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1957-03-29 第26回国会 参議院 建設委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年三月二十九日(金曜日)    午後二時十一分開会     —————————————   委員の異動 三月二十八日委員小山邦太郎辞任に つき、その補欠として田中茂穂君を議 長において指名した。 本日委員田中茂穂辞任につき、その 補欠として小山邦太郎君を議長におい て指名した。     —————————————  出席者は左の通り。    理事            石井  桂君            岩沢 忠恭君            田中  一君    委員            稲浦 鹿藏君            斎藤  昇君            中野 文門君            武藤 常介君            大河原一次君            重盛 壽治君            北 勝太郎君            村上 義一君   政府委員    建設政務次官  小沢久太郎君    建設省河川局長 山本 三郎君   事務局側    常任委員会専門    員       武井  篤君   参考人    東京大学助教授 加藤 一郎君    弁  護  士 野間 海造君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○特定多目的ダム法案内閣提出、衆  議院送付)     —————————————
  2. 岩沢忠恭

    理事岩沢忠恭君) ただいまから建設委員会を開会いたします。  委員の変更の件を御報告申し上げます。三月二十八日小山邦太郎君が辞任いたされまして、補欠として田中茂穂君が指名され、また本日田中茂穂君が辞任され、補欠として小山邦太郎君が指名されました。     —————————————
  3. 岩沢忠恭

    理事岩沢忠恭君) それでは特定多目的ダム法案を議題に供します。  本日は本案審査のために、参考人として東京大学助教授加藤一郎君及び弁護士野間海造君の御出席をわずらわしました。  参考人の方に一言ごあいさつ申し上げたいと思います。本日は大へんおいそがしいところお差し繰り下さいまして、本委員会のために御出席を賜わりましたことを心からお礼を申し上げたいと思います。すでに御承知のように、ただいま特定多目的ダム法案が上程されております。この法案審議に当りまして、まず権威ある御両者の御高見を拝聴いたしまして、そうして委員会審議の重要な参考にいたしたいと思うのであります。かように考えましたのでお願いしたわけであります。急な御出席をお願いいたしまして、はなはだ勝手でございますが、どうぞ率直に忌憚のない御意見をお述べ下されば非常に幸甚と心得ております。  つきましては、この際委員の各位にお諮りいたしたいと思うのでありますが、本案は御承知通りに過日建設大臣から提案理由だけの説明を聴取してあるだけでございますので、本日はまず本案の内容の説明政府委員から聴取して、あとで両参考人の御意見を聞きたいと思うのであります。そして参考人の方々、あるいはまた政府の方に対しての質疑に入りたいと思います。以上御異議ないと認めてさように取り計らいたいと思いますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 岩沢忠恭

    理事岩沢忠恭君) それではまず山本河川局長から御説明願います。
  5. 山本三郎

    政府委員山本三郎君) 先般大臣から提案理由説明がありました特定多目的ダム法案要点につきまして、お手元に差し上げてありまする要綱によりまして御説明申し上げます。  第一として、この法律は、多目的ダム建設及び管理に関し、河川法特例を定めるとともに、ダム使用権を創設し、もって多目的ダムの効用をすみやかに、かつ、十分に発掘させることを目的とするものとしております。  第二として、この法律におきまして、多目的ダムとは、建設大臣が直轄で建設するダムであわせて発電水道または工業用水道の用に供せられるものをいうものを規定しております。次にこの法律において、ダム使用権とは、多目的ダムによる一定量流水貯留一定の地域において確保する権利をいうものとしておることでございます。  第三として、多目的ダムによる流水貯留利用いたしまして、流水特定用途に供する者は、水利使用許可によって生ずる権利を有するほか、ダム使用権を有する者でなければならない旨を規定しております。  第四として、建設大臣は、多目的ダム建設しようとするときにおきましては、建設しようとする多目的ダムに関しまして、貯水池の利用計画、並びに建設費及びその費用分担に関する事項等を定めまして、その建設に関する基本計画を作成することとしております。この場合において建設大臣は、関係行政機関の長に協議するとともに、関係都道府県知事及びダム使用権設定予定者意見をきくものといたしております。  次にダム使用権設定予定者は、多目的ダム工事に要する費用の一部を負担しなければならない旨を規定しております。  次にダム使用権は、建設大臣流水特定用途に供しようとする者の申請によって設定するものとしております。  次は、建設大臣は、ダム使用権設定をするときは、設定目的並びにダム使用権により貯留が確保される流水最高及び最低水位並びに量を明らかにして行わなければならないものとしております。  次は、ダム使用権物権とみなしまして、ダム使用権登録簿登録するものといたしております。  次はダム使用権は、相続その他の一般承継、譲渡、滞納処分及び強制執行、並びに一般先取特権及び抵当権目的となるほか、権利目的となることができない旨を規定しております。  次は河川附属物として認定された多目的ダムで、二以上の都府県の区域にわたる河川にあるもの及び政令で定めるその他のものにつきましては、建設大臣管理を行う旨を規定しております。  次は建設大臣は、あらかじめ関係行政機関の長に協議いたしますとともに、ダム使用権者意見をきいて多目的ダム操作規則を定める旨を規定しております。  次はダム使用権者は、多目的ダムの完成後の管理に要する費用の一部を負担しなければならない旨を規定いたしております。  次は、多目的ダムによりまして貯留される流水特定用途に供するため必要な水利使用許可は、建設大臣が行うものとしております。これは従来におきましては、知事が直接の許可をしておりました。この場合におきまして、建設大臣は、関係行政機関の長に協議いたしますとともに、関係都道府県知事意見を聞くことと規定しております。  次に、現在国と発電事業水道事業または工業用水道事業を営む者とが共同いたしまして設置いたし、または建設しておりますダムにつきましては、これらの事業を営む君の持分が国に帰属いたしましたときに多目的ダムとなるものとし、この法律適用するということを規定いたしております。  次は前半の十三番目に申し上げました措置に伴いまして、河川法の一部を改正いたしまして、建設大臣水利使用に関する処分をいたし、または都道府県知事処分につきまして認可をいたしますときには、関係行政機関の長に協議するものと規定いたしております。  次に、ダム使用権設定された多目的ダムについては、国有資産等所在市町村交付金及び納付金に関する法律改正いたしまして、国または都道府県は、市町村に対しまして、交付金を交付するものといたしております。  以上簡単でございますが、要点を御説明申し上げました。
  6. 岩沢忠恭

    理事岩沢忠恭君) それでは、これから参考人の方の御意見を承わりたいと思います。参考人発言時間をおよそお一人二十分程度にお願いをいたしまして、質疑はお二人の公述が終りましたあと、お願いいたしたいと思います。まず最初に野間海造君からお願いいたしたいと思います。
  7. 野間海造

    参考人野間海造君) 私はここに書き出してありますように、弁護士をやっておりますが、かねて大学の教授もやっております。それからまた建設省専門委員、経済企画庁の専門委員をやっております。  私、水の問題は非常に好きでありまして、大正十二年に、木曽川の宮田用水大同電力水利権の問題を調べて、当時電力ピーク調節の違法だということを法律論として論証しまして、そしてその賠償は民法の金銭賠償でなしに、物の施設賠償するのだ、つまり現物賠償といいますか、賠償施設というか、そういうことを主張したのは、大正十二年の労作でありまして、つまり逆調整ダムというものをその当時主張しました。初めての言葉であったようでありますが、十数年後に今後に逆調整ダムができまして、学問が芽をふくのにだいぶ時間がかかりましたけれども、そういうことから私まあ三十数年、水の法律問題は非常に好きで、興味を持って勉強しておりまして、お役所の方も多少お手伝いをし、そして河川法根本改正等も、今ずいぶん呼び出されまして、かかったのでありますが、河川法の方は、改正は何とも難産で流れております。この多目的ダム法案は、実は私建設省委員をしておりながら存じ上げませんで、ゆうべ出先に電話がありまして、きょう出て来るようにと、それから資料も何も拝見していない、おそく帰りまして、拝見したのはほんの要点だけを拝見して、もう実は質問することすら熟していないというような状況でありますが、承わると衆議院は通過したということで、なかなか大事な段階であると思いますので、軽率な意見は述べかねますが、ただ私ども長年専門家としてのぞいておりまするので、質問のような意見のようなことをこれを読んだ程度で申してみます。少し時間が足りないような気がしますが、場合によりましたら、時間を少しいただきたい。  今河川法が非常に古い法律封建的立法だと、何とか根本改正しなければならぬということは、これはもう周知のことでありながら実現しないというのに、これがすぐこうやって出てくるというのは、一つ建設省ハイダムを盛んに作っておる。電源あるいは地方庁協議をして作っておるというようなことから、これが法案の形に発達してきたのだというようなお話であります。そこでそれらとにらみ合せて調節的に考えると、なるほどなとうなずけるのでありますが、要するに河川共同築造ダム法律問題のむずかしいことをかつて書きまして、今論文としましては、専修大学の論文集に、国と電気会社との共同築造ダム所有権問題、それを書いて発表してありますので、これでもってとにかく共同築造ダム所有権問題が非常にうるさい、それから河川法国有財産法関係がむずかしい、また国と私権との競合もむずかしいというようなことが非常によくわかりまして、結局私は特別立法を要するということを書いたのでありますが、実際問題としましては、河川法付属命令としまして、昭和二十九年七月九日の建設省令河川法四条二項の規定に基く共同施設に関する省令、これでやや私の論文趣旨調節されておるようであります。十分とも思いませんが、まあこれで一応糊塗的に調節しているように思う。そういうことを考えまして、建設省オンリーハイダムを作る、あるいは他の企業体地方庁で共同して作るという場合のこの多目的ダムそれ自体所有権問題は、一応今の省令が対象になるのでありましょうが、要するに国有財産でなし、それからまた河川付属物として認定されますと、無主物になる、ここに私権がのっかってくる、その私権を何とか生かさなければならぬというような趣旨のように拝見できます。その意味ダム使用権という物権を創設するというように私には了承できるのであります。もちろん河川法特例だと。ただし二に入りまして、この多目的ダムというのは、建設大臣が直轄して建設するダムだと、費用負担は従来は電源あるいは府県等であったのが、今度はそのほかのもののアロケーション費用負担任ずるというようなことになるので、その所有権をもし問題にするならば、一そうめんどうくさいのでありますが、要するにその出損をする人には特定用途ということのためにダム使用権という物権を与える。財産を与えるのだということのようです。ただこれは拝見してみまして、「発電水道又は工業用水道の用」と書いて、カッコして「特定用途」と、こう書いてありまして、灌漑が入っておらない、これは私にはわかりません。河川利用はもう日本の水田国では必ず灌漑に結び付くのであります。ところがここでは灌漑が全く入っておらない。あとで等という字があるのかと思ってよく見ると、等の字もない。そうすると灌漑というのはどういうことになっているのか、灌漑の問題が入ると水利権問題は非常にうるさくなるので、それだけにこれは難問題にむしろ展開するということが十分考えられるのでありますが、しかしこれなしに多目的ダムの問題が片づくのか、この点は私実はわかりません。要するに灌漑が多目的一つの大きな目的に包容されなければならないと私は考える。それを考えるというと、なかなかまた水質水温の問題が大へんむずかしくなる。同じ水量にしましても……。
  8. 斎藤昇

