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1957-02-13 第26回国会 衆議院 予算委員会第三分科会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年二月十三日(水曜日)     午前十時三十六分開議  出席分科員    主査 大橋 武夫君       今井  耕君    重政 誠之君       楢橋  渡君    西村 直己君       三浦 一雄君    井上 良二君       今澄  勇君    川俣 清音君       栗原 俊夫君    永井勝次郎君       横路 節雄君  出席国務大臣         農 林 大 臣 井出一太郎君  出席政府委員         農林政務次官  八木 一郎君         農林事務官         (大臣官房長) 永野 正二君         農林事務官         (大臣官房予算         課長)     昌谷  孝君         農林事務官         (農林経済局         長)      渡部 伍良君         農林事務官         (農地局長)  安田善一郎君         農林事務官         (振興局長)  大坪 藤市君         農林事務官         (畜産局長)  谷垣 專一君         農林事務官         (蚕糸局長)  須賀 賢二君         食糧庁長官   小倉 武一君         林野庁長官   石谷 憲男君         水産庁長官   岡井 正男君         水産庁次長   奥原日出男君  分科員外出席者         大蔵事務官         (主計官)   大村 筆雄君         農林事務官         (食糧庁総務部企         画課長)    中西 一郎君     ————————————— 二月十三日  分科員今澄勇君、小平忠君及び西村榮一君辞任  につき、その補欠として横路節雄君、栗原俊夫  君及び井上良二君が委員長の指名で分科員に選  任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十二年度一般会計予算農林省所管  昭和三十二年度特別会計予算農林省所管     —————————————
  2. 大橋武夫

    大橋主査 これより予算委員会第三分科会を開会いたします。  本日は、昭和三十二年度一般会計及び同特別会計予算中、農林省所管を議題といたします。まず政府説明を求めます。井出農林大臣
  3. 井出一太郎

    井出国務大臣 昭和三十二年度農林関係予算案についてその概略を御説明申し上げます。  まず一般会計における農林関係予算案の総体について申し上げます。農林省所管合計といたしましては、八百十二億一千四百万円となっております。これに総理府所管農林関係公共事業費七十九億四千九百万円及び原子力平和利用に要する経費九千三百万円、労働省所管農林関係公共事業費一億六千百万円並びに建設省所管農林関係営繕費六千七百万円を加えました農林関係予算合計は、八百九十四億八千三百万円となり、前年度に比し十七億二千百万円の増となっております。  次に、本予算案編成重点について申し上げますと、第一は、生産基盤拡充生産性向上であります。第二は、新農山漁村建設推進農林漁業経営安定対策であります。第三は、農林漁業団体関係及び農業災害補償制度等であります。  以下、この重点に従いまして主要経費について簡単な説明を申し上げたいと存じます。まず、第一に生産基盤拡充生産性向上でありますが、そのうち第一は食糧増産対策経費についてであります。土地改良開拓事業等農地拡張改良による食糧増産関係予算としましては二百七十億八千三百万円を計上しております。土地改良事業に百二十四億四千三百万円を計上いたしておりますが、このうち内地新規国営灌漑排水事業につきましては、国営及び代行干拓事業と合せてその国庫負担分を新設の特定土地改良工事特別会計に繰り入れ、地元負担分は同特別会計において別途財政資金の借り入れによることとして短期かつ計画的に工事促進をはかることといたしました。またその他の灌漑排水事業につきましては、相互に関連を持たせて実施するほか、他事業との関連工事については特に重点的に工事推進することといたしました。また防災事業につきましても前年より増額いたしまして早期完成に努めております。開拓事業については七十八億三千二百万円を計上いたしました。このうち国営代行干拓事業につきましては、その国庫負担分を前述の特別会計に繰り入れて実施することといたしております。開墾建設工事等につきましては、入植者開墾進度に逐次合せるよう工事進度を考慮いたしました。次に耕地整備事業につきましては二十二億七百万円を計上いたしており、特に寒冷地対策として暗渠排水、客土等工事促進をはかることといたしております。開拓実施費については、新規に四千戸の入植予定いたし、二十二億二千六百万円を計上いたしました。農業機械整備費は二億九千四百万円を計上いたしております。以上のほか、外資関係事業としましては、愛知用水事業に四億円、上北、根釧の両地区に六億四千万円、篠津開発のための経費として八億五千万円をそれぞれ計上しております。災害関係事業費といたしましては、災害復旧事業費七十二億三百万円、災害関連事業費七億六千六百万円及び鉱害復旧事業費三億五千七百万円を計上いたしました。なお、公共事業の行われがたい農山後進地域対象とする小団地開発整備事業につきましては、引き続き計画的に実施いたすこととし、これに要する経費三億円を計上しております。次に、耕種改善による各種農産物生産増強対策について説明申し上げます。まず、主要農作物種子対策につきましては、その種目、事業量等についてはほぼ前年同様でありまして、これがため二億七千六百万円を計上いたしました。次に、耕土生産力増強対策につきましては、低位生産地調査費として五千九百万円を計上するとともに、大豆作地帯等畑作地帯耕土改良のため三千二百万円を計上いたしております。次に、植物防疫事業につきましては、農薬備蓄制度とあわせて病害虫発生予察事業及び防除組織整備、特に市町村における防除機具計画的整備に努めることとし、二億九千六百万円を計上しております。以上のほか、耕種改善事業として特殊農作物及び園芸農作物生産改善経費として八百万円を計上しております。  第二に、治山治水事業林業振興に要する経費についてであります。まず山林公共事業費につきましては、治山事業に四十二億九千六百万円、造林事業に二十九億六千八百万円、林道事業に十九億千五百万円及び災害復旧等に五億九千万円を計上いたしております。特に林道事業につきましては、未開発林開発とも関連いたしまして、その整備拡充に努めましたほか、造林事業については本年より林種転換及び新伐造林重点を置いて推進することといたしました。また森林開発公団につきましては、前年実施した林道事業に対する国庫補助一億円を別途計上いたしました。林業振興に要する経費につきましては、その事業必要性に応じ、保安林整備計画実施に二千八百万円、森林病害虫等防除に一億九千二百万円、有益鳥獣増殖に七百万円を計上いたしますとともに、森林計画に新たに公有林経営計画を加えて三億三千五百万円を、毬果採取等優良種苗確保のため四千三百万円をそれぞれ計上いたしましたほか、新たに林木品種改良事業に千八百万円を計上いたしました。  第三に、水産振興に要する経費についてであります。新漁場開発並びに水産生物資源調査につきましては、沖合い未開発漁場積極的開発を行うため五百万円及び国際漁場開発のため三千四百万円、中南米漁業調査のため一千九百万円を計上いたしておりますほか、国際漁業生物調査関係等に六千七百万円を計上しております。沿岸及び内水面漁場維持及び増殖につきましては、二億一千五百万円を計上いたし、漁場維持培養沿岸漁業振興に特段の努力をはかりますとともに、漁業調整に一億二千六百万円、漁業取締り指導に八千九百万円を計上いたしました。なお、国際漁業関係取締り指導について三億三千七百万円を計上いたしております。漁港施設整備拡充につきましては、三十一億二千五百万円と大幅に増額いたしましたほか、災害復旧事業費等に十五億七千万円を計上いたしております。  第四に、畜産振興に要する経費についてであります。家畜導入及び改良増殖について二億九千二百万円を計上いたし、都道府県に対する種畜購入補助世界銀行資金によるジャージー種乳牛二千五百頭の導入及び有畜農家創設事業による家畜導入を実施して参る所存であります。次に、自給飼料対策でありますが、まず牧野改良対策として草地改良に一億七千二百万円、牧野改良センターに一千七百万円を計上いたしましたほか、飼料自給度向上対策といたしまして、三千六百万円を計上し、飼料自給経営施設補助及び飼料作物採種圃等事業を実施することといたしております。  第五に、蚕糸業振興に要する経費についてであります。まず、生糸需要増進につきましては、九千万円を計上し、従前の海外宣伝事業強化拡充するほか、ニューヨークにシルクファッションセンターを設けることを予定しております。これと相待って、国内における繭の合理的増産養蚕経営合理化措置として、前年に引き続き技術改良対策及び桑園能率増進対策を講ずるとともに、新たに千九百万円を計上して、凍霜害対策用の稚蚕共同桑園設置補助を行うことといたしております。次に、生糸設備処理に要する経費として、新たに五千百万円を計上いたしております。  第六に、農林水産関係調査研究並びに技術向上に要する経費についてであります。農林水産業発展基盤となる試験研究につきましては、農林水産技術会議中心として、中央、地方を通ずる試験研究機関活動強化施設拡充整備をはかるため、国の試験研究機関の諸経費三十一億七千七百万円、都道府県補助費二億九千五百万円、民間試験研究助成九千万円を計上いたしておりますが、特に前年度に引き続き、技術会議に、新規研究費一億五千六百万円、施設費二億五千六百万円を一括計上いたしました。なお、原子力関係予算につきましては、九千三百万円を別途総理府所管に計上いたしております。試験研究の成果を急速に浸透するためには、農業畜産業養蚕業林業及び水産業における技術改良普及事業強化をはかることが緊要でありますので、これがため二十七億三千三百万円を計上いたしております。農林漁業関係の統計、調査に要する経費といたしましては、四十一億五千三百万円を計上いたしましたが、新たに緊急畜産センサス等を行うことといたしております。  第二の重点として、新農山漁村建設推進農林漁業経営安定対策について御説明申し上げます。  第一に、新農山漁村建設総合対策に要する経費についてであります。新農山漁村建設総合対策につきましては、前年度に引き続き、その事業計画的に拡充いたすこととし、計画樹立地域数新規九百地域事業実施地域密継続五百三十四地域新規九百六十六地域、計一千五百地域とするため、特別助成費二十七億六千八百万円を計上いたしております。  第二に、農山漁村青年総合対策に要する経費についてであります。農山漁村振興の中核となる青年対象として、各種実践活動及び、研修への参加や内外先進農業地域への留学等を行わせるため、八千七百万円を計上いたしてあります。  第三に、寒冷地農業振興対策についてであります。北海道東北等寒冷地帯農業の安定とその振興をはかることが急務でありますので、土地条件整備と並行いたしまして、有畜経営への転換促進する目的で、展示農家群に対する乳牛及び役肉牛国有貸付制度を創設するとともに、これら農家群中心として畑作経営合理化畑地土壊維持培養をはかるため、国有トラクター貸付を行い、寒冷地道県農業機械化センター設置せしめるほか、寒冷地特用作物生産振興及び寒冷地試験研究強化等措置を講ずることとし、これに要する経費四億九千万円を計上いたしております。なおこのほか冷害恒久対策として、北海道中心公共事業費に三億円を計上してありますことは、先ほど述べました通りであります。  第四に、農地制度維持発展中小農家の経営安定の経費であります。まず農地制度については新たに転用基準を設定し、農地壊廃防止の徹底を期するほか、自作農創設維持に要する経費として、五億二千六百万円を計上いたしますとともに、農林漁業金融公庫自作農維持資金を増額して、五十億円といたしたのであります。なお新たに中小農家振興対策といたしまして、和牛、豚、綿羊等家畜導入を奨励するための経費として、二千八百万円を計上しました。  第五に、開拓営農の安定に要する経費であります。開拓地営農指導等に七千三百万円、開拓融資保証協会出資増加に三千万円、開拓者資金融通特別会計への繰入に九千八百万円等を計上いたしたのでありますが、このうち特に開拓者営農特別振興対策として、旧債の借りかえを行うための利子補給助成として、一千五百万円を見込んでいるのであります。  第六に、農林水産物及び生産資材流通改善価格安定に要する経費についてであります。まず化学肥料については、臨時肥料需給安定法に基く需給調整のため七千五百万円を、農薬については中央段階保管重点を置いて、所要経費六千七百万円をそれぞれ計上しておりますほか、購入飼料テンサイ糖及び農産物価格安定法に定める各種農産物につきましては、食糧管理特別会計において価格の安定をはかることといたしております。乳製品につきましては、国内産脱脂粉乳及びバターの学童給食等特定用途向け利用を奨励することとし、これに必要な経費一千万円を計上いたしております。農林水産物輸出振興に要する経費としては、先に生糸需要増進で申しました九千万円のほか、前年度に引き続いて通産省に計上された予算をもって、マグロ、ミカン等農林水産物市場開拓事業を行うこととしております。  第七として、農林漁業経営のための所要資金確保に要する経費についてであります。三十一年度に発足した農業改良資金制度につきましては、技術導入資金貸付額を十二億八千四百万円、施設資金融資額を二十二億七千八百万円といたしますため必要な資金造成に努めますとともに、新たに施設資金についての利子補給に対する助成を行うことといたし、これらに必要な経費五億七千五百万円を計上いたしております。農林漁業金融公庫につきましては、産業投資特別会計よりの出資七十億円、借入金百八十億円、回収金等百億円、合計三百五十億円の原資をもって融資を行う予定にいたしております。農林水産業における組合系統資金積極的活用に関する措置といたしましては、中小漁業融資保証保険特別会計において年間百億の保証予定しておりますほか、農業改良資金制度により二十二億七千八百万円、開拓融資保証協会出資三千万円により、従来の資金量に加えて一億八千万円、有畜農家創設特別措置により十二億八千三百万円、開拓営農振興特別措置により約四億円が予定されております。なお、一般会計による利子補給金といたしましては、以上述べましたほか、過年度における各種災害のための営農資金に対する利子補給及び昭和三十一年度北海道冷害による概算金返納措置に伴う利子補給金等、あわせて十二億六百万円を計上いたしております。  第三の重点として、農林漁業団体関係経費及び農業災害補償制度等について御説明申し上げます。第一に、農業委員会関係に要する経費についてであります。全国農業会議所都道府県農業会議に対する事業活動促進に必要な助成費を前年と同様一億一千万円計上しておりますほか、市町村農業委員会費補助につきましては、新制度の発足が予定される昭和三十二年八月以降は、新制度に基く農地関係事務処理等の実情を考慮して、従来は職員三分の二人に相当する分を負担していたのに対し、職員一人に相当する分を負担することといたし、他方町村合併による委員会数減少等を考慮して、九億八千五百万円を計上いたしております。  第二に、農業協同組合等農林漁業関係組合に要する経費についてであります。農業協同組合中央会事業活動促進補助のため、前年同様六千万円、農林漁業組合検査指導のため一億四千百万円を計上いたしますほか、農林漁業組合連合会整備促進事業費として、五億七千七百万円を計上いたしております。また不振農協整備強化対策といたしまして一億七千百万円を計上しております。  第三に、農業保険等に要する経費についてであります。農業災害補償制度につきましては、かねてから制度改正につき鋭意検討を続けて参りまして、本国会農業災害補償法の一部改正法律案を提出いたす予定でありますが、昭和三十二年度予算案におきましては、現行制度に基き農業災害補償制度に必要な経費百七億二千六百万円を計上いたしております。なお、漁業共済制度につきましては、自然的条件に左右されるところの多い漁業の実態にかんがみまして、なお慎重に検討すべき事項も残されておりますが、昭和三十二年度においては一部試験的に実施いたさせることとし、これに要する経費七百万円を新たに計上いたしております。  次に昭和三十二年度の農林関係特別会計予算案について御説明申し上げます。  第一に、食糧管理特別会計につき申し上げます。この会計歳入歳出はともに八千六百四十三億二千二百万円となっております。この会計予算編成に際しましては、種々論議のあったところでありますが、今後の運営方針、特にその合理化につきまして、新たに特別調査会を設け、十分に有識者の御論議をいただいた上、善処することといたしました。  米及び麦類につきましては、従来の方針を継続して参りますが、三十二年産米集荷数量は二千七百万石、国内産麦の買入数量は百二十二万トンと予定いたしております。外国食糧の輸入については、需給上必要な限度で、良質廉価なものの確保に努めることといたしました。  食生活の改善につきましては、学童給食用小麦廉価払い下げに伴う損失補てん金として、十三億円を一般会計より受け入れることといたしております。  米麦以外の農産物等につきましても、前年に引き続きでん粉、テンサイ糖、カンショ、なま切りぼし、菜種、飼料買入費を計上しております。  第二に、農業共済保険特別会計について申し上げます。この会計の各勘定を通じまして歳入歳出ともに百七十一億四千四百万円となっております。このうちまず基金勘定につきましては、その歳入歳出はともに二十九億三千九百万円を計上しております。次に農業勘定でありますが、歳入歳出ともに百十四億千九百万円を予定しておりまして、七十八億二千五百万円を一般会計から受け入れることとしております。次に家畜勘定につきましては、歳入歳出ともに二十七億八百万円でありまして、五億四千四百万円を一般会計より、受け入れることとしております。  第三に、森林火災保険特別会計につき申し上げます。この会計歳入歳出は、ともに四億六千八百万円でありまして、前年同様の事業を実施することといたしております。  第四に、漁船保険特別会計につき申し上げます。まず普通勘定につきましては、歳入歳出ともに十六億四千三百万円と、前年に比し増加をいたしておりますが、これは加入漁船数増加によるものでありまして、このため国庫負担分三億七百万円を一般会計より受け入れすることといたしております。特殊保険勘定歳入歳出ともに四億二千七百万円を計上いたし、再保険金の支払いに充てることといたしております。  また給与保険勘定につきましては歳入歳出ともに一億二千百万円を予定いたしております。  第五に、自作農創設特別措置特別会計につき申し上げます、この会計歳入歳出は十三億八百万円でありまして、開拓用地等の買収及び売渡しにつき必要な経費を計上いたしております。  第六に、開拓者資金融通特別会計につき申し上げます。この会計歳入歳出は二十五億三千百万円でありまして、新規入植戸数四千戸を予定して、営農資金及び共同施設資金八億八千百万円を貸し付けることといたしております。また開拓者に対する家畜資金として四億九千六百万円を計上いたしております。このほか営農不振の地区に対しましては、その振興対策資金として一億六千百万円、累年の災害を受けた入植者に対しては、農機具購入等営農改善資金として一億九千六百万円を計上いたしております。  第七に、国有林野事業特別会計につき申し上げます。この会計歳入歳出は四百二十九億八千八百万円であります。本会計においては木材の需給計画に基く国有林よりの必要供給量はこれを確保し得るよう措置することとし、北海道風倒木については三十二年度をもって処分を完了することといたしました。また従来一般会計で実施していた水源林造成事業を、都道府県における既契約地を除き、官行造林事業として実施するほか、一般造林事業費については北海道風倒木跡地造林に主力を注ぎ、林道事業については既設林道改良重点を置いてそれぞれ実施することといたしました。治山のための民有林買い上げについては、前年同様十億円を予定しております。なお、林木品種改良事業として一般会計と相応した計画のもとに育種場を設けることといたしました次第であります。  第八に、糸価安定特別会計につき申し上げます。この会計歳入歳出は、五十四億九千二百万円でありますが、これにより最低価格による生糸買入量を一万俵、輸出適格生糸特別買入量四千俵、及び繭の保管数量百万貫を予定し、これらに要する経費については前年度剰余金のほか糸価安定特別会計法の運用により三十億円を限度とする借入金を活用することといたす方針であります。  第九に、中小漁業融資保証保険特別会計について申し上げます。この会計歳入歳出は七億二千九百万円でありますが、これにより三十二年度は保証額を百億円、これに伴う保険金支払は三億三千四百万円を予定しております。  第十に、最後に新たに創設いたしました特定土地改良工事特別会計につき御説明申し上げます。この会計歳入歳出四十二億四千四百万円をもって、国営灌漑排水事業のうち内地新規着工分と、国営代行干拓事業経済速度をもって実施いたすこととし、従来は地元負担も含め全額国費でまかなってきたのを改めて、一般会計支出は国の負担相当額にとどめ地元負担額借入金をもって調達するこことし、これにより事業早期完成と施行の効率化をはかることといたしました。  以上をもちまして農林関係一般会計予算案及び特別会計予算案の概要の御説明を終えます。よろしく御審議のほど御願い申し上げます。
  4. 大橋武夫

    大橋主査 これにて説明は終りました。  これより質疑に入ります。質疑の通告がありますから順次これを許します。栗原俊夫君。
  5. 栗原俊夫

    栗原分科員 ただいま農林大臣から農林省所管予算について説明がありましたが、私はまず蚕糸業について一、二お尋ねしたいと存じます。  井出農相養蚕県の一位を占める長野県の出身でありますので、この点については十分御関心を払われていると思いますが、今回の予算を見ますと、従来通りいろいろな助成予算を計上すると同時に、新たに需要を増進するためにシルクファッションセンター等を設けて、大いに張り切っていただいておるわけでありますが、特に今国会には蚕糸業法の全面的な改正も企画されておるというようなことを聞いております。従って蚕糸業に対する最も基本的な考え方をもっての一つの施策といたしまして、まず第一に、御承知の通りかつて私たちがいろいろ教えられたときには、生糸わが国輸出の大宗である、こういうようなことを教えられて参ってきておりますが、最近はなかなかそうも参りません。ことに化学繊維が出てきて繊維部門を食い荒しておるわけでありますが、生糸化学繊維との今後の需要関係化学繊維によっていろいろ生糸部門が蚕食されるけれども、この中で今後蚕糸業というものは十分やっていけるかどうか、これらについての確たる見通しをお伺いいたします。
  6. 井出一太郎

    井出国務大臣 栗原さんの御質問は、まさしく蚕糸業の基本問題に関連あるものと存じます。近ごろ化学繊維の発達によりまして生糸の持っております領域が漸次蚕食されておるということは確かに現実の事実でございましょう。しかしながら私どもの考えるところをもっていたしますと、蚕というこの天然の虫が微妙な自然の営みをもって口から吐き出す繊維、これはその質においては、あるいは光沢といい手触りといい一種の微妙な自然のよさというものを持っておることは確かだろうと思うのであります。そしてその生糸が全世界に需要される繊維の中で占める分量というものは、おそらく一%にも至らないわずかなものでございますから、少くとも人間の生活の向上と申しましょうか、より高度の繊維を欲するという気持がございます限りにおいては、やはり世界的に生糸というものは関心が漸次高まってくべきものであろう、こういうふうに考えておるのでございます。戦時、戦後を通じて生糸というものが忘れられておった、あるいはそのよさというものが認識されなかった。こういうおくれを一応取り戻す意味におきまして世界市場に大いに一つ生糸のよさをわからせる、こういうところに目標を置きまして、先ほど御指摘があったように、新予算にもニューヨークにそういった宣伝機関も設けよう、こういう意図も持っておりますので、われわれといたしましては生糸の将来というものを、決して悲観して考えておるものではございません。
  7. 栗原俊夫

    栗原分科員 大臣の認識は、人間に趣味性がある限り生糸というものは今後も伸びるのだ、こういうお話で私もその点については同感でございます。そこで問題はわが国の生糸に対する施策として上値、下値をきめて、下値十九万円、こういうことで糸価を保証しておるわけでありますが、聞くところによりますれば、お隣の中共においては、最近非常に生糸生産というものが増強されて、しかもこれが一俵十五万円そこそこで輸出されておるやに聞いておるのですが、かりに十五、六万で中共生糸というものが輸出されておるとするならば、今後十九万円の日本生糸が、十九万円という値段で海外に発展していけるかどうか、この見通し、所信について御説明を願いたい。
  8. 井出一太郎

    井出国務大臣 御案内のように、中共の貿易というものは、一種の国策と申しましょうか、その生産費をそのまま価格に反映をせずに、国家的な立場でもって、日本の糸値と見合って、これを安くするというふうな規制が行われておるのではないかと思うのであります。従いまして、今後これと競争するという段になりますると、なかなか困難な問題があろうと存じますが、私どもとしましては、そういうような国家規制というものが一体いつまで続くかというところにも、問題はあろうと思います。要はこれと十分に対抗し得るような生産基礎条件をこちらが作り出す、そのための生産費の節減と申しますか、こういう方面に指導もいたし、努力をしなければならぬ、こういう考えのもとに実は施策を行なっておるのでございます。それがためには稚蚕共同飼育というふうなものを中心とする一貫した合理的な指導政策、あるいは桑園の反当収繭量を高めるための努力、こういうふうなことをいたしまして、鋭意日本の養蚕業あるいは蚕糸業が国際的競争力を持ち得るように、こういう努力を払っておるような次第でございます。
  9. 栗原俊夫

