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公述人(小柳勇君)
国鉄労働組合中
央執行委員長の小柳勇であります。国有
鉄道運賃の一部を
改正する
法律案に対しまして、
公述いたします。
同
法律案によりますと、
旅客貨物とも平均一割三分の
値上げ率によって現行
運賃を
値上げすることを提案いたしているのであります。私は
運賃値上げに反対でありまして、従ってこの
法律案の趣旨に反対の立場をとるものであります。ただいまからその理由を申し上げます。
提案理由によりますと、
国鉄の
現状は、累積した老朽施設、車両の取りかえを急速に行なって、輸送の安全を期し、急速に増加した輸送需要に対応するため、輸送力を増加しなければならない。さらに電化等
鉄道近代化をはかって、サービスの向上、
経営の
合理化を促進すべき段階であって、このために
鉄道運賃の
値上げによって
資金を調達しなければならない、と提案しているのであります。施設、車両の老朽化、輸送力の逼迫については、私もひとしく認めているところでありまして、現在のところこれらのものを
鉄道職員の労働強化によって補っていることは周知の事実であります。特に定員をとってみますと、昭和二十九年に
予算定員が四十四万七千七百二十五名、こういうものが三十二
年度の今日においてもなお四十四万七千七百二十五人でありまして、その間四年間における
輸送量の増加は約三〇%に及んでいるのであります。このように
輸送量は三〇%も増加して、定員は四年間そのままの据え置きの
状態である。こういうことで定員の面からも労働強化が来たしておるし、施設、車両の老朽化と、それから少い定員でそれだけの過重な労働に耐えているのが現在の
国鉄職員の
現状であります。
また
鉄道電化、近代化、
経営合理化につきましても、根本的には反対する何ものもないのでありまして、
時代の進展とともに、これに即応する近代施設を要求することは当然であろうと思うのであります。ただこの点につきましては、
国鉄職員の労働条件の向上、
生活権の確保の問題と関連して別途の問題が発生いたしますが、ここでは単に
資金調達の面で、
法律案の趣旨に反対の
意見を述べたいと思うのであります。
この法案の企図しておりますのは、以上の施設、車両の改修増備と、
鉄道の近代化のために要する
資金の調達を
運賃値上げに求め、五カ年間に約二千七百億前後の増収を見込んでいるのであります。
国鉄の輸送力が逼迫している点、
経済の隘路となっている点、こういうことをわれわれは
国鉄が危機に瀕していると言われるものであります。
国鉄の危機と言われるものは一体どこから発生しているかということを根本的に検討しなければ、単に
運賃値上げによって
資金は調達しても、これはその当時だけのことに終って、また近い将来、
運賃値上げをしなければ、輸送の逼迫を緩和することができないような情勢になるのではないか、従って私
どもといたしましては、
国鉄が現在危機に瀕しているならば、その危機を根本的に検討して、その根本
原因を除去することが、この際、一番大きな課題ではないかと
考えているわけであります。この
国鉄の危機を招米している
原因をいろいろ検討いたしまして、私は
政府の交通政策が貧困であるから、現在の
国鉄は危機に瀕している。このように結論を見出しているのであります。
第二には、
国鉄当局の
国鉄運営に対する方策が根本的に誤まっているのではないか、従ってこの
政府の交通政策の貧困を是正し、
国鉄当局の
国鉄運営に対する誤まりを是正することが危機を乗り切るためにとるべき焦眉の問題であると
考えます。
これから交通政策についてこんなことを
考えてもらわなければならぬという点について具体的に
意見を申し述べたいと思います。
まず第一に、
鉄道、自動車、船舶、航空の各交通機関の輸送分野を確立して輸送力を調整することが必要であります。たとえば
国鉄は長距離の大量輸送を担当する。自動車は都市における
旅客の輸送を担当する、あるいは
貨物自動車は近距離の軽量の
貨物を輸送する。私鉄は
国鉄の輸送力の部分的な橋渡し的な輸送をするといったように、それぞれの各交通機関の性格と任務があるわけであります。その各交通機関の性格と任務をお互いによく調整して、総合的に輸送力が判断され、配分されるということが第一に重要な点であると
考えております。今日の交通政策では、この点が全く放任されていて、輸送調整というものが行われていない。あるいは輸送力の分野の限界というものが明確になっていない。ここに今日の交通が混乱する、あるいは輸送力が不足する
原因があると
考えるのであります。
第二には、輸送行政を統一一元化する必要があります。交通行政を担当するところの
