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1957-04-22 第26回国会 衆議院 予算委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年四月二十二日(月曜日)     午前十時四十六分開議  出席委員    委員長 山崎  巖君    理事 宇都宮徳馬君 理事 河野 金昇君    理事 坂田 道太君 理事 川俣 清音君    理事 柳田 秀一君       今井  耕君    植木庚子郎君       臼井 莊一君    太田 正孝君       大橋 武夫君    小川 半次君       河本 敏夫君    須磨彌吉郎君       橋本 龍伍君    福田 赳夫君       船田  中君    松本 瀧藏君       三浦 一雄君    南  好雄君       山本 勝市君    山本 猛夫君       井手 以誠君    岡田 春夫君       岡  良一君    河野  密君       小山  亮君    島上善五郎君       田中 稔男君    田原 春次君       辻原 弘市君    矢尾喜三郎君       吉田 賢一君  出席国務大臣         内閣総理大臣  岸  信介君         大 蔵 大 臣 池田 勇人君         通商産業大臣  水田三喜男君         運 輸 大 臣 宮澤 胤勇君         国 務 大 臣 小滝  彬君  出席政府委員         内閣官房長官  石田 博英君         法制局長官   林  修三君         防衛庁参事官         (装備局長)  小山 雄二君         科学技術政務次         官       秋田 大助君         外務事務官         (条約局長心         得)      高橋 通敏君         大蔵事務官         (主計局長)  森永貞一郎君  委員外出席者         専  門  員 岡林 清英君     ————————————— 四月二十二日  委員楢橋渡君、勝間田清一君、西村榮一君及び  森三樹二君辞任につき、その補欠として臼井莊  一君、小山亮君、吉田賢一君及び岡良一君が議  長の指名で委員に選任された。     ————————————— 四月二十二日  昭和三十二年度特別会計予算補正(特第2号)  昭和三十二年度政府関係機関予算補正(機第1  号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十二年度特別会計予算補正(特第1号)  昭和三十二年度特別会計予算補正(特第2号)  昭和三十二年度政府関係機関予算補正(機第1  号)     —————————————
  2. 山崎巖

    山崎委員長 これより会議を開きます。  昭和三十二年度特別会計予算補正(特第1号)を議題といたします。質疑を続行いたします。田中稔男君。
  3. 田中稔男

    田中(稔)委員 今日、不平等条約改廃要求国民の世論であり、かつ識者の声であります。岸総理訪米は、この国民的要求にこたえるものでなければならないと考えます。しかし私は、遺憾ながらこの意味において総理の使命が成功するものと期待することはできないのであります。  総理は、一昨日本委員会における与党の船田委員質問に答えて、日本の真の独立を速成することの必要を説かれました。今日の日本がなおいまだ完全に独立していない理由は、日本に十万のアメリカ軍駐留を続け、六百に及ぶ軍事基地が存在しておるからであります。それはつまり日米安全保障条約があるからであります。総理はたびたびこの日米安全保障条約の将来における廃棄を希望する旨言明されました。日本の真の独立の必要を説き、日米安保条約廃棄を希望される限りにおいて私は総理のお立場を支持するにやぶさかではありません。しかし総理がおたずねになろうとしている今日のアメリカはどういう国であり、今日のアメリカ政治家は一体どういうことを考えているでありましょう。アメリカはその対外政策においては原子兵器を核心としたニュー・ルック戦略によって対ソ巻き返上政策を推し進めております。また国内政治においてはマッカーシズムは依然として衰えず、共産主義ノイローゼにかかったアメリカ上院議員たちは、二十世紀の宗教裁判ともいうべき赤狩りに狂奔しているのであります。ハーバード大学客員教授たる都留重人君に屈辱を迫り、そのためか、ノーマン・エジプト駐在カナダ大使を急死させるに至ったことは、ごく最近における周知のできごとであります。このアメリカ極東政策またはアジア政策における日本の役割について、アメリカ政府首脳がどういう考えを持っておるかはおのずから明らかであります。沖繩を含めて日本極東における堅固な反共のとりで、すなわち中ソ両国に対する原子力戦争のための基地たらしめること、これがアメリカ基本方針であります。岸総理がいかに賢明であり、いかに卓越した外交的手腕を持っておられたといたしましても、現在のアメリカ政府を相手として日米提携を話し合われるならば、おそらくアメリカヘの従来の従属を一そう深める結果になりはしないかということを、私はおそれるものであります。総理は一体アメリカに何を期待されるのでありましょうか、またどういう態度アメリカ政府首脳との会談に臨まれるのでありましょうか、冒頭にお尋ねいたします。
  4. 岸信介

    岸国務大臣 お答えを申し上げます。しばしば同趣旨の御質問に対してお答えをいたしておるのでありますが、私はあくまでも日本独立の完成と、自主独立立場から日米の間の関係を調整したい、これが日米が長く自由主義国として提携してそうして世界平和を増進する上に役立つという観点に立っておるのであります。従いまして、今日までの日米関係の実情をしさいに検討してみますると、この方向からいって望ましくない幾多の問題があることは御承知通りであります。これを私は、日米両国首脳者の間で腹を打ち明けて、その間の考え方を統一していくことが、この際必要であるという観点に立ってアメリカ首脳部話し合いをするというのが、今度の私の訪米根本的考え方であり、態度であります。従いまして、今御指摘になりました安保条約日米共同防衛体制等の問題に関しましても、私が申し上げましたような立場から話し合いをすることは当然であります。しかし具体的に今日私は日米共同防衛基本を変えるほど、日米自体防衛力というものが強化されておらないという現実もよく承知いたしております。そうしてまた今日の世界情勢極東情勢というものが、われわれが望ましい緊張が緩和された状態ができておるとは決して考えられない状態であることも十分承知をいたしております。しかしこの緊張緩和方向にわれわれが努力すべきことも、また日本根本的外交方針態度であることも、しばしば盲明かし通りであります。こういう立場から話し合いをするならば、今日直ちに安保条約を、アメリカの念願しておるような究極においてこれをなくして、そうして日本自身の安全が保障され、平和が確保されるというような状態でないことも、今申したような点において明らかでありますけれども、しかし方向としてその方向に向ってわれわれが一歩々々進んでいくという態勢を作り上げることが、私は日本安全保障世界の平和を増進する上からも必要であると同時に、日米の正常なる協調関係を進めていく上からいっても必要である、こう考えておる次第であります。
  5. 田中稔男

    田中(稔)委員 日米間にいろいろおもしろくない事態がある、これを改善するために話し合いをしたい、安保条約の問題も自然問題になるであろうというお話であります。そうして安保条約は、将来においてはこれを廃止したい、こういう御確認もありました。ただこれを廃止して、これにかわる何らかの形態の日米共同防衛体制を作りたい、こういう御意向のようでありますが、そう解釈してよろしゅうございますか。
  6. 岸信介

    岸国務大臣 この現在の国際情勢のもとにおいて、われわれが安全を保障されており、安全感国民が持つという上から申しますと、一つ防衛体制が完備していなければならぬこと、言うを待ちません。この防衛が、単純に現在のところ一国の力だけでその安全が保障され得る状況にないことも、これも遺憾ながらわれわれは認めなければならぬ。そこでこれにかわるものとしては、集団安全保障というようなことが考えられ、やはりそれの一番理想的な形は、国連中心としての集団安全保障体制というものができ上ることであろうと思うのです。しかし現在のこの国連集団安全保障制度というものもまだ無力であって、これにたよってわれわれがほんとう安全感を持てるというような状況でないことも事実であります。こういう状態のもとにおいて、日本としてはやはり日米共同防衛体制そのものを今すぐやめるということ、これは私適当でないと思います。ただそれを合理的な基礎においてお互い国民の納得するような体制合理化すということが、私は現在の状態においては最も必要である、こういうふうに考えます。
  7. 田中稔男

    田中(稔)委員 つまり日米安保条約廃棄して、もっといい安全保障体制日本のために作りたい、しかし国連中心集団安全保障体制というものがまだできていない、従って当面は現行の日米安全保障体制を、もう少し合理化しよう、つまりこれを改訂しよう、こういう御意向だと承わりましたが、それでよろしゅうございますか。
  8. 岸信介

    岸国務大臣 大体そういう方向でものを考えております。
  9. 田中稔男

    田中(稔)委員 私どもは、対日平和条約領土条項軍事条項改訂し、日米安全保障条約は全部これを廃棄すべきだとかねて考えているのであります。総理究極においてはそういうことを希望すると言っておられますが、実はこの条約には期限の定めがないのであります。ただ第四条において「この条約は、国際連合又はその他による日本区域における国際の平和と安全の維持のため充分な定をする国際連合措置又はこれに代る個別的若しくは集団的の安全保障措置効力を生じたと日本国及びアメリカ合衆国の政府が認めた町はいつでも効力を失うものとする。」こういう失効規定があるわけであります。この場合に「国際連合又はその他による日本区域における国際の平和と安全の維持のため充分な定をする国際連合措置」というのは、一体どういうことを意味するのであるか、またそのあとの「個別的若しくは集団的の安全保障措置」というのはどういうことを意味するのか、一つ外務大臣としてやや専門的な御答弁を願います。
  10. 岸信介

    岸国務大臣 専門的ですから、条約局長から答弁いたします。
  11. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 お答え申し上げます。第四条の「この条約は、国際連合又はその他による日本区域における国際の平和と安全の維持のため充分な定をする国際連合措置」、これは国際連合措置で、現在条項がございますが、それに基きまたはそれを補充する、いろいろな国際連合によってとられます安全保障措置であると考えております。  それから「又はこれに代る個別的若しくは集団的の安全保障措置」と申しますのは、国際連合規定に基きます地域協定によりまして、集団的な安全保障措置が行われる、たとえば御承知通りANZUSとかSEATOとかの条約による保障措置、それが集団的な安全保障措置ではないかと考えております。  それから個別的安全保障措置と申しますのは、通常言われますような国内における十分なる自衛の手段を拡充するというようなことが、個別的な安全保障措置であろうと考えております。
  12. 田中稔男

    田中(稔)委員 そこで、その前の国際連合措置というものは、今日安全保障理事会がその機能を停止している状態であり、総会朝鮮戦争の際に、平和のための統合といいますか、そういう決議をいたしまして、総会勧告権に基いて国際の平和と安全を守るための措置を試みてはおりますけれども、これも今日の日本にとって満足なものとは考えられません。従って国連措置というものは、今日においてはほとんど紙の上の計画にすぎない。問題はその後の部分でありますが、今条約局長の御答弁もありましたように、個別的な安全保障措置というのは、日本防衛力の強化ということになるのであります。そのあとの集団的な安全保障措置というのは、SEATOとかANZUS条約というようなことを具体的に例示されましたが、その通りだと思います。  そこで安保条約を廃止しようと考えるならば、こういう条件を満たして、しかもそれがアメリカの承認を得なければならないということになっておるのであります。今日日本におきましては平和憲法がかたく禁止しているにもかかわらず、自衛隊の名のもとに事実上相当強力な軍隊ができ上っておるのであります。しかもこれはさらに増強される傾向にあります。これが今後どの程度増強されたならば、個別的安全保障というものとしてアメリカに承認されることになるでありましょうか。日本防衛力も相当増強されたということを理由にして、アメリカにいろいろなお話をなさるか、総理立場において御答弁願いたい。
  13. 岸信介

    岸国務大臣 日本防衛基本方針ないしは日本防衛増強についての長期計画を、国防会議の議に付してきめることになっておりますが、実はこの防衛に関する日本基本防衛方針や、あるいは長期防衛計画というものが、まだ政府としてはっきりこれが日本方針であるということが定まっておらない状況でありまして、防衛庁自身が専門的なある種の一つ計画は持っておりますが、これをさらに高い見地から、広い見地から、彼我検討いたしまして、そういうものをきめるために、私ども国防会議関係者を督促して研究を進めさしている状態でございます。  私ども極東におけるいろいろな国際情勢の分析また日本の防御の基本方針及びこれに基いての日本長期防衛計画の大体の輪郭を定めるならば、ここに初めて日本としては一応これをもって個別的に日本自身安全保障体制ができるという見きわめをつけ得る、またつけ得るような計画をわれわれとしては持たなければならぬと考えているのであります。今日のところにおきましては、まだそれが確定の域に達しておりませんから、何年の後にどれだけのものができたら、それによって個別的なものができるんだという確信を申し上げることはできないのであります。しかしこの安保条約ができた当時、日本においては自力による防衛体制というものは全然なかったのでありますが、今日においては少くとも日米共同防衛体制のもとに日本安全保障に関して——これはいろいろな批判、意見はありましようけれども、少くとも責任日本として分担できる一つの力ができていることは言うを待たないと思います。  そういう意味から申しまして、安保条約ができた当時の日本状態とは非常に違った状態にまで来ていることも事実であります。そういうものを根拠として、日本安全保障体制について、この際日米の間で話し合うことは必要であり、また適当であると考えております。
  14. 田中稔男

    田中(稔)委員 一昨年重光外務大臣アメリカを訪問されて、ダレス国務長官と会談されました。その共同声明を読んでみますと、外務大臣は、日本防衛当局が最近策定した日本防衛能力増強に関する諸計画を説明した。これらの諸計画は、東京における日米防衛関係に関する継続的な協議の過程において検討され、かつ、戦略上の要請を考慮して随時再検討さるべきことが合議されたと、あるのであります。  私どもが今まで承わっているのは、防衛六カ年計画というのでありますが、これはたしか昭和三十年度を起点として昭和三十五年度までに、陸上において十八万の兵員、海上においてはたしか十二万四千トンの艦船、空中においては千三百機の航空機、こういうふうなものを整備する長期計画はすでにできておる。重光外相ダレス国務長官に説明されたのはその計画だろうと思うのであります。これが事実であるかどうか一つお尋ねしたいのと、それからアメリカ側意向もありまして、それがその後修正されつつある。完全な結論は出ておらぬにしても修正されつつある。そして岸総理渡米に当って、国防会議を開いて最終的な修正計画を完成する、こういうふうなことを聞いておるのでありますが、そういうことは事実であるかどうかお尋ねします。
  15. 岸信介

    岸国務大臣 先年重光外相アメリカに参りましてダレス長百と話をした際において、いわゆる防衛庁の試案なるものが説明され、そして共同声明にあるように、それをさらに東京において専門家の間において検討し、またいろいろな情勢の変化に伴って、再検討されるということについて意見が一致したということは、今お話通り、当時ありました防衛庁のいわゆる試案が中心になって話をされたのであります。私が先ほども申し上げましたように、これは私が訪米をするといなとにかかわらず、国防会議が設けられ、日本防衛基本方針防衛長期計画というものが国防会議において検討されて、そして日本政府一つ基本方針として定められなければならないという立場にありますので、それを急いで検討を命じておるのでありますが、私が訪米する前に、それを何らかの最後的な決定をして、そして訪米するというふうなことになりますか、あるいは実際上そこまでいきませんか、これは今検討を命じ、国防会議を今後開いて審議してみないとわからぬと思います。しかし少くとも防衛についてわれわれが考えておる大体の方向は、そういうふうに最後的な決定を見るに至らなくとも、十分アメリカ首脳部と話す場合において、日本総理としては一つの腹がまえを持っておる必要はもちろんあると私は信じておりまして、その国防会議の審議もそういう意味において期待を持っておるのであります。
  16. 田中稔男

    田中(稔)委員 アメリカ日本防衛力増強に大きな期待を寄せ、むしろこれを強制するというふうな内面的な事情もあろうかと思うのでありますが、日本もこれに応じて増強を続けております。今まではほおかぶりして憲法改正をやらなかったのでありますけれども、だんだんこれが増強されて、そして日米安保条約失効条件を満たす程度にまでこれが増強された暁には、これは何といっても憲法と抵触することは明らかであります。岸総理もかねて憲法改正論者でありましたが、政府としましては、憲法第九条を改正して公然と再軍備ができるように用意をされる御意向が、今日あるかどうかお尋ねします。
  17. 岸信介

    岸国務大臣 憲法改正の問題は、ただ単に憲法九条の規定のみに限らず、私自身の私見を申し述べますと、全面的に検討して、日本ほんとう日本民族独立、自由の意思から採択すべき糧法を作り上げる、いわゆる自主憲法を制定すべきであるというのが私の持論でございます。しかしこれに対しましては、ずいぶん反対議論もありますので、憲法調査会においてこういう問題を十分に検討して、そうして権威ある結論に基いて国民にその可否を問うという手続がとらるべきであることは言うを待ちません。日本防衛基本は、日本自衛、他の侵略から日本の国土、及び国民を守るという点にその眼目があることは言うを待たないのであります。従いまして、その意味において、現在の憲法においても、今の自衛隊組織というものは憲法違反ではないという見解をとっておるわけであります。これにつきましてもまた一部に反対議論もあることは十分御承知通りであります。従いましてそういう点も、自主憲法を制定するというような私ども考え国民の支持を受ける場合においては、当然こういう重大な問題について——一方において憲法違反という議論があり、一方においてそれが合憲であるというような激しい議論の対象になるような形に置くことは望ましくないという意味において、当然憲法九条も含めてわれわれは自主憲法の制定の際においては考えなければならぬ、こういうふうに考えております。
  18. 田中稔男

    田中(稔)委員 安保条約第四条にある集団的な安全保障措置というものに関連いたしますが、日本アメリカと一緒になって韓国とか台湾、フィリピンというような国々と相互防衛条約というものを結ぶ、それをNEATOと呼びますならば、これをSEATOと結び、さらにANZUS条約と結んでPATOを作るという構想は、しばしば伝えられた構想でありますが、こういう構想が実現するならば、安保条約失効して、日米共同防衛体制はさらに強化されるわけであります。問題は、日米共同防衛体制を強化するということに政府の意図はあろうかと私は考えるのでありますが、そうだとすると、そういうふうな安保条約を廃止してそういうものを作るという方法、あるいはまた今日の安保条約は、実は日米防衛体制規定したものではないのでありまして、よく言われるように、これは片務的なものである。ただアメリカ軍隊日本駐留するということ、そのために日本基地を提供するというようなことを規定したたけのことであって、その駐留軍は自分勝手な行動をとり、何も日本防衛には責任を持たないというような建立になっておるわけでありますから、日米共同防衛体制を念願する政府として、そういう集団安全保障体制というものを本格的に作らないとすれば、安保条約そのものの根本的な改訂を必要とする。その根本的な改訂と、これを廃止して全然新たなものを作るということは、大して私は実際問題としては違いがないのじゃないかと思いますが、今は政府合理化改訂ということを考えておると言われます。それはどういうふうなことを一体構想されておるのであるか、こまかい条文の形での御答弁を求めるのでありませんが、一つできるだけはっきりした構想としてその合理化改訂方向をお示し願いたい。
  19. 岸信介

    岸国務大臣 言うまでもなく、私が今回訪米いたしますのは、アメリカ側でも発表いたしており、それは私と全然同じ意見でございますが、特に具体的の問題を交渉する、ネゴシエートするという意味で参るのではなくて、この基本の問題についてディスカッスする、お互いお互い考えを率直に言いあって、そうしてわれわれの考え一致点を見い出そうというつもりでありますので、具体的にどこの点をどういうふうに修正する、改訂するというようなことをここで申し上げることは私適当でないと思います。ただ申し上げておきたいことは、従来この規定が全体的に見て非常に片務的である、これは双務的に考えなければならぬ、あるいは非常な不平等条約である、それを平等にしなければならないというふうな議論がございます。私はそういう議論の気持といいますか、そういう考え方基本についてはよく了解できるのでありますが、そういうことを押し詰めて参りますと、一体日本アメリカと翼に双務的な——両方があらゆる権利義務を平等にして、双務的なことがなし得るだけの日本の実力やあるいは国情であるかどうかという点、また不平等条約といいますが、それを完全に理論的に平等にするというようなことが可能な客観的情勢ができているかということを考えてみますと、そういう抽象的な議論方向をきめるということも、私は決して適当ではないと思います。私の従来由しておる日米共同防衛体制を合理的ならしめ、両国国民が納得して、日本平和維持に貢献するという形に持っていくことが必要なのでありまして、そういう見地から私はこの安保条約の全文をお互いに読みかえして見るということが、この際に必要であろうと思います。従いまして今ここではっきりとどこの点をどういうふうにするとかいうふうな点について、私どももある程度研究はいたしておりますけれども、また申し上げるのには適当でない、かように存じます。
  20. 田中稔男

    田中(稔)委員 安保条約においてはっきりと日米共同防衛体制というものを規定されていないと思いますが、ただ第一条の後段において、「日本国における大規模内乱及び騒じょうを鎮圧するため日本国政府の明示の要請に応じて与えられる援助を含めて、外部からの武力攻撃に対する日本国の安全に寄与するために」この駐留軍を使う、こういうふうなことが書いてある。この辺にある意味では共同防衛体制の片りんがあるかと思いますが、私は日本国における大規模内乱及び騒じょうを鎮圧するためアメリカ駐留軍が使用されるというような事態が起ったら、これは大へんだと思う。いやしくも形式的にせよ、独立した日本がこういう規定条約の中に残しておくというのは、私は独立国の威信にもかかわる重大な問題だと思う。安保条約改訂するというのならば、まずこういうところはぜひ一つ削除する、こういうことをアメリカ政府に対して御交渉あってしかるべきものだと思いますが、総理の御意見はどうですか。
  21. 岸信介

    岸国務大臣 田中君の御意見として私十分尊重して参りたいと思います。
  22. 田中稔男

    田中(稔)委員 また、日本駐留する軍隊極東における国際の平和と安全の維持に寄与すると、こういうことが書いてあります。これは言葉は非常にあいまいな表現でありますが、これはたとえばアメリカがソ連や中国と戦争を行うというような場合に、アメリカ駐留軍日本を某地として作戦をする、こういうきわめて重天な規定であります。しかも日本政府は何らこれに関与することはできない、こういうことは私はきわめて重大なことだと思うのであります。すでに朝鮮戦争の場合の前例もありますけれども朝鮮戦争を十倍にし、二十倍にした規模の戦争が日本区域に起った場合に、駐留軍が勝手にどんどん日本基地として作戦をする、これは実に大へんなことであります。これは日本の国におる駐留軍でありますから、かりにこの安保条約をこのまま存置するとしても、この駐留軍の使用目的については、日本側で何らかこれを制約する発言ができるように、この条約改訂すべきであると思うのでありますが、総理の御意見一つお尋ねしたい。
  23. 岸信介

    岸国務大臣 安保条約の全体が当時日本自衛力の全然ないときに作られておりまして、今日においては、先ほど申し上げるように、少くとも日本日本防衛について、ある程度責任を分担し得るだけの防衛力を持つに至っております。そういう見地から見まして、先ほどの内乱の問題であるとか、あるいは今御指摘になりました点について、日本側の意向も十分取り入れて、そういう事態に処するというふうなことを、安保条約の上において考える必要があるのじゃないかという田中委員の御意見に対しましては、私も十分に承わっておきまして、研究をすることにいたしたいと思います。
  24. 田中稔男

