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1957-04-16 第26回国会 参議院 運輸委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年四月十六日(火曜日)    午前十一時一分開会   —————————————   委員の異動 本日委員大河原一次君及び占部秀男辞任につき、その補欠として中村正雄 君及び松浦清一君を議長において指名 した。   ————————————— 出席者は左の通り。    委員長     戸叶  武君    理事      三木與吉郎君            大倉 精一君    委員            石原幹市郎君            植竹 春彦君            成田 一郎君            相澤 重明君            柴谷  要君            松浦 清一君            高良 とみ君            市川 房枝君            岩間 正男君   国務大臣    運 輸 大 臣 宮澤 胤勇君   政府委員    運輸省海運局長 粟澤 一男君    運輸省船員局長 森  嚴夫君    海上保安庁長官 島居辰次郎君   事務局側    常任委員会専門    員       古谷 善亮君   説明員    運輸省船舶局首    席船舶検査官  藤野  淳君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠互選運輸事情等に関する調査の件  (第五北川丸遭難事故に関する件)   —————————————
  2. 戸叶武

    委員長戸叶武君) これより運輸委員会を開会いたします。  委員変更について報告いたします。四月十六日大河原一次君が辞任され、中村正雄君が補欠選任占部秀男君が辞任松浦清一君が補欠選任せられました。   —————————————
  3. 戸叶武

    委員長戸叶武君) 理事補欠互選についてお諮りいたします。理事大倉精一君が委員辞任せられ、現在理事一名が欠員となっておりますが、再び委員に復帰いたしましたので、この互選は、成規の手続を省略して、その指名委員長に御一任願うことに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 戸叶武

    委員長戸叶武君) 御異議ないと認めます。それでは理事大倉精一君を指名いたします。   —————————————
  5. 戸叶武

    委員長戸叶武君) 運輸事情等に関する調査中、第五北川丸遭難事故に関する件を議題といたします。  まず、政府より本件に関する報告を願います。
  6. 島居辰次郎

    政府委員島居辰次郎君) それでは第五北川丸沈没事件につきまして、お手元資料が配付してあるのでありますが、その事故概要救助概要等を御報告いたします。  十二日の十二時に生口島瀬戸田港を出港いたしまして、尾道に向いました定期旅客船の第五北川丸、これは三九・四九トンでございますが、十二日の十二時四十分、佐木島西岸沖寅丸礁に乗り揚げ、沈没いたしまして、百十二名の死者及び行方不明者を出したのであります。この全体の百十二名の数字は、多少変るかもしれませんが、今のところ判明したのはそういうのであります。  当時の気象状況は、南西の風五メートル、青木瀬戸は、西流の最強時で四ノット程度でありまして、天候は曇り、視界は良好であったのであります。  この第五北川丸要目を申しますと、総トン数が先ほど申しましたように三九・四九トン、乗組員は四名、乗客は二百三十三名、計二百三十七名であります。  救助概要を申し上げますと、当時海上保安庁といたしましては、十二日午後一時十五分、尾道海上保安部が第五北川丸沈没の情報を入手いたしますと、即刻「ひなづる」外十八隻の巡視船艇及びヘリコプター一機を第六管区海上保安本部管内保安部署及び第五、第七、第九管区から現場に派遣しまして、全力をあげて遭難者救助作業を開始したのであります。  第六管区海上保安本部は、十二日の午後四時に尾道海上保安部救難対策本部を設けまして、第六管区海上保安本部長対策本部長となりまして、救助活動総合指揮をとりますとともに、尾道海上保安部長現場に派遣いたしまして、現地救助活動指揮に当らせたのであります。  そこで、途中いろいろ人数変更はございましたが、ただいままでにわかりました数字は、生存者が百二十五名、死体が七十三体でありまして、行方不明が三十九名でありまして、合計二百三十七名でございます。  なお、サルベージ関係で、けさまでに入りましたものをつけ加えますと、深田サルベージ、これは呉でございますが、起重機船一隻と作業母船一隻、潜水船七隻、潜水夫七名、作業員五十名をもちまして、十四日の十一時より作業を開始いたしまして、午後四時五分、寅丸礁の二百八十度九十メーター、水深が三十七メーター地点におきまして、船首を南方に向けて、右舷に九十度傾いている第五北川丸船体を確認いたしますとともに、当時死体一体を揚げたのであります。それから十五日は、四隻をもちまして午後一時より作業を再開いたしまして、一隻は船体引揚作業、三隻は死体揚収作業に当りまして、午後十時、船内から死体十四体を収容いたしたのであります。それから十六日の午前零時、船体寅丸礁南方九百メートルの地点に引き揚げ座礁させますとともに、排水いたしまして、けさの午前四時十五分でありますが、死体二十四体を収容したのであります。  これが最も最近の状況でございます。
  7. 粟澤一男

    政府委員粟澤一男君) お手元資料をお配りしてございますので、若干ただいまの御説明を補足さしていただきます。  本船経営者でございますが、これは芸備商船株式会社と申しまして、資本金九百万円の会社でございます。本船のほか、百十三トンの金比羅丸その他合計十隻の船を持っておりまして、免許航路といたしましては、本事件瀬戸田——尾道その他で八航路経営をいたしております。なお、本船要目詳細等については、お手元資料に書いてございますが、このうち、速力八・五ノットと書いてございますが、これは最高速力でございまして、常時スピードは六・五ノットでございますので、申し上げておきます。なお、本船旅客定員は七十七名ということになっております。以上であります。
  8. 戸叶武

    委員長戸叶武君) ただいまの報告に対し、御質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  9. 岩間正男

    岩間正男君 最初人員ですね、これは全体として、乗組員を入れて二百二十二名というふうに新聞なんかに見えておったのでありますが、ただいまの報告によりますと、乗組員を入れて二百三十七名、こういうふうに人員変更がありますが、これはどういう事情によるのか、その間の経緯を明らかにしていただきたい。
  10. 島居辰次郎

    政府委員島居辰次郎君) これは現場におきまして発売した切符その他によって最初調査しておったのでありますが、子供など切符を持たないで乗ったような人もあったりいたしまして、そこで、だんだん調査していくに従って増加していったような次第でございます。
  11. 岩間正男

    岩間正男君 どうも私たち、ゆうベラジオを聞いておりまして、それで二百二十二名というふうに頭に入れておったのでありますが、どうも船を揚げてみたら、いろいろまあ死体が出てきた、そういう経過から、その他いろいろその後人員を補足することをされたのだと思うのでありますが、これで間違いないのですか。そういうはっきりした見通しがあるわけですか。あとでまた人員が移動したり、そういうことは起らないのですか。どうもこの点が非常に私は重要な問題じゃないかと思うのです。二百二十二名、それで実際は十五名もふえておるのですが、いつでも、紫雲丸のときも同じようなことがあったのじゃないかと思うのですが、人命に対する考え方というものは、こういうふうにずさんになっておるところにこの問題の一つの大きな原因があるような気になるので、実は私は非常に、こういうところに払われている注意の度合い、こういうもののバロメーターになるのではないか、人員が変ってしまう、実際は死んだ人の数がはっきりつかめていなかった、二百二十二名ということを言っておりますけれども、実際はもっと多かったというようなことに、非常にずさんなやり方が、経営の仕方があるのじゃないかと思うのですが、この点いかがでございましょうか。
  12. 粟澤一男

    政府委員粟澤一男君) 先般来、たびたびの事故がございまして、私どももそういう点について、できるだけ注意を喚起しておったわけであります。従いまして、会社としましては、乗船のときあるいは乗船後にできるだけ確定的な人員その他を調査しておくという、もちろん義務はありますし、責任があるわけでありますので、できるだけそういう措置をとっておるわけでありますが、今回の場合には、いろいろ調べてみますと、船長船内船内券整理しながらその点の確認に当っておったらしく見えるのですが、従いまして、現在のところ、まだ確定的に二百三十七名で間違いなく全部であるというふうなところまでまだ確認されていないのでありまして、今後なお若干の変化があるかもしれないと私ども考えておりますが、できるだけすみやかに確定的な調査をするように、現地においてただいま調査さしております。
  13. 岩間正男

