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1957-04-27 第26回国会 衆議院 予算委員会 第25号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年四月二十七日(土曜日)     午前十一時一分開議  出席委員    委員長 山崎  巖君    理事 宇都宮徳馬君 理事 江崎 真澄君    理事 河野 金昇君 理事 小坂善太郎君    理事 柳田 秀一君       逢澤  寛君    愛知 揆一君       安藤  覺君    今井  耕君       植木庚子郎君    植村 武一君       臼井 莊一君    太田 正孝君       小川 半次君    上林山榮吉君       吉川 久衛君    齋藤 憲三君       周東 英雄君    須磨吉郎君       田中 正巳君    二階堂 進君       野澤 清人君    畠山 鶴吉君       福田 赳夫君    船田  中君       古井 喜實君    南  好雄君       山本 勝市君    山本 猛夫君       亘  四郎君   早稻田右エ門君       有馬 輝武君    井手 以誠君       井堀 繁雄君    今澄  勇君       片島  港君    小平  忠君       島上善五郎君    志村 茂治君       多賀谷真稔君    辻原 弘市君       古屋 貞雄君    森本  靖君       矢尾喜三郎君    横山 利秋君  出席国務大臣         内閣総理大臣  岸  信介君         大 蔵 大 臣 池田 勇人君         農 林 大 臣 井出一太郎君         運 輸 大 臣 宮澤 胤男君         郵 政 大 臣 平井 太郎君         労 働 大 臣 松浦周太郎君  出席政府委員         法制局長官   林  修三君         大蔵事務官         (主計局長)  森永貞一郎君         林野庁長官   石谷 憲男君         通商産業事務官         (軽工業局長) 齋藤 正年君  委員外出席者         大蔵事務官         (造幣局長)  脇阪  実君         大蔵事務官         (印刷局長)  大槻 義公君         通省商産業省事         務次官         (軽工業局アル         コール事業長) 菊池 淳一君         日本専売公社総         務部長     小川 潤一君         専  門  員 岡林 清英君     ————————————— 四月二十七日  委員大橋忠一君、川崎秀二君、北村徳太郎君、  須磨吉郎君、田中正巳君、竹山祐太郎君、中  曽根康弘君、橋本龍伍君、三浦一雄君、山口喜  久一郎君、池田禎治君、勝間田清一君、河野密  君、辻原弘市君及び吉田賢一辞任につき、そ  の補欠として二階堂進君、畠山鶴吉君、愛知揆  一君、齋藤憲三君、河本敏夫君、吉川久衛君、  逢澤寛君、亘四郎君、植村武一君、早稻田柳右  エ門君、田原春次君、志村茂治君、古屋貞雄君、  平田ヒデ君及び成田知巳君が議長指名委員  に選任された。 同日  委員逢澤寛君、愛知揆一君安藤覺君、植村武  一君、吉川久衛君、齋藤憲三君、二階堂進君、  畠山鶴吉君、早稻田柳右エ門君、亘四郎君及び  平田ヒデ辞任につき、その補欠として中曽根  康弘君、北村徳太郎君、野田卯一君、三浦一雄  君、竹山祐太郎君、須磨吉郎君、大橋忠一君、  川崎秀二君、山口喜久一郎君、橋本龍伍君及び  辻原弘市君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十二年度特別会計予算補正(特第2号)  昭和三十二年度政府関係機関予算補正(機第1  号)     —————————————
  2. 山崎巖

    山崎委員長 これより会議を開きます。  昭和三十二年度特別会計予算補正(特第2号)及び昭和三十二印度政府関係機関予算補正(機第1号)を議題といたします。  質疑を続行いたします。有馬輝武君。
  3. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 私は一昨日来質問が続けられております今回の仲裁裁定の問題、これが結論が出ますまでの経緯、そして政府が今度の予算措置をなされた根本的な態度、それから四現業に対しまして移用、流用で済まされたこと、おもにこの二点に関して御質問をいたしたいと存じております。総理がお急ぎのそうでありますので、十一時半までにいろいろな点をまとめまして最初にお伺いいたしたいと存じます。  まず第一に私がお伺いしたいことは、この公労協闘争というものは、完全に三公社現業当局とそれから組合との単なる賃金紛争というふうに私たちは理解いたしておりますが、むしろ政府当局はこの労組闘争をいやがりながらも、対政府闘争というか、そういった観点から問題をながめなければならないような雰囲気に追い込んでいるきらいがあるのではないかと私は考えるのであります。この点につきまして、その経緯をたどりながらいま少し具体的に申し上げますと、おもなる点を拾いましても、二月から三月にかけていわゆる公労協闘争が仕組まれたわけでございますけれども、一例をあげてみますと、三月九日に公労委から三公社現業調停案が出まして、その翌日には公労協はこの調停案をのむ態度を決定いたしましたことは御承知通りであります。調停案それ自体についてもいろいろ問題点はありますし、不明確な点もあったにもかかわらず、やはり公社の持つ公共性、そこに従事する職員の立場というものを十分に自覚いたしまして、紛争未然に防止したい、これは公労協を初め総評傘下民間産業にいたしましてもそうでありますが、常に堅持している態度でありまして、事を起すためのスケジュールを組んでおるのではなくして、やはり問題を未然平穏裏解決したいという態度が一貫して流れておることは、岸総理もまた松浦労働大臣もよく御承知のことであろうと思います。やはりその態度が、この調停案が出された際に直ちに翌日にはこれをのむという感度の中にも歴然と現われておると存じます。ところが十一日に総理淺沼書記長と会談されまして、これを促進するという約束をされたにもかかわらず、政府は引き延ばしにかかり、そして十六日に予定されておる闘争にいわばあわてたような格好で、十五日に仲裁を申請するというような動きを示しておられたのであります。このことはやはり仲裁が出ましたあと政府態度でも——これは調停のときでもそうでありましたけれども、不明な点があるから、あるいは十分検討しなければならないから、という理由でもって事を遷延させられた事例は、私が指摘にいとまないほどであります。もちろん慎重な検討も必要でありましょうけれども、私はせんだっての予算委員会におきまして総理にも申し上げたのでありますが、たとえば調停が出て仲裁が出る、これは性格は違いますけれども委員方々は同じなのですから、当然そこから出てくるものは予想されておるはずでありまして、事前にそういった調査というものは十分なされてしかるべきであるし、予測するところのいろいろな考え方というものをまとめておくことはできたはずであります。これは政府の怠慢というよりも、むしろ意識的にそういった方向に持っていかれようとするきらいがあったのではないかとさえ疑われるのであります、こういう点について、総理は聞くところによりますと、今度の春闘の結果の処分の問題まで考えておられると聞いておりますが、そんなことをする前に、やはりこれは政府自体としても、事をそのような、私が今申し上げましたような形に追い込んだ責任を、十分考えるのが先決ではないかと思うのであります。二十三日の一般にいわれておる国鉄抜き打ちストの問題にしましても、約束された通りをやっておれば、国鉄は決してあのような手段に出なかったでありましょう。冒頭で申し上げました組合が常に事を未然解決しようとする、平穏裏解決しようとするこの態度を認めるとともに、やはり今申し上げました政府責任というものについても、どのようにお考えになっておるか、この際お伺いいたしておきたいと思うのであります。
  4. 岸信介

