に見ていくということ、それ自身はいいのだけれども、名目はそうだけれども、実際にはそういうふうになっていない。むしろ生活保護法対象となる貧困な人たちが、かえってそのために生活の自由を奪われて、非常な不幸な目に転落をしている。  私はそれについて一つ次官にお尋ねしたいのですが、次官厚生行政を担当せられてからあまり長くないので、どういうようなお考えを持っておられるかわかりませんが、私が最近の厚生行政を見てみますと、これはもう政治じゃないと思うのです。きわめて事務的な処理、何といいますか、非常に事務的な傾向が強くなってしまって、政治としての本質が失われているような、そういう感じがするのです。これはたまたま今度の問題も、われわれとして非常に大事なことは、処遇適正化事務的に正しく行われておるかどうかということよりも、日本の困窮した生活保護を受けなければいけない人たちが、実際に正しく、その生活が守られているかどうか、そういう点を私は正しく検査し、そしてその結果に基いて政府としては施策を強化していく必要があるのじゃないか。それについての一つ次官のお考えをお聞きいたしたいと思います。
  12. 米田吉盛

    説明員米田吉盛君) ごもっともお話しでございまして、ただ先ほど申しますように、坂本委員もお認め下さっているように、公けの費用を使いますものとしましては、その使い方が乱費に流れないということの一面も、責任を非常に強く感じておるわけでございます。同時に、今仰せになりましたように、同じ国民の中で生活困窮している人に心の通った気持でやっていく。この両面が実は必要だと存じます。調査をいたしまするのは、あくまでもその両面考えてのことでございます。血の通った、非常に困窮しておられて従来のでは工合が悪いとか、何か道を考えなければならぬというような場合には、できるだけのことは法の許す限りにおいてやる。同時に、たくさんの中には必ずしもそれほど窮していないが、まあまあというようなことで、従来もらっておったのだから、まあもう一カ月、二ヵ月と心ならずも引きずられておられる方があってはならぬ。こういうような気持両面からやっております。私は将来とも、この両面をやはりやっていかなければならぬのだと実は考えておるのでございます。
  13. 坂本昭

    坂本昭君 次官のお言葉は、その言葉そのものを聞いていますと、それはなるほどもっとものように聞えるのです。なるほど国費をつぎ込んでいるんですから、われわれはそれに対して責任を持って厳格に追及しなければならない。そのために誤まった処遇を受けている人があれば、そういう人たちは直していかなければならない。その言葉そのものはけっこうですけれども、もう少し大きい目で見れば、たとえばこのたび総理が三悪追放ということを言っておられますが、あの中での汚職の追放、暴力の追放、そういう面を皆さん方は一体どこまでやっておられますか。実は厚生行政の面では非常にこまかいところまで根掘り葉掘り重箱のすみをつつくようにぴしぴしやっておって——これはけっこうだと思うのですよ。だから、社会局長が使命に熱心である点は、それは私はある程度認めます。しかし、政府施策としてはやはりバランスを持っておらなければいかぬと思うのです。同じように国費がたとえば建設面に、あるいはいろいろな補助の面に使われているならば、それに対しても同じような厳重さをもって追及してもらわなければならない。ところが、そういう面はどうも比較的薄いのじゃないかと私は思う。ところが、この生活保護対象となっている、現実に一番困窮な人に対しては、一つ事務基準のものさしで実にぴしゃぴしゃと押えている。私はこのことについても、次官を通して政府基本的なお考えを聞きたいと思う。私はこういう点はむしろゆるめて——たとえば去年までは生活保護患者さんの対象を百八十万にしておったのを、今年は百五十万にずっと減らしてきている。そうして皆さん方は、神武景気だから生活困窮者が減ってきているというわけで、対象の方もずっと落してきている。ところが、実際は神武景気は去ったというのが一般の声であります。そうしておいて、相変らずこういうことを、実態調査の名にかりて引き締めをやっておられる。そうしてそのあげくは警察官も入っていったり、あるいは信書を開いたりする。そういうことで結局一番弱い者は—強い者はこういう調査を受けたって平気なんですけれども、弱い者にはやはり非常にこたえるのですよ。だから、同じような事務適正化といっても、強いところに弱いと、弱いところに弱いでは非常に違うのです。そうして事務を扱う人間としては、それは常に同じ厳格さで臨まなければいかぬでしょう。しかし、政治をやるものとしては、弱いところに対しても同じような格好で臨むということは、これは私は正しい態度じゃないと思うのです。そういう点で、私は次官言葉そのものはいいのですよ、しかし、与党の、政府考えておられるこの今の厚生行政というものが基本的には私はその点で間違っているのじゃないか。その結果、こういう実態調査実態調査にならなくて、結局引き締めになっているということですね。私はそれに対して、引き締めに決してなっていないと言われるならば、なっていないという証拠一つ見せていただきたいのです。
  14. 米田吉盛

    説明員米田吉盛君) 証拠を見せろと言われましても、今そういうつもりで用意してきておりませんから、その点は後刻に譲らしていただきたいと思います。  私たち基本考えといたしましては、先刻申しましたような言葉そのものが、言葉だけじゃなしに、われわれの心持ちでございます。ただこの際御理解願いたいと思いますことは、最近の生活困窮者の大部分は、それほどの方はおられませんけれども、中には特殊の考え方から、まあ、あぐらをかいて取り上げるのだ、ひょっとしたらそうじゃないかとわれわれが疑うような気持の方も若干あるやに聞いておるわけなんです。これは何と言いましても、公けの費用ですから、なるべく困っている人から先に援助をいたしたい。同じ困っている人の中でも度合の多い人、それから心情のそれほど横着でない人、まあ言葉なき弱い人、こういう気持が私は気持の中にありますので、できるだけそういう考え方でやっておるのでございます。  それから一面また、そういうような強い気持の人がごく小部分かりにあるといたしましても、その人をにらみつけてその人だけを押えつけるというような気持からこういうことはとるべきものではございませんし、やってもおりません。二、三例があるようなお話しでございますが、厚生省としましては、局長が先ほど申しましたように、相当厳重な通牒を出しますし、それから地区の係長は地区ごとに呼びまして、信書秘密を侵してはならぬとか、行き過ぎてはいけないというような厚生省の方針を克明に指導いたしました上でこれはやらしておることでございまして、まあ万一そういうような点に行き過ぎのものがございますれば、将来は十分われわれの方としても改めさせたい、こういう気持でございます。
  15. 坂本昭

    坂本昭君 お言葉を返すようでございますけれども、今の行き過ぎないように克明に説明しておるということは確かな事実なのでございましょうか。あるいは文書をもってそういう通達をはっきりと示しておられましょうか、一つお確かめ願いたい。
  16. 安田巖

    説明員安田巖君) 今度の調査通牒の中にそういったような調査上の注意事項といたしまして、基本的人権を侵害しないように厳に注意するということと、患者心理を十分しんしゃくして、調査態度言語等について懇切丁寧を旨とすること。面接調査患者病状とか、安静時間を十分考慮し、出身世帯近況等も十分に連絡し、必要な指導、激励を行うこと。病状調査は主治医の意見に基き慎重に行うことというふうに、まだありますけれども、非常にそういった点はこまかい注意をいたしております。なおまた、県が今度はさらに呼んでただいま政務次官から申しましたような注意をいたしておるわけでございます。  それから立ちましたついでに、先ほどの坂本委員の御質問に対してお答え申し上げる次第でありますが、まあ生活保護が御承知のように、医療扶助生活保護の中の一つの種類でございますけれども一つ最低生活基準というものを設けておりますと、それにどんな人も皆一応合うようなやり方をしたい。甲の人には非常に寛大に、乙の人には非常に厳格にやるというふうなことはやはりわれわれとしては避けなければならない。これがまあ生活保護の唯一の建前でございますから、そこで今いろいろおあげになりましたような問題—個々のケースについて見ますというと、まあわれわれといたしましても、できるだけ寛大に取り扱うということはございますけれども、しかし、調べてみまして、そこに違った点が出てくるならば、それはやはり是正しなければならない。逆にまた、この一部負担等につきましても、いろいろ周囲の状況調べてみるというと、これじゃ一部負担をかけ過ぎじゃないかというようなことがありました場合には、さらにこれを今度は減らすというような処置をしなければならぬ。それからなおまた、もう退院の間近のような人につきましては、退院後の落ちつき先はどういうふうになっておるかということも調べなければなりませんし、自立更生についてどういうような希望を持っておるかということにつきましても、やはり調べていきたいと、こういうふうに考えておるわけでございます。  気の毒なという点になりますと、よく問題になります遺族年金をもらった人の差引の問題であるとかあるいは未亡人世帯高等学校へ子供が行きました場合のそういう世帯保護を打ち切るといったような問題、ほかにもいろいろあるわけでございますが、それらを通じまして、同じような態度で公平にやっていきたい。感情的にはいろいろ問題があるかもしれませんけれども、そこを一つ理屈の上で割り切って適正にやっていきたいということでございます。それから警察官を連れて行くというような指示をいたしたこともございませんし、また、そういうことをいたすはずもないのでありますが、なおまた、これは私どもの方は生活保護の規定によりまして、患者の被保護者生活調査をするとか、生活指導をするということが書いてありますが、同時にまた、資力その他について立ち入りをして調査をすることができるということになっております。しかし、これは本人が拒みますならばそれを拒んだのをあえてやろうというつもりはありませんから、そういった場合は警察官を連れて行かなきゃならぬというようなことは毛頭ないわけでございます。もし本人がそういうことについて全然調査に応じなければ、今度は保護の打ち切りであるとか、廃止であるとかいう措置がとれることになっておりますから、そう無理をしてまでやらなきゃならぬということは毛頭ございません。そういうわけで、警察を連れて行くということは私どもの常識から申しますというと、少し不可解な感じがいたしますが、そういう点につきましても十分取り調べてみたいと思っております。
  17. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 この調査要綱の中の調査協力機関として、労働基準局社会保険出張所警察署出入国管理事務所、保健所というようなのがあがっているのですが、警察にはどういう協力関係があるのですか。
  18. 安田巖

    説明員安田巖君) それははなはだ申しにくいのでありますけれども外国人調査の場合に、本人の身辺が危険であるといったような状況がしばしは最近まであったわけであります。そういう場合にあらかじめ警察に連絡をとっておくということが、調査員生命とか身体の危険ということについて必要な場合が過去にありましたので、そういうふうなことが入ったのだと思います。
  19. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 これは今の協力機関警察というのはそういうことですか。常時一般的に今警察調査に関与するような状態の危険というものを感じるところがあるのだが、今のお話しですと、過去にいろいろトラブルがあって、そういうトラブルのような状態が起きた場合にのみ警察協力を求める。こういうことですか。
  20. 安田巖

    説明員安田巖君) そういうことでございます。もう警察調査を依頼するというようなことももちろんございませんし、そういうことをいたしましても正確な調査ができるわけじゃありません。むしろこの調査員生命身体に危険を感ずるというようなことが過去にしばしばあったということが、そういうふうな通牒になったと思っております。
  21. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 その例をちょっと話して下さい、今の例を。
  22. 安田巖

    説明員安田巖君) これはもう例は幾らでもあげることができるのでございまして、たとえば東京でございますというと、あそこの枝川町でございますとか、あるいは京都におけるところのうどろ部落ですか、あるいは川崎でも、いろいろそういったような事件がございまして、調査員がなぐられたりいろんなことをしたことがございます。そういったことがありましたので書いたので、別に他意はございません。
  23. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 その調査対象になっているたとえば入院患者立場からすると、今度の調査というのが、たとえば信書開封がないと言われますけれども、実際に群馬、奈良、岡山でそれが実施されている。そういうことは厚生省通達を出したということを言われますけれども、実際にそういう通達を、信書やその他にさわってはいけないという重ねて通達を出したのかどうか、こういう問題が出てくる。そこで、今度の調査そのもの自体患者が、要するに扶養を受けておる人の立場から見ると、いかにも全部不正であって、不正というものが常時行われているような認識のもとに調査にかかっておられるという印象が強い。それでいろいろ要綱がありますけれども、単に警察署というような格好で、そういう立場からそこに行き過ぎや間違いが起きているように私たちは聞いているのです。だから、先ほど次官局長からのお話しとは大分違うようなんだから、特別な私はこれは配慮をしていただかないと非常に不安感を持たす、それからトラブルが起きてくる危険を今持っておると思うのです。  それから、もう一つは、私は聞いておきたいのだが、たとえば生活保護を受けて入院している人が、友人から、お見舞いに来たからといって幾らかの金をもらったような場合は、あの六百円の扶助料から全部引くという格好にやられているところもあるようなんです。そこで、どういう限度においてこういうものを差し引くということをされているのかどうか。これが第一点。  それからもう一つの問題は、信書開封とかそういうものに立ち入らないと言われますけれども、厳密にこの要綱の中の非常に大きな項目で、兄弟や知人、友人からの送金に対する調査ということが書かれているわけです。そうしますと、どういう工合にしてその送金やもらった金を調査されるか。本人の申告というものを本位にされているのか。何らか警察式に調べる手を持っているのか。もう一つ行き過ぎれば、信書開封とか見舞客の関係その他のこういうものが出てくる。それが高じてくれば、岡山、奈良、群馬でやられているような問題が私は発展して、これは非常に注意してもらわなければなければいかぬ。そういうような具体的な取り扱い方についてちょっとお聞かせを願いたいと思う。
  24. 安田巖

    説明員安田巖君) お答えいたします。  最初の、友人等の送ってくれました金品でございますけれども、これは言葉が悪いのでありますが、私どもは慈恵的な贈与というようなことを言っておりまするが、臨時的なもので少額であれば、そういうことを一々問題にする必要はございません。しかし、それが経常的に入ってくるということがあれば、それを一つ収入と見るというのが保護の原則になっております。  それからいろいろ調査事項についてお話がございましたけれども、これは一般の被保護世帯に行きました場合には、この点についてこまかく調べております。それが、ただ入院患者でありますために、患者に手が回らなかったというだけでありまして、入院患者であるから特別の調査をするとか、きつい調査をするということではないのでありまして、むしろ入院患者に対する調査というものはその点は非常に軽くなっているというくらいでありまして、たとえば他からの仕送りであるとか、郵便年金等というものは、ほかの世帯でありますれば当然調べておるのであります。それは本人に聞きますとかあるいは隣近所からの聞き込みもありますが、普通は本人から聞くことが第一でございます。  それから先ほどから労働基準局とか保険官署というのが協力機関にあるとおっしゃいましたが、これはやはり保険なんかから金が出ていることがしばしばあるのでございます。本人がそれをなるべく隠そう隠そうとしておるけれども、そっちを調べてみればよくわかる。たとえば基準局から労災関係の保険金が出ているということがございます。それを黙って生活保護をそのまま受けているということは、生活保護建前からいっていけないことなんでございます。外国の例から言いますと、調査なんかやらないでも、せいぜいそういった間違いのあった場合は、それをどしどし告発して刊事事件にまでしている。しかし、われわれの方の場合は、今までそういうふうなことをした例はないのでございまして、もし見つかったならば、その後そういったようなものが減らされるということだけで、本来ならばそういう間違ったことをすれば刑までも受けるというぐらいにして、そうして平素の調べをなるべく省略する方がいいのではないかというような気持もございますが、そういった趣旨で、やはりあるものはあるということで出してもらいたい、こういうふうに私どもは思うのであります。それを逆に、われわれがこういう調査をするということになりますと、これは私、そういうことがあるかどうか知りませんけれども、一部の団体等で、そういったようなことが事前にあるというと、たとえば外泊なんかすることを差し控えろとかあるいはそういった目ぼしい品物を隠しておけというふうなことを言われることになりますと、なるほどそういったようなことがあるのだなあということを私どもとしてはまた逆に感ずることがございます。そういうふうなことでございますから、われわれの態度といたしましては、できるだけ家際のことをつかみたい、そしてわれわれの手でもって適当な措置ができるものなら、なるべく適当な措置をいたしたいというような気持で実は仕事をいたしておるわけでございます。
  25. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 この問題はほかの委員の方にも質問があるようでありますから、私はこれで打ち切りますが、一つ聞いておきたいのは、生活保護医療扶助の申請をしてから大体認定をされるまで幾日ぐらいかかっておりますか。
  26. 安田巖

    説明員安田巖君) これは御承知のように、急ぎの場合には、先にそういった資料を受けまして、あとで手続をするということもございます。それから多くの場合は、慢性疾患が多うございますから、そういったような場合には、これは医師が初診券を出しまして、医師にそれを見てもらって、その場合の初診券は医師が本人につきまして病状を見て判断をするということのほかに、一種の見積りがあるわけでございます。そうしてこの病気については何カ月くらいかかって、どのくらいの薬を使ってどのくらいかかるかという見積りをしてもらってその額を見まして、そうしてこれが本人負担できるかどうか、あるいはこれは一部、五十円なら五千円負担できる、あるいは二千円負担できるという調査をして、その上で決定するということになりますので、やはり長い場合には一ヵ月くらいかかる場合もあるかと思いますが、そういった場合にもさかのぼってやるようにいたしております。今全国平均が何日だということはこれは覚えておりませんが、そういうふうなやり方をいたしております。
  27. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 たとえば、この新聞を見せますが、手おくれで死んで三日後に医療の認可を得たという、京都で社会問題を起しているのです。こういう実態はお知りですか。だから私は今の日数をお聞きしたわけです。で、死んだ人の友だちが寝台の横に本人を置いて看護したけれども、下りぬものだからどうにもならない。死んだものだからあとから認可がきた。こういう実態で、これは京都の新聞ですが、こういう一面で大きく取り扱っている事件があるのです。私はやっぱりこういう問題が新聞に出る出ぬは別として、やっぱり保護を与えて上げなければいかぬ人が—こういう実態というのはほかにも私は例があると思うのです。だから非常に私は重大な問題で、今のなるほど局長のお話を聞いていると、適切な処置が講じられているように思うけれども実際の面ではこういう問題が出てきている。だから、こういうところについて、私はもっともっと積極的でなければならぬという感じがいたします。お気の毒だという工合に考えている。この点は特に一つもう一段と注意をしてやってもらいたい。これだけを特に申し上げます。
  28. 坂本昭

    坂本昭君 今の藤田委員の指摘された点に若干関連しますが、なるほど一部には次官の先ほどの御説明のように、不正な人もあるかもしれません。かもしれないけれども、大部分の人は実際に私は困窮していると思うのですね。そしてその一番いい証拠は、医療扶助対象になっている八割程度は多分結核だろうと思うのです。そしてもう一面、今日、結核病院あるいは療養所の空ベット——空床が特に去年あたりからふえてきている。もちろん新しい病床の増加もあるでしょうけれども、実際保健所の調査などでは、患者はかなりちまたにおるんです。ですけれども、入院することができない。つまり生活保護の適用が十分でない。まあもう少し生活保護の幅を広げて、いわゆるわれわれがボーダー・ラインと呼んでいる人たちを含めるところまでやらなければ、ほんとうに国民の窮迫した生活を守ることができないだろう、そういう点で私は生活保護が政策的に適切にいっているとはどうしても思えないのです。そういう証拠を後ほどお出しになるということですけれども、一番大きな結核問題一つつかまえたって空床問題ということは、生活保護が適切に行われていない一つの大きな事実である。そういう大きな事実をほっぽらかして、中に一部あぐらをかいている人がいる、不正をやっている人がいると言って、小さいところをびしびしやるのは、これは事務をやる人、役人にまかしておいていいが、少くとも政治をあずかる人としては大きな怠慢だと私は思う。そういう点を、先ほどから繰り返して次官にもっとはっきりした決意を見せていただきたいということは、来年度の国民皆保険への一歩として、新聞に発表されたところを見ますと、生活保護による入院基準ですね、たとえば手術をする患者に限定をするとか、また、今までどんどん引き締めてきてるんですね。私はこういう、これは決定になったかどうか知りませんが、こういうことからみますと、決して政府は国民生活を守るために一生懸命でなく、むしろそれよりもなるべくこういうことに費用を使いたくない。そのためにはもっと引き締めてやかましく言ってそして基本的人権を侵さぬような指示を与えて調査をしていると言いながら、結局検査を受ける側としてはもう恐ろしくなってしまって生活保護も受けない。受けなければだんだん予算は減っていきます。それが政府目的じゃないのかとさえ私は思われて、これはどうも岸内閣としてはなはだ遺憾にたえないと思って私は御忠告申し上げるのですが、今の特に結核問題に関連して、次官がこの生活保護の問題についてどういうふうにお考えになっているか、それと今の実態調査をどういうふうに結びつけておられるか、その一点だけお伺いして私の質問を終ります。
  29. 米田吉盛