    岩間正男君 そうすると、まあ今の二百三十七名が確定数でないということなんですね。常に日常経営の仕方が非常に問題になってくると思うのです。事故が起ったときに大騒ぎしているのだが、日常にそういう全体何人おったかということを具体的に把握するというような方法——これは監督官庁としてはそういう方法をとらしていないのです、業者に。ここで、非常に簡単な問題のようだが、実は今度の問題の性格の大きなものが含まれているのじゃないか、人命に対する尊重の観念というのは、こういうふうな数字が非常にずさんだという形に現われておる、この点はどういうような監督官庁として方向をとっておられるか、この点をお伺いしたいと思います。
  14. 粟澤一男

    政府委員粟澤一男君) 私どもとしては、過般来の事故にかんがみまして、乗客定員というものはぜひ確実につかんでおけということを常に言って参っておったわけであります。当日の状況を調べてみましても、初めに百三十人前後の旅客を乗せまして、出発間近になりまして団体客が二団体入ってきた、船長はたまたまデッキにおりまして、デッキの客の整理をしておりましたために、その人数を数え切れなかったというふうなことを言っておるのでありますが、これはもちろん数え切れなかったというふうなことでは済まされる問題ではございませんで、平時の船長のみならず船員全部のやはり訓練と申しますか、そういう場合の取扱いに対する注意が足りなかったんではないかと考える次第でございます。なお、一般には陸上におきまして会社の者も出て当然整理しております。なお日曜、祭日等の混雑する場合には、特別にそういう人員も大体会社は用意いたしまして、そういう整理に当っておるわけでありますが、たまたまこの日は土曜——日曜でございませんでしたために、そういう特別な整理要員を用意してなかったというふうなこともあるかと思います。何にいたしましても、ふだんのやはり注意が足りなかったということは申せると思いますが、非常に遺憾と存じますが、今後なお厳重に注意を喚起したい、こういうふうに考えております。
  15. 岩間正男

    岩間正男君 これは被害者立場から考えると、ちょっとやり切れない感じがすると思うんです。人員変更なんというものは、どうも命に対する尊重のあれが非常に薄いという形で現われると思うんです。あとで追加されるとか、そういうことになってきますと、与える影響は非常に私は大きいと思うんで、人命に関する問題ですから、こういうところをもっと科学的に何とか方法を考慮しなければまずいんじゃないか。たまたま事故が発生したからこういうことが問題になってくるけれども、おそらく、十二日に事故が起ったが、十一日も十日も、その前の日も事故がなければ、そのあとの日も、こういうことがしょっちゅう行われるんじゃないか、七十七名の定員に対して三倍の二百三十名以上の者を乗せる、こういうことになっておるようになったわけでありますが、そうすると、これはどういう原因でございますか、どういうふうにおつかみになっていらっしゃいますか、乗員を超過し三倍も乗せたというその原因はどういうところにあったか。
  16. 粟澤一男

    政府委員粟澤一男君) ただいま申し上げましたように、出発ぎわになって団体が入ってきて、それを乗せたということでございまして、もちろん船長なり会社免許を受けた定員というものは承知しておるわけです。どういうわけで二百三十名も乗せたかという点につきまして、ただいまそれぞれの関係当局において取調べ中でございますので、私どもの方ではまだはっきりしたことはつかめておらないというわけでございます。
  17. 岩間正男

    岩間正男君 花見どきになって、あそこに私ちょうどこの前運輸委員会の視察のとき因ノ島まで行きました。あの近くで耕三寺というお寺があって、そのお寺のあれは西の日光といわれておるんですが、あそこの乗客もだいぶ、七十名か八十名、まぎわには乗り込んでおるということを聞いておりますが、こういう花見どきというようなときに対して、船を増発するとか、定員との関係でそういうことは別にやってないわけなんですか、どうなんですか。
  18. 粟澤一男

    政府委員粟澤一男君) 大体の会社におきましては、もちろんそういう場合には他船を臨時に増発いたしまして、殺到する客をさばいておるというのが状況でございます。
  19. 岩間正男

    岩間正男君 このような定員外に何倍も乗せるというような場合に、船員ですね、船員対策などというのは、別に何か方法はないんですか、これをそれに比例してふやすとか、これは定員、大体船員は五人なんですか、それを一人減らして四人というようなことになっておると思うんですが、こういう割合はどうなんです。二百三十人に対してわずかに四人、こういう割合はどういうことになりましょうか、監督官庁立場から。
  20. 森嚴夫

    政府委員森嚴夫君) 船員の問題についてお答えします。船員定員につきましては、船員法におきまして、必要な労働時間を守り、必要な運航をなすに必要な定員を乗せるということになっておるのでございます。しかし、今の問題の平水航路につきましては、平水で千トン以下の船につきましては、この規定が適用されておりません。従いまして、法律的には正面からは定員は規定していないということになります。ただ、これを就業規則等によりまして届け出さしておりまして、非常に不合理である場合においては、これに対して指導をいたしております。頭から法律的に直接には規定していないわけでございます。
  21. 岩間正男

    岩間正男君 そうすると、相模湖の場合もやはりこういうケースになりますか、千トン以下の船で。
  22. 森嚴夫

    政府委員森嚴夫君) 同様でございます。
  23. 岩間正男

    岩間正男君 相模湖の場合に、このことは問題になったと思うのですね。そうすると、それが一体どういうふうにその後改善の跡が明らかになっておるのでしょうか。監督官庁として行われたこと、それから実績としてこれはどういうふうにやられたか。
  24. 森嚴夫

    政府委員森嚴夫君) 就業規則の適正な運航をはかるという面において監督いたしておりますが、それが何人ふえたとか何とかいう数においては現われていないのであります。
  25. 岩間正男

    岩間正男君 そうすると、これは一つのこういう問題を発生させる暗箱になっておる、盲点ですな。やはりこういうものをもう少し法制化するなり何なりやらなければならぬですが、それともう一つ事業経営の問題とも関係するのですか、そういう問題はあるのですか。つまり、こういう小さい船に船舶定員だけを法的にぎゅっとやっていくと、もう経営が成り立たないというような問題から、今のような簡易な方法でもうけ主義をやっていくような格好になってきておるのでしょうか。その辺の関係はどういうふうに考えておるのでしょうか。
  26. 森嚴夫

    政府委員森嚴夫君) そのような点もあるかと思いますけれども、直接の問題といたしましては、そういう観点からではございません。ことに小さな船——いろいろな業態にある小さな船につきまして、法律で一律に規定するということが困難だという点に原因があるのだろうと思います。
  27. 岩間正男

    岩間正男君 この芸備商船というのは最近の経営状態はどうですか、黒ですか、赤ですか。
  28. 粟澤一男

    政府委員粟澤一男君) 当社は昭和二十七年の二月に設立されたまだ割合新しい会社でございますが、現在八航路経営しておりまして、最近の経営状況はまだ確実に報告されておりませんが、大体八航路のうち三航路ないし四航路黒字でございまして、あとの四航路か五航路が若干の赤字を出しておるかと記憶いたしておりますが、詳細の資料を掌握しておりません。
  29. 岩間正男

    岩間正男君 この花見どきなんかはずいぶんもうかることでしょうな、定員の三倍も乗せるのですから。どういうことでしょうか。
  30. 粟澤一男

    政府委員粟澤一男君) 大体こういう会社の船は一年を通じて見ます場合には、非常に客の立て込むシーズンと、そうでないシーズンとございまして、年間を通じて相当の採算をとるわけでございますが、客の多いときにやはりある程度黒字を出して、客の少いときのカバーをするというのが普通の形態です。
  31. 岩間正男

