運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1957-09-11 第26回国会 参議院 社会労働委員会 閉会後第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年九月十一日(水曜日)    午前十時五十三分開会   —————————————   委員異動 八月十二日委員野本品吉君及び大矢正辞任につき、その補欠として高野一 夫君及び荒木正三郎君を議長において 指名した。 八月十五日委員荒木正三郎辞任につ き、その補欠として藤原道子君を議長 において指名した。 本日委員木下友敬君及び藤原道子君辞 任につき、その補欠として松永忠二君 及び占部秀男君を議長において指名 した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     阿具根 登君    理事            勝俣  稔君            山本 經勝君    委員            草葉 隆圓君            紅露 みつ君            榊原  亨君            谷口弥三郎君            横山 フク君            占部 秀男君            片岡 文重君            藤田藤太郎君            松永 忠二君            山下 義信君            田村 文吉君   国務大臣    労 働 大 臣 石田 博英君   説明員    総理府総務副長    官       藤原 節夫君    警察庁警備部長 山口 喜雄君    調達庁長官   上村健太郎君    自治庁行政局長 藤井 貞夫君    法務省刑事局長 竹内 寿平君    大蔵省管財局長 北島 武雄君    労働政務次官  二階堂 進君    労働省労政局労    働法規課長   辻  英雄君    労働省労政局労    働組合課長   山崎 五郎君    労働省職業安定    局失業対策部長 三治 重信君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事辞任及び補欠互選労働情勢に関する調査の件  (駐留軍撤退に伴う労務者失業  対策に関する件)  (静岡市における市当局市職員組  合との間の紛争問題に関する件)  (鈴木化学工業株式会社における労  働争議に関する件)  (ヘンミ計算尺株式会社における労  働争議に関する件)  (プラチナ産業株式会社における争  議に関する件)  (全日本自由労働組合福岡支部の紛  争に関する件)   —————————————
  2. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 開会いたします。  委員異動報告いたします。八月十二日付をもって野本品吉君及び大矢正君が辞任され、その補欠として、高野一夫君及び荒木正三郎君が選任されました。八月十五日付をもって荒木正三郎辞任され、その補欠として、藤原道子君が選任されました。九月十一日付をもって木下友敬君が辞任され、その補欠として、松永忠二君が選任されました。以上報告いたします。   —————————————
  3. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 次にお諮りいたします。理事榊原亨君から、都合により理事辞任いたしたいとの申し出がございます。これを許可することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 御異議ないと認め、辞任を許可することに決定いたしました。  この際お諮りいたします。ただいま辞任いたしました前理事榊原亨君及び委員外選出の前理事高野一夫君の補欠互選を行いたいと思います。互選方法は、成規の手続を省略して、便宜その指名委員長に御一任願うことにして御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 御異議ないと認めます。それでは、理事高野一夫君及び勝俣稔君を指名いたします。   —————————————
  6. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 労働情勢に関する調査の一環として、駐留軍撤退に伴う労務者失業対策に関する件を議題といたします。御質疑を願います。
  7. 山本經勝

    山本經勝君 前回のこの委員会調達庁長官の御出席を願って、当面するアメリカの地上部隊撤退に伴う六万六千人の駐留軍労務者離職問題について、組合関係からも、離職後の対策並びに事前の対策を含めて対策要望が出ておりました。従って、これらの問題について調達庁当局並びに労働省当局の御見解をお伺いしたのでありますが、何かあいまいな形で、当時まだ十分に掘り下げた閣内の対策についての意見の統一を見ていないということでありました。従って、今回はこの問題をまずお伺いしたいのですが、その第一点として、最近この駐留軍労務者のほかに、特需関係でも、相模工場で千六百名の大量の解雇がすでに通達されたし、あるいは調達庁自身職員が現在三千数百名いるんですが、この三千数百名も従って半数くらいに減さなければならないという話が台頭しておるようであります。そうしますと駐留軍撤退、あるいは規模の縮小、移駐というような事態に応じて起ってくる失業問題が非常に広範にしかも多岐にわたっておると考えられる。ですからこの際、その状況について、調達庁長官の方から概略のお話を承わり、それから同時に、その対策について労働大臣の方からお話を願っておきたいと、かように考えます。
  8. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 速記をとめて。    〔速記中止
  9. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 速記を起して。
  10. 石田博英

    国務大臣石田博英君) ただいま御質問の中で、調達庁の定員の問題についてはまだ決定をしていない問題であり、私のところへもまだ御報告を承わっていないのでありますが、これは調達庁長官の方からお聞きしていただきたいと存じます。  駐留軍撤退に伴いまする失業問題につきましては、先般本委員会におきましても、いろいろ御要望を兼ねた御質問がありました。政府といたしましても、前内閣以来、特需等対策協議会を設置いたしてありまするので、そこを中心として各省間の意見調整を行なって、漸次対策を具体的に固めつつある状態であります。今特需等対策協議会協議具体的内容につきましては、事務当局より詳細にお答え申し上げた方がいいと思いますが、大きな線といたしましては、私はしばしば地方庁あるいは労働組合諸君の陳情に対しまして一貫して申し上げておりますことは、基本的に必要なことは、それぞれの地域におきまする各種の条件調査、それからその条件に応じまする対策樹立、そうしてその対策実施するに当っての障害点の発見ということが先決でありまして、それを具体的に立てて、それに応じて政府側で必要なる措置をとっていくということが最も効果的な方法であると考えておりまするので、地方庁に対しまして、これに対する準備研究を依頼しているようなわけであります。  と申しますのは、二、三年前に呉で国連軍撤退に伴います相当多量失業者が出ました際にも、一時的に、たとえば公共事業の繰り上げ実施とか、あるいは一般特別失業対策事業実施などによりまして、一時的な吸収を考えるのがまあ便宜であり、早道であるように思われたのでありまするが、実際それを行なってみますると、対象になるべき国連軍引き揚げに伴う失業者というものの参加が意外に少いのであります。そればかりでなく、公共事業失業対策事業はあくまで一時的な弥縫策でありまして、恒久的な対策とは申せないのでありまして、やはり恒久的な対策は、産業誘致いたしまして、そうして雇用を安定させるということでなければならないと思っているわけでありますが、呉等におきましても、この産業誘致という点に重点を置きまして、それに必要な——呉の場合におきましては、工業用水事業の施行ということでありましたが、それに対して所要の措置を講じました結果、急速に産業誘致が行われ、また、現在も進行中でありまして、すでに国連軍引き揚げに伴って生じました失業者諸君の三分の一は新しい誘致されました産業に吸収されておる。残余の三分の一につきましても、なお、今進行中の産業誘致によりまして吸収される見込みが立ちつつあります。残った三分の一はそれぞれの人々の自分の御判断で、中小企業なりその他へ吸収されていったというふうに報告を聞いております。やはり産業誘致のための条件整備することを早くから始めておくことが私は一番基本的な方法だろうと考えますが、それには各地によりまして、たとえば返還される設備あるいはその土地のいろいろな立地条件が違っておりまするから、それぞれの現地におきまして、それについてすみやかな調査対策とを出してもらうことがまず第一であるということを申し述べ、それを実施していただいておるようなわけであります。一方、特需等対策協議会におきましては、それに関連をする問題ももちろんありまするけれども、たとえば企業組合の育成でありまするとか、その他各省間の協力によって行われるべき施策につきまして、意見調整等を行なって、次第に結論を見つつある状況でございます。
  11. 山本經勝

    山本經勝君 大臣関連して伺っておきたいのですが、今のお話ですと、根本的には駐留軍撤退に伴う現象関係都道府県で、地方で起った、その地方条件基礎にしてお考えになる、その処理方法としてはそうでしょう。ところが問題は駐留軍撤退が、しばしば申し上げるように、これがいつ引き揚げるかは別として、いずれは引き揚げるものだと、こういうことなんです。しかも日米行政協定に基く国の責任において雇用をして労務を提供させておるという特殊な事情、こういうところに問題があるのである。従って今お話のように、呉の例をおあげになったのですが、返還される施設利用する場合、いろいろの問題があるのです。一応国有財産となったものの処理あるいはまた、利用方法等についての問題、ところが、それだけでは実は今日までの実績はまことに見るに足らぬと思うのです。ですから少くともそれに対して必要な政府投融資、その他の具体的な方法が、政府内部ではっきりした線が打ち出されておらないところにこの根本問題の解決がないと思うのです。しかも、申し上げるように、国の責任において雇用し、労務を提供しておるという協定の、この責任は国が持っておるということでありますから、勢いそこからはっきりした基本線が打ち出されておらなければならぬ。雇用された労務者離職するというのが、つまり国の雇うた労務者であるという意味における取扱いを、前回も申し上げたように、たとえば一般公務員の場合あるいは地方公務員の場合にも大体そういう線でいっておるのですが、本人の意思によらぬ、あるいは過失、その他責任でない問題の場合には、それぞれ特別の退職金とかあるいは支給金とか、いろいろの形で、名目は変っておりますが、それぞれ特別の取扱いが行われておる。ですから当然この前問題になりました五万円の要求がありますが、こういう具体的な問題、あるいはまた、基本的には産業誘致のための基本である国の財産の処分や利用方法等について、ただそれを地方にまかせた形ではなくて、国家の投融資等の道を開かなければ実効は上らないということが叫ばれている。ですからそういう点については、これは国の責任だと思う。岸内閣責任においてこれはやっていかなければならない。しかも、当面する責任者はやはり労働大臣である。労働問題として、失業者に対して対策考えるということになれば当然労働大臣である。ですから、その基本問題について労働大臣のしっかりした御解明をいただかなければ納得がいかないと私は考えます。
  12. 石田博英

    国務大臣石田博英君) 退職金の問題につきましては、直接責任官庁である調達庁の御意見、あるいは調達庁関係省との御折衝の結論をまだ私ども報告を受けておりません。私ども処理すべき問題は、御指摘通り、それによって生じました失業問題の処理であると思っております。そこで、駐留軍労働者諸君は御指摘通り、特殊な雇用状態、特殊な条件によって解雇され、従ってそれだけ政府政府責任においてあとう限りの努力をいたさなければならぬことは当然でありまして、そういう心がまえでやっておる次第であります。ただ私が申し上げたのは、たとえば産業誘致に必要な投融資あっせん等にいたしましても、あるいはまた、そのほかの具体的な措置にいたしましても、それぞれ出て参りまする計画によって行われるべきものである、たとえば国有財産処理ということについて、よく特殊な立法が必要じゃないかというお話がございますが、これもちょうど呉のときも同じような議論がございましたけれども、実際問題としては個々にあっせんをすることによってほとんど全部処理がついております。一部まだ占有権と申しますか、前に誘致した産業との関連がありまして、その調整で苦しんでおるのがありますけれども、具体的には大体解決方法をとっておるのであります。現行法規をもっていたしましても、ケース・バイ・ケースでごあっせんを申し上げることは政府として十分できる。それでなお、できない場合におきましては、必要な措置を考究しなければならぬことは申すまでもないことでありますが、私は現行法規で十分できると考えております。それから誘致されました産業が経営を維持していくための必要な措置については、それはできるだけの措置をしなければなりませんし、また、特殊な条件下における失業問題でありますから、政府がそれに対してできる限りの協力をすることは当然であると思っております。しかし、いずれにいたしましても、基礎はそれぞれ具体的な計画基礎になっておるのでございます。これに伴う投融資あっせんをするにしましても、具体的なものをつかまないでどうこうというような処理はできるものではございません。私が申し上げておりますのは、地方にまかせるというのではなくて、地方がそれぞれ具体的な現象基礎といたしまして、事実を基礎といたしまして計画を立て、それによって出て参りまする障害点というものの解決政府に求めてくる。それによって政府あっせんの労を惜しむものではないということを申し上げておるのでありまして、最終的なあるいは総括的な責任を回避するものではございません。
  13. 山本經勝

    山本經勝君 続いてお願いしたいのですが、今お話を伺っておりますというと、具体的な計画が立てられて、それがしぼられた形でここに問題がある、こういうふうになってこなければというお話があったんですが、これは私は政府責任回避だと思う。政府が直接雇用しておる、それはなるほど事務都道府県地方々々に落して、あるいは管理を落す。ところが、そこで計画を立てて前回の呉の場合、広島の場合を私どもよく存じているのですが、現地から、あるいは市当局、あるいは市議会、また、県議会、県当局等が具体的な案を持ってくる、それをそういうような形にならなければ国がやらないというのではなくて、今度なんかは六万六千人という膨大な人員が、しかも、関係の広い広範な地域において発生している。ですから、そうなる場合に、具体的の計画をもってこなければというような無責任逃げ方は私は許されぬと思う。いやしくも当面の失業対策が問題になるならば、やはり労働大臣としての、やはりこういうふうにしたいのだ、あるいはこういうふうにすべきであると考えているという案がなければならない。大臣はもはや就任後相当な実情について研究もなすっているのですから、私が先ほど申し上げたように、返還される施設利用する場合に、それはただ利用するといっても、その施設が直ちに日本の産業実情に沿うかどうかわからない、そのことは少くとも大幅な改造を要する。あるいは土地にしても、利用をどうするかという問題は根本問題だ、そこら辺の根本問題が政府で一応立案されて、計画が持たれておらなければ、地方計画立てようがないと思うのです。たとえば福岡の例を引きますが、雁ノ巣という飛行場が返還された、しかし、事実上それは使いようがないわけなんです。あるいはその他至るところに私はあると思う。ですから、そこには相当な資金を入れなければ、工場誘致なり、あるいは必要な企業誘致をして有効に利用させるという道は開けてこない。ですから、たとえば政府のそうした必要な投融資をする計画があるのかないのか、あるいは特需等対策協議会等も設置されていると聞くのですが、そうしたところでも、こうした問題が具体的に取り上げられて、何らかの具体的の措置が予算的に裏づけられる。こういうようなことになってこなければ、今の大臣お話は、から手形だと言わざるを得ない。それで少くとも当面する問題では、都道府県にある離職対策本部資金さえもない、それでは具体的な今のお話のような計画を立て、調査をし、そうしてしかるべき誘致方法を講ずる方法がないと思う。それは地方でやれ、こういう御意見なんですか。
  14. 石田博英

    国務大臣石田博英君) 各地方離職対策本部整備につきてましは、具体的の計画を立てさせております。それはいずれ職安局長から御報告いたさせます。  私の申し上げておりますのは、たとえば雁ノ巣の例をお引きになりましたが、雁ノ巣のような場合におきましても、それをその土地立地条件、その他からどういうふうに整備し、どういうふうに利用するのがいいかということを、計画を立てて持ってくるのが、私は先決であって、それがされれば、それに対する措置政府としてあとう限りのことをいたす、こういうことを言っているのです。呉なんかの場合におきましても、同じような事情産業条件整備ということが必要だ、しかし、産業条件整備をする場合に何が欠けておるか、何を一番先にやらなければならぬかということになりました際に、それは工業用水だということにしぼられて参りました。従って、工業用水については政府は必要なる資金を投じました。私の申し上げておるのは、政府が最終的に責任を回避する意思は毛頭ありません。毛頭ありませんけれども、呉の場合なんかと違って、今度は範囲が非常に広範囲で、散在的であります。従って、それだけに条件がまちまちであります。その条件のまちまちのやつを政府が一律的にどうこうというわけにはいきませんし、具体的の計画内容が出ないものを、それの必要な資金量というものを計算するわけにも参りません。従って、政府としては協力を惜しむものでないから、従って、それぞれの土地におきまして必要なる計画を立ててくることが先決である。呉なんかの場合は、呉の市当局県当局がみずから計画を立て、みずから努力をして、そうして及ばないところを政府にその協力を求める、あるいはまた、各省間の関係解決のつかない問題の処理を求めてこられた。でそういう努力をしていただくことが、具体的解決先決問題だということを申し上げているのです。それが行われれば、また、それを行うことによって必要な政府援助ということをまずいたすのであります。総括的に、基本的に申し上げられることは、労働政策としてこの駐留軍失業問題をどうするかとおっしゃられれば、恒久的にはそれぞれの立地条件に応じた産業誘致によって、そうして失業人口を吸収する。産業誘致に必要な条件整備については、政府はあとう限りの努力をするということであります。それの具体化はやはりそれぞれの実情によって違うのであるから、地方の率先した努力が必要であるということを申し上げているわけであります。それまでの中間的の措置といたしましては、失業対策事業、あるいは特別失業対策、その他の措置はあとで御報告いたさせますけれども特需等対策協議会において今検討中であり、結論を見たところもあるのであります。
  15. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 ちょっと関連して、今の大臣失業対策の問題を聞いておりますと、第一に、地方的な盛り上りにおいて足りない面を政府がやる。こういう御発言がありました。しかし、今度の六万六千プラス空軍関係の四千幾らで大体七万をこえる失業者が予想されている。特に駐留軍労務者というのは政府雇用関係を持っている。こういう歴史の中から見て、私はそれじゃ今までの駐留軍労務者の削減されていった方々のめんどうを政府は見てきているかどうか、ここに私は第一の問題があると思う。今問題が起きてきて、地方が自主的にやって、その足らざる面を政府援助すると言われるが、それが政府全体の方針なのか。労働大臣労働者保護という立場に立ってお考えなのか、そのところがはっきりわからない。私は労働大臣労働行政の根本になるのは、労働者保護する方法だと思う。だから、率先してむしろ地方庁産業振興を起すとか、失業救済を起すように鞭撻する、そして労働者失業をなくしていくということは、労働省が率先しておやりになるのが、私は本来の行政建前じゃなかろうかと思うのですが、この駐留軍労務者の問題について今のようなお話では、私は労働大臣としてのお言葉とはちょっと解しかねる。ちょっとその点、もう一ぺん言って下さい。
  16. 石田博英

    国務大臣石田博英君) おっしゃるまでもなく、私たちの役所は労働者保護を主たる任務といたしているのでありますから、駐留軍撤退に伴う失業問題の解決について最終的な責任を負って行動していることは当然であります。それを計画として具体化する方針は、私がただいま申し上げましたように、大きな筋はそういう方向でいたしますが、それを効果的にやります場合には、特にいろいろの条件地方地方によって違うのでありますから、地方自身がその計画を積極的に立てて、そして政府の方へ協力を求めてくるのが必要である。それはその計画を立てることについて、政府側援助労働省では率先していたします。いたしますけれども、抽象的にばく然としたことばかり持ってこられましても、たとえば今お説のように、先に投融資計画を立てろ、先に国有財産処理について特別立法をしろ、こうおつしゃいましても、私は特別立法のことについては、今の法律で十分処理できると思っておりますが、また、現にやって参りました。投融資計画のごときに至っては、具体的な計画が下になければ立てようがございません。地方がそういう率先した努力をすることが必要だということを申し上げたのは、地方盛り上りの足りないところをやるというのではなくて、私はむしろ地方がそういう問題についての具体的な計画の立て方にまだ不足の点があると思いますので、労働省といたしましても、そういう地方に対して、具体的な指導を行いつつ、そしてその地方のそれぞれの条件に応じた計画樹立を急がせているというところであります。それができ上ってきたときに、総合的な数字というものが出てくるわけでありますが、まとまった総合的な数字の出るのを待つまでもなく、それぞれの具体的な計画の立ち上りに対して、政府としてはあとう限りのお手伝いをし、また、問題の解決に当るということを申し上げているのでございます。従って、私ども努力を惜しむものでもなければ、責任を回避するものでもなく、その具体的な実施方法を申し上げておるわけであります。
  17. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 関連してもう一つ、労働行政建前から言って、今の失業が出てくる労働者をいかに救済するかということは、この行政全体の中で、労働大臣労働省が率先してこれは積極的におやりにならなければいけない問題だ、そう理解を私はしておる。まあ率先しておやりになるということをつけ加えられましたから、それはいいといたしますが、今までの、たとえば神奈川県の例を一つとってみますと、昨年の七月一日から今年の六月三十日までに調査をいたしまして、四千二百九十九の要するに失職した人の調査、はね返りは二千二百二十三、それらの中で就職したのは五割に達していない、千百六十二名というのが失職の状態を続けておる、これが今までの一年間の状態でございます。回答のないところは別でございます。回答のある分だけを見ましてもそういう状態にあるわけです。じゃ、これに政府はどういう保護の手を加えてきたかというと、保護の手というものはほとんど加えられていない、私は駐留軍労務者から聞いておる。だから非常にりっぱな、どうしていくのだ、こうしていくのだと言われても、労働者の身になってみたら、われわれが首を切られたって、どこからも保護をされる措置が講じられない。今までの歴史からいっても講じられないという状態で、結局は六万六千—七万の人間が非常に不安定な状態に置かれておりますし、結局は自分だけが何の保護もない状態の中で、失職で苦しい生活にあえいでいくのではないかという感じを持っておる。私はだから問題点として、そういう具体的な就労の機会を積極的に作っていって完全に就労させる、政府はよく完全雇用ということをお言いになるのだから、そういうものも一つでございます。しかし、今までやってきた仕事、その経験、そういうものをやはり生かしていくというためには、私はいろいろ駐留軍労務者の方々から政府に対して要請されておるような問題について、はっきりしたものが一つも回答に出ないように思う。私はやはり現状までの不安定な状態、将来というものを考え、こういうやはり要望、要求、要請という形になって表われてきておるということは、労働大臣は私は十分に一つかみ分けていただきたい。だから今単に、たとえば政策として就労の問題はやるのだと言われても、具体的にどうやるのだ、たとえば一つの例を取り上げて見ましても、ハイヤー、タクシーというような格好のもので、何とかこの点に、労務者のときに運転の経験のある者は、地方のハイヤー、タクシーとか、そういうものをやりたいと言っても、なかなか認可が下りない、結局うまくやってやる、うまくやってやるという状態の中で日が過ぎていったら、なおさらこれは不安が高まっていく、だから具体的にどういう工合に六万六千—七万の失業者は、本人の希望によっていろいろの事業も興したい、それにはどういう工合に援助してやる、または、そうでない全体の人についてはどういう工合に就労の機会を政府が保証してやるのだということを、私は積極的に一つ労働大臣におっしゃっていただかないと、労務者の方々は安心できない問題じゃないか、こういう工合に思いますが、一つの例を取り上げて質問をしたわけです。
  18. 石田博英

    国務大臣石田博英君) 失業問題について、労働省が積極的に指導解決に当るということは、私はわざわざ言わなくても、当りまえのことだと思って冒頭に申し上げなかったので、それは当然のことだと思っております。  それからもう一つ、具体的な問題というものの処理が足りないのではないかというようなお話でありますが、その具体性は忌憚なく申しますと、両方に足りないのです。たとえば企業組合ということを項目としてよくお取り上げになりますけれども、具体的に企業組合というものは何をやるつもりだということになると、ただいまおっしゃたようなタクシー、ハイヤー業ということが上ってくる、これは具体的な例ですが、その具体的な例がたくさんあるかというと、ないのです。そういう点についても具体的な計画があれば、それに応じた処理政府としては努力をいたします。それからやはり私は恒久的には産業誘致ということによって解決しなければならない、その産業誘致ということによって解決するためには、先ほどからくどく申し上げている通り、それぞれによって立地条件が違うのでありますから、その立地条件が違う土台に基いた計画というものが立てられなければならない、それには、その地元におる者が一番よくわかっておるのであります。政府としてそれに必要な援助は幾らでもいたします。地元がまずそういうものについて、特殊な条件というものの整理検討ということを早くやりなさいということを申し上げているわけであります。ただタクシー、ハイヤー業の問題を取り上げられましたから、お答え申し上げておきたいと思うのであります。これは政府としても努力いたしておりますが、私は個人としてもいろいろごあっせんを申し上げている状態であります。しかし、だんだん問題が大きく世間に取り扱われるようになって、困難になりつつあることも御承知の通りであります。そこで同じ労働者、タクシー、ハイヤー業の状態から見てみますと、無計画に許可をいたしますると、それは同じ労働者の既存のタクシー、ハイヤー業の諸君の生活に影響を与えてくる状態にありますから、その間必要な調整を行わなければならぬことは申すまでもありませんが、その条件をできるだけ克服をして、そうして具体的な解決を急いでいこうとしていることは申すまでもありません、やっております。それから神奈川県の例をとられました。私は特殊の地方官庁の名前をあげて非難をしたり、批評をしたりする意思はありませんから、そういう具体的な固有名詞は別といたしまして、国連軍引き揚げに伴う失業問題が発生いたしましたときに、当然そのときもそれに付随して類似のケースが相当あったのでありますが、それだけでなく、今日のような事態を覚悟しなければならないのであるから、関連府県においては、たとえばそのときはよその問題であっても必要な連絡をとり、その処理の経過というものを見ておくようにということを、私が官房長官になりましてからも、なる前もしばしば連絡いたしましたが、一向にそういうことはなかった。たとえば御指摘の相模原には私自身行って、そうして現地の司令官と話をし、対策についての具体的な検討をお約束をいたしたことがあるのでありますが、その後今日のような事態がくるまで、何ら連絡がなかったという事実があったのでありまして、政府の方といたしましては、あとう限りの便宜の供与と援助をすることは当然であります。それにはやはり基礎になる計画樹立について、もっと具体性ある努力関係者がしなければならない、その具体性ある努力をさせるために、労働省としては指導啓発に当ることは、これは当然でありますということを申し上げに次第であります。
  19. 山本經勝

    山本經勝君 大臣の先ほどからの、くどく説明をしたとおっしゃった、つまり大臣の言葉を借りて言えば、地方自身が具体的な案を立てて持ってこないからというお話なんであります。そうすれば、今の大臣のお言葉をそのまま借りれば、少くとも、国はこうして駐留軍労務者の起り得る失業、あるいは現に起っている失業に対する対策考えているのだという、はっきりした要領を示した通牒、その他適切な措置を、大臣はなさっておるのですね。
  20. 石田博英

    国務大臣石田博英君) 関係府県知事の方が私の所においでになりまして、そういう趣旨は明確に申し上げたのであります。私の方は、地方から出てくるのを待っているという、それまで、出てくるまでの間は全然何もしないということを言っているわけではございません。その計画がすみやかに出されるように、そうしてまたその計画が、どういうものでなければならないかということについての、具体的な指示は積極的にやっております。それで、そうしてもらうことが先決であるということは、先ほども申し上げました通り関係府県に、書類よりもっと確かな、私が自分で、私の所で、私の部屋で、はっきりと申し上げております。
  21. 山本經勝

    山本經勝君 少くともそういうお話があったということは、私ども承わっていないのです。そこで、先ほど雁ノ巣の例がありましたように、たとえば現に数百名の失業者を、離職者を出すところでは、御承知のように、元の陸軍工廠のあとが一万数千坪という膨大な地域と、膨大ながらんどうの建物が残っている、これを何とか利用したいという駐留軍離職者の皆さんの希望があります。そうすると、そういう問題を具体的に考えてみますと、あの建物や、そうして設備があることによって土地利用できない、撤去することは容易な金ではない、こういう実情のもとに置かれておると思います。そうすると、こういう問題についてたとえば福岡県知事に対して、あなたは口頭でお話になっておると言っても、口頭では私は問題にならないと思う。いやしくも従来の慣行から言うなれば、こういうふうな方法でこの問題を処理するのだという考え方は、大臣として通牒なり、指示なり、指令なり、何らかの具体的な形で私は出されるべきだと思う。そういう点についてはどうなっておるのですか。口頭で言ってあるから十分であるという考え方は逃げることのできる方法なんです。逃げの手を打てる方法なんです。これは大臣のきわめて無責任な表現だと思うのです。いやしくも従来の慣行から言っても、通牒とか、指示とかいろいろな形で出されている。こういうふうに都道府県に対しては、少くとも政府はこういう措置を、もし具体的な案が立ってくれば考えておるのだぞということになってくれば、どんどん地方がやってくる。やってこないというのは、逆に口で、から手形を渡してあるのにすぎぬのであって、そうでなくて、文書なら文書で正式に通牒を大臣は発せられるべきだと思う。そうすれば、当然地方の議会でも問題を取り上げるでしょうし、そこで十分検討した上、おっしゃるようなコースに乗ってくる、軌道に乗ってくる、こういうことではないかと私は思う。ですから、その点を大臣から解明していただきたいと思う。
  22. 石田博英

