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1957-08-01 第26回国会 参議院 外務委員会 閉会後第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年八月一日(木曜日)    午前十時十一分開会   —————————————   委員の異動 五月十七日委員佐野廣君及び海野三朗辞任につき、その補欠として大谷贇 雄賛君及び藤田進君を議長において指 名した。 五月十八日委員藤田進辞任につき、 その補欠として松澤靖介君を議長にお いて指名した。 五月十九日委員松澤靖介辞任につ き、その補欠として羽生三七君を議長 において指名した。 五月二十日委員大谷贇雄君辞任につ き、その補欠として佐野廣君を議長に おいて指名した。 六月六日委員加藤シヅエ辞任につ き、その補欠として海野三朗君を議長 において指名した。 七月三日委員海野三朗辞任につき、 その補欠として加藤シヅエ君を議長に おいて指名した。 七月二十二日委員羽生三七君辞任につ き、その補欠として内村清次君を議長 において指名した。 七月二十三日委員内村清次辞任につ き、その補欠として羽生三七君を議長 において指名した。 七月二十五日委員津島壽一辞任につ き、その補欠として小滝彬君を議長に おいて指名した。 七月三十一日委員加藤シヅエ辞任に つき、その補欠として岡田宗司君を議 長において指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     笹森 順造君    理事            佐野  廣君            鶴見 祐輔君            曾祢  益君            梶原 茂嘉君    委員            黒川 武雄君            小滝  彬君            杉原 荒太君            永野  護君            野村吉三郎君            岡田 宗司君            竹中 勝男君            羽生 三七君            森 元治郎君            吉田 法晴君            石黒 忠篤君            佐藤 尚武君   国務大臣    内閣総理大臣  岸  信介君    外 務 大 臣 藤山愛一郎君   事務局側    常任委員会専門    員       渡邊 信雄君   説明員    外務政務次官  松本 瀧藏君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠互選国際情勢に関する調査の件  (国際情勢に関する件) ○派遣委員の報告   —————————————
  2. 笹森順造

    委員長笹森順造君) これより外務委員会を開きます。  先刻委員長並びに理事打合会におきまして、本日の議事運営に関しまして各党、各委員所要時間並びに順序等についてお打ち合わせをいたしました通りに行います。さよう御了承を願います。  まず理事補欠互選についてお諮りいたします。当委員会におきましては、去る五月十七日以来理事一名欠員を生じておりますので、理事補欠互選を行いたいと存じます。互選は投票によることなく、便宜その指名を委員長に御一任願うこととして御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 御異議ないと認めます。理事佐野廣君を指名いたします。   —————————————
  4. 笹森順造

    委員長笹森順造君) この際、藤山外務大臣並びに松本外務政務次官から就任のごあいさつについて発言を求められております。
  5. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私今回はからずも外務大臣の重責を汚すことに相なり、皆様方の御協力によりまして無事その任務を達成することができますようお願いいたします。  なお私は議会の議事運営その他につき全く存じておりませんので、あるいは習熟いたしますまで失礼なところがあるかと思いますが、その点をお許しをいただきたいと思います。
  6. 松本瀧藏

    説明員松本瀧藏君) このたび政務次官に就任いたしましたが、何分にも浅学非才でございますので、皆さん方の御協力と鞭撻によらなければ任務を果すことができないと心得ておりますので、何分ともよろしく御指導のほどをお願い申し上げます。   —————————————
  7. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 本日は国際情勢等に関する調査を議題といたします。  御質疑の方は順次御発言を願います。どうぞ皆様方お楽に服装を適宜上着をとってお願いいたします。どうぞ政府委員の方も御遠慮なく。
  8. 杉原荒太

    杉原荒太君 それでは質問をいたします。  今回の訪米に当りまして岸総理は、アメリカ首脳部人たちと幾多重要な問題について率直な意見交換をなされました。聞くところによりますと、岸総理日本国民の要望しておりますことについてきわめて率直にぶちまけられたということであります。この両国首脳の率直な意見交換それ自体が、今後の日米関係を一そう健全な基礎の上に打ち立てていく上において、大きな意義を持つものと信じます。また具体的成果の上におきましても、たとえば安保条約の問題について再検討の面を打ち出され、またアメリカとの貿易等関係を悪くせずして、中共貿易に対する制限の大幅な緩和措置を取り得る道が開かれましたことは、国民ひとしく希望しておったところであると存じます。今日の世界において有力な盟邦を持つということは、日本全般外交運営の上からいたしましても、きわめて大事なことに違いありません。この意味におきまして、今回の岸総理訪米の結果、日米間の正しい友好関係が深められていきますならば、世界における日本外交的立場を強めていく上において、有力な素地を築いていくものと信じます。このような意味合いにおきまして、今回の岸総理訪米意義相当高く評価さるべきものと思うのでありまするが、私は以下二、三の点についてお尋ねいたしたいと思うのであります。いずれも岸総理訪米に関する問題ばかりでありまするからして、岸総理大臣から御答弁をいただきたいと思うのであります。  第一点は、日米共同声明の第一段にうたわれております、日米協力の諸原則国際緊張緩和の政策についてであります。共同声明に掲げております日米協力の五つの原則それ自体は、よく了解し得るところでありますが、この中には特に国際緊張緩和努力するということが、一つ独立の柱として積極的に打ち出されていない感じがするのであります。私の見るところでは、わが国外交にとって幾つかの大きな柱がある。その大きな柱の一つは、国の安全を守るということである。もちろんそれは極東世界の平和に貢献するということにも連なることは申すまでもありません。国の安全を守るというその目標の上からいたしまして、その方法としては、今日の国際情勢現実のもとでは、一方においてはある程度の自衛力整備するとともに、集団安全保障措置として国連の機能を生かすことに協力するほか、日米共同防衛の方策をとるということは実際上必要であると信じます。  それらの防衛措置と相並んで、他方外交施策の面においては国際緊張緩和をはかるということは、国の安全を守る上からいたしまして絶対に必要であると信ずるのであります。相当防衛措置をゆるがせにしないとともに、これと相並んで国際緊張緩和がなければ、国の安全感が得られないばかりでなく、この共同声明にも明らかにうたってありますように、国際緊張状態極東に存在する限り、琉球及び小笠原の施政権の返還も期待できません。またそれと関連いたしまして、他の国有の領土の問題解決もむずかしくなるおそれがあるのであります。また国際緊張緩和がなければ軍事的負担の軽減も望まれません。さらに国際緊張緩和がなければ、実際上貿易などの国際的経済活動も伸びにくい面が出てくるわけであります。  かような意味合いからいたしまして、国際対立緊張現実に存在しておればおるだけその原因を除去し、国際緊張緩和をはかるための積極的な外交努力というものが、日本外交一つの大きな柱でなければならぬとともに、そうしてまたこれが日米協力原則の重要なる一環となることによって、一そうその効果が発揮され得るものと信じます。またそうあってこそ日米協力に対する国民積極的熱意もわいてくるものと思う。共同声明に掲げられました日米協力原則との関連において、この点についての総理の御所信をお伺いいたしたいと思います。
  9. 岸信介

    国務大臣岸信介君) ただいまの杉原委員の御質問の要点をなしております、わが国外交方針の重要な基調一つとして、国際緊張緩和の問題について御意見を付しての御質問でございました。私杉原委員の御質問の御趣旨には全然同感でありまして、言うまでもなく日本国際連合加盟し、国際連合中心として国際連合憲章原則を忠実に守ってこれを実現することに努力するというこの外交方針は、言うまでもなく日本のわれわれが従来とってき、またわが政府においても終始一貫強調いたしておりまする平和外交中心は、現在世界に存しておるいわゆる東西の対立、この間の緊張緩和し、そうして世界の平和を実現するという点にあるわけでございまして、従いましてこの日米会談におきましても、国際情勢のこの分析並びに将来の見通し、これに対処する考えといたしまして、私はかねて国会において国際間の緊張緩和方向に向っておる、しかし全然これがなくなったということではないが、いわゆる雪どけの方向に向っておるということをかねて申しておりますが、しこうしてこれを推進するということは、言うまでもなくただ単に防衛力増強によって、その力によって、世界の力のバランスによって世界の平和を維持しようということではなくして、真の安全ということはやはりこれを裏づけ政治経済面におけるところの互いの理解と、そうしてお互いのその国の政治経済や、あるいは国の内部の事柄にはお互いが干渉しない、そうしてこれを尊重していくという、これは私は民主主義基礎観念であると思いますが、すなわちわれわれがわれわれの人格の尊厳を守るということは、他人の人格を尊重することであり、同様に国際的においてもお互いお互いの国の主権及びその独立ということを尊重して、そこに理解協力を生むことによって世界緊張緩和していく、これは政治の問題であり、あるいは経済の問題であり、あるいはこれらを通ずるところの外交の問題であるということができると思いますが、ただ単に強力な力を作り上げる、これのバランスによって世界の平和を何するということだけでは、緊張緩和されないのであります。この考えは、私の従来しばしば国会においても表明をいたしておりまするわが国外交基本でありまして、この考えを貫いて、今回の会談を通じてこの考え基本をなしておったことは言うを待たないのであります。従いまして今お話のように、その国際緊張緩和ということ自体を直ちに直接の表現としてこれを取り上げておりませんけれども、しかしこの共同声明の全体の精神は、その基調をもちろんもととして話をしたわけでございまして、今後といえどもわが国外交基本としましては、杉原委員の御意見のように今後も進んでいく考えでございます。
  10. 杉原荒太

    杉原荒太君 次に二つの問題を一緒にお尋ねいたしたいと思います。  その一つの問題は、共同声明の第二段の初めにあります安保条約に関する問題についてであります。安保条約に関する問題の検討日米間において正式に取り上げられるに至ったということ、これは日米関係を一そうファンダメンタルな基礎の上に置く上から見まして、非常にいいことだと私は信ずるのであります。現在の安保条約行政協定内容を見ますると、締結当時の事情のもとにおいては、それぞれ了解し得る理由があったのでありまするけれども、今日の新しい事態、たとえば日本がある程度の自衛力を持つに至っているということ、また日本国際連合にも加盟してきているということ、そういった新しい事態に照しまして再検討を要するものがあるわけであります。たとえば現行条約によりますと、駐留軍兵力量についてこの最大限なども明示しておりません。明示していないばかりでなく、またそれぞれの点について日本側協議ないし日本側に通知を要するというような建前にも相なっておりません。どれくらいの規模のアメリカの軍が駐留するかということ、基地や施設等所要量日本側の経費の負担その他の関係においても、日本側にとっては非常に大きな関係を持つものであることは申すまでもありません。また現行条約によりますと、日本に駐留するアメリカ軍が、極東における国際の平和安全の維持に寄与するために出動するという場合、そういう場合に日本側協議を要する建前にはなっておりません。しかし駐留軍極東において軍事行動に出るという場合には、その結果は日本にとってその影響するところは極めて重大であります。また国連憲章とのつながりを明確にするということも、安保条約の性格を一そうはっきりとさせる上からして必要な、またきわめて合理的なことだと信ずるのであります。日米共同防衛原則それ自体、これを堅持してくずさないとともに、しかしその方法としては、わが国の今申しました自衛力整備進捗状況とか、あるいはその他新しい事態に基いてそれに即応するように、そうしてその新しい事態に即応して実際上の必要の有無、また政治的考慮の上からして適当であるかいなかというような点をよく検討をして、逐次実際に即するように現実的に再検討を加えていくということが、かえって日米関係の大局をよくする上からいって私は必要なことだと思う。そこで、今回この安保条約に関する問題を検討するために、政府間の委員会が設けられることになったのでありまするが、この委員会においてわが方が具体的にどういう問題を取り上げる方針であるか。その辺のところは私はまだこれはいろいろ交渉の都合等もございましょうから、ここにお尋ねすることは差し控えますが、ただこの委員会の権限といいますか、取り上げ得る事項範囲そのものから見まして、私が先ほど申し上げましたような事柄は、いずれもこの委員会において取り上げ得る事項範囲内にあるかどうかという点を明確にしていただきたいと思うのであります。これが第一点でありますが、時間をセーブしますために続いてもう一つ申し上げます。  第三にお尋ねいたしたいと思います点は、これは新聞に伝えられておりますことでありまするが、植村甲午郎氏がアメリカ国防省当局意見交換をした新しい武器購入方式といわれるものについてであります。新聞の伝えるところによりますと、いわゆる新しい武器購入方式として日本円資金アメリカから武器を買い入れるかわりに、米国は受け取った代金で、日本兵器メーカーに対し、東南アジア各国向けに供給する武器を発注する方式について、話し合いがなされておるということであります。そうして植村氏の談話としてかなりここへ詳しく載っておるのでありまするが、これを一々取り上げませんけれども、私がお聞きしたいと思いますことは、これは日本防衛生産に関連するきわめて重要な事柄だと思うからお尋ねするのでありまするが、現在日本自衛体制整備の上からいたしまして、非常な大きな欠陥は、防衛生産裏づけがないということ、自衛隊の使用装備について国内生産裏づけがないという点、これは確かに大きな欠陥であります。そうしてこの問題の打開のためには、財政、経済、技術、その他いろいろな方面で工夫を要するとともに、根本においては防衛方針、計画の確固としたものを作るということ、それとともに国内方面協力ばかりでなく、アメリカ協力を得るということも実際上必要だと思うのであります。そこでこの今のいわゆる武器の新購入方式を私は重視するのでありますが、これはまだそう具体的なはっきりした形態をとるところまではいっていないと想像するのでありますけれども、私のお尋ねいたしたい点は、アメリカ側のこの点についての話の筋は、大体どういうラインのものであるか、またMSAとの関係はどういうことになるような性質のものであるか、つまりMSAのワク内での話し合いになる性質のものであるかどうか、あるいはそれとは別個の方式によるものであるかどうか、その大筋の点だけをお聞きしたいのであります。
  11. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 安保条約改訂の問題につきましては、私前国会におきましても、いろいろな御質問に答えたわけでありますが、この安保条約ができた当時の状況と今日の状態において、少くとも二つの点において非常な大きな事情の変化がある。それは一つは、安保条約締結された当時には、日本は全然自衛力というものを持たなかった、もっぱら国の安全保障というものを、アメリカ軍隊によってされなければならぬというような状況である。しかるに今日においては日本にある程度の自衛力が漸増されてきて、少くとも日本安全保障について、われわれは相当な責任を分担し得るところまできておる。またこの条約締結当時は国連加盟をいたしておらなかった。昨年末加盟した。加盟するにおいてはこの国連憲章との関係、また国連との関係というものが新たに検討されなければならない。こういう点から考えてみて、これに対する再検討をする用意がなければならない時期だと自分は考える。特にこの安全保障条約自体を廃棄するという議論も国内において相当にある現状であり、また国民感情として今言ったような状態のもとに結ばれた条約は、現在の実情に適さない、また国民感情から見てこれが納得できないような点が多々あると思う。今杉原委員の御指摘になりましたように、あるいは兵力量であるとかあるいはどういう装備を持った軍隊日本に駐在するか、あるいはこの条約自体が無期限な状況になっておるがそれに対する問題であるとか、いろいろな点においてわれわれはこれを再検討すべき、また適当な方法によって少くとも改訂に向っていかなければならないという考えを私は会談において率直に述べたのでありますが、これに対してアメリカの何といたしましても、これが恒久的なものでないということはまさにその通りである、また事情が変ったこともよく了承できると、しかし今直ちにどこをどう改訂するかということを論議するということは、いろいろな困難もある。従ってまずこの安保条約から生起する各種の問題、日本に配備する兵力であるとかあるいはこの使用等に関して協議するということを原則にすると、そういう協議をし、また安保条約から生ずる運営面のいろいろな点を、両国の満足するようにこれを運営していくために、両国政府間にハイ・レベルの委員会を作ってここで検討する、さらにこの委員会においてそういう運営上の点その他の、今申しましたような点を扱っていく上において、将来改訂を必要とするという結論に達したならば、両国政府にそれを提案するということも、この委員会がやってよろしいのだ、そういうように、安保条約から起ってくる各種の問題において、事情に適するように、また日本国民感情に合うように運営されるというためには、こういう委員会において十分に討議するということにすることがふさわしいという意味におきまして、この両国政府間の委員会を置くことになったわけであります。従って、先ほど御指摘になりましたような点に関しましては、この委員会がこれを扱っていくということにいたしたいと考えております。  第二に、過日新聞に出ております植村甲午郎君が私の顧問団の一人として訪米をいたしまして、その際に国防省首脳部と話をした。その話のうちに、新聞に出ておるような、武器購入方式についての一つの提案がアメリカ側からなされておるのであります。言うまでもなく、今御指摘になりましたように、日本防衛力自衛力という点から申しまして、防衛産業確立ということは、これは非常に必要なことであります。これの裏づけがないということは、非常な防衛上の弱点であることは言うを待たないのでありまして、これが確立をいたすということも、もちろんわれわれとしては当然防衛力漸増の大事なこととして考えて参っておるわけであります。同時にアメリカにおきまして従来、諸外国に対する武器無償供与ということに対しては、アメリカ国会においてもいろいろな論議が行われておるようであります。これらの事情アメリカ側においても考えて、今後無償供与という方式はなるべくこれを少くして、そうして、有償で譲り渡すという方法をとりたい考えである。しかしそれをドル資金でまかなえということは、日本においての事情からいって困難もあろうし、われわれは、日本防衛力増強のために日本がやっておる努力に対して、その武器購入代金日本に円で積み立ておいて、そして日本防衛産業確立に資するという方法考えてもよろしい。その場合に、日本のみならずわれわれの方から東南アジア諸国に供与すべき武器等を、日本の生産したものから買い上げてこれらに充てるという方法も、なお考えてもよろしいというふうな意見が述べられたわけであります。まだ内容が、具体化するのにつきましては、一つ構想であって、案の内容というものを相当検討を要する点が多々あると思います。従って、その構想につきましては、日本防衛庁あるいは通産省、大蔵省等関係当局におきましてなお検討中でございます。  そして、なお御質問でありましたMSA協定との関係でありますが、これはMSA協定によるところの援助そのものを直接に目的としたものではございませんで、それ以外の範囲におけるものでございます。なお、アメリカ側意向等につきましてもさらに検討をいたし、われわれの関係当局においても今申すような検討をいたしまして、さらに具体的になればこれを御報告申し上げ、もしくはわれわれ政府としての考えをはっきり申し上げることができるかと思いますが、現在の状態におきましてはそういう状態でございます。
  12. 佐藤尚武

