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1957-03-07 第26回国会 参議院 社会労働委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年三月七日(木曜日)    午前十時五十分開会   —————————————   委員異動 本日委員片岡文重君及び木下友敬君辞 任につき、その補欠として森中守義君 及び松澤靖介君を議長において指名し た。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     千葉  信君    理事            高野 一夫君            谷口弥三郎君            山本 經勝君            早川 愼一君    委員            勝俣  稔君            草葉 隆圓君            紅露 みつ君            榊原  亨君            西岡 ハル君            横山 フク君            大矢  正君            藤田藤太郎君            松澤 靖介君            森中 守義君            山下 義信君            田村 文吉君            竹中 恒夫君   国務大臣    厚 生 大 臣 神田  博君   政府委員    警察庁刑事部長 中川 董治君    厚生政務次官  中垣 國男君    厚生大臣官房総    務課長     牛丸 義留君    厚生大臣官房会    計課長     堀岡 吉次君    厚生省公衆衛生    局長      山口 正義君    厚生省公衆衛生   局環境衛生部長  楠本 正康君    厚生省医務局長 小澤  龍君    厚生省薬務局長 森本  潔君    厚生省社会局長 安田  巖君   事務局側    常任委員会専門    員       多田 仁己君   説明員    自治庁財政部財    政課長     柴田  護君    厚生省公衆衛生    院疫学部長   松田 心一君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○食品衛生法の一部を改正する法律案  (内閣提出)(第二十五回国会継  続) ○社会保障制度に関する調査の件  (熊本県水俣市に発生した奇病に関  する件)  (昭和三十二年度厚生省関係予算に  関する件)   —————————————
  2. 千葉信

    委員長千葉信君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。  委員異動を報告いたします。三月七日付をもって、片岡文重君及び木下友敬君が辞任し、その補欠として森中守義君及び松澤靖介君が選任されました。   —————————————
  3. 千葉信

    委員長千葉信君) 食品衛生法の一部を改正する法律案を議題といたします。  御質疑を願います。
  4. 山下義信

    山下義信君 前回委員会におきまして、今回の改正案に、現行法の第八章の雑則第二十六条関係、すなわちこの食品衛生法に関しまする費用につきまして、法律上は国が二分の一負担をすることになっておりますが、これが改正案におきましては削除せられております。この点のいきさつにつきましては、周知のごとく、すでに平衡交付金特例のとき並びに今日におきましては地方交付税交付金にこれが移されてある、従って、この費用関係の条文は死文化しておる、空文化しておるので、今回の改正においては、これを削除するのだ、こういうことであります。国の直接ひもつき補助地方交付税交付金の中に入れられてあるという問題、並びに、ことに食品衛生関係の、この国の費用負担の点が、さきには平衡交付金特例法という、今日におきましては地方交付税交付金に移されていくということと、法律が生きておるか死んでおるか、また、そのまま法律がそこに移っていくということについて、法理上妥当であるかどうかということの議論につきましては、あとで調べてみますると、すでにさきの第十九国会で十分論議されてあるわけでありまして、一応結論が出ておりますから、この第八章費用負担関係法律が、すでに後にできた法律によりまして優先せられたという法理論につきましては、一応結論が出たと考えてもいいのじゃないかと思います。疑義はありますが。そういう法律論は別にいたしまして、この種の食品衛生指導並びに取締り行政がこのままでいいかどうか、今の、地方にそれが移され、その費用交付金の中に入れられてあるこの状態でいいかどうか、今日食品衛生行政を大いに強化しなければならぬということは、一昨年来強く叫ばれて参っておりましてことに森永粉ミルク事件がありまして以来、一昨年も昨年も、また、今年に入りましても、驚くべき多数の中毒事件等が、その他食品衛生上非常に憂慮せられる事件が続発するにかんがみまして、この食品衛生行政強化が強く要望せられておる。今回の改正案を御提出になりました理由も、動機はそこにある。衆参両院森永事件を取り上げてこれを検討いたしました際にも、国会はこれを強く政府に要望した。そういう経緯にかんがみましても、この食品衛生行政を大いに一つ強化していかなくちゃならぬという場合に、現状のままでいいかどうかということについて、厚生省当局の見解を求めたい、こういうことが、前回委員会におきまする政府のお考えを聞こう、こういうことになっておりましたので、まず、私は、本日は、この食品衛生法関係費用の点につきまして、いろいろ伺ってみたいと思いますので、その前に、現状のような状態でいいかどうかということについて、厚生大臣の御所見を承わっておきたいと思うのです。
  5. 神田博

    国務大臣神田博君) ただいま山下委員の御質問要旨は、食品衛生行政が、今の食品衛生法の条章で一体満足するような行政ができると思うかどうかというようなお尋ねとお聞きいたしたわけでございますが、政府といたしましては、この食品衛生取締り等に関しましては、ただいまお述べになりましたような参院の御要望もございまして、また、いろいろ食品衛生上の事件等もございましたのにかんがみまして、今回食品衛生法改正いたしまして、添加物等の使用を一つ規制しておこうということ、さらに、食品衛生管理者をおきまして、この取締り成果というものを十分期して参りたい、こういう意図をもちまして、法案の御審議をお願いしているような次第でございます。
  6. 山下義信

    山下義信君 法案内容につきましては、今お述べになりました通りでありますが、ただいま私が申し上げましたように、食品衛生行政強化していくということにつきましても、法律だけ強くしたって何もならぬので、それを実施していかなければならぬことは申すまでもございません。従いまして、その実施をいたしますのには、強化されたこの改正法律案を実行していく上につきましては、費用が要るので、また、その費用使い方によりまして、この法の目的を達することができるかどうかということが分れてくるのであります。そういうことは申し上げるまでもございません。従って、国のひもつき補助、えたいの知れないような交付金の中にこの費用が不得要領で入れられてある現状というものとでは、本法が職務を果せるかどうかという上につきまして、非常に大きな影響がありますので、端的に申しますというと、今のような費用の出し方といいますか、あり方といいますか、いうようなもので、本法実施に遺憾がないと考られておりますか、あるいはこれを従来のごとく、政府が十分この立法の責任が負えるような、直接のひもつき補助に取り戻すべきではないかという考え方もあるわけでありますから、基本的にはどう考えておられますかということが伺いたい。
  7. 神田博

    国務大臣神田博君) 山下委員の御心配になられるお尋ね要旨は、よく私了承できるのでございまして、政府といたしましては、そういう憂いのないような取締り一つ強化するといいましょうか、徹底して参りたいという趣旨でございまして、ただその補助金財政上の理由削除になっておりますこと御承知の通りでございまして、そういう制約されたもとでこの徹底を期そうというのでございますから、多少のそこに心配はないわけではないと思います。しかし、何といいましても一昨年来のいろいろ大きな事件も出ておりまして、世間を騒がしておるわけでございまして、府県におきましてもこの取締り等につきましては、従来より、より以上な熱意を傾けて参っておる際でございますので、厚生省といたしまして、それらの機運をよくつかみまして、一体となりましてこの取締り徹底を期していきたいと、こういう考え方でございまして、補助金削除になったことを今申し上げましたような心がまえで一つやって参りたい、こういう考えでございます。
  8. 山下義信

    山下義信君 私のお尋ね申し上げている点がまだ大臣にはのみ込んでいただけないように思うのであります。基本的にはこの種の行政地方に全く移譲してしまってそして本省はほとんどその行政指導にはもう大した力のないような状態に置いておいていいかどうかということですね。いろいろあなたの方の行政事務——もう地方に近年わが国の国政のあり方の大勢として移行してしまって、最近またそういう傾向のものがありますが、そういう状態の中で、それはその方の一つ制度としてはまだいき方もありましょう。しかし、その中でもとりわけて食品衛生行政強化というものは、過去の事例にかんがみて必要であるばかりでなく、将来にわたってもこの行政はますます強力にやっていかなければならぬ、しかも新しい私は厚生行政一つだと思うのです。従来は、ただ食糧が足りない、足りない、国民生活の上において食糧不足といったような時代を経過いたしまして、今日のような国民生活が幾らかゆとりができてきて、そうして国内にはいろいろな各種の食品がはんらんしておるというようなこの現状にかんがみまして、国民保健衛生の面から格段にここに力を尽さなければならぬという私は新しい段階がきたように考えられる。いろいろな事件が発生すれば、それの対策に明け暮れ追われていくという、その必要から追い込まれてここに改正するというのではなくいたしまして、国民生活の新しい分野を開拓し、その生活についての非常に影響のある面について文化的政治一つ強力に推し進めていこうという新しい観点に立ちまして見ても、この食品衛生行政というものは私は非常に厚生行政の中で重大なウエートを持っておると思う。そういう際に、費用において地方交付税交付金の中に投げ込まれておるこの状態、それと国が直接にひもつき補助を出してその仕事をやらすということは私は行政いき方に非常に大きな差異があると思う。でありまするから、費用の面から伺っても、また、行政あり方から伺っても同じことなんでありますが、今のような状態でいいとお考えになるか、これをもう一つひもつき補助に取り戻して、そして厚生省が直接に指揮監督なり、この行政を強力にやっていくという態勢にもっていく必要があるのではないか、こういう点について基本的にはどうお考えになるかということなんです。その大臣の御所見一つ基本方針を承わりたい。
  9. 神田博

    国務大臣神田博君) 食品衛生取締り強化と申しますか、徹底を期して国民衛生生活向上に資したいという趣旨でございますので、これをうまくやっていくにはどっちがいいかという山下委員のいろいろ御研究の御意見につきましては、私もよく了解できるのでございます。そこで問題は、しからば、国が直接予算面を握るような仕組みにして、そして一体になってこの取締り徹底を期する方が成果が上るか、あるいは今の制度のような交付金のワクの中で地方分権を認めて知事の権威のもとにやらせる方がうまくいくか、この場合いろいろ不安が考えられる。一体政府は、ほんとうに真剣にそのどっちをいいと思うか、こういう突っ込んだお尋ねのようでございまして、御心配されておりまする御趣旨は、私はただいま申し上げましたようによく了解できるのでございまするが、政府といたしましては、一応とにかく今までのいろいろのいきさつがございまして、現行制度になったわけでございまして、この制度を生かしていくということが、今日のやはり政府考えであると私は考えております。制約されたこの制度一ついかに高能率に行政成果を上げるようにもっていくかということが大事なことでないかと考えております。とかし、今後の行政効果にかんがみまして、それではいろいろの具体的な支障が生ずるというような面が出て参りますようでございますれば、私はそのときはもう一度考え方を改めると申しますか、よく一つ突き詰めて、この原因除去なり、あるいは根本的にあらためてもう一度考え直すというようなことにもこれはしなければならぬ問題が出てくると思います。しかし、現在の段階におきましては、厚生省といたしましても、現行制度を生かして、そして国としては地方府県食品衛生取締りを十分指導強化いたしまして、その徹底を期していきたい、こういう所存でございます。
  10. 山下義信

    山下義信君 私は大臣の御答弁はわかります。ここですぐきめていただきたいとは言わない。いま一つ十分考えてみようということでありますから、考えていただきたいと思う。それは大臣が御就任になりまして以後の問題として私は一つ考えていただきたい。これは厚生大臣というものが政治力の、露骨に申しまして大してない人でありますれば、私はこういうことは申し上げません。期待もいたしません。しかし、神田厚生大臣は、これはもう世間評判政治力のある人でありますから、考えてみておいていただきたい。私は厚生行政の中に、地方交付税交付金の中に投げ込まれておるあのやり方に変っていった、シャウプ勧告以来変っていったあれを全面的に取り戻せとは言いません。しかし、その中で重点的に現状一つ調査してみて、どうもこれはいかぬということについては国全体として考えなければなりませんから、その中の一つは取り戻してみるということもやってみていただきたい。すでに厚生省は三十二年度予算編成の際に、第一次要求の場合は、この当初予算編成の時分には、神田大臣はおいでにならない、多分そう思う。その予算編成のおそらく後に御就任になったと私は思うのでありますが、そうでなければなおおかしいことになるのでありますが、第一次要求予算の当初予算には、国の費用食品衛生監視員を設置するために五百四十人でありましたか、五百四十一人かを国の費用でその食品衛生監視員を置くという予算要求編成されたでありましょう。およそ一億六千万円でありましたか、要求したのであります。これは全部削られたのであります。この考え方はいわゆる国費食品衛生監視員を設置しようという考え方でしょう。つまり国費用でやろうという考え方があったのです。それを全部削られた。削られてしまった今の三十二年度の予算で言うならば、現状ですから、地方移譲の形のままなんです。けれども考え方としては、国の費用でもって国費でもって食品衛生監視員を作ってみようという考え方厚生省にあったと言わなければならぬ。それで現状でよろしいのであるという答弁をもし現在の神田厚相がなされたら私は許さぬ。しかしながら、十分吟味してみよう、検討してみよう、あるいは場合によっては、国の費用でもってやらなければならぬ場合があるだろう。あるいはまた、国費ひもつき補助に取り戻さなければならぬかもわからぬ。一つ検討してみようということでありますから、ここでお答えはすぐにいただきませんけれども大臣、そういう状態であるが、一応厚生省としては、そういう考え方があったものとしなければなりません。それで検討願うのでありますが、つまり問題は、今のようなやり方では、この食品衛生行政効果があげられるかどうかという問題でありますから、これは一つ突っ込んで見なければなりません。地方自治庁——こういう時間を差しはさみますと、これは大臣のお時間に非常に御迷惑をかけるのでありますが、多くの時間を費やしませんから、この席上お聞きを願っておきたいのでありますが、地方自治庁政府委員の人が出席しておられましたらば、御説明を願いたい。今、地方交付税交付金の中で、食品衛生関係費用が幾ら計上されてあるか。
  11. 柴田護

    説明員柴田護君) 昭和三十一年度の基準財政需要額で申し上げますと、府県分で七億一千七百万円、市町村の分が、これは政令都市につきまして種別補正計算いたしますものですから、計算が若干不正確でございますが、大体三十一年度で、十億見当のものが市町村基準財政需要額として積算されておると考えます。
  12. 山下義信

    山下義信君 私の聞いているのは食品衛生費用です。
  13. 柴田護

    説明員柴田護君) 御答弁申し上げましたのは、食品衛生に関する基準財政需要額であります。
  14. 山下義信

    山下義信君 総額ですね。今おっしゃったのは総額ですね。
  15. 柴田護

    説明員柴田護君) そうです。
  16. 山下義信

    山下義信君 それを一府県に割り当てますと、いわゆる標準団体といいますか、百七十万の人口ですかを標準にしておられますね。その標準団体で言いますと、千六百五十一万円ですか、そういうことになっておりますね。それに間違いありませんか。
  17. 柴田護

    説明員柴田護君) その通りでございます。ただし、それは府県標準団体の……。
  18. 山下義信

    山下義信君 府県団体そしてですね。千六百五十一万円がいわゆるこの食品衛生に使おれている。その中身を見ますと、食品衛生を取り締る、監督指導する業者をおよそ一万の業者と見て、そうしてそれを食品衛生監視員を大体五十名と見て、それらの五十名の食品衛生監視員がこの約一万の事業場を年六回これをぐるぐる見て回る。まあ一回の出張で十カ所を見ると、その一回の出張費を三百七十円と、こういう考え方でやっているのです。その他のものが入っておりますがですね。これはその通り実施しておりますかどうですか。、
  19. 柴田護

    説明員柴田護君) 自治庁基準財政需要額基礎になります単位費用を積算いたします場合には、内容につきましては、専門省である厚生省当局の御意見を伺って、単位費用の内訳を作っております。ただそれが現実にどのような形になっておりますかというのは私どもの方の所管ではございません。単位費用としての積算基礎はそのように組んでおりますが、現実の面は、現実衛生行政がどのような形で行われているかという問題は、主務省の方で御存じだろうと思います。私どもの方といたしましては、金の使い道の内容につきましては、交付税の性格から見まして、これはむしろ容豫すべきものじゃございませんので、私どもの方といたしましては調べておりません。
  20. 山下義信

    山下義信君 それではその辺はあと厚生省からこの通り実施されているかどうか、五十名の監視員がこの通りの業務を行なっているかどうかという実情については、厚生省から一つ説明を求めなければなりません。あとで求めます。それで一体事業場のおよそ四十万余りという事業場は何から出してきた、この一体基準割り出し方は、ということも、そのときあわせて厚生省から聞かなければならぬ。厚生省意見に聞いて事業場を積算したというのですから、四十万の事業場というものは何から積算したか。厚生省の方からの資料を見ると、許可を要するものが、約六十万余り事業場がある。許可を要しない食品衛生対象業者がおよそ九十万ある。その二つ合せてもおよそ百五十万、この食品衛生業者対象業者があるというのに、このうち四十万だけ出したのはどういうのであるかということも聞かなければなりません。また、五十名の衛生監視員というこの定員は何から出したか。あなたの方では一体定員は何できめているのか。前回委員会でも四千人要るということになっていると言うが、四千人というのはどこで定員をきめてあるのか。定員を確保しておかないで、何人おってもいいような形にしておいて何をもって積算するのか。定員の確保は何でするのか。食品衛生監視員をおよそ四千人置くことにしてございます、そのうち実情は二千人ほどでございまして、あとは兼務で云々と言って答弁だけはしているが、一体この食品衛生監視員の中心になる定員というものは、何で確保するのであるか。それがちゃんと法律か何かで確保してあれば、それだけの費用要求できるが、定員一体どこで確保しているかということをもあわせて聞かなければなりません。あと答弁して下さい。  その前に、自治庁はこの配分方法はどうやって配分するのでしょうか。これは各県平等で配分するのじゃないでしょうね。どういう実情に沿うてこれを配分するのですか。これが第一点です。配分の仕方、各県にわたって配分の仕方。  それからいま一つは、これが食品衛生行政以外のものに使われておっても自治庁はそれは関係ない。何に使ってもいいのでしょう。これは一応これで積算してまとめて渡してあるけれども、それはいわゆる平衡交付金考え方が持ち込まれてあって、必ずしもこれに使わなくても何に使ってもいいのでしょう。ほかのものに使ってもいいでしょう。配分方法、こういう建前で渡してある。この食品衛生関係費はほかのものに何に使っても自治庁というものはそれについては、使い方については何も関係しないのかどうか。この二点について答弁して下さい。
  21. 柴田護

