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1957-03-05 第26回国会 参議院 社会労働委員会 第5号 公式Web版

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  1. 会議録情報

    昭和三十二年三月五日(火曜日)    午前十時四十五分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     千葉  信君    理事            高野 一夫君            谷口弥三郎君            山本 經勝君            早川 愼一君    委員            勝俣  稔君            紅露 みつ君            近藤 鶴代君            榊原  亨君            鈴木 万平君            西岡 ハル君            横山 フク君            大矢  正君            片岡 文重君            木下 友敬君            藤田藤太郎君            山下 義信君            田村 文吉君            竹中 恒夫君   国務大臣    労 働 大 臣 松浦周太郎君   政府委員    厚生政務次官  中垣 國男君    厚生省公衆衛生    局長      山口 正義君    厚生省公衆衛生   局環境衛生部長  楠本 正康君    厚生省医務局長 小澤  龍君    厚生省薬務局長 森本  潔君    厚生省社会局長 安田  巖君    厚生省児童局長 高田 浩運君    厚生省保険局長 高田 正己君    労働大臣官房総    務課長     村上 茂利君    労働省労政局長 中西  實君    労働省労働基準    局長      百田 正弘君    労働省婦人少年    局長      谷野 せつ君    労働省職業安定    局長      江下  孝君   事務局側    常任委員会専門    員       多田 仁己君   説明員    文部省初等中等    教育局財務課長 安嶋  弥君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○食品衛生法の一部を改正する法律案  (内閣提出)(第二十五回国会継  続) ○社会保障制度に関する調査の件  (昭和三十二年度厚生省関係予算に  関する件) ○労働情勢に関する調査の件  (石炭事業に於ける労働争議に関す  る件)  (労働教育行政の指針に関する件)   —————————————
  2. 千葉信

    委員長千葉信君) それではただいまから社会労働委員会を開会いたします。  食品衛生法の一部を改正する法律案を議題といたします。本法律案は第二十四国会以来継続審議中のものでありまして、審議の途中にあります。これから本法律案に対する質疑を行います。  なお、厚生大臣は、財外財産補償関係団体最終折衝のため、本日は当委員会出席いたしかねるとの連絡がございました。なお、大臣かわり中垣厚生政務次官及び説明員として小谷食品衛生課長出席中です。御質疑を願います。
  3. 高野一夫

    高野一夫君 ただいま委員長からお話通り、この問題はずいぶん長い期間にわたって継続審議になっておったわけでありますが、国民の朝晩の食品のことでございますので、質疑材料は数々あるわけで、十分、時間をさいて質疑したかったのですけれども、この前の、昨年この問題がかかりました通常国会でも、健保あるいは新医療費体系等の問題について時間がつぶれて、ほとんどこれの審議を続行する余裕がなかったと考えております。臨時国会においては、御承知通りに、継続になったままほかの問題に集中して、これを審議する余裕もなくて、今回久しぶりに初めて上程せられたようなわけであります。そこで、私としてもこの問題については十分に議を尽したいと考えているわけでありますけれども、あまり長くなりますので、私は本日をもって私としての質疑を、きわめて簡単に二、三の点にわたって最後的な質問を申し上げておきたいと思います。なお、そのあと各委員から御質疑があろうかと思いますが、簡単に申し上げますので、簡単に政府の方からも、時間をつぶさないように、要点だけ御説明を願いたいと思います。  前々国会のこの委員会におきましては、私はアメリカの例を引きまして、アメリカペニシリンあるいはオーレオマイシン——オーレオマイシンのごとき抗生物質を獣肉の腐敗を防ぐために使っているやに聞いたので、その点についてお尋ねしたわけです。日本においては幸いにしてそういう実例はなかったように思いますけれども、そういうものが使われることが飲食物としていいか悪いかという点については、厚生省として研究を願いたいと、こういう意味質問をしたわけなんです。ところが、その後間もなく、厚生省はそういうようなペニシリンオーレオマイシンのごときものを食品の新鮮度を保つために使用することは一切まかりならぬと、こういう通牒でございますか、告示でございますか、お出しになっているわけであります。ところが、私はそれは非常に早計ではなかったかと実は考えたわけでありまして、非常に私が憂慮するのは、日本遠洋漁業の点でございます。御承知通りマグロの漁場がすでにだんだん遠くに行って、インド洋の中央部から南の方にかけて延長されている、そうすると、そのマグロその他の魚類を持ってくるのに、新鮮さを保つためには冷凍だけではとうていいかない。そこで百万分の五とか、三とかいうことだそうでありますけれどもオーレオマイシンのごときものを入れた氷をもって冷凍することによって新鮮なる魚類として内地に持ってくる、こういうことを水産界はやっているらしいのであります。これが厚生省通牒によって絶対に使用ができないと、こういうことになりますれば、遠洋漁業の発展という意味からいって相当な支障を来たすのじゃなかろうかということを考えるわけです。そこで問題は、そういうような抗生物質を使った場合に、マグロならマグロの皮から中へしみ込むのかどうか、また、そういうもののなまの肉を食って弊害があるのかどうかという点について、厚生省十分研究をされた上で、弊害があるならば禁止をする、弊害がなければ従来通り使っても差しつかえない、こういうようなふうに告示をされるのが当然の筋道じゃなかったかと思うわけであります。それで、このことについて、厚生省としてどういう経過をたどられたかどうか。また、そういうものを使った食品弊害という点について、その後研究ができ上ったかどうかという点について、概略でけっこうでございますから、環境衛生部長から御説明を願いたい。
  4. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) お答えを申し上げます。  オーレオマイシン食品防腐用筆に使いますことにつきましては、ただいまお話がございましたように、外国におきましても肉類あるいは野菜等に使われております。日本におきましてもこの点は数年来、これまた御指摘のございましたように、主として遠洋漁業製氷——氷の中にこれを使用するというようなことが行われました。これは鮮度保持の上から、かなりの効果をおさめておることも事実でございますが、ところが、一方これら抗生物質を使いますことにつきましては、いまだ日本におきましては少くとも確たる研究がなかった次第でございます。また一方、これが果してマグロその他魚類の皮膚を通して体内に入るものかどうか、まあどの程度入るものかどうかというような点も明らかでございませんでした。一方その当時、昨年でございますが、いろいろ抗生物質によります耐性問題が問題になりましてそこで私どもといたしましては、一応結論のないままにこれを放置することも困難でございますので、さしあたり一応はこの使用を中止いたしまして、その中止している間にすみやかに結論を得て何分の措置をとりたいと、かように考えた次第でございますので、従いまして、これまた御指摘のございましたように、一応オーレオマイシン等抗生物質等使用禁止はいたしましたが、この禁止は、これを使ってはならないというよりも、むしろ目下検討中であるから、その結論が出るまでちょっと待っていだきたいという趣旨でございます。そこで私どもといたしましては、食品衛生調査会にこの問題を諮問いたしまして、目下検討を進めておりますが、できるだけこの結果を急ぎまして、その結論に基きまして、使うものなら使う。しかもその場合に、どの程度なら使ってよろしいかというようなことをはっきりさして参りたい、かような所存でございます。
  5. 高野一夫

    高野一夫君 そこで、現在研究調査中であるとするならば、いつごろ是非の結論が出る見込みであるかどうか。また、この問題をめぐって水産庁方面と何か連絡折衝があるとしまするならば、その辺はどういう事情になっておりますか、それを簡単に聞かせていただきたい。
  6. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) 結論を急ぎまして、私どもはこの春以降、夏場の魚類の保存にはぜひ間に合せたいと、かように考えております。  一方、水産庁におきましては、私どもの方にぜひこれは使うようにしてくれというような話でございますが、一応その委員会の中には、水産庁代表あるいは漁業関係者代表等も加えまして、総合的な検討をいたしておる次第でございます。
  7. 高野一夫

    高野一夫君 今の問題は、どうぞできるだけ早急に結論が出るようにお骨折り願いたいと思います。  次の問題に移りますが、この改正案政府の原案には、重要なる食品指定しまして、その食品製造工場には食品衛生管理者を置くということになっている。そこで食品衛生管理者を置いてまず製造面からこれを管理監督しようということでありましょうから、これは非常にけっこうなことと思うのでありますけれども、しからば、政令なら政令指定をされるというその重要食品製造品種というようなものはどういう範囲考えておられるか、それをお聞かせ願いたい。
  8. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) 食品衛生立場から申しますと、できるだけ多くの食品製造種類、特に比較的高度の技術を要するものにつきましてかような職員の配置をいたしたのでございますが、しかし一方、生産工場規模あるいは実情等にもよりますので、必ずしも十分に私どもの思い通りに配置するというようなことも、これは一方、産業立場からも考慮しなければなりませんので、私どもといたしましては、現在のところは、最も高度の技術を要し、しかも危険の伴いやすい添加物製造工場は一切これを設置する、また、乳製品等につきましては、これは赤ん坊の主食でもあり、特に一方、その技術内容が次第に複雑になって参っておりますので、さしあたりこの添加物及び乳製品につきましてかような職員の設置を指定いたしたい、かように考えております。
  9. 高野一夫

    高野一夫君 私は、もっと広範囲厚生省は案を持っておられるのかと思いましたが、今の話を伺いますと、食品の中でもきわめて部分的のものにすぎない。われわれが朝晩口にするカン詰冷凍製品、あるいはしょうゆにいたしましても、清涼飲料酒類にいたしましても、そういう点については何もお考えになっていないのであるか。たとえば、食肉加工業、一例をあげますならば、私は絶対にソーセージは食べないことにしているのでありますが、現在すでに材料が豊富でございますから、純良な牛肉をもって作るでありましょうけれども、このソーセージを作る所を見まするというと、どうにも食べる気がしない。それで一時は牛肉、豚肉、あるいは馬くらいはけっこうでありますが、犬を使ったり、ネコを使ったり、何を使ってもわからぬので、そういうような食肉加工工業、あるいはカン詰にいたしましても、先般も質疑を申し上げた通りに、牛の絵をかいたレッテルを張って、牛のカン詰としながら、中は馬肉であったり、鯨肉であったりするカン詰もなきにしもあらず。それで、そういうようなものはやはり標示と違うということはいかぬのでありまして、衛生上の建前からも、あるいは内容標示が違うというなうな意味からいきましても、これらの点についても十分私は製造業管理をする必要がありはしないか、酒類に至ってはなおのことでありまして、レッテルにしましても、防腐剤にしましても、特にその点の監査が必要である。しかも、できたものを一々摘発して、検査して、処分するということは、実際問題としてとうてい不可能でございまするので、その製造元において、酒類の醸造あるいは合成酒類等製造業についても当然管理が必要なんじゃないか。ジュース類についても、これは原料のくだものからとるものは別といたしまして、最近のジュースはことに御承知通り合成のものである。ああいうふうな色素類香料類を混ぜて作って、しかもわれわれは天然のジュースのごとく考えて飲む場合が多いわけでございまするが、これらについても管理ということが必要じゃないだろうか。冷凍水産物製造業に至っても当然必要である。そのほかいろいろなことを考えるわけでございまして、それらの点についてはこれを指定をして、そこの工場には、中小と大企業、いろいろ区別もございましょうけれども、一応原則として管理者を置くということが当然じゃないか、それが今度の食品衛生法改正の一番のポイントじゃないか、こう私は解釈しておったわけであります。ところが、今の楠本部長お話では、範囲があまりに狭過ぎる。これではせっかくのこの改正点ポイント効果を発揮できないのではないか、こういうふうに考えるわけでありますが、どういうふうにお考えになるか、一応伺ってみたい。
  10. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) 御指摘の点はまことにごもっともでございます。しかしながら、当初にお答え申し上げましたように、産業の実態、その規模等から考えまして、困難な点も見受けられますので、関係官庁とも十分相談をいたしまして、折衝の末、とりあえず、先ほどお答えを申し上げました業種に限ったわけでございます。しかしながら、今後さらに関係各省とも十分に協議を遂げまして、必要なものは逐次管理者を置くように改めて参りたいと存じております。ただ、ただいま御指摘のありましたうちで、たとえば、犬の肉、あるいは牛と称して馬というようなことは、御指摘通りで、まことに遺憾に存じておりますが、しかしながら、これらの点は高度の技術を要する、技術的な管理を要するというよりも、むしろ業者の自主的な良心に待つ点が多いのでございまして、これらの点につきましては、管理者とは別に今後一そう取締りを厳重にいたしますとともに、一方業者の良識、責任に訴えまして、この点を解決して参りたい、かように考えております。
  11. 高野一夫

    高野一夫君 中垣政務次官に、この点について大臣かわりとして伺っておきたいと思うのでありますが、私は今の環境衛生部長が、これは業者自身の自制に訴える、こういうお話でありますけれども、それならば、食品衛生管理者を置くということの重要性がぼけてしまうと思うのであります。せっかく管理者を置くというならば、やはり管理者を置いて、諸般の製造、あるいは製造の過程、あるいは原料精選添加物精選、そういう点について十分やはり専門的な管理をさせる、こういう建前でいくべきだと思う。ところで、今所管各省相談をしなければならない、こういうお話がございましたが、これはおそらく通産省とか、あるいは酒類大蔵省、あるいはまた、清涼飲料関係の農林省、冷凍水産物等についてもそうでありまするが、そういう方面との折衝相当の難点が予想せられる、こういうことではなかろうかと思うのでありまするが、この点について、厚生省はきぜんたる態度をもってこの食品指定、その製造取締り管理に当る、そのために、各省と強い態度をもって折衝に当る御決意があるかどうか、それを伺っておきたい。
  12. 中垣國男

    政府委員中垣國男君) 高野さんにお答えいたします。ただいま高野さんから指摘されましたすべての食品衛生に関して、衛生管理者といったようなものを置く必要がある、この点は私も全く同感であります。ところが、実際問題になって参りますと、たとえば相当大じかけなびん、カン詰のようなもの、あるいはミルクのようなもの、その他御指摘なさった酒類のようなもの、そういうものにつきましては、そう私どもの方で強い態度でやって参りましても、これは実現できると思うのでありますが、非常に小規模でやっているような問題等につきましては、そこに食品衛生管理者を置くというようなことは、実際問題としては大へんな問題がある、かように考えます。ところが、厚生省といたしまして一番大事なことは、できるだけ食料品全体につきまして食品衛生管理者を置くという考え方のもとに、ただいま各省との交渉をしておるようでありますから、高野さんの御要望にかないますように努めて努力をして参りたいと存じます。
  13. 高野一夫

    高野一夫君 小工業の場合はとうていむずかしそうにも思いまするけれども家庭工業式にやるのが一番危険なのでありますから、そこに管理者を置くことがむずかしいならば、保健所の方の取締りを厳重にするということをあわせ考えられて、できるだけ食品指定は広範囲にされるように御努力を願いたいと思います。  最後に一言、一つお伺いしておきたいと思うのでありますが、これは私の新しい改正案に対する考え方であるので、一応厚生省側の御意向を伺っておきたいと思う。それは、現在医薬品には薬局方というものがあるし、工業薬品には試薬というものがあって、それぞれ通産省厚生省を中心にしまして基準が定められ、あるいは公定書として公布されています。この食品に使うところの添加物につきまして、正確なる基準を設けて、規格を設けて、これを公定書と申しますか、基準書と申しますか、正式のそういう基準書公定善というような名目のもとにこれを制定をして、公布して、そうしてこの基準規格に合致したものでなければ食品添加物として使っちゃならぬ。たくあんの色づけの問題にいたしましても、そのほかの問題にいたしましても、使っちゃならぬ、こういうふうなことにするならば、ここでやや、比較的食品取締りがその基本の点においてできるんじゃないかと、こう思うわけであります。そこで、しかしながら、この公定書の、そういう基準規格を設けるのには、相当の時間もかかることと思いますので、できる範囲から順次こうしていけばいいんじゃないかとこういうふうにも考えられますが、まず第一問として、そういうふうな基準書公定書というようなものを作成して、それに合致したものを使わせる、こういうような考え方厚生省はどういうような意見をお持ちであるかどうか。これはこの改正案の中にはこの点はないのであります。そこで環境衛生部長に、この改正案につきましての関連した問題でありますので、一応御意見を伺っておきたいと思います。どちらからでもけっこうです。
  14. 中垣國男

    政府委員中垣國男君) 食品製造業薬品添加物等につきまして、普通の医薬品同様に公定書のようなものを作ることにつきましては賛成であります。
  15. 高野一夫

    高野一夫君 しからば、この問題については、また後日この問題を新たに皆さんと御相談することになるかもしれませんけれども、その御意思がはっきりわかりましたので、その点について了承いたしたいと思います。  最後に、また希望を付しておきたいのは、私の一番の基本的な考え方は、原料添加物一緒くたにして添加物として扱うことはいかぬという考え方をいまだに捨ててない。いかにしても原料添加物を区別したいのでありますが、そういたしますと、ほとんどこの改正案を根本的に修正しなければならぬので、そのことは今回は私はもはや意見は出さないことにいたしますけれども、現在の食品衛生法による厚生省考え方のように、ほんとうの添加物原料とを一緒くたにしますというと、大蔵省関係酒税法、あるいは酒税法施行令とそごするところが出てくるわけであります。この辺について、今後いろんな法律内容において、解釈においてそごするということになりますと、取締り上も困ることになろうかと思いますので、将来適当な時期にはこの間の調整もお考えおき願いたいと、かように考えます。  以上、それだけ希望を申し述べまして、一応私の質問をこれで終りたいと思います。
  16. 山下義信

    山下義信君 長い間の懸案の法案であったのですが、当委員会にも専門家がおいでになりますから、専門的な御検討をしていただけることと思いますので、私は常識的な御質問を申し上げてみたいと思っております。今、高野委員から御質問になりましたところの関連質問一つ先にいたします。食品衛生管理者を置くということは、この改正案の重点の一つなんです。今の御答弁で、私も、食品衛生管理者を置く営業者ですね、すなわち施設、それが一部に限られているということは全く遺憾で、私は全般に置くのかと思ったところが、一部に置くのですね、第十九条の二です。そこで、その第十九条の二の法文を見ますと、われわれしろうとにはわからぬ、どういう営業者に置くのかということがわからぬ、今の御答弁では……、こう聞いたのですが、私の聞き間違いですか。楠本環境衛生部長乳製品のメーカー、その他相当高度の技術を要するようなところには、それぞれしっかりした技術者もおるし、監督者もおるのだ。そういうところは置かぬでもいいのだというふうに聞えるのです。中垣政務次官は、小さい業者ほど危険なんだから、いい加減なことをするのだから、そういうところに置きたいけれども、これは非常に数が多くて、小さい家内工業式のところにまで一々置くというのは、少し無理だという御答弁である。大きいところにも置かぬ、小さいところにも置かぬというように、両者の御答弁が聞えたのでありますが、これはどういうところに置くのか、御答弁を統一してもらわなければならぬが、一つこれはわかりやすいように、改正案ではどういう製造業者のところに、また、どういう規模営業者には置くのかというところの種類基準とを資料にして出して下さい。ここで御答弁していただいてもいいのですが、時間を省略するために、何人以上の従業員を使っており、あるいはどの程度生産をしておるとか、どういう規模営業者のところに置くのですか、種類法律に書いてありますから、これをわかりやすく、どういう製品を作るところにこの管理者を置くのかということを資料にして見せて下さい。それから今の営業所規模は、これは明確にしてもらわなければならぬ。どの程度のところに置くのかということは、法律上明らかでない。  それからもう一つは、この食品衛生管理者を置いた営業者に対する食品衛生監視員監視関係法律で明確でない。この法律の中に、どこにそれが明記してあるか、指摘してもらいたい。食品衛生管理者を置いて、その者の任務について法律が規定してあれば、その任務に反する場合においては処分もある。そういうものを置いた場合に、食品衛生監視員はどうするか。監視しなくてもいいのか、また、監視をするのかということが、この法律で明確でない、その点はどうなっておるのですか。
  17. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) 第一点の御指摘につきましては、資料をもって御答弁することといたします。  第二点の御指摘につきましては、食品営業機関に置きまする衛生管理者は、これは国の補完業務を扱うものではございません。食品衛生上におきまする、国の責任を補完する意味ではございませんので、さような営業者に対しましても、営業施設に対しましても、食品衛生監視は当然行われるものでございます。ただその場合に、たとえば事情を聴取するにいたしましても、あるいは内容検討いたしますにつきましても、責任者がそこにおりますから、総合的に比較的、能率的に監視の実をあげるということは十分期待できますが、そうかといって、食品衛生監視を手を抜いたり、あるいはそれに補完させるという意味には解しておりません。
  18. 山下義信