    斎藤昇君 ちょっと発言中ですけれども、ちょっと一言……
  9. 岩沢忠恭

    理事岩沢忠恭君) 速記をとめて。   〔速記中止
  10. 岩沢忠恭

    理事岩沢忠恭君) 速記を始めて。ではお願いします。
  11. 野間海造

    参考人野間海造君) それから今の灌漑が入るとなると、このダム使用権につきまして、特に水温、それから場所によりましては河川水質、あるいは鉱山等がありますと、水質の問題も出てきます。それから水量にしましても、灌漑が入ってきますと、灌漑期間中の水量、それから発電水力としましては必ずピーク調整をやる、これは日々非常な水の変動を放水の上に与える、その任務をおそらく多目的ダムが持つと思うのですが、そういう自然水量、それからピーク調節をされる水量の変化、そういったものが、これは操作規程あとから出るようでありますが、そういったものがよほど考慮されないとなかなかむずかしい問題になる。それから、先に行って申してもいいかもしれませんが、この際ついでに申しますと、これは技術の世界の人は御承知ですが、例の水が貯留されますというと、躍層で非常に水温が低下するのであります。ちょっと記録を見ますと、十五メーター下に行きますと、まず摂氏の五度の温度になる。一メーターで大体六度ないし八度ぐらい下る。表面から五メーターぐらい下りますと表面温度より十度ぐらい下る。これは自然水温が非常に人工的に調節されるのでありまして、これは灌漑に影響すること非常に大きい。私どもたくさん見て歩きますのですが、この問題の配慮が土木、電力関係の人にはどうも乏しいように思う。自然水温が下るということは農生産には非常な打撃でありまして、たとえば稲の発芽に適当な温度は十度ないし十三度、生育に適当な温度は十三度ないし十四度、伸長に適当な温度は十五度ないし十六度、開花の時期に適当な温度は十五度ぐらい、それから結実稔実といいますか、二十度ないし二十五度という水温が稲作として要求されるのに、そういうふうにもう五度だの八度だの十度だのというふうに下った水を落されまするというと、これはよほどの施設、逆調整にしましても、あるいはため池というものを作りまするにしましても、よほどのことをしないと水温は上らない。私そういった問題で、古く北海道の忠別川と江卸水温問題で鑑定を日発に依頼されまして調べたことがありますが、あそこでは私の意見水温上昇ため池を作りました。約二度上っております、そのため池のために。もう少し上げるとよりいいと思うのでありますが、もう少し、二度ぐらい上ると冷害を防げると思います。少くともあの江卸で、旭川近辺水温上昇施設でよほど上ってきたということは言えるし、それから最近同じ北海道で、糠平のあのダムでは十数メーター下から水を落した、これは躍層に入ってたまらんから私が意見を申しましたが、口頭意見でしたが、キャンバスでずっと上水を落しております。それでもまだ数度、下手すると十度下っております。それは下流の元小屋の逆調整くらいではとても上らぬ問題です。とにかく水温の問題は、農業灌漑からいいますと非常に致命的に大事であります。電力関係の人は水温問題に非常にのんきでありますが、二度や三度とおっしゃいますが、二度や三度で枯死するか結実をしないかという重大な段階にいきますので、これはもうハイダムを作るのに非常に大事な問題である。どこから水を落すか。上水道が大体上水落しをやってくれますが、ああいう配慮が、ぜひこのハイダムを作る場合に少くとも最末流では逆調整が必要だ。その配慮が一体どこにあるのか。操作規程くらいではこれは間に合いかねる問題だと思うのであります。  それから先へいきましょう。三の点でありますが、これは、ダム使用権とは「多目的ダムによる流水貯留利用して流水特定用途に供する者」とあります。それは「水利使用許可によって生ずる権利を有するほか、ダム使用権を有する者でなければならない」、ちょっところがどうもわからないのですが、「水利使用許可によって生ずる権利を有する」ということがダム使用権獲得の前提ならば慣行水利権はどうなるのか。要するに河川法適用を準用されるところとそれから適用準用のない河川山間部にあります。山間部水田もありますしするので、そういう慣行水利権多目的ダム特定用途ダム使用権には参画できないのか。これはいろんな例外の場合を考えたらむずかしい問題かもしれませんが、そういった問題をここで、ちょっと私字句がよくはっきりしないのでわからないのですが、慣行水利権の場合には何かいい参画する方途はないものか。  それから、四は要するに基本計画を立てるということであります。そしてその基本計画は、建設大臣関係行政機関の長に協議する、関係都道府県知事、これは従来の第一次監督官庁でありますが、及びダム使用権設定予定者、つまり将来ダム使用権者となる者の意見を聞くと、こうなっております。これも十分御審議のあったことと思いますが、こういった問題はただ実際問題として相当にうるさいんじゃないか。私に理論的に言わせれば、行政庁がこういう協議をしたり意見を聞いて裁決を与えるということは当り前でありますが、水利権問題は意外にむずかしいことで、しかも下手をすると非常に長引く。訴訟にでもなるとそれは大へんなことになる。そういうときの、何かそこにまでならぬような、しかももっと科学的な相談機関がこの前にあった方がいいんじゃないか。あるいは意見を聞いたりしてまとまらぬときに、たとえば調整審議会といいますか、調整委員会というか、学者を集めたりした、要するに技術者法律家経済学者実務家と、そういったものを入れたそういう審議会のようなところでもっと御相談になって、科学的解決標準を示す、その通りになるならぬは別にしまして、科学的解決標準を示して、こじれないように早く解決するようにする、科学性標準にしておるというような諮問機関があってしかるべきじゃないかと思うのです。  それからなお蛇足ですが、理論的に言うと、これはそういう監督官庁ならば同意ということがある。あるいは使用権者ならばやはり権利者ですから法律的な解釈としては同意ということが理屈としては通るのじゃないか、この運用が非常によろしければ問題はないが、非常に心配される点であります。従って何かそういう科学的な相談機関をここで活用なさった方が私としてはいいと思う。  それから五でありますが、まあ工事費アロケーション分担でありますが、これは当然なことでありまして、むしろこのアロケーション工事施行者管理者に賦課する権限がないとやりにくいのではないか、私はそこまで考えます。で、農業が抜けておる感じがするのでありますが、かりに入るとしますと、農業の方も、従来の農業関係は補償をしぼることばかりやって、そうして協力しない。あれはそうじゃなくして、自分らも利益を受けるのだから、洪水旱魃調整を受けて安定水量を得るのだから、利益を受けるのだから、だったら受益者負担をすべきだ。電力の場合の受益者負担農業灌漑の場合の受益者負担の場合とは、これは利益率が違いますから、利益を受けるということは、農業灌漑が大きくともいわゆる収益率が違いますから、だから当然農業灌漑の方の負担率を低くする、電力の方は大きくするとか、そういう配慮がおありと思いますけれども、やはりこういった程度で考えることは、私はむしろ当然のことだ。そこではっきりした賦課権が、ダム一元工事をし、あるいはあと一元管理をする場合に、その担当者賦課権がないとやりにくくはないかというようなことも考える。そうして今のアロケーションの割合は収益性標準にした、つまり経済的な考慮でなされるであろうことは予想されますけれども、まあ一応意見として申しておきます。  それから六でありますが、ここで特定用途申請によってダム使用権設定されるという趣旨ですね。当然のことでしょう。  それから七は、貯留が確保される流水最高及び最低水位並びに量を明らかにしておく。かりにつまり、これは最大流量最小流量と同じように、ダム貯留した場合は利用できる最大最低ということでありましょうが、これは当然のことながら、実は私に言わせると、電力用途がある場合にピーク調節をする。理想を言えば、もう夢のような理想を言えば雨水は一滴も無為に流さず、どんな大洪水でもせきとめて、そうして旱魃を防ぐというところまでいけば理想でありますが、とにかくその調節のほかに電力用途ピーク調節がある、これをどっかではっきりして、その限度もこれは操作規程にも入る問題かもしれませんが、そういった問題はどっかここらで考えられていいのじゃないかしら。  それから八は、そのダム使用権物権とみなす、そうして登録簿登録をする、これは物権として財産権にしたのですからそういうふうに表示する、これは実は私はある意味ではこういった主張をしてきたのであります。まあ私の極論を言わせれば、ダムの共用が立法上はっきりすればいいんだ、そうしてその財産権としての登記をするというようなことが実は私の主張でありますが、そこまで現行法がきておりませんから、さしあたり便法として使用権物権として、財産権として登記する、これは必要なことだと思います。これによって電力上水道その他の水の使用権が、今まで河川法の三条では私権を認めないのが、それに対して大きな例外財産権ができた。従って投資したものが財産として生きてくる。今までなら幾ら投資しても付属物認定を受ければ無主物になる。水利権私権じゃありませんし、財産権にもならない。幾ら巨額の金を使いましても財産権としては何にも出てこない。こんなばかな矛盾はないと思うのであり、ますが、そこで財産権として物権となった。