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1957-03-01 第26回国会 参議院 決算委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年三月一日(金曜日)午後一 時四十四分開会     —————————————  出席者は左の通り。    委員長     三浦 義男君    理事            大谷 贇雄君            中野 文門君            西岡 ハル君            久保  等君    委員            石井  桂君            大谷藤之助君            後藤 義隆君            平島 敏夫君            松岡 平市君            吉江 勝保君            荒木正三郎君            片岡 文重君            高田なほ子君            大竹平八郎君            岩間 正男君   国務大臣      厚生大臣  神田  博君   政府委員      調達庁次長 丸山  佶君     厚生政務次官 中垣 國男君      厚生大臣官      房会計課長 堀岡 吉次君      厚生省公衆      衛生局長  山口 正義君    厚生省公衆衛生    局環境衛生部長 楠本 正康君    厚生省保険局長 高田 正巳君    建設大臣官房長 柴田 逹夫君      建設大臣官      房会計課長 關盛 吉雄君    建設省計画局長 町田  稔君    建設省河川局長 山本 三郎君    建設省道路局長 富樫 凱一君     建設省住宅局     長事務取扱  鬼丸 勝之君    建設省営繕局長 小島 新吾君   事務局側       常任委員       会専門員 池田 修蔵君   説明員       厚生省医       務局次長 河野 鎮雄君      厚生省社会      局保護課長 尾崎 重毅君    会計検査院事務    総局第三局長  石渡 達夫君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和二十九年度一般会計歳入歳出決  算(内閣提出)(第二十五回国会継続) ○昭和二十九年度特別会計歳入歳出決  算(内閣提出)(第二十五回国会継続) ○昭和二十九年度国税収納金整理資金  受払計算書内閣提出)(第二十五回  国会継続) ○昭和二十九年度政府関係機関決算書  (内閣提出)(第二十五回国会継続)     —————————————
  2. 三浦義男

    委員長三浦義男君) ただいまから第十三回決算委員会を開会いたします。  昭和二十九年度一般会計歳入歳出決算  昭和二十九年度特別会計歳入歳出決算  昭和二十九年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和二十九年度政府関係機関決算書を議題といたします。  厚生省の部を審議いたします。検査報告批難事項は第七百八十七号から第八百四十一号までであります。  本件に関し御出席の方は、会計検査院石渡第三局長神田厚生大臣山口公衆衛生局長河野医務局次長楠本環境衛生部長堀岡官房会計課長尾崎保護課長伊部国民健康保険課長山本保険局庶務課長の諸君であります。  まず、会計検査院から説明をお願いします。石渡第三局長
  3. 石渡達夫

    説明員石渡達夫君) 御説明いたします。  第七百八十七号は、一般会計国立帯広療養所及び国立療養所刀根山病院におきまして、二十六年四月から三十年三月までの間に診療した患者に対する病院収入徴収決定しないでいたものが五百六十八万三千円ばかりでありまして、そのうち百三万三千円は一ヵ年以上も古いもので、一ヵ年以上もたっているのに徴収決定の処置をとらなかったものでございます。こういうように徴収決定をしなかったのは、病院の側におきまして徴収決定をして金が入らないというと非常に病院の成績が悪いというふうにとられることを心配しまして、金が入るまで徴収決定を見合わしていたというような事態があったり、また係員の不注意によってこうした結果になっているのであります。それで実地検査の結果、会計検査院で注意しましたところ、三十年七月までに厚生省におきまして徴収決定の処置をとっております。  次に七百八十八号から八百四十号まで、「国庫補助金等経理当を得ないもの」、これについて御説明いたします。初めの(一)の分は、結核、性病等予防事業に対する国庫補助金等精算が当を得ないもの、それは初めにあがっていますのは、結核予防法なんですが、この結核予防法に対する補助金につきましては、百十九ページの七百八十八から七百九十二までに各件案があがっております。これは大体におきましてこの間違いが起りました原因は、その摘要に書いでございますが、ここに書いてあることは、結局この予防接種とか健康診断というものは県が施行するものと、町村が施行するものと、両方あるんでございます。それで町村が施行する場合に、町村の方で自分の方に医者がいないものですから、県の保健所に委託して健康診断予防接種をする、その県に委託してやった予防接種とか健康診断経費を、県の方で間違いまして、自分の方でしたものと町村の分をあわせまして、それに対して国の補助をやっている、こうした結果間違いが起きているのであります。この町村がしました健康診断等につきましては、別に国の補助が行っておりますから、従って国の補助がダブって行ったような格好になる、こうした府県が結核予防補助金におきまして五件、三百万円ばかりになっております。  次に、療養所運営費補助金でありますが、これが全部で人件、二百五十万円ばかりになっております。これは補助対象としてはならないものを補助対象に加えていたためであります。  それから八百一号から八百三号まで、性病予防法の国の補助金交付当を得ないもの、三件あがっております。三件で百七十二万八千円でございますが、この内容は、補助対象としてはならないものを含めておりましたり、あるいは八百二号のように、この補助金運営費補助金でありますので、運営費補助を誤まって建設費補助に用いたというような例でございます。  それから次に精神衛生費補助金が二件あがっておりますが、これは補助対象としてはならない経費を含めていたものであります。  それから次に保健所運営費補助金、これが一件、国庫補助金を返納すべき額が二十万円あがっております。これは補助対象外施設費を含めているものです。  その次に八百七号、優生手術交付金でありますが、これは北海道におきまして補助対象外道職員の旅費を含めていたのであります。この交付要項によりますと、この場合の補助対象になりますのは、優生手術を受ける患者の旅費とか、あるいはつき添い人の旅費だけを補助対象としております。それにもかかわらず、この場合には本事業に関連はあったのでありますが、道職員の旅費を補助対象として含めていたものであります。  次に八百八号、これは山梨県で、甲府市外五十四町村が日本住血吸虫病、こういう病気の、地方病予防のためにコンクリートのみぞを作る工事ですが、この工事費を四千五百万円ばかりかけてやっております。それに対して県が三分の二補助いたしまして、その県の補助に対して国が二分の一補助するものであります。国の補助としましては、この金額に対して千五百十七万二千円ばかりの補助をしております。その補助の状況を会計検査院で検査したのでありますが、各町村とも設計過大がありまして、補助金が約八十五万八千円超過交付になっておるという事態であります。本件は日本住血吸虫病予防のために、その病気の中間宿主をなすところの宮入貝を撲滅する、こういう趣旨で、従来どぶ泥のみぞを改修し、コンクリートにしまして、そうしてこの宮入貝がすめないようにするという趣旨の工事であります。この工事の設計に当りまして、厚生省におきましては、このみぞを全部新しく掘ってコンクリート張りにするという設計にしておるのでありますが、現地を見るというと、相当部分が従来のみぞがありまして、従来のみぞを利用するために、新しくもう土を掘らなくてもいいというところが相当あるのであります。そういうところを計算しますと、設計において、そのみぞの切土二万六千九百六十三立米になっておりますが、そのうち千九百八十五立米、これは既存の水路を利用するから、こうした切土の経費は要らない、こういう計算になります。その工事費が百四十一万二千円になっております。また、コンクリートを一・三・六の配合比コンクリート工事をやるのでありますが、その積算を立米当り四・八袋として計算しておられます。しかしこの一・三・六のコンクリート基準量は四・五袋で普通間に合うと、そうするとこの場合ならば十分に間に合ってあるのでありますから、この基準量立米当り四・五袋のセメントでもって計算しますというと、この分が百十六万二千円ばかり行き過ぎになっておる。この両方の合計で工事費が二百五十七万四千円ばかりが行き過ぎになっております。これに対する国庫補助金八十五万八千円、これが超過交付になっておるのであります。  次に、八百九号から八百十一号まで御説明します。これは「水道関係補助金精算にあたり処置当を得ないもの」でございますが、二十八、二十九両年度に簡易水道整備特別鉱害対策等水道関係国庫補助事業につきまして検査をしたのでありますが、そのうち、請負金額をつけ増ししたり、夫役賃金を過大に計上しましたり、あるいは路面復旧出来高不足となっているものに対し、実際の工事費を確認しないままに精算を了したために、補助金超過交付になっておりますものが百九万五千三百十一円でございます。その代表的な例を八百九号から八百十一号までに掲げてございます。  次に「生活保護費負担金交付にあたり処置当を得ないもの」、八百十二号から八百二十六号まででございますが、地方公共団体国庫負担金交付を受けて生活保護事業を行なっておりますが、その支出額は毎年非常に上っておる。この国の補助金だけについて見ましても、二十九年度は三百五十四億というような支出額になっております。この生活保護費の中で特に医療扶助費の占める比率が毎年非常に飛躍的に上っておりまして、これはこの医療扶助を受ける人が増加する関係もありますが、一つには医療の内容も充実しまして、生活保護費全体がふえる額よりも非常に医療扶助費がふえておる。ちょっと数字を申しますと、生活保護費に占める医療扶助費の比率が二十六年度は三六%、それが二十九年度は四九・五%、ほとんど半分に近いくらいになっております。それでこの歩合がうまくいっておるかどうかということを概括的に検査をしたのでございますが、三十年度中に百七十二福祉事務所について調査をしたのでございます。その調査は、この医療扶助を受けている家庭につきまして、その病人が六ヵ月以上継続して医療扶助を受けておる、それからその家庭のある人が勤めておりますが、その勤めておる収入が適正に計算されておるかどうかということを見たのであります。全体の調査件数は、さっき申しました百七十二福祉事務所につきまして、千三百七十三人について、これは医療扶助を受けている家庭から働きに出ている人の調査をしたのでありますが、それが千三百七十三名、この収入がうまく適正に算定されておるかどうかという調査をしたのであります。ところがそのうち不適正なものが八百十二件、結局、国庫負担金相当額超過になっておりますものが千七百七十四万九千円というふうになっております。こうした事態が生じましたのは、結局その働いております者の収入認定に当りまして、この被保護者の申告、あるいは雇い主の証明に不実な点がありましたり、また保護実施機関調査を十分にしなかったということに原因があると思われます。特にこの医療扶助につきましては、従来相当の生活をしていた者が、一たん病気になりますことによりまして、急に生活保護世帯に陥る、医療扶助を受けている間は結局最低生活をするべく余儀なくされる、その最低生活と申しますのが、生活保護法に基きまして、厚生省最低生活基準というようなものをきめておりますが、この基準が相当に低いのでありまして、結局、医療扶助を受ける間はその家庭は最低生活を余儀なくされるというようなことから、どうしても収入を低く申告する傾向がある、こうした事情は、福祉事務所の方でも十分に調べればわかると思いますけれども、事情が事情でどうも強く言えないような場合もある、こうしたことが原因になりまして、国の扶助行き過ぎになっているというような結果になっております。同情すべき事態もございますが、しかしながら、生活保護に対する国の財政負担が著しく増加しておりまして、特に二十九年度におきましては、国の負担不足が二億六千二百万円も出ている。これは国の資金繰りから国の負担ができなくて、このかわりは県が肩がわりして払っているというようなことになっております。それからなお、予算繰りの都合上払えないので、翌年度に繰り延べているものが七億七千四百万円もある、こういうような苦しい事態でございますから、なるべく公平に、ほんとう生活保護に値する家庭にまんべんなくこの扶助がいきますように、ほんとう生活保護の効果を十分に達するように一つ御努力をお願いしたいと思います。  それから「児童保護費負担金精算当を得ないもの」、これは八百二十七号から八百三十号までですが、これは児童福祉法に基きまして、児童福祉施設児童保護に要した経費に対しまして、都道府県が支弁しました経費について、国が八割補助をするのでありますが、厚生省におきまして国庫負担基本額の限度をきめまして、府県または市町村が実際に支弁した額がこの限度額を上回る場合には、実際の支弁額によらないで限度額補助基本額にする、また、実際の支弁額限度額を下回った場合には、この限度額によらないで、実際の支弁額によるというような交付条件を定めているのであります。ところが、本件の場合には、実際の支弁額がこの限度額以内であるにかかわらず、限度額をそのまま国庫負担基本額として国の補助を受けているのであります。そのためにここに掲げてございますように、八百二十七号から八百三十号まで、四件にわたりまして百二十三万四千円の超過交付になっております。  次に八百三十一号から八百四十号まで、「国民健康保険助成交付金交付にあたり処置当を得ないもの」、これについて御説明します。  国民健康保険補助金がうまく行っているかどうかということにつきまして、三十年度中において会計検査院におきましては百八十二保険者について調査をしたのでありますが、その結果、この八百三十一から八百四十号に掲げてあるような、交付が適正を欠いた例がございまして、全体において六百六十三万一千円の超過交付になっております。こういうような事態につきましては、従来も指摘したところでありまして、その後厚生省におきましても交付の際の審査及び保険者に対する指導監督がかなり行き届いて、改善の跡はうかがわれますが、なお依然としてこうした事態がありますことは、この補助を受けます団体におきまして、正当交付額以上に交付を受けようとする傾向がなおありますほかに、この補助金が非常にむずかしい条件になっておりまして、補助金は前年度の実績を基礎にしまして、その前年度実績に三つの条件がありまして、その三つの条件を満たしたものに、四つの方式によって計算した額を補助金にする、非常にこれは込み入っておりまして、補助を受ける側において悪意がなくて、計算を間違えて超過交付になるというような場合もありまして、そうした場合には、その精算厚生省でよく見て、この方式に当てはめて間違いがないかどうかということを、町村が出した精算書について精算をもっとよく検討する必要があると思います。  次に、厚生保険特別会計について御説明いたします。  二十九年度における厚生保険特別会計健康勘定損益計算書を見ますると、収益におきまして、保険料収入等三百九十三億一千五百余万円、費用におきまして保険給付費等四百三十三億四千二百余万円となりまして、差引四十億二千七百余万円の損失となっております。なお、貸借対照表におきまして、資産にあがっている保険料未収金の中には、事業所が解散したり、あるいは従業員がいなくなったりしたいわゆる全喪事業所というものの保険料が約十一億一千七百万円含まれております。こうした全喪事業所保険料というようなものは、なかなかとるのが困難で、今後の処理によっては不納欠損になるというようなものが入っておりますので、こうしたものを見込むと、実質上の損というのはもっと大きなものになるというので、留意を要するところと思われます。  このように損失を生じましたのは、二十六年度以降結核対策等の強化によって、受診率の増加、数次にわたる入院料点数の引き上げ、療養給付の内容の充実等がはかられましたが、一方、収入面においてはその間これという対策もなかった、いろいろな事情によりますけれども、保険経済全般的な対策が十分にとられなかったということによるものと思われます。なお、こうした制度上のほかに、業務執行面においても注意を要すると認められます点が三つございます。一つは、保険料徴収不足、これが報酬月額実態調査が不十分であったために、保険料徴収不足を来たしているものがあったこと。それから第二には、保険料収納未済が相当になっております。保険料収納未済は全額で三十五億九千九百万円、そのうち当年度分だけでも十八億千四百万円になっております。この当年度分の十八億と申しますのは、当年度分調定額に対しまして約四・五%ということになっております。この収入未済につきましても、今後もっと努力が要るように思われます。さっき注意を要するものが三つあると申し上げましたが、それは二つの間違いでございます。  それから国立病院について申し上げます。国立病院の二十九年度の損益を見ますと、収益におきまして、料金収入等八十一億円、費用におきまして、病院経費等六十九億九千五百余万円、差引十一億円ばかりの利益になっておりまして、二十八年度のそれが三億五千六百余万円であったのに比べまして、約八億円ばかりの利益になっております。しかしながら、この収益をさらに分析しまして、病院自体の稼働によるものではないものを除きまして、たとえばこの収益の中で施設整備費の全額、看護婦養成所費の半額、それから病院経営上の収入不足を補てんする意味で一般会計から繰り入れたもの、こうしたものの合計が十九億二千余万円ありますが、これを収益から除きまして、また費用のうちには、看護婦養成所医務出張所等経費が六億三千六百万円計上されておりますが、こういうものも病院自体経費ではないとしましてこれを除きまして、病院自体の稼働による損益を計算してみますると、一億千六百余万円の欠損になっております。これはこうした方法で損益を計算しました二十八年度分の損益が、二十八年度分は二億九百万円の損になっている点から見まして、やはりだんだんと経営がよくなっていることは間違いない事実と思われます。  なお、国立病院につきまして、診療収入徴収決定漏れが八百四十一号にあがっております。これは弘前及び山中病院におきまして、注射薬またはレントゲンを患者のために用いながら、これを徴収決定を漏らしてしまった、これが昭和二十九年四月から三十年三月までの間に七十七万六千九百八十五円ありました。このような事態は、この病院では伝票制度を採用していなかった、そのために医師または診療料金請求事務に従事する医事係の職員が、伝票制度のなかったために、薬品類を使用した事実を診療録または診療カードに登録するのを漏らした、このためにこういう事態になったのであります。これは伝票制度の採用あるいはその合理的な活用によって、こうした事態を防いでいただきたいと思うわけです。
  4. 三浦義男

