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1957-02-13 第26回国会 衆議院 予算委員会第二分科会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年二月十三日(水曜日)    午前十時十九分開議  出席分科員    主査 坂田 道太君       小川 半次君    川崎 秀二君       周東 英雄君    橋本 龍伍君       野田 卯一君    山崎  巖君       井堀 繁雄君    勝間田清一君       辻原 弘市君  出席国務大臣         労 働 大 臣 松浦周太郎君  出席政府委員         総理府事務官         (大臣官房公務        員制度調査室長) 大山  正君         労働政務次官  伊能 芳雄君         労働事務官         (大臣官房会計         課長)     松永 正男君         労働事務官         (労政局長)  中西  實君         労働事務官        (労働基準局長) 百田 正弘君         労働事務官        (婦人少年局長) 谷野 せつ君         労働事務官        (職業安定局長) 江下  孝君  分科員外出席者         大蔵事務官         (主計官)   小熊 高次君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十二年度一般会計予算労働省所管  昭和三十二年度特別会計予算労働省所管     —————————————
  2. 坂田道太

    坂田主査 これより予算委員会第二分科会を開会いたします。  本日は昭和三十二年度一般会計予算並びに昭和三十二年度特別会計予算中、労働省所管について審査をいたします。まず提案の説明を求めます。労働大臣松浦周太郎君。
  3. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 今回提案せられました昭和三十二年度一般会計及び特別会計予算中、労働省所管分につきましてその概要の説明をいたします。  まず第一に、一般会計におきましては、歳入において総額四億五百二十三万円でありまして、前年度の四億一千七百六万三千円に比較いたしますと、一千百八十三万三千円の減少となっておるのであります。この歳入のおもなるものは、国家公務員等退職手当暫定措置法に基き、退職した政府職員日本国有鉄道日本電信電話公社及び日本専売公社等職員に対し、失業中の退職手当を支給するために必要な財源を、特別会計等から一般会計へ繰り入れまたは納付するための負担金であります。  一方、歳出におきましては、総額三百三十五億四千九百三十一万三千円でありまして、前年度の三百三十八億五千九百八十七万一千円に比較いたしますと、三億一千五十五万八千円の減少となっております。  なお、このほか、建設省所管官庁営繕費に六千三百六十六万七千円を、労働省関係分として計上いたしておるのであります。  次に、この歳出の内容について概略の御説明を申し上げたいと存じます。  その一は、失業対策に必要な経費であります。最近における経済の好況を反映して、雇用失業情勢は漸次好転しておりますが、わが国雇用構造特異性から、なお多数の不完全就業者が存在し、加うるに年々約百万人に及ぶ新規労働力人口増加石炭鉱業合理化及び駐留軍国連軍引き揚げに伴う関係労務者解雇等によりまして、雇用問題は依然として楽観を許さない実情にありますので、この際完全雇用の達成を目標とし、総合的雇用政策確立を期する方針のもとに、内閣に雇用審議会を設置いたしまして、基本的な諸問題について調査審議を行うことといたし、また当面の失業者吸収につきましては、公共事業財政投融資事業の拡大と相まって、失業対策事業につきましても一そうの充実をはかることとし、事業効果向上と、日雇い労働者生活の安定に重点を置き、事業費単価の引き上げ、事業種目の改善、地方公共団体財政負担軽減等措置を講ずるのほか、日雇失業保険給付金額につきましても、実情に即してこれを引き上げる等、失業対策整備充実を期することといたし、これに必要な経費として失業対策事業費補助百五十二億六千三百万円、特別失業対策事業費補助三十五億円、失業保険費負担金八十一億九千九百万円、政府職員等失業者退職手当四億三千万円、合計二百七十三億九千二百万円を計上いたしております。  その二は、労使関係安定促進に必要な経費であります。労使相互信頼納得による円滑なる労使関係確立経済発展の基盤であることにかんがみまして、多数の納得協力が得られる労働政策を樹立推進するため、さきに設置いたしました、労働問題懇談会の一そう円滑なる運営をはかるとともに、常時的確に労働運動の動向を把握して労使関係健全化促進し、また中小企業における労働関係特殊性にかんがみ、両当事者に対する指導を積極的に行なってその合理化を進め、さらに労働教育を刷新強化して、民主的労働組合発展を啓蒙するのほか、労働組合福祉活動促進労働金庫の適正なる運営等施策を講ずることとし、これに必要な経費として、八千三百二十一万八千円を計上し、また労使関係合理化、かつ、円滑なる調整をはかるため、中央労働委員会並びに公共企業体等労働委員会に必要な経費として、一億二千五百二十万五千円を計上いたしております。  その三は、労働保護行政に必要な経費であります。労働者保護福祉を積極的に推進し、労働生産性向上を期するため、労働基準行政を刷新整備することとし、特に中小企業に対する労働基準法運用に当りましては、単なる取り締り摘発主義に堕することなく、実情に即した指導監督を行い、労働者保護の本旨を達成するとともに、最低賃金問題については、輸出産業等中心として、産業別地域別業者間の自主的協定を勧奨するのほか、技能者共同養成施設に対する助成、けい肺及び外傷性せき髄障害に関する特別保護法の円滑なる運用、及び労働衛生研究所整備充実等労働保護行政に要する経費として十五億七千八百七万円を計上いたしております。  その四は、婦人及び年少労働者保護に必要な経費であります。戦後における未亡人福祉問題は、重要課題として関心の深いところでありますが、とりわけ一家の支柱となって働く未亡人等就業は多難をきわめている実情にありますので、婦人職業対策をより一そう推進することとし、内職職業補導所家事サービス職業補導所充実をはかるとともに、働く年少者を健全に育成し、労働力質的向上をはかるため、これが保護福祉対策促進することとし、とりあえず中小企業に働く年少労働者福祉施設として労働青少年ホームを新設するのほか、婦人労働者保護福祉増進一般婦人社会的地位生活向上及び売春問題対策等に関する施策を講ずることとし、これに必要な経費として、九千八百二十二万円を計上いたしております。  その五は、雇用対策に必要な経費であります。現下の雇用情勢にかんがみまして、就職の促進をより一そう強力に実施する必要がありますので、公共職業安定所職業あっせん機能を強化して、これが効率的運営を期するとともに、産業界の要求する技能労働力の円滑なる需給調整をはかるため、職業補導事業充実整備を行うこととするのほか、身体障害者雇用促進港湾労働者雇用安定対策雇用移民促進等に関する施策を講ずることとし、これに必要な経費として、三十六億三千六百九十七万円を計上いたしております。  その六は、労働統計調査に必要な経費であります。労働関係における賃銀給与問題の重要性にかんがみ、毎月勤労統計調査整備拡充し、中小規模事業所を含め賃銀、雇用その他労働条件実態を正確に把握して、給与施策合理的推進を期するとともに、前年度に引き続き職種別等賃金実態調査労働生産性統計調査及びその他労働事情に関する統計調査を実施して、労働行政施策基礎資料とするとともに、労使その他関係方面に提供し、紛争議合理的解決生産増強等に寄与することとし、これに必要な経費として二億一千六百四十三万九千円を計上いたしております。  その七は、国際協力に必要な経費であります。国際労働憲章に規定されている義務を履行し、積極的にこれに協力するために必要な分担金及びILO関係の諸会議への出席旅費等経費並びにわが国労働事情に関し、海外広報活動を実施するための経費として七千二百八十四万九千円を計上いたしております。  その八は、その他一般行政に必要な経費であります。大臣官房等における行政事務費として三億四千六百三十四万二千円を計上いたしておるのでございます。  第二に、労働者災害補償保険特別会計につきまして申し上げます。この会計歳入歳出はいづれも二百六十二億五千八百六十九万九千円でありまして、前年度の二百五十三億五千九百四十二万九千円に比較いたしますと、八億九千九百二十七万円の増加となっております。  歳入のおもなるものは、保険料収入の二百三十六億三千百七十二万九千円と、支払備金受け入れの十四億六千四百十万七千円であります。また歳出のおもなるものは、労働者災害補償保険給付費の百九十三億一千六百八十万六千円でありますが、このほか、労働者業務災害被災者に対する療養給付適正充実をはかるため、前年度に引き続き労災病院整備拡充を行うこととし十二億二千百十六万三千円を、またけい肺及び外傷性せき髄障害に関する特別保護法に基き、けい肺患者及び外傷性脊髄障害患者に対する療養休業等給付けい肺健康診断の実施並びに配置転換労働者のための就労施設を設置する等のため、二億八千六百五十二万四千円を計上いたしております。  第三に、失業保険特別会計につきまして申し上げます。この会計歳入歳出はいづれも三百九十六億百十九万七千円でありまして、前年度の三百五十二億九千五百六十三万二千円に比較いたしますと、四十三億五百五十六万五千円の増加となっております。  歳入のおもなるものは、保険料収入の二百七十七億六千二百万円と、一般会計より受け入れの八十一億九千九百万円であります。また歳出のおもなるものは、失業保険給付費の二百三十九億九千七百万円でありますが、このほか本会計積立金より生ずる利子収入のおおむね二分の一を充当することにより、労働者福祉増進をはかるため、総合職業補導施設簡易宿泊施設及び総合福利施設等保険施設を拡充整備することとし、これに必要な経費として九億七千万円を計上いたしておるのでございます。  以上昭和三十二年度の労働省所管一般会計及び特別会計予算につきまして、概略説明申し上げたのでありますが、何とぞ本予算案の成立につきましては、格段のお力添えをお願い申し上げる次第であります。
  4. 坂田道太

    坂田主査 これより質疑に入ります。順次これを許します。勝間田清一君。
  5. 勝間田清一

    勝間田分科員 二、三の点について労働大臣にお尋ね申したいと思うのであります。  まずお尋ねをしたい点は、やはり労働大臣労働政策に対する心がまえの問題であります。従来私ども保守党労働政策を見ておりますと、どうしても印象として、労働者保護をやっていこう、あるいは生活を積極的に改善していこうという印象に薄かった。早く言えば、労働者生活権なりあるいは基本的な人権なりというものを、抑圧する労働大臣のように実は見受けられたのであります。たとえて申しますると、スト規制法などの問題が出たときに、むしろそういう問題があたかも労働政策であるかのごとくに扱われて、本来の労働者のための政治というものが非常におろそかにされておったように私は思う。ここでせっかく新たな松浦労働大臣が出られたのでありまするから、私は労働政策に対するあなたの心がまえをここで特にお聞かせを願いたい、こう思うのであります。
  6. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 大へん重要な御質問でございますが、私は労働省としてまた労働大臣といたしましてなすべき道は、労使の間に立って公平に事を処理していく役目であると思っております。就任いたしますときに記者の質問に答えましたのは、たびたび新聞にも出ておりましたが、私はやはり資本経営労働者三位一体協力でなければ、日本産業経済日本国家の再建はできないと信じております。それにはやはり相互信頼でなければならないと思います。そういう境地に持っていくためのアンパイアのような務めをしなければならないのではないか、それが私の務めだろう、こう思っておりまして、やはり協同友愛であり、相互信頼である。そこでこの三位一体境地まで持っていきたいというのが私の考え方でございます。
  7. 勝間田清一