    岸国務大臣 労働争議に関して事を未然に防ぎ、平和裏解決しようという考え方は、おそらく健全な労組諸君考えておるかしれませんが、私は国全体のいろいろな、国民生活関係なり公共の利益に関係あるような問題に関する労働争議が、実力行使等のことが行われず、平和裏未然に防がれるということを考えることにおきましては、責任ある政府としては、初めから徹頭徹尾そういう考えに徹しておるのは当然でありまして、また今回の春闘に関しましても、私ども最初からそういう態度でいろいろと事を処してきたことは言うを待ちません。今いろいろおあげになりまして、労組の方においては事を未然に防ぎ、平和裏解決する意味において、調停を直ちに受諾するという態度をとったにかかわらず、これを政府並びに公企業体の方において仲裁裁定に求めるということは、この解決を遷延する意図があったのじゃないか、あるいは仲裁裁定を申請するのが数日かかったということは、特に何らかの意図に出ているのじゃないかというふうな御批判でありますけれども政府——私も最初からそうでありますが、政府全体の本来の態度がそうであるのみならず、今回の春闘に関しまして、私どものとりました態度は、徹頭徹尾平和裏にしかも誠実をもってこれを処するという態度で一貫をいたしております。ただ有馬委員も御承知通り政府として予算をあずかり、また国民税金支出をあずかっておるものとしましては、すべて十分に検討をして、あらゆる手続を尽すべきであることは、これまたよく御了承いただけると思います。こういう点におきまして、私どもが慎重な態度検討したということは確かにあります。これは私ども責任上そうしなければならぬ、しかし一貫しての態度としては、これは強く——一般労働争議もそうでありますけれども、特にこういう公共企業体のなににつきましては、政府みずから責任を負うていることもありますし、政府みずからでなくても、三公社の仕事というものは、国民生活に重大な関係があり、実力行使等のことなくして、平和裏におさめなければならぬ、それには国家が設けておるところの調停及び仲裁裁定のこの仕組みを十分尊重して、われわれが明らかにすべきものは明らかにして、そうして国民にもその理由を明確に示し得るような基礎において、これを平和裏解決することが政府責任であるという立場を一貫しておりまして、事を遷延し云々というような御批判がありましたけれども、決してそういう意図は私ども最初から最後まで絶対に持っておらないということを、はっきり申し上げておきます。
  5. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 今岸総理からの御答弁がありましたが、もちろん私なども、たとえば三月十五日にわが党の委員長と会談されて春闘を何とかおさめたいという、そういった御努力についてもわからないではないのであります。また労働大臣にしましても、数次にわたって総評並びに官公労諸君と会談をして、問題の解決をはかろうとしたその努力についても、私たちは知っております。ただ問題は、そういった努力というもの、これが今度のような大きな問題の解決をはかる際には、やはり努力される限りそれなりの裏打ちというものがなければ、決して問題は解決しないのであります。たとえば政府は今度の春闘に当りまして、何日でしたか閣議で法内に違反したものについてはどうこうというような閣議決定をされて、それを石田官房長官総評諸君に話しておりますが、そういったことだけで問題は解決しないのであります。また松浦さんが何回も話をしに行かれましても、組合諸君を呼ばれましても、たとえば調停段階において事態解決する手もあったのではないか、仲裁まで持ち込まなくとも問題を処理し得たのではないか、今岸総理がおっしゃったような意味での具体的な解決案を持っての努力がなされたならば、私は仲裁まで持ち込まなくともよかったのではないかとさえ考えております。それと同時に二十三口の問題、業績賞与の支給の問題については、これは今岸総理のおっしゃった政府が一貫してとってきた態度、そこから割り出されないものではないか、このように考えますが、この点はいかがでございますか。質問の要旨は調停段階政府努力いかんによってはおさめ得る余地があったのではないか。第二点は今申し上げた通りであります。
  6. 岸信介

    岸国務大臣 調停が出ました当時、その調停内容政府としては検討をいたしたのでございますが、その調停内容はきわめて不明確であって、政府として了解することができないのみならず、国民をして政府納得せしめるだけの根拠調停内容として明らかにされておらない、検討した結果はそうであります。従ってさらにわれわれは仲裁裁定という方法によってこの間の事情を明瞭ならしめ、そうして政府責任を果すことが適当である、こう考えまして私ども仲裁裁定を申請いたしたのでございます。  二十三日のいわゆる抜き打ちストの問題に関しましては、いろいろと当時の事情につきまして釈明も行われ、いろいろの批判もあるようでありますが、私は多少の行き違いのあったことも後に明らかにいたしましたが、しかし少くとも政府当局として、私は政府の首班としてそういう約束がなされ、そうしてそれが云々というようなことは事前に私は承知しておりません。従ってわれわれが何らかのやるべきことを怠ってああいう事態を生せしめたものだとは、私はあの事態をその後詳しく検討いたしましたけれども、そういう結論は出ておりません。いずれにしても私は誠心誠意をもって、今回の春闘国民納得するように明確にしてこれを処理することが、政府の全責任であるという点に徹しておりまして、決して事を遷延せしめるとか、あるいは今日から考えてみても調停段階においてこれが処理をするというようなことは、あの調停のもとにおいては私は責任ある政府としてはできなかった、こう思っております。
  7. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 今の御答弁の中で事前承知してなかったという点については、私問題があろうかと思いいますので、あと運輸大臣にお伺いしたいと思います。  そこで、松浦労働大臣の方から春闘過程でたびたび組合幹部と会っておられますが、そのとき紛争解決のためにどのような具体案を持って臨まれたか、その点をお伺いしておきたいと存じます。
  8. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 春闘が始まりまして、から数度総評幹部に会ったのでありますが、私はただいま総理大臣お答えになりましたような考えのもとに、できるだけ平和裏に片づけたいということで努力いたしましたが、総評の方ではわれわれの方の言うことに同意がなくて、ついに実力行使になったことははなはだ遺憾に考えております。
  9. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 はなはだ遺憾に存ずるのは私の方なのですよ。どのような具体案をもって紛争解決されようとしたか、それをお話いただきたいと思うのです。
  10. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 三公社現業の問題でございますから、まず三公社、五現業の問題については、公労法の範囲内におきまして公共企業体等労働問題解決関係がありますから、それはその方法によってやってもらいたい、民間政府はあくまでも不介入、自主的にきめてもらいたい、官公労に対しましては六・二の予算が提案してありますからその方法でいく、と三つに分けて了解を得るようにいろいろ努力いたしました。けれども同意がなかったものですから今日のような事態になったのであります。
  11. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 今の問題でありますが、これはあとでも触れますけれども、たとえば民間におきましては三月十一日には私鉄の大手十二社が千三百五十円で解決するし、炭労も基礎賃金千三百円アップで解決しておるわけであります。やはり冒頭で申し上げましたが、組合が一応納得し得る線——労使の間の話し合い過程で、組合の要求もありますでしょう。経営者として出し得る範囲というものもありますでしょう。しかし話し合い過程結論を見出すべき点は見出しておるのであります。ところが事公労協に限って時日を遷延した。これは労働大臣が持っていかれたようなものが、あまりにも現実からかけ離れておったのじゃないか。これは今度の仲裁裁定に対する予算措置でもはっきりとその点はうかがえるのであります。問題はやはり、政府ほんとう意味紛争解決に当るという努力岸総理のおっしゃる誠意だけではどうにもならないのです。誠意を裏づける具体的なものがなければ紛争解決いたしません。  これは意見にとどめておきますけれども、これと相関連して次にお伺いしたいと思いますのは、昨日も藤林参考人からいろいろ再度御直見を伺いましたその中で、松浦さんもお聞きになっておったのですが、一番重要な点は、やはり紛争解決のために出された仲裁であるという、これは非常に抽象的な言葉ですけれども、それで一昨日からの予算委員会、それ以前の社会労働委員会におきましては、政府のお考えとわれわれの考えとが一致しない面が多分に残されておるようであります。それはともかくといたしまして、問題は政府ほんとうに今度の紛争をすっきりと解決し、問題を将来に残さないという立場から考えるならば、ベース・タウンになっちゃいけないのだ、これは将来実行単価予算単価については縮めていかなくちゃならない。しかも藤林さんは実一行単価に近づけることもり得るのだということさえ言っておるのであります。こういった観点からいたしますならば、岸総理は、今度出されました政府予算措置というものは、将来に問題を残さないものであるかどうか、自信を持っておられるかどうか、もし将来に問題を残すようであるとすれば、そういった部面についてある程度考え方を変える余地はないかどうか、こういった点について御所見を承わりたいと存じます。
  12. 岸信介

