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1957-05-16 第26回国会 参議院 建設委員会 第34号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年五月十六日(木曜日)    午前十時四十六分開会   —————————————   委員の異動 本日委員小滝彬君、坂本昭君及び山口 重彦君辞任につき、その補欠として武 藤常介君、木下友敬君及び小笠原二三 男君を議長において指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     中山 福藏君    理事            石井  桂君            岩沢 忠恭君            西田 信一君            田中  一君    委員            稲浦 鹿藏君            小山邦太郎君            斎藤  昇君            中野 文門君            武藤 常介君            内村 清次君            大河原一次君           小笠原二三男君            重盛 壽治君            村上 義一君   衆議院議員            瀬戸山三男君            前田榮之助君   国務大臣    国 務 大 臣 宇田 耕一君   政府委員    経済企画庁開発    部長      植田 俊雄君    建設省道路局長 富樫 凱一君    建設省住宅局長    事務取扱    鬼丸 勝之君   事務局側    常任委員会専門    員       武井  篤君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○公営住宅法の一部を改正する法律案  (田中一君外二名発議) ○住宅公社法案田中一君外二名発  議) ○東北開発促進法案内閣提出、衆議  院送付) ○宅地建物取引業法の一部を改正する  法律案内閣提出衆議院送付) ○請願に関する件   —————————————
  2. 中山福藏

    委員長中山福藏君) ただいまより委員会を開会いたします。  委員の変更の件を御報告申し上げます。五月十六日、坂本昭君、小滝彬君が辞任され、補欠として木下友敬君、武藤常介君がそれぞれ指名せられました。   —————————————
  3. 中山福藏

    委員長中山福藏君) この際、公営住宅法の一部を改正する法律案及び住宅公社法案一括議願とし、発議者から提案理由説明を承わりたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 中山福藏

    委員長中山福藏君) 御異議ないと認めます。  それでは両案の説明田中君にお願いいたします。
  5. 田中一

    田中君 ただいま議題となりました公営住宅法の一部を改正する法律案提案理由及びその要旨を御説明申し上げます。  公債住宅法は、昭和二十六年に住宅に困窮する低額所得者に対し低家賃住宅供給する基本法として制定されたものでありますが、そもそも公営住宅出発点は、戦後経済事情の激変から民間貸家供給が行われなくなり、戦前その七割まで民間貸家に依存していた勤労大衆は、とうていみずから建設する資力もなく、これが住居安定のため、国が住宅供給する地方公共団体等建設費補助し、賃貸住宅建設してきたことにあるわけであります。従いまして、公営住宅の本旨は、低家賃であることと、健康な生活を営むことができるものであることに置かれなくてはなりません。  翻って、現状を見ますると、一力に国の助成を受けて、住宅公団住宅協会等のやや高額の家賃住宅建設されておりますが、公営住宅におきましても、その入居者の幅は、いわゆる低額所得者から月収三万数千円の所得階層にまで及んでおりまして、入店者生計費に対する家賃負担は、必ずしも均衡を得たものとはなっていない実情であります。またその住居は、家賃そのものに制約されて、健康で文化的な生活を営むに足りるものとは必ずしも合致していないのであります。すなわち、低収入者は、たとえ多数の家族をかかえておりましても、わずか八坪以下の小規模住宅生活することを余儀なくされている状態であります。この原因は、家賃のきめ方と、国の補助率入居者選定維持管理仕方等にあると考えられますので、これらの諸点に関し、根本的な改正を行い、公営住宅建設促進入居者機会均等をはかるため、ここに本法律案を提出した次第であります。  次に、この法律案要旨について申し上げます。先ず第一に、第一秘公営住宅と第二種公営住宅の区別を廃止したことであります。  現在第二種住宅は、第一種住宅家賃を支払うことができないほどの低額所得者に対し、あるいは災害住宅を失った低額所得者に対し供給することになっております。従って、建設費に対する国の補助も第一種が二分の一であるのに対し、三分の二になっておりますが、それでもなお家賃低額にするため、第二種は第一種より規模や質を下げている状況であります。この改正案では、家賃算出方法を、地方公共団体が支出する建設費償却経営に必要な維持管理費等によって計算することをやめて、入店者世帯収入の一割を基準として入居者ごとに定めるようにいたしておりますので、従来の一種、二極の区分をなくすようにしたわけであります。  第二に、集団住宅には必ず共同施設を設けなければならないこととし、また中高層耐火建築物の一部として公営住宅または共同施設建設するように努めなければならないことといたしました。  第三に、家賃は、入居者世帯収入の一割を基準として定めるようにしたことであります。現行家賃は、建設費のうち、国や都道府県の補助部分を除いて、土地建物に要した費用の償却費修繕費管理事務費及び損害保険料を加えたものを月割額で算出しておりますが、このため年度によりあるいは地域により家賃に差異を生じ、入居者もまたこれによって、家賃負担が必ずしも公平ではなくなっております。これを入居者世帯収入の一割を基準として収入に比例して家賃をきめます場合には、個々の建物について償却維持管理が成り立つようにするのではなくて、その地方公共団体の管理する公営住宅全体として経営が成り立つようにするわけで、従ってまた、住宅一定基準によって質が確保される以上、規模の大小によって家賃に等差をつけないことが可能になり、低額所持者であっても家族の多いものは、それに見合う住居が確保されるようになるわけであります。  第四に、公営住宅等建設費国庫補助率を十分の七に引き上げたことであります。すなわち、公営住宅並びに共同施設建設及び災害に基く補修についての国の補助率を一率に十分の七に引き上げ、地方財政の現況に応ずるとともに、公営住宅規模と質の向上をはかり、かつ新しい家賃体系に即応し得るようにしたわけであります。  第五に、入居者選定については、住宅困窮者登録制を採用したことであります。すなわち、事業主体ごと住宅困窮者登録制を採用し、被登録者のうちから、住宅困窮度家族構成住宅床面積、通勤の利便等を考慮して入居者選定することとし、その基準は政令で定めるところに従って条例で定めることにしております。その他、公営住宅または共同施設譲渡処分はできないようにしたこと、家賃減免措置を設けたこと等であります。  なお、家賃に関する新たな規定にかかわらず、既存公営住宅に入居している者については、従前通りにいたしておりますが、ただし、従前家賃新規家賃より高額なものにつきましては、その差額分だけ減額することとし、この場合地方公共団体既定収入不足を生ずる分だけ国が補助をすることといたしております。  以上がこの法律案提案理由及びその要旨でありますが、何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決下さるようお願いいたします。  次に、住宅公社法案提案理由及びその要旨を御説明申し上げます。  現在わが国住宅建設は、約四割が国の財政投融資などの助成によって行われているのでありますが、その中心をなしておりますものは、公営住宅日本住宅公団住宅、並びに住宅金融公庫融資住宅の三つであります。ご承知のように、公営住宅昭和二十二年以来、庶民に対するただ一つの低家賃住宅として、地方公共団体国庫補助を受けて供給して参っているものであり、また住宅金融公庫昭和二十五年、住宅建設に対する長期低利資金を融通する金融機関として、日本住宅公団昭和三十年、主として大都市周辺集団的耐火構造住宅建設と大規模宅地造成を行う機関として、それぞれ設立されたものであります。これらの施策のうち、住宅金融公庫は少額の頭金を有するいわば中産階級対象においたものであり、その貸付方針個人に重点おいてきたのでありますが、過去の実情を顧みますとき、個人建設力は、建築費の高騰に伴う自己負担金の増大と宅地取得の困難から、次第に立法当初の期待とは遠ざかりつつある感が強いのであります。  すなわち、その後事業会社建設主体となる産業労働者住宅あるいは地方公共団体公益法人並びに民間会社等の行う分譲住宅供給が行われるようになり、その比重が逐年大きくなってきていること、更に、日本住宅公団が設立されて、賃貸並びに分譲住宅を大規模建設するに至った経緯をみましても、その事情が看取されるのであります。さらに今日におきましては、住宅金融公庫から融資を受けて供給する住宅協会等賃貸住宅住宅公団建設する賃貸住宅、あるいは同じく公庫融資による産業労働者住宅住宅公団特定分譲住宅等、その性格供給対象において同種競合する面がきわめて多いのであります。すなわち、両者共通するところは、公庫公団自己資金または民間資金を活用して中流以上の所得階層に対する住宅供給、あるいは会社給与住宅供給している点であります。  翻って、わが国住宅事情現状をみますと、中流以下の所得者、とりわけ低所得者住宅困窮度が著しいことと、都市住宅個人住宅によって、いたずらに低平に広がり、市街地宅地の有効適切な利用が妨げられ、かつ宅地難に陥っていることであります。この解決のためには、一方に中高層公営住宅を思い切って拡充強化し、勤労階層住宅難に対処するとともに、他方低廉な耐火性分譲住宅を集約的に建設することによって、市街地宅地高度利用都市の健全な発達をはかる必要があります。  以上申し述べました観点から、現在の住宅金融公庫並びに日本住宅公団を一本に改組し、新たに住宅公社を設立し、国民大衆が健康で文化的な生活を営むに足りる住宅建設し、住宅困窮者に適正な価格長期割賦支払い方法で譲渡し、住宅難解決都市不燃化をはかるため、ここに本法律案を提出した次第であります。  次に、この法律案要旨について申し上げます。第一に、住宅公社性格法人とし、資本金全額政府出資とし、日本住宅公団並びに住宅金融公庫資本金を引き当てることといたしております。  第二に公社経営委員会を置き、公社業務運営に関する重要事項を決定する機関とし、委員建設大臣が任命することといたしております。  第三に、公社建設する住宅は、原則として四階建以上の耐火構造共同住宅とし、譲渡する住宅には、間仕切り、建具等造作を除いて分譲価格を廉価にし、それらの室内造作は譲受人がみずからの資力趣好に応じて行うようにしたことであります。  第四に、譲渡価格支払いは十年以上三十五年以内、年利五分五厘の割賦支払いとしておりますが、譲渡契約の日から十年間は一時支払いができないことにし、施設の不当なる利用を防ぐことにいたしております。  その他、公社の実施すべき分譲住宅建設五カ年計画公社業務、財務及び会計並びに政府監督等について必要な規定を設けるとといたしました。以上がこの法律案提案理由及びその要旨でありますが何とぞ慎重御義の上、すみかに御可決下さるようお願いいたします。
  6. 中山福藏

    委員長中山福藏君) ただいま田中一君の御説明になりました両案の審査はあと回わしにいたします。
  7. 中山福藏

    委員長中山福藏君) この際東北開発促進法案議題に供します。御質疑のおありの方は順次御発言を願います。  宇田長官にちょっとこの点についてお伺いしますが、宇田長官自身としてですね、まず東北開発のために一番最初に手を着けなければならぬものは何だとお考えになっておりますか。ちょっとまあ大まかな構想を示していただきたいと思いますが。
  8. 宇田耕一

    国務大臣宇田耕一君) 東北開発は御承知のように、行政のあり方といたしましては、経済企画庁審議会を設けて、そうして資源開発基本計画を立てるということになっております。この今後の東北開発は、今までと違いまして、新潟を新たに含めたということは非常に特別の意義がある、こう思います。特に福島県と新潟県との水力電気等エネルギー資源に関する非常な重要な地点をこの一地区に含めておくということ等は、長期エネルギー対策等も関連いたしまして、東北開発審議会の重要な題目になるのだろう、こう思っております。それは東北中心として、特に関東地方におけるところの電源問題に非常な大きな影響がくるものと、こういうように考えるのでありまして、東北開発即やはり日本心臓部に対するところの重要な経済的関連性を持っております。そうしてそういうような関連性条件をだんだんとよくするためには、東北のやはり開発なり、民度を高める、生活の水準を上げるということでなければ、本質的な東北経済的な開発推進レベル・アップが困難である、こういうふうに思っております。これが企画庁の当面の、すぐ取りかからなければならない、要するに開発計画を立てる、こういうことが一点であります。  その次に、御承知経済開発の問題につきましては、従来の興業会社を、東北開発株式会社と名前を変えることによって、経済活動を行わしめる、こういうことになっておりますが、これは単なる利潤対象経済母体というものではございませんで、非常に公社的性格を持っております。たとえば産業立地条件を整えること、それがためにはあちこちの東北に必要な港湾の整備等は、当然これはやらなければならぬし、また工業用土地の埋め立てや何かも行わなければならないところもある。その他産業立地条件を整えますための長期計画を立てまして、しかもそれが採算を非常にはずさないという基本の上に立っていかなければならない。受ける金融が無利子の金融ではないというところに一つ経済活動母体としての条件をもって、東北開発会社運営が必要である。それから行政面は先ほど申し上げました通り経済開発面におきましては、東北開発会社をもって活動をせしめる。  第三点はこれに対する金融政策でありますが、金融政策は従来の金融機関と抵触をしないように、そういたしまして、北海道東北金融公庫を活用いたし、そうして北海道開発に必要な金融東北開発に必要な金融のワクは、明らかに別にいたしてありますから、その金融機関業務の内容が紛淆を来たさないように、しかも東北のために約四十五億の金をうまく、しかも今までの既存金融機関と混雑せしめないように、運用いたさなければならない。そういうところでありまして、まずただいま申し上げました行政面処置のためには企画をすること、それが第一点であります。経済活動のためには、東北開発会社運営をうまくはかりたい。金融関係のためには、北海道東北金融公庫紛淆を来たさないような、既存金融機関と混雑を来たさないような金融対策を立てたい。これが取りあえず当面の取りかからなければならないことと思います。
  9. 中山福藏