    説明員柴田護君) 基準財政需要額と申しますのは、通常の水準において道府県一般財源——詳しく申しますならば、租税と、それから地方交付税でもってまかなわれるものとされるものでありますが、これを各行政項目別に、今申し上げました食品衛生に関します経費と、ずっと同じように計算をするわけでございます。そうして、計算をいたしました総需要額と、それから、その団体で徴収し得るであろうところの租税、これは客観的な資料によって測定するのでありますが、その客観的な資料によって測定された税の八割の額、これに入場譲与税の全額を加えまして、差し引きしたものが普通交付税額として交付されるのでありますが、これは従いまして、食品衛生関係経費としてのあるべき譲与額としてはこの程度だという計算が出て参りますが、その金につきまして、一々それだけのものを使わなければならぬということは、交付税の本質からいいまして、そういうことは言えないのであります。また、御質問ございましたように、出しました金をどのように使うかという問題は、これは交付税建前と、現在の地方行政と、国の行政との関係からいたしまして、自治庁といたしましては、それについて文句を言うべき筋合いのものではありません。
  22. 山下義信

    山下義信君 前段の配分金額のきめ方については、一応機械的な一定の方程式についてはわかりました。ですから、要するところ、わかりやすく言えば、この府県食品衛生行政関係者が非常に多い。また、問題も非常に多い。事件も続発している。この行政をうんとやらなければならぬ府県だからというような、そういう考え方の要素というものは、この交付金配分の額には入っていないのですね。ただその地元の、その団体のいわゆる衛生関係費使い方というものには、若干の考慮があるかもしれませんけれども、そういう地方々々の行政の必要度というようなものについては、配分金額には何ら関係ないのですか。
  23. 柴田護

    説明員柴田護君) お答えいたしますが、何ら関係がないわけではございません。衛生費関係につきましては、全部につきまして人口測定単位にいたしておりますので、単位費用としては人口一人あたりの額が出て参るわけであります。それに人口を乗じて参るわけですけれども、それにつきましては人口が増すに従ってある程度経費もふえて参りましょうし、人口が減るに従って経費はどちらかといいますと、人口一人あたり経費の額というものは高くなって参ります。また、対象人口の存在、人口分布状態から見ましても、人口密度が希薄になって参りますれば行政経費は高くなって参ります。そういう格好で、人口密度あるいはその県の人口の多寡に応じます段階においても、あるいはその府県の中に包摂されます市町村の態様、商工行政の占める度合い、そういったものによりまして補正をいたしておりますので、その補正をいたしております限りにおきましては、食品衛生行政の大観的な財政需要の大小というものが反映、加減されているものと考えていいのじゃないかと思います。ただ具体的に、この県はこれくらいのたとえば対象であるから、その分についてこれくらいの経費が要るという問題は、それぞれの地方団体予算編成時に際しまする判断というふうに考えております。
  24. 山下義信

    山下義信君 一応はそうなんですね。一応はそうなんですけれども、精密な食品衛生行政の需要度のその府県府県ごとの特殊な実情が十分にこの配分の中に勘案されているということは言い得ないのですね。人口その他、その府県の使っている衛生費のいわゆる需要費といいますか、そういうものが相乗をされるのでありますから、その中には入っておるでありましょうけれども、具体的に一々押えて、生きた、地についた食品衛生行政というものがその府県実情に沿うような、そういうこまかい血が通うておるような考え方交付金配分金額の決定の中には私は考慮されているとは思わない。大体は算出の式の中にはそういう要素が入っておるでしょうけれども、一々それが私はこまかに検討されてあるとは思えない。ことにその金がどういうふうに使われているかということは、この交付金の性質上、向うにまかせてあるのですから、何にでも流用できるようになっておるのでありますから、その通り使われておるかどうかということは自治庁は無関係。それはどこで見るのですか。厚生省が見るのですか。厚生省交付金の中に入れてもらってあるからというて安心していられるのですか。問題はそこなんです。もしこれが安心していられて、その通りに使われている。所望のごとくに使われているというなら、大臣が先ほど言われたように、今の制度だってそれは期待はできるでしょう。しかし、それが使われていないということになったら、交付金の中に算入されてある形にはなっているけれども、どうなっているか。そういうふうに使われているかどうか。金がそういうふうに使われておるかどうかわからぬということは、仕事が行われているかどうかわからぬということと同じことなんです。それはだれが押えるのですか。その通りに使っておるかどうかということはどこで押えるのですか。私はその金の使いっぷりまで厚生省が十分検討して目を光らしているかどうかということは非常に疑問に思うのでありますが、一々この交付金の算定のごとく、今、自治庁が言ったように、府県ごとに相乗の方程式によりまして出されたその金額そのものが使われて、そうして予定のごとき業務が行われているということをあなたの方で一々把握しておられますか。
  25. 楠本正康

    政府委員(楠本正康君) 最初に現状についてお答えを申し上げたいと存じますが、まことに残念なことではございますが、交付税対象におきましては、なかなか当初の積算基礎通りに事業が進まぬことは事実でございます。しかしながら、理想といたしましては、各都道府県の良識によりまして、その府県食品衛生に非常に熱心である場合には、他の交付税の部分をも加えまして実施していくというのが建前でございます。しかし、私どもはさような線に沿って逐次府県指導いたしまして、たとえ交付金でありましても、行政の後退のないように極力努力して参りたいと考えております。しかし、現在までのところは、必ずしも私どもの力及ばずいたしまして、所要の定員、所要の事業量というようなものが確保できないうらみがあることをまことに残念に思っております。
  26. 山下義信

    山下義信君 実際は不十分だと言われるのですが、そう言われるともうそれ以上追及してもしようがありません。おそらく実情も、どういうふうに行われておるかということも厚生省は十分把握できていないと思います。私は実際はやっていないだろうと思う。実際は食品衛生監視を事業年度が終って、それからそれぞれやるということは基準には出ておりますが、やってないだろうと思う。いいかげんのことをやっているんだと思う。食品衛生監視員のなすべき仕事は、食品衛生の検査をし、あるいは認可をし、そうしてそれらの許可を与えたものにはそれぞれの証紙、スタンプを与える等いろいろの業務をやっているだろうと思う。けれども実際はやつていないだろうと思う。非常にルーズなんだと思う。私はその実際の状況を厚生省としても十分調査してもらいたい。大臣にもお願いしておきますが、十分調査してもらいたい。非常な大問題です。私は極端なことを言えば、いいかげんな検査をして、いいかげんな証紙を張って、そして不良品、不正品がいわゆる検査を受けたような形で多くの不良な食品が市井にはんらんしている。それがために幾多の事件が発生するのだと思う。最近新聞にも報道されておりますが、各地で食品衛生に関するところの証紙、検査済みの証紙が非常にいかがわしいブローカー等によって、多数の証紙が入手されて、そうして検査も受けられないような商品にそのスタンプが張られて不正品が大手を振って検査を通過したような形で販売せられておるというような事実が非常に多いというようなことが伝えられておる。実際はやっていないだろう。これは徹底的に全国的に一つ御調査を願いたい。食品衛生監視員がいかなる活動をしておるか、都道府県知事から報告を徴せられたい。また、全国にわたって、厚生省も御自身で事実の御調査を願いたい。私はその点を強く大臣に要望しておきたいと思いますが、いかがでございましょう。
  27. 神田博

    国務大臣神田博君) 最近、食品衛生に関するいろいろな事件がむしろ増加の傾向にあるということは、これはまあ食糧事情にだいぶゆとりが出てきたことにもよりますが、量がふえたということにもよると思いますが、しかし、その一面、今山下委員がお述べになりましたような非常に憂うべき食品衛生関係をつかさどる職員の怠慢に基くと申しましょうか、緊張を欠いておる。正当な職務の執行が行われておらない、その心配があるという御指摘につきましては、これは十分調査をしてみないとお答えができないのでございますが、何しろ数のあることでございますのと、えてしてこういう検査等が、その仕事の性質上ルーズになりやすい向きもありますることは私も了解できるのでございます。非常に御心配をいただいておりますので、これは国民の食生活上非常に重大な問題でございますので、厚生省といたしましてはさっそく一つ府県の注意も喚起いたしまして、調査いたしましてその成果を上げたい。また、結果等につきましても適当な機会に御報告できるようにいたしたいと、かように考える次第でございます。
  28. 山下義信

    山下義信君 本法の要点である、本法実施上の重要点でありまする府県に設置させる衛生監視員というものが、それに必要な費用というものがただいまここで論議いたしましたように非常にあやふやな状態でその費用が置かれてありまして、そして国のひもつき補助になっております関係上、これらの衛生監視員の行動につきまして直接これを監督、指揮、命令することが非常に薄弱であるということが、私はこの食品衛生法一つの弱点であると思う。  いま一つは、この衛生監視員定員の確保という根拠が、先ほど来私がお尋ねしているのでありますが、まだ御答弁はいただけませんけれども、おそらく確固たる根拠がないのではないか。置いてもよければ、置かなくてもよいのだというような形では、私はこれはこの行政上非常に粗雑であると思う。定員の根拠がありますか。
  29. 楠本正康

    政府委員(楠本正康君) 現在、定員といたしましては、標準団体に、おきまして一万カ所と見込みまして、五十人の監視員定員としております。従いまして、その標準団体から全国的にこれを計算し直しますと、全国の所要人員は二千三百人と相なります。しかしながら、先般の委員会でもお答え申し上げましたように、専任はこれを割っております。しかし、他の者を兼任いたしまして仕事を実施いたしておるような点から、兼任をも含めますると、かなり数は大幅に増加をして参っております。
  30. 山下義信

    山下義信君 それは一応の基準をおっしゃるのでありまして、その定員それだけを置かなくちゃならぬという義務規定の法的根拠は何にあるのですか。
  31. 楠本正康

    政府委員(楠本正康君) 交付税は性質上何らこれを積算する基礎を調整する根拠はございません。従いまして、ただいま御指摘のように、どうしても置かなければならぬという数字とはならぬわけでございます。
  32. 山下義信

    山下義信君 ですから、みな話が架空なんです。法律では衛生監視員を置かなければならぬことに、市長、県知事に命じて、何人置かなければならぬという法的根拠が何もない。一応交付金の中で算定してもらうために、一つ標準数字を出してあるだけで何もない。これはどこかでどうしても定員を確保しなければならない。それから国のひもつき補助に取り戻すことも五分もあればできる。この法律の付則で、地方交付税交付金の第何条か知らぬけれども食品衛生法に書いたところだけを削除すると、ただ一行書いたらすぐ全部ひもつき予算になってしまう、これは当委員会でも他日同僚諸君に御相談してから、機会を得てやりさえすればできることなんです。後日の問題に私は残しておきますが、簡単なことです。自治庁があるといったって何もなりはしない。神田厚生大臣の前に出れば、朝飯前、お茶漬ですぐできる。これはぜひやらなければならぬ。それで問題を後日に残しておきます。定員の問題は、全国的に何人要るかということを考えなければなりません。一つの県で三十人か五十人はほとんど今日屠殺場にみな行って、屠殺した牛肉を監視しているのが衛生監視員の八〇%の仕事になっている。飯食店を回っているような衛生監視員は一人もありません。あったらその実績を出して下さい。こういうような法律の上で幾ら字句を強めた形をとりましても、そんなようなことは行政になっていない、政治になっていない。これはどうしても厚生省でもお考え願わなければなりませんが、いま一つ私は聞いておきますが、食品衛生調査会、前回高野委員がお触れになったと思いますが、今は何をしておられますか。食品衛生調査会というのは委員長以下五十名の委員があって云々ということがありますが、この食品衛生調査会というのは一体何をしていますか。それからどういう人が委員になって、だれが委員長か、この開会日数、今までこれをやっているのですかどうですか。一体食品衛生調査会の経費はどうなっていますか。費用はどういうふうになっていますか。この食品衛生調査会というのは活発に動いていますかどうですか。それからこの中には一体いろいろな業者委員として入っておるようなことになっておりますが、私は前回に、この食品衛生行政を十分に効果をあげるためには、食品関係業者団体の大きな、民主的な民間団体一つ結成して、厚生省がそれを握って、そうして官民一体になってやるようにという要望もしておいたのでありますが、政務次官は聞いておられて了承したと言って下さいましたが、大臣の前で、あなたも繰わ返して言われましたが、ただしそういう団体を作って、そして利権をやってもらっては困るということのくぎをさしておいた。こういうことを強化してどんどんやればかなわぬから、いましばらく穏便にしてくれとか、何とか穏やかにしてくれと盛んに言ってくる。そのために、何かの物の種にされては困るからということを警告しておきましたが、その食品衛生調査会なんというものも十分一つ再検討してみて、そういう団体とのつながりを考えて、ただ、学問的には何とか、科学は何とかいうことばかり検討しておるようなことは、食品衛生研究所か何かにまかせておいて、そしていわゆる食品衛生行政実施する上においての有力なる協力機関か審議会のふうなことにせぬと、何か学者みたいなものを集めて、成分が二%とか何とかかんとかと、水素が、炭素がというようなことばかりやっておったのでは、食品衛生行政強化をしていく上の有力な政府機関にはこれはならない、私はそう思うのです。どういうことをやっているのかわかりませんが、念のためにこれを聞いておきたいと思います。
  33. 神田博

    国務大臣神田博君) この食品衛生法におきます食品衛生調査会の活動ぶりが緩慢であるじゃないかというお尋ねに伺ったのでございますが、御承知のように、調査会におきましては、食品添加物あるいは器具、包装等に関する斯界の権威者またはこれらに従事しているエキスパートをもって組織されておるのでございまして、最近におきましては、黄変米等に関する調査報告等をちょうだいしているわけでございまして、この働きぶりに関しましてはいろいろ御例示のような御要望もございますので、今後におきましては、一つ山下委員の御要望に沿うように一そう活動していただこう、これは何といっても、委員会の方が活動をなさる、なさらないということは、厚生大臣の諮問に応じて重要事項を審議、調査をするということになりますから、厚生省側からその重要事項であるものを諮問することが先決問題だろうと思っております。最近頻発する幾多こういった不祥事等もございますので、これらの除外、その他、また進んで積極的な食品衛生の向上するような面に向って十分機能を発揮していただくように、私も責任をもって今後の運用に一つ心がけて御期待に沿いたいと思っております。
  34. 山下義信

    山下義信君 私はあと二点でありますが、簡単に済ませますから御了承願いたいと思います。その一つはこういうふうな取締りをしていくということ、これは指導もございますけれども取締りをしていくということばかりでも味がないと思う。これも一つ私は神田厚生大臣に期待をして、御検討を願いたいと思うのですが、これは取締り強化するということは私は消極的だと思うのです。どれほど強くしましても、そのこと自体は消極的な行政です。積極的には私は何としてもいわゆる信賞必罰であって、優良な食料品を、優良な加工業者を、優良なメーカーをどんどん発達さしてやるといことが積極的だと思う。信賞必罰ですよ。ですから、この処罰や処分のことばかかり強化して、いろいろな取締り方法やその制度をどのように強めましても、これはたての一面ですよ。やはり一面におきましては、これは安心して食べられる食料がいい。これは優良食料品、これは優良メーカー、これは無毒だ、これはいいんだ、これなら国民は安心して食べられるというふうに、厚生省が保証してやるというと、かまぼこでも、ミカン水でも、ジュースでも、何でも出てきたら、ああこれか、これなら厚生省の保証付だからこれにしようということで、この食料品店が、この飲食店がということで、国が積極的に優良品を推奨するということを活発に行わなければ、こういう不良品、不正品があるぞよと言って、いかに警告しても、そこに機械を持っていって、役人を連れていって需要者が科学分析をすることができないのでありまして、これが不良品である、不正品であるということがわかるのは時間的にずっとあとのことでございまして、要需者がすぐ安心して、その用に足しますことは、これは直接目に見てこれは優良品ということが一目瞭然にわかる。また、そういう不正品を販売しているものはこれは不正の販売店だということがわかれば、その店には行かぬでしょう。その商品はだれも買いやしません。やはり私は、優良品をいかに国民に、これをはっきりとわかりやすく提供させることができるがという施策を、国民衛生の方面では積極的にやっていただかなければならぬということですね。私はこの点について特に御考慮を願いたい。従って、事は小さいようでありますけれども、九千万国民の健康保持に重大な影響のある食料品ですから、日常私どもが使います食料品でありますから、非常に私は大事だと思う。これこそ台所に直結する政治ですよ。生きた政治です。ですから私はそれがために厚生省が、これが安心のできる正しい食品だというスタンプをあなたの方からお出し下さって、それが一つ十円、一枚が十円であろうと、いわゆる証紙税がそれにかかろうと、需要者が喜んでそのくらいのことは安心して証明料は払いますよ。金を払ってから有毒なものを食べさせられるよりも、非常に健康的にもまた、生活費の上からもむだをしまするよりは、十円や二十円厚生省に手数料を払いますから、一品ごとにあなた方が発行された優良品のマークを張ってあるものは喜んで国民は歓迎しますよ。そういう優良食料品をやはり国民にその正邪がはっきり区別ができるような積極的な施策を一つ考えていただきたいと思うのですが、大臣の御所見はいかがでございましょうか。
  35. 神田博

