運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1957-02-14 第26回国会 参議院 外務委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年二月十四日(木曜日)    午前十時四十六分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     笹森 順造君    理事            鶴見 祐輔君            曾祢  益君    委員            鹿島守之助君            黒川 武雄君            重宗 雄三君            永野  護君            野村吉三郎君            加藤シヅエ君            佐多 忠隆君            竹中 勝男君            石黒 忠篤君   国務大臣    外 務 大 臣 岸  信介君   政府委員    外務政務次官  井上 清一君    外務大臣官房長 木村四郎七君    外務参事官   服部 五郎君    外務省アジア局    長       中川  融君    外務省欧米局長 千葉  皓君    外務省条約局長 高橋 通敏君    外務省移住局長    心得      石井  喬君   事務局側    常任委員会専門    員       渡邊 信雄君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○国際情勢等に関する調査の件  (国際情勢に関する件)   —————————————
  2. 笹森順造

    委員長笹森順造君) ただいま証ら、外務委員会を開会いたします。  本日は、国際情勢等に関する調査を議題といたします。外務大臣に御質疑のある方は、順次お願いいたします。
  3. 鶴見祐輔

    鶴見祐輔君 私は、外交根本について、まず外務大臣お尋ねいたしたいのであります。  先日、外交方針に関する本会議演説の冒頭で、外務大臣は、政治外交は表裏一体をなすものだというお話がございましたが、その裏打ちをするような具体的なことを一、二お伺いをしておきたいのであります。おそらくは、外務大臣のお考えは、最近の世界の動向からいたしまして、国と国との外交というものが、従来の宮廷外交あるいは専門家外交の域を脱して全世界一体とする国と国との利害関係、言いかえれば、ディプロマシーという、相互対等かけ引き交渉から、全世界繁栄と平和のために貢献する大きな世界政治、インターナショナル・ポリティックスという立場をおとりになっていると思うのであります。果してそうであるかどうか、まずその根本お尋ねいたしたいのであります。  第二に、もしそうであるといたしますならば、具体的にお尋ねをいたしたい点は、外務大臣指摘されましたように、日本外交根本は、世界平知を維持する、そして世界繁栄とも日本繁栄するということであると思うのでありますが、ところが、一昨年のスイッツルのゼネヴァにおける四巨頭会談のときには、世界緊張関位緩和したかに見えたのでありますが、最近その傾向が非常に変ってきておるというふうに感じられるのであります。これに対して、日本緊張緩和にどういうふうにして対処していったらよいかということをお尋ねをいたしたいのでありますが、スエズの問題に牽連をいたしまして、あるいはハンガリー、あるいは中近東の問題と、連鎖反応のように、次第に世界情勢が悪化いたしております。昨晩の夕刊の報ずるところによれば、ソ連側は、アメリカアイゼンハワー・ドクトリンというものが戦争を挑発する侵略行為であるという手きびしい表現を用いて、国連の討議を要求しておるというようなありさまであります。一方においてアメリカは、アイゼンハワー議会に対する経済及び出兵の権限に関する決議案要求と同時に、いろいろとアメリカ新聞雑誌等に出ておりますように、最近アメリカは、非常な大きな編隊をもって、飛行機を世界一周させております。わずか四十五時間十九分という驚くべき時間で全世界を飛行いたして、わさわざロシアのレーダーでつかまるような形において一周しております。一方には、中近東に対するアイゼンハワー議会に対する要求とあわせて、かような軍事的の行動がとられておりますから、緊張関係が悪化してきておるということは、争うことはできないと思うのであります。ところが、日本がこれに対する態度をどうするかといいますと、もちろん日本が、一国でいかんともすることはできませんが、最近日本国内経済状態改善並びに日本国連加入等によりまして、日本世界における地位重要性が増大したということは、争うことはできないと思うのであります。  そこで、お尋ねを具体的にいたしたいのは、一体この緊張緩和ということは、ソ連陣営アメリカ中心とした自由国家群との陣営との緊張関係、しかも、ほとんど世界人々が一致して申しておりますように、世界において和戦を決する力を持っておるのは、ソ連アメリカしかない、これが私は、世界形勢を非常に不自然な険悪の状態にしておると思うのであります。国連というものがありますけれども、結局この二大強国対立ということを国連に持ち込んでおるという形勢でありますから、このままでは、緊張緩和ということは、なかなか国連だけではできない。これに対して、ネールのような中立論というものがございます。中立主張する国々の力が二大強国の力と匹敵することができない場合において、この中立論というものがキャスチング・ボートを持つことがない。ところが、ここでお伺いしたいことは、最近ヨーロッパにおいて起りつつある一つ政治的傾向であります。それは、ヨーロッパで、イギリスの新内閣が、総理大臣のマクミランにしても、大蔵大臣のソー二ークロフトにしても、ヨーロッパ主義者であるということであります。つまりヨーロッパの、少くとも西ヨーロッパ各国及びこれに北欧を加えた国々の関税及び軍事、政治にわたるところの一体不可分関係を脚立して、これによってソ連ブロックとの均衡を作ろう、その方が経済繁栄のためにも、自衛のためにも有効であるという考え方が前からありましたのが、今度の新内閣では、だんだん強力になるだろう、これに対する英国内に反対もあるようでありますけれども、しかし、スエズ運河でああいう手痛い攻撃をこうむり、また一種の屈辱をこうむりました英国としては、その道をたどろうという傾向がだんだんできてくるのではないか。言いかえれば、強国だけが対立いたしますと、緊張関係というものはだんだんひどくなる、これに対し一つのバランスを作るよう新しいブロックができるという傾向が起ると思いますが、そこで、今度東洋の場合において、中立という議論のほかに、東洋全体をもって一つ利害共通団体ブロックができるということが可能であるかどうか、これは、西ヨーロッパの人口二億七千万というような、非常な強国がほとんど文化が同一であり、富が豊かであり、文化、教育の進んでおる国ならば非常にやさしいのでありますけれども日本の側を中心とした極東においては、なかなかむずかしいのであります。ただそこで、私が具体的に伺いたいのは、前内閣においては、日ソ関係は一通り平常関係になった。残っておるのは、日本中共関係であります。昨日の衆議院の外務委員会において、外務大臣は、その一端と見るべきものとして、中共に対する貿易禁輸関係緩和したい、すなわち日本中共関係においては、概論的に、一般的に解決するよりは、具体的に、文化とか貿易とかというような方面で、だんだんに改善をしていきたいというお考えのようであります。それには、先ほどの議論に返りますが、政治外交中心である、言いかえれば、国内政治と同じように、世界政治という観点から物を処理しなければならないという立場にお立ちになれば、日本の将来の国に置くべき目標というものを、はっきりどこかに打ち出していかなければならない。今申し上げましたように、緊張緩和という目標のために、一定の指導方針あるいは目標というものをきめていかなければならないというときになってきておると思うのであります。英国西ヨーロッパ連盟を作るということにいっては、アメリカとの関係がむずかしいという懸念国内にあるように、日本でも、中共とその他の国々関係が深くなるということが、アメリカとの関係に影響するという懸念ももちろんあると思いますが、しかし、日本がこの緊張関係の中に、無方針で漂っておることは非常に危険でありますから、この際、どういう方針でこの緊張緩和目標としたアジア大陸との関係調整されるかというような、具体的な点についてお伺いしたいのであります。  第一の点と第二の点を外務大臣からお伺いしたいとおもうのであります。
  4. 岸信介