    委員長中山福藏君) 重ねてお伺いしておきますが、宇田長官承知通り動力源欠缺というのが非常に重大な産業界影響を現在与えつつありますね。そこで幸いにして宇田長官原子関係担当責任者として、東北地方原子炉を設置して、その水力電気とか、火力電気不足をいわゆる電源を補う処置を講ぜられるというような、そういうことはお考えになっていないのですか。
  10. 宇田耕一

    国務大臣宇田耕一君) 東北地方はただいまお手元資料科学技術庁から差し上げたいと思っておりましたが、実はウランとか、トリウムの核燃料資源がかなりあるということはわかっております。従って科学技術庁におきましては、昭和三十一年度におきましては、鳥取県の人形峠中心とする調査をいたしました。本年度東北調査の一部分を主として使いたい。東北資源開発をはかりたいと思っております。それに必要な資料は整えてありますから、役所が違いますけれども、それは後刻見ていただきたい、こちらへ提出いたしたいと、こう思っております。  東北地方資源開発は、水力がかかなり豊富でありますが、東北大学を中心とするところの技術的な優秀な世界的な母体一つあります。従って東北地方開発は学問的には一つの基盤を持っておると私たちは考えております。それに調査したところによると、核燃料資源についてかなり希望が持てるものではないか、こういうふうに思っております。またそれと組み合せまして、新しく東北地方の後准性を改善するための長期燃料対策、あるいは資源対策考えなければならない。そうしてそれは経済企画庁だけではなくて、科学技術庁地質調査その他の方面を督励をして、本年度の予算の中からそれをさいて行いたい、こう思います。それで水力の水は——将来は原子力発電が一ぺん発電をしますると、一定レベル発電がとまりませんから、きのうおとといのアメリカのフォーラムの報告を見ましても、約四カ年ばかりは連続運転をする、しかもそれは出力はほとんど変りなくいく。七〇%ないし八〇%が出る。こういう発表であります、従ってダムにためました水は、ピークのときに必要な電気の補充のために水力電気を使うということに、電力行政方針を逐次変えていくことになろうと思います。そういう意味におきましては東北は非常に水に恵まれておりますから、基本原子力発電に求めていく、そしてピークのときのアジャスティングを水によって行う。そうなりました場合には、東北関東は非常に優位な態勢がとれる地区となろう、これはおそらく専門家の一致した意見のように伺っております。そしてどこにそういうものを配置するのが適当かということになりますと、やはりこれは非常な学問的な背景がありませんと、御承知のように、発電の途中でアイソトープ関係放射線関係の灰ができて参りますが、灰とは申しますけれども、これは非常に御承知のように貴重な新しい重要物資であります。またそれを大学を中心として分析をして、そしてそれを農村とかその他各方面に活用できるような利用方法考えていただかなければならん。こういうふうに考えております。従って東北開発促進の中の審議会にかける計画の中には、当然そういうことをわれわれは含めて、そして従来の企画に出ておりません面をここに織り込むことによって、東北独特の一つの力がありますから、その力を国全部の経済エネルギーのために特にこれを引っぱり出していきたい。関東と非常に違う東北特殊性近代性というものはそういうようなところにあると思うのでありまして、御指摘のようなエネルギー資源に対する対策だけを考えてみましても、これが促進という意味の最も大事な促進をはからなければならない点じゃないかと、こういうように考えております。
  11. 中山福藏

    委員長中山福藏君) どなたか御発言ありませんか。
  12. 石井桂

    石井桂君 東北興業株式会社セメント事業についてですが、御報告が出ておりますが、昨年度この法案を通すときに非常な困難があった。そこで昨年度事業がうまく進捗しておるかどうか、また本年度はどういうふうにそれを続けていくのか、それを資料——これは広範な資料ですから、何か簡単に御説明願いたいと思います。
  13. 植田俊雄

    政府委員植田俊雄君) 私自身も、御承知通りこの仕事に正式に関係いたしますのは、この法案が成立いたしてからでございますので、私が承知している範囲について申し上げます。  敷地につきましては、御承知通り岩手県の東山村を選定いたしまして、敷地の交渉も地元でやってくれるわけでございますが、これも終了いたしましたし、それから地盤のボーリングも終っております。それに関連いたしまして、鉄道の側線を入れるわけでございますが、その工事も着工中でございます。それから石灰山ボーリング、これも完了いたしております。  ただいま残っている問題といたしましては、シャフトキルンがドイツから輸入されて、荷物の暫くのを待つばかりでございますが、これも御承知のことかと存じますが、昨年小柳理事ドイツへ参りまして手続をして参りましたので、本年の六月には初めての荷物が積み出しされることになっておりますので、本年の秋には到着することになっております。  また原石を粉にいたします機械でございますとか、クリンカーを粉にいたします、ミルでございますとか、こういうものの発注もすでに国内メーカーに出しております。この面につきましては最近の鋼材値上り等もございまして、若干建設費は高くなる見込みでございますが、建物その他節約できるところを節約するといたしまして、ただいまのところはその方の製作も順調に進んでおるわけでございます。  当初の予定といたしましては、本年の幕には操業開始できるつもりでおりましたのでございますが、若干ドイツに対する機械発注がおくれたりいたしました関係で、操業開始は来年の  一、二月のころになるのではなかろうかと存じております。  またこれに対する資金手当の問題でございますが、九億の政府保証の社債につきましては、三十一年度中に全部調達いたしまして、これは会社手元におきまして定期預金をいたしております。なお御承知通り、三十年度、三十一年度を通じまして政府出資が三億ございました。これは入っております。また東北六県が資金運用部から金を借りまして、会社融資いたします金額が二億ございますが、これにつきましても手続が進捗中でございまして、六県のうち五県まではすでに金が会社の方に入っておる、一県も目下手続中ということでございまして、金融的に申しましても、建設段階におきましても、比較的順調に進んでおります。  ただ問題は、最近の鋼材値上り等に伴いまして、若干の建設費増高を来たす傾向がございますが、これも建設省当局から聞きますと、一億数千万円の資金がよけい要るんじゃないかということを申しておりますが、この程度の金でございますれば、今回増加いたします二十五億の資金でまかなわなくても、別途市中金融機関等から借りまして運用できるのじゃないか、従いまして、二十五億に予定されております三十二年度新規計画には支障を来たさないで、セメント事業は来年の一月になりますと操業を開始できると、かように考えております。
  14. 大河原一次

    大河原一次君 大臣にちょっとお伺いしたいのですが、これは旧来からございました国土総合開発法、これがすでにあっておるにもかかわらず、あえて今回この東北開発促進法というものが考えられたということ、すでに今日までは御承知のように国土総合開発法によって、いわゆる二県以上に及ぶ地方開発計画に対しては、これに国土総合開発法による手当をしなければならない、促進しなければならないという考え方に立っておるわけでありまするが、今回この東北開発促進法というものがさらに法案として出されたという関係の問題ですが、これを一つお聞かせ願いたいと思います。
  15. 宇田耕一

    国務大臣宇田耕一君) 今一の東北開発の問題は、御承知のように金融機関としての新しい開発方法を講ずる、そうして経済開発母体としては東北開発会社公社的性格を持たせて、産業立地条件を整わせれば、その母体としての特別の活動を持つ、そうしてそういうものをあわせまして、この行政官庁経済母体金融母体と、こういう特別な機関をそれぞれの政府出資等をもって整理をしながら総合的な運用をはかりたい、こういうふうな特別な機構がこの中に含まれて参りますし、また歴史的に、従来ありました東北興業を強化するというようなことも含めて、東北開発それ自身重要性一つまとめ上げたい、こういうことになったわけでありまして、各十九地区中心として考えておりました従来推進しておりますところの開発、あるいは国土総合開発計画に基くところの開発等の中における一つの、これは東北七県の特殊性にかんがみて新しく生まれた総合的な特別な立法と、こういうふうに考えていただきたいと思っております。
  16. 大河原一次

    大河原一次君 いま一点お伺いいたしますが、そうしますと、今の大臣のお言葉から考えられることは、結局東北という特異な、いわゆる後進性を持った地域であるがゆえに、従来の国土総合開発法に盛られていなかったそういう一つの要素を盛って当らなければならない、こういう考え方ですか、そういうふうに解釈していいですね。
  17. 宇田耕一

    国務大臣宇田耕一君) 原則、根本はそう思っております。
  18. 大河原一次

    大河原一次君 聞くところによりますと、すでに東北七県の方におきまして、いわゆる連合いたしまして、すでに企画庁の方に、これはもうよほど前のことですが、すでに連合して東北地方開発に関するいろいろの企画をして企画庁に出しているというふうに聞いておるのですが、どのようなものが出されておるか、お伺いいたします。
  19. 植田俊雄

    政府委員植田俊雄君) お話のございましたように、東北七県は開発に従来とも非常に熱心でございまして、国土総合開発法に基く地方計画の案を一応審査をいたすために提出いたしておりますことは事実でございます。これにつきましても、私どももかねてからこの内容を検討しないわけでもございませんが、何分にも県から県のそれぞれの言葉は適当でございませんが、希望するところといいますか、思いつきと申しますか、そういうふうに県単位のものをただ集合したというふうな格好の計画でございますと、どうしても計画が膨大になりがちでございます。国としてどの程度これを縮小せしめていくかどうかというような点にも非常に苦しむような点もございます。また御承知通り全国総合開発ができて、東北地方の受け持つべき経済上の地位等もまだきまっておりませんので、今まで審査をいたしかねておったような事情にあるわけでございます。今回のこの法律によりまして、東北開発促進計画をいたしますものは、そういった県から出してきたものではございませんで、国が今回の法律によって経済企画庁審議会の議を経て決定いたします促進計画は、地方の方から出してきたものを審査するという形でございませんので、もちろん地方の意見も聞くことはお聞きいたしますけれども、国の立場から東北地方開発計画を作っていく、こういうことになるものでございまして、従いまして、県の地域というものは当然考えますけれども、県間のバランスとかそういうことにこだわることをできるだけ少くいたしまして、そうして東北地方の重点的な開発計画をやって参りたい、こういうふうな気持でございまして、そのやり方につきましては、また計画の内容につきましては、若干北海道のやり方とは違って参るかと思いますけれども、ものの考え方におきましては、北海道は特に北海道開発法に取り上げ、あるいは首都圏地域は首都圏の計画の法律がございますが、あの法律に取り上げたと同じような気持で、東北地方一つの全体の区域として取り上げて計画を立てて参りたい、かように考えておるものでございます。
  20. 大河原一次

    大河原一次君 ただいまの御答弁の中から伺えることは、そうしますと、すでに出されておりました国土総合開発法によって東北の七県の諸県が開発のための全計画をすでに出しておるにもかかわらず、実際的にはいろいろな諸般の事情から十分に手当がされていなかったということが伺えるわけですね。そうしますると、今回出されております東北総合開発促進法というものは、そういういわゆる国土開発法によってでき得なかった点に対して、あわせてその従来の実績に対する十分な批判と検討が加えられた上で、今後新たなる構想に基いて再出発したものであるということに解釈してよろしゅうございますか。
  21. 植田俊雄

    政府委員植田俊雄君) その通りでございます。つけ加えて申し上げますと、現在経済企画庁では経済計画の改定をいたしておりますが、この経済計画のできますとほとんど時を同じくいたしまして、全国総合開発計画をきめまして、全国総合開発計画は、東北関東、中国、四国、近畿等、こういうふうに八つのブロックに分けまして、それぞれの地域の産業経済上受け持つべき役割をきめて参りますので、そういった片方で総合開発計画あるいは経済計画を立てておりますので、そういう目で見まして、重点的に東北開発促進する計画考える、かように考えておるわけであります。
  22. 大河原一次

    大河原一次君 そうしますと、今回の東北総合開発法というものは、国土総合開発法の一環としてという意味でのものではないと、全く別個のものだというように解釈していいのですね。この点もあらためて念を押しておきたいと思います。
  23. 植田俊雄