    岩間正男君 労働者賃金状態はどうなっておりますか。つまり船長機関士、それから十六才という人なんですが、大体これなんか賃金状態わかりますか。
  32. 森嚴夫

    政府委員森嚴夫君) その点、ただいま資料を持っておりません。
  33. 岩間正男

    岩間正男君 労働時間はどうですか。
  34. 森嚴夫

    政府委員森嚴夫君) 労働時間は、ただいま申し上げましたように平水区域の千トン以下の船につきましては、直接法律では規定しておりません。ただ、こういう問題につきましても海員組合との間に団体協約ができておりますから、妥当な線におさまっておるはずでございます。
  35. 岩間正男

    岩間正男君 こういうものの資料を、やはりちょっとあとでわかりましたら教えていただきたいと思います。もう一つは、これで終りますけれども補償ですね。終えたあとの策で非常にまずいわけなんだが、しかし、ある場合には、補償の問題が、こういう問題を起さないための補償でもあると思うのです。事故を防ぐための補償ということになる。これは船のことで私はよくわかりませんが、たとえば陸上で踏切り事故なんかあると、国鉄なんかは一人踏切りで殺して千円ということになる。そうすると踏切りを作るよりも補償の方が安いわけですな。人間の命を考えないで営利本位でやっていく。補償の額が高くなって、踏切りを作った方が得だということになれば踏切りを作って保安度を増すことになる。そういう意味におきまして、相模湖の場合にどういう補償が行われたか、それからこれと関連して、一体どういうふうにこういう問題を監督官庁立場からお考えになっておるか、その点お伺いしたい。
  36. 粟澤一男

    政府委員粟澤一男君) 当会社の船客につきましては、傷害保険がつけられてございまして、これは保険会社十数社の保険団体との契約になっておりますが、それによりますと、大体一人二十五万円ほどの保険がかかっております。しかし、この保険金が今度の事故の場合にもらえますかどうか、まだ決定いたしておりませんので、これはただいま保険金を出してもらえるように努力いたしております。それから会社に対しましては、できるだけすみやかに、まず香典と申しますか、一般の例によりますものを出しまして、そのあとで確定的な弔慰金をできるだけやすい方法で出すということをさしたい、こういうことを考えております。
  37. 岩間正男

    岩間正男君 相模湖の場合はわかりますか。相模湖の場合はどういうふうに行われたか、その跡始末を聞かしていただきたい。
  38. 粟澤一男

    政府委員粟澤一男君) 相模湖の場合には遭難者が二十二名でございまして、それに対しまして、当時相模湖で事業を営んでおりましたものが集まりまして、五万円の見舞金を出しております。
  39. 岩間正男

    岩間正男君 一人五万円……。
  40. 粟澤一男

    政府委員粟澤一男君) 総額五万円でございます。
  41. 岩間正男

    岩間正男君 それだけですか、相模湖は総額五万円出されただけで、実際跡始末はその程度ですか。
  42. 粟澤一男

    政府委員粟澤一男君) 五万円が総額でございます。
  43. 岩間正男

    岩間正男君 こういうケース、この相模湖の場合、今承わって実はびっくりしておるわけですが、とにかく二十二人の跡始末ということで五万円ということの補償で終ってしまうということになれば、これはやはり事故は絶えないのじゃないかというような感じがするのですね。今度の場合だって、どうなんです、定員の三倍も超過した場合に、傷害保険に入っていても、これは会社との間に係争が起る可能性が出てくるのじゃないですか。これをその通り、やっぱり船の運航やり方が悪い、七十七人の定員に対して三倍も乗せた、そうしてもう定員をこえるところの死傷者を出したというときに、二十五万円の補償を出したら莫大なものになると思うのですが、そういう点、どうでしょうか、見通しは。
  44. 粟澤一男

    政府委員粟澤一男君) 保険約款によりますと、やはりそういう会社に重大な過失がありました場合には、保険金はなかなか取れないというふうな約款になっております。その点について係争問題があると私ども考えておるわけでございます。しかし、何らかの方法で、まあ保険会社からもできるだけ填補してもらう。なおこれは保険会社会社のそういう支出に対しまして填補する契約でございまして、遭難者に対しまする見舞金その他の措置は、会社の第一段の措置になるわけでございます。そこで、会社として、それじゃどの程度の資力なり力があるかという問題が残るわけでございますが、先ほど申し上げましたように、資本金九百万円でございまして、航路も八航路経営いたしておりますが、全体的に非常に好成績をあげているという会社でもございませんので、その点では必ずしも資力は十分にあるとは言えないのじゃないかと思います。しかし、会社といたしましては、誠意をもってこの問題について当りたいということは申しております。いかなる方法でありますか、まだ具体的に私どもも聴取いたしておりませんけれども、その点、会社もできるだけ努力するということは申しておるのでございます。
  45. 岩間正男

    岩間正男君 そうすると、この国鉄のたとえば紫雲丸などの場合は、大きな国鉄のことですから、補償の問題も、満足とまではいかなくても、ある程度補償することができた、行われたと思うのですが、今、こういう民営の場合ですと、相模湖の場合で五万円、今度の場合だとどういうことになるのか、ちょっと見当つかぬという形で、見通しはこれはお持ちになっていないと思いますが、こういう点について、総合的な対策というものは監督官庁としてはお持ちになっていらっしゃるのですかどうですか。私は、この問題は事故を防止するためには、実は相当重要だと思っているのです、今言いましたように。最近のやり方というのは非常に経営本位で、人命尊重という点から遠くなってきておる。人の命なんかは非常に安く扱われておる。先ほど申し上げました私鉄のやり方のようなものがやっぱり流れていると思うのです、こういう精神が。施設をやって保安度を増して、それよりもまあ結局千円ずつの花代でも出していた方がずっと得だから、そういう露骨な考えをいえばそういうことになると思うのですね。今度の場合なんかも、相模湖の場合と同じような形で補償のことが行われると、こういう問題というものはあと根絶することができないと思うのですね。会社がこういうふうな事故を起した場合には大損害を食う、そうして根本的にこれはやっぱりひどい目に会うと、それよりは、こういう保安やり方をしっかりして、そうして船の保安度を増す、また乗組員なんかも多くつけた方が、結局長い目で見れば採算が合うというふうな、安全操業方針をやるためには、一つ補償という問題は非常に私は大きな関係を持っておると、私並みに考えているわけです。そういう点からいいまして、監督官庁は、単にそういう問題について、事故発生したあとにこうやくばり的な、そういうことでは私は足らぬと思う。一つのやはり方針として、政策として、明確にこういう問題はされていかない限りは、私は人命の保全というのは期しがたい、こういうふうに思うのですが、この点いかがでしょうか。その御答弁を伺って、私終ります。
  46. 粟澤一男

    政府委員粟澤一男君) 相模湖の事件は非常に何と申しますか、少い方の特別の事例と考えるのでございます。ほかに例がございまして、たとえばそういう場合には二十万円あるいは三十五万円というふうな弔慰金も支出しておるわけでございます。会社状況にもよりますが、本社におきましても、相模湖のような非常に極端な例に終るということは私どもないと思うのでございます。しかし、ただいまお話のように、保険が取れるか取れないかということは非常に大きなファクターになりまして、このためには、やはり会社としても保険約款に抵触するような、要するに定員超過というふうなことを厳重に取り締らなければならぬということになるわけであります。なお、相模事件事業者は、保険に加入しておりませんでございまして、そういう事業者がまだ相当ございますので、できるだけすみやかに保険にまず入るということを私どもはただいまも勧奨しておりますが、今後強力にそれを進めたいと、第一段階としては、補償問題としてはそう考えております。第二段階としては、その補償が、実際保険に入っておっても、できるためには保険金をもらうことがまず第一、定員その他を厳重に守らせまして、約款に該当する保険金をもらえるというふうな形をとらせたい、こういうふうに考えております。
  47. 柴谷要

