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1957-05-16 第26回国会 参議院 外務委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年五月十六日(木曜日)    午前十時三十八分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     笹森 順造君    理事            佐野  廣君            鶴見 祐輔君            曾祢  益君    委員            黒川 武雄君            杉原 荒太君            津島 壽一君            永野  護君            野村吉三郎君            加藤シヅエ君            森 元治郎君            吉田 法晴君            石黒 忠篤君            佐藤 尚武君   国務大臣    内閣総理大臣    外 務 大 臣 岸  信介君    国 務 大 臣 宇田 耕一君   政府委員    法制局長官   林  修三君    科学技術庁原子    力局長     佐々木義武君    外務政務次官  井上 清一君    外務省経済局次    長       佐藤 健輔君    外務省条約局長 高橋 通敏君    外務省国際協力    局長      宮崎  章君    外務省移住局長 内田 藤雄君    大蔵省主計局次    長       村上  一君    農林政務次官  八木 一郎君    水産庁長官   岡井 正男君   事務局側    常任委員会専門    員       渡辺 信雄君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○国際原子力機関憲章批准について  承認を求めるの件(内閣提出衆議  院送付) ○特殊核物質賃貸借に関する日本国  政府アメリカ合衆国政府を代表し  て行動する合衆国原子力委員会との  間の第二次協定締結について承認  を求めるの件(内閣提出衆議院送  付) ○特殊核物質賃貸借に関する日本国  政府アメリカ合衆国政府を代表し  て行動する合衆国原子力委員会との  間の協定第一条の特例に関する公文  の交換について承認を求めるの件  (内閣提出衆議院送付) ○千九百五十三年十月一日にロンドン  で署名のため開放された国際砂糖協  定を改正する議定書受諾について  承認を求めるの件(内閣提出衆議  院送付) ○国際情勢等に関する調査の件  (国際情勢に関する件) ○請願に関する件 ○継続調査要求の件 ○委員派遣に関する件   —————————————
  2. 笹森順造

    委員長笹森順造君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  国際原子力機関憲章批准について承認を求めるの件、特殊核物質賃貸借に関する日本国政府アメリカ合衆国政府を代表して行動する合衆国原子力委員会との間の第二次協定締結について承認を求めるの件、特殊核物質賃貸借に関する日本国政府アメリカ合衆国政府を代表して行動する合衆国原子力委員会との間の協定第一条の特例に関する公文交換について承認を求めるの件、以上三件を一括して議題といたします。質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  3. 曾禰益

    曾祢益君 国際原子力機関のいわゆる原子力憲章ができたには、いろいろな要素もあったと思いまするが、特に米ソ両国が、いわば原子力平和利用を、ある意味ではその外交政策あるいはパワー・ポリティックスの道具にして争っておったのが、とにかく原子力平和利用国際連合を中心にやらなきゃならないというその大義名分の建前から、相当危ぶまれておったのが妥結ができて、そしてこの憲章が一応でき上ったものとわれわれは考えておるわけです。非常にけっこうなことだと思っておりましたが、最近アメリカ議会方面においては、どうもアメリカが少し譲り過ぎている、この点について。たとえば、アメリカがこの機関を通じて提供することあるべき核物質等が、共産圏に流れるというようなことは、適当でないというような、かなり、この憲章に協力したアイゼンハワー大統領意向にそぐわないような、一つの反撃といいますか、が起っておるように新聞に伝わっております。それらについて外務省はどう見ておられるのか。また非常にこれはけっこうな憲章だと思うのですが、日本批准をして、アメリカの態度が、原子力憲章の実施を妨げるようなおそれがあるのかないのか、これらの点についてのお考えをお示し願いたいと思います。
  4. 笹森順造

    委員長笹森順造君) この際御報告いたしますが、外務省関係では井上政務次官高橋条約局長宮崎国際協力局長説明員として松井第三課長、並びに科学技術庁からは佐々木原子力局長、法貴次長が出席しております。
  5. 井上清一

    政府委員井上清一君) お答えを申し上げます。国際原子力機関憲章が、アメリカ国会における批准に関連をいたしまして、本機関憲章に対する反対の声が若干アメリカ国会の中にあるという御指摘につきましては、お説の通りでございます。私どももさような情報をキャッチをいたしております。で、これらの点につきまして、アメリカに駐在いたしております在外公館を通じまして、いろいろ情報を私ども受けておるわけでございますが、このアメリカ国会におきます国際原子力機関憲章に対する反対というものは、非常に部分的であって、しかもこの部分的な国会におけるところの声が、非常に過大に世間に伝えられておるというように私ども聞いておるのであります。で、アメリカ国務省筋の話でも、この憲章に対する誤解と申しますか、それがそうしたことになっておるので、十分一つ説明をすれば理解をしてもらえるし、また国際原子力機関憲章というものは、そうした若干の批判はあっても、よく理解してもらえば必ずそれが解消して、そしてアメリカ国会は通るであろうというような見方をしておるようでございます。で、私どもは、これはアメリカ国会通りますことは、時間の問題であるというふうに考えておるような次第であります。
  6. 曾禰益

    曾祢益君 私たちは、少くともそういう楽観説が重づけられることを期待したいと思うのですが、しかし御承知のようにアメリカ上院の三分の一を上回る反対意見がいよいよ固まったような場合には、これはそういう楽観説はくずれるわけです。しかも最近の、これももちろんわれわれは外務省みたいな特別な情報を持っているわけではありませんが、新聞が果して過大に伝えられているのか、何となしに対外援助費削減問題等に現われた議会動向等から見て、やはりアイゼンハワー・アドミニストレーションの何と申しますか、威信と申しますか、これがいささかゆるんできたような傾向がこの問題に限らずぼつぼつあるように考えておる。しかしそれは何といいますか、この問題に関しましては杞憂であって、そしてあるいは国務省だけではとてもこれは乗り切れないと思いますが、アドミニストレーションの威信にかけても少くともこれを上院で通す、こういう確たる見通しを持っておられるのか、はなはだ重ねて恐縮ですが、明確な見通しをお述べ願いたいと思います。
  7. 井上清一

    政府委員井上清一君) 本憲章アメリカ国会における批准見通しについての御意見でございますが、私どももいろいろな情報からきっと通るものだと確信をいたしております。なおまた、今度の東京で開かれております日米原子力産業会議に、アメリカから来られた方々にもこうした問題についていろいろ意見を聞いておりますが、そうした方々も、この憲章アメリカ国会を通過するであろうという見通しをしておられるようであります。
  8. 曾禰益

    曾祢益君 この原子力機構が発足しますと、理事会ができることになるのだろうと思います。総会のほかに。その理事会の中には、極東の方からの代表ということで、まあ率直に言って日本が推されてなるという、これはまた見通しの問題ですが、相当確固たる見通しが立っておられるのかどうか、この点をお伺いしたい。
  9. 井上清一

    政府委員井上清一君) お答え申し上げます。お説のように、この国際原子力機関が発足いたしますると、わが冨はこれの準備委員会に参画する機会を現在持っておるわけでありまして、日本原子力に関する極東における先進国として、将来は必ず私ども理事国になるものだというふうに確信をいたしております。
  10. 曾禰益

    曾祢益君 特殊核物質賃貸借に関する日米両国の第二次協定についてですが、日本側当局意向としては、むしろ賃貸でなくてこれを買ってしまう、その方がかえって都合がいい、こういうのが日本の立場であるようにわれわれ従来から伺っておったのですが、それが何ゆえに結局賃貸の線に戻ったのか、これらの点について、その事情、おそらくその点は伝えられる通り買却というようなことになると、いわゆるその物質に関する責任の問題、あるいはひもつきという言葉がいいか悪いかしりませんが、そういったようなアメリカ監督権の問題がつきまとって適当でない、どうしてもその問題を振り切ることができなかったから、やはり賃貸の形式をとったやに伝えられておると思うのですが、果してそういう事情があったかどうか。これは外務省並びに原子力関係の担当の方から御説明を願いたい。
  11. 井上清一

    政府委員井上清一君) お答えを申し上げます。天然ウランにつきまして、実はわが国としては、ぜひこれを一つ買いたい、賃貸じゃなしに買いたいということで、先般来、いろいろアメリカ側と折衝に努力いたしたわけでございますが、しかしアメリカが買うということについていろいろむずかしい条件をくっつけて参りましたので、なかなか折合いが早くつかず、相当長くかかるような見通しでございましたので、早く妥結をするためにとりあえず一つ賃貸借でいこうじゃないかということでこうした約束を進めたようなわけでございます。なお私たちとしては買うということには今後とも努力していかなければならぬ、こういうふうに考えております。
  12. 佐々木義武

    政府委員佐々木義武君) この第二次協定は、おととししました研究協定細部協定に当る部分でございまして、去年の十一月だと思いますが、アメリカ大統領が声明を出しまして、研究協定に関しましては濃縮ウランは十二キロを限度にして原則として貸与にす、る、一般協定、言いかえますと動力協定を含めました一般協定の場合には、原則として売却にするというふうにアメリカ側としては原則を去年定めまして、それに基きましていろいろ各国と交渉しておるわけでございます。わが国といたしましては、ただいま曽称委員からお話がありましたように、濃縮ウランに関しましても売ってもらいたいという希望を申し上げたのでありますが、アメリカではそういう原則を破って例外のものを作るためには、非常に国内的な手続が長くかかる、言いかえますとAECだけで済まなくて、どうしてもこれは国会承認という問題になりますので、時間がかかるがそれでよろしいかという問題が向うから申し出がありまして、いろいろ検討いたしました結果、買い取るという問題は今後の問題に残しまして、とりあえず研究に必要なこの濃縮ウランに関しましては、昨年の細部協定同様の賃貸でもっていく方がいいのじゃなかろうかという、細部の問題に関しましてこのようになった次第でございます。
  13. 笹森順造

    委員長笹森順造君) ちょっと速記をやめて下さい。    〔速記中止
  14. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 速記を始めて下さい。
  15. 曾禰益

    曾祢益君 簡単に伺いますが、アメリカの方の政策がなぜ研究用に提供する場合には賃貸研究用以外のやつは売却でもいいというのはどういう理由、どういうポリシイとお考えになっておるか、その点だけ伺っておきたい。
  16. 佐々木義武

    政府委員佐々木義武君) 研究協定の場合はごく少量でございまして、この間は従来の賃貸のままで進めていきましても、別にそれほど相手国にとつても問題もないでしょうし、またこの賃貸に関する細目の、詳細なものが各国に共通するようなものができておりますので、それでやった方が米国にも英国にも事態を運ぶのにも便宜であろう、というようなことじゃなかろうかというふうに解釈しております。
  17. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 本件に関する質疑は後刻に継続いたします。   —————————————
  18. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 次に、一九五三年十月一日にロンドン署名のため開放された国際砂糖協定を改正する議定書受諾について承認を求めるの件、について質疑のおありの方は順次御発言願います。
  19. 石黒忠篤

    石黒忠篤君 私は、きわめて大事な問題でありまするけれども、本日は時間がございませんのでごく簡単に伺わせていただきたいと存じます。この砂糖協定に関しまする議定書は、説明書によります、昨年の十二月の十一日に署名をされておって、七月の一日までに正式に受諾を行えばよろしいということになっておるのでありますが、国会への提出が四月の十一日という、十二月の十一日からかなりの間が出ておるのでありますが、その間国会は開かれて審議もやっておったのでありますが、どういうことで四月まで御提出にならなかったのでありますか。その間において何か砂糖の問題に関して政府で問題になったことでもあって四月になったのですか。
  20. 笹森順造

    委員長笹森順造君) この際御報告申し上げます。農林省からは政務次官八木一郎君が出席しておられます。
  21. 八木一郎

    政府委員八木一郎君) 御指摘通りその期間国会待ち情勢にございましたが、特に問題がございましてさようになったというわけではないのでございます。
  22. 石黒忠篤

    石黒忠篤君 砂糖に関しまする国際経済的の政策が、非常にむずかしいものだということは、私ども時代から知らされておったのであります。その後砂糖界状況が非常な変化を来たしておりますので、私ども研究をしました時代とはまるで違ったような情勢になって参って、一そうの複雑さを国際問題としても加えて参り、一国内における砂糖種類等も非常な変化を来たしておるのでありますが、わが国といたしましては、台湾の庶糖に成功した時代においては、テンサイ糖の問題などはほとんど顧みる必要がないという時代がありました。ところが終戦後において台湾を失ったというような結果から、砂糖輸入というものが非常に重大な部分を占めることになりまして現在に立ち至っておる。ことにその砂糖消費が文化の程度を表わすなんということも言われており、それがまた必要以上に唱道せられて、またわが国消費経済が非常にルーズで過分に消費をしておるように私は思うのであります。一面国内生産北海道糖の問題の立て直し及び酪農の問題にきわめて密接な関係にあるというようなことから、農業政策としては政府は新たに取り入れて重要視しなければならぬ事態になってきております。こういうような非常に複雑な状況になっておるのでありますが、それのみならず、アメリカにおいてもトウモロコシからこしらえる、しかもそれは穀実、実の方から澱粉糖化をするという工業が発達をして、コーン・シュガーの市場における位置が急速に非常に高まってきておることに対しまして、日本国内では澱粉糖化の問題、木材糖化の問題まで今非常に重要視されてきておるといううな、非常に複雑な事情が出てきて宏るように思うのでありますが、この協定説明をみますと、今度の協定等下日本輸入国としての位置協定上進めて、そうして輸入国としての発言権を強く持つようになった、これは非常にけっこうなことでありますが、それと同時に国内における砂糖需給表どうするか、生産をどうするか、消費をどうするかという問題について十分な研究を根拠とする政策立てられたければならぬと思うのです。ただ協宗に参加して、輸入国としての発言権を十分に持っていくようになったからといって、安心をしておるわけにはいかないと思うのでありますが、これに関しまして、政府はどういうふうな方針で日本砂糖に対されるのでありますか、ごく概要のことをお話を願いたい。
  23. 八木一郎

    政府委員八木一郎君) お話のように砂糖行政は、農林行政の中でも非常に困難に当面する幾多の事情の中に執行して参らなければならないのでありますが、簡単に私、急所とでもいう点を申しますならば、国内砂糖価格対策が直ちに零細な農民経済の生活、なかんずく畑作農民関係に及ぼす影響というのは、非常に甚大になって参りますので、わが国はなるほど砂糖の九割余は輸入しておるのでありますが、基本的には国際糖価格水準国内砂糖価格水準決定するという、この基本的な見通しの上に立ちまして、砂糖需給事情に見合いました、短期的国内価格変動を抑制するためには、やはりどうしても極力輸入の円滑を期するという点にしぼられてくるのでありまして、こういう考えに立ちまして、御指摘のような砂糖価格から起きてくる国民へのしわ寄せを排除して参りたい、こう考えておるのでありますこのために重要農産物価格安定法、あるいはテンサイ糖に対する増産対策等も一そう推し進めて参りたい、こう思っております。
  24. 石黒忠篤

    石黒忠篤君 私は価格対策だけを伺っているのではありませんし、農林行政部内における重要部門を占めているという御説明でありますが、農林行政についてのみ伺っているのではないのであります。砂糖の問題はさきに申し上げたように、非常に広い場面において、農、工、商、貿易、消費、衛生問題に関しまして大きな関係を持っておって、しかも非常な複雑なものになって参ってきておるのであります。新農作物として取り上げるばかりではみい。新工業として考え部面もあり、多々の部面に対してきわめて総合的な見地から、政府において十分な政策立てられなければいかぬ、こう私は思うのであります。そこでそれをあるいは経済審議庁なり何なりで十分にお立てになる必要があると思うのでありますから、その点をどうなさっておるかということを伺ったのであります。  本日は時間がありませんから、私の質問はこれでとどめておきます。政府の方で十分にその点を御考慮になって、総合的な方策をすみやかにお立てになって、幸いにこの協定で得られた輸入国としての地歩を固めたことを刊用して、善処されんことを希望いたします。私の質問はこれで終ります。
  25. 八木一郎