    栗原分科員 中共生糸の国策的な線から、その安い価格がいつまで続くかということについて疑問が持たれる、こういうお話でございます。しかしアメリカといたしましても、ただいまは台湾の国府を中心にものを考えておりますから、中共生糸に手をつけておらぬようでありますが、経済というものはやがて思想を越えると思うのです。従ってアメリカ市場が中共生糸と日本生糸の競争場裡になることも、決して夢ではない、こう思うわけです。そういうことに処するのに、ただいま大臣のおっしゃる通り、稚蚕共同飼育あるいはその他の反収を上げるという技術改善によって、何とかこれを合理化していこう、こういうお話でありますが、いかにしましても現在の状況は、下値十九万円の中に、農民の生きる金、あるいは製糸部門を担当する人たちの生きる積算、こういうものがないように思うのです。実際から言うて、今養蚕業界のいろいろな問題をながめてみますというと、その十九万円あるいは二十万円の中でお互いが生きられないのを、どこへしわ寄せをしようといういざこざが、混乱になって現われておると思うのです。そしてまた、そうしたことがいろいろ繭の取引の混乱あるいは今度現われてきたところの設備の整理等ということになったと思うのです。しかも日本の最大の市場であるアメリカが、中共糸の市場に開放されるようなときには、さらに値が下る。こういうような場合も想定して、今後蚕糸業というものを推し進めていかずばなるまい、こう思うのですけれども、十九万円をさらに安くしていく。そしてその中に農民も製糸関係業者も生きていく、こういうことが観念的に机の上ではプランができたとしても、実際問題としてどうでございましょうか。この点は日本の蚕糸業の非常に重大なところでございまして、特に養蚕というものは、ただ単に養蚕が有利だからといってやるのではなくて、農民は養蚕からほかの転作ができないという立地条件という立場に立っておるということを考えるとき、この見通しというものが今後こうした地帯の農民に対する施策の基本的な出発点になろうと思うので、この点についての御見解を聞かしていただきたいと思います。
  10. 井出一太郎

    井出国務大臣 現在のような中共生糸の輸出価格というものは、栗原さんは先ほど十五万円というお示しでございましたが、国際市場における差異は、日本生糸よりも二、三%の低目にあるんじゃないかと思っております。従いまして問題は、現在もそういう脅威が押し寄せつつあるのではございましょうが、問題はむしろ今後にある、そこで今後の対策をどうするかということに集約されようかと思うのでございますが、おっしゃるように、今日では繭を作っております地帯というものは、もっと有利な果樹とかタバコとかいうふうなものに転換する向きが一方においてございます。そうでなく、ほかにもう有利な作物が見出し得ないという地帯にだんだん追い詰められてきておるということは、御指摘の通りであろうと思うのであります。それであればそれだけに、新たな角度から養蚕の立地条件というものを検討し直さなければいけない、こういう感じを持っておるわけでございまして、御指摘の点等は十分に勘案をいたしまして、今後の新しい養蚕地帯の設定と申しますか、それに即応したところの施策、こういうものの確立に努めたい、このように考えておる次第でございます。
  11. 栗原俊夫

    栗原分科員 そういたしますと、今後の蚕糸業、特に養蚕業は増反によるところの増産でなくして、反収を上げる、そうして繭のコストを引き下げていく、こういうところへ今後の蚕糸業、特に養蚕部門の主たる施策が行われる、こういう工合に理解してよろしゅうございますか。
  12. 井出一太郎

    井出国務大臣 今おっしゃるように解釈いたしますと、何か非常に消極的な感じがいたしますが、これはやはり世界市場とのにらみ合せもございますので、もしほんとうに適地が新たにまだ拡大の余地があるとするならば、これはこれでやはり奨励もしなければなりますまいが、当面は、戦前とにかく輸出だけでも六十万俵をこえておったという、相当に大きな養蚕地帯を持っておった。これがこのごろでは現実的にいうと圧縮されてきておるのでありますから、その範囲においては、残された適地において反当収繭量を引き上げるという合理化政策をとる。といって決してそれだけでいいんだという消極的な考えではございません。
  13. 栗原俊夫

    栗原分科員 決して斜陽産業ではなくして、これから大いに積極的に努力をしていくんだ、こういう御説明でありますが、そこでいま少しく具体的な問題に入りまして、予算にも毎年技術指導の予算が計上されておるわけでありますが、実際面から申しますと、この技術指導というものが、必ずしも政府が考えておることと末端とは、同じに行われておらぬうらみがあるのではないかと思うのであります。そうした問題にからんで、取引の問題が非常に混乱してくるわけでありますが、御承知の通り養蚕農民が団体を作っておりますけれども、政府あるいは県等から技術指導のいろいろな援助を受けると同時に、繭の生産団体である養蚕連が、その売先である製糸家から技術指導の補助というような援助を受けておる、こういう事実があるわけでございます。伝えられるところによりますと、今回の法の改正等におきましても、団体協約によるところの取引に集約していこう、こういう方向があるそうでございますが、農民の中にはそうしたことに賛意を表さない面がかなり強い。団体ではぜひそう持っていきたいというのに、その団体の構成員は、そうした団体取引、団体協約、こういう取引を拒む傾向がある。この傾向は何で出てくるかというと、現在団体が製糸家から技術指導の補助と称して、安いところで一貫目二十円、高いところでは一貫目について四十円ももらっておるところがあるやに聞くのであります。自分の品物を売る相手から金をもらっておる。そこでどうも売掛金を協定するときに代表が弱腰である、こういうような印象を強く受ける。こういうことで、なるほど団体取引でまとまって強く当る、その形式はいいのだけれども、実際はまとめておいて、弱腰で売られる、こういったことに対する不平不満が非常にある。こういうことについて農林大臣はどのような工合にお考えでございましょうか。
  14. 井出一太郎

    井出国務大臣 御指摘のような点は、従来も農林委員会等ではだいぶ問題になったところでございます。この養蚕と製糸というものが相対立をして、この利害は一致しないのだ、こういうふうな見解に立つか、あるいはもっと大きな立場で、蚕糸業を一体として考えるかというようなところで、意見は分れてくるかと思いますが、御指摘のように、養蚕関係者が品物の売先である製糸関係者から援助を受けておるというこの形は、決して好ましいものだとは思いません。これには相当長年の伝統もございますので、今一挙にドラスティックな解決ということは、あるいは困難があるかもしれませんけれども、将来あるいはそこの辺は合理化をしなければならぬものか、このように感じておるわけであります。
  15. 栗原俊夫

    栗原分科員 今度の質問が非常に重要なところなので、これは腹をくくって答弁をしてもらいたいのですが、もしも養蚕団体が技術指導をするのには、政府あるいは地方団体としての府県からの補助金だけで足りないのだ、技術指導にはもっと金が要るのだ、こういうことをはっきり認めるならば、政府ははっきりと売り方から金をもらって技術指導をするというようなことは、これは禁止すべきであって、そうしてまた技術指導にほんとうに必要な金は、やはり国がめんどうを見てやる、こういう方向をとるべきだ、こうわれわれは考えるわけなんですが、この点は非常に重大なところで、養蚕団体等もほんとうに技術指導に必要な金だけは、どこからかは求めなければならぬわけですから、そこで本来的にいえば、これは養蚕農民が出し合うのがほんとうなんだけれども、養蚕農民がなかなかお互いのきんちゃくを切って出す段階にない、こういう段階において、政府はいま少しくきぜんたるはっきりした態度を出してもらいたいと思うのですが、この点いかがでしょう。
  16. 井出一太郎

    井出国務大臣 栗原さんのおっしゃるような点で問題をすっきりさせますれば、これを筋は確かに通ると思います。現実の問題といたしまして、今おっしゃるような方向は私も承認をいたしますが、今立ちどころにこれを切りかえることが可能かどうかという問題になりますと、しばらく一つ研究の余地をお与えいただきたいと思います。
  17. 栗原俊夫

    栗原分科員 大臣の苦しい立場はよくわかるのですが、そうするといま少し掘り下げて考えていただきたいことは、同種の業種についておる者が、農業団体あるいはその他そうした役職にはつけぬというような制約があるように覚えておりますけれども、そこまで注意して経済団体を法的に結集させておるのに、売る相手から金をもらっておることを黙認しておることはどうかと思うのです。そして簡単に言うと一貫目二十円というと、ごくわずかのように見えますけれども、私は群馬県出身ですが、大体年間五百万貫繭がとれる。こういう状況ですが、五百万貫で二十円ずつ製糸家から金をもらうというと一億円の金をもらうのです。養連が繭を売る相手から一億、銭をもらって、さあこっちの繭を高く買えといったって高く買ってくれませんよ。こういうばかげたことを許しておくということはおかしいと思うのですがどうでしょう。
  18. 井出一太郎

    井出国務大臣 御趣旨はよくわかるのです。これにつきましては従来の長い間の歴史、伝統等もございまして、たとえばある時期には製糸関係者が技術的なパイオニアの役をやっておった時期がございますね。そういうふうなことから養蚕、製糸は一体なんだ、こういうような時期も確かにあったろうと思うのであります。従いましておっしゃる線はよくわかります。本来養蚕家というものが、その自主性を強めるためには、みずからの出資犠牲において技術指導をしなければならぬ。ただ零細な非常に経済的に力の劣弱な養蚕農民であるとするならば、これは国の助成なり負担なりにおいてやるべきであるというお説は、これは私もよくわかるのであります。従いましてこれを今すぐ切りかえられるかといえば、本年度予算は必ずしもそうでございませんし、御趣旨のあるところは十分に体しまして、研究をさしていただきたい、こういうふうに御了承を願いたいと思います。
  19. 栗原俊夫

    栗原分科員 井出農林大臣もさすが長野県の出身で、養蚕家の実情もよく御存じであり、一つただいまの御言明通り養蚕農民の団体が、相手である製糸家から金をもらって、運営をやっていくというような、こうしたばかげた事態を一日も早く取り除くように、言いかえますならば、技術指導に必要な金は、でき得れば農民のふところから持ち出させるような、養蚕農民の経済事情を一日も早くよくするように努めてもらいたいのでありますが、その過程においては、その必要経費は、国が負担するという方向を一日も早く打ち出してもらうように、これは要望いたします。時間がございませんので今一項だけお尋ねをさしてもらいます。  それは、特殊農産物の生産価格についてでございますが、これはコンニャクの問題でございます。御承知の通り昨年コンニャクの問題が非常に大きくクローズ・アップされまして、外産コンニャクを輸入する、いや反対だという、こういう問題でございますが、御承知の通り、コンニャクも非常に立地条件に制約された産物でございまして、コンニャクを作らなければほかのものが作れない、こういうような立場に立っておる非常に宿命的な農民であります。しかも外産コンニャクは、聞くところによれば、大体において内地価格の八分の一とかあるいは十分の一、こういうことを言われておるようでありますが、この問題が起りましたのは、昨年の秋に一駄という単位で値段が十七万円ばかりに上った当時に起ってきた問題でありますけれども、このコンニャクの生産者は、万一外産が入ってくれば、これは理論的には何分の一かに値が下る、これではわれわれは生きていくことができない、こういう形に立って、生死の問題といってこの問題を注視しておるわけです。そこでコンニャクの問題についての対策でありますけれども、コンニャクが高過ぎる、あるいはコンニャクが少し量が足らない、こういうことでは社会問題は起る一まいと思うのです。しかしコンニャクが外産が入ってきて、そしてこれを扱う業者は、それはなるほど左うちわでもうかる、あるいはすき焼きもうまくみんなが食えるということにはなろうけれども、一方においてはそれ以外に作れないコンニャク生産農民はほんとうに文字通り死んでいく、こういう特殊な事情を持った産業です。そこでコンニャク対策を立てるに当ってどこに主眼点を置くか、私は少くともこうした特殊地帯に特殊な産業を続けて生きておるコンニャク農民が、生きていけるところから出発してもらわなければならぬと思うのですが、これに対する基本的な考え方はどうでございましょう。
  20. 井出一太郎

    井出国務大臣 大体栗原さんの意見に同感でございます。従いまして当面コンニャクを輸入するということは考えておりません。
  21. 栗原俊夫

    栗原分科員 大臣はそう簡単におっしゃって下さるのですけれども、これがなかなか容易ならざる政治問題がどうも裏にあるらしいのです。われわれが関知しておるところによりますと、外産コンニャクが安いこれを持ってくれば非常にもうかる、こういうことで初めは薬であるとか、あるいはいろいろほかの名前に名前を変えて持ってきた。これがうまくいかないというようなことで、何とかこれを表面的に輸入しようということで、コンニャクの練り業者あるいは貿易業者等がいろいろ御連絡をして、運動のお金も集めて、そうしてその金は莫大だというようなことが、国会内部にまかれた新聞等にも出ております。何千万円というようなことです。そういう新聞が出ておりますと、与党である自民党の政調会の商工部会では、外産コンニャクを輸入すべしという決議をしたというような報道がされておるのです。一方今度は同じ自民党の政調会の中の特殊農産部会か何か、ほかの部会では輸入すべからずというような決議がされた、こうも伝えられております。農村に参りますと、その輸入すべからずという決議をしたということが盛んにぶたれておる。ところが練り屋の方にいくと輸入すべしという決議がされておるのだということがぶたれておる、こういうような工合に言われておるのですが、これを輸入するための運動が、今後もこうした背景の中から非常に盛り上ってくると思うのです。実はきのう国の方からも新聞が送られてきましたけれども、いつも上る値ごろよりも、ことしは特に上った、もちろん不足だとかいろいろなことを言われますけれども、かなり政治的な値の引き上げがあるのではないか、こういうことが考えられるわけです。昨年の問題も、相場は十七万円になった。そこで生産地の方からは、それではわれわれの方で十五万五千円で売るから、こういうことで品物をそろえると、十五万五千円じゃ買えない、十四万五千円なら買う、こういうことです。従ってその相場は実態相場ではなくて、外産コンニャクを輸入するための一つのノミナルの相場であって、実際それで品物を出せば買わない、こういうややこしい運動が行われる。現在聞くところによると、関係三者の間で十五万八千円あるいは十六万円になったときに初めていろいろ相談して、そして外産を入れるか入れないかをあらためて協議しようではないか、こういう話し合いができているようでありますけれども、この際生産農民をほんとうに安心させるために、外産輸入をする余地のないように、入れなければならぬような相場は、しかもそれは人工相場のようにわれわれには思えるのですが、そういうものを禁止する。生糸でも二十四万円は禁止相場だというようなやり方もあるのですから、外産コンニャクを入れなければならぬようなそういう相場は禁止する、こういうような施策をして、ほんとうにこれしか生きる道のないこうした苦しい、山間に住んでいる農民を救っていく道はないかどうか、こういう点についての御所見を承わりたいと思います。
  22. 井出一太郎

    井出国務大臣 先に事情を詳しく政府委員の方から申し上げまして、それから……。
  23. 大坪藤市

    ○大坪政府委員 ただいまコンニャク輸入の問題につきまして御意見を承わったのでございますが、御承知のようにコンニャクは群馬県を主体といたしまして、最近におきましてはほとんど全国的に山間地帯等の非常に生産力の低いところで生産をされているわけでございます。従いまして数量といたしましては相当の数量、最近年々増産されております。しかしながら一方全体からいいますと、御承知のように総数量が少いのでございますから、いわゆる弾力性の少いと申しますか、価格の変動が割合激しい商品なわけでございます。従いまして毎年々々五、六月ごろになりますとコンニャクの値が次第に上り、それにつれてコンニャクの輸入の問題が連年夏ごろになりますと起きてくるというような状態をたどっております。昨年も七月ごろから順次値上りいたしまして、八月ごろになりますと十五万円を突破いたしまして、十七万円近くの相場が九月ごろに現出いたしたのであります。それに伴いまして全国の練り屋が、これは協議会を結成いたしておりますが、農林省に向いまして相当の陳情をして参ったのでございます。同時に国会におきましても、これは両三年以来毎度問題になりまして、入るべきであるという論議と入るべきでないという御論議とありまして、いろいろ御協議の結果、大体十四万から十五万見当を越した場合には入れて差しつかえないじゃないかという御議論もあったように記憶いたしております。昨年はたまたま本問題がちょうど九月ごろに、入れるべきであるという非常に大きな陳情になって参ったのでございますが、御承知のように九月ごろ輸入を許可いたしますとすれば、それが内地に到達いたしますのは大体十一月末から十二月になるかと思うのであります。十一月になりますと御承知のようになまコンニャクがすでに産地から出回ってくる。同時に十二月になりますと、いわゆる乾燥いたしましたコンニャクが農家から出回ってくるというような状態になりまして、ちょうど九月ごろに入れるのを許可いたしますと、農家のいわゆる出荷時期にぶち当ってくることに相なるのでございまして、昨年はそういうような事情からいたしまして、コンニャクの値段は相当の高値を呼びましたが、農林省といたしましては、農家に非常な迷惑を及ぼす最盛期に外国のものが少量でも入って参りますと、先ほど申し上げましたように、弾力性の少い商品でございまするから、少量の輸入といえども価格に非常な変動を及ぼす、しかもそれが農家の出荷時期にぶつかってくる、こういうようなことで、農林省といたしましては非常な強力な要望を押えて参ったのでございます。同時に生産者団体の方、特に群馬県には県庁その他団体を通じまして、あまりに法外な高値を出してもらわぬように、できることであれば十五万見当を越えないような売買にしてほしいということを強力に要望いたしました結果、群馬県御当局の非常な御尽力によりまして、その後十七万円、十八万円というような法外な高値の相場はなくなりまして、大体十五、六万の見当で売買された、こういうような格好に相なっているわけでございます。本年も幸いなまコンニャクの生産数量は、昨年に比べますると相当の生産増となっておるようでございまするが、御承知のように昨年の暮れから非常に天候が悪かったので、その点につきましていわゆるほしコンニャクの生産はまだ十分じゃないように考えておるのございます。今年もあるいはそういうような事態が現出してくるかとも思うのでございますが、これにつきましては、ただいま先生からお話がありました点は、私どもといたしましては十二分に了承いたしておりますので、決して群馬県の方あるいはコンニャク生産業者の方で法外な値を出していただかない限りは、当面の問題といたしましてはこれを輸入するというようなことは絶対にいたさない、かように考えておる次第でございます。
  24. 大橋武夫

  25. 井上良二

    井上分科員 この際農林省所管関係予算のうちで、特に食糧管理特別会計予算について質問をいたしたいと思います。先ほど新任の井出農林大臣から、石橋内閣の井出農政としての新規予算の概要の説明がございました。井出さんはかねてこの衆議院において、また与党の自民党内部においてもすぐれた農政通として、私ども非常に日ごろ尊敬をいたし、またお持ちになっておるいろいろな所見に感服をいたして、さだめし全国の農民が非常な期待をいたし、かつ一般消費国民もまた安心する農政並びに食糧政策を打ち出してくれるであろうということを非常に期待しておったのです。ところがこの予算書をずっと見て、ただいまの説明を伺っておりますと、作文としては実にきれいに書いて、御無理ごもっともの説明でございますが、重点を一体どこに置いておるのか。そしてこれを過去の農林予算と比べてみて、今日本は石橋内閣みずから言います通り、未曽有の好況期に入っており、神武以来の景気だと言われておる。そのために政府は二千億の新規増収を見込み、うち一千億を減税に充て、一千億を新規施策に充てるといわれるほど大胆な予算編成をして、今審議最中でありますが、ところが一方農林予算を見てみると、これは神武以来の低額な予算ですね。今までかつてない減額された予算ということが言える。なるほど今説明を聞いておると去年に比べて十七億二千百万円ふえておるという説明をしておる。十七億二千百万円去年よりふえておるかもしれない。ところがこの内容は人件費の値上りを差し引いてみたら一体何が残る、ほとんど何もありませんじゃないか、そういうごまかしな説明をしていかにもよけいふやしたようなことを言うておる。えらい農林省の予算が去年よりもりっぱであるとは言えません。人件費の加算をこれは見ておりませんか、見ていないで十七億二千百万円というておりますか、これはどうなっておるのです。まずこの点を明らかにしてもらいた。
  26. 井出一太郎

    井出国務大臣 今年度の農林予算について井上さんから御批判をいただいたわけでありますが、私ども決してこれをもって満足だ、りっぱな予算だと、こういうほどにはみえを切ったわけではございません。それで今御指摘の人件費の増高分がどうなっておるかというお話でありますが、大体農林省関係の人件費増は、八億見当ではなかろうかこういうふうに考えまして、これはこの中へ入っておる、かように御了承願います。
  27. 井上良二

    井上分科員 ただいま農林大臣から御説明通り、この十七億のうちに八億余りというものは人件費増が加わっておるという。そうするとあとわずか七、八億くらいしかない。それでは非常に事業分量がふえ、しかもやらなければならぬ事業がたくさんあるのに、さっぱり思うような仕事ができぬという結果になろうと思います。それに予算編成重点生産基盤拡充生産性向上、新農林建設の推進、農林漁業団体、災害補償制度等であるところ言うておる。これらはだれが農林大臣になっても当然やらなければならぬ当りまえの政策であります。何も新規な特別な目新しい政策とは言えません。なぜ私がこれを申すかというと、井出さんはわが国の農政の方向をどういう方向へ持っていこうとしておるか、それからわが国の農業の一番主要な農産物であります米麦生産で、わが国の農家経済というものが、国際農業経済の中で成り立つ経済であるかどうか。それから国民の食糧の構成から考えてみて、わが国の食糧の絶対不足の現状と、国民の体位の向上の見地から国民の食生活の方向を米麦中心の主食政策で貫こうとするのか、国民栄養食の方向へ持っていこうとするのが、どちらを一体中心にして農政をやろうとしておるか、これは農政を行う上においても、農家経済を安定する上から考えても、国民の食生活を安定さして国民の体位向上の見地から考えても、どうしてもこの問題は解決しなければならぬ一つの国としての使命であります。それをあなたはどうお考えになっているか、この点を伺いたい。
  28. 井出一太郎

    井出国務大臣 ただいまの御質問にお答えいたします前に、ちょっとその前の御質問に関連して一言申し上げます。本年度の農林予算は、なるほど絶対数字におきましては、人件費の値上りを考慮に入れますと、七、八億円前年度に比較してふえたという数字でございましょう。ただ内容になりますと、たとえば災害復旧の経費というようなものが、幸いに前年災害が少かった関係で、およそ三十億くらいのものが前年より減っております。その分は、実質的なメリットのある食糧増産その他に、それだけのものは入っておるわけでございまして、そういう意味からは、単に絶対数字だけでごらんをいただくのはどうかという感じがいたします。あるいはまた、農林漁業金融公庫融資のワクなども思い切ってふやしまして、こういう面からカバーし得る部分もございますので、さような点の御了承をまず得ておきたいと存じます。  それから今御指摘の、一体日本の農政の方向はどうなんだ、一体この国際環境のもとに日本農業というものが成り立つのかどうか、あるいは食生活の問題をどのように考えるか、こういうきわめて基本的な問題についての御質問でございました。日本の農政がただいま非常に困難な事態に臨んでおりますることは、井上さんも十分御承知のことと存じますが、御案内のように、終戦後しばらくの間は他の産業の水準が比較的伸びなかった、そういう時期にありまして、食糧の絶対量の不足というような問題からいたしまして、農村などにやみ価格が横行する部分などが多かったかと思うのであります。こういう時期には、農業というものが他の産業に比べまして、まあこれは決して正常な状態ではないと言えると思いますけれども、比較的農村が恵まれておったというような時代があったかと思うのであります。けれども、経済が逐次正常化の方向をたどって参るにつれまして、一方国際農業の圧力と申しますか、国際農産物価格が低落をいたして参るということによる国内農業への重圧、こういうものが出て参りまして、ようやく日本農業というものが困難な時期に入ってきておる。これはお認め下さるだろうと思うのであります。およそ一つの国が近代化して参る過程におきまして、それぞれの国において農村の占める地位というものが非常に困難であったことは歴史の示すところであろうと思いますが、しかし農村が、あるいは農業が、国民経済の中においておのずから占める地位というもの、これは日本の場合にどういうウエートをこれにかけるべきかということは、おのずから設定をいたしまして、そうして農林予算というものを作り上げなければならぬのであろう、こういうふうに私考えるわけでございます。それで米麦中心とする日本の農業が、農業それ自体で成り立つかという問題、これは御案内のように、統計の示すところによりますと、兼業農家というものが逐年ふえていく、このことは農業だけでは食っていけない証左ではないか、こういうことにもなるのでございまして、なかなか困難な条件のもとにおいて、この原始産業である農林漁業をどうして維持育成して参るかということは容易ではございませんけれども、しかしこれは成り立たしめなければならない、そういう方向へやはり農政というものを持っていかなければならない、こういうように私考えておるわけであります。  さらに食生活の問題でございますが、米麦中心として、特に米の飯というものに食生活がなれて参りましたこの日本の伝統というものを、今にわかに切りかえることが果して可能かという問題はよほど慎重に処理しなければならぬかと思うのでございます。一時なるほど粉食が非常にふえました。あるいは学童給食等の効果も現われて、食生活改善という方向が強く打ち出されて参りました。ところが昭和三十年、三十一年相当に豊作が続きました結果は、少し逆戻りをするというような現象も目に見えております。やはり米の飯が経済的には一番安上りにつくんだというようなこともあるのでございましょう。長年の食生活の伝統というものが、そう簡単に切りかわらない一つの証拠であったという感じもいたすのであります。従いまして私としましては、今の米食の習慣を一挙に粉食に切りかえるというふうな、百八十度の転換は、今直ぐには思いもよらないことでございまして、やはり米が反当カロリー生産量といたしましては一番高い、こういう事実にかんがみまして、日本のような過剰なる人口を養うためには、やはり米というものを離れるということは私はむずかしいと思うのであります。ですから基本はやはり米に置かなければなりますまいが、同時に絶対量が不足であるということは、これまた間違いないことでございまして、増産政策で一方追いついていこうという努力をいたしましても、人口がふえていくというこの現実の事態からいたしますると、なかなか増産で全部をカバーするというわけにも参りません。ですから副次的と申しては少し言葉が弱いかもしれませんが、まあ三食に一食くらいは米以外のものを摂取するという方向において、現実にマッチした具体的な食生活の改善という方向でいく以外にはないのではないか、大体このように考えておる次第であります。
  29. 井上良二