    国務大臣神田博君) この食品衛生法のねらいは決しておどかすと申しましょうか、罰則を強化して、そして徹底を期そうという考えではないのでございまして、ただいま山下委員のお述べになりましたような、その根本の考え方は、九千万国民によい商品を多量にしかも廉価に配給したいということがねらいであることは、これは申すまでもないと思います。そこで、このねらいに遺憾ながら沿わないというものについての罰則をやむを得ず規定しているわけでございまして、そこで今、山下委員がお述べになりました信賞必罰でいけ、りっぱなものはりっぱなものとして厚生大臣として表彰するなり、これは何も特定な店を宣伝するわけではありませんが、いいものはいいと証明することはやはり世の中を明るくすることでありまして、お説はまことに私ども同感ございまして、ごもっともでございます。今後この食品衛生法の施行に当りましては、全く山下委員のお考えに私も共鳴しておりますので、そういう趣旨一つ十分意図しさして、この行政成果が上るように期していきたい、かように考えておる次第でございます。
  36. 山下義信

    山下義信君 それでは、最後に一つ私は大臣の御在席の間に一つお願いしておかなければなりません。警察庁の中川刑事部長にはたびたび御出席をわずらわして恐縮でございますが、私は本日思いつきで伺っているのじゃない、昨年の春以来、委員長のお許しを得て、専門室の協力を得て全国的にいろいろ不正品や不良品の状態につきまして調査をずっと続けて参りました。今日は量の時代から質の時代に私は入っておると思う。あらゆる政治の面におきまして玉石混淆の時代ではない。だんだんと高度の政治が行われていくようになってきておるのでありまして、量から質へと、そこでどうしても厚生関係におきましても、不良、不正、そういったような問題は、雑草は切り払っていかなければならぬ段階に私はきておると思いまして、昨年春以来関係各方面にいろいろ医療公衆衛生等に関する不正行為の実情調査というものをずっと継続して参りました。そのうちの一例として、不正飲料水の状況につきまして、法務省、検察庁また、警察庁関係のいろいろな御所見も伺って今日まで参りまとたのであります。ここで多くは申しませんが、非常に驚くべき状態になっておる。それが具体的にときどき新聞に出るのでありますが、これは言うまでもなく、氷山の一角なんであります。ジャーナリズムに載りますのは、ただその一部が出るだけです。昭和二十八年の食中毒事件だけを見ましても、これは厚生省の方からお出しになった資料等を勘安したのでありますが、千三百四十四件、患者数が二万三千百二名、死亡者が百九十八名、昭和二十九年には患者数が二万二千名で、死亡者が三百六十名、昭和三十年度は一躍増加しまして、患者数が約六万五千名で、死亡者が四百六十名、この四百六十名のうちには森永粉乳事件の乳児死亡者が百十三名入っております。この辺から非常に多くの集団中毒事件が現われてきておるのであります。神戸の製鋼所では三千人、全員が中毒事件にかかり、新潟のイカ中毒では約二千人、雪印の脱脂粉乳事件では御記憶のごとく千三百名を初め、その他四百名、五百名の集団中毒患者がさらに出た。  三十一年になりますと、さらに増加いたしまして、食中毒事件の届け出られた患者数、治療いたしました医者その他保健所に届け出た者が六万五千三百一名、死亡した者が五百名、これは三十一年度の、しかも十一月までの計数です。それから本年に入りましてからさらに増進しておる、まだ三月早々ですが、一月へ、二月と二カ月しか経過しないこの二カ月の間に、宇部市のしょうゆ事件、長崎市の三菱造船所の粉食事件、栃木県の療養所の給食事件、四百名から三百名、三百四十名、東京都内の品川のウグイス豆の事件、最近は弁当の事件というようにどしどし出ておる、この状態一つ考えなければならぬ、これはおそるべき状態だと私は思う。それでしろうとでありますが、先輩諸君が、もちろん専門家がみんなおいでになるので、私は実のところは専門家をさしおいて、科学の知識も何もない私が言うのは恥かしいのでありますが、常識的なことしか言えませんが、これはおそらく保健所、府県の衛生部を通じて表面に出てきた一部の数字でありまして、この届け出られていない食中毒事件、食中毒だけですよ、食中毒だけの隠れた患者はおよそ私は十倍あると思う。十倍ある。十倍あるとしますと、届け出た者が六万、届け出ないけれども、ただ自分のうちで手当をして売薬か何かで腹薬を飲んだりして黙っているのが六十万、合せると六十六万、食中毒や何かで下痢とか何かをしたり、病気にかかった者が推定して六、七十万ある。それから私はおそるべきものは、こういうふうな食中毒の病気にかからなくて、日々に知らす知らずに有毒品を食べて健康をそこねている国民の数というものは何百万じゃないだろうか。この中毒事件の表面あるいは顕在、潜在しておる六、七十万の約十倍の六百万ないし七百万の国民はいろいろな不正の薬やら、そういうようなものでカムフラージュされている食品を食べて……私はきのうも何か見ておりましたら干物がある、干物のみりんぼしの、いかにもおいしそうな色のついている、しょうゆのような味がついているイワシのみりんぽし、ところがあれはゴムのりが塗ってあると書いてある、うわあ、これはこれからやめにしようと思った。実におそるべき食物だといわれておる、このおそるべき食物が知らず知らず国民の健康を害しておる、そのおそるべき被害というものは捨てておけぬと私は思います。それでそういう人たちがどのくらいの金銭的な損失をするであろうかと、かりに試みてみますと、一日休みますと一日収入が減る、医者にかかりますと治療費がかかる、そういうものを推算してみますというと、およそ七百三十三億の被害を国民がこの不良食品によって損害をこうむる、私の計算では。こまかいことはお尋ねがあれば答えますけれども、そういう結果です。七百億の損害を金銭的にも国民に与えて、知らず知らずの間に生命の危害を与えているということは、これは国民保健の責任に当る厚生省としては黙視ができぬ。それで厚生省の方では一つ大々的な御計画をお立て下さって、全国的に一斉に何といいますか、総動員といいますか、総調査といいますか、これは画期的なものをやってもらわなければ、少々なまぬるいことをやっておっては追っつけません。そして私はいつもこういうことを申し上げて恐縮ですが、この種の悪質業者といいますか、悪質な販売者といいますか、これは実にもう青バエのごとき執拗な常習者であります。犯罪者であります、しかも国籍不明な種類の人たちにもう抜くべからざるものがあると思うんです。ですから、大々的な強力な計画を立てていただいてやっていただきたいと思う。そこで、私は警察取締り当局にお願いをすることは、これはもう計画的に画期的におやり下されば効果を上げた先例がある、当委員会がお願いして、熱心な同僚委員諸君がことに先頭に立たれて当局に協力されて、あの覚醒剤の撲滅、ヒロポン撲滅というものは実にこれは成果をあげた一つの事例でありまして、これは一つ徹底的に全国にわたって取締りを励行されて、計画的に私は取締り当局と緊密に厚生省は連絡をとって、一つ画期的にこれを根こそぎやっていただきたい、こう思うのであります。施策を一方には御工夫願いますと同時に、国民諸君が、国民生活の上に厚生省の御努力に朝夕安心してこの食料が手に入りまするような施策をやっていただきたい、かように考えますので、厚生大臣の御所見と、中川刑事部長の御所信とを承わって、私の質問を終りたいと思います。
  37. 神田博

    国務大臣神田博君) 山下委員のただいまの厚生省に要望されましたこと、私も全くこれは同感でございまして、年々実施をして参ります点につきましては、関係各庁とも打ち合せの問題も生じて参ります。また、予算のやりくり等の問題もこれは考えなきゃなりませんが、事柄が国民生活に非常な重大な関係もございますのと、何といいましても、これはもう日常われわれの生活に直結しておりますきわめて喫緊のことでございまするので、そういう事例等承知いたしました上からは、すみやかに一つ御要望に沿うような処置をしたい。これは年に一回、二回やるというだけでなく、常時そういう心がまえをもって、本法の施行を一つ順守して参りたいと、御要望に十分沿って法の円満な施行をしていきたい、こういう考えでございますので、さように御了承を願いたいと思います。
  38. 中川董治

    政府委員(中川董治君) ただいまのお説につきまして、私ども関係しております者は、何といいましても消極面でございますので、悪いことをした人間に対して、特に犯罪を犯した人間に対する取締りの面になろうかと思います。御指摘がございましたように、覚醒剤等につきましては、覚醒剤をやみで作る、もぐって打つ、こういう点につきましては、当委員会の強い御要望等もございまして、徹底した取締り実施して参ったわけでございます。食品衛生関係に伴う犯罪についても、趣旨は全く同様に理解すべきものと思うのでありますが、この食品衛生関係で、過失によって人を傷つけた、過失によって人が死んだ、こういう事例が多いわけでございますので、刑法でいえば過失傷害致死罪、こういうことになる場合も少くないのでございます。その他あるいは食品衛生法に定めている犯罪もあるわけでございますが、何と申しましても、食品衛生の面につきますと、覚醒剤の場合と異なる点は、実際現実に店頭に並べられている物品が、食品衛生法上適当な物品かどうかという点につきましては、やはり技術的、科学的な検査等が中心になろうかと思いますので、厚生省におかれまして御努力中の、食品衛生監視員制度等の運用によりまして、そういう行政監督的な検査をまず遂行していただきまして、私どもの分担いたします犯罪面につきましては、それに即応いたしまして、お説のごとく理解できるのでございますが、われわれといたしましても、厚生省の御施策に即応いたしまして、よく連絡を密にいたしまして努力して参りたいと、こういうふうに考えておる次第であります。
  39. 高野一夫

    ○高野一夫君 私は一応質問は打ち切ったわけでありますが、大臣がせっかくお見えになっておりますので、先般楠本部長と中垣政務次官にお願いかたがたお伺いしておいた点について、あらためて大臣にお願いかたがたお伺いしてみたいと思うのでありますが、ここに本日資料が出ておりますが、食品衛生管理者を置く予定の業種、こういうものを指定するという資料が出ている。これは先般山下委員の御要求によったものだと記憶いたしております。これを見ましても、この間の楠本部長の御説明のごとく、管理者を置かなければならぬとする業種は、きわめて一と二だけのこの狭い範囲に限られておる、これは私は非常に不本意でありまして、いろいろ不良食品の出工合、中毒事件の勃発の仕方、そのほか諸般の事情から勘案いたしまして、この衛生管理者を置かなければならない業種というものは、もっと広範囲に指定をすべきじゃないか。たたし、たとえばアルコール飲料のごときは大蔵省とか、そのほか農水加工品に関しての食品は農林省所管とか、いろいろ各省にまたがっておる点があるので、厚生省としてもやりにくい点がおありなんじゃないかとお察しするわけでありますから、そこで私の考えますのに、たとえば乳製品にいたしましても、ただ乳幼児の保育上というようなものだけでなくして、乳製品、牛乳の処理上すべてにわたって業種に指定すべきである。カン詰、びん諸のごとき食品製造業あるいは食肉の加工業、アルコール飲料はもちろんのこと、清涼飲料、しょうゆ、冷凍水産物、こういうようなものは当然製造面において、また製品としての取扱い面において厳重に学問的の検査、指導をやる必要があると思うので、食品衛生管理者を置くべき業体じゃなかろうかと、かように考えておるわけであります。しかし、これは各省との折衝上厚生省の御一存だけではいかない点があるのではなかろうかとも察しますので、そこで先ほどの山下委員の口まねをするようでまことに恐縮でございますが、神田厚生大臣の御在任中に、各省との間にわだかまっておるこういうようなむずかしい問題について一刀両断的に解決していただきたい。そこで、おそらく農林省所管、あるいは大蔵省所管にいたしましても、こういう厚生省関係取締りの主体になるような食品衛生管理者を置くということについては、おそらく私は反対しておるのだろうと思う。そこで少くとも製品あるいは製造の面について食品として取り締る仕事は、厚生省食品衛生法によってやる以上は、そのもとがどこの所管であろうと、断固として厚生省がやるべきだ、こういうふうに思いますので、この資料に出されたようなきわめて狭い範囲でなく、あらゆる危険のある食品の製造、そのおそれのある業体に広範囲にそういう業種を指定する、こういうことについて各省間の折衝に一段と強力なる態度をおとりを願いたい、こう思うわけであります。これをお願いかたがた大臣の御所信を伺っておきたいと思います。
  40. 神田博

    国務大臣神田博君) ただいま高野委員より、食品衛生管理者を置く業種の予定がきわめて限られておるようで、これはできるだけ一つ幅を持つようにと、また、各省にばらばらであるおそれもあるようだから、こういう行政もするようにという御意見でございまして、これは先般の委員会にそういうことの御意見も出ましたことを政府委員より伺っておりまして、政府委員からも答弁されたことも承知いたしております。これはまだ私も実は置く問題を省議で詳しくきめたわけではないのでございまして、できるだけ一つ高野委員その他の方々の御要望もございますので、御趣旨に沿うような置き方をいたしたいと、こう考えておりますが、まあざっくばらんのお答えでございますが、管理者を置く場合でも、管理者のやはり養成からよくして参りませんと、業界が不当な圧迫をするのではないかというような心配も出て参りますので、その辺のことも十分これは考慮していかなければならないことと思っております。  それから今御要望にもございましたように、厚生省だけではできなくて、各省と調整しなければならない点があることもその通りでございまして、よく一つ御要望の趣旨は、私ども考えておりますことと考え方は一致いたしておりますので、なるたけ一つすみやかに御要望の線に沿うように、行政効果をあげるように一つ努力して参りたい、こう考えておりますので、さよう御了承願いたいと思います。
  41. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 厚生大臣お尋ねをしたいのですが、八章の雑則二十六条の補助規定ですね、これはこの前からお聞きしていると、二十五年以後は地方交付税交付金でやっている。山下参員の質問を聞いておりますと、地方交付税交付金使い方、具体的な運営については、どうもわれわれが納得いかない、根本的にはこういう地方交付税交付金制度というものがより活用され、意義あるものとして指導され、そして動くようにされるのは、厚生省の私は役割だと思うのです。こういうことがやはり重大な問題としてここに掲げられておりながら、二十五年から今年までこういう交付金状態にある。私は先ほどから山下委員質問を開き、また、いろいろ調査されたいろいろの具体的なことを聞いておりますと、どうも納得がいかぬ。厚生省としては、今のようにこれをとってしまうというようなことをいいと思っておられるか、われわれはなかなか納得できない。厚生大臣はこの問題については根本的に重要な問題だから検討してみるというお答えがあったように思うのですが、その通りですか。
  42. 神田博

    国務大臣神田博君) この問題は、今日になりますと深い意味をもったような形になっておりまして、厚生省考え方といたしましては、これはいろいろあったわけでございますが、今言ったような趣旨に順応しなければならないというようなことでここまできたわけでございまして、実際に、ほんとうの効果を上げるのに一体どっちがいいかという追い詰められたことになりますると、実は私も就任早々のことでございますから、ほんとのところは、自分の考えももっと掘り下げてみたいという気持もないわけではございませんが、しかし、長いことの懸案でございまして、一応これは一つこのような方法にしていただきまして、他にこれと類似の点が自治庁と申しましょうか、府県関係を通じて私どもの仕事の上には多々あるのであります。そういうことを一つまとめまして、何といってもこれは厚生省の第一線の実施機関は、府県が担任する部面が多いのでございまして、全体にわたって考えてみたいということは、ここでそういうことを述べる機会があるかどうか、はなはだ時間もかかるので結論だけ申し上げるわけでございますが、厚生省の今までずっと続けて参りましたことを、この辺で石橋内閣以来私ども福祉国家を一つ標榜しまして、社会保障を十分、逐次漸を追うて大幅にやっていこうという考えを持って参りますと、相当今までのやり方自体について大幅な規模において自治庁関係しておる問題、また地方庁の今いうような問題について再検討する必要があるのではないかという実は考えを持っておるのでございます。今いろいろな面で調査を始めたばかりでありまして、この結論がどういうふうになりまするか、これはだいぶ時間のかかることでございますので、ここでかれこれ申し上げるわけにいきませんが、しかし、私の心がまえ、また、内閣全体の考え方といたしまして、厚生行政というものを今までの消極といいますか、日本の復興を急いだ重点施策の中からまた、重点的に厚生関係考えていこうという大きな変り方から考えますと、厚生省全体についてもそういう気持で考えて、重要施策のうまく行政面に浸透するような、中央の意図が地方、また、末端に浸透するような方途をきめなければならぬのじゃないか、こういうような考えを持ちまして、実はようやく調査の方向を今きめようというような段階でありまして、そこで一つ十分やってみたいと思いますけれども、なかなかこれは一ぺんでどこまでいけるかということもございますので、何しろ相手のあることでありますから、これは今後一つこの意見を述べまして、さらに今申し上げたような調査が進みましたら、相当規模の大きいところでいろいろ御審議をお願いいたしたいと、こういう考えでございます。はなはだ取りとめのないような次第になったようでございますが、考え方としては今の段階ではこれをお願いいたしまして、将来厚生行政の全般にわたって一つの変革と申しますか、大きなものを打ち出していきたい、こう考えておりますので、根本的なところは、その辺で一つ御了承を願いたい、こういう気持でございます。
  43. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 大きな問題として今この二十六条の問題が具体的に地方官庁との間に、そうして厚生省との関係が生きたものとして動いておるのじゃないか、交付金という形のものにするか、その点の内容が今、山下委員質問で非常にあいまいである。私はこれをとることについては反対なんですよ。むしろこれを生かすように一つ厚生省としては努力していただきたい。これだけを一つお願いしておきたいと思います。
  44. 神田博