    国務大臣岸信介君) お答え申し上げます。お答えを申し上げます前に、簡単に一言ごあいさつを申し上げます。  私、過般石橋内閣外務大臣に就任することになりまして、本日は、参議院における外務委員会の第一回目でございます。私自身、現在の国際情勢はきわめて重大な時期であると見、また、日本といたしましては、昨年日ソ国交が正常化し、また国連に加盟をいたしまして、外交上もきわめて重要な転機に立っていると思うのであります。この際、全然外交にも経験のない私が外務大臣に就任することになったのであります。しかし私としましては、この重大な外交の時期に日本が際会しておることを十分に認識して、微力ではございますけれども、全力をあげて、国運の進展のために、また、日本外交究極目的である世界の平和と繁栄のために、あらゆる面において努力をいたしたいと存じます。また、国会委員会における、また各種の場合におきましても、至りませんけれども、私の所信を最も率直に申し述べて、御批判と御協力をいただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。  ただいま、鶴見さんから御質問になりましたことは、きわめて問題が重要でございますし、また広範にわたっておりますので、十分お答えができぬかもしれませんが、一応私の考えを申し上げてみたいと思います。それは、私が外交演説におきまして、政治外交一体ということを強く強調いたしましたのは、何と申しましても、日本外交は、過去においては、あるいは軍というような力が推進力になり、あるいは外交上非常に大きな発言権を持っておった時代もございます。しかし、民主主義日本として発展し、平和外交を推進していくという上から申しますというと、日本国際的地位ということも、戦前の日本とは非常に違った地位にある現在におきまして、われわれの主張がいかに正しくとも、また、それが当然やらなければならぬことにいたしましても、これを推進し、支持する強い力がなければならない。それはやはり私は政治力であり、またそれは、国民世論の支持を待ってである、こういう考えを持つのであります。この意味において、外交を推進していきますのにも、あくまでも国内政治というものと不可分一致、さらに、あらゆる面において、国民が私どもの行おうとする外交政策をよく理解し、日本が立っておる国際的地位というものに対しても十分な理解を持ってこの日本外交を支持し、またこれを推進する背後の力となっておるというような形を作っていかないというと、とうていわれわれが、従来のような、ただ外交上の技術や外交上の折衝だけをもって、日本主張というものを実現し通すことはできないだろう。こういう意味におきまして、私は、政治外交との一体ということを強く申したわけでありまして、また、私自身国会における答弁その他におきましても、質疑応答におきましても、できるだけ、国会というものを通じて国民に、日本が立っておる国際的地位と、また、国際情勢の正確なる分析、判断と、それからそれの理解、さらに、われわれが進んでいこうという道に対する理解を深めていくようにしていきたい、こういう考え根本にはおるわけであります。日本外交としては、とにかく私は、一面においては、国際連合に加盟いたしたのでありますから、国際連合に示されておる国際連合憲章精神を忠実に日本が順守して、さらに、日本が順守するのみならず、これを国際連合を通じて実現するという努力をしていくことが一面においては必要であります。また一面においては、日本は何といっても民主主義の国であり、私は、民主主義国家として日本を完成し、個人の自由を確保する、そうしてこれを政治の上に具現していくということが、われわれの国を立てておる根本理想であると思います。ここに、一切の独裁であり自由をじゅうりんする体制というものは、私どもとしては、あくまでもこれは、国家建国理想から申して相いれないものである。こういう意味において、私の考えでは、やはりわれわれがこの自由を愛好する国々との協調に重きを置いて、ここに国の立国の立場というものをはっきりしていく、そうしてこの立場……しかしそれは、今いわゆる東西の対立といわれておる、共産圏自由主義陣営との対立というものの一方の陣営にあって相対立するという考え方じゃなしに、私どもは、あくまでも今言う自由を愛好するという、またそれは、建国根本であるという点に立って、これらの国々との協調をわれわれは外交方針としては最も強化していくことを考えなきゃならぬし、何といっても、世界国際情勢大勢を見るというと、今御指摘になりましたように、ジュネーブにおける外国の四頭会談において、いわゆるジュネーブ精神といわれ、ジュネーブによる緊張緩和の徴候というものが、最近の次々に起る事態、また、アメリカ中近東あるいは東欧に対するいろんな施策、これに対抗するソ連の措置というものが、一見大勢である緊張緩和に逆行するような印象を世界人々に与えているということは、非常に遺憾であります。しかし私は、やはり外交演説でも述べましたように、どの国も人類が平和を望み、戦争を避けなきゃならぬという考え方においては、私は一致していると思います。ただ、それを達成する途中におきまして、いろんなその場合におけるかけ引きもございましょう。また、その国々立場における目前の利益とか、あるいは過去のいろんな歴史的な因縁にとらわれての事態は起ると思いますけれども大勢は、世界人類が平和を望み、戦争を避けなきゃならぬというこの理念が、私は、やはり国際のすべてのものの根底を流れており、それから最近の原子兵器その他の、非常な大量の殺人を起し、また、非常に大きな損害を与えるような武器発達に対しましては、同時にこれに対しての非常な恐怖といいますか、それを避けなければいかぬという、その発達が、やはり一面において、そういうこれを用いるとか、あるいはこれによって大量の殺戮を行なってはならぬというふうな運動なり傾向も広く起っております。どうしてもこの緊張緩和という方向に大きくやはり世界は流れていっておる。また、そういかせなければならぬ。その間におけるいろいろなさざなみなり、いろいろな変化はあるだろう。その間に立って、日本としては、やはり今申し上げましたような自由愛好であり、民主主義の国として完成するという立脚点を、はっきりと国の定めとしてとって、そうしてあらゆる面における対立緊張に対しては、われわれはこれをあらゆる機会緩和する。その緩和も、結局私は、世界大勢であり、世界世論——国際的世論というものによるほかには、なかなか大国の一人々々に説いたって、日本の力だけではいけるものではない。結局そういうたとえば水爆の使用禁止の問題にしましても、これは、やはり国際世論ができ上らなければできない。従って日本としては、あらゆる機会をとらえて、積極的に、建設的に、この緊張緩和に対する世界世論を喚起するという手段をとって参るのが必要じゃないか、かように考えておるわけで、具体的な問題につきましては、なお別の機会に……。
  5. 鶴見祐輔

    鶴見祐輔君 なお、国連関係日米関係について御質問いたしたいと思いますが、あと曾祢さんと石黒さんのお話の順序もございますから、今日はこの程度にとどめて別の機会に御質問を続けたいと思います。
  6. 曾禰益