    国務大臣石田博英君) まあ口で言ったのでは逃げると——私は元来そういうことを逃げるつもりもなければ、そういうけちな根性で事に当っているつもりでもごいません。それから直接本人に会って大勢の前で、一人ずつ来たわけではない、関係府県知事が全部おいでになっている席上であります。そのときに明確に言うほど確かなことはないのであります。なお、通牒等が必要であるといたしますならば、これは研究をいたしまして、こんなことは何でもないのであります。ただ屋上屋を架するむだなことだと思うのでありますが、必要であるといたしますならば、そういう措置をとってもよろしゅうございます。  それから既設設備、国有財産利用等については、これは不用意な御発言かもしれませんが、何とか利用したい。何とか利用したいでは政府としてはどうともしようがない。何に、具体的にどう利用して、それにどういうふうな資金が要る、どういうふうな計画があってどういう見込みがあるかということを立ててこられた場合、初めてそれが具体的な処理の対象になるのであります。そこで、しかしなかなかそういう具体的な計画を立てるのに、駐留軍の人たちだけで仕事をされる場合にむずかしいような場合とか、あるいはおなれになってない場合の指導あっせん等は、これは私どもの方でも積極的にもちろんいたします。それからそういう国有財産処理とか、何とかいうような問題は私の方一省ではこれはなかなか処理できない、関係省が多いことでありますから、これは特需等対策協議会におきまして、それぞれの個々のケースにおいて処理しまして難点の解決に当る。そのために各省の連絡会議というようなものも設けられているわけであります。そこで具体的な計画につきましても先ほどから何度も申しております通り検討を続けておりまして、すでに結論を得たものもございます。こういう状態であります。決して責任を回避するつもりでもなければ、積極的にやる意思であることは重ねて申し上げておきます。
  23. 山本經勝

    山本經勝君 今のお話でだいぶわかりかかったようでありますが、ところが、問題は関係都道府県の知事を集めてお話になったというのはいつですか。
  24. 石田博英

    国務大臣石田博英君) 私の方で集めたわけではなくて、関係都道は入っておりません、関係府県の知事の方々がこの問題についての政府に対する要望をそろってお持ちになったのであります。それは八月の中旬でありまして、日にちはいずれ必要であれば申し上げます。神奈川県知事が責任者で、あと関係知事が集まっておりまして、それぞれの責任において、そういう方針に基いての努力をされていると思います。
  25. 山本經勝

    山本經勝君 先ほど大臣は屋上屋ではあるけれども、必要であれば通牒を出すとおっしゃった。私は必要であると思うのです。ですから、少くとも今お話のように陳情に見えたのですから陳情に対してお答えした。八月中旬、日はわかりませんが、関係知事が大臣のところにお見えになって、あるいは内閣にお見えになって陳情があった。そのときに大臣の見解をお話になった。ところが、そういうことは、今度は知事が関係府県の議会とか、あるいは関係者に対してどういうふうに一体出るかさっぱりわからない。現に起っている問題のように、具体的の事例が至るところに起っている。ですから、そうすればこれは正式に通牒なり、指示なり、しかるべき形式で、様式でもって大臣からなさるのが当然だと思うのです。その点についてお考えを伺っておきたい。
  26. 石田博英

    国務大臣石田博英君) これは私は必要であると申すならば書類通牒の方法を、これは同じことでありますから、こういう考え方で処理するが、地方はすみやかに計画を立てろということを言うて参りたいと思っております、必要であるとおっしゃるなら。それから、ただし、これの処理につきましては、私の一省だけの所管でない問題がございます。そこで、通牒、私はそんな妙な手続きを必要としない、つまり政治的な責任においてそういう方針を明示したのでありますが、さらにそれを具体性を持たせてやらせまするためには、特需等対策協議会結論としてそういう方向を早く出させて、そうして文書をもってそういう通達をしたい、必要ならやりたいと思っておりますけれども、実際問題といたしましては、何かそういう形式的な結論を生むのには、なかなか役所というのはひまがかかる。だからそういう方針でいくのだから、早くそういう準備をそれぞれおやりなさい、早い機会に言う方が物を進めるために私は効果的だと、こう思っておるのであります。しかし、何も書類を出すことがいやだとか、いやじゃないとか言っているわけではありません。
  27. 山本經勝

    山本經勝君 ここの委員会で質疑の途中でも多少変ってきた、先ほど大臣の非常に自信の強い答弁から。案を出すならば、具体案を持ってくるならば検討をして、十分必要な政府措置は講ずる、こういうお話だった。そのことが地方から出てこないではないかと逆にきめつけられたわけなんです。ところが、そのことで別に私は今の通牒の話を申し上げておる。いやしくも正式に文書で通牒が出されているならば、私どももそれを知ることができる。そうしますと、起る地方の問題についてこういう具体的な対策を講ずべきではないかという注意もできるでありましょうし、協力もできてくる。ただそういうことが、遺憾ながら単に知事が集まった際に、陳情に見えた際に大臣の見解を述べられたという範囲のものだから、そういうことができておらないのです。ところが、いろいろ通牒として出すということになりますと、屋上屋であるが、むだなものであるがやりましょう、こういうお話です。そしてただし書きがついている。今お話の、ただし一省だけではできないから、特需等その他関係閣僚の連絡協議会と言いますか、何かそういうような機関に諮らねばならぬだろう、こういうことになってくる。だからこそ私は申し上げておる。口でお話になったことはただし書きができたり、枝が出たり、葉がはえたり、いろいろな形になって曲ってしまう。いよいよ実施になるというと因縁がついてやれない、こういうことが今までの実情ではないかと思う。藤田委員の言った今までの実績が問題だといったのはまさにその点だと思う。ですから、私は今申し上げたように、ただし書きがつくことをおそれている。そこで特需等連絡協議会等で協議なさることもけっこうでしょうが、少くとも正式文書で、ただいまお話になったことは会議録にも載りますけれども、同時にそれを屋上屋でむだと考えられずに、その労をいとわずに、大臣の名において通牒あるいは指示を正式に関係府県の知事あてに出してもらいたい、そのことはどうなりますか。
  28. 石田博英

    国務大臣石田博英君) 私が口頭で申し上げたことは、これは私の方針ばかりでなく、今まで、今日までこういう問題が起ってきた場合に、前内閣以来といっておった方針であります。従ってこれについて、その地方から具体的な計画ができ上った場合に、政府として積極的なお手伝いをすること、これはまあ当然のことであり、責任を持って申し上げることができると思います。ただ、たとえば国有財産処理についての方針を出すという問題、あるいは投融資あっせんをするという問題、これは全体の方針としては今申し上げたところでいいのでありますが、役所がそれを形式的な通達として出す場合には、やはり一応関係各省の承認というか、同意というか、形式的にでも手続上そういうことをやっておく必要が生ずるのであります。しかし、横やりが出たからやらないということを言っているわけではない。横やりの出るべき性質のものではないと思っているのでありますが、私が単独でやるべき問題ではなくて、やはり関係省に連絡をつけてから、文書で出すならば出すべきもので、従って、きょう約束したからきょう出すという性質のものには参りません。ただ、問題の内容にただし書きをつけたわけではございません。形式的な問題を言っているだけであります。
  29. 山本經勝

    山本經勝君 今のお話ですというと、前置きが、非常に解説付きだったのですが、ところが問題は、今私が伺っているのは、通牒を正式に出させるか、出させぬかということと、そうしておよそ出すならばいつごろになるかということを伺っておきたい。これを伺っておかないというと今のお話がしり抜けになる。
  30. 石田博英

    国務大臣石田博英君) 出すと言ったら、出します。できるだけすみやかに調整をとりまして出します。出すまでも、この八月中旬にそういう政府方針は明示してあり、それから駐留軍労働組合諸君に対しましてもそういうことを言っているのでありますから、やはり現実に実行に移されているものと信じます。
  31. 山本經勝

    山本經勝君 いま一つ大臣に、時間の都合があるようですから伺っておきたいのですが、これは大臣の直接所管ではないかと思う。しかしながら、防衛分担金が今年度、三十二年度に三百億でしたか、そうして三十三年度の予算にも大体それに準じて二百九十億ばかりの予算が組まれているということを聞いているのですが、ところが、駐留軍自身が相当大量に地上部隊を全部、さらに空軍関係も減少する、規模が縮小されるということを承わっている。そうしますと、この費用は浮いてくると思う。具体的に申し上げますと、その分担金、これは日米行政協定の二十五条でありますか、何かに載っている。ですから、そういう条項にのっとって一応分担金がきめられているのですが、その分担金が要らなくなる。そうすると、これを、一般的には、流用が困難なような協定になっているようですが、そのうちで、駐留軍撤退、あるいは同時にこれらの労務者離職等によって生ずる余剰を再び何らかの方法で生かすようにしなければならない。それは日米間の合意を必要とすることでありますから、これに対する内閣の方での交渉促進というようなことも、私は閣僚の一人として、労働大臣だけの責任ではないのですが、少くともお考えになっていると思う。その点についての所見を一つ大臣から承わっておきたいと思う。
  32. 石田博英

    国務大臣石田博英君) 政府方針について、閣僚の一人として責任を持ち、あるいは考慮することはこれは当然でありますが、その具体的問題の対外的意思表示というのも、やはり所管の人がやるべきものと思っておりますので、私から申し上げることは差し控えたいと思います。
  33. 山本經勝

    山本經勝君 これは事が、防衛分担金の使途については私が申し上げるまでもないことであると思う。つまり、必要な輸送費、あるいは労務費、その他関係事務費というものを振り当てられていると聞いているのですが、そうしますと、当面のいわゆる規模の縮小、あるいは移駐、あるいは撤退という事態が生ずる、現に起っているのだが、六万数千という大量なんです。ですからそれほどな大量なこれが離職者が出るということは、規模が縮小されるということを意味すると思う。ですから、そういう場合には、当然関係閣僚間で話し合われるでしょうが、その関係閣僚間の話し合いの中で、もう労働に関連を持つこの部分については、これは大臣としてのしかるべき心がまえがあってよかろうと、こう考えている。ですからその点を伺っている。
  34. 石田博英

    国務大臣石田博英君) 労働に関係がある部分の処理、それについての必要なる予算的措置ということについては、これは私も発言権があり、私が研究しなければならない問題であります。しかし、その財源をどういうところから捻出するかということは、これは私の責任に属することではございません。
  35. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) いいですか、山本君。
  36. 山本經勝

    山本經勝君 さらにこの具体的な、若干問題ですが、先ほどお話の中で、具体的な計画を立ててやればいい、それに対するしかるべき援護措置政府がやるというお話であった。呉の場合の問題、あるいは広島においてやった計画についてはどういう状況であったか。これはやはり三分の一程度しか吸収されておらぬと聞くのですが、大体そういうことではなかろうかと思う。そうしますと、この呉の市内に四千ですか、全体で連合軍撤退に伴う一万二千の中で、四千何がしの三分の一くらいしか就職できていないということを聞くのですが、そういう点については大臣は御承知なのかどうか。
  37. 石田博英

    国務大臣石田博英君) あのときは失業された九千人くらいであったと思いますが、九千人くらいあったと思っております。そのうちで、現在誘致せられました産業に吸収されておるのが約三千人、三分の一であります、御指摘通り。それから残った三千人は、その職業安定所にも出てこない。つまり明確にとらえられないのですが、職業安定所の方へは出て参っておりません。いわゆる求職人口として残ってはいないわけです。まあどこにいかれたか、数字の統計が出てこない。で、今なお処理をすべきものとして三千人程度残っておるわけであります。それは現在誘致計画を進められておる、もう順次吸収される見込みでございます。現在の段階では三分の一でありますが、現在進めつつある産業誘致計画によって順次吸収せられる見込であります。
  38. 山本經勝

    山本經勝君 もう一点だけお願いしておきたいのですが——お願いなり、あわせてですが、大体先ほどの通牒はいつごろに出しますか。これはおよその目安が必要だと思う。問題が残っているのですからね。
  39. 石田博英

    国務大臣石田博英君) もう実際上のことはやっておることでありますが、本月中には一つ同様の通牒を出します。
  40. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 先ほどからのいろいろの労働大臣意見には、私も相当意見を持っているけれども、きょうは時間がないからやめますけれどもしかし、どうも聞いておって、今の七万の失業者に対する——失業者が出ようという、もう順次月ごとに出てくるこの失業者に対して、どういう工合にしてそれじゃどこへ吸収していく、どこに職業を与えていくかという明確な御返答がいただけなかったように感じるのです。いろいろの施策はお持ちのようですけれども、具体的にそいつを一つ私はお聞きしておきたい。  それからもう一つは、あの特需労働者関係ですけれども、三十一年の二月三日の閣議了解という形で、この特需の発注、その他労働関係に非常に影響があるので、これは調整をしてやろうということが閣議了解をされて、昨年も昭和飛行機の問題で、同じような品物を、片一方では規制して、隣りの方にやって、片一方では失業が起きる、片一方では雇用を求める、しかし、地域的にはそこに移動ができない、そしてまた、そこでも積極的に余った人を雇うということはしないという状態であって、非常に問題があって、日米の協議会ということでその問題を取り上げておって、取り上げて積極的に処理をすべきだと私は委員会で要求をしたと思う。今度あの相模に、千四百人くらいの発注停止で首切りという問題が、もう短時日の間に起っているし、そういうものは閣議の決定によって調整をして、労働関係もあることだから、発注の問題はコントロールをやる、こういうことになっていたと思うのだが、最近、日米何とか委員会ということで、いろいろの問題が討議されているそうだが、これは大臣でないと、これは技術的な問題ですから、調達庁関係になると思うが、もう閣議決定ですから、大臣のおられる間にどういう工合にこういう問題を処理されていくかということをお聞きしておきたい。
  41. 石田博英

    国務大臣石田博英君) 今藤田さんの御指摘のような具体的な、積極的な了解であるとは記憶しておりません。しかし、そういうことが、たとえば急速に出てきたり何かすると困るものですから、そういう点についてはあらかじめ連絡をしてもらいたいという話し合いであったと記憶いたしております。しかし、御指摘のような具体的な事例の調整というようなことは、あとう限りやっていただきたいものだと思っております。ただ、そういうことは私の所管ではございませんが、やっていただきたいものだと思っております。
  42. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 もう一つ、一番先の失業者を吸収する計画の問題はどういうことになりますか。
  43. 石田博英

    国務大臣石田博英君) それはさっきから申し上げております通り、やはり……。
  44. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 何月にどういう計画をして吸収して……。
  45. 石田博英

    国務大臣石田博英君) だからそれはさっきからくどく申し上げております通り、それぞれの引き揚げに伴いまして、同時に施設もあき、基地その他の国有財産も返還をされるわけでありまするし、労務失業者として出てくるわけでありますから、そういう条件利用して新しい産業誘致し、それによって吸収されていくということが私は本筋であると、それまでのつなぎとしての公共事業失業対策事業、あるいは特別失業対策事業、あるいは小さな個々のケースとしては、企業組合その他の問題、あるいはまた既存の産業に対するごあっせんとしては職業補導、あるいはそれをさらに広域的に行いたいというようなことがございますが、やはり基本的には冒頭に申し上げましたようなことが一番必要だと思っております。それについての具体的な見通しというものは、やはり具体的な計画とともにあるものであって、先に腰だめで何月までどうこうという問題であろうとは思っておりません。従って、できるだけすみやかに解決のつくように地方とも協力をいたしまして、私どもの方でも率先指導啓発をいたしまして問題の解決に当って参りたい、こう思っておるのであります。
  46. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そうすると、積極的にその問題をとり上げてやるのだから、最近のうちには見通しその他いろいろと相談したり、計画したりして、われわれにお答えをいただくということになるわけですね。
  47. 石田博英

    国務大臣石田博英君) 前の呉の場合の経験によりますると、具体的な調査が整い、具体的な話が進められるのは、問題発生いたしましてやはり半年以上経過したときからだんだん具体的になってきておりました。まあ呉と違って今度の場合は、ああ広汎な数が一カ所にあるわけでありませんから、事情は違って参ると思いますけれども、具体的な計画の提出を急がせまして、でき得る限りすみやかにその見通しを立てて処理したいと思っておるわけであります。
  48. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 速記を落して。    〔速記中止
  49. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 速記を起して下さい。
  50. 山本經勝

    山本經勝君 調達庁長官はお見えになっておりますか。
  51. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) はい、見えております。
  52. 山本經勝

    山本經勝君 調達庁長官に、先ほど申し上げた、今の関連があると思うのですが、駐留軍労務者の六万六千、それに空軍関係も大体三千数百解雇になり、それから今の特需関係千六百、それから相模工場、それからさらに長官の足下である調達庁職員が今三千二、三百おられるようですが、それが大体半数くらい解雇せられるだろうといわれている。そうしますと、調達庁としては、もうこれは屋台骨をゆすぶる大問題になっていると思うんですが、この調達庁のその点に対する考え方、並びに今申し上げた点の大体の状況を御説明いただきたいと思うんです。
  53. 上村健太郎

    説明員上村健太郎君) 駐留軍労務者の減少につきましては、大体私ども今のところ、今後一カ年におきまして、ネットで定員として減りますのが二万ないし二万五千くらいありはしないか。ただし、駐留軍関係は基地の移動その他によりまして、一面において解雇をいたしますると同時に、一面において新規採用をいたしますので、従いまして、実際のところ、軍の命令によって解雇いたします数字は三万五千以上になると思います。その他期間満了あるいは直接雇用労務者がおりますので、その他を合計いたしますると、今後一カ年に四万ないし四万五千くらいの程度の強制退職が行われるのじゃないかと思っております。調達庁の自体の問題につきましては、この労務者の個々の削減ということのほかに、不動産関係につきましても業務量が減りますので、総体といたしまして調達庁の業務量が最低一割五分ないし二割程度までは減るんではないか、まだ予算の人件費その他についての積算はいたしておりませんけれども、あるいは来年度において定員がますます減少するということはやむを得ないのではないかということも聞いておりますが、ただ、不幸にして定員が減少いたしましても、来年度は、法案が成立いたしますと、防衛庁との合体ということもございますし、私ども職員につきましては、自衛隊に吸収、転換あるいは他の増員が行われまする省への配置転換というようなことによりまして、職員につきましては、いわゆる職を失って生活に困るとか、あるいは全然行き道がないというような職員のないように努力をいたしたいと存じております。
  54. 山本經勝

    山本經勝君 ちょっと内閣の総務長官はお見えになっておりますか。
  55. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 総務長官の代りに副長官が見えております。
  56. 山本經勝

    山本經勝君 この最近、二、三日の最近ですがごく最近に、今の駐留軍労務者あるいは特需関係失業者等の問題を総合的に、特需等連絡協議会ですか、開かれて、そこで検討になったように承わっておりますが、その状況、諸般の情勢判断、そうしてまた、今後の対策等について、簡単でいいですが、御説明をいただきたい。
  57. 藤原節夫

    説明員藤原節夫君) 二、三日ではございません、ちょっと前でございますが、連絡会議を開きまして、各項目につきまして関係各官庁の意見調整を行いました。なお、その席で直ちに調整のつかない問題、それが多いのでございますが、それにつきましては、引き続きまして、私どもの方と各官庁間、また、各官庁相互間におきまして意見調整を現に行いつつあります。近く大体の調整を終えまして、また、会議を開き、先ほど労働大臣から申し上げましたように、おそくとも今月中くらいには結論を出したい、閣議の決定等の手続をいたしたいと思っております。
  58. 山本經勝

    山本經勝君 続いてお伺いしたいんですが、特に特需等連絡協議会という名称がついております。特需だけではなくて、駐留軍労務者の問題も取り扱う。ですから、今起っている状態について、その連絡協議会がしばしば開かれているように承わっているのですが、最近の結論が出ておらないということは対策だろうと思う。そこで副長官の方においておわかりの範囲において御説明をいただきたいのは、当面の対策についての問題点というのはどういうところにあるのですか。
  59. 藤原節夫

    説明員藤原節夫君) 連絡会議におきまして今協議をいたしております問題点といたしましては、まず職業補導を大幅に拡充するという問題が一点、それから職業紹介を広域にわたって行う、また、これに関連しまして、労務者の住宅難ということは非常に就職の隘路になっておりますので、住宅の問題もあわせて研究する、それから離職者が企業組合等によりまして事業を行う場合の事業の育成について、国有財産の払い下げ等の問題も関連いたしまして研究をしております。それからこれに対します資金あっせん融通という問題であります。その次は返還施設を各種産業に転用して産業育成をしていくという問題、次には自衛隊その他各官庁等に離職者を吸収できないかということで、そういう意味の就業の促進ということ、それからもう一つは公共事業あるいは特別失対事業等を重点的に行う、最後に、地方財政につきまして特別の考慮を地方対策本部等につきまして補助をするとか何とかという問題につきまして行う、大体以上のようなことでございます。
  60. 山本經勝

    山本經勝君 それは一応問題点ではありましょう。しかし、いわゆる関係閣僚政府部内で論議になっている点というのをこれを一応羅列された、これはしかし今お話通り、職業補導それから就職あっせん、住宅問題、資金あっせん、これはまあ離職した個人が計画するものを主体にして考えられた対策なんです。今労働大臣のおっしゃったのはそうじゃない、根本問題です。いわゆる不要になった施設国有財産その他これの利用方法等地方から要請があれば具体的に応援をいたします、何らかの協力をいたしますと、こういうようなお話であった。そうしますと、今のお話は、これは非常に末梢的なものです。だから根本問題が解決つかなければ、これはやはり問題になっていかないと思う。そういう点はどうなんでしょうか。その中で今国有財産の払い下げ問題があるが、これについてはどういう御見解なんですか。そこら辺が非常に問題だろうと思う。あるいは資金あっせんにしても、従来口では言われておるけれども、何ら具体的方法が講じられておらない、事実上。たとえば先ほど藤田委員の御質問にもありましたように、具体的に出していくと、いやあれはこうだ、これはこうだということでやかましい、しかも、同業者間の競争があるためにそれが押えられる、こういうような諸般の情勢の中でうまくいかないのですよ。うまくいかないところに問題があるわけです。そういうところの具体的な内容がなければ、このいわゆる集まって協議をなさっても何らの成果を上げないと思う。私ども三十年来この方、しばしばこの問題を取り上げておるのですが、特需等の特別連絡協議会ですか、こういった会議があることも聞いている、会議が持たれて何らの成果を上げておらぬということが率直に申し上げて今日の姿ではないか。今申し上げたような点で、もう少し突っ込んだ話を伺わなければ、ただ集まって協議をしているというだけなら、いわゆる気休めにすぎない、極端に言えばそういう形じゃないかと思うのですが、そこらの状況はどうなんですか。もう少し焦点がしぼられておると私は判断する、また、しぼられなければならぬ。で、先の石田労働大臣の話をかりても、非常に重要な御発言であった。しかも、今後閣内でそういう方向で進むんだ、あるいは必要であれば通牒を出してもやるんだ、こういうことですから、事ほど関係閣僚として大臣責任のある発言をなさっておる。ですから、連絡協議会にいたしましてもその意見は当然反映しておると判断しなければならぬ、そのことが私は問題点だと思うんですが、そこら辺の御見解なり実情はどうなんでしょうか。
  61. 藤原節夫

    説明員藤原節夫君) ただいま申し上げましたのは、確かに問題の羅列でございますが、一応今回の大量離職者が出るにつきまして考えなければならぬ点を全部拾い上げましてこれを協議しておるわけであります。おっしゃいますように、また、労働大臣が先ほど申し上げましたように、その中には無論重点になるべき問題がございます。私が申し上げましたうちに返還施設産業転用ということを申し上げましたが、これらが先ほど労働大臣も申しましたような重点に無論なると思います。こういう点につきましては、抽象的な方針も、無論各官庁間の意見調整を行いますが、具体的には労働大臣の申しましたように、各地方の実際に起りましたケースに従いまして解決していくという方法になるわけであります。一、二具体的なことを申し上げますならば、仙台における苦竹地区、非常に広範な地域にわたって返還が行われる、これをどういうふうに使うかという問題につきましては、これは自衛隊において引き継ぐ面と、民間に払い下げまして産業用地に利用する面とあるわけであります。その辺の話を進めておるのであります。ある程度進展をしております。それから先ほど御指摘になりました小倉の場合にも同様の問題がありまして、それらについては具体的に話を進め、進んだ問題につきましては個々のケースについてあっせんをし、解決をはかっていくという方式をとっております。
  62. 山本經勝

    山本經勝君 今の特需等連絡協議会は、前回のこの委員会で問題になりました。調達庁長官も来ていただき、労働大臣等もおいでになって私から質問申し上げたんですが、きょうも冒頭申し上げたように、いやしくも公務員に準ずるという意味で、日米行政協定に基き国の責任において雇用するんだ、そうして外国人に労務を提供する、こういう特殊のケースの中にある労働者であって、しかもある期限がくるとやめなければならない、あるときにはどうしてもやめなければならぬ関係に置かれておる。ですから、この場合に特別支給金は何とかして国の責任において見てもらわなければ困るというのを私申し上げた。また、組合からもそういう要望が出ておることは御承知の通り、こういう問題については、この連絡協議会ではお話にならなかったのか、お話になったとしたら、どういう意向であったか、そのことをここで明らかにしておいてもらいたい。
  63. 藤原節夫

    説明員藤原節夫君) この駐留軍労務者がそういう特殊の性格を持っておる、また、今回の離職につきましても、特別な考慮を払わなければならぬという点は全くその通りであります。従って、それによってこういう特別の対策協議しようというわけでありますが、ただいまの特別退職金と申しますか、一人当り五万円ずつ国庫から補償してもらいたいというようなお申し出が、これは組合の方からでございました。これにつきましても、この会議においても一応意見は交換をいたしました。ただ、この点につきましては、従来の先例とかあるいはこの特別退職金と申しますか、その金の性質等につきまして、まだ十分研究が尽されていない、目下考慮をしておる、研究をしておるという段階でありまして、結論に至っておりません。
  64. 山本經勝

    山本經勝君 それは全くおかしいのであって、すでに調達庁長官も、前回委員会で私から強く御要望申し上げたところが、最終的にはそれは努力をいたしましょうというお話であった。労働大臣もまた同様の見解であった。ところが、それが問題になっております連絡協議会ではうやむやな形である。きわめて不徹底な形で、話は出たが調整中である。調整中ということはどういうことを意味するのですか。捻出する方法について考えているのか。原資について大体三十億程度要るということですが、その資金の問題でお考えになっているのか。出さぬということをお考えになっているのか、そこら辺はどうなんですか。
  65. 上村健太郎