    政府委員八木一郎君) ごもっともな御提案、御注意でございまして、曲府といたしましても総合的に新しいこの情勢に対処いたしまして、善処する覚悟でございます。
  26. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 本件に関して、ほかに御質疑はございませんでしょうか。……ほかに御発言もございませんようですから、質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  27. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 質疑は尽きたものと認めます。それではこれより討論に入ります。御意見のおありの方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。……別に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。  それではこれより採決に入ります。千九百五十三年十月一日にロンドン署名のため開放された国際砂糖協定を改正する議定書受諾について承認を求めるの件を問題に供します。本件承認することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手
  28. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 全会一致でございます。よって本件全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  なお本院規則第百四条による本会議における口頭報告の内容、第七十二条により議長に提出すべき報告書の作成、その他自後の手続につきましては、慣例によりまして、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  29. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 御異議ない……。認めます。よってさよう決定いたします。  それから報告書には多数意見者署名を付することになっておりますから、本件承認することに賛成された方は、順次御署名願います。   多数意見者署名     吉田 法晴  杉原 荒太     野村吉三郎  津島 壽一     永野  護  佐藤 尚武     石黒 忠篤  森 元治郎     鶴見 祐輔  佐野  廣     曾祢  益   —————————————
  30. 笹森順造

    委員長笹森順造君) ちょっと速記をやめて下さい。    〔速記中止
  31. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 速記を始めて下さい。次に、国際情勢等に関する調査議題といたします。質疑は、通告のありました方の順序に従ってお願いいたします。
  32. 吉田法晴

    吉田法晴君 国会が終り東南アジアあるいはアメリカ外遊せられるということですが、その問題につきましては、あとで同僚議員からお尋ねをすると思います。時間がございませんので、私は、韓国抑留者相互釈放問題とそれから北方の漁業問題の二点に限ってお尋ねをいたしたい。  総理は、あるいはかつて幹事長として、それからこの内閣の首相、外相として、外遊前に韓国に抑留されておりまする邦人の釈放と、大村収容所に収容されておりまする者との相互釈放を、人道的な見地から実現をしたい、こういうような約束をされて参りました。その約束が、迫っておりまする外遊前に実現をいたすかどうか。その点をお尋ねいたしたいと思います。
  33. 岸信介

    国務大臣岸信介君) ぜひ実現したいと考えて、鋭意交渉を続けております。
  34. 吉田法晴

    吉田法晴君 鋭意努力をしておるということでございますが、最近の新聞の伝えるところによりますと、あるいは石井国務大臣が、留守中の外相代理になって相互釈放をまとめる態勢を固めつつある。こういうような新聞記事もございます。そういたしますと、この新聞記事から想像をいたしますと、これはまあ悪い方の想像でありますけれども外遊前には実現をしないのではないか、こういうあれもあって、石井国務大臣におまかせになるというのですか、あるいはお頼みになる、こういう気持かとも考えられますけれども、ただいまの答弁では、東南アジア出発せられます前、アジア局長も同行するようでありますが、その前に釈放実現すると、こういう御答弁でございますね。
  35. 岸信介

    国務大臣岸信介君) ちょっと言葉が正確でなかったかと思いますが、私はアメリカへ行く前にはぜひなにする。外遊という言葉ではちょっと両方含んだかと思いますが、アメリカへ行く前にこれを解決するということについては、強い決意でやっておるわけであります。ちょっと伝えられるところによりますと、韓国側のこちらの公使等人事的異動があるやにも伝えられておりまして、そういうことが多少最後の決定をすることについて、何といいますか、おくれておるような事情もございますけれども、私自身としては、アメリカに行く前にはぜひともこれを実現する考えでおります。
  36. 吉田法晴

    吉田法晴君 もう一つ念を押しますが、東南アジア出発せられる前には、最終的な決定がなされるかどうかはしらぬけれども、多少金公使交代等についていわれておることがあるけれどもアメリカ出発せられる前には相互釈放実現すると、こういうことでございますね。
  37. 岸信介

    国務大臣岸信介君) さようでございます。
  38. 吉田法晴

    吉田法晴君 それでは重ねてこれは援護問題についてお尋ねをいたしますが、従来、当委員会その他で援護問題について、さらに充実完全を期するために、その援護取扱いを検討をする、こういうお話でございましたが、聞きますところによると、水産庁その他関係当局においては研究中のようでございますけれども、これも近く、アジア出発前あるいはアメリカ出発前において、この援護の点について、あるいは三十年十二月以前の取扱いにこれは直すべきだ、こう考えますし、あるいは帰って参りましての措置について、ソ連引揚者同様に取り扱うべきだ、それからはっきり援護措置をきめて、月々支給するか、あるいは月々支給と同じようにし得るように援護措置を講ずる、こういう点等もございますが、それらの点についてこまかいことはよろしゅうございます。外遊前に閣議でこの援護措置について取扱い決定をする、こういう言明が願えますかどうか。
  39. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 過般私は関係当局に対しまして、この援護措置についての万全を期するように具体的の方法を講じろということを申しつけたのでありまして、まだ実ははなはだ何でございますが報告を聞いておりませんので、何でありますけれども援護の問題は急を要する点がありますから、十分一つ検討いたしまして、御趣旨に沿うようにしたい、こう思います。
  40. 吉田法晴

    吉田法晴君 重ねて恐縮ですが、ですからこまかいことはここでお尋ねをする場でもないと思いますが、外遊前に、アメリカにおいてになります前か、釈放に関連をしてでございますから、閣議決定をいたして、その援護の改善について政府としては措置をする、こういうことが言明できますかどうか。
  41. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今お答え申し上げましたように、私具体的のまだ何を承知いたしておりませんので、私として今ここで結論を申し上げることは差し控えますけれども、御趣旨に沿うように私も極力努力をいたします。
  42. 吉田法晴

    吉田法晴君 もう一つの問題は、北方の漁業、特に歯舞、色丹あるいは千島、南樺太等、北方の近海漁業あるいは接岸漁業の問題でありますが、これは当委員会にも請願が出ておりますから、あとでも審議せられると思うのでありますけれども、戦前において戸数にして八千四百戸ほど、従業者の総数が三万八千、現在でも関係漁民の明らかになっております点が二万五千人もございます。それから、年々に出稼ぎをいたしておりました漁業労働者は三万五千九百、三万六千に近い数字であります。数量にしましても戦前一億数千万貫、あるいは金額にいたしましても百五十億ないし二百億、可能になりますならばその数字はやはり数千万貫あるいは数十億に達する問題でありますが、これが引き揚げて参りまして漁場が狭くなっておりますために、戦前の半分以下の漁獲あるいは非常な困難な生活をしているわけであります。日ソ国交回復交渉の過程でいろいろ論議はされたようでございますけれども片づいておりません。そこで、急速にこの問題を片づけてもらいたい、あるいは平和条約によって領土、領海等の懸案問題を解決するとともに、全海域、地域において完全に操業がし得るようにという要望もございますけれども、もしそれが直ちに実現をしないとするならば、少くとも歯舞、色丹等、近い海域において漁業の操業ができるようにということは、先ほど申し上げましたような生活の実情、あるいはこの漁業の実態からして、相当国民の多くの関係者の切望しているところでございますが、従来の交渉の中でも若干考慮をせられたようでありますけれども、外務大臣あるいは政府として、この点について折衝をする用意と決意とがあるかどうか承わわりたい。
  43. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今北方の沿岸漁業、接岸漁業の点につきましては、根本は領土問題が未解決になっております関係上、関係者に対して非常に不利な、また不便な、また従って生活上もいろいろ困難をされている事情がありまして、これに対する措置について要望のあります、これについては私の方から、外務省から、領土問題が解決せぬ前におきましても、ソ連側において特に考慮をしてもらいたいという意味において、ソ連側にこの処置について特別の考慮をするようにということを申し入れておりますが、まだそれについての解決を実はいたしておらない状況でありまして、今お話のような点において政府としては今後できるだけ、従来のこの漁業者がこれらの地域においてその生業が営めるように、ソ連側と折衝を続けていかなければならぬと思っております。と同時に、これは国内措置として農林省、水産庁とも十分連絡しまして、これら漁民に対する援護の方法はまたこれと並行して考えていかなければならぬ、こう思っております。
  44. 吉田法晴

    吉田法晴君 重ねて恐縮ですが、領土問題と関連をいたします漁業ということになりますと、申し上げました関係漁業の中で相当問題があろうかと思うのですけれれども歯舞、色丹は日本に返還が約束されておる。そして歯舞、色丹の接岸漁業というものは関係漁業の従来大半を占めている。ほとんど五〇%に近い漁獲であったようでございます。従ってこの歯舞、色丹等の沿岸漁業あるいは接岸漁業とうものは、これは直ちに交渉の対象になり得るものだろうと考える。それから黒当はかわられましたけれども、従来法眼参事官等においてもこれは考えられておったところだと思うのです。外務省としてどこまで考えられておったかということは私知りませんけれども、従って直ちに交渉をし、それから実現をし得る部面もございますので、具体的な交渉方法あるいは内容等はここでお聞きするつもりはございませんが、この問題について直ちに交渉を始めるべきだと思うのでございます。その御用意がありますかどうか重ねて承わりたい。
  45. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 歯舞、色丹につきましては、究極において日本の領土になるということは、共同宣言で明らかにされておるところでございます。従いましてその接岸漁業につきましては、日ソ友好関係がこの共同宣言によって作られた以上は、特別にこの地域についての接岸漁業については、ソ連の考慮をうながすわが方に根拠があると私は思います。従いましてこれにつきましては従来も、私その交渉の経緯をつまびらかにいたしませんけれども、われわれの方から申し出ておりますが、それに対する満足すべき回答を得ておらないのでありまして、従って今後、今お話のように直ちに私としてはソ連側に考慮を求めまして、これらの問題を解決するように私の方としてはソ連と交渉する考えでございます。
  46. 佐藤尚武

    佐藤尚武君 このたび岸総理大臣東南アジア方面においでになるというようなことを伺いまして、そしてまた続いて米国にも足を伸ばされるようなお話、まことにこれは機宜を得た御旅行であると思うのであります。同時にまたこの御旅行が非常な大きな意味を、種々の点において大きな意味をもたらし得るものとお察ししておるわけであります。東南アジア方面においでになるにつきまして一つ私の考えを申し述べ、それに対して総理大臣がどういうふうにお考えになっているかということをお尋ねしたい点があります。それはいわゆるアジア・アフリカ・ブロックと称せられるものに対する日本の態度についてであります。実は先般の国際連合総会に臨みまして、いわゆみアジア・アフリカ・ブロックなるものが非常な勢いでその勢力を伸ばしている実情を見て、私は驚きもしまた同時に喜びもしたわけであります。驚いたと申しますることは、以前の国際連盟時代には全くなかった勢力か、新しい勢力として今度国際連合の中で生まれて来ておるということを見て、実は驚いたのであります。しかもその勢力は日本を加えまして二十八カ国ということになっております。その上にアジア・アフリカ方面におきましてまだまだ新しい国が誕生する可能性があるように思われます。数年内にはこれが三十ヵ国ぐらいにふえていくことが期待されるわけであります。三十ヵ国と申しますと、いや二十八ヵ国の現状におきましても、国連の総加盟国は八十一カ国でありまするがゆえに、すでに三分の一強の勢力を占めているわけで、これまでは中南米の諸国の二十ヵ国というのがいつも結束して立っておりまして、かなりの勢力を占めておりました。しかるに現在八十一ヵ国の加盟国にもなりますと、二十カ国では四分の一の勢力しか占めていない。しかるに新しく生まれて来たA・Aグループなるものは三分の一強の勢力を占めたという点におきましても、いかにこれらの国々の動向が国際連合に大きな影響を及ぼすかということがわかるのでありまして、国連の重要決議は出席国の三分の二の多数を要しますけれども、A・Aグループその他またこれに同調する国々を合せますると、その重要決議をブロックすることができる、制約することができる。こういうようなところまで進んで来ておる。この事実は日本にとりまして非常に大きな問題を投げるのでありまして、何となれば日本もその二十八ヵ国の一国として現にその地位を占めることになっているからであります。しかもこの国国の多くは欧洲諸国に対しはなはだしく反感を持っているという、これもまた現実の事実であります。以前自分たちが植民地であったり、保護領であったり、ないしは委任統治国であった時代の記憶はこれらの国々にとりましては、まことに芳ばしからぬものであった模様でありまして、従って以前の母国に対しましての反感は非常に強いものがある。そこには反感と申しますよりはむしろ憎しみと申す方が当るくらいの高ぶった感情を持っているのでありまするからして、ややもするとこれが間違った方向にとつ走らないとも限らない、そういう傾向を持っておるということは日本にとりましても重要な問題でなければなりません。世界の平和を維持していくために、この二十八カ国の占める勢力というものが、今申し上げました通りに非常に大きなものであるとしまするならば、その中での日本の態度というものがこれまた非常に大きな疎意を持ってくるということになるわけでありまして、今後日本が国連に対処するという上におきまして、これをどういうふうに持っていかなければならぬかということは、日本にとりましてもきわめて重大な問題になってきておると私は感ずるのであります。ただこのA・Aグループの中におきまして、全部が全部しょっちゅう良好な関係にあるというのではなくて、国々の間においていろいろな意見の相違もあり、感情の相違もあり、その間の関係はむしろきわめて複雑でありまするが、ただ事、独立問題に触れるとか、あるいは民族自決の原則に触れるということになりますると、この二十八カ国はほとんど完全に結束するというのが、また事実として先般の総会にも現実に現われてきたところであります。そういうような情勢をよく日本といたしましては研究しなければならないと思うのでありまして、これらの国々の間同士がどういう関係にあるか、ないしはそれがどういう問題についてはお互いに結束して立つというような情勢になるのであるか、その間に処する日本の態度はどうあるべきであるかというような問題につきましては、これは日本といたしましては実は新しい問題でありますだけに、まだ研究は十分に行き届いていないと思うのでありまするし、その間の情勢につきましてこれからでもおそくはありませんからして、政府におかれても十分研究をされて、そしていかなる態度をもって対処するかということについても、深く検討を加えられるという必要があるのじゃなかろうかと、こういうふうに私は思うのであります。そうしてこの二十八ヵ国の中に日本が入っておりまするという関係からして、その関係におきまして、幸いなことには、日本はこれらのアジアなりアフリカの国々から非常にあたたかく迎えられておるということであります。またこれらの国々の中で見まするならば、日本が唯一の大工業国でもありまして、彼らとして日本に対しまする期待の大きいこともむしろ当然であろうかと思うのであります。それに今申し上げましたような民族のつながりと申しまするか、そういう点で日本にあたたかい感情を持っておるということも、一つの大きな日本にとりましてはプラスであろうかと思います。同時にまた欧米諸国からいいましても、日本の立場というものを非常に重要視しておりまして、日本がこのグループの中に加わった以上は、これを間違った方向に導いていくということは万あるまいという、これは違った方面からの期待である。従いましてこれらの間の日本の立場というものが、このいろいろな意味で両方から大きな期待をかけられておる。それだけに日本の責任は重いものがあるというふうに見られまするし、そういう点におきまして日本国際連合におきまする地位というものが、これから先日本の努力次第ではまだまだ伸びていくという、そこに可能性もあり、また国連のためにも日本の公正なる態度というものが歓迎されなければならぬ、そういう事態にあると私は見ておるのであります。その二十八ヵ国のA・Aグループの中には、またインドのような、今世界の中でも俗に言うのしてきておる、勢力を持っておる国も入っておる。そういう関係におきましてもきわめてその間機微な問題が存在するように思われるのであります。こういうような事態総理におかれましてもよく御考慮になりまして、そして今回の御旅行の機会を利用されて、日本の公正なあり方について進むべき道を総理としてお考えになっていく、御研究になっていくということが私はきわめて望ましいことではないかと思うのであります。私はそういう事態に対処して総理大臣がどういう態度をとられるかというようなことを、お聞きしておるのではなくて、これはきわあて機微な問題でありまするからして、総理御自身がおきめになるべき問題でありまして、わきからかれこれ申すべきものじゃございませんが、ただ私のお願いしますることは、そういったような国際連合の中で大きな勢力を占めておるA・Aグループの中に日本が入っておる。従ってこの問題を日本としても非常に重要視しなければならぬ問題であるということを、私は申し上げるのでありまして、その点に関しまする総理のお考えをお伺いすることができれば、大へん仕合せだと思うのであります。
  47. 岸信介