    田中(稔)委員 重光外相が、ダレス長官と一昨年会談されましたときに、安保条約合理化しよう、改訂しようというような御意向があって、努力されたと聞いております。ところがその結果はやぶへびになったことは御承知通りでありまして、重光・ダレス共同声明によりますと、日本が、できるだけすみやかに自国の防衛のための第一次的責任をとることができ、かくて西太平洋における国際の平和と安全の維持に寄与することができるような諸条件を確立するため、実行可能なときはいつでも協力的な基礎に立って努力すべきことに合意されたと、こうなっておるのであります。まずこの前段の自国の防衛のために責任をとるということは、これは政府みずからそういう考えでおられることでありまして、あえてやぶへびとはいえないかもしれませんけれども、この西太平洋における国際の平和と安全の維持に寄与するということは、一体何を意味するか、これは言うまでもなく、極東において、あるいは太平洋地域において、戦争が起ったというような場合に、日本自衛隊、実質的には日本軍隊が海外派兵をしなければならないということを予想した言葉であることは明らかであります。日米共同防衛体制の確立というのが政府の一貫した方針であります。つまりこれはすでに片務的でなく双務的に一つ行こうという考え。そうだとしますと、これは当然こういうことになるわけであります。重光さんが行って失敗された同じ失敗を、やはり岸総理が繰り返すということになりはしないかということを、私どもは心配しておるのであります。岸総理は、日本独立の完成を説かれ、あるいは安保条約は将来廃棄しなければならぬというようなこともおっしゃる。そういうことを聞いておりますと、私は岸総理を支持したい気持になるのでありますが、しかし、どうもいろいろ日米共同防衛体制についてのお考えを聞いておりますと、そういうお考えがあって、そして安保条約改訂あるいは合理化を交渉されるならば、結局私は重光外相と同じ轍を踏まれるんじゃないかと思う。このことについて一つ答弁を願いたいと思います。
  25. 岸信介

    岸国務大臣 この前、重光外相訪米してダレス長官と会談をした際に、私は当時民主党の幹事長として、その主要なる会議に同席をしたのであります。いろいろこの会談に関しましては、海外派兵問題をめぐって、当時日本の新聞等においても、あるいは世論のうちにも、批判があったのでありますが、実際の当時の会談の実情から申しますと、派兵問題については、派兵を要求されて、それを承諾したというような事態ではないのでありまして、むしろアメリカ側からいうと、日本の現在の体制憲法問題を含めて日本としては海外、派兵のできない立場にある、そういう立場にあることを前提として、日本アメリカとが協力して日本安全保障を確保し、ひいて西太平洋におけるこれが平和維持もしくは安全保障の基礎となるべきものであるという考え方が当時かわされたのでありまして、私は決して当時重光外相が海外派兵について何らかの義務を負い、もしくは将来そういうふうなことについて約束をせざるを得なかったというふうに追い込まれたというような事態では絶対になかったことを、私自身が当時の会議に列席しまして承知いたしておるのであります。もちろん、この極東情勢等につきまして、アメリカ考えておるこの種の情勢判断と、日本考えておる情勢判断とは、今日必ずしも一致しておるとは——方向は大体同じように考えておりましても、その緊迫の程度や、あるいはその度合いについては多少の考え方の相違があると思うのです。しかし、そういうことを十分に両方が忌憚なく話してみますと、この西太平洋における平和維持安全保障ということ、それには日本自体の安全保障日本自身の平和的立場の堅持ということが、その中心をなし、中核をなすべき状態に、日本国際的地位の向上や実力の向上から、当然なっておると思います。従って、私自身は、あくまでも日本安全保障という立場において日本防衛力の問題を考える、それを一歩も逸脱しないということが、この防衛問題に関するわれわれの信念であり、またそれは逸脱してはならないことである、かように考えております。
  26. 田中稔男

    田中(稔)委員 岸総理が、ダレス国務長官と同じような見方を、国際情勢についてなさるものとは思いません。若手というようなお言葉もありましたが、私は大いに違うのじゃないか、また大いに違ってほしいのであります。またアメリカを訪問される際に、インドのネール首相ともお会いになる機会もあるということでありますから、どうか一つアメリカ流の見方に同調するのでなく、日本内閣総理大臣としては、日本立場から国際情勢を独自に観察する、さらにはまたインドの声、アジアの声を今日代表しておりますところのネール首相あたりの考えもよく聞いていただいて、そうして僕は必ずしも三日間のアメリカ政府首脳との会談において和気あいあいと話して帰ってきたということにならなくともいいんじゃないかと思う。やはり大いに主張すべきは主張して、そうしてこちらの・主張が正しいならば、あのなかなか頑強なダレス国務長官といえども説得するというくらいの気魂を持って行ってもらいたいと思う。一つの例でありますが、バーミューダ会談の前においては、アメリカはチンコムの禁輸リストを、今までよりもっと狭めるというような態度でおりましたのに、マクミランが参りまして相当強く主張したのじゃないか、また日本その他の国の意向もありまして、とうとう逆な方向が出たのであります。だから私は冒頭、アメリカ政府のその後の一貫した基本方針を紹介して、なかなか岸総理の歯が立たぬのじゃないかということを申し上げて心配しましたけれども、私はそうばかりも言えないと思う。岸総理も、一つほんとうにしっかりした信念、それに基く迫力ある発言が、相手をやはり説得するというようなことも、そして向うの見方が間違っておるならばそれを訂正するということだって、私は望みなきにしもあらずと思いますから、その意味で御健闘をお願いします。わが社会党は、御承知通り日本の平和と安全を保障する道は、米ソ両陣営のいずれにも属しない、独立自主の平和外交を展開することであると、かたく信じておるのであります。その具体的な方法として、日中米ソを中心としたアジアないし極東における全面的な集団安全保障体制の実現を提唱していることも御承知通りであります。目下北京滞在中のわが党の訪中親善使節団との会談において、周総理は、全幅的にわが党の構想に賛意を表したと伝えられております。毛沢東主席とも会談しておるようでありますが、私は同様の結果だと確信しております。また二十日夜のモスクワ放送はこの構想を支持する立場に立って、日本の外務当局が何らの理由をあげることなく、この構想は実現不可能だと論じ去ったことを強く非難しております。もちろん国連の安保理事会もその機能を停止している現状である。従ってこういう構想の実現は決して容易なものとは思いません。しかしながら一昨年オーストリアに永世中立を保障する国家条約が、米英ソ仏の同意によって締結された先例もあることでありますから、今後の努力によってはこういう構想が実現しないというような理由は絶対にありません。総理はこの社会党の構想に対してどういうふうにお考えになりますか、別な機会でもあるいは御答弁になったことだと思いますけれども、重要な予算委員会でありますから、できるだけ詳しい御答弁をお願いいたします。
  27. 岸信介

    岸国務大臣 私ども日本安全保障を確立し、世界の平和を確立するという意味において、あらゆる努力を今後していかなければならぬことは言うを待ちません。私は今日の現状が永久に続くものだとも絶対に考えておりませんが。従って、ほんとう世界が戦争の危険なくして、そうして各国が、たといその国の内政上の方針は違いましょうとも、お互いお互いの国を尊敬し合って内政に干渉せず、それぞれ共存共栄して協力が求められ、平和がもたらされるという形が作り上げられることを念願してやまないのであります。そのためには私はどういう方法でもそれに役立つと思うところのことは、十分に研究していかなければならぬこと言うを待ちません。しかし同時にわれわれが特に政局を担当し、現実の外交を責任を持って遂行していくという場合におきまして、あくまでも国際の現実をわれわれはよく正確に認識し、これを分析して、それに基いて今の方向に向って進んでいくところの努力をすることが、これは現実の問題としては政局を担当している以上当然やらなければならぬことだと思います。この意味において今おあげになりました構想、それがもしも実現するならば、これが極東における平和の確保の上に非常な大きな貢献をすべきことは言うを待たないのであります。従ってそういうものができるということに対して私は反対すべき何らの理由はない。しかしそれは今その案を政府が政権を担当して、現実の外交政策としてそれを取り入れてそれに努力していくか、こう考えてみますと、今も御指摘になりましたような国際連合の実情から申しまして、その実現は私は可能性が非常に少いと思う。われわれはさらに有効な実際的な方法によって外交方針を進めることの方が適当であり、それは私はやはり国連中心にして、そうして直接にこの問題でなくとも、あらゆる問題からこの国際の真の協力、緊張緩和方向を打ち出していくような基礎を作って、そうして今社会党が唱えておられるような、そういう集団安全保障体制ができるということは望ましいが、それは現実から見ると、まだ遠いという考えを持っているわけであります。
  28. 田中稔男

    田中(稔)委員 近く国防会議を囲いて国防に関する基本方針と、それから長期防衛計画決定する、こういうことを新聞紙は伝えております。そこで国防の基本方針というようなものにつきまして、総理防衛庁長の御所見を一つ聞かしていただきたいと思います。
  29. 岸信介

    岸国務大臣 先ほども申し上げましたように、国防の基本方針につきましても、国防会議の審議を経てきめなければならないものであります。私どもとしてはここに具体的に、国防会議の開かれてない機会に、具体的に申し上げることは適当でない、かように考えます。
  30. 田中稔男

    田中(稔)委員 一つお伺いしたいのは、先ほどからよく日米共同防衛体制ということを言われますが、自立防衛体制ではなく共同防衛体制、こういうことは今後長期にわたる国防の基本方針と、こういうように承わってよろしゅうございますか。
  31. 岸信介

    岸国務大臣 究極のわれわれの目的は言うまでもなくわれわれの自立防衛体制の完備にある。しかし現在それが完成されておらない状態のもとにおいては、やはり現在ある日米で共同して日本の安全を保障するという体制をとらざるを得ない、かように考えております。
  32. 田中稔男

    田中(稔)委員 次に先ほどもちょっと触れましたが、長期防衛計画であります。これは防衛庁長官にお尋ねいたしますが、長期防衛計画というものは、すでに三カ年ほど実施されているわけでありましょうが、現在のところこれを修正するとすればどういうふうな方向に修正されるのか、できるだけ一つ詳細にお述べ願いたい。
  33. 小滝彬

    ○小滝国務大臣 防衛六ヵ年計画というものにつきましては、防衛庁の試案としてこれまで考え、大体それを念頭に置いて実施されてきたことは御指摘の通りでございます。これを今後どういうようにするかということは、国防会議におきまして基本方針決定せられ、それに基いて実情に応じて修正も考えられると考えますが、基本方針が第一前提であります。私ども考えといたしましては、防衛庁の方は直後こうした問題を担当しておりますので、国防会議の事務局の方に私どもの試案を出したいと考えておりますが、しかしそれは詳しくとおっしゃれば方向的に申し上げる程度にしかできないと思います。今までのいわゆる試案というものは貴重な資料でありますが、しかしそれにこだわることなく、その後における国際情勢の推移あるいはまた各国における装備あるいは編成の変化等をも十分考慮に入れまして、できるだけこれに即応した、そして日本の国情に沿うた線に適当に修正すると申しますか、そうした点を考慮に入れまして、そうした案を作りたいと考えております。
  34. 田中稔男

    田中(稔)委員 よく防衛庁の試案だといって、実際はそれで政府はどんどんやっているわけであります。その試案なるものは、私ども聞いておりますように、さっき言うように陸上自衛隊十八万、海上自衛隊の艦船十二万四千トン、航空自衛隊の航空機千五百、これを整備することにあるのでありますが、これを修正しなければならぬということで作業しておられる。これはいずれ増強されるということになるのでありましょうが、もう少し何か具体的に、大体修正するとしても小さなものか、あるいは相当大幅な修正なのか。またそのことについてアメリカ側からのいろいろな注文もあろうと思いますが、それも一つ聞かしてもらいたい。池田大蔵大臣が先年、これは個人の資格でおいでになった際の話として、例の三十五万というような話も聞いております。それはそれとしまして、その後においてでも、おそらく防衛庁当局は、あるいはさらに政府は、アメリカからいろいろ注文もあったのではないかと私は思いますが、そういうのをやはり国民の前に一つできるだけはっきりお示し願いたい。
  35. 小滝彬

    ○小滝国務大臣 第一点、どの程度のものを考えておるか、どの程度修正するかということでございますが、これは今後国防会議において討議せらるべきものでありまして、私どもの方ではっきりとした線を今ここで示すという段階には至っておらない次第でございます。  それからアメリカ側意向というもの——これは日本が作る国防計画でございますので、アメリカ日本防衛についてぜひこうしなければならぬというようなことを申してくるというものではございません。ただしかし、お互いに情報を交換する場合もありまして、それは日本防衛増強にも役立つことであり、ことに従来、もうすでに御承知通り、各種の装備あるいは日本の工業力ではできないような品物、あるいは火器というようなものは、アメリカの援助によっておりますので、そうした意味における相互の話し合いというようなものは必要なことでございますので、そうした場合にはございますが、防衛計画をどうしなければならないというような申し出は絶対ございません。
  36. 田中稔男

    田中(稔)委員 日米共同防衛体制ということを考えておられることからすれば、やはり日本防衛計画についてアメリカ側からいろいろ希望や何かが出るというのは当然なことであり、これは論理的な帰結だろうと私は思う。まあしかし、言葉を濁して御答弁にならなければ仕方がありませんが、総じて防衛庁の国会における答弁などが、国民の代表に真相を知らせるという努力において大いに欠けておる、むしろごまかして、ほおかぶりで何とか一つやっていこう——しかもこれは国民の税金で、一千億以上の金をつぎ込んで、そうしてやっている仕事であります。防衛庁長官もでありますが、岸総理自身からもう少し、やはりこういうことについての国民の税金の使途について、国民に明快な御説明をいただきたいと私は思う。今後のためにこれは申し上げておきます。  次に、今後修正される計画はいかようにもあれ、現在日本自衛隊が保有しておりますところの防衛力をもってして、いかなる仮想敵国からのどの程度の攻撃に対して、日本の安全を防衛することができるか、防衛庁長官に一つお尋ねしたい。
  37. 小滝彬

    ○小滝国務大臣 これまで総理からもお話がございましたように、数年前に比べますならば、現在の防衛力というものは増強せられておりますが、しかし日本だけでもって、かりに日本に事があった際に、どれだけの防衛力を発揮し得るかということになりますと、いまだ独力で——侵略の程度にもよりますけれども、これに対処するということはできがたい段階であるのであります。しかし私どもといたしましては、とにかく空に対して征空権は持たないまでも、侵略を困難ならしめる程度のものは持たなければならないし、そうしたものには現在の航空自衛隊も役立つでありましょうし、また海からにつきましては、特に日本のように海外からの物資に依存しなければならないところでは、商船の護衛というものは非常に重要でありますので、そうしたものに役立たせたい。また万一にも陸から侵入があるというような際にも最小限度のものを持つ、こういう考えで進んでおるのでありますが、今の装備を考え、また実際の兵力というものを考えますと、それに貢献することはもちろんでありますが、それによって今これだけのものをやり得るということは断言し得ない段階であります。
  38. 田中稔男

    田中(稔)委員 ここは内閣委員会でもありませんから、あまり詳細な質問はいたしませんが、防衛庁長官は、日本の仮想敵国というようなことについても、全然私の質問に答えられなかったのであります。しかしだれもが考えることは、一応日本の仮想敵国がソ連や中国になっておることは、これは常識だと思う。そこで、アメリカと中ソ両国との間に戦争が起るというやうな場合を想定いたしますならば、日本が直ちに戦場と化することは間違いありません。その場合、日本が保有する今日の防衛力ではとうてい長く日本を支え得ないということも、今の御答弁で明らかだ。実は、自衛隊の長崎地方連絡部で発行している「ながさき」という定期刊行物に載った「郷土愛」と題する論説には、こういうことが書いてある。少くとも一ヵ月、日本が地球から消えてなくならないだけの軍備と抗戦意思が必要である——約一ヵ月というのは、もちろん正確な根拠があってのことではないと思いますけれども日本自体の防衛力では、自国を防衛し得る時間的限度が非常に短かいものであるということは、これによってもわかるわけであります。そこで、アメリカとの共同作戦ということになるわけでありますが、これは片々たる地方連絡部の定期刊行物の論説でありますけれども、大体こういうふうなことで、今日本自衛力の正体は国民に紹介されておる。防衛庁当局として、日本の今日の防衛力で、一体どの程度のことができるのか、そうして仮想敵国はどこか、もう少し詳細に御答弁願いたい。
  39. 小滝彬

    ○小滝国務大臣 私どもは、仮想敵国がどこであるということを考えてやっておるのではなくして、いろいろの場合が想定できるでありましょうが、その際に、またどういう形態で戦争が起るか、戦略というものがどういうように行われるか、またその際における日本の地位はどうであるかということについては、いろいろの場合を想定し得るわけでありまして、これらを総合して考えまして、最少限度必要な措置を講ずるということを、目途として進んでおるわけであります。今田中さんは、たとえば米ソ間に戦争があった場合、日本はどうするかというようなお話でございましたが、その際、一体最近の考え方で言えば、心臓部を突くというようなことがいわれ、またその際いかなる兵器が使われるかについても、一応最近の説によれば核兵器が必ず使われるだろう、こういうこともいわれております。しかし、その第二次、第三次的な場所であるたとえば日本というものに対して、どういう形態の戦略がとられるかということは、これは軍事専門家でも非常に検討を要する点だろうと思いますけれども、今単刀直人に答弁をしろとおっしゃいますが、そうしたいろいろな場合が想定できますので、こうした点を総合的に考えまして、日本として、あるいは最大限にやれば、今私ども考えているような点ではもちろん不十分ではありますけれども、こういう問題を考えるのには、やはり何としても経済の基盤がなければならない、そうして国力に応じたものでなければならない、同時に、国民感情というものを無視したようなやり方をいたしましたならば、幾ら装備がよくても、あるいは兵力がありましても、実際の効果を上げ得ない。いわゆる間接侵略と申しますか、いろいろな情勢というものも考えなければならないので、こうした点を総合的に考えて進んでおる次第でございます。
  40. 田中稔男

    田中(稔)委員 今日は原子兵器がすでに通常兵群の中に数えられるに至ったのであります。アメリカではすでにそうでありますし、最近イギリスも、国防白書を発表して、兵員を減少して原子兵器による装備の質的強化をはかしるということを発表しております。だから、日本も、防衛の完璧を期するためには、日本自体で原水爆を含む原子兵器を保有することが望ましいという結論になるわけであります。しかしながら、それはほとんど不可能なことであります。そこで、日米共同防衛体制という政府の建前から言うならば、やはりアメリカ駐留軍にその保有を認めるということは、私は、むしろ日本側から進んでやるべきだというふうなことになるのではないか。岸総理は、原子兵器日本国内への持ち込み、あるいはまた原子力部隊の日本駐留ということには絶対に応じない、相談があっても応じない、こういうことをおっしゃっておりますけれども防衛当局の見解としてみれば、やはり駐留軍がより優秀な近代的兵器によって装備されておるということの方が望ましいということになりますが、防衛庁長官はどうお考えになりますか。
  41. 小滝彬

    ○小滝国務大臣 今、田中君のおっしゃいましたのは一つ考え方かもしれません。しかし、私どもは必ずしもそういう考え方をいたしておらないのであります。と申しまするのは、この小さな島の中にかりにそうした核兵器の基地を持つということにいたしました際、これは相手力の反撃を食う、むしろ先方の侵略を招来する、向うからの攻撃棄するもとを作るということにもなる。また、事実、戦略体制から申しましても、現実の問題でありますから、ここで論ずることが正しいか正しくないかは別といたしまして、戦略空軍というようなものは、日本のずっとうしろ側と申しまするか、太平洋の中にある。そうして、今ICBM、IRBMというものがだんだん進んだ際において、必ずしも側面にある日本をそうした兵器の基地にすることが戦略上正しいことか正しくないことか、こういう見地からいたしましても、決して田中さんのおっしゃるような、二面的な考え方になるはずはない。しかもまた、日本国民感清から申しまして、そういうようものは危険であるというような思想が一般に広がっておる際に、それを無視してやるということは、かえって防衛力を低下せしめるゆえんになることもありますので、私ども田中さんとは違った考えを持っておる次第でございます。
  42. 田中稔男

    田中(稔)委員 岸総理は、重光・アリソン会談における約束があるから原子兵器日本国内に持ち込む際にも相談があるだろうし、また最近原子力部隊の日本駐留というような話がちょっと出たときに、アメリカ当局がそういうことをかりにやる場合には、やはり日本に相談する、こう言明しているから、その場合には断固としてこれを拒否するから心配は要らないというようなことを外務委員会あるいは予算委員会あたりでもたびたびおっしゃっております。しかし、こういう重光アリソン会談なんというものは何も正式な条約でも協定でもないわけであります。そうして、日米安全保障条約、行政協定には駐留軍の持ち込む兵器について何も種類の限定はないわけです。だから、持ち込もうと思えば持ち込んでも、日本としては正式に文句の言いようがないわけであります。今防衛長官のお話もありましたけれども、純防衛見地からすれば、やはりアメリカ側としてはそういうものを持ち込みたいという意向はあり得ると思う。そこで、いろんなことを考えまして、ほんとうに原子力兵器を日本、さらにまた沖繩を含む地域に持ち込むことを拒否する、また原子力部隊が日本及び沖繩駐留することを断固として拒否するというお考えでありますならば、一つ安保条約をこの点において改正する、行政協定をこの点において改正する、——どもはこういうものを廃止したいと思いますけれども、廃止する前に、そういう部分的な改訂でもして、日本の危険を除くという、こういうふうな積極的なお考えはないか。ただ東光アリソン会談だけの約束、アメリカ政府の言明というようなことでは全く頼りない。ちょうどアメリカにおいでになりますから、お考え一つお伺いしたい。
  43. 岸信介

    岸国務大臣 現在の安保条約において、どういう兵器を持ち込むか、あるいはどういう部隊を駐留せしむるか、あるいはそれを引き揚げるかというようなことは、今の安保条約においてはアメリカの一方的な意思できまることになっておるということは御指摘の通りであります。現実の問題といたしまして、原水爆を中心とするところの核兵器に対する日本人の国民感情というものが非常に強くこれを排撃しておるという実情もアメリカはよく承知いたしておりまして、そういう場合において、日本に相談なしには、日本意向を聞かずに一方的にやらない、安保条約がそうなっておってもやらないというような言明が従来行われておるのであります。しかし、それじゃ不十分ではないかというお考えも、私はごもっともであると思います。従って、安保条約を全面的に検討するという場合においては、当然われわれは問題にすべき点であると考えております。
  44. 田中稔男