    曾祢益君 きょうは、きわめて大きな点だけ伺いましてまた次の機会に、具体的な点について御質問を続けさしていただきたいと思います。  最初に、外務大臣施政方針演説を非常に注意深く伺ったのでありますが、一般的な、総論的な点については、大きく同感やぶさかでない点があるのでございます。ただいま、鶴見委員からも御指摘があったように、たとえば政治外交との一体化、あるいは内外に対して率直に所信を訴え、さらには、アジア隣邦諸国との友好協力関係を強化する、なお、国連尊重民主主義国家との協調、これらの点については、何ぴとといえども異議のないところだと思うのであります。私もまた、さように考えるのであります。ただ、これらの総論が、具体的な、あるいは対米問題、あるいは対中国問題等の問題になって、いわゆる各論の分になりますると、必ずしも私たちとして首肯しがたい点も出てくると思うのであります。たとえば、ただいま申し上げました国連尊重と、民主自由国家との協調、われわれはもちろん民主主義を守らなければならない。こういう意味において、民主主義を奉ずるすべての国と協調していかなければならないのでありますが、事アメリカとの関係になりますると、この民主自由国家との協調というものが直ちにもって、たとえばアメリカとの協力をわが外交基調とする……私どもは何もアメリカとの協力を否定するような考え方に立っておりません。しかし、アメリカとの協力外交基調とするというような外務大臣お話の、たとえば説明的な部分には、けだし日米両国間には、政治経済防衛等の各面において、利害目標とが大きく一致しているからである、かように言われておるのであります。果してさようなことが言えるかどうか。ここに私は、外交一つの大きな問題があろうと思う。しかし同時に、外務大臣も、やはりその永続的な友好関係を打ち立てるためには、現在の日米関係調整をはかる、その調整の必要は認められておるようであります。以上のような点について、問題をもう少しクローズ・アップして考えますると、何といっても、この日米関係の最も重要な集約点として考えられるのは、日米安全保障条約行政協定、この問題であろうと思うのであります。この問題について、本会議あるいは両院の委員会における外務大臣と各委員質疑応答を通じて外務大臣のお考えがだいぶわかってきたように思うのですが、これは、日米安全保障条約は、日本自力防衛完備の上これの改正考えたいと、こういうような表現をされ、あるいはまた、他の表現をもってすれば、その改正方向には賛成であるけれども、まずその環境を作っていく、その環境の中には、日本自力防衛体制完備というものとアメリカとの協議というものを考えておられるやに伺うのであります。そこで、これはあるいは外務大臣としてでもよろしいし、あるいは臨時総理としてでもけっこうでありまするが、非常に基本の問題ですから、ぜひこの際伺っておきたいことは、その自力防衛完備ということは一体どういう意味であるか、これを、何も防衛計画の具体的な点について触れて伺おうというのではございません。一体その自力防衛ということが、新しいこの世界武器進歩発達等から見て、どういう意味を持っておるか。すべて日本の力で、一切の進歩した核兵器を含む外国軍備の状況から考えてそういうものを含めた自力防衛ということまでお考えになっておるのかどうか。もしそうお考えであるならば、この日本自力防衛というものは、これはほとんど不可能に近いことではないか。そうなってくると、自力防衛ができてから安全保障条約改正していきたいというお言葉は、実際上は、これは、無期限安全保障条約を肯定していくということになるのではなかろうか。申し上げるまでもなく、安全保障条約第四条によれば、結局、いろいろなことが書いてありまするけれども日本地域における平和と安全が国連によって、あるいは他の方法によって、まあまあ大丈夫だと、あるいは日本自衛力そのものがまあまあ大丈夫だという程度になってそのなったことを日米両国政府が認めたときに、この条約が終了するということになっているわけですから、これは、言うまでもなく無期限条約になっている。そういう点から、どうもその自力防衛完備してからという思想をもっていくならば、これは、依然として無期限に、安全保障条約を肯定する立場にならざるを得ないのではないかと、かように考えるのですが、この点に関するお考えを伺いたいと思います。
  7. 岸信介

    国務大臣岸信介君) お答えいたします。  現在の国際情勢から見まして、一国で一国の安全を完全に保障できるというような防衛力を備えておるものは、おそらくアメリカソ連ぐらいのもので、あとはないと思いますが、従って、私が申しておるのも、われわれの自力でもって日本防衛する体制完備しなければならない。それを申しておるのは、もちろんいかなる侵害に対しても、日本自身が完全に日本一国で、日本人の手でこの日本国の安全を保障するというまでの防衛力を持とうということではもちろんないのでありまして今、日本が、それじゃどこまでの防衛をやればいいんだというふうな何につきましては、一応日本においても、長期防衛計画というものを持たなければならぬことは、年々の防衛予算でもってただやっているというだけではいけないのでありまして、長期防衛計画というものを一応持って、日本としては、一応の防衛体制というものを、これである程度のものが完成するという長期のものを持たなければなりませんが、これは、国防会議において検討して立てるという建前になっておりまして、いろいろ防衛庁初め、その関係方面でも研究をいたしておりまするが、そういうものがまだできておりませんから、日本はどの程度防衛をやれば、そうすれば一応の防衛力というものができているんだ、こういうことになるかということは、これは明確に申し上げることはできぬと思います。しかし、私の考えでは、安保条約そのものの何は、今御指摘になりました条文にもありますように、これが終了するときは、期限はついておりませんが、ある事態を前提として終了することになっております。しかし、究極目的は、安保条約をなくすることでありましょうけれども、しかし、安保条約行政協定が結ばれた当時と今日とは、いろいろな情勢も変っておりますし、また、これが数年間実施されておる現状を見まするというと、日米両国のための友好関係を永続せしめ、良好ならしめる上から言うというと、あまり望ましくない点も多々あると思うのです。これらの点については、この全部を終了するということでなくとも、ある程度両国の話し合いによって改訂をするということも考えていかなければならぬ。これらのことについては、一面にわれわれがとっておる防衛力国力に応じて漸増するという根本方針に基いて、できるだけ国力の伸長とにらみ合せて、アメリカ駐留軍駐留を必要としない状態を早く作り上げるということがまず一番初めの目的であろうと思うのです。そして究極の何から申しますれば、私は、どうしても今、安保条約四条にも書いてあります通り、また、国際的の情勢を判断しても、また、武器発達考えましても、集団安全保障ということが完備することによってさらにより合理的な日本安全保障体制ができることが望ましい、それには、やはり漸を追い、いろいろな段階を何して、今直ちに安保条約の廃止とか、安保条約根本改訂だということを打ち出すまだ時期じゃない。それのいろいろな準備、環境を作っていく、その方向に向って作っていく時期である。これが私の根本考えであります。
  8. 曾禰益

