運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1957-02-09 第26回国会 参議院 社会労働委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年二月九日(土曜日)    午前十時五十一分開会   —————————————   委員の異動 本日委員近藤鶴代君及び木下友敬君辞 任につき、その補欠として寺本広作君 及び坂本昭君を議長において指名し た。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     千葉  信君    理事            高野 一失君            谷口弥三郎君            山本 經勝君    委員            勝俣  稔君            紅露 みつ君            鈴木 万平君            寺本 広作君            横山 フク君            坂本  昭君            藤田藤太郎君            藤原 道子君   国務大臣    労 働 大 臣 松浦周太郎君   政府委員    労働政務次官  伊能 芳堆君    労働大臣官房会    計課長     松永 正男君    労働省労政局長 中西  實君    労働省労働基準    局長      百田 正弘君    労働省婦人少年    局長      谷野 せつ君    労働省職業安定    局長      江下  孝君   事務局側    常任委員会専門    員       多田 仁己君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○労働情勢に関する調査の件  (労働教育行政指針に関する件)   —————————————
  2. 千葉信

    委員長千葉信君) それでは社会労働委員会を開会いたします。  労働情勢に関する調査を議題といたします。労働教育行政指針に関する件を問題に供します。まず、昭和三十二年一月十四日付労働事務次官名をもって、各都道府県知事通牒をいたしました団結権団体交渉その他の団体行動権に関する労働教育行政指針について、労働省当局説明を願いたいと存じます。
  3. 中西實

    政府委員中西實君) ただいまお話しのございました団結権団体交渉その他の団体行動権について、これは通牒にもございまするように、労働教育指針として、いわば私ども執務参考書というものでございます。従ってこれが行政解釈とか、そういった種類のものではございません。これがわれわれの方で作成いたしました目的といいますかについて申し上げますると、実はかねがね私どもの方の行政をやっていきます上においての、私ども部内でのこの問題についての考え方等について確たるよるべき基準がなかった。従って、従来行政解釈あるいはわれわれが行政の衝に当りまして、個々の問題について処理いたしていきます場合に、そのときどきにおいて、その具体的な事象ごとに見解を述べ、問題を解決していくというような態度でおったのでございますが、ちょうど昨年、御承知のごとく、労働組合法が施行になりまして十年になりました。そこで昨年の春には、いろいろの十周年行事が行われたのでございますが、その十周年の記念の一つの企てとして、この際に、労働組合運動また労使関係、そういうもののあり方、すなわち、われわれが行政をやっていきます上においての考え方基準というものを一応系統的に一つ基準として作ってみようじゃないかということで、検討を重ねてきたわけでございます。何分にも問題が広範多岐でございますので、相当日数を要しまして、大体昨年中に一応の案ができまして、政府部内の各関係部局とも打ち合せを遂げまして、ようやく仕上りましたので、去る一月十四日にこれを労働教育指針として十分に活用するようにということで、次官名をもちまして、各都道府県知事宛にこれを送達したのでございます。趣旨は全く今申しましたことに尽きるのでございまして、それ以外に何らの他意はないということを申し上げたいと思います。  その内容でございまするけれども、これはあるいはもうお読みいただいたかとも思いますけれども、きわめてまあ今までもわれわれどもとしまして、行政解釈その他において考えておりました考え方基礎にして出ておりますので、わかりやすい、私どもとしましては当然のことを記述してあるにすぎないのでございます。で、ごく概略この内容を申し上げますると、考え方基礎にありますのは、わが憲法に流れておりまする基本的な考え方、すなわち自由民主主義考え方、この上に立ちましてわが国労使関係、また、労働組合運動というものがどうあるべきかということを述べておるのでありまして、そこでわが憲法には御承知のごとく、二十八条におきまして、一条特に設けられました団結権団体交渉その他の団体行動権保障するという規定、これの解釈から出発しておるわけであります。そこで自由民主主義諸国においてとっております通り、この近代企業におきまして労使関係というものは集団的労使関係を確立するということが、これが労働者利益を擁護するとともに、産業の平和をもたらすゆえんである。このことは西欧諸国の長年の歴史が証明をいたしておりますので、この集団的労使関係の確立ということを目標とし、また、集団的労働関係をもってこの労使関係を律していくということを制度として認める、しかも、それを憲法に定めた制度として認めていくということから、この憲法二十八条があるのじゃなかろうか。すなわち、経済的に地位の低い、また、弱い労働者は団結しまして、そうして対等の立場をもちましてそれで経営陣に当る集団的労使関係を立てまする場合に、経営者の相手方として、つまり集団的労使関係当事者として労働組合というものが必要なんだ、そこで団結権、つまり労働組合を結成し、また、これに加入するということにつきましては、労働組合法においてこれが干渉されてはならない。使用者がこれに干渉し、あるいはまたこのことのために労働者に不利益な処分をしますれば、これは不当労働行為としてその行為を排除するという方法がなされておる。で、労働組合というものは、集団的労使関係を打ち立てる当時者として、これが制度として認められておる。そうして労働組合によって労働者意見というものが集約されまして、その代表者が選ばれ、その代表者経営人が対等の立場話し合いをする、これが労働組合の本来の使命である。  次に、団体交渉、これは集団的労使関係、つまり集団的に労働条件決定するということのために労使が話し合うのが団体交渉だ。で、わが労組法におきましては、団体交渉をすることについて経営人に義務づけいたしております。で、もし、正当な事由なくして拒めば、これは不当労働行為だということになっております。で、そういうふうに団体交渉保障しておりますのは、結局集団的に労働条件をきめるという制度を円滑に運ばせるために、今申したような団体交渉法律的な保障があるということであると、そこで労働組合使用者側との話し合いは、何でもかでも団体交渉というものではないので、やはり集団的労使関係労働条件決定するということが団体交渉の本来の任務であるということを説いております。  次に、団体交渉によってきまりましたものは、これは労働協約として書面に作成して、記名、捺印あるいは署名をいたすことによって、ここに集団的な労働条件決定される。そうしてわが労組法におきましては、労働協約には、個々労働契約に優先する効力を持たしております。それはなぜかというと、労働契約は、個々労働者あるいは使用者との契約だ、従って経済的に地位の弱い労働者は往々にして経営人に圧倒される。そこで集団的に結びました労働協約、それに優先する効力を持たせまして、それによって個々労働者経営者に圧倒されることを防いで労働者利益を擁護する、これが労働協約である、こういうことでございます。従って、たとえば、組合事務所を貸すとか、借りるとかいうような問題、これは集団的労働条件決定するという労働条件に入らないで、一般の建物あるいは部屋の賃貸借あるいは貸借関係とちっとも変らない。で、労働協約というのは、やはり集団的な労働条件決定の所産である、こういうふうに考えられるわけであります。  その次に争議行為でございますが、争議行為というのは、集団的に労働条件話し合いによって決定していく。で、団体交渉でそれが妥結いたしますれば、それに越したことはございませんけれども、もしも妥結しないという場合、労働者は今のような条件ではわれわれは働くわけにはいきません。こういうことで、労働組合決定をいたしまして、集団的に労務提供を拒否する。これが争議行為である。すなわち、争議行為経営人にも損害を与えまするが、組合側にも損害が予想される、犠牲が予想される。そこでその損害犠牲を比較考量しつつ、しかもそれでもやむにやまれず総員が労務提供を拒否する、すなわち、団体交渉が行き詰まった場合にその打開手段として行われるのが争議行為だ。争議行為とは、団体交渉打開のために集団的に労務提供を拒否するのがその本来のあり方であるということをまあ述べておるのでございます。従って労働組合団体交渉労働協約、それに争議行為というものは、集団的に労働条件決定するというこの労使自治制度を打ち立てるための一連の一つの筋道でありまして、これがばらばらとして理解されるべきものではないというのがこの教育指針にすっと貫かれておる根本的な考え方でございます。  しからば、集団的な労働条件決定のため以外のいろいろな活動というものはどうかと言えば、それは労働法保護保障の対象じゃないということでございまして、直ちにそういうことが違法かどうかということは、これはまた、それぞれ関係の法令によって律せられる。ただ、それは本来のものでないから、労働組合法その他のいわゆる労働法上の保護保障は受けないものである、こういうことになるわけでございまして、この点はまあくれぐれも誤解がないようにということは各所に出ております。  以上が大体これの内容でございまして、まあこういった考えのもとに、われわれ部内の事務処理に当っては念頭に置いてやるように、またできますれば、広く労使あるいは一般社会の方々にも御理解いただいて、まあこういう基本的な考えのもとに、憲法保障された権利が、それが適正に行使されるようにということを念願いたしておる次第でございます。今の基本的な考え方から出ましてさらに具体的なことを敷衍して相当長文になっておりますが、底に流れております考え方は以上のようなことでございます。
  4. 千葉信