    ○説明君(上村健太郎君) 出せるものであるか、出せないものであるかということを研究しておるわけであります。これは離職対策全般と関連いたしまして、いろいろ生業資金等の融通などについても研究し、検討しているわけでありますから、これとも関連いたすことでもあり、先ほど申し上げましたように、そういう資金の性質、性格というようなものについても直ちにこれは無条件で出せるものであるかどうか。また、出すとしましても、おっしゃいますような財源の関係もありますし、全般的な意味で研究しておるわけであります。
  66. 山本經勝

    山本經勝君 全般的な意味で研究なさるということは、一応の説明ではあるでしょう。しかしながら、出す気なのか出さぬ気なのか。今のお話だと、出せるものか出せないものか……、出せなければこの要求は認められないということになってくるのですが、先ほども申し上げた趣旨については御理解がいくという御答弁なんです。そうしますと、趣旨について御理解が願えるなれば努力をしてもらわなければ困ると思う。それを出すように努力するのかどうかというのがかかって問題になる。やはりほかの幾多の方法がここであげられている。しかし、何といっても、現実には首を切られてあすから職場がなくなる。それできまった収入を手に入れることができない、生活が出来ないのです。そうすると、その他の幾多の方法をある程度期間が必要になる。かりに関係府県が具体的な就業雇用計画を立て、企業誘致をするにしても、あす、あさっては簡単にいかないのです。ですから、さしあたって離職したものは非常な苦境に追い詰められるから、それをカバーして食いつなぎをさせるためにこの要求が出ているのです。そういう意味で私もこの間申し上げた。だから、その間の食いつなぎをする応急的な措置が何らか具体的な方法研究されなければ一つも意味がない、こう極言してもはばからぬと思う。ですから、そこら辺で、今の出すべくどうしたら出せるかということが調整の焦点になっているのかどうか、あるいは出さぬという前提なのか。そこら辺は非常にはっきりしておいてもらわぬというと、今後の話を進める上にもいろいろ考え方が変ってくると思う。調達庁の方も当面の責任者がおいでになるのですから伺いたいのですが、あとで調達庁長官の方から御答弁をいただきたい。何らかの方法を講じて出すように努力をしようというのか。そうではなくて、出せないから出さぬのだということなのか。努力をすれば私は幾多方法があると思う。駐留軍関係労務者意見基礎にしていろいろ考えてみますというと、先ほども申し上げた防衛分担金にしても当然縮小されるのではないか。そうしますと、そこからもすでに三十三年度の二百九十億が予定されておる。そうすると、そこからすでに余剰が私は生まれてこなければならぬ。そういうような努力がなされるのか、なされぬのかということにかかってその原資が出るかどうかということになってくると思う。私は立法する必要があれば協力してその立法もしなければならぬ。現に組合が労務者を首切りっぱなしじゃおさまらぬから、私はそう考えているのですが、その点どうですか。
  67. 藤原節夫

    説明員藤原節夫君) 駐留軍労務者というものの特別の性質並びに今回の大量離職を出すという事情につきましては、これは特別の考慮を要することはもちろんでありますが、だからすぐに五万円ずつの特別の手当を出すのは当然ではないかというわけにも参らぬのじゃないかと思うのであります。また、すぐあすの日から生活に困るということでは、これはまことに大へんなことでありますが、一応規定による退職手当というものも当然出ることでありまするし、その間に何か更生していける、食うに困らないような方法を立てたいというのがわれわれの考えておるところでありまして、直ちに今出すということを前提に努力をしておるとか、どういう方法考えておるとかということは、ちょっと申し上げかねる段階にあります。
  68. 山本經勝

    山本經勝君 今の点ちょっと調達庁長官にもはっきりお伺いしておきたいのですが……。
  69. 上村健太郎

    説明員上村健太郎君) ただいまの特別退職金と申しますか、政府側からもある程度の金額を出さないかという要求は強く労働組合方面からも出ております。私どもとしましては、管理者の立場といたしまして、今回の離職者の方々に対しては特別に手厚い対策考えられなければならないということは念願いたしております。しかしながら、まだ内閣各省の会合におきまして、いろいろな対策考えられておりまするが、その対策の見通しがついておりませんので、この対策との関連において総合的に考えまして考慮さるべき問題だろうと思うのであります。従いまして、今すぐに出した方がいいという方針であるとか、あるいは出さないのだというような、いずれの方針であるというようなことをお答え申し上げる段階に至っておらないと思います。
  70. 山本經勝

    山本經勝君 どうも調達庁長官、この間前回の、先月の十日ですかの委員会でも大体同様のお話があった。すでに一カ月たっている。しかも、その間には特別連絡協議会等も開かれて検討になっているというのですが、なお、今日さっぱり見当もつかぬ、こういう実情では、これは実は困ると思うのです。先ほどから申し上げるように、長官のおひざ元が屋台骨をゆすぶる重大事態になっている。そういう状況ですから、私は調達庁としてはもう少し責任のある検討をなされなければならぬ、あるいは当然特別連絡協議会に出られるでしょうから、そこで十分連絡協議会の関係閣僚や委員の方々に説得これ努めなければならぬという、私は責任であると思うのですが、今の話だと、てんでこの前の話と一向に進展をしていない。そういうことじゃ、その他の対策にしてもこれ全くうやむやであってたよりないことだと思うのですが、そういう点でもう一度責任のあるお話をはっきり伺っておきたいと思う。
  71. 上村健太郎

    説明員上村健太郎君) 先ほども申し上げました通りに、離職者の対策につきましては、ただ単に金の問題だけ取り上げて結論を出すわけに参らないのでありまして、他の総合対策がある程度成功いたしますれば、五万円の点については差し控えなければならぬという点もあると思います。いろいろな事情もあると思いまするが、従いまして、全般的の離職対策が今月の末ごろまでの間に閣議に上ると思いまするので、その結論が出ましたときに要求すべきやいなやということを決定いたしたいと思います。今のところ、先ほど申し上げました通り、はっきり結論を申し上げる段階に至っておらないと思っております。
  72. 山本經勝

    山本經勝君 どうもおかしいんですね。閣議に上るのはいつごろか私存じませんけれども、閣議できまってしもうたらもうそれはあとの祭だと思う。要求が出ているということは、直接責任者であるあなたは、少くとも連絡協議会にはむろんのこと、あるいはまた、閣議等において、こういう実情であるからこれを何とかしてやらなければならぬ、こういうことで強い肩入れをなさるのか、そうでなくて、見送りのような格好で閣議の成り行きにまかせる、あるいはその後に要求をお出しになったらおそいと思う。しかも、金の問題ですから、それに必要な原資も考えにゃいかぬでしょう。そこで、私は先ほども防衛分担金の問題を一例にあげたんですけれども、そうした何らかの具体的な努力が払われておらぬという実情は、そのまま確認してよろしいですか。
  73. 上村健太郎

    説明員上村健太郎君) 閣議で決定になりました後という意味ではございませんので、特需対策連絡会議におきまして大体の総合対策各省との間に行われてその結論が出ましたときに、それを見まして総合的に考えて考慮すべき問題であろうと思っております。内閣の方におきましても、各省非常に好意的でございますので、個々の問題は非常にうまくきまると思っておりますけれども、まだ最後的に総合対策結論が出ておりませんので、現在の段階におきましては結論を申し上げる時期にきておらないものと御了承願いたいと思います。
  74. 山本經勝

    山本經勝君 新聞記事等によっても私ども承わっているんですが、自民党の与党の方にも、駐留軍労務者特需等の対策の特別委員会ができて、小瀧さんが委員長でやっておられるということを聞いている。そうすると、政府与党でもそういう具体的な対策が審議されて進行していると思う。しかも、そこで、その政府当局で、今のようなもっぱらそれに乗っかかっているというような形では、私はおかしいと思うんですよ。調達庁長官として調達関係の業務の最高の責任者で、しかも、自分の配下にそういう事態が発生している。あるいは特需関係の相模工業の場合も同様で、そういう問題について、会議が具体的な取りきめをするような重要な機会に、あなたの所信がなくってどうします。あるいは閣議にしても同様だと思う。最終的には閣議決定でしょうが、それが行政的には最高の権威を持つ。従って、その閣議というものはきわめて重要である。その前に、連絡協議会においては重要な役割を持っていると思う。しかも、その中で、当面の責任者である調達庁長官ですから、私は、あなたの今のようなお話では、しょせん皆さんが納得するようなことにはならぬと思う。一体どうしていただくんですか、七万人の首切り問題は。
  75. 上村健太郎

    説明員上村健太郎君) 先ほど申し上げました通りでございまして、それ以上お答え申し上げる時期に至っていないものと御了承願いたいと思います。
  76. 山本經勝

    山本經勝君 それはいつごろそうしたら長官の決意とかあるいは所信とかがはっきりするわけですか。
  77. 上村健太郎

    説明員上村健太郎君) 月末までに、閣議に持ち上ります原案が特需対策連絡会議等におきましてある程度目鼻がつきまして、各省のやってくれる対策がこの程度できる、生業資金についてはこの程度できる、あるいは、その他の国有財産の問題につきましてもこの程度は対策が持てるんだということがきまりましたときに、私ども意見をきめまして、要求すべきものならば要求いたします。それで、ある程度離職対策が相当いけるということならば、他の権衡その他政府全体の立場もございまするので、その離職対策でいこうということになるかと思います。
  78. 山本經勝

    山本經勝君 これはどうも長官、さっぱりあなたの責任という分野ははっきりせぬですね。もっぱら、連絡協議会に出る各関係委員と言いますか、閣僚、こういった人々が、自分の方に余りがあったものならばここに持っていってやろうかということになったならばできるかもしらぬが、そうでなかったらできない。ましてや、その前にこの要求は当然だと認めておいでになりながら、しかも、それに対する実現方の努力はあなたなさっていない。あなたの所の所管の下部の大衆なんですよ。そうした人々に対する親心も何もないんですか。
  79. 上村健太郎

    説明員上村健太郎君) 親心がないとおっしゃられると、私はそういうことはございませんし、全力をあげて今度の失業対策問題につきましては努力をいたしております。しかし、問題は、どうしたらいいかということでございまして、五万円出すのがいいのか、あるいは生業資金その他ある程度総合対策で目鼻がつきまして、そうして離職者の方々が職を得られ、ある程度のことは失業手当でつないでいただきまして、また、米軍との間の退職金のこともございまするし、そういうことによりまして離職対策が成功いたしますれば、五万円を出すかどうかということにつきましては、やはり政府全体の他の関係もございまするし、あらためてその場合において考えなきゃならないと思うのでございまして、今それがきまりませんうちに、要求するあるいはしないという方針は、きめておりません。
  80. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 今の山本君の質問の真意がわかって御返事だと思うのですけれども、当面の責任者としての調達庁長官は、この失業対策に対してそれではどういうお考えで臨んでおられるか、あなた自体のお考えが十項目から出ている要求書に対してどういうお考えであるか。お聞きしておれば、非常に他力本願で、閣議あるいはその他の連絡機関等できまったならば私の方で考えようということを言っておられるのを山本君は非常に強くついておるようでございますので、長官自身の解決方針は何を持っておられるか、こういうことを言っていただけばわかるかと思うのです。
  81. 上村健太郎

    説明員上村健太郎君) 委員長お話しの通り、総合対策につきましては、私ども労務管理者の責任を持っておりまするので、できる限りのことを努力いたしております。ただ、前回にも申し上げましたが、私どもの方でできることとできないこともございまして、たとえば、生業資金の問題あるいはその他の対策の問題は、各省に参りましてそうして管理者の立場からお願いをしておるわけでございます。またそれを総合的に取り上げていただいておりますのは特別対策協議会でございまして、一応協議会に持ち出しましてお願いをいたしまするが、個々別々に各省にも参りましてハイヤー、タクシーの問題その他の問題につきましても具体的の問題も取り上げましてお願いをいたしております。ただ、文書になりまするのは、やはり私どもの省だけでも決定できないことが多々ございますので、内閣で取り上げていただいておるわけでございまして、私どもはあくまで労務管理の立場から離職される非常にお気の毒な方々に対しましてはなるべく手厚い対策というものを考えていかなければならないということに全力を注いでおるわけございます。
  82. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) そういたしますと、先ほど問題になっておる五万円の問題も、その立場から連絡会議その他には主張しておられる。こういうことになりますか。
  83. 上村健太郎

    説明員上村健太郎君) この問題につきましては、やはり先ほど申し上げました通りに、委員会お話はしております。強い労働組合からの要求があるということを申し上げております。しかし、やはり、先ほども申し上げましたことを繰り返しまして恐縮でございますが、他に生業を得られ、かつ、就職の機会が獲得せられ、ある程度総合的に見まして対策が金を出すということ以外において成功いたしますれば、五万円の問題に対する考え方もやや変ってくるのではないかと思っております。私といたしましては、従いたして、今すぐに五万円を要求してあくまでも大蔵省に向ってこれを出せということだけを切り離して考えることができないということでございます。
  84. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 私からもう一へん質問いたしますが、そういたしますと、環境が変ろうと、条件が変ろうと、仕事さえあったならばそういうものは必要じゃないんだ、あなたの部下で失業される方は、たとえ職があったにしても、非常に環境も変ってくるし、また、それに対するいろいろな準備も心がまえもあるから、五万円というものはその上にプラスして要求されておると思うのです。今長官お話では、仕事があったならばそういう問題の考え方は変るというようになってくれば、それは仕事がない場合には五万円の金も差し上げねばならない、仕事があった場合は五万円の金はやらないんだ、こういうような表現に変ってくるものと思うのですが、そういうお考え方ですか。
  85. 上村健太郎

    説明員上村健太郎君) これは先ほど総務副長官からもお答えがありましたが、私どもだけの立場から申しますれば、なるべく手厚い方策をとっていただきたいということはもちろのことです。ただ元来、退職金は御承知の通り、米軍との基本労務契約によりまして出ておりまして、その額の平均と申しますか、勤続年数に応じた支給額というものは、一般公務員と大体同じであります。一般公務員の方は、そのほかに一時恩給という制度がございますが、今回の離職者の方には失業保険がございます。そういう点を考慮いたしまして権衡をとってみますると、やはり政府雇用の公務員と比較いたしまして悪いということは申せないと思うのです。ただ、これが米軍からもらっておる労務基本契約の退職金規程による退職金でございますから、今回の場合は国策による離職である、従って、失業保険や退職金等では足りないのだということになりますれば、考え方も別になってくると思いますが、離職対策がある程度取り上げられまして、そうして各方面からいろいろな手当が行われますれば、五万円の問題は他の国策による離職者等に対する均衡の問題、その他にも私はからんでくると思うのでございます。従いまして、現在のところ、総合対策がどの程度実現できるかということに私はかかっておるのではないか。従いまして、今のところ、今の段階では要求するともしないとも、いずれということは決定的にお答え申し上げることはできないような段階にあると思います。
  86. 山本經勝

    山本經勝君 今の問題、一応あずけておきますが、それで私は今の三十億円、総額にして三十億円と目される五万円の特別支給金の要求については、また、機会をあらためて質問することにして、私はそれよりもむしろ困難ではないかと判断しておる、先ほど労働大臣お話しになった、つまり返還される施設は一応国有財産になるのでしょう。そうしてその国有財産利用して企業誘致する、これは話が非常にいい、そうしてそこへ集団雇用をする、そうすると、なるほど長官の言われるように、退職金をふやさなくても引き続き同様な条件、少くとも賃金、給与等において現行の給与が保たれるような条件で集団雇用ができるということは、一番やはり望ましいと思う。そこで、その中の一番問題になってくるのは、たとえば個々の離職者が、自分の力で組織を作って事業主体にする。つまり企業組合を作る。こういうようなことは離職者の希望や意見によって起ることですが、私の言っているのは、国の責任においてやるという事業の分野を申し上げておる。ですから、ここで国有財産の払い下げ、あるいは無償貸付、あるいは免税等のしかるべき措置を講じて、しかも改造を必要とする、あるいは大幅に変えなければならない、土地利用できるが建物はじゃまものである、こういうようなものも幾多ある。先ほど申し上げましたように、雁ノ巣の飛行場の場合は、返還されるという話が昨年の四月に一応出たのですが、その当時それはだれも引き受け手がない。県も市もこういうものを処理せよといわれても、コンクリートで固めた滑走路をのけて耕地にするのも容易じゃないといわれたので困った。あるいは小倉の工場にしましても、膨大な工場ですが、上に建物があるために土地が直ちに使いものにならない。あるいは工場の若干の施設は廃墟であって、ものの用には立たない。まして現代化された工業の基盤にはならない。ですから、そういう状態国有財産処理される場合に国のやはり投融資等の問題が起るでしょうし、いろいろな困難な——民間企業誘致するにしましても、すぐに生産ができるような施設であれば資本家は金を出すでしょう、投資もするでしょう、企業になるだろうが、そうでない場合は、なかなかできないと思う。この問題の方が私はむしろ大きいと思う。このいわゆる基本問題については、調達庁長官先ほどのお話のように、責任を持って全体的な総合政策を進めるものであるとおっしゃるのですが、どうお考えになっておるのですか。
  87. 上村健太郎

    説明員上村健太郎君) 仰せの通り、やはり集団的に雇用してもらうためには、呉におきますように国有財産を直接民間の会社に払い下げなりあるいは使用なりさせてもらって、そうしてそこに吸収してもらうというのが一番能率的であり、効果があると私は思っております。この点につきましてもただ会社その他につきましては私どもわかりませんし、それから通産省あるいはその他との関連もございますし、やはり先ほど労働大臣お話しのように、私どもの方は一応窓口になりまして、そうして各府県にお願いをいたしまして、こういう計画がある、たとえば新潟の問題がございますが、知事さんからお話がございますれば、私どもは知事さんのお話に従いまして通産省に参りあるいは大蔵省に参り、資金関係についてお願いに歩くということをやっておるわけでございます。
  88. 山本經勝

    山本經勝君 大蔵省の管財局長にお伺いしておきたいのですが、この駐留軍の軍用に提供しておる土地並びに施設が一応国に返還されるということになる、あるいは不用になってくるというと国に返るわけですね。そうすると、それをたとえば今お聞きのような状況のもとで駐留軍関係労務者を就職させるための職場に改装したりあるいは無償で払い下げて民間にやらせるといういろいろな方法があるようですが、これまでやられた実績等についておわかりの点を御説明願うと同時に、今後どういうお考えであるか、これは無償で払い下げ願えるのかどうか、そこら辺をはっきりお聞かせ願っておかないと、事はすでに目前に迫っておる。先ほど労働大臣でしたか、とにかく三万何がしくらいだと言われたのですが、私ども調査では、調達庁の方の御見解でも下部の担当部課では大体今年中に四万といわれておる。その大量が離職するのですから、何らかの具体的な措置を講じなければならない。お聞きの通り、特需等連絡協議会には大蔵省もお出になっておる。そこでいろいろ御論議になっておるのでしょうが、大蔵省当局としてはどうお考えになっておるか、また、どういう方法があるのか、それをお聞かせ願いたい。それと同時に、冒頭に申し上げました今まで利用された部分もあるやに伺っておりますから、その実情等を簡単に御説明願っておきたい。
  89. 北島武雄

    説明員(北島武雄君) 従来駐留軍に提供しておりました国有財産が、駐留軍撤退等によりまして大蔵省に返還されました場合におきましては、私どもといたしましてはまずそれが国としてどうしても必要である部分があるのじゃないかということをまず第一に調査いたします。と申しますのは、従来旧軍用財産を国において必要なしとみなされました後におきまして、国において新たにこれを取得する必要が起りまして、そのために非常に冗費と浪費をかけて、場合によっては非常にトラブルを起した例がございましたので、まず返還されましたものにつきまして自衛隊その他国がぜひとも必要なものはないかということをまず調査いたします。これは必要ないものにつきましてはできるだけ産業の育成等にこれを利用する方法を今までとって参りました。産業育成に利用いたしますということは、端的に申しますれば、大きな工場にきてもらう、そうして地元の労務ことに離職した方々の労務を吸収してもらう、これが一番の点でございます。こういう方法を講じて参る。ただし、この国有財産処理につきましては、昨年から国有財産審議会というものを設けまして、各財務局の所管ごとに国有財産地方審議会というものがございまして、地元の意見を十分伺い、各委員の方の御意見によりまして、大蔵省としてはその取扱いをきめて参ったのございます。従来今までいたしました中で最も顕著なものは、たとえば国連軍撤退に伴う呉地区の国有財産利用でございます。この点は特需等対策連絡会議におきまして、ごあっせんによりまして、呉市と広島県が十分にお打ち合せをいたしまして、大体大きな会社等に不用の国有財産を売り払いまして、それによって地元の労務、ことに離職者の方々を吸収する、こういうようにいたした顕著な例がございます。  なお、今回の離職者の方々に対する国有財産の扱いといたしましては、先ほど総理府の総務副長官お話になつたようでございますが、たとえば調達庁におきましては、離職された方々が組織する事業団体に対しまして、随意契約によってこれを売り払いまたは貸し付けるような方法をできるだけ講じてもらいたい、こういう御希望がございます。これはまことにごもっともな御要求でございますが、現在随意契約を認められる範囲といたしましては、予算決算及び会計令と予算決算及び会計令臨時特例の二つの政令がございます。この政令の範囲内におきまして今まで随意契約をいたしておるのであります。今回の場合考えられますのは、一応予算決算及び会計令臨時特例におきまして、旧軍用財産または財産税、戦時補償特別税で物納になりました不動産につきましては、売払予定価格が五十万円以下のものはこれは無条件で随意契約ができるようになっております。こういう離職者の方々が組織される企業の団体でありますと、あるいは小さな設備が御必要かと思いますが、多くの場合この規定によりまかなわれるかと思いますが、そうでない場合におきましては、他に、産業保護奨励のためこれに必要な物件の直接売り払いをなす、これは随意契約ができることになっております。ただし、この場合においては大蔵大臣各省各庁の長が協議することになっておりますが、同じ大蔵省ですが、この予算決算及び会計令を扱っておるのは主計局でありまして、そのつど主計局に協議いたしております。大体の場合におきまして、産業保護奨励のためこれに必要な物件を売り払うということに該当するかと思われるのでありますが、この取扱いにつきましては、できるだけ御趣旨に沿うように主計局の方に私どもの方としては申し入れたい、こういうように考えておる次第でございます。
  90. 山本經勝

    山本經勝君 続いてもう一点伺っておきたいのですが、今のお話ですと、根本的には相当広範な地域駐留軍の用に提供されているのですね、あるいは施設が。そうすると、それを一括してやるような大規模なものではなくて、離職者が集まって作る企業主体と申しますか、企業組合、こういったようなものがやる場合の問題点は、すでにお聞き及びと思いますけれども、無償でやってくれ、払い下げてくれ、要するに、くれてやれと、こういう注文ですが、この五十万円以下は任意に切り売りもできるのだというお話もございましたが、買えるならこれほど問題になってこないと思うのです。買えない事情のもとで企業を営むものですから、そういう場合の措置ということになりますと、今のお話と若干違ってくると思うのです。そこら辺はどうなんですか。
  91. 北島武雄

    説明員(北島武雄君) 現在無償で譲渡、すなわち国有財産法においては譲与といっておりますが、これができる場合には、国有財産法と国有財産特別措置法におきまして列挙いたしておりまして、大体におきましては地方公共団体等を目当てにいたしております。従いまして、単に離職者の方々の組織する企業団体に対しまして無償で譲渡するということは現在の法律では認めていないわけでございます。御承知の通り国有財産は、結局国民の租税のたまものでございますので、現在の法におきましては、単純に単に離職した方々だからと言って無償で譲渡するという規定はないわけでございまして、この点につきましては、ちょっと遺憾ながら御趣旨に沿えないものである、こういうふうに考えております。
  92. 山本經勝

    山本經勝君 調達庁長官に伺っておきたいのですが、今のようにいろいろむずかしい条件があるのですよ、一応。そこで離職対策の中で非常に重要な問題だと思うし、中心になっていくと思う国有財産の有効利用、無償払下げという問題については、いろいろ羅列的な中ではお話になったのですが、お聞きのように、大蔵省当局としてのいろいろ法規上の問題もあり、また、労働大臣の先ほどのお話では、立法措置を必要としないということを明言されている。行政措置でやるのだというお話であったのですが、そこら辺の調達庁長官の方の御見解はどうですか。
  93. 上村健太郎

    説明員上村健太郎君) 国有財産の払い下げあるいは利用等につきましては、大蔵省当局に極力お願いをいたしております。ただいまお話のように、払い下げにつきましては、いろいろな条件がついておりまして、現在の予決令では金額の制限がございますので、それをこえますものについてはむずかしいと存じますが、それ以外のものにつきましては現在の法令でもできるわけであります。ただ先ほど御指摘になりました大会社を入れまして、そうして集団的に効率的に離職者の方々を収容する面につきましては、その会社が能力があるところでは大蔵省に受け入れられると思いますが、企業組合につきましては、その制限以内でしか今はできないと思うのであります。
  94. 山本經勝

    山本經勝君 そこなんですよ、問題は。たとえば企業組合国有財産の直接払い下げできないと管財局長は言っておられる。地方公共団体の場合には一応それができる、つまり無償利用等もできるのだ、ですから、そういう場合の措置はあなたどうお考えになっているか。
  95. 上村健太郎

    説明員上村健太郎君) 無償払い下げの点はなるほど法律改正しなければ無理だと思いますが、払い下げあるいは貸付等の場合には、一定の範囲内でございますれば、小さい企業組合でもやっていただけるものと思っております。
  96. 山本經勝

    山本經勝君 それでは、官房副長官にお伺いしたいのですが、一応、先ほども触れたのですが、何といってもこの際は、この離職対策の中でやはり問題は最終的に原資になってくる、資金になってくると思うのです。そこで一番考えやすいことは、日米行政協定に基く防衛分担金の削減をしていくということがこれは筋だと思う、一応。ところが、昨年度、申し上げたように、三百億の分担金を予算の中に計上されて、今実施されている。ところが、三十三年度は二百九十億が組まれているというのですが、これはもっと大幅に減少していいと思う。少くとも三分の一ぐらいに削ってもいいのじゃないかと判断するのですが、現在の駐留軍労務者の数の問題から逆比例して推算しますというと。そこで、それにはいわゆる条件がついてくる、つまりこの行政協定の趣旨なるものは、日本の防衛力の増強に伴って一般方式としては軽減されていくといわれておった。ところが、その一般的に申し上げる方式の中ではこれはなかなか困難が伴おうかと思うのですが、この点は少くとも連絡協議会等で外務省をして交渉をさせて、大幅に削ってそれでも引き当てなければならぬのじゃないかというふうに考える。しかも、ちょうど今三十三年度の予算が大蔵省で査定中であるという状況であるならば、きわめてこれは重要な問題だと思うのですが、にもかかわらず、政府は今の、去年の三百億を十億削って二百九十億を計上している、こういうようなことは駐留軍撤退に伴い、いわゆる労務者その他に引き当てられた分担金の削減というものについてはどういう努力をなさるお考えなのか、あるいはどういう成算があるか、その点をはっきりさせておいていただきたいと思います。
  97. 藤原節夫