    曾祢益君 ただいま、外務大臣お話の中に、特に私が重要に考える点は、安保条約第四条にああいう規定があるし、また、あることは当然頭に置いておかなければならないが、必ずしもそれが全面的に、いわゆる純粋に、軍事的といいまするか、安全だということばかりにとらわれないで、たとえば、これは私の解釈が間違っておるかもしれませんが、とにかく安全保障条約ができたときの情勢と今の情勢、今後の情勢、これは、国内的にも国際的にも変っているんだから、情勢の変化にもかんがみて、また、日米の真の永続的友好関係を維持することを目的とするならば、外国軍隊の永久的駐留ということは、決して友好関係を促進するどころではなくて、これをまずくすることは、これは世界の歴史が示しておる。たとえて申し上げるまでもないことでありまするが、アメリカのすぐれた外交家でもあるし、歴史家でもあるジョージ・ケナンのごときも、これは昨年の六月ごろの話ですけれども、ピッツバーグの外交協会において、安全保障条約及びサンフランシスコ平和条約の永久駐留の規定に触れて、あれは、あの状況においては、遺憾ながらああしなけゃならなかったけれども、しかし、アメリカの今後の施策の方向というものは、日本という列島が米ソ両国の争いの種となるよりも、むしろ和解のかけ橋というか、和解のエリア、地域という性格にアメリカ外交を指向していくべきではないかという意見を述べておることは、大臣御承知の通りであります。まあ、そのことがアメリカの一般の世論になっておるとか、現在のアドミニストレーションの政策になっておるという意味ではありませんが、そういうような再検討、反省というものは、時々刻々必要であって、特に日本の自主的な立場から考えるならば、当然に必要だと、まあ、考えるわけであります。その点において、私どもは、安全保障条約を否定する立場に立って、同時に国際情勢のもとで、何らかのより好ましい集団的な安全保障が要るであろう、こういう立場に立っておるのであって、ただ単に、安全保障条約の廃棄だけで議論が進むと思っておるわけではございません。そういう意味において、ただ単に第四条の規定だけで、これを変えられないものだというような考えではなく、考えていく必要があろうと思うのであります。そこで、安全保障条約改訂方向の問題が一つ問題になるのでございますが、その前にです。先ほどの自衛力の完備ということに触れて、政府の方針によれば、今後の防衛力は、やはり量よりも質だという方向を示されておる。この量より質だということと、今の自衛力の完備、少くともアメリカ軍の駐留を必要としないような日本自衛力の質ということになると、これはどうしてもやはり、先般来国会でも非常に議論になりました、アメリカの戦略思想、それから戦略配置というものが根本的に違っている。いわゆる原子力の機動部隊を日本に置く置かないについてのいろいろな問題もございました。この点について、外務大臣が、率直に言って、初めのうちは、まだ現在の問題になっていないから、問題になっていないのに、反対だとか何とか言うのは適当でないという立場をとっておられたようですが、結局、アメリカから原子力部隊駐留の要請がかりにあったとしても、その場合にはこれを断わるということをはっきり言っておるので、一応その問題が済んでいるように見えるんでありまするけれども、やはり私は、その底にその問題がどうしても残っておるように考える。これはもう当然に、先日の外務大臣施政方針演説の中で、アメリカ日本とがいろいろな点で一致しているという問題の中に、防衛問題についても大きく一致しているということを言われておる。ところが、それはある意味アメリカ日本も、日本が他の国、アメリカからいうならば、いわゆる共産主義国に侵略されたり占領されては困るという、こういう意味においての一致はあるとしても、いわゆる防衛戦略という見地に立って考えると、アメリカの戦略は、どう考えてみても、この原子力部隊によるところの、いわゆる、何といいますか、デターレント、戦争に対する制御力、原子力を中心とし、また、長距離誘導弾等を大いに活用したところのこの制御力というものによって構成されていると思うわけであります。しかもその場合に、完全なまだ、大陸から大陸への長距離誘導弾あるいは誘導兵器といいますか、そういうもので、きめだま的なものがない限りにおいては、やはり日本防衛というものに対する戦略配置というものは、アメリカがやる場合においても、これを日本に期待する場合においても、基本的には同じであってただ単にこの日本地域を守る、いわゆる戦術的な海軍とかあるいは地上部隊というだけでなくて、それとあわせて、より基本的なものとしては、この原子力を持っているところの、あるいは誘導弾等を持っているところのこのデターレント、制御力というものに重点を置いた、そういう意味の質的な充実ということに振りかえられていくというのが、これは少くともアメリカから見た場合の戦略思想に違いない。そういうことを考えてくると、この原子兵器日本に入れる場合には、国民感情上これを断わる、これは私はその通りであって、まあそうでなければならないと思うのですが、そのことと、戦略上はやはり防衛上一緒に、アメリカと共同でやっていくということに基本的なズレが生ずるのではないか。だから、やはりそこを何とか根本的に考えていくならば、この自力防衛ということで、果して原子兵器等を拒否し得るのか、それで一体自力防衛が成り立つのか、もし成り立たないのならば、今のところは断わっているけれども、ずるずるとやはりそっちに引きずられて日本が持つか、あるいはアメリカが持ち込むかは別として、原子兵器を持ち得るような装備というものを日本地域において許す、こういうことにならざるを得ない。このジレンマにどうしても私は逢着すると思うのです。その点に対する明確なお答えをいただきたい。
  9. 岸信介

    国務大臣岸信介君) われわれ防衛力を増強するのについて、量よりも質ということを、本年度の予算におきましても、また、政府の方針としても、そういうことを言っているわけです。これは、一面においては、精神的な問題もありましょうが、一面最も重要なものは、ただ自衛隊員をふやす、数だけをふやすということではなくして、それの装備とか、いろいろなこれに関連しての施設等を中心に増強していかないというと、ただ単に数量だけをふやしただけでは意味をなさないということを、われわれ頭に置いて考えているわけであります。従って、最近の兵器の発達にもおくれないように、研究もしていかなければならぬし、また、装備も科学的な装備をしていかなければならない、こういうことになることも当然であると私は思います。  ただ、この原子力の問題に関しては、原水爆が日本の本土ないし付近において用いられるということに対しては、われわれのこの二回にわたる実際上悲しむべき体験、また、その後原水爆の実験によるところの現実の被害というようなものをまざまざと体験し、見せつけられている者としては、そういうことに対しては、これは、いかなることがあってもこれを拒否し、本土をそういうちまたに置くということはできないということは、強い国民的な感情といいますか、あるいは念願といいますか、悲願があると思うのであります。  そこで、この一方におけるところのそういう軍備の質の向上といいますか、質が進んでいくということと、今の国民のその感情というものをどこで調和していくかという問題に逢着することになると思います。しかし私は、これはまあ、世界の将来の戦争がどういうふうな形で行われるか、また、戦争そのものがどういうふうなところにどういうふうに展開するかということは、これは何人もまだ想像もできないことですが、しかし、いずれにしても、今度大きな世界戦争というものが起る場合において、そういう原子力によるところの悲惨な状態が来るだろうということは、だれもが考えておる。ただ、そのほかの、局地的ないろいろな、世界戦争ではない局地的な問題がいろいろ国際間においては発生する、こういう中に日本が置かれて、そうして日本の安全を保障していくという問題を考えてみますというと、少くとも極東における局地的な平和の維持なり、あるいは紛争から祖国が侵略されるというようなことぐらいは、少くともわれわれの手で守るだけの防衛力は今日は持たなければならぬ。そうして世界のそういう人類のほとんど破滅にも近いような大戦争や、悲惨な原水爆が用いられ、その他の方法によるところの大量殺戮が行われるというような事態は、われわれはあらゆる方法によってこれをなくする、防遏する。そのために、先ほど来問題になっている、むずかしい問題ですけれども、あらゆる機会において、東西の緊張緩和にわれわれが一つ努力もしなければならぬし、それから原水爆の使用はもちろん、実験禁止についても、あらゆる機会日本一つ主唱して、世界の世論を起していくというようにわれわれは努力していくということで、世界のそういう事態をわれわれはなくする方向にあらゆる努力を向けるべきものであって、世界傾向がすぐそういうふうにされて、アメリカ一つの戦略がそういう何であるからということで、非常に一面においては、安易といいますか、その態勢にずるずると引き込まれるようなことが日本外交方針なり、日本防衛の上において現われてはならぬ。こういう考えから、ああいう原子力部隊の日本への進駐とか、そういうことは仮定でありますけれども、そういうことの相談があった場合には、われわれとしては、強くこれは拒否しなければいかぬという方針を定めているわけであります。私は、やはり一方においては、今言っているように、あらゆる科学の進歩に対する研究なり、防衛の装備なりというものが研究されていかなければならぬけれども、しかし、これが原水爆を用いるようになるということは、いかなる形においても、日本人類のためにあくまでもそれを拒否し、これの使用をさせないという方向に、現在はまだそうなっておりませんけれども、あらゆる機会を通じて、それを実現していくということを考えていく以外に方法はないのじゃないか、こう思っております。
  10. 曾禰益

