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説明員(尾村偉久君) 防疫課長を兼ねております
公衆衛生局長の
所管なのでございますが、ただいま出張中でございますので、かわりまして私から御
説明申し上げます。今回のインフルエンザの流行のわが国における初発として大体考えられておりますのは、今年の五月十一日に東京を
中心に発生をいたしたのでございます。足立区の方面に発生し、逐次東京の方にふえまして、次いで五月十八日に京都市に発生したのを確認いたしました。これが東京、京都を
中心にいたしまして国内に逐次広がりまして、現在のところ大体三十八都道府県に発生しているという
報告がございます。その他は今までのところ
報告がない。
報告がないということは、今までに確実にインフルエンザが発生しておらないかということになりますと、それは疑問でございます。今まで、
厚生省でこれによるものとしてキャッチしておらぬという県が若干ございます。その後の増加の傾向を見ますと、いわゆる七大都市を含む府県に最も多く、これは元来
人口が多いせいももちろんございますが、ただいま七大都市のある府県の学校に非常に発生しているという
状況を確認しております。いわゆる六大都市プラス
福岡市、ここに一番数から見ましても集中いたしております。すなわち、
人口め非常に糊密なところに非常に多く発生しているということは、これは明確に急激なインフルエンザの性格と合っていると言えるようでございます。
それから患者の多発した学校数から言いますと、今朝の六月十日現在で、いやしくもインフルエンザを
原因といたしまして、学校
関係として何らかの
措置をしたものが千五百七十四校でございます。内訳を申し上げますと、休校したもの、すなわち、全学閉鎖ということでございますが、全学閉鎖は二百九十校、それから特定の何学年か、特定の学年全体を閉鎖したもの七十八校、それから特定のクラス、学級を閉鎖したものが七百七十三校、それからこの三つではありませんが、この三つに含まれないその他の
措置をしたもの、すなわち、多発をしておるということで、たとえば特殊な校内の防疫
措置とか、そういうようなことをやったということで、いわゆる学校は休むというに至らない、これが四百三十三校、こういう形になっております。もっともこれは全部今この千五百七十四校がこの
状況にあるというのではなくて、発生以来こういう
措置をとりまして、大体概数三分の二は現在原状に復帰しておるわけでございます。この約三分の一がきょう現在こういう
状況にある、こういう形になるわけでございます。
それから推定の患者数はこれは非常につかみにくいのでございまして、これは後ほども申し上げますが、大体三日ぐらいで経過してしまって全く大
部分がなおってしまうという形で、第一医師にかかる者が非常に少いらしいということで、一番確実につかめる医師の届け出での対象にならざるものが大
部分である、かぜ薬で済ましてしまうというような形から非常につかみにくいのでございまして、全体の数はつかみがたい。そこで、今まで比較的つかめておりますのが学童と生徒、いわゆる学校
中心でつかんだだけの数がけさほど現在で約十三万人を推定されます。これは決して学級閉鎖なり休校した全校生徒ではなくて、あくまでその中でそういう
措置をしなければならなくなった患者ということを一応目標にしてつかんだ数でございます。ただし、これは今申し上げましたように、医師が直接一
人々々を診断したのではありませんので、先生の判断と家庭並びに本人の自覚
症状との申し立てによって判断したものが大
部分でございますので、医学的な根拠はだいぶこれは
疑いはございます。
それから
症状と経過でございますが、比較的軽症でございまして、昨年末の冬の流行時のときよりも一そう軽症でございまして、最初熱だけは高熱を出す、大体一番多いのが三十九度、中には八度ないし高熱の四十度を出した者もございますが、要するに、比較的の高熱を出すことが最大の特徴、そのほかにいわゆる神経
症状、頭痛、それから腰の痛み、全身倦怠というようないわゆる神経
症状を併発するのが多く、その他粘膜であるのどの痛み、それから食欲不振並びにせきや鼻汁が若干出るという、いわゆる粘膜系統のカタル
症状、この三つが大体多く、ごく一部の
地区で鼻血、あるいはもう少し激しい下痢まで至る胃腸障害、いわゆる粘膜系統のもう少し重い下痢
症状、こういうものが加わった
地区がある、こういうことでございます。いずれの
地区も経過は二日ないし三日で大体完全に快方に向うということでございます。
