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1957-09-10 第26回国会 参議院 決算委員会 閉会後第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年九月十日(火曜日)    午前十時四十九分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     三浦 義男君    理事            大谷 贇雄君            中野 文門君            久保  等君            鈴木  一君    委員            江藤  智君            後藤 義隆君            永野  護君            平島 敏夫君            堀本 宜実君            松岡 平市君            相澤 重明君            大倉 精一君            島   清君            高田なほ子君            矢嶋 三義君            岸  良一君            杉山 昌作君            大竹平八郎君            岩間 正男君   国務大臣    厚 生 大 臣 堀木 鎌三君   事務局側    常任委員会専門    員       池田 修蔵君   説明員    厚生大臣官房会    計課長     山本 正淑君    厚生省公衆衛生   局環境衛生部長  尾村 偉久君    厚生省医務局次    長       堀岡 吉次君    厚生省社会局保    護課長     尾崎 重毅君    会計検査院事務    総局第三局長  石渡 達夫君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○派遣委員報告昭和三十年度一般会計歳入歳出決算  (内閣提出) ○昭和三十年度特別会計歳入歳出決算  (内閣提出) ○昭和三十年度国税収納金整理資金受  払計算書内閣提出) ○昭和三十年度政府関係機関決算書  (内閣提出)   —————————————
  2. 三浦義男

    委員長三浦義男君) ただいまから第二十六回国会閉会中第九回決算委員会を開会いたします。  昭和三十年度一般会計歳入歳出決算  昭和三十年度特別会計歳入歳出決算  昭和三十年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和三十年度政府関係機関決算書並びに国家財政経理及び国有財産の管理に関する調査  を議題といたします。  先般、本委員会から派遣せられました北海道班委員派遣報告を聴取いたします。
  3. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 委員派遣北海道班口頭報告を申し上げます。  本委員派遣は、昭和三十二年七月一日から同月九日まで、北海道方面に派遣せられまして、後藤委員奥委員と私の三名が参加いたしました。  この派遣調査におきましては、ただいま審議中の三十年度決算審査に資するため、主として北海道開発に関する事項と三十年度決算検査報告掲記事項について調査をいたして参りました。  検査報告に掲げられました事項は多種多様でありましたが、そのうち現地調査しましたのは、開拓地工事の問題、冷害融資利子補給の問題、農業共済保険の問題及び日本国有鉄道工事局の問題でございました。北海道総合開発の問題につきましても、これらの現場調査と関連して、おおむねこれらの面から調査した次第であります。これらの調査の詳細につきましては、別途委員長のお手元に提出いたしました文書報告書をもって御了承をお願いいたすこととしまして、ごく簡単に調査に当っての所見を二、三申し述べて口頭報告にかえたいと存じます。  第一に、北海道開拓一般の問題であります。私たちの参りましたところでは、上川支庁管内の美栄の開拓は相当の成績が上っているようでしたが、狩勝峠付近開拓地ではみじめな生活の様子でしたし、道もなく、飲料水の近くにないところや、医療施設の行き届かないところがまだたくさん残っており、開拓保健婦さんも全道で九十八人しかおらないありさまであったり、北海道開拓地は、戦後の緊急開拓場当り的惰性で広げられてきた結果、国や道のいろいろな手当も薄く、かつ細くなっているのではないかと思われました。根釧原野に外資を導入してやっておりますパイロット・ファームは、農業経営の面でも、生活施設の方でも、計画的、合理的にやっているとのことでありましたが、北海道開拓というものも、戦後の緊急な事情とは違って参りましたし、道内農家の二、三男対策の一助とする考え方もあり、新しい段階に応じまして、その行き方も重点的に計画的に、かつ合理的に進めるように再検討されて、国や道の金がより十分成果を上げるようにいたさなくてはならないと感じた次第であります。  第二に、北海道庁が代行した代行工事についての検査院指摘件数は二十四件で、二十九年度の二件に比べ著しい増加を見たのでありますが、その結果、北海道開発局道庁におきましては、この関係不当事項防止対策として、双方とも関係職員の増員を行い、検収旅費などの増額をいたしております。これは一面けっこうなことでもありますが、他面、行政事務の煩雑さを増すことでもありますので、北海道における代行工事はやめて、全部直轄とするか、あるいは道庁に重点を置いて開発局のあり方を再検討するか、いずれにしましても、不当事項を防止できて、しかも能率的なやり方を検討する必要があると思われたのであります。  第三に、北海道地域的特殊性ということについてであります。道内各地で、石炭手当に対して課税するのはいけないという意見を耳にいたしたのでありますが、これは地域的特殊性に基く必要経費として、非課税とするのが理屈に合っていると思いました。また、あるところでは、農業共済保険事項等指摘を受けて、その是正措置を講じます場合に、各組合側などで他府県標準措置には服したがらないような面があったのでありますが、これは地域的特殊性によって異なった取扱いを認めらるべき事項ではないのであります。道内一般に、北海道を外地と称する観念がありますが、このような観念行政に持ち込まるべきではないと同時に、地域的特殊性は十分生かされた措置が必要であると思った次第であります。  第四に、冒頭に申し上げましたように、指摘事項現場調査分については、別途提出しました文書報告の第二章以下に報告しておりますので、各事項についてはここでは報告を省略いたしますが、委員会の御参考までに、農林省所管災害融資利子補給の問題中、指摘番号第千六百四十三号、河東郡音更町中土幌農業協同組合分是正措置の件について報告いたします。これは二十八、九両年度冷害において三千五百万余円を融資されたものに対し、国は百五十八万余円を利子補給したのでありますが、本組合融資の目的からはずれて、融資額のうち、一千万余円を農家をして定期貯金させ、一千三百万余円を旧債回収に充てていたとの指摘のものでありますが、その事後の是正措置は、政府説明書によれば、定期貯金させた分に対する利子補給金は返還させ、旧債回収分は、今回に限りこれを認め、自後の利子補給を停止することとなっていたのであります。ところが、現地ではこの定期貯金分も返還しないことに農林省の了解を得ているとのことであったのであります。そこで、この食い違いの問題について、本省及び北海道庁についてさらに調査しましたところ、道庁においても政府説明書の通り返還させることにしたとのことであります。  以上をもちまして、ごく簡単ですが、口頭報告にかえる次第であります。
  4. 三浦義男

    委員長三浦義男君) ただいまの報告に対して御質疑はございませんか。ではこれをもって委員派遣に関する件は終了することにいたします。  なお、詳細な文書報告は、会議録の末尾に掲載いたします。  速記とめて。    午前十時五十八分速記中止    ——————————    午前十一時四十七分速記開始
  5. 三浦義男

    委員長三浦義男君) 速記を始めて。  では、次に厚生省の部を審議いたします。  検査報告批難事項は、第七百三十一号から第九百二十七号までであります。本件に関し御出席の方は、会計検査院石渡第三局長堀木厚生大臣森本薬務局長山本厚生省会計課長堀岡医務局次長高田児童局長今村保険局庶務課長、同じく小沢健康保険課長伊部国民健康保険課長鈴村船員保険課長尾崎社会局保護課長の諸君であります。  まず、会計検査院から概要の説明をお願いいたします。
  6. 石渡達夫

