○吉江勝保君 それでは私から
報告をいたします。
決算委員会委員派遣の第三班の
調査の結果につきまして口頭
報告をいたします。
第三班は、
昭和三十二年一月十一日から十六日まで六日間の
日程で
昭和二十九年度
決算検査
報告に記載されました兵庫県下の案件のうち、文部省、農林省、両省
関係に重点を置いて
調査を行いました。
派遣委員は高田
委員と吉江
委員であります。詳細は文書による
報告書によりまして御
報告申し上げますが、その
調査の概要を簡略に口頭で申し上げます。
今回、現地
調査をいたしました案件は、
昭和二十九年度
決算検査
報告書中文部省の補助金
関係が一件、農林省の代行
事業関係二件及び農林省の補助金
関係四件、計七件であります。各案件について御
報告申し上げる前に
一般的な
事項につきまして二、三申し述べますると、第一に今回の
調査を通じて
感じましたことは、補助
事業と代行工事のいずれを問わず、
事業主体あるいは工事請負人等、
関係者全員の順法精神を涵養して、代行
事業、補助
事業に対しまする認識を高めて、ひいては工事施行者をして良心的な工事を施行せしめることが、かかる
不当事項発生防止のためにきわめて必要であるとともに、
事業主体と直結する県側の指導監督もさらに強化する必要を認めました。特に指導監督につきましては、ただ単に技術面のみでなく、経営、経理の面におきましても指導の
必要性を痛感した次第であります。
第二に、各案件の際にも申し述べますが、工事に不慣れの受益者あるいは開拓者に工事を施行せしめるという
制度につきましては、今後考慮の必要があろうと思うのであります。
第三に、請負業者に工事を請負わせる場合、いろいろの観点から
検討いたしますことが、かかる
不当事項発生防止のために必要と存ずるのであります。
第四に手直し工事対策といたしまして、特に
経費の
負担方法については根本的に研究を要するものがあると認めさせられたのであります。
第五に、補助金適正化法に関しましては、県当局あるいは地元
関係者、いずれも賛意を表しております。本法施行の効果に多大の期待をかけておりましたが、希望といたしましては、補助率のさらに適正化及び補助金
交付の時期が
実情に即しない点もありまするため、こういう点の改善の希望が申し述べられておりました。なお、
交付期につきましては、補助金のみでなく、国庫支出金につきましても同様で、でき得る限り早期に
交付されますることを切望しておりました。
以下、各案件につきまして申し上げます。第一は、文部省所管の第七百八十二号で、本件は兵庫県御影高等学校が戦災復旧工事の補助金を申請する際に、算定の
基礎となる県有坪数を過少に申請しましたために、
交付された補助金が過大となったというのであります。県有坪数が過少に申請された原因は、保有坪数測定の誤りと、県有坪数に対しまして鉄筋補正を行わなかったことの二点でありました。第一の測定の誤りは、県有坪数の測定を
専門家が行わずに、教員の手で行なったために過少に測定したのであります。学校側及び教育
委員会側もこの点につきましては間違いを認めております。特に教育
委員会としましては、みずからも実地
調査を行うべきでありましたのが、人手不足のために
調査を行わず、学校側の測定をそのまま認めました点に監督不十分を認めておりました。
第二の鉄筋補正に関しましては、本件の申請当時、保有坪数算定に際しましての鉄筋補正を行うことにつきましては、文部省側と
会計検査院側が解釈を異にいたしました。文部省側は、保有坪数には鉄筋補正を行わないという解釈をとっておりましたために、学校側、教育
委員会側では当然この文部省の解釈に従って保有坪数に鉄筋補正を行わなかったのであります。なお、この鉄筋補正に関しまする解釈の不統一につきましては、
昭和三十一年度からは
会計検査院の解釈に統一されておりまするので、今後はこういう問題はないと存じます。間違いの原因は以上のようでありまするが、本件の場合補助対象工事は確実に実施されております。また、その後、
昭和三十年現在では生徒数も増加いたしましたために、これらを考慮いたしまして補助金は返還させないこととなっております。本件の場合、測定上の誤差は故意に数字を変えたものとは思われませんが、人手不足とはいえ、県の教育