    国務大臣岸信介君) ただいま佐藤委員が、過般国連にもわが国の代表の一人といたしましておいでになりまして、国連の実情等から詳細にA・Aグループ、また国際情勢の中に立ってA・Aグループの一員である日本のこれから進んでいくべき道、同時にその使命等についてお話がございましたが、私はこの問題はきわめて重要な、日本の外交方針の中におきまして最も重要な点であると、こう考えております。日本がこのA・Aグループの一員であり、歴史的にも地理的にも、あるいは文化的にも、あらゆる面におきまして非常に長い、また深い関係にあるこのアジア諸国との関係におきまして、われわれが従来持っておるよりも一そう深い親善友好の関係を作り上げるということは、とにかく国際連合におきまして今お話のA・Aグループの持っておる力から見ましても、これはきわめて重要な問題であると言わなければならぬと思います。と同時に、今お話にありましたように、これらの国々の大部分はいわゆる新興の国家と申しますか、独立をかち得た、独立国になられたことは比較的新しいのであります。従ってその独立の完成、また民族的意識につきまして非常に、はつらつたるものがあり、いわゆる新興国としての気運が盛り上りつつあることも、十分にわれわれとしては同情と理解をもってこれに対さなければならぬことは言うを待たぬと思うのであります。私はこの世界の平和を増進するという大きな目的を達成する上において、日本がアジアの一国として栄えてき、また将来も繁栄を続けていくというこの立場から見まして、アジア・アフリカのこれらの諸国との間におきましては、私はこれを理解しこれと協力を深めていくという上において、他の西欧諸国よりもさらに有利と申しますか、最も適当な地位にあると思うのです。と同時に、今世界の大きな対立は東西の対立であり、また同時に、A・Aグループと西諸欧国との間におきましても、先ほどお話がありましたような歴史的経緯にかんがみて、対立もあると思うのでございます。これらのものの調整と申しますか、あるいはそれらの対立を緩和すべき役目を持つものが日本であり、それをうまく果していくということが世界の平和を増進する上から見て最も望ましいところであると、かように考えておりますので、今回の東南アジア諸国を歴訪するということも、私から申しますと、そういう今後日本が進んでいくべき方向につきまして、重大な意義を持っておるこれらの国々の首脳部と、率直に話し合って、そうして互いの理解を深め、互いの協力関係を増進する基礎を作っていくということが、最も必要であるという見地に基きまして、今回の歴訪を考えたわけであります。しかし同時に、これらの国々の間にも微妙な関係、複雑な関係がございますので、われわれとしては、今後これらの国々と一方協調を進めていくと同時に、あらゆる問題に関して強い関心を持って研究をし、同時に十分このアジア・アフリカ問題に関する理解を日本としては深めていかなければならぬと、かように考えております。今お話のように、この問題はきわめて日本にとって重要な意義を持っておることでありますから、私としましても、あらゆる面から十分一つ今後検討もいたしていき、強い関心を持ってこの問題を扱って参りたいと、かように考えております。
  48. 佐藤尚武

    佐藤尚武君 ただいま総理のお考えを伺いまして、総理大臣にはアジア・アフリカグループの問題ないしはこれに対する日本の立場等につきまして、深い御理解をお持ちになっておるということがよくわかりました、まことに本懐に存ずる次第であります。  ただ、なるほど日本経済面におきましては、これらの新しい国々に比べましては先進国であることは、事実が証明はしておりまするけれども、しかし先進国ぶったりするということは、これは私は非常な禁物であろうと思うのでありまして、これらの国々の中には日本よりは古い文化を持っている国もありまするし、かたがた日本のA・Aグループに対する一般的な態度といたしましては、きわめて謙虚な気持でわれわれが接するということがきわめて望ましいことではないかと思うのでありまして、日本一流の態度でいくということが望ましいように感ずるのであります。  いま一つ簡単にお伺いしたいと思いますることは、賠償問題でございまするが、インドネシアとの問題につきましてまだ解決がついておりません。これは、日本が東南方に進出していきます上に非常に大きな障害になっておることは申すまでもないのであります。政府におかれましては、最近この問題の解決を促進する方向に進んでおられるやに新聞等で承知しておるのでありますが、その交渉の最中にあるその内容の問題等について、私はかれこれお尋ねするのではなくて、政府はこの問題の促進をほんとうに熱心に希望してその方向に進んでおられるということであるかどうか。最近は出先の公使もかわられるような、これも新聞報道でありますが、代表者がかわったりなんかしたがために、この問題の解決がおくれるというようなことのないように、一つ御配慮を願いたいと思うのであります。それらの点につきましての大体の御意向を伺えれば幸いだと思います。
  49. 岸信介

    国務大臣岸信介君) インドネシアの賠償問題は長い沿革を持っておりまして、いまだ解決をされておらないということは、インドネシアと日本との両国のためにとってのみならず、東南アジア諸国に対する、今お話のような謙虚な態度で、これらの国々の経済的な発展等にわれわれが協力する上から申しましても、非常な支障をなしておると思うのでありまして、私は就任以来これが解決を促進するという考えのもとに、従来の交渉をさらに一そう具体的に推し進めるように努力をして参ったのでありますが、御承知のように、一面インドネシアにおきましては、内閣が更迭するというような事情もございまして、幸いに新しい首相は、賠償問題について日本を訪ねられたこともあり、その経歴から見ても、日本のこの賠償問題について最も理解の深い人でありますので、さらにわれわれとしては、一そうこれを具体的に進めるように努めておるわけであります。過般倭島公使にも帰朝を命じまして、いろいろ現地の事情もしくはインドネシア政府意見等につきましても、具体的な報告を受け、私はさらにこれを一そう具体的に実現するという意味において、関係省におきまして細部の検討を命じておる段階でございます。倭島公使の人事異動は、これは外務省の人事の関係からいたしたわけでありまして、これがために賠償問題の遅延を来たしたり、あるいはそれを遅延せしめる意図をもっての異動では全然ございませんで、従いまして、私どもとしては、できるだけ早くこれを解決するという方向におきまして、従来の考えと違いないのみならず、さらに具体的に最後のわれわれの案を、向うの事情も聞き、向うの意見も取り入れて検討を命じておる段階でございますから、私としてはできるだけ早く解決したいと、こう思っております。
  50. 佐藤尚武

    佐藤尚武君 お尋ねいたしました問題につきまして、率直な御意見を拝聴することができましてまことに感謝いたしております。すべて私といたしましては満足をもって了承をいたしました。ありがとうございました。どうぞよろしくお願いいたします。
  51. 森元治郎

    ○森元治郎君 例によって時間がありませんから、質問を列挙して二つに分けて申し上げます。  第一の点は、原水爆禁止呼びかけの跡始末はどうされるか。この呼びかけは私は大した成果をおさめたと思いますが、イギリスやアメリカは大へん苦労をするし、いいところへ追い込んだと思っておる。道義の力というものも現実にこれほど大きい力があるということを発見したことは、われわれ国民にとって将来のために大きなことをつかんだと思っております。ところが政府は、核兵器も持てるのだという例の声明以来すっかりこれをぶちこわして、百の説法何とか一つという結果になったように見えます。それが証拠にアメリカ、イギリスは喜んでしまった。またソビエトに対しては、原水爆は共同禁止、一緒にやろうというのに対して、持てる国、持てない国が一緒にやれるか、そういうつもりで反対の、反対といいますか、そういう気持の回答を出しておりましたが、自分も持てるのだというようなことになってきますと、権威はきわめて失墜してしまいます。内外のおそらく疑惑を招くし、信頼を失墜すると思うのですが、今後引き続き従来通りの実験禁止運動をおやりになるのか、あるいはこの際変えるのか、また技術的に見ても問題の死の灰というものを制御する、大きくも小さくもできるという制御が可能となってきましたので、禁止々々と言っているうちに、実験をしなくてもいいようになるかもしれない、あるいは物をたくさん作ったのでその範囲でまかなえるという時代がくるかもしれない。そのときに実験禁止、実験禁止と一つ覚えのようなことを主張したのでは、目標がなくなってしまうと思うのですが、政府はどういうふうに今後される方針か伺いたいのであります。
  52. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私は、原水爆の実験禁止ということを、強くこれら実験をしておる国々に要望して参ましたことにつきましては、言うまでもなく、私の一番根拠となっておりますところのものは、人道的、おそらく私の気持と同様な気持から発しているであろう強い国民の要望等を体して、日本国民のこの考えを最も純粋に端的に各国に呼びかけて、そうして世界の良心に訴えるという方法で今日まで参ったわけであります。この問題はなかなかいまだ結論的に申しまして、私どもの期待しているようには参りません。のみならず、外電の報ずるところによりますと、本日午前朝早くクリスマス島における第一回の核爆発実験が行われたということが報ぜられておりまして、私どもとしては非常に遺憾にたえないところであります。今後におきましても、同じ考えで進んでいく決意を持っておりますと同時に、それをさらに実際的に有効的ならしめることにつきまして、あらゆる面から検討してこの運動を私は強く続けて参って、目的に到達するに至るまではやめないつもりでございます。
  53. 森元治郎

    ○森元治郎君 そこで憲法はすべての核兵器を拒否しておるのではないのだ、物によっては持ち得るのだ、こういうような政府の見解が強くあらゆる機会に打ち出されておりまするが、これは単に質問があったからこれに答えたというだけのお話なのか、世論では日米会談においてもこの問題が中心になることはほぼ確実だと見ておるのです。その真意は一体どこにあるのか、この際明らかにしてもらった方がよろしいと思うのであります。
  54. 岸信介

    国務大臣岸信介君) この憲法の九条の解釈論として、核兵器の所有が憲法で禁止されておるかいなかということが国会におきまして論議され、政府としては統一した見解を一応発表いたしたわけでございまして、さらにそれに対していろんな角度から質問をされまして、私は憲法解釈としての所信を明らかにいたしたわけでございます。これを一部の人の想像しておるように、そういう憲法の解釈をしたということが、何らかの政治的意図があるように解釈されることは、私としては大へん迷惑な、私の気持から言いますと迷惑なところであります。私は、政策論としてはっきり申し上げておるように、核兵器で日本のなにを武装する意図も持っておりませんし、また原子力部隊の国内への駐留等につきましても、これを拒否するという従来の所信を少しも曲げておるわけではございません。ただ純粋な憲法理論として質問を受けまして、それに対しましては、いわゆる自衛権というものを、われわれの立場から言えば憲法九条は否定しているものではならい、自衛権というものは、当然ある種の力を持たなければ侵略を排除するわけにはいかない、その力の内容というものはどういうものだと言えば、これは、科学の発達や技術の発達に相応して、有効な自衛を全うするものでなければならぬことは、私は当然であろうと思うのであります。こういう意味から、今日原水爆や、核兵器と言われておるものは、これは、私は自衛権の内容をなすものではないし、そういうものが憲法上許されておるということは考えておらないけれども、しかし将来科学の発達やいろいろな技術の発達を考えまして、いやしくも核兵器といわれ、あるいは兵器のカテゴリーに入るからそれはもういかぬのだというふうなことは、憲法の解釈としては行き過ぎであろうという所信を明らかにしたわけであります。
  55. 森元治郎

    ○森元治郎君 ただいまお話がありましたが、それだけの確信をもってお話をしているのならば、核兵器についてこれは憲法に違反しないという、核兵器の具体的内容もおよそ見当がついておられるはず、あるいは当然資料としてお持ちのはずだと私は思うのでありますが、もし時間がございましたらば、そこにございましたらば、伺いたい。あるいは、今発表はできないが、二十日の国防会議でも終ったときにでもこういうことを国民に知らぜるのか、国民は不安を持っておるから、私は、どういうものが心配はないと政府は思っておるところなんだ、ということをお示しになる責任があると思います。  第二点は、自衛権、自衛権と大へんこのごろ自衛権が、満州事変当時のように新聞をにぎわしておりまするが、こういう拡張解釈で行くならば憲法改正なんて必要ない。有効なる装備を持つということは総理国会答弁をされておられる。有効な装備、ちょうど安全保障条約の前文に書いてあるような、固有な自衛権はあるけれども、有効な力がないからと言っておられるのですが、その有効という字を使い始めた。こうして来るならば一体憲法改正の必要があるのか。憲法を改正しないままにほっかぶりされて、戦術兵器、おそらく政府の言うのは短い距離とか、あるいは局地的な兵器、千マイル以内、千マイルといいますと、九州からいえば満州里も入るし漢口も入る、カムチャッカも入る、こういうような他国の領土まで十分届くようなものを持っておるならば、憲法は改正する必要はないと思うのですが、この点について伺いたい。  もう一つは、自衛権で感ずるのですが、新聞などを見ましても、原子戦下の態勢、部隊の再編成、機械化、装甲化というようなことが堂々と新聞に載っておる、こういうことは満州事変以後われわれが見なれた文字でありまするが、これは国民も納得しない、反対党、社会党も納得しないこういうものを政府の一方的な見解で引っぱって行くということは、ちょうど三国同盟当時の空気を私は思い出します。当時総理は有能な若手官僚として商工省におられたと思うのですが、あの当時の勢いである。どうも私は総理が陸軍大臣のような気がしてならない。社会党が当時反対した、もちろん民間の有識者もだいぶ反対をしたが、いつの間にか持って行ってしまわれた。その日その日の総理の御答弁なりあるいはお話なりは、っじつまが合ってよろしいのですが、長く見通したときに大きな間違った流れに入って行くことを私は恐れるのです。その日その日のつじつまを合ぜて明晰な頭脳を誇っただけでは、プロアェッショナルな総理だけであって、政治家ではない。私は、岸総理は明晰な頭脳を持っておられ、しかも現実の分析、将来の分析などもりっぱなものだと思っておりますが、長い眼で見てただ自衛権自衛権といって、自衛戦争に発展して行くような原因を醸成されないように、私は切に望みたいのでありまするが、総理の所信を伺いたい。
  56. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 憲法九条の自衛という、自衛権ということは、これは非常に限局された意味であることは言うを待たないのですが、私どもがこの憲法第九条の解釈上、国として、独立国としては、やはり自衛権を持っておるという、一般通説の考えをとっておるということは、他から急迫不正な侵害を受けた場合に、これは手をあげて、ただその侵略にまかすということじゃなしに、やはり独立国としてはその侵略を排撃する、そうしてその国の独立なり平和なりを守っていくということは、これは独立国としては、当然どんな国でも、独立国である以上は最低限として持っておる国家の作用である、それに必要な最小限度の力を持っていくということが、この自衛権の私は内容であると思うのであります。従いまして、明治憲法下におけるいろいろないわゆる自衛戦争とか、あるいは自衛のためとか言ったこととは、私は本質においてこれは違っておることは言うを待たないと思います。  ただ、私どもがこの防衛力の漸増につきまして、すでに公けにしておりますように、本年度の予算編成に当りましても、量よりも質に重点を置いて増強をはかっていくという考えを私どもは明らかにいたしております。これは言うまでもなく、われわれが今申しましたような他から急迫不正な侵害を受けたという場合に、これを排除していくのには、やはり排除するだけの力を持たなきゃならない。それが果して陸上の部隊の力として十八万がいいか、あるいは十八万じゃ足りないから三十万置けとかいうような、いろいろな議論もあるけれども、そういう数の問題よりは、やはり装備が有効にされておって、そしてそういう場合における自衛の——本来限られな自衛の最小限度の力を具備しているという実質を持たすべきじゃないか、こういう見地から私どもは申しておるわけでございまして、そういう意味において、今、森委員お話にありましたけれども、私ども、かつて明治憲法下における自衛という考え方と、今度の新憲法下におけるわれわれが言っている自衛権の範囲というものは、非常に違うのであって、それは非常に限局されているものであることは、われわれといえどもよく承知いたし、また、そういう意味において用いているわけであります。  なお、核兵器について、こういうものはいいというふうな、何か具体的なものを考えているんじゃないかという御質問でございましたが、私は全然そういうことは考えておりません。また、今日言われておるようないわゆる核兵器というものは、また実験されつつあるようなものというものは、これは先ほど申し上げましたように、自衛のために必要な力とか、最小限度の力と見らるべきものではない。しかし、将来の発達ということはいろいろ考えておかなきゃならぬ。これは果してそれを核兵器と言い得るかどうか……、原子力を用いたいろいろなことは、エネルギーとして用いるということは、今後においても発達すると思います。そういうようなことの技術的の、また科学的の発達を、やはり頭に置いて考えていくというと、ただ単に名前が核兵器であるから必ずやすべて憲法違反だということは、私は行き過ぎであろうと、かように考えておるわけであります。
  57. 森元治郎

