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1957-10-16 第26回国会 参議院 外務委員会 閉会後第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年十月十六日(水曜日)    午後二時四十二分開会   —————————————   委員異動 九月十一日委員小滝彬辞任につき、 その補欠として白井勇君を議長おい て指名した。 十月十日委員白井勇辞任につき、そ の補欠として井上清一君を議長おい て指名した。 十月十二日委員竹中勝男辞任につ き、その補欠として木下友敬君を議長おいて指名した。 十月十四日委員木下友敬君及び岡田宗 司君辞任につき、その補欠として竹中 勝男君及び千葉信君を議長おいて指 名した。 十月十五日委員曾祢益君、佐多忠隆 君、千葉信君及び吉田法晴辞任につ き、その補欠として戸叶武君、荒木正 三郎君、岡田宗司君及び加藤シヅエ君 を議長おいて指名した。 十月十六日委員宗雄三君、黒川武雄 君及び森元治郎辞任につき、大谷贇 雄君、江藤智君及び小酒井義男君を議 長において指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     笹森 順造君    理事            佐野  廣君            鶴見 祐輔君    委員            江藤  智君            大谷 贇雄君            鹿島守之助君            杉原 荒太君            荒木正三郎君            岡田 宗司君            加藤シヅエ君            小酒井義男君            竹中 勝男君            戸叶  武君            石黒 忠篤君   国務大臣    外 務 大 臣 藤山愛一郎君   事務局側    常任委員会専門    員       渡辺 信雄君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○国際情勢等に関する調査の件  (国際情勢に関する件)  (報告書に関する件)   —————————————
  2. 笹森順造

    委員長笹森順造君) これより委員会を開きます。  委員異動がございました。本日、重宗雄三君、黒川武雄君、森元治郎君が辞任されまして、大谷贇雄君江藤智君、小酒井義男君が補欠選任せられましたので報告いたします。   —————————————
  3. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 本日は国際情勢等に関する調査を議題といたします。御質疑のおありの方は順次御発言願います。
  4. 佐野廣

    佐野廣君 外務大臣にはさきに渡米せられまして、第十二回の国連総会に御出席になりましていろいろ御奮闘いただきましたことは、国民としてひとしく感謝にたえないところであります。つきましては、この際二三お尋ねいたしまして御所見を明らかにしていただきたいと存じます。  外務大臣が、渡米の前から国連加盟各国につきまして、綿密な情勢判断を続けられておりましたことも、私よく承知いたしております。その結果、国連安全保障理事会の非常任理事国当選の運びに持っていかれましたことは、まことに御同慶にたえないとともに、深く御労苦を多とするものであります。これによって日本外交一大進展をしまして、これを転機として今後各国日本に対する期待も大きいものでございましょう。また同時にきびしい国際的試練の座に立つことも考えねばならないと思うのでありまして、ことに非常任理事国とはいいながら、アジア極東地域に位置をしておりまする日本として、今後とるべき基本的態度につきまして、この際外務大臣から明確にしていただきたい。まず第一点、この点をお伺いをいたしたいと思います。
  5. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 先般国連の第十二回総会におきまして、幸いにして各国の多数の支持を得まして安全保障理事会の非常任理事国当選をいたしたわけであります。従いまして国連の中におきます日本立場は重きを加えましたと同時に、今後の日本の動きというものが非常に重要なことになってくると思うのであります。  ただいまの御質問もその点だと思うのでありますが、かねて申し上げておりますように、日本自由主義陣営の中におりますことは当然なんでありまして、従って自由主義陣営の中の各国と非常に強い協調を保っていくことも、日本外交の基本的な方針でなければならぬと思うのであります。特に自由主義陣営の中の有力な国々アメリカイギリス等とは緊密な連絡をとって参らなければならぬのでありまして、日本外交がその点にあること、申すまでもないのであります。ただ日本は地理的に見ましてもあるいは人種的に見ましても、またそれからくる日本人の志向の点から見ましても、アジアを離れて日本人考え方なり、何なりがあるわけはないのでありまして、従って自由主義陣営の中にあって、同時にアジア立場を把握していくということも、これまた日本の置かれております情勢から見まして当然のことでありまして、従ってアジアアフリカグループ協調を保っていく、現に国連におきまして日本アジアアフリカグループ外交に加わって、その運営メンバーの一員として常時外交を持っております。で、そういう立場から、われわれは国際連合内部活動をして参るわけであります。  で、申すまでもなく今日日本各国支持を得まして、安全保障理事会の席を占めることになったわけでありますが、ほんとう日本の実力と信用とをもって、国際連合の中で十分な活動をして参りますのは、今後の問題だと思うのであります。従って日本の今後の国際連合の中における行動というものが非常に大事だと思っております。従って日本一定方針を持って国連の中に活動をしなければならぬのでありまして、今のような申し上げた立場の上に立ちまして、ある場合には同じ自由主義陣営の中で、ある場合は同じA・A・グループの中で賛成をする場合もあり、あるいは反対意見の違う場合もあり得るわけかと思うのであります。しかし、日本一定立場をとっていきますこと自体がむしろ信用を増すゆえんでありまして、賛成をするかと思っていたら反対して、反対するかと思っていたら賛成したという態度では信用を得られないのであります。そういう意味おい国連の中で仕事をしていくことが必要であろうと思うのであります。ことに国連という場においてやりますことでありますから、実際に円満なる協調各国と保って、そうして実質的に問題を解決していくということに努力をしなければならぬということが一番必要なことではないかと思うのであります。そういう意味おいて、できるだけ各国協調をとりながら進んで参りたい、こういうふうに考えておるわけであります。
  6. 佐野廣

    佐野廣君 ただいまの御答弁で、ことによっては賛成したり、不賛成を唱えたり、とらわれないで一つやりたい、こういう気がねしないでやるというふうな御意見、まことに私ども力強く感じました。ことにアジアの方の利益の主張には、十分に熱心に一つやっていただきます決意を承わって、力強く考えた次第でありますが、さて大きな問題でありまする国連おいて、外務大臣が真の世界の平和を招きたいというお話し合いから、この核爆発実験停止及び軍縮協定の促進についての御提案をなさったのでありますが、各国情勢を見ますと、私どもは口に平和を叫んでおる、どこも叫んでおりますから、すぐに飛びつきそうなものでありますが、なかなか率直に賛意を表しておらないということは遺憾に思いますが、外務大臣はこれについて再度月末にまた渡米なさって、この趣旨を徹底なさるようにも新聞で拝見をいたしておりますが、外務大臣はこの提案に対しまして、またその後アメリカからイギリスの方へもお回りになったというのでありますが、この各国の示しておりますこの御提案に対しての態度、こういうものはどういうものでありますか、また真相をどういうふうに外務大臣はお感じになりましたか、率直にこれを一つ伺いをいたしてみたいと思います。ことに新聞の報ずるところでは、イギリスの労働党のごときでさえ、核実験禁止案を否決をしておるというふうな情勢も見ておりますので、率直にこの点についてお伺いをしたいと存じます。
  7. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 核兵器禁止並びに核実験禁止につきましては、若干の構想をもちまして国連出席をいたしたわけであります。で、国連様子を見た上で提案をするかしないかをきめるつもりでおったわけでありまして、出発前に提出をきめていかないのはけしからんというお小言もちょうだいしたのでありますけれども国連内のいろいろな情勢を見た上で適当に処理するつもりで参ったわけであります。その後国連におきまして各国代表団とも接触し、またそれぞれ提案をする国の様子等も聞きまして、その結果として提案をすることに決定をしたわけであります。そうして時期等につきましても、相当慎重に検討をしたのであります。九月二十三日午後三時半に日本案として提出をいたしたわけであります。提出後の反響につきましては、両面の見方があったわけでありまして、一方ではソ連案に非常に近いとか、現に席をともにしておりましたユーゴの代表どもそういう話をしておりました。他面では非常に西欧案に近いというような批評で、なおこの案につきましては、アメリカ意向イギリス意向もその後承知したのでありますが、大体イギリスアメリカ核兵器の問題については同じような考え方を持っております。ある意味から申しますと、イギリスの方が核実験の問題についてはさらに強い考え方を持っているとも言えるかと思います。要するに核兵器製造禁止等を含めた一般軍縮の線が進み、何らかの妥結をみるというような状態のもとに核実験禁止をすべきであるという、一言にして言えば考え方だと思います。従いまして、その点については、日本国民の要望でありますまず核実験停止を、何らかの実効ある方法とともにその処置をとっていく。むろん引き続いて軍縮問題全般にわたって、特に核兵器製造及び使用というものを禁止しようという立場とは若干立場が違っているわけであります。右のような状況で、提案各国反響等も考えてやったわけであります。なおまた最近ネール首相等もみえまして懇談をいたした結果、両代表ともに密接に連絡しながら核実験禁止という問題についていろいろ協議をいたしているわけであります。大体以上のような次第でございます。
  8. 佐野廣

    佐野廣君 多少どうも国際緊張といいますか、ふに落ちない点もありますが以上で終りまして、三番目に一つ、今春私は岸総理と一緒に東南アジアの方を訪問いたしたのでありますが、その際にいわゆる東南アジア開発に関しまして開発基金の問題、それから技術研修センター問題等話し合いに出ましたのでありますが、これらの国々を回りました際に、技術の問題では別に異論があったわけじゃありませんが、開発基金の問題では、援助はありがたいけれどもひも付きになることはいやだ、ということはネール初め各国の人がことごとく言ったことでありまして、むりないことだと思います。その後岸総理、あるいはまた外務大臣米国の方へいらっしゃって、それぞれ当ってみられたわけでありますが、これについて、ことにまたネール首相もこの間みえたのでありまして、この米国及びインド首脳者意見を交換せられまして、これの脈を見なさったわけなんですが、これが今後どういうふうな見通しを持つものでありますか。具体的な案にどういうふうに到達しておられますか。私ども向うへ参りました者として非常に関心を持っておりますので、御意見を承わりたいと思います。
  9. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) アジア開発基金構想につきましては、これを具体化するべく就任以来努めておるわけでありますが、まず東南アジア総理が回られました以外の国々にもこの構想を示し、また資金もしくはその他の協力をする。アメリカ初め西欧諸国にもこの構想を示しまして、それぞれあの構想に対しまして意見をただいま集めておるところであります。大きな構想でありまするからわれわれも慎重に事を運んで参らなければならないと思うのでありますが、ことにいろいろな反対論あるいはこの構想に対する意見等は十分聞きいれて、そしてこの構想を進めて参らなければ日本だけの単独考え方で作りましても、できても動かないという状態では何にもならぬのでありますから、そういう意味で今進めておるわけであります。いろいろの意見があるわけでありますけれども東南アジア諸国の方々の意見のうちには、こういうマルティラテラルな方法でなくてすでにバイラテラル方法でやっているのだ、従ってバイラテラル方法プラス、こういう資金がでてくるならいいけれども、どうも各国資金もある限度があるのじゃないか。しかしこういうものに資金が流れると、従来受けておるバイラテラル資金が減らされるのじゃないかというような心配も持っておられます。またバイラテラルの従来のやり方で十分目的を達しているのだという考え方を持っておる所もあります。またアメリカ並びイギリス等の国においては、従来いろいろな援助計画をやっておる。イギリスあたりコロンボプランを中心にして相当やっておる。またそれとの関連をどういうふうに考えるのかというような問題もあるわけであります。なお総理が持って行かれましたときには、この構想のアイデアは羅列してあるのでありますけれども構想組織等の問題はあまり深く触れておらぬ。そういう面について、こういうものができて相変らず日本がその組織を独占的に動かしておるというような誤解もあると思います。先般ネール総理が来られまして懇談いたしましたときに、そういう二、三の点について御質問があったのであります。私はそれらに対してどの国でも東南アジアに何らかの経済援助をしようということについて、資金をもっと十分に供給するという点についてはどの国でも異存はないわけでありますが、今言ったような点にあるのであります。そこで私としてはまあバイラテラルの従来の資金を、これができたためにじゃまをする、あるいはこういう構想ができてどの程度資金が入ってくるか、それがバイラテラル援助を食ってしまうのじゃないかというようなことはないし、プラス資金として資金を確保するということを、たとえ少額であろうとも考えてやっておるのだ、また大きなプロジェクトは、バイラテラル援助計画でできる発電所とか大きなダムを作るとか非常に大きな港湾の修築をやるとかいうようなことは、むしろバイラテラルでやるわけでありますが、東南アジア各国の現在はそういう大きなプロジェクトもむろん必要でありますが、同時に民生の安定をはかります消費物資を作る中小規模の工業を育成していく、そういう面に資金が供給されてそうして十分な生産が上っていくということが、大きなプロジェクトと並行して必要なんでありまして、そういう意味おい技術なり資本なりを供給するのはむしろこういう形がいいのじゃないか。世界銀行等機能も大きなプロジェクトに対しては持っております。小さな実際資金的な援助をほしい中小規模の方面には、そういう資金は回らないということであります。そういう意味で何らかの形でこういうものがあったらいいのじゃないかと思います。  なおまたコロンボプラン等こういう構想ができた場合に、若干仕事の上で重なり合うところがあるかもしれませんが、しかしやはり東南アジア経済ほんとうに建設していくためには、できるだけこういう機関が若干その機関同士重なり合っても、また重ならない部面も起こってくる、地域的にもそういうことがいえるわけだと思います。そういう意味おいて、また多々ますます弁ずるとまでは言いかねるかもしれませんが、相当いろいろな機関が並存してもそのこと自体が悪いとはいえないというような話もしております。またこの機関運営については、日本が提唱したからといって、機関の役員である理事会等日本が独占するわけではない、東南アジア各国並びに資金を供出する西欧等国々代表者それぞれでコミュニティーを作るので、日本もそのメンバーの一人でありますということであります。そういう意味おいて、日本が何かこういう機関によって東南アジアにドミネイトする、という考え方はございませんという話をいたしておるわけであります。漸次理解を得るようになりつつあると思うのであります。まあ、各国ともいろいろな事情から、資金の供出その他についてはいろいろ国内的な問題もありますので、それぞれの点も十分考えながら、さらにまた細部にわたります構想に対する希望等伺いながら、将来こういう構想が現実に具体化していくようなふうに、ただいま運びつつあるわけでございます。ただ非常に大きな構想でありますので、一月二月の間にこれができ上るとも考えておりません。  なお、ただいまお話の、この構想の中の一部を若干実現していくことが適当ではないかと思いますが、たとえばプロジェクト・コンサルティング・センターというような種類の機能は小規模に始めましてもできるわけでありまして、将来こういう大きな構想ができますれば、その中に吸収されるものとして日本あたりが率先してそういう機関を設けることが適当じゃないかというので、来年度の予算に若干外務省の経費要求の中にそういう問題も含めて予算要求をいたしております。こういうふうになっております。
  10. 佐野廣