    山下義信君 それは食品衛生監視員食品衛生管理者との法律的な、法文上の解釈であって、運用についての考慮一つもない、運用についての関係答弁はない、今のような答弁は聞かなくてもわかっている。食品衛生管理者を置いて、その任務を規定して、そうしてその任務に反した場合の処分もあって、そうして食品衛生監視員との職務上の関連性運用についての考慮というものが、あるのかないのかということを聞いているのです。しかも、食品衛生管理者の資格と食品衛生監視員の資格とは、全く同一なんです。いわゆる食品衛生管理者以上のものを、監視員の資格は要請していないのです。同等のものです。それは法律上の職務権限は違いますけれども、大体同一のものです。言いかえてみるというと、大部分は食品衛生監視員のなすべきようなことが、食品衛生管理者に自発的にやれということが、法律で要請されてある。そこまでやらしておいたらば、端的に言ったら、食品衛生監視員は、もう管理者が置いてあるところにはあまり監視のわずらわしさがなくていいはずなんですね、そうでなくちゃ食品衛生管理者を置いた効果は何にもないのです。ですから、言いようは悪いけれども管理者を置いた営業所施設については、もう食品衛生監視はしなくてもいいほどにならなければ、置いた価値はない。運用の妙味が、その辺何か法律的に何もないから、当局において、そういう点について、運用の心がまえがあるかどうかということを聞いているのです。そういったところに運用の妙味があれば、食品衛生管理者を喜んで置く、置いただけの効果もある。自分のところだけの効果だけでなくて、食品衛生監視上の利便もあるというようなことがなくちゃならぬと私は思う。その点はどうですか。
  19. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) 言葉が足らずに、まことに失礼いたしましたが、食品衛生監視の手を抜くとか、そういう趣旨ではございませんので、ただ、今までは、かような高度の技術を要しまする大きな一つ工場になりますると、責任がさまざま分れておりまして、なかなか全体的に、これを把握することが、食品衛生監視上困難な場合がきわめて多いのでございます。そこで、それぞれの施設責任者を置きまして、その人が、少くとも材料、仕入れ、製造その他検査、あらゆるものに総合的な責任をもっている、また総合的に把握している、こういう人がおりますれば、食品衛生監視員が参りましたときに、その責任者事情を聞く、あるいは説明を求めるということで、きわめて能率的に、しかも効果のある監視ができるということは言えますので、さような観点からすれば、ただいま先生が御指摘になりましたように、手を抜くという趣旨ではございませんけれども、労を少くして大きな効果をおさめることが、監視上大きな効果をおさめることができる、かように考えている次第でございます。従って、今後はできるだけそのように運営をはかって参りたい、こう考えております。
  20. 山下義信

    山下義信君 私の質問関係で必要がございますので、国家警察の担当の国務大臣一つ御召喚願いたいと思います。
  21. 千葉信

    委員長千葉信君) 承知しました。
  22. 山下義信

    山下義信君 次の質問は、これも本法の改正の重大点ですが、法律で見ますと、第八章の雑則の第二十六条ですね、みんな削つちゃって、つまり国の費用の補助を削った、つまり衛生監視員を設置する費用を国が補助するということをやめにした。どうしてやめにしたのでしょうか。これは大蔵省がやめにしたというなら聞えますが、厚生省がやめにするのはどういうわけですか。この費用は要らぬというのですか。大蔵省の方からこういうふうな費用を削るということが、法案が出るんならば費用を節約するということがありますが、厚生省の提案の政府案で、この法律で費用の国の負担を規定するのを削ってしまうということはどういうことですか。これは食品衛生行政を強化するということと非常に矛盾したことに思うのですが、これはどうしてこれを置いて悪いのですか。これを置いておきますと何か弊害があるのですか。私は金が要るのじゃないかと思いますが、こういうふうな国の費用の補助をしてやらなければ、府県は食品衛生監視員というものを置きかねているのじやありませんか。これは一つどういうわけで費用が要らぬとあなたの方から言い出したのでしょうか。
  23. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) 実はこの現行食品衛生法におきましては、国が義務費として二分の一を食品衛生監視員のために要する経費に支出することに規定されておるのが現行法であります。ところが、昭和二十五年以来この補助は打ち切りとなりまして、これが当時の平衡交付金に編入をされておる次第でございます。当局といたしましては、ただいま御指摘のございましたように、職員を置くにしても地方財政の観点等から補助費がないとなかなか置きにくいうらみもございまするので、たびたびこの点を大蔵省折衝をいたしまして数年を経過いたしました。ところが、結局今日まで、これを法律の規定通り補助金を計上することが困難でございまして、そのために、この条文は過去数年間空文に帰しております。今回の予算に、三十二年度予算におきましてももちろんこれは補助の対象となっておりません。従いまして、かような空文をとどめておくことはかえって誤解を招くおそれもあると、かように判断いたした次第でございます。いずれにいたしましても、これは過去長年折衝を重ねた問題でありますので、その結果一応これでまあけりをつけるという態度でかような改正をいたしたわけでございます。
  24. 山下義信

    山下義信君 当局の事務的な説明は聞きましたが、これは重大な政治問題だと思うのです。政務次官はどうお考えになりますか知りませんが、平衡交付金のあり方というものがどういうことであるかということは自他周知の通りなんです。今、食品衛生行政を強化しようという場合に、これはひもつきの補助金制度に帰してもらわなければならぬことは、これは言うまでもない。今日までこれが空文化しておりますことは、言いかえるとこれは法律違反です。財政当局の法律違反です。これは補助費に当然呼び戻すべきであって、厚生省の方から、みずからこれを放棄するということは、せっかく法律で国の費用の補助の、これだけの権利を確保しておいて、この際私はこういう逆行的な改正は非常に遺憾に思うのでありますが、政務次官はどう考えられますか。
  25. 中垣國男

    政府委員中垣國男君) 山下さんにお答えいたします。食品衛生監視員に関しましては、その地方財政法ができましたあとからこの法律ができまして、そこで前からやっておりましたことは死文になっている。そういう関係で、今度この法律改正することになっているようであります。ところが、ただいま私に政治的な見解に立っての御指摘だったと思いますけれども、これを直接いわゆる国の予算でひもつきにしたものを、そういうような予算化が必要じゃないかという御質問に対しましては、私もまだ実は十分よくのみ込んでおりませんので、一応これをよく検討してみたいと思います。まことに相済みません。
  26. 山下義信

    山下義信君 この問題は、私は非常に重大な問題だと思うのです。すべて一般的に、厚生行政がややもすれば財政当局から圧迫を受けておるのでありまして、ことにこういうふうな法律で補助規定があるにかかわらず、従来の経緯はともかくもどうあろうと、これをこの改正案によって抹殺するということは、ただ単に食品衛生行政の問題のみならず、ひいては厚生行政全般に通じても関連する重大な問題でありますので、これはぜひ厚生大臣並びに財政当局、大蔵大臣等の出席を求めてこの問題の解決をいたしたいと思いますから、この点は次回に譲りたいと思います。  それで現在の食品衛生監視員の定員並びに実際の人員というようなものはどういうふうになっておりますか。
  27. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) 現在食品衛生監視員として働いております者は約四千人でございますが、そのうち、その半分が専従者となっております。従いまして、専任は二千人程度、それから実際に兼務の形で働いている者を加えますと、約四千人という数字になっております。
  28. 山下義信

    山下義信君 実際は、この食品衛生監視員の実情は私は非常に不十分なんじゃないかと思うのですよ。それでこれはもう前回も御質疑もあり、問題となったのでありますが、従いまして、食品衛生のこの監視ということが非常に弱体化してきておるということが年来の実情なんです。厚生省当局は非常にいろいろ努力なり心配しておりますが、組織が完備強化しなければ実績は上らないんでしてね。ほんとうを言うと、食品衛生監視員がこれはいわゆる身分を何といいますか、あるいは国費の職員くらいにして、業務を十分強化していかなければならぬ性質のものだと私は思うのです。これは元来昔のことはあまりつまびらかにしませんが、言うまでもなくこの仕事は従来警察の衛生行政であった、警察行政の一環であった、それを保健所の制度ができると同時に、これを警察行政の中から、いわゆる衛生行政として、皆厚生省に移し、保健所業務に移した、言いかえると、この制度はいわゆる占領行政の申し送りの制度なんです。当時は警察行政は、ああいうふうに自治警察も作りましたから、いろんな関係から全般の民主化ということもありまして、警官が一々飲食業者にタッチするということも、非民主的なので、この制度も非常にわれわれとしても民主的な制度として一応は納得したのです。しかし、その移された食品衛生行政というものが、非常に弱体であって、全国で四千という、そのうち半数が兼任だという、しかも実際の食品衛生監視員はほとんど大半は獣医さんが多くて、そしてただ屠殺場だとか、そういう牛肉関係の仕事を大半やっておる、一般の食品衛生監視の仕事はしておらないという、手が回りかねるというよりは、していないというのが実情だと私は承わっている、これはあるいは私の説は逆行するかしらぬけれども、私は警察担当の国務大臣を呼んで所信を質してみたいと思うのは、食品衛生監視というのは、もう警察行政です。これは取締り行政、この法律はほとんど取締り、全部が取締り、指導も助長も何もない、これは全部取締りだ、取締りならば、厚生省取締り行政ができないならば、警察行政に移した方が完全無欠な食品衛生監視ができる、国民生活は明日からまくらを高くして寝ることができる、法律を作ってもその監視をする取締りができないというようなことでは何にもならない、どのような学問的な言葉を使っても、法律の上で見るというと、至れり尽せりの注意が施してあるけれども、それにそむいたというものはことごとく取締り行政、あなたの方で、厚生省でこの食品衛生行政の実があがらなければ私どもは、九千万国民生活が非常に日々危害を加えられている、この実があがらぬということになるというと、この国民生活の不安を除去するためには、これは今日津々浦々まで国家警察になった今日においては、この取締りは警察行政に移した方が実があがるのじゃないかと思うような気がするのです。私の議論は行き過ぎかしらぬけれども、そこで今回食品衛生法改正して、この法律を実施していくということは食品衛生行政についての背水の陣だ、私はそう思う。これで実があがらずして、次々また非常な不良な業者が横行ばっこする不正品が多い、非常に危険な食品が市井にばっこしてくる、集団中毒事件が続々起きてくる、それによって犠牲者が出てくるというようなことになったら、これはもう厚生省からこの行政はやめるがよろしい、私はそう思う。それでただ単に、いつも衛生関係法律案になりますというと、簡単に当委員会審議をしていくのでありますが、今回に関する限りは、一年以上も——、森永の粉ミルク事件が起きて、そうしてあの数百名の乳児を犠牲にしているんです。しかも業者は横行ばっこしている、ますます繁盛している、実に許しがたい、その結果、食品衛生法改正して、強化しようじゃないかというので、本法が提案をせられて一年有余になるのです。数回の国会継続してきておる。私は今度この食品衛生改正案が成立の上、本法が実施せられて、もし実績があがらないならば、私はこれは考えなくちやならぬ、こう思うのです。それで、これをよく見るというと、本質は取締り行政だ、そこで私は食品衛生行政についても一貫性を持たせなきゃならない、たとえば栄養改善なんという仕事も考えてみなければならない、これも食品衛生とは別個の行政システムにあなたの方ではなっておる、環境衛生部長のもとを離れて栄養行政は別になっておるが、栄養行政、栄養行政と、中身を割ってみると、食品衛生の指導行政でなくちゃならぬ、そういうような食品衛生に対するところの食品行政というか、それに対する一貫性がなくちゃならぬ、総合性がなくちゃならぬと私は思う。従って食品衛生に対するこれは背水の陣だと、あなた方も覚悟しなくちゃならぬと思うのですね。それだけの一つ根本的な検討を私どもいたしたいと思うんですが、また、あと警察担当の国務大臣が参りましたらいろいろ尋ねてみますが、そう思うんです。  私はそういう、非常に心配をして質問をしておるのでありますが、次にこの罰則を改正しましたね、第九章、法律で言いますと、第三十条、第三十条の二、その他ですね、これはもっと厳罰にしたらどうですか。私は何も厳罰主義者じゃありません、罰は軽きをもってよしとすです。しかしながら、従来の「三年以下の懲役又は五万円以下の罰金」以外に、非常に軽いところをこしらえたですね、軽度の罰を設けたですね。そうして第七条の違反あるいは第九条の違反あるいは第十一条の違反というようなものは、割に軽き罰に処することにしましたですね。どうして、第三十条のあの「三年以下の懲役又は五万円以下の罰金」に皆すべて該当するということにしてはどうして悪いんです。
  29. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) 罰則の定め方は、他の法令あるいは他の罰則等との関係で、きわめて慎重を要するということが建前でございます。従いまして、なるほど標示違反のために相当な被害を起したような場合も、少くとも食品衛生法におきましては最高の罰則にすべきものであるということは、一応私どもも納得できますが、しかしながら、標示違反というような性格のものになりますと、これは他の法令との関係等もございまして、やはりそこに均衡と申しましょうか、国としての刑法規定の関係等もございまして、さような観点からかようなことを、最も合理的な罰則規定だと、かように考えておる次第でございます。
  30. 山下義信

    山下義信君 これは法制局などにまかして、向うで刑の量定の、今あなたの言ったバランスのことでですね、そういうふうにただ作ってもらったものをうのみになさるからそういうことをおっしやるのであって、この食品衛生上民衆に危害を与えるということは殺人罪と同じですよ。私は現在の第三十条の「三年以下の懲役又は五万円以下の罰金」というのは軽過ぎると思うんですよ、実際は。何百人殺したって三年以下の懲役ですよ。人一人殺したら死刑ですよ。ですから、この食品衛生の不良不正品をもって危害を与えるというこの罪というものは、私は非常に露大だと思うんですよ、その器具や容器の云々とか、あるいは無許可の営業だというようなことも、本法に違反するようなことは、皆人命に危害を与える罪でありましてですね、本質は。それであなた一年以下だとか、そんな三万円やそこらの罰金、三万というのは一夕の飲食代にしかなりませんよ。今日の不正業者というものが、この食品衛生の裏をくぐって、よいかげんなものを作って、そうして民衆に非常な危害を与えるなり、暴利をむさぼっておる者は、三万円や五万円の罰金は何とも思っていませんよ。しかも、今日のこの犯罪者は、公開の席で私は言うことを実ははばかりますが、日本人ばかりじゃありませんよ。実に悪質なる国籍不明者が非常に大じかけなことをやるでしょう。菓子の営業者であろうと、その他の食品業者でありましょうと、そういう悪質な、ことに飲料水あるいは酒類というようなものの不正業者というものは、非常に大じかけでやっているのですよ。少々のあなたがたのデスク・プランのことではびくともしていない。警察が総動員したってびくともしていない。そのなかなか容易に断ちがたいところの大組織をもって、そして悪質なこの種のことをやって民衆に危害を与えておる。罪のない学童の集団中毒、また、最近に起きた教職員の人たちの中毒事件、あるいは各労働者の工場の中毒事件、もう至るところに頻発しておる。昨年だけでも六万五千五百三十一名の中毒者が出た。うち死亡五百人、三十一年度に。でしょう。——そういうような不正業者に対するところの取締りをやるのに、こういうような刑の量定というようなものは、私どもはこれは不十分だと思う。これでいいというような答弁厚生省がなさったのでは、私は納得できない。これは罰金刑においても、三万円、今ごろ三万円なんて、不正な飲食物を作って人に危害を加えておいてそれで三万円の罰金、五万円の罰金で済む。そんなことで取締りできるものじゃない。私は重刑主義者じゃございません。しかしながら、この罰則の改正等につきましても不十分であると思う。あなたこれで十分であると思いますか。これで取締りの実が上ると思いますか。これで不正業者がこの罰則に戦標すると思いますか。
  31. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) この程度の罰則だけで問題の解決は困難だと存じます。しかしながら、まあお言葉を返すようでございますけれども、かような業態あるいは食品衛生というような種類のものは、もちろんこの罰則の強化も必要でございますが、同時にやはり協力を得て、良識を持って物の製造に当る、物の取引に当るということがまた一面大事でございまして、従って、罰則と両々相待って初めて取締りの実、あるいは食品の安全の実を期していくべきものだ、かように考えておる次第でございます。
  32. 山下義信

    山下義信君 そうです。その議論が一番正しいのです。しかし、それは業者の協力といいますか、その趣旨がよく徹底して、そうして、なるべく罰は用いざるをもってよしとすのでありますから、あなたの言い分が正しい。しかしながら、そういう実の上らない現状におきましては、この程度の罰則では不十分だという私の議論も正しい。それで、食品衛生関係の今の検査状況は、法律では、法律といいますか、あなたの方の法規では、飲食店は毎月一回検査することになっているのですね。集団の飲食の施設は毎年一回検査することになっていますね。これは行われておりますか。
  33. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) 職員関係、あるいは経費等の関係から、必ずしも規定通り監視が行われておりませんことは事実でございます。この点はまことに遺憾でございます。私どもといたしましては、現在はできるだけ重点的に、能率的に手を抜いていいところは手を抜く、やらなきゃならぬところは大いにやるというような重点的な考慮をもちまして、地方を指導をいたしておる次第でございます。
  34. 山下義信

    山下義信君 われわれは、法律法文についても検討しなくちゃなりませんが、しかしながら、お互いに政治を議論せにやなりませんからね。それで、あなたは、費用については平衡交付金の中へ入れちゃって、そうして補助金はやめにするというような法律改正である。それで、昭和三十二年度の予算にはどれだけの予算が組んであるか。三十一年度とどれだけ増額されてあるか。平衡交付金の中に幾ら入っておるか。ふえているのか、減っているのか。どういうことになっておりますね。
  35. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) これは地方交付税の積算基礎で計算をいたしておりまして、従って、一般補助金のような数量の出し方は、計数の出し方はいたしておりませんが、いずれにいたしましても、三十一年度よりも来年度におきましては、総経費としては若干増加をいたしております。しかしながら、ペース・アップの関係で若干増加をいたしておりますが、職員の員数につきましては、現在かなり欠員があるという建前から、現状というところから職員につきましては、若干減少をいたしております。
  36. 山下義信