    佐藤尚武君 ただいま杉原委員から種々重要な問題について総理の御答弁を促されたわけでありますが、また、私に続きまして社会党側からも同じように重要問題についての質問がおありになることと存じます。私は問題を限りまして、国連関係した点についてのみ総理並びに外務大臣にお伺いをしたいと思うのであります。端的に申しまするならば、日本国際連合加盟いたしました今日、国連に対して十分の力の入った支援をしなければならないという立場にあると思うのでありまするが、さきほど総理大臣の御答弁の中にそのことがはっきり述べられてあるように思いますが、少し掘り下げてそういう問題について政府の心がまえと申しまするか、力の入れ方についてお尋ねを申し上げたいと思うのであります。  ただいまも引用されました先般の日米共同声明には、「日米両国関係主権の平等、相互利益および協力の確固たる基礎に立脚するものである。」ということがうたわれておるのであります。これはすでにサンフランシスコ平和条約において日本主権の平等、連合国対等資格において国交を回復するということがはっきりとうたわれておりまするので、この日米共同声明においても当然こういう主権の平等ということが繰り返されたのだと思うのであります。これは当然なことではありまするけれども、しかし一敗地にまみれました日本といたしまして、主権の平等、連合国世界各国対等の地位を回復するということが何よりも大事なことであるかと思うのでありまして、それがサンフランシスコ条約にはっきり規定された、連合国をしてそれを認めさせたということになったわけであります。しかしそれは何と申しましてもいわば法律上の日本対等資格でありまして、実際の対等資格というものがはっきり認められたのは、何と言いましても昨年十二月十八日の日本国連加盟以後のことであると信ずるのであります。つまり日本対等資格においてあの国連総会に列席をし、各国代表と全く同等資格同等の権利をもってそうして日本を含めた世界的な問題に発言をするということになったのであります。このことは日本にとりまして非常に重要な意味を持っておるところでなければならないと思うのでありまして、その点から言いましても日本国際連合なるものをどうしてもこうしても重要視しなければならないということになると思うのであります。さらに進めまして共同声明には「両国国際連合の諸原則に従って自由と正義に基く平和の実現のため自らをささげるものである。」と言っております。さらに進んでは「このために両国国際連合を支持し自由世界の結束を維持増進することに最善の努力をささげるものとする。」実にこの共同宣言におきましては、日米両国国連に対する態度をはっきりと打ち出しておられるのでありまして、私はこの点におきまして、日本の態度を明確にここに掲げられたということを多とするものであります。国連の諸原則に従って、自由と正義に基く平和の実現のためにみずからをささげるものである。実にこれは私は日米両国、ことに日本の態度としてりっぱなものであると痛感するものでありますが、しかしながら、国連を支持するという方針はそれではっきりしたといたしましても、国連は何と申しましても世論の力でもって動く仕組みであることは申すまでもございません。世界の世論が国際連合に結集いたしまして、その世論によって世界の平和を維持していこうとこういうわけであります。現に昨年あちらに参って総会の空気を実際見まして、一そうその感を深くするのであります。私どもがあちらに参りましたときにはすでにスエズ問題は解決しておりました。そうして米英両国も十一月の末までには完全に撤兵しておったのでありますが、その米英両国の撤兵なるものは国際連合の世論の力、つまり全世界の世論の力が国際連合に結集されまして、その世論の前に、米英と申しましたのは誤まりであります英仏で、英仏両国が完全に撤兵をしたということになったわけでございます。この点は有史以来の非常な大きな出来事であったと思うのであります。こういう意味合いにおきまして、世界の平和を国際連合によって支持していこうというためには、どうしても世界の健全なる世論というものを起さなければならない、その世論によって国際連合を支持するという立場をとらなければならない。すなわち日本におきましてもやはり国民の世論がほうはいとしてその方に向うということが、何よりも私は大事なことであろうと思うのであります。政府におかれましては、そういう点に十分の注意をお払いになっておることとは存じますけれども、まだまだ日本国内における国際連合の知識というものは不十分でありまして、国民の一人々々が国際連合なるものを了解し、何のために国際連合を支持しなければならないのかということをはっきり知った上でなければ、健全なる世論が盛り上るわけはないのでありまして、そういう点において政府といたされましては十分の力を入れて下さるということに、これはお願いをしなければならないと思うのでありますし、その点における政府のお考え等もお尋ねしたいと思うのであります。  従来の歴代の政府におきまして、その点において国際連合を支持するのだということもたびたび繰り返されておりました。あるときの外務委員会でありましたが、しかも与党の委員から、政府国連に力を入れておるとしきりに言ってござるが、実際日本国内においてどういう方面に力を入れておられるかという質問がありました。それに対しての外務大臣のお答えは、十分できるだけのことはやっておるのである、現に日本には国際連合協会というものがあって非常に国際連合のために努力をしておる、政府はこれに対してあらゆる援助を与えておるのであるというような御答弁がありました。ところが実際問題といたしましては、国際連合協会に少くともその当時の政府がそれほど力をお入れになっていたわけではないので、この外務大臣答弁は悪く申しますならばおざなりの答弁であったと言わなければならないのであります。そういう点はおざなりのことではなくて、政府は実際に国内の世論を盛り上らせるために本腰を入れて、この国際連合の運動を支持されるということが、私といたしましてはどうしても必要であろうと思うのであります。ニューヨークあたりの空気を見ましても、日本加盟しまする前から国内のこの国連支持の運動を高く買っておりまして、そうして日本国際連合の味方なんだ、日本国際連合によって平和を維持していこうというかたい決心を持っておる国なんだ、というように日本を見ておったのはこれは争うべからざる事実だと思うのでありまして、つまり国際連合加盟以前にすでに日本のためにいわば地ならしができておったというようなことになったのであります。このやり方は今後もできるだけ力強く推し進めていかなければならぬ問題だと思うので、そういう点につきましての政府のお考えもお伺いいたしたいと思うのであります。  続けてもう一点申しますが、もし政府がそういうふうに国連に力を注がれるということでありますならば、実際に国際連合そのもの、つまり総会なりあるいは委員会なりに対して日本政府としての力を十分にお入れになる、ということが必要であろうと思うのであります。昨年の総会のことを考えてみますと、そう申してはなんでございますけれども、しかも私自身がこの日本代表の一員でありましたために、申し上げることははなはだ言いづらいのでありますけれども、日本政府のやり方としましては、決して十分に本腰を入れて国連を支持する、国連の運動に日本が参加をしたのだ、というようなことにはなっていなかったと申し上げるほかはないのでありまして、代表部の陣容からいいその機構からいいましても、きわめて不十分であったと言わなければなりません。それは昨年は途中から加盟いたしたようなわけでありますから、すべて間に合せでやったというのでありまして、それにはまた相当の言いわけも立つわけでありますけれども、本年以降はそうは参りません。本年はすでにりっぱな加盟国としてしかも最初の総会をお迎えになる、こういうことでありまするがゆえに、国連の総会をあやつっていくという上におきましても、政府はほんとうに真剣にお考えになり、かつまた本腰を入れてそれに当るのだという御決心が、私は非常に必要じゃなかろうかと思うのであります。そのためにはニューヨークにおきまするあの事務局、これは岸総理大臣が先般あちらにおいでになりまして、国連も訪問されましたようでありますし、また事務局等もごらんになったことと思いまするが、ああいったような仕組みではまだまだ不十分だと私は申し上げなければならないと思うのであります。以前国際連盟時代に私ども働いておりましたその当時、たとえば外国人でありまする法律顧問などをわれわれは持って、その人たちと私どもは常に意見交換して、そうして会議に当っておったものでありまするけれども、今まではニューヨークの事務所はオブザーバー程度のものでありましたからして、そういったような顧問等も必要でなかったかもしれませんけれども、現に昨年の総会に臨んでみまして、そういう仕組みのないことを見て実は私驚いたようなわけでございます。それはほんの一例にすきませんけれども、国連に対する力の入れ方と申しますると、今後、このたびの総会から始まりまして、非常な大きな問題に日本も当面しなければならないのでありまするが、そういう際におきまする陣立てというものをまずもって充実されるということが当面の急務ではなかろうか、そういうふうに考えるものでございます。これらの点につきまして総理、もし必要がございまするならば外務大臣においてお答えを願いまするならば仕合せだと存じます。
  13. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 国連に関しての御質問でございますが、日米共同宣言にもその点国連中心世界の平和の増進に努力するということが明らかにされておりますが、従来日本におきましても、加盟前からすでに国連の精神を尊重し、国連というものに日本協力するのであるということを言って参っておりますが、何と言っても当時は国連加盟しておらなかったのでありまするが、今日は加盟し、さらに私が今回訪米の途次、ニューヨークの国連の本部をたずねまして、事務総長やあるいは常任委員会の各国の代表等とも懇談をいたしまして、これら事務総長並びに重要なる国連のメンバーの国々が日本加盟を非常に歓迎し、同時に今後における日本国連内における活動というものに非常な大きな期待をいたしておるのが現実の事実である。言うまでもなく、今お説にありましたように、国連というものが一つ世界の世論を代表し、その世論の力によって、いわゆる正義と自由に基く平和の増進という方向に向って努力をしておることは言をまたないのであります。この国際的世論ということが、いろいろな点において今日までもすでにその国連意義を発揮して、先ほどお話になりました中近東における英仏の出兵の問題等に対処して、この事件が拡大せず平和に処理されたということは、国連世界世論の力であると思うのであります。言うまでもなく、従来の国際関係というものは、少数の大国によって一つの大きな問題が処理され、またわれわれから見て、自由と正義に根拠しておらない、正しいなんでないと考えられましても、二、三の強国のほしいままなる意図によって動かされておるというようなことも過去においてあったのでありますが、国連加盟しておる国々の平等なるメンバーシップのもとに、国際的世論でものが正しく処理されていく、そうして平和がもたらされるという方向にとにかく努力をしており、だんだんとそれが力づいてきておるということは、これはわれわれが看過できないことだと思います。完全にそうなっており、理想的な状態まできておるということは申し上げることはできませんけれども、なおわれわれが加盟した以上は、その使命を十分に国連が果すように、国連の忠実な一員として日本が行動するということが、われわれに課せられておる大きな使命であると、かように考えておるわけであります。こういう立場から、従来国連というものに加盟したい、何かこれのメンバーになりたいというのが、日本国民のひとしく長年考えておったことでありますが、従って国連の問題というものは、加盟前は、加盟するという目標のために国民の世論が結集されておったと思うのです。加盟した今日におきましては、忠実なるメンバー、日本がいわゆるりっぱな行動をするということに対して世論の支持があり、また政府みずからの行動が、そういうふうに国連において活動するということが必要であると思うのであります。  国連に関する国民の認識や、世論の興起が十分でない、まだ非常に遺憾な点が多いというお考えに対しましても、私もこれは十分でないと思います。大きな問題は、要するに国連における日本政府の活動そのものが国民の関心を持つように、また世界の正しい世論の興起に向って、日本の代表がりっぱな十分な行動をしておるという事実を示すことが、国民に第一の理解を深める点であると思います。さらにこれに関する認識を深めるためのPRの問題や、あるいは国際連合協会の活動に対して、政府及び国民の有識者がさらに一段の協力をするということも、もちろんこれは必要なことでございます。十分に私はやはり国連意義国民に徹底して認識せしめ、そうしてこれを中心日本はあくまでやっていくのだという世論が興起するためには、何よりも先ほど申しましたように、これからの政府国連内における日本の代表の活動、これに対して政府が処置するということ自体が、非常な私は大きな必要な問題である、従ってその代表部なり、もしくは国連内における代表の活動に必要な機構、組織、内容等につきましても十分にこれを充実し、遺憾ない活動ができるようにしたいと考えております。御承知のように、日本は来たるべき選挙の際に、安保理事会の理事国として立候補する考えでおりますし、これに対しまして、まあ一般の各国、国際的な世論は、相当日本理事国に立候補し、それに当選することに対して、好意的に動いておるのでありまして、私どもは、それは日本国連内における活動を各国が非常に期待しておるということの一つの表われであり、またそれの期待に対して失望を与えないように、あらゆる面において今後努力をいたして参りたい、かように考えております。
  14. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 国連代表部の充実の問題につきましては、今後私どもといたしましても御趣旨十分了承いたしておりますので、できるだけその問題について十分な手段をとって参りたいと思っております。ただいま松平国連大使が帰国して、そういう将来の代表部の問題その他に対して打ち合せをいたしておりまして、あらためてそういう充実の案その他ができ上ると存じております。予算措置その他がございますので、将来につきましては、本委員会の十分な御協力をお願いいたしたいと思います。
  15. 佐藤尚武

    佐藤尚武君 残された時間が僅少でございますので……。
  16. 笹森順造

    委員長笹森順造君) あと総理答弁を加えて五分残っております。
  17. 佐藤尚武

    佐藤尚武君 先ほど私が、ある外務大臣国内におきまする国連支持の問題について、私自身やっておりまする国際連合協会を引用されたということを申しましたのは、それはおざなりのお力添えであったということを申し上げたその一例として引用しただけでありまして、この委員会におきまして、国際連合に対して政府からの支持をお願いするというようなこと、これはもちろんできるわけのものではない、やってはならない問題であるということは万々承知しております。のみならず、国内におきまする国連関係の運動は単に私どもの国際連合協会があるばかりでなく、そのほかにきわめて有力ないろいろな協会なり、その他のグループがありまして力を入れておりますから、こういう点につきまして今政府が一そうそれらの運動を助長されるという態度を伺いまして、私は国内におきまする国連運動の全体といたしまして感謝を申し上げる次第であります。  残った時間を利用させていただきたいと思いまするのは、七月七日に国際連合のハマーショルド事務総長から日本外務大臣にあてての通牒がありました。その点であります。これは日本外務大臣ばかりでなしに、各国政府外務大臣にも同文の通牒がいったことと思いますが、それは国際連合憲章の効力が発生しましたその日を国際連合デーとして、全世界における全加盟国において、これを記念日として意義のある行事をするということについての通牒であったように了解するのでありまして、これに対してはすでに国際連合の総会の決議がありまするし、この日をもって、国際連合の目的並びにその業績に対して、各国において十分の認識を得るようにこの日を用いたい、こういう決議でありますので、それにつきまして、この事務総長からは、その国その国において、どういう方法をもってこの総会の決議の趣旨に沿うようにされるか、それについていろいろな手段がとられるならばその詳細を国連に知らせてもらいたいとか、あるいはまた当該係官ができたとしたならばそれとの連絡を保つために、その名前なり機構なりを知らせてもらいたいとか、もしくはその日に政府としてのプロクラメーション、声明を出してもらいたい、もしできるならばその国の元首のメッセージを発表されるというようなことも考えられるか、というようなことについての問い合せであるように私は了解するのであります。このことは日本にとりましても非常に意義のあることでありまして、ことに今回初めての国連デーを迎えることでありますから、その点に関しまする政府の御方針、もちろんこれはまだ日があることであります、詳細なことはまだおきまりになっていないと思いますが、お心がまえを拝聴いたしたいと思います。
  18. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 政府といたしましても、十月二十四日の国連成立の記念日に対しましては、できるだけ協力をいたし、またできるだけ力を入れてその目的貫徹に向って参りたいとこう思っております。ただどういう程度のことをやるかということについても研究いたしておりますので、研究次第逐次申し上げる機会があると存じます。
  19. 曾禰益