これは私非常にけっこうなことだと思うのであります。  九も財産権でありますから処分権がある。滞納処分も受けるし、強制執行も受けるし、先取特権及び抵当権目的にもなるという、これも当然な行き方で、実際問題としてはなかなかそうもいかぬかもしれませんが、それは当然の問題と思います。  十は、河川付属物として認定された多目的ダム、これは河川法それ自体でいえば無主物となるわけであります。公有財産、でもない、私物でもない、いわゆる公法上の営造物でもない、そうして河川法上は一種の営造物公物として管理を受けるというような非常にむずかしい河川法規定がありますが、ここにそういう認定をされた多目的ダムで、二府県以上にまたがる河川の場合は建設大臣管理をする。これは河川法でも常にねらったところでありますが、ここで一つ出てきたわけであります。建設大臣自分一元工事をしてそうして自分施行をして多目的ダム管理する、これも河川行政としては一つの機構がはっきりきまってやりいいと思うのであります。やりいいわけですが、あとが——そのあと操作規則になりますが、なかなか実際はむずかしいのじゃないか。建設省としてはやりいい、そのほかの方面の調節として。  次に、十一、建設大臣はあらかじめ関係行政機関の長に協議する、それからダム使用権者意見を聞いて、そうして操作規則をきめるということになっておりますが、この場合のやはり調整、それから権利関係の確認、それからまた救済、そういったものの前提的な機関、これは調整的な機関、できれば特殊審判制度が入れば好ましいのでありますが、さしあたり諮問機関でも、科学的な解決の指針を得るために科学的な構成である調整審議会式のものがあって、そこに公正な判断を示してもらって、それをさらに適当に調整して、そうして操作規則にする、こういうことの方が円満に実施ができてよろしいのじゃないか。  それから十二は、同じアロケーションの、今度は管理費のアロケーションでありますね。これも先ほど申した五の工事費アロケーションと同じ趣旨でいいと思います。これも賦課権がないと実際問題としては困るのじゃないか、この場合の賦課権は強制徴収の権限があってもいいのじゃないかと思います。  それから十三は、多目的ダム特定用途に供するダム使用権許可建設大臣が行う、これももう管理建設大臣がするのですから、河川行政の頂点をそこに置くということは、これは一員して筋が通っていいと思うのでありますが、やはりその場合の協議意見というようなことですね、特にこの場合に知事は——これは従来知事が第一次の許可権を持っていたのがここに落ちてきたのでありますが、これは河川行政が高度になってきた場合によろしいと思う。ただこれもまた相談機関、科学的な判断を得る相談機関、でき得べくんばそのまたむずかしい場合の救済機関というようなものがあった方がいいんじゃないかと思います。  それから十四は、これはまあ国とそれから電気事業者、水道事業者、まあ自治体でありましょう。それから工業用水道事業とありますが、これはおそらく工業用水の事業者、水道事業者に分れると思うのですが、そういう工業用水道関係、これらがみな共同して設置して、そして建設して管理する、そういった場合の問題ですが、「これらの事業を営む者の持分が国に帰属した時」というのは、これは結局共同出資でダムを作るのだが、所有権は国だぞ、持ち分が国に帰属するから一元的に国のものになる。といって、国有財産法適用のある国有財産ではなくて、これは河川法付属物として認定されたから無主物として国に帰属するわけです。だから出資が要するにここで行方不明になってしまうのですが、実際問題としては建設省管理権を持っていかれるのでございましょう。要するにまあ建設省の所有で大蔵省の管轄でないというような意味のことになるのじゃないかと思うのですが、実際問題としては、ただその辺の法律解釈がなかなかここいらがむずかしいところで、加藤先生からまたいろいろ御意見を聞きたいのですが、この辺なかなかむずかしい問題が法律的には包蔵されている。  それから十五は、水利使用許可建設大臣が行う、その場合に「河川法の一部を改正し、建設大臣水利使用に関する処分をし、」この処分許可意味が主でございましょう。または「都道府県知事処分につき認可をしようとするときは、関係行政機関の長に協議する」、その場合の関係行政機関は大体通産、農林、厚生というのがおもだろうと思います。ときには運輸省が入ったりするかもしれませんが、この協議の場合も何かすべて一つ科学的な相談機関、いわゆるちょっとこの辺まだ私のみ込めないところがあります。  それから十六は、ダム使用権設定された多目的ダムについては、国有資産等所在市町村交付金及び納付金法律改正、これはいわゆる固定資産税相当額を、あるいはそれより幾らか低いかもしれませんが、それを所在市町村に交付するということでありましょう。これもずいぶん問題がありまして、そういう大きな施設があるところの市町村だけが非常な利益を得て、税金が要らなくなって、町村民税が要らなくてそしてぜいたくをしておる。そして実際それを利用しておるのは大都市である。その大都市の方がむしろ高い税金を払っておるということになる。これらはこういう財源、これはむしろ国全体に振りまくような方法の方がいいんじゃないか、まあここではそうなっておりますが、私はかねがねそういうことを主張して参りました。固定資産税につきましても、その所在固定資産の所在市町村のみが恩恵を受けて、実際の消費者であるところの大都市が犠牲になっておる。これでは日本の産業は振興しっこないのでありまして、高いコストになる。  以上がこの法案要綱についてでありますが、それと考えさせられることは、いろんな点が考えさせられますが、従来もかなりハイダムがあちこちできております。所によりましては相当連鎖式にできております。そういうところで他の多目的ダムだけがこの権利を持って、ほかの連鎖して存在する、あるいは将来連鎖して建設されるであろう多目的ダム、あるいはハイダム等との調整、それが一体どうなっておるのか、たとえば北海道の天塩川ですが、あすこに雨竜ダム、鷹泊ダムというのがありまして、人工のダム洪水を起したことがある。これは昭和三十年の夏でありますが、ああいうものはこれとある意味で関連があったりなかったりするかもしれませんが、たとえば雨竜ダムはすばらしい北電のダムでありますが、あれは昭和三十年の夏に二度か三度洪水があった。大雨があったときに事前放流をしないで、満水で大雨を受けて、ダムの保護のために急いで放流してしまった。それを下の鷹泊のような小さなダムでは受け入れられなくて放流してしまった、それで人工の洪水ができたというようなことを考えますと、ダムが連鎖してできた場合に、その全体をいかに連繋操作するか。それをうまくやらぬと、ハイダムを作るんだ、多目的ダムを作るんだ、洪水調節はできるんだといいながら、現実はむしろ逆になってしまう、その危険が実際あるのであります。事実例がある。雨竜ダムの場合に北電の相当な方が私にこう言うのです。いや、うちのダムは営業ダムでありまして洪水調節ダムではございません。だからその任務はありません。まあダムの保護のためには放流するけれども、事前放流はまっぴらだ、こう言うのであります。これは実は刑法の百二十二条過失温水浸害、これが犯罪になるということを忘れておられる。検察当局も気づいておられない。ああいった場合に僕は不可抗力の実証がつくまで捜査すべきだと思う。またそれほどの気がまえでなければ、ダムを作ってそれが既設のダムと連鎖する、すなわちほかの営利ダムハイダムとの連鎖において総合的に調節ができなければ、人為的なダム洪水が実はかえって出てくる。ダム調節どころか、ダム洪水が出てくるという心配があるのであります。同一河川ハイダムが連鎖して、多目的ダムとその他のダムが重畳した場合に、いかにそれを連繋操作するかということは大きな問題でなければならぬと思うのです。そうしてその洪水時の調整方法ですね。この操作につきましても、洪水時の相互関連を連鎖ハイダム調整ということ、洪水時の調整ということ、これは非常に大きな問題として私は考えたいのであります。  なお、これには補償の問題は全然触れておりませんが、補償の立法も不完全でありまして、非常にまちまちな補償をなされている。しかも非常に高い補償をせびられて、そうしてコストが高くなっていくというような面も多々ありますので、これはこれに直接関係ないかもしれないけれども、補償の問題も何かの関係ではよほど配慮されないと、多目的ダム建設費の高いものになるという心配もあるのであります。要するに河川河川法適用準用河川と、そうでない河川は特に山間部には多い。そうして慣行水利権もずいぶん存在する。そういったものが田用水として非常にある。そういった農業灌漑の問題がどうもこの文面でははっきりしていない。それから水温のことが非常に心配だ。それから水温技術調節が非常に心配だ。そういうことを多年私が総合開発を主張しておるだけに、いろいろ心配だけは人並み以上にするのであります。  まあ、法律的にもっともっと突っ込むところも多々あるでありましょうが、せっかく衆議院を通りまして、今参議院で審議を受けておるこの機会に、おじゃまになってははなはだ恐縮なんでありまして、ただ一介の専門学者として、この短文を見た瞬間に気がついた程度のことで何も研究しておりませんが、それだけのことを今発表したのでありまして、はなはだ恐縮でありまして、なお法律的にこまかいことは加藤先生が御説明になると思います。  これで私の話を一応終ります。
  12. 岩沢忠恭

