○
江藤智君
中国、
四国班は六月十七日から二十三日まで七日間の
日程で、
大倉、常岡各
委員と私が参加し、
山口、
広島、
徳島三
県下の三十年度
検査報告事項中、
農林省所管、
補助金経理二件、
客土引きならし
代行工事一件、
農業共済再
保険一件及び
日本国有鉄道用地低価売り
払い一件、それに
建設省所管、太田川
改修に伴う漁業補償問題を主とし、また
国庫補助金に関連して、
山口、
徳島両県の
財政概況、
補助金の
収支状況等を
調査し、なお
広島鉄道管理局の
概況及び
会計検査の態度についても
調査いたしました。
以下、その
概要を申し上げます。詳細は、後ほど提出いたします
報告書によって御了承願います。
一、まず
山口県玖珂郡周東町(旧米川村)に対する
土壌改良事業補助金の件(千六百七号)は、
同村が
耕地八十町歩に
ボーキサイト五十四・五トン、三十一万九千七百五十一円(
トン当り五千八百六十七円)、
赤土十五万八千五百六十貫、百四十五万六千七百七十円、計百七十七万六千五百二十一円を
施行したとして、
国庫補助金五十二万五千三百三十三円、
県費補助金二十六万二千六百六十七円、計七十八万八千円を受けているが、実際は
ボーキサイトを二十五万九千七百八十七円で購入
施行し、
赤土運搬を三十八万四千百四十円で
部落に
施行させ、六十四万三千九百二十七円を支出したにすぎず、村は
剰余補助金十四万四千七十三円のうち、十三万一千円を県への
寄付命に、
残額一万三千七十三円を村の
一般経費に充てておる件であります。
1、県及び
村当局の
説明によれば、
地元部落に
施行させた
赤土の
採取運搬には、
部落民の
自家労力提供分があり、これが
村費として計上されていなかったため
指摘を受けたが、実際は
正当額の七割
程度は行なっていたとの
説明でありました。しかし、
自家労力提供分に対する
資料の不備で
信憑性がなく、また
採取土量を確認する方法もとっていなかったため、
指摘を容認すべきものと認められました。
2、
事後処置としては、
指摘の
不足分百十三万二千五百九十四円に対し、百十万八千八百円を追加
施行したものであります。村の言い分によれば、当初
工事と
追加工事を合せると設計以上の
実績となるが、
赤土客土は多ければ、それだけ
農地の
生産力を増強するので、地元民も納得したとのことでありました。
3、次に、
補助金を受けて
施行する村から、県がその
補助金の二分の一を
寄付させているのは、県としては
工事施行について県に協力する熱意のある村に優先的に
補助するためとの
説明でありましたが、この吸い上げ方式は、村に不当の
負担をかけるものであり、三十一年度から廃止しております。
二、次に、岩国市
藤河村土地改良区の
施行した
水路改良に対する
補助金(一千三百六十七号)について、
水路千八百二十六メートルのうち六百メートルは、
基礎コンクリート百四十三
立米を
施行したこととしているが、実際はぐり石十八
立米を
中詰めとして、
玉石コンクリート九十六
立米で被覆したにすぎず、また九百六十九メートルは、
基礎ぐり石三百二十
立米を
施行したこととしているが、実際は二百二十七
立米を
施行したにすぎない等のため、
工事費査定額七百三十六万八千円に対し、実際は六百五十二万五千円で足り、
事業主体は八十四万三千円の
負担不足を来たしているものであります。県及び
改良区の
説明では、
施行が二十八、二十九、三十年度に行われ、
災害多発のため、手不足とはいえ監督不十分であり、
指摘の
通りである旨、及び現
工事のままでも、一応
水路の
目的は達せられるので、
出来高不足分は
返還することとし、県は本年五月返納を終り、
改良区は県に対し、四年賦で
返還するとのことでありました。
山口県における
国庫支出金全般についての
説明を聴取しましたところ、
補助金については、
適正化法施行以後は著しく
経理が改善された。ただし、
交付時期がおくれるために、
事業の円滑を欠くとの訴えがありました。しかし
立てかえ金の利子を捻出するための
自己負担不足は、本県ではないとのことでありました。
災害融資補給についても
交付がおそく、また、使途についても法的の疑問もあり、考えの甘い面があったのは遺憾であるとのことでした。
農業共済については、
制度が実行上に困難な面があり、
掛金と
共済金との相殺、
共済金の
目的外使用が起ったなどの
説明があったほか、
共済の
事務負担金が、多久島事件以後、県を通じて
交付されることになったが、
交付時期がおくれるため、県は
立てかえ
払いで払っているものの、
財政上困難である。しかし給料の遅配が
事務能率を低下することともなり、
促進されたい。なお、