    委員長千葉信君) それでは順次御質疑を願います。  なお、大臣衆議院予算委員会関係がございますので、なるべく最初、大臣の方に御質問を願いたいと存じます。
  5. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 少しお尋ねをしたいと思うのです。まず第一に、今の中西労政局長から説明があったのですけれども、あくまで教育指針立場から出した、こういう工合に言われたのですけれども、この内容をずっと見てみますと、法の解釈法解釈の断定的な問題に非常に多岐にわたって入っている。元来労使関係というのはやっぱり日本では具体的には十年の歴史でありますが、十年の歴史の中でいろいろの問題が過去において、戦後あったでございましょうが、その中から労使慣行というものが作り上げられていく。むろん労組法、労調法という労働法建前によってこの労使慣行というものが作り上げられてきたというのに、そういう実態というものを見きわめて、今の教育指針だ、あくまで教育指針だと言われたけれども、このような領域まで教育指針考えておられるか。法解釈分野に非常にたくさん入っている。また、こうあるべきだと断定しているような面がたくさんあるが、どういうお気持なのか、大臣からまずこの問題についてお答えを願いたいと思います。
  6. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) 今の法の解釈ですか。
  7. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 いや、解釈じゃない、教育指針として出したと言われるが、この内容には法解釈の問題、断定的な問題がたくさん含まれておる。今の説明とちょっと違うじゃないかという……。
  8. 中西實

