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1957-03-04 第26回国会 衆議院 予算委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年三月四日(月曜日)     午前十時四十九分開議  出席委員    委員長 山崎  巖君    理事 江崎 真澄君 理事 川崎 秀二君    理事 河野 金昇君 理事 小坂善太郎君    理事 重政 誠之君 理事 川俣 清音君    理事 柳田 秀一君       今井  耕君    植木庚子郎君       宇都宮徳馬君    太田 正孝君       小川 半次君    上林山榮吉君       小泉 純也君    河本 敏夫君       坂田 道太君    周東 英雄君       須磨吉郎君    中曽根康弘君       野田 卯一君    橋本 龍伍君       福田 赳夫君    船田  中君       古井 喜實君    松本 瀧藏君       三浦 一雄君   山口喜久一郎君       山本 勝市君    山本 猛夫君       井手 以誠君    井堀 繁雄君       岡  良一君    勝間田清一君       河野  密君    小平  忠君       小山  亮君    島上善五郎君       辻原 弘市君    成田 知巳君       西村 榮一君    古屋 貞雄君       森 三樹二君    矢尾喜三郎君       吉田 賢一君  出席国務大臣         内閣総理大臣  岸  信介君         法 務 大 臣 中村 梅吉君         大 蔵 大 臣 池田 勇人君         文 部 大 臣 灘尾 弘吉君         農 林 大 臣 井出一太郎君         通商産業大臣  水田三喜男君         運 輸 大 臣 宮澤 胤勇君         労 働 大 臣 松浦周太郎君         建 設 大 臣 南條 徳男君         国 務 大 臣 宇田 耕一君        国 務 大 臣 大久保留次郎君         国 務 大 臣 田中伊三次君         国 務 大 臣 小滝  彬君  出席政府委員         内閣官房長官 北澤 直吉君         法制局長官   林  修三君         検     事         (刑事局長)  井本 臺吉君         大蔵事務官         (主計局長)  森永貞一郎君         運輸事務官         (鉄道監理局         長)      權田 良彦君  委員外出席者         最局裁判所         事 務 総 長 五鬼上堅磐君         判     事         (最高裁判所事         務総局経理局         長)      岸上 康夫君         日本国有鉄道総         裁       十河 信二君         専  門  員 岡林 清英君    ――――――――――――― 三月四日  委員小松幹君、滝井義高君及び田原春次君辞任  につき、その補欠として岡良一君、吉田賢一君  及び小山亮君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和三十二年度一般会計予算  昭和三十二年度特別会計予算  昭和三十二年度政府関係機関予算     ―――――――――――――
  2. 山崎巖

    山崎委員長 これより会議を開きます。  昭和三十二年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  質疑を続行いたします。須磨吉郎君。
  3. 須磨彌吉郎

    須磨委員 本委員会におけるいろいろな質問が出まして、大体出尽しておるやにも思われるのでごさいまするが、今日は、私は新しい内閣外交政策等について伺うのでございまするが、まず最初に大蔵大臣にお伺いいたしたいのでございます。  大蔵大臣の数次の御説明によりまして、わが財政収支、ことに国際収支問題等につきましては、すでに明らかになっておるわけでありますが、最近ヨーロッパにおきまして、御承知通り自由市場の問題でございますとか、あるいは原子力共同体と申しますかユーラトムと称せられるものができ上り、これが具体的になって参りまして、大体五月ごろには条約もできて、それが真剣に実施される運びになるかもしれないということになっておるのであります。けれども、これはもちろん将来のことに属しておりますから、何ともわれわれは、今からこれに危惧の念を抱く必要はございませんけれども、要するに国際的な問題となってきますと、御承知のようにヨーロッパは一億六千万かの人口を持っておりまして、さらに一億になんなんとする海外領土があるわけでありますから、そういうのと一緒になってこの共同体の制度、施設が行われるということになりますと、従ってわが東洋に対しましても相当影響があることは、今からでも想像にかたくないわけでございます。そういたしますと、自然そこにわが日本にも経済の波動が及んでくるのではなかろうか。さしむき一番われわれの懸念にたえませんことは、この結果といたしまして国際収支の上に何らかの変動、が起る危険はないのであるか。特に最近の情勢を見ますときに、最近の発表等によりましても、日本輸出がきわめて伸び悩んでおって赤字を見ておるという情勢は、今さら説明するまでもないのでございます。さようなこととも関連いたしまして、これは懸念にすぎないのではありますが、わが日本国際収支等に対しても、これがどういう影響を及ぼすことがあり得るか、またはないか、こういうようなことにつきまして、大蔵大臣から御観測を伺いたいのでございます。
  4. 池田勇人

    池田国務大臣 お答え申し上げます。欧州共同市場の問題は、以前からシューマン・プランその他の案がございまして、四、五年前から鉄鋼石炭につきましては、いわゆる関税をなくし、自由にする建前でいっておったのでございます。最近ベルギー中心になりまして、フランス、イタリア、西ドイツ、ベルギー、オランダ、ルクセソブルグの六カ国が、欧州共同市場のための条約案を今作成しつつあるようでございます。また物資交流を自由にするのみならず、資本あるいは労働力交流も自由にして、一つ経済単位として進んでいこうという考え方のようでございます。多年の懸案がここに実を結ぶと思われるのでございますが、まだ内容についてははっきりきまっておりません。条約内容がきまりましたら、われわれとしてもこれに対する対策を講じたいと思っておるのであります。いずれにいたしましても、この欧州共同市場案ができまして、六カ国がほんとうに力をあわせて生産増強、ことに原子力等につきましても共同してやるということになりますと、相当の力になると思います。御承知通りわが国は、この六カ国に対しまして大体一億ドルの輸出をいたしておりますが、今後これがどうなりますか、あるいは向うの経済力が伸びていけば、それに応じて輸出の伸びることも考えられますけれども、この点は今後十分注意していかなければならぬと思います。しこうして、この欧州共同市場ということは、生産増強をして、外国輸出をやるということになれば、それだけ日本としても強い相手を迎えなければならぬということに相なりますので、できるだけ早い機会に日本経済力を強化し、輸出力を増進する方策をとらなければならぬと思うのであります。現状といたしましては、お話通り二十九年、三十年と、相当国際収支の黒字を見ましたが、三十一年は輸出の伸びが衰えるということよりも、輸入が急激に拡張いたしましたために、三十一年度におきましては、予想に反しまして、ある程度赤字が出るんじゃないか。実質上の赤字が出ますか、ユーザンスその他によりまして、収支は同様かあるいはことによったらある程度赤字が出るかもわからぬ、こういう気持はいたしておりますが、この原因は主として原材料の輸入の急激な増加に基くものでございまして、私はそう心配する必要はないと思います。しかしこういう情勢でございますので、輸入をとめるというようなことは考えない、輸出の増進についてできるだけの措置をとる、税法上の優遇措置もとっておりますし、またプラント輸出その他につきましてもできるだけの努力をして埋め合せをしていきたい、こう考えておるのであります。
  5. 須磨彌吉郎

    須磨委員 よくわかりましたが、これに関連いたしまして、ただいまのお答えでも判断はつくのでありますが、当委員会のいろいろな質問におきまして常に問題となりましたのは、例の、インフレーションが起らないかという問題なのですが、これは起る見込みはないというお答えで尽きておったのでありますけれども、最近の情勢によりますと、だんだん物価上昇の気味が出て参ったというようなことに了解いたしており、かつ、たとえば百貨店の十二月における売上高のごときは、業者自身がきわめてびっくりしなければならぬような大きな売上高を示しておる等のことから、何とはなしインフレになるのではないかというような懸念が増してくる様子でございます。ただいまのお話によりましても、輸出がだんだんふえてきたために影響があるというお言葉もありましたが、私はただいまのことにも関連しまして、今まで大蔵大臣が本委員会お答えになった以外に、インフレに対する懸念の必要はないというようなお言葉を、もう一つ承わりたいと思うのでございます。
  6. 池田勇人

    池田国務大臣 インフレ論議は、予算審議におきましては常に問題になるのであります。今年は特に財政の規模が大きくなったから、その論議が強いようでございます。また片一方におきましては、国鉄運賃あるいはガソリンの値上げ等がございますのと、ごく最近に、すなわち昨年の春ごろから鉄鋼、木材の値上り、ことにまた年末から年初にかけまして、野菜、木炭あるいは正月用品等値上りが見えまして、いろいろ論議せられておるようでございますが、私は、物価の問題はずっと長い目で見ていかなければならぬと思います。卸売物価などを各国と比較してみますと、昭和二十八年を基準にいたしますと、卸売物価は、日本アメリカも、イギリスもドイツも、大体四%から六%程度上りようでございまして、その軌を一にいたしております。ただ日本は、六%上ったのが、三十一年の間に急に上ったものでございますから、そういう上り方をしておりますが、消費物価につきましては、日本が一番上り方が少い、こういう状況であるのであります。三十一年から急激に卸売物価が上ったのも、この原因は主として金属あるいは機械、特殊の物資に基くものでございますが、最近は、これが大体落ちついていっております。従って、長い目で見ればインフレを心配する必要はない。しかしこれは野放図にしておいていいというわけのものではございません。できるだけインフレを起きないように処置していけば心配はなくて済まし得る、こういうことでございます。従いまして政府の施策もインフレ防止通貨の安定、通貨の安定のもとの経済拡大、こういうことをやっていこうといたしておるのであります。
  7. 須磨彌吉郎

    須磨委員 よくわかりましてございますが、きょうはあとから外務大臣がおいでになってからもお尋ねをいたしたいと思っておりますが、わが外交というものを考えてほんとうに明るさを与えるものは、やはり移民の問題だと思うのでございます。先般も総理大臣から青年並びに婦人に対する希望等も述べられたのでありますが、その一つの大きな的となるのは、やはり移民問題の円満なる解決である、こう思うのであります。本年は移民問題に関連いたしまする費用といたしまして、外務省に十億円の見積りがあるわけでありますが、この移民がだんだんと進んで参りまして、海外委員会でありますとか、あるいは助成会でありますとか、いろいろな機関ができたわけでありましょうが、移民というものは、私は時を選ばなければならぬと思うのであります。先方受け入れ態勢のない国になりますと、幾ら日本が力んでみたところでだめなのでありまするから、今の現状といたしましては、何とはなし日本人に対する信用がふえ、また安心がふえて参っておる。それと同時に先方では労働力の足らないもの、技術の足らないものに対する要望が非常に出てきておる。いわば一つの潮どきであろうと思うのでございます。エクアドルでありますとか、新しい方面に非常な発展の見込みがあることが、わが海外移住株式会社等調査によっても明らかになっておりますが、本年のアメリカの三銀行からの借款に対するものとしまして、三百万ドルに対する利子補給だけは見積られておりますが、あの契約は千五百万ドル使えば使えるわけであり、私どもの仄聞いたしておるところによりますと、日本の方で使う道さえ立つならば、あるいは本年度に出してもよいかもしれないというようなことを申しておるようでありますが、果してしからば本年度内にさような空気が起って参りましたときには、今の約三百万ドルに対する利子補給のほかに、千五百万ドルの全部でないかもしれませんが、その幾分もしくは大部分を使うような場合には、それに対する利子補給を他の何らかの費用から、あるいはお出しができるというような準備があるものでございましょうか、それを伺いたいのでございます。
  8. 池田勇人

    池田国務大臣 海外移住問題につきましては、われわれも相当考慮いたしております。昨年度予算よりもある程度増額いたしまして、移住振興に努めておるわけでございます。しかし何分にも八億あまりを計上いたしましても、移民の家族といたしましたらごく少数でございます。百万人以上ふえる人口はけ品としてはごくわずかなものでございますが、しかしわずかにいたしましても、これをふやすように努力していかなければならぬと思います。お話の千五百万ドルについては、二、三年前に一応元総理吉田さんがお話になったようですが、その後この問題につきまして国内的にあまり熱意がなかったように聞いております。私はせっかくそういうふうな機運がアメリカにあるとすれば、これを早期に、そうしてもっとふえればふやしてもらって海外移住の促進をし、日本人口あるいはまた海外投資の問題を進めていきたい、こういう気持でおるのであります。千五百万ドルというのが五年間だったという説もありますし、一、二年という説もありまして、私は当時その衝におりませんで、はっきりいたしておりませんが、しかしこういう問題はもっとはっきりさせて、計画を進めるべき問題であると思って、一応三十三年度におきましては四百五十万ドル程度を予定しておるようでございます。私は一応そういう予定でございまするが、今後の海外移住振興のために外資が使えるならば、できるだけ使わしてもらった方がいいのではないかという気持を持っておることだけを申し上げておきます。
  9. 須磨彌吉郎

    須磨委員 ただいまのことで尽きておるようではございますが、私の聞いておりますところでは、元総理吉田さんがこのことに当られたときは、千五百万ドルは一ぺんに使おうじゃないかというようなお気持があって、先方もそのつもりでおったということでございます。現に問題になっておりますことは、黒田公使がパラグアイに赴任いたしまして、あれは八百万ドルかの調査費が出ておるようでありますが、その調査とともに、近く日本調査団があの方面に出るわけであります。調査の結果、たとえば土地の買い入れでありますとか、いろいろな方面において費用が要るということもあり得るということを聞いておるのであります。それでありますから、もしこの三銀行の方で千五百万ドルをことし中に全部出すというわけではないかもしれないが、相当額をそれから出すということになりました場合には、それに対する利子補給等をおやりになることができるか、その点を念を押しておきたいのであります。
  10. 池田勇人

    池田国務大臣 今、パラグァイの問題のネックになっておるのは、お金の問題よりも事業計画がまだできていない、六百万円の調査費を計上いたしまして、これから調査しようといたしておるのであります。もし伝うるがごとく鉄道を敷設するということになりますれば、これはもう三千万ドルぐらいは鉄道敷設だけでも要るのであります。昭和三十二年度にそういう調査ができましてからあとのことでございまして、まだ利子補給その他を考えることは、調査が済んでどこからどういう条件で金を借りるかということになってからで、この利子補給の問題は、まだだいぶ先のことではないかと思っております。海外移住会社の方にも十億円財政投融資から出しましたのは、先ほどお答えしましたような気持で組んでおることだけを申し上げておきます。
  11. 須磨彌吉郎

    須磨委員 総理大臣はまだなかなかお見えになれないのですか。
  12. 山崎巖

    山崎委員長 外務大臣は今、参議院の本会議におられるのですが、もう十分か十五分しましたらこちらへこられると思います。
  13. 須磨彌吉郎

    須磨委員 それでは続いて宇田国務大臣に御質問いたします。原子力の世の中になってきたということは、これはほとんど常識になっておるのでございますが、この原子力の発達は、むろん戦争というものはわれわれの考えるところではない、平和的利用のみについての話でございますが、それがだんだんに進んで参る。ところが日本あとから出たのでございますから、前途に幾多の困難が横たわっておることは事実でありましょう。宇田国務大臣就任早々五カ年後には八百四十万キロワット、十年後には千六百万キロワットというような発電力日本は持つことができるであろうというようなことで、一つの波紋を生んだわけでございますが、私はこれは一つのいい結果を生んでおるのではなかろうかと思うのであります。最近来ましたアメリカの雑誌を見ますと、日本の見方は決して大き過ぎるものではない、日本という国はコストは非常に大きいのであるが、必ずや平和利用についてのいい競争者になるであろうということを、スミスという人がフォーリン・アフェアーズの最近号に書いておりますが、私はそういうことからしましても、大いに日本はこの方面に力を入れなければならないと思うのでございます。最近の動向といたしまして、私は特に感じたのでございますが、御承知のごとく最近の政変において、英国は非常に困って、国防費も一割ないしは二割は締めなければならないとか、いろんなことに出っくわしておったのでございますが、ちょうど一月の十二日でございましたが、偶然私がロンドンにおりましたときに、その時期に際会をいたしたのでありますが、今度の政変においてマクミラン内閣が一番力を入れるものは動力であるということでもって、今までは動力相という、動力大臣というものは閣外の大臣であって、安く見積られておったわけでありますが、従来の閣内にあった大臣を二人ばかりおろして、動力大臣というか、これに燃料大臣でありますか、燃料相を加えて、一つ大臣にして閣内に入れるというようなことをいたしたことは、これを重く見た一つの現われでありまして、のみならずそれをやりますには六十三才かになります、党員でも何でもないリバプールの非常な実業家であるパーシイ・ミルズという人を貴族に上げて、上院議員にしてこれを入れるというような非常な動き方をしておるわけであります。アメリカはすでに十七年以来非常な計画を持ってやっておるのでありますが、英国は五年以来非常にやっておる、こういうようなことを見ますと、わが日本原子力に対する対策はいかにも弱過ぎるのじゃないか。もう少し強力な力の入れ方をしませんと、そうでなくてもおくれておる日本原子力でございますから、これはもう少し力こぶを入れなければならぬというように思うのでございます。  ところで私は具体的に伺いたいことが三点ばかりございますが、第一点はそのためには単に原子炉をどんどん入れるということも一つではございましょうが、それよりも大切なことは、各国の動静を見ますと、原子力に当ります技術者と申しますか、専門家と申しますか、そういうものをたくさん持つということが何よりも必要なわけであります。わが日本は何しろその点においてはきわめて貧弱でございますから、最近の情勢として考えてみますと、どうしても一番先に技術者の養成というものに力を入れる、従って各国にこれを派遣いたして、まずその道に通ぜしめるということが、すべての前提になっておるように思われるのでありますが、さような御計画をお立てになっておられるのか、まずもって承わりたいのであります。
  14. 宇田耕一

    宇田国務大臣 原子力関係ではわが国技術者はりょうりょうとしてほとんどありません。従ってわれわれは海外留学等につきましても、本年は八十名以上特殊の目的をもって、それぞれの研究分野をとりきめて留学させる計画を持っております。また海外から技術者わが国に招聘することも考えております。なお原子力発電関係についての研究グループは、民間にもそれぞれ持っておりますし、科学技術庁の中にもそれを組織的に研究をする方法を考えて予算立てております。そのほか原子力によるところの船の問題あるいは飛行機の問題、なおそのほかにアイソトープの国民生活への利用のためのいろいろな研究、それに必要な電子工学関係、あるいは高分子関係というような、われわれの想像のできないような非常な広い分野にわたって参りますので、挙国態勢をとらなければいけないような研究対象を持っております。従って政府だけではできない面がたくさんありますから、情報センターを作る、あるいは本年度においては原子力産業会議で、民間で六百社ばかりのものが原子力関係産業管理をやっておりまして、そういうものの中におきまして特殊研究部門を持たせ、助長させるなり助成をして、また政府の中に予算を組んで、相ともにこれを軌道に乗せるように、そういうふうな方法を講じております。なお今後もそういうことで進めたいと思って、予算の各方面にわたって配慮いたしております。
  15. 須磨彌吉郎

    須磨委員 その次に、初めて手をつける日本原子力平和利用でございますからやむを得ない面もあるかと思いますけれども、これは動力一つの根源でございますから、ある一国だけにこの原子力のすべてのことをたよるということになりますならば、あたかも日本石油資源でありますとか、石炭資源でありますとか、そういうものをある一国の専断にまかせると同じことになるのでありますから、これは初めから一つプランをお立てになって、プランメーシッヒと申しますか、科学的なプランをお作りになって、平和利用につきましてはどこの国とどうということはないのでありますから、一視同仁をもって処するところのプランというものを、あらかじめ立てなければならぬのではないか。従ってアメリカが十カ年計画立て、今また英国が五カ年計画立てておるようなことはまさにこれを意味する、われわれの先に行われた一つのひな型として、われわれはこれに学ばなければいけない点があると思いますが、そういうようなプランがお立ちになっておりますか、立てておやりになるという計画のもとにお進みになっておられますか、それを承わりたいのであります。
  16. 宇田耕一

    宇田国務大臣 原子力関係資源対策は、われわれとしてはまず国内資源の開発を第一と考えております。それには御承知のように、中国地方人形峠中心とする鉱区は相当埋蔵量が莫大なものがある。とりあえずわれわれの手元に参っております報告によりますと二百万トンであって、品位万分の五以上、こういうのが参っております。そのほかに宮城県、岩手県国境付近一帯、気仙沼市付近一帯、全国で数カ所ばかりのものをただいま調査中でございまして、国内産のウランをもってこの燃料対策解決に向いたいと思っております。そのほかにトリウム等調査もいたしております。それから東南アジア方面では、御承知のようにすでに日本トリウムや何かが入ってきておりますから、その入ってきているものから、ほかの原料を分析したその残りのものでも、最近四百トンくらいの中で七%くらいのトリウムが取れるということがわかっております。従って燃料対策としては、東南アジア各国の中で、そういう特殊の資源を持っておる国がありますから、そういう国とは特別の話し合いを進めたい。またウラン鉱につきましてはカナダに非常に広大な優良なものがありますから、そういう点につきましては国際協定を結ぶべきである、こういうように考えております。またウランとかトリウムだけでわれわれは満足するということはできないでしょうから、原子力委員会の中では、湯川博士を中心としての話は、何といっても重水素をうまく活用すること、水素の低温融合反応によって、本格的な将来のエネルギー源を海水から求めるということに進まなくてはならない、こういう話し合いもいたしております。従って日本の持っておるところの環境の中における特別の資源を、われわれの学問的な技術的な方法によって、どういうふうに開発していくかということでありますけれども、とりあえずは鉱石ウランないしはトリウム、将来は海水によるところの重水素というところにいくべきであるという、そういう計画で進んでおります。
  17. 須磨彌吉郎

    須磨委員 私どもはいろいろな方面から指針を謙虚な気持で受けなければならぬと思うのでありますが、日本原子力に対する外国の人たちの見ておる中に、一つの大きな指針があると思うのであります。それは十月十七日でありましたかにコールダー・ホールの第一期工事を完成して四万キロワットの電力の生産が成功したという機会に英国原子力公社、中央電力公社、南スコットランド電力公社と訳しましょうか、そういうものができて、その中にまた三つのグループの会社ができて、これが協力してやっておるということは、天下公知の事実であります。わが日本でも政府のやることに対して民間のかような会社が、これから林立すると申していいのかどうか知りませんが、たくさん出て参るかと思うのであります。ところがわれわれ民族の持っておる欠点の一つでありますセクショナリズムというものがあって、これがお互いに自分のなわ張り争いをしまして、いろいろな工事なり、あるいは計画がおくれることは、しばしばわれわれの見るところであり、このために戦争まで起してみたりするようなこともあるくらいでありますが、原子力という新しいことに向うのでございますから、ただいまのお話によっても想像はつくのでありますけれども、日本におきましても、英国が今立てておるかような体系は、そのまま取り入れられるかどうか知りませんが、日本に合うような体系を先にこしらえて、セクショナリズムが起らないような仕組みを一つ組み立てていくことが、非常に必要であると思われるのでありますが、それに対する御計画等がありましたら伺いたいのでございます。
  18. 宇田耕一

    宇田国務大臣 原子力関係の行政管理につきましては、必ずしも一律に行き得ないものというふうに考えております。ただ、障害を予防するという点につきましては、国家の規制をかなり強固に加えなければならない点がある、こういうふうに考えております。しかし原子力が産業全分野に及ぼす影響等を考えてみますと、これを簡単に国家規制、国家管理の中に全部入れていくということは不可能なものではないかと考えております。諸外国の例を見ましても、そういう取り運びに行きつつある。少くとも平和利用という面に関しましては、日本は三つの原則を今立てております。公開の原則、研究自由の原則、民主的自由、こういうふうな三つの原則を今立てておりますが、この三つの原則の上に立って、原子力の今後の管理をいかにするかということになりますと、国家管理にはなり得ない、こういうふうに思っております。ただいま研究中のものでは、発電に関するもの、あるいは原子力造船に関するもの、原子力航空機に関するもの、アイソトープを国民の全分野利用すること等から考えますと国家管理はせずに、むしろ民間の活発なる企業意欲を刺激するような管理方式が考えられなくちゃならないところに行くだろうと考えております。
  19. 須磨彌吉郎

    須磨委員 多少安心はいたしましたが、何しろ私は、原子力というきわものを言うのではありませんが、日本の今まで持っておった欠点の一つは、教育においても科学技術というものの教育が非常におくれておった。ここに起因するところの幾多の弊害が起っておることは万人の認めるところだと思うのであります。最近アメリカ原子力を始めてからというばかりではありませんでしょうが、アメリカの過去十年間の繁栄を来たしたということを、多少いろいろなものについて調べてみますと、おおむねこれは原子力の関係に帰することが多いというような結論を出しておる学者が非常に多いのであります。ちょっと見ましても、たとえば最近十年間にアメリカの一人当りの収入は八〇%ふえておるのです。つまり個人の収入というものは約倍になっておると申してもいいわけでございましょうか。十年前には労働者の一日分の収入が一ドル・九セントでありましたのが、最近においては一ドル九十八セントであるというような開きで、まあ八〇%ふえておる。それからまたこれをもう少し変えて見まして、一人当りの収入を全般の労働者以外のものについて見ると、やはり五四%の増になっておる。車の数に至りましては六一%ふえておる。全体の生産につきますと四二%ふえておる。個人の生産についても一九%、約二割ふえておる。そうして人口においても約一九%ふえておるという数字が結果としては出てきておるのであります。それで学者の比べたおもしろい例がございますが、この原子力というものが非常に大きな力になって、かような繁栄を来しておる、こう言っておるのであります。ソ連邦も原子力は非常に進んでおる。それから英国も、平和利用においては、あるいはソ連よりも進んでおるかもしれぬという見方が強いようでございます。ところがこれを比べていきますと、よそに出る力と申しますか、海外まで伸びる力というものを根本として見ると、アメリカは過去十年間において六十五カ国に対して援助を与えた額は六百三億ドルでありますが、ソ連が与えた額は十一億ドルにすぎない。すなわち六十分の一になっておる。こういうような比較を出しまして、原子力と国家の富及び収入ということの研究が、おもしろい方面にいろいろ発展をいたしておるのでございますが、私がかようなことを申し上げますことは、日本のこれから立っていきます動力源としては、どうしてもこの原子力にたよるということの以外にはないのじゃないか。またそのことに各国も目をつけまして、日本原子力の開発というものが必ずや大をなして、そして日本外交ということにも原子力というものがだんだん利用されてきて、これはいわゆる原子力外交という――初めてこんな論議が出ましたが、そんなものさえ書いて日本を特筆大書しておるのであります。かようなものを見ますと、われわれはほんとうに内に省みて恥しい。それに応ずるような気がまえを持って、政府並びに与党というものが当っておるかというと、これはほんとうに恥しい次第でございますが、こういうようなことを申し上げまして、私はどうしても根本的に言うと科学技術教育の振興ということでございましょうけれども、そういうような心がまえで企画庁長官においては何らか企図せられるような御計画があるでございましょうか。なかったならば、大いにさような意味における方向のことを、これから願いたいということを申し上げなければなりませんが、そのことをお伺い申し上げたいのであります。
  20. 宇田耕一

    宇田国務大臣 おしまいのところを聞き漏らしたのでありますが、もう一ぺん……。
  21. 須磨彌吉郎

    須磨委員 こういうことでございます。そういうようなわけで、原子力というものが国家の繁栄のもとになっておると見られている節があるわけでございますが、そういう点では、日本もこれからの発展の計画の重大なる基礎として、原子力に力を入れなければならぬということは、今申し上げた通りであります。そうすると、その根本である科学技術教育というものから始めなければならぬわけですから、そういうようなことに対して、原子炉を据え付けると同時に、一つ猛然と計画立てられる必要も一方においてはある。そういうような計画について何か御計画が立っておることがございますかということを承わっておる。
  22. 宇田耕一

