○矢尾
委員 私は
日本社会党を代表いたしまして、
政府提出による
昭和三十一年度
予算補正(第2号)外二案に対しまして、
反対の意向を明らかにせんとするものであります。
政府案の
一般会計予算補正(第2号)は旧軍人遺族等恩給費、義務教育費国庫負担金、
国民健康保険助成費、食糧管理
特別会計の繰り入れなど、三十年度
決算上の
赤字額と、三十一年度
赤字見込み額とを計上し、さらに沖縄
関係特別
措置費として十一億円を計上しているのであります、
政府案の
特別会計及び
政府関係機関の
予算補正は、この一般会計の補正に伴って生ずる補正であります。
一般会計予算補正の内容を拝見いたしますと、部分的にはわが党がさきに補正第1号に対する組みかえ要求動議として提出した案と、補正の内容が大体同じであります。私
どもといたしましては、旧軍人遺族等恩給
関係、戦傷病者、戦没者等遺族援護
関係、義務教育
関係、水産
関係、大蔵省
関係の非現業共済組合に対する支出と、国庫受け入れ預託金の利子支払いの
政府案につきましては、全く同
意見であります。ただし
国民健康保険助成費については、
昭和三十年度
決算不足額だけを補てんし、三十一年度には、明らかに事務費単価が低過ぎるために生ずる
赤字見込み十二億円余を全く無視しており、また
政府管掌健康保険の三十一年度
赤字見込みについても何ら補正を行なっておらないのであります。また国立大学病院に対する補正増額も十分とは申されませんし、さらに沖繩住民に対する特別
措置費は、わずか十一億円しか計上されておりませんので、きわめて不満足であります。少くとも社会党が組みかえ要求をした
ように、三十億円程度は確保すべきが当然であります、この
ように
政府案の内容の各部分を検討してみますると、部分的には私
どもと全く同じ
意見のものもあります。
それにもかかわらず私
ども日本社会党が
政府案に絶対
反対し、この返上を要求する理由は、第一に
予算補正に対する
政府の基本
方針そのものが、財政法の裏をかいた法の悪用であるからであります。(拍手)すなわち
政府は三十一年一度補正(第1号)において、産業投資
特別会計に三百億円を繰り入れております。この三百億円は、三十二年度及びそれ以降の産業投資の原資に充てられており、三十二年度における財政規模膨張の一翼をになっているのであります。
政府が三十一年度の
赤字見込みに対しても、
国民を納得させ得る
措置をとって後に、明年度以降の原資としての繰り入れを行うのであれば、これは一種の超均衡
予算として認められるべきでありましょうが、
政府は
食管会計の
赤字百六十一億円に対しては、食糧調査会の結論待ちと称して、何らの
赤字補てんを行なっておらず、むしろ消費者米価の値上げという結論の出るのを、首を長くして期待しているありさまであります。医療保険
関係について見るならば、先ほど申し上げました
ように、三十一年度に明らかに
赤字となる部分についての補てんを怠っているということであります。
国の
予算、特に一般会計
予算は、第一義的に
国民生活保障のための諸経費を計上するという大原則を
政府は曲げて、財政法を拡大解釈することによって、産業投資
特別会計に三百億円の原資を確保し、もって大企業本位の自民党
経済政策の円滑化をはかっているのであります。私
どもはこの
ような
予算補正の基本
方針には断じて賛成することはできないのであります。ただいま申し上げました
ように、
政府の三十一年度
予算補正は、財政法第二十九条第一項に規定する
赤字補てんを行うものではなく、同条第二項を乱用して、三十二年度以降の財政投融資
計画の原資充当を目当てにしているのであります。この意味におきまして、
政府案の三十一年度
予算補正は、三十二年度
予算編成の
方針に沿って編成されているのでありまして、三十一年度
予算補正といいますより、むしろ実態的には三十二年度
予算の一環としての性格が強いのであります。
しかるに、
政府の三十二年度
予算編成方針につきましては、私
どもが本日まで
政府にただした結果としましては、
政府は三十二年度の内外
経済の見通しについては、何ら明確なる説明ができないままであります。明確になったことは、三十三年度になれば、陸上自衛隊一万人の増強を行うという言質を、
アメリカ側に与えたという点だけであります。
三月十八日付の朝日
新聞の全国世論調査は、
石橋内閣に対するよりも、
岸内閣に対する
国民支持率は、八%も低下しております。読売
新聞の第百九十二回紙上討論は投書者の三分の二が解散を要求していると報告しております。これら
岸内閣の不人気、政策に対する不信は、何に原因しているでありましょうか、それは国鉄運賃、ガソリン税を値上げし、消費者米価の値上げのチャンスもねらっているという