    佐野廣君 時間がありませので、これで私は一応打ち切ります。
  11. 岡田宗司

    岡田宗司君 過日藤山外相 が国連総会出席されました際に、ダレスアメリカ国務長官ともいろいろ話し合いをされ、さらにイギリスにお渡りになりまして、イギリス外務大臣ともいろいろお話をされておるようであります。もちろん国際情勢についても検討がございましたでしょうし、日本アメリカの間の関係あるいは日本イギリスとの間の関係についていろいろ具体的な話し合いをされていたろうと思います。たとえばアメリカにつきましては、防衛の問題もありましたでしょうし、あるいは原水爆実験禁止の問題もありましたでしょうし、あるいは沖縄の問題あるいは日本品の排斥の問題等々の話し合いもあったろうと思います。イギリスにつきましても同じようにいろいろお話し合いがあったと思うのでありますが、これらのお話し合いの結果何か具体的なものが生まれてきたかというと、どうも私にはそういうふうに考えられないのであります。平たく言えばまあ成果が上らなかったのじゃないか、外交的用語のいわゆる相互理解を深めたという程度にとどまったんじゃないかと思うのでありますが、このアメリカ並びイギリスとの会談について、何か外務大臣から、特にこれによって具体的にこういう問題が進展する道が開けたということがございましたなら、一つお聞かせ願いたいと思います。
  12. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今回参りましたのは、国連総会に出ますことが主たる目的でありました。同時にワシントンに参りまして、アメリカ政府懇談をしたり、なおその際イギリス政府から招待がありましたので、その招待を受けたわけであります。従いまして特定の問題を解決するためにワシントンに参ったわけではなかった。またイギリス政府招待が、何か特定の問題を私に相談するという意味もなかったのでありまして、従って特定の問題について結論を得、何かいわゆる成果を示すということができないのは私としても遺憾でありますけれども、参りました目的がそういうことでありますので、これはやむを得ぬことだと思います。ただワシントンに参りましては、できるだけ岸総理アイゼンハワー大統領との会談の結果、問題にされ、また今後それをフォローして参りますことが必要な問題につきましては、十分話し合いをいたしたつもりでおるわけでありまして、そういう点から見まして、今後の問題の解決に相当私としては示唆を得た点があったと思います。あるいは解決、不解決と申してもいいのですが、の点にいろいろ示唆を得たと思います。  それからなおイギリスに参りまして、イギリス日本との間には特定の問題につきましての懸案というものは、そう現在ないのであります。ガット三十五条の撤廃というような問題以外には、そう特定の問題はないのでありますが、従いまして一般的問題について十分話し合いをし、また核兵器の問題については、相当長時間にわたって、ロイド外相初めサンズ国防相等も列席の上で、これは共同コミュニケにありますように遺憾ながら意見は一致しておらぬ。意見が一致しないということを確認したことは喜ばしいことだといって笑って、共同コミュニケにもはっきりそれを書いたようなわけであります。そういう意味おいて得るところが多大だったと私は考えます。
  13. 岡田宗司

    岡田宗司君 次に国連に関する問題について若干お伺いしたい。ただいま佐野君からも原水爆実験禁止に関するまあ決議案の問題についての話がございました。まあ私などは最初から、日本案核兵器原水爆を持っておる国の支持を得られそうもない、こういうふうに考えておったのであります。これはそういうものを持っておる国と、持たない、被害ばかり受ける国の立場というものは非常に大きな相違があります。なかなか持たない国が持てる国の間を取り持とうというようなことをやったのでは、かえって成功しないんじゃないかと思っておりました。まあ大体そういう結果になって参りまして、英米の方からもまたああいうふうなことになっております。そこで私どもは今度は別にそういうものを持たない、まあそれが使われるようになれば、被害ばかり受けておる国が大きく世界世論を動かして、そうして持てる国同士の間の、まあ恐怖もありますから、それらをうまく利用というのもおかしいですけれども、使って、そうして全体としてまあ実験禁止、次いでは製造禁止というあるいは使用禁止という方向にもっていくよりないのではないか。こういうふうに新たなる構想のもとに、私はこの問題を取り上げていくべきではないかと思うのであります。この間インドネール首相が参りましてお話し合いをされて、そうして国連おいてまあ共同でやろうというようなことになって、それぞれ訓令も出ておるようでございます。今度藤山外相向うに参りますときには、この問題の具体化ということが一つの大きな問題になるだろうと思うのであります。日本案は遺憾ながらまああまり支持がなかった。インド提案もございますのでこれを一本にして、そうして持てざる国に訴えて、大きくこの国連内部の持てざる国々を動かしていく、これが一つの大きな世界世論になっていくような方向に向けていくということが必要じゃないかと思うのでありますが、外相はこのインド提案日本提案を一本にする、そうしてさらに多くの国々支持してもらうような働きかけをする、こういうふうな方向をおとりになるかどうか、これをお伺いしたいのであります。
  14. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 日本代表団インド代表団とが緊密の連絡をすることにはそれぞれ訓令を出しております。現下において案は一本になるかどうかという問題は今ここで申し上げかねると思うのでありますが、しかし同じような立場両国でありますから、いずれにいたしましても同じような共同の、できるだけ協力関係をもって国連の中でこの問題については活動をしていきたい、こういうことであります。で、インドも非常に理想主義的のようではありますけれども国連という場においてはできるだけ一日も早く実際問題として、これが持てる国の間に話し合いがつくことを自分たち努力しなければならぬのだと、こう言っておるのでありますけれども、その点についてはわれわれもできるだけ、国連の中で持てる国同士妥結にいくように、インドと同じ気持で努力をしていくと、こういう考え方でおるわけであります。  以上のような考え方両国国連代表が、それぞれ今後国連の中で協力しながら活動をすることになろうかと思っております。
  15. 岡田宗司

    岡田宗司君 昨年のこの前の国連総会におきましては、日本単独提案でなくて、まあ登録案というおかしなものでありましたけれども各国共同で出した。共同で出せないわけはないのでありまして、私はまあこの際一つインドを初め他の国々共同提案をして、大きく国連を動かしていくようにするという必要があろうかと思うのであります。これは私の方から希望として述べておきます。  それから第二の点は安全保障理事会の問題でございます。まあ非常任理事国当選したことは、票数は十分とは言えなかったけれども、これは私は非常によかったとお喜びを申し上げます。しかし同時に責任も非常に重くなった。今まででございましたならば、日本はまあ大体日本アメリカと、日本と直接関係のある国、あるいは日本の位しておりますアジア国々関係が、まあ外交上主たる問題でございまして、ヨーロッパの問題とか中近東の問題は、それは間接的には大きな影響を持つでありましょうけれども、直接には持たなかった。しかし今度安全保障理事会の一員になりますと、日本と直接関係のない問題について日本はやはり意見も述べなければならぬし、投票もしなければならぬと、こういうことになって参るのであります。世界の難問題に逃げていることができないという事態になってきたのであります。そこでまあ今度の国連総会おいて、あるいは国連安全保障理事会おいて、一番大きな問題となるものはいろいろありますけれども、特に最近では中近東の問題が、これはおそらく安全保障理事会で大きく取り上げられるであろうということは予想されるのであります。最近シリアに対しましてソ連が武器並びに経済援助を始めた、これに対抗してアメリカの方がトルコ、イラク、レバノン等に対して武器の援助を始めまして、非常な対立が緊張してきました。それからさらに最近ではエジプトがシリアに軍隊を送るというようなことで、まああそこが今の世界の一番大きなデインジャー・スポットになっておる。この問題について安全保障理事会でいろいろ論議があります場合に、一体日本アメリカのとった、まあ私どもに言わせれば少しあわて過ぎた、そうしてまた同時に何といいますか、いわゆる威力による政策ですね、これは非常に危険だと思うのでありますが、それをとっている。しかもこれはアラブ諸国の間においてさえ相当反対を引き起しているような状態であります。こういうものについて一体日本アメリカ立場支持するのかどうか。これは日本としてやはり堂々たる態度をもって臨まなければならぬのでありますが、この中近東の最近の情勢に対して外務大臣はどういう考えを持っておられるか。そうして安全保障理事会でこの問題が取り上げられた場合に、日本はどういう態度をとるか、その点についてお示しを願いたいのであります。
  16. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ただいま岡田委員の言われましたように、安全保障理事会に席を持ちましたことは、日本が国際政治の中で重大なる責任を持って発言することになりますので、これは大へんな一方からいえば責任を持つことになると思います。従いまして、安全保障理事会日本の任期というものが来年の一月一日から二年間あるわけであります。将来にわたって国連日本代表部を強化いたしまして、あらゆる問題について十分調査もし、また研究もし、各国との平素からの交渉を深めて、それぞれの国の立場意見を十分承知して、そうして機に応じ、そういう問題が起りましたときに、確固たる意見を吐き得るような準備を進めて参らなければならぬと思うのであります。今御質問のように、われわれとしましてはアメリカと非常に友好関係は持っておりますけれども、すべてアメリカ意見に追随するという考えは持っておらぬのでありまして、その点は核実験の問題についても同様であります。親しければ親しいほど意見の違った場合はお互いに議論をしていく、しかし議論をすることが親しさをこわさない、これは個人の間においても国家の間においてもそうあるべきことだと思うのであります。われわれとしてはそういう意味で十分平素から準備をし、また国際紛争につきましては、やはり公平に両方の意見を聞いてみなければならぬのでありまして、みなそれぞれの立場から持っておる意見があるわけであります。それを公平に聞いた上で判断をして、そうして日本の主張なりそれらの問題に対する態度を定めていかなければならぬと思っております。どこかの一国の意見に追随するという考え方は持っておりません。
  17. 岡田宗司

    岡田宗司君 これは現在大きな問題として取り上げられておりまして、外相が過日アメリカへ行かれました際にも、この問題で多少問題を起しておったようでございます。私どもとしては、これは今のアメリカの政策は行き過ぎであると、こういうふうに考えておるのでありますが、この中近東の問題に対してアメリカのとっておるやり方というものを外相はどうお考えになるかお伺いしたい。
  18. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私がただいまこの席で各国のとっております政策を一々批評することは、差し控えたいと思うのであります。中近東の問題は、世界の平和を脅威する問題に発展することがあっては大へんなことなんでありまして、日本としてはそういう意味おいて平和を念願する立場から、できるだけ今後善処していきたいと、こう考えております。
  19. 岡田宗司