    ○曾祢益君 私は特に日米会談総理の渡米を中心といたしまして、これは総理にきわめて総括的な質問をなさしていただきたいと存じます。  まず最初に総理はちょうど羽田にお帰りになったときに、ワシントンにおける日米首脳会談は十分に成果をあげ得たものと自画自賛されております。またこの会談を契機としまして、これは共同コミュニュケの言葉を引用するならば「日米関係が共通の利益と信頼に確固たる基礎を置く新しい時代に入りつつある」と、かように述べられているのでありまするが、多くの日本国民から見るならば、むしろ総理の渡米は全体として、国民の期待したところの日米関係の根本的な再検討、これは日米間の真に永続的な友好関係のために必要欠くべからざるものであろうと思いまするが、この根本的な再検討という的をはずした結果となっているのではないか。その意味では渡米は失敗に終ったとわれわれは考えているのでございます。しかも岸アイク共同コミュニュケ、総理の米国国会における演説、並びにニューヨークにおける記者会見等に現われました総理の言動からいたしますると、どうも総理アメリカにおいでになって必要以上に国際共産主義の脅威を強調され、また中立主義の排撃、おそらくこれは中立政策という言葉が正しいのかと思いますが、これも排撃する、こういうような結果、かつては総理みずからも東西両陣営のかけ橋としての日本の役割を強調されておったと思うのでありまするが、それらはどっかに飛んでしまって、いわばペンタゴンの戦略論に追随するところの窮屈な、そうして現にアメリカにおいてすら、御承知のようにハンソン・ボールドウィンあるいはウォールター・リップマンのような一流の軍事評論家や政治評論家が、すでにアメリカ極東における駐留政策や、あるいはアメリカの大陸中国に対する政策の再検討、転換を述べている際にかかわらず、これらのアメリカの良識者から見てもどうかと思われやしないかと思われるように、日本外交路線を狭く固めてこられたのではなかろうか。非常に抽象的なことで、総括的にお聞きするのが正しいかと思いますが、実はこれが国民の聞かんとするところの根本ではないかと思います。従いまして簡単でけっこうでありまするから、すなわちこのような外交路線というものは日米関係の建て直しというものに貢献しない。かえって長きにわたって日米離反の原因を深めているのではないか。またこの意味では新時代に入ったというよりも、むしろ昔の時代に時計の針を逆に回したような感じすらすると思いますが、どうお考えになるか。  四項ばかり羅列してお伺いいたしますが、第二の点は中立主義といいまするか、中立政策の排撃までアメリカにおいて言われたことは、少くとも東南アジアとの理解の増進、提携の強化というものに対してはマイナスではないか、かように考えるのでございまするが、いかがでございましょうか。  第三には、ちょっと私が今アメリカの評論家を引いて申し上げました大陸中国との関係においても、その後の現実に起っている中共政府の態度についての評価は別といたしましても、やはり日本と大陸中国との関係をまずまずもっていくような結果を来たしているのではないか。  第四には、総理は社会党と対決ということを言っておられるのでありまするが、これは大いに戦意を高揚される上にはけっこうかもしれませんが、しかし私は外交の根本については、少くとも与党、多数党、またエグゼキューティヴの立場政府としては、なし得る限りの努力により理解を求める、協力を求めることはあるいはできないにしても、理解を求めるというような基本的態度があってほしいということを、少くとも国民として考えていはせぬかと思うのですが、これらは非常に抽象的なことで恐縮ですが、総論的な点としてきわめて簡単でけっこうでございますけれども、お答えを願いたい。
  20. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私が今回の訪米に際しまして何かアメリカ側の意向に動かされ、あるいは今御質問の中にも引かれましたが、私がペンタゴンの一つ考えに引きずられて不必要に反共、反中立政策というようなものを述べ、これがかえってアメリカとの関係を悪くするのではないか、あるいは日本外交政策としてどうかという第一点の御質問でありましたが、私は私の外交政策の根本として、立国の中心である自由民主主義、これの完成ということが日本の立国の根本であり、これがまた同時に真の世界の平和をもたらすところの道であるという意味におきまして、従来ともこの自由愛好の同じような理想を持っている国々との間の提携を深めて、そうして世界の正義と自由に基くところの平和を確立するのだということは、しばしば言明をいたしておりまするので、私の考えは今回の訪米によって少しもその点は変っておらないのであります。それを今日まで、あるいはそうでなかったのではないかというふうな誤解といいますか、十分な御理解をいただいておらなかったとするならば、それははなはだ遺憾でありますが、従ってそういう考えをもって、東南アジア及びアメリカの訪問の際に、各国の首脳部と同じ考えをもって話をしてきたわけであります。またこの反中立政策ということが、東南アジア諸国日本との関係において、非常にまずくなっておるのではないかという御懸念でありますが、今度私が訪問をいたしました東南アジア諸国におきましてもインド、セイロン、ビルマ等いわゆる中立政策をとっておると見られておる国々、そうでない国々と二つのグループに分かれてアジアは二つであるというふうな見解すらあるのであります。この両方を私は歴訪いたしまして、これらの国々の首脳者ともわれわれの今申しました考えに基いて話し合いをして参ったのであります。私は国際的の外交政策を立てる場合においては、やはりその国の歴史的の置かれている諸種の事情や、あるいはまた現実にその国を取り巻いている客観的の諸情勢というものに基いて、現実にこの政策というものが考えられてくることは当然であろうと思うのです。お互いお互いそういう根本の考えに立って協力して世界の平和を作り上げるというのが、これは私は最も望ましいことであって、どういう立場どういう政策をとるかということは、今申しましたようなことを考慮して、そうしてその国が独立考えるべきものである、こう考えております。しかしてそれは決して非友好的でもなければ、全然違う政策をとっておる国との間にわれわれは非友好的であってならぬことは言うを待たないことです。しかし同時に各国の立場なり、各国の国内政治的形態であるとか、そういうものに対してはこれを尊重していくということが必要なんでありまして、その点においてはあくまでも日本独立立場で、自主的な立場でわれわれの進んでいく道は決定しなければならぬという点でありまして、そういうことについては例えばインドのネール首相との会談におきましても、お互いが話し合ってお互い理解を深めた事柄であるのであります。決して、日本がそういう政策をとることが、東南アジア諸国との間に非友好的な空気をかもすとは私は決して考えておりません。  第三に、中共の首脳部周恩来首相を初め、いろいろと私の言動なり、あるいは私の声明なりを引用して、そうして中共に対して私が非友好的であるというような見解が述べられております。私はその真意がどこにあるのかはなはだ疑う者であります。私自身の言っていることをあるいは曲解し、あるいは誤解に基くものであると私は考えておりますが、少くとも私自身は、中共に対しては従来申しておりますように、今日の状態においてはこれを承認し、これとの間に正式の外交関係を開く段階でない。しかし中共との間に貿易の関係を増進するとか、あるいは文化交流をするとかというようなこととか、あるいはいろいろの人道的の立場において、われわれが協力すべきものに協力するというようなことについては、できるだけこれはその協力を進めていくということについて従来通り考えておるわけでありまして、その点において少しも、特にこの訪米を機として、あるいは東南アジア諸国を回ったことを機として、中共に対して非友好的になったという事実は私は全然ないと思います。  それから最後に、社会党との対決云々という言葉でございますが、私自身の、何か記者会見等の言葉として対決という言葉が使われたように報ぜられておりますけれども、私自身は対決という言葉を使った覚えは持っておりません。ただ私の申したことは、保守党と社会党との間の意見の違うことについては、これをはっきりと国民の前におのおのの信ずるところを明らかにして、国民の批判と国民の世論によってわれわれはこれに対して対処していかなければいけない。ただ単に話し合いをしていく、何か問題を生じないようにする、あるいは意見の違うものは伏せておくというようなことでは、これは問題は解決しない。できるだけ話し合いをしていかなければならぬけれども、ところがとうてい今の社会党の考えと、われわれの考え方と不幸にしてどうしても一致しないというような問題は、これはなるべく国会運営の正常化であるとか、あるいは話し合いということで、意見が一致しなければ、これはもう先に延ばしておけというようなことは、政局を担当する者としては無責任であるから、両方の違うところのことははっきりと両方でその理由なり、その意見というものを国民の前に明らかにして、国民の批判と国民の世論によって、われわれは問題の解決をはかっていくようにしなければならぬということは申したのでございます。この考え方は今日も持っておりますけれども、それ以上何か戦意を高揚するとかというようなことを申したのではございませんから、どうか御了承を願います。
  21. 曾禰益

    ○曾祢益君 これは論争になりますから次に移りたいと思います。またあとでこの点に触れることがあるかもしれません。  先ほど同僚杉原委員からも指摘があった点で、私は裏返し的に申し上げたいのですが、渡米の結果、やはりこれは相当重要な文章である岸アイク共同声明に結果がやはりシンボライズされていると思う。そのうち特に前段の原則等をずっと拝見していくと、全体の調子というものは、やはり国際緊張緩和というようなことには触れないで、むしろ国際共産主義は依然として大きな脅威である。自由世界の侵略阻止力が公然たる侵略防止のために有効な働きをしてきた。あるいはまた自由世界は平和の維持のため軍備が有効な管理のもとに置かれるまではその防衛力を維持しなければならない。これが私の申し上げた、まあ言葉は悪いかもしれませんが、ラドフォード・ロバートソン・ドクトリンというわけなんですが、そういうようなペンタゴン的なペース丸出しなのではないか。こういう点からいいまして私は十分に日本の主張とそれから日米関係をほんとうに建て直すという線は御努力があったにしても、結果においては薄らぎ向うのペースに巻き込まれたという感じが強いわけです。しかしこれはこういう抽象論を繰り返してもしようがございませんから、以下これらの原則を認めた以上一体安全保障条約はどうなったか、沖縄問題はどうなったか、中国関係は、あるいは原子兵器の問題がどうなったかということについて簡単に二、三点伺いたいと思います。  まず安保条約の問題でございますが、これは先ほどの御答弁にもございましたように、総理みずからがもはや根本的に再検討の時期に来ていることを認められているし、また国民条約の改定を望んでいることも米側にお伝えになったと言われております。しかし総理としてはもとよりさっき前段にあるような国際共産主義の脅威を強調し、中立政策といいますか中立主義を排撃する、こういう立場から安保条約日米軍事協力というものはやめないのだ、従って安保条約をやめるという方向のお話はなさらなかったと思うのですが、それはもうおそらくお尋ねするまでもないと思いますが、これは明確にしておきたいと思います。それに関連して総理のお話の中に、少くとも保守党の諸君も考えておられはせぬかと思う点としては、少くとも期限をつけるというような、これのいい悪いは別ですが、そういうような努力なり話し合いもなかったのかどうか、この点をまずお答えを願いたい。
  22. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 安保条約の問題に関しましては、私は先ほども杉原委員の御質問にお答えを申し上げたのでありますが、日本国民感情並びに私自身のこれに基く考えというものは、要するにこれを再検討していかなければならない。そして国民がこれに対して、これの廃棄というようなこと自体を言う人は別として、改定を望んでおるというのは、すべてのことをアメリカ側が一方的に決定できるようなことに対する不安と不満、それから無期限であるということに対する不満と、これが永久に続くという、いつまで続くかわからないということに対する不満と不安が大きな点であります。また国際連合憲章との関係というようなものについても、これは検討をするし、改定を要する点があるというような意見を述べたわけでありますが、これに対してこの安保条約に関して生ずる各種の問題を検討するために、政府間の委員会を設置してここで話し合いをし、検討をするということで意見が一致したわけであります。同時に一九五一年の安全保障条約というものが本質的に暫定的なものである、これを永久に続けるという意図は両方とも持っておらないということが、まあ再確認されたわけであります。今きょう何年という期限を付すという結論は出ておりませんけれども、われわれはこれが永久に続くものだというのじゃなしに暫定的なものだ、従ってある時期においてこれが根本的な改定を受けるということも当然頭に置いておく。しかしそれには準備も要るだろうし、いろいろな検討も要るだろうから、とにかくそのために運営上日々起ってくる安全保障条約上のいろいろな不安なり不満というものを解決するためには、この委員会において話し合って解決するということを、また委員会においてどうしてもこういうことを改定しなければならないと意見が一致するならば、これを両政府に提案して、両政府間においてこれに対する措置を講ずるようなことを考えていこうじゃないか、ということが今度の会談の結論でございまして、国民の意向であり、今直ちに改定するとか、あるいはその改定の内容につきましても、期限の問題であるとか、あるいは日本側の同意を得べき事項であるとかいうものを具体的にあげて改定する、という結論にまで達しておらないことは、国民にも不満とされるであろうと思いますけれども、そういう方向を少くとも具体的に打ち出したものがこの共同声明にほかならない、と私は考えております。
  23. 曾禰益

    ○曾祢益君 これは今の御答弁もあるし、安保条約をなくすと、あるいは期限をつけるというような具体的なことはできずに、また一方においては当然のことでありますけれども、暫定的な性格を確認しただけで、まあ杉原君の表現によれば改定の芽をここで一つふかしたというふうに言われたと思うが、その程度であって、現実には今度できるハイ・レベルの政府間の委員会現実には具体的の問題、すなわち配備あるいは兵力使用、あるいは国連憲章に合うか合わないか、これは米軍の出動に関連したことだと思うが、そういうような問題を取り上げてゆく、付随的に安保条約あるいは駐留の自体そのものについても一つ考えてゆく、ごくその程度のあるいは改定のきっかけになるかもしれないという程度のものではないかと思うのですが、その点は私はただ改定すればいいというふうに毛頭考えておりません。これは申し上げるまでもなく国民の大多数が改定であり、その意味から改定の方向に一歩進んだと言われるならば、それもあまり明確に進んでおらないのではないかという点について御質問をしているわけです。
  24. 岸信介

    国務大臣岸信介君) これは今後の日米委員会の実際の運営といいますか、検討の実際を見ないと、ここで抽象的にどの方へ一歩進んでいるかいないかということを申し上げても、これは結局水かけ論になると思いますけれども、私はこういう安保条約というようなものは日本の安全を十分保障し、ほんとうの平和を維持するためにこれが必要であるという見地からできているわけであって、それが目的を達成するためには、少くとも日本国民の大多数というものが十分にそれを納得し、協力するという態勢でなければ、ほんとうの安全保障やまた平和の維持というものはできないのだ、従って安保条約というものが日本国民の感情からして不満であり、あるいはこれが改定に対して要望があるのを、全然無視して動かさないというふうに持ってゆくということは、決して安保条約自身の目的を達するゆえんではない、この点においてはアメリカ側においても十分理解したことであります。またこの委員会をハイ・レベルにおいて作って、そういう問題を実際扱っていこうじゃないかという話し合いになったことでありますから、今後のこの委員会運営なり、委員会がどういうふうに検討をやるかという実際問題に徴していただきたい、こう思うわけであります。
  25. 曾禰益

    ○曾祢益君 安保条約が残る以上は、私は日本地域における日米協力防衛計画というものは、本質的にアメリカの抱く戦略構想に従わざるを得なくなってくると思います。そしてしかもアメリカの戦略方向は、これはアメリカだけではなくてソ連イギリスを含めて同様だと思いますが、何といっても原子兵器中心になっておるので、従って日本地域だけが例外ではないと考えるわけであります。防衛問題については同僚森君から詳しい御質問があると思いまするが、特に原子兵器につきまして若干伺いたいのは、総理は、今度の共同コミュニュケにあるように、米軍の配備、使用という点について、いわゆる安保委員会といいまするか、今度できる委員会協議するだのから、これはむしろ岡崎アリソン了解事項よりもより明確に、より安全な、アメリカ側からの持ち込み禁止等について保証ができたというように言われておるのでございまするけれども、これは少し皮肉な見方をとられるのを私は恐れるのですけれども、しかし協議して決定するということは、これは言いかえるならば明確に日本みずからはこれを使わない、あるいは、アメリカから持ってくることははっきりお断わりするというよりも、かえって不明確な事態をそとに残しておるような感じすらするのです。少くとも岡崎アリソン了解といいますか、これは外交文書としては不明確であったにせよ、これはやはり同じ程度の協議なくしては、日本の同意なくしては持ち込まない点については事態は一向変っておらないのではないか。もしそうでなくて、いかなる場合においても、みずからの原子兵器による武装なり、アメリカの原子兵器持ち込み絶対に反対だというならば、これだけの重要な会談における重要な文書のどこかに、その明確な表現が出ておっても差しつかえないのではなかろうか、むしろ出ておるべきではないか。たとえば琉球、小笠原に関する施政権の返還については、なるほど意見は合わなかった、しかし少くともコミュニュケの表現の中において、総理日本国民の何といいますか、強い希望を強調をしたということが書いてあります。このくらいのことが原子兵器一切、みずから持たないし、持ち込みもしない、他の方法による安全を考えるのだというような、力強い表現に積極的に欠くるところが私はあったと思う。またそのためではないかと思うのですが、特に羽田におけるステートメントにおいては、秘密の約束はなかったという趣旨のことを言っておられると思うのです。われわれは秘密の約束があったということを想像してはおりません、少くとも私はそのようなことは考えておりません。問題は、しかし明確にすべき、断定的に否定すべきものがされておらないという、客観的にいえば、その方向がしんしんと進んできておるのではないか、その両方の点からいって、どうも国民としては割り切れない点が、また首相の熱意についても、われわれは遺憾ながら割り切れない点を感ずる。この点について明確な答弁をお願いしたいと思う。
  26. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今回のこの共同声明の二項の初めの、政府間の委員会というものの設置、及びこれにおいて日本に駐留する合衆国軍隊の配備であるとか使用、また国連関係を含めて、安保条約から生起する各種の問題を検討するというようにしたのでございまして、私は今お話のように原子兵器の問題を、特に原子兵器というものに対して、何も言っていないじゃないかという御質問でありますが、なるほど原子兵器という言葉は使っておりませんけれども、今後どういう兵器がされるにしましても、日本におけるアメリカの駐留するところの軍隊装備やあるいは兵力量やその他の関係というものは、必ずこの委員会において、それもただ事務的の問題じゃなしに、ハイ・レベルな両国政府を代表する委員会において、話し合いして決定するということにいたしておりますがゆえに、一部の人々が懸念しているような、あるいは原子力部隊が日本に駐在するのじゃないか、あるいはそれが持ち込まれるのじゃないかというような懸念に対しましては、日本政府自体が自立的な自主的な考えをはっきりしている限りにおいては、私はそういう懸念は一切ないものである。問題は、それでは日本自身がどうするかという問題につきましては、今回の会談においてもラドフォード氏も一緒にわれわれが論議した結論は、日本防衛というものは、あくまでも日本が自主的に日本立場において、日本が決定すべきものである、これに対してアメリカが要求したり、アメリカから指図をするということは、これは一切すべきものでないし、しない。だから日本としてはあくまでも日本国際的な地位と、また日本を取りまくところのいろいろな諸情勢に対処して、日本が自主的に考え、また自主的に決定すべきものであるという原則を、はっきりとこの論議におきましても、会談におきましてもいたしたわけでありまして、従って今の問題は、結局日本政府自身がはっきりしている限りにおいては、また私は日本の自衛隊を原子兵器で武装し、あるいは原子力部隊を日本に駐留するということは認めないということを、きわめて明瞭に申し上げておって、その方針さえしっかりしておれば懸念はないものである、かように考えております。
  27. 曾禰益