政府の高物価政策の真意がどこにあるのか、
国民に
理解できないからであります。露骨に言えば、
政府の
予算編成は、目先の保守陣営の利益擁護にのみ奉仕しており、
経済自立と
国民生活安定については、何ら長期的展望のある政策を用意していないのであります。
わが国
経済に対して、最大の
影響力を持つ国際収支の見通しについて見るならば、三十一年度は、
政府の当初の予測では、
実質的には八千万ドルの
赤字、形式的には余剰農産物や外国銀行ユーザンスを含めて、六千万ドルの黒字になるはずでありましたが、本年三月に入ってからの計算によれば、
実質的には一億八千万ドル程度の
赤字、形式的には黒字なしの均衡すれすれという観測に変ったのであります。これで見ますと
実質的に一億ドル、形式的には六千万ドルも国際収支
関係は見込みが悪く変化したのであります。
政府の三十二年度国際収支の見通しは、この誤まった当初予測に基いて計算されて、
実質的には五千万ドル
赤字、形式的には均衡するというのでありましたが、衆議院の
予算委員会の開かれているわずか一カ月余りの間に、
政府以外の一般の観測は、
実質的には二億ドル近い
赤字、形式的にも
赤字と変って参ったのでありまして、
政府の
答弁も、国際収支の見通しはこうなるという説明ではなく、国際収支をこうしたいという願望に変ってきておるのであります。
次に、勤労
国民が
自分たちの生活を守るために、最も商い関心を持っている物価の動きについてはどうでありましょうか。
政府は明年度は卸売物価は二・六%、消費者物価は〇・九%の上昇にとどめるという予測を立て、いずれにせよ消費水準の伸びより下回るから、物価高による悪
影響はあり得ないと
答弁してきたのでありますが、最近の物価じり高は、
経済企画庁の週間卸売物価指数を見ますと、昨年十二月の平均一七〇・六に対して、三月第一週は一七三・九と三・三%もじりじりと上昇を続け、わずか三カ月の間に、
政府が三十二年度中に予測した二・六%という上昇率を上回ったのであります。しかも
政府は、国鉄運賃、ガソリン税を値上げし、電力料金、私鉄バスの運賃の値上げも認め
ようとしています。
池田大蔵大臣は、物価高要因はすべて企業努力によって、企業コストのうちに吸収せしめると
答弁されたのでありますが、今や四月を待って、セメント、化学肥料、ガソリン等重要商品の値上げは、すでに予約されているのでありまして、私
どもの身辺を見ますと、肉類、マッチに至るまで、すでに値上りしております。物価の根強い上げ歩調は、家庭の台所にまで侵入してきているのでありまして、
政府の物価見通しは、
予算執行の四月を待たずして早くも狂ってきているのであります。
もう
一つの重要な例を示しますと、
政府は三十一年度
予算補正による三百億円のうち、百五十億円を三十二年度財政投融資に加えてまで、一般会計及び財政投融資規模の膨張をはかっているのでありますが、これが金融にいかなる
影響を与えるか、私
どもが本日まで
政府を追究した結果としては、まことに悲観的な見通ししか立たないのであります。財政膨張による金融圧迫を警戒して、すでに三十二年度
予算の執行を前にして、市中金融
機関の貸出しは繁忙をきわめております。銀行側は再びオーバーローン状態に陥り、近日中に日銀の公定歩合引き上げと、高率適用制度の緩和を行わざるを得ない状態であります。これがすでに中小企業金融を圧迫していることは言うまでもないことであります。また財政膨張が、市中の起債市場も圧迫する実例としましては、九電力会社に課せられたる三十二年度分の新規開発及び継続工事の、合計五百九十三万キロワット
計画の所要資金三千百億円のうち、電力債の予定八百十億円のうち実現するものは、せはぜい六百億円程度と見込まれておるのであります。これでは生産増強に見合う電力の供給が、
計画通りにできなくなるばかりではなく、明年度の雇用吸収の面でも大きな狂いが生じてくるのであります。
政府はこれらの諸点について財政と金融、財政と
国民経済全体との調整をいかにはかるか、何
一つ私
どもを納得させる
答弁をしていないのであります。
この
ような三十二年度の膨張
予算に奉仕するために編成された三十一年度
予算補正に対しては、私
どもは
反対せざるを得ないのであります。
政府案の補正第2号において三十一年度
食管会計赤字補てんを行わず、医療保険
関係の
赤字補てんも不十分にしか行なっていない原因は、すべてこの
ような補正
方針にあるのであります。
従って
日本社会党は財政法上の法理論からしても、また
予算の内容から見た実態論としても、
政府提出の三十一年度
一般会計予算補正(第2号)外二案に対し、絶対
反対せざるを得ないことを申し述べまして討論を終ります。(拍手)