    理事岩沢忠恭君) どうもありがとうございました。  次に加藤一郎君にお願いいたします。
  13. 加藤一郎

    参考人加藤一郎君) 私は東京大学の法学部で民法を専門にしております。そのほか水制度の方にも関心を持ったりしておりますが、専門は民法の方でございますので、きょうは問題をしぼりまして、一つダム使用権という物権を創設することについての問題について、それを中心にお話したい。それからもう一つは、全体としての水制度の一環として見た場合の多目的ダムの取扱いがこれでいいかということを第二に申したいと思うのであります。結論を初めに申しますと、この法案はこの法案として、これでけっこうではないかというつもりでございます。  まず第一のダム使用権の問題でございますが、これは、まず二条にその定義が出ております。二条二項におきまして、ダム使用権とは、「多目的ダムによる一定量流水貯留一定の地域において確保する権利をいう。」、それが十五条以下におきまして詳しく規定されておりまして、それが物権になる。二十条でダム使用権物権にするということが書いてございます。まずこのダム使用権という物権を創設するのがどうかという点でございますが、これは従来は、先ほど野間さんの御指摘になりましたように、二十九年の建設省令によりまして、まあ負担した費用の額に応じて共有になるという形を一応とっておったわけであります。しかしこの建設省令は、果して河川法三条に反するのではないかという疑義もあるわけだと思います。つまり河川法三条で、附属物無主物になるというのが法律の考え方でありますから、それを省令で、果して共有持ち分を認めるということができるのかどうかという疑義もあったわけであります。それと同時に、共有持ち分といいましても、それを登記するというような方法が認められておらない。これはダムは建物ではありませんので、建物登記ということもできませんし、土地登記という中にも入ってこない。従ってそこに抵当権設定するということもできなかったわけであります。で、これは費用を出したからには、その費用について、たとえばほかからの借入金でダム建設したといたしますと、それについて抵当権設定するという必要がまあ当然出てくるわけであります。それで従来共有持ち分という形をとりながら、しかも抵当に入れるというような方法もないのであります。共有持ち分という、ただ虚名があるだけでありまして、実際にはあまり役に立たなかったのであります。まあ法律的にも疑義があるし、実際にも役に立たないというのが従来の共有の形であったのであります。それを今回この法律で、明確にダム使用権という独立の物権にいたしまして、しかもそれを担保化の道を開いたということは、けっこうなことではないかと考えるのであります。ただこのような物権というものは、一つの特殊な物権でありまして、従来あまり例を見ないものではないかと思うのであります。で、物権といいましても、ダム使用権ではなくて、施設使用権ではなくて、流水貯留を確保するという特殊の物権であるわけであります。これはいろいろな法律構成をとることが考えられますが、たとえばダムという施設の共有という従来の形体であるとか、あるいはその施設利用権であるとかという形体も考えられますし、また他方においては、水利権と一本にいたしまして、まあ水利権プラスダム使用権のような、新らしい権利というものを考えるという方法も、技術的には可能だろうと思われます。まあどの方法が一番いいか、必ずしも一がいにはいえないと思いますけれども、このようなダム使用権という物権をとるという方法は、従来の法律体系にあまり反することなく、つまり従来の河川法の体系に直接に反することなく、しかも必要な目的を達成するという意味におきまして、まあ考え方としては非常におもしろい考え方でありますが、それでよろしいのではないかと考えているわけであります。さらによりよい方法というものも考えられるかもしれませんが、これで法律的におかしいとか、従来の法体系に矛盾するとかということはない。そういう意味で、これを認めて差しつかえないと思うのであります。まあこれに似たような物権を従来の法体系の中から探してみますと、一番近いのは、おそらく漁業権の中の共同漁業権ではないか。つまり一定の水を支配するというわけですが、実際はその中で魚をとるので、あまり確定的な、特定的な物権というわけでもないわけです。それとかなり近いような新しい物権であると思われるのであります。  なお、これを物権でなくて、一種の債権的なものにするということも可能だと思われるのであります。たとえば貯留してある水を、不当に管理者の力で放水したというような場合に、それに対する損害賠償請求権を持つということは、債権でも可能なわけであります。しかし物権といたしますと、それよりさらに強くなりまして、たとえば不当に放水をするような場合には、それに対して物権的な差しとめの請求権を持つ、一種の物権的請求権みたいなものをもって差しとめもできるということが考えられるわけでありますし、他方において、これを担保化するという道を考えた場合には、やはり物権にしておいた方が便利であると思われるのであります。で、この権利を認めます一番実質的な実益としましては、先ほどの担保化の道ということだろうと思うんです。つまり他人から金を借りて費用を支出しておきながら、その担保になるようなものが何もできないというのは不合理な話でありますので、ここにできました物権を担保に入れるという形でそれを解決するというわけであります。もっとも抵当にできるといたしましても、それは借入した先との計算の上の関係であるのが普通でありまして、実際に抵当権を実行するということは、おそらく実際にもないと思いますし、やろうと思っても非常に困難であります。たとえば譲渡性はかなり制限をされておりまして、二十二条では、移転について建設大臣許可が要るということになっております。これはダム使用権の公益性からして当然の規定だと思われるのでありますが、そうしますと、かりに抵当権を実行するとか、あるいは強制執行で競売をするというような場合には、結局この許可を受けるようなものでなければ買い手になり得ない。電力会社がつぶれて、新しい電力会社を作ってそれを買うというような場合しかあり得ないわけでありまして、普通のように簡単に競売ができるわけではない。しかしそれにしましても、帳簿の上だけに終るかもしれませんが、やはり抵当という形がここで生まれることは妥当であると思うのであります。  なお、ダム使用権については、灌漑用の水利権者というものは、ダム使用権を持たない形になっております。つまり十五条におきましては、特定用途に供する者の申請によってダム使用権設定する。つまり「特定用途」と申しますのは、二条の一項にございまする「発電」「水道」「工業用水道」という三つのものでありまして、そういうものにしかダム使用権設定されない。従って灌漑用の水利権者には使用権設定されないのであります。この点たとえば十条におきましては、灌漑用の水利権者に対して受益者負担金を課すような規定が置かれておりますが、それとの関係で問題になります。つまり灌漑用水に使うものは、費用は負担しながらダム使用権は持てないという関係になるわけであります。それが果して妥当かどうか、ちょっとよくわからないのでありますが、これを認めようとすることももちろん差しつかえない、あるいはその方が妥当かとも思うのであります。しかしこの原案のままにしておいても、実際にはそれほど困らないのではないか。つまり、ダム使用権の実益というのは、抵当権設定するということに大体あると言ってもいいと思うのでありまして、工業用水利権者がほかから金を借りて受益者負担金を払うというようなことは、それは起らないのじゃないか。しかし、もしそういうことが起るとすれば、やはりそれを担保にしてということも法律的に考えられることであるし、この点はどちらにしたのがよいのか、実際がよくわからないものですから、必ずしもはっきり申せないのでありますが、まあどちらの方法をとっても実際にはそれほど違いは出てこないということはあるいは言えるのかしらと思うわけであります。以上が第一のダム使用権物権にするという問題でございます。  次に、第二に、水制度一般から見た場合の多目的ダムというのがどうかという、この法案がどうかという問題に移ります。これは従来多目的ダム建設及び管理については、発電などの事業者と建設大臣が共同でやるというような建前をとっておりまして、その間の責任とか、あるいは費用の負担関係とかいうものが必ずしもはっきりしていなかったのであります。二十九年の建設省令がございますけれども、たとえばそこで操作規程を作って管理をしようというような場合にも事業者の同意が要る、二条でそういうことになっております。そういう点からしますと、事業者の同意が得られなければ完全な責任ある管理ができないというような形もあったわけであります。その点からしまして、建設の点で建設大臣が単独で建設する、それについて特別会計を設けてやる、あと費用としてほかの者から徴収するというのは、建設の責任並びにその予算関係を明確に一元化する意味で私はけっこうな制度だろうと思うのであります。さらにでき上ったものの管理につきましても、一応建設大臣が責任を持ってやる。これは、たとえば電力関係事業者と洪水調節という問題とは二律背反になる面ありまして、そういう点についてはやはり建設大臣が責任を持って管理をするというやり方がいいと思うのであります。ただその点について、問題は他の行政機関や事業者の十分な納得を得た上でやっていただきたいと思うのであります。法律規定では関係行政機関の長には協議をする、あるいは事業者については意見を聞くということになっております。これは協議が整わないときに一体どうなるのかという疑問が残るわけでありまして、協議というのは一応話合いをすればいい、それで話合いがつかなければやはり責任と権限を持つところの建設大臣協議整わなくても処分ができる、あるいは操作規程を作ることができる、あるいは基本計画を作ることができるということに法律的にはなると思うのであります。しかし、この点は非常にいろいろな利害関係が輻湊しているわけでありまして、協議という言葉をあまり法律的に解釈することなしに、実質上十分に協議をしていただく、そうして協議が成り立たなければ、ほんとうに納得のいくまで協議を整えてやらなければ実際には管理がうまくいかない、計画がうまくいかないということになると思うのであります。法律としては、協議ということはあるいは条文としてはやむを得ない。あるいは同意ということも考えられますが、そうすると、何かやはり共同管理みたいな形が残って、責任、権限の一元化という点からいうと、やはり欠陥が残るのじゃないか。そこで同意としないで協議とするのは条文上はやむを得ない点だと思うのでありますが、しかし、その運用については十分御考慮を願いたいと考えるのであります。  なお、この点に関連いたしまして、付則において河川法改正が行われようとしていることは注目すべき点ではないかと思うのであります。付則の五項におきまして、河川法の六条を改正して二項を設けまして、主務大臣流水の占用に関する処分をするときには関係行政機関の長に協議をするということに条文が入っております。これは前から国土総合開発審議会の中に水制度部会というのが設けられておりまして、そこで河川法その他水制度一般に関しての審議をいたしておるわけでありますが、そこででき上りました意見書におきましても、これと同趣旨のようなことがうたわれていたと思うのであります。その水制度部会の作りました答申案というものは、まだ総合開発審議会にはかけられておらないようでありますが、これはいろいろ政治的な考慮があると思うのでありますけれども、その中の一部というべきこの点が、今回河川法改正によって実現されるということは、行政の運営を円滑にする上において非常にけっこうなことではないか。なお、できればそのほかの水制度一般の問題につきましても、この法案はこれでけっこうだと思うのですが、さらに全般的な御考慮をお願いして、なるべく総合的な調整の実現をはかるというようにしていただきたいと存じます。  もう一つ、いろいろな利益調整という点で問題のありますのは、受益者負掛金の制度であると思われます。これは九条と十条に出ているのでありますが、まず七条で一応建設費アロケーションをいたしますが、さらにその後におきまして、九条においては下流増、たとえば下流の既設の発電所などがそれによって利益を受ける場合には受益者負担を課する。それから十条では流水について専用施設を設けて灌漑用に供するものは、やはり受益者負担金を徴するということになっております。九条は一応当然の規定だと思われますが、十条においては、農業水利権との関係が出てくるわけであります。従来は、多目的ダムの場合にも、農業水利権者というものは費用の負担をいたしておらなかったのであります。これは河川法の三十七条の規定による不均一賦課によりまして、取れれば取れる形にはなっていたようでありますけれども、実際には取っておらないわけであります。もっとも、国営の灌漑用のダムを作る場合には、地元が二割の負担金をしておりましたので、それとのつり合いで、農林省がやる場合には二割負担する、それから多目的ダムを作る場合には全然負担しないというのもいささか筋が通らない話でありまして、負掛の率は大いに考える必要があるかもしれませんが、やはり農業利益を受ける以上、それを負担金という形で分担すべきだということは、議論としては正論だろうと思うのであります。ただ、農業というのは、採算の非常にとりにくい事業でありますから、ただ計算の上出た配分を受けたのでは、やはり不利である。ここでも、十条におきまして、分担の額は十分の一以内、それに建設利息を付したものということになっているようであります。従来の農林省でやっている場合には、土地改良法によって二割の負担をしておりましたのを、ここでは一割ということで、まあその約半分になっておりますけれども、それに建設利息が加われば、二割近くあるいはなるのかもしれません、利息はよくわかりませんけれども。とにかくそういう形で負担するというのは、従来より農業には不利になるけれども、理屈としてはやむを得ないところではないかと考えるわけであります。まあそうなれば、農業の方は十条でもっぱら負担をして、九条では負担をしない、九条からは灌漑水利権ははずれるということになるのだろうと思われます。ただ、九条と十条の書き方がつり合いがちょっとわからないのでありますが、九条では、「費用の一部を負担させることができる。」、十条では、「負担しなければならない。」ということになっておりまして、ちょっと言葉の上ではつり合いがとれないように思われます。もっとも、九条の「できる。」というのは、何も負担させなくていいという意味ではなくて、できるというその権限、建設大臣の権限を示したものだという意味だろうと思うのでありまして、まあそれならば同じになる。その点が言葉の上でちょっとわからない点であります。  以上で私の説明は大体終るのでありますが、全体として見た場合には、これによってダム使用権という形で権利が明確化することは、好ましいことである。それから、建設管理の一元化ということがなされることも望ましいことである。ただ、その場合には運用には十分気をつけていただきたいということでございます。きのう急にお話を受けましたので、十分調べておらないで、あるいは見当違いの点もあるかと思われますが、これで公述を終らせていただきます。
  14. 岩沢忠恭

