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1957-07-04 第26回国会 参議院 社会労働委員会 閉会後第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年七月四日(木曜日)    午前十一時三分開会   —————————————   委員異動 六月十日委員高良とみ君辞任につき、 その補欠として中山福藏君を議長にお いて指名した。 七月三日委員藤原道子辞任につき、 その補欠として大矢正君を議長におい て指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     阿具根 登君    理事            榊原  亨君            高野 一夫君            山本 經勝君    委員            勝俣  稔君            草葉 隆圓君            紅露 みつ君            鈴木 万平君            谷口弥三郎君            寺本 広作君            大矢  正君            片岡 文重君            木下 友敬君            山下 義信君            竹中 恒夫君   説明員    調達庁労務部長 小里  玲君    自治庁財政部理    財課長     山野 幸吉君    厚生政務次官  中垣 國男君    厚生省公衆衛生    局長      山口 正義君    厚生省公衆衛生   局環境衛生部長  尾村 偉久君    厚生省引揚援護    局復員課課長補    佐       田島 俊康君    通商産業省鉱山    保安局長    小岩井康朔君    労働政務次官  伊能 芳雄君    労働省労働基準    局長      百田 正弘君    労働省職業安定    局長事務代理  三治 重信君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○派遣委員報告社会保障制度に関する調査の件  (福岡市の水道に関する件)  (オーレオマイシン入り氷の使用に  関する件)  (原水爆実験に伴う放射能禍に関す  る件) ○労働情勢に関する調査の件  (赤平建設工業株式会社堤炭鉱作業  所におけるガス爆発に関する件)  (駐留軍労務者失業対策に関する  件)  (千葉県の川崎製鉄所における労務  者災害事件に関する件)   —————————————
  2. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) それではただいまから委員会を開きます。  委員異動報告いたします。六月十日付をもって、高良とみ君が辞任され、その補欠として、中山福藏君が選任されました。七月三日付をもって、藤原道子君が辞任され、その補欠として、大矢正君が選任されました。   —————————————
  3. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 社会保障制度に関する調査を議題といたします。  前回委員会において決定いたしまして行いました派遣委員報告をお願いいたします。
  4. 高野一夫

    高野一夫君 前回委員会におきまして、山本委員から御提案になって、本委員会で審議されました福岡市の井戸水問題につきまして、山本委員と私と現地に参りまして、六月十四日精細なる調査をいたしたのであります。審議の都合もございますので、調査の概要をこの席で申し上げてみたいと思います。  私ども両名現地に参りまして、なお、厚生省から山口公衆衛生局長が同行されまして、そこでまず、県当局市当局者から、今までの経過実情について概略伺った上で、関係者一同とともに現地をしさいに調査をいたしたのであります。そうして、その日の午後、市当局市議会、あるいは県議の一部、県当局大学関係者関係団体代表地元代表等にお集まりを願いまして、実情調査とそれから対策について懇談を続けたわけであります。  そこで、概略その調査の結果を申し上げまするというと、まず、地域が意外に広いのに驚いたのでございまして、福岡市の南部地帯住宅地または一部農村地帯世帯数として約四千世帯人口二万余りに及ぶ広大な地域であったのであります。  そこで、現在の事情といたしましては、消防署または自衛隊から給水タンクが出動いたしまして、一日平均わずかに六リットル程度の給水を朝と晩二回ずつやっている。現地住民諸君はこの水がほしい。しかも朝も晩もいつ小がくるかということを門口に出て待っている。その精神的苦労肉体的苦労というものがどんなにつらいであろうかということが察せられたのであります。  そこで、この事件発見せられまして、三月以来今日まで三カ月余りの間、どういうような一体調査をし、対策を練っておったかということを、これは後日他の地点に起り得る場合を想定をいたしまして、われわれ参考にいたしたいために詳細に当局者から伺ったのであります。ところが、市当局はほとんどこの井戸水についてこれを検査する能力を持たない。それでまことに遺憾千万であったことは、この地域まん中保健所がございますが、この保健所自身井戸水検査ができない、こういうような事態でありまして、一体何のために保健所があるのかわけがわからない。こういうようなことで、私どもはあいた口がふさがらなかったのであります。そこで、市の方といたしましては、県の衛生試験所、また、大学医学部薬学部に依頼いたしまして、市で採取した井戸水、あるいは住民から直接持ち込まれた井戸水検査に当っておるけれども、いろいろな事情で遅々として進まない、こういうような事態でございます。なおまた、試験に供する井戸水の採取にいたしましても、保健所から行って取ったのは適正なる取り方をいたしておるように聞きましたが、住民はどういう取り方をいたしたのかてんでわからない。それからまた、井戸水を取るにいたしましても、試験所が取っても、ただ取ったというだけであって、井戸の深さなんということは全然念頭に置いておらない。また、この地域まん中に大きな池がある。沼がある。こういうような池、沼については何ら考慮されておらない。こういうような事態でございまして、まず、今日までの調査経過というものはきわめて不完全しごくであるということを私どもは感じたわけでございます。そこでさらにこの点については、学者諸君意見も聴取して、十分市当局にも警告をし、あるいは大学にも協力方をお願いをしておいたのでありまするが、今後一体どれくらいかかったらばすべての検査が終えられるであろうかということをただしましたところが、少くともまだ二カ月はかかる——私はまだ二カ月でも無理だと思いまするが、少くとも二カ月はかかる、こういうお話でありました。しかもまた、大事なことは、この汚染源、すなわち、ここにこの四エチル鉛が隠されておるのか、その源がいまだにわからない。そこで、旧軍隊の燃料倉庫等がございまして、約四カ所ばかりのところについて目下発掘作業をやっておられまするが、果してそこに埋められたのかどうかも見当がつかないのであります。そこで、この事態を詳細に吟味いたしまするというと、これはかりに汚染源発掘されて、事態が究明されましても、こういう広大な地域に、しかも相当の高単位の毒物が検出されると、こういう事態から考えますれば、今後何年間にもわたってこういう井戸水毒物含有が続けられるのではなかろうかと考えられる。なおまた、汚染源発掘が的中いたしません場合には、これは永久にこの不安なる状態は解消されない、こういうことを私どもは感じたのであります。そこでまた、住民要望といたしましては、いわゆる恕限量なるものを設けて、ある範囲毒物の害を、四エチル鉛があるガンマー以下ならば飲んでも差しつかえない。雑用水に差しつかえない。こういうことのきめ方はできないものであるか、こういうわけでありまして、これについては、薬学部医学部の両教授に意見を徴したのでございまするが、今日までの四エチル鉛に対する日本の学界における研究が未だ不十分でございまして、正式の意味の学問的な恕限量を定めるということは不可能なる事態のように聞いております。しかも、大よそ飲用水として十ガンマー以下ならばよかろう、こういう想定でありますけれども試験の結果出たものは大体三十五ガンマー、あるいは五十、六十ガンマー、最高は実に百十三ガンマーに達した水もあるわけでございまして、とうていわれわれは飲用にたえないものと判定せざるを得ないわけでありますから、ここであるガンマー以下のものは飲用して差しつかえないという恕限量を設けることについても私どもは同意いたしかねる次第でございます。  そこで、詳細申し上げたいことがございまするが、あとでまた申し上げることにいたしまして、この二万の人口が、今後とも長い間にわたって自分の所の水が使えない、こういうような事態では、私ども現地に臨みまして誠に特殊の非常事態である、こういうように判定をいたしたのであります。この非常事態に対する対策といたしましては、一に水道布設するよりほか今日の事態としてほかに対策がない。この汚染源も見つからず、見つかってもここ数年間は出るであろう。こういうことを想定いたしました場合に、しかも一日として欠くことのできない水のことでございますから、速急に工事を急いで、水道布設して、水道水住民に供給してあげるよりほか対策はないのではないか、かように考えたわけでございます。住民要望も、市当局要望も一にそこに帰するのではないかと思います。私どももさよう判定をいたしたのであります。そこで、厚生省当局から、あと山口局長から御報告があるかと思いますが、この点について厚生省にも話しましたところが、同感でありまして、どうしても水道布設するよりほかあるまい、こういうわけで、さらに、私ども関係者一同とともに、水道布設するとするならば、水源池はどうであるか。こういうことで水源池の実態についても調査をいたしたわけであります。そこで、専門家の御意見を徴しまして、その水源池を利用することによって十分給水をなし得て、しかも従来福岡市の水道を利用されておった方々にはあえて支障を来たさない事情であるということも私ども同感をいたしたわけでございます。  そこで、願わくばあとでまた申し上げまするが、当委員会においてはわれわれの報告を了とされまして、水道布設のことについて御決定を賜わりたいと思いまするが、意見は別といたしまして、簡単に、山本高野委員が参りました調査の荒筋として御報告申し上げます。
  5. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 福岡水道に関する件を問題に供します。  ただいまの派遣委員報告にあわせて御質疑をお願いいたします。政府側出席者は、中垣厚生政務次官山口厚生省公衆衛生局長、尾村環境衛生部長田遊水道課長高部細菌製剤課長山野理財課長小熊主計局法規課長であります。お含みの上、質疑を願います。
  6. 山本經勝

    山本經勝君 御質問申し上げる点は若干ありますが、今の高野委員から報告願ったその後の経過を、厚生省当局の方にわかっております点、総合的に御報告願った方が順序がいいように考えるのですが……。
  7. 山口正義

    説明員山口正義君) 私、ただいま高野先生の御報告がございましたように、去る六月十四日、高野山本先生現地を御視察いたされました際にお供をして参りまして、現地状況をつぶさに視察して参ったのでございますが、私も被害範囲相当範囲にわたっており、また、その地形の状況からいたしまして、応急給水にも非常に現地において困難をされているということを想像いたしておりました以上の状態であるということを現地で見て参ったのでございます。  ただいま高野先生からお話がございましたまず、汚染状況検査の問題でございますが、これはただいま御報告がございましたように、先月の十四日ごろまでは非常に現地検査能力と申しますか、状況と申しますか、これが不十分な点があったのでございます。懇談会の席でも話があったのでございますが、早急に関係のところの協力を得て、その検査能力増強をはかるということの打ち合せがあったわけでございます。私も翌日十五日残りまして市の当局、県の当局とそれらの点、なお他の点についてもいろいろ打ち合せをして参ったのでございますが、とりあえず現地大学関係九州大学だけでなしに、久留米大学、そのほかの工業大学というようなところ、あるいは歯科大学というようなところにも応援を頼んで、検査能力を増してもらう、と同時に、この取りました検体を運搬しなければなりませんので、あまり遠方まで運びますということもいろいろ難点もございますので、しかもこの検査そのものが鉛の検査で、専門家の御意見を伺いますと、有機鉛でございますので、相当技術の熟練を要するというお話でございますので、とりあえず熊本県と打ち合せまして、熊本県の衛生研究所並びに熊本大学の援助を得て検査能力を増すという打ち合せをしたのでございます。昨日、現地から報告を受けましたところでは、検査能力が、私ども現地視察に参りました当時の倍に増強されているということでございますが、しかし、これだけでもまだ、先ほど高野先生から御指摘がございましたように、現地検査すべき場所全部を調べ上げますのに相当の時日がかかりますので、なお、この検査能力増強についてはもっと手を打っていかなければならないというふうに考えているわけでございます。  それから汚染源の問題につきましては、発掘によって現在のところ、汚染源と考えられまするドラムカン発見ができておりません。そこで、当時先生方の方からも御示唆がございましたが、ボーリングによって検査をするということもやられたようでございますが、それもなかなか十分にうまくいかない。そこで、九州大学の方に頼まれまして、地下水検査地下水の流れ方というような検査を大々的に開始されておるのでございますが、まだ汚染源をはっきり突きとめるということができない状況でございます。なお、この点については、そのほかのいろいろな聞き込み、あるいは現地調査というようなことを進めて参らなければならないというふうに考えているわけでございます。  それから第三の水道布設の問題でございますが、これは先ほどお話がございましたように、水源の問題と、それから配水管の二つの問題がございますが、水源は現在この地区に隣接しておりますところに水源地がございまして、そこの能力が一日一万トンでございますが、現在八千トン近くしか使っておりません。それでなお二千トンの余力がある。二万人に対して一日百リットルといたしますと、二千トンということになりますので、とりあえずまあこの水源を利用して、配水管だけをとりあえす布設するということが一番手っとり早い方法であるというふうに考えられます。現地の市の水道局においてもそういう計画を立てられております。問題はその財源措置でございますが、それは私ども東京へ帰りましてから、自治庁、大蔵省とも打ち合せまして、事態事態でございますので、とにかく工事にかかれるように財政的な心配のないように、起債等においても考えてもらうということを関係当局とも打ち合せいたしまして、すでに現地では水道工事にかかられて、千五百メーターばかりの大きな管の配管が終ったということでございますが、とりあえずのメーン・パイプを布設いたしますのには、九月一ぱいで終る、そうしてさらにこまかいところまで配水管布設いたしますのには、なお二、三カ月かかるという状況でございます。それに対する財源的な措置並びに資材のあっせんということにつきましては、現在資材の入手につきましても、市当局において支障のないように進んでおるというふうに承知いたしております。なお、応急給水につきましては、先ほど高野先生から御指摘がございましたように、視察に参りました当時の応急給水状況は、量から見ましても非常に不十分でございます。また、給水状況の現場におきましても、タンク車その他によって運びました最終末端から各家庭への配水状況が、必ずしも衛生的に見て満足すべきものでない。また、逆に申しますと、非常に心配な点が多かったのでございまして、そういう点は直ちに変えてもらうように注意をしたのでございますが、市当局においては、それらの配水の運搬に要する車、それから各家庭へ配る前の貯水施設というようなその細部の計画を立てておられまして、私十五日に市当局とも打ち合せましたときに、詳細打ち合せて参ったのでございますが、昨日、現地からの報告によりますと、そのときに計画されましたと少しこまかい点が変っておりますが、しかし、大体予定通りにいろんな施設の配置ということが進んでおるのでございますが、現在のところ、目標としましては、この応急給水におきましては、一日一人当り十五リッター配水できるような計画でやっていくということになっておりますが、現在はまだその域には達しておりません。なお、一昨日あたりにもタンクができ上り、また、貯水槽も逐次増強されていっているということでございますので、これは近く予定通りに完成を見るのではないかと、そういうふうに考えているわけでございまして、これらの水道布設に要する費用、それから応急給水に要する費用福岡市において、先月の十七日から二十日まで市議会を開催されて、とりあえず必要な経費についての予算の議決を行なって、実際に実施に移しておられる状況でございます。
  8. 山本經勝

    山本經勝君 本日は中垣政務次官がおいでになっておりますから、次官に御質問申し上げたいのですが、大体の今回の福岡市の水道汚染に関する問題については、ただいままで御報告通りで、まだ前回委員会でも、当時資料等については不十分でありましたけれども、一応調査をし、検討したわけです。そこで、根本問題として考えられるのは、これがもと戦時中に軍が保有しておったこの四エチル鉛並びにガソリンの混入されたこれらの航空歳用燃料が原因である、こういう点では非常にはっきりしておるわけですが、従ってこうしたことがあらかじめ終戦の際にほんとうに正確な処理方法がとられておれば、今日こういうような事態は起っておらぬだろうと思う。ところが、お聞きのような状況で、これが広範な地域にわたって地下水となって浸透して、そうして人に危険を及ぼし、あるいはまた、非常な被害が今日起っている、こういう状況なんです。ですからこれを集約的に申しますというと、もとこれはやはり国の国策に基く政策の遂行に当って起った問題である、こういうことが言い得ると思うのです。ですから当然国の責任において本来からいったら処理すべきものだ、こういうように考えておるのですが、この点は次官の方はどういうふうなお考えであるか、基本的な点として、まず第一点お伺いしておきたい。
  9. 中垣國男

    説明員中垣國男君) 山木さんにお答えいたします。ただいまの福岡市におきまする四エチル鉛飲料水に及ぼしました害の処置につきましては、ただいま山本さんが御指摘なさいましたように、その当時に四エチル鉛処置に誤まりがなかったら、こういう問題は起きなかったであろうという、その点につきましては、私も全く同じように考えておるのであります。ところが、国家責任におきましてこういう最終的な処置の問題の御指摘につきましては、これは国家賠償という法律の建前からいきますと、現在国が管理しておるところのそういう施設、あるいはそういう国有の施設並びにそういったようなものから起きてくる害については、国の賠償ということが当然のこととされておるのでありますが、すでにもうずっと前にこれが民間に渡されておるのでありまして、そういう点からは、これは少し疑問があるのでありまして、その点をこれは十分に調査してみなければならない。なおまた、先ほど高野委員からも御報告がありましたように、いまだどこにそういったような汚染源があるのか、そういうことも発見されていないような状態でございまして、これらの発見に努力いたしますとともに、ただいま御指摘になられましたような、そういったような観点から、これらの問題を十分厚生省としては考えて、最終的な対策結論を出したい、かように考えております。
  10. 山本經勝