    政府委員植田俊雄君) 国土総合開発という観点から申しますれば、国土総合開発の一環でございます。北海道がやはり国土総合開発の一環でございまして、北海道の即発計画と全体の経済計画との調整は、経済企画庁が調整をすることになっております。今度の東北開発につきましても、東北開発計画と全国の経済計画との調整もやはり経済企画庁でいたしております。従いまして、国土総合開発という観念におきましてはその一部でございますけれども、その中におきまして、すでに取り上げられた北海道同様に、東北地方を特に重点的に取り上げて参る。法律の体系から申しますと、国土総合開発法の特別法としてこの東北開発促進法があると、こういうふうに御理解願っていいかと思います。
  24. 大河原一次

    大河原一次君 わかりました。そこでお伺いしたいのですが、この法案の中に出ておる二の場合の「開発促進計画は、東北地方における土地、水、山林、鉱物、電力」云々という、この資源の総合的な開発促進ずる計画を立てるものであるとありまするが、特に御承知のように、東北は先ほども申し上げましたような特異な後進地域であることは御承知通りでありますし、特にこの東北地方における特異性、後進性というものは、今日私が申し上げるまでもなく、全くこれは長い間にわたって明治維新以来から今日までの間において、政府の政治あるいはまた行政面における何といいますか、大きな一つの欠除から、このような後進性が依然として継続されておるということが明らかであるし、全く当時の政府がとっておりましたいわゆる大陸経営のためのいわば犠牲に供せられたといっても過言ではないと思うのであります。従いまして、今日この後進性の中に占めておる問題として考えたときに、今言ったような「土地、水、山林、」というものの中において特に土地の問題、土地利用という問題と、地下資源開発という問題が特に重要視さるべきではないか、私はそういうふうに判断するわけであります。  そこで、昨日いただきましたこの資料の中にも東北七県における耕地及び林野面積総括表というのが出ておりますが、山林、原野を合せましてこれは五百四十四万町歩になっております。全国比におきまして二二%を占めておる。一方耕地におきましては百万町歩であります。全国比が二〇%であります。こういう状態を考えましたときに、東北というものは全く農業比率の多いところの地域である。ここにもまた一つの後進性がありますし、こういうことを考えましたときに、私どもはこの土地という問題、特にこの山林の面におきまして、山林、原野におきまして五百四十万町歩を占めておると、こういうことを考えましたときに、ここにやはり重点的に総合開発の施策を注ぎ込まなければならないだろうと考えておるのであります。御承知のように特に山林の面におきましては、これは農業改革の面からはずされまして、いうところの、いわば終戦後における農業の封建性は山林に逃げ込んだとまで言われておるのはこういう状態であります。従いまして、特に東北の場合を考えましたときに、山林という問題に対して大きな目を開かなければならないと考えておりますが、この東北総合開発の中には資源開発云々ということを考えられておりますが、土地利用云々という問題に対しては十分に取り上げられていないというふうに考えられておりまするが、この面に対してはどうお考えになっているか、その点を一つお伺いしたい。
  25. 植田俊雄

    政府委員植田俊雄君) 地方の開発にいたしましても、産業の開発にいたしましても、基盤になりますものは資源でございまして、資源の名前をここに列挙しただけでございまして、東北での一番大きな資源はやはり土地でございます。それから東北地方の増加いたします人口を吸収するためには第二次産業を導入し、また第三次産業の導入によりまして、産業構造を全国並みに引き上げるように努力することはもちろんでございますけれども、しかし第二次、第三次の産業のみで決して東北地方のふえる人口を吸収できるはずでもありません。ただ御指摘のございますように林野、林野の中で特に原野ということになりますと、この中には開墾可能な所は北海道に次ぎまして東北が一番多いのではないか、かように考えておるのでありまして、こういったところの開墾、あるいは既存の耕地の改良、こういうものも第二次産業の振興とあわせて大いに計画を立て、実行しなければならぬものと考えておるわけでございます。
  26. 大河原一次

    大河原一次君 大臣一つお伺いしたいと思うのですが、今政府委員の方から御答弁がありまして、幾分わかったのでありますが、私はさらに積極的にお伺いしたいのですが、非常に東北におきましては、最近再び数多くの離農者が、農業を離れていくのも事実でありますし、あるいはまた、せっかく開墾をして入植者があったにもかかわらず、入植者がこれまた相当数、数は控えておりませんが、出ておるのですが、相当数入植者が減っておると、こういう現状でございます。これは、みないわゆる国有林野の払い下げ等を取り上げても、十分に行われていない。やむを得ずして絶対耕作面積、耕地面積が少いために、結局農家ではやっていけないということで、そういう離農者が出、また入植者が減っていく、こういう現状である。ところが一方には、先ほど言ったようないわゆる五百万町歩に及ぶところの山林を控えておる。こういうところを考えましたときに、やはり東北の総合開発を真剣に考え、いわゆる後進性を克服することを真剣に考えるならば、もっと山林というものに対して、抜本的な対策を講じなければならないというふうに考えておるのです。  そこで大臣にお伺いしたいことは、いわゆるこういう相当数、全国におきましても、山林が六八%を占めておる、こういう状態であるし、特に東北におきましては、その比較が高いというこういう現況を考えましたときに、この山林に対して、いわゆる国有林ですね、しかも、さっき申し上げました五百万町歩に及ぶこの東北の山林の中には国有林が大体半分近くあると聞いておるのです。私は数字は持っておりませんが、大体半分近くある。こういうことを考えました場合に、すなわち私有林も半分はある。私は私有林に対して今すぐ飛躍的な考え方を持っておりませんが、少くとも国有林に対して、やはり国有林の解放というようなことを私は、飛躍する質問であるかもしれませんが、こういうことは思い切った政策を掲げなければ、せっかくの東北開発というものは、やはり絵にかいたもちになるのではなかろうかということを憂えるのであります。こういう点に対しましては、あるいは将来においてはどうするか、近い将来におけるこの山林に対する企画庁長官のお考えをお述べ願いたいと思います。
  27. 宇田耕一

    国務大臣宇田耕一君) 東北開発促進法についてただいま御指摘になった点は、非常に重要な点とわれわれは考えております。そして特にこの点につきましては、衆議院で付帯決議がありました。御存じかと思いますけれども、こういうふうに書かれております。   一、東北における農業の開発、又は畜産の振興上の必要により、国有林野について売払、貸付又は使用に関し関係県知事の意見の申し出があったときは、国は国土の保全上支障のない限り、総合的な土地利用の見地から、知事の意見を尊重して、国有林野の売払、貸付又は使用について十分配慮すること。  右決議する。  こういう付帯決議があります。従って、われわれはこの付帯決議に沿いまして、各府県知事とももちろん話し合いをいたしまして、また東北開発会社の定款の範囲内において、これはもちろん木材等の利用に関する工業につきましては、積極的に開発考えなければならぬ。また金融機関等につきましても、金融公庫の営業の範囲内で積極的にこれは融資をしなければならぬ。ということは、付帯決議の趣旨に沿いますと、これが最優先する条件ではあると、こういうふうに思っております。従いまして、これに対する具体的な計画審議会等におきまして至急に立てまして、皆さんに御審議をいただく機会があるかと、こういうように考えております。
  28. 大河原一次

    大河原一次君 最後にもう一つ大臣にお伺いしたいのですが、今回の東北総合開発促進法の中にはいろいろ土地、水、山林、鉱物、電力というようなものに重点的に、この資源開発ということに置かれておりますが、一面これもやはり長い間のいわゆる行政施策の欠陥から取り残されておる問題は、やはりこれは全国的にもそうだと思いますが、いわゆる災害の問題、これは災害の復旧が実際なされないで、置き去りにされておる、なおざりにされておるという実情であります。東北の農民の方々は非常に困っておるし、そこへきて年々歳々災害がふえておるという現況でありますが、そういう点もあわせて、東北総合開発の中で促進すべき問題ではなかろうか。それが総合開発の問題だと思いますが、こういう災害復旧等に対してはどのように考えておられますか、この点を最後にお伺い申し上げて、質問を終りたいと思います。
  29. 宇田耕一

    国務大臣宇田耕一君) 災害復旧ないし災害防除等につきましては、当然われわれはそうあらねばならぬと考えております。そうして復旧の終らないうちに新規災害が起ったり、また新たなる負担が加えられるということがありますから、そういう点につきましては、それぞれの機関を通じまして、できるだけ早期に復旧を期待するような対策考えなければならぬ、そういうふうに思っております。
  30. 大河原一次

    大河原一次君 最後と申しましたが、もう一回。審議会委員は三十五人以内で組織するということになっておりますが、この中で学識経験者でありますか、学識経験者が入っておるわけですが、この学識経験者の問題については、先般の委員会において中山委員長の発言がありましたが、私は非常に中山委員長の発言は重要視さるべきだと思うのであります。特にこういう開発促進という新しい見地に立った雄大な構想のもとにおいては、単に今日までの経験者というようなこと、そういうことだけではいかぬ。やはり一つの独創的な考え方に立ったそういう委員会でなければならないと、私はそう思います。そういう意味では、単なる今日までの学歴上の経験、あるいは単に経験からくるそういうものだけでは十分でないと思うのでありますが、この場合の学識経験者、お考えになっておる学識経験者というものは、どういうものを選ばなければならぬということを、そういう点のお考えがあったら、お示し願いたいと思います。
  31. 植田俊雄

    政府委員植田俊雄君) 学識経験者の委員の任命の問題でございますが、ただいまのところ、まだその選考に入っていないわけでございまして、御趣旨の点を十分尊重いたしまして、この人選に当りたいと存じます。なお学識経験者は、御承知通り、法文にございます通り八人でございまして、学識経験者に足りないものがございますれば、専門委員という制度もございます。こういう方に多極多彩なる、特にただいまもお話のございましたように、開発というものは、単に現状だけで満足するという考え方ではできないわけでございまして、ある程度夢を見なければいけない、そういう夢を見、また、いわゆる役人等で思いつかないいい構想を考えていただくような方を、学識経験者としてこの委員にお願いすることができない場合におきましては、専門委員にでもお願いいたしまして、そういう方々の意見が明確に反映できますように措置して参りたいと存じます。
  32. 大河原一次

    大河原一次君 そこで私一つ思うのでありますが、実はイタリーの場合において、イタリーでは労働団体が中心になられまして、いわゆる労働プランと称して、労働組合の職員がいわゆる電源開発の構想を作り上げ、りつぱになし遂げておるという事実を私は知っております。そこで、日本でもそういう独創的な立場に立って、私は何も労働者の代表でなくてもいいわけでありますが、農民の代表、農業の団体、あるいは労働者の代表が、こういうあとで出てくる専門委員でもいいのですが、専門委員等に入れるお考えがあるかどうかをお聞きしておきたい。
  33. 植田俊雄

    政府委員植田俊雄君) 審議会委員にいたしましても、専門委員にいたしましても、大臣の任命になるわけでございまして、私から御答弁申し上げるのはおかしいわけでございますけれども、そういう点も十分研究の中に入れて考えたいと存じております。
  34. 大河原一次

    大河原一次君 質問を終ります。   —————————————
  35. 中山福藏

    委員長中山福藏君) この際、御報告申し上げます。  本日、山口重彦君が辞任され、補欠として小笠原二三男君が指名せられました。   —————————————
  36. 中山福藏

    委員長中山福藏君) 委員長から一つ大臣にお伺いしておきますが、東北開発というのは輸送関係に非常に関連してくる。幾ら資源開発したところで、大体その過半というものは輸送力に待たなければならぬと私は見ておるのです。先ほども前鉄道大臣をしておられました村上先生にいろいろ聞いたのですが、どうも輸送力が不足のためにせっかくできたリンゴというものを送ることができず、海の中にはうらなければならぬ。今知事もここへ来ておりました。青森県知事も。そうすると、せっかく資源開発しても私は全くほんとうの水の中にほうる、水のあわになってしまうわけです。それからそのリンゴ箱を一カ年に二千五百万箱ばかり作るというわけですね。今もその箱の材料というものは不足して九州から持ってきておるという、こういうことから考えてみますと、これは相当輸送力というものを開発しなければならぬ。おまけにセメントというものを今度開発しようとしておられますから、セメントが幾らできても、ある場合には間に会わない場合があるのではないかと思うわけです。ですから運輸省と御交渉になるか、あるいは調整的な立場に立たれるという大臣としては、その点についてどういうふうなお考えを持って臨まれるつもりでしょうか。一つお示しを願いたいと思います。
  37. 宇田耕一

