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1957-03-19 第26回国会 参議院 運輸委員会公聴会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年三月十九日(火曜日)    午前十時二十七分開会   —————————————  出席者は左の遮り。    委員長     戸叶  武君    理事            江藤  智君            木島 虎藏君            三木與吉郎君            大倉 精一君    委員            石原幹市郎君            植竹 春彦君            後藤 義隆君            成田 一郎君            平島 敏夫君            相澤 重明君            柴谷  要君            中村 正雄君            松浦 清一君            井野 碩哉君            高良 とみ君            森田 義衞君            市川 房枝君            岩間 正男君   政府委員    運輸省鉄道監督   局国有鉄道部長  細田 吉藏君   事務局側    常任委員会専門    員       古谷 善亮君   公述人    三井銀行社長  佐藤喜一郎君            山川 菊枝君            平井 好一君    国鉄労働組合中    央執行委員長  小柳  勇君    貨物協会理事  宮野 武雄君    中央大学教授  大島藤太郎君    全国中小企業振    興会会長    松沢 隼人君            原  勝司君    全日本学生自治   会総連合委員長  香山 健一君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○国有鉄道運賃法の一部を改正する法  律案内閣送付予備審査)   —————————————
  2. 戸叶武

    委員長戸叶武君) ただいまより運輸委員会公聴会開会いたします。  開会に当りまして、公述人の方々に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案について公述のため、御多忙中のところ御出席下さいましたことを厚く御礼申し上げます。それではこれより公述人の御意見をお述べ願うのでありますが、公述人の一人の公述願う発言時間は約二十分以内とし、全部の公述人公述を終った後、各委員質疑に入りたいと存じますから、この点あらかじめ御了承願います。ただ、三井銀行社長佐藤喜一郎君は十一時に所用の約束がおありのようでございますので、公述の後直ちに各委員の御質疑を願いたいと存じます。  それでは佐藤喜一郎君にお願いいたします。
  3. 佐藤喜一郎

    公述人佐藤喜一郎君) 私、金融業者でありますにかかわらず、お呼び出しを受けましたのは、おそらく、かつて私が国鉄経営委員をしておりましたこととか、あるいは公共企業体合理化審議会委員の一人として審議に携わりました関係かと存じております。  結論を先に申し上げますと、率その他の方法は別にいたしまして、私は、国鉄運賃引き上げなければならないという点については、賛成考えを持っておるのであります。ただ、その方法その他についていろいろ問題があるかと存じますが、いつもこの運賃問題が起りましたときには、国鉄合理化が不十分であるということがよく言われておるようであります。それにつきまして、部内における企業経営意味におきます合理化というものもまだ不十分の点もあるかと存じますが、なかなか最近の数年国鉄側の努力は私の目から見て認められるのでありますが、なお不十分であるか、あるいは国鉄当事者がどうにもならない面で不合理な点があるのではなかろうかというふうに感ぜられます。御承知のように、この公共企業体として国鉄独立採算制をとっております半面、非常に強い公共性を持っておることを、世間からも常識としては思われておりますので、この二つの点を調和しますのに非常に骨が折れるわけであります。  簡単に例を申し上げますというと、独立採算制ということになっておりますが、公共性のために、たとえば新線建設というようなことにつきましても、明らかに建設資金は別といたしましても、これが建設されました後におきましても、当分の間赤字であるということがはっきりしておるものにつきましても、新線建設委員会にきまりますと、国鉄は線を引かなければならない。またそれが完成しましてから運営をしなければならない。つまり赤字運営承知の上で、公共性のためにやむを得ず取り上げなければならない線があるわけであります。かつ、こまかいことになって恐縮でありますが、この新線建設につきましても、いつも十数本の線が一度に着手されまして、順位をつけて、一線ずつ完成していくという方法がどうしてもとられておらぬということも、国鉄赤字をその面において累積する一つ原因になっているかと思うのであります。願くは、新線、必要と思われる線は何本あっても仕方がないと思うのでありますが、順位をつけて、一本ずつ所要資金のある限りにおいて完成していくと、その方が国鉄負担が非常に軽くて済むというふうな点を感ずるわけであります。  第二の例でありますが、これも小さな問題かも存じませんが、最近国会議員鉄道運賃なしで乗る権利があるわけであります。そこで、まあ国鉄は全国のパスを出しておるわけでありますが、これがやはり国鉄負担になっております、これは想定しまして、おそらく一億円には達しない、国鉄の世帯としては小さな数字でありますが、やはり法律できまっている運賃というものを国鉄がもらっていないというような面もあるのであります。なお、私どもが見まして、最近この五カ年計画に基いて輸送力増強のために、かなり大きな設備拡張をする——民間企業言葉でいえば、設備拡張をするわけでありますが、その際において、この際によりますと、運賃引き上げ外部資金依存、この二つだけでありますが、私はやはり政府がこれだけ大きく輸送量増強をしますときに出資をする必要があるのではなかろうかというふうに感じるのであります。現在におきましても、民間のベースから考えました一つ企業体として見ました場合においては、出資が著しく過少なのでありまして、これを民間企業並みに見る必要のあるなしは別といたしまして、資本構成が著しく出資過少であるという面があるかと思うのであります。まあ以上のような点がやはり国鉄経営面におきまして、合理化が思うように行ってないというところの原因の一部をなしているかと思うのであります。  次に、運賃引き上げの仕方でございますが、提案の基本になっておりますものは、国鉄の申請が一八%、運輸審議会の答申が一五%、法案は一三%となっておるようであります。これがいずれが適当であるかについては、私は意見を差しはさむことを差し控えますが、いずれにいたしましても、運賃のうち、貨物運賃旅客運賃とに均等に分けてこの値上げ考えているという面に、私自身としては多少の疑問を持つわけであります。国鉄のそろばんから申しますと、現在でも貨物の方が赤字が大きく、旅客運賃の方に若干の黒字があるわけでありますが、貨物運賃につきましては、国鉄のいわゆる公共性からかんがみまして、日本物価に対する影響というものが非常に大きいのでございます。その関係からいたしまして、私は貨物運賃引上率というものを、旅客運賃引上率よりも低率にすべきではなかろうかというふうに考えるわけであります。貨物運賃につきましては、すでに海上運賃その他の比例から申しまして、低きに失するという議論もずいぶんあるのであります。あるのでありますが、長距離逓減比仏というものを若干改めまして、この面において不合理を是正はしておることは非常に賛成なのでありますが、全体の引上率というものを一三%と押えました場合においても、これよりも以下のものを貨物運賃引き上げに用い、これよりも高い方を旅客運賃引き上げに使うというような考え方でいくのが、私としては好ましいというふうに感ずるわけであります。さらに、旅客運賃につき、まして私の感じておりますことは、定期割引率というものも着手の引き下げをしたようでございますけれども、この引き下げの仕方が私は足りないのではないだろうか、こう考えるのであります。定期というものにつきましては、私からくどくど申す必要もないと思いますが、この割引率というものは、国鉄の、日本鉄道の発達する初期から起りました特殊の事情によって、著しく割引率が高いのではなかろうか、つまり、汽車が非常にすいておりました場合において割引率か高いということは、これは当然のことでありますが、今日のように各線ともおしなべて非常な混雑を来たしておるようなときには、少くもその区間だけでも期間を区切りましても、しばらくの間はこの割引率を大幅に引き下げる必要があるのではなかろうか、かくすることによりまして、同じ運賃一三%の引き上げでありましても、負担の公平を期することができるかと私は思うのであります。もちろん定期割引率につきましては、私、経営委員時代からしばしばこの点を国鉄当局に考慮を促し、また、この希望を当該の委員会なり政府なりに申し上げるようにということを印しておったのでありますが、これがいわゆる既成事実として非常に抵抗が強い問題であるということも私は十分承知しておるのであります。しかし、現状、どう考え、豪しても、あまりに普通の運賃を払う人の負担において、定期乗客というものがその犠牲において非常に安い運賃を享受しておるという関係が深いのであります。この点はたれかが非常な不評判なことをかまわずに是正される勇気をお持ちにならないと、いつまでたっても、利用者が多い問題でありますから、改正できないのじゃないだろうか、こう考えるのです。なお、最近は特殊の急行列車以外の一等というものかなくなりましたが、二等と三等というものが、二等の料金一等の倍であるということを一ぺん検討する必要があるのじゃないか、つまり倍というものは今までの常識で、運賃いかようにいじりましても、必ずその倍という常識でやっておるのでありますが、私は国鉄の三等車両というものも、著しく車体も鋼体化いたしましたし、りっぱな車になって参った今日において、二等と三等とが二対一の運賃料金であるということがいいか悪いか、さらに特別二等のような特殊な装置をした場合についても、また別途の料金考えていいのじゃなかろうか、かたがた国鉄の貨車、客車の近代化して参りました実情に即して、運賃の立て方というものも、従来の観点から全く離脱して、新しい観点に立って見る必要があるのではないだろかというふうに考えておるわけであります。  なお、本年度資金計画を拝見いたしますと、二百十数億というものが外部資金依存ということになっておるのでありますが、この計画を遂行いたします場合に、金融市場実情をよく考えますると、おそらく資金運用部国鉄に対する貸付というものをふやして、そうして国鉄公社債発行額を減す、そうして所要資金のつじつまを合せるというやり方が、現在の金融情勢から見て、少くとも本年一ぱい、二十二年度としては時宜に合った処置ではない、だろうかというふうに考えるのであります。  大体、ごく結論的にすべての点に触れたのでありますが、私の、運賃法律案改正に伴います運賃引き上げということについての私の意見は、これで終ることにいたします。  もし御質問でもございましたら申し上げたい。
  4. 戸叶武

    委員長戸叶武君) 御質疑のある方は御質問願います。
  5. 相澤重明

    相澤重明君 ちょっと公述人にお尋ねしたいのですが、先ほどあなたのお話の中で、国会議員パスの点についてお話があったと思うのですが、一般運賃値上げするなり、あるいはまた国鉄職員パスがなくなるというような場合に、国会議員の優遇ということで出しておるものについて、一億からの金をどうすればいいか、こういうような点にちょっと触れたと思うのですが結局、国鉄財政に幾分でも得与するために大蔵省なり、あるいはまた国会の立場というものをそういう面で出す、こういうお考えなんですか、その点ちょっと承わっておきたいと思います。
  6. 佐藤喜一郎

    公述人佐藤喜一郎君) 今申し上げましたのは、法律でそういうふうな権利があり、国鉄はまた無賃で輸送する義務を負っているのでありますから、そしてしかも、国鉄独立採算制を持っているとすれば、国会予算の中から適当な評価をしてパス一枚幾らというふうに見て、国会の方で国会予算から国鉄に支払うべきであろう、こういうふうに考えます。
  7. 江藤智

    江藤智君 最後に、政府運用郷資金をもっとたくさん、ふやしてもらって、そして公債の発行を少くした方がいい、これは国鉄経営から申しましたら、もちろんその方かいいと思うのでございますが、特に今年の金融状態から見てそうだというふうに承わったのでございますが、今年は金融が何か非常に引き絞っておるような声も聞いておるのでございますが、専門佐藤さんからもう少し、今年のそういう金融市場特殊性というような点でもございましたら、少しお聞かせ願いましたらけっこうだと思います。
  8. 佐藤喜一郎

    公述人佐藤喜一郎君) 大ざっぱに申し上げまして、三十年度と三十一年度を比較いたしますと、三十年度は、財政民間収支関係で二千八百億という支払い超過財政資金はなっておったのであります。三十一年度になりまして、まだ三月三十一日まででございますので、若干日は残っておりますが、大体間違いないところか千七、八百億の引き揚げ超過になると思うのであります。この両者を合せますと、一方は散超、一方は揚過でございますので、合計して約四千五百億の財政対局間資金収支の違いが三十年度、三十一年度に発生しているわけであります。その他に、三十年度に比較いたしまして三十一年度経済活動が非常に旺盛でありましたことも含まれておると思うのでありますが、若干物価も上りました関係上、大体千億の兌換券の流通がふえているわけであります。これは三十年度もふえたのであります。三十年度は大体五百億から四百四、五十億の増発ではなかったかと思うのでありますが、約五百億ほど、三十年度に比較いたしまして、三十一年度は通貨の発行の平残が多いのであります。この面からいたしまして約五百億というものが、民間資金需要の要因にこれが加わるわけであります。そこで合せまして約五千億というものが財政とその他の関係から来たはっきりした違いになっておりまして、これを裏返してみますと、三十年度の間に、市中銀行の口銭からの借入金というものは二千三百億減っておりますが、ところが、三十一年度の、この三月三十一日までの問題でありますが、約二千七百億ほど一年間に市中銀行日銀からの借入金がふえる見通しであります。従いまして、前は二千三百億減り、三十一年度会計年度で二千七百億ふえる。ちょうどここに五千億というものの差がある。市中銀行の対日銀とのやりとりで調節されておるという形に今日なっておるわけであります。そこでこの点をさらに平たい言葉で申しますと、市中銀行資金というものが著しく枯渇いたしまして、一般会計財政資金はもちろんのこと、特別会計その他を入れました資金というものは、非常にゆとりを生じていると思うのであります。しかも他方、三十年度は金が相当余っているというところから、それを受けました三十一年度においては、財政投融資というものは相当民間資金にかぶせるという考え方に立って千四、五百億というものは、われわれもその話を受けてよろしいということで御協力したのでありますが、三十一年度は、今申し上げましたように、大幅の引き揚げ超過になっておりますので、それを背景にして三十三年度財政投融資というものを民間資金にこの前のようにかぶせるということは実情にく合わないから再考慮願いたい、こう言っておるわけであります。しかし、公社債その他の政府原安を拝見しますと、三十一年度も三十二年度も同じような発行の仕方、公募の考え政府がお持ちになっておるということについては、私は金融実情に対して政府は非協力的ではなかろうかと感ずるわけであります。そういう意味で、この公社債応募は、三十一年度は非常に揚過でありましたあとを受けた三十一年度であります。三十二年度は非常に揚超であったあとを受けた三十二年度であります。そこで、同じような公社債というものの民間応募考えること自体が少し無理ではないか、その中には国鉄債も入るわけでありますから、まだ三十二年度は入っておりませんですが、そういう考えで私は申し上げたのであります。
  9. 大倉精一

    大倉精一君 このたびの運賃値上げ物価その他経済的な影響について御意見を伺いたいのであります。御承知のように、今までの運賃政策というものは、低物価政策の必要から低運賃に押えられて、いわゆる政策運賃の建前をとってきたのでありますが、私は今の問題としては、運賃値上げということは、ある時期には必要かもしれませんが、今の物価事情なり、あるいは経済動向なりから見て、一割三分という運賃率でなくて、別に収入を一割三分上げる、こういう運賃改正をして、すなわち原価主義運賃をとられる、それでお尋ねしたいことは、今の物価のの事情あるいはその他の経済動向からいって、この運賃値上げというものが、すなわち原価主義運賃を今とるということを許すようなそういう事情にあるかどうか、同時に、この運賃値上げによって物価に対する影響はどういう程度に出てくるか、こういうような点について、御意見を承わってみたいと思います。
  10. 佐藤喜一郎

    公述人佐藤喜一郎君) 私、原価主義をとって、これをお考えになっておるかどうか、私は存じませんのですが、原価主義をとるとすれば、先ほどもちょっと申し上げましたように、貨物運賃の方がよけい上らなければならないのであって、むしろ旅客運賃引上率の方が低くて済むというのが私現状だろうと思います。  その次の御質問でございました物価に対する影響でございますが、これは貨物につきましては、貨物にいろいろの種類がありますので明らかに物価に、その商品の価格に影響するであろうというものもございますし、なお、吸収してしまうと思われるものもございまして、ただこれは腰だめ的に言うならば、これだけの大きな独占専業であります国鉄貨物運賃引き上げが、物価影響なしとはどなたも言い切れないのじゃないか。そこで私がこれを旅客運賃の方にウェートをかけて、片方の方にウェートを少くして、その物価影響をなるべく軽微にした方がよくはないかということを申し上げたわけであります。
  11. 戸叶武