    ○森元治郎君 憲法改正は……。
  58. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 憲法改正の問題につきましては、私どもは実は自主憲法を制定すべしという意味において現憲法を再検討しろということを申しております。しかし、その憲法におきまして、平和主義であるとか、あるいは民主主義であるとか、現行憲法の基本の人権を尊重する主義であるとかいうような、根本になっておる考え方を変えようというようなことは、私自身は毛頭思っておらぬと同時に、私の属しておる自民党においてもまた考えている者はないと思います。ただ、全面的にこの憲法というものを再検討して、ほんとうに日本民族の将来の基本法としてふさわしいものを、われわれの研究の上に作り上げようという考えでございます。憲法九条の問題につきまして、これをどういうふうに改正するか、あるいはどういうふうな点において新しい憲法を作るべきかという問題については、私は、少くともこの自衛隊なり、あるいはさっき申しました自衛権の範囲でするところのわれわれの最小限度の実力というものが、憲法違反であるかないかということで、非常な論争になるような状態に置くことは、私は自衛の本来の趣旨からいって、これは適当でないと思います。従って、そういう点において憲法上の違憲であるかどうかということについて、大きく意見の分れないような、はっきりしたものを作っておくことが必要であろうと、少くとも考えております。
  59. 曾禰益

    曾祢益君 最初に、日中国交問題について伺いたいのですが、総理のこの問題に対するしばしばの御答弁は、要約すると、日本と中華人民共和国との間に正式に国交を回復する問題は、まだ時期にあらず、こういうお考えのように拝聴しておるのであります。まだその時期にあらずというのは、どういう意味かということを考えてみると、まあ想像されることは、やはりアメリカの態度、またこれを中心として国連における中国の代表権の問題が片づいておらない、こういう点を特にさしておるやに考えるのであります。もとより、まだ時期にあらずという言葉は、話は違うかもしれませんが、一方における台湾の国民政府との条約関係、こういう点もあるかもしれないが、主として最初の二点が障害であるというお考えのように思う。しかし、そういう考えでいく限りこれは日本には何らの自主的な政策、中国に対する日本の長い目で見た一つの方針というものは全然なくて、ただ客観情勢待ちということになるのではないか。従いまして、今回アメリカにおいでになって、こういう機会にアメリカ当局との間に、世界の平和を論じ、国際情勢を論ずる場合に、一体中国全体の問題を、世界の平和、概東の平和、日本の平和と安全の見地から、このままでいいというような方向でなくて、やはり日中国交というようなことについて、むしろアメリカにも日本側の、希望なり、サゼッションなり、意見をべるというような考えがあるのかないのか、この点をまず伺いたいと思います。
  60. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 中共政府承認の問題、これの外交関係を正式に開くという問題につきましては、過般社会党の中国訪問団の、向うの学会の代表者との共同声明におきましては、その段階にきていると、早くやるべきだという意見が発表されております。が、私どもは、まだ時期でないということを申してきております。それにはいろいろの事情が私はあると思います。今御指摘になりました国際的の情勢というものも一つの大きな理由であることは言うを待ちません。従いまして、この問題の解決というものは、なかなか容易でないことも当然でございますが、しかし、私は、先ほども一言いたしましたが、アジアに日本位置しており、アジア全体の平和、これがひいて世界の平和の上に非常に重大な影響を持つことも言うもまでない。しこうして、アジア全体のなにについて、十分理解を持ち、アジアに対する一つ考えというものにつきましては、わが国が立つその立場からいって、われわれが、われわれ自身の最も公正な意見というものが、国際的に一つ発言として重要な意義を持っておるものだということの、日本国民としては、またわれわれとしては、一つ考えを根本に持ち、そうしてこれの問題についての十分な検討を、それを裏づけるだけの十分な検討をいたしまして、そうしてわれわれの意見というものをやはり持って、国際的の一つの雰囲気を作り、情勢を作り出していくというようにしなければならぬことは、私の根本の考え方であります。そこで、この中国問題に関して、当然私はアメリカ首脳部との会談におきましては、その問題にも触れることであると思います。従いまして、これらに関するわれわれの考えというものも、率直に述べる必要がありましょうし、また、アメリカ側意見というものも十分聞いてみる必要かある、こう考えておりますが、いずれにいたしましても、私はただ国際情勢変化待ちという消極的な態度では……、日本としてはこういう問題に対して、アジアの最も重要な問題の一つであるこの問題に対しては、私は、やはり日本側意見というものを、十分各方面から検討していくべきであると、こう思っております。
  61. 曾禰益

    曾祢益君 総理か単なる情勢待ちではない、またアメリカ首脳部との会談の際にも、むしろ中国問題の重要性に触れての日本側の気持等にもお触れになるという御発言を、私はこれを了とします。  そこで、言うまでもなく、先ほども佐藤委員の御発言にあったように、たとえばアジア・アフリカ・グループというものを考えても、これはいろいろのニュアンスがあっても、やはり中国を自分らの仲間に考える。それは中華人民共和国の方向をとっておることは、これは第一回のAA会議を見ても明らかであるわけであります。さらに突き進んだ会談の内容について意見を述べることは、この際、差し控えますが、少くとも今の気持をもってアメリカにも誤まりをさとす。大所高所から、大局的な正しい議論を教えてやる。また同時に、こういうことに関連して、少くとも国連における代表権問題等については、かつてイギリス等がしばしばやったように、たとえば中東問題に対するイギリスの立場をアメリカから支持してもらう代償として、自分の議論としては非常に支離滅裂であるけれども、ことしの国連総会においては、まだ中国の代表権の問題は、やはり人民共和国の方に肩を持たないというような、悪く言えばやみ取引的なそういう約束をすることは、これは適当ではない。これは他国のことは批評の外でありますけれども、少くとも日本の岸総理としては、そういうようなことにならずに、むしろ大勢は刻々にアメリカのかたくなな方針に不利になっていくということを、十分にさとしていただきたいと思います。従って、代表権の問題について、少くとも変な、先走った情勢に反するような約束をしないでいただけるかどうか、この点と、あわせてココムの問題について、これは当然に話が触れると思いますので、少くともこれまた大勢からいって、アメリカ及びいわゆる自由諸国の利益からいっても、いわばこういうような政策の貧困から中国の開発が、ただソ連及びソ連圏にのみたよるような方向に追い込むあの政策は間違いである。その意味で、チンコムの大幅な制限緩和等については、これはどうしてもトップ・レベルにおける話し合いを具体的に、強力的に進めていただきたいと思いますので、この二点についての御発言をいただければけっこうであります。
  62. 岸信介

    国務大臣岸信介君) いわゆる国連における代表権の問題、これを中華人民共和国に代表権を認めるかどうかという問題に関しましては、私は、いろいろの観点からこれを検討する必要があると思います。従いまして、アメリカに行って、今お話しのように、これを認めないということをあらかじめ約束するというような性質のものではないことは、言うを待たぬと思います。あらゆる観点から検討して、日本の態度をきめていきたいと思います。  それからチンコムの輸出制限の問題に関しましては、これまた、私どもは一貫して日本の主張をいたしておりますし、アメリカ側におきましても、ある程度緩和する提案をいたしてきておりますが、われわれの要望しているところとはまだ相当に開きがありますし、それからこれに加盟しているその他の西欧諸国におきましても、わが国の主張と同じような主張を持っている国が少くないのであります。十分、一面においてはこれらの国々と協調して、ハリの委員会におけるところの審議におきましても、われわれの主張が実現するように努力すべきことは当然でありますが、アメリカの首脳部との話におきましても、当然われわれの従来からの一貫した主張であるということは、十分に、あらゆる観点からわれわれがそう考えているゆえんのものを、アメリカの首脳者をして理解せしめる必要があると、こう思っております。
  63. 曾禰益

    曾祢益君 総理の所信表明が午後あるのでありますから、日米会談についてあまり触れるのは適当でないと思いますが、ただ一点、これはかつて今会期中に本院の予算委員会における私の質問に対して、総理がはっきりお答えになったと思うその点だけを確認していただきたいと思うのは、安保条約の改正の問題に関連して、少くとも、いかなる話があろうとも、二年ばかり前の岸さんも言っておられた、重光・ダレス会談といいますか、ワシントン会談の際の、ただ形だけ対等であればいい、双務的であればいいという日本側の持ち出し方であったと私は思うのでありますが、それから発展して、少くともだれが考えても常識的には西太平洋の共同防衛まで引き受ける、いわゆる海外派兵の予約までするというような、そういったような形だけの対等というところから、海外派兵なりあるいは今の純粋防衛的な、日本本土の防衛的な一種の片務条約が、そういう意味で双務的な共同防衛を、日本地域以外に広げるというような形に発展するようなことは万々ないと。国民はしかしその点を非常に心配しておりますので、この点に対するお考えだけをもう一ぺん伺いたいと思います。
  64. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 御質問の点は、きわめて重要な、もし誤解があってはならぬことでありますから、明確に申し上げておきますが、私は、全然そういう意図は持ちませんし、また、それは日本の憲法上許されないところであるということを、はっきり申し上げておきます。
  65. 曾禰益

    曾祢益君 すでに森委員とのただいまの応酬並びに昨日の本院本会議における田畑議員と総理との間の質疑応答で、問題は十分出されているわけですが、率直に言って、私ども並びに多くの良識ある国民がわからないのではないかと思う点は、どうして最近になって憲法の解釈に触れて、そうしてある種の核兵器、あるいは兵器とはいえないかもしれないけれども、核分裂を利用したようなある種の、これ純粋兵器でなくても、たとえば飛行機あるいは船の機関もあるでしょう、ある種のものは、これは必ずしも現行憲法が禁じてない、こういうことをどうしてあの機会に言わなければならなかったか。これは、いかにもわれわれとして納得ができない。総理はあくまでポリシーの問題、政策の問題としては、アメリカの原子兵器もお断りする。また日本も今わかっているところの核兵器による武装はしない。この方針は貫く。こう言っておられるのが、何ゆえにこの憲法の解釈に触れて、こういう幅をとっておかなければならないのか、これはわれわれが想像して、——想像で非常に恐縮ですけれども——たとえばアデナウアー、ドイツ最初の場合と非常に似ているのではないか、一面においてはソ連からの追及があれば、自分がみずから核兵器による武装は考えておらない、他方においては、もちろんこれは日本と違ってアメリカによる核兵器の進駐は認めておるのですから、その点は違いますが、しかし同時に、NATO及びNATOの軍隊のドイツ部隊としての関係からいうならば、何らかやはり将来の問題としても、核兵器によるドイツ軍の武装の余地を残し、ただ現在のポリシーとしてはそれをやらない。悪く言えば一つの問題を使い分けしているような例もあるがゆえに、このことが原水爆禁止に関するいろいろな日本のモラルな、道義的な立場を弱めるということももちろん重要でありますが、何となく政府の防衛方針あるいは外交方針に触れた私は根本的なそこに問題がやはり伏在しているような感じがしてならない。すでに参議院の予算委員会において、こういうことをリピートして私はなはだ恐縮ですが、武器の発達という点からいくならば、そうしてアメリカとの共同防衛という建前で行く限りは、いずれかの日にはアメリカの原子兵器を国内に入れるか、あるいはすでに日本の防衛庁がやっておったように、誘導弾の研究という形による何らかの、先ほど森君が言われたような、千マイルも到達するような誘導弾でないにせよ、たとえばばきわめて近距離といわれる三十キロ程度の、いわゆる直接の武力攻撃を水際において撃つ程度の、あるいは防空における誘導兵器の弾頭には、これは核兵器を使っても悪くないのじゃないかというような、どっちかに行くような可能性が非常に私は現実に起ってきているということを申し上げて、いずれもそのときには、総理は明確に、いずれもしないと。ところが今日はすでにポリシーとしては今やらない、しかし現行憲法の解釈においても、何らかのゆとりをとっておきたいという意図が明瞭に出ておるではないか。従って、何ゆえにこの際憲法の解釈にそういうゆとりをおとりになったのか、そこがわれわれとしてはわからない。過去から一々申し上げるまでもなく、これはあらゆる戦力は持たない、近代戦争のできるような戦力は持たないのだというのが、かつての吉田内閣以来の解釈だった、今や核兵器もある種のものは持つかもしれない、解釈上は余地かあるのだという、これは飛躍的な、私は政策に触れた転換だと言わざるを得ない。従って、その動機をこの際明確にされることが必要ではないか。ことに最も忌むべき疑惑というものは、アメリカに行くからその前にこういうことをやったのではないか、そういう総理の解釈がありますと、早速アメリカの方からは、むしろそれは、何といいますか、俗にいえば、ういやつだと言わぬばかりの、これははなはだ総理としても心外だろうと思うのですけれどもこういう疑惑が起っているに至っては、この際明確にその意図を鮮明されることがはなはだ必要だと思いますが、はなはだ重ね重ね恐縮ですが、御意見を拝聴したいと思います。
  66. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 先ほども申しましたように、私はこの問題につきましては、憲法解釈としてわれわれの方から積極的に申したわけではございませんけれども質問がいろいろ展開され、あらゆる観点からの質問に対して、現政府としての憲法解釈を明らかにせざるを得ない立場に立ちましたがゆえにしたわけでありまして、それ以外に別に今いろいろなことを想像されるとか、あるいはこういうふうな疑惑があるというような話がございましたが、私は先ほど申し上げましたように、何らそれ以外に政治的意図であるとか、あるいはいわんや私の訪米と関連せしめてなにをしたわけではございません。私の考えは、あくまでも憲法の解釈として申し上げたわけであります。それも積極的にわれわれの方から進んでこの際憲法の解釈を明らかにするという意味ではなくて、いろいろの点からの論議の結果、政府としての統一的な意見も発表せざるを得ないし、その趣旨についてさらに砕いて試さざるを得ないようになりましたがゆえに、私は憲法解釈についてのわれわれの所信を申し上げたわけでありまして、それ以上に何らの意図がないということは、一つ十分に御理解いただきたいと思います。
  67. 曾禰益

    曾祢益君 率直にすなおに受け取りがたいような気持があります。それから総理のいわゆる自衛権論は私は非常に危険ではないかと思う。もとよりかつての、自衛権を名としていわゆる先制攻撃をするというようなことを、だれしも現憲法下に考えていないことは明瞭です。しかし、直接急迫かっ不正な攻撃を受けた場合に、最小限度の自衛力を発揮することは、何ら禁じてないということになると、その最小限度の限度の限界は、それこそ総理が言われる武器の発達上、限界はなくなるというのが、これはむしろ防衛理論からいえば、そこにきていると思う。従って、そういう議論をしていく限り、少くとも防衛的な核兵器も必ずしも禁じない。防衛的という範囲がレインジできめることができないということは、森委員指摘した通りだと思う。私はそこに非常に危険がありはしないかと思いますが、その点について伺いたい。
  68. 岸信介

    国務大臣岸信介君) これは自衛力の質及び量ともにそういう議論が私は成り立つと思うのですが、一体最小限度のわれわれの力というものは、これはやむを得ず限られた自衛という範囲内において、それを裏づける限られた力というものが必要である、こう言いますというと、その力が果して数量的にいって、陸上部隊として何万まではそれであるかとか、あるいは海上の自衛隊として軍艦何万トンまではどうだとか、あるいは飛行機として何機まではそうだというようなことも論議されましょうし、また質的にいうと、飛行機の内容としてジェット機の発達があるが、ジェット機はどうだ、あるいは原子力のエネルギーを使った飛行機が発達してきたらそれはどうだというふうな、この問題も科学の発達、兵器の発達としては、当然量及び質の両方から自衛権のために必要な最小限度の力というものは論議の的になると思います。それは私は無制限なものではないと思います。しかし、それを具体的に線を引くということにつきましては、非常な、私は、むずかしい問題であって、これはお互い良識をもって解釈するよりほか方法はないと思っております。
  69. 曾禰益