    田中(稔)委員 総理はこの原水爆禁止の問題について非常に御熱心であるということは、私どもこれを多としておるのであり、なす。それで、今回松下特使をイギリスに派遣されたのでありますが、マクミラン首相の書簡を見ますと、全て木で鼻をくくったような回答でありまして、特使の使命は失敗したのであります。ところが、実は、きのうの朝のNHKのロンドン特派員の放送でありましたか、聞いておりますと、ロンドンでの印象では、日本政府態度は非常におかしい、松下特使まで、派遣してクリスマス局の水爆実験の禁止を英国に強く訴えながら、一方、国連に対しましては、カナダやノルウェーと一緒に、核兵器実験の何か登録制をしくようにという提案をしておる、——登録さえすれ実験をやって差しつかえないということでありますから、これはむしろ実験行為を合法化することになるのではないか、これで、あっては松下特使が水爆実験をやめてくれという人道上からの強い要求を幾らやってみても迫力がないわけです。こういうのがロンドンにおけるイギリス国民の一般的な印象だというのでありますが、このことについて一つ総理の御所見をお聞きしたいのであります。
  45. 岸信介

    岸国務大臣 私は、原水爆の実験禁止に関しましては、全人類の立場からこれが禁止を強く要望しておるのであります。あくまでもその理念は一貫して、これを実現するためにあらゆる努力を今後も続けて参って、究極の目的を実現しなければならぬと強く考えておるのであります。ただ、現実の問題としてこれを取り上げて考えてみますと、なかなか実験禁止ということはそれが正しい議論であり、また世界の人々の間にも漸次その考えに共鳴する人々が多くなって、そして国際的世論が盛り上りつつあることは、私はこの禁止の問題を実現する上において非常に将来に期待を持つものであります。従って、そういう意味において、今後においてもあらゆる努力を続けていく考えであります。ただ、現実の国際情勢を見ますと、田中委員も御承知通り、英米においては、これが事前に通告をされ、今度のクリスマス昂の実験におきましては、相当実験をする前にそのことが通告をされておりまして、従って、われわれもそれをとめようとして今あらゆる努力を続け、そして世界の世論もそれについて相当に盛り上りつつあることは今申した通りであります。しかるに、一方においては、全然無通告で、しかもやったかどうか、これに対して何らの報告もせずに、事後におきましても知らぬ顔をして、そうして数回相続いて最近においてもソ連において実験がされておる。それは今のいろいろな探知法によって探知されて、それがされておるというような実情にあって、この原水爆の実験というものによって、その実験される地域付近において直接に被害をこうむるほかに、大気を汚濁して、これが人数全体に及ぼすところの危険というような点を考えてみますと、そういう無警告で無制限に行われておるというこの国際の実情から見ますと、少くとも事前にこれが通告をされ、そうして世界の人々がそれに対して批判をし、それに対して中止の運動が起り、これに対してあらゆる反省が求められるという機会ができるということは、私は、この原水爆の実験禁止、実験を中止せしめる方向に非常に進んでいくものである、こう思うのです。従って、この実験登録制の問題につきましては、当時日本の代表が説明をいたしておるように、われわれはあくまでも理想として実験を禁止するものだ、それに向っていかなければならないのだ、それの第一歩として少くとも無通告で無制限に行うということをなするという必要があるという見地から これをわれわれは提案しておるのであります。しかし、理想としては今申すような実験禁止にあること、しこうして、その現実の問題から言うと、この実験登録制というものはそれに一歩二歩進んでいくところのものであるということは、国際の現実をよく分析して考えるならば、私どものやつておる態度は決してそこに矛盾があるものではない、かように考えるのであります。
  46. 田中稔男

    田中(稔)委員 ソ連が無通告でやっておる、米英は通告しておるということでありますが、ソ連は御承知通りソ連の領土内でやっておるわけでありますが、ビキニやあるいはクリスマス島というものになりますと、公海の自由を侵すことになりますから、国際法上の問題になってくる。通告はそのために行われておるものだと私は解釈しております。アメリカが自分の領土内においてやった実験においては、私はこれは通告はしていなかったと記憶し一ておりますが、その通告するしないは別といたしまして、何としても水爆の実験を禁止したい、この日本国民の念願、非願は、これを一つ実現しなければなりません。ところが、政府がソ連に対しまして同様の申し出をいたしたのでありますが、新聞によりますと、門脇大使に対してフルシチョフ第一書記の回答が伝えられております。これによりますと、日ソ両国は共同で核兵器実験の全面禁止を要求しなければならないが、もしこれができないのなら、共同でせめて実験の一時的中止を呼びかけなければならぬ、と、こういうことになっております。人によってその言を捨てずという言葉があります。そこで、私は、フルシチョフが言ったからいいことも採用しないという偏狭な態度はとるべきではないと思います。ソ連が日本と共同で、米英両国に対して、とにかく水爆の実験を一時的にもやめようじゃないか、そういう話し合いをしよう、協定か何か作ろう、こう言っておるのならば、これに応じていいじゃないか。マクミランがそう言い、ダレスがそう言ったら、もちろんこれに同調してよろしいのである。ただ不幸にして米英の政府はそういうことは言っていない。ソ連がそう言っておる。しかし、ソ連が言ったといって、いいことはいいのでありますから、共同で、米英両国政府に、最小限度一時的の水爆実験の中止をやろうじゃないか、こういう申し入れを私はなすべきではないかと思いますが、一つ総理意向を聞きたい。
  47. 岸信介

    岸国務大臣 原水爆の問題については、自由陣営たる米英と共産陣営のソ連と、この二つが相対峙して、そうしてこれに対して実験が行われておる。われわれは、人類の平和とその福祉のために、こういう原子力というものはあくまでも福祉の増進に平和的に利用さるべきであって、人類を破滅に導くごとき兵器に使用するものじゃないという観点から、われわれの考えを両方の陣営に送ってその反省を求めておるのでありますが、両方の言い分というものは、ちょうど責任を相手方にみんな帰すような、向うがやっておるからおれはやめられないのた、向うがやめればおれはやめるのだといって、互いにほんとうの反省をしておらないというのが、私は現状だと思う。それから、実際こういう現下の国際情勢から見ますとはなはだ遺憾でありますけれども、また、そういう軍備の関係において相対立した考え方から、相手方に対して優越なる地位を持っておるということが、平和を維持する力のバランスの上から言って、それが世界の平和を律するという一面を持っておる現実であることも、これもわれわれは認めなければならぬ。そこで、この禁止の問題を実際に有効に成立せしむるためには、これを持っておる三国の間に何らかの協定ができて、これを制限し禁止するという申し合せができなければ、私は、実際に一国だけが反省してやめるということはなかなかできないと思うのです。従って、三国の間にそういう禁止に向って協定なり話し合いができるということは、望ましい実際の実現の方法である。しかし、今直ちに日本が提案したからそれがすぐできるかどうかという点につきましては、なかなかそう簡単にはいかぬと思いますけれども、簡単にいかないから、それならそういうことを全然放置しておいていいかということになれは、これは最も有効な方法をもってそういう方向に進んでいくことが望ましい、かように私は従来も考えておるのであります。ただ、その場合に、われわれがソ連と共に共同して英、米に提議するというのが、外交上の方法として一体ふさわしい方法であるかどうかということは、十分に考えなければならぬ。また、今新聞に伝えられておるフルシチョフと門脇大使との会談の内容というものも、私の方に対する公電のなにから言いますと、多少事実と違っておるような点もございますので、それらの点については十分われわれもその事情を明らかにしたいと思いますが、私の考えは、今申し上げましたように、われわれは一国の間にそういう協定ができることが望ましいし、そういう方向に進んでいってこれが実現を期するということが一番実際的であるという考えは待っております。しかし、今申し上げたように、フルシチョフ書記の話云々については、なお十分事情も調べてみなければなりまんし、それで、すぐ一緒になって英米に提議するというようなことは今頭にはございませんけれども考えとしてはそういう方向に進んでいきたい、こう思っております。
  48. 田中稔男

    田中(稔)委員 それで、総理もおっしゃるように、イギリスだけやめろ、ソ連だけやめろということは、とても言えることじゃない。ところが、今までは互いに、あれがやめぬからおれもやめぬと言っておったわけです。ただ、今度門脇大使に対するフルシチョフの回答は、ソ連だけ先にやめるわけにいかぬけれども、しかしとにかくみんなでやめるような話し合いをしようじゃないかということを言い出しているのです。これは私は一つの積極的な提言だと思う。そこで、その場合、ソ連と一緒になってすぐ英米に対して共同申し入れをするということは、現在の日本政府としてはちょっとちゅうちょされると思います。そこで、私は、岸総理が今度アメリカに行かれるのですから、今度はアメリカダレス国務長官とでも一つゆっくりお話になって、そうして、ソ連もこんなことを言いおるが、三国で一つそういう話をしていただきたいぐらいのことは、おっしゃっていいんじゃないかと思います。せっかくおいでになるのですから。一つ答弁を願います。
  49. 岸信介

    岸国務大臣 よくわかりました。
  50. 田中稔男

    田中(稔)委員 岸総理大臣は訪米に先だってインド、パキスタン、ビルマ等のアジア諸国を一歴訪される予定でありますが、これはまことにけっこうなことだと考えます。私は総理に対してはなむけの言葉として、一昨年わが高碕代表も出席した第一回アジア・アフリカ会議において採択されました世界平和と国際協力に関するいわゆる十原則を贈りたいと考えます。いわゆるバンドン精神がこれであります。実は、私がひそかに心配しておりますことは、総理がインドのネール首相などと会談されました際に なるほど聡明で万事にそつのない総理のことでありますから、通り一ぺんの話はうまくいくと思います。しかしながら、国際政治に関する感覚の大きなずれが両者の間に生ずるのではないかということを心配するのであります。バンドン会議に参加した二十九カ国の中には、もちろんいろいろのニュアンスの相違があって、アジアは一つという言葉がありますけれども、今日のアジアは必ずしも一つじゃない。しかしながら、その中でも、一切の形態の植民地主義の排除、自主独立の平和外交の推進というような大きな目標は、大体私は共通しておると思う。それは特にインドやビルマでは顕著であります。私も昨年インドなどを見て参りましたが、インドやインドネシアにおりまして日本というものを遠くからながめてみますと、日本アメリカの従属国である、こういうふうにしか目に映らないのであります。また、日本における軍国主義の復活の脅威というようなことをまじめに考えている人も、それは決して少くない。岸総理が公式にお会いになる人の口からはそういうことは出ないと思う。やはり大衆の間にそういう感情が相当に残っておる。こういうわけでありますが、この間、日ソの国交回復の交渉が行われておる、いよいよ国交回復が実現した、こういうニュースは非常に大きく紙面をさいてインドその他の国の新聞に載りました。大体インドあたりでは日本に関する記事はあまり扱わないのです。しかし、こういうことは非常に大きく取り扱っている。これは吉沢大使もおっしゃっておりました。ずれがわかりますから、日本というものが本来のアジアの国に早く返れ、アメリカ一辺倒でなく、やはり両陣営に橋をかけるというような、そういう日本になってくれというのが、私は日本に対する希望であり期待であると思う。ネール首相にお会いになる、あるいはウー・ヌー首相にお会いになるでしょうが、私はインドやビルマの国民の感情はみなそうであろうと思う。そこで、私は、さきに国際情勢に関する総理の感覚のずれということを申しましたけれども、実は総理の感覚だけの問題ではない。今日の日本における政治の現実がしからしめているわけである。吉田内閣以来ずっとその方針で来た。鳩山内閣といえどもこの基本方針は変っていない。岸内閣もやはり変っていない。私はやはりここに問題があると思いますが、総理が東南アジアに御出発になるに当りまして、いわゆるバンドン精神によって表現されるアジア、アフリカの新しい政治的動向、これに対して一体あらかじめどういうふうな印象を持っておられるか、一体どういうふうなお感じを持っておられるか、それをお聞かせ願いたい。
  51. 岸信介

    岸国務大臣 私のこれから訪問しようとする東南アジア諸国は、事情は国国において必ずしも同一であるというわけには参りませんが、しかし、いずれもこれらの国々が、真に独立を完成したいという熱望に燃えており、またその努力をしておるということに対しましては、私は全面的に同感と同情を持って、われわれもアジアの一国として、われわれの力において協力できることがあるならば協力して、その国々におけるところの独立完成にわれわれも協力すべきものである。それは日本としては経済面においての協力ということになると思うのでありますが、また、これらの国々が独立を真に完成するためには、いわゆる政治の独立——植民地主義を清算して、ほんとうこ民族的独立をかち得、これを完成しようとすのには、それの裏づけになるような経済の基盤が必要であることは言うを待たないのであります。その点が非常におくれておることも事実であります。これに対して、われわれがほんとうに謙虚な気持で、これらの国々の国民の気持に対して敬意を払いつつ協力していくということが、これらの国国との将来の友好関係の基礎でなければならぬと思います。と同時に、お話のように、われわれはあくまでも世界の平和を念願し平和外交を推進いたしまして、われわれの持っておる防衛力というものも、これはわれわれが不当に他から侵略される場合のないように安全の情を持つような防衛体制をしようということであります。また、これらの国々も、いずれも自分の国が他から侵略されない意味における安全保障をするという自衛体制は持っておるのでありまして、その点は共通のものであると思うのであります。しこうして、従来アメリカがこれらの国々に政治的、社会的の安定をもたらすために各種のエイドを与えておることも御承知通りでありますが、それがそれらの国々において正当に理解され、正当に利用されておるかどうかについて十は、必ずしも本来の目的のように十分に理解され利用されておらないという実情も、私どもずいぶんいろんな方面から聞いておるのであります。ほんとうにアジアの興隆、アジアが世界平和の推進の一つの大きな力となるためには、今言った独立の完成と同時に、これらの間におけるところの真の協力関係が、お互いの誤解なくしてほんとうにその国々の繁栄と国民の生活安定のために資するようにすべてが行われるということが最も必要であろう、こういうことに対しての十分な話し合いをし、同時に、日本としてはこれらの国国との間にそういう気持で将来も協力しようとしておるのでありますが、責任ある首脳部がこれらの国々を歴訪して、そのわれわれの考えを、率心に話し、また、それらの国々における指導者が考えておることを率直に聞く機会を今まで持っておらなかったということは、私は非常に遺憾でありますので、この際これらの国々を訪問して、今申したような気持で話をしてみたい、こう思っております。
  52. 田中稔男

    田中(稔)委員 今のお言葉について、ちょっと私は要望みたいなことを申し上げてみたいと思いますが、今のお話にもあったように、政府も東南アジアの経済開発に積極的に乗り出すという御意向のようであります。そして、総理は、その場合に個々のプロジェクトを対象として具体的に経済協力をやろう、こういうふうなお考えのようであります。なるほど、個々のプロジェクトと上取り組んだ具体的な協力、これはけっこうですが、それが岸通産大臣であればそれでけっこうでありますけれども、岸内閣総理大臣としては、そういう個々のプロジェクトに対する協力の背景をなす一つの大きなアイデアというものがはっきりしていなければ、私は事を謝ると思う。アメリカという国もずいぶんばかな金を使うのでありまして、軍事援助なんかに莫大な金を費す、そして結果不信と反感を買うだけである、こういうことでだいぶ反省をいたしまして、そして、いよいよ経済援助をやろう、経済援助に力を入れよう、こういうことになったわけであります。そこで、日本は、ちょうどいい、アメリカの資本と日本の技術とを現地の資源と労働力というものに結びつけて開発をやろうというわけでありますけれども、このアメリカの経済援助といえども、何か政治的な色彩、政治的なひもがやはりまだついている場合が多いのであります。そこで、一歩誤まると、日本の東南アジア開発への協力が大東亜共栄圏のアメリカ的再版、日本が何か高利貸しの手代になるというような格好になる危険がある。バンドン会議におきましても、特定の国から経済開発のための直接援助を受けることを避けて、経済開発用国連特別基金というような制度を設けてやっていきたいということを決定いたしました。それは個々のいろいろな国から絶対に受け付けぬといりわけではありませんが、基本考ええはこうなんです。アメリカだとかイギリスだとか特定の国からすぐ受けると、何とかひもがっくので、国連基金というような形でプールされて、それか間接に入ってくる。日本が今度アメリカのためにクッションの役割をしょりという考えかもしれぬが、先ほど申しましたように、日本に対するアジア前田の評価は、まだ必ずしもそう高いものじゃありません。高いどころか、まだ相当不信と疑惑の念は残っておるりでありますから、ただアメリカから立が借りられる、アメリカが金を出してくれるということで、それで日本の優秀な技術を結びつけてどんどん乗り出そうといってみたって、そう事は簡単にいかないのであります。ですから、岸内閣総理大臣として、東南アジアをお回りになる際に、一つそういう観点から見てきていただきたいと思います。これは一つの私の要望であります。  次にお尋ねいたしたいのですが、私は、総理が今回インドネシアを訪問されないことを深く遺憾とするものであります。インドネシアの政局も、最近ジュアンダ新内閣が成立することによって漸次安定の方向をたどっていることは、これは倭島公使あたりから聞かれたところだろうと思う。このジユアンダという人は、大蔵大臣あるいは企画庁長官みたいなことをやっておった人であり、賠償使節として日本にも来たことがある人であり、日本が賠償問題を解決する相手としては最も適格者だと私は思うのです。新聞の伝えるところによれば、インドネシア賠償もずいぶん長引きましたが、これもいよいよ大詰めにきたような感じであります。この賠償については総額の発表もあったようでありますが、それによると、純賠償一億、焦げつき債権の棒引き一億、経済協力のための民間借款五億、こういうことのようでありますが、なお何かお聞きすることがあれば一つこの際承わっておきたい。
  53. 岸信介

    岸国務大臣 インドネシアの賠償問題は、従来も、なるべく早く解決して両国の間に正常なる国交関係を回復することが望ましいとして、いろいろ努力をいたして参っております。最初は両国の主張の間に相当大きな開きがあったのでありますが、漸次話が近づいて参っておりまして、アリ内閣の最後におきましても、インドネシア側も従来の主張をさらに緩和するような傾向もよほど見えてきたのであります。ジュアンダ内閣ができまして、お話通り、首相のジュアンダ自身が過去においていろいろな大臣を歴任し、特に経済に関しては特別に関係の深い大臣を歴任してきておりますし、今お話通り日本にも来たことがある人であり、この懸案を解決するのにきわめて適当な内閣ができておるものと私ども考えております。ただ、内閣ができましてからまだ日も浅いことでありますし、また、一種の非常事態が宣言されておって、国内におきましても、いろいろな軍等の動きにつきましても、まだ十分に政局が安定したという状態でないことも御承知通りであります。しかし、私は、その前途に対して決して悲観的な考え方を持っておりません。従いまして、この機会になるべく早くこの問題を解決したいと思うのでありますが、その意味において、倭島公使に東京への帰京を命じまして、今帰ってもらっております。いろいろな政情等についきましての現地の事情も十分に聞いております。また、賠償問題のなににつきましても、できるだけ早くその終末に達したい、かように考えて、今政府部内においていろいろと関係方面と話し合いを進めておる最中でありまして、最後の結論的なことはまだ申し上げる段階になっていないと思います。
  54. 田中稔男

    田中(稔)委員 私が先ほど申しました中で経済開発用の国連特別基金という制度、これを作ることについてはバンドン会議において日本代表は賛成したのでありますが、その後国連総会でAAグループの諸国がこれを提案した際に、日本代表は棄権をしたということを聞いておるのであります。総理はあるいは御承知ないかと思いますが、その間の経緯がわかっておったらお聞きしたいと思います。
  55. 岸信介

    岸国務大臣 ちょっと事情がはっきりいたしませんから、調べてまたお答えいたします。
  56. 田中稔男

    田中(稔)委員 もう時間もだいぶん迫りましたから、一、二問にいたしますが、バミューダ会談の結果、アメリカがチンコムの禁輸リストを大幅に緩和するのに同意して、その通告が政府にも最近行われたはずであります。その内容を通産大臣から公表していただきたいと思います。
  57. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 このチンコムの制限を東欧、ソ連並み程度に緩和したいというのが政府方針で、今まで努力して参りましたところ、今回米国政府におきましても非常に真剣にわれわれの希望を考慮されまして、対中共統制緩和についての米国の考え方を提示して参りました。この提案は、こまかい部分についてはまだ必ずしも明らかでない点もございますし、この問題は関係各国に共通した問題でありますので、近く関係各国間の会議において論議されることと存じます。現在判明しておりますところでは、米国の考え方は、まだ必ずしもわが国の従来の考え方とは一致しない点もございますので、今までの私ども方針に照らして内容を検討中でございますが、御承知のように、この問題は関係国の複雑な利害関係を含んでおりますし、また今後の交渉にもいろいろ影響するところが多いことでございますので、提案の内容とか、これに対する日本政府態度というようなことで、ここでいろいろ申し述べることは適当でないと考えておりますので、御了承願いたいと思います。
  58. 田中稔男

    田中(稔)委員 第三次日中貿易協定の期限は、来たる五月四日で切れるわけであります。最近中国側の態度として伝えられるところによりますと、新たに第四次協定を結ぶ前に、第三次協定の内容を実施した上でなければこれに応じがたいということであります。ところで、昨年第三次協定を一カ年延長いたしますに当って、日中貿易の一そうの促進に関する共同コミュニケというようなものが日中町国の関係者の間に取りかわされていることは通産大臣御承知通りでありますが、そのコミュニケでいろいろ書いてありますが、やはりポイントは常設の民間通商代表部の相互設置ということにあるのであります。そのほか決済方式その他ありますが、特に政府関係のある民間通商代表部の設置の問題、しかもさらにその問題の焦点は指紋問題にあるのでありますが、これは公式、非公式にいろいろわれわれも関与してやっておりますが、中国の態度が非常に強くなっておる。中国の態度がただいたずらに強いというのではなく、中国から今度来るように予定されておる通商代表部の部員というものは、やはり何といったって公務員であり、公務員的性格のものであるのでありますから、どうか一つ、この指紋問題においては、中国側の無理を通すというのではなく、むしろ中国側の言うことに理があるのでありますから、これを中国側の要望に沿うように、そういう形で解決していただきたいと思いますが 通産大臣の御答弁をお願いします。
  59. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 先方の要望もございますし、また日本政府側のこれについての要望もございますので、ここらの調整において、第四次協定までにはこの問題の解決をはかりたいと考えております。
  60. 田中稔男

    田中(稔)委員 通産大臣の良識に期待して、一つその実現をお願いします。  私の質問はこれで終ります。
  61. 山崎巖

    山崎委員長 午後一時半より再開することといたしまして、暫時休憩いたします。   午後零時四十八分休憩      ————◇—————   午後二時五分開議
  62. 山崎巖

