○水田国務
大臣 お説のように、自由競争というものは資本主義
経済の本質的なものでございまして、公正な競争によって
産業を発達させる、そうして業者の自由な競争に対して権力の介入を避けるということによって、
経済全体を発展させるというのが、私どもの
産業政策の基調であることは間違いございませんが、その自由競争の結果どういうことになるかと申しますと、やはり資本主義の本質的な問題であるだけに、ここにいろいろな問題が出てくると思います。やはり大
企業の集中主義、独占主義というものが当然起ってくるのですから、まずこれをとめなければならぬ。
産業の民主化とか、公正な自由競争を確保するというためには、この傾向をとめなければならぬというところから、独占禁止法というようなものが出て、大
企業側はそういう形で押えて公正な競争をさせようという法的な
制度ができておりますが、
中小企業となりますと、これはもうそれ自身本質的に弱いものであって、これの自由競争による振興ということになりますと、各
中小企業自体の健全化ということによって、競争力をお互いにつけさせるという
方向をとって競争するよりほかに仕方がないと思うのです。ところが、
日本経済の特質から見まして、今の
日本の
中小企業というものはあまりに弱過ぎる。これを振興するためにどうしたらいいかというのが、政治上の問題にもなってきていることは、御承知の
通りであります。従って昨年の夏以来、
政府は
中小企業の振興をどうしたらいいかという審議会を持って、各方面の権威者を集めてこの検討をして参りました。結局
中小企業の振興のためには、
企業自体の健全化をはかって、競争力をつけることが一番本質的な問題だ。そのためにはまず税制問題を考慮しなければならぬ。
税金の部面によってどういう公正な競争力を
中小企業につけてやろうか、この問題が
論議の中心でした。その次の問題は、
中小企業の税とあわせて、
金融をどういうふうにしてやったらいいか、
金融問題も
論議の焦点でした。それから第三番目は、
中小企業の労働問題をどういうふうに解決してやったらいいかという労働問題でした。第四の問題は、
中小企業自体の力をつけるために組織を
考えてやらなければならぬという、組織の問題がまた
論議の中心でしたが、その四つの問題のうちで、組織の問題に一番関心が向けられたのですが、それはどういう
意味かと申しますと、
企業の健全な競争力をつけようといういろいろな手段をとっても、現状の
日本の
中小企業というものを見たら、あまりにもひどい過当競争をやっている。この結果
中小企業自体がこれによってだめになってしまうという危険性があることが現状であって、これに対処するためには、
中小企業問題はここで組織化を
考えることが一番重要な問題だというのが、大体各方面の
意見でございましたが、特に
中小企業は、さっき申しましたように、競争に弱いから、協同組合というものを作って、
自分自身の競争力を増していくように協同組合というものを認めて作らせる。これは今まで
中小企業の組織体として法的に作られたものでございますが、それでもまだ足らぬというので、過当競争を是正するために、調整組合というものを安定法に基いて作らせる、こういう
措置が現在とられてきておりますが、この二つだけではとても足らない。両方の機能をあわせ行えるような新しい組織がほしいという要望も、
中小企業の中から非常に強く主張されてきましたし、またさらにわれわれが先年作った安定法というものは商業部門を一応除外しておりますが、除外しているために、問屋とか小売商が調整的な
仕事というものはやれない。従って乱売の競争をやって、そうしていろいろな
事態を起すことに対して有効な手段を持たないから、こういう部門にも調整的な
仕事ができる機能を立法的に与えるべきだというような
意見も非常に強く出てくるというふうに、最近の傾向は、競争によってお互いが生きることは、これはもう根本的な問題で、いいが、その競争があまりに現在ひど過ぎる、この過当競争を押える手段を自主的に講ずることが、
中小企業自体を守ることだという傾向が現在強く出てきておりますので、私どもとしては、そういう
事態に対して何らかの
措置をここでとらなければならぬ、こういうふうに
考えて、今この問題を研究しているところでございますが、自由主義
経済理論というものについて、これは全く私どもは同感でございますが、
日本の
中小企業の現状から見て、自主的な発意によってお互いが団結して、この不当競争を是正しようという
方向に対しては、
政府は法律的な保護を与えて、できるだけそういうことを許容していくという
方向に行くことが、今の段階としてはやはり
中小企業を守る
一つの
方法である。ですから、さっきおっしゃられましたように、まだ限界がきているという段階ではなくて、あまりにこの過当競争がひど過ぎるので、これをどうこれから少しずつ擁護していこうかという段階が、今始まっているというふうに私どもは解釈しております。従って、従来そういうことを考慮しても実際に効果がなかったというのは、やはりさっき、よくよくの場合という
言葉を申されましたが、このよくよくの場合というときになったら、ある程度員外の規制を
政府がしてやるとか、あるいは員外規制というようなものを法律的にやることは非常に問題だというのでしたら、場合によったら強制加入を命令して、そうしてお互いにきめさせるという体制をとらせるということにすれば、まだこれは員外規制というよりも、権力の発動としては弱い形になりますので、よくよくの場合というようなものも
考えた
措置をとっておかなければ、従来の
措置だけでは実際の効果がないということが、あらゆる層からも指摘されておりますし、
中小企業自体からもそういう要望を受けているというのですから、よくよくの場合というくらいの
考えまで盛った
措置をとるくらいのことが、今の
中小企業の現状から見て必要じゃないか、私どもの
考えとしてはそう
考えておりますが、しかしその基調としては、依然としてこの自由競争の体制をくずさない、そうして統制
経済というようなところに持っていかない範囲内で、そういう組織化の考慮をしなければならぬだろうと
考えておりますが、さっき申されましたように、傾向としては、そういう傾向であるということは、はっきり認めますが、必要によって生じた傾向であって、この傾向に対処する一定の策をとるということは、今あなたの言われるような本質的な問題に触れる問題とは
考えておらない、こういうことでございます。