    曾祢益君 時間がありませんので、重要な問題ですが割愛いたしまして、最後に、これは非常に小なる問題のように見えて、私、非常に気になっておる問題は、この前申し上げました日本海外移住振興会社に関するいろいろなおもしろからざるうわさです。簡単に申し上げるならば、経理内容がでたらめではないか。それからそれに不幸にして外務省の職員までやや疑惑を来たすような報道がなされた。第三に、事業の内容が本院の付帯決議の趣旨に沿っておらない、というのは、主として農業移民の送り出し並びに定着に必要な貸付等をやるということになっているのだが、それらの方々の事業が十分に行われていない。そこにロスがあるのではないか。さらには現在の最高責任者、社長が非常に政治的な言動をして、おれは総理大臣、外務大臣をよく知っているからというようなことで、ワンマン的な政治的な言動をしておって、はなはだおもしろくない。そういう問題に尽きると思うのです。これについての外務大臣としてのお答えを承わればけっこうです。
  70. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 海外移住会社の経理内容について疑惑があるように一部新聞に伝えられまして、これに対する世人の関心を引いたことにつきまして、外務省といたしまして、監督の地位にあるものとして、はなはだ遺憾でございますが、私ども早速その事情について詳細に調査をいたしまして、またなお不十分な点については、今後も調査しなければならぬ点もあるように思いますが、しかし、一部伝えられているように、外務省の官吏がこれに関連して、何らか不正もしくは涜職的な事実があるというようなことは、絶対に私どもはないということを断言いたします。  それから、経理内容につきましての点でありますが、これは、国内における経理内容につきましては、十分にその資料等につきましても、また帳簿等につきましても、私ども検討をいたしておりますが、海外の支社、出張所等におきまして、当時まだ報告が来ておらなかったとか、報告を出すべき時期に報告か出してないというような点において、やや規律が十分に守られていない、言葉をかえて言えばだらしがないというような批判を受けるような点もありましたので、それについては厳格に注意を促し、またそういう疑惑を持たれないように、特に監督上必要な措置を講じて参っております。  次に、この移住会社の業務といたしまして、主として農業移民の送り出しや定着や、これに対する貸付ということを主に考えるべきだということにつきましては、実は、従来移住会社のこの資金的な基礎も十分でございませんでしたために、十分なそれについての成績を上げなかったという批判はこれは受ける点もあるかと思いますが、私ども今度さらに資本の増加を実現をいたしまして、また政府からの融資等につきましても、さらに考慮を加えていきたいと思っております。なお、これは主としてそれであって、全然それでは他の企業的な、いわゆる海外企業進出についての資金等についての貸付という問題につきましても、これはもちろん禁止していることじゃございません。しかしそれがために、特に主たる業務であるところの農業移民の方に非常に支障を来たすということは、これはもちろんあの付帯決議の趣旨にも反するわけであります。そういう点につきましては、もちろん十分付帯決議の趣旨を尊重していかなければならぬことは言うを待ちませんが、そういう今申しました二つの意味において、資金が十分でないために、まだ十分その貸付の効果が上っておらぬじゃないかという非難、批評と、それからまたそれ以外の事業にも投資をしておるじゃないか、あるいは貸付をしておるじゃないかというような批判もあろうかと思いますが、それが非常な多額のものをやっておるという事情でないことは、実際の現実から御了承いただけると思います。  また大志摩社長は、私実は高等学校時代の友人でございまして、親しいことは事実でございます。過去において南洋拓植やその他の拓植事業にも関係をいたしたのでありまして、相当にこの移民問題、移住会社の問題についても理解があり、また性格上相当推進力を持っておる男であるということは私、認めますが、同時に、そういう人でありますので、あるいは不当に私との関係をいろいろな意味において強調しておった点があるかとも思いますし、また外務省の監督上の何から申しまして、事務的の連絡等が十分でないと思われる点も実はいろいろ指摘されましたので、私から特に大志摩社長には今後の業務の運営について、事務的にもう少し官庁側との連絡その他についても十分考慮しろと、また何か私との関係を特に強調して、政治的に動いているやの印象を与えておるということも、私が他から聞いておりましたので、そういう批評もあるから十分それは注意してもらいたいということを注意を促しておいた次第でございます。
  71. 曾禰益

    曾祢益君 これで終ります。
  72. 加藤シヅエ

  73. 笹森順造

    委員長笹森順造君) すでに総理約束の時間も経過しており、午後の日程もございますので、加藤君からの御発言はきわめて簡単に一、二分で結了をお願いしたいと思います。
  74. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 先ほど総理大臣から同僚吉田委員に御答弁がございまして、日韓の問題について、外遊という言葉ではなく、御渡米の前に、はっきり釈放の問題などについて解決をしたいという御答弁がございましたのでございますが、私は、この前総理大臣に御質問申し上げ御答弁をいただきましてから、もうだいぶ時日もだんだん経過いたしますし、東南アジアにおいでになったり、またそれから御渡米までのお時間も非常に短いものでありますから、こういうような重要な問題、なかなかこれは込み入った問題でありまするので、そういう短い時間にほんとうに解決するというところまで果して持っていらっしゃれるかどうか、大へん心配するのでございます。ことにこの前総理大臣が御答弁下さいましたことが韓国の方に報道されまして、民議院外交委員長がそのことを李承晩大領領にも報告せられております。大統領は大へんそのことについて好感を持たれたという情報も受け取っております。また、去る十一日には韓国においては珍しく大衆的な会を開きまして、五百名ばかりの人が集った。そこで今非常に日韓会談を進めるのにいい時期であって、日本人も今までにないいい態度でこれを妥結しようという考えであるというような、大衆的な会合もあったというような情報も受けておりますので、今は非常にいい時期でございますので、お忙しくても、このことだけは御渡米前に相当程度具体的な解決をしていただきたいと思うのでございます。せんだって新聞で、石井国務大臣が親善使節として韓国にお渡りになる、というようなことがちょっと出ておりましたのですが、それは十分に詳しいことでないのでわからないのでございますけれども、もし総理大臣が御渡米になって時間的な問題や何かから、あるいは石井国務大臣にそういうようなことを御依頼なさる、というようなそういう御意思があるのでございましょうか。
  75. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 実は私過般も郷里に帰りまして、下関は御承知の通り、こちらの抑留されておる漁民の留守家族の非常に多いところでありまして、その連中からも強く気持を述べられ、また私としては、渡米前にはぜひ解決するということをそれらの人にも申し上げたのですが、私はそういう気持で、実はこの問題に、一方それを促進することに極力努めております。ただ少し最近に至りまして韓国側の人事異動が行われるというようなことのために、多少最後の段階にきて行き悩んでおるような点がございます。しかし、そのために方針が別に変るということではないことを、私は間接に承知いたしてしておりまして、今加藤委員お話のように、日韓のこの問題を解決する上において、相当に韓国側の感情もいろいろな方面の御努力によって緩和してきておるということも承知しております。従ってこの問題は、まず両方で人道的の立場から抑留しておるものを釈放し合おう、そうしてさらに一カ月以内に正式会談を開こうという、その正式会談の内容につきましては、せんだって御意見なり御質問がありました点に私がお答えしておるような点は、明確に申しておりますが、さらにまたむずかしい問題もございます。しかしそれは正式会談の問題であって、私どもはまず釈放し合ってそして正式会談に入ろう。それにつきましては、さらに釈放した後、正式会談を開く前にさらにわれわれとしては、ただ期間の経過を待つだけで正式会談に入るということもあまりに策のないことでございまして、できるだけわれわれとしては、われわれの誠意をもって正式会談において取り上げる問題を解決する意思を持っておる、ということを韓国側に十分知らしめ、また韓国側もそれを理解して協力するという気持を起してもらいたい、そういうことについて、あるいは親善使節をその間に送ったらいいじゃないかという議論もいろいろありまして、考究はいたしておりますけれども、今新聞に出ておるようなことを具体的にきめておるわけではございません。
  76. 笹森順造

    委員長笹森順造君) ちょつと速記をやめて下さい。    〔速記中止
  77. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 速記を始めて下さい。午後は一時半より再開いたします。それでは暫時休憩いたします。    午後零時五十二分休憩    —————・—————    午後一時四十九分開会
  78. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 休憩前に引き続き委員会を再開いたします。  午前には、国際原子力機関憲章批准について承認を求めるの件、特殊核物質賃貸借に関する日本国政府アメリカ合衆国政府を代表して行動する合衆国原子力委員会との間の第二次協定締結について承認を求めるの件、特殊核物質賃貸借に関する日本国政府アメリカ合衆国政府を代表して行動する合衆国原子力委員会との間の協定第一条の特例に関する公文交換について承認を求めるの件、以上三件を一括して議題といたしておったのであります。質疑はなお継続いたしますように、午前中決定を見ておった次第であります。  右三件につきまして御質疑のおありの方は順次御発言を願います。ただいま関係官として政府からは宇田長官、佐々木原子力局長、法貴次長、並びに外務省からは井上政務次官高橋条約局長宮崎国際協力局長が御出席をされております。御質疑のある方は順次御発言を願います。
  79. 曾禰益

    曾祢益君 この際宇田長官から原子力発電に関する政府の最近の方針について、概括的な御説明を願えれば幸いだと思います。
  80. 宇田耕一

    国務大臣(宇田耕一君) 原子力発電につきましては、政府の方針といたしましては、とりあえず昨年の末に石川委員長を中心とする調査団が英米に出ております。それの報告が一月の十七日付で提出されております。その報告に基きまして、イギリスのコールダーホール・タイプの発電用の動力炉、あるいはアメリカに幾つかのリアクターがあるが、いずれにいたしましても、それの輸入につきましては、経済性の問題や安全性の問題等疑問のある点が数点あるから、これを確めるために、改めて調査団を派遣をすべきである。こういうことの報告があります。従って、商業用と申しまするか、そういう意味の動力炉の輸入につきましては、方針は調査団を派遣するというのが、正式の政府のただいままでのきまっておる方針であります。そのほかに来月から多分稼動を始めると思っておりますが、ウォーター・ボイラー型の実験用の炉が東海村に主えてあります。またCP5型が年末から来年の春にかけて組み立てが仕上るような運びになっておりますが、それらはいずれも実験用の炉でありまして、実験用の炉は国産炉を作るための収術的な研究というものを目的とするものでありまして、これは日本原子力研究所を中心にいたしまして、政府が主部を面倒を見て、政府の指導の下に実験を仕上げていく。こういう建前で知りまして、この実験のまだ稼動し始めております炉は、申し上げましたようにまだありませんから、従って、国内におけるところの日本の環境に合うような炉につきましては、まだ十二分に新しい発電用の動力炉を稼動せしめるに足るような技術、あるいはその他の見通しは十分なものはありませんから、その点につきましては、新しい動力炉の輸入、あるいは発電用の動力炉の輸入等の是非を決定するために、必要な、日本の基本の調査というものは、まだ緒についたところと、こう言わざるを得ないところであります。
  81. 曾禰益

    曾祢益君 そういたしますると、まだ動力炉を買うのか、買う場合にコールダーホール型といいますか、天然ウラン等をやるような方式でいくのか、それとも濃縮ウランアメリカ方式といいまするか、それで買うのか、それともまただんだん積み上げ方式とでも申しましょうか、日本で実験炉を二つくらい稼動して、そうして動力炉は日本で作るということをいたしながら行って、しばらくの間、外国からの輸入はいかなるタイプにせよ、まだ決定的ではない。どっちにするかもまだわからない、というような状態なんでしょうか。
  82. 宇田耕一

    国務大臣(宇田耕一君) ただいまのところ、そういう段階であります。それで実を申しますると、燃料が一番問題でありまして、燃料は、なるべく天然ウランないしトリウム等、日本国内で入手し得るものを利用することによるのを第一目標としていきたいと、こういうのが基本の条件と思っております。そうしてトリウム関係ですと朝鮮その他東南アジア、インド、御承知の通りたくさんありますから、東南アジア諸国のそういうような特殊資源をうまく利用する、将来必ずもうそういうことになるものだろうと、こういうように思っております。従って天然ウランの利用というものを非常に重要なものと考えまして、そういう意味からいいますと、コールダーホール・タイプのようなものを積極的に考究する必要があると、こう考えております。ただ濃縮ウランの持つ独得な輸送上の利益でありますとか、日本の資源が少い場合にたくさんの動力炉を動かすということになりますと、燃料政策上、濃縮ウランもまた考慮に入れなければならないのじゃないかということも考えております。そういうわけで、濃縮ウランに伴うところのアメリカの加圧水型とかスイミング・プール型とか、いろいろのタイプの利害得失はありますが、それによると日本の地震の影響等はそのタイプの場合にはほとんど心配はないというような特殊な条件もあります。従って経済性の問題、安全性の問題等から考えますと、ただいまのところ決定はいたしておりません。
  83. 曾禰益

    曾祢益君 それで大体原則としては、濃縮ウランを原料とするもののみにたよることは、国際的に適当でないから、天然ウラン、トリウム等を使って動力炉を作る方が少くとも原則である。しかし今のお話のように、これはまあ経済性、採算の問題もありましょうし、地震に対する関係等からいって、濃縮ウランのある種の発達したものについては、経済性と震災に対する予防等からいってもやはりこれも捨てがたいあれがあるから、研究はしていく。大体そういうふうに解釈してよろしいでしょうか。
  84. 宇田耕一

    国務大臣(宇田耕一君) それが重要な点であります。そのほかに、もう一つ条件が最近生れておりますのは、ただいまここに御審議を願おうと思っております国際原子力機関の中で、濃縮ウランの分配はこの機関を通じて行うということになっております。従って国際連合へ加盟いたしまして、しかも外務省からの報告によりますと、国際原子力機関の中で、日本理事国になることに予想されるそうであります。そういたしますると、なおこの国際原子力機関を通じてのわが国の活動というものは、かなり発言権が持てると、こういうように思いますから、この国際原子力機関に対して各国が提供をするところの天然ウランないし濃縮ウラン、双方を見つめながら日本の開発をするというのが、これはもう当然国際原子力憲章を御審議願う理由の、重要な根本の一つと思っております。そういたしますと、濃縮ウランは、本年のアメリカアイゼンハワー大統領の教書を見てみましても、二万キログラムの中で五千キログラムは国際原子力機構の中に引き渡すということが書かれております。従って、国際原子力機構そのものの中で五千キログラムというものは、これはすでに何らかの条件に従って分配のできる数字がここに具体的に現われておりますから、そういうものが採算ベースに合った場合には、おそらく、民間が導入いたしておるこのリアクターの中に、そういうものは私は当然入ってくるのではないか。またそれは、予想されなければならないのじゃないかというふうに思っておりますから、そういう点につきましては、われわれが国際的な活動の分野の中で、重要な燃料が得られるというふうな、非常に特殊な条件がありました場合には、それは民間では当然活用するという予想はされなければなりません。そういう場合におきましては、それを燃料とする動力炉は、おそらくこれは民間ベースで採算に合うものなら当然入ってくる、これはまたとめるべきではないと思っております。
  85. 曾禰益

    曾祢益君 そこで私は先ほど一般論として外務省の方に伺ったのは、今のお話のように、ことに濃縮ウランアメリカが主たる生産国に違いない。国際原子力機構ができればそちらに渡して、そこから分けるとか、また、そのことに対してアメリカの内部にかなり対共産圏考慮といいまするか、不信の念からあぶないというような意見も出ておって、果してアメリカ上院原子力機構に関する憲章批准を与えるかどうかということについて、やや疑問の点が出ておるやに聞いておるわけですが、その点は大丈夫だというお話でしたが、そこが非常に重要な点ではないか。少くともだれが考えても、長い目で見て、濃縮ウランの供給に全面的に依存するような形で動力炉が日本にできていく。これはアメリカだけというような供給国だと、非常にそこに大きなリスクが政治的に将来少くともあり得る。そこでこれはどうしても原子力機構を完全にスタートして、そこを通じて公平にやられる。その場合に、日本も当然理事国として主張すべきものは、日本のためだけではなくして、そういう資源等を持っていない、しかも原子力平和利用に非常に大きく依存する、アジア諸国等の立場を十分に主張していかななければならぬと思うのですが、その前提がくずれると、やはり濃縮ウランに頼るということが非常に危険になってくる。これは単に日米関係のいいこと、アメリカのごきげんを損しないという一つの大きな制約がそこに出てきはしないか、かように考えますが、いかがですか。
  86. 宇田耕一