    宇田国務大臣 本年度予算におきましては、日本原子力研究所が東海村にウオーター・ボイラー型の据え付を終り、それが六月から稼動いたすのであります。それで初めて自分たちの目の前でアイソトープその他を取り出して、そうしてそれを自分たちの技術で表明することができるようになりました。従ってそれに付随するアイソトープ学校を作ります。それから医療関係もそこに併置いたしまして、障害防止に関する医療的な研究はもちろんでありますけれども、むしろアイソトープを国民の医療方面に積極的に平和利用する方法はどうであるかということも、組織を作りまして、そこに学校を併置いたします。そうして学校を併置すると一緒に技術者の養成に取りかかる、こういうことを考えております。それでその教育をするのは、年々出てくる教十万の学生諸君に、そういうふうな新しい学問の方面技術を与えるために研究をするということについて、これは文部省と十分打ち合せをして、講座を設けるとか、あるいは指導員を配置するとか、三十二年度からこれを実行に移すことにしてありますが、なおわれわれとしては、特にこの際、既教育の大学の先生方、あるいは既教育で社会に出ておって第一線で働いているエンジニアの諸君、こういう人を総合的に、計画的に再教育をいたさなければならぬ。その基礎の学問を持っておりますから、そういう諸君を再教育をして、そして日本経済の中堅をなしている三十代、四十代、五十代という、その世代に応ずるところのエキスパートを再教育することによって、社会全部の技術の質的向上をはからなければならぬ、それを本年度はどういうふうにするかということを考え合せながら予算を組んで、その予算の上に乗っけて、原子力もそういうふうな再教育をはからなければならぬと考えております。
  23. 須磨彌吉郎

    須磨委員 総理大臣はまだですか。
  24. 山崎巖

    山崎委員長 もうしばらくお待ち下さい。
  25. 須磨彌吉郎

    須磨委員 どうも質問あと先になってなんでございますが、ここで休憩などをするとだんだん時間を食いますから、時間を節約するために休憩せずに伺いますが、私は一つ重点として伺いたいのは、これは外交の重大問題でありますが、この内閣経済外交で行くということを看板にいたしておるわけであります。これはまことにりっぱな看板ではありますが、さてしからばどういうことをやるのかということになりますと、まだこれは日も浅いことでございますから、どうもはっきりした観念がそこに出て参っておらぬのでありますが、きょうは一つここで、通産大臣もおられ、また大蔵大臣もおられるのでありますから、まず第一にアジア方面における経済の問題、こういうことについてちょっとお伺いをいたしてみたいと思うのであります。  最近の動向といたしましては、コロンボ計画もできました。また国連も経済援助というものをいたしておる。アメリカは御承知のように、これは重大な制度をもちまして、MSAと称してやっておるわけでありますが、こういうもののだんだん落ちつくところはどこにきておるかと申しますと、これは行政の面においても行政技術と申しますか、あるいは厚生、つまり病院でありますとか、そういう厚生の技術、行政の技術、そういう方をも含んでおるところの技術の展開というものが、非常に大きくなってきているように私は思うのであります。それで、一般に経済開発でありますとか、経済外交と申しまするが、どうしましても技術方面にしぼられてくるということは最近の形勢でございますから、私は、日本の方といたしましても、その点に集約されないかと思うのであります。そこで、経済外交をだんだんとしぼっていくと、技術というものにしぼられてくるのではないかということを深く考えるのであります。ところが、それを最近の例について見ますと、日本の方に東南アジアの各国から、技師というか、技術の修得をする技術者を招いてくるが、こちらからやるという成績が非常に芳ばしくないのであります。すなわち技術協力につきましては、あまり芳ばしいような状況にはなっておらないのでありまして、その点から見ますると、たとえばアメリカ海外援助計画としてやっておる中で、各国から技師を招くというような場合も、アメリカでありますとか、カナダでありますとか、そういう方面には技術者が千名も行っておるのに、日本には二十数名しか来ておらないというような現況にあるのであります。そこで、ちょうど総理大臣もお見えになりましたが、この経済外交というものの要点は、アメリカのまねをするのでも何でもありませんが、だんだんとしぼられてくると、日本技術というものの輸出にある。すなわち人といたしましては技師を送り出していく。その他、国に従ってプラントも出ましょうし、コンビネーションも出ましょうし、さようなもので経済外交というものがさしむきだんだんと進んでいくのが順序であろう、こういうようにまず私は考えられると思うのであります。この経済外交として知られている要目の一つとしてかように考えられることでよろしいのか、総理大臣からまず伺いたいのであります。
  26. 岸信介

    ○岸国務大臣 経済外交の推進につきましては、いろいろと皆さんお考えのことがあると思いますが、今御指摘の技術協力の面におけることは、きわめて重要な一つの項目であるのであります。御承知のように、すでにコロンボ・プラン等によりまして、東南アジア諸国における経済開発のために技術的な面から協力するという態勢もできております。また現に各国との間に、日本もこれらの国から技術者日本に連れてきて、これに対していろいろな技術を修得させる方法も講じております。しかしまだその目的が、これで十分というような状態でないことは言うを待ちません。しかし幸いに今日までの状態を見ますると、日本技術者で――これは非常に広いですが、農業技術、鉱山の技術、また一般の工業の技術者等で、東南アジア諸国やあるいは中近東の諸国に行った者の功績は、数はまだそうたくさんございませんけれども、相当に現地においてアプリシェートされております。今後そういう面において、さらにこれを強力に推進していくことが、経済外交の面から見ましてきわめて重要である、かように考えております。
  27. 須磨彌吉郎

    須磨委員 その技術外交経済外交の推進に当りまする機関というものは政府もあり、民間もあり、いろいろあるでございましょうが、予算面に現われてきている一つのものとしては、アジア協会が存在しておるのであります。このアジア協会は、できましたときに一つの約束をいたしておるのであります。それは、機械の照会でございまするとか、あるいは機械の宣伝でありまするとか、市場調査でありまするとか、あるいは技術の指導、海外におけるサービス・センターの設置、そういうようなことを書き上げておったのでありまするが、この過去の経験によりますると、もちろん出しておる金が不足していることもございましょうけれども、なかなかその効果が上っておらない。ところが、外国、ことにアメリカは、アジア協会というような名前になるかどうか知りませんが、本年から新たにそういうものを作って、大きな資本と大きなバックで、また再出発をいたすように聞いておるのでありますが、そういうものとだんだん太刀打ちをしていきまするためには、このアジア協会というようなものをもっと強化していくか、あるいはもっと内容を変えていくか、そういうようなことが非常に必要であろうかと思うのであります。この点は、予算審議に当りましても、予算を組みまするときにおきましても、すでに私どもが多少は論議はいたしてみたのでありますが、これは経済外交推進の一つ中心機関ともなっておる次第でございまするから、これに対しまして総理並びに外務大臣といたしましてのお考えを、まず承わっておきたいのであります。
  28. 岸信介

    ○岸国務大臣 アジア協会が今お話のような目的をもって設立され、今日まで相当な時日もたっておりますが、十分な活動がまだできておらないことを、私ども遺憾に考えております。政府としても、予算財政の許す範囲内におきまして、これに対する補助金を交付しておりますが、さらに民間の財界方面におきましても、この機関の活動をより強力ならしめるために、資金的な協力をさらに一そうされんことを私は希望してやまないのであります。  さらに、東南アジア諸国等に対する経済協力を、さらに一そう強力に推進するという意図のもとに、アメリカ側でいろいろなことが企てられておりますが、私は、特にこの技術面における経済協力は、日本が率先してやることが、日本の立場なり、日本技術力、もしくは日本の産業というものと、東南アジアの諸国の関係というものから見て、一番現地にぴったりくるものが多いと思うのです。そこで、アメリカの財的な協力、東南アジア諸国の開発に対する協力と、日本技術力とをうまく結び合せて将来協力するということが、さらに東南アジア諸国における経済開発なり、あるいはその地における経済力を強化する上に、きわめて有効な方法であろうと考えておりまして、そういう方面とも十分協力をしていきたい、こう思っております。
  29. 須磨彌吉郎

    須磨委員 この経済外交にまた先だつわけでもありましょうが、新しく岸内閣が成立いたしまして、いわゆる岸外交と申しますものが軌道に乗っていくわけでありましょう。ところが、それの冒頭に当って私は伺いたいのでありますが、よく岸外交は対米一辺倒の確立をするのであるとかいうようなこともいわれたりしているのであります。私の解釈するところによりますと、今の世の中になって、ことに日本は独立いたしたのでありますから、いやしくも一国が他国のためばかり思う外交というものはあり得るものではないと思う。すなわち、日本アメリカのためを思い、アメリカ日本のためを思うということもない。同時に、これはどういうことが外交の筋であるかといえば、二つをとりますと、二国がそれぞれ相互の利益になるところに初めて外交の筋が立って、それがだんだんに伸びていくのであろうと思うのであります。これはどなたも異論のないところであろうと私は思うのであります。従いまして日本とソビエトといたしましても、同様な相互の利益というものがだんだんと出てきますと、そこに外交の筋がどんどん立っていくわけであります。そういう意味からいたしまして、日米外交というものは、好むと好まざるとを問わず――日本は負けて占領されること十年に及んだのでありますから、そのために日本とのかかわりが、いわゆる相互利益というものがあるいは濃くなっておるかもしれません。その点で、いかにも日本が米国の外交を重んじなければならぬということは、自然と起ってくるかもしれません。けれども、ソビエトに対する外交でも、だんだんそれを積み重ねていくことによって、そういうことがまた起ってくるでありましょう。  そういう見地からいたしまして、その積み重ねる第一着手といたしまして、日ソ共同宣言ができた今日、しかもあの共同宣言の調印並びに批准に当って重大な役についておられましたグロムイコ氏が外務大臣になったのでありますから、この際において、日本とソビエトとの平和条約の推進ということに対して、あれは継続審議をするということになっておったのでありますから、さような意味合いをもってまず門脇大使の最初の仕事としてこれを打ち出していく、ここに私が先ほど申した相互利益というものが重なっていく第一歩ができてくるのではなかろうか。そうすることによって、岸外交というものが何もいたずらに一方に偏するものでないことをも明らかにする次第でもございますから、さようなことに私は考えるのでありますが、そういう気がまえがおありになるのでありますか。岸外交の構想の範囲をお示しになる意味合いをもちまして、御回答をお願いしたいのであります。
  30. 岸信介

    ○岸国務大臣 日ソ間の平和条約締結の問題につきましては、御承知のように、その核心をなすものは領土問題であると思います。この問題については、すでにロンドン及びモスクワにおいて彼我両国の全権の間に相当長い、しかも真剣な討議が続けられましたけれども、なかなか一致を見ない点であります。またこれは日ソ間において解決するのに最も困難な問題であります。しかし、われわれは、あくまでも従来の主張、またこれが国民的な信念になっております択捉、国後を日本の領土として、ソ連をして承認せしめなければならない、それでなければ平和条約というものはできないという段階にあると思います。今お話しの、あの一片の日ソ共同宣言によって、両国の国交の正常化、また両国の間のほんとうの相互の利益とか、あるいは相互の友好関係とかいうものの基礎が十分にできているとはなかなか言えないと思う。  そこで段階的に、まず大使を交換し、大使館においてそれぞれ両方の国の友好関係を進める。そうして日本としては、なおソ連邦内に残っておるもしくは消息不明である人々の状態を明らかにする、これにソ連政府が誠心誠意協力して、これを明らかにする。あるいは今東京で開かれております会議での漁業問題について、ほんとうに相互の利益を両方が考えて、妥当な解決をするとか、あるいはさらに通商協定を結んで通商関係を作り上げていく、こういうふうにして相互の利益というものが、お話しのように、両方で互いに認識し合われ、外交が軌道に乗り、そうしてこの領土問題に対する日本国民の考えというものに対してもソ連側でみな理解が生まれてき、初めてこれが解決できるというふうになると思います。従って今直ちに平和条約に対する交渉を再開して、この問題の解決をはかろうとしても、なかなかむずかしいと思いますから、そういうふうな段階を考えてこの問題を解決したい、そうして日ソ間の国交、友好関係をますます進めて参りたい、こう考えております。
  31. 須磨彌吉郎

    須磨委員 時間を正確に守るために非常に簡単にいたしますが、総理大臣が臨時代理時代であったと思いますが、そのときの演説の中に国際情勢は雪解けである、雪解けの中にもなだれがくるかもしれぬというただし書きがついておりましたので、私はただいまの国際情勢について論議をしようとは思わないのでありますが、とにかくただならざる情勢が日に日に動いておることだけは、だれもいなみがたいところだろうと思うのであります。ことにわが東洋の近いところにおいても決して油断のできないような情勢が展開されつつあるのであります。ところがわれわれの外交の根本は平和でありますから、平和というものを達成するためのあらゆる努力を払わなければいかぬ。その一番の大きな一つは、原子爆弾に対する問題でありまして、私は、ちょうど一日でありましたが、われわれの党を代表して、例のクリスマス島の原子爆弾実験の反対演説会に出たのでありますが、そのときの模様でも私は非常に強い印象を受けたのでありますが、われわれ日本はどうしても世界に向って原子爆弾の実験を禁止せしめ、かつ原子爆弾のもたらすところの影響からわれわれはのがれたいものであるということを言う一番大きなチャンピオンであるということは、これは間違いもないことであると思うのであります。そのクリスマス島における問題について、すでにきょうの新聞等にも載っておりますが、そこに抗議するところの船が乗り込んで、これに反省を促す、それには日本人ばかりでなく、ハワイの人も、英国人も、豪州人も参加するというようなことが出ておるのでありまして、今や日本が旗頭となって平和運動を起さなければならぬと思うのであります。このクリスマス島の原子爆弾の実験に対して二回にわたる政府の抗議があったようでございますが、細部のことはまだ私どもは知っておりませんが、あれには補償を要求せられておるわけでありまして、返事があったかどうか知りませんが、もしなかったとすれば、もちろんこの補償の責任は向うがとるということは自明の理であるというように、私どもは解釈してよろしいと思いますが、外務大臣としてのお言葉をちょうだいしたいのであります。
  32. 岸信介

    ○岸国務大臣 クリスマス島の原水爆の実験禁止につきましては、今お話しの通り、われわれは国を代表して、国民の意思を代表して強くイギリスに反省を求めましたが、第二回の抗議に対してはまだ返事が参っておりません。しかし私どもはあくまでもこの禁止を願うものであって、ただどうしても聞かぬという場合において、それから生ずる損害に対する一切の責任はあげてイギリス政府にあるのだ、こう断じておるわけでありまして、これに対して返事をよこさない以上は、私は、当然日本の主張をイギリスとしても黙認しておるものと見て差しつかえない、こういうふうに思っております。
  33. 須磨彌吉郎

    須磨委員 この一問で打ち切ります。先ほど移民の問題についてはすでに大蔵大臣からも財政面についてのお言葉をちょうだいしたのでありますが、一言総理並びに外務大臣に申し上げてその御意見を承わりたいのであります。移民はどうしてもこのいい機会に展開せしむべきほんとうに明るい大きな政策であると思いますが、それには明治二十九年に作った海外移民法というような旧式な――明治二十九年なんというのは大へんな前世紀でありまして、かような法律を今使っておるということは、私はほんとうに屈辱的だと思いますが、それにかわるべき移民根本法あるいは移民団体法等を早く作って、日本の大きな平和政策の、また経済政策の一環といたしまして移民を推進し、また移民というのはただ人が行くのじゃない、経済技術というものが行くのである、これは先ほどほかの大臣にも伺ったのでありますが、そういうような趣旨でお進めになるお覚悟がなければならぬと思います。それについては、移民と申せば農林省、運輸省、それから厚生省、労働省でございますか、そういうところがみな関係しているからというので、甲論乙駁、一つの規則をこしらえるためにも、長い月日と時間をかけて、結局はナッシングに終るということもあるのでございますから、一つこの内閣は、さような新しい意欲を持って出発をきれたのでありますから、この移民政策くらいは今の関係四省を打って一丸として、さような旧時代の思想から脱却をして大きな展開を示すという御決意をお願いしたいのでありますが、その御覚悟をちょうだいしたいのであります。
  34. 岸信介

    ○岸国務大臣 移民法の改正、新しい時代に合う移民に関する法制を整備することはきわめて必要であると考えております。外務省もこれを研究いたしております。今御指摘になりましたように、移民という問題は非常に関連するところが広うございまして、またこれらの協力をりっぱに得るにあらざればこれはできない。また外務省だけでいかになにしましてもできないことも当然であります。従って十分に関係各省と話し合いを進めまして、今の時勢に合った移民に関する法制をできるだけ早く国会に提案するように努力をしたいと思います。
  35. 須磨彌吉郎

    須磨委員 これをもって私の質疑を終ります。
  36. 山崎巖

  37. 島上善五郎

    ○島上委員 私は最初に岸外務大臣外交問題について二、三お伺いしたいと思います。この問題についてはすでにわが党の同僚諸君によって質問されまして、岸外交の方向がほぼ明らかになりました。自主外交をうたっておりながら、その実は対米追随と申しますか、向米一辺倒と申しますか、そういう色彩が一そう強くなったのではないかという感じすら持たれて、私ども失望し不満としておるのでありますが、この機会にあまり重複しない範囲で二、三お伺いしたいと思います。  その一つは、日本と北鮮との関係であります。朝鮮の人たちは、長い間日本の軍国主義的な統治に置かれて、独立を望んでおりましたが、日本の敗戦によってようやくその機会が与えられまして喜んでおったとたんに、国際的な理由によって、まるでなま木を裂かれるように南と北が引き裂かれてしまって、南北統一の強い要望にもかかわらず今日なおその統一ができない、むしろ一そう困難になっているような気がするのです。そうしてかつては同胞、互いに相はむという悲惨な問題を起している。今は休戦で表面上平静を保っておりますけれども、しかし李承晩大統領が武力をもって北鮮統一ということを呼号しております以上、いついかなる事態が起らないとも限らないと思うのであります。私どもは海の向うのお隣の国、そうして日本とはいろいろな意味において関係の深かった朝鮮において、再びそのような不幸な事態が起らないことを心から念願しておりますとともに、早く平和的な民主的な統一が実現して、そのような民主的な朝鮮と日本が友好善隣の関係を結ぶようにいたしたいものである、こう念願しております。  そこで私が伺いたいのは、今日日本は日韓会談等を通じまして、韓国との間にはいろいろ懸案の問題の解決を行おうとしており、さらに進んでは国交回復をなそう、こうしておるように見受けられますが、北鮮との間には何らそのような動きが見られない。北鮮の金日成首相は、日本との間に経済交流、文化交流はもちろん、進んで国交回復を希望しておるように私ども聞いておりますが、岸外務大臣は、北鮮との関係を今後どのようになさるつもりであるかということをまずお伺いいたしたい。
  38. 岸信介

    ○岸国務大臣 朝鮮と日本との関係は、私が申し上げるまでもなく、きわめて長い歴史的、また地理的に非常に密接な関係にあるものでありまして、これが今日のような状態であることはわれわれとしても非常に遺憾でございます。この意味において、私どもは朝鮮が民主的に統一されることも望ましいことだと考えております。またわれわれも長い間の懸案である韓国との間の問題もできるだけ早く解決したいと考えて、日韓の間にそれぞれ非公式な交渉をしておるわけであります。今日の状態におきまして、私は北鮮との間にそういうふうな交渉を開始するような意図は持っておりませんが、まず南鮮である韓国との間の国交を回復し、これとの間の懸案の問題を解決することが、日本にとって一番緊急であるという考えの上に立って韓国との間の交渉を進めていきたい、私はこう思っておりまして、北鮮との間には今直ちにいろいろな交渉を開始する意図は持っておりません。
  39. 島上善五郎

    ○島上委員 韓国とわが国の間にも問題があることは事実でありますけれども、北鮮との間にも話し合うべき問題がないとは言えないと思うのであります。貿易上の問題もありましょうし、また漁業上の問題だって全然ないとは言えない。韓国とは交渉するが、北鮮とは全然考えてないということは、私はやはり日本外交が片寄っておるという感じをどうしても強く受けざるを得ない。もし今の御答弁のように南と北が平和的に民主的に統一されることを希望しておるということであるならば、日本はやはり韓国と交渉を持つと同時に、北鮮とも友好関係を開始するための交渉を進めるべきではないか、こう考えるのですが、その点韓国とだけ交渉して北鮮とは全く――向うで今言ったように金日成総理大臣日本との交渉を希望しておるのに、そういうことに対して全く冷やかな態度をとっておるということは、日本外交が片方に片寄っておるということを言われても仕方がないのではないか、こう考えるのでありますが、重ねてお伺いいたします。
  40. 岸信介

    ○岸国務大臣 御説のように韓国との関係の懸案その他日本との関係におきましては、北鮮が日本に持っておる関係よりもより幾多の重要な問題を控えておりますし、また早く解決しなければならない、しかも解決がなかなか困難でありますけれども、問題を控えておるのであります。そうして北鮮と韓国との関係が今のような状況である場合において、私どもの緊切な、また一日も早く解決しなければならない問題を控えておるときに、いたずらに比較的関係の少いところと交渉することが、さらに韓国との交渉に支障を来たすというような、はなはだ遺憾な状態にある現状から申し上げますと、私は今北鮮といろいろな交渉をすべきときではない、しかし永久に北鮮とは一切口を聞かないとかあるいは交渉しないという問題ではありませんで、まず重要な緊切な問題を控えておる韓国との問題を調整して、さらに北鮮と話をしても決しておそくはない、かように考えております。
  41. 島上善五郎

    ○島上委員 李承晩大統領は事あるごとに武力北進統一ということを言っておる。これは私どもの希望する南北の平和的統一ということとは反対だと思う。そこで武力北進統一を呼号しておりまして、実際にもその準備をしておるのではないかとさえ思われるのでありますが、アメリカはもちろん武力北進統一といったようなことに対して今日直接に支持を与えているわけではありませんけれども、しかしもし李承晩が実際に武力北進統一を行動の上に現わすというようなことが起りましたならば、おそらく最近のアメリカ外交、つまり中近東や欧州に対するアメリカの態度から想像しまして、そういう際には何らかの形において韓国をアメリカが援助するのではないか、その場合心配されるのは、もしアメリカが韓国に対して軍事的な援助を与えるということになりますれば、この前の朝鮮動乱においても若干見られたのですが、日米安全保障条約並びに行政協定によって日本を防衛するためにといって、日本国内に多数設けられておる軍事基地を使用するおそれがあるのではないかということが一つ心配される。さらにもう一つ心配されるのは、その事態が深刻になりますれば、日本に対して直接間接に協力することを要請してくるのではないか。先般アメリカ極東空軍の指導のもとに日米間の共同空軍演習が行われたという事実を考え合せてみるならば、朝鮮にもしそういう事態が起ったならば、これは日本の周辺における防衛上の危機である、こういう口実を設けて、最悪の場合には日本の自衛隊の出動を要請するのではないかということを私ども心配するのですが、もしそういうような場合がありましたならば、私はきぜんとしてこれを拒否すべきものである。日本基地の使用はもちろんのこと、その他直接間接にせよ、そのような事態に協力するということはきぜんとして拒否すべきではないか、こう考えるのですが、岸外務大臣の御所見を伺いたい。
  42. 岸信介

    ○岸国務大臣 私は最近の国連の動きを見ましても、世界のどの部分においても直接武力が行使されるということは、国連は国連憲章の精神に基いてこれを防止するというような強い働きをしておると思います。私どもはこの国連に加盟した今日におきまして、また将来におきましても、あくまでも国連のこの考え方を中心にそういう事態をなくすることに努めるのが日本の方針でありまして、今日からいろいろの場合を想定して、想像的の条件のもとに日本がどうするのだということを申し上げることは適当でない。むしろ日本はあくまでも国連の精神に基いて、国連を中心として、日本の周辺はもちろん世界のどこでも武力が行使されることを防止するという精神に徹していくことを、世界の平和を増進する上から私は日本の使命としてやっていきたい、こう思っております。
  43. 島上善五郎

    ○島上委員 国連を中心として世界のどこにも軍事行動が起らぬように努力する、これはけっこうですけれども、しかしこの前の朝鮮動乱のときは国連の力で休戦になったのですけれども、アメリカに関する限りはきわめて積極的であったということが言えると思うのです。また最近の台湾と中国との関係についても、蒋介石の本土攻撃に対してアメリカがきわめて積極的であるというふうに受け取れる政策をとっておるように思えるのです。そこで私はそういうようなことを伺ったのですが、もう一つ伺いたいのは、御承知のようにアメリカは今日韓国との間に防衛条約を結んでおる、台湾との間にも結んでおる、日本とも結んでおる。このアメリカが台湾、韓国、日本と個々に結んでおる防衛同盟条約を、このごろはあまり言いませんけれども、かつて、私の記憶では一昨年だったと思いますが、ダレスがやがて東南アジア条約機構、SEATOのようなものを韓国、台湾、日本アメリカ中心にして、いわゆる東北アジア条約機構、NEATOを作りたい、こういう構想を漏らしておりましたが、私はただいまの岸外務大臣の答弁からしますれば、国連中心で行こうということであるならば、そのような構想をかりにアメリカが具体的に提起してくるような場合がありましても、日本としては参加すべきでない、そう考えるのでありますが、それに対してお考えを承わっておきたい。
  44. 岸信介

    ○岸国務大臣 地域的な集団防衛の組織につきまして、アジアにそういうものができた場合に日本が直ちにこれに参加するかどうかという問題は、日本憲法との関係もあり、私はそういう問題はむしろ国連を中心に、国連中心で行くということが世界の大道であり、望ましいことだという考えを私の根本思想としては持っておるのであります。今日アジアにおいてまだそういうようなことが具体的に問題になっておるわけでもございませんし、また一部におきましてはそれは自由主義国だけではなくして、この共産圏の国々も入れて、そうして集団安全保障の機構を作ったらいいじゃないかという構想もあるように聞くが、しかしそれらの問題についてはまだ現実の問題からいうと、中ソの間のあの同盟条約では日本を正面の敵としておるような条約が厳存しておる現状からいうと、それは私はまだなかなかできない問題だと思う。むしろわれわれとしてはあくまでも国連を中心に、そうして世界の平和、安全保障を進めていくという、まだこれにもいろいろな困難があることも私はよく承知しております。それも一つの理想であって、現実はなかなかそこまでいっていないことも知っておりますが、やはりそれに向って全力をあげるのがこの際望ましい方向である、かように考えております。
  45. 島上善五郎

    ○島上委員 国連中心にということはけっこうですが、しかし国連において――特に私ども先般の国連の総会においてもそう感じられましたが、アジア・アラブの国々と、岸外務大臣が今後一そう協調を強化していこうといういわゆる自由主義陣営、その指導国であるアメリカ、イギリス、フランス等とアジア・アラブの諸国との対立がしばしば顕著に現われる場合がある。そこで私は伺いたいのですが、岸外務大臣は、アジア・アラブの国々とも提携して参りたい、さらに自由主義陣営とも今までよりも一そう協調を緊密にしていきたい、こういうことを言っておられる。国連においてアジア・アラブの国々といわゆる自由主義陣営との対立がしばしば起っておりますが、こういうような場合に、どっちつかずのあいまいな態度をとるということは、日本としては国際的な発言力を弱め、アジアにおいて孤児になる、孤立してしまうという危険性が非常に多いと思うのです。私どもは、日本はもちろん自由主義陣営と協調するということも必要ないとは申しませんけれども、自由主義陣営とアジア・アラブが対立するといったような場合に、どちらにウエートを置くかということを考えますならば、アジア・アラブの国々と努めて行動を共にする、こういうことにウエートを置くべきではないかと考えるのですが、この点について外務大臣のお考えを承わりたい。
  46. 岸信介

    ○岸国務大臣 日本はアジアに位置しておりまして、われわれもいわゆるAAグループと称せられる国々の人々とは、歴史的にも民族的にもきわめて密接な関係があり、またこのAAグループの多くの国々が最近独立を獲得してこれを完成しようという民族的念願に燃えておる、この気持にはわれわれは全面的に同情をしておるものであります。しかしいわゆるAAグループと自由主義陣営、西欧陣営との国連内における対立の問題も、これは個々の問題を見ないというと、必ずわれわれはAAグループに味方するのだ、必ず西欧陣営、自由主義陣営に味方をしてこれを押えるのだということではないのであります。最近のアルジェリア問題に現われた日本の国連における態度も、最初はフランスは非常に日本の態度に対して不快を持っておったのでありますけれども、われわれはAAグループの主張を、しかも非常な極端な形でなしに、両者の間に適当な妥協点を見出せるように努めたことは、結局はAAグループの人も日本の努力を十分に認識をし、フランスにおいてもこれを認めてくれたというような事態もあります。従って個々の問題については、私どもは正しい、国際正義の見地からする態度をきめて、そしてその考えをもって、ある場合においてはAAグループを支持して自由主義陣営の人々にこの主張を通せしめる、あるいはAAグループの個々の問題についての主張が現状から適当でないと思うならば、AAグループに対して十分な説得をし、その緊張なり対立を調整していくのが私は日本の使命である、こういうふうに考えております。
  47. 島上善五郎