    山崎委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。本日付託になりました昭和三十二年度特別会計予算補正(特第2号)及び昭和三十二年度政府関係機関予算補正(機第1号)を議題といたします。まず提案理由の説明を求めます。池田大蔵大臣     —————————————
  63. 池田勇人

    ○池田国務大臣 政府は、本日、昭和三十二年度特別会計予算補正第二号及び昭和三十二年度政府関係機関予算補正第一号を国会に提出いたしましたが、ここに予算委員会の御審議をお願いするに当りまして、その概要を御説明いたします。  今回の予算補正は、いずれも公共企業体等労働関係法の適用を受ける公共企業体等の職員給与の改善に伴うものでありまして、郵政事業特別会計及び日本専売公社、日本国有鉄道、日本電信電話公社の三公社の各予算における給与費を追加するものでありますが、なお郵政事業特別会計の予算補正に関連して、資金運用部、郵便貯金、簡易生命保険及び郵便年金の三特別会計についても、所要の予算補正を行うことといたしております。  公共企業体等の給与問題につきましては、かねて公共企業体等と労働組合との間で折衝を重ねて参りましたところ、公共企業体等の申請により、去る四月六日公共企業体等労働委員会の仲裁裁定が行われたのであります。  その裁定の概要を御説明いたしますと、基準内給与は、その予算単価についておおむね千二百円を増額した金額の範囲内で両面当時者協議の上実施すること、並びにその協議に当っては、現行平均賃金の水準が実現されるに至った経緯並びに公共企業体等の経営の将来の見通し等、各般の事情を十分に塔属することを内容といたしております。  政府におきましては、この仲裁裁定を検討いたしました結果、公共企業体等労働関係法の精神を尊重し、公共企業体等における健全な労働慣行の確立を念願する趣旨において、これを実施することとしたのであります。また、この仲裁裁定を実施するために必要な予算上、資金上の措置について検討いたしまた結果、郵政事業特別会計及び専売、国鉄、電電の三公社につきましては、所要の予算補正措置を講ずることとし、造幣局、印刷局、国有林野事業及びアルコール専売事業の四特別会計につきましては、いずれも昭和三十二年度特別会計予算の予算総則第十二条の規定に兼きまして、経費の移流用等により措置することとしたのであります。  仲裁裁定の実施のための財源措置の具体的な方針は、次によることといたしました。すなわち、まず実員に対して基準内給与予算単価につきおおむね千二百円を増額した金額及びこれに伴う基準外給与所要額を計上することといたしました。これに対する財源措置といたしましては、まず既定給与総額内の財源を検討し、第一に、三公社につきましては、既定財源でまかなわれていたいわゆる第一項確定分、すなわち昭和三十年度末調停案第一項に基因する賃金増加分に相当する金額の半年分を充当いたしました。  次に、予算単価と実行単価との格差について、昭和三十一年七月一日の実態に基き、これを三年間に解消する目途のもとに、おおむねその三分の一相当額を充当し、そのほか、基準外給与の不用額と所定外支出の実績を勘案し、相当額を充当することといたしました。  このように既定給与総額内の財源をもつて充当し、なお不足する額につきましては、極力卒業の遂行に支障が生じないよう配意しつつ、物件費その他の既定経費から所要財源を捻出することといたしました。  なお、郵政事業特別会計につきましては、郵便貯金、簡易生命保険及び郵便年金の三特別会計及び日本電信電話公社から所要額を受け入れることといたしました。  以上に基いて算定いたしますと、郵政事業特別会計及び日本専売公社、日本国有鉄道、日本電信電話公社の三公社につきまして、今回の仲裁裁定を実施するために必要とする額は約百八十四億円でありますが、既定の給与費予算をもつて充当し得る額約六十九億円を差し引きますと、給与総額外から新たに追加される給与費の額は、約百十五億円となります。  以上で概略の御説明を終ります。何とぞすみやかに御審議をお願いいたします。
  64. 山崎巖

    山崎委員長 次に補足説明を求めます。森永主計局長
  65. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 詳細な説明はお配りいたしてあります「昭和三十二年度予算補正の説明」という印刷物に譲ることといたしまして、ただいま大蔵大臣から御説明いたしました財源措置方針に基く財源措置の一覧表が二ページに出ておりますので、この表につきまして簡単に申し上げたいと存じます。  今回補正をお願いいたしておりますものは、専売、国鉄、電電の三公社並びに郵政事業特別会計の四つでございます。ただし郵政事業関係で、ほかに資金運用部特別会計、郵便貯金特別会計、簡易生命保険及び郵便年金特別会計につきましても、補正を必要といたしております。これら三現業、一特別会計につきまして、基準内千二百円、それに伴う基準外給与を増額いたしますために所要となります金額は、二ページの表で申し上げますと、再公社七億八千二百万円、国鉄九十億五千五百万、電電三十五億六千二百万円、郵政特別会計五十億三千二百万円、この合計が百八十四億三千百万円、こういう数字に相なっております。これに対しまして、ただいま大蔵大臣から御説明いたしましたような財源措置の内容として、まず第一に給与総額内から充当いたしました金額が、専売公社につきましては四億六千六再万円、国鉄三十六億三千八百万円、電電十八億三千四百万円、郵政九億九千四百万円、その合計は六十九億三千二百万円、こういう数字に相なっております。  その内容は、いわゆる第一項確定分のほかに、格差の三分の一に相当する額、そのほか不用額、所定外支出額等を検当いたしまして、ここに計上いたした次第でございます。  給与総額外から充当いたしました金額は、専売三億一千六百万円、国鉄五十四億一千七百万円、電電十七億二千八百万円、郵政四十億三千八百万円、この合計は百十四億九千九百万円、こういう数字に相なっております。専売について申し上げますと、この内容は、退官退職手当は千四百万円、物件費等節約、これは原材料費の使用の合理化によるものでございますが、八千百万円、予備費を削減いたしまして、今回の財源に充当いたします金額が二億二千百万円、かような数字に相なっております。ちなみに、この予算補正によりましては、本年度における専売公社の一般会計に対する納付金には影響がございません。  国鉄につきまして、五十四億一千七百万円、その内容を申し上げますと、退官退職手当等で十億円、予備費の削減が十億円、残りが三十四億一千七百万円の資産充当ということに相なっております。この資産充当と申しますのは、昭和三十一年度の決算見込みにおきまして、収支差額の予定よりも増加いたすことが確実と相なっております。この部分を三十二年度における資本勘定に、資産充当として受け入れることによりまして、それに見合った損益勘定からの資本勘定への繰り入れを減少いたしまして、それを今回のこの給与財源に充てる、そういう趣旨でございます。従いまして国鉄の昭和三十二年度における当初予算における建設計画には、今回の補正によりましては何ら影響がないわけでございます。  電電の十七億二千八百万円の内訳は、退官退職手当が一億二百万円、資産充当十一億二千六百万円、これも国鉄について申し上げましたと同じような事情によるものでございます。ただ、電電の場合は、郵政会計への繰り入れの増加額もこの資産充当でまかなっておりまして、その分を加えますと、資産充当そのものとしては二十億一千四百万円、そういう数字に相なります。電電公社プロパーの給与費に充てられますものは、十一億二千六百万円でございます。予備費の削減五億円、かような内訳に相なっております。  郵政会計は四十億三千八百万円、内訳として退官退職手当が七億七千万円、物件費等節約八億五千七百万円、これにつきましても、郵政事業本来の業務遂行に支障がないような経費につきまして削減をいたしておりますので郵政卒業の遂行には影響はないものとお考えいただきたいと存じます。それから予備費の削減三億円、他の会計からの受け入れ二十一億一千百万円、この二十一億一千百万円の内訳は、四ページの上欄にございます郵便貯金特別会計からの受け入れが四億二千百万円、この四億二千百万円は、郵便貯金特別会計は、さらにさかのぼって資金運用部からこれを受け入れることに相なっております。この資金運用部におきましては、この四億二千百万円を歳入増加でまかなっております。その歳入の増加は、最近における金融情勢に対処しまして、金融債等に対するマーケット・オペレーションが行われておりますが、それに基く収入を今回計上いたしております。  それから簡易保険及び郵便年金特別会計から八億三百万円、これは簡易生命保険特別会計につきまして予備費を一億円減額いたしましたほか、最近の情勢検討いたしまして、解約に伴う還付金が減少する傾向がございますので、還付金の修正減少をいたしまして、この八億円を捻出いたしております。  そのほか、日本電信電話公社からの受け入れが八億八千七百万円あるわけでございます。この財源措置の中には、国鉄につきましては、備考にございますように、動力車の乗務員分、これは別な裁定になっておりますが、三億二千五百万円も含ませてございます。  なお、以上のような措置を講じました結果、基準内給与につきまして計算いたしますと、一人当りの財源の増加額は、専売公社につきましては六百二十円、国鉄につきましては七百五十円、国鉄の内訳を申し上げますと、一般職員分が七百二十円、動力車乗務員分が一千四十九円、電電は七百十円、郵政一千百二十円ということに相なっております。  以上のような財源措置の結果、現実に行われる給与改訂が、どういう形をとりますか。それにつきましては、団体交渉の結果に待たなければならないわけでございまして、ここに計上いたしましたのは、給与総額としての財源の増加額だけを計上してございますので、その点御了承をいただきたいと思います。  以上が補正を要しまするものでございまして、移流用によって処理いたしまする造幣、印刷、国有林野、アルコール専売につきましては、財源措置の一覧表を添付してございます。千二百円——これは各現業によりまして若干の違いがございまして、おおむね千二百円でございますが、その基準内と基準外の増加のための所要額は、造幣につきましては三千七百万円、印刷につきましては一億七千二百万円、国有林野が四億二百万円、アルコール専売が二千九百万円、合計六億四千万円でございます。それに対する財源措置といたしまして給与総額内で充当いたしますものが、造幣が九百万円、印刷三千四百万円、国有林野二千九百万円、アルコール九百万円、合計八千百万円。給与総額外から充当いたします分が、造幣二千八百万、印刷一億三千八百万、国有林野三億七千三百万、アルコール専売二千万、合計五億千九百万、かような数字に相なっております。ただし国有林野につきましてここに掲げましたのは、給与総額内でまかなわれる職員分のみでございまして、国有林野特別会計におきましては、このほかにいわゆる常勤職員の給与、並びに賃金労務者の給与の問題がございます。それにつきましては、ここの備考の一に書いてございますように、常勤職員給与分が一億五千四百万円、賃金労務者給与分が十三億二千七百万円、合計十四億八千百万円の財源措置が必要でございますが、これは事業費内の問題でございますので、事業費の内部でまかなわれる見込みでございます。  以上の財源措置の結果、基準内給与の一人当り財源の増加額は、造幣九百五十八円、印刷千二十四円、国有林野千百七十七円、アルコール専売千八円、かような結果に相なっております。この四現業につきましての給与総額外からの充当分につきましては、予算総則第十二条の規定によりまして、移用流用等によりまして処理されることが可能でございますので、予算上質金上可能であるということとして処理をいたしておる次第でございます。  以下各特別会計公社別に歳入歳出の項目別、または勘定別に今回の補正の姿が一覧表でお目にかけてございますが、時間の関係もございますので、御説明は省略させていただきたいと存じます。
  66. 山崎巖

    山崎委員長 以上をもちまして提案理由の説明は終りました。     —————————————
  67. 山崎巖

    山崎委員長 次に昭和三十二年度特別会計予算補正(特第1号)を議題といたします。質疑を続行いたします。小山亮君。
  68. 小山亮

    小山(亮)委員 午前中に同僚委員質問をしておられるのに対しまして、防衛庁長官の御答弁がございました。その御答弁によりますると、現在においては今の日本防衛計画基本方針というものがまだ決定されておらない。今後これを決定するのである。現在のところは防衛試案だけであるというようなお話がございました。私は日本日本の現在のこの乏しい財政の中でやり繰りをしていろいろな防衛計画を立てております間は、まだまだある程度の抑制ができると思いますけれども、今回のように、アメリカ側からアメリカの資金によって日本の軍艦がどんどん作られるというようになりますると、これはアメリカが金さえ出せば幾らでも日本の軍艦が増強することができるという結論になります。私はそれゆえにあらためて御質問を申し上げたいと思うのでありますが、岸総理大臣は、この議会が終りますとアメリカを訪問されるように伺っております。アメリカに行かれれば、アメリカ総理大臣が行かれる以上は、必ずこの防衛問題というものが大きな問題になるということは、これはもうだれが見ても考えられることであります。従って日本防衛計画に対する基本方針というものは、大体において総理大臣が胸に納めてお出かけになるのじゃないか、そうでなかったら、またアメリカからげたを預けられてきて、いやおうなしに日本でいろいろなことをきめなければならぬという結論になりますので、私はこの際日本防衛計画に対する基本方針というものが総理大臣の胸中におありになるならば、そのアウトラインだけでも説明していただきたいと思います。
  69. 岸信介

    岸国務大臣 午前中、田中委員の御質問に対しましてお答え申し上げましたように、実は防衛計画基本方針ないし日本の防御計画というものについて、国防会議ができましたけれども、まだこの議を経て、これが日本防衛基本方針であり、これが日本防衛計画であるということがいえるものがまだできておらないのであります。従来防衛庁内において一つの試みの案としての試案が持たれておりますけれども、これは防衛庁内の一つの試案であって、国の一つ方針として、これが日本防衛基本であり、また防衛計画の内容であるというふうにきまっておらないのであります。私が総理に就任いたししましてから、一日も早くそれをきめて、そうして国民の協力を得なければならぬ重大な問題でありますので、目下国防会議を督促して、関係者にその立案をするように督促をいたしております。数回幹事会も開かれ、また近く国防会議が開かれまして、これらについて正式に論議されることになると思います。おそらく私が訪米前に数回国防会議を、私の考えでは、開くようになると思います。従いまして、その際に日本の国防の基本方針についての考え方について、私も一応の腹がまえをこしらえて向うに参る考えでおります。
  70. 小山亮

    小山(亮)委員 総理大臣が渡米をされる前に、この基本方針を大体決定して、その腹がまえでいかれるというお話でありますが、これはひとり総理大臣及び内閣だけの問題でなくて、実に全国民が非常に注視をしておる大きな問題なんでありますので、少くもこの議会中に、この基本方針の概略だけでもおきめになって、議会にこれを御説明になるところの御意思はございませんか、伺いたい。
  71. 岸信介

    岸国務大臣 なるべく早く、私はその大体のアウトラインでもきめるようにしたいと実は急いでおります。そうして言うまでもなく、この方針は、私はわれわれの政府としての結論を得ましたならば、国会に説明をして、国会を通じて国民の協力を求めるようにしなければならぬこと言うを待たないと思っておりますが、今回必ず国会開会中にその結論に達するかどうかは、国防会議もごく最近開くつもりでありますけれども、今準備中でありますので、まだそのことをはっきり申し上げることはできない状況であります。
  72. 小山亮

    小山(亮)委員 そうしますと、基本方針を議会を通じて国民に訴えたいが、間に合わなければそのまま自分で出かけていってアメリカと打ち合せをする、こういう御答弁と心得てよろしゅうございますか。
  73. 岸信介

    岸国務大臣 言うまでもなく、アメリカに参りまして、防衛問題についても、日米間の基本的な問題である限りは私は話が出ると思います。その場合に日本を代表して、総理として話のできるだけの腹がまえを持たなければならぬこと言うをまちません。ただそういう意味において、私自身が今国防会議関係者を督促をいたしておるわけであります。ほんとう日本の国防の方針というものは、これは言うまでもなく日本が独自の立場できめるべきものでありまして、それがはっきりと、今言ったような順序を経てきまり得るならばけっこうであり、またきまらなくとも、総理として国を代表してアメリカと話をするだけの腹がまえは作って参る、こういう趣旨でございます。
  74. 小山亮

    小山(亮)委員 これは終戦後の敗れた日本の悲しむべきできごとでありますけれども、前内閣初め数代の内閣が、しばしば海外に責任者が参りました場合に、外国の方から突然、日本国民が知らないのに、寝耳に水に、いきなり向うの方からいろいろな計画を打ち明けられて、そうしてそれを大体において承認をして帰ってくるというのが現状であります。これはしばしば私どもはそういう事態——に名前をあげては申し上げませんが、ぶつかってきておって、はなはだ悪い例を残しておると思う。従って今回総理が行かれた場合に、また以前に行いましたように、アメリカ側から思いがけない要求を出され、いや応なしにそれをのまなければならぬようなはめに陥って帰ってくるという場合がないこともないと思いますので、この問題を特に総理大臣に私は伺いたいと思うのです。でありますから、少くとも議会はまだ五月の十八日まであるのでありますから、急速力にその間に国防会議をやってすら結論が出ないというものならば、おそらくあなたがアメリカにおいでになるまでに結論が出るわけはない。大体の方針さえはっきりすれば、その程度のことは国民にまず納得をさせて、それでお出かけになるのが私は最善の策だと考えますが、重ねて総理の御所信を伺いたい。
  75. 岸信介

    岸国務大臣 御趣旨はまことにごもっともでございまして、私も極力国防会議を督促して急いで審議をいたしたいと存じます。
  76. 小山亮

    小山(亮)委員 私はただいまのお話を伺って、日本には防衛計画に対するところの基本方針もきまっておらない、今防衛試案だけであるというような、きわめてまだ雲をつかむようなばく然たるものであるにもかかわらず、国防計画というものはどんどんと積極的に進んでおるような気がする。今回の臨時受託調達特別会計のこの議案も、こちらの方にまだ基本方針もきまっておらぬのに、アメリカからこれたけの船を作れと言われて、そうでございますかといって日本はいや応なしにだまってこれを承諾する、これは私はどうもおかしいと思う。こちらに基本方針がきまっておらぬのだから、基本方針がきまるまではもう少し待ってくれという態度に出るのがほんとうじゃないかと思うが、重ねて御所信を伺いたい。
  77. 岸信介

    岸国務大臣 今、日本が持っております陸上、海上及び航空の自衛力というものは、まことにまだ不十分なものでありまして、一応の防衛庁の試案の範囲内におきましても、まだそれに達しておらない状況にあるわけであります。従いましてこれを充実するのについては、年々の国力と見合って予算に必要額を計上するとともに、アメリカ側のいろいろな援助を受けてこれを充実するというのが実は現状であります。すでに海上のこの駆逐艦等につきましても、従来アメリカからその貸与を受けたりしてきておる実情にあり、また航空機等についてもそういう実情にあることは御承知通りであります。今回のこのことに対しましても同じような趣旨において、しかも域外調達の方法によって日本側にこれを供与しようという申し出を日本として受諾して、そしてこれに必要な補正予算等を御審議願うということにいたしておるのでありまして、全体の何から申しますと、そういうようにアメリカ側の援助を受けておるというのが実情でございますので、その計画一つとして今回御審議を願っておるようなものを提出をしておる次第であります。
  78. 小山亮

    小山(亮)委員 総理の御説明は、現在の日本防衛計画、また現在の日本防衛施設というものが不十分である。従って、不十分であるからアメリカからの援助を受け入れるのだとおっしゃいましたが、先ほど同僚議員の質問に対して防衛長官が答弁しておられるのに、日本という国は他国から侵略を受けた場合に日本独自では防御することはできない。どうしてもよその国の援助を求めなければ日本独自の力では日本の国を防衛することはできないと、こういうことを言われておる。また現在の世界情勢を見て、この苛烈なる原子力の時代に、原子爆弾がどんどん使用されるというようなおそれのある時代になって参りますから、どんなことをしても、日本のこの微力、日本の国のこの力で防衛ができないことはだれが見てもわかっている。そうすれば未来永久、少くともわれわれの考えにおいてここ十年十五年の間は、とうてい日本の国では他国の侵略を防ぎきれない。そうすれば結局不十分なんです。今も不十分だが、おしまいまで不十分なんだ。どうせ不十分なのに軍艦の二そうや三ぞう余計あったって何の役に立ちますか。これは私どもしろうとが考えたってそうなんです。過去の戦争の経験から、海の上に浮いている艦艇というものが空軍の前にいかに無力であるかということは、われわれが骨身にしみてわかっておる。どんなに速力が早い船だといったところで、今度防衛庁でお作りになる船なんかは三十ノットか、あるいはせいぜい出したって三十七、八ノットでしょう。飛行機はどうですか。超音速飛行機というやつが出てくるくらいなんだ。音よりか早いのだ。それが上に舞い上ってどんどん攻撃して、ふくろだたきになっている。海の上に浮いている船なんて飛行機の前には無力です。何の役にも立たない。そんなものを二つくらいふやしてもらってもやっぱり不足は不足じゃないですか。もっと徹底的にあなた方が防衛計画をやって、これで完全に防げるのだということをやられるならば、私は思い切ってやったっていいと思うが、しかしそれがやれないじゃないですか。原子爆弾一発持っていないでしょう。水素爆弾もどんどん使われるような時代に何も符っていなくて、しかもこの軍艦の計画をごらんなさい、駆逐艦だけじゃないですか、千七百トンか、今度できるやつが二千三百トン、これが日本で一番大きな船だ。駆逐艦だけでしょう。艦隊の編成というものは、主力艦を戦闘艦に置くか、巡洋艦に置くか、あるいは航空母艦を中心にするか、あるいは潜水艦を持つか、そして空軍を備えて初めて、一つ防衛単位になるでしょう。ところか駆逐艦だけ持ったって何にもなりゃしない。そういうものですよ。私は日本の軍備計画を見ましてはなはだ情ないと思うんだ。軍艦がないから軍艦をくれ、船がないから船をくれ、飛行機がないから飛行機をくれと言って、アメリカからも一のをもらう。エチオピアの皇帝あたりがわが国へ来ても、アメリカへ行っても、ものをくれというときには、一番いいものをくれと言ってもらう。日本のは古いものをくれ古いものをくれといって、ボロばっかりもらってきているじゃないですか。今までもらったものはボロばっかりですよ。くず鉄ばかりです。それで国が守れると言っている。それで飛行機が落ちたじゃないですか。実際こんなばかなことをしてよくも——日本国民は穏やかな、静かな国民だからそのままですけれども、あなた方だってこっけいに思うでしょう。思いませんか。ちょうど日本軍隊がそうですよ。戦闘態勢を私は詳しくは知らないが、大体アウト・ラインから見まして、持っている装備からいろいろ見て、いざ戦争というときには、その戦闘の主力部隊にはなれないですよ。あくまで補動軍隊なんです。過去の、満州国を建設しましたときに、関東軍というのを作ったでしょう。いざというときには関東軍が主力部隊で、満州軍というものを作ったが、これは補助軍隊なんです。満州軍を中心に単独で職名ができない。どうしても関東軍が中心になって、補助部隊の満州軍を使って戦争するようになっておった。日本もそうですよ。アメリカ軍隊が主力部隊で、日本軍隊は過去の満州軍の兵隊と同じなんです。補助軍隊だ。だから戦艦の必要もなければ、巡洋艦の必要もなければ、航空母艦の必要もなければ、最新最鋭の、今度できる二千三百トンの駆逐艦、これが一番たよりにするところの軍艦だなんて言って、それで今総理大臣は、不十分だから、十分にするために二隻ふやすと言う。こんなものを二隻ふやしたって何になりますか。日本基本的な計画がないのに、なぜこんなでたらめなことを、ばかなことをおやりになるか。向うがくれるからという。戦午後どうしてこんな卑屈な考えになるのですか。くれると言いさえすれば、何でももらうのですか。もらって迷惑するようなものもありますよ。何でもくれると言えば何でももらうという、なぜこんなさもしい根情に日本人がなるんです。独立しようというんだ。なぜきぜんたる態度で、ほんとう日本計画が立ってから、必要と思うものを私ども要求するから下さいと言えないのですか。私は重ねて総理大臣に伺いたい。同時に防衛庁長官にも伺いたい。
  79. 岸信介