    説明員米田吉盛君) 結核対策につきましては、いずれ予算のときに御協力を願わなきゃなりませんが、相当の考え方をもって予算を組みまして居宅ベットというようなものも力を入れるというようなことで、大体結核全体が厚生省といたしましては、まあ頂点が過ぎつつあるんじゃないか、幾らか下り坂にあるんじゃないかという希望で、それにさらに追い打ちをかけてうんと加速度にこれをなくしていく、こういう考えで結核全体については取り組んでおります。いずれこれは予算のときに御尽力を願わなきゃならぬと思うのであります。  それからあとの手術する者でなければ入院はささないのだというようなことは、私取りきめたおぼえはまだないんでございますが、新聞にそういうようなことが載っておったかどうか、私も実はよく知らないんでございますが、要は全体的に被保護者であるとないとにかかわらず、全体的に一つこの際追い打ちをかけて結核をなくしていこう、こういう考えでおることですね。で、幸いにベッドもあちこちとあきつつあると、今あなたの仰せでは引き締めた結果、これはあいたんで、病気がなくなったために減ったんじゃないようなお話もございましたが、厚生省としては幾らかまあ頭打ちに病気がなった、そこでさらに追い打ちをかけてこれを撲滅するんだ、こういう意気込みで実はやっております。全般的にそういう考えでおりますので、手術をする者でなければ入院ささぬというほど厳格に考えておらないと思います。全般としては仰せのように、まあ同じ同胞で非常にお困りになってるような方については、先ほど申しましたように、一面においては乱費に流れないように、ここらを乱費の気持でいいかげんにやりますとごそっと一ぺんに費用がふえてしまいます。そこらは厳にしつつも、一面においては先ほど申しますように、ほんとうにお困りの度合いの激しい方からできるだけめんどうを見なきゃならない、こういう気持でおることは、私自身も非常に実は苦労しまして、若いときにどん底の生活もいたしております。私自身としてはそういう考えで下僚を督励していきたい、こういう考えでおります。どうぞ一つ御了承をお願いいたします。
  30. 坂本昭

    坂本昭君 質問終りたいと思ったんですけれども、今結核の空床について次官重大な発言をされましたので、今の空床が実質的に結核の患者数の減ったことによって室床ができてきておるというふうな御説明で、私と根本的に違うのですが、これは一つ数字をもってぜひお示しいただきたいと思うのです。もしそういうような次官の根拠が成立するとなれば、特に、生活保護医療扶助対象になるほとんどすべての者は結核である、そしてその結核は減ってない、これを守るためにはむしろ生活保護のワクを広げなければならぬ、なるほど結核対策は今度国費負担がふえるということについて私たち協力を惜しみません。これは全面的に協力いたします。いたしますが、そのときに患者の数をどういうふうに認定するか、今のような次官考えではずっと減ってきておる、そうすると、医療扶助対象もまたずっと減ってくることになれば、いよいよこれは生活保護というものが来年度において政策的に貧困化すると言わざるを得ない、これは非常に重大なことです。次官がかつて貧困などん底の生活をされたと言うならば、なおのことこれは慎重に検討されて、はっきりした計数の上に立って、生活保護対策と結核対策とはこれはもう全く一体であります。その点十分認識せられてやっていただきたい。特に数的な根拠は正確なもので一つお示しいただきたいと思います。
  31. 米田吉盛

    説明員米田吉盛君) 承知いたしました。
  32. 木下友敬

    木下友敬君 話がちょっと変りますが、今生活保護の出先、たとえば福祉事務所で一番困っている問題は、第三国人の問題だろうと思うのです。これは御承知でもございましょうが、最初生活保護を申請するときから、所によっては大勢見えてしゃにむに許可を得るというような事態が方々にありますが、それで調査要綱の中にも外国人調査には二人行けということが書いてございます。これは将来といえどもこの問題はなかなか困難な問題だと思いますが、なおかつ一方では、生活保護を受けておる人員あるいは経費の面を見ますと、第一、三国人の密集しておる地域では、生活保護を受けておるのが三国人の占める位置は非常に多い、パーセンテージが多いという事実があるのです。これは非常に将来よく考えていただかんければならない問題だと思うのですが、一体二十五年に生活保護法が制定されまして以来、外国人保護のパーセンテージその他将来、これからの見通し等についてはどういうお考えを持っておられるか、外国人生活保護に対する政策を一つ説明していただきたい。
  33. 安田巖

    説明員安田巖君) 外国人困窮者に対する生活保護関係でございますが、まあ主として朝鮮人が一番多いわけでございますが、それは講和条約が発効いたしましてあとは外国人となったということで、生活保護法建前から申しますと、それがそのまま適用されるということはないのでございます。しかし、当時の模様及び今日に至りましてもそういう点は同じでありますけれども、いろいろの関係からやはりそれを日本人に準じた取扱いというふうなやり方を現在までいたしておるのでございます。そこで、その朝鮮人の保護についての足どりでありますけれども、昭和二十六年の八月は保護人員が五万九千九百六十八人でございます。それから二十七年の九月には七万四千九百十一人になっております。それから二十八年九月には九万七千八百三十七人。それから二十九年九月の十二万三千八百九十人。それから三十年九月の十三万七千八百九十人。これは昭和二十六年八月の最初の数字をかりに百%といたしました比率で申しますというと、昭和三十年の九月には二二九ということになりますから、二・二九倍になっているということ、その後私どもの方でいろいろ先ほど申し上げましたような努力をいたしまして、三十一年の九月には十万二千二百五十三人に減っておるわけであります。この数字を日本人の場合と比較いたしますというと、日本人の場合は千人当りで一八・九人が保護を受けておるのでありますが、朝鮮人の場合は千人当りが一七四人、これは最近減少いたしましても一七四人という保護率を示しておるわけであります。この問題はいろいろ複雑な問題がございまして、今すぐどうということは根本的には私どもの力の及ばないところでございますけれども、やはり日本人に準じてやるという考え方でいくといたしますならば、やはり日本人と同様にその保護の運営につきまして、適用につきましては適正を期していく、こういうふうな態度で今後もやって参りたいと思います。
  34. 木下友敬

    木下友敬君 これは法律の一番初めを見ますと、生活保護法はこれは日本国民に限られておる。敗戦を契機として外国人もそれに準じておりますが、準じている基礎は、基礎になっている法律あるいは省令とか、そういうものを一つ示していただきたいと思います。どういう基礎によって外国人も日本人として扱っているか。
  35. 安田巖

    説明員安田巖君) 大へんその点私どもにとっては実は痛い質問なんでおりますけれども、法律上ではなくて、一つの行政上の取扱いとして実はやっておるわけであります。
  36. 木下友敬

    木下友敬君 それは私はとんでもないことであると思うのです。これは法律の一番初めに日本国民というのが書いてあって、その日本国民というのは日本で生まれたか、日本に帰化した者か、この二つしかないわけです。それを法律の一番初めに規定してある、法律の第一条をふいにしておいて行政上の措置でそれをやっていくということは、私は納得がいかない。そういうルーズな半面においては先ほど来委員の方々が言われたように内地人に対して、これは外国人を含めてもおりましょうけれども、非常なしわ寄せをしていじめておるといってもいいくらいなやり方をしておる。これは私は責任があると思うのですが、どうですか。どういう根拠でということをはっきりしないで、そういうことをやって、多額の金を使う。あなたは生活保護では国の費用を使っておるのだから非常な精密な調査もして、責任を全うしたいとおっしゃるけれども、そうではない。公々然とあなたの方でお出しになった通牒などを見ますと、特に外国人に対する調査要綱というようなものも出しておられる。いやしくも一つ厚生省というようなものが要綱として通牒をお出しになるときに、法律によらないそういうものでお出しになるということは、それは無責任もはなはだしいと思うのです。これは次官、どういう考えですか。
  37. 米田吉盛

    説明員米田吉盛君) 私もこういうことがあるということは実は今初めて知りました。十分これは調査いたしまして、後刻またあらためて御回答いたしたいと思います。
  38. 木下友敬

    木下友敬君 そういうことは、もうこれは政治あるいは行政の基本的なことをほったらかしておいて、あなた方がやっておるのはいつも末端の小さいことばかりです。さっきも重箱のすみをほじるという言葉を言っておられた方がございましたが、こまかなことばっかりやっておって、そういう基礎的なことを、これは大臣とか次官とかが一番初めに気をつけなければならぬことであると思うのですが、おそらく行政の第一線におられる方は小さなことばかりやっておられるでありましょうけれども、総元締めの方は、国の法律できめておることを守っていくということをまず第一にやってもらわなければならない。これはぜひ私は責任をもって明らかにしてもらいたい。今までそういうようなずるずるべったりでやられておったとすれば、今日私の発言を契機として、外国人生活保護の中に入れているりっぱな基礎的な法律を作るなりしてはっきりとやってもらいたい。こう思う。  なおかつ、私はこの際考えまするのは、日韓の交渉なども非常に行き詰まっております。日本はこのように、第三国人に向っても日本人と同様の取り扱いをするような親切、人道上の立場に立ってやっておるにもかかわらず、日韓交渉はいずれに責任があるにしても、これは順調には進んでいない。私はこういうものを順調に進める一つ方法としても、日本はこれだけのことをしているということをはっきりすることが必要だと思う。それは一つ考え方としては、法律に従っていくならば、生活保護法が日本国民に限るということになっておるならば、第三国人の場合については別途の法律で第三国人についての法律を制定することも必要だ。そうすると、たとえばはっきりいえば、韓国人については日本はこういうやり方をしてやるのだ、たとえば大村でやっているような一つのワクを作ってこういう性格でやっているというようなことを国の内外にはっきりさすということが必要だと思う。この点についてのお考え一つ承わりたいと思う。
  39. 米田吉盛

    説明員米田吉盛君) 大きな問題でございますから、省に帰りまして十分研究調査をいたしまして、まじめな御回答をいたしたい。この場で自分の直観を申し上げるということははなはだ失礼でございますから、十分慎重にこれはやりたいと思います。同時に、効果のある考え方をいたしたいと、かように存じます。
  40. 木下友敬

    木下友敬君 非常にまじめな御答弁で私は満足します。どうか政務次官として責任のある態度をとって、この問題をはっきりさしていただくことを重ねて要望しまして、私の質問を打ち切ります。
  41. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 本問題に対する本日の調査は、この程度にいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  42. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 御異議ないと認めます。   —————————————
  43. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 次に、広島厚生事業協会経営の精神病院に関する件を問題といたします。質疑を願います。
  44. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 これは厚生者はどこの担当であるかわかりませんが、次官にまずお聞きしてみたいと思うのです。  この広島の精神病院というのは非常に問題のある病院でございまして、草葉先生が今お見えになりませんが、草葉先生が大臣のときに、この病院の経営について改善命令が出され、むろんそれに並行して県からも改善命令が出て、そうして漸次よくなっておるのですけれども、何といいましても井上武一さん及び一族と今日の福祉事業団としての今の運営全体との関係のくされ縁と言いますか、そういうものがどうもはっきりしない。それからその中における医者の中にも、井上さん、むろん出発は井上さんだったのですけれども、その部下がいてあらゆる面を支配されて、そこで働いている方々との間にまたまた問題を起して、そういう問題が続いているというふうに聞くわけです。一つ現状はどうなっているかということの御報告をお願いしたい。
  45. 米田吉盛

    説明員米田吉盛君) 社会局の所管でございますから、社会局長から御答弁いたします。
  46. 安田巖

    説明員安田巖君) お答え申し上げます。私どもの方で改善命令を出しましたことは御指摘の通りでございまして、そのうち定員の厳守でありますとか、あるいは治療を要しない者の収容の停止、経理の適正化等についてはすでに実施されておるわけでございます。それから敷地の所有権の明確化でありますとか、あるいは昭和二十七年の決算書類につきましては、関係書類が検察庁に押収されておりまして、いまだに返ってこない状況でございまして、その点でなお若干の猶予をいただきたいと思っております。  それからそのほか理事の一人にこの事件に関係のある人がおるわけでありますが、御承知かと思いますけれども、井上理事長は先般なくなられましたので、あとに一人だけそういう関係の方がございますが、これはまあ社会福祉事業法三十四条の規定の精神にはあまり沿わないのじゃないかと思いまして、私どもそういったような点について善処をさらにされるように要望したわけであります。
  47. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私もことしだったと思うのですけれども、あの病院を視察に参りました。で精神病院実態というものを見せていただいたわけなんですが、病院としては非常にきれいにして努力をされている、これはよくわかるのです。ところが、たとえば向うに働いている従業員なんかの問題に入ってきますと、十九人対百人の給与の総額が同じであるというふうな問題が出てきて、いろいろ問題を起しておるということを聞くのですが、給与の状態なんかお調べになっておりますか、たとえば一つの問題ですけれども
  48. 安田巖

    説明員安田巖君) 地方のそういう施設の給与の問題を全部知っておるわけじゃございませんけれども、これは御承知かと思いますけれども、あそこで労使間に紛争がございまして、従業員組合から八月の五日に広島の地方労働委員会に調停が申請されたのであります。その後、地労委の勧告に基きまして、団体交渉を行いました結果、八月二十八日に話し合いがまとまったと承知いたしておりますので、今お話しのような点は改善されたものと思っております。
  49. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 県と厚生省との関係もむろんあると思うのでありますけれども、やはり改善命令を出されて、具体的に正常な運営がされるように今後どういう工合に指導しておやりになるおつもりなんですか。特に私は厚生大臣の改善命令を出したというような病院というものは数ないと思うのです。特にそういう対象にされた厚生省として、今までの問題もありますけれども、今後どういう工合にこの改善命令、改善意見を生かしていくというおつもりなんですか。それをちょっと聞いておきたい。
  50. 安田巖

    説明員安田巖君) これは病院というよりか、社会福祉事業法に基いた社会福祉法人だということで私ども関係をいたしておりまして、病院じゃなくて、社会福祉法人の役員の問題だと思っております。それで今申しましたように、大体はもう改善されまして、あと一つ人事の問題があるということでございますので、これはやはり東京から一々言うと申しましてもなかなかむずかしいことでございますから、県を間に挟みまして、県にはいろいろ地元との関係もございまして、事情もございますことでございますから、その辺のことをよくのみ込んで県の方でやっていただくように私の方からいろいろ督促をいたしておるようなわけであります。もうしばらく御猶予を願いたいと思っております。
  51. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そこで一般論としてお聞きしたいのですけれども、この病院で、この調査事項によりますと、三百人という入院患者があるのですけれども、その患者が今入っておられるのが二百四十三人、その中で治療を実際に要するのは五十四名だといって、むしろほとんどの人が隔離だけでの運営ということになるのだと私は思うのです。だから精神病院というのは、今までよくこれは事業団の何になっておりますけれども、精神病院の運営というものについては非常に過去から問題があるように聞いているわけです。というのは、今のような実態なんですから、だからそこにはいろいろの問題が起きてきて、この精神病院に対する監督行政というものをどういうものをどういう工合におやりになっておるか、この際お聞きしておきたい、一般的に。
  52. 安田巖

    説明員安田巖君) 精神病院に対する一般的な監督方針ということになりますと、実は私の所管ではないのでありますけれども、たまたまこれが社会福祉法人であったということで私どもで監査をいたしました結果、そういったようなものが出てきた。しかもこれは私どもの判断ではなくして、向うの院長さんの方から出した資料によってこういうふうなことが出たわけであります。こういう点は実はその後直しまして、現在ではそういうことはないわけであります。ただこれは非常にむずかしい問題なんでありまして、これは私の方から言うよりが、むしろ公衆衛生局の方からいろいろ御意見を申し上げた方がいいことでありますし、公衆衛生局の立場と私ども立場と若干違うところもございますから、私がそういうことを申し上げるのも適当かどうかと思いますが、たとえば精神病として中に入って治療を加えてなおる人と、それからまた、精薄あるいは痴愚というような状況であるけれども、まちをうろついているためにそれを収容いたしまして入れるところがないので、そういうところへ送ったというようなのもあるわけであります。そういう精薄程度の者をどう扱うかということが、これは一つの大きな問題だと思うのであります。私どもの方ではそういったために緊急の厚生施設、救護施設というものを作りまして、治療を要しないようなものについてはそういうところへ入れたらどうかという考え方をいたしておりますけれども、しかし、同時にまた、精神衛生法の立場からいいますというと、現在ではなおそういった精神病のほかに精神薄弱者というものが一応対象になっているというような点で、若干問題が残っているような次第であります。今後精神病の方かますますいろいろの点で問題になって参りますので、そういう御質問の点につきましては、私帰りまして公衆衛生局長によく申し伝えておきたいと思います。
  53. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私はなぜそういう質問をするかというと、問題が起きたこの病院の歴史を見てみましても、人権の問題が出ているわけです。非常に食費をどうするとかこうするとかいう、ほんとうの人権尊重というところから離れた治療方法、それがどこかの収入、利益蓄積という工合にして行われたということが問題になって、改善命令にまで発展した。だから、私は精神病院というのは、一つ病院をとらえて私は言うのじゃないのだが、そういうような要素が精神病院の他のところにもあるのじゃないかという感じをするのです。どういう工合にして監督行政をやられるかということをお聞きしたいのです。今係りでないということで的確なお答えがないようですが、一つこれは調べていただいてわれわれに知らしていただきたい。これは特に私はお願いをしておきます。それからこの広島の静養院、この内容その他今後の運営については、改善命令まで出された病院ですから、一段と一つ何といいますか、よりよい病院経営、治療というものができるように努力をお願いしたい。これは特に申し上げておきます。いろいろ申し上げたいことがあるのですけれども、ほかにも問題がありますし、時間がないので、それだけ特にお願いをしまして終りたいと思います。
  54. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 本問題に対する本日の調査は、この程度にいたしたと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  55. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 御異議ないと認めます。   —————————————
  56. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 次に、熊本県水俣市に発生した奇病に関する件を問題といたします。質疑を願います。
  57. 森中守義

    森中守義君  次官にお尋ねします。この水俣の奇病の問題は、七月の九日でありましたか、一度本委員会で政府との間に質問をかわしまして、これに対して当時の神田厚生大臣からお約束をいただいておった問題なんであります。しかし、その後の状態は依然として停滞状態にあるようにも思いますので、再度繰り返しになるようでありますが、若干質問を試みまして、政府の所見をただしておきたいと思います。  最初に、厚生次官にお尋ねいたしますが、最近の熊本の新聞によりますと、新しい患者が一名発生をした、こういうことが報道されております。また、こういう事態に対して熊本県の方では、にわかに県条例を作定をして、漁撈禁止の措置をとった、こういうことが伝わっておりますが、この新患が依然として出ざるを得ないと、こういう状態に対するお考え、それと漁撈禁止を行なった裏には当然漁業生活一本でいっている零細漁民の生活保障ということが問題になると思うのでありますが、この点について、県側とどのような協議が行われておるのか、まず、この二点について御質問申し上げておきます。
  58. 米田吉盛

    説明員米田吉盛君) ただいま森中委員から新しい患者が発生したようなお話がございましたが、そういう事実はないということを承わっております。三十一年以後は新しい患者は発生しておらない、こういう報告を受けております。患者が全部かかりましたのは六十一名でございますが、その点は私の方に来ておらないということであります。それから漁撈禁止をいたしましたのは、今年の七月十二日にこの研究の結果が報告になりまして、これは公衆衛生院において水俣病因研究発表会の席というその席上で発表になりましたが、水俣病の本体は中毒性脳症であって、水俣湾産の魚介類を摂取することにより発生するということが明らかになりました。そこで、どの魚であるとか、どの貝であるとかということは実はまだつまびらかにならないわけでございます。少くもその湾内の魚介類を食べますとこういう症状が起る。これは人間ばかりでなく、ネコにもカラスにもそういう症状が起っております。そこで、これを禁止するということは法に実は根拠がないのでありまして、食品衛生法にそれに幾らか関係したような規則がございますが、これはそれをとって業をするものはやってならぬ、こういう業とするものはやってならぬという規定があります。業としないものはとってもこれは仕方がない。とめようがないという格好になりますので、県の方としましては強い干渉をいたしましてとらぬようにと、こういう措置をとっておるわけであります。この結果、今まで漁業に従事しておもに半漁半農の方が多いそうでありますが、そういう方々の生活には相当の影響があるだろうと思います。これは一面におきましては、地元の要求として、魚のつく巣をこしらえてくれ、石か何かこう海の中に放って、そういう魚のつく巣を新たな場所に作るというような御要求もあります。これは私どもの方の所管では直接ないわけです。さしあたって生活困窮せられる方は法の基準に照らしまして、できるだけのあっせんをする、めんどうを見る、こういうことを県の方に申してございます。  それから生活更生の資金の問題でございますが、これも十分手続をするようにということを言ってございますが、この方は、更生資金の方はあまりないようであります。まあ考えますのに、返す当てがないというような農村の純朴な人ですから、それで手続をなさらぬのじゃないかとも一面考えておるのですが、県の方にはそのことを申してございます。まだ更生資金の方の御要求は出ておりません。こういう実態であります。
  59. 森中守義

    森中守義君 新患は、これは私は県の方が報告をしていないのか、あるいはまた進んで厚生省の方で実態の把握をおやりになろうとしないのか、そのいきさつはよくわかりませんが、熊本の地元で発行している熊本日日新聞というこの記事によりますと、明らかに新患が一名出たということを三面のトップ記事に出しております。私は今ここにその新聞の持ち合せがございませんが、これはすみやかに御連絡をいただけばわかる問題です。さらにこの中毒性脳症という病原名は大体出たということでございますが、これによってこの病原体の究明は一応の終止符を打った、このように解釈してよろしいのですか。
  60. 米田吉盛

    説明員米田吉盛君) ただいまの一名発生したという新聞記事は、このことの誤伝ではないかと思いますが、今まで発生しておった患者の報告が漏れておって、新たに報告してきた、こういうことでございまして、発病の推定が三十一年二月とおぼしき七十三才の患者がなくなりましたが、その報告が最近参ったわけであります。それの間違い……、何か誤伝であろうと思います。  それから研究調査はもうこれで打ち切りかというお話でございますが、さようではございません。厚生省としまして、今年度百五十八万の合計金が厚生省だけから出たのではございません、厚生省からは五十万でございますが、文部省からは六十八万、地元の方の研究補助金が四十一万、合計百五十九万になるかと思いますが、こういう費用をもって研究を続けてもらう、こういう考えでございます。
  61. 森中守義