    勝間田分科員 労使一体の、しかも公平な審判者であろうという御見解、非常にけっこうであると私は思うのであります。それについて私はいつも思うのでありますが、たとえて申しますと、この前のスト規制の場合に、一面において労働者ストのいろいろの規制を、公益事業という名前で制限を課している。ところが逆に資本家の方からいたしますならば、たとえば中小炭鉱にしばしば見られるように、また大炭鉱によく見られるように、ロックアウト政策もある。従ってスト規制が行われるならば、当然ロックアウトに対する制限が行われなければ、公益事業というもの、石炭山に課したり、電気山に課したりすることは、私は実は不合理だと思う。もしあの際に、労使の間の話し合いをつけて、労働者もこういう自重をする、そのかわり資本家の方もロックアウトに対する自重をするということが公平に審判されておったならば、私はあの法律の必要はなかったと思う。また円満に解決がついたと思う。この点をしばしば当時国会の対策を通じて申し入れたのでありますけれども、そういう公平な第三者の考え方というものがなくて、結局労働紛争というものが非常に拡大していくという傾向をとっておった。私はその意味で今後の処置をとる場合に、どうか一つ公平な立場ということを貫いてもらいたい。そして、ある場合においては、話し合いによって解決をつけるという慣行を作ってもらいたい。労働法律が先だという考え方をやめていただきたいと私は思う。従って当然今後労働立法に対するあなたの心がまえも違ってくると私は思うのでありますが、しばしば伝えられておったスト規制が通れば、やがて私鉄やあるいはガス事業などにもこれを及ぼすのではないかという危惧もあった。松浦さんはそういう考え方でいるならば、こういう法律労働省としては考えていないということを、当然はっきりここでお答えができるのではないかと思う。まずそれに対するあなたのお心がまえ一つ聞かしていただきたい。
  8. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 御説全くごもっともであります。全く同感です。そこで企業公共性公用性というものから考えまして、経営者勤労者もやはり企業公用性というところに重点を置き、中心を置いてお互いに考え合うならば、私は今お話のような、ほんとうに話し合いで物事が進んで、平和のうちに解決ができると信じますので、そういうような方向に努めて努力いたしたいと思っております。
  9. 勝間田清一

    勝間田分科員 スト規制法の今後の拡張の意思はないということは……。
  10. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 そういうことは考えておりません。
  11. 勝間田清一

    勝間田分科員 それからやはり今後の労働行政で一番大切な点は、約束した法律は忠実に守るということが必要だと思う。調停がなされ、仲裁がなされる、その結果を完全に履行するということが、私はあらゆる積み重ねたものを合理的に運営していく基礎だと思う。ところが、よく公共企業体についても、また官公吏についてもそうでありますけれども、調停案勧告案というものが実施されないのです。そうしますと、結局どこで話をつけるかという結論がつかないということになる。私は意見が対立するときもあると思う。しかし最後にはどこで話をきめるのだ、きめた結果においては、どう約束を守るのだということが実行されていないと、これまた無用な紛争を起すことになると思う。でありますから、今後調停案なり勧告案に対しては、やはり労働大臣としては忠実に守ってもらいたい。これが保守党から見ても、一つ合理的な最後解決点ではないだろうかと思う。今日までの労働紛争の大部分というものは、やはり政府が約束したことを実行しなかったところに私は原因があると思う。これはたとえて申しますれば、公共企業体についてもいえるでしょう。また人事院勧告案等についてもいえることだと私は思う。私はその意味であなたの決意を聞かしていただきたいと思う。
  12. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 ただいまの御説ごもっともでありまして、話し合いでいくという前提の上に立っておる以上、勧告仲裁その他人事院等勧告に対しましては、これは尊重していかなければ、話し合い基礎がなくなってしまいますから、私はあくまで尊重していくということをお答えいたしたいと思います。
  13. 勝間田清一

    勝間田分科員 尊重ということが、しばしば財政的理由に籍口いたしまして、なかなか実行できない場合が多いのでありますが、こういうものは苦しくても実行するという態度でなければならぬと私は思う。この点は労働行政の建前としては当然貫いていかなければ、合理的な労働行政というものはできないと思うのでありまして、私はその点は特に希望を申し上げておきたいと思うのであります。  それから何といっても、これからの労働政策の一番の中心雇用にあると私は思う。昨日、厚生省関係予算を勉強さしていただいて、実はつくづく感じた点でありますが、生活保護を受けておる諸君の大部分というものは、労働力を持っておる諸君であります。計算をいたしてみますと、大体五一・四%くらいがこの生活保護を受けておる諸君であるという実態であります。それが労働力を持っておる諸君であります。すなわち日雇いをするとか、自営をやっていくとか、あるいは内職をやるとか、力を持っておる人たちである。そういう諸君が、生活保護を受けなければならぬということは、雇用が安定していないことと、何といっても賃金が低いということだと私は思う。従って厚生運動だけでこれをかぶっていくのは、早生省としては無理だろうと私は思う。労働行政に積極的なものがあって、賃金政策というものがしっかりしておれば、おそらく厚生省費用というものは大部分が必要のない費用になると私は思っておる。その本末の点がどうも矛盾しておるから、厚生省仕事もなまはんかになり、労働行政もなまはんかになる。結果からいけば、国民は混乱に泣いておるというのが実情だと私は思う。そこで、そのなまはんかな状態に対して、やはり生きた労働行政というものをやっていくことになっていくと、積極的な労働省政策が先に出てしかるべきではないだろうか、厚生省仕事というものは、あくまであとから出ていってしかるべき仕事ではないだろうか、私は実はさように考えるのであります。  そこで五一・四%というものが、とにかく生活保護を受けなければならぬ者の率だとするならば、勢い最低賃金というものがここで確立をしていかなければ、そういう生活保護というものは永久に絶えないということになるわけであります。従って私はここで最低賃金制という問題を社会党が取り上げ、また保守党もこれを取り上げようといたしておることについては、非常にけっこうなことだと思っておる。非常な積極的な意味を持っておると私は思う。そこで今いろいろなことの御説明が簡単にございましたけれども、労働大臣は、最低賃金法制定の問題について、一体今後どういうプロセスをとって進んでいかれようとするのか、この点を一つはっきりさしていただきたい。
  14. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 雇用問題につきまして、また賃金問題につきまして、社会保障との関連性がどうしてもなければならないという問題に対しましては同感であります。今後の雇用問題を完全雇用に導いて参りますためには、老人及び年少者労働市場に相当進出してきて、その人たちのために完全雇用ができないということになることが予想されますので、やはり養老年金であるとか年少者保護であるとかいうようなものが社会保障的に反面に行われて、そこに働き盛りの人が働けるような道を作るということも一つの方法であると思うのです。そういう社会保障の面も兼ね備えなければ完全雇用にはいかないと私は思います。  もう一つの点の最低賃金の問題でありますが、御説ごもっともでありまして、最低保障を憲法でしております以上、最低賃金を考えなければならぬのであります。ところが反面日本産業全体を考えますときに、大産業基幹産業であるとか、十大産業であるとかいうような大企業は、もう最低賃金という問題は、かりにありましても、それからはずれる部分はごくわずかなものであると思います。もうほとんど今世上うたわれておる以上の賃金であると思いますが、問題になるのは中小企業のうちの特に小企業等がこの問題に非常に関連すると思うのです。家内工業と申しますか、内職をやっておる人たち、この人たちの数も相当の人数になりますが月千円からよくいって二千五百円ぐらいしかとれない。それ以上の賃金を払うならば、その内職生産されるところのものがコストが高くなって市場に販売できなくなる、そうするとその賃金を上げることによってその仕事ができなくなってしまうというような面が日本輸出貿易の面にも、それは内職でありませんけれども、相当あります。そこで最低賃金も必要ではあるが、今世上でいわれておるような八千円であるとか六千円であるとかいうものを一律に法律できめるという場合に起ってくる問題は、日本失業が今日よりも一そう激化する結論になるということを私はおそれております。ちょうど勝間田さんの御郷里である清水港を中心にいたしまして、マグロのカン詰業者が二十数社集まりまして最低賃金制を決定いたしております。ああいうふうに、立地条件がありますから、やはり地域別業種別に自主的に賃金協定いたしまして、そこでその最低賃金をおきめになっていかれるというようなコースが、この際とるべき道ではなかろうか。日本産業経済がどんどん進歩いたしまして、設備近代設備になって世界市場にどんどんと進出することができて、日本経済がよくなるならば、そのときになって今のような八千円とか六千円というようなものを一律にやることができるでありましょうが、現在の段階ではやはり地域別業種別に自主的にきめてもらうことがいいのではないかというふうに考えております。そこでこの問題は労働問題懇談会に諮りまして、いろいろ御審議を願っております。近いうちにその答申が参りますから、参りましたならば、これは法律できめるものではありませんから、出先の基準局その他を動員いたしまして、できるだけそういう方向に勧奨していきたい、かように思っておるのが現在の考え方でございます。
  15. 勝間田清一

    勝間田分科員 大体の構想がわかったのですけれども、一産業中心という考え方一つ考え方に違いないのです。ただやはりあなたの論理の中から当然出てくるのは、業種間で自主的に話をきめていくということがあなたの一番心配しておる中小企業の場合に一体できるかどうかということであります。またきめられた場合の最低賃金というものは非常に低いのではないかと私は思う。というのは、現在もやはり中小企業に対する育成の政策というものが一面にあって支払い能力を漸次増大さしていくという政策最低賃金確立していくという政策とが一緒になっていかなければ、これはとうてい最低賃金というものは生まれないと私は思う。だから中小企業がたとえば五年なら五年後において最低賃金が支払える形態のところまで進んでいけるという、そういう中小企業立法が一面にできて、他面において最低賃金が不満足なものから完全なものに発展していくということにならなければならぬと私は思う。そういう意味では、業者間の自主的な協定ではなくて、業者そのもの発展最低賃金確立とをつけた政府合理的施策というものが、立法上なされていかなければならぬと私は思う。その意味においてただ自然にまかしておく、それを勧奨していくという政策では不十分だと私は思う、今お聞きするところによると、労働懇談会の方で成案を得られるそうだけれども、その成案は一体いつごろまでに得られるのか、私はもう一つあなたの真剣な答弁を聞かしてもらいたい。
  16. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 今月中にまとまりまして来月早々ぐらいにはまとまるつもりであります。そのように進行しておるようでございます。この間も出席いたしましていろいろお願いいたしました。
  17. 勝間田清一

