○橋本(龍)
分科員 私も実はこの
医療保障制度の
実施に関連をして、お医者さんのあり方等について実は要望もし、また
お尋ねもしたいと
考えておったのでありますが、周東
委員から大体お話がありましたので、私の伺おうと思った領分も大体は済んだわけでありますが、それについて補完的に、さらに補足的に私は要望を申し上げ、かつまた御
意見を伺っておきたと思うのでございます。
われわれはもうはっきりここで決意をいたしまして、
社会保障制度の全面
実施、その第一としては、これから四年の間に
医療保障制度を
実施することと、同時になるべく早い機会に
国民年金の
制度を
実施しようとしておるわけでありますが、これに関しましては十分な準備の要ることでありまして、
厚生省におかれてもいろいろお骨折りでありますが、今後ともよほどしっかりやっていただきたいのであります。
話は十分皆さんでおわかりのことでありますが、この
医療保障制度を
実施するに当りましては、これは当然、今日現在ありまするところの
健康保険だとか
国民健康保険だとかいう
制度をできるだけ伸ばしながら、そうして
国民健康保険を全面
実施をするということをしんにして、
医療保障制度の確立をはかろうとやっておるわけであります。ところがもともとがこの
制度というものは、発足の時期においては、これはもう恩恵的社会
政策として発足をしたものでありまして、従ってこの
制度を伸ばし切って、まず第一段階として
医療保障の完全
実施をやるという点には便宜な点があると同時に、将来さらに集大成をする上において、当然調整をしなければならぬ点があるわけであります。
健康保険の問題などは、明瞭にこのスタートの時期においては、一種の会社の厚生施設といったものを
政府が援助するような観念で発足いたして参りましたので、今日でもこの
制度が国の
医療保障制度の一環となるためには、いろいろな問題が起って、今日の
健康保険法改正の問題などもそれの悩みが出ておるわけであります。いろいろな面に問題がありますが、医者のあり方という面についてもその
通りであります。従来はお医者さんは自由診療であって、そうしてほんとうに技能と徳望とによって信頼のあるお医者さんが繁盛する。そのお医者さんは、自分の
考え方である程度負けてやったり、何かいろいろしながらやって参ったというのが、もとであります。ところが当然これは今日までの間に極端に変っている。戦争中までやはり社会
保険の
制度、共済
制度といったようなものは、みんな恩恵的社会
政策の色彩がありましたが、いくさに負けてから、みんなの
所得が落ちてから、急速にこの既存の調度をそういった
意味でなしに使うようになって、
社会保障の
制度も急速に発足をしたわけであります。その間において医者のあり方というものについても、非常に大きな変化が来て参ったわけであります。今日の事態においては、すでに社会
保険診療の部分が非常に多くなって、自由診療の部分というものは非常に少くなりつつある。その社会
保険診療の対価のきめ方というものは、要するに
国民の支払うべき総
医療費というものは、
厚生省のきめた点数だとかなんかというものによって特に上るようなことのないようにして、しかも医者全体に相当の収入を確保するような形で、点数をきめてあるわけであります。しかもその間においては、医者の数に制限もないし、いろいろな問題があるわけであります。近年、点数制の問題、一点単価の問題とか新
医療費体系の問題とかいったいろいろな
言葉が使われながら、医師会との間にいろいろなトラブルがある。これは明瞭に、つまり当面戦っておる間においては、物価が上ったのに点数を上げないのはいかぬじゃないか、あるいは
厚生省はそれに対してもいろいろな理由で
説明をなさる。それはそれでいいのですが、大きく流れている底流というものは、そもそもお医者というもののあり方が、昔とずっと違ってきたのだということが本筋であります。今後の問題といたしましては、あと四年の間に
国民健康保険制度を全国に
実施をいたしますれば、とにかく国が財政支出をして、
医療費も安くなるということであれば、これはおそらくいかなる家庭においても全部がこの
制度を使うようになるでありましよう。はっきり、四年後にはよほどの例外を除いてはまず自由診療というものはなくなって、そして社会