    森中守義君 この新患にはあえてこだわる必要はないかと思うのですけれども、御調査になってみて下さい。誤報ではありません。ただ、その発病のいわゆる毒素を持った時期がそういう時期であるかもわかりませんが、最近の新患であることには間違いない。誤報ではないと思います。  それと、まだ研究は続けていくと、こういうことでありますが、大体、中毒性脳症という病名までも明確になった以上、そのよって来たる原因がどこにあるか、これも私はこれから先の問題になるのでありますが、とりあえず、その原因が何による原因であるかということが明確でない限り、もう少し国家として私はこれを見ていく必要があると思うのです。その際に先般委員会の席上に、私は熊本大学が研究予算として文部省あるいは厚生省、こういう関係の中央機関に要請されている積算書があります。この中で特に注意を要するのは、いわゆる患者が学用患者としてこれを今熊大に入院をさせておるようであります。この学用患者の年間の経費が入院患者の九名に対して月二万円、合計二百十六万、こういう金額が要求になっておりますが、これはやはり国家補償という観点から見て、すみやかに入院患者に対する経費の支出等は行われるべきであろうと思うのでありますが、この大へん数字的で申しわけないのですが、入院患者費用等はどうなっておりましょうか。
  62. 米田吉盛

    説明員米田吉盛君) 学用患者は文部省の方の所管であります。
  63. 森中守義

    森中守義君 文部省の方おられますか。
  64. 緒方信一

    説明員(緒方信一君) 学用患者の経費といたしまして、熊本大学に対しまして三十一年度におきまして百万円、一般の配付額以上に百万円配付しております。このために研究の経費が出たわけであります。今お話のございました大学が要求しておるという件数につきまして、私どもまだ大学から聞いておりません。今後よく大学のお話を聞きまして、必要があれば、学用患者経費費用は配当しなければならないと思っております。これは全般といたしまして、学用患者の経費は各大学の病院に対しまして一応の配付をいたしますけれども、そうして特に必要のある場合につきましては、さらに特別の追加配付をいたすわけでありますが、先ほど申しましたように、三十一年度には今までお話いたしましたような次第であります。
  65. 森中守義

    森中守義君 学術局長に重ねてお尋ねいたしますが、水俣奇病積算書というのは文部省に熊大から来ておりませんか。
  66. 緒方信一

    説明員(緒方信一君) 私はまだ見ておりません。
  67. 森中守義

    森中守義君 私はこれは学術局長がまだ御存じないということであれば、全く文部省としては三十一年度ではその学用患者の経費を百万円お出しになったと、こういうことでありますが、所管である熊大に対してこういう奇病が出ておるということは私は文部省では御存じであろうと思う。しかも熊大の関係者は数次にわたってこの予算の折衝に東京へおいでになっておる、文部省に。何かあなたの感違いじゃないのですか。
  68. 緒方信一

    説明員(緒方信一君) それはいつの話でございましょうか、先ほど申しますように、学用患者に対しましても経費は特別に見ております。それからさらに、厚生次官からもお話がございましたように、ほかの研究費を相当出しております。あらためて申し上げますと、三十一年度にはそのために、その研究のための、これはむずかしい機械でございますけれども、それを買うために二百五十八万円、これを三十一年度に出しております。それからさらに一般的な研究費といたしましては、三十一年度は、あれはたしか年度の途中からでございまして、追加をいたしまして十五万円でございますか、それから三十二年度に続きまして六十八万円か出しております。合計いたしますと、その特別な経費も先ほど申します通り、学用患者を入れまして三十一年、三十二年にわたりますと、三百五十八万円、それから今申しました八十三万円でございますか、こういうのを出しておるわけでございます。で今後ともそれは今の積算された経費というのがその前に出てきたものであれば、そういう中から特別に必要だと思うものをこちらから配当したことになると思いますが、新たにまた、それが出てきているかどうかということにつきましては、私ども実はまだ存じておりません。
  69. 森中守義

    森中守義君 これは私ども熊本県出身の衆議院、参議院の議員及び社会労働その他関係委員会に全部配付になっておるのですよ。四月ころだったでしょう、予算が丁度審議の前かその直後くらいであったと思うのですが、大体熊大としてはこれを基礎にして文部省に研究予算をお願いしております。こういう説明を私ども聞いておるのですよ。だから三十一年度に幾ら、三十二年度に幾らという文部省の方がこの問題に対する予算の出し方もただ漫然と私はお出しになっておるとは思えませんし、これはあなた御存じじゃないのでしょうか。
  70. 緒方信一

    説明員(緒方信一君) これは私自身があるいはその書類を見てないのかもしれませんけれども、先ほど申しましたように、現実に出しておりますから、これにつきましては、その要求があってそれを検討して出したわけであります。文部省といたしましても、これはいろいろ予算の直接の取扱いは会計課でいたしておりまするので、そちらの方でいたしまして、そこで具体的な検討のもとに今申しましたような金額を出したということかもしれませんが、ただ私、今おっしゃいましたような計数は記憶しておりません。
  71. 森中守義

    森中守義君 年度の途中でこういうことが予算の中で考慮されておるかどうか、そこまではよく知りませんが、各省には予備費というものがありますし、先刻の厚生省のお話では、この問題は依然として究明を続けていく必要がある、そういう意思を持っている、こういうことであります。従って、文部省としては、熊大の研究予算については、すみやかに何分の結論をお出しになる、今三十一年度のことが主として言われておりますが、三十二年度の現行予算についてはあまり言及されていないのです。従って、この際できるだけすみやかに熊大のこの問題の研究のために予算措置をおやりになる御意思がおありでしょうか。
  72. 緒方信一

    説明員(緒方信一君) 三十二年度につきましても、先ほど申しましたように、六十八万円という金は出しておるわけでございます。これは科学研究費と申しまして、特別に大学その他の研究機関で特別な研究問題を取り上げて研究を進めます場合に、大学に配当をしております一般の運営費のほかに、いわば特配的に出す金でございます。それが三十二年度の分といたしまして六十八万円というものが出ているわけでございます。ただ先ほどお話の学用患者の経費につきましては、一般的な配当以外には出ていないと私は記憶しております。でございますから、先ほど申し上げましたように、大学の方で、さらにまた、三十二年度としまして特に必要があるという要求が具体的にございました場合には、それに対しまして検討したいと存じます。
  73. 森中守義

    森中守義君 学術局長の所管でないので御存じないかとも、こういう善意な解釈もするのですが、今熊大としては、この九名の患者に、特に各科の病室が一緒になって研究されているのですよ。だから、こういう予算要求は、私は文部省に来ていないはずはないと思う。それですから、今総括的にこの問題の研究のために学用患者に出す経費が必要である、あるいは消耗品、備品、その他いろいろ経費が必要であるということもお認めいただけると思いますし、できるだけ早くこの問題に対する文部省の予算上の検討と、結論をお出しになる御意思があるかどうか、それを一度聞かしておいて下さい。
  74. 緒方信一

    説明員(緒方信一君) 今おっしゃいました備品とか、消耗品というような経費は、そのために幾ら増額していかなければならぬか、これはこまかい問題でございますけれども、検討を要する問題だと思います。それは一般的には運営経費は出ておるわけでございますけれども、その上に幾ら増額しなければならぬかということだろうと思います。こまかい問題でございますけれども、そういうことにつきましては、よく調べていきたいと存じます。それからさらに学用患者の問題でございますが、これは先ほど申しましたように、大学全体の学用患者の運営をいたします経費を一応配当いたしております。それで足らぬということであれは、さらにまた検討する、かようなことでございまして、具体的に大学と、実情とをにらみあわせてやっていかなければならぬ、かように考えます。原則的に申し上げますならば、これはそういう必要があれば、検討いたす意思はございます。
  75. 森中守義

    森中守義君 これは事が非常に社会的な問題で重要でありますし、今の御答弁である程度納得もいくのですが、進んでこういう社会的な問題であるだけに、しかも原因がはっきりしない、責任の所在が明確でない、勢い、国としてこれをめんどうを見ざるを得ない、こういう状態であるということは御承知であろうと思いますから、進んで熊大の方と協議をされるなり、あるいは予算関係の方と折衝されてこの病原体究明、あるいは学用患者の措置、こういうことに必要な予算上の措置をおやりになる、こういったように、ただいまの御答弁は理解してよろしいのですね。
  76. 緒方信一

    説明員(緒方信一君) 大学といたしましては、地元の対策委員会等に御協力いたしまして、このいわゆる奇病の原因等につきまして十分研究をしているわけでございますから、その重要性につきましては十分認識いたしております。従いまして、よく大学の実情を調べてみたいと思います。
  77. 森中守義

    森中守義君 よくわかりました。  もう一度厚生政務次官にお尋ねしますが、先刻の漁撈禁止の問題で、生活保護法に関連をした御質問を申し上げたのでありますが、これはどうもやはり現行法上の不備といいますか、あるいは適用法の根拠がはっきりしていない、こういうことでありますが、これは私は国内のどこにこういう問題が再び発生しないとも限らないと思うのです、いろいろな形で。非常に想定的なことでありますが、そういうことを考慮に入れれば、もう少しこの水俣の問題を具体的な一つの事例として、魚は強制的にとってはいかぬ、食べれば人がなくなる、あるいは病気にかかる、こういうことがきわめて明瞭であるのに、法的にこれを禁止を、法定伝染病、こういうものと同じような見解のもとに禁止をするような立法措置はできませんか。
  78. 米田吉盛

    説明員米田吉盛君) これは私も法の不備を何らかの形で不備でないようにしたいとは考えております。しかし、これを今具体的にどういうふうにいたしますという、実はあなたの御満足のいくような御答弁ができないことは残念でございます。少くもこれは、きのう実は正直なところ食品衛生法を読みまして、販売する目的でとってはいかぬというのですね。販売以外で自分が食べたり、やったりするのならいいと、反対解釈も成り立つような格好なんですね。これはまずいなあと言ったのです。これはもう仰せ通りでございまして、何らかの手は打ちたいと考えております。しばらく一つ御猶予を願います。
  79. 森中守義

    森中守義君 これは実情はこの前の委員会でだいぶ詳しく、きょう出席されている谷口先生と私といろいろ申し上げたのですよ。とってはいかぬといっても、いわゆる半農半漁と言われますけれども、半ばこれは専業的な仕事をやっているのです。遠い海へ行くのにはなかなか道具がない。あるいは船も小舟で行けない。そうなれば、危険だということは承知していても、今日ただいま食うために困るような零細漁業ですから、やはりとらざるを得ない。たとえば警官を立てて監視をするとか、あるいは県や市当局が、危いからとるなといっても、これはやはりとっておるという実例があるようです。非常に危険ですよ。もちろん自分たちでは食べないでしょう。どっかに売っているかもわかりません。しかし、水俣の湾内でとれた危い魚だということで魚に標識はしてありませんから、これは非常に危険なんです。こういうことを考えますと、これは当然私は立法措置を講じて、法定伝染病と同じような措置を講ずる必要があると思うのです。次の臨時国会あたり厚生省としては、今水俣一カ所の問題でありますが、どこにこういう問題が発生しないとも限りません。従って、そういうことを考慮に入れながら、立法措置をおやりになるような御意思があるかないか。ことに水俣の問題は時間的に相当差し迫っている問題であります。もう少し明確な厚生政務次官のお答えをいただいておきたいと思います。
  80. 米田吉盛

    説明員米田吉盛君) まことに残念でございますが、こういういやしくも一つの法律を作るということは一次官の決定で実はできません。だから十分研究いたしまして、事柄はあなたの通り認識しておりますから、要点はこれを解決するということが目的でございます。その方向に努力いたしたい。それは立法措置であるか何であるか、よりよい、もっとよい措置があるかというようなことを研究いたしまして、とにかく目的を達するようにいたしたい、こういうことだけしか申し上げられません。どうぞ御了承願いたいと思います。
  81. 森中守義

    森中守義君 立法府があるのですから、こういうことを一次官の手でもってできぬことはわかっております。しかし、行政を担当されておる厚生当局として、すみやかに行政措置なりあるいは国会に立法措置を出されてこられるような、そういう御意思はあるということですね。
  82. 米田吉盛

    説明員米田吉盛君) どうしたらいいかという具体的のことを研究の上、立法措置をする意思があるか、ほかの措置の意思があるか、そういうことはまだ意思決定しておりません。それで十分研究して意思決定をいたしまして、御満足がいくかいかぬかは別といたしまして、できるだけこの問題解決に努力をいたしたい、こういう考えでございます。意思決定をしているということはちょっと言いかねるのでございます。どういう方法でこれを解決するかということをまだ厚生省としてきめておりません。きめましてから実はそれじゃほかの措置でやる、あるいは立法措置でやる、どちらになるかということはまだきめておりません。その上で一つ問題は、あなたの御心配になっておる点を解消することなんですから、その方向に向っていたしたい、こういうことだけしか申し上げられません。いずれ立法措置になるかもしれません。あるいはほかに強力な行政措置で可能である場合は、簡単に早くできるわけでございますから、今実際にやっておるのは、県が指導しておるだけでございます。お説のように指導ですから、これに反したことをやっても、人道の問題には触れましても、法の上からどうこうということになりません。だから、こういう点は十分研究しませんと、出まかせでこの場限りの答弁なら別でございますが、実は私はまじめに一つ考えておりますので、どうぞこの点、御了承願いたいと思います。
  83. 森中守義

    森中守義君 まじめに考え、まじめに答えてもらわないと困る、遊んでおるわけじゃありませんから、ただ、私は七月九日に前の神田厚生大臣は明らかに、議事録をお読みになればよくわかりますが、そういう問題を繰り返しております。もうだいぶたっておるのですよ、時間が。しかもこれは二十八年から起っておる問題であるし、いわんや二十六通常国会においては、請願関係をごらんになればわかるのですが、四月の二十四日の本院の、参議院の委員会でこの問題は採択になっております。しかも、そういうことはまだ意思決定が行われていないとか、どうしようという考えを持っていない、こういうことでは私は非常に困ると思うのです、この問題は。非常にしつこいようですけれども、こういう重要な問題をまだ意思決定をしていない、何も策を持っていない、こういうことでは私は国民の信にこたえるような行政はできないのじゃないかと思うのです。もう少しはっきり責任を持って、すみやかにこの問題を処理するなら処理する、こういうことを確答いただきたいのですがね。
  84. 米田吉盛

    説明員米田吉盛君) どうも私の気持が通じなくて残念でございます。私はあなたのおっしゃるように目的を達するようにいたします、こういうことはるる申しておるのです。ただ、その手段があなたのいう立法措置になるか、行政指導その他になるか、これはなかなかわからぬと、こう申しておるのです。お説のように、四月の二十四日に請願が採択されておるということは、ほんとうのところ実は今初めて知ったわけでございます。大へんおそくなって申しわけございませんが、新しい気持で早くいたしますから、御了承願いたいと思います。
  85. 森中守義

    森中守義君 大臣や政務次官がかわられるたびごとにこういうことを繰り返しましても、結局時間の空費になるだけなんですが、今申し上げましたように、かなり古い問題である。しかも、こういうことが早急に行われなければ非常に危険を伴うという重大な問題ですから、ぜひこれは次の臨時国会あたりには立法措置であろうと、あるいはその他の方法によろうと、責任を持てる措置ができる、こういうことに受け取ってよろしゅうございますか。
  86. 米田吉盛

    説明員米田吉盛君) さようでございます。
  87. 森中守義

    森中守義君 よろしゅうございますね。それでは、そういう措置を講じていただくということで安心をいたしましたが、その措置の背景には、あるいは裏には、当然漁民の救済、ことに専業庶民、こういう人たちの救済ということが考えなければならない問題でありますが、これは農林省にも関係があると思いますけれども、両当事者からここの漁撈禁止、あるいはこれに類似した措置をとるために、漁民救済はこういう工合にしたい、あるいはこうすべきであるという御意見が当然あってしかるべきだと思うのですが、その点について先刻政務次官から、例のいろいろなことをやってみたと、こう言われましたが、もう少し正確に漁業の問題あるいは生活補償の問題、この問題についてお答えをいただきたいと思います。
  88. 米田吉盛

    説明員米田吉盛君) 今申しましたように、どういう手で、どういう方法でゆくかということは、まだきめておりません。それによってどういうふうな被害が及んで補償しなければならぬかというところまで、実は私として研究を進めておりません。しばらく御猶予を願いたいと思います。他の省の所管のことはこれはくちばしを入れる筋合いではございませんが、厚生省限りの問題といたしましては、その段階までまだ進んでおりません。まことに申しわけない次第でございます。四月に採択になっている、それから前の大臣もこういうことは十分知っておられるというのであるのに、今日になったのは、申しわけございませんが、実情、実はそういうわけでこうするということも言いかねます。他の省の問題は他の省の方から一つ
  89. 新澤寧

    説明員(新澤寧君) 水産庁といたしまして、水俣に関しまして考えておりますことをお答え申します。  法律上の措置ではございませんけれども、実際上の問題としまして、水俣の湾内で魚かとれないということになってきているわけであります。従いまして、そのためには、漁民の生活の立つように、何らかの方途を講じなければならないと思いまして、そこで水産庁といたしましても、県の水産当局の方と協議をしながら施策を進めているわけでありますが、考えられる対策といたしましては、一つには危険でない水域に、新しく水産の増殖の施設を設ける。先ほど厚生政務次官からちょっとお言葉がありましたが、魚の巣と申しますか魚礁、あるいはつきいそと申しますか、そういう施設をやりまして、そこに従来よりももっと魚を繁殖させることによって、新たにそこへ出て行って魚をとれるようにするという施策あるいは、今まで狭い湾内でのみ魚をとっておりましたのを、もっと沖へ出て魚をとるようにする。あるいは県境の近くのところでありますと、自分の県内の海だけではなくて、隣りの県の海へ入って漁業をしなければならない、こういう必要が出てくるわけでございます。それらの諸対策を講じなければならないと思っているわけでございますが、あとに申し上げました二つの問題、新しく今までやっていた漁業と違った漁業へ変ってゆくという問題、さらに隣りの県まで出てゆくという問題につきましては、これは一方におきまして漁業者自身の方々がそういう漁業に転換したいというお考え、さらに他の県にまで出て行って魚をとりたい、そういう漁業者の方からはっきりした御意見は承わっていないわけでございます。とりあえずの施策といたしまして、危険でない近くの水域に水産増殖の施策を講ずるということを考えておりまして、これは本年度の予算のうちから百三万二千円の補助金を配当いたしているわけでございます。その結果、これは三分の一の補助でございますから、事業量としてはこれの三倍の事業量ができる、こういうことになるわけでございます。  そういうことで内示をいたしておりますので、結果といたしましても、着々実行に移っているのではないか。ことにつきいその事業等は、これから事業いたします最適の時期に入りますので、そろそろ事業に着手する段階に入るのじゃないか、こういうふうに考えている次第でございます。
  90. 森中守義

    森中守義君 もう一度厚生政務次官にお尋ねいたします。先刻の御答弁だと、結局厚生省は何にもしていない、あるいは今までやってこなかった、こういうように受け取れるのです。しかし、実際きょうおいでになっている局長初め皆さん方は、相当熱心にこの問題は研究しているのですよ。あなたが御存じないだけです。だからもう少し事務当局と検討されまして、たとえば転業資金であるとかあるいは生業資金であるとか、あるいは生活保護法を適用をするとかいうことを、できるだけ早く私は結論をお出し願いたいと思うのであります。総合的にこの転業ができた。あるいは浅海漁業、漁礁の転換ができた。こういうことが実現をすれば漁民も問題はないでしょうが、そういう完全なことができ上るまで漁民の生活をどうするか。こういうごく限られた現実に直面した問題が一つある。この点についてもう少しこの事業資金でありますとか、あるいは生業資金、あるいは現行法上の生活保護法のワクを、あるいは対象を広げるとか、あるいは審査をもう少し緩慢にするとか、こういったようなことをお考えいただきたいのですが、そういう点についてどうでございましょうか。
  91. 米田吉盛

    説明員米田吉盛君) 最初に申しましたように、生活保護法対象になるものは、県にも通知をしまして、大いにやってくれいということを言ってございます。最初にこのことは申しました。それから更生資金の方も、これもやるように県の方に言っております。最初にこれはあなたに申しました。しかし、返さなければならぬと考えておられるのか、そのためかどうか知りませんが、更生資金の方はまだ何も申してきません。こういう状態でございます。これは何もやらぬわけじゃない。多少やってはおります。ただ不十分でございまして、十分努力をいたします。
  92. 森中守義

    森中守義君 そうしますと、まだ原因が突きとめられていない。あるいはこの総合的な対策が立っていない。こういうふうな印象を受けるのですが、今までそれぞれ専門の人が、現地の熊本県においでになって、いろいろ対策を協議されているようです。しかし、肝心かなめの、中央における総合的な基本方針が立っていないので、事態が進展をしていないのじゃないか、こういう工合に思うのであります。ですから、この際、大蔵省もあるいは文部省も、厚生省も、農林省も、総合的に一度お集まりになって、農林関係はこうした方がいい、あるいは厚生関係はこういくといいというような、総合的な結論をお出しになって、現地の知事とか、あるいは市長、漁民代表、あるいは漁業の組合長、こういう人たちと、この際急速に総合的な協議をおやりになるような方法はおとりになりませんか。
  93. 米田吉盛