    ○島上委員 それではお伺いしたいのですが、岸外務大臣は今度の国会が終ったらアジア諸国並びにアメリカを訪問したい、こういう希望を漏らしております。その際私は、非常に何でもないことのようで大事なことは、岸外務大臣が一体アメリカを先に訪問して、アメリカといろいろの問題を相談してそれからアジアを訪問されるのか、アジアの国々を訪問してそれからアメリカを訪問するのかということは、これは非常に重要なことだと思うのです。私はやはりアジアの諸国を先に訪問して、アジアの国々と懸案事項についてよく話し合って、アジアの立場に立ってアメリカといろいろな問題を折衝する、アジアの平和とアジアの繁栄、こういう立場に立ってアメリカと話し合いをする、この心がまえが必要ではないか、この方針が必要ではないかと思う。そしてアジアを訪問する際に、私はアジアのうちで最も強力な国である中国、日本と国交を回復しておりませんけれども、中国にまず先に行って話し合いをすべきである。中国は、国交は回復しておりませんけれども、この前の戦争では日本が最も大きな被害を与えた国なのです。岸さんは東条内閣の閣僚であったばかりでなく、確か戦時中満州国の高い地位にあった役人として、軍部の大陸政策の片棒をかついだ一人でもあったと思う。そういう問題もありますし、私は、アジアを訪問する際にまず中国を訪問して、中国との間にほんとうに胸襟を開いて話し合う、こういうことが必要ではないかと思う。中国の方でも日本総理大臣が訪問することを歓迎しておる、こういうことですから、その点について承わりたい。
  48. 岸信介

    ○岸国務大臣 私は、東南アジア諸国に国会が終ったら行きたいということを、外務大臣として外交方針演説にも述べておるのであります。その後記者会見におきまして、アメリカにもたずねていきたいという意思を述べたことは事実であります。しかしそれの準備であるとか日程等につきましては、まだ何もきめているわけじゃございませんから、私としては十分諸種の事情を考えて適当な順序で参りたい、かように考えております。ただ、中共訪問のことの御意見がございましたが、私は今総理大臣として外務大臣として、中共を訪問する意思は持っておりません。
  49. 島上善五郎

    ○島上委員 これはしつこいようですが、単なる日程の問題ではないと思うのです。私はもし岸さんがアメリカへ先に行ってアメリカと話し合いをして、それからアジア諸国を回るということになりますれば、アジア諸国の受ける印象は、アメリカのアジア政策の片棒をかつぐために来るのではないか、もっと極端な言葉でいえば、いわゆる大東亜共栄圏のアメリカ版のお先棒をかつぎに来たのではないか、こういう誤解を生むおそれがあると思うのです。そこで私は単なる日程や順序の問題ではなしに、心がまえ、方針の問題として、アジア諸国を回ってじっくり相談をして、アジアの平和と繁栄をはかる、そういう立場に立ってアメリカといろいろな懸案問題について話し合う、こういう態度なり心がまえなりがほしい、これは単なる日程の問題ではないと思うのです。そこを私は伺っているわけなのです。
  50. 岸信介

    ○岸国務大臣 私はアメリカへたずねるということも、決してただアメリカにあいさつに行くという意味じゃございませんで、日米の間の諸種の懸案を解決する、私自身が外交方針でも述べておりますように、日米の関係のこの現状にはわれわれは決してこれでいいと思うものじゃない、調整を要する点が多々あるということを申しておる、それらの事態を解決するために行くわけでありますから、私は今島上君の言われるように私自身の念願としては、すでに外交方針で明らかにしたところは、東南アジア諸国を訪問したいということだけを述べておって、アメリカに行くということを述べておらないことからごらん下さいましても、私の意思は、東南アジア諸国との間の友好関係並びに懸案を解決することが、日本及びアジア諸国との間にきわめて大切であるということを考えておるわけであります。従いまして今日の気持も私のなにから言うと、アジア諸国をたずねたいという念願はそういうような意味からきておるわけでありますから、御了承願いたいと思います。
  51. 島上善五郎

    ○島上委員 私はこれは一つ希望しておきたいことですが、ぜひアジア諸国を訪問されて、アジア諸国と十分に話し合ってそれからアメリカへ行く、日本アメリカ日本とアジアという問題はみなそれぞれ相互に関連性がある問題ばかりですから、アジアの平和と繁栄という立場に立ってアメリカと話し合いをする、その心がまえに徹していただきたいということを強く御希望申し上げる次第であります。  次に具体的な問題を一、二伺いたいのですが、先ほど同僚須磨委員もお尋ねになりましたが、クリスマス島の英国の原爆実験の問題、これについて私は須磨委員が伺ったのと多少角度を変えて伺いたいのですが、昨日も日本の原水爆禁止協議会、いわゆる原水協といわれる団体ではこれに対して抗議船団を送る準備をしよう、クリスマス島のイギリスの実験地域にいわゆるすわり込みを行おう、こういうようなことが相談に上ったようであります。これについてはまだ最終的にきめたわけではありませんけれども、船団を送るには経費の問題もありましょうし、いろいろな問題がありますから、きめたわけではないようですが、もう早くもこれをきめる前に外国からそういうようなことに対する賛意を表し、あるいは提議をしてきている。イギリスの週刊誌のピース・ニューズからは原水協あてにイギリスの作家のレジナルド・レイノルズという人を中心に五人の人が身をもって実験をやめさせるために、そういうことを、日本で船の配置をするならば参加をしたい、至急回答をしてほしい、こういうことを言ってきておりますし、オーストラリアのストリート女史という人から、実験をやめさせるために国際的に協力して現地に乗り込むべきではないか、こういうようなことを言ってきている。また日本国内でも青森や高知やその他から、そういう場合には自分が危険を冒しても身をもって参加したい、こういう希望がある。けさの新聞なんかを見ますと反対の人もありますが、賛成の世論が強く盛り上ってきております。反対する人の意見を聞きますと、他にもっと強力な方法があるのじゃないか、そういう方法を見出すべきではないかという意味で、原水爆の実験そのものには日本国民が全部反対いたしておるといってもよろしいと思う。こういうふうに問題が具体的に国民の間で取り上げられてきておりますので、これに対して政府はどのようにお考えになっておるか。政府はすでに先ほどの御答弁では二度も抗議をし、二度目の抗議に対してはまだ回答が来ていないということでありますが、今の情勢から判断しますれば、今までの程度の抗議とか要請とかいうことではイギリスは強行するのではないか。そこでもし原水協できめたすわり込み船団を送ろうということになれば、これは非常に大きな問題になりますし、こういうことに対して政府がどう考えておるか、あるいはそれ以外にもっと効果的な、強力な手を政府が何か考えておるかどうか、これを伺いたいと思う。
  52. 岸信介

    ○岸国務大臣 イギリスのクリスマス島における原水爆核実験の問題に対しては、再度にわたってわれわれは条理を尽してイギリス政府の反省を求めております。同時にこれを公表して世界の世論の盛り上がることを私どもは期待しておる、実験のやめらるべきことを私どもも強く念願しております。今の船団を出して、そうしていわゆるすわり込み戦術に類した方法によってこれをとめようという方法でありますが、私はその気持自身には、――政府は今言っているようにあらゆる方法を講じてとめたいということを考えておりますが、しかしそういう方法が果して適当であるかどうかは、皆の良識をもってよく検討さるべきものであって、方法がないからといってそういう危険な方法に出ることが果して適当であるかどうかにつきましては、政府としては、私はその方法以外にないからそれがいいだろうということは申し上げかねると思うのであります。
  53. 島上善五郎

    ○島上委員 原水協の相談の経過を新聞で見ますと、原水協でも必ずしもこれをしゃにむにやろうと最終的にきめたわけではなさそうです。世論にも問うて見るし、他にもっと効果的な方法がないかということも検討してみるということです。これは政府がもし効果的な国民から信頼されるような手を打つならば、私はこういう思い詰めたことを民間で考えるわけはないと思うのです。これはほんとう政府に対する、少くともこの問題に対してはあまり弱腰だ、これからも何もやりそうもないというので、思い詰めた気持がこういうことになってきたのだろうと思うのです。そこで私は政府がこういう危険な方法にはあまり賛成できないというならば、政府としてはこういう方法を今考えている、こういう手を打つということがなければ、やはり国民の思い詰めた気持がこういう形になって現われてくるのは仕方がないと思います。そこで私は政府としてもっと積極的な有効な方法を考えているかどうか、一つ伺いたいと思います。
  54. 岸信介

    ○岸国務大臣 私はやはりこの問題については世界の世論、公正なる世論がこれを強くやられることが一番正しい点であると思います。今のああいう方法をとるという思い詰めた気持になっておられるという、また日本人がそうならざるを得ないという気持が、そういう気持自身が各地においていろいろな、また国際的世論の反響を盛り上げておるということについては、私は確かに相当な効果があることだと思いますけれども、現実にそういうことを実行することが果して適当であるかどうかは、政府としては私どもは非常に考えなければならぬ。ただしかしそれならこれにかわる何か有効な、必ずイギリスをしてやめせしめる絶対的な方法ありやと言われると、まあああいう方法をとってもイギリスはやるかもしれません、今のところ結局イギリス国内における世論がイギリス政府をしてあれをやめせしめる、国際的な世論のバックのもとにそういうことが起ってイギリス政府が考え直す以外には方法はないと思うのです。われわれ政府としてはイギリス政府に、今言うように条理を尽して反省を求めており、またこれに対して二度目の返事はありませんから、さらに二度目の返事をとるように交渉もしなければならぬと思っておりますけれども、必ずイギリス政府をしてやめせしめる方法ありや、有効なる方法ありやと言われると、私ははなはだ残念ですけれども、こういう方法をとったら必ずやめさせてみせるということを言い得ない。結局国際的世論を正当な方法で起さしめる以外には政府としては方法はなかろう、こう思います。
  55. 島上善五郎

    ○島上委員 国際的な世論を起す、あるいはイギリスの国内からも反対の声をあげしめるということはけっこうなことですが、それには私は原水爆の被害者であり、世界に最も強く訴えるべき立場にある日本がもっと強く出るということが必要だと思う。その日本が二度抗議をしたから、それでもやめないから仕方がありませんといって引っ込んでおるということでは、世界の世論もほんとうに強く盛り上らぬと思う。今言った抗議船団を送ろうということも非常にセンセーションを起しておりますが、こういう突き詰めた気持になったからイギリスの国内でも、じゃおれの方でも乗っていこう、諸外国でもそういう世論が起ってき、日本の国内でもそういう世論が強く起ってきているのである。やはり日本がこれに対する抗議の方法を強く打ち出すということが、世界の世論を喚起するために最も必要なことだと思う。今の御答弁からすれば、もう二度抗議して二度目の回答がまだ来ないからということでございましたが、二度目の回答で反省して、それじゃ考え直そうと言ってくれば非常にけっこうですけれども、最初の回答文から想像しますれば、どうもそういう反省の色が現われているとは思えない。最初の回答のごときは私もどうしても納得できない。日本国民もみんな納得できないと思う。それと大同小異の回答をもし出してきた場合に、じゃこれでもう打つ手は打ったからいたし方ありませんといって引き下るつもりであるか、もう一ぺん何らかの手をお考えになっているか、それを重ねてお伺いいたしたいと思います。
  56. 岸信介

    ○岸国務大臣 私はこの問題に関しては、日本政府としてただ一片の抗議文を出してそれでイギリスが聞かないからやむを得ない、二度も言ったから仕方がないというので引き下る意思は毛頭持っておらないということだけを、はっきり申し上げておきます。
  57. 島上善五郎

    ○島上委員 この問題はこの程度にしておきますが、ぜひとも一つ簡単に引き下るようなことのないように、国民がこういう思い詰めたことにならぬように、政府みずからが先頭に立って、国民の気持を代表して強く今後の阻止のためにやってもらいたいということを御希望申し上げておきます。  もう一つ外務大臣に伺いたいのは、例の南極観測船の宗谷の救出に関してであります。これは御承知のように、松本船長以下非常に苦労されて、家族や国民が心配をいたしましたが、結局ソ連のオビ号が出まして、三月一日に救出されて愁眉を開いたのでありますが、これに至る間の日本のとった措置と申しますか、どうも私どもふに落ちない。海上保安庁の島居長官の談によりますれば、二十日に松本船長に対して、近くを航行している外国砕氷船の援助を求めて脱出をするように指示した。さらに各国大使館の武官ともこの点に関して連絡し、打ち合せを済ました、こう言っております。近くを航行している砕氷船には二万馬力の米グレイシャー号があり、ソ連のオビ号もあるということを、この当時語っております。おそらく、これはしろうとではない専門家ですから、当時オビ号とグレイシャー号の宗谷との間の距離的な関係、すなわち救出にどのくらいの所要時間の距離にあるかといったようなことは、およそわかっておったはずだと思うのです。各国大使館の武官とも打ち合せを済ましたと、こう言っておりますが、一体これはどこの大使館と打ち合せをしたのか、私はアメリカだけではなかろうか、こう想像する。アメリカにはこの談話を発表した十九日に正式に救援方を要請しているようでありますが、ソ連の大使館に対しては、その一週間後の二十六日に法眼参事官を通じて初めて正式に救出方を要請しております。その前二十四日ごろには、はっきりと語っておるところによりましても、オビ号は三十二時間の近距離におる。グレイシャー号は十数日を要するところにあって、メルボルンの港へ入って油を積んでくると、早くとも三月十五日、おそければ二十日ごろになると、こういうことがわかっておった。それなのに今言ったようにオビ号に対してはアメリカに要請してから一週間たって、グレイシャー号が三月十五日か二十日でなければ宗谷に到着できないということがわかってからソ連に救出方を要請している。こういうところを見ますと、政治的な配慮は全然ないと、こう答弁しておりますけれども、どうも政治的な配慮がそこにあるような気がしてならない。要するにアメリカに対する気がねがそこにあったのじゃないか。もしアメリカの船がその近くにおったら、オビ号と大同小異の所要時間で来られるようなところにあったら、ソ連なんかには全然頼まないで、アメリカの力によって救出しよう、こういう考えがあったのじゃないか。それが、グレイシャー号はあまりにも時間を要するし、仕方がなくてオビ号に頼んだといったような感じを受けるのです。こういう問題は国境を越えて、イデオロギーを越えて、国際的な協力をすべき性質の問題ですから、そういう政治的の配慮、外交的な配慮をすべき問題ではないと思うのです。どうも前後の事情からしましてそういう感じを受けますので、その点を一つ伺っておきたいと思います。
  58. 岸信介

    ○岸国務大臣 この問題につきましては、今御指摘のような政治的な考慮がめぐらされた事実は全然ございません。ただ宗谷号がこちらを出発するに際しまして、米極東海軍といろいろ打ち合せをしておった関係もありますので、宗谷が困難に遭遇した場合に、まずアメリカ側に申し入れたというのが事実でありまして、決して今御指摘のような政治的考慮からこういうことをしたわけでは全然ないということを明確に申し上げておきます。
  59. 島上善五郎

    ○島上委員 どうもそうおっしゃられても私どもの印象からはぬぐい去ることができない。今後は一つそういうことのないようにしていただきたいと御うのであります。  次に私は政界、官界の綱紀粛正問題について伺いたいのですが、これは後ほど関係大臣から伺うのですが、その前に一つだけそれと多少の関係もありますので総理大臣に伺っておきたい。というのは先般の当予算委員会の分科会で、私が田中自治庁長官に衆議院議員の選挙区の議員定数と人口のアンバランスの構成の問題を伺いました。これは御承知だと思いますが、選挙法に五年ごとに直近に行われた国勢調査に基いて構成するを例とするとこうなっておる。ところが今日五年ごとどころではなくて、十一年たっておる。今の選挙区の議員定数と人口との関係は、昭和二十一年四月の調査に基いてやっておる。御承知のように戦後十年間の人口の移動というものは、普通の場合と違いまして非常な移動がある。そこで今日ここでは数字はせんだってあげましたからあげませんけれども、大まかに言っても、たとえば東京は二十八万について一人、山梨その他においては十五万内外で一人、さらにその東京でも、選挙区を分けて一区とか六区とか言えば、三十七、八方について一人、片方では十五、六万について一人、これではあまりにひど過ぎる。国民の権利を制約するものといわなければならぬ。これはどうしても是正しなければならぬ。田中長官は、この必要を認めて、近く提案したいと思っておる、こう答えられておる。そこで伺いたいのですが、このアンバランスを是正するということになれば、東京が十五名ふえる、その他がふえる。反対に二、三名減る県がたくさん出てくる、こういうことになる、これは容易なことではない。大へん苦労されると思う。そういうことに関連して一部にはふえるところはふやすが、減るところはそのままにしておこう、こういう議論が、特に保守党の諸君なんかでは出ているそうです。これはあまりにも筋の通らない話であって、人口に比例して基準をおいてやろうとするならば、減ったところは減らす、ふえたところはふやす、これが当然なことなんです。(「小選挙区だ」と呼ぶ者あり)それからもう一つ、今こちらでも声があったようですが、この機会にめんどうだから一つ小選挙区をまたやってしまおうじゃないか、こういう議論があるそうであります。しかし人口のアンバランスを是正する問題と、選挙区制そのものを検討するという問題はこれは別の問題なのです。去年小選挙区制ではお互いにずいぶん苦労しましたが、ああいったような党利党略、ゲリマンダーを再び賢明な岸総理大臣がやろうとは思いませんけれども、この問題は別の問題ですから切り離して、選挙区制そのものは十分検討するとしましても、切り離して、もう十一年もたっているのですから、この人口と議員定数のアンバランスの是正、訂正、これだけは急いでやるべきではないか、こう考えるのですが、この点について総理大臣はどのようにお考えになっておるか。
  60. 岸信介

    ○岸国務大臣 人口の非常なアンバランスから今の議員の定数を変更するという問題は、私は理論的にはまさに島上君のおっしゃる通りだと思います。しかし、また同時に、これは非常に困難を伴う問題でもあることは、これは私が申し上げるまでもなくよく御承知だと思います。十分一つ検討いたしまして、法の精神になるべく従うような形に持っていきたいというふうに私は考えております。十分一つ検討をいたしていきたいと思います。
  61. 島上善五郎

    ○島上委員 検討々々で、そういう抽象的の答弁は私は求めようとは思わなかった。第一議員の定数をふやそうという安易な筋の通らないそういう議論に対しては、議員の定数をふやすべきでないというはっきりしたそのくらいのことは言えそうなものだと思う。議員の定数は、外国の例を見れば日本よりも多いところもあれば少いところもあるので、四百六十七がいいか悪いかという議論があろうと思いますが、しかし、今日人口がふえただけ定員をふやして四百九十名にしよう、五百名にしようということは、私は必要ないのではないかと思う。その点と、それから問題になった小選挙区制をこれとからみ合せて出すお考えがあるかということを伺いたい。ただ検討々々だけでは私は納得できない。
  62. 岸信介

    ○岸国務大臣 小選挙区制と今の問題とは、島上君が言われる通り、私は必然的な関係はないと思います。この小選挙区の問題については別に私は私としての考えもございます。しかし、これは重大な問題でありますから十分研究しなければならぬ問題でありますけれども、今の問題と小選挙区とを直ちにからませてこれを解決するということは、私は筋が違うとはっきり申し上げていいと思います。小選挙区の問題は小選挙区の問題として別にわれわれは考究すべき問題である、かように考えております。定員をふやすかふやさないかという問題、この問題については、私は絶対にふやしてならぬとも実は考えておらないのです。そうかといって、安易な、これだけふえるからただふやしていけというような判断にも従いたくない。これこそ、私、検討々々で逃げておるというようにお考えになるかもしれませんが、ここで必ずもう定員は一人もふやさないのだということを言い切ることも、この問題を解決する意味から言うと、あまりにも法律的で政治的でないと思う。従いまして、そういうことを頭に置いて一つ検討していきたい、かように考えております。
  63. 島上善五郎

    ○島上委員 政治的答弁ばかりですから、この問題はこのくらいにしておきます。次に、政界官界の粛正ということですが、御承知のように、石橋内閣ができた当時五つの誓いという非常に威勢のいい公約を国民にした。その五つの誓いの中に政官界の綱紀粛正ということがある。これはまことにけっこうです。国民の望むところです。ところが、今までの鳩山内閣を見ましても、その前の吉田内閣を見ましても、言葉の表現こそ多少違いますけれども、これと同じようなことを言っておった。しかし、大ていは三日坊主に終ってしまって、これというまともな効果が上ったということは私は寡聞にして知らない。まあそのためであろうと思いますが、石橋内閣の政界官界の綱紀粛正という公約に対しても、ある新聞のごときは、これは権大僧正のから念仏だ、こういう皮肉を言っておりました。岸さんは権大僧正でないから念仏も唱えまいけれども、この種の公約は実際にこういうことをやるという具体なものがなければ、やはり三日坊主になってしまうと思うのです。行政管理庁の長官の足元に多久島事件が起ったり、長官自身が種馬だと称して競馬馬を買ってきたというような疑惑に包まれた問題がありましたが、これは前の内閣のことですから岸さんに伺いませんけれども、こういう問題は具体的にこういうことをやるという具体的な構想がおありだと思うのです。今までは三日坊主に終って何も目ぼしい公約を果していなかったという事実に徴して、今度五つの誓いのうちに勇ましくこれを公約した以上は、何らか今までとは違った構想がおありだと思うのです。その構想をお持ちでしたら、一つ総理大臣及び行政管理庁長官から伺いたい。
  64. 岸信介

    ○岸国務大臣 政官界の綱紀粛正という問題は、どの内閣も考えており、またこれは当然やらなければならぬ問題でございますが、なかなかその実が上らぬじゃないかというお考え、実際、過去のなにを見ますると、そうであります。また事際これを上げていく上におきましては非常にむずかしい問題が幾多あると思うのです。根本は、きわめてこれは抽象的なことになるのですけれども、やはり政界、官界を通じての一つの道義の頽廃といいますか、精神的な面がはっきりとつかまれなければならぬ。特に、私は、その点において政治家なりあるいは権力を持っておる者、政権を持っておる者の反省とその態度が非常に全体に及ぼす影響が強いと思います。私の党におきましては、綱紀委員会を作って、特にその点についてはわれわれみずからが自粛するのだ、まず第一はわれわれが身をもってやるのだという態勢を示して、そうして国民の納得し得るような方法をとりたいというのが根本の考え方であります。  なお、このいろいろな官吏の問題に関しますというと、もちろんそういう官吏の道義の問題もありますが、私はやはり、行政機構なり、行政事務をとっていくやり方なりに関連するものが非常にあると思います。あくまでも責任を明確にして、信償必罰の責任制を役人にはっきり立てるということも一つのやらなければならぬことだと思います。それから、できるだけ機構をやはり簡単にしていく、責任の所在が明確になるということが必要であろうと思う。私自身が実は長い官吏生活をしておったものでありますから、今日の官吏の事務のとり方を見まするというと、いろいろな大きな金の不正が起ってくるような事実が新聞等に見られますというと、それらの人がいずれも二十代かなんかの若い人であるということを考えますと、私どもの官吏の経験から見ると、そういう金を扱うのには、やはり役人としての修練を積み、官吏としての一つの経験なり考え方なりの固まったものでなければそういうことを扱わせない制度であったのが、このごろは非常に事務が多くなり複雑になった関係上、そういうことが簡単に扱われておるきらいが私は十分あると思います。こういう点については、やはり行政機構の問題なり、あるいは行政組織の問題、事務のとり方の問題にまで、この行政管理庁の方面において特に意を用いていく必要がある、こういうふうに考えております。
  65. 大久保留次郎

    ○大久保国務大臣 総理から詳しくお話がございましたので、私からつけ加える必要もないと思いますが、行政管理庁としましては、内閣の大きな方針に基いて監査を励行しております。しかし、いたずらに摘発第一主義をとりません。なるべく監査をして事務を改善する。改善ということに頭を置いております。第二番目は、やった以上は自分が責任をとる、責任主義に頭を置いております。第三番目には、事件を起さぬ、未然に防ぐ、未然に防止するという点を考えております。この点を基礎として監査を励行しておるわけでございます。  しからばどういう方面に監査の目を注ぐかといいますと、第一は重要国策であります。たとえば、三十二年度におきましては減税、これが重要国策であります。この方面に監査を励行していきます。第二番目には、非難の起きやすい事柄、たとえば、税金のこと、あるいは住宅政策のこと、あるいはただいま問題になっております食管会計のこと、あるいは国鉄のことというような、事件の起りやすい、非難の起きやすい方面に監査の目を注いで実行していかなければならぬ、こう考えております。
  66. 島上善五郎

    ○島上委員 どうも、せっかくの御答弁ですが、抽象的で、それではやっぱり今までの内閣と同じような轍を踏むのではないかと私は思う。そこで、午後同僚の吉田賢一君が質問に立ちますから、おそらくそれらの問題をもっと突っ込んで質問されると思いますが、あまり時間もありませんから、私は特に政界の綱紀粛正について伺いたい。  待合政治の廃止ということを確か石橋内閣でも言ったようですが、これも新聞を引き合いに出して恐縮ですが、さんさん待合政治をやって、今さら待合政治の廃止というのは、二日酔いをした日にもう酒はこりごりだからやめた、こう言うのと同じだ、こう言っている。私もどうもそういう気がしてならない。このごろまた三月か四月の党大会を前にして、あっちの会こっちの会と新橋や築地や方々で会合しておるようですが、それは自由党さんがやることですからあれですけれども、しかし、政官界の綱紀粛正ということから言えば、あんまりそういうところで会合されるのは芳ばしくないことだと思う。そこで、政界を粛正するのには、抽象的なことではなしに、やはり具体的に源をきれいにする。源が腐っておったり濁っておったりしたのでは末がきれいになるはずがない。その源というものは選挙です。きれいな選挙、公明な選挙を行う、それから政治資金をきれいにする、政治資金の出所、使い方をきれいにする、これが具体的にはどうしても必要なことではないか、こう思うのです。  ところで、この選挙のことですが、岸さんは解散しないしないと言っておるけれども、しかし、もう世間では、早ければ四、五月、おそくとも九月か十月解散があるものと常識的に見ておる。石田長官は、ここに見えませんけれども、はっきりと四月解散、五月選挙が筋であると新聞記者に語っている。その後言わなくなりましたけれども、それは党内、閣内で問題になったからしばらく言わぬでおこうというだけの話で、私はその石田長官の筋であるという確信はおそらく変りないと思う。とにかく解散が近くあるであろうということは世間の常識です。そこで、今盛んに悪質な事前運動が起っておる。法務大臣に伺いますが、法務大臣の足元で、この前の選挙で落ちた者が猛烈な事前運動をやっておる。これは現行選挙法に照らしても抵触するおそれのある事実が幾つもある。私はそういう事実を一々あげる煩にこたえませんけれども、これは法務大臣の足元ばかりではない。ほかに方々にありますよ。その煩にたえませんが、これはなぜこういうふうになっているかと申しますと、一つには、私は昨年のいわゆる国連恩赦というものが非常に災いをなしていると思う。昨年の鳩山内閣の最後の悪政だと私は思いますが、国連恩赦と称して選挙違反を、形式違反から悪質な違反、失格する者まで一律にパーにしてしまった。議員の失格といったら普通の刑事犯で言えば死刑の宣告にもひとしい一番極悪犯です。そういうものをみんなパーにしてしまった。そうして、やがてまた皇太子殿下の御結婚で恩赦があるだろう、こう予想しておる。今度は何をやってもいい、こういう気持が今候補に立とうとする者や運動しようとする者の中に充満しておるのです。少くとも金のある方面の方々はそういう気持でおると思われる。ですから、大胆不敵な事前運動をやっておる。私は一々の例はあげませんが、一つだけあげます。  せんだって川口で市長選挙、市会議員の補欠選挙がありました。その市長選挙のときに、その当時の市長は、今度は自分で立たないでこの次に衆議院議員に立候補すると言明している。そうして大野何がしという人の事務長をやっておる。その選挙の告示の一週間前です。すでに候補者もきまり、事務長もきまっておる。選挙法上の手続こそしないけれども、きまっておるときです。その市の自治協力会と農事組合の会長、副会長、三百四十何人かをバス七台を連ねて帝劇に招待して、帰りに船橋市の温泉に招待しておる。市の経費でです。御丁寧にもそれに選挙管理委員長が立ち会っている。選挙管理委員長が、この種の会合は選挙違反になりませんと、こういうことを言っておる。選挙違反になりませんから、皆さんたくさん飲んで下さい。候補者たる大野何がしもそこの場所へ行って大いにサービスしておる。これはこの前の委員会で同僚から指摘された。警察では調査をしますと、こう言っておるが、その後調査したかどうか、何も調査していない。警察でも検察庁でも何も調査していない。これはなぜかというと、苦労して調査しても、この前国連恩赦でみんななしになってしまった。苦労して引っぱってやってみても、この次もまた同じことになるだろうというので、警察でも検察庁でも全く熱がない。そういう状態なんです。  私は、この一つの事実から考えましても、この次の選挙は、もしこのままにしておいたならば大へんなことになると思う。それはもう金は使いほうだい、買収はしほうだい、金の選挙になってしまう。これは、今のうちにしっかりした対策立てなかったならば、もう大へんな手のつけられぬような選挙になるおそれがある。こういうことに対して、私は残念ながらあまり時間がありませんが、田中長官からもこの事実について多少伺いたいが、特に総理大臣は何らかの防止策をお持ちかどうか、また法務大臣にもこの点を伺いたい。
  67. 岸信介