    国務大臣(宇田耕一君) 天然ウランは第二といたしまして、濃縮ウランを燃料とする場合に、その問題は非常に重要な問題だと私は考えております。しかし、最近の技術の進歩から申しますと、スカンジナビア諸国は非常に平和利用の面で発達しておりまして、濃縮ウランは最近では製造の段階に入っております。それを世界各国に売り出してもよろしい、こういうふうなことも言っております。従って、私は六月四日に立ってスエーデンに行こう、こういうふうに思っております。また、ユーラトムの発表を見てみましても、西独を中心として濃縮ウランを製造して、それを平和利用関係国に分配をするということも、内々に話し合いがあります。従ってリアクターをこれから注文をするにしても、仕入れるにしても、四年ないし五年後だと思っております。スカンジナビア諸国の現在の実情と学問的なレベル、ユーラトムの各国の現状からみましても、濃縮ウランは商業ベースで各国が作って分配し始めるのは、世界的にもほとんどこれは常識になってきておるのではないかと思っております。従ってそういう意味でアメリカにそれを頼らなくてはならないという時代は、ここそう長いものではないようにこう考えます。従ってそういったことを考えます場合には、それのみを頼りにして、こっちの主張を無理にまげなければならないようなことは避けまして、そうして少くとも国連憲章にあげております、平和時の目的に使用する場合の条件を自分たちは主張して、それと並行し得る範囲内でこれをもらう。そして予想される四、五年後のリアクターを民間で用います場合は、燃料としてのみ濃縮ウランを用いるという場合が起りましても、そういうふうな心配の起らぬ、よく言われますように、ひもつきのような条件が起らないような対策を考えなければならない、こういうふうに思っております。
  87. 曾禰益

    曾祢益君 もう一つお聞きしたいのは、結局は採算性の問題だと思うのです。これは今伺ったところによると、石川ミッションは決定的なまだ結論は出しておられないように見えます。これは新聞雑誌等に現われておる議論によりますると、少くとも今コールダーホールの型でいけば、採算性が、日本でも合うというような議論は少しまだ早過ぎるのではないか。まだそれだけのほんとうのデータは出ておらないという警戒論もあるようです。一方において、これは言うまでもなく現に日本原子力産業会議ですかああいうことが行われており、ことにアメリカ側の売り込み競争、これも非常に熾烈に行われておって、いや、こちらには十分に日本の採算に合うようなちゃんと計算ができていますというような、猛烈な売り込み運動が行われておるやに今聞いておる。しかし、まだそこまで十分なデータがほんとうは出ていないという意見、さらには少くとも日本の学者の相当部分方々は、あまりあわてて現段階において、採算性だけの問題じゃありません、採算性ですらまだ確たる見通しがないのに、しかも大切な日本におけるみずからの原子力に関するスタッフを作るための基礎研究に、ある意味で水をぶっかけるようないきなり動力炉をすぐ入れるということをやってしまう。しかもそのデリヴェーションに至ってはおそらく四、五年先の方が得策ではないか。やや学者の方面は輸入にあせることに対する反対意見が出て、他面においては産業界の方はむしろ競争的に、今も長官のお話にもあったように、濃縮ウランだってもうすぐに大丈夫どこからでも買える、そうしたら一つどこかの電力会社もすぐやろうじゃないかと、これまたわれわれから見ると先走ったと思われるような意見もある。それらのことを総合してこれは非常にむずかしいことはわかりますが、いつまでも諸説ふんぷんとしておるような状況は、これはおもしろくないと思います。従ってある程度の慎重な研究はもちろん必要で、調査団を派遣されること、またあなたみずからおいでになること、非常にけっこうだと思うのです。しかし、ある程度の見通しと達観をもって、大体基本的な方向はどういうふうにきめるのだということも、もうそろそろきまってこないといけないと思うがどういうふうにお考えですか。
  88. 宇田耕一

    国務大臣(宇田耕一君) 民間の採算ベースの基準はどこにおくかというと、現在大体石炭ないし油によるところの火力発電の採算ベースと比較をしておると、こう思っております。それで石炭及び油の不足の状況あるいは輸入対策等、それの年次計画の見通しから見ますると、どうしても何とか燃料、エネルギー対策は解決をせなくてはならぬところに参ってきております。従って最近のずっと燃料だけの採算の報告書を見ておりましても、おそらく火力発電と原子力のコールダーホール・タイプだけを比較してみましても、そう長くかからぬうちにやはり原子力発電の方がコストが安いというところに行くのじゃないかと思われます。で、ただいま東京電力がアメリカに注文しておる二十六万キロワットの火力発電の条件を見てみましても、六分五厘そこそこの金で十何年という償還計画を立てておりますが、償還計画十年以上、火力発電に二十六万キロのものに外資をもってこれを導入するというような計画は、原子力が十五年も先までそんなものを待つはずはないと、こういうふうに思われます。従って燃料あるいはキロワット・アワーのコストから見ましても、将来、五年先は比較にならぬといたしましても、十年以上たちましたなれば、それはおそらくこういう火力発電の購入対策というものは、これはもっと考えるべきじゃなかったかというふうに言われるだろう、というふうに思われます。従ってそういう意味からも、おそらく民間の商業ベースでの輸入を急ぐということの意味は、私はかなり希望は積極的なものがあるように思います。従ってお説のような、発電用の動力炉の輸入につきましても、対策はすみやかに決定をしていかなければならないと、こういうように思っております。  それで、具体的に申し上げますと、コールダーホール・タイプに関しましては、地震のときの危険を、万一というのでなくて、アメリカあたりにいくと十億分の一の危険のチャンスとか、百億分の危険のチャンスとかいうような、危険のチャンスに対する分母の数字が最近は大へんこまかい、万分の一なんということじゃありませんから、その意味でもう少し、国民生活に及ぼす影響が大きい点から、科学的な、技術的な数字の間違いのない点を押えていこうと、そういうところがありますので、今大づかみなラウンド・ナンバーでのオーケーは言えるかもしれませんけれども、そういうことでなくて、もう具体的に入れるんだと、入れるについては危険率をどういうふうに見て、それに対するインシュアランスをどう見るかというふうなところまで来かかっておりますから、そういう意味でお説のような処士横議を見送るというわけじゃありませんけれども、技術的な、科学的な基礎の上でそう長くかからないと思いますけれども、もう少し的確に確かめたいと、こういうのが実情であります。
  89. 笹森順造

    委員長笹森順造君) ちょっと速記をやめて下さい。    〔速記中止
  90. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 速記始めて下さい。現在本件に関して、科学技術庁佐々木原子力局長、法貴次長も出席しておりますから、引き続き御質疑の方は御発言を願います。
  91. 曾禰益

    曾祢益君 もう一点だけ、佐々木さんに伺えばけっこうです。やはり商業ベース、商業ベースと言って野放しということは適当でないように思うのです。従って原子力研究所及び政府の当該機関としては、原子力平和利用の、重要点であるけれどもその一部である、動力炉の問題だけでなく、やはり総合的な動力対策といいまするか、そういう観点からも何か方向を示さないといけない。それから原子力発電にしても、商業ベースに乗ればどうか御勝手たるべしという、もちろんそういう方針ではないかもしれぬけれども、そこもやはり計画性を持った、国家的な計画の中に載せた、私企業の商業ベースに乗った競争ならこれは差しつかえないと思うけれども、それもただ単に外資委員会できめるというようなことでなくて、やはり原子力に関する最高権威の機関、学術的な基礎もあり、また行政的にも一貫した態度で、民間はこうしろというようなところをお出しになる必要があると思います。そういう点に関する方針を伺っておきたい。
  92. 佐々木義武

    政府委員佐々木義武君) ただいまの段階では、先ほど大臣もお話いたしましたように二つの考え方がございまして、一つ研究体系をどういうふうに将来とも発展していくかという問題と、もう一つは、国内のエネルギー資源等からみまして、可及的すみやかに原子力発電を、できますればコマーシャル・ベースの上に乗せて拡大していきたいという、二つの要求があるのは事実でございます。  そこで前者の研究の系統に関しましては、今まで原子力委員会でほぼ内定しております線は、アメリカから入って参りますウォーター・ボイラー、CP5、これが本案の内容でありますが、CP5の実験を経まして、第三番目には国産炉を三十四年の末まで、これも実験炉でございますが、作る予定でございまして、引き続きまして研究用動力炉の問題にその次の段階から入って参るわけでございますが、動力炉の問題といたしましては、私どものただいま考えていますのは、研究炉でありますならば、当然これは原子力研究所にやらしむべきではなかろうか。そしてその動力炉の実験を済まして、その後どういうふうにするかと申しますと、完全にコマーシャルに乗るものであれば、これは場合によって民間ベースでそれをやっても差しつかえなかろう、ただ研究所といたしましては、動力炉の実験が済んだから使命が終りというのでありまして、原子力についてはまだまだたくさん未解決の問題がございます。たとえばその後のやり方といたしましては、増殖炉というものも考えております。増殖炉とはどういうことかと申しますと、非常に原子力の特殊性でありますが、燃料を使った際には、今までの油とかあるいは石炭でありますれば、使ったままでもう全部灰になってしまって二度と使えないわけでありますが、原子力はみずから燃焼した、消耗したより大きい率で新しい燃料を自分の力で生み出すわけであります。従いまして無限というわけにいきませんけれども必要な燃料が次にまた出てくるわけでありますが、これを増殖炉と称しております。日本のようにエネルギー資源の少い国ではこれが一番望ましいわけでありますが、各国でもただいまの段階ではこれを非常に目標にいたしまして、英米とも最終的にこの方に力を入れているわけでありますから、日本でもその面にはさらに力を入れたい。なお長い将来を考えますと、海水なり普通の水から取ります融合反応の過程になりますと、資源は無源大になりますので、そういう点は研究所として研究していかなければならぬというふうに考えて参りますと、研究の進め方というものは非常にたくさんのテーマもあり、また時期としても長くかかるというふうなことで、この方はその方針でどんどん進めていきたい。  ただ二段の問題でエネルギーの逼迫状況から早く輸入して、そうして石炭なり重油を輸入するよりは、この原子力発電をやった方がいいんじゃないかという見解に対しましては、さっき申しましたが試験段階がある程度済んで、もうこれであれば技術的に見ても、あるいは安全度から見ても、あるいは経済性から見ても大丈夫だろうということさえはっきりすれば、民間にある程度まかしてもいいんじゃないかというふうな考えで、いつの時期にその輸入を開始するかといった問題に関しましては、先ほど大臣がおっしゃいましたように、非常に進んできつつありますけれども、まだ最終段階には至っておりません。
  93. 曾禰益

    曾祢益君 これは誤解があるといけませんから私は申し上げたいのですか、私は何も輸入を急げということを言っているのではなくて、ただ方針が原子力発電の採算性、安全性等をある程度早くキャッチしないと、その間にこの火力発電の借款というようなことを行われる。そうかといって、何もそれに確たる見通しなしにとりあえずとまっているということも、日本経済発展に対する阻害になるわけだから、何らかの確たる方針を立てることが必要ではなかろうか。また原子力研究所の使命については今よくわかりまして、これは決して発電の実験炉といいますがそれだけで終るのじゃなくて、さらには融合反応の方まで研究される、これはもちろんそうだと。しかしその間ある段階があったならば、民間の商社がもう勝手に輸入するなんかっていうことが起るかもしれない。それに対してはやはり列を並べてここまでは待たしておく、ここから先はこうだという、やはり国家の方針というものが早く明らかにされなければならないのじゃないか。いたずらに拘束し統制するばかりが能じゃない。また逆に勝手に採算ベースだからというので、研究所は研究所でじみな仕事をするのだからというので遠慮しているばかりでは、これはいけない。やはりそこには合理的な計画と統制というものが行われる必要がありはしないかというのでこういうことを伺ったわけです。
  94. 佐々木義武

    政府委員佐々木義武君) ただいまのお話通りでございまして、そういう長期の計画を持つ半面、原子力憲章にもあるいは日米協定にもありますように、この燃料が一番中心になるわけでございますが、この燃料を入手いたしますためには、必ずや国際間の協定等なしには入手できない。しかもそれをもらうためには平和の目的に限り、あるいは保健、保安等に対する十分な措置を講ずるといったようないろんな国際義務を負うて、そしてこれを進めるというのが原子力の特殊性かと思いますので、これに関しては国内法的にもただいま参議院の商工委員会の方で御審議をいただいておりますけれども、いろいろの国内的な規正法を作りまして、ただいま審議をいただいておる最中でございます。そういたしまして国際法あるいは国内法が整備して参りますと、自然それの制約下、あるいは燃料の需給状況等を見まして、日本のような場合には、国の一番少い資金で一番効率的にやるためにはどうすればよろしいかという問題が、おのずから出てくるのじゃなかろうかと思いますので、そういう国際的な環境等もにらみ合せながら、ただいまおっしゃいましたような確固たる計画性と持ちたいというので、今までの段階ではずいぶん委員会の方でも御勉強下さいまして、あるいは学界あるいは政界あるいは財界の皆さんに随時集まっていただきまして、せっかく検討中でございます。近く結論が出てくるのではなかろうかと考えております。
  95. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 御質疑のおありの方は、引き続きお願いいたします。
  96. 杉原荒太

    杉原荒太君 きょうの午前中に曾祢委員質問の冒頭に述べられた点は、われわれがこの憲章に対する態度をきめる前提として非常に大事な点だと思います。それで、政府の方ではたとえこれに対する国会承認があっても、具体的な批准手続というものはアメリカの態度を見た上で、アメリカ批准が完了した上で、具体的の批准手続をとるというつもりなのか。そうではなく、アメリカ批准が済まないでも具体的な批准手続をとるというのか、そのいずれですか、その点。
  97. 井上清一

    政府委員井上清一君) お答えを申し上げます。原子力機関憲章に関しまするアメリカ批准わが国批准との関係でございますが、私どもアメリカ批准も早、機会になされることを確信するわけでございますが、それと同時に、わが国批准アメリカ批准にかかわらず批准手続を進めて参りたいと、かように私ども考えておる次第でございます。
  98. 杉原荒太

    杉原荒太君 アメリカ以外の各国批准の進捗状況ですね、そういうのが大体わかれば。
  99. 井上清一

    政府委員井上清一君) 現在まで批准をいたしております国は、グアテマラ、スイス、ソ連、白ロシア、ルーマニア、その五カ国でございます。
  100. 杉原荒太

    杉原荒太君 それからこの原子力憲章とユーラトムとの関係はどうなりますか。
  101. 井上清一

    政府委員井上清一君) ユーラトムとの関係は現在のところはございません。あるいは将来におきまして、原子力憲章との関係ができてくるかとも存じますけれども、現在のところは関係はございません。
  102. 杉原荒太

    杉原荒太君 関係がないというのですか。
  103. 井上清一

    政府委員井上清一君) 関係はございませんと申し上げたわけでございますが、ユーラトムは必ずしも平和利用に限るわけではございませんで、原子力の軍事力として利用という面も含んでおる関係で、両方ユートラムとの関係は私どもはないものと了解しておるわけでございます。ただ実際問題として援助は求めることはあるいはできるのではないかとも思いますけれども、直接の関係は私はないと思います。そこでそのことは原子力構関の理事会においていろいろ決定することだと了解をいたしております。
  104. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 他に御発言がございませんければ、質疑は尽きたものとして御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  105. 笹森順造

    委員長笹森順造君) それでは、質疑は尽きたものと認めます。これより討論に入ります。御意見のおありの方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。……別に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。  それではこれより採決に入ります。国際原子力機関憲章批准について承認を求めるの件、特殊核物質賃貸借に関する日本国政府アメリカ合衆国政府を代表して行動する合衆国原子力委員会との間の第二次協定締結について承認を求めるの件、特殊核物質賃貸借に関する日本国政府アメリカ合衆国政府を代表して行動する合衆国原子力委員会との間の協定第一条の特例に関する公文交換について承認を求めるの件、以上三件を一括して問題に供します。三件をそれぞれ承認することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手
  106. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 全会一致でございます。よって三件は全会一致をもってそれぞれ承認すべきものと決定いたしました。  なあ本院規則第百四条による本会議における委員長口頭報告の内容、第七十二条により議長に提出すべき報告書の作成、その他自後の手続につきましては、慣例によりましてこれを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  107. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 御異議ないと認めます。よってさよう決定いたしました。それから報告書には多数意見者署名を付することになっておりますから、三件を承認することに賛成された方は順次御署名願います。    多数意見者署名     曾祢  益  吉田 法晴     野村吉三郎  津島 壽一     鶴見 祐輔  佐藤 尚武     佐野  廣  石黒 忠篤     杉原荒太
  108. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 次に、日韓問題について吉田委員から発言を求められております。これを許します。  この際報告いたします。水産庁長官岡井正男君が出席しております。
  109. 吉田法晴

