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1957-02-09 第26回国会 衆議院 予算委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年二月九日(土曜日)    午前十時三分開議  出席委員    委員長 山崎  巖君    理事 江崎 真澄君 理事 河野 金昇君    理事 小坂善太郎君 理事 重政 誠之君    理事 川俣 清音君 理事 柳田 秀一君       今井  耕君    宇都宮徳馬君       太田 正孝君    大橋 武夫君       上林山榮吉君    北村徳太郎君       河本 敏夫君    齋藤 憲三君       坂田 道太君    周東 英雄君       楢橋  渡君    橋本 龍伍君       船田  中君    松本 瀧藏君       三浦 一雄君   山口喜久一郎君       山本 勝市君    山本 猛夫君       井手 以誠君    井堀 繁雄君       今澄  勇君    勝間田清一君       河野  密君    小平  忠君       小松  幹君    島上善五郎君       田原 春次君    辻原 弘市君       成田 知巳君    西村 榮一君       古屋 貞雄君    森 三樹二君       矢尾喜三郎君    川上 貫一君  出席国務大臣         内閣総理大臣臨         時代理     岸  信介君         法 務 大 臣 中村 梅吉君         大 蔵 大 臣 池田 勇人君         文 部 大 臣 灘尾 弘吉君         厚 生 大 臣 神田  博君         農 林 大 臣 井出一太郎君         通商産業大臣  水田三喜男君         運 輸 大 臣 宮澤 胤勇君         郵 政 大 臣 平井 太郎君         労 働 大 臣 松浦周太郎君         建 設 大 臣 南條 徳男君         国 務 大 臣 宇田 耕一君        国 務 大 臣 大久保留次郎君         国 務 大 臣 川村 松助君         国 務 大 臣 田中伊三次君         国 務 大 臣 小滝  彬君  出席政府委員         内閣官房長官  石田 博英君         内閣官房長官 北澤 直吉君         法制局長官   林  修三君         法制局次長   高辻 正己君         防衛庁次長   増原 恵吉君         大蔵事務官         (主計局長)  森永貞一郎君         運輸事務官         (航空局長)  林   坦君  委員外出席者         専  門  員 岡林 清英君     ――――――――――――― 二月九日  委員須磨吉郎辞任につき、その補欠として  齋藤憲三君が議長指名委員に選任された。 同日  委員齋藤憲三辞任につき、その補欠として須  磨彌吉郎君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  分科員及び分科会主査選任  昭和三十二年度一般会計予算  昭和三十二年度特別会計予算  昭和三十二年度政府関係機関予算     ―――――――――――――
  2. 山崎巖

    山崎委員長 これより会議を開きます。  昭和三十二年度一般会計予算外二案を一括して議題といたします。質疑を継続いたします。今澄勇君。
  3. 今澄勇

    今澄委員 私が岸大臣にまずお伺いしたいのは、緊急の問題として、日韓交渉のその後の経過がどうなっているか。昨年の暮れに、相当な成果が上るということでありましたが、基本的な方針を変えずに交渉をなさっておられるかどうか。最近の韓国書外交部長談話ともからんで、この際政府側のこれまでの経過並びに将来の見通しについてお伺いいたしたいと思います。
  4. 岸信介

    岸国務大臣 韓国との問題につきましては、御承知の通り長い沿革を持っておるのでありますが、昨年九月前内閣の末に、釜山に抑留されておる漁夫を年内に帰すという目途のもとに、いろいろと韓国側交渉したのであります。  私が外務大臣に就任いたしました当時の引き継ぎによりますと、相当有望であるように一時聞いたのでありますが、実際に韓国側交渉してみますると、いろいろの条件がございまして、なかなかまとまりそうにない。そこで私ははっきりと問題を二つに分けて、抑留されておる漁夫釈放して日本に帰すという問題は、これは人道的の問題であって、あらゆる問題に先立って解決されなければならない。この問題が解決されない限り、やはり国民的に冷静にこの日韓の間に存しておる幾多懸案を解決するという状態にならない。まずこれを帰せ、これに対して韓国側は、かねて大村収容所に抑留されておる韓国人釈放問題を、これと引きかえに強く要求しておるのであります。この問題につきましても、いろいろ国内法制上の問題もありまして、むずかしい点があったのでありますが、大体において私は韓国側の要求をいれて、これの釈放につきましてはほとんど無条件釈放する、従って釜山におるところの抑留漁民無条件に即刻これを釈放してもらいたい、これが解決すればわれわれは日韓交渉を再開して、そうして幾多懸案問題を解決する審議に入ろう。この審議に際しては、私は従来の行きがかりにとらわれず、公正かつ現実的にすべての問題を処理する考えだ、従ってぜひとも漁夫釈放を即時やってもらいたいということを強く、要望しまして、韓国側もその方針には大体賛同しまして、それ以来その交渉を継続しておるのであります。大体の考え方は一致しておりますけれども、なお韓国側の要求しておることで一、二の点が、われわれとしてはこれを受認できませんので、折衝しておるというのが現状でありまして、大体の方針については今言ったような意図のもとにやっており、向う側の外交部長の、あの新聞に伝えられている意図が、どういう意図であれを発表したかわかりませんけれども、私どもがかねて主張している漁夫の問題と、抑留韓国人の問題を無条件釈放し合っていこうという、この根本方針韓国側も大体において認めているのではないかと思います。しかしまだ確答を得ませんので、これを早く得るように回答を督促しているというのが現状であります。
  5. 今澄勇

    今澄委員 韓国側情報によると、日韓本会談の再開については意見が一致した。日本外人登録出入国管理令その他でいろいろ問題があるが、抑留者については抑留者釈放協定というものによって、これを一つ早急に解決したい。日本政府と目下この協定について相談中であると言われておりますが、岸外務大臣からその見通しと模様について伺いたいと思います。
  6. 岸信介

    岸国務大臣 釈放協定というものについて交渉しているという状態ではありません。今私がお答えしたように、釈放問題を日韓のあらゆる懸案問題に先んじて、別個にこれを解決しようということで話し合っておりますので、今申しましたように、韓国側もその方針を最近においては根本方針としては認めてきております。ただ釈放に関連して多少懸案の点があるのでありまして、それを今両方で話し合っておるという状況であります。今までの例から見まして、韓国との交渉の前途をあまり楽観的に見ることは、これはいけませんけれども、今までの状況から申しますと、韓国側漁民釈放については、大体わが方の主張を認めるようになってきているだろう、こういうふうに推測しております。
  7. 今澄勇

    今澄委員 時間がありませんので次に移りますが、防衛庁長官にお伺いをいたしたいと思います。  昨日の広島県加茂郡演習場における長距離行軍の結果、自衛隊員が二名死亡いたしております。これはアメリカにも昨年こういう事件があって非常に大きな国民世論を巻き起したが、現下、誘導弾アメリカとの折衝、その他国民注目の的にある自衛隊としては、この演習問題というものは国民に与える打撃が非常に大きいし、人権擁護の建前からもわれわれはこれを見のがすわけに参りません。本件について、すでに死んだことであるから、防衛庁においても詳細な情報等はすでに入っておることと思いますが、概略の情勢並びに何が原因であったかということを、ここでちょっと御答弁を願いたいと思います。
  8. 小滝彬

    小滝国務大臣 お答えいたします。このような事件が起りましたことはまことに遺憾でございまして、私からもすでに遺族に対しては弔意を表し、目下原因等を詳細取り調べておりますが、この事実について、こちらへこれまで参りました報告によって御報告申し上げますと、陸上自衛隊の第三管区におきまして、これは例年行う方針でありまするが、行軍演習をいたしました際に、このような事件が起ったのであります。この演習は、大体本庁陸幕長の方からの概括的な指示による訓練でありますけれども、その個々の演習の仕方については、各管区で決定することになっておりますので、この行軍は第三管区計画して、それを実施いたしたのでございます。大体距離は七十七キロのものでございますが、その行軍に参加いたしましたのは、三つの大隊の中から特に優秀な者として選ばれた者が各大隊から二百名から二百五十名程度加わって、これ花実施いたしたのであります。一人は行軍のその距離の中間のところで体の工合が悪くなりまして、ジープに乗せて病院へ運ばせるということをいたしました。もう一人の方はほとんど終点に近いところで落伍をするということになりまして、そしてこれを急に収容いたしましたけれども、一人は国立病院に急送中に急性心臓衰弱のため死亡をいたし、もう一人は終点に到着した後容態が悪化いたしまして、医官の手当を加えましたが、その後同様に急性心臓麻痺で死亡いたしたのであります。  なお事故原因につきましては、現在いろいろ調査中でありますが、従来行軍演習中にこういう事故が発生した例もございませんので、その原因を十分検討いたしました上、今後かかる事態が絶対に起ることのないように十分措置を講じていきたいと思っております。すでに本庁の方からは各部隊に対しまして、とにかく原因のいかんを問わず、こういう不祥な事件が起ったのであるから、今後十分注意するようにという指令は出しておりまするけれども、詳細についてはさらに今後検討いたしました上、しさいにわたる指示をいたしたいと考えております。なお責任等につきましても、目下調査中でございます。昨年も実は比叡山方面の七十二キロの行程にわたる同様の行進をし、また当時も雨が降ったのでありまするが、幸いにしてその際は何ら事故を起すことなく、これを完了いたしのでありまして、本年はまた雨にあいましたので、最初計画では山越えでやる、昨年と同じような計画でやろうといたしましたのを当日に至りまして、総監の裁量でこれを平坦な場所に取りかえたのでありますが、それにもかか.わらずこういう事件が起りました。御指摘のようにこれは国民感情に与えます影響も非常におもしろくないので、こうした点につきましては、さらに詳細を調査いたしまして、絶対にこういうことがないように十分注意をいたしたいと思っております。
  9. 今澄勇

    今澄委員 防衛庁長官調査して調査してと言っていますけれども、そんな調査して調査してなんという問題と違うのです。きょうの報告を見ると、新聞紙上の伝えるところでは、筒井幕僚長談として、倒れて後やむのこの姿には全く頭が下がるとある。一体、訓練で倒れて後やむと言っても、国民を殺して階級を特進させて何がいいか。また片一方の方を見ると、第三管区幕僚長橋詰勇氏談として、両君の行為敢闘精神の発露として賞賛したいとある。この進級させる、賞賛するというのは、かっての軍国主義的な日本の軍隊と、これでどこが違うのですか。自衛隊設置法その他から見て、自衛隊がこういうむちゃな訓練をし、方向を定めておるものとするならば、自衛隊についての再検討を行う必要があるのではないか。われわれはこの際こういう問題については、制服自衛隊幕僚長その他を国会に呼んで、事態の究明をする必要があると存じます。いつも防衛庁は、これら制服幕僚はなるべく国会に出さないで、自分たち内局員が出てくる。今までなかなか制服幕僚国会に出しておらぬ。、だが、今度の問題については引き続いて内閣委員会で徹底的に追及いたしますが、この際ここで防衛庁長官に私が言質を取っておきたいことがある。  この問題の調査については統合幕僚本部議長陸幕幕僚長その他制服幕僚国会に呼ぶが、これを国会に送る用意があるかどうか、この点をここで答弁をしておいて下さい。
  10. 小滝彬

    小滝国務大臣 政治的な問題につきましては、私が責任者でありまするから、私の方が出席いたしまして皆様の御質問に答えるわけでありますが、特に事実問題などについて調査する必要、がある際におきましては、その必要に応じて出席されなければならぬ場合もあるだろうかと考えます。
  11. 今澄勇

    今澄委員 そこで岸総理大臣代理に伺いたいのは、今お聞きのように、自衛隊訓練中二名の殉職が出て、これに対して筒井幕僚長並びに第三管区幕僚長談話と、この進級の姿というものは、あなたは現在内閣責任者として、自衛隊のあり方をかような方向に今後も御指導なさり、これでいいとお考えになっておりますか。
  12. 岸信介

    岸国務大臣 この事件は、ただいま防衛庁長官が申しましたように、きわめて遺憾な事実でありますが、もちろん調査調査でわれわれは責任をのがれる考えは毛頭ありませんけれども、十分事実を調査してみなければならなぬと思います。  これに対する処置としましては、ただ自衛隊内部の規律であるとか、あるいは精神的な面からこれをどう扱うかということにつきましては、これは自衛隊の本質にもかんがみて考えなければならぬ問題で、直ちにこれをもって軍国主義を再現するものだと断定することは早いと私は思います。十分事情を明らかにした上で、一面からいうと自衛隊の精神的な面、すなわちあらゆる艱苦に耐えて、そして祖国の自衛に当るという精神力の点は、これは尊重しなければならぬと思います。そうかといってもそれにはおのずから限度があると思います。こういう点につきましては十分実情を明らかにした上でないと、これに対しては明確な御返答ができない、かように思います。
  13. 今澄勇

    今澄委員 死者を出した第七連隊第二大隊は、折柄の氷雪をついて十八時間半で踏破している。かなりの強行軍のためか途中で速度を落してほしいとの隊員の要望が強かったが、岡崎大隊長はこれを無視して行軍を続け、十四名の落伍者を出しておる。そこでその十四名の落伍者の中のまん中ごろにいた人が死んだのだから、この情勢から見る限り、私は岡崎大隊長の行為その他多くの間違いがあったと思いますので、防衛庁長官においては責任の所在が明らかになれば処断をするかどうか、その点について防衛庁長官から答弁を承わって、この問題については質問を終ります。
  14. 小滝彬

    小滝国務大臣 先ほどから申し上げておりますように、目下詳細調査中でありますので、その責任がどこにあるかということを糾明いたしました上、必要に応じて適宜処置いたしたいと考えております。
  15. 今澄勇

    今澄委員 次の問題は、先般来いろいろこの予算委員会で論議せられましたアメリカから供与せられると報道せられた誘導兵器であります。この誘導兵器は、昨年増原防衛庁次長アメリカに行った際に、アメリカにおいて詳細な折衝を遂げ、帰ってきての話では、大方貸与されることはむずかしいであろうなどと言っておった経緯にかんがみて、私は最近のアメリカの第二次ニュー・ルック戦略アイク教書にかんがみて、イギリスにもこれを供与しておるのであるから、当然わが国にも供与するであろうと考えておりましたところ、国会開会二、三日前に、アメリカ側から防衛庁に対しては内々の連絡があり、それに関する日本国内新聞によるすっぱ抜きがワシントンに伝わり、ワシントンにおける新聞者の追及によって、これがアメリカ軍当局が発表した経緯をたどっておるわけであります。この際国民が重大な関心を持っておるわけであるから、五五、五六年度の第一次貸与として要求した分がどれどれであり、引き続いて第二次貸与として要求した種目がいずれであるかということを、防衛庁長官からこの際明らかにしておいていただきたいと思います。
  16. 小滝彬

    小滝国務大臣 ただいま御指摘になりましたところは多少事実に反しておる点があると考えます。議会開会前に非公式に、こういうものをやろうというような向うからの内報があったわけではございません。いろいろ報道は出ておりまするけれども、そういうはっきりした申し出があったわけではなくて、ただ私どもの希望するところに基いて、できるだけ考えようということは、これまで向うから申しておったという程度のものでございますので、そのように御承知を願いたいと存じます。  なおこれまでどういうものを要求したかとおっしゃいますが、これは御承知のように、MSA協定に基く年々の米国から供与される品物のリストは、わが方から提出することになっております。そこで誘導兵器につきましては、防衛庁におきましては、すでに昭和二十九年ごろから技術研究所においていろいろ研究を開始しておりますので、昭和三十年度に最初この種類のものを要求したのは事実でございます。さらに三十一年度におきまして、新聞にも出ておりますように、七種類誘導兵器日本としては――使おうというのではなくて、これを研究開発するための資料としてワン・セットずつをもらいたいということを申し出たのでございます。その兵器につきましてはいろいろ臆測記事が出まして、たしか昨日ごろの新聞にもいろいろ名前が出ておりますが、これは実は実際と違っているところもございますので、ここではっきりと私どもの要求したものを申し上げたいと思います。これを申し上げればおわかり下さるであろうと思いますが、これは射程等もきわめて短い、最新の兵器ではありまするが、とにかくあくまで防衛を主としたものであるということを了解していただけるだろうと考えるのであります。  まず第一はナイキ、これは射程距離といえば三十二キロ、これははっきりわかっておりませんけれども、大体の研究したところでは三十二キロ程度地対空のものであります。オネスト・ジョンは、御承知のように地対地のものであって、これは大体射程距離は三十二キロ程度のもののようであります。それからテリアというのは地上から空へ向って撃つのでありますが、これは大体二十四キロ程度射程距離を持っておる。それからファルコン、これははっきりわかりませんけれども、大体同程度射程距離を持っておるようであります。それからもう一つはスパローというのが、大体射程距離が八キロ、それからボマークというのが八十キロ、ファロスというのが四十キロから八十キロ程度のものというように了解いたしておりますが、この七種類を要求したのでございまして、新聞などに報道せられておるような、非常に射程距離の長いそうして考え方によっては攻撃的な武器とも解されるようなものは要求しておる次第ではございませんので、この点をはっきりと皆様方に御報告申し上げておきます。
  17. 今澄勇

    今澄委員 三十二年度において要求している品目についても、あわせて一つ報告を願いたい。
  18. 小滝彬

    小滝国務大臣 アメリカ会計年度関係もございますので、三十二年度はまだ要求いたしておりません。
  19. 今澄勇

    今澄委員 私は今発表になったこの七つの誘導兵器を見ていると、アメリカ側日本に対する貸与は、秘密保護法関係があるので、日本から要請はあったが、これは貸与できないといわれて、先般報道に出ておりましたマタドール、これは海軍のレギュラスと相対するロケットであるが、このマタドールについては、日本側は要求しなかったのかどうか、この点について防衛庁長官からお伺いいたしたい。
  20. 小滝彬

    小滝国務大臣 マタドールは要求したことはございません。
  21. 今澄勇

    今澄委員 要求したことがないにもかかわらず、これの貸与が問題になっているということは、実に私は国民に対して当面を糊塗しさえすればいいという、そういった態度ではいけないと思います。私は防衛庁のこの誘導弾導入に当って、これが原子機動部隊等と直接の関係があるとは思いません。あなたの方の研究所でいろいろこの問題について研究するためであろうと善意に解釈しております。しかしながらこれらの誘導弾は、原子弾頭を付して原子戦力として使えば、あすからでも使えるわけです。特にこの中であなたが言ったボマークというのがあります。このボマークという誘導兵器は、中距離用なんです。これは相当長距離を飛ぶのであって、私は日本が外敵を防ぐという意味において、十五キロや二十キロの誘導弾ならともかくも、百キロから四百キロ近くの性能を持つこのボマーク導入について、あなたの方がアメリカに要請したということは、これは自衛のためというよりも、むしろ攻撃的な兵器であるという意味において非常に問題であると思う。この点について一つ防衛庁側の見解をお聞きしたいと思います。
  22. 小滝彬

    小滝国務大臣 お言葉を返すようで失礼でございますが、国務省が、マタドールのような、非常に進んだ、秘密性の多いものは貸せないと言ったということは、何もこちらが要求したということでなしに、例不をしていることであろうと思います。従いまして、先ほど私が申し上げたのは事実でございますから、その点を御了承願いたいと存じます。  それからボマークを例におとりになりましたが、これは私も先ほど申し上げましたように、地上から空中に向って撃つものでございまして、攻撃的によその領土へ撃ち込むというわけのものではなく、あなたの今おっしゃいました性能は、百二十キロとか二百キロとおっしゃいますが、私の方の専門家に調べさせますと、大体八十キロ程度のものでありますから、これが他のものと違って非常に攻撃的な武器であるというようには、私どもは了解しておらないわけであります。この点を御了承願います。
  23. 今澄勇

    今澄委員 そこでもう一つ防衛庁長官に聞きますが、日本においてこれらの誘導兵器は一応別として、原子兵器あるいは化学戦というものを勉強しておるところは、静岡県の須走に陸上自衛隊富士学校というのがあって、化学教育隊というのがあった。今回これを独立させたと聞くが、これの管轄範囲並びに対象としておるものは、いかなるものであるかということを一つ答弁願いたい。
  24. 小滝彬

    小滝国務大臣 あそこでやっておりますのは化学教育隊でありまして、原爆の被害というものについて調査をしようということをやっておるのでありまして、決してそういうものを使用することの検討をしておるのではございません。
  25. 今澄勇

    今澄委員 その隊は細菌戦毒ガスについても検討しておると先般聞いたが、事実はどうか。
  26. 小滝彬

    小滝国務大臣 自衛隊といたしましては、あくまで日本防衛するための措置検討しなければならないのでありますから、そういうことが万一あった際に対する処置検討させておるという事情でございます。
  27. 今澄勇

    今澄委員 万一あった際でなしに、毒ガス細菌戦、これに対する措置等研究しておるわけですね。
  28. 小滝彬

    小滝国務大臣 日本防衛を全うしますためには、不幸にしてまだ原水爆を禁止するというような国際協定もできておりませんから、あらゆる場合に対処する措置をあらかじめ検討しておく必要、があるであろうと考えますので、そうした意味において、日本においてそういう被害に対する研究をしておることは禁止すべきものじゃなかろうと思います。
  29. 今澄勇