    委員長戸叶武君) それでは次に山川菊枝君にお願いいたします。  この後の御質問は、先ほど申しましたように、一括してあとでお願いいたします。
  12. 山川菊枝

    公述人山川菊枝君) 私はただ一介の乗客として国鉄お世話に始終なっておる者でございますから、きょうお呼びいただきましたのは、多分一般庶民、三等乗客としての資格でその意見をお聞き下さることと存じますから、その意味で申し上げます。  で、三等運賃がこの前も上りましたのですけれども、やはりそのときも、それによって非常に込み合うのも楽になる、いろいろの点が楽になるというお話でございましたけれども、どうもそういうふうに感じられませんので、相変らず非常な雑踏でございます。ちょうど私個人の経験から申しますと、三十年前に、私の子供が小学生であった時代に鎌倉におりまして、そのころ、からだが悪うございまして、一々親がついて参れませんので、東京の医者へ一人で通わせますのに、少しも心配がなかったことがございます。往復ともに突き飛ばされるとか、つぶされるとかいう心配ございませんので、ちょうど一代置きまして今の子供子供——孫がその年ごろでございますけれども、とても自分たちで勝手に行きなさいというようなことを、おそろしくてできないほど込み合っております。運賃が上りましても、一向それが緩和されるどころか、三十年前よりも悪くなっているような状態がどうして起ったのか、もちろん戦争というような大きな打撃はございましたけれども、とにかく運賃はどっと上っておるのでございます。戦争前の大体二百倍ということでございますけれども、決してただでお世話になっておるわけではありませんので、乗客の方は非常な不便、苦痛を忍ばなければなりません。それにもかかわらず、今度また運賃値上げになりまして、ことに一番多い三等客、それから定期旅客運賃が非常に高くなる、それで寝台券とか特二の方は高くならないとか、また、旅客に対しまして赤字の多くなっております貨物の方は相変らず大口の、つまり大資本の方に奉仕する傾向が強くて、そして国民の生活に直接影響するような物資の運賃引き下げられるどころか、かえって割合がこの前の値上げのときよりも高くなっているというようなことは、どうも一般庶民にはがてんがいかないのでございます。ただ、今お話がございましたように、経営に不合理なところがあるということでございましたが、何かその辺にもっと私どもにもわかるような御説明がありませんことには、どうしても今度の値上げに、けっこうでございます、と申し上げるわけにはいかないと思うのでございます。  旅客運賃だけ、私どもしろうとにわかりまする数字をちょっと集めてみましたのですが、大体三等に乗る者が非常に多いようでございます。特に短距離のものが多うございまして、百五十キロまでの者が全体の七九・二%、五百キロまでが一五・五%、その両方で九四・七%、それから千キロまでが四・四%、千一キロ以上が〇・九%でございますから、これが五・一%。その約九五%を占めております短距離乗客方が、割合からいってずっと高い運賃を払っております。それからまた一等、二等という方から申しますと、一等客は非常に長く乗っており、四九四・七キロ、それから三等客は三四・八キロと、大へんな違いでございますが、その最も長く乗る者が非常に安くなって、短かく乗る君が高くなっておるのみならず、今度の値上げでは、またその短距離電車区間人たち負担が非常にふえるわけでございます。  運賃収入から見ますと、一等旅客は一%、二等が八%、三等が九一%となり、乗車人員の九九%は三等旅客だそうでございます。また定期は大へん安過ぎるというお話でございますけれども、しかし、定期普通旅客も合せまして、旅客運賃の方は黒字になっている。その黒字になっているものをなぜ上げる必要があるか、ちょっとこれも私にわからないのでございますが、定期旅客運賃は、何と申しましても非常に数が多いので、大へんにもうかる。中央線が十五億、山手線が十億、東北線が五億、これは国鉄電車区間だけでございますが、その電車区間の三分の二は定期旅客だそうでございます。距離によりましては、あるいは少しは損がいっているかもしれませんけれども、全体から申しますと、数も多うございますし、また、決して払わずに乗っているわけではないので、全体として黒字になっている旅客赤字の責めを着せて値上げをする、それがこの生活全体にどういう影響を持つかということを考えないのは、あまりに不公平であろうと思うのでございます。今度の値上げでは、三等運賃率値上げ最高二割に達しているそうでございます。それから定期では最高四割三分で、国電線の十円区間が少くなりますと、私どものような庶民の家庭の主婦はちょっと買いものに出かけるというようなことでも、一々非常に負担が重くなるのでございます。ある区同は十円から二十円と一〇〇%の値上げになります。つまり、この貧しい者ほど負担が重くなるような値上げの方式だと思います。それから学生割引もまたこの休暇期間は高くなるというのですけれども、しかし、その全体から見てこの学生のために非常に負担が重いのではなくて、全体として旅客の方は黒字になっているのですから、特に、そういう学生といえば将来の日本をしょって立つ人です。その健康なり、また学習なりにできるだけの便利をはからなければならないのに、こういうことをすることは、長い目で見た国策の上からも非常に不利益で、これが営利会社の仕事ならですけれども、国営であって、そしてこの利益を見ずにやれるというところですし、ことに、黒字になっている旅客の場合にこれを値上げするということは、もう少し考え直していただきたいと思います。それからまた特急料金は、最低六百キロであったのを今度は四百キロと、やはり実質的な値上げになることか多いのでございます。  もう一つは、旅客の方でこの貨物赤字の方を負担させようという、今日までもだいぶ負担が重くなっておる。ところが、この赤字が解消しないというので、この旅客の方でまたさらに貨物の不足分を負担させようというように思われるのでございますが、その貨物運賃の方に合理化のもっと大きなメスが当てられる必要はないか、この辺をよくもう十分に御研究になって、これ以上どうにも方法がないのか、一般の国民にはそこの点が大きな疑問になっているわけでございます。たとえばこの前のこの値上げのときでも、高級品であるとか、あるいはまた独占物資、大きな会社の扱っておりますたくさんの品物へは逆に割引率は高くなりまして、そして民衆の生活に直接関係のある物にはその割引が少くなっている。つまり、値上げが大きくなったり、そういう点について、私どもは何にも知らすにおりました間に、大へんに不公平なことが行われている。知らず知らず調高い生活費を払っていることになっていたわけでございます。  で、その値上げになったこの前の値上げ、二十八年の値上げのとき、いろいろな賃率や等級とか、いろいろむずかしいことがございますようですが、その結果どういうことになったかと申しますというと、銃砲、弾丸、火薬類と、これはどうも戦争を放棄したと憲法に言っております国としてははなはだ不都合に思われますけれども、そういうものが一割—二割値下げになって——運賃が値下げになって、また高級織物も平均一割の値下げになり、石炭、鋼材、セメントは一割—一割五分の値上げになっている。農業生産物、つまりそういう生活必需品の方の値上げは米、麦、豆類、野菜類が二割五分から三割五分上り、まき、木炭、二割四分—三割六分上り、農機具が三割、調味料が二割—二割八分上ったそうでございます。それからまたこの特殊列車、野菜や肉やくだものを運ぶ冷凍車とか、それから通風車の、帰りはからになるのは特別使用料金を取っておりますけれども、石炭や石油を運ぶタンク車からは特別料金を取っておりません。つまり、これはみんな大資本経営している事業の便利をはかるものです。そういうものをほかの食物並みに取ればそれだけ物価が上るという思いやりかもしれませんけれども、どのみち、こういう大資本のところにだけ奉仕しなければその物価が上るとは言えないのでございます。で、どうしてもそれらの大資本そのものの中でも、もっと経営合理化をして、そうして国鉄赤字の犠牲を払わせる、その赤字が大衆のいわば課税となりまして、三等旅客負担になるようなことをしないでも事業が経営できる、そういうような有能な人に一つ事業を経営してもらわなければならないと思いますので、国鉄の方でそういうことまで、民間の大資本経営が下手で、普通の料金を払っては、運賃を払っては経営できない、それを大衆に押しつけなければならないというような経営を許すために、その国鉄の大企業に対する運賃、それを特に安くなさるというようなことは考え直していただいた方がよさそうに思うのでございます。  また、これはたびたび言われることでございますけれども、例の食堂車、これが東京から大阪まで、平均この売り上げが十万円で、その国鉄に払う分が片道三千円だと、食堂車で営業する権利と食堂車の運転料が全体どのくらいなのか知りませんけれども、三千円ではあまりに安過ぎるのではないか、こういうこの不合理はまだほかにもあるのではないかと思うのでございます。  また、方々の大きな会社で持っております専用線、これが二千三百九十線も全国であるそうでございますけれども、その輸送量は、国鉄全体の貨物輸送量の四〇%にも達しておる。で、これがまた非常な赤字になっておるそうでございます。それからこの昨年の九月に規則が改正になりまして、それだけでも大へんに大企業や通運業者に有利になりまして、年間約一億、それから運転費用の軽減で八千万、一億八千万円だけますます赤字がふえてきたということを聞きました。  まあそういうふうに非常にこの貨物の運送につきましては不合理なことが多いように聞いておるのでございますが、それについて、十分に納得のいくような御説明なり、またその方法、これ以上何とも仕方ないという方法をおとりになったということを伺っていないのでございます。で、まだそのほかにこの運賃の滞納、これは私どもはちょっとお金を忘れましたからといって、ただ乗せていただくわけにいきませんし、またその車掌さんであるとか、その辺の警官の好意で百円なり、五十円なりの運賃を都合してもらったというようなことがありますと、新聞に大へんな美談として大きく出るくらいでございますから、まずお金なしには乗れないのでございますが、これが特別の人たちはただで乗せてもらえ、またそういう関係の荷物はあと払いで、それが非常な滞納になっているということを聞いたのでございます。特別な荷物と申しますと、通運業者の物とか駐留軍の物とか防衛庁、新聞社などの物、それから旅客といたしましては、交通公社の人とか防衛庁、駐留軍の人たちあと払いでいいということになっているというのでございますけれども、すべてこういうその経営内部のことは私どもしろうとには一向わかりませんが、ざっとしたこれは国鉄の非常に通じた方から伺ったことでございますけれども、しかもそれにしましても、またついここ二、三日読売新聞にも連続した記事が出ておりましたけれども、それについてのはっきりした、だれにでもわかりいいような御説明というものを伺っておりませんので、どうしても今度の値上げ案には納得のいかないものがあるので、これはこの際、よくもう一ぺん調べたり研究して、一般大衆の負担がこれ以上加わらないように、そしてもっと合理的な経営ということを、これは国民の財産でございますし、公営の企業でございますから、それだから自分たちの損にならないからというのでなしに、みんなのために経営して下さるということを、もう少し考えていただきたいと思うのでございます。  また、先ほどの方もしきりに公共性ということをおっしゃいましたが、ずいぶん公共性で犠牲を払っていらっしゃると申しますけれども、それもよく考えて、一部の人の利益のために公衆の利益を犠牲にするようなことは決して大局から見て公共性とはいわれませんし、また、ときに水害地であるとか、飢饉の地方、冷害地区とかへの輸送の貨物とか、また身体障害者に対する割引とか、そういうような公共性を持ったものは、これは国鉄が経常費の中で出したり入れたりするよりも、政府の仕事なのでございますから、これはやはり政府の社会保障一の方の予算としてやるように、その辺を国鉄のこの独立採算の手前からいえば、もう少しお考えになった方がいいこともあるのではないかと思います。  とにかく、私ども単なる乗客の立場といたしまして、旅客の方は黒字になっている、そして貨物運賃の方が赤字になっているという場合ででございましたら、これ以上旅客負担を加えるかわりに、その赤字になっている貨物輸送の内容をもっと研究していただいて、そして根本的に不都合なことのないよう、だれにでも納得のいくような経営方針を考えていただきたいと思うのでございます。その意味で、私は今度の運賃値上げをする前に、もっと考えていただきたいという意味でこれに反対いたします。   —————————————
  13. 戸叶武