    ○曾祢益君 ただ三点だけ、時間がありませんからつけ加えさしていただきたい。もう一ぺん原子兵器に関して。原子兵器の禁止と実験の停止といいますか、この問題でありますが、これは共同コミュニュケの原則の五においてもふれております。それからコミュニュケの最後に一項目特に設けられて、ロンドン軍縮会議における問題に関連してふれられてはおります。しかしこれをずっと通覧し、さらに先ほども申し上げました原則の五の中を貫いている精神からみると、結局原子兵器の禁止と実験禁止の問題については、アメリカの主張である、すなわちこれは通常軍備と核兵器は切り離しできない、またいずれも有効な管理査察制度のもとにおいて禁止が考えられる、製造の禁止と実験の禁止は切り離せない、こういう考え、主張におきましてそのまま認めた、と言っては語弊があるかもしれないけれども、どうもそのラインにおいての点しか、共同コミュニュケに関する限りは出ておらないのではないか。こういう点において私は非常に不満に考える。これは付随的な問題でありまするが、たしかニューヨークの外人記者会見における一こまかもしれませんけれども、エピソード的な問題で恐縮ですけれども、外人記者から、本気で原子兵器の禁止というようなことを主張されるのかという問に対して、これは間違っておるかもしれませんけれども、まあやや苦笑い的な態度で、それはできるだけやってもらいたいのだということを言われたという報道すらあって、こういうこと自身が、やはり総理がせっかくの場において最も強く、最も厳粛に訴えてもらいたいということが、必ずしも実現されておらないという感じは、これまた多くの国民が持っていると思うのです。この点についての明確な態度の御表明をお願いしたい。簡単でけっこうです。
  28. 岸信介

    国務大臣岸信介君) この問題につきましては曾祢委員も御承知の通り日本政府として一貫して実験禁止を米英ソこの三国に申し入れてきたのであります。しかしながら、これが一つもどの国においても取り上げられておらなかったことは、これもまた御承知の通りだと思います。しかし私はこの問題についての日本努力、またこれは世界の人類から見て大多数の良識ある人々がこれは賛同する議論である。従って世界の世論を鼓舞することに努めてくるという努力を今日までいたしたのであります。従来のアメリカ政府におきましては、ほとんどこの問題に関しての見解は、従来伝えられておる松下特使の行かれたときの話によりましても、非常な強硬な態度であったことも、これも御承知であろうと思います。今なおアメリカ政府と私どもの考えとの間には相当な開きがあることも事実であります。しかし私はこの問題に関してのわれわれの立場、われわれの考え方というものを、相当率直にかつ真剣に述べましたのに対して、従来からのアメリカの態度からみると、私は今回の会談において原子力兵器に対するアメリカ考え方というものは、それは私の力によって動いたということだけを言うのは適当でないかもしれませんが、相当に前進してきたということを私は認めたのであります。従って、これに盛られておることが、直ちに私はこれで満足でありこれが究極とは思いません。話が少し横道になりますが、現に今年のこの国連の総会にわれわれが登録制を提起したことに対して、ずいぶんな非難もあったのであります。私は少くともこの問題を現実に一歩進めるということが、一歩でも二歩でも進めていく、究極はこれを全部なくするということでありますけれども、実際の国際情勢はなかなかそこまでいっておらないので、少くともこの点までアメリカが進んできたということは、私は世界の世論の力であり、またわれわれの努力が少くとも一部はあずかって力がある、今後ともこの努力は真剣に続けていきたい、こう思っております。
  29. 曾禰益

    ○曾祢益君 最後に二点だけ伺います。第一は、沖縄の関係でありますが、これはもう施政権の返還が無期限的に延ばされた。非常に残念であります。少くとも経過的措置についていま少し明確な点が出ておらないかと思うのであります。住民の福祉を増進し、かつその経済的及び文化的向上を促進するアメリカの政策なるものの実態は何なのか。少くとも現在の問題として原子兵器の持ち込みの問題もあります。さらには軍事基地拡張のための土地の非常な乱暴な取り上げの問題等があります。少くともそれらの経過的な問題についての、何らかのこれは全島民のみならず日本国民全体の大きな願いでありまするが、何らかの結果がないのか、この点を伺いたいと思います。  第二に、続きまして最後に中国関係でございます。これはまあいろいろ申し上げたいこともあるのでございまするが、現実において中共貿易の制限をイギリス等の並みまですることの事実上の了解はできた、これは共同コミュニュケの字句の解釈等からではなくて現実にはそうだと思います。しかし非常に私が遺憾だと思います点は、冒頭にも触れましたが、一々こういう名前を引っぱり上げるのは少しどうかと思いまするけれども、現にアメリカの世論の指導者ともいうべき有力な評論家等が、少くとも日本のジラード事件、相馬ケ原事件、あるいは台北暴動事件、さらにはイギリスのチンコム脱退といいますか、独自の道を行く、こういったような大きな、ちょうど総理アメリカへ行かれる直前の大きな事態を契機として、相当力強くアメリカの対中国政策の再検討、苦悩に満ちた再検討でもやらなければならないだろうという世論が起っているこの際に、そういう際に、一体どれだけのそういう大きな極東に関する問題の話がなされたのか。われわれの今まで受けている印象から言うならば、中共との関係は貿易は希望する、しかし絶対に中共とはおつき合いしない、政治関係は全然別だ、こういったような態度をむしろ強く表明されたように外面的には少くとも受けます。これは私が先ほど指摘したような、むしろアメリカの世論の形成の過程から見ても、時計の針を逆に回したような感じがしてならない。もとより第一回の接触だけから直ちにアメリカ政府を、アドミニストレーションをその方向に引っぱって行くことはなかなか困難であることはわかります。しかしほんとうのトップ・レベルの立場において、アメリカの友人という立場からいっても、この中国政策についてはこれではいけない、ハンソン・ボールドウィンにしても、ウォーター・リップマンにしても、この政策ではもはや手おくれだと思いますけれども、少くとも二つの中国というような、かつて鳩山総理が言ったような線にアメリカが今動いている。少くとも動きかけている。ところが岸さんが行かれた結果はむしろ時計の針をうしろに回したような、あくまでも台湾一本やりだ、政治的には中共はおつき合いしない、こういうような線でのみ話されたとするならば、これは私は非常に大きな会談の山の欠陥ではないかと思う。それについて何らかそうでないというような方向であるならば、私は非常にけっこうだと思うのですが、そういうようなハイ・レベルの話の中に、そういう話に触れたかということとあわせて総理の御所信を伺いたい、この二点について伺いまして質問を終ります。
  30. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 第一点の沖縄問題に関しては、曾祢委員と同様に私も今回の会談において非常に遺憾な状態であったことを率直に申し上げなければならぬと思う。日本の主張とアメリカの主張との間には現在のところこれが意見の一致を見るに至らなかった。しかし私はこの問題に関して、今回のこの会談においては所期の国民の要望に沿うような結論を見出し得なかったけれども、この問題については今後さらに一そうの努力を継続して行って、この国民の世論であり国民の要望であるこのことを実現するように、今後もこれは努力をするつもりでございます。その理由、これに書いてありますように、一つはやはり極東のこの緊張状態が存在する限りは変えないと言っているのですから、この極東の情勢を変えるように、この緊張緩和するように努力することが一つの解決の道である。  それからもう一つの点については、まだ、私は今回のこの会談において相当率直にお互い理解し合い、また将来の信頼関係というものの基礎ができたと思いますけれども、しかしこの共同声明そのものの全体から見ると非常に抽象的である。これを具体的にほんとうに両国が誠実に実現するかどうかということが、本来今後の信頼関係基礎を固めていくことができるかできないかということだと思うのです。従って今後のこの両国理解、信頼関係がさらに一そう今度のことを契機として高まっていくようなわれわれの間に努力が払われるならば、この問題の解決を見出す一つのかぎになると思います。いずれにいたしましても、あらゆる面からこの国民的要望の貫徹のためには、今後も政府努力するつもりでおります。  さらに中国に対する問題でございまするが、この中国に対するアメリカの世論の一部に今曾祢委員がおあげになったような世論のあることを私も承知いたしております。しかし同時に、アメリカ政府の態度が非常にこの点においてかたいものであることも御承知の通りであります。それは、やはりアメリカの世論の大勢といいますか、多数というものが、中国に対して、これは朝鮮事変以来のいろんな経緯もあると思いますけれども、相当の強い反感といいますか、その態度を持っておる。これは、この前の大統領選挙においても、共和党及び民主党を問わず、やはり対中共の関係においては、相当強硬な意見を両候補とも述べておる。これが大衆的なやはり空気であると思うのであります。しかし私は、日本の置かれておる立場から、また国民政府との間の正当なるこの友好関係及び条約関係というものに基いて、これを忠実に履行するということがやはり国際的の日本立場であり、国連自身の現状の状況から見まするというと、中共というものを今日日本が承認するとか、これとの間に外交関係を開くということは、まだ適当でないと、こう思っております。しかし、私の言葉自体にもありますように、私は、恒久的にこの状態がどういうふうに続いていくものであるかということは、これはよほど考えなければならぬ。中国大陸における現在の政府の統治力というものが強化されつつあるという現実も、これを全然無視することができないということは言うまでもないのであります。そういうことについては、私は数回にわたって首脳部との間にも非公式の意見交換はいたしました。しかし公式の、これはアメリカ政府としては、その問題に関する何に対しては、現在御承知の通り非常に強い立場をとっている。それからいろいろこの中国問題に関するアメリカの将来の考え方については、有力な政治家や、あるいは財界の人々、あるいは言論人等の会合の席にこの問題を出して、これらの意見を聞いてみました。実はアメリカとして、ごく率直に言って、今のところ結論をまだ持っていない。一部の事業家や何かの、あるいは二つの中国を認めろというような議論や、あるいは中国大陸等の方の何の問題で、国民政府というものとの関係国内問題として、内政問題として解決しろというような意見もあったし、あるいは現状のままでいくよりほかないのだという意見もあって、実はアメリカとしては、この問題は非常にむずかしい問題として、取扱いについてまだ有識者あたりの一致した結論を持っていないというのが現状ではないかと思います。従って、今日の状況においては、従来私どもがとってきておるその政治的の関係は開かないという政策は、私はやはり今日はとっていくべきものである、かように思っております。
  31. 森元治郎

    ○森元治郎君 私は、共同コミュニケに従って、事実についてお伺いいたします。論争をする時間もございませんから、簡単で明瞭に御答弁をいただきたいと思います。  大体三つの問題であります。一つ世界情勢の認識ということ。第二点は、ラドフォードの説明を総理大臣はどのように理解されたか、聞かれたか。第三点は、アメリカ軍の撤退と削減について。この三点であります。総理は、どうもそのときそのときでうまい話をされるので、いろいろほんとうのところはわからないのですが、今度のアメリカ訪問で、アメリカが、共同コミュニケで見られるところは、軍事的な色彩が非常に強い。大きな政治的観点から問題を処理するというより、軍事的情勢に重点を置き過ぎているように思われます。そこで、私の伺いたいことは、一体軍人とか、あるいは軍人に同調する人々というのは、ことに軍令系統、参謀系統といいますか、作戦などを扱う人々は、相手を過大視する傾向があります。総理も戦時中閣僚をやられて、知っておられるでしょうが、危機だ、危機だ、危機だという軍人の情勢、こういうものをまともにはいはいと聞いて、自分の頭を働かせないと、とんだ方向にもって行かれる。そこで私は、岸総理大臣は、今度の共同コミュニケに見るように、あまりにデタレント・フォースというような、組織力とか、力と団結というようなことだけではなくて、もっと大きな配慮が為政者としてとらるべき必要があると思うのですが、心がまえを伺います。
  32. 岸信介

    国務大臣岸信介君) お話の通り、われわれが目的としておる世界平和というものを作りあげて行く上から申しますというと、森委員のお話のように、決して私は軍事力だけでもって、さっきもちょっと一言いたしましたが、力と力の均衡によって平和が維持されるような考えだけを強調して行くべきものではなしに、さらに広い見地で、政治経済、あらゆる面にわたる考慮をいたすべきものであって、決して軍事力だけに頼るべきものではない、こう考えております。
  33. 森元治郎

    ○森元治郎君 どうか将来とも総理は、そういう両面を常にお話しになっていただきたいと思います。アメリカへ行って、帰って来てから、盛んに反共とか中立放棄とか言う。われわれがおかしいと思って聞くと、自分の持論である、その前までは、もっぱら東西対立緩和にも自分は力を尽したいと言いながら、今度はそれを言わない。どうかおっしゃられるときには、両方バランスをとった話をしていただかないと、いろいろと誤解があって、時間を費して、こうやって質問をしなければならない。  それから、ラドフォードの説明は、二十日の日、第二日だと思いますが、十五、六人集まられて御説明を聞いたようであります。これが一番の今度の会談の実は実質的な重点だと思うのですが、どのように総理は感想を持たれたか、もし差しつかえなければ、内容をお話願いたいと思います。
  34. 岸信介

    国務大臣岸信介君) ラドフォード大将からの説明は、全世界にわたる自由主義陣営と共産主義陣営とのこの兵力配置の状況やあるいは現状、その動き等についてのアメリカ側の情報を基礎としての詳細な説明があり、また、これに対処して、ラドフォードはアメリカ国防省考えておる戦略的な構想について述べられたわけであります。われわれは、もちろん世界のそういう情勢に関する情報としては、最もアメリカが詳しいものを持っておりますから、そういう点においてこれを聴取したわけでありますが、同時にラドフォード大将は、日本のこれらの地位にかんがみて、日本安全保障日本防衛ということがきわめて重大なる意義を持つことを強調いたしておりました。しかし、日本防衛自身は、先ほど申しましたように、日本自身が決定すべき問題であって、アメリカ側からどうしようとか、あるいはこれをこうしろというふうなことを指図し干渉すべき性質のものでないことは言うをまたない。日本のすでに国防会議においてきめられた国防方針や、あるいは防衛力増強の目標というようなものについては、アメリカ側から見るならば、われわれはいろいろな意見も持っている。しかしこれは、日本があくまでも日本立場において、責任ある政府において決定せられることであるから、われわれはこれに対してかれこれは言わない。しかし、同時にわれわれは、この日本に駐屯の陸上部隊については、すでに従来も日本自衛力増強に従ってこれを撤退する方針であって、陸上部隊については、われわれはこれを早期に撤退する用意があるということが述べられたわけであります。
  35. 森元治郎

    ○森元治郎君 一番ここでラドフォードが強調したのは、日本はいろいろな理屈をつけて核兵器を持ちたがらないが、この天下の形勢はこうなっているのですよと、十分にこれを普通兵器のごとく扱って、将来自衛力増強のときには、こういう情勢も頭に入れなければ意味がないぞというげたを私は預けられたと思うのでありますが、さような感じは受けられなかったかどうか。
  36. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 別段私はそういう感じは受けておりませんし、またそういうふうな意味においてラドフォードの意見が強調されたことは、全然私の記憶によれば、なかったのであります。
  37. 森元治郎

    ○森元治郎君 この首脳部との会見のあとの記者会見で、総理は、国務省と国防省との間には意見が違う、しかしダレス長官、国務省の方は、われわれの意見を聞いてくれた。どうも国防省の方が当りが悪かったような発言でありますが、次は、日本には選挙があるからむちゃなことはできない、こういうところを見ると、そんな押しつけがましいことを言われても、防衛兵器は持てない、核兵器は持てないという頼もしい言明のように聞き取れたが、例の岸さんの半面しか言わぬところから見ると、このまま安心できない。自主的にきめる、問題はそこにしぼられてくるようであります。岸さんの右と左の表現の仕方をずっとつぼめると、アメリカは文句を言わないが、自主的にきめることだ、自主的にきめれば核兵器は持てないという結論になるのか、自主的にきめる場合には、これも考慮に入れるのか。かつてあらゆる兵器は憲法違反ではないとおっしゃっておられるので、これを伺うのであります。
  38. 岸信介

    国務大臣岸信介君) これは言うまでもなく、民主政治の何におきましては、国民世論の動向というものに政府といえども従わなきゃならぬことは言うを待ちません。それで私は、日本の国情からいい、国民感情からいい、こういう核兵器でもって日本防衛力、自衛隊を装備するということは、これは国民感情が許さないものであるという見地に立ちまして、過般の国会におきましても、私は、核兵器でもって自衛隊を装備する意思はない、またこれの持ち込みを認める考えはない、あくまでもこれを拒否するということを申し上げたのであります。ただ憲法論としては法律論の問題でありまして、私の見解を憲法の解釈として申し上げただけでございます。
  39. 森元治郎