    今澄委員 ただ私増原さんがおられたらちょっと聞きたいのだが、この際時間ばかりむだに費して――就任まぎわであると思って私もごく遠慮しておるが、そういう長々とした冗長な答弁を聞こうというのではないのだ。そこで毒ガス戦あるいは細菌戦等やっておるか、やっております、こういう答えでいい。もう一ぺんちょっと答弁して下さい。
  30. 増原恵吉

    増原政府委員 化学学校におきましては、ただいま長官から崩したように、原水爆等が万々一使われた場合の被害を局限するという面を研究しておりますが、同様の意味で、万々一細菌毒ガス等が使われた場合の被害を局限する意味の勉強はきせておるわけでございます。
  31. 今澄勇

    今澄委員 もう一つ増原さんに聞きますが、今の日本自衛隊の中において、原子戦、それから細菌戦、それから毒ガス戦、こういうものを対象として調べておるということは、アメリカが一九四七年二月、上院において毒ガス、細菌兵器使用禁止に関するジュネーヴの議定書を廃棄し、今日アメリカにおいては、細菌の研究ワシントン郊外べトリック陸軍細菌兵器研究所において、一九四四年すでに人員四千名、研究費千二百万ドルの陣容で、三十四種の伝染病菌を兵器リストに掲載をしておるのである。私は原水爆の問題についてはあとで徹底的に聞くこととして、さらに原水爆を使用した今日の世界戦の模様は、原爆使用地域に直ちに細菌、毒ガスを使うということがもう常識になっておる。だからこれを今の日本自衛隊研究しておるであろうということも、アメリカとの関連において当然なことである。ただ私はこのことを防衛庁長官に確めたいと思ったが就任まぎわであまり御存じなかっただけの話である。  私は増原さんに聞きたいのは、こういう意味において日本自衛隊細菌戦研究毒ガス研究をやっておるということを今明らかにされたが、あなたが行かれたときに、第一次貸与の七種類に続いて、第二次貸与の新しく新年度のものも要望なさっておると向うから伝わってきておるが、あなたは何と何を要望しましたか、それについてもう一度報告を願いたいと思います。
  32. 増原恵吉

    増原政府委員 向うへ要求をいたしますのは、御承知のように昨年の八月に、わが方の三十二年度にもらいたいものを要求をするわけでございます。今年のおそらく八月ごろに、来年度もらいたいものを要求するようになると思います。従いましてただいま長官からお答えをしました以外のものは要求をいたしておりませんし、私が向うへ参りました際には、具体的な個々のものをつかまえて折衝をするというやり方をいたしませんで、有効な新しい兵器を、防衛庁において技術研究のために見本としてもらいたいという、包括的な話し合いはいたしたわけでございます。
  33. 今澄勇

    今澄委員 第二次要望の、日本研究資材にしたいといったものに、マタドール並びに潜水艦が積むいろいろの兵器が入っておると私は考えておりますが、しかしこれは時間がありません。水かけ論になりますからこの程度にしておきます。要はこの予算委員会岸総理大臣代理から、そういう原子機動部隊についての話し合があれば断わる、こういう内閣の意見が表明せられました。私がこの際申し上げたいのは、今の毒ガス、細菌を含めた原子時代の今日の様相というものは、非常な革命的武器の進歩で、私は世界的な戦術は一変したと思います。これがアイク教書となり、第二次ニュー・ルック政策となって現われたほんとうの意味合いであって、いわゆるラドフォード構想といわれる原子兵器第一主義、陸上兵器縮小主義、こういうものがアメリカの世界的な戦略になってきた、かように思うのです。だから私はここで日本内閣の行く道というものは、一つアメリカの同盟国として、共同防衛圏内にあるわが日本防衛をどうするかということ。もう一つは、さようなアメリカの外交的な方針から、中共の問題、その他の問題等に関連がくるわけでありますから、私はこの際内閣の一番重大なことである、防衛に関しての外交方針について伺いたいと思うのであります。  まず第一に、岸総理代理に伺いたいのは、石橋内閣が組閣せらるるや、ニューヨーク・タイムズはその社説において、石橋は鳩山より好ましくない、「ミスター・イシバシ・レス・プロ・アメリカン・ザン・ハトヤマ」何とか英語で書いてありましたが、(笑声) 私はこれを見て、その中のおもなる論点を一つ申し上げると、鳩山より好ましくない、占領下石橋はインフレ主義であった、マッカーサー占領下に抵抗した、中共貿易の推進者であった。このニューヨーク・タイムズの記事を見て、私は日本内閣に対する――これはアメリカの有力紙ですが、政府の見解とは言いませんが、そういったアメリカの世論というものについて、あなたは内閣の枢要なるポストにある人としてどういうふうに思い、これに対してあなたはアメリカ外交をどういうふうに展開すべきであるとお考えになるか、岸外務大臣の御見解を一つ聞いておきたいと思います。
  34. 岸信介

    岸国務大臣 石橋内閣が成立しました当時、いろいろな新聞記事等も出たことは、これは当然でありまするが、しかしこの国会の開会の当初に当りまして、石橋内閣の施政方針並びに私自身の外交方針が中外に発表されておりまして、石橋内閣の本質、また岸外交の本質につきましては、今日において成立当時にあったようないろいろなうわさや憶測、それから誤解というものは私は一掃されたものであると確信しております。
  35. 今澄勇

    今澄委員 こういった日本内閣に対するアメリカの批判が現われてきたということは、アメリカとしては、ネール氏が先般アメリカを訪れた際、中共と国民政府、これを平和的に和解をせしめて、そうして日本としても重大な問題である二つの中国を平和裡に合致きせようといたしたネールの提案を、アイク大統領が断わったということは、アメリカが東洋においてソ連、中共に対する戦略並びに防衛的な措置についての一つの確信を、日本当局と相談をして得なければならぬ、その前提条件なしに国民政府をアメリカがただただ盛り立てるということは私はないだろうと思います。そういうことになると、アメリカは、わが日本内閣について重大なアメリカ防衛上のいろいろな問題を相談する相手として注文が出てくる、それでこういうような批判がアメリカの世論に載り、この批判を日本はおそれるということになると、アメリカの要望にこたえるということにならなくちゃならぬ、私はさような意味において、この際石橋内閣は重大な岐路に立っておると見ておるが、内閣責任者としてもお感じになっておられると思います。そこで、これらの日本を取り巻く情勢一つ岸総理代理に理解をしてもらうために、私はこれから第二次ニュー・ルック戦略というものについて、アイク大統領の教書を中心にして、防衛庁長官はいかにこれをながめておるか、この点について防衛庁長官の見解を聞きたいと思います。
  36. 小滝彬

    小滝国務大臣 お答えいたします。防衛庁といたしましてはもちろんアメリカとの関係、安保条約の関係もございまするけれども、あくまで自主的な日本の立場で日本防衛考えておるものでございまして、共同の部分があれば共同し得るでありましょうが、われわれはそれに引っぱられることなしに、日本の立場で防衛関係の各般の問題を検討し、これを実行いたしたいという所存でございます。
  37. 今澄勇

    今澄委員 私は防衛庁長官に申し上げるが、日本の航空管制において、ロケット戦術を中心とする、近代兵器のレーダー・サイトにおいて、わが日本の今日は、あなたが言われるような独立の防衛などしちやおらぬ。航空管制は全部アメリカに一任しておるし、二十四カ所のレーダー・サイトもアメリカ極東軍の管轄下にある。その中において日本自衛隊は動いておるのじゃありませんか。あなたは、国民の税金を千四百億も年々防衛庁につぎ込んで、こういったアメリカとの関係のある防衛庁責任者として、ニュー・ルック戦略並びにアイク教書については何らの関心もなければ知らないなどということで勤まりますか。もう一ぺんお答え願いたい。
  38. 小滝彬

    小滝国務大臣 この日本防衛力は、御承知のように不十分でございまして、私どもはこれを漸増しなければならない。しかしながら日本の国力、国情に応じて必要最小限度のものを持とうというので、今年度は防衛庁の予算も前年度程度に、予算編成の基本方針にものっとりまして削減したのでございますが、しかし不十分でございます。たとえば今御指摘になりましたレーダー・サイトにおきましても、日本にはまだそういう施設がない……。(今澄委員質問とその答弁は違う。質問はどうして知らないかということを聞いておる」と呼ぶ)しかしながら、これも日本の方で引き受けるようにいたしまして、今年度中には二カ所、さらに来年度は四カ所もこれを引き受けて、漸次日本自衛隊によってこれをやっていこうといたすのでありますから、先ほど申し上げましたように、私はアメリカの戦略は戦略といたしまして、日本はあくまで独自の立場において、これを進める方向に持っていこうと努力いたしておるものでございます。
  39. 今澄勇

    今澄委員 私は、ここで今の日本における極東空軍の配置、それから原子機動第七艦隊の横須賀を中心とした配置、その他の問題を実は聞きたい。だがしかし時間がないからこれは遠慮しておるけれども防衛庁長官、あなたがそんな答弁をするなら、ここへ幕僚長に出てもらわなければならぬ。国民は千四百億の膨大な金を防衛庁に入れておる。それで日本と共同防衛関係にあるアメリカ軍の様子が一つもわからない、国民報告することもできない、そんなだらしのないことでは話になりません。あなたがもし答弁できないなら、ここへ幕僚長を呼びなきい。私は少くとも今までの国会防衛に関する真剣な論議が取り上げられたことはなかったと思う。アメリカにおいてはどんな重大な秘密でも国会において報告されておる。幕僚長国会に来て報告しておる。日本では軍事が政治に優先して、あなた方が作ったものにいつも.政治があとをついていこうというのが、これまでの終戦後のやり方であって、常に国会には秘密にして、あなた方が勝手にやろうとしておるこれまでの態度は、実にけしからぬと思います。(拍手)あなたは一体ほんとうに知らぬのですか。それともあなたが知らなければ防衛局長でもだれでもいいから、一つ責任者に話させなきい。それができなければ幕僚長をここへ呼んでもらわなければ予算審議はできません。
  40. 小滝彬

    小滝国務大臣 不肖私が防衛庁におりますのも、決して軍事を優先きせようとしないための措置であると存じておりますので、私はそういう点については責任を持っておるのであります。  なおアメリカ軍の配置などを知らないかとおっしゃいますが、これは、もちろん情報の交換はいたしておりますけれどもアメリカ側の希望もありまして、、それを日本の方で発表するということはいかがかと思われますので、承知はいたしておりますけれども、それを発表はしないことになっておりますので、さよう御了承願います。
  41. 今澄勇

    今澄委員 そんなものは一つも発表すべから.きる項目ではなしに、雑誌にもどこにもすでに全部公表されている。そんな時代おくれの間違った答弁をしてはいけませんよ。今日はレムニッツァー大将のもとに、日本における配置はどうなっていて、その司令官はどうなっていて、どこがどうだということは全部発表されておる。そんなものは、何も軍機の秘密でも何でもありませんよ。あなたは何も知らないからじゃありませんか。(笑声)私は、実はこの際いろいろ大事な問題もあと控えておるからこの問題では深追いをしませんが、これを要するに、アメリカアイク教書、第二次ニュールック戦略というのは、原水爆使用による戦略空軍、海軍機動部隊の原爆攻撃の拡大、第二次ニュールック戦略の強化によるアメリカ大陸防衛の強化戦術、原子兵器の採用による陸上、海上部隊の縮小、世界的なレーダー通信網の確立、これが今日アメリカの第二次ニュールック戦略と言われるもので、これはもう新聞報道しておるし、日本における軍事専門家の常識ともなっておるし、そのためにアメリカ日本における極東騎兵第一師団を引き揚げようかという報道すらも出ておることも御承知の通りであります。  そこで私がこの際お聞きしたいのは、外務省は一月十七日の外務省見解という発表においてこう言っている.。アメリカが空軍連隊を削減するということは、反面において長距離誘導弾、原子装備など新兵器によるニュールック戦略を一そう推進するということを意味しよう、またこの編成が之の影響として日本から現在.駐留しておる第一騎兵師団がこの会計年度内に撤退し、海空軍と第八軍海兵隊の補給部隊若干のみが日本に残ることになろう、このような米陸上部隊の撤退は、陸上部隊は現地各国の増強・防衛に待つというアメリカの新しい行き方と見ることができようという見解を発表しております。これに対して担当責任者である岸外務大臣は、これを認められ、あるいはこのように思っておられるかどうか、一つお伺いいたします。
  42. 岸信介

    岸国務大臣 ちょっと私外務省の見解として発表されたことにつきましては承知いたしておりませんけれども、今お読みになりましたアメリカの極東軍の配置、すなわち日本から撤退して行くという計画につきましては、大体の方向としては私はそういう方向になるものと考えております。
  43. 今澄勇

    今澄委員 そこで、これは一月十七日の新聞紙上に全部発表してあります。今お認めになりましたが、この中で一番重大な点は、第一騎兵師団、がこの会計年度内に撤退し、海空軍と第八軍海兵隊の補給部隊若干のみが日本に残ることになろう、この点をあなたが今お認めになったということは、私は日本側としてアメリカ考えておるところを率直に認められたものと思います。しかも長距離誘導弾原子兵器など新兵器によるニュー・ルック政策を一そう推進しようということ、これをしようというのは、アメリカの新しい戦略を意味することになるのです。  そこで私は岸外務大臣にお伺いいたしますが、UPの軍事記者として有名なヘンスレー記者は  一月二十三日、アメリカ国防省と記者団と会見をして、陸軍は二個師団の削減、全世界六カ所に原子力自衛部隊を設け、部隊の再編成、機動化を国防省が発表した、これに対して記者団が聞いた。アメリカ新聞記者団は何を聞いたかというと、その在外十九師団のうち、日本関係があり、われわれの知っておるのは、ドイツに五個師団、韓国に二個師団、日本に第一騎兵一個師団、その中で西ドイツは引き揚げに反対で、西ドイツからの五個師団は引き揚げない、韓国も引き揚げに反対で、大体駐留を約束しておる、そこで引き揚げるのは日本が大体最も有力な候補地だが、日本から第一騎兵師団は引き揚げるのかどうかと言ったときに、アメリカの国防省は大体そうだと言ってこれを認めた。それと今あなたが認められました日本の外務省が一月十七日に出した外務省の見解というものは一致している。それを今あなたはここで大体その通りであろうと認められた。そこで、そのときに、これらの師団を削減をして原子力機動部隊に組みかえる、しかもアメリカ陸軍の師団はペントミックといって、五つに分割して移動して、非常に性能の上った、しかも機動力のある師団に再編成をする、そうして原子力機動部隊をその減らした師団のあとに持っていく、こういうことに向うではなった。その候補地はどこであるかと言って新聞記者が聞いたところが、アメリカの国防省は、西ドイツ、トルコ、イラン、アラスカ、極東と答えて、極東はそれでは沖縄か日本か、こういうことになっておるわけなんです。そうすると、へンスレー記者が――これは軍事評論家として確実な情報を流すことで信用がある。そのヘンスレー記者の報告を見ると、外務省のあなたの見解と一致しておるということになる。外務省は断わるかどうかは知らぬが、ともかくも原子機動部隊を第一騎兵師団のあとにアメリカとしては日本に駐留せしめる計画を持つものであると私どもは見.さるを得ない。これに対して岸外務大臣はどういうふうにお考えになりますか。
  44. 岸信介

    岸国務大臣 私は先ほどそういう方向になるだろうということを大体申し上げましたが、もちろん、第一騎兵師団が引き揚げることについて正式の発表があったわけでもなければ、アメリカがそういうことを決定しているわけでもないのであります。私は、日本自衛力の増強に伴ってアメリカの駐留しておるところの軍隊が引き揚げていくのは当然であり、またその方向日本防衛力の増強を持っていけという大体の傾向から、そういうことを言ったわけであります。しかし、今いろんなアメリカの戦略の点から、今澄君の指摘されているようなことがいろいろ論議される、だろうと思いますが、しかし、昨日もこの議場において私がはっきり明書しておりますごとく、アメリカの原子武器を持っておるところの特殊部隊日本に駐留されるということの相談があった場合には、私はこれを拒否するつもりであるということを明言いたしておるのでありまして、決して、アメリカがどういう意図を持っておるから、それに追随してすべていくというものではない。あくまでも自主的に、従ってわれわれは国力に応じて一日も早く防衛力というものを増強して、そうしてアメリカの駐留の必要なくして祖国が防衛できるということになりたい、こういうことを考えておるわけであります。
  45. 今澄勇

    今澄委員 私は岸さんに言っておかなければならぬのは、第七原爆機動艦隊は横須賀を中心としてアメリカは常駐せしめている。原子弾頭をいつでもつけられるロケットや誘導弾、B57の戦術原爆航空部隊日本に駐屯しておる。これは徐々に既成事実化して、そうして日本国民原水爆基地反対の要求を側面から切りくずし、日本国民に現実だというなれとあきらめを起きせようとする心理的な状態が今日まで続いて参っていることは、日本国民が全部知っているのです。だから、今あなた方が幾らここで原子兵器の持ち込みは断わるとか、機動部隊日本に来ることについては断わるとか言われても、これはもうちょっと突っ込んで聞かないことには、国民として安心をするわけに参らない。  私はそこであなたにさらに突っ込んで聞かなくちゃならぬ。その第一は、この際あなたに考えてもらわなければならぬのは、最初アメリカの国防省がワシントンにおいて原子力機動部隊の発表をしたときに、最も驚いたのはアメリカの国務省と日本アメリカ大使館である。われわれのところに入った向うからの情報では、日本の外務省は非常に驚いて、そういうことを今やってもらっては困る、それは日本における――石田官房長官が見えたから聞きますが、この間世論調査を官房審議室がやった。その世論調査の結果からいうとこれは大へんだ、そこで日本アメリカ国務省と、が相談の結果、会見をやり直して、そうしてその次に出たやつが、アメリカの国防省はいまだ決定したわけではない、検討中の段階である、もし決定するとすれば日本政府と協議の上実施するという第二次の国防省と新聞記者団会見になったことは、あなた御承知の通りである。だから、私は、あなたに申し上げたいのは、このような世界情勢日本を取り巻くこのようなアメリカ部隊配置の現状のもとにおいては、アメリカと共同防衛の中にあるわが日本が受けなければならない必然の影響が四つある。その一つは、同盟国の軍隊は原子戦術を訓練せざるを得ぬであろうという将来の見通しアメリカも声明しておる通り、将来の局地戦にもこの第二次ニュールック戦略原子兵器を用うるであろうということ。だから、これは将来日本自衛隊原子兵器によって装備され、そうしてこれがアメリカの原子部隊とともに行動するということになるのが今日の軍事専門家の常識であります。だから、私は、この際日本の外務省としては、ただ、向うが持って来たときにこれを断わるとか、あるいは向うから話があった場合にというような消極的な考え方ではなしに、――かって重光・アリソンの会談において、原子力兵器日本に持ち込むときは日本政府と相談をするという申し合せが実はあった。ところが、今回はその申し合せよりははるかに後退して、一方的にアメリカが発表をこの間した。だから、私は、重光・アリソンの話し合いに出た最低の線の、これからは原子兵器日本に持ち込むときは日本政府と相談をするということを、共同宣言の形か何かではっきりと取りきめる、そういうことが日本国民に最も大きな安心を与えるのであって防衛力の漸減方式、防衛分担金漸減方式でも、鳩山内閣もすべて共同宣言をしておるじゃありませんか。これが歴代内閣を拘束するかどうかという私の質問について、鳩山総理はえらく苦労をしたが、アメリカは事々一つ一つ共同宣言なり協定の形をとっているのです。私は、日本政府はこの原子兵器持ち込みについてアメリカ政府との間に日本政府との協議なくしては持ち込まないという協定を結ぶべきであると思うが、これについて岸外務大臣の御見解を一つ聞きたいと思います。
  46. 岸信介

    岸国務大臣 その点については、今御指摘のありましたように、私の前任者の重光外相とアリソン大使との間に話し合いがあったことも事実であります。今回の国防省の発表によりましても、こういうものを持ってくる場合においては日本政府と協議した上できめるということを言っておりまして、そのことはもはや問題なく、日本の同意なくしてはそういうものが日本にいけないということは、私はきわめて明瞭になっておると思うのです。今日直ちにそういう共同宣言とか何を作るという必要につきましては、私まだ考えておりません。
  47. 今澄勇

    今澄委員 この際ちょっと官房長官が見えたから聞きますが、この間内閣官房審議室は二万人の国民に対してペンディング組織による世論調査をしました。その結果はいつものことながら極秘にして発表しないのですが、これは再軍備についての世論調査であった。それがどういう結果になり、いかなる目的で調査をきれましたか、ちょっとここで御答弁を願いたい。
  48. 石田博英