    説明員藤原節夫君) 駐留軍労務者離職対策に要する経費につきましては、さしあたりは予備金支出であるとか、あるいはどうしても足りない場合には、予算措置を講じなければならぬと考えておりますが、ただ、それの引き当てに、ただいまおっしゃいます防衛分担金の削減ということが直ちにできるものであるかどうか、その点につきましては、ちょっと今回の離職対策協議する特需対策連絡協議会でどうこうというのはむずかしいのじゃないかと考えております。
  98. 山本經勝

    山本經勝君 これは政府全体の問題でしょう。なるほど言われるように、離職対策という局限された問題ではない。ところが、問題はやはり金になってくる。たとえば五万円の支給金の要求にしても、金があれば出せると思います。皆さん根本的には反対じゃない。ところが、原資がないというところに帰着していくと思います。しかも、予算査定の時期であるから、そういう意味では非常に重要だと私は思いますが、そうしますと、何らかの方法考えなくちゃいけない。その中でも防衛分担金というのは、駐留軍の用に供する労務の提供や、それからあるいは物資の輸送等、それから事務費等に引き当てられているということですから、そうしますと、大幅に削減されたら当然私は減るものだと、これは常識的にも判断できると思います。減らないのですが、調達庁長官でもいいのですが、お答えを願っておきたい。
  99. 上村健太郎

    説明員上村健太郎君) お話通り、私どもの方に関する限りは減少することは確実でございます。
  100. 山本經勝

    山本經勝君 やはり減少するのでしょう。つまり駐留軍労務、役務あるいは輸送、それから事務経費、こういったものに大体防衛分担金というものが引き当てられることになっている。ですから、それがどんどん減っていけば、これは私は全然要らなくなるときもあると思いますが、今のところ、そうはいかぬでしょう。ところが、大幅に減ることだけは事実なんです。六万六千人の給与にしてもまず減りますよ。そうすると、月間にして十何億私は減ると思います。そうしますと、二百九十億なんというものは要らぬ。百億か、百五十億か二百億もせいぜいあれば足りると思いますが、それはそのままにしておいてしかも二百九十億の予算を計上されている。これはあなた方に責めても仕方がないかもわからない。しかしながら、一応当面の責任者である調達庁長官にしてみれば、防衛分担金をどうこうという交渉は、なるほどこれは外務省の仕事かもわからない。しかし、あなたの所管される業務は駐留軍労務提供なんです。あるいは資材、物資、土地、その他の必要な物件の提供、それからあっせん、こういうことになっている。そうすると、それに要る費用が防衛分担金となって国が出している、国民の税金から出ているのだから、私は当然一応のお考えがあってしかるべきだと思います。それで、調達庁長官お話のようなあいまいなものでは私はないと思います。厳然としてあなたが責任を持っておられる、あるいは特需等の問題にしても、同様あとで御質問申し上げたいと思いますが、特需等の減少、軍当局では、こういうことを言っておられる、東南アジア諸国から新しいいわゆる特需がたくさん、大量に出るから、規模は縮小するどころか、むしろ拡張しなければならぬというやさきに、たまたま八月の中旬に大量の首切りを余儀なくして、三千二百名のうちで千六百名というまきに半分の人間まで人員整理が行われた、それは特需がないからという状態です。こういうような状態になってくることは、駐留軍の減少あるいは移駐あるいは規模の縮小、撤退等によって起る需用の減少なんです。ですから、それは調達庁としては当然注意深く見ておられただろうし、また、今日の対策考えておいでにならぬとえらいことになる、こういうことなんですよ。ですから、もう少し責任のある話をしていただかぬと困るわけです。これは公式な委員会なんですから、どうなんでしょう。
  101. 上村健太郎

    説明員上村健太郎君) 重ねてお尋ねでございますが、現在のところ、先ほど申し上げました以上にはっきりしたことを申し上げるわけにいきません、御了承願いたいと思います。
  102. 山本經勝

    山本經勝君 今のお話ですと、今のたとえば駐留軍労務者の問題にしても、きわめて、当面の責任者でありながら、消極的なような印象を強く受けて困るのですが、しかしながら、その中で話がありましたように、たとえば、こういうこともあるのではないかという私は意見を含めて申し上げておる。ところが、そういうことについては今何も申し上げられない、こういうような消極的な態度では、これは今後の問題が一向に展開を示さないと私は心配する。そこで、本日は今松総務長官に来てもらうように要求したのですが、副長官しかお見えになっていない。そこで藤原長官の方にあえて御答弁願っておきたいのですが、今申し上げたようなことは内閣責任において処理していかなければならぬ重大な事態だろうと思うのです。明らかに駐留軍労務者だけで六万六千、特需関係を含めるというと七万に達する大量の人員整理が行われるということは、駐留軍撤退並びに規模の縮小あるいは移駐等によって生ずる事態なんです。そういたしますと、その中でも撤退に伴う問題は大きいのですから、そうしますと、防衛分担金は当然減らなければならぬ、一般的に考えて。そうしますと、その交渉がなされなければならぬのじゃないですか。そういう問題は連絡協議会ではてんで問題にしていない、こういうふうに理解してよろしいのかどうか、あるいは調達庁長官としては外務省と相談して、そういう交渉をする御用意があるのかどうか、あるいはそういう必要なしとお考えになっているのか、そこら辺明確にお願いしておきたい。
  103. 藤原節夫

    説明員藤原節夫君) 確かに、おっしゃいますように、内閣責任において処理すべき問題であり、また、防衛分担金の削減の問題も、これは内閣として当然考慮すべき問題だと思いますが、特需等対策協議会の直ちに議題にすべきものであるかどうか、これはいま少し研究を要すると考えておる次第であります。
  104. 上村健太郎

    説明員上村健太郎君) 防衛分担金との関係は私存じておりませんので、お答え申し上げかねまするが、いずれにいたしましても、この対策につきまして費用が要るということになりますれば、大蔵省に交渉いたしまして、予備金支出、あるいはそれでも足りなければ予算要求ということになることは藤原長官から申し上げた通りであります。
  105. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) ちょっと速記をとめて下さい。    〔速記中止
  106. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 速記を始めて下さい。  本問題に対する本日の調査はこの程度にいたしまして、次に移りたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  107. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 御異議ないと認めます。  時間が一時になりましたので、休憩をいたしまして、午後は一時四十分から再開いたしたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  108. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) それではさよう決定いたします。  休憩いたします。    午後零時五十九分休憩    —————・—————    午後二時九分開会
  109. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 再開いたします。  委員異動報告いたします。九月十一日付をもって藤原道子君が辞任され、その補欠として、占部秀男君が選任されました。   —————————————
  110. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 静岡市における市当局市職員組合との間の紛争問題に関する件を議題といたします。質疑を願います。
  111. 占部秀男

    占部秀男君 ただいま議題となりました問題につきまして、主として労働省の方にお伺いいたしたいと思います。  この事件はすでに労働省内容を御存じのことと思いますので、あまり詳しくはお話はいたしませんが、静岡市で職員の新陳代謝をしたいというので、市長と市の職員組合との間に、文書協定ができて、強制勧告の新陳代謝はしない、自発的なものだけを新陳代謝をする、かような形で文書協定ができた。ところが、市長側が一方的にこれを破棄して、強制勧告を行なった、そこで騒ぎが起っておる途中で、学校用務員の遠野さんという人が、やはり勧告の対象になって、五、六人の理事者側に囲まれて勧告をされて、そのためにショック死をしたという事件が起きて、新聞その他で大きく取り上げられておることは御承知の通りであります。ところが、この問題は、衆議院では地方行政委員会で市長を喚問する。参議院では地方行政委員会の決議で参議院の調査をやる、こういうようなことにまで発展しておるわけでありますが、その後にまた非常に悪い方向に発展しておる。これは地方公務員法の運用の問題、労働組合法の運用の問題に関連して、非常に大きな問題になってきておるわけです。どういうところにその大きな問題があるかというと、去る八月の半ばごろですか、十四日に、市長側はその相手方である組合をつぶすために、部課長会議を開いて、市が、かような組合の脱退届を市みずからが印刷をして、これを課長、係長を通じて、全職員、つまり組合員にこれを一つ一つ手渡して、課長、係長の前でこれに判こを押させたというような強制的な行為を行なって、この組合をつぶそうとした、こういうような事件が起きました。さらにまた、いろいろな交渉権の、交渉の問題についても、非常にまあいろいろの事例をあげたいのでありますけれども、きょうは時間が三十分ということでありますので、急所の点だけ申し上げます。団結権と団体交渉権の問題で、非常にこれは大きな問題である。そこで昨日の地方行政委員会では、藤井自治庁行政局長も出られまして、この問題については明らかにこういう事実が事実とするならば、地公法五十二条並びに五十五条、つまり団結権と交渉権、これは五十二条その他の違反である、こういう点が明瞭になったわけであります。私はこの際これは単に地公法上の問題ではなくて、労働組合法上の、いわゆる第七条の不当労働行為の第一項及び第三項に該当するところの、悪らつな不当労働行為ではあるまいか、かように考えるわけでありますが、この点について、労働省の所信というか、見解を一つ承わりたいかように思います。
  112. 辻英雄

    説明員(辻英雄君) ただいまの御質疑の内容になっておりますのが地方公務員でございまして、地方公務員の団結につきましては、具体的には地方公務員法の適用によることになっておりますので、直接労働組合法の適用がないことになっております。従いまして、そのような行為が、地方公務員法上いかなる法律的な判断を受けるかということにつきましては、自治庁の方から御答弁申し上げます。
  113. 占部秀男

    占部秀男君 そういうことになりますと、それではお伺いいたしたいのは、地公法の五十二条と五十五条、いわゆる地方公務員の団結権と交渉権、これはやはり憲法二十八条の勤労者は団結することができると同時に、交渉するということの権利を保障される、ここから由来しておるものと考えるのですが、その点はいかがでしょうか。
  114. 辻英雄

    説明員(辻英雄君) 学説がいろいろあるようでございますが、私どもといたしましては、地方公務員の団結も憲法の二十八条に由来するものだと考えております。
  115. 占部秀男

    占部秀男君 そうだとするならば、その団結の性格というか、固有の性格というもの、そういうものはやはり自主的でなければならないし、交渉の場合も理事者側が一方的に理由もなくして拒否することはできない、そういう性格を含んだものと私は考えるのでありますが、その点はいかがでしょうか。
  116. 辻英雄

    説明員(辻英雄君) 一般的に申しますと、団結権の性格はお話があったような趣旨であると私どもも了承をいたしております。国家公務員ないしは地方公務員の場合には、別に憲法十五条その他の規定がございまして、その憲法全体からくる具体的な規定は、個々の法律によってきめられるべきものだというふうに考えております。
  117. 占部秀男

    占部秀男君 しかし、その憲法十五条の問題は、団結する団結権と、交渉権というものとの、その発動において制限を受けているという点において、われわれは了承できるのでありますけれども、いわゆる団結権固有の問題ですね、今私の言ったような、そういう問題は明らかにあるべきものである、こういうふうに私は考えておるんですが、その点はいかがですか。
  118. 辻英雄

    説明員(辻英雄君) 一般的にはお説の通りかと思いますが、特殊な例になりますれば、警察職員のように、団結自体が制限される場合も現行法上ありまするので、一般論としましては御趣旨のようでありますけれども、具体的の問題につきましては、個々の法規の定めるところによるべきものだと考えております。
  119. 占部秀男

    占部秀男君 そこで今私が言ったような、こういうふうな脱退届を、これはまあ一般労働組合法上の取扱いならば、明らかに不当労働行為です。しかし、それをやっている所が、このやられたところの公務員の組合の団結権と交渉権は、同じく憲法二十八条から出てきて、それが保障されなければならないという規定になっている、その規定の保障、地公法ではそういうふうな規定がないために、不当労働行為の規定がないために、現実のままでは何らの保障が与えられていないという状態になっているわけです。こういう点については、やはり憲法という最高の法があるのでありますから、それに沿うような保障をするところの何らかの手段がなければならない、そういうことを考えてくるならば、やはり労働組合法の第七条を準用するとか何とかして、この不当労働行為というものを、はっきりさせていかなければならないと私は考えるのでありますが、その点はいかがでございますか。
  120. 辻英雄

    説明員(辻英雄君) 現行法の解釈といたしましては、ただいまお話がありましたような具体的な規定がございませんので、将来の立法論としましては、やはり先ほど申し上げましたように、二十八条による団結権、団体交渉権というものを一方において考え、一方におきまして、憲法のその他の規定にありまする公務員の性格ないし公共の福祉というようなことを総合的に判断して、考えていくべき問題だと思いますが、具体的にここで、それをどうすべきかということを、ただいま私から答弁いたすべき限りでもございませんので、御了承願います。
  121. 占部秀男

    占部秀男君 ところで、それが一般公務員だけの問題ならば、今の労働省の答弁で、あるいは私も了解しなければならぬ点もあるかもしれない、しかし、これは一般の労働者の問題ではなくて、労働省御存じだと思うのですが、どこでも今地方公務員の組合というものは、その中に単純労務というものが入っている、現場ですね、たとえば土木、清掃その他、すなわち単純労務は、明らかに地公企労法関係の適用を受けている。そうすると、地方公企労法というものの不当労働行為については、第一項ただし書きを除いては、全部適用されるということになる、そうなると、この公務員の中の単純労務の方々については、明らかに不当労働行為が成立するのじゃないか、私はかように考えるのですが、その点労働省の見解はいかがですか。
  122. 辻英雄

    説明員(辻英雄君) ただいまお話のありました地方公営企業職員労働組合の場合には、明らかにこれは労働組合法の適用を受けることになりますので、七条の不当労働行為が、ただいまお話がありましたように、一応ただし書を除いて適用されることになります。また、単純労務に従事する職員につきましては、御指摘のように、地公労法を準用されることになっておりますが、単純労務労働者の組合というものでありますれば、それは労働組合法の適用になりまするが、いわゆる地方公務員法に基く職員団体の中に単純労務者が入っているという形の場合には、それは労働組合法にいう、労働組合とは法律上取り扱えないというふうに考えております。
  123. 占部秀男

    占部秀男君 今までの労働省の見解でありますが、単純労務のあれを政令で制定されたときには、縦割でなくて、御存じのように横割になっている。つまり何々の職種に従事している者はこれは地方公企労法の適用だと、こういうことになっておる。それは組合を指定するのじゃなくて、個々の単純労務者であるというその職場についている者が、固有の権利としてこれは労働組合法上の取扱いを認められている、それは当時の労働省の見解をはっきりしていただけばこれはわかる、私もそれをやった一人でありますから……。これは私ははっきりとその点については記憶を持っている。これは単純労務というのは労働組合として認めるのでなく、単純に職場にやっているところのその職員についてはこれは公企労法を認める、こういう形であるがゆえに、つまりたくさんの単純労務者があるところは独立の組合を作っております。少数の組合のところは、これは一般に一般組合の代表者がその包括しているところの単純労務者のいろいろな問題についての代表権を持って交渉している、こういう形だけであって、単純労務に対するところの不当労働行為はあくまで労働組合法上の不当行為として私は成立するのじゃないか、かように考えるのですが、その点の御見解はいかがですか。
  124. 辻英雄

    説明員(辻英雄君) ただいま具体的に静岡の場合の労働組合がどうなっておりますかよく存じませんので、一般論として申し上げますが、地方公務員職員団体、つまり地方公務員法の適用を受けます職員と、ただいまお話のありました労働組合法の適用を受けるべき単純労務者とが合せて作られました一つの団体というものは、もちろんそういう団体が作られることはもとより自由でございますけれども、そういう団体が労働組合法にいう労働組合ではないというふうに私どもとしては昔から考えておりますので、そういう見解を持っているわけでございます。
  125. 松永忠二

    松永忠二君 今の点についてですが、そういうふうなことで法的にはそうであったとしても、今の単純労務雇用される者を含んでいるということや、それから地公法の第五十八条、労働基準法第二条、あるいは第九十二条を適用して、労働協約等の締結をでき得るような使途を含んでいるということから考えてみて、労働組合の精神というものは十分に尊重さるべきだと思うのです。その点の見解はどうですか。
  126. 辻英雄

    説明員(辻英雄君) 地方公務員法にいう職員団体というものの性格につきましては、私どもから申し上げる筋でございませんが、ただいま御指摘のありましたように、単純労務者というものの入った団体については法の気持と申しますか、趣旨と申しますのは尊重さるべきだという点について私どもも趣旨としてさように考えてよろしいと思います。
  127. 松永忠二

    松永忠二君 自治庁の見解を伺いたいのですが。
  128. 藤井貞夫

    説明員(藤井貞夫君) 自治庁といたしましては一般的に申し上げて、今労働省がお示しになりました通りのように考えております。
  129. 松永忠二

    松永忠二君 そうすると、今の御答弁では、労働省で答えられたようにそういうものを含んでいる職員団体であるので、労働組合の精神は尊重さるべきだというふうに承わったわけであります。  そこでお伺いいたすのは、先ほど占部さんからお話があった脱退届の問題であります。これは今お話のあったように、八月十四日に部課長会議を開いて、この市職員を市職の労連から脱退する、水道の労組と高等学校教職員組合は単組として脱退するということを部課長会議で決定し、そして市の用意した脱退手続を課長から係長、組合員という経過をもって配付をした。そして係長から提出が強要され、回収の結果は市長公室に対して逐次報告をされた。そうしてまた市会議員並びに自治協力員等もそれに対して圧力をかけ、水道労組は課長監視のもとに職場大会を開いて脱退を決定したということは、過般の衆議院における地方行政委員会において参考人として呼ばれたところの自治労の静岡県連の三橋氏から証言があったのでありますが、そういうことを考えてみると、これは地公法の五十二条の加入結成の自由の違反であるというふうにわれわれは考えられるわけです。その点の見解を承わりたいことと、なお、労働省に対しては、先ほどお話のあった労働組合の精神を尊重するという建前から考えて、これは労働法における不当行為に類する事項であるというふうな見解を持つのでありますがへその点に対する自治庁並びに労働省の見解を承わりたいわけであります。
  130. 藤井貞夫

    説明員(藤井貞夫君) 五十二条関係について申し上げますと、この点は法律解釈の問題と、事実認定の問題と分けて考えなければならないと思いますが、事実認定の問題につきましては、ただいま御発言がございましたように、先般の地方行政委員会における証人喚問がございました際に、三橋証人の方からはそういうお話がありましたことはこれは事実でございます。ただ、この発言に対しまして、各委員から市の当局者、なかんずく市長に対してそのような事実があったかどうかということをお尋ねになりましたに対しまして、市長はそのような事実は関知しておらぬ、そういうふうな答えをいたしておるのであります。私どもの従って態度といたしましては、昨日も参議院の地方行政委員会で申し上げたのでありますが、五十二条自体の精神から申しまして、かりにそのような事実というものが現存しておったということになりますれば、これは明らかに五十二条の精神に照らして正しくないことであるというふうにお答え申し上げた次第でございまするし、また、その考え方は、今お尋ねの点に対しても同様にお答えを申し上げてよろしかろうというふうに考えておる次第でございます。
  131. 辻英雄

    説明員(辻英雄君) 先ほどお答え申し上げましたように、単純労務に従事しまする者が入っておるそういう団体は、労働組合法にいう労働組合ではなくとも、それらの単純労務者の集団という点については趣旨を尊重すべきだという点を申し上げたのでありますが、ただいま御質問のありましたそういうものが不当労働行為に類するかどうかということになりますと、不当労働行為と申しますのは法律上許されてない行為でございますので、趣旨だけでは違法である、違法でないという議論はちょっとできかねるかと思いますので、類するとは必ずしも言い切れないというように思います。
  132. 松永忠二

    松永忠二君 今のお答えについて、なお再度質問するわけでありますが、確かに自治庁の局長のお話のように、市長は関知をしていないということを言ったのであって、事実はそうしておるという証言をしておらないわけであります。それからまた、今出てきている問題は、八月十九日に証言をされた問題であって、そのときにも局長の方からこういう問題については十分な調査をするというような御発言もある。また、事実その行政委員会で、こういう法的に明らかに違法であるというものが証言をされたとするならば、私はその問題の調査をまあしてしかるべきものであると思うわけです。従って、その調査内容を一つ御発表いただきたいと思うわけです。  それからなおもう一つ、労働省にお伺いしたいのは、趣旨はそうであるからどうこうという話がありましたが、これがかりに労働組合において行われたとするならば、不当労働行為であるということを断定できるかどうかということをお伺いしたのであって、その点を再度御説明をしていただきたいと思うわけであります。
  133. 藤井貞夫

    説明員(藤井貞夫君) われわれといたしましては、いろいろ地方に問題がございまする場合において、これの円満な処理ということを常に念願をいたしているわけであります。従いまして、その角度から必要な調査というものは累次いたしておりまするけれども、われわれの取り扱っておりまする地方公共団体の行政運営全般というものは、私からこういう席上で申し上げますまでもなく、全体がやはり一定の法律上のルールに従って運営されなければならないけれども、その最終の判断なり、決定ということは、罰則とか、その他の点ということで保障するのではなくて、公共団体の自主的な運営によって事を処理していく、その最後の担保というものは、極端な場合において、本件の場合にも、たとえば地方公務員法にございまする不利益処分というようなことが具体的に行われてくる、そういう場合においては、救済規定として、人事委員会なり、公平委員会という機関がこれを判定するというような制度をとっているわけであります。また、極端な場合においては、その他の保障をいたしておりまするけれども、全般的にはそれらの是正措置というものは、あるいはリコールの方法であるとか、あるいは議会における論議を通じての行政措置であるとか、あるいは不信任の議決の問題であるとか、そういうような問題、さらには、ひいては選挙における住民一般の批判ということをもって是正をしていくという建前になっているような次第でございます。で、また、公務員法自体において、先刻申し上げましたように、われわれ自体といたしまして、問題のあったものは調査をいたしておりまするけれども、その調査につきましては、公務員法自体にも書いておりまするように、自治庁の権限につきましても、人事行政の運営というものが、公務員法に掲げられておりまする基本原則に従って行われて参りまするように、協力、あるいは技術的に助言をするということに相なっているのでありまして、人事委員会、公平委員会等が持っておりまするいわゆる証人の喚問とか、あるいは事実調査のいろいろな強制的な手段というものは与えられておらないのであります。そういう意味でおのずから限界があるわけございます。従いまして、本件につきましてもいろいろ調査をいたしてみたわけございまするけれども、これらの点について、最終的にわれわれとして、こういう席上においてこうであったとかなかったとかいうことについてはっきりとした断定を下すということは、むずかしい事柄ではあるまいかというふうに考えております。そういう問題については、ただ行政運営の実際的指導の面といたしまして不適当であるというわれわれの心証がございまする場合においては、それは行き過ぎだからもう少し何とかうまくやるように、こういう点は是正をしてみたらどうかというような運営方針で今までもやってきているわけございまするが、事実認定ということに相なりますると、確たるそこに判定を下すということは、それぞれの正式の機関を通じて行うのでなければ適当でない、また、実際の認定もできがたいという、そういう限界点がございまするので、その点もあわせて御了承を賜わりたいと思います。
  134. 辻英雄

    説明員(辻英雄君) ある行為が労働組合法上不当労働行為になるかどうかということは、非常に微妙でございますので、労働委員会で、詳細な事実の調査と判定、それに基きまして判定をいたすことになっておるわけございます。従いまして、ただいまお話の出ました静岡の場合につきましては、直接の問題でもございませんし、ただいま自治庁から御答弁がありましたように、具体的には県の人事委員会、公平委員会で判断されるべき問題でございますので、この際私ども意見を具体的に申し上げることは差し控えきせていただきたいと思います。
  135. 松永忠二

    松永忠二君 ちょっとその答弁では満足できない。自治庁の方から、そういう不利益処分があった場合においても、公平委員会なり、人事委員会に提訴の方法もあって、そういう措置があるということだけれども実際にはその法の、違法であるか、違法でないかという問題だな。従って、この法の正しい運用をはかるという意味から言うならば、明らかに法の違反であるという、今あなたの言われたような御見解のことが証言されるとするならば、それについてこれを調べて、調査して、適当に運営をはかっていくということは私は当然のことだと思うのであります。また、あなた自身も、地公法に関係して違反のような事実があれば、十分そういう問題について調査をするというようなことはいろいろな機会において言われておることなので、やはりこれは責任を持って調査をいたしていくべきものだと私は思う。  その他もう一点、調査事項についてはあるわけなんだ。条項の問題がですね、あるのですが、まあそういうふうに私は考えるし、そうしていただかなければいけない。  なお、労働省の方からばかに回り回った御答弁でありますがね。今こういうことであれば、地公法の五十二条の違反であるというふうに自治庁からも御説明があったので、地公法の五十二条の加入結成の自由違反ということであるならば、当然これは労働法を適用して、労働法における不当労働行為になるということくらいな、私は御回答があってしかるべきだと思う。いかがです。
  136. 辻英雄

    説明員(辻英雄君) 具体的実事を私の方では存じませんので、御答弁を申し上げることは差し控えたわけでございますが、抽象的に、組合の結成、加入に、支配、介入した場合に、労働組合法上適用のある場合には、労組法上不当労働行為になるかどうかということでございますならば、一般論として当然討論の行為になるべき筋合いのことであると存じます。ただ、私どもの方としましては、御質問が静岡の問題に具体的に関係しておりましたし、私どもとしてその内容を存じませんので、先ほどのように御答弁申し上げたのでございまして……。
  137. 占部秀男

    占部秀男君 その点が、それはもう、これは労働組合法に載っていて、当りまえのことなんですよ。当りまえのことをわれわれは聞いているのじゃないですよ。地方公務員法では不当労働行為をされても保障されない。この保障されないということは憲法に照らしても、これは正当ではない。不当である。これはまあはっきりしているわけだ。ただ、その保障されないものを、どういう意味で保障していくかという問題にからまるから、従って、これは事実上は、この労働組合の場合にこれが持っていかれれば、これは不当労働行為というふうに認定されるべきところの事実である、されるべきところの事実が行われておるのだ、こういうことをあなた方にはっきり言ってもらえばいいわけなんです。われわれは何も労働組合法上不当労働行為がそこに行われた、こういうことを私は言っているのじゃない。労働組合法上不当労働行為が行われると同じ事実がこれはあって、それは考えるべきものだ、それはもうそういうふうに考えるべきものだというところをはっきり聞きたいと言うのだ。
  138. 辻英雄

    説明員(辻英雄君) 静岡の場合の具体的事実につきましては、私ども詳細に存じませんので、この具体的事実が、かりに一般の労組法適用の場合にどうなるかということにつきましては、何回も申し上げました通り、御答弁をいたしかねますが、組合の運営、加入、結成に支配、介入した場合に不当労働行為になるかという御質問でありますれば、当然なるということは、これは当然申し上げられることであります。
  139. 松永忠二

    松永忠二君 再度労働省に、こういう確認でよろしゅうございますか。地公法の先ほどお話のあった、次長からもそういう証言は、三橋さんからなされたけれども、それが事実であるとすれば、自治庁においては地公法の五十二条の違反になると考えられる、そういう御答弁があった。その地公法の五十二条の違反になる行為は当然労働組合法の不当労働行為に当るという解釈であるということについては御異議はないと思うのですが、その点はいかがですか。
  140. 辻英雄

    ○説明書(辻英雄君) 地公法の五十二条の解釈につきましては、私どもから御答弁申し上げられませんが、ここにございます組合を結成し、結成せず、介入し、介入しないということに支配、介入をいたしました場合には、抽象的に申しますれば、一般の労働組合法適用の場合には七条の違反になるであろうということは申し上げられます。
  141. 松永忠二