    曾祢益君 私の質問といいまするか、一つの何といいますか、仮説といいますか、に対するはっきりしたお答えじゃないと思います。これは、率直に申し上げまして、アメリカとの共同防衛の建前でいく限り、これは、いやでもおうでも原子力を加えた防衛ということにいかざるを得ない。その証拠には、これは、外務大臣に今さら私が申し上げるまでもなく、同じくアメリカと共同防衛の建前をとっている、たとえば西ドイツにしても、イタリアにしても、イギリスにしても、これは、アメリカとの共同防衛を肯定する限りにおいては、やはり原子力部隊を肯定している。これは、ロジックはそうなるのです。もしそうでなく、世界戦争ということでなくて、防衛力といい、安全保障といい、これはすべて問題はレラティヴな問題、絶対的なものではない、従って、日本に関しては、いわゆるローカルな侵略なり、あるいは間接侵略も加えての、そういうものを抑えるための自衛力だという考えに徹されるならば、これは、私が一々例を引くまでもなく、インドの例もあるし、オーストリアの例もあるので、これは、原水爆の両陣営とくっつかない建前において、世界戦争がないであろう、またなくそう、ローカルな問題だけは一応自衛力でやっていく、こういう方式が生れてくるのが、これはもう御承知の通りでありまするから、私は、もとより日本国民感情を尊重しない外交なんかというものはないのでありまするから、われわれのプッシュの結果であったかどうかしりませんが、原子力部隊なんかごめんだ、はっきり態度をとられたことを肯定するのです。しかし、それでありながら、同時にまた、安全保障条約にたより、あるいはアメリカとの共同防衛の建前をとっている限りには、そこに矛盾がある、この点を私は実は指摘申し上げたかったわけであります。時間がありませんから、この点を一つ、さらに、いずれ予算委員会等で御質問を続けさせていただきたいと思いまするが、これに関連して、今度は安全保障条約を、条約的にみて、これを変えていくという場合に、かつて二年前に、重光外務大臣アメリカに、ワシントンにたずねられたときに、やはり安全保障条約改正ということを考えてそれを日本自衛力の増強とからみ合せての一つの話が進められた結果が、外務大臣も御承知のように、国民としては望まないような、あるいは憲法に逸脱するのではなかろうかと思われるような、西太平洋に対しても、日本が何らかの共同防衛の責任を分担する、日本自衛力の増強の一つの質的及びファンクショナルの、機能的な方向というものは、単に日本地域そのもの、本土だけの防衛ではないというような性格になる。そのときに初めていわゆる、何といいますか、より双務的な、より平等な形において安全保障条約改訂し得るだろうというような方向に進んで、そのことが非常に国民から反対されて、当時の政府として、あわててそういう意図ではないということを、取り消しをやったというような一こまがあったことは御記憶の通り、でありますから、安全保障条約改正ということを考えた場合に、そういう意味でいく限りにおいては、私は、問題がさらにひろがるだけで、国民の望む方向でなくて、やはり安全保障条約は、これをなくしていくのだ、同時に中ソ友好同盟条約もなくしていって、新たに不可侵相互安全保障条約が、いわゆる両陣営が加わったものができるというような、全然新たな構想でいかないと、この問題は、私は解決がないのではないか、こう思うのでありまするが、それらの問題についてのお考え方向を伺って咲きたい。
  11. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 一昨年でありましたか、外務大臣アメリカをたずねたときに、この安全保障条約が、安保条約が、行政協定等の改訂の問題もその当時論議になりましたことは、当時の新聞に伝えられたような、誤り伝えられたところもありますけれども、要するに問題は、さっき私が申し上げましたように、安保条約及び行政協定は、その作ったときの情勢と、国際的にも、また、日本国内的にも、アメリカ国内事情も、いろいろ変化をしておる。従ってこれを永久に、このまま全然改訂せずに持っていくということは、これは、だれもそういうことを考えているわけではない、永久にこの通りいくとは……。従って、いろいろなその後の変化なり、最も有効な方法というものを両方でも考究しつつ行かなければならぬが、ただ、そのとき問題になったような、あるいはこれを平等な、双務的なものにするとかいうことになるというと、日本の憲法との関係もあって、なかなかそんなことは考えられない。また、そういうことを考えなくても、今申し上げたように、先ほど来申し上げているように、いろいろな情勢の変化と、それから日米両国のほんとうの友好関係を円滑ならしめる見地から見て望ましくない、また、適当でない箇所もだんだんわれわれも感ぜられ、アメリカ側にもそれを十分認めさして、しばらく変えていきたい。しかし、究極日本の安全保障というものを、それじゃ日米共同防衛だけで達成することが日本のためであるかどうかという根本の問題になりますれば、私は、今直ちに中ソ同盟条約もなかなか——ソ連と国交正常化したから、すぐやめろと言ったって、すぐやめられる状況でもなかろうと思います。また、そういう情勢において、すぐこれらの国を入れた防衛体制考えるということも、まだその時期に達しておらない。国際連合によるところの集団安全保障によってすべての国が皆、これで安全だと思い得る情勢にもまだ達しておらない。こういう際においては、やはり日米安全保障条約、日米共同防衛立場日本防衛していくということは、現在のところでは、これはまあやむを得ない実情であろうと思います。そういう見地に立っても、改訂すべきものは、やはりさっき言ったように、十分研究していく必要の点も私は現実にあると思います。方向としては、やはり世界のどうも平和がかくらんされるということになれば、私の考えじゃ、やはり国際連合というものがさらに一段と強化され、ほんとうに国際連合憲章の趣旨に基いた集団安全保障というものが、これには東西両陣営が加わっていけると、また、ここにおいて、軍縮その他の問題もほんとうに合理的にいけるというような情勢世界的に、国際的にでき上らないと、また、でき上らせるように持っていかなければなりませんけれども、でき上らない現状においては、やはり日米共同防衛立場で、日本の安全を保障するというほかないんじゃないか、こういうふうに考えております。
  12. 曾禰益

    曾祢益君 まだ日中問題、日ソ問題ことに日ソ漁業問題も、きょうからいよいよ共同委員会の形で開かれるようであります。いろいろ伺いたいことは多いのですけれども、遺憾ながら、時間も私だけ取るのも恐縮でありますので、次の機会に譲りまして、きょうはこれだけにしておきます。
  13. 石黒忠篤