    ○石田(博)政府委員 お答えをいたします。  昨年十月からただいまお話しのような調査を行なったことは事実でございます。ただし、それは再軍備に重点を置いて調査をしたのではなくて、憲法が公布せられましてから十年たっておりますので、その憲法に対する国民の認識の工合がどうであるか、あるいははその憲法に対する国民考え方がどうであるか、あるいは憲法を改正するというような意見が世の中に出始めておりますが、そういうことについてどういう程度の認識を持っているか、そういう点を調査したのでございます。別に極秘にいたしておりません。御要求があればお手元に資料を差し上げることを別に拒むものではございません。  それから、再軍備の点ももちろんその調査の中でいたしております。
  49. 今澄勇

    今澄委員 その調査した結果、再軍備についての世論の集計はどうなりましたか。
  50. 石田博英

    ○石田(博)政府委員 まず第一の設問は……
  51. 今澄勇

    今澄委員 時間がありませんから、再軍備のところだけでけっこうです。
  52. 石田博英

    ○石田(博)政府委員 設問がありまして、それは、先の設問が、今日の国際情勢の中において日本の安全について不安を持っておるか、そう思わないかという設問が第一であります。多少とも不安だと思うという者が六三%、そういう気がしないという者が一六%、それから、わからないというのが二一%であります。そういう前提の上でお答えをいたします。  そこで、自衛軍の必要、不必要という問いに対しまして、これは問いの仕方を二つに分けました。自衛軍は必要であるかないかという質問と、再軍備に賛成であるか賛成でないかという質問であります。  そこで、自衛軍が必要であるかないかという点については、日本の安全について幾らかでも不安を持っているという者の中の七一%は、必要であると認めております。それから、二〇%は不必要であると言うております。残余は明確な答えではありません。それから、日本の安全についてそうは思わないという者につきましては、自衛軍を必要だという者が六七%、不必要だと思う者が二四%であります。  それから、再軍備賛成か反対かという質問になりますと、この傾向が若干変って参ります。日本の安全について不安だと思っておる者について、再軍備賛成論者は三五%、反対論者は四六%で、この場合は反対論者の方が多いのであります。それから、そうは思わないという、つまり日本の安全が不安だと思わない者についても、再軍備という質問に対しては、やはり賛成が三五%、反対は四五%ということになっております。  すなわち、自衛軍が必要であるかないかという設問と、再軍備賛成か反対かということについての呑口えは、以上のように出て参っております。
  53. 今澄勇

    今澄委員 だから、政府はいずれ近く選挙でもするので、これは誘導兵器の問題、原子機動部隊の問題その他いろいろの問題で、その世論調査の結果に応じて先般閣議をなし、われわれ野党の質問に先だって内閣が一応の態勢を整えたと思うのです。だがしかし、これまでの過去は歴代の内閣がそんなふうであったが、現実はどうかというと、朝鮮事変に勃発したマッカーサー書簡に基く警察予備隊が、平和憲法のもとにおいて今日在外武官の待遇を受けておる。今度ソ連と国交を回復すれば二名向うに行くわけじゃありませんか。もう武官並みの待遇で、国会でも軍事優先というような言葉が防衛長官の口から出ている。(笑声)軍事優先をやらないと言うておった。私は、この事実から見ると、これはこの内閣岸外務大臣答弁だけでは、われわれとしては断じて承服できない。  そこで、私はもう一つ岸外務大臣に御質問いたしますが、クォールズ米空軍長官、これは日本基地に原子兵器の貯蔵してあることを認め、米軍は極東に原子戦関係の空軍と兵器を組織し展開している、これをどこに配置しているかは言えないと公表しております。一月十六日のAPであります。この声明をもとに米軍の配置編成、組織を見るというと、日本本土内に原子兵器、原子爆弾、原子弾頭の相当量が分散配備されていると判断されるのが今日の軍事常識であると、林という軍事評論家が「世界」という雑誌において論じております。そこで、今のレムニッツァー大将を中心とする極東軍司令部、極東陸軍、極東海軍その他各司令部を見るというと、その実施部隊が出ております。その実施部隊を調べていくと、第三戦術爆撃機連隊、これがジョンソン基地にある。第三十五戦闘機連隊、これが横田基地にあって、セーバー戦闘機、その他原爆の積めるF00Aというのが来ている。第四十九戦闘爆撃機中隊、これは三沢基地にあって、セーバー86その他の戦闘機が待機している。こういう状態で、軍事常識から言うと、今の日本国内に、有事即応の態勢ということになれば、原子弾頭、原子爆弾等がそばになければ間に合わないような極東軍の配置になっているということを、私どもは十分心配をしておる。だから、こういう状態のもとにおいては、私は外務大臣にお願いするのは、今言った重光、アリソンがかって協定をいたしました、――これは言葉できめたことだから、何らそういうことはしなかったと言えばおしまいになるから、ぜひこれを一つ文書に直して、もう一つは、日本周辺における原子力使用禁止協定、これはすなわち日本、中国、アメリカとソ連の日本周辺における各国は原子力を使わない、これを、日本は国際連合に加盟したのであるから、これらの国連の舞台において主張するか、それとも、日本の外務省は、方針として――ソ連はこれに応ずると言っておるそうですが、ソ連、中国、アメリカを説きまわるくらいに、日本自衛隊がほんとうにわが国の自主的防衛のために努力するということであるならば、少くともこの原子戦争、原子兵器の問題については、外務省はっ込んだ態度を一つ示さなければならぬと思いますが、あなたは重光・アリソン協定の共同宣言なり法制化はどうも困難だと言っておるが、一体この極東における原子力使用禁止に関する協定について外務省は努力する意思があるかどうか岸外務大臣答弁一つ聞いておきたいと思います。
  54. 岸信介

    岸国務大臣 原爆の使用禁止、実験禁止につきましては、すでに国民の総意に基いて、日本ははっきりとこういうものを持つべきにあらずという意思を表明しております。またわれわれはそれをあらゆる機会に実現しよう、この悲願を達成するように実現しようと考えております。それをいかなる方法で、いかなる時期にどういう形でやるかということは、これはいろいろな事情考えなければならぬと思いますが、私は、精神として、日本国こそ原爆の使用禁止を世界に主張し、またこれを世界の世論として実現する使命を持っておる国だ、かように考えて、あらゆる努力をしたいと思います。
  55. 今澄勇

    今澄委員 そういう抽象的な答弁はだれでもできるのです。だから、それを具体化した、いわゆる重光・アリソン会談の決定を共同宣言の形であなたの力で持ち込めないかどうか。あなたは日本国会の決議の意思を体して少くとも、国連における全世界のあれは困難であるから、しかりとするならば極東における原子兵器の使用禁止に関する申し合せ、取りきめ等をこの国会の決議に基いて申し入れることができるかどうか。それは、そういう協定がなければ、幾ら日本がのがれようとしてしても、そういう日本を取り巻く原子戦術の今日の新段階においては、のがれる道はないじやありませんか。その国会の決議を生かす道は、極東における原子兵器の使用禁止、できれば国連における原子兵器の使用禁止、こういうことになるわけですが、極東におけるそういうふうなイニシアをとる。外務大臣としてこれに対するあなたの信念を伺いたい。
  56. 岸信介

    岸国務大臣 今澄君もよく御承知の通り、今の国際情勢というものは、原爆の使用禁止につきまして、なかなかまだ実現できない。それは、これを持っておる数国の強国というものの間に、ほんとうに一致してこれを使用禁止しようというような真意がまだ動いておらない。私はここに非常に遺憾な状態があると思う。現に、われわれが今回国交を回復いたしまして、今後の東西両方の緊張緩和に努力をしていきたいと考えておりますけれども、現実はなかなかそういうなまやさしい現実でないという状況でありますので、方向として、あらゆる面においてこの原爆使用禁止ということを進めていくということはわれわれやらなきゃならぬことだと思いますけれども、これは、十分に国際情勢と、それからあらゆる点を考えていかなければなりませんので、ただ極東だけにそういうものを提起するということが実現できるかどうかという情勢考えますと、遺憾ながらまだ国際情勢はそういう情勢に達しておらない、こう言わざるを得ないと思います。
  57. 今澄勇

    今澄委員 それでは、外務大臣、百歩を後退して、アリソン・重光会談の原子兵器に関する取りきめについてアメリカとの間に共同宣言を行うということはどうですか。
  58. 岸信介

    岸国務大臣 その点は、先ほど申しましたように、今度の原子部隊の問題については、すでにアメリカの国防省が日本の了解なくしてはこれを持ち込むことはしない、駐留せしめることはしないということを言明しておりますので、そういう実際の必要は私はなかろうと思いますけれども、御意見としては承わっておきます。
  59. 今澄勇

    今澄委員 これは、承わっておきますと言われますけれども、ここが一番重大なところなんです。外務大臣として一ぺんそういうことにきめたのだから、内閣が機動部隊を受け入れないということをきめた真意がほんとうなら、岸外務大臣は、戦略用原子弾頭、原爆等をも含めた原子兵器国内への持ち込みに関する重光・アリソン会談の内容を交換公文にして、共同宣言にする必要が断じてあると思います。あなたはそれをやる意思があるかどうか。せめて百歩後退して意思があるかどうかということはどうですか。意思もありませんか。
  60. 岸信介

    岸国務大臣 先ほども言っております通り、私は今これをやるという意思を表明する気持はございません。
  61. 今澄勇

    今澄委員 大体、この内閣が原子機動部隊について閣議できめてわれわれに発表した、あの相談があったときは断わる、こういう態度は、国民の不安を根底から払拭するものでない。われわれは、本問題について内閣には確固たる決意がない、かように断ぜざるを得ません。私は、少くとも、石橋内閣が中共問題と台湾問題の間にはきまれて、このアメリカの外交路線の中で大きな苦悶の姿を一これは岸、石橋両氏の間に開きを見せて将来進むのではないかと思います。それは今後のことですけれども、われわれはこの機会に石橋内閣がこれらの原爆の問題についてはもう一段と信念ある態度をとられることを要望して、また次の重要な問題に移ります。  それでは、これは予算ですが、防衛予算は本年度はほとんど増減がありません。一万人増加の問題が繰り延べになっておりますが、この一万人は、アメリカ会計年度に合せて来年の四月から六月の間に、日本は三十三年度の予算になるが、増強するという約束をいたしましたか、大蔵大臣にお伺いいたします。
  62. 池田勇人

    ○池田国務大臣 そういう約束はいたしておりません。
  63. 今澄勇

    今澄委員 先般第一回の会合、第二回の交渉、第三回の交渉がこの一月の初旬に行われました。アメリカ側はモルガン大使館付参事官、ハーンズ極東軍参謀長、ビドル軍事顧問団長、日本側からは増原防衛庁次長、門脇外務次官、平田大蔵次官の三人の会談のときに、一番初めの会談において、本問題は来年の会計年度において実現するからと口頭で相談したところが、これはやはり文書にする必要があるということで、日本の三名は日本政府を代表して文書でこれを渡したと伝えられているが、そういう事実があるかどうか。これは外務大臣にちょっとお伺いをしておきます。
  64. 岸信介

    岸国務大臣 そういう事実は、私は聞いておりません。
  65. 今澄勇

    今澄委員 増原防衛庁次長、あなたはそこへ行かれた方だが、どうですか。
  66. 増原恵吉

    増原政府委員 そういう事実はございません。
  67. 今澄勇

    今澄委員 およそ国会に対する答弁でこれほど国民を愚弄する話はないと私は思います。本問題は来年になればわかること、だが、しかしながら、そのときの会談の模様をあなた方以外に知っている者もなきにしもあらずです。少くとも今の政府が国会対策として国民にもうほとんど物事をひた隠しに隠す。韓国アメリカの援助を得るために会計年度アメリカと同じに二、三年前に直しました。日本も、今度のこの予算編成を見て、アメリカ会計年度に近づく公算が非常に多いと、心から憂えておりますが、それらの事実をこの国会においてひた隠しに隠すというあなた方の態度というものは、私は国会審議に対する政府の誠意を大いに疑わなくちゃならぬと思います。この問題はこの程度にしておきましょう。  もう一つの問題は、過ぐる日・韓・アメリカ三国の防衛演習のときに行われた一番重大な問題は、わが国のレーダー――いわゆる飛行機万能の時代において、空というものは陸と同じであります。このレーダーが、今日本国内においてアメリカのレムニッツァー司令官の脚下にあるレーダー基地が二十四カ所あるといわれているが、このレーダー基地については、御承知の通り刑事特別法という法律があって、行政協、定に基いてこの取締り、が行われておる。だが、このアメリカ極東軍傘下にある二十四カ所のレーダー基地というようなものは、これは新聞でも私は見ましたが、こういう報道は行政協定三条に伴う刑事特別法に一体ひっかかるのかどうか。これはどの程度がひっかかるのか。これの最終的な判定をする者は一体だれなのか。これはアメリカ政府と相談しなければきめられないのか。この秘密保持に関する刑事特別法というものは今日重大な意味を持つに至りましたが、法務大臣の答弁を求めます。
  68. 中村梅吉

    ○中村国務大臣 突然の御質問で失礼しましたが、お答えをいたします。  行政協定に基く刑事特別法第六条を見ますと、「合衆国軍隊の機密を、合衆国軍隊の安全を害すべき用途に供する目的をもって、又は不当な方法で、探知し、又は収集した者は」処罰をする、こういうことに相なっております。
  69. 今澄勇

    今澄委員 そこで、この刑事特別法は――アメリカは次々と機密事項をはずします。ついこの間は二十四カ所がアメリカの機密事項であっても、しばらくたつとこの二十四カ所は機密事項でなくなるわけだ。そこで、あなた方は、これをきめるのには日本政府だけでやれるのか、アメリカの大使館に相談してこれは有罪ということになればそれは有罪になるのか、これは調べてもらうように法務大臣には前もって私は言っておきました。これは、軍艦「大和」の設計図を横須賀の港で盗まれたという事件が昨年起りまして、それにフリゲート艦の見取図がついておったために・東京警視庁は二人の人間を逮捕した。われわれは、これは刑事特別法にかかってこのフリゲート艦の見取図を中共へ入れようとした事件は有罪になるであろう、しかも自信があるから検察庁も東京警視庁をして逮捕きしたの、だろうと思っていたところが、これはアメリカへ問い合せの結果、軍機の機密にかからぬというので無罪になって釈放した事実があります。しからば、この刑事特別法というのは、一体そういう容疑をもって調べた人間に対する補償等もあるのか。片っ端からこれにひっかかるということでは大へんな危険なんです。だから、今の二十四カ所のレーダー基地等の問題はこの刑事特別法にひっかかるのか、ひっかからないのか、私はそれを法務大臣にも聞いておるし、防衛庁長官でもけっこうです。
  70. 中村梅吉

    ○中村国務大臣 お答えいたします。  これは明らかに合衆国軍隊の安全を害する目的ということがございます。この目的がなければ、そういう意図をもってやらない者については処罰するということにはなっておりません。なお第二項におきましては「合衆国軍隊の機密.で、通常不当な方法によらなければ探知し、文は収拾することができないようなものを他人に漏らした者も、前項と同様とする。」、だから、通常の社会常識で知り得ることは、これは漏らしても差しつかえないわけです。通常の手段をもつては知り得ないことを不当に前項の目的で、合衆国軍隊の安全を害する目的で探知しまたは収集した者、こういう者を処罰する、こういう規定になっております。  なお、今御質問の中に触れられましたが、もしこれがこの刑事特別法で検挙を受けまして裁判の結果無罪になりました者等につきましては、日本の刑事補償法を適用することになっておりますから、そういう場合には当然その無罪になった者に対する補償の措置はとられるのであります。
  71. 今澄勇

    今澄委員 その判決は合同委員会にかけるのですか。
  72. 中村梅吉

    ○中村国務大臣 いや、そうでなしに、日本の手続だけでできるようになっております。
  73. 今澄勇

    今澄委員 この問題もまた関係があるのですが、もう一つ、今、日本の空は、これはニュールック戦争の時代においては空は陸と同じですが、航空法によって日本の運輸省が握っていなければならぬのに、日航機もその他の民間航空機も全部アメリカの航空管制のもとに置いて、羽田においても、一時間でも二時間でも、航空管制塔から許可がなければ押えられるが、今日本の航空管制を、日本の航空法を超越してアメリカ極東軍に一任している法律的根拠は一体どこにあるかということ、これを外務大臣なり運輸大臣から一つ承わりたいと思います。
  74. 宮澤胤勇

    ○宮澤国務大臣 お答えいたします。これは、行政協定に基く特別法を作っておりまして、それに基いて航空交通管制をアメリカに委任しておりますが、これは、だんだん日本の方で要員を作って、なれてきておりますから、もう両三年でこれは日本の方に移るように、だんだん訓練をしております。
  75. 今澄勇

    今澄委員 その答弁は非常に重大であって、私は行政協定の条文をくまなく調べたが、日本の空についてアメリカがこれを全権委任を受けるがごとき条文を見つけることができません。岸臨時総理大臣代理並びに法制局長官は、行政協定の第何条に基いて本航空交通管制に関する取りきめを一体いたしたものであるかということをお答えを願いたい。
  76. 林修三

    ○林(修)政府委員 詳しいことは運輸省当局からお答えがあると思いますが、これは行政協定第六条に基いたものと考えます。
  77. 今澄勇

    今澄委員 行政協定の第六条には、そういうことは全然書いてありません。あなた、これを読んでごらんなさい。私は行政協定をくまなく調べたが、行政協定のどの条章にも日本の領空について取りきめはございません。どなたでも政府の担当の方からお答えを願いたい。行政協定第何条に基いて取りきめたか。
  78. 林坦

    ○林(坦)政府委員 行政協定の第六条に、「すべての非軍用及び軍用の航空交通管理及び通信の体系は、緊密に協調して発達を図るものとし、且つ、集団安全保障の利益を達成するため必要な程度に整合するものとする。この協調及び整合を図るため必要な手続及びそれに対するその後の変更は、相互の取極によって定める。」、この条文によっておるのでございます。
  79. 今澄勇

    今澄委員 この条文では私は航空交通管制に関する取りきめをなす力はないと思います。だからこそ、この航空交通管制取りきめを見ると――これは岸外務大臣に伺いますが、この航空交通管制取りきめの前段は、「行政協定の原則に従って」と書いてある。行政協定第何条と書いてないのです。それは、今の行政協定第六条は、衆議院の法制局でも調べたが、これは、日本の空を全部アメリカが占領する、全権を委任するあれとはならない。私はこれは非常に重大なことであって、外務大臣は、この重大な日本の空を――しかもこれは日米合同委員会の航空分科会が取りきめた取りきめにすぎないのです。日米合同委員会の航空分科会が取りきめたたった一取りきめで、全日本の領空をいかなる飛行機といえどもアメリカの一切の指揮下にゆだね、しかも日本の航空技術者すべて英語をもって、これはジョンソン基地の指令に従わなくてはならぬ、そのことは、ロケットといえども誘導兵器といえども、事空中に関する限りはすべてジョンソン基地の指令に従わなければならぬ、こういうことが一片の取りきめでできるかどうかということについては非常に疑いを持ちます。外務大臣は、この航空交通管制に関する取りきめについて、日本アメリカの合法的な立場に立つ取りきめとお思いになりますか。
  80. 岸信介

    岸国務大臣 今政府委員から説明いたしました通り、政府としては行政協定の六条に基いてやっておる、こう解釈して、有効なるものと考えております。
  81. 今澄勇

    今澄委員 今の政府の行政協定六条に関する回答は、これは日本アメリカの占領下におけると同じ状態で解釈をしておる。われわれは、この行政協定第六条の解釈において、何ら本協定を作り得るところの原則的なものとはならぬと思います。少くとも、この航空管制に関する規定の第二条を見るというと、「相互の安全保障と共通の利益のために、航空交通管制組織の管理は、合衆国軍に委任する」となっている。日本の航空交通管制の管理を合衆国に委任をして、それで一体今度日本に返るときの返り方を見ると、第三条第三項D号の規定において、「資格ある在日米軍監督官は、これらの職員の資格及び進歩を判定することができ、日本国政府は、これらの監督官の決定に従うものとする。」、こうなっている。そうすると、これは「資格ある在日米軍監督官はこれらの職員の資格及び進歩を判定することができ」だから、日本に在留するアメリカの監督官が日本の航空関係の職員の資格、進歩を判定して、日本政府はこの監督官の決定に従うのですから、アメリカの監督官がだめだと言えば、永久にだめなわけです。しかも航空交通管制の組織は合衆国軍に委任するというのですから、私は合衆国軍に委任した基礎的な条項は六条のどこであるかということを聞きたい。
  82. 林修三

    ○林(修)政府委員 なお詳細の点については運輸当局から御説明がありますが、御承知の通り、航空交通管制というものは、一元的に行わないと、空の交通というものは実はうまくいかないものであります。従いまして、この六条の規定によりまして日米間で協定をいたしまして、お互いに協力してやりたい。つまり、協力するにつきましては、当時やはり米軍が一番航空交通管制になれておりますから、これを主体としてやっておる、こういう建前でやっておるものと考えます。
  83. 今澄勇

    今澄委員 具体的には第六条の何項ですか。
  84. 林修三

    ○林(修)政府委員 その点は、先ほど運輸省当局からお答えいたしました通り、第六条第一項で、緊密に協力してやっていく、こういうことに基いております。
  85. 今澄勇

