○徳永
政府委員 今までのこの問題に対しまする
政府部内の
話し合い、連絡なり問題点を申し上げまして御参考に資したいと思います。
ただいまお話のように、厚生省からいわゆる鉱害を防止するために何らかの
法律を作る必要があるんじゃないかというお話は前々から実は受けておりました。ただ先ほど
大臣がお答えになりましたように、厚生省は
産業のいろいろな発展がその近くに住んでおる住民に害を与えておるということだけを実は強調しておられますが、そのことは私らは必ずしも否定するわけではないわけです。ただだからといって害を及ぼすようなことを全部とめてしまえというようなのが端的にいいますと結論でございます。それを単純に
考えますれば工場をとめてしまえば人間に害を及ぼさなくなる。それでは人間の生活の
根拠がなくなるということにもなりますので、そう簡単にできないわけです。最近になりましても厚生省の方から鉱害防止のために廃水の問題が非常にむずかしそうだ。むずかしそうだから廃水の問題はさておいて煙の問題をどうこうしようじゃないか、あるいは騒音の問題をどうこうしようじゃないかというようなことで、ある
法律的なものをお作りになって相談をごく最近受けたのでございますが、これも従来と同じでございまして、どういう基準でどう取り扱いをやっていくのかというかんじんかなめのところは全然ブランクでございます。といいますことは、一口にいいますと、どうも害を与えているから押えるようにしたいという気持の表現でございまして、極端に申し上げますれば、
法律的に見ますれば、私
どもは実体的には
法律の体をなしていないのじゃないかと思うわけであります。これはただ私らは厚生省を責めるわけにも参りませんので、その問題につきまして実質的に社会的にほどほどな
対策、適当な
対策というものはどういうことであろうかということにつきまして、
通産省も実は目下のところ具体的な結論的な案というものは何も持っていないというのが現状でございます。しかし問題は非常にあるということは認めますわけで、私
ども通産省内にございます
産業合理化審議会にもこの問題を研究してもらったことがあるわけでございます。そこでいろいろな
内容的には結論まで出ないわけでございますが、とくとこの問題を処理する前提条件というものをもっと科学的に具体的に緻密に調査をして、それからこの問題にとっかかるということにしてもらいたい。しかしとっかかってもらって、どうかする必要は大いにあるというのが一口に言うた結論でございますが、
内容的に申しますと、いろいろな鉱害を及ぼしておる実態というものを、
政府全体といたしましてまだ総合的な調査も何もしていないというのが現状でございます。それをとくとした上でなければ
対策は
考えられないということが言えようかと思うのでございます。また先ほど来申し上げまするいろいろな基準につきまして、何ら具体的適用の可能性、
生産をとめないでできるのかどうなのかというような限度は、どの辺に
考えることが妥当であるかどうかという、そういう調査も何もなされていない。これも
政府内で当然やらなければならぬ仕事だろうと
考えております。またそういうものを処理しまする技術的な研究と申しますか、これもある
程度は
通産省といたしましても、この種の問題の技術を鉱工業技術の研究テーマとしての重要な項目とはいたしておりまするが、それが全般的に熟してないということ、従いましてどの限度のものを
産業界に普及徹底さすことが妥当であるかということもまだ十分固まっていない。これも今後の大きな研究問題であろうと思うわけでございます。また補償の仕方につきましても、現在は害を及ぼしました場合には、加害者と被害者との間におきまする金銭賠償というのが民法の原則でございまして、それによりまして従来ある
程度のことがなされておることは御承知の通りでございますが、これを一歩進めて鉱業法でやっておりますような無過失損害賠償的なことに
考えることが妥当であるかどうか。あるいはまたその方法はやられないとしましても、補償を適正に合理的に行わしめるために
政府が何らかの
指導と申しますか、あるいは調停と申しますか、いろいろなその種の方法が
考えられると思いますが、そういう問題をどういうふうに
考えたらいいかというふうな問題も、
政府部内といたしまして研究しなければならない大きな問題でございます。かれこれ問題がたくさんございまして、私
ども政府内連絡を密にしながら、まず
法案を作るということよりも、
法案を作り得る素地を、実体を固めるといいますか、その問題にそういう態度でもって実質的なこの問題の解決のための前進できることを
考える。それが何より大切なことではないだろうかというふうに
考えて、
通産省はそんなつもりで
関係省と接触もいたしておりますわけでございます。
関係省も厚生省ばかりでございませんで、建設省がありましたり、その他の役所がございまして、その点まだ
農林省もございますし、円滑に進んでいないのでございますが、
通産省としましては、今申し上げましたいろいろのむずかしい問題がございますので、むずかしい問題はこの問題を解きほぐす前提になる実態的な調査研究、それを固める、これにとっかかるということを各省共同でやろうではないかという態度で臨んでおります。