    山本經勝君 ただいまの次官お話ですというと、現在国が所有しておる——国が管理しておる、こういうものでないから、これは民間に渡されておるからというのですが、さっき申し上げた趣旨は、つまり終戦のときにしかるべき処置が国の手によってなされておるならば、こういう事態は発生しなかったであろうということは同意をなさっておる。そうしますと、なるほど今日まで十二年間という月日がたっておる。ですからいろいろ紆余曲折を経てこれらの問題の取扱いが適切に指示されたりするような処置が講じられていなかったということをお認めになっておる。そうすると、市民やあるいは市があるいは県が適当に取り扱ってきたのではなくて、やはりそういう行きがかりからいいまして、なるほど賠償法の適用をそのままやつていくことについてはいろいろ疑問があるということも私もしばしば承わっておる点であって、もしそうなればそれらしいまた対策が必要でしょう。しかし、いずれにせよ、今の経緯から見て参りますと、国が何らかの手を打って、これを措置してもらわなければならぬ筋合いにあると思う。たとえて申しますと、同じ福岡県の田川郡にありました火薬処理等も、これも民間に返された地所に埋蔵された火薬処理が行われた。これが裁判所で検討された結果、最終的には国が賠償すべきだという決定がなされて、国が賠償というこういう事例もある。ですから、もとそのものがたとえば軍の居留地として、あるいは基地として使用されておった。今日ではおらない。しかしながら、そこにおったという事実に変りはない。そうしてしかも埋蔵しておったことも間違いない。いまだ、まだ具体的なドラムカン汚染源なるものも突きとめられない。はっきりとつかめておりませんけれども、そういうものがあったということだけは確実なんです。ですから、そういうふうに考えて参りますというと、もし責任を持った政府のあり方とするなれば、これは何らか政府責任を持った措置をとるという安心感住民に与えていただかなければ、これはただ福岡だけの事例ではなかろうと思う。おそらく全国の空軍基地というものはたくさんあった。あるいは海軍の基地があった。それらにはいずれも航空機並びに車両、船舶の燃料としてオクタン価を上げるために使われたいわゆる材料がある。ですからそういうことを考え合せますというと、今の次官お話では、私ども納得いきがたいと思う。なるほど国の所有、国の管理でないという姿はお説の通り。しかし、その前に国が処理しなければならなかったはずのものが、あるいは当時の軍の手にありたといたしましても、国策に基くものですから、そうした線から言いまして、その点の責任の所在がこの際、明白になっておらないというと、今後の対策を考える上にも非常に相違が起ってこよう、かように考えるのです。その点もう一度御懇切な御解明をいただきたい。
  11. 中垣國男

    説明員中垣國男君) お答えいたします。私が先ほどお答えいたしましたのは、厚生省といたしまして、今日においては国が賠償をするといったような結論にまでは到達していないと申し上げたのでありまして、その前に、たとえば現在やっております自衛隊消防等による給水にも非常に多額の経費がかかっておるようでありまして、なおまた、今度布設される水道につきましても、市議会は八千万円という経費を計上しておるのであります。そういうような汚染によりまして多額な経費がかかることは、厚生省もよくわかっておりますので、さしあたりそういう自衛隊であるとか、消防であるとかいったような機関を用いまして、給水をやっていただき、それに要した経費というようなものは、自治庁とただいまよく話し合っておるのでありますが、これを平衡交付金等の対象に新たにこれを加えるとか、そういったような一つの方法もあろうかと思うのであります。なおまた、水道布設等につきまして、これを最終的にどうするかということは、ただいまのところ、今日の現在においての御答弁を申し上げたのでありまして、ただし、御指摘通りに、これにつきましては、相当に他の関連等におきまして、重要な問題であると思いますので、そういうような山本さんと同じような考え方のもとにつきまして、政府はただいまそういう結論を出すためにいろいろ協議等をやつております。ところが、まだ結論をこういうふうにするとここで申し上げるような段階でございませんので、全然知らないというのではないのでありまして、そういったようなお考えのように、そういう結論が出るように、そういう方向に資料その他を全部集めまして、検討していきたい、こういう段階でございます。
  12. 山本經勝

    山本經勝君 今の次官お話で、だいぶんわかるのですが、国に責任があるという点では了解がいくのです。そこで問題は、今の平衡交付金というお話があったのですが、私の方の聞くととろによりますと、今の特別交付税ですか、そういう形で何らかの措置をとるというようなお考えも、田中自治庁長官が現地視察された際にもお話が出て、あるいはまた、起債等、応急の措置については万全を尽し、優先的に処理するというお話が出ておる。ですから、その点は非常に期待をしておりますし、また、厚生省の今後の努力をお願いしなければならぬと思う、そこで、汚染源が突きとめられないという点で、せんだって、現地懇談会を開いた際にも、若干の質問を現地の方にしたんですが、やはり、今やっている方法は、汚染源を探求する方法として、二十四日でありましたか、いわゆる地下水の水流の系統を科学的に井戸水によって検査し、そして食塩等を投入してその流れの系統を探って、その流れ出る源に汚染源があるであろうと判断をつけるために、専門家を網羅して検討がなされておる。ですから、そこで何らかの汚染源が突きとめられるでしょうが、同時に必要なのは、当時の人が全然いなかったのではなくて、軍関係の指導者で、現地におられた方があるようですから、その話をしましたところが——これは、山口局長さんのお話であったと思うのです。それで、ある空軍の当時大佐が現地におったので、その状況が大体わかるという模様であるから、それを一応調べてみようというお話を承わって非常に期待をしておった。それで山口局長にお伺いしたいのですが、今の、空軍で勤めておられた大佐の方に実情をちょっとどのようにお確かめ願ったか、あるいはきょうこちらにお見えいただいておるならば、ここで御説明を聞いておきたいというふうに考えるのですが……。
  13. 山口正義

    説明員山口正義君) ただいま山本先生の御指摘になりました私の申し上げました言葉につきまして、私の申し上げ方が不十分でございましたためだったと存じますが、少し誤解をされたように私その後のお話で承わったのでございますが、それは私、この問題が起りまして、厚生省内でも関係の方面といろいろ打ち合せをいたしておりました際に、厚生省の援護局には当時の軍関係の方もおられまして、その方面の方に聞けば、当時の福岡周辺における軍の配置状況あるいはどういう部隊が駐屯しておったかというようなこともわかる可能性がございますということを申し上げたわけでございますが、それで、さっそく厚生省の引揚援護局の次長の方において、当時のいろいろな記録からたどりまして、そうして当時福岡周辺にどういう部隊が駐屯しておったか、そして具体的にどういう人が指揮をとっておったかというようなことについて調査を始めていただいておりますが、今日までのところ、残念ながらまだはっきりどういう部隊の方がそこにおられたかというような回答に接していないのでございまして、これはなお続いて現在調査をしていただいております。そういう状況でございまして、さらに詳細についてお尋ねがございますれば、援護局の方からも担当の田島事務官が見えておりますので、お答えいただけると思いますが、概況はそういうことでございます。
  14. 山本經勝

    山本經勝君 私の御質問申し上げたのは、この間の話をちょっと勘違いしておったかもしれません。そこで、その関係者の方がここに来ていただいておりますか。
  15. 山口正義

    説明員山口正義君) 援護局の田島事務官がお見えになっておりますが……。
  16. 山本經勝

    山本經勝君 それでは田島事務官に御迷惑ですが、大体の状況を総合的にお伺いしたいのですが、その前にこれは私どもの聞き込みと申しますか、いろいろな形で、市民やあるいは近隣の人から聞いた話なんです。大体大ざっぱに申し上げて、あそこはちようど……これは地図がございませんから具体的に指摘できぬのですが、板付にあります現在の飛行場、これがもと軍の航空基地になっておった。で、この航空基地から直通の道路を設置しまして、そうして西に向って延ばしたわけです。その丘陵地帯一円にいろいろな航空機燃料、あるいは問題のエチル鉛等が埋蔵されたというのですが、そういう状況について御存じであれば、なるべく詳しく経過等をお話を願っておきたい。かように考えます。
  17. 田島俊康

    説明員(田島俊康君) 福岡付近の航空部隊のことでございますが、あそこはいろいろ調べましたところ、第六航空軍というのがおりまして、これが山口県の小月の飛行場から九州全般をかけてこれが持っておりました。で、福岡付近には御案内のように、太刀洗に大きな部隊があったのでございますが、それで現在板付飛軒場として米軍が使用しておりますものは、当時いわゆる飛行基地というほどのあれでなくて、前進飛行場として使用しておったんだそうでございます。そこで、その当時は向うに常駐いたしておりますのは飛行場大隊という飛行場整備の部隊がおりまして、その一部が駐屯いたしまして、飛行機が降りてきましたならばそれに対する補給とか、若干の修理をするという任に当っておったようでございます。終戦後それがどういうふうになったかと申しますと、終戦後は、これまた御承知と思いますが、九州地区及び南関東地区は何月何日までに軍隊は全部出ていけというような、えらいやかましいことをアメリカから言われまして、それで大急ぎで出ていった地区でございますけれども、ここでは航空軍が現地の監視隊を全部残しまして、そうしてガソリンでありますとかあるいは被服類でありますとか、そういうものはすべて内務省の系統に移すという、そういう仕事をやりまして、そうして古い記録を見ますと、十二月一日にそういうものを解消した命令が出ております。それで、もし先ほどから問題になるような点があるとしますれば、むしろ終戦後のことじゃないかと私は考えるのでございます。ただ、いろいろ施設等の問題もございますから、終戦前そういう施設をしておったのを監視隊にうまく申し継がないでやつたのではないかというような懸念もございますので、ただいまのところ、そのもとからおりました飛行場大隊と、それから終戦後その任務に当りました監視隊と町方にかけて、大体人名等も明瞭でございますが、ただ時間が経過しておるものでございますから非常に人が移動しておりまして、思うような返事をまだもらつておりません。すでに一、二はついておりますけれども、これはそれによってさらに今後の調査をするという手がかりを得た程度でございまして、ただいまここで、こういうふうにいたしておりましたということを申し上げられないのをはなはだ残念に存ずるのでありますけれども、大体ただいま申し上げましたような筋道をたどつて調査を進めておるところでございます。
  18. 山本經勝

    山本經勝君 続いてもう一点お伺いしたいのですが、板付とともにあそこにはすぐ近くに雁ノ巣の航空基地がある。これは御承知だろうと思う。この雁ノ巣の航空基地から相当量のガソリン並びに——これはおもにガソリンのようですが、いわゆる四エチル鉛を混入したガソリンを、穴観音という所があるのですが、そこに移駐して、そうして地下に大きな鋼鉄板のタンクを作つてそこで貯蔵したという話もあるのですが、そういう事実はまだおわかりになっておりませんですか。
  19. 田島俊康

    説明員(田島俊康君) 今雁ノ巣のことを初めて伺いましたが、飛行場付近に置いておきますと爆撃等を受けました場合に、一緒に損害を受けるものでございますから、あれは相当離れましたところにそれぞれ貯蔵いたす場所があったのでございます。従いまして、先ほどからお話の、板付から西の方に——私も現地を多少存じておりますが、あの丘陵地帯等はそういうことに利用されたであろうと思われますことは想像できると思うのでございます。それでございますから、雁ノ巣のあたりもおそらく今先生お話通りのことがあったろうと思います。雁ノ巣は今雁ノ巣の監視隊というものを別に残しまして、福岡の監視隊と雁ノ巣の監視隊とは別個の部隊になって、それぞれ内務省の方に引き継ぎをいたしたようでございます。
  20. 山本經勝

    山本經勝君 それでは、非常に詳細な話を伺いたいけれども、これは困難だと思う。まだ調査の過程だということですから、また、調査がつきましたら伺いたいということにいたします。  そこで、自治庁の方に——山野さんがお見えになっておるようですから——ちょっとお伺いしておきたいのですが、長官が現地に参られた際に、起債の問題八千二百万円、これは問題ないというお話であったのですが、ところが、単に起債では——実は御承知のように、市の水道費は市としての独立会計であつて公営企業でやっている。ですからこの全体から見まして、あそこがあらかじめ予定された水道計画のある地域ではなく、このことがあつて初めて水道を作る以外にないという、先ほどの御報告にもありましたような結論から生まれたものだ。ですから、ここでこの水道布設について、現在韓線については一応八千二百万円程度で終るようですが、それがさらに引き込み線を加えますというと、これは相当額に上る。で、市の調べによりますというと、一戸当りの引き込みが大体平均して二万円程度に当るであろう。そうしてかりに二千軒にこれを引き込むということになりますと、これが四千万円ということになってくる。で、相当莫大な額に上るようになってくるわけですが、その点についてはいろいろ問題がある点で、今後さらに水道局も具体的に検討をするでしよう。また、本省の方でもやはりいろいろ御検討願わなければならぬでしょう。ともかくそういう形で……そこで、八千万円の起債については問題ないということですが、こちらへ来て聞いてみますと、そうではない、八千万円の起債は、水道起債というものはよろしい、しかしながら、その起債は、最終的には全国各公共団体から出ている起債の要求を総合的にきめるときにきめるものである。額について八千万円よろしいと言つたのではないというふうに言葉が変っているような印象を受けている。ですから、これでは非常に不安心なのであって、八千二百万円の布設費は一応起債その他の方法によってなされるでありましょうが、そのあと処理がやはり問題になって残っている。ですから、その点をどういうふうに自治庁当局としてはお考えになっておるか。大臣の言われるように非常に簡単なお話で出すのか。さらに全国の市町村から出ている起債要求の査定を全体にしてその中できまる。で、従って、額は必ずしもこれまでにはいかぬかもわからない。こういうような印象を受けるのですが、この点はっきりしておいていただきたいと思う。
  21. 山野幸吉

    説明員山野幸吉君) お答えします。この福岡水道の問題につきましては、当初まあ六千万円という要望がございまして、その後八千万円になったという御報告を受けたのでございます。で、その問題と、もう一つ御指摘のように、福岡市の一般の水道拡張の新規の計画がありまして、これが大体五億程度の計画でございます。で、私どもとしましては、この事態の緊急性にかんがみまして、まあ厚生省ともお話し合いしまして、至急工事はやっておいてもらいたい。早急のうちにこの水道の問題も査定に入るから、具体的な額はそのときにきめますけれども、しかし、工事自体はどんどん進めておいていただきたいと、こういうことを申し上げたのでございます。で、あとの五億の継続事業の水道につきましては、これは新規の水道でございますので、そのときにまたあらためて御相談したいという工合に申し上げたのでございます。で、まあ資金手当その他につきましては、御案内のように、福岡市の水道は、大体水道会計として五億程度の水道会計でございますが、年間約六、七千万の剰余金は生じております。で、かりに減価償却を完全にやりましても、三、四千万程度の年間の剰余金は出ることになっておりますので、まあ資金繰りは一つやつておいていただきまして、あとで一つ早急のうちに起債の額は大蔵省と厚生省と三者で協議してきめたいという工合に申し上げておる次第でございます。
  22. 山本經勝

    山本經勝君 今のお話しを聞きますと、だいぶ今までの話と変ってくると思うのです。先ほど次官お話しになりましたように、この問題の原因になるものは国の責任に属することは認められておる。ところが、具体的な対策等についてどう取り扱うかということが未決定状態である。こういうふうに理解される。ところが、今のお話しでは、福岡市の水道局は、年間財政規模が五億程度である。そうして、六千万円見当の黒字である。少くとも三、四千万円は確実に黒字になる。従って、そういう余力があるのであるから、水道は独自でやりなさい、こういうふうに受け取れるのですが、これは長官が現地においでになって話されたことは非常に話がよかったわけです。福岡市民は非常に歓迎したし、同時に感謝しておる。今のお話になってくると、どうやら話が変ったようになりそうですが、その辺はどうですか。
  23. 山野幸吉

    説明員山野幸吉君) ただ私の先ほど申し上げましたのは、福岡市の水道の大体の状況がそういう状況でございますので、応急措置につきましては、さしあたってやっていけるのじやなかろうか。追っかけて資金も決定したいという意味で申し上げましたので、剰余金がありましても、福岡市は福岡市として維持補修のための経費もかかりましようし、いろいろ経費がかかると思うのでございます。従いまして、今度の四エチル鉛の問題の八千万円の事業費を、どの程度起債として認めて行くかということは、早急のうちに三者協議して、これはきめて参りたい。いずれにしましても、その工事自体はできるように持って参りたい。かように考えております。
  24. 山本經勝

    山本經勝君 続いて、もう一点伺っておきたいのですが、これは特別交付税は、今の交付税の総額の一割ですかが、大体引き当てになっていると聞くのですが、特別交付税等でまかなっていただくお考え方はおありなのかどうか。
  25. 山野幸吉

    説明員山野幸吉君) この問題につきましては、先ほどお話にも出ましたように、第一次的には国の責任ではないだろうか。現在の国家賠償法の建前を離れますと、何といっても国の責任で、国の賠償の生じそうな問題だと考えます。その問題がどういう工合に片つくかということも考えながら、私どもの方としましても、一体特別交付税で考えられる性質のものであるかどうか。また、その内容はどうかという点についても、これは検討して参りたいと、かように考えております。
  26. 山本經勝

    山本經勝君 そうしますと、つまり特別交付税でやる方法はあることはあるが、それは国の賠償との関係で、その問題がはっきりしないとはっきり言えない。こういうふうに理解してよろしいのですか。
  27. 山野幸吉

    説明員山野幸吉君) 実は、特別交付税の問題につきましては、事務的にはまだ検討する段階になっておりませんので、従いまして、絶対に交付税で考えられる筋合いのものでないということは、あるいは言えないかと思うわけでございますが、先ほど申し上げましたように、第一次的には、まず国の責任だという建前と、それと、そういう国の賠償の問題の行方を見ながら、私どもの方でも十分検討して参りたいと思います。
  28. 山本經勝

    山本經勝君 そこなんですが、つまり第一次的には国の責任に属する問題である。国の賠償の問題に関連を持っておると判断がされる。ところで、もしそれができなければ、これは今度の起った事態の原因が、御承知のような状況であるから、特別交付税による国の負担という形をとり得ることもある。こういうふうに受け取っていいのですか。
  29. 山野幸吉

