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1957-03-19 第26回国会 参議院 外務委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年三月十九日(火曜日)    午前十時四十九分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     笹森 順造君    理事            佐野  廣君            鶴見 祐輔君            曾祢  益君            梶原 茂嘉君    委員            黒川 武雄君            津島 壽一君            野村吉三郎君            海野 三朗君            加藤シヅエ君            竹中 勝男君            石黒 忠篤君            佐藤 尚武君   政府委員    外務政務次官  井上 清一君    外務大臣官房長 木村四郎七君    外務省経済局次    長       佐藤 健輔君    外務省条約局長 高橋 通敏君   事務局側    常任委員会専門    員       渡辺 信雄君   説明員    大蔵省主税局税    制第一課長   塩崎  潤君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○所得に対する租税に関する二重課税  の回避及び脱税防止のための日本  国とスエーデンとの間の条約批准  について承認を求めるの件(内閣提  出、衆議院送付) ○在外公館の名称及び位置を定める法  律等の一部を改正する法律案内閣  提出、衆議院送付)   —————————————
  2. 笹森順造

    委員長笹森順造君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税防止のための日本国スエーデンとの間の条約批准について承認を求めるの件を議題といたします。本件について御質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  3. 竹中勝男

    竹中勝男君 どうも税金のことはよく私にはわかりませんけれども、第十二条かと思いますけれども留学生に対する免税規定されておったと思うのですが、これは文化交流の上からも考えなければならない点ですが、アメリカスエーデンには留学生に対して免税が行われておると思いますが、ところがほかの国に対する留学生免税規定のようなものはないように思いますけれども、この点第一点、どういうわけなのでしょうか。  それからできればこれは日本外務省としては一律に外国留学生に対して税金を免除するという日米行政協定、あるいはスエーデンとの今度の税金に関するこの条約批准を行われる際に、こういう規定もあわせて考える必要があるのじゃないかと思いますけれども外務省の御意見をお伺いいたしたいと思います。
  4. 笹森順造

    委員長笹森順造君) この際御報告いたします。外務省からは井上政務次官木村官房長高橋条約局長佐藤経済局次長が出席されておりますし、大蔵省からは塩崎税制第一課長が出席しております。
  5. 高橋通敏

    政府委員高橋通敏君) お答えいたします。御趣旨の通り留学生免税につきましては、日米租税条約で第十二条に免税がうたわれております。それからスエーデンにつきましてはやはり第十二条に免税がうたわれてございます。従いまして条約文面から、また法文上からは本来海外の留学生につきましては、この条約できめられている以外の国とは結局法文上は税金をとられていくのではないか。しかしこの種の二重課税という問題はなるべく多くの国々とやりたいと思っておりますので、ただいま英国とは、通商航海条約関係の省議をいたしておりますが、それが一段落済み次第英国ともいたしたいと思っておりますが、たまたま英国との交渉の開始前にスエーデンからも申し出がありましたので、スエーデンともこの種条約を結んだ次第でございますが、今後もなるべく多くの国々と結び、それに従ってこのような留学生免税ということも考えていきたいと考えております。
  6. 竹中勝男

    竹中勝男君 希望になると思いますが、スエーデンに対する留学生というものはそう多くはないのではないか、どれくらいあるか、もしわかっていればお聞かせいただきたいのですが。それからついでにおもな国、ドイツ、フランスだとか英国アメリカ、南米、そういうところの留学生はどれくらいあるものでございますか。アメリカには圧倒的に多いと思いますが、ヨーロッパ諸国にいるところの学生相当無理してみんな行っておるのですが、なるたけ実際上にこの免税になるような処置をどうやったら講ぜられるかもあわせて御答弁を願いたいと思います。
  7. 高橋通敏

    政府委員高橋通敏君) スエーデン留学生の数でございますが、これは御承知通り非常にわずかなもので、学生が一名程度、今のところの調査でございます。それからアメリカその他の国のはっきりした人数は存じませんが、英国フランスなんかも相当留学生として多数の者が行っていると思います。これらの者に対する免税措置でございますが、実はこういう条約がありませんので、何か特別の免税に関する取りきめか何か、そういうことをしない限りちょっとこれは困難だと思っております。
  8. 竹中勝男

    竹中勝男君 けっこうです。
  9. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 スエーデン日本との関係で、この条約の実際上との関連性といいますか、現在どうなっているかということを一つ御説明願いたいのですがね。この条約案に該当するような事柄ですね、日本においては、スエーデンのこれに該当するようなケースが一体どれほどあって、どういう程度の税をとっておるのか。それから税制において、日本側に対しては一体実際にどういうふうになっているのか、そういう一つ実情お話を願いたいのです。
  10. 塩崎潤

    説明員塩崎潤君) 税金建前になりますと、私の方からお答えいたします。御指摘通り二重課税防止条約目的は二つくらいあると思います。  第一は、各国政府がとる税金分け前と申しますか、取り方を調整しよう、いずれにいたしましてもお説のように居住国におきましては総合課税をいたします建前でございまするから、スエーデンがこちらに投資いたしまして向うに帰っていきますと、向う総合課税をされるわけでございます。こちらでの所得に対しますところの税金は、日本におきまして源泉として課税する。その際にあまり大きな高い税金になりますと、向う税金が控除できない場合がある。そこで日本スエーデンとの間の経済交流を円滑にするためには、お互い税金分け前を適当なところにきめようじゃないかということが、一つのねらいでございます。  もう一つは、今申しましたようなあまり高い税金を控除できない場合に、どういうふうな形で控除するか、これを相互にきめ合おうということでございます。従いましてこれによりまして税負担が不当に軽くなるというようなことは建前としてはないわけでございます。相互政府がどの程度かの税金を取り合って、お互い経済交流あるいは文化交流を円滑にしよう、こういうのがねらいでございます。そういう建前でできておりますが、現在このスエーデンとの間の経済交流というのは、アメリカほど密接ではございません。現在のところ一番問題になりますのは、工業所有権使用料日本が主として借りておりまして、これに対しまして使用料向うに払っております際に、現在の所得税法ではこれに課税する建前になっております。これが最も大きな税金の問題になる点でございます。現在のところ二十九年に二千五百八十五万円、三十年に三千四百四十万円、三十一年に八千四十五万円の使用料日本スエーデンに支払っております。ただ現在の所得税建前では、過去の所得税制がいわゆる支払地課税主義をとっておりましたので、昭和二十八年前におきましては、日本では課税しなかった、かようになっております。二十八年に所得税の改正が行われまして、各国課税方式を見ますれば、支払地主義というのはおかしいというので、所得源泉地主義源泉国課税する、こういうことになっております。そういたしますと、本来それは課税になるわけでございますけれども、今までの慣習を尊重いたしまして、二重課税防止条約ができて後六カ月以後に課税する、そういう建前をとっております。しかもそのときの税率源泉で二〇%の税率、かようにいたしておるわけでございます。従いまして現在のところはほとんど課税されておらず、三十年の税額はわずか八十万円、三十一年は二百十万円の課税になっております。で、こういうように低いのは、今申しました税制建前租税条約ができてから六カ月後に課税するということが一つと、もう一つは二十八年三月三十一日以前の契約にかかる分はそういうふうな建前になっておるのでございます。従いましてその後契約したものについてかかる、しかもその税率重要技術にかかるのは一〇%と、かようになっておりますために税額が少いわけでございます。今後この二重課税防止条約ができまして六カ月後からは、今申し上げました三十一年八千四十五万円、三十二年はこの程度、あるいはそれ以上になるかと思いますが、それにつきまして課税になりましておそらく収入がふえてくると思います。ただその場合におきましても条約によりますと税率は一五%というふうにいたしております。ただこれは国内事情の理由で、租税特別措置法重要技術にかかるものは一〇%、かようになりますので、条約によりまして一五%のものと一〇%のものが二つ出てくる、かように思います。その見積りは大体現在よりも三百万円程度増収になりやしないか、かように思っております。変な話でございますが、二重課税防止条約ができますと、かえって増収になる点があるわけでございます。これは先ほど申し上げましたように、所得税法の経過的な措置を、現在のところ二重課税防止条約にかからしておるためでございますので、こんなふうになるわけでございます。  その他短期滞在者給与所得に対するところの免税が、この条約によりまして出て参ります。現在のところ三、四十名スエーデンの方がいらっしゃるようでございまするから、これにつきましては短期滞在者といたしまして課税しないことになりますれば、それが減収になる。その他商業関係スエーデン企業もございまするけれども、これはまあ現行税制におきましては課税いたしておりますので、条約によりまして特に商業関係企業関係所得あるいは利益につきましての課税関係は、二重課税防止条約によりましてそんなに変更はないものと、かように考えております。
  11. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 この先方の関係はどうですか、言いかえればスエーデン日本に対して課税している状況はどういうふうになっておりますか。
  12. 塩崎潤