    国務大臣神田博君) ただいまの藤田委員のお気持はよく了承できるのでございまして、先ほど申し上げましたように、このほかに大きな類似のものがございますので、あわせて一つその機会には善処いたしたいと考えます。
  45. 千葉信

    委員長千葉信君) 本件に対しまする本日の質疑はこの程度にいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  46. 千葉信

    委員長千葉信君) 御異議ないものと認めます。  社会保障制度に関する調査の一環として、熊本県水俣市に発生した奇病に関する件を議題として、午後一時半から再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時十八分休憩    —————・—————    午後二時三分開会
  47. 千葉信

    委員長千葉信君) 休憩前に引き続き会議を開きます。  社会保障制度に関する調査の一環として、熊本県水俣市に発生した奇病に関する件を議題といたします。本件に関し御質疑を願います。
  48. 森中守義

    森中守義君 私はこの際、厚生大臣に特に質問を求めまして善処をお願いしたいことがあります。その前に、元来、社会労働に私は初めて出て参りまして、きわめてしろうとでありますので、しろうとに納得のいくような御答弁をお願いしたい。一般的な問題をまずお聞きしたいのでありますが、予想されない、いわゆる悪疫あるいは悪病と申しましょうか、こういうものが発生をした場合に、厚生省政府の方では、一体緊急にどういう措置をおとりになるのか、また、その結末はどういう場合でも必ずついておるかどうか、これを冒頭にお尋ねしておきたいと思います。
  49. 神田博

    国務大臣神田博君) 予想しないような、不測な、何といいましょうか、われわれの生活環境に不詳なことが起きたというような場合、厚生省ではどういう措置をとっておるか、こういうようなお尋ねのように承わったのでございますが、厚生省といたしましては、さような場合におきましては、まず事件の原因、それからまた、その事実の調査ということを主眼といたしまして、すぐ現地に調査班を派遣いたしまして、詳細調査を進める、そこでその調査の結果に基きまして、それぞれの対策を立てて、そして善処して参ると、かような考えのもとで行政を進めて参っております。将来におきましてもやはりそういうような方針で善処して参りたいと、かように考えておる次第でございます。
  50. 森中守義

    森中守義君 私はその具体的な事実の一つとして特に質問をしたいのでありますが、何といっても人命に関係をし、かつまた、民心に不安焦燥を伴っているような問題でありますが、おそらく熊本県知事から大臣の方に報告もあっているとは存じますけれども、熊本県南部の地帯に水俣という工場地帯があります。ここは御承知でもありましょうが、日本窒素という大工場がありまして、たとえば石けんを作ったり、あるいはまた、肥料を作ったり、従ってこういういろいろな化学製品を作る工場であるわけでありますが、その原因がまだつまびらかにされていないようでありますけれども、統計によりますと、二十八年ごろからいわゆる全く原因不明の病気が発生いたしております。二十八年の十二月に一名、それから二十九年の四月に一名、五月に二名、六月に一名、七月に二名、八月に四名、十一月に二名、合計十三名、それから三十年の一月に一名、五月一名、六月一名、七月二名、八月一名、十月二名、十二月に一名、合計九名へさらに昨年には一月に一名、四月に六名、五月に四名、六月に七名、七月に二名、八月に四名、九月に四名、十月に一名、十一月に二名、十二月に一名、合計三十二名で、現在までの総合計は大体五十四名の原因不明の患者が発病いたしております。この中ですでに死亡した者が十七名、また、全治した者が三人で、残りは今なお熊大の病院でありますとか、あるいは再春荘という国立の病院だと思いますが、ここに入って治療を受けておるようであります。従ってこういうように、統計が示しておりますように、非常に同地域では、たとえば漁業関係にもきわめて重大な影響を来たし、あるいは旅館業あたりにも、あまり観光客が来ない、こういうことで非常に重要な問題になっておるわけでありますが、大臣の方では、この事実を御存じですか。
  51. 神田博

    国務大臣神田博君) ただいま森中委員よりお尋ねのございました熊本県の水俣市に起きました患者の発生、あるいはそのうちの死亡された数、あるいは現に治療中の点等に対する詳細な報告は承知いたしております。この水俣市に起きましたこの不幸な奇病につきまして、厚生省といたしましても調査班を出して、その調査に基きまして鋭意研究いたしておりますが、まだこの発病の原因につきましては詳細を探知するということが、きわめることができておらないような状態でございます。しかし、何しろこれは二十八年から四ヵ年間に患者の発生工合、また、死亡者の数も非常にこれは高い率を示しておりますのと、病気そのものが非常にこれはお気の毒といいましょうか、憂慮に堪えないような状態でございますので、早く一つこの原因を突きとめまして、そして根本的対策を立てたい、こういうような意図をもちまして、目下鋭意調査をいたしておる、研究をいたしておる、こういうような事情でございます。
  52. 森中守義

    森中守義君 私はやはり問題は具体的でなければ、こういう問題はいけないと思いますし、今大臣の御答弁からいけば、抽象的ないわゆる役所の仕事として、御答弁としてはわかります。しかしながら、この地域で大体発病した人たちは海中に入って魚をとった、こういう人が非常に多いようであります。従って、同地域に約三百世帯ほど、いわゆる手釣りと申しますか、こういったようないわゆる零細の漁民がおります。こういう人たちはもう全く海に入れない、転業しなければいけない、あるいはまた、死亡した人のあとの措置が全く補償されていない、いわんや入院患者についても国はこの事態については何らの対策も立てていない、こういうことでありますので、もう少し具体的に私はどういう調査を行われ、そしてまた、現状においてはどういう措置を講じられようとされているのか、もっと具体的にお答え願いたいと思う。先般同地域から多数の代表がお見えになりまして、私どもはその切々たる現地の事情を承わって、これはもう非常に重大な社会問題であるということで、黙認しがたいようなところから、きょう私は特に本委員会大臣所見を承わっておるわけでありますが、もう少したとえば発病者に対してはどういう対策を立てているか、あるいはまた、死人に対してはどうした、また、これから先はどうする、そういう具体的な問題を承わりたいと思います。
  53. 山口正義

    政府委員(山口正義君) 大臣へのお尋ねでございますが、具体的な問題になりますので、私から答えさしていただきたいと思います。  ただいま森中先生からお尋ねの水俣市の郊外に起りました、いわゆる原因がはっきりいたしません疾病につきまして、今までの経過の概略を御報告さしていただきたいと思います。それからただいまお尋ねの患者に対する措置等の問題をお答えいたしたいと存じますが、この原因不明の疾病を私どもの方で承知いたしました端緒と申しますか、それは昨年の四月ごろから水俣市の郊外に四肢の運動失調、あるいは麻痺、それから言語障害を主症状といたします患者がかなり多く出て参りまして、三十一年——昨年の五月一日に水俣市の日本窒素の工場の付属病院の医師から日本脳炎の疑いを持って水俣保健所に報告されたのでございます。このような患者は、ただいまもお話がごさいました二十八年末あるいは二十九年の初めごろから同市郊外に発生しておりまして、一般の開業医の方々からは原因不明のまま臨床的に観察されておりまして、特に奇病としての報告は受けていなかったのでございます。ただいまおあげになりました患者の発生の状況はあとで申し上げますが、調査の結果、当時にいろいろ病歴等を調べまして、死亡原因は主として肺炎でございましたが、症状から考えまして同一種類の疾病ではないかというふうに推定して、そういうふうな数字をまとめ上げたわけでございます。現在までにとられました措置といたしましては、その報告を受けました保健所では直ちに調査を開始しまして、その当該地区——月の浦地区と申しますが、その月の浦地区、あるいはその付近の地区から多発していることが判明いたしましたので、県に報告しまして県も調査に着手したのでございます。五月二十八日に水俣市が当市の医師会と協調いたしまして対策委員会を作りました。それから行政的には七月二十日に取りあえず日本脳炎の疑似症を適用いたしまして、初めは原因不明でございましたが、伝染性の疾患ではないかと、特に神経症状を呈します関係から日本脳炎の疑似症を適用いたしまして、伝染病舎に八名を隔離収容したのでございます。どうも調べてみましてもなかなか原因がはっきりわかりませんので、八月の十四日に水俣市が熊本大学に調査を依頼いたしました。そこで八月の下旬、二十四日に大学と県と市関係者で水俣市に置きまして対策協議会を開催いたしまして、その結果、大学に患者が五名おりましたが、その五名を学用患者として入院させたのでございます。それからそれでいろいろ検討してもらっておりましたが、まだはっきりわかりません。十一月になりまして、県が大学医学部に研究を依頼いたしました。大学に研究班が作られたわけでございます。その疾病のそういう報告を受けて調査を開始いたしました当時では、局部的な問題として扱っておったのでございますが、厚生省にも報告が参りまして、厚生省としても、まあほかの地区にはそういう患者は発生いたしておりませんけれども、とにかく原因不明ではっきりしないということで、厚生省でも臨時に厚生科学研究班というものを結成いたしまして、ごくわずかではございますが、国の研究費をその班の費用として出しまして調査を開始したわけでございます。班の構成は、厚生省の付属機関でございます公衆衛生院の疫学部長松田博士を班長とし、国立予防衛生研究所の北岡部長、これはやはり脳炎ではないかというような事態がございましたので、そちらの方の専門家を入れ、それから現地の熊本県の衛生部長、それから熊本大学の医学部長を班員として、そうしてそれにそれぞれの助手と申しますか、手伝う人たちをつけて班を編成したわけでございます。それで調査を開始したわけでございますが、現在とられております措置は、県が衛生、民生、土木、経済と四部による水俣奇病連絡委員会というものを設けまして対策に当っております。市の先ほど申し上げました対策委員会は研究会と改めまして、研究を主としてやっているのでございます。  漁獲とかそれから魚類の販売の禁止につきましてはいろいろな問題がありますので、県としてはできるだけ、まあ先ほど御指摘のように魚に疑いが持たれましたので、食べないように指導するというような立場をとっているわけでございます。  患者の治療費につきましては、大学の入院患者は学用患者としてて取り扱っております。それから生活保護法を適用できるものはもちろん同法を適用して医療費をまかなっているというような状況でございます。  患者の状況は非常に特異な症状を呈しておりまして、先ほど申し上げましたような神経系統の症状を主症状とする特異な症病でございます。現在までの患者の数は先ほど御指摘ありましたように五十四名、そのうち死亡者が十七名、全治したと思われる者が三名というような状況でございます。調査に当りました班長の松田疫学部長がこちらに参っておられますので、詳細な点につきまして、もし御質問がございますれば、松田部長もお答えできると思いますが、いろいろな調査をいたしました結果、初めは伝染性の疾患ではないかというので、患者の死体から、あるいは患者の糞便、そのほかのものから病源体の検出に努めたのでございますが、それがどうしても伝染性のものは、病源体は今までのところ検出できないというような状況であります。ただ疫学的に見まして、先ほど御指摘のように、患者のうちの六〇%以上が漁業、あるいは半漁業というような人たちでございまして、直接釣に携わる、そうしてとった魚を食べておる人たちから発生しておるというようなことで、魚に関係があるんじゃないかということが推定されるわけでございます。その湾内では、ボラ、エビ、タコ、いろいろな魚がとれますが、そういう魚を特に非常に当該地区の習慣として多量に食べるということでございますが、多量に食べている者からこれが発生率が多いというようなことでございます。特異なことは動物との関係でございまして、ネコが非常にこれと同じような症状を起して死亡している。ネコのほかに豚とか犬も類似の症状を呈して死んでいるものもございますが、特にネコが多いということが非常に特異的だと思われるのでございます。  原因につきましては、先ほどから申し上げておりますように、最初伝染性症患と思ったのでございますが、どうもそうではなしに何かの中毒ではないかというように考えられるわけでございます。  今までこの調査に要しました費用は、先ほど申し上げましたように、厚生科学研究費をごくわずかでありますが、それを支出いたしました。それから最初伝染病の疑いがございましたので、伝染病予防法によりまして費用を支出する道がございますので、それに基きまして、県の出しました費用について国が半分補助するというようなここをしているわけでございます。患者の医療費につきましては、先ほどのようなことで、全般的に患者の医療費を公けでみる、あるいは生活費を補助するというようなことは現在とられておらないのでございますが、現実の問題として漁ができなくなったので、非常に現地で困っておられるという事態は私ども承知しているわけでございます。
  54. 森中守義

    森中守義君 大体今までの調査、あるいは対策の経過としては了承できますが、承わってみて私若干奇異に感ずることは、要するに対策委員会というのは、これはどうしても現地における市当局の自主的な組織のように受け取れる、あるいはまた、熊大のいわゆる学校における研究班ですか、こういうものも特別に厚生省の指示に基いて作ったものとも思えます。従って厚生省が独自におやりになっているのは、いわゆる松田部長を中心にされた研究班、この研究班が果してどの程度組織的に、しかも積極的に問題の解決を一日も早からしめんがためにおやりになったか、こういったようなことがどうも私にはピンとこない。要するに、積極性があったのか、やる意欲があったのか、少くとも人命に関係し、あるいは人心の不安、動揺に関係するような社会問題を、やはり厚生省がおとりになってきた措置としては積極性を欠く、あるいはまた、その意欲がどうもなかったような気がしてならない、この点をもう少し具体的に承わりたいと思うのですが、大体県の報告では、三十一年の四月に厚生省に正式に報告があった、もうかれこれ一年たとうとしております。この一年間の間に現地における人心の動揺、尊い生命の喪失ということは、これにもう私は非常に重要な問題だと思うのですが、要するに、積極的意思をどの程度までお持ちであったか、これをもう少し具体的にお話しいただきたい。
  55. 山口正義

    政府委員(山口正義君) この対策について厚生省は積極性がないのじゃないかというような御指摘でございますが、私どもは決してそういうつもりではございません。この問題が最初は局部的でございましたので、地方で調査をしてもらうつもりでおったのでございますが、しかし、その後の報告によりますと、どうしても局部的な問題として片づけるのには——まあ、全国的に広がってはおりませんけれども、非常に特異な症状を呈しておりまして、原因が不明ということで、やはり衆知を集めることが必要であるということで、先ほど申し上げましたように班を結成して、こちらから、とにかく学問的に非常にむずかしい問題でございますので、専門家に行ってもらいまして調査をする。そうしてその調査を持ち寄って何か早く結論を出す、とにかくいろいろな、どこに原因があって、なぜこれが起ったかということがわかりませんと、今度の対策も立たないものでございますから、それに全力を注いでいるわけでございます。一月の二十五日に、こちらの厚生省の公衆衛生院におきまして会議を開いて現地から関係者に来てもらい、そうしてそのときの一応の報告をまとめて、さらに三月十日にも、もう二、三日あとでございますが、三月十日に、一月二十五日から三月十日までの、いろいろな材料を取って調べておりますが、その資料を収集して、そうしてその後どういうふうな状態になったかということの結論を出したいと思っているのでございますが、しかし、これは非常にむずかしい問題でございますので、なかなか簡単に結論は出ないかもしれないのでございます。来年度の厚生省の研究費の中からも、一応、さらにわからなければ続いて研究費を支出して原因の究明に当りたいと、そういうつもりでおりますが、ただいま御指摘のように、決してこれは厚生省に熱意がないというようなことではございませんので、ただ時期が少しずれました点は、局部的問題でございましたので、現地で解決するというふうに最初考えたわけでございます。
  56. 森中守義

    森中守義君 大臣お尋ねしたいのですが、大体経緯としてはあらかたわかるのですよ。ただ問題は、非常に今日の日本の医学あるいは技術というものは世界的の水準に決して劣っていないといったように学会あたりの報告を私どもしろうとなりに聞いても大体了承できる。そこで問題は、厚生省がもう少し今日の進歩した日本の医学陣を動員して組織的におやりになるようなことが必要じゃなかったか。ただ現地のまあいわゆる報告をお聞きになった、あるいは松田部長あたりがおいでになった、そういうことも私は決して効果がなかったという意味ではないのですが、もう少しこういういわゆる学問上奇病といわれておりますから、方程式も何にもないとは思うのですけれども、もっと広範に厚生省が中心になられて、組織的におやりになればもう少し解決が早められたのではなかろうか、こういう工合に私は考えるのです。それで、冒頭にお尋ねしたように、予期されないこういう悪疫、悪病について、国家としてやはり最大のそれぞれの専門の機能を発揮しておやりになるのが妥当だと思うのですが、もちろん過ぎ去ったことを今ここで究明しても仕方がないのですけれども、この際、大臣はもう少し厚生省が中心になって現地に研究所というような、そういう形があればなおけっこうでしょうけれども、中央からそれぞれの専門の学者あたりを派遣されて組織的な究明をおやりになる意向はありませんか。
  57. 神田博

    国務大臣神田博君) 今の森中委員お尋ねでございますが、これはもう厚生省としては、この実地調査に当りましては、今お述べになられましたようなことも十分考慮の上で、公衆衛生院の松田部長とか、あるいは北岡予防衛生研究所の部長を首班としまして、現地のその事情に通じておる熊本大学の尾崎医学部長、それから県の衛生部長が先達となって、これは頭数行ったから必ずしも病原が早くつかめるというものでもないと私は思うのですが、今のわが国のこういった病原不明な奇病の対策としては、一応この辺のスタッフで参りますればこれはある程度、一応は私はめどを立てたものじゃないかと思う。そこで第二段として、おそらく森中委員はそれはもう一ぺん行ったことは了承するが、第二段としてもっとその先を研究しないかという御意見だろうと思うのです。これは私も憂慮しておるのでございますが、第一回の方々の御調査が第二回の方々の行くといたしましても同じことを調査してもこれは意味のないことでございまして、やはり調査した結果を十分資料になるような程度であって行かれることが望ましいと思う。そこでこれは非常に専門的なことになるのでございますから、私からとやかくこれはあまり立ち入った御説明はむしろ申し上げない方がいいと思うのでありまして、今松田公衆衛生院の部長が見えておりますので、調査等に直接当られたわけでございますから、もう少しその内情等をお聞きになった上で御審議をお進め願ったらどうかと思うのでございますが、松田部長に一つ御報告させていただきたいと思いますが。
  58. 森中守義