負担金は
年間三千万円である。
最後に
出納長から要望がありました。
一、
補助金の
交付は
一般に早くなったが、
義務教育費国庫負担金の三十一年度分が四千万円まだ来てない。
促進方に御協力願う。
二、
補助金適正化法の
施行に伴い
国庫補助金の概算
払い、または
前金払いが行なわれている場合、
補助金の八、九割を
交付し、
残額は
事業費の確定後
交付せられているが、県の
立てかえ支弁が困難であるため、
全額を概算
払い、または
前金払いにしてもらいたい。
三、
出納長は国の
支出官を委任されて、七十億円の年額を取り扱っている。その
事務費は
地方交付税交付金に含まれている建前であるが、
実質上はないにひとしく、その上
支出事務のほか、
物品管理官、
債権管理官の
事務が増加し、
適正化法の
事務も複雑であるから、
事務費を
実質上
交付されたい。
以上であります。
第三に、
広島鉄道管理局の
用地低価売り
払いの件であります。
本件は、同
管理局で、
昭和三十年九月、
随契により鉄道弘済会に対し、駅前の
国鉄用地二百九十八坪を、総額千五百七十六万八千百五円で売り渡したものであります。
右土地は、二十二年以降同会の
建物敷地として
使用承認してきたものを売り渡したもので、
売り渡し価格は、
勧銀、
広島法務局の
評価を
参考とした坪十二万五千円、または四万五千円から
借地権相当額として三割を減額し、また
投下有益費を控除して決定していますが、本
用地は、
使用承認の際、
期間を一カ年とし、
期間満了後は
使用者の
負担で
更地に回復して
返還すべき条件があり、また
国鉄では、従来からの
使用者に
土地を売り渡す場合、この種の減額はしないのを例とするのに、
本件において減額したのは当を得ないもので、その結果約六百八十万円低価となる
計算との
指摘であります。
これに対し、
国鉄側の
説明によれば、
検査院は、
借地権相当額を減額したというが、
国鉄は
借地権を対象としたものではなく、単に
建物付きの
土地に比準することとし、
建物付きの
土地の売買においては、
更地価格より減価されるのが慣行であり、
広島市内では、二〜四割減額される実情で、
建物移転費等も考え、三割減したというのであります。かりに
借地権を考慮するとすれば、
金融機関の
評価では、
本件附近は七割
程度との
説明でありました。
また、
本件用地の
使用期間は一年で、
期間満了後は
更地で
返還すべき条項もありますが、
質疑応答の結果を総合すれば、弘済会が
建物(木造二階
建モルタル塗)の敷地としているのに、
使用期間を一年としたのは、
経理手続上やむを得ず定めたものと認められ、
実質上は長期使用を
予定したものであり、
更地返還すべき場合は、
国鉄において必要あるときに起るものと認められます。しかして
本件は、
国鉄がみずから必要とするものでなく、売り渡すものであり、
更地返還すべき条件には合わないと認められました。
次に、
検査院職員の
検査態度につき一言します。先般当
管理局に派遣された
実地調査官の
検査態度及び言動において、受検者を当初より罪人扱いするような、人格を無視した点があったことであります。このように常軌を逸した態度は慎むべきであります。
第四に、岡山
農地事務局が
徳島県に委託代行させた松茂地区
客土引きならし
工事の件は、引きならし
立米当り単価を八十七円または七十二円と見込み、三百六十二万円を積算しているが、この種
工事の
実績に徴して、八十三万円が過大な設計であるとの
指摘であります。
過大設計とされた原因は、現地の
状況が足場不良につき、標準歩がかりの高い方をとったが、客土をなし、なお、一部引きならすと、足場はよくなり、能率があがることを考慮しなかったためであります。
本件の
指摘は県もこれを認めました。
事後処置としては、過大分の
返還を行なわず、その部はそのままとし、別に同額の
開拓道路を増
工事として
施行することの承認を受け、
工事も完了しております。
本件の
施行は、県が地元の開拓農業協同
組合に請け負わしていますが、
組合はさらに吉吾
建設株式会社に下請けさしている実情で、地元
組合に請け負わしたことは無意味となっており、むしろ県が直接業者に請け負わす方が、
計算も明瞭であり、設計過大等も防げるよう設計変更等ができやすいと考えられます。
第五に、
徳島県鴨居町(旧牛島村)
農業共済組合の件は、本
組合が二十九
年産水稲共済金五百六十四万二千九十六円を損害
評価通り個人ごとに支払ったとしているが、実際は、個人ごとの
共済金を一括
組合長名義の通帳に
預金として
資金を
管理し、
組合員から
支払いの申し出があったつど
掛金、