    説明員米田吉盛君) できるだけそういう総合的のことも、あるいは役所間の横の連絡をとりまして、至急いたしたいと思います。ただまあこの問題で、現段階としましては、魚をどういう魚を食ったら悪いのか。それからいま一つ、それでは魚がまあどういうものを食べているからその魚が悪いのかという、だんだんさかのぼった調査が不十分なんです。そこで工場から出ているところの水が悪いから、その水の中にこういうものがあって、それを食べている、あるいはそれが泥土に汚染している、それに住んでいるところの魚が悪い。魚の種類の中ではどの魚が悪いというところまで、まだ調査が突き進んでいないわけであります。そういうような調査とのにらみ合わせの関係も実はあるわけであります。完全な調査が五年先でなければできない。それを待って対策をやったのではおそ過ぎるという点もございますので、現在の段階で可能な範囲のことを横に連絡いたしまして、努力をいたしたいと思います。そういう考えを持って実は先ほど私は法的手段でやるか、行政措置でやるか、何でやるかは研究に待つ。だから、今どっちの意思決定をしているかということは言いにくいと申しましたのは、そういう意味を含んで実は申し上げたつもりであります。
  94. 森中守義

    森中守義君 大体言われることはわかるんですが、私の御質問申し上げているのはその病原の究明、原因の追及、これが最大の目的であります。同時にそれに関連をして漁民救済をどうするか。あるいは漁撈禁止をどうするか。こういう厚生、文部それから農林、大蔵、こういう各省にまたがった今問題に発展をしているんですよ。そういうことを各省ばらばらにおやりになっているから、なかなか一貫した対策が立たないので、この際、関係の各省が病原究明についてはこういうような方針でこれからいこうとか、あるいは漁業救済については現地の意向等もあるのでこういう工合にやろうとか、そういう総合的な結論をお出しになって、現地で打合せをおやりになるような対策をお立てになるような御意思はありませんか、こういうことをお尋ねしておるのです。
  95. 米田吉盛

    説明員米田吉盛君) 現地でやるかどうか一つおまかせ下さいまして、要はあなたの御心配の点をなくすることなのです。それはやはりわれわれに一つおまかせ願ってそしておそいけれども横の連絡もとって努力していく、こういう考えでございます。
  96. 森中守義

    森中守義君 これはまかしてくれと言われるけれども、おまかせする以外に方法ないのですよ、ほかのものではどうにもなりません。ですから、当然まかせなければならぬのですが、ほんとうにまかせ得るような対策をお立ていただきたい。それには関係各省が急速に、政務次官だけお集めになることもよろしいでしょう、あるいは関係官もお集めになることもいいでしょうし、少くとも個々ばらばらな対策でなくて、関係各省が一貫した対策をお立てになって、それで急速にこういう措置を講ずるという結論をお出しいただきたい、こういうことなのです。現地にさらにおいでになればなおけっこうなのですが、何と言っても出先の方では中央と全部協議をしなければ手が出ない状況下にありますから、できるだけ早く四省一丸となって、予算の問題も、あるいは学術上の研究の問題も、すべて四者の中で急速に結論をお出しいただく御意思があるかどうか、具体的にそれをお聞かせいただきたいと思います。
  97. 米田吉盛

    説明員米田吉盛君) 今までだいぶ私気持を申し上げておるので、まだわからんでしょうか。
  98. 森中守義

    森中守義君 大体わかっております。総括的にそういうことをおやりいただくという……。
  99. 米田吉盛

    説明員米田吉盛君) 私の方はやるつもりでおります。私の方は十分呼びかけてやるつもりでおります。しかし、必ず満足いくように責任を持ってすっかり何もかもというところまでいくと、他省のことにもわたりますから、私の省のこと限りに一つ私の答弁はお願いしたい。私の方としては他の省に呼びかけて御期待に沿うようにいたします。何しろよその省のことまで答弁する結果になります、あなたの言う通りにいたしますと……。これは私越権だと思う。そういう点は御理解願って、今までの私の気持をおくみ取り願えれば御了承願えると思います。
  100. 森中守義

    森中守義君 気持はわかっておるのですよ。ただ政府が一体となって対策をお立てになるそうですから、厚生政務次官というポストだけに私はこだわる必要はないと思う、国民の政治ですから。だから大蔵も農林も文部もできるだけこれを早くやりましょう、そういったように総合的におやりいただきませんと、ばらばらではどうしても進まないのです。進まないのがこういう結果を生んでいるのですけれども、だから閣議なり、次官会議にお出しになって、一つやろうじゃないか、全部集まろう、こういうお話は私はできると思うので、何も越権行為をやってくれとか、または越権行為をやるようにお勧めしているのじゃないのですよ。そういう点を四者で責任を持とう、ただその内容がオールマイティーでなくちゃならぬということまで私は言っているのじゃなくて、とにかく現地の人たちにとってこの問題が急速に解決されればこれに越したことはないのです。まあそういうあなたのお気持をしんしゃくして、次官会議なり何なりおかけになって、総合的な対策を立てよう、こういうことを言ってもらいたい。この程度のことはできるのじゃないですか。
  101. 米田吉盛

    説明員米田吉盛君) それは先ほど申しました。それは横の連絡をとりまして、これこれのことをいたしてあなたの御希望に沿うようにいたしますと、そのことは申しました。申しましたことは私はその考えでおるということであります。
  102. 森中守義

    森中守義君 これで私終りますが、大へんくどく申し上げましたけれども、現地の方では非常に恐慌と申しますか、一種の恐怖症にかかっておるのですよ。ことに熊本県全体では水俣でとれた魚ではないかという話が魚屋の軒先あたりでちらほら出る。漁民は食べなくても夜中でもとってきて売りますからね。こういう不安な社会状態を一日も早く排除してもらいたい、こういうことも最後に私はつけ加えまして終りたいと思います。
  103. 谷口弥三郎

    谷口弥三郎君 ただいまの問題は、この四月ごろ出ましたときに、その後各省でいろいろと御協議になって、そうしてすでにもう第一回はその協議になった結果を私どもでは聞いたこともございます。だから、ただいまのお話の森中委員のおっしゃるように、今後次々とそういうようなふうの連絡会議をお開きいただいて、そうして早く解決していただきたい。なおまた、私どもの聞いておる範囲では、マンガンがかなりこれの中毒の原因になっておるというようなこともだいぶ進めておられるようですからして、研究と同時に各省連絡を今後相変らずおとりを願ったらいいのじゃないかと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
  104. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 本問題に対する本日の調査は、この程度にいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  105. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 御異議ないと認めます。午後は二時に再開いたしたいと思います。休憩いたします。    午後零時五十六分休憩    —————・—————    午後二時十八分開会
  106. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 再開いたします。  社会保険医療費の一点当単価問題に関する件を議題といたします。本件に対して、厚生省当局からその後の経過について御説明を願います。
  107. 堀木鎌三

    ○国務大臣(堀木鎌三君) かねて各方面から、適正な医療報酬をきめることが国民皆保険を推進する上において最も必要な一つの重要な問題であるというふうな御要請がありますと同時に、過般の本委員会におきましても申し上げましたように、これらの問題につきましては長い間の懸案でございますし、当委員会においてもこれらについて一応案を    〔委員長退席、理事山本經勝君着席〕 事務当局がいつごろできるのだというふうなお話もずいぶんございましたので、就任以来事務当局を督励いたしまして鋭意案の策定に当らせましたような次第でございます。一方臨時医療審議会におきましては、適正単価をきめますにつきましていろいろな原則を、審議の途中におきまして、御承知通りに、不幸にいたしまして日本医師会、歯科医師会等の脱退をみましたわけでございますが、それらの問題にかかわりませず、この問題を早急にきめて参りたいというふうな考えをもちまして、一応昨日の中央医療審議会を開きますと同時に、事務当局の案を提示いたしました。そうして今後の御審議の対象にしていただきたいということで掲げましたような案が、ただいまお手元に参りました案でございます。内容につきましては説明員より説明させていただきたいと思います。
  108. 高田正巳

    説明員(高田正巳君) それではお手元に御配付を申し上げました「社会保険医療の診療報酬の算定方法並びに点数及び単価策定方針の概要」こういう冊子がございますので、これに大体の内容を要約して書いてございまするので、便宜これに従いまして御説明を申し上げたいと存じます。    〔理事山本經勝君退席、委員長着席〕  まず、今回の診療報酬の改訂を考えまして、私ども事務当局の方針をまとめましたものが、この最初に書いてございますが、「保険医療の適正を期し、国民皆保険を推進する基礎的条件を整備するためには、常に保険医療における医療技術の向上と医療内容の改善を図ることができるようその診療報酬の算定について十分な考慮を払うことが必要である。」かように考えまして、まず、診療機関の院長といいますか、さような医師の生計の問題につきましては、専門技術者としてふさわしい生活内容を維持していただけるようにという点と、それから経費その他の面につきましては、医療施設及び医療用器材についても医学技術の進歩に応じて必要な整備と更新が加えられるというふうなことが必要でございまするので、それらの点をも加味いたしまして、後刻御説明を申し上げまするように、大体現行の診療報酬に比し、おおむね八・五%程度引き上げることが妥当であろう、こういう結論に到達をいたしたわけでございます。  次いで、この増額を機械的に現行の一点単価をその程度だけ引き上げることによって処理いたしますることは、現行の点数におきまする不合理を、何と申しますか、加重いたすような結果にも相なりまするので、点数を合理的に是正いたしたい、その上でこれらの増額分を配分いたしたい、かように考えた次第でございます。で、その際に、私どもといたしまして、基本方針といたしましては、まず、この医療の技術を高く評価するという点と、それから、かねがね現在の社会保険その他の社会医療面におきまする請求事務の非常なめんどくささというものを医療機関の側から訴えられておりまするので、まことにごもっともな点でございまするので、これらの医療機関事務的な負担をできるだけ軽減したい、こういう点とを大眼目に考えたわけでございます。請求の事務を軽減いたしますると同時に、いわゆる基金の審査の事務というふうなものをも徹底的に簡素化することができるようにということに配慮をいたしまするとともに、さらに事務的な観点から診療報酬の一点単価はまるく計算のしいいように十円ということにいたした次第でございます。  なお、これらのことを考えて、具体的な案を作成いたしまするに当りましては、そこに書いてございまするように、臨時医療保険審議会あるいは中央社会保険医療協議会、診療報酬に関連のあるこれらの協議会におきまして、あるいは審議会におきまして、今日までいろいろと御審議をいただいている部面があるのでございます。最終的な結論はいずれも出ておらないのでございますが、中間的な御報告をいただいている面もあるのでございまして、それらの御報告なりあるいは御審議の過程を通じまして現われましたいろいろな御意見を、私どもとしましてはできるだけ取り入れて慎重を期してやる、こういう基本的な方針でできているわけでございます。  さてこの二番といたしまして、診療報酬の方を一体どの程度に押えるべきか、結論的にはおおむね八・五%という結論を出したわけでございますが、これの過程でございます。これの過程がその次に二ページのところから書いてあるわけでございますが、一般診療所におきまする昭和二十七年三月の医療経済調査をもとといたしまして、三十三年の年間平均まで延ばしました。そうして諸経費の物価の値上りあるいは医療の規模が拡大しておりますので、それらの点も配慮いたしまして、それぞれの算定をいたしたものでございます。二十七年の三月の医療経済調査というものは、これはすでに皆様の過去のいろいろな御審議の過程において、お耳に入っておりまする調査でございまするが、これは診療担当者の団体にも全面的な御協力をいただきまして、厚生省調査をいたしたものでございまして、今日使い得る資料といたしましては相当権威の高い資料であろうと、かように確信をいたしているわけでございます。  さてこの医師の所得でございまするが、これはそこに書いてございまするように、まず二十七年の三月に医師の生計費支出、世帯支出というものが調査されておりまするが、その三万三千円という額に、まず他の一般の消費支出というものがどの程度上昇をしておるかということを考えまして、その倍率をかけ、さらに三万三千円という生計費の中には、これは支出でございますので、貯蓄等に回ったものは表現されておりませんので、まあ逆に申せば、過去の貯金を食いつぶしたというものも入っておるわけでございますので、しかし、貯蓄に回ったものもこのほかにあるわけでございまするので、その貯蓄に回されたであろう金額をそこに見込んだわけでございます。そうしてその伸びを見まして、一・一〇七というものを乗じまして加算いたしました。  その次に、さらに稼働時間というものの延長というものを考えたのでございます。その後大体二十七年当時の患者数というものが、おおむね診療所平均といたしまして、二十三人余りでございましたかの患者でございましたが、今回私どもが現在の姿を推定いたしましたものにおきましては三十八人程度の患者になるということでございまして、これは相当忙しくなるわけでございまするので、その忙しくなるのをどの程度見込むかということは論議のあるところでございまするけれども、これを大体患者数の増加の二分の一程度というものをこれに加えたわけでございます。かくいたしましていわゆる個人立施設院長、言葉をかえて申しますると、いわゆる開業医師でございまするが、そのあるべき所得を大体六万九千九百五十五円、七万円ばかりのものに押えたわけでございます。これを全施設の公立診療所等も数もございまするので、全施設に平均いたして考えますると、五万九千四百六十二円ということに相なるわけでございます。  次は所要経費でございますが、そこに詳しく各経費の費目について、その計算の過程が書いてございますが、所要経費を、従業者の給与、この中には医師もあり、看護婦もあり、その他の従業者もおられるわけでございますが、その従業者の給与すなわち人件費とそれから衛生材料費、給食材料費及び一般の経費というふうに四大別をいたしまして、二十七年以後の伸びを計算いたした次第でございます。従業員の給与につきましては、全国勤労者賃金の上昇率一・五七というものを加算いたしました。さらに、当時から従業員がふえておりまするので、そのふえた人員を乗じて推計をいたしております。さらに、賞与の問題をも加味いたしてこの数字を出しておるわけでございます。衛生材料費中、投薬、注射の薬品そのものの費用につきましては、三十年に社会医療調査を私どもの方でやりました。この点につきましては、二十七年の調査を使っておりません。と申しまするのは、これは御存じのように、使用薬品の使用頻度というようなものが変って参りまするので、できるだけ新しい調査をもとといたしまして、昭和三十三年の稼働点数と三十年の社会医療調査の一施設当りの点数の比率を乗じて伸ばしております。その他の衛生材料費、包帯とか、脱脂綿とかいうような全部のものでございますが、これは消費卸売物価指数の上昇率及び患者数が増加いたしておりまするので、その患者の増加率をそのままかけてございます。給食材料費は、消費者物価食料指数の上昇率及び一施設当りの入院患者数の増加を乗じております。  第四番目の経費でございますが、これには光熱給水料事務費、通信費、雑費というふうなものがあるわけでございますが、それぞれの料金の値上り率をかけました上に、さらに、比較的固定的な経費でありまするけれども患者が伸びれば若干の伸びはあるはずだということで、患者の増加率の三分の一を乗じて加算をいたしております。  被服費につきましては、被服費の上昇率と患者の増加率そのまま及び職員の増加率の二分の一を加算いたしました。  会議費、図書費、旅費等は、雑費指数の上昇率及び従業者の増加率というものを加算をいたしたわけでございます。  修理費につきましては、その二分の一を材料費、残りを賃金といたしまして、そのおのおのの上昇率をかけまして、さらに、まあこの辺はだいぶ問題がありますが、患者がたくさんになれば修理費もたくさんかかるであろうということを加味いたしまして加算をいたしてございます。  不動産賃借料、火災保険料、租税中、固定資産税あるいは法人税等の費目につきましては、そこに書いてあるような大体以上申し上げたような指数をそれぞれ適当な、そのものに適当な物価の上昇率を見まして推計をいたしておるのでございます。なお、徴収不能額いわゆる若干の焦げつきがあるわけでございますが、これにつきましても、二十七年の三月にその額を調査をいたしてございますので、稼働点数が伸びればそういうものも多くなるであろう、また、一部負担も少し多くなりましたので、さような点を配慮いたしまして、これらの額の増加率を乗じてございます。借金の利子も、これに稼働点数が多くなれば借金もふえるであろうということを前提にいたしまして、その増加率をかけておるのでございます。  最後に、減価償却費でございますが、これはいろいろなことで、いろいろな方面できまっておりまする耐用年数というものをそのまま使いますることはいかがかと存じまして、特に医学、医術の進歩に即応して、医療に関係する器材、施設というようなものとしましては、耐用年数は長くございましても、新しいものがどんどん出て参りますので、さようなことを勘案いたしまして、そこに書いてございますように、一般の医療器具機械等は十五年、それからエキス線装置、エレクトロというようなものにつきましては六年に短縮をいたして、ここで設備の陳腐化というようなものをも含めて更新し得るような配慮を加えたわけでございます。  かようにして一口に申せば、物価の値上りとそれから規模の拡大と両方とを加味いたしまして、あるべき姿の所要経費を推計いたしましたところ、十万百七十円と出たわけでございます。これで先ほど御説明をいたしました全診療所院長平均の五万九千四百六十二円と、ただいまの十万百七十円とがこれが一診料所当りの平均収入になるべきである、合計いたしますと、月十五万九千六百三十二円ということに相なるわけでございますが、これが平均収入になるべきであるという金額を算定をいたしまして、現在の単価で計算いたしました十四万七千百二十五円というものに比較をいたしますると、八・五%程度の増加になるわけでございます。かような過程をとりまして、あるべき医療費の値段というものにつきまして、私ども考えを現行の八・五%程度引き上げということに結論付けた次第でございます。これによりまして、いわゆる開業医の所得は、そこに書いてございますように、平均七万円弱ということになりまして、二十七年三月の当時の世帯支出三万三千何がしと比べますと、およそ二・一倍の増ということに相なります。これは現在の所得というものとの比較ではございません。その当時の世帯支出と比較いたしますと二・一倍の増ということになります。大体一般勤労者の増加率が約六割ということでございまするので、これを大幅に上回る結果となりまして、いわゆる待遇の改善を所期し得るものと私ども考えるわけでございます。  資料にありまする次の表は、ただいま申し上げましたことを各費目に分けまして金額に表示をいたしたものでございます。  その次の表はいろいろの指数を使いましたので、その指数の表を御参考までにつけましたわけでございます。  その次のこれは個人立施設院長の生計費の推計の計算の過程を詳しく書いたものでございます。  さて以上のような経緯によりまして、現行の医療費というものは八・五%程度値上げをすべきであるという結論に達したわけでございまするが、しからば、この新しくふくれる増額分をいかにして払っていくかという点につきましては、これは大へんゲラ刷りでございまして恐縮でございますが、ページが一ページと打ってあるかと思います。そこに書いてあるわけでございます。この点数表の問題につきまして、私どもの今回の案の一般的な基礎となっておりまする点が一般的事項というところに書いてございますが、まず、第一に甲表、乙表という二つの点数表を作りまして、保険医療機関にいずれかを御選択を願うという案の中身になっております。もちろん御選択を願うということでございましても、きょうは甲表、あすは乙表ではこれは大へん繁雑になりまするので、一年間はお選びになったものを同じく続けていただくということに相なるわけでございます。  それから二番目に先ほど申し上げましたように、単価は甲地、乙地とも十円ということにいたしました。それから現行の甲地、乙地の地域差の問題でございますが、これは実は私どもの希望といたしましては、廃止をいたしたいというふうに考えておったわけでございますが、なかなか一時にさようなことをいたしまするにつきましては、相当な無理も生じまするので、その差を現在の八%あまりからおおむね五%程度に差を縮めるということに案の中身はなっております。そうしてその方法といたしましては、そこに書いてございまするように、従来の申地にありました医療機関につきましては療養担当地域手当ということにいたしまして、外来患者については一カ月の診療件数一件につき三点、入院患者につきましては入院日数一日につき三点を加算するという方法によることにいたしたわけでございます。  さて、この甲表、乙表の中身の何と申しますか、要約したようなものがそこに例示とともに上っておりまするが、甲表、乙表とも御承知通り、非常に膨大な点数表になるわけでございまして、その要約がそこに書いてあるわけでございますが、甲表と申しまするのは、私どもはこの甲表のような点数表というものが望ましい姿であるというふうに考えておるのでございます。それでこの甲表の中には、先ほど申しましたように、技術の尊重ということ、それから事務の簡素化ということが相当程度加味されておるわけでございます。それで甲表は、この診療報酬を基本診療料と特掲診療料とに大別をいたしました。基本診療料におきましては、件数払い的な思想を若干加味いたしておりまして、初診時基本診療料、再診時基本診療料、入院時の基本診療料というものを三つ設けたわけでございます。そうしてそれぞれの初診時、再診時あるいは入院時に普通多く行われるであろう一般的な診察、投薬、簡単な検査、注射、処置、理学的療法、それから入院の場合にはいわゆる入院の費用、そういうふうなものを一括して支払いをいたすことにいたしたわけでございます。しかしながら、医療の内容は非常に複雑多岐でございまして、これらの基本診療料でとうてい解決し切らない多くの医療行為があるわけでございまするので、別に特掲診療料を掲げまして、それらの医療行為が行われた場合には、それらのものを加算して支払うということにいたしたわけでございます。特掲診療料につきましては、いろいろそのあとの方に書いてございまするように、いろいろな種類のものがたくさん掲げられるわけでございます。なお、この甲表におきましては、投薬、注射等がございました場合には、事務の簡素化の観点から、従来個々に支払いをいたしておりました注射の手数料あるいは調剤の調剤手数料、あるいは従来入っておりました潜在技術料というふうなものは皆一括して基本診療料としてお支払いをいたすことにいたしまして、薬剤そのものの費用事務の簡素化の観点より、六十円未満の薬剤につきましては、平均単価で支払いをいたすということにいたしたわけでございます。従って、薬剤そのものの費用は、別個に平均単価で支払いをいたすというわけに相なるわけでございます。各基本診療料というものを設けますることによって、今の薬剤そのものの費用を平均単価で支払いをいたしまするというこの二つのことによりまして、私どものただいま手元にありまする資料から推算をいたしますると、請求事務は従来に比しまして、投薬料関係は九〇%以上、注射料関係はおおむね八〇%以上、処置料関係は八〇%以上がこの請求事務事務負担が軽減されるものというふうに考えております。なお、さようなわけ合いでございまするので、審査というようなことにつきましても、ほとんど審査の必要がないというふうなことに相なっているわけでございます。  次は、なお具体的には甲表、乙表の中身につきましては、そこにおもなものを書きあげてございまするので、これによって御承知をお願いいたしたいと存じます。  つけ加えて申し上げておきますることは、この甲表におきましては、中央医療協議会の専門部会で各科の大先生がお集まりになりまして、手術の面につきましては、技術の難易差というものにつきまして御検討をいただいておりますが、最終的な結論ではございませんけれども、一応中間的な御報告をちょうだいをいたしておりまするので、それによって手術の難易差というものを加味いたしております。  それから乙表の方でございますが、この方は甲表と違いまして、非常に現行の点数に近いものでございます。ただ違いまするところは、診療報酬総額の引き上げ分をもちまして、従来診療報酬が低額であった診察料、入院料、手術料、検査料のほぼ一割程度の引き上げを行うことといたしたのでございます。すなわち、増額分を医師の技術を伴いまする部面に配って参ったということにいたしたのでございます。従いまして、従来の点数表とあまり相違がございません。さらにこの方法でいきますると、点数表の変更によって減収を来たすという医療機関はないということに相なるわけでございます。みんなふえるけれども、そのふえ方にほんのわずかな相違があるということでございます。  なお、この医療行為の相互のバランス、ことに手術等におきましては、従来の点数に表示されておりまするそのバランスをそのまま機械的に、そのバランスをとったままで、従来のものに一割増しとか何とかいう、ごく機械的なやり方をいたしておるわけでございます。なお、この歯科の場合におきましても、大体このような方針で甲表、乙表ができておるわけでございますが、ただ歯科におきましては、若干歯科の特殊性がございまするので、その面が一般の診療の方と異なっておるのでございます。  それから一番最後に調剤料のことでございますが、これは従来六円という、一日一剤分六円ということで、若干二十七年の調査からいきましても低過ぎるところにきめてございましたので、これを八円ということに増額をいたすことにいたしております。大体この甲表、乙表の中身は域上の通りでございまするけれども、この表を両方併用いたしまして、医療機関の御選択にまかせるという態度をとりましたのは、理想と現実との調和をさような方法で求めたというふうに申し上げたらいいかと存じます。甲表ばかりにそれが理屈として私どもが望ましいと言いましても、現実の医療機関で甲表にいくことはいかがであろうかというふうな医療機関もたくさんあられると思いますので、現行の点数とあまり隔たりのない乙表というものを選択制としておいたと、かように私ども考えておる次第でございます。一応少し長くなりましたが、御説明を終らしていただきます。
  109. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 説明が終りましたので、質疑をお願いします。
  110. 山下義信