    委員長戸叶武君) 次に、平井好一君にお願いいたします。
  14. 平井好一

    公述人(平井好一君) このたびの日本国有鉄道運賃引き上げにつきましては、私は賛成でございまするし、また今程度の引き上げでは、現在の資材関係また労務関係から見ましても、やがて間もなく引き上げをせざるを得ないような状態に相なると思うのでございます。  きょうこの席に招かれまして私のお聞き願いたい要旨は、運輸交通が日本の産業経済においてどれだけの位置を占めておるかということをまず第一にお聞き願いまして、その運輸交通のうちでもって国鉄がどれだけの分野を占めておるかということを申し述べたいと思います。次には、これからの日本の国土の全面的開発という点から考えまして、今の国鉄運賃体系がこのままでは必ず行詰ってくる、そしてこの運賃体系が根本的に是正されない限りは、日本の国土の開発の全きを得ないではないかと思われます点を申し述べたいと思うのであります。  日本では四大産業として数えられておりますものが、電力、鉄鉱、石炭、運輸交通の四つでございます。終戦以来、これら四つの重点産業のまず最初の五カ年間は復興に、それから次いでは拡充が企てられまして、各部門にわたって多額の財政資金また民間の投資が行われておるのでございます。私自身も昭和二十二年から二ヶ年間経済安定本部の運輸局長をいたしておりましたし、続いて二十四年から二ヶ年間は運輸審議会委員をしておりまして、運輸交通行政の一翼に加わっておったのでございます。ところが、政府全体といたしましても、また国会におきましても、さらにまた国民一般としましても、運輸交通の重要性に対する認識は、他の産業よりも遺憾ながら低いのでございます。国民生活に占めておりまする重要性は運輸交通が一番大きいのであるにかかわらず、国民の認識が足らぬ。運賃は安ければよい、上っては困るという考え方が最も大きな力を得ておるのでございます。ところが、これら四大産業の一カ年間の総収入をごく大略見てみますと、これは昭和三十年度を基礎にしておりますが、電力では大体一カ年間の総収入が四千億円と見てよろしかろうと思います。鉄鋼が約二千億円でございます。これに対して運輸交通は約六千五百億の運賃をあげておるのでございまして、四つを並べてみますと、運輸交通が一番大きな収入を占めておるということがおわかりいただけると思うのでございます。むろんこの運輸交通の部面には国鉄も電鉄もまた沿岸の客船、貨物船、航空も含んでおるのでございまするが、外航の海運だけは、これは国外輸送の問題でございますから、この中からは除外しておるのでございます。従業員の数を見まするならば、運輸交通におきまして、国有鉄道が約三十七万名を初めといたしまして、民営の電鉄、バス、トラック、沿岸航路の貨物船、客船を合せまして、百万をこえ約百二十万名と存ずるのでございます。これに対しまして電力では約十三、四万と見てよろしゅうございましょうか、鉄鋼が約十万名、石炭では約二十八万名でございます。従いまして、賃金の占める割合は、運輸交通におきましては、国鉄が総収入の約四三%が人件費でございまするが、私鉄におきましては運賃の大体五〇%に近づいておるのでございます。従いまして、運賃が適正であるか否かということは、運輸施設の安全を保ち、能率よく運営していき、かつまた、時勢の進運に応じまして、これを改善する、さらに進みましては、将来の需要に対して拡充していませんし、多数の従業員の生活の安定をはかり、健康を保持し、もって運輸全体の安全、能率をはかる上におきまして、この賃金問題が適正であるかどうかは、非常に大きな問題になって参るのでございます。  しからば、運輸交通のうちにおきましては、国鉄の閉める分野はどれだけ旅客を通じまして約四〇%だけが、国鉄負担しているところでございまして、他の六〇%は全部民間企業によっておるのでございます。これを数字でもってごらん願いたいと思うのであります。昨年書いたものがございますが、「旅客船」という雑誌がここに十部だけ持ってきておるのでございますが、数が足りませんから、先生方これをお二方か三人でもってごらん願えばけっこうと思いますが、この中からごく概略申します、日本全国の旅客輸送におきましては、運賃が総額でもって二千九百七十六億円でありまするが、そのうち国鉄が千百七十七億円、その他が千八百億円でございます。貨物におきましては、二千七百六十六億円のうち、国鉄が千百七十五億円で、その他が千五百九十一億円でございます。貨物におきましては、五八%が民間企業により、また旅客におきましては六一%が民間企業によっておるのでございます。国鉄経営がうまくいっていないということは、他の運輸機関もまたうまくいっていないことであります。何となれば、運賃は貨客通じまして国鉄に準拠しておるのでございます。日本のような細長い国は、国鉄と電鉄、バス、トラックがおおむね並行しておりまするか、あるいは相互に連接しておるのでございます。また海上におきましては、船と国鉄とは大体平行しておるのでありまして、国鉄運賃以上には民間経営の輸送機関も運賃をいただくわけには参りません。また民間企業運賃といいましても、これは運輸大臣の許可制になっておるのでございますから、むちゃくちゃに高い運賃を取るというわけにはいかないのでございます。この収入問題、すなわち運賃問題からしまして、国鉄の施設が改善を十分になし得ないならば、他の運輸機関もまた改善資金の稔出が思うようにできないのであります。ところが、運賃が大体同じでありましても、国鉄民間経営に比べましてだいぶ有利な点がございます。まず第一には、借入金の金利が安いことであります。また税金がほとんどかからないと言ってもいいでしょうか、最近民間企業に対する固定資産税と同じような意味で地方に納付金を出すとになっておるのでありまするが、民間負担しておるものよりも、税全体としましてははるかに国鉄が安いのであります。また、民間企業は施設の拡充をするためには、どうしても株主資本依存しなければなりません。株主の増資払い込みを求めるためには、適正な配当をしなければならぬのでございますが、国鉄には配当という問題はないのでございます。民間の運輸交通事業も非常に苦しいのでございまするが、そこに電鉄会社などは副収入を求めなければならない。いわば企業としてのアルバイトを考えなければならぬのでありまするが、どうするかというと、その沿線に住宅地を経営する、それで土地の値上りでもってもうける。遊園地を作り、観光地を開発して人を誘致しておるのでございます。また、ターミナル・デパートを作る、映画館を兼営するというようなやり方をしておるのでありまするが、こういうふうな仕事から収入をかせぎ出そうといたすといたしますと、現在ではそれがかなり度を過ぎているのではなかろうか。本来の運輸交通事業以外に逸脱しているのではなかろうか。というのは、自分のところの交通可能の量よりも、はるかそれ以上の客がこのために動いている。従って、混雑を来たす、はなはだしきは混乱状態を現出しておるのでございます。ところが、国鉄もまた盛んに観光遊覧の宣伝をしておりまして、通常の輸送キャパシティ以上の客が輻湊しておるような状態でございます。何のことはない、運賃率が安いから、国有鉄道も、民間経営の電鉄、バスも盛んに交通本来の仕事以外のアルバイトをして、それで副収入を得て何とかつじつまを合わせようとしているのであるけれども、それが日常の交通客にとりましては、非常な大迷惑をこうむっているというのが現在の姿でございます。このために通勤輸送の困難は実にひどく、国鉄、私鉄通じまして、これはもう殺人的な状況でございます。私は昨年の夏、大阪のNHKでもって放送したこともございまするが、ちょうどその前に新聞を見ますというと、こう、やく会社の薬の宣伝で、これを貼れば肩の痛みが少なくなっていくというふうなことを言うておりまして、電車にぐんぐんと押し詰める光景をこうやくの広告に使っているというふうなありさまでございます。運賃率の是正、適正をはかるにあらざれば、すべての輸送機関は健全な運営をいたしがたいというのが現在の現状であります。  そこで、都市中心の運輸交通でありまするが、戦後においては都市集中の傾向がきわめて著しいのでございまして、これをちょっと数字で当ってみますというと、東京都の人口が八百五十万人になんなんとしておりまして、すでに戦前をこえております。神奈川県が三百万になっておりまして、これも戦前をこえておりまするから、京浜地区におきまして一千百五十万人の人間が集結しておるのでございます。また、西の方におきましては、大阪府の人口が五百万、兵庫県の人口が四百万で、計九百万でございます。大阪府の方はいろいろの事情がございまして、戦前における大阪市の人口にやっと達したくらいでございまするが、とにかく京浜、阪神という二つの拠点に二千五十万人の人間、九千万の人間のうちの二割三分かこの都市圏に集中しているのでございます。こういう状態を今後このままに放置するならば、どこまで進むだろうかということは、これは国政をつかさどりまする先生方にぜひお考え願わなくちゃならない点でございます。それで、このように人口が集結しました結果、工業生産におきましては、これは紡績とか、機械製作、化学、石油、紙、金属その他でございまするが、昭和十年におきましては、この京浜地区におきまする工業生産は、日本全体の三〇%を占めておりましたが、昭和二十九年には、これが三一・五%になっているのでございます。これは三十年、三十一年、また本年を通じまして、もっと、この日本全体の生産に占める京浜地区のパーセンテージが多くなって、おそらく今年、去年あたりは二二%あるいは三%に達しているのではなかろうかと思うのでございます。こうなって参りますというと、もう都市生活で非常に困りますのは住宅の問題であります。学校であります。病院、水道——水道なぞもこの渇水でもって節水あるいは減水をしなくちゃならぬというふうな状態になっているのであります。ガス、一番困るのが下水、それから通勤、通学の問題でございます。何でこんなに都市に集中しなくちゃならぬか、あるいはこの集中傾向をこのままに放置していいかという問題になるのでありまするが、これはいろんな原因がございまするが、われわれ運輸交通、の面からいいますと、日本運賃体系——国鉄を基幹としまするところの運賃体系そのものが都会へ都会へと集中するような工合に通貨体系ができておるのでございます。これは旅客の面につきましては、この都市内における通勤とかあるいは通学とかという、定期券の高いとか安いとかいう問題はありまするが、これはこの大きな見地から見るというと、実に集中し過きた、都市内に現におる人々にどうするかという問題なのでございまするが、私の申したいのは、もっとこれで今後もよいのかという問題なのでございます。  まず、旅客の面からいいますというと、非常な大幅な長距離逓減でございまして、従来の長距離割引にしましても、今度御審議中の改訂にしましても、最初の百五十キロまでを一〇〇といたしますというと、それをこえる五百キロまでが大体三分の二になります。それから千キロまでになりますというと、大体三分の一になります。千キロをこえますというと、四分の一に相なるのでございます。ですから最初の一キロにおきまして、今度の率が二円四十銭でありまするが、千キロをこえますというとただの五十五銭に相なるわけでございます。貨物の面におきましてはこれほどではございませんけれども、長距離逓減が著しく行われておるのでございます。また貨物の面におきましては、一級品から十二級品までの幅がいかにも多い。一級品の一〇〇に対しまして十二級品ですというと三七%になってしまうのでございます。これが日本の明治以来の経済発展の跡を見ますというと、明治から大正、それから大正から昭和の十年くらいまでの間はこれでよかった。この細長い国でもって、まあ人口がばらまかれておる。物資が、いろいろな物があっちこっちでできるから、これを京浜と阪神との二つの拠点に集めるためにはこれでよかったのであります。人口が大体七千万程度の国であるならばこれでいいのでありまするが、すでに九千万をこえて、ここ十年のうちには一億に達しようという今の状態で、これより以上この二つの拠点に集まることは、これはもうどうしてもこれから避けなきゃならぬ。避けるためにはどうするかといいますと、私は客の面において、貨物の面において、この大幅な、長距離逓減を是正していただかなければならないと思うのでございます。  で、今国鉄の五カ年計画を達成するために運賃をどうするか、定期券をどうするかというふうな問題は、必要なる資金負担をどういうふうにしたらば国民の皆様方の満足が得られるかという分担の問題だけであります。総収入を増加させなければならないという点につきましては、これは何人も国鉄の現況を見ますというと異論がないだろうと思いますが、貨物に多くするか、あるいは客に多くするか、あるいは長距離逓減をもっと大幅に緩和して近距離のものを助けていくか、いろいろの方法はあるのでございますけれども、その負担をいかにするかという問題だけになってきていると思います。で、一体国鉄経営を見ますというと、まず単線区間では赤字でありまして、複線区間ではやや黒字になっておる。準線区間のうちでも電化をした区間では黒字になる所があるけれども、ほかは大体赤字になっておるのでございます。で、貨物で損をして客で得をしているというけれども、これはいろいろな仮定の上に積み上、げた計算から見るとそういうふうになっているもので、これは絶対的のものじゃございません。ということは、駅長一人の月給を見ましても、あなたの貨物面の月給は何割で、客の面の月給は何割だというふうに分れておるものじゃございませんので、これは便宜的に計算の基礎としたものでございまして、私どもはこれを国鉄全体としての経理の上から考えなければならぬ。改善、拡張資金が足らないゆえに、これをふやすのにその負担をどうするのかという問題になっていると思うのでございます。  それで与えられた時間も少くなりましたので、日本の国土開発の点から見て、今の状態では日本は行き詰まってしまうのでございます。今ちょうど入学試験期でございまして、地方から多数の青年がやって参ってきます。何で一体東京の学校に入らなければならぬかといいますと、東京なりあるいは阪神方面の学校を出るのでなければ就職できない。つまり、この両拠点に産業がかたまっておるために、学生もここに勉強せざるを得ないわけでございます。私どもも地方を回ってみますと、あっちにもこっちにも立地条件がかなりよさそうな地点がたくさんあるのでございまして、今後はそういう所に新たなる工場を持っていく。そうして今まで原料が非常に安い運賃でいたずらに長距離を走り回っておりまするのを、地方でこれを製品にするか、あるいは半製品にまでして鉄道に運びますならば、これは必ずや今非常に輸送距離の延びているものが短縮される。それで鉄道は製品、半製品に運賃をかければ、負担力も多くなってくる。輸送のトン・キロは減りましても運賃収入はふえるであろう。またそのダイヤのゆとりは客のサービスをふやしていくということもできると思うのであります。なお国鉄と沿岸の貨物輸送の問題でございまするが、これが国鉄運賃を安くしておるためにどうしても海運に荷物がうまく回らないのでございます。これも国鉄貨物運賃を適正にし、長距離逓減をもっと緩和するならば、これは必ず海運に荷物が、しかも大口荷物が回ってくること、戦前と同じ姿になるであろうと思うのでございます。これによりまして、鉄道赤字赤字で苦しんでおりまする大口の運賃の安い品物を船に回すことによりまして、さらに国鉄全体の輸送の姿はもっと合理化し、もっとスムーズにいくだろうと思うのでございます。  なお、ここに新聞に書いてありますもので、日本の輸送路は海に広げろという趣旨をここに書いたものがございますが、これは昨年の秋でございますが、ちょうど残部を持っておりましたのでここに持参しておりますので、十部ございまするが、ごらん願えれば幸いだと思います。  以上をもちまして私の公述を終ります。
  15. 戸叶武

    委員長戸叶武君) 速記をちょっととめて下さい。    〔速記中止〕
  16. 戸叶武

    委員長戸叶武君) 速記をつけて下さい。  それでは山川君、平井君、お三人の公述に対する御質疑のおありの方は御質疑を願います。
  17. 相澤重明

    相澤重明君 平井公述人にちょっとお尋ねしたいのですが、あなたの今言われておる国鉄赤字というのは、貨物運賃、しかも長距離の貨物輸送というものを無理をしておる、こういうものをもっと適正化し、あるいは緩和することによってですね、いわゆる海上運送にも振り向けることもできるし、また国鉄赤字も若干減らすことができる、輸送の緩和もできる、こういうふうな御論旨と思うのでございますが、そうしますというと、結論的にはですね、あなたの今のいわゆる運賃値上げの問題については、もっと考える面がある、むしろ、その賛成の面よりはまだそのそういう値上げの問題についても反対すべき点もあるのじゃないか、こういうような御論旨のように受け取れるのですが、いま一度その点お伺いしておきたいのですが。
  18. 平井好一

    公述人(平井好一君) お尋ねの趣旨、ごもっともでございますが、この長距離逓減を今の事態において、もう新年度から急に改めるというようなことはなかなか産業経済上できません。また、砂利とか石炭とか、あるいは石灰石とかいうふうな非常に運賃の安いもの、あるいは食料品に対する低率の運賃というものを今すぐに大幅に改めるわけにはいかぬのでございます。そこに私は実施面におきましては非常用に大きな巧みさを加えなければいかぬと思いますが、理論としましては、今のような低級品に対する大幅な長距離逓減というものをやめれば、これは自然の姿のままに海上に荷物は移っていく、こういうように考えておるわけでございます。今度の運賃改定にこれを織り込んでも、なかなかこれは自分の工場はこういう所からこの資材をこの運賃で持ってくるからという状況でやっておりますので、それではだめだ、そのことは私もよく考えておるところでございますが、御質問の趣旨は全く同感でございます。
  19. 柴谷要

    ○柴谷要君 山川先生に一言お尋ねいたしたいと思いますが、大へんども数字的に参考になる御検討をいただいた御発言がございまして、非常に私ども参考になりました。その数字の中で一、二お尋ねいたしたいと思うのでありますが、特に御検討いただいております内容の中で、運賃あと払い、特に駐留軍関係あるいは新聞社関係その他防衛庁の外郭団体等のことをお調べいただいたようでありますけれども、その数字を分けて、あと払いの状態が駐留軍関係がどのくらい、それから新聞社あるいは防衛庁関係がどのくらいかという数字がお調べになっておられましたらお聞かせいただきたいのでございますが。
  20. 山川菊枝

    公述人山川菊枝君) 今ちょっと持ち合せておりませんですが……。
  21. 戸叶武

    委員長戸叶武君) 速記ちょっとやめて下さい。    〔速記中止〕
  22. 戸叶武

    委員長戸叶武君) それじゃ速記つけて下さい。  それではこれで午前の公聴会を終ります。  長い間公述人の方に貴重な御意見をお述べいただきましてありがとうございました。  それではこれで休憩にいたします。    午前十一時四十六分休憩    —————・—————    午後一時十四分開会
  23. 戸叶武

    委員長戸叶武君) ただいまより運輸委員会公聴会を再開いたします。  公述人の方々に一言ごあいさつ申し上げます。本日は国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案について公述のため、御多忙中のところ御出席下さいましたことを厚くお礼を申し上げます。  なお、本日経済団体連合会事務局長、堀越禎三君がやむを得ない事情で御出席できないとのことでありますので、御了承願います。  それではこれより公述人の御意見をお述べ願うのでありますが、公述人のお一人の公述願う発言時間は約二十分以内とし、全部の公述人公述が終った後、各委員質疑に入りたいと存じますから、この点はあらかじめ御了承願います。  それでは小柳勇君にお願いいたします。
  24. 小柳勇