    説明員塩崎潤君) 御承知のように、日本の方といたしましては工業所有権使用料相当払っておりまするけれども、現在のところ、スエーデン日本から工業所有権を借り受けまして、あるいはまあ買いまして、これに対しまして使用料を払っておるような状況はないようでございます。ただ現在のところ、スエーデン在住日本人が三十三名ばかりおりますが、これにつきましても今申し上げましたような短期滞在者あるいは学生、これらにつきまして免税措置が講ぜられる見込みでございます。むしろスエーデン方々日本に来ている場合が多くて、むしろ日本人方々スエーデンに行っている実例は少いので少いわけでございます。
  13. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 そうしますと、条約上均等な立場に立つわけですけれども経済活動なり税を徴収するという観点から見ると、実質的にはわが方が不利であるということになるわけですか。
  14. 塩崎潤

    説明員塩崎潤君) 結果的にはまあそういう場合が多いかとも存じまするけれども、先ほど申し上げましたように、現在の建前では二重課税防止条約を結ばなければ、工業所有権使用料について課税できないような事例がございますので、必ずしもわが方が損になるとは考えておりませんし、これからの経済交流あるいは文化交流発展いかんによりましては、こういう二重課税防止条約を結んでおいた方が相互利益になる。現在のところは日本から資本を輸出し、あるいは日本人向うに行っているケースは少いわけでございますけれども、将来を考えますと果してどうなるか、まあ現在だけでは判断できないのじゃないか、かように考えております。
  15. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 今の工業所有権についての課税が、この条約ができてそれから六カ月間ですかの間、免税ですかするというのは、これは別にそういう法律があるわけですか。
  16. 塩崎潤

    説明員塩崎潤君) 特別措置法によりまして、先ほど申し上げましたように支払い地課税主義源泉地課税主義に改めました際に、特別措置法にそういう規定を設けてございます。
  17. 竹中勝男

    竹中勝男君 これは直接スエーデンの問題とは関係ないのですけれども関連して外務当局及び税務の方がおられますので、この間からの朝日新聞によく、天声人語にも出ておるのですが、外国旅行者日本に来たときに、何とかいう作家で元軍人だったそうですが、日本に来たらはんこが合計何十とか必要で、羽田相当時間がとられて、荷物の検査などが相当厳重であるということに関連して、これは日本観光あるいは通商の上に非常な不利ではないか。第一印象が非常によくない。私も外国旅行をしてカバンの中まで見られた国はありません。もし外国相当観光客だとか重要な商業上の人だとか、あるいは外交関係の人あるいは文化関係の人が来たときに、日本税関というものの手続が非常に繁雑で、あまりいい印象を与えないということは非常に残念だと思うのですが、ことにまあ日本の産業の一つの重要なものは観光事業ですが、こういう人たち日本相当予定して使う金も使わないでそのために帰るというようなことがままあるのじゃないかと思われますが、そういう点についてもうちょっとその税関関係の、あるいは入国関係手続を簡素にする、そうして印象をよくする方法がないものか。ことに羽田空港というものは非常に日本としては重要な所ですが、あそこで相当長い時間をとられて、はんことサインを幾つもとられて、荷物を検査されて、それからあの道路の悪いところを東京まで、都内までくる間に相当両側の店、店というか、夏などはふんどし一つで御飯を食べているところが見られるわけで、非常に観光上は面白いかもしらぬけれども、どうも日本としてはあまり感心しないのですね。手続きの上で長い間あそこで調べられたり、それからまああまり文明国でないような道路を三十分ほどドライブして東京に来る。こういう日本の門口というものはよほど考えていかなければならないと思いますが、外務当局税務関係の御見解を伺いたいのですが。
  18. 井上清一

    政府委員井上清一君) 竹中委員からお話がありました件は、先般新聞紙でたしか自動車輸入するのに非常なたくさんの判を必要とする、そのために大へん手間どって不愉快な念を与えたというようなことでございまして、御指摘通り税関におきまする外人の所遇、また税関の扱いというものが非常に入国者にいい印象も悪い印象も与えて、わが国の観光政策の上において親切、懇切なる取扱いというものが大事だということはお説の通りで、税関は私ども所管ではございませんけれども大蔵省は絶えずそういう考え方で、やっておりますけれども、中にはやはりしゃくし定木でいろいろ不便をかけておる点があろうかと思います。観光また外客に対する接遇という見地から、私どもとしては大蔵省に十分御意見の点をお伝えするつもりでおります。
  19. 塩崎潤

    説明員塩崎潤君) 税関関係は私は内国税をやっておりますので所管ではございませんが、私の知り得る限りのことをお話し申し上げたいと思います。  自動車が例に上りましたが、御承知通り戦後自動車輸入につきましていろいろな事件が起ったわけでございます。自動車を持って参りましてそれを引っ越し荷物といたしまして輸入いたします。日本におきましては自動車輸入相当制限されております関係上、直ちに売り飛ばすとかこういう事例が非常に多かったわけでございます。そういうのは関税と同時に物品税までそこで逃げてしまうわけでございます。そこで一定期間内に売るものにつきましては、売ったときもう一ぺん関税物品税を取り返すという規定が現在の法律にございますので、そんなような関係から手続を若干厄介にしているのではなかろうか、かように見ております。そういう事例がなくなりました場合に、私どもおそらく廃止すべきものでございましょうけれども、現在までのところはそういう事例が非常に多かったわけでございます。そういうふうになっておるわけでございます。しかし私どもといたしましては運用につきまして十分留意いたしまして、善良な方々にまで迷惑をかけないように注意いたしたい、かように考えております。
  20. 海野三朗

    海野三朗君 今のに関連をしてちょっとお伺いいたしたい。たとえば自動車アメリカから買ってきたところがえらい関税をかけられた。今度は引き取れない。そういう場合に税関にとどめて置く期間はどんなものですか。何年も倉庫のすみに自動車をほったらかして本人も引き取りに行こうと思わない。税関の方ではどのくらいの期間で処分されますか、この機会にこれを伺いたい。
  21. 塩崎潤

    説明員塩崎潤君) 私先ほど申しましたように内国税しかやっておりませんので、期間につきまして詳しく存じません。今聞かせましてお答えをいたしたいと思います。
  22. 竹中勝男

    竹中勝男君 これはことに外務政務次官に希望したいのですが、どうも羽田の道が行くごとに気になって仕方がないのですが、別に体裁をつくろう必要はないと言えばないのですけれども、とにかく第一印象が、羽田からの三十分の道を、日本のあれがありのままの姿ですけれども、特にあの両側は奇妙な姿があまりに多く見られるのですよ、どうもあまり……。何とか一つ外務省として、これは文化国家を作っていく上に、また外国人に対する第一印象を少し変える。特にひどい場合がほんとうに、去年だったかな、アメリカの人と一緒に初めて友達が来たのですが、それがおもしろがって見るんです。自動車をもう少しゆっくりやってよく見せてくれと言うんです。どうもそんなものは見ぬでもいいと言うんですが、半分裸で家族中が飯を食っているところが見えるんです、夏だから。どうもこっちは、僕の家でもああしてやるのかと言うから、そうするかもしれぬから来て見ろと言ったんですが、どうもあまりいい体裁じゃないです。日本はああいう国かと思われるとかなわぬですが、一つ外務省の方から。  もう一つ、こういうことはどうなんですか。駐留軍軍人軍属として来まして、そのまま日本に滞在して何かいろいろ商売している人があるのですが、そうしてその人たちの商売上の脱税相当あるように聞いている。何か悪い人も相当いるように聞いているのですが、軍人軍属をやめたら行政協定によって日本にそれは通告があるはずだと思うのですが、そういう点について何かお調べになった点がありますでしょうか。
  23. 高橋通敏