    森中守義君 今ここで医学上のいろいろの専門的なことを承わっても率直に言って私どもわからない。だから、学問上の調査研究ということは、問題の解決が目的なんですよ。だから今大臣はもう少し研究したいということなんですが、これは研究じゃだめなんです。一日も早く患者をなくし、今入っている人たちを、あるいは将来もそういうことが起り得ないように抜本的な解決をするためには、これはやはり私はお医者さんにしろ、あるいはその他の学者にしろ、ややもすると一般的な傾向としては、日本においてはどうもそういうことに国の予算が出されないようなことも聞いております。従って、国の予算のこういう人命に関係がある、あるいは原因不明の病気がある、こういうことについて私は即刻もう少し厚生省が中心になって大規模な調査研究班的なものを編成して現地に乗り込むような、そういう積極的な意思がないのかということを大臣に聞いているのです。だから部長のいわゆる医学上の専門的な立場からの御説明というものは、私はあとにしてもらいたいと思うのです。
  59. 神田博

    国務大臣神田博君) お尋ね趣旨よくわかりました。私の今まで受けた報告によりますと、まだこの十一月二十七日に出発いたしまして、ずっと調査をやっている段階でございまして、これはいろいろ数をかけてやることも必要でありますが、今の方々が資料をまとめておられますので、今の段階ではこれをまとめることに主眼を置くことが必要ではないか、こう考えております。と申しますことは、これはどういう関係になっておりますか、この調査班が調査に参りました以降、新規の患者はまだ出ていないようでございます。出ていないからという意味で申し上げているわけではないのでございますが、熊本大学にも学用患者として現に入院治療もやっておりますれば、また、日窒の付属病院でもやはりそこで長らく研究もしているわけでございまして、十分な連絡をとってやっているわけでございますので、私は今の段階では、これらの治療のデータと申しまとようか、それから発生の原因等、一つ中央と連絡をとって、もっと資料をまとめた上でなおこういうところをもっと深く見たい、こういうところをもっと洗って見たいというような具体的なことが出てこないと、何度参りましても、最初の調査を繰り返してそうして深く突っ込んでいくことができないようなおそれがあるのではないかと思うのです。  それから学問的にもまた、臨床的にも調査研究を進めている段階でございまするから、私どもといたしましては、一応今の関係した方々に御研究を願う。そこでそれらの意見を聞きまして、さらに次の手を考えていきたい。いきなりまた新しい調査班を出してやる。それで原因がわからないので、また、新しい調査班を出していくということになると、こういった原因不明のものがあとからあとから新規の手だけ行ってしまって、横だけ広がっていくと深くいかないということも困るわけでございますので、もうしばらく一つ、今の方々がせっかく御熱心に突っ込んだ資料をまとめつつあるわけでございますので、しばらくその方の研究の経過を見たいと、そこでまた、手がかりが出て参りましたならば、その手がかりに応じた措置をする、手を打っていきたい。今、森中さんのおっしゃったように、メンバーをさらに考えまして、内容的にも広く、また、質的にも深くいくような方法考えたい。今の段階では早くそういう次の段階に移る解決の窓口を見つけてもらいたい。実はこういうような考えであるわけでございます。しかし、せっかくの御熱心な御意見でございますので、なお、一つ調査班等にこの御意見のあることを十分伝えまして、解決を急ぐように、第二調査班の出動が必要とする段階でございましたならば、決してこれはちゅうちょせず現地に派遣もいとわない、こういう今の考え方でございます。
  60. 谷口弥三郎

    谷口弥三郎君 関連して。ただいま森中委員の言われたこともごもっともと思いますし、厚生大臣のおっしゃることもまことに適切なことと思いますが、私どもの聞いている範囲におきましては、この疾病は一、二、三月ごろは一例も起っておらない。そして四月から八月までの期間に多数起っているというような関係からして、あるいはウイルスの関係ではなかろうか。あるいはまた、日本窒素工場の方の廃水の関係ではなかろうかというような、何か異様な、死体を解剖されたことがあるのではないかというようなことをぜひお聞きして、そしていろいろとまた申し上げてみたいと、大臣にも要望したいと思いますので、まず第一に、松田部長もせっかく行かれたのであるから、その結果を一応聞いてそれからあとに判断する方がよろしいのではないかと考えますのでちょっと……。
  61. 千葉信

    委員長千葉信君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止〕
  62. 千葉信

    委員長千葉信君) 速記を始めて。公衆衛生院の松田疫学部長。
  63. 松田心一

    説明員(松田心一君) 僭越でございますが、それでは私から一言申し述べさしていただきます。  先ほど来、厚生省の設置しております研究班が積極的にあまり仕事をしていないのではないかというお言葉をいただきまして恐縮いたしておるのでございますが、この機会に、最初のいきさつをちょっと簡単に申し述べさしていただきたいと思うのであります。  私がこの厚生省の設置いたしておりまする研究班の主任研究者としての責任を持たされましたのは、現在の今度発生いたしました病気につきまして、いろいろ地元の方でも対策委員会を作り、また、大学でも研究班を組織してやっておりますることに関連いたしまして、ぜひ一つ疫学の面からさらに突っ込んだことを調査してほしい。それにはぜひ公衆衛生院の疫学部が専門の部なんだから、一つその点ぜひ突っ込んだ調査がしてほしいのだというお話もございましたのと、それからもう一つは、熊本大学には御承知のように、専門の各教授がたくさんおいでになりまして、尾崎医学部長が中心になって研究班を組織されまして、内科の勝木教授、病理の武内教授、小児科の長野教授、あるいは公衆衛生の喜田村教授、衛生学の入鹿山教授というふうにりっぱな教授陣をもってせっかく研究しておられますので、ぜひこの大学の研究班の皆さんと協力して、一つ厚生省の研究も進めた方がよかろうではないかというお話になりまして、私が現地へ参りましたときにも熊本大学の先生方にお目にかかりましてそういう意味のことを申し上げ、ぜひ一つどもはお手伝いに来たような格好で、いろいろなお調査の十分でないというような面もありましょうから、疫学の立場でお手伝いさしていただくのですというようなことで、十分な期間的な余裕もございませんでしたので、一週間現地でもりばら疫学調査に専念いたしたわけでございます。従って専門的なことにつきましては、今申し上げましたように、大学のりっぱな先生方がそろっておられますので、一つそれを主任の研究者として私がまとめ役をお引き受けする、微力ながらまとめ役をお引き受けして、そしてできるだけ早くこの病気につきましての本体を明らかにするようにいたしたいということで、私が初めて現地に行きまして県側と大学側と相談いたしましてそういう話ができたわけでございます。それが実は十一月の終りでございまして、患者ももう大体下火になったころだったのでございますが、そこで私どもはその疫学資料を調査いたしました。相当広範囲にわたる調査でございましたが、たとえばその市民の全体の基礎調査はもちろんでありますが、病気の発生しておりまする部落の患者の実態、ことに環境衛生施設あるいは生活様式、あるいは食品の摂取状況等はもちろんでありますが、そういう患家初め、その他の部落の実態を疫学的にこまかく調査いたしまして、その資料を持ち帰りましたのでありますが、もちろん相当膨大な資料でございますので、市役所、市の対策委員会等の御協力を得まして逐次これを整理したのであります。そのほか表に出ました患者以外に、やはり潜伏している患者もありはしないか。たとえば学校の学童あるいは中学校の生徒、こういうような者の間にも、やはり自分が気がつかないでも病気になっている者もありはしないかということで、約四千人ばかりの学童、生徒を対象に連日身体検査もいたしました。また、過去にさかのぼって、昭和二十八年以前にやはり死亡者があったのではないか。気がつかないうちにやはりこの病気で死んだ人があったのではないか。これはこの事件の発端を押える上に非常に重要なことでありますので、そういうようなこともいろいろ調査いたしまして、それらの資料を持って帰って検討いたしたわけでございます。その結果は、やはり大学及び研究班の県側、その他地元の保健所、市役所の方々ともそのデータにつきましてよく打ち合せし、検討する必要がありますので、先ほど山口局長からお話がありましたように、一月二十五日にその報告会をいたしたわけであります。その後なお大学方面では着々研究も進めておりまするし、保健所の方でもいろいろな資料について検討を続けると同時に、いろいろな材料などにつきまして、たとえば魚ですとか、あるいはネコ等を使っての動物実験ですとか、いろいろ進めております。また、大学でもそういうふうな動物実験をさらに進め、あるいは細菌学的な研究を進めておりますので、そういう成績につきましてはさらに三月十日を期してそのデータを持ち寄って検討しましょう、こういうふうに話ができておりまして、そのためにそれらの成績を取りまとめるべく目下いろいろと努力をいたしておるわけでございます。  そこで先ほど谷口先生からお話がございました件でございますが、この病気の本体が一体何であるかということでございますが、すでに熊木大学では昨年の十一月に中間成績を発表されておりまして、一月の二十五日の会合のときにもいろいろ報告があったのでございますが、そのときは大学の先生がお二人お見えになりまして、微生物学の先生と、病理学の先生がお見えになったのでございますが、いろいろお見えになりましてそうしてお話をいたしました。そうしてそのとき先ほどお話が出ました予研の北岡ヴィールス・リケッチャー部長の方からも研究の成績の発表がございまして、それらの各先生方と大学の研究のデータを検討いたしました結果、日本脳炎ですとか、あるいは小児麻痺、いわゆる急性灰白髄炎でございますが、こういう病気につきましては、どうもこれが原因と疑うのは、少しもうその疑いが薄らいだ。どうもそうではなさそうだというようなことになりまして、ことにこの熊本の内科の勝木教授のところでも、日本脳炎の補体結合反応などをおやりになり、小児科の長野教授のところでもおやりになっております。それから六反田教授のところでもおやりになっておりますが、それらのデータを拝見いたしますと、日本脳炎やあるいは小児麻痺はどうも少し疑いが薄らいだというふうなことになっておりまして、それならば何かはかにヴィールスの疾患があるのではないか。これはさらに専門の六反田教授の方で患者の材料その他をとりまして追求していきたい。さらに検討を続けたいというふうなお話になっておりまして、その研究を進めていただいておるわけであります。それから公衆衛生学の喜田村教授及び衛生学の入鹿山教授の方では、やはり工場廃水というものを一応疑ってその方の研究も続ける必要があるというので、いろいろその工場廃水、あるいは地元の海の土壌、海水その他を分析されておりますが、その分析の結果につきましては、まだ明らかにこういう物質のために魚が汚染されて、その結果こうした病気を招来しておるのだというふうな結論を導き出すほどのものは正式には出ておらないのであります。目下これらの専門教授のところでは、せっかくその調査を進めておるのでありまして、先般一月の会合のときには、この疾患は非常に重大な疾患であるとともに、まことにむずかしい疾患である。だから熊本大学といたしましては、明年度さらに陣容を整備して現在は七人の教授の班でございますが、来年はさらにそれを倍にして耳鼻科あるいは法医学その他各専門分野の教授を網羅した十数名の教授陣をもって、徹底的な本病の本体究明を行なっていきたい、それにはやはり相当の研究費が要る。現在でも熊本大学では学用患者としてこれまで収容いたしました患者に要した経費は、食費、治療費を含めまして百八十七万円と聞きましたが、非常な金がかかっている、ぜひ金を何とか工面していただいてでも研究はさらに続けていって、一日も早くこの本病の本体を究明したい、こういうふうにこの前のお話でもみんなが話し合ったわけであります。近くその後のデータが私どもの手元に参りますので、さらにそのデータにつきまして、関係方面と研究を続けていきたいと思いますが、何分にも現地とは相当離れておりまして、連絡にちょっと不便な点があることが残念なわけでございますが、ただ熊本大学には非常にりっぱな専門の先生がおられますので、その先生方の代表として医学部長が入っておるのであります。私どもの方は疫学の立場で、予検の北岡教授は病源の究明という立場で、協力しておられるということになっておりますので、やはり今後ぜひともこの病気の本体につきまして、私どもその責めを果したい、こういうふうに考えておるわけであります。  それから剖見でございますが、解剖所見でございますが、これは実は先例についてもちろん行われておるわけでございませんで、解剖学の武内教授のところで四例解剖しておられるのでありますが、そのうちの二例は、実は地元の開業医の先生方から脳髄の方を提供を受けられた。あとの二例は大学で死亡したものを解剖しておられるのでありますが、解剖の所見は中枢神経、ことに脳脊髄神経の血管壁の外膜の拡張、血管周囲の水腫というふうな症状が見えます。ただし、炎症性の細胞侵潤というものは見られない、そのほか神経細胞、そういうふうなものが多少増殖しておるというふうなことでございまして、武内教授の所見といたしましては、広義の中毒症、どうも炎症性の疾患とは思われない、広義の中毒症のように思われるとの意見です。で、直接の死因は、嚥下困難がございますために、異物を吸入して肺炎を起して死しぬので、つまり肺炎の炎症像が見られる、こういうふうなことでございます。大体概要を申し上げた次第です。
  64. 谷口弥三郎

    谷口弥三郎君 マンガン中毒、マンガンの急性中毒とかいうのじゃなかろうかといううわさを聞いたことがありますが、それをちょっと……。
  65. 松田心一

    説明員(松田心一君) それにつきましては、実は喜田村教授のところで非常に厳重な一通りのマンガンに関する分析を行なっておられるのでございます。水俣地域の海水ですとか、あるいは工場廃水、魚類、海草それから植物性の野菜類のようなものですとか、さらに死者の臓器の分析でございますとか、そういうような分析をこまかくやっておられますが、数字がこまかくなりますので申しませんが、全然患者でなかった死体の、たとえば臓器で申しますと、患者でなかった死体の臓器のマンガン含量と、患者だった死体の臓器の含量とは、はっきり優位の差がまだ認められておりません。その他魚類等におきましても、一部の魚に少し量が多い、他の地域でとれた魚よりも少し多いというようなものが一つばかりございますが、まだこれをもってすべてを処理するわけには参らぬようでございます。さらに、こういうふうな分析を追及していきたい、こういうことでございます。工場廃水に含まれておるマンガンの量も、今のところはまだそんな大量のものではない、そういう点でございましてこの分析表からいろいろ見ましても、はっきりとマンガンの中毒だと言い切る段階ではございません。
  66. 森中守義

    森中守義君 今大体調査結果のあらましの報告があったのですが、私はもう少しこの問題、別な角度から大臣質問したいと思うのです。それは先刻ちょっと言われた中に、私合点がいかないのは、新しい患者が出ない、こういうものの考え方については、どうしても納得できません。それは、最近ほとんど人心が動揺して、海水に人が入らない。つまり漁業をやめた、こういうことなんです。従ってこれはもう、今でもどんどん魚をとりにいけばこの種の患者というのは私は続発するのではないか、こういう工合に考えております。従って、自然に病源というものが消滅したわけでも何でもない。それだけに同地域の人心はきわめて動揺している。こういうような認識を特にお持ちいただきたいと思いますし、そういう観点から、いわゆる生活保護法の適用によって罹病者、あるいは死亡者に対する一種の社会保障制度上の措置は講ぜられておる、こういうことなんですが、もっと実際今三百世帯が実は全然漁業ができないで困っている。こういうものを、たとえば転業資金を出すとか、こういったような措置はお考えでないか、この点大臣に承わっておきたいと思います。
  67. 神田博

    国務大臣神田博君) 先ほど私のお答えの中で、十一月以降この患者の発生を見ないということは、お答えのついでとしてお答えしたわけでございまして、出てないから今後出ないとかというような意味で申し上げたのではないのでございまして、幸いに十一月以降出てない、こういう意味でお答え申し上げたわけでございまして、もちろん今、森中委員が言われたような、何か海の魚の関係であるということは、一応これは関係が強いのじゃないかということは、今までの調査の結果によりましてほぼ明らかのようでございまして、魚をとっておらない、そこで病気が出ないのじゃないか。魚をとらないので病気が出ないということはこれはまあけっこうでございますが、魚をとらないことによって三百戸何がしの住民の方々が生業を失って、そして生活の困難を訴えているということは、非常にゆゆしいことでございまして、私ども生活保護で社会保障をしていくということは、これはもうきわめて消極的なことでございまして、実際において早くこの原因が究明できて、どの魚が有害だということがわかれば、その魚だけとらないことに努力する。あるいは海草なり、貝類なり、そのものだけが有害だということがわかれば、非常にこれは漁をされる方々の生活条件というものが旧に復元できるわけでございまして、けっこうなことでございますが、それが今の状態でありますと見通しがつかないということでございますから、これに従事されている方々のこれは生活環境が非常に同情にたえない、お気の毒な立場であることは想像できるわけでございます。そこでこれをどうするかということでございますが、この点はこれは私厚生省の立場から申し上げるわけでございまして、逃げるとか何とかという意味ではないのでございますが、政府の方といたしましては、まあやっぱり一応生業を安定できるような、生活環境を変えると申しましょうか、転業をすると言いましょうか、何かほかの指導によらなければならないのではないかと思うのであります。そうだとしますれば、漁師の転業ということになると、これはまあ農林省、水産庁の関係になるわけでございまして、私どもきょういろいろ御注意も受けておりますので、なお一そう一つ農林省とも連絡を十分とりまして、これは今この調査について農林省の水産研究所等も加わっているかどうか、私まだはっきり承知いたしておりませんが、その辺のところもよく調査いたしまして、こういう集団の不安をできるだけ一掃いたしまして、生業の安定するような方途を政府全体の立場から考えて参りたい、さっそく一つ連絡をいたしたいと、かように考えている次第でございます。
  68. 森中守義