委員会がいまだ全般的に各校の
実態調査を十分行うことができずにおるということは遺憾な次第で、何らかの方策が必要と思われます。
次は、第八百六十三号、農林省所管であります。本件は代行工事としまして京都農地事務局が兵庫県に施行させておりまする奥山地区開墾建設工事のうち、
昭和二十八、二十九両年度に施行しました幹線排水路は、設計が過大で、従来から存在しておりまする旧排水路を利用すれば十分であり、また同地区の工事自体も、総
事業費が二千百万円余に上ります
経費をわずか十三町六反の開田に投入しておるものでありまして、きわめて不経済と認められるというのであります。なお、右のほか、二十九年前に施行されました幹線用水路等の工事につきましても出来高不足、不経済工事等が
指摘されておりました。まず、幹線排水路につきましては、県当局は、本地区の地勢の特殊性を考慮いたしまして設計いたしましたもので、若干設計過大は認めまするが、旧排水路を利用せよとの
指摘は
実情に即しないという
説明がありました。
次に、本地区の開墾工事の経済効果につきましては、農林省京都農地事務局、県当局等もこれを不経済であると認めておりました。事実不経済と認めざるを得なかったのであります。なおかかる不経済な工事を代行工事としまして採択した理由は、採択の当時は現在ほど経済効果を考慮しておらず、かつ本地区は当時すでに入植者も入っておったためであると、県側、農地
事務局側で
説明をしております。今後はかかることの発生しないように、代行工事の採択に当りましては慎重を期すべきであると思われます。その他の
指摘につきましては、
会計検査院指摘の
通りというように認めておりました。このような事態を発生しました原因は、県側の
説明によりますると、本工事を工事に不なれな地元の奥山地区開拓農業協同組合に施行せしめましたために、及び県側も指導監督の不十分な点があったためと認めております。
指摘事項に対しまする手直し、あるいは代替工事はすでに施行されておりましたが、手直し工事等は地元開拓農協の
負担において行われたとの
説明でありますが、不当工事の手直し
経費等の
負担方法については、だれがその補償の責任をとるのかという点、及びその
負担能力のない場合の資金繰りにつきましても再
検討の余地があると思われます。
次に、本地区の開墾の進行
状況その他について申し上げます。本地区の開墾は予定より非常におくれており、これは開拓農協側の
説明によりますると、工事進捗に必要な幹線道路の建設が幹線水路等の後に行われておるためであると申しております。これらの点に関連いたしまして、計画立案、設計については地元側の意見を入れることなく、一方的に県が施行された傾向もあるようでありまするが、この点地元側の意見も建設前に入れるような方途が望ましいと思われます。また、本地区は二十三年度から二十七年度の間に建設施行されましたため池のほかに、ただいま申しましたこのため池のほかに、下流に二つのため池があります。新設のため池は、相当完備したものとなっておりまするが、下流の二つのため池は、その設備が新設のそれに比較いたしまして均衡を失しまして貯水量が急激に増大いたしました場合の危険性も予想されまするので、この点総合的見地から再
検討の必要を認めた次第であります。
次は第九百十三号であります。本件は、京都農地事務局が代行工事としまして兵庫県に施行させております別所地区の開墾建設工事のうち、
昭和二十八、九両年度に建設しました幹線道路が出来高不足であったというのでありますが、出来高不足発生の原因は、
関係者の
説明によりますると、本工事の請負人でありまする明美開拓農協が剰余金を組合の債務償還と、前の組合長の着服いたしました金の穴埋め等に流用する目的をもちまして、工事費以下の金額で業者に下請に出したためであると言われております。出来高不足分に相当する手直し工事はすでに完成しておりましたが、その金額の大小、あるいは動機のいかんを問わず、国家の工事の金を不当に流用しました点は厳に戒むべきことと認められます。本農協は、経理については帳簿も全く整備しておりませず、実際に工事に使用した金額も正確に把握できないという