    公述人(小柳勇君) 国鉄労働組合央執行委員長の小柳勇であります。国有鉄道運賃の一部を改正する法律案に対しまして、公述いたします。  同法律案によりますと、旅客貨物とも平均一割三分の値上げ率によって現行運賃値上げすることを提案いたしているのであります。私は運賃値上げに反対でありまして、従ってこの法律案の趣旨に反対の立場をとるものであります。ただいまからその理由を申し上げます。  提案理由によりますと、国鉄現状は、累積した老朽施設、車両の取りかえを急速に行なって、輸送の安全を期し、急速に増加した輸送需要に対応するため、輸送力を増加しなければならない。さらに電化等鉄道近代化をはかって、サービスの向上、経営合理化を促進すべき段階であって、このために鉄道運賃値上げによって資金を調達しなければならない、と提案しているのであります。施設、車両の老朽化、輸送力の逼迫については、私もひとしく認めているところでありまして、現在のところこれらのものを鉄道職員の労働強化によって補っていることは周知の事実であります。特に定員をとってみますと、昭和二十九年に予算定員が四十四万七千七百二十五名、こういうものが三十二年度の今日においてもなお四十四万七千七百二十五人でありまして、その間四年間における輸送量の増加は約三〇%に及んでいるのであります。このように輸送量は三〇%も増加して、定員は四年間そのままの据え置きの状態である。こういうことで定員の面からも労働強化が来たしておるし、施設、車両の老朽化と、それから少い定員でそれだけの過重な労働に耐えているのが現在の国鉄職員現状であります。  また鉄道電化、近代化、経営合理化につきましても、根本的には反対する何ものもないのでありまして、時代の進展とともに、これに即応する近代施設を要求することは当然であろうと思うのであります。ただこの点につきましては、国鉄職員の労働条件の向上、生活権の確保の問題と関連して別途の問題が発生いたしますが、ここでは単に資金調達の面で、法律案の趣旨に反対の意見を述べたいと思うのであります。  この法案の企図しておりますのは、以上の施設、車両の改修増備と、鉄道の近代化のために要する資金の調達を運賃値上げに求め、五カ年間に約二千七百億前後の増収を見込んでいるのであります。  国鉄の輸送力が逼迫している点、経済の隘路となっている点、こういうことをわれわれは国鉄が危機に瀕していると言われるものであります。国鉄の危機と言われるものは一体どこから発生しているかということを根本的に検討しなければ、単に運賃値上げによって資金は調達しても、これはその当時だけのことに終って、また近い将来、運賃値上げをしなければ、輸送の逼迫を緩和することができないような情勢になるのではないか、従って私どもといたしましては、国鉄が現在危機に瀕しているならば、その危機を根本的に検討して、その根本原因を除去することが、この際、一番大きな課題ではないかと考えているわけであります。この国鉄の危機を招米している原因をいろいろ検討いたしまして、私は政府の交通政策が貧困であるから、現在の国鉄は危機に瀕している。このように結論を見出しているのであります。  第二には、国鉄当局国鉄運営に対する方策が根本的に誤まっているのではないか、従ってこの政府の交通政策の貧困を是正し、国鉄当局国鉄運営に対する誤まりを是正することが危機を乗り切るためにとるべき焦眉の問題であると考えます。  これから交通政策についてこんなことを考えてもらわなければならぬという点について具体的に意見を申し述べたいと思います。  まず第一に、鉄道、自動車、船舶、航空の各交通機関の輸送分野を確立して輸送力を調整することが必要であります。たとえば国鉄は長距離の大量輸送を担当する。自動車は都市における旅客の輸送を担当する、あるいは貨物自動車は近距離の軽量の貨物を輸送する。私鉄は国鉄の輸送力の部分的な橋渡し的な輸送をするといったように、それぞれの各交通機関の性格と任務があるわけであります。その各交通機関の性格と任務をお互いによく調整して、総合的に輸送力が判断され、配分されるということが第一に重要な点であると考えております。今日の交通政策では、この点が全く放任されていて、輸送調整というものが行われていない。あるいは輸送力の分野の限界というものが明確になっていない。ここに今日の交通が混乱する、あるいは輸送力が不足する原因があると考えるのであります。  第二には、輸送行政を統一一元化する必要があります。交通行政を担当するところの政府の行政機関がばらばらになっているので政策にも強力なる重点と核心というものがない。運輸省あり、建設省あり、あるいは経済企画庁ありという姿になっているのが現実の鉄道輸送の姿であります。たとえば運輸省の都市交通課があるかと思えば経済企画庁にも都市交通課というものがあります。あるいはまた自動車の方では建設省で自動車の問題をやっているかと思うと、同時に運輸省の方でも自動車の問題をやっているのであります。自動車の縦貫道路法案一つをとってみましても各関係官庁でさまざまの意見が出て、その調整がつかないような困難な状態であります。こういうことでは輸送行政というものが強力に遂行されるという態勢にはならない。このようなばらばらになった輸送行政というものを統一一元化することが今日の条件としては絶対に必要であると思うのであります。  第三の点といたしましては、国鉄に対して政府財政金融的な裏づけが行われていないところに輸送力が強化されない最大の原因があるのではないかと考えるのであります。なるほど作文としての交通政策はきわめて総合的に、しかも強力に輸送力を増強していくという工合になっているのでありますが、この政策を遂行するところの具体的な力としての政府財政融資政策の裏づけがない、単に作文となってしまっているのであります。  第四には、陸上、海上、航空の各輸送機関に対する施策の総合的な均衝をはかるということが必要であると考えるのであります。このことは、たとえば貿易政策、あるいは産業政策として海運に対しては利子の補給をしてその貿易政策の遂行をはかっておるのでありますが、国鉄新線建設という国家的な問題については何ら考慮されていない。あるいはまた日本航空につきましても補助金なり、あるいは年々十億前後の出資がなされているのであります。そして保護助成の政策が進められているのでありますが、国鉄に例をとってみますならば、昭和二十五年に四十億円の出資があっただけで、その後は全く政府から出資金というものがない。また補助金は一つもないのであります。補助金がないばかりか地下鉄を例にとってみますと、国鉄は年々二億から三億の金を逆に地下鉄に出資しておるわけであります。国鉄がなぜ地下鉄に出資しなければならないのか、その理由なり必要性については運輸省としてももう一回考え直してもらわなければならないのであります。本来鉄道省であった時分には、国鉄が地下鉄に投資するために年々出資をするということが考えられたわけでありますが、現在はすでに公共企業体でありまして、公共企業体になりまして七、八年を経過した今日、なお地下鉄に国鉄出資する必要はないと思うのであります。こういう点が政府の代弁的なことをさせられている。また負担だけを転嫁されていると思うわけであります。このようなことは海上、陸上あるいは航空、各輸送機関に対する政府の施策がきわめてアンバランスになっているということを意味しておると思うわけであります。従ってこれは施策の総合的な均衡をはかる立場から直していかなければならないのであります。こういう点が交通政策に対して政府なり国鉄当局に特に考えてもらいたいという点であります。  そこで国鉄労働組合といたしましては運賃値上げしてその資金によって国鉄を再建するという方向ではなくして、先ほど申し上げましたように、まず交通政策を確立して、政策の遂行によって危機を打開することを基本的な方向として主張いたしておるわけであります。具体的に、ではどのような施策をすれば運賃値上げをせずに年間五百億円の資金が調達できるかについて若干意見を申し述べてみたいと思います。  その第一は、国家の基幹産業としての国鉄の再建問題は、国鉄政策中の緊急課題であるということをまず認識してもらわなければならないのであります。そのことはすでに御承知のように、鉄鋼、電力、輸送、この三つの基幹産業が今日日本経済のネックレスになっているということが言われ、政府としてもその対策がいろいろ考えられているようでありますが、そういう基幹産業としての国鉄の再建というものは、利用者運賃負担てもらってその資金で立て直しをするというような性格のものではなくて、政府資金やあるいは計画のすべての面にわたって責任をもって、再建をすべき性格のもして当面運賃値上げを避けて、次のような施策を強力に進めていくということが重要ではないかと考えるのであります。このような施策を進めて参りますと、運賃値上げをせずとも国鉄の再建ができる、このように考えられます。今から具体的に一、二申し上げます。  その一つは、まず資本金の問題であります。御承知のように来年の一月になりますと、大体今年度に入りますが、民間におきましても百億程度の会社が相当程度出現すると言われております。八幡製鉄、東京ガス、東京電力、中部電力、関西電力、日本鋼管、東北電力、富士製鉄、こういった民間の会社でさえ資本金を百億ないし百五十億程度に増資をして設備の拡張をやっていくようになっているのでありますが、二兆一千億の膨大な資産を持っている国鉄がわずかな資本金でやっているということは、まず問題にしなければならぬ点だと思うわけであります。資産に見合う新たな資本金を作る、あるいは国鉄の施設というものをよくするためには政府資本投下をして設備改善をする、車両を作る、線路を作るというような基本的な考え方に立つということが大切ではないか、運賃から上った収益をもって資産を作っていくという考え方は根本的に誤まりであると考えるのであります。その具体的なやり方としては、まず昭和二十四年の公共企業体になったときの借入金が、五百八十億ありますが、この借入金を全部出資金に振りかえ、そのことによって一つには資本金がふえ、資本と資産の割合を平常に戻し、同時に利子の負担を軽減するということが大切ではないかと考えるのであります。また資本金を一年千数百億も出せということではなくて、毎年大体百億程度の出資をする。たとえば現在日本航空が毎年十億ずつ国家からの出資を願っているわけであります。これと同じように国鉄に対しても毎年百億程度の出資をしていく。このようにしてまず資本金を増加せよということであります。  第二には、税金の免除と企業還元ということであります。具体的に申し上げますならば、提案理由にもありますように、今年から固定資産に対するところの納付金か大幅に国鉄負担せねばならないということになったのであります。この納付金は今年度は三十六億でありますが、来年度は七十六億程度になります。固定資産税などを含めるならば年間八十億の固定資産に対する税金を納めていくということで、これは相当企業財政を圧迫して参るわけであります。もちろん国鉄経営が相当な余裕がある場合には税金をかけますと、地方財政救済の一つ方法考えられるのでありますが、御承知のように国鉄財政が非常に圧迫されている上に、加えてこのような税金をつけ加える。そうしてこの金を運賃値上げによってまかなうというような事態が発生することは考え直す必要があるのではないか。言葉をかえるならば、国鉄を利用する人が国鉄の固定資産税を払うというようなことになるのではないかと考えるのであります。  従ってこのような公社の財政に大幅な負担となるような固定資産税なり、納付金というものは廃止することが当然必要だと思うのであります。税金の問題ではいま一つ通行税の問題があります。通行税は今日では一等と二等に対して賦課されているわけでありますが、これも一般会計の方に繰り入れるというような形でなくて、ひもつき財源であっても、企業に還元してサービス向上の原資とすることが必要ではないか。これらの税金の免除と還元によって、年間百億程度の財源が出てくる。あるいは負担が軽減されるということになろうかと思うのであります。  第三に、公共的負担の一部を国家が補償することが必要であると考えるのであります。たとえば新線建設を毎年やっておるのでありますが、この新線建設はもうかるから新線を建設するという性格ではなくて、日本経済の発展のため、あるいは地方の産業を開発していくという国家的あるいは社会的な政策的見地から新線を建設していくわけでありますが、このような新線建設は経常的に見れば赤字原因であり、相当財政を無視しなければならない。このような国鉄財政負担をかけるような新線建設については、当然国家政策として必要であるというのでありまするならば、利子の補給をして造船の場合以上に利子の補給をしていくということが必要ではないか。もちろん営業的に見て採算が成り立つというような地域に対する新線建設まで利子の補給をせよという主張ではないわけであります。国家政策の上で必要な、しかも経常的に見ても赤字原因になる、あるいは建設自体が赤字だというような点について利子の補給をするということを主張しているわけであります。  第四には、新線建設によってすでにでき上って営業の開始をしている非採算線の問題であります。非採算線の年間の赤字は約四十億円前後あると言われております。この非採算線の年間の赤字の問題についても全部を補償せよという考え方ではなくて、少くとも二割程度、金額にいたしまして八億程度国家が負担をする、その負担は永久にするというのではなくして五カ年間政府が補償する。また旅客貨物運賃のきわめて過大な、公共的な理由による割引については、年間三百三、四十億と当局側の資料では説明をされておりますが、このような原価を償わないところの公共的な過大なる割引については、社会政策なり、あるいは文教政策なり、あるいは産業政策なり、そういう見地からしての割引でありますから、それを公共企業体である国鉄負担をさせるという形で処理をすべきではなくして、政府がそういう政策遂行の担当者でありますから、当然政府でそれによるところの負担はめんどうを見るということが正しいのではないかと考えておるわけであります。このような公共的な負担の一部国家補償ということによって年間約言五、六十億というものが捻出できるのではないかと考えておるわけであります。  第五には、運賃制度の不合理是正の問題であります。今日の運賃制度をよく検討してみますと、相当に内容に問題があるわけであります。今回の値上げ案を見ますと、制度の変更も含まれておるわけでありますか、重要なる点に不合理是正が欠けている点を知るわけであります。たとえば特別扱いの新聞、雑誌の運賃一つ例にとってみますと、金額的には大体一三%程度の値上げになっているのでありますが、その雑誌なり新聞の内容が果して特別扱いをするに妥当であるかという点については問題があるわけであります。すなわち夫婦雑誌というようなもの、あるいはエロ雑誌というようなもの、怪奇雑誌、あるいはエログロ的な雑誌までこのような超定率運賃で輸送しているという点については、特別扱い新聞あるいは雑誌というものについての取扱いの条件たり原則というものが明確に決定されておらない。これらの点にについてはその範囲なり条件というものを厳格にし、ほんとうに公共的な、必要だというものについてのみ割引をしていくという内容是正の措置を講ずべきであると考えておるのであります。  次に割引制度の問題でありますが、割引制度には暫定割引あるいは恒久割引、または別の見方をすれば営業割引、政策割引といったようないろいろの割引がございます。昭和二十八年の運賃値上げのときに貨物等級を改正して直ちに運賃割引として今日まで引き続いている物資があります。たとえば金鉱であるとか、石灰石、ドロマイト、材木類、こういった貨物については等級表を相当上げたにもかかわらず、その直後急激に運賃の値上がりをすることはあまり好ましくないという考え方から暫定的に半年間ということで、これが三年間今日までなお引き続いて割引がやられておるのであります。これを逆に言いますならば、割引をするような必要性があるならばどうして等級を上げたのかといったような逆の疑問が出て参りますが、このように割引がきわめてルーズに行われているふしが多大にあると思うのであります。  工業的割引にいたしましても、どのような条件をどのような原則の場合に、その貨物なり旅客に対して割引をするのかということがきわめて不明確になっております。この割引制度というもののは、あらかじめ民主的な方法なり、あるいは条件というもので対外的にもきちんとしておく必要があると考えるのであります。現在年間約二十億程度の貨物割引が行われているということでありますが、これらを厳格に検討するならば、少くとも数億円の財源というものがここから生まれてくるのではないかと考えておるわけであります。  その他貨物等級制度の適正化の問題、遠距離逓減制の問題、あるいは私有貨車のタンク車、石灰車の料金がきわめて安くきめられている。あるいはまた食堂車の営業料金というもの、あるいは郵便車の運賃というものがやや均衡を欠いている。総体的に申し上げますならば、特殊車の運賃というものの適正化をしていく必要があるのではないかと考えるのであります。  食堂車に例をとって具体的に申し上げますと、現在構内営業料金が売上料金に対して千分の十一でありまするが、食堂車はそういった構内営業料金意味と運転料といった意味を含めまして千分の三十徴収をするということになっております。たとえば東京—大阪間で大体片道十万円の売り上げがありますが、営業料金としては国鉄に入ってくるのはわずか三千円ということになります。これは三等の旅客運賃の、三人分程度にしか当らない。こういうことはその代表的な一つの例ではないかと思うのであります。  また、専用線の問題につきましても、昨年の九月専用線の規定が改正されまして、従来国家で負担をしなかったもの、あるいは料金徴収しておりました貨物使用料運転費用などが今度取れないようになりました。このため約一年間で二億程度の減収ということになっておりますが、これらはやはり従来通りの姿が正しいのではないか。国鉄財政が圧迫をされておる今日の実情の中で、年間二億円も減収になるようなやり方というものは相当問題があるのではないかと考えているところであります。これらの運賃制度の不合理是正によって年間百億程度の財源というものが優に捻出できると考えているところであります。  第六には、部内の節約の強化の問題であります。相当改善はされたのでありますが、工事契約なり、資材購入等、主として物件費関係の節約にいま一歩の検討の余地があるのではないかと思っております。また外郭団体に対するところの直接的な交付金補助金という点については改善をされたわけでありますが、業務委託、あるいは業務の調査委託というものは、さらに相当検討する必要があると思われるのであります。  また、外部に発注する品物なり、その範囲というものと、内部で作り調達するものの範囲と単価の再検討も相当問題があると考えているところであります。私の方で調べたところによりますと、鉄道工場で作りました車両の単価と、外部に発注した車両の単価では一両についても相当の開きが出ております、こういった点については物価費の節約という意味でいま一そう努力すべき点ではないか。こういった部内の節約強化によっても年間五億や十億の金というものは優に捻出できると考えておるわけであります。  なお、その他二、三の点について強調しておきたいと思うのであります。国鉄収入金は日本銀行あるいは日本銀行の代理店といったところに預金をすることになっております。この預託金については支払準備金として四十億円までは利子がつかないことになっているわけであります。措入金の方については一円でも利子を払うのでありますが、預託金の方については四十億円までは利子がつかないことになっている。国鉄の性格から支払準備金といった制度はもはや必要ないのではないかと考えている次第であります。従って国鉄の預託金については通常の利子をつけていくことに今後改正をする必要があろうと思うわけであります。  また、国鉄自動車の問題でありますが、相当有利な条件の自動車路線については、ほとんど国鉄の申請のものは許可されておりません。あるいは却下になる、一方大ていいいところの路線については許可されるのはほとんど民間の自動車会社だけという形になっているようであります。これについては国鉄民間という規模で自動車路線の許可について差別扱いをせずに、国鉄申請の自動車線の許可というものに対しても政府は公正妥当なる点で裁定願いたいと思っているのであります。  以上申し述べました点を要約して申し上げますと、資本金の増加によって年間百億程度、公租公課の免税によって八十億円、新線建設の利子補給によって四億五千万円、非採算線赤字補償によって八億円、公共割引の一部国家負担によって百五十億円、専用側線、運賃合理是正によって百億円、部内の工事、資材契約の合理化によって十億円、その他、日銀利子、自動車路線の差別撤廃による増収、年四十億円、合計いたしますと年間約五百億円の金が運賃値上げをしなくても出てくると考えているところであります。  運賃値上げ反対に対する第二のおもなる理由としては運賃値上げをいたしますというと大衆へのはね返りがいろいろな面で出て参ります。一つの例を言いますと、石炭は一トン当り最近は三円程度上りました。鉄鋼につきましてはトン当り四百円程度、硫安については一かます五円程度、あるいはセメントについては二、三百円程度値上げになることは必至という状況であります。こういうことがすでに国鉄運賃によるところの影響としてあげられてきているのであります。国鉄当局なり、あるいは運輸省の方としては一割三分程度の運賃値上げでは物価には響かない、影響はないと断定的な考え方でおられるようでありますが、この点は国民生活を圧迫してくる。こういう点からもわれわれとしては運賃値上げに反対をしているのであります。国鉄労働組合といたしましては、初めから申し上げましたように、まず政府が交通政策を確立して財政金融的な政策の裏づけ立った交通政策を強力に遂行して、国鉄の危機を打開していく、こういうように主張しているところであります。ある人は政府が金を出すことは国民の税金でまかなうことであるからそれは不適当だ、利用者側が当然負担すべきであるというような意見を言っているのでありますが、われわれは以上申し上げました二つの立場から運賃値上げに反対しているところであります。運賃値上げというような安易な資金調達の方法によって国鉄輸送力増強を行うということはどうしても認めることができません。また、われわれは労働組合という労働者の生活を守る立場から、また国民生活を守るという立場から運賃値上げに反対しているところであります。  以上で公述を終ります。   —————————————
  25. 戸叶武