賦課金の分を差し引き、適宜
払い出していたものであります。
また、本
組合は三十年二月以降、すべての
共済金にこのような
経理を行い、三十一年八月までに
預金した六百七十三万四千二百四十六円のうち、四百四十九万七百五十五円を個人に
払い出しただけで、九十九万七千七百九十三円は
掛金に充当し、五十七万五千二百九十八円は防災
賦課金名義で
組合経費に充て、六十七万七十円は保有していたものであります。
指摘の
通り、
共済金を
組合長名義の通帳で
預金していたことは不当でありますが、
当局及び
組合の
説明によれば、地区内に二つの農協(
金融機関)があり、手続が複雑で、
保険金受領後五日以内に
共済金の
支払いを完了できないため、臨時の措置として行なったもので、
資金管理をする意図はなかったとの
説明であり、
共済組合の内部においては、各人別口座の収支を詳細に明記
整理してありました。また、
掛金及び
賦課金に天引き充当したのは、その
徴収を確保するためのやむを得ざる
処置であったとの
説明でありました。しかし、
指摘後はこれを改め、農業協同
組合の個人別の通帳に
預金し、個人は自由に引き出せる道を開き、農協において未収
掛金等を個人に知らせ、承諾の上控除させており、また
共済金の
支払いを受けなかった
組合員については予納貯金にする方針であります。
農業共済全般の問題として県
当局の
説明によれば、(一)補償が損害の平均半額にすぎないこと、三割以下の損害が補償の対象外であること、(二)
基準収量の定め方が現実に合わぬこと、(三)損害
評価額について
農林省の
評価に不満があること等を農民が訴えるとのことでありました。
このうち(三)の
評価については、損害
評価会が法定の必要諮問機関として設置されることになった。その構成員は、学識経験者より任命されることになっているが、十分客観性を期待すること、
組合の
評価と統計
調査部の統計とが従来のように食い違いを来たさぬよう調整が円滑に行われるよう関心を有しているとのことでありました。
六、次に太田川
改修に伴う補償金の問題については、
中国四国地方建設局、
広島県
農地経済部
当局から
概要説明を、また公平分配
組合(分配を不満とする者の任意団体)の代表者及び太田川
改修草津対策
委員会の代表から各所見を聴取しました。
まず、本問題に関し去る当
委員会以後の発展
状況を申し上げます。
補償金二億六千六百余万円の配分の対象及び損害
基準については、太田川
改修草津対策
委員会において、
広島県と地建の指導のもとに、漁業権に基く実害補償の建前をもって、漁業協同
組合員とともに、
組合外漁民をも対象とし、損害率の
基準について配分要綱案の作成を見、対策
委員会の漁種別部会の承認を得ています。今、各漁民の個別実態を
調査中であり、多分総会の決議は八月ごろの
予定であります。
次に、各
事態の内容について申し上げますが、まず地建局長と対策
委員長が結んだ協定であります。その形式について対策
委員長竹本四方一氏は、
関係漁業者代表となっていますが、委任状の提出がなく、代表資格の形式に疑問があるとの意見があります。対策
委員長の
説明では、当初太田川
改修については、漁民の生活擁護のため反対したが、反面、治水も重要であり、転業の方法も整ったので、
改修に賛成し、名称を太田川
改修草津対策
委員会と改め、
当局に協力してきた。また、区域内漁業者の代表としての責任は十分持つとのことでありました。
地建の
説明では、竹本氏を漁民代表と認定したのは、草津地区が大部分であり、
実質上の代表者と認定するのに十分の確信と根拠があったというのであります。
また、この協定の立会者たる
知事、市長、
広島市漁業協同
組合長及び同
理事の立場につき、地建の
説明では、協定の両当事者のほかに、第三者的立場の人、及び各
組合の
連合会的性格を有する
広島市漁業協同
組合の
理事者を立ち合わせ、協定の解釈等に行き違いのないよう確認させ、最終解決まで関与するためだとのことでありました。
(二)次に、補償の内容と補償金
支払いの方式、
支払い済補償金の分配及び
経費の使用についてであります。
(1)補償金は漁業権に基く実害補償を内容とするものでありまして、現在においては各当路者ともに漁業権の主体たる漁業
組合ばかりでなく、
組合に加入していない漁民についても実態を
調査し、実害ある者には補償することに意見の一致を見、配分要綱も進展している現状であります。
この問題に関して争いとなったのは、
昭和二十五年に漁業法が改訂され、漁業
組合が権利者として認可を受けることになったが、
組合加入を申し出ず、
組合員とならなかった漁民の実害であります。右法律改正の際、公示は行われたが、漁民に対する周知徹底については、