    吉田法晴君 午前中、総理外相韓国抑留者の早期釈放についてお尋ねをし、渡米前にはその処分を実現したい、すると、こういう御言明がございました。関連をいたしまして援護の点についても、当委員会その他で援護について一そうの完璧を期したい。具体的に昭和三十年十二月十六日以前の取級いに準拠せられたいと、それから差し入れについて政府から差し入れの金品を支給することについて原則を確立をしてもらいたい。それからこれの点について、この制度を確立をして閣議決定をし、そうして月々支給なりあるいは府県において立てかえ支給ができるような態勢をとってもらいたい、こういう要望を含めまして質疑をいたしましたところ、それらの点については十分研究をし、御希望に沿いたい、こういう答弁があったのであります。そこで問題は、農林省、水産庁の所管事項と関連をいたしますし、具体的にお尋ねをいたしておきたいと思うのであります。従来拿捕漁船の乗組員の救済については、補助金交付要綱というものがございますが、総理外相の従来の言明によりまして、その再検討を命じておるということでございましたが、どの程度に進んでおりますか。それからどういう工合にこの改善をし、要綱の改訂を考えられておるか承わりたい。
  110. 岡井正男

    政府委員(岡井正男君) ただいまの吉田先生の御質問の、従来の船漁乗組員給与保険の被保険者となっていない者等に対する点、あるいはまた入っておりましても、非常に低額の加入者に対する点をどういうようにするかというような問題であろうかと存じますが、これらの問題につきましては、当初は大会社も小規模の人たちも平等に、過去においては、月数に応じまして、一人につき一万円というような出し方をしておりました。あるいは低額の加入者、一万五千円未満の被保険者である者に対しては、その月数に応じまして一人一カ月にっき一万五千円を出すというようないき方をしておったわけでございまするが、財務当局と折衝をたびたびする間におきまして、政府が相当、この種の特殊保険あるいは漁船乗組員の給与保険という制度は、赤字を相当国としてみながらこの制度を確保しているのだから、この制度を活用するように、主管庁で十分に行政指導をやってくれという再三の申し出があるし、われわれももっともでございますので、その通り行政措置で強く関係の向きについては周知徹底したのであります。にかかわらずその後大会社において遺憾ながら入っていないようなものがあった場合、大蔵省と折衝した場合において、従前の全額でなく、そういうものに対しては半額程度、それからそういうふうなことを再三再四われわれが指導したのちに、依然として未加入であった若干に対しても、やはり半分というような出し方をしてきたのであります。この点につきまして、財務当局とわれわれは、何とかもう最後だから一つ平等にやってくれというようなことの折衝は続けてはおります。しかし大蔵当局としては、この前のように、やはりそれは半額程度にしてほしいという強い要望があるので、これはまだ割り切っておりません。それから今度帰る者に対する一時手当金とでも申しますか、ソ連邦からの引揚者に対する援護措置などが行われたのと見合いにして、そういうふうな同等の措置を、われわれとしては大蔵当局へは強く、要求中でございます。しかし、大蔵省当局の言い分といたしましては、ソ連からの引揚者に対する援護措置よりも、むしろ、留守家族などと関連して総体的に考えた場合に、いわゆる韓国に対する抑留乗組員に対する国の手当というものは非常に厚くしておる。バランス上、これはむしろソ連からの引揚者に対する援護措置よりも厚くしてあるので、この点もどうも今のところは御同情は申し上げるにやぶさかではないが、大蔵当局としては他の方のかね合いも公平に考えまするとむずかしゅうございますから、というような回答しか今得ておりません。その他のことにつきましては、おそらく吉田先生がお考えになっておるような措置は、われわれとしては十分打てるだろうと、かように考えております。
  111. 吉田法晴

    吉田法晴君 今あげられました保険の米加入者、あるいは大会社、このそうでないもの、その他の差別取級いをなくする、あるいは帰還者の問題等についても、総理外相にも具体的にあげて、そしてそれらの点についても十分御希望に沿いたい、こういう御答弁であったのであります。まあ外相おられませんが、外務政務次官がそこにおられるのだから、総理としてこまかいことは、これはわからぬかもしれぬけれども、具体的に項目をあげたのです。それについて御期待に沿うように努力したいと、こういうことですから、政府として私は責任を負ってやりますという言明をして帰られた。そこで、問題は、各項目について、従来も大蔵省との折衝の経過が半分述べられたんであります。それにかかわらず、そういう今までのいきさつ、今までの大蔵省の見解にかかわらず、一つ政府としてこの抑留船員なり、あるいは家族の援護について、十分な措置をし得る要綱を決定願いたい。これは閣議にかけて決定をしてくれますかと、こういう質問をしたところが、御希望に沿いたい、こういうことであります。そこで、まあ大蔵省も呼んであるのですが、実は大蔵省が来てないから、あとから来られるかもしれないが、最後に大蔵省にだめ押しをすることにして、水産庁にその点でお尋ねしたいのですが、帰還者の問題について、抑留者の留守家族の方が全体として引揚者よりも国の取扱いは手厚いと、こういうあれでしたが、二、三日前に帰って参りました十一名の病人にいたしましても、病気をしておりますから診断をし、あるいは手当をする、こういう費用が一体どこから出るかということさえ現に問題であります。それから帰る旅費その他に至ってはなおさらの問題だ、あげて本人の責任で保険をいたしました保険でやれ、こういうことに相なっております。この給与保険についてもそうであります。ところが、これは関係者それからわれわれにしてもそうでありますが、本人の責めに帰すべき事由によって抑留をされ、あるいは拿捕された、あるいは病気になった、あるいは抑留をされて非常にからだをいためて帰ってくる、それについても全部自分が責任を負わなければならぬ、こういうことになりますと、これはそうはいえぬというのが常識だと思います。それでその帰還者をソ連引揚者と同様に取り扱ってくれということは、日本の港、神戸にしろどこにしろ、帰ってきてからのことでありますが、引揚者としてソ連から拿捕されて抑留されて帰ってきた人については、その他の引揚者同様に取扱っているのでありますから、根本の責任問題もございますけれども、これは取扱い得ると思うのであります。総理外相の言明もありますし、引揚者として帰還者を取り扱ってもらいたい、こういう点はぜひ今後の取扱い要綱については改善をして織り込んでいただきたい、こうまあ考えるわけであります。これは水産庁としては当然の措置とお考えになるかと思うのでありますが、もう一度弁明だけ聞いておきたいのでありますから、重ねてお伺いいたしておきたいと思います。
  112. 岡井正男

    政府委員(岡井正男君) 特に病気で帰ってきた人々、あるいはまた今後将来の就職あらゆる点について、やはり所管庁であるわれわれとしては、関係者は漁民でありますので、身の上に非常に御同情をしたいのでありますけれども、できる限りの大蔵当局との折衝、並びに事後の問題についても、できる限りの手を打ちたい、お尋ねの病人の病院入りをしてどういうふうにするかというふうな点につきましても、漁船船員の保険に加入をしている人たちで病気になった場合には、関係を持つ病院へ入れましてやる、保険にも何も入っていない人をどうするかというような場合は、労災関係でいくか、他の便法でより病人のために非常に有利な療養方法があるかというような点は、なお一そう研究を深めて、機会があったら申し上げることにいたしたいと思います。
  113. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 速記をとめて。    〔速記中止
  114. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 速記を起して下さい。次に請願を一括して議題といたします。速記をやめて下さい。    午後二時五十三分速記中止   —————————————    午後三時三十三分速記開始
  115. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 速記を始めて下さい。ただいま懇談にてお打ち合せいたしました通り、請願の各項目について御賛成を得ました件は、これを議院の会議に付することを要し、かつ内閣に送付を要するものと決するに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  116. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 御異議ないと認め、さよう決定いたしました。なお、その他の件は本委員会において保留といたしたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  117. 笹森順造

    委員長笹森順造君) さよう決定いたしました。なお、本会議における委員長報告及び議長に提出すべき報告書については、慣例により、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  118. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 御異議ないと認めます。さよう決定いたします。   —————————————
  119. 笹森順造

    委員長笹森順造君) なお、お諮りいたしますが、国際情勢等に関する調査を従来より調査して参りましたが、会期も切迫し、会期中に調査を完了することは困難でありますので、本院規則第五十三条によりまして、継続調査要求書を議長に提出いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  120. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。なお、要求書の内容及びその手続等は委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  121. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 御異議ないと認めます。よってさよう決定いたしました。   —————————————
  122. 笹森順造

    委員長笹森順造君) なお、閉会中の委員派遣に関しては、すべてこれを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  123. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 御異議ないと認め、さよう決定いたしました。   —————————————
  124. 笹森順造

    委員長笹森順造君) ただいま水産庁長官の岡井正男君、大蔵省主計局次長村上一君が出席しております。先ほどの吉田君の御質疑の御継続を願います。
  125. 吉田法晴

    吉田法晴君 主計局の村上次長においでいただいておりますので、も5一ぺん繰り返して申し上げますが、韓国抑留船員は、大村に収容せられております被収容者とともに、人道的な見地から、すみやかにその相互釈放実現せらるべきだ、こういう質問を申し上げましたところ、総理外相は渡米前には実現をしたい、こういう答弁がございました。  それから関連をいたしまして、抑留船員に対しまする援護措置について、援護の万全を期したい、さらに検討をして御希望に沿いたい、こういう答弁があったのであります。これは前回の委員会等でございました。  そこで今回は、援護について万全を期するということであるが、抑留は本人の責めに帰することのできない原因によって抑留されあるいは拿捕されている。従って、政府はその責めに任ずべきであるし、昭和三十年十二月十六日以後においては、保険に加入すべきであるという行政指導をやりながら、加入をしておらぬ者、あるいは大企業、中小企業等によって取級いが別になっている。しかし、最初申し上げましたように、抑留、拿捕は本人の責めに帰すべからざる事由であるから、十二月十六日以後においても以前と同様の取扱いをしてもらいたい。    〔委員長退席、理事佐野廣君着席〕  それから、政府において差し入れのための金品の支給をするということを原則的に確立をしてもらいたい。  それから、本人の帰国後の取扱いについては、ソ連引揚者と同一に取り扱ってもらいたい。  こういった具体的な項目をあげまして、かねての言明が、従来の拿捕船乗組員の救済費補助金交付要綱を改善をし、そしてこれを閣議決定にして、今後さらに十全を期してもらえるか、こういう質問をいたしましたところ、それらの点についても検討をして御希望に沿いたい、こういう答弁があったのであります。  そこでこれらの点について、時間がございませんから一々読み上げませんが、問題点はすでに明らかになっているのでありますから、水産庁、それから大蔵省御出席願っておりますが、御協議いただいて、閣議決定を経て、あるいは閣議了解を経て、従来の取扱いを改善し、実施を願えるかどうか、願えることだと思うのでありますが、その点を長官なり次長から御明答を得ておきたいと思います。
  126. 村上一

    政府委員(村上一君) お答えを申し上げます。先ほど吉田委員の御発言の際におりませんで、まことに失礼をいたしました。書面になっておりますものを拝見いたしましたので、その各項目についてお答えを申し上げたいと存じます。  各項目を拝見いたしましたが、いずれも具体的に私ども水産庁の方からお話をまだ承わっておりません問題でございますので、水産庁の御意見も十分伺いまして善処いたしたいと思っておりますが、とりあえず、今私ども考えております点をお答え申し上げたいと思います。  抑留者一人当りの見舞金につきましては、おそらくこういう点を御指摘になっておられるだろうと思います。と申しますのは、二十八年、九年に相当抑留の事実があったわけでございますが、それらにつきまして漁船保険に加入しておりません場合には、一人一月一万円、それから保険に加入しておられる場合には、保険による給付がございますわけでありますから、その給付を受けられる月額と一万五千円の差額の三分の二を見る、というふうな措置をやっておるわけでございます。ところがその後引き続き抑留が起るというような事態が続きましたので、ぜひ私どもとしては保険に加入をしていただきたい。また保険の事故が起りました際につけます給付額、つまりこれは入りますときの掛金額を幾らにするかという問題でございますが、できるだけ金額の多い、つまりあまり少な過ぎる保険でなくて、事故が起った場合に、留守家族がそれによって生計の足し前になる、というだけの金額の保険に入っていただきたいということを、私どももまた農林省と御相談いたしまして、極力各事業の事業主の方々にお願いを申し上げたわけでございます。と申しますのは、大体私どもの方で伺っております数字を拝見いたしますと、抑留されました漁夫の方々のうち、漁船保険に船主が入っておられる場合が七割程度でございまして、三割程度のものが加入されていなかったわけでございます。またその加入されていない場合に、企業の規模が非常に小さい場合もございますが、あるいは大洋でありますとかあるいは日水でありますとかいうような、非常な大企業が保険に入っておられない場合もございまして、これらにつきましては極力保険の加入、その金額の増額をお願いしたわけでございます。申し上げるまでもございませんが、相当そういうような危険があり得るというような、いわば前提の下に、その近傍地域において事業を営まれるわけでございますから、何と申しましても、第一次的には事業主においてあらかじめそういった不測の事故に備える、ということがまず肝要であろうかと思います。そういった趣旨で極力そういったお願いを申し上げまして、従いまして三十年一月以降につきましては従来やっておりました、最初に申し上げました見舞金の程度を、二分の一程度に切り下げておるわけでございます。お話の御趣旨はそれをもとに返さないかというような御趣旨であろうかと思いますが、今申し上げましたようないきさつがありまして、また相当時間の経過も経まして、そういった段階を経てきておるわけでございまして、私どもといたしましては今これをもとに返す、つまり倍額にいたしますようなことはちょっとこの席でお約束申し上げるという立場にはないと思います。  それから差し入れ品の購入費補助として一万五千円を見たらどうかというようなお話があったかと存じますが、これはすでに実行しておるはずでございまして、これは今後につきましてもその金額を直ちに減額するというようなことは考えておりません。  それから韓国からの帰還者についてソ連からの帰還者の場合と同様の援護措置を講ぜよ、こういうような御趣旨の御意見があったかと存じますが、ちょっと問題が私の解釈が違うかもしれませんが、御承知のように留守家族に未帰還者が帰還いたします、引き揚げて参ります場合には、上陸地におきまして帰還手当というものを支給しております。しかしその場合引揚者は終戦の結果によりまして、いわば自己の意思に反しまして引き揚げることができなかったという場合に、法律上も限定されておりまして、終戦後事業のために出ていって抑留されたという場合には支給をいたしておりませんので、ソ連からの場合にも、そういった方々はいわゆる引揚者として取り扱っていないと存じます。従いましてこの点につきましては今後韓国からの抑留者が引き揚げられる場合についても、いわゆる引揚者としての手当を支給するということは困難ではなかろうかと思います。なおこの点につましては厚生省当局とも私ども十分打ち合せをいたしたいと存じております。これは吉田委員御承知のことと思いますが、御参考に申し上げますと、いわゆる引揚者帰還手当をもらいます方々の留守家族に、法律によりまして留守家族手当を支給しておりますが、その金額は月額三千円であります。扶養家族があります場合にはだしか一人当り百百円の増額をいたしておりますが、基本額は三千円でございまして、しかも残っておられます本人とこちらにおられます留守家族と、生計依存関係がある場合にのみ限定しております。それに比べますと、先ほど申し上げましたように、一ヵ月一万円あるいは一万五千円との差額という金額は相当多かったのでございまして、これはこういった抑留漁夫の実情というものを十分勘案いたしまして、こういった方に多い金額を支給することになっておったわけでありまして、これを先ほど申し上げましたように三十年一月以降減額はいたしておりますが、なお留守家族手当に比べますれば相当厚い保護がなされているのじゃなかろうか、かように存じます。  それから最後に、三十年十二月十七日以降の外国艦船によります銃撃、撃沈の結果による死亡者に対する見舞金の問題でございますが、これはたしか私の記憶によりますと三十年の暮は、それまでにそういう災害に会われた方に対しまして、いずれもらい得る賠償金の内払いといたしまして、金額も七万五千円くらいだったと思いますが、見舞金を支給した例がございます。それ以後の分につきましては、いろいろ実情等もよく伺ってみませんといけないと思いますが、よくそういった状況を判断いたしまして、前例等も考慮して検討いたしたい、かように存じております。
  127. 吉田法晴

