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委員外議員(小柳
牧衞君) 去る七月下旬、九州地方に発生いたしました大水害に対し、
議院運営委員会の
決定に基きまして、自由民主党の稲浦鹿藏君、重政庸徳君、
社会党の大倉精一君、永岡光治君、
緑風会の森田義衞君と私の一行六名は、現地の慰問及び被害
状況調査のため、七月三十一日より八月六日までの七日間、現地に派遣せられましたので、一行を
代表いたじまして、その調査の概要を私から御
報告申し上げます。
一行は、七月三十一日、東京を出発いたしまして、第一日目は佐賀県、第二日目、第三日目は長崎県、第四日目、第五日目は熊本県、第六日目は鹿児島県という日程の順序に従って、被害
状況の調査を行なったのでありますが、各県におもむきました際は、本院を
代表いたしまして見舞金を贈呈いたしました。また、災害の各現地は、日程と時間の許す限り、広範かつ詳細に、災害の実情とその原因並びに復旧対策等について調査を行いながら、一方、罹災者に対しては慰問の言葉を申し述べて参ったのであります。これに対して、各県においては衷心より感謝の意を表明され、旺盛なる災害復興の決意を示されましたので、一行は深く感銘をいたした次第であります。
各県の被害
状況の概要その他につきましては、ここに詳細な
報告を用意いたしておりますが、お許しを得まして、これは一切
会議録に掲載きしていただきまして、
会議録によってごらん願いたいと存じます。ただ、ここではごく簡単に、今次の災害の調査により感じました諸点について申し上げたいと存じます。
まず、今回の豪雨災の特徴と思われました点は、第一に、時間降雨量がきわめて多く、局部的に集中して、三百ミリから八百ミリという多量の雨を降らせたということであります。第二に、これらの多量の時間降雨量は、治山治水の不十分な山岳部地方の各所に多数の山くずれを続発せしめたということであります。第三に、しかも電気は停電し、電信
電話は途絶した夜半の寝込みに不意をつかれましたために、避難する余裕を与えなかったということの三点でありました。そして、これらの原因によりまして予想以上の人的大被害を与えたのでありまして、その惨状きわめて深刻なものがあったのであります。
しこうして、各県の災害は、そのほとんどが山くずれ、あるいは地すべり等、大規模な災害を招いているという現状にかんがみますと、今後は、国土一の総合開発の棄として、壷調査等に科学力を動員して、緊急砂防、森林砂防、ダム建設等の促進をはかり、あわせて地すべり、山くずれ等の防止のための立法措置によって、治山治水の適切なる対策をとられることが必要であると深く感じさせられました。
さらに、各県はいずれも台風常襲地帯であるために、各河川の堤防決壊、道路破損個所等は、僅少な雨量によっても、再び浸水決壊する危険にさらされておる現状であるので、これが復旧については特別に高率国家補助を行い、また、治山治水上重要視せられる河川及び堤防については、国の直轄工事として、すみやかなる着工が必要であることを感じました。また、大災害の裏に、小規模の災害地域がきわめて多く、その総額も相当大きな損害額を示しており、これらは乏しい市町村財政をますます逼迫せしめて、災害復旧をいよいよ困難ならしめている実情でありました。これらの小災害地域に対しては、国庫補助の適用に当り、再検討の必要があるように思われました。
最後に、気象通報について一言申しますと、今次豪雨の気象通報は、その警報発令が非常におくれ、かつまた一般民衆は、大雨注意報、大雨警報等の豪雨警報につき、どれくらいの雨量で、どの
程度の被害が予想されるのか、百ミリ、三百ミリ、五百ミリ等の雨量数字は、どの
程度の降雨量であるかということについて、十分なる認識を持っていなかったのであります。気象観測に当っては、科学陣を動員して、近代的設備により、きわめてすみやかに、かつ的確に観測して、予想される豪雨地域に対して、わかりやすい気象通報を報道して、
事前に万全の予防対策を措置させる必要性を痛切に感じさせられました。そうして、特に災害常襲地帯に対しては、台風期を目前に控えておりますので、緊急に適切なる措置を行うべきであると認めました。
なお、自衛隊の災害現地に対する出動でございますが、その活動は、罹災者の救い出し、死体の捜査、避難所の設置、食糧、被服、寝具等の生活必需品並びに稲の苗等の緊急輸送の応急救援に引き続いて、主要河川、道路、堤防等の応急復旧工事を献身的に着々完了せしめて、緊急災害復旧対策に相当の成果をあげておりました。
以上をもちまして御
報告を終りますが、今次災害は、何といっても予想以上の大被害を発生せしめたのでありまして、多数の尊い人命を失いましたことは、まことに胸迫る思いでありまして、一行は心からお悔みを申し上げるとともに、その復旧対策に万全の措置がなされるよう、そうしてその復旧の一日も早からんことを切望いたしております。どうか各位の絶大なる御協力をお願いいたす次第であります。
以上をもって終ります。