    岸国務大臣 私は今回のこの調停さらに仲裁裁定を申請するに当りまして、国民にも私の意思を明瞭に述べ、またその際に野党の鈴木委員長とも会見をいたしまして、仲裁裁定誠意をもって尊重して、その実現をはかるということを私は申し上げております。従ってその考えは、仲裁裁定というものを仲裁裁定の持っておる意義通り実現するということ、これは政府の当然やらなければならないことであり、また同時に将来におけるこの種の紛争解決し、また将来に禍根を残さない方法である、こう信じて、そのことを仲裁裁定が出ましてから、仲裁裁定意義を正当に解釈して、正しくこれを実現するという態度でもって、関係大臣にその意思を十分に徹底して、そうして仲裁裁定検討し、仲裁裁定趣旨を実現することに私は努力をいたして参っております。もちろん仲裁歳差というものの持つ意義は、この紛争がありましたその紛争解決するために仲裁裁定が下されておるということは当然でございます。しかし、われわれはこの三公社現業に対する立場と申しますのは、これは政府趣旨というものは、私が申し上げるまでもなく、国民からとる税金でまかなわれるわけでありますから、これの支出につきましては、これを明確に合理的に説明できるような基礎において支出をしなければならぬこと言うを待ちません。従って一般私企業のごとき幅をもって処理する上におきまして、どうしても今言ったような国家予算というものの本質から申しまして、ある程度融通性が欠けておる点はあろうと思います。しかしそれは政府としてもちろん責任のあることでありますので、十分にそれを明確にする義務がわれわれには課せられておるという点において、そういう融通性一般私企業に比して、は、いろいろな紛争解決するのだから、要するに理由はよくわからぬけれども、加えて二で割ったらどうだというような立場を、かりに私企業においてはとって、円満に解決することができるかもしれませんけれども国家の場合においては、予算としてそれを裏づけるだけの説明ができる根拠がなければならぬという意味におきまして、一般私企業とは今の融通性の上において違った点があろうと思いますが、いずれにしましても、これは責任ある両党の党首が会って話し合ったことであり、またそれを国民に明確にいたしておることでありますから、政府としては徹頭徹尾誠意をもって実現する。そのことは言葉をかえていえば、仲裁裁定の持つ意義を明確にして、その意義通り予算その他の措置においてこれを実現するという態度を一貫して、実は今回御審議を願っておる追加予算を出しておる次第であります。
  13. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 総理のおる時間はあと二、三分しかないようでありますから、簡単にお伺いします。今総理責任を持って国民納得をいただくような措置を講じなければならぬ、こうおっしゃっておる。もちろんそうあらなければならないと存じます。それと同時に、やはり先ほども申し上げますように、組合不満であるかどうかは別として、いわゆる理論上納得のいく形で解決がはかられなければ、私は、紛争を将来に残す、その歴然たる現われが今回の六百円あるいは五百二十円の措置である、また基準内、基準外流用制限措置である、このように考えております。この基準内、基準外の問題については、あと大蔵大臣労働大臣からもお伺いいたしたいと存じておりますが、総理としてこういったことをしておきながら、ただ単に国民の御納得を得るというような抽象的な言葉でもって、組合不満を、納得のいかない形を将来に残して、ほんとう意味紛争解決だとお考えになるのかどうか、またこの流用禁止の問題について、公社性格というものを、一昨日多賀谷委員にもお答えがありましたけれども政府機関と違って、やはり一つの事業体としての経済行為を行う上において、大きな制約があるのではないか。社会労働委員会におきまして参考人方々から意見を伺いましたときにも、国鉄の副総裁なども、控え目でありますけれども、真剣な叫びとして自主性を持たせてほしいということを申されておるのであります。そういった面から総理としては、公社性格というものを所期通りの、目的通りの形で十二分に運営させていく上について、そういった措置が果して妥当かどうか、こういった点についての御所見を承わりたいと存じます。
  14. 岸信介

    岸国務大臣 もちろん紛争につきまして、私は大きく国民納得のいくということは必要であるということを申しましたが、同時に紛争の両当事者が納得するものでなければならぬことは言うを待ちません。しかしその背後には、公企業体性格として特に国民納得国民の支持というものが必要であることは、全体について私は当然であろうと思います。公企業体のあり方について昨日も御質問お答えを申し上げたのでありますが、言うまでもなく、企業としてある程度、従来の単純な官業から特に公社制度を作ったという趣旨に顧みてみましても、企業経営についてある程度自主性を持ち、独立の経営をしていくということによって、能率を上げ、その事業の持つ本来の意義を十分に達成するというために作られたのでありますから、その自主性を認めていかなければならぬことは言うを待ちません。しかしそれは要するに完全なる私企業で私営にまかされておるものでなしに、ああいう公社という制度がどの程度自主性を持つことが最も適当であり、またいい形であるかということは、その事業の性質から見、実際の経営の実績から見て、われわれはこれをきめなければならぬと思います。諸外国の例がこうなっているからこうしろと言われましても、やはりそれはその国の国情にもよりますし、いろいろな経験からも来ることでありますから、全然自主性を認めないということは、公社制度本質に反しますけれども、どの程度にすることが適当であるかということについては、常に公社経営の実態を検討しつつ、また国情とにらみ合せつつこれを作っていかなければならぬ、私はこう思っております。そうしていわゆる予算単価実行単価とが大きな開きをしておることが望ましくないということは、だれもが認めておられることであろうと思います。ことに予算制度本質から見まして、この間に非常に大きな開きがあるということはよくない、これが起った原因等も十分に検討してみる必要があるし、その格差をどういう方法でなくしていくかということにつきましても、ただこれが望ましくないから一挙にそういうものをなくするというようなことが、果して実情に合うかどうかということも十分に検討する必要がある。そこに今度は程度であるとか、テンポの問題であるとかいうようなことについて、いろいろ労使両当事者の間に意見の食い違うということもあり得ることでありまして、そういう点についてもこれは十分に話し合って、適当な解決策を見ていかなければならぬことは言うを待ちません。私どもは将来こういう格差をさらに大きくしたり格差が生ずるような原因は、なるべくなくしていくとともに、現在あるところの格差というものを適当な方法によって縮めていくという措置をとしりたいということは、根本的に考えておるわけであります。今申しますように、公企業体の持つ自主性という根本に私は異論はない。持たなければならぬが、今言ったような制約のもとに自主性というものが認められていくべきである、こう考えております。
  15. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 それでは労働大臣にお伺いいたしますが、先ほど申し上げましたように、昨日藤林委員長実行単価に近づける方法もあるのだということをおっしゃったのは、御承知通りであります。そこで実行単価予算単価の食い違いの問題につきましては、これは今まで論議されたところでありますので、その経緯等については、私はここで申し述べなくても十分皆さん方御承知になっておるところであります。それでお伺いしたいのは、少くとも公社責任をもって受諾して実施してきて、そうして各所管大臣がこれを承認したもの、その結果を否定するような今回の政府措置なのですが、こうなって参った場合に、各担当大臣責任はどうなるのですか。少くとも各担当大臣としては実行単価予算単価を近づける努力をされたと思うのです。そうでなくては責任の所在がなくなってしまう。つまりこの点について、これは総理にお伺いすべきことかもしれませんが、少くとも閣議の模様その他からして、労働大臣としてもそれなりの見解を持っておられるだろうと思います。特に所管大臣でありますから、この点についてお伺いをいたしておきたいと存じます。
  16. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 昨日藤林さんもいろいろ御説明になりましたように、理由第一は、千二百円を予算単価の上に上げよ、しこうしてその範囲内において団交しろということは、はっきりおっしゃっておられます。また主文にもそうなっております。私どもはこの精神を尊重いたしまして、警告であるところの差額については、昨日もわれわれのとったことは否定しておられません。それは政府のとったことは当然認めるということでありますから、われわれは今回の裁定に対しましては、十分仲裁裁定を尊重しまして、完全実施だと思っております。
  17. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 労働大臣がそういった受け取り方をなさるところに今度の問題は大きな原因があるわけであります。先ほども申し上げましたように、藤林参考人は全部減額しろ、予算単価に近づけることだけではないということをおっしゃっておるわけであります。しかもこの差を縮めることが望ましい。これは仲裁委員会としての御意見でありますが、また公労法に定めてある仲裁委員会のなすべき仕事の範囲に属しております。がしかし、あなたも公労法を御承知のように、予算的な措置をどうこうしろということは、これは言えないはずであります。藤林さんはそういった角度からおっしゃっておるのであって、政府がやったことについてどうこう言うべき筋合いのものでないということをおっしゃっておるのであります。いいとか悪いとか、承認するとかいう角度からおっしゃっていないはずであります。このことは、同僚委員各位もみんな御理解いただけるだろうと思います。それを藤林さんもその通りしてよろしいのだ、承認をしたのだと受け取る方が、方法論的にも僕は誤まりを犯す最も大きな原因じゃないかと思います。あなたは所管大臣として、本当の意味で先ほど私が岸総理にお伺いしましたように紛争——ただ今日の時点だけじゃなくて、将来にも問題を残さないように解決するために、むしろ藤林さんがあとでつけ加えられた予算単価実行単価に近づける努力をすることこそが問題を解決する道なのです。それが所管大臣としての御努力なさる方向ではないかと思うのですが、この点についての御意見を承わりたいと存じます。
  18. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 いろいろ観点がその人その人によって違うのですけれども、何べんも申し上げますように、主文第一で法律的にほんとう考えるならば八十円でいいということは藤林さんも何べんも言っておられるけれども、それでは労働紛争解決にならないから、この差額というものについては相当の給与改善を企図しておる、こう言っておられますから、相当という問題がお互いの考えることであって、われわれはこの相当という問題を六百円を四百二十円にしたのですから、私は相当だと思っておるのです。それは藤林さんの判定によれば、政府のとった態度はそれでいいのだ、こう言っておられますから、私どもは完全実施だと思っております。
  19. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 労働大臣にお願いしたいのですが、あなたの立場からおっしゃっておることはわかっておるのです。問題は私が質問しておることにお答えをいただきたいわけなのです。問題をはぐらかさないで、問うたことについてはすなおに御答弁いただきたい。反対なら反対、賛成なら賛成でよろしゅうございますから、問題をはぐらかさないで御答弁をいただきたいと存じます。今も申し上げますように、少くとも基本的に紛争解決するのがあなたの責任なのですよ。それをただ減額することがあなたの仕事であるかのように思い込んでしまって、最初からそうしなければならないのだという角度から、藤林さんのお話も伺う、私たち質問も、これは反対にきまっておるのだからこう答える、それじゃほんとうの質疑応答にならないわけです。そういった角度からお願いいたします。先ほどもちょっと触れたのでありますが岸総理が行かれるというのであとさきになるのは御了承いただきたいと思うのですが、あなたは委員会か何かの答弁でスケジュール闘争は実にけしからぬというようなことを言い、また野澤委員の一昨日の質問に対しましても、徹底的にメスを加えなければならない、こういうような御答弁をなされておりますが、徹底的にメスを加えなければならないのは今回の措置をするような政府態度なのです。なぜアベック闘争ということが言われるようになったのか。これは国鉄にしてもその他の公社当局は、やはり当局としての態度を堅持しておられるだろうと思う。労組労組としての態度を堅持しておる。しかし一般から見てアベック闘争というような当らない言葉が発せられるようになるのは、要は予算的な措置で縛られておる。いわゆる公社でありながらも、先ほど岸総理にお伺いした自主性が認められてないところにその原因があるのではないかと思うのです。公社のあり方について労働大臣としての御所見を承わりたいと存じます。
  20. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 岸総理もいろいろ言っておられますように、私は今の公社というもののあり方については、さらに検討する必要があると思います。自主性を与えるのなら、もっと国家資本を代行する人の部面が強くいくようにした上に自主性を与えるべきである。そうでなければ、一方は勤労者の代表が団体交渉をされる。それを受けて立っている人が、資本主義の社会において資本を擁護する、資本施設を擁護するものとの間に戦わされて、中庸の意見が出ると思うのです。それがアベックと言われるような行き方で、国家の資本を擁護する代表者さえ、俗に言う財政当局大蔵大臣さえ承認するならばいいというような考えでやられたのでは、公共企業体としてほんとうのものでないと思いますから、そういう面を与えるとともに、もっと自主性を与えるということの方がほんとうではないか、かように思っております。
  21. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 あなたも御承知のように、日鉄法の第三十九条では「日本国有鉄道の予算には、その事業企業的に経営することができるように、需要の増加、経済事情の変動その他予測することができない事態に応ずることができる弾力性を与えるものとする。」と、わざわざ法文でさえ断わってあるわけなのです。私は有能なる各公社幹部は、この条文に従いまして、とにかく企業の収益を上げるために最善の努力をしておられるだろうと思う。それを今回のように自主性を制約するような形で——企業の収益を上げるということは、基本的なものとして労働問題も含んでいるはずであります。そういった問題のほんとう意味での解決をはかる自主性を制約して、どうして公共企業体としての本来の使命を果し得ると思いますか。あなたも事業に対する豊富な経験を持っておられる方であります。その方が今のようなことをおっしゃるのはどうか。今の問題に関連いたしまして、今度の基準内と基準外流用に対する制約ですが、これは今言ったような立場からむしろこの益業体の正常なる運営を大きく制約する、労働問題としては団体交渉を大きく制約していく、紛争解決のために出された今回の予算措置でこういったことをうたうこと自体が、私は大きな逆行ではないかと思うのですが、その点についての御意見を再度承わりたいと存じます。
  22. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 基準内、墓準外の問題について予算総則の中に今度出ました事項を御指摘になったと思うのでありますが、私はおっしゃったような線でいけばけっこうでありますけれども、今度の仲裁裁定は、実行単価予算単価の開きがこうあってはおもしろくない。だから現実のこの差額を合理的に順次なくしていくとともに、こういうことが将来起らないようにしろというのが、今度の仲裁裁定の精神であります。移用、流用が勝手にやれるということになると、より多く差額が出てくる。でありますから、大蔵大臣の承認を得てやる方が、現実の姿としては、私はこういう差額が多くできない方向であろうと思うのです。先ほど公共企業体のあり方が、お問いになりましたからお答えいたしましたが、将来変ってくればとにかくといたしまして、現実かような差額が非常にできたものを順次なくしていくとともに、将来そういうことが起らないようにするということで答えたのでありますから、私はやっぱり今度出しましたことが、予算総則の上に立ちまして大蔵大臣の承認を得べきものであるということを支持するものであります。
  23. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 次に大蔵大臣松浦労働大臣にお伺いしたいと思います。  一昨日の質問でも昨日の質問でも、この第一次並びに第二次のものについては、無法ではないけれども望ましくない、簡単に申せばそういった答弁をなされたようであります。そこでお伺いしたいのですが、日鉄法の第二十九条の十六並びに第四十条の二では、資金計画を立てて大蔵大臣に並びに会計検査院に出し、また各年度の事業報告を、運輸大臣を通じて内閣に出さなければならないようになっております。昭和二十九年並びに昭和三十年になされたこれらの措置は、こういった条文があるにもかかわらず大蔵大臣は私は知らなかったというような御答弁であったようでありますけれども、これは日鉄法に定められたこれらの措置国鉄当局がなされなかったのか、見ておられてもあえて私は知らなかったといって強弁されるのか、この点についてお伺いいたしたいと存じます。
  24. 池田勇人