    政府委員中西實君) ちょっとその前に私から……。
  9. 千葉信

    委員長千葉信君) 質問者大臣からお聞きになりたいというのですから。
  10. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) ただいま中西局長説明いたしましたように、あくまで労働教育指針として出したものであるということ。それはその解釈については、そのことの起ったためにたびたびいろいろな解釈を発表するけれども、それを総合的にまとめてやったものでありますから、従って法解釈の問題も多少は出ているだろうと思いますが、底に流れているものは、一貫した労働教育指針として出したものであるということをお答えいたします。
  11. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 どうも、それだけじゃなかなか納得がいかない。これは大臣、この指針をお読みになっていることだと思うのです。だからお読みになってかみ分けられれば、この教育指針、単なる教育指針であるか、法解釈分野にたくさん入っているかということがよく私はわかると思うのです。が、この問題はなかなか納得いきませんので、続けてお伺いしたいのですけれども、たとえば、この内容にたくさん入っていきますといろいろな面で、ことさらに特徴的な、ほんとうの特徴的な問題を誇大に宣伝といいますか、そういう工合にたくさんとり上げる。’そういうことを考えてみますと、労働組合立場からして労使慣行というものをことさらにこういう工合に、私らから言えばゆがめられて、そしてこういう上から抑圧するような感じを持つ通牒というものを出された。今日の時期に特別の目的があって出されたのか、そこのところをお聞きしたいのです。
  12. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) そういう考えをもって出したものではありません。先ほど中西局長が申し上げましたように、昨年来調査研究いたしまして、ようやくでき上ったものですから、そういう今お話のような、たとえば春闘に備えてというような考え方で出したものではなくて、ちょうどでき上ったものですから出したと、こういういきさつでございます。
  13. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 でき上ったから出したというお話ですけれども、こういう工合多岐にわたって法解釈分野まで入っているような問題、労使関係というのは生きて、一定の限られた期間に起きるものじゃなしに、あらゆる労働問題その他の問題が労使の間において、団体交渉その他によって関係というものが生まれてくる、そういうものを、こういうことで出すというお考え、一年間かかったと言われますけれども、それなら争議実態、または当事者意見を聞く、またはたとえば、こういう労働委員会でその意見を聞くとか、専門家意見を聞く、そういうことをなぜされなかったか。
  14. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) この問題に対しましても、この間、労働問題懇談会でそういう御意見がありました。けれども、これは次官通牒でありますから、一々お聞きはしなかったのですが、今後は、大きな問題については、労働問題懇談会に諮問するということを約束したのですが、この問題は単なる次官通牒でありますから、お聞きしなかったのでございます。
  15. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 単なる次官通牒と言われますけれども、よく労働省の中でもいろいろの面から研究され、個人がその研究した結果を、意見をどこかで発表されるということであれば、これは自由でございましょうけれども労働次官通牒として出すということになると、単なる意見と違って、やっぱり行政面の大きな力というものがこれに加わって流れていく、こういうことに私はなると思うのです。また、そういう工合に受け取られやすいと思うのです。そういう重要な要素を実態の中に組むということであれば、今私が申し上げましたように、労使関係というのは、あくまで自主的に問題を解決するというのを建前にとっている。これは今、中西局長説明にもありましたし、労働関係法がそういう工合規定しているわけです。憲法三権保障、それから労組法保障、こういう工合にして関係というものが生まれていると思うのです。だからそこで、今のような格好で出ていますと、私らの考えるところでは簡単にお考えになっているようですけれども、非常に重大な関係があるように思いますが、どういう工合にその点お考えになっているか。
  16. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) これは労使関係仲裁役というか、アンパイヤというか、政府はあくまでも厳正中立といったような立場に立たなければならぬと思うのです。それの物さしをやはりこの正当な解釈で出しておくということは必要だと思うのですね。でありますから、事の起ったたびに、その事象々々によって、一貫した考え方によって解釈はするのでありますけれども、前もってやはり一貫した総合的な解釈を発表しておくことは、アンパイヤの役として当然のことではなかろうか、こう思うのです。  それから今いろいろお話がありましたが、労働関係の方に強く当って、使用者の側の方に弱いじゃないかというような意味の御発言もあったのですが、これは団結権であるとか、団体交渉権であるとか、その他の問題であるとかということでありますから、主として労働関係のことに対する解釈が多くありますから、労働者の側の方に強く当るように見えますが、それは公平に判決例であるとか、あるいは、法制局その他最高裁判所その他すべて調べまして作り上げてきたものでありますから、片寄っていないとは思っておりますが、あくまでも厳正中立立場において公平にやったつもりであります。
  17. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 労働大臣は、解釈の統一、こういう労組法三権解釈基準を明確にしたのだと、こう言われた。中西局長は単なる教育指針だと言われた。その点はどうなんですか。
  18. 中西實