    石黒忠篤君 私も、いろいろ伺いたいことがありますが、時間の関係上、本日は、原水爆に関する問題だけをお伺いいたしたいと思います。  原水爆及びその製造並びに実験の禁止という問題に関しましては、両院非常な関心を持っておって、決議をいたしておることは、御承知の通りでございます。これに関しまして、昨年の十一月に、日ソ共同宣言が当外務委員会で審議をされました際に、前外務大臣に対しまして、私は質問をいたしましたことがあるのでありますが、新外務大臣に対しまして、多少重複になりますが、おかわりになりましたのでありますから、重複の点もあるかと思いますが、お伺いしてみたいと思います。しかし、それに先立ちまして、一つ当面の問題といたしまして、英国がクリスマス島附近において実験をやるということに対しまして、西大使からの中止の申入れをなされた。これに関しまして、本会議における緊急質問に対して、外相からの御答弁があったのでありますが、その後の英国との間における交渉は、どういうことになっておりますか。ただいままでのその後の交渉の実際を、御報告をいただきたいと思います。
  14. 岸信介

    国務大臣岸信介君) せんだって来、本会議等におきましては、こちらから中止を申し入れておるというところまで申し上げておいたのでありますが、まだそれに対する回答を日本としては受領しておらなかったのであります。昨日、これに対して、英国側の回答が電報で、西大使に与えられた回答がわれわれの方に届いて参りました。これによれば、イギリスは、日本の中止の申し入れに対して、依然としてこれはどうしてもやるということの意思を表示いたしまして、その理由も、非常に高度でやるから損害を与えないとか、あるいは十分損害を発せないような処置が講ぜられておる。あるいはこの原子力というもののあらゆる兵器の発達というものがむしろ世界戦争を防止するものである。われわれとしては、どうしてもそれの実験をやらなければならぬというような空気が伝えられてきたのであります。私どもとしましては、さらにこれに対して、その回答には非常に不満であり、また、われわれの意思は、ぜひともやめてもらいたいというところにあるが、しかし、決して損害が発生しないとか、危険がないということじゃなしに、日本としては、いろんな危険や損害を受けることを非常に懸念をしておるから、これに対する日本側の要求というものは、もしどうしてもやられるという場合においても、われわれとしては、十分これに対する権利は留保する考えであるという意味のことをさらに重ねて申し入れる考えでおります。
  15. 石黒忠篤

    石黒忠篤君 実験を中止し得ないことの理由についての究明を十分にやっていただきたいと、私は思うのであります。非常な高度の上空においてやるから被害はないとかいうようなことは、今日の科学技術上はっきりは言えますまいが、ほぼ科学技術上の今日の常識において認められる高度なりやいなや、問題もあろうと思います。また、危険の発生しないような設備をするからという、その設備が果してそれに十分なるものなりやいなやということのお問い合わせも願いたいと思います。  最後に、これを中止することのできないのは、国際平和の上において必要だというような理由がついておるように伺ったんでありますが、これに関しましては、政府はどういうふうにお考えになりますか。私は、本来国と国との間の軍備の問題というような、レシプロカルの問題は、どちらかが思い切ってやめるということでなくてはいけない、一向に進まないと私は思うのであります。これが軍縮のためにしばしば国際会議が開かれて、しばしばお流れになっておるところなのでありまして、それを実行させるためには、特殊の地位に立った国家が根強く、そしてあらゆる力を尽して唱道するという当事者にならなければだめだ。当事者になってもむずかしいと思うのでありますから、これは、非常な覚悟で進まなければいかぬと私は思うのであります。わが国は、この新しい原水爆というものについて、この地位に当るべき権利と義務を背負っておるのじゃないかと私は思うのであります。これが、ただいまこの席において外務大臣がおっしゃいました、原水爆の使用のみならず、その製作についての実験ということに対して、あらゆる機会にこれを主張しなければいかぬというお言葉がありましたので、私は非常に満足をするのでありますが、ただ、それが議会の答弁にとどまらず、国際政治の上において、実際にそれを実現せずんばやまずという意気をもって日本国が、そして日本国の代表機関として、日本国の外務省がこれに非常な熱意をもって進まれるということが願わしいことであり、必要だと、私は考えるのであります。外務大臣の御意見を伺いたいと思います。
  16. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今、石黒委員のお考え、全然私は同感でございます。従って、この日英間のこの問題の折衝につきましても、当方からの申入れ、向うの回答、またさらに、こちらから再度の抗議というようなものを私はある程度公表することが、やはり世界の世論なり批判を高める上からいっても、必要であろうと思っております。そういうことで、イギリス側とも、今、これを公表することについても折衝をいたしておりまして、やはりこれは、イギリス内にも相当、日本がそれの中止を抗議しただけじゃありますまいけれども、それらと関連して、これを中止しろというような声も、英国内でもだいぶ起っているようであります。さらに、国際的なそういう声が各方面に起ることによって、今持っている大国のそういう行為をとどめる私は力にもなると思いまして、ただ単に、国会における質疑応答だけじゃなしに、真剣に熱を入れて、日本としては、これの実現に今後とも努力したい、こう思っております。
  17. 石黒忠篤

    石黒忠篤君 外務大臣お答え、まことに私は、けっこうなお答えをちょうだいしたのを喜んでおります。ただ、公表に関しましては、公表をした結果、普通の外交文書の取引だとか、あるいは申し入れをした事実の列挙ということじゃなしに、精神のこもったものの御公表をしていただきたいと私は思います。  前重光外相はかつて、三十一年の五月、当委員会における羽生委員質問に対しまして、原水爆禁止の両院の決議を米英ソに対して伝達をしたが、禁止の目的は達しなかったことは遺憾である、さらにその回答は、当方の考え方、研究の結果と一致していなかったので、わが方の考え方をさらに詳細に記述した、駁論的な回答を出しておいた、これは適当な機会に発表して批判を求めたい、こういうことを言うておられるのであります。そこで、昨年の十一月の日ソ共同宣言の審議の際に、私は、もはやその批判を求められる時期であろうと思うから、外務省からそれを示していただきたいと求めたのに対しまして、外務省からは、三十一年の八月二十三日付の外務省情報文化局長談という、交渉経緯についてというものをいただいたのでありまして、これ以外に発表すべきものはない、こういうことであります。これを見ますというと、ただ交渉の経過だけでありまして、当方の考えを駁論的に言うたといったようなことで、内外の批判を求められるといったような考え方のもとになっているものは、何ら示されておらないのであります。そういうことでは、私はいけない、こう思います。この問題に関しまして、岸外務大臣のおっしゃる、あらゆる機会にこれを主張するということを、たゆまずどこまでも、何べん繰返してもよろしいから、やっていくということと、また、それによって世界の世論を起すというのでありますから、それをできるだけ詳細に、実効のあるように公表されるということが私はいいのじゃないかというふうに思うのであります。私の考えは、そういうことに方向付けられておりますので、十一月の共同宣言の審議の際に質問をいたした他の方向は、日ソ交渉に当ってソ連から原爆実験禁止についての申し出があった。これを日ソ交渉の共同宣言の中に入れることの要望があった。しかるに、日本の全権は、これは共同宣言のうちに入れるべき性質のものでないからというので、了解を得て除外をしてしまった、こういうことがあるのであります。私は、その当時批判をいたしまして、これは、非常につかむべき機会をこちらの方からわざと拒絶をしたということになって、私は遺憾だということを申した。そうしてそのソ連の申し出は、どういうことを申し出たのか、これを示してもらいたいということを申したのに対して、外務当局は、それは、両国の交渉の中に起ったことであるから、これを公表することはできないということで、拒絶をされたのであります。しかしながら、私の知っているところだけでも、たしか三十年であったと思うのでありますが、ソ連のブルガーニンがアイゼンハワーに対して原水爆禁止について条約をしたらどうか、もしやるのならばこちらはそれをやる用意があるという申し入れをしたということがあったように思うのであります。そうだとすると、これは交渉中のことであっても、何もそれをどういうことを言うてきたかということを公表をすることを拒絶されるようなことじゃないのじゃないかと私は思うのでありますが、新外相があらゆる機会を利用してこれを主張し、世論を起して、これをバックとしてこの実現をはかりたい、こういうことであるとすれば、それらも御公表願えるのじゃないかと私は思うのでありますが、いかがでしょう。
  18. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 日ソ共同宣言の交渉の段階で出ました事柄は、当時外務大臣が、交渉中のことであるから内容を具体的に公表することはできないということは……
  19. 石黒忠篤

