○
衆議院議員(
山口丈太郎君) ただいま議題になりました
港湾運送事業法一部改正案につきまして、その
提案理由及び
内容の概要について御
説明申し上げます。
港湾荷役は戦時中港湾
運送事業統制令により一港一社を
建前とした独占的な企業形態によって
運営されてきましたが、戦後は独占企業の弊害を除去するという理由で総司令部の指令に基いて、港湾荷役会社は解散され、以後港湾
運送事業は何らの規制なく自由に
経営できることとなり、企業の乱立、弱体不良化を紹くところとなったのであります。このため
運輸省は
昭和二十六年五月混乱した港湾
運送の秩序を回復するため、現行の
港湾運送事業法を制定して、
事業の種類を四種に分類し、これらに一定の資格要件を設定して、事
業者はすべて登録すべきことといたしたのであります。しかるに、同法は
業者に対する規制が登録という簡易なものであるため、十分なる規制ができず、当初の
目的に反し、
業者の乱立、不良化を防止することができないまま今日に至っているのであります。現今の港運業の
実態は、そうした現行法の不備欠陥に由来して、その
経営規模の極端な不均衡性と、下請企業の零細化を助長し、公正なる自由競争が阻害される現状を醸成しつつあります。特に零細化した下請企業の多くは、簡易な登録によって一応港運
業者としての資格を取得し、請負形式をとって作業をしているものの、その
実態は、
労働ボス的な人夫供給業を
事業としておる企業が必ずしも少くないのであります。こうした
業者の乱立、不良化は、勢いそこに働く
労働者の上にも重大な影響をもたらし、
労働条件の劣悪化、雇用の不安定はすでに港湾
労働にとって常識化された事柄となっております。こうした状態をそのまま放置するならば、当該
事業の混乱は、更に悪質化、複雑化して、その健全な発展はとうてい達成されないのみならず、
関係労務者の生活権も脅かされ、その社会経済に及ぼす影響はきわめて重大と言わなければなりません。よってこの際すみやかにかかる禍根、弊害を除去し、港湾
運送事業における秩序を維持回復し、その安定をはかり、もって
事業本来の経済的、社会的
機能を発揮せしめるため、
港湾運送事業法の一部を改正して当該
事業活動の監督を強化し、かつ当該事
業者の資格要件を厳正にして不良事
業者の規制をはからんとするものであります。
以下
内容の概要について述べます。まず第一に、本改正案は現行の登録制を免許制に改め免許基準を明確化したのであります。
前述のごとく現行の簡単な要件充足主義による登録制実施の結果は、適正なる規模を持たない不適格
業者を乱立せしめ、複雑なる下請
関係を醸成するとともに、不当競争、
労働条件の悪化をもたらす原因となっておるのであります。すでに海運、通運、道路、航空等の
運送事業においては免許制が実施されており、ひとり港湾
運送事業の場合のみが登録制をとっているにすぎないのであります。その理由は他の
運送事業に比べて、公共性が少いということでありますが、そうした解釈自体に重大な誤まりがあり、私たちは公共性が他の
事業に比べて、それほど劣るとは
考えていないのであります。実際問題として、現行の登録制実施の結果が、もろもろの弊害を生ぜしめていることが明らかな現在、すみやかに免許制に切りかえて港運
業者としての適格条件を明確化し、港運
事業の適正なる
調整をはかることが望ましいと
考えるのであります。
第二に、本改正案は
荷主、船舶運行事
業者、及び港湾逆送事
業者間における
運賃、料金を規制することといたしたのであります。港湾荷役の波動性の結果は、独占的な船会社、貿易商社及びその代行機関としての倉庫
業者に従属する元請—下請—再下請の系列化を助長し、そこに事
業者間の不当競争、
運賃料金の不公正な値引き及び割り戻し、さらには自己の
運送能力を越えて元請し、これを大
部分下請せしめて不当な中間利潤を得る等、公示料金を守らぬ事
業者を輩出し、その結果は港湾
労働者の
賃金の上にも相当な影響を与えるところとなっているのであります。そこでそうした公示料金の不遵守を取り締るために、港運
業者問における荷役相互融通を行う場合には、公示料金を下回る
運賃、料金で
運送させ、または割り戻しを受けることを禁止し、
荷主及び船舶連行事
業者にも公示料金遵守の義務を課し、それに違反した場合は罰則を課すことといたしたのであります。
第三に、現行法において一般港湾
運送事業は一貫作業を行うべきといたしておりますが、実際には、法文の不明確さから、一貫作業がほとんど行われていないというのが現状であります。そこで、改正案ではこ点を明確化するため、一項目を設け、一般港湾
運送事業者は必ず一貫作業を行わなければならぬことといたしたのであります。
第四に、本改正案は運輸大臣の諮問機関として、第三者構成の港湾
運送審議会を中央、地方に新設し、各港湾における適正な供給逓送力の策定、
運送の需要と供給との
調整に関すること、その他港湾連運
事業に関する調査、監督をこれにつかさどらせ、港湾
運送事業の秩序維持と、その健全なる発展をはかることといたしたのであります。この港湾
運送審議会の新設によって、現行法において運輸
審議会の諮問事項であった事柄については、これを全部港湾
運送審議会の諮問事項といたしたのであります。
以上のほか、港湾
運送事業監督官の新設、その他こまかい点について改正を試みておりますが、本改正案の主要な改正点は大体以上の
通りであります。
なお、改正案は、その円滑なる
運用をはかるため、一カ年の実施猶予期間を設け、その施行に万遺憾なきを期した次第であります。
何とぞ、慎重
審議の上、本改正案に御賛同賜わらんことをのぞみます。