○井上(尚)
政府委員 お答え申し上げます。最近の特許行政実情について、
審査官の数的
増加と同時に、それの質的
向上について十分な対策を講じておるかという点を中心とする問題であったように私一応了解しました。最初に申されましたロイアルティ、
海外の外国人の技術に対しましての日本からのロイアルティの支払いは、一昨年の数字でございますけれども、年間一千四百万ドルという
程度の金額を支払っておりますが、残念ながら
わが国の技術に対しましての
海外からのロイアルティの収入は、一昨年十万五千ドルで、非常にここに懸隔がございます。こういう点につきましては、
わが国におきましても逐次優秀な発明が出て参っておりまするので、これにつきまして外国出願を
奨励する
意味合いから、その
補助金制度の道も講じて参っております。今後の問題としましては、一方におきまして
わが国の優秀発明についての
外国特許出願の数がだんだん
増加して参りますのと、なお他方におきましては、戦後十年間にいわゆる外資導入といいまするか、技術提携契約を中心にしましての外国特許権に対する実施契約の設定が数多くあったことは事実ですが、同時に国内技術の水準の
向上に応じまして、
海外に対する支払いの方も必ずしも従来のような上昇カーブを続けていくということは
考えていないわけでございます。
なお
審査官の陣容につきましては、最近特許、実用新案、
意匠、商標を通じまして、出願件数は逐年非常な
増加を続けて参りまして、戦前
昭和十五、六、七年当時と比べますと二倍ないし二倍以上でございますので、いろいろな能率
増進の方法を講じましても、究極するところどうしても人間のある
程度の
増加は絶対必要であります。最近数年間平均三十名ずつの増員を続けまして、三十一
年度におきましては八十名
増加、今回三十二
年度におきましては大体百名
増加ということが決定しました。そういう
審査陣容の
強化によりまして、今日までのいわゆる
審査、審判を通じましての遅延と申しますか、停滞件数の
増加という遺憾なる実情をなるべくすみやかに
改善したいと
考えておりますが、仰せの
通り、そういう数的
増加と並行しまして質的
向上を
考えることは当然必要でございます。この点につきましては、つとに
審査官、審判官を中心としましての研修
計画といいますか、これを内部で作りまして、新人の教育は言うまでもなく、中堅幹部のいわゆる再教育という研修教育
計画も目下着々実施中であります。なお特に原子力等の新しい問題につきましては、まだようやく人数は二名ではございますけれども、英米に留学生として出すというような方法も並行して講じておりますが、
特許庁審査官という業務の性質上、はっきり申しまして、一人前の
審査官になりますには、どうしても三年ないし三年以上の月日が必要でございますので、今日の段階といたしましては、いわゆる古い
審査官が新人の教育と同時に
審査業務の遂行ということで非常な労働
強化を見つつあるというのが実は実情であります。今申しましたように、質的
向上ないしまた同時に
海外資料、
海外の技術文献のなるべくすみやかな、なるべく広範な収集という方法も講じまして、これを
審査の用に供しまして、そうすることによっていわゆる出願に対する新規性の判断の場合にこれを引用することによって、不当に、必要以上に外国人の出願に対して特許を与えるというようなことがないように、今申しました内外文献、なかんずく
海外の技術文献の迅速かつ広範囲な入手ということについては、格段の力をいたしておりまして、今回の
予算の点でも、三十一
年度から
海外文献収集費等の
増加を相当大幅にいたすという状況でございます。簡単でございますが、一応御
説明いたしました。