    井上分科員 この問題は非常に重要な問題であり、議論のあるところでありますから、一々ここで議論をしておると時間をとりますので、いずれ後ほど申し上げることにいたしますが、私ども大ざっぱに考えまして、日本の米麦作の農家の現状では、御承知の通り土地が細分化されまして、耕地が非常に狭くなってきておる現状、それから特に米作なら米作の場合になりますというと、政府で相当生産価格というものに対する補償価格をつけませんとやっていけない実情にありはせぬか。だから農家が米作なら米作をやりまして採算の合う価格というものが問題になってくる。しかしこれはやはり国際的な価格水準というものがございますから、二重価格をしない限り法外な高い価格で買い上げるということは困難になってきやせぬか。そうなりますというと、限界生産農家というものが非常に大きくなってきやせぬか。実際米作なら米作で生活ができるというのは、裏作のない地帯でもって一町五反なり二町を専業に作らなければ採算が合わぬ。それ以下は米作だけでは飯が食っていけない、裏作の場合は一町以上持ってなければだめだ、こういう数字がはっきり出ております。ですからこの農家の経済の実態を考えて、何を農村にもっと持ち込んだらいいか、農村を一体どう経営化していったらいいかという問題は、非常に大きな問題として考えなければならぬ問題であろうと思います。  私が特にこの問題を最初に聞きましたのは、食管の持っておる任務を考えるがゆえでありまして、政府が食糧統制をやっておる理由は、一つは農家の経済を安定さそう、一つはまた国民の食生活を安定さそうという二つの大きなねらいでやって参りました。ところが最近自民党内閣の長い間の食糧政策をやっておるあとを見ておるというと、あるときは米の統制はもう撤廃するのだということを盛んにふれて歩いて、一歩々々と統制撤廃べの裏づけの政策を実施してきた。その結果が今日食管の操作の上に、非常に国民から見ますというと判断のつかないといいますか、あるいはまた解釈のつかないといいますか、内容のよくわからないといいますか、いろいろな問題が食管の内部にたくさん含まれてきておるということであります。  そこで、ここで食管の会計の内容についていろいろ御質問申し上げたいのでありますが、たとえば食管の特別会計予算書を見ますと、損益決算では百四十一億八千二百万の損失を三十二年度見込んでおりますが、この損失の具体的な内容はどうなっておりますか。私ども伺うところによると、三十二年度の赤字は大体三百三十七億に達する。その内訳は内地米で百七十三億、それから内地麦でもって七十五億、外米の損害が十五億、農産物安定法といいますか、あれによる損害が約九億、合計して二百七十二億、この赤字は外麦の売り上げ百三十億の利益があるので、これを差し引くと純損金が百四十一億八千万円かになる。ところがこのほかに三十年度の赤字が三十四億、三十一年度の赤字が百六十一億あって、これをプラスすると三百三十七億、本年処理しなければならぬことになる、こういうことであるそうでありますが、これに間違いはありませんか。食管会計赤字内容について具体的な説明を願いたい。
  30. 小倉武一

    ○小倉政府委員 ただいまお述べになりました数字で大体よろしいようですが、ちょっと私の聞き違いかもしれませんが、違っている点もあるようでございますので、ちょっとその点を申し述べます。  三十一年度の予算の実行見込みでございますが、これによりますと損が百六十一億でございます。なお三十一年度に繰り越して参りました累年損が三十四億、合せまして百九十五億。三十二年度の予算の点につきましては、ただいまお述べになりましたのをまるめまして百四十二億、これが損でございます。その内訳といたしましては国内米百七十三億、国内の麦が七十五億、それから外国米が十七億、農産物が二億、飼料が七億、益の方が外国麦が百三十二億、差引いたしまして百四十二億、こういうことであります。
  31. 井上良二

    井上分科員 ただいまの赤字の内容によりますと、外米の損害が十七億あるという。外米の去年輸入しましたのが六十六万トンかございまして、そのうちで在庫をしておるものがまだ相当あって、このうちに問題になりました病変米、通称黄変米と申しておりますが、この病変米が十二万五千トン倉庫に在庫をしておるというのですが、この六十六万トンの輸入のうちで配給できますものが二十二万何トン残っておって、そのほかに黄変米の配給できませんものが十二万五千トン在庫をしておる、こういうのですが、それに間違いありませんか。
  32. 小倉武一

    ○小倉政府委員 病変米の在庫でございますが、これは二月一日で十一万七千トンでございます。ただいまお述べになりました十二万五千トンいうのは昨年の秋の在庫でございます。なお外米の輸入でございますが、三十一米穀年度、昨年の十月末までの一年間でございますが、これで約九十万トン輸入しております。三十二年米穀年度、去年の十一月から本年の十月までの計画でございますが、これによりますと砕米を入れまして三十七万六千トンでございます。砕米を除きますと三十四万六千トンという計画になっております。六十万トンとおっしゃいました数字がどの辺の数字かちょっとわかりかねますが、私どもの計画としてはそういう計画になっております。
  33. 井上良二

    井上分科員 そうしますと、ただいま申しました外米の十七億の損害の中には黄変米はどうなっていますか。黄変米は普通の輸入価格で売れますまい。そうするとこれは当然工業用その他にトン当り一万五千円かそこらで払い下げているようでありますが、一万五千円見当で払い下げました場合はこの損害だけでもものすごい損害になりますが、概数約四十億といわれておるこの損害は見てないのですか。それはまたもう一年間じっと年間倉庫料四億円を払って持っていくつもりですか。これは別にしておきますか。それとも虫に食わせますか、どうします。これは今十一万七千トンと言いましたが、どうするつもりです。これは今の外米の損害の中へは計算をしてない。
  34. 小倉武一

    ○小倉政府委員 病変米関係ももちろんただいま述べました損の中に入っておるのであります。損の見方につきましては、これは大部分はただいままだ在庫のままでございますので、病変米の処理によりまして、どの程度の損が出るかということは、非常な推算の域を出ないのでありますが、ただいまお述べになりましたような一万数千円といったようなものでしか処分できないというわけでもございませんで、よほど悪いもので、たとえば工業用アルコールといったようなものに向けるとすれば、あるいは二万円以下でしか処分できないということにもなろうと思いますが、そうでない比較的良質のものもございます。全部まるまる損になるというようなことはなかろうと考えております。もちろんこの十七億の損のほかに先ほど述べました三十年の損の中にも病変米の売買の損金でありますとか、あるいは保管料といったようなものも出て参っております。また今後も出得るものでございます。
  35. 井上良二

    井上分科員 もう一つちょっとその点で伺っておきますが、この三十年度の食糧特別会計の報告によると三十年度に赤字が百六十七億出て、そのうち百億円はインベントリーで処置をして、さらに一般会計から受け入れた分が学童給食用の分を合せて八十五億受け入れている。そうするとこの百六十七億というものは帳消しになっておるのに、ただいまの御説明によると、さらに三十四億円が三十年度の赤字として再び姿を出してきましたが、この三十四億円の三十年度の赤字というものは一体何ですか。
  36. 小倉武一

    ○小倉政府委員 三十年度の損金についての経過的な点はただいまお尋ねの中にございましたようなことであります。繰り返して申し述べる必要もあるいはないかと存じますが、お話のように一般会計から繰り入れましたのは八十五億、これは損の填補という意味のものはこの中で六十七億でございます。その八十五億と六十七億の差額はお話の学童給食と被害農家に対する米の安売りの分が入っております。そのほかインベントリーを入れまして、百億。三十年度の補正のときには、それでもって三十年度の特別会計は収支の均衡がとれる、こういうことであったのであります。お尋ねの点は、にもかかわらず損が出たのはどういうわけだ、こういう点かと存じますので、その点を項目だけ申しますと、一つはその当時の補正予算のときに想定しておりましたよりも、内地米の買い上げ単価が上ったのであります。上りました理由は、早場米とそうでない米とは値段が違っておりますが、早場米でない米が相当入ってくるだろうということで、全体の単価を低く見ておったのが、早場米でない奨励金のつかない時期に入ってくる米が、比較的予算の想定よりも少なかったために単価がふえました。それから希望配給が予算で想定しておったようには出ませんでした。そういった理由が一つあります。それからもう一つは、外米の輸入単価が予算で想定していたよりも高かった。のみならず一方売る方は外米の売却価格を引き下げて売ったようなことをいたしましたし、また売却の数量予算で想定したように売れなかった、こういった事情。それからまた外麦につきましては、いろいろ船の関係等によりまして内地に到着する分が少くなりましたので、いわば内麦で立てかえて内麦の売却がふえた。内麦の売却がふえますと損がふえるという関係で、損がふえるということもございます。それから飼料需給安定法関係飼料用麦、この麦もやはり外麦が減りまして益が減るといったような点も損が出ている一つの要因になっております。そのほか内麦を三十一年四月から下げるということで、在庫上の評価、決算上の評価を引き下げるということでだいぶ損が出た。そういったような多様な要因が加わりまして、補正予算のときの想定と三十四億近くのものが狂いを生じた、こういうことに相なっているのであります。
  37. 井上良二

    井上分科員 どうもおかしい。あなたは前の食管長官でなかったから、あなたを追求してみたところで困るだろと思うけれども、三十一年度、三十年度の補正予算はたしか一月か二月に出てきている。一月二月に出して、あともう一月でその年度が済んでしまうのに、その年度間の赤字の推定が——まあ一億や五億ぐらいのことなら、八千億からの大きな世帯の特別会計ですからそのくらいの誤差、見込み違いが出てきたにしても、四十五億というようなものが補正予算を出した後にさらに数年たって現われてくるというようなことになると、一体何のために国会は審議しているんだ、あなた方の出してきている予算書というものは正確な基礎に基いておりはせずに、そのときそのときのつじつまをいいかげんに合しておいて、そうして実際積算をした結果、最後には確実なものがこうなったというて、また翌年予算国会承認に出せばいい、そういうめちゃくちゃなことをやられたのでは国会の審議はできません。これがお話のように、早場米奨励金を出す時期等で、早場米奨励金を出します予定の早場米がどのくらい出てくるか、またそれに見合って外国食糧の国内売り上げがどうなっていくかという、その当時の予算でありますならば、それは年度末においてこういう狂いがきましたということはいわれますけれども、大体国会予算を審議いたしますのは一月末から二月、三月にかけてでありまして、会計年度末であります。会計年度末に補正予算を出しておきながら、それがその翌年々々とたって、三十二年度の予算審議に、実は三十年度の赤字がこれこれあります、これもついでに片づけてもらわなければ困ります、こうやられてきたのでは、一体私どもは今まで何の予算を審議しておったんやと国民から言われる。お前らは一体何を審議しているのや、こういわれたら、あいた口がふさがらぬということはこのことじゃ、はなはだ困る。かような予算を提出して、それで審議してくれというてみたって、これはちょっと困りますが、この問題を一つ懸案にしておきます。  そこで問題は、三百三十七億という膨大な赤字が何ゆえに出ておるかというと、一つは、はっきりしたことは、生産者米価と消費者米価の格差が、中間経費を見まして、はっきり赤字が出ることになっておるんだ、すなわちコスト主義の上から割り出された当然の赤字。いま一つは外麦、外米輸入や、あるいはまた国内の異常な豊作や内地麦の買い上げ等による、業務運営上どう考えても妥当と思えない措置、これが赤字を生んでおる原因でないかと思う。第三は国の食糧政策なり農業政策としてやっている政策上の、当然国が責任を持たなければならぬ、別な言葉で言うと、一般会計で持つべき経費を食管会計に持たせている。そのことが結局食管の赤字を累積させているんだという、大きく分けてこの三つが大きな赤字を出している原因になっていないかと私ども考えるわけです。そこで大臣に伺いますが、一体大臣はこの大きな赤字をどうやって穴埋めするつもりですか、これを伺いたい。  そこで今大臣が御説明になりました農林省予算概要の説明の食管会計説明を聞くと「この会計予算編成に際しましては、種々論議のあったところでありますが、今後の運営方針、特にその合理化につきまして、新たに特別調査会を設け、十分に有識者の御論議をいただいた上、善処することといたしました。」こう書いてある。これが実は問題なんです。この予算編成は赤字のままで出されている。今まで政府が出してきた予算で、赤字のままで国会の審議に供した予算は一ぺんもありません。どういうわけで井出農林大臣になって赤字のままでこの国の総予算に次ぐ大きな、八千六百億の膨大な特別会計予算書を提出したか。あなたは国務大臣として内閣を構成している閣僚でありますが、その閣僚の責任は憲法第七十三条に規定してある。憲法第七十三条の五項に、予算を作成して国会に提出せよ。八十六条には、内閣は毎会計年度の予算を作成して国会の審議を経てその議決を求めなければならぬと書いてある。これは内閣に課せられた責任であります。そこで内閣は予算編成の基本となりますところの給与ベースを何ぼに押えていくか、それから物価指数を何ぼに押えていくか、その物価指数の裏づけになる米価を一体何ぼに押えていくかということが、予算編成の根本的な問題でありまして、この予算編成の基本問題になります米価をきめずに——その米価はきめずではない、きめてはありますが——この説明によるとその次に(イ)の欄に「米につきましては前年度に引き続きまして事前売り渡し申し込み制度を実施して集荷を確保するとともに、配給につきましても従来通り消費者家計の安定をはかることを本旨とする方針であります。」こういうことが言われている。しかるに石橋内閣の閣議は、本年一月消費者米価一升当り八円五十銭を引き上げ百十七円五十銭にするということを決定したのです。閣議でこれがきまらぬと予算も組めますまいから、そこで一度決定してこの予算編成にかかった。ところが外部の圧力というよりも党内の方から、石橋内閣を作っている自民党内部の派閥の力が強くなってきて、この力のためについに閣議決定をしながらその決定を取り消した。農林大臣は国務大臣として閣議で決定したこの米価をどういうわけで取り消されたんですか。一体どういうわけでつじつまの合わぬ赤字予算国会の審議に供したのですか。その点まず農林大臣から伺いたい。
  38. 井出一太郎

    井出国務大臣 だんだんの御質問でありますが、非常に広範にわたっておりますので、あるいはお答えが漏れましたら、後ほどまた指摘していただきたいと思います。井上委員御指摘の通り食管特別会計というものが非常に複雑な仕組みに相なっておりまして、そこには赤字の出る要因というものがいろいろございます。今およそ三点にわたって御指摘があったと思いますが、一つは生産価格と消費者価格との設定の建前が本質的に赤字が出るように組まれておるのだ、こういう御指摘、あるいは運営の面において特に豊作が二年続くというようなことから、異常なる在庫量ができた、ないしは外国食糧の手当をするに当ってあるいは見込み違いとでも申しますか、必要以上の大きなものをかかえ込んで、これが運営上の不手ぎわから赤字が出る。ないし第三点としましては、農産物価格安定法による特別な価格指示政策の面から、農産物を買い入れたものの赤を、食管がひっかぶっておるというような点もあろうかというような御指摘は、私どもも痛感をしておるところでございまして、何とか食管会計のあり方というものをすっきりさせたい。単に赤字が出ればそれを一般会計からしりぬぐいしてもらうので事足れりと考えてはいけない。こういう考え方の上に立ちまして、今回これに対する何らかの措置をしなければなるまい、こういうふうに実は考えた次第でございます。  そこでこの当面の事態と取り組みまして、鋭意食管の内部にメスを入れまして、そうしてこの機会にその正しいあり方を発見いたしたい、こういうふうに念願いたしておることをまず御了承をいただきたいと思います。  そこで、一体閣議決定をしたのにもかかわらず途中で引っ込めたのは何事かというお問いでございますが、確かに御指摘のようにこの手順といいますか手続といいますか、決して手ぎわのいいことではございませんことはおっしゃる通りであります。ただ問題をより慎重に考えまして予算編成を取り急ぐということのために、こういう国民生活にきわめて重大な影響を及ぼすような問題を、それだけの観点から処理いたすのもいかがか、むしろ十分世論にもかんがみ、そうして有識者の御意見も伺った上で慎重に取り扱うことの方がよりいいのではなかろうか、こういうことで当面据え置き価格のままで参りまして、それらの問題は、食管の合理化、健全化の線とも合せまして、そうして特別調査会に御論議をしていただこう、こういう気持に相なったわけでございます。  それから赤字のままで予算を組んで出すのはまことに無責任ではないか、こういうお話でございますが、少くとも三十年度あるいは三十一年度に生じました赤字というふうなものは、これを今後の価格体系の中で処理をするというのは不適当でございますから、これはおそらく一般会計で跡始末をする以外にはなかろうと思います。けれども、先ほどもだんだん御指摘がございましたように、ただ漫然と赤字が出たから、それを一般会計からふいてもらえば能事足れりという考え方ではいけないという観点から、これらの年次につきましてもやはりあからさまに実際の数字を提示いたしまして、そうして御検討を願うよすがに供したならばいかがか、このように考える次第でございます。そうして財政全体といたしましては、これらの赤字に見合うべきものを十分に用意をしておる。たとえば昭和三十一年度の剰余金というふうなものが相当に大きく見込めるのでございますから、そういうものを見合いといたしまして、財政全体としてはこれは決して健全化の方針を逸脱しておらない、こういうふうに御了解をいただいたならばけっこうかと存ずる次第でございます。
  39. 井上良二

    井上分科員 これは井出さんから御親切な御答弁のようでございますけれども、われわれから考えると、なっていない。と申しますのは、今いろいろ御丁寧な御答弁でおそれ入るのですが、これは小学校へ行っておる子供でもはっきり赤字の出ておる内容はわかっておる。ここへずらっと農林省のおえらい方が並んでおって、そうして食管には二万五千人という人を使って、年間四百億の金を使っておるのですよ。それでもってなお食管の運営の内部にメスを入れてみなければ、赤字の出ておることに心やすう手当はできぬという、あなた、そんなだらしのないことが言えますか。生産者米価は一万七百円ですよ。一万七百円で買うたものを消費者には一万九百円で売っているじゃないですか。当然食管経費には赤字が出てくるわけです。この赤字を消費者に負担させるか、一般会計から繰り入れるかなんです。この二つしかないですよ、われわれ社会党は二重米価制度を主張しておりますが、自民党は消費者米価負担ということでいっておるわけだが、消費者米価負担なら負担でいいじゃないか、はっきりしておるじゃないか。何もしちめんどくさいことを言う必要あらへんじゃないか。一升売ったら何ぼ損やということはわかっているじゃないか。合理化もくそもあらへんのやないか。その他の運営上のことについては、それはいろいろ検討もすれば、もう少し金利の安い方法もあろうし、あるいは運賃ももう少しうまい方法で安くならぬかとか、あるいは集荷奨励金、協力金あるいは農協に払っておるいろいろな倉庫賃、運賃というようなものは何とかならぬかという、そういう点についてはいま少し専門的に諸般の事情を検討した上で、最も妥当な経費をはじき出すということは言われるかもしれぬけれども、一番本家本元の生産者米価と消費者米価との価格差というものははっきりしているのですよ。これをどうするつもりです。あなたは特別調査会に逃げるように言うておるが、特別調査会というようなものは法的根拠のあるものではありませんよ。これを法的根拠によって作るつもりですか。それはどうですか。その点まず伺いましょう。
  40. 井出一太郎

    井出国務大臣 特別調査会は別に法的基礎を予定しておりません。内閣へこれを設置いたす予定でございますが、かりに法的基礎はなくても、十分に尊重し、その権威を認めて参りたい、こう考えております。
  41. 井上良二

    井上分科員 冗談言うちゃいけませんよ。食管法に基いて農林省設置法によってきめられておる米価審議会というものが農林省にあるのですよ。これはあなたも御存じの通り、各方面からのそれぞれの権威者を集めて、しかも非常に慎重に生産者米価、消費者米価を検討してきている。中間経費もたびたび食管会計合理化について検討をしてきてくれておるのです。これは法的根拠を持っている。そして法的根拠を持って構成されておる米価審議会の答申さえ・今まで政府は聞いたことがないじゃないか、答申さえ尊重したことはないじゃないか。答申さえ尊重せぬでおいて、法的根拠のない、聞くところによると与党だけで多少外部の専門的な学者でもお茶をにごすために入れて、それで結論を出してその意見は尊重します。片一方の法的根拠を持って、野党も入り、消費者、生産者その他学識経験者も入っておりますところの米価審議会の答申は一向尊重しない、そんなむちゃくちゃな話がありますか。それはあきまへん。
  42. 井出一太郎

    井出国務大臣 米価審議会は、井上さんも従前委員をお勤めいただいたこともあり、今御指摘のように、まさしく法的基礎をもった権威ある機関でございます。私は決してこの米価審議会の意見を尊重しないなどということを申した覚えはございません。考え方は、今回政府に設置される特別調査会は、いうなればその前段階において、政府の心がまえ、腹がまえと申しましょうか、そういった問題をきめるための機関でございまして、米価審議会に対しては、具体的な米価、麦価、こういうものの政府諮問案について、閣議了解を得た上に、諮問をいたす方針に相なりますが、この調査会の方は、むしろそれ以前の問題といたしまして、食管会計合理化、健全化を目途にして、あるいは業務運営の問題でありますとか、一般会計の負担の考え方でございますとか、あるいは米と麦の価格体系、それからさっきお話の出ました農産物、つまり安定法に基く農産物であるとか、えさであるとか、あるいはテンサイ糖のごときものの扱い方をどうするか、こういう政府の基本方針をきめるに当って、この機関に御意見を求める、こういうふうに、その間、分離してお考えをいただければけっこうかと思っております。
  43. 井上良二