    ○山下義信君 ただいま御説明を終りましたが、医療費値上げの問題は、政府案が発表になりましてがぜん世論が非常にやかましく相なった。われわれはこの種の問題がガラス張りの中で、国民の十分検討を加えた上で決定せられるという方法を望んだのでありますが、御諮問は中央医療協議会にかけられたのであるけれども、すでに一般に公表せられて、これに対してけんけんごうごう賛否の声が高く相なって、今や批判が盛んになってきているというこの現象は、われわれの希望通りでありまして、今後とも国民がいかにこれに対して審判を下すか、判断を加えるかということは、われわれとしても注目いたさなければならぬと思うのであります。まことに時期が悪いというか、何というか、今、日本の国情、一般の財政経済状態というものがこういう状態になってきておりまするときに、政府においてはふろ代の値上げをする、あるいは米の値上げをする、あるいは運賃の値上げをするというような一連の反動的な政策が続出いたして、ここに医療費の値上げをするということになって参ったので、国民は非常に驚いて、これに対してやかましく世論が指摘しておる、こういう状態になっておる。私どもといたしましても、十分慎重な検討を加えて判断しなくちゃならぬと思いますが、しかし、大体において私はこれは個人的の見解でもありますが、ひとしく物の値段、価値、物価といいましても、私はこの医療費の問題は、事生命に関する報酬の問題でありますから、一般の物質的な物価と同一的に軽々に取り扱うべきではないと考えておるのでありますが、ただいま御説明を聞いたままでありますから、なお、十分内容を検討して、具体的な御質問を申し上げようと思うのでありますが、本日は政府のお出しになりましたこの案について概略われわれが疑問と考えている点を伺いたいと思うのです。その前に、先ほどから厚生大臣が、これは事務当局案だ、事務当局の案だとおっしゃったが、これは実際は事務当局の案でしょう。しかし、あなたがもうすでに中央医療協議会に御諮問に相なつた以上は、この案は厚生大臣責任において、これは厚生省の案として御諮問になったのであって、そういうお取り扱いでなくてはならぬ。いつまでも事務局案、事務局案では私はないと思う。あなたの責任においてこれはお出しになった案である、かように私は了解いたしまして、一、二伺いたいと思う。  まず第一点は、どういうわけでこの甲表、乙表という二本建の建前にしたかということですね。これは今、理想と現実と、ということを言われて、いかにももっともらしいことを言われたが、これは端的に言って、こういうやり方をしたのでは、非常に医療界を混乱せしめることになりはしないか、こう思うのですね。甲表は病院向きだ、乙表は一般診療所向きだ、こういうことをまことしやかに言っているけれども、実際は甲表が合理的であって進歩的なんだ、こう言う。そうすると、乙表は旧式であって不合理的であって、内容も、つまりこの診療報酬制度の内容が不合理的だということは、すなわち医療そのものもどうかすると怪しいぞと、この乙表を使うものは。甲表を使うものの方は、非常に合理的な医療か行われるのだ、しかも病院向きだと。世間は病院の方をあるいは信用するかもわからない。病院の方は甲表のやり方をするのだ、一般のお医者さんは、つまり端的に言えば、利欲づくのお医者さんは、乙表を使うかもわからぬと言わぬばかりの建前をとるということは、これは医療界を混乱せしめるものでししょう。また、一つには、お医者さんが混乱するばかりでなく、患者の方も甲表と乙表とを見て、これは世論も指摘しているが、どっちがいいのかわからないじゃありませんか。被保険者自体患者の方も混乱するのであって、こういう二本建を使う、これは非常に理想と現実ということをまことしやかに言われるけれども、これは医療界を混乱せしめるものだ、あるいはこういうことをねらっているのかもわからぬですね。ねらっているものとすれば、非常にうまい手を打ったのですが、混乱せしめるものだ。そういうややこしいやり方でなしに——どちらでも同じと言えない。すでに中身が違う、やり方が違う。どちらか優劣があるはずです。どちらかベターなはずです。ベターの方をとって、これ一本で、これならどうだと言って諮問するのが私は当然と思う。これは非常に巧妙に考えておるようだけれども、奥にはいろいろな考えがあるのじゃないかと邪推せられるから、そういう点について、明快に厚生大臣の御説明を願いたい。    〔委員長退席、理事山本經勝君着席〕
  111. 堀木鎌三

    ○国務大臣(堀木鎌三君) 甲表と乙表という二つの制度を採用いたしましたので、これが非常に目新しいために、何らかそこに別に理由があるのじゃなかろうかというふうな御質問でございますし、また、同様の考え方の方も相当多いようでございますので、一応私から答弁さしていただきます。  甲表と乙表というものをしましたのは、根本の趣旨は、今の医療機関のあり方というものにつきまして見ますときに、医療機関そのものの形態がいろいろあるわけでございます。従いまして、甲表をとる方が現実に即しているというふうな医療機関につきましては、甲表を御選択になるであろうし、事実現在のあり方から、乙表が実際に自分の医療機関に適当であるというふうなお考えの方は、乙表をとっていただきたい。で、なるほど一本の方が実際においてはよりベターでございましょうが、医療機関の現実のあり方そのものがそう単一いたしておりません以上、この方法をとることの方が、かえって現実に即しているのではなかろうか。何か乙表は非常に悪いのじゃなかろうか、保守的なのじゃなかろうかという御指摘でございますが、乙表自身につきましては、なるべく現状を尊重して、そうして何と申しますか、先ほど政府委員から説明いたしましたような、技術の尊重という観点から考え考えるべきものについて、新しく点数制度を考えたという意味におきまして、現状よりやはり私は一歩進歩しているのじゃなかろうか。この案のすべてを貫きますものは、やはり医学の進歩、技術の向上ということを考えておりますので、ただそれを組み入れる場合に、何と申しますか、組み入れ方の差が、甲表と乙表に相当大きな差がおるということにお考え願いたいと思います。乙表といえども現状よりは技術の尊重を組み入れてやりましたような次第でございます。いろいろの、案に出しました裏には何にもございません。ただそういう意味合いから申しまして、この二案をもって選択的に考えていただくのが、より現実に即応するのじゃなかろうか、こういうふうに考えておりますような次第でございます。
  112. 山下義信

    ○山下義信君 甲表、乙表に何というか、差があることば言うまでもないことであって、甲表は技術本位だと言うのでしょう。ならば技術に自信のあるお医者さんは甲表を使うのだと、こういうことになるでしょう。乙表というのは、薬にかぶせてどこまでも高い薬が利益になるという現行制度を使うというのが乙表だというのでしょう。だから、乙表をうちの方では使いますというお医者さんは、世間から信用を失うことになる。甲表、乙表という二大建にして、一体健康保険医は、どっちの表によるものが多いという見通しを立てておりますか。どうそれを見ておりますか、半々ぐらいだと思いますか。どうです。あなたは現実のそういう乙表を採用する希望者があるからこういう二本建にしたのだとまことしやかにおっしゃるならば、見通しは乙表を使う者はおよそどのくらいあるだろうという見通しでおられますか。おそらく乙表を使う者はないでしょう。
  113. 堀木鎌三

    ○国務大臣(堀木鎌三君) 山下さんのお言葉でございますが、正確に甲表を使うものがどれくらいで、乙表を採用される方がどのくらいかということは今のところちょっと判断するのに困難を来たしておるのですが、私ども考え方は、乙表をお使いになる方が相当あるだろう、むしろ乙表を使われる方の方が多いんじゃなかろうか。しかし、乙表というのはいかにも技術を無視したようにおっしゃいますが、程度は非常に少い、それを御承知の上での御質問だと思いますが、乙表といえども従来の診療に対しまして技術面を入れておる、そういう面につきまして、ただベースになっておりますものが大体現状を認めて、そうして技術の点で高く買わなければならぬ分に新しく財源を付与しておる、こういうような状況でございますから、しかし、甲表の方は大幅にそういう面を取り入れておるということは事実でございます。
  114. 山下義信

    ○山下義信君 私は政府は遠慮なしにおっしゃるのがいいと思うのですよ。それは甲表は病院向きですよ、それは無床診療所が入院費にこんなたくさんの点数をつけてもらうのは有利だからといって甲表に走ったからといって無理じゃないでしょう。一応病院向きにできておりますが、しかしながら、政府としては、先ほど高田保険局長が御説明になったように、でき得れば甲表にしていきたいと思うがと、それが方針でしょう。甲表の方を採用してもらいたいというのがあなたの腹でしょう。しかもこれは甲表を使ったらほとんど審査が要らぬだろう、これはとても魅力がありますよ、ですから甲表を使うことをあなた方は希望するんでしょう、方針としてはどうです。
  115. 堀木鎌三

    ○国務大臣(堀木鎌三君) むろん私どもとしては現在の医療制度から見まして、現在は技術面の評価が足りないんじゃなかろうかということは考えております。従いまして、今度の場合にもそういう点に重きを置いたことは事実でございます。ただ、医療機関現状から見まして、甲表に一挙に多くの人が移るということは非常に困難でなかろうか、こういうふうに考えております。
  116. 山下義信

    ○山下義信君 それは政府は矛盾ですよ。そういうことをおっしゃっては矛盾ですよ、現実はそうあってもやはり方針としては、甲表なら甲表でいくんだということが一つの方針としてはっきりいかなくちゃならぬ。現に中央医療協議会にはいわゆる甲表に基くところの点数表の検討を命じておられるでしょう、諮問されておられるでしょう。俗にいう新医療費体系の諮問の最中でしょう、その諮問をしておる協議会に現状維持の乙表を諮問をするのはどういうわけですか。自分が諮問しておる通りの線に沿うた甲表だけを諮問するのが建前であって、一方では新医療費体系をこういうふうにするんだと諮問しておいて、それとは反して現状維持に後退するような乙案を諮問するということ自体が矛盾しておるじゃありませんか。その点どうですか。
  117. 堀木鎌三

    ○国務大臣(堀木鎌三君) 中央医療協議会に諮問しておるのは御承知通りでございます。だから私どもとしては、むろん技術の尊重という面が多く加わっていく要素、そういう要素が必要であるということは一貫した思想でございます。これはもう前後常に変らない思想でございますが、甲表を現状からみて便利とし、またとった方がいいとする医療機関もございましょう。それから乙表は何か非常に保守的だとおっしやいますが、現状よりはこれでも少しは技術面に対してよくなる、そういう考え方を持っておるのであります。
  118. 山下義信

    ○山下義信君 政府は、将来健康保険の医療を大体病院主義でいこうという方針を持っておるかどうかという点を一つ念のために聞いてみたい。
  119. 堀木鎌三

    ○国務大臣(堀木鎌三君) その点につきましては、現在の医療機関の全体の状況から見まして、まだ私は、何と申しますか、一応そういう方針を立てたにしてもなかなかそこまでいかない、従いまして、単純な私は方針的なものよりも、現在の医療機関のあり方がだんだん理想に近づいていくという方向に一歩々々進めるべきものだ、こう考えております。
  120. 山下義信

    ○山下義信君 被保険者、患者の方にとったら甲表の方が得につきますか、乙表の方が得につきますかね、どっちをとったらいいでしょう。どういうふうにそれを指導されますか。患者にわからぬじやありませんか。こういう診療報酬の制度は医者向きばかりじゃないでしょう。被保険者に関係があるのですからね。国民にはっきりわかるような医療費の制度にしてもらわなくっちゃならぬ。患者は一体甲表によった方がいいですか、乙表によった方がいいですか。どっちが得につきますか、これを教えて下さい。
  121. 高田正巳

    説明員(高田正巳君) まあ私が甲表の医療機関に行ったり、あるいは乙表の医療機関に見てもらいまして、私がかかってなおるまでということになりますと、大体両方同じくらいのことに相なるようなことになると思います。ただ払い方が違いますので、甲表の方ではこういう名目でたくさん払う、乙表の方ではこういう名目でたくさん払うというふうに、払い方が変っておりまするから、従って、その日その日の払いということになりますると若干相違があるかと存じます。
  122. 山下義信

    ○山下義信君 要領を得ません。それでは患者はその日にお医者さんのすることを予想して、そしてきょうは薬をもらう、このお医者さんだったら指導だけしてもらえるかもわからぬというそのお医者さんの判断をして、これは甲表によった方がいいか、乙表によった方がいいかと……。家族は半分持たなければならぬ。そうして患者の方がまた医者のやり方を見ながら判断しなければならぬじゃありませんか。自分の容態を自分で診断して、きょうは甲表の方の病院に行った方が都合がいい、きょうは薬をもらうから、あるいは注射が必要がないからこれは乙表の方に行った方がいいと、毎日甲表の病院に行ったり、乙表の医者に行ったりしなければならぬ。迷うじゃありませんか。毎日変らなくても、大体どっちの表が患者にとっては得につくかということを聞いている。そういう混迷に陥らしめるということをどうして除きます。
  123. 高田正巳

    説明員(高田正巳君) 先生御指摘のような経済面から見ますれば、甲表の医療機関にかかった場合と、乙表の医療機関にかかった場合と、何と申しますか、その日その日のやり方、その日その日の医療費について比べますると、経済的な面からはそういう問題は確かに起って参ります。しかし、私ども考えでは、甲表の医療機関にかかった場合も、乙表の医療機関にかかった場合も先ほど申し上げましたように、経費の全般といたしましてはあまり相違がないというふうに考えておるのでございます。これをさらに詳しく申し上げますれば、甲表の方にかかりました場合には、技術面の大きい医療行為が行われました場合には払いが多くなります。乙の場合ではその払いの多くなる点が現状よりは非常に小さい、こういうことに相なるかと思います。先生の御質問の、一体どっちの医療機関にかかった方が国民のためになるのかという点につきましては、これはもう甲表をとるか乙表をとるかということに関係なく、その医療機関のよしあしといいますかに関係するわけであります。私は純粋に経済面だけで申し上げておるわけでございます。
  124. 山下義信

    ○山下義信君 これは、その医療機関のよしあしは、甲表乙表にかかわらず、甲表でいいのもあれば悪いのもある、乙表でもいいのもあれば悪いのもありましょうけれども、実際において点数の配置表が違うのですから、点数の配置表が違うということは即医療のやり方が違うということなんです、治療のやり方が違うということなんです。大手術をやる場合には大病院がその技術を持っているぞと言わぬばかりのやり方です、この甲表は。この乙表の方は技術は低いかもわからぬけれども、薬代で相当な料金を取っていく、それでもいいと思うものは乙表で大手術を受けろと言わぬばかりの言い方です、ざっくばらんに言ったら。そういう真相は国民に知らしてあるかどうか知らぬが、そういうことを実際甲表と乙表とも比べてみていろいろ経済的な負担も違うし、また、治療の方もどっちの方が、どっちの方法でやったならば、ただ医療費の支払いだけでなくして、その治療のやり方も違うし、技術本位でいく人と薬本位でいく人と二つに分れるのだと言わぬばかりのやり方ですが、患者さんはどっちの方が、治療も違う、経済的負担もどう違うかといって、これはうろうろしなくちゃならないじゃありませんか、私はやっぱり患者といえども、この甲表と乙表のこの分裂については非常に困ると思いますか、困らぬと思いますか、わかりにくいだろうと思いますか、わかりやすいだろうと思いますか、私はそういう点も確かに混迷の二本建にした以上は、いかなる制度でも二本建にした以上は治療者の方がどっちによろうかといって迷うことは当然じゃありませんか。二本建にした以上は、国民をして迷わさせぬようにその取捨選択に迷わせぬだけの自信がなかりせば、二本建の制度は出せるわけがないじゃありませんか。その点について患者、国民をして迷わせることはない、はっきりわからせるようにするということのその自信がありますか、そういう考え方を持っておりますか。あまり一つことばかり聞いておってもいけませんから、その点をはっきり一つ自信があるならいいです、わからなければないとはっきりおっしゃい。
  125. 高田正巳

    説明員(高田正巳君) 一本であることよりは二本になりますれば、当然先生の御指摘のような問題が起って参ります。しかし、私どもといたしましては、もしこれが実施されるという場合におきましては、それぞれの内容について十分の啓蒙をいたしまして、国民に選択について迷いを起さないような、こちらへ行けばこちらはこうだ、こちらはこうだという内容の啓蒙を十分いたすつもりでおります。
  126. 山下義信

    ○山下義信君 それなら話はわかるのです。優劣をはっきり、どちらがいいのだということをよく宣伝すれば、それはもういい方をとりますから迷いません。両方同じだと言ったら迷います。ですから、それは政府が十分に啓蒙宣伝するということであれば、一応その点は話としてはわかるのですが、実際は混迷してできやしません。  それから次に伺いますが、甲表はこれはもう率直に言って新医療費体系の持ち込みですね、これは一昨年からお互いにいろいろと苦労してきました新医療費体系がここに出てきた、死んだと思ったお富さんがここに現われた、お釈迦様でも御存じあるめえ、ここに出てきたのですが、これはこの前の新医療費体系と今度のこの点数、甲表との著しく改善された点というか、改められた点、われわれが顔を赤らめて論議したのですが、その点がどういうふうに是正されてあるか、一、二著明な点を指摘して下さい。
  127. 高田正巳

    説明員(高田正巳君) 基本診療料という考え方をとりましたのは、この前の新医療費体系に基く点数表よりは異っております。それから先ほどもちょっと御説明をいたしましたように、新医療費体系のあの点数表におきましては、手術の技術差というふうなものが、一応この私ども役人の限られた範囲の頭で若干加味されております。今回はそれを専門家の御意見によって検討をなされた御報告を尊重いたしたのです。それから基本診療料というものを設けたことと、同じような事務的な繁雑さをなくする意味におきまして、先ほど申し上げましたように、薬価につきまして平均単価で支払うという思想が入っております。それらの点が大きな相違と見られるかと存じます。
  128. 山下義信

    ○山下義信君 こまかいことはまたこれで十分拝見してから伺いますが、大体においては、今お話になさったように、私も新聞記事で一応きのう拝見したのですが、大体初診料、再診料というものが前回の新医療費体系の点数から見ると相当これはふえるですね。それから指導料というものがぐっとふえておりますね。前回の新医療費体系のときの点数から見ると、それから入院料がぐっとふえた、なるほど病院向きでそういう点は相当点数がふえておりますね。しかしながら、その他の点については大差ないように思いますが、著しく点数がふえたのは、こういう点が前回われわれも攻撃した一人ですが、指摘した一人ですが、そういうような程度ですか。大体手術料等はあまり大差ないのでしょう、前回と。
  129. 館林宣夫

    説明員(館林宣夫君) 前回のいわゆる新点数表と比較いたしますと、手術、検査処置というようなものの非常にむずかしいものが上っております。ことに手術は中間報告をもとにいたしまして、各手術相互間のアンバランスを改めて、またさらにより高く評価してございます。なおまた、内科方面ではレントゲンの読影料、それからただいま御指摘ございました指導料、これはかなり大幅に各種疾病に認める方針で、指導料というものを。また、深夜の医師の往診というようなものも、非常に御苦労を考えまして、これも新設して非常に大幅な点数を加算できるようにいたしたわけであります。なお、先ほど来、御説明申し上げておりますように、事務簡素化の点では先般発表いたしましたものに比較すれば格段の差異がございます。
  130. 山下義信