    政府委員高橋通敏君) ただいまの軍人または軍属身分をなくした者につきましては、その点は行政協定の第九条の5に「日本国入国した者の身分変更があってその者が前記の入国の権利を有しなくなった場合には、合衆国の当局は、日本国当局に通告するものとし、また、その者が日本国から退去することを日本国当局によって要求されたときは、日本国政府負担によらないで相当期間内に日本国から輸送することを確保しなければならない。」こういう規定がございます。  それから租税の点については税務当局から。
  24. 塩崎潤

    説明員塩崎潤君) 行政協定によりますと、軍人軍属身分を持っている間は御承知通り日本課税権には服さないことになっております。軍人軍属の地位を失いました後におきましては当然日本税法の適用を受けます。今お話のように事業をやりますれば、これはその所得に対しましては全部課税する建前になっております。ただ御指摘の点はおそらくPXその他関係のいろいろな免税物品を仕入れて、それを不正に販売するような者の事例ではないかと思いますけれども、私どもといたしましてはできる限り調査いたしまして、そういう見つけた事例もございますが、適正な課税に努めているつもりでございます。
  25. 竹中勝男

    竹中勝男君 それについてはどうぞもう少ししっかり一つ調査していただきたい。被害者相当あるのです。そうしてその者がいつの間にかいなくなったりしている場合が、私の小さい交際の範囲の友人の中にも一、二あるわけです。こういう場合はどうするかという相談に来たこともありますけれども、私はそういうことはわからないと返事しただけのことですが、相当被害者も現実にあるのです。いわんや脱税行為というものは相当あるだろうと想像されるのですが、一つそういう点相当厳密に調査して今後注意していただきたいと思います。非常に日米相互友好関係の上に暗い影を投ずることになる、非常に日本人の反感を買います。軍人のような顔をして商売したり、軍属のようなことを言って日本人利益を誘導したりする人が相当あるように聞いておりますが、どうぞ一つ
  26. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 この税に関する条約というものは、やはり通商条約が一応基礎になってできるのですか。通商条約がなければ大体税の条約はないとみていいのですか。
  27. 高橋通敏

    政府委員高橋通敏君) 必ずしも必然的に通商条約が先行しなければならないということはないかと思いますが、やはりこのような場合には、通商航海条約で一般的な両国の通商その他、人的な交流関係をきめた上で、こういう二重課税防止の問題を取り上げた方が、まあ通常のやり方ではないかと思っております。ただ通商航海条約でありましても、租税に関するものは特別の条約としまして最恵国待遇とか、その他例外的な問題となると思います。
  28. 石黒忠篤

    石黒忠篤君 ただいま問題になっております二重課税回避及び脱税防止関係と直接の問題ではないと思いますが、やや趣きを同じゅうしているようなので、ちょっと伺ってみたい。  いろいろ文化協定もでき、文化交流をするために留学生等も出るというようなことが、これから多くなっていくと思うのです。今私が関係をしておるのもその一つの例でありますが、具体的に申し上げると、ストレプトマイシンの発明で世界的に有名になりましたワックスマン博士が一昨々年来られました。日本におけるストレプトマイシン製造についての特許使用料に対する収入、それは同博士のおられるラトガース大学財団にすべて帰属さして、そして微生物化学発達をはかるという、自分も研究をし人にも研究させる施設をフィードしている、こういうやり方をやっておられるようであります。日本における各製薬会社からの特許使用料の半額を日本に置いて、その方面の学問の研究をする者にアメリカその他へ留学をする費用に充てるように、財団法人を作ってくれんかという依頼があったのでありまして、これを作って将来人も出そうという計画をしておるのであります。今製薬会社の方の関係、厚生省の方の関係で少しトラブルがあるのであります。追ってこれは解消することと思う。そういうような場合に税の関係がどういうふうにいきますか、これは税法の定めるところによって課税されることはやむを得んと思いますが、使用目的が今申し上げましたような、アメリカにおいても日本においても非常に公益的なものである、文化発達及び交流に非常に関係を深く持つものであるというものに対しましては、税務当局といたしまして対外関係の点も、それから文化発達交流の点もよくお考えになって一つ許す限りの便宜を与え、手続等も簡略にしていただきたい。こう思いますので、それだけをお願いをしておきます。
  29. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 大蔵省にお伺いしたいのですけれども、概算しまして今外国人及び外国法人から徴収しておる各種の所得税なり、法人税等の総額というものはどの程度のものでしょうか、大体でけっこうです。
  30. 塩崎潤

    説明員塩崎潤君) ただいまの御質問の点につきましては、先般衆議院でこの条約が審議されました際に、米国人あるいは米国法人の納めている税金が幾らか、こういうお話がございましたので、それに関しまするところの資料を提出いたしておりますから、おそらく間もなくこちらの方に参ると思いますけれども、少し資料が古いのでございますが、外国人の三十年度の課税状況は、税額にいたしまして二億六千二百六十一万一千円でございます。それから次に外国法人に対しまするところの課税状況は、税額にいたしまして三十九億六千四百万円ばかりを外国法人から徴収いたしております。
  31. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 いつでしたか、在留の外国人に対する日本税額が比較的高いせいでしょうか、税負担相当の圧迫になる。従って日本に居住することが不利なために、長くいたいという者もやむを得ず帰らざるを得ないというようなことがよく言われたのですけれども、暫定的におる期間は低減した税をかけておったようであります。それは日本としては差別待遇をなくしていく方向に当然進んでいくと思いますが、結果的に見て、やはり日本に居住することが非常に不利なような状況にあるのですかね。それともそれは言いがかりといいますか、実際はそれほどでもないのか。言いかえますと、日本の税と外国の税と比べてそれほど大きな影響があるのかどうか伺います。
  32. 塩崎潤