    井上分科員 政府の基本方針がきまっていないのに、一体何を根拠にして特別調査会なるものにおいてきめられます。政府の基本方針はこれこれだといって、案を示して、こういう行き方で行こうと思うが、一体皆さんの御意見はどうですかという、一つの結論を得ることに協力を願うことも、これは広く意見を聞き、知識を求め、妥当な結論を出すことの方法としてはいいことかわかりませんけれども、今あなたがおっしゃったその食管の運営をどうしよう、赤字がどういうわけでどこから出てくるだろう、そういうことを、この八千数百億に上る膨大な食管会計を、一週間や二週間議論したってわかりませんよ、こんなものは……。わからぬようにできておるのです。そういうことこそ政府の責任ではっきり処置すべきです。政府の責任において、当然一般会計で持つべきものは一般会計にこれを返し、そして一般会計が負担すべきところの食管検査費その他の食糧政策として行なっておるものは、これを一般会計の負担に返して、整理すべきですよ。そうしてほんとうの純欠損はこれこれが出てくる、この欠損に対しては、一般会計から穴埋めするか、あるいは穴埋めができなければ消費者米価を上げるか、どちらかの態度をきめるべきですよ。政府がきめなければどこがきめますか。政府予算編成と並行してきめなければならぬものをきめずにおいて、予算国会を通ってしまうわ、あとから法的根拠も何もない特別調査会が、消費者米価はかねて政府が主張しておる通り一升八円五十銭方上げてよかろうという答申をしたら、どこからどういう方法でこれをやろうとするかしりませんが、また米価審議会に諮って御決定を願うかわかりませんけれども、ともかくあなた、予算通過後に起る現象なんだ。国民としてははなはだ迷惑だ。国会議員としてははなはだ権威のないことなんだ。だからこの問題は当然予算審議と並行して、政府方針をきめなければならぬ。消費者米価を何ぼにするか。ところがあなたの説明によると、従来通り消費者家計の安定をはかることを本旨とする方針でありますというから、これは消費者米価は上げないという方針ですか。その点どうです。
  44. 井出一太郎

    井出国務大臣 政府としましては、今おっしゃいますように、最終責任は政府においてこれを決定をいたさなければなりません。ただその間、先ほど来申し上げますように、より慎重を期する、こういう意味で、特別調査会の機構を考えておるわけでございます。  それから先ほどの私の説明に消費者の生活、消費家計の安定をはかるということを申した次第でございますが、これは当面予算の作成は消費者価格は据え置きのままでいっておる、こういうことを意味しておる次第でございます。
  45. 井上良二

    井上分科員 そうしますと、あなたは今のこの予算をわれわれが審議しておる間だけは消費者家計の安定をはかることを本旨とする、消費者米価は上げないということでいく。ところが国会が済んで、政府お気に入りの人を委員に委嘱をして、そうして池田さんとあなたとお話になったように、一升当り八円五十銭上げることが望ましいという特別委員会の結論が出てきたら、今度は予算とは関係なしに消費者家計は不安定な方向へ持っていくことになりますが、あなたそんな変な、ややこしい予算政策も米価政策もありませんぞ。
  46. 井出一太郎

    井出国務大臣 井上委員、すぐそういうふうに勘ぐって国会との関連、あるいは予算が通過してしまってから、あとどうするだろうというようなうがったお考えをなさらずに、率直に一つお受け取りをいただきたいのでございます。それは先ほど来申し上げておりますように、より慎重を期する意味において特別調査会にゆだねる、こういうことに相なっておりますので、そこから出ました結論を参照いたして政府の態度を決定いたしましたならば、これはまたその上で国会に御相談をする、こういうふうに御了承をいただきたいと思います。
  47. 井上良二

    井上分科員 農林大臣は盛んにより慎重、より慎重と言うけれども、赤字の出た内容というものは明確です。慎重もくそもないのです。これはだれに見せたって赤字の出ておることは現実なんです。この赤字をどういうめがねで見せた場合はどうなるという、そういうものじゃありません。これははっきり算数で出てきますから、慎重に時をかせげばかせぐほど——この結論がつくまではこれを借入金で一時この赤字のつじつまを合せておこうというのでしょう。借入金をどこから借りるか知らぬが、借りた以上は利子を払わなければならぬ、利子を払う以上はそれだけまた消費者米価にその負担がいくんですよ。何のことはない、あなたは値上げは決してやらない、うまくやってやろうと思うかしれないけれども、逆になってくるじゃないですか。この米価決定は政府の責任ですよ。米価をきめないでここへ出してきておるところに問題があるんですよ。これは農林大臣としてもっと責任を感じてもらわなければいかぬ。あなたは慎重に考えたっていいかしらぬけれども、国会は迷惑しますよ、国民は迷惑しますよ。しかも法的根拠のない、単なる諮問機関にすぎないような調査会を作って、そこで政府の責任を逃げ込もうなどということはいけませんぞ。
  48. 井出一太郎

    井出国務大臣 決して責任を回避するというのではございませんで、先ほど来申し上げておりますように、より慎重を期したいと考えておるほかに他意はないのでございます。それで先ほど来おっしゃるように、これは一般会計から埋めるのか、あるいはコスト主義を貫くのか、こういうあたりも、実際を申しますとなかなかその限界がむずかしい問題でありまして、従来といえどもこれは果して完全な二重米価かどうかという段になると問題はあった。あるいは八円五十銭というようなもので完全にコスト主義が貫かれているかというあたりにも、実は問題があろうかと思うのであります。そういうあたりをこの際もう少しすっきりさせたい。さっきも御指摘のように、食管会計でまかなわずに当然一般会計から補填をすべき性質のものもあろうか、こう思いますので、そういう仕訳などもこの機会に十分にいたしてみたい、こういうつもりでおるわけでございますので御了承を願います。
  49. 大橋武夫

    大橋主査 井上君にお諮りいたしますが、もし相当まだ時間がかかるようでしたら、この辺で休憩いたしたいと思います。
  50. 井上良二

    井上分科員 まだ序の口でございまして、特にこの際農林大臣に午後の劈頭に私が伺うことについてご相談をしていただきたい。といいますのは、ただいま私が質問をいたしておりますのは予算編成の根拠となる米価の問題でございますが、この米価を上げようということを一ぺんきめておきながら、それを上げぬ。しかも赤字のまま出されておる。そうなりますと、政府特別調査会を作って、これを合理化するための御検討を願うという御答弁でございますけれども、政府みずからこの特別調査会に臨むに当って、この調査会に諮問する諮問案を出さなければならぬ。単に食管特別会計合理化するための御検討願いますというような抽象的な問題でない。問題は食管会計の赤字の処理中心としておりますから、この赤字処理に対して政府は一体どうしようとするのか、どうしたらいいと考えておるか、これは当然政府の責任として特別調査会であろうと国会であろうと、政府の考えておる所見というものを明確にすべきであります。その点を一つ十分御検討を下さって、午後劈頭に御答弁を願うようにお願いをいたして、暫時私の質問は保留しておきます。
  51. 大橋武夫

    大橋主査 午前の会議はこの程度にとどめ、午後は二時より再開して農林省所管に対する質疑を継続することにいたします。  暫時休憩いたします。    午後零時五十八分休憩      ————◇—————    午後二時十三分開議
  52. 大橋武夫

    大橋主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  農林省所管について質疑を継続いたします。井上良二君。
  53. 井上良二

    井上分科員 午前中に引き続いて質問をいたしますが、午前中に私が質問をした重点は、問題は三十二年度赤字の処理について政府当局は食管会計全体の合理化を目途とした調査会を設け、この調査会の答申によって善処をする、こういう御答弁でございました。そこで私は、この調査会へ臨むに対して、政府はおよそこの赤字の処理に対する、また食管の合理化方策に対する政府としての一応の諮問内容を用意せなければならぬはずだと思う。これが全然用意されずに全部おまかせをする、いかなる結論を出そうとも御自由であるというわけには参らぬことであります。少くとも調査を委嘱いたします以上は、必要な書類を全部そろえて、参考資料をととのえ、それに対して政府の見解というものを一応つけて政府はかように考えるがという点の一応の指示をいたしまして、それによって意見を聞くということが従来の諮問機関に対する政府の運営の態度であります。従って、この赤字処理に対して、さいぜんも申す通り政府はコスト主義を貫こうとするか、それとも二重価格制度によろうとするか。いかなる方法によってこれをやろうとするか。どちらを一体妥当とするかという政府としての心がまえは当然きめておかなければなりません。また政府はその結論によって当然態度をきめるといいますけれども、われわれは予算を審議しておるのでありますから、この結論がどう出るかというような、そういう海のものとも山のものともわからぬというようなことを予定して、国民に重大な利害関係を持っております食管会計の現状を赤字のままで通すというわけには参りません。ですからこの際政府の心がまえとして調査会に臨む態度として、一体この赤字はいかなる方法によって穴埋めしようとするか、政府の持っております具体的な腹案をお聞かせを願いたい。
  54. 井出一太郎

    井出国務大臣 井上委員から午前中の御質問に引き続いて、ただいまそれをさらに敷衍しての御質問がございました。食管会計は現在巨額の赤字を持っておりまして、これを現状のままに推移いたしますれば、さらに赤字が累増するであろうと予測されるのでございます。  そこで同会計の全般にわたって検討を加えまして可能な限りの健全化をはかることが必要であろうかと考えるのであります。そのためには消費者米価その他米麦価格体系あるいは米麦等の中間経費の問題、澱粉等価格支持に関する赤字の要因とその処理方法その他ございましょうが、これらを究明しまして赤字の原因の除去と合理化対策とを打ち立てる必要があろうかと思うのでございます。こういった事柄が調査会に対する諮問の内容でございまして、あらかじめ政府が具体案を持ってこれを調査会に押し付けるというような考え方はいたしたくないのでございます。  ただそれだけではおそらく井上委員御不満でございましょうが、この際私の気持として考えておる点を申し上げるならば、この食管の赤字処理の方法として消費者価格にしわを寄せるということはもとより好むところではございませんが、しかし全体をにらみ合せますると、消費者家計の安定を阻害しない範囲におきまして、やはり消費者価格にも手をつけなければならぬのではないかと考えておるのでございます。  ただ消費者価格の点だけで赤字の全体を処理できるものでもなし、またすべきではなかろうと考えますので、食管の合理化、健全化の一方法として、どの程度に消費者価格の引き上げの可能性があるか、こういうふうな問題、またどのような方法がそこに見出されるかというあたりを一つ検討していただきまして、その調査会の結論を待って政府としての具体案を得たいというのであります。その具体案ができまして、これを米価審議会に御諮問申し上げる、こういうことに順序としては相なるだろうと思うのであります。  それから三十年度、三十一年度の赤字、農産物等の安定策による赤字などにつきましては、これは一般会計から繰り入れるということが考えられるのでありますが、根本的にはこの食管の全体の問題と関連をして一つ検討をしなければなるまい、このように存じております。  それから中間経費合理化は、これは非常に多方面に及ぶ問題がありますので、食管運営全般の改善ともにらみ合せまして、合理化推進する方策を立てたいと考えております。  それから麦価の体系の問題がございます。これは現在相当ひどい逆ざやになっておることは御承知の通りでありまして、麦価については、麦作農家の安定と、また一方食生活の面からの再検討の時期にもなっておろうかと思うのでありまして、この意味において麦の買い入れ価格決定の方法などにもまた検討を加えていただき、麦作合理化あるいは麦作農家の経営安定策を立てまして、そうして弾力性のある運営が可能になるような方途を見出して参りたい、大よそこのように考えておる次第でございます。
  55. 井上良二

    井上分科員 はなはだ抽象的な何でございますが、私の伺っていますのは、午前中からたびたび繰り返しております通り、赤字の原因というものが明確でございます。その明確なる赤字を特別調査会に付託をしたからというて、その赤字が消えるものでもありません。ただ今後業務上の運営なりあるいは食糧政策、農業政策等の政府の考え方から、一般会計で持つものと食管会計にしわ寄せするものとをどう区分するかという予算編成上の問題が残っているだけであって、純粋の赤字というものは、特別調査会にこれを委託したからというて消えるものではないのです。ただこの赤字がどうやって出ておるかということをせんさくして、その業務運営の上における赤字を多少緩和するといいますか、合理的な運営によって赤字の高をできるだけ少く圧縮する方法は、金利の操作やあるいは運賃の合理化やあるいは倉敷保管料の改訂等いろいろやり方はありましょう。その面における経費の節約による赤字の減少ということは多少は考えられますけれども、本筋の赤字はどうやってみたって消えるものではないと私は考えております。ましてやこの特別調査会が扱います場合に、単に三十二年度の食管赤字をどうするか、どうやったがいいか、いわゆる消費者米価を上げるのを妥当とするかあるいはまた一般会計から補てんするのを妥当とするか、どちが今日の情勢、国民生活の現状からいいかという政治的な判断を求めるにすぎないのであります。私はそう思っておる。またかりにそういうことを求めようとしても、一体この三十二年度産米の買い入れ価格が果して一万円見当で農家が妥当とするかどうかという問題もございましょうし、あるいはまた三十二年度の麦の買い入れ価格というものも一体前年度通りでいいのかどうかという問題も当然起ってくるのです。これら生産者米価、生産者の麦価というものが、政府は一体予算に組んであるだけでいいとするのか。もしそれ米価審議会において本年度の麦価はこれを妥当とするという答申が出され、あるいは本年の産米に対してこれを妥当とするという答申が出されて参りますと、特別調査会がいかなる結論を出そうとも、再びそこに新しい赤字の発生というものが起って参ります。ですから、問題の本質は、政府が本年は予算通りの米価でいく、予算通りの麦価でいくという基本的な方針をきめております以上は、当然これから出てきますところの赤字の処理に対しては、いわゆる消費者米価を上げてこれを補てんしようとするか、それとも、さきにもちょっとお話が出ましたが、三十一年度の自然増によってこの赤字は穴埋めをしようとしておるのか、一体いかなる方法によってこれをやろうとするのかという政府の心がまえ、腹がまえというものがその特別調査会においても政府側に対して質問されるのは当りまえです。当然質問されることです。その場合あなた方の良識によって、あなた方の公正妥当な御判断によって、消費者米価を上げるのがいいというならば、政府はその通りにいたします、また一般会計から繰り込むのが妥当とすればそういたします。そういう不見識なものじゃないと私は思います。少くとも政府は一つの見識を持って予算編成している以上は、当然その予算にのっとって消費者米価に対しても、一つの見識のある意見を持っておらなければならぬ、私はそう思う。そうでないと、われわれこれから予算を審議いたす場合におきましても、今お話のように、かりに政府予定をしておりましたような一升当り八円五十銭値上げをするとして、本年度の赤字がこれこれということを考えておって、そのうちで消費者米価がこれこれ上ったからこれだけは相殺できた、ところがそれだけではまだ赤字全体は消えないという問題がここに残ってきます。しかもその赤字の処理については何ら政府国会において明確な答弁をされておらぬ。されていないのにわれわれは予算を通さなければならぬ、成立させなければならぬ、そういう事態になるのではありませんか。予算を審議しておる国会といたしましては、そんなつじつまの合わぬ意見によって、予算を成立さすわけには参りません。国会をなめるとあきまへんぞ。国民から預かった金を使う政府であり、国民から預かった金をどう有効に国家国民のために使うかということを審議しておる国会としましては、責任のある審議をしなければなりません。無責任な審議はできないのであります。従って赤字予算を出しております以上は、その赤字処理に対して政府の基本的方針というものをお示し願わなければ、政府を信頼してこの赤字の穴埋めに対しての処置がまかされぬじゃありませんか。乗った汽車がどこに行くかわからないのに、そんな汽車に乗れますか。そうなるじゃありませんか。ですからこの予算を通してもらい、成立させてもらおうと思うならば、この赤字の処置はこうしますということを言わぬことには、——何も法的に国家機関として当然そこを通らなければ結論が出ないという機関ではなし、政府が窮余の措置としてやろうとしておる特別調査会というへんてこなものによって予算が曲げられ、結論がつけられるというようなことは、国会としては見のがすわけには参りません。もしあえてあなた方が特別調査会を作るというならば、正式に法律を出して、その法制において正式な機関として、米価問題についてはこれこれの機関で結論を出してもらうという、国会の承認を得て処置をまかすべきであります。そうでなければ、結局特別調査会の一切の責任は政府にあるのでありますから、政府がその結論に対して見通しを持たなければ、はっきりした結論を言えないという今日の状態では、この予算をわれわれが審議するわけにはいかぬことになります。この点に対してどう農林大臣はお思いになりますか。
  56. 井出一太郎

    井出国務大臣 今だんだんのお問いただしでありますが、政府といたしましては、もちろんこれは最終的の責任を持たなければならぬものと、こういうふうに考えておる次第でございまして、特別調査会に諮って、より慎重を期するということは先ほど来申し上げておる通りでありますが、責任はあくまで政府にある、このことは御了承をいただきたいと考える次第でございます。  さらにいろいろ御指摘がございましたが、赤字の問題はもうすでに明確である。これを一般会計から埋めるか、あるいは価額で調節するよりほかないじゃないかと仰せられますが、実はまだこのあたりも慎重に検討をいたしまして、たとえば従来とも食管の管理費の内容などにつきましては、これを一般会計にまかすべき部分もあろうか、あるいはそれ自身米価の中へ織り込むべきであろうかというような主張もございました。その他いろいろ問題点はあるのでありますが、こういうことをも一つ調査会の御検討を待って、そうしてより慎重に誤まりなきを期したい、こういう考え方でおるわけでございます。
  57. 井上良二

    井上分科員 今あなたがどうしても特別調査会の結論を待とう、慎重に検討をする必要が起ったからより慎重な態度で臨みたい、そうおっしゃるなら、この予算審議と並行して、ちょうど在外資産の国家補償に見合うために公債利子十億円を計上いたしまして、その元金及び利子、さらにその発行額というようなものが裏づけされていないということで、予算委員会で問題になりまして、遂に大蔵大臣は元本及び利率、発行額等については、予算成立までに十分一つ裏づけになる資料を作るということを明らかにされたのであります。それと同じように、少くともこの赤字をこれからどう処理しようとするかということについて、より慎重を期したいというのならば、特別調査会に対しての法的な一つの権限を与えまして——これは一つの予算審議を特別調査会に譲ることになるわけです。われわれに言わせればわれわれに付託されておりますところの予算審議権の一部、米価値上げということと食管会計全体の合理化という、食管会計の運営にわたる全体を特別調査会が検討することになりますから、一種の予算審議であります。その結論を政府は考えるというのですから、国会の審議以上の効果を発揮しようとしておる。ですからそういう重要な役割を背負わせるならば、少くとも法的な基礎を持たなければなりません。法的な基礎を持たずに、国会が審議をやっておるのに国会の審議に対しては明確な答弁をせずに、そうしてその特別調査会によって結論を待つということで逃げられたのでは、国会の審議はたまったものじゃありません。だからこの問題はあくまで政府において慎重に御検討願わなければ、まだわれわれ特別調査会と米価審議会という法的根拠を持つ機関との関係も輻湊して参りますし、その審議の権限もいろいろ混乱を生じてきますから、この点は特に政府に一つ注意をいたしまして、できるだけ早い機会にこの赤字処理に対して答弁のできますようにお願いをしておきたい。  この問題はあとでもう一度触れますが、さらにこの際伺いますが、午前中の質問で長官は外米の赤字の中には在庫しております黄変米の処理に基く赤字は含んでないようにおっしゃったか、含んでおると申しましたか、そこのところがはっきりいたしませんが、私ちょっと計算してみますと、黄変米が、今政府説明によると、十一万七千トンある。これを買い入れ価格にかけますと約七十億の金額になります。ところが今検定所か何かでこれを仕分けをしておるようでありますが、かりにアルコール原料として相当部分が売れたにしましても、また他の用途に相当多く払い下げられることも考えられるのでありまして、今まで払い下げておりますトン当り一万五千五百七十円ですか、この金額で計算をしますと、これだけでもって全部で十八億になりますが、この黄変米十一万七千トンで、一万五千円平均で売って、私の計算だけで五十二億の赤字がこの上に出てきます。だがさいぜんも御説明通り、一万五千五百七十円というような安い金額では全部を処理するわけではありませんから、相当営利に売れる部分もありましょうし、できればトン五万円くらいにも売れるかもわかりませんが、そうなりましてもこの金額は相当大きな金額になろうと思います。これが全然本年度の予算に載せられていない。これは配給に予定する在庫量ではございません。配給の予定外に置かれているものであります。だから需給操作の上からいうならばこれは実損する米であります。損になっておる米であります。損になっておる米を十一万七千トンもかかえておきながら、これが赤字として正式に計上されてきていないという点は、何としても私ども納得ができません。  それからいま一つさいぜんにも御説明がありましたが、三十年度の暮れ、前農林大臣の河野さんを中心にしまして、準内地米をものすごく大量に輸入いたしまして、これを国内の消費者に希望配給で売れば相当もうかるといったところから、いわゆる思惑買いをやったのですね。ところが御存じの通り、国内では大豊作になりまして、至るところで内地米とこれが競合いたしまして、希望配給は都市においてもほんの一部分しか消費をされません。農村の生産県、あるいは中間県においても総スカンの状態で、大部分がストックしなければならぬことになっておる。そういう不当な思惑買いをいたしました。そしてその実際事態と相反する結果になった。そういう食糧操作上の責任を一体だれがお持ちになるのですか。そして大きな倉敷料を払い、大きな目減りをいたし、中には黄変米、砕米を抱き合せに買わされて大きな損をしておりますが、この大きな損害の責任は一体だれが負うのですか。これがもし会社であったら大へんなことになる。破産してしまっている。だれも責任を負わない。これはどういうことにしたらよろしいと思いますか。農林大臣に責任がありますのか、食糧庁長官に責任がありますのか、第二部長に責任がありますのか、輸入課長に責任がありますのか、どこに一体この責任の所在があるのです。だれも責任を負わない。そうして赤字や赤字やと言うて、消費者米価を上げるの、片っ方では、足らなければ一般会計から繰り込めのと言うて、心やすうこっちの税金を何しよりますけれども、だれも責任を負う者がない。これではたまったものじゃありません。だれが負うのです。それをちょっと御説明願いたい。
  58. 井出一太郎

    井出国務大臣 この問題につきましては井上委員の御認識もさることながら、実情を所管局長から申し上げて、その上でお答えをしたいと思います。
  59. 小倉武一

    ○小倉政府委員 黄変米についての損について申し上げますが、これは現存持っておりますものは相当前の年のものでございますので、その損は本年度一ぺんというわけのものでももちろんございません。年々に現われておるわけであります。一番多く現われておりますのは、相当の在庫になりまして、たしか二十九年ごろでございますが、そのときに期末評価でもって相当下げて評価をして、翌年度に繰り越してきている。そのときの損がおそらく一番多く出ておるだろうと思います。その後は大体の処分見込みをつけまして、なお繰り越してきた評価と処分見込みの評価との差が売買損、そのほかに一般の米と同じように金利、倉敷がかかる。こういった性質のものであります。三十二年度の見込みの十七億円の中にも、一部は黄変米の損が含まれておる、こういう勘定になるわけでございます。それから外米の輸入についての問題につきましては、三十年度におきまして、業務用の配給をいたす。新しく準内地米を業務用に配給するということで、それに約十七万トンのものが要る。七万トンはこれまでのいろいろやりくりで充てる、あと十万トンの輸入を必要とするというふうで、十万トンの輸入をいたす。ですから需給関係からいいまして、なおそのほかに十一万七千トン程度のものが要る。こういう計画を立てて実施に移ったのでありますが、御承知の通り三十年度の出来秋は未曽有の豊作に遭遇し、こういう事態になったわけでございます。外国相手の外米輸入でございますので、そういう事態になったからと申しまして、すぐ輸入をキャンセルするというわけにも参りませんので、思わざる滞貨をかかえるということになった点が今お尋ねの点ではなかろうかというふうに存じます。もちろんこれはだれの責任といいましても、これは食糧庁の私どもの責任である以外には責任はないのでございますが、そういうところで需給見込みが違ってきて、在庫をかかえ、金利、倉敷がかかるという事態になったことは、まことに申しわけないと存じておるわけであります。
  60. 井出一太郎

    井出国務大臣 ちょっと私からもつけ加えますが、実情はただいまお聞き及びの通りでございます。先ほど思惑買いというようなお言葉もあったかと思いますが、決してそういう意図ではございませんで、需給操作上やはり不測の事態でこのようなことに相なったと御了承をいただきたいと存ずるのであります。従いまして、こういう既往における幾多の欠陥と申しますか、あるいは失敗と申しますか、こういう点にかんがみまして、これは国民諸君からも食管のあり方がきびしく批判されておる時期でございますので、今後に当りましては十分心して扱って参りたい、このように存ずる次第であります。
  61. 井上良二