    池田国務大臣 私が今回の裁定が出るまで知らなかったと申し上げたのは、第一号確定分でございます。昨年末のダイヤの改正のときにある程度の臨時手当をお出しになったということを聞いておりますが、それがベース・アップに相当する一号確定分と今言われているものであるということは知らなかったのであります。仲裁裁定が出てから知ったのでであります。
  25. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 次にお伺いしたいと思います。先ほどから岸総理並びに労働大臣にお伺いしておったのでありますが、今度の流用の禁止の問題、この点については公社自主性を大きく制約するのではないかと考えるのです。これについて大蔵大臣の御見解を伺うと同時に、少くともこういった改正は、公共企業体の持つ性格を伸ばす方向において考慮さるべきであって、逆行する形で取り上げられるべき問題ではないと考えるのですけれども再考慮の余地はないかどうか、この点お伺いいたしたいと存じます。
  26. 池田勇人

    池田国務大臣 給与総額をきめまして、そのうちにおきまして基準外基準内をきめたゆえんのものは、たびたび申し上げましにごとく、今まで——国鉄に例をとりますと、基準外であった超過勤務手当が賞与として出まして、今申し上げましたような一号確定分というふうなことになったのでございます。そういうことは給与ベースに非常な変動を来たすことであり、今後の給与問題につきましていろいろな問題を起しますので、もし今基準外といっております超勤その他のものを基準内としてお出しになるときには、一応大蔵大臣に協議をしていただいた方がいいのじゃないか。私は、四十四条で給与総額というものがきまっており、おやりになるのでありますから、あえて自主性を持っておやりになることを否定するものではございません。しかし事を明らかにしておくことが、今回の裁定の趣旨から見ましても適当であると考えているのであります。今まで給与総額だけでやっておるのは三公社だけでございまして、五現業につきましてやはり大蔵大臣に協議することになっておるのであります。従いまして結果から申しますと、五現業と三公社を比べまして、基準外とわれわれが言っている超勤その他、あるいは欠員から出している一号確定分というのは三公社だけでございます。五現業にはそういったことはございません。それは大蔵大臣に協議することになっているのであります。ですから私はこの際、五現業と三公社はもちろん違いますけれども、今までのようなことではまた予算単価実行単価が違う、そしてそれが財務当局にはっきりわからぬというようなことがあっては、予算の編成上いろいろな問題が起りますので、今回は御相談を受けることにした方がいいのではないかというので、皆さん方の御審議を願っている次第でございます。
  27. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 今の点については一応大蔵大臣から御説明がありましたけれども、私がさっきから繰り返しておりますように、問題は公労法で規定されている団体公渉の場というものを大きく制約していくということだけではなくして、社会労働委員会におきまして国鉄副総裁から述べられましたように、自主性というものを十分認めてもらいたい、このような各公社幹部の希望を大きく制約するような建前等を考えますと、今大蔵大臣のあげられた諸点などを上回る点ではないだろうか。ただこうこうじゃないかと言われるだけではなくして、やはりこういった点についてはぜひ再考慮していただくということを強く希望いたしておきたいと存じます。そういった余地があるかどうか、大蔵大臣にただ簡単にイエスかノーかお聞きしておきたいと存じます。
  28. 池田勇人