組合の幹部も不親切であり、県
当局の指導も欠けるところがあったのは遺憾であります。これらのいきさつをも考慮に入れ、配分については努力中であるので、円満解決を督励しておきました。
(2)次に地建の
支払い方式であります。三十一年二月以降の分は、権利者たる
組合の委任状がありますが、二十九、三十年の分は、
組合員の委任状が出してあります。しかし地建は、委任者たる対策
委員長へ支払うことについて、各
組合長の承認書を取りつけ、かつ対策
委員長とともに
広島市協同
組合長が同行捺印した上、地建が支払っており、
支払いの相手方としての適否について問題ありとする
委員もありました。しかし
支払いの形態としては、一歩を進めて、
組合長に直接
支払いをなす方が簡明な方法であったと思われます。将来配分要綱が確定し、漁民の納得を得れば、この点も自然解消になりましょう。
(3)次に受領した補償金の分配であります。現在なお草津地区分で一億四百余万円が未
払いとなっております。分配のおくれた事情につき対策
委員会では、
組合外の漁民の分について実害を
調査の要があり、全体が明らかになるのを待って配分
基準を定め、
支払いたかったためとの
説明でありました。その間、対策
委員会は内
払い金の
定期預金を担保として、
委員長名義で一千万円を借り入れ、これを
組合員に貸し付け(日歩二銭八厘)していたのでありますが、内
払いの進行に伴って償却し、現在三百八十万円が残っている
状況であります。この辺にも公私混淆の気分が流れており、むしろ分配金の内
払いを
促進すべきであったと思われます。
(四)次は受領補償金からの経資の
支払いであります。
経費額については、科目別予算として総会の承認を得たものではなく、過去三
年間は補償金の三分相当額を
経費として承認を受け、最近の総会で一割相当額とする承認を得たものであり、最終までには二千万円を見込んでいるとのことであります。これらは規約の制定、または科目予算によることなく、総会の
一般承認としていますが、そこにも間違いの起るおそれがあると思われます。
(五)また、補償金の使用(
経費の使用を含む)についての県及び地建
当局の
処置であります。水産業を監督する県は、対策
委員会に対する指導監督に万全でなかったと思われるし、また、地建としては法的
処置においては正当に委任された竹本氏に
支払いを行なっており、
支払い債務の履行後は、権限上直接の
関係はないとしても、補償金は実害漁民の損失補償を最終
目的とする点を考慮し、また、当初の協定の相手方でもあった対策
委員長の補償金
管理及び分配を見守るべきであったと思われます。また、対策
委員長においても
関係漁民の代表であり、補償金の受領代理人でもあるので、漁民の資産を
管理する公的立場に思いをいたし、収支の内容を明確にし、総会の承認事項の取扱い及び
一般への公表についてさらに慎重であるべきだと思われました。
第三に、現在制定の途上にある配分要綱についてであります。本要綱はまだ制定の途上でありますが、具体的内容中、被害度の
計算基準について公平分配
組合の不満があります。これに対し、対策
委員会としては、区域内の同種漁業(たとえばカキ漁業)については同等のものであり、業種が異なる場合(たとえばカキ漁業とアサリ漁業)に差違が生じ、ノリ、アサリは被害率高く、カキは低いのであり、学識経験者の意見を聞いて策定しているとのことでありました。
説明聴取の後、公平
組合の代表に対して「あまり感情に走ることなく、おおらかな気持で善処されたい。また二十五年の漁業法改正の際、
組合加入について行き違いがあり、その後も対策
委員会幹部の仕打ちに不満があったとしても、将来はさらりとした気持で
組合に加入することも考え、共同の利益を増進することに努力されたい」と注意しておきました。
対策
委員会の代表に対しては、各
委員から
一、補償金は被害者たる個人に渡ることが根本である。
資金の
管理をガラス張りにして、かつ公平に第三者たる地建及び
県庁の指導も受け善処されたい。
二、一億円の
預金を有しているが、厳正な収支を行うよう
事務的にも整備して、粗漏ないようされたい。
三、
経費を補償金の一割相当額にするような放漫さでなく、
経費細目を作るなど、
経理体制を確立されたい。
四、国民の血税による補償金を代理受領し、漁民のために
管理する公的立場を自覚し、疑惑なきょう善処されたい、
経費の二千万円も多過ぎると思う。
五、総会の決議であればどう処理してもよいとの観念は許せない。
との警告がなされました。
本件については、なお
委員会において
審議を願いたく思います。
以上、口頭
報告を終ります。