    説明員山野幸吉君) その点は一つ十分に研究いたしてからお答え申し上げたいと思います。
  30. 山本經勝

    山本經勝君 その研究もけっこうなんですがね、とにかく工事はすでに着手しておる状況ですからそれは期待をしておるわけなんです。そこで、二万数千に上る市民が困窮していることですから——非常に皆さんの方のお考え方もわかるし、また、努力も感謝をしておるわけなんです。そこで、私のはっきりしておいていただきたいのは、第一次的には国の賠償に該当する問題であるとお考えになっておる。ところが、その第一次的な問題が解決がつかなければ、そのあとの、たとえば交付税で処理するというようなことは不可能だということなんですか。そこがあいまいなんですよ。それを今言えないと言われるのは、一応考え方ですから、何ぼどうするのかということになるとそれは一応別個の問題として、今おっしゃるように、事務的な問題を含めて検討も必要でしょう。考え方の筋としてはその点はどうなんでしょうかね。そこがちょっとあいまいなんです。
  31. 山野幸吉

    説明員山野幸吉君) 今度の水道問題につきまして、市の方で御負担なさったその額は、おそらく応急給水の問題の額が対象じゃないかと思います。そのあとは一般の起債でいくわけでございます。従いまして、その応急給水の内容で、これは全く福岡市として、一般会計として全額持つべき性質のものであるのか、あるいは若干は水道会計の方でも持っていい性質のものもありはせぬかとか、そういう問題もまたあるかと思います。いずれにしましてもそういう事故があって、福岡市が現実にそれだけ財政需要がふえたということが客観的に認められるならば、一応、基準財政需要額の中に特別の基準財政需要として算入されることにはなると思うわけでございます。しかし、その結果、具体的に、交付税がそれだけ特別にいくというわけには、まあ仕組がそうなっておりませんので、その点は若干すぐその額がいくということとは違うわけでございますが、一応特別の基準財政需要として見込まれるということは言えると思います。
  32. 高野一夫

    高野一夫君 大体事態はもうすでに明瞭にされたかと私は感ずるのでありますが、時間もたって次の議題も控えておりますので、願わくは、この辺でこの審議を終えたいものだと考えるわけでございますが、そこで私としては、政府当局自治庁並びに厚生省、大蔵省方面に要望申し上げておきたいのであります。  それはただいまもお話がありましたが、先ほど私も報告申し上げておきましたけれども、われわれとしては、現地調査をした責任上からいたしましても、どうしても緊急に水道布設をする必要があると同時に、応急措置に要したる予想しなかった金の費消、これに対して国としても何らかめんどうを見てやる必要がある、こう思うわけであります。そこで水道布設について、今も自治庁の課長からお話があった通りに、当初は六千万円、その次にわすか半月か一カ月たったら今度八千万の計画に変った、こういう事態はまことに困ると思うので、そこで、その汚染されたる地域を確定することが急務である、こういうことは現地に私ども注文を出しておいたわけであります。大体いろいろの状態調査いたしました結果、現在の地域汚染地域であるとの確定は大体できるのじゃないか。従って、今後計画変更が起りましても、さしてそう違わない程度の計画変更で済むのじゃなかろうか、こう思うわけであります。総額八千万なら八千万といたしまして、これを全額起債、こういうことについても、政府の方でもすでにいろいろお考えがあり、今は自治庁の方からも慎重なる御答弁があるわけで、これは現在としてはああいう答弁をされざるを得ないであろうと思うのであります。そこで、さらに今後十分吟味をしていただいて、この起債について、非常事態としての現地に対する問題として格段の考慮を払われたい、それからこれまで要しました応急措置に使った費用が、私どもの見ました資料は大体四千万近くなっているのじゃないか。これについても、福岡市が、できるだけの福岡市の方の別な財源でいかれればやってもらいたいが、それもむずかしいような事情に私ども調査の結果見ましたので、これに対して厚生省あるいは自治庁、大蔵省方面が、この点について、方法はいかなる方法でもよろしいが、いろんな方法を御研究の上、これに対する特別の補助の方法をとってもらいたい、こういうふうに私は考えるのであります。  そこで、私はもはや質疑はいたしません。実は動議を出して決議でもしたいと思ったのでありますが、政府の態度が明白であると思いますので、決議の必要もないと思いますから、この希望を明確に申し上げておいて、中垣政務次官並びに自治庁の方からこれに対する御答弁を願って、この問題に対する審議は、この辺で打ち切りにしていただきたい、こう思います。
  33. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) よろしゅうございますか。
  34. 榊原亨

    ○榊原亨君 ただいま高野委員から御要望のありましたほかに、私ちょっとあれですが、先ほど引揚援護局の方でいろいろお調べになっておるのでありますが、当時の書類によっていろいろお調べになって、また、それをイモづる的に考究なさる、そういう方法もけっこうだと思うのでありますが、これは迷子が毒を持って逃げたと同じことでありますので、これは全国的な放送網によって、福岡事態がこういう事態だから、その当時これに関与したものは一つ懸賞金でもつけて申し出よと言われた方が結局早いのじゃないか、そういう今までの型を破った方法によって早く感染源を見つけられるということをあわせて私は希望いたします。いかがですか。当局の考えをちょっと。
  35. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 当局からどなたか御答弁願います。
  36. 中垣國男

    説明員中垣國男君) 榊原さんにお答えいたします。ただいま、当時の状況調査につきまして、早急に結論を得るために懸賞をつけたようなやり方ではどうかというお話だったと思うのでありますが、それは厚生省としてよく考慮してみたいと思います。  それから先ほどの高野委員の御意見でありますが、これにつきましては応急処理に使われました経費並びに水道布設経費、このいずれに対しましても、自治庁、大蔵省等とよく協議いたしまして、誠意をもちまして解決をして参りたいと考えております。
  37. 榊原亨

    ○榊原亨君 私懸賞と申しましたのは、ただ一例でありまして、たとえば犯罪捜査におきましては、何も懸賞をしなくてもそういうことがラジオ放送等に出ますれば、必ずその当時を知っていた人は道義的にも当局に申し出るのが普通であります。従って、あながち懸賞をおかけにならなくても、そういうことをラジオ放送等によってすみやかにやるという頭の切りかえを私当局にお願いしたいのであります。
  38. 勝俣稔

    ○勝俣稔君 今回の福岡のような関係のことが、ちょうど昔大牟田に赤痢の問題がありまして、その当時私も関係者の一人であったのでございますが、大牟田市の要した費用を補助をしてくれないか、これは伝染病予防法によりますと六分の一、しかも伝染病予防に関係したものだけである、これでは非常に少いというような関係から、その当時、伝染病予防に関する問題に対しては六分の一、その他の費用に関しましては特別の措置を講じて、たしか三分の一くらいの国庫補助が出たと思います。当時主計局長が谷口君でございましたが、そういう前例もございますから、こういうところを一つお考え下さいまして、この問題の処理に当ったらあるいは御便宜になりはしないかというので、ちょっと御注意までに申し上げたいと思います。
  39. 山本經勝

    山本經勝君 高野委員並びに榊原委員その他の御要望等、私ども同感なんですが、私はやっぱりその前にややはっきりしておきたいのは、先ほど話のありました水道起債の問題については、大体において異議はないわけであります。そうすると、当面の応急対策としてすでに支出されたものあるいは今後計画的に約六ヵ月ないし七、八カ月の期間に支出されることが予定されたものが、大体給水費だけを見ましても二千六百万円余りになって、それからさらに検診等がなされて住民の安心を与えなければならないわけですが、検診や汚染源発掘等の費用等が三千二百万円をこえている、こういうことになってくるわけなんです。ですから、この費用は当然私どもはこれは国に何とかしてもらえるだろう、こういうふうな考え方を持っており、また、現地の希望もそれです。また、水道についても、事がたとえば直接被害をこうむっている市民の声をなまで聞けば、自分たちの井戸は自分たちが先祖伝来掘って使ってきた井戸であって、それを掘るためには資金もかけている。ところが、今さら水道の引き込みまで自分でやれと言われたのでは困るので、少くとも濁らぬようにしてもらいたい、汚染せぬ井戸にしてもらいたい、こういう考え方が率直に言って強く叫ばれておるわけです。  ですから、これに要する費用は本来から言ったならば、先ほど自治庁の方からも言われたように、第一には国の責任に属するものであるということが確認になって、また、厚生政務次官もそういうふうにおっしゃっておる。ですから、そういうことがはっきり筋道が通れば、当然国の責任において全面的な処理が願える、こういうことになってくると思う。そこで、金額について今どうこうと言っても、この委員会で即検討して決定するというわけには参らぬでしょう。これも私はよくわかります。そこで、少くとも基本線は国の責任において処理されるものであるという前提と、それから必要な資金がその基盤の上に立ってそこで最善の考慮をされる、こういうことになってこなければ筋が通らぬ。  そこで、先ほど高野委員の御要望もありましたし、また、あらためて別の決議をしても私はいい問題だと思いますが、たまたま現地調査もして詳細な報告もなされておりますし、実情を十分政府当局も認識になっておるわけですから、あえて私は申し上げませんが、そういう点をやはり基本的なこの委員会のまあ共通な意見として御確認を願っておきたいと思う。でないと、単に善処すると言われただけでは、この間の自治庁長官の福岡にお見えになった際の声明と一つも変りがない。ところが、実際にはその取扱い事務的な問題も含めていろいろ検討せんければならぬ、こういうことになってくると、将来どうなって動いていくのかわからぬ。それで、そこら辺を一つ取り入れて、次官なりあるいは局長等の御見解をはっきりと承わっておきたいと思う。
  40. 中垣國男

    説明員中垣國男君) 山本さんにお答えいたします。ただいまの御指摘の御趣旨は非常によくわかるのでありまして、応急処理に要した経費並びに水道布設経費等そのいずれにいたしましても、大蔵省や自治庁とよく協議いたしまして、誠意をもって解決をして参りたいと、かように考えます。
  41. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 本問題に対する本日の調査はこの程度にいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  42. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 御異議ないと認めます。   —————————————
  43. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 次に、オーレオマイシン入り氷の使用に関する件を問題に供します。本件につきましては、前回委員会において、次回の委員会までに政府における検討の結果を報告することとなっておりますので、この際、厚生当局から御報告を願います。
  44. 尾村偉久

    説明員(尾村偉久君) 前回委員会におきまして、すみやかに食品衛生調査会を開催して、厚生省がこの会議の意見によって態度を決するならばすみやかに結論を出すように、こういうことでございまして、ぜひそう努力をすることをお約束をいたし、さっそくこの調査会の方の開催を要求いたしました。六月二十日に第一回、それから第二回目が六月二十七日、最終が一昨日の七月二日に、三回にわたって連続開催されました。結論を得られまして答申案が作成をされました。あとは事務的な形式だけが、判こと印判を集めて押す形式だけが残っております。それもわれわれの方で事務的にごあっせんをいたしまして、今集め中でございますので、中身はおそらく十月二日の委員会で、決議された通りになるかと想像いたしておりますが、その結果によりますと、抗生物質を食品の保存に使用する場合には、薬事法に規定しております抗菌性物質製剤基準、要するに人間が医薬品として使い得る程度の基準でございますが、それに適合するような塩酸クロル・テトラ・サイクリン、それは俗にオーレオマイシンと言っておりますが、これを氷の中に百万分の五、五PPM以下含有させる、この氷を使うということがまず前提でございます。そういうような氷でしかも以西遠洋底びきの漁船、それがただいまのところ一般的に禁止になっております抗生物質を食品に使うのを解除してほしいと願い出ております漁業でございますが、その漁船中で、将来必ず熱を加えて販売するといういわゆる魚肉練製品の原料用に使う魚の冷凍保存用に使用する場合に限って差しつかえない、こういうことが食品衛生調査会の一昨日の最終の結論でございます。従いまして、以上のようなアメリカないしはカナダの許可しておる実情とそれからその後にずっと国内で行われましたこの問題に対する研究の結果を総合して、ただいまのようなことならばよいというような御決議でございましたために、その趣旨が間違われぬように付帯的な条件が同時に決定されました。要するに、それは今の保存用に使う氷のオーレオマイシンの含量が平均して五PPM、平均といいます意味は、これは製氷の場合にただほうり込んで溶かしますと、氷がだんだんまわりから凍ってきまして、まん中が非常に濃くなるというのであってはいけない。ですから、どの部分の氷を取っても五PPMでなければならないということを注意するということ、従いまして、この氷は今のように、魚の漁船内における冷凍用というのならば安心であるということでございますので、その他に使用されてはいけない。従って、一般の飲用氷と間違われぬように何らかの標示をする。これは当時の話ではたとえば製氷のときに畿らか色紙のようなものをまぜておけばこれはわかる。もちろんこれは漁業用の冷凍用の氷でございますが、白氷と称しまして空気を抜かない氷でございまして、普通市販の透明氷とは一見してわかるのでございますが、しかし、それにいたしましても、これは薬がまざっておるかまざっておらないかの、これが区別ができないといかぬものでありますから、そのような標示を必ず講ずること、それから船内以外で使われないようにする。これは委員会にお出になっておりました水産庁の直接の関係の方等の御意見によりましても、また、以西底びき網の漁業を実際の映画におさめまして、これを委員会に十分見てもらったわけでございますが、その内容から見ましても、全部これは出港するときに砕粉した氷を持ち込みまして、そうして揚げるときにはまた今まででも全然別の氷を今度陸上では使うということが習慣になっておるようでございます。これも大丈夫なそうでございます。必ず船内以外に氷を持ち上げて使わないように、こういう条件。それから抗生物質についてはただいまのところ、データがすべて塩酸クロル・テトラ・サイクリンということになっておりますので、これ以外の抗生物質が使われたのでは、この決議の対象にならぬということでございますので、ほかのものが氷に使われては困るから、それの検知方法を十分講じて間違わぬようにする。それから最終的には右の氷を使いまして保存いたしました魚類が今言いましたような、必ず加熱して販売される練製品、かまぼこ、ちくわ、はんぺん、それからさつま揚げのたぐいでございますが、これ以外のものには使用されないような監視方法を、たとえば家庭の手に渡って、刺身等になって食われるとか、あるいは酢の物でなまで食われるというようなことにならぬような、必ず加熱のルートを経て販売されるように監視すること。これだけの付帯条件がありまして、先ほど言いましたように、このオーレオマイシンを東支那海でとる練製品用の魚の船内保存に使っていい、こういう結論を出されましたので、これに基きまして、厚生大臣の告示で禁止しております——食品衛生法に基いて禁止しております抗生物質を食品保存用に使ってはならぬというところから、こういう限定されたものについては至急取り除くような措置をただいまから事務的に至急講じましていく予定でございます。以上御報告申し上げます。
  45. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 御質疑願います。
  46. 高野一夫

    高野一夫君 ちょっと伺いますが、従来オーレオマイシン入りの冷凍方法を講じておったのは以西遠洋だけですか。裏南洋あるいは印度洋方面の遠洋漁業にあまりそういうものは使われておらなかったものでありましょうか、その点を一つ、私よく知らないのです、事情を。
  47. 尾村偉久

    説明員(尾村偉久君) この点も先般の委員会におきましても質問が出まして、水産庁の研究部長に来ていただきまして質問したところ、以西以外の場合には原則としてみんなキャッチャーが母船についていって、それで短時間にとれを母船に返していろいろな冷凍あるいは加工、これは北方の方の工船も同様なそうでございます。かようなことで、これ以外にはよほどの例外を除いてまずありません。こういう回答でございましたので、委員会もそれに基きまして、それが前提になりましてかような決議をされたようでございます。
  48. 高野一夫

    高野一夫君 以西遠洋でとれる魚は大部分は、ほとんどがそういう調整品の材料に使われておりますか、それともなまで使われる場合も多少はあるのですか。魚の種類等にもよると思いますが、その点はどういう調査になっておりますか。
  49. 尾村偉久

    説明員(尾村偉久君) 約八〇%が全部この練製品に使われる、また、材料も約十種類ございますが、グチを第一といたしまして、サメとかそういうものでございますが、これは八〇%、それから残りの二〇%が練り物の材料にならぬその他の一般の使用に適する魚、こういうことでございまして、従いまして、船内の保存方法も従来といえども全部八貫目ないし二十貫目くらいの小箱に魚種ごとに分けまして、今までは普通氷で冷凍しておった。従いまして、陸揚げ後これの販売先が八〇%はいずれも練り物製品の加工場の所在地に向って発送する。その他は一般に回るそうでございます。従いまして、非常に今度の場合も厳重に魚種をきめて決議をされたようでございます。
  50. 高野一夫

    高野一夫君 そういたしますと、調製用以外の、たとえばなまで食べる刺身、そのほかすし等で使う魚には使ってはやはりいけない。こういうことになるわけだと思うのですが、これは果して使っていけないのか、使って差しつかえないのかはまだわからぬわけです。そこで使って差しつかえなければ早く解除してやった方がいい。それで今後厚生省として、あるいは調査会に依頼されてか、何らかの方法でなまで使ったものをなまで食べてそれが害があるかないかということについては、引き続き学術的の試験をなさるのでありますか。これでもう中断してしまわれるのでありますか。それを一つ伺っておきます。
  51. 尾村偉久

    説明員(尾村偉久君) これは引き続きましてなま物、あるいはほかの使い方等につきましても、できるだけ研究を盛んにやっていただくように厚生省としては措置と希望、両方もちましてやっていく予定でございます。
  52. 高野一夫

    高野一夫君 しからば今後なまのものに使って差しつかえないかどうかという点については、十分一つ研究を続けられて、しかもできるだけこういうものでございますから、結論を急いでいただきたい。あらゆる学者や関係者を動員されて研究を進めていただきたい。そこで、ただいま御報告の内容については、大体調査会の答申なるものは、われわれ了として差しつかえないのではなかろうかと、こういうふうに思いますが、それを了解すると同時に、今後の研究、結論を急いでいただきたい。こういう要望を申し上げておきます。
  53. 木下友敬