    ○森元治郎君 アメリカ軍の撤退について、コミュニケの第二項にうたってありまするが、どういう兵力が、どういう種類のどれだけの兵力が、どんな段階で撤退するのか、内容がおわかりでしたらば伺いたい。  それから、そのコミュニケのところに、日本防衛力がさらに増強されたならば、一そう削減すると書いてありまするが、大幅に削減したあとに、一そう削減するほどの兵力量というものが一体残り得るのかどうか、これはアメリカ兵力量です。  それから明年中というのは、この協定ができたところから約一年、大体アメリカの会計年度という意味ですか、来年の一月、暦年を指すのか、そういうところを伺います。
  40. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今回のこの米軍の撤退につきましては、陸上部隊を撤退する、海上及び航空部隊については、将来日本のこれらのものが、部隊が増強されるに応じてさらに撤退する、こういう意味でございまして、陸上部隊等のうち、どういう部隊がいつ撤退するか、すでに撤退の一部は進行中であるように承知しておりますが、詳しいことは、具体的なことは、私承知いたしておりませんが、これは防衛庁とこちらの軍の当局、外務省等が話をして、これが撤退をするのであります。  それから明年中ということは、はっきり明年の何月何日までにということは言っておりませんけれども、アメリカの会計年度に合して、来年の中ごろまでにその撤退は完了するものと心得ております。
  41. 森元治郎

    ○森元治郎君 そうすると、アメリカ日本にいる駐留軍は、ウィルソン長官などの新聞報道によれば、クリスマスあたり二万五千減らす、こういうようなことが出ております。若干の空白ができるわけでありますが、ダレス国務長官のお得意の、あき家であるとどろぼうに入られるという議論からいくならば、しかもコミュニケにうたってある、共産主義の脅威が大へんなものだというところから、どうしてこれは引けるでしょうか。それほど引けるというなら、国際共産主義の脅威毛大したことはないのじゃないかという感じも受けるのですが、この間の話し合いは何かありますか。
  42. 岸信介

    国務大臣岸信介君) これは、今申し上げたように、陸上部隊を早急に撤退するということであり、それは、日本の陸上自衛隊の増強及び現在の装備なり訓練なりの度合いから見て、撤退しても差しつかえない、日本に空白を生じて安全保障上の欠陥を生ずるということはないという見地に立っておるわけでございます。
  43. 森元治郎

    ○森元治郎君 そうすると、コミュニケにある、日本防衛力整備計画を歓迎しというくだりがありますが、歓迎しということは、私は、今総理のようなふうには解釈しないのです。アメリカとして、なるほどお前はよく勉強した、努力賞をここに書いたのであって、それはいいのだということではないと思う。このウェルカムというのは、むしろアメリカの気持は、私はこれはラドフォードあたり、相当アメリカの雑誌、今までのことを総合してみれば、むしろ日本にこの際は期待していないのじゃないか。従来みたいにややこしくせっついてこない。持たないなら持たないでいい。強い武器を持たないなら、おれの方は引くと、こういう感じを受けるのですが、どういうものでしょうか。
  44. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 従来日本には、政府としてきめた正式の国防計画というものは実はなかったわけでございます。御承知の通り防衛庁の試案というようなことは言われておりました。国防会議において検討して、一応の目標というものを決定をいたしたということ、従って政府はその方針によって増強するということを明らかならしめたことが、アメリカ側として大へんけっこうなことであるという意味でございまして、その内容そのものについては、私は、アメリカ立場から、いろいろラドフォード大将の世界情勢の説明等から見まするというと、決してすべて満足しておるとは思いません。しかしそれは、あくまでも日本の国情なり日本経済力なり、各種事情で自主的にきめるものである、しかし計画ができて、それを実行するということは、日本安全保障の上からいい、それがひいて極東の平和にとって大へんけっこうだ、こういう意味であります。
  45. 森元治郎

    ○森元治郎君 何かそういうところにお互いに、水くさいといいますか、冷たい感情が流れておるように感じられる。これがなかなかの大仕事だ。藤山外務大臣も御苦労なさるところはそこだろうと私は思うのです。そこで、本土からアメリカが撤退するけれども、このとばっちりは、アメリカの沖縄、小笠原確保にうんと力が入ると私は想像されます。従って沖縄の施政権返還とか、あるいは沖縄、小笠原の返還、千島の返還ということもいよいよむずかしくなる。これは軍事情勢からの判断でありますが、どうお考えですか。
  46. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 沖縄の問題につきましては、先ほど曾祢委員の御質問にお答え申し上げたわけでありますが、この領土問題の解決という問題、われわれが北及び南に持っておる両方の領土問題の解決というものは、日本国民の要望からいって、ぜひとも実現しなければならぬ問題でありますけれども、非常な困難を伴う問題であることは、私どももよく承知いたしておりますが、特にアメリカのこの日本内地の陸上部隊を撤退することによって、その問題が特に困難になったものだとは私は考えておりません。本来この問題は、非常に困難な問題であるということは十分に理解いたしておりますが、この軍隊の撤退につれて特にむずかしくなったというふうには私は考えておりません。
  47. 森元治郎

    ○森元治郎君 あと一つ。特にむずかしくなったのではないかもしらぬが、将来なるということを私は伺っているのであります。  もう一つは、このコミュニケの中に、外務省の条約集の第二項、三ページに、アメリカ軍の「配備及び使用について実行可能なときはいつでも協議することを含めて、」とありまするが、この一句、どちらが入れたのか知りませんが、前文を殺す結果になっているような感じがするということが一つ、もう一つは、政府日米間の委員会の設置をだいぶ急いでいるようでありますが、安全条約についてどのような形で申し入れをされたか、常識的に改訂改訂といいますが、政府は、安保条約は再検討の時期に達したという表現で申し入れをされたように私は伺っております。その点がどうか。それから、もしそうだとするならば、この政府委員会の第一に議案にしなければならないのは、日本政府として義務のあるのは、やはり安保条約検討に関する具体策を持って臨まなければならぬ。これが日本側の第一の議題と思うのですが、いかがですか。
  48. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 御指摘の、「実行可能なときはいつでも協議することを含めて、」という、こうある。実行可能であるか可能でないかという意味において協議がされない場合が——実行可能でないときはしない、こういう点において骨抜きになるのじゃないかという御懸念でございます。もちろんこの「実行可能なときは」という文句がないのに比較して、あるということは、それだけの例外があるわけでありますけれども、言うまでもなく、これは、原則はあくまでも配備及び使用について協議するということについて完全な意見が一致しておるわけであります。ただ想像すれば、非常に緊急な、その事前に協議することの余裕のないような事態が起るかもしれない、そういう場合のことを考えて、「実行可能なときは」ということを入れたわけでありまして、実際の問題としては、またわれわれが非常に懸念しているような問題につきましては、十分協議する余裕のある問題でありますから、この言葉がありましても、決して骨抜きになるというようなことは私はないと思います。  それから、安保条約の問題につきましては、しばしば申し上げている通り国民の大多数の人は、改訂すべきだと、また改訂事項につきましても、いろいろな意見が出ております。私は、とにかくこれが締結された当時と非常な事情が変っておる現状においては、少くともこれを再検討して、適当に国民感情に合うようにこれを改訂することが望ましい、こう考えております。こういう意味において、アメリカ側と話をしたのでありますけれども、今すぐ改訂問題を具体的に取り上げるということは、なお研究を要する幾多の問題があり、米国内におけるところの事情も存在するから、この最高レベルの委員会を設けて、実際上その運営において、両国が満足するような運営をして行こう、しかし、どうしてもそれができないというような場合においては、さらに両国政府に提起して、改訂問題も両国政府において取り上げるというようなことも考えることが適当である、こういうわけであります。
  49. 羽生三七

    羽生三七君 同僚曾祢、森両委員質問に関連して、二点だけお伺いをいたします。前の吉田総理はよく議会の質問で怒ったこともあるし、鳩山総理は感情に激すると泣いたこともある。ところが、岸総理は実にそつのない人で、ちっともすきのない答弁をされて、あまりおもしろ味がないのですが、(笑声)外務委員会はおもしろくある必要は少しも私はないと思うのですが、しかし、さっぱりわからないことがあるのです。それは、わかったことは、イデオロギーが明確になったということです。自由国家群の一員として、対米協調政策を基調とする反共政策である、このイデオロギーは明確になりましたが、しかし政策を具体的に検討していくというと、相当わからないことがあると思います。だから、よほど気をつけないと、岸総理方針というものは、外交上で言えばイデオロギー外交になる。かつて失敗したイデオロギー外交を操り返すことになるのじゃないか、この杞憂が十分あります。そういう点で、具体的にお伺いいたしたいことは、先ほどから御質問になった日米共同声明においては、たとえば、安保条約は暫定的なものであることを双方で確認したわけであります。しかしこの場合、暫定的という意味は、将来これを解消を目標としておるのか、あるいは部分的な改正であるのか、この辺が必らずしも明白ではない。なぜ私はこのことをお伺いするかというと、これは、日本防衛基本的な問題に関連するからであります。たとえば一国防衛方式で、米軍の完全撤退、具体的に言えば、地上部隊のみならず、空海を含む米軍の完全撤退を目標として、これにかわり得るだけの日本防衛力を保持しようというのか、あるいは一国防衛ということは日本としては困難であるから、現在の安保条約基礎として、しかし条約上の不備もあるから、その部分を部分的に改正を行おうというのか、さらにまた、双務協定的な新しい条約を指向しているのか。昨日の衆議院の外務委員会では、藤山外務大臣は、対等条約ということを言われました。対等にするならば、私がこの前予算委員会指摘いたしましたごとく、よほど気をつけないと、これは海外派兵の義務を負う。そうでない限り対等双務協定ということはあり得ない。そういうふうに考えてみますると、この安保条約に手をつけるのはもとより望ましいところでありますが、何を指向しているのか、これらを明確にしないと、これは岸総理は、どこからつかれてもすきのない御答弁をしておるけれども、私たちは、日本防衛基本的な方向というものはのみ込めない。ここで私は、こまかい条約上の解釈なんか少しもお聞きしたいとは思いませんから、岸総理の、今の私の質問に関連する日本防衛基本的な構想について、見解を明らかにしていただきたいと思います。
  50. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 一国が完全な独立国である以上は、一応その国の安全保障というものの第一段の責任を持つものは、その国を作っておるところの国民でもってその国の一応の安全保障をするのは、これは当然のことであろうと思う。他国の軍隊をその国に駐在せしめる以上は、いろいろな権益を与えざるを得ないのでありますから、そういう状況にあることは、私は、一国の完全な独立ということから言えば、望ましいことじゃないと思うのです。また同時に、世界の情勢から見まして、一国でもって完全なるその国の安全保障というものができないことも、こういうことも事実あります。従って、一応の安全保障ということを申し上げるよりほかない。ただ、この見地に立って見ましても、やはりその国の経済力であるとか、国情であるとかいうことと、世界の情勢というものとをよく検討しなければならないのでありまして、そういう目標を持っておっても、時期的に言って、直ちにそれが具現するか、その方向に向って行くにしても、その過渡的ななにをどうするか、また究極の世界平和が本当に確立されない限りにおいては、どの国も絶対的に安全だということは言えないわけでありますが、そういう究極の目的というものと、こういうふうに分けて私は考えないというといけないのじゃないか。そこで、日本防衛体制としては、一応とにかくわれわれが国情及び国力に相応した、これに順応してわれわれの自衛力というものを増強して、一国の国民安全感を持ち得ると、政府なり世論の一般のものが持ち得ると考えるところの防衛力というものは自国だけでやる。そうして外国軍隊の駐留をなくするということは、私は一つの目標である、これに向って進んでいかなければならない。しかし、将来の究極の目的としては、私はやはりしばしば言っているように、国際連合集団安全保障という制度を確立して、これによって、できれば国連軍というようなものができて、強化されて、そうして各国の、これに加盟しておる国々の安全保障というものをそれが確保する、それによって世界の平和が維持されるというところの方向に各国の努力というものは漸次向っていっている、また向っていくべきものである、かように考えます。
  51. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私が対等なる安保条約と言ったという誤解があるのですが、私は、対等なる立場に立って安保条約の運用なり、あるいは将来改訂の場合に、対等立場話し合いをするということを申したので、対等立場で話をするということは、必ずしも双務協定的なものにすぐに結論になるということではないので、お互いに長所、短所をまぜ合せる場合もあるわけですから、さよう御承知を願います。
  52. 羽生三七

    羽生三七君 ただいまの岸総理の御答弁については、まあ私、相当矛盾もあるし、お尋ねしたいこともたくさんありますが、時間的に制約があるので、もう一点だけ次の問題をお尋ねいたします。それは、先ほど曾祢委員からお尋ねのあった、中共に関する問題でありますが、先般台湾で総理が言われた、本土反攻はけっこうだというようなことを言われたように聞いておるのですが、これは事実なんですか。真疑のほどをちょっと先にお伺いいたします。
  53. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 新聞等に伝えられているような意味において、私は本土反攻をけっこうだとか何とか言った事実はございません。ただ、こういう話があったわけであります。蒋介石総統は、どうも日本の情勢を見るというと、台湾が非常に狭いし、小さいところへあくせくしているようなために、もう台湾というものは絶対に中国大陸に呑まれてしまうのだという見解が日本にあるように自分は想像するけれども、中国民族の永遠の理想は自由の確保にある。これは、四千年前からの中国歴史を見るならば、これほど、中国民族ほど、自由を愛し、真の自由に徹する民族はない。今の中国大陸における情勢は、それをわれわれから見るというと、自由が拘束されておる。こういうなにがたとえ一時的には起るけれども、長く続くものじゃない。従って、われわれの理想である中国を自由化すということは、これは、五カ年かかるか、十年かかるか知らないけれども、必ず実現するのだ、これは歴史が証明しているし、自分はそういう意味において、中国本土を自由に解放するという信念並びに決意は、牢固として動かないものがあるということを蒋介石総統が述べたわけであります。私は、その意気並びにその信念の非常に強いことに対して敬意を表したという事実は、ありのままの事実でありまして、それ以上のことはございません。
  54. 羽生三七

    羽生三七君 しかし、ずいぶんこれは内外に誤解されておりますので、この機会に大陸反攻、軍事的な意味の大陸反攻は絶対反対だ、好ましくないということを総理が認められたと了解してよろしゅうございますか。
  55. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私は、現実的に、そのいわゆる中国内部の事柄としてどういうふうな事態が起るか、またどういうふうなことを考えておるかということについては、一切われわれが他から干渉すべき性質のものではないと思います。しかし私は、いずれにしても、世界に平和を望み、ことに極東において平和を望んでいるように、極東の一部においても全部においても、兵力が使用されて、戦禍が起るということは望ましくないこと、言うをまたないのであります。そういう意味において私は、軍事力を持ってどちらがどちらに反攻する。あるいは併呑するかということは望ましくないということは当然であります。
  56. 羽生三七