    岸国務大臣 先ほども申し上げましたように、一応とにかく防衛庁の試案としての海上の防衛力として、これだけのものを持とう、あるいは陸上部隊としてこれだけのものを持とう、あるいはさらに航空機をこれだけは整備しようという、いわゆる第一段の、三十五年を目標としての一つの試案の計画はあるのでありまして、これを基礎に年々の予算が組まれておるという、これが日本の現状であります。小山君の言われるように、日本の現状からいうと、一切非武装で、軍需産業も一切なくした日本が、さらに自衛力を自主的な立場でこれを持とうという新たな踏み出しをしてきている現状から申すというと、これは今御批判があるように、かつて日本のあった姿からいえば、まことに情ないというお言葉に表現されるような事態であることもやむを得ないと思います。しかし防御力というものはなかなか一朝にしてできるものでないことも言うを待たない。やはり背後にそれぞれの軍事産業、技術の面においても、あらゆる面においても裏づけになる廃業ができていかなければならない。この新たに出発して一つの防御力を持とうという道程にある現在としては、これはまことに情ない点も多々あろうと思います。しかしとにかく今の国際情勢からいえば、日本防衛安保条約中心として、アメリカ中心のもとに、いわゆる共同防御体制というものがとられておりますけれども、それにおける日本責任分担の力というものは、初め安保条約のできたときには言うまでもなく、ゼロであったのが、だんだんこれである程度分担するような方向に進んできておるという現状から見ますと、いろいろな兵器あるいは装備等について、アメリカの援助々受けて日本防衛力を充実していくということも、私は現段階としては万やむを得ないことであると思います。その意味においてわれわれの持つ海上の防衛力についても、かつてわれわれが持っておったような主力艦隊というものを編成しようというような見地から見ると、まことに微々たるものでありますけれども、同時に日本立場考えてみると、何かここに平和な状態が破られたという場合において、日本の海上の護送の点とか各種の哨戒の点だけを考えるというと、一方において、航空機の発達により、これを持たなければならぬが、同時に海上におけるところの、それらの任務に属するところのそれらの艦船を持つことも必要なので、そういうことをにらみ合せて今回のアメリカ側からの提案である駆逐艦二隻の建造を日本でして、そうして日本が供与を受けるということは、私は決して意味のないことではない、同町にまた必要なことであるという見地のもとに、本案を提案したようなわけであります。
  80. 小滝彬

    ○小滝国務大臣 すでに総理からお話のあった通りでございます。ただ駆逐艦にしても、向うから押しつけられたものを物ほしそうにもらうのではないかというお話でございましたが、これは決してそういうものではなくして、かねてからわが方から先方に要望しておりましたのに対して、本年に入りまして、域外調達によってこの駆逐艦を提供しようということになったのでありまして、私どもの方の計画に基いて行なったものであります。ただ古いものがたくさんあるじゃないかということをおっしゃいますに対しまして、私は全面的にこれを否定するものではありません。たとえば海上におきましては、上陸支援艇のようなものはだんだん古くなって、老朽化しておるのは、返還する必要が、あるいは廃棄する必要がある。そうすると私ども考えでは、海上の自衛力もそれだけ減ってくるわけであります。それを補うのには、この四千六百トンというものはそれによって補い得るということにもなるわけであります。総理の説明にもありましたように、なるほど近ごろ空の力というものは非常に重要視されておりまするが、同町に海においても、特に対潜武器を備えた艦船を持つということはぜひ必要なことであってそうした意味においてこれを使うものであり、また小山さんのおっしゃいますように、大きな軍艦がなければ艦隊というものは意味をなさないというような考え方に対しましては、私どもは全面的に同意することができないのであります。御承知のように、空母というものを除きましては、世界的に大艦主義の時代は過ぎておるというような見地からいたしましても、私ども計画は御指摘のように全然実際に即しないものというようには考えておりません。集団安全保障の機構がどれだけ進みましても、まずその最初の瞬間というものに自主的な防衛力を持ってこれに対処していくということは依然として必要なことであるというように、私どもは確信いたしておるのでございます。
  81. 小山亮

    小山(亮)委員 ただいま防衛庁長官からいろいろお話を伺いましたが、なるほど日本の現有のいわゆる海上におけるところの艦船の装備、大体において数量は八万七十か約九万近くございましょう。しかしこれは大半がLSSL、上陸用舟艇が五十何ぱい、フリゲート艦が大体十八隻ですか、こんなものもほとんど通用しゃしないのです。小雛さんはその方の方でないから御承知ないのですが、私ども長い海上生活をしてきた者から見ると、あんなものは船じゃない。危なくて乗れやしないですよ。ただたまたま戦争後日本がお作りになった船です。その中で大体六、七隻というものは新鋭船があります。アメリカからもらいました駆逐艦の中で三千三百トンですか、千三百トンですか、「ゆきかぜ」とかああいう船はやや使えます。しかしながらあとの船は日本が最近作った「あけぼの」であるとかああいったような船に比べますと、性能においてうんと落ちるのですよ。何といったって船は新しくなければだめなんです。すべてそうなんです。ことに兵器は新しくなければだめなんで、三年も五年も、ないしは十年も二十年も前のものを持ってきて、ただ並へたからといって、これは観艦式か何かには役に立つかもしれませんが、防衛計画は全然立ちません。そういうことを防衛庁長官に私が言わなければならぬというようなことになると、はなはだ情ないと思う。防衛庁長からそういう説明を私はむしろ聞きたいくらいなんです。私はその意味において今度の計画というものに対して非常に考えさせられることは、日本の今のあなたのおっしゃった防衛試案は、陸上部隊が十八万、海上が十二万トン、そうして飛行機が千三百機、これがいわゆる五ヵ年計画か六カ年計画ということの全部なんですが、そうしますと、総理大臣がさっき言われたように、はなはだ情ないが何とかして日本防衛計画を立てたいと言われるが、そんなもので実際計画が立ちますか。それでまくらを高くして安心して寝ておいでになれますか。私はそんなたらしのないような軍隊を持つよりも、むしろ持たぬ方がまくらを高くして寝ていられるということを申し上げたいのです。持つなら徹底的に世界最強の軍隊を持ちなさい。持てなかったらおやめなさい。どこまでやったっていい。ソ連やアメリカとの戦いが始まったときに、その中にわれわれが頭すら入れられない、手さえ突っ込めないのです。手でも出してこらんなさい。頭でも出してごらんなさい。それは地球の上の大きな力、鋼鉄の歯車のようなやつが切り合う中に手とか足を突っ込んだら、すぐつぶれちゃうのですよ。そういう意味から、私どもはなるべくならばそういう渦中から遠ざかる方針をとるということが、私は正しい行き方じゃないかと思うのです。そういう意味で私は質問をしておる。とにもかくにもアメリカがくれるからもらう。くれさえすれば何でももらう。それがあとあとどんな迷惑になるようなものでももらってくる。この考え方を直しで、日本が力がないならないなりに、あるだけの程度でまかなえるような方法を考えるという行き方はどうでしょうか、小満長官のお考えをもう一度伺いたい。
  82. 小滝彬

    ○小滝国務大臣 前段でおっしゃったことは、私ももうすでに申し上げたと思うのであります。なるべく新しい、ほんとうに使えるものを備える、その意味では、今般の駆逐艦一隻というものは、従来私どもが持っておりますものよりもずっとすぐれたものを作る、しかも向うにあったものをもらうとか、向うで設計したものをもらうというのでなくして、わが方の専門家基本設計もいたさせまして、日本に適したものを十分考慮いたしまして、そこで作ろうというのでありますから、小山さんの御趣旨に最も合致するやり方であるというように私ども考えます。そしてまた米ソ戦でも起った場合に日本は対抗できないじゃないか、私どもはそういうところに対抗しょうというのじゃなくて、世界には局地戦というものもある、あるいは科学的な侵略というものも現実にある。昨年におきましてもそういうこともあった。今の小山さんの議論が正しいとすれば、世界中の各国の政治家はみな間違ったことをしておって、米ソ以外は自衛力を持つ必要はないということになるのであります。そうではない。世界の常識は、現実は不幸にしてそれを許さない。最低限度の自衛力を持たなければならないという必要がありますので、私どもはこうした努力をいたしておるのでございます。
  83. 小山亮

    小山(亮)委員 防衛庁長官からのお話がございました。そのお話によりますと、今日まで日本の持っておったところの船はアメリカからもらったような船で、そして向うで作ったような船で、必ずしもよろしくない、そこで独自の立場において今度はすぐれた船を作るのだ、こうおっしゃった。これはまことにけっこうだ。それならば今度できます船の性能を伺いたいのです。対空の防衛設備はどういうものができておるか、伺いたいのです。
  84. 小滝彬

    ○小滝国務大臣 小山さんは専門家でありますから私の説明では不満足でありましょうが、本件の駆逐艦について申し上げますと、排水量が二千三百トン、速力が三十二ノット、航続力は十八ノットで六千海里、そして機関が四万五千馬力でありまして、主要兵器といたしましては、火砲は従来建造されました甲型警備艦と大体大差はありません。五インチ砲三門、三インチの連装速射砲二基を装備してございます。それに特に対潜兵器について重要視いたしまして、これを強化する考えでございます。そして最新式の投射兵器すなわち対潜ロケット発射機を一基、それにヘッジホッグを三基、対潜用の魚雷発射機を二基、二十一インチの四連装の魚雷発射管を一基及び最新式のソーナー・ホーミング魚雷をも搭載する、こういう予定でございます。
  85. 小山亮

    小山(亮)委員 そうしますと、この間進水しました「あけぼの」はこの装備とどれだけ違いますか。
  86. 小山雄二

    小山政府委員 従来防衛庁で建造しました艦船と今回の艦船との差を申し上げますと、二十八年度に作りました今御指摘の「あけぼの」でございますが、五インチ砲一門、四十ミリの四連装の機銃を二基でございます。対空の関係では五インチ砲は今回の船と同じでございますが、今回の船が対審用として、今長官の申しましたように、三インチの連装速射砲を持っておるのに対しまして、既存の船は四十ミリの機関銃を持っておる、この差でございます。
  87. 小山亮

    小山(亮)委員 対潜の設備はどうですか。
  88. 小山雄二

    小山政府委員 今回の船は主として対潜能力に重点を置いておりまして、ただいま長官が申しましたように最新式の対潜装置、この中では国産ができますものは国産いたしますが、技術的その他の理由から国産のできないものは先方からの提供を受けまして、これを装備することになっております。従来の「あけぼの」等の対潜装置は、ヘッジ・ホッグ、日本語では対潜弾発射機と申しましょうか、これが一基、それから魚雷の発射管が一幕ないし二基程度ございます。
  89. 小山亮

    小山(亮)委員 今の説明を聞きますと、大して違ってないじゃないですか。「あけぼの」はたしか千トンか千五十トンぐらいだと私は思っております。これは二千三百トンです。これは倍も大きいのです。倍も大きいのであれば、砲門なんか多少よけい載ることは当然です。もし積載するところの砲や、魚雷の発射管がたくさんありさえすれば安全だというのなら、なぜ大型の船を作らないのですか。一万トンの豆戦艦のようなものを作れば、もっと十分な装備ができるのです。これが二千三百トンでなく、三千トンの船もありますよ。昔の神風、海風、山風などという船は、一時間の速力は三十八ノットでした。戦争後十年たった今日、今度お作りになる船が最新式の船で速力が三十二ノットというのでしょう。これが最新式の船で世界に誇る船のようなことをおっしゃるが、私はとんでもない話だと思う。しろうとだましですよ。だれが一体この設計をするのですか。
  90. 小山雄二

    小山政府委員 設計は基本計画機業と申しまして、要求性能を技術的に検討いたします。たとえば速力とか、機関の馬力とか、排水量とか、基本的な事柄は防衛庁で立案いたしまして、それに基いて次に基本設計をやって参りますが、これは防衛庁の従来の艦船を設計いたさせておりました船舶設計協会に委託して、防衛庁がやっております。
  91. 小山亮

    小山(亮)委員 基本設計を日本がやりまして、それからこまかい機械その他のいろいろな問題についてはどうするのですか。
  92. 小山雄二

    小山政府委員 基本設計をそういうふうにしてやりまして、あとは業者が選定いたされますれば、業者が基本設計に基いて、工作その他のことも考えました詳細設計をいたしまして、これで船を建造していく、こういうことになっております。
  93. 小山亮

    小山(亮)委員 業者の設計というのは、これは一般の造船業者に請負いさせるのですか、それともあなた方の方から監督が行かれて、監督が設計したものをそのまま作らせるのですか。
  94. 小山雄二

    小山政府委員 基本設計で基本的なことはみなきまりますが、それに基いて、業者が詳細設計をして建造いたすわけでございます。建造の設計の詳細につきましては、たとえば、業者の手持ちの機械の関係、材料の関係など、こまかい点はあらかじめ確定してしまうわけには参りませんので、詳細設計の主要な部分につきましては、業者が考えましたことを、そのつど防衛庁に伺いを立てまして、防衛庁が承認しつつ工事を進めていくという格好になります。
  95. 小山亮

    小山(亮)委員 私は、この場合非常に疑問を持つのです。今度あなた方の計画でお作りになる船の最新式の兵器、それから最新式の航海用具、たとえばジャイロ・コンパスのようなもの、あるいは電波兵器などは、日本よりアメリカの方が非常にすぐれているのがあるのじゃないか、おそらく大部分がアメリカの持っておるところの兵器をこれにつけるのじゃないかと思うのですが、いかがですか。
  96. 小山雄二

    小山政府委員 先ほど申しましたように、日本で国産ができないような種類の、これは技術上の理由もございますし、あるいは数母がまとまりませんために、とうてい引き合わない、無理にやりましても、相当問いものにつくという種類のものにつきましては、今回の話し合いの下打ち合せでは先方の調達の船と一緒にそういう装備品を調達してもらいまして、それを現物でもらうというものが相当ございします。砲で言えば五インチ砲とか、最新式の魚雷とか、それからソーナーとか、砲に付属します射撃指揮装置だとか、また弾薬とか、消火器も数が少いために供与に待つという形のものが、金額にしまして約六億円見当あります。その他の武器は国産にいたしますが、これも金額にいたしまして同程度であります。武器その他の装備品については向うで作りますものと、こっちで作りますものと約半々くらいの見当になります。
  97. 小山亮

    小山(亮)委員 そうしますと、実物を向うからもらう場合、費用はどうなるのですか。現在の艦船の建造費の中には入っているのですか、いないのですか。
  98. 小山雄二

    小山政府委員 向うから現物で供与を受けます装備品の費用は向うの負担でございます。今回御審議を願っているこちらの建造費の金額の外でございます。
  99. 小山亮

    小山(亮)委員 従来日本の軍艦に関する兵器その他一切のものは全部日本でできたのでありますけれども、現在においては残念ながら戦後軍需品生産の会社はほとんど壊滅しておりますから、おそらく上五インチ砲でも日本で作ることはむずかしいのではないかと思うのですが、現在五インチ砲は日本でできるのですか。
  100. 小山雄二

    小山政府委員 五インチ砲は、今回は向うからの供与を受けます。三インチ砲はこちらで作ります。五インチ砲も今の日本の技術で申しまして、できないことはないと考えておりますが、たまたまこういう砲を作ります業界がいろいろの岡係で繁忙でございまして、またそのために相当の設備投資も必要だというようなことで、会社自身として決心がつきかねるというような点もありましたし、また製造期間の関係がありまして、今回の五インチ砲は供与を受けることになりました。
  101. 小山亮

    小山(亮)委員 この船を大体三隻作りますのは、二カ年計画でお作りになるということを伺いましたが、これを入札にされるとすると、日本の造船所のどこかに入札されるわけですが、艦船を完全に作り得るところの資格を持っている造船所というものは、日本に幾つありますか。
  102. 小山雄二

    小山政府委員 従来防衛庁が作りました警備艦六隻でございますが、これは大体数で申しまして五社程度が従来の警備艦の建造を引き受けております。それ以外でも、戦前に駆逐艦程度のものを作りました造船所は約五造船所くらいございます。
  103. 小山亮

    小山(亮)委員 戦争前は日本の造船所は大体駆逐艦の建造くらいには欠事かなかったのですけれども、現在においては、遺憾ながら政府計画しておられるような二千三百トンの船を作り得る造船所というものは五社と言われたが、五社であるか三社であるかわかりませんが、きわめて少いと私は思う。従ってどの会社とどの会社にこれを作らせようという御腹案はあなたの方にあると思うが、これは入札でやるのですか、どういう方法でこれを作らせることをおやりになるのか、伺いたいと思う。
  104. 小山雄二

    小山政府委員 具体的に船を作って参りますための調達契約につきましては、目下どういう方法でどうやるかということを政府部内で相談、検討中でございます。従って、結論的にどういうやり方になるかということはまだきまっておりませんが、大体従来の防衛庁関係の建造の実績等を見まして、その技術的能力とか、あるいは造船会社がいろいろな艦廷並びに商船その他の受注をたくさん持っておりますので、その受注手持量とか、そういうことを勘案しました上で、それらの中から選んで参りたいと考えております。
  105. 小山亮

    小山(亮)委員 先ほど防衛庁長官が、この船の主機は四万五千馬力と言われたが、エンジンはどういうエンジンをお作りになるのですか。
  106. 小山雄二

    小山政府委員 エンジンは四万五千馬力、三万二千五百馬力二基でございます。これもどういう型のエンジンを採用しますか、各造船会社、主機製造会社は、日本式、あるいは最近の外国の技術と提携いたしましたいろいろの型で、それぞれ自分のところの得意の型のものを作っておりますが、どれを採用するかということも今後検討いたしまして、その馬力の出るような、工程その他に無理がなく、またその実力を出し得る技術能力を持ったところから選びたいと考えております。
  107. 小山亮

    小山(亮)委員 エンジンの種類を聞くのです。タービンだろうと思うのですが、どういうタービンをお作りになるのですか。そうしてまたそのタービンの名前をあなたの方でおっしゃれは、造船所は一つか二つにきまっちゃうんです。
  108. 小山雄二

    小山政府委員 ボイラー・タービンの方法であります。どういう型のものを採用するかは、先ほど申しましたように、いろいろな会社のいろいろ手打ちの都合等もありますから、そういうことも考え、また能力を十分発揮する型のものということを勘案しまして今後きめて参りたいと思います。
  109. 小山亮

    小山(亮)委員 今度新たに作られる軍艦といいますか、この駆逐艦にはロケットをおつけになるのか、あるいは誘導爆弾というようなものをおつけになるのか、それを伺いたい。
  110. 小山雄二

    小山政府委員 ロケット砲も誘導弾も考えておりません。ただ先ほど長官が申しましたように、対潜ロケット砲をつけます。
  111. 小山亮

    小山(亮)委員 対空は。
  112. 小山雄二

    小山政府委員 対空は考えておりません。
  113. 小山亮

    小山(亮)委員 さっきはいかにも世にも珍しい最新式の船のようなことをおっしゃいましたが、対空ロケット砲もなければ誘導爆弾の装備もない。どこが新しい船ですか、ざらにある船ですよ。あなたには珍しいかもしれぬけれども。(笑声)おそらくそっちの方の専門家の方々から言えば、まだまだ不満足でしょう。こういうことは私はむだだと思うんだ。むだなものをなぜあなたの方はこんなにして喜んで、ただだからといってお作りになるのか、世の中でただほどこわいものはないということを言うじゃありませんか。(笑声)作ったあげくにアメリカにやった、アメリカからはあらためてまたもらった……。戦争後に、日本で食糧のないときに、いろんな食糧をもらったことがありますね。ただでもらうたと思って、国会で感謝決議をやったり、学校の子供は、アメリカ大使館に行ってありがとうございますと言ったりしたが、あとになったら、みな日本に勘定を取りにきている。こういうことを考えて、それから以後、人から余り物をもらうようなこじき根性はやめたらどうか、政府自身がなぜそんなさもしい根性になるのか。政府は、国民道義の頽廃を非常に嘆いている、道義の高揚を言っておられる。しかし、自分のやっておることはどうですか。政府がパチンコやばくちのようなものを奨励し、富くじのようなものを奨励したり、アメリカからくれるというものは何でももらう。だからごらんなさい、政府部内から何から疑獄に次ぐ疑獄じゃないですか。道義の頽廃のようなことをやるのは、みななっていないからですよ。こういうことを根本的に立て直すような考え方を持たなければ、日本の再建なんてとても期し得られませんよ。  また私はあらためて伺うが、日本防衛方針は、陸海空のどこを一番重点的にお考えですか。今後日本ほんとう防衛をやるというお考えがあるならば、陸海空のどれを重点的に考えたらほんとうの防御ができると防衛長官はお考えになるか、伺いたい。
  114. 小滝彬

    ○小滝国務大臣 防衛の力を発揮いたしますには、やはり陸海空のバランスのとれたものでなければならない。これが統合して力を発揮する仕組みにしなければならないわけであります。それにつきましては、最近の科学、あるいは兵器の発達というようなものになりまして、ただ従来の考え方だけではおさまらない、そこに新しい考え方も持ち込まなければならないのでありますが、これを抽象的に申しますならば、特にどれだけで防衛が全部済むというわけのものではございませんから、均衡のとれた、そして総合して力を発揮し得るような仕組みにいたしたいと目下検討中でございます。
  115. 小山亮

