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説明員(
石渡達夫君) 三百十五ページからずっと書いてございますが、三百十六ページに「
直轄工事について」という見出しで書いてございますが、これは主として
ダム工事について申し立てております。
ダム工事が、近来非常に大きな
支出になって参りまして、二十九
年度におきましては、総
支出額が四十六億に及んでおります。それで
会計検査院としましても、
ダム工事を見たわけでありますが、その中で、国の
経費だけで購入した機械を
共同事業に
使用した場合には、その
使用料の
計算を行なって、
共同事業者から徴収すべきであるのに、その
計算をしていないのがある。また、
工事の
施行に伴う
人件費及び
完成後の
ダムの
管理費、これは
共同事業者と
共同で負担すべきものであるのに、国が全額負担しているというようなものがありまして、
ダム建設工事が始まってからあまりに時日を経過していない不なれな点もあるかもしれませんが、
一つこの辺でよく検討されて、こうした徴収すべきものはすみやかに
計算をして徴収されることが望ましいと存じます。
次に、二十八
年度の
決算検査報告に掲記しました
事項の
事後処理について申し述べております。二十八
年度の
掲記事項の中で、
補助金を
返還または
減額すべきもの、これが六十二件ございますが、これに対しまして、三十年九月末までに六十一件について
返還または
減額の命令を
建設省は出しておりまして、そのうち四十五件が
歳入に入りまして
処理済みとなっております。また、
手直しまたは
補強することとしているものがございますが、そのうち七十五ヵ所について実際を見たのでありますが、これは三十年の二月から三月にかけて
現地を見たのであります。この七十五につきまして、二十ヵ所が
手直しをするという
通りに
手直しがされております。残りの五十五につきましては、二十九が
工事中であり、二十六が未
着工でございました。この中で、
検査当時はそうでありましたが、その後三十年九月末現在の
進行状況を
報告をいただきましたところが、この五十五のうち三十二は
完成したという
報告に接しております。
次に、「
安全保障諸費について」、
日本とアメリカの間の
安全保障条約第三条に基く
行政協定によりまして、
駐留軍が
都心部から郊外に移動する、こういうために、
建物等の
代替施設工事を二十七年から二十九年までの間に二百五十億円ばかり
支出しておりますが、このうちには
工事着手の
見通しもないのに
多額の
前金払いをしたものがある。また、
道路等の
補助工事につきまして、
安全保障費の支弁では工合が悪いようなところに対して
補助を出しておるケースが見られました。
次に、三百十八ページの
不当事項、二千八十四号について御
説明します。これはただいま申し上げました
安全保障費の問題でありますが、
駐留軍の
使用に供する
電信電話施設、または
建物等の
工事費に対する
前金払いとして六億九千二百万円払ったものでありますが、これは
工事の
具体的内容も明らかでない、また
工事着工の時期の
見通しもまだはっきりしないというところに
多額の
前金払いをしておりまして、不当であると思われるのであります。このうち五億二千九百万円は、二十八年十月に
電電公社、
建設省、大蔵省、三者が
協定をしまして、
日本電信電話公社が
駐留軍の
施設をする場合の
協定をしまして、その
協定によって
電電公社に
支出したものでありますが、これも三月になりまして五億二千九百万円を
支出している。その
支出当時には
電電公社の側におきまして、大体こういうような
工事をするという
工事の
内容が決定していたものが、このうちの二億三千四百万円、また
予算書のできていない、ほんの
概計の域にすぎないものが二億九千五百万円、こういうような
状態でありました。これに対して
前金払いをいたしたのであります。このことにつきましては、三十
年度一ぱいたちましても、なお
電電公社が
工事をしない、こういうものが生じて参ったのでありますが、
建設省におきまして、三十
年度一
ぱいたってもなお工事ができなかった部分四千五百万円ばかりにつきまして、三十一年四月に
電電公社から国に
返還させております。そのほかの一億六千三百万円、これはやはり同じ場所の
岸根地区の
宿舎工事を
鹿島建設株式会社外二十九
会社に請け負わしまして、やはり三月に
前金払いをしたものであります。これは
関東地建で
前金払いをしておりますが、
前金払いした
理由としまして、
建設省の
説明によりますと、大体
土地のあっせんは
調達庁がやっておりますが、
調達庁に連絡したところが、四月一ぱいには
土地の問題が解決する、五月早々には
着工できる、こういう
見通しで、法規に従って全体の
金額の九億円に対して何割かの一億六千三百万円の