    森中守義君 まあ非常に大臣の適切な御答弁を承わって、あらかた了承をしたつもりですがね。ただもう少し御答弁を求めたいのは、先刻山口局長、松田部長の方から、現地における調査の実態の報告がありました。この中でずいぶん実際とは違っているのではないかと思いますのは、つまり厚生省では、私はあまり積極的でないということを申しましたが、かなり積極的のようにもとれるのですよ。ただお答えの中に出てくるのは、あたかも熊大が中心になって、ただ厚生省の方では、松田部長が向うにおいでになってその中に参加をされた。しかも百八十七万という食費、あるいは治療費を含めて金がかかった。この金は一体厚生省がお出しになったのか、文部省が文部省の経費を使われたのか。いずれにしろ国の金ですから、それはどちらでもいいと思うのですよ。ただ松田部長のお話の印象そのままから私が感じ取ったところでは、要するに、熊大の各教授が中心になって厚生省は松田部長がそれに参加をされているにすぎない。つまり私が冒頭に申し上げたように、こういう問題を組織的に、しかも積極的に厚生省が中心的な役割を果して指導していこうというようには、どうしても先刻の御答弁からは受け取れない。その点をもう少しお話いただけませんか、将来の、これから先の問題としまして……。
  69. 山口正義

    政府委員(山口正義君) 先ほど私は厚生省は積極的にやっているのだと申し上げまして、松田部長の報告をお聞きになりまして、厚生省は松田部長一人だけがやっているというようにお取りになりましたようでございますが、松田部長としましては、班長としてやっております。まあこういう問題は、先生も御承知のように、学問的な問題、やはり現地の——現地に相当な人がいなければ別でございますけれども、相当な権威の方がおられるわけでございますから、現地の方々の権威を尊重するという建前でいきませんと、こちらから乗り込んで参りましても、材料の収集その他いろいろ不便を感ずるということは、これは今回は非常にうまく行っておりますが、ともすればそういうことが起りがちの問題でございます。松田部長はそういう点を特に注意されて、しかし、先ほどの御報告は非常に控え目に、自分の立場を控え目に発言されたのでございまして、実際は松田部長のところから、部下の所員、部員を連れていって、また、材料を持ってきて、公衆衛生院の科学研究室で調べるということもいたしております。それから予防衛生研究所の方からも、北岡部長が行かれて、材料をとってきて、こちらで調べる。それにも部員が一緒に出かけていくということをやっておりますので、決して現地にまかせきりというようなことではございませんで、最初にも申し上げましたように、現地の機関の権威というものをできるだけ尊重していくということが、こういう研究をスムースに進め得る、まあ本筋だと思いますが、そういう立場をとってきているのであります。
  70. 森中守義

    森中守義君 そうしますと、私はこれは大臣一つの要請みたいになるのですが、今、山口局長が、同じ学界の立場から、現地の医学陣の立場を非常に尊重された。こういう良識ある態度は私は非常に歓迎すべきことだと思うのです。ただ、しかし、熊大も厚生省から委嘱されたのか、あるいは文部省と連繋の上でおやりになるのか、それは知りませんが、少くとも熊大には本来の任務があるはずなんですね。従って、この問題を各教授が研究をされる、これについてはやはり予算上の問題あたりが私はかなり影響してくるのではないか、こういう工合に考える。従って今同じ学者という立場から、熊大の教授を中心におやりになることは大いにこれは歓迎すべきことではありますが、そういう形態の中で予算上困らない……、しかも一日も早くこの問題を解決するという決意と、積極的な意欲をお持ちであれば、これはやはりもう少し予算上の措置ということを、的確に、どの程度要るか私は知りませんが、少くとも学術上困窮を来たさない、しかも一日も早く解決ができる、そのためには厚生省予算をうんと出そう、こういったような意欲をお持ちじゃありませんか。
  71. 山口正義

    政府委員(山口正義君) 大臣へのお尋ねでございましたが、先ほど私、お答えを落しましたし、また、予算のこまかい内訳になったりいたしますので、私から一応お答え申し上げますが、三十一年度の予算につきましては、先ほど申し上げましたように、厚生省の研究費は大体年間の当初に一応分けてしまいますので、緊急な事態が起りました場合の用意に、ごくわずか保留してございまして、それが三十一年度としてそれを利用したわけでございます。このほかに、御承知のようなペニシリン・ショックのような問題もございましたので、そちらにも使ったわけでございますので、非常に費用が少かったわけでございます。熊本大学が使いました費用につきましては、文部省から出してやっております。  先ほどの三十二年度、今後の問題につきましては、私どもの方は三十二年度の厚生科学研究費の今予算を御審議願っておりますが、その中で厚生科学研究費がございます。その額は、どれくらい必要になるか、どういうふうになるかわかりませんが、できるだけの費用を出していかねばならぬと思っておりますし、また、先ほど松田部長もお答えいたしましたように、大学としても、文部省と連絡をとって、大学の費用としてできるだけのものを計上してやっていかねばならぬ。まあ私どもはそれらの実現につきましては、私の方と文部省と連絡をとって、局部的な問題ではございますけれども、非常にむずかしい病気でございますから、その解明に努めたい、そういうふうに考えております。
  72. 森中守義

    森中守義君 これは大臣にもう少しお約束をいただきたいのですが、一般的に言われているのは、どうも日本の場合には、学術については国の予算が足りない。まあこういうことが、私ども今までしばしば議会の中で体験をし、かつまた、論争を重ねてきたところなんです。従って人命に関し、あるいは人心の不安に関することに省の予算がこれだけだ、一つのワク内から仕事をしようとしたのでは、とても私は満足な成果は期し得られないのじゃないか、こういうふうな工合に考えます。従って熊大、あるいはまた、厚生省と合体をされて、この問題は一日も早く解決を望ましいわけですが、要するに、大臣の政治的な責任においてでも、これが一億かかろうと、一億かかろうと、こういう特殊な問題については一日も早く解決するという意欲をお持ちである限り、予算の方は引き受ける、絶対心配は要らない、こういったことを一つ関係の向きにも指示願いたいと思います。また、この委員会でも、そのことの言明を求めておきたいと思いますが、どうでしょうか。
  73. 神田博

    国務大臣神田博君) 今の森中委員のお述べになりましたことは、もうきわめてこれは重要なことでございまして、私もこれは全く同感なんです。ということは、国の予算編成の仕方の問題、また、できた予算のこれは使い方の問題だと思っております。こういったこの奇病が、あるいは天災地変とこれは変らないと一応見てもいいだろうと思います。これはたまたま二十八年ごろから出ておるということでございますから、少し事情は違うかもしれませんが、こういう原因不明のものを解明するというようなことについては今後できるだけ一つ早く解決するような万全の策をこれはもうとることは当然だと思う。そこでそのとり方でございますが、衆知を集めて、全力を尽すわけでございますが、金をうんとかけたからこれは早く解決するという問題でもないと思います。ただしかし、所要の金がないのでこの解明ができないというようなことがありますならば、これは全く、そういうことは断じて許されるべき問題でないと思う。そこでこの問題に限ってお答え申し上げるといたしますれば、私は、三十一年度はこのあと十数日でなくなるわけでございますが、三十二年度の予算の、この奇病の一つ使い方、この究明に要する費用というものを、一つ厚生省といたしまして、厚生省一体どの程度これに見通しを立てて必要とするか、それから文部省が、どの程度一体——これをことし一つ解明してしまおう、できるだけ一つ早期に解明しようというようなめどがついて、それに要する金がどのくらいであるかということが、計算つきますならば、私は思い切った処置をとることをお約束いたします。計上された予算の中でやりくりすることはもとよりでございまするが、しかしこういうことは、なかなかこれは予算を組むときに、そう予測して、一体どの程度組んだかということはむずかしい問題だと思いますが、今のように、これだけの金をかければこれはもうすぐ解明できるんだという段階でありまして、そこで金が足らない、そこでできないというようなことは、私はこれはやらせないつもりであります。計上された厚生省予算、また、文部省とも協議いたしまして文部省側の予算、これを一つ、足らないということでありまするならば、予算には予備費があるわけでございまするから、大蔵省と相談いたしまして政府において所要の予備金支出をしてもこの問題を一つ解決しよう、問題は、その解決する前提の、どの程度一体金をかければ、あるいはどういう仕組みでやれば解決するかという、問題の端緒をつかむことを早くつかんでもらいたいということなんですね。これだけの処置方法をとればこれを一つ究明できるのだ、そういう仕組みがはっきりしてそこで金が要るんだ、これだけの金が必要だというならば、思い切った処置を政治的に私とりまして、そしてこの地方の人心の不安をなくする。われわれの同胞が一人でもこういった不幸なことにならないような処置をとりたい。これはひとり水俣の問題だけでなく、こういうようなことがわれわれの領土に起るとするならば、これは一つできるだけの努力をして、今、森中委員の要望されたような処置をとっていきたい、こういう私決心でございます。
  74. 森中守義

    森中守義君 大体大臣の言われることはわかるような気もするのですが、少しわからないところもある。これはあまり丁寧すぎる答弁であるせいかわかりませんが、つまりこういう学術的な問題は、もちろん一定のプランがあるでしょう、調査をされるには。しかし、その調査の期間が、どのぐらいかかるという測定ですね、あるいはまた、段階、こういうものは、私はおよそ学術上の問題では結論が出ないと思う、率直に申し上げると。一日も早く解決しなくちゃならぬということは、これはもう当然なことですが、あるいは一年かかるかわからない、二年かかるかわからない。大体学術というものはそういうものだと思うのです。だからおよそこの程度の金のめどがつけばこれを政治的に解決しようというようなことは私は反対だと思う、大臣の言われる結論は。だから私は端的にお答え願いたいのは、およそきまれば、それについて政治的な手を打とうということではなくしてこういう学術上の問題は、将来日本の医学界にとっても貴重な私は歴史として残っていくのじゃないか、こういう工合に考える。だから端的に、要るだけの金は私の責任においてどうかしようと、こういうことをここで述べてもらいたいということですよ。どうです、そういう点は。
  75. 神田博

    国務大臣神田博君) お尋ね趣旨、よくわかりました。私は今、森中委員の言われたようなことは、この予算に組んでおるという前提で、それがそうでなく、もう少しこういう金が要るんだという事情が起きた場合にはその処置をとりましょう、もっと先のことを申し上げたつもりだったんです。
  76. 森中守義

    森中守義君 要るだけのことは出すと、こういうことですか。
  77. 神田博

    国務大臣神田博君) そういうことです。
  78. 森中守義

    森中守義君 わかりました。  それではもう一つ。私は、あまり時間をとっても御迷惑ですから、もう一点だけお尋ねをして打ち切りたいと思いますが、農林水産との関係がある、こういう御答弁を先刻大臣に承わったのでありますが、確かにそうだろうと思います。しかし、現地の実情というものは、ほとんど三百戸という人たちが、さお一本にまかして生活を営んでいるんです。だから先刻大臣が、最近新患者が出ない、こういうようなことは、私が繰り返して申し上げたように、すでに廃業状態になっておる、つまり仕事をしていない、海水に入って。だから患者が出ないということです。これを一つ認識していただくならば、一体廃業状態にある漁民をどうするか、こういう問題は、これは私はまさに喫緊の問題であろうと思う。もちろん生活保護の問題もありましょうけれども、さて生活保護法の適用で、一戸世帯当り大体六名平均だと聞いていますが、そういう人たちが私は生活保護法の適用を受けて、それで国の補償で生活するにはあまりにも悲惨じゃないか、こういう工合に思います。もちろんそれはそれなりに県議会あるいは市議会でも対策はとっているでしょうけれども、やはりこの際厚生省が中心となって、問題がこういうところに原因があるわけですから、いわゆる行政機関の所掌としては農林省あたりもまたがる場合もありましょうけれども、責任を持って、いわゆる三百戸世帯が、今生死の路頭にさまよっているこの状態というものは、一日も早く解決をする、責任を持って解決をする、こういうことを、いずれ私は当委員会に出席をいたしまして、その後の経過等を承わりたいと思いますが、そのことをも含めてお約束を求めておきたい。
  79. 神田博

    国務大臣神田博君) ただいま森中委員の、水俣地区の水産に従事しておる方々の生活環境の激変に伴う救済の問題でございますが、これは生活保護法ということでありますと、これは厚生省の主管で、これは厚生省の消極的な仕事でございまして、それではほんとうの政治ではないわけでございまして、そこで私、先ほど一つの例として、これは水産業であるとすれば、農林省の方で主になってやる仕事なんで、しかし、おそらくそれをまためぐっていろいろな、酒屋もあればたばこ屋も、組合もあるというような、私は総合的な問題であろうかと思う。これらは一つこの機会でございますので、政府が、全国から見て地域的にいえば小さい問題かもしれませんが、しかし、そこ自体を考えれば全部の問題ということになるわけでございますから、至急一つ関係方面とも連絡をとりまして善処いたしたいと思います。
  80. 谷口弥三郎

    谷口弥三郎君 ただいま森中委員のいろいろの要請で大体はわかりましたが、私も、特に希望いたしたいことは、やはり本病を一日も早く決定することでありまして、それには私の聞くところでは、発病者の六一%までは漁業者であるというような関係もありますので、水産研究所あたり一つ一緒に、全部連絡をして、そうして一日も早く原因究明をしていただきたい。それからそれにはやはりいろいろ予算も要ることでしょうから、その点は一つ各方面と御協議の上十分出していただきたい。熊本県の財政とか市の財政ぐらいではとうていいけますまいから、何分よろしくお願いしておきたいと思います。
  81. 神田博

    国務大臣神田博君) ただいまの谷口委員の御要望もごもっともでございますので、今聞きますと、水産研究所との連絡がまだ十分してなかったように聞きますが、いろいろと関係方面との連絡もし、検討いたしまして、総合的な面から一つ本病の原因を解決することに専念するとともに、これによって迷惑をこうむっておる方面につきましてできるだけ一つすみやかに適当な処置をとる、こういうふうに進めて参りたいと思いますから御了承願います。
  82. 山下義信

    山下義信君 私はここで承わっておったのですが、門外漢ですが、厚生省の扱い方としてどうかということを一つ承わっておかなければならぬと思うのですが、厚生省で研究をしておいでになる間に今問題の三百戸の漁業者を中心とした人たちはこの研究の結果の出まするまで海に入っていいのですか、ふだんの通りに業を営んでいいのであるか、ということはどういう扱いになりますか、どういうふうになりましょうかね。これは公衆衛生の立場から、もう従来の通りあるいは入ったら発病するかもわからぬが、業を営んでいいという建前をおとりになるか、研究の結果がわかるまでは危ないかもわからぬからしばらく入らぬがいい、注意した方がよかろうという見解をおとりになるかということをおきめになっておかれませんと、すでに今日まで業を休んで窮境に陥った人々を救うということは、これは今問題になり、また、お答えになりましたからそれでいいと思いますが、しかし、いつまでも業を休んでいるというとだんだん問題が大きくなる、問題が先にいくのでありまして、海に入っていいのか悪いのか、一応それは一つ注意して入らずに待っておれ、研究の結果でもわかるまで待っておれという方針をおとりになるのか、これが厚生省の御見解でおきめにならなければならぬことだと思いますが、しかし、それも農林省の関係である、水産庁の関係である、また、その他の業者があれば他省の関係であるということならば別ですけれども、その点は厚生省の方で御心配なさってどちらかにおきめにならなければならぬ問題だと思いますが、その辺はどうでしょう。
  83. 山口正義

    政府委員(山口正義君) 漁獲の禁止をする、あるいはそこでとれた魚の販売を禁止するというような問題になりましていろいろこれはコレラのような急性伝染病の場合には法的な措置が直ちにとれるわけでございますが、いろいろ微妙な問題も含んで参りますので、現在までのところは県当局と打ち合せまして、法的に禁止するというような立場でなしに、今までの調べた状態から見ますと魚というもの、しかも沿岸の魚と関係が深いというようなことからできるだけ食べないように、また、そこで漁をしないようにというような指導はいたしております。今後もできるだけ早く原因を究明することは必要でございますが、もうしばらくの間そういう立場をとっていきたいと考えております。
  84. 山下義信

    山下義信君 私はその注意はけっこうだと思うのです。そうであろうと思うのです。原因がわからないからその注意が必要なんですね。ですからある程度の危険性があるのですね。危険性があるかもわからぬ、不明なんですからそういうふうにとめておった、注意をしておいた、そういうふうに指導をしておいたということになれば、その生活に対しての保障の心配をしてやらなければならぬ、これは厚生省の尽力しなければならぬ問題になりますね。ですからそれは当然一つ考えなければならない。言いかえますと、生活の保護ではなくしてそのことによって収入が支障を来たす、それのカバーは心配なさる、それだけのことが厚生省予算、今の研究の関連した費目として出る余地があるかないかわかりませんけれども、そのことの心配一つ厚生省が主体になって御心配になっていただきたい、それをせぬというならば、随時海へ入って従来の通りやってよろしいということになる。けれどもよろしいとは言えないでしょう、研究の結果が出ないのですから、不明ですから。ですからその間の営業の保障、生活の保障ということは生活の保護とは違いますね。生活の保護の状態状態として、別にそのことによって収入の欠陥を来たす、その保障は私は考えなければならぬと思うのですね。この点どうでしょうか。
  85. 山口正義