保険診療一本になるということになるわけであります。お医者さんというものはそこでとにかく好むと好まざるとにかかわらず、国のきめた
医療保障機構というものの中で働く
一つの新しい役割というものを完全に持つようになるわけであります。今日でもお医者さんの側からいろいろな
意見が出ておりますが、これはやはり今言ったようにお医者さんのあり方というもの自身が非常に大きく変っているということについての悩みというものが、現実に薬が幾ら上ったの幾ら下げていいじゃないのというような現実のコスト問題なんかと別にあると思うのであります。そこでごく率直に申し上げますが、最近見ておると医師会も
厚生省も努力をせられて、その間の
関係というものはよほど改善されつつあると思っておるのですが、しかし、とかくその間に率直に申して険悪な空気がないと言えないのであります。これは私は両方で
考えてもらわなければならぬと思う。
厚生省の方ではとかく
医療というものは昔と違うのだ、国の
医療保障体系というものがもう完備せざるを得ない
状態において、医者というものはその中の
一つの役割を果す人として働いてもらわなければならないのだから、こうなるのが当りまえじゃないかといったような気持が、とかくすると働きがちだと私は思う。ところがこれはやはり、いかにそれが今日の理屈として正しくても昔から町や村でも一番の徳望家で一番の名望家という形でやってきたお医者さんというものが、時代の変化を浴びながら、社会的地位が変りつつある
一つの悩みというものには、
厚生省がもっと気持において親切でなければならぬと私は思っております。医者の方の側でも、こういったやはり時代の移り変りというものを
考えながらそれに理解協力をもってやってもらわなければならないので、両方の問題があると私は思うのであります。そこで今後四年間の間にやらなければならない大事な仕事があると私は思う。いよいよこれで自由診療部分というものがなくなって、
社会保障診療だけになるならば、やはり医者の収入というものをもう一ぺん
厚生省として
考えられる必要があると思う。それから今日のようなつまり医者の数にも制限がなければ、開業地域にも制限がない、しかもそう
医療費は特に値上げをされないような形で、単価のきめ方で開業した医者の
所得をみんな一定
基準できめるといったような行き方で、
医療担当者が気分的にも非常に満足してうまくいけるものかどうかというような問題もありますし、それから今すでに問題にされておるところの十分技術の内容のいい、信用の高いお医者さんと、学校を出たてのお医者さんとに対する扱い方をもう少し
考えろといったようなことも
——今とにかく自由診療部分があれば医者も文句を言いながら、患者の方でもいろいろ希望がありながらでも、特別に町へ行ってえらい先生に自由診療で見てもらえばやれるといったような、形がずっと変ってくるとなると、そういう点もあらためて
考えなければならぬ。これはよほどうまくやりませんと、
医療保障体系というものをほんとうに
実施する上において、
政府と医師会その他の
関係というものがうまくいかないんじゃないかと思って私は心配をしておるわけであります。十分お
考えだと思うのだが、これをよほど御配慮願いたい。
そこで私は
一つ提言があるのですが、実は今日やっております
医療保障委員の
制度は私自身が提言をいたしたわけであります。というのは、国としては
社会保障制度審議会の答申に基く
社会保障制度を、
医療保障の体系を整備するためにはぜひ実現していかなければならない。それから今言ったそれに関連しての単価のきめ方であるとか、医者のあり方であるとか、いろいろな問題を処理していく、あるいは
健康保険だったら、会社の経営だとかいろいろな面の問題を
考えて処理していくためには、今日忙しい仕事を持っている
厚生省の普通の機構だけではだめなのです。どうしても各
方面に顔がきき、そうして学識も深く当りもいい人を選んで、その人に
予算と事務スタッフをつけて
実施計画というものをほんとうに作ってもらう、同時にそればかりじゃなくて、たださえむずかしい
保険者の団体との交渉であるとか、あるいは医者や助産婦の団体との交渉であるとかいうものをやってもらって、問題が円滑にいくように助けてもらうということはいいことじゃないかと思って、実は私は提言をした次第であります。そこで私は今度の