    岡田宗司君 先ほど藤山外相は、安全保障理事会日本が参加するようになると同時に、日本国連代表部を強化しなければならぬというお話をされたのですが、私もその点は同感だと思うのであります。国連におきましては、世界的な非常に大きな問題が取り上げられており、しかも迅速に日本態度をきめなければならぬというようなことも予想されるのであります。現在の外務省の出身者だけによって構成されておる代表部では、私は非常に弱いように思う、処理能力がないように思うのであります。これは各国国連代表部を見ましても、重要な問題がありますときには外相がどんどん出席しております。それから代表部に国際政治に明るい政治家がたくさん加わっておるのであります。一々本国に訓令を求めてやっておるというようなことでなく、相当な権限をもって臨めるような代表陣を私は構成しなければならぬと思います。聞くところによると、国連代表部を強化するために、さらに二名ほどつけ加えるというようなお話ですが、これは今までのと同じような型の外交官を加えただけでは、私は量はふえるけれども、強化になるかどうかこれ疑問だと思うのでありますが、そういう点に対する藤山外相の御一見解を承わりたい。
  20. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 国連代表部の強化につきましては、今お話のありましたように、私は外交の責任者としてできるだけ機会がありますれば向うに参りまして、手軽に行って手軽に帰ってくるという行動をとって、外務大臣としての責任を果したいと、こう考えておるわけであります。  なおしかし、常置の代表部を強化しておきますことは、安保理事会というものが時間的に早急に開かれる場合が相当ありますので、必要だと思います。どういうそれを構成にするかということは、今後の問題として残るわけであります。ただこれは老大家をもっていってもいけないのでありまして、存外若手の優秀な人の方が、ああいう中でこまめに活動をするという立場にもありますので、その辺も一つお考えをいただかなきゃならぬ点だと思うのでありまして、今後そういう点は十分留意しながらできるだけ一つ強化をいたしていきたいとこう考えております。
  21. 岡田宗司

    岡田宗司君 次に最近ICBMがソ連で実験をされ、さらに人工衛星が打ち上げられまして、これは世界中に非常なセンセーションを起したのであります。特にソ連と対抗しておるアメリカに大きなショックを与えたようであります。このためにずいぶん世界外交関係等にも大きな影響を及ぼしてきておるのじゃないかと思うのでありますが、特にICBMが今後どんどん両国の間にできる、あるいはIRBMが大量生産の段階に入るということになりますと、戦争の状態が変って参ります。またこれらを持つ国々と持たない国々との間のいろんな勢力関係の変化ということも起ってくるのであります。とにかくこういうものは、使われるということになりますと、なかなかそれを使う国々同士の破滅だけでなくて、被害はもうあらゆる国々に及び、同時にこれはもう、人類の破滅という言葉を使っていいかどうかわかりませんが、そういう方向へ行くのではないか。従って、こういうものを何とかして製造使用禁止して、それでこれをやはり人類の平和的な生活の上に貢献できるようにしなければならぬということは、おそらくこれは全世界の願いになってくるだろうと思いますが、これらに対してやはり国連総会おいて、あるいは安全保障理事会おいて、軍縮委員会おいて、日本としては十分に発言しなければならぬと思うわけですが、そういう点についての研究あるいは構想、これの御用意があるかどうか。
  22. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 大陸間弾道弾のできましたこと、特に今回人工衛星が打ち上げられましたということは、世界の庶民の心の上に大きな影響を与えたと思うわけでありまして、これは表に現われておりませんけれども、私はやはり世界一つの大きな将来の出発点になるのではないかというふうに考えます。従って、そういうことの上に立って、国際政治におきましても、あるいは国際経済おいても、あるいは国際的な文化の面においても、いろいろな影響がこれから相当に起ってくるのではないかと思われます。特に国際政治の上においては、早急にそういう問題をめぐって、旧来の考え方と新しく何か飛躍して考えなきゃならぬというものとの間の相剋等も、従来の国際政治の中にからまって出て参ると思うのでありまして、そういう面について今後の国際政治を相当深く眺め、またある程度見通さなければならないことになるのではないかというんで、これは非常に大きなわれわれに課せられました問題だと思うのであります。そういう意味おいて、特に国際政治に直接の関係を持っております外務関係の者としては、今後そういうことから起ってくる動きというものを迅速にキャッチし、また判断していかなきゃならぬのではないかと思うのでありまして、そういう意味おいてわれわれは努力したい、こう思っておるわけであります。ことにこういう問題が出てきますと、ますます核兵器等の問題が一そう痛切に感じられるわけでありまして、これが平和的に利用されれば非常に人類の福祉のためにいい影響を与えるわけでありますが、軍事のために利用されますことは、単に国際政治を動かすばかりでなく、庶民の心理の上にも非常な影響を与える。今お話のように人類の不幸が出現するわけであります。そういう意味おいて、われわれはやはり戦争を放棄し、核兵器によって惨害をこうむり、また核実験によって影響をこうむった日本国民立場としては、一そうその点で働き場所のあるようなふうにも考えられます。またそれだけに責任も重いのではないかということを考えるわけであります。
  23. 岡田宗司

    岡田宗司君 九月十八日のアメリカの「フォーリン・アフェア」にダレス長官の論文が出ております。これはICBMの打ち上げや人工衛星の打ち上げの前に書かれたものであります。これは、各国アメリカの持っておるIRBMあるいはもっと小さい核兵器を配付して、いわゆる集団防衛をやらそうというものであったのであります。日本なんかにも持たしたいということがほの見えておるわけであります。しかし、ICBMの実験あるいは人工衛星の打ち上げから、こういうような構想も吹っ飛んでしまったんではないか。それから同時に、そうなって参りますと、アメリカ日本を軍事的に利用しようというかそういう考え方も、これは従来の考え方も違ってくるのではないか。私どもはそういう見地から今の日本の防衛方針というものもこういう時代には大きく転換しなきゃならぬ。ただアメリカのプログラムに従ってそれと歩調を合せて自衛隊を増強して、年中落っこちるF86をふやしたところで、これほどうにもならぬと思う。また陸軍をふやしていったところでどうにもならん。こういう点で今後日本アメリカとの間に防衛問題についての折衝もひんぱんに行われるだろうと思うのでありますが、こういう時代に対処して、旧式な観念によるところの軍隊を日本に増強しようというアメリカ立場に対して、私ども反対せざるを得ないのでありまして、こういう点について外務大臣はどうお考えになるか。またそういう新しい時代における日本の防衛問題についてどういう考えを持っておるか、これをお伺いしたい。
  24. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) お話のように、また私さきほど申しましたように、人工衛星が打ち上ったということは、一つの大きな世界的なショックだと思います。国際政治の中でこれがすぐに善用されるか悪用されるかということは、長い期間は別としまして、短時間の間はあるストラッグルがある場合もあるだろうと考えます。したがいまして、今後短かい期間にはあるいは一応そういう競争が激烈になるのか、あるいはもうそういうことはつまらんことだからここですぱっとやめるということになるのかは、にわかに私は判断できないと思う。しかし、究極においてはやはり私はお話のように、こういういろいろの武器ができまして、みんながそういう武器で戦い合うことのばからしさを感じてきて、たとえば一時的緊張が起りましても、終息する時期があり、また幸いにして一時的緊張も起らないでその方向に向って行けば、世界の平和が所期されていくのでありますから、そうなりますと、日本の本土の防衛と自衛上の兵力というものについても、将来違った角度から見られる時期があろうかと思います。今しかしそういう時期が明日に到来するということは、まだ今後の少くも若干の期間をかけてみませんと、一応熾烈になるのか、一応でなく永久的な静穏のことが始まっていくのか、ちょっと予期できないと考えております。
  25. 岡田宗司

    岡田宗司君 まあ一応熾烈になったとしますと、よけい、旧式の自衛隊を持つこと、またこれを持たされることは無意味になってくるのでありまして、これは従来と変った考え方を持っていただかなければならぬ。こう私は考えるんですが、これはまあ私の意見でありましてこれ以上お伺いしません。  次に、中国の問題は竹中君、あるいはアジア開発基金の問題については戸叶君から御質問がございますので、二三あと別の問題をお伺いしたいのですが、一つは日韓会談であります。これは、岸首相 が訪米される前に調印せられるだろうというようなところまで行ったようでございますけれども、それが何らかの理由でとうとう今日に至りましても解決を見ておらぬという次第でございます。しかもなぜ一体こんなに解決がおくれておるのかということは少しも明らかにされておらない。国民はみんな疑惑を持っておる。一体李承晩がむちゃ言うためにこうなったのか、しからばどういう点をむちゃ言っているのかということも国民は知りたい。あるいはまた日本側の方に何か向うの要求に対してこれはだめだという点があるのか、これも国民はよくわからない。この日韓会談についてどうしてこういうふうに行き悩みになっておるのか、その経過、それからその問題点、これをもう今は国民に明らかにしていい時期ではないかと思います。いつまでも放っておくわけにいくものでもないし、隠しおおせるものでもないのであります。むしろ朝鮮の方ではいろいろ言っておるのであります。日本側を攻撃しておるのであります。日本側でも経過をここらで明らかにしたらどうかと思うがいかがでしょう。
  26. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 日韓交渉が今日まで六月以降会合を開いていますけれども、最終的妥結に至りませんことはまことに遺憾なことなのでありまして、その間最終的には非常に大きな問題があるわけでもないわけであります。韓国側からの要求であります財産請求権の問題について、両国意見が合わぬというほぼ一点にしぼられてきておるわけであります。この問題については私ども特に秘密にする必要もないと思っておりますけれども、何分にも韓国側を刺激します言辞を吐きますことは、いろいろな意味おいて非常にデリケートな関係にありますからして、そういう意味おいてできるだけ口を慎しむ必要がある。私などはとかく失言をしかねませんものですから、なるべくそういう意味おいて自重しておるわけなのでありますが、特別に秘密はございません。今申し上げた点が問題点であります。
  27. 岡田宗司

    岡田宗司君 韓国側を刺激するということは、これは故意に刺激することはいかぬことでありましょう。しかし実際問題としても国民の間になぜこうなっておるのか、ということについて非常に疑惑があります。日本側が特に何か弱い態度だというようなことも国民に感じられておる。やはり私は刺激しない程度に経過を明らかにした方がいいのではないかという気がいたします。それから今の相手方の刺激で、まあ藤山さんは別に刺激されないと思うのでありますけれども、むしろ岸総理大臣がえらい刺激を与えたんじゃないかと思うので、何かラジオ放送で言ったことが大分刺激をしたということがあるのですが、それは岸総理に御忠告になった方がいいんじゃないかと思いますが、まあそれはそれといたしまして、次にインドネシアの賠償問題、小林移動大使が帰ってこられ、それからまたハッタ氏が本日こられ、いずれスカルノ大統領もこられるでしょうが、もう大体におい妥結すべき時期がきたのじゃないか、またこれは早くした方がいい。インドネシア側においてもずいぶん政情の不安もあったようでありますが、最近新しい構想のもとにやや安定をしておるように思います。向うも最近の経済情勢それから経済開発等の問題からして、妥結の早いことを望んでおると聞いておる、これは一つぜひ早くまとめていただきたい。と申すのはインドネシアに対しましては聞くところによりますと、各国からずいぶん経済開発のために多くの企業が入り込んで、合弁事業あるいはそうでなく単独にいろいろな事業を起しておるのでありますから、日本の立ちおくれということが大きくなることでございますので、日本が将来アジアおい経済開発に大きく協力をしようとするならば、特にインドネシアにおいては賠償問題を解決して、そうして心理的にインドネシア側の協力を求めていくということが、金額の多少の問題よりも将来にとって大きな問題ではないか。この点について早急に解決される意思があるか、またその抱負についてお示しを願いたい。
  28. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) インドネシアの賠償の問題については、今岡田委員の言われた通りわれわれも考えておりますので、できるだけ早期に解決をいたしたい。ただ交渉のことでありますから、総理が南方を回るからその時期までに解決をするというような無理はいたさぬつもりでありますけれども、できるだけ早期に解決いたすつもりであります。幸いに先般小林移動大使がインドネシアに行かれまして、いろいろ首脳部と会見して会談を重ねてこられました。その結果われわれとしても示唆されるものが非常に多かった。従ってその御報告を基礎にして、さらに日本の考えをまとめて参りますように今努力をいたしておるわけであります。従って二国間の交渉でありますからいつというわけには申し上げかねますけれども日本側もそれだけの努力をいたしておりますので、最近の機会にいま少しく進展するのじゃないか、こう考えます。
  29. 岡田宗司