    理事岩沢忠恭君) どうもありがとうございました。  それでは、参考人の方に対しまして御質疑はございませんか。
  15. 田中一

    田中一君 結局、水はですね、古来何千年か流れておった。それを慣行によって利用しておったというのが現在の姿であるわけですね、どの河川にいたしましても。流水というものはですね。そこで、ダムの築造によって被害を受けた場合には、これはむろん補償という問題が起きてくるわけなんです。その利益を受けたというのは、ためた水をある一定の時期に流したというために、灌漑用水としての負担ということになるのか、その水の。その水ですね。その場合の水です。あるいは、従来ともにむろん旱魃もあるでしょうが、ないかもわからんです。その場合には必要な水はむろん充当し、また、必要でないものも一緒に流しておった農業灌漑用水とするならば、渇水時に流した水に対する一部負担ということになるわけですか。
  16. 加藤一郎

    参考人加藤一郎君) 十条の規定は、単なる下流増の場合、つまり上にダムを作ったために従来の水量がふえたというただそれだけのことでは受益者負担を取らないことになっておると思うので、つまり専用の施設を新設、拡張して、そうしてその貯留水を利用するという場合に初めて取れるわけでありまして、ですから、従来通り施設のままで利用していれば、これはおそらく取れないというつもりじゃないかと思うのです。
  17. 田中一

    田中一君 そうすると、御承知のように、川というものは何千年か前から同じように流れておったのです。それをせきとめることによって、漁業権なりあるいは灌漑用水の水利権というものが制約を受ける場合もあるわけですね。この場合には補償の問題が起きるわけです。そうすると、負担するという根拠は、補償でもってカバーされちゃって、当然そういうときの条件としては負担しないでもいいのじゃないかという考え方も持つわけなんです。むろん補償という内容には、金銭補償もあれば、負担をしないという補償の解決点もあると思うのです。現在のダム築造によるところの水利権争いというものは、そういう形に解決が見られたのが多いのじゃないかと思うのです。そうしてなおかつ、渇水時には、当然余分のものをお前ら発電に必要だけれども、いけない、出せ、というような解決が現在行われておるものと思うのです。こういう場合に想像するのは、そういう場合には、かりに私が今申し上げたような点だというならば、その形態は、たとえば漁業権にいたしますと、その水を利用して下の方に養魚場を作る、そうしてそこでもって水をためて、わさわざ出してもらってですよ、ダムから放水してもらってためてやるという場合か、あるいは、全然水がない所へダムのたまった水を流してもらって新田開田といいますかね、開田用水として送り込むという場合にだけに限るのではないですか。
  18. 加藤一郎

    参考人加藤一郎君) つまり十条の新設、拡張の場合は、新田開発のような場合を主として考えておる。また、それだけを考えておるのじゃないかと思うのですが、従来の施設を使って利用しておる場合には負担しなくてもいい。これは従来の既得権といいますか、それでただ水がふえて渇水時に利益を得ても、それは取らないという建前だろうと思うし、また、それが妥当だろうと思うのですね。
  19. 田中一

    田中一君 そうすると、今のダム使用権というものは設定されないでも当然じゃないかという気がするのですが、その点はどうですか。
  20. 加藤一郎

    参考人加藤一郎君) ですから、費用を負担しない場合にはなくて当然だと思いますが、費用を負担した場合、その負担にかわる身がわりのものが何も得られないか、財産権としてですね、得られないかといえば、それをもしほしければ、形の上でダム使用権ということで置くことも考えられる。ただ、それを抵当に入れるというようなことは農業の場合には普通ないでしょうから、それがなくても済むのじゃないか。どちらも考えられると思うのです。
  21. 田中一

    田中一君 こういう場合を想定してみます。ダム築造によるところの水の争いがあった。そうしてその妥結点は、むろん金銭補償の点、あるいは渇水期の放水の点とか、それからまたそのほかにダム使用権というものをよこせ、ダム使用権というものは、一定の場所に貯留したところの水を流すということがダム使用権であるならば、それを、その物権をおれにもよこせということを要求することも私はあっていいのではないかと思うのです。これはむろん補償という問題とはからみ合いの問題です。この問題を解決するために、ダム使用権をおれにもよこせ、権利として放水させろということはあり得るのじゃないかと思う。たとえば、これは一本の水系のもとにおけるところのダム使用による問題じゃなくて、流域変更その他によって起るところの問題ですよ、これはそういう意味の既得権といいますか、慣行水利権といいますか、そういうものに対するダム使用権設定ということは、当然あっていいのではないかという考えを持つのですが、これは加藤先生と野間先生から御答弁を願いたいのですが。
  22. 野間海造

    参考人野間海造君) いまのあれですか、補償施設をもらったから、費用負担に任じない、そうするとダム使用権は成り立たないというのですか。
  23. 田中一

    田中一君 先ほど両先生からのお話を伺っておって、結局海潮用水に使う流水というものは、この二条の定義でこれは含まれておるわけですか、はっきりと灌漑用水というものは……。しかし、前段に加藤先生が言っておるように、含まれておるのだということも言い得るのではないかと思います。当然含まれておるということ、灌漑用水に使う権利というものが含まれておるのだ、ただダム使用権という物権としての権利はそれに与えられないのだということに尽きると思います。そうしますと、自然に流れてくる水というものは一定量あればいい、余分な水は灌漑用水として欲しくはないのです。従って、そのダム建設の他の河川からでもあるいは水の流れてくる場合もあります。しかし流域変更の場合、相当上流部において流域変更をして、他の河川にその水を持っていった場合に、そういう場合のトラブルというのはとにかく農民というものに……、ほかの目的に使っておる水というものは、一定権利を与えられて確保されておる。しかし当然流される水というもの、当然水系として流れてくる水を確保されて向うへ持っていかれた場合、同じようなダム使用権というものをくれという要求も起り得るのではないかと思うのです。またやっていいと思います。
  24. 加藤一郎

    参考人加藤一郎君) その場合は、補償の問題とからませておっしゃっておるのだと思いますが、補償の問題とダム使用権の問題は、一応切り離して考えた方がいいのじゃないか、補償の問題は補償として、これは政党な補償をなさって解決する。ダム使用権は別に考えて、受益者負担ということで、もし負担した者がダム使用権があった方が都合がいいということなら、それにはまたダム使用権を与えるということもいいと思いますが、補償とは一応別個の問題じゃないかと思います。
  25. 田中一

    田中一君 これはまあ灌漑用水ということは、ダム使用権というものはないのだときめて……、私の言っておるのは、そう思ってもいいのではないかというのです。もし補償の問題に関係がなくても。
  26. 加藤一郎

    参考人加藤一郎君) 補償の問題と切り離して考えた場合は、あってもいいのではないかということを私は先ほど申し上げたので、つまり農民がそれがあった方が気分が楽だということであれば、あるいはそれが負担金を出すということで、何か権利というものが与えられれば金を出してもいいという気持があるならば、認めるということも考えていいと思います。
  27. 田中一