    ○岸国務大臣 政界の綱紀粛正について、選挙を公正、公明なものにしなければならぬという島上さんのお考えは、私も全然同感であります。従いまして、今後といえども選挙の公正を考えなければならぬことは言うを待たないのでありますが、今いろいろ御指摘になっておるような事実に対しましては、法務当局その他と協力しまして十分それの対策立てたいと思います。
  68. 中村梅吉

    ○中村国務大臣 お答えします。選挙の公正を期することの必要でありますことは申すまでもございません。選挙の事前運動の制限、これらにつきましては、かつて選挙法の改正に当りまして、島上委員も熱心に各党の選ばれた小委員として御検討になりまして、その後百九十九条の二あるいは百九十九条の三を設けまして、寄付行為の制限等、立法措置等も十分講じてあるのでありますから、われわれといたしましては、これらの法条に照らしまして、努めて選挙の公正を期するために、事前運動等についても適切な取締りをするように、今後一そうの努力をいたしたいと思います。  なお、川口市で起きました事柄につきましては、法務省の刑事局におきまして事態の実態というものは一応調査をしてあるようでございますから、もし必要がございましたら刑事局長から答弁いたさせます。
  69. 井本臺吉

    ○井本政府委員 川口市におきまして自治協力会の方々を約三百名ほど川口市の費用において招待した事実につきまして、われわれの方で一応検討いたしたのでございますが、これは川口市の市の費用におきまして自治に協力した方々を一応その労をねぎらったという事情でございまして、ただいまのところ、これが何々候補の特定の選挙の事前運動であるというような証拠は明らかになっておりません。従って、引き続きさような点についてなお検討中でございますが、現在の状況では、事前運動の嫌疑はわれわれの方の立場からは薄いという状況になっております。
  70. 島上善五郎

    ○島上委員 それは、おそらく、直接その調べの衝に当る役人諸君が、さっき言ったように、またどうせ恩赦があってみなパーになってしまうというので熱意がないのだと思う。告示の一週間前に、候補者の事務長になると宣言しておる市長、この次に衆議院でやるという現職市長がその招待をして、候補者がその席に臨んで、選挙管理委員長が臨んで、選挙違反になる心配はないから大いに飲んでくれと言ったというようなことは、これは私の方にもっとこまかい事実もありますので、選挙法委員会でもさらにこまかく質問しようと思っておりますが、これは、私どもの解釈からすれば、どう考えても事前運動です。熱意がないから、まだ事前運動になるという的確な証拠が上っておりませんなんてとぼけたことを言っておる。もっと熱心に厳密に調査すれば、事前運動であることは明白だ。何も公示する一週間前に招待しなくても、いつでも招待できる。市長をやめてからでも招待できる。これは明らかに事前運動です。私はこれに対しては徹底的な調査を要求します。  それから、驚くべきことは、これは法律上問題があろうと私は思いますが、この前の選挙で買収という悪質違反に問われて失格した議員が、また立って当選しておる。これは自民党さんです。法律上どうあろうと、これは道義上許されないことだと私は思う。こういうことがどんどんやられることになったら大へんなことです。この前の国連恩赦というのは、実に選挙界を腐敗せしむる大へんな悪いことだったと思うのです。この次の恩赦を予想して大いにやろうとしておりますが、田中長官は、今後恩赦については審議会のようなものを作ってそういう点十分に国民の意見を参酌したいというようなことを言っておりましたが、私は、買収、供応というような失格に相当する、死刑に相当するような悪質違反は、恩赦の際に除外すべきものだと思うのです。この点に対してどのようにお考えになっておるか、総理大臣に伺いたい。
  71. 岸信介

    ○岸国務大臣 御質問がきわめて法律的な問題でありますので、私は法律的な審査をしなければこれは結論は出ないと思いますけれども、御趣旨の点につきましては賛成であります。
  72. 山崎巖

    山崎委員長 島上君に申し上げますけれども、お約束の時間が経過いたしておりますので、どうぞ結論をお急ぎ願います。
  73. 島上善五郎

    ○島上委員 須磨君が僕の時間を食ったので、どうしてももう少し――食わなければ一時に終るつもりだったのです。  そこで、私は一つ政治資金の規正の問題で最後にしますが、政治資金の規正の問題は、先ほど法務大臣は、この前選挙法百九十九条の二と三の改正をしました、こう言っておりますが、あの改正はまるでざるみたいなもので、穴だらけです。どこからでも漏るようにできておるのです。御承知のように、国または公共団体と請負いその他特別の利害関係のある者から選挙に関して寄付を受けてはならない、あるいは寄付をしてはならないということになっておる。選挙に関してという言葉がありますために、選挙に関してでないと言ってやれば何でもない。抜け穴がある。それから、今年の予算を見ますと国の財政投融資が非常にふえておる。私どもは、国が財政投資や融資や補助金、貸付金、利子補給といって特別の便宜を与えている法人から政党が寄付を受けるべきものではない、これは選挙に関してばかりではなく、寄付を受けるべきものではないと思うのです。国民の税金を片方で与えておいて、陰に回って寄付を受けてくるということは、これは疑獄、汚職の温床にななると思うのです。好ましくないことだと思うのです。そこまで改正しなければ政治資金の改正ということにならぬ。それをやってもまた抜け道を考えるだろうけれども、そこまでやらなければいかぬ。特に政治資金規正法については、これは改正しようというのが懸案なんです。この前、たしか昭和二十九年だと思いますが、例の国会が混乱したとき、疑獄、汚職があったとき、当時の五党が国民に自粛の申し合せをしました。そうして、自粛三法を実現しよう、こう約束した。自粛三法とは国会法の改正と公職選挙法の改正と政治資金規正法の改正である。法務大臣中村さんも私と一緒に公職選挙法と政治資金規正法の小委員をやって半年も検討しておる。国会法と公職選挙法だけはこの自粛三法の公約に従って改正しましたが、政治資金規正法だけはついに改正せずに今日なお懸案になっている。私は、国が国民の税金でもって財政投融資、補助金、利子の補給等々の便宜を与えている法人からは政党は金を受けるべきものではない、それを受けると疑獄、汚職の温床になる、こういう考えを持っておりますが、こういうような考えに対して総理はどのようにお考えになっているか、伺いたい。
  74. 岸信介

    ○岸国務大臣 政治資金に関する法制の改正の問題につきましては、私実はまだあまり研究をいたしておりませんので、法律的の何は申し上げかねますが、今島上君の御指摘になっているような、国と特別の関係があり、国からいろいろな恩恵やあるいは租税によるところの援助を受けるというようなものが、一つの政党なりあるいはある個人に政治資金を出すということは、私は、望ましくないことである、かように思っております。法制上どういうふうに整理されるものかは、もう少し研究して結論を出したいと思います。
  75. 島上善五郎

    ○島上委員 そろそろ結論にします。こまかいことはあとで当該委員会でうんと質問しなければなりませんが、私はここに昭和三十年二月の総選挙と昨年の参議院選挙のときの寄付を受けた党の支出と収入の詳細を持っておりますが、昨年の七月の参議院選挙では、自民党さんが三億八千八百十八万九千円という大へんな寄付を――これは選挙管理委員会に届け出たものだけです。届けないものも、志れたものも多少あるかもしれません。この前佐藤榮作氏は、五千万円だかちょっと忘れましたと言っておりましたから、忘れた口もあると思うが、届け出た口だけです。しかも、これを調べてみますと、個人は九百五十五万円でわずか三%、九七%は法人その他の団体、そうして、この法人その他の団体の中には、私が今言った、総理大臣が好ましくないと答えられた、国から財政投融資、補助金、交付金、利子補給等々を受けている団体が少からずあるのです。(「社会党へも少いけれども行っている」と呼ぶ者あり)いや、社会党にはない。そこで、どうしても今総理大臣が答えられたような趣旨に沿う政治資金規正法の改正、つまり政治資金を公明にする、少くとも国民の税金を与えているようなところから政治資金をとるというようなことはやめる、これはもちろん野党もそうですが、そういうふうにしなければ、政界の粛正なんというものはできないと思うのです。これについての御所見を承わっておきたいと思う。
  76. 中村梅吉

    ○中村国務大臣 ただいま御指摘になりました点は、政府としましても十分今後検討すべき問題であると思います。しかし、これは政党自身のことでもございますから、二大政党になりました今日、できますことならば、政党の間にも、小委員のような、かつて研究しましたような機構を設けまして、――先ほどお話のございましたように、各党から先年委員を出しまして検討いたしました際にも、今御議論のありましたような点はそれぞれ意見が出まして、他のつり合いとの関係、いろいろ労働関係、あるいは外国等の寄付金、こういうようなものとの関連もございまして、結局各党の意見一致を見ずに終っておる問題でございますから、われわれ政府側としましても、政府の責任において研究すべきものは研究を進めて参りますが、どうぞそういうようにして今後の研究に待ちたい、かように考えております。
  77. 島上善五郎

    ○島上委員 どうも抽象的な答弁で満足しませんが、そろそろ腹もすいてきたし、あとは当該委員会でもっと検討したいと思います。  ただ、強く希望しておきますが、この政治資金の規正だけは、自民党さんが関係が多いからどうこうということじゃなしに、ちゃんとやらぬと、今のようなざるのように漏る法律では決して政界の粛正はできないと思います。
  78. 山崎巖

    山崎委員長 午後二時より再開することといたしまして、暫時休憩いたします。    午後一時十二分休憩      ――――◇―――――    午後二時三十分開議
  79. 山崎巖

    山崎委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。吉田賢一君。
  80. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 外務大臣に伺いますが、最近、日本アメリカとの間の船舶貸借協定に基きまして、アメリカから新たに駆逐艦を日本に供与せられることになって、この事項が閣議決定を終え、目下双方の権利義務の関係等々について手続上の各般の折衝の最中と聞くのであります。果してそうであれば、日本アメリカに対してどのような義務を負うものであろうか。この駆逐艦の供与の内容は、日本の造船所でアメリカの資金で調達するという方式らしいのですが、このような結果、日本の負うべき権利義務等についてどのような関係に立ち至るのであるか。もし閣議決定、がいまだないとするならば、その間の情報としてでも国民は知りたいと思いますので御説明願いたい。
  81. 岸信介

    ○岸国務大臣 お答えをいたします。今御指摘のような問題は閣議で決定をしたことはありません。私の承知しておるところでは、防衛庁がアメリカ側と非公式に話し合いをしておる段階であると承知いたしております。
  82. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 岸さんの時間の都合もありますので、私は直ちに綱紀粛正の問題に入っていきたいと考えます。  今、岸内閣一つの大きな今国会における仕事は、国鉄運賃の値上げ問題の成功するかいなかにあるだろうと思うのです。しかし同時に、もしこのまま値上げを無理押しに実現することになりましたならば、おそらく私はあなたの内閣の大きな黒星になるのではないかと思われます。私はこの運賃値上げの当否、必要性の有無等を論議する前に、まずもって国鉄財政を粛正せなければならないと思っております。国鉄財政を粛正することは、同時にこれは綱紀の粛正なくしては不可能であります。この関係を十分に認識いたしまして、初めて私は経営の合理化にしろ財政の再建にしろ論議し得ると思うのであります。もしこの基盤をなす財政の紊乱ということを軽視いたしましたならば、運賃値上げがかりに多数党によって実現するといたしましても、おそらくは悔いを将来に残すこととなると思うのであります。国鉄運賃値上げを論議する前にまず綱紀を粛正せねばならぬ、こういう点についてあなたはどうお考えになっておりますか。
  83. 岸信介

    ○岸国務大臣 国鉄の運賃値上げの問題に関しましては、かねてより国鉄の経営の合理化の問題を検討し、今御指摘のようなあるいは綱紀問題に触れるものがあるかと思いますが、いわゆる広い意味における経営の合理化、ここにいろいろなむだやあるいは間違ったことがあるのを直して、できるだけ経営を合理的ならしめた上において、その最後に幾ら値上げすることが必要であるかというふうな研究の結果、運賃値上げの結論が出たものと承知いたしておりまして、もちろん今お話のように、国鉄の経営上あるいは不合理な点があるとか、あるいは綱紀問題に触れておる点があるということであれば、これを粛正し是正することはもちろん前提として考えなければならぬ、かように考えております。
  84. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 綱紀問題は、国鉄に関する限りにおいては実に根深いものがあり、またこれは単に国鉄の内部だけの問題ではなくて、外部との関連におきましても相当広範な根深い関係にあることは御承知と存じます。この問題につきましてはあらゆる面から検討いたしまして、粛正の実を上げていかねばならぬと考えるのであります。試みにたとえば財政再建の問題を検討しようといたしましても、いかにして多く収入をはかり、いかにして支出を節減するかということが直ちに問題になって参りますが、その前に、そのときに当面することは、例をあげますと膨大な固定資産の管理の問題があるのであります。世界一番の公共企業体である国鉄に限って、この固定資産の管理運用の問題をめぐりまして、かくもひどい乱脈がなぜこんなに長い間放置されておったか、こういう感を深くするのであります。あなたはこういう点は詳しく御存じないかもしれませんけれども、しかしながら、東京におられ、政治の中心におられて、この固定資産の管理の問題がいかに重大であるかということは、これは御認識にならなければなるまいと思います。この固定資産の管理について、たとえば収入の面から見て、これはわずかでないだろうか、こういうお考えならば、これはとんでもないことであります。収入が少いとか多いとかいう問題のほかに、この財産の管理をめぐりまして、あらゆる財政的な乱脈があるわけであります。たとえばこの間決算委員会におきまして、高架下の問題、特に新橋駅の百貨店問題を取り上げて論議をいたしておりました。なぜ粛正の実が上らないのか、なぜ粛正できないのかということをだんだんと追及しておりますと、ついに副総裁は暴力によってこれが妨害せられておるという事実を指摘なさるのであります。よろしゅうございますか。国会で暴力によって粛正の実が妨害せられると言われるようなことは、これはまことに聞き捨てがたいことだし、よくよくのことである。刑事局長がそばに列席しておりますので、刑事局長に聞いておいて下さい。たといそれがどういう形で現われるにしろ、国鉄が資産を守らんとするときに、合理的な経営をなさんとするときに、暴力がこれを妨害するというようなことを国会で発言せられるということは、これは大へんなことです。こんなことで一体国鉄の資産管理を全うし得るでしょうか。あなたはその席にはおらなかったが、ここに国鉄の財産管理をめぐりまして、きわめて深刻な泥沼のような腐敗と乱脈があるのであります。外から中においてあらゆる力が錯綜しておるのであります。こういう事実を明らかにするのでなければ、あなたの方で年間数百億円の増収を目ざして進んでいきましても、こういうところからみな漏れてしまう。国民はそう言っているんですよ。ざるで水を受けるようなことになる。この財政の紊乱のその一つの穴が固定資産の管理にあるのであります。現に神田の駅の高架下をめぐりまして、御承知と思いまするが、係長が今収容されております。前課長も逮捕されております。前後十人ほどの者が贈収賄の嫌疑を受けて、今逮捕され取り調べ中であります。三十年の五月には、国鉄みずからが五百件にわたって高架下を調査した事実もあるのです。その中にはいろいろな外廓団体が巣くっておりまして、そして国鉄に損害をかけておる。二重、三重、五重の転貸し、又貸し、それをやっておる。途中で利益を収奪しておる。中間搾取をしておる。それをまた、国鉄の者が入り乱れて利益の分け前を受ける。こういうことが三十年の五月に発見されておるのであります。そして名前も全部出ておる表がある。現に国鉄においてはそれを持っておるのであります。そのうち一部が現われたのが、この間の新橋の百貨店問題なのであります。こう見て参りましたならば、あなたは、経営の合理化をよく考えて、収支のことも、財政再建のことも考えて、そして値上げ問題の結論を得ておるというような考えでは甘過ぎますよ。本気に綱紀粛正をやろうとするならば、こういう問題がもし芽を吹いておるならば、少しでも出ておるならば、それは氷山の一角として、深くぐっと鋭く追究していくだけの熱意と、誠意と、努力と、真剣さと、勇気がなければ、綱紀の粛正なんということは百年河清を待つにひとしいことです。そんな念仏を国会は聞こうといたしませんので、こういうような最近のなまなましい事実をあなたに申し上げるのであります。暴力問題さえ国会に出たときに、あなたは総理といたしましてどうお考えになります。
  85. 岸信介

    ○岸国務大臣 私は、今おあげになりましたような事実は詳しく承知いたしておりませんが、しかし、言うまでもなく、国鉄は国鉄として、その不動産の管理等につきましては、あくまでも厳正に、公正に、かつ合理的にこれを行わなければならぬということは、言うを待たないのであります。その管理について不正があり、もしくは不合理な点があるならば、これはあくまでもその事実を明らかにして、これを是正するというのは、政府として当然やらなければならぬ、こう考えております。
  86. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 政府は、かつて経営調査会、あるいは運輸省におきまして、いろいろな諮問機関等々によりまして、いろいろと運賃値上げの問題も協議し、意見も聴し、答申も得ておるのでありますけれども、しかしながら固定資産の管理等をめぐりましてこんな大きな乱脈があり、綱紀の紊乱があるということについては、深く触れておりません。またいろいろな公聴会におきましても、国鉄その他政府が呼びました人は、その真相を知りませんから、うわさだけでは公けに発言をしておりません。従ってこれを究明するところは国会以外にないのです。町でやろうとしてもできないのです。警察なり検察庁も、それはほんに事件となって現われたものだけなんであります。国鉄がみずから手を下そうとするならば、暴力がこれを妨害するのであります。国会以外にないのであります。そこで国会におきましては、この事実を徹底的に究明いたしまして、それによってどんなに財産の管理上、収支の関係におきまして、国鉄財政の健全化のために寄与し得るか、こういったような数字まですっかり出しまして、それはよし十億になろうと、三十億になろうと、あるいはそれ以下になろうと、その総額は別であります。いずれにいたしましても、国鉄財政の将来のことを考えますときに、この種の問題については、まずもって徹底的に究明をしていくということが先決でなければなりません。でなければ国民は納得しませんよ。運賃だけ値上げして、全国の鉄道利用者からよけい運賃を、取って、そしてあらぬ方に流れていってしまうということ、乱脈があり、汚職があり、暴力があるということが国会で明らかになり、これに対する究明が遂げられておらぬというようなことで、国鉄の運賃値上げを決定することは、本末の転倒であります。前後の撞着であります。まずもって粛正をし、まずもって財政の再検討をし直さなければならぬ。深刻にこの種の方面から財政の再検討をしなければいけません。こういうふうな手段に出ることが私は順序としては正しいと思います。いかがでございますか。
  87. 岸信介

    ○岸国務大臣 先ほども申し上げましたように、この運賃値上げの問題に関しましては、これに関係して相当長い間、各般の権威ある調査審議を重ねてきた結論でありまして、もちろん高架下あるいは何に関する不動産の管理を合理化するという問題も頭に置いて出てきた結論でありまして、今御指摘のありましたような具体的な事例等は、これはあくまでも究明し、それを明らかにしなければならぬことは、私は言うまでもないと思います。しかし、この運賃値上げの問題そのものの大きな結論を、それがためにおくらせるということは適当でない。あくまでも、輸送が隘路になっておる現状から見ますると、国鉄の経営を健全、合理化して、そしてこの隘路を打開しなければならぬという大きな命題の前には、結論としては、私はそう動かす何はないと思うが、しかし今吉田さんがおあげになりましたような事態を決して等閑に付し、それを全然調査しないということは間違っておりますから、あくまでもそれは究明し、明らかにし、また将来そういうことのないようにすることは、当然考えなければならぬと思いますが、私は、運賃値上げの問題をそれがためにおくらすとか、結論をどうするという問題じゃないと思います。
  88. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 そこが根本的に考え方が違うのであります。国民に納得をせしめて、その上で正しい運賃の改訂をする。国民に納得せしむるということは何かといえば、疑獄あり、汚職あり、紊乱あり、財政が紊乱しておるということであれば――そもそも運賃値上げは、国鉄の財政問題がもとであります。国鉄財政が紊乱の結果正しい収支が行われておらぬ。財政の執行が正しくないということがありとして指摘されるならば、その大小は別といたしまして、これを検討するということが先決でなきゃならぬ。たとえば、雑収入という小さな費目がある。雑収入は、三十二年度予算によると、八十八億円になっております。そのうちのこの種のものの収入は、三十六億円ということになっております。しかし、三十六億円でも、これの管理運営のいかんによりましては七十億円になるのです。あなたはそういうこまかいことは知らないかしりませんけれども、今の新橋の百貨店でも、毎月百三十万円も鉄友会がふところに入れておったのです、中間搾取、中間利益を一つの小さな場所で。そのくらい利用価値があるのです。でありまするから私は言うのです。上野・新橋間を調査した先般の国鉄の調査結果を見ましても、ほんとうにりつ然とするのであります。ようもこんなにひどい状態がほったらかしてあった。現に、たとえば朝日新聞のそばの高架下に交通公社が借りている場所があります。これも転貸しです。二百五十万円の権利をもって小さな洋品店に貸しております。そんなことはしちゃいかぬのです。けれどもやっておるのです。月々五万円の家賃をとっております。こういうことなのです。ですから何十億円という雑収入をまぬがれておるということ。これを増収するだけでも数十億円生ずるのであります。数十億円を小さいとお思いになってはいけぬ。七十三億円の固定資産の増税も、現に運賃値上げの理由に述べておられるじゃありませんか。答申の実情を見ても、数億円ならともかく、七十億円をこえなければならぬということすら調査会の答申に出ておる。だから雑収入は、これを倍額にいたしましても、おそらくは三、四十億円はふえるのであります。これを小さしとすべきじゃありません。ですから、こういう問題をほんとう解決して国民に納得させなさい。そして終局におきましてどういうふうに運賃が改訂されようと、これはまた別の問題です。こんな問題をほったらかすということは、これは断じて間違いであり、本末転倒であります。あなたと考え方が根本的に違っております。運輸大臣、どうお考えになりますか、あなたの所管事項ですよ。この問題については、いいかげんになさったら全国民の恨みを買いますよ。どうお考えなさいますか、この問題については。
  89. 宮澤胤勇

    ○宮澤国務大臣 お答えいたします。ただいま御指摘になりました国鉄の固定資産の運用につきまして、あのような不祥事の起っておること、これは今回に限らない、数年前からもときどきそういうことが起っておりますが、まことに遺憾にたえないのであります。たといいかに多くの人が従業しておろうとも、かくのごときことの起るということは、やはり私どもとして国民に対して申しわけない。ことに国鉄運賃値上げをするというこの機会にこういうことの起りましたことは、なおさら申しわけないと考えておる次第であります。また、もちろんこれに関しましては、国鉄当局においてもなおざりにしておるわけではないのでありますけれども、しかしながら、ただいまお話のように、こういう席上においてお話を承わることは非常に刺激となって、実際これにまた刺激されまして、特にいろいろな手を打ってもおるのであります。ことに国鉄の資産の権利が生じて、又貸しを幾つもするということには――実はこれは国有財産もそうだそうでありますが、国鉄の資産を貸しますときには、いつでも期限なしに取り上げるという約束になっておる。そのために貸賃を安くしておる。市価というか、つまり普通の値段で貸しますと、取り上げるというわけにいかないのですけれども、安く貸しておるから、いつでも取り上げられるという約束になっておる。そういうことからいろいろな事柄も起ってくるので、これに対してはやはり相当に改めなければいけないのじゃないか。御指摘のように普通の市価をもって貸せば、それは収益も相当上ってくる。しかしそれはそのままその権利に移ってしまう。国鉄が必要なときにこれを取り返すことができないというようなこともありまして、非常にこれは考え直すべき問題ではないかというようなことも考えておるのであります。ただいま御指摘になりましたような点に、私どもは決して弁解もなにもない、すなおに承わってこれに対処しなければならぬということを、実は苦慮しておるのであります。御期待に沿うような運びをいたしたいと考えております。
  90. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 それなら伺いますが、国鉄の有力なる旧幹部がいわゆる外郭団体と称せられるものを作って、これが上野――新橋間の最も利用価値の高いところの土地を借りて、又貸しし、権利を譲渡するという例がずいぶんたくさんあるのであります。今あげました新橋の例もその一つでありますが、こういった国鉄に損害をかけ、いつでも取り上げられる約束によって借りておるにもかかわらず、契約に違反してこのような不都合なことをいたしましたすべてに対しまして、直ちに断固これを取り上げるという処置をして粛正したらどうですか。それを約束できますか。
  91. 宮澤胤勇

    ○宮澤国務大臣 あれだけのものを貸して、それぞれ仕事をしておるものを、今ここで直ちに取り上げるということを、原則的に、一般的に取り扱うことは困難であろうと思いますが、しかし事実御指摘のような、約束に反する又貸しのようなことをするような行き過ぎたものに対しては、これはそういう処置をとらなければならぬと思います。この点に関しましては、一つ国鉄を激励いたしまして、御期待に沿うような成績を上げるよう努力してみますから、一つしばらく時日をかしていただきたい。
  92. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 前の石橋首相は、第二の誓約として綱紀粛正を叫びました。あなたも強い意思を持って綱紀粛正をすると言っておられる。それならば、このような重大な綱紀の紊乱、国鉄に損害を加えられておる醜事実、これにまた汚職が続出してきた、こういうような事実につきましては、断固粛正したらいかがです。たとえば外郭団体と称するものがあって、これが国鉄に損害をかけておる。国鉄との契約に違反して、蟠居しておる、こういうような状態がずいぶんあるのであります。これは私自身の創意でもなんでもない、国鉄の調べた結果によれば、すなわち、三十年五月十日、東鉄の管理局長が調べたところによれば、上野――新橋間には、たとえば日本交通文化協会、運輸故資更生協会、鉄道機械熱処理工業会社、鉄道興業株式会社、それから鉄道弘済会、株式会社潤正会、鉄道電化協会等があって、それには旧幹部がおって、いずれも外郭団体であります。これがことごとく安い値段で借りて、高い値段で又貸しして、しかも、中にはパチンコをやらしておるものもあり、飲食店もずいぶんとある。その他、喫茶店あり、等々、実にひどいのです。一体このようなことで、急にはできないというような弱腰であってはだめだと言うのです。それとも、暴力がこわいんですか。それを断固粛正することができないで、日本の政治の粛正の実があがりますか。百年念仏を唱えておるのと同じです。そんな念仏を唱えておる時代ではないのであります。総理ほんとうに断固決意して、この粛正の実をおあげになるのですか。今運輸大臣相当な熱意を示された。けれども、なお若干躊躇逡巡はある。総理は、断固としてこういうものの処理をなさらぬわけにはいくまいと思うのですが、どうですか。財政の粛正のためには絶対に必要なことです。
  93. 岸信介