    勝間田分科員 これはまた出て参ったときにあなたにお尋ねをしたいと思っております。最低賃金の場合やはり生活ということが中心にならなければならぬのですけれども、これは私日雇い労務者の場合によく思うのでございまして、昨年あなたの前任者の労働大臣に対して、年度末の手当をもう少し出さぬかというので実はお願いしたところが、六日分しか出なかった、しかし基準を見るとニコヨンが漸次よくなったものの、二百八十二円になって、最近は三百二円を計画されておるということを私は聞いておる、わずか二十円は上ったわけです。この二十円上ったということをいろいろと減税という問題と引き比べてみて、減税された人は五十万円以上、三十万円以上となかなかたくさんの、ある意味では恩典に浴するのだけれども、日雇い労務者はわずか二十円だ、私はこの二十円の労務者になったことを考えて、私がバスに乗り電車に乗って出かけていくとする、今度おそらく国鉄が一割何分上り、またガソリンが上るでしょう、二つ乗りかえたら何といったって十円以上は必ず上る、今十五円のバスが二十円になる、そこでもう五円は上る、電車の方は五円は必ず上るだろう、往復行ってくれば二十円は足代だけで吹っ飛んでしまう、必らずそうなる、そうすると日雇い労務者で出かけていったとき、一体石橋内閣は神武以来の景気だ、こう言うけれども、なかなかおれたちにはそういうものはちっとも響かぬ、むしろ困るのだということが身に感ずるだろうと思う。けさ私は六時に静岡の駅を出て飛んできましたが、静岡駅に、私が見ましたところおよそ三、四十人の人が、この寒さに身体をまるめてベンチの上で寝ておる、こういう人たちはうちでは寝られない諸君で、決して旅行者じゃない、これはいろいろな原因があるだろうと私は思うけれども、そういう点を考えてみると、三百二円に日雇い労務者の賃金が上ったということで、労働省最低賃金というような考え方は、労働省自体が一つ非常に大きな間違いをしているのじゃないかと私は思う。そういうことがあるために、日本労働賃金水準というものは非常に下げられていくわけです。私はそういう意味で、もう予算がこうだということになるからなのかもしれませんけれども、私はこういうものは上げるべきだと思う。わずか二十円の値上げをした、それでいいのだというものでは私は絶対ないと思う。その意味では、何か恩恵でものをやるという考え方ではなくて、やはり労働を尊重した労働政策でないと、私は筋が通らぬのじゃないかと思います。一つ労働大臣のここらあたりの見解を申し述べていただきたいと思う。いつまでも神武以来の景気なんということは言っていられないと思う。
  18. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 大へん痛いところでありまして、努力したのですけれども、二十円以上上げることはできなかったのです。神武以来の景気ということがしきりに新聞その他に現われておりますが、私自身もそう思うのです。これは景気が偏在しているのではないか、まあ重工業及び貿易その他の関係においては、神武以来の景気かもしれませんが、国全体から見れば、特に中小企業の不渡手形の多いというような点を見ましても、これは全く偏在しておると思う。従って石橋内閣のやるべき道は、やはり引きならしをしなければいけないのじゃないか、そういうような点に重点を置いていかなければならぬと思っておるのでありますが、そういう意味で、投融資なんかも去年よりもだいぶ多くいたしまして、約六百七十億ばかり多くしたので、ありますが、やはり偏在しているものを引きならしして、中小企業その他の恩恵がいけば、自然に全体に回るようになるであろう、かように思っております。そういう意味において、二十円ではもちろん足りなかったのですが、さらに今後も努力いたしたいと思いますけれども、今のところ二十円以上は、財政経済の関係上、どうしてもできなかったのでありまして、心持はもっと多くしたいと思っておりますが、現状以上にいかなかったことをここに告白いたします。
  19. 勝間田清一

    勝間田分科員 それから、やはり雇用の問題で重要視して考えていかなければならぬのは、特需産業労働者諸君だと思う。駐留軍に働く諸君も同様であります。今一番生活の不安定な諸君はこの層だと私は思っております。それでもう少し労働省というものは、特需産業の転換という問題を、通産省あたりと密接な連携をとって、計画的に進められたら私はどうかと思う。この前中国に行ってみて一つ気がついたことは、小松製作所の農機具が相当たくさん入ってきております。これは言うまでもなく、かつて小松製作所は非常な特需産業として栄えたこともあれば、同時に非常な苦労をなめた産業です。これが農機具や土木機具の工場として出ておられたのを見て、私は一つの転換の道というものがあると思うのです。そういう問題は、私は中国ともよく話をいたして参ったのだけれども、日本の方で何かこの特需産業というものを指導、育成、転換、特に転換させていくという道が少いように思う。だから、労働政策の面から見て、特需産業を平和輸出産業に切りかえていけるような、計画的な措置というものがなければ私はだめだと思う。この前、何という名前の工場でしたか、昭和飛行機と申しましたか、これらの労働組合諸君が、真剣に私のところへ来られた。私はそういう面の配慮が足らぬと思う。でありますから、この面についての、特需産業生活不安定の労働者諸君を今後どうしていこうか、特にそのための産業転換というものを政府はどう考えているか、労働省の面から私はその点を考えてもらいたいと思う。一つ労働大臣の所見を聞かしていただきたいと思います。
  20. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 今の問題は、経済閣僚懇談会の中にわれわれも入りまして、特需産業の輸出転換の問題と、東南アジアに対する商権拡大の問題等、いろいろ審議いたしております。お説のことが最も重大でありますから、私からもそのことは強く要望いたしております。私自身も特需関係の仕事をいたしておりますので、これが漸次減って参ったものでありますから、その減った部分の能力をアメリカに輸出することにいたしましてそれを続けております。私は合板の事業をやっておりますが、駐留軍日本占領建設の仕事が終るに従いまして、アメリカの方に輸出することが漸次ふえまして、今は特需がなくなりましたけれども、国全体の合板事業が非常に盛んになってきたのでありますが、そういうふうに転換していかなければならないということで、この間もいろいろ閣僚懇談会の席上で申し上げて、通産大臣はその方に重点を置いてこれからやっていくと言っておりますから、お説私は全く同感であります。同時に、今お問いの中にありましたような、駐留軍が直接に使っている労務者の解雇の問題でありますが、この問題に対しましても、呉なんかで去年、おととしから大へんな問題が起っておりますし、これはやはり配置転換を知事や市長や、われわれの出先のものが真剣になって考えてやらなければならない。けれども、今のような状況ではなかなか吸収ができませんが、やはり特需産業をやっているような工場は、日本の他の工場に比べまして優秀な工場でありますから、お説のように輸出転換することが最も必要なことだと私は思います。その販路については、アメリカに行くようなものは少いと思うのです。やはり東南アジアとか、お説のように、中国の方に行くものの工場の方が多いと思います。というのは、優秀な製品でなければアメリカは買いませんしそれほど優秀な製品のできる工場でないものですから、やはり中国であるとか、東南アジア方面の販路開拓が一番大事じゃないか、これについては中共貿易の問題が一番重要な点になってくると思いますから、外務大臣ともその問題についてはココムの緩和についていろいろと相談いたしておりますが、お説の点については今後十分努力いたしたいと考えます。
  21. 勝間田清一

    勝間田分科員 私は数年前から考えて、しかも遅々として少しも進まない問題に、海外に対する技術移民の問題があるのです。東南アジアの地域に何回も行ってみて一番要求している点は、技術を要求している。特に中小企業の直接これらの地域に出て来てくれることを非常に希望している。こういうコッティジ・インダストリーというものに対する日本協力というものは、双方とも議論が済んでいる問題だと私は思う。そのコッティジ・インダストリーに対する日本協力というものが実現していない。私は一労働大臣の責任とは思っていませんけれども、今労働省雇用移民というような形でときどき外国からの注文に募集で応じさせているようでありますが、私はああいう形ではいかぬと思う。部分的にはいいでしょう。やはり中小企業そのものが出かけていくとか、あるいは技術者が出かけていくとかいうような、そういう面での進出がこの際なされなければ、せっかく東南アジアの要望も実現できないのです。日本の現在の経済事情から見て、また労働人口その他から見て絶好の目標でなければならぬと私は思うのだが、これがなぜ一体進捗していかないのか、また労働省は依然として雇用移民というような形で停滞しておるのか、私はそこを疑問に思う。労働大臣から当然これを経済閣僚懇談会にも出して、実現するだけの抱負があってしかるべきだったと私は思うのだが、どうも突っかけもちになってできない。私はこの政策について一つ労働大臣の決意を聞いておきたいと思う。そしてあなたは実際にやっていただきたいと思う。
  22. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 ドイツの炭坑の方に五百人ばかり約束ができまして、過日六十人ばかり第一回の人たちが立ったのでありますが、ドイツの方は、日本勤労者が参りまして向うのことを学ぶことの方がかえって多いと思います。今の東南アジアの開発のために日本の熟練勤労者と申しますか、熟練技術者が行って開拓者となって、向うの国の政策を推進していくということに対しましては私は同感です。それでお説のように、私ほんとうにやりたいと思います。このためには今御報告申し上げましたように、多少旅費も組んでありますから、その方にも人を派遣したり、いろいろ関係者を向うから呼んだりして、ほんとうにやりたいと思っております。そうすることが日本の東南アジア諸地域における経済的な結びつきをする糸ともなると私は思いますから、日本の加工貿易を盛んにする原料地としての開拓は、ぜひ日本人の手によって、向うに好感を持たれつつやるのでなければなりませんから、このことは大へんむずかしいことであると思うのですけれども、ぜひやってみたいと思っております。
  23. 勝間田清一

    勝間田分科員 労働大臣の非常に積極的な意図を歓迎いたします。どうか一つやっていただきたいと思います。  最後に、雇用審議会は一体今後どう運営していくのか、仕事は何をやるのか、この点が一点、それからもう一つ労働基準法に対するいろいろの非難が常にあったが、私は労働基準法というものはやはり現状を守り、さらに発展をさせていくべきものであって、後退させるべきものではないと思う、労働基準法に対するあなたの考え方、これを最後にお尋ねをして私の質問を終りたいと思います。
  24. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 雇用審議会の問題については、これは完全雇用をやるという石橋内閣のふれ込みで、ただ単に経済を拡大するならば自然に雇用が増大するからそれでもう黙っておっても完全雇用になるというべきものでないと思うのです。やはり雇用審議会を作りまして、各層の知識を集めて、さっき申しましたような老齢者が労働市場を圧しておるというようなことについても、老齢者の行くべき社会保障の道を講ずるなり、その他各般の考え方がやはりあると思うのです。それと経済発展とが相連って初めて完全雇用にいけると思います。完全雇用を石橋内閣が唱えるから、石橋内閣が一、二年やっているうちに完全雇用を必ず達成するかといえば、私はそんな簡単にできないと思うのです。労働大臣としてそういうことを申し上げることはどうかと思いますけれども、ほんとうに考えるならば、七%ずつ伸びて参りましてもやはり、七、八年はかかると思うのです。これが十年を一期として考える場合に、七%伸びることもあるだろうし、あるいは現状のままでいく年もあるのだろうし、なかなかそう簡単にはいかないと思いますが、完全雇用にいく道を一歩々々やはり積み上げていくということが必要でありますから、その面に対して雇用審議会を十分活用いたしたい、かように考えております。  労働基準法の改正あるいは改悪に対しましては、私はそう考えておりません。むしろ今労働基準法によって一番困っているのは中小企業だと思うのです。中小企業にそのまま大企業で行われているようなことをやったら、もう日本中小企業はみなつぶれちゃうのです。そこで摘発主義をとらぬで、やはり勤労者も擁護し、経営者も立つようなふうに愛して連れていくという考え方に持っていきたいと思うのです。中小企業の方から基準法を直してくれという要求は非常に強いものがありますけれども、これを私は直すというよりも、拡大解釈によって摘発主義をとらぬで、だんだんと生産を上げさせるようにして、その企業が引き合うならば時間もだんだんと縮小させよう、こういうふうにやっていきたいというのが私どもの腹であります。でありますから今私は労働基準法を直そうということは考えておりません。
  25. 坂田道太