    池田国務大臣 三公社につきましての自主性は、私はその趣旨からいって、できるだけ認めていきたいという考えでおります。その意味において自主性を認めますが、こういうような予算の立て方にした方がいいと考えて御審議願っているわけでございます。
  29. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 お前さんの意見意見たということではなくて、一つこの点についてはぜひ検討していただく機会を持ちたいと存じますから、希望として十分聞いておいていただきたいと思います。  なお裁定の主文の第三項について初任給の引き上げ実施に伴う財源措置についてはどのように考えておられるか、お伺いいたしたいと存じます。
  30. 池田勇人

    池田国務大臣 これはこまかい数字になりますが、一応国鉄当局と相談いたしまして、三十二年度において初任給を引き上げられることにつきましての大体の予算は認めているのでございます。金額は多分二億余りだったと思います。
  31. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 この問題に関しては大体以上でとどめたいと思いますが、ただ問題は、今後——冒頭で申し上げましたように、これに紛争解決ではなくして、紛争の種になりそうな事情にあることは労働大臣としても十分御承知だろうと存じます。このような形の中で団交が行われても結論が出ないことははっきりいたしております。そうなりました場合に、裁定の主文では、両当事者の意見が一致しないときには、委員会はその解決について協力を惜しまないとうたわれておりますが、政府としては、この問題が解決しないときにはどのような態度をもって臨まれようとしておるのか、この点をお伺いしておきたいと存じます。
  32. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 政府は、最初から声明いたしておりますように、仲裁を尊重して参ってきたのでありますが、今日の現状では仲裁のおっしゃるように、われわれは完全実施の方向に向っております。でありますから、必ず私は団交しましても、その線によってまとまるものと思っております。万一まとまらぬときには、委員会もさらに協力するということを、きのうもお約束になり、おとといもお約束になった。また文書の上にもそう書いてありますから、これを信じております。
  33. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 政府としてのこれに対する考え方をお伺いしておるのであります。もちろん仲裁委員会はそのような御努力がある、このように考えておりますが、政府としてはどうされようとしておるのか、春闘過程においても、さっき私は申し上げましたが、松浦さんが何回出かけたって問題が解決しないのは当然だ、そういった意味でお伺いいたしておりますから、その点一つお答えをいただきたいと思います。
  34. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 団交でいろいろ御決定になれば、それはもうできるだけそれを尊重することになると思います。その点であったと思います。
  35. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 このような予算的な措置を講ぜられるのでは、団交だって簡単に問題が解決できぬ状態にあることは私が申し上げるまでもないことなのです。その際に政府としてはどうされるのか。もちろんこれは労使双方の問題でありますから、その自主性にまかせるべき問題でありますけれども、せっかく犬馬の労をとられた松浦労働大臣としては、この問題を黙っておれの任務は終れりとして済まされるのかどうか、この点をお伺いいたしておるのであります。
  36. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 これは労使双方とも仲裁が出ましたならば、それに従うべきことが今日の公労法に規定されておりますから、私はそういうことを憂慮いたしておりません。ただ完全実施かどうかという問題だけであります。私どもは完全実施したと心得ております。
  37. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 お答えがないのでその問題はそれにとどめておきます。  次に第二の問題としてお伺いしたいのは、専売、国鉄、電電の三公社及び郵政につきましては、今回の予算補正措置が講ぜられたのでありますが、造幣、印刷、国有林野事業並びにアルコール専売については、移流用措置で済まされておりますが、前のものとあとものとが、一方では予算補正措置が講せられながら、あとのものは講ぜられぬ理由については、この政府から出されましたものを見ましても一向にのみ込めません。それで具体的に大蔵大臣の方から御説明いただきたいと存じます。
  38. 池田勇人

    池田国務大臣 三公社現業につきまして大体同様な裁定が出たのでございますが、この三公社と郵政一現業と、他の造幣、印刷、林野、アルコールの分は、その性質内容が私は相当程度違っていると思います。すなわち国鉄、電電、たばこ専売及び郵政の方は、ほとんど政府の独占的公益事業であります。鉄道運賃あるいは電話料金あるいは郵便料金というもののもとをなします給与ベースの変更は、国民生活その他に非常な関係があるのであります。またたばこ専売事業におきましても、これは専売納付金という一つの租税につきまして、給与ベースの改訂はかなり今後におきましても影響を持ちます非常に重大な問題でございます。この点はアルコールとか、造幣、印刷、林野とは相当に趣きを異にいたしておると私は見ておるのであります。将来国民生活に非常に影響する独占的公益事業につきましては、他のものよりも重要視いたしてやるということが第一。第二点は、移流用その他につきましても、量的にかなり変って参っておりますので、今回は三公社、郵政につきまして御審議を願い——他の四現業につきましては御決議いただきました予算範囲内でまかない得ると考えまして、区別し、今の大きい金額であり、そうして将来の国民生活に非常に影響を与える三公社と郵政の一現業につきまして御審議を願う、こういうことにいたしたのであります。
  39. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 独占的な企業であり、それが国民生活に大きな影響を及ぼすというような抽象的な言葉では、ちょっと納得がいきがたいのです。第二の点の概定予算、通過した三十二年度予算範囲内でまかない得るというお話でありますが、少くとも三月三十一日に通過いたしました予算は、予算決算及び会計令第十二条、第十三条というもので、要求書の明細とそれに対する具体的な説明を各省から出させて、それを財政法第十八条にのっとって大蔵大臣が厳重に査定されたものであると思うのであります。そしてまた、そういう角度からこの国会において審議いたしまして、賛成反対はあったにいたしましても、とにかく院の決議となっておるものであります。それがわずか一ヵ月を出ずして移流用ができるような、そのようなずさんなものであったのかどうか。この点についての池田大蔵大臣の御見解を伺いたいと思います。
  40. 池田勇人

    池田国務大臣 移流用ができるということがずさんということには直ちにならないのであります。こういう裁定を予期しておらなかった場合におきまして、予算を作成し、そうして予算審議の過秘からいって移流用範囲でまかない得るものであるならば、私はまかなってよいと思うのであります。しこうしてまた、移流用範囲でまかなえないというときに、これは予算上資金上不可能なりという結論を出すこともいかがかと思いますので、予算を補正して御審議を願うのであります。予算が通過して一ヵ月以内に移流用ができるというの、だったらそれはずさんじゃないかということですが、そうではございません。やはり仲裁裁定趣旨をくみまして、十六条の規定によって予算上質金上可能なりやいなやということを検討して、それが翌日であろうが三ヵ月たとうが、これをやるのが公労法の建前からいっても至当である、それは大蔵大臣に与えられた権限内でできることであり、しかも将来にわたって非常な影響のないことでありますから、この際十六条の規定によってやることが至当と考えたのであります。ただ三公社、郵政につきましては、先ほど来申し上げましたごとく、非常に将来も重要な問題でありますので、ご審議を願ったのであります。
  41. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 池田さん非常に心臓が強くて将来にわたって影響ないのだと簡単に言い切られるのでありますが、それではこの問題について各省大臣にお伺いいたしたいと思います。まず第一に、私農林省出身でありますから井出さんにお伺いしたいと思いますが、ほんとうに今おっしゃるように今度の移流用で影響ございませんか。またその財源措置はどこら辺からでそうとしておられるのか、この点を国有林野事業特別会計についてお話をいただきたいと存じます。
  42. 井出一太郎