状況で、
一般に開拓農協の
会計監査機構も不備であります。営農の技術のみでなく、経理面での指導、監督の強化を痛感させられた次第であります。また、農協組合長が個人的に責任を負うという解決方法につきましても再
検討の余地があると思われます。
次に、検査
報告批難番号第一千三百三号、農林省所管でありますが、本件は
昭和二十八年九月第十三号台風の豪雨によりまして災害を受けました有馬郡本庄村のため池の復旧工事が粗漏であり、なお、工事費は国庫補助金を下回る金額で、
事業主体はその
負担分を
負担していないのみでなく、かえって剰余を生ずることとなっていたものであります。県当局の
説明によりますと、粗漏工事として
指摘されました諸点は、いずれも
検査院の
指摘の
通りで、このような事態の発生しました原因は、
事業主体が補助
事業施行に対しまする認識不足、工事監督の不行き届き、請負人のため池工事技術の貧弱、工事施行に対しまする県の指導監督の不足及び県の工事検査がため池貯水に妨げられまして、徹底を欠いたこと等であります。きわめて遺憾であり、今後はかかることのないよう切望いたしております。なお、本工事が海潮の時期及び集水期間との
関係上完成を急ぎまして、約五十日で完成したとのことであります。こういう点は認められまするが、完成を急ぐのあまり粗漏な工事を行なったことは責められなければならないと思います。
本件の事後
処理は、請負業者の
負担ではがね土、護岸工事等の全面的施工がえを行いまして、完成後、
検査院の再検査を受けて、完了の承認を得ておりまするが、今後の問題といたしましては、まず第一に、県の監督指導の不十分の原因が人員不足に起因している点であります。この点将来でき得る限り解決いたしまして、指導監督の万全を期すべきであると存じます。第二に、本工事を請け負いました業者は、当時村会議員の職にあったとのことでありますが、村会議員がその村の工事を請け負ったという点も問題がありました。こういう点は、今後禁止すべきであると思われます。第三に、ため池工事の技術が乏しい者にこの工事を請け負わせたという点も一応問題になるかと思われます。
次に、第千三百二号でありますが、本件は、末野土地改良区の灌漑用幹線水路の改良工事が出来高不足であるというのであります。
会計検査院により
指摘された点は、水路の三面張コンクリートの厚さ及び高さが不足し、暗きょのふたは、鉄筋の太さが不足し、石垣の石積工事は、使用された石の控えが不足であり、かつ本工事に使用されたコンクリートはいずれもその配合比が設計と異なるものを使用していたという点であります。県当局及び請負業者の
説明によれば、
指摘された
事項についてはいずれも
指摘の
通りで、このような事態の発生した原因は、当時本工事を請け負った業者が、本工事以外に多数の工事を施行していたため、手不足となり、業者自身の指導監督も不行き届きであったためとのことであります。本件の事後処置としては、業者の
負担で暗きょのふたについては工事をやり直し、その他の部分の不足分に対しては相当金額の代替工事を行なった後、さらに
検査院の検査を受けた結果、暗きょのふたのコンクリート配合比の質が落ちている旨の
指摘を受け、この差額に相当する工事を追加施行したとのことであります。本件は先に述べましたごとく、人手不足の業者と
契約したためこのようなことを発生せしめたことから
考えまして、今後業者の選択に当っては、業者の
負担能力をよく
検討し、請負能力をこえた
契約を締結しないように留意すべきと思われます。
次に、第千二百九十八号は、補助工事で施行いたしました宝塚市伊子志頭首工の二十八年災及び二十九年災の災害復旧工事が出来高不足であり、かつ
事業主体の
負担分が不足であったというものであります。本頭首工の災害は二十八年に災害を受けまして修理中、さらに二十九年六月災害を受けまして、新たに査定を受け直し、復旧工事を行なったのでありますが、
会計検査院の検査の結果、頭首工阻水壁の高さ及びエプロン部の厚さの出来高不足及び宝塚市がこの工事を予算額を下回る金額で請負業者に請け負わせておりまして、
事業主体が