    国務大臣宇田耕一君) 輸送については、もうわれわれの大先輩のエキスパートがおられるのですから、これは釈迦に説法になるのでしょうけれども、実は鉄道につきましては、従来の方法だけでは不十分というので、五カ年計画をもって新しい能率を上げるための手を打っておりますが、長期計画といたしましてはこれを複々線にするという計画を持っております。東北地方の一番の弱点はそこにあって、そうして北海道との海底連絡は約六百億という計画でありますが、北海道との海底連絡を仕上げて、そうして複線によって鉄道輸送の能率を上げるということの長期計画を持っております。しかし、とりあえずは操車とか、あるいは貨車繰りとか、そういうことによって緊急対策を講ずるように、また鉄道だけに荷物のロードをかけるというのはどうも不合理でありまして、戦前うまくやっておりました港湾——小型船舶によるところの輸送対策というものが、これがあわせて日程に上ってこなかったならば、陸上だけでこの輸送隘路を解決するということは本来の使命から見て不合理な面があるようにも思うわけです。荷物の動き工合から判断をいたしてみますと、やっぱり水上輸送の合理化をはからなければならない点が多い。従って港湾等の整備は緊急を要するものではないかと考えております。それにあわせまして、何といいましても最近は特にトラックその他の短距離輸送についての非常な進歩がありましたから、道路、特に弾丸道路の計画は先般来もう軌道に乗って参りまして、最近これの実現をはかるというところまできておるように思います。その点につきましては金融面に影響がありますが、道路を対象とするところの外資の導入ということがあり得るかどうか。そういう点につきましては、ただいまそれぞれの機関を通じて外国との交渉もいたしております。  いずれにいたしましても、鉄道を中心として、船舶ないしトラック等による陸上輸送の円滑化を積極的にはからなければならぬ。東北は特にそういう意味で産業道路、そうして弾丸道路と言いますか、スピード・アップのできるような道路計画を重点的に先にこの地区で取り上げなければならぬのである。それを実行に移すということに建設省を中心として、これは皆さん御承知のような経過であります。そういうようなところで、輸送対策は三つの面を主として総合的に考えながら、そうして資金対策を国際的にも考えて今考慮中、こういうわけでございます。
  38. 中山福藏

    委員長中山福藏君) もう一点聞いておきますが、宇田長官は調整当事者としてここに法律上現われておるわけですね。その調整でまとまらないときの決定権は総理大臣にあるのですか、あなたにあるのですか。どっちなんですか、それは。
  39. 宇田耕一

    国務大臣宇田耕一君) 形式上、法律上は、それは総理大臣にあります。実際の運営は、われわれは関係省と話しをしながら経済企画庁で大部分の調整はできます。しかし問題点によっては総理大臣を含めて閣議の前後に、ほとんど月に何回かそういう問題について突っ込んだ話を総理を中心として事実上はいたしております。法律上、形式上は総理に一々形式的の伺いをたてるということは、する以前に十分われわれで各省との連絡はいたしております。そうしてどうせ問題点が総理と一緒に話した方が解決が早いと判断した場合には、遠慮なしに総理を交えて決定するような具体的な話し合いを進めて参っております。
  40. 中山福藏

    委員長中山福藏君) はっきりしないが、もう一点だけ植田さんに聞いておきますが、今松の木がリンゴ箱に一番いいという話を聞いたのですが、大体国有林が大河原君の質問によりますとあるのですね、その松を払い下げるという便法を講ぜられておるかどうか、九州から持って来ておるというのですがね、これは一つ念を押しておきます。
  41. 植田俊雄

    政府委員植田俊雄君) 東北地方の国有林におきましては、広葉樹が非常に多いのでございます。松の木もないことはないかと存じますが、しかしこれはある程度樹齢に達しませんと、伐採もできないわけでございますので、あるいはそういった事情でただいまお話のような事情もでて来るかと存じます。詳細な決定的な今のお答えを申し上げる資料調査して、この点は御意見のあったところを林野庁に伝えておきたいと思います。
  42. 中山福藏

    委員長中山福藏君) 取りあえず至急御調査になって、非常に開発に大きな影響のある問題と思いますので、至急措置されるよう願います。  それからもう一つ長官に聞いておきます。ただいま資料をいただきましたウラン、トリウム、この産地の一覧表ですが、リチウム関係では東北ではお調べになっておりませんか。
  43. 宇田耕一

    国務大臣宇田耕一君) 何ですか。
  44. 中山福藏

    委員長中山福藏君) リチウムの関係は出ていないようですね。これはどうですか。
  45. 宇田耕一

    国務大臣宇田耕一君) もちろん調べております。地質調査所を通じて調査はいたさせてありますので、これはウランとトリウムだけを限ってここに掲げて、参考に便利なような方法を取ったわけで、それの一覧表であります。ほかの資源に関する調査をもし御希望でしたら、あとから調製させて差し上げていいと思っております。
  46. 中山福藏

    委員長中山福藏君) リチウム関係がありましたらいただきたいと思います。これはほかの関係なんですが、リチウムだったら被害が少いのですから、もしこういうデータができておれば一応いただければけっこうだと思います。
  47. 宇田耕一

    国務大臣宇田耕一君) その点につきましては、御趣旨に沿いまして、私の方の手元にあります資料は全部整えてあとから差し上げます。
  48. 西田信一

    ○西田信一君 宇田長官一つ御質問申し上げますが、ただいま委員長から東北開発の推進のために、交通の整備が非常に重要であるということのお尋ねがあり、それに対して鉄道の復々線の問題、あるいは弾丸道路の問題、あるいは青函隧道の問題のお話がございました。そこで青函隧道の問題についてはすでに調査が終ったように聞いております。運輸省当局においても急速に案を作って、資金計画あるいは事業実施計画を作るという考えを持っておられるように聞いております。これはひとり北海道のみならず、東北、北海道両地方に重大な関係がございまするし、この実現も非常に急ぐ必要があろうと考えるのでございますが、しかしながら相当大工事であり、また資金も相当要するわけでございまして、その事業実施の方法というか、計画といいますか、どういう形でやるのか、あるいはまた資金をどのように調達するかということについて相当問題があろうと思うのでありますが、東北開発を所管される大臣として、また、ただいまのお話のように、交通整備に対する立場からどのようなこれに対する構想を大臣としてお持ちになっておられるか、伺っておきたいと思います。
  49. 宇田耕一

    国務大臣宇田耕一君) その点につきましては内閣でも非常に積極的にこれを取り上げて解決をはかろうということが一致した意見であります。そしてこれには運輸大臣建設大臣、特に大蔵大臣等が総理を中心としてそれぞれの責任の範山内において、具体的にそれぞれ交渉をいたしております。国際的な金融等につきましては、世界銀行の総裁等も見えておりますから、大蔵大臣の話の中には必ずそれは含まれておるはずだと私たちは考えておりますけれども、経過の途中でありますので、果してそれがどういうふうな話の経過かということにつきましては、窓口を一本にしぼって、大蔵大臣が連絡に当ってもらっておりますから、ただいまのところ、その点についての見通しはどうかということについては、第二義としてお考え願いたいと思います。いずれにいたしましても、国内において来年度以降のおそらく予算体系の中にこれを積極的に取り入れていかなくてはならぬというのは、運輸大臣はたびたびそういうことをわれわれに話しておりますし、私たちも全幅そういうことをやらなければならぬと考えております。そうして北海道と東北と別々に開発するような、行政母体は持っておりますけれども、北海道の開発はやはり東北開発が伴わなかったならば、全然一二階に対するはしごをはずしたようなことになりますから、東北開発促進をわれわれがここに提案をせざるを得なかったのは、北海道に対する実際はパイプをつけるという非常に深い意味がありまして、そういう意味で合せて一本というように考えております。それの一番のネックは、何といっても輸送であるということはこれは決定的だと思うのであります。ただいま申し上げましたような各省、特に責任個所を中心として、われわれも連絡等をいたしまして、その趣旨に沿うように、それぞれ具体的に来たる年度までには何らかの頭を出してくるように、そしてそれが短期間の間に仕上りますように交渉はいたしております。
  50. 中山福藏

    委員長中山福藏君) 他に御発言はありませんか。
  51. 田中一

    田中一君 北海道開発が単行法で出る際に、私はなぜ東北を飛び越えていくのかという点について、ずいぶん政府に対する質問をやったのです。そうして、ことにすべてが東北を置き去りにして北海道にいく。これはむろん当時の政府の政略的な何らかがあったと考えておりまして、北海道開発については、われわれは正面から反対したものなんです。従って東北開発がとりあえずこのような形でもって総合的な開発をやろうということになったことは、われわれも非常に共感をおぼえるものであり、かつ、おそきに失するという気持を持っているわけです。ただ今度の東北開発の問題も、多分に政略的な意図があるのではなかろうかという懸念を持っているわけなんです。むろん自民党では広川さんを中心にする特別委員会を作り、われわれの方でも同じような特別委員会を作ってやっておりまして、大体においてこの設立の趣旨というものは賛成をしております。しかしながら、もしも関東地区において、あるいは中部地区において、あるいは四国において、九州において、各地においてこのようなブロック的な総合開発というようなものが、促進法が単行法でできまして、八つなり九つなりに分割されてできた場合に、長官としてはそういうものは望ましいと考えておるのですか。それともそういう傾向にあるのだから、ぜひ現在あるところの国土総合開発審議会、これはこれとして、各地区にそのような機関を持つことが望ましいという考えでいるのか、将来また地元からそのような請願と申しますか、運動が起った場合に、政府として取り上げて、それを逐次作っていくんだというような構想でおられるのか、その点をまず伺いたいと思うのです。
  52. 宇田耕一

    国務大臣宇田耕一君) この東北開発で、今回非常に新しい傾向は、新潟東北の中へ含まれたというようなことは、非常に特徴のある団体編成の方法であったというふうに私は思います。それは新潟県の持つ、たとえば水資源だけを考えてみましても、東北とこれを切り離してはいけないじゃないかという経済的な非常な重要条件を含んでおるので、エネルギー対策から見ると、新潟県は東北へ入れておかなかったならば、東北開発に当然プラスになるものがプラスにならない面が起り得るんじゃないかというふうに見まして、これに新潟県が入ったのは適当であったと私たちは考えております。そういう意味で最近の経済は昔の行政単位で考えるというよりも、むしろ重要なエネルギー資源等その他から考えますと、全国各地区における開発計画の中で特に水の価値の高くなったこと、本年のアメリカの大統領の教書を見てみましても、水一滴といえども、これを合理的に使わなければならぬというふうなのが出ております。それで科学面はもちろんでありますが、エネルギー面におきましても、日本人は水に対する配慮が非常に浅いじゃないかと思われる面が非常に多くなっておる。近代文明では水の利用が非常に重要だと、こういうようなことが言われておりますから、そういうような観点からだけ考えてみましても、関東関東あるいは近畿、北陸、四国、九州、中国というふうに経済単位を従来の行政単位よりも大きくして、そうして資源利用の合理性を求めるということが逐次必要になってくるんじゃないかと思われます。  ただいま御指摘になりましたように、東北開発、北海道の開発が多分政治的な配慮の背景を持っておったんじゃなかろうかということをおっしゃいましたが、それも私は否定をできないものと考えます。しかし、それを政治的な感覚を持ちながら取り上げてきた本質的なものは、やはり近代的な科学の進歩に伴うところの総合開発の背景が、そういうふうなブロックを対象としなかったならば、本格的な経済開発を目標とする場合にはなかなか成り立ちがたかったというふうに私は思われます。従って、今後関東ブロックでありますとか、あるいは北陸ブロック、近畿ブロック、四国ブロック、九州ブロック、あるいは中国ブロックということは、これは当然考えられる日がくるであろうと思われます。それがどういう形でもって現われてくるかということは、地区別の経済的ないろいろな条件によって変るだろうというふうに概略考えております。
  53. 田中一