    ○井出国務大臣 今度の裁定を実施するに当りまして、国有林野の特別会計をつぶさに検討をいたしたわけでございます。もしこれを予算補正というようなことにいたしますならば、増伐をするというふうな問題あるいは次年度に処分をするものを繰り上げて歳入に計上しなければならぬというような問題が怒って参りまして、いろいろな支障があるわけでございます。そこで検討をいたしました結果、一部はこれを予備費に持つということにいたし、他の材源措置としましては、当面支障のないものを考えまして、幸い林野関係本年度の予算としてはこの際に老朽施設の改善というふうな費目も相当に予定をしておりましたが、これらは一年見送ることにいたしまして、今年度の給与に充て得るというような目安もつきましたし、あるいは水源林の造成であるとか、官行造林でございますとか、こういうふうなもので、苗木の事情がことしは変化して参りまして、乾燥のために苗木の確保が思うようにならぬというふうな面も出て参ったものでごさいますから、これらを財源に充てることにいたしまして、大体所定の裁定通りの費用をまかなうことができる、こういうことであります。
  43. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 農林大臣はそういう御答弁をされますけれども、第一に今度のこの予算説明によりますと、今削減する言われたところの官行造林事業業、こういった点については、積極的な農業政策のない本年度の農林省予算の中で、国有林野事業の一つの積極的に押し進めるべき問題としてわざわざ断わってあるものなのです。それを削られて支障はないと思いますか。どこに農業政策の積極的な意欲というものが見られますか。私はそんな簡単なものじゃないと思うのです。これはただ単に農林省に限らず、やはり各省が同じような形でせっかく進めようとする事業なり計画なりというものを、大きく制約されておるというふうに孝えざるを得ないのであります。社会労働委員会林野庁長官にお伺いいたしますと、増伐も限界に来ておるし、とにかく財源は見当らぬ。繰り上げその他でやらざるを得ないとはっきり断わっておられるのです。この点について閣議においては積極的に井出さんとしても発言されただろうと思いますけれども、こういったことでは、単に一ヵ月、二ヵ月の問題じゃないと大蔵大臣は言われましたけれども、このように各省の事業計画に大きな狂いを生じてきておる事実について、大蔵大臣はどのようにお考えになるか、再度御答弁いただきたいと思います。
  44. 池田勇人

    池田国務大臣 既定予算で新たに発生した給与の引き上げということになりますと、どこかにひずみの出ることは当然でございます。そのひずみが耐え得る程度であるかどうかということが、予算上資金上可能なりやいなやの判断でございます。予算上資金上可能かいなかということを調べてみますと、ある程度のひずみは、この際給与の引き上げ、仲裁裁定趣旨を実施するという意味において、繰り延べとか移流用はやむを得ない、これは私は公労法の関係から申しましても財政法のあれからいっても、この程度のものは歳入をふやすよりほかはない。その歳入をふやすのにどこから持ってくるのか、なかなかむずかしいのであります。郵政事業のように他の会計から繰り入れなければならぬというものにつきましては、しかも移流用でなかなかむずかしいという場合におきましては、当然補正予算を組まなければ、既定の予算では予算上質金上不可能でございますから、お願いするわけでございますが、他の財政法あるいは会計法等にかんがみ、そして仲裁裁定を実施するという場合におきましてのひずみは、これはある程度がまんせざるを得ない。それは私は各省大臣大蔵大臣に与えられた権限だと思います。そしてそのひずみが非常に大きい、そして将来に重大な影響を及ぼすというものにつきましては、これを実施しようとすれば皆様方の御承認を得なければならないのであります。
  45. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 再度農林大臣にお伺いしたいと思います。定員内のものは今この説明でもあげられておりますけれども、定員外のものについて十四億八千一百万円についてはどのような財源措置を講ぜられるのか、この点についてお伺いいたしたいと思います。
  46. 井出一太郎

    ○井出国務大臣 主として事業費の移流用をもってこれに充てまして、足らさるものは予備費から繰り入れる、こういう形であります。
  47. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 郵政大臣が見えられておりますからお伺いしますが、社会労働委員会でも、これは労働組合側だけからでなくして、当局の方からも、特にこの郵政事業は繁忙期における起動が多いというようなお話があったわけでございます。ところが今回も郵政に関しましては六億七千八百万くらいは、所定外支出として超過勤務手当等が充てられているようでありますが、こういったことでほんとう意味事業を推進できる御自信があるかどうか、その点についてお伺いしたいと思います。
  48. 平井太郎

    ○平井国務大臣 昨年の超勤手当の状況を見まして、本年度は大体五億五千万程度ならば、どうにかまかないがつくだろうというような観点から、これを今回お願いいたしたのでございます。
  49. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 どうも農林大臣も郵政大臣も自信がなさそうで、ただこういうことになったからというような、やむを得ない答弁のようにしか聞えないのであります。問題は、仲裁裁定を実施する過程で当然の措置だ、当然とは言えないまでもひずみを生じない限りやむを得ないというような大蔵大臣の御答弁でありましたけれども、やはり超勤その他の額が制限されることの各職員に及ぼす影響というものは、私が申し上げるまでもなく甚大であります。こういった形で財源措置を講じなければならないということになりますと、私はせっかくの仲裁裁定の実施が実施にならないと思うのですが、その点について、両大臣の御見解を承わりたいと思います。
  50. 井出一太郎

    ○井出国務大臣 先ほども申し上げましたように、林野の関係におきましては、幸いにも市況が比較的活発である、こういうふうなことからいたしまして、林野全体の事業活動は、今回の流用をいたしましても、まあ平年ベースを若干上回るという見通しを持っておりまして、まず御懸念のようなことはなかろう、こう考えます。
  51. 平井太郎

    ○平井国務大臣 今回仲裁裁定を確実に実施いたし、御期待に沿うような線で努力するという意味におきまして、今回無理な面も多少出て参るかと思いますが、しかし郵政予算といたしましては、今回の予算は決してずさんな余裕のあった予算ではございません。しかしながら御指摘の超勤手当等を五億何千万か引いておって、これは繁忙期においていろいろ問題を生ぜしめるという御指摘の点でございますが、この点はわれわれとしては十分考えておる点でございまして、今後は企業努力を払って節減をすべきものは大いに節減をし、今後企業努力の線で一つがんばってみ、企業の運営の妙を発揮いたしたい、かように存ずる次第であります。
  52. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 こまかいことを伺うようで非常に恐縮でありますが、予備費等も考慮されておるということでありますけれども、これはここに三十年度の決算書しかございませんのであれですが、林野事業特別会計の三十年度の決算書を調べてみますと、林業振興費と昭和三十年発生の山林施設災害復旧事業費並びに災害復旧処理事務費だけに使われておるようでありますが、これは昭和三十一年度において人件費その他に移流用したのがあるのかどうか、予備費の性格として、運営として違法ではないにしても、私はやはりこういった事業の推進にたくわえておくべきものである、このように考えておりますが、この点についての農林大臣の御所見を承わりたいと思います。
  53. 井出一太郎

    ○井出国務大臣 三十一年におきましては、管理費その他に予備費からこれを用いたということはございません。今災害の問題等もお問い合せになったのでありますが、今年度の予備費は十五億七千万円と記憶をいたしておりまして、ここ三年間くらいの平均いたしました災害被害というものは、大体五、六億でとまっております。でありますから、今回の予備費はなおあと八億内外ございますので、そういう場合には事足りるであろう、こういう見通しでございます。
  54. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 次に森永さんにお伺いいたしたいと思いますが、専売の場合積算の基礎になった予算定員と、それから四月一日現在の実人員とを比べてみますと、六百人も下回っておるようでありますが、こういったことで果して正常な運営ができるのかどうか、この点についてお伺いしたいと思います。
  55. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 専売公社の補正後の基準内給与額は八十五億五千八百万円でございまして、基準内の補正後の予算単価は一万八千二百四十五円になるわけでございますが、この補正予算で支弁可能の人員は三万九千八十八人でございます。一方昨年の欠員率で推定いたしました三十二年度の推定人員は主力八千二十六人でありまして、まだ約千人くらいの余裕があるわけでございます。御懸念のような点はまずまず心配は要らないと思います。
  56. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 それから宿日直手当並びに超過勤務手当、やはりこれは専売においても同様に大幅な減額を見ておるわけです。これは私しょっちゅう専売公社等にも参っておりますが、事業の実悪その他を見まして大きな支障があるのではないかという気がするのですが、この点についての御見解を承わりたいと思います。
  57. 小川潤一

    小川説明委員 御承知のように基準外の超勤予算は、財源として数億この際充てられたのでありますけれども、だんだん企業も進歩いたしておりますし、能率の向上によって何とかこれをまかなっていかなければならないと思っております。
  58. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 どうも皆さん口を合せたように、何とかまかなっていこうということですが、これは社会労働委員会労働大臣にもお伺いしましたように、やはり各事業に対しまして、各省予算に対して、大蔵大臣は、大したひずみにはならないと言っておられますけれども、大きな影響を及ぼす。ぜひこういった措置は今後絶対に避けていただく、こういうことでなければならないと存じます。  この問題に関連しまして最後にお伺いいたしたいと思うのですが、平田大蔵次官が、移流用等が簡単に認められるのは予算査定が甘かったからだ。かぶとを脱いだというようなことを言われたことが新聞に報じられておりますが、そういった形で非常に甘いものをおくめんもなく国会に提出されたのかどうか、この点について大蔵大臣の御所見を承わりたいと思います。
  59. 池田勇人