それから死亡者はこれは非常に重要な問題なんでありますが、今まで確認できましたのは全国で東京都の滝野川方面の小学生一名のみでございます。ただこれも非常に大事なことでございますので、ある程度
報告を求めたところ、ふだんから非常に心臓の弱い
子供で、一ぺんこのインフルエンザらしく二日ほど休みましてなおったというので出てきて、それから心臓の工合が悪くなった、こういうことであります。しかし、これは学校の閉鎖
措置等には、死亡ということがこれまで出たことは非常に大事なことでございますので、この点も最近の東京都の学級閉鎖、休校等にはある程度参考になっておるかと思います。
それから今度の
原因菌であるウイルスの形でございますが、大体今までのところ、幾つかの学校からこの
原因菌が発見されまして、今までのA型、B型にない、A型のでも新しい新変異菌ということが確定になっておる。大体これは予研の小島所長がお見えになっておりますので、そちらにおまかせいたします。現在のところ、六校から分離した菌、しかもそれは東京、京都、川崎、横須賀という
地区の違ったところから出たものがいずれも新A57というインフルエンザ菌ということになっております。
でこれに対しまして国際的な経過でございますが、これはわが国のほかに現在のところ、欧州あるいは北アメリカには出ておらないのでございまして、現在のところは、東南アジアに四月以来相当多発しておるという、わが国では五月中旬でございますが、多く出ておりまして、推定は非常にむずかしいのでございますが、同じような輸入菌ではないかということも言われております。そのつながりは現在ロンドンにあります世界のインフルエンザ・センターの方にこちらの分離した菌を送っておりまして、よそから行った菌とあわせて、同じものかどうかをまだ検討中でございます。まだ
報告が参っておりません。
若干東南アジアの
状況を申し上げますと、香港では四月中旬に発生いたしまして、全
住民の約一割が罹患したそうでございます。そういうA型の新変異菌が出ておる。それからシンガポールにおきましては、四月下旬に八万人が罹患いたしまして、やはり何らかのA型新変異菌が分離された。台湾が四月下旬、これはちょうどシンガポールと同時期でございます。約十一万人が罹患をしております。菌の点は詳細不明でございます。それからフィリピンのマニラ、これはマニラ市に大体五月の中、下旬に約八百名ないし九百名の患者が同時に発生しており、そのうち十四名が死亡したということでございます。
原因菌は現在分離中でまだ成功しておらぬらしい。その他五月中旬すなわち
日本と同期からインド、それからボルネオ、ベトナム、インドネシアにも患者が発生を始めておるという
報告がございます。
それからもう
一つ国際関係で、わが国と
関係のありますのが、五月の二十六日に、神戸に香港から入港いたして参ったオランダのチクルバール号という汽船、これは乗客と船員合せて百六十八名中、乗るときの検疫で十五人の罹患者を発見したというのでございます。これはわが国で罹患したのではなくして、明らかにわが国以前すなわち香港から入ってきたのであろうということが考えられる。同様に、同日に、全く同じ日に神戸に並行して入って参りましたプレジデント・クリーブランド号、これは乗組員と船客七百七十四名乗っていたのでありますが、そのうち十一名が同様香港から到着した検疫において発見されております。これも全く同じようなことが考えられます。それからその後の
厚生省のとっております
措置でございますが、五月二十九日にこの発生をキャッチいたしまして、予防対策は、昨年の十二月十五日に昨年度のインフルエンザ対策の詳細な通達を出しておりますので、やり方といたしましては、菌は除きまして、同じことを全部網羅しておりますので、これを緊急に今回もとるように通達をいたしました。それから疫学
調査をすみやかに実施する。これは流行の形をはっきり見きわめるには疫学的な観念から
調査いたしませんといけませんので、これを指示いたしました。それから菌を、検体を見つけたならばそれを予研へ送って全部菌の型を、権威ある
決定をする。こういうことを五月二十九日に局長名をもって指示をいたしました。従いまして、もちろん昨年以来やっておりますように、医師にかかれば、医師は一応
疑いがあれば、必ず保健所に届け出る等の
措置と全部並行して行われておるわけでございます。ワクチンの問題でございますが、一応A型の新変異菌でこの効果の百発百中の問題は疑問でございますが、いずれにいたしましてもA型がもとになっておりますので、とりあえず保存をしております三十八リットルのA型ワクチンを十二都道府県に一番多い