    政府委員中西實君) この基本的な考え方は、これはやはり全く法律を離れてはこれは出てきません。早い話が、たとえば団結権団体交渉権団体行動、これにつきまして、各諸外国の立法例をみましても、憲法規定してあるところもありますし、ないところもある。それから規定しているところだけでも、団結権だけを規定しているところもある。それからさらに憲法を受けて、その関係の直接の法律になりますと、これはもうその国々のいろいろな特殊事情で、いろいろな規定をしている。従って、わが国でこのことについての根本的な考え方を立てる場合に、やはりある法律の上に立って解釈考えなければならない。それからまた、考え方を持たなければいけない。しかしながら、御承知のごとく、労働関係法律というものは内容多岐であるにかかわらず、非常に大筋だけしか規定がない。これは御承知のように、たとえば、労組法の一条二項、正当な労働組合活動には、刑法三十五条の適用があるとありますけれども、さあ正当ということはどの範囲かというのが、これはえらい大きな問題であります。そうしますと、根本的に、この労働関係法律に立ち向う考え方というものは、これは非常に問題になってくるわけであります。従って、もちろんわれわれとしましては、現在ある法ということを無視しないで、その法の解釈に当ってどういう態度解釈すべきか、これが結局正しい労使関係、あるいは労働組合運動あり方だということにつながってくるわけであります。そこでこれは行政解釈でございまして、しかしながら、法を解釈する場合の態度といいますか、解釈基準といいますか、それに当るわけでございます。それがすなわち、労働教育指針だというふうに考えておるわけであります。
  19. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 像は労政局長に重ねしお尋ねするのですけれども労使関係法律解釈基準をたとえば立てるというような場合には、アメリカの一つの例をとって悪いですけれども斡旋調停局というのがあって、この斡旋調停局が具体的な事例によって解釈を、最終的には裁判所がむろんきめることでしょうけれども、そういう慣行が行われ、中西さんも中央労働委員会事務局長の時分に、労働委員会労相法に対する解釈というようなものが、行政解釈、こういう時の政府が勝手に解釈するのじゃなしに、労働委員会とかいう三者構成のような機関で、この一つ一つ事例によって解釈をししいく、こういう慣行といいますか、こういうものが私はあったと思うのですけれども、そういう点について、どういう工合にお考えになっておられますか。
  20. 中西實

    政府委員中西實君) これは法の解釈のものではありません。教育指針であるということははっきり申し上げておきますが、今の法解釈の場合に、労使意見を聞いてそれを解釈するということは一度もやったことはございませんし、そういう性格のものじゃないのじゃなかろうかと思います。それで、行政解釈をします場合に、労働委員会関係のあるような事項は、労働委員会意見が違っても悪いので、連絡するということはしております。しかしながら、労使に御意見を聞いてやるとかいうようなことは、これは事の性格上妥当じゃないのじゃなかろうか。つまり、われわれが法解釈をいたします場合に、関係法制局とか、あるいは法務省とか、そのほか関係官庁と連絡いたします。そういう意味において、労働委員会にも必要に応じて連絡するということはいたしますけれども、特にこの利害関係のあるところに意見を聞いてやるというようなことは、やはり筋としてはおかしいのじゃないか。で、この指針は、これはもう先ほど来言っておるように、行政解釈じやございませんし、考え方基準を示しておるのであり、しかもそれは自由民主主義の原則からいいますれば当然のことをするのだ。従来からの考え方、当然の考え方基礎にしてこの基準を作ったという意味において、私は政府の責任において、執務参考としてこういうものを作るということは、決して妥当を欠くものじゃないと思います。で従来でも、たとえば、労働協約内容はこういうふうにした方が完璧だとか、こうすべきだとかいうように、相当こまかい、しかも重要なことにつきまして、いわゆる指針というようなものも出しておりますので、この例は今回始まったものではないというふうに考えております。
  21. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 中西局長、今もまた解釈ではない、さっきは労働大臣は法の解釈を統一したものだと、こういうふうに言われた。大臣どうなんですか。そこのところは。
  22. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) それは、法解釈と申し上げたかもしれませんが、大体、労働行政あるいは労働教育というものの解釈を統一したものであるというふうに、こういうふうに申し上げておるのであります。
  23. 山本經勝

    山本經勝君 労働大臣にお伺いしたいのですが、今のお話だと、法解釈をしたものじゃない、総括的に労働組合運動実態基礎にして、どうあるべきかということをそう解釈されたものなんですか。つまり、労働法法解釈の問題じゃない、労働組合運動はどうあるべきかという実態に即した解釈をなさった、こういうわけですか。
  24. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) 大体そうであります。
  25. 山本經勝

    山本經勝君 そこで続いてお伺いしたいのですが、労政局長お話だと、行政解釈ではない、これははっきり言われておる。ところが行政解釈基準だと言われた。この行政解釈と、行政解釈基準というのは一体どういうふうに違うのですか。
  26. 中西實

    政府委員中西實君) まず先ほど解釈という問題が御議論になっておりますが、この内容の中には法解釈的なところがございます。しかしながら、これ全体が、結局、団結権団体交渉その他の団体行動権に対する正しい解釈の仕方ということでございまして、従ってこの全部が行政解釈というものじゃない。われわれの方はよく地方執務参考としまして、その時々の労働情勢とか、あるいはまた、裁判例解釈とかいろいろなものを出します。それと同じ種類のものでございます。ただ、内容が、団結権団体交渉その他の団体行動権、つまりこの考え方基準を書いてあるというところで特徴がございますので、つまり参考書として、従来とも常にわれわれは、中央で作ったものを地方に流す、こういうことをやっております。
  27. 山本經勝

    山本經勝君 そうすると、こういう工合に理解していいのですかね。単なる執務参考書、あるいは局長の言葉を借りれば十周年を期して、過去の十年間の労働運動の歩みを振り返ってみるというふうにもお話があったのですが、単なる執務上の参考書ということであれば、これはどういうことなんですか。労働省内における関係お役人の方々の執務参考書とか、あるいは全体に、その他の広範な節囲に流される執務参考書なのか、そういう点はどういうふうに考えておられますか。
  28. 中西實

    政府委員中西實君) これは事務次官名をもちまして、この本の通牒がございますけれども、事務次官名で、各都道府県知事へ、今般これを別添の通り労働教育指針として送ると、従ってこれを指針として労働教育にさらに努力願いたいと、こういうことでございます。従って形式からいいますと、部内の参考書労働教育における参考書ということになります。この内容は、しかしながら、できるだけ時に触れ、労使初め一般の方々に御理解いただきたい、こういうものであります。
  29. 山本經勝