    池田国務大臣 移流用が認められるのは予算が甘かったとは私は考えておりません。今御質問がありましましたとえば林野におきましても十四億円の非常勤の方々の給料が上りますが、それは御承知通り三百数十億の事業費の中から何とかやりくりしようというのであります。しこうしてまた郵政の方で六億円も超勤を減らしておるではないか、こういう御質問でありますが、郵政で六億円超勤を減らしたのは、今までの実績で超勤として出した金が予算で認められたよりも六億月余っておるのであります。ほかへ使われておりましたので、今度給与の財源に充てよう、こういうのでありまして今度は合理化しておるのであります。専売公社におきましても、ただいま答えたように、事業の能率あるいは合理化によってまかない得る、こういうことであるのであります。それでは前から専売の方は合理化でまかなえたのになぜ予算で認めたのか、こういうことになりますが、これは今言ったようにやむにやまれぬ仲裁裁定実施のためにやるのでありまして、これからお互いに工員のため、労務者のために出すのでございますから、働いていただいて能率を上げていただく、こういう見通しで予算補正したのもありますし、また補正しないのもあるのであります。
  60. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 平田大蔵次官が非常に甘かったと率直にこれを認めてかぶとを脱いだと言っております。あなたは甘かったのではないと言っておりますけれども、この平田大蔵次官の言明をどうお考えになりますか。
  61. 池田勇人

    池田国務大臣 私は大蔵次官がそう言ったかどうか知りません。人の害うことに対しましては触れませんが、大蔵大臣としては先ほどお等えしたような考えでおります。
  62. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 あなたのすぐそばにおる平田さんが、そんなに甘いいいかげんな予算を国会に提出したのだということに対して、あなたは大臣でしょう、それに対して、人のことだから知らぬといって済まされるのかどうかということをお伺いしておるのです。
  63. 池田勇人

    池田国務大臣 私は平田君のその言葉は聞いておりませんので、私の信ずるところでは、大蔵当局は甘い予算、辛い予算ということでなしに、適正な予算を組んだと思っております。いつ言ったかどうか知りませんが、少くとも大蔵省を代表いたしまして、私は、決して甘い予算も辛い予算も組んでおりません。甘辛適当な予算だと思っております。
  64. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 それでは、私所定の時間が参りましたので、これは昨日来同僚委員諸君から申し上げておりますように、今回の措置は、完全にこれは団交権を否認する方向へいくものでありますし、また協約実施の過程に当って、各公社責任者が結んだものに対してこれを否認するもので、結局は公労法自体々否認するものであります。しかも裁定の趣旨が、松浦さんのように一方的に都合のいいように解釈されて、紛争解決にはならないで、むしろ紛争の起因を作ったとさえ言えるこの今回の予算措置に対しまして、全面的に反対の意思を表明いたしまして、私の質問を終りたいと存じます。  それでなお移流用の問題については、私が先ほど大蔵大臣に希望を申し述べましたように、ぜひこだわることなく御検討いただくように希望いたしておきます。(拍手)
  65. 山崎巖

    山崎委員長 これにて質疑は終局いたしました。  これより討論に入ります。島上善五郎君。
  66. 島上善五郎

    ○島上委員 私はただいま本委員会に提出されております仲裁裁定に関する昭和三十二年度特別会計予算補正(特第2号)及び昭和三十二年度政府関係機関予算補正(機第1号)に対して、日本社会党を代表して反対の意思を表明せんとするものであります。  日本社会党が何がゆえにこの補正予算に反対するかについては、すでに数日来本委員会における同位議員の質問の中に明らかに指摘されたところでありまして、あらためて詳しく述べるまでもないと思いますか、その理由を一言にして申しますれば、今回政府より提出された補正予算は、さきに仲裁委員会によって行われた裁定の趣旨を故意に曲げて解釈し、一方的、独断的な措置であり、不完全な実施であり、しかして公労法の精神をじゅうりんし、三公社、五現業に働く労働者の生活と権利を不当に抑圧するものであるからであります。  まず第一に指摘したい点は、今回の補正予算において、政府予算総則を変更し、基準内と基準外との間に一線を画し、給与総額内における流用の自由を規制し、大蔵大臣の承認を必要とするという措置をとらんとしている点であります。このことは、単に予算上の問題であるのみならず、他の部面においてきわめて重大なる問題を含んでいるのであります。と申しますのは、このような措置は、従来日鉄法、電電公社法あるいは専売公社法等において、当然認められていたところの給与総額内における流用の自由を規制することによって、公社の総裁の権限に重大な制約を加えるのみならず、公労法上適法に行われた労使間の協定、協約の効力を完全に拘束する結果を招来することになるのであります。(「その通り」)現行の公労法第一条第一項は「この法律は、公共企業体及び国の経営する企業の職員の労働条件に関する苦情又は紛争の友好的且つ平和的調整を図るように団体交渉の慣行と手続とを確立することによつて、公共企業体及び国の経営する企業の正常な運営を最大限に確保し、もつて公共の福祉を増進し、擁護することを目的とする。」と規定しております。すなわち公共企業体における職員の労働条件等に関する紛争については、当局と労働者の自主的な団交をこの法律は要求し期待しているのであり、これが公労法を貫いている根本精神であるのであります。  しかるに今回の補正予算に示された予算総則の変更は、この公労法の根本精神である労使間の自主的団交に大蔵大臣が積極的に干渉を加え、公社自主性を侵害し、進んでは労使間の自主的団交の結果結んだ協定なり協約なりが、ほご紙同様に否認されてしまうような危険性を含んでいるのであり、よす。このように公社自主性を侵害する今回の予算総則の変更は、明らかに公労法の精神をじゅうりんするものであり、かつ現行の公社法の規定、現業にあっては職員給与に関する特例法並びに財政法の違反であると思うのであります。特に今回の場合はそうした関係法律の一片の改正も行わず、単に予算総則の変更という方法によって行われている事実は、全く許しがたいといわなければなりません。(「その通り」)  第二に指摘したいのは、今回の仲裁裁定及び補正予算の中心問題である予算単価実行単価との格差の取扱いについて、この補正予算は、仲裁裁定趣旨を曲解し、一方的、独断的な措置をとることによって、仲裁裁定を完全に実施しようとしていない点であります。すなわち政府は、この補正予算編成に当って、仲裁裁定主文第一項に示された金額の中から、いわゆる第一項確定分六百円と予算単価実行単価の格差五百円内外の中の三分の一を差し引いたものを計上しているのであります。第一項確定分の六百円は、本来給与総額内の流用措置によって行われたものではなく、その原資は給与総額外から持ってきたものであるにかかわらす、それを給与総額の中から差し引くという措置は、きわめて不当であり、そこに大きな問題を含んでおりますが、その問題はともかくとしても、実行単価予算単価の格差五百円内外のものの中から三分の一を差し引くということは、何としても納得しがたい不当な措置と断ぜざるを得ません。去る二十四日の社会労働委員会及び昨日の当委員会の席上における仲裁委員長藤林敬三氏の答弁は、今回の裁定の千二百円の中には予算単価実行単価の格差は含んでいないこと、及び格差の縮小は将来の問題として合理的に措置さるべきものであること、並びに将来とは文字通り将来であって、今回の予算措置のことではないという点が明らかにされたのであります。この格差の生じた原因が、もともと公労法その他関係法律の適法な措置によって生じたものであることは、政府委員会の質疑応答の中で認めているところであり、そして今述べた仲裁裁定に関する藤林委員長の解釈に徴しても、政府がもし仲裁裁定誠意をもって実施しようとするのであれば、当然に現在の実行単価の上に千二百円をプラスするというのが、本来講ぜらるべき措置であるのであります。  さらに第三に指摘したい点は、この予算編成に当って、政府仲裁裁定の不完全な実施を企図したその上に、予算定員を基礎とせず昨年七月の実人員を基礎として計算を行なっているという点であります。さきに国会を通過した昭和三十二年度本予算に際しては予算定員で計算しておきながら、今度の仲裁実施に当っては実人員をこの計算の基礎にするがごときは、あまりにも一貫性のない矛盾した態度といわなければなりません。(「その通り」)昭和三十二年度本予算をわれわれの前に示したときには、これこそ必要欠くべからざる予算定員でございますと責任をもって説明しておきながら、それから二ヵ月もたたない今日、ぬけぬけとみずからの説明をくつがえすがごときは、行政をあずかる政府態度としてあるまじき無責任と非難されてもいたし方ないと存じます。(拍手)しかも実人員とは言うものの、政府はその算定の時期を昨年の七月にとっているために、今日における実際の実人員との間には、すでに相当の食い違いがあるという暴挙を平然と行なっているのであります。たとえば専売公社の場合のごとく、今日の実人員は政府の算定した人員より約六百人もオーバーしているというのが現状であります。  以上述べましたほかに、こまかい点をあげますれば、今回の補正予算に対する反対理由はまだ幾つかありますが、私はきわめて基本的な点のみを指摘するにとどめておきます。  最後に一言つけ加えたいことは、今回の賃金引き上げ要求に関連して、公社及び五現業の労働組合当局との紛争が重大化した際、事態の悪化を防止せんがために行われた両党首の会談の約束に関してであります。これはすでに天下周知のごとく、わが党鈴木委員長に対して自民党の総裁である岸総理より、仲裁裁定に対して誠意をもって実施すると約束がなされ、労働組合はこれを期待して自重し、紛争解決の方向に向い、国民もまた安堵の胸をなでおろしたのであります。そして何人も仲裁裁定が下った場合には、政府が完全な形で実施するものと信じて疑わなかったのであります。(「その通り」)  しかるに今回の政府の補正予算内容は、私が今指摘したように不誠意きわまるものであり、不完全実施であって、これはわが党に対する許しがたい不信行為であるばかりでなく、まさに労働者を欺き国民を欺く行為といわなければなりません。(拍手)  さきの国家公務員の給与改善に際しても、また今回の三公社現業の職員の給与改善に際しても、政府のとった態度は、いかにして労働者の賃金を低く押え、いかにして労働組合の活動を威嚇し弾圧するかに終止しておったものであり、労働者に対するあたたかい思いやりなどはみじんもなく、まきに日経連、経団連等大資本の方針を忠実に実行するものといわなければなりません。(拍手)これは労働問題解決への努力ではなく、かえって政府みずから紛争を挑発激化する態度といわなければなりません。(「ノーノー」)三公社現業の従業員諸君は、この補正予算案に対して大いなるふんまんを抱いております。もし政府が与党の多数を頼んで、今回のような一方的、独断的かつ不完全な措置を強行するならば、公労法の期待する労使の友好的かつ平和的調整が破壊され、企業の運営にも重大な影響を及ぼすことでありましょう。  私はこのことを警告し、政府と与党に対して強い反省を求めて討論を終りたいと存じます。(拍子)
  67. 山崎巖