    ○岸国務大臣 よく事実を調べまして、私はできるだけの是正をしたいと思います。
  94. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 固定資産の管理運営だけの問題でない。今度は、年間一千億円に上る国鉄の資一材購入の紊乱状態、これまた大へんなものです。年間千億円に上ります。これはこの間決算委員会におきまして、稲葉秀三君からも、この方面は一〇%は節約ができるだろうというような発言すらあったのであります。参考人として公けの発言でありますから、その根拠なしに言ったとは思われません。そこで、うべなるかな、その内容の紊乱を伺うならば、これは実にひどいのであります。幾らでも出てくるのです。これはまた外郭団体。一体、おもな資材は、私が申し上げるまでもなく、車両、石炭、それから鋼材、機械、まくら木等々であります。全部あげると時間もありませんが、このような年間千億に上る重要な資材の購入が、外郭団体によって多くなされておるということを、あなた御承知じゃないでしょうか。外郭団体から買い入れるというところに問題が生ずるのであります。なるほど、あるいは説明されました。たとえば、この間工藤氏の説明によってみても、外郭団体けしからぬという私どもの非難に対しまして、やはり若干そこにそうする方が便利なところもあるというお話もあったのであります。けれども、私どもは、年々繰り返しておりますこの種資材の購入の問題は、いろいろな角度から再検討をしてもらわねばならぬと思う。たとえば車両につきましてもそうでありますが、一例をまくら木にとってみましょう。まくら木のごときも、これは年間二十八億円ばかり買っております。まくら木の大部分のものはブナであります。ブナは、これは東北ならば御承知通り大部分国有林なんです。そこで、国有林のブナ、これをあるいは買い、あるいは他の山から買い、そうして国鉄へ売り込んでおります。売り込んでおる事実をずっと精査してみると、材木屋が売っておるかと思うと、そうじゃない。日綿実業会社が売っておる。三菱商事会社が売っておる。安宅産業会社が売っておる。しかもこれは大きな金額に上っておるのであります。これはことごとく中間利益なんです。国が持っておる山口ブナが何ぼでもあるわけです。そしてこれらの商売人は貿易をやっておる。米の輸入をやっておる。機械の輸出もやっておる。そういう人なんです。それにまたまくら木を売って、その間の中間口銭をとらえておる。なぜこんなことをしなければならぬのだろうか。二十八億円のこの購入は、最低三億円は節約が可能であるということは、これはもう常識なんです。この点私は去年も指摘したんだが、一向に改まらない。どうして改められなかったか。やはり因縁情実がある。この因縁情実をどうしても改められないというのが実情なんです。こういうことなんです。まくら木は一つの例なんです。まくら木は鉄道が最も大きな需要者であります。この点だけでも年間最低三億円の節減ができることを思うて、これは農林省とも相談をして、国のものを直接買うという方法技術的に可能であるということも考えまして、私は、この点に対してもメスを入れて、綱紀は粛正してもらわなければならぬと思うのであります。この点どうお考えになりますか。
  95. 宮澤胤勇

    ○宮澤国務大臣 今の、そういう資材を外郭団体から買っておるということはないはずでありますが、それらの事柄につきましては、一つ政府委員並びに国鉄当局者から一応御説明申し上げます。
  96. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 こまかい技術的のことはあとで聞きます。  綱紀粛正の問題で、それでは総理に伺いますが、この資材の購入に当りまして、石炭、車両、鋼材、機械など全体を貫きまして、いろいろとこまかい改革をなされておりますのは、それは知っております。国鉄の出された経営合理化の経過書を読んでみましても、あるいはできるだけ相手方を選択するとか、その他むだを省くようなことは若干出ておりますけれども、問題はそういうところにあるのではないのでありまして、国鉄が、たとえば例をあげましたならば、車両を購入する。車両だけでも三十二年度予算は三百四十八億円になっております。この車両でも、車両会社に発注をする、たとえば三十年の四月から十二月にかけて、指名競争契約で汽車製造株式会社東京製作所から五十八両の車両を買った事実がある。これでも、この会社に直接材料を交付する、材料支給契約をするという方法をとっていきましたならば、相当な価格の利益がこれは得られるのであります。言いかえますと、経費の節約ができるのです。そうして資材局も国鉄にあるのでありますから、こういうふうな電車の製作の受け入れ等については、資材の供給などは簡単に可能なんでありますが、それをしないで、千万円以上の損をかけておる。こういうことになっておる。これは一つの例にすぎないのです。例にすぎませんけれども、ともかく年間最低にいたしまして――三十年度は百三十二億円の決算になっておりますが、このような数百億円の資材中の第二番目に属します。もしくは第一番に上ります車両の購入にいたしましても、これを国鉄が、外郭団体あるいは特定のこういう商社との間に、みずからの利益を守る公正な契約を最も有利にという角度から検討していきましたならば、こんなむちゃくちゃなことをせられる機会が生じないのであります。これはことごとく綱紀が紊乱しておるからです。綱紀が弛緩しておるからです。全部あげましたならば際限がありませんけれども、石炭におきましてもそうなんです。石炭の荷役にしましても、外郭団体が港で一手に荷役を引き受けておることは、あなたは御承知かどうか存じませんが、これみな価格に入っております。石炭代金に入っていることは御承知と思う。こういうように、あるいは鋼材にしましても、鋼材はなるほど今の市価から見たら別に高くはないけれども、御承知通り製鉄会社へ古鉄なんかを渡しておりますから、そういう利益は与えておりますので、ちっとも安くない。あるいは機械にいたしましても、これは購入者の見積りをそのままうのみなんです。こういう事実がずいぶんたくさんある。こういうことは、綱紀を厳正にするという角度から、そうして公共企業体である国鉄の財産管理に忠実な立場を持つ、こういうような角度からそれぞれ誠実に職に当りましたらこんなことはない。このことを思いますると、千億円の資材の購入は、一割の節約は非常に簡単である。一割を節約すれば百億円、この百億円が節約をきれて、さきに述べました雑収入の一部だけでも、三、四十億円浮いてくるというだけでも、百数十億円浮いてくるのであります。支出を免れるのであります。収入がよけいに入るのであります。これだけでも百数十億円になるのです。こういうことを考えましたならば、一括しまして、この重要なる資材購入について徹底的に綱紀を厳正にするという態度を明確にしてもらわなければいかぬと思います。これは、一つ総理は各方面を鞭撻してもらわなければいけませんから、ほんとうに強い、厳とした決意を表明しておいてもらわなければいかぬと思いますが、いかがでございますか。
  97. 岸信介

    ○岸国務大臣 国鉄のごとき大きな企業、非常な巨額の財産を持ち、固定資産を持っており、また事業経営上重要資材等も巨額なものを購入しなければならない、いろいろな点においてこういう巨大な企業でございますから、各般にわたってこれを合理化し、最も厳正に国鉄経済の健全化をはかる意味において、これに従事している全部が非常に緊張してやらなければならぬことは言うを待ちません。詳しいことは、吉田さんは吉田さんのお立場からいろいろと御研究になっているようでありますが、政府といたしましても、あらゆる面からそういうものを検討して、国鉄の健全なる経営と合理的な運営によって、国民経済に隘路を与えている運輸の隘路をなくするというのが政府の方針でございます。  途中における今の合理化の問題や綱紀粛正の問題に関しましては、政府としては、国鉄のあらゆる面にこれを徹底するようにいたしたいと考えております。
  98. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 私は、綱紀を粛正すべしということは、綱紀粛正すなわち財政の粛正になりますぞ、財政の粛正は財政の再建の唯一の道であります、財政の再建は、すなわち、収入がふえ、支出が減ることで、そうして財政は健全化するのでありますということを申し上げているのであります。でありまするので、この面における粛正の実がほんとうに上っていきまして、千億円の資材の購入というもので、もし百億円の支出減がありましたならば、国鉄のためにもどんなに国民は喜ぶことでしょうか、これを申し上げるのであります。  さらにまだあります。今度は工事であります。これはまた大きいのであります。この工事は修繕費及び工事勘定のものを全部含んでおります。三十年度決算によりますと、修繕費が約五百十五億円、工事勘定の支払い済み額が約五百二十四億円、計一千四十億円に達するのであります。膨大な支出と申さねばなりません。このうち、材料費がありますので、純粋な工事請負額は三、四百億円と見てよいだろうと思います。  そこで、この工事がまた伏魔殿なんです。工事はどういう人がやるのでしょうか。なるほど競争入札あるいは指名入札などをやるようでありますけれども、これは大部分が独占なんです。一番顕著な例をとってみましょう。たとえば今鉄道電化が五カ年計画のうちに強く打ち出されておる。ところが電気工事は一体だれがやるのでしょうか。これは電設工業株式会社と新生電業会社といま一社であります。たった三つであります。この三つはいずれも元国鉄の出身者によって、国鉄の幹部によって経営されておる会社であります。この三つが国鉄の仕事をみんな独占しておるのです。ことに電設工業のごときは、資本金九千万円のちっぽけな会社なんです。しかしながら国鉄の仕事を三十三億円もやっております。そこで仕事が多過ぎて困るくらいです。国鉄に食いついたなら何ぼでももうかるという考えなんです。だから毎年々々めちゃくちゃな工事が続出するのであります。その一つを申しましょう。私は申す煩にたえませんが、その一つは米原の駅ですよ。行って見てごらんなさい。米原の駅でこの会社に電柱を建てさせたところが、コンクリートの大きな岩盤を置かなくちゃならぬのに、それを置かずに、掘立小屋の柱を建てたのであります。こんなむちゃくちゃな工事をやるのです。これが電設工業です。電設工業は会計検査院だけでも三件にわたって批難をされております。そうして国鉄に向って莫大な損害をかけておる。これはどこからくるのですか。これはやはり綱紀の弛緩からくるのであります。一体どうすればいいのですか。どうしてもっと見積りを厳格にしないのですかと申し上げたい。これは綱紀が弛緩しておるからですよ。見積りを厳格にして、現場を厳重に監督して実地検査をし、ないしはいろいろと物の補給等についても十分に目を光らしておったならば、こんな間違いは生じない。また中には、ひどいのになりますと、使った残りのレールを持って帰ってしまっている大きな会社もあります。そんなのはずいぶん出ております。レール一トンは古鉄にいたしましても二万円以上でありましょう。そういうレールを何十本も持って帰ってしまっておる。そういうものも最後に検査院が行かなければわからぬ。表向きに出ないのであります。これはどこかに穴があいているか、どこかにくぎが抜けているのです。こういう穴があき、くぎが抜けておりましたならば、何百億円、何千億円を投じて新しい建設工事を進めていこうといたしましても、それはざるで受ける水と同じことであって、資金はどんどんと流れていってしまうのであります。だからこの工事請負につきましてももっと厳格な態度を持って臨んでもらわなければいかぬと思います。どうしてもこれは綱紀の紊乱に原因するものと見ねばならぬのであります。  資材の購入と並んで工事の紊乱というものは、ことに外郭団体的な存在が悪い。どれが外郭団体か、それはいろいろ意見もあろうけれども、国鉄に食い下ってもうけて、国鉄出身者が中に入って幹部で指導している。これを外郭団体と言わずして何でありますか。経営調査会においても外郭団体のことは強く指示しております。至るところで外郭団体は問題になっております。それは改めましたということをその経過においても述べておる。それほど有名なのが外郭団体です。もっとひどいのは工事に巣くっている外郭団体です。この外郭団体の工事上における紊乱、これがまた国鉄に莫大な損害をかけておる。これがもし一割の節約ができましても、年間三、四十億円は出ます、一割五分節約ができても、七十億円ぐらいは浮いてくるのであります。ひどいのは何ぼでも出てくる。工事の紊乱、見積り価格をめちゃくちゃに低くしてみたり、高くしてみたり、あるいは手抜き工事をやられたり、材料を持っていかれてしまったり、いろいろなことをやっております。工事上に現われましたところの財政の紊乱は言語に絶しますよ。こういうことを粛正することなくしては、国民からは運賃の値上げで金を取ろうなんということはこれまた本末転倒であります。くどいようでありますけれども、私は総理に申し上げます。あなたは今全国民を相手にして国鉄運賃の値上げを打ち出しておられるが、全国民が利用者であります。たといそれは一日十円、二十円のちっぽけな利用者であろうと、ともかく飯と同じです。八千万の国民みんなが利害の関係者なんであります。この利害の関係を相手にして、自分の方は年間数十億円のこんなめちゃくちゃな損害を知らぬ顔をしておいて、運賃の値上げによってまかないますということでは、国民は納得しません。断固としてこの工事請負については粛正の実をあげてもらわなければならぬのです。そうしなければ、あなたの内閣は、国民からこんなひどい内閣はないとほんとうに大きな黒星を与えられますよ、これは間違いありません。あなたはこの工事の請負につきまして、もっと真剣な態度で粛正の決意を示してもらわなければいけません。  それから問題は新しい問題であります。資材の問題とはまた別個の角度から――これは最も重大な、長年のガンなんです。あなたは御承知でしょう、大阪へ行けば大阪には大鉄工業株式会社あり、東鉄管内には東鉄工業株式会社あり、函館にはまた函館の株式会社がある、九州には九鉄工業、みな管理局の名前をとったところの大工事請負主のほとんど専属的な、独占的な会社のあることは御承知でしょう。この重役の大半は国鉄の出身者であるということに思い至りますならば――資本の食いつぶしということをよくいわれます。経営調査会等におきましても、速記録を読んでみると、そんなことが書いてある。資本の食いつぶしというのは頭の白いか黒いかそういうネズミが中にもおるし、外にもおるし、よってもって国鉄の資産を食いつぶしてきたというのが国鉄八十年の歴史でありますかとさえ、私どもは、感ぜざるを得ないのであります。こういうひどい工事の状態を私はあげるに煩にたえぬし、時間もありませんからあげませんけれども、これまた重大な綱紀問題として、あなたは重大な決意をもって、これはどんな腕力があろうとも、どんな暴力があろうとも、こういうものに臨んでもらわなければならぬが、これに対しましてもはっきりと御決意を示していただきたい。
  99. 岸信介

    ○岸国務大臣 鉄道工事に関連してのいろいろの御意見でございますが、鉄道の工事につきましても、綱紀の紊乱は、これはどうしても粛正しなければならぬことは言うを待ちません。ただ正直に申し上げて、私自身が詳しく実情をまだ承知いたしておりません。ただ鉄道の工事、いろいろな関係というものは、どういう意味でそういう特殊な関係ができておるかにつきましても、よく事情を明らかにする必要があると思います。いろいろな関係がございますので、いずれにいたしましても、綱紀が紊乱し、これによって経営が紊乱しておるという事実は厳として粛正し、事実を改めなければならぬと思います。
  100. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 綱紀を粛正するということは、言うはやすくして行うはかたい。ことに実をあげということは容易ならぬことであります。(「もういいよ」と呼ぶ者あり)ちょっとお待ち下さい、もう一点だけ聞いておきたいのです。実はこういう問題があるのです。外郭団体にあなたの統率しておられる自民党の国会議員がおるのです。これは、あなたがもう退席なさるなら、私はこの問題をもっと暴露しますよ。けれども私は同僚のことだから多少遠慮しておったのです。けれどもあなたは綱紀問題に忠実に取り組んで下さるものと思って私はあと申し上げようとするのです。(「約束があるのです」と呼あり)約束があろうとも重大なことですから……。だから、あなたが綱紀問題に耳をかさぬというならば、私はこれは徹底的に申します。実は、国鉄の綱紀の粛正は、ただに国鉄内部の職員、役員だけではありません。旧役員だけではありません。財界人、一般部外人だけの問題じゃありませんよ。政治の圧力が加わっているのです。ようございますか。はっきり申しますよ。自民党の国会議員が加わっているのですよ。よろしゅうございますか。これは速記録に明らかになっております。私は登記簿でも見せてあげる。名前はちゃんと書いてある。書いてあります。やはりこれは呼吸を合してもらいたいのです。きょうは私はあなたの言葉の答弁を求めようとするのではないのです。国鉄の副総裁は、暴力で粛正ができぬということさえ発言しておるのですよ。これはよくよくのことです。こんなことは言えることじゃありません。よくよくです。それほど真剣に粛正のために戦おうとしておるのですよ。財政の粛正ですよ。立て直しは粛正からなんだ。これと戦おうとしておるのです。私はその真剣さを思うのです。そこで、ほんとうに自己の立場を離れてこの粛正をするということは国政振作の根本であります。どんな大きな看板を出しましても、政策を羅列しましても、粛正の実が上らなかったらこれはだめであります。そこで、あなたには言葉の答弁は要らぬのですよ。ほんとうに粛正に向って私とあうんの呼吸が一致するという、それがなければいかぬのです。それで私は申し上げるのです。ようございますか。その国会議員といえども私は何の恩も恨みもありません。けれども、政治の触手があったら大へんだというのであります。あなたはこういうことにつきましても断固として適当な方法をとってもらわねばいかぬということなんです。きょうは名前を言いましょう。名前を言いますが、現に参議院の決算委員長をしておる君であります。この君は鉄友会の初代からの法律上の監査役でありまして、最近、委員会の関係か、これを辞任して、これは明らかにしておきますが、衆議院のあなたの方の国会議員と入れかわっておる。ただし、その衆議院の君は株主ではないのであります。(「はっきりせよ」「明らかにしたらいい」と呼ぶ者あり)速記録を見せてやる、速記録があるから。そこで、この会社は、大きいとき月に百三十万円も中間利益を取っておって、自分は何をする会社かといえば、登記簿によれば、その百貨店を見回っておるくらいしか何もやっていないというような状態であります。しかも、その最近の結果を見ますと、株は四倍半に値売りいたしまして百貨店に売っております。その株の行方は私は存じません。そこで、これではいかぬというので、少くとも年間五、五六百万円くらいは国鉄はよけい収入を取らなければいかぬというのが今度の国鉄の態度であります。少くとも従来は五、六百万円くらいは取りそこなっておったのであります。そういうような中間搾取はできないのです。又貸しはもちろんできないのです。又貸しをするということは禁止してあります。禁止しておるのを破ってやっていた。これは大目に見ておった。大目に見ておったのもいかぬし、禁止を破ったのもいけませんし、そうしてまた国鉄にそんなに損をかけることはなおさらいけません。それが国鉄のもとの職員であり、あるいはまた国会議員が大株主であるし、そしてまた監査役をしておったというのでありますから、こういうことはもってのほかなんです。いささかでも国鉄の財政の粛正に向ってそれを妨害するために政治の手が伸びるということであるならば、それは大へんであります。私はそれをおそれます。  そういうわけでありますので、国鉄のあらゆる問題につきまして政治の手が不当に干渉、圧迫、妨害というふうになっていくということをおそれます。これはやはり断固として粛正する以外に道はないのであります。そういうことであります。でありますので、この点はあまり露骨にいろいろなことを言うと若干やぼになりますから申しませんけれども、実際にたとい少額でも月々何万円でもそんな方面からおこぼれを取るということがもしあったら大へんでありますので、この方面に向ってもあなたの力強い粛正の努力はしてもらわなければいかぬのです。私はあなたに申し上げたいのです。たとえば資材購入の面とか、あるいは工事の面とか、あるいは固定資産の管理の面とかで、こんな醜い汚職とか疑獄とか、あるいは綱紀の頽廃とか紊乱とか暴力とか腕力とか、こういういろいろなものがあります際、この問題をもっともっと究明して、明るくして、そうして収支の関係を改善できるようにして、その上で、国鉄の計画はこういうふうにあらねばならぬ、国鉄の老朽取りかえはこうしなければならぬということで、あらためて出直して運賃値上げの問題を国会に問うということがものの順序だろうと思うし、みんな国民はこれを考えておると思います。これを知らなければ、生活費に〇・何%の影響があるんだと言われると、そうかいな、今日の経済界の状況から見ていろいろな過程においてそれを吸収してしまうのである、ああそうかいな、十円、二十円上っても別に家計上大きな影響がないというふうに考えて、国民は漫然とついてくるかもわかりませんけれども、少くとも心ある者は、こういう事実を知りましたならば、やはりこれが先に解決されて、その上で運賃問題を一つ論議して国会に出してもらうのが順序ではないか、こういうふうに思うのです。この点について一つあなたのお考えをはっきり聞いておきたい。綱紀問題を先に解決すべし、粛正を先にやるべし、そうすればやはり国鉄の財政関係は明瞭になりますから、その上で運賃問題を国会に問うということがものの順序で、国民は納得する。国民を納得させないような政治は民主主義ではございません。納得させなければいけません。その点についてあなたのはっきりとしたお考えを聞いておきたい。
  101. 岸信介

    ○岸国務大臣 先刻来の御質疑、私の答弁によりまして、これらの綱紀の紊乱やあるいはいろいろ法規を無視してやられておることや、あるいは不合理な点は、あくまでも厳正な態度をもってこれを是正するということは、私の強い決意であります。ただ、運賃値上げの問題をまずそういうものを解決してやれという御意見でございますが、この運賃値上げの問題につきましては、大きな筋として経営委員会等において十分長い間審議され、論議された問題でございまして、なお、現在の国民経済の面から見ますと、運送の面の隘路を打開する必要を痛感するものでありまして、この運賃値上げの問題は運賃値上げの問題として解決し、これと並んで今の問題に関しましては厳然たる態度をもって粛正をいたしたい、かように考えております。
  102. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 次に大蔵大臣に伺います。  国鉄の財政の粛正ということは同時に財産の管理にかかっておるのであります。ところで、国鉄が現在業務にかかる現金を法律に違反して市中銀行に例外なく預金しておるという事実は御承知と思います。これは、国鉄法四十二条によって、必要なときには大蔵大臣並びに運輸大臣の承認を得て銀行等に預金ができるということになっております。ところが、現実におきまして、適正な承認がないままに市中銀行に預けられておる。現に、東鉄の管内におきまして、東京都内において三十年度の扱い金を調査してみますと、環状線四十一の駅において六百八十六億円が市中銀行に預けられておる。これは、大蔵大臣、あなたの時代ではなしに、第一は小笠原大蔵大臣、それから石井運輸大臣の時代であります。二十八年十一月十二日付の申請によって承認をせられておる。この承認の条項によって見ましても、これは市中銀行に預け得る要件は満たされておらぬ。市中銀行に預け得る要件が満たされておらぬままに、すべて市中銀行に例外なく預けられておるのであります。これは私は国鉄法四十二条の違反行為ではないかと思うのでありますが、あなたは御所見いかがですか。
  103. 池田勇人

    池田国務大臣 私はそういうことは聞いておりませんが、大蔵大臣になる前に、駅の近くの銀行にその日の集まったお金を一応預けて、日本銀行の国庫の方に切りかえるというようなことは二、三年前に聞いたことがございます。しかし、ただいまの各銀行に多額のお金を預けておるということは初耳でございます。
  104. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 大へんなことであります。これは、国鉄の業務上の現金の扱いにつきましては大蔵大臣の指定する銀行に預け入れる、つまり原則は現金は国庫預託でなければならぬ。ただし書きとして、「業務上必要があるときは、政令で定めるところにより、郵便局又は銀行その他大蔵大臣が指定する金融機関に預け入れることができる。」、「前項の規定により国庫に預託された預託金については、大蔵大臣の定めるところにより相当の利子を附するものとする。」、こういう規定がありますので、全体から見まして大蔵大臣の承認ということが唯一の要件になっておる。大蔵大臣の承認なくしてはできないのでありますが、いかがでございましょうか。
  105. 宮澤胤勇

    ○宮澤国務大臣 この国鉄の収入金は四十二条に定められておる通りに扱われております。ただ、これが市中銀行に預託されますのは、七日間の範囲内で必要な場合、ということは危険防止でありまして、その金を国庫に届けるまでに危険がありますから、それを即日市中銀行に預けて、最長期間七日間以上置くことはできない、直ちにそれを国庫に預け入れる、そういう便法から生じておることであります。
  106. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 危険防止ということは、これは承認の条件になっておりません。言いかえますと、市中銀行に預けるための承認の申請に、危険でありますから市中銀行に預けることを御承認を願いたいという趣旨はどこからも現われておりませんが、いかがでございましょうか。
  107. 宮澤胤勇

    ○宮澤国務大臣 その点は政府委員からお答えいたします。
  108. 權田良彦

    ○權田政府委員 お答え申し上げます。国鉄法第四十二条の原則は貫かれておりますので、その条文に基きまして、政令におきまして業務上必要な場合を規定するほか、その以外でも原則を尊重しながら国庫以外の金融機関への預け入れば必要最小限度の七日間に限定して許されているわけでございます。従って適法でございます。
  109. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 七日間ということを私は今論議しておるのじゃないのです。期間のことは別でございます。それはよく存じております。そうじゃなしに、これは大蔵大臣の承認を得なければいかぬのだが、一体いつ承認を得たかというのです。
  110. 權田良彦

    ○權田政府委員 四十二条は、「郵便局又は銀行その他大蔵大臣が指定する金融機関に預け入れることができる。」であります。従いまして、銀行へ預けております場合には指定は要らないわけであります。
  111. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 日本国有鉄道法施行令第十一条、業務にかかる現金の銀行等に対する預託に関する規定、「日本国有鉄道は、運輸大臣及び大蔵大臣の承認を受けた事由がある場合には、法第四十二条第一項但書の規定により業務に係る現金を郵便局又は銀行その他大蔵大臣が指定する金融機関に預け入れることができる。」、こうなっております。
  112. 權田良彦

    ○權田政府委員 どうも説明が不足でございまして申し訳ございません。
  113. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 不足じゃない。間違っているのじゃないか。うそを言わないで、はっきりしなさい。
  114. 權田良彦

    ○權田政府委員 昭和二十八年十二月八日に大蔵大臣、運輸大臣から国鉄総裁あてに、その政令の十一条に見合いまする承認を受けた事由を承認しております。先ほど私が申し上げましたのは、その後段の「郵便局又は銀行その他大蔵大臣が指定する金融機関」ということを御説明したわけでございます。
  115. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 あなたの先ほど説明したのは間違った説明じゃなかったのですか。あとで訂正したのじゃないのですか。訂正なら訂正で聞きます。あなたはさっき市中銀行に預けることは大蔵大臣の承認は要らないと言ったのです。施行令十一条によれば大蔵大臣の承認が要ると書いてあるのです。そこで私はあなたの答弁を反駁の意味で再質問しているのです。間違ったのなら訂正して下さい。はっきりと筋を通して問答しましょう。
  116. 權田良彦

    ○權田政府委員 お答え申し上げます。「郵便局又は銀行その他大蔵大臣が指定する金融機関」、この場合に銀行については大蔵大臣が指定することは法律上ない、ただ預け入れるときの事由については大蔵大臣と運輸大臣が承認をする、その承認は昭和二十八年十二月八日に出ております、こういうことでございます。
  117. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 そんな回りくどいごまかしを言わずに、ともかく、特定の銀行を指定することはないということじゃなしに、そういうことを聞いておるのじゃないのであります。よろしゅうございますか。例外なく市中銀行に預けておるじゃありませんか。市中銀行に預けるという場合には大蔵大臣の承認を得るんだろう。あなたは承認は要らないと言ったから、こう言っているのです。
  118. 權田良彦

    ○權田政府委員 これは、ただいま御説明申し上げておりますように、昭和二十八年の十二月八日に事由について承認を与えてございまするので、適法にやれるわけでございます。
  119. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 事由ということがただし書きの趣旨であります。四十二条の原則は、現金は国庫預託ということになっておるのであります。例外としてただし書きがあるのであります。それは業務上の必要ということを限定しておるのです。問題の骨子はそこなんですよ。いいですね。その業務上の必要ということが申請の趣旨なんです。申請をして承認を受けるということは、その法律の解訳は、限定した事由を申し上げて大蔵大臣の承認を得るということなんであります。そんなことは頭から文理的に見て明らかじゃありませんか。そんな、ごまかしていけません。
  120. 權田良彦

    ○權田政府委員 私は法律と政令とこの承認事項に従って御説明しているわけでありまして、この事由がある場合にはそういうことができるのであります。
  121. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 事由があるというときは、それは要するにただし書きのことなんです。  そこで、今度は運輸大臣に聞きますが、必要というのはどういうことなんですか。
  122. 宮澤胤勇