    田中一君 私はこういう傾向は政治の貧困を証明するにほかならないと思うのです。御承知のように、国土総合開発というものは、むろん個々においては十九の特定地域というものを指定して、個々に早期開発、早期経済効果を上げようという意欲がほの見えております。私ども四、五年来国土総合開発審議会委員をずっと続けておりますけれども、結局政治の貧困から北海道開発という問題が単行法によって取り上げられたということ、同時にまた東北開発というもの、あるいは中部、九州、四国、その他のものができるということが、その傾向が好ましいということになると、結局、経済というものは、東北なら東北七県のみで日本経済をささえるものではない。従って全国計画というもの、これが確立しなければ地方計画があり得ないのです。戦後、全国計画の唯一の政策として取り上げたのは国土総合開発です。これが分割されるということは、私は、政略と戦後十カ年のこの政治の貧困からそこにいかざるを得なくなったということを指摘せざるを得ないのです。  そこでお伺いしたいのは、国土総合開発審議会という全国的な計画はございますけれども、この内容たるや、これは今言う北海道とか東北とかという区域のほかに、なお細分化したところの地域を対象としているのが現状なんであります。従って、屋上屋を架すような機関を数々持つことが、国土の開発経済的なプラスの面が増大するという考え方からきているものではないと私はこう考えておるのです。東北開発——今回のこの立法化の問題については私賛成です。賛成なるゆえんは、北海道開発というものがあるから賛成なんでございます。そうして、これが今宇田長官が言っているように、国全体を八つなり九つなりに分割して、そうして高度の経済効果が生まれるということは、これはかえってマイナスになる面の方が多いのではないかと思うのです。御承知のように、すべての都道府県の長というものは民選でやっております。その知事は、東北七県の知事も、新潟県のために福島県の知事がおるわけではございません。どこまでも福島県の知事は福島県の県民の利害の上に立って新しい行政を行うということになるわけなんです。従って、傾向として生まれる各地のブロック的な総合開発事業というもの、これと現在長い歴史を持っております国土総合開発というこの事業関連性ですね、どういう工合に調整しようとするか。ことに、先ほど大河原委員も質問しているように、学識経験者というものが、全国的な視野から見るところの練達者と、地方的な面から見るところの練達者というものは、これは日本のような小さい島では違いがないのです。同じことなんです。私は、どこまでも屋上屋を架すような方向に向っているんじゃないかと思うのです。従って、国土総合開発というこの事業と、部分的にできるところの北海道、東北等との調整と申しますか関連性と申しますか、そしてよりよい日本再建のための経済効果を生み出す方途というものはどういう形で求めようとするのか。どういう運営によってその効果を発揮しようとするのか。私は、これはもう大きな問題ですから、宇田長官、先ほど委員長の質問に答えて、総理大臣が主務大臣でありますけれども、事実においては私がいたしますと言うから、総理大臣の意思をつぐものとして、長官から率直に、それからまじめに、そういう点についての御見解をお示し願いたいと思うのです。
  54. 宇田耕一

    国務大臣宇田耕一君) 国土総合開発計画は、当然これは持たなくてはならない基本の問題と思うわけです。それには、非常にこの作業をするのに困難な、資料の不十分な点もあるのです。その一例が昨日申されました、御審議願った土地調査だけを考えてみましても、九十億くらいの金を使って短時日に仕上げたいつもりでありますけれども、なかなかそれがうまくいかないというような点もあります。そういう意味で、そのほかにもまだ何点か問題点がありますが、従って、総合開発計画のこの正確さといいますか、正確度といいますか、そういう点につきましては、相当な不十分な点も現われる原因を持っております。そういうわけで、われわれはこの経済五カ年計画を新しく立てます。それはことしの九月ごろまでに立てますが、経済五カ年計画考えておりますることと、そうして国土総合開発計画の期待しております点と計画の立て方が違いますから、それぞれ別の方式によってこれを組み立てて参りたいと思っております。本年中には、国土総合開発計画は当然仕上げたいと思っております。その中において地方別の緊急度によって東北開発、あるいは北海道開発、その他十九地区についての開発計画は、それぞれの立場でこれを検討いたしております。ただ、垂直的に上から基本計画を立てて、そうして地区別に細目分化計画を立てていくという方式は好ましいのでありますけれども、実際の開発計画実情、従来の歴史、経過等から見ますると、もうすでに、いろいろの地区別に開発を進めておる点がありますから、そういうものは現在進行中のものをとどめずに、そうして合理的にこれを推進しながら計画をあわせて取りまとめていくということにならざるを得ないと、こう思っております。また、この経済計画を立てます場合に、最近非常に顕著なことは、科学的な、技術的な戦後の進歩が、経済開発についての考え方の基本に対して、いろいろ変更を加えることを要請する面が非常に多くなって参っております。その中でも、特に顕著なものは何といっても水の利用じゃないかというように思われます。近畿地方だけを見てみましても、淀川の河口におきますところの地盤沈下、地下水の吸い揚げ等によるところの水の再配分計画をどういうようにするのか、あるいは北九州等における工業用水の配分計画等を見ますると、次の国土総合開発計画基本になるものについての配慮というものは、従来よりももっと緻密なものを要する、科学的なものを要する。しかも、一県単位でとてもこれを整理することができないものばかりのように当ってみると思われるのでありまして、どうしてもこれはブロック別に経済——一つ水だけを考えてみましても、水系を中心とするところのブロック経済考えなければならないのじゃないか。それには当然行政単位ではとうていこれは処理ができないものであるというのは、ほとんど決定的なんじゃないかと思われますから、そういう意味で、今度は国土総合開発計画とあわせまして、ブロック的な開発計画をあわせて考慮しなければならぬ、こういうふうに思っております。  そういう点につきまして、審議会運用だけではとうていこの目的を達することはできませんでしょうから、この地区別、また各県別にそれぞれの地方の経済実情に応じました権威者、あるいは国全部の総合的なものを考える面におきまして、それぞれの権威者がありますから、必ずしも審議会委員、限られた人数によって窮屈なことにせずに、専門的な立場のそれぞれの人を特別な委員に任命して参加してもらうということができるような道は講じて参りたい。国土総合開発計画の場合には特にそういうことは新しく要請されるものだ、こういうふうに思っておりまして、万全を期したいと思っております。
  55. 田中一

    田中一君 現在内閣にありますところの国土総合開発というものは、これはブロック的なものと何ら変りがないのです。むろんこの計画経済企画庁が実施の面にまで、あるいは予算の面にまで立ち入って権限をお持ちならばこれはいざ知らず、現在の計画そのもの、机の上でかいた絵そのものは、やはり地方々々、各地方の村落から積み重ねられまして形成されたものが計画なんです。二十五年でございましたか、国土総合開発審議会ができて、あの内容というものは何ら変ってないんです。特別に分割しなきゃならぬという要素は何ら見出しません。ただ問題はそのような計画に対して当時の政府が熱意があったかどうかの問題なんです。また日本のような小さな島で、八つなり九つなりに分けなければ的確なものはつかめないということはあり得ないのです。ことに東北総合開発促進法ができて、この内容たるややはり各省、各庁が自分の方の保有する職員を構うための限度の事業量というものをまず押えて、それを若干でも伸ばしていこうという形にすぎないんです。そういうような、今まであったような考え方で東北促進法という法律案が通っても、これは実効ということは発見できない。私は宇田長官がほんとにこの法律案によって現在に倍する、あるいは何十パーセントの増となるような事業資金というものを投入するんだということが裏づけられるものならいざ知らず、北海道には北海道開発金融公庫を設け、これを今度は北海道東北開発公庫にし、その上にやはり日本開発銀行という、ちょうど政策的には全国を総覧するところの、計画するところの国土総合開発審議会と同じような金融機関というものがあるのです。どうして屋上屋を架すようなそうした機関が必要だということの一要素が発見できない。かりに政策としてこのようにブロック的の事業単位を持とう、計画単位を持とうというならば、国土総合開発審議会というものの現在の機構というものは縮小するか、さもなければ各ブロックごとにあるところの、またできようとするところの地方的な総合開発の上に立って、その資料によって、その計画によって積み上げたところの全体計画を立てる機関として改組しなきゃならぬと思うのです。宇田長官も御就任になってから日が浅いので、まだ歴史的なわれわれが国土総合開発審議会でもって真剣に取っ組んできた問題については、事務当局からお聞きになった程度だと思うのです。お忙しいからなかなかお知りになれないと思うので、御勉強不足とは言いませんけれども、おひまがなかろうと思うのです。しかし、そういう点において今後各地方にまたブロックごとの開発単位の機関が設けられるということになりますと、相当な政策の変更をしなきゃならぬのです。この点について、まあ宇田さんにあんまり聞いても困るから、植田君が答弁して下さい。どういう計画を持っておるかおそらく何かあると思うのです。
  56. 植田俊雄

    政府委員植田俊雄君) ただいまのお話でございますが、東北開発を特に国が乗り込んで、国が県の意向を尊重いたしますが、国自体で計画を立てていくということになりますと、現在の国土総合開発法の地方計画というものが、地方から盛り上ったものをこの国土総合開発法で承認するという形の法律になっておりますので、東北開発に国が特に力を入れる、北海道と同様に力を入れるのだということにいたしますれば、北海道開発審議会と同様に東北開発審議会を作るということの必要性をお認め願えるかと存じます。ただ、その後にお話になりましたことにも関連するわけでございますが、それでは国土総合開発というものが今後各ブロックごとに計画ができて、各ブロックごとに審議会かできるようになったら、国土総合開発審議会というものは弱体化する、むしろあるいは解消する、あるいは職務を変えるかと、こういうお話でございますが、これはそういう事態がかりに起るといたしますれば、当然何らかの方策を国土総合開発審議会の方に講じなければならぬ問題かと存じております。ただ私は開発計画の立て方、あるいは開発計画審議のやり方につきまして、これは地方ごとに相当の差異があり得るのではないか、先ほど来お話のございましたように、北海道と東北というものは、これは後進地域であり、しかも未開発資源が非常に多いわけでございますから、これにはこういう形の、ただいま御提案申し上げておるような形の開発計画が必要になって参ると思うわけでございます。従いまして、金融公庫の問題も同時に考える必要があろうかと存じます。かりにこれが、こういった開発計画が他の相当進歩いたしておりまして、工業地帯として相当の開発が進んでおりますが、なお一そう開発を望むという地域でございますれば、これは産業立地条件の整理さえすれば、金融の面まで見る必要はない、また特別の委員会を作って審議する必要もない、国土総合開発法の特定地域の計画、あるいは府県の計画程度で間に合うというものもあろうかと思います。今後の開発考え方というものを、ブロック的に見るという考え方は非常に進むかと思いますけれども、開発計画それ自体の審議機関でありますとか、立案機関ということにつきましては、果して他の地域につきましても、北海道、東北と同様にしようという機運が盛り上るであろうかということになりますと、私は現在のところ、必ずしもそういう形には盛り上ってくることはないのではないか、またすべてがそう盛り上る必要はないのではないか、かように考えておるのでございます。
  57. 田中一

    田中一君 そのブロック的にでき上るのではないかと思われるような開発計画というものは、宇田長官はそういう計画になるかもしれないと言っておったのだが、政治家だからそういう発言ができるのです。あなたは今企画庁としてはそういう考えを持たないということをはっきり意思表示したのです。またそういう必要はなかろうと言っておる。その点は基本的にどういう態度を持って臨むのですか。
  58. 植田俊雄

    政府委員植田俊雄君) 私はただいま北海道、東北の二つにつきまして、こういう方式の開発計画がございますから、他の六つの地域につきまして、すべて同じようなやり力をする必要があるとも思えないということを申したわけでございまして、あるいは他の六つの地域のすべてがそうならないと私は見通しを立てておるわけでございまして、絶対にそういう方向にどの地域、一つの地域もそういう方向にはならないだろうということまでも私は申し上げておるのではございません。ただ六つの地域がそれぞれ審議会を持ち、それぞれ公庫を持つというところまではおそらくなるまいと考えておるのであります。
  59. 田中一

    田中一君 私は必ずこの傾向は他の地域に及ぶものであるという見通しを持っております。まず最初にくるのは瀬戸内海を中心とするところの開発計画、こういうものは早速芽をふくのではないかと思うのです。従って、むろん地域的にはその地域の特殊性がございます。だから同じ形式とか何とかというのではなくて、このような傾向が顕著になると思います。もはや東北だから、北海道だからという特異性は失われております。そういうものでこういう機関ができるのではないのです。政治家は自分の出身の選挙区の代表であります。従って自分の政治的な行動というものは選挙民から委託されておるのです。それらが経済的に優位に立つということになりますならば、いかような方法をとってもその目的を達しようとするのかこれは現状でございます。従ってこういう点について、先ほど宇田長官はわきの方にそらしてばかり御答弁をなさるので、私は押しようがなくなってきているのです。だからあまり申し上げたくはないのですが、植田君の言葉もどうも突き進んであなたが企画庁長官のような答弁をしていますけれども、そういう点は一つ午後にこれは継続するでしょうけれども、その態度をはっきりしてもらわぬと、経済効果というものが減殺されるおそれが多分にあるのじゃないかということを考えなければならぬと思うのです。ですからこの点は午後に答弁を留保して、継続して午後質疑をいたしたいと思いますから、そのつもりで準備しておいて下さい。
  60. 中山福藏

    委員長中山福藏君) これにて休憩いたします。午後一時半から再開いたします。    午後零時二十三分休憩    —————・—————    午後一時五十四分開会
  61. 中山福藏

    委員長中山福藏君) 休憩前に引き続き、これより委員会を再開いたします。  まず東北開発促進法案議題に供します。御質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  62. 田中一

    田中一君 資料としてお出し願った東北七県公共事業費配分総括表、この東北開発審議会は、次年度のこの法律案の施行される区域の公共事業については何らか発言権を持たせようということなんでしょうか。それともただ中央で各省各庁が自分のそれぞれ計画されている事業をそのままおっつけるという形のものであるのかどうか。
  63. 植田俊雄