    委員長三浦義男君) ちょっと速記をとめて下さい。  〔速記中止
  5. 三浦義男

    委員長三浦義男君) 速記を始めて。  厚生省から説明をお願いします。
  6. 堀岡吉次

    政府委員堀岡吉次君) 厚生省検査報告にあげられました批難事項につきまして御説明申し上げます。  七百八十七号、国立帯広療養所及び国立療養所刀根山病院におきまして、病院収入収納成績を考慮して、徴収決定を控えたり、係員の不注意の結果、御指摘のような事実のありましたことは、まことに遺憾にたえないところであります。御指摘金額は、昭和三十年七月までに徴収を完了いたしましたが、今後は一そう指導監督を厳にし、このようなことのないように十分注意いたします。なお、当時の責任者に対しましては厳重な注意を与えました。  次は、七百八十八号から八百四十号までの当省所管国庫補助金等経理当を得ないものとして、会計検査院から御指摘を受けましたことにつきましては、まことに遺憾に存じている次第であります。厚生省といたしましては、昭和二十九年一月、省令をもちまして、厚生省所管国庫補助金等交付規則を制定いたしまして、補助金及び負担金の申請、交付、使用及び精算等に関する事務を適確に処理するため、その手続等の統一をはかるとともに、同規則に基いて申請基準等を明示し、かつ必要があるときは実地調査をするなどいたしまして、補助金等交付時における審査の適切を期しており、また、事業計画変更事前承認実地検査報告徴収等の励行をはかりまして、一そう交付後の指導監督の徹底を期するなどの処置を講じまして、国庫補助金等経理適正化に極力努力して参ったのでありますが、昭和三十年九月、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律が制定施行されました現在、なお一そう補助金等経理適正化に留意いたしまして、今後はかかることのないよう十分注意いたす所存でございます。  次に、御指摘を受けました事項を各補助事業別に御説明申し上げます。  七百八十七号から八百七号の結核性病等予防事業に対する国庫補助金等についてでございますが、これら補助金等精算不適確であり、また一方、精算書審査に当りまして実地調査が十分できなかったため、補助基本額補助対象外経費を含めていたり、あるいは事業収入を控除しなかったものなどがあって、このような指摘を受けたものでありまして、まことに遺憾に存じます。補助超過額につきましては、それぞれすみやかに国庫に返納させまするとともに、一そう指導監督を厳にいたしまして、今後かかることのないよう十分注意いたします。なお、当時の責任者に対しましては、それぞれ厳重な注意を与えました。  次は、八百八号、地方病予防施設費でありますが、本件は、寄生虫予防法第七条の規定に基きまして、国は地方公共団体に対して寄生虫病予防に関する施設に要した費用に対し補助をするものでありますが、昭和二十九年度において山梨県に交付した地方病予防施設費補助金精算に当り、地方病予防施設のための溝渠築造切土施行延長及び溝渠用コンクリート配合基準量計算が、事実より過大となっていたものを、実地調査が十分でなかったなどのためにこのような指摘を受けましたことは、まことに遺憾に存じます。本件補助超過額につきましては国庫に返納すべきものでありますが、この事業は、地方病である日本住血吸虫病予防撲滅を目的として、本病の中間宿主である宮入貝の棲息を不可能ならしめてこれを駆除するために有病地域溝渠年次計画により、逐次コンクリート溝渠に改築する事業でありまして、一時も早く全域について完成することを有病地住民がひとしく熱望している実情にありますので、補助超過額相当する事業量を延長実施せしめることにしました。なお、今後はこのようなことのないよう十分注意いたしますとともに、当時の責任者に対しましては厳重な注意を与えました。  次が八百九号から十一号までの水道事業に対する国庫補助金についてでございますが、愛知県田口町に対して補助いたしました簡易水道施設費補助金及び福岡県稲築町並びに大任村に対して補助いたしました特別鉱害復旧事業費補助金精算に当りまして、夫役賃金を過大に計上するなどしていたり、あるいは請負金額をつけ増ししまして、補助対象外工事を施行していたものなどがあったのに、実地調査が十分に行われなかったために、かかる指摘を受けたものでありまして、まことに遺憾に存じております。補助超過額につきましては、それぞれすでに国庫に返納手続をとっておりますが、一そう指導監督を厳にいたしまして、今後はかかることのないよう十分注意いたします。  なお、当時の責任者に対しましては、厳重な注意を与えた次第でございます。  次が八百十二番から八百二十六番までの、生活保護費負担金についてでございますが、生活保護法に基く保護の決定実施における収入の認定は、保護の要否及びその程度を決定する根拠を具体的に確定する行為の一つでありまして、本法運営のかぎであることは申し上げるまでもないところでございます。しかしながら、被保護者本人の申し立ては、ややもすれば過少になされる傾向にあり、特に医療扶助単給世帯につきましては、保護の決定行為は、当該世帯の生活程度を最低生活水準まで引き下げる意味を持っております。最低生活費と収入との差額を一部自己負担額として医療機関に支払う等の関係もございまして、特に傾向を強めておりますので、収入調査方法、調査技術を絶えず考究し、実施要領もすでに数次にわたり改訂いたして参りましたが、北海道外十四都県においてこのような指摘を受けましたことは、まことに遺憾に存じます。  厚生省といたしましては、このような事態に対処するため、従来よりしばしば、その取扱いの適正を期するよう関係者に対して指示、指導をしておりまするが、今後は、さきに指示した事項の再確認をさせることはもちろん、本法運営の全般にわたり、収入の認定等事実確認のいかんによってその適否が左右されるものにつきましては、実施機関の積極的な確認を励行させるとともに、保護の開始に当ってはもちろん、決定後における処遇の過程におきましても、十分保護者等の協力義務を強調し、真に被保護者が自己の責任と義務を理解して、不実の申し立て等の絶無が期され、実施機関対被保護者間の協力関係を確立し、これを基盤として適正な運営がなされるよう特に指導し、また収入の認定につきましては、従来以上に税務機関、社会保険機関その他と緊密な連係をとりまして、この面からもその適正を期するよう、その指示を徹底して、このようなことのないよう十分注意をいたすとともに、指摘を受けた北海道外十四都県につきましては、それぞれ別冊「昭和二十九年度決算検査報告に関し国会に対する説明書」の通り措置いたしました。  なお、当時の責任者に対しましては、それぞれ厳重な注意を与えた次第でございます。  次に八百二十七番から八百三十番までの児童保護費負担金についてでございますが、児童福祉法に基く児童保護措置費負担金精算の取扱いに関しましては、児童福祉施設等の児童等の保護に要した費用として、都道府県または市町村が支弁した金額に対する国庫負担額につきましては、国庫負担限度を定め、実支弁額をもってそれぞれ国庫負担基準額とし、国庫負担することといたしておりますが、昭和二十八年度において、北海道外二県におきましては、実支弁額が右の限度以内であるにもかかわらず、実地調査が十分でなかった等のため、限度額をそのまま国庫負担基準として精算を完了していましたので、このような指摘を受けたものであって、まことに遺憾に存じております。  超過補助となりましたものにつきましては、それぞれすでに国庫に返納手続をとっておりますが、今後は精算事務を行うに当っては、一そう関係帳簿及び書類との照合などの徹底を期するよう指導監督を期しまして、このようなことのないよう十分注意いたします。  なお、当時の責任者に対しましては、それぞれ厳重な注意を与えた次第でございます。  次が八百三十一番から八百四十番までの国民健康保険事業に対する助成交付金についてでございますが、助成交付金交付条件を実際には具備していないもの、あるいは事実と相違する申請書または精算書に基いて交付を行なったため超過交付となったことは、会計検査院の御指摘の通りでございまして、まことに遺憾に存じております。超過交付となりましたものにつきましては、それぞれすでに国庫に返納手続をとっておりますが、一そう指導監督を厳にいたしまして、今後はかかることのないよう十分注意いたします。なお、当時の責任者に対しましては、それぞれ厳重な注意を与えた次第であります。  次は、厚生保険特別会計についてでありますが、政府管掌健康保険の経済は、ここ数年順調に経理されてきたのでございますが、健康保険制度を実施してからすでに三十年になり、その間年々充実発達を重ね、特に戦後は著しく普及いたしまして、昭和三十年十一月末現在では、その被保険者数は五百余万人の多きに達しているものであります。しかして、保険給付費、特に医療給付費は、結核対策の強化等による受診率の増加、医学の進歩に伴う抗生物質療法の全面的採用と、療養給付期間の延長、点数の引き上げ等によりまして激増して参りましたにもかかわらず、保険料収入の面について見ますれば、適用事業所の大部分が中小企業であります関係上、保険料の算定基礎となっておりまする被保険者の標準報酬はおおむね低額であり、また賃金上昇率もきわめて低い状況にありまするので、その均衡維持は漸次困難となって参りました。厚生省といたしましては、これに対処するため、昭和二十年六月、保険料率の引き上げを行いまして、保険料収入の増加をはかりましたが、保険財政の不均衡はなお是正できない現状にありまするので、別途、健康保険法の一部改正案を提出いたしまして、現在国会で御審議を仰いでおりますが、その根本的な解決をはかりたい所存でございます。なお、保険料徴収につきましては、適用事業所に対する標準報酬月額実態調査が十分でなかったために、徴収不足をきたし、また保険料の収納につきましても多額の収納未済をきたす等のために、このような結果となったことは、まことに遺憾に存じております。今後は、なお一そう標準報酬月額の届出に対しましては、随時実態調査を行うほか、標準報酬適正化月間を設けるなどによりまして、徴収不足のないように万全を期しますとともに、保険料の収納につきましても、滞納整理班を設けるなどの方法により、収納未済の解消に極力努力する所存でございます。  次は、国立病院特別会計についてでございますが、国立病院特別会計の昭和二十九年度決算の結果生じた損益計算上の利益は、十一億六千七百万円でありまして、昭和二十八年度三億五千六百万円の利益に比べまして、八億一千百万円の増加となり、病院経営の円滑化とともに、その経理状況もまた好転いたしております。今回、会計検査院が御指摘になりました国立病院事業の欠損の経緯につきましては、当会計を、国立病院看護婦養成所、義肢製作所、厚生本省及び医務出張所の五部門に分析した結果、国立病院の稼働により生じた損益計算上の損失について御指摘を受けたわけであります。しかして、国立病院が経営上欠損を生じましたのは、荒廃老朽した建物の補修、改修に相当額の経費を必要とし、旧陸海軍から引き継いだものなど、衰損した諸物品を廃棄し、また、特別会計設立後四年でありますが、本年度退官退職手当の大部分を占める特別会計所属外の勤続年限分相当額を負担したなどのためでありますが、他方、診療内容につきましては、逐年向上いたしておりまして、特に中央病院の整備に伴い、今後における収入の増加には相当期待できるものがあります。なお、国立病院特別会計は、必ずしも国立病院の完全な独立採算制を目的とするものではなく、むしろ公的医療機関として、その立地条件を考慮しつつ健全な病院経営を促進するためのものでありまするが、この会計設置の趣旨から、一そう病院経営の合理化をはかる必要がありまするので、既存の建物を早急に整備するとともに、医療機械等診療部門の諸設備をすみやかに完備して診療の完璧を期し、他面医師を初め優秀な職員の採用に努め、一そう診療内容向上をはかるとともに、経費の節減をはかり、収支の均衡についても努力し、もって適正な病院管理運営の実績を上げる所存であります。診療費の徴収決定漏れにつきましては、なお一そう機会あるごとに、関係者に細心の注意伝票制度の採用等による的確な事務執行を要望するとともに、診療費の徴収決定状況につきましては、随時内部監査を実施するなどにより、今後このようなことのないよう十分注意いたします。  次に、八百四十一番でありますが、本件は、国立弘前、山中両病院で、注射薬品、またはレントゲン・フィルムを使用した事実を診療録または料金カードに記載することを脱漏することがあるなどのため、診療料金の徴収決定漏れを生じたことについて御指摘を受けたのでありまして、まことに遺憾に存ずる次第であります。今後は一そう診療費の徴収決定漏れにつきまして、機会あるごとに関係者に細心の注意と、伝票制度の採用などにより、的確な事務執行を要望いたしますとともに、診療費徴収決定状況について、随時内部監査を実施するなど、これが防止に極力努力いたす所存でございます。なお、当時の責任者に対しては厳重な注意を与えた次第でございます。  厚生省として申し上げることは以上であります。
  7. 三浦義男

    委員長三浦義男君) 以上をもって説明は終りました。  なお、大臣が出られている間、政務次官が見えておりますからお含みおきを願いたいと思います。御質疑のある方は順次御発言をお願いいたします。
  8. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 私の一つお尋ねしたいことは、これは年度の上からいくと三十年度になるかとも思うのでありますが、事柄があまり大きいので、あえて御質問申し上げるわけであります。  例の森永乳業の粉ミルクの砒素事件という、これは極端に申しますならば、世の中の幼児を持つ母親を震騒さした大事件でありますが、これについてその後の状況はどうなったかということについて、概要を一つ説明願いたいと思います。
  9. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) お答えを申し上げます。  ただいま御指摘の森永乳業の砒素中毒事件につきましては、その後患者の治療は意外に好成績の結果を得まして、すでに全部が全快をいたしております。ただ、必ずしも砒素に直接の原因がなくても、そのために若干体力を消耗したために、併発的に他の疾病を生じたものをも治療の対象といたしておる関係もございまして、かかる患者は砒素中毒は全快いたしましたが、現在数名治療を受けておる者がございます。なお、これらの患者に対しまする医療費、あるいはこれに伴う経費等はすべて森永乳業が責任上支払いを了しております。従いまして、この大事件でありましたものも、患者に関する限りはすべて問題が解決いたしておるものと、かように考えておる次第でございます。
  10. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 なくなった子供の数は何人くらいですか。
  11. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) 後ほど資料でお答えいたしたいと存じますが、死亡者の数は結局八十名余りと記憶をいたしております。
  12. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 森永が弔慰金あるいは治療費等を出されたそうですが、大体金額にしてどのくらい出されたのですか。
  13. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) これまた後ほど資料で正確なところをお答えいたしたいと思いますが、見舞金あるいは死亡者に対する弔慰金その他の形で支出いたしましたものが二億円程度になっておるかと存じます。しかし、これらの点はさらに、ただいま申し上げましたように、資料でお答えをいたしたいと存じます。
  14. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 森永だけにどうしてこういうような事件が出たのか、それから他の乳業会社にこういうようなものがあっても、まあ患者が重くならずに済んだのか、あるいはまた過去にこういうような例があったのか、その点いかがですか。
  15. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) 粉乳を通じて砒素中毒が起きましたものは、私どもの知っております範囲では、むろん日本では最初の事件でございます。世界各国におきましてもその例は見ておりません。
  16. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 今後の対策はどういうことをやっておられますか。
  17. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) 従来、この粉乳等に対しまする検査は、厚生省で規格、基準を定めまして、これに基いて抜き取り検査をいたしておったのでございます。そのためにかような結果が生れたとも思えますので、現在は乳業技術協会というものがございますので、これが責任を負いまして、政府の意図、指示いたしました基準検査方法にのっとりまして全品検査をいたしております。すべてその基準にのっとって検査をいたしております。従いまして、現在市販されております粉乳は、すべてそれらの検査合格の証が張ってございます。
  18. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 資料の提出によって詳細はわかると思うのですが、今の御説明によりますと、死亡者並びに治療費等を含めておそらくおっしゃられる二億円と、こう解釈しておりますが、よろしゅうございますか。
  19. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) ただいま二億円と申しましたのは、死亡者に対する弔慰金あるいは見舞金その他の経費の総額でございまして、その他、たとえばいろいろな治療費その他も支出いたしておりまして、現在までの支出は、これまた資料でお答えをいたしますが、十億円近い金がこの事件のために支出されておる形になっておるんじゃないかと記憶いたしております。
  20. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 御承知の通り、森永というところは、これは大衆を相手にしてあの大財閥をなしたものでありますが、六億にしろ十億にしろ、この大事件から見るならば私は大した金でなく、また出すのが当然だと思うのでありますが、あるいはこれだけにとどまらずに、役所の方の方針として、何か今後これに対処する一つの研究機関とかいうようなものを、組織を慫慂するようなことをやってもいいんじゃないかと思うのですが、その点はいかがですか。
  21. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) 御指摘の点はごもっともでございますが、ただここで研究機関を設けることを勧奨し、あるいはそれを実現したといたしましても、現在すでに各方面でこれに関連ある多数の研究が行われております。従いまして、私どもといたしましては、むしろ一ヵ所に新しいかような研究機関を設けましても、必ずしも総合的な研究成績が上るものとは限らないようにも思われます。これももちろん、その規模にもよりますけれども、おのずから限度がございますので、さような判断をいたしております。従って、それよりはむしろ、現在各方面でいろいろな研究が行われておりますので、かような研究をそれぞれ、今回の事件にもかんがみまして、さらに進行することが必要と考えまして、これら各方面で行なっておる関連研究に対して、今後森永乳業といたしましては、購罪の意味をも含めまして、研究費等を支出いたしまして、この研究の進行をはかっていくよう指導をいたした次第でございます。
  22. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 なくなった子供のことを考えますと、これは決して金銭で償われるものではないと思いますけれども、なくなった方、あるいはまた治療中の者、これらに対して慰安をされた森永の態度に対しまして、あるいはまた役所の態度に対しまして、患者並びに死亡者の遺族はいかがでありますか、別に特別なこれに対して問題でも起きたようなことはありませんかどうか。
  23. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) きわめて多数の死亡者並びに罹災者を出しましたことは、まことに遺憾でございますが、これらのうち、私どもの承知をいたしております範囲においては、おおむね、政府並びに森永乳業の責任上とりました措置につきまして、むしろ好意をもって納得をいたしておるものと考えます。しかしながら、何分にも数が多いために、一部にはもちろん、その過程におきましていろいろ問題もございました。たとえば、治療費の増額あるいは見舞金の増額等を要望する、さらにいろいろな問題もございましたが、これはごく一部の罹災者、患者等でございまして、大部分は、ただいま申しましたように、おかげをもちまして支障なく解決をいたしたと存じます。なお、一時的に一部の方々がだいぶ問題化をいたしましたが、この人たちも、最後的にはいろいろ懇談をいたしました結果、すべて了解をいたしました。患者同盟というようなものも一部に組織されておりましたが、現在はすでに円満に解散をいたしておる次第でございます。
  24. 片岡文重

    ○片岡文重君 会計検査院の方にちょっとお伺いしたいのですが、この報告書の八百八号ですか「地方病予防施設費補助金交付当を得ないもの」とあげられておる山梨県の日本住血吸虫病ですか、これの予防のための工事に使われた補助金の支出について、いろいろとお調べになっておられるようですけれども、このお調べになられた御報告を拝見すると甲府市、外五十四ヵ町村の施行した工事は、「いずれも設計過大な部分があったため」という御報告になっておられます。これは、善意な設計過大なものか、故意に、この補助金等の要求のため等もあって、故意に設計を過大に見積っておると考えられるのか、こういう点について、会計検査院は何ら触れておりませんけれども、どういう見解をとっておられますか、その点をまずお聞きしたいと思います。
  25. 石渡達夫

    説明員石渡達夫君) この工事をしました甲府市、外五十四町村で、その工事設計を作りますときに、現場をよく見ないで、一応机上で設計している。そうして、厚生省の方もまた現場へ行かないで、各実施団体の作った設計書をそのままうのみにしているというような事態でありまして、工事をした甲府市、外五十四町村においても、初めから悪意があったのではない。結果的に行き過ぎたことになりましたけれども、初めから厚生省をだますことでやったんではないというように聞いております。
  26. 片岡文重

    ○片岡文重君 初めから悪意がなかったという御見解のようですが、そうすると、この甲府市ほかの五十四町村は、いわばテーブルの上だけでこの見積りをし、請求をしておったということになると思いますが、もしそうだとすれば、少くとも国民の税金をもって補助を受ける、この補助金交付を受けるに当って、何といいますか、はなはだ無責任なやり方であったと思いますが、検査院は、その点どういうふうにこういう問題をおとりになっておられますか。
  27. 石渡達夫

    説明員石渡達夫君) そういう場合には、補助を何回かに分けてやっておると思いますが、最後の、実際できたあとにやる補助は、現場に、厚生省なりあるいは厚生省の委託を受けた国の機関としての県が現場に行って、実際にそれだけできているかどうかということを確かめた上で補助金をやる、こうするのが正当な方法でありまして、この場合には、そうした最後の検収が手抜かりがあったというためにこうした結果になったと思います。
  28. 片岡文重

    ○片岡文重君 最後の決定をするに当って、その決定権を持つ厚生省が、現地を検分して、確認の上に立ってその決定をなされるべきであるという御意見のようですが、これは私も同感です。しかし、もし請求者である町村が、いずれも正当に、しかもその補助を受ける金がことごとく国民の血税から出されるのだということを考えて、良心的に設計をし、できるだけ地方において受益者が負担をする考えに立って設計をし、請求をするということであれば、わざわざ旅費を使って厚生省から行かなくても私は済むと思う。しかし、そういうことがなくて、悲しいことに、おおむねこういう事態がこういう工事にはつきもののように起っておるから、今のような検査院の御意見が出てくると思うのだが、その厚生省の責任は別として、請求した町村の考え方、これは補助金等に対して、ひとりこの甲府市、外五十四町村ばかりでなく、ほとんどあらゆる補助金といっていいほど、この国庫補助に対しては、きわめて無責任に受益者が要求をし、交付を求め、しかも、これは多く政治的な力によってその額も決定され、あるいは交付の時期等もきまってくるようなうわさも聞かぬではありませんけれども、こういう事態に対して、やはり検査院は、請求する方に対してはそう責むべきものはないとお考えになっておられるのですか。
  29. 石渡達夫

    説明員石渡達夫君) 実際に事業をやるものがよく現場の事情を調べて、正しい設計をしたものについて申請をする、これはもうおっしゃる通りの基本的の問題と思います。この場合には、現場の実際の事業施行の市町村がそれだけの注意を欠いた、欠いたためにこうした間違いが起った、間違いが起った根本原因はそこにあると思われますけれども、この事業をした町村が、初めから厚生省をだますつもりでそういう設計をしたというところまでは考えておりません。
  30. 久保等

    ○久保等君 八百八号は、特別な計らいをもって、引き上げるべき補助超過額は、なお引き続いての工事の方に延長して使わせるようにしたという、さっき御説明があったのですが、そうすると昭和三十年度も引き続いてこの山梨県の当該地域ではこういった工事を続行しておるのですか、またその工事そのものが、どういう計画で、いつ終るような状況にあるのか、それから先ほど、その次年度に引き続いてやる工事補助額に充当させるようにしたというのですが、充当した工事は一体どういう結果になっておるのか、その点ちょっと補足説明願いたいと思うのですがね。
  31. 山口正義