    吉田法晴君 岸総理外相答弁と違う御答弁をいただきますことをはなはだ残念に思います。こういう委員会の最終段階でございますからあまり長く時間をかけないで、一つ総理の方針通りにやりますという答弁を私はいただきたいと思います。時間がかかります。この抑留者が帰って参りましたのちの待遇につきましても、戦争の場合には終戦の結果自己の意思に基かずして帰って来られなかった云々と、こういうことがございますが、その原因は戦争でありましょうと、あるいは李ラインという日本も認めない、あるいは本人たちも認めておらぬ、自己の責任のない理由でありまして、その点は同じだと思うのであります。その点を最初に申し上げたのであります。自己の責めに帰すべからざる理由によって拿捕、抑留され、そして刑についてもこれは日本から言うと不当だと言わなければなりませんけれども、その後抑留をされておりますのは、収容所に入れられておりますのは、まさに何の理由もない、そして人権は十分守られないで、病気になる者がたくさん出ておることは、私が言うまでもございません。病人になりあるいはからだが弱り、不法に長期抑留をされて、そして帰ってくる者、それについて引揚者同様の待遇をせよというのは、これは当然の主張だと思うのであります。同じように、この給与あるいはこの見舞金あるいは差入品等については、従来昭和三十年十二月以前において行われておったそれを、本人の責めに帰すべからざる理由により長年抑留をされ、あるいは引きとめられており、そして病気になりてきた、家族は五千円しかもらわないような状態のもとにおいても、八千円あるいは一万円程度の金品を毎月送らなければならぬ実情だということは、これは私が申し上げなくてもおそらく事実御承知であろうかと思うのであります。そこでこの事態に対して、政府としてできるだけのことをしてやろう、こういうことですから、もっとそれは申し上げたい、あるいは要求したいところでございますけれども、従来の取扱い、実例に従って、この程度はぜひ出してもらいたいと、こう言うのであります。そして、総理には御賛成をいただいたのであります。出すように水産庁とも御検討を願って、取扱要綱をおきめ願いたいと、こう思うのであります。この引揚者について、戦争によってその後抑留されていた云々ということでございますけれども、たとえばソ連引揚者の場合に、漁業関係で抑留されておった者も含んでおったことは、これは御承知の通り。それはまあ一緒に帰ってきたという点もございましょうけれども、同一取扱いをした。それで、これは佐野委員も一緒ですけれども外務委員会から私どもが山口、福岡、長崎と回りまして、あるいは船主、あるいは留守家族その他関係者と会いました際に、家族の窮状それから抑留者の状態、それからその中で病人が次々に出ておる実情、そして、すみやかな釈放もでありますけれども援護のことについて、せめて月々金が受け取れるようにしてもらいたいということで、差し入れと申しますか、政府の差し入れが事実上とまっておりますし、それから送りましたものもあるいは釜山、京城等で保留をされて、本人たちには着いておらぬ。従って従前の差し入れも実際に行なってもらいたいし、それから収入がなくとも、あるいは五千円程度のあれをもらっておっても、あるいはそれが切れて何にもなくなっておっても、月々釜山には送らなければならぬ、あるいは送りたいという実情等をつぶさに聞いて参ったのであります。でその、委員会が受けました陳情と要望とをもって、最小限度のこれは政府として実現し得る措置であると考えて、従来から要望申し上げてき、それから項目もあげて、岸総理外相にただしましたところ、希望に沿うように関係者において検討をして、実現しよう、その実現という点は閣議決定であるか了解であるかは知りませんけれども、そういう取り運びにしたい、要望を申し上げたことについてこたえたいと、こういう答弁をいただいたのでありますから、各項目について私はこれは無理な要望をしておるとは思いません。一々について反駁を申し上げる時間が十分ないのを残念に思いますけれども、この総理として明言いただいたのでありますから、私はあるいは水産庁あるいは厚生省に御相談になる点は、これは御相談にならなければならぬと思いますけれども関係各省の間で御協議願って、総理の御言明通り改善をし、要望を実現するようにお取りはからい願いたいと思いますが、重ねてお伺いしたい。
  128. 村上一

    政府委員(村上一君) お答え申し上げます。総理のどういう御発言がありましたか私承知いたしませんので、よくその点私どもとしても十分検討いたしたいと思います。内容につきましては、お言葉を返すようでございますが、先ほど申し上げましたように、当初こういう問題が起りましたときから、留守家族手当とは非常に程度の高い特別の援護措置を講じて参ったわけでございます。それが三十一年から減額いたしておりますが、これは先ほども申し上げましたように、当然企業としてあらかじめそういう措置を講じていただきたい、現に二十八年、九年にそういう事故が起ってきたわけでありますから、しかも保険制度というものが設けてございますので、当然保険制度によって事前の準備を整えていただきたいということで、それぞれ関係者にも事前に十分その点は徹底をしていただいたはずでございます。そこでそういったような通知を御承知になりましたあとで起りました事故につきましては、ある程度減額するのもこれはやむを得ないということで、かような措置をとった次第でございまして、その結果を見ましても、いわゆる留守家族の援護措置よりはなお相当程度手厚い援護措置がなされておる、というのが実情でございます。  それから、差入品購入費の補助の問題がございましたが、これは先ほども申しましたように、御趣旨の通り今後も実行するつもりに変りはございません。
  129. 吉田法晴

    吉田法晴君 大へん残念に思うのですが、昭和三十年一月以降保険に入ってくれという指導をしておいたから、保険に加入しておらぬ者については減額するのは当り前だ、こういう主張でありますけれども、実情を聞いてみますと、対馬の北の端のところは、いわゆる向うの言う李ライン前、そこで一本釣りの、李ライン問題とは関係がなさそうな船あるいは船員までつかまっておる。あるいは李ラインの外で最近、まあごく最近は存じませんけれども、李ラインの外で拿捕されておるものが多数あるということは、これは御承知の通りだろうと思う。それから中で云々と申しましても、李ライン問題について、それじゃ政府として認められてきたのはっけるのか、その点は本人の責めに帰すべからざる理由によって拿捕されておることは、これは間違いない。従ってこれは船員からいいますならば、船主に対して、自分の責めに帰すベからざる理由によって抑留をされた、あるいは賃金をもらえない、それについて賃金の請求をするのは当然です。これは労働基準法なり何なりからいいましても、当然これは請求権がある。裁判を起しましたら、これは船主が支払いをしなければならぬでしょう。あるいは政府がどういう形にしろ、見ていくという制度が二十八年、二十九年、三十年の一月以前において、責任をもっておったならば、本人の責めに帰すべからざる理由によってそういう拿捕、抑留が起こったのだから、それについては見よう、こういうことになったと思う。それならその保険だけ、あるいはこれは本人を含んで船主の自分たちの責任だけでそれは払ってくれ、こういう点は言えぬはずであります。理由からいたしましても、理由が本人に帰すべからざる理由である。だから政府としても三十年一月以前においては、何らかの措置を講じていきたい、そういう例があるからその責任を、これはまあその指導、それから指導に従ったか従わなかったかというあれもありましょう。ありましょうけれども総理の言われるように、これから抑留という問題が起らなければ、これは過去の問題です、過去の原因についてその保険に入ったか入らなかったかということについて、責めてもしようがない。あなたのとにかく今まで言われる理由については理由がないと思う。今外務政務次官はそこにおられて、政府を代表すべき立場としてはあなた一人なんだが、総理発言をそこで聞いておられたのだから、政府としては、私ども項目をあげて政府の決意を促したところ、御希望に沿うように援護についても十分いたしたいと、こういう答弁があったのですから、あなたからも一つ答弁を願いたい。
  130. 井上清一

    政府委員井上清一君) どうも私が……外務大臣がおっしゃったことについてお答えを申し上げたいと思います。これは前々から外務大臣がこの問題については答弁しておったのでございますが、最近抑留漁夫の非常なお気の毒な状態についてはいろいろ十分に調べて、いろいろ質問されました吉田委員の御意見等もあり、十分一つ事務当局とも打ち合せした上で御期待に沿うように努力をしたいと思う、こういうような発言であったように思います。で、実は総理からもあのときお話があったように、こまかい点については自分もよく知らないけれども、そういう気の毒な事情ならば、事務当局とよく検討した上で御期待に沿うように努力したいと、こういうことでございますので、一つ事務当局と十分相談し、打ち合せの上で総理としてもそういうふうにお話を申し上げまして、適当なるこれに対する御対策を十分御検討願う、こういうことで御了承願いたいと思います。
  131. 吉田法晴

    吉田法晴君 政府を代表して井上政務次官から御答弁がありましたから、大蔵当局としては次長もおいでになっておりますから、次長は従来の態度をここに繰り返し述べられたのですが、その従来の態度あるいは意見にかかわらず、ここで従来の答弁を繰り返して聞こうとは思わない、総理、外務大臣の発言の趣旨に沿うて、先ほど来問題になりました点等も含めて相談をし、希望に沿いたいと、こう言明できますか、さっきの答弁は引っ込めて新しい事態において善処するという答弁が願いたい。
  132. 村上一

    政府委員(村上一君) 先ほど、最初にも申し上げましたように、各項目につきまして、私ども水産庁から具体的なお話をまだ伺っておるわけではございません。そこでただこういう具体的な事項につきまして御質問がございましたので、私どもの従来の考え方を申し上げたわけでございますが、こういう御要望があるわけでございますから、もちろん関係省で十分検討はいたしたいと存じます。
  133. 吉田法晴

    吉田法晴君 検討は約束されましたが、本来これは法律によれば問題はないと思うのです。これは与野党をこえてこの問題については国会は望んでおる。で、午前中の総理外相の言明で、委員長実現したじゃないかと、こういうお話も内々あった実情、で、問題は法律になりませんから従来の要綱、これは補助金交付要綱ということになっておりますが、その交付要綱を再検討をして、先ほど来言いますような点について、要望を織り込んで一つ閣議決定なり、あるいは閣議了解を得られる取扱いをきめてもらいたい。はっきりとそれがきまりますと、たとえば一万五千円の差入品につきましても、あるいは一万五千円の見舞金にいたしましても制度として確立をする、制度として確立をすればたとえ半年に出るとしても県等においても月々渡せるようにいたしたい、こういう関係府県の言明もございまして、その点は私ども努力をいたしたい、実現をしたい。こうしてこれは今佐野委員長代理もそこにおられますけれども約束をして参っておるということであります。取扱い要綱を先ほど申しますような内容を含んできめていただくことを要望し、それを御了承願ったんであります。大蔵省としても、関係省と打ち合せて検討をするだけではなくて、総理言明の通りに取りきめたい、こういう言明がいただけますか。
  134. 村上一

    政府委員(村上一君) 具体的な金額を含んでのお話でございますので、私ども事務当局としてはそういった具体的な点は十分検討してみませんと、ここで今おっしゃいました内容のものにつきまして、検討の上行うというような御返事はいたしかねると思います。御承知のようにこの見舞金による援護措置も直接、間接に他のいろいろな援護措置関係を持つわけでございまして、たとえば先ほど来申し上げました留守家族の援護手当、あるいはその他いろいろそういった具体的な単価の問題になりますと、相当影響するところが、範囲が広いと思います。それらについては関連事項をよく検討いたしませんと、この事項だけにつきまして直ちに御返事をいたすことはいかがであろうか、かように存じておる次第でございます。
  135. 吉田法晴

    吉田法晴君 金額を含んで検討したいということですが、せっかく尊い時間を何度も空費して同じ議論をすることは私ども大へん残念に思う。留守家族と比較されますけれども、ソ連の引揚者という中にはソ連関係の抑留船員もあったんです。この点は御否定になるわけにはいかぬだろう思う。それから月手当云々という話がございましたが、これは死んでおるか、死んでおらぬかわからぬ、しかしもう長く帰ってこぬからおそらくもう死亡しておると考えられるけれども、なお引き続いて十年の長きにわたって留守家族見舞金を出している実情もある。だから月々の単価を比較されたって、これは比較になりません。まあそういうこまかいことまで申し上げなければならぬのは大へん残念に思いますが、本人の責めに帰すべからざる理由によって抑留をされておる、あるいは拿捕された、そういう点は認めて政府としても当初やられておったその取扱いをやってくれということですから、もっと申し上げたいところでありますけれども、全部の責任をもって従来のもらっておった平均給与を全部支払えということになると、それは問題でしょう。問題でしょうが、政府が一応とにかく責任をもって出してきた通りにやってもらいたい。その後の原因についてはそれは行政指導もあった、こう言われるけれども、しかし私が先ほど申し上げますような、一本釣の対馬の北の人間、あるいは李ライン外で捕えられたものもある、こういうことでその点についてはそれは行政指導もありましたでしょうけれども、行政指導の行き届かなかった点がある、その責任はどこにあるかというようなことを尋ねないで、ほとんどが近く全部について解決をするというんだから、この際とにかく最初やられておったような措置を全部についてやってもらいたい。それから引き揚げた者についてはソ連引き揚げの中に抑留船員等もあったし、それから病気で帰ってきた者等についても、帰ってきてからの療養についても何らの基礎がない、保険に入っておる者はともかくとして何もない、それから帰る旅費もない、まあ政府機関の何と申しますか、受け入れも全然なかったけれども、今回については水産庁から一人行っていただいて、大へん喜ばれたということであります。しかしその帰る汽車に乗せることについても、これは何らの根拠もなくて汽車賃もない、本人たちだけで帰っておる。普通の旅客の中に込みでこれは行かなきゃならぬとしても、それについて何らの根拠もないのです。まあ行かれた水産庁の人で交渉をして、座席と申しますか、車両をあけてもらってそこに乗せた。こういうことは水産庁の出先の人のあたたかい心づかいによってできましたけれども、しかし政府としては帰ってきてから先のことについては何にもない。そういう点はこれは当然改められなければならないと思う。その点について引揚者の方と同様の取扱いをして下さいというのが何の無理がありましょうか。大きい声を出したくありませんけれども政府としてとにかく善処をいたしたい。項目についてさえ私はあげたのですから、それぞれの点を含んで善処をいたしますと、先ほど政務次官もそういうことを答弁ぜられましたけれども、項目、それから金額についても保険に責任を負わせるような、私はへ理屈と言うのですが、へ理屈をやめて、一つ政府として御希望に沿いたいという御言明があったのだから、その線に従って善処願いたいことを要望いたします。前の今までの大蔵省の態度を撤回をして御協議に入っていただけることを重ねて伺いたい。
  136. 佐野廣

    理事佐野廣君) 速記をとめて。    〔速記中止
  137. 佐野廣

    理事佐野廣君) それじゃ速記を起して。
  138. 井上清一

    政府委員井上清一君) 抑留漁夫の救護に関しましては、先ほど総理大臣からの答弁もございましたが、私がまあ外務省の立場におきましても、政府といたしまして先ほど御答弁申し上げました通りでございますが、関係当局も多岐にわたっておりますので、十分一つ関係方面とも協議をいたしまして、できるだけ御期待に沿うように努力をいたしたいと、かように存じます。
  139. 吉田法晴

    吉田法晴君 今の答弁言葉じりをとらえるわけじゃございませんが、外務次官としてということでございますが、それじゃ困る。総理政府を代表して総理として、あなたは外相と言われるけれども政府として御希望に沿うように努力いたしますと、こういうことでしたから、これは水産庁、それから大蔵省、外務省とされるのだけれども政府を代表して関係各省の間で打ち合せて御希望に沿うように努力をいたしたいと、こういうように御答弁を願わなければ。
  140. 井上清一

    政府委員井上清一君) ただいま御意見がございましたが、政府といたしましては一つ関係当局と十分協議をいたしまして、できるだけ御期待に沿うように努力をいたしたいと思います。
  141. 佐野廣

    理事佐野廣君) じゃ本日はこれにて散会をいたします。    午後四時十八分散会