    井上分科員 私が質問をいたしましたのに対して、農林大臣は何か私がよけいな質問をしたように言っておりますが、完全に思惑買いです。基本配給、希望配給のほかに業務用の配給というものを新しく考えて、これに対しては、一升百何十円に売るということで、これでもうけようとしたことは確かなんです。思惑なんです。ところが売れなんだ。売れなんだ結果は倉庫代だけが赤字となって出てくる。金利代が赤字となって出てくる。こういうことになってきた。当てがはずれた。事実思惑ですよ、何と言うたって。そんなこと言うたってあかんです。  それからこの際伺っておきたいのですが、一番国民が問題にしておりますのは、先ほどもちょっと触れましたが、食管全体の総予算が八千六百億ですから、ものすごい大きな会計を操作しておりますが、このために二万五千人からの人が働いておる。そして一般会計から給与しております人はたしか食管長官など一人か二人。あとは全部食管会計から俸給をもらっておるのじゃないか。それだけ大ぜいの人がかかって、そうして四百億からの経費を使っている。管理費に約百億、それから農協の集荷保管費に二百六十三億、それからこれに人件費を加えますと四百億近い金がこの管理運営の経費として消えている。ところが実際集荷しておりますのは何ぼかというと二千四、五百万石から二千七、八百万石というところであります。全体の総収量は七千万石を突破しておる。七千万石を突破しておって、二千四、五百万石を基準配給所要量として集荷をするということになりますと、三分の一しか集荷されてない。もちろん約半分に近いものが農家保有量として持たなければならぬ関係がございますが、あと残りました半分のうちその半分だけが正規なルートに事前申し込みによって供出されている。ところがあとの半分はこれは全然供出されてない。これがいわゆるやみ米と称して全国にばらまかれておる。これがまた正規の配給を非常に妨害をしておるということは、すでにあなた方の御調査でおわかりの通り、基本配給の配給辞退というものが一体どういう状態になっているか。希望配給に至ってはほとんど五〇%は配給辞退です。やみ米によってそういう影響が起ってきている。それなら農家もそんなに米を持っておるなら、もっといい値に売ったらと思うけれども、全国のやみ米の相場は、御承知の通り生産地で九十円から百円まで、消費地で百二、三十円という程度であります。だから農家も予想以上にもうけておるということにはならぬ。これにはもちろんかつぎ屋という中間商人が入っておりまして、それにもうけられておって、農家としてはそんなにもうかっておりはせぬ。また消費者の方においても、現実にあなた方おわかりの通り、消費地は基本配給は内地米でわずかに三日か四日でしょう。多いところで五日です。それに希望配給、いわゆる準内地米を五日か六日間やって、あとは希望配給で十日分やっていますか、合計で二十日ぐらいやっていますか。政府がほんとに国内の産米を集めて配給しておる量はほんのわずかしかない。あとは外米で穴埋めしているにすぎない。しかもその配給米たるや実にわずかで、ほとんど内地米のやみに圧迫されて、どんどん配給辞退が出ておる実情であります。そういう実情におって、それでもって四百億からの莫大な経費を使って、なおかつ二万五千人からの人が動いている。こういう状態になってくると、それはよほど御検討を要する問題であろうと思う。こういう状態で、一方においてもう食管としての統制の域から事態ははるかに別なものが出てきておるから、この際統制をやめるべきではないかという意見が出てきております。こういう事態に立って、農相がなおかつ主要食糧の統制を実施しようとしておるのでありますが、それに違いありませんか。統制をこれから続けていこうとする農相の具体的な根拠について、この際明確にお示しを願いたい。  今一つは食糧庁長官に伺いますが、生産価格と消費者価格との間の中間経費が、いろいろの人々の試算によっていろいろ違います。ですから、食管の今の運営によって純粋に中間経費と見られる経費は、どのくらい一升当りにつくか、石当りにつくか、国民の最も疑惑としておりますところのこの中間経費の計数を明確にお示しを願いたいと思います。
  62. 井出一太郎

    井出国務大臣 お答え申し上げます。食管特別会計が非常に膨大な数字を扱い、しかも巨額な管理経費を使っておる。またそれに従事する人員が二万五千人、こういう大へんな犠牲を払いながら、食管の現状というものは国民の期待にこたえておらぬではないか、こういう御指摘が最初でございました。私もこの責任の地位につきまして以来、食管の内容を鋭意検討をしておるわけでございますが、確かに御指摘のような幾多改めなければならない個所も多かろうと思うのであります。しかし後段の御質問にもありましたように、それでもなおかつ統制を継続する根拠いかんというお話がございましたが、国がこれだけの巨額な国費を使い、人員を配備いたして所期の効果が上っているかどうかという点になりますると、これは決して十分だとは思いません。しかしそれでもなおかつ国民の食生活の安定と申しますか、消費者の層から申しますと、これによって月に基本で十日、希望で十日、ともかく政府の責任で米が届けられるというところに、これは大きな安心感があるだろうと思うのであります。たとえば昨年の北海道の凶作などに当りましても、やはりこの制度が存在しておりましたがゆえに、地域的な混乱を避けられたのではないかというふうにも見られるのであります。それからまた一方、生産者の立場からいたしましても、やはり一つの価格安定の措置にも相なっているという点があろうかと思うのでございまして、やはりこの管理制度の基本はくずしてはなるまいと私は考えているのでございます。この機会にやはり改むべき点は十分検討して、これを改めるという方向で扱って参りたいと考える次第でございます。
  63. 小倉武一

    ○小倉政府委員 いわゆる中間マージンでございますが、その中の政府経費と見られるものは、石当り約千円、そのほかに卸、小売りの配給マージンが約七百円、このほかに七十円ばかりの配給上のロスがございますので、卸、小売りの中間経費としては七百七十円、それに政府経費が千円余りというのが、いわゆる中間経費でございます。
  64. 井上良二

    井上分科員 食生活の安定のために統制を続けていく、また農業生産を安定さすためにも食糧統制は必要だという農林大臣のお答えのように伺いましたが、そうすると自由民主党の従来の食糧統制撤廃という、あのスローガンはもうおやめになったのか、それを明らかにしていただきたいと思います。
  65. 井出一太郎

    井出国務大臣 私の承知しておりまする範囲においては、自由民主党といたしましては、食糧統制撤廃というスローガンは別に掲げておりません。
  66. 井上良二

    井上分科員 それでは次に伺いますが、統制を存続していこうとすると、食管特別会計には採算制を採用しようとするか、二重価格制を採用しようとするか、農林大臣の率直な御答弁を願いたい。これはさいぜん私が赤字対策について伺いました問題とは別に、統制を続けていこうとするためには、ただいま食糧庁長官からお話がありました通り、当然中間経費が赤字となって出て参ります。これをコスト主義によっていきます場合は、当然消費者米価にも影響してきますが、いわゆるコスト主義、採算制でいこうとするか、それとも二重価格制を採用しようとするか。これは当然政治的に農林大臣としてのあなたの所見を聞きたい。
  67. 井出一太郎

    井出国務大臣 その点は午前中の御質問に際しても触れたのでありますが、純粋に二重価格という考え方、あるいは純粋にコスト主義を貫くという考え方は、いずれも検討の余地のあるところでございまして、私は従来といえども純粋な二重価格制度であったとは思えないのであります。先ほども申し上げましたように、その間十分仕分けをいたしまして、合理的な基礎に立って、一般会計が負担すべきものはすべきであろう。そういう検討を今回の調査会にも一つやっていただきたい、このように考えておる次第であります。
  68. 井上良二

    井上分科員 その問題に触れると調査会ということでにげますが、いずれそれはあとでまとめて聞くことにいたします。  ただいまの中間経費のうちの問題でございますが、このうちで一番大きな問題は運搬費と保管費であろうと思います。その次に金利が大きいという問題がございますが、この運搬賃九十八億四千万円というのは日通に支払っておるのでございますか。この中には農協の運搬賃も入っておりますか、それを明らかにしてもらいたい。もし農協が入っていないとしますと、農協の分はどういうことになっていますか。  それからこの約百億に近い運搬賃を出している日通の運搬の方法であります。これは一体いかなる方法でやらしておるか。たとえば北陸の米を東京へ持ってきます場合、北陸の金沢なら金沢の駅から東京までの運賃を精算して払っておりますか、それとも全国プールの形で払っておりますか、それを明確にされたい。  その次に、この日通の輸送費の中に——穀物検定所というものができておるそうでありますが、この穀物検定所の経費に充てるために、日通の運賃の中から一俵当り二円ないし三円というものが見込まれておるということでありますが、さようなものを見込んでおりますかどうか。見込んでないとすると穀物検定所というのは一体いかなる機関でどういう仕事をしており、その予算は一体どういう収入、どういう支出になっておりますか。これもあわせて御存じならお教えを願いたいと思います。
  69. 小倉武一

    ○小倉政府委員 日通等に支払う運賃九十八億は食糧庁の米麦等を輸送します運送賃、諸掛りその他全部でございます。一括日通と運送契約を結びまして、従いまして料金も一括日通に払います。もちろんその中には鉄道納金がございますし、船舶の運賃もございますし、日通の諸掛りもございます。また日通が下請の協同組合のトラック等を利用しているようなものもここに入ってくるわけでございます。  それから後段のお尋ねは、穀物検定協会と申しまして、この検定協会の検定のことかと存じますが、主要消費地に米が入って参ります場合、倉に入る場合に入庫検定というものをいたしますが、その検定料のことのお尋ねだと存じます。そういうものを日通に支払うものの中に加算いたします、お尋ねの通りであります。
  70. 井上良二

    井上分科員 そうしますと日通に払っている約百億の運搬賃というものは、これは全国プールで払っておって個々のケースでは払ってない。個々のケースの伝票というものは食糧庁の方ではないのですか。
  71. 小倉武一

    ○小倉政府委員 鉄道納金の実績によって払うのであります。
  72. 井上良二

    井上分科員 実績ということは、当然実績でなければ金は払えない。私の聞いているのは、たとえば新潟の米を東京へ運ぶ場合、トラック賃が何ぼ、鉄道運賃が何ぼ、あるいは東京へ着いてから政府倉庫までの運賃が何ぼ、合計、この一本の貨車についてはこれだけの運賃だということの計算で払っているのか、そういうことはとてもこまかくてめんどうくさいから、全国からの集計で払っているのか、どういうことになりますか。
  73. 小倉武一

    ○小倉政府委員 鉄道運賃はお話のように個々の鉄道輸送の実績と申しますか、実際鉄道に払います料金によって払うわけであります。従いましてあらかじめ全国プール運賃を定めておきまして、つかみと申しますか、そういうもので払うわけではございません。
  74. 井上良二

    井上分科員 そうすると、今お話の日通の運送費の中に穀物検定協会の倉庫へ米が入ります場合、その米を調べることになるかどうか知りませんが、その調べる費用として日通の輸送費の中から出さすというのは一体どういうことです、それは別の仕事じゃないですか、輸送業務とお考えになっておりますか。
  75. 小倉武一

    ○小倉政府委員 入庫検定ということをやっておりまして、それを日通の方から払うという建前にいたします理由でございますが、入庫検定をいたします理由といたしましては、倉へ入ってから事後の保管管理について妥当な措置をとるため、またそれが倉から出まして配給になる場合について、出庫検定というものが別にございますけれども、それの予備的な一つの検定の役割を果す。それからまた産地に対しまして、いろいろの指導等にも役立つ、こういう意味でやっておるわけでございます。日通を通じてやっておりますゆえんのものは、食糧庁と日通に運送ということを通じましての現品の受け渡しということが生じて参りまして、どういうものをどれだけ輸送して食糧庁に納めたということについては、日通としても第三者なり自分なりで検定をいたしまして食糧庁に渡すという必要がございますし、また食糧庁といたしましては、日通の言うなりに物を受け取るわけにも参りませんので、品物を確かめて受け取るという必要がございます。そういう場合に、両方の便宜のために第三者である検定協会に検定を依頼する。その場合に、これも一種の便宜の問題でございますが、日通の運賃に含めてその検定料に充てる、こういうふうにいたしておるのであります。
  76. 井上良二

    井上分科員 どうもよくわかりません。日通が自分で預った荷物を正確に政府指定の倉庫に入れるのについて、数量が間違っておったり、目減りがあったりしては、委託者に対して迷惑をかけるから、そこで一俵当りたしか二円とか三円とか聞いたのですが、検定料を検定協会に払うようにしておるというのなら、これは筋道が立ちます、ところがそうでなしに、政府が日通に頼んだけれども、日通が果しておれの方に持ってくる伝票通りの操作が一体運搬業務において行われておるかどうかということを確かめる必要があるという、政府の入庫出庫等に対する監督のために適正な機関を設けてやる必要があってやらしておるというのとはだいぶ違ってきます。あなたの方はおわかりでございますか、検定協会に日通が払っております全体の金額は、どのくらいになっておりますか。そしてここに働いておる検定協会の所員というものがどのくらい全国におりますか。そしてこれは日通の社員ですか。日通の社員ではないのですか、それもあわせて伺いたいと思います。
  77. 小倉武一

    ○小倉政府委員 検定協会に働いておる人の数は七、八百人だと思いました。正確に覚えておりませんが、それくらいたしかあると思いますが、間違っておりましたらあとで訂正をいたします。金額の方は、ただいまお尋ねの入庫検定、これは一俵当り二円四十銭でございます。そのほかに輸入食糧の検定をいたしております。それから実量検定と申しておりますが、倉出しに当っての検定もやっております。そういうものがこの検定協会の主たる財源と申しますか、ほとんどもっぱらの財源でございます。たしか全体の収入のお尋ねがあったように思いますが、年間二億数千万円から三億程度の収入だと存じます。
  78. 井上良二

    井上分科員 そうすると食糧庁の役人は政府倉庫にはおりませんのか。検定協会が検定してくれたらそれで何俵米が入ったものやら、どのくらいの目減りがあったものやら、どのくらいのロスが出ておるものやら、そういうことは一切おかまいなしに、検定協会の検定した報告書に基いて日通には運賃を払っていく、こういうことになっておりますのか。そうすると、そんなむちゃなことをされたら、それはえらいことになりますぞ。検定をするような重要な役割を検定協会に委嘱をして政府がやらしておるのに、その荷物の損傷、荷物の欠量等の出る当事者から、その検定料なるものを一俵当り二円五十銭、ほかいろいろの名目で出させて、それで検定協会の正当な検定がされておるということにはなりませんぞ、そんなむちゃなことをしては。私は食糧庁の役人が各倉庫にはそれぞれ立ち会って受け渡しをしておると思うておりましたのですが、そうではなしに、日通から一俵当り二円五十銭もらっております検定協会の職員が、受け渡しをいたしておりますのか。それはどうなっておりますか。
  79. 小倉武一

    ○小倉政府委員 もちろん政府が——米でなくても麦でも同じでございますが、買う場合には、政府の役人が最後の検収をすることは申すまでもないわけでございます。なお農産物の検査ということもありまして、検査はもちろんいたしておりますが、量的な問題等につきましてお尋ねのようなことをやることは言うまでもないのであります。ただ政府の役人だけでは、第一手が足りませんし、もう一つには、政府がいわば当事者、売買の、あるいは運送契約で言えば、運送する者と運送させた者との当事者であります、というわけでございますので、政府だけでもって量はこうだ、品物はこうだということをきめつけて、それによって違いを運輸業者なりあるいは運送業者の責任にしてしまうというようなわけには参りませんので、第三者である機関の検定によってそれを公正に定めるという必要性があってさようなことをいたしておるのであります。
  80. 井上良二

    井上分科員 そうすると政府の品物を運んで行った場合、目減りがあった。確かに出庫をしたときはこれだけの目方があったのに、ここへ来たときにはこれだけ減っておる。こういうことで日通と政府——食糧庁の間に問題が起る。この問題を起しちゃいかぬので、公正な第三者機関としての検定協会を作って、これの判決を待つというか、それの公正な判定によって事を処理していこうという仲裁機関、妥協機関、そういうつもりの機関ですか。これはどうです。
  81. 小倉武一

    ○小倉政府委員 何と申しますか、仲裁機関なり妥協するという機関というふうに申し上げては、これはちょっと間違われると思いますが、広く言えばあるいはそういうことに当るかもしれませんが、第三者といいますか、そういう検定機関が検定したところによって当事者の不平を処理する。輸入食糧であれば輸入業者と食糧庁の間、運送であれば日通と食糧庁の間、卸と小売りの間でありますならば卸と小売りのそういった問題について、第三者がきめた量、期間、こういうものによって現品受け渡しを行うわけであります。それが約束と違っておれば、それによっての違約金なりその他の措置をとる、こういうふうになるわけであります。
  82. 井上良二

    井上分科員 そうすると、この機関は全く政府の業務運営を公正ならしめていくための食糧統制機関の一つの役割を果しておることになっておるのに、それならそれで、何で食管特別会計予算の中にこれを組まないのです。どういうわけで日通の運賃の中にこれを入れなければなりませんか。これはどういうことですか。
  83. 小倉武一

    ○小倉政府委員 予算の積算の基礎としては、もちろん入ってくるわけです。予算上の措置等とは別に、しかるべく日通に払わしておる、また日通の運賃についてはしかるべく色をつけておる、こういうことではありませんので、日通に対する運送諸掛りの計算の基礎に出て参っております。そういう積算の基礎で行なっております。予算とは別に処理しているわけではありません。
  84. 井上良二

    井上分科員 私の聞いておりますのは、日通の運賃をあなたの方で支払う場合は、それは積算の基礎になっているかもしれぬけれども、食糧庁全体の予算を作り上げます場合は、これは運賃となって出てきておる。そうすると、一俵当り二円も、正当な運賃にあらざる経費が含まれている。純粋にいえばそう見なければならぬ。そういうややこしいことをやめたらどうや、やらなければならぬ機関ならはっきりしたらどうや、こういうのが私の質問の趣旨です。
  85. 小倉武一

    ○小倉政府委員 お尋ねの趣旨から申しますと、この検定料を日通と申しますか、あるいは運賃諸掛りから別に引き出して一本立てたらよかろう、あるいは政府から直接払ったらよかろう、こういうふうにも受け取れるのであります。なぜそうしてないかということは、実は先ほどちょっと触れたわけですが、運送を請負う日通といたしましても、ある程度の検定的なことをやりまして、そしてこれだけ政府に届けろということで、そういう仕事がどうしても伴うわけでございます。そうであれば、むしろその機能をうんと充実させて、日通が本来やるべき部分もあるのだから、日通の諸掛りの一部としまして検定をし、検定協会の検定によって処理できるような諸掛りを見ておくということが便利である、こういう意味で日通の諸掛りの中にこれを含ましておる次第であります。
  86. 井上良二

    井上分科員 私の聞いておるのは、日通は利益団体ですよ、利益団体の行き過ぎを是正し、公正にやらそうという機関でしょう。やらそうという公平な機関に、利益団体から金を出さしてやったんじゃ、これはまっすぐ行けと言うても、それは無理や。どうしてもそこには、日通の主張が、多分に意味相通じて、大目に見るという事態は起ってきますよ、どういう仕事をやらしているのか、具体的に私はわかりませんけれども。またこれは実に屋上屋の仕事をやっているようにわれわれには考えられる。政府の倉庫に食糧庁の役人がいないはずはない。それが受け渡しに立ち会わぬはずはないのです。おるのです。おるのに、なおかつ検定協会の人まで使わなければ、正確な受け渡しができないということになったんでは、これはどだい食糧庁というところは、いたずらに余分な人をよけい使うておる、こういうことになる。だから、そこらは長官はもう少し——あなたの先輩もこの協会に入っておるか知らぬけど、それはそれでしようがない、しかし、やはり筋道だけははっきりしておいてもらわぬと、食管の会計がいろいろ言われるときでありますから、その点はこの際明確に一つ対策を講じてもらいたい。  川俣君から関連質問があるそうですから、私の質問は、川俣君がやりましてから、またやることにします。
  87. 川俣清音

    ○川俣分科員 この問題は三年来の問題で、それがいまだに解決しないところから井上君の質問が出たと思うのです。長官の答弁の中には十分理解されない答弁があるわけです。そのことは今ここで訂正は求めません。ただ問題は、なぜ一体財団法人検定協会に直接補助金の形で出さないのかという問題について、食管特別会計が他の団体へ補助金を出すことが大蔵省で認めかねる、これが一つの問題だと思います。もう一つの問題は、井上君が指摘されました、実はこれは政府を通して日通へ出しておりますけれども、日通はこれは六分のピンはねをしておる。このピンはねが有力であるために、なかなか日通が放そうとはしないし、とられることをおそれておるために、そういう疑惑の中に、前長官が日通の重役になるというようなうわさも生まれてきたんではないかというような誤解さえ生むのです。ですから、いつまでも日通を通じなければならないということはないはずです。しかも検定協会は第三者であるという説明になりますと、いよいよもって疑問が出てくる。食糧管理法に基きますと、政府関係者以外には倉庫に立ち入ることもできないはずなんです。管理下にあるのですから。ところが地方の倉庫などに検定協会の者が行って、歩減りがあるかないか、食糧事務所の者を立ち会わして検査をしておる。第三者の検定協会が政府の倉庫を検査をする。一体どこにそんな権限があるのか。ですから、もしも検定協会の検定が必要だとするならば、法的な根拠を持たなければ立ち入り等をさせることが困難ではないか、これをたびたび質疑をしておるが、いまだに解決していないのです。この点どうですか。
  88. 小倉武一

    ○小倉政府委員 検定協会の検定料に相当するものの一つの交付の仕方といたしまして、補助金ということが問題として提起されたわけでございますが、補助金にもいろいろ性質がございますから、一がいには言えませんが、どうも補助金として処理することが適当な仕事とは思いません。本来検定協会が勝手にやっておる。仕事が、国としても望ましいからそれを助成するということもありません。本来全く国だけがやるべきことを検定協会にやらすから、それに委託金を出すというふうにも割り切るわけに参りません。従いまして、補助金というのを委託費というふうに解釈しましても、どうもそういうことでは割り切るわけにいかないのではないかというふうに考えられます。それからこの金額の妥当性、日通がピンはねをしておるといったようなお話もございましたが、そういうことはないと存じております。もし万が一そういうことがございますれば、検定料その他の料金の算定についても再考すべきことは言うまでもありません。またそういうことはないにしましても、だんだん合理化というようなことに努めておりまして、昨年も一部の検定料については単価を引き下げる措置を実はとっております。だんだんそういうふうに合理化措置を進めて参りたいと思います。  それから検定協会の職員政府倉庫等に勝手に立ち入るという、その権限のようなことについてのお尋ねがございましたが、もちろん法律上の権限といたしまして、食糧庁の職員ないし検査員が倉庫等に立ち入る権限、そういった意味での権限があっての仕事ではもちろんございません。食糧庁、日通あるいはそういう関係者の了解のもとに仕事をやっております。そういう権力的な関係の検査検定というふうには必ずしも私ども了解していないのであります。
  89. 川俣清音

    ○川俣分科員 ここで議論しようとは思わないけれども、あなたの今の答弁の中に、進んで勝手にやっている検定協会には補助を与えるにも値しないし、交付金をやるにも値しない、そういう値しないようなものの職員が一体倉庫に入って検査をするというのは、政府の管理下にあるものを、それ以上の監督権を持って、これは歩減りがあるとかないとか検査をするというのはどういうことでしょうか。あなたの管理下にあるものを、補助金の対象にもならない、交付金の対象にもならないような団体の職員が一体検査をするというのはどういうわけですか。それが必要だというならば、対象になるのだ、これなら別です。対象にもならない、勝手にできた団体だから交付ができない、日通を通してごまかせばできるけれども、正当にはできない。問題はそこにあると思う。正当にはできないけれども、日通を通してごまかすならばできる、これはいよいよもっておかしい。検定協会というものは法律的に存在して、出さなければならぬ団体として出すなら私はまだ一歩譲歩できると思う。了解できると思う。それにも値しない団体だという、日通を通してならばできるし、直接ならできないという根拠はどこにあるか。これはあなたは日通から来たものというけれども、倉庫に入ったのを検査するというのですよ。トラックの上で検査しているのじゃないのです。倉庫に入ったのを検査しているのです。政府の管理下にある倉庫を検査するのです。
  90. 井出一太郎

    井出国務大臣 ちょっと私から簡単に申し上げますが、川俣委員がこの問題を二、三年前農林委員会でお取り上げになったことも私承知をしております。それでその検定という仕事は、これは必要であろうということは御了承をいただけると思うのです。その場合に検定料というものが当然随伴して起ってくる、これはこれで検定料として払ったならばいいじゃないか。日通の運賃と込みになっておるところに問題があるという先ほどの御指摘だったと思うのです。こういうあたりは、問題を御提起いただきました以上、十分われわれの側としても意を用いまして調査検討するつもりでございます。ただいま長官の答弁中にあるいは用語の整わない点などありましたことは、この程度で一つ御容赦を願いたいと思います。
  91. 井上良二