    羽生三七君 これで私の質問終りますが、最後にもう一つお尋ねしたいことは、この一国の安全保障を、私は、日本でいえば、自衛隊の増強だけで保持し得るものではないと思います。戦争の起る条件を取り除いていかなければならない。ところが、この岸政府の政策は、緊張を取り除くことよりも、自衛力増強にのみこの自国防衛に対するウエートを置かれている。これは、先ほど杉原、曾祢両委員からも御指摘のあった通りであります。そういう意味で、台湾海峡の緊張緩和することが、私は日本の安全に非常に重大であると思います。ところが逆に、今直接には軍事力が行使しないと言われたけれども、若干緊張緩和とはいささかどうかと思われるような御発言もありましたが、それはとにかくとして、私の不思議に思うことは、日本が太平洋戦争を終って十二年、しかも太平洋戦争がシナ事変から起っているのであります。その相手国である中共本土に対して、あまりに日本政府はかたくなである。私は、共産党と全く立場を異にいたしているのであります。これはもう、御列席の各位の御承知のところであります。立場を異にしている、それにもかかわらず、戦後十二年、日本があれほど迷惑を与えた中共に対して、承認をしてやるとかやらぬとかいうことをいつまでもやっているのは、私は得策ではない、またとるべき策ではないと思う。むしろアジアの緊張緩和は、中共の国連加盟にあるのだ。だから、日本がむしろ積極的に中共との国交を回復し、あるいはすみやかなる戦争終結宣言をやって、そうしてできるならば、日本があっせんの労をとって、国連加盟に道を開く、これくらいなことをやらなければ、六億の人口を持つ、しかもお隣であるこの大陸中国に対する私は日本外交ということは成り立たぬと思うのであります。私の言うことが抽象的で、今の政府のいうことが具体的だ、現実的であるんだというようなことをよく言われるのでありますが、私はそうではないと思います。追随主義は必ずしも現実的ではない。私は、世界の大勢を見るならば、中共の国連加盟は近きにあると思う。しかも、日本がこれだけ迷惑を与えた国でありますから、これは、アメリカの意向もありますが、少くとも日本が承認すべからず、日本が承認しませんということは、積極的には言う必要は少しもない。そういう意味で、貿易の振興もとよりけっこうでありますが、もっと中共との国交回復について政府が、あるいは戦争終結宣言でもよろしい、いずれにいたしましても、もっと積極的な態度をお持ちになるべきだと思いますが、この点に関する御見解はいかがでございましょうか。
  57. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 中国との関係におきましては、羽生委員御承知の通り、われわれは、何千年にわたって非常な親密な交際を続けてきたのでありますが、不幸にしてシナ事変が起りまして、当時中国を統治しておった蒋介石の政府中心とする中国とわれわれは戦いをしたわけであります。で、今お話の、中国の民衆に対して迷惑をかけたことも少くないと思います。しこうしてその終戦の事態も、蒋介石政権のもとに終戦が行われ、そうして当時中国を統治しておった蒋介石氏が、うらみに報いるに徳をもってするという、一切の戦争中における日本の行動に対しても、われわれは寛大な処置をもってやるという宣言をし、それがひいて国民政府との間に国交を正常化するという沿革をとってきたことは、御承知の通りであります。その後、中国の国内事情は非常に変りまして、中国大陸は毛沢東の政府によって統治せられ、台湾を中心として国民政府ができて、事実上中国国民政府というものと中国の人民共和政府二つが広い意味における中国を支配しておるという、こういう事実が生じたわけであります。私どもは、この沿革とこの事実を全然無視して一つの理論を立てるということは、これは非常に現実から私は離れるものであると思います。従って、この事実は、あるいは一応この二つの中国という現実のなにから言って二つの中国じゃないかという理論もできましょうし、そうじゃなくて、その問題をどう解決するかという問題は、中国自体が解決すべき中国の内政問題である、解決されたことによってなにしていくということも一つ考え方でありましょう。しかし、現在の状況から言うというと、決して中国大陸を支配しておるところの毛政権、毛沢東の政府というものが台湾自身を統治しておるということを言うことはできないと思います。また、台湾自身が中国大陸を支配しておるということも言えないと思います。こういうこの国際現実というものが調整され、解決されない限りにおいて、先ほど言ったような沿革をとっておる日本が、直ちに中国政府、中国人民共和政府というものを認めるとか、あるいは国際連合が加入を認めるということになるならば、一体国民政府自身が安保理事会の常任理事国であって、それのメンバーになっておる、それをかえるということがこの国際連合加盟しておる多数の国の意向であるかどうかというような点が全然まだ未解決の状態で、解決の方向すらついておらない状況に私はあると思います。従って、そういう状況のもとにおいて、一方においては国民政府というものと正当に、これとの間に先ほど言ったような沿革から平和条約を結び、友好関係を結んでおって、ただそれが無力であり、それが将来性がないからわれわれはなにするのだというふうな見解に立つわけには私はいかないと思います。しかし、この中国におけるところの状況の今後の推移なり、あるいは国際的にどういうふうな方向に持っていくべきかということについては、日本としては、アジアの一国とし、あるいは非常にさっき言ったような深い関係にあり、また、地域的にいっても非常に近い関係にある日本としては、非常に重大な問題として考えていかなければならない、こういうふうに思っおりますが、結論としては、今のところにおいては、まだそういう政治的な関係を開くべきでなしに、貿易その他の関係においてはこれを増進していくべきである、こう思っておるわけであります。
  58. 笹森順造

    委員長笹森順造君) まだ発言の通告の方々がございますが、時間も予定を過ぎております。従って発言の順位をかえまして、これからお願いいたしまする方は、できるだけ簡潔にお願いをいたしたいと思います。
  59. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 私は往復十分の時間をいただいておりますが、御答弁一つ簡単にお願いをいたします。  第一は、日韓問題であります。くどい話はいたしませんが、家族にも、あるいは関係者、私にも、渡米前に、相互釈放を実現するとかたく約束された。それがどういう工合に影響したとか何とかいう言いわけは必要ございません。一国の総理国民に約束された、それが実現されないで今日に至っております。それについてどういうように責任を明らかにされるか、岸総理にまずお伺いしたい。
  60. 岸信介

    国務大臣岸信介君) これは長い問題でございまして、少くとも渡米前にはこれを解決して、相互釈放を実現する考えのもとに、私はあらゆる努力をいたしたのでございます。しかし不幸にして、これはもちろん相手方のある問題でありまして、私としては、従来の行きがかりにとらわれず、相手側の希望等もいれられる限りにおいてはいれた最終案で、そうしてしかも、大体韓国政府を代表して東京におる私の折衝した代表者との間におきましては意見が一致して、それを実現しようということでありましたけれども、韓国政府の内部におけるいろいろな意見がございまして、これが実現を見ることができず、今日に至っていることは、非常に私としても遺憾であり、またこれの関係者の諸君も非常に失望をされておることと思います。しかし、私自身が誠意をもって今言ったようなことを実現しようとして努力したことに対しては、関係者の人も、相当に当時の事情を説明して御了承をいただいたことと思いますが、なおしかし、この問題の解決につきましては、政府としてもぜひやりたいと思いますし、新外務大臣におきましても、その努力を続けておられるわけであります。
  61. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 この問題について時間がございませんから、他日藤山新外務大臣に御質問を申し上げ、それから責任を明らかにして参りたいと思います。  次は、沖縄、小笠原の問題でございますが、これも沖縄の県民代表に、あるいは私どもに強く約束された、四原則についても強く折衝するということ、それから施政権については、全部が一ぺんにいかなければ、教育施政権というような御答弁がございました。ところが、結果は共同声明に明らかでありますが、私どもに約束された態度と実際にアメリカに行かれて交渉をせられた態度とは違うんじゃないか、プレス・クラブにおける向う側の記者から、琉球、小笠原の問題の解決については日本側は何を望んでいるか、もっとはっきりしたらという質問があったにもかかわらず、米側が方針を変えられない事情理解できるといった、こういう態度であったと聞きますと、私は、国民に対する岸総理の態度と、アメリカ側に対する態度あるいは笑顔というものが違うということを考えるのでありますが、その点を一つ明らかにしてもらいたい。
  62. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 沖縄問題については、結論として、私国民の要望にこたえることができなかったことは非常に遺憾といたします。しかし私自身が、今、吉田委員が、約束したことが実行されておらぬと、こういう何でありますけれども、私自身としては、この問題に関しては最も率直にまた強く、沖縄住民のみならず、沖縄住民の要望は即同胞である同じ民族である九千万国民全体の要望であるゆえんを強く述べまして、そうしてあそこが平和条約やその他の条約上、アメリカがここに軍事施設をするということ自体に対して、われわれは、将来は別として、今日のところそれに不満があり、それをくつがえそうという考えじゃないんだと、しかし、施政権自体を持っておるということについては、そこに軍事施設をしなければならないから施政権を持たなければならないのだということは論理的に矛盾しておると、しかし、こういう問題は、解決するのにすべてを一時にやるということがむつかしいならば、あるいは教育権等、一部から返していって、漸次その目的を達成するようにするという方法もあるじゃないかというような点に関しましても、あらゆる点を十分に述べたのでございますけれども、この問題に関しては、私は、アメリカ政府の根本の態度は変っておらないと思う。今日の現状においては、これは返すことはできないし、また返すことは日米両国のために自分たちは望ましくないということの一点張りでございまして、意見は物別れになっておるのであって、共同声明にもそのことを明らかにいたしたわけであります。結果として達し得なかったことにつきましては、私は実に遺憾でございますけれども、先ほど申しましたように、この問題の実現については、なおわれわれが一方においては国際緊張極東における情勢の変化に努力するとともに、一方においては、われわれがせっかく理解と信頼の基礎を置いたのでありますから、それをますます固めていくような今後の両国の態度なり両国政府の実行において、この問題を解決するかぎを見出していきたい、かように思っております。
  63. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 具体的にお尋ねをしたい点がございますけれども、時間がございませんから、他日に譲ります。  最後にお尋ねをしたいのですが、日米共同声明と、それから岸内閣の外交方針とはそのまま同じなのか、あるいは違うのか、先ほど来の答弁を聞いておりますと、若干疑問を持つ。これは、アメリカに向ける笑顔と日本人に向ける顔が違うんだと思うのでありますが、しかし、共同声明に書いてあるところをもってすれば、はっきり自由主義陣営に属し、反共——これはイデオロギーで反共ということはないでしょうから、これは反ソあるいは反中国だということだと思うのでありますが、しかも力の政策に立つのであります。戦争諸施設、あるいは個別的、集団的な自衛云々と書いてありますから、アメリカのいう力の外交政策、あるいは巻き返すという言葉も使われるのでありますけれども、力の政策に立つということは間違いないと思うのであります。そうすると、東西両陣営のかけ橋になるということも、これは事実上おやめになった。あるいはアジア諸国とのかけ橋ということも事実上なくなる。中国の承認問題もございましたが、これは中国不承認という態度が出てくると私は思うのでありますが、あるいはバンドン十原則も否定せられるということになるのでありますが、その結果は、中国との間に今貿易問題についてたくさんの問題がございます。通商代表部の設置問題、あるいは支払協定の問題、あるいは中国で見本市を開くという問題もございます。あるいは商社の代表が引き揚げてこなければならないかもしれぬ。夫帰還者の調査について拒否された、あるいは原水爆禁止大会の代表を制限する等々のたくさんの問題がございますが、けさの新聞には、先ほど同僚羽生委員指摘されました、岸総理の台湾での発言の問題もございますし、読売新聞には、中国貿易問題も取り上げられておりますけれども、共同声明に盛られておるような態度では、実際のそうした貿易あるいは対中国関係について、悪くなってもよくはならぬ。だんだん悪くなっていく。今以上に貿易の拡大もできない。それだけでなしに、インド、ビルマ、インドネシア等——アメリカとの間に特別の友好関係がある国々はとにかくでありますけれども、アジア諸国との友好関係の促進ができない。貿易の進展もできない。インドネシアの賠償問題も私は進まないと思うのでありますが、そこまで、この共同声明に盛られた方針がアジア諸国との友好関係あるいは貿易も伸展しないということでいいというところまでお考えになっておるのかどうか。その点を、時間がありませんから一括して、考えておられるかお尋ねしたい。
  64. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 日米共同宣言に盛られておる考え方は、先ほど来私がしばしば繰り返して申しますように、私が従来考えておることと少しも変更しておるわけじゃございません。また、東南アジア諸国を歴訪した際におきましても、この考えと同じ考えを各国の首脳部と話し合っております。われわれが自由民主主義立場を堅持し、その自由民主主義国家として完成していく——要するに人類に平和をもたらすのには民主主義方法によって、繁栄と進歩の上に平和を築いていくというこの理想は、日本の立国の精神であるのみならず、その考え方で世界の平和をもたらそうということに対しては、私はどの国においても異論がない考え方であると思うのであります。従って、そのためにどこかの友好を害す、貿易を害す、日本の伸展を害するというようなことは絶対にないのでありまして、吉田さんはいろいろと御心配になっておるようでありますが、私自身はそう思っております。ただ、中共との間の貿易増進の問題に関しまして、御承知の通り、具体的の幾つかの問題がございます、御指摘がありましたごとく。これをどう解決するかということにつきましては、いろいろ国内の法制上、従来の取り扱い等の関係もございますし、いろいろな問題もございますが、できるだけ貿易を増進するために、われわれはあらゆる便宜の方法等につきましても考慮をいたし、研究をいたしておる状況でございます。なお、その貿易の増進につきましては、御承知の通り、新外務大臣は、特にその方面につきましては、経験と十分な見識を持っておる方でありますから、私は、具体的の問題を解決するについては、さらに有効適切な方法が見出だされるものであると信じております。
  65. 竹中勝男

    ○竹中勝男君 時間の都合で、二つだけの御質問を簡単にいたします。二つとも非常に緊急な問題であり、非常に具体的な問題です。  岸総理にお尋ねいたしたいと思いますが、一つは、中国紅十字会の会長李徳全女史を団長にして、日本に感謝親善の使節団をよこすということについて、すでにこちらから招請を出し、向うは十人の人が三週間の予定で、七月、八月のころに日本に来たいという返事を得ておるわけであります。これの起りは、先般の国会開会中の委員会におきまして、政府が三万五千人の日本人のまだ行方不明者、未帰還者が中国にあるという前提のもとに、留守家族の非常な要望に動かされて、すでに三回にわたって中国政府にこの人道の問題を解決するため働いて、努力されておるわけです。ところが三回とも失敗しておるのです。こういう問題があるのを、岸総理は、これは人道問題であるから、ぜひ解決したい。イデオロギーや国交回復の問題とは別に、この問題はぜひとも早急に解決したいという誠意を持っておられるのであります。そこで私が、中国における日本人の処分に関する人道問題と同時に、日本におけるところの中国人の戦争中に俘虜になって来たところの者で、六千人ほど日本で死んでおる、この中国人の行方不明者の問題についても、日本政府は誠意を持ってもらいたいということに対して、岸総理は、それはその通りだという立場から、先般私が遺骨を中国に送還いたしましたときに、特に岸総理は、自民党の正式の機関で決定して、二人の有力な自民党の議員、篠田弘作君と野本品吉君をこの団に加え、そうして自民党から副団長を出して、私が団長で参ったのであります。そのとき岸総理は、りっぱな花輪を供えられましたので、私はそれを北京まで持って参りまして、周恩来総理、中国紅十字会の全体が集まった所でその話をいたしました。そのときには、周恩来総理は、岸総理の誠意を非常に感謝すると言われたのであります。で、その際に、この感謝の使節団を送りたいという話も出ましたので、私も、それは岸総理も、少くとも日本国民は心からお迎えするという話をいたし、また篠田弘作君は、同じくやはり自民党の議員として歓迎の言葉を述べられた。それで、私どもは直ちに歓迎の委員会を作りました。大谷瑩潤さんを会長にして、それから副会長の過半数は自民党の有力者でもって構成しておる。ところが最近におきまして、例の岸総理の台湾その他におけるまあ言辞が、非常な問題を向うに生んでおる。そのために、実は私どもは名簿と期限を早く知りたいのにかかわらず、何回も——一度あらためてまた催足の電報を打ちましたのですが、いまだに回答がない。これは相当具体的に日本人の未帰還者調査をとりつける機会を失うことにもなるし、また、これが日本に来ないようになるならば、ひいては貿易の問題、経済の交流の問題、文化交流の問題、こういう問題も行き詰まりにならざるを得ない。そういう緊急性と重要性を持っておりますときでありますから、特にこの委員会において岸総理が先ほどからの答弁の中に要約されておること、これは共同声明という全体的な大きな機構、イデオロギーを基礎としたところの日米関係、従って中国に対する態度というものと関連はいたしますけれども、同時に、岸総理の言動が誤解を与えておるという点も見のがすことができません、私は、おそらくこれは岸総理の真意が、むしろ誤まり伝えられたと解釈したいのです。この際に、特に大陸反攻に岸総理が賛成したというようなことは誤解である。むしろ蒋介石総統に対する一つの敬意の態度であったという今の羽生委員質問に対する釈明もあられたのですが、あらためて、この人道問題の解決については、日中の国交の現状いかんにかかわらず、日本政府の代表者は、岸総理は、誠意をもってこの問題を早急に解決したい。従って、感謝使節団の来日を迎えたいという発言をしていただきたいのです。これは、その結果が直ちに現われてくる緊急な具体性を持っておる問題と思いますので。
  66. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 竹中委員もよく御承知の通り、私は自民党の幹事長の時代から、日本において戦時中に中国人の死亡された遺骨を探し出して、これを丁重に送り返すという努力に対しましては、私自身も微力ではありますけれども、できるだけの尊い仕事として、これをお助けをして参りましたし、また、その考えは終始変らないのです。この遺骨の問題、また、中国大陸における日本人の行方不明者の事情調査、また、できるだけこれを日本に送還してもらうというようなことは、あくまでも人道的立場から、これは両国において考えるべき問題であって、また、協力をすべき問題であって、従ってそれが国交上どういう状態にあるかということとは別に離れて、この問題は尊い人道的の仕事として、われわれのやるべきことはわれわれにおいてやるし、またどうしても向うの協力がなければ実現できないことについては、一つ協力を求めて、そうしてこういう問題を解決するということに努力したいという考えは、従来も一貫して私の持っておるところであり、また、今日まで努力してきたところでございます。従って、過般数百体の遺骨を丁重に送り返す場合におきましても、私としてはできるだけの敬意を払い、これに対して丁重なる方法を講じたわけでございます。しこうして、中国側においてこの行動に対して、紅十字会の李徳全女史初め、感謝のために日本に来るというお話につきましても、十分人道的立場からこれは受け入れていくべきものである。ただ、従来こういうことが、われわれはあくまでも人道的立場から、尊い見地から考えておるのでありますけれども、十分慎重に処置しないというと、いろいろな誤解を招いたり、あるいはその誤解からいろいろな摩擦が生ずるというようなことがあるというと、せっかくの両国の間の純粋な人道的な立場におけるこの理解協力というものが妨げられたり、あるいはかえって悪い感情を与えたりすることになりますので、あくまでも人道的立場に立って、純粋に考えて、またそれが誤解を生まないように処置していくべきである。せっかくおいでになって不愉快な思いをさせたり、あるいは何かそれに関連して、将来に残るところのまずい感情を起すようなことがあってはならないということを考えておるわけであります。従って、李徳全女史一行がそういう意味日本に来られるということであるならば、私はあくまでも人道的立場に立っての日本人の気持を率直に表明するような方法においてこれを迎えることが適当である、こう思っております。
  67. 竹中勝男