    山下義信君 これはね、結局地方交付税交付金の増額は、まあそういうことで、皆さんも御承知でありますから、おわかりになりましたから、私は追及しませんが、これではしょうがないんですよ。ですから、食品衛生監視は実際にほとんど行われていない。そこで、業者の自覚を促し、営業者の協力を求める。どうやってやりますかね。一つには、この法律改正によって食品衛生管理者という者を置かせる。なるべく置かせるようにしてもらいたい。この費用は、政府に何の関係もないから、業者が自発的に大いに置くようにしなきゃならぬ。高野委員の私はお説に賛成する。先ほど資料も要求しましたが、資料が作られればその資料がそのままあなた方の省でも内規になるのですから、できるだけこれを、広範に置かせる。これが一つありますね。それから、法律で今度やるのでありますから、それで一般、一般でありません、もともと業者に協力させにゃならぬと思うのですね。これは法律建前で、衛生管理者を置くということは、当然の設置義務でありますが、もっと一つ業者に自覚を促して、そして、あなた方の指令が末端の業者施設にまでもこれが電波のごとくに伝わるというような、何か組織ありますか。食品衛生関係者にあなた方の方の賞品衛生行政に協力させるというような態勢が何かありますか。今ないでしょう。協力させる、協力させるといってもないでしょう。ありますか。なけりや、何か構想を持たにゃならぬ。何か食品衛生業者を集めて一つの団体を組織するとか、何とかしてそういう運動が行われなきゃならぬ。何か食品衛生業者を、この一つの組織をもってこの衛生行政に協力させるという態勢についてのお考えが何かありますか。
  37. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) これはただいままことに御指摘通りでございまして、取り締るにはおのずから限界がございますが、しかしながら、組合員、同業者同士の間になりますと、どんなささいのことでも、たとえますれば、メンチボールの中に犬を入れたようなことでも、これは業者同士ではお互いに業者関係もあり、はっきりいたしております。そこで、かような組織をむしろ活用いたしまして、お互いに切瑳琢磨する意味で、この自覚を促していくということが、最も合理的な一つり方法であろうと私ども考えております。従って、かねて食品関係の営業につきましては、この組合をそれぞれの業界で設置して、講習会あるいはお互いに励まし合う、さらにまた、材料り試験検査等も共同で行うというようなことを指導して参っております。若干さような組織も逐次できつつあるわけでございます。今後は、かようなただいまの御指摘もございますので、組織をさらに民主的に強化いたしまして、もっぱらお互いに監視し合って、自粛していく態勢を整えて参りたいと、かように考えております。  なお、これらは食品衛生に限らず、他の同様の業種にも適用することでございますので、さような観点からいろいろ検討をいたしておる次第でございます。  それから一方、もう一つの方法といたしましては、やはり国民一般の大衆が食品に対しまする正しい知識を持ちまして進んで参りますことは、一方この業者を逆に注意させる一つの大きな原因ともなりますので、今後は一方広く国民に対しまして、食品に関する正しい知識を啓蒙いたしまして、これによって業者にいやいやながらでも協力しなければならぬ態勢を整えていくということも必要かと考えて、目下その方に力を尽しておる次第でございます。
  38. 山下義信

    山下義信君 私の質問はこれで終りますが、今の国民に大いに注意してもらう、国民の関心を一方高めるということはまことにけっこうです。けっこうですけれども、実際問題としては、たとえば新聞で読みましたが、主婦の一日衛生監視員ということもいいです、スローガンとしては。けれども実際におきましては、これは学問がなければそんな鑑別はできませんよ。めくらに名画を鑑別せよと言っても、あなた、めくらで名画の鑑別はできるものではありませんよ。やはり衛生学その他の知識がなければ鑑別できませんよ。食品の中には毒があるかもわからぬから、皆さん主婦は気をつけて下さいよいよくらいは言えますよ。それはみなわかっております。だけれどもどこに毒が入っているのか、このきれいな色をしているまっかなおいしそうなものが毒だということまでわかるようにするには、全部主婦に高等教育をしたり、そしてまた、この検査器具を持って行かなければできやしませんよ。ですからそれは一応は国民の関心を高め、それについてのいろいろの知識、認識も深めさせるという宣伝も要りますよ。政治ですから要りますが、今あなたが前段におっしゃったような業者の自覚をうながす、業者が自発的に不正をしないようにするということを極力やらなければならない。これは政治です。ですから、それを何かそういうことをするについての組織が要りましょう。それをアドバイスしているのです。積極的に献策をしているのですよ。要らぬことかもしれぬが、しかしながら、それを希望せざるを得ない。ですから同業組合が注意するといっても、同業組合の総会に行って、その席で折箱をもらって生意をしておっても、あなたそんなことでは通りゃしませんよ。多くの食品同業組合は厚生省に直結していない。みな農林省の関係、食糧庁あるいは通産省関係のそういう経済各省の方にひもが強いのであって、厚生省の、あなた方の命令一下の同業組合がどこにありますか。ただ栄養関係でそういうものがちょろちょろある程度でありまして、あるいはあなた方の食品衛生行政の中に、そういう業者のいろいろな組織ににらみのきくような組織をお持ちになっているかどうか知りませんが、ないのだろうと思う。私の言うのは、そういう食品業者の組合に向って注意などいろいろするのもいいでしょうけれども、彼らをあなた方の配下に一つ団結さしてみな集めて、そうして食品衛生協会というようなものでも作って、そうしてそこでもって自発的にどんどんこういったような不正行為を内部でしないように、そうして自発的にどんどん、たとえば証紙であるとか、あるいは検定であるとか、あるいは監視であるとかいうようなものも彼らが自発的にやって、そうして当局と密接に連絡してやれるような組織を作るべきです。ただし、利権の温床にしてもらっちゃ困りますよ。なかなか手の黒い政治家がおりますからね。そういう一味徒党の者が厚生大臣などになるというと、すぐこういうものが利権の温床になりますね。それはもう断固として事務当局が排除してもらわなければならぬ。どんな厚生大臣が出て、それですぐ厚生省なり、あるいはどこかにうまいところはないかとじろじろにらむようなことを許しちゃなりませんからね。これは私は、厚生大臣にも警告を適当の機会にしておこうと思うのですが、厚生省には利権はありませんぞということをよう厚生大臣に言うておかなければなりませんね。ですから、こういう組織を作るとすぐに何かうまいものがないかと着目さしてはいけませんから、そういうことでなしに、あなた方で食品衛生関係一つ強力な団体を作ってそうしてある程度食品衛生行政に協力させるということをやる気があるかないかということを一つ政務次官、あなたから約束してもらいたい。
  39. 中垣國男

    政府委員中垣國男君) 山下さんにお答えいたします。同じような種目の業者が集まりまして、そうして食品衛生協会というようなものを作り、これ厚生省としましては努めて保健所あたりから指導させまして、そうして下から盛り上ってくる力と一緒にしてこういう団体を作って、そうしてただいま御要望のような目的が遂げられるような、そういう努力をいたして参りたいと思います。
  40. 山下義信

    山下義信君 警察担当の国務大臣への質問を留保いたしまして、一応私の質問を終ります。
  41. 千葉信

    委員長千葉信君) この際、山下委員に申し上げておきますが、大久保国務大臣は衆議院の内閣委員会出席中でございまして。それが終りましたならばこちらの方へ出席するという当初の連絡でございましたがただいま連絡の結果、風邪のために内閣委員会が終了後帰宅されたそうでございまして、次回にあらためて当委員会に国務大臣出席を要求いたしたいと思います。
  42. 山下義信

    山下義信君 了承しました。
  43. 木下友敬

    ○木下友敬君 この改正案を見ておりますと、今、山下議員の指摘しましたように、取締りということが一つのおもな点にもなっていますけれども、第八章罰則を全部坂ってしまったというようなことからみますと、また、業者の自主的な面に非常に依存しているというような気がするのであります。特にこの食品衛生管理者というようなものに非常に重点があるように思うのでございますから、この管理者について少し簡単な質問をしたいと思いますが、現在厚生大臣指定した食品衛生管理者の養成施設というようなものは、これはどの程度の仕事をし、どういうふうな養成をされているかということを伺いたいと思います。というのは、これが第一には、医師、薬剤師または獣医師という、のがでんとすわっておりまして、それに相対して養成施設で養成された者が同等の資格を得るということですから、相当な教育が行われていると思うのでございます。その内容について……。
  44. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) 厚生大臣指定する養成施設といたしまして私ども考えております点は公衆衛生院でございます。ここならば相当専門家も、しかも実地に即していろいろ研究指導しておりますので、これを考えておる次第でございます。なお一方では、医師、薬剤師等の資格者を定め、一方何の資格もない、単に厚生大臣指定する養成施設を経た者をも包含いたしましたのは、やはり現在すでに相当な、学校は出ておりませんけれども、資格は持っておりませんけれども相当技術を持った、相当の経験を持った者もおります。また一方、現在多数にこれを配置いたしますとなりますと、やはりあまり一方に偏しますと、確保等にも事欠くという考え方から、実力主義でさような制度とならない制度を考えた次第でございます。
  45. 木下友敬

    ○木下友敬君 そうしますと、養成施設というのは現在まだないわけなんでしょう、これから作るわけでしょう。
  46. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) 国立公衆衛生院はすでにございまして、現在でも地方衛生職員のいろいろの訓練を実施いたしております。従って、そこで訓練をした者は今回この資格のうちに加えていこうというのが考え方でございます。
  47. 木下友敬

    ○木下友敬君 国立の養成になることはわかりますけれども、それじゃそこでどんなことを教えますか。
  48. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) 現在、公衆衛生院におきましてはいろいろの科に分れまして、それぞれ専門的な立場から地方衛生当局を訓練いたしておる次第でございます。ほとんど地方衛生職員のすべてを網羅したそれぞれの専門コースができておりまして、今でも十二程度の専門コースができておる。そこで一々その専門に即しましたしかも行政を中心にした技術的な訓練を中心として教育を実施しておる次第でございます。
  49. 木下友敬

    ○木下友敬君 その食品衛生管理者に、特に教えていこうという科目をあげて下さい。
  50. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) お答えを申し上げますが、現在考えております点は、公衆衛生概論、衛生行政の組織及び法規、それから食品衛生概論、環境衛生概論、乳肉衛生概論、上下水道行政概論、伝染病予防行政、寄生虫予防行政、栄養行政概論、衛生統計、細菌免疫学、伝染病学、寄生虫病学、上下水道、汚物処理、ネズミ及び昆虫の駆除、建築衛生、それからさらに専門的になりまして、食品衛生監視食品生産加工、食品衛生検査、化学性食中毒及び細菌性食中毒と食中毒の疫学、それから食品の保存、食用色素論、器具包装論、それから従業員衛生管理、さらにそのほか臨地訓練、実習等を見込んでおります。
  51. 木下友敬

    ○木下友敬君 非常に広範でございまして、今のようなことは、この第一に「医師、薬剤師又は獣医師」とありますが、医師、獣医師には再教育でもせねばならぬような場もあったようでございますが、私がお聞きしたいのは、この第二のところに、大学令とかあるいは学校教育法などがあげてあります。そこに「医学、薬学、獣医学、畜産学、水産学又は農芸化学」という課程をあげております。その中に、なぜ歯科医師というのが抜けているか、と同時に一番初めの「医師、薬剤師又は獣医師」というところに歯科医師が入ってない。ところが、今あげられた中で見てみますと、医師、薬剤師、獣医師と比べて歯科医師がちっとも抜けねばならないような理由がないわけです。今あげられた項目の中で、医師が十分勉強してないところは、歯科医師もしてないけれども、医師がしていることは、今お話になった限りは歯科医師もやっているのです。それを省かれた理由を一つ説明してもらいたい。どの点とどの点が歯科医師が不適当であるか。
  52. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) 御指摘の点はごもっともでございまして、特に教養科目の点から歯科医学を不適当としたわけではございません。ただおのずから一つの職域という範囲でかねて若干困難があるのではなかろうかという考えで進んで参っております。従って、現在は食品衛生監視員の資格も歯科医師を一応省いてございます。さような趣旨からでございます。
  53. 木下友敬

    ○木下友敬君 今のでは何か科学的でなくて、習慣上というような答弁のように思われるのですが、それは非常に納得のいかぬことでありまして、その先にある、たとえば三年以上衛生管理の業務に従事した者というような、きわめて雑駁な教育程度でも経験を積めば役に立つんだというような、これは書き方ですがそこへ歯科医師を習慣上入れないということは大きな手落ちだと思う。これはどうしても私は改正しなければ、歯科医師を加えることを実施してもらわなければいけないと、こう思うのですが、次官にお尋ねしますが、この一の「医師、薬剤師又は獣医師」という中にあらためて歯科医師を加えられるのが至当と思いますが、それに対する御意見、相変らず歯科医師は資格なしというようなお考えであるかどうか。どうも私の申しますのは、現在の教育内容をあまり知らない人がこれを作ったんじゃないか。また、少し歯科医師というものの一般衛生行政に対する知識を下に見下げているのじゃないかというような気がしますから、ここに竹中さんもおられるけれども、お聞きしているわけですが、これは改めてもらいたいと思う。こういうことは改めるのに何もおかしなことじゃないのですから、それが悪いから改めようといかれるのが私は一番フェアな行き方であって、一ぺん書いたものはどうしてもいかぬというのではこっちも考えがあるわけです。一つ気やすくして話してもらいたい。
  54. 中垣國男

    政府委員中垣國男君) この「医師、薬剤師又は獣医師」という、これを定めます当時、その当時としては、これに従事しておった歯科医師というものは一人もなかったそうであります。ところが、今後の問題といたしましては、御指摘の点非常に重要だと思いますので、もう一ぺんよく省に持ち帰りまして、その点は考えてみたいと思います。
  55. 木下友敬

    ○木下友敬君 その点はよろしくお願いをしておきます。それから十九条の二項の二、これは新しくできたのですが、二項の二の中にさらに「学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)に基く大学、旧大学令(大正七年勅令第三百八十八号)に基く大学又は旧専門学校令」云々と書いてございますが、この旧大学令というようなものも現在これは資料に入っておりませんし、この学校はどの程度にくるめておるか、ここに書いてありますけれども、実際たとえば具体的に申しますと、満州にあった医科大学などの関係をどういうふうにお考えになりますか。
  56. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) 外地の学校の卒業生につきましては、一応従来それぞれ資格を認められるものについては、それぞれ資格を認めております。同等の扱いをしております。また、全然認められないものもございますけれども、一定の標準ができておりまして、それによって現在行われております。その考え方をそのまま外地の学校の場合には、本法におきましてもその考え方を取り入れていきたいという考えでございます。
  57. 木下友敬

    ○木下友敬君 それはどこに書いてございましょうか。外地の学校などに関することは、それは学校教育法にもなければ、大学令にもないと思いますが、どこか書いてありますか。そのことが外地の取扱い方について。
  58. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) これは特に書いてございませんけれども、従来ただいまもお答を申し上げましたように、外地の学校におきましても、内地の学校を終ったと同じ資格の者は同じ扱いをしていくのでございます。これはすでに決定いたしておりますから、さようなものは当然その厚生省の方針に従いまして、本法におきましても取り扱っていきたいというような考え方でございます。
  59. 木下友敬

    ○木下友敬君 それでは外地ではございませんが、戦時中に私立の医学校が内地にできたものがございますが、たとえば三田にありました興亜医学館、あるいは本郷にあった東洋医学院というのがございました。これは現在ではもう医師の免許はもらえないことになっておりますが、文部省としては、たとえば東洋医学院、興亜医学館などにつきましては、所定の四年の課程を終えた者については、その学術及び実地ともに日本帝国医学専門学校を終えたる者と同等であることを認めるというような証明書を出しているわけであります。興亜医学館とか東洋医学院というようなものは開業医師には現在はなれないことになっているのです。ですけれども、これは医師の免許は要らないので、学校卒業しておればいい条文になっておりますから、こういう人たちも当然その中には包含されるように私は解釈しますが、当局はどういうふうにお考えですか。
  60. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) 私この資格関係の問題につきましては担当が違っておりまして、責任を持ったお答えのできない立場でございますが、学校を出た者のほかに、先ほど来お話を申し上げておりますように、その実務経験がある、あるいは相当の知識を持っておる者というようなものは、むしろこれを救済的な規定として最後の方に載せてございます。従って、おそらく相当な医学的な、あるいは科学的な知識を持って経験を積んでおるという者でありますれば、それは最後の救済規定といってははなはだ失礼でございますけれども、さような規定の方に該当いたしますので、現在すでにそういう方はおそらくもう働いておられると思いますので、これは十分に別な方から救済ができていけることになると、かように考えております。
  61. 木下友敬

    ○木下友敬君 今救済と言われて、どうも救済という言葉は適当でないと自分で言われましたから追及することはやめますが、私は救済の意味ではなくて、この条文のこの法律の主眼というのは、自発的な食品衛生管理者というものにウエイトをおいてあると思うのです。というのは、これを監督の立場にある者の方が四千人のうち二千人しかいないということですから、自主的にこれを製造加工の途中において知識をフルに利用し、そうしてまじめにやっていくということに依存しなければならない。救済というような意味ではなくして、そういうような能力のある人はどんどん登用していくというような考えのもとに行われなければならぬということを私は申し上げたいのです。それについて学校教育法に基く大学、旧大学令とかがここに出ておりますけれども、このほかにも、今言われたように、能力のある者は採用していくという考え方であれば、私は資料として、二の学校教育法に基く大学、旧大学令に包含されるすべての者、それから今あなたの頭の中にあるどういう者はこの面に当てていくというお考えの者をひっくるめて資料を作っていただきたい。と申しますのは、これは非常に重大なことと考えますから、はっきりしていただきたいということをお願いしておきます。
  62. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私もいろいろ質問したいことがあるのですけれども、しかし、この質疑を続けて参りますと、いろいろ重要な問題がある。特に二十六条の問題で、交付金の関係はどうなっておるかという問題になってくるとわからない。二十五年以来条文があっても空文にひとしいというような答弁があり、先ほど山下委員もいろいろ言われたように、なかなか納得いかない面がたくさん出てくる。私は当初から厚生大臣出席されて、この委員会に参加されるということを期待しておった。この法律を軽々しく思っておるわけではないでしょうが、何といっても、これを審議いたしますと、重要な問題をたくさん含んでいる。私はこういう建前からいって、ぜひ厚生大臣は直接関係のある社労の委員会出席して、ともに審議し、質疑に答え、提出法案の内容について解明していただく、こういう建前を明らかにしていただきたいと思う。こういう建前からいって、午後にはたくさんの議案が予定されておるので、厚生大臣出席して審議を続けていく、こういう建前委員長一つとってもらいたいと思います。
  63. 千葉信

    委員長千葉信君) お答え申し上げます。中恒政務次官の連絡によりますと、厚生大臣は、午後は多分出席願えるのじゃないかというお話でございましたから、私の方からも重ねて出席か要求いたしておきました。  ちょとつと速記をとめて下さい。    〔速記中止〕
  64. 千葉信