    ○山下義信君 こまかいことを言って済まぬですが、今、館林さんの説明の中に、私の見た程度では、深夜の初診及び再診料の加算は、これは現行二点を今度は甲表では十点取っている、しかし、前の新医療費体系のときも十点だからあのときよりはふえていないということになる。  それからもう一つ、念のために、重大なことだから伺っておきますがね、今度の診療報酬の改訂で、甲表でも乙表でも、両方を通じてこの医療内容の改善ということが、医療内容向上、これはいつも言われている、保険の診療は制限されて十分な診療が行われていない、ただ給付の引上げだけでなくて、その医療の内容も一つできるだけ向上ささにゃならぬ、そういう点はどうなっておりますか、考えられていますか。たとえば今まで使うことを禁止した薬は今度使わせるようにしたとか、いろいろな処置もできるだけ十分な治療のできるようにしたとかという、この医療内容であります、テクニックでは治療内容というか、そういうものの改善はどう考えれているか。
  131. 館林宣夫

    説明員(館林宣夫君) 甲表をごらんいただきますと、非常に多数の点数が新設されておりまして、新しい治療法が加味されております。これは従来、現行の点数表ではあまり明確を欠いておったものでございます。また、理学的療法等におきましても、新しい治癒法を入れておりまして、新しいたとえば心臓の機能検査というようなものの最新式のものに対しては相当高度の点数を設けてございますので、このような医療がどしどし促進されて行われるようになるという意味合から医療内容の向上が考えられると思います。
  132. 山下義信

    ○山下義信君 それは乙表にでもですか。その検査の方法がこういう精密検査、高度の検査を認めたというのでなしに、いわゆる従来禁止しておった新薬高貴薬、そういうものをどしどし使えるようにしたのか。これは甲表、乙表を通じてですね。これは大事なことなんです。
  133. 館林宣夫

    説明員(館林宣夫君) その内容的な点は甲表、乙表同じでございましても評価が違いますので、高度の医療が、その医療を行えばあるいは損かもしれないというような憂いのあったような点が改善せられておるようでございます。
  134. 山下義信

    ○山下義信君 こういうこまかい点はこまかい点であるけれども、しかし、大事な点であるから、そういう改善された点はどういう点を改善されたかという点を資料として出していただきたい。われわれは生命に関することですから、かけがえのない命のことですからね。パンが上ったといえば少し安いパンを食べようとか、米が上ったといえば少し安い米でがまんしようとかいうわけにはいかないので、これは命のことだから、安かろう、悪かろうというわけにはいかないので、十分な治療もして、やはり高い薬も使ったというようならば、少々上ることもがまんしてもいいという理屈はでてくるけれども、医療内容は同じであって、そうして医療費が引き上げられるということになると、なかなか世論がきびしいですから、これはその点を世論が指摘しておりますから、どういうふうに医療内容が引き上げられたかをお示し願いたい。  もう一つ伺いたいことは、二百十七億医療費がふくれるというが、どうしてふくれるのか、どこからこういう計算をしたわけですか。
  135. 高田正巳

    説明員(高田正巳君) 三十三年度の医療費全体、いわゆる社会医療費全体がどうなるかという推計をまず出しまして、管掌別にいたしまして、従って受診率の増加と、例年ございまする傾向もその中に入って、さらに各管掌の被保険者の増加、ことに国保におきましては毎年五、六百万人程度国保の被保険者をふやしていくという計画もございます。それらをも人員の増というものも見込みまして、各管掌別の三十三年度の医療費を一応今日の資料で推計をいたしたのでございます。そういたしますと、大体二千四百億余りになったということでございます。三十二年度の予算できまっておりまする社会医療費はたしか二千七十何億であったかと思います。さような三十三年度の推計をいたしまして、そうしてそれの大体八・五%程度のふくらみというふうにいたしますると二百億あまりの金が出て参るわけでございます。
  136. 山下義信

    ○山下義信君 二百十七億ふえるという始末はどういうふうにされますか。厚生大臣
  137. 堀木鎌三

    ○国務大臣(堀木鎌三君) それが今御質問になりましたものがこの問題について最終的な判断をする時期じゃなかろうか。今お話の二百十数億というものをいかに吸収するか、こういう問題が残されておりまして、これが今回の、できますならば三十三年度の予算において処理いたしたい、こう考えているので、今それらにつきましてはいかにすべきか、負担吸収割合をせっかく検討いたしておるのでありますが、まだ御承知通りに、予算も本格的に審議に入っておりませんので、今きめる、きめなければならない、今きめなければ間に合わないという段階ではございませんので、種々研究をいたしておるような次で第ございます。
  138. 山下義信

    ○山下義信君 これはこれだけ医療費かふくらんでくるということになれば、当然始末は考られなければならぬことであって、この予算の裏付けができなかったら、これはもう何にもならぬことになる。一ぺん撤回しなければならぬことになりますから、これは並行、常に並行でありますが、一応政府は一部を国庫補助でもって、国庫負担に求め、一部を被保険者の保険料の増徴によってこの財源に充てようという考えがあるかのごとくに新聞に出ていますが、そういう考えを持っておられますか。あるいは新聞の報道はうそですか。
  139. 堀木鎌三

    ○国務大臣(堀木鎌三君) むろんあの問題につきましては、新聞には出ておりますが、ほんとうに何にも交渉を開始してないのであります。ただ私どもとしては適正な医療報酬を考えなければならぬという事柄と、もう一つ今おっしゃったような、これをどういうふうに吸収方法を講ずるかという問題と二つあるわけでございますが、吸収方法はむろん従来の例によれば、方法としては三つぐらいよりないわけです。すなわち、国庫が負担する場合、被保険者が負担する場合、あるいは保険事業主が負担する場合、いろいろあるのでありますが、それらにつきまして、もう少し時日をかしていただかないと、お答えする段階にまだなっていない。しかし、吸収の方法、予算の大体の方向がきまる時分には、中央医療協議会の御審議と並行して物事をやって参りたい。中央医療協議会自身におきまして、またある程度の修正が起るかもしれない。そういう意味合いからもちましても、今私どもとしてはきめる段階ではないのでなかろうか、こういうふうに考えております。
  140. 山下義信

    ○山下義信君 その費用負担の区分はいろいろおっしゃったけれども、被保険者の負担というのはまっぴらですから、これはよく申し上げておきます。これは一銭一厘なりとも被保険者が負担するということはまかりなりません。その他のことでいい御名案が出るならば、しっかり心配しておいていただきたい。しかし、私が思うのには、厚生大臣いかがでしょうか。国庫負担にその財源を、かりに求めたとすると、もう一昨年といいますか、年来自他ともに叫び続け来たった国民皆保険への、これは非常に大きな障害になる。国が国民皆保険に必要とする負担もしようし、たとえば健保二割、国保三割、いろいろとそういう負担もしようし、五人未満の被保険者も吸収しなければならぬ。いろいろ費用が要る。今の状態で続けていっても、国保を普及しても、相当負担増を要求しなければならない。そこへ持っていってこの医療費のふくらましてさらに国庫の負担をかけるということが果して可能であるかどうか。それが不可能ということになれば、いわゆるこの国民皆保険のために国の負担を求めようとする、その財源を食わなければならぬことになる。国民皆保険の計画は、この医療費のふくらましによって阻害を受けることはありませんか。いかがですか。その辺の見通し。御所信。
  141. 堀木鎌三

    ○国務大臣(堀木鎌三君) 今申し上げたように、何と申しますか、負担割合につきましてまだ具体的な案をきめる段階に達しておりませんので、国民皆保険を進める上に支障になるのではないかという問題になりますと、今山下さんのお話のように、被保険者の負担というものがふえて参りますことは、相当皆保険を推進するのに支障になるはずであります、当然。私どもとしては国民皆保険を進めていく、また、社会保障制度の性質そのものからも、国民負担というものについて負担をなるべく軽減したいということは当然の事柄でございますが、吸収方法については、今実は先ほども申したように研究中なのでございまして、また、これらにつきましては、国家財政全体の問題、あるいは国民所得の問題等とも勘案いたさなければなりませんし、諸種の問題が考慮の中に入って参る。これはもう御承知通りの各種の条件が入って参るということで、もう少し私どもとしては研究をしている段階でいいんじゃなかろうか。こういうふうに考えております。
  142. 山下義信

    ○山下義信君 私は基本的には保険医の待遇を改善するということは賛成です。これはわれわれも年来言ってきていることなんです。保険医をいじめて、保険医の待遇を薄くして、それで保険の運営が円滑にいくというわけはない。保険医の待遇改善ということはわれわれも異議がない。しかし、全部の保険医を——もう無制限に増加してくる保険医を——たとえば今年でも数千人でしょう。大学卒業すればすぐ保険医になれる。すぐ開業したらなれる。無制限に増加してくる保険医を、全部の待遇をこれを十分にするということは不可能なんです。これは保険医の数が減少したら、二・二倍どころじゃありません、三倍、四倍、こんなに点数を増加しなくても、いわゆる単価を引き上げなくても、現状のままでも、保険医の数が適当に整理せられれば、少数になってきたら待遇はずっとできる。全部の保険医が全部受けるように、そんなことのできるわけのものじゃない。これは政府においては保険医制度の上においても、ただ待遇改善ということは点数単価のこの医療費の引き上げだけでなくて、その他いろいろ改善策もあろうけれども、根本的には保険医というものは無制限に増加させるという考え方ですか。その辺をどういうふうに基本的には考えているのすか。
  143. 堀木鎌三

    ○国務大臣(堀木鎌三君) まだ、そういう将来の基本的な問題につきましては、私としては今まだお答えできる準備がございません。むろんおっしゃるような、こうなればこうなるということはよくわかります。しかし、卒直に申して、総医療費はややふえて参ることは点数自体をいじろうといじるまいと、単価をいじろうといじるまいとふえてくる傾向、しかも、それは生活水準の向上に伴って当然起り得る現象でありまするから、それに即応してこれらの制度を考えて参るということは必要だと思います。現在の状況では、お医者さんのふえるよりは総医療費のふえて参る方が多い状況であります。従いまして、すべての点から勘案して、今言われました問題は将来の方針として研究すべき問題ではあると思いますが、今私がお答えするだけの準備ができておりません。
  144. 山下義信

    ○山下義信君 最後に私は、この二百十七億——この程度のやり方をして二百十七億医療費がふえるということについては、政府の方では、非常にふえるぞと言った方が都合がいいのか、そんなにふえないのだから、この程度の引き上げはしようと言った方が都合がいいのか。この程度引き上げしても、二百十七億と、こんなにたくさん医療費がふえるのだぞと言った方が都合がいいのか。一体どっちが都合がいいのですか。
  145. 堀木鎌三

    ○国務大臣(堀木鎌三君) どうも大へんむずかしいお話ですが、私どもこの問題を政治的に考えるよりは、むしろまじめに社会保障及び国民皆保険の推進の上であるべき姿にわれわれ自身がいいのだ。こういうふうに考えておりますが、二百十七億といいますと非常に大きくも考えられますが、先ほど保険局長が言いました二千四百億くらいの社会保険医療費のうちでの問題でございます。従いまして、それが八分五厘になる。しかしながら、われわれ自身として、今の国民経済及び財政の状態からは、まずここら辺がいいところじゃなかろうかという考え方で、一応中央医療協議会に御諮問申し上げ、そうしてその御意見を組み入れて最後に決定いたしたい、こういうふうに私は考えております。
  146. 山下義信

    ○山下義信君 もとより厚生大臣仰せのように、この種の問題は、これは大きな観点から立てば言うまでもない、国民生活関係があるのですからね。保険制度の上においても重大問題ですから、非常に大きな政治問題ですが、政治的の意図があっていろいろにこれが色が塗られてあり、色がつけられてあるということがあってはならぬのであって、言うまでもなく、厳正公平にすべてが割り出されていなきゃならぬことは言うまでもない。しかし、私はそうなればなるほど二百十七億の医療費の増大ということは私としては信じられない。これはあなた方のこの計算の出し方に私は不まじめなものがある。この二百十七億のこれだけふくれるということは、現在のいろいろな受診率、また、診療件数その他三十三年度の伸びに向って八分五厘をかけたものである。そうして出てきたものである。こういうことを言われる。私はこの説明は不まじめだと思う。真実でないと思う。真実は甲表、乙表のこの新しい制度を実際に実施した上にいかなる影響が起るかということを勘案して、それによって与えられる影響から医療費のふくらましが出てこなきゃならぬと思う。あなた方が年来叫んでおる新医療費体系、われわれもその考え方においては賛成というこの合理主義の診療報酬制度は、言いかえてみるというと、むだな治療を排除し、要らない薬を押し売り的にやっておるような、そういう問題の診療方式をやめさせる。そうして技術中心に、いわゆるむだな医療をさせないように、いたずらに注射をぶつぶつ打つようなこともやらせないように、不要な薬品をたくさん使って、それに一つのプラス・アルファーをつけさせるようなことをやめると、合理主義でいけば医療費が安くつくということが年来主張しておるところです、新医療費体系。従って、そういう行き方をする甲表、また、その精神を若干取り入れたという乙表——乙表の方は取り入れていまいけれども、大体においてその方式でいくならば、俗にいう頻度の上に影響を受けることは当然である。もしそうでないならば、ここの説明にも言うた、医療の合理化をはかる、医療内容の向上をはかる、このうたい文句は、かねて年来厚生省が新医療費体系によって、いわゆるむだな医療の排除をする、医療費の低下をはかるということを言ってきておる。この新しい診療報酬によってやるならば、俗にいう、専門家の諸君が言う頻度の上に大きな影響がくることが予想される。私ども考えでいくならば、前回新医療費体系を政府が打ち出したときに、どのくらい医療費が低下するかと、相当低下するつもりでおりますと、これは速記に載っておる。某厚生省の幹部は、これをやってみるというと、俗にいう医薬分業方式の診療報酬体系、これをやってみるというと、あるいは二割くらい安くつくかもしれぬくらいのことをもらした人もある。この一割上げる、八分五厘上げるというが、この方式をやって、医療費が一割下ったということになれば、現在より医療費がふくらまぬじゃありませんか。この新しい制度を実施した影響がどういうふうに見ているかということを明快にして、その上で医療費にどれだけの影響を来たすという、そういう予想を立てることがほんとうでしょう。今のような平面的な数字の上に立てていって答えを出したような、そういう二百十七億という数字は、私はいつも柳の下にドジヨウがおるとは言わぬ。しかし、前回あなた方が六十七億の赤字で、われわれはさように信ぜぬと言って論争して、今日の保険経済の結果を見たのでありますが、私はこの二百十七億という医療費のふくらまし、新しい診療報酬制度を、これを点数表を実行してこういう状態になるというのであるならば、甲表の、合理的な新点数表は価値ないということになる。私はもっと点数を上げても、あの合理的な制度を使うならば、点数表を使うならば、もっと点数を上げても、実際には現状よりふくらまないでもいくかもわからぬくらいの私は価値がなければ、甲表というものは声を大にして左右する値打がないと言わなければならない。私は二百十七億というこの数字には非常に疑問がある。場合によっては、果してこうなるかということを実際に徴して、頻度予想を立ててやってみて、あなた方は前回の新医療費体系でやってみたことがあるじゃありませんか。この表で実際にやってみて、そうしてその上に立って論争しなければなりませんが、私はこういうふうに、このくらいの計算、平面的にかけたこの二百十七億という数字は信用できない。しかしながら、こういうことによって医療費をむやみに要求する医師会の要求を押えよう、これだけやっても二百十七億がふえるのだといって驚かすために使うようなら黙っておる。あるいはまた、これだけ要るといって大蔵省に交渉するに便利のいいものなら黙っておる。しかしながら、新しい合理的なこの甲表を主軸としてやっていくということをやるならば、私は今のような平面的なかけ算で出る二百十七億という数字には多大の疑問がある。これは実際的な数字でないと申し上げざるを得ないのですが、厚生大臣の御所見はいかがですか。
  147. 堀木鎌三

    ○国務大臣(堀木鎌三君) 先ほども政府委員から御説明いたしましたように、二百十七億とか百七十七億とかいうものが、ただ一つの引き延ばしによりまする金額であって、実際施行の上でどうなるかということは、確かに私はその通りになるとは申し上げかねます。おそらく二百十七億とか百七十七億というものは実際の面において狂うであろうということは、前提になります条件が、その金額を出しましたのは今と同じような方向でいく、こういうふうな推計の上に立っておるからであります。まあ、山下さんの御理想までは達しませんけれども、今回の診療費の算定方法に当りまして私どもが単価だけをいじらずに、単価と点数の双方から見ましたのも、御趣旨の方向に向おうという意図の現われだとお考え願いたい。ただ、山下委員の理想までは参っていないから、おしかりを受けるだろうと思いますが。
  148. 山下義信

    ○山下義信君 理想々々と言われると迷惑する。私はこういう政府案を批判したのであって、やはりあなた方の方向を進めていくについての問題点を指摘しておるのです。
  149. 堀木鎌三

    ○国務大臣(堀木鎌三君) 方向としては、私どもが単価だけを直せという世論が強いにもかかわらず、単価と点数の双方について検討を加えましたのは、今言われましたような方向を指向しておるということの立証だと私は考えております。
  150. 山下義信

    ○山下義信君 私の質問は一応この程度で打ち切ります。
  151. 木下友敬

    木下友敬君 厚生省は今医療経営がどのくらい困窮しておるかということは、もうたびたび申し上げておるから御承知のことであると思うのです。そこで、公的病院におきましては、従業員の給料が上げられない。また、国立病院におきましても、患者の食事をごらんになればあの通りなんです。何とかしてこれをもう少しよくしてやらなければ、被保険者なり、国民全体が困るということはよく御存じだと思う。ですから、前の神田厚生大臣は、もう非常に早い時期に、少くとも私ども考えれば七月か八月までには新しい単価をお目にかけて実施するところに持っていこうというようなことを言われたので、私どもは非常に明るい感じをもっておったのですが、ところが、大臣はかわるは、高田局長は右往左往しまして、これがいまだに出てこない。八月中には出すと言われた大臣も、すでにきょうは十二日でございますが、きのう十一日にやっと中央医療協議会に出たということで、だんだんおくれてくることは私非常に残念だと思う。ことに、今度の点数改正を一緒にされましたために、この点数改正を審議するだけでも、これは医療協議会におきましても非常に手間取ることです。前の新医療費体系が手間取って今も日の目を見ないのも、この点数改正という大きな問題があるからでありまして、この急ぐ矢先にわざわざ手間のかかる点数まで扱ってやられたということは非常に残念に思いますが、おそくなったという責任は当局は十分とってもらわなければならないと私は考える次第でございます。  なお、私は今度の政府の案を非常にまじめに調べていきたいと思うのでございますが、遺憾に思うのは、この計算の基礎、立案の基礎になっておるのが昭和二十七年三月の実態調査、あれを基礎にしておるのであります。二十七年と言いますと、今からすでに五年前のことであります。新医療費体系を一生懸命勉強しておられましたし、何とか医療費の改正をしなければならぬということであるならば、この五年の間にもっと新しい資料を作るべきだったんです。二十七年から三十二年の今日までのほほんとしておって、三十三年の実施に向って、二十七年の資料によってやろうということはこれは非常な怠慢だと思うのです。ことに二十七年と申しますと、当時は健康保険いわゆる社会保険と、一般自由診療との比率を見ますと、一般自由診療は三五%、六五%が健康保険だと言われておったけれども、今日ではもう自由診療は一二%だ、あとの八八%が健康保険だ、こういうような比率になっている。根本的にそこまで差が出ておる今日に、二十七年度の調査を役立たせようという考えは、初めからこれはもう間違った考えだと思うのでございます。  なお、その健康保険あるいは自由診療、その補正というようなことも、今度の案では十分に私はこれを見取ることはできない。なぜ、二十七年度の調査を基礎にして今度の案をお作りになったか。なぜ、そう怠けておったかということについて、一つ、当局の弁明を私聞いてから質問に入りたいと思う。
  152. 高田正巳

    説明員(高田正巳君) 私どもが今回の案の基礎に使いました経費の方の点は、二十七年の調査でございます。その後、三十年に社会医療調査というものをやりまして、医療行為の頻度なりあるいはさらに主要薬品の価格なんというふうなものを調べております。経費の方のは二十七年でございますが、頻度等は三十年の頻度の変化をこれで考えております。基礎に使っております。  なお、御指摘の自由診療の問題でございますが、私どもが今お目にかけました数字は、自由診療も社会医療と同じような値段でやったとして、これだけになるというやり方でございます。従って、自由診療の多いところは、自由診療と社会医療との差額があるといたしますれば、それだけが別個に加わるわけでございます。それでその移り変りは、これは毎年統計調査部でやつておりまする患者調査というものがございます。二十七年当時はたしか百人のうちで四六・七%であったと思いますが、自由診療があったのでございます。ところが、今、先生御指摘のように、最近におきましては、自由診療というものが非常に減って参りまして、三十年の七月の調査におきまして、全額自費は一九・一%、労災その他で二・二%、合せて二一・三%に減っているわけでございます。さらに、私どもが今回この推算をいたしまする際には、先ほども申し上げましたように、三十三年の年平均にまで延ばしておりますので、今の自由診療と、労災その他を含めましたいわゆる私ども社会医療と申しておりまするもの以外のパーセンテージは一三%程度に減るであろうという推定を加えてこの資料を作成いたしております。さようなわけ合いでございます。
  153. 木下友敬