    ○竹中勝男君 もう一つは、この八月六日から、すでに東京において開かれる第三回の世界原水爆禁止大会に関する外国代表者の入国に関する問題でありますが、これはむろん藤山外相が直接担当される問題でありますが、これは岸総理が、総理として参議院において、原水爆実験禁止の決議に対して、非常に明確な禁止に対する態度を表明された関係もあり、また、抗議船団は出さない、しかしながら了解を得るために、三国に国民使節団を原水爆禁止に関して出すということには賛成され、すでにソ連には六名の国民使節団が過日出て参りました。米英にも、ある時期を見てそういう使節団が出ることになっております。それと関連して、この最後の一つの……最後といいますか、一番重要な行事として、世界大会を東京において成功させたい。日本がそのイニシアチブをとるのは当然である。これは日本国際社会に負う、世界政治に対する一つ日本の使命ですらあるというふうに、岸総理考えておられると思いますが、だから、これを成功さすことに政府としても十分御協力といいますか、配慮を願いたいのであります。ところが、との共産圏からの代表については、非常にこの外務省、法務省としては、問題を——これを入れない、なるべく制限しようというように動いておられるわけで、非常に原水爆禁止協議会として、世界大会としては困っている。ことに中共代表が十一名香港でもう数日も入国を待っております。で、外務省の意向として伝えられるところによりますと、これを八名程度に減らしたらというような意向もあるようですが、その根拠は、共産圏の数があまり多くならないようにしたいと言われるようであります。ところが共産圏は、全体の今度の外国代表の中からしますというと、わずかに五分の二にしかならないのであります。また、ソ連の代表については、外務省の出先で多少まだ書類をこちらに送っていないという事実がある。身元調査書を要求しているために、日本の大使館に本国からの書類が送ってこられないというような不体裁な事情があるようであります。これも一つこの際解決するように、一つ政府として御努力願いたいのですが、この国際的な会合でもって、世界大会で、原水爆の禁止に対して国民的な世論を盛り上げて決定していくということは、これは日本世界に対して、ほんとうに原水爆の禁止問題については唯一の被爆国民として、世界にイニシアチブを十分とり、また、世界にこれは貢献できる、貢献すべき重大なこれは問題なんですから、一つ政府としてあまり偏狭な、この際釣り合いだとか、あるいは共産圏だから特に控えてほしいというような考え方でなしに、五分の二の共産圏からの代表ですから、向うから申し込んできている者を全部日本に入国できるようにしていただきたい。これはやはりイデオロギーの問題や国交の問題を越えたところの、やはり世界の文化、世界の人類の運命に関する問題を、日本が率先して解決しようとする、そういう態度のもとに、そういう立場から解決していただきたいと思うのですが……。総理とそれから外務大臣にお願いいたします。
  68. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 原水爆禁止の問題についての世界大会を日本で開かれる、これをできるだけ成功せしめ、そうして世界的世論の興起に貢献するようにしたいというお考えに対しましては、私は全然同感であります。ただ、このいろいろな者の入国の査証の問題につきましては、従来の取扱いの方針もございますし、外交慣例等もございまして、その手続上の点につきましては、外務大臣からお答えを申し上げますが、ただ、私は世界的に見て、また、日本国内におきましても、原水爆の禁止というこの運動、これはイデオロギーを超越している問題でありますが、ややともするというと、これが共産主義者の一つの片寄った運動であるかのごとき印象なり誤解なりを従来持たれておったことも事実であると思います。また、国際的にもそういうような印象なり、あるいはそういうような口実のもとにこれを見ているというような傾向すら一部にあったことを、私は非常に遺憾といたします。従って、私自身が保守党に属しておって、政局を担当している者でありますけれども、この運動はあくまでもそういう主義やイデオロギーを超越した人道的な問題であるとして、あらゆる面に主張をやっているわけでありまして、従って、今度のこういう大会が最も成功するためには、できるだけ私は自由主義の国の人々が相当多数に参加することが、世界的に世論を興起する上において、私は、有効な方法である、こう思っております。そうだからというて、共産主義の国から入る人を私は制限しろということを申すわけではございませんが、これは純粋に、従来のこの入国査証の、国内的もしくは外交的な慣例によって手続的にきめられるものであると、考え方としては、このように考えております。
  69. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 外務省といたしましては、純粋に原水爆の大会に来られる、また原水爆の大会そのものが、純粋に原水爆禁止の問題だけを取り扱うというなら、入国に対して異議はないし、また、人数を制限している事実は——意見を出しておる事実はないのでございます。ただ、この問題は直接法務省の所管でありますので、なお、法務省とも連絡いたします。
  70. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 藤山外務大臣に対する質疑の通告がございますので、これを続行いたします。発言は通告の順序に従ってこれよりこれをいたします。
  71. 曾禰益

    ○曾祢益君 今の世界大会のことにちょっと関連して、簡単に私質問一つさせていただきたいと存じますが……。
  72. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 議事進行に関して、もし御要望があるなら、御発言願います。私は続行の考えで今議事を進めております。(「続行やりましょうや。」「続行しましょう。」と呼ぶ者あり)
  73. 曾禰益

    ○曾祢益君 ただいまの問題ですが、私はこういうふうに、外務大臣に多少意見を交えて御質問したいのです。  基本的な考えとしては、今、総理も大体述べられたと思うのですが、つまり、この世界大会を、真に——いわゆる世界二つに分れておっても、共産陣営も、自由陣営も、またいわゆるどっちにもつかない国からも、また、国ばかりじゃいけないのであって、自由陣営の中からも、ほんとうにいろいろな階層の人が、真に国民的な規模でとの世界大会に集まってくることが望ましいが、現状において必ずしもまだ十分とはいえないかもしれません。そういう世界大会をやることは、これは日本国民国民的な行事として、これはもちろん政府行事じゃないけれども、政府も、ただけっこうです、あるいは四月十八日には、当時の総理外務大臣岸さんは、今と同じように、もっと積極的に、そういう行事には援助します——まあいろいろな援助のことはあると思いますけれども、まず、精神的な援助といいますか、これは、やはり外務大臣なりあるいは総理大臣なりが、ほんとうにみずからのメッセージを送るためにみずから出席するくらいの腰の入れ方が望ましいのではないか。少くともそういうふうに積極的に考えて、今御意見があったような、一つ世界が、一つのイデオロギーのものだけがやるとまずいということは、これは皆同感をしていると思うのです。だから、それならばそれだけに、これは政府も、またこれは与党の諸君も、もっと積極的にこれに参加していくというような方法考えるということが、私は、基礎じゃないか。そういう観点に立ってこの入国問題を考えるということならば、今、外務大臣は肝心なところになると、法務大臣の責任だと、それじゃだめなんであって、それは自由圏の人も、共産圏の人も、これはこの問題に限っては入れるというような意向の、ハイ・ポリシーとして、そういう態度で考えていただけないだろうか、この点を一つ意見を交えて御質問いたします。
  74. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 原水爆の禁止は、政府といわず日本国民の総意でありまして、これを世界に宣明しますことは、当然われわれの同感いたしておるところなんであります。従いまして、今お話のように各方面のイデオロギーが違いましても、また、各層の方々が集まっていくことは非常に望ましいので、従って、共産圏なるがゆえに禁止をする。あるいは数を減らすということを考えておるわけではありません。ただ、この運動を機会に、いろいろな副次的作用を起すようなことがあっては、この原水爆禁止の真の世界国民運動が十分に達成せられないじゃないかという点を、私ども心配するのであります。ことに日本国民に対する影響は、そういう意味においてはそういう場合があり得る。従って、そういう意味でわれわれは純粋の原水爆禁止の大会であるならば、別に数を制限しようとは考えておらぬ。また政府もこれに力を入れることは、ただいまお話の通りに、できるだけ努力を払いたいと思いますが、しかし同時に、これは政府の態度がはっきり原水爆禁止にきまっておるんであって、これはむしろ純粋の国民運動として展開されることが望ましいのであって、日本政府相当の息がかかったようなやり方であるということは、必ずしも望ましいことではないと思います。その辺を考慮しながら、われわれは考えておるわけであります。
  75. 岡田宗司

    岡田宗司君 まず、お伺いいたしますのは、この共同宣言に盛られております日米委員会の問題、最近藤山外相はマッカーサー大使とこの問題について話をされておりますが、やはり話をされるについては、日本側構想というものもあろうかと思います。新聞に伝えられるところによりますというと、この代表は外相一人の問題、あるいは防衛庁長官を加えたというようなこと、向う側としてはマッカーサー大使並びに在日米軍司令官というような話も出ておるのでございますが、まず、これらの構成についてどういうふうにお考えになって日本側として主張せられるのか。それからお伺いしたい。
  76. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) マッカーサー大使と早急に日米委員会を発足いたしたいと思いまして、話し合いを始めたわけであります。がしかし、先般の話し合いは、まだ両者のほんとうの話し合いでありまして、アメリカ側におきましても、今お話のようにどういう代表を出すかということについて、確定的な意見を持っておりません。また、私どもの方もそういう意味を受けまして、確定的な意見を申し出してはおりません。しかしながら、日米安保条約の問題がありますので、外務大臣及び防衛庁長官というものは、非常に関連の深い立場にあるということだけは申せます。
  77. 岡田宗司

    岡田宗司君 この日米委員会が早く発足することは、国民の期待しておるところだと思うのですが、この日米委員会においてですね、一体何が議せられるかということが、今後国民の一番注目の的になっておるところだろうと思うのです。先ほど岸総理大臣のお話によりますというと、これはここに書いてあります「合衆国によるその軍隊日本における配備及び使用について実行可能なときはいつでも協議することを含めて、」云々と、また、「安全保障条約に関して生ずる問題を検討するために」というふうに、問題が限定されているのであります。これは、先ほどの岸総理のお話ですというと、これらの問題から入っていって、そうして、もし安全保障条約改訂の問題について、事実上問題が起ってくれば、それから安全保障条約改訂に入るのだというふうに、段階的に進まれるように聞いたのでございます。しかし、国民の要望は、安全保障条約改訂ということにあるのでありますから、まだ委員会もできないうちから具体的にこういう問題をというふうなことを私お聞きするわけではございませんが、とにかくこの委員会ができました場合に、外務大臣がとられる態度は、安全保障条約改訂するということを検討することを主眼としておやりになるのか、単にここにある「配備及び使用」の問題あるいは現在の安全保障条約の運用からくるいろいろな問題等について協議をするということでお始めになるのか、その点についてのつまり外務大臣としてのこの委員会に対する心がまえについてお伺いしたいのであります。
  78. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私といたしましては、安全保障条約の実施に伴います諸般の問題を取り上げて、両者の話し合いをしていくつもりでありますが、その話し合いの結論から、日米安保条約をこういうように改訂したらいいんじゃないかという線が出てくるのじゃないか。現実的にそういう問題に触れていくということが起り得ると考えております。
  79. 岡田宗司

    岡田宗司君 外務大臣は、次の国連総会に御出席になるために、アメリカにおいでになることになっておりますが、いずれ向うへ行きまして、ダレス長官等々ともお会いになるような予定になっておりますが、それまでにこの委員会を設置されるようにお運びになるのか、あるいは向うへ行って最後のいろいろ話をダレス長官との間にされてきて、そうして、しかる後にこれが発足するようになるのか、その辺はどういうふうにお考えになりますか。
  80. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 先般マッカーサー大使とも話し合いをいたしまして、当方としては、安保条約の実施に伴って、諸般の問題が現実にいろいろありますので、そういう問題を早急に話し合いをしていきたい。従って、早急にこの委員会を成立さしていきたいということを申し述べたわけであります。アメリカ側においても全く同意見でありますので、先般の話し合いに基きまして、向う側の態度がきまって参りますれば、私が国連に行く前、むろんそのずっと前にでも、発足することができると思っております。
  81. 岡田宗司

    岡田宗司君 次に、これは国連との関係の問題でございますが、この次の国連総会に、この何ですか、セキュリティ・コミッティの非常任理事の改選の問題がありまして、日本が立候補することになっておりますが、これは相当な票数を取れなければ当選できない。私は、もちろん日本がこれに立候補し、そうして当選することを心から期待しているものでありますが、その投票を得るには、日本といたしましては、ソ連、アジア・アフリカ・グループの国々の支持が得られないというとなかなか当選しにくいのであります。前に、日本加盟いたしました国連総会の際においてこういう問題がありまして、国際司法裁判所の判事の補欠選挙の際におきましても、日本とそれから台湾の顧維均との間に激しい競争が行われました。日本は最後には負けたのでありますが、その間、日本は何だびか投票に勝ったということは、アジア・アフリカ・グループ並びにソ連圏の国々の支持を得たからでありまして、おそらく今度の場合におきましても、それらの国々の支持を得ないことには、なかなか当選はむずかしいのじゃないかと思うのでありますが、昨年の場合と違いまして、本年は日本の、アジア・アフリカ・グループの国々の日本に対する見方というものが変っておるのじゃないかということが考えられるのであります。それは、岸総理大臣が渡米されまして、そして日米共同宣言というようなものが出た。この日米共同宣言等に盛られておる精神というものを見ましたときに、あるいはまた、先ほどから岸総理大臣がここで述べられましたような御方針で反共主義を明らかにし、さらにまた、非常に軍事的な点に重きを置いたようなことが、かなりアジアの諸国の間に日本に対する評価は、買いしぶっておるのじゃないかということが考えられるのでありまして、そうなって参りますというと、国連の総会において、果して日本が支持を得られるかどうか、アジア・アフリカ・グループの国々から支持を得られるかどうかということに、かなり疑念が起ってくるのであります。特に日本に対してアメリカが強く支持をするというようなことは、アメリカに追随する国の投票は獲得できるかもしれませんけれども、そうでない国々の方の支持は非常に薄くなるのじゃないかという感じがするのでありますが、これらの点について、外務大臣はどうお考えになり、また同時に、この非常任理事の当選を目ざして、すでに日本の代表部あるいは日本政府として活動を開始しておられるのかどうか、それらがどういう結果になるか、その見通しをどういうふうにお持ちになるか、その点についてお伺いしたいと思います。
  82. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 非常任理事国の立候補の問題は、お話のように非常に楽観を許さないものがありますから、われわれとしてはできるだけの努力をして参りたいと考えて、今日まですでに在外大公使を動員しまして、それぞれの国に対して日本の意向を明らかにさしておるわけであります。しかし、この非常任理事国の席が、御承知のようにアジアに割り当てられていないわけでありまして、西欧の中から一席を取るわけでありますので、従って、その方面に共産圏の国が立候補いたしますと、ソ連並びにアジアの中の国というものの投票は、そういう意味で期待せられない点が多分にあるわけでありますから、その意味におきましても相当な困難があると思います。同時に、東南アジア方面、あるいはA・Aグループの中の投票を確保していくということについても努力をして参るわけでありますが、今申し上げたような観点から、あるいは東南アジアの中の国も非常任理事国の席が増加しない限り、原則としてアジア圏に取ろうといたしましても、増加しない場合において、現在のままの状態にすれば、東欧の議席を取ることになるのであります。そういう意味からいって、単に岸総理の声明とか日本のそういう態度とかいうことではなしに問題があるのでありまして、その点は十分の理解を得ていただきたいと思うわけであります。
  83. 岡田宗司

    岡田宗司君 次に、これもまた国連の問題に関係するのでありますが、次の国連総会においては、おそらく日本はこの原水爆の問題に対して、何らか提案をされるのだろうというふうに予想されるところであります。この問題について、日本は失敗をおかしておるのであります。さきに岸総理はクリスマス島におけるイギリスの原水爆実験の禁止を阻止するということのため松下立大総長を使節としてイギリスに派遣された、これも明らかに原水爆の実験禁止ということをアッピールするためだった。しかるに向うにこの使節が行って、各方面にそれを訴えておりましたときに、こちら側ではどうも原水爆の実験禁止ではなくて、原水爆の問題については登録というようなことをいたしたために、向うに行った使節が非常に困られた。同時に逆に向う側から、日本は登録をすれば原水爆の実験を認めるのじゃないかというような逆襲を食っておったような始末です。私は、日本政府としては全くこの問題について大きな黒星をかせいだと思うのです。この問題についての最近の情勢は、私も申し上げるまでもなく、ずっと進展をしておるのであります。軍縮委員会におきましてこの問題がすでに具体的な問題になっております。さらにまた、この原水爆の実験禁止から製造禁止の方向に進むというような状況になっておる、こういうようなときに、被爆国であり、またこの訴えについては世界の先頭に立っておりました日本が、本年の春におけるような失敗を繰り返すことは、これは国民としてはなはだ不本意だろうと思うのであります。この問題について、藤山外務大臣はいかなる構想を持っておられるかという、この問題について国連にアッピールするについてどういうふうな方法をもっていくか、これについてお伺いしたい。
  84. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 原水爆の実験禁止、あるいはそれよりもさらに根本にさかのぼりまして、製造禁止ということは、日本国民の念願であろうと思うのであります。従いまして、私といたしましてもそれに向って全面的な努力をしていく。ただしかし、日本として考えますことは、一歩でも前進していくことがそのときどきの事情によって可能ならば、一歩だけでも前進しておくことが適当じゃないかという実際的な考え方も平行して考えられるわけであります。従って今後われわれとしては別にこだわっておるわけではないのでありまして、軍縮会議の経過その他とにらみ合せながら、さらに進んでこの問題を積極的に取り上げていきたい、こう考えております。
  85. 岡田宗司