    説明員塩崎潤君) 外国税金とわが国の税金でございますが、各国によって違いますことは当然でございます。昭和二十五年以来ただいま梶原委員の御指摘通り特別措置がございますが、それをだんだんなくする方向に進んでおります。現在のところまだ特別措置は三十五年まで続くことになっておりますから、これを外国税金と比較いたしますと、直接税で比較した方が私はよろしいと思います。その直接税の中に二つございます。第一は所得税、第二は法人税でございます。法人税の点につきまして外国の法人税を見て参りますと、必ずしも日本の方が高くない。たとえばアメリカの法人税で申しますと、大体連邦税だけで五二%まで参ります。日本国税は年所得五十万円以下は三五でございます。それをこしますと、四〇という税率でございます。ただ日本の方はこれに事業税と、地方税でございますところの法人住民税がつきまして、その実効税負担は最高五一・二五%で、事業税が損金になります関係で、表面税率五七・四%が五一・二五%になるわけであります。それからまたイギリスと比較いたしましても、イギリスもノーマル・タックスは四二・五%でございまするが、そのほかに利潤税というのがございまして、配当分につきましてはなお三〇%、留保分につきましては三%、こういう税負担になりますので、イギリスあたりの方がむしろ高い、こういう状況でございます。従いまして英米の例をとっただけでも日本の法人税につきましは、まあそう高くないというわけで、外国からみましても日本の法人税はそんなに不平がないようでございます。  問題は所得税の方でございます。これは戦後日本所得階層が非常に変化いたしまして、相当低額なところからも税収を上げなければならぬことになりました関係上、相当税の累進率が急激でございまして、御承知通り非常にボーナスをもらいますと半分くらいまでいかれるというような場合があったわけでございます。だんだん改正をいたしておりますけれども、まだ外国所得税あたりに比べてみますと、高めでございます。しかも国民所得が低い関係相当下の方にも高めになっておるような状況でございまして、そんなような関係から外国人の間にはまだまだ不平があるようでございます。ただ今回の提案しておりますところの所得税の改正案によりますと、大体相当軽減が適当なところまでいきまして、今後の所得税につきましては、そう不満はないのではなかろうか、かように考えております。たとえばイギリスあたりは非常に所得税が高いようでございます。かりに免税点を比較いたしますると、日本では大体二十七万円くらいまでは課税にならないわけでございまするが、イギリスでは七十万円まで課税にならない。アメリカでは百二十万円まで課税にならない。西ドイツは六十万六千円まで課税にならない、これは夫婦子供三人の場合でございます。日本の場合は正確に申し上げますと、給与所得者で二十六万三千円、事業者では二十万円でございますが、外国の例はそういった状況でございます。免税点はさようでございますが、累進の方で税率がかかるようになりますと、各所得階層で負担が異なって参りまして、たとえば一万ドルくらいの所得がありまして、この方々が夫婦子供二人というのを私どもははじいておりますが、日本税金では大体二八・五%くらいまでかかることになります。米国ではこれが一三・七%、ところがイギリスではこれが三六・二%、イギリスの方が今度は高めになります。これは改正後の状況でございます。フランスではこれが一七%、西ドイツでは二七・七%で、アメリカフランス、西ドイツよりは高めでございますけれども、イギリスに比べれば低めだとこういうふうな状況になりますが、こういうことを考えますれば、大体今後の改正を織り込みました所得税のところでは、適当なところをいくのでなかろうかというふうに考えております。
  33. 曾禰益

    ○曾祢益君 ちょっとそれに関連して。日本におる外国人所得に関する不平というか、これは結局日本の方は会社の重役さんなんか実際上はいろいろまあ何というか、社用族的な実際上の手当みたいなもの、交際費みたいなものがかなりある。給与の方は、これは労働攻勢もあるし、世間体もはばかるし、あるいは脱税、いろいろな関係から、実際非常に低いものにしているというのが戦後の現状だったのですね。これじゃかなわぬ、自分の方ははっきり所得を出しているから税金がフルにかかってくる。ところが日本の同じような会社の重役なんかという者は、実際上脱税している。だから自分らの方は非常にアン・フェアな取扱いを受ける結果になる。こういうかなり外人の商工会議所あたりの不平の一つの原因になっている。これはほんとうに変な話なんですけれども、それらの点についてはどう考えられておりますか。
  34. 塩崎潤

    説明員塩崎潤君) ただいま曾祢委員の御指摘の点は、私どももときどき聞いております。ただ税法上の扱いといたしましては、たとえば交際費というような形でとりましても、所得が会社の重役に帰属いたしますれば、これは賞与として課税いたすことにいたしておりますし、私ども現に税務の実際に携わりました経験から見ましても、相当事例があるわけでございます。でございますから、そういう点は一つの言い訳けにはならないのじゃないか。しかもまた外国の法人につきましても、交際費はあるわけでございまして、必ずしも交際費が出てないというふうには言えないと、かように考えております。  さらに、日本の交際費は少し多いじゃないかというようなことで、現在租税特別措置法によりまして交際費の損金算入の限度を規制いたしております。こういう事例外国にもないようなことでございまして、こういうところを見ますと、ただいまおっしゃったようなことは、特に日本人所得税負担が違うのだということには直ちにはならないのじゃないか、かように考えております。
  35. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 本件につきましての御質疑は本日はこの程度にいたします。   —————————————
  36. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 次に、在外公館の名称及び位置を定める法律等の一部を改正する法律案を議題といたします。本件につきまして御質疑のおありの方は順次御発言願います。
  37. 竹中勝男

    竹中勝男君 御質問がないようでしたら、私直接のことじゃないのですけれども、これは文化協定のときもお尋ねしようと思っておったのですが、在外公館の場所によって、国によって館員といいますか、日本の出先の方たちの、何といいますか資格というようなものを十分考慮をお願いしたいと思うのですが、たとえばアジア、アフリカ諸国、中近東、インドだとかイラクだとかエジプトとかという、比較的文化日本よりはおくれた国々に対して派遣される日本在外公館の館員には、技術者だとか医者だとか科学者だとか、そういう科学などについて十分わかるような方たちを派遣していただきたいと思うのですが、私は文化交流の点でただ技術や学問というだけでなくて、実際に生活に即した、たとえば非常に衛生状態の悪い国だとか、医療の状態の悪い国だとかという所には、出先に医者といいますか医学、衛生に関する知識を持った人などがおられると、非常にその国の文化に貢献できると思うのです。キリスト教の伝導の中にメデイカル・ミッショナリというものがあるのですが、キリスト教を布教するということが終局には目的ですけれども、その低い文化の国に、ことに医療のできる宣教師を派遣する、各キリスト教国が宣教師を出す場合にまず医者を派遣するのですね。そしてたとえば今のアフリカに行っておる、有名なドイツの何とかいいましたね、音楽家で学者で、医者で、ああいう人が行っておってそうしてまあドイツ最高の文化を未開国に入れるということから、キリスト教の布教という目的に近づいていく、日本のこのそういう比較的後進国に在外公館を設けられるときに、そういう点を十分考慮されていただきたいと思うのですが、日本の公館の中に非常に優秀な医者がいるというような場合には、非常にその国に貢献できると思うのです。また開発がおくれておる国に対して、日本の公館の中に技術的な知識を持った人がおれば、その国の開発に十分協力ができ、また日本にそういう機械だとか開発だとか資本のことが、そういう関係日本に経済的な交流が増加するということも考えられると思うのですが、そういう点について在外の公館の位置を定める場合、また公館の出先の人員を考える場合、そういう点、外務省として御考慮になっておられるかどうか御意見を伺いたいのです。
  38. 井上清一

    政府委員井上清一君) ただいまの御質問まことにごもっともだと思います。私どもといたしましては、さようなお示しのような方針でできるだけ在外公館の充実をはかっていきたいと思っております。しかし何分在外公館の数に比べまして、それに充てます館員の定員が非常に少いのでございます。たとえばこれはまあアメリカと比較するのはどうかと思いますが、アメリカが二百二十六の在外公館がございますが、それに対しまする館員が五千八百三十二人、ところが日本がその三分の一の八十三の在外公館がございますのに、それに充てます館員数が五百三十三ということで、人員から申しますと、十分の一以下でございます。まあさようなことでいろいろ考えておりますけれども、なかなかそういう関係で御期待に沿うことができないのは、はなはだどうも私残念に思っております。ことに英国とかあるいはアメリカの大使館は、相当人員が充実いたしておりますけれども、お示しのような後進国の大使館というのは非常に人数が少なうございまして、あるいは三人とか四人、大使を入れまして五人とかというような数でございましてなかなか思う通りに参りません。それでもできるだけ、つまり技術協力とかというような点を考えまして、若干の人員は配置をいたしております。現在科学技術庁から三名参っておりますし、またいろいろ各官庁からも出てもらっているというのが相当あるのでございます。各官庁から在外に約七十人の専門的な知識を持った人に出てもらっております。しかしこれでもまことにどうも旱天の何と申しますか、非常に不十分な状況でございます。今後もできるだけ一つお示しのような点で在外公館の充実をはかって参りたいと、かように考えております。
  39. 竹中勝男