政府の行政機関がばらばらになっているので政策にも強力なる重点と核心というものがない。運輸省あり、建設省あり、あるいは
経済企画庁ありという姿になっているのが現実の
鉄道輸送の姿であります。たとえば運輸省の都市交通課があるかと思えば
経済企画庁にも都市交通課というものがあります。あるいはまた自動車の方では建設省で自動車の問題をやっているかと思うと、同時に運輸省の方でも自動車の問題をやっているのであります。自動車の縦貫道路法案
一つをとってみましても各
関係官庁でさまざまの
意見が出て、その調整がつかないような困難な
状態であります。こういうことでは輸送行政というものが強力に遂行されるという態勢にはならない。このようなばらばらになった輸送行政というものを統一一元化することが今日の条件としては絶対に必要であると思うのであります。
第三の点といたしましては、
国鉄に対して
政府の
財政金融的な裏づけが行われていないところに輸送力が強化されない最大の
原因があるのではないかと
考えるのであります。なるほど作文としての交通政策はきわめて総合的に、しかも強力に輸送力を
増強していくという工合になっているのでありますが、この政策を遂行するところの具体的な力としての
政府の
財政融資政策の裏づけがない、単に作文となってしまっているのであります。
第四には、陸上、海上、航空の各輸送機関に対する施策の総合的な均衝をはかるということが必要であると
考えるのであります。このことは、たとえば貿易政策、あるいは産業政策として海運に対しては利子の補給をしてその貿易政策の遂行をはかっておるのでありますが、
国鉄の
新線建設という国家的な問題については何ら考慮されていない。あるいはまた
日本航空につきましても補助金なり、あるいは年々十億前後の
出資がなされているのであります。そして保護助成の政策が進められているのでありますが、
国鉄に例をとってみますならば、昭和二十五年に四十億円の
出資があっただけで、その後は全く
政府から出
資金というものがない。また補助金は
一つもないのであります。補助金がないばかりか地下鉄を例にとってみますと、
国鉄は年々二億から三億の金を逆に地下鉄に
出資しておるわけであります。
国鉄がなぜ地下鉄に
出資しなければならないのか、その理由なり必要性については運輸省としてももう一回
考え直してもらわなければならないのであります。本来
鉄道省であった時分には、
国鉄が地下鉄に投資するために年々
出資をするということが
考えられたわけでありますが、現在はすでに
公共企業体でありまして、
公共企業体になりまして七、八年を経過した今日、なお地下鉄に
国鉄が
出資する必要はないと思うのであります。こういう点が
政府の代弁的なことをさせられている。また
負担だけを転嫁されていると思うわけであります。このようなことは海上、陸上あるいは航空、各輸送機関に対する
政府の施策がきわめてアンバランスになっているということを
意味しておると思うわけであります。従ってこれは施策の総合的な均衡をはかる立場から直していかなければならないのであります。こういう点が交通政策に対して
政府なり
国鉄当局に特に
考えてもらいたいという点であります。
そこで
国鉄労働組合といたしましては
運賃を
値上げしてその
資金によって
国鉄を再建するという方向ではなくして、先ほど申し上げましたように、まず交通政策を確立して、政策の遂行によって危機を打開することを基本的な方向として主張いたしておるわけであります。具体的に、ではどのような施策をすれば
運賃値上げをせずに年間五百億円の
資金が調達できるかについて若干
意見を申し述べてみたいと思います。
その第一は、国家の基幹産業としての
国鉄の再建問題は、
国鉄政策中の緊急課題であるということをまず認識してもらわなければならないのであります。そのことはすでに御
承知のように、鉄鋼、電力、輸送、この三つの基幹産業が今日
日本経済のネックレスになっているということが言われ、
政府としてもその対策がいろいろ
考えられているようでありますが、そういう基幹産業としての
国鉄の再建というものは、
利用者に
運賃を
負担てもらってその
資金で立て直しをするというような性格のものではなくて、
政府が
資金やあるいは
計画のすべての面にわたって責任をもって、再建をすべき性格のもして当面
運賃値上げを避けて、次のような施策を強力に進めていくということが重要ではないかと
考えるのであります。このような施策を進めて参りますと、
運賃値上げをせずとも
国鉄の再建ができる、このように
考えられます。今から具体的に一、二申し上げます。
その
一つは、まず
資本金の問題であります。御
承知のように来年の一月になりますと、大体今
年度に入りますが、