    坂田主査 小川半次君。
  26. 小川半次

    ○小川(半)分科員 今勝間田氏からの完全雇用の御意見が出ておりましたから大臣にお伺いするのですが、実は先般来の労働大臣完全雇用に対するいろいろな御意見を拝聴しておりますと、少し私たちの考えている完全雇用に対する意見と違うと思うのですがね。それは、あなたにはただ完全雇用というその文字にとらわれて、非常に神経質になっておるようです。世界の労働学者の定説である完全雇用というのは、必要労働者数に全員満たなければ——全員がその労働部門につかなければ完全雇用とはいえないという、そういう説と、もう一つは、要するに必要労働者数の二・五%、三%までの失業者があっても、それは完全雇用の部類に入るのだ、こういう説とあるのです。それで私たちは、必要労働者数の二%ないし二・五%の就労をしない人があっても、それはある意味においてそういうことが必要であるという意見を持っておる。なぜかというと、全部の労働者がそれぞれの職場についてしまいますと、ここに新規事業ができて、そこに大量の労働者が要るという場合、どこから労働者を持ってくるのですか。全部の労働者がみな就労している、そこへ新しい企業、新しい産業が生まれたときに、ここへいく労働者がいないならば——だから俗にいう労働予備人員というものがあることが、労働対策上これは完全なのです。そういう新説が今世界の労働専門家の中から生まれてきておる。かつてイギリスは完全雇用を事実実施しました。完全雇用を実施したがために、新しい産業が生まれたときに、この新しい産業の分野にいく労働者がいなかった。そこでイギリスは新しい産業を見つけたけれども、結局それが計画倒れになって、その新しい産業を今度はアメリカがとらえて、アメリカがその産業に着手して、アメリカで幸いなるかな労働予備人員があったがために、この分野へ労働者を回して、計画はイギリスがしたけれども、イギリスはそれを実現できずして、結局それを見習ったところのアメリカがそれに成功した。ですからやたらに完全雇用というその文字にとらわれて神経質になって、肝心なる労働対策を立てないということは——このことが肝心なのです。ですから、今日本は幸いに拡大生産を行なっていくときですから、さらに原子力の時代に入って新しい産業が生まれてくるわけです。ここへ労働者が必要になってくるのですから、その計画をある程度保っていかなければほんとうの意味労働対策が完成できないと思うのです。ですから社会党の諸君に突っつかれて神経質になって、やたらに七年間でなければ、八年もたたなければ完全雇用が達せられない——私は来年から私たちの考えておるところの二%くらいの失業者があっても常識上は完全雇用のうちに入るというこの説で労働計画を立てていただきたい。そうしたら神経質にならなくとも私はりっぱな労働行政が生まれると思うのです。ですからこの新しい私などの考えておるところの完全雇用説に対して労働大臣との意見が食い違っていたら、私の考え方が間違っておれば、私は改めなければならぬと思うのですが、一つこの点労働大臣の教えを請いたい、いかがですか。
  27. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 大へんお教えを願いましてありがとうございました。お話しのように労働人口四千二百万の二%くらいまでは、完全雇用の域に入ると思いますから、今の失業者の数が昨年は平均七十万でありましたが、今年は六十五万でありまして、約平均五万人減っておりますけれども、それは完全失業者でありますから、それは二%の範囲内のもの、それだけならば完全雇用に参りますけれども、不完全就業者と申しますか、潜在失業者というものが相当の数ありますから、それを完全就労させるためには七、八年かかると私は申し上げておるのでございます。それで現在経済企画庁とも相談しておりますが、八月ごろでないと第二期の計画ができませんけれども、大体腰だめで考えておりますと、年々ふえるくらいのもの、出産人口が多い年と少い年とありますから、年によって違いますけれども、今年あたり百三十万くらいふえる。それが労働関係に直接働けるものは六八%と見ると、やはり九十万くらいのものが新しく出てくる。九十万くらいのものをやはり吸収するのには、現在の日本企業が六%なり、七%伸びなければ使えないことになるのです。そうすると六%や七%伸びておったのでは、新しく労働人口にふえてくるものを吸収するだけであって、現在お話のような、どこにでも転用できる、転用を希望して待っておるという人口、これは見方によって、いろいろ違いますが、これは推算でありますけれども、二百二十万から三百万の範囲内にそういう人たちがある七%ずつ伸びるものは新しくふえる人口を吸収するのでパーパーなのです。それで二百二十万なり三百万というものをその上に吸収していくということになれば、相当の年限がかかるということを申し上げておるのでありまして、これは小川さんの非常なお説をお聞きしまして、私同感なんです。やはり全人口が就労するということはどこの国でもできますまい。やはり日本は今のところ四千二百万ないし四千二百五十万くらいで、大体七、八十万の失業者があってもそれは完全雇用と言えましょうが、潜在失業者というものが相当日本に現在あるものですから、また低賃金勤労者がもっと多いのです。そういうものにもよい生活をさせるということに政策をもっていくならば、そう短かい時間ではできないということを申し上げておるのであります。
  28. 小川半次

    ○小川(半)分科員 潜在失業者の数というものは、捕捉できるものじゃないのです。あなた方の労働省の統計でも一種の推測です。私はいろいろと調べましたが、やたらに違うところもある。ですから捕捉しがたいところに潜在失業者という名称をつけておるわけですから、やはり数字に現われたはっきりした失業者に対してプラス幾らとか、そういう数字から割っていかなければならぬと私は思う。そうして七%ずつ経済も上昇し、同時にそれに対して雇用も増大していく。一方においては老齢に達して労働部門から去っていく人もある。こうした統計をとっていきますと、あなたは七、八年も先でなければとおっしゃったけれども、向う三年間で日本経済が伸びていけば一応完全雇用の域に達するのです。ですからその三年先に日本完全雇用の時代に入るから、やはりそういう目標を立てて労働対策を立てなければならぬと思う。ただやたらにあせって、とにかく全部の労働を必要なところへ全部つけなければならぬということにのみあせると、先ほど私が申し上げたように、新規事業とかあるいは新しい産業が生れたときに非常に支障を来たすわけですから、そういう点等をもよく数の上に現わして、そうして労働行政を行なっていくことが最も必要じゃないかと思うのです。この問題については、また個人的にゆっくりお話しする機会もあると思うから一応打ち切ります。  もう一つ私が気にかかりますのは、生産向上運動でございますが、これは御承知のようにアメリカだってヨーロッパだって、どこの国も今あげて生産向上運動に重点を置いているわけです。特に西ドイツ初めヨーロッパ諸国の労働陣営は、何としてもやはり生産を高めなければならぬ。生産を高めて輸出をして、輸出の増大をはかって国力を充実させる、国力を充実さすことが自国の労働者生活を高めることである。このはっきりした理論に基いて生産向上運動に協力している。一体日本の総評などは生産向上運動に反対しておりますが、生産を高めることは資本家をもうけさすことだ、こういう幼稚な思想で生産向上運動に反対しているということは、これはナンセンスなんです。だからそういうことを、もっと親切に、情熱を持って労働省の人々は組合代表者とよく語り合わなければならぬ。今日まで労働大臣は就任日は浅いわけですが、労働組合代表と何回会われたか、そうしてこういう運動について協力を求められたか、そうしてもし代表者と御相談された事実があるなれば、代表たちはどういう回答を、また意見を持っておったか、この機会にお聞きしたいと思います。
  29. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 生産向上の問題はお説の通りでありまして、これなくては日本の再建はできないのでありまして、できるだけ努力をいたしたいと思います。  労働代表とは数回会いました。総評の方々ともお話しいたしました。いろいろお話ししますと、結局あなたのおっしゃるように、労働を過重にするんだ、それからもう一つは、利益はほとんど資本家がとってしまうんだ、こういうお話があります。そのほかにアメリカ経済と結びついて、つまりアメリカの従属経済のように日本がされてしまうからというようなこともあります。けれども私どもは、中小企業近代設備にいたしまして、生産向上を盛んにする場合、何もアメリカの金を持ってきてやるのではありませんから、財政投融資でやるのですから、そういうことはないというのでいろいろ話しておりますけれども、いろいろ御不安があるようです。しかし私は、これはやはり両方が熱情をたぎらせなければいかぬと思うのです。勤労者の面におきましても、労働は神聖であって、額に汗して働くことが国家民族を興すもとであるという考えに御出発になると同時に、経営者もまた企業公共性というものを考えまして、企業というものは自分のものではない、これは国家から預かったものであるという考えに出発して、利益の配分に対しましても、労使だけが利益を収奪するのではなくて、一般市民の商品価格を下げるということに対しても、やはり企業公共性ということを経営者も十分に考えていかれるならば、私は両方の話がまとまると思うのです。従って生産向上には三つの要点があるのです。それは生産性を向上するために、過渡的に失業者を出さないというような問題、それから上った効果に対しては経営者が独占的にそれを取らないということ、その他労使協力というような三つの原則の上に生産向上は立っておるのです。けれども、言うだけでは安心できないというのが総評さんの方の考えでありますが、お説のように私どもも情熱をたぎらせて総評とも相談をし合いますから、皆さんの側におかれましても一つ御援助を願いたいと思います。
  30. 小川半次

    ○小川(半)分科員 ですから、今総評の人たちは単にイデオロギーにとらわれているのだと思いますが、もしあの人たちが言うように、生産を高めることが結局資本家をもうけさすことだというような幼稚な観念で割り切っているものとすれば、それはやはり事実によって示さなければいかぬ。会社の利益は幾ら上っているか、それに応じて税金として国家が取り上げていくのですから、資本家が果してどれくらい利潤を得ているかということは数学によって明らかなんです。国家の機関である税務署において明らかに帳簿を調べていくのですから、幾ら総評の人たちが、いやそれは結局経営者をもうけさすことだ、資本家をもうけさすことだと言っても、事実を示せばいいのです。事実を示して、なおかつ彼らが生産向上運動とは資本家を利益さすものだということを固執しているとすれば、それは彼らの単なる一つの殺し文句、反対せんがための反対文句にすぎない。そういう言葉を使って労働陣営、労働者を引っぱっていく手段にすぎないということは明らかなんです。それでもなおかつ反対しているとすれば、思想的に日本生産を高めようということに協力しないという根本的なものがあるとしかわれわれは解釈できない。それであればなおさら国民こぞって考えなければならぬ。しかし私はそこまでも、要するに反国家的な立場に立って生産向上運動を阻害しているとは信じられない。しかし今申し上げたように、資本家がもうけているかもうけておらぬかということは、すでに数字によって現われるのですから、それまでも信じないということになれば、根本的に考えなければならなくなってくると思うのです。こういう問題についても、一つ労働大臣並びに労働省当局の諸君には十分御検討願いたいと思います。  それから大企業中小企業に従事する労働者賃金の、バランスについてお尋ねしておきたいのですが、新聞で見ますと、また大企業労働組合幹部は春季闘争を準備してきているようでございますが、こうして大企業において賃金引き上げの運動を起すたびに、その犠牲は中小企業労働者のところへおっかぶせられてくるのです。なぜかと申しますと、とにかく大企業経営者の方では労働者賃金を上げます。賃金を上げますと経営が非常に不振になるから、そのしわ寄せを今度は下請工場の製品の値下げに持ってくる。下請工場であるところの中小企業経営者は、ここでその製品を値下げされてはやり切れないから、結局その犠牲のしわ寄せを、自分の工場で使っている労働者賃金値下げとか賃金ストップというところに持ってくる。このことなんです。ここに大企業に従事する労働者中小企業の分野に従事する労働者との非常な賃金の格差があって、私はそのバランスの合わない点を見るときに非常に気の毒でならない。ですからこれに対する方法としては——もちろん高い角度から見るときには最低賃金制ということも考えられるけれども、それよりも、要するに中小企業に従事する労働者にそういうしわ寄せのこないところの対策を立てなければならぬと思う。ですから、ここで問題になってくる今の二つの問題について、そういう場合を考えるときに最低賃金というものが起ってくるが、最低賃金制をとる考えを持っておられるか、あるいは今最低賃金制を実施する意思がないとすれば、中小企業の分野に従事する労働者に、この春もまたそういう犠牲がおっかぶせられようとしているときですから、これらに対する対策はどうするべきか、労働省当局の御見解を承わっておきたいと思います。
  31. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 大へんむずかしい問題であります。先ほども勝間田さんから、その点に添っての御質問があったのですが、最低賃金の問題はさっきお答えしましたから簡単に申し上げますが、業種別地域別自主的協定によって作っていきたい。これの一つの例は、静岡の清水のマグロのカン詰業者が二十数社ありまして、それが最低賃金協定して非常に都合よくいっておりますから、そういうような例を見習ってそうしたいということで、労働問題懇談会の方にいろいろ審議を願っておりまして、今月中ぐらいに話がまとまって答申があろうと思いますから、それができましたら、われわれの出先の役所を通じて地域別業種別最低賃金を自主的に協定してもらいたいということを勧奨したいと思っております。  それから、今の中小企業と大企業賃金の格差は驚くべきものがあるのです。人数によって違いますけれども、五百人のところを一〇〇といたしますと、五十人から百人ぐらいのものはそれの六八%、七〇%ぐらいです。それからもっと小さい、一〇〇以下の従業員のものは、場合によっては五五%というのもあります。そういうわけで、この較差は非常な問題でありまして、これは今の下請問題もございますが、去年の国会には、皆さんの御努力によりまして、下請業者に払う延べ払い防止の法律も作ったのでありますが、下請中小企業の過当競争の裏をかいて、大企業が入札で安く下請をさせるというこの現実は、自由経済としてはこれをとめるわけにもいかないのです。それで、先ほどこの問題についても勝間田さんからいろいろ御意見があったのですが、中小企業対策というものが真剣に取り上げられて、今年も財政投融資を増額して、相当国家財政が流れるようになっておりますが、一般銀行、一般金融機関からも、相当思い切って国の勧奨を強くして、中小企業の方に金を回すなり、その助成政策、振興対策がとられない限り、やはり仕事がなければ立っていかないものですから、血を出しても入札でとるということになるのです。その結果が賃金の不払いになったり、低賃金になったりするのでありますから、その基本になるものは、やはり中小企業振興対策というものが確立されるのでないといけない、かように思うのでありますが、このことにつきましては、経済閣僚懇談会において、通産大臣ともいろいろ相談いたしております。今年の予算は、大したものは現われませんでしたが、これからはこの振興対策について極力努力いたしたいと考えております。
  32. 小川半次