    今澄委員 行政協定第六条は、航空、通信の体系、航空施設に関する協力、こうなっている。その中の一で、 「すべての非軍用及び軍用の航空交通管理及び通信の体系は、緊密に協調して発達を図るものとし」の中に、どうして日本が航空交通管制組織の管理は合衆国軍に全権を委任するというのが出てきますか。
  86. 林修三

    ○林(修)政府委員 これは、行政協定に基きまして、――結局、先ほどお答えいたしました通りに、航空交通管制というものは性質上一元的にだれかが行われなければこれは実行できないものでございます。従いまして、現在はその点を一元的にアメリカ空軍の方に委任をいたしましてやっておる。しかしながら、航空法あるいは航空法規の適用関係は、わが国の航空機につきましては航空法の規定によります。普通の外国旅客機につきましては、これは民間航空条約の規定が適用されております。米軍の飛行機につきましては、行政協定に基く特別の航空上の取りきめによって実際の適用が行われるわけであります。
  87. 今澄勇

    今澄委員 外務大臣に伺いますが、本取りきめはアメリカとの間にかわされた協定でもなければ何でもない。日米合同委員会の交通分科会の取りきめなんです。合同委員会なり分科会というものは、日本の領空を外国に委任するというような国際間の重大な問題を、一体永久効力があるがごとき取りきめができるのかどうか。その取りきめをいたすことができるとすれば、行政協定の第何条によってこの取りきめをと前文に書いてなくちゃならぬが、私の指摘する通り、取りきめる基礎となるべき条文がない。だから、アメリカの圧力に屈して政府は行政協定の原則に従っておる。行政協定全体を流れておる一つ意味合いをもとにこの協定を作っておる。そうすると、岸外務大臣、今言った「すべての非軍用及び軍用の航空交通管理及び通信の体系は、緊密に協調して発達を図るものとし」、このわずかな条文でわが日本国の領空を全部アメリカに全権委任をしておる。一体こういう状態が許されるとあなたは思いますか。私は林法制局長官にあとで聞きますけれども法制局長官も、第六条のどこに該当しておるか、よう言わないじゃないですか。第六条のどこにも、日本の航空交通管制について、アメリカがこれを軍用のためにその領空並びにアメリカの駐屯地の空港をどうするということは全然ないのですから、私は日本の航空交通管制を全部アメリカに全権委任をしておることは行政協定の違反であると断じます。
  88. 岸信介

    岸国務大臣 法律の解釈問題につきましては法制局長官から今答弁した通りでありますが、私自身一応第六条の第一項を読んでみましても、今お読みになりました「緊密に協調して発達を図るものとし、且つ、集団安全保障の利益を達成するため必要な程度に整合するものとする。」、ずいぶん妙な言葉ですが、「整合」という言葉が使ってあります。だから、この協調及び整合を図るため必要な手続云々ということは相互の取りきめによって定める、こういつて取りきめをされたものだと思います。しかし、航空の一元化ということは必要であると同時に、これを取りきめた当時の日本事情から言いますと私はその必要があったのだと思います。しかし、運輸大臣も申しておるごとく、日本のこれに関係しておる各方面も漸次なれてきて、両三年の後には日本人の手で全部やるというふうに持っていきたい、これが一つ方針であろうと思うのです。またそういうふうに私はなっていくものだと考えております。
  89. 今澄勇

    今澄委員 私はここに重大な問題を先ほど来論じたのは、日・韓・アメリカの三国共同演習も、その統帥権はジョンソン基地なんです。日本の航空交通管制も、これまたその中心はジョンソン基地なんです。だから、林法制局長官がここでるる述べたけれども、私は最高裁判所の長官ではないから、ここで判決はようできませんが、少くとも、行政協定第六条の規定で日本の領空をあげてアメリカに委任をするというようなこれまでのやり方が、――この協定国会審議にかかっておりませんが、それを別としても、行政協定そのものにも矛盾をしておるという私の見解は不動の信念です。これは、きょうここで法制局長官からも、それは絶対間違いであるという意見はなかった。しかも、このとりきめの前段においては、行政協定の原則ということになっていて、全然これは行政協定にも書いてない。そこで、この法理論はしばらくおくとしても、岸外務大臣はこの航空管制を一体どのような方法によって日本の自主的な航空管制に移すようなお考えがあるか、これは運輸大臣からでも外務大臣からでもけっこうです。
  90. 宮澤胤勇

    ○宮澤国務大臣 この航空交通管制の実際を申し上げますると、今約七百人の要員をもってやっておりますが、だんだん日本人がなれてきまして日本人を枢要部にだんだん入れております。今三百余名の日本人がようやく養成せられて、言葉にも通じ管制にもなれてアメリカ側においてはなるべく早く日本人にこれを移したいというので、三十五年を目途として全部日本の管制に移したい、こういう方針でやっております。
  91. 今澄勇

    今澄委員 運輸大臣にもう一つ伺います。が、今の航空法に基いて運輸大臣に日本国内のすべての航空問題については許可を得る、こういうことになっている。だから、あなたの手に日本の・航空関係のすべてのあれがなくちゃならぬ。それが、行政協定第六条一項によって、その全権限をアメリカに与えておるというこの状態を、あなたはおそらく大臣になられてあまり日にちがありませんから詳しくはお調べにならなかっただろうと思うが、運輸大臣として、あなたは、この章条が適用され、しかもそういう根拠があるとお思いになりますか。
  92. 宮澤胤勇

    ○宮澤国務大臣 ただいまの法的の根拠は、私も法律家でないけれども、第六条によって行政協定から出発してやっておる。協調をして相協力してやっていくという点から、この管制の問題は一元化でなければいけませんから、ほとんど初めはアメリカがやっておった。日本じゃやる力がなかった。それを取り入れてやっておりますので、これを、三十五年を目途として約七百人に上る日本人を養成してそれに移ってくるということは、日本の航空上の実情から言ってやむを得ないことであり、私は、数年ならずしてこれが運輸大臣の手に移るということで、適当な順を追って適当な措置がとられておる、こう考えておるのであります。  なお、アメリカとの関係におきましても、この問題は、言葉は全部英語ですから、これが将来日本の運輸大臣のもとに全部管理が移りますと、国内交通くらいは日本語でやれるけれども、国際交通については何としても英語でやらなければならぬ。その要員は順次養成して、アメリカの側も淡白にこれを日本に早く移したいというような状態でやっおるのが現実の問題であります。
  93. 今澄勇

    今澄委員 そこで、私は、この問題はこの程度にして、もう一つ今度外務大臣に伺わなくちゃならぬが、石橋総理は昨年の秋レムニッツアー極東軍司令宮に書簡を出し、レーダー基地を返還してくれるならば受け入れの用意ある旨の申し入れをして、事務当局と協議したい旨の希望を言っておられます。この書簡に対して向うからいかなる返事が来たか。それから、この書籍はいかなる理由のもとに出されたか。この点については、石橋さんがおられませんから、外務大臣から一つ答弁願いたい。
  94. 小滝彬

    小滝国務大臣 石橋総理大臣が防衛庁長官を兼任せられておる際に、防衛庁長官として出されたことでございます。まだそれに対して返事は参っておりません。事務的に話し合いをしておるのでございまして、その実情は先ほども簡単に言及いたしました通り、漸次日本側で引き受けていこうというので、本三十一会計年度の年度末までに二カ所を引き受け、来年は大体四カ所を引き受けるというふうな予定をいたしておるのであります。
  95. 今澄勇

    今澄委員 そうすると、防衛庁長官、そこでまた問題なの一は、航空管制というのは、やはり上部機関があって、それがだんだんとうしろへ下っておるわけだ。だから、一番最初の前線基地にあるレーダー・サイトから、さらにその奥にもう一つ下り、さらにまたその奥にもう一つ下って、守山を中心として管制が出ておる。これはもう一体のものですから、そうすると、日本防衛庁に下げられたレーダー・サイトは、アメリカの守山に報告をしなければならぬし、さらにまた守山からの指揮を受けなければならぬということになるが、この統帥権についてはアメリカ軍と日本自衛隊との関係は一体どうなるのですか。
  96. 小滝彬

    小滝国務大臣 引き受けました分につきましては、防衛庁長官としてこの運用手続を決定するわけであります。ただし、相互に連絡を緊密にしておきます必要がございますから、防衛庁長官として決定いたしますについては、向うと下打ち合せするでありましょうが、あくまで運用手続はわが方において決定いたすものであります。そして、実際の問題といたしましては、先ほど運輸大臣も申されましたように、今全部を一括して引き受ければ全部それが防衛庁長官の指揮下に入りますけれども、そういうふうにならないから、その段階におきましては、防衛庁長官の指揮のもとに、その手続に基いてアメリカの基地の中心部へも通報するというような実際的な取扱いをしなければならないと考えております。
  97. 今澄勇

    今澄委員 私は、それはもう今の交通管制の条文を読んでもおわかりのように、それはもう口で国会で言うだけのことで、今日のこの戦略体制のもとでそんなことができるわけはないのです。防衛庁長官に、三十二年度返還予定が四カ所と言われておるが、これはどことどこが返りますか。
  98. 小滝彬

    小滝国務大臣 どこということはまだはっきり確定いたしておる次第ではありません。
  99. 今澄勇

    今澄委員 四カ所返ることは間違いないですか。
  100. 小滝彬

    小滝国務大臣 先ほど申しましたように、事務当局で話し合いをいたしてその程度は返そう、またわれわれの方にも受け入れの実力はあるというように判定いたしております。
  101. 今澄勇

    今澄委員 これで私は防衛に関する大体の質問を終りました。  まだいろいろ問題がありますが、あと原子力の問題と、それから沖縄の問題について少しく聞きたいと思います。  そこで、私は宇田経企長官に聞きたいのですが、あなたは五年間に三百万キロワットの原子力発電を実現するという宇田構想を勇猛果敢に発表になりました。全く実現性のないことは天下周知の事実で、どんなしろうとでもわかる。たとえばアメリカのストローズ原子力委員長があなたと同じような発言をしたら、アメリカの原子力開発は全くこれは世界から笑いものになるでしょう。あなたの言われるよううことでやると、全世界のウラニウムを日本に集めて、そしてアメリカ、イギリスの何倍もの原子力を日本は使う、こういうことになるのですが、全く私はあなたのこの発表を見て驚きました。あなたは原子力委員会の委員長ですが、あなたの下におられる有灘原子力委員はこう言っておる。これは単に原子力委員会の恥であるばかりでなく日本全体の恥である、日本の信用を失墜した責任は重大である、こういうあれですが、あなたは一体国務大臣としてこの政治的責任をどう思っておられますか。あなたの下にある原子力委員会は、湯川さんと有澤さんと藤岡さんと石川きんで、委員長のこの放言は、何ら委員会は関知せず、これは委員長個人の放言であると言っておる。私は日本の国務大臣ともあろう者が、こういうむちやなことを放言をして、一体これで済むものかどうか、ちょっと宇田国務大臣の責任を追及します。御答弁を願いたい。
  102. 宇田耕一

    ○宇田国務大臣 お答え申し上げます。経済自立六カ年計画は、昭和三十年から六年間計画を持っております。しかしこの計画は、現在の経済の伸びに対して合いませんから、これの改訂を必要といたしておることは、先日来申し上げた通りであります。それで、昭和三十二年から五カ年間の新しい経済計画を立てようと思って、ただいま作業を開始いたしております。それに合わすべく・原子力委員会は鳩山内閣のときに調査団を英米に派遣をいたしました。それの調査報告は、十二月帰って参りまして、一月十七日の日付をもって私の手元に参っております。それによりますと、コールダーホール型の原子力発電機、十万キロないし十五万キロのスケールのものを日本に買うべく準備するのが適当であるという報告があります。理由はるるありますが、その中で特に注意すべき点は、地震に対する配慮と原価計算の点において、なお一・二点注意すべき点がある、こういう報告があります。それで、原子力委員会はその報告に基いて、本年あらためてその疑問点をただすべく、調査団を派遣するということに意見はまとまっております。それで、もし調査団を派遣いたしまして、本年の下期において多分その報告が新たにもたらされました場合に、われわれは原子力発電の機械を日本に購入すべきかいなかということを決心すべきである、それが適当であると考えております。その報告に基いて、新しい来るべき五カ年計画のエネルギー対策を新たに考え直すべきであると考えております。その際に、もしも原子力発電機を何基か購入することが適当であるという報告がありました場合には、これは受け入れるべきものである。従って、新しい五カ年計画の中にそれを織り込むべきものである、こういうふうに考え、またそれは、委員会の決定を待って、新聞記者団にも発表いたしたわけであります。そのほかに一月末に、アメリカからニコルスというウエスチングハウスの代表が参りました。インドからの帰りと申しまして、そうしてヤンキー・タイプ、すなわち改良水冷加圧型というもの、がアメリカで十二月に青写真ができましたから、もしもよかったらそれを日本導入してはどうかということであります。しかしこれも的確なことはわかりませんから、あわせてアメリカに新しい調査団をわれわれは送るべきものであるということを、原子力委員会で話がまとめてあります。もしその報告が適当でありました場合には、私は新しい五カ年計画の中にこれを織り込みまして、日本のエネルギー対策を考えなくてはならぬ、こういうことも原子力委員会で決定をいたしております。それを新聞記者諸君に発表いたしました。そのときに新聞記者諸君から、一つの仮定のもとに質問がありました。もし機械の購入、が可能である場合には、あなたはどれくらい日本のエネルギー対策として希望を原子力発電に持ちますかということでありましたから、日本の現在持っておる六カ年計画の中において、まだ八百四十万キロの発電計画を達成しなければならぬが、そのうちの火力発電は六〇%になんなんとしている、昭和三十二年度におきまして二千八百億の資金を必要とし、これを投入する計画を持っている、昭和三十三年度におきましては、二千九百五十億の発電に対する投資をわれわれはしなければならぬことに計画を持っておりますが、その六〇労近いものは火力発電であって、しかもその燃料は、外国から粘結炭を買い込まねばならぬの、だろうし、また重油も百五、六十万キロリットル以上輸入しなければならぬはずでありますから、それに見合うものがもし原子力でもってカバーできる場合には、船腹の補充とか、あるいは港湾の構築対策、修築対策等から見て、われわれがむしろ原子力のようなものにたよること、ができたら、われわれとしては、粘結炭の輸入、あるいは重油の輸入よりも好ましい燃料対策、あるいは輸入対策がとれると思います、そういう場合に、八百四十万が経済自立六カ年計画の内容でありますけれども、新しい年度の昭和三十二年度以後におけるところの発電計画は、おそらく八百四十万キロを上回って九百万キロになるか、あるいは一千万キロになるかもしれません、そのときに.、その三割くらいのものをもしわれわれ、が手に入れることになったら、国家のために非常に好ましいことであると思う、しかし万事はミッションの報告を待って、それによらなければわわれれは決定する力もないし、また日本の国情がそれに合うとは考えられないから、前提はよく申し上げておきますよ、こういうことであったわけであって、宇田構想といいますけれども、それが宇田構想というに値するものとは考えておりません。
  103. 今澄勇

    今澄委員 あなたは、それでは先般来の新聞に伝えられた宇田構想は誤り伝えられた誤報であると、こういうわけですか。それともあれがほんとうならば取り消すか、それは誤報なのか、その点を一つ私は明らかにしてもらわなければいかぬと思う。
  104. 宇田耕一

    ○宇田国務大臣 誤報であるか誤報でないかということの御質問は、私は合わないと思う。それは調査団の報告を待って、それがほんとうに可能だという線が出てきた場合には、日本のエネルギー対策としては、少くとも三割程度のものを原子エネルギーによるところの発電に求めたいということ、がわれわれの希望であります。そういうことであります。
  105. 今澄勇

    今澄委員 しかしそれには、今まだアメリカとウラニウムの原料等についての話はまとまっておらぬ。国内における本格的原子核の研究に今ついたばかりであって、これを、国内的なものでもやはりやるべきであるという意見もある。、だから私は、宇田さんの言っているような原子力発電促進計画は、イギリスやアメリカからまた原子炉を大量に買うという考えなんですが、われわれの原子力を外国の隷属下に将来置くという憂いも多分に出る。やはりこの点では、他の売り込み競争もあるでしょう。高いものも買わなくちゃならぬでしょう。これで原料自給ができるという考えは、よその国にウランの原料を確保しなければ、日本の産業の根幹となる動力の中心がないということは、わが国産業の最も大動脈をよその国に握られるという結論になると私は思います。かつはまた原子兵器に対しても、各発電所がおのおの勝手にどんどんやるということになると、これらのウラニウムから武器もやはりできるから、これを管理する一つの方法も要るでありましょう。私は、このニコルスという人が今作ったものを持ってきているのではなしに、まだコストの計算等をやっている――原子炉はまだ建設されておらぬのですから、建設しておらない原子炉を、将来のものをコスト計算をしている、こういうものをあなたは信用して、これを中心にこういうものを作り、しかも将来のこういう問題の検討もしないで、あなたがそういう構想を発表するということは、確かに有澤さんの言われるように、これは、原子力委員会が、あなた個人の発言であると言うのはもっともだと思う。あなたはいやしくも原子力委員長として、もっと責任をとられる必要があると思う。少くとも軽率だと思いますね。
  106. 宇田耕一

    ○宇田国務大臣 ただいまの御質問と、私の申し上げていることとは、少し論点が違うように思います。私の申し上げておりますことは、ニコルスの言うことを信用するということはまだ十分にできないから、われわれはアメリカ調査団を派遣をして、その報告に基いて国策は決定を必要とする段階にきていると思う。従ってニコルスの先般の申し出というものは、私たちは頭から信用できないが、しかし日本のエネルギーの現状から見ると、これは放置しておくべきものではない、行政措置といたしましても、調査団を派遣すべきに値するものであるという判断である、こういうことであります。  それからただいまお話しがありましたように、日本には人形峠、その他にウラン鉱が発見されておりまして、これに対する燃料処置を講じたいと思って、大蔵省と話し合いの結果、それに関しましても十億あまりの調査費、及び燃料設備を本年度は設置いたしたいと考えております。それは今澄委員の言われる通りに、日本に燃料が十分あるというわけではありません、しかし粘結炭が何百万トン足らぬであろう、重油が何百万キロリットル輸入しなくちゃならないというふうな状況は、われわれはそれにたよって、火力発電をのうのうとしておれるものではないと思う。日本にそういう資源がないときには、粘結炭においてわれわれはどういうふうに燃料資源のネックを押えられるかもしれない。またこの重油その他の日本にない、資源の足らぬものを、各地から求めてくる場合に、それ、がほんとうに日本の経済拡大のためにネックとなる事態が起らぬとは断言できない、そういう心配を持っております。従って日本に資源はないですけれどもアメリカが濃縮ウラン二万四千キログラムを国際原子力機構に引き渡す、われわれが国連に入った以上は、国連の原子力配給機構を通じて、なんぼかの濃縮ウランをもらえる見通しがほとんど世界の常識になった場合には、そのベースの中において日本の原子力発電機構の発展の見通しをつけ得ないとはいえないと思います。国際連合へ入ったところの意義が、エネルギー対策の中では、二万四千キロリットルというものが国連に引き渡されるというこの国際環境の中において、それを引き当てにして、ニコルス、ウエスチングハウスの発電機を日本で作るというのは、私は好ましいものと思います。また、それは、必ずしも向うから押しつけに持ってくるのではなくて、三菱グループの機械を彼とコーポラティブに仕上げていきたいということを申されております。しかし万事は調査団を派遣して、詳細な技術的な報告を待って、そのあとでもう一ぺん皆さんの御審議を得たいと考えるのが前提でございますから、御了承を願います。
  107. 今澄勇

    今澄委員 時間がありませんが、もう少し残っておるので、岸外務大臣に中国、台湾の問題について、今までい.ろいろ質疑応答がありましたが、具体的な一つの問題についてお尋ねします。  日本は、台湾政府との間に中華民国全権にあてた書簡を発しておる。これは昭和二十七年四月二十八日、台北で署名いたしております。出したのは日本の全権委員河田烈、あて名は中華民国全権委員葉公超殿、こうなっていますが、この書簡を見ると、「第一号書簡をもって啓上いたします。本日署名された日本国と中華民国との間の平和条約に関して、本全権委員は、本国政府に代って、この条約の条項が、中華民国に関しては、中華民国政府の支配下に現にあり、又は今後入るすべての領域に適用がある旨のわれわれの間で達した了解に言及する光栄を有します。」まだずっとありますが、これが中心点で、こういう条約は、ほかの条約には絶対ありません。おそらく思うに、この公文は、台湾政府が将来、中共が治めておる大陸に反攻作戦を展開して、そこで大陸の全部あるいはある程度を治下に治めたならば、大陸もまた自分のところの  今後入るすべての領域に適用、があるというのだから、いわゆる台湾政府の領域であるということを日本国に認めきせようとした正式な交換公文であります。この河田全権の出した文書に対して、今度は、向うの葉全権から河田全権あての第一号書簡というのを見てみると、ずっと書いてあって、「本国政府に代って、この条約の条項が、中華民国に関しては、中華民国政府の支配下に現にあり、又は今後入るすべての領域に適用がある旨のわれわれの間で達した了解に言及する光栄を有します。」というので、双方でこれを確認しておるわけです。そこで、今日もこの台湾国政府との間の、も河田、葉全権の間で取りかわした交換公文の精神は生きておると思うが、石橋内閣は、この交換公文の精神によって中国に対する外交方針の基本とするのか、これは廃棄すべきものと考えておるのかどうか、抽象論でなくして、具体的な問題について、一つ岸外務大臣のお答えむ願いたいと思います。
  108. 岸信介