民間におきましても百億程度の会社が相当程度出現すると言われております。八幡製鉄、東京ガス、東京電力、中部電力、関西電力、
日本鋼管、東北電力、富士製鉄、こういった
民間の会社でさえ
資本金を百億ないし百五十億程度に増資をして設備の拡張をやっていくようになっているのでありますが、二兆一千億の膨大な資産を持っている
国鉄がわずかな
資本金でやっているということは、まず問題にしなければならぬ点だと思うわけであります。資産に見合う新たな
資本金を作る、あるいは
国鉄の施設というものをよくするためには
政府が
資本投下をして設備改善をする、車両を作る、線路を作るというような基本的な
考え方に立つということが大切ではないか、
運賃から上った収益をもって資産を作っていくという
考え方は根本的に誤まりであると
考えるのであります。その具体的なやり方としては、まず昭和二十四年の
公共企業体になったときの
借入金が、五百八十億ありますが、この
借入金を全部出
資金に振りかえ、そのことによって
一つには
資本金がふえ、
資本と資産の
割合を平常に戻し、同時に利子の
負担を軽減するということが大切ではないかと
考えるのであります。また
資本金を一年千数百億も出せということではなくて、毎年大体百億程度の
出資をする。たとえば現在
日本航空が毎年十億ずつ国家からの
出資を願っているわけであります。これと同じように
国鉄に対しても毎年百億程度の
出資をしていく。このようにしてまず
資本金を増加せよということであります。
第二には、税金の免除と
企業還元ということであります。具体的に申し上げますならば、提案理由にもありますように、今年から固定資産に対するところの納付金か大幅に
国鉄で
負担せねばならないということになったのであります。この納付金は今
年度は三十六億でありますが、来
年度は七十六億程度になります。固定資産税などを含めるならば年間八十億の固定資産に対する税金を納めていくということで、これは相当
企業の
財政を圧迫して参るわけであります。もちろん
国鉄の
経営が相当な余裕がある場合には税金をかけますと、地方
財政救済の
一つの
方法と
考えられるのでありますが、御
承知のように
国鉄財政が非常に圧迫されている上に、加えてこのような税金をつけ加える。そうしてこの金を
運賃値上げによってまかなうというような事態が発生することは
考え直す必要があるのではないか。
言葉をかえるならば、
国鉄を利用する人が
国鉄の固定資産税を払うというようなことになるのではないかと
考えるのであります。
従ってこのような公社の
財政に大幅な
負担となるような固定資産税なり、納付金というものは廃止することが当然必要だと思うのであります。税金の問題ではいま
一つ通行税の問題があります。通行税は今日では
一等と二等に対して賦課されているわけでありますが、これも
一般会計の方に繰り入れるというような形でなくて、ひもつき財源であっても、
企業に還元してサービス向上の原資とすることが必要ではないか。これらの税金の免除と還元によって、年間百億程度の財源が出てくる。あるいは
負担が軽減されるということになろうかと思うのであります。
第三に、公共的
負担の一部を国家が補償することが必要であると
考えるのであります。たとえば
新線建設を毎年やっておるのでありますが、この
新線建設はもうかるから新線を建設するという性格ではなくて、
日本の
経済の発展のため、あるいは地方の産業を開発していくという国家的あるいは社会的な政策的見地から新線を建設していくわけでありますが、このような
新線建設は経常的に見れば
赤字の
原因であり、相当
財政を無視しなければならない。このような
国鉄財政に
負担をかけるような
新線建設については、当然国家政策として必要であるというのでありまするならば、利子の補給をして造船の場合以上に利子の補給をしていくということが必要ではないか。もちろん営業的に見て採算が成り立つというような地域に対する
新線建設まで利子の補給をせよという主張ではないわけであります。国家政策の上で必要な、しかも経常的に見ても
赤字の
原因になる、あるいは建設自体が
赤字だというような点について利子の補給をするということを主張しているわけであります。
第四には、
新線建設によってすでにでき上って営業の開始をしている非採算線の問題であります。非採算線の年間の
赤字は約四十億円前後あると言われております。この非採算線の年間の
赤字の問題についても全部を補償せよという
考え方ではなくて、少くとも二割程度、金額にいたしまして八億程度国家が
負担をする、その
負担は永久にするというのではなくして五カ年間
政府が補償する。また
旅客、
貨物運賃のきわめて過大な、公共的な理由による