    ○小川(半)分科員 それではもう一点だけ。日雇い労働者の就労日数について特にお尋ねしておきたいのですが、地方によっては十九日ないし二十日、また非常に条件の悪い地方においては、一ヵ月の就労日数が十五日あるいは十六日しかない地方がかなり多いのです。あなた方のところにどういう報告がきておるか知りませんけれども、一ヵ月のうち十六日くらいしか働いていない、これは事実です。あなた方御承知のように、日雇い労働者は国民の中でも一番気の毒な、最低生活をしている階層なんです。その日に得てくる金によって、ようやく一家族が糊口をしのいでいくという、実に惨たんたる生活を日々続けているような階層が日雇い労働者です。こういう人たちが一ヵ月に十六日とか十七日間というものを働いて、あとは職もないということでは、どう考えてもお気の毒でならない。ですから、まず第一番に最も不幸なこの人たちを対象としての対策を立てることが、労働政策上一番必要なことです。それをただ労働行政などをはでな方に費用を使って、一番気の毒なこの人たちのことについて予算が非常に少い。少いから、結局就労日数が、今申し上げたような十五、六日ないし二十日ということで現われてくるのです。本年度も特にいろいろな予算措置を多少講じてあるわけだから、せめて一ヵ月二十五、六日働けるとか、何とかそういう方法を立てなければ、せっかく他の職場においては比較的好況に恵まれて、非常によくなってきておる、俗に神武天皇以来の好況といって、サービス営業にしてもあるいは他の産業分野における職場においても、非常に忙しくなってきて、そうして勤務の上に何ら不安がないときに、ただ日雇い労働者のみが一ヵ月わずかな日数しか働けないということは、ますます生活に困るし、いわんや本年はインフレの傾向にありそうに見える、そうして物価が上ってきたりしますと、より一そうこの人たち生活が困窮に陥ってくる、こういうことを考えて、ぜひ就労日数をふやすように対策を立ててほしいのです。そこで、現在統計として、一ヵ月幾日就労しているかお示し願って、本年は昨年に比して就労日数がふえるかどうか、この点を一つお示し願いたいと思います。
  33. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 関係局長から答弁いたします。
  34. 江下孝

    ○江下政府委員 お答え申し上げます。全国の日雇い労働者の就労日数は、予算は二十一日ということで組んであります。今年度は民間の就労が非常に伸びましたために、全国平均といたしましては二十一日を相当上回っていると思います。ただ御指摘のように、特定の市町村等におきまして、就労日数のごく少いところがございます。私どもこの問題は実は数年来頭を悩ましておる問題でございます。御承知の通り、失対事業は府県なり市町村が実施をして、国が補助をするという建前をとってやっておりますので、行政的に市町村、府県に命令という形をとっておりませんので、府県、市町村が財政上できないということになりますと、なかなかこの点が実現できない。そこで私どもとしては、本年度予算から高率補助制度というのを設けて、特に財政状態の悪い市町村で、失対事業を大幅に実施しておるところには、特別に一般の補助率の三分の二を五分の四にしまして高率補助をする、来年度予算にもこれを組んでおるわけであります。そういう方法で、いささかでもこれらの日雇い労働者の就労日数が伸びるようにということに努めておるわけであります。なお、御指摘の通り、就労日数の少いところにつきましては、今後とも関係当局と十分話し合いまして、就労日数をふやすように努力いたしたいと思います。
  35. 坂田道太

    坂田主査 辻原弘市君。
  36. 辻原弘市

    ○辻原分科員 先刻から勝間田さんあるいは小川さんの方から重要な問題が出されておりますが、私は、労働省が所管をしている労働行政の中でやはり重要な問題は、先刻から問題になっている雇用の問題と、賃金政策の問題だろうと思うのであります。本年度の予算に盛られた政府雇用政策を見てみますると、率直に申して、寒心にたえない点があるのでございます。これは雇用の問題のみならず、全般的経済政策についてもそうでありまして、わが党から種々それらの問題点について追及いたしましたが、ますますわれわれとしては疑義が深くなってくるのは、何というか、非常に甘い見通しの上にこれらの政策が立てられているんじゃないかという点に不安を感ずるわけであります。特に雇用の問題で、昨年は一応経済五ヵ年計画というプランの中に、当該年度の雇用政策ということを述べられておったと思うのでありますけれども、本年度は遺憾ながら的確な、長期にわたる経済の見通しとマッチした雇用政策というものが述べられていない。まずこの点が問題であろうと思うのであります。ちなみに、非常に好景気に恵まれまして雇用が伸びてきているという前提に立って、本年度たとえば失業対策の面においても、二万三千名にわたる対策費の減少を来たしておる。ところが経済の先行きが果してそうであるかどうかということは、これは常識的に考えても必ずしも即断できないし、また実際の雇用関係から見て、通常一般にいわれるような雇用の伸び方をしているかという点に、非常にこれも疑問がある。そういう点から見て、あなたがこの雇用の今年度の計画を立てられるについて、どういう長期的な見通しに立ってお考えになられたか、また政府としては、やはり何がしの長期計画をもってこの雇用計画というものを立てられておるか、一つその見通しをお示し願いたいと思います。何か、聞くところによると、七月ごろに、新しく、相当大きく変更を来たした——従来の五ヵ年計画ですか、これを改訂しなければならぬということを、企画庁の長官も申しているようでありますが、それまでの間は、在来の五ヵ年計画にのっとってこれを立てられたのであるか、あるいはもうすでに五ヵ年計画というものは、これをパーにして、ほとんど役に立たないという前提において、一応漠然とした長期計画に基いてこの雇用計画というものを進めておるのか、これらの点を明らかにしておいていただきたい。
  37. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 現在まであります経済企画庁の五ヵ年計画は、鳩山内閣当時、高碕長官によって作られたのでありますが、それは三十五年に四千五百万の労働人口になりまして、四十五万の完全失業者を出すという程度の統計ができておりました。ところがその時分には、一ヵ年の経済の伸びを五%に見ておったものが、一二%にも飛躍したものでありますから、貿易なども三億数千万ドル多く輸出するというようなことになりまして、基本的に直さなければならぬということになりまして、今準備中でありますが、四月から八、九月ごろまでに、第二次の五ヵ年計画を石橋内閣の手によって完成いたしたい、かように思っております。しかしながら、今年の雇用の見通しについてということでございますが、先ほども小川委員にお答えいたしましたように、大体八十九万ぐらいの七%六という程度の経済の伸びといたしまして、それだけの雇用はできる。またこの供給側の方の新規勤労者の数もややそのぐらいでございますから、これは供給も需要もちょうど同じような数字になる、かように考えております。三十三年及び三十四、五年の問題に対しましては、八、九月ごろに完成いたしますので、これが経済の伸びを幾らに見るか、あるいは国際経済の情勢はどうなるかという見通しも加わって参るのでございますが、今年度は八十九万ぐらいの雇用計画を持っております。  それから失業対策の問題についてお問いがありましたが、これは昨年二十四万の計画で三十一年はかかったのですけれども、実行いたしてみましたところが、二十三万ぐらいになるであろう、かように考えております。でございますから、来年度は二十二万五千人をこの予算に計上いたしたのでございます。二万三千人減っておりますが、これはやはり経済の好転に従いまして民間の雇用も増大して参りましたから、その方にも吸収され、かたがた二十二万五千人あれば、大体失業対策は差しつかえないという考えのもとに計上いたしたのでございます。
  38. 辻原弘市