    岡田宗司君 例の登録制の問題は、私はあれは政治家的な考えのない、政治考えのない外務省あたりのきわめて事務的な考えからおやりになったことと、それが政治的には大きな失敗になったと思うのです。新外務大臣は、その点外務省があまり事務的ななににとらわれないで、政治的な見地からこの問題を判断されてやっていただきたい、こういうふうに考えているわけです。  次にお伺いしたいのは、この例の日中貿易の問題なんでありますが、指紋の問題は先ほどからいろいろ御議論もあったようですが、例のチンコムの線がくずれまして、そうして日本も大体最近中国に対するいろいろの輸出の品目の緩和が行われることになったわけですが、それでは実際日本と中国との貿易が進むかというと、形勢は逆転しそうな状況になっているのであります。これは昨年よりも本年の貿易額は下回るだろうといわれておる。これは、単に両国の間の経済的ないろいろの問題があるというだけの問題ではなくて、大きな政治的な問題をはらんでおる。第一に、岸総理の最近の洋行ということが影響を与えたことも一つでありましょう。また、指紋問題が一つの大きな行きがかりになっておることも、これはいえると思うのです。とにかく第三次協定はすでにその期限を過ぎて、第四次協定を結ばなければならぬ事態になっておりまして、しかも問題は非常に難関にぶつかっておるのでありますが、この難関を越えるのは、単なる技術の問題ではなくて、政治的な態度の問題だろうと思うのであります。で、まあアメリカの方では、日本が貿易で生きていかなければならぬ、そのためにまあ共産圏と貿易するのはやむを得ないのだということを、しぶしぶ認めておるようなことは、いろいろ新聞にも伝えられておりますし、また、共同宣言の中にも触れておるわけであります。さて、チンコムの線がくずれて、実際日本としては貿易をふやしていかなければならぬ、おそらく外務大臣もそのつもりであるのでありましょうが、その一番の問題となっております第四次協定、これはまあ民間の協定でありまして、政府が関知しないところであるとはいいながら、実際これを進める上に問題になっておりますのが政治問題であります。この点について、外務大臣は、単にこれは技術的ないろいろな問題で解決できるとお思いになっておるのか、あるいは政府としてこの第四次協定を締結し、さらに日中貿易の量を拡大する上に、いろいろな点における政治的考慮を払うおつもりか、その点をまずお伺いしたい。
  86. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 日中貿易を増進して参りますことは、まあ日本の商工業、特に中小企業者の熱望でありますので、それをわれわれも十分了解しております。私も民間におりましたときに、日中貿易の盛んになりますことを、そういう意味で承知しておったわけなんです。従って、これが純経済的問題として、私は両国の間のいろいろな政治上その他の誤解に影響されずして増進されることを、まあ一番希望しておるわけなんです。純経済問題としてそういうものが進んで参ればけっこうだと思います。しかし、こういう問題について全然そういう政治方面からの影響が絶無であろうともまあ考えられない点もありますので、従って、それこれあわせて配慮しながら、いかにしたならば将来の日中貿易を増大できるかということの努力をしていくという考えをもって、さらに、さっき言ったようなチンコムについても今せっかく考慮をいたしておるところであります。まあ昨年の貿易額よりも減ろうとも私ども考えておりませんけれども、減らないだけで満足はいたしておらぬので、やはり相当ふえていくということも必要だということはもちろんであります。そういう意味努力していきたいと思います。
  87. 岡田宗司

    岡田宗司君 ふやすように努力されることは非常にけっこうなんでありますが、そこにはすでに難関があるわけなんです。例の中国における見本市ならびに日本における中国の商品の見本市の問題でございますが、これらがまず一つの難関になっておるのでありますが、この見本市を日本において開催せしむるという方針をおとりになっておるのか、あるいはこれと指紋問題とからんでおるのですが、その問題との関連で、開かしても開かさないでもいいのだというふうなお考えなのか、つまり、あくまでもこれは開かせなければならぬ、今そういう事態にあるのだというお考えになっておるのか、そこのところを。
  88. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私といたしましては、むろん見本市を開くことに異存はないわけであります。ただ、これと指紋問題とがからみ合いますこともまことに困るのであります。指紋問題と中国見本市を開くという問題とは、全く別個の問題として考えていただきたい。また、中共方面においても指紋問題とこれとは別個の問題であって、指紋は日本が単に中共だけにこれを強制している問題ではないということの理解を得れば、話を切り離して、見本市の問題も考えていただけるんではないかというふうに考えているわけであります。
  89. 岡田宗司

    岡田宗司君 これは別個の問題であると言われるんですけれども、実際からんでしまっておるという現実に立つと、これを日本側において解決しなければならぬ、そうしなければ一歩も進展しないという事態でありますならば、そこでさっき言う事務的な問題としてこれは別個に考えるんだということがむしろ観念的なんであって、政治的にこの問題を処理するということが現実的になってくる。そこで私は、これは外務大臣としてはなかなかむずかしい問題もあるだろうと思う。しかし、すでに鳩山内閣の時代、あるいはまたそのあとで石橋内閣ができました当時の空気からいたしますと、指紋問題については何らかの措置が講ぜられるような空気だということは、よく御存じだろうと思う。これが岸内閣になりましてから、かなり指紋についての問題について法律的にこだわるような形になってきておる。それらの点から、私はもう一度前の政治的考慮、鳩山内閣あるいは石橋内閣のできた時代の政治的考慮を払われるように希望したいと思いますが、その点についての藤山外務大臣のお考えを承わりたい。
  90. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 指紋問題と、たとえば見本市とがからんだということは、日本側がこれを無理にからましたということでは必ずしもないと思う。その点は中共側でも十分了解していただいて、そうして別個の問題として考えていただく方が適当であろうと思う。また、日本側としても指紋問題全般に対しては、これは見本市とかそういうことを別にして、将来友好国に対するこの登録制度をどういうふうにするかという観点から考えていただくのが、私は適当でないかと、こう考えております。
  91. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 関連。見本市とそれから指紋問題が関連する、まだ論理的に関連しないという押し問答をなされておりますが、これは私が説明するまでもございませんが、国際見本市に中国から商品を出すという話だった、ところが台湾から出しておったから——台湾という中国からいうと認められないあれから商品が出ておるというので、中国からは商品を出さなかった。そこで取りやめになっておったものを、私はまあ福岡の出身だから申し上げるんですが、福岡もそうでありますし、それから名古屋もそうですが、見本市をぜひ開いてもらいたい。開くについては去年のように名古屋と福岡は別々に開いてくれというのは無理ですから、名古屋に持ってきたものを引き続いて福岡に展示してもらいたい。こういう形で見本市を開いてもらいたい。これは日本から要望した問題であります。私は言うまでもありませんけれども、福岡にしても名古屋にしても、これは党派とは関係ありません。福岡のごときは自民党から出られた市長が会長です。そして要望して、それでは、中国としては見本市を開くことになっていなかったけれども、それだけ要望があるならば開くことにしようということで、向うが日本側からの——これは政府ではありませんけれども、民間の要望ですけれども、市や、たとえば中京地区と申しますか、あるいは九州——福岡だけではなくて、九州地区の関係者、これはほかの市もあります、それらが、いわば要請をして開くことになった。ところが、そのために来る調査といいますか、準備といいますか、打ち合せに来る人たちが、上海まで来たところが、二カ月たったら指紋を押さなければ入れないと、自分たちだけでなくて、あとから見本市を実際に開くときに、名古屋から福岡に行くその世話をする工作員についても、二カ月たったら指紋を押すということを承諾しなければ、その前の準備にも入れないと、こういうことになったから、問題はその見本市が開けなくなりつつある。おそらくもう帰っているだろうと思うのです。そういう事態になっていることは、藤山外相民間人として事実御承知だろうと思うのです。ですから、見本市の開催という問題と指紋という問題とは事実関連をしておる。関連をしておるし、見本市を開いてくれというのは日本側で、それから来るときに二ヶ月たったら指紋を押すという約束をしなければ入れないというのもこれは日本です。ですから向うは、君の方で要望をしておって、そうして指紋の問題を片づけなければ入れないというのはおかしいじゃないかというのは、これは当りまえだと思うのです。そこでこれらの点について、これは見本市の問題でありますけれども、見本市の問題だけではない、通商代表部の設置問題についてもそうだし、あるいはそういう一般的な互恵平等でない非友好的な態度が、商社の問題などについても疑問を持たせてくるゆえんだと思うのです。そういう事情が放っておけなくなって参りましたから、新聞なり世論なりあるいは自民党の中でも、中共貿易について関心のある皆さんが、そろそろ起ち上っておるのだろうと思うのです。これは社会党だけじゃありません。国民的な要望だと思うのです。ですから政府としても、けさの社説じゃありませんが、国内法は曲げられぬと日本政府の態度はわれわれは賛成しがたいということは、直接の見本市の関係者——名古屋、福岡の関係者だけじゃ私はないと思うのです。おそらく国民の声だと思うのです。そういう点で、政治的に政府としてはお考えになるべきだと思うのです。固陋な、偏狭な態度をお直しになるべきだと思うのですが、貿易の促進あるいは経済外交というものを使命とされて登場された新外相は、私はこの点について十分の御理解と英断と申しますか、近いうちに推進があるだろうと期待しておりますが、その片りんを一つお伺いしておきたいと思います。
  92. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 見本市と指紋問題が御承知のように混同されていることがまことに困るのでありまして、中共から見本市について来る人だけが二カ月以上にわたれば指紋を取られるのではなくて、英米その他西欧の人が来ましても、二カ月以上なら指紋を取っておるわけなんであります。中共だけに制限していくという状態にはないわけであります。ですから、指紋問題は、指紋の法律そのものを、将来どこの国の人に対しても、経済上の問題その他の場合には、何かミッション的なものであればこういうふうに変えるのだということは、これは指紋の登録問題の別個の問題として考えていただかなければならぬ問題であって、現状において、法律があって、しかも西欧諸国の人もアメリカの人も指紋を押している以上は、中共の人だけにそれを特別に免除するというわけにはいかぬ、その点は十分中共側にも理解をしていただきたいと、私はこう思っておるわけです。見本市そのものを開きますことについては、むろん何らそういうことを利用して私ども見本市を中止させようというような考え方は持ってないことは、これはもう御了解いただけることだと思うのです。
  93. 笹森順造

    委員長笹森順造君) ちょっと速記をとめて下さい。    〔速記中止〕
  94. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 速記を始めて下さい。
  95. 岡田宗司

    岡田宗司君 ただいまの問題と関連するのですが、御承知のようにチンコムの線がくずれまして、イギリスだのドイツだの西欧諸国が相当中国へ品物を現に売り込んでおります。それからまた、あるいは見本市の開催、あるいはミッションの派遣というようなこともやっておる。そうなってくると、こちら側がどうしてもおくれてしまって、あなたの考えておられるような、中国に対する日本の貿易を拡大するということは非常に困難なことである、こういうふうに考えられる。その上にもってきて、まあ向うが互恵貿易の国でありまして、個々の商社が日本に行って買いつけるということはない。従いまして、中国との貿易ということになってくると、通商代表部の問題が、貿易量がふえれば必然的に問題にならざるを得ないでしょう。これは日本側としても向うに何か置いた方がいいし、それから中国側とすれば、当然互恵貿易ですから、そういうもののあることが必要になってくる。そう考えてきますというと、第四次協定を民間でやって、そうして日本の貿易を拡大するというときに、通商代表部設置問題というものは、これは必然的に中心問題になってくる。現になっておるわけです。この点について、外務省はその通商代表部というようなものを日本に置くことをお認めに依然としてならない方針でいかれるのか、そうして、それは中国との貿易の拡大と矛盾しないでいけるとお考えになるか、その点を一つお聞かせ願いたい。
  96. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 中国との貿易増進につきましては、あるいは貿易上のいろいろな障害を除去して、スムースに持っていくという問題につきましては、総体的に私は今検討をいたしておるわけであります。むろんその中に通商代表部の問題も一つの問題としてあることは事実であります。しかし、今私が結論を申し上げるまでに検討が進んでおらないのであります。
  97. 岡田宗司

    岡田宗司君 検討はけっこうですけれども、時期がおくれると、よその国がどんどん先へ進んでしまう。それからまた検討の最中にこういう事態がずっと起って参りますと、あなたのお考えになることと別な結果が生じてくる。ですから、検討をなさるならばすみやかになされて、そうして結論はすみやかに出されることを僕は外務大臣に要望しておきます。  それでは私の質問を終ります。
  98. 森元治郎

    ○森元治郎君 藤山さんに非常に期待して、きょう一時間こうやっておったのですけれども、ところがあなたまでが法律論を振りかざすのには非常に私はがっかりいたしました。この内閣——石田労働大臣は、悪法も法だ、おれがやるんじゃない、法律に書いてあるのだから、おれは知ったこっちゃないと言っておる。あなたもこれとこれは別で、法律がこうなっておるんだからちょっとむずかしいというのでは、あなたがお出になった価値がない。法律は総理大臣がやるわけです。藤山さんはやはり自由な民間人としてそこに闊達なところを見せてもらいたい、これが第一であります。  そこで国連の話に関連しますが、何をあわてて非常任理事国なんということにのさばり出したか、これはアメリカへ行って大へんごちそうになったついでに、お前応援するからやってみろというようなことになったのだと思う。それが証拠に、松平国連大使も当初は賛成でない、それからまだその時期ではない、もう少しじっとして世界の衆望をになって、じっくりやってもいいじゃないかという意見も有力であったが、それをひっくり返して立候補するという気持になった理由はどこにあるのか。それから、去年はやるんじゃないとわれわれ言うのに、やって負けちゃった国際司法裁判所の判事、今度は出ないそうです、聞くところによれば。それはどういうわけか、この二点です。
  99. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 国際連合の非常任理事国の立候補でありますが、松平大使が反対だということはなかったように聞いております。東南アジアと申しますか、アジア方面一つのいすを持ちますことは必要だと思います。そういう意味で非常任理事国に立候補し、そうしてわれわれとしてはできるだけ努力をして、その当選を期したいと思っております。むろん選挙のことでありますから、いつの場合でも必ずしも落選をしないとは限りませんので、落選をしそうだからやめようという、そういうことで問題を提起しないわけにもいかぬ、私どもとしては国連の中で十分に活動をするために、特にその必要を感じております。また、ただいま国際司法裁判所の方の立候補をやめたというようなこと、それは御承知の通り判事団の合意によって決定されるわけで、外務省がとやかく指図をする問題ではないのであります。判事団の中でそういう御決定をなさったことと伺っております。
  100. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 期待をしております新外相から、先ほどの見本市を開けるようにしてくれるかどうか、はっきり一つ答弁を願いたい。  それからもう一つ。先般中国から中国人と結婚いたしました日本人、これは戦争の犠牲の一つだと思います。里帰りということですから、中国へ帰ることになっております。それで八月一ぱいで帰ることになっているのでありますが、興安丸は引揚船をやめるということで、船がなくなるという心配がある。それで、厚生省はそういうことを考えておらぬようです。そこで、これは大切なことであるし、藤山新外相にお尋ねをするのですが、中国関係について、非友好的になったわけじゃないというお話ですから、これらの点について、里帰りの配船についてお考えをいただけるかどうか。即答でなくてもいいんですが、御答弁を願いたい。
  101. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 見本市を開くことは私は反対しないのです。ただ、そのために法を破ることまで期待されるのはどうも……。
  102. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 法律論ではなくて、開くようにしていただけるかどうかを聞きたい。
  103. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) なお、引き揚げの問題につきましては、十分よく事情を存じておりませんので、調べてお答えします。
  104. 岡田宗司

    岡田宗司君 アメリカの問題なんですけれども、日本品に対する排撃、あるいは日本品の輸入阻止についていろいろな手段が講ぜられておる。さらに、今度これがかなり包括的な日本品のアメリカへの輸入阻止をやるような気配が見えておる。はなはだ非友好的だと思います。経済外交を主張しておられるのですが、この点についてはいろいろ御配慮もあることだろうと思いますが、これらについて、一体いかなる手をお打ちになるか、また、これを阻止することは可能である、ことに今度のあなたの訪米の際に、この問題についてこういう非友好的なことが今後起らないように、向うを説得してくる自信がおありになるかどうか、それをお伺いします。
  105. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) アメリカの輸入制限の諸般の問題につきましては、これはまことに遺憾に思っております。アメリカは御承知の通り議会においていろいろ論議される民主主義の国でありますので、むろん政府の当局者とこの問題について話し合う必要はありますけれども、やはり今後日本は対米輸出をやっていかなければならぬその必要性、またアメリカから相当に物を買っているじゃないかという点を、広く一般のアメリカ国民に訴えていくことが、この問題の解決に大きな力になるものと考えております。従いまして、そういう両方面もあわせて、今後この問題について考えていくと同時に、日本におきましても、これは単にアメリカだけでなしに、輸出貿易の競争のためにそれぞれ当該国に迷惑をかけております事態相当ありますので、こういうことのために、日本商品の輸入というものに対して若干疑惑の目を持っておるという場合も、これは単にアメリカばかりでなく、東南アジアの各国においても行われておるようなわけでありますから、そういう問題については、それぞれ各地方の事情等を申し上げて、通産大臣等とも連絡して、御善処願うようにしたいと私は思っております。
  106. 笹森順造

    委員長笹森順造君) この際、派遣委員の報告についてお諮りいたします。先般の外務委員懇談会において北海道班並びに関西班の派遣委員の方々から、それぞれ報告されておりますので、委員会での報告は省略いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  107. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 御異議ないと認め、そのようにいたします。  なお、報告書が提出されましたから、報告書を会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  108. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 御異議ないと認めます。  本日は、これにて散会いたします。    午後二時七分散会