    木下友敬君 私はそこが非常に不満なんです。たとえば支出面では二十七年度のを使い、薬価などは三十年のを使うというような、勝手に都合のいい資料を、あれを集め、これを集めして作るということは、それは都合がいいかもわかりませんけれども、一貫した結果が出てこないというおそれを私は十分考える。なぜ二十七年から今日までの間に実態調査をしなかったかということを、私は理解に苦しむわけなんです。  それからまた、その前に一つ大臣にお聞きしておかなければならぬことがありますが、先ほど山下委員の御質問でございましたが、あの中で大臣はこれからは病院主義でいくのかどうか、厚生省としての医療問題に関する考えはどうかということの質問に対して、病院主義でいくのが理想であるけれども、現実を考えてだんだん理想に近づいていくつもりだということを言われたと思いますが、間違いないでしょうか。
  154. 堀木鎌三

    ○国務大臣(堀木鎌三君) 私は山下委員の御質問に対して病院主義でいくのだと言った覚えはなくて、むしろ山下委員からおしかりを受けた。現状をよくみて、それに即応して一歩ずつ医療内容が向上するようにもっていきたい。こう申し上げたのでございます。
  155. 木下友敬

    木下友敬君 私が聞きましたところでは、理想は病院主義であるけれども、現実の問題を考えながら理想に近づいていくのだということを言われたように受け取っております。これは速記録をあとで見れば明らかでございますが、私は医療制度というものは、やはり公営のものと私営のものとこの二つからなっている今日の状態が一番いいと考えておる一人なんです。それを病院主義というものは、おそらくこれは公的の意味で使われたのかもわかりませんし、あるいは大きな資本のあるところの私の病院を意味されたものであるかもわかりませんが、そういうことからすれば、もちろん大きな資本をかけて、そうしてりっぱな病院がたくさんできるということが理想であるのに違いないけれども、ほんとうの意味の医療制度というものはどうしても公的のものと私的なものとの二本建が必要であると私は考えるのですが、大臣のこの点に関するお考えをもう一度はっきりさせておきたいと思う。
  156. 堀木鎌三

    ○国務大臣(堀木鎌三君) たしか私は山下委員の御質問にそう端的に、遠い将来のことを今から方針を立てる段階とは考えておりませんということを申し上げたと思うのであります。でありまするから、現在の状況から、そういう方針を立てるのにはまだ早いのじゃなかろうか、将来の方針を——ずっと先の方針を今私が立てることは何も実益がないわけでございます。そういう意味から、私は現状に即して医療内容がよくなって参る方がいいということなんであります。医療内容が現実によくなって参りまして、その医療機関の設備がよくなって参りますれば、医術が進歩してくるような方法をとることがいい、こう考えるだけであります。
  157. 木下友敬

    木下友敬君 もう少しはっきりしておきたいのですが、私は公的病院がどんどん栄えていく。それから医療内容がだんだんよくなった私的の診療所がふえていくということは、非常にいいことだと思う。しかもその二つが、私的のものを加えて、その医療機関が両両相待って国民にサービスしていくというのが一番いいことであると思う。すべてが国営の状態とか公営の状態になっていくということには反対でございまして、医療が社会化されるということは、これは必然の行き方であります。現在におきましても社会保険というものがどんどん進んで、国民健康保険が全国的に広がっていく、国民皆保険という状態になっていくということは、私は非常に希望するところであるけれども、経営自体がすべて公営になっていくというようなことは、これはよくないことだと私は考える。大臣の腹は一体——大臣は医療というものは国営でやるべきものか、すなわち公営としてやるべきものか、あるいは私的のものをこれに加えて、現状のような状態でいくべきものかということについてきまった腹をお持ちになっていないような気がします。それでは私は厚生行政の大御所である大臣としては心細い次第ですが、これは私はもう一ぺんあらためて、将来は公営一本でいくのだ、医療公営にもっていかなければならぬと、自分は医療に関する限りはそう考えているのだということであるか。あるいは内容は別ですよ。内容がよくなることは、これはよくなることを希望するのはだれでも希望するのだけれども、そういうことでなくて、やはり私的のものと公的のものとの二つが要るのだ、しかし、これが国民にサービスするのはすべて医療の社会化によってサービスしていくものだという私の意見と同様であるかどうか、この点を一つはっきりさしてもらいたい。
  158. 堀木鎌三

    ○国務大臣(堀木鎌三君) 私の表現が悪いのか、実は私は公営主義者ではないのであります。御承知通りに、この社会保険につきまして一番悩むのは、お医者さんの自由な診療というものを認めていく。そういう一つの国家統制のワクに全部入れてしまうことがほんとうに医学の進歩になり、医術の向上になるかという点については、私自身として疑問を持っております。従って、公営主義者でないことだけははっきり申し上げます。
  159. 山下義信

    ○山下義信君 ちょっと観念の整理をしておかなければならぬのですがね。医療機関の公営主義ということと診療保険の公営主義というのは違いますからね。ですからどういうことを言っておられるのですか。将来国民皆保険に進んでいく上について、当局は先般、一部の新聞に出ておりましたが、この健康保険に関する現業の経営部門をみんな公社のような公団方式……今、政府の手でいわゆる管理、監督しておるか、その現業的な経営面は公社方式のものを作ってそういうものにでもやら厄よう、つまり言いかえれば、健康保険の一部に民営方式でも入れようというお考えなんですか。こういうことですか。医療機関として公的医療機関と私的医療機関と両方使うのはこれは当りまえの話です。公的医療機関にみなしていくことはできやしません、百年たっても、五百年たっても。また、そういうふうにする必要もありません。ですから政府は、何ですか、公営をしないということは健康保険の公営をしないということですか、また、同時に一部を今のような公社方式にでもするというあの新聞の報道は事実ですか。そういうお考えをお持ちですか。
  160. 堀木鎌三

    ○国務大臣(堀木鎌三君) 今、木下さんのお話は、これは経営主体の問題だと思うのです。御質問は、経営主体について公営主義をとっておるわけではないということをはっきり申し上げたたけであります。
  161. 山下義信

    ○山下義信君 それでは健康保険を民営でやらせようというのですか。今の健康保険の経営主体は全部公的ですがね。政府または市町村もやっておりますが、政府の管理下にほとんど公営ですが、それを一部民営にでも移譲しようというのですか。
  162. 堀木鎌三

    ○国務大臣(堀木鎌三君) 先ほど木下さんのおっしゃったのは、経営主体を全部公営にもっていく意図があるのかどうかという御質問でありました。そうでございましょう。私はそれについて、何も健康保険と社会保険とのつながり、関係において、経営主体がみな公営でなければならぬという原則は一つも持っておりませんということを申し上げたので、経営主体の問題について申し上げただけであります。
  163. 山下義信

    ○山下義信君 私まだはっきりしないのです。観念の整理ができていないが、どういうことを言っておるのですか。健康保険を一部民営を入れてやるというのですか。それはどういう方式ですか。たとえば国保で申しますと、市町村営とそういう地方公共団体が経営主体でないあるいは健康保険も政府管掌でやっております。ただ健康保険組合は組合方式でありますが、その他はほとんど公営ですがね。将来民営方式を経営主体の上でとるということは、どういうことですか。これは大事なことですからおっしゃっていただきたい。
  164. 高田正巳

    説明員(高田正巳君) 木下先生が御質問になりまして大臣がお答えになりましたのは、医療機関の経営主体の問題でございます。今山下先生が御質問になっておりますのは社会保険の経営主体といいますか、保険者というものをだれがやるかという問題についての御質問でございます。で、後者の山下先生の御質問につきましては、社会保険でございますので、組合でございましてもやはり公けのものでございます。従って、これは社会保険で、しかも強制ということになりますというと、当然公営でやるべきものと存じます。
  165. 木下友敬

    木下友敬君 それで今現在、中央社会保険医療協議会に一つ案が、以前から出た案がございますが、あれはあのままになっておりまして、今度新しく甲、乙に分けた案を出しておられますが、あの案との関係がどうなるか、あれはただ研究にまかしておいて、実施していこうと思うものはこの甲、乙であって、前から諮問にかかってるのは、あれは一体どういう運営にまかせるつもりであるか、これを一つ……。
  166. 堀木鎌三

    ○国務大臣(堀木鎌三君) いわゆる新医療費体系なる名のもとに現在中央医療協議会にかかっておりますのは、私どもの見込みでは結論に達するのには相当時間がかかるであろう、現にもうたしか二年くらいにわたりまして御審議を願っておるような次第でございます。おそらく結果的には相当理想に近いものができ上ることを私どもとして期待いたしておりますが、一方におきましては木下先生もそうでありますように、現在の単価制度というものについては現状から見て非常に御不満が多い。これを改善することが私ども国民皆保険を推進する上においては必要だという気で、とりあえず差しあたり来年度からは織り込めるような案として御審議願えないだろうかというのが私の真意でございます。
  167. 木下友敬

    木下友敬君 そこで私は非常に矛盾があると思うのですよ。新医療費体系は、あれはちょっとやそっとではできない。それだからとりあえずすぐにでも御審議願えて、そうして結果が出そうなこの甲、乙案を出して諮問したんだと、こういう仰せのようですが、この甲案なんていうのは、これは新医療費体系と同じなんですからね。あの新医療費体系が何年もかかるというなら、新しい甲案というのは、向うが二年ならこっちは三年かかりますよ。あれよりかもっとむずかしいことが今度は出てきておるんだ、そういう意味においては、私は諮問してある新医療費体系はそのままにしておいて、新しく甲、乙という二つの案をここにお出しになったということは納骨がいかないのです。これについてのお考え一つ……。
  168. 堀木鎌三

    ○国務大臣(堀木鎌三君) 率直に申し上げて、少くともある程度私としては医師の待遇を改善するということが国民皆保険を進めていく上において必要だ、こう考えましてそれを早急になるべく早く実施いたしたいという考えでございます。その上に立って物事を考えましたときに、御承知通りの単価だけを差しあたりいじったらいいじゃないかというお説もございますが、今御承知通りの医療費全体をふやして参るというときに、現状のままで点数をおいとくのは、案としても私は同時にやはり考えるべきものじゃなかろうか、こういうふうに考えまして事務当局に命じたような次第でございます。従いまして、差しあたりの現状において私どもとしてはこの両方を御審議願うのがいいんだという考え方基本に立ってでございます。ことに甲表、乙表と二本建にいたしましたことも、全体を考慮して、これならば実施に当ってもまあ現状としてはできるだけのことを考えてもこうでなかろうかというふうに考えて、現実に即してものを考えたつもりでございます。御承知通り、全体の情勢としても単価だけいじるべきだという御議論と、単価と点数をいじってできる限り合理化を考えろという御意見と双方が私はあると思うのでありますが、現状においては、私どもとしてはやはり点数、単価を考慮すべきもの、両方をあわせて解決に向うべきものではなかろうか、こういうふうに考えております。
  169. 木下友敬

    木下友敬君 私の考えでは、この際、点数表を扱うべきだ、これを改めるべきだという考え方は医療費問題の解決を長引かせようという考え方を持っておる人の考え方で、なるだけ解決をおそくしようという意図があれば、この点数表を扱うということを言いさえすれば何年でも延びていくわけです。それは新医療費体系の例でもはっきりしておる、ところが、私はこれは厚生省の中に二つの流れがあって、これは想像ですけれども、今の点数表で単価だけ上げていけばいいんだという考え方と、いやこれは点数表も改正していかなければいけないという二つの考え方があるんじゃないか、そのなまのままの二つの体系がそのままここになまのままでほうり出されたという形ではないか、自信がないから二つとも出してみようという考え方ではないかと思う。もしそうでないとして、ほんとうに乙案というものがここに、諮問に出す価値があるならば、乙案というものは今の点数表そのものと考えてもいい、大体それに〇・八五がかかったというだけですから、これこそ今の点数表のままで単価だけをいじったというのと大差ないわけです。すなわち甲乙というものは、一方の方では単価だけいじった一つの案と、一方の方では単価とそれから点数表をいじったという二つのものをなまのままでここに出したというだけです。私はそれからいけば明らかに単価だけを上げても不都合がないという一つの例がはっきり出されておる、乙の方では。そう非難されることなくここに生きておるんだ、こういうふうに考えるのですが、そのことは再々当局の方から言われました乙案というものは、今までの点数表にただ単価だけをいじった形で、幾らか増した形だということを言われました。この点の考え方をはっきりさして下さい。
  170. 高田正巳

    説明員(高田正巳君) 私の先ほどの説明であるいは木下先生が乙表というものは現行の点数表のままで単価だけを引き上げたこととほとんど変らないようにお取りになったかもしれませんけれども、そうではございませんで、やはり現状よりはある程度の私ども考えておる方向に前進をいたしておるのでございます。なお、省内に単価だけで点数はいじらなくてもいいんだという考え方もあるやに推察され、それがこの姿になって出てきたのではあるまいかというような御質問の御趣旨でございましたが、省内にはさような考え方はさらざらございません。医療費の値上げをやる以上は、少しでもこれが合理的に使われるようにということを考えますることは私ども当然の責務と考えておりまするし、また、先般の国会で、これは衆議院でございましたが、つけられました付帯決議におきましても、点数、単価の両方について検討をしろという付帯決議がついているわけでございます。さようなわけ合いでございまして、私どもといたしましては、省内にさような考え方を持っている者はないということを申し上げておきたいと存じます。
  171. 木下友敬

    木下友敬君 私は少くとも厚生省が出す案に甲乙二つの案があってはいけないと思う。ことに甲の案を見てみますと、これは点数の改正がおもになっているようですが、これは非常にこの中にごまかしが多いと思う。たとえば入院料などでも五十何点に上っている。山下先生のような烱眼の方でさえ入院料は非常に上っていると言われますが、数字は上っているけれども、その中にはその後の処置料とか調剤料とかたくさんございます。三ヵ月入院しておれば三ヵ月間の調剤料、処置料がみんなその中に入っている。注射料も入っている。それで何で五十何点の入院料が上ったということが言えるか、非常に欺瞞に満ちたものだと思う。だから山下先生が指摘されたように、私も二百十七億というこの金の考え方が、大きくふっかけ取った方がすべてにいいのじゃないかというような考え方で出されたのではないかというような考えがするのです。実際にたとえば日本医師会が出しておりますのは、一円の単価を上げて十億でしたか、十億ぐらいの迷惑をかければいいということを出しております。これは非常にめんどうな計算から出てきたもので、今簡単に御説明することはできませんが、少くとも資料は新しい資料を使っている。二十七年の資料は使っておりません。あまりにも懸隔がはなはだしいことに私は実は驚いている。二百十七億と申しましても、これは、あるいはこれをそのままとみても、実際は公立病院でありますとか、国立病院、大学などからこの半分というものはまた収入が上ってくるわけなんですよ。だから公けには二百十七億要るのだと言われましても、またはね返ってくる収入というものはどんどんあるわけです。そのことを考えれば、実際にこの改正をしたためにどれだけ金がよけい要るのだという親切を尽さなければ、いたずらに二百十七億要るのだといえば、医療費を高くしたのだということだけ言っておいて、いかにもあなた方が医師階級のために尽したということを呼称するだけであって、その実ははね返りがあるのですから、国費をどんどん使うとか、あるいはその他の方々に御迷惑をかける率というものは、実際は少くなってきているのだと、この意味においてここに、むろんこの場合に医師会の案が出ているわけではない、私らもよくまだ見せてもらっておりませんけれども、むしろ厚生省の案よりも医師会の案の方が私はずっと進んでいるというような考えを持っております。どうですか、この二百十七億というのは、山下さんも言われましたが、これは公立病院、国立病院、大学病院などからはね返ってくる金額を引いただけでよろしいのですが、そうするとほんとうの値上りはどれくらいになるというお見込みですか。
  172. 高田正巳

    説明員(高田正巳君) 値上りは二百十七億ということになるわけでございます。国立病院でありましょうと、公立病院でありましょう、私立の病院でありましょうと、医療機関が受け取る総額がそれだけふえるということでございます。なお、先ほど御説明を申し上げましたように、この二百十七億という数字は、われわれが現在三十二年度の社会医療費の伸びというものを推定いたしましたものから出ておるわけでございますから、これは現実に三十三年度にどういう社会医療の規模になるかということによって変ってくる数字でございます。  それからいま一つ、先ほど山下先生からおしかりを受けましたが、これによって医療行為の頻度が変ってくるという要素があるじゃないか、それを一体見ておるかということでございますが、その部分につきましては見ておらない数字でございます。さような意味合いで、これは変っては参りますけれども、とにかくこれだけ医療機関が多く受け取る金額でございます。
  173. 木下友敬

    木下友敬君 そこで私はお尋ねしておるのは、そのことはわかるのですよ、医療機関がとると、これが多少の変りがあってもいいけれども、私がお尋ねしたのは、現在でも大学病院あるいは国立病院からは返ってくるものは、大かた保険医療費の半分は返ってきておると思うのです。そうすると、この二百十七億がよけい診療機関に入ったといっても、今度は政府収入の方に入ってくる金が幾らかということをお聞きしておる。出す方だけじゃなくて、受け取る方もあるわけだから、その収支がどのくらいかということをお尋ねしておる。
  174. 高田正巳

    説明員(高田正巳君) 国立病院なり、大学病院なり、それらがいわゆる国の、これは一般会計、大学もたしか特別会計だったと思いますが、国立病院等におきましては、これは一般会計の収入ではございませんけれども、その経営主体が国でありまする医療機関でありますれば、当然それは国の収入がそれだけ増加いたすわけでございます。その金額がどの程度になるかということは、今私ども計算をいたしておりません。しかし、その半分になるなんということは、これはとうていちょっと想像ができないのでございますが、国の方に入ってくるということも御指摘の通りでございます。
  175. 木下友敬

    木下友敬君 それならそれがわからないといえば、どうですか、現在の保険の収入から国立とかあるいは大学病院から国庫に入っておる、これは御存じでしょう。これを知らなければあなた計算ができないはずです。どれくらい国庫の収入になっておるか。それも御存じないのですか。
  176. 高田正巳

    説明員(高田正巳君) これは私にお聞きいただいても、実は私さような計算をいたす立場にございませんので、ここに資料を持ち合せておりませんけれども、これは調べればわかると思います。しかし、同時にまた、これは別のことでございますが、先ほど収入は入ってくるはずだと申しましたが、同時にこの計算におきましては、先ほど申し上げましたように、実際に使われている経費よりは、経費を押えたのではなくして、かく使わるべきであるという支出の経費も押えておりますので、経費の増というふうなものもこれはあり得るわけでございます。そういう理屈になるわけでございます。お尋ねの、国にどれだけ入ってくるかという計算は、これは私としましてはただいま計算をいたしておりません。
  177. 木下友敬

    木下友敬君 それでよくわかりました。厚生省は大体予算のとり方が下手だと思ったのです。一体予算をとるには、私が申し上げぬでも、これだけの裏づけがあるから、はね返りがあるからこれだけくれといえば出すと思うのです。幾らはね返りがあるかということはちっとも言わぬでくれくれというから、非常にとりにくいだろうと思う。だから、予算をとられる方としては、当然これだけの予算は要るけれども、実際はこれだけ国にはね返ってくるじゃないか、実際の国の支出というものはこれだけにしかならぬじゃないか、私らが予算とるときでもそういうことを言うわけなんです。それをあなたが知らぬといえば、ただ人からものをもらう方だけ言って、とるという方は、とってあげるということは言わぬでもらおうとする、それだから厚生省の予算というものが非常に貧弱であると私は考えております。それは単にここの問題だけではない。生活保護の問題にしましてもどこにしても困るというのは、その予算のとり方が非常に下手だ。もらうことだけ言って、そうして利益していることを一つも言ってない、こういう点にあるだろうということがはっきりわかってきたわけですよ。これはどうも一つ新しい大臣はこういうことも考えていただいて、たとえばこの二百十七億というものをこのまま認めたといたしましても、私はこれをかりに認めたとしても、これだけ出せというけれども、実はこれだけはね返ってくるのだということを私はおっしゃるならば、ちっともこれは大きな問題にならぬだろうと思う。それだからこそ、二百十七億だけあなたが表へ出されるから、山下先生からでも、一体誇張して言うのが都合がいいからそういうことをしているのかという質問も出ただろうと、私はこう思うのです。この点は一つ将来御注意を願いたいと思います。  それから私は甲乙二案についての内容をちょっとばかり詳しいことで、簡単に申しますが、たとえば一つ虫垂炎、いわゆる盲腸炎の手術の問題としましても、甲にいけば四千円、乙にいけば三千円という値打ちがつけてあるわけです。それで手術する人の腕前でありますとか、あるいは設備であるとかいうことによって治療費の格差の出てくるということであれば、これは一応納得がいくだろう。しかし、診療担当者の、いわゆるお医者さんの希望条件でおれのは四千円だ、僕は三千円だということを勝手にきめさせる。一つの虫垂炎の手術というものは、それ自体において主体性があるはずです、その手術には。それを勝手に、両方で勝手に選択させるといういき方はこれは間違いだと思う。一つも点数をきめるということについての主体性がない。また、そのことはほかにも言えますよ。たとえば入院料の場合にいたしましても、一カ月目までは幾らだ、三カ月日からはどうだ、こういうようになる。ところが、一カ月目においても三カ月日においても処置でありますとか、注射料であるとか、そういうことはみな同じ手数は持っておるわけなんです。それを三カ月日からは、非常に手をゆるめておるわけでも何でもない、同じ手数を踏んでおる。あなたがもし技術料というものを非常に重く見るというなら、調剤料のごときは何ヵ月たってもこれは同じ手数がかかるものであるし、もし技術が要るとするならば、薬剤師が処置するでありましょう。しかし、薬剤師が調剤するものを、入院料の方で、薬剤師の手技というものが一ヵ月目はこれだ、三ヵ月目はこれだという、その手技の価値が下っていくということは考えられないわけなので、調剤なら調剤それ自体が主体的な価値のあるものだし、手術なら手術それ自体に主体的な価値があるわけでございまして、これを入院料というようなものを商業的に、何日間おられれば割引きしてあげます、一本が二円の鉛筆でも一ダース買っていただければ二十円にしておきますというような、そういうのに類するような考え方で、この入院料が月とともに減小していくというような考え方には納得がいかない。どういうつもりでこういうことをされておるのか、それを一つ聞かせてもらいたい。
  178. 館林宣夫