    説明員石渡達夫君) 百一ページの七百三十一号について御説明します。  「経理のびん乱しているもの」、これは、関東信越地区麻薬取締官事務所で、三十年四月から三十一年九月の間に、正規手続によらないで不当に支出した金額で、それを別途経理しまして、その現金旅費捜査費報償費等に充当したものが二百八十九万五千円あった。この役所は、御承知のように、麻薬の取締りをしておるのでありまして、この法律に反した者を検挙する司法警察権を持っておる役所であります。それで、いろいろの捜査経費が要るにもかかわらず、予算においてそうした経費が十分でなかったと、そういうので、やむを得ずに正規手続によらないで経理をして、便宜的な方法で金を使ったという点も認められます。ここにあげました二百八十九万五千円、これは旅費捜査費報償費等、この役所経費として予算があれば、正規支出できたであろうと思われるような経費であります。そのほかに適正を欠くと認められるものが十四万八千五百五十一円、これはかりに予算があっても認められない経費であると思うのであります。残余の二万二千六十一円につきましては、全く使途がわからない。さっきも申し上げましたように、予算の組み方が、こうした役所についてぴったり当てはまるようにいっていなかった。やむを得ず不当に経理をしたという恕すべき点もあるのでありますが、それにしましても、適正を欠くと認められる経費も相当額含んでおり、また、使途が全くわからない経費も中にはあるというので非常に経理が乱れておるのは、まことに遺憾であります。  なお、三十一年十一月に、前記の不適正経費及び使途不明分を合せた十七万六百十二円、これは全額国庫に返納されました。  次に、七百三十二号から八百十六号までの「国庫補助金等経理当を得ないもの」、これについて御説明します。  まず第一に、七百三十二号から七百六十号までの公衆衛生補助に関する点であります。これは保健所法、あるいはその他の公衆衛生関係法令によりまして国庫補助金交付するものでありまして、厚生省におきましては、厚生省所管国庫補助金等交付規則という非常に厳格な規則を作られまして、これに基いて交付をしておられます。検査院も、厚生省が作られましたその国庫補助金等交付規則ものさしにしまして、それを当てがって検査をしたのでありますが、以下、各番号がふってありますような補助金不正額が発見されましたことは、まことに遺憾であります。こうした経理がありましたおもな原因は、国庫補助金国庫補助基本額に、補助対象とならない経費を含めていたもの、事業に伴う収入を過小に算出したり、または算定基準額の誤算があったもの、こうしたような原因によりまして、すでに提出した精算書では補助金が不足になっておりますものが、かえって超過になりましたり、また超過として精算しておりましても、その超過額がさらにふえて返納を要するものが、一事項ニ十万円以上のものをあげますと二十九件、千九百六十四万四千円ございます。このような事態につきまてしは、二十七年度以降、毎年検査報告指摘しておるところでありますが、なおこのような事例が見受けられますことは、前に申し上げました補助金等交付規則が定められ、これを補助条件としているのに、これについての厚生省指導監督が適切を欠いていた。かつ精算審査が不十分な点があった。また補助団体におきましても、財政困窮等のために、正当交付額以上に補助金を受けようとする傾向があるものによると認められます。  なお、ここに各項別保健所費補助金結核予防費補助金性病予防費補助金精神衛生費補助金各項別番号をふっておるのでございますが、各項の御説明は省略いたします。  ここに合計二十九件、千九百六十四万四千円あがっておりますが、二十九年度と比べて見ますと、二十九年度はこれが二十件、九百二十八万円、二十八年度は二十九件、二千百十六万円、こういう数字になっております。  それから、次に百六ページの七百六十一号について御説明します。  「結核療養所整備費補助金経理当を得ないもの」、これは青森県で二十九年度に施行した結核療養所整備事業に対しまして、国庫補助金八百五十七万四千七百円を交付しておりますが、対象外工事費を含めておりましたために、補助金が四十四万四千四百五十三円超過交付になっておる事態でございます。  これは青森県立青森療養所結核病床百床を増設する工事に対する補助でありますが、この設計の中には、炊事とうの工事費は含まれていなかったのでありますが、県において申請外炊事という七五・五坪、この建築費二百八十六万九千円を含めて、全額補助対象に含めて精算をしているのであります。ところが同療養所は、結核病床だけではなくて、ほかの病床もありまして、このほかの病床のための炊事という、これは少くも除かなければ工合が悪い。初めの申請にはありませんでしたけれども、一歩譲って、結核病床に対応する炊事場工事は認めるものとして、その分の工事は、ベッド数によって按分比例しますと百九十万二千三百七円、これに対する補助金を認めまして、そのほかの九十六万六千九百三十五円の分に対する補助は、結核病床以外に対応するところの炊事とう工事の分ですから、補助から除かなければならない。この分を除いたものが、先ほど申しました四十四万四千四百五十三円になります。  次は、七百六十二号、「簡易水道整備費補助金経理当を得ないもの」、これは新潟県の刈羽刈羽村、これが二十九年、三十年度に施行した簡易水道工事六百二万五千二百七十円に対して百五十万円の補助交付してありまして、四分の一の補助です。ところが、実際に要した工事ははるかに少いのに付け増ししまして精算したために、六十三万八千九百二十円超過交付になっております。これは、当初は大きな設計を持っていたのでありますが、同村が財源に窮したため、設計を変更しまして、鋳鉄管の一部をエタニット・パイプにする、また管経、管長の一部を変更する、こうした設計変更をしまして、請け負い分が三百四十万円、直営施行分が四万四千、これの合計三百四十四万四千三百二十円で工事を完成しているのに、付け増しをしまして、六百二万五千二百七十円かかったような精算書を提出し、厚生省は、そのままそれを信用して補助交付したという事態でございます。  次に、「生活保護費負担金経理当を得ないもの」、七百六十三号から七百八十九号まであがっておりますが、これは、二十九年度も同じ事態につきまして検査報告があがっておりまして、詳しく審議していただいたのでありますが、それと同様の事態につきまして、二十九年度には見なかった青森県ほか三十府県、それから北海道は二十九年度と重複して、もう一度見たのでありますが、見たところが、やはり結核で長い間入院している気の毒な家庭ではありますが、その家族の働ける収入を低目に見たために、保護が行き過ぎているというものが、やはり二十九年度と同程度に出ております。件数としまして千九百四十三調査しました中で九百九十三が不適正で、この比率が五一%になっております。二十九年度は千三百七十三見まして、そのうち不適正が八百十二、この比率が五九鬼になっております。従ってパーセンテージからいいますと、二十九年度が五九で、三十年度が五一と、やや改善の跡が見られます。厚生省におかれましても、二十九年度にああした検査報告が出た関係もありまして、非常に徹底した指導監督をしておられるのでありますが、なおこうした事態が生じまして、この問題は、前の当委員会におきましても、非常に同情的な御意見も出ておりまして、われわれとしましても、きのうまで相当な俸給をもらって生活していた世帯が、一朝その世帯主が病に倒れるというと、あくる日からもう生活保護を受ける世帯になるという、非常に気の毒な事態でありまして、同情を持って検査をしているのでありますが、しかし、ほんとう保護をする相手に、真に公平に保護が均窮するという、大乗的な見地からこうした検査をしたのであります。  次に(五)の「児童保護費負担金経理当を得ないもの」、七百九十から七百九十六、これは児童保護法に基く児童福祉施設児童保護に要した経費として、都道府県または市町村が、昭和二十九年度に支弁した金額に対する国庫負担金でありますが、厚生省におきましては、この国庫負担基本額限度をきめておりまして、実際に県なり市町村が支弁した金額がこの限度を上回る場合には、上回った金額によらないで限度額による。また下回る場合には、限度額によらないで実際の支弁額による、こういう基本を定めておられます。検査院におきましても、この厚生省のきめたものさしをそのままものさしに使って当てがって検査をしたのであります。ところがこの七百九十から七百九十六にあがっておりますような事態がありまして、七件五百二十二万二千二百七十一円が、国庫負担が行き過ぎて、返還を要するという事態となっております。こうした事態となりました原因は、まず第一に、実支弁額が右の限度額をこえているのに、実支弁額をそのまま補助対象とした。また実支弁額限度額以下である場合に、実支弁額を過大に計上して、限度額まで達するように過大につけ増しして計上したものを、そのまま認めて国庫負担基本額とした。また徴収金を控除する場合には、厚生省の今の基準によりまして、徴収決定済み額によらなければならないのに、現金収納済み額によっておる。だから過小に少く収納金を控除しておるというような原因によっております。  次に、(六)の「国民健康保険助成交付金経理当を得ないもの」、これは七百九十七号から八百十六号までにあがっております。国民健康保険助成交付金経理状況につきまして、三十一年中に施行した会計実地検査において、二十九年度助成交付金交付した五千二百八十一保険者のうち、その八%に当る四百四十五保険者について調査をした結果、次にあがっておりますように、一事項ニ十万円以上のものが二十件、一千十四万二千円、これが超過交付額になっております。この四百四十五保険者を見たうちの二十件という比率は四・五%になっております。二十九年度検査報告にあがっておりますものは六・六%になっております。それから見まして、厚生省におきましても、補助金適正交付について指導監督努力をしておられる跡がうかがえるように存じます。このような事態につきましては、毎年検査報告にあげているのでありますが、なお、こうした補助金交付超過が生じます原因は、現在の交付方式が非常に複雑になっている。この交付方法は、前年度の実績を基礎としまして、条件を三つくらいきめて、その三条件を満たした者に交付する。この条件が欠けますと、この検査報告にあげておりますように、この北海道の七百九十七のように、三条件を欠いているために、正当交付額がゼロになって、まことにお気の毒なことになっているのであります。この条件を充当しなければ全然問題にならない、この三条件を充当したものにつきまして、四つの方式を当てはめて計算する。こういう非常に複雑な形式になっているので、つい補助金を受ける方が間違った計算をするという場合もございます。それからまた、本年度非常に多いケースとして、摘要にずっと原因が書いてありますが、この原因の中に、一般会計繰入金が相違しているものが、ほとんど各県ごとにあがっております。これは、一般会計繰入金についての範囲が解釈上はっきりしない点もある、こういう点について厚生省指導監督がなお足りない点がある、こういうような原因で、なお交付超過の問題が跡を絶たないように思われます。  次に、厚生保険特別会計昭和三十年における健康勘定損益計算書によりますと、利益の部が四百六十七億八千百余万円、損失の部が四百七十三億五千六百余万円、差引五億七千四百余万円の損失となっておりますが、この損益計算には、一般会計繰入金の十億、それから土地、建物等評価差益七億四千九百余万円、これが利益の部に入っておりますから、こうしたものを除いて、ほんとう会計自体損益をはじいてみますと、本年度損失二十三億二千三百余万円となりまして、二十九年度損失四十億五千八百余万円であったのに比べましてだいぶ損失が減少しております。このように損失が減少しましたのは、収入面において、三十年六月から保険料率が上りまして、従来の千分の六十から千分の六十五に上ったのであります。こういう保険料の引き上げ、それから前年度に比べまして、被保険者数が一・二%、それから標準報酬月額が四・六%増加したことなどによりまして、保険料収入が前年度に比べまして一三・八%の五十四億二千七百余万円も増加しておる。ところが一方、支出面におきましては、診療報酬請求明細書支払基金におきまして厳重に調査をするようになってきた。従来も厳重でしたけれども、非常にまあ厳重になってきた。それから、そのために不正な請求を排除するのがふえてきた。それから被保険者受診率上昇が、従来非常な勢いで上っておりましたが、この年あたりから上昇が鈍化してきた。そのために保険給付増加が前年度に比べまして三十七億、パーセンテージにして八・八%の増加にとどまっておる。一三・八%収入がふえまして、一方支出が八・八%の増加にとどまっておる、こういう点が大きな原因になっております。参考に、二十九年度の二十八年度に対する給付増加をちょっと書いてありますが、それは百二十四億、猛烈な勢いで二十九年度は二十八年度に対してふえております。これがまあ四十億というような赤字の大きな原因になっておると思います。この百二十四億円と申しますのは、パーセンテージにしまして、前年から見て四〇%の増加になっております。こういうふうに損失程度が著しく減ってきたということは、保険の運営上非常に望ましい姿でありますが、しかしながら、貸借対照表における未収金三十八億八千万円あがっておりますが、その中には、二十八年度以前の分が十四億九千百余万円も含まれております。で、この保険料は、時効が二年になっておりますから、時効中断手続を怠るというと、これは不納欠損にならざるを得ない。こういうような次第でありまして、こうした点を考慮しますと、なお損失は大きく、実質上の損失はもっと大きくなるんじゃないか、二十三億プラス・アルファになるんじゃないかという点も考えられまして、留意を要するところであります、それでこうしたような一般的な状況でありますが、本院におきましては、まあ法令の問題はもうさることながら、現行法におきまして、なお保険料徴収努力をすれば、もっと改善の余地があるんじゃないかということに留意しまして、保険料徴収というこの行政上の執行面に主力を注いで検査をしたのでありますが、保険料算定基礎になる標準報酬月額の実態の把握が不十分で、標準報酬月額を少く見ておる。定時決定の際に、当然標準報酬を改めるべきを改めてない。また、随時改定の場合にも、随時改定すべき事態に当りましても随時改定をしていない、あるいは適用漏れがあるというようなものも、個々に非常に細密な調査をしまして、この標準報酬月額の過少を指摘しまして、それによって徴収をするというふうに決定しましたものが一億六千六百万円に達しております。こういうような事態は、主として事業主におきまして届出の義務を怠ったり、届出に不実の点があったことによりますが、一方、実施機関側におきましても、事業主についての調査及び指導監督が不十分なことによってこのような事態が生じたものと思われます。また、保険料収納にもう少し努力をすればいい、徴収決定をしたが、なお収納に至らないというものが、三十年度分で十五億三千九百余万円ありまして、前年度に比べて改善の跡はうかがわれますが、この十五億三千九百余万円と申すのは、今年度分の調定額に対する三・四%となっております。三・四%と少々未済があった。前年度はこの収納未済が四・五%程度でありまして、まあ努力の跡はうかがわれますが、なお今年度分十五億三千九百余万円を、先ほど申し上げました末収金三十八億から引きまして、二十三億というものが既往年度未収金がございますので、当年度分の十億の収納について努力されるのはもちろんでありますが、既往年度分の二十三億についても、できるだけ収納についての努力が望ましい次第であります。  次に八百十七号から九百二十二号まで、今御説明しました事態をこまかく、歳入徴収官の所在しますところの保険出張所、あるいは県の保険課と、これを別にずっと一覧表にしてあげてございます。  次に、百二十二ページの船員保険特別会計についてでございます。船員保険特別会計の損益状況は、利益が四十三億三千三百余万円、損失が三十三億千七百余万円、差引十億千六百余万円の利益となっております。この保険は、御承知のように健康保険とか労災保険とかいう区別でなしに、健康、年金、労災、失業と、こうした保険を全部一括して、一括経理しておりまして、各保険に相当した勘定区分を付しておりませんが、損益計算を見ますと、健康及び労災部門、それから全体の保険料のうち、健康及び労災保険に対応する部分の保険料、こういうものが損益計算上はっきりと出ております。これによって健康及び労災部門の給付収入と両方を比べてみますと、この部門におきましては二億千三百余万円の損失となっております。このように健康、労災部門が損失となりましたおもな原因は、主として漁船部門におきまして、漁船が非常に大きなウエートを占めておりますが、この漁船船員の報酬と申しますのが歩合制になっておりまして、非常につかまえにくい。また、厚生省におきましても、従来確たる計算方式を示していなかったという実情がありまして、県においてまちまちにやっておる。中にはよくわからないから、船主協会と申しますか、船主団体との協議によってきめておるという事態もあります。また、汽船船員につきましても、報酬の範囲について、取扱いが実際に即さないと認められるような傾向もありまして、保険料徴収不足を来たしておるためと思われます。また、保険料収納率が、この保険は非常に低いのでありまして、九〇・七%、これは漁船の部門におきまして非常にとりにくいという事態もありますが、それにしましても、ほかの社会保険が大体九五から九七%にいっておりますので、もう少し努力が望ましい。こうしたように保険料徴収不足あるいは収納未済というようなために、健康部門及び労災部門に現金の不足を来たしまして、本来積み立てるべきところの厚生年金の部門から、一億七千七百余万円ばかりを労災部門の資金に充当しておるというような資金の苦しい事情もございます。こういうように船員保険は一見こじんまりとまとまっておりまして、小さいスケールから見ますと、相当大きい益金が出ておりまして、非常に安泰のように思えますが、この中を健康、労災と、すなわち疾病給付に対する部門だけを抜いて収支を勘案しますというと、やはり赤字になっておりまして、健康保険で申し上げましたと同じような一つの問題が伏在している次第であります。  それから国立病院特別会計、九百二十三号、「経理の紊乱しておるもの」、これは国立鯖江病院で、診療料金の一部を、病院の運営上必要な経費に充てるという、そういう方針をきめまして、これは二十七年五月に病院管理会議というものを開きまして、病院長、庶務課長、幹部がみな集まって、どうも病院の運営上そうした金がないというと工合が悪い、病院の運営がやりにくいから、一つ別途資金を作ろうじゃないかというので、最高幹部の会議を開きまして、それによって、患者から納入された診療料金の一部を、歳入に納付しないで、五十五万八千円の資金を別途に保有して、これを医者の住宅の借上料、会議費等に充当したものがありまして、残額三万九千七百九十五円で、これを現金で保有しておりましたが、三十一年六月に歳入に納付されました。  なお、これに関連しまして、次の不正行為というところの九百二十四号に、国立鯖江病院というのがありますが、ここに不正行為の金額九十四万七千三百十三円、これがあがっております。これは、今申しました経理の紊乱と関連したところの一連の事案でありまして、これは病院長と庶務課長が、大体こうした経理のイニシアチブをとりまして、そうしてその命を受けまして、この庶務課の医事主任、これが実際のこうした経理の運用に当ったのであります。それで、さっき申しました病院の管理会議の方針のように、五十五万八千円につきましては、この相馬医事主任は、その通りに資金を出しまして、その用途に充当しましたが、それにサバを読んで、さらに吹っかけてとりまして、この九十四万七千円は着服してしまった事案であります。  それから次に、不正行為、九百二十四号から九百二十七号まででありますが、九百二十五号は、中津療養所の七十八万二千円の不正行為であります。これは杉本某が庶務課歳入係として勤務中に、入院患者の診療費を収入官吏に引き継がないで領得したものであります。  それから次の高知県厚生労働部保険課井上某、これは八十七万八千七百四十円、これは同人が分任収入官吏として保険課に勤務中、事業主から領収した健康保険料及び厚生年金保険料を国庫に払い込まないで領得したものであります。  次に、熱田社会保険出張所、丸岡某外四名、これは丸岡雇が出納員として徴収課に勤務中、事業主から領収した健康保険料等を収入官吏に引き継がないで領得したり、また、別に丸岡が単独で、あるいはほかの者と共謀して、資金前渡官吏をだまして、架空の脱退手当請求書を作成して、前渡資金から領得したものであります。  以上をもちまして……。
  7. 三浦義男

    委員長三浦義男君) 次に、厚生省から概要の説明をお願いします。
  8. 堀木鎌三

    ○国務大臣(堀木鎌三君) ただいま昭和三十年度決算報告書において、厚生省所管事項について批難されましたものは、予算経理補助金及び不正行為に関する不当事項並びに健康保険及び厚生年金保険保険料に関する是正事項についてでありますが、これらはいずれも会計検査院指摘の通りでありまして、まことに遺憾に存ずる次第でございます。  予算適正なる経理及び補助金等の効率的使用と精算の的確なる処理とにつきましては、極力努めて参ったのでありますが、今後とも一そう指導監督に努め、このような御指摘を受けることのないよう十分注意いたしたいと存じます。  また、職員の不正行為につきましては、従来よりこの種事故の生じないよう指導監督をさして参りましたところでありますが、はからずもこのような事故の発生を見ましたことは、まことに遺憾に存ずる次第でありまして、今後なお一そう指導監督を厳にいたしますとともに、これらの責任者に対しては厳重なる処分を行い、この極事故の根絶をはかる所存でございます。  また、健康保険及び厚生年金保険保険料徴収不足に関する是正事項に関しましては、実態調査の強化をはかるとともに、適用事業主に対しましては啓蒙指導を行い、保険料徴収不足のないよう万全を期している次第でございます。  なお、厚生保険特別会計及び船員保険特別会計に関する財政の健全化につきましては、第二十六回国会におきまして、健康保険法、厚生年金保険法及び船員保険法の一部改正法の成立によりまして、保険財政収支の均衡をはかるとともに、御指摘の点につきましては、なお一そうの努力をいたす考えでございます。  なお、個々の問題につきましては、別に担当官より御説明さしたいと存じます。
  9. 三浦義男