    委員長千葉信君) 速記を始めて下さい。
  65. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 今、木下委員から御発言がありまして、しりぬぐいするようになってはなはだ恐縮ですが、私もこれには関心を持っていたのです。ただいまの御答弁によりますと、この食品衛生法には「医師、薬剤師又は獣医師」と限定してあります。御答弁によると、従来は歯科医師はその当時から関係をしたことはなかったので表わさなかったというような御答弁のように聞いたのですが、御承知のように、先般の当委員会でも審議されました公衆衛生修学資金貸与法にもありますように、最近とみに歯科医師が保健所に勤務いたしております。保健所に勤務いたしておりますということは、当然保健所の業務の中の一つでございますので、ただお座なりに次官が持ち帰って考えてみようということではなくて、もうすでに今日では現実の事実として、保健所に勤務いたしております。歯科大学の教科課程におきましても、当然木下委員のおっしゃるような事柄は御承知のはずでございますので、一つただお座なり的に、ここの答弁としての答弁でなくして、実際において、この機会に順次改めていっていただきたいということを次官に申し上げるわけなんですが、次官の御所見のほどを重ねて承っておきたいのであります。
  66. 中垣國男

    政府委員中垣國男君) 先ほどお答えいたしましたのでありますが、非常に私も同じ見解を実は持っているのでありまして、これは入れた方がいいのだ、かように考えているのです。ところが、まだ一応よく検討いたしまして、大臣意見等も聞きまして、そうして次の委員会のときに、お答えさしていただきたいと思います。非常に重要だと思いますので、ちょっとここで、簡単にすぐ、歯科医師をこれに入れますということは言いかねますから、御了承願いたいと思います。そのかわり、次の委員会におきましては、これにつきまして結論を出して、お答えいたします。
  67. 千葉信

    委員長千葉信君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止〕
  68. 千葉信

    委員長千葉信君) 速記を始めて……。  暫時休憩いたします。    午後零時二十七分休憩    —————・—————    午後一時五十八分開会
  69. 千葉信

    委員長千葉信君) それでは休憩前に引き続きまして社会労働委員会を開会いたします。  食品衛生法の一部を改正する法律案に対する質疑は、関係大臣出席を求めて、次の機会に行うことにいたしまして、本日の質疑はこの程度にして次に移りたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  70. 千葉信

    委員長千葉信君) 御異議ないと認めます。
  71. 千葉信

    委員長千葉信君) 社会保障制度に関する調査の一環として、昭和三十二年度厚生省関係予算に関する件を議題といたします。御質疑をお願いいたします。ただいま出席されておられますのは、中垣厚生政務次官並びに公衆衛生局長山口正義、小澤医務局長、森木乗務局長、安田社会局長高田児童局長でございます。御質疑を願います。
  72. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 具体的な質問に入る前に、大臣出席できない理由を一つ次官から聞かしていただきたいと思います。
  73. 中垣國男

    政府委員中垣國男君) お答えいたします。大臣はけさ九時から海外引揚者との間におきまして海外引揚者に関する給付の問題をめぐりましてただいま交渉をいたしておるのでありますが、大体午前中で完了する見通しを持っておりましたところ、なかなか双方に異論がありまして、まだ結論に達しておりませんので、諸般の情勢が、非常にこの問題は、どうしてもきょうあす中には結論を出さなければならないという関係等もございまして、余儀なく本委員会出席ができません。そういうようなわけでございまして、私が出て参りました。
  74. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そうすると何ですか、午前中の質疑にもありましたように、関係委員会の、特に参議院に対する軽視とか、この関係委員会に対する軽視ということが午前中の委員会で論議になっておる。今、次官のおっしゃいましたことを聞きますと、以後は、この社労委員会の要求があれば必ず出席すると、こういう工合に約束して下さいますわけですか。
  75. 中垣國男

    政府委員中垣國男君) きょうは衆議院の方におきまして予算委員会や、海外同胞引揚対策特別委員会等も開かれておりますが、それにも大臣出席できませず、もっぱら海外引揚者との間におきまして給付に関する交渉をいたしておるのでありまして、本日はこれが必ず終了すると思いますので、今後の委員会には、大臣は必ず出席されますことをお誓いいたします。
  76. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 それではお約束をいただきましたので、二、三の点について御質問をしたいと思うのです。まず第一には、この予算の面でのいろいろと施策をされているのですけれども、私の第一に聞きたいのは、この結核療養所の問題なんです。結核療養所に空床ができている。その空床というものはどういうところから出ているのですか。たとえば厚生白書を見ましても、百三十七万という要するに入院をする必要のある患者がある。こういうのにもかかわらず、現在の病床は、ベッドは公私を含めて二十四万床である。それにもかかわらず、まだその二十四万床の空床がある。どこに原因があるか。厚生省としては結核患者を何といたしましてもなくしよう。厚生白書の冒頭にも貧困、疾病をなくするというのが社会保障の建前であるという工合に、冒頭に厚生白書の中で厚生省任務を書かれておるわけです。そういうところから見まして、空床があるというのは、どういうところに原因があるのかということをどういう工合にお考えになっているか。それからまずお伺いしたい。
  77. 山口正義

    政府委員(山口正義君) 結核療養所に空床がどうして最近ふえてきたかというその理由につきましてのお尋ねでございますが、いろいろな原因が考えられると思うのでございます。その一つは、最近の化学療法の進歩に伴いまして、在宅のまま治療ができるというような傾向がだいぶふえてきておることがその一つかと思うのでございます。従前でございますと、直ちに入院をして、そうして外科手術等を受けなければならないというのを、一応化学療法というものによって、在宅のままで経過を見て、その上で入院をするというような傾向がふえてきておりまして、経過のいい場合には、そのまま、在宅のまま軽快に向うというようなことがふえてきているというのがその一つでございます。  もう一つは、全体といたしましては、空床の結核病床の利用率が減ってきているのではございますが、ただ地域的なアンバランスと申しますか、不均衡が生じているのでございまして、これはやはり最近入院いたします場合には、ただいま申し上げましたようなことで、一応化学療法によってやって、その上で外科手術を行うというような場合に、やはり手術に適した施設を持ち、また、医者その他の要員を持っているところを患者の方で選ぶというような傾向が強くなってきておりますので、おのずからその施設とか、人員の状況によりまして非常に退院者があるということ。それからそうでないというようなところから現われているということが一つの原因かと思います。  もう一つは、特に空床が顕著に目立っておりますのは、大きな事業場の委託病床でございますが、これは大きな事業場におきまして、いわゆる健康管理を厳格にいたしまして、そうして何とか結核患者を減らそうというような努力を続けられておりまして、それが効果を奏してその事業場、企業体の中の結核患者が非常に少くなってきた。従いまして、委託ベッドを作りました当時は、相当患者がたくさんおりまして、入院を要する者が、その事業体としてはたくさんおりましたものが、最近非常に少くなりました。従いまして、その委託病床としてとってあります病床に余裕ができてきておるというようなことで、全体の結核病床の利用率は大体八五%から、最近九〇%近くにまでなってきているのでございますが、委託病床につきまして、全体平均いたして見ますと、七〇%ぐらい、はなはだしいところでは五〇%というようなところもございます。それが空床を生じている一つの理由かと思うのでございます。  それからもう一つは、これは結核の治療という問題になりますと、なかなか治療費で、入院いたしまして長期にわたります場合には、単なる自己負担だけで入院できるというものが少いということがいろんな統計に現われているのでございまして、経済的な理由も一つあるかと思うのでございます。  ただいま申し上げましたいろいろな因子が重なりまして、最近結核病床の利用率がやや減ってきているというふうに考えられるわけでございます。
  78. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 百三十七万の中で、二十四万床がまだあいている。今、たとえば大きい理由の一つとして、自宅療養というような問題をおあげになったり、企業内における予防処置という問題をおあげになっているのですけれども、私たち先日兵庫、岡山、広島等、出張いたしまして、療養の現状を見て参り、いろいろと患者からいろいろの実態についてお話を聞いて参ったわけです。ところが、非常に単純でなしに、非常に深刻なものがあるのじゃないか。たとえば食費の問題にいたしましても、国立は九十四円十銭ですか、療養所が九十六円十銭とかという形で、そういう公事で、一般より、より以上栄養をつけなければ治療が進まないという現状にありながら、これで実際問題として厚生省、私らは現地で非常に疑問に思ったのだが、厚生省はこれについて今のが妥当だとお考えなんですか。
  79. 小澤龍

    政府委員(小澤龍君) ただいまの御質問が、国立療養所関係の食費についての御質問だと存じまして、私からお答を申し上げたいと存じます。この前の臨時国会におきましても同様な質問が行われたのでございますが、私どもといたしましては、患者のまかない費は適当な時期には増額しなければならないと考えております。ただ現状におきましては、この給食それ自体の敷率の上げ方につきましてなお至らない点が多々ございます。そこで前回にもお答え申し上げました通りに、患者のまかない材料の購入の方法、あるいは調理の仕方、あるいは調理に関する設備等につきまして特段の工夫と努力をいたしまして、ただいまのところでは、かなり成果が上ってきているのではないか。その具体的の例といたしまして、証拠といたしまして、従来平均して愚考の残します残飯量は二割程度であったのであります。ごく最近では一割程度に下ってきております。しかしながら、全国の各療養所について見ますと非常に成果をあげまして、残飯程度がわずか四、五%であって、患者から非常に喜ばれている。施設と、まだ調理に関する点が、ただいま私の申し上げた努力が不十分で、患者から喜ばれないという施設がございますので、当分の間なお悪い施設に徹底的な指導を加えまして給食敷率を上げる、しかる上において、材料をむだにしないようなものにいたしましてから、しかる上に給食費を上げていくように実施ししいきたい、そういうことによりまして国の使います金を効果的に使っていきたい、かように努力しておる最中でございます。
  80. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 ところで、単に国立病院、国立療養所のほかに目を向けてみますと、東京都や岡山風あたりでは一日の食費は百二十円以上にしている。また、大学病院、都立病院、公社畑院というようなところでは百三十八口とか、百二十三円とかいう工合にしし実際に実施している。こういうのと見てみますと非常に懸隔があるわけですね。で、患者の口からこれは困るというようなことを盛んに陳情されたわけなんです。実際厚生省として今のような話ですが、具体的に人並みと申しましょうか、早く病気が治るようにしてやる、何とかしょうという心がまえか、早急にやろうという心がまえがあるのかないのか、そこのところをお聞きしたい。
  81. 小澤龍

    政府委員(小澤龍君) 私自身もできるだけ患者の食事の中身をよくして参りまして、そうして患者の治療成績を上げていきたい、上げていくようにしなければならないと、かように考えております。ただ先ほど申し上げましたように、まだ相当のむだを出している段階でございますので、一まずこれをよくいたしまして、それでそれと相関連いたしまして、この次には材料費の力で一そう中身をよくしていくというふうに努めていきたいと考えておる次第でございます。
  82. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 もう一つその点で指摘しておきたいのですが、厚生省の公衆衛生局の栄養課で出した、たとえばカロリーが二千四百とか、蛋白は九十五グラムというようなうものを出しておられますね。そういうものにも現在はいっていない、こういう問題が出てくるわけです。だからその点については、私は大臣がおられませんから次官にお尋ねしたいのですが、そういう問題について、もう少しはっきりしたお考えをお聞きしたい。
  83. 中垣國男

    政府委員中垣國男君) 局長が答えたあとで申し上げます。
  84. 小澤龍

    政府委員(小澤龍君) 公衆衛生局におきまして、かなりこれは古いのでございますけれども昭和二十四年ごろ結核患者に適当な栄養量は次のことしであるというような標準が出されたものがあるのでございます。その場合は、絶対安静の患者であれば、これは一日千九百カロリー、それから蛋白質は八十五グラム、脂肪五十グラム、それから室内で安静している程度であれば、カロリーで一日二千二百五十カロリー、そから蛋白質で九十グラム、脂肪五十グラム、動き回ることのできる結核患者であれば、二千六百カロリー、それから蛋白質九十五グラム、それから脂肪五十グラム、こういう基準を出されているのでございます。これはすべて成人を対象にしてございますが、先般私の方で昨年の三月三十一日現在国立療養所に入院している患者をただいまの絶対安静、室内安静、動き回ってもいいという三つの種類に分けましてその員数を出しまして、それからそれに与えた栄養量と今の標準量と比較いたしますというと、大体これはつり合っている数字が実は出ているのであります。問題は、ただ脂肪が少し足りないのでございます。たとえばこれは全体を平均いたしますというと、昨年三月三十一日の患者について今の栄養量を、今の基準量をあてはめますというと、カロリーでは二千二百九十五カロリーやらなくちゃならない。蛋白質は九六・六グラムやらなくちゃならない。脂肪は五〇グラムやらなければならないという数字なんでございますが、私どもが与えている栄養量は二千三百八十九カロリーで、カロリーとしては少し上回っている。蛋白質では八八・一カロリーでごくわずか足りない、脂肪は四〇・二グラムでやや足りないという数字が出ておりまして、結核患者に与えるべき栄養基準量からいうとそう大した隔たりはないのであります。しかしながら、御承知通り、栄養そのものが単にカロリーの数字とか蛋白質のグラムだけではなかなか割り切れるものではない。質的にいかにいいか悪いかということが当然問題になってくるのでございまして、私どもは数字は大体間に合っていますけれども、これで満足しているのではございませんで、さらにこれ以上だんだんよくしていきたい。内容的にもよくしていきたい。予算的にもよくしていきたい。かような念願でいることを申し上げておきます。
  85. 中垣國男

    政府委員中垣國男君) 藤田さんにお答えいたします。  給食の内容というものが非常に悪くて治療上の効果を上げぬとか、治療の障害になるというようなことであってはなりませんので、御指摘通り、その給食の内容というものは、これはできるだけ向上させていかなければたらないことは全く同じ考え方であります。そこで、先ほど局長が申し上げましたように、施設関係並びにその材料等の関係でいろいろ努力した結果、給食の質的な向上がだんだん見られて齢るということも、これも事実でありまして、こういうことをいたしましてなお患者の給食としては、これは少し栄養問題その他から見てまだこれは悪い、特に九十四円の金ではとうていその目的は達せられない、こういうことが調査の結果明らかになりましたならば、当然これは所要のところまで引き上げていかなければならないものである、かように考えております。
  86. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そこで、それとだんだん関係の問題が出てくるわけですけれども、たとえば給食費が足らないので十分な栄養がとれない、そういうために間食と申しましょうか、ほかのもので療養している人が、患者がまかなう。ところが、経済力のない要生活保護者の疾病者なんかはまかないきれない。だから、たとえば死亡率の問題を見ましても飛び抜けて他のクラスよりか三倍も四倍も結果として生活保護者の死亡率が上っている。こういう結果にもなるわけです。問題は、たとえば今日の生活保護者の生活扶助料というようなものを見てみますと、一日六百円である。まあ日患同盟と申しますか、患者の団体が何とかせめて人並みの生活を、十分にできなくてもせめて千円にしていただきたいと言って、厚生省に何回も陳情されていることなんであります。こういう問題とやはり非常に深刻な関係をしてくるわけなんです。だから今の問題なんかについてどういうようにお考えになっておりますか。
  87. 小澤龍

    政府委員(小澤龍君) 国立療養所のたくさんの施設について調査いたしますと、病院当局が給食努力を十分に傾けて給食成績が上っているところにおきましては、先ほど申し上げましたように、残飯量がいちじるしく減っております。さような施設におきましては、患者の間食費と申しますか、患者自身が栄養をとるために購入する金の使い方がいちじるしく滅っておるようでございます。それからなおその努力もまだ不十分な施設におきましては、相変らず患者が適当な物を買って、買い足して食べておる状況でございます。そこで、私が先ほど申し上げましたように、そういう現象を一日も早くなくすために、昨年来相当ひんぱんにこの調理士の講習会を開いて、あるいは調理士を施設間で相互に交換してお互いにいいところを勉強し合わせる。それから給食に関する経費を昭和二十九年以来、従来に比べまして相当多額の金額、三倍以上を年間に支出しております。それから建築費でもそうでありますし、それから栄養給食の機械の購入費も同様でございますが、それからなお温食をやるとか数種類の献立を立てて、それから患者の好むところを選ばせるとか、いろいろ工夫いたしております。これが逐次あの努力が普及いたしますと、おそらくは一両年にして全体相当高いレベルに到達するのではないかと、こう考えております。
  88. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 今、医務局長が言われましたけれども、実際問題として一つのワクをきめておいて、九十六円十銭のワクの中でいろいろ努力されることは非常にけっこうだと思うのです。それは御意見は非常にいいと思うのですが、このワクの中でやろうと言ってもこれはおのずから限界があるわけです。だから今日普通人より、より以上栄養をとらなければ病人はなおらないというときに、絶対数の九十六円十銭というものを今世間一般でやっている百二十円以上にしようとするやはり心がまえがなければ実際問題としては生きてこないと思うのです。だからここではその問題が出ていない。だからその点は私は大臣が来られたら聞きたいと思ったけれども大臣がおられませんので、大胆にやはり結核を撲滅しようという白書の冒頭に掲げておる任務を持っておられる厚生省が、やはりこういう現実の問題として行われている問題を変える、変えて何とかしてやらなければならぬということを一つ次官からどういう工合に腹をきめておられるか、お考えをお聞きしたい。
  89. 中垣國男

    政府委員中垣國男君) 今の九十六円十銭でやっておりまして、その九十六円のワクの中でやっておっていろいろ先ほど来局長が言いましたように、材料の問題や、あるいは設備問題等でその金のワクの中で努めて栄養価のあるもの、また、患者のためになるような食事内容にしたい、こういう努力をして参りまして、それでなおどうしてもこの食事内容では受療上の効果が上らないとか、これでは受療の障害になるような内容ではないか、こういうこと等をここ一生懸命一両年の間に完全に調査いたしまして、はっきりとこれではいけないということになりましたならば、藤田さんの御意見通りに、それを逐次上げて参りたいと、かように考えております。
  90. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 どうも一両年と言われると、非常に長い期間じっくりとお考えになるようですけれども、現実の病院へ次官行かれたと思うのですけれども、病院に行かれた患者のほんとうのことを聞きますと、一両年どころか、もうほんとうに現実の、きょうの問題として食事の問題、または、生活扶助料の問題につきましても深刻な問題である。身にしみる問題なので、これは生命に関する問題なので、私はそれを承わって参りまして、何とかやはりしてあげなければならぬ、こういうことを非常に強く胸に打たれて帰って来たのです。今のようななまぬるいといいますか、ゆっくり物を考えましょうというようなことでなしに、これは何とか早急に私は考えてもらいたいということを厚生省一つお願いしたいと思うのです。私はそうでなければ、あの人たちはかわいそうで見ていられない、私はそういう工合に考えて参ったのです。これとやはり同じように、現実の問題として関係するのは、この新看護体系ですね。この問題もやはり病人としては非常に深刻な問題になっているわけです。たとえば例を申し上げますと、病人四人について一人の看護婦ということがきまっている。ところが、何といいますか、軽い病気の人たちはまだ四人でも何とか看護ができる。しかし、もうきょうあすというような状態の重病患者の人が何といっても看護婦の定員が不足しているから、現実大体四人に一人、療養所は六人に一人というのが、十人から十二人に一人くらいしか看護婦がないというのが現状なんです。私はそこで一番深刻に打たれたのは、もう重病であす生命の問題にかかわるような重病の病人が、だれもいない間に息を引き坂っていくという現実がもう各所にある。こういうことについては、もう同じ病院に入っている人でも耐え切れないという深刻な訴えがありました。私はその新看護体系というものがきめられたときには、しばらく実施してみて、その実施の上に立って現実とマッチしているかどうかということが国会でも付帯決議をされていると聞いている。ところが、現実の問題は私が申し上げたような状態です。たとえば岡山の療養所もかような状態です。そうなると、私はこの三つの問題がこの結核治療の問題には重要な問題として関連するわけなんですが、この三つの問題を取り上げてきますと、先ほど一番最初の問題に戻りますけれども、空床というものがある。そういう承要な問題があるから、病院にもうっかり入れないぞというような問題がありはせんかという危険を一つ持ったわけです。これは私の的が当っておるか当っておらないか知りませんけれども、しかし、その三つの問題をかみ合せてみて、患者からいろいろ訴えを聞いてみますると、非常に深刻な問題なんです。だから今の新看護体系の実施後の現状その他について少しお話を承わりたい。
  91. 小澤龍