    政府委員山口正義君) この問題につきまして、御指摘のような事態が起きましたこと、私ども厚生省の当事者といたしましては、まことに申しわけなく存じております。だだいまお尋ねの引き続いての工事の状況でございますが、これはこの当該地区のみぞをずっと延長いたしましたその全部の長さというものが、非常に膨大なものに上っておりますので、これは現在まで行われて参りましたような進み方で参りますと、今後二十年以上かかるというような状況でございます。それで先般、寄生虫予防法の一部を改正されまして、今後十年間でこれを完成させるように、予算的にも実施計画その他いろいろ立てるようにというような法律が定められました。今後は大体十年間で当該地区のみぞコンクリート化するようにやっていくというような計画でございます。  それからこの翌年度に、つまり二十九年度で延ばされました、特別な計らいで延ばされました間数は、一千八百三・九間という長さで施行されております。
  32. 久保等

    ○久保等君 二十九年度が初年度だったのですか、それからまた、三十年度もやはり幾ばくかの補助金交付しておるのかどうなのか。ただ二十九年度だけ、たまたま補助金を出したという形になっておるのか、補助交付の実情ですね、補助金交付の状況はどういうふうになっておるのですか。
  33. 山口正義

    政府委員山口正義君) これは二十九年度だけでございませんで、引き続いて補助金交付いたしております。
  34. 久保等

    ○久保等君 二十九年度が初年度ですか、いつごろから始めたのですか。
  35. 山口正義

    政府委員山口正義君) 二十七年度から実施いたしております。
  36. 久保等

    ○久保等君 それで繰り延べた、先ほども問題になっておる問題なんですが、それについての工事は三十年度で完全に完了しておるということですか。
  37. 山口正義

    政府委員山口正義君) 二十九年度で完了いたしております。それと、二十九年度に繰り越しまして、さらに二十九年度にも補助金を出しておりますので、それを合計した長さだけが完了いたしております。
  38. 片岡文重

    ○片岡文重君 厚生省にお伺いしたいのですけれども、先ほどの厚生省の御説明を伺っておると、こういう事態の起ったことに対して、なるほど言葉では遺憾の意を表されておられますが、私どもにはさっぱり真実、こういう事態を頻発せしめておることに対する申しわけなさ、遺憾の意というものが少しも感じられないと思うのです。こういう事態に対する監督官庁としての真剣な責任感を持ち、国民に対する良心的な態度で臨まれるならば、今、会計検査院から言われるまでもなく、当然こういう問題に対して、しかも、従来かつて例を見なかったような不当事実として起ってきたのではなくして、こういう補助金交付されるような工事というものは、きわめて多くこういう不愉快な事件が起っておるのでありますから、こういう申請に対する決定に当っては、慎重の上にも慎重を期していくべきだと思うのに、全然現地にも行かずに、机の上で決定をしておるということについては、私どもとしてきわめて残念に思いますが、厚生省では従来この種の決定に当っては、常にそういう本省だけで、もしくは出先機関でも現地を見ることなしに決定しておるのかどうか、その点をまずお聞きしたいと思います。
  39. 山口正義

    政府委員山口正義君) 今、御指摘の点は、住血吸虫病の対策としての補助金の決定の問題でございますが、この住血吸虫病の補助金の決定につきましては、現在、寄生虫予防法に基きまして、地元の市町村が三分の一、当該府県が三分の一、国が三分の一というような負担区分になっておりまして、御指摘のように決定いたします場合に、私どもは府県を通じて地元から出て参りました書類を審査してやっておったのでございまして、この決定の際に一々全部出向いておりませんでしたことは、まことに申しわけないことでございましたが、府県を通じまして府県の担当の部局に、できるだけ現場を見てもらうというようなことを指導して参っておったのでございまして、そのほかのいろんな建築費に対します補助金交付の決定のような場合にも、厚生省といたしましては、全部非常に数がたくさんになりますのでなかなか参れないのでございますが、できるだけ参るようにいたしておりますが、大体地方の府県当局に依頼をして現地を確めてもらうというようなことをやっておったわけでございます。
  40. 片岡文重

    ○片岡文重君 たしか二十四国会であったと思うのですが、あれは福岡県かの場合ですか、もう一個所ありますね、この吸虫病の発生する個所は、それで、そこの工事を促進するためにも、もう少し補助金をふやして、期限も短縮してほしいという要求が出て、これは法案を改正したはずです。その際に申し上げたのですが、きわめて死亡率が高いという、こういう地方病に対して、どうしても十年以上短縮してこの工事を進めることは予算が許さないというわけです。しかも、その許さないといわれた予算というものはそう大した予算じゃなかったはずです。あれは死亡率の高いようなこういう病気に対して、なおかつ十年以上もかからなければ、国家がめんどうを見てやれないというくらいに、こういう問題については、命という問題については重くは見ておらない。そうして五年に縮めたらどうかといったのに、とうとう十年ということで決定をされたのです。今、この不当事項報告を見ると、国庫補助金千五百十七万円支出しておる、そのうちの八十五万八千九百円ですか、ほとんどこれは大体六%に当る、これが超過交付となっております。しかもその中で見ていくと、既存の水路があったにもかかわらず、これを新しく構築するものとしておる。コンクリートの配合量に至っては、これまた四・五袋で十分であるべきものを四・八と計算をしておる。実にこれを見ていると腹立たしくなるばかりで、不愉快この上もないのですが、それで会計検査院では、決してこれは悪意ではないと言っておる。既存の水路が、新しく工事をすることにして要求をされる、これが悪意でないと言い切ることはどうしてできるんでしょうか。検査院もそれから厚生省も、もっとこういう問題について良心的に責任を持ったきぜんたる態度で臨んでおったならば、たとえ絶滅することはできなくても、もっと国民が納得できるような、また事件が発生したとしても、せいぜい善意による過失ぐらいでとどめることができるんじゃなかろうかと思うんですが、こういう点について、単に責任者に対しては厳重注意をしたということぐらいじゃなしに、監督官庁の責任ある機関自体がまず責任を痛感しなきゃならぬのじゃないですか。そういう点について、どうも私は今までもそうであるし、きょうの御説明を伺っておっても、さっぱり責任を痛感しておるようにも思われませんし、会計検査院においても、まあこの場合厚生省の方々のおられる前ですから、故意にいわば政治的な発言をされたのかもしらぬが、少くともこの報告書を見て、善意による——善意によると言っては行き過ぎるかもしらぬが、とにかく悪意のない要求だとは私には考えられない。もしほんとうに悪意のない要求であるとお考えになるならば、こういう問題にはもう一つ突っ込んで御研究いただいて、将来こういう問題のないようにしていただきたいと思うが、検査院としてのお考え、厚生省としてのお考えを一ぺん伺っておきたいと思うんです。
  41. 石渡達夫

    説明員石渡達夫君) この場合は、県の公衆衛生担当の技官がこうした土木工事についてあまりに経験もないし、深い考慮が足りなかった。それでその県の公衆衛生の技官が設計を作りまして、この設計でやれということを甲府市ほか五十四町村に命令している。それで各事業主体はその通りの申請をしているということが実態でありまして、事業をした各町村には、県や厚生省をだましてたくさんもらうというような趣旨はなかった、そういう悪意はなかった。ただ一番悪いのは、この県なり厚生省が、最後の補助の締めくくりのときに現場に行って、ほんとうにその通りにできているかどうかという検収をしなかったことが一番悪い。そのときに、もしよく検収していれば、こうした超過交付はそういうときに防ぎ得た。これは必ず、厚生省ができなければ、県に命じて検収をする、そういう手を打つべきだったというふうに思うのであります。
  42. 山口正義

    政府委員山口正義君) ただいま会計検査院の方からお答えがございましたように、県当局においてその設計をいたします際に技術的な不なれなために、非常にずさんな設計指示をいたしました。従って県全体にこういうふうな事態を起しましたということは、まことに申しわけないことでございます。しかも今御指摘のように最終的な検収をしていなかったというためにこういう事態を起しましたわけでございますが、今後、ただいま片岡先生からも御指摘の点、私どもも十分注意いたしまして、たとえ悪意はなくとも、十分設計等に注意して、ずさんな設計が行われることのないように、かかる事態が起らないように注意いたしたいと存じております。
  43. 岩間正男

    ○岩間正男君 厚生次官がお見えのようですから、私簡単に二、三点お聞きしたいのです。それは生活保護の問題ですが、生活保護というものについて、厚生次官はどういう一体基本的な態度で臨んでおられるか、と言いますのは、われわれから考えますというと、憲法に保障された人間の生きる権利、これを当然認めて、それによってこれを行なっている、こういうふうに考えられるのですが、しかし実際の面を見ますと、何か恩恵的に生活の貧しい人に施しをやっておるんだというような形で行われている点が非常に多いんじゃないかと思うんです。従って今後の生活保護の行政をやる上において、一体政府の責任者は基本的な態度としてどう考えているか、この点が非常に重要だと思うんです。末端におけるこれを実施する係の人たちの考え方と政府の考え方との間に、一体意思の疎通があるのかどうか、一貫した考え方があるのかどうか、この点非常にいろいろな問題にわれわれもぶつかっておるわけなので、この点基本的な問題としてお聞きしたい。
  44. 中垣國男

    政府委員(中垣國男君) お答えいたします。ただいま生活保護に対する基本的な考え方についてのお尋ねだったと思うのでありますが、これはただいま御指摘の通りに、やはり憲法第二十五条の規定に基きまして、私どもはどこまでもこれをやって参りたい、これの基本には変りございません。それから実際のやり方について民生委員等との関連はどうかというお言葉でありましたが、これにつきましては各都道府県に民生部長というものがありまして、これを通じまして、あらゆる、民生委員の講習会であるとか、あるいは生活保護者に対する取扱い、たとえば交付金申請であるとか、そういったこと等につきましては、絶えず厚生省指導監督を行なっております。  それからその生活保護に関する一つ厚生省の行政上の考え方といたしましては、これは要保護者生活の実態というものをば的確に把握すると、これが非常に重要な点だと考えておるのでございまして、その要保護者生活実態を的確につかみまして、これは、今日、法律に照らして保護すべきものであるということがわかりましたならば、やはり法律の基準に基きまして保護をしておるのであります。先ほど恩恵的な考え方ではないかというようなお言葉でありましたが、そういう考え方等は持っておりません。どこまでもこれは、いわゆる社会福祉国家並びに社会保障の一つの、最も大事な部分を占める内容でありまして、これはどこまでも憲法の規定に基きましてそうして実施して参りたいと、かように考えておる次第でございます。
  45. 岩間正男

    ○岩間正男君 ただいまのような御意見があったのでありますが、末端においてですね、必ずしもそうなっていないというような実情じゃないかと思うのですね。この民生委員が被保護者のところをたずねてきて、あるいは保護を決定すると、こういうような場合には、非常にこれはいろいろな点で制約がなされていると思う。最近はことに、政府の方針でもあるようでありますが、該当の人員はだんだん切られている。今年度の予算なんかを見ましても、これは神武以来の景気だから、生活貧困者は少いんだということが盛んに宣伝されて、そういうことが基調にされて、保護を受ける人員は、御承知のようにこれは相当大幅に切られている。そういう点からお伺いしたいのですが、現在生活扶助を受けるための基準ですね、民生委員の方がやってきますというと、いろいろ受ける条件としてあげておるらしいですね。たとえば電灯は何ワットをつけなくちゃならないとか、新聞はどうしなくちゃならないとか、ラジオを持っていればどうだこうだというようなことが条件になっておると聞いておるのですが、これは厚生省として、そのような生活保護を受ける条件としての基準というものは何かおきめになっているのですか。そしてその基準があるとしましたら、それをまずお伺いしたいと思います。
  46. 中垣國男

    政府委員(中垣國男君) お答えいたします。民生委員等によりまして持ち込まれてくる問題は、各市町村役場におきますところの社会福祉主事という者が責任を持ってこれらの調査や実施に当るわけです。それから、そのほかの問題は、ちょうどここに保護課長が出て参っておりますから、それらの基準等については保護課長に説明いたさせます。
  47. 尾崎重毅

    説明員尾崎重毅君) ただいまお尋ねの件でございますが、生活保護法におきましては、保護基準というのがきめられておりまして、それで、現在東京都を標準にいたしますと、大体老人とそれから未亡人、それから子供ですね、こういう五人世帯、これを標準にいたしまして、現在では大体八千二百三十三円というべースになっております。それで、これは御承知のように、来年度予算ではべース・アップがあることになっております。それで保護の要否を決定いたしますときには、その世帯に、ただいま政務次官が申されました社会福祉主事が参りまして、それで大体その世帯の収入はどれくらいあるか、それから資産はどういうものがあるか、そういうものを調査いたします。それでまず資産を活用してもいいというようなものは活用していただくと、まあその活用の点でいろいろ実は具体的に問題もございますが、一応利用し得る資産は全部活用していただくと、もちろん、本人の自立更生に役立てるようなものは、あえて売り払うというようなことはやめていただく、それから収入のあります場合には、その収入が月どれくらいあるかというようなことを、その世帯の方の話を聞いたり、いろいろ調査をしまして、その収入を認定いたします。それでなおかつ八千二百三十三円というものに足りない分は補助するという仕組みになっております。従いまして、今お尋ねのように、電灯はどれくらいのものを使い、あるいはラジオはどうというようなことはないというふうに考えております。
  48. 岩間正男

    ○岩間正男君 そうすると、そういう保護基準というのは別に指示はされていないというわけですね。ところが、実際は、これは民生委員の人が見えて、大体の基準を押しつけているというのが事実だと思いますが、こういう点、これは把握されておりませんか。
  49. 尾崎重毅

    説明員尾崎重毅君) 大体、保護基準は、私が今申し上げましたように、東京都で八千二百三十三円というものを分解いたしまして、それで一級地で年令別に一人当りどれくらい、それから今度は世帯の人員にしてどれくらい、世帯何人当りについては幾らぐらいという、そういう人員別のものと、世帯別のものを組み合せまして基準ができております。それは全部、保護の実施をいたします社会福祉主事は十分承知しております。それで民生委員は、一応社会福祉主事のこの保護の実施についての協力的立場に立っております。いろいろ世帯の実情をよく連絡していただくという立場にございますので、そういう押しつけというようなことはないものというふうに考えております。
  50. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは私たちもそんなに全部、全般的に調査したわけではありませんが、われわれの触れるところでは、こういう実態が行われている。たとえば電灯は四十ワット一個、それをこしちゃいかぬとか、新聞は地方紙を一つだけは認める。それからいろいろそういうことの基準を少し出るようなことが起りますと、これはぜいたくだ、従ってこういう格好では生活保護の適用を受けなくてもいいのじゃないかというような圧迫が絶えずきている。しかも、このような監視の目が絶えず加えられているということは、事実だと思うのです。それからラジオもこれはなかなかどうも聞けないというような形で、実は生活の基本的な権利を守るのだという厚生次官のお話がありましたけれども、これは生活保護を受けていることによって、こういうような生活上のいろいろな圧迫に耐えているというのが、この実際の実施面における事情じゃないかと思うのですが、こういう点ですね、これはどうも雲の上ではよくわからないらしいのですな、こういうことを実際調査されたことはございますか。おそらく調査されても、官庁式にずっと出かけていって、そうしてその官庁のそういう役人を対象にして調べられたのでは、どうもほんとうのことを言わぬと思うのです。今言ったようなやり方で実際は運営をされているというのが最近のやり方である。しかも非常にそういう傾向が最近強化されていますね。これは会計検査院報告書の問題とも私は実は関連させなくちゃならない問題だと思ったのですが、会計検査院の方は、その職務の職責からしまして、当然予算の範囲内でこれを執行するのだということを、技術的にこれはお考えになるのは当然だと思うのです。ですから予算の絶対額の不足がそういうところに追い込んでいるのだという、そういう政治的な責任問題について私は申し上げているのじゃない。しかし、どうも見ますというと、これが不正に適用されているのだと、そういうところを指摘するのだ、そういう面だけが強化されていっているんじゃないか。で、中には収入を少く言ったり、それからいろいろな自分に有利な申告をやる、そういう事態もあります。しかし一方においては、適用を受けなくちゃならないような人があるのだけれども、しかし民生委員の非常に心証を害したとか、あるいはまた、いろいろな情実関係におきまして、適用を受けないという人も、これは相当いることをわれわれは知っている。事実あるのです。これは具体的に指摘してもよい。従って私は、会計検査院の方が単に一つの法的な立場に立って、自分の職責に忠実なあまり予算の執行状況について厳格であるということは当然の建前でありますけれども、同時に、しかしこれがほんとうに公平に、かゆいところに手が届くようにこれが施行される、ほしいところに実際は生活保護法が適用されていくような面、つまり保護が適用されなければならない面についての指摘は全然ないわけですね、これを見ますというと。こういうことになってきますというと、何かやはり監督を強化するという面だけが出てきて、そうして国政をほんとうに、生活保護法の精神を生かすという面においては必ずしも最善でないという事態が出てきておると思う。従いまして、この報告書についてこういうような指摘がありますというと、得たり賢しというわけでないのですけれども、非常に間違いでございました、従って今後厳重にこういう点をいたしますというので、まるで結果におきましてはしめし合せたような結果になって、国民の当然受けなくちゃならない権益というものがだんだん制限されていく方に追い込まれている。そういうものが基調になって、今年度の予算においてこの適用人員の削減ということが具体的に起ったのじゃないか、こういうふうに考えられるのでありますが、こういう点から考えまして、きょう厚生省指摘に関する限りにおきましては、どうも私は会計検査院の方の基本的なやはり態度についてお伺いしておきたいのです。  もう一つ、これと関連いたしまして、具体的に下の実情をどのように把握されておるか、また把握されるための努力をどうされておるか、そういう、実際、今までそのためにどんな具体的なことをされたか、この点については厚生省の係からお伺いしたいと思います。
  51. 石渡達夫

    説明員石渡達夫君) 会計検査院としましては法律、あるいはそれによるところの厚生省交付基準、そういうものを当てはめまして、どんなふうに交付されているかということを見たのでありまして、この生活保護法におきましては、まず世帯の働き者が得るところの収入、この収入と、厚生省がきめました最低生活基準額、これとを比べまして、かりに一万五千円の働き手の収入があると、最低生活基準額がその世帯は一万円だというふうにしますと、一万五千円から一万円引きまして五千円残ります。この五千円がその世帯の自己負担自分負担すべき額だと、こういう計算をしまして、そうしてかりにその病人の医療費が一万円かかれば、その一万円から五千円引いた五千円が国の交付すべき補助金額だという、きわめて法律、交付基準にのっとった機械的な計算をしまして、もともと最低生活基準額というものが非常に低いものでございますから、この生活保護法を受けている御家庭はさぞつらいだろうという満腔の同情を持って検査はしているのでございます。しかし、何分ここに書いてありますように、二十九年度におきましては、生活保護を受けるに該当する人で受けられない分が十億円近くもなっております。そうした生活保護を当然受けられる人でもなお予算上受けられないというような事態もありますから、一応法律、あるいは厚生省交付金基準、これを厳格に適用しまして、それに照らして、多い者は多い分だけは補助金を差し控えて、その分をほんとう生活保護を受けるだけの資格のある人で受けられないといった者に回すべきではないか、そういう気持をもって検査しておるのでございます。
  52. 岩間正男