    ○宮澤国務大臣 必要ということは、先ほど申し上げたように、危険防止でありまして、各停車場その他からの収入を一々国庫に持ってくるということは非常に危険の事故が伴いますので、そこで、各地の銀行に預けて七日間以内に国庫に納入するということにしております。
  123. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 法制局長官、あなたは法律の専門家だから聞きますが、そこで、この場合、条件として、出納役が所管にかかる受入金をこういうような銀行その他大蔵大臣の指定する金融機関に預け入れることができる、このような趣旨に申請は書いておりますが、一体この場合に何ら必要性のある事実は事由として記載されておりません。結局、この申請なるものは、今運輸大臣の言う業務上の必要ということは事由として記載されておらないままに申請をし承認を受けておるので、従って、これは法律のただし書きの要件を満たさない趣旨の申請であり、満たさない趣旨の承認であると思うが、その点いかがですか。もしそうであるとするならば、この東鉄の四十一の駅の扱っておる年間六百八十億円のこの市中銀行への預け入れば、明らかに国鉄法四十二条の違反になると思うのですが、いかがですか。
  124. 林修三

    ○林(修)政府委員 私は、その当時の申請書、あるいはそれに対する認可書を拝見いたしたことはないわけでございますから、的確な御答弁はできないかもわかりませんけれども、おそらく運輸大臣あるいは大蔵大臣が承認したのならば、当然法律あるいは政令の事由に従ってやっておられるものと考えるわけであります。内容を知りませんから的確なことはお答えできません。
  125. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 知らない人に聞くのは無理ですから、それならばこれは大蔵大臣に念を押しておきます。大蔵大臣昭和三十八年の十二月十二日にいわゆる承認申請に対して承認書を与えております。その承認には何ら業務上の必要とする項目はどこにもない。一ペん再検討して下さい。もしないとするならば、今運輸大臣が危険防止だから近所の郵便局へ預けると言われたが、現に大阪は国庫代理店へ預けている。大阪は先般指摘して改まっている。改まらないのは東鉄だけなんです。東鉄は今みんな市中銀行へ預けている。そこで、あるいはいわく、実はそれは銀行から取りにきて、計算してくれて持っていく、つまり集金制度で便利ですからそうするのです、そういう説明もあるのです。今運輸大臣は危険防止だと言う。たとえば東京駅、新橋駅等で一体何の危険があるのです。日銀の代理店がそこらにありますよ。そこらに持っていくか取りにいく、そんなことはただ労力だけの問題であります。危険なるがゆえに預けているというが、危険ということはこれにはどこにも書いてない。あなたの想像言葉なんだ。だから、そういうような場合には、これはこの法律に違反した金の扱い方であろうと考えるのであります。そうしましたならば、六百八十億円というものが市中銀行に法律に違反して預けられておる。これが危いのです。銀行の名前を一々言うてもよろしいけれども、一々言うと営業の妨げになると思うから言いませんけれども、ともかく、銀行は、たとえばこれが三井銀行なら三井銀行を富士銀行へ変えるというような場合に、あるいはまた分散するというような場合、もしそこに請託贈収賄の事実がありましたら、これは大へんであります。御承知のように、戦後いわゆる公団の金の扱いから日本に浮き貸しという言葉が初めてできました。浮き貸しというのを字引を引いてみると、ないですわ。(笑声)やはりあのときに初めて起ったらしい。そこで、浮き貸しになる危険があるのです。市中銀行なら自己資金になって、この資金はそこらの会社へひもつきで貸せます。日銀へ入りましたらそうはいきません。そこでこの法律があるのだろうと私は思う。国鉄の扱う金が年間二千数百億円に上る。一応は国庫預託金として、そうして適正に資金としてまた使うなら使う。けれども、市中銀行へ預けると、あくる日からその金は自由自在に銀行屋さんが使うことができるのであります。そこで、有無相通ずる関係が生ずるような危険があるのであります。これもまた綱紀紊乱の温床であります。もし法律に違反しているということになれば大へんであります。法律に違反しているということでありましたならば、こういうところから国鉄の財政ほんとうに粛正しなければならぬのであります。あなたも政府機関の、あるいはあらゆる財政についての責任者であります。大蔵大臣として財政監督の首長なんです。行政上の首長なんです。この角度からしまして、やはりこういう莫大な金の法律違反の疑いのあるような扱い方については、これはほんとうに即刻直ちに検討いたしまして適当なる措置をとらねばならぬと思う。あなたもこの詳しいところを御承知でなかったから、今私がお示し申しました。これは検討して下さい。直ちにやってもらわなければならぬと思いますが、いかがですか。
  126. 池田勇人

    池田国務大臣 昭和二十八年の申請でございまして、私はよく存じておりませんが、直ちに調査いたしまして、適法なりやいなや、また必要性ありやいなやということにつきまして結論を出したいと思います。
  127. 山崎巖

    山崎委員長 吉田君に申し上げます。お約束の時間が経過しておりますので、結論をお急ぎになりますようにお願いいたします。
  128. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 この運賃値上げ問題をめぐりまして、はしなくも世論は国鉄の財政に対する疑惑に集中しておるものとわれわれは判断いたしております。そこで、また一面国会との関係におきましても、真に私どもは清潔なる自粛した態度をもって臨んでいかねばならぬと思うのであります。そこで、とかく問題になりまするのは新線建設の問題であります。新線建設の問題にいたしましても、来年度は十五億円の増加になっておる。去年もふえ、ことしもふやす。新線の増設につきましては、これは政治的な理由のあるものもあろう、あるいはまた、別の機会に、運輸大臣は、国家の要請によって、産業政策等の要請によって、あるいは国土開発的な要請によってできるというようなお話もある。しかしながら、こういうときに新線建設費の増額というものがやはり運賃値上げに織り込まれておるということであるならば、これはまた国民は運輸行政あるいは国鉄行政、新線建設をめぐりまして大きな疑惑を持つものと思うのであります。この点につきまして、やはり経営調査会においてもいろいろな点から指摘しておりますが、あなたは、この新線建設費と、そして今度新たに要求しておりますところの予算のうち値上げによって増収を得んとするその資金との見合いの関係、これについてはどういうふうにお考えになっておるか。
  129. 宮澤胤勇

    ○宮澤国務大臣 新線建設費は、合理化審議会においても、この費用だけは一つ国家から出せ、少くともその利子補給だけは国家でしなければいけないじゃないか、こういういうようなことになっておりまして、この点については私どもいろいろ打ち合せをいたしておるのでありますけれども、今この資金を国家の資金から、一般会計から出すということも、財政上、直ちに手を染めるということにもなりかねておるのです。利子補給の点につきましても、今のところはわずかでありますけれども、それでももうすでに二百億くらいを使っておりますので、この利息というものも少くとも十数億円になる。これが一般の国鉄の経営の負担になっておるわけであります。そういうわけでありますから、できるだけは国家財政の余裕ができましたらその方から一つ出してもらいたい、こういう希望を持って、内輪で順次その打ち合せを進めておる次第であります。
  130. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 運輸大臣になお伺いますが、これもまた、先になって燃え上ったときよりも、今の間に警告の意味において伺っておかなければならぬところの、志免炭鉱の問題です。これまた下手をすると汚職、疑獄が出る案件なのであります。これは経営調査会においても国鉄から分離せよというような意見も出ております。前もっていろいろ競願があって、これの払い下げ、買い取りの運動が猛烈に行われておることは、これもまた御承知通りであります。そこで、最近伝えられるところによると、すでに政界の首脳部におきましてはある会社に売り渡すという方針がきまったと伝えられておるのであります。多数の運動者もあちらやこちらへ行き来しておることも伝えられておるのであります。この点、率直に、志免炭鉱が今どうなっておるか、もし相当進んでおるならば、その辺は率直に述べてもらいたい。
  131. 宮澤胤勇

    ○宮澤国務大臣 ただいま御指摘のありました通り、国鉄経営合理化の点から、志免炭鉱のようなものは払い下げて国鉄から分離する、それができないならば、経営の合理化を行なって、これから赤字が出て国鉄の負担にならないように、こういうことでありますので、その趣旨にのっとって今この問題を研究しております。払い下げをさせてもらいたいというような要求もありますけれども、これは今国鉄において検討しておりますが、まだこれを決定するような段階には立ち至っておりません。ただいま吉田さんの御指摘になりました通り、この内閣の、綱紀の粛正をする、それらの点から、これが政党の幹部がどうこうなんということは、私は少しも聞いておりませんし、また、不肖私が在任しておる限り、そういうことに左右されてこの問題を処理するというようなことはいたしません。
  132. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 それではもっと端的に聞きすが、三菱へ売り渡すという話は相当進んでおるのじゃないですか。一つ端的なところを聞いてみましょう。
  133. 宮澤胤勇

    ○宮澤国務大臣 この点は、私直接交渉の任に当っておりませんから、国鉄総裁から答弁をいたします。
  134. 十河信二

    ○十河説明員 まだ、三菱へ売るともどこへ売るとも、売るとも売らぬとも一向決定しておりません。ただし、私はこれを売ることがよかろうという自分の意見はきめております。私は今そういうふうに考えております。なぜかというと、すでに皆さんの御了承を得ておるように、国鉄はだんだん蒸気列車は電気列車あるいはディーゼル列車にかえておるのであります。従って、石炭の消費量は年々歳々減っておる。志免炭鉱はこれを掘っていけば年々歳々寿命が縮まってくるのであります。ここに三千五百名の労働者が働いておるであります。この人たちは、だんだん国鉄の需要が減っていく、炭鉱の寿命がだんだん縮まってくるのを非常に不安に思っておると思うのであります。私はこの点を非常に心配いたしております。それゆえに、私は、適当にこれらの労働者の生活が安定するように考えてやるのが親心だ、そういうふうに考えております。
  135. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 三菱に売るとも何ともきまっておらるというお話でありますが、まだ売る相手方を確定しておらぬことはこれも事実でしょう。事実でしょうが、相当話が進んでおるということは、その道の者は大体了承しておるのでありますが、もう少し率直なところを述べてもらいたいと思う。というのは、そういう労働者の問題のあることももちろんでありますけれども、しかしながら、これがなんぼに売れるということが、一つは国鉄の財政立て直しの観点から見ても重要なことであります。ましてや、今志免炭鉱をめぐりましてあらゆる運動が行われておりますので、このいろいろな綱紀紊乱の矢先に、志免炭鉱がまたその渦中に投じるということが私どもは忍びないのでありますので、この点をあえて追及的に申し上げたいのでありますが、もしできましたならば、もう少し内容の割ったところを一つお示し願いたいと思うのであります。
  136. 十河信二

    ○十河説明員 今日は何らの運動も行われておりません。ただ、組合が、先刻申し上げますような不安な状態にあるために、いろいろと多少動いておるように見えますが、私は、そういう動揺を取り静めたい、そういう動揺を起させないようにしたいということを考えて、今慎重に考慮いたしております。
  137. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 運輸大臣に伺いますが、問題を転じまして国鉄の管理費の問題であります。私は食糧関係から入りたいのであります。食管特別会計を見ますと、その管理費のうち国鉄の関係の分は日通が独占しておるのであります。日通の独占ということは、いろいろな観点から考えまして再検討の余地があるのではないだろうかということ、食管会計の当路者は日通の幹部になる、こういう関係も世上いろいろのうわさが取りざたされているという点、それから、特に、今度もし運賃改訂ということになりましたならば、相当膨大なこの辺に対する数字の狂いが生じて参って、食管会計の負担増ということが大体見当がつくのであります。この点はあるいは農林大臣が適当と思いまするが、もしでき得るならば、日通独占の食糧の輸送という問題について再検討する意思があるかどうか、ことに毎年問題になっておりまするのは、特別の事情によりまするところの年間三、四億円も支払っておる運賃があるわけでありますが、とかく日通との関係が明朗でないということは随所に現われておるのであります。通運事業法による通運事業基本運賃料金表等によりまする計算関係について見ましても、これは日通との特殊関係が、やはり一つの汚職の温床になりゃしないか、農林省は食管会計をめぐりまして汚職をいろいろ出しましたことは天下周知の事実。あらゆる方面に向って汚職の根を断つ、温床をなくすことに最大の努力をしなければならぬ時であります。幸いに国鉄運賃の問題が今爼上に上っておりまするので、日通に対する独占関係を廃棄して、もっと自由競争をさすというふうに考え直すべきではないかと思うのだが、農林大臣、どうお考えになりすまか。
  138. 宮澤胤勇

    ○宮澤国務大臣 ただいまの問題は農林大臣からお答えする方が適当と思いますが、ことに私その事実をよく知りませんので、私ども運輸省の方面に関する点だけを政府委員から申し上げさせます。
  139. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 農林大臣でけっこうです。
  140. 井出一太郎

    ○井出国務大臣 お答えいたします。食糧庁が日通と一括契約をいたしておりますることは、ともかく年間に五百万トンからの膨大な貨物を動かしておるのでございまして、これにはやはりその機構といい、あるいは人的配置といい、いろいろな関係から日通をして扱わしめるということが、一番能率的であろうと存じておるわけであります。あるいは食糧でございますので、季節的な繁閑というようなこともございましょう。あるいは山間僻地へ輸送するというふうな問題もございましょう。こういうふうな場合、やはり機構的に日通というものが他の荷扱い機関とは隔絶して大きな便益を得る機構に相なっておりますので、そういうことにいたしておるわけであります。ただ吉田委員御指摘のような、食管会計自体がこの際非常に内部の合理化をしなければならぬということは、われわれとしても痛感いたしておりまするので、この日通の問題は十分考慮、検討を加えるつもりでおります。
  141. 山崎巖

    山崎委員長 吉田委員、重ねてお願いしますけれども、もうお約束の時間が三十分以上経過しておりますので、結論を急いで下さい。
  142. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 承知しました。  運輸大臣に伺いますが、あなたはしばしばの機会に、国鉄運賃の値上げは私鉄バスなどへ波及することを極力防ぐという御趣旨の御答弁があったと思うのです。ところで、運輸省の報告によりますると、たとえば私鉄バス会社は全国二百数社ある。その二百数社はすでに運賃値上げを希望し、原価計算を出していろいろと運輸省と折衝の最中であります。私鉄は二百九社あります。全部読み上げてもいいのだけれども、時間がないから――全国にわたってことごとくであります。そうして私鉄におきましても、すでに値上げを許可しておるものが大阪の南海二割を初め、その他多数に上っております。あるいは現に申請しておるものが七社に及んでおります。そうして私鉄は全国的にほとんど黒字であります。こういうような状態でありまするときに、私鉄及び私バスへ連鎖反応なしということは常識上考えられないのであります。現にもう殺到いたしておるのであります。ただ表へ出ないだけのことなのです。表へ出さないだけのことなのであります。時至らば出すのであります。今その準備のまっ最中であります。準備を進めておるということはあなたも御承知通りであります。国民はまんまと一ぱい食わされる手前の時であります。ふたをあけてみればみんな値上りです。この値上りの結果はどうなるのですか。これは経済的にあらゆる物資あるいは物価に、ことにわれわれの家庭生活に直接間接に響いてくるということは、これは申し上げるまでもありません。時間もないからその点に深く触れることを私は差し控えますけれども、少くともこれだけはあなたにはっきりしておいてもらわなければいかぬのです。私鉄会社のうち、たとえは黒字のものには値上げしないかどうか。もっともこれの内容としてはいわゆる三つのクラスを七つのクラスにするという趣旨になるので、でこぼこの修正である、必ずしも値上げという趣旨にならぬというような答弁になるかもしれませんけれども、みんな底意及び常識は値上げを希望しました運賃の改訂なのであります。方式が違うだけなのであります。だから黒字の私鉄なんかには絶対に値上げをされぬかどうか、ことにあなたの部下の何とかいう建設部長は大阪へ行って、新聞記者を集めて、四月には私鉄一斉値上げを許可するのだということを公言しておるのであります。このために関西におきまして非常な衝撃を受けておることは事実なのです。こういうこともあるのであります。でありますから、この二百社以上にわたるところの私バスが一斉に値上げを希望して、運賃改訂の交渉の最中であるというこの事実を認められるかどうか。そうして少くとも私鉄の値上げは許さない、こういう方針であるかどうか。これを一つあなたにはっきりしておいてもらいたいのであります。どうですか。
  143. 宮澤胤勇

    ○宮澤国務大臣 お答えいたします。この点についてはしばしばお答えをしておるのでありますが、国鉄運賃の値上げにならって一斉に私鉄もしくはバスの値上げは行わないという方針は堅持しております。ただバスにつきましては、従来個々にやっておりますが、そういう方針をとっております。
  144. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 一つ振り返って、全部総括しますが、私がだんだんあげましたところのあなたの方の財政の粛正ということは、最も重要視すべき案件であることにかんがみまして、財政の粛正が先行すべきで、運賃の値上げを論議することはその後にすることが適当であること、そのときに初めて財政状態は国民の前に明らかになりますので、幾らほんとうに収入があることが正しいのであるか、幾ら支出することが正しいのであるかということが明らかになりますから、数字の基礎というものは、財政の粛正なくしてははっきり出てこないのであります。そこで国鉄財政の粛正が先行すべきであるということの立場に立ちまして、まずもってこの綱紀を粛正するということを先行せしめ、その上において、あらためて値上げの問題を論議することが正しい、こういうことについておなたも同感じゃないかと思うのだが、重ねて大臣の御意向を承わっておきます。
  145. 宮澤胤勇

    ○宮澤国務大臣 先ほどから総理大臣からもお答えいたしました通りであります。今お話の点は、並行してこれを行いたい。
  146. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 ちょっと別の問題でありますが、法務大臣にお尋ねします。これは昨日の朝日新聞の社説にも出ておったのでありますが、私は弁護士であるがゆえに、先般来から非常に気がかりになっておりましたが、実は訴訟費がないので訴訟ができない人が全国に満ちておるのであります。そこで無料相談所を街頭その他でやっておりますことは、わかるのでありますが、当然権利があっても権利の行使ができないのであります。一例を申し上げますと、東京の葛飾の方のバスで、みずからは無過失で重傷を受けてその後死亡したところの建具屋の職人さんがあるのです。その職人さんは無料相談所へ法律上の相談に行ったのです。ただし、その奥さんは主人、が病気で重態で寝ておる。けれども金がない。そこで人に金を借りまして相談に来たのであります。相談に来ましたところが、バス会社はただ病院の入院費の一部をそれに弁償しただけで、損害賠償はしないのであります。そのうちに死んでしまったのであります。そこで訴訟しようにも訴訟費用がないのであります。当然数十万円ないしは百万円も請求できるのですが、訴訟費用がないのです。訴訟費用のうちには、法律上は申すまでもなく一部印紙、その他のものは補助しますけれども、弁護士でないと損害賠償の訴訟なんかできません。ところが弁護士の報酬その他の経費というものは、訴訟救助の対象にはなっておりません。これがために、権利がありながら権利行使ができない、裁判を受ける権利がありながら裁判を受くることができないところの人が無数にあるのであります。この人を救済するということが長年の懸案なんです。そこであなたの方も本年度予算千万円ほど要求したのです。そこへまた最高裁の方も同様に要求をしておる。ところが意見が食い違っておるのです。これは法務省の所管事項である、いや最高裁の所管事項である、こんなけんかをしておるから大蔵省ははねてしまった。あなたの方は補助金をくれというのです。補助金をくれということは、補助金適正化法によって今切るという方向にある。そこで切られてしまうのは当りまえなことである。  そこで私が申し上げるのは、所管争いをするようなことで権利者をいたずらに泣かすのじゃなしに、要するにこれを実現させるの、が目的であります。そこで譲って、最高裁の方でもそこは話し合って、多数の権利者を擁護するということを実現すべきだと思うのであります。あなたの方は最高裁と事務的な話し合いではだめなのであります。これはずっとけんかしておられるのですから――そういう立場を離れまして、多くの国民のためにという見地から話をつけるという御意思はありませんか。あなたと、最高裁もだれか見えておる、だろうから、簡単でよろしゅうございます、一分間でいいから答弁して下さい。
  147. 中村梅吉

    ○中村国務大臣 御指摘になりました点は、申すまでもなく、正当な権利を行使したいが訴訟の経費がない、こういうものに対して何らか国が扶助する方法を講ずるということは、やはり一種の訴訟に関する社会保障的のことで、そういう意味においてわれわれはぜひ実施に移したい、かような熱意を持っておる次第でございます。ただしかしながら、実際にこれを実行する段になりますと、しからばその人の主張する訴訟費用をどうしても必要とするその人の経済状態なり、あるいはその主張自体が将来裁判をして必ず勝訴を得る見通しが立つような正当なものであるかどうか。これが一体どこでそういう判断をして扶助したらよいかということが、いろいろ実施の面においてはむずかしい問題を伴ってくるのでございます。現在のところ弁護士連合会が、御承知通り数年前から最初五百万円ほどの寄付金を集めまして、その寄付金をもとに訴訟扶助を始めておるのでございますから、われわれとしましては、本年度予算要求いたしました際には、とりあえずこの弁護士連合会がやっております財団法人組織の訴訟扶助協会に対して、国がある程度の資金を入れて、この訴訟扶助協会に適切な運営をしばらくやってみてもらったらどうか、こういう考えから、実は予算要求をいたしたのでございますが、なかなかそれらの取扱い上の――大蔵当局として、なるほどそれならばワクが十分しぼれてよかろうというまでの企画がまだ十分でございませんので、今年度の査定からは落されたような次第でございます。なお御指摘のように、この費用につきましては、法務省と裁判所と両方から予算要求をいたしまして、競合いたしました。しかし私の考えでは、先刻も申しましたように、これは一種の、訴訟に関する困った人に対する社会保障的のものでありますから、やはり行政を担当いたします法務省が所管するのが正しいのであって、裁判を行う裁判所がそういう経費を所管するということは、どうも筋が違うのではないかというのが現在も私の抱いております考え方であります。しかしお話のように、これをこういう懸案のままにしておくということはよろしくないと思いますから、急速に裁判所側と話し合いをいたしまして、そうして妥当な運行のできますように、今後とも努力をいたしたいと思います。
  148. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 大蔵大臣はその事項は御承知じゃないと思いますけれども、お聞き及びの通りです。とかく裁判というものは、裁判に利害関係のある人でないと関心を持ちません。多く知らぬのであります。けれども、今申しましたように、正当な権利がありながら、訴訟費用がないので権利の行使ができないということは、一つの社会の暗い欠陥でありますから、これを是正するためには、やはり適当に最高裁並びに法務省の見解を調整して、その上で財政措置を講ずるということが適当だろうと思いますので、一つ研究しておいてもらいたいと思いますが、どうでございますか。
  149. 池田勇人

    池田国務大臣 各方面の意見を聞きまして、十分検討いたしたいと思います。
  150. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 これで終ります。
  151. 山崎巖

  152. 小山亮

    小山(亮)委員 外務大臣にきわめて簡単に、率直に質問を申し上げたいと思います。  石橋内閣以来、岸外務大臣外務大臣をしておられ、今日もなお兼任をしておいでになる。私は岸外務大臣が就任以来現在まで、戦争後戦犯の名によって今日巣鴨に収容されておりますところの残された抑留者並びに現在なおソビエトその他におりまして、所在がわからないままに放置されております人々の釈放及び内地送還に対して、どんな処置をおとりになりましたか、それを伺いたい。
  153. 岸信介

    ○岸国務大臣 今日なお巣鴨に拘置されておる者が、アメリカ関係で七十八人と豪州の関係で二十人、計九十八人に及んでおります。これの釈放につきましては、かねてから両国政府に対して、それぞれ事情を具して、これが釈放方を申し入れております。私が就任した後におきまして、これらの事情、今までの経過をよく検討をいたしまして、両国との間の交渉の経過も頭に入れまして、両国に対して、近くそれぞれ適当な方法を講じて、さらに強力にこのわれわれの希望が実現するような方法をとりたい、こう思って、今その準備をいたしております。  ソ連に対しましては、ソ連に抑留されておる者につきましては、一応マリク名簿の者は帰されましたけれども、なお相当数の者が抑留されており――向うにおり、さらに消息不明の者も相当にあるわけであります。これについては日ソ共同宣言において、これの調査について、ソ連側においても協力することを明らかにいたしておりますので、ソ連大使館の設置に伴いまして、厚生省関係におきましてその方の事務を担当する大使館の館員を一名置きまして、そうしてできるだけ早い機会にソ連関係を明らかにする考えであります。なお非常に多数の者が中国大陸にやはり抑留され、もしくは消息不明であり、あそこからまだ日本に帰らない者がたくさんあると考えられますので、これの調査につきましても、厚生省の調査をもとにして、一応従来の関係もありますので、ジュネーヴのわが方の総領事より中共の総領事にその名簿を渡して、これが協力を求めておりますが、さらに私としてはこの中共を承認はいたしませんが、また外交関係は開きませんけれども、こういう人道上の問題に関しては、中共の政府に協力を求める適当な方法を講じたい、こういうふうに考えております。
  154. 小山亮

    小山(亮)委員 詳細に御説明下さいましたが、私が伺ったところでは、それは前の重光外務大臣以来外務省がそういう処置をとっておったということの御説明のようで、岸外務大臣が就任以来、新たなる立場においてあなた自身がおやりになったということはおっしゃっておいでにならない。これからやろうというお話のように伺いましたが、就任以来は何もまだなすっておいでにならないのでありますか、これを具体的に伺いたい。
  155. 岸信介

    ○岸国務大臣 先ほどもお答え申し上げましたように、巣鴨の何につきましては、実はアメリカも大使が更迭されております。また豪州との関係――これも両国が残っているわけでありますから、豪州との関係におきましても、あるいは近く豪州の首相その他が日本に来訪するというような機会もございます。私は適当な機会において、あまり遠くないしかも有力にわが方の主張が実現できる機会を、実ばねらっておるわけであります。まだ現実に実際こういうことをしたということにはなっておりません。しかし、それはあまり遠からざるときに、ただ繰り返すだけではなしに、新たな構想のもとに、有力にこれを実現するように努力したい、こう考えているのであります。中国に対しましては、私になりましてから中国の詳細な名簿をこちらで整えまして、スイスの総領事を通じて、一応向うに協力を求めております。次にさらにこれに基いて次の方法も考えておりますが、まだこれを一応実行しておるというところであります。
  156. 小山亮

    小山(亮)委員 議会開会以来、岸総理大臣外務大臣は、過去の大戦当時の輔弼の責任ということに対して、非常に野党側から、われわれ同僚からも追及されておられます。これに対して総理大臣は、自分は過去を深く反省して、そうして過去のあやまちを再び繰り返さないように、ほんとうに新しい平和日本を建設するために、自分は民主主義に徹底して、そうして国民の期待に沿うようにしたいということを言っておられる。私はそのお言葉を信用したい。私自身も、戦争時分に――戦前から議席を占めておりまして、戦後やはり追放されたものでありますから、それが再び議席を占めて国政に参画しようというには、よほどの深い決心がなければならぬはずだと思う。そのときの責任を深く反省されたならば、総理大臣は普通の政治家以上に、常人以上に非常な努力をもって、真剣な努力をもって、この戦争問題の終結、そうして新しい平和日本の建設という面に向って、渾身の努力をして償いをしなければならぬ。総理大臣は償いをするということをおっしゃった。私はほんとう総理大臣が真剣に命がけでこの償いをしていただきたいと思う。それがために、第一にまず片づけるものは、この戦犯の釈放です。あなたも四年間あの巣鴨の中で、非常に不愉快な生活をしておられたから、言わなくてもよくわかる。それをなぜ着任早々この問題の解決に着手していただかないのか。これを私は非常に遺憾に思うのです。と同時に、ただいま今なお外地に抑留されて、そうして帰国の日を待っているような人たちがございますが、それに向ってもっと率直に大胆にこの解決の手を差し伸べたらどうでしょうか。あなたは議会が終ったならば、まず六月にアメリカに行くということをおっしゃっておる。アメリカに行くのもけっこうです。だが同時に、むしろソ連に乗り込んで行って、そうしてこの行方のわからないような人たちを早く日本に帰してくれということを、誠心誠意あなたが訴えるところのお考えはございますまいか。私はそういう立場で真剣にあなたが政治に取っ組んでいただきたいと思うのですが、お考えはいかがですか。
  157. 岸信介