    ○木下友敬君 ちょっとお伺いしますが、一つの船がとった魚の中に練り製品に使うものとそうでないものと二種類あり得ますか。
  54. 尾村偉久

    説明員(尾村偉久君) 先日水産庁の部長のお話では、網の中に魚が一緒に入るために、約二時間ばかりで一網揚がるそうでございますが、また、映画でもそういうようになっておりますが、その中にやはり混合して網の中に入っております。従って、揚げた船の中の貯蔵は両種類どうしてもできざるを得ない。こういうことであります。
  55. 木下友敬

    ○木下友敬君 そういたしますと、船の中に貯蔵してある氷は二通り持って行かなければならない。そういうことになりますか。
  56. 尾村偉久

    説明員(尾村偉久君) その通りでございます。
  57. 木下友敬

    ○木下友敬君 そこで、今度は陸揚げの際、監督が要ると思いますが、その監督の構想はどういう監督をされるような構想になっておりますか。
  58. 尾村偉久

    説明員(尾村偉久君) 大体食品衛生監視員、これが今非常に手不足でございまして、現に保健所あるいは県庁におるわけでございますが、厚生省といたしましては、まずそれを第一に活用してできるだけ監視をしたい。こういうふうに存じております。
  59. 木下友敬

    ○木下友敬君 現在でも保健所の人員というものは非常に手薄でございまして、それは御存じの通りでございますが、あらためてこういうような事態が起って、監督を厳重にしなければならぬというようなことであれば、当然増員するとかというようなことも考えなければならぬ。増員しなくても、これには当然予算面の、経費の面の増額とかということもついてくるのではないかと思いますが、そういう点についてはどういうふうな御構想になっておりますか。
  60. 尾村偉久

    説明員(尾村偉久君) この告示を改正いたしますと、この夏でさっそくこれがおそらく実施が行われると思いますが、今年度は年度途中でございまして、よほど特別な方法を講ずれば別でございますが、たとえば予備費でこういうような人員がとれるわけでございますが、省としては人員の増加、あるいは特別なこれのための事務費増加は非常に困難でございます。従いまして、手持ちのものをできるだけ能率的に使って今年は済ます。来年度につきましてはこれから予算を組む時期でございますので、十分こういうことも考慮に入れて来年度予算を編成する。こういうふうにいたしていきたいと思います。
  61. 木下友敬

    ○木下友敬君 現在のものをフルに使うというようなお考えですが、現在のものをフルに使うといっても、今、保健所などは三〇%ぐらいは医者が不足しておるというような状態です。それをフルに使ってやるといっても、とても以来は上げられないと思います。ですから、監督ということについてはまあ一応監督するということではあるけれども、実際は業者の方の自主的な方向にまかすというような考えがありはしないかということを心配するのでありまして、また、監督するにしても費用か要る場合には、業者の方にその費用の分担を申し出るとかというような、そういうような考えがあるとこれは大へんだと思いますが、その辺のことはどういうふうにされますか。
  62. 尾村偉久

    説明員(尾村偉久君) これはあくまで国ないしはきめられました都道府県知事の権限内のことでありますから、ただいまのようなことではこれは監視にならぬので、さようには考えておりませんが、ただこれは先般委員会でもこの漁業の内容が非常に特有でかつ限定された漁業でありまして、これを扱っておるのは大きな会社が多いので、それからこれの製氷自身もほとんど特定の大冷蔵会社、これは大漁業会社と共通なのが多いのでありますが、非常に限定されております。それから水揚げ港が九五先が四港に指定をされております。ほかにも指定港はございますが、それはあとの五%でほとんどこれはわずかということでございますので、これを実施する場合には、水産庁の方と最初からやる規格等の基準の方を十分に厳重にいたしまして、それで一尾ずつ揚がるのを監視するというのはいずれにしてもこれは大へんであります。むしろやり方等のルート等を、あらかじめ信頼ができると思いますので、そちらと十分相談をいたしまして取扱いの基準をきめる。さようにしてあとはただいまのサンプルというようなことで、その通りいかぬといけませんから、その程度の監視、これが一番むしろ目的を達するのではないか、従って、製氷のもとの作り方まで最初から基準をきめたい、やり方につきまして……、こういう方をよけい締めていけばそれが万全を期するのじゃないか、かように考えます。
  63. 木下友敬

    ○木下友敬君 大体わかりました。ですけれども、再々申し上げましたように、今の保健所の人員は非常に手不足であり、しかも魚が揚ってくるという港はそうたくさんはございません。その港に関係のある保健所だけを充実していくということは、私はそう困難なことではない、全国の保健所全部をやれというのじゃないから……。そこで要望しておきますが、こういうような薬品の最後的な監督の考え方については必ずしも徹底した研究が完成されているとも思われない節もある、なるべく用心をしていくべきだと思います。ですから一つわかった範囲だけでも十分に監視をする意味において、その関係のある保健所だけでも一つ充実していくように要望しまして、質問を打ち切ります。
  64. 榊原亨

    ○榊原亨君 ただ一つ私お尋ねいたしたいのでありますが、その製氷の中に色紙を入れるということでありますが、私はむしろ氷の中に色素を入れるべきである。オーレオマイシンで着色しました氷を使えば魚に色がつくということであれば一番早いのじゃないか、食料に使います色素はたくさんありますから、そういう点もともとと御考慮願いたい。
  65. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 本問題に対する本日の調査はこの程度にいたしたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  66. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 御異議ないと認めます。   —————————————
  67. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 次に、原水爆実験に伴う放射能禍に関する件を問題に供します。  本件に対する研究の結果を厚生省当局から御説明願います。
  68. 尾村偉久

    説明員(尾村偉久君) 先般の当委員会におきまして、まず第一に、厚生省ないしは政府側としての放射能の、これは外からの問題でございますが、放射能に対する許容の問題に対する考え方がどうかということ、それからいろいろな調査についてどうかということの二点を研究するようにという御要請がございまして、その後検討いたしました結果を御報告申し上げます。  第一に、この外部から参りました放射能物質の国民側としての障害の限度の問題、すなわち許容量の問題でございますが、これは一昨年雨水、飲料水飲食物、空気等の汚染状態に対しまして、どの程度が許容度であるかという考え方を国としてまとめるために、これは原水爆の被害対策協議会でこれを検討いたしました結果、結論が出まして、一昨年——大体当時は国際的にきまっております許容量に対しまして、それからさらに十分の一の安全度をやる、すなわち十倍の安全を何した量が一般の国民に対する許容量である、こういうきめ方が一昨年されたのでございますが、この点をその後のいろいろな情勢の変化で変更する必要があるかどうかというので、この原爆被害対策協議会を六月十二日に開催いたしまして協議していただきました結果、現在のところも、この許容量の考え方は再確認をいたされました。それから同時に、これらのものが国民にいろいろ加わった場合の健康のからだからする許容量、すなわち健康診断の基準でございますけれども、これの方も、これはちょうど私が偶然幹事をいたしておりました今の協議会の医学部会で昨年の六月に決定しておりました、放射性物質障害の有無に対する健康診断基準という決定ができておりますが、これを再確認したらいいか、あるいは変更をしたらいいかというのを、やはりこの協議会でお諮りしたところが、現在のところ、これでよろしいと、もう当分の間はこれで間違いないという、この両者の確認を得ましたので、政府といたしましては、やはり今の両基準によって当分は物事を、測度をきめていくと、こういうつもりでおります。  以上がただいまの許容量に対する考え方でございます。  それから次に、その後集まりましたわれわれの方の調査のいろいろな成績でございますが、これは今、法によりまして必ず調査義務を付するというようなものがないのでございまして、結局今の対策委員会の中にはほとんど関係の各省が、代表委員が入っておりますが、それから在京の学者方がみんな入っておりますので、この委員会にやはり六月十二日に決議していただきまして、できるだけその方々ないしはその傘下にあるところでいろいろな研究を、あるいは調査した結果は、幹事役である当省の方にぜひ出していただきたいということで、これはお約束をいただきまして、これからは逐次こういうものが集まる予定でございます。ただいままでのところ、集まりました資料をわれわれの方で検討した結果は、今の許容量、先ほど申し上げました許容量を突破して、直ちに物事を禁止したり、あるいは水を先ほどの福岡のごとく飲ましちゃいかぬというようなデータは出て参りませんが、ただ概括して申せることは、その測定値がいずれにおきましても若干ずつふえつつある、若干ずつ上昇線をたどっておる。すなわち、許容度からははるかに下の方であるが、いずれにしても上昇線をたどっておるということが、これは若干総括的に申せることでございまして、これは好ましい成績ではないということを申し上げられるわけであります。  以上、御報告申し上げます。
  69. 榊原亨

    ○榊原亨君 ただいまのお話で大体よくわかるわけでありまするが、そういたしますると、その許容量——わが国の当局がお認めになりました許容量の範囲外におきましては、遺伝的素質についても障害がないというお認めでありますか。巷間伝えるところによりますと、たとえばストロンチウム90はいかに許容量から少くとも、いかに微量でありましても、直ちに染色体に影響を及ぼして、不具の者ができるというようなことを伝える人があるのでありますが、今のお話でございますと、その許容量の外でございますならば、国民に対しまして奇形その他の障害がないというお認めでありますか、その点を一つ。
  70. 尾村偉久

    説明員(尾村偉久君) これは六月十二日の委員会におきましても遺伝に関する問題は、全く今のところ学説も定説もないので、遺伝問題については全然はずした上での安全度でございます。これは従って、この量は遺伝には全く影響を及ぼさないという量でなくて、これは現に生きている人体に影響が及ぶかどうかの許容量であるということを確認されまして、従って、遺伝問題については結論を得ない。また従って、遺伝と結びついた許容度は結局できておらぬわけでございます。かように存じております。
  71. 榊原亨

    ○榊原亨君 遺伝に影響があるかないかわからぬが、生体には影響がないというのは、私は非常に不思議であります。御承知の通り、遺伝に影響があるということはすでに生体に影響があることでありまして、もう私が申し上げるまでもないと思うのであります。伴いまして、遺伝に影響がないということでなければ生体に影響がないとは誓われないのでありますが、その点についての厚生省の考え、学者の考えというものは少しおかしいと思うのですが、その点はいかがですか、今のお話
  72. 尾村偉久

    説明員(尾村偉久君) ただいまの御意見ごもっともでございまして、遺存に害があるということならば染色体の方にも何か影響がある。影響がないというなら遺伝もないのであります。全く人身に無影響ということでなくて、今度の許容量はさしあたり、これは委員会でもソマティックに影響はないということを言っておりましたが、私もよくその点どこまでさすのかわからぬのでございますが、要するに、さしあたりの、一般的に言った、健康に差しつかえないという意味の許容量のようでございまして、これは国際の基準の方も遺伝は全然入ってないようでございます。従いまして、遺伝にまで安全な許容量というものはこれから研究の結果、もしきまるものなら、遺伝にも影響がない、それからさしあたりの健康生活にも影響がない、両方合せました線はどこまで下りますか、現在ないので、もしこれから出て参りますればこれは許容量としてきめる、こういうふうに存じております。
  73. 榊原亨

    ○榊原亨君 私は議論をしたくないのでありまするが、厚生省が学者をお集めになりまして、その許容量というものが、かく国民の生体に影響を及ぼさぬ許容量はかくあるべきであるということを御決定になり、また、それを広くわが国の国民に知らさなければならぬわけでありますが、その場合に、ただいまお話になりましたように遺伝の話はわからない、また、遺伝の話をすると生体には少し影響があるかもしれませんが、その話はわからぬというお話では、これは国民に納得させることはできぬと私は思うのであります。従いまして、これらの研究は御承知の通り、この放射能だけではございません。超音波が染色体に及ぼす影響につきましても、もうすでにわが国の研究ができておる。従いまして、これらの十分なる学者を動員されまして、一応その染色体に影響を及ぼす範囲はどうかということをはっきりさせることが目下の急務ではないか。また、国民しそれだけの安心を与え、また、染色体に影響を及ぼすならば、そのデータをはっきりと世界にこれを公表されてやるべきではないかというふうし私は思うのでございまするが、特にこの際、厚生省におかれましては、これらの諸点を勘案されまして、すみやかにそれらの御研究を助長されまして、結論を出されて国民にお知らせになるようにお願いをいたしたいと思うのであります。  また、ストロンチウム90につきましても、御承知の通り、血液に流れておりますところのストロンチウム90と組織に沈着いたしますストロンチウム90とはおのずからカルシウムとは違うのであります。従いまして、尿に直ちに排泄されますものと、組織に残りますものにつきましては、いろいろとそういうところに問題がある。これらの点をただこの時代に迎合いたします学者のような、そういう曲学阿世の学者の話を聞いてそれはそうだということでなしに、根本的に研究をしている学者はたくさんあるわけでありますから、ことに東海村にもそういう医学研究所ができるわけでございますから、それらの点を十分勘案せられまして、すみやかに厚生省とされましても、環境衛生の立場から、これらの諸点を明らかにされるように要望する次第であります。
  74. 谷口弥三郎

    谷口弥三郎君 ただいま遺伝のお話がございましたが、ストロンチウム90はむろんですけれども、それよりかセシウム137が最も遺伝に関係がありますし、よそからの報告によりましても、セシウム137につきましてはだんだんとふえて参っておりますので、必ず遺伝に関係があるというようなことを言っておる学者もかなりおるようでございます。私どもも実はこの七月一日から日本全体の分娩の奇形児について遺伝の方面を研究し始めたのでありますが、とにかく厚生省もその方面も一つ大いに御指導と言いますか、御協力をいただいて、ぜひともこのセシウム137がどういうような状況にあるかをときどきあなたの方からこういう機会にでも御報告いただきますと、われわれも大いに安心できるのでございますから、何分よろしく御協力をお願い申し上げます。
  75. 片岡文重

    ○片岡文重君 さしあたり健康に影響がないということは、さしあたりと言っているのは、期限的にどの程度をさしておりますか。それがからだについてすぐにどうこうしないということなんですか、それともまあまあ大体五十年なら五十年生きられる者が五十年の生命を維持できるだろう、こういうことを言っているのですか、そのさしあたりという意味はどの程度のことを言うのですか。
  76. 尾村偉久

    説明員(尾村偉久君) 先ほど申し上げましたのは、今の許容量は日本の研究と知識の程度では普通の肉体的、健康的にこれ以下ならば差しつかえない、こういう意味で申し上げましたので、今さしあたりというのをちょっと私の方の使い方が悪かったのでございまして、さしあたりというのは、そういう意味でなくて、現在の知識でこの許容量、こういうことでございます。
  77. 片岡文重

    ○片岡文重君 現在の知識でこの程度の許容量ということだというと、現在の知識では健康に影響を及ぼさないという、その及ぼさないという程度は、現に直ちに健康に及ぼさないという意味なのか、将来それが原因となって健康をそこねるようなことはないというところまで含んでおるのか、その許容量というのは一体現在一時的なことを言っているものか、将来も保証される許容量なのか、その点はっきりしておきたいのです。
  78. 尾村偉久

    説明員(尾村偉久君) その点は今の後者の方でございまして、将来の点も遺伝のみは全然別といたしまして、将来も含んで影響がない、この程度のものならば影響がない、こういう意味でございます。
  79. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 本問題に対する本日の調査はこの程度にいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  80. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 御異議ないと認めます。  速記をとめて。    〔速記中止〕
  81. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 速記を起して。  休憩いたします。    午後零時四十五分休憩    —————・—————    午後二時十二分開会
  82. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) それでは休憩前に引き続き委員会を再開いたします。  労働情勢に関する調査を議題といたします。赤平建設工業株式会社堤炭鉱作業所におけるガス爆発に関する件を問題に供します。本件について、通商産業省並びに労働省当局から御説明を願います。
  83. 小岩井康朔

    説明員小岩井康朔君) それでは堤炭鉱ガス爆発の災害につきまして、ただいままで入っております分をまとめて御説明申し上げます。堤炭鉱は、北海道炭鉱汽船株式会社の鉱区を租鉱しております租鉱炭鉱でありまして、租鉱権者は赤平建設工業株式会社になっております。それで爆発の事故は先月の六月二十一日午後の九時過ぎごろでございまして、災害の場所は冠坑道引立附近、これはちょっと図面がないとおわかりにくいと思いますが、比較的坑内は簡単でございまして、坑口から約八十メーターばかりが斜坑で入りまして、それからずっと水平坑道で払が一つついております。風ももちろん斜坑を通りまして、約千メートルに近い水平坑道を通りまして、長壁の払を通って上の坑道に抜けておる対隅式の通気法をとっております。この租鉱権は二十九年の五月に設定されたものでありまして、大体在籍の労務者は百名あまり、出炭は月に四千トン前後、このくらいの出炭の規模の炭鉱でございます。  災害の状況につきましては、六月二十一日の災害の起ります前十七日に払が一部割れまして、それからなお引き続いて前日早朝、払の下部の方が再び崩落をいたしまして、風は崩落した岩石と天井との間のすき間を通してかなり通風上制約を受けておったようでございます。しかし、風は多少回っておりまして、作業は平常のようにそれぞれの部署で行われたようであります。大体の配番の状態は二番方でございまして、冠坑道の間枠入れでありますけれども、これに四名、それから冠坑道の引立の掘進に四名、それから同じく冠の坑道の拡大作業に三名、計十一名、これらの方々が、一名重傷で、他は全部死亡いたしております。当事の係員は山田という係員でございまして、これが災害前の——災害の起りましたのが午後の九時ごろでございますが、災害前の五時ごろに一度坑内各所を回りまして、ガスの点検をしております。当日五時ごろ爆発の現場に近いところで働いておりました作業箇所のガス測定をいたしましたところ、ガス量はメタンガス一・四%を計っております。かなりガスがあったようであります。それから一旦係員は坑外に出まして、それから九時ごろ再び入坑して現場に参ります途中、爆音を聞いているのでございます。それで直ちにその辺に来ておりました仕繰夫をして、さらに上席の山崎という係員に連絡いたさせまして、本人もおそらく——詳細の動静はわかりませんが、かなりあわてて右往左往しておったようであります。そのうちに上席の山崎係員に連絡がつきまして、直ちに二人で相談の結果、至急罹災者を収容した。罹災者は大体翌日の五時ごろまでには全員収容されまして、結局重傷一名、死亡十名という罹災者を出したわけであります。  原因につきましては目下調査中でありますけれども、現場にはもちろん火源となりますような電気器機は一切ございません。ハッパもかけた形跡はございませんので、しょせん火源といたしましては、たばこによるものかあるいは安全灯によるものか、この二つに制約されるものと考えております。しかしながら、安全灯は、罹災者の持っておりましたものを全部収容いたしましてそれぞれ検査をいたしましたが、ただ一個、リードロからケーブルが切れておりまして、その切れたところにスパークを出したとおぼしいような点がただ一カ所ございまして、これは肉眼では判然といたしませんので、目下学校に送りまして顕微鏡の検査を一応いたしてもらっております。が、当局の私どもの考え方といたしましては、これによる原因と考えることはかなりむずかしいような状態でございます。もう一つのたばこにつきましては、監督官が参りまして直ちに収容中の状況にぶつかりまして、坑内でぶつかりました最初の罹災者につきましては、監督官自身が検査をいたしましたけれども、その他の罹災者につきましては監督官が直接検査できませんで、一切警察の方におまかせいたしまして、警察の方で調べてもらいました結果では、たばこその他の発火具は持参いたしていないという報告を受けております。従いまして、現在のところ、原因としてはまだはっきり確証を得たものはございませんけれども、その安全灯の検査を待ちまして大体の推定をいたしたいと、かように考えております。  監督官は連絡を受けまして直ちに参りまして、二十一日の二十三時には現地から連絡を受け、もう翌日の零時三十分ですから、ほとんど二十二日にすぐ現地に到着いたしまして、直ちに入坑いたしております。監督官は小野監督官、西島監督官、それから森竹監督官、それに塩月という石炭課長、この四名の監督官が現地調査をいたしたのであります。大体ごく概略に申し上げまして以上のような次第になっております。
  84. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) それでは御質疑を願います。なお、労働省関係からは伊能政務次官、百田労働基準局長、鈴木監督課長がみえておりますので、お願いいたします。
  85. 大矢正