    山本經勝君 労働大臣にお伺いしたいのですが、この労働運動を十年間過去の実態について振り返ってみて、いろいろ希望もあり、御意見もあるのだから、そういう場合にいろいろな記念事業も行われるだろうし、あるいはそういう場合に、組合運動実態を振り返ってみた歴史的なものを編集されて、そうしてこれを十周年の記念にするというようなことは、これは当然あり得ることだ。ところが、今のこの通牒は、一応前文は通牒であると言われている。通牒内容に盛られているものは、団結権団体交渉それからその他団体行動と言われると、労働者が集団的に労働条件をきめる場合に法律的保護を与えているという労働法建前から、当然この一番中心になるのは何かといいますと、労働者の団結であり、そうして団体交渉であり、団体行動だと、これは当然一連のつながりを持った必要な要件なんですよ。そうすると、労働運動全体をながめて、しかも憲法との関係においてどうあるべきかということはしばしばこの通牒内容に具体的に述べられておる。しかも裁判例まで引用してそれがなされている。そうしますと私ども考え方では単なる執務の参考書というのはこれはおそらく労働省内におけるそれぞれの部署のお役人方の参考書であるのは当然わかる。通牒という名前のものはそもそも行政上の指針になっていくと思うのです。執務上の参考と言われるような単純のものではなくて、むしろ労働行政上のこういうふうにやるべきだという命令に等しいものである。こういうふうに私は当然解されると思うのですが、この点労働大臣としてはどういうふうにお考えになりますか。
  30. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) いろいろに解釈はできると思いますけれども、われわれのこの通牒を出しました意図するところは、先ほどからも何べんも申し上げておりますように、従来断片的に出ておった法の解釈とかその他の問題について、その精神に従って労使関係あり方について労働教育指針として出したにすぎないのでありますから、あくまでもやはり労働教育指針としてお取り扱いを願いたいと思っております。
  31. 山本經勝

    山本經勝君 大臣お話は初めから労働教育指針として使ってくれと言われた。ところが労働者側からこれを見ますと、これは労働運動指針としては使えません、こんなものは。この労使関係労働法制という第一項に書かれているような、第一番に言われていることは、自然発生的なものだと言われている。自然発生的なものだということは、雇用と労働という関係において労使関係が生まれて、そしてこれを集団的に賃金その他労働条件の取りきめをしていくという筋は、もっとも言われる通り自然発生的なものでしょう、歴史は。しかしながらこれにいろいろな国家権力の介入や圧迫があって、労働者の団結が阻害され、労働者利益が守られないところにこの法律が出てきた。そういう関係がほんとうに自然発生的にその法の抑圧にもかかわらずこうして長い苦難な闘争で世界の労働者は闘争を続けてきた。日本でもまた同様に戦後の労働運動とは違って、さらに戦前におきましても労働運動は私どももやっていた。そこで労働者が団結しようとしても当時の警察、あるいは治安維持法とかその他の取締規則が団結することに対してあった。そういう状態のもとですから、いわゆる団結し、労働条件を集団的に改善しようとしてもできなかったのが実情であった。これは大臣といえども御承認願える点だと思う。ですから自然に作り出され、雇用と労働という関係において双方が話し合って一つ慣行を作り上げて、しかもともに立っていくようにしたいということが念願の基礎であったことは申すまでもないと思うのです。それが自然発生的に歴史とともに流れて長い間に慣行ができ上って、それが制度化されたことは一応日本の場合はわかりますが、しかしこういうような慣行労使の間の自然の姿で、民主的に行われていくのが本来のものだと思う。ところがそれができなくて、ここで言われている占領という事態が起って敗戦によってさらに占領下における行政によって立法化されたという歴史は事実としてありますが、しかし言われているように自然のものであるなれば、皆さんの方からしいて、いわゆる労働省からしいて労働運動の行き過ぎを是正しようという意図のもとに立ったと判断されるように受け取れるような意味通牒を出して行政指導をしようというところに問題があるのじゃないかと私は思う。ですから私が今伺っていることは、むしろさかのぼって言えば、大臣に伺いたいのは、労働省は一体何をするところかということを伺いたい。
  32. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) これはお説のようにいろいろの解釈ができますけれども労使関係が円滑にいきまして日本の経済力が伸張するというところにわれわれの考えがあるのでありまして、別に労働関係に特に重圧を加えるということは毛頭も考えておりません。特に私はそういうことに対しましては一つの経験を持っておりますし、そういう考えを毛頭持っておりません。労働省としては、これは御承知のように、労働省設置法の中にこういうような宣伝啓蒙するとか、あるいは労働省の組織令の中に労働教育課というものもありますし、またその十五条には労働教育において、「左の事務をつかさどる。」ということで、「前各号に掲げるものの外、労働組合及び労働関係の調整に関する教育及び啓もうに関すること。」を行うということが規定してあるのです。そういう意味から将来望ましい方向はこの方向であるということを労使の間に知っていただくように教育、啓蒙というようなことをすることは日本の労働行政といたしまして日本の政府としてやるべきことじゃないか、かように思っております。
  33. 山本經勝