    小山(亮)委員 どうせそういうことをおっしゃると思っておった。あなたのおっしゃるように、均衡のとれた防衛計画を立てられるような国なら、こんな貧乏な国ではありませんよ。アメリカから頭を下げて物をもらわなくてもいい国なんです。金がないのですよ。やりたくても、ないから、工面をしてこんなことを考えているのでしよう。そうだとすれば、ないものならばないなりに——さっきあなたは僕に説明してくれた。小山さんは、よその国でいきなり侵略されている国も今あるんだ、そういう国は手を上げていろと言う、世界政治家考えとは逆な考え方をしていると笑われた。私は、あなたの嘲笑を甘んじて受けますよ。しかしどうですか、今の日本のような金のない国がああいうようなことを言って、均衡のとれるような防衛計画はできない、できないからこそ、一番安上りで、しかも応急の措置のできるところはどこに重点を置くかということを伺っているのですよ。実際問題としてのことを伺っているのです。それを均衡がとれた、バランスがとれたそれはお金持ちのむすこの言うことですよ、アメリカの大臣であれば、そういうことを言ってもいいが、日本のような貧乏国の大臣であれば、貧乏なりに、どこに重点を置くか、実際に即して事を考えなければいけないでしよう。私は、その意味で、あなたに陸海空のどこに重点をお置きになるか、こういうことを伺っているのです。
  116. 小滝彬

    ○小滝国務大臣 日本に対する間接的、あるいは直接的な侵略がどういう形で起るかということによっても違ってくるわけでありますが、私は防衛考える際に、経済性というものを十分考えなければならぬ。そしてまた、結局すべてのことが十分にできるわけでもございませんから、重点的にこれの取り計らいをしたい。しかし、それかといって、経済的な理由のみで、陸の方が比較的一人当りの装備が費用が少いから、それだけを充実するというわけにはいかない、やはり日本日本なりに独自な力で、第一義的な防衛のでき得る部隊を持たなければならないわけでありますから、そういう面を十分考慮いたしまして防衛計画を立てていく、こういう考えで進んでいるものでございます。
  117. 小山亮

    小山(亮)委員 そうすると、結局私の質問したことに対して御答弁がないのですね。ないのですか、できないのですか、それという考えがないのですか、どれを重点的にやるという考えはないのですか。経済的なことを考えてやるんだ、それは重点的じゃないですよ。陸海峯のどれをやれば一番経済的に防衛の実が上るかということを考えなければならぬのでしょう。どこを一番先にやるのですか。防衛の実の上るのはどこです。逐次全部をやっていく、そして均衡のとれたものにするが、さしあたって一番経済的に効果のあるのはどこだ、こういう考えがなければならぬでしょう。それを伺うのです。
  118. 小滝彬

    ○小滝国務大臣 重点的と申しましても、一体数で言うのか、あるいは装備の点について言うのか、小山さんの御質問の趣旨が十分にわからないのでありますが、経過的に申し上げまするならば、日本自衛隊というものは、陸上自衛隊というものが最初にその建設の緒についたわけであります。その後、本年の予算をごらんになりますならば、陸の方の増員は一時取りやめにして、特に長い訓練を要する、そして新しい装備も考えなければならない航空自衛隊というところに特に重点的置く。それが、あるいは質的にその辺を特に重要視したと説明すれば、説明し得るかもしれません。同時に、海上についても考えたのでありますが、本年度の予算をごらんになれば、大体陸の関係、あるいは技術の開発というような点に特に意を用いて予算を編成いたしたという実情であります。
  119. 小山亮

    小山(亮)委員 この重点的にやるということは、数をやるとかなんとかいうんじゃないのです。防衛の力です。力というものは、必ずしも数が多いから力というものでもなければ、あるいは数が少なければ、幾らいいものでもあまり少なければ、これはやはり防衛にならないのです。防衛の力を言うのです。だから、十八万の軍隊があるから、これは経済だ、人間が一番安いからということをあなたがおっしゃれば、これでは話にならないのです。私の考えていることは、今の日本の現在の立場において、もし今あなた方が防衛計画をどんどん増強なさるようないろいろな面の御心配があるとするならば、どこの面が一番先に心配だから、まずその面を充実させるということがなければならぬでしょう。ただ世界じゅうを見渡して、ソ連も心配だ、中共も心配だ、朝鮮も心配だ、アメリカも心配だ、みんな心配だ、こういうことになれば、今のあなたの言う均衡のとれたということになるが、均衡をとったって、日本の国はかないやしませんよ。ですから、私の言うのは、さしあたってあなた方が——さっきあなたの方で、仮想敵国というものはないとおっしゃった、あったってないと言われるかもしれません。だから、ないのがほんとうだ。なければ対策が立たないのですから、一応の仮想敵国というものはそれを防げるか防げないか、戦って勝つか勝たないかわからないけれども、一応の仮想敵国というものは作るのです。作らなければ、いろいろな国防計画は立たぬじゃないですか。そこで、一番最初、どうもこの辺が危険で危ないと考えられるというところがあって、それを防ぐために、とにもかくにも、だれかが言われた、一カ月か二ヵ月防げばいいのだ、一ヵ月でも三ヵ月でも防御する。それは完全にやれれば文句はない。ところが、金がないから完全にはできぬ。そうすると、さしあたって不完全ながらも、とにかく一番効力のあるところをやるにはどうしたらいいかということを考えられるでしょう。そういうことを、防衛庁長官はいつでも幕僚と一緒に心配しておいでになるのじゃないですか。私はそうだと思うのですが、あったら一つ聞かして下さい。なければ返事しなくてもいい。あなたは、そういうことは考えたことがない、そんなことは、今まで相談したこともないというなら、御返事は要りません。
  120. 小滝彬

    ○小滝国務大臣 作戦を考えております際に、いろいろな可能性というものは考えなければならぬ。あるいは一応の想定というものもしなければならないのでありまして、そうした面については、もちろん幕僚監部の方で考慮いたしまして、われわれの防衛計画というものの作成に当っておる次第であります。
  121. 小山亮

    小山(亮)委員 雲をつかむようで、一向にどうも要領を得ない。この金の支払いはどういうふうに支払うか。これは大蔵大臣にお伺いいたしますが、金の支払いは分割払いをするようだが、総体において、六十七億円ですか払うようになっていますが、しかし差しあたって十二億円、次の金、次の金と払うのですか、どういうふうな支払い方法になうて払うようになりておるのですか。
  122. 池田勇人

    ○池田国務大臣 大体三カ年にわたって支払いをするようでございます。昭和三十二年度は、ただいま御審議願っておりますように、十二億七千万円でございます。
  123. 小山亮

    小山(亮)委員 そうすると、三十三年度はどうなりますか。
  124. 池田勇人

    ○池田国務大臣 工事の進行の状況を見まして、三十三年度はまた予算を御審議願うことにいたします。従いまして、三年間にわたりますので、債務負担契約を御審議願うことにいたしております。
  125. 小山亮

    小山(亮)委員 兵器の建造というものは、一刻を争うものなのです。今日の最新式の兵器は、明日ほかの兵器ができると、それは決して最新式の兵器でなくて、非常に効力の劣った兵器になる。これは全部そうなんです。兵器は、全部一番新式の、そして一番能率のいいやつが兵器であります。ほかにさらにそれ以上のものができたときには、それは役に立たなくなっております。この計画で、この設計で一生懸命三年でお作りになって、三年後に国際情勢の変化とか、それから今の科学技術の進歩というものを考えますと、これじゃとても間に合わないように思いますが、防衛庁長官、これでいいのですか。
  126. 小滝彬

    ○小滝国務大臣 御指摘のように、兵器の発達というものは著しいものがあります。最近は特に顕著な発達をしておりますが、しかしそれかといりて、在来の兵器が全然むだになるものではない。いろいろ訓練にも役立つし、補助的な役割を果すものでもおりますから、これができ上って、これが全然むだになるというように私どもは想像いたしておりません。
  127. 小山亮

    小山(亮)委員 私は、実に驚き入った御答弁だと思う。こんなことは言いたくもないが、わかりよく言いますと、在来世界で、どんな優秀な日本の兵器でございましても、あの原子爆弾ができてきた、水素爆弾ができてきたとたんに、ほかの兵器は全部無力になったじゃないですか。無力にならぬとあなたはおっしゃいますか。たとえば、現在防衛庁が十八万か二十万の軍隊を持って、そして戦車を使い、バズーカ砲をかついで、あちらこちらに演習をして一生懸命やっておられる。たまたま青竹でぶんなぐられて死ぬやつができたり一生懸命働かされております。それほど一生懸命やって訓練を受けた兵隊が、たとえば、原子爆弾が一発落ちたらどうなるか。あの演習を見ていると、昔の演習と同じですよ。穴を掘ったり、あるいは丘の上に上ったり、いろいろの木やなんか持ってきて掩獲物を作ってみたりして、前面の高地にある敵何百メートル、何千メートル、急ぎ撃ちかかれ。昔われわれが学校で教わったと同じことを今、やっておりますよ。それが、原子爆弾が一発落ちたらどうなりますか。広島に落ちた原子爆弾ですら、あれだけの損害を与えた。ビキニの原子爆弾では、ビキニの爆弾が落ちた環礁から九十マイル離れた海上において、何も知らないで魚を取っておった静岡県の焼津の福竜丸という船の久保山さんが死んたじゃないですか。九十マイルというと、東京のまん中に落ちたら、ずっと北の方にはかりまして高崎までを半径にしてぐるっと円を描いた中のものが全滅するんじゃないですか。そうすれば、二十万や三十万この辺におったって、東京も静岡も神奈川県も千葉県も埼玉県もありゃしませんよ。一ぺんにばっと全滅したら、今までの兵器は役に立たぬじゃないですか。それでも、あなたは鉄砲を持って人が生きておると思いますか。持っていても持っていなくても、やはり死ぬのです。そんなことはない、昔のものでも使える。だから、アメリカの古い軍艦でも、もらってきて間に合うというあなた方の考え方を改めなければ、だめだと言うのです。私は、古いものは、新しいものができた、非常な威力を打ったものができたときには役に立たぬ、こう思う。そうでないですか。
  128. 小滝彬

    ○小滝国務大臣 私は、小山さんが想像されるような戦争だけがすべての戦争であるというようには考えておりません。また侵略というものは、局地的な侵略もあるし、あるいは革命戦のようなも一のもあり得る。日本にあるというわけじゃございませんが、あり得るでしょう。現に昨年のスエズのときにも核兵器を使ったわけじゃございません。あるいはハンガリー、ポーランドにおいても、そういうものは使われなかった。原子爆弾はあったけれども、朝鮮事件のときにも、そういうものは使われていない。そして、ある非常に軍事的に価値のある地域に対して大量殺戮の兵器を使うということは、すべて元も子もなくするものでありて、将来の利用価値がなくなるということも考えられましょう。ことに核兵器というものについては、もう私から申し上げるまでもなく、原子弾頭などというものは、非常に小型な戦術兵器としても利用し得るようにだんだん変ってきている。そういう際に、大きな水爆とか原爆が使われるというようにすべての場合を想定してかかるということは、少し早計ではなかろうかと考えます。地上軍というものも、たとえば誘導弾の基地を守るのにも役立つでありましょう。要地の防衛というようなものに役立つ場合もあります。私は、一がいにそうした議論でもってわれわれの防衛力というものを考えるべきではないという見解を持っております。
  129. 小山亮

    小山(亮)委員 これは、ますますあなたと私とは意見が違っちゃう。かつて潜水艦というものがほんとうに完全に使われたのは、第一次歌州大戦のときです。それまでは、小さい潜水艦というもののあることば知っておったけれども、海上においてあれほど激しい活躍をするとはだれも思ってなかった。ちょうど私はそのとき二十五才でありましたが、小さな船に乗りまして、ヨーロッパに行うたんです。自分の船には、潜水艦を砲撃するところの大砲も、二門ちゃんと持っておるのです。持っておって、訓練をしておる。それでありながら、潜水艦に撃沈された。そのやられたときは、ほんとうに天気の晴れた、波の平らな、畳のような海で、どこに潜水艦が出てもわかるときなんです。それですらも、月にとまらないで、自分の船が不意に撃沈された。三分五十秒で私の船は水中に没した。ごらんなさいな、どんなものを持ってたって、それ以上の兵器ができたらためなんです。ところが、その敵に姿を見られないで攻撃するところの潜水艦にはかなわないと思ったら、そのかなわないと思った潜水艦が飛行機にやられるじゃありませんか。幾ら水の中に入っても、レーダーでちゃんと所在を探知されてしまえば、潜水艦もだめになる。そうすると、次から次へと科学の進歩につれた新しい兵器ができてくれば、前のものは役に立たなくなるのは当りまえでしょう。朝鮮のときに原子爆弾を使わなかった、スエズ運河で原子爆弾を使わなかった、だから使わない、そんなばかな理屈がありますか。常識で考えたって、スエズ運河に原子爆弾が使えますか。朝鮮だってそうですよ。使えませんよ。使えないから使わなかったのです。ほんとうに天下分け目の戦争になれば、これは使うためにこしらえたんだから、だれが使わないでおきますか。そういうばかな、いいかげんな口先だけのことを考えた、そんな防衛なんてやっておるなら、心配で、危なくて、まかしておけないじゃないですか。まるで中学生に軍艦を作らしておるようなものです。もう少し実のある話をして下さい。私どもがなるほどなと納得して、じゃどうかお願いしますから、どんどん船を作って下さいと言えるように、実のある答弁をして下さい。
  130. 小滝彬

    ○小滝国務大臣 小山さんは、自分の考えだけを押しつけようとされるのです。先ほども申し上げております通り、私の見解は違っております。そういう世界的な戦争がある場合は、その心臓部へ向って、大陸間の弾道兵器というようなものが米ソの間に使われるかもしれない。しかし、その側面にある日本にそういうものが常に使われるという想定のもとで、私は日本防衛というものを考えようとしておるものじゃございません。
  131. 小山亮

    小山(亮)委員 そういう情ない防衛ならやらぬ方がどうですか。私はさっきも言った。やるならだれが攻めてきても防げるような防衛をやりなさい。やれなかったら、むしろよけいなことをして、そうして毛を吹いて傷を求めるようなことはやめたらいい、こういう考えで、私はこれ以上質問したところで、どうせ今のような御答弁ならしようがないですから、これでやめますが、しかし、もう少しあなたの所管事項に対して熱心に勉強していただきたい。それだけを御注意申し上げておきます。
  132. 山崎巖

    山崎委員長 先ほどの田中君の質疑に対しまして、答弁の申し出があります。この際これを許します。岸内閣総理大臣
  133. 岸信介

    岸国務大臣 先ほど、国連の経済開発特別基金に関してのわが方のとった態度について御質問がありましたが、これに対するお答えを申し上げます。  国際経済開発特別基金の設置の問題は、数年来国連で討議されてきましたが、各国の意見がまとまらぬままに、本年の一月、国連の第十一回総会にこれが持ち込まれた。そこで同総会では、早期設置を望むラテン・アメリカ諸国及びアジア・アフリカ・グループから決議案が提出されたのであります。この決議案によって、この基金に関する規約を至急に作成すべしということを求めておるのであります。これに対しまして、この基金ができますと、その基金を醵出するおもなる国々、すなわち英米その他の西欧先進国としましては、その設置の細目についてまだ十分審議をし尽さないのに規約の作成を始めるというのは、時期尚早であり、これに応ずることはできぬ、もしラテン・アメリカやAAグループが多数を頼んで規約作成を強行するようなことがあれば、米英等は、今後この基金の問題について協力はできないというような態度をとっておったのであります。この間にありまして、わが代表は、日本としては、この基金の早期設置を望むも一のであるが、実際上これが有効な運営をはかるには、ぜひともおもなる醵出国であるところの国々の協調を得なければならない必要がある、従って、これら醵出国と折り合いが合わない今日、規約作成について進む考え方は、決して結果として早期設置を実現するゆえんではない、もしかかる法蔵案の採決を強行される場合には、こういう状態では日本として棄権せざるを得ない、従って、この際先進国と後進国が十分に議論を尽して、右のような対立のないように希望する旨を述べたのであります。結局国連総会では、最後のどたん場におきまして、西欧先導国とラテン・アメリカ、AAグループとの間に妥協案が成立しまして、国連の某金特別委員会は早期設置を目ざして適当な法制化を縦訂する、すなわち、規約の母体化になるような法制化を検討するということになつて、この趣旨の決議案が上程せられ、日本も賛成しまして、満場一致でこれが通過しております。その後、日本代表は、右の特別委員会のメンバーに選ばれまして、前のごとく、できるだけ両者の折り合いが成立しながら、この基金が早期に設置を見るように、この討議に協力をしておる次第であります。右お答え申し上げます。
  134. 山崎巖

    山崎委員長 質疑を続行いたします。古田賢一君。
  135. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 内閣が防衛庁所管としてアメリカから駆逐艦の調達受託契約を受けることになる問題について、第一に岸外務大臣に伺いたいのであります。この臨時受託調達特別会計法案という法律、これの末尾に附則として、防衛庁設置法の一部改正の趣旨が規定せられ、設置法の附則十九項を二十項とし、以下説明が記載せられ、結局MSA協定に基いて、政府が無償でアメリカから軍艦二隻を譲渡せられる、こういうた趣旨のもとにアメリカの負担において調達する、これらの軍艦の建造、これを同国政府に引き渡すことを目的として日本政府との間に契約を結ぶ、こういう趣旨が記載せられておって、要するに受託調達の契約が日本政府アメリカ政府との間に締結せらるるということが前提になっておるようであります。ところがMSAによりまして無償譲渡、日本が受けるということはよくわかるのでありますが、その種の契約をするということは、MSAによっては生じてこないと思います。やはりこれはその前提といたしまして、アメリカ日本との間に別個の条約ができなければならぬのではないか、こう思うのであります。日本が義務を負担し、もしくは権利を秤まして、相互間におきましてお互い権利義務を設定し合うのでありますから、その根拠になりますものは、新しい条約でなければならぬと思う。先行的に、どうしてアメリカとの間に条約もしくは協定などをお作りにならぬのか、この点について御答弁を願いたい。
  136. 岸信介

    岸国務大臣 私ども政府としては、これは特別に協定や条約を作る必要はないと考えたのでありまして、今御審議を願っております法律案や予算が通過するならば、私契約としてアメリカとの間に契約をすれば、これで事足りる、こういうふうな見解をとっております。
  137. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 この調達契約は、日本に権利を取得し、義務を負担するということになるのでなければならぬと思うのであります。当然そういうことであります。そういたしますと、それは何らの契約、国と国との間に条約なしにできるということは——これは少くとも国際法的な観点からいたしまして、また国家と国家とがお互いに相互に権利を得、義務を持つことが広い意味における条約であるというような、こういう法的概念からいたしまして、確かにそこには何らかの形の協定がなければならぬと固く信ずるのでありますが、その点について、あなたは単に私契約によってこれをなし得る、その必要がない、こういうふうにおっしゃるのでありますが、これは、少くとも国際法的な常識から考えましても、相互の国の権利義務を設定するというきわめて重大な関係を新たに新設するのでありますから、こういう見地から、何らかの協定が必要でなければならぬ。私契約でいきますというような、そういうことをおっしゃるならば、アメリカ日本との間におきまして、過去においても、将来におきましても、条約はほとんど必要でない、こういうことにも推論せざるを得ないのであります。あまりにも簡単な暴論のように私は考えますが、いかがでありますか。
  138. 岸信介

    岸国務大臣 法律的な解釈を私が申し上げまして、法律的な構成につきましては、法制局長から答弁をいたさせます。
  139. 林修三

    ○林(修)政府委員 普通、条約によりますのは、大体国と国との剛において公法的な権利義務関係を設定するものを、普通、条約あるいは協定と呼んでいることは御承知通りだと思います。またそういうものと別に、国と国との間で私法上の契約を結び得ることも、これは言うを待たないと思うわけでありまして、国と国との間で、たとえば大使館の敷地等の賃貸、あるいは売買の契約をやるとか、あるいは国が国営貿易をやっているような場合に、その国と国との間で物を売り買いする、あるいは物を注文する、そういうようなものは、すべてこれは私法上の契約として考えられるところだと思います。国と国との間に約束をする場合にも、国家国民に対して公法的な権利義務関係を与えるのは、条約あるいは協定として取り扱われるべきものと存じますけれども、ここにございますような受託契約、受託開化というようなものは、これは私法的な関係と思いますので、私どもといたしましては、政府にそういうことをやる権限がこの法律案あるいは予算に基いて、できればそれに基いてやれる、かように考えます。
  140. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 しかしながら、MSAの協定によりまして、日本が、あなた方のおっしゃる防御計画の上にアメリカから重要な寄与を受けるというのが、結局契約の目的になっております。こういうような重要な利益を享受するということがその内容であり、趣旨であり、終局の目的であるのでありますから、これは単に大使館の敷地の貸借をするとか、あるいは金銭上の、あるいは単なる物品の売買をするとか、そういう私法的効果を発生する案件とは性質が全く違います。少くとも、あなた方らのお考えによってみましても、また防衛庁の設置法、防衛庁の存立の目的、こういう点から考えましても、国の存立の根本に影響を与える重大な問題を含み、これを目的にした終局の契約であります。こういうものを、単に物の売買とか、あるいは敷地の貸借とか、賃料の取りきめとか、そういう私法的効果と同列に扱うということは全く政治感覚のない考えであります。これは、あなたの法制局が単に法律技術的にお考えになるということの以外に、やはり今日のような、公法、私法の見解につきましても議論まちまちになっております時代に、ことに国の存立に重大な関係を持つようなこの契約が、単に私法的な効果を生ずるべきものだというように断ずることはとんでもない考えであります。大体こういうことを総理——総理として伺いますが、あなたは——ちょっとお待ち下さい、私語はしないで下さい、やはりここは総理の所信を聞いておかなければいけません。かりにもMSA協定によりまして軍艦の譲与を受ける、譲渡を受ける、あるいはその他の重要な資材の譲渡を受けるというような問題は、これは単に私法的な効力を発生すべき範疇に属しないことは申すまでもございません。この軍艦二隻も、七十億円になんなんとするような重要な財産であることはもちろん、重要な兵器であることはもちろんであります。またこれのために、特別立法をしようというようなほどに重大視しておられることはもちろんであります。そうしてこれを国内もしくは世路に対するための何かに用いていかれようとするのでありますから、こういうようないろいろな方面、角度から考えてみましたときに、これを単に私法的の効力を発生すべき法律事実として考えるというような、そういう考え方は、全く政治感覚のない三百代言的な言い方と申すよりほかありません。やはり総理大臣としての所信をはっきりしておいてもらわなければなりません。厳に法律技術屋にまかすべき問題ではありません。広い視野に立ちまして、日本の国の一切の行政の最高の責任者でありまする総理大臣としてのはっきりした信念をお持ちにならなければいくまいと思う。
  141. 岸信介