    ○柴谷要君 一、二お尋ねいたしたいのでありますが、今回の不祥事件の発生は、私どもしろうとの考えといたしましても、まず定員の過剰、それから船体の老齢、それに寅丸礁ですか、そこにおきます——海上危険区域であるにかかわらず、その標識がない、こういったような幾つかの問題がからみ合って今回の不祥事件が発生したと思う。そこで、まず定員過剰の問題についてお尋ねをしたいのでありますが、これらの問題は、季節には相当の人出があって、連絡船、遊覧船等はこの機会をのがさず、大いにもうけよう、言葉は悪いかもしれませんが、こういう際に大いに輸送をして収益を上げておこうという会社のたくましい商魂のために、いわゆる七十七名の定員を二百三十二名ですか、こういったような乗船をさせた、ここに問題があろうかと思うのですが、この定員過剰の問題について、運輸省自体、今日までどういう態度をとってきたか、指導監督をしてきたか、これを一つ明らかにまず最初に伺いたい。  次には、他にも遊覧船なり連絡船がある、たくさん。今後こういうところから事故発生をさせないために、運輸省はどのような処置を今後とろうとしておるか、これらについてまず最初にお尋ねをいたします。
  48. 島居辰次郎

    政府委員島居辰次郎君) まず、お話のように観光季節には往々にしてよくそういう違反が多いのであります。おっしゃるように、この際もうけようというのは、まあ普通の経営者としてやりかねないことでございまして、そこで、私どものそういう取締りの方といたしましては、一般行政的な取締りは海運局の方でやられるのでありますが、そうでなくて、私どもの海上保安立場から見ます取締りといたしましては、例年季節に小型旅客船の海難防止と、それからそういう海事法令を励行する、つまり定員以上乗せてはいかぬとか、あるいは定員だけの救命ブイはつけなければいかぬとか、そういうふうな安全法関係のような法令の励行と、それから違反の防止のために、積極的な対策をずっと毎年必ず季節々々に打ってきておるのであります。そこで、本年も中央——どもの方から三月二十二日に文書をもちまして、各管区の海上保安本部長に通牒を発したのであります。事故防止の対策をそういうふうにはかっておるのであります。こういうものに基きまして、具体的に申し上げますと広島にあります第六管区海上保安本部措置でありますが、三月の二十日に第六管区海上保安本部の警備救難部長はNHKのラジオ放送で、海難の防止についてよくこんこんと放送をして注意をしておるのであります。それから三月二十七日に文書をもちまして、海難の防止と法令の違反の防止につきまして、管下部署あてに、業者の方によく話をしてくれるように通牒を発して指示しておるのであります。それから四月の二日に本庁から参りました文書をもとにしましてなお強調をしております。四月の八日に今度は警備課長がNHKのラジオ放送、それからラジオ中国のスポット・ニュースで海事法令の励行についてまた強調しておるのであります。  また第六管区本部の措置に符合いたしまして、現在この海難が起りました近くの尾道の海上保安部の措置でございますが、これはもっと徹底しておるのでありまして、三月の十三日には雑踏警備懇談会というものを瀬戸田に設けまして、各関係機関が行楽季におきます雑踏の警備協議会を開催いたしまして、船舶による旅客運送に当りましては、船舶の所有者、それから船長は最大搭載人員をこえて旅客運送をしたり、また、いわゆる上甲板に旅客を搭載してはいけないということを強調しておるのであります。それから三月の十五日には市町村長、遊覧船業者、機帆船組合、漁業組合等に対しまして春の遊覧客の海難防止につきまして、文書をもって注意を喚起しております。またそのほか、普通の平日よりも土曜日、日曜日が御存じのように非常に多いのでございますので、臨船措置と申しまして、船を臨検して、そうして直接の指導に当っておるようなわけであります。  なお、この芸備商船に対しましては、二月の九日と三月の九日に文書をもちまして、第五北川丸所属の芸備商船に最大搭載人員をこえて旅客を運送してはいけない。それから救命設備を整備しておくように、ことに注意をしておりますし、また、ことに三月から四月の二カ月間にわたりまして、瀬戸田と尾道関係者を集めまして、合計約二十回にわたって特に旅客の多い季節であるので、定員は厳守するようにというようなこと、それから航行中に、船の運航に十分注意を払うように、こういうようなことを具体的に指示しておりまして、前もってそういうふうな、船会社に対してはくどいというくらいに注意をしてきたのであります。
  49. 柴谷要

    ○柴谷要君 海上保安庁長官の方から、特にいろいろ指示してきておるという御説明でございましたが、本件の不祥事件発生以来、海上保安庁のとられた敏速な処置については、われわれも新聞を通じてよく承知している。ところが、事故が発生してから、幾ら海上保安庁が有能な力を発揮しても、この犠牲者を防ぐわけにはいかない。その前の海運局のとるべき態度について、私は先ほど質問しておるわけであります。そこで、法律をいろいろ見ていきますと、最大搭載人員であるとか、制限汽圧とか、満載吃水線の位置などを定めて、船舶の検査証書を交付しております。しかるに、この船は老齢、すでに三十三年を経過している。新聞によりますと、再三にわたって船長が修繕してくれ、改造してくれという要求を会社に出しておったけれども、これを取り上げておらなかった、こういう事実が新聞に伝わっておりますけれども、このような船が検査に合格して就航しておるということは、ちょっとわれわれ良識で苦しむわけであります。これらの状況について、海運局は検査証書を与えた立場であろうと思いますので、この問題について少し詳しく説明をしていただきたいと思います。どうも私考えてみますのに、船の耐用年数をわずかこえたとか、あるいは少しこえたという程度なら了解しますが、三十三年にもなって、しかも、乗っておる船長が危険な船でたまらないから、再三修繕してくれ、改造してくれと要求しているにもかかわらず、これを取り上げなかった、こういうようなことを聞くときに及んで、全く人命の尊さを忘れてしまって、船が動きさえすればいいといった考え方で、大事な人命を扱っておったようにわれわれには考えられる、この点について海運局長から少し詳しく説明を聞かしていただきたいと思います。
  50. 粟澤一男

    政府委員粟澤一男君) 御指名でございますが、ただいまの問題は船舶検査官が担当しておりますので、たまたま首席検査官が参っておりますから、首席検査官から御説明いたします。
  51. 藤野淳

    説明員(藤野淳君) 老齢船の検査の問題につきましてお答え申し上げます。私ども第五北川丸の検査の状況につきまして、さっそく検査報告あるいは検査手帳につきまして調査いたしましたところ、過去において、ただいまお話のような危険な個所を修繕しないで放置していたという事実はございません。現状おおむね良好という報告が参っております。なお、ごく最近の状況につきましては、現地の海運局に照会いたしまして調査中でございます。
  52. 柴谷要

    ○柴谷要君 そうしますと、私が先に質問した新聞に出ていたのは誤まりで、危険の点はない、おおむね良好ということで検査証書を与えておるということですから、この問題はこれで打ち切りたいと思いますが、事故の発生したのは佐木島でございますが、またこの付近を航行しております船、あるいはこの島付近に居住している人たちは非常に危険な水域であるから、何か標識をつけてもらいたい、こういう陳情が再三来ておると思うのですが、このような危険な場合には、今日まで何か標識を立てるとか、あるいは十分危険を察知させるような何らかの方法を今日までとられなかったのかどうか、この点について少しくお尋ねいたしたいと思います。
  53. 島居辰次郎