    委員長戸叶武君) 次に官野武雄君にお願いいたします。
  26. 宮野武雄

    公述人(宮野武雄君) 貨物協会の宮野であります。  まず、私は現在駅頭でどれくらい貨物が滞貨をしているか、こういうところからお話を進めて参りたいと思います。二月末の現在では駅頭の滞貨二百四十万トンという数字が上っております。二百四十万トンという数字は、実は昨年の同期では八十万トン程度でございましたから、昨年同期の三倍の数字でございます。国鉄の大体滞貨と申しますのは、ノーマルの状態ではどれくらいだろうか、これは私どもにはよくわかりませんが、大体一日半分くらいだということを承わっておりますので、もし大体国鉄でお送りになる一日の輸送トン数が四十万トンといたしますと、一日半分だといたしますと六十万トンになりますが、六十万トンのノーマルな状態から見ますと四倍だということになるわけでございます。この二月の松におきまして国鉄の沿線にあります滞貨の二百四十万トンをごく大ざっぱでございすが品目別に拾いましてこれが一体、どれくらいの値段になっておるかということを見てみましたところが、これはもう見方はいろいろございますし、正確な何ではございませんが、まあいろいろな物のトン当りの価格というものを大体推定いたしまして見てみますと、二百四十万トンのトータルでは六百九十四億四千六百万円というのがその総価格になるわけでございます。今申しましたようにノーマルな状態が六十万トンであるといたしますと、ごく大ざっぱにこの四分の三が実は鉄道輸送の不円滑なために駅頭に残っております。こういうことに考えてみますと、その価格は五百二十億八千五百万円という膨大な数に上るわけでございます。もしこれを非常に妙な計算でございますけれども、年八分のこれだけのものが利息だとこう考えてみますと、一日の日歩は二銭一厘九毛になりますから、五百二十億と申しました鉄道輸送の不円滑なために駅頭にあります滞貨の金利と申すのを計算いたしますと、一日で一億一千四百万円という額になるわけでございます。年間では四百十六億三千四百万円というのが実はこの利子だけで計算されるわけでございます。この四百十六億というのがどれくらい大きな額であるかということはこれはもう見方がいろいろございましょうけれども、非常に大きな額であろうということだけは想像できるのでございます。ところが荷主たちの立場から非常に困っております問題は、これだけの金利が梗塞することだけではございません、たとえばこのほかに倉庫を借りておる倉庫の料金を払わなければいけない、そのほか荷主のこうむっております不利と申しますのは、たとえば荷物が滞ったためにせっかくの製品が作られましたけれども、これが向うへなかなか到着できないというために契約の解除、あるいは遅滞料を取られる、あるいは貨物が損傷する。駅頭に置きまして品物がよくなるという荷物は何もございませんので、もうどしどし悪くなるというようなことになるわけでございまして、そういった点を合せて考えますと、荷主の受ける不利益というものはこれよりさらに大きいのでございます。また、この二百四十万トンという現在の駅頭の滞貨は実は昨年の夏ころから日本経済が、生産が伸びて参りましたのにあわせまして次々増加して参った数量でございますが、これはトラックで運べるだけのものはトラックで運んででおる。船で出せるだけのものは船で出しておる。非常に荷主たちは高い運賃を払い、あるいは不利な条件を忍んでそうしたほかの輸送機関を使っているわけでございますから、これはどうしても現在のような情勢では国鉄に持ってくるほかに方法がない貨物だけがこれだけある、というふうに私ども考えておるわけでございます。  こういった状態から見まして、現在の荷主側の立場といたしましては、何としてでも貨物を早く送ってほしい、輸送力を増強してほしいというのがこれは精一ぱいの気持であるわけでございます。実は昨年の秋でございますか、国鉄から一割八分の運賃値上げする、一方五カ年計画として五千二百億円の資金を投ずる、こういう案のお示しがあったわけでございます。この問題につきまして私ども再三会議を持ち、また各地でも私の方には全国で三十ばかりの支部がございますが、そういったところでいろいろ相談をし合ったわけでございますが、今までの国鉄の輸送の行き詰まっておる状態考えてみまして、単に運用効率を上げるとか、現在の設備をもっとよく使うというようなことではもうどうにもならぬような行き詰まりになっておるということはわれわれとしても知らされておるわけでございますし、われわれとしてもそういうふうに了解しておるわけでございます。まだまだ能率を上げる点はあると思いますが、全体的としてはもう非常に行き詰まりにきておる。どうしても設備を増加するとか、あるいは車両を増すとかいうことをするほかに輸送力を上げる方法がないということを私どもとしても了解しておるわけでございますが、そういった面からして、五百二十億かけて相当貨物輸送力を増す、大体三割程度五カ年後には増す、そのためには一八%の値上げはどうしても必要だという国鉄からのお示しだったわけでございまして、私ども先ほど申しましたように、この問題につきましていろいろお打ち合せしたわけでございますが、個々の問題につきましてはいろいろ問題がございます。私どももまた国鉄なり関係本面に御要望した点は多々あるのでございます。しかしながら全体的な歩み方としましては、全体的に見まして、これは輸送力を上げて増進するということの意味において一応はやむを得ないのじゃないだろうか、しかしながらこれにつきましては私どもとしていろいろそのほかにも申し述べなければならぬ条件と申しますか、というよなものが多々あるわけでございます。運輸省で運輸大臣の諮問で公聴会が開かれましたときにも私どもの立場は申し上げたわけでございますが、まず第一番は国鉄経営合理化について、さらにその徹底を期していただきたい。  第三番目には、政府におかれましては海陸を通ずる総合輸送対策を樹立していただきたい。  六三番目には国の政策上、国鉄に要請する各種の割引、無賃輸送などの公共的の負担一般荷主負担とならないように考えていただきたい。  第四番目には、必要やむを得ないで新線をお作りになるということはあり得ることと思うのでございますが、これの建設資金政府出資をしていただきたい。  第五番目には、設備資金の調達については一そう政府及び民間からの外部資金活用をはかっていただきたい。こういった点から御検討願って、どうしてもなお運賃値上げが必要だというような場合におきましては、運賃値上げは適正妥当であって、必要最小限度にとめていただきたい。また運賃値上げによる増収分の使用は直接輸送力の確保増強に必要な部門に限定していただきたい。  その次には、五カ年計画の遂行に当っては貨物関係を優先にお考えを願いたい。  それからその次は、国鉄経営改善によって余剰を生じた場合にはすみやかに運賃の逆に引ぎ下げをお願いしたい、また国鉄運賃改正案におきましても、遠距離逓減率を改めるということは、これは貨物輸送の調整や交錯輸送の抑制などによって輸送力の合理化的な活用の立場からはある程度やむを得ないと思うが、しかしながら海運を利用し得ない、鉄道によるほかない貨物があることなどをお考えになって、その影響については特段の考慮を払っていただきたい。また貨物等級につきましては、前回の改正以来物価の変動が相当大きく、運賃負担力の不均衡のものもあり、また工業の発達によって新規な貨物の輸送も生じておりますから、可及的早い機会に全面的な等級の是正を行なっていただきたい、こういうふうなことを考えられていただきたいということをその際公聴会等で要望したわけでございます。  その後国有鉄道におかれましては一割八分の運賃値上げを、一割三分にとどめる、私どもが要望しましたいろいろな点についても相当お考えをしていただける、また輸送力の増強につきましては、五カ年後に貨物輸送力は三割四分の増強をしよう、車両の方の新造も相当ふやす、これに対する五カ年間の経費といたしましては、前の五千二十億の暗に九百五十億を加えました五千九百七十億というふうに増強しよう、こういうお話に承わったわけでございます。個々の問題につきましては、いまだに未解決の分もあるかに承わっております。私どもとしましては、さらにまたお願いしなければならぬ面も多々あるのでございます。しかし現在の輸送の行き詰まりが先ほど冒頭に申しましたような状態で、その利子だけでも一日一億ぐらいずつの金は要るといったような荷主関係の非常に窮乏しておる状態、輸送の不円滑から給料の支払いもできかねるといったような企業もあるやに承わっております。また工場で、原料が来ないために工場を休まなければならぬというふうなところもあるように聞いておるわけでございますが、こういった現状を一月でも一日でも早く解消していただくということの前提で、個々の問題は別にして輸送力の増強をしていただけるという前提で、一応やむを得ないというふうに私ども考えておるわけでございます。  なお、この際に申し上げておきたいことは、鉄道貨物輸送というのは、実は鉄道だけの問題ではないのでございまして、旅客輸送の場合と若干異なりまして、駅から向うの駅まで送ればよろしいというのではございません。たとえば製品が工場から出ました場合、工場から出て倉庫に入れて、それをトラックに積んで駅まで持っていって、駅でおろして、さらに貨車に積むという発送手続、到着いたしましても、それと逆に貨車からおろしまして、トラックに積んで、向うの倉庫に入れて、さらに倉庫から荷主さんのほんとうの手元まで届くこの全体が鉄道貨物輸送であるわけでございます。鉄道の中の輸送は、貨物輸送につきましてはその一部分であるということが言い得るわけでございます。  極端な例を申しますと、これは一つの例でございますが、たとえば鉄道の輸送におきまして、一時間のスピード・アップをするということは、非常にむずかしいのでございましょうが、この前後に、たとえばホームにおいて、三十分くらいホームに寝かしておくことは、これは割合に時間がたつ。従って鉄道の職員の方が非常に苦労をして一時間早くスピード・アップされたことが、全体の流れとしては大した意味がなくなるという場合もあるやに見ておるのでございます。これは、そういったことがあるということではなしに、この全体を通じて一つの流れとして見なければならないということであるわけでございます。常に全体を通じて貨物輸送については、見ていなければならぬわけでございます。  その全体を通じての問題でございますが、国鉄当局のお示しになりました表によりますと、現在の一割三分運賃値上げいたしますと、価格に対して三・八%、鉄道運賃は価格に対して三・八%になると、こういうお話でございます。大体におきしまして専用線などの発着の問題は別にいたしまして、通常の場合が、先ほど私が申し上げた問題でございますが、通常の場合について申し上げますと、鉄道運賃は三・八%だと、通運の料金は、これは私はっきりした数字を知らないのでございますけれども、まあ大体トラックの運賃から、それから積み込み、取りおろしというふうなものを入れまして、大体価格に対して一%ずつであるとしますれば二%になる、それから倉庫の料金なんかも、幾らかわかりませんが、まあかりに一%程度であるということにいたしますと、六・八%程度になるわけでございますが、そのほかに実は荷作り費というようなものが非常に多額にかかっておるわけでございます。これは鉄道貨物では荷作り費がかかるものと、かからないものと二通りございます。石炭とか木材とかというものは、荷作り費が一応かからないのでございますが、大体そういった貨物は全体の貨物の大口の貨物でございますが、六割程度でございまして、あとの四割は何らかの意味で荷作り費がかかっておるわけでございます。この荷作り費が一体どれくらいかかってるか、ごく大ざっぱに私推算したのでございますが、これは国有鉄道でお調べになったいろいろな、非常に古いデータでございますけれども、もとにして調べてみますと、大体昭和二十二年の六月現在でお調べになったのがございますが、それをもとにしますと、昭和二十二年の六月現在の荷作り費の単価で昭和三十年度の荷作りをする貨物を一応見てみますと、三百四十六億円ということになるわけであります。ところが昭和二十二年の六月から今日までは物価というものは非常に上がっております。正確に申しますれば荷作り資材だけの物価をみなければいけないのでございますが、これはちょっと数量がとれませんので大体全般の物価の指数から考えますと、去年の十月末現在ぐらいに換算いたしまして、約十倍ちょっとの値上がりというふうに考えるのでございます。そういたしますと、三千五百四十八億円という非常に大きな数になるわけでございます。この通りであるかどうかということは、まあいろいろ問題があるでございましょうけれども、もしかりに三千五百四十八億という荷作り費が一応出たといたしますと、これは貨物の価格に対しまして七・四%という数字になるわけでございます。そういたしますと、先ほど申しましたものに、通常の荷作りをして運ばれるものは七・四%さらに加えなければならぬ、そういたしますと、大体価格の一五%ぐらいが実は貨物輸送の場合の荷主がみた運賃だと、こういうことになるわけであります。荷主からみますれば、先ほど申しましたように、戸口から出て、向うの家に着くまでが、全部が運賃なわけでございますから、荷作り費ももちろん入りますし、いろいろなものが全部入るわけでございます。こういうふうに考えてみますと、この荷作り費といったものがそのままでいいのかどうか、もっと大きないろいろ手を打つことによってこれを合理化する、あるいは改良することができるのではないだろうか、もう一つ見方を変えまして、荷作りの重量が、荷作りします箱とか、あるいはボール箱といったようなものが全体の重さでどのくらいになるかと申しますと、八・八%という数字が出ておりまして、まあたとえて申しますれば一割近いものが荷作りの重さでございますから、たとえばリンゴを運ぶ場合に一番まあはっきりいたしますが、中身のリンゴだけほしいのだが、箱だとか、もみがらとかというものを一緒に送ってくる、箱ももみがらも、実は運賃の面ではリンゴの運賃で払っておると、こういうことになるのです。そういった面からこの重量というものももう少し何とか減る方法はないだろうか。そういった面を全部考え合せまして、この荷主が見ます運賃というものをもう少し低減する余地は、いろいろな面から検討すれば、まだ余地があるのではないだろうか、まあそういうことを私どもももちろん研究して参らなければなりませぬし、また国鉄関係の方にも、通運事業の関係の方にも、全体にこういった問題について関心をお持ち願う、またこれがいろいろな面で実施困難な面が多々あるかと思うのでございますが、そういった面につきましては、各方面の御協力を願って、こういった問題を、全体を通じての合理化ということをお考え願わなければいけないのではないだろうか。  少し余談に入りしなすが、荷作りに使います木材は、木材の消費量は、一番大きなのは家を建てる場合に使う木材の消費量でございますが、その次がだいぶ差がございますけれども、ここに今詳しいデータを私持っておりませんけれども、実は荷作りに使う箱類のための木材の消費量でございます。わずか差がございましてパルプと、こうなるはずだと聞いているわけでございます。森林資源の点から見ましても、こういった木材の節約というようなことから、いろいろ検討を加える必要があるんじゃないだろうか、こういうふうに考えるわけでございます。  こういった荷作りの問題につきましては、少し余談ではございますけれども、しかし運賃全体の問題についてまだいろいろ合理化する、考えなければならぬ面があるという点から一言申し添えたわけでございます。失礼いたしました。   —————————————
  27. 戸叶武

