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衆議院議員(
前田榮之助君) ただいま
議題となりました
宅地建物取引業法の一部を
改正する
法律案につきまして、
提案の
理由及びその
要旨を御
説明申し上げます。
宅地建物取引業法は、御
承知の
通り、宅地
建物取引業を営む者の登録を実施し、その
事業に対し必要な規制を行い、もってその
業務の適正な
運営をはかることにより、宅地及び
建物の
利用を
促進することを目的として
昭和二十七年六月に制定され、従来何らの規制措置もなかった宅地
建物取引業の
運営に
一定の秩序を与え今日に至っておるのであります。以来、この法律は適正な
業務の遂行と宅地、
建物の
利用の
促進に寄与し、現在登録業者の数は、全国で約二万二千人に達しておるのであります。
しかるに、現行法のもとにおきましては、破産者や未成年者等を除くほかは、
一定の登録手数料を納めればだれでも登録して営業できることになっており、従って業者の中には、この
業務を行う上に必ず知っておかなければならない必要最小限度の知識すら有しない者も相当見受けられます。また登録業者の一部には、不心得者も若干あり、かつ、登録業者を装ったいわゆるもぐり業者の数も少くなく、このため宅地、
建物等の取引を通じ、依頼者が
経済的に不測の損害をこうむる等、各種の事故を発生している例が相当の件数に達しておる状況であります。そこで、今回業者の質を向上し、業者に対する一般社会の信頼度を高め、
業務の
運営を一そう適正化するため、以下のような措置を講ずることといたしました。
まず第一に、業者の設置する事務所ごとに都道府県知事の行う試験に合格した者を専任の取引主任者として一人以上置くことといたしました。この試験は宅地
建物取引業に関して必要な知識について、
建設省令の定めるところにより行うこととし、試験に合格した者は、これを宅地
建物取引員と称することといたしました。
第二に業者の事務所ごとに
一定額の営業保証金を供託しなければならないことといたしました。この営業保証金は、主たる事務所のもよりの供託所に供託することにし、その額は主たる事務所につき十万円、その他の事務所につき事務所ごとに五万円の割合による金額の合計額とし、その合計額は三十万円をこえないものとしております。
なお、宅地
建物取引業者と宅地
建物取引業に関し取引をした者は、その取引により生じた債権に関し供託した営業保証金について債権の弁済を受ける権利を有することといたしております。
また、宅地
建物取引業者は、供託した営業保証金を登録が抹消された場合には取り戻すことができるようにいたしております。
次に宅地
建物取引員の品位の保持と資質の向上をはかり、あわせて宅地
建物の取引にかかわる
業務の進歩改善に資する目的をもって、都道府県の区域ごと及び全国を単位として、宅地
建物取引員会及び宅地
建物取引員連合会と称する民法第三十四条の
規定による
法人を設立することができることといたしました。
以上のほか、事務所の移転に伴う登録がえの
規定を設けるとともに、無登録業者に対する取締りを厳にするため、無登録業者のいかがわしい標示広告を禁止する
規定を設けました。
次に、従来この法律の適用除外となっておりました信託
会社及び信託業を兼営する銀行についても、試験等の新しい制度が設けられましたため、この際これらのものに対しても、この法律を適用することといたしました。
なお、今回の
改正に伴う新しい制度が円滑に実施されるよう、付則において必要な経過
規定を設けました。その主要な点は、以下の
通りであります。
第一に、この法律施行の日から二年をこえない範囲内において政令で定める日から、各事務所に取引主任者を設置することとし、現に営業している業者についてはその政令で定める日までに引き続き四年以上の実務経験を有し、かつ、都道府県知事の行う選考に合格すれば試験を免除することといたしております。
第二に、営業保証金につきましては、現に営業しておる業者については、
昭和三十四年七月三十一日までは適用しないことといたしました。
第三に、先ほど申し上げましたように、従来この法律の適用除外となっていた信託
会社及び信託
業務を兼営する銀行にもこの法律が適用されることとなりましたので、以上の信託
会社等につきましても、取引主任者の設置、営業保証金の供託等に関しては、従来から営業しておる宅地
建物取引業者と同様に取り扱うことといたしました。
以上がこの
法律案の
提案の
理由及びその
要旨でありますが、何とぞ慎重御
審議の上、すみやかに御可決下さるようお願いいたします。