    ○岩間正男君 今ちょっと聞き漏らしましたが、資格あって、当然この生活保護適用の資格がありながら受けられない人が何人でございますか。
  53. 石渡達夫

    説明員石渡達夫君) ここにも書いてありますが、百二十五ページの終りから二行目でございますね。「二十九年度末において負担不足額が二億六千二百余万円」、これは厚生省の方からこの交付金が出ていないけれども、県が立てかえて二億六千万円は診療機関の方には金が行っておるわけです。それからその次の「医療扶助費国庫負担分を財政上の都合により翌年度に繰り延べているものが七億七千四百余万円」、これは予算上の都合で負担ができませんので、当年度負担しないで翌年度に繰り延べておる分でございます。
  54. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは会計検査院の方の御説明の中で法律事項に関する範囲内で検査をされているのは一応その点はわかります。そうしてしかもそういう立場の中では、今言ったように、実際ははみ出している。そうして地方費なんかで負担しなければならない金だけでも四億円ある。しかし実際これをほんとう調査すれば、これは一応そういう施行した面においてなんですが、具体的に調べればもっとこれはそういう人が私は多くなるのではないかということを考えるわけですが、その問題はおくとしまして、こういう現状で、会計検査院指摘によりましても十億取りあえず足りないという実情にあると思うのです。それだのに、最近やはりこの保護適用人員を切っているというこの政府のやり方はどういうところからその根拠は出ているのですか。
  55. 中垣國男

    政府委員(中垣國男君) お答えいたします。三十二年度の予算対象人員が少し減っておるということにつきましては、これは一般経済状態の発展に伴いまして、その対象になっておる人が自活能力がふえてきて、非常にできてきた。そういう人なんぞが省かれておりまして、そういうことが対象人員を減らしたという一番大きな理由になっておるようであります。  それから生活保護者の経済生活の実態という問題につきまして、これは最低生活のいわゆる保障ということでありますので、そこには見積り額とか、あるいはその内容等につきましては、やはり運用上非常に判断のしにくい点も事実あるだろうと、こう考えておるのであります。そういう問題につきまして会計検査院指摘しましたところの、やはり自己負担分に比せられるようなものが過小に申告されておるという傾向があると指摘されたのは、やはりこれは私どもといたしましても認めざるを得ないだろうというふうに考える点があるのでございます。しかし、ただいま御指摘の通りに、実際に保護を受くべき人が受けておらぬではないか、そういうのもまたやはりあると思うのです。でありますから、厚生省といたしましては、真実この生活保護法を受けるべき人にほんとうにこれはやはり生活保護法を適用しなければいけない、こういうふうに考えております。
  56. 岩間正男

    ○岩間正男君 どうも十億円ぐらいの……、もっと資格があって受けなければならない人が、そういう実情があるのに、今年度は少し景気がよくなったので、少しどころじゃない、神武以来の好景気なので、自活できる人が多くなった、こういう判断でこれは切っておられるということですが、この間の矛盾は、これは非常におかしいと思うのです。これは実態を調査すればなお出てくると思いますが、とにかくわれわれの判断でも、実際の状況を見ますと、なかなかそんなものじゃないと思うのですがね。これは生活保護法の適用を受ける人の数がむしろふえている。減りはしない。しかも今までの予算が不足なために、実際ははみ出して、適用を受けたくても、受ける資格があっても受けることができなかった人が非常に多かったんじゃないか、これが実情じゃないか。これが全体として予算のワクの絶対的な、総体的な不足という問題がはっきり出ていると思うのですが、この点は次官はお認めになりますか。
  57. 中垣國男

    政府委員(中垣國男君) つまりこの百二十五ページの、二十九年度における負担不足額というのは、これはやはり義務を果しておる金でありまして、これはもちろん義務費でありますから、三十年度におきましては補てんすべき金なんです。これは二十九年度でありますから、三十年度ではもちろんこれは出しているのです。そこで私が先ほど申し上げましたのは、昭和三十二年のことでして、ただいま御指摘の点は、昭和二十九年度ですが、私がお答えいたしましたのは、昭和三十二年の予算についてお答えいたしましたので、それは非常に一般経済状態が好転しておる、そういうことから、事実におきまして、今までの要保護者であった者が、実は俗にいっておりますボーダー・ラインへ入っていった、こういう点は事実でございまして、そういうことをば考慮に入れて予算化した。それは非常に対象人員が減っておるから不当じゃないか、こう言われるのでありますが、実は私どもは必ずしもその点はそう思っておりませんです。
  58. 岩間正男

    ○岩間正男君 ここのところは論争になるとこでろすが、二十九年度あたりからの人員の数、わかりますか、ずっと、ちょっと知らして下さい。
  59. 尾崎重毅

    説明員尾崎重毅君) 実は二十九年度……ちょっと最初、失礼でございますが、二十九年度当時とただいまとはちょっと事情が違っておりまして、三十年度に至りますまでは、毎年度予算が、当初予算の見積りが不足しておりまして、二十九年度年度途中において七十億円の補正をしておるわけであります。それから三十年度は二十三億五千万円補正をしております。本年度は当初予算は十分足りて、むしろ若干余るくらいである、そういう実情になっております。お尋ねの人員について申し上げますが、大体被保護人員は、現在生活扶助だけで百五十万ぐらいでございまして、
  60. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは二十九年からわかりますか。
  61. 尾崎重毅

    説明員尾崎重毅君) わかります。
  62. 岩間正男

    ○岩間正男君 二十九年からちょっと知らして下さい。
  63. 尾崎重毅

    説明員尾崎重毅君) 二十九年五月をとりますと、百六十三万ぐらいでございまして、それが大体三十年のやはり五月になりますと、百七十一万、若干ふえております。それから三十年の九月が大体ピークでございまして百七十二万、それからだんだん下降傾向をたどっておる、それで現在百五十万ということになっております。
  64. 岩間正男

    ○岩間正男君 三十一年はわかりますか。
  65. 尾崎重毅

    説明員尾崎重毅君) 三十一年の五月が百六十五万、それからだんだん減っておりまして、十月が百五十三万、そういう実情になっております。
  66. 岩間正男

    ○岩間正男君 それで、実は先ほど報告をいただきたかったのでありますが、どういう調べ方をされているのか、実情をつかむために、この点と関係あるのです。これは民生委員を今まで……任命制になったのですか、あれはいつですか。
  67. 尾崎重毅

    説明員尾崎重毅君) 実は昭和二十六年であったと思いますが、そのころまでは生活保護の下部の実施は、民生委員にやっていただいておったわけであります。昭和二十六年ごろ社会福祉主事という、いわゆる専門のケース・ワーカー、有給吏員のケース・ワーカー制度を採用いたしまして、同時に社会福祉事務所制度を採用いたしまして、それ以降は生活保護法実施機関は、大体社会福祉事務所になりまして、実施の事務は社会福祉主事がやっているわけであります。民生委員はそれに対して協力機関という関係に立ちまして、いろいろ被保護者を発見したり、あるいは適切な生活指導をするという面において協力してくれるというような構成になっております。
  68. 岩間正男

    ○岩間正男君 どうも民生委員は何か改組したようなときがあったと思いますが、あれはいつでしたか。
  69. 尾崎重毅

    説明員尾崎重毅君) 民生委員は、昔、方面委員というふうにいっておりましたのですが、それは名前が変っただけで、お尋ねの点は、ちょっと私所管でもございませんので、詳しいことは承知しておりません。
  70. 岩間正男

    ○岩間正男君 私もこの点はあまり詳しくないのですが、何か市町村長が頼んで、委託ですか、そういうふうにして、全体の人の、そういう世論によって民生委員になるのでなくて、一方的に任命するような格好が出てきたのではないですか、これは一、二年前だと思いますがね。
  71. 尾崎重毅

    説明員尾崎重毅君) 実は昨年の十二月に民生委員の改選がございまして、新たな方々に厚生大臣が御委嘱を申し上げたということになっておりますが、それ以前にそういう選挙方法であったかどうか、つまびらかにいたしませんので、あとから御報告申し上げたいと思います。
  72. 岩間正男

    ○岩間正男君 その点は私も調べてみたいと思いますが、この点御報告いただきたいと思います。とにかく私たちの近所の話を聞いてみましても、やはり非常に民生委員がいばり出したと言っちゃおかしいけれども、どうも恩恵的にやるのだ、そういう考えでもって、なかなか今までよりもびしびしやってくる。そういうことをやっていけば、今まで言ったように、人員を切っていくのは、これはわけないことだと思うのです。実際はそういう保護を受ける必要な人が、これは減っているというよりも、今言ったような操作によって、そうして実際は適用人員を減らしているというのが今のやり方じゃないか、その根本には、やはり生活保護費の絶対的な不足があるので、この点やはりはっきりわれわれ確認したいと思うのですが、これは次官どうお考えになりますか、さっきの問題と関連するのですが、どうでしょう。
  73. 中垣國男

    政府委員(中垣國男君) これは民生委員というのは、社会福祉事業のための協力機関になりますから、これは推薦によって厚生省が委嘱するという、先ほど課長が答弁したようでありますが、その通りでありまして、この人員を、対象を、いわゆる要保護者対象を明らかに確認するとか、あるいは要保護者からこれを除外するとかいう問題につきましては、民生委員だけできめるものでなくて、市町村役場には社会福祉主事という一つの、どこにも全部いるわけですから、そこでやっておりますので、これが無理な、要保護者を削ってしまったり、あるいは生活保護をしてやる必要のないものを入れたり、そういうことは実はしていないと、こういうふうに私どもは考えております。
  74. 岩間正男

    ○岩間正男君 これも実情をもう少し見ていただきたいと思いますな、民情視察というような。これは今の民主政治の非常に重要なことだと思いますので、そのお考えになることと実情は必ずしも一致していないということを私は申し上げることができると思うのですが、そういう形で運用されておるのですか、とにかく基本的な考え方については先ほどお伺いしましたが、この精神を徹底するということになりますと、少くとも今までのいろいろな条件ですね、電灯であるとか、ラジオであるとか新聞の問題で、むしろ人権を侵害するようなやり方をこれは厚生省はおとりになるのですか、ならないのですか、こういうようなやり方で進めておる実際の事務ですね、この態勢についてはどうお考えになりますか。
  75. 尾崎重毅

    説明員尾崎重毅君) 実は形式的なことを申し上げて恐縮でございますが、生活保護法の中にも被保護世帯に対する指導、指示の規定があるわけでございます。それでいわゆる社会福祉主事が世帯と関係を持ちまして、最低生活の保障である保護費を支給すると同時に、その自立更生をはかるということも任務になっておりますし、民生委員もそれに対して協力関係に立って、側面的に応援してもらうということも現在の建前になっております。従いまして、具体的にその運営が個人の人権侵害というふうにゆがめられますことは、これは私どもといたしましても、はなはだ回避しなければならないことでありまして、ただ自立更生をはかるようにいろいろな指導、指示をするということが往々にしてそういう、たとえば安定所へ行って働いたらどうか、あるいはどうこうしたらどうだというふうに、ある程度干渉がましいことになることはやむを得ないのではないか、ただ、それがあくまで非常に人権侵害的なものにならないような注意は、これは第一線としては当然すべきでありますし、それからまた、私どももそういう監督指導に留意いたしたいというふうに考えておるわけであります。
  76. 岩間正男

    ○岩間正男君 たとえば制限のいろいろ条件をつけて、非常にその方はやりやすいわけです、やっていて。民生委員も忙しいだろうし、必ずしも適当な人ばかりいるとはいえないわけです。あるいはまた任命制みたいになりますと、とにかく理事者は自分に都合のいい人ばかり任命しようというようなやり方で、政府に協力するというような格好になってくる、そういうふうになりますと、簡単に基準でも設けてそれをぎゅうぎゅう押しつけ、それを一つ監督の基準にして、たえずそういうような圧力を加えるというようなことが実際起っているのです。そういうことはやはり基本的にやめるべきだ、そういう形で人権侵害が行われているのですから、そういうことについてはやめるべきだ、こういうふうにお考えになるのは当然だろうと思いますけれども、政務次官いかがでございますか。
  77. 中垣國男

    政府委員(中垣國男君) ただいまの御意見に対しましては、これは全く同感です。そういう実際の実施機関である社会福祉主事並びに協力機関でありますところの民生委員等が、その生活保護者にすでになっておられる人、あるいはこれからその生活保護者の中に加えられる人、そういう人々に対しまして、その実施に当り、もしくは調査に当りまして、人権を侵害するような言葉並びに行いといったようなことは、これはほんとうにしてもらっては困る、これは全く御意見の通りに、同じように考えております。
  78. 岩間正男

    ○岩間正男君 そういう不当な行き過ぎがあった場合には、やはりこれは取り締られるというようなお考えはお持ちですか、いかがでしょう。
  79. 尾崎重毅

    説明員尾崎重毅君) まず第一に、社会福祉主事は、当然これは府県なり市の吏員でございまして、しかも国の機関としての府県なり市が生活保護を実施する方面に働くわけでございますから、私どもが当然そういうその不当な行為に対する監督権は持ちまして、適切な措置はとれるというふうに解釈いたしております。それから民生委員につきましては、実は厚生大臣のたしか任命にはなっておるはずでございますが、その辺の従いましてそういう事柄は、一般的な監督権はあるというふうに考えますが、正確なところはあとから御報告申し上げたいと思います。
  80. 高田なほ子

    高田なほ子君 関連して。ただいま厚生当局の方から岩間さんの御質問に対して、無理なことはしないつもりだと、しかも今度の三十二年度の政府の予算は、もう当初予算で足りて、しかも余ると思うと、大へん伺えば朗報のような御答弁でありますが、これに関連してお尋ねをしたいことは、この生活保護の仕事は、個人の更生という問題が大きくうたわれることは当然だと思うのですが、家そのものがやはり更生していく、つまり家族の関係がこの保護対象の中で更生していく、こういうふうに私どもは考えなければ、本来の意味が果せないという観点に立っているものですが、これは私の近所でも非常に問題になって、しばしば泣き込まれてくる問題でありますが、両親が年をとっている、娘や息子にこれから大いに働いてもらわなければならないというような場合に、現在この就職戦線から見ると、やはり高校卒業ということでないと、なかなか適当なところに採用され得ないということになっておるわけでありますから、当然この高校入学者がある場合でも生活保護費を打ち切るというようなことは、私は少し時代おくれではないか、家庭の更生という問題に目をそらした行き方ではないか。まして教育を受ける子供、受けたいという、また生活をこれからしょっていかなければならないという、そうした子供の好学意欲というものを……、生活保護費を剥奪するという脅迫条件と私は言いたい。こういうような条件で打ち切るということであるということは、私に言わせれば、非常にこれは無理だと思うのです。こういうような無理を御存じであると思うのですが、これを含めて無理なことはしないというふうにお考えになっていらっしゃるのか。
  81. 中垣國男

    政府委員(中垣國男君) お答えいたします。ただいまのお尋ねの第一の点でありますが、これは生活保護法というものが最低生活保護ということにその趣旨が貫かれておりますので、そういう子弟の学校教育というものは義務教育、いわゆる小学校、中学校の義務教育の課程を終えることができる、それまでを一応現在の生活保護法におきましては最低生活と、かように実は考えておりまして、ただいまの法律をそのまま直訳いたしますと、高校に行っておる人を含めて生活保護するということは、これは考えられないと思います。しかし特別な場合等がありまして、たとえば高校の二年に行っておる子供がおるときに、働いていた御主人がなくなったというような場合に、その子供があと一年で高校を卒業するのでありますから、それがおったんでは生活保護法の適用ができません。そういうことには、ただいまのところ人情の面でしていないようであります。
  82. 高田なほ子

    高田なほ子君 していたらどうしますか、実情はしていますよ。
  83. 尾崎重毅

    説明員尾崎重毅君) ただいまの政務次官の御答弁の通りでございまして、私どもとしましては、そういう指導方針をとっております。従いまして、その指導に従わない、はなはだ不適当なる措置がございますれば、十分監督して参りたいと思います。
  84. 高田なほ子

    高田なほ子君 まあ関連ですからそこにしぼっていきたいのですが、現在までは義務教育というようなことで、これが最低というふうに考えられているかもしれませんが、将来のこれは研究課題として、一家の更生という面から、それから就職戦線の状態から、これは大いに考慮してもらわなければならないと、こういうふうに考えます。  もう一つ関連で失礼ですが、お尋ねしたいことは、今度、生活保護費対象人員を大体一割減らしたようであります。そのかわりに単価を六・五%くらい上げているように思いますが、この六・五%というのは、先ほど担当の方がお答えになったように、予算でやられても余ると思うほど十分であるという科学的な計算からこの六・五%というものが組まれてきたのでしょうか、いかがでしょうか。
  85. 尾崎重毅

    説明員尾崎重毅君) 大体六・五%の増は、全体の予算のワクというようなことから逆算されたというふうではございませんので、一応現在の保護基準が二十八年の七月以降据え置きでございまして、その間、物価も若干上昇しておりますし、なお全般的に国民生活の水準も向上した、そういうようなことから、物価の補正やあるいは内容改善ということを来年度において取り上げたい、そのためには大体もう少し、高ければ高いほどいいにはこしたことはございませんが、まあ六・五%というところで予算を計上したのであります。従いまして、もし、これは一つの見込みでございますので、来年度事情が変更いたしまして、この予算で足りなくなる、三百六十二億ばかり足りなくなるということになれば、そのときに手当をしなければならぬ、そういう性質のものだというふうに私どもは理解しております。
  86. 高田なほ子

    高田なほ子君 意見にわたりますが、生活水準が向上したとかしないとかは、もっと精密に考えなくちゃなりませんが、私どもはさっぱり生活水準は向上していない、数字の面から考えても、国民の一人当りの税を出す、国に出している税金、これは今度一万二千二十九円一人当りになっておるようでありますが、前の年から比べると、平均すると千三百七十三円もふえている。間接税だって今度はあれでしょう、ガソリン税が値上りになれば、それも税金に入ってふえてくるでしょうし、お砂糖も上るでしょうし、お米も上るでしょうし、運賃も上るでしょうし、間接税だったって一人平均三千四十円くらいこれは払わなければならない。だから政府が生活水準が向上した向上したと言いますが、数字から見るとそんなに向上していない。そういうような、私どもと政府の観点が違うのかもしれませんが、六・五%でもって足りないという場合には、また対象人員が実情に即さない、こういうような場合には、これは政務次官がおいでになりますが、補正予算をお組みになるのですか、今の御答弁だと補正予算でも何でも組むような御答弁に聞えますから、ただしておきます。
  87. 中垣國男

    政府委員(中垣國男君) 先ほど答弁を申し上げました中に、対象人員が減ったと申しますのは、単にその予想をした数字でないのでありまして、昭和三十一年度のその実情に基きまして、昭和三十二年度計算をされているわけでありまして、御指摘の通りに、もしこれがやってみて足りないということであれば、当然これは補正予算を組むべきものだと考えます。
  88. 久保等

    ○久保等君 ちょっとお尋ねしたいのですが、二十九年度でのこの医療扶助件数は何件ぐらいだったのですか、この会計検査院指摘されておる問題なんですが。
  89. 尾崎重毅

    説明員尾崎重毅君) 医療扶助の人員でよろしゅうございましょうか。
  90. 久保等

    ○久保等君 ええ、人員でけっこうです。
  91. 尾崎重毅

    説明員尾崎重毅君) 二十九年度は、平均いたしまして、入院関係が十二万五千、入院外の関係が二十三万三千でございまして、合計三十五万八千という、大体そういう数字になります。
  92. 久保等