    岡田宗司君 それからアメリカの余剰農産物の購入の問題でありますが、藤山外相はしいて輸入しなくてもいいという御意見のように新聞に出ておりました。私どもも今日の日本情勢からいたしまして、特に日本の農業事情からしてもしいて輸入する必要はない、こういう考え方であります。河野氏も向うに行かれましたが、どういう交渉をなさるかこれは私はわかりませんが、どうもこういうことは経済問題ですけれども外務大臣が今度あちらに行かれるのだし、外務大臣にまかせてやられたらいいのじゃないかと思うのですが、向うに行って河野長官も、単に経済的な問題だけでなくて、外交上の問題についてもいろいろ話し合われるようでありますけれども、こういうことはあまりうまいことだとは思わないのですが、余剰農産物についての御見解、しかもこういうような大ぜいな人が出て勝手ばらばらに交渉するというようなやり方についてどう考えるか、この二点お伺いいたします。
  30. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 余剰農産物につきましては、本年度に関してはアメリカ資金関係その他の理由によりましていろいろ問題があると思っております。従ってそれらの問題のいかんによりましては、あるいは余剰農産物の協定を締結することにならないようになるかとも思っておりますが、この点につきまして河野長官がガットの会議に行かれますので、余剰農産物を企画庁長官としてまとめておられますので、その点については外務大臣と十分打ち合せの上、ワシントンに行ったときにお話を願うことにいたしておるわけでありますが、ただいまお話のように、私ができるだけあらゆる機会に外国に参りましてできるだけのことはしていくつもりでありますけれども、必ずしも時間的の理由その他でできぬときには、他のそれぞれの大臣の方々にかわって行っていただくことも必要がある場合があると思っておりますが、その場合には十分事前にお打ち合せをいたしまして、二元的に問題がならないように私としてはいたしていくつもりであります。
  31. 石黒忠篤

    ○石黒忠篤君 核爆発実験禁止に関しましては、同僚の両君からすでに御質問がありましたのでありますが、その御質問に対するお答えを伺いましても私十分に明らかにすることはできませんので、その点に関しましてお伺いをいたしたいと存じます。  核爆発実験が兵器の関係おいて必要であるけれども、平和利用関係おいてはごうも必要がないということは学者が言っておる通りであります。しこうしてその兵器のために必要な実験を繰り返すことにおいて、繰り返すたびごとに人類の後の世代に対する危害をも含むおそるべき害を全人類に及ぼす。こういう点からいたしまして、核爆発実験禁止は軍備、軍縮の問題と切り離して主張せらるべきものだということは、われわれ前々から唱えておるところでありまして、しかるにこれがどうも日本の政府の提案として取り扱われる場合においては、軍縮と関係を持たないでは実現はむずかしいものだというような思想が相当深く支配をしての主張になるように私は思うのであります。この点は私ばかりではなく先ほど岡田委員も新構想を持ってやられたらどうかと、こう言われたことによって、政府の今までの提案の御主張というものの色彩が、その思想のもとにおいて取り扱われておることが多いように思うのでありますが、私はそれではいけないと思うのであります。非常に困難な今日の各国が、ことに核兵器所持国が勢力の消長といったようなことから、解決がいつつくかわからないというような状況のもとにある。それを条件にして解決をというのでは、その間におそるべき実験が繰り返されて、取り返しのつかぬことになっていく罪過を現代のものが人類の将来に対して犯さなければならぬということになる。ここでそれをはっきりと分けておやりになることが必要だと私は信じておるものでありますが、    〔委員長退席、理事佐野廣君着席〕 この点に関しまして外務大臣の御所見をいま一ぺん繰り返して、一つできるだけはっきりと伺っておきたい、こう考えます。
  32. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 石黒委員からの御質問でありますが、核実験禁止が必要でありますことは私どもも同じように考えております。ただ外務大臣として、国連の場においてこの問題を取り扱います場合には、できるだけ一日もすみやかに各国政府間が合意に達して実験が禁止されるということが必要なのでありまして、たとえば総理大臣の特使その他が行かれまして、各国の政府並びに国民に訴えるという立場と、若干外務大臣国連の場において発言する場合、あるいは提案をする場合は私は違うのではないかと考えております。従いまして総理の特使その他の方々が各国国民に訴えにていくということは、これは非常に必要なことでありまして、そのためにすでに各国国民の中にもいろいろそれに呼応した動きが出てきております。そのことは私も事実だと思うのでありまして、アメリカおいてもイギリスおいても、そういう民間的な動きに日本の松下特使が刺激された、それが大きなこの問題の将来バック・グラウンドになっていく、各国政府をそれぞれ動かしてバック・グラウンドになっていくということは考えられ、またそうあるべきことであって、非常に適当なことだと思うのであります。ただ外務大臣として日本の全権団の代表として参りました場合には、やはり単に国連の場において人道的立場だけで絶叫をして、そうして日を暮らしますよりも、何といってもあの軍縮委員会の中においても、困難ではありますが、ソ連とアメリカの間において若干の歩み寄りは本年も進められてきているのでありまして、そういう情勢をできるだけ馴致していく。そうして一日も早く国連おいてそういう決議が採択されるように努力をしていくことが、まあ私の使命ではないかというふうに考えているわけでありまして、先般もネール首相と話しました際にも、ネール首相も、ああいう非常な理想家のタイプの方でありますけれども、やはりできるだけ各国代表間で歩み寄りのできるようにインドも骨を折って、そうして一日も早くまとまるように努力をする。それは表の総会議場ばかりでなく、裏の関係おいてもその間のあっせんをやるという立場を言われたのでありますが、私も国連の場においてはそうあってしかるべきだとこう考えておりますので、その意味おいて私としては今日まで行動をしているわけでございます。
  33. 石黒忠篤

    ○石黒忠篤君 もう一点伺っておきたいのがあるのであります。それはこの二十四より二十六口までの間に、東京で国際日系二世の大会が開かれるという計画があるようであります。米国初め各外国におります日系人の、ことに二世、三世ということになって参りまして、その国の善良なる、また有力なる国民となってやっていってくれられる人たちというものは、日本としては非常に重きをおかなければならぬと思うのであります。アメリカにおける二世の諸君が、だんだんとアメリカの一般社会における地位を高めて、単に父祖の業、私の企業をよく継いでおるとか、発展さしていくとかということでなしに、アメリカの公共の生活等においても相当の地位を占めるように、だんだんなってきておるということは、日本国民の能力の、他国民族に比較いたしまして相当優秀な点があるということの証左であると思って、私は非常に喜んでおるのでありますが、こういう人たちにも、押しつけでなくして、求めるならば、自分の出てきた日本というものの、過去の文化の発展及び現在の各方面の発展しておる現状というものを求めれば、いつでも概念を得られるような情報施設というものが非常に大事だと私は思う。日本国語の問題、ことに文字の問題が非常にそれを害しておると思うのでありますから、平易なる英語もしくはその他の外国語で、これを各方面にわたって、また古今にわたって、常に求めれば得られる状態にしておくことが非常に大事だ、しかも、それは外国人をして日本の状況、日本というものを知らしめるために必要なものとほとんど同一物でいいと思う。こういう点に関しまして、外務省としましては、情報局として相当お努めにもなっており、また外郭団体においてもやっておられるようでありますが、もう一そうの力をこれに加えられ、非常に高尚なものだとかいうようなことは、これは私は第二に置いてよろしいと思います。もっと手っとり早い真実と、それからもう少し平易な発達の歴史といったようなものを知り得るようにする必要があると思う。これは在外の日系人、二世、三世とだんだん経ていきますというと、ふえる日系の人たちの力が、その国の国内政治、しいては国際政治に及ぼす力が偉大なものがあると存じますので、今回の二世大会を機として、外務省として、いま一そうの力をそういう方面にお注ぎを願いたいということを私は切望するのですが、ことに、今回の二世大会には大統領の補佐官のマックスウエル氏がやって来る、あるいは移民長官のスウィング将軍がやって来るといったようなことでありますので、むろんいろいろ御計画になっていることと思いますが、一つ重大視してお進めいただきたいということを希望いたすと同時に、これに対しましてのお考えを伺いたい。
  34. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今回二世大会が開かれますについては、外務省としてもできるだけの御援助もし、また、この機会を利用して、できるだけ今お話のような点に注意をいたしながら活動いたしていきたい、こう考えております。  なお、二世を対象にするばかりでなく、一般的な宣伝活動等についてもお話があったわけでありますが、従来日本を紹介しております文書というものは、比較的学者もしくは好事家と申しますか、そういう人が日本の最高の芸術の紹介を読みたいというような意味で、比較的そういう平易な日本紹介のものが少なかったのではないかと思うのであります。そういうものについては、御指摘のように、われわれも留意しまして、もっと二世に十分平易にわかるようなもの、同時にそれが他のそれぞれの国の国民大衆にも簡単に理解し得るような、いろいろな宣伝活動、また書物等も、あるいは説明書等も作らなければいけないということ、私も全く同感でありまして、今後外務省の活動の中に、そういう点で外務省自身及び関係諸団体において、そういう面に留意するように、一そう注意をいたすことにいたしたいと思います。
  35. 笹森順造

    笹森順造君 私はきわめて限定された問題について、外務大臣にお尋ねしたいと思います。それは一般的な海外移住に関する現在の外務大臣構想、さらに昔から特にその問題と深い関係を持っておりまする日米関係における移住者の問題、これらに限定してお尋ねしたいと思います。  戦後日本の国際的な関係が新しく開かれましたために、この経済外交おい東南アジアの開発であるとか、あるいはラテン・アメリカ地方に対するプラントの輸出であるとか、その他いろいろな希望があることはもちろんであり、そこに従来経済外交をもって特に力を入れようといわれる現外務大臣が、いろいろな構想のあることも私どもは期待を持っております。それとともに、平和なる移住者として世界各国の至る所にそういう機会を開く、そうして日本の大きな人口問題なり、あるいは完全雇用の問題なりを処理するということも、また大きな問題でなければならない。ことに今後の平和外交の面では、昔のように武力に経済が従うものでもなし、軍の力によって海外に発展するものでもないので、平和の移住者をもって先頭に立てるという方針を、ぜひとも立てなければならぬと私どもは考えておりますが、まず、この海外に対する平和的な移住に関する根本的なお考えを一応お聞かせを願いたいと思います。
  36. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 日本の現在のいろいろな情勢を見てみまして、人口問題は大きな問題の一つだと思います。いろいろの議論はありまするが、日本自体でもってこの問題の調節をはかりますことが、世界にこの問題を打ち出します一つの大きな基盤にならなければならないということは、これは申すまでもないのであります。しかし、それと同時に、世界にはやはり人口が過少のために、その国の経済を十分に活用しておらぬ国も相当あるわけであります。そういう国と平和裏に人口の移動を考えますことは、これはまた両国相互のために必要なことであり、世界の平和のためにも必要なことだ、こう思うのでありまして、そういう意味おいて、喜んで受け入れてくれる国々に対しては、十分そういう努力をして、そうして先方の社会各般の福祉の向上に対応して参らなければならぬと思うのであります。そういう意味おいて、二国間の問題としてでなく、国連等が適当の時期にこういう問題を取り上げて、そうして円満にそういう面での貢献をしてもらいますことも、私としては日本にとって重要なことだと考えておるわけであります。従いまして、喜んで受け入れる国に対しましては、その国民となって、永久にその国の繁栄に寄与するような気持のもとに出発いたします移住者の処遇に対しては、できるだけ政府としても保護助成をしていかなければならぬ、できるだけ便宜供与をいたして参らなければならぬと思うのであります。そういう意味におきまして、それらの受け入れてくれる国々話し合いを円滑に進めていく必要があろうと思います。なお、従来移民の多くは農業移民であったわけでありますけれども、むろんこれも今後とも必要なことはわかっておりますが、若干技術を持ちました工業的な技術者の移住というものも、今後考えられるだろうと思うのであります。そういう面について、われわれは調査研究を行い、また、具体的にそういう問題が実現するように努力をいたしていきたい、こういうふうに考えておるわけであります。ただ、行きました人たちが一日も早くその国の国情になれ、その国の習慣に従い、その国の法律を順守して、善良なその国の国民となってくれなければならぬのでありまして、そういう意味おいて、行きました人に対しても前後の援助をしていくことは必要なことかと考えております。そういうことを全般考えながら、今後の移住政策を進めて参りたいと、こう存じております。
  37. 笹森順造