前金払いをしたと申しておりますが、実際は
土地問題が非常にごたごたしまして、なかなか思うように解決しない、とうとう
土地収用法にかけまして、
土地収用委員会の
裁決がやっと三十年の九月十五日に
裁決になりまして、それから十月に入って
工事を始めたというような結果になりまして、非常にまずいことになったわけです。これも三月当時にはもう少しよく調べれば、
土地がそうやすやすと解決する
見通しがむずかしいということはわかったろうと思われまして、もう少しよく調べて適当な時期に
前金払いをすべきだったと思います。
それから次の二千八十五号、これは「
工事費の
積算当を得ないもの」、これは岩手県の
猿ヶ石川田瀬ダムの堰堤の
排水孔穿孔工事、
排水孔に穴をあけましてセメントを詰める
工事でありますが、
東北地建の
工事であります。これは二十七年九月に
最初に六百二十九万円で、ここにあがっております
日本産業再建技術協会に請け負わせまして、その後引き続いて五回にわたりまして
合計二千二百八十二万八千円で請け負わせたのであります。ここで言っておりますのは、初めに請け負わした二十七年九月の六百二十九万円については文句言わないが、二回目からの五回にわたって請け負わしたものについては、
最初に請け負わした二十七年九月の際の
実績をもっとよく検討すべきであった。この
実績を見れば、その次の二回以降第六回までの
契約が高過ぎたということがわかったはずだ。
検査院で
あとから第一回の
実績を調べ、また二回から六回までの
実績を調べたのですが、その
実績から見て、第二回から第六回までの二千二百万円の
契約はちょっと二百三十八万円ばかり高過ぎたのじゃないか、こういうことを申しておるのであります。これは非常にぎちぎちした
積算をやりまして、
建設省では、第一回の
契約の
単価を大体そのまま第二回以降第六回までに当てはめておるのでありますが、
検査院におきましては、第一回の
実績を見ると、穿孔する
メーター当りが高過ぎる、それからもう
一つは、第二回以降の実際の
施工状況を見ますと、この
日本産業再建技術協会というのはノミナルな請負にすぎないので、
実態はすべてここにあがっております不二
ボーリング株式会社に
通り抜けして請け負わしておる。その間この元請の
会社はトンネルをしておるということもありまして、
メートル当りが少し高いのと、それから諸
経費の率が少し高い、こういう点を考慮しますというと、なお二百三十八万円ばかりは節減する余地があった、こういうふうに認められると存じます。
それから次の二千八十六号ですが、これは
中部地方建設局で施工しました
美和ダムの
工事用としまして
送電線路の新設、それから
変電所の
改造工事を
合計四千二百万円ばかりで請け負わして、九月に
完成しておりますが、この
施設は、長野県の要望によりまして、同県がすぐ近所で施工します
発電用の
ダム工事のために
使用する
施設もあわせて施工したのでありますから、この
施設は、国と県との
使用電力量の按分によって県にも分担させるべきである。しかるに
実態はほんの一部しか県に負担させていなかったというので、
検査院が注意しましたところ、同
地方建設局におきまして、総額四千二百万円を
使用電力量の割合によって按分しまして、県に千八百四十八万六千円、これを負担させるように補正されております。
次に
補助金について申し上げます。「
公共事業に対する
国庫負担金等の
経理当を得ないもの」、これは主として
災害復旧事業について、毎年
現場を歩きまして
検査をしておりますが、二十九
年度におきましては二百三十一
工事、八千六百万円、これが
工事費を除外すべき
不当工事であるというふうにあげております。
金額は相当
金額あげておりますが、二十八
年度施行しました結果と比べてみますと、二十八
年度は
会計検査院が
検査した
個所と
不当工事が含まれていた
個所の
比率を申し上げますと、二十八
年度は八%、それから二十九
年度は四%、
ついでに三十
年度を申しますと、一・四%ということになっております。それから
金額から見た
工事全体と、その
工事の中に含まれていた除外すべき
不当金額、との
比率を出しますと、二十八
年度が一・七%、それから二十九
年度が〇・六%、
ついでに三十
年度を申しますと〇・一三%、こういうふうに、大体
検査院としましては同じようなウエートを注いで
検査をしておるのでありますが、非常に顕著な
数字で
改善をされております。しかしながら、なおこうした多くの
不当事項があげられておりますことはきわめて遺憾に存ずるのであります。
このうち
市町村と県と両方がございますが、
市町村が
施行した
工事においては、表面上は
競争入札等によって
工事を
実施設計額と同
程度の額で請け負わせて
施行したこととして、
国庫負担金の
交付を受けておりますが、実際はこれより低額に請け負わして
施行し、正当な