    政府委員島居辰次郎君) おっしゃるように瀬戸内海におきましては、このような暗礁はいろいろあると思いますが、全国的に見ましてもっともっと、何といいますか、大きな危険な場所もございまして、全体の予算の都合ももちろんございますけれども、いろいろの関係から、危険の度の多いような場所と思われます所から順次、灯台なり灯浮標というものを置いていっているわけであります。具体的にこの佐木島におきましては、もちろんここも大切ではございますが、ここよりもっと大切だと思われるのが北方に鍋ヶ鼻というのがありまして、佐木島においてはそこの方を先に小さな灯台をつけたようなわけでございまして、今後こういうふうな所へはもちろんできるだけ予算措置を講じまして、できるだけ早い機会に灯浮標なり、その種類のものをつけていかなければならぬかと存じておる次第であります。
  54. 柴谷要

    ○柴谷要君 佐木島の所よりも他に危険な所があるのでそこを先にやった、こういうことになっておりますが、今後こういうふうな不祥な事件が起きたらやるということでなしに、危険区域に対しましては、できるだけ予算をさいても、このような不祥事件を起して莫大な支出をすることよりもむしろ得策だと思う。そこで、事故が起きたらすぐやるというような形になりますけれども、大臣は早急にこれに対してかような処置を施すだけのお考えがお持ち合せかどうか、お尋ねをいたします。
  55. 宮澤胤勇

    ○国務大臣(宮澤胤勇君) このたびの第五北川丸の遭難事件につきましては、その原因並びに責任について、もとより急速に適当な処置を講じなければなりませんけれども、いずれにいたしましても、多数の人々がかくのごとき悲惨な事態に陥りましたことについては、遭難せられた方はもちろん、その御遺族並びに周囲の方々に対し、まことに衷心から御同情にたえない次第でありまして、従って、これに関連をして、政府としてとるべき処置について、また間然するところないようにいたしたいと考えておるのであります。この一両日衆議院の運輸委員会におきましても、定員を増加する問題に対する取締りの海上保安庁第一線の職員の増強並びにただいまの航路標識の問題、また善後処置としての保険の問題等について、それぞれの御意見がありまして、いずれもごもっともでありまして、ただいまお話のように、事ができてしまってからどろなわでは追いつかないわけでありまするけれども、しかし、今後かようなことに対しまして、何とか一つあらためて考えなきゃならぬと思う次第であります。また定員増加その他の問題につきましても、春の行楽シーズンに当りましては、それぞれの注意も与え、その他各管区において、聞くところによればラジオ、その他において非常に注意を促しておる。この第五北川丸につきましても、こういう辺でこういう事態の起らないように巡視船を回しておる。ことに第五北川丸はその出発の時、やはりそういうところを回る巡視船が行ってみたらもう出ていったあとだったというような行き違いもあったようでありますが、とにかく、あらかじめ注意を与えることには相当な手配はいたしておったそうでありまするけれども、ついにかくのごとき事態を生じた。なおこの定員をかくのごとく超過させる、まあ春のことですから来て次から次に乗って、船主、船長らも抑え切れない、とめられないというような事態もありましたが、そのよううな場合には、船の運航についても船主、船長とももう少し注意をして十六才の少年にまかせていくというようなことのないようにしたならばよかったろうとあとからも考えるわけでありますが、そういうわけでただいまこの善後処置の保険の問題その他についても考慮いたしますし、今の職員の定員の増加はどうしてもこれは次の予算ですが、航路標識にしても何も灯台を建てないでも、暗礁のある所は一つ大きなブイをつないでもわかるようなことだろうと私は思うので——これはしろうとの考えですが、これらについても一つ適当な処置を急速に今の予算の範囲内でできることは何とか、またそれ以上一つ案ができますれば、あらためて何らかの方法はぜひとも講じていきたい。航路標識の問題についても、果して船主もしくは地方においてことが危険だというならば、政府だけでなくても地方においても、船主側その他の御協力を得て、やはり一時的の方法ができないことはなかろうと、私どもしろうとながら考えるわけでございますので、これらにつきましても一つ何とか方法を講じまして、これからはできるだけかくのごときことのないような方向に向って一つ注意をしていきたいと考えておる次第であります。
  56. 柴谷要

    ○柴谷要君 やはり大臣が答弁された中で、これは役所だけでなしに地元、こういうふうなお話がありましたが、やはり地元にまかせておいてはなかなかできない。そこで、こういう事故が発生して不幸の中でございましたけれども、やはり一般の認識の高いうちに政府はすみやかに予算の措置をして、そして航路標識を立てる、そこでこういうふうな不祥事故を起させないということは当面運輸省のとるべき態度かと思うので、その点に向って大臣、特に御努力願いたい。  次に補償の問題になるわけでございますが、船運賃の中に当然保険に該当する金額は含まれていたと思うのですが、この問題はいかがでございましょうか。新聞によりますと定員七十七名に対して、保険会社は、百七十名くらい会社事故が起きたならば保険の責任を痛感するのでありますけれども、どうもそれ以上の人間が乗っておったのでは、保険の方では責任が持てないと、これはあまり様子を知らない人が書いたんではないかと思って見たのですが、このようなことが載っておる。この船運賃の中に保険に該当する金を含めて運賃を取っておるのか。それとも保険には全然関係がなかったか。この点を運輸省の方から明らかにしていただきたい。
  57. 粟澤一男

    政府委員粟澤一男君) 当該船の船客につきましては、芸備商船は十数社の保険団体契約いたしまして、乗客傷害保険をかけております。ただいまお話のありました百七十数名というのは、保険会社の何と申しますか、技術的な問題でございまして、七十七名の定員の船でありましても、その船の大きさ、その他を見まして、大体百七十六名くらいまでは保険会社は損害をカバーいたしましょうという数字が、何と申しますか、乗客定員の限度表と申しておりますが、そういう限度を一応出しております。従いまして、普通に参れば百七十六名分だけは船業者は約束しておる、こう御了承を願っていいと思います。ただこの場合には二百数十名という大きな数字でございますので、これも普通の保険約款でございますと、そういう過失があるような場合、あるいは定員オーバーを無視しておるような場合には責任は持てない、こういう約款になっておりますので、その点で今後トラブルが起るかと考えておるのでありますが、今までこういう事故でこの約款に該当したために、定員超過で保険会社が支払いを拒否したという例はないものでございますので、ちょっとそこのところはどういういきさつになりますか、今のところはっきりわかりません。保険会社契約当事者であります定期船協会でただいま折衝を続けておりますので、ちょっと見通しは申し上げかねる段階でございます。
  58. 柴谷要

    ○柴谷要君 この保険といっても大した額ではなかろうと思うのです。その額、まあ大した額でないものを二百三十三名乗っておりますから、百七十五名をオーバーする人間には保険の対象にならぬ、こういうようなことになると非常に額の低い額をまた保険会社から受け取って百七十五名分を二百三十三名で分けるというようなことになっても非常に額が少くなると思うので、ここはまあ政府の方においてもしかるべき、何といいますか、干渉がましいことになるかもしれぬが、これは当然遭難者に対する一つ方法として、保険会社等にも十分なこれは犠牲者に対する保険の支払い等をさせるように、政府としても努力をされることをさらにこれは要望しておきたいと思う。  それから次に、この会社が果して事故補償ができるだけの能力が今日あるかどうかというと、資本金九百万円くらいの会社ではおそらくないと思う。で、たよるところは今言ったようにわずかな保険金であると思う。そうなりますと、先ほど岩間委員から質問されたように、相模事件というのも五万円しか払っていない、これでは非常に遭難者に対して私は気の毒だと思う。中には一年間営々として働いて一日の行楽を楽しむために出かけていって不慮の災難にあったという人がかなりあると思う、団体旅行ですから。こういう一家の柱を失ったというような家庭は、まことにこの事故を境にいたしまして、将来一家が悲惨な状態に追い込まれる、こういう状態に対して政府は何らかの方法をとる考えを持っておるかどうか、この点を一つ運輸大臣にお尋ねをしておきたいと思う。
  59. 宮澤胤勇