    石黒忠篤君 外務大臣じゃありません、外務当局です。
  20. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 外務省当局からそういうような御返事を申し上げたようでありますが、私自身も責任をもってここで申し上げる程度にそのいきさつを承知いたしておりませんから、一ぺんその当時のことをよく調べました上で、この点についての御回答をしたいと思います。
  21. 石黒忠篤

    石黒忠篤君 どうぞお調べいただいて、差しつかえない限りはお示しを願いたいと思います。私はこれを要求しますゆえんは、日ソ交渉が終って間もなく、たしか十一月の十七日でありましたと思いますが、ソ連が核爆発の実験を行なって、しかもそれが成功した、こういうことをタス通信が伝え、で、同時に近い日本の気象台の観測を気象庁が発表をいたして今回の爆発は、実験は、ビキニ水爆の実験、すなわち従来の最大のものに比してほぼ同じくらいのものが中央アジアのノヴォシビルスク付近において行われたものかと思われるということを公表しておるのでありますが、こういうようなソ連の意向を、いろいろなその裏には理由もありましょうが、ともかくも原水爆の実験を禁止するということについての意思があるといっても、ソ連が言っている言下においてこういう実験をみずからしているというようなことを、何とかしてとめることにしなければ、一面において人類を直接破滅に導くところの兵器の製造というものを、その方面にどんどん進めていくことになる。また原水爆の実験そのものの直接の被害がすでにわれわれの漁民等においてこうむり、また農作物の上においてもこうむるというようなことにもなる。のみならず、実験そのものの結果ではないが、実験の結果蓄積されるところの、あるいは流出するところの物質の堆積というものが、知らず知らずの間において人類の健康の上において、遺伝の上において非常に大きなものを来たす行為になっているということは、これはすみやかに禁止されなければならぬと私は思うのであります。これは人類直接の破滅を目的とした行為と究極においては何ら変りがないと私は思うのであります。こういうことの実験をやることが、一面、平和利用ということにどれだけ必要なことであるかというと、一つも必要でないんだということは、今日の学者が言っているんです。人類の幸福のために利用するということについては必要でない実験を、破滅のための実験をやるということになるのでありますから、これは日本が率先して人類の幸福、平和のために唱道して然るべきことだと思うのでありますが、国際法は今日そこまでいっておらぬということは、前外相も言っておられたところなんであります。で、この点に関しまして、日本の外務省が必ずしも海洋の自由とか何とかいうことのためではなく、この新しい問題に対しまして、すなわちある国が、人工をもって、大自然の環境、あるいは自然均衡というものを著しく人工をもって変更していく、破壊していくというようなことは、人類全体の上において許されるべきことでないというような面についての新しい国際法規を出していくというぐらいの考えで、私は日本の外務省は研究を進めていかれ、その結果を国際連合等において強調をされることが、なすべきことではないかと私は思うのであります。それらに関しまして、外務大臣の御意見を承わりたいと思います。
  22. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 原水爆の使用、またこれに関連しての実験というものについて、それが人類に幸福をもたらすものではなくして、破滅をもたらし、悲惨なる事態をこれによって作り上げるものである。従ってあくまでもこれが禁止についてあらゆる面から努力するということは、先ほど来申し上げている通りであります。国際法の関係につきましては、これまた現在新しい問題であって、今までの国際法の理論でもって、これを直ちに違法であるとか違法でないとかいうことを決することはむずかしいことであると思います。これに関するほんとうの法理というものはまだ国際法的にも確立されておらない、われわれがこの禁止を叫んでいるのは、ただこれによって日本人が損害をこうむるとか、日本人が危害をこうむるとかいうことだけではなくして、全人類のために考えているのが根本でございますから、従って今の石黒委員お話のような、国際法の原則なりそういう法則が確立されるということは、きわめて望ましいことだろうと思います。ただ、しかし現実の国際連合等における状況を見まするというと、軍縮の問題も委員会に付せられただけで、一向進捗しておりませんし、また、われわれが提唱しましたせめて禁止ができないとするならば、これは無断で、無警告で行うということは、世界のどこで行われても、それははなはだ人類のためにいかぬことであって、少くとも登録制にし、そうしてこれに対して国際連合というものが、ある程度の監視をする。損害を最小限度に局限するような意味において少くとも最小限度の登録制というようなものを考える必要があるじゃないかという澤田代表の提案すら、実はやはり軍縮委員会へ持ち込まれたという情勢でありますので、なかなか今石黒委員の言われるような、国際法の原則なり、法理が打ち立てられるというのは、よほど現状におきましてはむずかしい、しかしむずかしいからといって仕方ないというわけじゃなしに、この問題に関する限りにおきましては、私はあらゆる努力——そういう構想につきましても十分研究して、日本として積極的に世界の良識に訴えて、一つの法則なり原則を作り上げるということには、熱意を持って努力をしていきたい、こう思っております。
  23. 石黒忠篤

    石黒忠篤君 そこで、ただいま軍縮との関係お話が出たのでありますが、最近の英国の中の世論といたしましても、原水爆の悪循環を断つためには、クリスマス島の実験というものを思い切ってやめるということがなすべきことじゃないかと、こういう世論も起っておる、報道されているのであります。私もどこからか思い切ってやめる国を作り出さなければならないと、こう思うのであります。で、軍縮と原爆実験禁止とは、軍縮ができなければ原水爆実験は中止ができない。そうしてそれを中止をしないで実験をやって、結果がよかったと、結果によって今度はこう変えた方がよかろう、また実験をするということにすれば、軍縮は結局できない、これをどこかで断ち切るということについては、軍縮委員会あたりに持ち込まれないように、原水爆実験禁止の一本やりでやっていくような態度を、これは大国に伍して多数の国に伍して、大国のいろいろな操作をやる国連の側においてはむずかしいでありましょうが、ただいま外相の言われたような不屈不撓の考えでどこまでもお進みになることを私は強く希望しておきます。  ついでに伺いますが、澤田代表が出された登録制なんか、これに関しましては緊急質問によって批判もされておるようであります。原水爆というものを前提として認めて、そしてそれの登録をする、実験を前提と認めて登録をするというのは、現実の方法としてやむを得ないかもしれませんが、むしろその根本をやはり私は強く主張をされ、あらゆる機会にそれの一本やりで私は続けられんことを希望をいたすのであります。で、伺いますが、登録制に関しましては、軍縮委員会の方に持っていかれてしもうて、将来どうなるのか、近く審議にも上らぬのじゃないかというような気がいたすのでありますが、それの実際のその後の状況はどうなっておりますか。また、それに対しまして日本政府としましては、代表が提案をしたるその案を、いかにして実現をされるというお考えでおられますか、それだけをお伺いいたします。
  24. 岸信介