自己負担をしていないものがある。このように実際上の
工事費が不当に少額となったため、
工事の出来高が不足したり、
工事が粗漏になったものが相当にあります。また
県工事におきまして、直営で
施行した
工事の
人夫賃等につけがけして
資金を捻出をして、ほかの
工事費等に充当しているもの、
監督検収が不十分なために
工事が粗漏になっているものが見受けられるのは遺憾に存ずるところであります。
その次に(1)から(9)まで代表的な
事項をあげてございますが、もし御質問があればお答えすることにしまして、次に移りたいと思います。
次は、
昭和二十八年、二十九
年度の
発生災害復旧事業の
査定額を
減額させたものについて述べてございます。これは
工事が終った
あとの
検査では十分に回復できないような国の損害を、
工事を
着工する前に見ればもっとたやすく是正されるという見地から、二十八
年度から
建設省の
査定に対しまして、
検査院が
現場を見て、
査定が適当であるかどうかということを見ているのであります。これもさっきの
工事と同じように、
建設省及び
工事主体の
監督及び自覚によりまして
改善されて参っております。ちょっと
数字を申し上げますと、
個所の
比率で、さっきと同じような
検査院が見た
個所と
不当個所の
比率でございます。
個所の
比率で申しますと、二十八
年度が二〇・五%、二十九
年度が七・二%、
ついでに三十
年度を申しますと二・五%、それから
金額の比で申しますと、二十八
年度が四・一%、二十九
年度は一・八%、
ついでに三十
年度を申し上げますと〇・三八%、こういうふうに逐年
改善の跡が顕著でございます。それでもなお、こうした
不当事項がたくさんあがっておりますことは、きわめて遺憾に存ずるのであります。ここにも大きな例があがっておりますが、「同一箇所の
工事を
建設省と農林省の双方においてまたは
建設省において重複して
査定しているもの、
災害を受けていないのに
改良工事を
施行しようとしているもの、近接している
工事の場合、捨土を他方の
工事の盛土に利用することができるのにこれを考慮していなかったり、
現地の確認が不十分で
所要量を過大に見込んでいるもの」などが例示されているのであります。こうしたものの
合計が五百八十
工事、
工事費において二億二千六百万円に上っております。
次に三百三十四ページの二千二百八号について御
説明します。これは
久留米市が二十八年、二十九年、両
年度にまたがって作りました
公営住宅がきわめてお粗末である、こういう例であります。これは
久留米市が牟田山、
中隈山団地へ
公営住宅二百八十三戸を作ったものであります。との
契約単価は、
坪当り二万一千五百七十四円から二万五千二百九十二円でありまして、この価額がちょっと安いように思われますけれども、
久留米市が同一時期に建設したほかの
個所にできた
公営住宅の
工事、これが
坪当り二万七百円から二万六千六百円になっておりまして、こうした完全にできたところのその
単価から見て必ずしも安くはない。しかし、まあ
監督検収が十分でなかったために、いろいろな手抜きをされまして、非常に粗末な
工事になっている。
所要の強度を欠いており、「
軸組、
小屋組に
差狂いを生じて家がゆがみ、建具の
建付けが不良なものが多く、なお、
整地工事が不良なため床下に雨水の流入、
渋滞等があって、満足に居住することができない
状態」である、こういう非常にお粗末な
建物になっております。
次に、二千二百九号、「
道路改修費補助金の
交付にあたり
処置当を得ないもの」、これは先ほど総論の
説明でちょっと申し上げましたが、
安全保障費の使い方において当を得ないものの例であります。これは群馬県で作った
道路に対する
補助でありまして、
駐留軍の
妙義山地区の
演習場に連絡する県道の
改修工事としまして、
国庫補助金を五百五十三万五千円ばかり出しております。ところが、ただいま
妙義山の
演習場は三十年の二月二十八日に
駐留軍から
解除の指令がきているのであります。この
工事は、三十年の三月二十五日に
工事費六百七十九万六千円で請け負わせて
施行したものであります。もう
解除になった後に
着工している。
建設省におきましてもこうした場合に、三月一日までに
着工しない
工事に対してはその
施行を打ち切ることとしておるのでありますが、
本件工事と一連の
道路についても、三月一日、未
着工の分に対しては
施行を打ち切っている
状況でありますのに、
本件についてはそのことなく、
演習場廃止の後に
着工した
工事に対して
補助を出しておるのであります。これはこうした方が
道路行政上見て有利である、必要であると認めてやられたように伺っておりますが、もし必要があるとすれば、
安全保障費でやるのはよくない、ほかの
公共事業の
改修費の
補助と、こうした
一般の
補助でおやりになるべきだと、こういうふうに考えております。以上。