    岸国務大臣 言うまでもなく、この建造された駆逐一艦をアメリカの方へ渡しまして、さらにアメリカの方から日本に供与されるということは、MSA協定に基いて日本に与えられる——今その船をどうして作るかという、本来言えばこれはアメリカアメリカ国内で作りましてそうして日本にくれるなら、これはMSA協定そのままの問題であります。それを日本において建造して、いわば受託契約といいますか、日本の方でアメリカの注文に基いて作って、そうしてアメリカにこれを渡して、さらにアメリカからMSA協定によって日本へ供与されるという法律関係になるのでありまして、その船を作る途中における仕事を受託するということでありますから、これは、われわれは、単なる私法的の問題である、かように考えておるわけであります。
  142. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 しかし、ちょっとお待ち下さい。日本へ軍艦を無償供与される、これが終局の目的である、そこへいくまでの建造を受託する契約であるから、その契約を受託する、あるいは委託するのであるから、それが私法的関係である、この二つを分離することは、これはやはり全体として事実及び観念が分離しておるのであると私は思います。契約をするということは、同時に国に権利が生ずるのです。国に義務が生ずる。日本政府におきましても、重大な権利が生じ、重大な義務が生ずる。だから、重大な権利義務が発生するという、その契約をする根拠は、これはMSAではありません。それは何かというと、それは私法上の契約で、土地を貸した賃料の取りきめをするのと同じである、それはどうでありましょうか。そうでなしに、その権利義務お互いに発生するという重大な契約をせんとするのであるから、その契約をぜんとする根拠になるものは何か、それはお互いに何らかの取りきめをしておかねばなるまいじゃないか、この取りきめが私は条約だと思うのであります。おそらくこの点は、今法制局長官は事もなげに簡単におっしゃったけれども、相当議論がなければならぬのであります。あなたの力におきましても、これらの点についてはずいぶんと議論をされたと思うのです。これば、あまりにも急いでこの協定か条約を結ばずして、事ここに出ておりますけれども、しかしながら、やはり協定が先に立って契約はあとになる。協定が先行して、そしてその協定によって——この協定は憲法七十三条に基いて国会の承認を得る、国会の承認を得まして、これに基いてアメリカと新しい契約をする、その契約によって生じた権利義務によって、あらためて防衛庁はそれぞれ造船所に新しい委託をする、こういう順序にならねばならぬのであります。契約の前提になります条約もしくは協定、その他何らかの国と国との間の公法的取りきめ、国家と国家に権利義務の発生するところの広義のいわゆる条約が何らかなければならぬ。現に、従来におきましても、たとえば安全保障条約に基く行政協定によりまして今日の日本基地が提供せられ、こまかい規定どもせられておるのであります。でありますが、こういうようなお互い基本的な約束、契約、条約、協定というものがこれに欠けておるのであります。これは重大な欠陥であると思う。この欠陥は、今後もしこれが完全に履行されていきますならば、あるいは問題なくして済むかもわかりませんけれども、例といたしましても、かかる例は初めてでありましょうから、この際に厳としてその前提になる協定ないしは条約を先行せしめなければならぬと思うのです。そうして議会にお諮りにならなければいくまいと思う。どうしても、これが先行して、その次に契約があって、この契約によってお互いほんとうの契約上の権利義務が発生する、こういうような考え方でないと首尾完結しません。あなたのお考えによりますと、国と国との間の重要な取りきめ、契約、権利義務の発生ということにもう条約も協定も要らないという場合を多数に予想しなければならぬということになりますが、こんなだらしのない国交というものはないと思います。やはり、国際間におきましてお互いに権利が生じ、義務を負担するという約束をします場合には、この国の存立に若干でも影響するような場合には、ことごとく公けの約束になるということが、これが国際法的な考え方からいきましたら大原則でなければならぬと忠り。これをあえて放棄し、破るということは、とんでもないことだと思いますが、重ねて首相の御意思を伺っておきます。
  143. 岸信介

    岸国務大臣 政治的に見るというと、これを作るということ、作ったものをもらうということは不可分じゃないかという吉田さんの御議論でありますが、実体そのものは、作ってそうしてこれをMSAの協定に基いて日本が供与を受けるというのが究極の目的であることは言うを待ちません。しかし、この、作ってそうして最後にもらうということはMSAの協定に基くものでありますが、その途中において、その方法として、あるいは私契約を結んでその建造をするとかあるいはどうというような道程は、その法律的構成についてはおのずから私法と公法の違いが出てくるのであります。それを作ってそうして日本がもらうということは、これは大きな問題でありまして、そのことはMSA協定に基くことはもちろんでありますが、その道程として、従来のようにアメリカアメリカ内で作ったもの、もしくはアメリカで使い古したものを日本によこすということでなく、新たにこの船を建造する、その建造も、日本内地において日本の造船所においてやり、そうしてその設計その他のものを日本に委託して、日本が作ってアメリカへそれを渡して、さらにアメリカから日本が供与を受けるというこの構成を法律的に検討してみますと、今の第一段階のところは、私契約で結んで差しつかえない、それにはその私契約を結べるような権限を防衛庁に与える必要があるというので、今御審議を願っている法律案等をわれわれは提案しておる次第であります。
  144. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 それならば防衛庁長官に伺いますが、両国間におきまして相当下話が准行したのでこの法律案並びに予算を出すに至ったというように御説明になっておりますが、およそ日本アメリカとの間において生、ぜんとするところの権利義務関係はどういう趣旨内容になっておりますか。
  145. 小滝彬

    ○小滝国務大臣 総理お話しになりましたように、これは、支払いの義務をアメリカの力が持って、そうしてこちらの方がものを渡すという、もののやりとりの内容であります。あるいは吉田さんは、途中で支払い問題なんかでごたごたが起りはしないかということを御心配かもしれません。しかしこれは出来高に応じましてこちらから請求書を出す、そしてそれに対して九〇%ずつ向うが払う、日本の方では向うからその金を受け取ることを条件として下請に支払うものでありまして、その間に日本政府の方がかわって支払わなければならぬというような問題は生じないのであります。その差額は最後に引き渡すときに全部支払うというような仕組みにいたそうとしておるのであります。  なお、あるいは吉田さんの方では、もし途中で事故でもあった際に、政府として義務を生じはしないか、こういう御心配があるかもしれません。しかしそれにつきましては、私どもの下話では、この契約をする際にそういう事故等に対しては保険にかけて、万一の場合はその保険によって損失をカバーする、危険を負担するということになっておるのであります。そしてその保険料というものは、向うの支払うところの船価の中で見るということになっておりますので、政府として代金の準備というようなものは生ずることのないように十分配慮をいたしたつもりでございます。
  146. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 それなら伺いますが、第一、船はどこで設計することになっておるのですか。さきに小山委員に対しまして、船舶設計協会がこれを設計するとかいう御答弁でございましたが、その通りでありますか。
  147. 小滝彬

    ○小滝国務大臣 基礎的な概案は防衛庁の方で作りますけれども吉田さん御承知通り、私どもの方に技術者が十分ございませんので、ただいまのところ、便法といたしまして、船舶設計協会の方を利用せざるを得ない次第でございますから、基本設計については船舶設計協会の方へ委託しなければならぬと思います。その費用は、もちろん設計費としてアメリカ側の払う金額の巾に見積ってある次第でございます。
  148. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 船舶設計協会に基本設計を委託するということは、アメリカとの間に了解みなんですか。
  149. 小滝彬

    ○小滝国務大臣 私ども考えでは、できるだけ日本側にそういう設計とかすべてをまかせてもらうという考えでございますので、詳細について一々アメリカに相談する必要はなく、わが方で必要と認める措置をとり得る次第でございます。
  150. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 船舶設計協会が基本設計をするというのですが、詳細設計は造船所がやるのですか。
  151. 小滝彬

    ○小滝国務大臣 その通りであります。
  152. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 アメリカに対しては、大体軍艦をいつ渡すという約束ですか。
  153. 小滝彬

    ○小滝国務大臣 昭和三十五年の三月末であります。
  154. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 着工契約はいつという約束ですか。
  155. 小滝彬

    ○小滝国務大臣 この法案を御審議願いまして御承認を願いました上は、五月に至りましてさっそく設計にかかりまして、大体十一月頃終了するつもりでございます。従いましてその後のいろいろな関係考えまして、大体確定契約は来年の二月と予定いたしておるのでございますが、概算契約的な点は本年の六月ごろに行おう、こういう計画でございます。
  156. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 概算契約をしました場合に、やはり日本の調達方式によって代金を支払うことになるのですか。
  157. 小滝彬

    ○小滝国務大臣 調達方式と申しますと、随契とかなんとかいう問題じゃないですか。
  158. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 従来の艦船建造につきましてとっております例に従って代金の支払いをやるのかというのです。
  159. 小滝彬

    ○小滝国務大臣 大体私どもの経験に基きまして、従来のやり方で行おうとしておるわけでございます。
  160. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 あなたの力では、従来、たとえば日本防衛庁の三十年度の艦船建造は、三十一年秋になってようやく契約ができております。三十一年度の艦船建造については、昭和三十二年四月二十二日のきょう現在、まだ契約ができておらぬ。言いかえますと、一年以上契約の取りきめもできていないのであります。この実例からするならば、三十三会計年度にはまだ契約ができないというのが順当な観察じゃないかと思うのです。その点、いかがですか。
  161. 小滝彬

    ○小滝国務大臣 御指摘のように、これまで契約が非常におくれましたのはまことに遺憾千万でございますが、本件につきましては向うから支払いを受けます関係、また諸般の関係がありますので、できるだけ早く契約をいたすように努力をいたしたいと考えております。
  162. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 できるだけ早く契約をするといっても、防衛庁自体にこれを設計する能力がないのでしょう。設計する能力がないので、他人に委託して設計をしてもらうのでしょう。今日まで防衛庁は、予算を組んで、その予算が通過しても、同会計年度内には契約ができず、予算も消化できず、毎年繰り越しが二百億円にも上っておるのでしょう。他人に依存しなければみずからの設計もできないというような実情じゃありませんか。急いでするといっても、従来の実例からいたしましても、急いでなし得ろ根拠は何も示されておらぬ、依然として従来通りです。あなた自身が設計もできない、他人に委託しなくちゃならぬ。他人に委託するというようなことまでも明らかです。アメリカに話をすれば、アメリカはこの際政府との間に約束はしないだろう、そういうことも考えるのです。けれども、一々そういったことをアメリカに言うと不利だから、言わないのだとお考えになるかもしれぬ。これらについてもっと正確な、実情から割り出しました話し合いというものがなければなるまいと私は思う。ことし十二億何がしの予算を組んでおる、ことし十二億何がしを支払うということになるかもしれぬというような前提に立っておるのだが、このあなたの力の前歴、実績から見るならば、本年度消化はできない。なるべく早くするといっても、なるべく早くなし得る何らの根拠も示されておらぬというのが事実なんです。この点いかがですか。
  163. 小滝彬

    ○小滝国務大臣 防衛げとして十分設計能力を持っておらないのは遺憾でございますが、しかし、これはぜひただいま申しましたような予定で進行させたいと考えておる次第でございます。十二億の方を見積りましたのは、一応資材の手入れをいたしまして、これを確保するという段取りになれば、この程度の費用は必要であろうというところで算定いたしたのであります。
  164. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 日本防衛庁の艦船建造の契約により、契約と同時に四分の一、着工と同時に四分の一支払うことになっておるそうでございますね。今のあなたのお話によりますと、本契約が来年の二月ごろ、こういうことらしいが、契約と同時に着工するということまで見込んでおられるのかどうか。これによりまして予算の消化率、内容なんかすっかり変ってくるのでありますが、こういうことに関する見通しも実際のところないということじゃないですか。ここはあけすけに言ってもらわなければ困る。あなたの方はことし使いますという予算も使われておらぬ実情です。三十一年度の予算を組みながら、全然何ら契約もしないでほうったらかしてあるのです。三十一年度におきましても、小型警備艦二隻その他があるじゃありませんか。それも全然手をつけていない、これが実情です。こういうような実情のもとにおきまして、今のようなお話——これは机上のお話ならわかります。机上のお話ならともかくといたしまして、実際に責任をもってこれを実行する場合におきましては、そういうことは不可能なのじゃありませんか。
  165. 小山雄二

    小山政府委員 設計につきましては、ただいま長官からお答えありましたように、防衛庁自身の力でできないという現状であることは、はなはだ遺憾でありますが、この点は向う側にも実情をそのまま話しまして、設計協会をして基本設計に当らしめ、その設計費用は今回その船価の中に含ませてございます。  それから設計は先ほどの答弁のように、国会で御承認をいただきますれば直ちに五月に着手いたしまして、十一月に完成する予定にいたしております。従ってそれを受けまして、船体の方の契約は六月ごろには最高限をきめました、最高限の確定した概算契約をまずやりまして、設計が完成しましたのを受けまして、三十三年の二月ごろ確定契約にするということに予定いたしております。造船会社ではその確定契約を受けまして詳細設計に入って、その詳細設計の完成を待って三十三年七月ごろ起工する、こういうことに予定いたしております。進水は三十四年四月、竣工は三十五年二月、三十五年三月に引き渡ししたい、こういう計画であります。
  166. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 政府のなさらんとする造船契約の方式はどうなのですか。これは一つ防衛庁長官から……。
  167. 小滝彬

    ○小滝国務大臣 先ほども申しましたように、支払いの方法は違うわけでございますが、大体従来の例によって契約をいたしたいと思います。ただ私としましてはなるべく競争的な要素もできれば加味いたしたい、こういう考えでありますので、近くその品目に従いまして、たとえば武器については、あるいは一社でしかできないようなものにつきましては、これは随意契約によらざるを得ないのでありますが、そうでない何社かあるものについては、その造船についての手持量がどのくらいあるかとか、技術の能力がどの辺であるか、今までの経験等にも徴しましてこれをよく調査いたしました上、今申しましたような気持も加味して契約をいたしたい、こういうふうに考えております。
  168. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 従来は入札をした例がないだろうと思う。そうすると従来の例によってということになれば、これは随契であるというふうに考えていいのでありますか。
  169. 小滝彬

    ○小滝国務大臣 今まだ確定はいたしておりませんけれども、大体従来の例また実績等も考えまして、その上にでき得れば競争的な意味も加えたい、こういう考えであります。船はずっと随契だけでやっておりましたが、できれば見積り合せというような点にも考えを及ぼしまして、今申しました私の趣旨をできるだけ生かしていきたいというふうに考えております。
  170. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 随契かあるいは入札か、あるいは公開入札か指名入札かということは、少くともアメリカとの間において協定せんとするときには、重大な関心事じゃなかろうかと私は思うのであります。やはりこのことは艦船建造費の内容にかかわってくると思うのであります。これは同時に防衛庁の予算執行上のあらゆる問題を生んでいく要素でもあるからであります。こういう点から考えてみましたときに、あなたの方では第一にアメリカとの間に随契でやるというようなお話でもできておるのか、あるいは指名入札でやるというようなお話でもできておるのか、やはり契約の方式は基本的な重大な事項であります。従来の随契に幾らか競争入札を加味するということを考えておるというような、そんな問題じゃないはずです。これはやはり私が、このアメリカとの間の下相談等について、さらにその前提となるべき協定等について、もっと深く十分な理解と話し合いと、お互い責任の限界と権利義務の限界というものを明確にしておかなければならぬということを当初申し上げたのはそこにもあるのであります。今なお随契にするのか競争入札にするのか、どの部分を指名競争入札にするかどうかということを検討中でございますというような検討の段階ではなかろうと思うのです。もう法律案を出しておるのです。予算も出しておるのであります。アメリカとの間には協定は必要でない、条約も必要でないというほど自信を持っておられる。しかるになさんとするところのあなたの方が、アメリカとの約束によって民間の造船所との間に契約をせんとするところの、その契約の根本方式すらきまっておらぬということはとんでもないことであります。この契約の根本方針をきめることなくして一体何をきめる、こまかい設計をどこへまかすとか、あるいは支払いの方法をどうするとか、ことにさっきのお話によれば、ことしじゅうに設計を完了したい、来年契約したいというところまでいっておるじゃありませんか。契約の根本方針をきめておらぬということはとんでもないことであります。もっとはっきりとおっしゃいませ、その点は言いにくいのですか。
  171. 小滝彬

    ○小滝国務大臣 先ほど申しましたように、武器などについて一社しかないというようなものについては、結局よくわれわれの方で調査いたしまして随契にせざるを得ない。船体につきましては、今申しましたように競争的要素をできるだけ入れようというように先方とも話しておりますので、まだはっきりどういう方式ということには触れておりませんけれども、ちょっと申し上げましたように、見積り合せのような方式でもとったらいいのじゃないか、しかしそれについてはもちろん手持量があって、幾らしてもなかなかその中に加えることのできないものもありますから、いろいろ考慮しなければならぬ点もありますが、原則的には先ほど申しましたような考えで進もうと思っております。
  172. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 そうでなしに、すでに二、三社との間には、あなたの方は造船所との間には下相談もできて、その方へこれを委託するというような話もあって、そうして相当突っ込んだ設計等について見積りも出させておる、そういうところまで反面において用意をしておるのではないですか、そういうことを近く反面並行的にやろうとするのではないのですか。もしくは設計協会というものが——かねて私も指摘しましたがごとくに、設計協会の代表者は造船会社の社長なんです。ようございますか、造船会社の社長が設計協会の代表者である。その設計協会において基本的設計をする、その基本的設計をすることが契約船価を決定する。これに基いて契約船価の重要なものを決定する。これに基いて詳細設計を造船所がやるということになるのでありますから、設計協会に設計を委託するときには、すでに大よそのものは契約の相手方の方に筒抜けになってしまう可能性が十分にあるのでりあます。何も内部でなさるのでも何でもない、秘密に行うのでも何でもない。建築せんとする場合に土建屋さんに設計を依頼するのとあまり変らないのであります。こういう関係になっておるのであります。そういう点から見ましても、今おっしゃったような点は理解しにくいのであります。私があなたの方にはっきりしてもらいたいことは、設計協会に設計を委託する、こういうときにどの段階において原価がはっきりするというようなことまでアメリカとの間に話し合うというところまでやるのかどうか、またそれならばアメリカは原価計算等についてどこまで介入するのか、支払い等についてもどこまでアメリカが関与してくるのか、こういうことはやはりこの軍艦の調達方式の基本要素なんです。原価が基本要素であるということは、私みたいなしろうとが申し上げるまでもございません。原価決定をするのが設計協会ですよ。その原価が決定しないということは同時にまた契約の方式ともうらはらの関係になってくるわけであります。そういう関係になってきますので、あなたの方においてはもっと突っ込んだいろいろな話し合いというものが——それは下話か何か存じませんけれども、ある数種の造船会社との間に進めておるのがほんとうじゃないですか。
  173. 小滝彬

    ○小滝国務大臣 そういう下相談は全然進んでおりません。詳細は装備局長に説明いたさせます。
  174. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 あなたの方で造船会社と将来契約しましたときに、アメリカにおいては何らの監査もしない、こういうことになるのでありますか。その点はいかがですか。
  175. 小山雄二

    小山政府委員 造船所との間にいろいろ打ち合せをしているというような事実はございません。ただ、先ほど申しましたように、六月ごろには最高限をきめた概算契約をやりたいというわけでございまして、その際には、いろいろ手持ち数量とか技術的能力をきめまして、ある程度競争的要素を入れるようなことを考えてくれという向うの話がございます。アメリカでも大きな船はみな随意契約をやっているようでございます。ただ、隻数が相当多い駆逐艦等は、ある程度そういう方式、見積り合せとかあるいは入札とかをやっている例がございます。これも、場合によっては、技術能力培養というような意味で、能力的には多少落ちるようなところに随意契約をするというような方法、臨機応変の態勢をとっております。一般的に日本の生産能力、建造能力を向うも高く見積っているというような関係もありましょうが、何らかの競争的要素を考えてくれという話がございまして、これはいずれ業者を選定いたします際にはその経緯並びに結果を向うに通報することになると思いますが、その際に、今われわれの考えておりますことは、どういう形で競争的要素を入れますか、確定はいたしておりませんが、たとえば見積り合せ等の方法をとって、従来よりも競争的要素を広く、取り入れるというやり方をとって参りたいと考えております。
  176. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 造船契約の実行過程において、アメリカがどの程度関与するのか、もしくはしないのか、こういう点はいかがですか。
  177. 小山雄二

    小山政府委員 本艦の建造に関しましては、設計、監督、検査すべて日本でやることになっております。ただ、米国側としましても、金は向うで払うわけでございますので、向うも国の税金を出しておるような関係もありまして、会計の監査に必要なような資料は、日本政府がまとめまして向うに通報するという程度の、これも、向うも人手がありませんので、一々こまかいことを見ることはないと思いますが、日本政府がまとめて向うに通報する、こういうことにいたしたいと考えております。
  178. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 そうすると、日本政府は、造船契約実行上の各般の会計的な書類、事実等を政府からまとめてアメリカ政府に通報しなければならぬ、こういうことになるのですね。そうすると、アメリカ政府はその通報に対して何らかの意思表示をし得る余地があるように思うが、この点いかがですか。
  179. 小滝彬

    ○小滝国務大臣 先ほど装備局長が説明いたしましたように、日本の方で監督もし監査もするわけでありまして、まず第一に、支払いの方面から申しまするならば、大体月々払いになるだろうと思います。その出来高によりまして、下請業者の書類をよく防衛庁の方で検討いたしまして、それに裏書きをして向うの契約担当官の方に出す。そうすると、契約担当官の方は、書類がそろっておるかどうかをよく見まして、それを支出官の方に渡せば、支出官の方で、それに応じて、先ほど申しましたように九〇%のドル小切手を切る。そして、それをこちらの方に渡せば、日銀において三百六十円の割合で円にかえて、それが下請業者に支払われる。こういうことになるわけであります。今装備局長が申しました書類というのは、さらにでき上りましてからの経理の大体を示す書類を向うの経理上の都合を考えまして向うへ送ることになるわけでありますが、この契約は、引き渡してから向うの最後の支払いによって完了する、こういう順序でございます。こういうように私ども了解しております。
  180. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 装備局長に伺いますが、今のあなたのお話ですが、出来高に応じて九〇%支払う、この支払うのに対して、こちらから会計経理上の報告をするというのが筋だと思うのです。今長官のお話によれば、全体完了の上これらの経理関係の書類を送るかのような印象を受けますが、これは間違いだろうと思うのです。これは常識から考えてもそうでないのが当然だろうと思う。やはりそのつどもしくは一定の期間を区切ってそういった会計経理上の書類を先方に通報してこれを渡す、これがほんとうじやないですか。
  181. 小山雄二