    政府委員(小澤龍君) 大体国立結核療養所におきましては、患者六・七人かに対して看護婦一人の割合で配置しておるのであります。しかし、これは患者にすべて平等に看護婦をつけるという趣旨ではなくて、病気の種類によりまして、軽い患者は軽い患者同士で病棟に集める、重症な患者は重症患者同士で集めまして、そして看護は重症患者に重点的にやっていくつもりでございます。従いまして、看護婦が知らぬ間に息を引き取ったという例は、これは通常ではあり得ないと私は考えておるのでございます。むしろ新看護体制をしくとき、いろいろ問題があったのでございますが、また同時に、なれないために療養所側におきましても、ある程度の困難があったことは事実のようでございますけれども、その後この新しい看護体制に逐次各療養所が習熟して参りまして、最近ではかなりよく運営されてきたとこう感じております。ただ問題は、百八十二カ所もある療養所でございますので、療養所々々々によりましては、十分な新体制を把握してないところもあるかと存じますので、今後とも十分指導していきたいと考えております。
  92. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 今、局長が言われましたけれども、現実の問題、各療養所を視察されるような機会が、中央の仕事のためにあるかどうか私は知りませんけれども、現実行って見て調べていただくという機会をうんと作ってもらわなければ、通り一ぺんのお話だけではわれわれは納得できないのです、今のようなお話は。われわれつぶさに見て参りまして、この三つの関連について、これはこうなっておる、現実を見てくれと言われて、われわれは現実を見てきたのです。われわれはそれをここで机の上でやられていると、そういう失礼なことは言いませんけれども、そういうなまやさしいものでは私はないと思う。だからそれはほんとうに今言われたような格好じゃ私はないと思う。だからその点はですね、もっと深刻に一つ考えていただく。この新看護体系の転換の実態調査ということなんかが、この前の約束にありながら、実際に行われてないように私は思うのです。早急にこれを一つやってもらって、食費の問題、それから扶助料の問題、新看護体系のこの問題、現実、統計でだって十人から十五人に看護婦一人しかおらぬということになっておるのじゃないですか、今お話になりましたけれども、その点はどうなんですか。
  93. 小澤龍

    政府委員(小澤龍君) 看護婦全体といたしましては、私は先ほど申し上げた通りの数字でございます。しかしながら、看護婦は婦長というふうな管理的な仕事をしている者もございますし、それからたとえば手術場等に重点的に看護婦が配置されているという点もございますので、実際看護業務、それ自体につく看護婦の数は、今私が申し上げたよりは実際は看護婦が足りない、平均すれば足りない。しかしながら、先ほど申し上げたように、軽症患者の病棟に対してはうんと看護力を落しまして、その分は重症患者に振り向ける、さような作業をやっております。
  94. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 今、お話を聞いていると、これは空床の問題に関連するのですが、医療関係の全医労という組合がありますが、ここの人に昨日も聞いてみたのですが、詳しい調査を、一つのたとえば秋田県の岩谷村というのですか、ここの結核患者が十八人、それで入院している人は六人しかおらぬ。それでその十八人のうち十二人は農家で入院ができない。なぜ入院ができないかというと、入院しても非常にたくさんの金が要る。たとえば国民健康保険でいくと半額負担になるのですが、そういうことになると相当な金が要って補給をしなければどうにもならぬので入れない、こういう実情を訴えられたということを言っておられましたが、これは一つの例ですけれども、ほかにもたくさんの例があると思うのです。それで百三十七万も患者がおって、二十四万の病床があいているという、これは国立や市立まぜてあいているという原因の中には私はやはりその政府の、厚生省考えられている、何とか早く結核病者をなおしたいという意図とは違って、条件がそろわないと病院にも入れない。また入ったとしても、今のような状態というものを伺ってみると、また入れないというような問題があるから、どうも病院がありながら、そこで十分に療養して治療することができないというような、そういう考え方でこういうことになっているのじゃないかということを思うわけです。その通りですか、どうですかね。
  95. 小澤龍

    政府委員(小澤龍君) 病院における患者に対するサービスを、あらゆる面において日ごとによくしていかなければならぬということはまことに同感でございまして、私もその通りにしなければならぬと信じております。ただ患者の入らない原因が、現在の療養所のサービスが低下したということではないかという問題につきましては、実は御承知通りに、国立結核療養所の持つベッドの数は、全国のベッドの約四分の一でございます。ところで、その国立療養所における患者の減少と、国立療養所以外の一般療養所における患者の減少率を見ますというと、むしろ国立療養所の方があまり減少してないのでございます。ベッドの利用率は国立療養所の方がむしろ一般のものよりかややよろしいのではないか。従いまして、結核患者が減ったという理由は、一部そのサービスの悪い療養所がありまして、そういう療養所におきましては、サービスの悪いということのゆえんをもって入院患者が減ったのではないかと存じますけれども日本全体から考えますと、先ほど公衆衛生局長からお答え申し上げたような理由が主たる理由ではなかろうかと、こんなふうに考えるわけでございます。
  96. 山下義信

    山下義信君 私はこの際一点だけ質問したいのですが、生活保護法の関係のことでありますが、生活保護法の被保護世帯の、新たに今年学校に入ります子供、新入学の児童、これがどのくらいおりますか。それからその新入学児童に対しての扶助と言いますか、生活保護法で見ていきますことはどういう、ふうになっておりますか。その点お尋ねしたいと思います。
  97. 安田巖

    政府委員(安田巖君) 大体これは確かな資料が今ここにございませんけれども昭和三十二年度の教育扶助の対象になっている人員が、五十二万三千二百六十五人という人員を出しております。新しく入る者は、それの大体九分の一と見てよいのじゃないかと思います。
  98. 山下義信

    山下義信君 教育扶助の対象が五十二万三千二百六十五人ですね。新入学児童はこの九分の一と一応見るのですね。
  99. 安田巖

    政府委員(安田巖君) さようでございます。六万人弱でございます。
  100. 山下義信

    山下義信君 わかりました。約六万人弱ですね。九分の一と見るというのはどういうわけですか。
  101. 安田巖

    政府委員(安田巖君) これは実は扶助人員は、生活扶助にいたしましても、住宅扶助にいたしましても、大体過去の実績を基礎にいたしまして将来を推定するというやり方でございますので、ことし何人入ってそのうちどのくらいが扶助を受けるだろうというようなやり方をいたしておりませんものですから、そこで私が今とっさに申し上げましたのは、教育扶助が五十二万三千二百六十五人でございますから、義務教育が九年でございます。そこで一年が大体それの九分の一だと、こういうふうな見当でお答えしたわけでございます。
  102. 山下義信

    山下義信君 九分の一を六、三で平均して、初年度の児童が九分の一だろうと、いうふうに一応見られたということはわかりました。この過去の実績はありませんか。いわゆる、被保護世帯の新入学児童は何年には何人おった、何年には何人おったということが、教育扶助だけが新入学児童ではないので、教育扶助だけ抑えて出ますか。教育扶助と別に出る数はありませんか。
  103. 安田巖

    政府委員(安田巖君) 毎年どれだけの学童が新しく入ってくるかという調べは、おそらく文部省にあると思いますけれども、私今持ち合せておりませんのでございますが、それで今中しましたのは、そういった学童の中で教育扶助を受ける者が何人あるかということから、それから推算いたしまして一年生が六万弱であるということを申し上げたわけであります。実は資料といたしまして、一年生が何人、二年生が何人というふうな資料は、今まで過去の実績をとっておりませんものでございますから、大へん恐縮でございますけれども、先ほど申し上げましたようなお答えをいたしたわけでございます。
  104. 山下義信

    山下義信君 私は、きょうは問題を持ってあなた方の方へ無理なお尋ねをするつもりは全然ないんです。本年の新しい小学校へ入る新入学児童、その中で生活保護を受けておる世帯の児童がどのくらいおって、その児童にどれだけのことをしてあげてあるかということを聞きたい。心配なんです。それで多分文部省の方でも何かの数字があろうかと思って、委員長を通じて出席を求めておりますが、もし、あなた方の方で、過去に、何年には新入学児童にこれだけのことをしてやった、何年には何人の児童についてこれだけのことをしてやったということの実績があれば、正確な数字がどこかにあろうと思うんですが、過去のそういうデータはありませんか。
  105. 安田巖

    政府委員(安田巖君) 今のお話のように、生活保護を受けております者が、新しく入ってきた学童が何人、それから二年生が何人というふうな調べを実はいたしておりませんのです。
  106. 山下義信

    山下義信君 二年生はいいんです。毎年新たな入学児童がある。去年はそれに対して何をなさったか、おととしはそれに対して何をなされたかということは知りません。知りませんから伺うのです。もしなされてあれば、昨年は何人の新入学児童があって、一年生に入る者があって、それに何を買ってやった、ランドセルを買ってやったどうしてやったということが、なされたことがあれば数字が出ておるだろう、こう思うのです。二十九年でも、三十年でもよろしいんでありますが、過去にそういうことをしたことがないというならば、新入学児童は何年に何人おったという数字はないわけですから、実績がないわけですから、それでよろしいわけです。過去にそういうことをなさったことがあれば、何か、新入学児童の一年生に入ります児童の数がおわかりになっておれば聞きたいと思います。
  107. 安田巖

    政府委員(安田巖君) 今のところ、そういう資料は私記憶いたしておりませんけれども、もう一度一つ調べまして、それは私は多分ないと思っておりますけれども。念のためにもう一度調べさしたいと思っております。それで今のお話のように、何をするかということにつきましては、まあ教育扶助の内容でございますので、それぞれ一年生は何、二年生は何という一応の内容はあるわけでございます。しかし、それを各年ごとにどれだけ支出したかというようなことは。数字は持ち合わしておりません。
  108. 山下義信

    山下義信君 この被保護世帯の新入学児童には必ず教育扶助を支給しておるのでありますか。
  109. 安田巖

    政府委員(安田巖君) 保護世帯の子供が学校に入りますれば、教育扶助は当然にかかるわけでございます。そのほかに、保護世帯ではございませんけれども、ちょうど保護世帯の生活基準とかりに同じ生活基準の生活をいたしております世帯があるといたしますというと、それは教育扶助だけの単給の世帯もあり得るわけでございます。
  110. 山下義信

    山下義信君 そうしますと、生活扶助を受けておる世帯で新入学児童がありますと、教育扶助を受けておる。それから生活扶助を受けていない世帯でも、今あなたの言われたような単給で教育扶助を受けておる世帯がある。いずれにしましても、教育扶助を支給しておる。この対象から新入学児童というものが出てくるわけですね。
  111. 安田巖

    政府委員(安田巖君) さようでございます。
  112. 山下義信

    山下義信君 本年の予算で、新入学児童に対して、新入学児童がどのくらい、被扶助世帯、あるいはまた今言ったような教育扶助を支給せにゃならぬ世帯がこれくらいあるという過去の実績か何かから一応推定を出されて、生活保護の関係の予算に当然積算されておられるのでありましょうが、それはとういうふうになっておりますか。つまり、新入学児童の一年生児童には何を買うてやる、どれだけの費用を与えてやるということになっておるのでしょうか。御説明願いたいと思います。
  113. 安田巖

    政府委員(安田巖君) この教育扶助は山下委員承知通りでございまして、小学校、中学校の学年別に実はこまかく内訳ができておるわけです。その場合、一年生についてだけ申しますと、一年に入りますと、小学校の一年に百二十円だけ月にあるわけであります。そのほかに教科書代の実費が要ります。それから学校給食費の実費が要ります。それから通学のための最低限度の交通費が要ります。まあそういったような内訳になっております。
  114. 山下義信

    山下義信君 教科書の実費、学校給食の実費、それから交通費等ということになって、それは百二十円の別にあるということですが、教科書の実費、学校給食費の実費その他のことは文部省の方が参りましたときに関連して聞きますが、百二十円だけを新たに入る一年生に教育扶助として与えるということになっておるということでありますが、率直に申し上げまして、百二十円では学校に行く仕度はできぬと思いますが、これは私は昨年の予算編成の当時でありましたか、盛んに新聞には、何か新入学児童に対してはランドセルを買ってやりたいとか、何をどうしてやりたいとか言って、厚生省一つ今度は貧困新入学児童に対しては親心を持って、温かいこういう施策をしてやるんだということが非常に大きく新聞に報道されたことがあったと思うのですが、そういう御計画をなさったことがあるのですか、それはどういうふうになりましたでしょうか。ないでしょうか。今度の予算にはありませんですか。
  115. 安田巖

    政府委員(安田巖君) 今お話のように、当初要求いたしましたときに、児童加算というものを実は考えておりまして、それは学齢前の子供、それから小学校の学童、これに大体百五十五円、現在五十円ばかりあるのですけれども百五十五円、それから中学の方の生徒には月額で三百円ばかりつけてやりたいということを考えております。そのほかに一時扶助といたしまして、小学校に入る子供には一つランドセルを買ってやりたい、それから中学校に入る子供には手さげのカバンを買ってやりたい、こういうような予算を出しましたけれども、いろいろな関係で実現をいたさなかったようなわけでございます。
  116. 山下義信

    山下義信君 予算の内容もわかりました。結局生活保護費の中には、生活保護世帯の新たに小学校に上ります新入学児童に対しましては何もしてやることはない。何もないということになるのです。私は責めません。これは財政当局がこういうようなふらちな予算を査定したことでありますから、これは大蔵大臣を責めます。政府全体を責めます。しかし、これは何としても納得ができません。これは厚生省が当初予算に要求されたことは非常にいいことでありまして、金額はつまびらかにしませんが、考え方としては、私どもとしてはぜひそうありたいものだと思うのです。近く四月一日の新らしい入学日を迎えて、普通の家庭の子供は乏しい中にも入学の仕度を整えますのに、生活保護世帯、それに近い世帯の子供たちに対しまして、何にも入学の仕度がしてない。してやらないということはこれはあるべき姿ではないと思う。われわれはとうていこれを見のがすことはできません。政務次官、なぜランドセルを買ってやりません。保護世帯の子供になぜランドセルを買ってやりません。政務次官に伺いますが、この小学校一年生に上りまする子供のために絶対に必要なもの、絶対に必要なものはこれは欠かすことはできません。生活保護関係の費用は、その世帯においてもう必要な絶対のものは出してもらわなければいかぬ。私の調べたところによりますと、小学校一年生に上りまするためには一番安いランドセルを買って、千円前後のランドセルといったらごく粗末なものです。一番安いのです。高いのは二千円、三千円でありますが、千円というのは最低です。それ以下のものはありません。この千円のランドセルを買って、それから通学服が要ります。皆新しい学校へ行きますから新しい服が要ります。一番安い服を調べてみますると、レーヨンやナイロンの一番安いので千二、三百円、それがありますと学校に行く服ができます。そういうもの、鉛筆、それからノート、鉛筆削り、そういうふうなものをそろえますと、どうしても最低限度でも五、六千円要ります。大体普通の家庭の子供はおよそ七、八千円で一そろえするのでありますが、一番安い分を見まして、そうしてできるだけ必要品を少くいたしまして、まあ大体五、六千円ぐらい要るのであります。それがなけらねば一年生は学校へ行けない、どうして下さいます。これは生活保護世帯や貧困な子供はどうします。学校へ行けなくてよろしゅうありますか。恥かしい思いをさしてよろしゅうありますか。これはどういうふうに厚生省はお考え下さるのでしょうか。それでこれは予算はこうなっておりましても、生活保護費の費用はこれは弾力性のあることでもありましょうし、まだ三十二年度は十二ヵ月ありこれから迎えるのでありまして、今からでも、できるだけの処置はしていただけるのではないかと思うのです。それで何かそういう点に御研究が願われましたでしょうか、願われましょうかということを私は今日伺いたい。決して責めるのじゃありません。お互いに研究しまして工夫をしたいと思うのです。まだ間に合います。それで金を支給することがいろいろな点において困難でありますれば、至急に措置をしていただいて現物をそれぞれ配るということもできます。何か一つ考え願わなければ、神武景気と言われて腹鼓を打って、そうして世間がはなやかになっておりまする今日に、保護世帯の児童だけが、新しい一年生に入りまする子供に何らかの対策が講じてないということでは私どもは納得ができません。そういう点をどういうふうにお考えでございましょうか。
  117. 中垣國男

    政府委員中垣國男君) 山下さんにお答えいたします。生活保護法によりまする要保護者の家庭からのいわゆる小学校一年生の進学児童に対しましてのいろいろ御同情あるお言葉をお述べになりましたのでありますが、実は私自身が考えましても、ほんとうに山下さんと同じようにしてあげたいと思います。ところが、一応生活保護法というものが、経済生活の上におきましては、最低生活の保護を生活保護法に基いてやっておる。そういうような観点から、すべて生活保護法による規定が生まれておりますので、この範囲の中でできるだけのことをしておるというのがことしの予算の内容であるのでありまして、たとえば月に百二十円を出しておるとか、あるいは教科書代を実費をやっておるとか、給食の実費を支給しておるとか、交通費の実費を支給しておるとか、そういうことはやはり生活要保護者の最低のものとして考えておるのでありまして、許す限り、山下さんの御主張のような方向に努力はして参りたいと考えております。
  118. 山下義信

