○辻原分科員 ちょっと私の
質問とずれている点がありますが、私のお伺いしたのは、
雇用というものは、これは
経済と密接な関連を持っているということは申すまでもないことです。従って長期的な
経済の見通しに立った
雇用政策でなければ、本質的な
雇用政策を進めておるということにはならぬ、そういう
意味で、今年度立てられたものは、長期計画の見通しの上に立つ一環のものかどうかという点をお伺いしたのです。それは、今のお話でも、それから今日までの
予算委員会等での質疑の過程で
政府から承わったところによると、やはり長期計画全体は、六、七月ごろの新しく策定するものによらなければ、どうも見通しがはっきりしないというような形のものらしいように承わっておる。従ってこれは端的に申して、年度限りの、率直に申せば、これは、当該年度の、場当りの
一つの
政策にすぎない、こう申していいと思うのです。また私は、それは悪口を言うのではありません。実際この
雇用の内容を探ってみると、確かにそういう感じが深いのです。たとえば
雇用が伸びたというが、その伸び方の質的な内容を見ると、たとえばあなたの言われている八十九万という数字がほんとうに安定した形の
雇用であるかどうか。実際は統計を調べてみるとすぐわかると思うのですが、必ずしもそうじゃない。全体の傾向から言うと、いわゆる一時的なそういう
雇用の伸び方が内容に相当ある。またあなたは今三十三年、三十四年も大体同じような形で
経済のテンポが進んでいくであろうと言われておるけれども、しかし現実に
経済がそう楽観できない情勢だということも、今いろいろな要素が生まれてきております。早い話が貿易を見たって、大蔵大臣は一時的な入超等はそれは顧慮するに足らぬ、こう言っておるけれども、しかし実際は好景気に恵まれたといわれている今日までの段階、ここ一、二年来は、貿易は一応黒字を示した。ところが一月以来はすでに赤字に転化している。さらにアメリカ等の景気を見ても、すでにアメリカ内部で相当な警告が出ているように必ずしも楽観できない。こういうことを見通せば、そう景気が上昇していくような
考え方に立つことは、われわれはできないと思う。そういたしますと、
雇用というものもそういう見通しの上に立って、もう少し長期的な
考え方で作成しなければならぬ。とすれば、この当該年次だけ少し景気がよかったから、たとえば失対事業費を削ってよいのだという
考え方は、私は誤まりだと思う。そうじゃない、これは一時的に伸びている、しかし全体としてはまだまだ、これから
雇用が先行きどういうふうに悪くなるか。とすれば、できるだけ、それを大きくワクを広げておくということが
政策の基調にならなければならぬと私は思う。もちろん
雇用と失対事業というものは本質的に
意味が違うけれども、それは今やっている失対事業なら失対事業というもので全部プロパに確保されているならいざ知らず、それはある
部分だけしか満たされておらないのでありますから、そういう中にあって数を減らしていくというようなことは、これは正しい
労働政策のとるべき方法ではないと考えます。従って
労働大臣に次の長期計画等の策定に当っては十分この点を再考してもらわなければならぬと思います。
次にお尋ねいたしたいのは、昨今
労働大臣も、
生産性の
向上という問題に対して非常に強く強調されて、何か異常なまでに、ちょっと観点が違った押し方をされているように思う。というのは、本
会議の席上においてもあなたは、ともかく今たとえば総評あたりが
生産性の
向上に対して反対していることは、これはけしからぬ、こういうものの言い方をされている。言葉それ自体をとらまえて表面のあれを見れば、
保守党であるあなたがそういうふうにおっしゃられるのも、これは一理届としてわからぬこともないのでありますけれども、しかし一体現実に行われている
生産性の
向上というものがどういう観点から取り上げられているかということをしさいに検討してみたならば、先刻小川さんも言われたようにもう少し所管の大臣としては考えるべき点があるのじゃないか。先ほど
勝間田さんの
質問に対して、あなたは
労働行政というものは
労使協調の姿で押し進めるべきだと答えられている。そう言われている限りにおいては、私は
生産性の
向上というようなものも、そう言われているあなたとしてはもう少し違った観点において、行政の中で考えられていく点がなければならぬと思う。現実に昨今の各
企業体における投資活動あるいは利潤の蓄積というものは、
賃金の上昇に比較いたしますと莫大なものであります。もちろん全部が全部というわけではありませんけれども、いわゆるブームに乗った
産業と称される鉄鋼部門あるいは重電機部門、造船部門、船舶部門、輸送関係等々とあげていって、
日本を動かしている大
企業体の
資本蓄積は異常に伸びてきている。そういう中にあってこの
生産性
向上は、
資本家側の考えは依然として低
賃金、いわゆる近代化、オートメーション化あるいは
企業の再編成ということである。こういうことから現実にそこに現われてくるものは、首切りあるいは
賃金の釘づけ、ないしは上昇率の漸減であります。そうした
生産性
向上には
労働者はついていけないということなんです。
労働者はその
実態を知っている。利潤が増大し
企業が
発展するという過程において、当然
労働者もそれに比例して
生活が確保されていってこそ、あなたの言う
労使協調の姿なんです。ところが現実はそうじゃない。ギャップはますます大きくなる。景気が上昇し
企業が拡大すればするほど、その格差というものが大きくなるという問題があるところに、この
生産性
向上を
労働者が釈然として受け入れなし原因があることを真剣にお考えなさっておられますかどうか。この点についてもう少し明快な御答弁を願っておかないと、世人に非常な誤解を与えると思うのです。