    委員長戸叶武君) 次に、大島藤太郎君にお願いいたします。
  28. 大島藤太郎

    公述人大島藤太郎君) 私も国有鉄道運賃法改正による運賃値上げを中心とする国鉄輸送力の回復に対しましては反対の立場をとるものであります。  まず最初にその理由を二、三御説明いたします。  現在国鉄の出費、たとえば修繕費の中には、戦争中の酷使並びに資材投入不足による荒廃、こういうものを回復するための費用というものが引当入っております。たとえば補修用のレールをとってみますと、二十八年のごときは昭和十一年の約三倍の投入をやっております。それから三十年になりましても昭和十一年に比較いたしまして約七割、七〇%多いのであります。これらはいずれも戦争中の投入不足による分、それが戦後押せ押せになりまして現在に至っております。線路の故障はいまだに戦前の二倍ぐらいになっておりますが、こういう出費というものは現在の国鉄利用者負担すべき筋合いのものではないと私は考えます。たとえばフランスにおきましては戦後実に三千三百五十億フランに達するところの巨費を投じまして、こういう戦争中の鉄道の荒廃並びに対抗競争機関に対する鉄道の欠陥というものを、政府の金によって回復いたしたことは、他山の石として参考にしなければならない点だと思います。  第二番目に支払い利子の問題、すでに小柳さんが触れておりましたので簡単にいたしますが、たとえば昭和二十四年には支払い利子は二十六億でございましたけれども三十二年の予算によりますと百三十八億円に達しております。これは申すまでもなく資本金がふえないで、借金がウナギ登りにふえた結果であります。三重一年度の機末によりますと約二千億の長期負債をしょっております。そのうち約五百四十三億というものは全く民間の会社と同じような条件の公社債によって依存しておるわけであります。こういう状態でますます公社債による借金をふやして参りますと、いよいよこれはまた、運賃値上げをまたそういう条件からしなければならないんじゃないか、たとえば借金する借金の半分以上も利子に支払うというようなのが実情の補給が行われておるんでありまして、こういうことも当然国鉄考えるべきである。資本金の増加とあわせて行わない限りは、国鉄財政というものは健全化しないんではないかと、こう考えます。  次に、新線建設の問題でありますが、これもすでに、もう宮野さんもお触れになっておるようでございますが、たとえば、今度の計画を見ましても、五カ年計画の中で三百五十億の建設費で新線建設をやることになっております。しかるに、一番国鉄の不評を買い、まことに怨嗟のまとになっている通勤輸送に対しましては、車両を除くと二百二十五億。新線建設よりもはるかに少い金額になっておりして、われわれはいささかこの不均衡を憤慨せざるを得ないような心境でございます。国鉄の八〇%は申すまでもなく赤字の線でありますけれども、この二〇%の収益部門、ことに通勤輸送や東海道、山陽のような最も輸送の混雑しており所のこの収益でもって、こういう新線建設経済線の赤字をしょっていくということは、いかにも不合理であります。しかも、この反面には、三崎線であるとか、下田線というような、すでに国鉄の測量が済んでおるものが、私鉄の圧力によりまして国鉄で建設ができないというような事例さえもある。比較的もうかるような新線建設については、そういう事情もございます。最近九州の川崎線につきまして、この建設運輸省の所管、すなわち一般会計でもってやることにきまったわけでありますが、こういうことは、もっともっと拡充していくべきものであると考える次第であります。  次に、運賃割引問題、これもすでに小柳さんも指摘せられておったのでありますが、最近ちょっと調べてみますと、広島の宇部地区でありますが、ここにソーダ、セメント関係の大きな会社が四つばかりありますが、この一月から三月まで、石灰石の運賃の特別割引が四千五百万円にも達しておるような事実がございます。そのほか、同一の鉄道局の範囲内におきましては、局長権限によって運賃の特割ができますので、非常に乱発されておる傾向があるんじゃないか。自動車対策、産業開発というよう名目のもとに、運賃体系が乱されて参ります。これを非常に私は危惧しております。こういう点で、ぜひ是正しいかなければならない。次に、生活必需品、あるいは学生諸君の学割が非常に安い安いということが言われるんでありますが、これはおそらく全学生の諸君も言われると思いますが、これは、一国の文教政策並びに社会政策の問題であります。従いまして、こういう運賃割引額というものは、それ以外の収益部門の旅客負担すべきものではなくて、私はやはり政府負担すべきものであると思います。事実、フランスにおきましては、たとえば運賃引き上げ拒否の場合の政府の補給金、あるいは強制的な運賃割引に対する政府の補償金というような制度がございまして、学生や通勤割引割引部分に対しましては、昭和二十九年で二百八十八億フラン、三十年で同じく二百八十八億フランの支出を国鉄に対して行なっておるような現状、これまた他山の石に足ると思うのであります。  次に、最近の国鉄経営政策の中で、いろいろな点に特徴的なことがありますが、たとえばその一つに、小口混載制度を東海道線におきまして大幅に日通に引き受けさせるという問題がございます、これは国鉄側事情は、要員の生み出し、貨車の使用能率の増大並びに代用車による小口の赤字の減少というようなことが一応の理由だと思います。この反面には、非常に日通にとりましては有利な仕事がふえる。国鉄にはかすばかりの貨物輸送が残ってくる。しかも、小口貨物に対しまして非常にこういう冷酷な態度をだんだん国鉄はとっておりますけれども、これは非常に重要な問題である。荷主の大体七割は小口貨物であります。確かに数量におきましては小口貨物はわずかに三%、収入におきましてはわずかに一割程度のものでありますけれども、荷主の数におきましては七割でありまして、いわゆる庶民大衆が荷主でございます。こういうのがもうからないからといってだんだん排除していく傾向には、われわれとしては重大な関心を持たざるを得ない。企業性を発揮するというような名目のもとにそういうことが行われますと、非常に重大であると、こういうふうに考えます。  まあ、そういうような、今あげましたようないろいろな理由から、私は政府が当然国鉄のこういう輸送力の増強には大幅にめんどうを見るべきであると思います。たとえば、次に、財源の問題を三十二年度予算について見ますと、この五カ年計画の第一年度におきまして、約千億の工事費を使いますけれども、その四割、四百億は、部内のいわゆる職員諸君の血の出るような合理化による生み出しによる金額、運賃値上げによる分が三百六十五億、それから一般公社債が二百十五億と、資金運用部資金がわずかに八十億と、まあこういうような資金構成になっております。しかるに、電力におきましては六百九十六億の政府資金、海運におきましては、開銀を通じまして二百億、たとえば地下鉄には三十五億、道路公団七十億、日本航空中十億、こういうように、国鉄に比べましてわれわれはいささかここに大いなる不均衝を感ぜざるを得ないのであります。政府は、電力、鉄鋼、輸送が日本経済の発展の隘路だと申しておりますけれども、電力には七百億を投じながら、国鉄にはわずかに八十億位、まことに不均衝であると、こう考えます。  次に、しからば五カ年計画というものが果して十分なる検討の上に作られているのかどうかということを分析して説明申し上げたいと思います。国鉄の輸送力というものは非常に複雑でございまして、八幡製鉄たとえばストリップ・ミルの工場をアメリカの青写真によって作るというようなのとわけが違いまして、非常に複雑な要素から成り立っております。従って、厳密な総合性、一貫性というものが要求されるのでありますけれども、一挙に工事費が倍にふえますけれども、果たしてこういうものに対して十分そういう検討がされておるかどうか。最近、線区別の輸送力の逼迫状況を調べておるような事実がありますが、まことにどろなわ式であると考えざるを得ません。まず、要員の問題であります。工事局の関係において調べますと、大体工事局の定員は従来三千七百人前後でございましたけれども、この一人当りの工事量が四百二、三十万円。ところが、三十二年度になりますと、これが約五割ふえまして、六百七十八万円というような巨額に達して参ります。果してこれが消化できるかどうか、まず要員面。それから要員面を東京工事局の数字について見ますと、たとえば工事量が三十一年が二十七億でありますが、これが三十四年になりますと六百九十三億、まさに二十七倍。要員の増員は全然手配されておりませんけれども、天文学のような巨額な工事量をやることになっておりますが、一体どうなっておるのか。これを東京電気工事局に見ましても、三十年が二十億でありますが、三十二年になりますと八十五億の工事をしなければならない。一体工専関係の設計審査要員なんというものの不足は深刻でありまして、かの定員法によりまして半減されて以来、ほとんど補充されていない。こういう人たちは経験を必要といたしまして、短期な養成はきわめて困難であります。そういう意味から、一体、どうするのか。非常に机上計画の感を抱かしむるのであります。あるいはまた、事務的にも、一つの工事をやるのに判古を七十回もつかなければならないというような事例もあるそうであります。こういう点。それから次にしからば資材面はどうか。たとえば、その代表的な鉄鋼をとってみます。車両の四割くらいは鉄鋼の価格になっておりますけれども、レールその他非常に必要でありますが、最近の鉄鋼不足は非常に激しいものがありまして、特に造船部門の需要の増大——大体日本の造船所も近ごろは三、四年くらいの受注をかかえております。こういうような状態のために、鉄鋼については輸入を盛んにやられておるような始末であります。従って、巨大な機械メーカーその他におきましては、この資材の入手のためのカルテルをやろうというような動きさえ示しておるようなわけでありまして、果して五カ年計画というものがこういう資材に対する手当が見通しがあるものかどうか、国鉄並びにその受注するメーカーがこういう鉄鋼を十分入手できるかどうかということに大いなる危惧を持っておるものであります。次に価格の問題であります。一体鉄鋼の価格というものは五カ年計画の中でどういうふうに織り込んでおるのかどうか。八幡製鉄は、昨年八月建値の値上げをして、また一月に再び値上げをしました。市中の相場を見ましても、去年の九月のごときは一月の二倍に暴騰いたしておるような次第であります。こういうような状態のあるときに、果してそういうものの単価を五カ年計画の中でいかなるふうに見ておるのか。われわれは、わずか十ページか十五ページの五カ年計画でとうていこういうことはわからないのでありますけれども、大いなる危惧を持っておるような次第であります。すでに鉄鋼需給安定法案なんというものも通産省においては準備されておるような段階でありまして、この点も大いに検討していただきたいと思います。  次に、こういうような国鉄のあらゆる資材面、要員面の不足の問題を解決する道として当局の考えているのはおそらく外注の問題であります。しかしながらこの外注というものは非常に危険な問題をたくさんはらんでおります。たとえば設計監督というようなものを外部に外注いたしますと、三千万の工事に対しまして五%、百五十万円の費用がかかると言われております。内部であればこれは四十万で済むのだ。こうなって参りますと、貴重なる国民の運賃値上げの中からそういうものに流れていくおそれはないか。あるいはものによっては、たとえば電燈工事、電化、保守、変電所、その他鉄道には特殊な工事がたくさんございまして、こういうものはむやみに外注できない。あるいは外注さしても特殊な業者に限定しておる、こういうような関係から急に倍だ、二倍だという発注量を出しても果して消化できるかどうか。一方電源開発、その他から巨大な建築土建資本の相当仕事がふえておる現状でありまして、果してどうか。それからまた業者を厳選するというようなことをいろいろ当局は言われるかと思いますが、非常にこれには問題がある。たとえば昨年の大分鉄道病院あるいは幡生の工場におきましては一流の指定業者が作った完成したばかりのものを直ちに手直しをしなければならないという事実がある。こういうような点からしても大いに危惧を抱くのであります。あるいは昨年の会計検査院のたくさんにわたる工事に対する指摘、こういうものを見ましても、われわれは非常に危惧をいたしております。特に業者の、国鉄幹部その他の腐敗、こういうものも予想される。ところがすでに聞くところによりますと、内部に特別監査局を設けて、この五カ年計画の工事を監視する必要があるのではないかというような意見さえあるということを仄聞いたすというような状態であります。すでに大蔵省からは工手経費の一割を国鉄は値下げすべきじゃないかというようなアドヴァイスを受けておる。しかも外注をやることは、逆にふえているのではないか、そこに私は問題がある。  次に、問題点は用地の買収であります。線路の敷設の場合には用地の買収をしなければならぬ。しかるに電源開発、弾丸道路の場合を見ましても非常に困難である。価格が非常に上る。すでに神戸—名古屋間の弾丸道路におきましては沿線に用地反対同盟がずっと村から村へとできておりまして、その旗のぼりのあるところを見ると、ここに弾丸道路が通るのがわかるという冗談さえ言われているくらいでありまして、この点にりきましても大いに問題があるんじゃないか。  それから最後に問題点といたしまして、五カ年計画を貫くところの思想的な特徴の問題であります。国鉄独立採算制によりまして一般財政から援助を打ち切られました。そうしてこの中で非常にいろいろな政治的な不安が重なって参りまして、その結果最近当局が盛んに言うのは、企業性の発揮ということであります。このためにすでに競争的な営業政策がいろいろなところに出て参りまして、たとえば三十八年二月の貨物運賃改正のごときは典型的でありまして、そのほか今回の場合にも小荷物の運賃の距離の刻み方の細分化、小口扱いの割増し範囲の拡大、貨物運賃計算キロを十キロに改める、これらはいずれも自動車に対する競争という意味がありまして、必ずその反面には特殊な輸送分野にしわ寄せされる、こういう事実があるわけであります。こういう条件の中で一方企業性を発揮する資本の使い力といたしまして経済効果というものも盛んに言われます。経済効果というのは、すなわち投下した金に対して果して収益が上るかどうかということであります。こうなって参りますと、非常にこの金の使い方にも大体国鉄はサービスが最低限に落ちておりますから、このサービスを上げる部分の資本投下はこれは収益はとうてい期待できません。通勤輸送を回復された金に対しまして直ちに収益が上ってくるとは考えられない、これだけサービスが落ちているのであります。従ってこういう条件の中で経済効果を上げようということになりますと、非常に危険な問題がたくさん出て参ります。たとえば新聞に一機関士からこういう投書が出ておりましたけれども、参審線の事故があった直後でありますけれども国鉄では信号と転轍と一貫的な連関性をもって自動化されておる。これは人件費が節約できるからだ。ところが肝心の運転士と信号との間には注意力だけに依存しておる、こういう投書が出ております。これなども投下した資本の人件費の節約からくるということでありまして、事故の防止、こういう非常にサービスの悪いのを向上しようという点につきましては非常におくれているということであります。元来国鉄の輸送力のどこが一体根本的に逼迫しておるか、非常に複雑であります。一体どういうふうにわれわれは考えるか。たとえば線路が足りない、車両が足りない、機関車が足りない、人間が足りない。人間が足りないのは別にいたしましても、私が端的に申しますと、線路容量がないということが一番根本的な問題点だろうと思います。すでに東北、北陸、上越のようなわが国の主要な動脈か相当な単線区間をかかえている始末であります。わが国鉄ではいろいろな歴史的な事情がありまして、長年にわたって線路容量の増加に対してきわめて渋った政策をとって参りました、御承知のように複線化されたところはわずか一割二分である。西独、フランス、スイスは四割以上、イギリスは六割以上複線化されております。こういうような複線化率の少い鉄道というものは一流の国としてはないような次第であると思います。大体輸送力の増減に対応する輸送量の増大に対する輸送力の側の条件というものは非常に従って国鉄は底が浅いのであります。ですから、少し荷物がふえますれば、直ちに行き詰まる。しかも今度荷物がふえますと貨車が足らないとう状態が出てくる。これは要するにどうしても線路容量かないからでありまして、ですからほかの施設を幾らふやしましても線路容量が増加しない限りはだめなんであります。たとえば戦争中に、とにかくあれだけの輸送量をさばいたというのは山陽線が複線化せられたからだ、こういうように言われておるような次第であります。しかるに驚きましたことに、この五カ年計画が来月から始まる矢先きになりまして、最近の新聞報道によりますと、仙台の鉄道局長がこういうことを申し入れていることを聞いております。仙台以南につきましては電化をしても意味がないのじゃないか。つまり、東北、北陸線の輸送力の電化もさることながら、複線化なくして期待できない。今のまま電化したところで輸送力が詰まっている福島—白河間は完全に輸送が行き詰まってしまう。仙鉄局の計画では福島—白河間の複線化を早期に実現する計画がある。つまり東京と仙台間、この電化は第一年度から着手して、宇都宮のごときは三十二年度に完成する予定になっております。しかるに仙台の局長はそれじゃ因るのだ、それを、やっても輸送力はふえないのだ、それよりも線路の複線化をやってもらいたいということを言っておるのであります。まことにいかに五カ年計画というものが本社の一部の人の形式的なプランにすぎないかということを感ぜざるを得ない。少くとも全国の各線区別の輸送の逼迫と、それに応じた施策のアンバランスをこの計画の中にちっとも盛り込まれていないということを感ぜざるを得ない。しかも電化ばかりをなぜああいうふうに問題にしているのか。これは先ほど申し上げましたように、電化いたしますと直ちに石炭の締約になりまして収益が上ってくるから、すでに昨年も十河総裁が電化に対しましては、鳩山総理大臣に特別の費用をみてもらいたい、こういうような申し出をいたしておりましたけれども、これは非常に危険だ。そういうところに私は五カ年計画というものの非常に重要な問題点があると思います。大体国鉄の輸送力というものは非常に後会的な要素によって成り立っておりますために、簡単に机の上で運賃値上げの資料としては確かにできるだろう、しかしながらいざこれを実施段階になりますと、今実はあわてふためいているというのがこれは国鉄内部の実情ではなかろうか、少くとも技術部門の相互に十分な連絡があったかどうか、施設局と電気局あるいは工作局、十分な連絡があったかどうか、あるいはまたそういう技術部門と事務局との、事務系統の人と輸送との関係が十分連絡があったかどうか、非常にそういう点私は危惧いたします。そこからこういう問題が起きてくるのでありまして、まさに前年度の工事費が一拳に倍額になるという事態は国鉄始まって以来じゃないか。すべてあらゆるものにつきましてこうやくばり、今までのは弥縫策でありまして、いざ五百億の金が新しく使えるのだ、どうするのだというと、実は今日とまどっているのが現状じゃないか、こんなことを感ぜざるを得ないのであります。  これをもちまして私の公述を終ります。
  29. 戸叶武