    松永忠二君 いいです、それで。
  142. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 今の問題は地公法の五十二条の団体に対する自主性、この自由という問題がうたわれておる。私はここで地公法の労働者保護処置がないという問題が今論議されているのですけれども、たとえばその労組法の目的、それから五条のただし書き、七条の不当労働行為というこの精神ですね。労組法ができてきた精神、憲法ができてきた精神そのものは、労働者と使用者と対等の立場にどうして置くか、そうして労働者保護していくかという大原則の流れだと私は思うのです。そうなってくると、五条のただし書きでは個人の問題まで触れているわけです。そういう精神があって不当労働行為というものが一般的な労働組合にしてはいけないというのが、今日の不当労働行為をしてはいけないという工合に進んできておる。地公法についてはそれが何ら救済する処置がないということだけでほっておいていいものかということになってきたら、これは僕はその労働者保護する立場におられる労働者としては、私はしかるべき処置というものを、直接の行政官庁でなくとも、自治庁またはその具体的な労政課というものが各県にあるわけです、そういうところからそういう間違った行為に対する是正の処置というものは労使関係の本元に返ってやらしていくというところに問題がある。私はここに今ちょっと見せてもらったのだが、たとえばその組合をつぶすために市の理事者がこういう活版印刷をして判を押させて脱退をさしていくというような行為というものは、一般の労働組合の常識として、労働者の団結という問題に対して考えてみても許さるべき行為でない。これは社会人共通に認める問題だ。ところがいわゆる保護処置が明確でないから云々ということでこれはこのままほっておくという手はそれはちょっとどうか、労働行政という立場からはずれていはせぬかという感じを今特に深くしたのです。こういう点について労働省と自治庁との返事をもう一ぺん承わっておきたいと思うのです。
  143. 辻英雄

    説明員(辻英雄君) 地方公務員の勤務条件、福祉、利益の保護その他の問題は地方公務員法の中に明定せられておりまして、これは具体的には先ほど自治庁からお話がありましたように、公平委員会、人事委員会がその任に当ることになっておりますので、労働省が直接にとやかく申すべき筋合いではないと思います。
  144. 占部秀男

    占部秀男君 ちょっと今のに関連して。先ほど単純労務の問題をお話ししたのですが、今の問題に関連してもう一ぺん労働省にはっきりしておきたいのは、地方公務員法の中の単純労務の処分は、この地方公企労法の規定にあるように、地方公務員法の第五十七条に規定する単純な労務雇用される一般職に関する地方公務員は、この地方公企労法の適用を受ける、こういうことになっておる。個々の人間は受けることになっているのですよ。それは承認されると私は思う。そこで、その地方公企労働者は、労働組合法の第七条については、これは適用を受けることになっておる。しかも、労働組合法の第五条のただし書きには、第七条第一号の規定に基くところの個々の労働者に対する保護を否定する趣旨ではないとしている。当然この地方一般、いわゆる地方公務員組合の中の組合全体に私は入れろといっているのじゃない。その中に含まれているところの個々の単純労務者、すなわち労働組合法上労働者として認める者、この者については個々に第七条の適用をきれるのが当然ではないかと私は思う。何か労働省がその点について、そうじゃないというようなことを言うのは、非常に法の解釈上けしからぬと思う。この点についてはっきり一つ御答弁を願いたいと思う。これは大きな問題ですよ。こんな、もしもあなたの言うような答弁だったら、一体単純労務を何がゆえに一般公務員の中から分けてわざわざ労働組合法上の適用をしたかということが問題になるのです。そういう点についてももう一度御見解を承わりたいと思います。
  145. 辻英雄

    説明員(辻英雄君) 単純労務の法律適用問題につきましては、先ほども申し上げましたように、単純労務に従事する職員が組合を結成いたします場合には、当然に労働組合法の適用を受けるということは、先ほど申し上げました通りであります。ただ、私がただいま御質問に対しまして、直接労働省の問題でないと申し上げましたのは、一般の、ここで主として問題になっております団体は、静岡の市の公務員の職員団体であるということで、そういう意味のことをお答え申し上げたわけでございまして、単純労務についての問題を言い落しました点につきましては、私の答弁の誤まりでございます。
  146. 占部秀男

    占部秀男君 そうすると、単純労務の問題については、私の言ったように労働法上の適用ができるという確認でよろしゅうございますか。
  147. 辻英雄

    説明員(辻英雄君) この場合に、単純労務者労働組合が作られておるわけではございませんので、直接の労働組合法の問題になって参りませんことは、初めに申し上げた通りであります。
  148. 松永忠二

    松永忠二君 二、三質問をいたしたいのでありますが、その後いろいろ話に聞き、調査したところによると、こういうような事実が出ているわけでありますが、この争議に関係しております成島という執行委員が八月の二十六日に消防署の方へ出向を命ぜられており、非組合となった。それから海野副委員長も九月二日に消防署へ非組合員として出向を命ぜられた。しかも成島執行委員、海野副委員長は今までの組合に脱退届というものは未提出であって、いまだ新しい組合に入っておらない。八月三十日の日に新しい組合が結成をしているので、成島執行委員が非組合員の方に転向させられたのは、まだ新しい組合の結成の前であって、そうしてしかも古いと言いますか、前の組合は登録の取り消しもまだなされていない。つまり脱退届も出ていなければ、脱退もしていなければ、新しい組合もできていないし、古い組合の法的な取り消しもされていないのに、その争議に関係している執行委員長並びに副委員長が非組合員として出向を命ぜられたということがあるわけなんでありますが、これは私は地公法に基く五十六条の不利益の取扱いであるというふうにまあ考えるわけであります。で、同時に労働組合法に基いては、不当労働行為の一項の正当な行為に不利益な取扱いがあったというふうにまあ考えられるわけなんでありますが、この点の見解を一つ自治庁並びに労働省からお伺いをしたいわけでございます。
  149. 藤井貞夫

    説明員(藤井貞夫君) 組合の方々で消防の関係事務に転勤を命ぜられた方があるということは私たちも聞いております。で、その内容について市の当局者に承わったところの説明では、前々から消防の関係で欠員もあり、これの補充ということを頼まれていたというような事実があったということ、それと職務の格付け自体につきましてもそのような疑いを生ずることのないような配慮をいたしたというような説明をいたしておるのであります。しかし、まあこの点につきましては、不利益取扱いの禁止の規定でございまする第五十六条の精神に違反することのないような措置をやっておかないと、これは困ることになるかもしらぬという点については注意を実は喚起をいたしておったのであります。従いまして、この点につきましては直ちにそれが不利益取扱いの禁止の条項に触れるかどうかということは、さらに事実問題をよく調査をいたしまして、総合判定をいたさなければならぬ問題であろうかと思います。この点につきましては、転勤を命ぜられた組合員の方々にその意思がございますれば、法の命ずるところに従いまして公平委員会等の審査の道が開かれておるわけでございますので、その機関を通じて判定が下されることに相なるのではないかというふうに考えております。
  150. 辻英雄

    説明員(辻英雄君) ただいまの職員が二人転勤させられた問題につきましては、具体的な事実を存じませんので、そういう場合はかりにどうだということに対しましては私からお答えすることは御容赦願いたいと思いますが、一般論として、労働組合に加入し、あるいは結成し、組合の正当な行為をしたことを理由として不利益な取扱いをいたしますれば、労組法の不当労働行為になるということは御指摘通りであります。
  151. 松永忠二

    松永忠二君 自治庁に再度……。今申し上げましたのはですね、私が申し上げましたことが事実であれば違法であるかどうかということを聞いておるわけなんであります。それだから、私の申し上げましたのは、要するに、その新しい組合——古い組合に脱退届を出していないと、しかも、新しい組合を結成していないと、しかも、古い組合を登録を取り消されていないときにですね、組合の執行部である者が、しかもこの組合の争議に関係をした直接の執行部の者が非組合員の場所へ転勤をさせられたということは、その地公法の不利益の取扱いになるかならないかということを聞いておるわけなんです。
  152. 藤井貞夫

    説明員(藤井貞夫君) 五十六条に規定をいたしておりまするのは、職員団体のために正当な行為をしたことのゆえをもって不利益な取扱いを受けることはないというふうに規定をいたしております。従いまして、不利益なそれが取扱いであるかどうかという点につきましては、これはいろんな角度から総合的に判定を下さなければならぬ問題であろうかと思います。そういう見地から先刻のように御答弁申し上げたわけでございますが、しかし、建前から言いまして、こういう時期的な問題、あるいは今御指摘になりましたような組合自体がまだ形式上存続をしておるというようなそういう時期、そういうような点を考えます場合においては、やったこと自体の総合判定の結果は別問題といたしまして、少くとも妥当なるやり方ではないというふうに私も考えております。
  153. 松永忠二

    松永忠二君 もう一点だけ一つ……。  そこで今私が申し上げたことということであって、事実の調査はまだ必要だと思うわけなんです。  それからなお、時間がありませんので、御答弁はいただかないわけでありますけれども、この前の地方行政委員会で問題になった消防団が団長並びに幹事約四十人がしかも消防自動車を携えてそうしてこの争議の行われている場所に出て来ていると、これは一体市町村長がこれを管理するという責任が消防組織法にある以上、これは団長が単に勝手に出動したというような言い方はできないので、法的にこの点は非常に重要な問題であるので、十分にやはり調査しなければできないということは言われてもいた。そういう点にまだ調査の点が残っておるわけであります。それからまた、その他ここで触れませんでしたが、先ほどお話のあった脱退強要の問題についても、あるいはその配置転換についても幾多まだその調査の不十分なところがあるわけであります。また、調査いかんによってはやはり自治庁として適当な措置をとるべきものが残っておるわけでありますから、この点については委員長も一つ御配慮をいただいて、今後十分な調査をし、調査の結果によって一つその見解を明確にしていただきたいと思うわけであります。  そこで、最後にもう一つお尋ねしたいのは、この登録の問題であるのですが、これもあなたの方では今これを調べてみなければというお話でありますが、こういう事実の上に立って一つ御判断をいただきたい。八月三十日に結成の大会を開いて規約承認の投票をした。ところが、投票数が八百三十六で、有効投票八百二十四、無効十二、賛成六百五十二、反対百七十二というようなところで、組合員が千二百十二であるので有効な投票数としては六百七以上であるというので有効だというふうに発表した。その後調べてみたところが、賛成は事実五百七十三であって、実は白票五十、無効投票七十九という結果が出てきて、これは六百七の有効の賛成投票にはならないということがあった。それが問題になったので、職場では再度この問題について職場会議を開いてこれを挙手、あるいはその他の方法といっても直接秘密の投票によらないでこれを決定したという事実をまあわれわれが承知をしておるわけなんです。そうなってくると、これは地公法五十三条において登録される資格としてはやはり直接秘密の投票によらなければできないということからして、これが職場会議の挙手とか、いろいろな方法でやられたということであるならば、これは登録の資格はないというふうに判断がされるのです。この点についてどういう見解を持たれているのか。  それからなおもう一つ、最後に労働次官にお尋ねをしたいのは、今お話の出てきているように、実は労働法の中には使用者が不当労働行為をしては悪いと、従って、それに罰則の規定も実はあるわけです。ところが、地公法の中には職員が争議行為をやった場合にはこれに対して罰則規定はあるわけであります。ところが、職員団体の組織の加入、結成の自由に干渉したり、あるいは運営に干渉をすることに対して、地方団体が介入することに対して何らのいわゆるその触れべき条項もきめられておらなければ、罰則規定もないということはまことに少し不均衡であろうというふうに思うわけです。不当であろうと思うわけです。先ほどからお話のあったように、憲法二十八条の団結権とか、団体交渉権とか、あるいは団体行動権は、やはり同じ憲法の中の公共の福祉であるとか、あるいは公務員の全体の奉仕という関係から制限をされているけれども、あくまで団結権、団体交渉権、団体行動権は尊重さるべきものである。そうするならば、つまり地方自治体がこういう問題に関与した場合、介入した場合には、当然これを拘束する規定というものが設けられていかなきゃできないんではないか。それでなければ、いわゆる労働大臣のよく言う労使慣行という問題もできないし、そういう点でやはり問題があろうと思うので、こういう点について、今後検討をする意思があるかどうか。また、これについてどういう見解をお持ちであるかということについて、一つ労働次官の御見解を承わって、私は質問を終りたいと思うわけであります。
  154. 藤井貞夫

    説明員(藤井貞夫君) 新組合の結成の手続段階におきまする問題でございますが、ただいま御指摘になりました事実がそのままの通り行われたといたしまするならば、これは、はっきり申して、五十三条に規定をいたしまする手続を踏んでおらない行為であるというふうに思います。
  155. 二階堂進

    説明員(二階堂進君) 御指摘のありましたような問題は、あくまでも、私は、やはり憲法に規定されておる権利、団結権、交渉権というものが主になっていかなければならぬと考えておりまして、それに付随する法律にもし欠陥があるとするならば、再検討をしてしかるべきものであると考えております。
  156. 松永忠二

    松永忠二君 なお、自治庁の方から、その調査と見解を発表することについては、お約束ができるわけですね。
  157. 占部秀男

    占部秀男君 時間があるので、確認しておきたい点が一つだけあるんです。
  158. 松永忠二

    松永忠二君 今のは記録に残して下さい。
  159. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) それは、あとで、委員長要望されておりますから、委員長がやります。
  160. 占部秀男

    占部秀男君 労働省に簡潔に確認しておきたいんですが、私は、今度は労組法の第七条の不当労働行為に一般組合としても該当すると思うんですが、まあその点はあなた方も議論がある。しかし、その一般組合の中の個々の単純労務者、すなわち、労働組合法上の扱いを受けておる者、この受けておる者は、個々の者として、これは第七条の不当労働行為の問題が提起し得る、こういうふうに私は確認しておきたいんですが、その点はよろしゅうございますな。(「これは当然だ」と呼ぶ者あり)これは当然だ。第五条にもはっきりしておる。
  161. 辻英雄

    説明員(辻英雄君) ただいま御質問のありました単純労務に従事する職員につきましては、七条の適用があるというふうに考えます。
  162. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) それでは、先ほど、松永委員質問の中で、調査の上報告事項を求められておりますので、その点は、自治庁で調査の上、御報告を願います。  本件に関しましては、本日の調査はこの程度にいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  163. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 御異議ないと認めます。   —————————————
  164. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 次に、鈴木化学工業株式会社における労働争議に関する件を議題といたします。  質疑を願います。
  165. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 大臣がお見えになっておりませんので、次官にこの問題についてお聞きしたいと思うのですが、次官も鈴木化学の争議の経過についてはお知りであると思うのですが、この三月の暮れから今日まで争議が続いている。相当長い間この争議が続いている。その中において、たとえば荷物積み出しによって傷害事件が起きてみたり、それからいろいろのいきさつはございます。ございますけれども、とにかくこの事業そのものがやっていけないかどうかという問題。労使関係ですから、やはり、資本もそれから経営能力も労働力も三者一体になってこの事業が進んできたんだと私は思うのです。この会社はこういう状態で六カ月からの争議が続けられておるのですけれども、こういう形というものに対してどういう工合に見ておられるか、次官からまずお聞きしたいと思います。
  166. 二階堂進

    説明員(二階堂進君) 鈴木化学の争議につきましては、私は詳しいことはよく承知いたしておりませんが、六カ月もという長い聞こういう争議が続くことは、これはきわめて遺憾なことだと考えております。なお、詳しいことは組合課長から答弁させます。
  167. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 それじゃ、十分にお知りじゃないというのだから、これは大臣がいつも、うまく労使関係を正常な形に戻して云々ということを言われるのですけれども、とにかく六カ月も続いているわけです。だから、最近の経過を、私らも多少この経過については知っているのですが、労働省から一つ説明をして下さい。
  168. 山崎五郎

    説明員(山崎五郎君) 鈴木化学の争議について説明申し上げます。  鈴木化学工業株式会社は、東京工場の争議でありまして、現在の所在地は、墨田区にあります。主要な製品は、水あめ、葡萄糖。従業員数は、六十四名であります。組合員数は、五十三名。現行賃金が一万五千五百円。  今度の争議の発生の原因は、組合役員の解雇と賃上げ二千百円の要求でありますが、途中から八百円の要求に切り換えられております。  経過は、本年二月六日に、柴田勇吉が一月二十六日定刻前に退社する際にタイムレコードのカードを押さずに帰ったことについて守衛が注意を与えたところ、柴田の職場責任者である保戸塚孝一が——組合幹部でありますが、この守衛の処置をおもしろくないとして暴行を加え負傷せしめた、こういうことを会社側では言っておりますか、こういうようなことから端を発したのであります。会社側は、保戸塚が代理してカードを押すよう依頼されたのを失念し、それを注意されたのでは面目立たぬと称し暴力を振った、こういうことを言っておりますが、組合側の万ではそうでないと言っておるようであります。守衛は、二月の七日、八日の両日会社を休みまして、さらに二月十日に診断書を提出しまして二月十六日まで欠勤するというような事件が起きたのであります。組合側では、これは守衛とちょっとしたいざこざがあったが、その後双方で話し合い、万事解決して別れたのであると、こういうことを言っております。でありますので、この点につきましては、双方の言い分が相違があります。そこで、会社側は、退勤時タイムレコードのカードを代理して押すようなことや、暴力を起さないため再三注意したが、改俊の情なしとして、解雇する方針をきめまして、二月十九日以降二十日、二十三日と組合に対して事情説明をし、あるいは組合の意見の聴取をしたと申し立てております。そこで、組合では二月二十三日、一方的な処罰は受け入れることはできないとの態度を決定しまして、その旨意見書を会社側に提示するとともに、二月二十六日、別に、先ほど申し上げましたような賃上げの要求を出しております。三月一日、組合は大会を開いて、賃上げと解雇処分撤回について強力な態勢をもって対処することを決議しております。三月二日、会社側は、組合委員長、副委員長同席の場所で、保戸塚に対し、三月二日付で懲戒解雇にする、賃金一カ月分を支払う旨の通知書を読み上げたが、本人はこれを拒否したため、会社は同日内容証明郵便で保戸塚の自宅あてに解雇通知書を発送しております。  三月五日、解雇通知書は会社に返送されております。同日の団体交渉では、会社は解雇問題については譲りません。賃金問題につきましては、向う一カ年間賃上げを要求しないという条件付で五百円アップの回答をいたしました。  三月七日、会社は保戸塚に対し、賃金二カ月分と解雇予告手当一カ月分を支給する旨を伝えたが、本人はこれを拒否しております。  三月八日、会社は保戸塚に対し、会社内の立入禁止を申し渡すとともに、再び内容証明郵便をもって解雇通知書を発送しております。  三月十三日、関東化学小林委員長、飯崎書記長同席で第三回団交を開いたが、進展は見られません。  三月十五日には闘争宣言を組合は発しております。  十七日には、全食品の役員六名が会社側と会見し、保戸塚と守衛との当事者間の話し合いの状態に戻すように要望いたしておりますが、会社はこれを聞き入れません。  翌日、団体交渉を開きまして、会社は解雇は撤回しない、賃金は一年間据え置で六百円を回答しております。  三月の二十日、組合側は三月二十八日二十四時間ストを実施することを通告しております。  二十一日、組合側は二十九日から四十八時間ストを通告いたしました。  三月二十三日、三十一日から七十二時間のストをやることを通告しております。  三日二十七日、団体交渉で、会社は組合事務所及び北門から事務所までの通路及び便所を除く立入禁止を組合に通告しております。  三月二十八日、組合側はストに入りました。その後四月二日、二十七日、五月十日、三十日、六月三日、十日、十五日、十九日、七月一日、十八日、八月三日、七日と団体交渉を行なったが、進展いたしておりません。  八月十九日の午前八時ごろ、会社側から組合側に電話で、工場内にある澱粉を運び出したい旨を通告するとともに、トラック三台で約二千貫を運び出そうとしたとのことであります。組合側は直ちに支援団体に連絡しまして、約百三十名が動員されて搬出を阻止しようとしたために紛争を生じまして、同日は搬出ができなかった。で当日は負傷者あるいは検挙者等は出なかったと、こういうふうに聞いております。組合は不当介入として取り上げ、警察に抗議を行なったという話を聞いております。  八月十八日、搬出阻止のために、ピケ隊三十名を待機、午後二時から七共闘会議代表者は会社側と団体交渉を行いました。  で、組合側は、この賃上げは八百円として、配分は今後労使で協議する。なお、先に会社案として出された、今後一年間は昇給、賃上げを据え置くと、こういう条件を撤回してもらいたいというのが第一点。  第二点として、立ち上り資金として、スト中の賃金相当額の八割を支給せよ。  第三は、保戸塚の懲戒解雇を撤回し、十五日間の出勤停止とせよ。  第四として、告訴事件は一切取り下げ、責任を追求しないこと。  第五は、早期解決のためにお互いに刺激的行為を取りやめる。澱粉の出荷は解決まで取りやめる。こういうような要求をいたしました。これに対して会社側は、賃上げは六百円、配分は従来通り、ただし、八月中に承認しない場合白紙に返す。  立ち上り資金は一切支給できない。  保戸塚の解雇は撤回しない。  組合の争議中における不法行為は責任を追及する。  争議中といえども、営業行為は継続する、すわち澱粉の出荷は行う。こういうような回答をいたしまして、組合はこの回答を不満としてストライキの続行を決定いたしました。  八月十九日、会社は中田運送のトラック三台で澱粉を搬出のため表門から入ろうとしたところ、ピケ隊と紛争を生じて、ピケ隊の中にいた近江教蔵はトラックの下敷となり、骨折で四—五週間の重傷を負い、直ちに救急車で病院に入院したということでございます。この点につきましても、会社側は、組合員近江が会社の差し回したトラックの前に寝ころんで、バンバーにしがみついて身をもって妨害行為をあえてしたということを言っております。一方、組合側は、トラックを組合員に向けて暴走させたために組合員が二名重傷、十数名が負傷したのだということを言っておりますので、この点も会社側の主張と組合側の主張とが対立しております。  また、その際付近におった重役玉田氏も倒れたが、これについては会社側は、組会員に局部をけられて重傷であるということを発表し、組合側は、脳貧血を起して倒れたもので、組合側は何ら暴行を加えた事実はない、こういうことを言っております。  八月二十一日、組合側は十九日の事件につきまして、殺人未遂罪として告発しております。  八月二十七日、会社側は東京地裁に製品搬出妨害排除の仮処分申請を行なっております。  八月二十九日、東京地裁第一回審問に、西川裁判長は解決のための試案の提出を会社側に求めております。  八月三十一日、第二回審問、会社側和解案として、解雇を撤回しない、賃上げ七百円。一人当り三千円の貸付。争議中の違法行為は追及する、こういうことを裁判長に提示しておりますが、組合側はこれを拒否しております。  九月四日、組合側は都労委にあっせんを申請しております。第一回のあっせんが九月十日に行われたのでありますが、会社側ではこのあっせんに応諾できない、こういう態度を表明した、こういうような報告を受けております。  以上概略を申し上げましたが、だいぶ長くなったのでわれわれも記憶が十分でない点もありますし、下部の方からの報告も十分でない点もあると思いますが、大よそ今申し上げたのが概略でありますので、報告を終ります。
  169. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そこで、会社側との食い違いというのはまず第一に、保戸塚君が守衛に傷害を負わしたという問題を一つ取り上げてみても、われわれになかなか会社の言い分は納得いかぬ。それから八月十九日にこのトラックを従業員がたくさんおる中にそのまま突っ込んでいって、そうして非常にたくさんなけがをさした、こういう経過はあるのだが、労働省としては、何といっても争議が長く続いて、労働不安が続いて、正常な秩序云々というていつも言われているのに、今の報告だけで、たとえば労働委員会が労使調整のために努力をしてそのあっせんをするとか何とか、そういうお考えはこの長い期間の間になかったのですか。
  170. 山崎五郎

    説明員(山崎五郎君) はなはだ長くほうっておいたように結果的になりますので、遺憾に思っておりますが、実はこの種の争議は国会で取上げられる問題などは、まあまだ組合側からでも、あるいは経営者側からでも表面に出たということになるのでありますが、実はこの種の問題で表面に出ない問題が非常に多いことも事実であります。で、われわれも実は大争議、そういうようなことに追いかけられまして、なかなかこの種の情報と申しますか、実情が入ってこないのであります。でありまするので、全般におきましては、実は率直に申し上げますが、この事実は報告も受けておりませんでしたし、詳細も承知しておりませんでした。その後、あまり長くなるので、都からも報告を受けまして、これの解決方法がないかという点でいろいろ協議いたしましたが、今経過報告の中で申し上げましたように、労働委員会に応諾しないというような状態でありますので、非常に感情的になりまして、いろいろ今までの経過から見まして、労政事務所あるいは都の労働局等におきましてもこの問題に入る機会を失いましたことと、若干説得などをいたしましてもとうていその経営者側も応じないし、あるいは組合側もなかなか応じられないというような状態であると、こういうふうに聞いておりました。私たちといたしましては、この種の問題はすみやかに労働委員会において解決されることを願っております。でありますので、今後もこの問題の解決のためには東京都と連絡いたしまし、労働委員会等において解決されるように努力していきたい、こういうふりに考えております。
  171. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 八月十九日に荷物の積み出しによってトラックが人夫を含めて入ってきて、その人の中にトラックが突っ込んで相当なけが人が出ている。これは組合側からは殺人的行為だという、殺人未遂ということで告発をしておるのですけれども、この問題に関して警察はどういう工合に見ておられるのか。
  172. 山口喜雄

    説明員(山口喜雄君) まず最初に経過を申し上げます。  八月十九日の午前九時十分過ぎころ、鈴木化学の前でトラックに人がひかれた交通事故があったということが百十番に電話がかかって参ったのであります。そこで、本部の百十番の指令室から交通係に通報して、交通係が現場にすぐ飛んで行ったのであります。なお、同じ時刻に付近の交番の警察官に対して、鈴木化学正門前で交通事故があった、すぐ来て下さいと、こういう訴えがあったのであります。そこですぐに署に報告し、署から公安係長も現場に出て調べてみましたところが、いわゆる交通事故として交通係で処置する問題よりも、むしろ刑事の方で調べる方が適当であろうというので、いわゆる交通事故としての事件ではなくして、普通の刑事事件の容疑として調べをいたしております。今日まで組合側から告発を受けております関係の会社側の者五角及び当日現場におりました自動車の運転手あるいは上乗りの関係者、組合員等、二十数名にわたって調査をいたしております。先ほどちょっと話がございましたが、その負傷者が出ましに前後のいきさつにつきまして、組合側の言われるところと、自動車の運転手あるいは会社側で告発を受けた関係者の言うところ、目撃者の言うところと非常な食い違いがあるのでありますが、この点の真相を追及いたして参りたいと思いまして、ただいま所轄の警察署で極力捜査を続けておる状況でございます。
  173. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 部長にお尋ねいたしますが、捜査を続けておるとおっしゃいましたが、相当な時間がたって、私は、通知がどういう工合に受けられておるか知らぬが、現地に行ったら門の前で、そのまま突っ込めという号令で人の中ヘトラックが突っ込んでけが人が出たということは警察もお知りになって、刑事事件として扱われるようになったということだと思うのです。それで、この問題ばかりでなしに、その他の傷害事件にいたしましても、なかなか五十九名の組合員が納得しないような理由で、でっち上げという言い方はどうかしりませんが、そういう格好で理由づけを次から次へしてきておる、その一連の中で、これも調べてみなければわからぬということですけれども、われわれといたしましては、五人の傷害者、それから軽傷者が非常にたくさん出ておるという事件がいまだに、警察ではお調べになっておるのですけれども、具体的に積極的にお調べに、その実態をおつかみになってないような気がするので、それでまず警察の方にこの見解をお尋ねしたわけなんです。今どのくらいの程度までわかっておるのでしょうか。
  174. 山口喜雄