    岸国務大臣 交換公文は現に生きておるものと考えております。
  109. 今澄勇

    今澄委員 この交換公文が生きておると考えておるということは、そうすると岸外務大臣は、台湾政府が今の中国の大陸を、現に支配下にあたり、または今後入るべき領域に適用というのだから、今後入るべき可能性があるとあなたは思っておるわけですか。
  110. 岸信介

    岸国務大臣 私がその交換公文が生きておるということは、これは国際的のこういう取りきめから申しますと、廃棄しないうちは生きておることは、当然であります。ただそれに盛られておること、がいつ実現するか、その実現性の可能性がありゃいなやという認識とは、これは別だと思います。今日私は、そういう可能性があるかどうかということを、公けの席で、責任ある地位として論ずべき時期じゃない、こういうふうに思います。
  111. 今澄勇

    今澄委員 いかに公けの席にあろうとも、これは外交の基本方針なんです。少くとも台湾を中心とするアメリカの原子力機動部隊、沖縄を中心とする軍事基地、日本を中心とする軍隊の問題等を連ねて、私の思うのには、アメリカが中共政府と台湾とを一緒にしようとしたネール氏の提案を受け入れて、日本が極東において対中国外交に困らないような一つの路線を歩むかと思っておりましたが、しかるに、これが一つの路線を歩まないで、ネールの提案を拒否して、中国並びにソ連に対する態勢を非常に固めようとしておる今日、石橋内閣は、中共の通商代表部の存在を認め、中共貿易を増加せしめ、現実に経済的な中共との問題を増進すべき任務、があると思い、しかも施政方針においてもそういうこと、が述べられ――通商代表部についてはあとでだめになりましたが、述べられておる。しかるに背後においてもあなたが外務大臣として、こういった日本と台湾との条約関係というものに対する何らの考えなしにはも外交方針が進むものとは考えられません。だから、岸外相のいわゆる二つの中国に対する外一変方針というものは、現実にあるこの交換公文に照らしてどういうものであるか、これは、私は石橋総理の中国に対する外交方針と並べて聞くべき必要があるが、あなたの見解をまず聞いておきたいと思っておるのです。
  112. 岸信介

    岸国務大臣 中華民国に対しては、御指摘のありましたように、昭和二十七年に両国間に平和条約が結ばれ、これを正統な中国の政府として認めております。また国際連合におきましても、同様な趣旨において、中国が国連の一員として重要な地位荷持っておることも、御承知の通りであります。私は、やはりこの現実に基いて考えなければならないと思いますが、同時に中国大陸を中共政府が支配しており、また現実にそこにおいて政府として存在しておるというこの事実も、これは否認できないところであります。ただ今日においては、まだこれとの間に、正統政府として外交関係を開く段階には達しておりませんけれども、その現実の事実に基いて、主として経済貿易の関係でありますが、あるいは個々の文化的の交流等も行われていくということは、これは自然の流れでありまして、私はそういう見地に立って、現在は正統なる政府としては、やはり中華民国を考える。しかし現実の事実としては、中国大陸との間に主として経済関係を深めていく、こういう考え方をもっておるわけであります。
  113. 今澄勇

    今澄委員 時間になりましたから、けっこうです。
  114. 山崎巖

    山崎委員長 この際御報告を申し上げます。先日委員長に御一任を願いました分科会の区分及び主査の選任につきましては、次の通り決定いたしました。  第一分科会、皇室費、国会、裁判所、会計検査院、内閣、経済企画庁を除く総理府、法務省、外務省及び大蔵省所管並びに他の分科会の所管以外の事項、主査松本瀧藏君。  第二分科会、文部省、厚生省及び労働省所管、主査坂田道太君。  第三分科会、経済企画庁、農林省及び通商産業省所管、主査大橋武夫君。  第四分科会、運輸省、郵政省及び建設省所管、主査宇都宮徳馬君。  以上の通りであります。  なお分科員の配置は、公報をもってお知らせいたします。  分科会は明後十一日より十四日まで四日間開会することになっておりますので、さよう御了承をお願いいたします。  午後一時十分より再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時十二分休憩      ――――◇―――――    午後一時十八分開議
  115. 山崎巖

    山崎委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を継続いたします。田原春次君。
  116. 田原春次

    ○田原委員 私は日本社会党を代表して二、三の質問を申し上げたいのでありますが、まずけさの新聞によりますと、戦前の友邦国でありましたポーランドとの間に国交が回復されましたことを喜ぶものであります。引き続いてチェコスロバキアとも近く国交の回復されることを望んでおるわけであります。なお、東ヨーロッパの国々、すなわち、ブルガリア、ハンガリァ、ルーマニア、アルバニア等ともなるべく早い機会に国交の回復するよう一段の御努力を希望するものであります。さらにアメリカとソ連との対立の関係から、おのおの国内が二つに分割されておる悲劇を持っておる国々、すなわち東と西のドイツ、北と南の朝鮮、北と南のヴェトナム等に対しましても、わが国は独自の立場からすみやかにその双方に対して、同時に国交の回復するよう一段の努力を希望するものであります。特に台湾政府と中国大陸政府との問題につきましても、同様の希望を持つものであります。  私は去る二月四日の首相代理の施政方針演説の中で、二つの点をここに拾い上げてみますと、第一段において、終戦以来ともすればありがちであった他力依存の思想を一掃し、独立自主、自力更生の思想をふるい起し、国力の増進をはからねばならない云々と言っております。また続いて、今後わが国は、国連を中心として、世界の平和と繁栄に貢献することをわが外交の中、心とするという首相の声明であります。私どもはこの言葉を聞くことを喜ぶものでありまして、願わくは単なる演説に終らず、本年の外交方針の上において具体的にこれを具現してもらいたいのであります。以下数点に分けて御質問申し上げます。  第一は、お言葉の独立自主の問題でありますが、けさの新聞の新刊書の広告の中にこういう言葉があった。不屈の抵抗精神で、盲従を少くしていけ、一たび服従せんか完全なる奴隷とならんという、これはドイツに占領された当時の反抗運動の訳本の広告でありますが、私は今これを日本現状に当てはめて感慨無量なるものがあります。すなわち去る一月三十日に群馬県の群馬郡相馬村柏木沢で起りました、いわゆる相馬ケ原事件といわれております米国兵による日本婦人射殺事件でございます。これはすでに新聞等によって相当わかってきておりますが、こういうことであります。三等特務兵のジラード・ウイリアムズというのが坂井なかさんを射殺しております。当時の模様は、そこに同席しておりました小野関英治君の証言によりますと、演習の休憩時間中であって、われわれ薬莢拾いの者は休憩所近くに近づいた。ところが一人の兵士が薬莢を数十個手に持って、これを前にばらまいて、そうして手まねであれを拾ってもよろしいという合図をした。そこで自分がまず先頭に立って進んで行ったところが、ちょっとうしろを振り返ったら射撃のかまえをしておる。それで驚いて自分は逃げ去った。ところが自分のあとに続いておる三人の婦人があって、それは気がつかず、遂に坂井なかさんはます一発撃たれて――これは当らなかったのです。それで驚いて逃げようとしますと、さらに二発目で遂に貫通銃創を受けて殺されたのである、これは明らかに殺意のある行為である、こういうことを小野関英治君はわれわれの調査団に対して言明しており威す。しかし当時現場におりました大尉は、これは実弾射撃中である、公務執行中であると言っておりますが、そうでない事実はこの証言によって明らかであります。先日内閣委員会におきましても、井本法務省政府委員が、この経過を聞きまして、それが事実であるならば、これは公務中ではありません、休憩時間中の行動は公務中でありませんと言っており、従って当然に犯人の引き渡しは行政協定に基いてできるものであると言われております。今なお犯人の引き渡しのできないのはどういう点であるか。岸さんも御承知と思いますが、ここにたくさんの統計も持っておりますけれども、頻発する日本人に対する死傷事件に対しまして、この辺で一罰百戒と申しますか、厳罰をもって臨んでもらわなければ、京だまだあとを断たぬと思うのでありますが、この問題に対する処置をどうお考えでありますか。これは日本の独立遂行上最も必要な問題であると思いますので、まず最初に御質問申し上げます。
  117. 岸信介

    岸国務大臣 相馬ケ原の事件はきわめて遺憾な事件でありまして、ただ現在は犯罪といいますか、その事件の真相を明らかにするために、日米両方で事実を正確に把握し、確認するということに努めております。その事実に基いて、これは一面においては今御指摘になりました行政協定の規定、両方相にらみ合せてきめる問題であります。これに関連しまして、実はこの事件を早く結末をつけるように、及びかくのごとき事態の発生を将来絶対にないようにしてもらわなければならないということで、アメリカ側の注意を喚起しておいたのでありますが、昨夕米国大使館ホーシー代理大使が私に会いたいということでありましたので、私が会いましたら、今大使がいないので自分が臨時大使として米国政府の意をもって遺憾の意を表するとともに、かくのごとき事態が将来絶対に発生しないように厳に軍をして注意せしめる考えであるし、またこの事件自体の処置についてはできるだけ早く事件を明らかにして、その明らかになり次第日本側にも連絡をしていきたい。また遺族に対してはわれわれは心から弔慰をしたいということを申して遺憾の意を表して参ったのであります。この問題につきましては、今申しましたように、あくまでもまず事件事態をはっきりといたしまして、これに対する日本側のとるべき処置につきまして、自主的な立場から考えて参りたい、こう思っております。
  118. 田原春次

    ○田原委員 それは米国政府側、が日本政府側に対しての回答並びに態度でありまして、現実にはこのジラード・ウィリアムス三等特務兵は、射殺を現場において認めておる。また明らかに殺意もあったのでありますから、まず犯人の引き渡しを要求し、そうして日本の司法官憲の手において調べる、、そういう進行の過程において向うが遺憾を表するというのはいいのでありますが、向うに通報して御意向を伺って、まだ犯人を逮捕しないというところにわれわれ国民の大きな不満があるわけであります。  従って法務大臣にお尋ねいたしたいのでありますが、何ゆえに今日まで明らかなる射殺事件の  本人も自白しておるにもかかわらず、取調べのためにこれを日本側で逮捕しないか、どういう都合で逮捕しないのでありますか、明らかにしてもらいたいと思うのであります。
  119. 中村梅吉

    ○中村国務大臣 事件が起きまして翌日日本側の県警察本部といたしましては、このときに目撃をしたという五人の人を連れて、部隊の三十数名を並べさして首実検をいたしまして、確かにこの人が犯人であるということがそのときに明確になりました。それと同時にアメリカ軍側におきましては、直ちにその被疑者を逮捕いたしておるのであります。そこで日本側でなぜ逮捕しないか、こういうことでございますが、行政協定の第十七条によりますと、一方が逮捕いたしております場合には、日本側が公訴を提起するまでその身柄の引き渡しを公式に請求できない、こういう取りきめになっております。しかしながら実際の問題としましては、その日も直ちに県の警察本部の刑事部長、が、捜査課長と二人で直接被疑者の取調べをいたしておるのでありまして、アメリカ側におきましても日本側の取調べには協力をして、必要に応じていつでも被疑者の、取調べのできるような状態に置かれておるわけであります。またこういうような方法によりまして、過去においても両当局において意見の相違を来たし、あるいは不都合なことがあって衝突をしたような事例はないようでございますから、支障なくこちら側としてはこちら側の十分な捜査を完遂したい、かように考えておる次第であります。
  120. 田原春次

    ○田原委員 事例はないと言いますが、私は一つの事例をここにあげましょう。これは一九五六年、昨年の四月八日午前八時に沖縄の美里村で起った事件でありますが、与那悦子さん事件といわれておりまして、アメリカ軍の弾薬集結所の敷地内にくず鉄拾いに入っておった三人の日本婦人のうち与那悦子さんに対して米兵は不当にもこれを射殺したのでございます。そうして他の二名を逮捕いたしました。そこは立ち入り禁止区域でありますけれども、別になわを張ってあるわけでもなく、また従来暗黙のうちにくず鉄は拾うことを認められておったのでありまするが、午前八時という夜明けの、人の識別のできるときにこういう暴挙をやったのであります。しこうしてその後この射殺兵のサーバーというのは沖縄軍の軍法会議で無罪となりまして、そうして本国に帰されております。それから与那悦子さんは軍令違反であるということで一円の補償料ももらえないのであります。所は琉球でありますけれども、同じ日本人であり、そしてやっておる相手は同じアメリカ人であります。私どもがこういう事件を調達庁の書類、だけから見ましても、逐年増加の傾向にありまして、殺人、殺傷、死傷事件だけでも、昭和二十一年に二十件でありましたのが、だんだんふえておりまして、二十八年には千九百十六件あります。死亡の総数四千七十八名が昭和二十八年、だけであるのであります。こういうふうに、米軍の駐留による不当なる殺傷事件というもの、が至るところに問題を起されておるのでありまして、たまたま今回の坂井なかさんの事件が最近の問題でありますからわれわれの記憶に新しく、憤激しておるわけでありますが、こういう点につきまして、ほんとうに独立しておるという気持があるならば、行政協定の改廃は第二といたしましても、明らかに行政協定の第十七条では逮捕できることになっておるのでありますから、先方が逮捕しておっても、それならそれの引き渡しを要求する、そうして即時に明瞭に解決をするというだけの勇気を持ってもらわなければならない、この点を私は聞いておるのでありまして、私は、法務大臣が直ちにその決意をされまして、犯人の引き渡し、日本官憲による独自の調査を進められんことを希望するのであります。  なお、この機会に遠く南の方の沖縄にあります種々なる暴行事件をわれわれは思い出します。一つは由美子さん事件と申しまして、これは一昨年の九月三日の夜石川郵便局前で遊んでおりました六才の由美子ちゃんを米兵が拉致したのであります。そうして翌四日嘉手納飛行場の米軍のごみ捨て場に暴行されて血まみれになった死体として発見されたのでございます。犯人のバード軍曹というのは、海岸でこの六才の由美子ちゃんに暴行を加え、胸部圧迫で殺してしまったのでございますが、ついに犯人の引き渡しをしないで、本国に転勤その他のことでうやむやになっておるのでございます。当時全沖縄の同胞諸君の憤激を買った事件であります、が、日本政府の力足らずして、そのままわれわれは泣き寝入りをさせられておる。それだけではありません。同じおととしの九月十一日夜中の零時半ごろにやはり沖縄の石川村中道地区の伊車三郎さんの宅に米国軍人、が戸を押し破って入ってきて、そうして次女のS子さんという九つになるお嬢ちゃんを拉致いたしまして、付近の松林で暴力を加えて重傷を負わせておりますが、これまた県民の怒りが爆発したにもかかわらず、日本側の態度軟弱のためにうやむやのうちに犯人の逮捕はないのでございます。最近日本にありまする第一騎兵師団が近く本国に帰るなどといわれておりますので、もしまごまごしておりますと、群馬県のジラード・S・ウイリアムズも本国転勤命令が出ないとも限りません。早く身柄を日本側に引き取りまして、そうして独自の立場からやってもらいたいということはその意味からであります。この点を強く希望いたしまして次の問題に移ります。  御承知のように、今日本には安保条約と行政協定の中におきまして、およそ七百カ所の軍事基地がありまして、その中でほとんど意味のなくなったような数カ所だけは返還が約束されておりますが、新たにこれにかわるにジェット機の発着地といたしまして、数カ所の飛行場の拡張が起っております。昨年はこのために砂川事件という事件が起ったことは皆さん御記憶の通りでございます。もちろん砂川だけではございません。小牧の飛行場、茨城県の百里ケ塚の飛行場、福岡の板付の飛行場、宮崎県の新田原の飛行場、福岡の築城の飛行場、島根の美保の飛行場の基地の拡張、そのほか木更津、新潟等等の問題も今なお紛糾を続けておりますし、さらにまた飛行場でないところの演習場につきましては、静岡県側の東富士の演習場、山梨県側の北富士の演習場、あるいはそのほか山口県の秋吉台の演習場や山形県の大高根の演習場等も一ころ問題となってきておったのでございます。かように、軍事基地が依然として日本の全国をおおっており、そうしてアメリカ軍の一方的の作戦の要求のために、その飛行場や演習場付近に住んでおります良民の財産、土地その他が不当に奪われておる傾向に対しましては、国民ひとしく憤激しておるのでございます。私は、首相代理の演説で他力にたよらず、独立自主、自力奥生をするという決意をされたからには、飛行場等につきましても、むしろ漸減方針をとっていく、こういう方針でなければならぬと思うにかかわらず、事実はあべこべになっております。これに対しまする考え方なぜそういう問題を放置しているのであるか、もしくは航空基地等をふやすことに賛成したのであるか、その間の経過考え方を聞かしてもらいたいと思います。
  121. 岸信介

    岸国務大臣 基地問題につきましては、今御指摘になりましたようないろいろな問題を起して、私どもはこれがやはり漸減されることの方向に向っていかなければならぬと思っております。それには日本自身の防衛力というものを漸増方針によって増強いたしまして、アメリカの駐留なくしてみずから日本の国を守り得るという態勢にできるだけ早く持っていくということが、アメリカの駐留をなくし、従って基地問題というようなものをなくする前提であって、どうしてもこれは進めなければならぬ問題、だと思いますが、いずれにしましても、今日ある安保条約、行政協定等において、日本として共同防衛の立場からやらなければならぬ、また飛行機等の発達によって飛行場の拡張等においてやらなければならぬという問題は、これは最小限度においては日本としては誠意を持って実現する、しかし全体として今言うような方向に進んでいかなければならぬ。これが日本の自主的な防衛の立場から当然のことである、こう思っております。
  122. 田原春次

    ○田原委員 軍事基地を漸減することとそれから日本の独自の防衛力を持つということは必ずしも同時に承認できることではないと私は思いますが、それは議論はあとにいたしまして、首相代理の御演説の中の次の句、これは米国との間の相互理解と協力を一そう推進していくように特に考慮を払いたい、こういうのは、しからば今まで米国との間の相互協力がなかったのか、もしくは新たなる観点でさらに協力しようというのか、原則としてわれわれも米国はもとより世界のどの国とも相互に協力し、理解を深めることには賛成なんでありますけれども、特に米国、だけをここに言っておる理由が私にはのみ込めない。なぜならば米国は確かに国の成立は民主主義といわれておりますが、日本におけるさまざまのやり方、特に沖縄におけるやり方を見ますと、米国の民主主義というものはにせものである、言論の圧迫その他のやり方を見ますと、そう思わざるを得ない事件があります。  一つ実例を申し上げます。昨年の十二月二十五日に沖縄の那覇の市長の選挙がございました。沖縄人民党の瀬長亀次郎という書記長が立候補されまして、これは当選いたしました。ところが当選しまするや、当選確定という報はしておきながら当選証書を渡さない。  それから次は、市長に当選した瀬長氏は、犯罪人の疑いがあるからということで、これ密承認しようとしない。その犯罪人というのは、その前に法律を出しておりまして、昨年の十一月四日に米軍が布令第百四十四号を出しまして、米軍の命令にそむく者は犯罪人とみなすという命令を出しております。米軍の命令にそむいた者は犯罪人だというのです。この命令はそのことのいかんを問わず沖縄の八十万の人は守らなければならぬという前提に立って、瀬長さんは別に何の犯罪もありませんが、日本復帰、祖国復帰の運動をやっておりましたのを、沖縄の米軍の布令違反として犯罪人だというのでありまして、まことにこっけいな断定といわ.きるを得ません。  第三点は、この沖縄人民党を共産党だからといって非合法化して――事実は共産党ではないのでありますけれども、従ってそれを非合法化すると、その公認候補は失格するのであるという宣伝をしておる。   さらにまた第四点は、すでに米軍から那覇市に補助金として八千七百万円の補助が決定をいたし、約四千三百万円は支給済みでありまして、あと四千五百万円が残っておるのでありますが、これを瀬長市長である限りにおいては補助は停止する、今後那覇市にはいかなる形においても貸し出しをしないという声明をしておる。  それから第五点は、ひとり米軍の声明のみならず、琉球銀行、第一相互銀行、沖縄相互銀行等の融資機関をして、今後那覇市には貸し出しをしないようにしろという命令を出しておる。これに対しまして、日本政府が何らの抗議もしない。そうしておいて民主主義のアメリカと一そうの相互理解と協力を推進するというのであります。向うさんの方は協力かもしれませんが、私どもがほんとうの友人となるには、二つに一つは相手の間違いははねつける、お前のところは間違っておるじゃないかというくらいの勇気を持たなければならぬと思う。  本年の一月四日にレムニッツァー氏は、民政長官の資格で向うへ行きまして、瀬長は好ましくない人物だということを書っております。そうすると多くの実業家や心の弱い島民は、せっかく当選きせながら瀬長市長に十分な腕をふるわせないようなことになりますから、この点につきましても、なるほど潜在主権があるとかないとかという法理論は別といたしまして、事実沖縄八十万人民は日本人民であることは間違いありません。また合法的に立候補の宣言から演説をやり当選した市長でありますから、当選した以上はその任期中市長として適当に活動するの、が当然でありますから、それに対する抗議をやったかどうか、七これは外務大臣としての浮きんにお尋ねをしておきます。
  123. 岸信介