    政府委員植田俊雄君) 法文にございます調整をどうやるかという問題についての御質問かと存じますから、それでお答え申し上げます。御承知通り現在の公共事業予算は各省で各県の要望等に基きまして編成いたして、大蔵省に要求をするのでございます。各省ともそれぞれ五カ年計画、十カ年計画で要求いたすわけでございますが、実際にこれが予算として実現いたしますのは、従来は三分の一程度、最近は若干要求も小さめになっておりますので、その二分の一程度が実現するということになろうかと思います。従いまして、予算の編成以前に各省から取ります要求資料というものは、各省が大蔵省に要求しておるなまのものを私どもでちょうだいいたしまして、そしてその調整過程を通じまして、東北開発上特に重要だと思われるようなものにつきましては、相関連する事業については調整をいたしますとともに、重要なものにつきましては、企画庁の調整の段階において、ぜひこの予算を実現してもらいたいということを各省に要望いたしますとともに、場合によりましては、大蔵省にもその旨、伝えたいと考えております。
  64. 田中一

    田中一君 従来とも次年度の公共事業費の予算の配分というものは、各府県から希望が出て、それを勘案しながら査定してきめていくのが現状であります。そうしますと、公共事業費の面は、もう一つ七県の知事が審議会にその問題を取り上げて、審議会の議を経なければ本ぎまりにならぬということはありませんね。
  65. 植田俊雄

    政府委員植田俊雄君) 公共事業費の予算につきましては、知事が審議会の議を経て要求しなければならぬという形をとらないつもりでございます。十カ年なら十カ年の開発計画をこの審議会で御決定願う。こういうふうにいたしたいと思います。
  66. 田中一

    田中一君 やはり公共事業そのものが開発の根幹をなすものだと思うのです。従ってその公共事業というものは前もって確定しなければ、その計画は完全なものにならないということが考えられるのです。従ってこの七県の公共事業は相当長期計画を樹立しなければ他の総合的な経済効果を早期に上げるという面についてはそごを来たすおそれが多分にある。従って特別にこの東北開発促進法の区域は別の計画を立てるつもりでありますか。
  67. 植田俊雄

    政府委員植田俊雄君) お話の通り開発計画と申しますと、いかにも産業計画であるかのような印象を受けるようでございますが、産業計画にマッチしました計画であることは当然でございますけれども、国の施策として実行できますものは公共事業であり、あるいは国の金融政策によって決定できますところの電力政策であり、あるいは公社を通じてやりますところの鉄道計画でございまして、こういうものを広く公共事業と申しますならば、公共事業開発計画の中核になることはお話の通りでございまして、これを各省が要求しましたものを企画庁で予算の要求段階において調整するわけでございます。予算の組み方におきましては、特別の措置を講ずるという考え方はただいまのところ持っておりません。企画庁の事務的な範囲で調整いたしたものを各省が大蔵省に要求しまして、それを大蔵省が査定いたしまして決定するわけでございまして、そのきまりました範囲は、また各省が誠意をもって実施していくように、こういうことを期待いたしておりますので、予算上特別の措置を講ずる必要はあるまいと考えております。
  68. 田中一

    田中一君 従来通り総合開発計画というものは、たとえば北上特定地域の計画を実行するに当りましても、各省各庁かそれぞれ従来計画を別々に持っておったところの予算を全部合せて、これが総合開発事業なんだというような出し方をしておるのです。これでは実を言うと、ほんとうの意味の総合開発に実はならないと思うのです。従って現地において調整機関としての総合開発庁というものができれば、これはまあ今言う通り隣接県との間に道路にいたしましても、両方で相談すれば道路が開通するときは同町に開通するという特典があるのです。そういう点はわかるのですけれども、ただそのために各省各庁が自分だけの主管で、また地元の要求だけを根拠にして査定をしたりなんかしますと、そごを来たすおそれがある。しかし経済企画庁にはそれをチェックすることが往々にしてできないのが実情なんです。一昨年も調整金的なもの、金を持たなければわれわれ承知するわけはないですから、本年度の予算には多少ついておったように思いますけれども、これですら満足なものではありません。やはり経済企画庁が調整金というワクを持っておらぬと完全に行かないことになるのですね。そういう点が三十二年度の予算にはどういうような措置をとられておりますか。
  69. 植田俊雄

    政府委員植田俊雄君) 公共事業を、所管官庁間の調整というものは、文章に書きますときわめて簡単でございますけれども、実際上非常にむずかしい問題でございます。そこで三十一年度から御計上願いました調整費というものは、その意味において非常に役立っておるわけでございます。金額といたしましては五億円の予算をいただいておりまして、三十二年度におきましても、同様総合調整する金といたしましては五億でございます。それでこの五億の金の効用でございますけれども、五億の予算を通じて公共事業の各省を引っぱる、こういう趣旨ではございませんので、調整費の運用を通じまして、各関係省が経済企画庁に集まって話し合う機会も多くなりまして、お互いの役所間の連絡も非常にうまくなつておりますので、そういう意味におきまして調整費の効果もきわめて大きかったと存じておるわけでございます。最近の傾向といたしましては国土開発の総合企画性と施行の関連性ということを各方面に叫ばれておりまして、これが一つの相言葉のようになっておりまして、関係各省間もお互いに連絡する風潮も出て参っておりまして、また主要な地域の開発事業につきましては、各省間で企画庁を中心にいたしまして、話し合うのがいいことだというふうな風潮も出て参っております。  これはちょっと話は別になりますけれども、昨年の秋に私ども四つの工業地帯につきまして、工業地帯のさしあたって必要とする公共事業的な隘路の問題につきまして、調整いたしたのでございますが、これも割合に成果を上げ得たと信じておるわけでございまして、今後東北開発につきましても、そういう調整面の能力を最高度に発揮することによって、相当効果を上げ得るものと確信をいたしておる次第でございます。
  70. 田中一

    田中一君 次に伺いたいのは、どういう事業融資するかという問題ですが、これはほかの委員会でも、この法案関係ある法案審議している他の委員会でも質問があったと思いますけれども、大体第一道路なりあるいは軌条なりというと、まず橋とか、河川の改修ということが先決問題です。従って後進地域の特殊性として、ここにせめて既存の産業にだけ特別にこれを助成し、融資するという形をとってゆくのか、あるいは、抜本的にこの地域に地下資源なら地下資源が相当ある、従ってそこに軌条を敷くのか先決というような形でゆくのか、私が心配するのは、先ほどあなたが今後ともこうした計画のものは他の地区では出ないということを言ったが、私は必ず出ると思う。それがすべて政治的な観点から芽ばえてきて発展しなければならない。従ってこれを推進するという地元の方々は、いろいろ自分の選挙の人にいろいろ約束しておると思う。当然しなければならない要望にこたえようとしておるのであって、そういう場合に、その基本的な七県のいわゆる総合的な見地からこれを立案し、その事業融資を行おうとするのか。ここにある日本開発銀行、その他の金融機関から今までの産業、今まで少くとも緒についておる産業に対してそれを生産増加するための融資を行うという考えに立つのか。この点がこの法律案ができ上った場合の心配を持っているわけです。むろん経済企画庁なり、それから国という面から見る場合には、中小企業金融公庫なり、それから日本開発銀行なりが認めておる産業というものに対して、ある程度また北海道東北開発公庫から融資すれば一番妥当性があり、かつまた危険かないわけです。日本開発銀行その他の国家金融機関もすべて国の意思によって融資されておるのであって、    〔委員長退席、理事若洲忠恭君着席〕  従って足りなければ増加して融資した方が楽なわけです。そういうことだけで進めようとするのか、もっと抜本的な、ただいま早期に経済効果を上げられなくても、総合性があって、たとえば一年待つならば軌条なら軌条一本敷くことによって次年度においては、その完成後においては、一年待ったというもの以上の効果が上るということが考えられなければならぬと思う。これが総合開発だと思う。そういう点から見ても現在各機関融資をしている産業以外にどういう産業に、事業に投資をしようとするか、その点を一つ答弁願いたいと思う。私できるならば、きょう長い時間を質問するのではありませんけれども、東北興業の蓮池さんに来てほしかったのです。私は経済企画庁としては、それはわからぬと逃げられればそれきりになるのですから、現に蓮池君は相当この地域に対して研究になり、あるいは資料なりをお持ちであろうと思う。植田君がもし答弁するなら、いいかげんに逃げない答弁をして下さい。まともに答えて下さい。あなたの方と多少逸脱したところがあるかもしれないけれども、それはあなた個人としての意見を聞きたいと思いますから。
  71. 植田俊雄

    政府委員植田俊雄君) ただいまの御質問の趣旨はよくわかります。と申しますのは、開発銀行とそれから北海道東北開発公庫との金融機関としての二つの間の相違点を御説明申し上げる点から申し上げた方が、おわかり願えるのではないかと思います。開発銀行につきましては、開銀法の第一条におきまして、産業の開発という題目を使っておるわけであります。公庫につきましても、もちろん産業の開発を目的にいたしておるわけでございますが、開発銀行の産業の開発というものは、全国的視野による産業の開発でございます。従いまして御承知通り経済企画庁が毎年度の各官庁間の、しかも国として特に伸ばしたいと思っている産業について、たとえば電力が幾ら幾ら、造船が幾らというように金額をとりまとめまして、それに基いて大蔵省から開発銀行に通牒が参りまして、開発銀行はその線に沿って運用いたしておるわけであります。そういう意味におきまして、国が助長いたしたい産業について、政府としての金融の目的を達するというのが開発銀行の使命かと存ずるのであります。従いまして、開発銀行の産業の取り上げ方というものは、日本全国という立場から見ております。従いまして、ごらんに入れたところの表におきましても、東北地方につきましては、電力、海運を除きました約十億でございます。開銀の目から見たところの産業というものは十億ということが一つの目安ということになっておるのじゃないかと存じます。  北海道東北開発公庫は、若干これとは性格を異にするわけでございまして、若干卑属めいたことを申し上げて恐縮でございますけれども、北海道、東北のような後進地域の産業を伸ばすのには、どういう措置をするかということになりますと、先ほどもお話のございましたように、産業基盤のための輸送の問題を解決いたしますとか、電力の問題を解決する、その他各般の公共事業を実施いたしまして、産業基盤を造成することでございます。従いまして、後進地域では工業があまり発展していない、従って産業基盤の整備だけではすぐに産業がついてこない、こういう地域につきましては、こういう特殊な金融機関を設けまして、その金融機関があるということを一つの誘引力にいたしまして、北海道、東北には産業を持ってこよう、こういうところに一つ意味があろうかと思うわけでございます。そういう意味から申しますと、開発銀行の基準に合いますものは、これはあくまで開発銀行の融資対象にいたすべきでございます。開発銀行が全国的視野から見ますならば、若干順位が落ちるかと思うような業種、あるいは事業主体におきましても、それが十分採算に合うものであり、それが地方の開発に役立つものでございますならば、現在開発銀行が融資対象にしております事業とは別個のものでございましても、尺度といたしましては東北開発に役立つかどうか、これもお話のように、単に短期的に見る必要はございません。比較的長期をとりまして、それが東北開発に役立つということを一番大きな尺度として見ますならば、お話のように開銀の対象としていない産業におきましても、相当融資対象が求められるのではなかろうか、かように考えております。
  72. 田中一

    田中一君 そうしますと、北海道東北開発金庫は、日本開発銀行あるいは農林漁業金融公庫とか、中小企業金融公庫、農林中央金庫等の融資先以外のものを対象としているということに、はっきり割り切って考えてよろしゅうございますか。
  73. 植田俊雄

    政府委員植田俊雄君) 農林中金とそれから中小企業金融公庫につきましては、政府の次官会議におきまして覚書を交換いたしまして、お互いに事業分野を侵食し合わないような決定になっております。開発銀行との関係におきましては、原則として別途であるということになっておりますので、開発銀行と今度の公庫との事業分野は、おのずから分れるわけでございます。ですから開発銀行の対象になるものには、この具体的の場合におきますと、開発銀行が取り上げたものは、公庫で貸す必要はないわけでございます。しかし一つの例を取り上げまして、砂鉄なら砂鉄を取り上げる場合に、砂鉄はかつて開発銀行から貸したことがあるから、従って金融公庫からはそちらに一文も貸してはいけない、これほど厳重に縛る必要もなかろうかと存じております。従いまして、一つ事業につきまして金融を求めて参ります場合に、開発銀行にも、今度の開発公庫にも申請して差しつかえないものがあろうかと存ずるわけでございます。この点につきましては、開銀と公庫との間でよく話し合いまして、この分野については開銀から貸す、このプロジェクトについては公庫の方から貸す、こういうような話し合いをして、おのずから貸出し対象をきめて参りたい、かように考えているわけでございます。
  74. 田中一