    山本經勝君 一応労働省設置法のあれは私も概略は存じております。そこで今の労働教育、あるいは労働関係の調整、これも重要なことだと思う。しかし労働省そのものの持っている本質的な任務というものは、私どもはやはり職場を求める労働者に職を与えるという、つまり就労その他広範な労働者の勤労に関する権利を保護するということにあるのじゃないかと思うのですよ。この点はどうなんですか。
  34. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) 同感であります。
  35. 山本經勝

    山本經勝君 そうしますと、問題は労働者の雇用、つまり就労の機会を与え、全国民の憲法保障している勤労の機会を拡大して、そうして働きたい者に働き得る職場、または生活の保障できるような職場の確立を指導することが私は行政面では最も大きな課題ではないかと思う。それからそれに今の教育あるいは調整ということが紛争等には必要でありますが、その紛争調整等はいわゆる行政上の指導というよりも、自発的な労働者の持っている教育調整というものに期待するところが私は中心であろうと思うのですが、その点は労働省が直接それを手がけていくというお考え方を持っておられるのですか。
  36. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) まあ事態の起り方によっていろいろあろうと思いますが、われわれはやはり労使の間の中間に立って調整して行くべきであると思っております。
  37. 山本經勝

    山本經勝君 まあここで調整と教育と一つ一ぺん分けてみましょう。そこで従来とも労働者の教育ということは労働省は言っておられる。しかし教育の機会を与えるということについては私どもはわかる。労働省がそれでは労働者の教育と称して学校を作って何とかするとか、あるいは勤労時間以外の、就労時間以外の適当な時間を使って、集めて教育するということはあえて聞かないのですよ。教育の機会を与える、それに対する行政的な援護を与える、こういう点では私ども十分理解している。その点はどうなんですか。教育なら教育というものだけ切り離して考えると、直接労働省労働者の教育と称してしかも労働省考えているような、今の大臣の言葉を引用すれば、つまり公平な第三者的、中立的立場に立って労働者を教育する、こういうお話なんですが、直接やられるのかどうかということ、それと労働者自身はみすから、先ほど申し上げましたように、いろいろの多くの経験を積み重ねつつ実質的に研究もし、検討もし、自分たちの生活の改善向上のために努力していると思う。さらに国家社会にある多くの機関がこれらを援護しつつ、あるいは共同しつつやっていくこの自然の姿が私はあると思うのですが、その点はっきりしておいていただきたいのは、労働省が直接労働者に対する何といいますか、国民的教育というのか、あるいはどういう教育をされるのか知らぬが、考えておられるような、どういうものかわかりませんが、労働省でお考えになっているような型の中に労働者を養成しよう、こういうふうにお考えになっているかどうか、そこをはっきりしておいていただきたい。
  38. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) まあ労働省として労働教育を直接やっている問題も、青少年の問題とか技能者の養成の問題であるとか、直接教育の問題もありますが、今お問いの問題は団体に対する問題だと思うのでありますが、それに対しましては、今とっているような方法をもって教育の指針としたいと、こういう考え方でございます。でありますから、従って知事あるいは基準局というようなものを通じてやっていきたい考えであります。
  39. 山本經勝

    山本經勝君 私の伺っているのは、今申し上げたような行政的ないわゆる教育指導というもの、労働省がやっているのじゃなくて、そして県知事とか、あるいは都道府県の担当労働関係の官吏、こういうところを通して、労働者というのは現在組織労働者約七百万見当ありましょうが、これらの労働者に対する教育をなさる、しかも、その教育の基本指針をこういう通牒内容においてやろうとなさっておる、こういうことが、今言われる労使のいずれの立場にも立たない公平な立場でとお話しになっているのですが、この大臣の言われる、労働省労働者のいわゆる就労の機会、勤労者に就労の機会を与え、それからしかも憲法でいう生活権の保障へ努力するという趣旨と、その教育の指針とはどういうふうな関係になりますか。この点を解明願っておかなければいかぬと思う。これは大臣に聞いておるのです。
  40. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) 今の問題は、私は従来やってきましたような方向でいって差しつかえないと思うのですが、労働者の生活権の擁護及び就労の機会を与えることに対しましては、政府といたしましては、財政経済の許す限り、失業の問題に対しましても、あるいはその他の雇用関係に対しましても、努力いたしておりますから、これを一そう強化していきたい、かように思っております。
  41. 山本經勝

    山本經勝君 まことに大臣お話を聞いておるとたよりない話で、従来やってきたと言うが、従来何をやってきたか、その具体的なことを私は伺っておる。教育指針という名で通牒を出されたから、私はそれを伺っておる。これははっきりしておいてもらわないと困る。従来どういうことをなさってきたのか。大臣が従来とおっしゃっているが、従来はどういうことがあるのか、その点を御解明願いたい。
  42. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) 今従来と申しましたが、従来やって参りました方向の、今の生活権の擁護、あるいは就労の機会というお話がありましたから、そのことを従来と申し上げたのですが、教育の指針の問題については、今回やりました方向によって進んでいきたいと、かように思っております。
  43. 山本經勝

    山本經勝君 こういうことを私は伺っているのです。つまり就労の機会を増大するような、これはまあ技術のこともあろうし、いろいろな問題があろうかと思うのです。こういう種類労働者一般的教育ということについては、これはよくわかる。こういう点でこういうふうな仕事をし、こういう施設を設け、こういうふうな教育をするのだという、労働教育と言われることになりますとわかる。そうすると、大臣の言葉を裏に返して言えば、これは労働組合に対する教育指針ですか、この通牒内容は。
  44. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) やはり労使双方に対しまして総合的に教育指針考えております。
  45. 山本經勝