    岸国務大臣 アメリカとの間に真の協調と友好関係を続けるためには、特に率直にわれわれの主張すべきことは主張し、アメリカのやっておることもしくは態度やその他の点について、われわれが日米の永久的な友好関係の上から望ましくないと認められるようなことは、やはりこれは率直に言って改めしめることが、むしろアメリカとの間の協調を進めていく上には必要だと私は思っております。われわれ、が従来ありがちな他力依存ということを一掃して自力更生にいかなければいかぬということを申しているのは、ややもするとアメリカと親しくしようとかあるいは協調しようということを、占領時代からのずっと延長のような気持で考えている向きもないわけではないと思うからです。私ども考えている日米協調、日米の間の今後の協力というのはそういうことではなしに、日本自身が独立の立場で、しかも日本の国の建て方といい、また世界の国際情勢から見まして、日米の間で日本日本の立場から協調することが必要である、またこれを作るという見地からすべてのものを考える、そうして日米の交渉やその他のことに当りたい、かように考えているわけであります。  沖縄の問題につきましては、御指摘のごとく数々私どもとしては、不満な問題があります。特に土地問題につきましては、現地住民がいわゆる四原則を掲げて、これは強く実現を、沖縄住民の悲願としてその声をあげていることも御承知の通りであります。これらを、実現するために、私どもはこの原則をやはりアメリカ側に強く要望をいたしまして、実現に努めており、最近におきまして、アメリカ側におきましても、いろいろな点において反省をしておる点が見られると思います。現にレムニッツァー司令官が国会に対して、数人の人を招待して、そうして最近の沖縄の事情を見てもらって、それに対するいろいろな批判も聞き、また協力も願いたいということを申し出ておりますが、いずれにしても今まで沖縄に起ったいろいろな問題について、沖縄の住民はわれわれは同胞として考えており、これらの人々が異常なそれらの事件によって傷つけられ、もしくは圧迫されているというような事実に対しましては、これはできるだけ日本独自の立場からわれわれの考えを率直に言うことは必要であると思います。瀬長君の問題について具体的に私の方から抗議を申し入れた事実はございません。
  124. 田原春次

    ○田原委員 沖縄の実情を見てくるということは非常にいいことでありますから、国会からやるのはよろしいけれども、うわさに聞きますと、自由民主党から来てもいいが、社会党から来てはいかぬと言っておる。そういう片寄った視察ならお断わりになった方がよろしい。野党であるわれわれが行って特に労働者や農民の立場からいろいろ見て役に立つことがあるはずですから、お引き受けになるなら社会党を必ず加えることを前提としてもらいたい。  なお去る十一月三十日に東京沖縄県人会と沖縄問題解決国民運動大会――これは超党派的で、自由民主党の同志も大ぜい出られたと思いますが、そこであげておられる数項目の決議のうちで、外務大臣に御記憶願って実現をしてもらいたい問題は、全島民がこぞって希望している沖縄諸島における施政権の即時返還であります。それから県民の要求している四原則の支持であります。これだけはぜひとも実現するように、あなたのこの国会における独立声明に裏づけする大きな仕事でありますから、やっていただきたいと思います。  なおまたこまかい問題でありますが、沖縄においては言論、集会、結社の自由が確立しておりません。種々なる陰険悪らつな圧迫が加えられておりますが、これをはねつけるような沖縄の確立こそが日本アメリカの正常なる国交の確立に必要なことであると思いますから、これをぜひ要求しておきたい。  また今なお沖縄は渡航したり、送金したりするのは外国扱いにされております。これもそういう制限が早く撤廃されるようにしたいと思います。  これは法理論ではないかと思いますけれども一つの問題を出しまして御答弁を願いたいのでございます。御答弁法制局長官でもよろしゅうございますが、国連憲章の七十八条の解釈と、サンフランシスコ講和条約第三条の解釈の問題であります。国連憲章第七十八条では、大体こういう意味であります。国連加盟国の間の関係は主権.平等の原則を尊重するから、信託統治制度等は、すでに加盟国となった以上はその地域には適用されない、加盟国でない場合は、加盟国が他の国を信託統治することもあり得るけれども、同等の主権を持って加盟した以上は信託統治制度というものはなくなってくるというのが七十八条の精神だと私は解釈しておる。そうするとサンフランシスコ講和条約第三条、ここでは、日本は合衆国をただ一つの施政権者とする信託統治制度のもとに置くことにする国際連合に対する合衆国のいかなる提案にも同意すると、まず羽がい締めにしております。そして次に、合衆国は沖縄の領水を含むこれら諸島の領域及び住民に対して、行政、立法及び司法上の権力の全部及び一部を行使する権利を有する、こうなっておるのでありますが、わが国が国連に参加して一人前になりました以上、このサンフランシスコ講和条約第三条が消えるのではないか、すなわち沖縄の信託統治というものは消えてしまうのじゃないか、こういう問題であります。これに対する政府側の御解釈を承わりたい。
  125. 高辻正己

    ○高辻政府委員 法制局長官はちょっと所要で出ておりますので、次長がかわりまして御答弁申し上げます。御指摘のように日本国との平和条約第三条によりますと、この沖縄の地域については、合衆国が信託統治制度のもとにおくこととする提案を行う余地がございます。ところで御指摘のように、国連憲章の第七十八条によりますと、信託統治制度は加盟国となった地域には適用しないということになりますので、一見その関係が御指摘の通り法理問題として問題になると思いますが、この国連憲章の第七十八条の規定は、信託統治制度であった地域全体が加盟国になりました際に、その信託統治制度というものと、それから国連の加盟国というものとが相両立して存するというのは非常におかしいので、そういう点がないようにするというのが根本の趣旨のように一般に説かれておりますし、われわれもそう思っております。従って七十八条があるために三条の規定が変るというようなことには――政治的な問題は別といたしまして、法理的には直ちにはそうなることはあるまいじゃないかというふうに解しております。
  126. 田原春次

    ○田原委員 法制局次長がもしも日本人であるならば・すべての法律の解釈をわれわれの希望する線に解釈すべきでありまして、今の解釈を聞いておりますと、これはアメリカの法理学者のような説明だと思うのです。問題は、日本は一日も早く沖縄を返してもらいたいのでありますから、この国連参加の絶好の機会を利用いたしまして――向うが弁明するのはともかく、こちらからそれは当然の問題であるなんと言うことは私はまことに残念に思います。そういう占領ぼけ・そういった一種の精神上の従属感、卑屈感がある限りにおいては、私は岸さんのせっかくの御演説の独立の達成にはまだまだほど遠いものと思いますから、そういう方々は他の機会に他の方面に出てもらって、もっと骨のある者を法制局次長等といたしまして、わが方に有利に解釈するように考えていかなければいかぬと思う。私は少くともそう解釈するのが正しいと思っておりますからいま一度お尋ねいたしますが、法制局次長はこの問題を提起する意思なし、提起してもアメリカ側の解釈に従うというお考えで御答弁されたのでありますか、いま一度お考えを知らせていただきたいと思います。
  127. 高辻正己

    ○高辻政府委員 お答え申し上げます。ただいまいろいろお話がございましたが、純粋に、何といいますか、政治的にどうこうというあれでございませんで、この七十八条の成立の経緯とかそういうものを研究いたしました結果、法理的には直ちに三条がそれによって変るということにはなるまいというわけでありまして、御指摘のようなふうに努力するのがいいとか悪いというようなことには触れませんで、純粋に法理論として申し上げたわけでございまして、その点御了承願いたいと思います。
  128. 田原春次

    ○田原委員 この法理論は私どもは納得いたしませんが、他に問題もありますから、これはこの程度にしておきます。  次は小笠原諸島の問題であります。小笠原諸島は今を去る五百年の昔に信州の小笠原藩主が見つけた由緒正しいわが日本の領土であります。しかるに昭和十九年の六月三十日軍の命令で住民全員の総引き揚げが強行され、からだの強い青壮年二百三十名だけが残されたのであります。ほとんどその大半は東京付近、特に三多摩付近に帰ってきておったのでありますが、その後、終戦後昭和二十一年に、内地引き揚げ中の八千名の小笠原島民のうち、欧米系帰化人のみ百三十五人が帰島を許されたのであります。そのほかの七千数百名は今なお埼玉、千葉、東京、神奈川等におりまして、仕事もないし、知り合いも少いというので、生活保護の適用を受けている家族が四百家族近くもある。機会あるごとに彼らはあの先祖の住んだ小笠原島に帰りたいという悲願を持って、陳情、嘆願実に百数十回しておりますが、今なおこれが聞かれておりません。歴史の示すように、小笠原島は小笠原の殿様の発見した日本の純然たる領土でありますから、沖縄と同様これまた当然日本のものにならなければなりません。しかるに白色人種の帰化人だけ帰して、本来の主人公であるわが日本人を帰さぬということは、私はどうも解釈が片寄っておる、これがやはり国連憲章かサンフランシスコ条約のどこに触れるかという法理論を聞くのでなく、その点は岸さんの政治論を聞きたい。岸外務大臣としては、一体どうお考えになっておるか、どう処置しようとしておるかを聞きたいと思います。
  129. 岸信介

    岸国務大臣 小笠原の全体の問題につきましてももちろん考えなければなりませんが、とりあえず小笠原の住民が小笠原に帰っていくという希望を実現するように努力しなければならぬ。これは前の内閣におきましてもまたいろいろな点でもってアメリカ側にそれを要望しております。しかしいまだそれが実現をしておらないことは非常に遺憾であります。私はやはり多年の小笠原島民の希望であり、念願である自分の島に帰っていくということが、まず第一に一日も早く実現するように今後とも努力したい、こう思っております。
  130. 田原春次

    ○田原委員 独立問題はその程度にしまして、次は平和友好の問題に対する政府の所見を聞きたいと思います。  古来歴史を見ますると、甲乙二つの国が相敵視する場合、数百年間それが敵視されたままで対峙しておるという国は少い。必ずどこかで歩み寄るなり妥協しております。今日これを言いますゆえんのものは、隣国の中国と台湾の問題であります。中国と台湾は同一民族であり、そうしていわゆる政治上の見解を異にするがゆえに、国民党と共産党が戦うこととなり、当初国民党は優勢でありましたが、漸次類勢をとりまして、台湾に逃げ込んでいっておる。それから中国本土は共産党の施政よろしきを得まして民心を把握し、着々として再建途上にあります。今日では人口の割からいきましても中国は六億四千万、台湾は六百万であります。地域の広きも比べものになりません。  こういう状態でありますが、先般来この委員会や本会議においての岸さんの御答弁その他の閣僚諸公の御答弁の中にもうかがえますことは、中国と台湾とが相結び得ざるもののごとく前提を立てておる。すなわち貿易は盛んにするが、その他の問題はあと回しにするというようなことで、いつまでもこれが並行線をとっておるように解釈されておるのではあるまいか、こういう危倶を私は持つのであります。そうでなく、中国の四千年の歴史を見求すると、強いものが現われ、弱いものが圧迫される、あるいは途中でどこかで妥協するということは、あるいは三国史、あるいは漢楚軍談、あるいは十八史略などを見ればわかることなんです。従いまして所を異にしておりますが、今日永久に蒋介石台湾政府と毛沢東中国政府が対立すべきものであるかどうかということについては、私ども疑問を持っておる。どっかで話し合いができるのではあるまいかという考えを持っておる。いわんや台湾の状況をその後調べて見ますと、当時大陸から追われまして蒋介石軍についていききした六十万の兵隊のうち、四十万は平均年令三十五才以上の老兵であります。そうして過去七年間大陸に家族を残して台湾に一時のがれていっておる者でありますが、なかなか本国に帰る見込みがない。残りの二十万は、台湾生まれの青年を徴兵してとっておりますが、これも平均二十五才、大陸反攻を盛んに叫んでおりますけれども、大陸に反攻したならば、その翌日大陸出身で、現に台湾におります四十万老兵は家族のところに帰るのじゃないか、こういうこともあって、容易に大陸反攻ができずにおる状態なのです。参謀長の孫立人将軍も、おととしの秋、台湾に見切りをつけまして、本国に帰順しようとした事件も起りました。日本新聞にはあまり書いておりませんけれども、香港その他の新聞に大きく出京した。こういうふうに動揺しております。また台湾政府の高官の中にも、一定の条件が整うならば、話に応じてもいいという気持がありありと動いておる。肝心かなめのアメリカの中にも、なるほど蒋介石を助けてみたけれども、台湾一島に立てこもるだけであって、大陸に帰り得ない。一方大陸はどんどん経済建設が進んでくるということであせり出しておることは、私もよくわかります。こういう機会でありますから、一番近い日本が何か考えて打つ手はあるまいかということが私のきょうの質問の趣旨なのでございます。すなわちこの内閣が、もし施政方針の演説で言ったように、平和を維持するということをほんとうに具体的にやるというならば、アジアにおいては中国と台湾との和平統一の問題へ乗り出さねばなりません。中国と台湾が和平統一されますならば、北朝鮮と南韓国も解決いたします。北ヴェトナムと南ヴェトナムも解決いたします。そうしますとアメリカの第七艦隊が東シナ海におりますが、手持ちぶさたになってしまうのであります。沖縄におります駐留軍も恥かしくなって、おられなくなると思う。(笑声)結局沖縄及び東シナ海から米軍が引くということは、極東における平和を確立することになると思うのであります。これができないわけはありません。私は昨年の暮れからこの一月にかけて、どうしたなら一体和平統一ができるかということを、私個人の立場から香港、中国、それからわずかでありましたが台湾にも寄りまして、聞いて回ったのであります。そうしますとここに三つの案が集約されます。これを私は一つずつ説明して、岸さんがこれに対して、どれをとられるかということを聞いてみたいと思います。(笑声)  第一は、これはスポーツの世界ではやっておることでありますが、ヨーロッパ・インターナショナル・スポーツ・コンテスト、がありまして、私はルーマニアのブカレストで見ておったのですが、西ドイツと東ドイツから選手が出ます。しかしながら政治上の理由で国は別でありますが、一つのドイツということでレコードを争っておる、こういう例もあります。私はこれを方々.で説いて回ったのであります。それから社会党が分裂しておった当時に、アジア社会党会議に私は出しまて、その際左派が半票、右派が半票ということで、日本を一国一票と見て、意見が一致すれば一票と認める、意見が一致しなければゼロだということで、(笑声)われわれはそれに服して、ラングーンのアジア社会党会議に出ておったのですが、そういうわけで、私はこれを至るところの連中に聞いて回ったのです。今台湾は国連に入っておるから、これを半票として、中国が入って半票で、両方合せて一票とするのはどうですか、それはとてもできませんと言っておりましたが、(笑声)双方半票ずつの共同加入ということを岸さんはごあっせんするお考えはございませんか。
  131. 岸信介

    岸国務大臣 中共と台湾との統一の問題については、東亜の平和のためにわれわれは念願をいたしております。現在の状況におきましては、おのおの完全な主権を主張し合っておるような状況で、今御提案になったような半票々々ということでは、とても両国ともこれを認めない状況であろうと思います。従ってそういう御提案には私は賛成いたしません。
  132. 田原春次

    ○田原委員 私は提案したのではなくて判断を聞いたのであります。悪ければ無理にそれを主張するものではありません。  第二案は、香港と台湾との振りかえというものに対する勧告であります。香港は、イギリス帝国主義の植民地戦争の結果、中国から取り上げて今日になっておりますが、黙っておってもあと四十年すれば返ることになっておる。しかしながら台湾問題の処理といたしまして香港を完全に中国のものにする、その反面香港にあるところの銀行、商社あるいはその他の施設、これらを台湾に移して、高雄なり基隆を自由港にしてそこに住ませるということになりますと、問題は香港のイギリスと台湾のアメリカとの対立になるのでありまして、日本は高見の見物みたいなことになりますが、(笑声)こういう勧告をするという手はどんなものでありますか。これも一つ
  133. 岸信介

    岸国務大臣 いろいろなことが考えられると思いますが、今第二案としておあげになったようなことを今直ちに提案するという気持は私まだありません。
  134. 田原春次

    ○田原委員 少なくとも平和を維持するという演説をやられた以上は、御対案としてこれも考えてみたらよいと思います。  次に第三案にいってみましょう。第三案は、すでに日本が国連に入ったのでありますから、国連の中に中国台湾統一小.委員会のごときものを作らせて日本が小委員長となり、そうして中国側と台湾側からそれぞれ代表を呼びまして、香港あたりでいいと思いますし、あるいはオブザーバーにインドあたりを呼んでもいいと思いますが、双方の第三次国共合作のあっせんをする方法はないかということであります。第二次国共合作は、今から十年前にアメリカのマーシャル将軍がやりましたことは御承知の通りであります。当時は国民党蒋介石政府は強くて共産党が弱かったのでありますが、歴史の皮肉は所を変えて、今度は大陸は中国共産党の支配下に入り、往年国民党の代表として名を鳴らしました蒋介石は台湾に引っ込んでよわい七十を越えておる。そこでもしこの国共合作の話をするとすれば、くしくも主客所は異にしておりますが、中国の周恩来首相と台湾の蒋介石元帥との話し合いになると思いますが、これを一体だれがやるかということであります。その国共合作に賛成ならば、これは日本がやるべきものではないかと思います。インドのネール首相は、周恩来中国首相と会談の後・遠くアメリカに飛びましてアイゼンハワーと会っております。その内容はわかりませんけれども、おそらく想像するに、アジアにおける、特にこの中国民族の和平統一の案が出たのではあるまいか、しかし発表にならぬところを見ますれば、結論に到達していなかったのではあるまいかと思いますから、この機会に単に貿易だけを熱心にやるというような、相異なる二つの政府をそのまま認めるというのではなくて、これをどこかで歩み寄りをさせるという、このくらいの決意をもつて進みますならば、私は口でいかにどちらも不賛成を唱えておっても、ちょうど夫婦げんかのようなものでありますから、台湾と中国は、内心は感謝すると思います。双方の主張を十分聞きまして、三方一両損と申しますか、大岡さばきができそうだと思います。このくらいの夢を持たなければ、今の日本が国連に入ったといって自分一人で喜んでおっても意味をなきぬと思います。私は国連に入った日本が、真剣になって統一の努力をすべきだと思う。失敗したからといって恥かしくはありません。第三案のこの第三次国共合作に対して政府は考えるところがあるかないか、自信があるかないか、このことは今岸さんは臨時首相代理でありますけれども、あなたがもしこれに成功するならば、本格的な首相になる可能性がある。(笑声)及第するかせぬか、もし及第しなければ池田勇人という首相の候補者もおることでありますから、(笑声)少くとも私はこの際岸さんがアジアの親善のために乗り出すというくらいの真剣な決意をもって答弁をしてもらいたいと思います。
  135. 岸信介

    岸国務大臣 第三案の国共合作の問題は、合作という言葉は非常に広い言葉でありますが、意味があると思います。ただ私は今すぐ国共合作で蒋介石と毛沢東をどこかへ集めて話し合いをするというその段階ではないと思いますが、田原君の具体的におあげになりましたことにつきましては、先ほどから申し上げておるように、私直ちに賛意は表しませんが、しかしその根本を流れている、日本が独自の立場でこの問題を処理しようという、何かわれわれが積極的に建設的にこの際考えなければいけないというお考え自身には、私は全面的に共鳴いたすところでありまして、(拍手)私としてもぜひそういうことでいきたいと思っております。
  136. 田原春次