    委員長三浦義男君) なお、補星説明があればお願いいたします。
  10. 山本正淑

    説明員山本正淑君) 厚生省検査報告にあげられました批難事項につきましては、ただいま大臣から御説明申し上げた通りでございますが、若干補足さしていただきたいと思います。  七百三十一号の関東信越地区麻薬取締官事務所経理の紊乱に関する事項でございまして、御指摘の通りで、まことに遺憾に存ずる次第でございますが、特にこの中で、従来警察権を持っておりまして、捜査旅費の系統のものが予算に組まれておらなんだ点もございまして、昭和三十二年度におきましては、捜査旅費等につきまして予算措置をいたしまして、別途に予算上こういう経費支出し得る科目を設定してございまして、今後十分気をつけて参りたい、かように存ずる次第でございます。  それから七百三十二号から八百十六号までの国庫補助金経理適正を欠いた点でございますが、これも御指摘の通りでございまして、この補助超過額につきましては、すみやかに国庫に返納させる措置を講じている次第でございます。  なお、七百六十三号からあとの生活保護費の負担金の経理の当を得ないものにつきましては、この経費の特殊性にかんがみまして、お手元に政府の説明書として弁明さしていただいているのでございますが、五十七ページにございますように、収入の認定につきまして問題があるわけでございます。かつまた、事務監査の方面につきまして今後なお一そう徹底しなければならぬ点もございまして、特にこの重点を医痛扶助の単給世帯に置きまして、十分改善に努める措置をとっておる次第でございます。  なお、その次の国民健康保険助成交付金につきましては、御指摘の通りでございますが、この中で八百十一号、岐阜県那加町に対します超過交付額の御指摘の件につきましては、この町の国民健康保険におきまして、保険料徴収方法と申しますか、国民健康保険の運営の仕方が若干異なっておりまして、その点を事情参酌いたしまして、返納の措置は講じないということにいたした次第でございます。  それから、次の厚生保険特別会計につきましては、ただいま大臣から御説明申し上げました通りでございまして、健康保険法の一部改正案が国会通過いたしまして、その後、健康保険財政の健全化に当っておりまして、特に御指摘の適用事業所における標準報酬月額の把握が適切でないという点がございますが、これにつきまして、厚生省といたしましても、この適正を期するために、いろいろ工夫して参りまして、特に昭和三十一年からは、調査員制度というのを設けまして、そうして事業所を回りまして、標準報酬適正把握ということ、並びに徴収不足がないようにというような点に気をつけて参っております。かつまた、御指摘の過年度分の未徴収額があるというような点につきましては、いわゆる滞納整理というものをもう少し円滑に順調にやらなければならないということで、各県に滞納整理班というものを別途に設けまして、収納未済の解消に努めておる次第でございます。  それから八百十七から九百二十二に至ります、ただいまの標準報酬の把握が不適正であるために、徴収不足があるという御指摘の点につきましては、その後、鋭意努力を続けまして、前年度の末におきましては、このうちで一億三千百万円の徴収をいたしたのでございます。  それから、船員保険の特別会計の分でございますが、これにつきまして、これも御指摘のところでございますが、特にこの漁船船員につきましては、標準報酬の把握におきまして、歩合制というものが実際実施されておりまして、非常に把握が困難な点があるわけでございます。そこで、この船員保険の諸般の御指摘事項改善するために、昭和三十二年度におきましては、主要水揚げ地、全国のうちで、主として漁船が漁獲物を水揚げする港に分任収入官吏を常駐させまして、そうして適正保険料収納努力をいたしておる次第でございます。  それから予算経理不当事項並びに不正事項として指摘されました国立鯖江病院の件でございますが、これは御指摘の通りで、まことに遺憾に存ずる次第でございますが、ただ、この病院が地理的環境が非常に悪いところにございまして、医師の充足に絶えず苦労しておりまして、大学に頼んで医師をそのつど招聘しているというふうな状況でございます。そのために充足医師の住宅その他のためにこういう不当経理をしておったような次第でございます。今後はこのようなことのないように十分注意して参るつもりでございます。  以上、ただいま大臣から御説明申し上げましたことにつきまして、若干補足いたしまして御説明申し上げた次第でございます。
  11. 三浦義男

    委員長三浦義男君) 以上をもって説明は終りました。  速記とめて下さい。    〔速記中止
  12. 三浦義男

    委員長三浦義男君) 速記を入れて。  御質疑のある方は、順次御発言を願います。
  13. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 他の委員も質問があるでしょうから、私は二、三点について伺います。  まず、伺いたい点は、厚生省関係予算執行上のこの効率のよしあしというものは、直ちに国民の福祉、民生安定に面接的に結びつくだけに、ささやかな予算の執行については、私ども重大な関心を払わざるを得ないわけです。先ほどから検査院当局からの説明を承わるとともに、出されました資料を拝見いたしますと、改善された面もあり、その努力を認めまするが、また、「国庫補助金等経理当を得ないもの」、こういう項については、むしろ前年度よりは増加しておるし、また、この内容を全般的に見ますと、過失という面のもありますけれども、しかし、きわめて悪意なものも含まれております。そして、ことに国庫補助金等に関する面のごときは、補助対象にならないものを計上したというのは、これは十分知り尽しておってこういうことをやっているという点、これは許すことができないと思うのです。大臣の決意もさることながら、長きにわたってずっと厚生省に勤務され、第一線において事務を担当されている事務当局の幹部諸君の指導監督に対するところの決意と、それから、この内部監査の充実いかんというものが、事を私は支配すると思う。大臣の決意は先ほど表明されましたから、あえて私はここで承わりませんが、大臣の同席している前において、私は事務当局の代表者として会計課長の答弁を求めるわけです。  それは、あなた方は、年々歳々、大体同じような指摘会計検査院から受けているわけですが、これに対して、どういう事務当局お互い同士に反省の会を持ち、さらにどういう戒めをもって絶滅を期すべく過去において協議をされ、また現在その努力をされているのか、事務当局を代表して会計課長の決意と現状について私は承わりたいと思います。
  14. 山本正淑

    説明員山本正淑君) ただいまお話しの点でございますが、確かにお話しの通り、厚生省予算の執行につきましては、非常に少額の経費と申しましても、それぞれの対象が、国民層の中で非常に、何といいますか、条件の悪い人たちに対しますものでありますので、従いまして、厚生省事務当局といたしましては、このまず予算適正に最終の目標に渡る、しかも時期的その他の点につきましても、受ける者に便利なような方法で渡るということが一番大事なことであります。それで、私どもといたしましては、まず予算の執行を時期を早くするという点、並びにその執行された第一線において、適正に配分されるということにつきましては、省内におきましても、毎週局長会議がございまして、その席上におきまして、予算の執行状況並びに従来の問題点というものにつきまして話をいたしまして、そうして、どういうところに厚生行政の問題点があるかということを協議いたしまして、十分その点は認識してやっておるつもりでございます。ただ、対象が非常に数が多いわけでありまして、特に補助金等につきましても、現在厚生省関係では八十項目くらい補助金がございまして、そうして職員数——これは中央並びに地方を通じての職員につきましても、いろいろの組織になっております。委託職員もありますれば補助職員もあるし、あるいは交付税による職員等もございまして、その間の関係におきまして、申請書類全部につきまして、現地に出張して調査するということができない面、やむを得ない面もあるわけでございまして、そういう点の間違いというのが、毎年御指摘を受けて、非常に残念に思っておるのでございますが、今申しましたようなことで、予算の執行と、そして本部としての第一線に対する者の指導監督のポイントというものにつきましては、そのつど協議をいたしておる次第であります。
  15. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 その点については、今後さらに一段と大臣の方針に沿って、大臣の方針の具現のために、さらに善処されることを強く要望いたしておきます。  質問の第二項としては、具体的に生活保護関係について承わります。  本年並びに昨年におきまして、生活保護関係は、およそ三百六十億円程度予算が計上されておるわけですが、この運用の適正化ということも、また私はきわめて重大であり、国民の関心事だと思うのです。ここに提示されました昭和三十年度の分につきまして、認定ですね、それから実態調査、この実施に当っては、相当私は適当でない過酷な面があるやに聞き及んでいるわけですが、そういう点どういうふうにお考えになっておられるかということと、それからこの生活保護費の不正事項は、会計検査院指摘のごとく、きわめて率が高く、五〇%以上になっているわけでございます。一方、かようにこの不適正なる運用がなされるとともに、一方、私はこの法の運用について非常に疑点を持っている点がありますので、やや具体的になっておそれ入りますが、この点については大臣からお答えいただきたいと思うのです。時間の関係上、私は詳しく質問の理由を申し上げませんが、この法の第一条には、「最低限度生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする。」ということがうたわれております。と同時に、この第九条には、必要即応の原則として「実際の必要の相違を考慮して、有効かつ適切に行うものとする。」、こういう原則というものをうたわれているわけです。ところが私は、具体的に申しますならば、最近よく聞き、また新聞・ラジオ等で報ぜられていることですが、生活保護を受けている母子家庭などに多いわけですが、そういう家庭の子供さんが、中学校の義務教育を終えて高等学校に入学したとたんに、生活保護法の適用を打ち切られる、そこでその進学の望みが断たれるということが、非常に数多く発生しているわけですが、これは私は法の第一条並びに第九条の立法精神からして、あまりにもしゃくし定木的な法の運用をされていると思うのでありまして、これらは当然私は是正さるべきものである、かように私は考えているわけです。これらに対する大臣の見解、さらに私は幾つかの例を知っているわけなんですが、この生活保護に基く医療扶助で、この間、家庭が非常に貧困で医療扶助を受けている。具体的に申しますと、父が結核で医療扶助を受けている。ところが子供が感染してまた結核になった。そういう人が、さらに医療扶助を受けにいきますと、福祉事務所あたりで、お父さんが受けているからあなたには支給できないと、お父さんがいなかったらあなたには支給するのだが……という例を、私は具体的に三件ほど知っているわけですが、ここに指摘されているように、ずいぶん不適正なる運用が、会計検査院検査された中の五〇%以上もある半面、国民の税金が法の運用面においてかような理解のできない形で運用されている点について、私は常日ごろから非常に疑問を持っておりまするがゆえに、この際に厚生大臣の御所見を承わっておきたいと思います。
  16. 堀木鎌三

    ○国務大臣(堀木鎌三君) 矢嶋さんの前の御質問は、事務当局の答弁をお求めになったのでありますが、私、厚生行政を担当するようになって、まず考えますことは、非常に厚生省行政事務が急激に膨張いたしておりますにかかわらず、現場機構が非常に弱いということが一つの欠点だと思って、それらについて、今後是正して参りたいというふうに考えるのでございます。  それから、ただいまの生活保護法の適用の問題でございますが、今お読みになりました生活の保障と自立を助長するということが書いてあることは確かでありますが、生活保護法自身の適用につきましては、よほど乱給に流れないようにしなければならぬと同時に、一方におきましては適正な運用をはかるということが必要であることは、御指摘の通りでございます。今、正確な金額は忘れましたが、ある程度収入があっても、なおかつそれを控除しないという分は、あることはあるのでありますが、これが非常に少額であるということが目下問題になっておるように思うのであります。で、それらについては今後研究して参りたい。  ただもう一つ、生活保護法の適用いたしません部分で、ボーダー・ラインに対しまして相当の予算が三十二年度から始めて取れるというふうになりましたので、両方相待って運用いたして、所期の目的を達成するようにいたして参りたいと、こういうふうに考えております。  具体的な医療扶助の問題につきまして、特に結核に関しましては、私、実は今御指摘のような医療扶助の場合、親がなっているから子供には支給しない、感染して同病にかかっても支給しないというのは、そういうことは考えられないと思うのでございますが、具体的にはなお調査いたします。ただ結核の問題に関しましては、今後私どもといたしまして、結核は最近の医学の進歩、医術の向上に関連いたしまして、非常に治療行為が進んで参りました。これらにつきましては、来年度には徹底的に結核の撲滅に向って対策を講じたい。そうして約五年間後に半減できるのでなかろうかというふうに考えて、それを目標に施策を進めて参りたい、こう考えております。
  17. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 高等学校進学については、どういう見解を持っておられますか。
  18. 尾崎重毅

    説明員尾崎重毅君) 実はこの前の決算委員会でも、その問題が問題になりまして、私からも御説明申し上げました。事務的な問題にわたりますので、私からお答え申し上げたいと思います。  実は事務的な立場から申し上げますと、現在高等学校以上の学校に進学する場合に、その子弟を擁する世帯をくるめて被保護世帯として保護対象にするかどうかという問題でございます。それで、私どもとしましては、確かに今御指摘のように、保護法の所期の目的は、最低生活の保障と、それから自立の助長という二つの問題があるわけでございます。その後者の目的からいえば、できるだけその世帯の目的はかなえさして上げたいという立場は片一方にあるわけでございます。片一方に最低生活を保障する、これは国民の権利であると同時に、国の義務であるという立場からいたしますと、そういう最低生活の内容として、どういうものを内容にすべきかということは、個々の世帯の実情のみを考慮するわけにはいかないのでございます。高校以上の進学者につきまして、今、日本の現状では、大体中学校の卒業生が百八十万くらいございますが、そのうち高校以上に進学しております者は、その五〇%に足りないわけでございます。しかも中学校を出ましてすぐ就職する者が実に四〇%以上あるわけであります。まあこういう事情から、日本の現段階では、高校以上の進学を最低生活の内容にするというのは、どうもちょっと無理があるのではないかということで、私ども原則としては、中学校を卒業いたしましたら就職していただきたい、それによって幾分とも国民の税金からまかなわれる公費を減少してもらいたいという立場を原則として持っております。なおしかし、自立助長の精神ということも考えまして、そういう取り扱いは機械的、一律的にならないように、たとえばもうあと半としくらいで高等学校を卒業するというような場合に保護にかける場合もございます。そのような場合にはその進学を認めてむしろ六カ月間くらい猶予して高校を卒業さす方が自立更正に役に立つだろうというような場合には、そういう取り扱いも例外として認めておるわけであります。大体以上のような取り扱いをしております。
  19. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 一応あなた方の御見解として承わっておきます。若干私の見解と相違するところがありますが承わっておきます。この法の適用に当っても収入の認定、実態調査さらに末端における法の運用については今後とも皆様方の方で適正なる指導を強く私は要望申し上げまして、最後に第三の質問に入ります。  最後にお伺いいたしたい点は、国立病院特別会計批難指摘事項の九百二十三号に関連してであります。私はここで私見と希望を申し上げておきますが、国立病院の内部監査は強北する必要があると私は認めております。それからこういうこの会計面だけでなくて、国立病院でございますから、全国の国立病院は国民にもう少しサービス改善という点について、サービス精神を高揚する必要があると私の見る限りにおいては思っておるわけでありまして、こういう点についてぜひとも御善処をまず要望しておきます。お伺いしたい点は、この九百二十三号について、地理的関係で医師用住宅の借り上げ料等に適用したということが書かれてあるわけでありますが、現在国立病院の医師の充足状況はどうなっておるのか、国立病院に入院している患者に聞くというと、医師が不足するために、夜急病になったときなどは私立病院と違ってなかなかお医者さんがおいでいただけぬので困るということを各地でよく聞きます。それから特に特殊な施設であるらい患者収容所のごときは、私は熊本ですが、恵楓園あたりを具体的にあげますと、定員の医師が二十五名のところ十九名しかない。聞くとお医者さんが手に入らないということなんです。これは一つの具体的な例ですが、一般に国立のかような医療施設における医師の充足状況はどうなっているのか、これらがやはり九百二十三号にある医師用の住宅等とも関連してくると思いますが、その状況事務当局から承わるとともに、大臣に対しましては、国立病院の、このたとえば医師の充足をはかることについてどういう御見解を持っておられるか、さらにそれを通じて国民の税金で運用しているわけですから、国民へのサービスの改善をすることによって、一部にある国立病院の苦情というものを払拭する必要があると思いますが、それらに対する大臣の御見解を承わって私の質問を終りたいと思います。
  20. 堀岡吉次