    大矢正君 ただいまの局長の説明に対して私は五、六点質問をいたしたいと思うのでありますが、これは一年間に約七百人くらいの人間が現実には炭鉱において事故のために死亡していくのでありますからして、かりにこの堤炭鉱において十人の人間が爆発事故において死んだからといって、さほどこの問題は国会が取り上げて騒ぐ必要もないのではないかという、こういう常識的な意見と言いますか、考え方もあろうかと思うのでありますが、この最近の、特に炭鉱における災害事情を検討してみますというと、とかく事故が起り得べくして起ったと言いますか、不可抗力ではないという状況の中で事故が起っているのじゃないか、何かしら非常にその中にはわかりずらい要素を含んで事故が勃発しているということを指摘しなければならないと思うのであります。そういう意味から、やはりこの際とり上げて通産局の保安局長として今後炭鉱に対しての保安問題をどう扱っていくかという点においては、従来の経験やそれから事故の経過等のみを勘案して、この災害の防止対策を立てるというときにはすでにおそい時期にきておるのではないか、このように私は考えて、特異のケースではないかというふうに感じられ、堤炭鉱の問題についての質問をするわけですが、ただいま局長報告にもありましたように、果して何によって爆発が起きたかというその原因というものが非常にわかりずらい、一般的にはもう普通の場合、爆発というものは大体原因というものはわかるものですが、今度の場合は比較的原因というものが一体どこにあるか、火を発したその内容というのは一体どこなんだという点についても非常に不明瞭なものがある。あなたは今たばこを持って入って、たばこを持って入ったばかりではなくて、それを吸ったんだという予想も成り立つという説明もございましたけれども、私どもはそういうことはまずよもやないだろう、自分の命をみずから縮めるようなばかなことをするはずがないし、実際問題として、この引立は相当ガスがある程度停滞する場所でもあるので、その中でたばこを吸うなどということは、これはとうてい考えられない。そうなって参りますと、あなたが今言われたように、安全灯しか火を発するものがない、全然あとは火の気というものがこの中にないのでありますからして、安全灯しか火を発するものがない、そういう想定も成り立ってくるというお話でありますが、私はそのことから考えて、今ここで事故の原因は絶対的に何なのだということは私自身もわかりませんし、保安局長もそれはこうなんだと言えないだろうと思いますけれども、何かしら最近の炭鉱の事情というものは漸次変りつつあって、古い時代や、古い何と言いますか保安技術と申しますか、そういう問題においてはもうはかり知れないものがあるのじゃないかというような気がするのですが、それはもっと具体的に言えば、今までの炭鉱の数多くの災害や事故の経験、それから割り出したところの論理的な保安に対する考え方というものではすでに限界にきておる、もっともっと新しい角度から坑内保安については検討し直さなければ、災害を防ぐことができないような事故だけが最近起るように私はどうも感じてならないのでありますが、そういう点について、保安局長としてはどういうようにお考えになっておられるか、お聞かせいただきたいと思います。
  86. 小岩井康朔

    説明員小岩井康朔君) ただいまの御質問は私ども全く同じように感じておるものでありまして、大体きょうも課長会議をやっておりますが、私けさほど注意を申したばかりなんでありますが、従来の考え方というものはあまり極端すぎて、炭鉱の災害を絶滅するとか絶無にするとかいう表現を今まで私どももとって参りました。もちろん理想としては、全部なくすことが理想であるには間違いございませんけれども、あまり急激に段階を飛びこえて目標に追い込むということは、保安政策としてはあまりよくない。それでまず世界的な水準に日本の鉱山の保安を持っていきたいという表現に変えておりまして、なかなか私ども努力はいたしておりますけれども、これを急激に減らすことは非常に困難でありまして、特に最近のように、先ほども数字が出ましたのですが、災害の死亡者が六百十名になっておるのであります。この六百十名は三十年来の好記録と私がときどき委員会で申し上げましておしかりを受けるわけでありますが、従来、非常に多いときには千七、八百名も年に死亡者を出しておったのであります。どうやら六百十名に昨年押えられた、こういう点でまあ六百十名の犠牲者を出したことは非常に残念でありますけれども、従来の実績から見れば、ここまで持ってきたことはまあ一つの喜びじゃないか。こういうことで考えておりますが、もうことしに入りまして、昨年の成績を維持しようとするのに非常に困難を感じております。で、まあ先月、先々月くらいまでは、何とか石炭の関係では昨年の成績を下回って落ちついて参りましたが、もう六月ではちょっとこえまして、現在のところ、死亡者では、昨年同期と比べまして二十七名死亡が増員しておるわけであります。まあ出炭もふえておりますから、私どもも災害のふえることは一応常識的に予想いたしておりまして、そういう環境の中でふえないような施策をそれぞれ現地に命じておりまして、ようやく先々月ごろまでは下回って進んでおりましたが、先月に入りまして、六月までの成績はただいま申し上げましたように、昨年の六月までの実績をもうすでに死亡数でも二十七名もこしてしまっております。何とかこれを昨年の好水準のまま持続したいということに非常に大きい努力をいたしておるような次第で、なかなかこれを急激に減らすということは急には困難だと思います。災害の内容につきましても、ただいまお話のように、かなりむずかしいようなケースがだんだんふえてきております。原因その他につきましても十分に究明のでき得ない——表現いたしますと、災害の原因がつかみ得なかったというようなケースがだんだんふえて参っております。仰せの通りでございます。それらにつきましては、今後ぜひ一つ、徹底的な保安教育、それから非常に有効な保安の技術改善、これらに力を集中いたしまして、もう大体底をついてきておるこのカーブをさらに一そうそれらの施策によって下げたい。かように考えておる次第でございます。
  87. 大矢正

    大矢正君 まあ最近の新しいケースからいうと、先日も国会で問題になりました清水鉱の坑内火災の問題、あれも何も実際問題としては事故原因というものがわかりずらい。一見すると、不可抗力のように見えるような事故にも見受けられるわけでありますが、今度の場合も、これは私は労働組合その他の関係の人にも多少聞いてみたのでありますが、坑内の何と申しますか、保安ということについては、相当積極的に経営者自身もやっておられるということを労働組合自身が認めておるのでありますからして、まあ決してその保安をおろそかにしたためにこういう事故ができたというふうには今度の場合には言えないのじゃないかと思います。それほど実際的には事故がむずかしくなってきて、今までの何と言いますか、保安規則やそれから過去の事例をもとにした、単なる技術の転換では、もうすでに坑内保安を守って事故を起さないようにするための限界がきている感じがするので、これはやはりこの際、積極的に取り上げて、政府としても特に人命尊重はもとよりのこと、資源の滅却をこの際防止するという意味合いにおいて、新たな観点から、もっと高度な坑内保安技術を研究するとか、ないしはまた、そういう施設に対する検討をするというようなお考えはないのでしょうか、その点を承わってみたいと思うのでありますが、もしかりに、このようにして非常に事故の内容というものがむずかしくなって参りますと、一つの企業の中において、かりに坑内保安を守っておる、そういう技術的な面から研究をするとすると相当高額なやはり金もかかりますし、経費の問題になって参りますからして、なかなかそれはやりづらい。ましてやこのたびのように、租鉱して石炭を掘っているというような、言うならば中小炭鉱以下のような、こういう所においてはなおさらこういうことができない。これはやはり政府がもっと積極的にこのようにむずかしくなってきた坑内保安の実態を研究して、もっと総体的な日本の炭鉱保安に対する技術の向上をはかるような、政府としての施策を必要とする時期に私は到達したのじゃないかというふうに考えるのでありますが、この点に対する局長の御見解を承わっておきたいと思います。
  88. 小岩井康朔

    説明員小岩井康朔君) ただいまの御意見私も全く同感でございます。私も常々——租鉱炭鉱は御承知のように、鉱業権者の一部の鉱区を借りまして、一定の年限、権者にかわりまして稼行いたすものでありまして、大体現在租鉱されておりますのは、一年、二年あるいは三年ぐらいのものが非常に多いのであります。二、三年の借り上げによりまして、十分の保安の設備をやっていくということはかなり困難な状態でございます。もちろん規則では五カ年間経過しましてもさらに延長することはできるようになっておりますけれども、建前といたしましては大体二、三年で掘り尽せるような状態のところを租鉱しておるのが非常に多いのであります。そうすると、二年か三年で掘ってしまうのに、一応石炭鉱業と名のつく仕事をやるためには、もう二年あるいは三年で必ずやめてしまうということのわかっておるときに、それに対して十分な施設をやっていく、あるいはそれを要求するということもかなり困難な実情にあるわけでありまして、私どもはなるべくこういう小さな租鉱炭鉱はない方がいいんじゃないかということを考えております。しかし、これは保安法だけで解決のできる問題でございません。鉱業法の根本問題にもなりまして、私どもだけの所管ではございませんので、問題が非常に大きくなりますが、別途に考慮してもらうことが必要ではないか、かように私自身としては考えております。今日の新聞にも出ておりますように、フランスから今ソフレミの調査団が来ておりますが、日本はやはり小さい炭鉱が多くて能率が悪いことを指摘しておるようでございます。私どももかねがねあまりに小炭鉱が多くて、それらが非常に無理な仕事をしておる。また、その改善を十分に要求することも困難な実情にあるという点は事実でございまして、これらは何らかの方法で改善の方途が講ぜられれば非常にけっこうではないかというふうに考えております。
  89. 大矢正

    大矢正君 参考のために局長にお伺いしておきたいのでありますけれども、それは今の、当面ですがね、当面、炭鉱の、特に坑内保安の確保に関する技術的な研究をするような、そういう、何と申しますか、機関と申しましょうか、そういうようなものをお持ちになっておられるかどうか、その点ちょっと伺っておきたい。参考のために。私知らぬものですから、お尋ねしておきたい。
  90. 小岩井康朔

    説明員小岩井康朔君) 保安のことに関する、まあ政府の研究機関のことをおっしゃっておるのだろうと思いますが、資源技術試験所の中には第六部までございまして、特に五部でしたか、鉱山関係の、もちろん保安も入っておりますが、そういった関係の研究をやっております。それから特に九州におきましては試験炭鉱というものがございまして、これももちろん資源技術試験所の所管に入っておりまするが、試験炭鉱がございまして、各炭鉱の要望する研究の事項につきましてはこの試験炭鉱を使いまして、それぞれ実験なり試験なりができるようになっておりますが、まあ、現在それらが必ずしも十分に動いておるというふうには考えておりませんけれども、それらの機関がございまして、希望の試験なり、実験なりができるようになっておるのであります。
  91. 大矢正

    大矢正君 これは、まあ要望ということにもなるかもわかりませんけれども、最近、炭鉱では、特に大きな炭鉱では、御存じのように、鉄柱を使う、そうしてカッペを使っておるわけですが、そういうカッペなんかを使っていても、今まで気がつかなかったことなんだが、ごく最近に至ってカッペが往々にして火を発することがある。そこで、まあしょうがないから、これはまあ初めてそういう現象に気がついたので、銅板を張って火を出さないようにするというようなことを考えつかれてやっておる。ところが、実際それはまあ火が出てみないとわからないわけなんですね。往々にしてこういう場合が多いように見受けるわけです。ある炭鉱でもカッペから火が出たということがそれまではわからなくて、火が出てみて初めてこれはカッペというものはなかなか危ないものだ、使うと火が出るのだと、こういう幼稚なという言葉は、私のようなしろうとだからそういうことが言えるのかどうかわかりませんが、研究不十分でいろいろ使われている面がありますね。こういう点については、もっともっと積極的にやはり政府みずからが研究をするなり、何なりして、そういう事故が起きないようなふうにこれからし向けていかなければならないのじゃないか、そうしていかなければ、もう坑内の保安もこれからますますむずかしくなっていく、技術的にむずかしくなっていく坑内保安を守っていくということは、実際問題としてできないと私は思うのでありますが、そこで、これはまあ労働省にも私はお願いとして申し上げたいのでありますが、そのようにして炭鉱技術というものは、昔のように非常にカンテラ下げて坑内に働きにいけばいいというような、どかんときたときには三百人、五百人まとまって死ぬのだという常識をやはりこの際改めて、坑内に入って働いたからといって、これは死ぬものではないのだという、国民にはっきりした印象を持ってもらう必要性があるのじゃないか。まあ、つい二、三日前にも、この堤炭鉱の災害のニュースが出ています。小岩井さんも見ていらっしゃるかどうかわかりませんが、実に悲惨なものです。私も見ておりましたが、東京で見たのでありますが、そばにいる人がやっぱり炭鉱というものはしょっ中人が死ぬのですね、こういう話を近所でやっているわけです。こういう国民感情というものはぬぐい切れない面が私はまだ残っている面があると思います。そこでこれは、私は特段炭鉱の擁護をする意味で申し上げるわけではないが、労働者の生命を保護するという建前から見ても、やはり労働省自身がこの際取り上げてもらわなければならぬ。私は最近言っておるような、常識的な保安教育とか何とかいうものでは、すでに解決できないところまで来ているのじゃないかと思うのです。事故の原因がむずかしくなってきて、従って、新しい角度から徹底的労働者に対しては保安教育をさせ、また、坑内保安係にしても教育のし直しとか、あるいはまた、ある面では鉱山保安法の研究のし直しとか、さらにはまた、技術の点においてはやはり政府が中心になって、各界の代表や、それから現実にやはり現場で働いているような坑内職員というようなものも入れて研究をするような、技術者を入れて研究するような、そういう機関を設けたりして未然にやはり事故を防止するということに対して私は全面的な労働省としての働きかけと申しますか、活動をぜひやってもらいたいという気持をもっておるのでありますが、いかがでしょうか、労働省の考え方として……。
  92. 伊能芳雄

    説明員(伊能芳雄君) まことにごもっともな御意見だと思いますけれども、鉱山の問題は直接には通産省の管轄でございますが、労働省といたしましても、こうした災害については、決して今まで関心を持たないのではないのでありまして、いつもこうした大きな災害があるごとに災害のあと、共同で研究検討いたしまして、少くとも同じような事故は再び繰り返さないようにというような共同研究の結果を事後において実施するというような方法でやってきておるのであります。ただいまのような御意見もございますので、さらに一そう、鉱山関係だからというので私の方が無関心だということはなく、一そう新工夫をこらし、新機軸を出して、さらに災害の防止に一段の努力をいたしたいと存ずる次第であります。
  93. 大矢正

    大矢正君 それから小岩井さん、もう一つこれは問題点があろうかと思うのでありますが、事故をなくするということは、単に経営者の目的じゃなくて、国としてもそれからまた、働いている本人としても常に考えていることなんで、その点に手抜かりは私はないと思うのでありますが、最近昨年あたりから通産局その他が何と申しますか、保安週間というようなものを設けて盛んに保安の確保をやりなさいという運動を行われておるのでありますが、これに対して労働組合は、非常に批判的な点があるのですね、なぜ批判的なのかということをいろいろ聞いてみますと、保安週間になると、かえって事故が起きるということなんですね、これは決して何と申しますか、観念的にそういうのじゃなくて、事実災害の件数がふえていく、どういうわけかわからぬけれども、労働組合はこの災害がふえるということについて、これはむしろ保安週間なんというものを作ってやればかえって悪い、あるいはまた、それが終ってしまうと、がっくり、まあもう終ったというような安心感とか安堵感があってまただめだというようにして、官製保安週間というのか、政府が積極的にやっておるとは思いますけれども、これに対して労働組合が非常に批判的である。労働組合が批判的であればなかなかこれは思うようにいかないのじゃないかと思いますが、局長はこういう空気をお聞きになったことがありますか。
  94. 小岩井康朔