    田中一君 しかし、その場合はよくわかりました。ただ既得権というものが侵害されるという場合を想定いたしますと、既得権が侵害されるということになりますと、補償という問題がちょっと飛び出してくるものですから、私の力は混乱するのかもしれませんけれども慣行水利権とか、既得権というものが侵害されておるという、侵害されるのだという前提に立って、その場合は、今こういう流域変更というような、ダムは今後相当に大きくならなければならないと思うのです。私はそう思っておる。ただ一河川だけの水の使用だけでとどまってはならぬと思うのです。そういう傾向が多くなって参りますと、灌漑用水に対して、既得権が侵害されるという前提のもとに、ダム使用権というものは、これはむしろ一定の負担ということはあります。私の言っておる一定の負担ということは、補償金の中から差し引いてもいいのですから、一定の負担でもってけっこうだと思います。設定してもいいのではないかということの強い主張はできませんかしら。加藤先生のお話では、それもあり得るのだ、これもいいのだということでは困るのであって、あり得るのだ、なくてはならないのだというような結論は出ないかというのです。
  28. 加藤一郎

    参考人加藤一郎君) 今の補償の場合とは一応切り離すというのは、私の考えでございますが、かりにその補償の場合とからませて考えるといたしましても、ダム使用権を認めても、それはあまり実益がないのじゃないかと思うのです。ダム使用権というものは、実際水を使う水利権と結びつかなければ意味がないのだと思う。単なる補償としてダム使用権を与えても、あまり救済にならないと思うのです。ですから補償としては金銭補償か、ほかのところの補償を別に与えて、ダム使用権はあくまで受益者負担に属するものとして考えられた場合に、私があってもよし、なくてもよしと申しましたのは、あるというのは、形の上であった方が農民の気持に合するということがあれば、認めてもいいと思いますので、ただ認めても実益というものは、やはり抵当に入れるとか、そういうふうな場合は、やはり水利権と結びつかなければ意味がない、そういう意味におきまして、認めても実際には経済的にそれを売るとか、担保に入れるとかという問題は、農民の場合には普通行わないから、実益はあまりないのじゃないか、そういう趣旨で認めなくてもいいと申し上げたのであります。
  29. 野間海造

    参考人野間海造君) 私も二条に灌漑が入っていないことも不思議でもあったし、これは灌漑を入れた方がいい、それでその場合に、流域変更等で水利権が侵害された場合に、補償なんかそんな——侵害の程度にもよりますが、補償が一部にされても、なおかつ水利権があるあれもあるのだから、それで一部の負担に任ずることもあるのだから、補償と費用負担を相殺という観念は適しないと思います。やはりだから補償と費用負担は別途にして、侵害の場合の補償も別途にして、そうしてとにかく灌漑多目的ダム特定用途として、ダム使用権の範疇に入れべきだと私は思います。入れた方が、既得権の侵害があれば補償するし、それから受益があるならば費用負担任ずるし、権利もはっきりさしていく。それから加藤先生は、抵当権等のそういったような役にも立たぬし、なるほど灌漑水利権というものは公権的性質をもっておりますから、財産権とかというものはそういう意味からすれば、希薄でありますけれども、これが物権として認められ、抵当権等の対象になるならば、土地改良区あたりがやはり国家資本でも借りる場合に、農林中央金庫あたりから借りるようなときは、それは幾らか形になってくるのじゃないか、やはり生きることもある。いわゆる灌漑水利権は公権的性質が強いということは言える。従って河川法適用の場合、適用のない場合でも、私権であって公権的性質を持っているということも言えるのだから、私は二条には灌漑問題は入れべきであると思っております。
  30. 田中一

    田中一君 かりに新田開田といいますか、開墾地に水を導入するためには、負担はこの場合でもダム指定というものは設定されないのですね。費用負担を勘案して、そして開田と言いましても、自分灌漑地に一応既得権によって流した水を下流において使うという場合にはどういうみなし方をされるのですか、法律的にどうなりますか。自分のたんぼを通った水が今度は下の方にかりに十町歩開田した、その水は当然打っちゃっておけば自然に開田地に流れ込むのです、何も施設しない場合に、施設をすれば施設をしたといって負担金をとられるかもしれない、何も施設をしない場合、巧妙にそういう場合にあぜ道を作ったりした、その場合にはどうですか。
  31. 加藤一郎

    参考人加藤一郎君) それは施設をしたかしないかという問題になると思うのですが、なかなか実際にはそういうことはむずかしいと思うので、普通はやはり施設をして、ちゃんと水を取るということになるのじゃないかと思うのですが、自然に流れていったやつは十条で負担をする必要がない。
  32. 田中一

    田中一君 灌漑用のダムというものを農林省が相当多く各地に作っておりますが、なかなか工事が悪いので、何と言いますか、破壊されて災害をやった例はたくさんあります。こういうものに対しては二〇%の負担をしていると言いますと、この場合にはこれは特定多目的ダムとこうおっしゃいますが、あれはダムに間違いないですが、そうすると、結局増産とか改良という点から、ああいう政治的な配慮が行われて実行しておると思いますけれども、どちらかが農業灌漑用水に対して負担が過重だという不均衡があった場合には、これは農民の問題になろうかと思うのです。従って特定多目的ダム以外のダムというものはたくさんあるわけですね、特別会計法を見ますと、天龍、美和ダム、二瀬ほか八つのダムが指定されているのですが、これ以外のダムの場合ですね、いたずらに開田する場合に、農民が損をしなければならぬということになるわけですね、これは十分の一以内のアロケーションとそれから利子というものが加わる。そうすると現行のダムというものは何ら法律で縛ってないわけなんでしょう、下流において開田した場合に……。これはそうすると、特定多目的ダムの下流にあるところの農民なり何なりがむろん受益をする面もあるでしょうけれども権利を侵害される面もあるのじゃないかと思います。そうすると他のこれに入らないところのダムの場合、灌漑用のダムの場合負担がどちらかが重くなるという場合には不均衡というものが問題になるおそれがありはせんかということを伺っておるわけですが、その点はどうでしょう。それはそれでいいんだ、当りまえだという、法律的に当りまえだということでいいのか、あるいは政治的にはあっちゃならぬのだということになるのか、その点伺いたいと思うのです。
  33. 加藤一郎

    参考人加藤一郎君) 理屈を申しますとですね、利益を受ける以上は、その割合は問題でしょうけれども、やはり一般の税金を使ってやるわけですから、特別の受益者というのは負担をすべきだというのが本来の筋だろうと思います。ただ問題は農業の場合に、農業が相当保護しなければ育たない産業であるというような点の、つまり政策的な考慮もそこに入ってくるわけでありまして、ですからその割合に農業が成り立つように政策的にやはりきめなくちゃならぬ。で、普通の場合、ほかの事業者の場合にはその点は考慮を異にして政策的な考慮が入ってくる。それがどこまで入るか問題でありましょうけれども、そういうことが考えられる。しかし理屈はやはり負担をすべきだという理屈になると思うのです。まあいろいろな場合の不均衡があるわけですが、現在の農林省のやるダムについては負担をするのに、多目的ダムでは負担をしないという不均衡が一つあるわけです。その不均衡の方が、一般の場合の不均衡の方が多いから、こういう法律を作る場合にはやはり農業用のダムを作ったと同じように、あるいはそれに近い割合で負担をさせるということになってこざるを得ないと思います。それの負担金をどうするか、もう一つの上の段階から政策的に決定されるべき問題だと考えております。
  34. 田中一

    田中一君 この要綱の四ですね、「協議をする」、「意見を聞く」という点です。これは野間先生の場合には同意の方がいいのではないかという御意見、それから加藤先生の方はむろん同意ならはっきりするけれども、それじゃいわゆる主権というものがはっきりしない。従って一つ事業なら事業ができない場合もあるのだから、これはそれだけの権力を建設大臣に持たした方がいいのだというような御意見があるのです。私は加藤先生の御意見もわかる気がするのです。しかし権利だけを国に与えて、これはもう非常な大きな権利なんです。意見を聞いて協議をする、聞かぬでもこれは執行できる権限ですから、こういう点は民主主義じゃ少くともないのであります。民主主義というのはどこまでも討議討論をやって納得ずくで結果を待とうというのが民主主義のはずなんです。そうするとこれはやはり権力的なにおいがないでもないのです。むろん加藤先生は納得してという前提があります。問題はこの納得の問題なんですよ。御承知のように現在こうして官公労の諸君が、あなたも入っておるでしょうけれども、ああして赤旗を振っておりますけれども、納得しないからああいうものでやっているのです。しかしこれは一方的にものをきめるでしょう。また一面民主主義は多数意見が尊重されるということであり、多数意見で決定するということになっております。ここにやっぱり傾向として、日本の民主主義憲法化において、傾向として権力主義というものが徐々にあちらの立法のすみから、こちらの立法のすみから芽ばえてくるというような印象を私は受けるわけなのです。そこで協議という点を同意に置きかえて、そしてこれは野間先生が先ほどこの点については特殊な調整審議会ですか、というようなものを持つとか、あるいは持って協議にかえる、納得にかえるという方法をとるか、まだ私この法律案を全部説明を聞いてないものですから、ちょっとわかりませんけれども、もしも協議をしても納得しないという場合ですね、権力で行動するという場合ですね、やっぱり別な審判制というか、抗告制度ですかというものが、これに入っているか入っていないかはっきりわからないのですが、そういうものがやっぱり必要なんじゃないか。たとえば土地収用法にいたしましても、そうした意味の訴願の道というものが現在できている。これが今のあらゆる法律の姿だと思うのですがね。その点はどうお考えになりますか。何かこれだけでは権力政治的な、権力主義的なにおいがするのじゃないか、弱いものが、少数者が納得する形というのは、やはり法文の上、制度の上でもってさしてもらわないと、納得できないという点があるのじゃないかと思うのです。
  35. 加藤一郎

    参考人加藤一郎君) その同意協議かという点は、これはいつも問題になる非常にむずかしい点だと思うので、どちらが妥当か、なかなか一がいに言えないと思うのですが、それからまた同意協議かということのほかに、たとえばどっかに調整機関を設ける、あるいは経済企画庁、あるいは内閣総理大臣調整権を持たして、調整権のあるところに第三者的な審議会みたいなものを置くという方法も考えられると思うのです。どちらがいいのか、どうもそこは行政の運用の問題になるので、どっちがスムースにいくのか、一がいにも言えない。同意の方が民主的だとも言えそうですけれども、しかし同意の方をたてにとってあくまでもがんばられると、これはまた非常に困るという面もあるわけで、その辺の調整がいつも心を悩ます問題だと思うのです。今の私の気持としては、一応その建設大臣に権限と同時に十分な責任を持ってもらって、そこは良識で判断してもらう、あとは各行政機関との間の政治的な解決によってあくまで納得づくで解決をしていただくということで、一応建設大臣に権限と同時に責任も持って一元的にやるようにするのがいいじゃないかと思っておるのですが、その点は非常にむずかしい問題だと思います。
  36. 田中一