    笹森順造君 海外移住に関する外務大臣構想、そうしてこちらから行く者、迎える国の同意、そうして迎え入れられた国の進歩発達のために寄与するものでなければならぬということは、これは基本線で、もとより私どもも同意であります。しかも、平和的にそういう工合にするように、行く者を助成しようというお考えの基本的なことが伺えて、私どもも同意であります。  そこで、具体的な問題になりますわけでありますが、今申しました地域のほかの地方ということも、むろんいろいろ考えられますが、特に北米合衆国の問題にこれを集約して、もう少しはっきりと御構想を伺っておきたい。というのは、ほかの地方の移住の問題は相当大きく取り上げられ、あるいは経済外交の面において国費が相当に新しい年度において計上されることになっておりますが、私の特にお伺いしたいことは、日米の関係における移住の問題についてのことであります。また、私から申し上げるまでもなく、過去七十年の日本からアメリカに行きました移住者の歴史の中で、大体戦前においては大陸に直接行った者は十万をこえているのであります。ところがそれが御承知の通り、ジェントルマン・アグリーメントによって、日本から移民を辞退したということで、長い間向うに行ってなかった。ところが不幸なる戦争のために情勢が全く一転いたしまして、大臣の管轄下においてすでに取り扱っておりまするように、戦後十年足らずで、向うへ行っておりまする者が三万五千をこえている、ある者は四万と申します。そうすると、過去七十年間に行きました者の三分の一以上は、戦後向うに行っておる者、そこで、この者が非常なる大きな日米の関係に、外交的にも影響を及ぼし、あるいはまた経済の上でも影響を及ぼし、今後、日米の関係おいて非常に大きな問題である。ところが、このことが国民一般からそう認識されておらぬようなきらいがありはせぬか。従ってまた、政府当局においてもこれに対する対策が十分であるかどうかという点について、私はただしておきたいと思うわけであります。  ただいま外務大臣お話のごとく、日本から過去七十年にわたって戦前に行きましたものが、米国の憲法の帰化に関する解釈が変って、御承知の通り、帰化して市民権が与えられることになり、従ってこれに対するいろいろな問題がここに起きておるわけでありまして、あるいはまた国際結婚によって向うへ参りましたものが、すでに伝えられるところによっても、二万六千をこえておる。あるいはまた戦争の落し子であった混血児が二千以上も向うへ行っておる。これは養子として向うへ行っておる。そのほかに、帰米のもの、つまりアメリカで国籍を持つように生れて向うにおった者が、日本に帰って来て、一時国籍を失った者がまた向うへ帰るような、こういうような工合で、いろいろ情勢が変ってきておりまして、今申しましたあの国の国民となって生活する者が相当ふえてきておる。しかし、これはまた非常にいい傾向であって、過去におけるジェントルマン・アグリーメントは事実上そこに消えておるのではないか、こういう気がします。  それと、さらに進んで現在外務省でも取り扱っておりますように、この農業実習生の問題、特に先ほど大臣からお話がありました短期農業労働者の受け入れ態勢の問題、これらの問題も、私はある意味おいてはこの海外移住政策として最も大きく取り上げなければならないものではなかろうか。この点に関しまして、どうしてもこの問題を大きく取り上げられて、しかもこれが試金石としてそこに成功しまするならば、構想しておりまするあるいはラテン・アメリカであるとか、あるいはまた東南アジア等において迎えられる非常にいい機会ではなかろうか。これに対しましては、先ほどお話がありましたように、むろん個人の努力で運命を開拓すべきでありますけれども、政府としての援護の施策が手が伸びないということであったのでは、これはいかぬのではないだろうか、この点について、今までやっておりました構想が実際満足であるか、今までこれらのものについてどういうことを考えておるか、そのことについての御確信と、現在の方途とを伺って、それからさらに私どもが疑問に思う点についてお尋ねを進めていきたいと思います。
  38. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今お話のありましたように、戦後いろいろな意味おい情勢が変化しておるのでありまして、戦前においては南米方面に主として移民が迎えられておったわけでありますが、お話のように、戦後はいろいろな形においアメリカ等にも従来と違った考え方も出てきております。そういうような関係から、短期農業実習生というような形も起っております。あるいはまた予期しないようなことであったわけでありますけれども、炭鉱労務者のドイツにおける実習訓練というような問題も出てきておるのでありまして、そういう意味からいいまして、日本の移住政策というものを若干ここで再検討してみる必要はあろうかと思うのであります。で、問題はこういう情勢になりました基本的な各国考え方なり、あるいは日本及び日本人に対する信用の問題もあろうかと思うのでありまして、そういう意味おいて、十分われわれとしては今後そういう問題を考えていかなければならぬのじゃないかと思います。国外に出られました特に移住を主たる目的として出られた方のその土地におきます援護の問題は、これはできるだけ政府としても努めて考えて参らなければならないことでありますが、しかし、それがやはりその国の内政上の問題に関係してくるような誤解を受けますことは、はなはだ将来のために好ましいことではないのでありまして、そこいらの点について、十分慎重に考慮しながら考えて参らなければならぬと思います。御指摘のようにアメリカに対して戦後三万に及ぶ人が出ておるわけであります。そのうち国際結婚で行った方が二万五千五百ないし二万六千という数字になっております。実情からいいますと、これらの婦人を日本送出前に何らかの形で援護して適当なアメリカ人、あるいはアメリカ市民としての生活の方途を教育しますことは、大へんにむずかしい問題だと思うのでありますが、同時に、現在若干やはりこれらの婦人がアメリカおいて必ずしも幸福な状態に置かれておらない、そしていろいろその状態から困難な問題が起りかけている実情もあるわけでありまして、そういう面については、日本信用の上からいっても、あるいはその婦人方の幸福の点からいっても、いろいろな意味おいて考えさせられる点があると思うのであります。こういう問題につきましては、政府が直接手を伸べる必要もあろうと思いますが、なお、民間の有力な婦人団体等の方々の御活動を願って、そして政府がそれに協力していくというようなことが必要ではないかということを、私もアメリカに行きまして最近感じて参ったのであります。移民全体の問題につきまして、やはり情勢が違っておりますので、再検討をしながら今後の対策を考えて参りたい、こう思っております。
  39. 笹森順造

    笹森順造君 今の国際結婚の問題は、いろいろ問題がありますが、向うに参りまする前に、できるだけ向うへ行ってりっぱな市民となり得る予備的な何かの指導、補導ができるようなことについて、民間の運動がほしいということは、私も同意でありますが、そういうことはないようでありますから、特に今後婦人団体等について強く呼びかげをしていただくということは、これはこの点について希望して、その点はそれで質問を打ち切ります。  さらに大きな問題は、今後に属する問題として、三年間を予定しておりまする短期農業労務者の問題であります。これは御承知の通りに、すでに昨年から千人の予定で向うに参っておるわけで、相当な成績を上げておる、至る所で向うに歓迎せられておるということを、私どもは仄聞しておる次第でございます。さらにまた、今いろいろな交渉が始まっておって、新しい年度において千人行くでしょう、三千名は行くということになっておる。ところが、ここで私は特に外務大臣にお願いをし、その構想についてお聞きをしておきたいことは、初め毎年千人、三年続いて三千人、それを三年たって帰してよこす、しかも、その者が将来営農資金を百万円というものを三年後には必ず持って帰れるというような構想で始まっておるようであります。これもまたいろいろな制限なり、条件がありましょうが、そのこまかい内容については論議はいたしませんが、とにかくそういう一つ構想、大体うまくいきそうです。しかし、そこで問題になって参りまするのは、所得がありましても彼らの支出が非常に多いということが問題になっている。そのうち一番大きな問題は、何としても税金の問題であります。そこでこの税金の問題をどう取り扱うかということについては、これまた必ず両国の間に起ってくる問題でなかろうか。伝え聞くところによりますと、四十万から入っておりますメキシコ労働者は税金を払っておらぬということを聞いておるのです。で、これらの点は十分に一つ検討なされていただかなければ、せっかく百万円持って帰ろうというのが、所得税を向うで二割も取られるということになると、彼らの期待ははずれてくることになるのです。しかし、これは両国の間の納税の問題にも関係して参りましょうが、しかし、彼らとしては非常に大きな関心の問題でありますから、ここで御返答いただきませんけれども、十分に御検討なされて、他の国に与えておる最大の援助を彼らも得るようにしていただきたい。千人が百万円ずつ持ってくると十億円になりますか、そういうようなことになる。それは金の問題。  ところがもう一つの大きな問題は、単に三千人ではない、四万人くらい入れたらいいじゃないか、メキシコが四十万人で、日本の労働者はメキシコの労働者よりもなになので、四万人入れたらいいじゃないかという話が起っておった。試みに三千人になっているが、これがうまくいきますると、将来は日本の農業労働者が米国の農業の上に非常に貢献するものとして認められておる。そしてその問題が、先ほど申しましたように、日本からは向うの移民法に従って自由に行き得るということになりはしないか。そこに先ほど申し上げましたゼントルマン・アグリーメントというものはもうなくなっていいのじゃないか。そうするとカナダにも、あるいはメキシコにも、遠慮して移民を出さないということはなくなるのじゃないか。すでに外務大臣米国に対する新しい構想なり関心があるのであるから、これについて根本的な、そういうことで短期労働移民をふやすということについて、せっかく移民行政の関係に深い者がこちらにおいでになるということであるから、それを十分お話し合いをしていただけないだろうか。そしてこの構想が結局日米の新しい状態を強める、移民によって、しかも平和移民として日本の大きな問題に貢献する、それゆえに世界各地が日本の移住者を歓迎するという方向に行かなければならない。この問題が案外大きく取り上げられておらない感じがする。  私はこれで質問を終りますが、将来の数に対する考え方と、現在補導を与えると言っておりながら、どれだけのことをやっておるかというと、伝え聞くところによりますと、この派米協会に対する配慮がはなはだ少いように考えておる。従って、今年千人、今度二千人というものに対して手当がなされていない。このような点について、思い切って向うに対する在外公館なり、派米協会なりに強力な指導を与えなければ、せっかくの問題がここで水泡に帰する、画餅になってしまう。そうすると、このせっかく開かれたよい機会が何もならないということになりはせぬか。この問題に対する外務大臣としてどういう構想を持って臨むか。これを処置するのにいい試金石なので、現在行われておるのでありますから、これについての御熱意と将来に対するどういう派米協会等に援助の手を伸べて満足させるかという点をお答えを願って、私の質問をやめます。
  40. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 短期農業労働者の問題については、先般もアメリカに参りましたときにワシントンで話をしたのでありますが、米国政府当局も相当にこの価値を認めておるわけでございまして、できるだけの便宜を与え、かつまた使用者側に対しても条件等日本人短期農業労働者の待遇等について相当な優遇をするように措置しておるように思うのであります。ある意味におきまして、使用者が困難になるような好条件を使用者側に示しておるような場合もあるように見受けられるわけです。そういう状態でありますから、将来こういう短期農業労働者のアメリカに出ます道は、お話のように事前に十分なアメリカ生活に対する知識を与えて、あるいは予備的な方法を講じて、そうして向うアメリカ人との摩擦相剋というようなものが、つまらぬ社会上の風俗習慣の違いによって起ることのないようにして参りますれば、相当継続し得るように考えますので、われわれとしましても、なおできるだけこの問題について留意をいたしまして、熱意を持って考えていくことにいたしたいと、こう思っております。こまかい派米協会その他のああいう問題について、もし御質問があれば事務当局から御説明をいたさせますが、私としてそういう問題は十分移民政策の一環として、外務省の施策の上に取り上げて参ることを申し上げてお答えといたします。
  41. 竹中勝男

    竹中勝男君 外務大臣に三点ほどの問題についてお尋ねいたします。時間の関係もございますので、なるべく核心をついた簡単な御答弁を、失礼ですけれどもお願いしたいと思う。過日ネール首相日本を訪れた際、公けの席でも、あるいは大衆に対する演説におきましても、日本インド、中国、この三つの関係がしっかりできるならば、アジアにおける平和はもとより、世界の政治に非常な大きな貢献をするという話をして、それが非常に国民に大きな影響を与えて参ったことは事実だと思います。外務大臣も、日本政府も、おそらくこの考え方には反対ではないと思いますが、そうであるならば、日本インドという関係は非常にうまくいきつつあるわけでありますが、中国と日本との関係は必ずしもそうでない、この三国がしっかりした関係を持っていくという外交方針を是認されるのかどうか、一応中国に対する日本政府の外務大臣の率直なお考えを、まず承わりたいと思います。
  42. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 日本と中国とインドとが、アジアにおける有力な国であるということをネール首相が言われましたのは、その通りであると思います。われわれとしては無論東南アジア各国の中で、これだけが力のある国だとのみ申すわけにはいかぬと思いますが、少くとも現状においてある程度そういうことも言えるのではないかと思います。インドとの関係を別にしまして、中国との関係は、残念ではありまするけれども国連が侵略者の決議をいたしておるのでありまして、インド日本との関係のような関係に、現状においていくわけにはいかぬというふうに私は考えております。
  43. 竹中勝男