    説明員小岩井康朔君) 私どもも何々週間、何々月間という運動を絶えずやっておりますけれども、必ずしもこれが完全な対策であるとは考えておりません。考え方といたしましては、恒久の対策と応急の対策と二つ大きく考えられると思いますが、私どもはできることならば保安教育、技術改善のように、年数は長くかかりましても、恒久的な対策をとっていきたいのであります。しかし、これらはとても一年や二年で成果ましては、五年、十年と、しっかりした方針に基きまして施策をとっていかなければ完全な効果が期待できないものでありまして、この恒久対策だけを絶えずとるということもかなり困難でございますので、それに応急対策といたしまして、何々週間、何々月間といったような保安運動を絶えずタイムリーにその間にはさんでおる、この応急対策は私も必ずしもいい方法とは考えておりませんけれども、やはりこれは保安の一つの刺激になるのでありまして、やはりこの期間は平常のときよりも成績がいいのであります。しかし、今お話のように、週間あるいは月間が過ぎますと成績がまた悪くなるというような状態もございますし、そしてまた、組合も必ずしもこういう応急的ないろいろな運動につきまして全面的な賛意を表していないということもよく聞いております。私どもも完全な方法ではないと考えておりますけれども、やはり刺激剤としては、適時にこれらの施策をはさんでいくことが、やはり方法としては必ずしも悪い方法ではないというふうに考えておるものでございます。
  95. 大矢正

    大矢正君 もう一点だけ、ほかにも質問があるようですから、私もう一点だけ質問しておきたいのですが、五千三百万トンの出炭目標達成ということが非常に事故に結びついているというような危惧が最近北海道で起りつつあります。その一例としては、北海道のあなたの方の、何と申しますか、下部の監督部長なんかも、大きな炭鉱ではあまりそういうことは見受けられないけれども、何となしにやはり中小炭坑とかあるいは先ほども問題になったのですが、租鉱権を設定している炭鉱は比較的増産計画と結びついてやはり事故というものが比例して大きくなっているということはやはり認めておられるのですね。私どももやはりずっと長年見ていると、石炭を積極的に出そうとする場合には、どうしても事故が多くなりますね。その事故の多い現象がどこに現われるかというと、大きな炭鉱より比較的中小炭鉱ないしはそれ以下というところに多いわけですが、これは明らかに出炭を強行するために、通産局の方もこれは直さなければいかぬということも暗のうちに黙認をするというような、あるいはまた、規模のあまりにも小さい炭鉱であるために、そこまでやかましく言うことも何だということで見のがしをするという傾向が非常に強く出るような気がしてなりませんが、そんなことはないだろうと思うのですが、どうも過去の実例からいくと、私はそういうふうに感じてしょうがないのでありますが、この点は局長いかがでしょう。
  96. 小岩井康朔

    説明員小岩井康朔君) 私どもは増産をいたしますときには、やはりその増産に対する人員とか、切羽の状態なりを十分に考えまして増産の計画ができなければ、ほんとうの増産ということはできないのじゃないかというふうに考えております。しかしながら、中小の炭鉱におきましては、従来五千トンなら五千トン出しておりました炭鉱にすぐさま六千トン出せというような権者からの命令がありまして、内容を調べますと、あまり人数もふえていないで、ただ出炭だけが増しておるというケースもままございます。これらはほんとうに保安を考えた生産ではないというふうに考えておりますけれども、私どもの方の目から見ますと、やはり増産のしわよせが保安に回ってきているというような面も見ることができるような気がいたしております。最近特に、私の方で調べまして非常にはっきり出ているように感じますのは落盤の問題でありますが、落盤は従来払と掘進でもう八割を占めておったのであります。大半の落盤災害は切羽と掘進先と、この二カ所だけで起っておったのでありますから、私どももこの落盤を何とか一割くらい減らしたいということで、切羽の規格の必要を完全にやってもらう。それから掘進先には掘進先の落盤抑えを必らず実施してもらうというふうに、厳重にこれを監督のときに、先行き実施の方法を監督官に見てもらうというふうにいたしておりましたところ、この払と掘進の災害はずっと減っているのであります。非常に厳重にやっておりますので、漸次減少しておりますけれども、今度は従来少かった坑道の落盤がその減っただけを食ってしまいまして、さらにそれを上回っている。それはどういうわけでそういうことになっているかと申しますと、やはり今申し上げましたように、ただ出炭の数量だけがふえてしまって人間がふえていない。従って、従来の仕繰夫あたりがどんどん採炭の方に回されて坑道の仕繰りが十分にいっていない。従って、従来あまり出ておりませんでした坑道の落盤災害がせっかく減らした切羽と掘進先の災害を食ってしまって、さらにオーバーしているというような状態があるのであります。これらは今お話のありましたような、生産の強行がやはり保安に一部はね返ってきているのじゃないかというふうに考えられる実例の一つでございます。
  97. 山本經勝

    山本經勝君 今の局長の御答弁、きわめてこれは重大だと思うのです。先ほどの局長の言葉じりをとらえるようですけれども、昨年の同期に比して、今年は二十七名の死亡者の増大をみているというようなこと、この際に出炭の増大をしているのであるからというお話があったのですが、今のお話のように、たとえば掘進あるいは払いにおける落盤等の重大な事故の原因が、すでに局長にしてお認めになっている。たとえば坑道の維持等に必要な措置をとる要因を出炭第一主義でいくものだから、払いに、掘進にというふうに振り向けられて、人員が減少した関係が、そこにしわ寄せがきて、災害が増大しているということ、これはきわめて重大なので、少くとも今の五千三百万トン出炭計画の増大に対する保安の裏づけというものは、御承知のように、十分に監督、指導される必要があると私は思う。その点では私は、ごもっともな御質問、ごもっともな御質問ではなくて、実際に、直ちにこれは具体的な措置を講じて、しかもその保安、監督の行政面における指導を厳重にしてもらわなければならぬと思うのですが、そういうところで一応私は次の質問に入りたいと思うのですが、先ほどお話の、つまり堤炭鉱では一・四%のガスがあったということが確認されていると承わったのですが、それは間違いないですね。
  98. 小岩井康朔

    説明員小岩井康朔君) 間違いございません。
  99. 山本經勝

    山本經勝君 そうすると、これをお調べになったのは何日ですか、その御報告にあるのは。
  100. 小岩井康朔

    説明員小岩井康朔君) 山田係員がはかりましたのが当日の午後五時です。
  101. 山本經勝

    山本經勝君 それは六月の十七日ですか。
  102. 小岩井康朔

    説明員小岩井康朔君) 二十一日です。二十一日の午後五時でございます。
  103. 山本經勝

    山本經勝君 そこでこのガスのある状態は、これはやはりいい方ではないと思うのですが、ここは無論甲種炭鉱だったと思うのですが、どうですか。
  104. 小岩井康朔

    説明員小岩井康朔君) 乙種炭鉱でございます。
  105. 山本經勝

    山本經勝君 平生のいわゆる保安監督、指導等に関し、そこではどういうふうにやられておりましたか。
  106. 小岩井康朔

    説明員小岩井康朔君) この堤炭鉱に対します従来の札幌監督部の監督状況につきましては、これは最近の監督を申し上げますと、ごく最近のは三十二年の六月十七日に小野監督官が行っております。それからその前、三十二年の四月十九日に菊池監督官が行っております。三十一年の八月二十九日に小野監督官が行ったわけでございます。大体最近の監省はこの三回でございます。
  107. 山本經勝

    山本經勝君 そこで、先ほど局長から御報告があったのですが、現場には発火の原因となるようなものが見られなかった。安全灯のせんが故障があったので、そこは顕微鏡で検討しておると言われたのですが、坑道にはそういう何らの形跡もない、そうすると、おのずからひとりで火は燃えぬわけです。そうすると、発火の原因となるのは、第一に、ガスが爆発したのですから、ガスがあったということ、それからガスに火がついたということ、この二つの要素がなければガス爆発は起らぬから、そこで問題の原因となるのは、やはりガスがあったということだと思う。だから平生の保安監督、指導の面でどのように監督部がやっておられたかということは、非常に貴重な問題になると思うのですが、今のお話のように、三十二年六月十七日、それから同じく四月十九日、それから昨年の八月二十九日、こうときどき行っておられる、そのときどきの保安監督あるいは行政的な指導面でどういうことがなされておったか、御報告が参っておりますか、あるいはそれが全然ないのか。
  108. 小岩井康朔

    説明員小岩井康朔君) 三十二年の六月十七日に小野監督官が参りましたときの注意事項を申し上げますと、一つといたしまして、坑道の上添上部を四、五メートル全面的に採掘し、しかも該個所への通気不良のため多量のメタン・ガス——これはカッコしまして四から五%と書いてございます——のガスが低滞している、かかることは採掘上からもまことに危険であり、しかも係員が何らの対策も講じていないことはまことに遺憾である。各目貫の漏風防止とともし該個所へ通風し、ガスの低減をはかる、これが注意事項の一つであったわけでございます。  それから二番目といたしまして、一片坑道引立用風管の目塗りを行うこと。  三番目といたしまして、現在の冠坑道を下層に切りかえるようにすること、以上の注意をいたしておる次第でございます。
  109. 山本經勝

    山本經勝君 今のお話ですと、これはあの災害はおのずから招いたに等しいと思うのですよ。しかも何日ですか、払いに二回にわたって崩落が起っておる、通気はますますこれは悪くなっているにきまっている。それだからそこに対する保安監督部のいわゆる行政指導なり監督というものは、これはきわめて怠慢であったと私は判断せざるを得ぬ、原因が何かかんか考える前に、その保安の維持状態が、施設としての改善等が、いわゆる勧告に基く実施が行われたかどうかということが、その先に私は問題だと思うのですが、そういう点は局長はどうお考えになるのですか。
  110. 小岩井康朔

    説明員小岩井康朔君) 実はこの六月十七日に参りましたのは、ただいまも申し上げました三項目について注意をいたしておるのでありますが、その前の四月十九日に参りましたときに、やはりかなりいろいろの面で注意をいたしております。これは通達書といたしまして六月五日に現地に着いておるのであります。従いまして、堤炭鉱では、前の監督官の通達事項に従ってこの冠坑道のいろいろの坑道の修理をやっておる。従いまして、平生なら冠坑道は三名くらいの掘進夫で済むのでありますが、たまたまこの通達に基く坑道の改修をやっておりましたので、災害の罹災者が平生よりもかえって多く出てしまったような皮肉な状態になっておるのでありまして、山の方でもわれわれの通達の事項に従って改善の方途を講じておったということは、私どもも認めていいのじゃないかとかように考えております。
  111. 山本經勝

    山本經勝君 そこら辺が局長全くおかしいのですよ、いわゆる勧告をしばしばしておられる、勧告まではいいが、勧告したあとがいかに改善されたかということは、再度やはり厳重な現地調査をされて、その勧告に対する実施状況を確かめておかなければならぬ、そういうことがなされておらなければ、この災害の一般的な原因はともあれ、その責任は通産省なりあるいは鉱山保安監督局自身も負わなければならぬ。しかもその経営者にしては怠慢至極であると私は断ぜざるを得ぬと思うのです。  そこでこういうことをちょっとお伺いしてみたい。昨年であったと私は記憶しておりますが、小岩井さんがまだ局長としておいでになる前であったでしょう。倉石労働大臣の当時、炭鉱で最近起る頻発災害の中でやはり死亡者が六百名から七百名を上下しておるのが実態なんだ、その中でガス爆発によるのが約三割、二百数十名に上っておるのが実態なのである、そこで、ガスの爆発を防止するということになれば、まず、炭鉱の坑内からガスを排除することである、そこで倉石労働大臣に、いわゆる労働大臣の監督権に基く通産大臣への勧告を要請した。しかもこの委員会で議決をした。そして要請をしたと思うのです。その際にこういうことだと思うのです。内容から言いますと、いろいろ前文がありましたが、炭鉱の坑内からガスを排除することが、ガス災害を防止する唯一の基本的な方法ですから、それに必要な適切な措置を講ぜよという要請がされた。それで、通産大臣からこの点に対する答えがされたのでありますが、それは当時の記録をめくってみればわかるのですが、ガス爆発を防止するためには、あるいはガス燃焼、あるいは窒息等の事故をなくするためには、どうしてもガスを排除することが先決問題だ。それで、ガスを排除するためにガス抜きという方法が最近非常に研究されて行われておる。ところが、悲しいかな、この中小炭鉱ではそれに必要な資金がない。であるから、ガス抜きの施設をするために補助金を出しなさいということを私は主張したのです。個々の企業に対する補助金といっては出しがたいが、貸金はいたしましょう、こういうことであった。しかもこのことはやられておるはずなんです。そこで、こういうガスが相当量あって非常に危険な状態の坑内条件にあるなれば、これはやはり特殊な施設をしてでもそこに必要なガス抜きの基本的な対策を講ずることなしには、この災害はおよそ絶滅はできないと私は思う。そういう点ではこれはきわめて石炭局は私はふまじめであり、しかもただ単にわれわれが質問すればごもっともである、御無理もないというようなことばかりおっしゃっておってもこれは何にもならぬ。災害は不可避である。それでガス抜きを推進するような勧告をしてこれが実施になっておるはずだ。これは記録を見ればはっきりしている。そういう措置を講ぜられ、しかも危険であるならば、現場の監督、指導がきわめて不徹底である。こういうことだと思うのです。特に梅雨期の災害の多い季節なんです。ですから最近でも頻繁に災害が起っておる。単に個々の赤平の問題だけではありません。清水沢とかあるいは九州の明治佐賀のガス爆発が起って三名の犠牲者が出ている。こういうふうに見て参りますと、非常にこれは重大だと思うのですが、この点に対する監督行政の責任者である局長はどういうふうにお考えになっておられるのか。これは笑いごとではないのだ。責任のある、しかも真剣な御答弁を願っておかなければ、炭坑労働者は安心して働らけないですよ。
  112. 小岩井康朔

    説明員小岩井康朔君) ただいま巡回のあと、注意をいたしましたあとの実施の状況をすぐに調べないかという御質問でありますが、私どもも監督官を山にやりましていろいろ注意なり通達なり出しましたあと措置をぜひ見たいのでありますが、現在のところ、なかなか予算が十分でございませんので、目下これを重点的に使いますためにブラック・リストを作っております。ブラック・リストのうちで、監督部長が見まして最もこれは危ない山である、注意を要する山であるというふうに考えました山を第一種といたしまして、これは毎月山に監督官を出しております。従いまして、通達なり、注意なりいたしたものは一カ月前後で、そのあとの実施状況は見られるわけであります。そのほかの炭鉱につきましては、年に一回とかあるいは年に二回というふうな状況でありまして、この堤炭鉱はまあ年に二回のクラスに入っておるのであります。従いまして、一回監督官が参りまして、注意なり、通達なりをいたしましても、半年たちませんと、そのあとが見られないわけであります。従って、これは行かれませんから、文書でもっていただく場合もございます。しかし、なかなか文書でいただきますと、もう実施しておるというような回答が参りまして安心しておりますと、実施していなかったりいたしまして、やはり結局はその実施状況あとを見たいのでありますけれども、いかんせん、予算の関係で年に二回のような所は半年ぐらいたちませんと、その実施状況を見ることができないような状態でございます。この炭鉱は年に二回でありますけれども、先ほど申し上げましたように、最近は四月に参りまして、また六月に行っております。これは四月の通達の状況もかなり根本的な大切な問題を通達いたしておりますので、従って、年に二回の予定にはいたしておりますけれども、四月に参りました通達で、六月にまた再び監督を出しておる、かような状態でございます。  それからガス抜きの問題につきましては、労働省からこの前ガス抜きを積極的にやるようにという勧告をいただいております。私どももガス抜きは非常にいい方法でありまして、でき得ることならなるべくガスを抜いて利用をしないまでも、一定の排気に固めて、濃厚なガスを排気するということは払いのガス状況につきましても非常にいいことであります。できるだけ奨励いたしておりまして、目下のところ、私記憶がはっきりいたしておりませんが、三十炭鉱に近く、ガス抜きをやつているというような状態でございまして、今後ますます盛んにいたしたいというふうに考えておりますが、小炭鉱におきましては、なかなかこれをガス抜きをやります器具も、掘さく機もかなり大きなものを使いまして、三十メーター、四十メーター相当長孔のボーリングをいたしますので、なかなか中小の炭鉱ではこのガス抜きを実際に実施させることはかなり技術的な問題もございますし、困難な状態ではないかと考えておりますが、でき得る山につきましては、一炭鉱でもよけいに今後ガス抜きの実施ができますように、積極的にやって参りたいと考えております。
  113. 山本經勝

    山本經勝君 時間もありませんし、局長を今責めてみたってどうも始まらぬようですが、私はここで重ねて要望を申し上げておきたいのは、ガス抜きについては非常に賛成であると言われるが、積極的でないという事実ははっきりしている。それはいわゆる資金難の問題があることは私ども重々承知しております。大手の山ではある程度のことができるけれども、しかしながら、それができないから、中小炭鉱に対してもガス抜きを推進するために資金の融通はいたしますというお話であったのかと思います。それは十分出しておりますか。
  114. 小岩井康朔