    田中一君 北海道開発金庫ができた場合も、当時の正力国務大臣は、日本開発銀行の金を持ってくる、導入する呼び水として八十億程度の金は別ワクでもらって、これでもって産業の出発点として、あとは日本開発銀行の金を持ってくるのだ、こういうような答弁をしているのです。これも日本開発銀行のほかに北海道東北開発公庫を作るということは、これはやはり政治の貧困からくるのです。何も日本開発銀行が特に全国的視野とわけ、そうして地方の開発金庫は地方的な視野というものじゃないのです。ことごとくその積み重ねが日本経済計画であり、日本の生産の向上に役立つわけなんです。これがかつてのイギリスのようにオーストラリアを持ち、インドを持ち、カナダを持つという場合には、これは一応そういう考えを持つでしょうけれども、何といっても日本という国は四つの小さい島なんです。飛行機で飛べば、一日かかればぐるっと全部回って来れるような小さい島なんです。そこに人間がたくさん住んでいる、これが特異性なんです。従ってやはりこの場合には、全国的視野からのみ地方的な事業というものがあり得るということは言えるのでありまして、その中で今度は各政治家が、自分も政治家の端くれですが、言っちゃ言葉が過ぎるかもしれないけれども、自分の選挙区へ少しの金でも持っていこうというような考え方が生まれますと、これはむだな金になるのです。従ってあなたが特に東北六県を地方的な視野から、その地方的な産業、地方的な開発ということを言っておりますけれども、どこまでも全国的な、全国計画のもとにあるところの一部分であるという観点から考えなければならぬと思うのです。日本開発銀行の場合でも、大体において三千五、六百億の金を持っております。東北開発公庫として持つものは四十億ですね、たしか。
  75. 植田俊雄

    政府委員植田俊雄君) 四十五億です。
  76. 田中一

    田中一君 四十五億ですか。けれども、何といっても全国的な視野から見るばかりでなく、地方的な視野から見ても、東北七県というものが総合的な開発によって全国的なウェートを占めるという要素が多分にあるわけなんです。ことさらにその融資先というものを局限し、締めて、これは地方色なんだというような考え方は持ってはならないのです。その危険を多分に感ずるのです。何といっても四十五億の金よりも三千六百億の金を持っている日本開発銀行の方の金を使うことが一番望ましいのです。そうしないところにやはり現在の政府の政策の貧困があり、また官僚諸君の、恩給がついたらばそこに出向こうというようなさもしい考え方があるのです。おそらく東北興業会社東北開発会社に改編された場合、植田君がそこの重役になるかどうかしりませんけれども一、理事になるかどうかしりませんけれども、おそらくまた新しい官僚がそこにすわって、偸安の眠りをむさぼるということが今までの例で明らかなんです。従って局部的な開発云々ということはもう捨てていただきたいのです。国家的な視野からの融資先を求めるということ、選択することこそ望ましいのです。そこで日本開発銀行、中小企業金融公庫、まあこの二つにいたしましょう。そのうち、日本開発銀行が新潟県に融資をしておる一番大きな一単位の会社事業というものはどういう種数のものですか。
  77. 植田俊雄

    政府委員植田俊雄君) 昨日資料の御要求がございましたので、その点開銀とも相談いたしましたが、個々の会社の名称と金額をということは従来も例がないから、かんべんしてもらいたいという銀行出局のお言葉でございましたので、ただいまの点に直接ぴったりするお答えを申し上げるには適当でないかもしれませんが……。
  78. 田中一

    田中一君 においぐらいかがして下さい。(笑声)
  79. 植田俊雄

    政府委員植田俊雄君) においだけということでございますれば、新潟県におきまして一番大きなものは、あそこの特殊の資源でございますところの天然ガスを利用する工業でございます。
  80. 田中一

    田中一君 それに大体これだけが一億とすると、どのくらいの幅ぐらいのものが行っておりますか、現在。
  81. 植田俊雄

    政府委員植田俊雄君) ただいまの速記のありますところで申し上げるのは適当でございませんので、田中先生が特に御必要でございますれば、後ほどでも金額は申し上げさしていただきたいと思います。
  82. 田中一

    田中一君 正確な金額は、今言う通りあなたの方で約束してあるのでしょうから伺いません。こっそりでも伺いません。伺いませんが、大体ここでもって、ここに出席の委員が大体想像し得るゼスチュアでもってお示し願いたいと思います。速記に残らぬように……。
  83. 植田俊雄

    政府委員植田俊雄君) ただいまゼスチュアでお示しになりましたものが一億でございますれば、ゼスチュアの今の幅よりももう少し狭いのじゃないかと思っております。
  84. 田中一

    田中一君 その程度の問題が新潟県唯一の重要産業でありますか。またこれは優先融資の順位が相当高いものだと思うのです。新潟県にはその程度のもの以外にはございませんか。
  85. 植田俊雄

    政府委員植田俊雄君) 新潟県は一つの港でございますので、この表にございますように……。
  86. 田中一

    田中一君 新潟市は港になっておりますが、新潟県は港ではありません。
  87. 植田俊雄

    政府委員植田俊雄君) 新潟県には港もございますので、海運関係会社もあろうかと存じます。それから新潟県の産業におきまして、天然ガスはきわめて重要でございますけれども、最近は天然ガス関係の工業も非常に成績もよろしゅうございますから、あるいはそれまで開銀の融資を受ける必要がなかったから金額としてあまり大きくないのかもしれません。
  88. 田中一

    田中一君 その会社は何という会社か知らぬですが、天然ガスの会社があるんでしょう。その会社の社長は何という方です。これは今天然ガスの会社は二つあるか、三つあるか知らぬが、三つあったらその会社の社長の名前を教えて下さい。
  89. 植田俊雄

    政府委員植田俊雄君) 社長の名前を申し上げれば、すぐ会社の名前もわかりますので、その点御容赦願いたいと思います。    〔理事岩次忠恭君退席、委員長着席〕
  90. 田中一

    田中一君 天然ガス開発会社は幾つございます。
  91. 植田俊雄

    政府委員植田俊雄君) 私天然ガスの方を具体的に承知いたしておりませんけれども、新潟付近にたしか三つくらい、それから直江津方面その他で五社くらいあるんじゃないかと思っております。この数字は正確じゃございませんが、一社だけでないことは確かでございます。
  92. 田中一

    田中一君 それらの会社は、国会に席を持っておる方々が関係しておるものはございますか。
  93. 植田俊雄

    政府委員植田俊雄君) ただいまの御質問でございますが、先ほど私が名前をあげたくなかった方は、国会には議席を持っておりません。
  94. 田中一

    田中一君 今の直江津、新潟方面にある七つの会社には国会に席を置く者が何らかの形で、株主とか何とかいう形でけっこうですが、関係しておる方がございますか。
  95. 植田俊雄

    政府委員植田俊雄君) 直江津方面にも天然ガスの工場ができているということは承知いたしておりますけれども、その幹部が国会に席のある方かどうかということは存じておりません。
  96. 田中一

    田中一君 岩手県に飛びますが、岩手県ではどういう産業が、日本開発銀行が貸しているもののうち顕著なもの、それからかりに岩手県として東北総合開発の地方的な条件の備わっておる産業というのはどういうものでございますか。
  97. 植田俊雄

    政府委員植田俊雄君) 岩手県におきまして、三十一年度におきましては、この表の中の鉱業という問題が取り上げられておるようでございます。
  98. 田中一

    田中一君 それは金へんの鉱業……。
  99. 植田俊雄

    政府委員植田俊雄君) 金へんの鉱業でございます。それから今度公庫融資対象として岩手県でどういうものが出てくるかということでございますが、実は本日午前にも公庫の事務局次長を呼びまして様子を聞いてみたわけでございます。この仙台の支店を店開きいたしますのは六月一日でございますので、それまでに正式の融資の申し込みを受けるのはないわけでございます。しかし各県ともこれに大いに期待しておりますので、県によりまして、こういった事業をやりたいという案もあるようでございますが、まだ公庫の本店までは一県を除きましては、正直に申しまして一県を除きましては、県から話し合いはきていないということでございます。それからその際に私も念を押した問題でございますが、県当局が融資のお申込みを取りつけたり、あっせんすべきものではない、ただ県が、こういう事業内容が県に話があるから一つ考え願いたいと、こういうことで、一つの情報として県の方がお話ししたいというならば、それは何も拒む必要がなかろうではないか、こういうことでございまして、公庫の窓口として県を使うという考え方は決してとっておりません。従いまして、仙台に支店ができまして、そして仙台の支店長の下でそれぞれの事業の主体になられる方が自分の事業計画を立てて、そうして公庫の納得いくような事業計画を持ち込んだ際に、初めて融資対象にするかどうかということを決定するということに相なろうかと存じております。
  100. 田中一

    田中一君 その岩手県の鉱業会社で、やはり国会に席を持っている人がやっておる事業はありますか。
  101. 植田俊雄

    政府委員植田俊雄君) 私この会社の社長を存じませんが、国会に議席のある方はないと思っております。
  102. 田中一

    田中一君 今度は青森県の例を一つ伺いたいと思うのですが。
  103. 植田俊雄

    政府委員植田俊雄君) 青森県につきましては、青森県の特殊な産業でございますところの砂鉄銑というものが、三十一年度におきましても相当大きく取り上げられております。またこの社長には国会に議席のある方はないと存じております。
  104. 田中一

    田中一君 これは私自分の郷里ですから、はっきりわかるのですが、国が今岩木川の上流のダム建設をやっております、目屋ダムというやつを。その二、三十キロ山の方に、今金、銀、銅の戦後に初めて採掘をやっておる所があるのですが、それにその品物を出しながらですよ、ダム建設の資材、その他を輸送しようという計画の電鉄計画があるわけであります。これは御承知のように、貧困な土地ですから、とうてい自力では不可能であります。そういうようなものは今あなたが考えておるような、融資対象というようなものにはなるものでしょうか、ならぬものでしょうか。
  105. 植田俊雄

    政府委員植田俊雄君) 今回決定になりました東北関係公庫融資対象として、産業の振興、開発にかかる交通運輸業というのがございますから、交通運輸業の中に当然私鉄も含まれるものと考えております。
  106. 田中一

    田中一君 ぽつぽつと部分的な、あなたの言っておる地方的な産業に相当な融資をされることになりますが、これは後進事業としてはまことに望ましいことなのでありますが、その資金がいたずらに政治の圧力に負けて、ことにこの東北開発促進法関係の三つの法律案が通ったごほうびとして融資されるなんということがあっちゃ、とんでもない話なんです。ことに秋には解散があるのじゃないかというような様子も見えておりますが、そういう意味のリベート的なものに、この資金が源泉になるということになれば、われわれがこれに対して協賛したという目的とそごすることになります。従って宇田長官は、あなたは事業家であられて、そうして日本でも有数な鉄鋼業者であられるはずなのです。だから、経営というものはよく御存じだと思うのです。従ってあなたの任期中は——まあずいぶん長くいらっしゃるつもりでしょうけれども、あなたの任期中は、少くともこれが出発いたしますと、直ちにくるのがこの融資の希望であります。そういう場合には、十分に総理大臣にかわる監督権を一つ発動なさって、十分に一つ地方民の求める産業、そうして総合的な、国家的な見地からその資金が使われることに対して、十分な関心と意を注いでいただきたいということをお願い申し上げて、一応私の質問を終ることにいたします。
  107. 中山福藏

    委員長中山福藏君) 他に御発言はございませんか。……それでは質疑は終局することに御異議はございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  108. 中山福藏