    竹中勝男君 インド日本との関係のようにいかぬということはわかりますが、中国と日本との関係をさらによくして、いくということは、これはだれしも日本人反対しておる者はないと私は考えますが、それにもかかわらず、中国と日本との関係は、最近において非常によくないように見受けられるのであります。第四次貿易協定の代表が北京に行っておりますけれども、いろいろ大きな問題にぶつかって、はかばかしくはかどっておりません。あるいはおそらく少数の人を残して引揚げてくるのではないかというような意見もあります。また、戦犯釈放の受け取りの問題も、九月から実は八人の釈放戦犯の同胞が天津に待っておって、いまだに迎えに日本の船が行かない、また引揚げの問題にしても、李徳全女史が来日するという問題にしても、行き詰まっておるような形になっております。これは最近の岸総理東南アジア及びアメリカおいての言動に対して、われわれの受けた以上に非常に強く、中国には非友好的態度だということで、激憤している趣きがあります。人民日報の論説のごときは、岸総理はすでに新しい中国に向って、戦宣布告をしたものである、あるいは最後通牒を突きつけたものだとすら論じている状態であります。しかしながら、岸総理は、また外務大臣も、国交の回復ということは現在考え得る範囲の外にあるけれども、人道上の問題や文化の交流、あるいは経済の拡大ということについて、どこまでもこれはやるつもりである、誠意をもってやるということを、たびたび回答されておるのであります。この中の文化あるいは経済、人道、一つずつ例をとって私は具体的に外務大臣に答弁を願いたい。  一つは、報道機関が全部締め出されているということであります。現在報道の特派員は、北京に一人もおりません。最後に残っておったところの共同通信と朝日新聞の特派員も、八月二十三日に引き揚げざるを得なくなって、帰っております。向うは今まで半年間の期間で特派員の駐在を認めておったわけでありますが、しかし、日本態度が逆でありますために、向うも平等互恵の原則で日本の報道陣の引き揚げを向うは要求してきたわけであります。これは非常に日本のために、あるいはアジアのために不幸です。現在は主としてロイターのニューズを買っているのです。外国のニューズを買っている。そのために非常に間違った、たとえば毛沢東の引退説というようなことが打電されてくるような状態、また日本のことが向うに伝わっていない、あとで御紹介しますけれども、八名の天津に待っている釈放戦犯が、手紙をよこしておりますが、何にも日本のことがわかっていないのです。向う日本の国内のことが通じていないのです。フランスなどは国交回復していないのですけれども、ロイターのりっぱな特派員を向うは持っております。アメリカでさへ今十七社の新聞社が、香港まで出て入国を待機している。アメリカの与論が、報道陣を中国に入れろという与論が強いので、アメリカの政府は報道陣を入れようとしている。最近中国人民日報に、先日来ました呉学文が、日本の政府のこの報道陣締め出しに対する態度、すなわち日本政府のこの無理解な態度を強く批判いたしております。で、この人は原水爆大会に来たのですが、一両日この滞在期間を延期したいというので、与党の北村徳太郎氏を初め、新聞協会が非常にこれは熱心にこの人の数日間の滞在を申し入れたのですけれども、それを日本の役所は拒否したわけであります。この人は来るときは非常にはなやかに迎えられて、実にさびしく日本を立っていっておるのであります。    〔理事佐野廣君退席、委員長着席〕  こういうように、なぜ報道陣を締め出さなければならないのか。朝日新聞も今特派員の申請をしておりますが、まだ保留されております。今度第四次貿易協定に行くのに七人の報道陣が二人に日本の政府の手によって削られてしまったのです。だから向うの事情も日本の事情も全然今通じないのです。そして外国のニューズの、買った報道が入ってくるというようなので、日本のことも間違って向うに伝えられておるわけです。どうしてこういうことなのか。十月下旬には台湾に三千人の報道陣が招待を受けて行くというのですが、こういうような状態に置かれておっては、これは日本のためにならない。アジアのためにならない。外務大臣は何らか条件でもつけて中国の報道陣を、特派員を日本に入国を考えられておるのか、考えられることはないか。そしてこちらからも特派員を向うに置けるような方法について、外務大臣の政治的な立場から御配慮があるかどうかをお聞きしたい。
  44. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 岸総理大臣が何か非常に戦闘的なことを言われ、宣戦布告のような言辞があったということのお話でありますが、私どもはそういうことを言われたとは考えておらぬのであります。従いまして、中国側にも何らかの形の誤解がそういう点はあるのではないか、こういうふうに実は考えております。  なお、中共の新聞特派員を日本に入れ、それと交換的に日本新聞の特派員を北京に送るという問題と関連してくるという御質問であったわけなんであります。御承知のように、二カ月以上滞在する人に対しては指紋の問題があるのであります。その点がおそらく一番の問題の点ではないかと、こう考えております。しかしこの問題は、報道員であるからという立場でこれを変更する、特例を設けるわけには現在の法律上ではいかないわけでありまして、そういう点がこの問題を困難にしている点であろうかと思います。
  45. 竹中勝男

    竹中勝男君 今指紋の問題を外務大臣が申されたので、関連して御質問いたしますが、この第四次貿易協定の中でも、一つのひっかかりが指紋問題であることは御承知の通りであります。日本は五人まではとらない、あるいは七人まではとらないとか、少しずつワクを広げておるようでありますが、指紋をとるということ自身が、非常にこれは両国のというか、日本の国際的な外交の上に障害になっておると私どもは考えておりますが、アメリカでさえもはや指紋をとることをやめたのですから、こういうひっかかりが大きい指紋問題を、外務大臣としてはこの際解決されるお考えはありませんか。
  46. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 指紋の問題は単に中共を対象にして法律ができ上っておるわけでないのでありまして、そういう全体の問題を考えますと、軽々に私からこの問題について申し上げかねると思います。
  47. 竹中勝男

    竹中勝男君 時間の都合で、引き揚げの未解決の問題について御質問いたしますが、厚生省の案、広瀬案というのですか、厚生省が発表したところによりますと、現に釈放戦犯を迎えに行く船を出さないと言っておりましたけれども、出すようになった。出すようになってからも、初めは練習船の俊鶻丸という小さい船を出す、それが不適当であるといって向うがそれに応じないようであるので、さらに百トン級の船を出す。しかしそれは十一月の二十日前後、それと並行して里帰りの船にはチャーターした英国のバタフライを出す、こういう考え方、同時に二そうの船をなぜ出さなければならないのか、しかもほかに適当な日本船がないのではない。われわれ、厚生省でも知っていると思いますが、あります。それにもかかわらず、この外貨の足りないときに英国の船を雇って出す、使って出す、その背後には、相当中国と日本との関係を悪化していく。すなわち三団体と紅十字会が協約しました戦犯や一般引揚者の帰るときに、里帰りの問題も同時に考えるという、こういう協約を破って、一方的に破ったような形に少くともなって、そうして十二月、しかも冬に臨もうとしておる。夏前に帰ってきた八百何十名の里帰りを、寒さにふるえながら今日まで置いておいて、さらにもう一月以上も待てというような、そういう構想というものは、政治的にきわめて拙劣だと私は考えます。実は今も申しましたこの藤田茂元中将から、これは五十九師団の師団長です。元閑院宮の武官をしておった人ですが、八人の戦犯釈放者の署名をもって手紙がきておりますが、その中に、里帰りの日僑の人々、日本華僑の里帰りの人々の帰還問題を含めて、私どもの帰還に御尽力をお願いしますということを言うてきておるのです。すなわち、里帰り問題と一緒に戦犯の問題は中国に協約しておるのです、三団体が。それで自分らだけ迎えに来るということでは、あまり帰ることを望まないということを述べている。こういうことを釈放された同胞の戦犯も、それから国民の中にも非常に強く里帰り問題を解決したいという要望があり、寒さにふるえている八百人の子供を連れた終戦後初めて日本に帰って来た——またこの人たちは日本の軍隊に捨てられ、日本の政府の保護外に置かれて、仕方なしに向うの人と婚姻をした人が多いのですが一そういう人たちを、なぜこれを日本に帰って来たときにあたたかく処遇して、向うに返すような方途ができないのか。私は、外務大臣として大きな立場から、政治的にこれを解決する方法がないのか、今の厚生省は行き詰まっておる。何か打開の道を持っておられないか、お伺いしたい。
  48. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) この問題は、政府が何らか政治的意図を持って遷延をしているというのではないのでありまして、全く事務上の関係の問題から起っておると思うのであります。従いまして、中国側でも日本の事務上のいろいろな根本手続き等について、十分了承を得られれば、誤解が起らないのではないかと思うのでありまして、その点について、なお厚生省の方の引揚援護局長が出席しておりますので、御答弁をいただきたいと思います。
  49. 竹中勝男

    竹中勝男君 大体厚生省の案は知っておるのです。それを外務大臣がどういうように外交の責任のうちにあって、厚生省案で行き詰まりとわれわれは見ておるそれを、どうして打開されるかということを、私はきょうは御質問しているのです。
  50. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 日本の政府としてただいま申し上げましたように、この問題は人道の問題でありますから、中共政府に対する日本の何らかの政治的意図、もしくは背後からこの問題を遷延さしている、あるいは解決方法をしいて困難にしているというのでは全くないのでありまして、全く厚生省所管の事務上の関係としてですね、日本としてはこういう手続きでやってもらいたいという希望を持っておられるのであります。従って、私としてはその点を十分中国側でも了承されれば、それが何か政治的意図をもって、こういう人道問題にそれをまたまぜて中共側を困らすというようなことでないということを理解されればですよ、円満に、問題は事務上の問題でありましても、もっとスムーズに話が進行するのではないか、こう思うのでありまして、何かそれ以上の問題が伏在しておるというふうには、私は考えておらぬのであります。
  51. 竹中勝男

    竹中勝男君 この日本のそういう外務大臣の善意が向うには通じない。また、どうやってそれを通じさせるかということは、外務大臣としては十分御研究になられると思いますが、三団体を通して、あるいは報道人を向うに、日本から正しい報道が向うに受け取られるような、そういう里帰りの問題の解決、そういう一つ一つ処理していかなければならない問題が相当山積しておるように思うのですが、で、二つ最後に一緒にお尋ねいたしますが、今度アメリカに行かれる際、河野さんと向うで行動をともにされ、あるいはある場合は一緒にアメリカで交渉される場合もあるだろうと思いますが、その場合に、新聞によると日中の貿易の問題も打ち出されるということが新聞に出ておりますが、一つそういう経済の問題の拡大については、積極的にアメリカ当局に、外務大臣として十分な了解といいますか、要はこれの促進について、日中貿易を拡大されるように、御努力されると思いますが、その点についてのお考を一つ伺いしたい。  もう一つは、九月十一、十二日に外務大臣及び厚生大臣から御答弁をいただいておりますけれども、中国人の未帰還者の調査及びその遺骨の送還の問題ですが、これは大臣は日本政府が、あるいは国会が、日本人の未帰還者調査を中国に対して申し入れておるのに対して、中国政府は中国人の夫婦選者の調査、行方不明者の調査日本に申し入れておるのであります。これは直接申し入れておりませんけれども、間接には二回申し入れております。これは、ただ日本で死んだ七千人の中国人の捕虜だけでなくて、実は数十万の中国人が日本の官憲や軍隊に拉致されたということを向うは信じております。戦争中に。その行方不明者まで含めて彼らは考えておるようであります。中国の方ではそう考えているようであります。しかし、この間から私が御質問をして、外務大臣の答弁をいただいているのは、その七千人の中国人の捕虜の死亡者、行方不明者の調査は今やっております。民間団体を助力して、そして政府の責任で誠意を尽して行わせると言われたのですが、それはどういう内容を持ったものであるかをお伺いしたいのです。助力してやると言われた。それは独自ではやらないという意味だろうと思いますが、その内容について、もう少し外務大臣の御意向伺いたい。すなわちアメリカおいて日中貿易促進のために働かれるかどうか、動かれるかどうか、及び中国未帰還者の調査について伺います。
  52. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今お尋ねのありました日本と中共との貿易関係について、河野大臣が何か交渉されるということは、それは誤伝だろうと思います。私がその次、参りますときには、国連出席するのを目的として参りますので、果してワシントンに参ることができるかどうか、今ちょっと疑問に思っているのであります。前回参りましたときに、私は中央貿易の問題は、ワシントン政府に日本の実情を説明することはいたしておりますけれどもアメリカ政府の承認を求むるという意味で話したことはないのであります。日本の中小企業家の希望というものが、こういうところにあるのだという実情を十分に話しました。私も機会あるごとに説明しまするし、また民間各方面の方が行かれたときにも、それぞれ接触を保たれる政府、もしくは民間の方々にお話をしていただけば、私は非常によいのではないかと思います。機会あるごとに私もそういう意味おいて、日本経済の実情を説明して参りたいと考えております。  それから第二の御質問でありますが、未帰還者の調査、特に中共側が要求しております日本における中共の行方不明者の調査という問題につきましては、前回も御質問がありましたが、政府としては、中共政府に対してジュネーブを通じて現在でも中共における日本人の未帰還者の調査を依頼するように絶えず努力をいたしております。一方、日本におきまする中国人の調査につきしまては、政府においても、厚生省を中心にしまして現在資料を収集しつつあるわけでありまして、こまかいことは厚生省の方から答弁していただくことにいたします。
  53. 竹中勝男