    説明員小岩井康朔君) 特に中小炭鉱にガス抜きのために資金の融資をいたしておるということはございません。出しておりません。
  115. 山本經勝

    山本經勝君 それが問題なんですよ。勧告は単なる文書の上の伝達や何かでないはずです。それは口頭でかりにそういう要望があったとしても、保安の根本的な精神は常に申し上げるように、保安法第三条が示すように、身体生命の安全を保障すること、その次は、資源施設を保護すること、こういうふうなことになっている。ですから、保安という問題を考えるときに第一義的に考えることは、やはり人命というか、人命が尊重されぬところに大きな問題があるのです。先ほど大矢委員から質問があった点も帰するところそれであると思う。しかも、今日増産計画を立てるようになって、五千三百万トンを目標にして計画を実施しております。そのために絶大なる犠牲が、施設をサボる経営者のもとに労働者の血の犠牲が払われたということがそこで言われるのです。それはもう少し資金を、局長、予算がないとか何とか言われますが、たとえば監督にしても、予算がないから監督行政が行えないから困るのだということですが、なぜもっと積極的に要求しないのか、私はそういう話はあまり聞かぬが、私はガス抜きの施設をするためには一応貸付金でもよろしい、補助金をもらえなくても仕方がないけれども、資金を私は融通してやればやると思うのです。それで技術指導をしなければならぬ、それが私は監督局の、保安局の大きな任務であろうと思いますが、その点はどうなんです。
  116. 小岩井康朔

    説明員小岩井康朔君) 監督の予算につきましては、毎年要求を出しておりますが、いつも大体削られまして、現状々々と、通年よりも多少少しずつ減少いたしております。従って、私の方では監督の回数が下ってはいかぬというので、普通の旅費規程もありますけれども、監督官は三等で行くようにいたしまして、山に参ります回数をふやしておるというような状況でございます。  それからガス抜きの点につきましては、小炭鉱についても大いに積極的になぜやらぬかという御質問でございますが、反駁いたしまして大へん恐縮なんでございますけれども、中小炭鉱におきましては、たとえば今回の堤炭鉱におきましても、内気のガスは二百三十立方メートルぐらいでございまして、もちろん通気状況を完全にいたしますれば、大体従来の総排気のガス量は〇・六前後というふうに報告を受けておりまして、特別ガス抜きをいたしませんでも、施設を完全にいたしますれば、十分にガスの排除ができる、わずかな金でガスの排除ができるような状態であったように考えております。もちろん普通の施設をいたしましても十分にガスが抜けないというような実情の炭鉱がございますれば、私どももできる限りガス抜きの実施ができますように、融資その他で御援助いたしたい、かように考えております。
  117. 山本經勝

    山本經勝君 これで私質問を打ち切りますが、これはもう問題がなくて打ち切るのでなくて、時間がないからやむを得ません。そこで、私は局長に一言に要望しておきますが、少くともこの委員会で、炭鉱保安問題は国会のたびごとに相当やかましく要求もし、また、実態を調査をして参った、しかもその災害は、局長によれば、多少減少した、昨年は六百十名であったというので、鬼の首でも取ったように言われておりますが、決してそういう事態ではない、むしろいわゆる軽症等でも増大の傾向にある、ただこれは隠蔽されておる、あるいは重症にいたしましても死亡は隠すわけにはいかぬから、数はごまかすわけにいかぬ、やむを得ず実数が出てきておる、実際には減少した実態はない、しかも危険な場所であることは御承知の通りです。だから、これは少くとも通産省と労働省との間でよく話し合っていただいて、具体的なやはり保安対策は必要な予算を遠慮なく要求され、しかも政府部内でこれをとってもらわなければ困る、そういう対策をやっていただくことができるかどうか、一つお答えを願って、質疑を打ち切ります。
  118. 小岩井康朔

    説明員小岩井康朔君) ただいまの御意見、できるだけ私どもの方で最善の努力をいたしたいと考えております。
  119. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 本問題に対する本日の調査はこの程度にいたしたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  120. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 御異議ないと認めます。   —————————————
  121. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 次に、一般労働情勢に関する件を問題に供します。  駐留軍労務者失業対策について御質疑を願います。
  122. 大矢正

    大矢正君 最初にお尋ねをいたしたいのは、現在の米軍の陸海空と申しますか、そういう陸海空に分けて直接的にまた、間接的に雇用されておる、あるいは雇用されたような状況のもとにおける労務者というのは一体どの程度おるか、その数を一人、二人のこまかい問題とまでは言いませんが、概数について一つ。
  123. 小里玲

    説明員(小里玲君) お答えいたします。一番最近の数字を申し上げますと、全部でこの六月一日現在、陸海空軍を合わせまして日本人労務者の雇用数は十二万七千五百九十二名でございます。そのうち陸軍関係が六万六千二百四十二名、それから海軍関係が一万八千七百二十九名、空軍関係が四万一千九百六十一名、海上輸送隊関係が六百五十名でございます。
  124. 大矢正

    大矢正君 この数字は、直接陸海空軍に雇用されておる労務者の数ですか。それともそれに付属して、この間接的な雇用関係という言葉が妥当かどうかよくわかりませんが、とにもかくにも、アメリカの陸海空軍に関係のあるすべての労務者というのはどの程度ですか。
  125. 小里玲

    説明員(小里玲君) ただいま申し上げました数字は、いわゆる間接雇用の労務者として、日本政府が雇用主になっておりまして、実際に使用しておりまするのはアメリカの軍でございます。従って、このほかに、いわゆる直接雇用労務者と申しまして、たとえばPXでありまするとか、そういう日本政府が雇用主になっていない労務者がございます。十二万七千五百九十二名というのは従ってアメリカが直接雇っている労務者ではなしに、アメリカが間接雇用と申すのでありますが、日本政府が雇用主になっている労務者の数だけでございます。
  126. 大矢正

    大矢正君 私の質問の仕方がちょっとまずくて申しわけなかったのですが、これはまあ日本政府が雇用して、それを実際的には米軍が使っておるということは私もよく存じておりまするが、そこでこれ以外に、それじゃあなたの今言われたように、PXその他米軍に直接雇用されておる労務者は一体どのくらいおるのですか。
  127. 小里玲

    説明員(小里玲君) 直接私の方の関係でございませんので、はっきりした数字は申し上げかねますが、約四万ぐらいだと記憶しております。
  128. 大矢正

    大矢正君 これは、ちょっとこういう質問をすることは何かおかしいかもしれませんけれども、かりに米軍——陸海空を問わず、米軍が移動もしくは帰国するということに関連して、直接、間接に雇用されておる問題は別として、純粋にこういう人たちのみを相手にして営業しておる地域住民と申しますか、そういうような数は全国に相当数あるのじゃないかと思いまするが、そういう点についての参考の資料——そう言うと何ですが、概括的な、どのくらいというようなこともおわかりになりませんかね。
  129. 小里玲

    説明員(小里玲君) ちょっとその点はわかりかねます。
  130. 大矢正

    大矢正君 最近——と申しましても半年ぐらい前からなんですが、実は宮城県の原町ですか、何ですかわかりませんが、どっかあの辺で、米軍が——もちろん陸上部隊でしょうが、移動するか、あるいはまた、帰国するかその辺まではよくわかりませんが、そういうことによって約三千人の人間が実際に路頭に迷わなければならない、失業しなければならないという、政府との雇用関係が切れたという現実が起り、これは今週でございますからまだ起きておりませんが、そういう見通しがある。それから広島県でもまた、数の問題は別として、そういうような情勢があるのですが、大体当面現実に話題になっておる、そうしてまた、やがては話題になるであろうと目される陸海空軍の移動ないし帰国によって生じてくる雇用関係の切れる人間の数ですが、この点、できれば地域的に、そう数もないと思うのです。たしか三、四カ所じゃないかと思うのですが、御説明いただければ幸いだと思います。
  131. 小里玲

    説明員(小里玲君) 実はアメリカ軍の撤退、特に陸軍部隊の大量引き揚げという共同声明が出まして、私の方でも至急にどの部隊が引き揚げて、それに雇用されている労務者が何名、従って、何名の労務者が解雇になるかという数字をつかみたいと思いまして、それぞれ関係の方面と連絡をとりまして、ただいま正確な情報を把握すべく努力中でございますが、現在の段階におきましては、まだはっきり数字が出ておりません。  ただ現在までのところ、予想されますところは、ただいまお話しのございました宮城県の米軍基地苦竹、川内地区の部隊の引き揚げに伴いまする労務者の解雇でございますが、これはすでに一部この六月に人員整理が実施に移されておりますが、約二千名ぐらいの労務者が本年の九月中旬ごろまでに解雇になる見込みでございます。私が申し上げます数字は、念のために申し上げておきますると、これは間接雇用の労務者だけでございまするから、先ほど申しました直接雇用の労務者は入っておりません。  それから兵庫県で約二千八百名程度の労務者が、これは期間といたしましては大体今年度と申しますか、今会計年度末までというように予想されております。六月中にも二千八百名のうち、約六百五十名程度が整理をされております。  それから福岡県でございますが、これが小倉の補給廠が将来一部を残して閉鎖をするということで、この六月中に二百数十名の人員整理があり、残り千三百名につきましても漸次整理が行われる予定であるという情報を得ております。  それから高射砲部隊、これは全国にまたがっておるのでございますが、青森県、東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、愛知県、福岡県、こういうところで部隊の引き揚げに伴いまする解雇が出ております。この数字が約四百五十名余であります。  陸軍関係はおもなところは以上のようでございますが、そのほかに空軍関係におきましても若干出ておりまして、これはまず兵庫県の伊丹飛行場が返還になるということで、この在籍労務者約千二百名余が人員整理になる予定になっておりますが、これも全部の解雇が終了いたしますのが明年の四月まで、九月ごろまでに千二百余名のうち四百五十名程度が解雇になる。こういう予定でございます。  それから北海道の計根別、八雲の両航空基地施設閉鎖によりまして、これは五月に解雇が出て、もうすでに終っておるのでありますが、計根別が二十八名、八雲が九十三名という数になっております。  それから石川県の小松飛行場の施設閉鎖によりまして、これも五月中に労務者五十三名が解雇されております。  それから福岡県の築城の飛行場の施設閉鎖という理由で、三百八十七名の解雇が、六月中に行われております。  それから新潟県の新潟飛行場における作業の縮小ということの理由で、二百五十三名の解雇が六月中に実施されております。  それから鳥取県の美保の航空基地の部隊使命の変更という理由をもちまして、五百四十五名の人員整理の通知を、六月末解雇をするという通告を受けたのでございまするが、このうち約五百名ほどは、あすこの通信施設の部隊で、陸軍関係が雇用するということで、再び雇用するという通告を私の方で受けております。  それから愛知県の高蔵寺弾薬庫の施設閉鎖という理由で、二百二名の解雇が六月中に行われております。大体現在のところ、予想されまするところ、あるいはすでに六月中に解雇が実施されました状況のおもなところは、以上のようであります。
  132. 大矢正

    大矢正君 政務次官にお尋ねしたいのですが、これは岸総理がアメリカへ行かれまして、ダレスあるいはアイゼンハワー等々といろいろ協議された結果、日本の自衛力の漸増計画もさることながら、特に米軍陸上部隊が一年以内か、あるいは二年以内かわかりませんが、まあそう遠からずして引き揚げるというようなことが、話し合いをされたというように、新聞なんかでは盛んに報じておりますが、総理がすでにお帰りになって、できれば総理の口からじきじきに、一体どのような概括的な構想に基いて、アメリカ陸上部隊が本国へ引き揚げるのか承わりたいのでありますけれども、なかなか総理もお忙しいおからだであります。おそらく政務次官としては、総理のそういった対米交渉のある程度の経過と申しますか、特に陸上部隊をめぐっての内容については、お聞きになっているのではないかと思うのでありますが、そうこまかい面は別としても、基本的な点だけでもお聞きになっている点がありましたならば、この際お知らせをいただければ、私幸いだと思うのです。
  133. 伊能芳雄

    説明員(伊能芳雄君) その問題につきましては、去る二日の定例閣議の際に、ごく、今回訪米に関する大ざっぱな報告がありまして、陸軍部隊が引き揚げるようになるということは申したそうでありますが、非常にあの日も日程の忙しい日でありましたので、この詳細についての説明をする時間的余裕もなかったということでありました。労働大臣としては、これが大量に引揚げるようになれば、その関係——ただいま調達庁からのお話のありましたような陸軍関係の雇用者六万数千名というものが直ちに影響するから、この雇用面については労働省としては特に重大なる関心を持っておるということを一言発言しておいた、こういうことを労働大臣から承わっております。当然のことでありますが——まだこれがどういうふうな形で表われてくるのかわかりませんので、ただいまのところ、これに対する対策はまだ立てる段階には至っておりません。
  134. 大矢正

    大矢正君 岸さんは、これはまことにけっこうなことをアメリカに行って話をしていただいて、解雇される六万六千人の人ないしは直接雇用されている人々の気持は別としても、国民の多くの人々は一日も早く米軍が本国へ引き揚げてくれることを希望していると思うのでありますが、しかし、その国民の希望は希望としても、これは当然やはり六万六千人の人間の生活の権利を防衛してやるという立場が政府としてはなされなければならないんじゃないかと思うのであります。特に、これは直接米軍に雇用をされておったというよりは、政府が一たん雇用し、そしてその雇用した人々を政府が米軍に提供しているという、従来までのこういう雇用関係からいっても、これら六万数千名の人々の生活は最終的に政府が具体的に成り立つように対策を当ててやるべきがしかるべきだと思うのでありますが、もしかりに新聞発表その他のように、一年以内に陸上部隊の全部が撤退をするということになりますと、これはもう具体的には本年度の予算の中で、すでに六万六千人の人間のやはり生活が成り立つように処置をしなければならぬということと私は相通ずるものがあると思うのでありますが、そういう意味では、アメリカとの間に、一年以内で引き揚げることを話をされてきたことはけっこうだとしても、その後に付随して起るこの問題について、いまだに政府が何ら方針としては出ていないということは、どうも片手落のような私は気がしてなりませんが、実際問題として今のところ、この六万六千人の人間が一年の間に来年度の新しい予算が成立するころまでには路頭に迷わなければならないという、この事実に対しての具体的な点というものがほんとうに政府としてないのかどうか。両度しつこいようでありますけれども、念を押してお聞きしたいと思います。
  135. 伊能芳雄

    説明員(伊能芳雄君) 今相当具体的に、何日にはどのくらい、どの地区でというような具体的な数字が出てきませんと、実際手の打ちようもないのでありますが、それが調達庁を通じて逐次わかって参ると思うのでありまして、先ほど来調達庁からお答えしておるようなことにつきましては、すでに全部織り込み済みで今実施中であります。新しく今回出る陸軍部隊の引き揚げに伴う分につきましては、相当具体的なものが表われてきました上で、逐次遺憾のないような手を打って参りたい、かように考えておりますが、具体的に申しますならば、内閣に昭和三十年八月から特需等対策連絡会議というものを持っておりまして、この会議で関係者が集まって、関係係員からそれぞれ自分の担当の問題について意見を開陳しまして、そこで労働省からはこの雇用の問題を主として持ち出して、関係各省の協力を得て、特に建設省の協力を得て、この吸収について今まで大体において遺憾なく実施して参ったのであります。今回一年間にもし六万名も出るということになりますならば、この特需等対策連絡会議を一そう強化したもので、この対策をすみやかに樹立して、それぞれ方途を講じなければならないと考えます。予算等の措置としては、一応は失業保険の給付によってまかなうことは当然でありますが、雇用面におきましてはさらに新しい考えをもって計画を立てなければならないと、かように考えております。
  136. 大矢正

    大矢正君 この一年後に雇用が切れるという六万六千人の人たちはそれでは別として、今までの分は別にして、現実に先月、あるいは今週までの間に、宮城県の二千人以上を筆頭にして、約七千人の人間が先ほどの調達庁からの説明によりますと雇用が切れることになるのでありますが、労働次官の今の話を承わっておると、この七千人の人々の生活対策がもうでき上っておるのだというような話に聞えるのでありますが、実際にそれはでき上っておるのですか。
  137. 伊能芳雄

    説明員(伊能芳雄君) ただいま調達庁から御説明になった分につきましては、本年度における雇用対策として織り込んでおりまして、具体的に申し上げますならば、そういう大量的に出る地区に公共事業の割当をよくしてやるとか、あるいは失対就労というような事業の割当を多くするとかいうことで吸収することが最も適切であるというので、そういう面をことに割当をしております。そのほか安定所の機構をフルに活動させまして新しい開拓をし、あるいは失業保険の続いておる間に補導所における職業補導をして新しい職場へあっせんするとか、さらにまた、こまかく言えば、自営業者に対する資金のあっせんをして自立できるようにするとか、あるいはその付近には大てい国有財産がありますので、国有財産の払い下げの便宜をはかってそこに定着の方法を講ずるとか、こうした総合的な施策を講じておりますので、すでにこれは何月にはどのくらい出るということが初めから調達庁から連絡がありましたので、それを皆それぞれの下部機関に流して実施中であります。
  138. 大矢正

    大矢正君 次官の占われる言葉を返すようで、まことにこれは恐縮なんですけれども、五人、十人、あるいは三十人などという部分的に現われてくる局所的な解雇などというものは、私はその地域、その地方でもって適当に処理ができると思いますが、ところが、一番問題なのは、五百人、千人、あるいは二千人というように非常にまとまって一つの地域で解雇されるようなところが、問題点が私はあると思う。何か今お話を聞くと、失業保険というような話がありましたが、これは失業保険なんというものは、政府が何も特別に考えなくても、当然に払われるものだから、これは何も政府の新しい手でも何でもないですね。私はこの宮城県の二千人の問題のときに特に具体的的に聞いたのですが、今大体公共事業費として二千万くらいとりあえず当面まあそういう手を打ちましょうということがある程度政府との間に話し合いがされておるようでありますが、それ以降についてそれではどうやってこの二千人以上の人間を雇用していくか、あるいは雇用したらよいか、生活権を守ってやったらよいかなんということは一つも出ておりません。私も先日宮城県の知事と会いましたけれども、知事も困ったものだと、これはある一定の期限を切られたいわゆる失業保険、それからある一定の時期をもたすことしかできない公共事業費の内容では、ほんとうにこの先、心もとないという話でありまして、どうも政務次官が言われておるように、国有財産を払い下げてやるとか、あるいはその地域には特に東北開発に関連をしてどれだけの人間を雇用するとか、国家的な見地に立った総合的な施策は何もないように知事は言っておりますが、どちらが正しいか、私はよくわかりませんが、どうももし政務次官の言われておるようなことが事実であるとしても、そのようには下の方は安心していないし、何と申しますか、そういう気持もくんでいないように見受けますが、実際にそういう国有財産の払い下げをやってやらせていくような方法がすでに着手されておるのかどうか。これは宮城県に限ったことでなくて全体的に……。また、どこから貸すのかしらぬが、国民金融公庫か、あるいはどういう機関を通じて金をお貸しになるのか知りませんが、そういうような生業資金と申しますか、そういうものが、現実に窓口を通て行われておるのかどうか、どうも私の聞いた範囲では、あまりそれほどやられておるように見受けない。先日札幌に行きまして、あそこで真駒内という所でやられておる人もやはり多少おりまして、その人にも会ってみましたが、最近は非常に金詰まりで、質屋をやるともうかるからやろうということを考えているらしいが、あまり政府が骨を折り、力を入れてくれたから、われわれはある程度こういう明るい見通しがあるというような話は、直接解雇をされる人々もまっていないようですから、どうも政府の言うこととは違うように思いますが、どんなものでしょうか。
  139. 伊能芳雄