    説明員(山口喜雄君) 現在まだ関係者の述べるところに非常に食い違いがあります。私どもといたしましては、第三者の立場にある目撃者があれば、そういうところからいろいろ事情を聞きまして真相を明らかにいたしたい、かように考える次第であります。ただいま第三者の立場にある、ある目撃者について状況を聞いてみますと、けがをされた方は、現場におりまして状況を見ておりました見物人のある人に、自分の腕時計を外して、これをちょっと預ってくれというように預けて、左の前の車輪のバンバーを持ちまして、足の方から先に自動車の下に入って行ったという事実をある第三者の目撃者が述べておるのであります。そういう点もございますので、真相を明らかにいたしたいと思ってただいま極力捜査をいたしておるような次第であります。残念ながらまだ結論を得まして、この事件の取扱い措置するまでに至っておりませんが、そう遠くない時期におきましてこの問題を解決し得ると思うのであります。問題は殺人未遂ということで告発がきれておるようでありますが、前後の事情から見まして、いわゆる殺人の犯意があったというようには、ただいままでのところ認められないのであります。問題はいわゆる過失傷害というような犯罪の問題についてただいま調査をいたしております。
  175. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) ちょっと関連して。私から質問するのはおかしいのですが、私現場に行って参りましたので、今の問題非常に重要な問題があるから御質問したいと思うのですが、写真も見て参りましたし、現場も見て参りましたが、その重傷者で寝ておる横に警官が立ち会っておられる。そうした場合に、重傷者が、死ぬか生きるかわからない人が、人事不省になって倒れておる、これは救急車で運んだ。立ち会っていた警官はなぜそのトラックの運転手なり、責任者なりを直ちに逮捕して隔離しなかったか、いわゆる今までの労働争議の問題はほとんど組合の人はその場で逮捕されておる。あるいは直ちに逮捕状を出しておる。ところが、これは現行犯で、そこに倒れておるにもかかわらず、運転手は何ら尋問も受けておらないし、引っぱられておらない。そういうことがあったからこそ、今度は飛び込んきたのだと言うし、あるいはひいたのだと言うし、そういうことを第三者の聞き込みで裁判をしよう、いわゆる判定をしよう、こういうことをやっておられるが、なぜその運転手をその場で一応隔離されるか、あるいは聞き取りをその場でとらなかったか、その点についてどうも解せないところがあるので、御答弁を願います。
  176. 山口喜雄

    説明員(山口喜雄君) 先ほど申し上げましたような事情でございまして、いわゆる大勢の人が前に立っておるのに、自動車で突っ込んだというような事態ではないと思うのであります。もちろん関係者につきましては、直ちに警察署に呼びまして捜査を続けております。この事件につきまして、私どもといたしまして事態を明確にしないままに措置するというような考えは毛頭持っておりません。
  177. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 山口警備部長はよく状態を御承知のないままか、あるいは故意に作られた報告を聞いておられると私は考える。私は現場の警察に行って警察の署長に会って参りました。ところが、これは二十一日に殺人の告発がされてから調査に移っております。そういたしますと、その間どういう話し合いも、どういう証拠隠滅もできるわけでございます。こういうことが警察としてあり得るかどうか、警官がその場に立ち会っておる。しかもまだ医者にも見せておらないし、人事不省になっておるならば、これは死ぬか生きるかわからない。あの現場は御承知と思いますが、そんなに広くないのです。だから飛び込んだとするならば、車が走ってきておるなら、これはあるいは運転手は飛び込んだと気付いてもとまらなかったかもしれない。あるいは横からそうっと入ったら運転手は知らずに運転したかもしれない。あるいは今度は逆の人から聞くならば、おることがわかって鉄扉が半分ほどこわれるほど車を突っ込んだのだ、そのトラックのあとが鉄扉についておるし、鉄扉も非常に動いておる。こういうことまで言われておる。そういう問題で私はそれのどれが正しいかどうかということは私にはわからないけれども、そういう重傷者を出しておる。しかも、あなた方の指示によって警官は現場に行っておる。どうしてだれにも聞きもしないし、だれも引っぱらずに、これが普通の交通事故だということが、常識のある人ならば考えられないことである。なぜそうされたか、故意にされたとしか見られないじゃありませんか。
  178. 山口喜雄

    説明員(山口喜雄君) 故意にそうされたという御質問でございましたが、別に何か意図をもってことさらにそういうふうにしたということは全くないのでございます。事件後、現場に参りました公安係長は直ちに引き継ぎまして、その日に運転手、助手、上乗りの人夫を数名呼びまして調査をいたしております。告発をまちまして捜査を開始したということではないという報告を聞いておるのであります。
  179. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そこで、私は今の委員長の質疑のうち、それから現場の写真などを見ましても、非常に深刻な状態で、重傷者が出ている。それに今のお話のように、今日では相当たっているのに、第三者の話をお聞きになっている。それも一つの意見であったかもしれないが、そういう問題ではなしに、もっと深刻な問題であったから、もっと早くこの問題は処理すべきではなかったかと私は考えている。先ほどのお話の中では、「突っ込め、やれ」という号令をかけたのは、会社側の人だと言っております。会社側のそこにおった関係者はお調べになっていないのですか。
  180. 山口喜雄

    説明員(山口喜雄君) 調べております。先ほども申し上げましたように、二十数名にわたりまして、組合側、会社側及び自動車の運転手、上乗りの人夫、あるいは目撃者というものについて調べているのであります。
  181. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 警察の関係については、具体的ないろいろな角度から見ましても、どうもわれわれがその取調べに対して不安を持つような状態じゃないかと思いますので、そういうことのないように、一つ積極的に事実を明らかにしていただきたいということをお願いしておきます。  それで問題は、元に帰りますが、労働省関係ですが、今の質疑にもありましたような深刻な問題がこの争議の中にあるわけです。それじゃ会社は破産しているかというと、そうでなしに、むしろここに出ている中では、組合の切り崩し、弱体化、要求脅しない労働者に育てていくという意図があるのか、ともかく自分の思うように安い賃金で働かしていくという昔のような状態に返そうとする意図があるのか、私は知りませんけれども、とにかく相当の在庫品があり、その他、経営状態も決して悪くない。非常に大きな利潤を上げている状態でありながら、いつまでもそういう状態でほっておく。こういうことがいいのかということは、私は非常に重要な問題だと思うのです。だから先ほど組合課長は、この種の問題は、できるだけ労働委員会あっせん、調停という格好で解決するのがいいのだというお話がありましたけれども、しかし、問題は、これを解決しようとする熱意が生まれてこなければ、労使関係はいつも正常でなければ云々と労働省は言われるが、こういう形のものこそ、使用者に対する教育をしなけば、その問題は解決しない問題であると、私はこう思う。だから、これからこの問題に対してどういう処置をとろうとされるのか、一つ大臣がおいでになりませんから、次官から明確にお答え願いたいと思います。
  182. 二階堂進

    説明員(二階堂進君) このように長い間、こういう争議が続けられているということにつきましては、これはきわめて遺憾な事態であると考えております。こういう争議の解決につきましては、建前といたしましては、労使双方が自主的に熱意をもって解決するということが、私は建前であると思っております。また、それぞれの立場において、労働委員会なり、あるいはその他の機関を通じて積極的に解決されるということが建前でなければならぬと思っておりますが、しかしながら、先ほどから申し上げておりますように、こういうように事態が長引くということは、これは好ましいことではございませんので、労働省といたしましても、よくこれらの事件のいきさつ、あるいは労使双方の意見等が相当食い違っているようにただいま承わったのでありますが、こういうこともよく検討いたしまして、なるだけ早くこういう事態の解決するように努力いたすことが当然だろうと考えております。
  183. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 ちょっと今の話の経過に一つつけ加えておきまするが、労働委員会あっせんという格好で、こういう状態の中で、問題を解決しようとしたって、労働委員会あっせん、調停というものは、頭から受け付けないという計画的の態度があるわけです。さっき山崎課長の報告にありましたように、二千百円の要求が八百円という工合に組合が自主的に解決しようとして、非常に努力をしているというこの現実の中においてすら、そういう会社側の態度で、この争議が長引き、そうして今のような刑事事件の問題のようなものが起きておるということは、私は許すべきでない、こういう状態はいつまでわれわれは続けるべきでないということを考えて、きょうこの問題を一つ労働省に、早くこのようなことがないように、積極的にやってもらいたいということを約束していただきたいと私は考えたのです。今の御返答にありましたように、積極的にこの問題を解決されるために、労働省は乗り出すということに解釈していいですね。
  184. 山崎五郎

    説明員(山崎五郎君) ただいまの藤田委員の御意見ごもっともでありますが、具体的に直ちにいかに解決するかということにつきましては、今までの経緯から見て直ちに手を打つようなものは持っておりません。先ほど私が労働委員会等において、この問題は解決されるべきものだと、こういうことを申し上げました。組合側はせっかくこの問題を労働委員会解決しようというふうに申請をしておりますが、経営者側等におきましても、もちろんこういう労働委員会を通じまして、その場所に出るようにわれわれは勧奨するつもりであります。この件につきましては、実は労使双方につきまして、私たちも全然ほっておいたわけではありませんが、直接当事者を呼んで聞きました。しかし、先ほどあったようないろいろの問題が、付随的なものが発生しておりますので、実際上解決できない、積極的に動いても解決至難だと、こういうふうに見てきたのであります。今後はこの問題につきましては、東京都等とよく協議の上で善処していきたいと、こういうふうに考えております。一般的な問題として先ほど御指摘されました経営者等の教育、こういう点を御指摘されましたが、この点については、労働省も御意見通り考えております。
  185. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 本問題に対する本日の調査は、この程度にいたしまして、次に移りたいと思いますが、御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  186. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 御異議ないと思います。   —————————————
  187. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 次に、一般労働情勢に関する件を議題といたします。ヘンミ計算尺株式会社の争議に関する件を議題といたします。質疑を願います。
  188. 片岡文重

    ○片岡文重君 今鈴木化学の問題で、だいぶ最近の中小企業者の労使の紛争が深刻になってきておるという感じを受けるわけでありますが、労働省として、すでにこれもまた、二カ月近い紛争を続けておるヘンミ計算尺の労働争議について、どの程度に実情を把握しておられるのか、まずそこから一つお伺いしたいと思う。
  189. 山崎五郎

    説明員(山崎五郎君) ヘンミ計算尺の賃金争議につきましては、私現地をそのまま見ておるわけではありませんので、県の報告あるいは直接労働組合、あるいは経営者等から聞いておることでありますが、この問題につきましては早くから埼玉県労政部におきましては、中に出まして、すみやかに解決するように努力してきております。われわれもこれを承知しております。鈴木化学とは違いまして、労働省としても直接この問題にタッチしてきたのでありますが、遺憾ながらまだ解決を見ておりません。現在なお、これが解決のために私努力しておりますが、まだ解決を見るような見込み等につきましては、申し上げられるような段階にきておりません。で、経過を申せと、こういうことでありますが、詳細報告いたしましょうか。
  190. 片岡文重

    ○片岡文重君 時間もありませんから、概略でけっこうですが、ただし、問題となるような点については正確に述べていただきたいと思う。なるべく簡明でよろしゅうございます。
  191. 山崎五郎

    説明員(山崎五郎君) ヘンミ計算尺の労働組合の人数は四百八名で、埼玉県北足立郡大和町に白子工場を持っております。問題はここに発生したのでありますが、夏季手当の要求と昇給分の総額、この二点から発したのでございます。組合側は千四百万円の要求をいたしまして、一人平均三万五千四百円になるのでありますが、また、昇給原資としては二十五万円の要求、これが一人分六百三十三円の要求であります。会社側は夏季手当の総額を、最初六月六日には千二百万円の回答をしております。昇給分につきましては、二十五万の要求に対して二十万円の回答を寄せました。これが不満で紛争になったのでありますが、その間組合は地労委にあっせんを申請したが、会社側では自主交渉を主張して譲らなかった等のいきさつがありまして、その後会社側は夏季手当の総額を千三百万円まで上げるという回答をしております。昇給分の総額は二十万円で、その前の回答通りであります。これを不満として組合は七月六日以降全面ストライキに入ったのであります。この間、川口労政事務所では団体交渉再開のあっせん、あるいは予備交渉、こういう点で、いろいろ折衝を持ったのでありますが、いろいろな対立点がありまして、物別れになっております。その後、上部団体の総同盟県連会長やあるいは埼玉県の民主労働部長等が、この団交再開についてあっせんなどをいたしております。労政局長、労政事務所長等も再三この点につきましては、中に入っております。その後いろいろな事件が起きまして、八月一日の夜、組合員が工場長宅にデモを行なった、あるいは会社側はそれによって硬化した、こういうことをそれぞれ言っております。しかし、県がそのつどあっせんに入りまして、今後は誠意をもって、そういった交渉に当ることを約束せしめ、そうして団体交渉が行われたのでありますが、具体的な問題に入りますと、常に決裂をみております。その間、七月の二十七日、給料支給のために工場に出向いた庶務課長に対して、組合側がピケを張っておったので、そのとき紛争が起きて、全治二週間の打撲傷を負うた、こういうような事件が起ったことも報告を受けております。この件の詳細につきましては、内容等につきましては組合側の言い分と、あるいは、経営者側の言い分との相違があるようでありますが、そういう事件が起きたということは承知しております。なお、その中で組合幹部三名は、傷害事件として逮捕され、うち二名は起訴された、こういうことも報告を受けております。八月二十六日に地労委は、職権あっせんを行うことを決定しまして、二十七、八、九日と事情聴取を行なった結果、あっせん案が提示されました。三十二年上期の賞与は千三百万円を支給する、三十二年上期の昇給額は二十万円とする。特別皆勤手当五日分を基本給に繰り入れる、普通皆勤手当をそのまま続行する。会社は今後、生産協力鼓舞資金として六十万円を支給する。で、ただいま申し上げました千三百万円、二十万円の配分については工、職員間の格差をできるだけ縮少するように協議決定すること、会社は合理的な定期昇給率等を含む給与水準の体系化をすること、こういうことのあっせん案が提示されたのでありますが、会社側の方からは条件付の受諾、組合側の方からはこれは拒否と、こういうような回答をいたしまして、ストライキがなお継続中であります。この間、八月の中旬から労使双方に対して責任者をきめていただきまして、いろいろ事情聴取から解決のためにいろいろ側面的な援護をしておりますが、いまだ解決を見ない状況であります。  以上、経過の概要は申し上げた通りであります。
  192. 片岡文重

    ○片岡文重君 概要を今伺ったわけでありますが、概要を伺っておると、組合要求と会社側の回答との間はそうたくさん開いておらないようなふうにも聞えるのですが、そのわずかな開きにもかかわらず、こういう深刻な対立が続いておるということは、やはりそこに何らか対立を続けていかなければならない、紛争を解決することができない私は原因があろうかと思うのです。で、その一つの原因は、結局会社側としては十分な支払い能力もあるし、特にこの会社は日本における計算尺の大部分の供給を行なっておるいわば独占事業にも近いような会社であり、経営状態もきわめて良好であろうと考えられます。それは昨年の十月にこの会社が行なった資本金の増資に当ってとられた全額無償交付によってみてみても首肯できるわけでありますから、そういう独占的な、しかもきわめて優良な経営成績をおさめておるにもかかわらず、一般賃金としては女子職員が多いという点もありましょうけれども、給与ベースとしては非常に安い状態に置かれておる。そういうことがやはり問題の大きな点であろうと思うし、さらに、いろいろの会社の労務管理と言いましょうか、労働者に対する経営者の考え方、扱い方というものが非常におくれているのではなかろうかというふうに考えられるのですけれども、こういう点について、労働省は何か把握しておられるのですか。
  193. 山崎五郎

    説明員(山崎五郎君) ただいま要求金額と回答金額が非常に接近しておるとこういう御指摘がありますので、要求通り出せばいいじゃないかという論も出ますが、同時に、要求に近いものが出たからのめばいいじゃないかと、こういう論も出てくるかと思います。でありますから、金額が接近したからといって紛争議が解決しやすいとこういうふうにはなかなかいかないのであります。われわれ第三者としては、非常にこういう問題について割り切りやすい点があるのでありますが、両当事者になりますと非常にこういう点はむしろかえって固執するような点がありますので、それだけではわれわれの意気込みとかえって相反するような結果が出てきておるのが現状であります。会社の経理内容につきましては、御指摘通り私聞いておりますが、非常に会社の経理内容等はよいとこういうふうに聞いております。で、その経営内容のよいのと比較して賃金がどうかということになりますと、片岡委員の御指摘のようなことも言えるかと思いますが、全般的にこの種の中企業と申しますか、こういうところと比較しましては、では一体悪いかという点になりますと、これまた悪いと、こういうふうに言えない点もありますので、従来この会社の労使関係は非常に円満にきておると、こういうふうに聞いておりましたし、われわれもそういうふうに見ておりましたが、一たびこれがこういうような紛争議に入って、まだ解決を見ないという点につきましては、いろいろ組合幹部等もこれをまとめるために苦労しておる点も、私承知しておりますが、会社側としてもこの点につきましてはなかなか譲らない点があるようであります。労務管理の点につきましては、私具体的に今まで紛争議がしょっちゅう繰り返されておりますとよくないなと、こういうことは言えるのでありますが、今まではそういう点はなく過しておりましたので、具体的に指摘されるようなものは、それほど私の方では把握しておりません。
  194. 片岡文重

    ○片岡文重君 従来労使の紛争があまりなかったから、労務管理がよくいっておったのではないかという見方も、なるほどないわけではないが、たとえば近江絹糸のごときも、あの争議の勃発するまでは、何らこの労使の紛争というものは起きておらない。むしろこういう中小企業の紛争の表面に出ておらなかったところほど労務管理が封建的であり、前時代的であるということを労働省としては十分考えていただきたいと思う。ことにへンミ計算尺の場合には、女子職員が七、八割を占めておる。ほとんど工場においては九割近くが女子職員において占められておる。従って、その勤続年数もそう長くないわけです。これらを管理するいわゆる課長とか部長とかいう人たちは、実権を握っておる本社からの指令によって、むしろ機械的な労務管理を行なっておるから、屈従といいますか、圧迫にたえ得る限度までは労使の紛争というものは出てこない。ところが、一たびこの忍従の限りに達すれば、限度に達すれば、これはやはり爆発せざるを得ない。これが爆発してくれば、今までのうっせきしたふんまんとそれから押えつけられておった怒りというものが、強い団結心となって現われてくるから、なかなかわずかなところまでいっても労使の紛争は解決をしないということになる。私はヘンミの状態はこういうところにあるのではなかろうかと思うのです。こういう点についてはさらに一つ労働省としても十分に検討、現地について御調査を私は従来の行き方についてお願いしたいと思う。特にこの私が申し上げた点が裏書されると思うのは、この紛争が起ってから会社側はあっせん案を拒否するならともかくとして、そのあっせんをすらしばしば拒否をしておる。こういうやり方は明らかにこれは近代的な労使の慣行を知らない者のやり方か、もしくは労働組合というものの存在を無視し、労働者というものの人権を完全無視しておる考え方から出てくるものだと思うのです。今もなお聞けば、経営者側は逃走といいますか、どこかに隠れておって、なかなか団体交渉には応じておらぬという状態にあるそうですが、これらは明らかにその感覚的にも私はずれておるし、あたたかい労務管理ということについては、およそ縁遠いものではなかろうかと思います。従って、労働省としては、私はこういう紛争に労働省が積極的に立ち入るということは、もちろんやめてほしい。これはあくまでも労使の紛争は自主的な解決によって、自主的な交渉によって解決されることが望ましいのですから、よけいな介入をすることはまあ好ましくないし、むしろこういうところで論議することも私はなるべく避けたいという考え方を平素持っておるのですけれども、こういうこの中小企業の経営者は前時代的な考え方で、特に弱い女子労働者を苦しめるような場合には、やはり労働省としては、この経営者の教育を十分に一つ積極的にやっていただきたいとお願いするわけです。  次に、警察の方が見えておられるようですから、一つお伺いをしたいのですが、最近のこの種の労働争議に当って、どうも警官が介入する傾向が再び多くなってきたのではないかという感じを私は受けざるを得ない。今、労働課長の御説明を伺っておりますと、七月の二十三日といわれたようですが、七月二十三日にやはり何かトラブルが起っておるようです。で、この七月二十三日に起ったトラブルに対して、埼玉県警は動いておるようですが、この埼玉県警が動いた経過、理由等について、御承知でありまするならば、まずお聞きをしておきたい。
  195. 山口喜雄

    説明員(山口喜雄君) 七月六日から無期限ストに入りまして、七月二十日ごろから、スト中の組合員は、会社及び非組合員に対して、入門をさせないというような、入門拒否の戦術をとっておったのであります。二十日ごろからは入門をきせるようになったのでありますが、多数の組合員で取り囲んで、まあこれをもみながら会社の事務所まで送るというようなやり方をやっておった。七月の二十七日に、今御質問になりました事件が一件起っておる。これは会社側の関係者が四名門の中に入ろうとしたのであります。で、これに対して労組員が約三百人ばかりで、まあ入門をさせるようにはなったのでありますが、今までのように、会社の事務所までもみくちやにして送るというような気配が見えましたので、からだの弱いある課長は、門の外にのがれまして、門に入ることを断念したということです。そしてこの会社側の課長二名が中に入ろうとしますと、女子を大部分とします労組員が、午後二時ごろからこの二人を取り囲みまして、まあワッショイ、ワッショイとかけ声をかげながら、一名に対して約五十名ぐらいが一団となってもんで、正門から会社の事務所の前まで約二十メートルの間をジグザグに往復をしまして、十五分間にわたりましてもんだわけであります。その際に、三名の者が、この一名の庶務課長に対しまして暴行を加えまして、先ほど御説明がありましたように、全治二週間ばかりの傷害を負わせた、こういう事件であります。この事件につきましては、警察におきましては、三名につきまして逮捕状の発付を受けまして捜査をいたしました。八月三十一日に二名起訴になっておるのでありまして、一名につきましては処分保留こう、いう現状でございます。もちろん警察といたしまして、労働争議等に介入をいたすというような考えは毛頭ございませんが、ただこういう争議に関連をいたしまして、違法が行われます場合には、警察といたしましても、これに対して取締りを行なっていかざるを得ない、こういうことでございまして、われわれとしましては、労働争議に対して、警察として介入していくというような考えは、毛頭持っておりません。
  196. 片岡文重

    ○片岡文重君 もちろん労使の紛争の場合であっても、秩序を破るような違法な行為に対して警官が出動するということはやむを得ないことだと思うんですが、このヘンミの場合を例にとって見ましても、はなはだ警官のとった措置というものが納得できない点が多いと思うのです。もちろん先ほどの鈴木化学の場合でも、会社側、組合側、それから見ておった者、それぞれ話が違うということであります。ヘンミの場合にも、それぞれの人によって違うでしょう。これはしかし、だからといって問題の真の原因というものが三つも四つもあるわけではない。一つの事態に対しての見方が違うのであって、警察としては、やはりなるべく公正な立場をもって、そのただ一つの真相を把握し、これを公正に究明していくことに、そうしてその再発の起らないように私は努力をしていただくべきだと思うのです。で、今御答弁のありましたところによれば、暴力が振われたという御説明でありますけれども、私ども現地におった者に聞いたところでは、暴力を振ったということにはどうしても考えられない。特に医務関係職員の話によれば、この課長は貧血ですかの常習者というのも変でしょうが、とにかくそういう常癖を持っておるということでもあるし、たまたまそういう興奮しやすい状態の中でその病気の発作が起ったとも考えられるし、特に先ほど来申し上げておるように、女子職員でありますし、たまたま当日はスクラムを組んでおったということですから、暴力の振いようが私はなかったと思う。そういう点からいっても、暴力を振ったとは考えられない。がしかし、その点の追及はまた別としても、ふに落ちないのは、七月の二十七日の事故に対して、八月の十九日に検束を始めておるようです。しかもこの検束というよりも、これは普通の場合には、私は周囲におった者に意見を聞くために、参考人として任意出頭を求めるのが普通であったと思うのですが、警察でとられた態度は、聞くところによると、十九日の朝早くそれぞれの組合員の自宅に踏み込んで、その女子職員を初めとして、十数名の人たちを、有無を言わせず検束をしておるようです。こういうやり方は、最近の警察としては当りまえのことなんですか。
  197. 山口喜雄

    説明員(山口喜雄君) 逮捕状を執行いたしましたのは、男子の職員三名でございます。女子職員につきましては、参考人として取調べはいたしました。早朝から自宅から逮捕状を執行したというようなことはございません。それから被害者本人は、事実、上半身に打撲傷その他のけがをいたしておることは事実でございます。なお、けがのありました上に一時失神状態になったということでございます。
  198. 片岡文重

    ○片岡文重君 打撲傷を負い、失神状態に陥ったことは事実だという断定はどこからされたのですか。
  199. 山口喜雄

    説明員(山口喜雄君) これはもちろん本人の供述、あるいはその現場におりました人々につきまして十六、七名の参考人の供述を取りまして、そして大体この被疑者がこういうようにやったという証拠を得まして、措置をいたした次第であります。三名検挙いたしましたが、うち一名につきましては、現在まだ取り調べ中でございまして、処分保留ということになっております。
  200. 片岡文重

    ○片岡文重君 本人の供述というものだけで、この被害が成立をするとし得るならば、私は警察も検察庁も非常に信用できない存在になると思う。本人だけ、つまりいわば告訴をしたかどうかわかりせんが、この被害を受けたという人だけの供述に基いて、これを警察が事実である、こう認定するならば、私どもは将来非常なる不安な状態におかれると思うのですが、警察としては今そういう事実の認定の仕方をしておるのですか。
  201. 山口喜雄

    説明員(山口喜雄君) 先ほども申し上げましたように、もちろん被害者である本人から事情も聞きます。そのほか、現場におりました組合の関係者の人も参考人として事情を聞いております。また、組合側でない会社側の課長、あるいは守衛というような人で現場の近くで見ておった人の供述も得まして、いろいろ各方面から調べまして、その容疑者として三名について逮捕状の請求をいたした次第であります。被害者だけの一方的な言い分によって事を取り扱うというようなことは、これは差し控えて参っております。
  202. 片岡文重

    ○片岡文重君 どうもきょうは残念ながら、私は決算委員会においても質問しなければならない時間に迫られておりますので、長く納得のいくまでお尋ねすることができないのをはなはだ遺憾と思うのですが、この警察でお調べになられた十何名かの諸君の供述というものも、私は決してそういう断定を下すほどの供述はしておらないと思う。なぜしておらないかといえば、そういう事実がほんとうにあったかどうかということすら私にはわからない、組合等について私の伺っておる範囲では、そういう暴力行為は少くともスクラムを組んでおった状態の中では行い得ないことだと思うし、その一事だけをもってしても、そう全身に打撲傷ができるほどの暴力を組合員が……、手は二本しかないはずですから、そうはやれないだろうと思います。しかし、この問題についての追及は先ほど申し上げた通り時間がありませんから、そしてまた、今後の裁判所における追及によって明らかになることでしょうから、その後にするとして、十九日の朝早く婦人の組合員を警察から来て連行した、これは間違いないことだと思うのですが、警察部長ですか、警務部長さんですか、あなたはそういうことについての報告は受けておりませんか。
  203. 山口喜雄