    委員長中山福藏君) 御異議ないと認めます。  これより討論に入ります。御意見のおありの方は賛否を明らかにしてお述べを願います。
  109. 大河原一次

    大河原一次君 私は日本社会党を代表しまして、ただいま議題になっております東北開発促進法案に対しまして、一つの強い希望をつけまして、賛成をしたいというように考えております。  それは御承知のように、先ほども質問の中で申し上げましたように、東北における後准性というものは、今日まで長い間、明治維新以来九十年間にわたりまして、政府の政治の貧困、あるいはまた行政施策の欠陥等によりまして、長い間放置されておったということも事実でありますし、単に地理的な、あるいはまた気象的な関係ばかりではございません。そういうような政策の、政治の貧困から、むしろこのような後進性を長く持続させた問題であると私は強く指摘しなければなりませんし、この問題の具体的な事実に対してはいろいろありまするけれども、特に東北は先ほども申し上げましたように、農業比率の多いところでありまして、そのしわ寄せが長く続けられてきたのであります。すなわち今日日本が資本主義国として強い発展をしたその陰には、いわゆる農民の大きな犠牲の上に立ってきたのであります。特に八〇%に及ぶ地租の取り立てによって、今日の官業、あるいは、また官営事業が行われて、この上に立って日本の資本主義は発達してきたものと言わなければならぬのであります。従いまして、私は、だからそういう点があったから、今東北の問題を強く取り上げるという意味ではありませんし、あるいはまたいろいろな問題が起きて、離農者が起きておる。あるいはまた入植者が減っておる。あるいはまた再び東北の中からかわいい子供さんが京浜地区の中に身を沈めていくと、こういう問題が起きておりますから、だから東北開発をやらねばならぬと言うのじゃありませんか、こういう問題で、単なる救済じゃなくなってくる。千二百万の東北民の問題ばかりでなくて、この東北の総合開発が行われることが、具体的に促進されることが、全国民の一人々々の上に幸福がもたらされるものである。私はこういうふうに考えまして、この東北開発促進法案というものが今日出されたというのは、むしろおそきに失しておるほどであると、こういうふうに考えております。従いまして、今日までのいわば総合開発によって、いろいろな施策が行われたことに対して、それに十分なる批判を加え、これの反省の上に立って、単なる絵にかいたぼたもちでないような、そういう方向に向って、ぜひ運用の面において取り上げていただきたい。これが私の希望であり、さらに先ほど申し上げておるように、この東北開発審議会審議に対しては、単なる学識経験者という、今までの単なる経歴を長く続けたという、そういう学識経験者ではなくて、独創的な考え方を持って、そして今後の日本の自主経済を立てていかなくちゃならぬという、そういう大きな抱負に燃えた人を、ぜひともこの学識経験者の中に入れるべきであると、私はこういうことを強く要望申し上げまして、希望申し上げまして、賛成の意を表する次第であります。(「それだ」、「同感々々」と呼ぶ者あり)
  110. 中山福藏

    委員長中山福藏君) ほかに御発言はないと思いますが、これより採決を行います。  東北開発促進法案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  111. 中山福藏

    委員長中山福藏君) 全会一致でございます。よって、本法案は可決すべきものと決定いたしました。  なお、本院規則第百四条による本会議における口頭報告の内容、第七十二条により議長に提出すべき報告書の作成、その他事後の手続につきましては、慣例によりこれを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なしと」呼ぶ者あり〕
  112. 中山福藏

    委員長中山福藏君) 御異議ないと認めます。よって、さよう決定いたします。  それから例によりまして、御署名を順次お願いいたします。   多数意見者署名    石井  桂  岩沢 忠恭    西田 信一  田中  一    稲浦 鹿藏  小山邦太郎    斎藤  昇  中野 文門    内村 清次  大河原一次    重盛 壽治 小笠原三九郎    村上 義一   —————————————
  113. 中山福藏

    委員長中山福藏君) 五分間だけ休憩いたします。    午後二時四十分休憩    —————・—————    午後二時五十一分開会
  114. 中山福藏

    委員長中山福藏君) 休憩前に引き続き委員会を開きます。  それではこの際宅地建物取引業法の一部を改正する法律案議題に供します。  まず本案の提案理由の御説明提案者からお願いいたします。
  115. 前田榮之助

    衆議院議員前田榮之助君) ただいま議題となりました宅地建物取引業法の一部を改正する法律案につきまして、提案理由及びその要旨を御説明申し上げます。  宅地建物取引業法は、御承知通り、宅地建物取引業を営む者の登録を実施し、その事業に対し必要な規制を行い、もってその業務の適正な運営をはかることにより、宅地及び建物利用促進することを目的として昭和二十七年六月に制定され、従来何らの規制措置もなかった宅地建物取引業の運営一定の秩序を与え今日に至っておるのであります。以来、この法律は適正な業務の遂行と宅地、建物利用促進に寄与し、現在登録業者の数は、全国で約二万二千人に達しておるのであります。  しかるに、現行法のもとにおきましては、破産者や未成年者等を除くほかは、一定の登録手数料を納めればだれでも登録して営業できることになっており、従って業者の中には、この業務を行う上に必ず知っておかなければならない必要最小限度の知識すら有しない者も相当見受けられます。また登録業者の一部には、不心得者も若干あり、かつ、登録業者を装ったいわゆるもぐり業者の数も少くなく、このため宅地、建物等の取引を通じ、依頼者が経済的に不測の損害をこうむる等、各種の事故を発生している例が相当の件数に達しておる状況であります。そこで、今回業者の質を向上し、業者に対する一般社会の信頼度を高め、業務運営を一そう適正化するため、以下のような措置を講ずることといたしました。  まず第一に、業者の設置する事務所ごとに都道府県知事の行う試験に合格した者を専任の取引主任者として一人以上置くことといたしました。この試験は宅地建物取引業に関して必要な知識について、建設省令の定めるところにより行うこととし、試験に合格した者は、これを宅地建物取引員と称することといたしました。  第二に業者の事務所ごとに一定額の営業保証金を供託しなければならないことといたしました。この営業保証金は、主たる事務所のもよりの供託所に供託することにし、その額は主たる事務所につき十万円、その他の事務所につき事務所ごとに五万円の割合による金額の合計額とし、その合計額は三十万円をこえないものとしております。  なお、宅地建物取引業者と宅地建物取引業に関し取引をした者は、その取引により生じた債権に関し供託した営業保証金について債権の弁済を受ける権利を有することといたしております。  また、宅地建物取引業者は、供託した営業保証金を登録が抹消された場合には取り戻すことができるようにいたしております。  次に宅地建物取引員の品位の保持と資質の向上をはかり、あわせて宅地建物の取引にかかわる業務の進歩改善に資する目的をもって、都道府県の区域ごと及び全国を単位として、宅地建物取引員会及び宅地建物取引員連合会と称する民法第三十四条の規定による法人を設立することができることといたしました。  以上のほか、事務所の移転に伴う登録がえの規定を設けるとともに、無登録業者に対する取締りを厳にするため、無登録業者のいかがわしい標示広告を禁止する規定を設けました。  次に、従来この法律の適用除外となっておりました信託会社及び信託業を兼営する銀行についても、試験等の新しい制度が設けられましたため、この際これらのものに対しても、この法律を適用することといたしました。  なお、今回の改正に伴う新しい制度が円滑に実施されるよう、付則において必要な経過規定を設けました。その主要な点は、以下の通りであります。  第一に、この法律施行の日から二年をこえない範囲内において政令で定める日から、各事務所に取引主任者を設置することとし、現に営業している業者についてはその政令で定める日までに引き続き四年以上の実務経験を有し、かつ、都道府県知事の行う選考に合格すれば試験を免除することといたしております。  第二に、営業保証金につきましては、現に営業しておる業者については、昭和三十四年七月三十一日までは適用しないことといたしました。  第三に、先ほど申し上げましたように、従来この法律の適用除外となっていた信託会社及び信託業務を兼営する銀行にもこの法律が適用されることとなりましたので、以上の信託会社等につきましても、取引主任者の設置、営業保証金の供託等に関しては、従来から営業しておる宅地建物取引業者と同様に取り扱うことといたしました。  以上がこの法律案提案理由及びその要旨でありますが、何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決下さるようお願いいたします。
  116. 中山福藏

    委員長中山福藏君) それでは御質疑のおありの方は順次御発言を願います。  ちょっと速記をとめて下さい。    〔速記中止〕
  117. 中山福藏

    委員長中山福藏君) 速記を起して。
  118. 田中一

    田中一君 ただいま提案になった宅地建物取引業法の一部改正法律案について、政府の所見を一、二伺いたいと思います。  この法律が施行された際に、相当の期間、試験を受けた者ないし試験を受けたと同様の権利を、取引員としての称号を与えられる君たちが、統一した団体を持って、この法律の趣旨徹底のために行動したいというような点については、行政的に政府としてはどういう指導をしようとするか。大体この法律案の内容としては、試験を終了しませんと取引員というものは生じないわけですから、それに対する行政指導の面を伺いたいと思います。
  119. 鬼丸勝之

    政府委員(鬼丸勝之君) 今回の改正法案におきまして、宅地建物取引業の取引員の団体が認められておりまするが、ただいま田中先生のお言葉のように、この団体は、正式に取引員とならなければ実際上組織されないわけであります。従いまして、取引員となるのには、試験なり選考を経なきゃならぬという関門がありますので、それ以前におきましては正式の団体はございませんけれども、私どもといたしましては、現在任意団体として設立されておりまする業者団体がありますし、また、公益法人として建設大臣の許可を受けて設立されておる全日本不動産協会というものもございますので、これらの団体を通じまして、今回の法律案改正の趣旨なり内容を業界に徹底いたして参りたい。さらに、試験を行いますに当りましては、やはり、その前に試験を受けるだろうところの業者なり取引に従事している者を、まあ試験準備と言うと語弊がありますけれども、必要な教育といいますか、講習会等を開きまして、やはり十分これらの人たちに勉強してもらう、そういうような仕事を現在ある団体等がある程度それを受け持っていくということが望ましい。従いまして、私どもも業界を指導する立場といたしましては、やはり現在ある任意団体なり公益法人を十分清川して参りたい、将来試験が行われた暁におき、致しては、もっと強力な、あるいはもっと統一された正式の取引員の会ができることを期待いたしますけれども、これはまあおおむね二年先のこととなると思いまするが、それまではただいま申し上げましたような考え方で業界のめんどうを見て参りたいと、かように存じております。
  120. 田中一

    田中一君 今、御答弁の中に、民法上の法人の全日本不動産協会と別の業者団体があると、これを現在ではそれぞれそのままにしておいて、二年後にいよいよ取引員としての団体が生まれる場合には、統一した行動をさしたいというような御答弁のように伺いましたが、私といたしましては、そうした二つのものが、片方は任意団体、片方は民法上の法人としてあることになりますと、民法上の法人は、御承知のように建設大臣がこれを監督しておるものでございます。従って、その方は何らか力があるような誤解をする傾きがあるのじゃないかと思うのです。従って政府の指導としては、公益法人としての全日本不動産協会というものはさておき、残余のものは全部業者の任意団体に加入するような勧奨を行なっていただきたいと思うのですが、その点はいかがですか。
  121. 鬼丸勝之

    政府委員(鬼丸勝之君) ただいま先生の仰せのごとく、二つの団体がどちらが権威があるかどうかという点は容易に判定するわけに参らぬと思います。同じ業者がそれぞれの団体に加入しておりましても差しつかえないわけで、私どもといたしましては、どっちの方が権威があるからどっちに入れということは申したくないのでございます。ただやはり一方は公益法人で、その目的なり使命がある程度公益性を持っておる、一方はまあ業者の純粋の任意団体でございますから、いわば業界の私益団体である、形式的にはそういう区別がございます。しかし私たちはどちらでも業者の人は入ってもらってけっこうだと思っております。
  122. 重盛壽治

    ○重盛壽治君 私はいろいろ異議があるのです。建築業者があっせんする場合とか、それから弁護士などが財産処理等を依頼されて、こういうものを処理するという場合があるが、土地や家の売買とかあっせん、それはどういう工合に解釈するか。
  123. 瀬戸山三男

    衆議院議員瀬戸山三男君) ただいまのような場合は簡単に結論を下すことはできないと思いますが、今おっしゃったような場合は業としてやっておるのではないのですから、そういうものは入らない。そういうふうに解釈しております。
  124. 中山福藏

    委員長中山福藏君) 他に御発言ございませんか。……なければ質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  125. 中山福藏

    委員長中山福藏君) 御異議ないと認めます。  これより討論に入ります。御意見のおありの方は賛否を明らかにしてお述べを願います。
  126. 田中一

    田中一君 討論を省略して、直ちに採決せられんことの動議を出します。    〔「賛成」と呼ぶ者あり〕
  127. 中山福藏

    委員長中山福藏君) それでは討論は省略しまして、これより採決を行います。  宅地建物取引業法の一部を改正する法律案を問題に供します。本案に賛成の方、挙手願います。    〔賛成者挙手〕
  128. 中山福藏

    委員長中山福藏君) 全会一致でございます。よって本案は可決すべきものと決定いたしました。  なお本会議における委員長の口頭報告の内容及び議長に提出すべき報告書の作成、その他自後の手続につきましては、慣例により、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  129. 中山福藏

    委員長中山福藏君) 御異議ないと認め、よってさようにいたします。  それから例により、賛成された方は御署名をお願いいたします。   多数意見者署名     石井  桂  岩沢 忠恭     西田 信一  田中  一     稲浦 鹿藏  小山邦太郎     中野 文門  大河原一次     重盛 壽治  小笠原二三男     村上 義一
  130. 中山福藏

    委員長中山福藏君) ちょっと速記をとめて下さい。    午後三時十七分速記中止    —————・—————    午後三時三十五分速記開始
  131. 中山福藏

    委員長中山福藏君) 速記を始めて下さい。本日はこれにて散会いたします。    午後三時三十六分散会