    井上分科員 この問題は何としても割り切れぬ問題ですから、一つとくと農林大臣の責任において、食糧長官と、国民が納得する線で解決を願いたいと思います。  次に伺いたいのは、政府は本年の米についても事前売り渡し申し込み制によって二千七百万石を買い入れる、こういうことを申しておりますが、この事前売り渡し申し込み制は自主供出、政府にこれだけ米を出しますということを予約をいたしまして、それで収穫があれば申し込んだだけは出そうという一種の自由供出であります。ところがこの食管会計の中を調べてみると、強制供出をやって食糧不足の非常事態を緩和しようとしたときに、農業協同組合の協力を求める必要があって集荷協力費というものを組んでおった、それが事前売り渡し申し込み制になっても依然としてこの集荷協力費というものが出されておりますし、本年の予算にもそれが出ておりますが、一体これはどういう理由で依然として強制供出当時の支出をそのまま残してありますのか、これを伺いたいのと、それから早場地帯の奨励金問題と供出してきます米の質の問題でございますが、御承知の通り早場地帯の米の供出には、それぞれ時期を定めまして奨励金に格差がついております。この格差がついているがために一日も早く供出をしたい、こういうことから十分に乾燥してない、いわゆる軟質米が相当量この締め切りの日時に殺到してくる実例をわれわれはよく知っております。この結果は、同日まで出しました場合には当然それに該当する特別の奨励金がもらえます。ところが受け取りました米は軟質米でありまして、これは長期保存をいたしますと当然目減りがいたして参りますし、中には使いものにならぬものさえ出てくる危険もありますが、かような事態は一体どう食いとめようといたしますか。この点を明らかにしていただきたいのであります。
  92. 小倉武一

    ○小倉政府委員 集荷協力費、集荷奨励金につきましての御質問でございますが、集荷協力費は、御承知の通り、主として府県市町村等の米の集荷供出行政事務ないし集荷に対して協力体制をとる団体にいく金でございます。もう一つの集荷奨励金は協同組合等、実際の集荷業務を担当する集荷業者に参りますものでございます。お話のように強権でもって供出をさせるということが集荷のふだんであったという時代と、予約制度でもって自主的に集荷を願う、こういう現在とでは、時代がだいぶ違っておるということで、そういう集荷奨励ないし集荷協力の資金の本来の目的がなくなったのではないか、こういうお尋ねのようでございますが、それは予約と申しましても、流れて参る米が自然に集まってくるというふうになっておるのじゃないことは申すまでもないのでありまして、関係機関がいろいろ活動し協力して予約の完遂が期せられる、こういうことでございますので、従来通りに奨励金という措置が必要であると存じます。また府県の行政機関等におきましては、米の集荷等につきましての費用はこのほかにはございませんので、こういうもので予約の指導をやる。あるいは手続といたしましては、供出時代と同じように供出命令といったようなものが必要でございますし、あるいは減額補正といったような手続も必要でございます。そういう意味は変っておりませんで、集荷のための主たる手段が変っただけでございますので、従来のような奨励措置と申しますか、そういう金がやはり必要であることはおわかり願えると思います。
  93. 井上良二

    井上分科員 次に伺いたいのですが、本年の予算書によりますと、政府は外米の輸入を昨年度に比べますと大幅に減額いたしております。そうして外麦は予定通り昨年とあまり大差のないものが輸入されておりますが、どういうわけでかように外米の輸入を差し控えたかといえば、問題は、昨年、本年の豊作によって国内食糧が大幅に増加しておる。そして外米の輸入が予定通り行われたので在庫量がものすごくふえておって、本年はこの在庫と見合って四百万トンですか、そのくらいの輸入で大体いいではないかという見当でこの数字を出したのだろうと想定はいたしますが、一体農林大臣は、現在の主食の配給を現状のままでいいとお考えになっていますか、あれで国民が満足しておると思うておりますか。さっきから長官の御説明がありました通り、基本配給十日分、希望配給十日分、あとは勝手に何か食っておれ——一ヵ月は三十日から三十一日あるのですよ、あとは好きなものを食っておれという御説明のようでございます。しかるに政府の倉庫には二十万トンも三十万トンもの米麦が高い金利を払い、高い倉庫料を払ってうなっておる、中には人間の食うことのできない米まで出てきておる。そういう状態において、消費者には基本配給たった十日分、希望配給十日分、あとは何でも食っておれ、これで一体合理的な食糧配給をやっておるとあなたはお考えになっていますか。それで米が余るから本年は四百万トンしか輸入しないなんて、そんな話がありますか。昨日内閣から発表された世論調査を見ても、消費者価格は多少上げられてもやむを得ない、しかし配給はふやしてもらいたいということが、やはりあの調査には現われておるのであります。倉庫料を払って倉庫業者にもうけさせ、金利を払って金融業者にもうけさしても国民の腹には飯を食わさぬというのですか、そんなむちゃな話がありますか、そこのところを明確に御答弁願いたい。
  94. 井出一太郎

    井出国務大臣 御指摘のように、基本配給が十日、希望配給が十日というのが現状の配給日数でございます。もちろん多々ますます弁ずでありますが、これからの需給を推算をいたしてみますときに、安全度とでも申しますか、そういう点から勘案いたしましてまず予算書に示しました程度のところが、これからの計画ではぎりぎりではないかというように思うのであります。決して、倉庫に米がうなって金利倉敷をいたずらに食わせておくということを望むものではございませんが、需給計画を今申し上げました程度に樹立をいたしますると、まずこのあたりが精一ぱいのところではないか。一方麦につきましては、これは直接統制をとっておるのでございませんから、パン食なりうどん食なり、こういった食生活を切りかえるという方向ともあわせ考えますると、まあまあこの辺でごしんぼう願うのが筋合いではなかろうか、このように存じておる次第であります。
  95. 井上良二

    井上分科員 麦の統制をはづしておるから、従って米で足らぬ分は麦を買うてくれ、こういう御意見のようでございます。国民はできるだけ栄養度の高い新しい食糧をとろうとしておるのですけれども、大臣みずから御経験の通り、米食とパン食との実際の家計に響く比率というものをお考えになったことがありますか。米一〇〇に対してパンは一一五についております。これはもちろん政府が小麦等の払い下げ価格を、もうけるために高う売っておることにも原因しておる。外麦で百三十億も去年もうけているんだから……。われわれおかげさんで十日分しか米をもらわぬで高いパンを食わされて、それで食管会計の百三十億の赤字を穴埋めさせてやったわけだ。そういうことを国民にさしておいて、それで麦食え、麦食えと言ったってだめだ。パン食だけでもそれだけの比率になっておるところへ、バターなりチーズなり牛乳なり肉なり魚なりの、いわゆる蛋白給源、脂肪給源をとろうとしますと、より以上高くつくというところに問題があるわけです。ですから、米を二十日分しかやらぬ、あと十日はパン食なり粉食をしてくれというなら、粉食にふさわしい副食の栄養の対策というものを総合的に立てませんと、国民の均衡ある食生活というものはできません。これは自明の道理であります。しかるに一方国内の食糧の需給の実態を見ておると、これは私ども農林委員会におります時分からやかましく言うておるのですけれども、生産県は二十日分まるまる米でやる、内地米まるまる食わしておるじゃないか、同じ日本国民で、県境一つ離れてこっちの県へ行ったら内地米はたった五日か一週間もらえるかもらえぬかじゃないか、そんな不公平な話がどこにありますか。せめてこれでも一つ均衡したらどうやと言うておるけれども、威令行われず、なかなかやらない。今日本は米を安く買えるときでもありますし、なおかつ国内には相当やみ米がだぶついておることは自明の通りでありまして、そうしますと、この国内のだぶついておるやみ米をいかに集荷するか、それに見合って配給制度をどう立て直すかという絶好のチャンスであると思う。今日ほど配給量を増加し、かつ食生活を改善するよいときはないと考えておるのに、一向そういうことに手をつけずに、ただ赤字が出るから、採算主義で一つ消費者米価を上げたらいいと心やすく考えてやられてはたまったものではない。せめて五日分でもよけい米を配給するよって、この際多少の値上りはがまんしてくれ、こう打ち出すならばだいぶん緩和しますけれども、そういうことをちっとも考えずに、米を食う者にえらく高い、外米の悪いものばかり配給しよる、それじゃいかぬ。あなたとしてはこの際そこらをもう少し考えるべきじゃないかと思います。そうせずにただこのままでいきますならば、高い倉庫料と権利でまた三十二年度末にはもう一ぺん補正予算を出さぬと赤字がぬぐい切れぬことになってきますが、そうお思いになりませんか、今のうちに配給してもらった方がいいが、どうです。
  96. 井出一太郎

    井出国務大臣 井上さんから非常に含蓄のあります御対策を伺いまして、これは十分に参考にいたしたいと私ども考えております。先ほどの御発言の中にございましたが、ただいま基本配給十日の中で、準内地米は、場所によって違いますが、一日ないし三日でございます。従ってこの点はよほど改良されたことを一つ御認識をいただきたいと存じます。  それからただいま御示唆をいただきました点は、一つ十分に意を体して努力する所存でございます。
  97. 井上良二

    井上分科員 次に金利に関する問題でございますが、この予算書によりますと、三千四百六十七億という膨大な食糧証券発行と借入金があるようですが、このうち借入金はどのくらいになっておりますか。そうして食糧証券発行の手数料はどのくらい払っておりますか。それから借入金の金利、それからこの借入金は中金から借りておりますか、他の金融機関から借りておるのでありますか、その点を明確にされたいと思います。
  98. 小倉武一

    ○小倉政府委員 借入金は大部分食糧証券でございまして、金利は一銭四厘五毛であります。そのほかの借入金というふうなものは、この予算にあげておりますのは国庫余裕金の使用でありまして、これは金利がございません。それから予算で国債整理基金特別会計へ繰り入れという中に入っております部分に金利が入っておるわけでございますが、その利子は百二十二億でございます。
  99. 井上良二

    井上分科員 この証券発行の手数料はどのくらいですか。
  100. 小倉武一

    ○小倉政府委員 発行諸費といたしましては二百万円計上いたしております。
  101. 井上良二

    井上分科員 次にさきに私がいろいろ質問をしたときにもお話がございましたが、政府の外米輸入の不手ぎわの問題でございます。最近病変米の輸入あるいは砕米抱き合せ等の問題で、現実は非常に改善されておるようでありますが、この外米の買付については、食糧庁はそれぞれ指定商社をいたしまして、その指定商社をいたします場合は、一応商社の指定についての要綱というものを出しているようでございますが、これら指定商社というものはあの要綱通り、完全に米穀を取り扱う経験者があり、かつ外地においてその土地に出張所員を持ち、米穀取扱いの経験のある店員が駐在しておって、そうして十分政府の委託を果し得る任務を持つ社員がそれぞれ全部おって指定をいたしておりますか。現在外米買付の商社指定は何社になっておりますか。そうして今申します通りの適格な条件を持つものがないとは言いますまいが、その点はどうなっておりますか、この際伺っておきたいと思います。
  102. 小倉武一

    ○小倉政府委員 お尋ねのように米麦等輸入食糧を取り扱う商社の資格につきましては、お述べになりましたようなことが要件になっております。指定につきましてはいろいろ歴史的と申しますか、沿革がございまして、現在のようなことになっておるわけでございますが、なお現在の登録の規定が必ずしも十全とは言えませんので最近検討をいたしております。登録がえの時期がちようど四月一日に当りますので、この機会に再検討いたしまして、一つ遺憾のないように措置いたしたい、かような考えを持っております。
  103. 井上良二

    井上分科員 最後に私さいぜん保留してあります問題についてもう一度明確に農林大臣から伺っておき、なおかつわかりません場合は、いずれ予算総会においてこの問題は質問をいたしたいと思います。  すなわちそれはさいぜん申しました、三十年度の食管会計の決算で百大十七億の赤字が出ておる。それを補正予算で穴埋めいたしたが、なおかつその後のいろいろな操作の都合から三十四億の赤字が出たからこれを示しておる。こういう御説明でございました。三十年度の赤字に対しては補正予算によって当時国会の承認を得ておるわけです。ところがこれが三十一年度の補正予算には出ずに、本年度の食管会計の総合的な赤字の帳じりとして、ここに新しく三十四億が三十年度の分の赤字として出てきたというところに、われわれは予算審議上はなはだ政府の怠慢を糾弾をせねばなりません。もし、三十四億という膨大な赤字が、なおかつ三十年度の食管会計予算の補正後においてあるといたしますならば、一体何ゆえに今日までこれをほっておいたかということであります。当然その間において適当な処置を求むべきであるし、処置を講ずべきであろうと思いますのに、どういうわけで今日までこれをほっておいたかということに対する農林大臣の言明を伺いたいと思います。
  104. 井出一太郎

    井出国務大臣 昭和三十年度におきまして、当時インベントリー百億をくずして赤字を埋め、なおかつ補正においてたしか六十七億の補填をいたしたかと思っておりますが、それでもなおかつ三十四億近くの赤字が出ておるということは、まことに遺憾千万でございます。これが何ゆえ生じたかという理由につきましては、先ほど食糧庁長官からも申し述べたところでございますが、おそらく年度の終りに近いころに補正をしておきながら、この赤字を見通し得なかったということは何ごとだ、こういうおしかりだろうと思うのでございます。まことにこの点は遺憾な次第でございますが、私としてずっと携わっておった事柄でもございませんので、今これをにわかにここでどうこうということは申し上げませんが、当然この赤字は特別調査会においても御議論があることと存じますから、いずれかの機会に一般会計処理をしていただく、こういう考えの上に立っておる次第でございます。
  105. 井上良二

    井上分科員 私ことさらに意地悪い質問をするのじやありません。われわれは国会に負わされた責任上、予算審議をやっているわけでありますから、国民の代表としてだれが見ても納得する審議をしなければなりません。その立場から政府が出してきておりますこの三十二年度予算のうちに、三十年度の赤字はすでに国会の承認を得て一応解決がしてあるのに、さらにその後また三十四億という新しい赤字がここに明示されておるということになってきますと、私どもとしては三十年度予算の審議というものが、はなはだ無責任きわまる審議じゃなかったかということを言われても仕方がないのでありまして、国会の責任が非常に重要であります。当時補正は御存じの通り、二月の予算審議中に出されたことであろうと思いますので、そうなりますと、あと一月でもって三十年度予算は帳じりがつくわけであります。ところが実際精算をして、予定する分が予想以上に多かったということになったという結論であろうと思いますけれども、それではあまりにもずさんな、あまりにもお見込み違いな計数のはじき方であって、国民をしてますます疑惑を加えしめる結果になりはせぬかということを私は憂えるわけであります。たとえて申しますと、本年度の赤字の集計は、最初は百六十億か百七十億といわれておった。それが金利をどうして、運賃をどうして、保管料をどうしてというようなことを計算し直しますと、一ぺんに二十億何ぼか減って参る。何と食管というところは手荒いそろばんをはじくところだな。わずか一週間もたたぬうちに二十億も計数が違った数字が出てくる、こういうことが当時言われて、非難の的になっている。それをまた上回るようなことがここに明らかにされてきておる。これはもちろん井出農林大臣の時代の産物でありませんから、私はこれ以上この問題についてあなたの責任を追及しようとは思いませんけれども、少くとも一方においては本年度の赤字の処理の具体的方針も明示できず、その上に三十年度の赤字をさらに三十四億もこれにぶち込んできて、そうしてこの承認を求めるというても、それはなかなかちょっと無理じやないかと私どもは思うのです。特に食管としてこの際御注意を申し上げておかなければならぬのは、御存じの通り、わが国の主要食糧の絶対不足の現状から、全国の生産農民の非常な協力のもとに食糧増産一途の政策を政府は強行してきました。このためにわれわれの血のにじむような税金が、食糧増産対策費としていろいろな形で数千億がつぎ込まれてきております。その結果最近食糧は、どんなに悪くても六千万石以上はとれる。人によりますと、七千万石はもう切れないというようなことが言われております。平年作ならば七千万石以上だと言われるような時代になってきておるのに、依然として国民の方への食糧の配給というものは、あの食糧の困難な時代から一歩も出ていないという事態でありまして、しかも国内で七千万石の米が増産をされておりますのに、集荷するのはその三分の一、その三分の一を抱えておるところへもってきて、国内産麦政府価格事情によって買い上げなければならぬことになって、これがまた外国との競合の関係から、非常な赤字の原因になっておるということから、ともかくその保管料だ、運送費だ、金利だというて、そうしてまた置けば置くほど米は減ってくるし、ロスは出るし虫には食われるしというわけで、全く食管としては青息吐息の現状に置かれておりはせぬかと私どもは見るのです。もちろんあらゆる物の統制が撤廃をされまして、ただ一つ主食だけが統制をされておりますところに非常な矛盾と不合理が、その統制を取り巻いておることを私どもは見抜きます。またこの統制によって利益を得ようとする者が周囲にたくさんうろついておることもわれわれは見抜きます。ですから、この関係をこのままで運営するということは非常な無理があります。どうしても無理が起ってきます。そこでこの八千五、六百億の膨大な、わが国の国家財政にも匹敵するような大きな金を年間動かしておるというところに無理がありますから、これを政府の責任において区分をしてみてはどうかと思う。すなわちさいぜん申します通り一般会計に属するものは一応はずして、これでまた別に特別会計を設けて一般会計からつじつまを合わしていくというやり方をとってもいいだろうし、また買い入れなら買い入れだけの特別会計を作ってもいい、あるいは配給なら配給だけの特別会計に区分をてしまう。そうしてもっと国民にわかりやすく、見ればすぐわかるような会計予算に立て直す必要がありはせぬかと思う。私はそれが今度の国会にかけられた大きな一つの任務でもあろうと考えております。ところがその点になってくると、農林大臣はそれは特別調査会の御努力を待つ、こう逃げてしもうて、のれんに腕押しになつちゃってはなはだ私は残念でなりませんが、そういう一つの方向に対して農林大臣は一体どうお考えになっているか、この際明らかにしていただきたい。それだけ先に伺っておきましょう。
  106. 井出一太郎

    井出国務大臣 本日は井上委員からだんだんと示唆に富んだ御意見を伺わせていただきました。これは先ほど来の問答を通しておわかりもいただけたと思いますが、御意思のあるところは十分に尊重して参りたいと考えます。それから特別調査会へ決して逃げるというのではございません。ここで御検討をいただいた上は、もちろん政府の責任においていずれお目にかけて、さらに慎重御検討をいただく、こういうつもりでおりますから御了承をいただきたいと思います。
  107. 井上良二

    井上分科員 あなたは盛んに特別調査会調査会と言うておりますが、一体この特別調査会はいつ作りますか。そしてその構成はどういたしますか。法的権限は与えないそうでありますが、法的権限を与えないこの特別委員会と米価審議会との法的権限は一体どうなってきますか。あなたのおっしゃる通りこの調査会で答申を一応いただいて、これがもし消費者米価の引き上げや、生産者米価の変更や、麦価の変更等が行われた答申が出された場合は、そのまま政府はこれを予算化するわけには参りますまい。当然米価審議会にかけなければなりますまい。米価審議会の議を経ずして、米価審議会はかってにしておれ、こっちは別じゃ、そんなわけにはいきません。そうなると余分な御苦労を二度もあなたは経験せなければならぬことになって、まことに御苦労千万な話ですけれども、やろうというのだからおやりになっても一向かまいませんよ。われわれの立場からいいますと、予算審議中にこの特別調査会を早く成立さして、そうして予算が成立するまでに具体的に結論を出すことが、国会審議を促進するゆえんなりと考えますが、農林大臣はどうお考えになりますか。
  108. 井出一太郎

    井出国務大臣 事の慎重を期しますためには決して二重の苦労といえどもいとわないつもりであります。この調査会は今週中にも一つ決定をいたしまして、すぐさま発足をしたいと考えておりますが、大体ただいまのつもりは閣議決定を経ましてこれを内閣に存置する、そうして学識経験者その他十五名内外の人員をもって当っていただく、こんなつもりでおるわけでございます。きょう午前中からもしばしば申し上げましたように、この機関は政府の腹がまえを作りまするために、米価審議会よりもそれ以前の問題にわたるということでございますので、今の御趣旨にも沿いまして、できるだけこれを取り急いでやって参りたい、こういうつもりでおります。
  109. 井上良二

    井上分科員 どうですか、予算審議が終るまでに発足して数回やればいいだろう、大体赤字の出る根源というものは明確でございますから、有能な食管の職員二万五千人をかかえておって、どんな資料もどんな御意見も十分伺うことのできる機関をお持ちでございますから、そんなに長時日を要さなくてもこの赤字処分に対する結論というものは、私は簡単に出ようかとも考えます。ですからわれわれ予算審議の都合がございます。まして今度伺うところによると、この特別調査会には野党側のものは入れないという話もございますから、そうなりますと、われわれはつんぼさじきにおりますので、予算審議の方は結論が出るまでは簡単に進めるわけには参らぬという態度をとらなければなりませんが、これは予算が赤字になっていますから、これはどうしても予算が衆議院の段階において成立いたしますまでの間に、この処置に対しての答申を求めて政府の閣議決定を得ることのできますような処置がとれますかとれませんか、これを所管大臣たる農林大臣から明確にお答えを願いたい。
  110. 井出一太郎

    井出国務大臣 できるだけ取り急ぎたいと考えております。
  111. 井上良二

    井上分科員 もう一点で終りますが、それはさいぜん農林大臣がきわめて重大な発言をいたしておりますが、食管の赤字を消費者米価を一部値上げをいたしましても、なおかつ赤字というものが予想され得るのでありますし、またかりに消費者米価に転嫁しなかった場合は、当然赤字の処置をしなければなりませんので、その赤字を処置するために、何か三十一年度の自然増の予備金のものを、これに充当する心がまえでおるというような御意見のように承わったんですが、さようでございますか、もしさようでございますと、これは非常に重大な問題になって参りますので、われわれとしてもとくと検討しなければならぬことになりますが、もう一度その点を明確にお示しを願いたいと思います。
  112. 井出一太郎

    井出国務大臣 その点につきましては、先ごろの予算委員会の際に、大蔵大臣からもお答えを申し上げたはずでありますが、昭和三十一年度の歳計は相当巨額に上る自然増収が予想をせられますので、財政全体といたしますならば、そこに十分の弾力性であるというように考えておる次第でございまして、財源をどこに求めるかという場合には、これなどは有力な財源になる、このように御了承をいただきたいと思います。
  113. 井上良二

    井上分科員 それはけしからぬことで、三十一年度の余裕財源は財政法によってちゃんと使い道が規定されておる。それを勝手に食管の穴埋めに使うということは許されませんよ。これははっきり繰り越すものとしての建前になっておる。だからもしどうしても穴埋めをしなければならぬというのなら、一兆一千三百幾億の一般会計予算の圧縮によって一割なら一割、五分なら五分、いわゆる財政支出を削減する、削減してから穴埋めをすることの方が最も妥当なやり方なんだ。これなら国民は何も怒りませんから、そういう方向に農林大臣としては検討すべきではないかと思うのです。
  114. 井出一太郎

    井出国務大臣 お考え方はよく承わっておきます。
  115. 大橋武夫

    大橋主査 横路分科員より関連質疑の申し出がありますので、この際これを許します。横路節雄君。
  116. 横路節雄

    横路分科員 農林大臣にお尋ねしますが、財政法の付則の第七条に、「国の予算、決算及び会計制度に関する重要な事項を調査審議させるため、大蔵省に財政制度審議会を置く。」とありまして、ちゃんと法制上きまっているのであります。今大臣からいろいろ御答弁ございましたこの食管の赤字に関する問題は、やはり国の予算、決算それから会計制度に関する重要な事項であります。従って当然これは財政法の付則第七条にきまっているこの財政制度審議会でいろいろ審議すべきだと思うのに、なぜ一体わざわざ法律によらないでそういうものをお作りになるのか。私はこれでおやりになったらいいと思う。その点いかがでございますか。
  117. 井出一太郎

    井出国務大臣 食管の問題は単に財政問題というだけにとどまりませず、この食管会計のあり方と申しましょうか、相当広範な問題にわたっておりますので、それゆえに、先ほど来申し上げておりますような調査会を設けて、これに御相談をして慎重を期する、こういう考え方に出ておるわけであります。
  118. 横路節雄