    ○辻原分科員 ちょっと私の質問とずれている点がありますが、私のお伺いしたのは、雇用というものは、これは経済と密接な関連を持っているということは申すまでもないことです。従って長期的な経済の見通しに立った雇用政策でなければ、本質的な雇用政策を進めておるということにはならぬ、そういう意味で、今年度立てられたものは、長期計画の見通しの上に立つ一環のものかどうかという点をお伺いしたのです。それは、今のお話でも、それから今日までの予算委員会等での質疑の過程で政府から承わったところによると、やはり長期計画全体は、六、七月ごろの新しく策定するものによらなければ、どうも見通しがはっきりしないというような形のものらしいように承わっておる。従ってこれは端的に申して、年度限りの、率直に申せば、これは、当該年度の、場当りの一つ政策にすぎない、こう申していいと思うのです。また私は、それは悪口を言うのではありません。実際この雇用の内容を探ってみると、確かにそういう感じが深いのです。たとえば雇用が伸びたというが、その伸び方の質的な内容を見ると、たとえばあなたの言われている八十九万という数字がほんとうに安定した形の雇用であるかどうか。実際は統計を調べてみるとすぐわかると思うのですが、必ずしもそうじゃない。全体の傾向から言うと、いわゆる一時的なそういう雇用の伸び方が内容に相当ある。またあなたは今三十三年、三十四年も大体同じような形で経済のテンポが進んでいくであろうと言われておるけれども、しかし現実に経済がそう楽観できない情勢だということも、今いろいろな要素が生まれてきております。早い話が貿易を見たって、大蔵大臣は一時的な入超等はそれは顧慮するに足らぬ、こう言っておるけれども、しかし実際は好景気に恵まれたといわれている今日までの段階、ここ一、二年来は、貿易は一応黒字を示した。ところが一月以来はすでに赤字に転化している。さらにアメリカ等の景気を見ても、すでにアメリカ内部で相当な警告が出ているように必ずしも楽観できない。こういうことを見通せば、そう景気が上昇していくような考え方に立つことは、われわれはできないと思う。そういたしますと、雇用というものもそういう見通しの上に立って、もう少し長期的な考え方で作成しなければならぬ。とすれば、この当該年次だけ少し景気がよかったから、たとえば失対事業費を削ってよいのだという考え方は、私は誤まりだと思う。そうじゃない、これは一時的に伸びている、しかし全体としてはまだまだ、これから雇用が先行きどういうふうに悪くなるか。とすれば、できるだけ、それを大きくワクを広げておくということが政策の基調にならなければならぬと私は思う。もちろん雇用と失対事業というものは本質的に意味が違うけれども、それは今やっている失対事業なら失対事業というもので全部プロパに確保されているならいざ知らず、それはある部分だけしか満たされておらないのでありますから、そういう中にあって数を減らしていくというようなことは、これは正しい労働政策のとるべき方法ではないと考えます。従って労働大臣に次の長期計画等の策定に当っては十分この点を再考してもらわなければならぬと思います。  次にお尋ねいたしたいのは、昨今労働大臣も、生産性の向上という問題に対して非常に強く強調されて、何か異常なまでに、ちょっと観点が違った押し方をされているように思う。というのは、本会議の席上においてもあなたは、ともかく今たとえば総評あたりが生産性の向上に対して反対していることは、これはけしからぬ、こういうものの言い方をされている。言葉それ自体をとらまえて表面のあれを見れば、保守党であるあなたがそういうふうにおっしゃられるのも、これは一理届としてわからぬこともないのでありますけれども、しかし一体現実に行われている生産性の向上というものがどういう観点から取り上げられているかということをしさいに検討してみたならば、先刻小川さんも言われたようにもう少し所管の大臣としては考えるべき点があるのじゃないか。先ほど勝間田さんの質問に対して、あなたは労働行政というものは労使協調の姿で押し進めるべきだと答えられている。そう言われている限りにおいては、私は生産性の向上というようなものも、そう言われているあなたとしてはもう少し違った観点において、行政の中で考えられていく点がなければならぬと思う。現実に昨今の各企業体における投資活動あるいは利潤の蓄積というものは、賃金の上昇に比較いたしますと莫大なものであります。もちろん全部が全部というわけではありませんけれども、いわゆるブームに乗った産業と称される鉄鋼部門あるいは重電機部門、造船部門、船舶部門、輸送関係等々とあげていって、日本を動かしている大企業体の資本蓄積は異常に伸びてきている。そういう中にあってこの生産向上は、資本家側の考えは依然として低賃金、いわゆる近代化、オートメーション化あるいは企業の再編成ということである。こういうことから現実にそこに現われてくるものは、首切りあるいは賃金の釘づけ、ないしは上昇率の漸減であります。そうした生産向上には労働者はついていけないということなんです。労働者はその実態を知っている。利潤が増大し企業発展するという過程において、当然労働者もそれに比例して生活が確保されていってこそ、あなたの言う労使協調の姿なんです。ところが現実はそうじゃない。ギャップはますます大きくなる。景気が上昇し企業が拡大すればするほど、その格差というものが大きくなるという問題があるところに、この生産向上労働者が釈然として受け入れなし原因があることを真剣にお考えなさっておられますかどうか。この点についてもう少し明快な御答弁を願っておかないと、世人に非常な誤解を与えると思うのです。
  39. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 第一問の雇用問題の基礎となる経済の問題でありますが、これは一時的に輸入が多くなりましても、それが多くなったから、ことしはうまくないということを即断することはどうかと思うのです。というのは日本の貿易の性格は加工貿易ですから、原料を入れてこなければ輸出することができないのであって、国内の資源で全部まかなっているのならば、いろいろな今のような御議論ができますけれども、原料を入れてきてそれを加工して出すというのでありますから、ある月は入れることの方が多い月もありますし、またある月はそれの生産をしまして出超になる月もありまして、一年差通じないで即断することはできないと思います。私どもは今年は七・六%という程度の経済の伸びをするものだという確信の上に立って予算を編成し、雇用の関係を考えたのでございます。  それから生産向上の問題については、私は真剣にそう思っている。生産性を向上しなければ日本の再建はできないと思っております。しかし生産性を向上する場合に三つの基本条件をつけて、現在の生産向上を推進しているのであります。それは言うまでもなく生産向上を推進するために過渡的な失業者を出さない、上った効果は経営者資本家だけに独占させない、また労使の協調はあくまでやらなければならぬというふうに、三つの基本条件をつけて生産向上の推進をさせておりますし、われわれもそのように協力しているのであります。この間、本会議で私は野田さんの御質問に対しまして、そういう話があったものですから、私は総評が生産向上に反対するのは遺憾であるということを申し上げました。今も遺憾であると思います。しかし遺憾であるというだけではいけませんから、今後総評その他幹部の方方とたびたびお会いいたしまして、日本経済復興のために生産向上に御協力願うように、われわれは極力努力をするつもりであります。今、オートメーションであるとか、あるいは近代設備によって首切りが起るという御心配のようでありますが、これはやはり長い計画のもとに日本経済発展を考えなければならぬのでありまして、設備の近代化、オートメーションを行えば、その瞬間には失業ができるかもしれません。しかしその企業から見れば失業が出たというそれ自体の賃金は支払わなくともいいのでありますから、これが新しい合理的な機械を買い入れたものの固定償却その他にも使え、それがさらに企業を拡大する方向に向って参りますから、量産の方面、あるいは品質の向上の面ということで、日本中小企業生産設備生産向上合理的な運動に伴って近代化されて参りましょう。またそうしなければ日本経済は成り立たないと思うのです。  それはなぜかと言えば、国内に資源がありませんから、外国から資源を持って来て加工貿易をやる国柄ですから、その加工貿易の加工の場が他国におくれているようなことではならない。そこで、日本労働賃金はよその国よりも安いけれども、現在のような老朽設備のもとに行われているならば、単位当りの労銀のコストというものは非常に高い。これを生産向上によって合理的な近代化の設備にいたしまして安い賃金でやっているけれども現在は高いのです。この世界的な安い賃金合理化された近代化された、オートメーション化された機械を使いましたならば、うんと製品が安くなって企業ももうかるのです。もうかれば勤労者にもあるいは一般市場にも安く売れるし、国際市場においても良品廉価の上で闘って市場を拡大することができますから、企業はますます拡大してくる、拡大していけば雇用量は増大する。その間の問題になりますが、それはやはり政治上の政策によって救っていかなければならぬと思っております。生産向上についていろいろの御議論がありますが、また今まではいろんな感情上の問題があっただろうと思いますから、お互いに胸襟を開いて話し合ったならば、話し合いができるのではないか。皆さんのような社会党の幹部の方々が総評の諸君に、まあ一つこういうふうに行こうじゃないかというふうにお話を願えば、また考え方は違って参りますから、生産向上のために皆さんの総評その他にお話を願う御協力を一そうお願いしたいと思うのです。それが国のためだと思うのです。ただ、生産向上をしたから資本家経営者だけが独占してしまって、勤労者には低賃金で、しかも労働を過重させるというようなことは絶対にない、また私が労働大臣をやっておる間にはそういうことはさせないという確信を持っておる。そうでなければ日本産業は成り立たないと思う。これは卵が先か鶏が先かわかりませんけれども、勤労者国家民族を発展させるために、勤労が神聖だという気持でお働きを願い、経営者企業そのものは公共性のものである、自分の独占的なものでないという両者の考えが一致しなければ、日本発展しないと思いますし、その仲介役を私はどこまでもやりたいと思いますから、この点については特に御協力をこちらからお願いしたいのであります。
  40. 辻原弘市

    ○辻原分科員 だんだんと承わっても、やはり観点が違うように思います。もちろん全部が誤まっておるとは申しません。あなたの経済理論、それも一面確かに真実があると思います。しかし問題は、あなたが常に強調される労使協調という姿は、総評の幹部と会って、よく納得のいくように話をする、そしてまたわれわれにも総評にそういう話を伝えろ、こういうふうなことで問題の解決がつくのではないと思います。それは何か。もちろん安い賃金で、雇用量をできるだけ減らして、いい設備をして、その量産をやれば、確かに生産が上る。また輸出競争にも打ち勝つ道ができるかもしれない。その意味において私は一面だと思います。しかし日本企業全体を伸ばし、日本産業全体を発展させる道というものは、もっと総合化されたものだろうと思う。私はしろうとなりにそう考える。とすれば、たとえば労働者協力を求める。生産発展した、その非常にいい姿において、好条件の中で発展したときにおいて、初めて労働者賃金向上させてやろう、そこから雇用量も増大していくのだ、こういうことはだれでもできると私は思うし、またそういう形でやることが一番安易だろうと思う。しかし果してそれでほんとうの協力が求められるかどうか。今までの日本のいわゆる資本家といわれる人たちの中に、少くともそうしたことを地においてしました人が、一体何人おったかということに疑問を抱く。従来、企業実態を赤裸々に示し、協力を求めていって、そして協力しない労働者は私はないと思う。やはり企業発展していって、初めてその中における労働者も恵まれてくる。ところが企業発展していっても、必ずしも労働者は恵まれないというたびたびの苦い経験が、日本労働者をそういう形に追い込んでいると私も考える。だから鶏が先か卵が先かといえば、結局労使協調は、少くとも今の段階において資本家が率直において、そして労働者生活安定を真剣に考える。たとえば問題になっている最低賃金などというものも、少くとも今の、中小企業とは申しませんけれども、大企業においては真剣に取り組むべきだと私は思う。また実現の過程において、保守党政府としては鞭撻して、そのくらいのものは実現すべき段階だと思う。しかしそれすらやらない。賃金の上昇率は低い。こういうことだから、そこに生産に対する真剣な労働者協力は求められない。そういうことを私は申し上げる。だから総評の幹部に会う前に、あなたは少くともまず資本家陣営に、経団連、日経連の幹部に会って、なぜこの好景気の中で労働者福祉あるいは賃金問題について真剣に考えないかという点を示して、しかる後において、資本家陣営において真剣なかくかくの考え方が出てきたじゃないかということを前提にして労働者に話すのが筋道だと思う。そういうことで、とにかく観点がいささか違うと私は申し上げておるのであります。その点は議論になりますから、それくらいにいたしまして、そういう現状で、少くとも生産性の向上というようなことを真剣に考えるならば、もう少し身の入った雇用政策賃金政策というものを織り込むべきだということをわれわれとしては痛切に感じる。  そこで、話は先刻の最低賃金の問題に戻りますが、あなたの先ほどの御答弁によりますと、最低賃金法を制定したいという意図はおありなさるように承わる。そのやり方としては、近く労働問題協議会ですか、ここでの答申を待っておやりなさるという、そういうプロセスで考えられるということもわかりましたし、それからもう一つ中小企業等を中心にした自主協定、こういうものにゆだねてもやりたいということを聞いたが、ここらにも私は一考を要する点があると思う。  もちろん日本産業構造から見て、中小企業賃金についても最も真剣に考えなければならぬということは、これは重要問題であります。ただしかし、その必要性は強調さるれけれども、あなたが言われるように、中小企業の業態から推して、確かにこれをにわかに賃金政策だけでやることには非常に困難な面があるということもわかる。そこでやりやすい方面から手をつけていくという考え方はないか。それは私はどういうことを言うかといえば、今回政府は公務員に対する給与の改訂の問題を、人事院勧告に基いて提出されております。ところがこの政府の構想を漏れ承わってみても、どうもあなたがおやりになりたいという最低賃金法の一つのあり方とはほど遠いものに見受ける。もし最低賃金法をやりたいということになれば、少くともその方向に近づけていくのが私は賃金政策としての正しいやり方であろうと思う、これは公務員であろうが民間であろうが、そういう方向をとるべきだ。ちなみに諸外国の例を見てみると、米国はあるいは日本との比較にならぬかもしれませんけれども、最低賃金が大体二万円、それからイギリスにおいては一万一千円、フランスにおいては九千円。それに比較した日本最低賃金は、大ざっぱに見ても四千円から六千円程度。今度の人事院勧告に基くそれが六千八百七十円ということになっておる。そういたしますと、諸外国の経済動向、たとえばフランスと比較いたしましても、そこに非常な差がある。日本経済の実力、実態をかなり楽観している政府の見方からすれば、私はフランス等と比較してもそう大差はないはずだと思う。それが賃金政策においてかはどの差を見なければならぬということについて、私は疑問を感ずるわけであります。そこにも、今日までの日本保守党賃金政策あるいは先刻私が申した資本家陣営等の賃金向上に対する熱意の乏しさを物語っておるものがあるように私は考える。一体、これら諸外国との関連において、日本賃金のあり方がこの程度であっていいかどうか。労働大臣としてはどのように考えるか、妥当なものであるとお考えになるか、一つ御答弁を願いたい。
  41. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 日本経済の動向に従って自然にでき上った現在の賃金は、これを急激に変化させることは日本経済を危険にするものであると思います。でありますから、現在の実情に即した程度以上に、フランスやその他の例にならって引き直す考えはございません。人事院勧告その他の問題については、この分科会では別なことですから、他の分科会においてお答えいたしたいと思います。
  42. 辻原弘市