    説明員(伊能芳雄君) 主要の地区について、失業対策部長からそれぞれの事業別の数字を御説明いたします。
  140. 三治重信

    説明員(三治重信君) これは特調からの情報によりますと、しかもまた、県から、御指摘の宮城県なんかは知事を中心にして県自身で各部の連絡のいわゆる駐留軍解雇者の対策本部というものを作っているわけです。それで、大体が雇用問題ですから、大体どこの県でも職業安定の主管部長が幹事になって県の要望事項を大体持ってくるわけです。それで、われわれの方として内閣の副長官を中心とする各省対策連絡会議でやるわけです。それはどうしても地方の方は、やはりなかなか大きな望みと申しますか、いろいろな要求が出てくるわけです。それで、宮城県の方はまだ実際に出てくるのが半分ぐらい出てきていないわけなんで、進行中のわけなんです。従って、こういうふうな初めのところはいろいろと県の方でもなかなか具体的なまとまりはむずかしい。どうしてかというと、やはり出てきた人たちは現在の実際の労務者の賃金水準からいくと、駐留軍労務者は年令または仕事の内容の質の問題からいうと非常に危険というか、いつ首になるかわからぬということで、賃金が高くきめてあるわけです。失業保険の支給のワクでも、平均支給金額となると、大体一般産業水準の離職者の支給賃金からいくと、最近の正確な数字は知りませんが、一般より三割ぐらい高い失業保険の支給平均になる。従ってこの方たちは大体特殊なことでない限り、失業保険をもらわないですぐ就職するということはまずない。失業保険を目当てにして、それから、ゆっくり仕事を考える。それから今までの調査でいきますと、どうしても役所なり、安定所なり、いろいろ、世話をしてほしいというのは大体四割ないし五割が実際に個々に面接して、いろいろやったうちでも、ほんとうに何とかしてもらいたいという、本気になって相談に来る——もちろん何とかしてもらいたいとは口で言いますが、身の振り方についてほんとうに真剣になって来られるというのは大体半数ぐらいが今までの経験です。  それからかわって財産の問題でございますが、ことに呉地区の場合においては、やはり市が中心になって工場誘致の条件に——先ほど政務次官お話で、先生がおとりになったのは、個々に払い下げるみたいな感じを持たれたかもしれませんが、政府のやっているのは大きな財産ですから、個々ではだめなんで、やはりそれが市なり、県なりが工場誘致なりほかの産業その他の総合的な計画を立てて、それが利用できるような計画になったならば有利にそこへ払い下げましょうというようなんで、呉の場合は、今市が中心になって、そういうような施設の利用、工場誘致についてまだ具体的に最終決定はされていませんが、計画はいろいろ進んでやっているようでございます。  それから宮城県の方は、国有財産とかいうような問題についての具体的なやつは出ておりません。大体宮城県の場合においては建設関係のやっと、それから運輸省の方の事業、農林省の方の事業、各省いろいろ数字を出していただきまして、大体一般の公共事業、それから特失、臨就その他いろいろな事業計画でできるものが大体千人の事業団があるというふうに計画はしてございます。
  141. 大矢正

    大矢正君 まだもう一点何か別なことで質問があるのでありますし、また、この問題は今日だけでなくて、今後も重大な問題でありますから、論議はされると思いますので、最終的に私はこの際、要望申し上げておきたいのでありますが、岸さんがことしの春言われたことによると、日本の経済は拡大していくから失業者もなくなるだろう、こういう話もありましたけれども、御存じのように、拡大するのではなくて、現実には縮小してきましたし、それからまた、失対事業費の問題にしても、あるいは失業保険にしても、対象となる人間がむしろ三十一年度よりは減らされておる。そこへ持ってきて、また六万六千人もの膨大な、この一年間に解雇される者が出るとすれば、これはもう経済政策と、それから実際の姿というものはすれ違って反対の方向に行ってしまっているわけです。ですから、ほんとうに最初岸さんが言った通り、拡大経済政策をやられて、どんどん規模が広がっていく場合でしたら、政府もあまり積極的に力を入れなくても、六万が十万でも雇用されたと思うのでありますけれども政府がむしろ積極的に縮小しているのですから、政府がむしろ積極的に経済規模を縮小するということは、就職の機会をむしる政府が与えていないと言ってもいいような状況になりつつあるのですから、その意味では、解雇される六万六千人の人々としては、非常にこれはうらみの数々が政府に私はあるものと思うわけです。そこで、そういう政府の政策のまずさもある程度手伝って、ますます就職難になるのでありますからして、この際、今までのように、部分的に発生した解雇と同じような考え方ではなくて、やはり数が六万人だ、あるいは七万人だという以上に、政府の経済対策との関連においても十二分にこれは考慮してやらなければならない多くの人々でありますから、具体的にどこの地域に何千人の人間が解雇されるという、こういう資料に基いて、その地域にどういう国有財産があり、あるいはまた、新しい工場の誘致なり、開発計画というものができ上ったということに照し合せて、精密な、そうしてまた、ほんとうに失業者が出ないというような構想まで持てるような計画性のある対策を私は立ててもらう必要件があるのではないか。これはさっきから繰り返して言っているように、これは経済政策の誤まりからこういう条件になってきたのでありますし、単にこれは米軍が帰るというだけの問題以上に、経済問題に関係してくる問題でありますから、どうかその点、十二分に御勘案いただいて、先ほど非常に政務次官から積極性のある御答弁をいただきまして、私も内心しておるのでありますが、どうか間違いなく、しかも確実に実行に移されるように、この際、念を押して御要請申しげておきたいと思います。  以上私の質問を終ります。
  142. 伊能芳雄

    説明員(伊能芳雄君) 経済が縮小されるというお言葉がありましたが、これはお言葉を返すようでまことに恐縮ですが、財政投融資一割五分減らす、減らすのでなく、繰り延べするという案があるようでありますが、一割五分かりに——これはまだ非常に未確定の、大蔵省だけの案のようでありますが、これが全部一割五分繰り述べしましても、昨年よりは投融資の額はまだ多いのでありますが、公共事業がかりに一割五分繰り述べになりましても、これまた、昨年上りも多いのでありますから、経済が縮小するということは私どもは考えられませんけれども、経済の拡大の度合いが当初予想したより少くなるということを私ども考えているわけであります。それに対する雇用量が減るのじゃないかということについて重大な関心を持っておるわけでありまして、それがどういう面で現われるか、これによって私どもとしてはまた雇用面における対策を講じなければならないと考えております。同時に先ほど来、特に強く御要望のありました駐留軍の陸軍部隊の引き揚げがどういうふうに実施されるか、それによって駐留軍労務者がどんなふうな解雇の状況が出てくるかということは、今後の推移を見まして万全の策を講じたい、かように考える次第であります。
  143. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 本件につきましては、本日の質疑はこのぐらいにいたしまして、次に千葉県川崎製鉄所における労務者災害事件についての質疑に入っていただきたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  144. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 質疑のある方はどうぞ。
  145. 片岡文重

    ○片岡文重君 時間もないようですから、簡単に要点だけを二、三お尋ねしておきたいと思います。第一に、今月に入っての安全週間第一日において、しかも県下における最大というよりも、日本においても最高最大を誇る川崎製鉄で即死五名を出し、重傷者二十名内外に及んでおる大きな不祥事を起したのですが、この事故の原因についてはまだはっきりしておらないで調査中のようですけれども、大体幾日ぐらいたったならば、この原因の究明の結果が明らかになるのか。
  146. 百田正弘

    説明員(百田正弘君) ただいま実は安全研究所等で研究をいたしております。大体一週間ぐらいたてば見当がつくのじゃないか、こういうふうに予測しております。
  147. 片岡文重

    ○片岡文重君 調査の結果が明瞭になりましたならば、その結論だけでもけっこうですから、一応資料として出していただきたいことを、まず委員長にお願いしておきます。  そこで調査中であるということでありますから、その原因についてのお尋ねは後にはっきりしてからにすることとして、この工事をすることについてはすでに基準局として、基準監督署で許可をしておるということですが、この許可を求める場合には、書面申請だけで足りるのであって、監督署としてはその現場を実地に見たり、調査をしたり、そういうことはやらないで、書面だけの審査でこれを許可しておるのかどうか。
  148. 百田正弘

    説明員(百田正弘君) 御質問のこうした起重機の設置の場合には、許可申請を監督署に出すということになっておりましてその際に、詳細な計画書と摘要書をつけて出す、原則として書面によって審査する、こういうことになっております。ただ必要によりまして現場に行くこともございますけれども、大体は計画審査でございます。
  149. 片岡文重

    ○片岡文重君 そうすると、こういう起重機あるいは揚重機等を設置する場合には、書面申請だけで、その申請した書面だけに基いてなされるとすれば、その設置する地盤、あるいはその設置する揚重機の材質、強度、こういうようなものもやはりその書面の中に申請条件として入っているのかどうか。
  150. 百田正弘

    説明員(百田正弘君) それらの事項につきましては、大体たとえば強度等につきましては、その計算書等がついておるわけであります。なお御承知の通り、安全衛生規則につきましては、構造設備につきまして所要の規定を設けておりまして、それらの事項が果して満足されておるかどうかということはこの摘要書によって一応わかる、こういうことになっております。
  151. 片岡文重

    ○片岡文重君 では、今回事故を起した川崎製鉄の千葉製鉄所における起重機の設置に関する許可の申請書は、基準法もしくは安全規則に基く所定の条件を全部満足しておるのですか、どうですか。
  152. 百田正弘

    説明員(百田正弘君) さように承知いたしております。
  153. 片岡文重

    ○片岡文重君 とかくこの大企業に対するこの種の工事については、監督官が往々、何と言いますか、習慣的と言いますか、安易な気持で書面審査だけ行なって、慎重の度が中小企業等に対する監督の場合よりも軽い気持でなされる傾向が一般のように聞いております。これはまあそういうこともあるのではないかというように考えられるのでありますが、今回の事故の起った一つの原因としてこの監督の面に若干問題があったのではなかろうか。書面の上で条件を満足さしておっても、その書面に記載された通りの条件で果してあったのかどうかということも問題でしようし、特に結果から見れば、いまだかつて通例を見ないような事故であるということであれば、今までの安全規則でもって規定された通りに仕事がなされておれば、こういう類例を見ないような事故は起らなかったのじゃなかろうか、書面の上では条件が満足しておったにもかかわらず、こういう例を見ない事故が起ったとすれば、その書面に記載されておった通りの条件が具備していなかったのじゃないかということが考えられるし、もしその条件が具備しておったとするならば、従来の安全規則の条件というものはこれじゃいけないということになるのじゃなかろうか。もっとたとえば材質の強度なりあるいはロープの張り方なり根底にまで立ち至った規制をしておかなければならぬのじゃないかと考えられるのですが、基準局長はこの点どういうふうにお考えになっておるのか。それから千葉からの報告はどうなっておるのか。
  154. 百田正弘

    説明員(百田正弘君) 今お話通りに、こういうふうにデリックのマストが途中から折れたという事例は現在まで一つもございません。ただそれが倒壊したとかといったような事例は数回ございます。そういう関係でございますので、われわれといたしましても、この原因がどこにあったのかということの結果を待ちまして、今まで通りのこれだけの規則でいいのかどうか、あるいはまた、審査そのものに何か遺憾の点があったかといったような点につきましては、この結果を待って慎重に真剣に検討いたしたいと、こういうふうに考えております。
  155. 片岡文重

    ○片岡文重君 将来一定の制限をつけることも考えられますが、この一定の条件をつけて、こういう大きな揚重機等を取りつける場合には、書面申請だけでなしに、実地に検査をし、その強度等についても十分に把握できるような措置を、安全規則の上に私は明記すべきじゃないかというのですが、基準局長はどう考えておりますか。
  156. 百田正弘

    説明員(百田正弘君) そういったことを考慮いたしたいと考えております。
  157. 片岡文重

    ○片岡文重君 大きな会社ですから、多分安全管理者については有資格者が任命されておったと思うのですけれども、この安全管理者は有資格者であったのかどうかということが一点。  それから安全規則の第五条でしたか、この安全管理者には安全に関する措置を十分になし得る権限が与えられなければならないことにたしかなっておるはずです。そういう措置が果して、措置というよりもむしろ権限、これは形式的ではなしに、実際に会社が、その安全管理者の言うがごとくに、それに応じて処置をしておったかどうか、従来その点についての調査はできておりますか。
  158. 百田正弘

    説明員(百田正弘君) この安全管理者が資格があったかどうかという点については、私今ここで申し上げられませんが、従来の監督の結果から見ますと、その点に関する違反事項は指摘してありませんので、この点についてはさらに調査をいたしたいし、また、その点について、これに対する権限をまかしておったかどうかという点についても十分調査いたしたいと思いますが、この川崎製鉄は実は二十六年にできまして以降、実は千葉県で大きな工場でございますので、千葉の監督署としては、本年の六月までに四十数回監督をいたしております。ところが、その間におきまして、ほとんど大部分が何らかの安全法規規定関係の違反が指摘されておる。それは監督署におきまして直ちにその場に行きまして指摘された事項につきましては、再監督によって是正済みであります。そういうようなことを重ねて参りましたので、去年あたりから非常に災害そのものも少くなって参っておりますが、従来、当初におきましては、安全について非常に問題が多かった工場であります。
  159. 片岡文重

    ○片岡文重君 川鉄が従来労災件数の多かったということにつきましては、今局長もお認めになっておられるのですから、これに対しては繰り返し申し上げませんが、その後におけるこの労災事故を減少せしめるために会社も努力しておられたと思う。監督署においても十分これまで指導されておったと思いますが、しかし、今度の事故を見ると、負傷した職員が、ひどいのは採用されてまだ二、三日しかたっておらない職員が重傷を負っておるわけです。つまりまだ採用されて間もないような職員、あるいは下請会社にしても、いずれにせよ、こういう危険な工事に対して、しかも十分に資格を持たなければ立ち寄ることができないような工事に対して重傷を負うような立場におった。そういう位置におったということは、これはやはり安全規則を十分に順守しておらなかったということも考えられるし、会社側としてのこの面に対する落度も十分にあったのではないかと思うのですが、基準局の方にはそういう点についての御報告はまだ来ておりませんか。
  160. 百田正弘

    説明員(百田正弘君) そういう話は聞いておりますが、現在千葉の基準局をして詳細に調べさせておりますので、判明次第御報告申し上げます。
  161. 片岡文重

    ○片岡文重君 大きな工場でもありまするし、職員等もすでに一万近くたしかおると思うのですが、当然安全委員会というものが設けられておると思うのですが、この安全委員会の設置があるのかどうか。また、あるとするならば、その規則が監督署には提出されておるのかどうか。ないとするならば、それを承知しておられたのかどうか。
  162. 百田正弘

    説明員(百田正弘君) この点まだ千葉の基準局から報告を受けておりませんので、あわせて御報告をいたします。
  163. 片岡文重

    ○片岡文重君 調査中であり、結果がわからないということでありますから、なお詳細の点について御質問はできませんけれども、しかし、この安全委員会の規則であるとか、あるいは安全管理者がどういう者がやっておるかというような程度のことについては、こういう大事故が起ってすでに数日たっておるのですから、直ちにこの程度のことは基準監督署からすぐに取り寄せる。わからなければ会社へ行って調査してくれば私はすぐわかると思うのですが、そういうことすらおわかりにならぬということであれば、技術的な工程なり、設置の操作の面にのみ、原因追及の、目をというか、心を奪われておって、将来のこの種事故の絶滅の基盤となるべき安全に対する考え方が少し足らないじゃなかろうかと思うのですが、基準局として、この技術的な面はもちろんですけれども、それよりも、それ以前の問題にもう少し関心を深めてもらった方がいいと思うのですけれども、基準局としてはどういうふうにお考えになりますか。
  164. 百田正弘

    説明員(百田正弘君) おっしゃる通りでございまして、今、千葉の局で全部こうしたことを次々に関係者を呼んで調べておるわけでございます。
  165. 片岡文重

    ○片岡文重君 時間もありませんし、結論がはっきりわかっておらないようですから、結論が出ましたならば、先ほど申し上げました通り、一つ委員長から資料の提出を御要求いただいて、その資料に基いてさらに質問は留保しておきたいと思います。
  166. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 片岡委員より要望のありました資料については、でき次等御提出方をお願いしておきます。  一般労働情勢に関する本日の調査はこの程度にいたしたいと思いますが、御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  167. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 速記をとめて下さい。    〔速記中止〕
  168. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 速記を起して下さい。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時八分散会