    小山政府委員 建造が始まりますれば、今長官が申しましたように、そのつど出来高を業者が日本政府に報告して参りまして、日本政府がそれを検討いたしまして支払い請求書をアメリカに出す、アメリカは、契約担当官がそれを検閲しまして支出官の方に渡しまして、支出官がドル払いによって日本国政府に払い、日本政府はそれを円貨に直してやる、そのつど出来高の九〇%ずつを支払って、完成のときに残りを精算する、こういうやり方でございます。そういう資料は、まあ一種の請求書でございますから、これを全部差し出さなければ精算ができない、支払いができないわけでございますが、そういう段取りになっております。なお、向うも結局アメリカ合衆国政府が要するに金を負担することでありますし、向うの会計検査法の関係もありますので、アメリカ政府の申し出があれば、ある一定の期間は帳簿を——これは日本の会計法でも帳簿の保存期間がございますが、もしアメリカ政府の申し出があれば、協議の上調査上必要な資料を提供する、こういうことになっております。
  182. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 元に戻りますが、岸さんになお伺いますが、今のお話によりましても、将来この造船契約が民間の造船所と防衛庁との間に締結せられて、この造船契約が実行せられる途上におきまして、今の御答弁によりますと、やはりアメリカの会計経理上必要なる文書、証拠書類等は相当要求せられるらしい。これはアメリカの調達方式の常識から見るならば当然だろうと思います。そこで、そういう場合には、やはりアメリカ政府日本政府との間で会計経理に対して何らかの発言の機会がどうもあるようでありますが、こういうような義務を総括的に受諾していくという立場にある日本政府は、単に通常の契約によって義務を負担しておる、あるいは権利を取得したという場合とはよほど違った趣きが生じてくるものと思いますので、もし防衛庁の造船契約の実施の上におきまして不正があったり、あるいは非常に会計上批難すべきような事態が発生するというようなことがありました場合には、これは経済的には保険によって補てんせられるかもわからないが、しかし、会計経理上の会計検査院的な批難されるような案件が発生するという場合には、これは、アメリカの会計検査院としまして、日本政府に向って相当な、何らかの要請もしくは主張がなければならぬと思います。今のお話によっても当然それは生じてくると思います。こういうようなことは、日本政府アメリカ政府との間の単なる物品の売買的な、私契約的な範疇に属する事態でないと思います。やはり、日本政府アメリカ政府との間に、政府政府間のいろいろな交渉、やりとりあるいはその他の意見の交換、協議、こういうようなことが発生する可能性は十分にあることと思います。こういうふうになって参りますると、やはり、この種の契約を取り結ぶ場合におきましては、もっと基本的な約束をしておくということが必要でないかと思います。あるいはこういうことにつきましてアメリカは何ら要求もしなかったのでありましょうか。アメリカ要求しないとすれば、協議の途上、下話の途上におきまして、そういう意見の交換、あるいは問題、あるいは疑義、そういったことがお互いに出されたのではないのでありましょうか。これはやはり国と国との今後のあらゆる事柄のやりとりの上におきまして根本的な一つの問題を持っておるものと私は考えざるを得ません。この契約の進展過程におきまして、もしそういういろいろな案件が発生するような場合には、当然これはやはりお互いの国と国、政府政府との間に新しい交渉をしなければならぬ事態になるのではないか、こういうふうにさえ考えるのであります。その点は、外務省におきましても、事外交上の関係にもなりましょうし、相当大事にこういうことはお考えになることが私は当然と思うのでありますが、いかがですか。
  183. 岸信介

    岸国務大臣 本件についての今日までの下話は、この防衛庁アメリカの担当官との間に進められてきたのでありまして、根本的な考えは、日本に委託して、そしてこれを調達するという考え方についての根本の話し合いは、できておるわけであります。しかして、今お話しのように、これがいろいろな履行するに途上においてもし適当ならざることが起りますと、それはいろいろな国と国との間の信用の問題にもなりましょうし、いろいろな問題が出てくることも、これは考えなければならぬ。しかし、それは国と国との私法上の契約でありましても、それが誠実にりっぱに履行されないというと、いろいろな問題を国と国との間にも生ずるという一つのことにもなると思います。いろいろな単純なる私法上の契約をしておっても、それの上におけるいろいろなクレームというようなものが出て参りますと、それが国と国との外交機関において話し合わなければならぬというような問題も、もちろんこれだけではなしに、諸外国との間にたくさんあるわけであります。従いまして、この契約ができましても、その契約の履行が誠実にまた正当に行われなければならぬということは言うを待たないのでありまして、いろいろなトラブルがそれから生ずるようなことのないように、契約を定める場合においても、具体的の内容をきめる場合におきましても、私契約において締結されなければならぬということも十分に考えなければならぬと思っております。  それから、いろいろの場合を想定して、将来のうまく行かなかった場合も頭に置いて、万全を期するということは当然でありますけれども基本的の話し合いとして、アメリカ側から今日までの下話の経過は、決して今御指摘になるような点について日本側についての特別の要求というものがあったようには私は聞いておらないのでありまして、そこはスムーズに今日まで話が進んでおる、かように私は聞いておるわけであります。
  184. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 そうしますると、造船所との間の契約上の財政的な面につきましては、これは日本の会計検査院が検査の対象にすることになるのですか、あるいはアメリカの会計検査院がこれを検査するということも可能であるのですか、その点いかがでしょうか。
  185. 小滝彬

    ○小滝国務大臣 日本の会計検査院の検査の対象になるのでありまして、アメリカの方はそういうことは干渉しないのであります。
  186. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 造船契約の方式につきまして、これは予決令によりまするとどの条項によってこれをなさろうとすることに大体今はなっておるのですか。
  187. 小山雄二

    小山政府委員 先ほど来申し上げておりますように、従来防衛庁の船は、純粋な随意契約といいますか、そういうやり方をとっておりますが、今回の船は、契約を急がれるような関係もありますし、また先方の要望もありまして、何らかの競争的要素を取り入れたいという話がありますので、いろいろ事情を勘案しまして、見積り合せ等の方法も考えて参りたい、こういう考えでおります。
  188. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 予決令には、随契の条件と一般競争入札の条件、指名入札の条件、みな書いて規定してあります。政府はこの法律によらずしては契約できないはずなのでありますので、それで御指摘を願いたい。
  189. 林修三

    ○林(修)政府委員 これは当然に予算決算及び会計令によってやることになると思います。予算決算及び会計令は、御承知のように、原則は一般競争入札でありまして、場合によっては指名入札でいきます。それから、随意契約につきましては各号の規定がございます。従来の防衛庁の造船契約で随意契約にいたしましたのは、あの一号で、契約の目的が競争を許さざるもの、あれでやっているように思います。
  190. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 法律の解釈をあなたに聞いているのじゃない。そういうふうにやっておりますということを聞いておりますということをあなたに聞いておるのじゃないのです。防衛庁自身の御方針を聞いているのです。
  191. 小山雄二

    小山政府委員 従来防衛庁で調達いたしました船の契約は、(「従来のことじゃない、今回の場合だ」と呼ぶ者あり)また今回の場合も、契約のやり方としては、その根拠は、予算決算及び会計令の九十六条の第一号、「契約の性質又は目的が競争を許さないとき」、この条項によってやって参るわけであります。
  192. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 九十六条の第一号であるならば、これはやはり随契であります。そうすると、あなたの方はやはり随意契約によるということを基本方針としておることに、これは間違いないわけであります。いろいろとさっきから潤色した言葉を羅列しておられましたけれども、これは随契でやることにきめておる。どういうわけでこれを随契にするのです。問題はそこなんですよ。どういうわけで随契になさるのか。長官、こんなことは責任を持って答弁しなさい。
  193. 小滝彬

    ○小滝国務大臣 私から指摘するまでもなく、この駆逐艦は戦前におきましてもずっと随契でやっておるわけであります。(「戦前の話じゃない、今日の話だ」と呼ぶ者あり)性能の高いものを買わなければならないという関係で、ただ一般入札によりますると、安く見積って手を抜かれるおそれもありますので、戦後におきましてもこうした随契によったのであります。もう一つ防衛産業と申しますか、この艦船の建造に必要な技術を修得させるというような意味におきまして、受注上技術の程度とかいろいろな点を考えまして、随意契約によって参ったのであります。今度は先ほど申しますように、結局厳格に突き詰めていえば随意契約ということになるかもしれませんが、できるだけ競争的な要素をそこに入れて契約をするということにいたしたわけで、こうした考えで進んでおるわけでございます。
  194. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 この場合九十六条は競争を許さないというんでしょう。契約の性質が競争を許さない規定によっているというのです。性質なり目的は競争を許さない。ところが競争的要素を入れるというんだから、それは矛盾しています。あなたの方では競争を許さないということを前提として契約をしようとされている、これが随契でございますね。競争を許さないというふうに、この場合の駆逐艦二隻をお考えになってやろうとしているのです。そうじゃないのですか。そうであるならばそうであるというふうに、一つはっきりとしておいていただきたい。
  195. 小滝彬

    ○小滝国務大臣 厳格に言えばそれは随意契約ということになるのでありましょう。しかし競争を許さないということは、フリーなコンペチションを許さないということに私どもは解釈しているのでありまして、その際競争的な要素を入れるということは、いろいろの業者が数社あればそれをよく精査して、それの見積りというようなものもとって、最終的な決定をする場合の重要な参考にするということで、私は競争的見素を入れるというふうに説明したわけでございます。
  196. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 競争を許さないということがこの九十六条の趣旨であることは明確なのであります。防衛庁はこの法律を左右する何らの権限もないわけなのでありますから、この法律によってのみあなたの方は随意契約ができる。ところが随意契約をすることについても、まだ十分の調査もしくは自信がないかのようなさっきの御答弁もあったわけなのです。しかし今はそうじゃなしに、この条文によって契約をするとおっしゃっておるのであります。一体随契をすることと競争入札にする場合との利害あるいは得失ということについても議論があると思います。あると思いますが、現状におきまして、日本の艦船建造の随契におけるあらゆる弊害、ことに船舶の設計協会等に依頼して莫大な経費を支払って、そこで設計をさして、そしてある特定の業者と組んでこれに随契をさす、そういったところにやはり艦船建造における幾多の弊害が指摘されておるわけであります。そういうわけでありますので、こういう場合にその辺までアメリカとの間に話をするということになったなら、もっと公開的な、もっと公明な方向へ契約を持っていかなければアメリカとの間に話ができない。でありますので、下話のいろいろな話を聞こうとするけれども、あなたの方は明らかにしない。前提になりましたところの協定等も作っていかない。作るべきかどうかについても十分に説明がない、こういうわけなのであります。大体今日の実情から見ましても、日本のこの随契がどんなに弊害があるかということについては、もうこれはいいかげんに反省もしていかなければならぬのではないかと思います。技術の指導その他等々とおっしゃってもあなたの方においては技術指導をする能力もないのだし、また特定した業者がむしろ設計上については優位にあるわけなのです。こういうわけでありますから、結局そういうところで原価がきまってしまう。だから相手に原価をきめていただいて、設計をしていただいて、そうして随意契約を結ぶというのが実情になっている。そういうようなことで一体アメリカとの間の話ができただろうかどうか。今日あなたの方が突如としてアメリカとの間に——突如ということは若干語弊があるかもしれませんが、会計年度もだんだん迫っておる。これは二千五百万ドルであったかと思いますが、アメリカの予算の執行上の年度が終らんとしておりますので、そういう辺のいろいろの要請があったかもわからぬ。あったかもわからぬが、やはりこれらは従来のようなあらゆる弊害がないような方向へ持っていくということが、一つの考慮でなければならぬ。もう一つアメリカとの間に、もっと公開的な公明な話し合いを進めていかなければならぬだろうと私は思う。そもそもそういう点につきまして日本の持っておる弊害の要素というものを、そのまま抱き込んで進んでいかれるのではないかというところに根本的な疑いを持っておる。これは防衛関係基本論ではありません。基本論ではありませんけれども、このたびの契約を扱っていく上におきまして問題としなければならぬ重大な点であろうと思うのであります。あなたの方におきましては、やはり数個の特定した造船所にこれをやらすということにあらかじめ予定はされておる、どうもこういうふうに推定せざるを得ません。今何らの下話もないのだというような御説明もございました。あるいは下話もないかもわからぬ。しかしながらすでに意中の造船所はあるというくらいなことは言えるでしょう、こういうふうになって参りますと、このたびのこの扱いにつきましても、将来不明朗なものが生じないとは断言できません。私は半面におきましてそういうことも憂慮するのです。そこで今の随意契約の点でありますが随意契約に終始するという場合に、造船所が、原価につきましてもあなたの方の設計によらないのでありますから、当然先方がきめてくるということが順序であろうと思う。そういうようになって参りましたときに、一体これはアメリカにおきましても、会計検査院は関与しないという御説明でございましたが、そういうことで納得するのでありますか、日本防衛庁が自主的に設計して、自主的に原価計算を立てるのではなくして、防衛庁が他人に委託して設計をしてもらう、その相手の設計協会の代表者が造船所の社長さんである、こういうような社長の造船所におきましてさらに詳細な設計をする、その方でむしろ原価を立ててくる、これをうのみにしていかなければならぬ、こういうような関係において、一体アメリカがそれで承諾するのですか、こういう点がもっと明確になっておらなければならぬと思うのでありますが、それはいかがでございますか。
  197. 小滝彬

    ○小滝国務大臣 先ほどから再三申しますように、設計協会に頼まなければならぬということは非常に遺憾ですが、しかしそれかといってあそこの理事長というのが、一々の設計に関与して自分の社へ持っていくというのではなくして、ああいう財団法人でやっておりますので、そこで年々理事長がかわって出てきておるということだけでありまして、御指摘になったほど、それほど大きな弊害があるというふうにも考えておりませんが、ただいま吉田さんの御指摘の点は十分心に体しまして、間違いのないようにやらせたいと考えております。
  198. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 そこであなたの方では大体あらかじめ予算を組んでおりますが、たとえば十二億七千万円といい、あるいは六十七億円といい、予算を組んでおる。そうしますと、その予算はトン何円、船体が幾ら、あるいはこれに対する汽罐が幾ら、あるいはその他の装備が幾ら、こういったことは大体もう予定はされておるのでございますか、予定をされることによってこういうような予算が出たのですか。そういう点はいかがです。
  199. 小滝彬

    ○小滝国務大臣 詳細は装備局長から説明した方がよろしいかもしれませんが、この船体につきましては、従来警備艦を建造しました実績並びに現在の物価というような点を考えて推算いたしまして、一応の予定額を作ったものでありますが、はっきりとわかった武器とかあるいは装備品の数量等の決定的でありますものについては、それについてそれぞれあるいは市価によるものあるいは特に推算を要するものは、それをよく計算いたしまして作ったものでございます。大体船体につきましてはトン百十万円くらいに推定しております。
  200. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 大蔵省当局に聞きます。大蔵省におきまして予算をお組みになるときに、積算の基礎といたしましてどのような計算がこれは立ったのでありますか。第一船体につきましてどういう数字がこれは組み立てられたことになるのでありますか。第一設計もまだできておらぬようなもの、わからぬようなものについて予算をお組みになったのでありますか、その点どうなのですか。
  201. 池田勇人

    ○池田国務大臣 防衛庁からの予算の要求に従いまして大蔵省が実際支出する時期、額等を考えて予算を組んでおります。こまかい問題については事務当局から説明いたさせます。
  202. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 今回の予算の計上に際しまして、防衛庁からの大体の予定計画に基きまして年度内に支出を要するものにつきましての要求があったわけでございます。その予定と申します点は、船価につきましても、これは大体の予定であるという意味で、これは今後契約をする際にはできるだけ合理的なものにするために、あらかじめそれできめておくわけには参らぬわけでございますが、大体の支払いの見当をつけるに必要な限度におきましては、予定があるわけでございます。それに対しまして年内にどの程度の進捗が期待せられるか、そういう点につきましては、防衛庁当局としてもある計画を持っておられるわけでございまして、これももちろん予定でございますが、その予定によりまして年内の進行率を計算し、その進行率によりまして概算十二億程度の支払いを年内に必要とするという検討の結果に従いまして、今回の予算の計上をいたしたわけでございます。
  203. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 ちょっとお待ち下さい。主計局長に伺いますが、防衛庁から出してきた予算見積り、それによって本年度支出の額をきめた。しかしながら三十五年に引き渡すということになっておりますので、国庫債務負担行為の内容あるいは大体の金額、そういうものもあらかじめ御検討になったろうと思う。ことに十二億七千万円につきましては、これはこまかい設計の基礎を御検討になっただろうと思う。それをせずしてこういうこまかい端数まで出ておる、十二億六千六十七万六千円という端数まで出ておる、こういう端数を出すについては相当こまかい計算があってその上で積算されたものであろう、こう思うのであります。どうですか。
  204. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 契約の方は六十七億何がしということで、債務負担の御承認をいただいておるわけでございます。これは設計とか主たる機関部の主機の製造であるとか、船体の建造であるとか、国産の主要武器であるとか、いろいろな部面に分れるわけでございまして、それぞれの項目につきまして契約をいつごろするか、そうしていつごろそれが完成するかという段取りにつきまして、大体の防衛庁からの見込みをちょうだいをいたしておるわけでございます。そういたしますと、年内にある程度くらいの進行率であるということが出てくるわけでございますので、その進行率と、それから六十七億という、これは概算と申しますか、限度でございますが、その限度の中のただいま申し上げましたような船体であるとか主機であるとか、それらの占める割合がございますが、その割合と、今の進行率と両方から年度内にどの程度の金を払わなければならぬかというような計算をいたしまして積み上げました結果、端数がついておりますが、それは今のような計算過程の結果出て参りましたのでございまして、現実に幾ら払われておるということは、もちろん今後正式に契約を締結いたしました結果によるわけでございますから、現在の予算は、ほかの予算でもそうでございますが、大体の見込みを基礎として積算いたしておることを御了承いただきたいと思います。
  205. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 今もう一度言って下さい。そうしますと見込みの内容を、おもなものでよろしいですから、何が幾ら、それだけ言って下さい、十二億七千万円のおもなものだけでいいです。
  206. 小山雄二

    小山政府委員 総額六十七億二千四百八十万円の中には、設計費、船体、エンジン、武器の製造、艤装費、それから公試、予備費すべて入っておりますが……。
  207. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 その経費を言って下さい。
  208. 小山雄二

    小山政府委員 この内訳につきましては今後……。
  209. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 ちょっとそれではわからぬのです。わかるような答弁をしてもらいたい。おもな費目、そしてそれに対するおもな金額、概数でいいのです。見積りでいいのです。
  210. 小山雄二

    小山政府委員 金額につきましては、今後下請業者と折衝する関係がございまして、中身はこの際御説明申し上げることを差し控えたいと思います。
  211. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 これは秘密だというのですか。国会では秘密も何もないでしよう。内容をおっしゃい。内容を言わずして総額だけ言うことは、そんな答弁の法はありませんよ。概数を言いなさい。
  212. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 ただいま私どもが積算をいたしましたやり方をお答え申し上げたわけでございますが、これは今回の例だけではございません。防衛庁の一般会計予算に計上してございまする艦船建造費、その他につきましても、具体的に主機が幾ら、造船部門が幾らというようなことを申し上げますと、今後契約の場合にできるだけ有利に、かつ低廉にというふうに考えておりまする方針の遂行上、若干支障を来たすようなこともございますので、せっかくのお尋ねがございましたが、内訳の明細につきましては、ここでお答え申し上げることを御容赦いただきたいとお願い申し上げる次第でございます。
  213. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 これはやはりつかんで六十七億円となし、つかんで十二億七千万円としておられるからこういうことになる。というのは、現に設計はできておらぬ。自分で設計をするのじゃなしに他人に設計をまかす。設計で基本設計ができ、さらに造船所にまかして具体的な詳細設計ができる。設計もなしに計算はできないはずなのです。そこで基本設計もなし、詳細設計もなし、そうしてこまかい端数の出るような予算が組まれている。こまかい端数の出る予算を組むためには、こまかい計算が積み上げられて合計になるわけです。こまかいその積み上げる予算の内容を聞けば、それはわからぬということになる。そんなこまかい端数の出る予算はどういうことになるか。やはりこれにつきましては国会として審議を求められておるのでありますから、詳細にそれにつきまして資料として出していただきたい。やはりわれわれはそれを検討してみたいと思います。やはりこれは単に数字の検討にとどまらぬのであります。やはりこれは防衛庁の予算というものが、今の設計もしないままに積算されておるというところに根本的な間違いがあると私は思う。こういう間違いを平気でのんでいったというところに、私はやはり大蔵省の行政的な予算の査定の上におけるあやまちがあった、こう思うのであります。やはり国会としましてはその点もただしていかねばならぬ。防衛庁が予算を執行する上におきましても、自分で設計もしない、詳細設計もなしで、そしてこまかい予算を組んだというようなことでは、これは国民は納得しません。こまかい予算が出た以上は、こまかい計算が出なければならぬ。そのこまかい計算は出せない、ないということであっては、一体これはつまんできて——六十七億円というものをつまんでおるのだろうか、十二億何がしというものをつまんでおるのだろうか、こういうことになるのであります。一体つまむようなことで、ようアメリカと相談ができたなということになる。もしそれが七十億だったらどうなるのだろう、五十億円になればどうなるのだろう。五十億円になれば、これは法律では返すということを予定しておるようでありますけれども、そういう点が全然根拠と客観性がない。またこまかい積算の基礎が明らかになっておらぬという上における予算ということであるなら、これは厳にこの十二億七千万円の予算のみならず、国庫債務負担行為におきましても同じような問題を包蔵しておるものと思います。やはりこれは予算審議としては明らかにしておくべき筋だろうと思います。防衛庁予算について、とかくその辺が明瞭でないということは、これは私どもほんとうに遺憾にしておるところであります。十分に資料を出していただきたい。それに基いて、これは明らかに審議を進めていきたい、こう思いますから、若干この質問を保留させていただきたいと思います。
  214. 柳田秀一

    ○柳田委員 議事進行について。ただいま吉田委員から指摘しましたように、国庫債務負担行為になるところの基礎資料が、なお本委員会に明確にされておりませんので、明日再開するまでに詳細出していただきまして、それによってわれわれはさらに慎重に検討したいと思うので、本日は吉田委員質問はこの程度で一たん保留いたしまして、明日さらにその資料に基いて続行するようにお取り計らいを、委員長においてお願いいたします。
  215. 池田勇人

    ○池田国務大臣 お答えいたします。資料につきまして検討の上、お気に召すかどうかわかりませんけれども、できるだけの資料を出したいと思います。こちらで予定計画を出しますと、実は契約のときに非常に困るわけでございまして、今までそういうことはあまりいたしておりませんが、こちらも困らなくてまた御納得のいける1近いくらいの数字を、検討してみたいと思います。
  216. 山崎巖

    山崎委員長 明日は午前十時より開会することといたしまして、本日はこれにて散会いたします。    午後五時四分散会