    国務大臣岸信介君) その後における軍縮委員会及び軍縮小委員会会議の模様は、私の方にもつまびらかにいたしておりませんが、一応軍縮小委員会におきましては、日本の提案を第一順位にこれを取り上げて審議するということになっております。従って軍縮小委員会のその後のなには、すぐ取り上げられてやっているという事情じゃありませんけれども、今後この問題を第一順位に取り上げてやっていくという決定になっているということになっております。
  25. 石黒忠篤

    石黒忠篤君 私の時間は過ぎましたからこれで。
  26. 笹森順造

    委員長笹森順造君) ちょっと速記をやめて。    〔速記中止〕
  27. 笹森順造

    委員長笹森順造君) それでは速記を始めて。
  28. 竹中勝男

    ○竹中勝男君 それではざっと要約して二つだけの問題にしぼってお尋ねいたします。  一つは行方不明、未帰還者の問題です。もう一つは、日韓の相互抑留者釈放の問題。  実は昨日、全国の未帰還者留守家族の大会がありまして、私もあいさつに出ましたが、相当緊迫した、非常に熱心な会合でございまして、もはや戦後ではなくなったとはいわれながら、まだ五万人以上の未帰還者の問題が未処理のまま残されているということは、国の政治の上に、非常にこれは重大な問題だと思います。この未帰還者、行方不明者の大部分、すなわち五万人以上の中の三万五千人くらいまでが中国にあるわけです。一昨年の田付沈平会談——ゼネヴァの場合でも、この問題が出ておりますけれども、未解決です。昨年天津会談、これは、三団体と向うの趙安白氏らとの会談ですが、その場合でも、向うに資料が整っていないので、未帰還者あるいは死亡者の日本における資料を早く提出していただきたい、日本の手持ちの資料を提出していただけば、それによって調査をするということの話し合いがありました。私が一昨年末に、遺骨を持って向うに参りましたときにも、周恩来総理が同じことを繰り返しておられました。これは全くの人道問題でありまして、日中の国交回復の政治的問題とは別に、全く人道上の問題として、政府が向うの政府と、この点については接触をもっと積極的にされなければ、この問題は解決しないと思います。そういう点で、現在厚生省の援護局の中には、その資料があるわけなんです。ところが、その調査の人員がすでにあるのにかかわらず、この際、聞くところによれば、三分の一ほど人員を整理する、その三百人ほどの人がやはり日本におけるこの資料の調査に従事する人ですから……そういうような、逆に今こそ十分この資料を調査して、向うに提出しなければならないときでありますからして、もっと積極的に外務大臣は援護局を督励して、そうして一日も早く向うに、日本にある手持ちの資料を通告されるというようにしていただきたいと思うのですが、その点について、外務大臣の御返事をいただきたいと思うのです。  もう一つは、これに関連することですが、やはり日中の国交回復ということよりも、人道上から考えるべきことは、もっと往来についての制限の基準を緩和していただきたいと思うのです。ことに向うからは、今里帰りの希望者がだいぶあります。ハルピン地区だけでも、六十名の申し込みがあります。大連、天津、奉天の地区にも相当あります。また、日本におる華僑の中にも、向うに里帰りしたい者が相当たくさん申し出ておりますが、興安丸が三月一ぱいでチャーターが切れるということですが、その次のことも考えておられると思いますが、私どもは、遺骨を向うに持って行きたいと思いまして、約四百体ほどすでに準備をしておりますが、何とかこの際、政府が興安丸あるいは他の船を向うに出していただきたいと思っておりますが、これは、団体の方からも外務大臣にお願いしょうということでしたが、あわせて御返事をいただきたいと思います。
  29. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 第一点につきましては、私ども、行方不明になっておる人たちの調査をできるだけ早くやらなければならぬという考えで、厚生省の係の方を督励して、資料も整えたいと思いますが、同時に、整っておる資料が相当ありますので、これは、ジュネーブ日本の総領事から中共の総領事に渡して、そうして、それの調査を依頼する運びにいたしたいと思っております。  それから、日本内地における遺骨を中国に返す問題につきましては、これまでも数回話されておるのでありますが、これは非常に、人道的な立場から見て、必要なことでありますから、それの実現につきましては、できるだけ一つ、外務省としても御協力申し上げたいと、こう思っております。
  30. 竹中勝男

    ○竹中勝男君 日韓の相互の抑留者釈放の問題の解決を、外務大臣は、昨年中にできるだけこれを解決したいというように、非常に重大な決意をしてかかられております。これは大へんありがたいことですが、衆議院の質問に対する御答弁の中で、政府当局は、まだ一つの点が残っておる、これを解決しなければならないというふうに御答弁になっております。しかも、その一点は、李ラインに関するものでもないというところまで御答弁になっておられるようですけれども、相当この問題も、国民が期待しております問題で、早急に解決されるべきことであろうと私は思っておりますが、その一つの点ということについて、これを委員会で御説明願えないものですか。そうしてまた、どういう見通しを持っておられますか、その点について。
  31. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 抑留者の相互釈放の問題につきましては、人道的見地からまずこれをやらなければいかぬということで、いろいろ韓国側と折衝をいたしておりまして、もとは、未帰還のいろんな懸案とからめて、これを解決するというような韓国側の態度でありましたけれども、その点は、これだけを切り離して解決しようというところまで進んできておるのであります。  ただ、それに関連しまして、一点だけ、まだ両者の意見が一致しないものがあるのでありますが、その内容は、実は具体的には、ちょっとまだ申し上げかねますから、御了承願いたいと用いますが、李ラインの問題であるとか、財産権の問題であるとかというふうな、非常に前から論議されている問題では実はないのでありまして、十分当方側の意向がわかれば、向うも了承するのじゃないか、金公使は、大体に、わが方の考え方についても、ある程度納得しているようであります。で、今公使自体が今日朝、韓国へ、新聞に発表しているように、一時帰国しました。これは、この問題を促進するための用務が一番大きな用務であると思うのであります。  いま一つの点は、これは、日本がどうしても譲れない点でありまして、少くとも常識をもって考えれば、日本がそれを譲れないということは、向うが了承しなければならないことであると思うのです。従いまして、何とかこの際は、この問題は長い懸案でありますが、解決できるのじゃないかと思って、相当な私は実は期待をいたしております。ただしかし、韓国との従来の交渉を見ますというと、なかなか最後に、つまらないことと思われるようなことで行き悩んだ例がありますので、非常に注意深く、ぜひともこの問題だけは解決さしていきたいと、努力中でございます。
  32. 竹中勝男

    ○竹中勝男君 外務大臣の熱意のある御努力に対して、国民は深く期待しておると思います。ことに中国に送る遺骨の問題についても、積極的に大臣が考えておられることについては、私ども非常にありがたいと思っております。これで終ります。
  33. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 本日は、これにて散会いたします。    午後零時三十分散会