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佐藤尚武君 このたび岸
総理大臣
東南アジア方面においでになるというようなことを伺いまして、そしてまた続いて米国にも足を伸ばされるような
お話、まことにこれは機宜を得た御旅行であると思うのであります。同時にまたこの御旅行が非常な大きな意味を、種々の点において大きな意味をもたらし得るものとお察ししておるわけであります。
東南アジア方面においでになるにつきまして
一つ私の
考えを申し述べ、それに対して
総理大臣がどういうふうにお
考えになっているかということを
お尋ねしたい点があります。それはいわゆるアジア・アフリカ・ブロックと称せられるものに対する
日本の態度についてであります。実は先般の
国際連合総会に臨みまして、いわゆみアジア・アフリカ・ブロックなるものが非常な勢いでその勢力を伸ばしている実情を見て、私は驚きもしまた同時に喜びもしたわけであります。驚いたと申しますることは、以前の
国際連盟
時代には全くなかった勢力か、新しい勢力として今度
国際連合の中で生まれて来ておるということを見て、実は驚いたのであります。しかもその勢力は
日本を加えまして二十八カ国ということになっております。その上にアジア・アフリカ方面におきましてまだまだ新しい国が誕生する可能性があるように思われます。数年内にはこれが三十ヵ国ぐらいにふえていくことが期待されるわけであります。三十ヵ国と申しますと、いや二十八ヵ国の現状におきましても、国連の総加盟国は八十一カ国でありまするがゆえに、すでに三分の一強の勢力を占めているわけで、これまでは中南米の諸国の二十ヵ国というのがいつも結束して立っておりまして、かなりの勢力を占めておりました。しかるに現在八十一ヵ国の加盟国にもなりますと、二十カ国では四分の一の勢力しか占めていない。しかるに新しく生まれて来たA・Aグループなるものは三分の一強の勢力を占めたという点におきましても、いかにこれらの国々の動向が
国際連合に大きな影響を及ぼすかということがわかるのでありまして、国連の重要決議は出席国の三分の二の多数を要しますけれ
ども、A・Aグループその他またこれに同調する国々を合せますると、その重要決議をブロックすることができる、制約することができる。こういうようなところまで進んで来ておる。この事実は
日本にとりまして非常に大きな問題を投げるのでありまして、何となれば
日本もその二十八ヵ国の一国として現にその地位を占めることになっているからであります。しかもこの国国の多くは欧洲諸国に対しはなはだしく反感を持っているという、これもまた現実の事実であります。以前自分
たちが植民地であったり、保護領であったり、ないしは委任統治国であった
時代の記憶はこれらの国々にとりましては、まことに芳ばしからぬものであった模様でありまして、従って以前の母国に対しましての反感は非常に強いものがある。そこには反感と申しますよりはむしろ憎しみと申す方が当るくらいの高ぶった感情を持っているのでありまするからして、ややもするとこれが間違った方向にとつ走らないとも限らない、そういう傾向を持っておるということは
日本にとりましても重要な問題でなければなりません。世界の平和を維持していくために、この二十八カ国の占める勢力というものが、今申し上げました
通りに非常に大きなものであるとしまするならば、その中での
日本の態度というものがこれまた非常に大きな疎意を持ってくるということになるわけでありまして、今後
日本が国連に対処するという上におきまして、これをどういうふうに持っていかなければならぬかということは、
日本にとりましてもきわめて重大な問題になってきておると私は感ずるのであります。ただこのA・Aグループの中におきまして、全部が全部しょっちゅう良好な
関係にあるというのではなくて、国々の間においていろいろな
意見の相違もあり、感情の相違もあり、その間の
関係はむしろきわめて複雑でありまするが、ただ事、独立問題に触れるとか、あるいは民族自決の
原則に触れるということになりますると、この二十八カ国はほとんど完全に結束するというのが、また事実として先般の総会にも現実に現われてきたところであります。そういうような
情勢をよく
日本といたしましては
研究しなければならないと思うのでありまして、これらの国々の間同士がどういう
関係にあるか、ないしはそれがどういう問題についてはお互いに結束して立つというような
情勢になるのであるか、その間に処する
日本の態度はどうあるべきであるかというような問題につきましては、これは
日本といたしましては実は新しい問題でありますだけに、まだ
研究は十分に行き届いていないと思うのでありまするし、その間の
情勢につきましてこれからでもおそくはありませんからして、
政府におかれても十分
研究をされて、そしていかなる態度をもって対処するかということについても、深く検討を加えられるという必要があるのじゃなかろうかと、こういうふうに私は思うのであります。そうしてこの二十八ヵ国の中に
日本が入っておりまするという
関係からして、その
関係におきまして、幸いなことには、
日本はこれらのアジアなりアフリカの国々から非常にあたたかく迎えられておるということであります。またこれらの国々の中で見まするならば、
日本が唯一の大
工業国でもありまして、彼らとして
日本に対しまする期待の大きいこともむしろ当然であろうかと思うのであります。それに今申し上げましたような民族のつながりと申しまするか、そういう点で
日本にあたたかい感情を持っておるということも、
一つの大きな
日本にとりましてはプラスであろうかと思います。同時にまた欧米諸国からいいましても、
日本の立場というものを非常に重要視しておりまして、
日本がこのグループの中に加わった以上は、これを間違った方向に導いていくということは万あるまいという、これは違った方面からの期待である。従いましてこれらの間の
日本の立場というものが、このいろいろな意味で両方から大きな期待をかけられておる。それだけに
日本の責任は重いものがあるというふうに見られまするし、そういう点におきまして
日本の
国際連合におきまする地位というものが、これから先
日本の努力次第ではまだまだ伸びていくという、そこに可能性もあり、また国連のためにも
日本の公正なる態度というものが歓迎されなければならぬ、そういう
事態にあると私は見ておるのであります。その二十八ヵ国のA・Aグループの中には、またインドのような、今世界の中でも俗に言うのしてきておる、勢力を持っておる国も入っておる。そういう
関係におきましてもきわめてその間機微な問題が存在するように思われるのであります。こういうような
事態を
総理におかれましてもよく御考慮になりまして、そして今回の御旅行の機会を利用されて、
日本の公正なあり方について進むべき道を
総理としてお
考えになっていく、御
研究になっていくということが私はきわめて望ましいことではないかと思うのであります。私はそういう
事態に対処して
総理大臣がどういう態度をとられるかというようなことを、お聞きしておるのではなくて、これはきわあて機微な問題でありまするからして、
総理御自身がおきめになるべき問題でありまして、わきからかれこれ申すべきものじゃございませんが、ただ私のお願いしますることは、そういったような
国際連合の中で大きな勢力を占めておるA・Aグループの中に
日本が入っておる。従ってこの問題を
日本としても非常に重要視しなければならぬ問題であるということを、私は申し上げるのでありまして、その点に関しまする
総理のお
考えをお伺いすることができれば、大へん仕合せだと思うのであります。