    ○国務大臣(宮澤胤勇君) 御承知の通り、まあ会社は非常に小さな会社でありますが、しかし、政府といたしましては、行政的な指導でこの会社のできるだけのことは一つ会社に直接させる。また保険のこともただいまお話のように政府においてもできるだけ一つそういうふうに当らせたい。それ以上の問題につきましては御承知の通り今までの過去の例その他からいいまして、政府が直接これに対して何らかの処置を講じたということには今なっておりませんので、これは全体の問題として考えなきゃならぬのでありますが、保険の問題も小さいは小さいですが、二十五万円ですか、一人二十五万円というものはとにかく当面渡りますので、保険が取れれば相模湖みたいな非常な惨たんたる問題ではない。なくなった方の百二十何人に対して取れるわけでありますから、それらに対してもそれらの実績を見、また政府において何かなし得るところがあるかどうか、いろいろと考えておる次第であります。
  60. 柴谷要

    ○柴谷要君 まあ最後に、質問を打ち切りたいと思いますけれども、こういう事故は、まあ国鉄を皮切りと言っては語弊がありますけれども国鉄を皮切りに年々年中行事のように行われておるわけでありますが、さらに運輸当局の関係の皆様が日々心労されていると思うのですが、ほんとうにこういう事故を絶滅させるというには、厳重なる監督ばかりではなしに、やはりこういう船に乗り合せます乗客にもやはり一つの観念を植えつけなきゃいかぬじゃないか。そのためにはまあ役所的な押しつけがましいことではなしに、やはり交通道徳の精神を十分植えつける、こういう面にもやはり考えていかなきゃならぬじゃないかというふうに思うわけです。ところが、どうも今までのことは形式的な役所の通達であるからということで軽視する考え方が最近とみに出てきたと思う。これは由々しい事故発生の原因にもなるので、政府はいわゆる二百何名も乗せられる船を定員七十七名なんということでぴたっと押えている、私はここに問題があろうと思う。ですからいわゆる役所の形式的な指導監督ではなしに、身の入った、たとえばこれは百五十名ならば絶対安全だ、こういうことであるならば、百五十名までは許して、それをオーバーして起きた事故があるならば、一切営業を続けさせない、あるいは厳重な罰則を与えるというような厳重なしぼった態勢でいきませんと、特にこういう大ぜいの命を預って輸送する場合には、大きな事故が起ると思う。今後運輸省は十分その点を考えられて対処するかどうか、これを一つまあ運輸省の見解として最後に承わって、私の質問を終りたいと思う。
  61. 粟澤一男

    政府委員粟澤一男君) 非常に適切な御意見を承わりまして、私ども全くその通り考えます。ただ定員の問題につきましては、私どもも、先ほど御答弁申し上げました検査官の方の所管でございますが、常時相当の研究をいたしまして、技術的にできるだけの安全度というものを考えまして定めておるのでございますので、そう巷間で申しますように非常にきつ過ぎる、あるいは非常識だというふうなものではないと思うのでございますが、しかし一方、何分にも海上のことでございまして、突発的な突風なり、その他の状況変化が絶えず考えられるのでございますので、そういうものを考えつつきめ、定員はとかくシビアになりがちだという点は申し上げられるかと思うのであります。平日天候のいい場合は、当然相当の超過があっても、まあ安全に行けるという余裕を見ておるわけでございます。と申しまして、その突風が起る場合が必ずしも予測できませんので、非常に高い安全度を考えますと、その点でまた非常に窮屈になるというような両面の事情がございまして、私ども、今後ともこの点についてば、検討を続け、必要があればなお改正をしたいと考えておりますが、しかる上で、ただいまお話のように今後は厳重に、そのかわりきめた定員は守らせるというふうに指導もし、また会社の監督の立場もそういう立場をとっていただく。最後に違反のあった場合は、やはり仰せのように法律に照らしまして相当の処分をするということをいたさなければならぬと考える次第であります。
  62. 大倉精一

    大倉精一君 だいぶん質問がありましたので、私は違った観点からお伺いしたいと思うのですが、最近遊覧客の事故というものは年中行事のように続いているのですが、海上においては船、陸上においてはバス、これはどこかに何かの欠陥が根本的にあると思う。何かの欠陥があると思う。ただラジオやあるいは通牒でもって注意を促しておるだけでは何ともならぬような欠陥が、抜け穴があるのではないかと思いますが、当局として、どういうところに根本的な欠陥があるのか、こういうことを検討されておるのか、されておるとしたならば、当局の所見をまず伺っておきたいと思う。
  63. 宮澤胤勇

    ○国務大臣(宮澤胤勇君) お話の通りその海上の、まあ今度の事柄、それからバスについては盛んに起っておるわけでありまして、これはやはり定員の問題が非常に問題になっておりますが、今、汽車もバスも定員をこえてどんどん乗り込むというような事態になっておりますので、これらについては一つ今お話の通り、具体的にまあ何をということはありませんが、各部局においてそれぞれ検討はしておりますけれども、まあこういう事態も起りまするので、さらに一そう各部局を激励しまして、一つ何らかの処置をとっていきたいと考えて一おります。
  64. 大倉精一

    大倉精一君 その抽象的な言葉が私はやはり非常に年中行事の絶えない原因だと思うのですが、私は別の観点から、運輸省当局の観光政策というものはどういう工合に考えておられるか、むしろいわゆる花見どきとかその他のいろいろな行事のある場合、あるいは駅のターミナルの施設、そういうようなものの今の当局の御方針を見るというと、いわゆる混雑を緩和するというのではなくて、ますますそこへ乗客を誘致しようという、こういうことが無計画に行われておるような気がするのですが、そこに私は大きな自己の原因があると思うが、この観光政策との関連性について、どういう工合にお考えになっているのか、そういう点を承わっておきたいと思います。
  65. 宮澤胤勇

    ○国務大臣(宮澤胤勇君) この国鉄等におきまして、行楽のシーズンに特別な列車を仕立てるとか、いろいろなことをやって一般乗客の便宜をはかるということはやっておりますけれども、危険を及ぼすようなことは一つ避けるように、むろん万全を期しておるわけであります。ただ観光政策として、むやみに客を呼ぶというようなことはいたしておりませんし、また文部省におきましても、学生の旅行につきましても、非常な制限を加えて危険を防止するというようなことはお互いにやっておりますが、しかし、それに対して統一ある、またどういう施策が行われているか、私もまだ承知しておりませんので、こういうこともまたあらためて考えなければならぬかと思うわけであります。
  66. 大倉精一

    大倉精一君 この問題は一つ根本的な問題ですから、関係各省連絡の上で、十分一つ検討してもらいたいと思う。観光客の誘致宣伝もけっこうなんですが、ただ輸送機関も何もそれに伴わない、実力も伴わないようなそういう誘致方策をとり、国鉄あるいはその他国の機関みずからが、いわゆる利潤本位のようなことをやるということは、これが私は大きなこういう事故原因であるのじゃないかと思う。きょうも私の娘が修学旅行に出かけましたが、汽車はいいとして、末端のバス、あるいは汽船、こういうものに対して親は常に帰ってくるまで心配しなければならぬ、これが日本の観光の実態です。こういうことを政府は総合的にお考え願って、万全の措置考えていただきたいと思う、それからもう一つは、汽船についていいますというと、やはり老朽船ということがいわれているのですが、大体本造船で遊覧船あるいは一般の定期船、この船の年令といいますか、船令というのはどのくらいが限度なんですか、どれくらいから先が老齢船といいますか、一つ当局の見解を伺いたい。
  67. 粟澤一男