    山本經勝君 私はますますわからなくなる。労使双方に対する指針でもしあるとするなれば、この中に盛られているこの通牒内容ですよ、私もこれは詳細に読んでいる。そしてまた専門家意見も聞いておるのですから、こまかに知っているつもりです。そこでこの内容から一々具体的なことを、あとから逐次この委員会において解明して参りたいと思うから、内容には触れませんが、一応この中身を見ますと、労使関係においてかくあるべきことであるという点は指摘されているけれども労働者の教育として一般的な就労の機会を与えるために、あるいはまた失業者に対する対策をどうとかというような、失業者の就労のための技術補導や何かについての重大な指針は何らないのです。しかも労働大臣の昨日の施政方針の話を伺っておりますというと、国の中にはいまだ多数の不完全就業者がある、これは重大な問題であるから取り上げて対策を講じなければならぬと、こうおっしゃっておりますが、この種の人々に対する、たとえば労働教育の機会があるということはわかる。ところが、それらのことには何ら触れていない。労働者教育指針として出された通牒内容なるものは、もっぱら労働組合運動に限定されておる。その点を一体はっきりしてもらわないと、先ほど局長からお話しになった、これは単なる参考書である、あるいはまた十周年記念事業の一つとして、労働運動の過去十年を振り返ってみたものであるというような、でたらめな御説明では納得いかない。責任のある最高責任者である労働大臣から、はっきりとこの点を解明願わなければならぬ。御説明願います。
  46. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) これはいろいろ考え方がありますけれども、私ども考えは、就労の機会を増大するということも、やはり労働教育一つだと思うのです。本通牒もそういう意味において、やはりお問いのような線に達しておると思っております。
  47. 山本經勝

    山本經勝君 これはちょっとこの点は一応質問を留保しておきますが、今のお話は、就労の機会等に対する指導もこの通牒の中に入っておると言われますが、この点、内容に私は、先ほど申し上げましたように触れません。  そこで基本的に次の問題を伺っておきます。調整関係労働省の所管に属する労働委員会がやっておることは、よく存じております。私も長い間労働委員をやらしていただいておりますから、そういう関係で知っておりますが、調整に関する指導という場合には、特に今まで戦後再三次官通牒なるものが出た。この次官通牒が出るたびに、この委員会で問題になり、労働関係の相互の力が均衡を保って、対等の立場話し合いをして解決がつくということが前提でありますから、勢い、一方的に政府が公平な立場と称して出される——しばしばお聞きしたことですけれども——通牒が災いをして、むしろ労使関係がこんがらがったような事例も少くないように思う。そこで、少くとも重大な通牒が出される場合には、労働委員会等において要望が出ておると思う。これは、もっとも松浦さんが大臣でなかったのだから、その当時の事実を具体的に御存じないかもわからない。しかし、そういう要請があり要望があったことは、ここにおいでの専門家の皆さんはよく御存じだと思います。ですが、調整について、どういうふうな指導をしたら、最も妥当な公正な労使周の関係になるのか、この点を一つ大臣から、これまた明確に御解明を願っておきたい。
  48. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) その調整の問題に対しましても、いろいろな審議会、委員会等を通じまして今後もお世話になっていかなければならぬと思っておりますから、それが不十分であるならば、さらに機構を拡充していかなければならぬと思っております。調整はやはり委員会、審議会を通じてやっていきたいと思っております。なお、今のお話につきましては、先ほども申しましたように、この間の労働問題懇談会におきまして、なぜこの通牒を出す前に委員会に諮らなかったかというお問いもありました。けれども、すでに出ておりましたし、この問題は次官通牒でありますから、一つの大きな制度を変革するとか、あるいはこれを創設するとかいうような場合はとにかくにいたしまして、次官通牒でありますからわれわれもそのまま御相談せずに出したのでありますが、今後はまあ機会あるごとに一つ御相談をいたしたい、かように思っております。
  49. 山本經勝