    山崎委員長 山本勝市君。
  68. 山本勝市

    山本(勝)委員 私は自由民主党を代表して、ただいま議題となっております昭和三十二年度特別会計予算補正(特第2号)、昭和三十二年度政府関係機関予算補正(機第1号)に対し、賛成の討論を行わんとするものであります。(拍手)  賛成の理由は、一言で申しますと、この補正予算は去る六日の公共企業体等労働委員会の仲裁裁定を相当に誠意をもって取り入れたものと信ずるからであります。この仲裁裁定に対し、誠意をもって政府がその実施に当るべきことは当然でありまして、健全なる労働慣行の確立、合理的な給与体系の整備をはかる上にも必要であることは、今さら申し上げるまでもありません。  元来、公共企業体等における公労法の問題あるいは公社制度のあり方等につきましては、多くの検討を要する問題があり、特に給与の問題につきましては改訂の必要が痛感されてきたところであります。新聞などにおきましては、いわゆる労使双方なれ合いのアベック闘争によってやみ給与が支給されているなどと言われておるのでありますが、このことは、公共企業体の特殊の性格や、また公共企業体等の給与がこれまで給与総額内で自由に操作できる仕組みになっておったことから発生したのでありまして、必ずしもやみではないし、また違法行為とは言えないと考えるのでありますが、しかしその結果として予算単価実行単価に大幅な開きを生ずるという好ましくない、放置しがたい事態を生じておるのであります。  このような給与制度を幾分でも合理的なものに是正するために、仲裁裁定の実施に当って、政府はまず第一に予算単価実行単価との格差を、できるだけ縮小をはかるとともに、また今後かかる格差の発生をあとう限り防止する意図のもとに、予算総則における給与総額を基準内給与と基準外給与とに区分し、従来公社などがしばしば行なってきた基準内給与総額の変更を、主務大臣大蔵大臣と協議して承認を与えた場合に限るということに改めておる点がいろいろ問題になっておりまするが、これは将来こういういざこざの起らぬように処置するためには必要な措置考えるのであります。  第二には、本委員会において論議の中心となりました仲裁裁定主文第一項の解釈の問題についでありますが、私はこの主文をすなおに、文字通りに解釈して実施するといたします場合には、たとえば国鉄の場合について申し上げますと、すでに昨年において国鉄当局が支給した第一項確定分六百円及び予算単価実行単価との格差五百二十円、合計千百二十円を今回の仲裁裁定による千二百円から差し引いて、わずかに八十円の給与是正をもってしたといたしましても、法律的には必ずしも不当な解釈とは言えないと思うのであります。しかしながらそれではいかにも少額の昇給となって、働いておられる方々にお気の毒と考えて、政府は何とかしたいということから、労働次官の名をもって、公共企業体等労働委員会に対して裁定主文第一項の趣旨の解釈についての問い合せを行なったものと考えるのであります。これに対する委員会側の回答は、今回の裁定の千二百円は、予算単価基準として公務員及び民間賃金ベースとの均衡を考慮して算出したものであって、実行単価に千二百円を積み上げるものではないこと、しかしながら同時に、現実の問題として相当額の昇給を予想しておる旨の回答を得たのであります。今回政府のとりました措置は、このような仲裁裁定の精神を尊重し、相当に誠意をもって実施したものであることは、昨日藤林委員長が本委員会においてはっきりと言明された通りであるとわれわれも考えるのであります。  このような経過を経て、政府は次のような措置をとったのであります。こまかなことは省略いたしますが、御承知のような措置をとった次第でありますが、なおこの機会において、われわれは公社の給与に関して、政府並びに公社の両当事者に対して考慮と反省を求めたい三つの点をつけ加えておきたいと思うのであります。  第一は、元来公社なるものは私企業とは異なって、国民の負担によって作られ、かつ国の法律によって保護されておる独占的な事業であるということであります。ですからその利益というものも、資本の大部分は無償で国民に仰ぎ、独占事業として認められておるところに発生しておる部分が多いのでありまして、その利益がすべて当事者の業績とのみ見るわけにはいかぬと思うのであります。ですから業績が上ったから、それがおれたちの力でできたんだから分けるというふうにはいかぬという点であります。  第二には、公社の給与が適当であるかどうかということを考える場合には、団体交渉ももちろん必要であり、仲裁裁定の決定を尊重すべきは当然でありますが、さらに広く労働全般の給与状況をも忘れてはならぬということであります。すなわち昭和二十九年一月の給与を起点といたしましての公務員の給与並びに民間の大きな類似企業の給与の上昇率の考慮という、きわめて狭い範囲の考慮のみではなくて、わが国民経済で大きな役割を果しておる中小企業の労務者の給与状況や、さらには仕事を求めながらも得られないでいる多くの人々の生活状況をも十分念頭に置いて行動するのでなかったならば、私は国民大衆の承認を得ることはできないであろうと思うのであります。  それから第三に考慮を求めたいことは、政府も両当事者も、あくまで法律を順守しなければならぬということであります。法律に不備があればすみやかに改正しなければなりませんけれども、法律として存在する限りはあくまでこれを順守し、またこれを順守せしむるのでなかったならば、ただに健全な労働慣行が生まれてこないのみならず、社会の秩序そのものの維持が不可能となって、重大な結果を招来すると思うからであります。  以上の理由によって政府原案に賛成する次第であります。
  69. 山崎巖

    山崎委員長 これにて討論は終局いたしました。  これより採決に入ります。採決は一括し、これを行います。  昭和三十二年度特別会計予算補正(特第2号)、昭和三十二年度政府関係機関予算補正(機第1号)の両案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  70. 山崎巖

    山崎委員長 起立多数。よって昭和三十二年度特別会計予算補正(特第2号)及び昭和三十二年度政府関係機関予算補正(機第1号)は、いずれも原案の通り可決いたしました。  委員会報告書の作成につきましては、先例によりまして委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  71. 山崎巖

    山崎委員長 御異議なしと認めます。よってさよう決しました。   これにて散会いたします。   午後零時五十七分散会