    政府委員粟澤一男君) 法定耐用年数は十二年になっておりますが、普通木船の場合には、船令十年以上の場合に、俗には老朽船、老齢船と申しております。
  68. 大倉精一

    大倉精一君 瀬戸内海で今就航しているところの木造船は何隻あって、今の十年以上の船は何ばいくらいありますか。
  69. 粟澤一男

    政府委員粟澤一男君) 瀬戸内海に現在就航しておりますものが、船腹にいたしまして二百三隻、トン数三万五千トンになっているわけです、これは昨年の三月現在の数字で少し古うございますが。そのうち木船だけの資料はちょっと手元にございませんが、全体のパーセンテージでみまして、大体先ほど申し上げました船令十年以上という、いわゆる老齢船と申しますものが五七%ほどになっておりまして、瀬戸内におきましても大体同様な数字、比率を示しているのじゃないかと考えます。
  70. 大倉精一

    大倉精一君 当局がすでに老齢船と認めておるものが半数以上ある。先ほどの柴谷委員の質問に対しまして、会社から出てくるものによるというと、この船は大丈夫だというので免許、許可をした、こういうことなんですが、この五七%という船自体について、当局として何らか対策はお持ちになっておるのですか。私はこの老齢船というのはやはり改良し、あるいは修復しなければならぬと思う。この根本策がなければ、やはりこういうような事故は尽きない、こういうことを考えるのですが、老齢船についての当局の今後の方針ですね、対策はどういう工合にお考えになっておるのか。
  71. 粟澤一男

    政府委員粟澤一男君) 仰せの通り、こういう海上の大事な人命を預かる、しかも、離島その他の海上交通以外には交通の方法のない所で人あるいはその他の重要物資を運んでおります航路でございまして、この航路に就航しております船が、ただいま申しましたような非常に困った状況であることは、まことに残念なことでございまして、私どももこういう状況考えまして、できるだけこの船腹を代替させて、新しく建造させるということを考えて参ったわけでございますが、何分にも相当の航路がございまして扱うのでございます。政府から補助金をもらわなければならぬというふうな状況航路が相当あるわけでございます。そういうことをいたしましても、なおある程度の低運賃をもって離島その他の旅客を運ばなければならぬという使命もあるわけでございます。従いまして、会社にこれをまかしておきましても、なかなか新しい船の代替建造ができないわけでございます。私どもそういう観点から、できるだけ融資のあっせんをいたしております。予算にも補助金の要求を再三いたしたことがございますが、いまだに残念ながらまだ実現いたしません。やむを得ず、まず第一に開発銀行の低利の長期の金を借りることをあっせんいたしまして、これは確か一昨年からと思いましたが、金額にいたしまして三億円ほど開銀から出してもらいまして、今年も続けていただけるかと思うのでございます。それからそのほかにも、中小企業金融公庫あるいは商工中金あたりからも融資をあっせんいたしまして、それらの金によりまして相当の数、毎年代替を続けて参っております。ただいまのところ、こういう政策によりまして、できるだけ船の安全度と申しますか、状況考え、あるいは旅客に対する重要度を考えまして、代替建造をはかって参りたい、こういうふうに考えております。
  72. 大倉精一

    大倉精一君 離島航路整備法という資料によりますというと、そういう船の建造または改造のためには、融資を必要とするものに対して融資をすることができる、これは省令で定めるところによりやるのだ、こういうようなこともあるわけであります。ですから私は、こういうような事故が毎年起っておるのですから、五七%という老朽船をできるだけやるというのじゃなくて、何カ年計画というのがはやるのですが、これも大体何年までには改造させる、こういうような方針が当局になければ、今のような御答弁はこれは空文にひとしくなってしまうので、ああやってもできなかった、こうやってもできなかった、努力しておりますと、そういうような答弁に終ってしまうのじゃないか。きょうは大蔵当局がおいでになりませんが、五七%という、現実には半分以上が老朽船である、こういうのに毎年旅客を二倍、三倍詰め込む、これが危険なことは当りまえのことなんです。それを監督官庁がそういうのを黙認して黙っている、知らぬ顔をして見ておる、改造が困難だということで傍観をしておる、ここに私は大きな原因があるだろうと思うのです。半数以上老朽船がある、これを何カ年たったらこうするのだ、こういう計画がなければならぬと思うのですが、大臣、これは大事な問題だと思うのですが、大臣から重ねて御方針を伺っておきたいと思います。
  73. 宮澤胤勇

    ○国務大臣(宮澤胤勇君) この老朽船ということは、技術的の問題ですが、この事件が起きてから私もそのことをよく聞きましたところが、大正十三年の船、どうもそういうものを木造船でやっている、そしてやはり修繕をして、そのときに検査をしてよければ船は大体使われていくものだ、修繕をさせて、それからそのとき検査をして適格なら船令にかかわらず大体使われていくというようなことを聞いた、それもそうかと思いましたが、今のお話で半数もあるものを端から取りかえるということも実際どうかと思いますが、これは一つ再検討さしていただきたいと思います。
  74. 大倉精一

    大倉精一君 これは何かの機会に大蔵省もお呼びしてお聞きしたいと思うのですが、このことがいわゆるさっき申しましたところの観光というような問題なり、この老朽船を修繕をする、あるいは改造するということ、こういうことが根本的に解決されない限りは、私はこういうような事故というものは絶えないと思うのです。しかも、この瀬戸内海あるいは青函の海峡あたりの混雑というものはますます多くなる。今度の一部改正によりましても、青函連絡の貨物をこれを船でやろうという、そういうような御希望であるようですが、あそこはたださえ輻湊するのです。そこへもってきて大きな輻湊をするということで海上航路がますます危険な状態になってくる。これは陸上の東海道のようにはいかないから、あまり金をおかけにならぬのですが、そういう所こそほんとうに事故が起るのですから、必要な金をかけて、そうしてこの施設あるいはこの船、そういうものの完全をはからなければならぬと思うのですが、この点については私は特に一つ要望しておきたいと思うのです。  それから次に、十六才の少年がかじをとっておったという、これは先ほども大臣がお話になったのですが、新聞によるというと、これは法律違反じゃないのです。法律違反じゃないと言っておられるようなんですが、確かに法律に厳密に照らしてみれば違反でないかもしれません。ないかもしれませんが、ここにもやはり盲点があるのじゃないか、いわゆるそういう見習船員、未資格——資格のない船員がかじをとる、人命を預る、しかも、この場合には、新聞によるというと、船長切符整理していた。一体どっちが大事だ。船長がこのかじをとって——しかも、航行危険区域がわかっておるならば、船長がかじをとって、そうして切符整理は十六才の少年でけっこうなんです。事故が起った、起ったけれども、これはもう法律違反でないからいいのだ、やむを得ぬのだ、そこに一つ盲点があると思うのです。こういう点についての解釈はどういう工合にお考えになっておられますか。いわゆる指導監督の方針ですね、この点についてあるいは何か改革されるような面があったらお知らせ願いたいと思います。
  75. 森嚴夫

    政府委員森嚴夫君) ただいまの問題につきましては、お話のように法律上では違反ではございませんです。しかし、このかじを十六の少年にまかせておいて、そうして船長切符の世話をするというようなことは、何と考えましても正常な状態ではございませんし、またこういう困難な航路におきましては、船長は甲板にあってこの指揮をしなければならないということも法律で要求されておるわけでございまして、こういう点につきましては、法律の精神が生かされていないものと考えまして、これはそういうことが今後ございませんように十分指導していきたい、かように考えております。
  76. 大倉精一