    山本經勝君 今の調整については委員会、審議会等に相談をしてなさる、またそういう要望があっていたことは御承知通りですから一応その筋だと思うのです。ところがこの調整に——たとえば労働委員会、これは中央労働委員会地方労働委員会とございますね、あるいは労働基準その他広範な審議会制度が設けられている。こういうものは調整的な役割を果す行政機関の一つとしてある。それらがいろいろ調整をするのですが、その調整機関から通牒を出すに当っては個々の事件に対する処理をどうするという——先ほど中西労政局長から話のあった、通牒についてもそれぞれあったのですよ、私もたびたび見ておる。ところがこの教育指針と銘打って出された内容にはこの調整問題が中心になっている。団結権それから団体行動権、あるいは団体交渉権、こういった労働の基本三権と言われる三つの権利を中心にして労働組合法がこれを保護している、あるいはまた労働関係調整法がいろいろな意味において監視をしたという形に置かれているのですが、そういう関係の中心がこの通牒内容をなしている。それで先ほどお話しになりました教育に関する場合、一般的に労働者の教育と銘打つなれば少くとももっと広い問題になるはずです。ところがここで取り扱っているのは、もっぱら労働関係の調整を中心にした事柄が具体的な事例を引用して通牒と銘打って出されている、こういうことになっている。それほど重大でもしあるなれば、事前にこの委員会の要望等を尊重されるというお考えにのっとって、あるいはまた審議会の意見を徴してしかるべきものじゃなかったか。それで今後はそうしますというお話ですが、事すでにおそい。私ども聞くところによると、この通牒なるものは前倉石労働大臣が就任早々に、憲法労働関係法規との関係を解明せよということを事務当局に命じてはっきりしている。そこで当時法制局におられた某事務官を教育課に配置がえをしてそうしてそこでこの編集をなさっている。そしてしかも聞かれた人々の意見はあるいはその徴された人々というのは特定の人々なんです。そういうふうにして、しかも最初編成されたこの通牒内容は広範な労働法規と憲法との関係の法理的解明であった。そこでこれはまずいというので、こういうものを出せば大へんなことになるだろうということで法規関係の分を削除して、そして一般的な労働運動に置きかえた、こういうことを私ども聞いているのですが、これをまさか私がこの公式の席上で大臣に聞いてもそういうことはございませんとおっしゃるのでしょう。しかし事実は明らかなんです。しかも取り入れられた内容には日経連の労働協定なるものの要素が多分に取り入れられている。こういうようにして大臣の言われる公平ないわゆる政府機関としての行政解釈になったり、あるいはまた正しい意味における自然発生的な時間とともに流れる洗練された労使慣行の指導ということになるのかどうか、ここに私は重大な疑問を持つわけです。そこら辺をもう一度、先ほどの事務的な中西局長の解説ではなくて、総括的ないわゆる大臣の御説明を願わなければ絶対に納得いかない。そこで一つ時間等の関係もあるようですが、とりあえず急速にそれを一つやっていただきたい。
  50. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) 大臣としての責任のある総括的なこの問題に対する解明をせよということでありますから、次の機会までに十分考えて参りますが、今直ちに即答をすることはできないのであります。
  51. 千葉信

    委員長千葉信君) 委員長としても非常に心苦しいのですけれども、特に現在のように非常に重要な段階に質疑が入っておりまするけれども先ほどから衆議院の方の予算委員会の関係で何度もこちらの方へ大臣をお呼びに参っておりますし、私ども当初委員会を開くに当って大臣と連絡しましたその約束の時間が大体参っておりますので、ただいま大臣の方から今答弁できないという御答弁ですから、これはまことに遺憾ですが、答弁できないものをこれ以上何ともできませんので、また次回に、この問題についてやっていただくことに御了解願えれば、この際大臣に衆議院の方に行っていただくことにしたいと存じますが、一つ御了承願いたいと存じますが、いかがでしょうか。
  52. 山本經勝

    山本經勝君 もっともこれは予算の問題ですからやむを得んと思うのですが、しかしこれは労政局長が答弁をしたいような模様ですが、私はそれでは納得できない。やっぱり最高責任者の大臣にその点ははっきりしておいてもらわんと、今後の労使関係の運営上非常に重大な意味を持ちますから、そういう意味で、委員長の指示の通りにいたしますが、次回には一つ説明を願います。
  53. 千葉信

    委員長千葉信君) わかりました。(「聞けば聞くほどわからなくなるような答弁でなくして、はっきりわかるような答弁をしていただきたい」と呼ぶ者あり)  お諮りいたします。  大臣は出かけられましたので、このまま、政務次官、中西労政局長がおいでですが質問を続行することにいたしましょうか。どういたしましょうか。もし大臣がおいででなくても御質問続行差しつかえなければこのまま委員会を続けたいと存じますが……。
  54. 山本經勝

    山本經勝君 実は労働予算を中心とする行政一般の問題に対しても説明を聞かなければならない、あるいは資料の要求もありますから、一応昨日理事会の中にもきょう午前中で議事を打ち切ってという御意見もあったようですから、むしろ会を改めまして一つ十分意を尽したいという希望がありますからそういう意味に……。
  55. 千葉信

    委員長千葉信君) いかがでしょう。御異議なければ——じゃ。
  56. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 お尋ねしたいことがたくさんあるのですけれども、そういう事情なら打ち切ることに異議ありませんが、この中に出てくる争議の状態を中心に、いろいろのまあ解釈であるか指針であるかはっきりしないような状態でたくさん書かれてあるわけです。だから私はやはりもっと実態をつかむために、争議実態の資料を一つ出してもらいたいと思うのです。そんなここに書いてあるようにスムーズに、机の上でやるような状態に争議というものはいっていないと思うのです。たとえば公益事業であるとかその他の民間事業であっても交渉という段階では一銭も金を出さない、何かの行動が出てこなければまとまらぬ、こういう状態がもう歴史的な事実です。だからここに言われているようにすなおにいろいろの問題が並べてあるのですけれども、そういう実態では私はないと思う。だから一つ争議の、特徴的な争議でもいいし、全体的な争議の資料というものをできる限り資料を集めて出していただきたい、これをお願いしたい。
  57. 中西實

    政府委員中西實君) ちょっとばく然としておりますので、またあとであなたと御相談して、ぴたっとする資料にしたいと思いますから……。
  58. 千葉信

    委員長千葉信君) いかがでしょう。その問題については直接その御希望をはっきりお述べになる機会があると存じますから、またあとで打ち合せを願いたいと存じます。   —————————————
  59. 千葉信

    委員長千葉信君) この際委員の異動を報告いたします。  二月九日付をもって近藤鶴代君及び木下友敬君が辞任し、その補欠として寺本広作君及び坂本昭君が選任されました。  本日はこれで散会をいたします。    午後零時一分散会