    説明員堀岡吉次君) 国立病院の医者の充足状況は全国的に見ますと九七、八%でありますが、御指摘のように、ところによりまして非常に不便なところがありまして、そういうところでは相当の欠員が出ております。御案内のように国立病院は軍から引き受けましたものでありますから、地理的条件が非常にまずいところが相当ありまして、そういう関係上医師の充足には非常に悩んでおる状態であります。御指摘のようならい療養所等につきましては、これは部門が部門でありますので、その方面の研究をする方々が、何と申しますか、非常に少うございます。そういう点もありますので、非常に厚生省としては、その点の充足に苦慮いたしておるわけでございまして、それがひっきょうずるに、特にらい療養所等におきましては、患者の医療に、端的に言いますれば、若干内容的に欠けるのではないかという点の御指摘につきましては、われわれの方として平素から頭を痛めている問題でございます。なお、この医師の充足の問題につきましては、一つには医者の俸給が先生御案内の通り、在来低うございまして、この点は国会におきましても非常に大きな問題となっておりまして、先般の給与改訂におきましても、現に医療に従事する医者の方々の給与改訂は、その他の者よりも相当大幅に今回はなされたわけであります。しかしながらそれで十分だというわけには、これは参りませんので、この点につきましては、われわれとしましては特にこの地理的条件の悪いようなところにおきましては、お医者さんの研究費でありますとか、そういう点、今度の給与改訂ではこれは一律にいっておりますので、それ以外に研究費等なり何なり、そういう方面で先生方に来ていただけるような、そういう措置を講じたいということで、明年度予算等におきましても、そういう措置の実現をはかりたいということで案を練っております。  なお、御指摘の、国立病院等の患者に対するサービスでございますが、これはもうおっしゃられる通りでございまして、ただ病院は当直制を引いておりますので、夜間等の往診は現在の段階ではちょっと参りかねるかと思います。当直医者がおりまして、何分にも内部にそれぞれ百名なり、何百名なりの患者を控えておりまして、それに応ずる程度の当直制でありますので、急患でおいでになられる方、これはもちろん別の問題で、問題ありませんが、外部等の往診等におきましてはそこまで現在至っておりません。これは医者の充足とも関連いたします。  なお、患者、一般国民へのサービスにつきましては、中身の問題としまして、これはもうここで今新らしく問題を取り上げて、お話し申し上げることよりも、前々から御案内の通りでありますが、たとえば国立病院、国立療養所の患者の食費の単価でございますとか、あるいは施設が非常にぼろであるとかいう面におきましては、予算の許す限り改善いたして参りたい。これはちょうど明年度予算編成期も控えておりますので、事務当局といたしましては相当な改善をはかりたいということて、これに当るつもりでおります。当局の考えの大体を御説明申し上げまして御了解を得たいと存じます。
  21. 堀木鎌三

    ○国務大臣(堀木鎌三君) 矢嶋さんから御指摘になりました、国立病院がどうも取扱い上不親切じゃなかろうか、それから事務の監査を強化する必要があるのではないかというふうなお話しにつきましては、当然われわれとして努力すべき事柄でございます。国立病院の、過渡的に陸海病院を引き継ぎましたいろんな不便はございますが、やはり人的な、物的な状況から見て、真にサービスができる、国民の模範病院たるべき性質を備えさせてやるべきだ、と同時に監査を厳格にいたしまして、いやしくも不正の行為、その他の不親切な行為がないようにいたしたいということは、何といっても私は必要不可欠の条件である、さらに進んで医者の技術に対する一つの指導機関としても整備いたして参りたい、こういうふうに考えておるような次第でございます。
  22. 江藤智

    ○江藤智君 先ほど会計課長の御説明で、予算執行をできるだけ早くやりたいというお話、私も特に厚生省関係におきましては、予算の執行に当って親切に、しかも早く、打てば響くような扱いをしていただく必要があるのじゃないかと思いますが、それについてちょっと御説明を願いたいのでありますが、これは調査室の資料によりますというと、医療施設補助であるとか、児童保護費に関係するものであるとか、そういったようなものの補助金の翌年度繰り越しが非常に多いのですね。たとえば精神病院の整備費補助金につきましては支出済みの金が一億六千万円に対しまして、翌年度への繰り越しが二億一千万円、とにかく半分以上ですね。結核療養所整備費の補助金でも、支出済みが三億一千万円に対して翌年度への繰り越しが約二億九千万円、これもちょうど支出済みと同じくらいです。児童福祉施設の整備費もやはり半分ぐらいが繰り延べになっておりますし、結核のあとの保護の施設費におきましては支出済み額の三倍も翌年度に繰り越しになっている。こういうことを見ますと、どうも先ほどわれわれが望んでおります早く処置してやるということに対しまして、事務的にはどうも非常におくれておるというような心配があるのでございますが、その点について一つ御説明願いたいと思います。
  23. 山本正淑

    説明員山本正淑君) 実はただいま御指摘になりました補助金の、特に繰り越しにつきましては、施設整備費につきましては三十年、三十一年も非常に多いのでございますが、実は三十一年は予算が国会できまりますのがおくれまして、それから一番むずかしいのは地方の予算化というのは非常に厄介でありまして、特に補助率の低い補助金につきましては県の予算化が非常におくれる、昨年度のごときは十二月を越えて予算化するというような例が非常に多くございまして、それで非常に変な格好になったわけでありますが、それでことしは、三十二年度におきましては、予算を組みました当時において、それぞれの補助金につきまして何月何日までにどういう段取りでやるという一覧表を全部作りまして、これは各局でスピード・アップして、どこまでぎりぎりやれるかということで全部の補助金につきまして予定を立てまして、そうして市県並びに市町村に対する交付基準というものは、非常におそい補助金でも、大体七月中ごろまでには全部通達できる、こういうふうに早めまして、そして補助指令も早めるというのでやって参っております。従いまして三十二年度補助金につきましては、現在のところ八十数件補助金がございますうちで、四、五件を除きましてはほとんど割当を終っておりまして、その点は改善されると、かように考えておる次第でございます。
  24. 江藤智

    ○江藤智君 今のお話で最近は非常に改善されておる……。
  25. 山本正淑

    説明員山本正淑君) ことしでございます。
  26. 江藤智

    ○江藤智君 ことしは……。こういうものは、えてしてどうもお役所仕事になりますと、現地では非常に急いでおるけれども、とにかく時期が大へんおくれて、極端な場合は北海道とか東北あたりでは、もう時期はずれになってしまうというようなことがおそらく起るのではないか、こういう点は一つお直しになったようですから、またその結果を拝見して御説明を承わるとして、ぜひ一つ十分気をつけて、予算がきまればすぐできるだけ早く配るというふうにやっていただきたいと思います。
  27. 堀木鎌三

    ○国務大臣(堀木鎌三君) 江藤さんから答弁の要求はないのですが、実際おそいのです。と申しますのは、一番問題は自治庁との相談及び地方各県の予算の問題、それから補助率がいろいろありますものですから、それによってまた県がいろいろ自分の財政とにらみ合せて、それが国家的に見ましたときには非常な損失であることは、もうほんとうに申しわけないような次第であります。そういう意味から、私も今後今御指摘の点につきましては、できるだけ是正をして参りたいと思っておりますので、特に発言を求めた次第であります。
  28. 岩間正男

    ○岩間正男君 先ほどの会計検査院説明によりますと、生活保護の問題が出ておるわけです。特にこの中で医療保護支出が毎年累増しておる。そうして非常にこれは不正な支出がなされておるという点について問題が出ておるわけなんです。この超過交付の問題について、現在厚生省は各都道府県に対して一斉調査に関する通達を出しておる、こういうふうに言われておるのでありますが、今までそういう点ではずっと努力されてきたと思うのです。最近これがもっと組織的に、九月あたりから行われておるということを聞いておるのですが、この内容はこれからのやり方ですが、そういうものはどういうふうになっておるか、大体この概要についてお伺いしたいと思います。
  29. 尾崎重毅

    説明員尾崎重毅君) 実は厚生省といたしましては、毎年一回全国の被保護者を一斉に調査するという措置を行なっております。それで特に毎年行なっておる中で、実は問題になる点は、特別重点的にその年のつどきめることにいたしております。医療単給の扶助の問題につきましては、実はここ二、三年来非常に問題化し、表面化して参りましたので、昨年からこの一斉調査を取り上げまして、本年度もやはりその中に識り込むことにいたしております。それでやり方でございますが、これは実は生活保護の建前から申し上げますと、被保護世帯に対しましては、つまり社会福祉主事、いわゆるケース・ワーカーの訪問調査を励行いたしまして、それで被保護世帯の実態をつかむ、合せてその自立更生を指導する、そういう建前になっておりますが、病院に入院しておる患者につきましては、なかなかそこまで従来手が回りません。そういうような事情もございまして、大体被保護世帯の訪問調査をやる要領に準じまして、この患者に面接して調査をするというやり方をとっております。具体的に申し上げますと、まあ大体どういう生活状況であるか、それは病状も含めまして、大体病状はどの程度であるか、この病状につきましては、大体お医者さんに相談することになっておりますが、病状がどの程度か、あるいは家族との連絡はどうなっておるか、あるいは一部負担金があれば、どういう支払いの状況になっておるか、あるいは将来の退院後の自立更生についてはどう考えるか、どういう計画を持っておるか、そういうようなことにつきまして患者に面接をして調査をする、そういうやり方を指示いたしまして、なお、いろいろ病院に入院しております患者につきましては、その特殊な心理状態等も十分考慮に入れて、一般の被保護世帯に対する訪問調査と同様なあるいはそれ以上に注意しなければならないということも特別行なっておる次第であります。
  30. 岩間正男

    ○岩間正男君 何かこれについて要綱を出しておられますか。この要綱をこれは当委員会に資料としていただけませんか。それはまあいただいてからにしまして、そうすると、今の御説明では、この調査の目的というやつは、どういうことになるのですか、その点がちょっとあいまいである。つまり被保護者の、ことに医療扶助を受けておるそういう保護者に対するむしろ生活指導、そういうような点でこれはなされておるように聞いたのでありますが、われわれも、実態について二、三耳にしておるわけであります。必ずしもそういうような方法で行われていないんじゃないかという疑いを持つような実例にもあっているわけです。そういう点からこの目的とするものはどこにあるのか、つまり、会計検査院指摘された非常な不正な交付が多い、これをもっと厳重にして、あくまでもこれを取り締るのだ、そのための資料を作るために、このような調査が行われておるのであるか、あるいは、被保護者の将来並びに現在の生活改善や、あるいは幸福のためにそういうような補導をするためにこの調査が行われておるのであるか、この点が非常に不明瞭でありますから、この点を明確にしていただきたいと思います。
  31. 尾崎重毅

    説明員尾崎重毅君) 今度の調査につきましての具体的な要望を受けておるかということでございますが、それは、文書としては私ども受け取ってはございません。実は、昨日、日本患者同盟の方が二十人ほど私の所に見えまして、三時間ほどお話し合いをいたしました、その際に、いろいろ御要望は承わっております。その御要望の内容が、今御質問の調査の目的に関連いたしますので御説明申し上げますが、被保護者の生活の実態を正しくつかむということは、私は、先ほども申し上げました最低生活の保障を適正にやるということと同時に、やはり被保護者の自立更生にケース・ワーカーが参画する、その援助をするという二つの意味があるわけです。ところが、医療単給世帯にきつきましては、会計検査院の御指摘もありますように、最低生活保障という建前が必ずしもうまく全般に浸透していないのでありまして、この点は、基本的にもいろいろ問題はある。検査院報告文書の中にもそれが一部触れてございますが、いわゆる従来の生活レベルを下げなければならぬ、そういうようなところに問題があることは、これは重々承知しておりますが、しかし、今のわが国の現状からすれば、この程度でやはり医療補助の限界というものは考えなければならぬといたしますれば、収入適正化ということも、われわれとしてもやはり適正化に努力しなければならぬ立場にあるわけであります。しかし、そればかりではございません。具体的な数字を申しますと、実は、昨年の医療単給世帯の実態調査の結果、大体一月四千万円ほどの減額を見ておるわけであります。その内容を見ますと、医療扶助を廃止したものが二千七百万円、停止したものが三百六十万円、減額したものが二千万円ということになっておりまして、それと同時に、増額したものも一千九十万円ございます。そういう意味合からいたしまして、あくまでこの調査の目的というものは、私が先ほど申し上げましたように、最低生活保障という立場の適正化と、それからなお、それにその調査の際に、保護の十分でなかったものについての保護をこの際十分にするという建前、さらには、その両者を総合いたしまして、本人の自立更生計画にまで参画するというのが調査のねらいであります。
  32. 岩間正男

    ○岩間正男君 そうすると、私の先ほど上げました交付適正にする問題と、もう一つは、患者の生活指導と、この二つの面から行われているというようなお話であったのでありますが、どうもわれわれの聞いておる話では、こういうような目的から相当逸脱して、場合によっては、どうも人権を侵害するような調査が行われている、こういうふうに聞いておるのでありますが、こういう点については、実施面でのいろいろな報告があると思うのです。これはどういうふうに厚生省の方では報告を聞いておられますか。
  33. 尾崎重毅