    竹中勝男君 特にその際には医者を何とか未開発の国には専門家として送っていただきたいと思うんですが、これはその非常におくれております所では医者が非常にありがたがられるわけです。そうすると結局医療器具にしても薬品にしても、日本というものが有利な、将来経済的にプラスになるんだと思いますし、また人道上からも、国民の感情の上からも、これは非常に大きなプラスになって、また日本外務省がそういう政策を十分考えておられなかったんじゃないかと思うんですが、これは実は宣教師のさっき申しましたメディカル・ミッショナリというものは、非常に大きな役割を果して、さっき名前を忘れたが、シュヴァイツアーです、ドイツがアフリカに送った。そういう形の一つ文化的な外交といいますか、経済的な基礎になるそういう人道的な外交官を派遣されるということを希望します。
  40. 佐藤尚武

    佐藤尚武君 ただいまの文化発達していない国々に対する日本が設置する大公使館に、医者を館員として加えるようにという竹中委員の御発言、これは私も全面的に賛成するわけでございます。戦後の模様は存じませんけれども、戦前においてはアフガニスタンの公使館に日本から館員として医師が来てもらっておりまして、大へんいい成績をあげたことを聞いているんです。かたがたただいまの御発言に対しまして私も全面的に賛意を表するわけであります。そのほかなお根本的な問題として中東方面のことについて少しお伺いしたいと思います。  中東アフリカ方面は現在国際的に非常に険悪な情勢を展開しておるということは皆さん方御承知通りであります。まかり間違えば世界戦争にまでも発展し得るような紛争が起きておるという現状であります。そこで本日提案されておりまする在外公館の名称位置を定める法律の改正の中に、ネパールにはすでにもう大使館が設置されておる。そのほかにテュニジア、リビア、モロッコ、イエメン等に、あるいは大使館あるいは公使館等設置され、それはけっこうでありまするけれども、現在の外務省の方針では、それらの多くの大公使館に対しては、すでに存在しておる大使館をして兼摂させる、つまり大使に兼任させるというような方法をとっておられるんじゃないかと、この御説明でみれば理解されるんでございます。たとえばモロッコとかテュニジア等に対して、あるいはエジプト駐在の大使がこれらの公使館を兼摂するというようなことになるんじゃなかろうかというように思う。そうなりますると、単に儀礼上新興国との間に公館を設置して、お互いに使節を交換するというだけのことにとどまって、ほんとうにそれらの国の国情を視察し十分に研究するというような手段に欠けておるかのようにみえる。そこでお伺いしたいのは、中東方面においては、今私はよく記憶しておりませんが、どこどこに大公使館を持っておられるか、私の承知しておるところでは、トルコはもちろんのこと、イラン、エジプト等に大使館があるということは承知しておりますが、アラブ諸国に対したはどういうことになっておりますか。たとえばイラク、ジョルダン、シリアに関してはどうなっておるか。イスラエルに対しては現在どういうようなことになっておるか。現に日本にはイスラエルの公使が来ておりますけれども日本から向うに公使が派遣されているとは聞いていないのであります。これらの国々に対して、あるいはトルコあるいはイランなりその他の既設の大使館なり公使館なりをもって、先ほども申しましたように兼摂するというようなことであっては、私は情報の収集その他国情の調査の上に大いに欠けるところがあるというふうに思うのであります。まあそれらの国々に派遣される大公使がどういう人たちになるか存じませんけれども、しかし、組織としては、やはり外務省の方が十分にそれらの地方、国際的に見て目下のところきわめて重要なまた緊迫した情勢にあるこれらの地方においての情報収集、もちろんそれらの国々と親交をはかったり経済上の関係を密接にするということの必要はむろん第一にあげなきゃなりませんけれども、しかしそのほかに緊迫した情勢に関しての情報の収集という点に、専任の大公使を置かなければ私は十分にそれらを期待することができないのじゃないかということをおそれるのであります。外務省の方針としては、どういうふうにやっておられるか、お伺いしたい。
  41. 井上清一

    政府委員井上清一君) ただいまお示しの、特に中近東方面に今後外務省として力を注がなけりゃならぬじゃないかという御意見については、まことにごもっともなことで、いろんな点で中近東に対しましての力を入れておるわけでございます。従来とも中近東、ヨーロッパ、その他アフリカ、大洋州、南北アメリカ、全部ひっくるめて欧米局で所管をしておりましたが、今御審議を願っておりますように新しい欧亜局というものを作りまして、中近東というものをそちらの方で所管することにいたして参りたいと思っております。これは本省の機構でございますが、在外公館といたしましては、ただいま御質問のございました中近東の大公使館は七館ございます。
  42. 佐藤尚武

    佐藤尚武君 どこでございますか。
  43. 井上清一

    政府委員井上清一君) 大使がおりますのは、イラン、アフガン、エジプトの三国でございまして、公使のおりますのはシリア、レバノン、イラク、イスラエル。そのほかにカサブランカに領事館がございます。そのほか今度イエメンに公使館ができるわけでございますし、それからテュニジア、リビア、モロッコ、これらは兼轄になりますんですが、お示しのような次第もございますし、できるだけひとつ優秀なる館員を配置いたしまして活動に支障のないようにいたしたいと、かように考えております。
  44. 佐藤尚武

    佐藤尚武君 今の御説明によりますと、シリア、レバノン、イスラエル、イラク、これらはどこかの既存の大使館で兼摂をしておるというように私は伺ったのでありまするが、それはどこどこがどこを兼摂しているということをひとつ御説明願いたい。
  45. 井上清一

    政府委員井上清一君) ただいま申し上げましたのは、兼摂じゃございませんで大公使がいる所でございます。
  46. 佐藤尚武

    佐藤尚武君 専任でございますか。
  47. 井上清一

    政府委員井上清一君) 専任でございます。ただ、シリア、イスラエルが代理公使でございますが、あとはみんな大公使が現存いたしております国でございます。
  48. 佐藤尚武

    佐藤尚武君 そうしますと、私が今まで了解していましたのとは大へん違うのであって、それらのアラブ諸国もしくはイスラエルには、専任の公使なりあるいは代理公使なりがおると、こういうことなんでございますか。
  49. 井上清一

    政府委員井上清一君) さようでございます。
  50. 佐藤尚武

    佐藤尚武君 そういたしますと、私の懸念は、少くとも組織の上においては多分に解消されることになるわけでありまして、どうしても私はそういう所に専任の公館長がおって、そうしてじっくりとその場に落ちついて国情を視察するということが、こういう際には最も必要であると思うのみならず、これは私は外務省の人事にくちばしを入れるわけでありませんけれども、しかし目下非常に重要な国際問題を起しておる地方のことでありまするがゆえに、外務省等におかれましても十分に人選に注意をされて、そうして適当な公館長を派遣されるということ、もちろん外務省としてお考えになっていることとは思いますけれども、それを重ねて私からも要望しておきたいと思います。  そこで今度は、新しく開けるリビア、モロッコ、イエメン、テュニジア、これらはどうなっておりますか。専任の公館長を派遣されるつもりでおられるのですか。
  51. 井上清一

    政府委員井上清一君) 佐藤先生の御指摘の点につきましても、外務省としてひとつ十分注意をして参りたいと思います。イエメン、テュニジア、リビア、モロッコ、これは兼轄でございます。
  52. 佐藤尚武

    佐藤尚武君 その兼轄ということは当分の間そうされるというつもりでおられるのでありましょうか。あるいは在勤俸をきめる資料がそろわないために、それらの調査をして在勤俸をきめ、そうして公館長を派遣すると、こういうようにお考えになるのでありましようか。とにかくこれらの地方は、さっきも申しました通りに、非常に重要な国際情勢の中心地点でありまするので、いつまでもたとえばエジプトの公館に兼摂させるというようなことでなく、できるだけ早く専任の公館長を派遣されるような仕組になさらなくちゃいかんと思うのでありますが、その点はいかがでありますか。
  53. 井上清一

    政府委員井上清一君) ただいま御指摘になりました、今度お願いを申し上げております中近東の公使館は、いずれも当分の間兼轄にいたしたいと、かように考えております。さきほどお話もございましたように、非常な重大な時期でございますし、また地域でございますので、兼任をいたしております大公使をして、できるだけひとつひんぱんに現地の方に出向かせまして、情報収集その他に遺憾ないように取り計らいたい、かように考えておる次第でございます。
  54. 佐藤尚武