    横路分科員 この財政法付則第七条は、これは明らかに予算、決算及び会計制度なんです。食管の特別会計というものもやはり会計制度なんです。そうして出ました、立てた予算、それによって生じてきた赤字、そういうものをどうするかということについて根本的に検討するためにこれが置かれていると私は思うのです。しかしいろいろ政治的な意味があっておやりになる点については、先ほど井上委員からいろいろお話がありましたから私はやめますが、これは当然付則第七条でやるべきだと思います。  次にお尋ねしたいのは、井上委員から質問がありまして御答弁がございましたが、三十年度の赤字の三十四億については一般会計処理をなさるといいますが、これは三十一年度の補正でなさるのか、三十二年度の補正でなさるのか、その点をはっきりしておいていただきたいと思います。
  119. 井出一太郎

    井出国務大臣 この特別調査会の結論を見出しましてと、先ほど来申し上げておりますが、その答申の時期等ともにらみ合せなければなりません。それで現在の予定では、三十一年度補正では少しく無理ではないか、このように考えております。
  120. 横路節雄

    横路分科員 それでは三十一年度の赤字百六十一億ですか、これも合せて三十年度の赤字と同様に三十二年度の補正でやるわけですね。その点はっきりしておいていただきたい。
  121. 井出一太郎

    井出国務大臣 これも大体そのように御理解いただいてよろしいと思います。
  122. 横路節雄

    横路分科員 それでは農林大臣にお尋ねしたいと思いますが、総額約百九十億以上に上るものについての昭和三十二年度の補正をやるということがここで明らかになった。そうすると、いよいよ二十日から一般質問が始まって、三十二年度予算について審議をされるわけですから、そうすると農林大臣のお考えとしては——三十二年度の補正が出るということは、これは今までの予算審議の過程ではないのです。いついかなる場合でも大蔵大臣に私どもがその年度の当初予算を尋ねた場合に、これは補正予算を組みますかというと、みな絶体組みません、こう言われる。ところが最後になってやむを得ないから補正予算を出さざるを得ませんでした、いろいろ自然災害その他がありまして、こうなるわけです。今農林大臣のようにはっきり三十年度、三十一年度のしかも百九十五億に上るこの赤字を三十二年度の補正でやるということになるならば、これは当然この予算審議の過程で三十二年度の政府予算の原案について、御自身で修正されて出されなければならないと私は思うのです。こういう例は今まで予算審議上ないです。今までかつて国会予算でこんな審議はないです。補正を初めから二百億近くのものを出しますと、こう言明して当初予算を審議したなんということはないのです。これは農林大臣が率直に話されてわれわれとしてはけっこうなんですが、しかしそういうのであれば、私は初めからこの原案を修正されておやりになった方がいいのではないか、こう思うのですが、大蔵大臣とのいろいろな関係もありましょうが、農林大臣としては、もう初めから補正だときまっているものであるならば、初めから原案を修正されてやった方がいいのではないかと私は思いますが、いかがでしょうか。
  123. 井出一太郎

    井出国務大臣 その点はあるいは私の表現が非常に問題を割り切ったようにおとりかと思いますが、先ほど来申し上げます特別調査会の議を待ってということに相なりまするので、その際従来の食管の赤字のあり方というような問題の検討もありましょうから、三十年、三十一年の赤字をそのままに繰り越したという次第に相なっております。従いまして、これはいずれかの機会にはこの処理をしなければなるまい、こういう考え方のもとに今私申し上げましたような次第でありまして、この点はなお財政当局とも十分に打ち合せをいたしました上で申し上げたい、このように御了承を願います。
  124. 横路節雄

    横路分科員 食糧庁長官にお尋ねしますが、初め政府の方で食管の特別会計について検討した場合に、一升について八円五十銭を値上げしようというふうに考えた。三十二年度で一升について八円五十銭を値上げした場合における食管の赤字は幾ら埋まるという計算でやったわけですか。その数字を一つお尋ねしておきます。
  125. 小倉武一

    ○小倉政府委員 当時の計算ではたしか百三十三億でございました。
  126. 横路節雄

    横路分科員 それではその百三十三億というのは四月一日からですか。四月一日からやって石数はどれだけを見込んでおられたのか、その点について一つお尋ねします。
  127. 小倉武一

    ○小倉政府委員 値上げの時期につきましては、四月にいたします場合、あるいは六月にいたします場合ほとんど変りません。と申しますのは、値上げをするというふうに決定をしますれば、本年度の三月末に持ち越す米の評価がそれだけ上りますので、本年度の予算の損益に影響する部分が出てきまして、それに影響しますが、来年度の予算には、うんと時期をおくらせば別でありますが、三月末の在庫米を食っている範囲においては、影響はまずないというふうに考えていただいてけっこうであります。量といたしましては、これは値上げする場合としない場合とでは、また食う量が変ってくるという理屈にもなりますので、ちょっとむずかしいことになるわけでございますが、そこは大きくのんでいただいて、ただいま持っております資料は、値上げをしないという前提での需給から推していただくほかはないのでありますが、三十二米穀年度におきましては、基本配給といたしまして内地米を二百四十二万トン、希望配給といたしまして百四十六万トンというふうになっております。この基本配給の百四十万トンが値上げになり、これによって利益が生まれるという関係に相なるのが、主たる財源であります。
  128. 横路節雄

    横路分科員 値上げをしない場合の昭和三十二年度の赤字、内地米の今日の二重価格による赤字は、幾らに見積っておられますか。
  129. 小倉武一

    ○小倉政府委員 値上げをしない前提での内地米だけの損は、ただいま提出いたして、御審議を願っております予算の基礎になっております損益の関係におきましては、内地米は百七十三億の損失ということになっております。
  130. 横路節雄

    横路分科員 そうしますと、値上げをしない場合の三十二年度食管の赤字は、内地米の場合は、現在の価格制度からいけば、百七十三億になるということですね。そうすると、これは一升八円五十銭の値上げで、これは今あなたの方で基本配給量の内地米の二百四十二万トン、希望数量の百四十六万トン、この百四十六万トンがそれに該当するというお話ですが、その場合に、内地米の今のままでいけば百七十三億、それが百三十三億であると、初めから八円五十銭値上げしても、なお食管の赤字は三十二年度はどの程度見込んでいるか。三十二年度八円五十銭上げても、なお食管の三十二年度の赤字は幾らと見ているのですか。
  131. 小倉武一

    ○小倉政府委員 先ほど申し上げましたが、値上げをするという前提で考えました場合は、この百七十三億が約四十億ぐらいになります。差引値上げをしますれば、内地米についていえば、百三十三億程度の損が埋まるというわけであります。
  132. 横路節雄

    横路分科員 そうすると、今の場合、八円五十銭値上げをしても三十二年度の赤字は幾らですか。その点、ちょっと聞き漏らして失礼ですが……。
  133. 小倉武一

    ○小倉政府委員 内地米だけの関係でのお尋ねでございますので、内地米だけでお答えをしていたのでありますが、ただいまの予算は値上げをしないという前提での予算でございまして、内地米についていいますれば、その結果百七十三億の損になっております。これがかりに値上げをするということでございますと、百三十三億埋まりまして、差引四十億の損ということになろうと存じます。
  134. 横路節雄

    横路分科員 そうすると、あなたに数字のことだけお尋ねしておきたいのですが、内地米を値上げをしなければ百七十三億の赤字になる、値上げをすれば百三十三億埋まるから、そこで四十億。麦についても赤字が出ているわけですね。七十五億ですか。それから外米の補給金の分で出ておるわけですか。そうすると、値上げをしても、やはり食管の場合には外麦を差し引いても、幾分まだ赤字が出るわけですね。そういうことになりましょう。値上げをしてもなお赤字が出ますね。その値上げをしても、なおトータルとして残る赤字は幾らかということを、私はお尋ねしているのです。
  135. 小倉武一

    ○小倉政府委員 国内の麦の関係でも損がございます。そのほか農産物等についてもございます。外麦の益が百三十二億と見ております。そういうものを差引計算しまして、値上げをしない前提では百四十二億の損になるわけでございます。値上げすれば、内地米での益が百三十三億程度出て参りますので、百七十三億が御承知のように四十億になるという結果、総計で申しますと、ただいま提案しております予算では、全体の総締めくくりで損益の決算は九億のマイナスということになるのであります。
  136. 横路節雄

    横路分科員 農林大臣にお尋ねしたいのですが、農林大臣から今三十年度、三十一年度については当然一般会計でやらなければならぬということで、私たちもそうだと思うのです。まさか三十年度、三十一年度の赤字をこれからの消費者米価の値上げによって埋めていくというやり方はないのですから、当然一般会計しかないのですが、しかし、八円五十銭の値上げをしてもなお九億の赤字が出てくる。これは外麦の国内の売渡しの差益を引いて、なお赤字が生まれる、値上げをしてもなお赤字が出るということは、食管会計の赤字をなくしていきたいという政府方針からいえば、どうも私はおかしいと思うのですが、この九億についてはどうなさるつもりなんですか。
  137. 井出一太郎

    井出国務大臣 この九億の赤が出ると申しますのは、いわゆる農産物価格安定法による物資、澱粉その他ございます、あるいは飼料需給安定法に基くえさ等でありますとか、テンサイ糖の問題も入ると思いますが、そういったもののトータルがおよそ九億くらいになるのではなかろうか。そうしてこれは先般来御議論の中にも出ておりましたように、これを食管の消費者価格にしわを寄せるという性質のものではございません。従いまして、これは一応赤字のままで出てはおりますけれども、いずれ決算を見まして、やはり一般会計から補給をしてしかるべきもの、こういうふうに考えておりますので、先ほどの値上げをもっていたしますると、食管の収支はバランスが合う、こういうふうに御了承いただきたいと思います。
  138. 横路節雄

    横路分科員 私これで終りたいと思いますが、私の考えでは、昭和三十年度の赤字の三十四億については、三十一年度の補正予算の中で一般会計から繰り入れて、今度の国会で始末するのが正しいのでないか、三十一年度の分につきましては、三十二年度の補正でやられてもいいです。そういう意味では、私はまだ国会の審議は衆議院側では今月から来月の初めにかけてあるわけですし、この三十四億については確定しているわけですから、三十一年度の補正で、今お考えの食管に関する調査会ですか、それを待たないで、今私が申し上げましたように、大臣も同意したように、どう値上げしてみても過去の赤字の蓄積を、値上げによって埋めようというやり方はないのですから、そういう意味で、私は国の正しい予算の運用という点からいって、そうなさるのが最も至当だと思うのですが、この点いかがでしょうか。
  139. 井出一太郎

    井出国務大臣 ご意見のほどはよく承ります。
  140. 大橋武夫

    大橋主査 川俣清音君。
  141. 川俣清音

    ○川俣分科員 大体重要な点だけを意見をまじえずにお尋ねいたしますから、お答え願いたいと思います。三十二年度の農産物価格の見通し並びに農業所得の見通し、及び国際農産物の価格の動向をどう見ておられまするか。この三点をお尋ねいたします。
  142. 井出一太郎

    井出国務大臣 これは先の見通しということにも相なりますので、あるいは的確さを欠くかもしれませんが、国内の農産物価格は、米や麦のように統制下に置かれておりますものと、しからざる自由価格によるものと区別して考えなければなるまいかと思います。それで米麦につきましては横ばいとでも申しますか、それほど変化はなかろう。けれども、他の農産物は国内景気を反映いたしますときには、価格面では生産者に相当有利になるのではないか、こういう点から勘案いたしますると、農林関係の所得は他のいんしんな産業に比べると、もちろんテンポはおそいでありましょうけれども、幾分上向きになるのではないか、こういうふうに了解をいたしております。それから国際的にながめてみますと、特に食糧輸入の関係からながめてみます場合に、米につきましてはそれほど変化はなかろう。それから麦は、小麦の方は最近少し市況が堅調のようでございます。大麦は大体横ばいではなかろうかというような見当をつけておるわけであります。
  143. 川俣清音

    ○川俣分科員 そこで国際価格の動向をにらみ合せて、おそらく日本のこれから一年の農業政策を立てられることであろうと思う。今の見通しというものは、おそらく裏に政策があって、そういう表現をされたと思うのです。在野にある場合にはほんとうの見通しですけれども、当局になりますと、それらを計画に入れての見通しだと、そう私は理解するのです。  そこでお尋ねしたいのですが、米麦は横ばい、その他のものが幾分値上りする、こういう計画を立てられるわけでございますが、ところが、企画庁あたりは、あるいは通産省は最も明らかに言っておるのですが、工業生産の伸びを聞いてみますと、農業所得は上る。従って購買力が上昇する。それで肥料の生産も伸びる、農薬生産も伸びる、農機具の生産もみな伸びるという説明なのであります。そうすると農業所得の大宗をなすものは、日本の場合は米麦でありますから、米麦もまた相当生産が伸びるであろうし、もしも生産が伸びなければ、価格で伸ばして農業所得というものが伸びを見せて購買力をなす、こういうふうに通産省は見ておるわけであります。そういう通産省が見ておるような計画を農林省はお立てになっておるのですか、あるいは通産省は通産省で勝手に見ておられて、あなたの方と見解を異にしておるのですか。これは日本の物価の動向から見まして非常に大切なことだと思いますので、お尋ねしたい。
  144. 井出一太郎

    井出国務大臣 通産当局あるいは農林当局それぞれ所管するところが違いますので、見解に扞格があるかもしれませんが、これは経済企画庁あたりがこれを調整するという建前に相なっておるかと思うのであります。それで私はさきに申し述べましたように、農林漁業という、もともと性格が原始産業でござまいして、テンポが非常におそい、あるいは自然条件を相手にいたさなければなりませんので、他産業のような伸び方は、これは望むことが無理であろうと思うのであります。ただ最近技術面と申しましょうか、こういう面の発展がやはり大きくものをいうておると思いますので、価格面は先ほど申し上げました通りでありますが、量的には、これはやはり三年続きの豊作といえるかどうかしりませんが、まあ期待をつないでいいのではないか、こういうふうに考えております。
  145. 川俣清音

    ○川俣分科員 それでは続いてお尋ねしますが、通産当局並びに企画庁あたりが、分配国民所得からいっても、工業の伸びから見ましても、農村の購買力を無視しては計画が立たないということは明らかに説明しておることであります。そういたしますと、政府の手の及ぶところの農村の購買力を落さないということになりますならば、平年作以上を期待する。それで物価は横ばいだというふうに見れば、あまり伸びがない。平年作であって、さらに伸びを見ようとするならば、価格の上に手を加えなければ伸びは見られないということになると思う。ところが平年作であるかどうかというようなことは、いかに石橋内閣がしゃっちょこ立ちをしても天候を支配するだけの力はない。やり得るのは、価格政策だということになる。平年作に対していろいろな手を打ってできるだけ期待をするということは、これは一つの政策でありますけれども、それでもなおいかんともしがたい、及ばない点があると思う。それを補うのはやはり価格で補っていかないと、企画庁が計画しておるような日本の工業の伸びは期待できないということになると思う。そこで平年作に対する手も打たなければならないでしょうし、また価格についても考えなければならぬということになるのだが、農林当局としては、一体自然を相手に非常に危険のある平年作だけにたよっておられるのか、あるいは価格をも考慮して日本の工業の基盤をなしておるところの農村の購買力というものを持続しようという立場で、この政策を立てられておるのかどうか、どうも必ずしもそうだとは見えない点がありますけれども、一つお聞きしておきたい。
  146. 井出一太郎

    井出国務大臣 これはもう少しものを総合的に見なければならないと思いますので、ただ単に価格面ということでなく、一方生産基盤拡充でございますとか、新しい技術の浸透でございますとか、そういう面からやはり農村に力がついて参るということは、生産費の切り下げというふうな問題にもなりましょう。こういうことから所得全体としてはそのために増して参る、こういう面もあわせ考えてやったらいいのではないかというふうに考えております。
  147. 川俣清音

    ○川俣分科員 これはあまり論争しようとは思わないのです。おそらくそういう答弁をするだろうと思う。ところがこれからやるところの干拓にしても灌漑排水にしましても、ことしの増産の上にプラスされる割合はごく少い。すでにもう干拓などにつきましても、あるいは既存の改良事業にいたしましても、まだ十三年とか十七年という完成年限を残しておるのです。これから手をつけるところもおそらく五年なり七年なりたたなければ、現実の生産は上ってこないわけです。ただ労賃として落ちるとか、地方にいろいろな面で購買力の原動力となるものは問題は存するでしょうけれども、農業生産の上から見ますれば、ことしの伸びに直接すぐ影響するような手は一つも打っておられません。ですからそういうことをやることは五年なり六年なり先の生産力を増すことのためにやっておられるのであって、今年のためには大して役に立っていない、こう見ていいと思うのですが、これは議論はあと回しにいたします。これはあとで予算委員会で三人お並びの上で聞かないと出てきませんから、大体の構想を聞いておいて、その次に移りたいと思います。  そこでお尋ねしたいのですが、予算委員会も中ごろまでになってきて、分科会も明日で終るわけですが、農林大臣は農産物の価格に関する法律、いろいろな法律がございますが、これらの法律を改正するような用意があるのでございますか。全然農産物価格に関する法律については改正なさらないのであるか、食糧管理法を初め、その他の法律の改正の用意をしておられますかどうか、その点をお伺いします。
  148. 井出一太郎

    井出国務大臣 川俣委員の御質問の具体的な内容でございますね、農産物が一体何を意味するかという点は不明でございますが、われわれとしましては価格体系を検討するという段階ではございますが、この国会へ今具体的にさしあたりどうというところまでは、いっておりません。
  149. 川俣清音

    ○川俣分科員 もっと具体的にお聞きいたしますが、価格関係のありまする食糧管理法または農産物価格安定法等のこれらの法を改正する用意は今お持ちになっていない、こう見てよろしいのでしょうか。
  150. 井出一太郎

    井出国務大臣 この国会に関する限り……。
  151. 川俣清音

    ○川俣分科員 この国会では用意がない、——それに基いて一つお尋ねいたします。  それをお聞きしたので聞く範囲が非常に狭まって参りましたが、食糧管理法の建前は明らかに米及び麦の生産価格については、再生産を保障するという建前でできておるわけです。それから消費価格の方はいろいろな経済事情は参酌するけれども、消費者家庭の家計を安定させるために価格をきめるという建前をとっておるわけであります。これは明らかに違った関連なしに考えられた趣旨のものでありますことは明らかでございます。いろいろなものを参酌しなければならないのでありますから——参酌ということはおそらく参考にする、この参考の重要度ということはありましょうが、建前は全然別個に出ておるものであります。この点は従来もこの解釈についてはどなたも異議を立てておられませんが、まさか農林大臣これに異議を唱えるわけではないと思いますが、この点一つお尋ねしておきます。
  152. 井出一太郎

    井出国務大臣 御指摘のように食糧管理法から申しますと、一方においては生産者に再生産の保障、他方消費者に対しましては生活を脅威しない、こういう建前に相なっておると思います。ただ同時に、第一条においては国民経済の安定という題目が出されておるのでございまして、しいていえばこの大きなカッコで二つのものをくくってあるというふうにも思えるのでございます。まあそんな解釈をしております。
  153. 川俣清音

    ○川俣分科員 これは大きなカッコで囲んであるというけれども、このカッコの中の具体的な数字はもっと分類して出しておるのでありますが、カッコの内容をなすものは先ほど申し上げた通りだ、こう理解するのが本筋だと思うのであります。  そこでさらにお尋ねいたしますが、先般の委員会で食管特別会計の分離論が大臣の構想の中に出てきたのでありますが、なぜ一体食管会計を分離しなければならないというふうにお考えになったのか、その考えられた根拠を一つここで明らかにしていただきたい、こう思うわけです。
  154. 井出一太郎

    井出国務大臣 川俣委員の今おっしゃる分離論というのは、私がたしか和田さんにお答えをしたとき、たとえて言うならば、そういう前提のもとに農産物価格安定法等によるような一種の赤字が当然予想される価格指示の使命をになっておるような部分は切り離してみるのも、一つの考え方ではなかろうか、こういうことを申し上げたことに関連してだろうと思うのでございます。そこで現在は御承知のように食管特別会計というものが国内産の米麦、輸入食糧、農産物等各品目を処理しておりまして、これがこの食管の収支の理解を非常に困難にしておるのではなかろうか、こういうふうに考えるのであります。そこで別個の特別会計というような考え方のもとに経理を明確化することがよりベターである、こういう意味で私は発言したわけでございまして、それでは小さな特別会計を幾つも乱設することになりはせないかというような御意見も一般論としては出るだろうと思うのであります。そんな点なども今度の調査会の一つの研究テーマになるのじゃないかというように考えております。
  155. 川俣清音

    ○川俣分科員 この間の委員会では非常に勇敢に意思表示をされておるわけです。私はその根拠を決して思いつきに出てきたものとも思わない。今また調査会にあなたは逃げられたから、これに触れなければなりませんが、三十年の七月に農産物価格対策協議会というものを内閣に設けて、案が出ておる。その後こういう問題については、たびたび学識経験者を集められて議論はされておる。しかしいつでもこれらの問題をなぜ一体政府が取り上げてやれなかったかというところから、おそらく先般のような特別会計を二つなりに分けて問題を明らかにしよう、こういうことが出てきたのじゃないかと思うのでありますが、そうではないのですか。
  156. 井出一太郎

    井出国務大臣 川俣委員はあの際の私の発言を非常に強くおとりをいただいたようでありますが、これは先ほど来申し上げるように非常にいろいろな性格のものが食管の中に同居しておる。これが経理の明確化を妨げており、ときによっては食管というものが何か暗影を漂わしているというふうにも考えられるのでありまして、いわば一私案と言いましょうか、そういう考え方もあるということで申し述べたつもりでございます。
  157. 川俣清音

    ○川俣分科員 これは決して私案ではないと思うのです。確かにそういう考え方があってもしかるべきなんです。ところがあってしかるべきことが、発言してみると、大蔵当局からちょっと待ったということになったのではないかと想像しますけれども、そのことはあと回しにいたします。世間でこの食管会計を非常に複雑だ、こう言っておるわけです。あるいは大臣みずからも複雑だと言っておられる。確かに複雑怪奇なところもなしとはしません。しかし私は複雑じゃないと思っておる。怪奇なところはあるかもしれません。先ほどの日通との関係でも、黄変米等は怪奇なところはありますけれども、私は複雑じゃないと思っておる。すっきりさせたいというけれども、非常にすっきりしていると思っている。私の見るところではこう見ているのだが、そこでもう一歩進めてあなたの意見を問いたいのです。私は決して複雑じゃない、すっきりしていると思っておる。どういうところにいわゆる赤字というものが出ているかというと、私は法律の執行による当然の結果起ってくる赤字があると思う。井上君の分類とちょっと違いますけれども、法律の執行から当然行政費として見なければならないものを食管会計が行なっているために、国の行政を行うための必要な経費が食管の特別会計としては赤字になっている。国の会計から見れば決して赤字じゃないのだけれども、食管特別会計から見れば赤字になっておる。いわゆる法律を執行する、行政府としてはやらざるを得ない結果起ってくる一般支出であるべきものを、食管会計という中に置かれておるために生じる赤字、国の赤字じゃなくて食管会計の赤字です。  もう一つは、これは井上君の明らかに指摘した通りでありますが、事業の運営上の赤字と見るべきものです。これは大した問題ではないと思う。もう一つ見落してはならないのは、日本の貿易振興のしわ寄せからくる赤字であります。私どもからいうならば、日本の貿易振興の上からくる犠牲になった赤字だ、こう見るべき赤字かと思います。いわゆる国の大宗をなすところの貿易振興の上から、やむなくかぶらなければならない食管の赤字、国の財政が当然負うべき赤字であるのを、食管の中で消化しなければならぬために生じる赤字であります。この三つだと思うのです。そういたしますれば、これは複雑でも何でもない、すっきりしているのです。あなた方行政府として、法律命令に従わなければならない結果生ずるものであり、一方は国の貿易外交の上から犠牲になっている赤字でありますから、しいた赤字でありまして、生じた赤字ではない。こう考えるとすっきりしているじゃないですか。どこが複雑なんです。私はどうもわからないのですが、複雑だというのはどこなんですか。
  158. 井出一太郎

