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高野一夫君
前回の
委員会におきまして、
山本委員から御提案になって、本
委員会で審議されました
福岡市の
井戸水問題につきまして、
山本委員と私と
現地に参りまして、六月十四日精細なる
調査をいたしたのであります。審議の都合もございますので、
調査の概要をこの席で申し上げてみたいと思います。
私
ども両名
現地に参りまして、なお、
厚生省から
山口公衆衛生局長が同行されまして、そこでまず、
県当局、
市当局者から、今までの
経過、
実情について概略伺った上で、
関係者御
一同とともに
現地をしさいに
調査をいたしたのであります。そうして、その日の午後、
市当局、
市議会、あるいは県議の一部、
県当局、
大学関係者、
関係団体の
代表、
地元代表等にお集まりを願いまして、
実情の
調査とそれから
対策について
懇談を続けたわけであります。
そこで、概略その
調査の結果を申し上げまするというと、まず、
地域が意外に広いのに驚いたのでございまして、
福岡市の
南部地帯、
住宅地または一部
農村地帯、
世帯数として約四千
世帯、
人口二万
余りに及ぶ広大な
地域であったのであります。
そこで、現在の
事情といたしましては、
消防署または
自衛隊から
給水タンクが出動いたしまして、一日平均わずかに六リットル程度の
給水を朝と晩二回ずつやっている。
現地の
住民諸君はこの水がほしい。しかも朝も晩もいつ小がくるかということを門口に出て待っている。その
精神的苦労、
肉体的苦労というものがどんなにつらいであろうかということが察せられたのであります。
そこで、この
事件が
発見せられまして、三月以来今日まで三カ月
余りの間、どういうような
一体調査をし、
対策を練っておったかということを、これは後日他の地点に起り得る場合を
想定をいたしまして、われわれ参考にいたしたいために詳細に
当局者から伺ったのであります。ところが、
市当局はほとんどこの
井戸水についてこれを
検査する
能力を持たない。それでまことに遺憾千万であったことは、この
地域の
まん中に
保健所がございますが、この
保健所自身井戸水の
検査ができない、こういうような
事態でありまして、一体何のために
保健所があるのかわけがわからない。こういうようなことで、私
どもはあいた口がふさがらなかったのであります。そこで、市の方といたしましては、県の
衛生試験所、また、
大学の
医学部、
薬学部に依頼いたしまして、市で採取した
井戸水、あるいは
住民から直接持ち込まれた
井戸水の
検査に当っておるけれ
ども、いろいろな
事情で遅々として進まない、こういうような
事態でございます。なおまた、
試験に供する
井戸水の採取にいたしましても、
保健所から行って取ったのは適正なる取り方をいたしておるように聞きましたが、
住民はどういう取り方をいたしたのかてんでわからない。それからまた、
井戸水を取るにいたしましても、
試験所が取っても、ただ取ったというだけであって、井戸の深さなんということは全然念頭に置いておらない。また、この
地域の
まん中に大きな池がある。沼がある。こういうような池、沼については何ら考慮されておらない。こういうような
事態でございまして、まず、今日までの
調査の
経過というものはきわめて不完全しごくであるということを私
どもは感じたわけでございます。そこでさらにこの点については、
学者諸君の
意見も聴取して、十分
市当局にも警告をし、あるいは
大学にも
協力方をお願いをしておいたのでありまするが、今後一体どれくらいかかったらばすべての
検査が終えられるであろうかということをただしましたところが、少くともまだ二カ月はかかる
——私はまだ二カ月でも無理だと思いまするが、少くとも二カ月はかかる、こういう
お話でありました。しかもまた、大事なことは、この
汚染源、すなわち、ここにこの四
エチル鉛が隠されておるのか、その源がいまだにわからない。そこで、旧軍隊の
燃料倉庫等がございまして、約四カ所ばかりのところについて目下
発掘作業をやっておられまするが、果してそこに埋められたのかどうかも見当がつかないのであります。そこで、この
事態を詳細に吟味いたしまするというと、これはかりに
汚染源が
発掘されて、
事態が究明されましても、こういう広大な
地域に、しかも
相当の高単位の
毒物が検出されると、こういう
事態から考えますれば、今後何年間にもわたってこういう
井戸水の
毒物含有が続けられるのではなかろうかと考えられる。なおまた、
汚染源の
発掘が的中いたしません場合には、これは永久にこの不安なる
状態は解消されない、こういうことを私
どもは感じたのであります。そこでまた、
住民の
要望といたしましては、いわゆる
恕限量なるものを設けて、ある
範囲の
毒物の害を、四
エチル鉛がある
ガンマー以下ならば飲んでも差しつかえない。
雑用水に差しつかえない。こういうことのきめ方はできないものであるか、こういうわけでありまして、これについては、
薬学部、
医学部の両教授に
意見を徴したのでございまするが、今日までの四
エチル鉛に対する日本の学界における研究が未だ不十分でございまして、正式の意味の学問的な
恕限量を定めるということは不可能なる
事態のように聞いております。しかも、大
よそ飲用水として十
ガンマー以下ならばよかろう、こういう
想定でありますけれ
ども、
試験の結果出たものは大体三十五
ガンマー、あるいは五十、六十
ガンマー、最高は実に百十三
ガンマーに達した水もあるわけでございまして、とうていわれわれは
飲用にたえないものと
判定せざるを得ないわけでありますから、ここである
ガンマー以下のものは
飲用して差しつかえないという
恕限量を設けることについても私
どもは同意いたしかねる次第でございます。
そこで、詳細申し上げたいことがございまするが、
あとでまた申し上げることにいたしまして、この二万の
人口が、今後とも長い間にわたって自分の所の水が使えない、こういうような
事態では、私
ども現地に臨みまして誠に特殊の
非常事態である、こういうように
判定をいたしたのであります。この
非常事態に対する
対策といたしましては、一に
水道を
布設するよりほか今日の
事態としてほかに
対策がない。この
汚染源も見つからず、見つかってもここ数年間は出るであろう。こういうことを
想定いたしました場合に、しかも一日として欠くことのできない水のことでございますから、速急に
工事を急いで、
水道を
布設して、
水道水を
住民に供給してあげるよりほか
対策はないのではないか、かように考えたわけでございます。
住民の
要望も、
市当局の
要望も一にそこに帰するのではないかと思います。私
どももさように
判定をいたしたのであります。そこで、
厚生省当局から、
あとで
山口局長から御
報告があるかと思いますが、この点について
厚生省にも話しましたところが、
同感でありまして、どうしても
水道を
布設するよりほかあるまい、こういうわけで、さらに、私
どもは
関係者御
一同とともに、
水道を
布設するとするならば、
水源池はどうであるか。こういうことで
水源池の実態についても
調査をいたしたわけであります。そこで、
専門家の御
意見を徴しまして、その
水源池を利用することによって
十分給水をなし得て、しかも従来
福岡市の
水道を利用されておった方々にはあえて
支障を来たさない
事情であるということも私
どもは
同感をいたしたわけでございます。
そこで、願わくば
あとでまた申し上げまするが、当
委員会においてはわれわれの
報告を了とされまして、
水道布設のことについて御
決定を賜わりたいと思いまするが、
意見は別といたしまして、簡単に、
山本、
高野両
委員が参りました
調査の荒筋として御
報告申し上げます。