土地、どんどんと出つつある府県に配布をいたしました。
それから先ほども申し上げましたように、五月二十八日と六月五日に予研の中にある
日本インフルエンザ・センター、これは国際的な分布になっておるわけでありますが、ここからロンドンの世界インフルエンザ・センター並びにマニラほか二カ所にあります同じようなセンター、これに流行
状況の
報告と、それからA型の新型を分離したということを直ちに伝えまして、二十九日に分離したものの第一例、これは分離菌の第一例は東京の足立区から発見した、分離できた菌でございます。これをロンドンに送付いたしまして、相互比較の
検査を今要請中でございます。
大体以上のようなところでございますが、潜伏期につきましては、現在まで集まりました
調査の結果では、やはりインフルエンザの原則である
——ないし三日を出たものはほとんどなく、大体が
——ないし三日以内に全部発病する者は発病する、こういうことでございます。この点は従いまして、従来とも休校の
措置が三日ないし四日ということでございましたが、これは
厚生省の考えといたしましても、その間に前日感染を受けていれば、発病するであろう、発病すれば今度はまたその経過中は当然休むであろうということで、大体三日ないし四日以上の休校
措置は適切であるというふうに現在考えております。
それからなお、
日本は、主として学童を
中心に、若い者を
中心に出たのでございますが、その他の方はあまり申し出なり、集団的な発生もつかめませんのでありますが、現在まで若干わかっておるものがございます。それは防衛庁の方で、これは若い人の集団になっておりますが、隊員でございますが、茨城県の勝田の
部隊で、これは
部隊といたしましては二千三百名いるのでありますが、そのうちの一番若い養成
部隊が、いわゆる陸曹と言って下士官の
——昔の下士官でありますか、これの養成
部隊の二百名の中で百名が六月一日に集団発病した、
症状は二種類ございまして、これは学童とちょっと違うかもしれませんが、呼吸器系にきた者と、胃腸系にきた者と二種類ございますが、これが五〇%程度の発病になったのでありますが、これが一例でございます。それから隣の防衛庁の本庁、すぐ隣と言いますか、この向うにございますが、新しいところでございます。あそこに勤務員が四千三百角いるそうでありますが、その中で合計いたしまして約百四、五十名がまとまって、ごく若い者にやはり出ておるそうで、年寄りの方にはほとんど出ていない、伊丹の
部隊で十五名、横浜の
部隊で六百名中二十二名出ております。ここの
部隊は呼吸器ではございますが、ここの
部隊は鼻出血を出しております。こまかく分けますと、特定の
部隊ごとに、要するに起居住をともにしている営内居住者に集団で出ております。なお、労働省
関係の情報は、正規には監督署等にまとめて、作業労働に差しつかえるということで、これを
原因とする届出は全然ないそうであります。ただうわさでは二、三の商事会社等で社員が休む者があるという程度に聞いておるわけであります。
以上の
通りでありまして、比較的ごく若年者の方に多いということが特徴なことと、それから潜伏期、あるいは
症状は、従来のインフルエンザの成書等に全部書いてあります範疇に全部合しておるということであります。
症状は従来のものは、現在のところでは最も軽い、将来どうなるかわかりませんが、現在十三万名ほど推定されますが、いずれも二、三日でなおっている。ただ
一つ従来から虚弱な
子供が一名だけ死んだ、こういう
状況でございます。
対策としては従いまして、現在のところは、従来の流感に対する処置を全面的に広
範囲にやっていく。こういうことと、それからやはり今の
症状等の性格から見まして学童
中心になっておりますので、文部省
関係で、やはりこれの一番いい対策である発病者を除く、発病者といつまでも集団的に一緒にしないと同時に、ほっておけば非常に軽く済むものでありますから、その他の
原因で重症にかからないようにということで、休養が最も大事であります。からだの調子が悪いと、先ほどの死亡例の問題もございますので、工合が悪くなるといけませんので、そういうような処置を講ずるとか、万全の
措置を講ずる。
なお、ワクチンの問題につきましては、まだ国際センターとの、外国との関連もございますが、ワクチンの方の問題については、これは予研の所長から専門的な
説明をお聞き願いたいと思いますが、従来のものをどの程度使うかということ、あるいは新型のものを作る問題等はもう少し専門的な
報告を分明して、至急対策を立てたい、こういうように思っている次第でございます。