    ○辻原分科員 あなたの御答弁によりますと、自然の趨勢できた賃金政策。確かに私は、これはいわゆる熱意を持たざる自然の趨勢の中に生まれた日本賃金のありのままの姿だろうと思う。だからこそ賃金向上ということに熱意を持てと言うのです。また現状とあなたはおっしゃる。あなたが言われる現状、また日本の今の段階をとらまえた現状というものは、少くともこの程度の賃金で見合う経済ではないはずであります。大蔵大臣も言うように、異常に発展した日本経済。まさに神武以来ということが今よく言われておりますけれども、昨今、次々に決算において発表された各大企業等の経理内容を見ると、実に驚くべき上昇だと思う。そういうものが現状だとするならば、私は必ずしも今日の賃金の水準が適合したものとは考えない。やり方としてはもちろん急激にするわけにはいかぬけれども、しかしそれを上昇させていこうという一つの熱意のほどは何かの機会に表われてこなくちゃならぬ。そういう点を申し上げておるわけです。
  43. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 賃金を上げるとするならば、ほんとうば賃金外のものを上げるかわりに下げるものがなければ上げられないと思うのです。なぜならば、今度国鉄の運賃を上げる、ガソリン税を上げるということも、これは賃金を上げる一つの動因になると思うのです。そうしてだんだんと賃金を上げるが、日本生産量には変りがないということになればインフレにならざるを得ない。インフレになってしまったら賃金を少しくらい上げたって何にもならないのですよ。インフレにならない限度において行おうとするならば——今は自然の趨勢と申しましたが、自然の趨勢の中には、合理的な労使の協約その他が行われて、十年間この方、自然の趨勢によって、インフレの起らない内容において今日の日本経済が成り立っておりますから、ここでフランスのように切りかえていくということになりますならば、それは何か賃金以外の方面に、オートメーションでもやったり、その他の設備が拡充されて、他の方の経費が非常に少くなった、だから賃金を上げてもよいということにならないといけない。ほかのものがそのままになって、賃金だけ上げていきますと——低賃金ではお気の毒ではあるが、日本経済全体から見るならば、これは一つのインフレになる。そういう要素を持っておるものですから、そこのところがお互いに考え合せなければならぬところであると私は思っております。
  44. 辻原弘市

    ○辻原分科員 議論というのは非常に都合のいいもので、鉄道運賃を上げる計画を進め、あるいは米価を上げる計画を胸の中に秘し、印紙税その他いろいろなものを上げても決して物価は上昇いたしません、インフレにはなりません、こういうふうに論断を下す政府が、事賃金の問題になれば、必ずインフレになりますというのが今までの常套手段なんです。しかし現実は今度の六・七%何がしの公務員給与の引き上げ等については、これはインフレ要因はてんで問題にされていない。一回も議論になったことはないでありましょう。だからそれは御都合の論法であって、妥当な一つ賃金水準を定めることが直ちにインフレになるということは、それは一つの議論であると思う。もちろんそれは過大に経済の進歩力以上のものになった場合にインフレの要因にはなるけれども、しかしながら妥当に定められる賃金において、直ちにそれが大きなインフレの要因になるということは今日考えられない。これは議論になりますから申し上げるだけにとどめておきます。  そこで最低貸金制は、ともかく協議会の答申を待ってやるということになれば、またあなたの議論による自主協定によってぼちぼちやっていこうというようなことでは、これはいつの日に実際の日の目を見るか、きわめて疑わしい。ところが最低賃金の問題はすでに取り上げられてから歴史も古い。しかも制定をしなければならぬという日本経済の要請というものは非常に高まってきている。最近政府は、この答申案などというものはきわめて軽々しく取り扱って、ほとんど各種の専門審議会等の答申をほおかむりしておる傾向がありますが、すでに最低賃金の問題は、昨年の十一月の失業対策審議会等の答申を見ても、そのことが常に強調されておる中小企業の育成強化ということとうらはらの関係において雇用の安定が必要であるということをいっておる。その雇用の安定を進めていくものは何かというと、それは最低賃金制の実施であると規定している。常に今までの最低賃金制の議論の中では、中小企業の振興をやらなければ最低賃金制はできないのだという議論に立った、こういう点も突込んで考えてみたならば必ずしもそうではないと思う。中小企業の振興をほんとにやるためには、いわゆる中小企業者あるいは中小企業体に所属する労働者の真剣なる協力というものを求めなければならぬ。そのためには現状のような非常に不安定な雇用の関係、賃金の関係に置いたのでは、これはとうてい日本中小企業全般の伸びはない、こう考える。そうすれば当然そこに積極的に、その振興と相待って、こういう一つ最低賃金制の実施というような問題がもくろまれなければならぬと私は考えますが、あなたはこういう答申を見てどういうふうにおとりになっておるか、その点を……。
  45. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 今議論になるとおっしゃるけるども、あなたの方も議論をされますから、言わしてもらいたいと思いますが、過当競争をやっておる中小企業の立場というものは、貿易の面に見ても、あるいは一般市場の問題に見ても、その他競争に対する入札なんかを見て血を出した入札をやっておるのです。あの過当競争を防止するために最低賃金を決定しておけば過当競争を防止できると一面は言えるのですけれども、日本中小企業というものは多いものですから、どうしても競争するのです。競争していかなければ生きていかれないものですから、競争した結果、やはり賃金に影響していくのです。そこでそれならば一律に六千円とか八千円とかいうことを法制的にきめたならばどうかということになれば、私は小企業は全部つぶれると思うのです。そうすると、経営者失業者になり、従業員も失業者になって、失業者がうんと出てくると思う。というのは、私は中企業経営しておりますが、小企業の人々のやっておるのを見ますと、非常に危険な経営ぶりです。これは政府政策が貧困であって、中小企業の振興ということについて不十分であるから、やむを得ないのでありますが、今の中小企業の現状は、不渡りの額面を見まして非常に小さいのです。五万枚も出ておるやつの中は平均が七万円か七万五千円ですから、一万円か二万円の手形があるのですよ。だからこれを一律に法制的に五千円とか八千円にきめるということになったならば、勤労者を擁護することにならないと思うのです。経営者失業者になって出てくるのです。この点は皆さんの方は暫定的に六千円、八千円というものをおきめになったようでありますが、それは一つの政党の政策としておきめになったでしょうけれども、日本の現状には私はちょっと合わないと思う。でありますから、業種別自主的協定に待っていく。そのためには、先ほどこれは勝間田さんから深刻に御質問があったのですが、やはり中小企業の金融対策であるとか、あるいは税の問題であるとか、そういう対策について並行して考えなければならぬ問題であると思うのですが、私の考えは答申を待ってわれわれの出先の人々に勧奨させるという程度以上にはやってみようとは思っておりません。
  46. 辻原弘市

    ○辻原分科員 どうも観念的にはよくおわかりになっておられるようでありますが、もう少し意欲的なもの、また最低賃金の必要性というものを一体として大臣は把握せられてないように私は失礼ながらお見受けするわけであります。これは協議会の答申といわれますが、従来の協議会の中でも若干の答申がもうすでに出ておると思う。同時に最近の賃金のあり方についての趨勢から見て、その必要度合いというものは従来論じられた以上に非常に深刻なものがある。この制度を実施することによって何か非常に重圧を感ずるとか、経済に大きな変動を来たすとかいうことがやはりいわれておりますが、私はそれは逆じゃないかと思う。むしろそのことによって今の日本経済の跛行性というものがかなり調整される面が多い。単に労働者福祉という現実ばかりでなしに、全般的な経済から見てそういうふうに思う。これは申し上げるまでもないが、若干議論としてそれらの要因を申し上げて御意見を承わっておきたいと思うのであります。先ほど大企業中小企業賃金格差の問題が出ましたが、やはり中小企業対策というものは千差万別でなかなか進めにくい、こういうことももちろんようわかるのでありますが、しかし賃金格差が今の日本経済の趨勢から見てますますひどくなる傾向にある。いわゆる大企業と弱小企業との間は特にそれが顕著な傾向が資料の上にも現われてきている。たとえば千人以上とそれから三十人以下を比較してみた場合には、その格差は約五〇%、三十人以上とそれから九人以下の零細な企業体との賃金格差が約四〇%、こういうような傾向にある。さらにこれから経済のテンポが政府のおっしゃられるような形に行くとするなれば、この傾向はもっと深まり、そこに中小企業労働者一つの不安定という問題がますます助長される、こういう傾向の中で果して中小企業が本格的に立ち直っていけるかどうかという点にも、非常な疑問があると思う。  それからもう一つ労働力の比率なんですが、これはよくいわれるように、日本労働人口の最近の一つのあり方を見ると、中堅的な労働力よりも老齢労働力といいますか、そういうものが非常にふえてきている。いわゆる高年令層の再就職とか高年令層が長期にわたってその職をずっと継続しておる、こういう傾向が非常に顕著になってきておる。こういうことからも新しく生産労働人口としてふえていくものをまかない切れない一つの原因を生んできておる、こういうところとも賃金制というものを確立していかなければならない一つの原因があると思う。それから賃金が安定しないから従って雇用も安定しないという傾向から、転職者が非常に多い、こういうことも能率の面から見て非常な大きな問題だと思う。それから私は先刻申し上げましたような、いわゆる臨時的な雇用関係が増大しておるということも非常に不安定だと思う。従って賃金の中で雇用を見ると、実際はその雇用の姿というものは不健全な要素が多いし、質的に見ると必ずしも向上していないという面がある。こういうところに非常に日本経済全体の中で弱い要素が出てくるのじゃないかということが考えられる。これらを総合して見た場合に、やはり一つ解決策としては、この最低賃金制というものをやはり早期に制定していくということが大きな政策であろうと私は考える。そういう面を相当しさいにあなたは分析せられてこの最低賃金問題と取っ組まれておるかどうか、これを一つ伺いたい。
  47. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 今お説きになりましたような千人以上と五十人、三十人というような例は、われわれの方の統計とやや似ております。大体五五%から一番低いのは五〇%くらいになっております。ところがその百パーセント払う大企業はりっぱに税金を払って、配当をやっているのですよ。五〇%の賃金もろくによう払わない連中は、税もよう払わない、払うだけの利益も上らないし、ぴいぴいなんですよ。それで賃金を安くしておって、安くしておるがためにうんと利益をとっておるというならば、それは賃金を高くさせるようにしたいのですが、安い賃金でも経営がならぬというのが現実なんです。そこが悩みなんですよ。それならば、賃金を上げるからその人の経営が改善されるかというと、改善されない、つぶれていくのでも。だから大企業基幹産業は、大体もうそれ以上なんだから、私は最低賃金というものをこしらえてもいいと思うのです。けれども問題は中小企業の中の小企業なんです。これは五人とか三人とか頼んでいる。そのものはもう二ヵ月に一ぺんか三ヵ月に一ぺすしか払えない場合もある、毎月払の場合もあるということで、それが高い賃金になったら、もうやっていけぬから、そのうちがつぶれると経営者もともに失業市場に現われてくるのです。というようなものが日本は相当あるますから、大企業の計数だけで一律一体にこれをきめることはどうかということが、私どもの一番悩みとするところであります。憲法に最低生活が保障されておりますから、労働省といたしましてはできるだけ勤労者生活を安定させたいという気持には変りはありませんけれども、そうするとなお一そう失業者がふえるということになるものですから、そこのところが私どもの悩みでありまして、これらのお説もいろいろ拝聴いたしましたから、今後答申を得ましたならば、さらに研究いたしまして善処したいと思っております。
  48. 辻原弘市