    山下義信君 私が同情しておるんじゃないんです。私は当然だと思うんです。この当然のことが行われていないということは、私は当局の怠慢だと思うんです。政治の大きな欠陥だと思うんです。これは決して必要以上のことではないんです。二年生になりましてからは、これはよろしゅうありましょう。あるいは三年生からもよろしゅうありましょう。新入学児童につきましては、学校へ行くための必需品で必要なんです。それが考えられていないということは、私はこれは適当でないと思う。それで、先ほど言いましたように、どういう当初予算でありましたかを調べてみまして、こういう査定をしました財政当局あるいは政府全般に対しての責任は追及いたしますが、これは、この段階におきまして、厚生当局としては言いわけとか、あるいは今お答えになりましたようなことでなしに、何か一つ手を打っていただかなきゃならぬ、可能な限りにおいて一つやっていただかなきゃならぬ、まだきようが五日でございますから、入学まで二十五日の間があります。一つ、何らかの方法を講じていただかなければ、あまりに悲惨です。これはどうしても、この委員会を通じまして、何とか一つ対策を立てていかなきゃなりません。教科書の実費とおっしやいますが、あとで文部省に聞きますが、多分教科書は無料でしょう。学校給食の実費といいますが、これも一応実費を支給して、また、あらためて肩身の広いようにさせる仕組みになっておるか知りませんけれども、文部省でやっておりましょう。要するに、新入学児童に入りますところ。必要な、少くとも学用品は、今申しましたような、人並みとは申しませんけれども、ぜひ子供に与えなければなりませんものは、生活保護で見ていただけなければ、生活保護の世帯ですから、どこからも見ようがありません。いろいろ、たとえば朝日新聞の厚生文化事業団その他のあっせんによりまして、施設の児童なぞに学旧別品、ランドセルを一そろい寄付されたということも局部的にはありますけれども、そういうことだけでは追っつきません。全般に対して何らかの対策を立てていただかなければならぬと思いますので、ここで何かいい方法がありませんか。一つ相談をいたしたいというのが、私の質問の要旨なんです。
  119. 安田巖

    政府委員(安田巖君) 一つだけつけ加えさせていただきたいと思うのでありますが、ランドセルは私どもはできるだけ買ってやりたいと思っておったのでありますが、しかしながら、いなかや、農村あたりに参りますと、まだランドセルをやらないところもございまして、ふろしきでもってすませておるといったような実情もございまして、それで生活保護の児童でございますから、最低生活という基準からいくならば、ふろしきでもそれはかわりができるのじゃないかというような見解もあり得るということと、それから着ております洋服でありますとか、靴でありますとかというものは、これは一時扶助という制度がございますので、各世帯心々の実情によりまして、その一時扶助の制度を活用することによりまして、できるだけそういったことのないようにしたいという趣旨でございます。  それから給食の方は、これは文部省の方から別に出ているわけではございませんで、これはまるまる生活保護の方で出しております。教科書ももちろん無料のものにつきまして私どもが出すわけではございませんけれども、全部が全部各年を通じまして、無料というわけではございませんで、そういう金は実は本年からは年度内に金を流すことになりまして、そうしてできるだけ学校の始まりますときには、新しく入る子供の手に渡るというようなことを配慮いたしておるのであります。足りない点については十分私ども検討をさせていただきたいと思います。
  120. 山下義信

    山下義信君 いいじゃありませんか。先ほどは何にもないようにおっしゃったから私は悲しんでおりましたが、そういう対策を立てるというお考えがあるならば、大へんけっこうだと思います。私は愁眉を開きます。今おっしゃったふろしきでもいいです。何も生活保護世帯の児童が新しいランドセルに新しい靴、新しいものづくめで富家の子弟と同じような風をしなくちゃならぬことはありません。貧乏人が貧乏人のような風をするのが当りまえだという議論はこれはいけませんけれども、私は子供のときから貧困の中でそういう目にあうことも私はいいと思う。それで奮起することはいいと思う。いいと思いますから、ぜいたくは要求いたしません。貧困の生活の中から何くそ今に官僚を打ち倒してみせる、そういう気概が生れることを望みます。ですから、ぞうりをはかせるのもいいですし、ふろしきづつみでもいいです。ですから、普通の子弟と同じようなきれいなランドセルを負わせろというようなことは言いませんが、農家の方では今おっしやいました通り、ふろしきでけっこうです。しかし、大体はズックの手さげカバンなどがいいそうです。これは五、六百円します。ふろしきでもまあ最低百円以下ではない。ほんのろくなふろしきしかありません。ふろしきでも二、三百円はするんです。これはズックの手さげカバンというようなものを農村方面では用いられておるということでありますから、そういう品物のことは一ついろいろ予算やその他いろいろな関係もありましょうから、お考え願って、今社会局長お話では、一時扶助という制度があって、これを一つ活用すれば、まだ四月一日の入学日までには間に合う。一つふろしきでもいいですから、今からできるだけのことを一つやってみたいということであります。私は当を得ておると思う。しかも三十二年度の予算ということになりましたら、四月一日以降ですから、三十二年度予算を使うなということを言ったらナンセンス、年度内に三十一年度予算で操作ができる、間に合うようにしたい、検討してみるということでありましたから、一つ政府代表意味で、政務次官からはっきりと、この生活保護世帯並びにこれに準ずる教育扶助を交付する、支給するという世帯の新入学児童につきましては、できるだけ悲しい思いをさせないように、できるだけ新しい学用品の支給については厚生省考慮するとはっきりした言明をしていただきたいと思う。
  121. 中垣國男

    政府委員中垣國男君) お答えいたします。生活要保護者の児童の新入学につきましては、教科書等はもちろん三十一年度予算で買いまして、三十二年度に間に合わせていくわけであります。年度内に間に合わせていくわけであります。それからそのほかのことは、一時扶助の問題はどこまでも生活の実態というものに即しまして行われていくわけでございまして、ただいま御指摘通り努力をいたしまして御要望に沿いたいと思います。
  122. 山下義信

    山下義信君 私はただいまの答弁を多とします。無理なことを言ってもいけません。これは一つ今年は善処して下さい。そのかわり来年の施策につきましては、一つうんと私どもも協力いたしますから、一つ努力を願いたい。ただ新年度の一年生に入学いたします児童、これは私は先ほど社会局長がよく調べてまた数字は返答するということでありましたから、差しあたっては必要がありませんから、それを資料の提出を待ちますが、かなりな数に上るのじゃないかと思うのです。五万人、六万人弱ではないのじゃないかと思うのです。これはついでに、本席でなくてもよろしゅうございますから、厚生省は取りまとめて一つ資料を至急に出していただきたい。保護世帯、並びに準保護世帯の子供はあなたの方のある資料によりますと全児童数のおよそ四%くらいになるのじゃないかということが出ているのですね。そうすると、全児童数の四%ということになりますと、先ほどおっしゃったような教育扶助の対象から九分の一というふうに出された数字と少し違いやせぬかと思うのですがね。どうですか。  それから文部省はまだ来ておりませんか。
  123. 千葉信

    委員長千葉信君) 申し上げます。  文部省からは財務課長の安嶋君が見えておりますが、管理局長も、それから初等中等教育局長も所用のために暫時おくれるという連絡でございます。
  124. 山下義信

    山下義信君 文部省はどなたが見えておりますか。
  125. 千葉信

    委員長千葉信君) 文部省は財務課長の安嶋君が見えております。
  126. 山下義信

    山下義信君 ああそうですか。今の小学校の児童、新入学児童等も含めて、この文部省が補助ないし援助をしております児童の数というようなものが財務課長でおわかりでしょうか。
  127. 安嶋弥

    説明員(安嶋弥君) 文部省が援助いたしております児童数でございますが、学校給食関係の数字は私存じませんので、教科書関係の数字だけ申し上げますと、小学校におきましては二十四万五千人、中学校におきましては十万五千人でございます。
  128. 山下義信

    山下義信君 今の数字は教科書を無料配付する例のあの法律ができました就学困難な児童のための教科用図書の給与に対する国の補助に関する法律、この法律の対象になる数をおっしゃったのですね。
  129. 安嶋弥

    説明員(安嶋弥君) さようでございます。
  130. 山下義信

    山下義信君 今の二十四万五千人という数字は今年新たに入るべき一年生の児童の数ですね。つまり、教科書を無料支給しようとする要保護児童と一応文部省で考えておる数字ですね。
  131. 安嶋弥

    説明員(安嶋弥君) 二十四万五千人の数字は、これは一年生から六年生までの数字です。
  132. 山下義信

    山下義信君 そうですが。そうすると、全国の児童の中で一・七%以内の、昨年ですか二十一万幾らという児童を出しましたのは、これは一年から六年まで含めて一・七%であると、こういう見込みであったのですか。
  133. 安嶋弥

    説明員(安嶋弥君) その通りでございます。
  134. 山下義信

    山下義信君 この数字はこれは生活保護法の教育扶助を受けていない者の数字ですね。
  135. 安嶋弥

    説明員(安嶋弥君) その通りでございます。
  136. 山下義信

    山下義信君 私が出しました数字は少し誤まりがありましたから直します。今、文部省の言われた二十四万五千は全児童の一・九%と、こう見た。一・七%は昨年の数字ですね。本年は一・九%と見た。それで二十四万五千人と見た。これは教育扶助を受けていない者の一年から六年にわたっての数でありますから、先ほど厚生省の方で言われました教育扶助の対象になっていると推定される約六万の者を加えますると約三十万の何ですね、いわゆる低額所得階層の保護を要する世帯並びにそれに準ずる、これは申しにくいことですけれども、貧困世帯の児童の数字と、そういうことになりますね。いや間違いました。そうしますと、一年生だけに割って申しますと、あなたの方の対象になっているのが約四、五万ですか、一年生で申しますと四、五万……。
  137. 安嶋弥

    説明員(安嶋弥君) それは今年の四月一日から入るわけでございますから、どういう支給がされるかよくわかりませんが、おそらくその六分の一程度だろうと考えております。
  138. 山下義信

    山下義信君 六分の一ですからね、約四万。そうすれば、生活保護の対象になっておる子供が約六万で約十万の児童が、一年生、新入学生児童の中で約十万の児童が生活保護の対象の世帯の家庭の児童、もしくはそれを受けていないそれに準ずる世帯の児童、こういうことになりますね。それで今われわれが問題にしましたのは十万の児童、実は全部にしていただきたいのでありますが、さしあたって当局から答弁を得ましたのは、今の生活保護の世帯並びに教育扶助を受くる世帯、それの新入学児童についての何らかの一つ処置をとっていただくということがここで問題になったのでありますが、あなたの方には文部省の関係では、教科書の無料交付以外には何もないのですね。
  139. 安嶋弥

    説明員(安嶋弥君) 私の方の所管ではございませんが、学校給食につきまして二分の一の補助をいたしております。これも教科書と同じようにいわゆる準要保護児童を対象とするわけであります。
  140. 山下義信

    山下義信君 学校給食は半分あなたの方で持っているのであって、みんな持たぬ。今の生活保護の世帯の児童の給食費はどうなっておるのですか。これは文部省は関係ないのですか。
  141. 安嶋弥

    説明員(安嶋弥君) 関係ございません。
  142. 山下義信

    山下義信君 わかりました。文部省に聞きます。生活保護世帯の児童で長欠児童はどのくらいおりますか。私は初等中等教育局長が来ておりましたらそれを聞こうと思ったんです。——ではそれを調べる間に聞きます。社会局長にお尋ねしますが、生活保護世帯の小学校児童の中で、長欠児童はどのくらいおりますか。
  143. 安田巖

    政府委員(安田巖君) 今調べがございません。
  144. 山下義信

    山下義信君 これは政務次官、お調べ願わにやなりません。生活保護法の世帯の中の、小学校児童、中学校生徒も加えまして、義務教育、その通学のために教育扶助の制度もあるのです。生活保護法の世帯の児童の通学状況がどうなっておるかということはお調べ願わなければなりません。すなわち、生活保護世帯の児童の長欠児童は、どの程度でどうなっているか、なぜ学校へ行かないか、なぜ学校へ行かれないか、何をしているか、家の手伝いをしているか、何をしているか、どうしているかということはお調べ願わなければなりません。これは生活保護の制度の上の大きな問題です。ことにこういう入学とか卒業とかという、学年の学期のこういうときにこそそういう点をお調べ願うて、文部省と御連絡になって、文部省の方では長欠児童というのは問題にされるでしょう。文部省、あなた方の方では、この長欠児童の対策というものは重大なんでしょう。それが一般世帯の、浮浪少年とか何とかということでなくして、その中の生活困難の世帯の子供たちのこの長欠児童の問題は、文部省として教育上重大なんでしょう。そういうことについて、文部省は厚生省相談なさらなければいけません。長欠児童は、生活困難のために学校に行かないのかどうかということを文部省はお調べにならなければいけません。そうして厚生省とお連絡にならなければいけません。厚生省の方でも、教育扶助を出している生活保護世帯の児童で、学校へ毎日行っているであろうかどうであろうかということの状況は御承知にならなければいけません。私は非常に長欠児童が多いのではないかと想像されます。そういうことは、政務次官、これは非常に重大な問題でありますから、一つ厚生省の中の方でも御検討になりまして、生活保護世帯の児童のあり方ということは、これを重視されまして、もう五十、六十、われわれの年令になって役に立たぬような者は、これはもうそのまま動物的生活でもがまんします。しかし、これからの児童、少年には望みをかけてもらわなければなりません。ことに貧困な世帯の少年こそ、将来望みをかけてもらわなければなりません。特権階級の子供なんか、みんないずれもぐうたらになるばかり、これからの次の時代の国民の期待は、もうこういう貧困な世帯の少年に奮起を望むよりほかにありません。ですから、その生活保護世帯の児童が、学校に毎日すくすくとつつがなく行っているかどうかということの状態は把握してもらわなければなりません。厚生省と交渉なさって、相互に緊密に連絡をつけていただいて、そうして私はこの対策を至急に立てていただきたい。政務次官の御所見を伺いたいと思います。
  145. 中垣國男

    政府委員中垣國男君) 山下さんにお答えいたします。ただいまの御指摘の生活要保護者の児童の長期欠席の数字の問題並びに長期欠席の理由でありますが、この二つのことにつきましては、文部省とよく協議をいたしまして、これはぜひとも調査してみたいと考えております。そうしてまた調査すべきものであると考えております。
  146. 山下義信

    山下義信君 私の質問は終りました。期待しておりますから、一つお願いします。文部省は、財務課長でありますから、所管かどうか知りませんが、帰りましたら、それぞれ上司に報告されまして、今の趣旨を伝達して下さい。私の本日のこの質疑につきましては、厚生省の当局から、身のある返答をいただきましたので、一応了といたします。
  147. 勝俣稔

    ○勝俣稔君 ちょっと簡単に伺いますが、下水が建設省に移管される、建設省が主管することになったという理由をちょっと伺いたい。
  148. 山口正義

    政府委員(山口正義君) 上下水道が、公衆衛生行政あるいは環境衛生の基本施設であるということは申し上げるまでもないところでございます。従来この上下水道の所管につきまして、厚生、建設両省の共管になっておりまして、実際の事務を行なって参ります場合に、窓口が二つございますために、いろいろ事務の処理上、地方の市町村の方々から、何とかしてこれを一本化してほしいという御要望が強かったのであります。長年の懸案で、たびたびいろいろな折衡が重ねられましたが、それぞれいろいろ理屈がございまして、なかなか一本化が行われなかったのでございますが、しかし、何とかしてできるだけ一般の国民の方々と申しますか、あるいは市町村の方々の便宜をはかるように行政の筋を立てていきたいということでございまして、そういう理由が一つございます。そこで上水道と下水道それぞれ一本にして専管するようにしたいというようなお話が進んで参りまして、取りあえず、上水道は厚生省で専管し、下水道は、函渠を埋設いたします場合には、道路行政との関係が非常に密接な場合が多いのでございますので、その所管については主として建設省で所管する。しかしながら、厚生省は環境衛生。特に汚物の処理という事業を所管いたしております。それが公衆衛生、環境衛生の基本になりますのでございますので、下水道のうちで、その終末処理施設、特に科学的、衛生工学的な技術を要します終末処理場につきましては厚生省が専管するということで、一応の所管を分けたわけでございます。
  149. 勝俣稔

    ○勝俣稔君 そうすると、下水を設置するというときに、イニシアチブをとるのは建設省で、衛生上の見地からは何ら考えないで建設省がやってもいい、こういう意味でございますか。
  150. 山口正義

    政府委員(山口正義君) 決してそういう意味ではございませんので、下水を設置いたします場合に、函渠を設置いたしますことにつきましても、あるいは終末処理場を設置いたします場合につきましても、衛生上の見地からやらなければなりません。所管が今回そういうふうに分れましたけれども、その両者お互いに連絡し合ってどういう場所に函渠を建設し、またどういう場所に終末処理場を作るということは両省十分話し合って運営していくようにしなければならないと、そういうふうに考えております。
  151. 勝俣稔

    ○勝俣稔君 専管になっておるという、打ち合せをせにやならぬということは一体どういうやり方をして打ち合せをするのですか、それを伺いたいのです。
  152. 山口正義

    政府委員(山口正義君) 法律上専管にはなっておりますけれども、それを実際に実施いたします場合に、たとえばこれは別の問題ではございますが、上水道の問題にいたしましても水源を河川からとるというようなときには、河川につきましてはまた河川法という建設省の専管の事項がございますが、そういう場合に、両省打ち合せて敷設をするということが従来の例になっているのでございますが、今回の問題につきましてもお互いに所管はそれぞれ分かれているのでございますが、実際の面につきましては非常にまあ不可分と申しますか、非常に密接な関係のある両方の施設でございますので、話合ってやっていくようにしなければならぬ、そういうふうに考えております。
  153. 勝俣稔

    ○勝俣稔君 今のお話とは、ちょっと水源をとるとかとらぬとかという問題でなくして、事いやしくも下水の問題は衛生上の一番大きな問題じゃなかろうかと思うのです。これを単に話し合いでやるとか、従来やっておるとかというような問題でこれをやっていこうというようなことは非常な間違いじゃなかろうかと私は思うのです。なおもし、都市計画の関係で函渠をやった場合においては、終末処理場は厚生省でやるんだ、そうすると、その予算の関係は一体どういうふうになるのですか。予算は一つは建設省、一つは終末処理場は厚生省の所管でとらなければならぬ。これこそ私は一体どこに根拠を置いていいのやら、それは非常に困る問題じゃないかと思う。予算の問題から言うならそれは一本にした方がいいんじゃないか、私はそういうように思うんですよ。その点についても一つ意見を承わりたいと思います。
  154. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) 前段のお話はまことにごもっともでございますが、一応おそらく建設省も配管の面に関して下水道法——まあどうなりますか、法律を設定いたすと聞いております。厚生省といたしましても、この終末処理場に関する分についてこれまた扱いはいずれといたしましても法文化を急いでいるわけでございます。従ってそのお互いの法律の中に十分この連絡し合うことを規定いたせば、大体ただいま御指摘の点は解決されるのじゃなかろうか。大体この下水というものが、専管とは言うものの実は共管でございまして、従って、たとえますれば、お互いに協議し合うような体制で進んでいくということにいたしますれば、そうこの衛生上支障のあるような結果にはならないのではないかと、かように考えております。  第二の点につきましては、これまたまことにごもっともでございますが、この現在終末処理場につきましてはきわめて立ちおくれておりまして、約百十都市が配管を——まあ大小の差はありますが、下水工事を始めておるにもかかわらず、終末処理場を持っておるものはわずかに大都市にすぎません。今後この立ちおくれた終末処理場を早急に伸ばしていくためには、むしろこの別建てにいたしまして予算を確保する、しかも一方、配管計画というものはある程度進んでおるのでございますから、これにとても追いつくだけの予算はそう早急には形つきませんので、予算執行の面におきましては特に支障のないもののように考えておる次第でございます。
  155. 勝俣稔