    竹中勝男君 厚生省の方で資料の収集しつつあると言われますのにつきましては、厚生省の方に質問しなければならないと思いますが、私はおそらくこれはまだそこまでは手がついてないと思います。外務省に資料があるのです。あれば外務省にあるはずなんです。それから、この前外務大臣は、今大谷瑩潤氏が会長をやっておる中国人殉難者慰霊実行委員会というような団体に対して、さらにこれを継続さすような御答弁があったのですが、この点についてお伺いいたしておるわけです。
  54. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 外務省に資料があるかどうか、私存じませんですが、もしありましたら、むろんそれは厚生省の方に協力して、お渡しすることになるのじゃないかと思います。外務省として、そういうものを秘し隠しておることはないだろうと思います。なお、それらの調査につきましては、厚生省が所管官庁としていろいろ考慮される点だと思うのでありますが、現在までの三団体がもはや民間団体としての能力が限度にきたというお話もありますので、それらを勘案しながら、厚生省として新しく方策を立てられるのじゃないかと、こう考えております。
  55. 竹中勝男

    竹中勝男君 いや、それはまだ、私もっとお伺いしなければならぬことかありますけれども、時間ですからこれで……。
  56. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 予定の時間が参りましたので、しかし、なお質疑の通告の方がございますけれども、どうか御質疑、御答弁ともに御簡潔に願います。
  57. 戸叶武

    戸叶武君 日中貿易交渉は、通商代表部員の人数をどうするかで行き悩んで、デッド・ロックに乗り上げております。で、通商代表部の設置は、第三次日中貿易協定以来の懸案で、中共側の強い要望を日本側でも原則的に認めておるのにもかかわらず、この代表部員の人数の極端な制限の問題で、交渉で決裂するというふうなことになるというと非常に残念だと思いますが、日本側の池田君は、五人というようなことを打ち出し、雷任民氏は、五人ではどうにもならない、百人というような多くの人数を必要としないが、五人ではひど過ぎるのではないかというところで、対立したままになっておりますが、昨日藤山外相の答弁を聞いておりますと、少い人数で出発して、逐次に増員してもよいというような見解でありましたが、その人数は、できるだけ少いという最小限度の人数を、外務大臣は常識的に幾人くらいと考えておられますか、そのことから承わりたい。
  58. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 最小限度の人数が幾人になるかということは、実際交渉に当って、向う側の進出口公司その他の活動、また貿易交渉の内容等、十分に承知しなければ申し上げかねると思うのであります。そういう意味おいて、私どもとしては、できるだけ少い人数で最初は出発してもらいたい。従って、できるだけ少い人数でまとめてもらいたいということを池田団長には私の意向として申し上げたわけなんであります。
  59. 戸叶武

    戸叶武君 それでは、人数の問題には多少の弾力があるということを認めることができますが、この問題は、通商代表部と支払協定の機能は、取引の実情に合致した、円満にして確実な支払と、協定された取引総額に達するまで取引の拡大均衡をはかることを保障する、これが協定に対する政府保障の本質でありますが、政府保障の問題に対して、中国側の要求は、代表部員の全員に対して指紋登録の免除、裁判権、警察権、課税権の免除、出入国の自由、国内旅行の自由、暗号使用の自由、国旗掲揚等であるが、中国側の上記の要求に対して、政府はどの程度の保障を与える考えを持っておられるか。
  60. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 外交特権と同じものを全面的に許与するという考え方は持っておりません。しかしながら、実際の貿易を円滑に推進するためには、できるだけの便宜的な考慮を政府としても考えてやりたいと思っているわけであります。しかし、お話のように、外交特権と同様なものを許与しようという考え方は持っておらぬ。
  61. 戸叶武

    戸叶武君 英国は、中共を承認している関係から、すでに商務官も派遣しておるし、また西ドイツは、政府保障を取り付けておるのでありまして、日本も西独と同じように、政府保障を当然行うべきだと思いますが、ここに関連して、支払い協定の問題について御質問します。まだ何の合意に達していないようですが、日本代表団の持って行ったものは、両国為替銀行間のコルレス契約案の内容は、LCの署名人の登録、暗号の交換のみであるから、この程度ではなかなか交渉がむずかしいと思うのです。少くとも両国為替銀行間で預金勘定を持ち合い、相当程度のオーバー・ローンを認めるくらいまで認める必要があると思いますが、外務大臣は、昨日は銀行の方の代表も行っているからという形で明確な答弁を避けておりましたが、これに対して、もう少し具体的な御答弁を願いたい。
  62. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 代表団が参りましたときの話では、比較的支払い協定は向う側の希望も入れ、あるいは昨年度の状況から見て、銀行方面で案を作って行ったということでありまして、そういう問題になるようなふうに実は伺っておらなかったわけなんです。いろいろ問題が起りますとすれば、大蔵当局なり、銀行方面の意見を十分聞いてみませんと、私として今お答えしかねる。
  63. 戸叶武

    戸叶武君 それではトレード・プランについて、特に商品分類方式については、日本側の甲乙二分類方式が拒否され、中国側は第三次協定通りの甲乙丙三分類方式を主張し、対立したままとなっております。また、ココム禁輸品が当然トレードプランの中に含まれるか、これら禁輸品の輸出の保障問題をどうするか。また、鉄鉱石、石炭等の基礎物資の輸入について、中国側は長期の保証付の契約を要望している。これは、保証がなければ、中国側は採鉱のために投資ができないとの見解に基くものであるか、これらに対して外務大臣はいかなる見解を持っておられるか。
  64. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 分類につきましては、分類の数が多くないほど、引き合いの出合いが多いわけなんでありまして、そういう意味からいえば、私ども民間におりましたときから、余り数多い分類になると、引き合いが非常にむずかしくなってくるという感じを持っておったわけなんです。ですから、そういう意味おいては、三分類よりも二分類の方が適当じゃないかと考えております。ただ、今いろいろ御質問のような、他の問題につきましては、通産大臣の意見も聞きませんと、私としてはこの際お答えしかねる。
  65. 戸叶武

    戸叶武君 もしこのままの状態で放置すれば、国会も始まるのだし、代表団は十月末までには帰国しなければならない。もう期間がなくなってしまって、交渉が大体失敗に終るのではないかというような公算が非常に大きくなる。従って、失敗した場合において、議連も困りますが、民間団体の責任のみたらず、政府のあいまいな態度からくる責任というのもまた、実際上経済上に対する打撃として現われてくると思うのでありますが、これに対して外務大臣の御見解はいかがですか。
  66. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 民間の代表者の方が行って、そして交渉されていることでありまして、私としましては、円満に民間使節の方々が成功して帰られることを望んでいるわけであります。私としては、中共貿易に対する考え方というものは、御承知のように、かねてから申し上げている通りでありまして、できるだけこれをスムーズに円滑にやるように、若干政府も考えていく必要があるんだという立場から、通商貿易の実務をとる人であるならば、何らかの形でそういう事務所を東京に置くことについてしかるべきではないかという考えを持っております。為替関係その他の問題については、両国の実情に適したように貿易をやります以上は、適当に考慮していく必要があろうと思っております。これは、私のかねてからの考え方でありますが、現在でもそういうふうに思っております。
  67. 戸叶武

    戸叶武君 中共貿易の問題に対して、岸総理すらも、アメリカに訪問したときには非常に熱心で、アメリカ側の誤解を解くためには、現実におい日本アメリカとの貿易は、日本の輸出の倍も日本は輸入しているが、アメリカおいては公正なる市場を与えてくれない。それから、中共よりも東南アジア貿易というふうにアメリカ側では言うが、金を持たないところの東南アジアに物を出しても、金の回収ができない。そういう見地から、中共貿易を拡大しなければならない。昨年度においては、輸出が六千万ドル、輸入が八千万ドル程度で、これを一億ドル程度にまで拡大しようというのにすぎないのだという形でアメリカ側を説いていたようでありますが、それがためには、不必要と思われるような反共演説や何かまで景品付のサービスもやったようですが、今、前に外務大臣が言われましたように、日本アジアに置かれている立場というものは、西欧とアジアとのブリッジの役割をすべきでありまして、アメリカ側がこの中共に対して病的なほどの悪感情を持っている。これも、最近三、四年はだいぶ薄らいできたのですが、日本側がほんとうアジアの実情を知らせて、そして政治的な国家性格なりイデオロギーは違っても、経済的な共存があり得るということを推し進めなければならないと思うのですが、このアメリカ側の一部の者は、ソ連がポーランド、ハンガリー、中近東の問題で忙しくて、中共に手が回らないとき、日本が中共に手を出すなんて余計なことをしないでくれ、中共が経済建設に成功して強くなると、アメリカの納税者は防衛費をもっと負担しなければならなくなるので、そういう影響もあるというような考え方を庶民の中には持っている者が相当に強いと思う。そういう間違った考え方というものを、もっと広い視野で世界を見るという考え方というものを説いて行くには、私は日本外務大臣の役割が非常に大きいと思うのですが、それに対して藤山さんはどういう決意を持っておられますか。
  68. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 日本の中共貿易における立場というものは、私は、大体アメリカ政府としては、今日では、日本の中小企業者の生活問題としても、ある程度了解をさけているというふうに考えます。従いまして、現在行なわれておりますような通商協定の関係おいて、特に異存があろうとは私ども考えておりません。むろんアメリカは、多数の人がおりますから、いろいろ議論もあろうかと思いますけれども、私の何した範囲においては、そういうことでございます。
  69. 戸叶武

    戸叶武君 次に、日本インドとの経済協力、それから開発基金の問題について御質問申し上げます。  日印両国が強調するアジアの復興の悲願というのは、アジアの未開発地の開発、産業建設による近代化、それから貧困の根絶と人口問題の解決、こういうことに対して現実的な力の躍動がなされなければならないので、そのためにおいて、いろいろな批判はありますが、経済援助のための資金の裏づけとしての開発基金ということがだいぶ問題になっているとき、目印共同声明の中には、開発基金構想が姿を没して見えなくなっておりますが、これは、新聞等によると、ネール首相がこの構想に難色を示したということを伝えておりますが、ネール首相が難色を示した点は、具体的にどういう点でありますか。
  70. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ネール首相は、この問題について難色を示されたというよりも、三、四の質問を私にされたわけであります。それは、先ほどもお答えをした中にあったと思いますが、そういう問題について質問をされまして、私としての考え方を申し上げたのであります。全部が全部御了承を得たとも考えませんけれども、しかし、この問題は大きな問題だし、私と話します以前よりも理解を得たのじゃないかと思っております。将来お互いに一つ研究しながら、アジアがファンドをいろいろな形で必要とするということについては同感であるのだから、方法をお互いに研究していこうじゃないか、こういうことで話し合いを終ったわけであります。共同コミュニケには従って形の上で載せておりません。
  71. 戸叶武

    戸叶武君 開発基金構想では、一九五四年十一月に吉田首相がアメリカを訪問した際に、ガット加入及び貿易に対する願望を説いたときに、ナショナル・プレス・クラブで行なった演説からその種がまかれたのではないかというふうに見ている人もありますが、あのときの演説は、吉田さんとしては上出来という評判がありましたが、それが一転して、ジョンストン構想となって日本に持ち込まれ、さらに岸構想となって今日具体化されつつあるようでありますが、アメリカといたしましては、自分の国の安全を保障するところの防衛費のためには国民が負担に応ずるが、人の国の貧乏をなくさせるために、われわれの税金をむだづかいされては困るというような感情が国民感情の中に横たわっており、国会がそれによって動かされており、今度岸さんがアメリカを訪ねたときは、アイゼンハワーが、国会におい経済援助の問題に関していろいろな質問を展開されておったときなので、従って、アイゼンハワーは、この問題に対しても具体的な回答ができない状態にあったというふうに伝えられておりますが、この開発基金の問題は、アメリカ資金的な援助というものに重点を置いて考えられるのか、それとも、きょう藤山さんが言われたのならば、基金というものを、資金をそれほど多額に要しなくても、小さいところからすべり出すことができるというようなふうにもとれますが、その間の関係はどうなっておるか、藤山さんから承わりたいと思います。
  72. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) こういう構想を進めます上において、相当の金額があることが、実際の仕事を円滑にかつ効果的に進める上において必要だということは、これは申すまでもないわけであります。しかしながら、アメリカにも、御指摘のありましたように、いろいろ国内政治の上の問題もありますし、必ずしも多きを期待できないかもしれませんが、先般イギリスで話をしましたときも、イギリスも、財政上相当為替関係で困難な立場にありますので、あまり多くの資金を、かりに適当であっても、そう当てにできないのじゃないかという点もありますし、必ずしも、膨大な資金を当てにして参れば、なかなかむずかしいのでありまして、しかし、一定のある程度資金がなければ、またこれも動かないことは事実であります。そういう意味おいて、この構想というものを仕上げますについては、相当時間的余裕の必要もありますので、われわれとしては、その構想の一部、しかも、そう多額の費用を要さないでやり得るものならば、将来構想ができたときに、その中に吸収するという意味で、若干始めてもいいんじゃないかということを先ほど申し上げたのであります。
  73. 戸叶武