    ○辻原分科員 だから私が最初に申し上げたのは、ともかく手がつけられる範囲のものを早急に、少くともそこまでのものだけでも成案を持って示すべきだということを申し上げた。大企業の段階においてできるなら、大企業の段階において実施させたらよろしい。そうして中小企業も並行的にそれを速めていく。自主協定でそれをやれるところはそれを一つの指針として進めていく、そうして法制化する、こういう段階も一つの構想であろうと思うのです。ところが今では、ともかく中小企業が無理だからということでじっとそれをながめておるという一つの行き方をとっておるのです。それだから最低賃金制というものはいつまでたっても日本では日の目を見ないのです。だからここらで何か突破口をあなた方の方で積極的に出すべき時期ではないかということを私は申し上げているわけなんです。なお私は公務員の問題にも触れましたが、これも同断だと思うのです。所管がどこであるか別としまして、あなたは労働大臣として、これは労働行政に関係ある重要な問題であり、しかも給与を担当されておる大臣ですからお答え願いたいと思う。公務員の場合は、先刻申し上げましたように、大体六・七%ばかりの上昇、それで六千八百七十円という給与の改訂を予算面に盛り込まれてお出しになっておる。ところがこれに対して官公労その他においては九千円というものを要求しておる。しかしそういうものは経済の現実からとしても認められないということで、政府はそれを押えられておる。ところが政府のいう考え方からはずれて、いわゆる最低賃金のあり方なりあるいは日本経済事情と比較的相似た諸外国の例、もちろん後進地域とは別でありますけれども、そういうものと比較をとってみた場合においても、いわゆる今日八千円ないし九千円程度の最低賃金というものは、日本経済界においても、もちろん全部が全部直ちに可能性があるとは私は申しませんけれども、可能性がないというようなことは私は言えないと思う。少くとも基幹産業、あるいは政府が責任を持つ公務員等においては、これは実施が可能だと私は考える。従って、従来官公労等が主張してきておる一律のベース・アップということの考え方は、額は九千円になるか八千円になるかは別といたしまして、少くとも将来最低賃金を制定するのだという、その政府の構想から考えてみた場合においても、決して矛盾はしない。少くともそれに近づけるという観点からすれば、当然給与の改訂という問題は、これはその最低を考えて、一応その段階に達するまでは、一律ベース・アップを実行するのが給与政策としては正しいと私は思う。この考えについては、労働大臣はどうお考えになりますか。
  49. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 官公労の給与改訂に対しましては、人事院勧告を尊重いたしまして、今年の予算に計上いたしたのであります。今その給与の改正の方法について検討中であります、いろいろ御意見のような点もありますし、世上のいろいろは材料を集めまして検討中でありまして、近く成案を得て提案いたしたいと思いますから、そのときに一つ審議願いたいと思います、今こうだということをはっきり申し上げる段階になっておりません。今月中には出したいと思っております。
  50. 辻原弘市

    ○辻原分科員 今月中には成案を持つということ、まだ最終的な結論に達しておらないということでありますが、すでにこれは予算面にも盛られて、額その他についてはちろん動かない。その点には誤まりはないでしょう。そこで幸いまだ結論を得ていないということならば、二、三私は問題を申し上げておきたい。聞くところによると、大体われわれは予算面から推察をいたしまして、また今まで政府から聞きただした点等から見て、相当の問題点を含んでおると思う。まず一つ人事院勧告というもの、これはいろいろと問題がありまして、私も補正予算のときの予算委員会でも相当申し上げたのでありますが、この議論はよしにいたします。しかし人事院勧告を相対して見ますると、これはベース・アップでないことは明らかである。そこで政府の方で考えておられるのは、若干いわゆる初任給を引き上げるという形においてのベース・アップを認めておられるようです。この点は人事院勧告よりは少し考え方としてはましかもわからぬ。しかしその反面、どうもその給与の体系それ自体は、上厚下薄というか、いわゆる号級その他において相当な変更を見て、結局職階制というものを強化していくような、そういう内容を盛り込まれておる。ここらに非常に問題があると思う。ここでお考えいただきたいのは、ともかくこれが純粋な一つの質金制度なんです。先ほど申し上げるように、最低賃金を制定されるとするならば、他の要素は顧慮する必要はないのであります。いわゆる妥当な賃金制度をしくということが眼目にならなければいかぬ。そういう意味合いにおいて、幸い初任給を若干引き上げるというベース・アップ方式をあなたはお認めになっておられるならば、この際さような、いわゆる公務員自体に、ある場合においては現実に不利益を与えるような改革を行わないで、少くとも最低財源として確保している一人当り六・七%.そういうものを一律にこれを引き上げていく、そうして現在考えられているような上厚下薄の一つの給与体系というものを改められて、できる限りいわゆる標準以下のものにかなり厚くなるような方法を採用せられることが、私は最も妥当だと思う。特に三十二年度予算においては、いわゆる中堅層といわれる課長以上の職等においては、これは大幅な減税がかなり認められている。その勤労所得税だけを考えてみますと、平均五千円ないし六千円等の減税が見込まれる。それに比べて、比較的低位にある所得については、これはベース・アップによる恩恵も少いし、減税による恩典も少い。いずれもが結局中堅以上の相当高額所得者に対しては手厚いという傾向を生んでいるわけである。だから減税されたものと見合せて考えるならば、そこにも当然この給与の体系というものは、もう少しすなおな形にならなければならぬ、これらについてどのような御構想をお持ちになるか、承わっておきたいと思います。
  51. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 今検討中でありますから、こうだということははっきり申し上げることはできませんが、今お話にありましたような、上厚下薄といったような、下のものを薄くするというような考えを特に持っているわけではありません。やはり公平に賃金はきめるべきである、こういうふうに考えておりまして、また今度の人事院勧告も、給与糸を改正するということが条件付できておりますから、これらの人事院の意見も十分尊重しなければなりませんので、大体お説のようになると思いますけれども、職階制とかその他の問題に今触れられましたが、その内容については今申し上げることはできませんけれども、いろなお説をくんで近く提案いたしたいと思いますから、提案の上で一つ審議を願いたいと思います。
  52. 辻原弘市

    ○辻原分科員 時間もありませんので、また大臣も、内容の点はいずれということでありますから、私が申し上げたような点について、若干考慮するような御意図も伺ったので、それを楽しみに、その点についての内容はこれ以上質疑を申し上げません。  ただ最後に一点、これも大臣の一つの考えを承わっておきたいと思うのですが、今の公務員給与に関越して、また私は最低賃金に戻るわけでありますが、先般も申しましたように、やはり手のつけやすいところからつけていくということになれば、基幹産業と、それから国家が保障している公務員が、最もこれは手がつけやすい。しかも公務員等の給与は最低貸金に至っていない。その観点から見ると、少くともベース・アップ等の機会においては、何回も繰り返しますが、いわゆる最低賃金制の構想によってそれをやるべきだ、しかもそれを制度化するためには、何も最低賃金法の制定を待たずとも これは国家公務員法その他関係法規の改正によっても行い得るわけだ。あるいは公共企業体等においても、私は十分実施は可能だと思う。そうして先ほど言いました中小企業等に対する影響、こういうものも、いわゆるそういう公共企業体等が実施することによって、その関係の下請、こういうものにも逐次及ぼしていくことも可能だ。従ってこうした構想も実施の突破口を開いていく上に、私は一つ考え方であろうと思う。そういった点について一つ御検討なさるお気持があるかどうかということを承わっておきたい。
  53. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 最低賃金制の問題については、もうたびたび各方面の委員会で申し述べておりますから、今お説のように私の意見を変えるということはできません。やはり地域別業種別に、自主的にまずきめさせていきたい、こういう線を一貫して答えておりますから、今辻原さんと二人でここで相談して、それじゃそうしますということは言えない。それからもう一つは、官公労及び大企業基幹産業等は最低賃金の線にきておりますから、これを最低貸金に制定したらどうかというお話でありますが、あなたのおっしゃる八千円にはならないかもしれませんけれども、今われわれの方できめた最低のものを最低とすれば、それは最低にならぬこともないと思うのです。あなたの方のお考えの八千円にはならないかもしれないけれども、その最低賃金というものが八千円であるという定義のもとにかかれば、いろいろ御議論はありますけれども、われわれの方できめる最低のものを最低であるとするならば、それはやはり官公労の最低であるということが言い得ると思います。
  54. 辻原弘市

    ○辻原分科員 もうこれで終ろうと思ったがそういう議論をされると最低賃金制というものが径しくなってくるので、一言申し上げておきますが、あなたの方で考えておられるものが最低債金制であったらとんでもないことです。これは人事院勧告なり、人事院の話でも相当はっきりしているように、人事院勧告で算定している六千八百七十円なんというのは、最低賃金の根拠には何もならぬということは明確に申しておるのであって、少くとも科学的な生計費その他から算出をした理論的な数字がわれわれのいう最低賃金であって、それらを比較的日本経済に合せて検討して算出したものがわが党のいう八千円、さらに官公労が独自に算出したものが九千円、こういうことでありますから、それらの点については特に理論的なものと現実的なものを混同されて最低賃金などをおやりにならぬように、これは私の方から一つ希望いたしておきます。  いろいろ申し上げたいこともあるのでありますが、ともかくこの賃金政策については、やはり労働大臣としてはきわめて重要な問題でありますから、雇用の問題とも関連をして一つ真剣にお取り組みをいただきたい。なお公務員給与等については、いずれこれはまた提出をされましてから、果してわれわれが要望申し上げたことが盛り込まれておるかどうかについては、詳細に内容にわたって検討をいたしたいと思います。  本日はこの程度にして、質問を打ち切ります。
  55. 坂田道太

    坂田主査 これにて労働省所管に対する質疑は一応終了いたしました。  暫時休憩いたします。    午後零時五十三分休憩      ————◇—————   〔休憩後は開会に至らなかった〕