    政府委員(山口正義君) 現在とっております措置といたしまして県は単に衛生関係者だけでなしに、衛生、民生、土木、経済、その四部の関係者から委員会を設けて対策を考えておるわけでございます。ただいま山下先生御指摘のように、法律で禁止するわけではございませんけれども指導でそういうふうな漁獲はやめた方がいいというような指導をしております。それに伴って生活が困窮してくるというような事柄に対しましては、現地でも関係の部局が相談して対策を立てておるわけでございますが、先ほど大臣もお答えがございましたように、厚生省におきましても関係の方面と連絡をとってぜひ考えていかなければならないと思います。
  86. 神田博

    国務大臣神田博君) 現在対策としてとっておりますのは、今政府委員のお答えをした通りでありまして、さらに患者の大学に入っておるというような者については学用患者として取り扱うとか、それから生活保護法の適用を受ける者については適用をしておるというわけでございますが、しかし、今谷口委員御指摘になったように、こういう場合に何か適当な法的措置といいますか、予算の裏づけのあること、これは考える必要があるのじゃないかという御意見には私も同感の気持でございます。しかし、現在はそういう面に対してどういう方法をとっておるのか、あるいは今後どういう方法をとるのか、予算的措置とか前例とか私承知しておりませんから、この機会でございますから、一つ研究課題としてよく調査し研究いたしまして、適当な機会にまた御報告したいと思います。
  87. 千葉信

    委員長千葉信君) 本件に関する本日の質疑はこの程度にいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  88. 千葉信

    委員長千葉信君) 御異議ないと認めます。
  89. 千葉信

    委員長千葉信君) 社会保障制度に関する調査の一環として、昭和三十二年度厚生省関係予算に関する件を議題といたします。御質疑を願います。
  90. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 生活保護の問題につきまして少しお聞きしたい。今度の予算を見ますと、生活保護の予算は三百六十六億ですか、昨年度より少し上っておるわけであります。ところが、内容については八千二百三十三円が大体六百十七円増したという工合に六・五%ふやされておる。それで二億ほどの予算がふえている、こういうことになっている、大まかにいいますと。そこで、それじゃどういうところに原因しているかというと、六・五%片方で、片方にしてはあまりふえていない。むしろそういう状態対象人員が減っている、そういうことになるわけですが、たとえば厚生白書に出しておられる生活保護のすれすれのところが九百七十二万という工合に厚生白書に出しておられる。だから私は九百七十二万というものをどういう形で出されたかということをまずお聞きしたい。  それから第二点は、われわれが考えますように、九百七十二万もすれすれだというのだが、生活保護、生活扶助の対象になっているという人がだんだん減っていくということは考えられない。一昨日だったか、労働大臣のいろいろこういう問題のお話があったときに、神武以来の景気だといっても、中小企業やその他は、政治的な縁故といいますか、非常に中小企業が困って、あわせて中小企業に働いている人が非常に困っている現状だというお話もあった。そういうところから総合してみますと、私は対象人員が減っているということがどうも理解ができない、だからそこらの点の御説明一つ願えないかと思うのです。
  91. 神田博

    国務大臣神田博君) 今藤田委員お尋ねでございますが、生活の要保護者の人員が減った。そこで神武景気がそこまで一体浸透しておらぬじゃないか、ボーダー・ライン層が相当の数になっておるが、どういう調査でそれだけの人数を把握したかということでありまして、こまかいことについては政府委員からお答えいたさせますが、何といいましょうか、これは考え方、見方の問題にもなろうかと思いますが、神武以来の景気が、神武以来の景気ということは、その言葉ではなはだ恐縮でありますが、その言葉を使っておるようでありますが、だんだん浸透してきたということを言われるようになってきたのじゃないのでしょうか。たとえば通商産業省の出先の局長会議、あるいはその他国の関係地方の機関の会議が中央にございましても、その報告によりますと、ようやく及んできているということをいわれておるようでございます。私どもこれはラジオを聞いていましても、ようやく下の方に浸透してきて庶民の手取りがふえ、内職等に人を頼むにも人がなくなったというようなことを聞いて心ひそかに、幾らかその辺まで出てきたということを聞いて、まあ心を休めておるような気持なんでございますが、ただしかし、数字を扱っておりますと、健康保険の方を見ましても、たとえば労働者の就職状態を見ましても、ずっと昨年以来毎月一%くらいの割合でふえているのですね。それで健康保険の被保険者の数もやはり一%くらいの割合で伸びているのです。だからこれは雇用の関係が臨時工が多いのじゃないかというような内容を持っているようであります。これはまあその通りでしょう。しかしとにかく就業人口がふえてきたということは、これは私は事実だと思います。就業人口が一%からふえている。そこでこれとちょうど同じような率が要保護者の数でやはり減っているのですね。日雇い労働者も減っておる。ちょうどその統計を調べてみますと、そういうようなのが出ている、これは統計の表を一つの基準として考えた場合ですね。だから私ども昨年末から今年の予算折衝等をいたしております過程においても、一%ずつの程度の増加というものが、どうしてもこれは今年度の予算編成についてもやはり見なければならぬのじゃないか、こういうような実は考えを持ちまして折衝いたしまして、昨年一%ずつふえたから、今年はそのままで計上するということはいたさない。三月まで一%ふえるということにして、それからまあふえないというような見方で数字をきめようじゃないか、こういうようなことできめたわけでございまして、別にそのために予算のおもてをきめて人員を相殺したのじゃなくて、ずっと昨年一年の推移した就業人口、それから実際において要保護者として扱っております実数の減って参りましたものをつかんで予算基礎にした、こういう考え方なんでございます。詳しいことは政府委員から一つ答弁させますが、そういう考え方予算を固めてきた、この趣旨だけ一つ私から申し上げておきたいと思います。
  92. 堀岡吉次

    政府委員(堀岡吉次君) お尋ねの方のボーダー・ラインの九百数十万の推定は、厚生行政基礎調査のときを使いまして、厚生行政基礎調査はランダム調査でございまして、全国の世帯地域の正確な数字を忘れておりますが、それから推定をいたしまして、約この程度ということで推定をいたしております。  それから生活扶助の人員でございますが、三十一年の十一月末現在は百五十一万人の約、約でございますが、約百五十一万人の被保護世帯となっております。ところが、三十一年度三月から十月までは毎月減少いたしておるのでございます。その減少率が〇・九七七%、対前年度それだけ減少しているという減少傾向を示しております。そうしてそこでその減少傾向を三十二年度の二月まで、そういうふうな減少傾向をたどるものと一応推定いたしました。しかしながら、無限大に減少するというわけにもいかぬだろうということで、その後横ばいということで推定を下しまして、その上なおかつ人口増加率ということで一%増加するだろうという推定を下しまして、三十二年度の生活扶助の対象人員の推定としましては百五十万というもので一応押えたわけであります。これはただいま大臣からも御説明ありまとたように、最近における減少傾向にかんがみまして、そういう減少傾向の伸びを三十二年の二月まで見て、それを無限大に減少続けていくというわけにはいかぬということで、そこでストップ、その後人口増加率を一%加える、こういう推定でいたしたわけであります。
  93. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 その、今大臣がおられないのだが、この三十一年度毎年大体五%ずつくらい対象人口がふえておる。それで三十一年度にはその五%ずつふえているやつを五%に当局が押えているということを言っておるが、その点についてはどうですか。
  94. 堀岡吉次

    政府委員(堀岡吉次君) 生活扶助につきましては先ほどお話がありましたように、少しずつずっと減っておるわけであります。    〔委員長退席、理事山本經勝君着席〕 むしろ実際の結果は、厚生省としては無理に減らすというふうな、そういう指導はいたしておるとは存じておりません。
  95. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 それでは厚生省が大蔵省に予算要求されて、まあ三百六十六億に落ちついたわけですけれども生活保護費に四百四十億の予算要求をされて、それが三百六十六億になっておるわけですけれども、この四百四十億の予算要求内容について、ちょっとお聞きしたいのです。
  96. 堀岡吉次

    政府委員(堀岡吉次君) ちょうど今その資料は持ってきておりませんので正確なことはちょっと申しかねますが、主として生活保護の予算を立てますときには、去年の夏ごろに厚生省で一応大筋の見込みのものを立てましたが、それはその前の年のすなわち三十年度の推移、それらを見ながらやっております。それからもう一つはざっくばらんに申し上げますと、生活保護の予算の立て方は現在この国会要求しておるのとは変っておりまして、たとえば期末とか、あるいは盆暮れでございますね、そういうふうなときに何か一時的に五百円とか千円とかそういう程度のことを差し上げたらどうだろうかというようなことを当委員会でもいろいろ問題がございまして、そういうものを考えましたり、また、児童加算というふうな制度生活扶助の中に考えておったとか、そういうふうなことで金額が相当上っておりまして、そこで被保護世帯の伸びの見方、それから医療等の単価の見方、それらについて前の傾向を相当程度織り込んでいる。そういうところからかなりその数字の基礎が違ってきております。それから今申し上げたような一時扶助といいますよりも、新規の一時扶助なんですが、盆暮れ、そういうものをどうだろうかというようなこと、それからただいまもちょっと申し上げました児童加算というふうな全然新しい今度別途の形で今予算としては御審議願っておるわけですが、そういうふうなことを考えましたものですから相当な金額にのぼっているということは承知をしております。詳細の点はちょっと手元に持っておりませんので。
  97. 山下義信

    山下義信君 ちょっと関連して。生活保護の対象の減の問題はもう衆議院の方でも御議論になったりして、いろいろ厚生省も御説明なすっておいでになると思うのですが、私らが考えると、あとから数字に合うような御説明、皮肉のようなことを言って済みませんけれども、そういう理由をつけることになったらどんなにでも理由がつく。理由のつけ方、でこれを百四十万に減って、また、ふえるような理屈をつけようと思えばふえるような理屈もつくのです。けさも厚生省の当初予算についての食品衛生関係費用要求の仕方のことをちょっと引用しましたが、これはあなたの方の当初予算に一応ふえると見込んだのですね。
  98. 堀岡吉次

    政府委員(堀岡吉次君) そうです。
  99. 山下義信

    山下義信君 生活保護の対象者は二百幾万にふえると見込んだ、今度は査定は減った、減った見込みはいつ立てたかというと、意地の悪い質問になりますから、私はそういう質問はしません。その質問はしませんが、今の会計課長答弁も神武景気の影響大臣の御答弁を補佐して、その一%ずつ減ずるところは神武景気の影響で、そして今度はそこでストップしてあとはずっと横ばいをする見込みの立て方になっている。それから先は減、いろいろ聞いてみるというと聞きたいところがあるが私は聞きません。聞かないのじゃが、生活保護法の対象が減ずるといえば非常に大まかな話ですが、こまかく言うとどの扶助の対象者が減ずると見るのか、生活扶助の対象者が減ずると見るのか、医療扶助の対象者、あるいはその他の各種の扶助があるが、どの扶助の対象者が減ずるのか、中身を一つ聞いてみなければならない。どこに見込みを立てたかということを聞いてみなければならない、引っくるめて一%か。
  100. 堀岡吉次

    政府委員(堀岡吉次君) 先ほど来の数字の基礎でいろいろ申し上げましたが、一番人数として大きい生活扶助を中心にして申し上げます。生活扶助が先ほど申し上げましたような、そういう推移であるから、そういう推算を下してみたということでございます。医療扶助におきましても人員の若干の減を見込んでおります。それから教育扶助、住宅扶助、いずれも若干の減を見込んでおります。
  101. 山下義信

    山下義信君 今は藤田委員の御質問最中ですから私は控えておきますが、そういう説明は納得いかぬですよ。これはよその委員会だったらそういう御説明、御答弁は通るけれども、ここは専門の委員会ですからそういう御説明通りかねる、まかり通りかねる。生活保護法の対象は被保護世帯というのは、神武以来の景気の影響を受ける対象者ですか。厚生大臣は幸いに経済情勢に通暁しているベテランで、一体生活保護の被保護者というものはほとんどその経済能力のない対象者ですよ。ほとんど最後のいわゆる労働能力もなければ経済能力の欠如している、もう浮び上ることのほとんどできない、絶望の状態の実は対象者ですよ。それが長い間の問題になっているのですよ。そしてその扶助の内容というものは率直に言ったならば実際どのような景気の波が来ようと、その景気の波に乗って収入を増加させるような道を、その手がかりをつかむことができる費用というものは一文も与えていないのですよ。景気の風が、外でどんな好景気の風が吹こうと、不景気の風が吹こうと、世の中の景気とほとんど無関係で、もうただ単に動物的生存を与えてある対象者ですよ。その対象者がこの神武以来の好景気にどう浮び上るのでしょうか。どうしてそれが生活保護のそういう環境から普通の生活環境に移り得ることができるでしょうか。私はそれを聞かなければならない。どうしてそういうような現象ができるのでしょうか。この対象者が減るということはうそですよ。減るならどうして減るのか減り工合を聞いてみなければならない。どうして減るのでしょうか。どうして生活保護のそんな対象者から浮び上ることができるのでしょうか。これは専門の委員会では実際はそういうところを掘り下げて研究せねばならない。好景気がこの対象者に影響があって浮び上ることが二十万からできたらそれはありがたいことだ、奇跡だ、私から言わせると。別に御答弁をいただかなくてもいいのですがね。私らはそういうことはあり得ないと思う。それですから現在の生活保護世帯のこの数をこの程度でできるだけ一つ、上から落っこってくるのを防ぐのは景気政策で防ぐことができましょう。低額所得者もあるいは景気政策によって防ぐことができましょう。けれども現在もう最低に落ち込んだ、そういう世帯はこの数はもう固定的ですよ。これが入れかわって浮び上ったら、それはもう天下の大政治だ。そういう見通しならば実例を聞かねばならない。どこの生活扶助の被保護世帯が何世帯浮び上ったか、何の商売を始めて浮び上ったか。どこからその金が出たか。それは各民生委員からも、各県からも報告を聴取して実績を聞かなければならない。そうではない。ですからこの数が変動するのは生活保護の適用を押える、しぼるとかそういうようなことをすればこそ伸縮自在ができましょう。この予算の計上の数字というものはこれはどうでもできる、実際問題としては。それは生活被保護世帯がこの景気の波に乗ってしかも一〇%、一割も、二十万の世帯が生活保護からはずれている。その線上に浮び上ってきたということはおそらくそれは大へんな大成功です。私は賞賛しますよ。実際良心的にそうまたしてもらわなきゃなりませんよ。しかし、そうではないでしよう、そういうことはできないでしよう。
  102. 神田博

    国務大臣神田博君) お答えしましょうか。これはまあ山下さんあまりお答えをしなくてもいいということにお答えするのはどうかと思いますが、生活保護を受けている方々が立ち上ることが困難であるということについては、私もその事情をこれはもう山下委員が述べられた事情を私も了承いたしております。しかし、その前に今生活保護を受けている方々のうちの相当数というものはこれはやはり始終移動をしておる数だと思う。もう生活保護に落ちきってしまってそこで長年沈滞のままであるという数字ではない。相当数が出たり入ったりしている数字であることもこれは事実なのである。これは社会局長が参りましたら詳細答弁させたいと思いますが、そういう一つ前提のもとで、それからもう一つはまあ一昨年以来、ことに昨年貿易を中心としてわが国の景気が上昇して神武景気と言われておるこの実態、私は今度のこの景気の上昇というものは雇用の関係においてもこれはすばらしい成果を上げてきているのじゃないかと考えております。先ほど藤田委員にもお答え申し上げた通り、毎月一%くらいの工場労働者の数がふえてきている。それと見合ったような状態に要保護者の数が減っておる。政府管掌の被保険者の数を見てもちょうど一%くらいずつ漸増しております。ですから私は景気の変動がないということであれば、これはそういうことは何かどこかでからくりがあるかという想像がつくのでありますが、要保護者の数が毎月一%くらいずつ減っていくということ、それから就業人口がふえていくというこの見合いからいきますと、どうしても今度の景気というものが相当浸透してきている、私はそうでなかったら三十年、三十一年というような国民所得が私は国民の大多数の方が稼働しなかったらああいう大きな国民所得というものは私は形成されないと思う。そういう意味で相当これは稼働人口がふえている。そこで経済の立ち直りというか、立ち直りどころじゃない、神武以来というのですから、これはもうかってない景気が出ているわけでございまして、今の要保護者の中で固定しない、いわゆる出たり入ったりしている層ですな。それらの方々からやはりボーダー・ラインに上る、あるいは就職ができたというようなことで私は変化をしたと思っています。そこでこの要保護者の予算編成に当りまして、私どもは数字を単にいじって六・五%上げたんだが、予算のつじつまを合せるというだけでやっておるとすれば、これは予算が少くともこれは要保護者をほうっておくわけにはいかぬわけでございますから、これは法律によって予備費を充当するなり、あるいはもっと大きいなら追加予算をお願いしてもこれはまかなわなければならぬわけでございまして、決してこの数字を私は意識的に何か作ったというようなことではない。ただまあ今お尋ねございましたように、厚生省要求した際の数字が私は少し研究不十分なのじゃないかと思うのですが、これはまあ要求したときに私がいないからということで申し上げるわけじゃございませんが、諸般の、私先ほど来申しておりますような日本の統計を見てそれを見ても厚生省予算要求したときにはあまりに何と言いますか、安全率を私は取り過ぎたのじゃないか、年末から今年の初めにかけて予算編成の際にようやく自信を得たとこういうことじゃないかと思うのでございます。ですから予算基礎になる数字は大蔵省から圧力をかけていったとか、あるいはこちらの方が何かほかの予算を取るために減らしたとか、そういう考慮はちっとも払っておりません。ほんとうに想定されるしかも安全率を見た、たとえば今年も景気が上昇するということを言われておりますが、私どもは今年の景気は昨年の平均足並みのパーセンテージから今年の三月まで続き、で三月の数字であとはもうずっと平らに行くという見方で押えておるのでございます。ですからそういう意味からいきますと、むしろ安全率を見ている。こういうふうに考えておるのでございますが、説明の足らない点で御納得がいかない点がございますれば、この点は十分一つ担当政府委員から申し上げまして納得いくようにお願いいたしたいと思うのでございます。
  103. 山下義信