    説明員尾崎重毅君) 実は、九月の初めからやることになっておりまして、今ちょうどやっておる最中でございますので、最終的な結果の報告はまだ受けておりませんが、昨日、東京都でやっておる実情のいろいろな話を伺いまして、なおあらためて、その点今東京都にも照会しておるところでございますが、私も、そのときにお話ししたのでございますが、私どもとしましては、その調査の目的に従って適正調査をやるように、しかもなお、先ほど申し上げましたような、患者の特有な状態というものと考えて、具体的な配慮を——これはいろいろ具体的に書き並べてございますが、たとえば、言語態度には気をつけろとか、あるいはできるだけ面接室で面接するようにというような具体的な指示をいたしております。従って、そう地方庁で人権じゅうりん的な、あるいは非常識な取扱いをするということは、まず普通では考えられないというふうに私どもは考えております。
  34. 岩間正男

    ○岩間正男君 今のような御説明があったわけですけれども、これは、患者の心理というのは、ことに、生活困窮で病院に入っておる、こういう人の心理状態というものは、これは非常にいろいろな点から考慮さるべきものがあると思う。普通の健康人ともこれは違う。それから生活をはっきり立てて普通にやっている人の心理では考えられないような心理状態があると思う。私たち聞いたんでは、たとえば相当こまかいところまで調査しているわけですな。実際病人に面接をして、それから衣料あるいは寝具、それから所持品の一切までこまかに調査をして、中にはシーツをめくって見る、あるいは食物を入れておくそういうケースのようなものまで実際調べる、こういうことが実際行われておるということがはっきりしておるわけです。こういう点はどうなんです。これは少し行き過ぎになるのじゃないかと思う。そのほかに、中には、四十度ぐらいの熱を出している患者、これは、医者も看護婦もそういう調査をする人に注意をしたのでありますが、しかし、これが徹底していないのかどうか、そういうような病人を審査した。そうしてその結果、どうも非常に混乱を与えておる、こういうようなことが私たちの耳に入っているわけです。さらに、特殊郵便物、為替とか、書留、こういうものについて一々検査をしている。郵便物の検査などということは、これはどういうのですか、これは私は重大な問題だと思うのでありますけれども、こういうことが実際行われてないのか、行われておるのか、こういう点をあなたたちほんとうにつかんでおられるのかどうか。この前も、私は生活保護の問題で当委員会で質問したのでありますけれども、なかなかこれは本庁にいるお歴々はわからないようです、実態は。下では、あなたたちの考えておられるような、そういうここで声明されるような気持で具体的にそれが行われているかというと、なかなかそうじゃない。相当行き過ぎがあって、そのために人権侵害というような疑いのあるような問題まで引き起していると思う。そういう点で、今私が二、三の例を上げて、今度の実態調査に関連した調査のやり方について指摘したわけですが、そういう点についてはいかがですか。
  35. 尾崎重毅

    説明員尾崎重毅君) 先ほども申し上げました通り、私の方としましては、最終的にまだ調査が終っておりませんので、具体的な県からの報告はまだ得る段階ではございません。しかし、昨日そういう話を聞きましたので、さっそく今都の方に照会しておる、まあ具体的な調査の一つの趣旨あるいはやり方、そういうものについてのわれわれの方針、考え方、これは御了解願えると思うのですが、問題はそれをいかに具体的に第一線の社会福祉主事が取扱っているかという問題だと思いますので、私どもとしましても、そういう行き過ぎなりあるいは不適当点があれば、これは十分注意をいたしまして訂正するように監督いたしたいと思います。
  36. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは今のような実態は未だつかんでおられないようですが、実際は起っておるのです。たとえば、今の特別郵便物、為替、書留を実際調べる、こういうような点については大臣どうお考えになりますか。われわれとしては、どうもこれは憲法違反の疑いがあるというように考えるのですが、ここまで入っていくということになると。ところが実際はこれが行われておる、こういうことになっておる。こういう点の御意見を伺いたい。
  37. 尾崎重毅

    説明員尾崎重毅君) 今申し落しましたが、実はきのうもその話が出たのでございますが、何か特殊の府県、一、二の府県でそういう例があるという話でございました。東京あたりではそういうことをやっておりません。これは私のところに来た患者もそう申しております。従いまして、その一、二の府県につきましてはさっそく調べてみたいと思います。やっておりますとすれば、それは間違いでございます。私どもの趣旨はそういうことはうたっておりません。
  38. 岩間正男

    ○岩間正男君 そのほかにいろいろ病院の人を手伝わしておるということを行なっておる。看護婦とか医師とか、そういう人からいろいろ実情を聞く、病状なんかについて一応いろいろと聞くということもあるでしょうが、これが非常に立ち入りになるとこの問題もこれは業務上の秘密に関する問題まで立ち入るような事態が起らないとは言えない。従って、よほど運用というものは私は気をつけなければならないと思うのです。そうでないと全くこれは逆効果になる。一体、どこに調査の目的があるかということです。私が先ほどお開きしたのはこの点に関するわけなんです。大体、大臣にこの点からお伺いしたいわけですが、生活保護というものは、これは憲法に保障されたものであり、国民の権利を守るためのものであり、当然国民はこれを受ける権利があるものかどうか、それとも国家が余ったものを、残飯を犬に与える、犬というわけではないけれども、残ったものを少しでも生かしておくべく与えるというような恩恵的な慈善事業のちょっともの生えたような形でこれが遂行されるのか。これが根本的にやはり厚生の社会保障の行政に関連して重大な問題だと私は考える。従って生活保護の中で一番問題になっておる医療保護の根本的な態度、これは一体どういうふうに政府は考えて、どこに立脚して行政を進めようと考えておるのか、この点についてはっきりした意見を承わっておきたいと思います。
  39. 堀木鎌三

    ○国務大臣(堀木鎌三君) どうも岩間さん自身がすでに御承知の上で御質問なさるわけでございますが、生活保護、最低の生活を保障する、これは国家的責任においてやることである、そうして国家の義務としてやる、そこに私は日本の新しい国家の観念が出て参っておるというふうに考えております。と同時に、それだけに権利の乱用はよほど行われないようにもされなければならない、これは当然のことであろうと考えておりますが、今、実際の実施に当っての現場の担当者自身の行き過ぎた行為というものがありますならば、これについては厳に戒めたいと思います。私、実は余計なことでございますが、スエーデンに参りまして、日本の社会福祉主事に当るような人が実際に各家庭にタッチしておりますが、ほんとうに何と申しますか、お互いに非常な人間愛をもって、信頼され、親しみの深い状況を見て参りました。日本の公務員がとかくこの種の問題を扱うことにふなれであって、しかも何と申しますか、行き過ぎた監督までしておるということは往々にしてあることなんであります。十分注意をいたしますと同時に、実際問題の調査にも誠意をもって当りたい、こういうふうに考えております。
  40. 岩間正男

    ○岩間正男君 ただいま大臣のそういう御説明があったのでありますが、どうしてもこの社会保障の問題は現実的に行われておる姿を見ましても、どうも恩恵的に、与えておるんだと、そういう考え方が残っておるんじゃないかというふうに考えられるわけです。ですから生活保護を受ける人は当然の自分の権利だというような形で、たとえばそれを要求するというような場合に、どうも絶えず抵抗にぶつかるというようなことで、非常に肩身の狭い思いをしておるというのが現状だと思います。民生委員なり福祉主事の現在のやり方の中で、中にはほんとうに温い気持で接しておる人もないとは言えません。しかし非常に少いのじゃないか。これは九牛の一毛といっては語弊があるかもしらんけれども、非常に少いじゃないか。実際はどうも恩恵を与えるんだというような形で実は非常に被保護者に対して冷酷になっておるのが最近の姿です。  私はここでお聞きしたいのですが、ただいまの御説明の中で、最低生活を保障するというお話がありましたが、一体現在の予算、現在の状況で最低生活が保障できるとお考えになっておるかどうか、この点はどうです。私はどうもこれは最低というのも二つ言葉があると思う。このごろ使っておる最低生活賃金というような意味の、つまり人間として生きるためにはこれだけ必要だというような最低と、それから最低というのはどん底ですね、どん底の末の末、やっと生きておるだけというような形での最低、この言葉がしばしば混同されておる。それを最低生活ということで、実際はとにかく人間としてある当然の水準の生活というものをやっておるんだということとはき違えられておるような傾向があると思うのです。これは厚生大臣としてどういうふうにお考えになりますか、現状の予算をもってして。これは国立病院でも何でも私たちときどき患者の人たちにもいろいろ触れるのですが、一体あの生活が日本国民の憲法に保障された最低の生活があの中で保障されておると、こういうふうにお考えになりますか。
  41. 堀木鎌三

    ○国務大臣(堀木鎌三君) 最低生活がどういうものだということは非常にむずかしい問題だと思います。観念的には、国民経済なり国民の富の状況が変って参ります。それに伴って物事も判断できるのでなかろうか。要するに現在の日本の社会経済の状況を諸般から見て物事を考えて参らなければならないじゃなかろうか。私ども現状が決して満足すべきものだとも考えておりませんが、日本の経済の状態、国民の富の状態が進むにつれて改善いたしたい。現に三十二年度予算におきましては、従来の生活保護に対しまして金額の増額をお願いし、御承認を得たような次第でございます。そういうふうに考えて参りたいと思っております。
  42. 岩間正男

    ○岩間正男君 まあ私たちの見るところでは、最低生活などというものではなくて、実はどん底生活ということだと思うのです。ただいまのお話では、三十二年度予算では、とにかく六・五%くらいの生活保護費の増額をやった。単価ではなるほどそうです。しかし人数はどうかというと、人数は御承知のように約一〇%切っておるというふうな実情です。従って総額では昨年度予算に比べてこれは生活保護費が四億くらい昨年よりマイナスになっておるというのが実情です。そうすると神武景気というようなことが一つの非常に今障害になっておる。神武景気で生活は上っておる。生活保護は適用を受ける人が少くなる、そういうふうな、つまり机上の数字によって実は一〇%も削られておる。そうして総額的には落ちておる。単価だけ上げたのでそれだけは宣伝されておりますけれども、これは実態には合わない。そういう形で大臣も今認められましたように、現状では満足だとは考えていない、こういう形であったのでありますから、当然これがどこにいくかといえば、これは被保護者のところにいくわけです。当然今の形でですよ、長い間のたとえば結核療養の場合なんか、果してこれは自分の生活を守り、そうして自分の健康を回復するというようなことがあれだけでできるかどうか。どうしてもこれに対してこれはいろいろな問題が当然ここから発生してくると思うのです。従って、きのうの文部省のときにも起ったのでありますけれども、予算の絶対的な不足ですね。この問題が実は会計検査院から指摘されておる問題と非常に関連してきておるのです。会計検査院の立場からしますならば、当然現行法できめられたワク内の数字のぎりぎりを締めていく。従って六〇%の不当支払いがある、こういうことで指摘をしておる。その結果がこのたびの実態調査、一斉調査というような形になって、そうして実は相当過酷なところまでまあふとんのシーツまでひっぱがして見るあるいは書留やそういうものまでこれは調べる、こういうようなところにいっておるのじゃないか。これが与えるところの影響というものは、私は非常にむしろ逆効果になっておる面があるというふうに考えられるのでありますが、一応まあ会計検査院の主張する立場はそれなりの範囲内においてはわかるわけです。しかしこれを大きな政治の立場から考えるときに、そのような低いレベルのものを押しつけて、そうしてそれでもってますではかったようにぎゅっと政策を前進させるために、どうしても今のような過酷に見えるあるいは人権侵害に見えるような調査までやらなければならない。その結果が非常に療養中の患者に対して心理的に悪影響を与えるというのは、これは当然だと思うのです。何といっても精神的な安静がこれは健康回復の第一義的な条件だとわれわれは思う。特に長期の結核患者の場合なんかは全く自分のこういうような身辺の問題で、ふとんがひっくり返されるというような形になって迫られてくると、それがやはり非常に影響してくるだろうと思うのです。この安静を失うことによってやはり実は療養がおくれる、こういう事態も私は考えられてくると思うのです。あるいはまた医者や看護婦がそういう調査に協力するというようなことで、何かやっぱり今までお互いの患者とそういう病院の関係者が保っていたところのこのあたたかい関係というふうなものは非常に冷くなっていく面もあるじゃないか。そういう点を一体考慮されておるのかどうか。私はこういう点から考えますときに、今の一斉調査に起っておりますいろいろの諸問題について十分な考慮を払うということを、これは大臣は言われたのでありますけれども、同時にこの問題の中に当然起っておるところの根本の原因は何といっても基準が低い。そうして予算も不十分である。そういう形では、現状ではなかなかやつていけない過酷な条件のもとに、これは療養を強いられている。従ってこれを何とかカバーするような形でやっていかなければ、なかなかやっていけないのじゃないか、こういうふうに考えるのですが、この点に対するところの見解はいかがでしょうか。  この点が明確にならなければ今この指摘された問題を形式的に数字の上からこうだああだということだけをやったのでは、これは実際の政治にならないようにわれわれは判断するわけです。どういうふうにお考えになりますか、大臣の所見を伺います。
  43. 堀木鎌三

    ○国務大臣(堀木鎌三君) 最低の生活を保障いたしますという法文は空にあるわけではございません。やはりそれは実体に裏づけになるところの国民経済なり社会の状態なりというものが一つの基準になります。それからいろいろな法律から標準があるのでありまするから、私は現在としてはその法のもとに運用される、適正な運用をされるということが必要である。岩間さんの御指摘のような個々の問題において、実際の状態がどうでありますかは存じませんが、一つ一つの問題が間違っておれば、それは行き過ぎとして直すべきであるというふうに考えております。予算上の処置におきまして私が三十二年度予算をあげましたが、何も実際生活保護対象になり得る人をはずして予算の総額を削減しておるわけではないと思っております。事実保護対象になるべき人があらば、それに対して適切な予算を盛るのが私どもの責任である、当然の責務である。こういうふうに考えておるのであります。しかし国民生活自身が、一般のレベルがもう少し上っていくというふうな国民経済の上から許す社会的条件ができれば、これは当然保護世帯についてもそれに応じまして考えるべきであるということは私どもとしても当然考えておるのでありますが、個々の問題につきましては、御指摘のようなことがあらば、早速直したいと思いますが、全体の議論としては予算が少いために生活保護対象になるべきものをしない、あるいは支給すべき金額が非常に厳格すぎて非常に少い額を査定しておるというふうなことは目下のところ考えられないのじゃなかろうか。しかし経済の情勢が変化いたして参れば、それに応じまして私どもはもしもそれからくる運用上の誤まりがありますれば、私どもは是正するにやぶさかなものではないと、そういうふうに考えております。
  44. 久保等