    ○久保等君 で、この会計検査院指摘事項について申し上げたいのですが、これは大臣がおいでになっていただければ大臣に実はお尋ねをしたいところなんですが、おいでになりませんのでお尋ねをしたいと思うのです。この生活保護の問題に対しての指摘事項なんですが、これはやはり先ほど来質問をせられておりますように、問題の根本的な解決は、単に事務的な面の督励、あるいはいろいろ受給者の協力という問題等でやはり解決せられる問題じゃないと思う。この検査院に指摘せられておりまする問題を見ましても、少くとも調査せられた各県について例外なくこういう問題がありますし、しかもその実態を掘り下げて参れば、私はこれはもう全く実情を聞けば聞くほど、それに対してむしろ法の不備といいますか、手の届かないという問題、あるいはまた制度的に非常に手ぬるいという点からくる、これはどうにもならないお気の毒な実情だと思うのです。しかも医療扶助を受けなければならないという人たちは、わけてもわずかばかりの生活保護費をもらっておる、生活保護の適用を受けている人が、さらにその上病気にかかった、いわば貧して鈍した、全くお気の毒な人たちだと思う。従って、その場合に病気になれば、もちろん単に生活費のみならず、いろいろと出費が必要だろうと思うのですが、その場合に、かりに極端なことを言えば、十円でも二十円でも生活保護費以上の収入があれば、当然それは医療関係に加算するのだというやり方は、これはもうまことに現実から私はかけ離れた実情だと思うのです。それで少くとも先ほどお伺いしております東京都の場合を例にとって考えても、最低生活最低生活といってみても、これはどう考えても、子供三人に未亡人、老人、収入は一銭もないということを前提にして八千二百三十三円というお話だったのですが、かりにそれが六・五%上ってみたところで、九千円にはまだまだはるかに届かない、八千六、七百円か、その程度の金額だと思うのですが、そういう状況からするならば、私は、やはり少しでも内職をして、一千円でも二千円でももうけて、病気しているならば、その方へ若干何とか足しにしようということで働かれると思うのです。ところがそれは当然入れると、当然医療費の中に加算して医療扶助から除外するのだというやり方は、これはもう何とか、事務当局をどうこう申し上げるのでもなく、また会計検査院のやり方が酷だというのじゃなくて、制度的な立場から会計検査院はきびしくやらざるを得ないと思うのですが、問題は私は大きな政治問題だと思うのです。しかも人員的にいっても、先ほどの御説明だと、百五十万前後が生活保護を受けている人であり、そしてまた病気になった方々も、今の御説明だと、二十九年度でとにかく三十七、八万、四十万弱の人たちなんですが、これらは最も私はお気の毒な、何とか考えなければならぬ人たちだと思うのです。もちろんそれと似たり寄ったりという、いわゆるボーダー・ラインの問題等もありますが、そういうところまで話を広げていくと際限がないと思うのですが、少くともこれを的確につかまれる谷底の一番底の、しかもその上に病気をしたというような場合に対する医療扶助等の問題については、もう少し私はやはり何とかあたたかい政治という点から考慮しなければならぬ問題じゃないかと思うのです。また、そのことが結局、この会計検査院指摘しておりまする八百十二号から八百二十六号にわたる問題の私は根本的な解決になるのじゃないか。これは生活保護法の適用を受けておる人たちの医療扶助の問題について手きびしくやれという方が、むしろ私はどっちかというと非常識にわたっているのじゃないかというふうに実は考えるのです。従って政府の説明書で言われておりまするずいぶん丁重に説明がなされて、約二ページにわたって書かれているのですが、内容は全く、事務的な点での指導を十分に一つ強化していきたいとか、あるいは十分被保護者の協力義務を強調したいとかいうようなことをるる書かれているのですが、これはむしろ、こういったことは励行すればするほど、私はこういった人たちにはよけい大きなむちを当てられるという結果にしかならないのじゃないか。私はもう全くこういう問題については人道上の問題だと実は思うのです。生活保護費そのものの問題についても、ただいま申し上げたように、五人家族で八千円程度で、一体最低生活は保障しているのだというけれども、最低生活というものは一体どういうものかということになれば、これはどうやら人間らしく生きておるということの程度のことは、教育費まで入っているのだという説明なんですが、これは数字ははじき出して積算されたのだから、相当こまかく計算されているのだと思うのですが、これはどなたが考えても常識以下の問題じゃないかと思うのです。従ってこの会計検査院指摘事項で、今度は政治的な立場から、特に今度の内閣にしても、私は社会福祉国家の建設という問題も、石橋内閣をそのまま継承せられる重要な施策の一つだと思うのですが、まあ先ほど御説明で、六・五%ふやしていいじゃないかということですが、これも、しかし総額の面を見れば似たり寄ったりということになっている。逆にむしろ減っているというような実情になってくるならば、私はこの会計検査院の問題で、会計検査院という立場から問題を処理するのじゃなくて、その裏の方から、裏の方からというか、たての裏側の方から解決する以外には、この問題自体についても解決する方法はないんじゃないかと思うのですが、一つ政務次官のお考えを承わりたいと思うのです。
  93. 中垣國男

    政府委員(中垣國男君) ただいま御意見としてお述べになりましたことにつきましては、大体私どもも同感であります。ただ問題はこういうことでありまして、たとえば生活保護者が何か家で仕事をやりまして、家庭的な仕事をやりまして、若干の収入があるというような場合に、それらの経費というものをばどんなふうに見るかという、こういう問題で、御指摘の点は大へん緩和していくと、こういうふうに考えるのです。そこで、今の最低生活基準の問題でありますが、それにつきましては、これは少いということで、いろいろ検討した結果少いということになりましたならば、これを変えてかかるということは、別にそんなにむずかしいことではないと考えておるのです。ただ問題は、そういうことは非常に及ぼす範囲というものがいろいろあるものですから、よほど慎重に調査をいたしましてそういう問題には触れないと、今ここで私が思いつきで答弁するなどということは差し控えたいと思います。ただし御指摘なさった点や御意見につきましては、非常にもっともだと思いますので、省に持ち帰りまして、これらの問題は十分調査さしていただきたいと思います。
  94. 久保等

    ○久保等君 今、政務次官の御答弁は、比較的現実の問題としては私、実のあるお話かと思うのですすなわち、運用の面での、収入について、これは運用によって多少何とか考慮できるのじゃないかというお話ですから、そういう運用面でお考えいただくことも、これは当然お考えをいただかなければならぬ問題じゃないかと思うのです。同時に私の申し上げておるのは、現行の建前自体が、先ほど来申し上げるような建前になっておることは、これは今日の一般常識からいって、非常に極論すれば常識はずれ程度の、ほんとう最低生活費じゃなくて、最低生活補助費にすぎないと私は思うのです。率直にいって。一人頭二千円どころじゃなくて、千四、五百円というか、そんな程度の金で東京でしかも生活するということは、これは不可能だと思うのです、どういう生活をするにしても。従って根本的に最低の生活費つ根本的に御検討いただきたい。の基準費そのものの増額についても私は政府としても当然根本的に何か検討していただかなければならぬ大きな問題じゃないかと思うのです。もちろん、ここで即答をお願いするほど、問題は簡単な問題ではないし、小さな問題ではないと思うのです。しかし、少くとも福祉国家という看板を掲げてとにかく国民に臨む以上、私はやはり福祉というところまでいかなくても、とにかく先ほど来の問題は、最低生活の人がさらに病気をしておるという場合の問題です。そういった問題だけにこれは一つほんとうに腰を据えて、わずか六・五%程度の最低生活費の基準額をふやすとかいう程度の問題じゃなくて、それからまた、それが何か操作をさせたかのごとき印象を与えるような六・五%程度ふやすという程度じゃない、もう少し実情に近寄せた私は政策をお答えいただかなければならないのじゃないか。これはもう私はどなたも異議のない問題であろうと思うのです。問題はやはりしかし腹をきめてやらぬことには、金額がわずかな金額じゃ済まない。従って少くとも百億単位の経費になると思います。従ってこれを倍額にして、かりに一万四、五千円としたところで、果して最低生活といえるかどうか問題だと思うのです。しかし、まあ一万四、五千円ともなれば、これはどうやら私は常識的に、最低生活なんだといえばあるいは最低生活ということもいえるかもしれませんが、七、八千円という程度では問題にはならぬ、補助費にしかすぎない。最低生活費の補助費にしかすぎないというそしりを免れない。そういう点を一つ根本的に御検討いただきたい。  それからまた医療扶助費の問題については、もちろんこれはさらにプラスされたお気の毒な人たちだと思うのです。そういう点から一つお考えを根本的にいただくことは、決算報告に出ておりまする問題に対する根本的な解決になるのじゃないか。従ってむしろ会計検査院なり事務当局なりを叱咤勉励をして、会計検査院指摘の通り、どんどん回収しろ、それから何といいますか、交付超過になっておるものを巻き上げるのだということをやればやるほど、私はむしろ実際の政治という問題から考える、ゆゆしい問題じゃないかと思うのです。そこに制度と現実との遊離があると思うのです。やはりギャップを埋めていくということは、私はこの際ほんとうに必要なことじゃないかというふうに考えますので、単に今日の制度下においての運用面を出きる限りあたたかみのある、温情味のある形で処理をしていくというだけじゃなくて、根本的な問題について一つ、幸いに福祉国家を高く掲げております岸内閣でありまするだけに、私は組閣早々でもございまするから、一つ大きな政府の抱負として是非断行するくらいのお約束をいただきたいのですが、この席上で簡単にお約束いただくこともできかねると思いますので、ぜひそういう問題について御配慮をいただきたい。これは抽象問題じゃなくて、たまたま、具体的に二十九年度実績に徴して出ておるのでありますから、こういう問題の解決の面からも、ぜひこの際一つ強く要望申し上げたいと思うのですがいかがでしょうか。
  95. 中垣國男

    政府委員(中垣國男君) ただいまの御要望にできるだけ沿えますように、大臣とも相談いたしましてよく結論を出したいと思います。
  96. 岩間正男

    ○岩間正男君 今久保委員高田委員からも指摘されましたように、非常にこの問題はやはり根本的に検討してやらなくちゃならない問題だと思う。第一、この最低生活ということとどん底生活ということ、最低生活という言葉が間違っておる。最低生活というのは、今政府の使っている意味では、最低生活という言葉はこれは正しい使い方じゃないんじゃないかと思います。最低生活の概念が非常に違って、実はどん底生活のことを最低生活と、工合がいいものだから言っているのだと思うのですが、やはり最低賃金制の問題なんかと関連した最低生活の意味で、人間が生きるため、しかも先ほどお話のありました憲法で保障された当然これは日本国民として生きる権利を主張し、そしてその中において、とにかく曲りなりにも生きられるそういう生活基準があって、それにふさわしいところの生活内容を持ったのを最低生活と言うのだと思うのでありますから、最低生活最低生活と言ってどん底生活と混同しないように一つ願いたいと思う。従ってこの問題についても、久保委員からも話がありましたように、当然今後の対策としては鋭意努カされるべきものだと思います。  もう一つこれと関連いたしまして、高田委員から先ほど話がありました高等学校に子供をやると生活保護を打ち切られる、これは私も質問したいと思っておった問題なんです。とにかくこういうことなんですね。子供が上に行きたい、中学を卒業したが、中学じゃ満足できないし、就職するにも困る、従って試験を受けさしてみた、子供の念願が非常に切実なために、試験を受けるというので受けさしてみたところが、いい成績で通った。通ると子供はどうしたってこれは上に行きたいですね。ところがすぐにひっかかってくるのがこの生活保護を打ち切られるという問題なんです。そこで親としてはこれはまことに苦しいところに追い込まれるのです。何とも言えないこれは切実な苦しみであるということを、私どもは何件かこういう問題を聞いておるのです。つまり生活保護を打ち切らせるか、そして子供を学校にやるか、生活保護を今までのように続けるために子供を思い切らせるか、こういう問題に親としてぶつかるわけです。これはまことにはらわたをかきむしられるような親の苦しみであるという点をよく考えていただきたい。従って私はこれは法案として生活保護法の適用範囲の中で当然もう改正されているべきときじゃないかと考えるわけです。これはたまたま今高校に行っているのが、二年生くらいになった子供が、たまたま親が死んだためにやめさせるのが気の毒だから手心を加えてやっている、こういう形で答弁がありました。そういう例もありましょう。しかし大ていの場合は、高校に行くというのと引きかえに生活保護が切られるというのが実情なんです。従ってこれは非常にたくさん起っている問題で、しかもむざむざ今の生活保護法の実体というものを示しているようなことになっているわけです。憲法の二十六条にはなるほど義務教育は中学までとなっています。しかしこれは何もその上の子供の教育について制限していることじゃない。ただ国家予算の建前から現在においては義務教育費くらいまでしかまかなえない。しかもこれは無償にするということを言っていますけれども、無償にもされてない。実際は父兄負担がPTAの会費とか給食費用という形で非常に強化されている。少くとも政府の出しているくらいの、二倍くらいは父兄が今負担しているというような形になっておる、こういう非常に不完全な形で義務教育が行われているのですが、この日本の教育の体系から考えましても、高等学校に進学の希望を持っている子供たちを、今の生活条件のためにむざむざ思いとどまらせるということは、これは非常に国家の大きな損失ですよ。そうしてまた貧富差による教育の差別待遇が始まっているのですから、こういう点から考えますと、教育問題とあわせまして、もう法案改正の時期になっているのじゃないか、高等学校くらい子供をやったからといって、生活保護を打ち切るというやり方は、もう先ほども高田さんからもお話がありましたように、情勢に合わないのじゃないか、こう思うので、法案改正の必要が迫っていると思うのでありますけれども、これはどうでありましょうか、これについて生活保護法の法案を改正する考えがありますか、この点をお伺いしておきたい。
  97. 中垣國男

    政府委員(中垣國男君) お答えいたします。  ただいまの生活保護法は、先ほど来お答えいたしました通りに、義務教育ということは下級中学までということに規定しておりますので、ただいまのところやはりこの点はもっていきたいと思います。今後の問題といたしまして、高校進学者並びに高校在学者等をその適用の範囲に含めるかどうか、これは法律の改正が必要になってくると思いますが、その前にやはり国民経済の全般的な問題等から考えましても、この問題は単にこれだけの問題じゃないと考えますので、今ここでこの法律を改正する考えがあるとか、するべきであるとかというお答えは私としてはちょっといたしかねます。ただし一応これは省に持ち帰りまして、一応意見を聞きまして、次の委員会なり適当な機会にお答えさしていただきたいと思います。
  98. 岩間正男

    ○岩間正男君 この教育に対する考え方の中に、これは自分の、親の子供だというような個人所有観念が非常につきまとっているのじゃないか、これは教育の観念の中では非常に古いものだと思うのですね。これはやはり社会の子供であり、日本の国の子供なのです。従ってこれは生活保護の問題と切り離すべきだ。そして当然教育のそのような態勢を確立するのが私は今の方針だと考えるのです。従ってこれはまあ厚生省の政務次官並びに大臣が、今後閣議の中で主張されるときどういう立場をとられるかというところで、この立場の要点が変ってくると思うのです。この点はっきりやはりお考え願わなければならぬと思うのです。これは個人の所有観念だから、従って親の経済状態が悪い場合には子供は上にやれないのもやむを得ないのだというふうに考えるなら、これはやはり東条時代に逆戻りです。新しい教育の理念からいいましても、そういうことになっていないと思うのです。ですからその点、心していただきたいと思うのですがいかがでしょうか。
  99. 中垣國男

    政府委員(中垣國男君) 教育問題の教育に関する一般論としましての岩間さんのお考えにつきましては、一応御意見としまして承わっておくのでありますが……。
  100. 岩間正男

    ○岩間正男君 意見じゃないですよ。
  101. 中垣國男

    政府委員(中垣國男君) 私はやはり子供が国家の子供だという考え方のもとに教育制度であるとか、あるいはそういう考えのもとに生活保護法というものは、ただいまの段階でそうすべきだとは私は考えておりません。ただしこれは政務次官として、まだ省議や大臣等の意見をまとめておるのじゃないのでありますから、私個人の考えかもしれませんが、ただいまのところはそういうふうには考えておりません。  それから今後の問題といたしまして、ただ……。
  102. 高田なほ子

    高田なほ子君 教育基本法と抵触する。
  103. 中垣國男

    政府委員(中垣國男君) ただいまの教育の問題としましては、それは高校ということが一つ基準でありまして、もちろんその義務教育まではあなたのおっしゃった通りでありますが、高校以上の教育につきまして、これを国家の子供として国家全体が責任を負わなければならぬという考えに私はただいま立っておりません。(「進行々々」「建設をやろう」と呼ぶ者あり)
  104. 三浦義男

    委員長三浦義男君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止
  105. 三浦義男

    委員長三浦義男君) 速記を入れて。
  106. 高田なほ子

    高田なほ子君 これは直接関係がないのですが、緊急な問題なので、この厚生予算に関係があると思われますので尋ねたいのですが、らい病患者の取扱い方についてでありますが、らい病患者で何か罪を犯したような人、それのおそれのある者については、これは留置所をただいま建設しておるようですが、この予算というのは、厚生予算の中に組まれておるものなのでしょうか、いかがでしょうか。
  107. 河野鎮雄

    説明員河野鎮雄君) 留置所自体は実はらい療養所の施設として考えておりませんので、厚生省の予算には計上してございません。
  108. 高田なほ子

    高田なほ子君 これは厚生省の予算ではなかりそうな御答弁がありましたが、国立の駿河療養所から多分ほかの議員さんのところにも陳情が参っておるようですが、留置所を建てることについて、患者たち、また市民が非常に反対している、しかるにもかかわらず、突貫工事でもって監房を設置しておる。何とかこれは県議会の決定したように、療養者の意見もまた県の意見も尊重するように、この処置をはかってもらいたいという手紙が来ておるわけなんですが、そうすると、これは全然厚生省の行政所管ではなくて、別個の所管だということになるわけですか。こういうことを伺っておりませんでしょうか、厚生省の方は。
  109. 河野鎮雄

    説明員河野鎮雄君) ただいまお答え申し上げましたように、予算といたしましては、厚生省の予算にはございませんが、国立の療養所と関連がございますので、私どもそういった問題を実は伺っております。ただ留置所を絶対に要らないのだというふうな建前ではもちろん実は考えておりませんので、やはり罪を犯した者がありますれば、やはり一般の国民と同じように留置所に拘置するというふうな問題もありますので、また療養所の患者といたしましても、やはり大部分の者は同じような考え方を持っておるものと私どもは考えておるのであります。患者の意向もございましょうが、いろいろ円満に話し合いをつけまして実現の方向に持っていくものと、かように考えております。
  110. 高田なほ子

    高田なほ子君 ちょうど次官もお見えになっておりますから、この問題はなかなか複雑であり、また行政所管は厚生省になっておりますから、こまかい点を十分お調べになって、こういう問題が未然に防げるように、また今起っている問題を円満に処理できるように、一つ積極的に御努力願いたい。これが私の希望です。
  111. 三浦義男

    委員長三浦義男君) ほかに御質疑はございませんか。——御質疑はないものと認めます。  では厚生省の分、検査報告批難事項第七百八十七号から第八百四十一号までの質疑は一応終了したものとすることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  112. 三浦義男

    委員長三浦義男君) 御異議ないものと認めまして、さように決定いたします。速記をとめて。   〔速記中止
  113. 三浦義男

  114. 三浦義男

    委員長三浦義男君) 次に、建設省の分を続行いたします。  検査報告批難事項は二千八十四号から二千二百九号までであります。  本件に関し御出席の方は、石渡会計検査院第三局長、丸山調達庁次長、建設省町田計画局長山本河川局長、富樫道路局長、開盛会計課長、柴田官房長、鬼丸住宅局長事務取扱、小島営繕局長の諸君であります。  御質疑のある方は順次御発言を願います。
  115. 小島新吾

    政府委員(小島新吾君) 会議の前に、前回の御質問の事項に対しましての答弁がはなはだ不明確な点もございましたので、一応釈明さしていただきたいと思いますが、いかがでございましょうか。
  116. 三浦義男

