○大倉精一君 そのお
考えは非常に消極的だと思うのです。労働運動に対しまして、こういうことが起るというと、必ず聞く言葉は、日本の
労働組合はまだ未熟だという言葉を聞きます。しかし、日本の
労働組合もすでに十年たっております。しかも、この十年間に、外国にはない特殊の事情のもとに労働者は団結をして、
自分たちの権利と生活を守る戦いをやってきております。むろんその中には失敗もあり、あるいは行き過ぎもあり、後退もありましたが、十年間の
労働組合の体験というものは相当貴重な体験であって、私は未熟とは
考えていない。ただ未熟なのは何かというと、昔の教育を受けた
国民大衆なんです。
労働組合の体験がない、経験がない、
労働組合のそういう洗礼を受けていない、あるいは民主主義の洗礼を受けていない、そういう
国民大衆こそ私は未熟だと思うのです。大衆を相手に私は抗議をしようと思っておりませんが、
労働組合が未熟というのじゃなくて、昔の教育を受けた
国民が民主主義に対して、労働運動に対して私は未熟だと思うのです。その中で
労働組合はいろんな戦いをしなければならぬ、従って、今の日本の一般
国民の認識状態では、ストライキをやれば、やった方が悪くなる、無条件に悪くなる、ここに私は問題があると思うのです。そこで、
総裁はもっと
国鉄の信用を回復するように協力をしてくれと言う。これは裏を返すというと、
労働組合は今しばらく何もやらぬでがまんせい、これは幹部はがまんするかもしれないが、しかしながら、
組合というものは、幹部がファシズム的な
自分一人の
考えで押し通すというわけにはいきません。日本の労働者大衆というものは、
自分の生活を守るための戦いというものを経験しております。体験をしております。でありますから、労働者が
自分たちの生活に不安を感じ、あるいは権利を侵害される、こういう認識ができれば必ず団結して戦います。戦うなと言って理屈を言って訓示をしてみても、そういう体験のできた労働者というものは、それでは無理です。でありますから、こういう十年間成長してきた労働者に対して、この労働運動を解決していこうということになれば、やはり今
総裁がおっしゃったような、もう少しがまんしてくれ、
——これでは私は騒動が起るたびにだんだん
権限が狭められる、そういう危険があると思う。これをどうやったら打開できるか。おそらく労働者がこれを聞いたならば、よし、それならおれ
たちの力でもって
総裁の
権限を拡大するように
一つやろうじゃないか、こう言うに違いないと思うのです。ですから私は、
総裁は今の御
答弁で、確かにもっと
権限を持たしてもらわなければ
国鉄の労働問題に対しては非常に困る、こういうお
考えがあると思うのです。であるとするならば、労働者を首切るばかりが芸じゃなくて、むしろお互いに協力し合うといいますか、お互いに
一つ、この労働問題に関する限りは、
国鉄の
総裁がもっと自由な裁量、自由な
裁定を下す、
団体交渉も、自由な
団体交渉の
権限を持つ、こういう
権限を与えてもらう、そういう方向に向ってもっと積極的に動くべきじゃないかと思うのです。ですから、たとえばやみ給与の問題にしましても、これはやみ給与、やみ給与といいますけれ
ども、今、
相澤君も言いましたけれ
ども、これもりっぱに
団体交渉によって双方が調印しておるわけなんです。ですから、労働者はこれはもらう権利がある、あなたの方は払う義務があるのだ、これを今度は
仲裁裁定云々といって、いわゆる
仲裁裁定でもって、レベルを同じにしなさいということを言っておるのですが、レベルを同じにしろということは、これは削れということじゃない、
国鉄労働者がこれだけよけい給与もらっておるとするならば、ほかの
組合の給与をそこまで上げるように
努力すべきなんです。これは
国鉄労働組合がそれだけの調印をするについては、血のにじむような
努力をもって調印したのですから、それを労働者に相談なく削ってしまって、そうしてゼロにしてしまう、それでは
一体その調印をだれがしたんだ、
一体どういう経過によってその
調停を調印されたのか、これは労働者は納得できませんよ。これもひとえにあなたの労働問題に対する地位というものが非常に薄弱であるということになるのです。これをだんだんせんじ詰めてくるというと、
労働組合は、もう
国鉄総裁に対して
団体交渉をやってもこれはむだだということになる、そうすれば
政府を相手に交渉する、
政府を相手に戦う、こうなってくれば
事態がますます重大化して参ります。でありますから、私の申し上げたいことは、首を切って責める、そういうことをやるということよりも、逆にあなたの労働問題の取扱いに対する
ところの
権限というものを拡大する、この方向に労働者と一緒にそういう
努力をすべきじゃないかと思うんです。特に労働者はあなたが直接監督され、使用されておるという言葉はこれはいかぬかもしれませんが、あなたの直轄下である、でありますから、少くとも労働問題に対しては、あなたの
権限を拡大して、そうして正常なる
団体交渉が実質的にできる、こういう体制を作らなければ、おそらく
国鉄の労働争議というものは毎年繰り返されていく、特に今度の場合には、もう
国鉄総裁というものは、
ほんとうに何といいますか、
一つの取次ぎ役みたいなもので、すべては
政府の労働政策、その戦略、戦術から出ておることが原因なんです。ですから、そういうことを根本的になくする、こういう
努力をあなた方はもう少し積極的にやるべきじゃないか。
国鉄の信用を回復することに
努力を願いたいということは、私はきわめて消極的であって、ますますこれは
事態が混乱してくると思います。そういう点について、もう一ぺんお伺いしておきたい。