    佐藤尚武君 その当分の間兼任するものは、外務省としてやむを得ずそうされておるのかも存じませんけれども、それらの公館を作られた以上は、やはり専任の公使なり大使なりを派遣されるということが、これは建前でなきゃならぬと思うので、単に人の節約であるとかあるいは経費の節約であるとかいうようなことからのみ兼任制をとられるということは、これは私としてはどうかと思う。なるべく早い機会に専任公館長をやられるということが至当じゃないかと思うのですが。
  55. 井上清一

    政府委員井上清一君) お説の通りでございます。できるだけ早い機会に専任の大公使を置きたいと、かように思いますが、財政的にそう一度にというわけに参らなかったものですから、逐次充員をいたして参りたいと、かように考えておるわけであります。そうして今お尋ねございました点を漏らしましたのでございますが、イエメンにつきましてはエジプトの大使をして兼轄させ、テュニジアはフランス、リビアは工ジプト、モロッコはエジプトまたはスペインをして兼轄させるようにいたしたいと、かように考えております。
  56. 佐藤尚武

    佐藤尚武君 さきほどの御説明でイスラエルは代理公使が今おるということでしたが、本任の公使は近いうちに任命されるというようなことはないのですか。
  57. 井上清一

    政府委員井上清一君) これは六カ月の予算的措置がとれました関係で、いずれ専任の公使を任命いたしたいと、かように考えております。
  58. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 ちょっと今の佐藤先生の御質疑に関連するのですが、まあできるだけ早くということでありますけれども、大きな経費がこれによって要るわけでありますし、従ってやはり何といいますか特別な考え方で促進されるということが必要じゃないかと思う。  それから一つお伺いしたいのは、ほかの地帯と違ってあの地帯は、佐藤委員も御指摘通り、普通のノーマルな状況においては、比較的大きな国の専任の大使が、事務分量その他比較的少い所を兼摂していくということで事が足りるであろうと思う。またそういうことでさしたる問題はないと思います。ところが中近東あたりの情勢は、その専任の大使の置かれておる所と兼摂されるであろう国の関係が、必ずしもノーマルじゃなくて対抗的に非常に微妙なことが私はあるのだろうと思う。従って同一人が両方兼摂することがかえってマイナスといいますか、思わしくないというようなことがあり得るのじゃないでしょうかね。従って従来のような考え方で、便宜兼摂するというような考え方であの地帯に臨むことは、これはちょっと問題じゃないかと思う。そのときに問題がなくても兼摂している国の態度が変ってくれば、一人の大使ではこなし切れないのじゃないでしょうかね。そういう感じがしますけれども、そういうことはどうでしょうか。
  59. 木村四郎七

    政府委員木村四郎七君) 御指摘の点はまことにごもっともでございまして、兼任国と本任国との関係につきましては微妙なものがあるのでございます。たとえばロンドン駐在の大使がアイルランドの公使館を兼轄するというような問題については、御承知通りのような関係がありますので、目下慎重を期しておる経緯がございます。なお中近東におきましてもエジプトがサウジアラビアを兼轄する、またモロッコをどこかエジプトをして兼轄せしめるべきか、フランスをしてせしめるべきかというような点についても、従来慎重に考慮して参りまして、結論はモロッコはフランスというような経緯が決定になったわけでございまして、今後ともそういう微妙な国家間の関係につきましては十分考慮を払って参りたいと思う次第でございます。
  60. 曾禰益

    ○曾祢益君 今佐藤委員あるいは梶原委員から言われた点非常に重要だと思うのですが、たとえばこのリビアはどこでしたかね。
  61. 井上清一

    政府委員井上清一君) エジプトです。
  62. 曾禰益

    ○曾祢益君 そうするとモロッコとテュニジアはフランスですか。
  63. 井上清一

    政府委員井上清一君) いや、テュニジアはフランスで、モロッコはエジプトまたはスペインと考えております。
  64. 曾禰益

    ○曾祢益君 そこで、これは十分に考究された結果とは思うのですが、僕らは端からみていると、たとえばテュニジアのフランスということすら非常に問題があると思う。全く佐藤委員等の御指摘になった通りでありまして、せっかく開くのにモロッコのスペインも相当問題でなかろうかという感じがするので、せめていましばらくエジプトの方で兼摂するならばやむを得ないけれども、三つぐらいリビア、モロッコ、テュニジアくらいは一人の公使を出してそうして三国を兼摂する。少くとも今まで関係のあった、何といいますか西欧植民帝国の方とのあれは、だれが考えてもまずいだろう。それにもかかわらず暫定的にもせよ、そういうことをなぜしなくちゃならないか、これが非常にこれからの問題になるところです。それからまあアラブ地帯の、なぜイエメンに開いて、サウジアラビアとか、ヨルダンとか、これはもうどっちが重要だか私はよくわかりません。通商関係その他これは相手側の希望もあるでしょうから、まずイエメンができたということもあると思いますが、そういう点においてやはり全体を見て非常に効率的な配置ということをぜひ考えていただきたい。まあほかに今出ていない国を先にやれという意味じゃありませんけれども、特にイエメンが出てきた。それから兼摂の場合の兼摂国との関係についてはマイナスの場合もある。  それからいま一つ伺いたいのは、シリアとイスラエルは代理公使で、代理公使を置く以上はこれは兼摂ということはないわけですね、はっきり言いますと。こうい点はもちろん十分御承知なわけだけれども、同じアラブ諸国の中の兼摂の場合でも、言うまでもなく今シリアとレバノンなんかというのは非常にデリケートな対立をしています。そういうような要するに大兼摂の場合に、余り兼摂をやるためにマイナスな公館配置になってはいけない。こういう意味で申し上げていわけなんです。それから、そういう意味で中南米にしても、これは一体中南米諸国の気質からいって公使館を大使館にするのもけっこうだと思うのですが、ことに中南米方面の、たとえばドミニカ、キューバ、コロムビアあたりは、これはもちろん兼摂で行かれるのですか。これはどういうことなんですか。それとも別々にお出しになるのですか。
  65. 井上清一

    政府委員井上清一君) 中南米の公館は専任を置くわけでございます。で、先ほど来いろいろ御指摘がございましたが、いろいろごもっともな点で、私どもも非常にこの点については中近東の諸国の兼轄の関係につきましては、ずいぶん頭を悩ました点でございます。何分兼任でやって行かなくちゃならぬ関係上、相当無理も伴いますわけでございまして、できるだけ合理的な配置をと考えましたけれども、まあそうも言っていられない点もあろうかと思うのであります。しかしまあ大体兼轄の場合には相手国とも打ち合せまして、あらかじめ同意を得ましてすすめているようなわけでございます。まあ先ほど御質問がございましたヨルダン、サウジアラビアにつきましては兼轄ですでに聞いております。
  66. 曾禰益

    ○曾祢益君 サウジアラビア開いておりますか。
  67. 井上清一

    政府委員井上清一君) はあ、その点一つ御了承願います。
  68. 曾禰益

    ○曾祢益君 それで中南米の方はどこがどこを兼摂するのですか。
  69. 井上清一

    政府委員井上清一君) これは専任です。
  70. 曾禰益

    ○曾祢益君 中南米は全部専任ですか。
  71. 木村四郎七

    政府委員木村四郎七君) 今度昇格になりますチリ、ヴェネズエラ、コロンビア、キューバ、ペルー、ドミニカの六つは昇格でございまして、今ペルー、チリには公使が行っております。ヴェネズエラ、コロンビア、ドミニカの三カ国は公使が現在行っております。それからヴェネズエラは代理公使でございます。コロンビアも代理公使でございます。キューバも代理公使でございます。これは全部今度大使に昇格を予定しているのでありますが、コロンビアは間もなく専任の公使が参ります。
  72. 曾禰益