    説明員(館林宣夫君) この両案を比較して参りますと、虫垂炎の場合のみならず、初診時におきましても、甲案は初診時基本診療料という形で百八十円、それから乙表におきましては、従来の考え方の初診料として百円でございますが、ただし手術の場合のみならず、あらゆる医療行為が個々にとり出しますと診療費が違うわけでございます。ただ、たとえば虫垂炎のような場合を例にとりますと、その前後に各種の注射、処置が行われるわけでありますが、甲表におきましてはそれらがほとんど無料にひとしい注射の薬剤料だけということになっておりますが、乙表におきましては、注射処置が従来通りの形でとられるし、注射の薬剤料のほかに手技料あるいは潜在技術料というふうな形のものがとられるわけでございます。総括的に虫垂炎で入院したような場合が、甲表と乙表とではそれほど激しい差がないようにはなっております。しかし、個々の診療行為を個別的にとり出しますれば、もちろんある程度の差はあるわけでございます。総体的に考えまして、甲表と乙表とは患者の側から見れば、総括的には、あまり変りがない、かようになっておるわけであります。  なお、甲表の入院時墓表診療料の期間の差は、急性期でございますのとあるのは亜急性期でございますのと、慢性期に入りました場合における注射料、あるいは諸検査、あるいは諸処置というようなものの量が違って参るわけでございます。従いまして、従来の考えの入院料だけではございませんで、入院の際の各種の診察行為あるいは簡単な検査、処置、注射、投薬の技術料、これらのものが総合されておりますので、やはり急性期の方がそれらの行為が多いでしょう。亜急性期がそれに次ぎ、慢性期に至ればそういうような行為は比較的に少くなるという点を比較して、このようにいたしてあるわけでございます。
  179. 木下友敬

    木下友敬君 私が申し上げるのは、相対的のことではなくて、一つの診療行為自体には、それ自体としての主体性がなくちゃいかぬ、そういうことを申し上げたのです。虫垂炎を一つ取り上げたのはその例でございまして、虫垂炎という手術それ自体でも、甲と乙とで値打が違ってはいかぬ。もしお医者さんの上手下手がある、あるいは病院の格差があるというのならそれは別であると、私はこう申し上げるのです。それから、入院料の問題にいたしましても、入院料は急性期と慢性期に入ったのとでは違うのだというけれども、あなたが医者であるかどうか私は知りませんよ。しかし、初最の一ヵ月の間にも急性と慢性の差があるのです。三ヵ月の間でも急性として言えないとも限らないし、三カ月になったから、三ヶ月のあとの方は非常に医者の監督なり手技なりが少くて済むとは一概に言うことはこれはできない。これは医者が決定することで、その場その場で違ってくることだ。それを日本全国の入院というもの一律に一ヵ月、三カ月、三カ月以上ということできめられるということは、これは全然受け取ることはできない。これを要するに、この甲、乙ということは、これはもう非常にまずい出し方でした。これは厚生省の大きなしくじりなんです。これは末代までのほんとうにまずいことをしたという保険局長の名にかかわることだと思うのです。先ほど大臣は自分が命じたようなことを言われましたけれども、これはもうだれでも大臣が命じられたとは思やしません。最近来られまして、すっとこういうことがおわかりになるとは思やしません。この責任をとられたって大臣の不名誉にはなりませんけれども、高田局長としてはいやしくもこの甲、乙の表を投げ出しておいて、どっちでもお取りなさいという投げやりなやり方をおとりになったということは、保健行政の上でも非常に大きな黒点が出てきたものとして非常にお気の毒でならない。どうかこれだけは、もういさぎよくこの甲案、乙案ということはきょう限りやめて、どっちでもいいから一つにまとめて、集中したいき方をとってもらいたい。こういうような人の注意をぼやけさせておいて、その中を縫っていくというようなそういう卑怯な態度、投げやりの態度はきょう限りやめてもらいたい。私はそういうことをお願いする。それについては当然御答弁があってしかるべきだと思います。なお、もう一つは、この一枚の紙がございますが、これは事務的なことでございますから、ほんとうにお尋ねしておとがめをするわけではない。七番目に「特別の事由がある場合は、二から五までの規定により算定するのほか、都道府県知事は、厚生大臣の承認を得て療養担当手当を別に定めることかできること。」ということがございますが、この「療養担当手当」というものはどういうものであるか。    〔理事山本經勝君退席、委員長着席〕
  180. 高田正巳

    説明員(高田正巳君) 甲表、乙表の選択制をとりましたにつきましては、いろいろな御批判があることと存じますが、実は私どもが今回の案を考えましたにつきましては、その点につきまして非常に考え考え考え抜いた上のことでございまして、事務当局といたしまして、この原案を引っ込める意思はございません。ただ、中央医療協議会という諮問機関がございまするので、これはその諮問機関の御意見ということになりますれば、これはそのあとでまた大臣として別の御判断をなさると存じまするけれども、私どもは医療協議会に諮問をいたしておりまする原案を引っ込めるというふうなことはいたす意図は全くございません。  それから第二点の御質問でございますが、現在の北海道の暖房料みたいなものがあることを先生も御存じだと思いますが、そういう現在あるものはさようなものでございます。
  181. 木下友敬

    木下友敬君 その療養担当手当というテクニックは前からございますか。
  182. 館林宣夫

    説明員(館林宣夫君) このようなものは今回初めて設けられたものでございます。
  183. 木下友敬

    木下友敬君 初めて新しい言葉を使うというときには、これはこういうものをやりますといって初めから説明しておかぬというと、要らぬこういう質問をせにゃならぬから、新しい言葉を作るときは一々通知をしてもらいたい、こういうふうに私は考えております。  それから私らは議員でございますから、諮問機関ではないから、こういう問題を勝手に申し上げるわけで、引っ込めてくれとも申しますが、いさぎよく引っ込めてもらった方がいいというのは、新医療費体系が二年も三年もあすこに塩づけになっておるというものを引っ込めないでおくということも、これは非常にみっともないことだから、ついでに甲乙をどっちか一つにするとともに、あの新医療費体系というものをこの際一つはっきり、もう要らないことなんですから、新しい案が出れば要らないことなんですから、はっきり引っ込めるくらいの、そんなくらいの勇気を出してもらわぬと……。  それから先ほど申しました予算のとり方を研究してもらって、厚生省を輝く厚生省にしてもらいたいというのが私の希望なんです。以上をもって終ります。
  184. 坂本昭

    坂本昭君 厚生大臣基本的な問題を二つほどお伺いいたします。厚生保険事務当局の案につきましてはゆっくり検討させていただくつもりでございます。先ほど大臣は単なる事務当局の案と言われましたけれども、本来この問題は健康保険法の一部改正以来長い歴史を持った問題でございます。この点の認識を大臣としては十分持っていただきたい。その間に私たちの一番経験しましたことは、審議、諮問、審査、こういう点が十分行われなかったという過去の事実があります。そしてどっちかと申しますと、大臣その方自身が事務当局に少し振り回されてきた。これは一つ気をつけていただきたい。私はあえて政府与党全般までこの言葉を推し広げようとは思いません。が、事務当局に振り回されてきたということはまことに遺憾だと思います。それで、きょうは大臣に二つほど試験問題を提出したいと思います。それは今のような歴史の上に立って、大臣としてはこれは簡単な問題じゃないということを考えていただいて、まず私の心配するのは、保険行政がどうも少しふとり過ぎておる。厚生行政の中には公衆衛生や医務行政、いろいろな、社会局、各局があって、それぞれ行政をしておりますが、保険行政の柱がどうもふとり過ぎてきておる。そのためにいろいろな迷惑がはたにかかっておる。これはどうしても大臣がこれをコントロールする必要があると思うのです。先ほど大臣は答弁の中で、社会保険の公営問題を論じられましたが、私は大臣の認識が浅いのでびっくりしたのです。現在の皆さんの、政府考えておられる国民皆保険というものは、これは完全に公的性格を持っております。これは国営ではありません。しかし、少くとも国家管理だと思うのです。この点は事務当局ははっきりつかんでおられると思うのです。これは大臣も、また政府与党も、この点少し明確につかんで仕事をしていただきたい。この点が一つの問題です。保険行政に対するコントロールの問題。それからもう一つの問題は、健康保険の赤字問題から始まって、連綿としてここに至った問題の中で、結核の問題がいつも見捨てられている格好です。保険局長は私の所管ではないと言われるけれども、これは保険行政の根本に横たわるものは結核問題です。けさ午前中に次官が実はお答えしたのですが、次官は、結核はもうずっと減ってきておる、減ってきたために空床ができたのだ。私はその証拠を見せろと、実はそうお伺いしましたが、これは大臣として、この結核問題と保険行政の連関についてどう考えておられるか、この問題をまず一つお伺いいたします。
  185. 堀木鎌三

    ○国務大臣(堀木鎌三君) いろいろ御注意をちょうだいいたしまして、私としては、率直に申し上げますと、この保険行政の問題、ことにこの医療行政の問題が非常に問題になっておる。しかし、今回私としては、厚生省としてはどうしても結核の撲滅問題だけは、しっかりした方針の上に立って整備して参りたい、幸いに非常に医術の進歩、医学の向上がありますので、実際の過去の経過を見れば、この結核撲滅は何と申しますか、現実の問題としてはっきりやり得る問題である、こう考えまして、最近におきましては、結核問題というものについての解決に向いたい、それはぜひ三十三年度からはっきりした基本方針で参りたい、こう思っております。
  186. 坂本昭

    坂本昭君 今の結核問題について、また日をあらためて詳しく審議したいと思います。最初申しました保険行政に対するコントロール、それについて大臣があらためて御返事していただきたいことと、当面する今度の事務局案につきまして、昨日例の中央社会保険医療協議会に私も実は傍聴に行きまして、大臣が非常にお困りになっておったことも実は見たのですが、私が非常に遺憾に思ったことは、あの会の空気ですね。正しく諮問されていない。正しくまた審議されていない。これは前の健康保険法の一部改正のときもそうなんです。社会保障制度審議会、それから社会保険審議会に諮問の問題がずいぶん論じられたのです。これは大臣の私はお間違いだと思いませんが、事務当局の私は間違いじゃないかと思う。もっと民主的な話し合いの線に乗せて、医師会も、あるいは被保険者も、保険者も、もっとゆっくり話ができるような、そういう指導をこれは大臣としてやっていただきたい。そうしないと、もう単なる事務当局案と言いますけれども、今までのいきさつから申しますと、単なるじゃありません。このきまった事務局案というものは、最高の権威を持って、あらゆる諮問も審査も無視して、まっしぐらに進んでしまう。その途中では、厚生大臣も何もみなひっくり返してしまうほどの実績がある。ですから、私は今回のこの問題について、われわれゆっくり検討しますが、大臣としてこれは一つ明確にしておいていただかないと、重大問題になるだろうと思います。
  187. 堀木鎌三

    ○国務大臣(堀木鎌三君) 昨日の中央医療協議会の空気についてお感じになったことは、私も同様に感じました。何と申しますか、あれだけの経験者が一堂に会して、そうして今後の医療制度と申しますより、診療報酬のあり方という重大問題と取り組む場合に、ただ対立的な観念から建設的な段階にいかないという状況は、まことに遺憾だと思います。と同時に、臨時医療保険審議会の会議に起りましたことも、やはり同じような状況である。率直に申しまして私、厚生省を受け持つようになりましてから、大体空気は察知いたしましたので、そういう地ならしの上に立って、それを地ならしした上に立って、双方が非常に共通の広場で建設的な議論が戦わされ、そうしてこの方面に進歩が見られて、結局国民が幸福を受けるようになればいいという努力をいたしたいという考え方でおったのであります。非常に力が及びませんことと、日にちが非常に少かったことでございますが、そういう所期の状態ができなかった。現にただ坂本さんに申し上げたいのは、今度の中央医療協議会に対しまして、私どもが少くとも一つの案を提示した、これは広く御批判を仰ぎたい、率直にいえば、先ほど坂本さんめおっしゃるように、審議会は非常に簡単な諮問をいたしました。そうして小委員会か何かを作って、そうしてそこら辺から事務局の案が出て参りまして、そうしてそれで押し通してしまうというような手段方法をとらない、あの場で、皆さんに非常に公開の場ではっきりと御意見を交換していただくという手段方法を経た方がいいと私が断定いたしましたのも、はなはだいろいろまだ未熟な点があるかもしれませんし、必ずしも何と申しますが、完璧を期した案とは言えないと思いますが、しかし、ああいう公開の場に出して御批判を仰ぐ態度をとりましたのも、今坂本さんのおっしゃったようなことが避けられれば非常にけっこだというふうに考えてとりましたような、何と申しますか、やり方であったというふうにお考え願っていいのだと思うのであります。ただ、その私の考え方とあの場の空気とが非常に違った空気が現出して非常に残念に思いました。今後せっかく努力して参りたい、こういうふうに考えております。
  188. 坂本昭

    坂本昭君 健康保険法のあの改正のときのようなああいうきわめて不愉快なことの起らないようにお願いいたしたいと思ます。
  189. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 質問に入ります前に、委員長にお伺いするのですが、先ほど来大臣は何かお急ぎのようで、きょうの予定は四時までの予定だということだったのですが、相当私はお尋ね申し上げたいことがあるわけです。引き続き私の得心のいくまで質問の時間をお与えいただけるものでしょうか、いろいろな予定の関係で差しつかえがあれば、他日に譲っていいわけです。他の委員の方々も社会党さんに限らず、自民党さんの方でもこの医療問題は相当大きな問題で、御意見なり御質問があられると思う。あらためて次の機会にというお考え委員長にあられますれば、私はきょう隣の藤田委員が他の問題でどうしても緊急に大臣に質問したいという案件があられるようですから、そこは適当に御相談の上で御決定願ってけっこうでございますから、いかがでしょうか。
  190. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 本日はお諮りしておきましたように、大臣も非常にお急ぎの用があるようでしたので、一応四時までということで御相談申し上げておきましたが、この重要な案件でございますので、これは一回、二回の委員会で結論が出るものとは思っておりません。次回には竹中先生初めまだ十分御意見のおありの方がおられることと思いますので、十分御意見はお受けいたしますので、次回にさせていただければけっこうだと思っております。
  191. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 了承いたしました。
  192. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) それでは本問題に対する本日の調査は、この程度にいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  193. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 御異議ないと認めます。   —————————————
  194. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) この際、追加いたしまして、中共地区引揚者対策に関する件を議題といたします。質疑を願います。
  195. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私はこの際、中国人の妻となられ、里帰りをされている方方の対策を厚生省としてはどういう工合にお立てになるか、この点をお伺いをしたいと思うんです。私たち地方へ回りまして、また先日こちらへ里帰りされた方が少い所持金で生活に非常に困っておられる。そればかりでなしに、今度里帰りされた人は子供をたとえば四人おれば二人は残して二人は連れて帰る、こういう環境にあってお互いに寒さも増してくるし、具体的に九月から学校が始まるということで非常に言うに言えないお困りのように思うんです。で何とかしてこの方々を中国に早く帰らしてあげなくちゃいかぬのじゃないか、こういうことで、私ももうその話を個人々々から聞きまして、耐え得ない状態であった。ところが、もう一つはっきりしてないようですから、厚生大臣としてこの措置をどういうようにお考えになるか、私は積極的にこの措置をしてもらいたいという立場から質問をするわけです。
  196. 堀木鎌三

    ○国務大臣(堀木鎌三君) 実はこの問題につきまして、興安丸が用船を解除になりまして、衆議院で私ども当時外務、厚生、運輸等の三省間で自後、何と申しますか、お帰りになるのは定期不定期の船もあることであるから、これによって随時お帰りを願いたいというふうなことを申し上げましたし、また、その船につきまして先方の意向を打診いたしましたところが、御返事が参りまして、何といっても便船をよこせ、ことに八名の戦犯があるんだから、その八名の戦犯の受け取りのために、なお、その場合に数はわかりませんが、一般邦人の引き揚げもあるようでございます、それらに対して従来の経緯にかんがみて配船をしなくては困るというふうな御返事が参っておるのでございます。これは御承知だと思います。そういうふうな先方の電報が参りましたので、私どもとしては、この際に従来の方針でもってしては戦犯者の引き揚げその他の問題も円滑に参らないんじやなかろうかということがほぼ推察できたのであります。と同時に、三団体がこの問題につきましては従来ともお世話を願っております。で私としては、三団体の方にたしか一昨昨日だと思いますが、夕方おいでを願いまして、従来の経過及び今回の問題等につきましてほんとうにざっくばらんなお話し合いをいたしました。でそういう上に立ちまして、従来の経過もつまびらかにややすることができましたので、何とかこの問題を解決いたしたいということから、実は今明日ぐらいに、何しろ一ぺん関係省のうちで打ち合せた事柄でもありますので、もう一ぺんこれを再考してみたいということで目下考えておるところでございます。従いまして、この問題は相当事務的に取り扱うことができないんじゃないかというふうに考えて、何とか善処する方法を発見いたしたい、こういうふうな段階でございます。ただ、おっしゃるように、日にちが、日時があることでございますから、じんぜん延ばすつもりはございません。もう早くきめなければ、どうにもしようがない、露骨に言って。そういう状況ですから、もう明三日お待ちを願えないだろうか、私としてはともかくもいろいろな経緯はあるが、戦犯を受け取り、そうしてお返しする方をお返しするというふうな事実が行われるようになりたい、こう考えておるような次第でございます。
  197. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そうすると、明確になるのは二、三日中だと、しかし、厚生大臣としてはやはり今までの例に従って便船を作って、戦犯を受け取る、そして送ってゆきたいという工合に確認してよろしゅうございますね、そういう工合に政府の中で努力する決意をされているわけですね。
  198. 堀木鎌三

    ○国務大臣(堀木鎌三君) まあ端的に言えばそういうことになるかと思いますが、しかし、今までの経緯との調和点というものも発見しなくちゃならない、で私としてはそういう気持でどういうふうにして実現できるかという問題を考えている、考えているより、もう事実はそういう問題を早く解決したい、こういうふうに考えておるところでございます。
  199. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 この問題は八百人、それからプラス三百幾らという方がおりれる、さしあたり八百人の方々は向うから引揚船、日本の船でまあ積んでざたというか、そういう言い方は何ですが、こちらへ向うからいえば送ってきたという格好になっている。で、日本に帰りましても、親兄弟のところにおる、しかし、なかなか二万円の小づかいじゃどうにもならぬ、それでいつまでもやはり親兄弟、親戚のところに厄介になっているわけにもいかない。  それからもう一つ深刻な問題だったのは、やはり子供の就学、それから着るものがない、貧困の問題については、政府は特にお考えになるでしょうけれども、もうそれを乗り越えた、ほんとうに人間としてこれは何とも言えない深刻な問題がある。で、特に厚生大臣は、今の言明なされたことを最大の努力をしていただいて、向うが言ってきております十五日から二十五日の間に早くに便船を送るように、一つ配船の手続を努力をしていただきたいと私は思うのです。まあ一応その点は安心いたしましたから、そういう工合に伝えたいと思います。  それからもう一つ、この際聞いておきたいのですが、行方不明者の調査の問題について今後はいろいろと問題があるのですが、日本における、今問題になっているのは遺骨ですね。戦時中の中国人の遺骨を順次民間の力によって移送をしていますけれども政府としてはあの遺骨の調査、それから中国人のこっちへ来ていた人などの全体の動態の調査というような問題は、どういう工合にお考えになっておりますか、この際伺っておきたい。
  200. 堀木鎌三

    ○国務大臣(堀木鎌三君) 私実は今おっしゃったような問題につきましては、自分自身でみな直接お目にかかって事情を伺っているのです。でありますから、里帰りの方々にもお目にかかりました。それでなおその遺骨の問題も、民間の団体の方ともお目にかかりました。で、率直に言ってずいぶん御努力願ったのですが、民間団体としてはある程度限度に来ておるのです、ということは、当の団体自身がお感じになっている、私どもとしてこの問題については、従来よりは積極的に民間団体と協力するという方向にものを処理して参りたい、こう考えております。
  201. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 特に私はお願いしておきたいのだが、行方不明調査の問題については、外交機関を通じたりその他の機関を通じてやっても、なかなかうまく軌道に乗っていない、最近有田さんが中国へ行かれて、その行方不明の調査なんかに協力しようという態勢まで今きている。あわせてやはり日本における中国人の遺骨、それから当時のいろいろの状態などは、やはり政府が積極的に努力してやられることが、私はこういう引き揚げというやかましい問題の解決に重大な影響があるのじゃないかと思いまして、私はそういう工合に発言をしたのです。ぜひ一つ、この二つの問題は、厚生大臣として最大の努力をお願いしたい、これだけ申し上げて、私は質問を終りたいと思います。
  202. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 本問題に対します本日の調査は、この程度にいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  203. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 本日はこれにて散会いたします。    午後五時四分散会