    ○岸国務大臣 小山君の今のお言葉は、まことに私の心を強く打つものがあるのであります。私自身、過去の責任を厳粛に反省し、戦争状態から生じたところの犠牲者に対して、でき得る限り早くその大きな犠牲から免れしめるように努力することは、私が再び政治家として、日本政治に民主政治を完成するために挺身する私の大きな務めであると思います。従いまして私は今お話のありましたあらゆる国々に、今なお抑留され、もしくは祖国に帰らんとして帰ることのできない、また消息不明の人々の実情を明らかにすることは、私としての責任を果す一つの道でありますから、できるだけやりたいと思いますが、今直ちにソ連に参ってそうするかということは、今まで考えておりませんが、ソ連の大使も参っておりますし、われわれの方からも大使を向うにやりますし、今申すように、アメリカからも新しい大使が来ております。私は率直に私自身の考え並びに日本国民の考えを述べて、これらの問題を解決することに強力に進んでいきたい、かように考えております。
  158. 小山亮

    小山(亮)委員 なお真に新しい平和日本を建設する、さらに恒久な世界平和というものが切実に必要である。それがために渾身の努力を払う、その使命をもって自分は再び政界に復帰したのだという心持でおいでになるように見受けますが、それならば、むしろ今日原水爆の禁止というようなことは、もうすでに日本国民全体の常識なんです。ただ国連に対して登録の申請をするというふうなことでなくて、原水爆の禁止ということを、アメリカ、イギリス、ソ連に向って率直大胆にこっちから申し出たらどうか。登録申請を申し出たということは、私どもから考えると、ある面において原水爆というものの存在することをある程度認めなければ、登録申請ということは言えないわけなんです。登録申請をしておるということは、原水爆を認めたということになるならば、これは大へんに私どもの考えと考えが違うのです。国民全体の気持が、もうすでに原水爆禁止と恒久の平和を望んでおるのです。でありますから、もしあなたがこの間の施政方針の演説で言われたように、日本の国民、青年の奮起を求めるならば、その青年は何を求めておるか、真の平和を求めておる。それならば、その面に向って青年を奮起させるようにするには、率先して原水爆の禁止ということを、率直大胆におやりになるのが当りまえだと思いますが、この点に対してのお考えはいかがでしょうか。
  159. 岸信介

    ○岸国務大臣 原水爆の使用禁止、従って実験を禁止するということは、日本国民一人残らずの強い念願であり、要望であると私は思います。これはすでに国会の議決においてもはっきり現われております。われわれはあらゆる機会に、この国民の意思を実現するように努力し、あらゆる機会をとらえて、またあらゆる方法をもってそれを実現しなければならぬと思います。不幸にして現在原水爆を持っている国が世界の三大国であって、彼らがその実力によってわれわれの悲願であり、同時に世界の人々の念願であるこれを禁止するということを、なかなか聞かないという国際の現状は、私どもの非常に遺憾にたえないところであります。これがためには、私は何といっても国際世論を喚起して、その盛り上る世論の力によってこれをとめていくようにしなければならぬ、かように考えて、あらゆる機会にわれわれの意のあるところを述べてきております。現にソ連、イギリス及びアメリカ三国に対しまして、率直に国会の議決をわれわれは通告し、日本国民の念願を通告してあります。またそれにもかかわらず具体的にやろうとする場合におきましては、今度のクリスマス島におけるイギリスの実験のごとき、われわれはあらゆる方法をもって、これをとめようという努力をいたしておるのが現状であります。さらにお話のごとく、率直にわれわれの強い要望を伝えるということは、これはきわめて必要である、かように考えております。
  160. 小山亮

    小山(亮)委員 過去の大戦の開戦当時の閣僚として席を占めておられた人が、はからずも日本の政治の首班になった。私は日本の国ではこれが最初にして最後だと思う。なぜならば、岸総理大臣はそのときの閣僚のうちの最年少者だったのだから、もうあなた以外に総理大臣になる人はあり得ない。従ってあなたが戦争によって生じたところの日本のこうむったる損害、あるいは日本の置かれたる立場に対する跡始末をする、これは絶体にあなたの肩にかかってくるところの重い責任だと思う。あなたが一番責任者だと思う。従って戦争後の状態を見て、何が一番われわれが悲惨に感じ、何に一番悲しみを感ずるかといえば、安保条約によって生じたところの日本の国内のいろいろな事件です。たとえば現在起っておるところの沖縄の問題、あるいは砂川事件とかいうような、ああいった軍事基地の問題、あるいは演習地におけるところの農婦の射殺事件のようなああいう事件、あるいは赤線区域なんかができてきて、そして混血児のようなものがたくさん日本の中に住んでおる。こういったような見るもの聞くものことごとく実に私は悲惨に感ずる。悲しみにたえない。一々それを見ると、あの戦争がなかったならばと胸をしめつけられるように私は感ずる。同様におそらく総理大臣もお感じだろうと思います。従って安保条約の改正ということは絶対に必要だ、これはもうあなたがどうしても命を張ってもやらなければならぬことだと私は思うのです。あなたは六月にアメリカに行かれる。さだめしその解決に全力を尽すためにおいでになると思いますが、ほんとう総理大臣はこの安保条約の改正を徹底的におやりになるお覚悟であるのかどうか、伺いたいのです。
  161. 岸信介

    ○岸国務大臣 安保条約及び行政協定につきましては、私がこの予算委員会におきましてもすでに私の信念を述べましたごとく、私はこれがなくなることが日本の国民の願いであり、日本国民の考えはそこにあるということを申しております。ただこの改訂もしくはこれをなくするというような問題につきましては、それぞれ段階があることであり、客観的のいろいろの条件を作っていかないと実際の実情に合わないし、またこれを実現することはできない、かように考えまして、その客観的の情勢を作り、これに必要な環境を作ることが、今のところ最も必要であるということを申しております。たとえば日本の自衛力の増強のごとき、あるいは極東における緊張緩和の問題のごとき、いろいろな問題があると思います。しかし現実に今までこれが実施されてからの経験にかんがみて、実情に合わないところのものが、日米両国で感ぜられておるものも私はあると思います。これらの問題をやはり段階を追うて、今の日本国民の目途としておる、こういうものをなくする、そうして真の独立自主の立場が完成できるように持っていくことが、私は政治の目標でなければならぬ、こういうふうに考えております。
  162. 山崎巖

    山崎委員長 小山君に申し上げますが、外務大臣は四時四十五分ごろから用務のために退席したいという申し出がありますので、右お含みの上、御質疑を願います。
  163. 小山亮

    小山(亮)委員 できるだけやります。安保条約の改正ということは、これは与党、野党を問わず、全部やはり安保条約の改正を望んでおることと私は思います。これは言いかえれば、国をあげての悲願だろうと思います。従ってこれを段階的にやらなければならぬということはよくわかりますが、しかしながら普通の人間にできないようなことを岸外務大臣がやるのでなければ、国民に対する償いにならないじゃないですか。人にはできないが、あなたならばできたというようなことをやって、そうしてあなたがさすがに償いをやってくれたのだというふうにやってもらいたい。沖縄、小笠原の問題を解決するということは、結局国後、択捉の解決といこことに筋が続いてくるのです。つまり小笠原の問題、現在起っておる琉球の問題、このくらいのことはあなたが解決することができるだろうと思う。市長が日本に来たいといっても来られない。これを日本に来させるくらいのことは、あなたがしてやることができるのでなければ、懸命な努力をしたということにはなりますまい。中共貿易にしても、国府の問題にしても、あなたが外務大臣になったからこれだけもっと幅が広くなったというのでなかったら、私は意味がないと思う。だれが外務大臣になったって同じだというならば、あなたが真剣に国民に対する償いをしておるとは、口で言うだけで、何も実行していないのだ。実行するならば、一つでも事実を示して、さすがにやったということを認めるようなことをやっていただきたい。それがためにはもっと真剣な気持で当っていただきたい。この点に対してどうですか、琉球の問題なんかにに対するあなたのお見通しはどうですか、また交渉されたことがございますか、伺いたい。
  164. 岸信介

    ○岸国務大臣 私は外交方針の中に、私の外交に関する考えを率直に申し述べておりますが、日米の間の問題は、もちろん一つ一つ取り上げれば、今の沖縄の問題も非常に重要な問題であります。あるいは小笠原の問題もございましょう、あるいは基地の問題もございましょう、あるいは安保条約全体の建前の問題もありましょう。あるいは先ほど申しました戦犯の釈放の問題もございましょう。いろいろな問題が私は存在しておると思います。こういう問題をやはり総合的に考えまして、日米の問題は、ほんとう日本の国民の気持、また民族の要望というものを私自身がはっきりとつかんで、率直にアメリカと話をすることが、私はこれらの問題を解決するかぎであると思っております。もちろんこういう状態ができたということは、戦争によってできたことでありますし、また戦後における日本の国力なり、あるいは防衛体制なり諸種の状況というものが、まだ十分に行っていないところがございますので、なかなか一挙にして国民が期待されるように解決することはむずかしかろうと思いますけれども、しかし私はかねて申し上げておる通り、沖縄の問題につきましても、施政権の返還の問題は国会の議決を経た国民の意思の表現がはっきりしております。しかしこの交渉に当っても、なかなか全面的に返せということは、アメリカ側がすでに日本に回答をよこしているように、私は今日の状況ではまだむずかしいのだ、そうなればたとい一部分であってもその方向に向っていく、解決をしていく、そういう話し合いをするということが、日米間のいろいろな懸案の再調整の上において必要である、こう考えまして、日米間に存しておるところのこれらの国民の要望であり、われわれの民族的の一つの念願であるというものを取り上げて、これらのものを準備をして、そうしてアメリカと率直に話し合って解決するというのが私の使命である、かように考えて、いろいろの準備をいたしておるところであります。
  165. 小山亮

    小山(亮)委員 先ほど同僚議員の質問に対して総理が綱紀粛正を断行したいということを言われた。私は綱紀粛正という言葉を歴代内閣が申しますが、少しも粛正きれないということを非常に悲しむのです。すでに終戦後のいろいろな情報を聞きましても、通産省、建設省、大蔵省、厚生省、あるいは防衛庁、運輸省、農林省、あるいはこのごろに至っては全購連、ことに最近の国鉄に至っては、もう底なき泥沼に手を突っ込むようなものです。実に疑獄の巣くつだと私は思う。この問題が粛正されなければ、国民精神の作興ということはございません。一体何のために税金を払っているかわけがわからない。税金を一体どこへ使われておるか、税金の行方を突きとめたいというのが国民全体の気持なんです。納税に対するところの義務観念なんというものは、国民にはなくなってしまう。今はもう税金をとられるので、税金をのがれよう、のがれようという気持で一ぱいです。昔は警察官がこわかったが、もう警察官はこわくない。今は税務官吏がこわいのです。税務官吏よりかこわいものはないくらいです。それはもういやでたまらぬ、税金をとられる、払った税金がどこに生きて使われるという具体的な事実が少しもはっきりしないうちに、至るところにおいてつまみ食いです。至るところにおいて疑獄です。これじゃどうもあんまり国民がかわいそう過ぎる。このくらいの粛正ができなければどうするか。そうしてまた国民精神の作興だって、青少年の奮起だってありませんよ。具体的に総理大臣が綱紀粛正をやるというならば、身をもって範を示さなければならない。あなたが内閣を組織なさるときに、あなたはまず自分のできることをおやりになったらいい。自分が任命するところの閣僚の中で、疑獄事件に多少でも関係をしたり、あるいはそのにおいでもある者は一切排除なさって、きれいな人間をお出しになったらどうでしょう。どこから見てもすがすがしいような、縦から見ても横から見ても、一言半句人から言葉を差しはさまれないようなりっぱな人格の者を、まず閣僚にお据えになったらどうですか。いろいろなうわさをされたり、新聞や雑誌に書き立てられたような人たちが入っておれば、やはり口で言うだけで、あなたの言うことを信用しやしない。ほんとうにやるならば、まず自分の周囲からおやりなさい、そうして自分の役所からおやりなさい。どんな迫害があっても、どんどんと粛正をやるということをやるのでなければだめだと思います。今の内閣は、石橋内閣をあなたは受け継いだ、思いがけなく拾ったような内閣だ、何も気がつかずに歩いておったら道ばたに財布が落ちていた、それを拾ってみたら石橋内閣の遺産を拾ったということなのです。引き続いてきておるのだから、あなたは今の内閣の改革はできないかもしれない。しかしこの予算が済んだら、どうせ岸内閣の陣容を建て直しをなさるでしょう。そのときには思い切ってほんとうにきれいな顔ぶれで陣容を立て直すことが、一番いいことだと思いますが、お考えはいかがですか、私は国会が終ったら内閣を改造しろなんて注文するのじゃないのですよ。しかしいつの日か改造しなければならぬときが来るでしょう。そのときに私の今申し上げた改造をおやりになる御決意があるかどうか、それを伺いたい。
  166. 岸信介

    ○岸国務大臣 綱紀粛正の問題は歴代の内閣が唱えておるが、なかなかその効果が現われない。これは私もそう思います。よほど決意を持って当らなければいかぬと思います。そうしてそれをやるにつきましては、何といってもやはり政府みずからがそういう姿にすることが、今小山君の言われる通り私は一番必要であると思います。もちろん今日のような、たくさんの官吏がおりまして、組織も複雑になっておりますから、いろいろなところに国民の期待に沿わないような疑獄その他の汚職の問題ができることは非常に残念であり、これを粛正しなければなりませんけれども、何といってもその源泉は政治であり、従って内閣の姿そのものを国民が信頼するようなすっきりしたものにしなければばならぬことは、私は言うを待たぬことと思います。全然小山君のお考え通りのことを私としては考えております。
  167. 小山亮

    小山(亮)委員 約束の時間が来ましたから総理はいいです。  続いて大蔵大臣に伺いたいと思います。私は海運、陸運の問題を主としてきょうは質問したいと思っておるのでありますが、第一にお尋ねしたいのは今度の予算を見ますと、政府は造船に対するところの利子補給というものを中止されたように見受けますが、事実中止したのであるか、あるいはもし中止したならば、その理由はどういう理由であるか、これを伺いたい。   〔委員長退席、河野(金)委員長代理着席〕
  168. 池田勇人

    池田国務大臣 造船に対しまする利子補給は、三十二年度におきましては予算を計上いたしておりません。従いまして中止いたしたのであります。法律はそのまま残っております。なぜ中止したかと申しますと、最近の海運界の状況から見まして、船会社また関係の造船所におきましては、利子補給がなくてもやっていけるという見通しがつきましたので、取りやめたのでございます。
  169. 小山亮

    小山(亮)委員 そうすると利子補給つまりむずかしく言うと外航船舶建造融資利子補給及び損失補償法というものですが、一体この法案を設定なさったときの精神はどうか、この提案の理由と、法案を制定したところの理由はどういうわけか、性質はどういう性質のものであるか、それを伺いたい。
  170. 池田勇人

    池田国務大臣 御承知通りわが国は海運国と言われておったのでありますが、戦争によりまして大部分の船が沈没いたしてしまったのであります。しかして戦時補償特別税その他の関係から保険金等政府の補助は一切ございません。従いまして外国との競争場裏において、日本の船会社は船も少いし、非常に不利な立場に立つのであります。しかし日本の置かれた情勢から申しまして、どうしても海運を興していかなければならぬ。しかしてわが国の金利は外国のそれに比べて非常に高い、そうして船会社は昔の船を持っていない、こういうことから利子を補給いたしまして、当時運賃が非常に安うございましたので、利子補給をして造船を盛んにすると同時に、運営に便を与える考えでやったのであります。
  171. 小山亮

    小山(亮)委員 そうしますとつまりこの利子補給というのは、国際的な日本の競争力を高める、そういう目的でありますか、あるいは不況に対してこれを救済するという不況対策が本旨でありますか、どっちであります。
  172. 池田勇人

    池田国務大臣 両方とも加味されておると思います。
  173. 小山亮

    小山(亮)委員 私はあなたの今おっしゃった言葉――私はこの法律を廃棄するということには決して反対じゃないのです。反対じゃありませんが、もし法律を廃棄されるならば、これはよくわかりますが、法律をそのまま残しておくというのはどういうわけなのか。残しておいて中止させるということになると、船の会社に、お前は利子をもらうのを遠慮しろ、こういうことを言うわけでしょう。遠慮しろと言った場合に、私は遠慮しません、遠慮したならばやり切れないと言って断わった場合には、どうするか。そこを伺いたい。
  174. 池田勇人

    池田国務大臣 今の状況で予算を計上いたしませんのは、法律を廃棄してしまうわけではございません。また将来そういうことがあった場合には、予算を計上してもいいのじゃないか、またすべきではないかと思います。従いまして、ただいまは中止と申しますか、三十二年度予算を計上いたさなかったのであります。しかしこれは重大な問題でございますので、運輸大臣と相談をいたしましたし、また業者の意見も聞きまして、大体計上せずに済むという見通しがつきましたので、計上しなかったのであります。
  175. 小山亮

    小山(亮)委員 私はその点が非常に不可解なのです。政府が法律をそのまま置くならば、一応予算をそのまま置かなければならぬでしょう。そうしておいて船主がみずから辞退するなら辞退させるということもありますが、法律をそのまま置いておいて、予算をとってしまっておるのです。初めから予算をとっちまっておる。やらないということなのです。ですから結局、船主側の方でもって私は承服できない、前からの約束でやっているのだから、これは承服できないと言った場合に、法律的に断わることができないと私は思うのです。その場合はどうなのですか。
  176. 池田勇人

    池田国務大臣 これは利子補給をし得ることになっておるのでございまして、法律が存しておるときには是が非でもあの比率によってやらなければならぬとは考えていなかったのであります。
  177. 小山亮

    小山(亮)委員 しかし全然やらないということはまたおかしいでしょう。幾らかやっても、全然やらないということはできないはずなのです。これはあなたの方でもって法律をちゃんときめられて法律で支給することになっているのだから、その割合をあなたの方で減らすことはできるだろうが、全然とっちまうということもおかしい。そしてまた政府が船主を呼んで、無理やりにお前は遠慮しろ、こういうことを言う場合には、船主はあるいは遠慮するかもしれぬ。しかしそうした強制をするということがもしあったら、私はそれは憲法上疑義があると思う。どうでしょう。
  178. 池田勇人

    池田国務大臣 新規の造船につきましては、契約によってやることになるのでございますから、これはいたしません。しかし過去の分につきましては、お話通りそういう約束であったのでございますが、向うが辞退してくれれば予算に計上しないのが至当じゃないか。当りましたところ、大体辞退するようでありますので、予算を計上しなかったわけであります。
  179. 小山亮

    小山(亮)委員 それはあなたの方で、向うがやめるだろうという考え方だが、もしも一人ぐらい俺はいやだと言う人間がないとも限らない。その場合に予算措置がなかったらどうなさるのですか。
  180. 池田勇人

    池田国務大臣 大体この問題を運輸大臣と相談いたしまして、辞退するという見通しがついたのでございます。
  181. 小山亮

    小山(亮)委員 あなたのお見通しがつきましても、見通しが狂うことが万が一あった場合はどうしますか。これは必ず一人ぐらいはありますよ。かりに私が作った場合には、どうするのです。あなたはそのときはどうしますか。
  182. 池田勇人

    池田国務大臣 私の見通しと運輸大臣の見通しは一致いたしまして、大体ないと私は信じておるのであります。
  183. 小山亮

    小山(亮)委員 この問題は、運輸大臣がそう信じておられて、もしあった場合には予算が出るところがないからお困りになるだろうから、これでやめておきますが、あなたはさっき、日本の船会社が外国に比べて非常に不利な立場にある。戦後も安い運賃だ、何とかして日本の船会社の外国との競争率を高めるように努力したいということを言われた。まことにそういう御精神は、私はけっこうだと思う。しかし実際に政府のやっておいでになるところを見ますと、あなたのお考えと逆なことをやっておられる。一例をあげますと、今、日本で一番必要なものは船腹です。船を作りたいのです。戦前六百三十万トンの船が、すっかりこわされ、そして戦後七、八十万トンのところから、ようやくまたやり上げて、今日では三百七十万トンばかりの外航船を持つようになりました。しかし世界的に船腹を見ますと、世界の船腹というのは、戦前において六千万トンの船腹を持っておりました。ところが戦後の今日では、もうすでに一億近いのです。   〔河野(金)委員長代理退席、委員長着席〕  そうしますと、日本の船腹が戦前の船腹に返りましても、なおかつ日本の国内需要も満たし切れない。その証拠には鉄の需要をごらんになればわかりますが、戦前三百六十万トンくらいの鉄の消費をしておりました日本が、現在においては七百二、三十万トンある。それに二千二、三百万トンから三千万トンくらいの鉄がなければ、日本の産業は成り立たぬというくらいな状態で、これは大蔵大臣が施政方針の演説のときに言われた通りである。経済的規模がだいぶ違ってきている。そうしますと、日本は今必死になって船を作って、将来の外貨獲得に当てなければならないにもかかわらず、今の日本の国内の造船所はどうかというと、外国船で注文は一ぱいですよ。今の国内の造船所は、大体四百二十万トンくらいの手持ちの工事量を持っております。その中で外国からの受注を見ますと、三百三十万トンくらいが外国からの受注です。そうすると、差し引きして日本の国内の船は九十万トンしかできない。外国の船を八割以上日本の国で作っている。そうしてまたその外国の船に対してはどういうことをしているかというと、日本輸出銀行が建造資金を貸しているでしょう。輸出銀行が建造資金を七割、市中銀行が三割貸すのです。その七割の輸出銀行の利息が四分ですよ。そうして市中銀行の利息が九分四厘九毛ですから、九分五厘ですね。そうすると、両方合せますと、外国船の建造のために日本が融通する金は、五分六厘なのです。五分六厘の金利で外国の船を作らせる。しかるに日本の船の建造はどうかというと、たとえば定期船でありますと、五割が開銀の政府資金でしょう。五割が市中銀行でしょう。開銀からの政府資金というものは、利息が六分五厘、そうして市中銀行が九分五厘、合せると八分です。日本の船舶の建造に対する融資、それに対する建造資金というものは、八分の利息で建造させて、外国に対しては、五分六厘。一番保護されている定期船ですらそうなんですから、さらに今度不定期船になりますと、三割が開銀、七割が市中銀行。そうしますと、その利息が両方合せて八分六厘ですよ。そうすると、日本の船だけには特に重い利息をあてがって、外国のやつに安いのをやらせる。そうして日本の造船所は、八分通り外国の船がすっかり注文して、日本の船は作ろうたって作れない、こういう状態をごらんになって、あなたは矛盾を感じませんか。私は、いろいろ長い間たくさんやっているから、一つや二つ見落しがあるかもしれません。しかし私が今申し上げたことは、実際の事実なのです。この事実によって、これでは日本の船がやり切れない。何とかほかに方法を講じてやらなければならぬというようなお考えはございませんか。
  184. 池田勇人

    池田国務大臣 この点なかなか数字にわたりまして厄介な問題でございますが、御承知通り三十二年度から利子補給をやめました。従いまして十二次造船までにおきましては、開発銀行から借り、市中銀行から借り、また自己資金でありまする関係上、大体定期船では五分三厘程度の負担になることになっておったのであります。それは市中銀行の二銭六厘の九分何ぼと六分との差額を半分利子補給いたしました。また開発銀行は六分五厘と三分五厘との差額の――三分五厘で返しまして、三分を猶予いたしております関係上、十二次船につきましては大体三六、七%が開銀、三〇%余りが市中、その他は自己資金、こういうことになる関係上五分三厘くらいになっております。それからまた輸出銀行から借りますのは、最近の状態では大体六、四くらいになっております。輸出銀行が六分で、市中銀行が四分というのでございます。そういうようにいたしますと、大体五分九厘くらいのところでありまして、今までのところは国内船の方が、いわゆる計画造船にはまっておれば、そう不利ではなかったのであります。昨年は御承知通り、開発銀行の融資のない船主が、単独で作りました船は三十四、五万トンに達したのであります。金利の負担の問題は、今までのところはなかった。今後の問題として利子補給をやめた場合におきましては、私は開銀の割合をどの程度に持っていったらいいか、市中銀行の金利をどの程度にしたらいいか、これが今後に起る問題だと思います。そうしてもしそれ、開銀の融資の場合と輸出銀行の融資の場合を比較して妥当な方法を講ずるとすれば、輸出銀行の今の四分の割合、六、四というのを四、六にするか、あるいは三、七にするかということも考えなければなるまい。ただ輸出銀行の四分という利子は、このごろ造船が非常に盛んになりましたが、これはもともとはプラント輸出を主にしたものでございまして、当初はあまり造船の方は考えなかった。プラント輸出の方だと四分でやっておりますが、これは国際的に大体妥当と認められておるので、これをたびたび動かすわけにはいかない。従って外船の利子につきましては、輸出銀行の四分の割合を低くしていく方が一番いい方法じゃないかと思います。ただ最近の状態では、即金払いとか、あるいは長くて一年か一年半くらいでみんな向うは払ってしまうのであります。開発銀行から出します造船資金というものは非常に長期であります。私はこういう意味から申しまして、小山先生のおっしゃるほどこれが非常に重大な問題とは思いません。ことに今の輸出銀行の割合を少くすれば、大体平均がとれるのじゃないか。私はそういうことよりも、国内造船をやると同時に外国船もどんどん引き受けたらいいのじゃないか、そこの間に船主において不利の起らないようにするには、利子補給を切りました関係上、今後の問題として考えていくべきものと考えております。
  185. 小山亮

    小山(亮)委員 この点については今の大蔵大臣お話のある程度はわかりましたが、ある程度まだわからないところがある。それは今の輸出銀行の融資の率を変えるということをおっしゃいましたが、それよりもむしろ日本の国内船主の建造に対する開銀と市中銀行との率をお変えになったらどうか、いずれにしても外国船はすぐ払うからそんなにつらいのではないということをおっしゃいますが、一応外国から建造の注文をとりますときに、この市中銀行輸出銀行との融資率というものも向うに申し送って、向うの了解を得て契約をしているのだといたしますと、その途中において政府の考えで一方的にこれをどんどんとやっていくということになりますと、ある程度において国際信義にもとるとか商業道徳上非難をされるというおそれがあります。従って日本政府の信用を高めるためにも、やはり外国の方の率をいじるよりもむしろ国内の方の利子の率を変えて、そうして船の建造を豊かにしてやるということの方がいいのではないか。それからさらに先ほど利子補給というものが不況対策であり、国際競争率を高めるための両方だとおっしゃった。国際競争率を高めるためであるならばあえていろいろ申しませんが、不況対策の一種の気持までも含めてああいう法律を出すということであるならば、なぜ外国船だけお出しになるか、外航船だけお出しになるか、日本国内の内航船というものはみな困っている。非常に苦しい立場に追い込まれている。内航船の不況時代に不況対策として何のめんどうも見てやらない。元来日本の今までの海運政策といいますか、日本の船舶行政というものは、日本の名だたる指折りの十何社という大会社だけのものに非常に便利にやっておって、いわゆる中小企業対策というようなものは海運政策には絶対にないのですよ。今までかつてなかった。中小造船所がどんなに困っても、中小の船主がどんなに行き詰まって船を売り払わなければならぬようになりましても、これを政府は何にも見てやらないで、郵船会社であるとか商船会社であるとか飯野海運であるとかいう名だたる大会社がちょっと困れば、すぐいってサービスをしてやってちっとも困らないようにめんどうを見てやる、その親切の度が過ぎるくらい大財閥には一生懸命にやっているが、働いて一生懸命にやろうとして起き上ろうとする人間がどんなにのめろうとしても、一つもめんどうを見てやらなかったのが今までの船舶行政なのです。私はこの矛盾を委員会でもつきまして、ことしはどうやら百万トンだけ、二千トンか三千トンくらいの船を作る資金を初めて貸してやろうという、これは実に神武以来の善政をやられたわけなのです。今まで神武天皇以来何もしていないのですから、財閥中心の政治をやっていたのですから、この点についてあなたがもっと日本の船舶の建造ということを考えられるならば、今日なおかつ日本の自己資金で作っているのがありますが、そういうものまであたたかい手を将来差し伸べてやるというような方策を講ずるお考えはないか、これを伺いたいのです。
  186. 池田勇人