負担いたしまする
負担分が不足となっておることを
指摘されたのであります。
関係者等の
説明によれば、阻水壁の高さ及びエプロンの厚さ不足に関しては、本地区は伏流水が多量のため、上流で締め切りを行なっても、工事個所の完全水かえは至難であった等の原因により、設計
通りコンクリート工事を行なったにもかか
わらず、阻水壁下部及びエプロン下部は、セメントが水に洗條されて流された部分も生じ、ために出来高不足となったとのことであります。事後処置としては、高さ及び厚さ不足のままでも、実用上
支障がないと認められたので、特に手直しは行わず、出来高不足相当分の工事費は、三十年度以降の割当
事業費から減額するという方法をとったとのことであります。
本件に関しましては、
事業主体の
負担不足という点はまことに遺憾であります。今後
関係者の反省が望まれる次第であります。出来高不足の点に関しましては工法上の問題で、本件の場合かなり困難な条件下にあったと思われまするが、今後できる得る限り万全の対策を講じまして、かような事態の発生しないように努力すべきものと思います。
最後に、第千二百九十七号は、補助
事業で施行されました尼崎市園田町の頭首工の二十八年災害復旧工事が著しく粗漏で、沈床の押えに使用しましたコンクリート・ブロックは、コンクリートの配合が粗悪で、寸法も小型で、その上施行個数が設計の半量にも達しないために、完成直後再び水害を受けまして、流失崩壊するという
状況で、しかも国庫補助金以下の金額で工事が施行されまして、
事業主体はその
負担分を
負担していないのみか、かえって余剰金を生ずることになっていたというのであります。
関係者からの
説明によりますると、工事に未
経験な受益者が工事を実施し、しかも指導監督が不適当であったためにこのような事態を発生したのであり、きわめて遺憾でありまするが、工事完成直後に再び流失した点につきましては、ただ単に粗漏工事に起因するというのみでなく、たび重なる水害あるいは河川水流の変動等によりまして河相が変化していたというような点、これに対しまする対策が十分でなかったために、河川の他の部分の被害と相待ちましてこのようなことが発生したと
考えられると述べております。
負担不足に関しましては、まことに遺憾であり、かつ、本工事は経理の帳簿も不備で、工事費の
実態が正確に把握されていないことは残念である旨の
説明がありました。
事後の処置といたしましては、手直し工事を、先に工事を施行いたしました受益者の
負担で施行いたしましたが、従来の頭首工の形状が
実情に即さないために、新らしい設計に基きまして全面的に工事を施行し直し、
検査院の手直し検査も完了しておりました。
本件に関しまする所見は、まず第一に、工事に不なれな受益者に工事を施行せしめまして、しかも
事業主体側あるいは県側の工法、経理等に対しまする監督指導が不適切であったことが、事態発生の第一原因と思われます。この点今後の改善が切望されます。また、本工事の場合、部分補修の粗漏のみを取り上げる傾向がありますが、河川の
状況の変化も再流失の一因であることを
考えまするならば、今後は本河川に限らず、河川の
状況全般も考慮しまして、総合的な方策を講じない限り、大量出水の場合には常に同様な問題を惹起するおそれがあると認められます。特に工事が部分補修の場合で、補修部分流失の原因が悪意によらないものでありまするときには、特に考慮に入れる必要が痛感されたのであります。なお、受益者、農協等が工事を施行しまする際には、帳簿が整備されておらない例が多々ありまするが、この点に関しましては、
事業主体側、または県当局の適当な指導が切望されます。
以上、簡単でありまするが、今回の現地
調査の結果を御
報告申し上げました。
なお、最後に一言述べさせていただきますと、
会計検査院の検査につきましては、夜間懐中電灯を持ちまして検査を継続しました例もありまして、かりに不正を
指摘されました場合にも、このような熱心な態度は
関係者に感激を与えまして、かつ反省への指針となっておりまする状態でありまして、この点、
会計検査院職員の熱心な検査の
状況に敬意を表した次第であります。
以上、
報告を終ります。