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大矢正君 実は午前中の
大臣との
質疑の中でまだまだ解明をしなければならぬ幾多の点があることを私
どもは感じておるのでありますが、不幸にして都合に上り
大臣がお見えになりませんので、従って、
次官通牒をめぐる問題点の
基本的な点については、これはいずれまた、
大臣が出席をいたしました折にただしたいと思いまするので、この点は保留をして、特に
労政局長が来ておられますので、この
次官通牒に関連する具体的な問題として二、三私は
質問をいたしたいと存ずるのであります。
まず、第一点といたしましては、この出されました
通牒の
内容を総括的に判断をしてみて、特に労政を担当されておる
局長の
立場からの判断を私はいただきたいと思うのでありますが、最近非常にこの
労働争議というものが深刻になってきておる。終戦以来十年間
労働運動は非常にめざましい勢いで
発展は遂げて参りましたけれ
ども、しかし、その
労働争議の
内容たるや年を追うて非常にこの何と言いますか、陰険と申しますか、非常に
内容的にはむずかしい
労働争議というものが発生をしてきております。なぜこのように
労働争議というものが非常に深刻になってきたかということを考えてみますれば、私
どもはもちろん
基本的には今の
政府の
政策の不満をあげることができますけれ
ども、それは
労働委員会の場において論議をすることを本旨といたしませんので、その点に私はあえて触れようとはいたしませんけれ
ども、とにもかくにも終戦以来、当分の間は大きな企業を
中心にして行われていた
労働争議というものが零細な企業に
発展をしてきておるという、進行をしてきておるというのが今日の実態だと私は思うのであります。今の
政府は減税をする場合には、これはもう神武以来の減税であり、そしてまた、神武以来の景気であるとか、あるいはまた、その他の
政策を行う場合には仁徳以来の
政策であるとかという、非常に何と申しますか、今までの
政府の中ではこれほどの善政をしく
政府はなかったと言わぬばかりのことをよく口にするのでありますけれ
ども、しかし、実際的には非常に深刻な争議が各所に勃発をしておる。これは必ずしも
政府が言う今の善政ということを裏書きしていないものだと私は思うのであります。特に大企業が
中心に行われてきた
労働争議というものが、中小企業ないしはそれ以下の零細企業に進行をしたということは、これは一面では大企業の非常に
経済的な要因というものがだんだん下に下ってきたということも言い得るでありましょうけれ
ども、私はもっとその根底を流れるものの中に経営者の
考え方の相違というものがあげ得るのではないかと思うのであります。いろいろ今日まで経営者の方々のものの
考え方も、戦後十年間の
労働運動の過程を経て変化は来たしておりまするけれ
ども、そういう経営者のものの
考え方というものは、中小企業ないしは零細企業にいくに従って、非常に新しい民主主義を基調とした
労使関係というものに対する判断の仕方というものが、これがテンポが非常にのろい形で行われておる。急速に頭の切りかえをすることができない状態に置かれておるために、そういうことから特に中小企業、零細企業の中でひんぱんに争議が発生をする。その争議の
内容たるや、これは実に深刻なものがあって、単にこれは欲望のみに基いて要求をするという段階ではなくて、みずからが与えられた
権利や権益を守るための
立場からの争議、あるいはまた、ほんとうに人権を無視したような経営者の態度から起った争議、こういうのが非常に多うございます。こういうような今の一般的な情勢の中で
次官通牒というものが出されたのでありますが、私はこういう
次官通牒を出すことによって、今の日本の
労使関係というものの置かれている主体的な条件というものに対する
考え方が、大企業の場合も、それからまた、中小企業の場合も、あるいはまた、家内工業に近くなるような零細企業の場合にも同様な判断をもって律せられるきらいが出てくるのではないかと思うのであります。私は判断をいたしまして、少くとも今日出されました
次官通牒というものは、これはちょうど国税庁が税金をとるためにやる方法と同じような結果が現われるのじゃないか。
労政局長はけさほど来の
答弁の中で、この
次官通牒というものが取締りの
内容ではなくて、単に
教育を施す
内容が主たるものであるという
答弁はいたしておりまするけれ
ども、しかし、これが事実
一つ一つの企業体なり、あるいは都道府県にまで行き渡りました場合には、単に
教育の
指針として
解釈をされるのではなくて、これを守らなければ法律に違反をするのだという、こういう経営者の強制的な態度が出て参るでありましょうし、そのことから逆にかえって争議を招来する結果になるという危惧を私は持たざるを得ないのであります。今までの
労働争議の中では幾多裁判所において、あるいは
労働委員会においていろいろな判決なり、裁定が下されておりまするけれ
ども、私はそういう
内容を否定をする
立場ではないかもわかりませんけれ
ども、そういうような
内容にはあまりこだわる必要性はないのだ、あるいはそういうものを
中心として
労働政策、
労働行政をやることは、これはむしろ今日の段階ではおかしいのではないかという
立場に立脚したような、こういう
次官通牒を出すことによって画一的に大企業の場合も、中小企業の場合も、あるいは零細企業の場合も
労使関係が律せられて、ちょうど国税庁のお役人が法律があるからすべてこの法律によって税金は徴収をしなければならない、ああいう今日までの強硬な態度と同じような
立場が将来においては行われるという危惧が私はあると思うのでありますが、この面に対する
労政局長の私はお答えを願いたいと思うわけであります。