    戸叶武君 アジア開発基金構想の一部として、プロジェクトセンターを設置する一方、技術研修センターの設置ということが問題になっているようでありますが、その対象となる業種は、現地側の希望によって、農業、水産業、中小企業などを取り上げるということでありますが、これは、インドを旅行した者は、だれでもインドの識者から聞くことは、コティジ・インダストリーとハンド・ワークを日本から学ぼうという点であると思うのですが、特に農業関係なんかにおいては、戦後ボンベーの郊外で、二百名ほどのインド農民が日本の農業技術をそのまま取り入れて、現地の約七倍の収穫を得る成績を上げた。このことが米産地があるボンベー州やマドラス州に大きな影響を与ているのでありまして、ああいうふうに、三億六千万以上の人口がありながらも、教育は普及していないで、文盲の人が多いような所においては、農業ばかりでなく、すべてのものが、研究所というだけでなく、モデルを作って、それを目で見て、実際に一緒に働いて、そして影響を与えるというような試みがなされなければならないと思います。そういう問題に対しても、ネールさんとはこまかい点を具体的に立ち入って話し合ったのですか。
  74. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 技術研修センターの問題は、インド日本と二国間だけの問題でありまして、相当詳しく話し合いをいたしました。最終的には、向うの希望をまとめた上で、日本側に申し出ることになっておるのでありますが、大体場所は、一カ所は西ベンガル州に置いてもらいたい。もう一カ所は南インドのどこかの地点を自分の方で選ぶ。それから業種については、自分の方で適切な業種を数個選んで、それに適するような技術指導者をよこしてもらって、技術の研修センターを中心にして仕事をしていく、こういう話し合いをいたしたわけであります。
  75. 戸叶武

    戸叶武君 その西ベンガルというのは、四年前に岸さんがカルカッタをたずねたときに研究したと思いますが、鉄の開発が主ですか。
  76. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 技術研修センターというのは、むしろ中小企業、農業、漁業——漁業も言っておられました。
  77. 戸叶武

    戸叶武君 最後に私は、核兵器禁止の問題で、当面の問題だけを一点伺いたいと思います。  それは、藤山外務大臣は、昨日衆議院の外務委員会で、目印の核実験禁止の案は、一本化のためにインド代表部と緊密に連結をして努力したいと言明しておりますが、今まで日本案西欧案に、インド案はソ連案に近いと一般に言われておりましたが、しかし日本案は、実験禁止の緊急性を訴え、とりあえず実験だけをやめさせようとするのが本旨であって、事実上は生産禁止その他の一般の軍縮協定成立と切り離せないという西洋案とほ非常に違ったものだと思います。それにもかかわらず、日本西欧案よりも日本案に近いソ連案をきらって、西欧案賛成するというような態度を示したことは、世界から、日本の真意というものはどこにあるかというような、非常な誤解を受けたもとだと思います。酷評するものは、日本実験禁止を主張しつつ、実験禁止を不可能にする西欧案支持しようとしておるのは、アメリカに無用の義理立てをしておるのじゃないかということすら非難されておるのであって、こういう筋の通らない動きをすることは、外交おいて非常に禁物だと思うのです。そこで私は、政府側も、ネールさんが来られたのを機会に大反省をして、そこで今度は、目印両国が困難を克服して一本化していこうということになったのだと思いますが、その場合に、もしも今度は、ソ連が一本化された案に同調してきたときには、政府はどうしますか。また逃げ出しますか。ソ連が同調し、米英がそれに応じなかったというときに、日本態度決定を保留しますか。私は、いろいろな国際舞台において主張するのもいいが、腰が定まらないで、いつもふらふらは、日本の国辱だと思うので外交の基本というものは、国際間における、いいにしろ、悪いにしろ、信頼感だと思いますが、こういう点において私は外務大臣の明確な腹を聞きたい、言葉でなく腹を聞きたい。それから、藤山外相も先ほどの答弁では、今大国間で考えておるのは、生産は認め使用禁止するというので、成果は期待できないというような悲観的な見通しを冷静に持っておるようでありますが、この場合、米英の一方においては、代表団は、西欧決議案というものはNATO、SEATO、バグダッド条約機構に参加した国々、中南米諸国等四十五カ国の支持を得ておるから、政治委員会を通過する見通しがついたというふうに言っております。核実験禁止に関するソ連の決議案及び日本インド決議案というものは、今の状態だと敗れる公算が強いというようなことも言われておりますが、日本インドはあくまでも同一歩調をとって、アジアアフリカの一員として、この人たちとともに、だれが正しいかでなく、何が正しいかという主張を持って、イデオロギーを持って、この国連おいて終始一貫して戦われるかどうか、この問題に対する外務大臣ほんとうの決意というものを私は示してもらいたい。そうでないと、今まで岸さんがあれほど聡明で、そつのない人ですが、そつがなさ過ぎてブームが沸かない。それは、一つの信頼感というものがないからです。やはり人々の心をゆすぶるものがなければ、とにかくほんとうのあらしが沸かない。ネールさんは日本に来て、あれだけのあらしが巻き起ってくるのは、あの人の誠実感、イデオロギーというものが日本人の心をゆすぶるからです。外交は単なるタクティックスでなく、技術でなく、ほんとうに私はイデオロギーを人間に浸透させることだと思います。藤山さんは、岸さんのいき過ぎを是正するくらいのプランと決意を持っている人だから、この際ぜひ一つお聞きしたい。
  78. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私は、世界が再び部分的にも全面的にも戦争にならぬことを熱望しておるわけであります。従いまして、軍縮が行われることを希望し、また一般兵器の軍縮ばかりでなく、核兵器禁止ということが来なければならぬと思います。従って、その意味おいては、やはり核兵器の生産、保有や使用というものを当然前提にして問題をわれわれは考えるのがしかるべきだと思うのですが、しかし、そういうことが考えられましても、時間的に相当長期になるだろうと思うということは言えるわけであります。実験によってフォール・アウトの影響をこうむりますことも当然であります。従って当然核兵器の核物質の実験というものがとめられると同時に、軍縮に向って歩みを進め、核兵器の生産保有、使用禁止が行われるような段階で進むことが一番国民の要望でもあり、私ども平和を愛好している者としても希望でなければならぬと思います。従って、そういう意味おいて、全般の核兵器禁止と軍縮というものを切り離すわけにはいかぬのであります。核兵器の実験さえ禁止されれば、生産も保有も、あるいは軍縮も、続けて行わなくてもいいのだという考え方にはなれないのです。従って、そういう意味おいて、核兵器の問題に触れざるを得ないのであります。しかし同時に、今申し上げた通り、それを推進する意味からいいましても、お互いに実験競争をやって、一国が優秀なものを作れば、さらに実験を続けて、他国がその上をいく優秀なものを作ろうという競争を……実験競争をやっていたのでは、ますます困難になるのであります。その間に、日本のごときがフォール・アウトの影響をこうむり、実質的に損害をこうむるということが起ってくるわけであります。一日も早く、核実験というものが一定の期限内にやめてもらわなければならぬ。やめてもらったら、すぐにやはり軍縮の場に移ってくるというふうに考えているわけであります。そういう意味おいて私は、日本案が相当適当だと確信を持っているわけであります。  インド代表団と今後もこういう問題につきましては、できるだけ協調をして参るつもりでありますが、必ずしも案が一本になるのか、あるいは別個の案で協力するのか、あるいはさらに別個の案を将来両代表団で考えていくのか、そういう点については、今後の状況から出てくる問題だと考えております。
  79. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 時間がないようですから、私は、沖縄の教育権返還の問題について簡単にお尋ねをしておきたいと思います。  藤山外務大臣が先般アメリカを訪問された際に、沖縄の教育権返還の問題でもって話し合いがあったというふうに聞いておるわけです。ところがその際に、アメリカ側から言われた中に、返還できない理由として、日教組の活動が不満であるというふうなことがあげられたというふうに伝えられておるわけですが、これが事実であるかどうか、この際伺っておきたいのですが、事実であるとすれば、はなはだ了解しがたい気持を私は持っているわけであります。で、これはかなり強い誤解に基くものだ、こういうふうに考えているわけであります。それからまた、こういう問題について事実そういうことがあったとすれば、やはり内政干渉のような印象もまあ受けるわけでございます。そういうことから、この際どういう話し合いがあったか、はっきり言ってもらいたいということが一つと。  もしそういうことが事実であるならば、そういう誤解を解く必要があると私は考えるわけなのであります。そういう点について、今後そういう誤解を解く努力をせられるかどうか。  それから第三点としては、きょうの新聞に、文部大臣がアメリカの駐日大使とこの問題について今後話し合いをしたい。こういう談話を発表されているわけです。この問題を政府としては、文部大臣とマッカーサー大使との話し合いに移すという方針を持っておられるのかどうか。私は、沖縄の教育権返還の問題は、相当政府としても力を入れて今後努力しなければ、容易に達成できない問題のように思うのであります。それで、今後はそういうふうに、文部大臣と駐日大使との間に話し合いを移そうというお考えなのか。そういう点をお伺いしたいということです。
  80. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 沖縄の教育の問題については、私が立ちます前に、文部大臣からもいろいろお話がありまして、私としては、一つの重要な政府の問題として、ダレス長官に会いましたときに話をいたしたのであります。むろん沖縄の問題については、施政権の返還についてのわれわれの希望を前提として話し合いをしているわけなのであります。しかし、いろいろな事情からして、今すぐできないということであれば、少くとも教育権あるいは教育の内容等について、日本側の意向を——教育権の返還というような日本側の希望による教育方法を採用してもらいたい。こういうことを言ったわけであります。その際ダレス氏は、御指摘のように、日教組があるから、教育権は返還できないと言ったのではないのでありまして、決してそういうことを発言したわけではありません。ただ、沖縄の問題を総括的に論じております際、むろん教育というような問題も含んでおりますが、沖縄における市長選挙その他をめぐっての共産党の策動があるのじゃないだろうかということをしきりと言われました。私は、そういうことはない、それは非常に誤解であって、むしろあなた方が沖縄国民の要望を十分に聞き入れない場合にそういうことが起るのであって、必ずしも沖縄の人が共産党に興味を持っている。あるいは選ばれた市長が共産党の人だというのではないので、そういう結果からそれを判断しないで、原因から判断してもらわなければならないのだ。もし日本国民もしくは沖縄の国民の気持を十分くんでやっていけば、自然そういう共産党とあなた方が考えるような状態に沖縄を追い込んでいかないのだ。ところが、それは、結果を見て、何かそういうことだから、共産党が非常に沖縄に激しくばっこしているので、もっと厳重にやらなければいけないのだという気魄をあなた方が持たれるとすると、ますます問題を混乱するというような、全般的な実は説明と議論をしたのであります。そういう議論の受けた感じを私は申したわけでありまして、ダレス氏が、日教組があるから沖縄に教育権を返還できないということを申したわけではないのであります。その点は誤解がないように、ダレス氏の言われたことに申し添えておきたいと思います。ですから、そういう意味おいて、できるだけ今後とも全般の問題として扱って参りたいと考えておるわけであります。で、外交が二元的になりますことはよろしくないことでありまするし、それから、今お話のように、沖縄の問題は重要な問題でありますので、当然外務大臣として最大の努力をいたすべきでありますが、しかし、やはりいろいろのそれぞれの関係の方々から事情をいろいろな機会にお話しいただいておくことは、非常に私は必要なことだと思うのであります。これは、政府の人がワシントンに行って話す、あるいは民間の人も行って話す、そういうような意味で、従って、私は、文部大臣からきのうそのお話を受けたのですが、文部大臣が交渉をするのではなくて、実情を十分言われることは、この問題を外務大臣として取り扱っていく上において非常に有力な参考になると思います。外交が二元化しますことは、対外的にも対内的にもおもしろくない結果を起しますので、私としては、二元的な意味でそういう問題が起りましたならば、外務大臣として賛成いたしません。しかしやはり、教育の専門的な問題その他については、十分実情を話していただくことが、今後の交渉の上において必要だと思います。文部大臣が話されることによって外交が二元的になった、あるいは外務大臣がそれを逃げて文部大臣にまかしちゃったという意味ではないのであります。十分教育の内容、実情等を説明していただきたい、こう思っております。
  81. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 国際情勢等に関する調査につきまして、この際お諮りいたします。  本件につきましては、いまだ調査を完了するに至っておりませんので、本院規則第七十二条の三によりまして、閉会中調査未了の旨の報告書議長提出いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  82. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお報告書の内容及びその手続等は、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  83. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後五時四十四分散会