    委員長三浦義男君) どうぞ。
  117. 小島新吾

    政府委員(小島新吾君) 先般本委員会において、前金払いについて説明の際、御質問の趣旨を誤認し間違った答弁をいたし、かつ若干説明不足の点がありましたので、この際、その訂正と補足をかね御説明いたしたいと存じます。  岸根外一地区工事については一部の用地問題が未解決でありましたので、これが早期解決をしばしば所管庁である調達庁へ促進方を申入れていましたところ、昭和三十年四月末ごろには解決する見通しの旨、回答がありましたので、五月には着工できることと思いまして、年度末の三月に鹿島建設株式会社外二十九社と工事費九億二百九十万七千五百円で契約したものでありますが、一部用地の買収等が予定より意外におくれまして、ようやく十月に至り着工いたしました次第で、会計検査院より指摘されるような結果となりましたことは、遺憾に存じます。  この前払金は、公共工事の前払金保証事業に関する法律の規定により保証事業会社が前払金の保証を行なった場合に工事の代価について前払いができることが予算決算及び会計令臨時特例第二条第四号に定められておりますので、この規定に基いて支払ったものでありまして、この前払金の額の割合は大蔵大臣と協議により請負額の十分の四以内となっており、前払いをなし得る範囲は工事の材料費、労務費、機械器具の賃借料、機械購入費、動力費、支払運賃、修繕費、仮設費、保証料及び保証基金に充当され得るものであります。  岸根地区二十六件工事は、十分の二に相当する一億五千六百八十七万一千円、横浜日塩倉庫地区四件工事は十分の三に相当する六百二十四万三千七百五十円、計一億六千一二百十一万四千七百五十円を支払ったものでありまして、この前払金は東日本建設業保証株式会社と業務委託契約をしている銀行に別口普通預金といたしまして預け入れ、同保証会社の使途監査のもとに材料費、労務費、その他の支払に充てたものであります。これについての前払金使用状況調書は、お手許に配布してございます。  前回の当委員会において私が一億六千余万円の前払金は資材費にのみ充当しているということを申し上げましたが、前払金は先に御説明いたしましたように資材費にのみ充当すべき制約はなく、本件の場合においても事実におきましても資材費はもとより労務費に充当されていたのでありまして、この点に関しては、会計検査院当局の説明が正当で私の説明が間違っていたのであります。  なお、前払金の積算の根拠として労務費を含めていないことを御説明しましたが、これは当時岸根工事に関し前払金の割合を二割にとどめた際の算定の要素として資材の購入費を見込んだという意味でありまして、前払金の使途については資材費にのみ充当すべき制約は契約上においてはございません。この点、前回は誤解を招く説明をいたしましたが、右のような次第でございますので御了承願いたいと存じます。  次に、岸根工事昭和二十九年度末に契約し、前払金を支払いましたが、現場においては事実上、工事を中止しており、現場の着工は、同年十月となりましたが、その間の前払金の使用額は九千八百余万円でそのうち資材費は九千五百余万円であることを確認いたしており、残額の五千八百余万円は、それぞれ十月着工前には、銀行に預、託された十月以降はそれぞれ正当に処理されておるのであります。  従いましてこの前払金は昭和三十年度末に打ち切り竣功を行なった際出来高に応じて精算を完了しておるのであります。  以上でございます。
  118. 岩間正男

    ○岩間正男君 一応説明を伺いましたが、その中で労務費を含んでおるかどうかという問題は、今の説明で明らかになったと思うのです。建前としては労務費を除外するということはきまっていない、実質的には資材の方に二割分大体入れた、しかも実際使っているのは労務費としては七十二万円ですか。
  119. 小島新吾

    政府委員(小島新吾君) お配りした資料で使途前払金の使途金額の内訳がございます。それに資材費に充てたもの、労務費に充てたものがここに入っておるのでございます。労務費は七十二万一千百七十八円でございます。
  120. 岩間正男

    ○岩間正男君 この労務費というのは一般工事が進む、その中で使った労務費じゃなくて、何か資材を発注して、そうしてその外注のときに必要な労務、こういうふうに何か説明があったと思いますが、そういうことになるわけですか。
  121. 小島新吾

    政府委員(小島新吾君) ただいま申し上げた労務費は、着工後の労務費でございまして、現場の工事遂行上必要な大工、トビ、左官等の労務費でございます。
  122. 岩間正男

    ○岩間正男君 そうすると、これは十月以後に使ったことになるんですか、着工後ということになりますと。
  123. 小島新吾

    政府委員(小島新吾君) さようでございます。
  124. 岩間正男

    ○岩間正男君 そうすると、使用分の中で「その他」というのがありますね、この「その他」というのはどういう内容になるんでしょうか。
  125. 小島新吾

    政府委員(小島新吾君) 「その他」の項に、右側の二百七十二万一千三百八十六円というのは、着工前までに使った前払金の中のものでございまして、これは保証料と保証基金でございます。それから左側の二百二十六万二千二百六十七円、これは工事を始めた後の資材及び労務を除いたものの動力費とか仮設費とか機械の賃借料、こういうものでございます。
  126. 岩間正男

    ○岩間正男君 会計検査院のこの前のお話では、この前払金そのものが不当なものに出した、これは出すべきものじゃなかったんだと、だから従って利子の計算なんかはしなかったという御説明がたしかあったはずでございますが、つまり三月に一応契約して五月から着工するはずであったのが、実際は用地の問題が解決しないので一時工事が中止された、そうして十月に着工になったわけでありますが、この点についてこれはやはり依然として建設省の見解と会計検査院の見解というものは対立するように思うのでありますが、この点いかがでございましょうか。
  127. 石渡達夫

    説明員石渡達夫君) 利子の問題でありますが、利子の問題につきましては、この前金払いがついている契約につきましては、建設省の方で予定価格を作られますときに、予定価格の中の諸経費という分があるのですが、その諸経費が二〇%前後、請負金額の二〇%前後諸経費という科目を見ておりますが、前金払いのついた工事につきましては、この諸経費の割合をある程度引きまして、金利相当分として引いて安くしてございます。従って前金払いのあるときには、初めから予定価格において諸経費が安くしているから、金利については別にやり過ぎは、国の損害はないというふうに一応考えられますし、また一番正しい方法としまして私が考えますのは、予定価格をはじくときは、前金払いの金利分は金利分として計算をしまして、正しい数字を予定価格から引くと、それからこれはさっきもお話がありましたように、前金払いのある工事につきましては、保証会社の保証につけるように国の方が義務づけまして、業者は必ず保証会社の保証に契約をするということになっております。これにやはり経費がかかりますから、保証会社の保証料の方は経費として予定価格にプラスする、そうして金利を差し引き、経費はプラスする、こうした予定価格を作るのが望ましい姿だと思いますが、まあ建設省におきましてはそうしたプラス・マイナスはされないで、見積りで諸経費のパーセンテージを少し安くしているというふうになっております。従って厳格な意味において利子について損がなかったかどうかということをはっきり申し上げる段階に至りませんが、しかしこの契約を実際見まするのに、この検査報告にあります工事費九億円ということになっておりますが、これを予定価格を建設省が作りまして、そうして入札をして、ある業者が請負っている、この予定価格と実際に工事を請負った現場とを見ますると、予定価格に比べまして実際の請負金額は二千数百万円安くなっております。これは業者がやはり競争しまして、競争する過程において前金払いがあるということは十分に承知しておりますから、前金払いがある、それによって金利がどれくらいあるということを頭の中で計算をして、はじいて入札をしているに違いないと思います。こういうふうに予定価格と落札価格の差額が二千数百万円もあるということは、そうした競争の過程において金利分だけは安くなっているというふうに考えられまして、この金利相当額がすなわち国の損になって返還を命ずべきものであるというふうには考えておりません。
  128. 岩間正男

    ○岩間正男君 私の石渡さんにお伺いしたいのはこの速記録によるのですが、ちょっと読ましていただきます。「それから利子の問題ですが、その遊ばした利子を一体どうするかということですが、検査院といたしましては、こうした前金払いを払ったこと自体が違法である、払ったこと自体がよくないので、利子の点は、もっと前の出したこと自体が違法であるということを言っておりますので、利子の点までは突っ込んで考えておりません」、こういうような御答弁になっておるのでありまして、この御答弁の文意からこれをこのまま解釈しますというと、このたびの前金払いをやったこと、そのことがもう違法だ、これを違法とお考えになるかどうかという点について、私は御質問いたしておるわけであります。ところが今の御説明によりますと、利子の問題もちゃんと見て、それから保証料の問題も見て、そういう契約をすべきだというような説明でありますが、これは技術的な問題です。私のお聞きしておるのは、根本的のこの前金払いのこういう事態における支出は不当だと、こうお考えになっている点がこれは基本だと思うのですが、こういう点はこれはどうなんでしょうか。この速記録に関する限りはそういうことになると思います。
  129. 石渡達夫

    説明員石渡達夫君) この速記録の通りであります。不当であると思っております。
  130. 岩間正男

    ○岩間正男君 やはり違法だとお考えになっておりますか。
  131. 石渡達夫

    説明員石渡達夫君) はあ、そう考えております。
  132. 岩間正男

    ○岩間正男君 その違法だという点をもう少しこまかく指摘していただきたい。
  133. 石渡達夫

    説明員石渡達夫君) 前金払いする場合には、会計法によってどういう場合に前金払いするということがきまっておりまして、この場合にはその会計法の規定、その会計法に基く前金払いの臨時特例、そういうような法令によって出しておりまして、形式上から見れば違法ではございません。しかしまだ工事の実態もよくきまらないというようなものに対して前金払いを出すことは、その実体が前金払いではない。そういうときに出す前金払いは、実質的に違法である、こういうふうに見ております。
  134. 岩間正男

    ○岩間正男君 今の御答弁、非常に重要だと考えるのです。つまり形式的にいえばこれは違法でないということが言われるかもしれませんけれども、実質的に内容的にこれを考えてみるというと、とにかく工事はできない、半年もこれは打ち切られている。そういう事態においてこれは前金払いをやったんでありますから、このことについても違法だという点ではっきりこれは見解を表明されたわけであります。建設省としてはこの点について、今の指摘に対してどういうふうにこれはお考えになるのか。
  135. 小島新吾

    政府委員(小島新吾君) 岸根の場合でございますが、当時の状況といたしまして着工の見通しが五月ということになっております。五月からは実際の仕事にもかかれる、そういう見通しのもとに契約をいたしました。その五月までの間の資材費としての前払金という意味で前払金を払いました。
  136. 岩間正男

    ○岩間正男君 どうお考えになりますか、違法かどうかという点について、とにかく内容的に、形式はともあれ、実質的には違法だという指摘がただいま石渡局長からなされたわけです。これに対して建設省としてはどうお考えになるか。
  137. 小島新吾

    政府委員(小島新吾君) 違法でないと存じております。
  138. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは大へんな問題になると思うのですが、この前からの問題の一番焦点は私は解決していないと思う。一応資料は出されましたが、根本の精神におきましてこれは建設省側では違法でない、会計検査院はこれを違法だ、こういうように考えられているようでありますが、これについての実は責任問題というものがあるのです。どこが一体責任の主体なのか、責任を明確にするということは、当委員会のこれは一つの任務になってくるというように考えるわけです。依然としてこの食い違いがあるのでありますが、この点はこれはどういうような処置の方法をとるか、これは今決定される問題じゃないと思いますけれども、この点についてはやはり一応の明確な解決を当委員会としてはされるのが当然のことと思います。委員長いかがですか。
  139. 三浦義男

    委員長三浦義男君) これは委員会として決定をすべきもんだろうと私は思います。
  140. 岩間正男

    ○岩間正男君 それで私はやはりこの問題は実は安全保障費の支出の問題と関連しまして、いろいろな問題を持ってる問題だと思うのです。特に調達庁側からの出席を実は要望したわけでありますけれども、建設省さんの方では今違法でないというような見解に立っておられるのですが、実質的にこれはこの前も指摘しましたように、この期間の金利の問題から言いましても、非常にこれは不当なものが出ているわけです。損をかけてるんです。この問題が起っておるそもそもの原因として、五月から着工する、こういうふうな認定をしたのは、これはどこでございますか。調達庁でありますか、建設省でありますか。その点これは調達庁の、この問題を決定するに至りました前後の事情を、もうちょっと経過を聞かしていただきたいのですが。
  141. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) 三十年の当初に、調達庁では、当時の問題の解決が四月の末ごろには解決するであろう。従いまして工事も五月からはできるだろう。かようの旨を確かに建設省に御連絡申し上げました。その間の事情と申しますと、前回お話しがあったのではないかと思いますが、私は出席いたしませんので、一応概略申し上げますと、岸根の土地の接収、これは横浜市内の米軍の接収建物を転換させて、そのかわりに移るというところで、その岸根の土地が選ばれたのは、横浜市の意向にのっとって進んで参りましたので、岸根の土地が横浜市の土地の所有で、ここならば代替地になるから、それによって政府は計画を進められたらよかろう。これが二十八年の初めごろでございます。それに関しまして、当時日米の関係官が調査検討し、よかろうということで、二十八年の末になりまして、米軍側からは正式に施設委員会に、あの岸根の土地をほしいという要請書を出して参ったわけでございます。それから二十九年に入りまして、もしそれを提供するならば、どれだけの市内の建物、施設等が返還できるだろうか、こういうふうな点もいろいろ委員会が討議いたした結果、二十九年の六月に、施設委員会としては、この岸根の土地というものを選ぶということを正式に決定したわけでございます。翌々月の八月にその通りに合同委員会がきめ、それからなお、引き続き政府としましては、閣議の決定を経て本ぎまりに出したわけでございます。一方横浜市としては、そのような事情でありますので、岸根の土地に関して、要望しておられる五十数名の方の立ちのき問題ということに努力をしておりました。横浜市としては、おそらく自分の所有地であり、五十数名のうちの約半数ぐらいかと存じますが、賃貸契約があるが、その他の半数にはそういうことはない、比較的容易に立ちのきということができるであろうという見通しを立てられて、耕作者とその話しを続けて努力をされて来たわけでございますが、予想に反して、なかなかその問題が円満に解決ができない、このような事態がだんだんと高じて来まして、結局二十九年の末ころになりますと、どうもむずかしくなった、こういう事情でございます。政府の方といたしましては、今申し上げました経緯で決定をいたしまして、これを遂行しないというと、すでに計画した市内の施設、建物等の立ちのきもできない、どうしても既定通りにやりたい、しかも米軍には撤退計画を促進の何を出しておりますので、早くいたしたいということで三十年の初めになりまして、やむを得ずそれでは土地収用法に基く収用をいたそうという方針が立って、これが二月にはすでに総理大臣の収用認定も下りました。かような状況でありましたので、当時調達庁といたしましては四月の末ころになれば、そのような途で解決がつくだろう、従いまして建設省へは五月から着工できるでしょう、この旨を建設省に申し上げたわけであります。
  142. 岩間正男

    ○岩間正男君 そうしますと、これは事実に反しておったわけですね、五月から着工できるだろうというので、そういう通知をされたのでありますが、実際はこれはできなかった、そうして工事を一時打ち切らなければならなかった、こういう点については、今の建設省さんの方と関連しまして、調達庁の方としてどういうふうにお考えになっておりますか、責任について。こういうことを決定されて建設省に押しつけられた。建設省さんの方ではそれをそのままに信じて、それからいろいろの処置をされたわけで、事実不当行為もこれに伴ってなされたわけです。ところがそれが会計検査院から指摘されなければならない形で、不当なる支出として違法的なものとして指摘されなければならないような形で、実際には実害も与えておるわけです。これについて調達庁の方としてはどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。
  143. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) 後の結果から見ますと、たしかにその見通しが間違っておったということにつきまして、いろいろ論評あるいは批判があるわけでございますが、その見通しにつきまして、御連絡申し上げました当時としましては、真剣に事情を判断し、このような期日予定で進むであろうというめどを立て、またそれを期待しておったわけであります。それが予想に反してしまったということにつきまして、このようなものを建設省に連絡し、建設省に対していろいろの影響を及ぼした意味においては、私どもも責任を感じておる次第であります。
  144. 岩間正男

    ○岩間正男君 まあ事実、認定を誤った予想の下にこういう結果を来たした、この点は認めておられるわけですが、しかし、その原因になったもの、なぜこういうものを誤まらしたか、この点についての、これは認識の度合いはどうでございましょうか、当時地元においてこれに対する農民並びに市民、こういう人たちの相当に広範な反対運動があったということについては、これは調達庁の方は御存じであったか、いかがでございましょうか。
  145. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) もちろん当時岸根の土地問題について反対運動があり、いろいろお話したことを承知しております。ただ、それらに対する見通しの判断といたしましたのは、最初に私がいきさつを申し上げました通り、それが横浜市の所有地であり、横浜市の意向によって、この計画が当初から成り立っている。従いまして、横浜市当局のいろいろなその後の見通しその他に十分の信頼をおいてものを見ておりました。従いまして、たとえ相当の現地の反対があり云々であっても、市全体としては、やはりこの計画を進めるのが、最も横浜市の市内の軍事施設を移すということにおいて適切なものである、そのような判断をいたして参った次第でございます。
  146. 岩間正男

    ○岩間正男君 この反対運動というものについて、あなたはこれは現地に行かれて、あるいはまた陳情を受けて、どういう根拠からこの問題について市民や農民が反対しておると、その反対理由というものを当時おつかみになりましたか。
  147. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) 実は、私当時直接に掌に当っておりませんのと、それから本日は実はそのところまでの記録等を調べて参りませんので、この際十分のお話が、この点についてできないことを御了承願いたいと思います。
  148. 岩間正男

    ○岩間正男君 これはこの前、係の方が見えて、岸根の経過については詳しくお伺いしたいからというので内容をお話ししておいたはずなんです。ですから今の御答弁では非常に不満足なんですが、第一に、この問題について、今のあなたのお話なんですが、横浜市から頼まれてやった、横浜市が最初にこの話を言い出したというふうにお話になっておりますけれども、事実そうでございますか。
  149. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) 私ども記録等を調べ、また、当時の事情を知っている者から話を聞いて、私はそのように承知しております。
  150. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは事実に相違するんじゃないかと、私たちの調査した範囲では思いますがね、大体この岸根の基地設定、これはどういうような……米軍の一つ方式によって行われたものですか、これは。大体横浜の市内に米軍のいろんな施設がたくさんあったわけでしょう。それをとにかく情勢の変化によりまして、岸根の方にまとめる、つまり都市の中心部から都市の周辺の方に、これを移動させる。こういうのが米軍の基本的な今日の方針だ、その方針に基いてこれが行われたということを聞いておるのでありますけれども、この点はいかがでございますか。
  151. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) その通りでございまして、平和条約の発効、それに伴う今の軍施設の問題につきまして、当時日米双方において、東京、横浜等大都市の中心部にある施設は、できる限り郊外へ移転しよう、こういう方針を双方確認いたしまして、それに基くものでございます。
  152. 岩間正男

    ○岩間正男君 そうすると、この問題の発端は、そういうような米軍の一つの方針の変更から起った問題でしょう。そうしてそれに応じて横浜市がそういうような希望を出したということになるのであって、何か横浜市が自発的にこのような問題を、自分から進んで出されたというようなあなたの御答弁は、事実に反すると思うが、いかがでしよう。
  153. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) 私が、横浜が進んでということに対して、若干説明が足りなかったかと存じますが、この方針は何も米軍だけの方針変更ということで、そうなったのではございません。当時、平和条約の発効と同時に、日本政府としても大都市目抜きの所に多数の米軍施設がある、こういうような状況が続くということはおもしろくない、こういう日本政府側の方針、これを向うと打ち合せの上、向うにも確認させました。これが中心部から郊外へ移転させるという方針でございまして、従いまして、横浜のこの問題を具体的に取り上げるときには、もちろん当時の担当の役所では、横浜に対してはどうしよう、どこに移転させたらよろしいか、こういう問題で横浜市に相談をかけたことはもちろんでございます。それにつきまして、今の岸根というものが候補地に上った。それに対して横浜市も、なるほどあそこならばよかろう、こういう賛意があったということは、私ども記録、あるいはその他当時の関係者から十分に確かめております。
  154. 岩間正男