    ○久保等君 今のに関連して。ここで指摘せられておるような、今の岩間さんの質問の問題なんですが、前の決算委員会でもやはり問題になったところなんです。しかし私はやはり現状のままでは、これは会計検査院がいかに検査で多数の項目をあげて国会に報告して参りましょうとも、年々どうもこういった問題が減少するとは実は考えられない。問題は単にその被保護世帯そのものが非常に協力しないとかなんとかいう問題でなくて、やはり私は実体そのものの中にあるのじゃないかと思う。特に私どもやはり現在の保護世帯に対する最低生活の保障という問題、金額的にいっても非常に微少すぎるのじゃないかと、今大臣が一般国民の生活レベルからいって現状よりもさらに大幅にというか、引き上げることが非常に困難だと言われるのですが、しかしおそらく東京都の場合を例にとってみても、保護世帯、五人家族としても、おそらく九千円にも一カ月ならない——九千何百円といった程度じゃないかと思うのですが、未亡人一人子供三人老人一人といったような世帯の場合ですと、八千円台じゃないかと思うのです。そうすると、一人二千円にはるかに満たない金額で最低生活保障だと言ってみたところで、これは全く実は私はナンセンスじゃないかと思うのです。いわゆるこういう問題こそ単に私は会計法規上なりあるいは手続的に非常に誤謬があるとかなんとかいう問題よりも、政治そのもののやはり問題じゃないかと実は思うのです。会計検査院も非常に項目を三十年度の場合についても二十数件にわたってあげて指摘はしておるのですが、私もやはりこの問題の解決はもう少し何かこの最低生活の保障、即ち最低生活費の基準額の引き上げについて政府が積極的に考慮して参る必要があるのではないか。そうでないと、これは医療扶助なんかの場合にも、今のような低い、最低生活費を除いた残余の収入はこれはもう全部一切あげてみずからの医療負担に実は帰せられるんだというような状態では、百年河清を待つのじゃないかという気がするのです。一体、大臣、三十二年度で六・五%ばかり最低生活費の基準額の引き上げを行なったのですが、これはもう全くスズメの涙というよりもまだはるかに小さいものであって問題にならないと思いますし、私は、これは厚生大臣が定めるということになっているのですから、厚生大臣の決意にもかかっておる問題だしするので、三十二年上皮で若干上げたというものの、予算の総額では、さっき岩間委員の言われるようにむしろ減額されたというような実情の中で、これに対する熱意が基準額の引き上げによって表われておるとは実は言えないと思うのです。従って、さらに最低生活といっても、今日の最低生活が一人当り月に千九百円前後だなんていうのは、これはどう考えてみたって私は全く話にならないと思うのですよ。法律も、すでに生活保護法が昭和二十五年に制定せられて約十年になんなんとしておるのですが、やはりこの生活保護法の条文を見てみると、文化的で健康的だ、それに必要な最低限度生活を保障するのだということになっているのです。そうだとすると、これは非常に条文はりっぱな条文があるし、生活保護法もすでに制定せられて十年近くもなろうという情勢の中で、東京都のしかも生活水準が一人平均千九百円から二千円に満たないという状態では、これはどう考えてみても、私は、やはりここらを何か政府はもう少し積極的に努力する余地があるのじゃないか。これはそれこそ党派を問わず、この問題について政府として考えるべきじゃないか。一つ厚生大臣にこの点についての私は  お考え方をお伺いしたいと思うのです。特に、本日あたり、明年度予算編成の大綱等についてのお話し合いがなされておるという話も漏れ聞いておるのですが、こういう点についてどうお考えなのか。これは私、こういう状態のままで放置するならば、会計検査院がいかに努力をせられても、また政府当局が先ほど来言われているように、調査を厳重にするという、その調査の正確な把握は、これはけっこうだと思うのです。しかし、もし基本的人権の侵害とも思われるような過酷な形で、しかも予算の総体的なワクを何とか保っていくための根拠としてそうい調査を集めようとするならば、これはまことに私は人道上の問題としても看過できないのじゃないかと思うのです。根本的には、やはり食べるためには何としても最低基準額の引き上げについて、もう少し熱意のある努力をする余地があるのじゃないかと考えるのですが、大臣はいかがですか。
  45. 堀木鎌三

    ○国務大臣(堀木鎌三君) 私は、本来厚生行政をあずかっている者としては、今の九千円とか一万円足らずのところとか一万円ちょっと出たところとか、いろいろ給与の平均の関係やその他で狂って参ると思います。厚生大臣として、生活保護世帯の状態がもっとよくなるようにということは、これは私は当然の基本的な線でなければならぬと思う。ただ、その場合に、客観的な諸条件を全部無視するわけにいかないという御説明をしただけであって、私自身が生活保護世帯に対して熱情を傾け、その生活向上を希求する政策をとっていくということは、これは基本的態度で当然あるべきだ、こういうふうに考えております。いろいろなことを言うから、お前は生活保護世帯生活向上については熱意がないんじゃないかというふうな御疑問を持たれたかと思いますが、決してそういうふうな考え方で言っているわけじゃございません。
  46. 久保等

    ○久保等君 私別に大臣の熱意を疑っての質問を申し上げておるわけじゃない。当面の問題としてもう少し生活費の基準額の引き上げについて単なる希望的な気持、あるいは単なる何とか一つしたいのだという意味じゃなくて、もう少し具体的に一歩踏み出して、確かに低いと、これはもう私万人の認めるところだと思うのです。従って大幅に引き上げることは別としても、さらに近い将来においてもう少し何とかしたいのだというお気持でも持っておられるかどうか。抽象的な言葉のやりとりではなくて、現実に三十二年度で六。五%上げたのですが、これはしかし予算総体から見ればむしろ減額されたという状態にあるので、適用人員の問題等についても私はやっぱり問題があると思うのですが、それはまあここでは抜きにして、基準額のもう少し引き上げについて早急に何とか一つ十分に考えていきたいというようなお気持があるかどうかということが、まあこの検査報告書に対する私は最大の最良のまた答えでもあると思うのです。そういう立場から私質問を実は申しておるんですが、いかがですか。
  47. 堀木鎌三

    ○国務大臣(堀木鎌三君) 私どもとして一番今考えておりますことは、やはり岸内閣として貧乏の追放ということを掲げている以上は、私ども閣僚はこれらの問題につきましては一生懸命になってその解決策に努力するのが私どもの責任だと、こういうふうに考えております。
  48. 久保等

    ○久保等君 ことしになっての生活保護者の数か何か、厚生省として把握されております人員はどの程度になりますか。
  49. 尾崎重毅

    説明員尾崎重毅君) 一番新しい統計が五月まででございますが、大体漸減の傾向をまだたどっております。漸次減少しておる傾向でございます。具体的に申し上げますと、昨年の十一月では総保護人員は百七十二万人でございましたが、ことしの三月に至りまして百七十一万人、五月の数字が百六十六万人というようになっております。なお、最近の情報によりますと、だいぶ職業安定所の求人関係状況が悪くなってきたというようなことで、この漸減の傾向が果してどうなるかということは私どもまだはっきり見通しはつかないわけでございます。
  50. 久保等

    ○久保等君 ちょっと、ことしの三月の当委員会でお伺いしたときには、昨年十月現在での数字が百五十三万だというお話だったのが、今十一月ではあったとしても百七十二万といって一カ月くらいでぴんと飛び上っているんです。従って委員会としての最近承わった限りの数字では百五十三万という数字を伺った。漸減の方向にあるとしても百六十六万という数字は漸増の傾向にあることになるのですが、その数字的ななにはどういうことになっているんですか。
  51. 尾崎重毅

    説明員尾崎重毅君) この前の委員会報告と違いまして恐縮でございます。実は、この前は生活扶助の人員だけを申し上げました。昨年の十月では百五十三万八千でございます。それがやはり漸減の傾向でございまして、ことしの三月で百五十万、五月で百四十六万ということになっておます。今私が申し上げました数字は被保護総実人員でございます。これは医療扶助を受けておる人が医療扶助だけを受けておるという場合には、それは生活扶助の人員には入ってきませんが、被保護人員の中には入ってくる。そういうふうに生活保護には七種類の扶助がございますが、生活扶助以外の単給の扶助を受ける人員もございますので、従いまして百七十万というような数字は実際にどれか扶助を一つあるいは一つ以上受けておる実際の人員を指すわけであります。
  52. 岩間正男

    ○岩間正男君 今の漸減というものと調査関係ありませんか。最近調査条件が過酷になってきて、そういうことで実際は資格がないということで切られる。こういうことで統計的に作ることはできるだろうし、ある場合には統計に合せてそういうことで今度は調査をやる。調査が実際は漸減のそういう傾向を作る。そういう一つの資料的なものを作るてだてとなる、こういうこともあり得るのではないか、どうなんですか、その点は。
  53. 尾崎重毅

    説明員尾崎重毅君) 生活保護の実施は、各府県の保護の実施機関が実施するわけでありまして、これは法律に基いて適正に実施しなければならぬ。この三、四年前までには実は非常に乱給の問題が世間の問題になったわけであります。従いましてここ二、三年来最底生活保障ということは適正化しなければならないということを私どももやかましく申しております。そういうことで保護すべきものを保護しないというような、あるいはわれわれが何かのワクを示しまして、そのワクの中であるいは端的にいいますれば、予算の中でまかなえというようなことは、これは絶対やっておりません。
  54. 岩間正男

    ○岩間正男君 この問題は久保委員からもお話があったのでありますが、基準の問題だと思います。基準の問題と会計検査院指摘の問題というものは、非常にこれは深い関係があるわけです。大体厚生省ではこのような現行の生活保護適用者、それから医療保護適用者、こういう人の調査をやっているようですが、たとえば東京で五人家族で九千円何がしという生活ができるかどうかという、こういう調査はおやりになっていますか。実際私はこういう調査をやってもらいたいと思う。こういう調査をやってみれば、果してできるのかどうか、人間がちゃんと生活を維持してやっていくということができるのかどうか、この問題は、やはり根本的な問題を把握する科学的な、こういうような一つの調査をすべきだと思うのですが、こういう点について大臣はどうお考えになりますか。あるいは事務当局はこのようなプランをもっておるのかどうか。
  55. 尾崎重毅

    説明員尾崎重毅君) 生活の実態調査というのは確かに御指摘のように、国が最低生活水準をきめる場合には大事なことだというふうに私どもも考えております。それで現在その生活実態に関します調査は、総理府の家計調査、それから農林省農家経済調査、そういうものもございますし、それから私どもは私ども独自の立場から被保護者の生活実態調査というのを毎年やっております。その結果の数字を見ますと、これは渡し切りの金の中で生活しろということですから、若干調査の性質からいってお答えになるかどうかわかりませんが、若干やはり基準よりは高くなっております。しかし大体においてそのワクの中で一応やっておるということがいえると思います。
  56. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは私は厚生省としても科学的なそういう調査を実はやってもらいたい。その方が実は大切なんじゃないか。今の生活実態調査といっても、今言ったような九千円の金を渡して、それからほんとうにこれは動物実験でありませんから、人間の生活調査になるから非常にむずかしい問題を含んでいるかもしれないけれども、大体結論が出るのです。そうしたら、こういう基準ではやっていけないということは常識だと思うのです。今日それをとにかくいろいろな総合的立場とか国家財政の立場とか、こういうような観点から、どうしても現在これ以上は出せないのだというようなことでワクが作られ、このワクを強行していこうというのが今の政治の実体じゃないか。  私はこういう点から最後にちょっと申し上げたいのですが、やはり今の調査の実態を見ていますと、大衆を信頼していない。国民を信頼する立場に立って、一体この調査がやられているのではなくて、実は国民を頭からどうもこれは違反しているのだ、必ずこれは超過補助を受けているのだ、こういう疑った立場からこういうような実態調査がなされておる。そうしてまた実際の運営の面から見ますと、そういう疑いをもたれるような行き過ぎがたくさんあるように思う。これでは私はやはり非常に根本的に矛盾があるのじゃないか。最低生活というものがとにもかくにもやっていけるところの、まあ人間らしい生活が一応やっていけるという基準の上に立って、そうしてこのような厳正な法の実施が行われるのであったなら、私は会計検査院がこれほど毎年にわたって指摘しなければならないような事態というものは起らないと思う。国民というものはそんなに……大体自分の生活が満たされ、そうしてほんとうに国家の保護というものの中で生活ができる立場から、どうしてこれを破ろうか。こういうようなことを望んでおる人というのは、よほどのこれは悪質な者でない限りはないわけです。普通の国民はやはり生活保護なんか受けないところに早くいきたいというふうに考えておるのが事実だと思う。やむを得ず受けておるというのが実情だと思う。ここに政治の貧困があるのでありますから、どうしても私は大局的な立場から、もっとあたたかい、国民を信頼する立場から、この行政を進めるということが非常に重要じゃないか。  こういう点から私は対照的に考えられますのは、これはかつてわれわれの記憶では大正十二年だと思う。大震災がありました。当時犬養木堂氏が逓信大臣をやっておりましたが、郵便貯金の通帳の原簿がほとんど焼かれたような事態が起った。このとき犬養木堂氏はたしか、預金者は申告しろ、その申告通り支払いをしろ、こういう通達を出した。ところがこれに対して部下の属僚は、そういうことをやったら非常に不正をやる人があるのじゃないか、そういうことをやったら大へんなことになるのじゃないかと言って注意をした。ところが木堂氏これに対して笑って、それはお前たちの事務的な考え方だ、もっと国民を信頼しなくちゃいけない。かりにそういうものが二、三あったにしても、しかしそのことによって生活は潤うのだぞ、それによって国民生活は向上するじゃないか、そういう大局に立って初めて政治というものは行われるのだ、お前たちのように重箱のすみをようじでほじくるようなやり方で、そうしてぎゅうぎゅうと国民のあら探しをやるというような格好では、ほんとうの政治はできないのだ、こう木堂氏はたしなめたということを聞いておる。私はこの問題を実は検査報告書を読んでいながらふっと頭にきたのは、これと対照的な木堂氏の政策である。どっちに一体生きた政治があるか、大衆を信頼するという立場に立ってこそ、初めて公正な社会保障の行政というものが行われるのだ。これは堀木厚生大臣には、何といいますかな、釈迦に説法かと思うのでありますが、こういう立場に立って、私はもう少し厚生省関係者、福祉事業並びに生活保護その他の社会保障に関係する人たちを指導していただきたい。こういうことを私は要望したい。  最後にこれと関連しまして、たとえば先ほど申し上げました行き過ぎの問題でありますが、その中で、一応厚生省の当局から、手紙の検査がいまだに行われておるということは工合が悪い。憲法違反の疑いがあるというので注意はされたが、しかし実質的にはこれはまだやられておるということを聞いておる。あるいは本人が知らない間に、もう差出人、受取人、それからその中のいろいろなものが調べられておる。それによって幾分でも保護を緩和しよう、減少させようというようなことがやられておるということを聞いておるのです。こういう問題についてはこれは厳重にやはり警告を発してもらいたいと思うのであります。  それからそれに類似した、先ほどあげましたようないろいろな行き過ぎがあると思う。基本的にはやはり憲法に保障された、当然人間の生きる権利、この権利は当然受ける権利があるのでありますから、これは被保護者の立場から考えて、こういう問題を解決していくということが非常に重要だと思うのです。今の実態調査の中では、とにかく先ほど私が指摘しましたように、病人の心理の状況について非常に不安を与えておるという点、それから医療関係者と患者とのやはり相互信頼の立場を非常にこわすんじゃないか、あるいは福祉事務所の実際関係者が非常にこのような調査のために労働過重になって、本来の福祉の事業というものが果されなくなってきておるというような実態も起ってるんじゃないか。そのために非常に悩んで、現に山形県あたりでは現場におる福祉主事が自殺したということを聞いているのであります。そういうような実態がこれはあるのでありまして、私はこの点について新たにこの問題を検討して、これに対する適切な通達なり何なりを発してもらいたい、こういうふうに考えるんですが、いかがでございましょう。
  57. 堀木鎌三