    ○田原委員 少くとも私の目をもってしますれば、これが成功するならば、岸さんは正式首相になる資格ありと思いますので、どうぞ十分の御準備をなさいまして、これが実現に努力されんことを希望しておきます。  次は、同じく臨時首相の.演説の中にありました繁栄と友好に関して、第一に通産大臣にお尋ねしたい。それは中国に対するチンコムの撤廃の問題です。しばしば先般来同僚議員から、質問がありましたが、私は少し観点を変えて別の点から申し上げます。  イギリスの労働党の元首相アトリー氏、が一九五四年に中共の北京を訪問した。ところが北京の飛行場にアメリカ製のその年の最新式の自動車が六百台並んだ。スチュードベーカーからキャデラック、それからリyカーン、クライスラー、パッカード等々が並んだ。これは私が中国の要人から直接聞いたのでありますが、それでアトリーがびっくりして、どうしてこんなにアメリカの自動車がたくさんありますか、そこでいわく、ごらんなさい、これはことしの自動車です、これがこんなに入っているということは、あのチンコムの最も強硬なる主張者でありますアメリカが、 みずからチンコムを破って、私の方にこれだけの自動車を持ってきているのです、どう思いますかと言った。これは大へんだというのでアトリーが国に帰りましてから、今イギリスの自動車も先を争って入っております。ヴァンガードが入っております。オースチンも、ヒルマンも入っております。また共産党を大きらいでありますアデナウァーの政府の西ドイツからも、ダイムラー・ベンツが入っております。フォルクスワーゲンも入っております。本国では共産党を非合法化しておりますが、中国にどしどし品物を売っておる。ひとり自動車だけではありません。肥料も行っております。薬品も行っております。旋盤も行っております。こういうふうに、今日チンコムの制限をばか正直に守っておるのは、水田通産大臣だけでありまして、世界の他のすべての通産大臣は、平気でこれを無視してやっております。デンマークのごときは、チンコムの違反を明らかに犯したこと四ケース、チンコムの委員会にかかった。かかったけれども微罪不起訴ということでうやむやにしてしまって、商売をやった方が得だということになっておる。なお香港には、皆様も御承知と思います、が、アメリカの一流貿易商社四十六社、が支店を持っております。りっぱな自動車とりっぱな事務所を持っております。一体香港にアメリカの貿易商社が四十六社も何の用事があるのです。東京に品物を売るならば、東京に支店を置いたらよろしい、、マニラに品物を売るためならば、マニラに置いたらよろしい。ジャカルタならばジャカルタに置けます。香港に四十六社あるということは、結局香港にあるイギリスの商社その他の商社となれ合いで、香港までアメリカの旋盤や、重量機械、戦略物資を持ってきまして、これをイギリスやその他が買いまして――北京にはイギリスの商社の支店がたくさんある。スエーデンもあります。ノルウエ一もあります。フランスも行っております。もちろんポーランドもチェコスロバキァもたくさん行っておる。ボーランドのごときは、百人くらいの貿易公団の代表が行っておりますが、こういうふうに表面はチンコムでやかましいことを言っておりますけれども、商売は商売、政治は政治とちやんと分けているの、がアメリカのやり方であります。果してわが親愛なる水田水産大臣がそこまでの決恵を持っておるかどうか、まずこれを一つ承わりたい。
  137. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 今中国に西欧各国のいろいろなもの、が入っておるということは承知しております。そういう情報を得たときには、それに対する禁輸制限の撤廃に努力したり、あるいは特認制度の活用をやったり、大体日本も列国と同じ程度入れられるような努力は現在もしておるところでございます。で、問題は、ああいう委員会があって、私どもはやはり信義は裏切らない。そうして関係国の反感を買わないようにする、そういう方針でやっておりますから、今私ども考えておるやり方で見ましても、問題は、今の貿易の協定では、日本がこれから輸出を伸ばすことは非常にむずかしい協定になっておりますので、この貿易の方式とか決済の方式が近く改善されると思います。私どもは五月までにこれが改訂されることを期待しておるのですが、これを変えることによって、適当にそういう点も日本側にとって不便.でないように行く道が開けてくると考えておりますので、こういうことはどうだこうだというんであまり騒がないで、ゆっくりやるつもりでおりますから、そういうふうに御了解願いたいと思います。
  138. 田原春次

    ○田原委員 別に私は騒いでおりませんが、(笑声)ゆっくりやるといいましても、大体内閣の一平均寿命は一年半ですから、ゆっくりやっているうちに、何もできずにおしまいになってはいかぬ。もちろん次の内閣は社会党がとるにきまっておりますから、 (笑声)われわれがとれば直ちにやりますけれども、まあ水田さんも一つぐらいは手柄をしたらよかろうと思って勧告しただけであります。  次は、この間の北京、上海の日本商品展の印象であります。このことも通産省に報告が行っておると思いますけれども、御承知のように、日本の貿易商社で登録をしておるものは二千八百社ある。これがおのおの競争いたします。大きい商社と中小商社との競争があります。むだがあります。そこでどこかに売り込みに行きましても、一方が百円というと、同じ日本の商社が行って九十円になる、それから八十円になるということで、相手はにやにや笑ってそれを見て、日本人の商社同士の共倒れを待っておる傾向は御承知と思います。これはひとり中国だけではありません。東南アジアにおいても、ヨーロッパの市場におきましても、アフリカでもそうであります。これは要するに日本の貿易商社が多過ぎることに一つ原因があると思う。これを整理するというねらいであったかどうかわかりませんが、先年輸出入組合法というもの、ができ上った。地域別に輸出入組合法を適用してやろうということで、われわれもこれに賛成をして法案を通したのでありますが、その後を見ますと、日中輸出入組合一つしかない。当然インドネシアも中近東も中南米もできるべきでありますが、できておりません。これはどうなっておるかということ、が第一。最近の各国の傾向は、もむしろ貿易公団ないし貿易公社のような格好に進みつつあります。従って非常に調査情報も正確であります。これは日本も二千八百の商社を合併ができないならば、せめて地域別の輸出入組合を強化して、むだな競争を省かせるようにしたらどうか。現に上海の日本商品展覧会の終りに、あれに関与いたしました四つの団体、日本国際貿易促進協会、中日貿易会、それから日本商品展覧会、こういう団体がおのおの展覧会終結後の展覧物の処理方針が違っておりまして、中国側にこれが別々に、あるものは売るという、あるものは寄付をすると言う、あるものは持って帰ると言って、結局はなはだしく軽く扱われておる実情を現地に行っておる商社の連中もしみじみ知っておる。、だからこれが扱い方としまして、通産省の方針が、たとえば一国一紙のように、世界に八十カ国ありますから、八十社くらいの国別の貿易商社に統合するものかどうか、あるいはそうでなくて、商品別に鉱工業品貿易公団、食糧品貿易公団のようにするものであるかどうか、またそうでなくて、この輸出入組合法の程度で、地域別に集結して統一ある行動をとらせるかどうか、あるいはそうでなくて、現在のように自由放任、弱肉強食でやるかどうか、この通産省の貿易に対する方針をこの際明らかにしてもらいたい。
  139. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 御承知のように過当競争を調整することは今最も必要なことでございますので、先般貿易秩序を整えるという意味であの法律が出て、それによって今組合を作らせておりますが、現在のところ輸出組合が大体三十四できておりますし、それから輸出入組合は御指摘の通り日中輸出入組合一つでございますが、そういう組合を作らせることによって、不当な競争を避けきせるということを現在やっておりますが、なかなかこれがむずかしいことでございまして、二千以上ある商社でございますから、現存の組合だけではなかなか過当競争を押えることができませんので、今考えておりますことは、この輸出入組合をもう少し強化きせる。そうしてアウトサイダーの規制をするとか、いろいろなことをやって、過当競争を極力押えようという方針をとっております。地域的にどうこうとか、商品別にこれをどうこうするということは、現在のところ非常にむずかしくて、それをやろうとは今のところ考えておりません。ただ問題は、ソビエトとの貿易とか、あるいは中国との貿易というふうに、相手が国営貿易であるというところに対しては、やはり日本の商社がばらばらで当るという態度ではいけませんので、日本の方も貿易の窓口を一本化させるという方向へ指導する必要があると思いますので、日中貿易の場合をとってみますと、やはり輸出入組合を中心にして、なるたけここに相当の権限を与えて強化していくというような方向でこの不当な競争を押える、こういう措置をとりたいと思っております。
  140. 田原春次

    ○田原委員 その問題は、しばらく政府のやり方を拝見するといたしまして、次はアメリカとの貿易の問題であります。これは、前の内閣以来懸案となっておりまして、未解決の問題であります。すなわち米国は、日本の綿製品の輸入制限ないし禁止、続いては陶磁器類の輸入制限ないし禁止、あるいは加工水産物の輸入税の引き上げ、あるいは絹スカーフの輸入の禁止並びに制限、こういう非友好的態度を経済面ではとっておるのであります。政治面においては、しきりにわが方だけが協力と友好を続けたいといっておるにもかかわらず、経済的には全く無縁の友人といわねばなりません。そこでこれが対抗策を考えてはどうか。綿製品のごときは、これを作りまする原料は米綿を買っておるのです。米綿を.買って作った品物は買わない、こういうべらぼうなことはありません。いかに国で安全保障条約の一方の友人であるといいましても、生きるか死ぬかの貿易の面においてこうけっ飛ばされたのでは、日本としては、私はこの辺で独自の処置をとるべきである。どういう処置をとるか、これに対する具体的な方針があるかどうか、いつ玄でも平身低頭していくのかどうかということを通産大臣に聞いてみたい。
  141. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 綿製品の輸入を押えるという運動、そのほかの傾向が米国の各州に見られる傾向であることは御承知の通りでございますが、これに対しまして、私どもは極力向うの業界の意向も入れてそうして内地業者が自主的に規制する、そういう形で話し合いをして、円満にこの問題を片づけようという方針でずっとやって参りました。綿製品の問題ぼ、ようやく今話が妥結しましたが、まだ各州にこれに類するいろいろな動きがございますので、これに対しましては、それぞれ日本側で手を尽しております。下院を通った法律についても、上院が日本の実際の現状を見て、これは無理だといって訂正してくれたり、大体今日までいろいろなことがございましたが、日本側としては善処して参ったつもりでございます。こういうときですから、報復手段的なことを日本がとるということは最も不適当、だと考えて、私どもとしては、これに輸入制限とかいうような手段で対抗するという考えは、今は持っておりません。
  142. 田原春次

    ○田原委員 対抗という言葉が不適当ならば、他の言葉でもいいのであります、が、これはアメリカから入ります米綿、それからガソリン、次は映画であります。こういったものを日本独自の立場から規制する必要はないか。映画の点については、私は大蔵大臣にも御意見を聞きたいのであります、が、年間に五百二、三十万ドルの貴重なるドルを使いまして、外国から百数十本の映画を入れております。その中の八割くらいは、アメリカから入る映画であります。アメリカから入りまする映画の九九%までは、ギャング映画であります。キスとギャング、だけの映画に四百万ドル近く使って今さら習う必要はない。今日少年犯罪等が多くなって、簡単に親を殺す。これはピストルのまねなんです。これは結局アメリカの映画を押しつけられて、アメリカでも年々それほどよけい作っておりませんから、駄作でもなんでも入れて、検閲は簡単にしてやるものですから、ギャング映画か入ってきます。そこで、綿製品の輸入制限を向うは言うならば、それは対抗策でないでもよろしいから、少くとも外国映画はバーター制度でいく。日本の映画を一本買う国からこつちも一本買う。こういう方針ならば文句の出ようはないと思うのです。これはブラジルでやっております。御承知と思いまするが、ブラジルは、ブラジルの映画を買う国から映画を買っておる。今日本で「二十四の瞳」、だとか「羅生門」とか出ますけれども、それは行ってみますと、アメリカの、カリフォルニアとか、ハワイの日本人の映画館でやっておるだけであって、一般のアメリカ人は見ていない。だけれども日本が、もしも外国映画はその国のいかんを問わず、一対一でやっていく、そのために五百万ドルのドルは使わない、こうなりますと、今日本映画も駄作は多いのでありますが、輸出せにゃならぬという気持になりますと、いい映画ができると思うのです。それを、アメリカが自分の映画を日本に売りたければ、どうにも一本買わなければならぬということになりますと、自然一般のアメリカ人、が、日本の映画を見ることになる。あなたは、貴重なドルを非常に大事にすると思うのでありますが、映画に関する限りは、実にだらしがない。これは、あなたの親分であります吉田茂きんが、吉田・シーボルト協定と申しまして、独立のどさくさのときに、今まで占領中入ったアメリカの映画は、そのままのアロケーションを認めろ、承知しましたとなっておるところに、すなわち弊害があるのです。今日吉田さんも自由党に入党したのですから、この辺で方針を変えまして、映画は一対一のバーターでいくというくらいなことをやりますと、池田勇人の外交的手腕は高く評価されると思うのであります。いかがなものでありましょうか。
  143. 池田勇人

    ○池田国務大臣 映画の輸入につきましては、ドル節約の意味から、本数を非常に押えておるのでございます。従いまして、形式は二段にいたしまして、グローバル地域として全体から幾ら、非ドル地域から幾ら、こう二つに分けまして、ドルの節約をはかっているような状況でございます。何分にもアメリカ映画の方がこちらでよく見られるので、また採算上のこともございますので、どの国をどうこうということはいたしておりませんが、一体にドルの節約という考え方から輸入を極力押えるようにいたしております。
  144. 田原春次

    ○田原委員 映画に対しては、ドルの面からだけでは、池田さんの御意見も一つの意見として聞きますけれども、教育面でどういうふうに考えられますか。青少年の犯罪、これを助けるかのごときアメリカのギャング映画の放置ということは、ゆゆしい問題だと思うのです。従って、何かここで米国ギャング映画の無制限な輸入を制限して、映画そのものは興味のうちに教育されるというものにしなければいかぬと思うのです。米国映画の輸入に対する文部省側の何か意見はなかろうかと思うのでありますが、ありましたら聞かしていただきたい。
  145. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 近年映画に、はなはだ好ましくないものがだんだんできております。また外国から輸入せられる映画の中にも、国民生活に悪影響を与えるものもあるようであります。この映画の輸入につきましては、今日関税定率法に基きまして、税関の方で、公安に非常な差しつかえがあるというものについては、許可しない方針をとっておるのであります。その他につきましては、内地で上映せられましたところの映画について、われわれとしましては、社会教育的な見地からこれを見ておるような次第であります。性典映画とか。あるいは暴力映画とか、あるいはまた昨年の太陽族映画というものの弊害もかなりひどくなって参りましたので、世間の批評も非常に高まって参りました。文部省といたしましても、映画業者に対しまして自粛を要望いたしました次第であります。これについて、多少法律的な措置を講じたらいかがであるかという声もあるのでありますけれども、法的措置を講ずることにつきましては、よほど慎重な取り扱いをしなければならぬと思います。業界におきましても自粛の態勢を整えて参りまして、いわゆる新映倫というふうなものも、この正月から発足をいたしておるわけであります。しばらくこの業界の自粛の成績がどうであるかということを見守って参りたいと考えておりますと同時に、地方と連絡いたしまして、実際の状況について常に把握に努めて参りたいと考えております。
  146. 田原春次

    ○田原委員 次の問題に移ります。それは日本民族の海外移住の問題でありますが、すでに国連に加盟をいたしまして、一人前の発言のできる時期となったのであります。一方国内を見ますと、人口の絶対増加が年々百二十万、それから水田耕作地が年々減りますの、が逆に三万町歩もある。これでは、食糧問題を見ましても、その他の問題を見ましても、これは大へんなことであります。しかるに、世界にはいまだ斧鉞を入れ、さる未開発の地域が非常にたくさん残されております。歴史を見ますと、ほとんどこれは少数の白色国家が無人島を占領し、もしくは武力をもってこれを自己の植民地と化して今日に至っておりますけれども、放置している、だけでありまして、開発されておりません。わが日本民族は、来年はブラジル移住五十年になるのでありますが、ハワイ、アメリカ等を見ますと、七十年の歴史を持っておる。皆さんも御承知と思いますけれども、ブラジルはもとより、アメリカにおいても、ハワイにおいても、カナダにおきましても、日本移民の順法性と申しますか、その国の法律を守り、税金を納め、それから不毛の地を開墾開拓した勤勉性とそのよき市民性は、高くこれは評価されておるのです。しかしながらこれらの地方における移住の数は、いろんな制約もありまして思うようにいきません。一年に百二十万ふえるならば、少くとも百二十万の日本人が海外に行けるくらいの大きな移民方式を立てにゃいかぬ。けれども近年の外務省の移住に対する方針を見ますと、もう一年にせい、せい五千人、あるいは七千人程度でありまして、とうていこれでは世界の未開発地域を開墾するには適しません。私は、この際政党政派を超越して、日本民族の、世界の未開発資源に寄与する大きな運動を起すべきであると思う。これについて、最も力を入れるべきものは外務省であります、が、続いては運輸省、問題は船です。わずかに今移民船と称するものが二はいかそこらしかありませんけれども、少くとも戦前の、大阪商船がブラジルに行きましたころは、二週間に一回、さんとす丸であるとか、ぶらじる丸級、が行きましたときは、七、八はいの当時のモーター船を持っておった。戦争中にこれはいろいろ使えなくなりましたですが、そこで運輸省としては、一体海外移民を専門に送る輸送船に対してどういう考えを持っておるか。なおまた外務大臣は、海外移民の大量増進に対して何か外交上の手を打っておるかどうか。まず先にこれを伺っておいて、それから質問に入りたいと思います。
  147. 岸信介

    岸国務大臣 移民の問題は、、私は経済外交の一つの項目として、最も重視しておるところであります。本年度におきましては、従来の計画を相当拡大をいたしておりますし、また移住会社に対する政府の出資も、これを.相当額ふやしております。しかし、いずれにしましても、今田原君の指摘されるような、日本の人口の増加をこれでもって消化するというふうな大規模なものは、なかなか実現がむずかしいことは言うを待たないのであります。少くとも本年度におき才しては、従来の移民の計画を増大して参りたい、年々これを増大していく、それにはやはり輸送力の増強の問題が、御指摘のごとくありますので、移民用の船舶建造についても、政府としては、とりあえず今年度は一隻でありますが、今後これを増強していきたい、こういうふうに思います。
  148. 宮澤胤勇

    ○宮澤国務大臣 お答えいたします。移民船はただい圭二そうありまして、一そう今年改装しておりまして、ただいま外務大臣の言われた明年の計画造船で、一そうできます。大体これで、今外務省の計画している、ただいまでは自国船で六割しか運んでおりませんが、来年度からは一万人ぐらいの輸送、ができる。また移民のだんだんの増加に対して、造船の方もそれににらみ合っていく、こういう状態であります。
  149. 田原春次

    ○田原委員 はなはだしく不満足であります。そういうことでは海外移民熱に、輸送力の面におい、ても十分備えるだけの用意にはならぬと思います。  ところで、これは大蔵大臣に聞きたいのでありますが、防衛庁は千余億円という金を一年間にむだづかいするの-でありますが、しかもこの予算書を見ますと、艦船建造費が三十二億円、潜水艦の建造費が十二億円、こういうふうになっております。一体潜水艦を作って海の魚を見るのではあるまいし、必要のないものを作るよりか少くとも潜水艦を作る十二億円ありますと、五百人くらい乗れる移民船が一ぱいできる。また艦船建造費を節約しますと、三ばいできます。この不急不要の非生産的な防衛庁の費用を削りまして、海外移住者のための移民船に振り向けるべきであると思ったのですが、それをしなかったのはどういうわけでありますか、大蔵大臣に聞いてみたいと思います。
  150. 池田勇人

    ○池田国務大臣 自衛力漸増という内閣方針によりまして、さよういたしました。
  151. 田原春次

    ○田原委員 自衛力漸増ということは、新聞等によりますと、途中でいろいろ変更がありまして、数の一万人の増員も取りやめるようになったのでありますから、少くとも急にやるべき海外発展の船の方に回すべきだと思いますが、これは議論でありますからやめておきます。  次は、時間もありませんから、法務大臣と厚生大臣にお尋ねしたい。それは、昨年の十一月に一人の朝鮮の青年が自殺をいたしました。調べてみますと、これは黎月星君と申しまして、巣鴨の戦犯に長期に服役中に肺をやられ、出所いたしまして五年間入院しておったけれども、なおらず、ついに絶望して、彼は線路に飛び込んで自殺したのであります。その前の年には許栄君というのが、これまたスマトラで十年の刑を受け、戦犯として巣鴨に帰りまして、出所したけれども、仕事がなく服毒自殺をしております。二人の無名の朝鮮の青年が東京の一隅で自殺をしたのであります。このことは新聞にも出ませんから、だれも知りません。しかし両君等の経歴を調べてみますと、一九四二年の六月、釜山の野口部隊というところに志願をいたしまして、お前たちは南方に捕虜になっておる米軍の捕虜監視所の職員として行け、朝鮮政務総監等が出まして、後顧の憂いなくという激励の言葉で送って、多くの朝鮮の青年、あるいは台湾の青年が南方に行った。ところが日本が負けまして、そうして中には現場において、捕虜監視中に虐待の事実があったというので死刑になった者があります。無期懲役になった者がある。大部分が巣鴨に、国内に服務を命ぜられて帰ったわけでありますが、きていよいよ刑期が満ちて出る段になりますと、無情にも日本政府は、君たちは外国人である、第三国人であるから恩給その他の恩典に浴するわけには参らぬということになってしまったのであります。そこで多くの出所いたしました――仮出所並びに本出所いたしましたおよそ五百名の韓国並びに台湾の青年諸君は、青年時代の一番職業でも覚えそうなときを南方の日本軍の軍属として使われ、それから敗戦によって日本に引き取られたけれども日本の政府は相手にしない。本国に帰ろうとしても、お前たちは日本軍閥の手先であるというので、本国にも帰れない。ただ焦慮と不満のうちに東京をさまよっておるのです。いかに日本が戦争に負けたからといって、戦時中に使いました者に対しましては、たとえば日本人の戦犯は、巣鴨に入っておりましても、服役期間が恩給に加算されておる。この朝鮮、台湾の不幸な青年、数もよけいありません。数百名の青年に対する処置が全くいっておりません。厚生大臣や法務大臣は、これを一体何と考えておるか。内閣の官房副長官等には、数十回陳情に行っておるようでありますが、なかなか面会してくれないということであります。だれも相手になってくれない。金額にいたしましても、よけいな金額ではないのであります。彼らの生業を助ける、それから刑死者並びに戦死者に対しましては日本並みの処遇をする、戦争に敗けたけれども、実にあなた方の御協力は御苦労だったというくらいの感謝は、日本民族は持ってしかるべきだと思いますが、それをやっていないのは何ゆえであるか。その後の経過等も聞かしてもらいたいと思います。
  152. 中村梅吉