    ○曾祢益君 今度は大使になるわけですね、コロンビアは。
  73. 木村四郎七

    政府委員木村四郎七君) はあ。コロンビアは今度大使に昇格いたします。
  74. 曾禰益

    ○曾祢益君 いろいろな関係からそういうことになっているのだろうと思うのですけれども、ことに中米諸国は貿易の相手としても非常に重要でしょうから、必要があればもちろんいいでしょうけれども、まあ先ほどのなにも、今中東に緊張が来ているから特に言うわけじゃないけれども、どうもほんとうの効率的な配置であるかどうか。あるいは大使館に昇格しても、実際上はしばらく代理大使を置くというのなら、あまり大して効果はない。しかもかなりこまかく専任を置くという配置に中米はなっている。ところが他の地方においては必ずしも……もう少し早く、ほんとうに兼任制から専任制、このまた専任制も名前だけでなくて、本格的な公使をやらなければならぬという点にだいぶおくれている点がある。たとえば、これはどうも私はこれで三回目だと思うのですが、たとえばイスラエルの問題なんか前から実は申し上げており、これはアラブ諸国との関係でおくれてきたことはある。しかし専任の公使くらい送らなければいかんのじゃないかということを始終言ってきたわけであります。ところが偶然かどうか知りませんが、まあイスラエルを中心としてああいう重大紛争が起っておる。新聞でもトップ記事ですね。そういうときに、やはり専任の公使くらいいるということは当然じゃないか。だからそういう意味で、もう少しこの全体の再配置、リシャフルをぜひこの際考えていただきたい。でまた実際、時によってはウエイトを変えていってもいいと思う。そのときのあれによっては今中東に人をわっと出すとか、そこは一つマンネリズムでなく、ほんとうに重点的な効率的な配置をぜひやっていただきたい。これは希望として申し上げておきます。
  75. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 さっき東亜局とおっしゃったのですね。
  76. 井上清一

    政府委員井上清一君) いえ、欧亜局です。
  77. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 その欧亜局の機構はどういうことになっておりますか。その仕事はどういうことになっておりますか。
  78. 井上清一

    政府委員井上清一君) これは外務省設置法の一部改正案で、今本院で御審議を願っているわけでございますが、現在地域局の分け方といたしましては、欧米局とからアジア局とまあ二つになっているわけであります。この二つの地域局がそれぞれ政務を担当いたしているわけであります。ところがまあアジア局は、御承知のように東アの諸国、これは非常に平和回復に伴いましてとかく賠償の仕事だとか、あるいは平和回復善後処理に関するその他の仕事が多いわけであります。ところが片一方の欧米局の方は北米、中米、南米と、ヨーロッパ全体、それからアフリカ、大洋州まで含んだ非常な広い地域を管轄をいたしておったわけであります。これではとてもやり切れぬ、なかなか大へんだ。ことにソ連並びに共産圏等との国交回復が出て参りました。これは非常に大きな仕事が相当あるわけであります。また中近東方面も、この欧米局の管轄にございまして、ただいま御指摘のございましたように、相当緊迫した空気がございまして、あの方面の仕事も非常にふえておる。またアフリカ関係も最近非常に貿易関係が密接になって参りました。それから大洋州の関係も日豪通商協定をやろうというような機運もございまして、相当経済的にはいろいろ密接にやっていかなければならぬというようなことで、一つの局でやるにはちょっと荷が重過ぎるのじゃないかということで、そこで米州を分けまして、アメリカ局を一つ独立した局にすると同時に、欧亜局、欧州の欧の字と亜米利加の亜の字をつけまして欧亜局というのを一つ設けまして、これにヨーロッパと中近東、アフリカ、大洋州を管轄させるという構想で、今外務省設置法の一部を改正する法律案を今国会に提案をいたしまして御審議を願っております。衆議院を先般通りましてただいま参議院内閣委員会で御審議を願っている状況であります。
  79. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 先年アフリカの方へ参りましたときに、非常に外務当局の方にいろいろお願いして、たとえば商品見本市を開く必要があるとか、いろいろのサンプルを送っていただく必要があるとか、いろいろお願いしても、一向外務省の方では半年くらいほうっておかれて、何もしていただけないという陳情を大へん現地で伺ってきたものですから、そういう局をお作りになって、そういう所で現地からのいろいろの要求に手早く応じておあげになることが非常に必要だと思います。それでないと、どんどんほかの国からみすみす追い越されていらっしゃるのを私は拝見いたしましたので、大へんこれは適切だと思っております。  それからエチオピアの方はどういうふうになっておるのでございますか。先だって何か民間の経済顧問団とかいうのがこちらへいらっしゃるということを伺ったのですけれども、それは外務当局とはどういうふうな関係になっておるのでございますか。
  80. 井上清一

    政府委員井上清一君) エチオピアはわが国に対して非常な好感を持っておる国でありますことは申し上げるまでもございません。で、エチオピアの方はわが国からは公使館を出して、今代理公使が行っております。で、両国の関係はきわめて密接関係でございます。昨年エチオピアの皇帝がこちらにおいでになりましたときに、非常に日本の状態をよくごらんになって、日本のいろいろな技術、農業技術なり、あるいはその他の技術を入れたいというようなお考えがあったようであります。その当時一緒に参りました陸軍の武官が先般参りまして、これは外務省にはあまりアプローチしないで、民間の方々といろいろ接触いたしまして、日本の技術を入れて、また日本の移住の先がけを、何とかこの際一つ道をつけたいというようなことで、いろいろ奔走をされたやに聞いておりますが、外務省にはあまり連絡がなかったものですから、深くこれには触れておりませんでございますが、もしこれがきっかけになりまして、今後もあるいは通商の道が開けるというようなことになりますれば、これはけっこうなことであるというように今思っておりますが、現在のところまだ詳細のことは私実は承知をしておらないのでございます。
  81. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 アジア・アラブ諸国の旧植民地であった、そういう所へ日本在外公館ができておりますときに、原住民の人を雇員、用員というのですか雇いとして雇い入れていらっしゃいますね。そういうような人々の待遇とか、あるいはそういう人々の取扱い方というようなものが、どうもあまりよくないようなことを私ちょっと聞いてきたのですがね。それは非常に大切なことだと思うのですけれども、たとえばインドに例をとりますと英国はもとインドを支配していた国だというようなことで、何かにつけてそこの土地の方を雇ったときに、やはり支配者のような、支配国のような態度で扱っていらっしゃる。すると日本なんか、何ももとインドを植民地にしていたわけでも何でもないのですけれども、やはりそういうことをまねしたようなことをして、非常に原住民なんかの、原住民という言葉もあれですが、つまりその土地の、インドならインドの人を、在外公館の雇いとした場合に、何か非常に軽べつしたような取扱いをしていらっしゃるのですね。そういうことは、私ども旅行者として行ったときに、何にも日本がそういうようなまねをする必要はないんで、やはり平等な態度をとるように御注意なさることが非常に必要じゃないかと感じた次第でございます。そういうようなこと、聞いていらっしゃいますでしょうか。
  82. 井上清一

    政府委員井上清一君) 御指摘のような点につきましては、実は私は承知しておりませんが、非常に大事なことだと思いますので、幹部の方からでも一つ各公館の方へよく現地雇い入れの館員に対する処遇について十分注意をするように、ということをさっそく書面をやるようにいたします。
  83. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 ぜひそれはしていただきたいと思います。  それから今度ここに新しく出ておりますアフリカ、それからアラブ諸国はずいぶん気候の悪い所があるんでございますね。で、こういう気候の悪い所へ行っていらっしゃる公使、領事館員の方々はなかなか家族を連れていらっしゃることができないように聞いたのです。で、連れていらっしゃってもじきに病気になるというようなことがあって、大へんに気候のいい所へ派遣された場合と、こういう所へ派遣された場合には非常に困難がこちらは多いと思うんでございます。そういうようなことに対して何か特別に考えて上げていらっしゃるのでしょうか、いかがでございましょうか。
  84. 木村四郎七