    説明員(山口喜雄君) 十九日の日に逮捕状を執行いたしましたのは三名、それから参考人として十数名の方に出頭願っております。従って、あるいはその婦人の組合員の方のところに参考人として任意出頭を求めたということは、これはあり得ると思います。これはしかし、逮捕状の執行でも何でもないし、参考人として警察署に来ていただいて事情を聴取した、こういうことでございます。
  204. 片岡文重

    ○片岡文重君 ですから、その事態が明瞭になり、あるいは被疑事項が濃厚になって、そうしてかつまた、逃亡のおそれもあるということで逮捕状を執行されるならば、それは時間の都合もありましょうし、警察の方の考え方もありましょう。私が今ここで聞いているのはそうでなくて、参考人として供述を求められた女子組合が、朝早くから警察に自宅から任意出頭ではなくて、これは警官が来て逮捕状を示さずに、警察官であることを告げて、任意出頭であるから行って下さいと言われても任意出頭にならぬでしょう。少くともこの埼玉県の大和町ですか、あたりで、そうして警察官が警棒をがちゃつかせてきて、連れて行くのだということになれば、女子職員にとっては、これはまさに終生忘れることのできない大きな私は脅威を感ずるでしょう、威嚇されるだろうと思うんです。そういう状態の中で連れて行くということは任意出頭ではないでしょう。それでもしかし警察は任意出頭だと言いはるんでしょうか。
  205. 山口喜雄

    説明員(山口喜雄君) 任意出頭を求めます方法は、これはいろいろあると思います。書面をもって出頭を求める場合もございましょうし、場合によりましては直接本人のお宅にお伺いをして任意出頭を求める場合もございます。あるいは電話で求める場合もございます。これはいろいろあると思います。
  206. 片岡文重

    ○片岡文重君 いろいろな事情はあります。やり方もあります。それを伺っているのではない。一体それではこの女子組会員に対してそういう早朝から恐怖の状態に陥れて、警察官が引き連れていく、そうしていろいろと質問をする、会社側の参考人に対してやはりこの五時、六時の早いときに行って任意出頭を求め、直ちにその場から連行してお調べになっているのですか。
  207. 山口喜雄

    説明員(山口喜雄君) この工場の争議につきましては、会社側の職員が被疑者と見られるような事件は起っていないように聞いております。
  208. 片岡文重

    ○片岡文重君 女子組合員を参考人として連れて行ったのは、この警察という、いわゆる暴行事件の被疑者として連れて行ったのですか。
  209. 山口喜雄

    説明員(山口喜雄君) 告発状の中には被疑者として立てられておりました女子職員もございますが、警察としましては、被疑者としてではなくして、参考人として任意出頭を求めて、被疑者として取り調べをいたしてはおりません。
  210. 片岡文重

    ○片岡文重君 被疑者としてでなしに、参考人として警察がお調べになっておられる、お聞きになっておられるというのであれば、当然この会社側の課長なり、一緒にいた課員なり、とにかくその会社側の者もおったはずです。これらの者からも当然参考人として警察で事情を聴取されていると思うんです。その場合にやはりこの女子職員にとられたと同じような処置をとっておられるのかどうか、それをお聞きしたいんです。
  211. 山口喜雄

    説明員(山口喜雄君) 時間の点につきましては、私報告を受けておりませんので存じませんが、参考人として任意出頭を求めて事情を聞くという意味におきましては、会社側の人であろうと組合側の人であろうと、その間に差異はないものと私は考えております。
  212. 片岡文重

    ○片岡文重君 まず会社側も組合側も、男であれ、女であれ、それに差別のつくはずはない、これが私は常識だと思うんです。そうでなければならないはずです。しかし、残念ながら私の聞くところでは、このへンミ工場の紛争の場合におけるこの今のトラブルについて警察がとられた態度は、参考人として警察がお聞きになるのに、朝早くからこの組合員の自宅に警察官が行って、そうしてその場から連行しておられる。しかし、会社側に対して私はそういう措置を警察がとられたということは私は聞かないんです。被疑者として嫌疑濃厚なりという立場から、あるいはまた、そうしなければ逃亡するかもしれぬ、こういうようなことでもあったなら別ですが、もしそういうことがあったならその事実を、根拠をお知らせいただきたいし、そういう事実がないとするならば、どういう何でそういうことをしなければならなかったのか、こういうことを私はお聞きしておるわけです。
  213. 山口喜雄

    説明員(山口喜雄君) 事実関係をもう少し御説明を申し上げたいと思います。  逮捕状を執行しました三名につきましては、八月十九日午前五時半に出向いたしております。任意出頭を求めましたのは十九日に七名でありますが、そのうち婦人は四名であります。この四名とも出頭を求めて参りました時間は、午後二時十五分から五時までが一名、二時十五分から午後五時十分までが一名、二時十五分より五時までが一名、それから二時十五分より五時十分までが一名、こういうようになっております。午後二時に出頭をいたしておるのであります。朝、自宅から警察官が連行というような形でいたしたのではないのであります。それから二十日の日に、参考人の取調べをいたしましたのが六名ありますが、そのうち女子が一名であります。これも午後零時十五分に出頭いたしまして、午後三時に参考人としての事情聴取が終了しておるということでございまして、朝、未明から自宅から連行したというような事実は私ども報告を受けておりませんし、また、常識から考えましても、参考人として出頭を求めるのに、婦人に対してそういう時間に連行という形式で任意出頭を求めるということはちょっと考えられないのであります。報告は私がただいま申し上げましたようなことになっております。何かその間に行き違いでもあるのではないかと、かように考えております。
  214. 片岡文重

    ○片岡文重君 決算委員会からまた催促がありましたので、はなはだ残念ですが、今の出頭の問題については御答弁の通りであろうことを私は心から願っております。しかし、現実にはやはり相当厳しく行われておる。特に女子職員のこの自宅近くに来て、平素の行動にまで、組合活動ばかりでなしに、私生活にまで立ち入って警官がその自宅付近において事情調査と言いますか、そういう聞き込みをやっておる、こういうことはこれはどんな必要があっておやりになったのか知らぬが、こういうことも特に結婚前の女子職員等にとってはこれは致命的な打撃です、こういうことをされることは。こういうことは組合の諸君に対しては非常に厳重に仮借なく行なっておられるようですけれども、会社側の幹部諸君に対し、やはりこういう聞き込みやあるいはその事情聴取等についての措置が同じようにとられておるかどうか。全然とられておらない。非常にこの間に大きな開きがあります。従って、この会社側としても現に姿を見せないで、組合との正常なる団体交渉をも拒否しておるような経営者の諸君ですから、こういうつまり警察の態度について見のがすはずはないのです。組合の弱体化のために警察の力というものを申し分なく利用いたしております。だからこそ、自発的に組合の説得のためにあるいは給料支払い等の用務のために来た会社の課員に対して、専務夫人ですか何かが一方的に誤解をして警察に電話をしておる。この電話に基いて警察があわてておる。こういう笑止千万な事態も起っておる。これはこの一例を見ても明らかに警察が組合員の行動にのみ神経をとがらせ過ぎておる私は結果だと思うのです。不当な事態の起ること、不測な事態の防止のために警察官が公正な態度で行動されることについては、何ら私ども異議を申し上げるものでもなければ、むしろその活動の敏速にして公正なことは願うところであります。しかし、今申し上げましたような事態が現実に行われておるとするならば、特にこういう争議が長引けば長引くほど組合員も神経が高ぶって参りますから、不測の事態が起らないとも限らない。むしろ警察官が介入することによって事態が紛糾しないとも限らないのですが、こういう点について、さらに一つ地元警察に対して十分な御注意を喚起していただきたいと思うのです。  労働政務次官に一つお尋ねを、お尋ねというよりもむしろ要望になるのですけれども、今お聞きになっておられます通り、会社としては経営状態も非常によろしいし、今後の会社経営についての不安もまずないような独占事業であります。で、こういう状態の中で、従来の労務管理はきわめて封建的であったと思われる数々の事例があります。争議の中に不当に労働省が介入されることを私は望むものではもちろんありませんが、こういう前時代的な考え方を持つ経営者に対して、労働省はやはり十分な注意を与えられるなり、善意のあるこの争議の解決に側面からの御援助を私はお願いしたいと思います。これに対して、労働政務次官の御意見を一つお伺いして、質問を終りたいと思います。
  215. 二階堂進

    説明員(二階堂進君) この問題につきましては、先ほど組合課長も申しました通り、当事者を呼んでいろいろ所見をお伺いしたのですが、また、経営者側の万で非常に旧時代的な感覚で労働者に対決しているというような点がありましたならば、大臣もしばしば申しておりまする通り、そういう啓蒙、指導は積極的に行なっていくつもりであります。
  216. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 本問題に対する本日の調査は、この程度にいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  217. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 御異議ないと認めます。   —————————————
  218. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 次に、プラチナ産業株式会社の争議に関する件を問題といたします。  質疑を願います。
  219. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 これは主として不当労働行為の問題なんです。不当労働行為の行われているところも他にあるのですけれども、特にこれはひどいから、少し労働省意見を聞いて、そうして特に特別な指導をしてもらいたいということで取り上げるようになったのです。  問題のきっかけは、六月の四日にここの賃金は現在九千円くらいなんです。営業は非常にいいのですが、賃金が九千円という非常に安い賃金状態でありますので、そこに今まで組合がなかったのですけれども、今度初めて組合ができて、賃金要求、ベース・アップが千五百円、それから一時金丁五カ月という要求をして、その日のうちに会社と協定をしているわけです。ですから、それで終れば文句はないところなんですが、とにかく一時金の一・五ヵ月は、三回にわたってこれは協定に基いて実施はした。ところが、千五百円のベース・アップは約束をしながら、協定をして実施をしないという問題について労使間で問題が起きているわけです。内容を見ますと、組合の千五百円の中に、一律と、五百円を勤続によって分けるという考え方と、それから会社側は最低を二百八十円にして分けるという考え方、それのみかせつかく協定したものを基準賃金でないとして、基準外賃金という格好で振り当てるという考え方、ここに協定をしてからの問題としてそういう問題が労使間にあるわけです。この問題は順次交渉によって、なかなか相手は実施しないのですけれども、そこで起きてきた問題というのがこれがきょう言わなければならぬ問題だと思うのです。労研、労働者研究会という形の団体、趣味の会のようなものを作りまして、ちょうど静岡にあったような格好で、個々に脱退をしますという者に判をつかすとか、または、お前が組合活動をやっていたら首にするといって会社側が総動員をしましてその組合の切りくずしをやって、切りくずしと言いますか、この組合の解散というか、そういう形の運動をやっているわけであります。私はその不当労働行為と言いましても、こういうものが常識上許されていいのかどうかという問題、非常に深刻な問題になっているからこそ、きょうはこの問題を特に——むろん争議の状態であります。ストライキに入っておりませんけれども、こういう問題がある。それで経過を言えといえば、私は経過を順次具体的な事例を申し上げたいと思うのですけれども労働省としても多少お調べになっておるようでしたら一つ報告をしていただきたいと思います。
  220. 山崎五郎

    説明員(山崎五郎君) ただいま藤田委員からお尋ねの経過等につきましては、実は率直に申し上げますが、よくわかっておらない点が多いのでありますから、藤田委員の方からそのつどお教え下されば……概要は知っておりますが。
  221. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 たとえば組合の活動を今後やるなら一カ月の退職金をやるから会社をやめてしまえ、組合に入っているなら、とにかく会社をやめてもらいたいという工合にして、まあ白昼に堂々と言いますか、勤務中に次から次と総動員をしてやっていく、結局女子従業員はそれにおびえて——全会一致で組合を結成しそして要求協定もその日のうちに終ってそして自後の、今日まで賃金の問題は解決しない。結局そういう形でまあ行われておるわけです。私はこういう状態が起きたときに、労働省はどういう工合に今まで処置をされておったか、または具体的な、ここでお願いしたいことは、事実をよく調べていただいて、そういう間違いがないように指導をしてもらうということに私は帰結するのだ、ところが、まあそこら辺の労働省のお考え方を少し時間をかけてもお聞きしたいと思うのです。法規課長もおられるし、こういうことが、ぼつぼつあっちにもこっちにも今出てきておる、特にこれはひどいから一つ明確にしようじゃないかということなんです。
  222. 辻英雄

    説明員(辻英雄君) ただいま組合課長から申し上げましたように、具体的な事実を存じませんので、はっきりしたことは申し上げられないかもしれませんが、ただいま例にあげられました、組合に入っているなら会社をやめろというようなことを組合員に対して話をして、それによって組合から脱退をさせるというようなことは、それ自体が明らかに不当労働行為に該当すると思います。不当労働行為に対する救済の方法としましては、御承知のように、労働委員会に申し立てるという制度を法律が予定をいたしておりますが、もしそういうような事実がありましたならば、一般的に申しますならば、労働委員会の救済を求めるべきものだと考えております。また、ただそういう頭の経営者が中小企業等に今なおあるというようなことに対しましては、今後も労働省といたしまして、労働教育の一環としまして、経営者に対する啓蒙指導も十分やって参りたいというように考えております。
  223. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そこで私は特別な例としてこれを取り上げたのですが、こういう例がまあ静岡の問題は私も意見があるけれども、不当労働行為という歴然たる問題になる。地公労法の関係でいろいろ理屈を言っておられたけれども、一般の労働組合が組織をして、労組法に守られている対等の立場という、こういう格好を労働行政の中では——なかなか労働大臣はいいことを言われるけれども、こういう個々の問題については手が届いていないように私は思うのですよ。サボっておられるようなことはないと思うのだけれども労政課も、東京都は局が、労働局まであるんだ、だから、その監督行政労働省が一括しておやりになっているわけですから、こういう点はもっと積極的にやっていただきたい。この問題は資料を差し上げますから、十分に一つ検討して早急に処置をしてもらいたいけれども、このような驚くような実態というものが世間にあるということを認識して、あらためて不当労働行為は、無論それの保護処置というのは労組法にもあるし、それから労働委員会という役割があるんですから、これは手続としてはいいんですけれども、そういうことの起きない労使関係を作り上げるというところに、私は労働省労働行政の中心があるんだと思う。そういう点を特に配慮してやってもらいたいということを特にお願いしておきたいと思う。よろしいですね。
  224. 二階堂進

    説明員(二階堂進君) そういうような具体的な例がもし使用者側にあるような場合には、先ほど申し上げました通り、今後は一そう積極的にそういうことがないような指導啓蒙教育を行いたいと考えております。
  225. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 本件に対する本日の調査は、この程度にいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  226. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 御異議ないと認めます。   —————————————
  227. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 次に、全日本自由労働組合福岡支部の紛争に関する件を問題にします。質疑を願います。
  228. 山本經勝

    山本經勝君 時間が切迫しましたので、二点だけ質問申し上げたい。第一点は、労働省関係で、前回の当委員会労働大臣に対しまして、今職安の窓口で非常に窮屈な条件に追い詰められているということは非常に問題であるし、たとえば適格条件なるものが非常にきついことを言われておる。従って、そういうことから引き締めをしておるのではないかということを質問申し上げたら、労働大臣はそういうことはないはずである、自分はそう考えていない、むしろ今四十四、五万の職安窓口の登録人員があるが、完全失業者と目される者についてはむしろ幅を拡大したい、こういうような御答弁があった。そのために、東京都内の適当な職安の事務所の実情を回って見たい、ここまでお話しになった。ところが、今福岡で起っておる状態は、今申し上げたよりさらに輪をかけた強いきつい、県の労働部長の通達が出ております。これは本年の七月の末ごろに出され、それからさらに八月の末ごろにも出されておる。その文書の要領は大体次のようなもので、適格条件としての厳正化という問題で、家計の担当者であることが第一点、それから一世帯一名であるという限定、それから家族構成三人以上のところでなければならないというようなこと、それから六十才以上の者は適格に入らない、こういうことで制限をされている。さらに雨の降る日には仕事をさせてはならない、それからいわゆる職場を離脱した者に対しては賃金をカットせよ、こういうような指示がなされておる。そこで非常にこれを自労としては問題にしておるわけですが、こういうようなことを強力に行政指導するように、労働省はこの間の労働大臣の言明にもかかわらず、都道府県の担当者に対してなさっておるかどうか、この点をまず明らかにしておきたい。
  229. 三治重信

    説明員(三治重信君) この大牟田のは本年に入ってから、福岡の労働部長が現地の安定所並びに事務所に対して、このような通牒を出されたのに対しては私たちも承知しておりますが、大体私たちも従来こういう線は十分守られないと、いつも問題になります。失対事業の就労者が非常にぶらぶらしていると、就労状況が悪いと、非常にまあ年寄りまた労働能力のない人がずいぶん入っているんじゃないかというような非難に対して、ほんとうに働く意思があり、能力がある人によく限定してもらいたいとともに、やはり登録につきまして、家族なり、その家計が相当維持されているようないわゆる家族構成にある家庭でですね、さらに失対事業にわれもわれもと入られても、従来労働者でない、やはり非労働力であった人までもこういうふうに正規の国の事業としてやられる失業者の入るワクを狭めるようなことのないようにということで、常々従来われわれの方で指導していた線と思っております。
  230. 山本經勝

    山本經勝君 今のお話ですが、われもわれもとてんやわんやで押しかけてくるような職場ではございません、これはあなたご存じかどうか知りませんが。しかもですよ、雨の降る日の就労してはならないということは、一カ月二十一日の一応ワクを備えて、ところが、一週間なり三日なり雨の降ることはざらにあるんですよ。そうすると雨天のときに、たとえば特殊な条件のもとで装備をして就労をすることは従来もさせておったし、今問題になっておる大牟田の雨天就労の際もこの大牟田に対する規制があったけれども福岡市並びに北九州五市についてはそういう規制はなされておらない。普通の状態で今までの慣行によってなされている。特に大牟田だけがこういうような取扱いを受けたということは一体どういうわけなのですか。
  231. 三治重信

    説明員(三治重信君) そのときの状況はですね、まあ大牟田が特別雨がひどかったということをまあ県当局は言っておりますが、まあ従来のこの福岡県の雨天就労の問題は非常にあまりにもわれわれの監察官の監査の結果でもひどいんです。ことに大牟田はまあ少し雨が降ると自宅待機といって、安定所へ来て紹介状をもらってみんなうちへ帰ってしまう。そして四時ごろになって賃金をもらいに来る。それがもうずっと慣習になってしまった。これでは一般のどんな民間の事業でも、ほかの政府の事業においても、いかに何でも少しひど過ぎるんじゃないかということで、もう少し——もちろんその今先生のおっしゃったように、二週間も四日も続いて雨が降ってどうしても就労できない、しかしながら、一般のこういう日雇い失業労働者についての、日払いになっておりますから、それは生活が、そういうふうになってくると、困難になるから、その便法をとっておる都市も聞いておりますが、そういう特殊の例は別として、普通の、たまに一日降ると、またはわずかの雨の降る雨模様ぐらいで、当然現場に行って一時間なり二時間待てばすぐ就労できる状態の場合でも、少し雨がばらつけば全部自宅待機といってみんな自宅へ帰ってしまう、全然現場へ行かないというような、まあ非常にひどい状況であるから、われわれの方は監査の結果、雨天就労の場合に、その就労に、働けないのに紹介状を切ってしまって、そして自宅待機で、四時ごろになって賃金をもらいに来るというのは少しひどいじゃないか、当然就労できない雨天の日は就労は禁じ、事業主体としてきょうの作業は中止を当然出すべきじゃないかというふうに指導しております。それはまあほかの府県においても特別な場合は別といたしまして、大体において雨天就労は、続かない限りにおいてはどこでも、また、一般の事業体においてもこれはまあ当然就労できない状態の場合に就労紹介すると、また、事業主体が就労さしたような形をとるということは、これは会計検査院においてもまあ従来もそれは不当経理ということで非常にまあわれわれは強い注意を受けておることなんで、まあ当然な処置だと思っております。
  232. 山本經勝

    山本經勝君 これは今お話になったのは、あなた現場からの——現場というよりも県の方からの報告ですか、今お話になったのは。県の方で言っているのは、私が職安の事務所に、職業安定課でいろいろ話を聞いたのです、このことに関連して。そこで、雨天の際も雨具を用意して、ちゃんと準備して出てきているのですよ。今お話のような実態を私は聞いておらない。私は地元だけれども聞いておらない。あるいはその特例があったかもわからない。一、二の例があったかもわからない。その一、二の例を、特例を全体としてそういうふうにお考えになっているのか。これはその点はどうなんですか。
  233. 三治重信

    説明員(三治重信君) これは県からの報告によれば最近、まあこの二、三年だと思いますが、そういう傾向がだんだん強く——もう一番失対事業を始めてからずっとそういうことでもなかったようでございます。
  234. 山本經勝

    山本經勝君 一応お話進行させるのですが、あとで要望がございます。  そこで、今の職場離脱について賃金をカットせいということが、内容については私今課長の方から伺っておらぬのですが、問題はこういうことなんです。その中には、昨年の八月の五日から同年の九月の四日にかけて数次にわたる県当局と自労の間の取りきめがあった。その取りきめの条項に違反した事柄は行われておらない。これも私現地並びに県当局に対して十分調べたのです。そこで、その協定は土木部と、あるいは福岡県の土木出張所、大牟田にある出張所長との間で取りきめられた労働条件に入っておる。この種の取りきめに対して労働省はどうお考えになっておるか。
  235. 三治重信

    説明員(三治重信君) 補助条件に違反するどういう取りきめをやられても、それはやはり無効だと思います。
  236. 山本經勝

    山本經勝君 そうすると、労働者としては、つまり職安の窓口で就職をその日その日にあっせんをする、そうすると、行った所が県の土木の事業所である、こういうことになるとですね、そうしますと、土木の出張所長、あるいは土木課長等と話し合ってこういうふうにしてやろうという取りきめがこの指示の中に違反するということはどういうことなんですか。たとえば就業中病気で病院に行かなければならぬ、あるいは公民権の行使をなさなければならぬ、あるいは組合業務について一定の時間を切ってそれにつくことを認める協定ですが、そういうような協定がこの指示の内容からいって違反するものであるという解釈になりますか。
  237. 三治重信

    説明員(三治重信君) 労働省からは、その職場離脱の場合で賃金カットをしない場合というのは、選挙権その他公民権の行使の場合、公務上呼び出されたときの場合、それから就労中の負傷または急病によって職場離脱をする場合、それから家族の急病、出産、死亡等によってその場合連絡があって帰った場合というふうに指示しているのでございますが、この大牟田の全日自労の分会とこの現場の出張所長との取りきめの場合においては、産前産後の二週間、同居家族の死亡の場合の死亡より三日間の有給、これに休んでも賃金は与える。別居の家族の死亡の場合で毛一日与える。配偶者の出産の場合でも一日与える。組合用務によるものはその所要の日数だけ有給を与える。その他は小中学校の入学式の出席に対しても賃金を与える。PTAの会議の出席にも賃金を与える。隣組の無常講の出席にも賃金を与える。町内会の用務だといっても賃金を与える。組合の用務といっても賃金を与える。冠婚葬祭のための休みも賃金を与える。私病のための通院でも賃金を与える、こういうふうな協定というものはやはりどういうふうに考えても少し、まあこれが完全な民間の企業の中における取りきめでも少し激しいと思いますが、このわれわれの方の失対事業の就業者の就労条件というものにつきましては、やはり国の補助金で一定の救済事業としてやっているので、相当なやはり制限をしているわけなんですが、こういうものはやはりどうしてもこうきめられておっても、やはりこれはとても会計検査院の承認を受けられませんし、われわれとしても、先ほども申し上げた程度のことにつきましては、会計検査院としても不当経理等のないように話し合いがついていますけれども、一番最初申し上げました以上の約束が現地においてどういうふうに行われておっても、それはまあ不当経理になり、それは約束されてもやはり補助事業としての失対事業の違反になるというふうにわれわれ了解しております。
  238. 山本經勝

    山本經勝君 その今のお読み上げになった協定といいますか、覚書か、あるいは確認事項かしらぬが、それはあとで見せていただきます。私も写しを持っている。非常に違う。  ところが、その前に時間がないから私伺っておきたいのですが、労働省で言われている就労の規制ということは一体何の目的ですか。あなたの方で就労を規制するということは……。
  239. 三治重信

    説明員(三治重信君) これはまあ……。
  240. 山本經勝

    山本經勝君 なるべく仕事はさせないようにするのですか。
  241. 三治重信

    説明員(三治重信君) いやそうではございませんで、まあ失対の労務者の稼働につきましては、民間それから公共事業特別失対、そういう事業との就労と合せて、月間基準として二十一日の就労の基準でここ数年やってきているわけでございます。就労基準というのはやはり二十一日確保というふうに考えております。
  242. 山本經勝

    山本經勝君 それはわかっています。二十一日という一応のワクがあればこそ、雨天といえども三日以上連続する場合には何らかの雨天の状態のもとで就労させるような努力を県がやっている。そうすると、その努力に対してもあなたの方の公式的な見解ではだめなんですね。そうなると、結局何か就労させないように、ワクはあるけれども、そのワクの中に押え込んでしまうような、こういう考え方なんですか。これは先日の労働大臣お話と全く食い違う。そうじゃなくて、たとえば職安の窓口が閉めてあるのじゃなくて、むしろ拡大して、それに就労できないものについても極力事情の許す限り拡大したいのだ、こういうことを大臣が言って、みずから東京都内の職安の窓口を見て回るということを言われた。あなたの今のお話は、反対にいわゆるワクをなるべく押えて、金をためるために、予算を残すために努力されるように承われるが、その点はどうなんですか。
  243. 三治重信

    説明員(三治重信君) 決してわれわれの方は、予算が非常に不足するということのような実際のやり方は困るわけなんですが、決して残すような考えでやっておりません。ただ、実際の就労の場合の、この福岡の大牟田の場合においては、やはり県の方も、雨天が続いて二十一日就労できない場合には、降雨の出勤もさして、かわりの日曜就労までやろうというふうな計画をしておって、二十一日の就労はできるだけやれるようにいろいろな工夫をしているようであります。
  244. 山本經勝