    池田国務大臣 輸出銀行の持ち分を少くするということにつきましても、これは今後の問題でございまして、既契約の分はなかなかむずかしいのではないかと思います。ただこれは計算が造船会社の計算で外国の船主にどうこうということは、直接にはこない、外国の船主との問題は注文の船の値段の問題でございますから、国内的の問題として考慮し得ると思います。その辺は今後金融市場の問題等から考えまして善処いたしたいと思いますが、開発銀行の六分五厘をこれまた低くいたしますと、御承知通り第十二次計画造船で計画は三十一万トンでありながら、その計画造船に載らない自己資金でやる人、あるいは銀行からの借入金でやるなど、計画に載らない人が三十数万トンやっている状況でありますので、今言ったあまりに特別大きな会社に保護を与えるということもなかなかむずかしいので、六分五厘をもっと下げるというのであるならば、勢い国内的に波紋を起すということに相なると思うのであります。私は計画造船ということにつきましては、以前からある程度疑問を持っておった。もうこういうときになって、しかも計画造船に載らない造船会社が多いという場合に、いつまでも計画造船を固守していくということはいかがなものかという気持は、個人的な意見といたしまして持っておりますが、しかし今のところはやはり計画造船でやっていこう、しこうしてその計画造船をできるだけ変化を持たせ――今外航船自体から申しますと、戦前に比べましてそう遜色はない。今問題は東南アジアあるいは中共あるいはまた近海の輸送にかなり困っている。だから大造船所もそうでございますが、中小の造船所も非常に繁忙を来たしてあるのであります。こういう実情から見まして、やはり一万トンあるいは六、七千トンというものよりも、二千トン程度のものを、この際やはり政府のできるだけの補助をしていって進めていくべきじゃないかと思っております。何分にもやはりそのときの状況によって、いろいろ考えなければならぬ問題と思いますが、運輸大臣と十分連絡いたしまして、十分ではない金をできるだけ効率的に使おうといたしております。
  187. 小山亮

    小山(亮)委員 これは主として運輸大臣に伺いたいのですけれども、はなはだ失礼ですが、運輸大臣はあまり船のことを御承知ないものですから、勢い前からやっておられる大蔵大臣の方によけい伺うことになるのですが、三十二年度計画造船資金は大体百八十億というふうに踏まれていますが、それはやはり三十九万八千トンの船腹を作るための費用として割り出しているわけです。それに対して予備金あるいは開銀その他の関係から、二十億ほどの予備をあなたの方が見ておいでになるということですが、しかしそれで大体計画造船の船腹は、船価が上ってきて一割くらいの船価高になってもそれでいいという計画で来ておるのですが、現在はもう三割くらい造船資金が高くなっておる。それに対して勢いやはり政府資金も、今の二百億からはみ出してくるということになりますが、そのときの手当は大蔵省の方でできるわけなのですか、それを伺いたい。
  188. 池田勇人

    池田国務大臣 昨年の第十二次計画造船は三十一万トンでございまして、開発銀行は百四十億円を予定しておったのであります。今回の第十三次計画造船は三十四万トンでございます。三十九万トンまで計画いたしておりません。三十四万トンで百八十億円を見ておるのであります。従いまして定期船、不定期船あるいはタンカー、これによりましてトン当りの価格は一割程度上ることを見ております。そして鋼材その他も一割二、三分上っておりますので、大体一割程度上り方でいいのじゃないか、タンカーの方は一割まで上らぬだろう、定期船の方は一割ちょっと越えるのじゃないか、こういうふうな見方でおるのでございます。しかし何分にもやはり造船は必要でございますから、一応百八十億円で三十四万トンと見ておりますが、開発銀行の予備金の五十億円のうち、一応二十億は予定いたしておるのであります。私は問題は開発銀行の予定の金額もさることでありますが、民間資金、これが問題だと思っておるのであります。船も大事でございますが、電力その他鉄鋼等につきましても相当金が要りますので、財政投融資の分は一応見通しはつけましたが、民間の方の融資の状況を見まして善処いたしたいと思っております。
  189. 小山亮

    小山(亮)委員 けさの新聞でありますか、日銀総裁が関西の方へ行かれまして、そうして言われた談話が出ております。それは、造船資金を潤沢にする必要は絶対である、市銀のみに依存するのは無理だから、インパクト・ローンを実行するのもその一方法である、しかしながら自分としてはこの期限というものに対してやはりちょっと考えなければならぬということを談話で発表しておられます。私はインパクト・ローンという外国の資金を日本国内の船の建造に使うということは一番適当な方法であろうと思いますが、大蔵大臣はこれに対して何かお考えがありますか。また具体的にそういう問題が起きてきたらどうなさいますか、それを伺います。
  190. 池田勇人

    池田国務大臣 インパクト・ローンの問題は厄介な問題でございまして、ここ一、二年は原則としてインパクトローンは許可しないという原則があったのでございますが、前からの約束等によりまして、船あるいは電力の二つにインパクト・ローンも相当ありました。インパクト・ローンとは何ぞやということになりますと、これはなかなかむずかしい言葉でございますが、今後の問題といたしまして、普通言われておるインパクト・ローンをやるということになれば、電力あるいは鉄鋼が適当であるということは、私は日銀総裁と同じ意見でございます。しかしどれだけやるかという問題は、私はその新聞を読みませんでしたが、これはいろいろな条件がございますので、一がいに私はどれだけ造船、電力のインパクト・ローンをやるということはここで申し上げられません。やはり国内の金融、そして外国との契約の内容等によりますので、やるともやらぬともここでは御返事できませんが、もしインパクト・ローンをやるとすれば、電力や火力の発電あるいは造船なんかが適当なもののうちに入るだろう、こういうことだけしかお答えできません。
  191. 小山亮

    小山(亮)委員 宮澤運輸大臣に伺いますが、今大蔵大臣は三十二年度の建造船舶の見込みが三十四万トンだと言われた。それは百八十億円というものを土台にして考えれば、三十四万トンです。しかしながら運輸委員会その他で宮澤運輸大臣も言われましたように、二十億の予備費というものを見れば、三十百年度の建造船舶数量は三十九万八千トンまでできるわけだ。そこで二十億を出すということがもうすでにきまったのなら、それは予算にちゃんと計上して、そのつもりで三十九万八千トン、まあどっちかといえば四十万トンくらいの建造計画を断行するお考えはないか。また今のような三十四万トンの数で満足しておいでになるのかどうか、それを伺いたい。
  192. 宮澤胤勇

    ○宮澤国務大臣 お答えいたします。お話通りでありまして、一応百八十億円の割当で三十四万トン、あとの百十億円は予備金としてとっておりますが、最近の金融情勢その他から見て、できるだけこれは行いたい予定で、ただいま船台も、これは私よりあなたの方が詳しいですが、国内船に八十万トンくらいのものはありますので、自己資金のものと合せて七十万トンになるか、八十万トンになるか、そのくらいことしは建造したい。そういう点から、一応当初二百億円で三十九万トンという計画立てまして、財政投融資の各般の事情を見合せて一応百八十億円を先にきめまして、あとは今後の情勢によって、どうしても日本の船舶は足りないのですから、これは一つ順次その方向に進めていきたい、かように考えおります。
  193. 小山亮

    小山(亮)委員 大蔵大臣に伺いたい。観点を変えてガソリン税の問題でありますが、今度政府はガソリン税の増税を計画されておる。予算面を見ますと、約五百四億がガソリン税として見込まれておりますが、一体ガソリン税は過去三カ年毎年連続増税なんです。あらゆるものの増税を見ましても、ガソリンくらい毎年連続増税というふうなものはございません。私はこれはあまり過酬な税金の取り方じゃないかと思う。さらに最近スエズの問題が起きまして、そしてタンカーの輸送賃が二割五分上ったということを口実にしまして、石油会社が一斉に石油の原価の値上げを断行した。でありますから、一キロリットルに対して八千円上っておる。その一キロリットルで、八千円上っているのに対して、政府はさらにそれに六千五百円の税金をかけようとする。これは私はあまりに苛酬な税のかけ方だと考えますが、大蔵大臣のお考えはいかがですか。
  194. 池田勇人

    池田国務大臣 ガソリンの課税は当初一万円というふうな声もあったのでございます。それで御承知通りスエズ問題が起りますまでは、大体一キロ二万三千円程度でございました。当時の各国におきまするガソリンの値段を比較いたしますると、イタリアが一キロリットル七万五千円、フランスが六万六千円、日本の三倍くらいのガソリンを使っているわけです。イギリスにしても四万五千円、ドイツもその程度に相なります。それに日本が二万三千円である。二、三年前からガソリンを道路改修の財源にしよとという方針がきまりましたので、どうしても道路の急速なる改良補修をするとすればガソリンにたよらざるを得ぬ。一万円上げても三万三千円だというふうなことで、一万円から実は検討していったのでございますが、何分にもお話通り毎年上げてきているのでそういうふうにするということはどうかというので、国でもこの際新たに一般会計からある程度負担しよう、そして六千五百円ということなら、スエズ問題が起らなければ三万円程度で石油を非常に産出するアメリカとあまり変らない。イギリスやドイツに比べてもまだ安いし、フランス、イタリアに比べたら半分以下というふうなので、私は大体六千五百円くらいでがまんしていただく。そうしてまた新たに一般会計からもできるだけの負担をしよう、こういうので六千五百円引き上げ案を出した次第でございます。急激に上るということはいかにもわれわれとしても心苦しいのでありますが、片方におきまして道路を早く補修改良しようという念願から出ておるわけでございます。
  195. 小山亮

    小山(亮)委員 そうするとあなたのおっしゃることは、政府は六千五百円というガソリンの増税をやって、それを道路補修のために目的税としての税金を取り上げておいて道路補修に充てる、そのほかに一般会計から道路補修費を出す。どのくらいお出しになるのですか。
  196. 池田勇人

    池田国務大臣 ちょっと正確な数字を記憶しておりませんが、四十四億と思います。
  197. 小山亮

    小山(亮)委員 ガソリン税を五百四億取って、そうしてそれを道路の目的税として全部道路の補修費に充てるといわれるのでしょう。それで一般会計から四十四億しか出さなければ、スズメの涙みたいなものではないですか。結局道路を全部ガソリンの消費者に負担させるという結論になるでしょう。私は目的税としての受益者負担ということの意味はわかります。受益者が負担する、さらに道路が補修された後にその自動車業者というものは一キロに対して十円とか十五円の利益があるということはわかります。わかりますが、しかし政府が今税金を増徴しまして、そうして道路の補修をやる。五カ年間にどれだけの補修をやるかというと、大体千二百何キロですよ。ところが実際に自動車が走り回っている日本の道路というものは三十万キロあるのです。三十万キロのところを走り回っているところに、五年間で千二百何キロのところをやって、わずかに三%くらいのところをやって、そうして日本全国の自動車業者に、やがてお前らはもうかるのだから負担しろということは、これは無理じゃないでしょうか。もうかったから現に直ったところを走っている者だけから取り上げるということはわかりますね。道路が直ったところを走っている者から取り上げるということはわかる。これから五年先に直すのだから出せ、そうして出しても、それを使う人間は全国の道路の三%だけで、残りは全然補修されないところを走っている業者がガソリン税を負担しているのですから、事業としてこんな乱暴なことはないでしょう。これから道路を直す、将来は十年、二十年、三十年後にこれだけもうかるのだから、お互いに出資金として、賦課金として出せというならわかりますが、税金としてはそういう取り立て方は私はないと思う。そういう取り立て方は池田さんとしては当りまえの税金の取り立て方だというふうにお考えですか。私はもうかって利益があったところで税金をお取りになる、これはわかる。将来はもうかるかもしれぬ、五年も十年も二十年も先にはもうかるかもしれぬから、それを見越して今これだけ出せという税金の取り方がございますか。池田さんはそういう税金の取り方を発明なさったのですか、前からずっとやっていらっしゃったのですか、伺いたい。
  198. 池田勇人

    池田国務大臣 五百数億円のうちで四十四億円ではないのでございます。今度増徴いたします場合におきまして百二十数億円見込んどおりますが、大体一キロ百千円として四十四億円を見ているのでございます。従来は目的税にいたしましてからそういうことはしておりません。根本は相当増税になりますので一般会計も見ようということにして、今までに例のないようなことをいたしておるのであります。しかし次の問題につきまして、それではこれから道路をよくしていくのだ、しかしよくしているところはいいけれども、よくならぬところを走る自動車もガソリンを使うからそれは無理じゃないかとおっしゃいますが、実際問題としてはそうやらざるを得ますまい。私はこれが実際のところだ、それでだんだん早くよくしていく。しこうしてまたガソリン税を主として負担される業者はよくなったところを走る業者が多いのでございます。走るものでないのだからそれは負担するなといったのでは、私は政治というものは国全体がよくならないのではないかと思います。
  199. 小山亮

    小山(亮)委員 私は道路の問題は、これはかって政府が招聘をいたしましたワトキンスという調査団が来ましたときに報告しております通り日本ぐらいの工業国でもって、道路が今日のようにまで捨てられておったという国は珍しい、産業の振興のためには何といっても道路が一番先だということを言っています。私は国民総所得の百%ぐらいは道路にかけなければならぬというような報告があるのも見ておりますが、それから見まして、道路をよくするということは日本全体の産業をよくするということなのです。日本全体の国富を増大することなのです。あるいは観光事業にしてもそうです。日本に来た人が金を落すので日本全体がもうかるのです。ひとり自動車業者だけがもうかるのではないのですから、それを考えますと、日本全体がもうかるのに自動車業者だけが負担するのが当りまえだというあなたのお話は、私はどうも承服しがたい。利益を受けるものが日本全体であるならば、日本全体で見なければならぬ。それから今までは目的税であったから、ガソリンの税金だけで道路が修復したのだから、今度は初めて四十四億円を入れたのだということをおっしゃっておるが、これは間違いだ。これは目的税をきめます以前に一般会計でやっておった。しかしながら道路の修復というものを積極的に急速にやらなければならぬからというので、目的税という制度を設定するときにこのガソリン税もそれに充てる、それは従来一般会計から支出したものにプラスしてこの目的税を加えようというので、そうして委員会が認めたのですよ。そのときの速記録をよくごらん下さればわかります。政府ははっきりそう言っております。それをガソリン税だけを置いて、あとの一般会計からの支出を財政が苦しいという名目ですりかえて、いつの間にかどこかへ隠してしまって、そして自動車の方だけに、ガソリンの消費者だけに負担させて知らぬ顔をしてほおかぶりしていた、こういうようなのが現状なのです。それはその当時からの速記録をずっとお読みになればわかります。もしあなたがそういうことを知らぬとおっしゃるならば私が持ってきてお目にかけてもよろしゅうございます。私はそういう意味からいって、国家全体が利益を受けるのですから一ガソリン業者だけではだめだと考えますが、重ねて同いたい。
  200. 池田勇人

    池田国務大臣 ガソリン税を道路の補修、改良に充てるということは、多分昭和二十七年の暮れ、私が通産大臣のときの閣議決定であったと思います。いろいろ問題がございました。問題がございましたが、私はやはり道路を直すことを早急にやらなければいかぬというので所管の大蔵大臣ではございませんでしたが、通産大臣として閣議で主張したわけなんです。そのときの了解は、私の知るところでは、やはりガソリン税をもって道路の補修、改良に充てよう、こういうことに私は了解いたしたのでございますが、しかるにその後において、これは私は知りませんが、聞くところによりますると、建設委員会の方でお話しのような点があったと聞いております。今まで通り一般会計から道路を負担し、そうして揮発油税の収入がまたその上に別に乗っかるようでは財政は持ちません。そこでそういう委員会の議論があり、決議があったということは、最近において聞いたのでありますが、しかし過去二年あるいは三年は、ガソリン税だけでいっておったのであります。私は、今小山さんのおっしゃるような趣旨もありますので、今回は四十四億円を出すことにいたしたのであります。これも、やはり閣議決定のときとは違いまして、委員会にそういう議論があったというので、実は四十四億円を入れたような次第でございます。
  201. 小山亮

    小山(亮)委員 私は、現在の大蔵省の考えておるような増税をやった場合に、日本のトラック業者というものが税金の負担に耐えるかどうかということを心配しておるのです。御承知のように、現在の日本のトラック業者の利益というものは、数字から見ましても大体三%ぐらいです。ところがこれだけの負担をいたしますと、とても耐え切れない。トラック業者というものの形態は、大蔵大臣の方がよく知っておいでになるから説明をしなくてもわかると思いますが、大体大きなトラック業者というのは数少いのです。大体みんな十両ないし十両以下ぐらいの車両を持ったような業者がきわめて多いのです。そして、これらは銀行からの融資の対象にならないのです。中小企業といいますか、小企業のまだ下ぐらいなものだから対象にならない。みんな月賦で車を買ってころがしているようなもので、利息でも日歩三銭五厘か五銭ぐらいのを借りているのが多いのです。そういう業者が辛うじて生活しているものを、今のあなたのような工合に、原油において値段が一キロリッター八千円も上っているのですから、それに六千五百円を上げてくればやり切れなくなる、つぶれてしまうか、そうでなければ運賃を上げるかどっちかです。今すでにもう全国のバス業者で、運輸省に値上げを申請しているのは二百件をこえています。百件ぐらいはもうすでに値上げを認可しておる形勢です。そうしますと、もう値上げというものは全国の、押えることのできない趨勢です。そうすると、あなたの方が税金をトラック業者、あるいは自動車業者、ガソリン消費者にかけるか、結局これはそういう車を利用する一般大衆にその税金の負担を転嫁させるということになるが、それをあらかじめ御承知の上でおやりになるのですか、それを伺いたい。
  202. 池田勇人

    池田国務大臣 道路を補修し改良することが運送の能率その他の点に非常に利益のあるということは、世論の一致しているところでございます。ガソリン税によって道路をよくしたことによって、国全体としては非常な得があるということは、世間一般に認められておるのであります。私は、この際産業育成、経済基盤の強化の上からもそうすべきだと考えましたし、また業態の上から申しまして、これは、私が実地に調査したわけではございませんが、運送業者の最近の業態はなかなかいいようでございます。この点は、主税局長から答弁させてもよろしゅうございます。こういう点から考えまして、まあお気の毒ではあるが、ある程度やむを得ないのではないかと思います。  次に、ガソリン税を上げたために運賃に影響する、この計算もやってみましたが、私はそう大して影響するものではない。理論的にいったならば、税率の引き上げによるものは、消費者が負担するというようにお答えせざるを得ません。しかし実際的には、自由経済のもとにおきましては、合理化その他で私は吸収し得るのではないかと思います。業態がいい悪いにつきましては、主税局長から答弁いたさせたいと思います。
  203. 山崎巖

    山崎委員長 小山君に申し上げますが、だいぶ時間も超過いたしておりますので、なるべく結論をお急ぎ願いたいと思います。
  204. 小山亮

    小山(亮)委員 次に運輸大臣に伺いますが、今の大蔵大臣の答弁で、運輸省の方はそれに同感できますか。たとえばトラック業者というものの利益が、私が言ったよりもさらにもつと利益が上回っておる、それで運賃の値上げをしなくてもいいような状態だということをおっしゃったが、あなた、それに同感ですか、いかがですか。
  205. 宮澤胤勇

    ○宮澤国務大臣 スエズの問題から値段が上っておるところへ、またこの六千五百円ということで、自動車業者は非常な困難に当面しておると思うのであります。値上げの問題は、スエズも近く通るようになりますれば、やはり油の値段は下るのではないか、それらと見合いまして、今お話がありましたが、トラックに対しては、一斉もしくは個々に運賃の値上げを許可しておりません。しかしながら今後の実情に応じて、どうしても立ち行かないということになれば別ですけれども、しかしこの問題も、スエズの方が解決してくれば、その値段は下るのではないか。税金の問題も、なるほど六千五百円というものは非常に困ると思いまして、私どもいろいろ考えましたけれども、今日の諸般の情勢が、ことに道路の上からして、これはやむを得ないということで、一応政府はその案をきめているわけでありますが、今後の業界の実情、また値段その他について勘案して――トラック業者も、戦後非常に困難な時代を克服して今日に至りましたけれども、それが非常な困難に至らないことをいろいろ考えてやらなければならぬ、こう考えております。
  206. 小山亮

    小山(亮)委員 ガソリンの値上げに対して反対をしているのは、野党だけではないのです。与党の大部分が反対をしております。それから運輸当局が、これに対しては決して賛成しておりません。ただたまたま運輸大臣が、大蔵大臣に閣議かなんかで押し切られたということに対して、運輸大臣の政治力が非常に弱いということを非難しているというだけのもので、これは反対の声が強いのです。与党の中にも、ずいぶん反対の声があると思う。まだあなた方もきまっておらぬでしょう。これを見ましても、この問題は、そう簡単に運輸大臣がここで、大蔵大臣の言うことはその通りでありますなんて言える筋合いのものではないと私は思う。そのほかに、国鉄の問題についても、同僚委員がずいぶん疑獄事件に対して痛烈な質問をいたしました。今日国鉄の値上げにしましてもそうです。国鉄が値上げすれば、私鉄が値上げするのは当然です。これは、どんなにあなたがおっしゃったところで、私鉄は値上げしますし、これを拒むことはできません。バスの値上げもそうです。全部運賃の値上げになることは、だれが何と言ったってのがれられないことです。国鉄の値上げにつきましてもそうです。先ほどから同僚委員が言われるように、私の調べたところでも、新橋付近のガード下のあるところでは、二十八坪の土地を一年四万五千円で借りて、その半分を又貸しして、月に七万五千円ずつ取っているのですから、わずか百十八坪ぐらいの土地で、それを又貸しすることによって、年に百万近くの利益を得ているのです。京浜デパートの問題もしかりです。これは調べれば調べるほど、あたかも泥沼に手を突っ込むようなもので、はかり知れない底なしの沼です。この問題をはっきりさせなければだめです。ことに今度の予算を見ますと、新車両を買うのに四百何億という予算を計上しておる。四百何億から車両やその他いろいろなものをお買いになる。そのほかに一般の工事、すべての工事費を入れますと、一千億の新しい費用を要求しておいでになっております。国鉄の内部を調べますと、ただに特殊な車両の部品や何かが高いとか安いとかいうのじゃないのです。普通の事務用品で、何ら特殊な用途のない茶わんであるとか、ああいうような事務用品が、一般の市価と比べてはるかに高いのです。非常に高く仕入れておる。だから、事務用品の方だけをずっと調べていきましても、一年に数百億の利益が上るのです。今の国鉄の内部のどこを深しても、みんな疑獄だらけでしょう。しかも不思議なことには、国鉄の幹部のいるところに疑獄が多いのです。東京であるとか、大阪であるとか、神戸であるとか、えらいやつがいる、力のあるやつがいるところに一番疑獄が多い。(その通り)地方なんかには疑獄が何にもないのです。それがおかしい。そうしてまた、この間からのいろいろな問題を調べてみますと、歴代の国鉄の一番枢要な地位にすわっておったような人がやめていくでしょう。そのやめていった人が、今まで住んでおった官邸をまるで二束三文で安いところの土地に振りかえて、自分のものにしてしまったとか、あるいはやめてからいつまでも立ちのかないで、その官邸にいたとか、あるいはその地位を利用して外郭団体の中にもぐり込んでいって、その顔を売ってどんどん金もうけをしておる。昔ごやっかいになった国鉄に、やめるときに退職金をもらい、恩給をもらって世話になっておりながら、昔世話になったところの役所に食いついて、その中に白アリのように入り込んで、ダニのようにあらゆる利益を吸い取っていこう、これが一ぱいいるのですよ。だから、これは直りっこがない、えらいやつがみんな悪いことをするのですから。だから、むしろ下の方がびっくりしておる。上のやつが悪いことばっかりやっておる。これは、国鉄の幹部をみんななくしてしまわなければ、国鉄はきれいにならない。そうしますと、一体この粛正なしに運賃を上げろ上げろと言ったって、国民感情が許しませんよ。国民は、税金の行方ということを真剣に考えています。一生懸命出した――今でも税金が安いなんて考えている人は一人もいない。この税金が一体何に使われるか、そんなことに片っ端から使われる、そういう事実がわかっておるにもかかわらず、その整理もしない。こちらをこうやったから幾ら安くなったということも示さないで、ただ国鉄の運賃を上げろ上げろとどんなに言ったところで、国民は納得しっこないですよ。ですから、ごらんなさい。ガソリンの問題でも、鉄道運賃の値上げの問題でも、与党だって必ずしも賛成してはおりませんよ。解散をやろうやろうと言っても、与党が解散に踏み切れない。与党がふるえている。与党がふるえているのは、こういうことをやっているからなんだ。解散したって勝てっこないですよ。やるならもっとりっぱな政治をやりなさい。善政をやって、国民が、なるほど保守党はいいことをおやりになったと納得するところでやったらどうですか。こんなつまらぬことはやめたらどうか、出直したらどうですか。率直な運輸大臣の御意見を伺いたい。
  207. 宮澤胤勇

    ○宮澤国務大臣 お答え申し上げます。小山さんのお話、私どももそういう考え方からいろいろ物事を進めていかなければならぬということも承知しております。しかし物事も、これはいろいろ程度のある問題でありまして、お話ほど、国鉄が端から端までそういうことになっておるというようなことも――これは小山さんの方が実情を御存じであろうと思います。それであるからといって、そのままにしておいていいということはありませんから、先ほど総理大臣から言われたように、どこまでも私どもは国鉄の経営の合理化、その中には、今の資材の買い入れから、あるいは契約から入札からすべてをもっと合理化するということは、どこまでもやっていきたい。しかし、それがために今の国鉄運賃の値上げということをこのままあとに回すということのできませんことも、もうよく御理解下さると思うのであります。この数年間、今あなたのお話しのような考え方によって、国鉄運賃を値上げしなければならぬものを押えてきたのですが、昨年からいよいよ日本経済も非常な転換がはっきりしておる。このままでいっては、国鉄の輸送力を増強しなければ、これがネックになって、将来ほんとう日本経済がその点から首を締められるようなことになる。それには国鉄の合理化もする、外からの借入金もする、同時にある程度の負担を利用者にしてもらって、そうして日本経済の拡大に伴っていこう、こういうような考え方ですから、これは、一つそういう面も十分御理解下されて、御賛成賜わらんことを切にお願い申し上げます。
  208. 小山亮

    小山(亮)委員 宮澤運輸大臣にお考え願いたいのは、今のようなこんな無理な値上げ――国鉄の運賃を上げなければならないということを、もっと国民に納得させるのには、この疑獄事件というものをきれいにしてしまう、こういう水の漏るところがないというところを見せなければなりますまい。つまり底のないつるべで水をくませるようなもので、幾らくんだところで水がたまらない。ですから、底をふさがなければならぬ。底をふさいだところを国民に見せて、その納得の上で運賃値上げということを御決定になる方がいいのではないか。ですから、それまでは借入金でおやりになったらどうですか。一千万円なり百千万円なりの借入金をなさって、利子補給をその方にしたらいい。船会社はもうかっておるのだから、利子補給は要らぬですよ。大蔵大臣と運輸大臣が相談する相談するとしきりにおっしゃいますが、こんな理解ある大蔵大臣を持っておるのは非常にけっこうなことですから、よく相談をして、鉄道の方に利子補給をしてもらったらどうか。そして鉄道が自分の金で修理のできるところはずっとやってみて、そして国鉄の内部がこういうふうに粛正された、こうしてやってみたがなお足りないから運賃を値上げするというのならわかりますが、その方は何もやらないでおいて、一番安易な運賃の値上げで、与党がそれを数で押し切っていこうということは、今のような納得のいく政治をやらなければならぬ時代に、これはわれわれの最もとらざるところである。でありますから、私どもは、この調査をする、先ほど運輸大臣は、値上げと調査と並行すると言われたが、値上げと調査と並行するなんてばかなことはありゃしませんよ。超党派的な調査会でも作ったらどうですか。そしてまず調査をして、その上で運賃を決定する、そういうふうにおきめになったらどうか。私どもは、調査せざる限りは、絶対に運賃の値上げには承服しません。これは、国民の名においてお断わりしなければならぬ。この点だけを私ははっきりさせて、きょうの質問を終ります。(拍手)
  209. 山崎巖

    山崎委員長 明日は午前十時より開会することにいたしまして、本日はこれにて散会いたします。       午後五時四十九分散会