    委員長戸叶武君) 次に、松沢隼人君にお願いをいたします。
  30. 松沢隼人

    公述人(松沢隼人君) 私は中小企業の代表者といたしまして、本日国鉄運賃値上げに関する件でお呼び出しをいただき、意見を述べる機会を与えられたことを厚く御礼を申し上げます。  以下、お手元に参考に要旨を差し上げてございますので、おおむね公述要旨に基いて意見を述べさしていただきたいと存じます。時間の節約を考えて、読みながら説明を申し上げます。  鉄道運賃値上げがもたらす国民生活への影響はけだし深刻なものがあります。一千億円の減税による中小商工業への思いやりも、ベースアップによる勤労者への思いやりも、すべてこのことで御破産となり物価の値上りを増長し、ひいてはインフレの要因となりせっかく安定になりつつある経済を根底から崩壊してしまう結果を招来するので、ほかに財源を求める方法を講じて値上りは、避けてもらいたいというのが国民大かたの総意であると存じます。それに国鉄経営には、とかくの批判があって常に国民の脳裏に深く刻まれている、列車の大事故による衝突、人命の犠牲、労働争議のために、再三足を奪われる事態、国鉄財産に関する不正事件、国鉄一家の横行、等々あまりにも国民に与える不愉快なことがあり過ぎるというのが、その実情であると思います。従って、国会においても問題としてかつて取り上げられた決算委員会で扱った交通公社並びに鉄道外郭団体の不正事件等は、いたく国民を憤激せしめたことは記憶に新たなところであります。その他鉄道弘済会及び工事関係の外郭団体の独善的な行動は目に余るものがあります。  従って国民は鉄道関係に批判的にならざるを得ないというのが実情であると思います。今回のストライキも運賃値上りを見越してその分け前を先に要求して行なわれたものではないかというように印象づけられております。この闘争のために貨車の輸送に支障を来たし、東京では大根一本が五十円にもはね上り、一般家庭の台所は悲鳴をあげ、また官公庁、公共団体、民間会社等の予算はこのため増長を来たし、物価はつり上り重大な事態を生み出しております。かかる客観情勢は国鉄当局に対する国民的不満をかもし出していることは否定できないところであります。  しかしながら、現実問題として国鉄当局の要求される老朽施設の改善並びに近代化施設の増強の必要性は認容せざるを得ないところであります。また国鉄の施設の完璧は国民の生活につながることも否定できない事実であります。しかし、要は内容を充実して真に国民に親しまれ、愛される国鉄になってもらいたいというのがまた国民の願いでもあります。  そこで、国民生活に直接響く運賃値上げ等の方法によらないで、次に申し上げる新らしい財源によって、その目的を達成することを考えていただきたいと思います。かわり財源の提案を申し上げます。  その一は、国鉄公債、現在発行されておる国鉄公債の発行の処置を大幅に講じて、この財源により施設改善費をまかなう道を開かれたい。値上げによる自己資金という考え方をやめて外部資金でまかなうことを原則として、方法鉄道当局で必要額を勘案して公債を発行し、民間側にも売り出す。また一定の比率で現在も行われておるのでありますが、資金運用部資金をもって政府で引き受けるようにすれば完全に公債の消化は可能であります。現在発行されておる公債の累計は五百四十億円であります。これに三十三年度の二百十億が加わるわけでありますが、鉄道当局の要求は、向う五カ年間に一千二百億円を計上しておるようでありますが、これは少し過大すぎやしないかという感じであります。従って、これを今も前公述人が申されたような、いろいろの観点からこれをしぼって計画を延ばす、たとえば五カ年計画をそのまま十カ年に延長してやるということになれば、半分の費用で計画を綿密に立てていただければいけるじゃないか、それに見合ういわゆる消化可能の線で公債のバランスをとっていただく、こういう方法はすでに電電公社等においては、施設の改善費を電話公債を発行してまかなって、りっぱにその目的を達成しておるという例がありますから、こういう例にならって、この公債の発行の措置を考えてもらいたい。  次に二の問題は、資金運用部資金の活用によるところの施設改善の道であります。国鉄の持つ公共性にかんがみ、政府資金運用部よりきわめて低利で必要な額を、さらに大幅に貸し付ける。国鉄はこの資金を活用して徹底的な合理化経営をすれば、十分利子ぐらいは払っていけると考えられます。すでに、資金運用部よりの借入れは、累計で八百六十億でございまして、これに三十二年度予算で八十億が認められておりますので、プラスすることになりますが、結局今述べられましたように、公債の累計が五百四十億、資金運用部よりの借入れが八百六十億円、合計すると千四百億円の外部資金ということになるようでございます。こういう金額は、一億の資産を擁する国鉄としては、借金が決して多いとは考えられません。現在資金運用部から貸し付けられているところのいろいろの種類の貸付がございますが、そういう全額と比較いたしまして、国鉄の大きな企業実情と他の事業とを比較いたしましても、減殺資金運用部が貸し付けておる累計八百六十億円というのは少きに失すると考えられます。従いまして、こういう公債を発行し、さらに資金運用部の金を政府が思い切って安く、いい率で貸し付けるという方法によってりっぱに財源が生み出されると考えます。操作資金は別といたしまして、長期にわたる施設というようなものは、やはり長期にわたる公債が適当と考えられますので、こういう外部資金によって、十分補っていけるように考えられますので、そういう方法を講じて、その要求を満たすようにお願いしたいと思うのであります。  また、どうしても運賃価上げをしなければならぬというのなら、せめてこの値上げを半額程度にしてもらって、そうして半分を借入れでまかなうというふうな修正をお願いしたいと思うのであります。先般米の値上げ問題が相当大きな世論を生起いたしまして、政府はこの案を取りやめたいというような実情もございますので、国鉄は米とは意味が違うにいたしましても、やはり国民生活に密接な関係をもたらすということは、ほとんど比重は変わらないと考えられますので、この際一つ、この運賃値上げ改正については十分一つ御検討を願いたいと存じます。以上、国民生活を脅かす方法でなく、以上申し上げたような方法を採用していただいて一石二鳥の結果を生んでいただきて、ぜひこういう提案に切りかえていただきたいということを議員各位に御検討をわずらわしたいと存じます。  私は団結もなく、また組織も微弱である、従って、言いたいことも言えない、行動には現せない、ストライキもできないというような中小商工業者、特に零細企業者の声なき声を代表いたしまして、以上の趣旨から鉄道運賃値上げ反対の意見を表明し、各位の御参考に供したいと存じます。以上。   —————————————
  31. 戸叶武

    委員長戸叶武君) 次に原勝司君にお願いいたします。
  32. 原勝司

    公述人(原勝司君) 私は原勝司でございます。今回の国有鉄道運賃法一部改正、すなわち運賃値上げには賛成を表明しております。  国鉄経営を批判する態度としてまずこういうことを考えてからこの批判をしたいと思うのであります。国鉄八十五年の歴史的の事実を無視して批判することは判断を誤まるということであります。もう一つは、鉄道の運輸、運転の管理の経験なくしては経営の実態に触れることが非常に困難でありますから、批判のメスを入れるということは相当困難である。もう一つは、国鉄が出しております各種の資料、統計、そういうものの基礎に基いて十分批判するのでなければこの経営を批判するということは危ういのではないかと考えまして、そういうような見地から意見を申し述べたいと思います。それで運賃値上げの理由と根拠を具体的なものについてこれから述べてみたいと思います。  まず、国鉄の会計制度の変遷と経理状態をまず第一にながめなければならぬと思うのでありまして、国鉄は大体会計制度は三段階の階梯を経て今日に至っておるのであります。まず、明治十八年東海道線開通後の二十三年には一般会計、いわゆる官設鉄道会計法によって経営をやっているのでありまして、明治三十九年には鉄道国有法の公布になり帝国鉄道会計法に改めて新しく会計をやることになりましたが、これは四十二年に実施しておるのであります。その後、昭和二十二年経営状態が非常に悪くなりまして、二十三年には会計法を改正しまして国有鉄道事業特別会計法というものになりまして、二十三年には公共企業体として国有鉄道に改組しております。そうして二十五年から独立採算制をとるいわゆる事業会計になっておるのであります。いわゆる三段階を経て今日に至っておるということをまず頭に入れておいて考えなければならぬと思います。  そこで、経理の内容を検討しますと、特別会計のときの、三勘定のうちの収益勘定による収支決算の項目、それから現在の事業会計による損益計算の項目を決算によって詳細に調べますというと、この現状がはっきりするのでありますが、これは非常に膨大なものでありまして、なかなかそれを一見して見るということは困難であります。でありますから、これをごく通俗的に知るためには営業計数というものを用いてその収支状態を見るのであります。数というのは、総支出を総収入で割りましたものを百分率で現すいわゆる一〇〇より少い数字は収益を上げておる、一〇〇より以上の数字は欠損になっているということであります。そこで、明治、大正の時代には五〇という計数になっております。それから昭和の年代、十九年までは六〇から八〇、大体これまでは鉄道の採算がとれておる。ところが、終戦後二十年には一四〇になり、二十一年には一六〇という、おそらく国鉄は破産の状態になったのであります。そこでいろいろの方法を講じまして、二十二年、二十三年には一四七、八、そうして初めて二十四年ごろになりしまして一〇三と、そしてその後一〇一というようになりましたが、三十年度はまた赤字の傾向になりまして、一〇六という計数を出しております。そこで、これを線区別に見ますというと、大体二百三十くらいの線区があるのでありますが、いわゆる収益を上げている一〇〇未満の線路は二〇%であります。あとは一〇〇以上七〇〇というような計数の線路が八〇%ある。いわゆる国鉄赤字の線を経営しなければならないという特別なる事情に置かれているのであります。でありますから、この赤字線区をどうするかという問題については、先ほどもいろいろ議論がありましたが、これは時間があれば述べますが、とにかく国鉄はこういう赤字線区を背負っていなければならない宿命的な現状になっているということであります。そこで、国鉄としては、収益を上げるについていろいろ手を打っておりますが、どうしておるかということを申し上げたいと思います。  そこで、収入増加のためには何といっても、収益としては運賃料金以外にはないのでありますそこで二十一年から二十二、二十三と——二十八年まで八回にわたりまして運賃改正をやっております。そして何とかこの収支状態をまかなおうとしておりますけれども、これはほとんど弥縫策でありまして、根本的な対策でないことでありますので、どうしても赤字というものは克服できない状態になっております。しからば、収入の増加を運賃によってまかなわなければならないのでありますから、一方において、経費の節約をやろうということになるのでありまして、経費の節約をやるには、まず人件費について、人件費の節約ができるか、これはなかなか問題ありまして、皆さんも御承知のように大量の首切りをやって、ああいう涙ふるって人員整理をしなければならない。それから国鉄の現在の給与はどうであるか、私は国鉄の給与は決してよくないと思います。ということは、ほかの企業に比べて非常に危険である、おそらく国鉄の業務くらい危険なものはないのでありまして、毎年職員がどれくらい負傷者を出し、死傷者を出しているか、まあ一番多いときには、一年に三万人の負傷者を出している。そうして大言五十人、いわゆる毎日平均二人くらいの死亡者を出している。現在でも昨年度の、三十年度の負傷者が二万七千人、死亡者が百三十六人と、こういう危険なる業務というものは、おそらくいかなる業務、企業体といえどもないのであります。でありますから、人件費の節約ということはやるべくして行われないことであると思います。  それから用品費であります。いわゆる修繕あるいは補修というものに使う用品資材のおもなるものは鉄鋼あるいはセメント、まくら木、こういうものはおそらく物価の騰貴率は、ほかの物価に比べまして非常に高いのであります。これがおそらく経済の変動に先行して上るのでありますから、用品の節約ということはこれはできないのであります。それでは動力費はどうであるか、動力費は辛うじて節約できるということは、これは石炭を使うのをやめまして電化により、あるいは軽量客車を使うというようなことによりまして動力費を節約する、これには全力を注いでおるのでありまして、電化なんかはそのうちの一つであります。かように電化なんかをやりたいのでありますが、資金の調達と、これには年限というものがありますから、そう急速に上げることはできないのであります。こういう状態がどこに原因するかといいますと、これは運送原価の決定にあると思うのであります。  運送原価と運賃の変遷について申し上げますと、大体旅客については、一人一キロ当り幾ら、貨物については、一トン一キロ当り幾らということにして出しておりますが、もう一つは、運賃負担であります。旅客利用者負担する。貨物はこれは利用者負担にすることはできないのであります。これは国の政策が非常に関係しておる。いわゆる生産事業あるいは国民生活への影響考えまして、低物価政策をとらなきゃなりません。国鉄は輸送すれば損になることを覚悟してこの貨物輸送をしなければならぬという非常な使命を負わされておるのでありまして、こういう点から考えますというと、なかなか収益を運賃の現在の体制で上げるということはできないのであります。そこで、運送原価と運賃との比較を、その比率を考えてみますというと、いわゆる運賃、運送原価、運送原価というものはこれは決算から逆算した数字を用いるのでありまして、ほんとうにその理想的な原価ではない、国鉄の決算から、やむを得ざる数字の上から出した原価と、それから運賃——これは実際の運賃であります。それの百分率で示しますというと、旅客は昭和十一年が六七、そうしてだんだん上っていきまして十九年には三〇、そうして昭和二十二年には七九、現在では九二、旅客は収益がもう幾らもない。国鉄旅客収入によって経営をまかなっておったのでありますが、現在では旅客収入の収益さえない。貨物はどうなっておるか、昭和十一年は九四でありますが、すでに十五年にもう原価を割っておる。そうして三十二年には三四三、実に莫大なる損害をもっても輸送しなければならぬというような現状になっておるのでありまして、この状態経営の改善によりまして、企業体になりましていろいろなサービスを低下するというようなことを講じまして、二十六年にようやく一〇〇というような数字になったのでありますが、それはほんのつかの間でありまして、現在では一一五、貨物はもうどうしてももうからないということが明らかに現われておるのであります。この旅客が今までもうかったのがもうからなくなった原因はどこにあるかといいますと、やはり客車、車両の酷使をそのまま続けることはできませんので、たくさんの車を改造する、あるいは新車を作るといって新造を急いだ。その結果、減価償却のたびに収入が上らない。貨物はサービスの低下をした、あるいは貨車を、運転にたえないような車を終戦後十年間に三万四千両廃車しております。そして新車は二万ちょっとだ、一万両不足しておるのであります。終戦のときから見ると一万両。これが貨物輸送が円滑にいっていない大なる原因であります。貨車が足りない、こういうふうに経営が非常に困難になってきているというような現状でございます。そこで、これは運送原価の分析をしなきゃならぬということになるのでありますが、原価計算の要素は、現在までの体系では作業費としては人件費、修繕費、動力費そのほかに管理費、それから利子というような項目でありますが、私はこの体系を改めて、改正の体系はどういうふうにしたらいいかといいますと、現在の項目のほかに減価償却費、固定資産税、こういうものを含めてそうして運賃の原価を償えるような体制を整えなければ、幾ら輸送したところで赤字をなくすことはできないというのが現状でございます。そこで、減価償却に対する批判でありますが、国鉄は膨大なる減価償却をやっておる。はなはだけしからぬではないかというようなことでございますけれども、それでは現在どれくらいの減価償却費を払っておるかといいますと、固定資産に対してわずか三%、耐用年限が四十年から五十年、現在でも機関車は五十年以下の機関車が非常に多いのであります。客車にしてもそうであります。でありますからこういう現状です。それじゃイギリスはどうか、イギリスは減価償却費が一〇%、大体十カ年、償却費が、土地、建物を入れましても二十カ年で償却する。それから現在の日本の一流会社五百三十五の平均を見ますると、まず、私鉄では八%、工業会社が一一%、そうして耐用年限は十二カ年というような計算になっておりますが、国鉄のみが四十年から五十年の耐用年限で、しかも、国民に安心した列車運転をさせるということは無理じゃないかと私は思うのであります。  そこで結論を申し上げますが、かように経営が非常に困難な状態になっておる。幾らこの国鉄の職員初め努力をいたしましてもです、この無賃体系を変えない限りは、幾ら働いても貧乏であります。労働組合が自分たちが命をささげて列車運転をやっておるのにもうからぬというのはけしからぬじゃないかと、内輪の声が出てくることはです、ここにあるのであります。まあ運賃に対していろいろ政策上ありますけれども、こまかいことは今ここで申し上げませんけれども、そういうこまかいことは別としても、ともかく運送原価が現在のような事情では、幾ら国鉄が全職員が一致団結して働いたところで収益をあげる状態になっておらない。でありますから、この点について、どうしても運賃の原価計算をやり直す新しい体系に整えなければならぬ。このことについては、二十六年、二十八年の運賃改正のとに、まあ公聴会なんかでは、運輸交通機関の経験あるいはそういう経営に理解ある職員、非常にこの点を力説しておるのでありますけれども、これは一顧の値もないというようなふうになって、二十八年にもこの原価計算のとき、減価償却、固定資産を含めたような体系にするというようなことが通らないのであります。でありますけれども、今回の提案によりますというとこれが明らかに出てきておる。私は率が幾らかいいというようなことはここで申し上げませんが、ともかく、そういう体系によって運賃値上げをするということは、これは非常に正しいやり方じゃないかと思うのであります。国鉄経営をして正常に戻す。昔のような体系に戻す。昔は収益をあげておったのは、建設費とかあるいは改良費に振り当てておったのでありますが、現在はそういう金の出所がない。どうしても借金しなければならない。借金しなければやれないのでありますが、その借金にも程度がありまして、なるべくならばやはり自分で働いた収益によってその幾分かでも将来の発展に備えなければならぬというのがねらいじゃないかと思います。でありますから、この点について考慮を願いたい。  なお、最後に一言自分の希望を述べたいと思いますが、この運賃審議は、現在では国会によって審議されておりますが、これはむしろ、ある特定な、運賃審議機関というようなものを設けまして、そこにおいて審判制度をやって、そうして十分検討する、専門家が寄って検討するというふうにしていったならば、経営にも役立つ、あるいは国民生活にも役立つような、両方役に立つ、両方の立場が十分守られるような状態になるのではないかと思うのであります。この点に関しては、日本交通学会の関東在住の会員方が、国鉄経営改善に対する意見として、もうすでに一九五六年でありますか、に意見を発表しておる。これを何とか私はものにする熱意がなければ、昔のような国鉄、いわゆる鉄道経営が国民に喜ばれ、また経営もうまくいくような状態に戻らぬではないか。これはどうしても歴史を通して観察し、現在までの経過をたどってみますということ、こういうところに落ち着くように思うのであります。  はなはだ簡単でありまして要を得ませんが、私の改正賛成意見は、この程度であります。   —————————————
  33. 戸叶武