    山本經勝君 ちょうど問題の起った七月二十六日なんですが、ちょうどあのときは台風何号でしたか、長崎県の諌早に大事故が起った前日なんです。九州一円は二百ミリ以上の降雨なんです。さっき大牟田だけが特に雨がひどくて就労をとめた、こういうようなことを言われたのですが、私も当日は佐賀に行っていた、そこで私は途中で雨に閉じ込められずに済んだのですが、そういうことで、北九州一円はあの前の日から降り始めて、二十五日から降り始めて、二十七日の明け方に問題が起きたわけなんです。あの間は四日間連続雨が降っている。そういう状況のもとですから、就労させるという問題が起ったのですが、三日以上続けば、その日その日働いた賃金を窓口でもらって帰って、それで米を買って食う日雇い労務者にとっては生活の方法がないのです。にもかかわらず、今言われるような規制が行われ、しかも、雨天就労をさせてはならないという厳重な示達があり、あるいは職場離脱の問題にしても協定があるが、その協定あるいは覚書という形にしても話し合いできまっている。きまったものがそのような線でやられておるということは、組合だけの責任でしょうか。あるいはまた、今押えてなるべく働かせないようにするという言葉は悪かったけれども、実際結果から見ますとそういうふうにしか見えない。二十一日事実上働けない。もし一週間雨が降り続いたら、四日以上続いたら月に二十一日の就労は困難である。あるいは日曜を振りかえると言われるけれども、九州には大体月に三回程度の大小にかかわらず台風が襲い寄る。十号が通ったと思ったら十一号が回ってくるというような状況で、雨がきわめて多い。そういう状態のもとですから、この就労というものは非常に困難な状態にある。そういう中で、今のようなお話で公式的なワクをはめていくというような指導の仕方であれば、これは就労をとめるというふうに動いておられるとしか受け取れぬ。労働省労働者保護し職場を与える、あるいはいろいろな意味で生活の安定をはかるということがもともと目的であるなれば、むしろそこら辺が、さらに発展的に拡大して対策考える必要こそあれ、規制することを中心に政策を推進するということは、むしろ反対じゃないかと思うのですが、その点はどうなんですか。次官の方から承わりたい。
  245. 二階堂進

    説明員(二階堂進君) 私はこの日雇い労務者の方々が困っておる実情を、特にこの大牟田の問題につきましては、先般も私は県庁に参りまして、労働部長からも事情を大体は聞いて参っております。非常に困った問題であると思いまして、さっそく帰りましてからも、当局の者を呼びまして何かできるだけ早く解決するような方法はないものか、こういうふうに注意もいたしておるわけでございますが、何も私、県の労働部長といたしましても就労日数を制限しようというような意図を持っているとは考えておりません。ただ失対部長がさっき申し上げました通りに、少し市当局との協約と申しますか、行き過ぎた協約があるのではないかというふうには一応考えられるのでございまして、そういう行き過ぎた協約等を漸次正しい姿に変えようというような努力考えてそういうような通牒も出しておるものと考えております。雨の大小にかかわらず、雨の日は就労してならないというようなきついことは通達をいたしておるとは私は考えておりません。
  246. 山本經勝

    山本經勝君 時間がありませんから、今の問題、先ほど失業対策部長ですかのお話のようなことであれば、次の機会に県の職安の課長をこの委員会へ呼んでもらいたいと思う。  それから次の問題に移るのですが、法務省の刑事局長さん大へんおそく御迷惑ですが、お見えになっていただいておるのでしょうね。
  247. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) はい、見えております。
  248. 山本經勝

    山本經勝君 実は今申し上げました問題の中で、七月の二十六日に今の雨天就労問題をめぐって大牟田の職安の事務所で組合員と当局側との話し合いが行われた。その際に、青柳という県の査察官といいますかが現場においでになったということ、そこで今申し上げたような趣旨の労働部長通達なるものを携行して、そこでいろいろ問題を起したようでありますが、ともあれ、そのときの現場の模様をかいつまんで申し上げますというと、約千名程度の組合員がその現場におった。そうして、その周囲には、大牟田警察署の署員が約四十数名制服でおった。ちょうどその職安の事務所の前に玉栄館という旅館があるんですが、その二階には、大牟田警察署の警備課長以下幹部が私服で待機している。こういうような情勢である。その中で、今申し上げた青柳査察官なる人が、話は私の方から直接あなたの方にはできない、私は今用事があるから土木事務所へ行かなけりゃならぬ、そういうことで、出ようとするのを、実は多数おる組合員の皆さんが、まあ待って下さい、せっかく県からこの問題に関する通達の責任を持っておいでになったということであるならば、県の代表者として話をしたいことがあるからということで、とめたそうであります。そういうのですが、ところが、その問題が、申し上げるように、七月の二十六日の問題、現場には警察官が多数待機しておられ、注意もされておった。そこで、そのときは事なく終って、翌二十七日に話し合いが妥結して、雨天就労等の取りきめが新しくできまして、そこで解決した。ところが、翌月の八月の十九日になって、突如として、自労の委員長である渡邊君並びにその外三名、名前はみんな記録にはありますが、もう省略します。合計四名が、私宅あるいは組合の事務所から逮捕状を執行されて、そうして逮捕された。そこで、どういうわけで逮捕されたかと言いますというと、警察官の取調べによりますというと、二十六日の協議の際に、青柳事務官に対して、踏む、なぐる、けるの暴行を働いた。そこで、そのために傷害を起している。で、暴行傷害、公務執行の妨害、こういうような形で逮捕されたということなんです。私ども現場におったわけではないんですが、この状況について、現場に居合せた職安の事務所の人々や、むろん組合員や、そのほか警察の方の話も大体聞いている。警察の方の話では、それほどひどくなぐる、けるという暴行があったとは私どもは感じていなかったと、こういうことなんです。警察の方では、申し上げるように、四十数名の制服がその周囲にちゃんと警戒をしている。あの職安の事務所というのはいろいろ違いますが、ガラス張りになっていまして、中の状況がずうっと外からも見えます。そういうところであって、しかも、事務室で話し合っていたのです。そこに閉じ込めたことは事実です。多数で、行ってもらっては困ると言ってとめたのは事実ですが、そこで踏む、なぐる、けるという暴行を働いてけがをさせたという事実は、私どもはないというふうに聞いている。ところが、申し上げるように、それから一カ月近い時日が経過した後に、突如として逮捕状が執行されて逮捕され、しかも、申し上げるように、公務執行妨害、暴力による傷害と、こういうことで検察庁が取り上げた、こういう事件なんです。ところが——もう時間がございませんから、かいつまんで申し上げますが、ところが、それが、八月の三十日ですか、三十日かに、弁護士の要求によって勾留理由開示公判を大牟田の支部でやっております。それが終りましてから起訴、不起訴がまだ決定せぬ状態の中で、九月の三日の午前八時ごろに身柄を福岡の地裁の方に送って、そこでそちらに拘束しておる、こういう状態で今日に及んでいる事件でございます。そこで、検察庁の方にいろいろ話を聞いております。警察の方の話も聞いておる。警察の方では、大体今申し上げたような状況で、現場に多数の警官が警戒をしておって注意をしておって、逸脱した状態があるなれば直ちに現場の警察官がしかるべき処置をするはずです。それはしなくて、一ヵ月にも近い時日がたった後に、検察庁からその問題を取り上げたというのは、どういう検察庁の御見解なのか、これは私どもわからない。その点をまず第一点、刑事局長の方から実情がわかっておりますなれば、その実情に即する取扱い方を御説明いただきたい。
  249. 竹内寿平

    説明員(竹内寿平君) 承知しております範囲でお答え申し上げます。結果的に見まして、捜査の結果によりますと、この事件は、今お話のありましたように、なぐる、ける、たばこの火をつけるといったようなことを大ぜいでやった。この事実を見ますると、事件が起ったのは七月二十六日の朝でございまして、それが実際に逮捕されましたのはほとんど一カ月もたっておる八月十九日。この点につきましては、私どもなぜこうおくれたんだろうかという疑問を実は持ったわけでございます。それにつきましては、なぜおくれたかの的確な情報を私いただいておりませんのでございますが、ごく内輪で一つの情報として伺っておりますところによると、当時は、今仰せのように、犯罪内容がはっきりしていなかったということもあったでございましょうが、いよいよ犯人検挙というような問題になりました際に、主犯が何か労働組合の会議等のために出席して不在になっておったらしいのでございます。帰って来ますすぐお盆だというようなことからだんだんおくれてこういうふうになったというふうに洩れ聞いておるのでございますけれどもその間の的確な情報ではございませんが、これは警察庁当局にお尋ねを願わないと、私どもわからないのでございます。それはそれといたしまして、八月十九日に被告人を逮捕いたしました。次いで八月二十一日に身柄拘束のまま福岡地方検察庁大牟田支部に事件の送致をされておるのでございます。検察庁におきましては、被告人全員四名につきまして、罪証隠滅及び逃亡のおそれがあるということで、二十二日に裁判官の令状によってこれを勾留いたしております。同時に、接見禁止等の刑事訴訟法に基く処分も請求をいたしております。八月二十二日になりまして、先ほど三十日とおっしゃいましたが、八月二十二日が正確でございます。勾留理由開示の請求がございまして、次いで二十七日にその開示公判が開かれております。それで、御承知のように、勾留理由開示の法廷におきましては、勾留理由を示してほしいという請求でございました。その示した結果、理由がなければ釈放してくれと、こういう要求になるわけでございますが、その裁判の結果は、釈放不相当であるということで、この要求はいれられておらないのでございます。次いで八月三十一日に七日間の勾留延長の請求が検察官からなされた。九月三日になりまして捜査上等の必要によりまして、検事は、裁判官の同意を得て、被告人全員を福岡刑務所大牟田支所から福岡刑務所に移管をいたしております。被告人らは、その日の昼ごろから六日までいわゆるハンストを行なっておるのでございますが、七日に至りまして弁護人の勧告を入れたとみえまして、ハンストを中止して、目下健康状態は良好であるというふうに承知いたしております。  九月七日に四名に対しまして、傷害、公務執行妨害という罪名で公判請求をいたした。大体経過はそういうわけでございます。
  250. 山本經勝

    山本經勝君 そこでこれは一般的な問題ですが、たとえば身柄を移送する、つまり勾留の場所を変えるというような場合には、本来家族あるいは関係弁護人、こういうものに対しては通知をすることになっておるのではないですか。
  251. 竹内寿平

    説明員(竹内寿平君) 一般的にそうすべきものであるということには規則の上ではなっておりませんが、ケースによりましてはそういう処置をとることもあろうと思います。
  252. 山本經勝

    山本經勝君 そうすると、たとえば身柄がどこにあるかわからぬ、隠匿されたような格好になりますね。そういうことは普通なんですか。
  253. 竹内寿平

    説明員(竹内寿平君) これは勝手に検察官がやるのではございませんので、裁判所の許可を受けていたします。従いまして、裁判所はもうすでに承知しておりますし、捜査中といえども弁護人を付け得るのでございますから、そういう場合には弁護人に通知される、こういうことになろうと思います。
  254. 山本經勝

    山本經勝君 今の問題の場合には、家族にも通知されていない、弁護人にも通知されていない。これは私が一緒に検察庁に参りまして、園田という福岡地検の担当検事に会い、検事正にも会って、通知してないということをはっきり確認されておる。接見禁止の問題もありますが、そういう状況ですが、これは適切な措置ですか。
  255. 竹内寿平

    説明員(竹内寿平君) 一般的に申しますと、適切な措置とは言い得ないように思うのでございますが、先ほども申し上げましたように、この勾留状が発せられますと同時に接見禁止の処分がなされた。それから弁護人につきましては、接見禁止ということはあり得ないのでございますが、接見の制限ということがなされておるのでございまして、事前に弁護人の了解を得て連れて行くということはしなかったという趣旨ではないかと思うのであります。しかしながら、弁護人でありますので、当然そのことは後に通告されるものと、かように考えております。
  256. 山本經勝

    山本經勝君 私が会ったのは六日の日なんです。九月の六日、そのときに谷川弁護士と一緒に検察庁で会った。そのときの話では来てなかった。そして身柄の移送の問題については全然知っていない。こういうことです。それから主任弁護士が諌山という弁護士ですが、その弁護士はちょうど国鉄の問題で公判があって、小倉の支部に出向いておる、そういう状況で実際上連絡がとれなかった。私どもの方からいう連絡がとれなかった。ところが、その弁護士が現に私どもの目の前で、園田検事に対してどうして通知してくれなかったかということを詰問しておられた。するとどうしてかわからないけれども、しなければならないということになっていないからということと、これは何らかの指示によるものである、しかし、その指示者は言えないと、こういう答弁をなさっている。私はここにメモしてある。こういうようなことが公然と……、まことに暗黒政治、暗国司法行政が公然と行われておっていいでしょうか。私はもっと公明にやられてしかるべきじゃないかと思うが、刑事局長の責任ある御答弁を伺っておきたい。
  257. 竹内寿平

    説明員(竹内寿平君) 先ほども申しましたように、法規上はそうしなければならぬという義務づけられた行為ではないのでございますが、良識を持ちまして運営するというのが検察官の立場であろうと思いますので、御指摘のようなことがもし故意に、あるいは指示に基いてなされるというようなことになったといたしますならば、これは妥当な措置ではないというふうにお答え申し上げます。
  258. 山本經勝

    山本經勝君 それのみではない、福岡の藤崎刑務所というのは——本来この種の容疑者、まだ起訴前の容疑者を勾留するために検察庁の地下室に十分な設備があります。これは御承知の通りと思う。ところが、そこには入れなくて、藤崎刑務所の拘置所に入れるという連絡があった。拘置所の所長が言うわけなんです。これは会いに行った大牟田の副委員長が会って話を聞いた。ところが、身柄が来るはずであったが参りませんと、こういうことだから、一体どこへ行ったのだろうかということで探し回った。ところが、藤崎刑務所のいわゆる受刑が確定した犯罪者を収容する、何と言いますか、本監の方に移して、しかもその三舎という死刑因や重大な犯人を収容する懲罰房の中に入れておるという事実が明らかになった。しかもそのことは私どもが直接行ったのではないが、組合の代表者が拘置所へ行って聞いてみたところが、いわゆる当然本来からいったら、検察庁の地下室に用意されてある拘置所があるのだから、そこに入れられるべきものであると私どもは常識で思う。ところが、わざわざ藤崎の刑務所へ持っていって拘置所に入れるということだけでも念が入り過ぎていると思うのに、それだけでなくて、いわゆる受刑者を収容するための本監の中に入れておる。しかも三舎、北三舎というものは懲罰房であるといわれておる。独居であることはむろんですが、独居であるだけじゃなく、死刑因その他凶悪犯罪者を収容するところに詰め込んでおる。こういうような事実が明らかになった。このことも園田検事に対して弁護士とともに詰問をした。この検察庁の地下室にはそういう設備はないのか、あります、なぜそこに入れておかぬのか、その理由はたとえば組合関係から陳情したり、デモをかけたりするからそういう所に入れたのか、そういうわけではない、ではだれがこういう所に持っていけと言ったのか、その指示者も申し上げるわけにいきません、こういうふうに園田検事は答弁されておる。これ私一人ではない、そのとき五人の代表と一緒に谷川弁護士と私と七人で会っておることであってはっきりしておる。あまりひどいから私は検事正に会った。一体どういうわけでこういうような取扱いをなされるのかと言ったのですが、検事正はよくそういう事情がわからないから、園田検事にそういう事実があれば是正するように指示いたしましょうということであった。そういきさつですよ。これは適当な取扱いでしょうか。私はその四名の方々が逃亡や証拠隠滅をはかることはあり得ないと思う。ましてやこういうような措置を特にとられた理由がどうもわからないので、そこら辺を一つ御解明いただきたい。同時に委員長にお願いいたしますが、この問題はこの場合だけで済ませない重大な問題ですから、できれば検察官を呼んでもらいたいが、不可能であろうと思いますから、少くとも正式に実情調査してもらうかあるいは法務委員会で再度取り上げるようにお願いしたい、これは委員長への要望です。
  259. 竹内寿平

    説明員(竹内寿平君) 二、三点御質問の問題点があったように思いますが、まず検察庁の地下室に留置場があるのじゃないか、そこに入れるのが相当じゃないかという点でございますが、これは仮監と通俗に申しております。仮の監房という意味でございますが、これは拘置所ではございませんので、拘置所から裁判、検察の用務のために身柄が出所いたしましてそこに参りました場合に待たしておく場所でございます。そういう所でございまして、捜査中の者でありましてもここへとめておくということは運用としてないのでございまして、そこへ連れて参りましても夕方は拘置所に連れて帰るという運用になっておりまして、これをもって拘置所というわけには参りませんので、おそらく検察庁の地下室にとめおくという措置は現在の監獄法令のもとにおいてはできないというふうに私は理解をしております。  それから福岡刑務所に連れて行って、しかも凶悪犯のおります房に入れたのはどういうわけかということでございますが、これは私の承知いたしておりますところでは、ここの部分が、受刑者の入っておる部分ではなくて、やはり拘置区画になっておるそうでございます。で御承知のように、受刑者が入りますいわゆる刑務所と未決者の入ります拘置所、これは全然別の建物になっておるところもございますし、刑務所の一部の中にその両者を区別いたしまして、仕切りもはっきりいたしまして、交通のできないような状態にはっきり区画を区別して、そうして拘置するということになっておるのでございまして、本件の被疑者らが——現在は被告でございますが、この被告らが収容されました場所は拘置区画であるというふうに伺っております。そしてなおつけ加えて申しますならば、今懲罰房ですか、懲罰房というお言葉がございましたが、私は沈静房という熟語のあることは承知しておりますが、そういう懲罰的に入れる房という通俗的な意味でおっしゃったと思いますが、これは独居房になっておるようでございます。そこへ収容したというふうに伺っております。  なお、もう一つは、そういうところへだれが指揮をして入れたかということでございますが、これは検察官はどの房に入れろという指揮権はないのでございまして、身柄の執行の指揮はいたしますけれども、指揮を受けました刑務当局がこれをどこに収容し、どういう処分をしますかは、あげて刑務当局の責任においてすることでございまして、もしも何ゆえにそういうところに入れたかということをお確めになるということでありますならば、行刑当局の御意見も一つお聞き願わなければならぬ、かように思うのでございます。
  260. 山本經勝

    山本經勝君 まず第一点の問題をもう一度明らかにしておきたいと思うのですが、私たちが今申し上げるように、私一人ではないのです。組合の代表五名と——組合の代表と言いますが、総評の代表です。各単産の主要な代表が五名、私と、それに谷川弁護士が園田検事に会ったときに、拘置所は地裁の地下にはない。建物の中にはないというお話だったが、拘置所があるではないかということを谷川弁護士が言っているのに、それはあります。それは詰まっているのか、そうではないということだったので、私どもこれは非常な大きな問題であると思った。これはよくお調べを願いたい、あなたの方からも。そういうようなことであった。それで、必ずしも今言われるように、その部屋がなおったとか、あるいはこれは仮に入れておくところであるという、こういうお話はなかったのです、園田検事からの話では。ですから、その点は設備はあると私どもは解釈しておる。あるにもかかわらず、わざわざ藤崎刑務所に持って行っておる。  もう一つは、藤崎刑務所の中にある拘置所の所長なる人は、身柄をここに送られることになっておって、待ちよるけれども参りません。これは五日の日です。ですから、その日に行った組合の副委員長は、そういう形で、むろんこれは地裁の裁判所の中で島村君というのに会っていて、その状況が明らかになった。それまで弁護士もどこにいるか知らぬので会うことはできなかった。むしろ接見禁止ですか、制限というのか、そんな形で会えなかった、そういう状態である。そうしますと、拘置所の所長の方には正式に通知が行っている。これはおそらく地検の方から来たんでしょう。ですから、これは大牟田からやるというよりも、地検の方が身柄を受け取っているから、地検の方でやったと私は判断しますが、そういたしますと、身柄の送り先は、福岡の藤崎刑務所の中に設備されているところの拘置所に送られるものだ、ところが、その拘置所と今の本監と言いますか、いわゆる受刑者を収容するところの刑務所とは同じ建物の中にあって、区画は違うというようなお話があったが、これは皆さんの関係者の話を聞いても、その実情を私どもが伺っても、やはり北三舎というのは、この全体の多数おります広い収容所の中、つまり刑務所の中で最も悪いところであることだけはもう疑いない。そうすると、そういうようなふうの取扱いをこの四名に対してせなければならぬという根拠は、私ども、逃げも隠れもしない、証拠隠滅もましてやするような心配はない、いやしくも県の約三万近い組織の代表者として責任のある仕事をやっている男が、そうしていずれも幹部の人なんです、その人々が事件をおそれて、逃げもしなければ隠れもしない、正々堂々と法廷で戦う。ところが、そういうような状況であるにもかかわらず、今のことさらにそういう取扱いがされたということ、これは私どもどうしても納得、理解することが困難だ、その点についてもう一度これは必要であったら、申し上げるように、この委員会関係検事に来てもらいたいが、なかなかそういうことには簡単にいかぬでしょうが、刑事局長の方から責任ある御調査を願って実情をいま一度確かめてもらわなければ困る。
  261. 竹内寿平

    説明員(竹内寿平君) だんだんお話を伺って、少し私も気がついた点がございますが、今裁判所の中に拘置所があるというお話でございましたので、私は検察庁の地下室に仮監があることを先ほどお答え申し上げましたが、それは、今山本委員のおっしゃる裁判所の中の拘置所というのは、土堤町拘置所のことをおっしゃっているのじゃないでしょうか。これは裁判所の裏にある拘置所でございますが、これは非常に朽廃した拘置所でございまして、法務省としてもどこかへ移築しなければならぬということになっております。そういう朽廃している拘置所でございますので拘置、勾留を全部そこでのみ行うということじゃなくて、今の福岡刑務所の——離れておりますが、福岡刑務所の中にも拘置区画を設けて運用しているように私承知いたしております。で、それをなぜそこへ持っていったかということは、先ほど申しましたように、これは刑務当局の判断に基くものでありまして、検察官がどこそこの場所のどういうところへ入れろというような指揮をする権限もありませんし、その間の事情はつまびらかにいたしませんが、御要請もありますので、調査をいたしまして、御要望に沿えるかどうか、できるだけ調査をいたしてお答え申し上げたいと思います。
  262. 山本經勝

    山本經勝君 それは今申し上げたようにはっきりと園田検事のお話なんですよ。今の土堤町の方の拘置所は私よく知っているのですよ。私はそのことを言っているのじゃない。新しい鉄筋コンクリートのがんじょうな三階建のりっぱな、高検も一緒におります新しいのができておりましょう。これは御承知だと思う。あそこに設備があるのかと言ったら、そこに設備がありますというのが園田検事のお話です。なぜそこに入れなかったのですかというようなことでお話をすると、先ほど申し上げたように、しかるべき指示に基くものである、私の単独行動ではないということをはっきりお話になっている。あるのに、ことさらに刑務所に持っていかなければならぬということは私ども考えられない。ましてや北三舎というのは今申し上げたように、凶悪犯や死刑囚等を収容するところの棟です。そこに、なるほどあいておったからそこへ入れた、これは勾留者を入れるところの区画である、こういう弁解も私はできると思う。ところが、それよりも問題は、やはり拘置所長が通知を正式に受けて、その通知を受けた身柄が来ないからどこに行ったのだろうと思っていたら、そういうことだったということが、あとでわかった、そこら辺は実に奇々怪々なんです。
  263. 竹内寿平

    説明員(竹内寿平君) 検察庁ビルの地下室にあります仮監でございますが、その点に関しまして、園田検事がそのように答弁したかどうかということにつきましては、これはよく調査いたしてみたいと思いますが、先ほど申しましたように、そこは仮監でございまして、拘置所ではございませんので、朝連れて参りまして夕方は連れて帰る、従って、宿泊せしめるような設備は全部できておらないのでございます。従いまして、設備があるからそこへ何日もとめておくというような、そういう運用はあり得ないというふうに私は理解いたしておりますが、今お話のような点を園田検事が申されたかどうか、その点を一つ調査いたしてみたいと思います。
  264. 山本經勝

    山本經勝君 これで大体の模様は私ども現地状況を知っているし、わかるのですけれども、それで起訴になっている、その後の保釈の手続もおそらくしたと思いますが、その後どうなっておりますか。
  265. 竹内寿平

    説明員(竹内寿平君) 保釈になったかどうかは私わかりませんのでございますが、承知しておりますところでは、勾留そのまま継続されておるものと考えます。
  266. 山本經勝

    山本經勝君 ちょうど十月の初旬に大牟田市で全日自労、つまり職安の窓口で働いている組合の全国大会が開かれている。ところが、聞くところによるというと、県の労働部や、あるいはまた、労働省でもそういう計画があるやに承わっている。そういうことがいろいろうわさかデマか知らぬけれども、流れている。この県の委員長をやっている渡辺君の身柄を拘束して凶悪犯のごとく取り扱っている裏には、こうしたいわゆる組合運動に対する計画的な干渉、圧迫という問題があるのではないかということが非常に強く福岡では言われている。自労の問題だけではなくて、福岡県にあります四十数万の組織労働者の全体の問題になりつつある。私はやはり重大だと思います。そういう形で問題が発展して参りますというと、好むと好まざるとにかかわらず、さらにいろいろな派生問題を惹起しかねない。こういうことも一応検察庁として、やはり考慮の中に入れていただかないと、しかも取り扱いについてハンストをやっているということが非常に労働者を刺激している。労働者と、今のお話のように、谷川弁護士が六日の午後五時半に面会いたしました。私は七日に会わすということで現地に行く約束がしてあったが、これは会わなかった、そういう事情なんです。ですから、最近の検察庁におけるこの種労働問題に対する取り扱いというものは、実に苛酷で昔の、ちょうど治安維持法や治安警察法のあった当時の状態に変りはない。私はその経験者なんです。実にむちやなやり方です。しかも、この問題の中で先ほど申し上げた県の何か日雇い労働者に関する就労状態を査察して回る査察官の青柳という人がなぐる、ける、踏むの暴行を受けてけがをしたと言われるけれども、けがは一向してない。そうして、この事件を取り上げた警察がどういうふうにやったかということはわからぬというお話でありましたが、警察が現場を見ているが、しかもそういう事実があれば警察はいち早くこれは制止をするか、何らかの措置を講じたと思う。ところが、そうでなくして、検察庁がいきなり、どういう形であるか知らぬが、告発でもないようです。告発でもないと検事さんは言う。そうすると、どういうふうにして探知をして、この事件をつかんだのかさっぱりわからぬ、そこら辺に疑いが生まれてくる。県の労働部から検察庁に、この大牟田の自労をねらい射ちさしているのだという声もある。労働省計画的に自労に対する弾圧をやろうとしているのだということも言われております。うわさはとりどりですが、問題はそういうふうに発展する様相を持つた内容ですから、検察庁のやり方がひどいということ同様に、総体的に先ほどからこの委員会で問題になったヘンミ計算尺の問題にしても、あるいは鈴木の争議にしても、同じケースのように思われるのである。ですから、この点は十分一つ、これは御要望ですが、検察庁としては慎重にしかも十分な調査をして、不公平のないような措置を講じてもらわなければ困る。  委員長に対するお願いがある。これは少くともこの委員会の限られた時間ではとうてい不可能ですから、あらためてこの種労働問題に対する警察官並びに検察庁の最近の取扱い傾向、先ほどから話されるように、非常に行き過ぎたあるいはへんぱなものである、率直に申し上げて。しかも労働省では、かねて次官通牒なども出して、労働争議に対する闘争の限界等を法律的に解釈して、これともつながりがあるかのごとくわれわれ印象づけられているのですから、非常に大きな疑問を持っているししますから、あらためて十分この労働関係の官憲の弾圧干捗という問題を中心にした一つ審査の日時を選んでいただきたい、このことをお願い申し上げて、私の質問を打ち切ります。
  267. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 委員長要望のありました事項につきましては、理事会にお諮りいたしまして、しかるべく日時をきめたい、かように思っております。  本問題に対する本日の調査はこの程度にいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  268. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 御異議ないと認めます。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時三十七分散会