    井出国務大臣 ただいま御指摘のような、いろいろな性格に基く赤字が雑居しておるといいますか、この一本の会計の中に混然として投げ込まれておって、その仕訳がついておらぬ。こういうあたりをあえて複雑と申したつもりでございます。それで今おっしゃる貿易振興のしわ寄せ、この点をもう少し具体的にお聞かせいただけば、一そうけっこうと思います。
  159. 川俣清音

    ○川俣分科員 これはたとえば小麦にいたしましても、大体オーストラリアやアルゼンチンから買ってくるあるいはメキシコから買ってくる。こういう問題のときに、日本の貿易の進出上少しぐらい高くともこの国から買わなければならないといって負わせられた赤字もあるわけです。これは黒字になるべきものが黒字にならないという場合と、直接すぐ赤字が出る場合とある。これは明らかじゃないですか。東南アジアから米を買ってくる場合に、米がほしくて買ってくるよりも、現状の取引の状態では日本の貿易の振興に一番役に立つように買ってきておる。これは明らかな事実なんです。従って黄変米でも入ってくるのはこのためです。食う食糧を入れるということよりも、持っていった品物がどうしてはけるかというコネクションの一番強い消費者と結んで買ってこようという動きが現にある。それから来る赤字があるはずです。まだあります。毎年私どもは指摘しておるのですけれども、大麦などは買わなくたって国内で十分でき得るのです。赤字になるものをなぜ買ってこなければならないか。小麦のように優秀なもので国内で不足しておるものは別です。大麦などは少し価格政策をとりますならば十分増産する素地も持っておる。能力も持っておるのに、なぜいつも国内の大麦を押えて高い外麦を買ってくるのか。多いときには十二、三億赤字を出してまでなぜ買わなければならぬか。理由が一つもないじゃないですか。これは食うものからいえば、大麦のごときは日本の大麦の方が決して外麦に劣らない。小麦は確かに劣ります。大麦は増産も可能なんです。通産大臣は、外貨を尊重するといいますか、貿易バランスの上から国内で増産できるものは、できるだけ買わない方針でありますと言っておる。ところがあなたの方は買うのです。無理に買わせられて赤字が出ておる。政府方針は買わない方針なのにかかわらず、あえて買っておる。これは貿易振興でも何でもない。こういうことまで赤字だからといって消費者が負わなければならぬ理由は一つもないじゃないですか。すっきりしておるのです。すっきりしておることをすっきりさせないでごまかしておることから複雑だといわれる。怪奇だといわれる。このくらいすっきりしたことはないじゃないですか。ちっとも複雑じゃない。こんなものは取りはずしていけばすっきりするのです。あえてこういう点を触れられることをおそれて複雑怪奇だということで逃げておることは無責任だと私は思う。御答弁願いたい。
  160. 井出一太郎

    井出国務大臣 大麦の問題については私も同感なんです。これは日本の立地条件というものが小麦については確かに国際競争には勝てない条件を備えておる。大麦はおっしゃるように優に外国に対抗し得ると思うのであります。ただその作付転換等がすぐに間に合うかどうかというような問題もありましたから、既往においては大麦の輸入もやむを得なかった点もあろうかと思うのであります。その点は私は御趣旨とちっとも変っておりません。それから怪奇なところはあるが複雑ではない、こうおっしゃるのでありますが、従来その仕訳がどうも明確を欠いておりました。私がこのほど来そこにメスを入れて、これは特別会計を別に区分するといなとにかかわらず、食管会計の中で区分を明らかにして問題を処理する方法を考えたいというところへ思いついたのも、まさしくその点からでございます。
  161. 川俣清音

    ○川俣分科員 そこで大麦の問題だけ解決つけてしまいましょう。毎年私が指摘することは、大麦は前年度は八十四万一千トンが、今年もまた八十七万三千トンにふえている。これはいつも実績がふえた、ふえた——大臣御存じの通り、大麦の価格をちょっと上げたばかりで国内の増産が期待できたことがある。とれすぎたといってあわてたほどのこともあるのです。何も転換は困難ではありません。無理に大麦の価格を押えておる。これは裸麦とか小麦との関連上、三麦間の調整をとるということで押えている。これは一つの政策でしょう。価格を押えておいて増産を押えておる。それで八億なり九億の赤字を出しておる。これは一ぺんで直せることじゃないですか。この予算をさっそく直すだけの勇気がありますかどうですか。趣旨に賛成だというなら、当局になられた大臣はすみやかにこれを実行する勇気がなければならぬと思いますが、どうでしょうか。これだけでも直す勇気があるかどうか。
  162. 小倉武一

    ○小倉政府委員 外大麦の輸入でございますが、これは方向と申しますか、気持といたしましては、川俣委員と同様に実は私どもも思っているのですが、(「もうけるためにやっているんだよ」と呼ぶ者あり)ただ外大麦はもうけるためではございませんで、むしろ損をするのですけれども、麦作全体の関連から申しましても、先生がおっしゃいましたように、大麦の方が比較的日本に適しているという関係もございますし、また国際競争力から申しましても、比較的に大麦の方が特段に優れておる、こういう関係から申しまして、国内の麦作といたしましては、特に大麦に重点を置いてやっていく。また輸入につきましても、大麦はそういう意味で減らす方向に一つ持っていきたい、かように思っております。たしか実績の数字についてのお尋ねだと思うのでありますが、これは豪州からの大麦の輸入につきまして、一時船等の関係によって繰り下げ輸入になったような関係がございまして、最近に輸入がふえたというような実績の数字にごらんになっているのだと思いますが、それは先ほど申しました船等の関係計画がずれたということでありまして、ごく最近の私どもの方針としては漸減の方針をとっておりまして、政府といたしましては、従いまして本会計年度よりも来会計年度は、若干でございますが輸入を減らしておる、そういう方向で今後とも行きたいと考えております。
  163. 川俣清音

    ○川俣分科員 長官、この予算書は間違いないですか。私のところへきておるのは、前年度予算では八十四万一千トン、三十二年度は八十七万三千トンでしょう。しかも予算はこう組んでおりながら、実行はいつでもこれよりふやしておるのです。いつもそうなんです。大麦だけは決して減らしていない。趣旨には賛成だというが、いつも予算をオーバーしている。これはおかしい。だからこれよりも減らす意思があるならば、三十二年度は減らさなければならぬにもかかわらず、上げている。しかもこれもまた実行はもっと上っている。今日の国内三麦の間において、大麦ほど反当増産率の高いものはない。こんなに発展できるものを、なぜ一体押えなければならないのですか。趣旨に同感だというなら、さっそく予算を修正されたらどうですか。できないことはないでしょう。これはずっと組んでくると、少くともゼロにまでするならば、九億くらいの赤字は一ぺんにとんでしまう。そんなに赤字に苦労するなら、まずこれから手をつけたらどうですか。一番簡単なことくらいやれるでしょう。むずかしいことをやれというんじゃない。
  164. 小倉武一

    ○小倉政府委員 ちょっと数字を比べる基礎が違いますので、お話のようなことになるわけでございますが、川俣先生のお話は、三十一年度の当初の計画と実行と比べて、実行が出ている、こういうお話だと思うのです。そういうことだと思うのでありますが、私どもの先ほどの御説明といたしましては、前年すなわち本年度の実行と来年度の予算というものと比べましてお話をしておりますので、そこに若干ずれておるのでございますが、お尋ねのように、昨年の当初の計画と実行という点をお比べになりますと、実行がふえている。これはいろいろ事情もございましたけれども、とにかくそういうことに事実なっているわけです。今後そういうふうに漸増の方向は一切とらない、むしろ漸減の方向をとる、こういうことを実は申し上げているのでありまして、従いまして三十二年度の予算をごらんになりますと、三十一年度の実行見込みよりは若干減らしているのであります。
  165. 川俣清音

    ○川俣分科員 私が聞いているのは、これは三十一年度の予算よりも実行がふえている、そのふえた実行を基準にして三十二年度に持ってきているために、三十一年度の予算よりも三十二年度の予算がふえている。これは明らかでしょう。漸減の法則にあるならば、ふえたことが間違いだといって、三十一年度予算よりも減らしていかなければならぬ。あなたは減らさなければならぬと言ったが、ふえた。減っていたならば、それを基礎にとることは、これは別ですよ。ふやしておいて、ふやしたものを基礎にとらなければならないといって持ってくるのは、漸減の法則じゃないでしょう。去年実行でふえたものと、今年の予算と見てくれ、そんなことを聞いているんじゃない。これは予算を組むときのあなたの意思でしょう。だれかが間違ったかどうか知らないけれども、曲げられた予算になったものと、今年の予算と比べてくれといっても、それは比べることはできません。大蔵省はわざわざこれを出しているからには、当初予算と三十二年度の予算と比較しているんじゃないか。漸減の法則をとるというから私は聞いている。ふやすという方向をとるというのなら、ふえたものをもって比較をとる。これは別問題です。減らすことに賛成だ、たまたまふえた、こういうのならば、たまたまふえた分などは、比較するに値いしないじゃないか。やはり当初予算と三十二年度予算と比較しなければならぬ、これは常識じゃないか。大臣、どうなんですか。
  166. 井出一太郎

    井出国務大臣 そこに若干数字の食い違いがありましたことは、今、川俣委員と食糧庁長官との間にその点は明らかになったと思いますが、それはそれといたしまして、方向といたしましては御趣旨の線に沿ってこれを漸減いたしたい、こう考えております。
  167. 川俣清音

    ○川俣分科員 これは、あなたがその方向をとりたいならば、三十一年度に河野君が組んだ案よりも、あなたは減らすかどうかということを聞いているんです。
  168. 井出一太郎

    井出国務大臣 その点は今後の実行上において、十分考慮をいたす所存でございます。
  169. 川俣清音

    ○川俣分科員 もしこれを実行で落されれば、赤字が減るのですよ。全部減したかったら、全部移せばいい。別に調査会も何も要らないですよ。今直ちにできることです。おそらく調査会の連中は、こんなことはかえって知らぬくらいです。知らないところへ相談をかけたって、いい案ができるはずはありません。  今度はもとへ戻りまして、こういうふうにお聞きしたらどうなんですか。一度、同じ自民党の吉田内閣の時代に、統制撤廃をやろう、間接統制をやろう、こういう考え方があったのですね。自民党の中には、いまだにそういう考え方がある。対抗上あった方がいいと思います。そこでお聞きしたいのですが、一体間接統制をした場合に、政府はどのくらいな経費を負担しなければならないと考えておりますか。これは食糧庁でも、統制撤廃になった場合の想定をして試算をしたこともあるはずです。従って間接統制になった場合には、一体一般会計からどのくらいな負担をしなければならないと思われますか。試算があるはずです。お示しを願いたい。
  170. 井出一太郎

    井出国務大臣 私、まだ試算があるかどうか確かめておりませんが、過去において、たとえば米穀自治管理法とか何とかいう一種の間接統制の時代のあったことも承知しております。相当莫大な経費のかかっておることも、数字が明らかに示しておると思います。今日のところは私としてはそれは考えておりませんので、今お示しする数字は持ち合しておりません。
  171. 川俣清音

    ○川俣分科員 それはおかしいですね。調査会を設けるということになると、やはりこれが基本にならなければなりません。やるかやらないかは別ですよ。もしもはずせばどのくらい一般会計が負担しなければならないか。これを考えてくると、直接統制をしておるものと間接統制をやった場合の一般会計の負担とを比較検討すれば、特別会計においてはこのくらいな負担はやむを得ないじゃないかということが出てくるはずじゃないですか。これが一つです。  もう一つは、現行法を改正しないとすれば、この現行法は行政を命じているのです。行政には必ず行政を行うところの裏づけの経費というものがなければならないはずなんです。法律の運用には当然経費が伴うものでありますから、この法律を生かしておく限りにおきましては、この法律の執行上の経費というものは必ずついていなければならぬはずです。この経費一般会計で見るべき性質のものである。法律を執行するための経費というものになれば、これは一般会計で見るべきものです。税法に基いて税務官吏が行う行為は、一般会計で見ておる。税金の中から取って、あとは残余として、あるいは利益として国に出すわけじゃないのです。従って法律に伴う行為というものは、当然一般会計が負担すべきものなんです。ただ特別会計の中で操作をするということはあり得るでしょう。操作することがすぐ赤字だというのは、どこからだれが持ってきたのか。特別会計が負担させた負担行為なんです。赤字じゃないのですよ。赤字だ赤字だとだれが言うんです。行う法律行為に伴う当然な経費です。これをただ所属がえして特別会計が負担をして、これだけの赤字だというのはどこから出てくるのか。農林大臣は赤字だ赤字だというのはおかしいじゃないですか。法律の執行者が当然行うべき経費を赤字なんて言ったらどうします。森林対策費であろうと何の対策費であろうと、あれは赤字とはならない。一般行政費として当然受くべきものとして一般会計に載せている。こう割り切ってくれば、調査会など入用じゃないじゃないか。このふんずめをつけないでは、どんな人に頼んだって、答案は出てきませんよ。質問者が悪ければ、決して答案が出てこないと思う。お伺いしたい。
  172. 井出一太郎

    井出国務大臣 川俣さんの御見解は、当然行政に伴うところの経費、こういったものは赤字でないんだ、こういう御見解だろうと思います。この中には直接性を持つもの、あるいは間接性を有するもの、こういうあたりに区分をすべきではないかという議論もあります。そういう点などは、やはり一つの検討の宿題になるのではないか、こういうふうに考えているわけであります。
  173. 川俣清音

    ○川俣分科員 いや、検討になるんじゃなくて、調査会にかけるには、こういう問題はどうかといってかけなければ、回答にならないじゃないか、こういうことなんです。  もう一つは、ほかの事業体と違って、食糧管理法に基くところの特別会計というものは、事業体、営業体じゃないですね。アルコール専売であるとか、印刷専売のようなものとか、タバコ専売のようなものとか、あるいは国有林事業のようなものであるとか、そういうものと本質が違うんです。別個にただ経理を明らかにするための特別会計であって、こういう性質の特別会計はたくさんありますよ。事業体でなくて、経理の区分を明らかにしようとするための特別会計はたくさんあります。事業会計じゃない。これを事業会計と見ておられるならば、どんなところへ諮問されても、回答は出てきませんです。法律を変えない限りにおきましては、出てこない。その法律に関係のないものが、法律を直してやろうなんということは、おこがましいことである。しかも国会開会中です。法律の範囲内でやるとすれば、案が出てくるわけがない。井上君の指摘された通りである。それじゃ法律を改正しようかというならば、国会が開かれているときに、屋上屋を重ねるようなことは避けなければならない。そうすると、営業ではない。あなたが一条に示すように、国民経済のためにやるんだ、こういうのである。企画庁のようなものです。実施官庁と企画庁の関係くらいのものです。実務がないから企画庁が要らないんだということにはならないと同じように、これは国民経済全体の上から必要だということでできているものなんですね。これを営業のごとく考えておられるとすれば、これは法律の根本を犯すものであって、邪道なものなんです。そうすれば、複雑だとか赤字が出るとかいうような議論は出てこないはずなんだ。営業体と見るか、一つの事業体と見るから、赤字だという問題が出てくる。事業体でない部分がある。行政の面がたくさんある。同時にそれ自体というものは事業体じゃないんだ。こんなことを私から説明されるまでもない。なぜ私が説明しなければならぬかというと、調査会などを作って、答案の出てこないところへ逃げようとするから、ここで説明をし、あなたの答弁を願わなければならぬことになる。井出さんをここまで責めるつもりは毛頭ないのだけれども、どうも心細い気がするのでお尋ねせざるを得ないのです。
  174. 井出一太郎

    井出国務大臣 御指摘のように、食管特別会計というものの性格でありますが、これは確かに行政だ、こういう部分も大きくございましょう。それからこれは、一つの売買行為をやっておるんだ。特に外国食糧などについてはそういうことが言えるだろうと思っております。こういう面については、あるいは運営のいかんによりまして赤字、黒字というような問題の生ずる面も確かにあろうと思います。ですから、そういったいろいろな角度からこの会計にライトを当ててみる時期が、ここに到来をしたのである、かように考えまして、これは国民の御批判もある時期でありますから、いつまでもほうっておいていいというものではなかろう、こういうことでこの問題に取り組んでおりますことを御了承いただきたいと思います。
  175. 川俣清音

    ○川俣分科員 それはおかしいです。国民の批判などということは。麦のように間接統制ですら、こういう数量の少い、単価の少いものですら、これだけの赤字が出るのであるから、主食の大宗である米をやった場合においては、これだけの間接統制の費用がかかるんだ。どっちをとるか、こういうことになると、了承するか了承が得られないかという問題が出てくると思う。問題の提起が悪いのです。統制をはずせば、赤字というものはどこへいくんだということなんです。これは消費者が負担するだけでは済まされない問題がある。行政費が負わなければならない部分がある。もちろん食糧管理法から行きますと、日本経済の全体の上に非常な影響を——一番先に提起したように、日本の農村の購買力が上るか上らないかによって、日本の工業の上昇率が変動するというくらい大きな購買力を持っておる。何といっても人口が大きい。消費水準は都市の消費水準より低いにいたしましても、人間の数が多い。ことに農業には単なる消費財ばかりではなくして、生産財として日本の工業の持っておる工業資材をかなり投入いたしておるわけです。日本の生産構造に大きな変化を与えるものなんですから、そこで国民経済の上から食糧を管理するという建前をとっておるわけなんです。それなるにかかわらず、赤字だ赤字だというのはどこから出たのですか。赤字というものをだれもまだ示してないんじゃないですか。赤字を的確に出した人がおりますか。食糧庁はそろばん上の赤字だけ出しておるわけですよ。本来の赤字というものは、だれも出していませんよ。だれも出されないで、赤字解消なんてどこから出る。赤字の内容がわからないで、赤字解消なんてどこから出ているのか。内容がわかって初めて、赤字の解消ということが言えるでしょう。赤字か黒字かわかりもしないでおって、どれだけ一般の経済に寄與しているか、そういうことを計算もしないで赤字だと言う。土地改良事業につぎ込む金、これを赤字であるとはだれも見ないでしょう。見方がみな違うじゃないですか。農林大臣、赤字だと言われるのはどこをさして赤字だと言われるのか。事務官はそろばんをはじいていればいい。大臣としては、赤字だということはそうは見ておられないと思う。少くとも井出農林大臣は食糧庁の赤字をすぐ赤字だと認めますなんて言われないと思う。
  176. 井出一太郎

    井出国務大臣 だんだんの御指摘でございますが、ともかくここ連年百五十億ないし二百億のノミナルな赤字というものが出ておることは確かでございます。それで川俣さんはこの内容は、単なるそろばん上の赤字だけで、それで了承できない、それゆえにその真相を究明しなければならぬ、こういう御指摘だろうと思います。私としましても、今当面直面しておる問題は、そういう基本的な問題にまで掘り下げまして、それぞれ仕訳、区分をいたして、その赤字の実体を明確化したい、こういうつもりでおるわけであります。
  177. 川俣清音

    ○川俣分科員 それは民間人に頼んでも出てこない。これは内閣の責任で区分をきめなければ出てこない問題です。行政区分の問題です。それを民間の有識者に頼んだって出てきません。しかしこれ以上この問題は論争を控えて、あらためて別の機会にいたします。これは課題にしておきます。  次にお尋ねしたいのですが、消費価格の問題が非常にやかましくなっておるにかかわらず、生産者の売り渡し価格がまだくすぶっておるわけです。政府は一万円というものを出しておられますが、これは従来の方式でやられたのですか。一万円というところにみぞを置いて、あとは一万円になるように計算されたんですか。どうも一万円になるように計算されたと思われるのでお聞きいたしたい。
  178. 小倉武一

    ○小倉政府委員 生産価格の算定でございますが、これは従来のようにパリティ方式によりまして、それに生産者所得補償という考え方をくずさないつもりで計算したのであります。具体的な計算の仕方といたしましては、三十一年産米の手取り価格を基準といたしまして、それをパリティ指数で修正をする、こういう計算ではじいたものであります。
  179. 川俣清音

    ○川俣分科員 これは資料でお出し願いたい。資料を出されるというと、おそらく恥かしいと思う。そこでお尋ねする。さっき井上委員は三十一年度の米価は一万七十円だということでしたが、従来はきまった米価よりも実際の手取り米価が多いのが例でありますが、昨年は表面公表された一万七十円に対して、実際手取り額は九千九百五十円を割っておるようですが、その点はお認めになりますかどうか、お尋ねいたしたい。
  180. 小倉武一

    ○小倉政府委員 米価決定当時は一万七十円ということであります。実際の手取り米価といたしましては九千九百七十円というふうに考えております。
  181. 川俣清音

    ○川俣分科員 九千九百七十円というのは、おそらく十一月か何かの計算でしょう。一月の計算をしてごらんなさい。五十円ちょっとこえるか、割る程度です。なるべくいい時期をとってきて言ってもだめですよ。一万七十円できまったものを、どうして一体低めるかという方策をとって低めた。自然に出てきた九千九百七十円じゃない。策を弄して減らしたのです。その点をお認めになりますかどうか、大臣どうですか。
  182. 井出一太郎

    井出国務大臣 決して策を弄しているとは思いませんが、なお詳しいことは政府委員から申し上げます。
  183. 川俣清音

    ○川俣分科員 これは明らかに策を弄したのです。なぜかと申しますと、米価審議会へ政府が諮問して決定されたことを、しかも自分で諮問したことを変更して、なるべく早場米奨励金が出ないように工作したのです。その結果起ってきた問題なんです。一万七十円になるように計算したのじゃないのです。九千九百六十円程度になるように操作をした結果生れてきたものです。長官、これを否定しますか。否定するならば、もっと詳しく申します。
  184. 小倉武一

    ○小倉政府委員 一万七十円と実行見込みとに差額が出ております点につきまして、何かそこに手かげんをしたということでございますが、そういう特別の悪意のある手かげんをしたというわけではありません。その理由の一つは、等級間の格差につきまして、当時の見込みよりは実行上変って参った。これはいろいろ作柄の関係が影響することでありますので、そうなったのであります。なお早場の時期について、おそらく米価審議会当時と若干の違いもあるかと思いますが、それは実はそう主たる原因ではないと存じます。
  185. 川俣清音

    ○川俣分科員 二つともごまかしです。米価審議会には、第一期は十月五日となっている。先ほどこれでよろしゅうございますかと質問しているのです。一期はそれでよろしいという返事をしている。それで実行しますと言って確約しておる。それをなぜ九月三十日で締め切ったのですか。九月三十日で締め切らないと、予定の五十億を上回るかもしれないと思って切ったのじゃないですか、策を講じたのじゃないですか、ちゃんと自分で、大体早場米の平均価格は二百円だと言っておる。二百円を百七十七円に落したのはだれなんです。策を講じたのじゃないですか。検査基準も去年からかえたのですけれども、これは基準をかえたのじゃありませんよ。四等を新三等を名づけるということで、四等則新三等の名前にかえ、三等は新二等といって、名前を組みかえただけなんです。検査を厳重にするなんという約束は一つもない。それを検査をやかましくして、なるべく二等、一等を減らして、元のように新三等、元の四等を多くしようというねらいでやったから、一万七十円にならなかったのじゃないですか。そうやらないということで計算していって、一万七十円になる。そうやれば一万七十円にならないのは、初めからわかっていることなんです。一万七十円になるようにやりますというのが政府の声明だった。今度だって一万円になりますというけれども、やり方によってはもっと減るのです。これで策を弄しないというのは何ですか。だれでも一万七十円だと思っているのです。世間でも新聞等においてはみな一万七十円という計算をしておられます。九千九百七十円だとか、九千九百五十円なんて、だれも言っておりませんよ。知っているのはあなた方だけです。これを世間ではごまかしといわないで、何をごまかしというのですか。政府が声明したものを減らしている、こういう約束で買いますといって告示をしておる、それで買わないのだ、だからこれはごまかしだというのです。まあ議論はこのくらいにしておきますが、この計算だって一万円になるような計算をしているのですけれども、これは追ってあとの資料を出された上で、資料を出されると抜き差しならないことになると思いますから、抜き差しならないものをお出しになって、その上で質問いたしたいと思います。
  186. 大橋武夫

    大橋主査 本日の会議はこの程度にとどめまして、明日は午前十時より開会し、通商産業省及び農林省所管に対する残余の質疑を継続することにいたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時四十六分散会