    田中一君 河川法には御承知のように水利権というものの許可都道府県知事がやっております。都道府県知事は何かというと、民選知事なんです。しかし今の政府は大体において官選知事にしようというような傾向を示しておるのです。そこでそういう現在の置かれておる姿から見て、これが建設大臣に取り上げられる、このむろん特定多目的ダムの場合ということですがね。そうしますと、現在他の水利権というものがやはり都道府県知事がやっておるのです。同じ多目的ダムにいたしましてもやっておるわけなんです。そこにまた一つの不均衡の面が起きてくるわけです。これもすべてどういう法律を作ろうと、納得の上においてなされることは、われわれは望ましいのであって、民選知事の権限までも取り上げるというくらい重大なこの特定多目的ダム目的というものが、ここまでしなければならないかということになりますと、私非常に疑問を感ずるわけであります。同じ形のものが他にもあるのです。ただこれは特定という文字を頭にかぶしてやっている。特別会計法では八つの地点を示してございますけれども、おそらく今後予想されるダムは、少くとも日本の国土開発という面からも、自立経済の面からも全部多目的ダムでないものはないと思うのです。従って今後は上水、工業用水、発電という、もしそこに農業灌漑用水が含まれるならば、一切のものが、むろん総理大臣にいたしましても大臣にいたしましても、選挙を経て出てきたものではありましょうが、何といっても国家行政機構というのは強権であります。従ってそういうものに、全部強い力のものに与えてしまうということは、どうも危険を感ずるのです。われわれはやはり新しい憲法を守るという立場から申しましても、また逆行するのではないかという危険を感ずるわけですが、これは学者としての加藤先生、ことに東京大学の助教授としての加藤先生、民法学者としての加藤先生が、率直にあなた自身の御意見、個人の御意見を伺えたら伺いたいと思うのです。
  37. 加藤一郎

    参考人加藤一郎君) 私は今も個人として、初めから個人として言っておりますので、別にほかの資格で言っては全然ないわけです。その点は御了承願いたいと思います。  で、結局協議にするか同意にするかという問題も、結局話し合いがつかなかったときにはどうするかということになるわけで、その場合にほっておいていいのか、それともやはり何かしなければならないのかという問題になるわけであります。やはり全体の立場からすれば、ほっておくわけにはいかないと思うのです。整わない、同意ができない場合に解決の方法を考えなければならない。そうしますと、やはり権限を上に上げて、たとえば総理大臣のところに持っていく、その総理大臣審議会をつけるというようなことで、そこで最後的にきめるという結果にあるいはなるかもしれない。しかしそういう方法も考えられますけれども審議会といっても、結局それほどまでに問題になった事柄については、またこれも今までの実情を見ますと、大体各省のひもつきというか、そういう人が割合に委員に出てきて、そこでまた前と同じ論争を繰り返して、結局とにかく学識経験者も入りますけれども、あまり当時の議論が出て、前の蒸し返しをして、総理大臣が最後的に決定をするということにどうしてもなりがちなんですね。ですから権限を上に上げてみたところで、必ずしも今解決が保障されるとは限らない。よくなる場合ももちろんあるでしょう。ですからそこはやはり協議がはっきり整わなければ、それはやはり内閣全体の責任において、あるいは閣議でそれを持ち出してきめるとか、むしろそういう解決をとるべきではないか。いたずらに総理大臣に権限を集めて、またそこで総理大臣の強権を発動するという形も望ましくない。そうかといってまあほっておくのも望ましくない。従って協議にしておいて、あとは話し合いで解決したらどうか、それを十分考えてほしい。その場合に十分考慮した上で解決をしてほしい。というのが私の本来の意見なんです。
  38. 田中一

    田中一君 ですから、法文の上にそうした段階を織り込んであると、まあ大衆討議の機会も持たれて納得の方向へ進まれるわけなんです。全然そういうものがなくて、初めから権力ですぐにするのだということを宣告されますと、やはり抵抗は強くなるのではないかと思うのです。伺ったのは、そういう傾向が今日いいか悪いかの問題を伺ったわけです。審議会を持っても同じじゃないかということは、私は水利度部会におきましても、各専門々々の学者の方が一生懸命議論なすっても、今の各省の次官というひもつきが委員になって出てきている以上、とうていやはりひもつき意見だけで官僚性が露呈されるのです。従ってそういうものがだめだからいいじゃないかということではなくて、そういう傾向は好もしいか好もしくないかということを伺ったわけなんです。
  39. 野間海造

    参考人野間海造君) 今の田中委員のお尋ねでございますが、つまり権力主義的な政治の発達という懸念がする、行政機構としては通産も、農林も、建設も同列なんですから、だから従って同意ということが望ましい。これは河川法なんかで水利権許可する場合でも、下流水利権者の同意を得た上で許可するという建前ですから、同意という言葉の方が筋が通ると思う。筋が通ると思いますが、河川行政についてはわれわれ水専門の者の考えで見ますと、河川行政に関する限り建設省をトップに置くということにいかぬと、支離滅裂になる懸念がある。それは権力主義的なということになると非常に困るので、同意というととは困難で、むしろやるなら協議という言葉で円滑に運営してもらいたいと思うのですが、しかし今の田中さんの御心配のように、これは行政庁限りではいわゆる政治的な行政というものは合理性が果してあるか、科学性があるかということを疑うのです。だからこの立法に間に合うか間に合わぬかは別として、学識経験者を主体にした調整審議会式なものを持つ、それを今度は総理大臣が決裁するということも一つの最後的な救済手段だと思うのです。あるいは特殊審判制度を作って、裁判所へ持っていっても、実際技術的に作成しますから、らちがあかない。特殊審判制度をゆくゆくは作ってもらって、そしてアメリカのように一つ水利権を解決する場合に、下流の河川も全部調整してしまう、その審判所は一括して当該の係争だけじゃなしに、それに関連して派生してくる問題を全部一括して片ずけてしまう、工事や何かを全部調整しながら片ずける。ああいうやり方をすると、多目的ダム、さらに総合的なしかも科学的にいい結末ができるので、政治権力的な傾向を持つということはすでに河川法がそうなんで、しかも河川法府県知事を第一の許可官庁にしておいて、しかもそれは民選知事になってしまったというときに非常にでこぼこ、矛盾で運用がむずかしくなったという点、調節もどうしてもむずかしいのでありますが、少くとも建設省が直轄事業としてのダムの場合に、建設省を一応これに関する限りトップにおくという方式は許されていいのじゃないか。しかし建設省は上級官庁じゃない、従ってこの協議同意に類するものだ、それに匹敵するほどのものであるというほどの認識と運用がほしいと思います。
  40. 加藤一郎

    参考人加藤一郎君) 私も田中さんのおっしゃったように審議会を置くとか、あるいはもう少しほかの調整方法を考えるということに反対なわけじゃないので、あるいはその方がベターかとも思うのですが、しかしこういう形をとっていったから必ず権力的だといって、一がいに非難するわけにもいかない点がある。もちろん調整機関を設けてもなかなかうまくいかない面があるということを申したので、これで悪いということも言えないだろう。それはその場合の実情によって、あるいは審議会を設けた方が適当な場合もあるというぐらいのつもりでございます。
  41. 田中一

    田中一君 私はなぜこのような立法がされたかということに対して心配しておるのです。というのは、私も長い間国土総合開発審議会委員をやっておりまして、先生方が水制度部会でもっていつまでたってもらちがあかないのをよく知っております。そこで昨年の石橋内閣ができる前あたりからですか、傾向としていわゆる水のぶんどり主義の傾向がはっきりとわれわれの前に出てきたわけです。地下水の問題については、昨年の二十四国会では工業用水法という法律ができて、これで通産省は持っていってしまいました。それから上水はこれも建設省、厚生省ともに長い聞けんかをして参りました。そして話し合いがついたらしく、上水は厚生省、下水は建設省、ただし下水の濾過装置といいますか、これは厚生省、むろん農林省には農業用水というものを持っております。こういう限りではどうやらこの辺で水に対する政治的、行政的な結論ができかかってきているのです。しかし何といいましても、水というものは日本の唯一の資源であると私は考えているのです。そこで役人たちが自分の役所のなわ張りを考えて、そうして自分の都合のいいように水を支配しようという考え方は、今国土総合開発審議会の水制度部会で一応の結論といいますか、が出て、これに対する基本的な態度がきまった後にしてほしかった。私もずいぶん期待しておった、水制度部会の結論に対しては。しかし、まだ先ほどあなたがおっしゃったように審議会に報告されておりません。中間報告は受けましたけれども、これが話がついたというところからこうした形のいろいろな立法がなされてきたと私は思うのです。こういうことになりますと、これはなるほど各行政官庁がおのおのの責任の分野においてりっぱな行政をするでございましょう。ございましょうが、ここにもまだロスがあるのじゃないかと思うのです。こういう点を総合して、一滴の水といえども生かして使いたいという考え方を求めておるわけでございますけれども、この法律の成立によって、おそらく将来ダムの築造というものはこの方式によらざるを得なくなると思う。過去の問題はいざ知らず、現在できつつあるもの、あるいはできてしまったものもあらゆる形でこれに入れていこうという傾向が強くなるのじゃないか、こう思うのです。そこまで持ってくるならば、私は電力などは一本のもとの姿にして、国の直営にすべきであるというような考え方を持つわけなんです。民営にする必要はないのじゃないかという考え方を持つわけなんです。そういう点から見ても私はどうもこういう形には納得できないのです。で、われわれがというか、国民が納得する形のものがほしいと思うのですが、加藤さんが水制度部会のメンバーでいらっしゃるならば、そういう点根本的な水制度に対する考え方をどういうふうにお持ちですか。
  42. 加藤一郎