    ○勝俣稔君 なお、この管理の問題はどうするのですか。配管の工事が破れて汚水なんか出た場合の衛生の問題は、配管の問題はこれは建設省でやる、終末処理場の問題は厚生省がこれを監督管理するのではなかろうか、こういうようなことになっておるのやら、私はやはりそういうような衛生上の問題に関しまして——下水というのは衛生の問題でございますから、この監督の問題は厚生衛生行政を、公衆衛生をつかさどるところでこれは管理監督せねばならぬ問題じゃなかろうかと思うのですが、これをただ土管をふせたりいろいろするようなところにこの衛生管理をまかしていいものやら、どうであるのか、こういう点をなおどういうお考えであるか、そこを伺いたいと思います。
  156. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) 水道のパイプにつきましてはきわめて厳重な衛生管理が必要でございますが、下水につきましては、従来の実績から申しますと、衛生的な管理というものはもう全然必要がないということは、これは申せないかもしれませんけれども、特に配管の管理を誤まって事故を起したというような例は承知をしておらぬのであります。従って、今回の行政所管の割り振りにつきましても、下水配管については衛生上の管理上は少くとも特に考慮すべき重大な点がない、これに反しまして、この終末処理場はきわめてこれは高度の技術を持って衛生管理をしなければなりませんので、さような管理の強弱から所管を分けたというのも一つの理由であったかと存じます。  なお管理上につきましては、むしろ下水は洪水の防除あるいは舗装道路の補強というような点にも大きな意味がございますので、さような洪水問題、あるいは道路の路面の維持管理等と不可分な関係のものとしてかような決定を見たかに承知をいたしております。
  157. 勝俣稔

    ○勝俣稔君 不正工事のあと、長年のうちにおいてこういうむしろバインデングの間から出ていって事故を起したという例を、そういうことをあまり知りないというふうなお話ですが、これほ厚生省のその関係の人は知らないかもしれない。これは文献にもすでにある話でございます。これをただ知らぬからというので、そういうようなことでやっているということは、私はどうかと思う。私は少くとも政治は二つ足して二で分けるというようなことは、よく世の中にいわゆる政治家が言うておるかもしれませんけれども、いやしくも科学を中心にした行政においては、私は妥協というものはないものじゃなかろうか、こういうように私は考えておるものでありまして、下水はこれはもう厚生省には関係ない、こう言ように至っては、私は厚生行政というものの存在を疑わざるを得ないと、こういうように思うのでございまして、まあどういうお考えでなされるか知りませんが、今環境衛生部長も言われたように、法律の面において十分これを明確にする、そうして衛生行政の見地からの発言権を十分得ておくというならば、私はもうこれで満足いたしますが、外国でもこういう問題を、下水の問題をほかのところでやっておるというところはきわめて少く、イギリスであるとか、ユーゴであるとか、レバノンであるとか、エジプトであるとかいうようなところは、最近こういうことをやっておるようですが、ことごとく内輪でやはり心配しておるというのが私に対しての最近のニュースであります。こういうようなことを考えて、そうして今後私はこの問題に対処してもらわなきゃ困るのじゃなかろうか、先ほどはうまくこれからやっていけるだろうというようなお話だけれども、今までのいきさつから考えて、それでうまくやっていけるなんということは、なかなかこれはむずかしい話でありまして、われわれ長い間衛生行政に関与し、また、医学を学び、公衆衛生を学んだ見地から見ていけば、これは当然上下水というものは公衆衛生という衛生に携わるところの省が主管すべき問題であると私は思うておるのでありまして、最近も衛生工学なるような講座が諸方に出てくる、まさにこの下水、上水というものは衛生の根本をなしておるもので、公衆衛生責任ある省が担当して大衆の安寧をはかる、安全をはかるというのが私は最近の傾向じゃなかろうか、こういうように思うておる次第でございます。どうぞ政務次官におかれても、ぜひこの下水道の問題につきまして、われわれの……、少くとも私の意のあるところを一つ御配慮を願いたいと思う次第であります。  私はこれで終ります。
  158. 千葉信

    委員長千葉信君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  159. 千葉信

    委員長千葉信君) 速記を起して。
  160. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) ただいまこの所管のいきさつについてお答えを申し上げたいと存じますが、何分にもきわめて長い、深い事情がありますので、あるいは話が少し若干期間等はずれておるかもしれません、いずれ資料をもって詳しくはお話いたします。  かつて内務省時代におきましては、内務大臣のもとに衛生局が上下水道の主管をいたしておりました。従って、予算その他一般計画は、衛生局が立案をいたしておった次第でございます。ところが、同じ内務大臣のもとに土木局に多数の土木技術者がおりましたために、便宜技術面は衛生局が土木局に依存をする形で進んでいたわけであります。ところが、その後この厚生省ができるに当りまして、たまたま技術面の、土木部の技術力だけを置いて、厚生省衛生局だけの姿ででき上りましたために、そこに技術面と予算その他の総括面との分離が行われまして、ここに共管が始まったわけであります。しかし、そのときには両省の間で覚書を交換いたしまして事務連絡等をはかったと聞いております。ところが、その後両省にまたがりまして仕事を共管の上で実施をする。つまり、一方は総括事務、一方は技術面、かようなことが共管としてなかなか問題が多うございまして、一番これによって苦労いたしましたのは市町村と聞いております。市町村が間の板ばさみになり、まことにつらい立場におられることもあったと聞いております。  それから、一方共管となりますと、やはり責任の所在というものがはっきりいたしませんために、しばしば決算委員会等でも批難事項を生んだり、あるいは着実に伸びるべき仕事がややもするとその責任の分散からして十分な効果がいかなかったり、かような数々の不便があった。特にこの市町村に対するいろいろな問題もございまして、たびたびこの問題を何とか解決をはかろうとして努力をして参りました。たとえばいろいろな行政機構改革の委員会あるいは話し合い等におきましてはしばしばこの問題が出て参りましたが、解決せずに現在に至っておったわけであります。昨年約一年内にたまたま閣議におきまして突如としてこの下水と上水とを交換する——交換と申しましょうか、割り切るという話が決定されまして、私どもといたしましてはこれは衛生上の立場から下水を野放しにして放すことは、これは保健衛生責任を持つ厚生省としては絶対技術上許されない点であるところから、閣議決定には出されましたけれども、その後いかに調整をはかったらいいかという点を、その線に沿って過去一年間いろいろ相談をして参りました。その結果、現在のような姿に割り切ろうとしたわけでございまして、従って私どもといたしましては、これによって十分支障なく上下水道の発達ができ、しかも一方、これによりまして今後衛生上の問題等も事故なくやっていけるという判断のもとにかような調整が終ったというふうに考えておる次第でございます。
  161. 千葉信

    委員長千葉信君) 再開の劈頭に、藤田委員からの厚生大臣出席の要求について政務次官から確約が与えられました通りに、大臣に対する質疑等については次回に譲ることにしまして、本日はこの問題についての質疑はこの程度にいたしたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  162. 千葉信

    委員長千葉信君) 御異議ないと認めます。ちょつと速記とめて。    〔速記中止〕
  163. 千葉信

    委員長千葉信君) 速記始めて。  暫時休憩いたします。    午後三時五十一分休憩    —————・—————    午後三時五十九分開会
  164. 千葉信

    委員長千葉信君) それでは休憩前に引き続きまして、社会労働委員会を開会いたします。  労働情勢に関する調査の一環として労働教育行政の指針に関する件を議題とし、前回に引き続き、質疑を行います。御質疑願います。
  165. 大矢正

    ○大矢正君 私はこの際、労働大臣出席をいただいておりますので、実は緊急に大臣質問を申し上げたい点があるのでありますが、それは今行われようとしておる、あるいはまた、行われている賃上げ闘争です。これに関連して、特にきょうは午前中労働大臣は、今非常に問題になっている炭鉱の争議に対して労使を招致していろいろ談話を発表され、ないしは要請をされ、そしてまた事情を聴取されているようでありますが、私はこの点について緊急に大臣の所見を実は承わりたいと思うのであります。この点動議として、一つお取り上げ願いたいと思います。
  166. 山本經勝

    ○山本經勝君 ただいまの大矢委員の緊急質問に対して賛成いたします。
  167. 千葉信

    委員長千葉信君) 大矢君の動議に御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  168. 千葉信

    委員長千葉信君) ではさよう取り、運びます。
  169. 大矢正

    ○大矢正君 さっそく取り上げていただきましてまことにありがとう存じます。今日午前中、労働大臣並びに通産大臣が、今、春の争議で非常に国民経済に影響ありと思われる炭労の争議に対し、特に労使を招致して、日本の経済の現状を述べて、争議の一日も早く解決されることを要請され、また、労働大臣は談話として発表されておるようでありますが、きょうなされました特に労働大臣の談話、この談話の意図というものはどういうところにあるか、まずここから私はお尋ねをいたしたいと思います。
  170. 松浦周太郎

    ○国務大臣松浦周太郎君) ここに全文がありますが、長くなりますから簡単に申し上げた方がいいと思います。もし御必要があるならば、読み上げて御参考に供したいと思うのでありますか、政府といたしましては、今度の春季闘争に対する炭労の問題について特に心配いたしまして、それは石炭の貯炭量がだんだん減って参りまして、明日から行われる向う五日間の争議が続行されますと、大体一日まあ大きい山の五十五、六の山の生産量は十一万トンくらいになりますから、残りが八十万トンはあるといったようなことになりまして、ある産業においてはもう二、三日分しかないところもあるし、特に電気あるいは鉄道なんかにおきましても貯炭が非常に少いものでありますから、そういうことが起きて日本の国民経済の上に非常に大きな影響を及はすということは困る、政府としても座視することはできないのでありますから、この際使用者、勤労者双方とも大局的な見地に立って、この窮状を救ってもらいたいという意味において、自主的に熱意のある自主的に争議を一日も早く平和裏に解決つけてもらいたい、これが政府の要請であり、また、特にお願いでありますということで、石炭経営者の伊藤会長初め、ほか九、六人出席されました。片方、原資員長ほか五、六人御出席になりまして、そしてわれわれは、通産、労働、官房長、三人が出席しまして要請を申し上げたのであります。その場におい、まず原委員長からは、これはまあ通例いつもやる方法じゃないか、こういうことをやるということは後に緊急調整のようなことをやる意図があるのではないかという御質問がありましたが、私は絶対そういう考えは持っていない、あくまでも労使双方において、熱意を持って平和裏に争議の解決をしてもらいたいということを強く要望いたしました次第であります。通産大臣からも今申し上げました石炭の事情及び日本経済の動向をお述べになりまして要請がございました。伊藤炭鉱の会長の方からも、労働代表のおっしゃるように、自分たちも相手のあることですから、早急と言ってもなかなかできないけれども、誠意を持って片づけるように努力するという答弁があった次第であります。以上簡単に……。
  171. 大矢正

    ○大矢正君 ただいまの労働大臣の争議に対する考え方を承わりまして、多少将来についての疑問があるので再度お尋ねいたしたいのでありますが、本日、大臣が行われた労使を招致しての談話の発表というものは、これは何と申しますか、争議を具体的に解決をするという面では、なかなか直接的な動機にはなり得ないのではないかという感じを私は持つわけでありますが、なぜ私がそういうことを申し上げるかといいますと、大臣は談話の中でも具体的に述べておられるように、労使の各位は、今の日本の経済が、非常に石炭の労使の状態がうまくいかなくて、争議が起ることによって非常に混乱をするということは十分わかっているはずであるが、こういうように大臣自身が述べられておる通り、炭鉱の労使ともに今の日本の経済の中で、石炭産業というものが争議を起し、これはいずれの責任を問わず争議が起り、そのために経済に影響するという点は十分労使も私はわかっておると思うのであります。その中で、本日労働大臣が談話を発表され、そしてまた要請をなされたようでありますが、これだけでは争議の解決の直接的な動機にはなり得ない、実際問題として労使の要求の額の内容には、あるいはまた、経営者の提示の内容の中には相当な開きもありまするからして、こういう点ではなかなか争議というものは解決することがむずかしいのではないかという、実は見通しも立つわけでありますが、こうなって参りますと、大臣の談話の発表、あるいは通産大臣の要請のみをもってして、今の争議が円満に平和裏に妥結されるものとは私は考えられないわけでありまして、相当深刻な状態に立ち至るのではないかと考えるのでありますが、もしもこういうように、大臣の要請にもかかわらず、労使いずれが悪いかは別として、争議が今後も継続され、しかもそのことが、漸次日本経済に非常に影響を及ぼすような状況になって参った場合に、労働大臣としてはいかような態度対策を立てられるおつもりか、その点を承わってみたいと思います。
  172. 松浦周太郎

    ○国務大臣松浦周太郎君) 労使いずれも現状のままで、いつまでも闘争をにらみ合っていくことはないと思うのです。それは勤労者も使用者も一刻も早く片づけだいという意思がなければならない。それがまた、日本民族として、日本民族の発展を考える者として当然のことであると思うのです。私は永久にこの争議が続くとは思っておりません。そこで、ただこの御指摘になりました両者の間の歩み寄りの中心がどこにいくかということの問題であろうと思うのです。その問題は政府は不介入り態度をとっておりますから、そうすべきことが政府の労働行政としては当然のことでございますから、労働者の側の方に同情するとかあるいは使用者の方に肩をもっとかいうことを少しでも政府がいたしましたならば、それが実際の自然の経済の成り行きから見てちんばになりますから、それは日本経済の破壊の原因になりますので、自然の状況において両者の歩み寄りといいますか、いわゆる平和裡に解決づけるという、両方とも最小限度の犠牲においていこうというような話し合いがつくべきであろうと思うのです。それを私は期待いたしております。そのために今度の勧告、要請をいたしたのでございますが、いつまでも長くこの争議が続くということを私は考えてもおりませんし、早く解決することを祈ってやまないものであります。
  173. 大矢正

    ○大矢正君 先ほどの大臣答弁の中に、緊急調整を発動するというような考え方はない、それから今の答弁の中では、明確にこの労使の争議には不介入であるという立場の表明がありました。そうなって参りますと、かりにこれから争議が何日続くかは別とし、また、そのことが具体的に日本の経済にどういう影響を及ぼすかはこれまた別として、介入をしないということは、きょう労働大臣が労使を招いて談話の形式で、単に要請をするという立場で争議の解決に努力をしてもらいたいという表明をいたしておりますが、私は本質的にいって、大臣が労使の争議に介入をしないという態度であるとすれば、将来ともにこの談話や要請の域を出ないものと、このように私は判断をするわけでありますが、具体的にいいますれば、かりに緊急調整までの間に段階がいろいろありますし、大臣は、おそらく労働委員会に対してあっせんやあるいはまた調停や、こういう要諦るわけでありまするが、こういうことは明らかにもう介入ということに入ると思うのでありますからして、大臣が労使に絶対不介入という立場の堅持というものは、将来としても、本日行なった談話の形式あるいは本日行なったというような軽い意味の要請、こういう程度を出ないものであるという判断を私は持つわけでありすまが、その通り解釈してよろしゅうございますか。
  174. 松浦周太郎

    ○国務大臣松浦周太郎君) 言葉の上に現われた以上、陰に何にも隠れておりません。その通り了解をしていただけば差しつかえないと思います。
  175. 大矢正

    ○大矢正君 そうすると、大臣、私は将来非常に問題になってはいけないと思いますし、それからあとあと紛糾をしても困ると思いますので、再度私はここで念を押しておきたいのでありまするが、不介入の原則と、それからさらに、そのことをもっと積極的に具体的に表明をいたしまするならば、緊急調整その他の発動は一切行わないという態度に変りありませんか。
  176. 松浦周太郎

    ○国務大臣松浦周太郎君) 現在の情勢下においては、今のところそういうことを私は毛頭も考えておりません。
  177. 大矢正

    ○大矢正君 質問いたします。現在の情勢というその情勢の判断について一つ説明を願いたい。と申しますことは、これはもちろん経済の状態とか、あるいは労使間の状態とか、いろいろあると思いまするが、そういう今の状態ではこうだといわれますけれども、争議が続いていけば今の状態でないことは明らかなんです。そうすると、きょうの状態とあすの状態が変ってくることは明らかであります。それは労働大臣、抽象的な言葉の論議じゃなくて、私は具体的のお尋ねをいたしたいと思うのでありますが、かりにあすから争議が行われたとする、そうすると、さっき大臣が言われたように、一日の争議で何十万トンという石炭がこれは出ないことになるわけです。そうすると、何十万トンの石炭が出ないということは、それだけ日本の各産業には相当影響を与えるということもこれも事実でありまするからして、これはきょうの状態とあすの状態は、変化していることは事実です。ですから今日の状態であると言われる立場というものが非常に私は問題があろうと思いますので、その面に対する大臣の御見解を承わりたい。
  178. 松浦周太郎

    ○国務大臣松浦周太郎君) 私は先ほど申し上げましたように、労使双方間において平和裡にかつ自主的にきめてもらいたいということが私の信念なんです。それを自分に行おう、そういうようにぜひやってもらいたいという考えなのです。片方でやらなければ、それ緊急調整をやるぞというような態度では、目的を達成することはできない。私はあくまでも現在の状況においてこれは平和裡に、自主的に話を進めてもらいたい、それがまた、労働省として当然とるべきことであるし、労使間においてもそういう、この前二十六年でしたかにやりましたような緊急調整をやるというようなことは、労使間においても恥辱なんですよ。ですから、労使並びに日本政府は三位一体になってそういうことのないように解決をつけて、日本経済に影響を及ぼさないようにすべきことが、今日のわれわれの立場であると思うのです。私は今のところ、緊急調整をやるという考えは持っておりません。
  179. 山本經勝

    ○山本經勝君 関連して。今の大臣お答えの中に関連するのですが、先ほど大臣はおっしゃったように、現在貯炭が八十万トンと推定され、かりに一日ストライキをやりますと、今の炭労傘下だけで大体八万トンくらい減産するのですか。
  180. 松浦周太郎

    ○国務大臣松浦周太郎君) 十一万トンです。
  181. 山本經勝

    ○山本經勝君 炭労だけです。
  182. 松浦周太郎

    ○国務大臣松浦周太郎君) 炭労だけですが、十一万トンです。大体十七万トンくらい出ているのです、
  183. 山本經勝

    ○山本經勝君 大体そういう形勢ですと、今の非常に懸念されている貯炭量の減少に伴い、たとえば電気の方に故障が起る、あるいはまた、国鉄の輸送に影響が起るというようなことが具体的にかりに予想されるような事態になったときには、大臣の言葉裏をとっていえば緊急調整も発動することがある、こういうふうに理解していいですか。
  184. 松浦周太郎

    ○国務大臣松浦周太郎君) 電気が消えたり、鉄道が走らなくなったり、国の経済状態が麻痺状態になるというようなことが目の先に現われておる今日においては、私は使用者も勤労者もその事実を目の前に見ている以上、そこへ追い込むような考え方まで押し合わぬでも、お互いに話し合いでつけることは、日本民族の今日持っておる考え方ではないかということが私の理念なんです。そこで、これは終戦直後の二十五年か二十六年ごろまでであれば、非常にものがへんぱであって足りない場合がずいぶん多かったのでありますから、そういうところで押し合ったが、今日の経済情勢においては、同じ春季闘争をやりましても、住は大体統計上足りないのですよ。衣食は二十五、六年以前の状況に比べては非常に緩和されております。そこで問題は、分配の度合いをどうしようかというところにあるのでありますから、もとのような真空のところへ行かないうちに平和裡に片づけるべきじゃないか、私はそれを祈ってやまないのです。そこで緊急調整を出してそこで政府使用者、勤労者がけんかをするような態度でやるようなことは好ましくないのです。私はやりたくない、これはほんとうに私はそう思っております。
  185. 山本經勝