割引については、年間三百三、四十億と当局側の資料では説明をされておりますが、このような原価を償わないところの公共的な過大なる
割引については、社会政策なり、あるいは文教政策なり、あるいは産業政策なり、そういう見地からしての
割引でありますから、それを
公共企業体である
国鉄に
負担をさせるという形で処理をすべきではなくして、
政府がそういう政策遂行の担当者でありますから、当然
政府でそれによるところの
負担はめんどうを見るということが正しいのではないかと
考えておるわけであります。このような公共的な
負担の一部国家補償ということによって年間約言五、六十億というものが捻出できるのではないかと
考えておるわけであります。
第五には、
運賃制度の不
合理是正の問題であります。今日の
運賃制度をよく検討してみますと、相当に内容に問題があるわけであります。今回の
値上げ案を見ますと、制度の変更も含まれておるわけでありますか、重要なる点に不
合理是正が欠けている点を知るわけであります。たとえば特別扱いの新聞、雑誌の
運賃を
一つ例にとってみますと、金額的には大体一三%程度の
値上げになっているのでありますが、その雑誌なり新聞の内容が果して特別扱いをするに妥当であるかという点については問題があるわけであります。すなわち夫婦雑誌というようなもの、あるいはエロ雑誌というようなもの、怪奇雑誌、あるいはエログロ的な雑誌までこのような超定率
運賃で輸送しているという点については、特別扱い新聞あるいは雑誌というものについての取扱いの条件たり原則というものが明確に決定されておらない。これらの点にについてはその範囲なり条件というものを厳格にし、ほんとうに公共的な、必要だというものについてのみ
割引をしていくという内容是正の措置を講ずべきであると
考えておるのであります。
次に
割引制度の問題でありますが、
割引制度には暫定
割引あるいは恒久
割引、または別の見方をすれば営業
割引、政策
割引といったようないろいろの
割引がございます。昭和二十八年の
運賃値上げのときに
貨物等級を
改正して直ちに
運賃割引として今日まで引き続いている物資があります。たとえば金鉱であるとか、石灰石、ドロマイト、材木類、こういった
貨物については等級表を相当上げたにもかかわらず、その直後急激に
運賃の値上がりをすることはあまり好ましくないという
考え方から暫定的に半年間ということで、これが三年間今日までなお引き続いて
割引がやられておるのであります。これを逆に言いますならば、
割引をするような必要性があるならばどうして等級を上げたのかといったような逆の疑問が出て参りますが、このように
割引がきわめてルーズに行われているふしが多大にあると思うのであります。
工業的
割引にいたしましても、どのような条件をどのような原則の場合に、その
貨物なり
旅客に対して
割引をするのかということがきわめて不明確になっております。この
割引制度というもののは、あらかじめ民主的な
方法なり、あるいは条件というもので対外的にもきちんとしておく必要があると
考えるのであります。現在年間約二十億程度の
貨物の
割引が行われているということでありますが、これらを厳格に検討するならば、少くとも数億円の財源というものがここから生まれてくるのではないかと
考えておるわけであります。
その他
貨物等級制度の適正化の問題、遠距離逓減制の問題、あるいは私有貨車のタンク車、石灰車の
料金がきわめて安くきめられている。あるいはまた食堂車の営業
料金というもの、あるいは郵便車の
運賃というものがやや均衡を欠いている。総体的に申し上げますならば、特殊車の
運賃というものの適正化をしていく必要があるのではないかと
考えるのであります。
食堂車に例をとって具体的に申し上げますと、現在構内営業
料金が売上
料金に対して千分の十一でありまするが、食堂車はそういった構内営業
料金の
意味と運転料といった
意味を含めまして千分の三十徴収をするということになっております。たとえば東京—大阪間で大体片道十万円の売り上げがありますが、営業
料金としては
国鉄に入ってくるのはわずか三千円ということになります。これは三等の
旅客運賃の、三人分程度にしか当らない。こういうことはその代表的な
一つの例ではないかと思うのであります。
また、専用線の問題につきましても、昨年の九月専用線の規定が
改正されまして、従来国家で
負担をしなかったもの、あるいは
料金徴収しておりました
貨物使用料運転費用などが今度取れないようになりました。このため約一年間で二億程度の減収ということになっておりますが、これらはやはり従来通りの姿が正しいのではないか。
国鉄財政が圧迫をされておる今日の
実情の中で、年間二億円も減収になるようなやり方というものは相当問題があるのではないかと
考えているところであります。これらの