    参考人加藤一郎君) 私はその点今おっしゃった限りでは、田中委員の御意見に大体賛成であります。つまり全体としての水制度の基本方針をきめてからいろいろな個別的な立法をしていくべきでありまして、その点は先ほど申したと思うのですが、総合的な見地を一応たな上げしておいて、これを一方的に解決していくということはやはり望ましくない、根本方針をきめていっていただきたいというつもりであります。
  43. 斎藤昇

    斎藤昇君 加藤先生にちょっと伺いたいと思いますが、このダム使用権はただに物権だけでなしに請求権といいますか、債権といいますか、そういう一面も持っておる。そこで貯留量が確保されない場合には、差しとめ権があるというようにおっしゃいましたが、そうすると、この設定権者に対して貯留量を確保せい、確保されないような場合には、さらに水を流すことは差しとめる。あるいは上流の関係、またダム、貯水池の状況の変化等によって貯留量が減ってきた、これを維持するために、かさ上げ請求制度とか、そういういろいろな請求権がダム使用権にある、こういう御見解でしょうか。
  44. 加藤一郎

    参考人加藤一郎君) かさ上げ請求権ということになると、また少し別個の問題になると思うのですが、つまりそれは新たに今までのを拡張するような格好になると思いますから、別個の問題になると思いますが、今までの貯留する権利が侵害されるそういう場合、不当に水が放流される、そういうような場合には差しとめ請求権もある。その認定は非常にむずかしいと思うのですけれども、そういうふうに考えます。
  45. 斎藤昇

    斎藤昇君 かさ上げ請求権も一定量のこれだけの水を貯留する権利があるということになれば、たとえば底が埋まってきてそれだけ貯留できない、あるいは上流の状況が変ってきてそれだけ貯留できないことになってきたということになると、この設定権に言われている一定水量というものを確保するために請求ができるということになるのじゃないかと思うのですが、先生の先ほどのお考えであれば。
  46. 加藤一郎

    参考人加藤一郎君) 今の砂がたまってきて、貯水量が減るというようなことは、これはダムの計画に本来内在する問題だと思うのです。ですからそれは当然本来予定されていることでありまして、それで貯水量が減ったからといって、その分をよこせということは言えない。それは計画の中に当初から入っているものであると私は考えております。
  47. 斎藤昇

    斎藤昇君 そういう事柄がダム設定権者の設定する場合に最高水位最低水位、それから一定の量というのがございますね。これに自然の変化がきても、当然予見し得る自然の変化であればいい、こういう御見解ですか。
  48. 加藤一郎

    参考人加藤一郎君) 大体そういう見解でございます。
  49. 斎藤昇

    斎藤昇君 それから特定用途に供するダム使用権者のもとに確保する水量が少くなってくる。そうすると田植時で非常に水が要るといっても、その水を流すな、こういう差しとめができるわけですか。
  50. 加藤一郎

    参考人加藤一郎君) それは一応操作規則などで下流の灌漑用水としてどれだけのものを放水するというようなことがきめられるのじゃないかと、その点はよくわかりませんけれども、思いますが、大体操作規則協議をしたり、意見を聞いたりしてきめることになる。それで大体やっていくんで、実際差しとめが問題になるようなことは非常にまれだと思いますが、たとえば一応協議して作った操作規則に違反して何らかの行為がなされるというような場合のことを主として考えているわけであります。
  51. 斎藤昇

    斎藤昇君 そうすると、その操作規則をよほど注意してかからぬといかんということですね。操作規則と別個に最高最低水位一定の量、こうきめても、操作規則によってそれが変更され得るという、そういう御解釈ですか。
  52. 加藤一郎

    参考人加藤一郎君) 結局操作規則が具体的な運用方針をきめることになると思うのです。一応操作規則によってやれば、これは合法的だ。
  53. 斎藤昇

    斎藤昇君 そういたしますと、ただいまおっしゃるような、何といいますか第二条の第二項からくるいわゆる請求権みたいな、そういうダム使用権としてでなくて、操作規則違反とか、そういう別個の契約違反みたいな事柄じゃないのですか。言葉をかえて言えば、ダム使用権は第三章に掲げてあるのが内容で、それ以外にそういうダム使用権自身から起ってくる請求権、あるいは債権的なものは、この法律からは生まれてこないのだ、こういう解釈にはなりませんか。
  54. 加藤一郎

    参考人加藤一郎君) 操作規則は一応の基準だと思います。ですから操作規則に合っていれば一応合法的だと言っていいと思うのですが、操作規則にかりに書いてないことであっても、ダム使用権が何らかの形で侵害されるという場合には妨害排除権を持ち、また債権的なものだといたしますと、操作規則に違反しても必ずしも当然に妨害排除権が出てくるとは限らない。損害賠償権は出るかもしれませんが、妨害排除権となりますと、やはりここに契約関係があるとも言えないのですね。操作規則は一応建設大臣がきめることになりますから、契約関係とも言えない。それに違反しても直ちに差しとめ請求権があるとも言えないと思うのです。そういう点でやはり本質が物権ということになりますと、操作規則に違反すれば差しとめ規定がある。操作規程にかりに触れていない点について妨害が起ればやはり妨害排除という意味での差しとめ請求権のようなものがある。そういうふうに考えております。
  55. 田中一

    田中一君 たとえば私が心配するのは、第三十一条の操作規則にしても、これは一方的に建設大臣がきめられる。これもせめてその地点にやるのだと、かりに百歩譲って納得づくでやったとしても、納得の上に立って前段がきまったというものならば、納得したという前提でありますから、せめてこの操作規則ぐらいは合意によってきめるということが正しいのじゃないかと思うのですが、その点はどうなのですか。
  56. 加藤一郎

    参考人加藤一郎君) 私はむしろ基本計画操作規則は逆のような考え方をしております。基本計画では同意がなければできないだけの話で、特にそれによって被害を受けるというような問題はむしろ起らぬと思いますが、ところが、一度でき上ったものの操作規則が完全なものができないということになれば、これは下流にそれが被害を与えるというおそれも考えられるので、そういう面からでき上ったあと操作規則については、これこそ建設大臣が責任をもってやってもらいたいと存じております。これは先ほど野間さんもちょっと触れられましたが、たとえば電気事業者は自分の方の電気のことを主として考えて、洪水調節ということはあまり考えないという面もあるわけでございまして、その点は、むしろこちらの方は建設大臣にうまくやってもらってもいいのではないかという考えを持っております。
  57. 田中一

    田中一君 そうすると、今の基本的な計画の方は同意が必要ということであって、操作規則の場合にはまかせてもいいじゃないかということですか。
  58. 加藤一郎

    参考人加藤一郎君) 法文の体裁としては、どちらも協議で一応いいのではないかと思いますが、その気持は、基本計画の方はむしろ同意に近いような協議、それから一度できたものは、操作規則を作らず、ほっておくということはできないと思いますから、こちらの協議が整わなければ、これもできるだけ話し合いでやっていただきたいと思いますが、整わなければ、建設大臣がやるのもやむを得ないと思うが、今は同意ができないような場合は、暫定的な何か操作規則みたいなことでやっておられるようですし、結局実質は建設大臣がやるということだと思います。
  59. 斎藤昇

    斎藤昇君 もう一度だめ押し的に伺いますが、第二条の第二項に、ダム使用権とは、多目的ダムによる一定量流水貯留一定の地域において確保する権利と、こう書いてあります。そして第十八条の第一項の第二号では、ダム使用権により貯留が確保される流水最高及び最低水位並びに量とあります。そこで、ただダム使用権というものは権利がなければ、特定目的のため水が使用できない。この権利があれば使用ができるのだという権利だけであるならば、つまりこれは物件的のもので、担保に入ったり、あるいは譲渡できるというだけならばよろしいが、そのほかの債権的の請求権もあるのだという解釈をされますと、かさ上げせい、あるいは建設大臣がきめた操作規則に反しておろうと、おるまいと、とにかく一定の量というものが確保されない、そこで確保する措置をとれとか、されなかったための損害賠償をよこせというようなことが出てくるような気がいたしますが、この書き方でも、そこに請求権があるのだと解釈をされますと、私は常識的には加藤教授のおっしゃるような解釈になるように法文が作られることが望ましいのですけれども、請求権があるのだと、第二条の二項から見ますと、ありそうに見えますが、そうすると、そういう請求権があって、そういう請求を裁判所に起すというようなことができるような気がいたします。この書き方ではそれはできませんか。
  60. 加藤一郎

    参考人加藤一郎君) 今の物件の請求権があるかどうかという問題でございますが、これはやはり侵害は違法のものでなければならない。違法の侵害に対して妨害排除ができるということだと思うのです。操作規程というものがあれば、それがまた非常に不合理なもので、本来ダム使用権を無にするようなものであれば、その使用規程自体が違法だということもあるいは起り得るかもしれませんが、常識的に言えばそういうことはあり得ない。そういう意味操作規則に従えば一応合法的である、ここには違法な侵害がないといっていいかと思うわけでございます。
  61. 田中一

    田中一君 ここの「一般先取特権及び抵当権目的となるほか」、これはほかに何かありますか。
  62. 加藤一郎

    参考人加藤一郎君) 質権とかそういうものも考えられるわけでございます。それからそのほかには、まあ一番考えられるのは質権だと思うのですが、そのほかにも賃借権なども考えられますね、あるいは使用借権ですね、そういうようなものを法律的には考えられるわけでございます。
  63. 岩沢忠恭

    理事岩沢忠恭君) それでは参考人に対する質疑はこれをもって終りといたします。長い間どうもありがとうございました。  ちょっと速記をやめて下さい。   〔速記中止
  64. 岩沢忠恭

    理事岩沢忠恭君) 速記を始めて。  委員会はこれをもって散会いたします。    午後四時二十四分散会      —————・—————