    ○山本經勝君 これは労働大臣に直接関係があるというよりも、むしろ通産大臣の所管に属する問題ではありますが、労働とは緊密な関係がありますから、特に私はこの際、大臣に御考慮おきを願いたいのは、本年度政府の方針では、大体五千二百五十万トンの出炭計画を一応持っている、ところが、実際にこの目標が達成できるかどうかということは一応疑問の中にある。これだけ争議をやっても貯炭はすでに争議前において百三十万トンしかなかったという状況なんです。それからそれにもかかわらず、一方では六十に達する中小炭鉱が買いつぶしになりつつあるのですよ。で、年間出炭量というものは約二百万トン、一方ではこうして政策的に炭鉱を買いつぶして、押えておいて、そうして全体の出炭量は非常に不十分な状態、貯炭の円滑化を欠いておる、いわゆるランニング・ストックと称するものが普通約二百万トン程度必要なんです。それされ確保できぬような施策が行われておる。ところが、最近聞くところによると、さらに国鉄は年間大体四百万トンですか、必要としておる。その中の一割五分程度は国鉄自身で生産している志免鉱業所の石炭によって……、ここは一ヵ月五万トン、約年間六十万トンを生産する、これを分離してやめようという、こういう政策と一連の関連をもって石炭が足りないという現状に追い詰められておる、しかも炭価はつり上げられつつある、こういう状態とにらみ合せてこの際はお考え願わないというと、炭労の争議もただ単に今お話のように、労使双方の良識による解決に期待するものである、これはまことにりっぱなお話ですし、また、不介入の方針そのものも私ども非常に敬意を表するところです。ところが、実際問題は労働大臣の手によって必ずしもその点がどういうふうにでもなるということにはなせない場合もあると思う。つまり内閣の施策の方針としてやはり閣議の決定を必要とするような事態が発生するというと、どういうことが起るか。先だって新聞で見ますというと、御承知のように、炭労争議に備えて百万トンの緊急外炭輸入という見出しで、でかでかと書き立てられておる、こういうことは単に労働大臣だけの手でもって——いかに労働大臣がほんとうに労働者を思う、あるいは労使間の関係の円滑な確立を望むというお考え方があっても、閣議でもってそういう線が打ち出されてくるときには、なかなかそうは簡単に参らぬと判断せざるを得ぬ。しかし、きょうは私ども一応ただいまお答えになった争議不介入、労使の自主的解決への期待、緊急調整等はまして発動する考えもない、こういうお言葉を期待して、一応この点の質問を打ち切りたいの思います。
  186. 千葉信

    委員長千葉信君) 上程されました議題について御質疑を願います。
  187. 山本經勝

    ○山本經勝君 それでは、前回、労働次官通牒を中心にしていろいろ質疑を続けて参りましたが、さらに大臣の御出席をいただきましたので、この際続いて御質疑を申し上げたい。  なお、その初めに私は大臣に重ねて御要望を申し上げておきたいのですが、この社労の委員会でなるほど多くの問題があります、法案等もございます。しかし、厚生省と労働省と二つの省にまたがった法案、政策等の審査をしておる。でありますから、何を申しましても主管大臣は労働大臣厚生大臣です。ところが、本日などの委員会の状況を見ますというと、この点まことにそり不満やる方のないものがある。あらかじめ理事会でもって日程だけを相談をし、そうして委員長を通してそれぞれ出席要請があっていると思う。ところがその日になって、いや何やら委員会がある、あるいは予算委員会もある、本会議もある、こういったようなこと、これは国会開会中ですから当然ある会議なんです。そこで、こうした会議の輻輳も私ども事情わかるのですよ。しかし少くとも主管大臣委員会に出て見えないということでは、まじめに審議ができるとお考えになるのか、これは少くとも今後の問題として、また、これは長い期間この国会もありますし、また、その次もあることでしょうが、主管大臣が欠席をされた姿で、そうして事務当局とここでいかに応酬をしてみても最終的な締めくくりにならないと思うのです。むしろ国会審議の経済的な、能率的な運営からいいましても、私はやはり主管大臣は当該委員会に対してはまず優先的に出席をしていただくべきだと思う。それでなるほど衆議院、参議院両方並立されておりますから、その間の調整等は必要とするでしょう。しかし来られないなら来られないということで、一応大臣が顔を出して事情を解明なさるくらいなことは私は当然のことではないかと思う。私まだ期間は短かいのですが、二十回国会以来この会議にすっと出ている。ところが、どうもその労働、厚生両省の所管大臣が歴代委員会を軽視される傾向にあるように感じておる。この点は、一つ今後の問題として特に御留意を願っておきたいと思う。  そこで前回、これは局長の方からのお話であったわけなんですが、この点もあらためて確認をしていく方が都合がいいと思いますから、大臣の確認を求めておきたい。次官通牒というものが教育指針という形でもって都道府県知事あてに通達された。そこで、これについてはむろん労働省内のしかるべき会議、省議といいますか、そこで御決定になって、労働大臣が次官をしてこり通達を出させた、こういうことなのか。
  188. 松浦周太郎

    ○国務大臣松浦周太郎君) 先ほどの出席の問題について私弁明申し上げます。前もって総務課長及び連絡係りの間には、きょうは非常に輻湊しておるように申し上げたんでありますが、非常に御迷惑をかけまして申しわけないと思っております。今後決して軽視するどころではありません。私は衆議院は昭和十二年以来出ておりますから友だちが多いし、自分の里へ帰ったようなつもりでありますが参議院の方は親の前に引き出されるような気持なんですよ。非常な敬意と感謝を持っております。それでだから敬遠するのじゃないかと思う、こういうのじゃありません。しかも私の政府委員室は参議院の中にあるのです。けれども、きょうは朝からのことをいうと、八時半に家を出て九時に閣議なんです。十時に勤労者との、炭労との会に出たんです。それから十時半に衆議院の社労で昼までやったんです。それからその次にまた本会議なんです。今衆議院の予算委員会から、社会党の北山愛郎さんがぜひ来いといってメモが来ているのです。それで向うへ行ってはしかられ、こっちへ来てはしかられる。どうしていいかわからないのですよ。実際私は正直に言うておる。私はできるだけやりますから、一つ御協力をお願いしたいと思います。  それから次官通牒の問題については、これはしばしば述べておりますように、まあ日本の労働運動というものは前もありましたけれども、具体的に行われたのは戦後において具体的に行われておりまして、それがだんだんと進歩向上いたしておりますことは言うまでもありません。けれども、まだ不十分だというようなところはないとも言われないわけであります。そこで、昨年労働組合法ができてから十年、まる十年になりますから、その十周年記念の場合に一つこれを指針を出した方がいいと、教育指針を出した方がいいということにきまったようであります。そこで、年かかってこれができ上って、私が、就任した三週間後くらいにこの通牒をたしか一月十四日だと思いますが、出すことになったのです。その前に、次官を初めといたしまして、局長その他から十分に内容説明を受けております。で、私もこれはこの際、都道府県を通じて直接には組合員あるいは間接には一般国民にこの説明を知らせることが必要である、その上に健全な労働組合の発展をさして、それで日本生産を高め、日本の経済をよくすることがほんとうであると、かように思ったのでありまして、知らないものに判を押したのではないかということは絶対にございません。私はあくまで責任を持ちますから、どうぞそのつもりで御質問を願いたいと思います。
  189. 山本經勝

    ○山本經勝君 私決してめくら判を押したというふうには申しておりません。今私が申し上げたのは、通牒の筋として、出されるものには労働省において関係局長さん、その他省議といいますか、省の会議がございましょう。その会議でもって御決定になって、大臣の命によって次官が都道府県知事あてにこの教育指針を通牒として出した、こういうことなんですね。
  190. 松浦周太郎

    ○国務大臣松浦周太郎君) そうです。
  191. 山本經勝

    ○山本經勝君 先日の中西労政局長の御説明によりますと、労働施策の一つとして都道府県知事に助言をしたのであると言われた。次官の名において出されておりますが、大臣の承認を得て、いわゆる命によって通牒を発せられた。そうして都道府県知事は労働教育に関する指針として、貴重ないわゆる指令として受け取って、そうしてそういうような業務を推進するのじゃないかと思うのですが、その点どうなんですか。大臣に……。
  192. 松浦周太郎

    ○国務大臣松浦周太郎君) こっちから説明した方がいいんじゃないですか、今のお問いに対しては。
  193. 山本經勝

    ○山本經勝君 局長からはこの前伺っておるわけです。それを念のために、大臣が承認をされて、そうして次官をして通牒を発せられたのだということを、そのことを確認しておかないと、あとあとの話を進める上に順序が変動したりして困りますから……。
  194. 松浦周太郎

    ○国務大臣松浦周太郎君) 局長の答えた通りであります。
  195. 山本經勝

    ○山本經勝君 そうすると、もう一度伺いますが、労働省のしかるべき会議の決定に基いて、次官の名による通牒を発せられた、これは労働大臣の命によってなされるものだ。そこで都道府県知事に労働教育指針なるものがこの通牒として渡っていく、その通牒は、いわゆる都道府県知事がその内容に従って労働教育行政をつかさどる、こういうことになると思うのです。ところが、中西さんのお話では、そうではなくて、単なる助言をしたという弁護をしておる。施策の必要な助言である。これは私は従来の、いわば大臣の命による通牒とはよほど性格を異にすると思うのです。しかもそれは拘束があってはならない。その点はどうなんですか、これは局長からでもよろしいのですが。
  196. 中西實

    政府委員(中西實君) 常識的に考えれば、次官名通牒ということによりまして知事がこれを体して施策するということでございます。しかしながら、地方自治法によりまして、中央官庁と知事との関連というものがはっきり規定されております。で、この知事のやります事務に二つございまして、国の事務を法律によって委任して行なっておる事務とそれから府県固有の事務とあるわけです。で、この労政の事務というものは府県固有の事務になっておるわけです。そうしますると、地方自治法の二百四十五条の三の四項によりまして、主務大臣というものは、地方公共団体に対して「その担任する事務の運営その他の事項について適切と認める技術的な助言若しくは勧告をし、又は当該事務の運営その他の事項の合理化について情報を提供するため必要な資料の提出を求めることができる。」これがつながりなのであります。従って法律的に正確に言いますると助言、勧告と、こういうことでございます。しかしながら、中央、地方の実際の運用といたしましては、まず地方が主務大臣の命を受けて出しました通達には、これは一応従ってくれて、その方針によって運用してくれることを期待しております。
  197. 山本經勝

    ○山本經勝君 中央と知事との関連はよくわかりました。そこで、助言と勧告という言葉が使われておりますが、内容からいいますと、この前しばしば繰り返して議論をここでしたところなんですが、つまり行政解釈ではない。行政解釈とは、施行してある法の適法であるかいなかということに関する見解を明らかにするものであると言われている。ところが、この教育指針なり、通牒の中身を見ますると、労働関係三法、特に労働組合法を中心にして、あるいは労調法さらに労働基準法等にもまたがっている、協約等を通してまたがっていると感ずるのですが、こうした労働三法の法規解釈というものがざらに入っている。従って、行政解釈ではないと言われながらも、実は行政解釈内容を持っていることは私はこれは論ずるまでもないと思うのですが、こういうことになると、この助言なりあるいは勧告の相違というものは一体どういうところにあるのですかね。
  198. 中西實

    政府委員(中西實君) 前回にも申しましたように、こういった通達はこれに始まったのではございません。今までにもう何べんか地方知事あてにそういった通達が出ているわけでありまして、すべてこれは大体同じような性格を持っているのでありますが、行政解釈という正確な表現につきましての意義は一定しておりませんけれども、いわゆる行政解釈というのは法の適法違法ということをはっきりと行政官庁の方できめまして、それによって一応行政官庁が施行する場合に行政解釈と言います。ところが、この前申したかと思いまするけれども、労働関係法につきまして、つまり労政局の担当しております法律につきましては、労働大臣の直接権限として持っているところは少いのであります。従って、法に対しまして一応の解釈を下して、それを一応の準拠とするところとして行動してもらいたい、こういう程度のものとして種々のものが出されているわけでございます。今回出ましたこういった種類のものは、今までにでも幾らも出ておりますので、ただ内容的に、今度のものが労働組合活動全般に及んでいるというところに特異なといいますか、内容的に特徴がございますけれども、珍しいものじゃないというふうに考えております。
  199. 山本經勝

    ○山本經勝君 珍しいものでないことは私もよく存じております。たくさん出ていることもよく存じております。そこで、この前の、前回の局長の御説明では、今まで出した多くの通牒を集大成したものであるというような御説明もあった。これはよく存じている。ところが、昭年二十三年の十二月に、この前もちょっと触れたと思いますが、労働組合規約及び労働協約に関する教育指針と称するものが出された。われわれが非常に印象深く考えることは、当時もっとも占領下ではありましたが、御承知のように、二十四年の七月には労働組合法が改正になった、そうすると、この種の一般的な広範な、組合運動に関する広範な指示が通牒という形で省議の決定を待って行われることには何らかの意味がありそうだ、で、労働組合法あるいは労調法等を含めて労働関係、特に基準法がせんだってから問題になって、労働省では調査会を作っておられる、基準改正に関する調査会が作られている。その前から、すでに昨年、一昨年から労働法改正という声が使用者団体、特に日経連等から非常に強く出ていることは御承知通りであります。そこで二十三年のことを思い合せますと、当時は占領軍が中心になって勧告に基く改正であったかに記憶いたしますが、今度は占領軍ではなくて、日経連が中心になって、労働三法改正に関する意見が強く出ておることは周知の通りなんです。そこで、労働者の団結権、憲法が保障している労働者の団結権、団体交渉権、団体行動権、こういったものに対する大幅な法改正以上の強力な広範な大臣の依命通牒が発せられたということは、一つには労働法改正が非常に困難な課題である、強力な労働者の抵抗もあるだろうし、あるいは国際情勢にも関連をする、そこで、非常に邪推した言い回しかもしれませんが、労働法改正という仕事をやり遂げたいけれども、これは実際的にもまた、国内的にも容易なわざでない、そこで実質上その改正をしたくても済むような次官通牒という形でもってこの通牒の形式で、しかも内容に至っては巧妙な労働者に対する教育指針であるというまことに風当りのいい、また、表面的なだらかな形でもって打ち出されてきた、こういうふうな解釈が行われておるし、また、そういう考え方があながち虚説、あるいは虚構だというふうにも考えがたい節々がある。さらに言葉を続けて申すなれば、今問題になっておる労働三法の改正の地ならしをこの次官通牒でもってやっていこう、こういうふうなことが考えられておるのではないかという、これは私はそうも考えておりませんが、そういう説があります。そこで、一つその点について、大臣からはっきりした御答弁を願っておきたい。
  200. 松浦周太郎

    ○国務大臣松浦周太郎君) 今の教育指針として出しました次官通牒は、労働三法改正をする地ならしだというようなことは毛頭もありません。私は今の労働三法そのものでは、今の日本の中小企業の現状においては救われないとい、陳情はしばしば受けております。また、自分も中小企業の一人でありますからその苦痛は十分なめております。他国を旅行いたしましたときに、ドイツ及びイギリスその他の労働法を全部見ましたが、業種別にやっておる場合が多い。特に運送法あるいは工場法などというものは、その工場法、運送法の中に労働についての規制があります。日本のように全部一律一体に一つ法律によってやるということについては、これは私は長い将来はだんだんと進歩するに従って直されていくであろう、こう思うのでありますが、私は直す考えは今持っておりません。中小企業に対しましては、摘発主義を廃しまして、もっと拡大解釈と申しますか、教育をしながら生産を上げさせて中小企業が引き合うようになるならば、だんだんと時間の方も縮減していくというようなふうに、お互いに相談し合って、われわれの第一線における基準局長と経営者団体とが相談し合って、だんだんと今の労働基準法に近寄らせるように彼らも進歩をさせたいということを考えておりますが、今の場合において、この労働基準法等労働三法というものを直すということになると非常な摩擦が起きまして、現在以上に国家が損失すると思いますから、これを直す考えは毛頭持っておりません。
  201. 山本經勝

    ○山本經勝君 今の大臣お話、労働三法に対して改正の意図はないという明言については、そのように一つ努力いただきたいと思いますが、ところで、その問題は今お話になった中小企業の場合に、現在の労働法による組合法も基準法が中心ではないかと思いますが、そういう点からもいわゆる摘発主義ではなくてむしろ拡大して保護しつつ、一方理解を深めて育成するというようなお考え方、それは一つの悪いお考え方ではない。ところが、大臣は中小企業者の経営者の実態というものをよく御存じになっていないと私は思う。  そこでこの間も質問申し上げたように、現に起っている事件を、具体的な事例によって御報告も求めたわけですが、これは後ほど局長の方からいただくとして、問題はその個々の事件を見て参ると、ただいまお話になったような心持とは全く違って、経営者の心理というものはどこまでももうければいいということに尽きている。そのことが労働者に対する不当な圧迫になって現われる。組合運動にしましても、組合を作るとすぐに切りくずしをかけて第二組合を作って、自分の側に組合を置いてそして第一組合と戦わせる。こういうようなやり方がひんぱんと起つている。こういう点から実は報告を求めたわけです。
  202. 松浦周太郎

    ○国務大臣松浦周太郎君) 今の問題は、この間本会議においてそういう問題をお聞き願いまして、私も答弁が少し悪かったようでありますが、後刻ある機会においてよく御説明もし、私も考え方を申し上げたいと思いますが、今の中小企業の連中の誤まった考えで正業の経営をしているという点もともに教育する必要があると思うのです。それは勤労者ばかりではありません。それは両方ともやはりそこへ持っていかなければならない。特に中小企業の場合においては、日本の経済の実悪から見て、中小企業にしわ寄せされしいるものですから、非常な無理な経営をしなければ、もうけようというよりも倒れないようにしようということの方に集中されている。それは今日の手形の、一年に五十一万枚も出るという不渡手形の現状から見れば、その不仮手形が大体平均七万五千円くらいです。これは神武以来の好景気といいますけれども、それは私どもの政策が貧困であります。ただあるところには、神武以来の好景気かもしれない。しかし、日本全体から見るならば、失業の側から見ましても、中小企業の面から見ましても、景気は偏在しているのです。だからほんとうに政策をやるとするならば、地ならしの方向にやらなければいかないと思う。そのまず最初に行なったのが減税であり、一千億政策であって、一ぺんではできませんから、除々に直していきたいということが私ども考えなんです。
  203. 千葉信

    委員長千葉信君) 質問の途中でございますが、衆議院の予算委員会の方から再度大臣に対する出席要求が来ておりますので、このまま次回に続行することにして、本日はこれで散会したいと思いますが、いかがでしょうか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  204. 千葉信

    委員長千葉信君) では、これをもって散会いたします。    午後四時四十八分散会