    委員長戸叶武君) 次に、香山健一君にお願いいたします。
  34. 香山健一

    公述人(香山健一君) 私は全学連の香山であります。全国の五十万の学生を代表いたしまして、今回の国鉄運賃値上げ、そのための国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案に対して、全く反対の態度を表明するものであります。  私は第一に、今回の運賃値上げに対する世論の動向について、第二に、運賃改正案の提案理由に対する反論、第三に、それでは現在国鉄が当面している諸問題、すなわち輸送の安全、輸送力の増強、サービスの向上というふうな問題が、どのように解決されなければならないかという点について意見を述べたいと思います。  まず第一に、世論の動向はどのような状態を示しているのか、この問題は、国鉄運賃値上げのごとき国民生活に重大な関係のある問題を考慮する際に、第一に考えられなければならない重大問題であると思います。私はこの点について、各階層別に簡単に世論の動向を述べてみたいと思います。  第一に、学生はどうか。これは申すまでもなく、私どもの組織である全学連を初め、全日本教育系大学生協議会、全日本私立大学学生協議会、全日本夜学学生連盟、そのほか医学生の組織である医学連、私学連というふうな、すべての学生組織が大会において反対の決議を行い、昨年以来、国鉄運賃値上げを阻止するための運動を全国にわたって展開しております。全国のほとんどすべての学生自治会は、すでに満場一致で反対の決議を行なっています。で、なぜ学生がこのような行動を行っているか、これはここで申すまでもなく、現在の学生生活状態はきわめて困難なものがあります。この点については、文部省の諸統計にも明らかなように、学生の七割近くがアルバイトをせざるを得ないような状況に端的に表わされております。そうした状態の中で、一昨年の保守合同以後、昨年の三十一年度予算においては、国立大学の授業料値上げが行われました。さらにそれに引き続いて多くの大学において、私立大学の授業料の値上げが相次いで行われております。で、こうした状況に引き続いて、今回の運賃値上げが行われてきているということから、学生の圧倒的な多数が学生生活に対する大きな脅威としてこれに反対しております。しかし、そればかりではなくして、学生がこの問題に対して反対してているのは、単に生活に対する圧迫という当面の問題の関係だけではなくして、このような状態が今後も引き続いて行われていくことが、国鉄の今後のあり方、さらに、全体としての国民生活に対する国家政策の問題として、きわめて憂慮すべきものであるという点から反対をしているのであります。  次に第二に、労働組合はどうか、すでに国鉄の小柳さんが意見を表明されておりました通、日本の労働運動の最強の組織である総評が大会において反対の決議をし、国鉄労働組合、私鉄その他の労働組合が反対の決議を行なって、運動を展開しております。  第三に、青年婦人団体はどうか。全国四百万の農村青年を中心として組織している日青協、あるいは全日本青年婦人会というような組織も反対の運動を行なっている。そのほか、申すまでもなく中小企業団体、あるいはPTA、その他の教育団体、政党においても社会党、共産党は正式に党の態度として反対の決定を行い、自民党の議員についても、私ども学生国会に対して反対の請願の請願書を出す際にも、十数名の自民党議員が反対の請願の紹介議員に名を連ねております。ジャーナリズムの動向ついても、多くの有名な雑誌がその中で反対の意向を示しております。農業団体あるいは知識人、さらに地方自治団体の幾つかも運賃値上げに反対の態度を表明しております。このような状態を見ておるときに、国民の圧倒的な多数が、今回の運賃値上げが国民生活を圧迫するものとしてこれに反対しており、賛成しているのはごく一部の独占資本家のみというのが事実であろうと思います。  それではこのような世論の動向、世論の圧倒的な多数が運賃値上げに反対しているのは、理由のないことであろうか。国鉄の総裁と会見した際に、国鉄総裁は、国民は国鉄の問題について知らないから、国民は無知だから運賃値上げに反対しているのだというふうなことを述べました。このような弁解はきわめて重大な問題を含んでいるように考えられます。国鉄が国民のための国鉄であるためには、まず何よりも国民の意思を尊重する必要があるからであります、  私は次に、この運賃法の改正案の提案理由に対して、二、三の意見を述べたいと思います。すでに小柳さんであるとか、あるいは大島さんが意見を述べられ、時間の関係もありますので、重複を避けて、特に重要な点について二、三指摘を行いたいと思います。  今回の運賃法の一部改正の提案理由の中では、次のように述べられております。すなわち老朽資産の取りかえを可能ならしめる減価償却費の計上と、採算のとれない輸送力増強施設のための経費に充当すべき自己資金の捻出のため、運賃値上げを決意いたしたわけであります。これによる運賃値上げが一割、さらに国有資産等所在市町村交付金及び納付金に関する法律に基いて、国鉄が納付金として負担しなければならないものとして三分、計一割三分の値上げを提案しているのであります。  しからば、この提案理由の中で述べられているような老朽資産の取り替えを可能ならしめる減価償却費の計上という問題について考えてみるならば、現在の国鉄の荒廃が何によってもたらされたものであるか、また適正な減価償却費というのは、どのように考えられなければならないかということを考慮する必要があると思います。国鉄当局は、適正な償却費額に比して計上額が不足していたので老朽設備の取りかえが十分にできなかったというふうに述べて、現在の国鉄の荒廃の原因が減価償却費の不足によるものであるかのように述べております。そしてこの不足額を運賃値上げに算入し、すなわち、このまま放置すると不測の事故の発生するおそれがないとは言えない状態にある、こういうふうに三十一年度の白書の中では述べておりますが、この原因運賃の低いためであり、事故が起らないためには値上げが必要であるということを印象づけようとしております。しかし、この主張は全く誤まりであります。で、確かに適正な減価償却費を計上することは、施設の食いつぶしをしないために必要なことでありますけれども、この償却費はその年々の損耗していったと計算される減価分が形状さるべきものであって、国鉄当局の算定した償却費は、形式的にはそのようになされているけれども、この基礎となったし参照化の根拠がどこにあるかという点については、すこぶる大きな疑問を抱かざるを得ません。重要な問題として、国鉄当局は、減価償却費が今まで不当に低かったことが設備の老朽化の原因であるかのように述べておりますけれども、設備の老朽化は決して最近数年の間に生じたものではありません。幾人かの方もすでに述べられたように、施設の損耗の最もはなはだしかったのは、一つには太平洋戦争中の酷使と戦災、第二には、戦後のインフレーションの際の独占資本擁護及び占領軍優先の措置によるもの、第三に、朝鮮戦争中の酷使等によるものであります。で、このことは、たとえば貨物運賃戦争中から原価を下回っていて、昭和二十一年から二十二年度にかけては、実に原価の三分の一になっているということにも端的に示されていると思います。で、こうした要因によって十分な設備の改善ができなくなったために、荒廃から脱却、復旧、設備の更新ができなくなり、そうした状態が今なお引き続いているというのが実情であろうと思います。  次に、採算のとれない輸送力増強施設のための経費に充当すべき自己資金の捻出のためにという点でありますけれども、今回の運賃値上げ案を見た場合に、決して採算のとれないということから、採算のとれていないところだけに運賃値上げが行われているのではない。たとえば具体的な例をあげるならば、山手線でありますけれども山手線あるいは中央線というふうな近距離の区間においては、たとえばお茶の水から池袋までの区間が現在の十円から、今度の値上げによって二十円になり、すなわち十割の値上げになっております。しかも、これらの線が決して赤字ではないのであって、国鉄の中でもきわめて大きな利潤を生んでおるという線であるということを考えた場合に、このような根拠は全く当をはずれたものであると言わなければなりません。また採算のとれない新線の敷設、あるいはすでに設置されている線についてでありますけれども、これもすでに何人かの方が述べられたように、もしそれが国家政策の観点からして必要な場合には、これを国民のしわ寄せによって解決するのではなくして、国家が、政府が責任を持って財政投融資を行なって解決すべきであることは言うまでもないことであろうと思います。  次に、一割三分のうち約三分は国鉄が納付金として納めるものとして計上されております。この点について言うならば、私はまず第一に、運賃は税金ではないということを申し上げなければならないと思います。国鉄当局は、三十一年度の白書の中で、昭和二十八年、地方税法の改正によって、毎年四億円ないし五億円の固定資産税を払っていたけれども、本年より地方財政の窮乏に対する措置として、国有資産等所在市町村交付金及び納付金に関する法律が定められて、この結果、年額七十二億円の新規負担をしなければならないというふうに述べて、この分を運賃値上げによってまかなおうとしております。しかし、名目はどうであっても、これでは地方財政の窮乏を新たな間接税によって行うこと以外の何ものでもありません。われわれはこのような実質上の増税を許すことはできません。国家財政の根本的な欠陥から生じたところの地方財政赤字を、このような実質的な大衆課税によって補うことは全く正当ではないのであって、私は第一に、国家財政による正当な地方財政建て直しによるべきであって、このような法律を廃止することを、考慮すべきであり、第二に、国鉄当局がこの法律による負担一般国民の肩に転嫁するような措置をとるのは不当であって、別途な方向が考えられるべきであると主張したいのであります。この問題は、現在の政府が一千億の減税を大きく宣伝し、減税を主張しているのに対して、しかも、その減税か事実は低額所得者に対しては実質的な減税になっていないばかりか、今回の運賃値上げ、あるいはその他の間接税の増徴、それによって引き起されるところの物価の値上りということによって、事実は国民生活を圧迫する結果になっている。一千億の減税という主張とは全く事実が反しているということを指摘したいのであります。  結論として言うならば、今回の国鉄運賃値上げのための提案理由は事実に反したものであり、しかも、国民大衆の一そうの負担を増加させるものであり、国民大衆の生活を圧迫するものであると言わなければなりません。しからば、これらの問題に対してどのような措置が講ぜられるべきであるか、われわれももとより輸送の安全、輸送力の増強、サービスの向上ということは必要であると考えているのでありますけれども、これはどのようにして解決されなければならないか。その第一は、政府国鉄に対して責任を負うべきであるという点であります。国鉄は全国の基幹鉄道のすべてを網羅した独占的な企業であって、また、それだけに公共性の強いものであります。しかも、従来その経営政府の政策によって行われてきました。すなわち戦前独占価格的な性格を持った運賃は、国家収入の大きな部分を占め、戦争の進行とともに軍需輸送のために全面的に動員されて施設の荒廃を来たしてきました。しかるに、戦後の再建の時期に当って、政府戦争の跡始末である国鉄復旧の責任をとることなく独立採算、すなわち公社制という形で国家財政の直接の掌握化から切り離しました。これらの結果として国鉄の復旧はおくれ、国鉄労働者の低賃金と労働強化、数回にわたる運賃値上げによる一般国民の生活の犠牲の上に国鉄経営は成り立たざるを得なかったのであります。しかも、現在なお輸送力の回復は遅々たるものであり、混雑の緩和はまだ十分でなく、また国鉄の事故の頻発は国民の生命を脅かしております。このような事実を見るときに、政府国鉄経営に対して無責任な態度をとることは許されないのであって、戦争と戦後の時期に荒廃をもたらした国鉄の設備の復旧、更新と近代化による輸送力増強のために、政府は責任を持って重点的施策を講じ、その遂行の責任を明らかにするべきであると考えます。政府はこのような戦争による跡始末の責任もとっていないのに、年々一千億以上の軍事費を計上し、今年度においても、さらにそれを増大させようとしております。また、戦後国鉄企業に対しては無責任な態度をとり続けた一方、すでに先ほども述べられたように、石炭、鉄鋼、造船、電力などの独占資本に対しては、補給金その他の財政投融資によって巨額な援助を行なっております。本年度予算についていえば、税の増収が一千億に上ると想定される一千億の減税を行おうとしているのに対して、国鉄経営再建のための施策が、運賃値上げはやむを得ないということのみであることは、われわれにとってきわめて遺憾なことだと考えざるを得ないのであります。  以上述べたごとくに、国鉄当局の主張し、今回の提案の理由の中で述べられている運賃値上げの理由は一つ一つ納得のいかないものであるばかりではなくして、戦時中あるいは戦後の政府の誤まった施策によって生じた負担を国民大衆に転嫁するものであって、さらに一部の独占資本の擁護、利益確保のために生じた矛盾を国民大衆の犠牲において解決しようとするものであると言わなければなりません。で、国鉄の現在称している経済の拡大に伴う経営合理化の必要性から、その解決を単に安易な運賃値上げという方法にたよるのではなくして、真に国民の国鉄とするために政府が断固とした責任を持った態度をもって国鉄の現在の危機を打開する保証を行うようにわれわれは要求したいと思うのであります。  最後に、特に学生の学割の問題、また通学定期割引率が非常に低いという問題が運賃値上げの際に常に持ち出されてくる問題ですが、この点については、先ほど大島さんも言われたように、われわれとしては国家の文教政策の観点からこの問題は考慮されるべきであって、単に国鉄経営の問題からのみ論ぜらるべきではないということを特に指摘しておきたいと思います。  最後に、国鉄運賃の変更の問題を決定するに当っては、最初に述べたように世論の動向を第一に重視する必要があるということを指摘したいと思います。で、一時運賃改正を国民の世論の代表機関ともいうべき国会と別のところで行うような、国会から切り離して、たとえば運賃裁判所のごとき機関で運賃改正を取り扱うようにするというふうな試みが持ち出されたことがありましたけれども、われわれはこのようなことにも絶対に反対いたします。で、国鉄経営の問題はすでに繰り返し述べた通り、国民の世論の動向によって決定されるべきものであって、私は特に国会審議の過程において、一番最初に述べたような国民の動向に対して十分な注意を払われて、今回の国鉄運賃値上げのような措置を行わないように要望したいと思うのであります。  以上全学連を代表いたしまして、国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案についての公述を終らせていただきたいと思います。
  35. 戸叶武

    委員長戸叶武君) それではこれより公述人公述に対し、御質疑のおありの方の御質疑を願います。   速記とめて。    〔速記中止〕
  36. 戸叶武

    委員長戸叶武君) 速記つけて。  それでは、これにて公聴会を終了いたしますが、公述人の方々には長時間にわたり貴重なご意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。  これにて散会いたします。    午後三時二十四分散会