運賃制度の不
合理是正によって年間百億程度の財源というものが優に捻出できると
考えているところであります。
第六には、部内の節約の強化の問題であります。相当改善はされたのでありますが、工事契約なり、資材購入等、主として物件費
関係の節約にいま一歩の検討の余地があるのではないかと思っております。また外郭団体に対するところの直接的な交付金補助金という点については改善をされたわけでありますが、業務委託、あるいは業務の調査委託というものは、さらに相当検討する必要があると思われるのであります。
また、外部に発注する品物なり、その範囲というものと、内部で作り調達するものの範囲と単価の再検討も相当問題があると
考えているところであります。私の方で調べたところによりますと、
鉄道工場で作りました車両の単価と、外部に発注した車両の単価では一両についても相当の開きが出ております、こういった点については
物価費の節約という
意味でいま一そう努力すべき点ではないか。こういった部内の節約強化によっても年間五億や十億の金というものは優に捻出できると
考えておるわけであります。
なお、その他二、三の点について強調しておきたいと思うのであります。
国鉄の
収入金は
日本銀行あるいは
日本銀行の代理店といったところに預金をすることになっております。この預託金については支払準備金として四十億円までは利子がつかないことになっているわけであります。措入金の方については一円でも利子を払うのでありますが、預託金の方については四十億円までは利子がつかないことになっている。
国鉄の性格から支払準備金といった制度はもはや必要ないのではないかと
考えている次第であります。従って
国鉄の預託金については通常の利子をつけていくことに今後
改正をする必要があろうと思うわけであります。
また、
国鉄自動車の問題でありますが、相当有利な条件の自動車路線については、ほとんど
国鉄の申請のものは許可されておりません。あるいは却下になる、一方大ていいいところの路線については許可されるのはほとんど
民間の自動車会社だけという形になっているようであります。これについては
国鉄、
民間という規模で自動車路線の許可について差別扱いをせずに、
国鉄申請の自動車線の許可というものに対しても
政府は公正妥当なる点で裁定願いたいと思っているのであります。
以上申し述べました点を要約して申し上げますと、
資本金の増加によって年間百億程度、公租公課の免税によって八十億円、
新線建設の利子補給によって四億五千万円、非採算線
赤字補償によって八億円、公共
割引の一部国家
負担によって百五十億円、専用側線、
運賃不
合理是正によって百億円、部内の工事、資材契約の
合理化によって十億円、その他、
日銀利子、自動車路線の差別撤廃による増収、年四十億円、合計いたしますと年間約五百億円の金が
運賃値上げをしなくても出てくると
考えているところであります。
運賃値上げ反対に対する第二のおもなる理由としては
運賃値上げをいたしますというと大衆へのはね返りがいろいろな面で出て参ります。
一つの例を言いますと、石炭は一トン当り最近は三円程度上りました。鉄鋼につきましてはトン当り四百円程度、硫安については一かます五円程度、あるいはセメントについては二、三百円程度
値上げになることは必至という状況であります。こういうことがすでに
国鉄運賃によるところの
影響としてあげられてきているのであります。
国鉄当局なり、あるいは運輸省の方としては一割三分程度の
運賃値上げでは
物価には響かない、
影響はないと断定的な
考え方でおられるようでありますが、この点は国民
生活を圧迫してくる。こういう点からもわれわれとしては
運賃値上げに反対をしているのであります。
国鉄労働組合といたしましては、初めから申し上げましたように、まず
政府が交通政策を確立して
財政金融的な政策の裏づけ立った交通政策を強力に遂行して、
国鉄の危機を打開していく、こういうように主張しているところであります。ある人は
政府が金を出すことは国民の税金でまかなうことであるからそれは不適当だ、
利用者側が当然
負担すべきであるというような
意見を言っているのでありますが、われわれは以上申し上げました
二つの立場から
運賃値上げに反対しているところであります。
運賃値上げというような安易な
資金調達の
方法によって
国鉄の
輸送力増強を行うということはどうしても認めることができません。また、われわれは労働組合という労働者の
生活を守る立場から、また国民
生活を守るという立場から
運賃値上げに反対しているところであります。
以上で
公述を終ります。
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