    政府委員木村四郎七君) 気候の悪い方面へ赴任をしております館員の健康ということは、御指摘通り非常に注意を要するものがございまして、夏場だけ気候のよい所に二、三カ月避暑をさしてくれというような要請もございます。これにつきましては経費の許す限り好意的に考えたいと思いまして、今その具体案を練っておる次第でございます。  先ほど御指摘のローカル・エンプロイーの取扱いにつきましては、私もいささか経験がございますのですが、これを大切にするということは何よりも大切でございまして、費用の点につきましては御指摘通り欧米の文明国に比しまして経費がややアンバランスのあることは現状でございます。これは先に取った方が勝ちだというような現状になっておりますので、今開設しておる方への分配が貧弱であるということは事実でございますので、これは矯正方、目下考えておる次第でございます。なお現地のさようなエンプロイーが長年勤めても何ら恩給その他の措置がない、これは欧米の先進国と比べて非常な違いだというコンプイントがだんだんあるのでございます。これらにつきましては先般外務大臣のお礼の賞状を渡すという、若干品物を添えるというようなことも試みたのでありますが、これは生活の足しになるわけでもございませんので、こういう点についても考えていかねばならぬということを私どもとしては痛感しておる次第でございます。現地職員の生活改善ということについては今後とも十分注意して参りたいと思っております。
  85. 津島壽一

    ○津島壽一君 非常にこまかいことですが、この職員の語学の問題ですが、アジア・アラブ諸国が非常に外交上重要になったと、これは戦前と非常な変化だろうと思うのです。それでこれらの国々に駐在する大使館または領事館等の職員に、日本人のまあ外務省の役人ですが、その国の言葉についての修練というか、そういうことはどうやっているかということをまあ伺いたいんです。それをお聞きするに当って、ちょっと説明を加えたいんですが、まあ英語とかフランス語、ドイツ語、または中国関係で中国語というような、非常に奨励され、学校においてもこういう語学の修練の課程というものはずいぶんあったと思うんですが、戦後になって東南アジア諸国、いずれも独立して外交関係を結ぶと、また最近このアラブ諸国といったように、こういった大公使館を置かれるわけですね、まあ一例をとれば、インドネシアの場合は初め賠償交渉を私、担当したんですが、向うに来た者はインドネシア語でやってくれという要求だったんです。英語でやっておりました。ところが多数の代表は全然英語がわからない。そこで時間を費してやったことも全然理解できないということで、まあインドネシア語を用いるということにしたので、まあそれをこちらが受けたのです。ところが外務省にインドネシア語の通訳がどんどんやる人が非常に少い。これは事実だったのです。一人おるのです。この人が欠席すると会議ができなかったのですね。これはまあインドネシア語を特に戦前の外交の用語として使わなかったという事情もありましたろうが、まあそのとき痛感したのです。これはどうも今まで中国語にアジアのあれとしては力を入れておった時代が変ってきた、まあ変るというか、中国語も必要だということは当然でありますが、さらに諸外国のその国の言葉というものを、一つ十分に普及する必要があるということを痛感したのです。で、アラブ、ソージ・アラブの関係である重要な案件があって、昨年も人をやったのですが、ところが向うの王様その他にまあ大官というか、アラビア語で話すと非説に話が合う。そこで某商社のこの言葉に通じた者を使ってやってみると、非説に結果がいいのですね。まあそういった実例を二、三持っているのですがね。それでこういう国に大使館、公使館その他の在外公館を置くに当りまして、これは外交上の知識経験があるりっぱな者は当然のことでありますけれども、語学に通じた者を配属するか、またその在外公館の長というか、今度行かれる人が従来の外国語以外にその国の言葉に通じるという要件が非常に重要になるのではないか。これはなかなかむずかしいことでございますが、しかし方針として、外務省はこれらの諸国に対する外交上の実際の問題に当って、その国の言葉をどういう方法で修練さして、またあるいは特にこれを奨励する、ほかの国で言えば語学手当といったような制度が実行されているかどうか。そういうことについて現在の外務省のとっておられる措置でありますね、それを一つお伺いたしたいのです。
  86. 木村四郎七

    政府委員木村四郎七君) 御指摘の特殊語学の養成につきましては、全く御指摘通りでございます。つきましては現在の状況は、従来戦前からおりました特殊語学者が老朽化している。一方新興国が非常にふえておりますので、特殊語学の必要が非常にふえておるという関係がございますので、まあ東京におきましては外務省の研修所におきまして、ある程度の特殊語学の研修を実施しております。それから大体特殊語学の留学生を年々三カ年、二カ年、一カ年と、人によりまして研修の期間は違っておるのでございますが、三年間に三十名ずつ、一年に十名ずつぐらいはふやしていきたいということで、二十数カ国の特殊語を予定いたしまして、留学生の増強を期しておる次第でございます。そのほかに語学手当というものは、各今の問題になっております中近東諸国に在留しております館員から志望者を集めまして、特殊語学の手当を支給いたしまして奨励の措置をとっておる次第でございます。
  87. 津島壽一

    ○津島壽一君 よく了解しましたが、現実に中近東方面における、あるいは東南アジア諸国における在外大公使館の職員で、そういう任国の語学に通暁し、用事の足せる職員が現実に配属されておるか。まあ今研修所で勉強させているという問題はけっこうなことと思いますが、その点はどうなんですか、現状ですね。
  88. 木村四郎七

    政府委員木村四郎七君) はなはだ不十分な状況でございますが、東南ア諸国には、大体公館には一人ないし二人は特殊語学の専門家を配置しておるのでございます。
  89. 曾禰益

    ○曾祢益君 ただいまのお話関連して。語学の訓練ももちろん必要だと思います。それからまあ現地の人の雇いや何かに対するいろいろな報償の措置もこれは必要だと思いますが、やっぱり根本的には、在外公館の上の人たち特に館長なんかの結局精神的な訓練というか、心がまえの問題が私は非常に大きいと思います。まあこういうことを申し上げて恐縮ですけれども、私はちょっと前ですけれども、皆さんもよく御存じのチェスター・ボールスの「インド駐在記」に、ちょうどたまたま日本語に訳してただでくれたから実は読んだんで、お恥かしい次第なんですが実にぼくは感心した。これはやっぱり彼はいゆる職業外交官でないからこそあれだけ突っ込んだと思うんです。インドに行ってから、彼並びに彼一家の人々が、インドそのものを勉強し、あるいは「敬愛し、あがめ愛する」という態度ですね。たとえば、加藤さんの取り上げられたような問題について、みずからが自分の大使官に雇っている雇い人の中で、いわゆるアンタッチャブル、不可触財民というようなものもほんとうに平等に取り扱う。もちろん、自分も及ばずながらヒンディを勉強する。家族はもちろん全部自分の意思によってインドの学校に入るといったような徹底振りですね。もとよりわれわれ日本人である以上は、まず英語を勉強し、フランス語を勉強し、それだけでもたいへんなのに、さらに任国の言葉を全部大使、公使が徹底的に勉強する、これは私、無理だと思う。だから、問題はやはり心がまえになる。外務省におけるいわゆるあなたの言う特殊語学の需要がふえた、ところが人員は足りない、今非常に追っかけて非常に努力されている。それも必要。しかし、やはりアメリカ式の開拓者精神と、多少理想主義的な思い上りもあるかもしらんが、とにかくチェスター・ボールスの本くらいは読んで、少くとも新興国に行く公館長はその十分の一でも実践するというような、そういうやっぱりモラルというものが非常に重要だと思う。研修所も、若い人のトレーニングばかりでなくそういうこともぜも考えていただきたい。
  90. 井上清一

    政府委員井上清一君) 御意見ごもっともと思います。重々今後は研修所その他における教育の方針の中で、さような考え方でひとつ大いに教養に努めさせるつもりでございます。
  91. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 本件につきましての御質疑は本日はこの程度にいたします。次回は三月二十六日午前十時から開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時三十五分散会    —————・—————