    大倉精一君 御答弁がどうもみな抽象的なんで、われわれまだ安心して子弟を船に乗せるということもできないのですが、そういうものを拾ってみますというと、総合的に私は、方々に抜け穴があるのです。定員の問題でもそうであります。これはラジオで放送しております——何で放送しようが、定員超過ということは今慢性になってしまっておる。この定員超過の問題にしても、これをどうやって取り締るか、どうやってこれを防ぐか、これもラジオで放送してやっておる、あるいは訓示を出しておる、何々を出しておる、これだけではどうもこの定員超過のことについては完全な取締りができないと思うのです。私は多くは申しません。他の委員からも言われると思うのですが、私は、今、以上申しました通ります第一番には、観光客の誘致の問題、この問題はぜひとも一つ御考慮願いたいと思います。これは船ばかりではありません、観光ばかりではございません。最近のターミナルの設備で申しますと、名古屋あたりでも地下街ができたり、デパートができた、こっちにもあっちにもできたといって、たださえ輸送機関の足りない所が非常に混雑をする、あれで事故が起らなければ不思議です。こういうものを無責任にやらせるということはこの際一考を要すると思います。それに伴うところの駅前広場も、駐車場設備もほとんどこれに伴っていない、こういうところに私は非常に大きな問題がある、これが第一点であります。  もう一つは、さっき申し上げましたところの老朽船の問題、これは大した金は要りませんから、鉄道何カ年計画というような大きな金は要りませんから、一つ政府でめんどうを見て、五十何%かしりませんが、たとえ一%でも二%でも、こういうようなものは向う何カ年のうちに完全に消化する、こういうめどをつけたところの計画を持って対処してもらいたい。  それからもう一つは、えてして小さい少年を使う例が多いのです、事故になって……。これは一つ具体的な法の不備があれば法を検証し、不備を直す、その他の具体的な一つ対策を立てていただく、こういうことが両々相待ってこの事故を防ぐことができるのであって、何回、この事故が起るたびに国会でやっても、結局あとの祭です。よく注意します、研究します、といって終ります。これを注意します、研究します、これでまた事故が起る。何回でも繰り返す。でありますから、私は今申し上げましたような観点に立って、当局の方において具体的な方策、指導方針を立案して、確立していただいて、今後事故を最大限防止できるような措置をとっていただきたい、このように希望を申し上げて、質問を終ります。
  77. 市川房枝

    ○市川房枝君 定員の問題について、少し運輸当局に伺いたいのでございます。同僚委員からもいろいろ御質問がありましたが、同じような事件が、相模湖の問題があった、あのときにやはり定員をこして乗せたということがあの事故の大きな原因であったと思います。おそらくその当時この問題は国会で問題になり、運輸省としてはきょうと同じような質問応答があったと思うのですが、あの事故以後今日までに運輸当局として、ことに船の定員の問題について、何らかの対策をおとりになったかどうか、それを具体的に伺いたいと思うのです。
  78. 粟澤一男

    政府委員粟澤一男君) 先般あの事故につきまして、船舶安全法の改正、海上運送法の改正をいたしまして、船舶安全法違反による処分といたしまして、事業の停止または免許の取り消しという条文を一項新しく設けたのでございます。それから実際に船舶旅客定員の問題につきましては、ただいま所管の首席検査官がちょっと席をはずしておりますが、その後安全法関係定員検討の委員会を設けまして、相当に長期にわたりまして検討いたしまして、たしか一昨年の十二月でございますが、設備規定を改正いたしまして、現在の定員を作っております。
  79. 市川房枝

    ○市川房枝君 定員のきめ方の問題が一つあるだろうと思うのですが、これは専門的な問題になるのでしょうけれども、さっき同僚柴谷委員から御質問がありましたように、今度の事件で、定員が約七十名、それに対して三倍以上の人たちが乗ったわけなんですが、これは新聞記事なんかを見ております感じから見ると、実に不思議といいますか、一体どっちがほんとうなのか、それだけたくさん乗せるのに、どうしてそんなに定員が少くきめられておるのかというか、あるいは逆に、定員がそんなに少いのに三倍以上も平気で乗せていて何ともないのかどうかというような疑問が出てくるわけなんですが、先ほどの御答弁で、もう一ぺん定員の、どこまで定員があってもいいか再検討するというような御答弁があったと思うのですが、その定員をこして乗せている例といいますか、たとえば船においてはどのくらい、鉄道のは中央線あるいは山手線は定員の二倍ぐらいというような、あの通りすし詰めに押し込まれているわけなんですが、いわゆる鉄道などの点、あるいはまあ航空の方はどうといいますか、いわゆる輸送機関の定員というものがどの程度守られているか、あるいは現実の数と規定との一体そういう調査というものが運輸当局にありましょうか。ありましたら一つ拝見したいのですが。
  80. 粟澤一男

    政府委員粟澤一男君) 最初の御質問の技術的な問題につきましては、たまたま担当の検査官がおりませんので、私ちょっと技術的に御納得いくような御説明ができないかと思いますが、実はこの問題は非常に技術的にむずかしい問題でございまして、単純に、船が何人の人を乗せて、あるいは貨物を乗せて沈むか沈まないかというふうな問題ではないのでございまして、大体許容容積と申しますか、たとえば船室におきましては一人が〇・三平方メートルといったような面積も考えます。あるいは旅客としては通路の問題もございます。それから船の積載し得る救命設備の問題もございます。それから船がかしいだ場合に、どの程度まで復元性を持ち得るか、元へ戻り得るかという船の強さの問題もございます。構造の点から考え、あるいは船の大きさの点から考え、あるいは船の重量の点から考え、あらゆる面から検討いたしまして、大体この船としてはどの程度までの許容量かという点から定めるわけでございます。先ほども申しましたように、いろいろな場合を想定してきめますので、たとえば湖のような所で、非常に静かな風も何もない場合に乗せ得る人間の数、それから海上の波のある場合、あるいは潮流のある場合、あるいは相当そこに風が吹いた場合、いろいろな場合を考えますと、そこにおのずから定員の差ができることは常識でもわかるわけでございます。従いまして、どの程度をもって当該船の定員とするかということは、非常に困難なむずかしい問題でございます。しかし、その場合に、運輸省といたしましては、できるだけの安全度を考えまして、これならば当該の船が、たとえば三時間以上も航行してもその間に予想し得る事態には対処できるだろうというふうなところまで考えまして、算定して数字を出すわけでございます。従いまして、そういう予想したような天候その他の状況が起らない場合には、相当の数定員を超過した人間を乗せましても、実際問題としては安全に目的地へ到達するということはあり得るわけでございます。またふだんには、確かにこれは安全に行き得るわけであります。そこで問題は、事業者としては、一年のうちにあるかないかわからないような天候その他のことを考え乗客で一年中を縛られているという点については、非常に苦痛を感ずるであろうことは、私どもも予想できるのであります。従いまして、季節によりまして、そういう心配のない季節には、ある程度まで許容数を出すということも考えられます。あるいはまた航路によりまして、そういう考慮のできるということも考えられるわけでございます。しかしながら、今度の場合におきますように、定員の三倍も乗せるということは、どう考えましても、安全度をはるかにこえておるのではないかと、私ども考えるわけでありまして、技術的に算定いたしまして、どの程度になるかちょっと申し上げかねますが、おそらくそういうことを考えましても、二倍というふうな数字は出てこないのではないかというような気がいたします。それから最後の御質問の船におきまして、国鉄では数字を出しておりますが、どの程度一体定員超過というものが数字的に出ておるかという点につきましては、申しわけございませんが、私どもただいまその数字を持っておりません。簡単でございますが……。
  81. 戸叶武

    委員長戸叶武君) 速記ちょっととめて下さい。    〔速記中止〕
  82. 戸叶武

    委員長戸叶武君) 速記つけて。  休憩いたします。    午後零時四十分休憩    〔休憩後開会に至らなかった〕