    ○岩間正男君 その点はそういうふうにこれはなるんだろうと思いますが、先ほどのお話だと、横浜がいかにも進んでそういうことを申し出た。従ってそういう意向に沿うようになるんだから、これは大丈夫だ、こういう見通しをつけたということを、非常に簡単に言い切っておられますけれども、そこに非常にいろいろ関係があったことは明らかだと思います。  それでお聞きしたいのですが、土地の面積、それから宿舎その他の建物を建てられますが、この坪数ですね、それからこことに大体どれくらいの人員を収容する予定であったか、その大体の構想をお聞きしたい。
  155. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) そこに収容する予定のものは、将校約四十名、兵員が千七百名、こういう規模のものの施設を岸根に建てる、それに相応する横浜市内のものを返還させる、かようなものでございます。
  156. 岩間正男

    ○岩間正男君 その土地の面積と建坪ですね、それはどうなりましょう。
  157. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) 土地は大体私四万坪くらいと了解しておりますが、実は正確な土地面積、あるいは建物の建坪等の資料をただいま手元に持って参りませんでしたので、御要望がありますれば、後ほど御報告申し上げます。
  158. 岩間正男

    ○岩間正男君 それはまああとで伺うことにして、出していただきたいと思いますが……。そうすると、ここにこの宿舎ができますと、米軍の市内における軍隊が移動するわけですね、そのためにこれが作られたものですから……。そうするとその予定されておった米軍の宿舎というのは、どういう建物なんですか。
  159. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) 恐縮でございますが、そのものの明細な名称、その他の表も持って参りませんので、後刻御報告いたします。
  160. 岩間正男

    ○岩間正男君 これはちょっと困りますね、これでは……。この点は非常にやはり重要な問題ですから、どなたか係の方ついて来られないんですか。この点の資料がなければ、この点くらいは、やはり明らかにしてもらわないとまずいと思うんですが。
  161. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) さっそく手配いたします。私は一人で参ったものですから。
  162. 岩間正男

    ○岩間正男君 困ったものですね、今間に合いませんか、すぐ何か電話で……。といいますのは、この委員会は二十九年度を急いでやっているわけでしょう。従って予定は大体きょうしかないというようなことで進められていると思うんですから、従ってこの次にまた延ばして、また延ばしてというようなことでは、非常に私たち審議に協力できないのだ。だから大体話しておいたはずですがな……。それではその点さっそくあとで伺うことにしましてですね、それで地元民の反対の理由ですね。こういうものは少くともこの問題を決定するには、これは重要な一つの課題になったと思うのです。つまり、世論尊重の政治だということをうたっているのですからね。従ってこれは退けばいいのだろうというので、これは強引に収用委員会が、日米合同委員会の決定によって押しつけるというわけにはいかない問題と私は思うのです。従って、市民はどういう点でどのように反対しておったかということは、一応おつかみになっておられたと思うのですけれどもいかがでしょうか。
  163. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) これは耕作をしておる方々の補償の問題について、いろいろ横浜市当局並びに調達庁、この当事者との間に、非常な話の食い違い等がありました。それがまあ第一点でございます。これに関しましては、従いまして収用委員会に諮りまして、その決定がありましても、直ちにその補償金が受け取っていただけない。これを従って、法に従って供託するというような状況になりました。しかし、その供託後は、逐次また御了承を得まして、その後全部受け取っていただく、これがまあ一つの方法と心得ております。
  164. 岩間正男

    ○岩間正男君 とにかく、私はこれはまあ当時関係されておられないと、こうおっしゃれば、それまでの問題でありますけれども、少くとも調達庁が私は全貌を、そういう岸根の問題は、ずいぶん騒がれた問題ですから、少くともあなたはおつかみになって、責任者として考えておられる問題だと思うのです。ところが、今補償の問題だというふうなことで、この問題をそれくらいしかおつかみになっていられない。そこにこそ、この問題がこういうふうに先に行って、差しつかえを起す根本的な原因があるのじゃないか。われわれの承知しておるところをまずあげてみますと、第一に、横浜の市民は非常に米軍に対して、やはり飽き飽きしているのです。たとえばあの終戦後、米軍が横浜に参りましてそれから二ヵ月、この二ヵ月間に、米軍の暴行事件だけでもこれは大へんなものです。約九百五十七件というような形になっております。もうその後、暴行、婦女子に対する問題などというものは、目にあまるものがあるものですから、それでこういうような基地を、もう設けさしたくない。岸根だろうが、どこだろうが、設けさしたくないという嫌悪の情というものが非常に強かったということが一つ。その次は、岸根の周辺二千米の所をずっと見ますというと、その周辺には神奈川大学を初め、大学、高等学校、中学校、小学校が十八校あるわけです。こういう形になりますというと、教育環境というものは、完全にじゅうりんされ、従って、ここの関係者の人たちは、先生を初め生徒も、もう大きくこれに対して反対してきたわけなんです。こういうことはあなたの方はおつかみになっておられましたか、どうでしょうか。
  165. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) 米軍が駐留いたすために、その関係でいろいろな事故を起す。あるいはお話しのような暴行事件その他もある。このようなことは、私どもは重々承知しております。また、その基地があるために、その付近の、周辺の風紀問題その他いろいろあって、周囲が迷惑するという状況も、これは横浜に限らず、全国的各地区の問題としまして、重々承知をいたしております。これらに関しましては、絶えず軍側に注意を促し、厳重に部下統制をするという処置を要求するとともに、具体的に事件があれば、それに対処するということを努めておる次第でございます。また、従ってその新たに施設ができる、これがなるべく周辺に影響の少いところを選ぶ、こういうことにわれわれ十分注意して参っておるわけでございます。しかし、そこらの全体をまあ総合いたしまして、岸根の問題といたしましては、横浜市の処置として、あすこということに、当時十分検討の上、きめたものと私は承知しております。
  166. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは日米合同委員会が、一ぺんもう決定したら、撤回できないのですか。それからこういうような日本国民のいろいろの要望というものを、十分に織り込んで合議の上で、この問題は決定しているのですか、これほどうなんですか。
  167. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) 合同委員会が一たん決定したことが、変更できないのですかというお尋ねでございますが、これは理論的に申し上げますならば、絶対にそういうものとは言い切れないものであると思います。しかしながら、実際といたしましては、合同委員会へかける前に、政府の関係各省、地元、その他十分にその意見の調整をし、その上で、合同委員会において、日本側が意思表示をする問題でございますから、理論的には別としまして、実際的には、これの変更ということは困難だと私は思います。
  168. 岩間正男

    ○岩間正男君 困難だというような考えで進められてきたのが、基地接収の今までのあらゆる場合における調達庁の態度じゃなかったかと思います。こういう中にも、はっきり出ている。実際まあ、いろいろ砂川の問題なんか起っているわけでありますけれども、こういう中で、いつでも調達庁の問題が出てくるわけですが、一体このような国民の世論をどういうふうにつかみ、さらにこの意見というものを、世論というものをどういうふうに尊重し、それをこれは米軍の方針とここのところを話し合って、あるいはこれを撤回させる、やめさせる、そういうような方向に、一体今まで努力されたという例を私は聞いていないわけであります。ですから失礼な言い分かもしれませんが、一体調達庁というのは、これは日本の役所かどうかこういう言葉がいわれております。絶えず米軍の決定した問題については、ほとんどそれをうのみにして、それに協力する、日本の国民が反対しようが、まことにもう正当な理由をあげて、生活権を守らなければならないという問題、先祖伝来の土地を、もうどうしても守り抜かなければならないという問題あるいは教育環境を守り抜かなければならないという問題、そうしてそのことは、日本のさらにまあ国民の平和を念願する気持と連なっているわけです。砂川の例なんか見ますと、これを原爆の基地にしたくないのだ、そういうような平和に対する非常にこれは高い念願が、これに込められている。そういうような問題について、私たちは今までこの国民の意向というものを、やはり米軍との折衝におきまして、施設特別委員会なり何なりへ、十分にお伝えになったことがございましょうか。この岸根の問題ではどうでございましたか。
  169. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) お話ではございますが、調達庁として、また政府としまして、米軍が決定したから、何でもかんでもその通りにこちらも従うのだというようなことは、事実に反すると思います。今まで合同委員会で決定し、それに基き、また閣議決定をとった事案、一方軍側の要求、これは当時合同委員会が発足する平和条約発効当時の状況、当時はこの施設に関する事項も、外務省の所管でありましたが、数百件に上る要求等であったと思います。しかしながら、それに関して、こちら側がなるほど、これは必要最小限度の欠くべからざるものである、こう認めて合同委員会も決定し、また、それに基いて具体的措置に入ったのは、その何分の一かでございます。決して軍側の決定したものは、そのまま日本側ものんで実行するというようなものではございません。特に調達庁としては、決して軍側のサービス機関ではございませんで、日本政府のその窓口に当る機関でございます。閣議決定に至りますまでにも、それぞれ事案によりまして、十分関係各省の意見を徴した上においてものをきめる、こういうことにいたしておるわけであります。
  170. 岩間正男

    ○岩間正男君 そういう考えをお持ちの調達庁さんが、やっぱりこの岸根の問題については、あるいはまた、砂川の問題でも、そうでありますが、非常に国民を納得させていないのじゃないかと思う。ですから、岸根のこれは反対運動は、これは横浜の市民の多くの人が参加しております。それからまた、労働組合なんというのは、もうほとんどあそこの地評の人たちが、全面的にこの問題を取り上げて、文化人もそうです、学生もそうです。そういうような形でこれは世論の面から見ますと、非常に大きな、しかもこれは長期間にわたって、いろいろな点からこれは反対を続けてきたと思うのです。これに対して調達庁のとられた態度は、いろいろな点でこれは遺憾な点が多かったと思うのです。もう基地の農民たちが反対するのにかまわないで、今度はボーリングを始めるとか、さらにその次の段階になるというと、強制収用を始めてくる、それからあらゆるこれはいつでも基地問題についてとられるようなやり方で強引にこれはやってきた、こういう形をとられたと思うのですが、今のお話と、それから実際岸根や砂川でとられた態度について、国民は決して今のような御説明を納得していないと思うのですが、これはどうでしょうか。岸根について一体十分に、このような問題を検討されましたのでしょうか。
  171. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) 岸根の問題につきましても、なるほどお話しの通り先生御自身が特に御存じでございますから、私、直接に衝に当らない者がかれこれ申しましても、御納得はいかぬかと存じますが、とにかくいろいろ労働組合等の反対のあることは、私も承知してはおります。しかしながら、先ほども御説明申し上げた通り、全部直ちに平和条約発効と同時に米軍施設、あるいは米軍そのものを撤去、撤退ということは、実際問題としてできない。これは御承知の条約発効後のまた新たなる条約、あるいは行政協定というまあ政府の何によりまして当時の実情として、まずやり得ることは、都市内の中心から目立たない郊外に移そうという方針が立てられた実情でございます。それにおいて、あの土地が地元市当局といたしましても、また政府の関係機関の検討においても、これ以外に適当なところはないと、かようなことで決定になったものだと思います。もちろん、その直接の耕作者の方、あるいはその他それに関連して反対の方面に、十分にその当時説明をいたし、釈明し、御納得を得るというところの努力については、あるいは私どもとしては、相当努力いたしたつもりでございますが、それではまだ足りないという御非難ならば、これはやむを得ないことであります。私どもの方としても、今後はなお一そう十分に説明し、納得いただいて、円満裏に話を進めるように、今後も努力いたすつもりでございます。
  172. 岩間正男

    ○岩間正男君 どうも次長さんのお話を聞いておりますと、当時自分関係しなかったからして、少し傍観的な態度のように聞えるのですが、しかし、少くともこれは調達庁長官を補佐する最高の位置にあなたおられて……。この問題をもう少し自分のものとして答弁していただきたいと思いますね。その点何だか、自分関係しなくて……、それでこれはいつから、失礼ですけれども今の次長におなりになったのですか。
  173. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) 次長になったのは、三十一年の十二月の末だと思います。
  174. 岩間正男

    ○岩間正男君 その前は、そうすると調達庁でございますか。
  175. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) 調達庁にはおりました。
  176. 岩間正男

    ○岩間正男君 次長になられるようなおえらい方なんだから、その当時も、やはりこれに参画されたのじゃないかと思いますけれども、どうも少し何か傍観的なように考えられるのですが、しかし、きょうここに御出席願っているのは、決してそういうような立場じゃないと思うのですがね。この点は一つ、あなたが全責任を持って、そうしてこの問題について調達庁全体を代表して御答弁なさるという態度で、お話しいただきたいと思います。これは委員長、確認しておいていただきます。そうじゃないと、これは話が個人的な問題じゃないのだから。  そこでお伺いしたいのですが、施設特別委員会というのがありまして、そうしてこれらの分科会には建設部会というのが、これはできているわけです、これは御存じですね。これには建設省の課長さんも参加しておられるわけですけれども、これも御存じですか。この前の委員会におきますと、このような施設、営繕に関する問題、建築に関する問題につきましては、ほとんどこの分科会が開かれない、施設特別委員会で決定されたことも、建設省にこれが天下り的に持ってこられて、そうしてその事務だけはこれは執行する、それから支出負担行為は大蔵省の方から建設省の方に移管されてそうしてこれを執行する。しかも、この問題がずっと突き詰まって参りまして、当決算委員会において会計検査院指摘を受けて、そうして建設省が矢面に立っているわけだ。何も建設省を擁護するわけじゃないが、この決定というのは、建設行政から考えましても、当然日本の住宅問題とか、いろいろな問題とにらみ合せて、この米軍の宿舎の問題というものは決定されるのでなければ、非常に私は不十分ないろいろな片ちんばな点が起ってくるだろう。こういう点について、これはどういうふうに今まで処理されたのか、あるいはなぜ建設部会というのは、一回も開かれなかったのか。この間の事情について、合同委員会の運営に関連しまして、ぜひお聞きしたいと思うのです。
  177. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) 軍側に使わせる施設、あるいは区域というものの検討を加えるために、施設特別委員会というものが設けられておる。この施設特別委員会というものは、行政協定二十六条に基く日米合同委員会の下部機構で、そういうものをそこでまず検討してあげて来い、まあこういうものでございます。この施設特別委員会の構成は、日本側では調達庁のほか外務省、大蔵省、それから農林省、水産庁、運輸省この代表の方々が委員会のメンバーになっておるわけでございます。アメリカ側は極東軍司令部の者と、あと陸海軍代表の者、かような構成で、なるほどこの施設特別委員会の中には、建設省からは代表委員会が出ておりません。この委員の任命に関する事項は、これは所管といたしましては、外務省でありますけれども、私承知しておるところを申し上げますれば、そのように、どの地区施設というものを米軍に使わせようか。どこをまあ返還させようか。こういうものの決定検討をするところでございますので、調達庁自身は設置法上その実務を行う、こういうことでございますから、これが入る。それから外務、大蔵は、これは外務が一般渉外関係、それから大蔵はまあ全部金にも関係ある、こういう一般的な問題でございます。しかし、大蔵省のうちでも、これは主計局が、今の予算等の面でございますが……一方管財局の代表を加わっておる。これは国有地を所管するところが大蔵省の管財局であります。農林省は農地山林等一切をまあ所管する官庁である。それからまた、海の方面を使用するという関係で農林省のうちで水産庁も加わる。運輸省は港湾の主管官庁である。港湾も使用するという関係がある。まあかようなところで、いずれも調達庁、外務省というものを除きましたあとは、その施設区域というものを主管する官庁の代表者がメンバーになっている。こういうことで構成されていると私は承知しております。従いまして、今度はそのものの、ただいまお話しになりましたような、まあ決定されたものに建物を建てる部分のことになりますと、その設計の問題、あるいは工事の実施の問題というその技術面がございます。その技術面の検討のために、施設委員会では付属機関として特別建設部会とか、あるいは道路の建設問題であれば、道路橋梁部会、まあこういうような部会を設けてテクニカルな面をなお詳細に検討して委員会に報告する。まあこういう仕組みになっておるわけであります。従いまして岸根の関係におきましても、場所の選定、決定等は、これは施設委員会でやりましたが、しかし、それに基いてそこにどういうものをどういう工合に建てるかという、その技術的な面を検討するために建設部会があって、これには建設省の代表者がおられる。その建設部会でも検討される。なお、その建設部会で一回検討されたときに、双方の間で今後は特に部会という会議でなくても、直接に向うの工事に対する責任者と、建設省の責任の者と具体的話し合いをつけよう、こういうことでそこに話ができた、かようなことによってこの工事は進められたものであります。
  178. 岩間正男

    ○岩間正男君 どうも現在の運営の実態についてお話があったのでありまするが、せっかくこれはこういう一つの機構で建設部会というものが設けられていて、しかもこれは全然話し合いは開かれていない、正式には。そうしてしかし、実際上にはいろいろ連絡をして相談をするからいいという格好で運営されているわけですね。こういうところに私は問題があるのではないかと思う。せっかく機構がこうあって、しかも責任の所在というものが明確でない。今度の問題がここまで来ますというと、果してこれは建設省の責任なのか、あるいは調達庁の責任なのか、これは非常に不明瞭であります。現在の決算委員会として、当委員会が扱っている立場では、これは現在は建設省が矢面になっているわけであります。しかし、実際はこれは用地の問題というものが、先ほどから非常にあいまいな、不確かな、不十分な、しかも、国民の意思というものを、ほんとうに尊重するというような立場で決定されていない。そうしてしかも、これが大きな見積りの誤まりをやっている。見通しを間違ったそのために、やはり半ヵ年にわたる工事打ち切りが行われた。そうして国費のやはりむだづかいということが、ここに起ったわけです。こういう問題に対する責任体制というものが、明確になっていない限りは、私はこれはやはり重大問額だと思うのです。こういう問題が発生した、どうも合同委員会で決定されたのだから仕方がない。これはどうもアメリカさんの参加している、アメリカさんの息のかかっている会合だ、機関だ、従って、ここにあまり当りさわりをやっちゃ、どうもあとのたたりがこわいかもしれない、まあそっとしておいた方がいい。そうして実際はその正面に当るこの建設省が、ここだけ責任を追及される。これじゃ、私は抜本的な問題の解決にはならんと思うのです。今言われましたような運営で実にあいまいな、けじめのつかないところの責任体制が、不明確な格好でもって、日米合同委員会というものが運営されているということが明らかだと思うのです。私はそこからこの問題のそもそもの原因が発生していると思うのです。こういう点について、これは調達庁の責任者としまして、これははっきりこの点お認めにならなくちゃならない立場だと思うのですが、さらに今度の岸根のこの問題について、やはり調達庁の立場として、責任をお持ちになる覚悟があるかどうか、この点を承わりたい。
  179. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) 私は合同委員会並びに施設委員会の運営等が、不明確とは考えません。先ほども申しました通り、設置法上、軍に施設区域を提供し、あるいは返還させるこの仕事は、調達庁の仕事と明確にきまっております。ただ、その土地、あるいは建物、あるいは水面海域等いろいろ関係している、それを主管するところの各省がある。その人々を代表に入れた日本政府の側の委員の構成、こういうものによって、現実にある施設、あるいはある土地を軍側に使わせる、あるいはこれを返させる、このことの討議に参加させる、こういう委員会を作り、これでもってアメリカ側の相対応するものと検討を加える。その結果を最高の合同委員会本会議、合同委員会の本会議で決定する、こういうことになっておりますので、その点において何ら不明確と考えておりません。ただ、建設省がこの問題で非常に責任をどういう工合にとられるかと、現在の問題に関しましては、合同委員会による決定、施設の、つまり岸根というものの選定等に関しましては、建設省は何か責任がないと申しますか、とにかく参加いたしておりません。これは委員にもなっておりませんし、その土地が選定されたものについて、あとそこへいかなるものを建てるかという設計施工という面については、これは土地がきまったそのあとの処置として建設部会に参画し、軍側のそれと検討を加える。だから設計なり、施工の面なりの実施面については、もちろん建設省は責任があるわけでございます。  岸根を選んだのはどうか云々ということについては、建設省は、私は何も責任はないと考えております。
  180. 岩間正男