    山下義信君 対象者の数の論争はですね、これはあなた方のそういう見方もあるでしょう。そういうお考え方もあなた方の側としての一応のお考え方、まあそれはそれで一つの見方でしょう。また、その数が百五十万でなくちゃならぬとか、百八十万でなくちゃならぬとか、二百万でなくちゃならぬとかおっしゃったところで、これは昔から一応の見積りがあっての義務費でございますから、いつでも出すことになっておる、できるようになっておる費用でございますから心配はいたしておりません。心配はいたしておりませんがしかし、雇用の増加ということが直ちに生活保護世帯が新たに就職するのではないのでありまして、新卒その他いわゆる予備的立場にあった労働者が再就職する場合もありましょうし、大部分は新卒の雇用の増加。また、被保険者の増ということは人口の中の労働人口の増加に伴い、また、雇用の増加に伴いまして、被保険者の数が増加するのでありますが、そのことが直ちに生活保護対象の人員の減少には直接的には何も影響いたしますまい。しかし、大局的にはそれは景気が上昇いたしますと国民生活が上昇いたしますから、生活困難者の数が減ってこなければならぬはずです。しかしながら、最低の下積み、稼働能力もない、経済能力の欠減をした再起不可能な層というものは、これは何というか、一つの固定層があるのです。どうすることもできないのがある。どこかから多額の金が出て生計費が急に入ってこぬ限りには、すでに稼働能力がない。経済能力が欠減しておるのですから、景気の波に乗る力のない層というものが固定層にはある。これは私はその絶対数だけは争われぬ。それからまた多少の出入りはもとよりありましょう。    〔理事、山本經勝君退席、委員長着席〕  しかしですね、私は一面にはですよ、ほんとうを言ったらですよ、今の現在の百七十万の対象者でも同様の立場の者がことごとくカバーされているんじゃない。言いかえてみるというと、老朽の対象者はたくさんある。その証拠には社会福祉事務所に生活保護の適用の申請をしても、同様なケースであっても、この適用がまだ満たされていない対象者はあるのです。非常に生活保護の適用が締められておるということはこれは争われぬ事実です。ですから全国の社会福祉事務所に保護申請者がどれだけある。そしてそれに対しての適用がどれだけなされてあるかという数をあけてくれればすぐわかるのであります。いま一つは当然このたび基準が幾らか上り、また、母子手当その他が上ってくるというと、そうすると適用の生活費の基準というものはやはり上ってくる。一〇%か幾らか上ってくる。そうすると生活保護の対象者の範囲は、これも衆議院の方でどなたか触れておられるから、もう済んだことでありますから、対象を適用する限界の線がそれだけ一〇%でも上ってくればです、対象者はふえなきゃならぬ。それを一応こういうふうに積算したあとで、第二次、第三次が、おしまいに大臣等が努力されて母子手当その他のものが入ったのですから、あとから入ったもので前の数字をいじるというわけにはいきませんけれども、それだけでもほんとうに適用していくことになれば、少くても十万や二十万の対象者はふえる。まあ論より証拠であります。論より証拠でありますから、この景気の波で、そういう自然的に生活保護の対象者が何パーセントか景気の波を受けて減少するという事実が先で実証されたら、まことにそれは御同慶の至りであります。御同慶であります。ですから、この生活保護対象者の数がこの景気の波で減ずるか減じないかということは、この論争の勝敗は先へいって事実できめた方がいいのですからね。ここじゃお互いに予想論ですから、実際にそういうような状態になったかということは、先にいってみればわかる。
  104. 堀岡吉次

    政府委員(堀岡吉次君) 数字の点だけちょっとつけ加えておきますが、基準改訂の、六・五%のべースを上げたということによる人員増は当然予想いたしてありまして、一応これにつきましては三万世帯、十万三千人というものを大体この中に加えております。それから母子加算による母子加算の増額、これによりましても六万世帯というものはふえるであろうという、そういうことは一応計算基礎には入れております。その点だけつけ加えておきます。
  105. 山下義信

    山下義信君 そうすると、扶助基準の改訂と、母子手当の新設とによります、生活費のレベルの上昇によるこの対象の増大というものが入っているわけですね、そうすると、百五十万の中にそれが入っているということですね。それを除くというと、対象者の数の減少の見込みはもっとふえるのですか。
  106. 堀岡吉次

    政府委員(堀岡吉次君) 先ほど申し上げましたような算定方式で、三十二年度の年間生活扶助だけで申し上げますと、そういうものを作り上げまして、そこへ今の基準改訂並びに母子加算の増額ということによる人員を加えたその結果が、先ほど申し上げましたような数字でございます。
  107. 山下義信

    山下義信君 ですから、百五十万の数から、この六・五%増によるそれを見越し、また母子手当の新設によって加えられる対象者を見込んで百五十万と言うならば、この景気によって減少するであろうと見込んだその減少数は、もっとふえなければいけない。そうでしょう。六・五%基準を上げないで、母子手当というものも新設しなければ、従来の基準によって適用するということならばです。その減少の数というものは、今示されたような一%云々……人口増の一%差引したようなそういう数字でなしに、もっと減少率が多くなければならない。もっと十五万か、二十万か、減らなければならない、見込みがですね。それはどうでしょう。百三十万くらいに減らなければならない、生活保護の対象が。従来は六十万世帯、百七十万人で、横ばいか、幾らかずつ減っていたかわからぬが、そういう状態にあった生活保護対象者が、一挙に百二、三十万のところに減少するという見通しは……。それだけ好景気の影響がその階層に及ぶでしょうかね。
  108. 堀岡吉次

    政府委員(堀岡吉次君) 景気の影響が具体的にどうなっているかということは、こいつはただいま、先ほど山下先生のおっしゃったように、一年間の推移を見ませんと、これは何とも言えませんけれども、一応予算の積算の基礎としましては、先ほど来御説明申し上げましたような、そういう基礎数字をつかんで、それから母子加算並びに基準改訂、それによる増加人員を、それを加えたものであって、従って母子加算の増額並びに基準改訂が行われないということであるならば、在来の基準であるならば、先ほど山下先生のおっしゃった通りということになるのであります。  ただ非常に恐縮な話ですが、この六十万という生活扶助の推定は、あるいは、私が御説明申し上げましたので間違いないと思っておりますけれども、もう一ぺん主管の係に問い合せまして、今の其の基準改訂による増と、母子加算による人員の増とが、この外ワクになっているか、この内ワクになっているかという点は、もう一ぺん確かめまして、正確なところをお答え申し上げたいと思います。
  109. 山下義信

    山下義信君 わかりました。私の質問は関連質問ですから、これでとめておきますがね。ですから大臣の言われる三十一年度の何月からですか、何月からか、〇・一%ずつ減少する傾向にあるのだ、それが本年の二月まで一応参ります。そして人口増のまた比例を考えて、そして百五十万と押えたとおっしゃるのは、ちょっと違うのです。百五十万で押えると言う、その百五十万という数は、六・五%の基準を引き上げて、従って従来の線以上のものをカバーする数字と、母子手当を新設することによってさらにカバーしなくちゃならぬ対象者を加えて百五十万と言うならば、実際の生活保護の対象者の減少率は、もっとパーセンテージを多く当初は見積られていなければならぬことになってくる。こういうことが会計課長と私との数字のやりとりではっきりしたのです。
  110. 神田博

    国務大臣神田博君) それはその通りでありまして、だから私は安全を見ていると、こう申し上げておったのでございます。
  111. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 地方へ私らが行きまして、生活保護法を受ける対象者、それから今九百七十二万という数字が出ましたか、ボーダー・ラインの人々を、何とかしようかということが、地方において非常に問題になっておるのです。そこでその九百七十二万という、この数字の出た基礎数字を一つ出していただきたいということをお願いしておきますと同時に、このような方々を厚生省としてはどういう工合に処置したらよいとお考えになるでしょうか。私は、先ほどから一%ふえるかふえないかという論議がいろいろされておりました。で、景気の問題も出ておりましたけれども、なるほど経済回転は進んでおります。しかし大きい、大規模の企業は機械化によってむしろ人員が減っている、新規採用は、サービス部門においてふえるというような面も出てきておりますけれども、幾らか雇用の面は下っておりまして、中小企業にはこの景気の影響というものが、そう神武景気と言われるほどの影響じゃなしに、景気が偏在していると見なきゃならぬと私は思うのです。それは順次余波は受けるでしょう。だからそういう点から見れば、これは私は百五十万が多いとか、少いとかという問題でなしに、九百七十二万、このボーダー・ラインの人というものの変化というものはあまりないと思うのです。でそういう人を厚生省としてはやはり何とか救わなきゃならぬというお気持を持っておられると私は思う。だからそういう方々をどういう工合にしたらよいかというお考えを、一つ大臣からお聞かせ願いたいと思うのです。
  112. 神田博

    国務大臣神田博君) このボーダー・ライン層、あるいはこの、何と言いますか、要保護者の生活環境を豊かにするには、それ自体直接受益するような、これはまあ方途ができれば、これはこれに越したことはないわけであります。しかし、大体この今の日本の——というよりも、これはどこの国も、大体民主主義国においてはそうだと私は見ておるのでございますが、国の基本施策が動き、それがまあ景気の上昇線に入った場合、そこから順次ボーダー・ライン層あるいは要保護者層にだんだん循環していく。その循環の速度だとか質とかということはこれはあるわけでございますが、まあ今度の日本のこの神武以来の景気という、この景気のあり方ですね、今、藤田委員のおっしゃるように、まあ地方々々によってはやはりこれはでこぼこになっている。そのでこぼこの程度も相当これはあるようでございます。しかし、最近ではそのでこぼこではあるが、まあだんだんぼこの方が上昇してきていると、で、そこへ景気の面がぐっと下層の方まで及んできてまあほんとうにもう一息二息で相当良好なところまでいくんじゃないかと、まあたとえばこの質のいい労働者もほとんど今得られない。これから労働者を一つ求めようとするとどうしても考え方をかえて、ずっと質の落ちた方までいかないと雇用人員が見込まれないと、そこで質が低下するから量で補おうというようなことで、就職率というものが、採用率がそれだけ上昇してくるわけでございまして、そういうことが今のボーダー・ライン層にはだんだん減ってきて、それがまた要保護者層からまたボーダー・ライン層に上ってくるというのが今の実情じゃないかと思うんです。そこで先ほども申し上げましたように、ボーダー・ライン層そのもの、あるいは要保護者層そのものをすぐ立ち上るような即効薬というか、特効薬があれば一番いいのでございますが、それがなかなかむずかしい問題でございますので、まあ三十二年度の予算におきましては母子中心の面を主として医療対策であるとか、あるいはまた、貸付制度一つよくするとかいうような一連の線を打ち出したわけでございまして、この景気の持続力というものについてはいろいろ議論なり見方もあるようでございますが、私たちといたしましては、予算編成に際しましてはもっとうんと続くんだというようなあまい考えでなしに、大体三月基準でまあ横並みにいくというようなふうに考えた方が安全ではなかろうかと、まあこういう基本的な考えをもちまして大蔵省と折衝し、また、閣僚会議等におきましても、まあ厚生省予算あり方というものはその線で御了解いただきたい、そういう考えでおります。まあそれでその後いろいろ変化があればもちろんその変化に応じたような仕組みをしなければならぬわけであるわけでございます。まあたとえば予算途上に米の値が上るというような問題もあり、あるいは——まあこれは中止したわけでございますが、将来調査会がどういう結論を出すか、調査会の結論によっては上るというような際にはその上る率だけでなくそれにプラス・アルファの一つ社会保障予算を組まなかったならば、厚生大臣としては一つ同意しかねると、まあこういうようないきさつ等もございまして、大体の考え方は三月までの見通し、三月からは一つまあ平らにいくというような考えで、まあすなおな組み方をしたつもりなんでございますが、しかしもっとこれはたくさん組めれば多々ますます弁ずるわけでございますが、これはまあなかなか財政の問題といたしましてそういちずに増額を実現するというわけにも参りませんが、まあ来年等におきましては予算によりましてはすでに入った分のものも相当あるようでございまして、逐次一つ一つ社会保障費をふやしていこう、しかも逐次ということは今までに比べますと相当大幅な上昇率であろうというような考えでございます。
  113. 堀岡吉次

    政府委員(堀岡吉次君) 先ほど数字で御説明申し上げました点と、それからただいまの数字でございますが、基準改訂と母子加算の増額による人数は、まことに私どもの思い違いでございます。百五十万の外ワクでございます。  それからお尋ねの九百七十万のボーダー・ラインの算出基礎ですね……。
  114. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 資料で出して下さい。
  115. 堀岡吉次

    政府委員(堀岡吉次君) これは別途資料で、数字で……。
  116. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 それから六百十七円のやつも資料に出して下さい。
  117. 堀岡吉次

    政府委員(堀岡吉次君) 六百十七円と申しますと……。
  118. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 それがふえましたね、六・五%、その基礎資料をいただきたい。
  119. 堀岡吉次

    政府委員(堀岡吉次君) 別途それは資料提出いたします。
  120. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私の今申し上げたのは、まあ九百七十二万のボーダー・ラインの人を厚生省としては救う道を考えているかということをまあお尋ねしたのですが、今お話に出てきましたように、先ほど私が少し話しましたように、失業者の問題や、それからまた日雇いの窓口の問題なんかを見てみまするに、なかなかそう減少の道はたどっていない。で問題はまあ経済回転がよくなり、生産所得が多くなればなるほど、おのずから顕在失業、潜在失業の概念もおのずから私は変ってくると思うのです。また、変っていかなければいけませんし、その経済の推移に応じて低い生活の人をその経済力の中で救っていくということにならなければ、政治によいものではないと私は思うわけです。で、そういうことになってきますと、そういうことの考え方になりますと、なかなかこの九百七十万の今までボーダー・ラインだと言われていた方々の処置というものは、私は今のような偏在している景気回転の中では非常に困難な重要な問題になってきはせぬかということを考えますからこそ、お尋ねをしたわけです。だからたとえばこれは一例をとってみますと、失業救済の問題も緊急失業対策事業も、あの問題も地域的に偏在しております。これは事実です。ある所は二十五日であり、ある所は十五日である。そういう所の人は非常に因っている。まあ平均稼働が昨年は二十一日だったが、ことしは二十日たしか組まれている。ちょっと下げられている。今大臣は就業の機会を作るとか、何とかのバランスの上でこの問題を考えなければならぬと言われたが、これはやはり政府自身がいつも言われている社会保障制度確立という中でこの問題が出てくると思うのだが、しかし、就職の機会だとか、または救済という問題は、少し他の方に目を向けてみると違った方向じゃないかと私は思うから、私は厚生大臣にこの問題を追及するのじゃなしに、だからむしろそういう水準を高い水準でより守らなければならぬ。生活救済という問題になってくると、厚生大臣の所管になるから、私はそういうことをまあお尋ねをしたわけです。で、まあその点は十分に一つ御配慮を願いたいと思うわけです。  で、私はこの際、この前、中垣次官がお見えになりましたときにお尋ねをしておいたのだが、特に生活保護法に関係して結核療養所や、結核病人のこの病院や療養所におられる人の食費の問題だとか、それから生活扶助のたとえば六百円の問題、食費が九十四円十銭、こういう問題について私は現地に参りまして非常に訴えられて参りましたので、中垣次官にはこういう問題は早急に、東京都内やその他の病院については一日食費を百二十円以上出しているというような問題に関連して、早急に一つ何とか処置してもらいたいということを私はお願いをしておいたのですが、大臣はこの問題についてどういう工合にお考えになりますか。、
  121. 神田博

    国務大臣神田博君) 今の藤田委員のお考え方は、私も全く同感なんでございます。前段のお話にございましたごとく、今の後段の病院の何といいますか、食費の単価の問題でございますが、私もこれはできれば一つ変えたいという考え方を持ちまして、いろいろ実は構想も練ったのでございますが、就任後日が浅かったことと、いろいろ内容の問題を聞いてみますと、もっと料理の方法と申しましょうか、買付の方法と申しましょうか、いろいろまだその前に合理化すべき問題があるのじゃないかというような声も高いのでございます。しかし、これはもう当然なことでございまして、予算の増額と関係なしにやるべきことでございますから、すぐにも手をかけなくちゃならぬ問題でございますが、といっても単価の問題が私どうしてそういうのにきまったのかも実は詳しくなかった関係もございまして、もっと深く掘り下げて構想したいと思っておったのでございますが、今度は非常に日がなかったものでございますから、ついそこまで手が伸びなかったのと、また、実情もつまびらかにしておらないような際でございまして、よくこれは時間を少しかしていただきまして研究いたしまして、将来善処いたしたいと、こう考えております。
  122. 千葉信

    委員長千葉信君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止〕
  123. 千葉信

    委員長千葉信君) 速記を始めて。  それでは暫時休憩いたします。    午後四時二十四分休憩    —————・—————    午後四時四十一分開会
  124. 千葉信

    委員長千葉信君) 休憩前に引き続き委員会を再開いたします。  本日はこれをもって散会いたします。    午後四時四十二分散会