    ○国務大臣(堀木鎌三君) 相互の信頼が行政の運用上一番必要だというお説に対しては全く御同感でございます。実際そういう点が基礎になりませんと、円満なる運用、適正なる運用というものが私はできなくなる。で、お互いの信頼関係基礎であるという点はごもっとでございます。と同時に現在の保護世帯に対する調査の行き過ぎがあったために、制度の基本について何か疑いがある、疑いを持たれるような行政というものは、私どもとしてもはなはだ遺憾に存じております。具体的に調べまして、警告すべきものにつきましては厳重に警告いたしたい、こういうふうに考えております。
  58. 久保等

    ○久保等君 実は厚生省に一つお伺いしたいと思うんですが、この国会に対する説明書の中を見ますと、補助金あるいは交付金、まあそういったものに対して、会計検査院指摘まことにごもっともであって、金額の面については国庫に返納させるという項目が非常に多いんです。数十項目あると思うんですが、一体これについての事務的な処理はどういう状況になっておりますか。あまり多くてこの各項目について全額ではないにしても、何十パーセントかずつ返納されてるというような項目で、あまり説明の煩にたえないということであれば資料としてお出し願ってもけっこうだし、簡単に御答弁願えるならここで御答弁願いたいと思う。  それからつけ加えて、これは二十九年度の場合についても、非常に多数の項目にわたってそういう実は説明がなされておるんですが、事務的にどういう一体状況におかれておるのかお尋ねしたいと思うんです。
  59. 山本正淑

    説明員山本正淑君) ただいまの御質問の点でございますが、これは全体の数字でございますが、よろしゅうございましょうか。
  60. 久保等

    ○久保等君 ええ、よろしゅうございます。
  61. 山本正淑

    説明員山本正淑君) 三十年度の分につきましては、返納命令を出しました件数が五十七件でございました。金額にいたしまして約三千五百万円でございます。それに対しまして今日までのところは返納済みが四十九件の二千六百万円、それから返納未済が八件で、約九百万円、かような状況になっておるのでございます。
  62. 久保等

    ○久保等君 それではちょっとその内容について、これはまあ資料としてあとでお出し願いたいと思うんですが、そのことをお願いしておきます。  それから二十九年度のものについては、これも今程度のことだったら御答弁願えると思うんですが、おわかりになりますか。
  63. 山本正淑

    説明員山本正淑君) 二十九年度につきましては、批難件数が五十三件で金額が三千六百五十万円でございます。そうしてそのうちで返納免除、これが三件ございまして、返納指令を出しましたものが三十五件で千六百万円、それに対して返納済が三十二件、千二百万円、かようになっておる次第でございます。
  64. 久保等

    ○久保等君 それはいつ……現在ですか。
  65. 山本正淑

    説明員山本正淑君) 三十二年八月三十一日現在でございます。
  66. 久保等

    ○久保等君 両方とも……。
  67. 山本正淑

    説明員山本正淑君) そうでございます。詳細はなお後刻御報告いたします。
  68. 相澤重明

    ○相澤重明君 生活保護の問題に関連して厚生大臣にちょっとお伺いしたいんですが、例の中国から日本に里帰りにお帰りになった方が引き揚げたくとも実は金もない、あるいは船も乗れないというようなことで非常にお困りになっているということを聞いておるわけですが、一体何人くらいがお帰りを希望し、またその生活実態はどうなっているかということを一つ御答弁をいただきたいと思うのです。
  69. 堀木鎌三

    ○国務大臣(堀木鎌三君) 今手元に正確な数字を持っておりませんので、数字の点はあるいは少し違うかと思いますが、大体八百人くらいじゃなかろうかと記憶いたしております。それで大体日本に滞留される期間がすでに迫って参りました。非常に帰国について切なる御希望がありますので、目下それについて中国側の意向もございますので、にらみ合せて早急に決定いたしたい、こういうふうに考えております。と同時に実は生活保護対象——実際にこっちにお帰りになって生活保護対象になるべき家庭については当然適用すべきではなかろうかというふうに考えてやっております。
  70. 相澤重明

    ○相澤重明君 非常に実は生活問題と、もう一つは帰国についてのやはり不安を持っておるわけであります。そういう点について今の大臣の言われたように早急にこれは手続き等も進めて困難のないように一つしていただきたいとこう思うのです。それについては了承しました。  次に、ここの百五ページの七百五十三から七百五十九号までの性病予防費補助金という問題があるわけです。このことについては先ほど御説明をいただいたのでありますが、たとえばこの七百五十三号に関して「補助対象外経費を含めたり事業収入の一部を脱漏していたもの」、こういうようなことが、大体ずっと各号がそうなっているようでありますが、一体政府は性病予防について根本的にどういうふうにお考になっているのか。まあ私どもが見るというと、せっかく売春禁止法というものを作っておきながら、その予算が少い、従って各都道府県においてこの予防費というものが非常に足りないためにどうしても無理をする、こういうような点が一つあると思う。  いま一つは、果して来年の四月以降この売春禁止法というものが実施されるのか、これが確実に行われるのか、あるいはまたその間に業者等の方々の陳情によってあるいはこれを延期をするという考えでいるのか、あるいは何か変った名称というものでその点取扱いをするのか、こういう点で非常に疑問が出ているわけです。で、厚生大臣就任の際にだいぶそういう点については法の実施をするというふうにお話になったようでありますが、聞くとどうも業界には非常に混乱がきておるんです。どうも私どもが聞いた話では、いやこれは政府に頼めば法は実質上延期をされるのだ。だからやめる準備をする必要はない、こういうことを言って、資金を集めておるといううわさも聞いておるわけです。一体今七百五十三号からの問題を見ると、いろいろなことが書かれておるが、根本の原因はやはりそういうところの問題をどういうふうにされるかということが明らかにされなければ、この問題も解決されないと思う。そこで私は大臣にこの売春禁止法という問題をどうするのか、その点をお聞きしたいと思います。
  71. 堀木鎌三

    ○国務大臣(堀木鎌三君) 売春禁止法につきましては、これはもう私は国会において全会一致をもって成立した法案をわれわれは忠実に施行するのが政府として当然の責務だ、こう考えておりますので、今御指摘のように厚生省を預かりますと同時に、そういう趣旨を言明いたしました。実はむしろ私自身が責任者としてこう言っているのに、いまだにそういう御質問を受けることが非常に残念だ、こういうふうにすら思っておる次第でございます。既定方針につきましては、全然変更を見ておりません。ただ長い間の日本の封建社会の慣習としてああいうものがありました場合に、あれだけの変革を起しますようなときには、これは相当いろいろな、いわばレジスタンスがあるのもまたやむを得ないのじゃないかというふうに考えております。と同時にできるだけ法の実施を円滑に移行させたいということを考えてせっかく努力いたしておるところでございます。それから性病につきましては、実は最近は医学の進歩及び薬品の新しい出現によりまして、製造によりまして、結核と性病に対しては非常に最近は進んでおるのではなかろうか、そういうふうに私諸般の統計を見て考えている次第でございますが、これらにつきましても、特に売春防止法と関連いたしまして、何と申しますか、ああいう人が病気をなしにして、世の中に出るようにいたしたいということは、どうしてもいたしたい、こういう考えであります。と同時にひとり寒防疫の対象の人のみならず、社会全体としても漸減しておりますから、この際拍車をかけて、これがなくなるような方向に厚生行政を持って参るのが当然だ、こういうふうに考えておるような次第でございます。
  72. 相澤重明

    ○相澤重明君 大臣の御説明はわかりましたが、具体的に業者間でも転業しようというような人があっても、中に延びるという考え方を持っている人は、先ほど申し上げたように資金まで集めて猛烈な一つ国会運動をやろうというようなところにまで来ておるために、かなり転業をしようという人たちの迫害をするようなところまで出てきておる現状なんです。そういう点を考えていきますというと、政府が転業をする人のためのいわゆる生業の資金援助であるとか、あるいは融資の問題であるとか、あるいはこれらのいわゆる婦人そのものに対する適切な対策というものを、予算の面においても、そういう指導を各都道府県にも行わなければ、これは実際の話が絵にかいたもちになってしまう。いくら法律でやろうと言ったところで、実際にそれが具体的な問題を指示していかなければならない。そういう点について大臣は三十三年度予算編成期に当って、そういう点をお考えになっておりますかどうか、この点を御答弁をいただきたい。
  73. 堀木鎌三

    ○国務大臣(堀木鎌三君) お説ごもっともな点があるのですが、ともかくも四月一日から廃止するとあの法律はなっておるのでございます。今御質問のあるように実績はわれわれの予期の通りに出て参らない。そのうちには先ほどまあレジスタンスがあるのもやむを得ないと言ったのですが、しかし私どもからいえば、もうああいう法律ができたのですから、毎月その実績が少しでも上ってくることを希望しないと、四月一日の移行に体制ができにくい状態になる。御指摘のように幾らそう言っても施策が伴わなければ困るじゃないかというお話のように、私参りましてからすぐ推進対策委員と相談いたしまして、また閣内でも相談いたしますと同時に、事務に命じまして各府県の担当者に集まってもらいまして、そうして対策委員を設置し、対策本部を作るというふうなことを強力に地方庁に勧奨いたしております。ただ婦人相談員なり婦人相談所なり、これはやや進んでおりますが、ところが保護施設につきまして——収容施設につきましては、地方の任意設置になっているものですから、なかなか進まない。と同時に実情からいえば、なかなか保護対象の御婦人が出てこないというふうな問題がありまして、何とかこれらを実績を上げて四月一日に円滑に移行するよう強力に進めて参りたい、こう考えております。今転業資金等についてお触れになりましたが、大体四月一日は延期しないこと、業者に対する廃止補償的なものは考えておりません。ただ長い間の社会慣習から転業をしようという方も事実あるのであります。そのうちには、単に資金的な支障のみならず、いろいろな支障がないではないわけでございまして、そういう点については資金面も含めまして実際上お世話できるものはできるだけのことをしよう、しかし転廃業の補償というふうなことは、今政府としては全然考えていないというところでございます。
  74. 相澤重明

    ○相澤重明君 今の点については、やはり若干見解の相違の点もあろうかと思うのですが、政府が全部を補償するといっても、これはなかなかできないでしょうが、少くとも私は政府の一貫した政策の中で、やはりこれらの転廃業を行うという問題については相当やはり慎重に考慮をしてやらなければならぬ問題ではないか。さもないと実質上これは結局はまたそれを延ばさせてしまう、こういうことになるおそれがあるのじゃないか。この点をやはり法の精神というものを生かすように私は最大の努力をしていただきたい。そうして国民がなるほど国会できめられたこの売春禁止という点は、政府も着実に実施をしてくれたというところを私は見せていただきたい。十分そういう点についてどういうことを計画し、どういうふうに各都道府県に指示するかということの構想がきまったなら、資料を一つ御提出いただきたい、こう思うのであります。  厚生大臣、時間がないようですから、あとは一問だけお尋ねをいたしたいと思います。それは七百六十二号の簡易水道整備費補助金経理当を得ないもの、これは新潟県の問題でありますけれども、簡易水道の整備に対する補助金の扱い方でありますが、これは会計検査院にも先にお尋ねをしておきたいと思うのですが、これは実際には村で——刈羽村ですか、ここが行なっておるようでありますが、これは組合水道というようなことがあったかなかったか、この点だけ端的に一つお答えいただきたいと思います。
  75. 石渡達夫

    説明員石渡達夫君) これは村の経営でございます。
  76. 相澤重明

    ○相澤重明君 厚生大臣にお尋ねをしておきたいと思うのですが、この簡易水道の整備については、どこの土地でもこういう形が行われるわけでありますが、特に配水管だけしか実は工事費というものは出ないわけです。国が四分の一しか補助をしない。従って引っ込み線、じゃ口をひねって水が出るまでは、これはいわゆる地元の負担、受益者負担だ。そうしますというと、当然この地元の負担が、いわゆる村なり町内の起債の中にこういう問題が含まれてくる。これは、大蔵省に対して、そういう起債の認可条項というものを出せるわけなんですが、そういう際に、ともすると、起債の申請と国並びに県の助成金を得ながら、これが村営なり町営でなくして、組合水道という肩がわり、トンネルになる場合が多々ある。こういう点について、今まで調査になったことがあるか、あるいはそういう事例がなかったか、この点をお答えをいただきたいと思います。
  77. 堀木鎌三