    ○岩間正男君 そうしますと、これは建設省の責任問題について、ここで指摘されているのは、建設省の責任として会計検査院指摘しているわけです。これに対して建設省側の答弁によりますというと、この工事の着手の時期が春からできると、こういう認定のもとでやったことははなはだわれわれが不十分で間違いであったというようなことを言っておるわけです。これは当らないわけですね。責任の所在は建設省にない、工事は建設部で、用地の問題を解決するということは、これは施設合同委員会でやるなら調達庁が全責任を負うべき問題であり、さらにもっと突き詰めれば、日米合同委員会が責任を持つべきものだ。言いかえますと、ここに指摘された問題の一番中心的な責任の所在というものは、これは日米合同委員会並びにこれを実際に運用する面の調達庁にある、こういうことでいいのですか、そういうことでしょうな。
  181. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) 岸根を選び、現実にそういう土地の使用の権利を得るということに関しましては、まさに責任官庁としては調達庁だと考えます、主管官庁でございます。ただ調達庁といたしましては、その土地取得の時期等につきましては、当初にもるる説明を申し上げましたような事情で、この時期くらいまでにはできるだろうという見通しを立てたと、それが結果的には、先生も御承知のいろいろ現地の反対、その他の事情があり、結局その権利を取得して建設省に行動を起していただくというその時期について、私どもの見通しを申し上げたのが誤まっておったと、これに対する見通しについては、私どももその誤まった見通しを建設省にお伝えした、これは私どもが責任をとらなければならない問題だと考えます。ただ、しかし、私どもといたしましても、先ほど申しました通り、かくかくのような次第でここに至ったのであるからこうなるであろうということは、当時真剣に、まじめに考えてその見通しを立て、そしてその実現を期待しておったのが事実でございますので、その点は御了承を願いたいと思います。
  182. 岩間正男

    ○岩間正男君 ずいぶん建設省も迷惑をしたということですね。責任の主体は調達庁にあるので、決定は向うでして、そして実際手足でやるのは、建設省ということになって、その結果、支出負担行為まで押しつけられて、その結果、会計検査院指摘されて、ここに二日もつるし上げられて、つるし上げたつもりではありませんが、そういうような結果に落されて大へん迷惑をしておるのですが、こういう点で調達庁関係というのは、これには、内容にないのですか。これはちょっと会計検査院の方に一お伺いいたしますが、ちょっとお門違いじゃなかったのですか。調達庁の責任を追究すべきではなかったですか、どうでしょう。末梢になって、そうして本筋をつかれていないように思うのです。
  183. 石渡達夫

    説明員石渡達夫君) これは予算科目が安全保障費になって、おりまして、安全保障費の中で、大蔵省から建設省に予算を移しかえた部分に関する予算執行について検査院が行っておりますので、そういう形式によって建設省の予算執行の問題だと、そういう形式の区分によって建設省の部門にあげてあるのでございます。
  184. 岩間正男

    ○岩間正男君 まあ形式的にはそういうことになりましょう。また、会計検査院検査の立場も一応形式の面からなされておると思うのですが、しかし、問題の本体は今までに明らかにされ、次長さんからはっきり言明されましたように、これはもう調達庁側にあるというのがこの問題の本質だと思うのです。もし建設省が相当な責任を分担するというものであったら、私はやはりこの日米合同委員会の中にもっと発言権を確立すべき問題だ。これはこの前も大臣に質問いたしたのでありますけれども、建設行政の全般的な総合的な立場から米軍の宿舎の問題というものもこれは考えなければ、非常に住宅が全国で何百万戸と足らない、そうして年々その対策に追われているというような一つ事態を見ましても、これは非常に片ちんばなことが起るのであります。たとえば、あそこの代々木のあたりを見ますと、全くあの辺で部屋も探すことができないであぶれている。そこに一戸何億もするような膨大な、学校が二つも入るようなあの棟が二十もずらっと並んでいる、朝夕あそこを通る電車から人は見ている。こういうような形で運営されるところの今の行政の正体というものはこれは、納得できない。従って、建設省が国民の利益を守り、調達庁も国民の利益を、国民の代表として国民の側に立つのだということをおっしゃったのですが、そういうような立場からしましたら当然建設省のそういう意見、さらに国民の意見というものを反映して運営するという方向にこれは行われなければ、非常に私は不当な事態が起ると思う。ところが、現状は今の説明のように、全然これはほとんど相談ができない。建設部会というような何か枝葉の部会があるのだけれども、これは一回も開かれていない。そうして必要があればお前に相談するのだというような格好で相談して、その結果については全部押しつけられて、そうしてそのしりぬぐいは今度建設省という格好できている。ここに日米合同委員会というものが、実は国民の前には全身を現わさないで、ほとんど全身を雲の中に隠しておいて、そうして日本の行政庁をいろいろな点で総合して使って、そうしてこれをうまい工合に背後からあやつっている正体があるのじゃないか。こういう一端がはしなくもこの問題の中に暴露されているのじゃないかと思うのですが、こういう点でこれは調達庁さんどうです。私は非常にこういうやり方では、日本の国の独立ということが非常に言われて、そうして独立したということが言われている、しかし、独立の実態というものはかくのごときものだ、いまだにこの正体が雲の中に隠れて、雲の上のことになっているわけなんです。こういう運営の仕方、そこから今度の問題が発生したというように考えるのです。こういう問題について、調達庁の次長さん一体どうお考えになりますか。
  185. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) 施設の使用あるいは返還に関して、建設省を全然抜きにしているような運営の仕方がそもそもまずいのであるというお尋ねが第一のようでした。その点は先ほども申しましたように、施設委員会の委員といたしましては、土地、建物それぞれの主管省が代表を出すのが適当であろうということでなっているわけでございます。しかし、なおそれ以上に必要があるということならば、また、建設省の御意見に基いて政府としてきめる、その主管の業務は外務省でありますから、外務省の方で建設省側から意見があれば十分検討を加えられ、適切な処置をとられることと思います。ただかりに、委員になっておらなくても、調達庁といたしましては、すべてのこの分の施設の要求の可否に関しましては関係あると思われるその省庁にはかならず連絡し、意見を徴して決定をするという処置をとっております。従いまして、新たに建物を建てて云々するという問題についても事実上は建設省に連絡をとっておるわけであります。それからなお実際的にも、この設計施工という問題のために特に建設部会というものを設けて、それには建設省も参画されておる。その建設部会を私どもの記憶では確かに正式といいますか、部会も開かれて、そのときに今後の具体的な設計あるいは施工等の打ち合せほ、特に部会というものを開かないでも、実際に担当者同士の方でやる方が実際的であろう、こういう話も出て、それに基いて遂行された、かように考えております。
  186. 岩間正男

    ○岩間正男君 まあ調達庁さんからいうと大へんけっこうに運営されて、各省に連絡して民主的に運営されておるようなお話でありましたが、しかし、建設部会というものがこういう一つの機構の中にありながら、まだ一回も実際開かれていないという事実が何よりも運営の実態を物語っていると私は思います。これは都合のよいときには相談する、しかし都合の悪いときには雲の上にしておいて、責任だけそっちの方に押しつけておく。それからやはり米国との、アメリカとの関係において、必ずしもこれは国民の前に明らかにしなくてもいいのだという考え方があるかないか知りませんが、そういう形でこれは運営されるということ、ここに日米合同委員会のわれわれは実態があると思いますが、これは議論していてもしようがありません。時間が非常になくなりまして皆さんに御迷惑をかけてもまずいですから、先ほどの質問、あれをお伺いしたい。大体どの宿舎ができますと、一体どの軍隊が、米軍が移るようなものであったか、この点をお伺いしたい。
  187. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) 岸根ができましたために移りましたものは、憲兵中隊の兵舎地区、これが約五千六百坪、それからキャンプコー、これが約一万六千三百坪、それからその次がコレヤコート、海上輸送地区というものがございます、これが五千六百坪、それからピンクスクールの兵舎地区七千百坪、合計三万五千坪ほどのものを返還さしたものでございます。そのために移りました兵員数が、返還されましたときにおりました兵員数が将校四十名、兵員二千三百名、こういうことになっております。
  188. 岩間正男

    ○岩間正男君 そうしますと、たとえばキャンプコーとか、コレヤコート、その他ニヵ所、四ヵ所移るということになっていたのですが、現在キャンプコーは横浜におりますか、横浜のキャンプコーの何を使っておりますか。
  189. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) これははなはだ恐縮でございますが、これの現状についてまだ今私承知しておりませんので、後に御報告さしていただきたいと思います。
  190. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは出していただけばわかるのですが、実はいないのです。われわれは調査した。これはすでに金沢区の富岡町第五百八通信修理隊、ここのところに移っております、キャンプコーは。それからコレヤコート、これは根岸競馬場地区にもうちゃんと移動しております。そこにいないのです。何のために岸根を使っているのですか。あなたたちは御存じないでしょうが、われわれしろうとさえ調査済みであります。そうしてそのときに四つのものを移すということで、こういうことで作って住民まで反対して、農民が、市民が血の叫びをあげて、そうして市民が、労働者たちが、学生が、婦人があすこで反対した。そうしてあなたたちは、強引にこれを調達庁のあれにかけて、強制執行までして、そうして最後には無理々々にとって、しかも予算を途中で出すということで圧力を加えて、それでもこの運動というものに実は水をぶっかけるようなやり方で強引に建設した。一体岸根地区というものはどうなっておりますか。言語道断じゃないですか、これはどういうことになっておりますか、ちょっと伺いたい。これを入れるために作ったはずだ。現在ありますよ、ごらんなさい、あすこへ行ってわれわれは調査すればわかる。ここに問題がある。これは次長さん御存じないですか。現在いますよ。こういうものを入れるのだといって、そうしてなるほど周辺に移すのだということでこれは進められた。ところが、こういう部隊は別なところに移動しておる。ところが、岸根地区の基地は一体何に使ったか、この点について御答弁いただきたい。
  191. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) 当初、岸根に建設してこれを移すというものの予定は、先ほど申し上げた四つの兵舎地区を移すということでございます。実は私よく調査して参りませんので、現状においてそうなっておらぬというお話でございますが、これは現状をなお調査して、現在どういうものが入っておるか、このキャンプコー、あるいはコリヤコートというもの以外に、どのような事態になっておるか、これはきわめまして御報告いたしたいと思います。
  192. 岩間正男

    ○岩間正男君 こういう場合の予定変更の場合には、日米合同委員会にはかかりますか。ここで決定して日本政府もはっきり確認しなければこういうことは私は不可能だと思います。どうでございましょうか。
  193. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) 合同委員会で決定いたしました事項は、岸根のこれこれこれだけの面積のところを軍に使用させる、それを同意する、また、そこにどの程度の兵舎を作るかという規模のものはございます。従いまして、その後の軍の事態によりまして、予定しておった、あるいは当初は入ったが、その後変更した、こういう内部の変動がございましても、これは合同委員会におきまして、岸根地区を使わせるということの変更にはならないと思っております。
  194. 岩間正男

    ○岩間正男君 ところが、米軍が勝手に、何ですか、こういう日本政府に命じて合同委員会でここ、ここのものを勝手に疎開するのだ、そうして中心地から周辺に移すのだという名目のもとに、われわれの国民の血税が出されて、そうしてこれは九億なにがしです、全体を含めれば十二億でございましょう。そうしていろいろな問題まで起して、そうして国民の血の出るような反対を押し切って、強引にこういう不当なやり方で作り上げて、しかもそれが使われないで、その当時に移るはずになっておったところの軍隊というものは別な方面に移動した、これは何のことです。一体これは調達庁としても、こういうことは了承できますか。これは重大問題じゃないですか。あなたたちは今言った予定をはっきり示して、米軍を、これを移すのだというので、ずいぶん無理をされたのだ。無理をして、さていよいよこの宿舎ができる。現在、この宿舎は何分通りできておりますか、完成はいつですか、ちょっと伺いたい。
  195. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) ただいまの現状が当初のものと異なっておる、こういうことで、従って向う側が現在において使用してない、あるいは使用見込みがないというような実情でありますならば、当然調達庁といたしましては、それらは不要であるから返還せよと、こういう交渉の事項になりますので、それは実情を調べた上において処置いたしたいと考えております。
  196. 岩間正男

    ○岩間正男君 とんでもない話だと思うのですよ。実際国民がそれで納得すると思いますか。だから私は、調達庁さんというのはどうも日本の機関じゃないと言われても仕方ないのじゃないか、作るときは勝手に強引にやられて、あらゆる無理をして、そうして今日の問題まで発生させて、国民の世論というものは無視して、強引なやり方で作ったものですよ。それが使わなかったと、使わないなら、それなら今度はお返し下さいと、こういうことを言ったとして、それが通りますか。そういう言い方——全くこれは米軍にほんとうに従属した、米軍の意向によっては何でもやって、そうしてつじつまを合せるというようなやり方で、一体国民が納得するとお思いになりますか。全くわれわれもばかにされたようなものだと思うのですよ。一応米軍が入るのだというので無理をして作ったんだと、だからそこの所に入るのだということだったら、これはまだ——むろんわれわれはこんなやり方に反対してきたのでありますが——幾分は筋が通るかもしれないのです。何分の理があるかもしれない。それさえだめだというし、しかも調達庁の次長さんといわれる方が、その当時の移る軍隊がまだそこにいるんだとお考えになっている。ここにも相談することなしに、勝手に米軍は別な所に移ってしまっている。何のためにこんな無理をしている。何のためにこんな乱費をやっている。こういうことが国会で問題になるというと、米軍はあわてて何かここの所に間に合せに入れたりするかもしれません。そうしてこれは米軍の意向で、戦略的にどうしてもこういうことが必要だったなんということを勝手につけるかもしれません。しかし、われわれは断じてそういうことは許すことはできない。国民のこれは非常な血の出るような血税によってまかなわれているということを片時も忘れることができない。こういうようなあらゆる面に、行政面に、混乱を起しておる。こういう形で運用されるものに対してきぜんとした態度をとることができない。その兵舎があいて、使いものの必要のないものは返還を求めると、それであなたたちは口をぬぐっておられる。それで済むというふうにお考えですか。とんでもないことだと思う。それだからこそ、最初にこれについて十分な真剣なやはり態度で私は米軍に臨まなければならない問題だと思う。少くとも合同委員会の、あるいはまた、そういうような施設の任に当る人たちというのは徹底的にこの問題を明確にして、そうして国民の血税はびた一文も使わせない。行政協定や安保条約によってやむを得ず血の出るような税金が使われているのです。こういうことは今日われわれはむろん不当だと言っている、もうやめようじゃないか、改廃しようじゃないか、これが今国民の大きな願いであり、もうこの問題については赤も白もない。国民の民族的な世論にさえなっている。こういうさなかにおいてこういうばかげたことが行われて、一体国民感情が黙っているとお思いになりますか。これはやっぱり私は次長さんでは物足りないですな。やはり少くともこれは総理大臣か何か出て、この問題を明らかにしてもらわなければ、とても政治責任は明らかにならない。次長さんを、今仕方ないからあんたが風先に当っておりますが、悪しからず思っていただきたい。しかし、これは次長さんも考えていただきたい。ことにあなたは昨年赴任されたそうですから……。次長さん個人に当っているわけじゃありません。しかし、少くともきょうここに来ている限りは、調達庁をしょってきているから、これは覚悟して来ていると思う。この問題はもう少し明らかにする大きな問題を含んでいると委員長、私は考えるんです。こういう形で国費が乱費されてはたまらぬと思うのです。この問題は、もう建設省さんと会計検査院の意見の食い違い、不当だと、こう考えられた、この食い違いの問題も技術的には重要でありますが、もっともっと何倍かの大きな重要性を持っておる、まあ政治的な問題だと私は考えるのですよ。こういう点で委員長に特にお願いします。こういう形で不当にやられておることに対して、もう少しやはり実態をもっと明らかにして、そうして安全保障費並びに施設提供費ですね、こういうものの使い方というものは、もうこれだけじゃないと思うのです。ここ一見ちょっと氷山の一角で顔を出しておるけれども、大なり小なり似たような問題があるだろう、決してこれは私の単なるみだらな推察じゃないと考えておる。従ってこの問題で、当委員会にこの前もお願いをしたのでありますが、継続的に御努力願いたい、このことを私は委員長並びに同僚の議員の皆さんにお願いしまして、私の質問は一応終ります。
  197. 高田なほ子

    高田なほ子君 今の岩間さんの御発言にちょっと関連して、事務的なことですが、聞いておきたいのですが、合同委員会の要求懸案事項の中に、日本側の返還要求ということで、岡山県日本原演習場初め二十九件載っているようですが、今の岸根地区の新設したものについての返還要求というものは、この二十九件の中に含まれている懸案事項になっておりますか、いかがですか。
  198. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) 岸根地区の返還要求というものはまだ出してないと思っております。
  199. 高田なほ子

    高田なほ子君 もう一つだけ確かめておきたいと思います。この問題の発端は、一九五三年の九月二十二日に、日米合同委員会に岸根地区提供、日本側が提案したように私の調査ではなっておりますが、日本側の提案する前に、各省の意見を全部まとめられて、それでよしというところで提案をされたということになっているわけですか、これは事務的なことですが。
  200. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) その通りでございます。
  201. 高田なほ子

    高田なほ子君 私はこれ以上具体的な質問はいたしませんが、岩間さんの質問を承わって非常に問題が重要だというふうに考えております。従いまして、本問題の基本的な解決ということは、当決算委員会としても十分にこれは考慮しなければならない、こういうわけで、この問題の取扱いについて、たくさんの問題が含まれているようですが、再度理事会において検討されて、具体的な方針を出していただくことを私は強く委員長にもお願いしておきたいと思います。(「賛成」と呼ぶ者あり)
  202. 三浦義男

    委員長三浦義男君)これは理事会でも懇談の事項が皆さんともありますから、そのときにお話をいたしましょう。
  203. 久保等

    ○久保等君 ですから、総括質問をやる機会があると思うのですから、その機会に、本日御存じないということですからお尋ねしても今の段階では始まらないと思いますが、特に大臣の御出席をその機会に願って、先ほど来不明確な点、この点は明確にしていただく必要があると思います。さらにその後の取り運び方については、これは理事会の方へおまかせを願って、また、理事会で一つ検討することにして、まあ私も若干御質問申し上げたいのですが、きょうは一つ時間もありませんからこのくらいで打ち切るようにしてもらいたいと思います。
  204. 三浦義男

    委員長三浦義男君) ほかに御質疑はございませんか。  〔「あります、保留」「ありますけれ   ども進行だ」と呼ぶ者あり〕
  205. 三浦義男

    委員長三浦義男君) ではきょうの質疑はこれで打ち切ります。  では建設省の部、検査報告批難事項第二千八十四号から第二千二百九号までの件は一応終了したものといたして御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  206. 三浦義男

    委員長三浦義男君) 御異議ないと認めまして、さよう決定いたします。  以上で、本日の審議を終了いたしまして、明日は、池袋の民衆駅の視察をいたしますので、午前十時に正面玄関横に集合していただきたいと思います。ぜひ御参加下さるようお願いいたします。  次回の委員会は三月四日、月曜日午後一時から、輸銀、開銀を除く政府関係機関の決算と、日銀経理状況に関する件を審議いたします。  これをもって委員会を散会いたします。    午後六時十分散会