予算編成に当って実は遺憾に思いましたのは、
医療保障委員の
予算を三十一年度限りにおいて、三十二年度においてはこれを削ってしまうという大蔵省の
意見だというのはいかぬじゃないかというので、話をして、幸いにして継続されることにもなったし、また別に
国民年金制度の
委員も創設をされたので、私はそれはけっこうだと思うのです、しかしこういったふうに
予算が削られるというような問題を起したのも、私は
一つは
厚生省のやり方として少し遺憾だと思っておる、というのは
厚生省でどう大蔵省に話されたかしらぬけれども、少くとも
医療保障制度というものを完全
実施をするために、
厚生省として直接いろいろな
制度を作ったりすること、あるいはまたそれの
実施に関するいろいろな障害を除くということにおいてどれだけの仕事があるか、たとえば
国民健康保険実施のために、どういう年次
計画をやるとか、それがために
予算がどれだけいるとか、あるいは
健康保険だとか共済だとか
生活保護だとかいうものとの調整を、それから先どうとっていくかという問題、それから全面
実施をして自由診療がなくなったときに、医者の収入というものをもう一ぺん見直して新
医療費体系といったようなものをどうしのぐか、あるいは薬との
関係がどうなるとかといういろいろな問題があると思う、それをただ頭の中で
制度を作れるだけでなしに、文句のない
実施のできるように医師会に了承してもらうとか、
保険者団体に了承してもらうとかいうような実険の仕事もある、こういうふうな仕事を私はほんとうに
厚生省が洗い上げて、これは一朝一夕に二月や三月でできることではないのだから、これをあと四年間に年次
計画でどれだけ
厚生省としてこなしていかなければならぬか、こなす仕事で
医療保障委員にやってもらう仕事がどれだけあるかということが、
医療保障委員にやらす仕事の
計画がはっきりしておって、それが四年後に
医療保障の完全
実施をするまでの間に、手続が済んでなければならぬという具体
計画が非常にはっきりしておれば、
予算のたびに削るとか削らぬとかいう問題が起らないと思う。私は今後、今のところは
国民健康保険制度を四年後に完全
実施をするということで、ただそれだけで問題は済んでしまうかのごとき空気に
一般があるけれども、実際はこれから先医師会の問題だとか何とかいうものはますますしげくなってくると私は思うのであります。そういう点を
考えて、十分
厚生省としては、直接の厚生行政の問題のほかに、
厚生省として
考えなければならない
——世の中が変ってくるのだから、社会問題の処理というものを十分頭におかれて、
厚生省プロパーの
大臣から事務官僚に至るスタッフでどれだけの仕事ができる、
医療保障委員にどれだけ手伝ってもらうということのお
考えは私は必要だと思う。ただいま
厚生省で
医療保障委員に選ばれた長沼弘毅君は、御承知のように民間にいる社会学者であり、そしてことに給与
関係の問題等に対する大家で、著書も論文も書いておる
人たちなんだから、私は直接
医療の
制度を
考えてもらう以外に、こうした大きな
医療保障というものをしんにした、何千万という患者だとか医者だとかいう、この社会問題の始末のつけ方という
意味においても、私は格好な人物だと思うし、大いに活用されるのにいい人であるとも思うので、私はそういう点の、つまり
計画的考慮を十分やっていただきたい。そして、ことに頭の中で
制度をやって、これをやるのが当り前じゃないか、これを聞くのが当り前じゃないかということだけではなしに、受ける人間の問題をできるだけスムーズにやる配慮を十分
考えておいていただきたいということを頭において、私は今日
医療保障委員に対して、どういう課題を授けておられるのか、そうしてこれから先どんなふうに活用をされるおつもりなのか、これはまた下手に場当りで、その場その場の仕事だけをやるとまた来年の
予算で、もう要らないじゃないかということが起るに違いないと私は思う。そういう
意味で、
医療保障委員に今日どういう課題を授けておられるか、そして今後どういう課題を授けて、これに何をさせるつもりであるかということを
お答えを願いたいのと同時に、新たに創設をされた
国民年金委員に対しても、これはどれくらいの年数がかかるつもりで、どういう仕事を与えてどういう活用をするつもりか、それを
一つ伺っておきたいのであります。