    ○国務大臣(堀木鎌三君) あまりつまびらかにいたしておりませんから、すみませんけれども、事務の方から答弁させます。
  78. 尾村偉久

    説明員(尾村偉久君) ただいまの御質問のうち、最初の配水管までということでございます。これはむろん水源から始まりまして、要するに各戸の直接の引っ込み線というのは、これは水道に関する限り全部個々の負担ということになっておりまして、ただいままでのところはやむを得ないことといたしております。で、なおトンネルで、村で村営として受けながら、結局においては組合というようなことになってないかという御質問でございますが、現在のところ、私の方で調べましたのは、さような不法な目的を持ってやったということは、現在までの調査の結果ではつかんでおりません。しかしながら、いろいろなさような可能性もあるかと思われますので、幸い先般の国会で御通過を願いました水道法というのが、いよいよ十二月から施行になりますが、従来明治二十三年にできました水道条例で、古い法律でやっておりましたので、いろいろなことも起り得る可能性がありましたので、今度は簡易水道までかけまして、厳重にさようなことがないように、それから村が幾つか集まりまして、組合立でやる場合には、それ相当な、適切な、別にいろいろ規制ができるようになりましたので、今後もさようなことは一そう起らぬようになると、かように信じております。
  79. 相澤重明

    ○相澤重明君 大臣がお帰りになるから、ちょっと、閣議にでも出ることだと思うからお尋ねをしておきたいと思うのですが、環境衛生法の問題です。特に全国の知事会、関東の知事会においては、厚生省がふろ銭の値上げの問題を御論議になったのに対して反対の意思を表明をされておるわけです。これに対して厚生省は、一体ふろ銭十七円、あるいは今までにかつてない中人なんというのを作って、いわゆる中間の例を作ったわけですね。昔は大人と子供ということにきまっておったのが、今度は中人ができた。そういうようなことまでしながら、しかも多くの人はふろ銭値上げ反対ということを言っておるにもかかわらず、厚生大臣の方で十七円とか十二円とかいうようなことをお示しになっておるように思われる。こういう点について、どういうふうな機関でそういうことをきめ、また都道府県にもそういうことを指示してゆくのか、環境衛生法の発足とともに、そういう問題についてのお考えを一つこの際出しておいていただいて……。おそらくこれは重要問題になると思うのですよ、私は。これは閣議でもよほど討議をして、そうして臨時国会に私どもはこの問題を出してもらわなければ、納得のゆく問題ではない。  いま一つは、ふろ銭の問題を出しましたが、環境衛生法の実施について、十月一日ですか施行条例を出すとかなんとか言っておりますが、具体的にどういう委員会を作る——たとえばこれは新聞の発表ですからわかりませんが、旅館業については二通りの旅館業の運営の点を何か認めているとかおらぬとかいう点がすでに出ている、こういうような点で、非常に業界自体も困っているだろうし、一般の者も非常に疑惑の眼を持っているわけですね。そういう点について、環境衛生法の実施の方法、それからその業種の委員会をどういうふうに作られたか、あるいはまたそれをやる場合は、どういうふうにあなたは指示をされるのか、こういう点について、具体的に一つ御説明をいただきたいと思うのですが、時間がなければ資料で御提出願いたい。根本的に一つ今のふろ銭の問題は、当面の問題だから一つお答えをいただきたいと思う。それだけで私はきょうは終りますが、出方によってはそうはいきませんよ。
  80. 堀木鎌三

    ○国務大臣(堀木鎌三君) 今問題になっておりますふろ代の問題、これは二十一年に現行の浴場料金が、物価統制令によってきまっております。で、私どもの方で原価計算をいたしましたところでは、特に人件費の値上りあるいは電気料金その他の値上り等からみまして、最高を十七円まではやむを得ないのじゃなかろうかというように考えているのであります。で、いろいろ誤解がありますが、今新しく中人というのを作ったわけじゃございません。前からこれは制度としてあったようでございます。  ついでにお触れになりました旅館につきましても、一本できめました。ただどうもああいう非常に何と申しますか、環境衛生法に指摘しあげてありますような業種につきましては、内容が非常に複雑なのは御承知の通りで、幾分その業種の形体によっては、部会を設くることができるというような事柄にいたしたような次第でございます。  ふろ銭につきましても、前から非常に地区的に別個にきまっております。私どもとしてはこれを地方の実情に応じてきめるのがかえっていいのじゃなかろうかということから、地方長官に——地方長官というのは今ありますかありませんか知りませんが、ともかく都道府県にこれを委任するという原則でやって参りたい、こういうように考えているような次第でございます。料金の決定に当りましても、あるいはその他重要事項の決定につきましても、官僚的な勝手な統制にならないように、四者構成の審議会によって、民主的に決定して参りたい、こういうふうに考えている次第でございます。  なお、こまかい点につきましては、環境衛生部長から答弁さしたいと思います。
  81. 相澤重明

    ○相澤重明君 物価の値上げを促進する法律になっちゃ困るわけです。われわれが心配するのはそこなんです。それを厚生大臣に示してもらわないと、何か法律を作れば、物価が値上げされるのだという印象を、やはり国民に与えるということはいかぬと思います。従ってこの法律の実施に当ってはそういう点のないように、私は誤解を解くように、やはり政府としては慎重な態度をとってもらいたい、これだけは閣議にそういう点を特に担当大臣として私はよく話をして了解を求めてもらいたい、このことがないと、政府は法律を作ればもう何でも物価をどんどん値上げするじゃないか、こういうことになってしまう。こういう点について私は率直に申し上げて、あとは大臣お帰りになってもけっこうです。
  82. 堀木鎌三

    ○国務大臣(堀木鎌三君) 物価問題との関連については常に慎重に考慮いたしております。
  83. 尾村偉久

    説明員(尾村偉久君) ただいまのふろ銭の問題でございます。これは終戦後、戦後の混乱したときに物価を統制するという意味で物価統制令ができまして、二十七年に勅令が廃止になるときに、今度法律によりましてこれが生きるということになりまして、当時から、ふろ銭は物価庁というのが当時ございまして、物価庁がこれに基きまして地方の物価庁の出先機関並びに当時の地方長官、今の府県知事、これに権限を移譲ないしはこれに指示をいたしまして、ふろ銭をきめておったのであります。ところが二十七年に物価庁が廃止されまして、これの行きどころがなくなりまして、厚生省にこのふろ賃の統制令を譲り受けたわけでございます。ところがその前、昭和二十五年に公衆浴場法というふろ屋を取り締る衛生法が改正になりまして、この中でふろ屋を設立するのが統制を受げまして、これは現在こういうような法律がありますのは、非常に珍しい改正でございますが、ふろ屋は一定の距離の中にあとからできない、いわゆる距離制限というのができました。従いましてほかのいろいろな物価というものが自由競争の中で廃止をされたにかかわらず、この法律があるために独占企業になったということでありますので、最高値段というものを統制しにゃいかぬということで、この物統令がふろ銭に関する限り存続をしたのであります。で、当時各地域ごとにこれは物価に応じましてA、B、C、Dの地域に分れて値段がきまっておったのでございますが、これを厚生省が譲り受けましたときに、直ちにまた厚生省から地方の知事にも譲り渡すように、この物統令は両面規定されておるんでございますが、諸種の事情からそのまま厚生省に存置されまして、中央で地方の村の値段まで統制をそのまま承継して継続したということでございますので、その後いろいろと地域ごとの物価の変動によりまして変化すべきことが起った場合に、とてもこのいなかの端まで厚生省では手が届かぬというので、大体府県と、それからその地域の浴場組合等の申請に基きまして適当にこれを変えておった。現在におきましては非常にこれが不適当になっております。一例を申し上げますと、東京都につきましては北多摩の山奥までA料金、すなわち銀座のまん中の十五円というのが末梢の村まで適用されておる。逆に神奈川県の厚木市あるいは秦野市というような市の地域が、逆にてれより二円低い十三円というB地区に指定されておる。非常にこれは不合理が全国的に起って参りましたので、これはとても厚生省としてはそこまでは調査ができぬということが一つと、それから公衆浴場法の権限は一切これは二十五年以来府県知事に、これは全部委任されておりまして、なお今度の環境衛生法に基きます最低料金とか、あるいは営業方法その他の事項も全部地方長官がやること、で、料金だけ中央におきましては全く調査も全然そろいませんし、監督も全然ちぐはぐになるということで、十月からやりますのはまず不合理を是正するために地方長官に移譲いたしまして、全面的にこれを適正に運用するというのが主たるねらいでございます。その場合にやはり一定の額をきめて移譲しませんと、県によりましては、たとえば三十円というような希望が出た場合にどう判断するか、県内だけの判断じゃ困るであろうというので、全国的な最高の一応業務基準というものを示すということでございました。それには今までのA地区である一番東京のような最高のものを示せばそれ以上にはなりっこないということで、東京の部分を最近の原価計算をやったわけです。二十七年以降変えておりませんので、二十七年に算定いたしました方法によりましてふろ屋の大体の支出経費のうちで、いわゆる所得に起算しない、すなわち自分のもうけでないこれが一番大きいものは燃料費、あと電気代、水と、三助等の人件費、これが一番大きいものでございまして、これら十一項目の物価の資料を、日銀の資料その他を詳しく調べますと、全部ウエートを計算いたしまして一八%の値上りになっております。この部分だけをかける、これをかけませんとふろ屋につきましては国で統制しておりますので、これらの物価騰貴が当然自分の残りの生活費等に充てる所得の方に全部食っておるのです。それが非常にほかの自由企業と比べまして気の毒な状況でございます。これは統制した以上はある程度算定してやるべきわれわれの義務があります。逆に本人の所得額は四年間の上昇を全然認めず、わずかでございますが二・五%ほどの、むしろ二十七年の所得より減少させた、こういうことによりまして、当時浴場の方から——全国で二万軒ございますが、これから原価計算して業界から出て参りましたものは、最高の場合には二十三円くらいということが出て参りました。われわれの方が、今のようなほかの企業と比べますとかなり苛酷でございますが、実際のものの部分だけを主として見まして、わずか二円の、最高の場合でも値上げしか許さぬ、こういう基準を置きまして、その他B、C、Dはそれに比例いたしまして、しかもそれを機械的でなくて、現地々々の原価計算を地方長官がやって、動かさぬでもいいし、不合理な部分だけは上げるなり下げるなりして動かす、こういうことで合理化という線で十月一日からやる、こういう決定を見たわけであります。さような工合でございますので、地方長官がいざこれを受けましてきめる場合でも諮問機関を設けるなり、すでに五、六カ所の県で配置基準をきめるにもそういうことをやっておりますが、これらを利用するなり、その他公平な民主的な方法でやってほしいということを通牒をいたす、こういうことになっております。  なお、環境衛生法の方の問題でございますが、この方は先ほど旅館が二種類になっておるという御質問でございましたが、これはあくまで一種類でございまして、政令での指定は十七種目きめております。ただその場合旅館でございますと共通の部面が大部分でございます。しかし温泉地にある旅館と、都会地にある旅館とは違う部面がございます。それを省令で部会を作り得るようにいたしまして、特有の部分をお互いに研究して最終的には一本の同業組合で決定いたしますが、さような点を諮ったわけでございます。旅館だけでございませんで、飲食店というのは一本に指定しておりますが、この中でも、うなぎ屋とかあるいはいろんなものがございます。そういうために部会を作り得るように共通にしてありますので、その点御了承願います。
  84. 相澤重明

    ○相澤重明君 今の点大事な所なんだ、この問題ちょっと聞いておかぬといかぬから。あなたの言う十月一日から十七種目についてどういう委員会を統一して持っていくかということは、業者間において非常に大きな問題なんだ。われわれ国会議員が法律を作るときには、こういうものを中央地方に作れ、こう言っても実際施行するのは、実施に移していくのは厚生省が指示してそういうものを作らせることをしなければならぬ。ところが業者にとっては大へんな問題です。だからそういうものをどういうふうに作らせるか、どういうふうに指示をするのか、こういう点を国会議員は全くわからぬわけだ。厚生省は自分でアドバルンを上げておけばいいかしらぬが、国民としてはなかなか大へんな問題だ。そこで私は十月一日からそういうものをどういうふうにやるのか、実施するにはどういう内容を持っておるかという、こういう点をやはり資料として提出していただきたい。資料がなければわからぬ、実際の話。今一つは先ほどのいわゆる物価の上昇基準等、日銀等の資料もお調べになったようでありますが、何と言っても問題になるのは、これがこういう法律を作れば、何でも物価が統制されて上ってくる。それで弱い者はいじめられる。もうとにかく政府が法律なり政令できめてしまえば国民はその通り業者から高いものを買わなければならない。文句を言ったって買わずにはいられない。ふろに入らずにはいられない。こういう点がやはり私は物価値上げの機関に、あるいは諮問機関というものは、厚生大臣にどんどんむしろそういうものを値上げをするように申請する機関だ、こういうことになっては国の権威はなくなってしまう。こういう点についてまず基本的な物価上昇の機関にならぬようにやはり対処していただかなければならぬのじゃないか。しかも政府の言うのは、物価の値下げ運動というのをこれからやろうとするのです。決算委員長もよく聞いておかなければならない。物価の値下げ運動をやるのに、一方においては物価の値上げ運動を行なっていくというようなこういう矛盾した政策があるか。こういう点について、少くともこういう環境衛生法の実施に当って誤解がなく、しかも政府の言う物価の値下げというものが現実に行われるという方向に行くべきものだと私は思う。そういうふうな点で資料がないとわからぬから、この資料を私は提出してもらいたい。  以上です。
  85. 三浦義男

    委員長三浦義男君) 速記をとめて。    〔速記中止
  86. 三浦義男

    委員長三浦義男君) 速記をつけて。  ほかに御質疑はございませんか。——御質疑はないと認めます。  では、これをもって厚生省の部、検査報告批難事項第七百三十一号から第九百二十七号までの質疑は一応終了したものとすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  87. 三浦義男

    委員長三浦義男君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  では、これで本日の審議を終了いたします。    午後二時五十二分散会