    ○中村国務大臣 韓国及び台湾関係の戦犯者の処遇につきましては、いろいろ配慮して参っておりますが、もちろんまだ十分と言い得ない状態でございます。まず第一に、この戦犯者が釈放されました場合に、住居の問題がありますので、当初は東京都の引揚寮に優先的に入れておりましたが、その後韓国及び台湾関係別々の財団法人の組織を作らせて、これに約三百万円ずつ、計六百万円の資金を入れて、住居関係の確立を期すると同時に、多分昨年であったと思いますが、昭和三十一年度におきましては、これらの生業を得るための更生資金として、三百万円ほどを財団法人関係に投入をいたしておるのであります。昭和三十二年度、来年度の今御審議中の予算の中には、これらの生活を確立するために、資金として六百六十万円ほど計上しておる次第でございます。これでは、関係の人たちから申しまするならば、まことに不十分で、十分と言えないことはもちろんだと思いますが、政府としてはでき得るだけの措置を講じまして、これら戦犯関係の人たちが生業を得、生活の安定を得るように最善を尽しておるような次第でございます。
  153. 神田博

    ○神田国務大臣 お答えいたします。大東亜戦争に際しまして、朝鮮人、台湾人で従軍して戦死された方々は、朝鮮人が二万人、台湾人が二万二千人、合計で四万二千人といわれております。これらは日本人として戦争に参加したのでございますから、これらの方々の遺家族に対しましては、日本人同様の処遇をするということに相なっております。ただこの遺家族の方々が、日本に在籍しておらない現況でございまして、これらの調査を、厚生省といたしましてはいたすことに相なっておりまして、三十二年度におきましても、所要の経費といたしまして四百九十万円の予算を計上いたしております。なお戦犯として処刑されました者は、朝鮮人が二十三人、台湾人が二十六人でございまして、四十九人に上っておるようであります。それからその他の収容され、また刑を受けた者は、今田原委員が言われたような数字に相なっております。厚生省といたしましては、今法務大臣からの御答弁もありましたように、厚生省関係におきましては、生業資金として五万円を貸し付ける、こういうような処遇をいたしております。なお日本人並みの処遇をするということにつきましては、従来からの強い要望もございまして、目下検討を加えておる次第でございます。
  154. 田原春次

    ○田原委員 もう少しこまかく聞きたい点もありますが、いずれ分科会等でなお詳しく聞かしてもらいたいと思います。  次は、この機会に外務大臣にもう一つお尋ねしたい。それは、韓国と北朝鮮に対する問題です。御承知のごとく、韓国日本に対する態度は友好的ではありません。竹島を不法に占領する、あるいは公使を一方的に駐在きせて、日本の公使を迎え入れようとしない、あるいは三億円に上る貿易の焦げつきをそのままにしておる、あるいは李承晩ラインというものを一方的にきめて、これを日本に承諾きせようとしておる、あるいは八百人の日本漁夫を不当に抑留していまだに帰さない、これらの.項目をあげますと、少くとも韓国日本に積極的に友好であるとはとれない。一方北鮮の方はどうかと申しますと、数回の議員団やそのほかの訪問の機会に、茂山鉄鉱の鉱石を日本に輸出いたしましょう。日本からは漁網や漁船等も買いましょう、あるいはまた崔承喜その他の舞姫であるとか、あるいはフットボール等のスポーツの選手も送りましょう、日本からもスポーツ選手を迎えましょう、また相互いに自由な旅行をするようにいたしましょう、特に日本が受け入れてくれるならば、留学生を日本に送って、その費用も本国から送りましょうという申し出がある。なるほどよって立つ思想は、日本の現在の思想と違うといたしましても、実に友好的な態度、謙遜な態度で北鮮は日本側を迎えようとしておる。しかるに、これは日本が一方的にけりまして、そうして一から十までけとばされがちな韓国としきりに手を結ぼうとしておるのはどういうわけであるか。これも、前の中国と台湾との和平統一が実現すれば、北鮮・南韓の問題も片づくと思いますが、その間日本の外交当局としては、友好的態度をとっておる北鮮に対しては日本が非友好の態度をとり、非友好的態度の韓国に対してはしきりにもみ手をしておる。こういういくじない態度をやめて、どの辺かできりっとした態度をとらなければ、いつまでたっても李承晩韓国とのいろいろなトラブルは片づかぬと思いますが、これに対する方針はいかん。
  155. 岸信介

    岸国務大臣 韓国との問題は、今まで長い間の歴史から見ましても、日本とは非常に関係が深いし、地理的にも経済的にもまたあらゆる面で近いのであります。しかも韓国日本との間の戦争後の状況は、御指摘のごとく非常にまずいことが幾多重なっております。これを調整することは、日本の外交として最も必要なことであると私ども考えて、あらゆる面からこれが解決に当っているのであります、が、今日までのところ十分な効果を認めておりません。北鮮と南鮮がいわゆる三十八度線で区切られたこの状況において、相対立しておるということ、は、これまた南.北鮮民族の不幸であるとともに、極東における平和の非常な一つの障害になっておる。これを調整していくということも、やはり日本の大きな使命の一つであると思います。しかし同時に、今あなたが御指摘になっているごとく、北鮮の立国の考え方及びこれを取り巻くところの国際環境、情勢というものが相当に複雑な関係にありますので、今直ちに北鮮と友好関係を作るということは、私は実際上むずかしいと思いますが、南の方との間には、今おあげになったような幾多懸案があり、一日も早く解決しなければならぬ問題がありますので、これ、が解決には今後とも力を入れたいと思っております。
  156. 田原春次

    ○田原委員 なお文部大臣に対しては、スポーツ局の新設、漢字の簡略化等々聞きたいこともありますし、農林大臣に対しましては、海外漁業の問題等で聞きたいこともありますが、同僚の時間もありますし、いずれまた分科会で詳細質問することにいたしまして、これで終ることにいたします。
  157. 山崎巖

    山崎委員長 井手以誠君。
  158. 井手以誠

    ○井手委員 最初に、現在石橋内閣の金看板になっておりまする完全雇用について承わりたいと存じます。宇田経企長官に特にお尋ねをいたします。  前の鳩山内閣の友愛精神といい、この石橋内閣の完全雇用といい、けっこうなお題目であります。そこで企画庁では、雇用十カ年計画を立てられておるようであります。現在の六十万人の完全失業者、さらに一千万人にも上る潜在失業者や不完全就業者、さらに毎年起って参りまする百万人近い労働力をいかにして吸収されようとするか、その具体案を承わりたいと存じます。
  159. 宇田耕一

    ○宇田国務大臣 雇用対策としては、ただいままでに経済自立六カ年計画を持っております。それによりますと、国民所得の伸びを大体五%前後に考えております。しかしそれでは、現在の経済の成長率から見て、少し低きに失する、こう考えますので、新しく五カ年計画を立て直したいと考えております。それはただいま作業の準備に入っておりますが、しかし基本方針といたしましては、まず七分ないし八%のところに国民所得の水準を持っていき得るもの、そう考えております。そういたしますと、十年余りでこの目的を達成し得るもの、こういうふうに考えております。
  160. 井手以誠

    ○井手委員 国民総生産を七%から八%伸ばせば吸収し得るというお話であります。毎年何万人ずつ吸収なさる御予定でありますか。
  161. 中村梅吉

    ○中村国務大臣 ただいまのところ、三十二年を含む新しい五カ年計画の的確な数字の整理は、まだできておりません。従って、毎年どういうふうにこれを整理をしていくかというこになりますと、新しい五カ年計画を作り上げたあとになる、こう思われます。しかし、ただいまわれわれの予定しておりますところは、昭和三十一年と三十二年とを比較してみましても、昭和三十二年度においては、約八十九万の労働人口を新規に吸収し得る。従って、ただいま言われたような六十万人の数字は、そのまま横ばいに持ち続けていく結果になろう、こういうふうに思っております。
  162. 井手以誠

    ○井手委員 ただいま御答弁になりました八十九万人ないし九十万人――生産年令人口は、私は百三十万人にも毎年上るであろうと考えておるのであります。この百三十万人に対して、八十九万人あるいは九十万人にとどまるかどうか。私は、この点については国民の八割近くがこれはあとで述べますけれども、八割近くが生活に追われておる今日、いかに神武景気といえども、私は家庭に帰る人はない、ほとんど就職を希望するであろうと考えておるのであります。そういうことを考えて参りますと、今後五カ年間に毎年九十万人を吸収するという御確信がおありになるかどうか、もう一ぺん念のためにお尋ねいたしたいと存じます。
  163. 宇田耕一

    ○宇田国務大臣 ただいま申されたように、百三十万という数字をわれわれの方でも持っております。正確に言えば、八十九万約九十万を基準として、現在の日本の経済の成長率から見て、これは吸収し得るものと考えております。
  164. 井手以誠

    ○井手委員 そうなかなか就職がうまくいかないことは、宇田長官も御存じであろうと思っております。精一ぱいあなたの言葉を信用いたしましても、年間に九十万人。私は百万人以上吸収しなければならぬと考えております。そこで三十二年度の国民総生産は、七・六%の伸びである。これはあなたがおっしゃった九十万人を吸収するという標準であります。そうなりますと、かりにあなたのおっしゃるように、最大限にあなたの言葉を信用いたしましても、先刻あなたのお言葉にもありましたけれども、現在の六十万人の完全失業者、一千万人に及ぶ潜在失業者や不完全就業者、これを救う道は、少くとも石橋内閣が存在する限り、ないと私は考えます。完全雇用なんというものは、私は最初からくずれておると思う。まず現在の六十万人の完全失業者を救っていく、さらに.不完全就業者を完全就業化していく、そういう措置をとらなくちやならぬ。石橋内閣の完全雇用というものは、最初からく.すれておる。計画を立ててくずれることはありますけれども最初からあなたの計画はくずれておる。かように考えて参りますと、三十二年度においても、完全雇用というものは一歩も前進できません。昨年十一月の完全失業者は五十三万人、それが三十二年度には六十万人になる。しかもただいま申しました、完全失業者や不完全就業者は全然救えない。こういうことであっては、何年たっても完全雇用は一歩も前進しない。これは完全雇用ではなくして、完全失業であると私は申し上げたいのである。この問題は、石橋内閣の金看板でもございますので、この完全雇用がくずれますと、私は重大な問題だと思う。従って首相臨時代理の岸さんに奇手妙案がありますならば、この際一つ承わっておきたいと存じます。
  165. 岸信介

    岸国務大臣 宇田国務大臣から答弁をいたしましたように、あなたはくずれておるとおっしゃいますけれども、われわれとしては、やはりせっかくのこの経済界の現状に基いて、積極的な政策によって完全雇用というものは実現できる、かように考えております。
  166. 井手以誠

    ○井手委員 それでは、もう一ぺん岸さんに私は確かめておきたいと思う。先刻も宇田長官から御答弁があり決したように、百万人に近い新たな労働力が発生して参るのであります。ところが経済五カ年計画、三十二年度から新たに発口止しようとする経済計画によりますと、生産が七%ないし八%伸びて、毎年九十万人前後の新たな労働力を吸収し得るというお話でありました。そうなりますると、百三十万人の新たな生産人口のうちに、百万人前後の労働力が発生してくる。それも果して全部吸収できるかどうかわかりませんよ。その上に現在の六十万人の完全失業者、さらに現在の一千万人にも及ぶ不完全就業者や潜在失業者というものは全然救えないではありませんか。数字がはっきりしておるじゃございませんか。
  167. 宇田耕一

    ○宇田国務大臣 ただいまの生産年令人口あるいは労働力人口というのは、昭和三十一年から三十五年までは年平均九十九万人、こう見ておりますが、三十六年から四十年になりますと百十四万となって、実際のわれわれの持っておる統計から見ますと、非常な対策を講じなければならぬ時代に入ると思っております。それはもう御承知の通りだと思います。その次に、四十一年から四十五年に入りますと、これが非常に状況が変って参りまして、その人口は、三十六年から四十年の間は五百六十八万人という予定の数字でありますけれども、も四十一年から四十五年に入りますと四百六十九万人となって、百十四という数字が今度は年平均九十四と減って参るはずであります。従って、仰せられることはよくわかりますけれども、十五年の長期に数字を割って、そしてその年々の労働力人口を見て参りますと、四十年以後は非常な変化が起る。従って、われわれの経済の成長率からこれを推算して参りますと、伸びに比べて、四十年を越した場合は非常な変化が起って、労働力人口に対するところのわれわれの対策というものは十分成果を上げ得るものである、従って、来たるべき、五カ年計画ないし十カ年計画を立てて労働力人口の吸収対策は考えなくてはならない、五年だけでは、これは現在の日本の経済の成長率に対して圧力を加え過ぎるものでありますから、十年の期間をとってこれを考えるのが適当でないかと思うような数字に思っております。
  168. 井手以誠

    ○井手委員 数字がはっきりしておるのでありまして、十五年先のことをお尋ねしておるわけじゃございません。ここ何年かのこの重要な完全雇用の問題をお尋ねいたしておるのであります。  そこで、話を進めますが、聞くところによりますと、今回予算編成の基礎になった経済計画は、昨年十一月自民党に提出された資料よりも、完全失業者を十八万人、労働力人口を三十八万人減らしておるといわれておるのである。机の上の数字のいじくりでは雇用量はふえないのであります。去る本会議に私どもの同僚議員の質問に答えて松浦労働大臣は、完全雇用は必ずできますから御安心下さいと大みえを切られたのである。そこで私はお尋ねいたします。最近の雇用状況、大企業のオートメイション化が進んでおることは御承知であろうと存じておるのであります。しかも雇用は若干ありましても臨時や日雇いの者が非常にふえておる。さらに、第一次、、第二次、第三次の種類別に参りますと、肝心の第二次産業よりも第三次のサービス業あたりに不完全就業者がふえておるのであります。一番肝心の大企業に雇用量がふえない。そして若干の就業がありましても不完全就業である。この現在の雇用状況に対して、私は松浦労働大臣のお考えを、対策を承わりたい。こういうオートメーションの時代にどういう御抱負があるか、遠大なる御抱負がありますならばこの際拝聴いたしたいと存じます。
  169. 松浦周太郎

    ○松浦国務大臣 お答えいたします。大企業のオートメーション化によりかえって失業者が出る.ではないかというお話でございますが、オートメーションにいたしました直後においては一時そういう現象が現われるかもしれません。しかし、日本産業が世界産業と伍して良品廉価の上に戦ってその企業を拡大していくところに、初めて雇用量の増大が起るのでありまして、一時的の、オートメーションになりました直後における失業者がふえるという問題は起りましても、それは失業対策において吸収したい、かように思っております。
  170. 井手以誠

    ○井手委員 大へんな御抱負でございました。これ以上追究はいたしません。  そこで、労働大臣、あなたは過日同僚議員の質問に答えてこんなことをおっしゃっておる。生産性向上に労働組合の反省を求めると。私どもは、労働組合の今日における生産性向上運動に対して反対しておりまするのは、今日の生産性向上運動が労働者の犠牲において資本の利潤追求ばかり考えておる。一番肝心な生産の大きなにない手である労働者に対して生産性向上の利益の配分がないということに対してであります。私は労働者にその利潤を配付してこそ真の生産性向上があると思う。労働大臣でありますならば、自分ばかりもうけようとする資本家に対して利潤分配を求める、資本家に対して反省を求めることこそ、私はあなたの責任であると考えておるのであります。石橋総理は新年の遊説においてこんなことをおっしゃった。ここに私は新聞も持っております。生産性が向上すれば一週五日にすればいい、今の生産の二倍、三倍はすぐ上るとぶっておられる。日比谷でも大阪でも言っておられる。石橋総理が信頼なさっておられる労働大臣、この石橋総理の考え方に対してどのようにあなたはお考えになっておりますか、その点をお尋ねいたしたい。
  171. 松浦周太郎

    ○松浦国務大臣 生産性向上の問題に対して御協力を願いたいことは、この間本会議でお答えいたした通りでありまして、今なお御協力をお願いいたしたいと思っております。そうでなければ、日本の産業、経済、日本の国家の再建はできないと思いますから、どうしても生産性向上に対しましては御協力を願いたいと思います。しかしな、がら、今御指摘になりましたように、せっかく上った生産を経営資本のみで壟断するという考え方は、だんだんと是正していかなければならぬと思います。そもそも生産性向上の運動に対しましては三つの要一点がありまして、過渡的に失業者を多く出さない、上った生産に対しましては資本、経営のみで壟断しないというような線が打ち出してあります。そういう線に沿って今後はやっていかなければならぬと思います。私はこの機会にお話がありましたから申し上げますが、勤労者の方々もほんとうに民族発展のために汗して働くことが国家民族の発展するゆえんであるという線においてお働き願いますならば、経営者、資本家においてもその利益を経営者、資本家のみで壟断すべきでないという考え方が穏当であると思う。このことはわが党が合同の際にそういう線を一応打ち出しております。けれども、その後におきまして、総評その他の方面におきまして反共の態度を取り消すような方向に向っておられますので、私は、この際におきまして、皆さんの力を借りて、総評の方々も一つ供産性向上に御協力願いますように御支援をお願いいたしたいと、心からお願いする次第であります。
  172. 井手以誠

    ○井手委員 ただいままで承わりましたところでは、完全雇用が最初からくずれておることは数字に明らかなところであります。また、ただいま、大企業のオートメーション化に対しては、一時失業が出たものに対しては失業対策をやるという労働大臣のお答えです。これらを考えて参りますと、保守党内閣ではいかに大みえを切られても完全雇用は絶対困難だと思う。これはやはり社会主義政権でなければ、社会党の政権でなければならぬと私は考えておる。  そこで、私は続いて低額所得者のことについて大蔵大臣と経企長官にお尋ねしたいと思います。  最近予想以上に伸びたこの国民所得が、どの階層により多く潤ったかということ。これについては経済企画庁ではいろいろ詳細な調査もあっておろうかと思いますので、七年間二十万、三十万、五十万、八十万、そういう大まかなところでけっこうでございますから、どういう階層に所得がふえたかということについてお尋ねをいたしたい。
  173. 宇田耕一

    ○宇田国務大臣 お答えいたします。勤労所得関係では、三十一年度三兆六千三百三十億円という見込みであります。また個人業種所得二兆二千百九十億円、この二つが非常に大きい数字であります。法人所得は七千七百五十億、こういう数字になっております。
  174. 井手以誠

    ○井手委員 私が念を押してお尋ねしたのは、そういう合計の数字じゃございません。どういう階層に所得が伸びたかということをお尋ねしたのです。
  175. 中村梅吉

    ○中村国務大臣 法人所得関係、これが伸びは……(井手委員「階層別」と呼ぶ)法人所得関係の階層、勤労所得の階層……(「大蔵大臣やれ」と呼ぶ者あり)それじゃ大蔵大臣とかわります。(笑声)
  176. 池田勇人

    ○池田国務大臣 国民所得の増加の方面は年によって違います。終戦後におきましては、農民階級の方の所得が戦前に比べて非常にふえて参りました。最近の状況を見ますと、大体各層にわたってふえて参っております。ことに大所得者の方のふえよりも中小所得者の方のふえようが多いのでございます。これはごく最近の調査でございまするが、東京商工会議所あるいはその他の機関におきまして、中小企業の伸び方、これが大企業の伸び方よりも上回っているという統計も出ております。また、賃金におきましても、二十四、五年から六、七年までは大企業の労務者の賃金の伸び方が非常に急速でございました。しかし、三十年に比べて三十一年の状況を見ますと、大企業、いわゆる五百人以上、あるいは五百人から百人京で、あるいは百人以下、こう三段階に分けてみますと、三十年に比べて三十一年は大体七、八%ずつ同じようなふえ方をいたしております。また、プリヴェーリング・ウニージというか、一般労務者の賃金の増加は、昭和二十八年から二十九年に比べての状況を見ますと、低所得者の方で一割五分ないし二割の増加を示しておりますので、総体的に見まして、ここ一、二年、二、三年の所得の増加は各階層に行き渡っていると見て支障ないと思っております。
  177. 井手以誠

    ○井手委員 大蔵大臣のただいまの御答弁は事実とは逆ではないかと思う。私は、あなたの方の国税庁と宇田さんの方の企画庁の方で詳細に調べました。ただいまから申します数字は宇田さんの方の数字でありますから、お聞きを願いたい。大体所得税のかからぬと思われる月二万円以下の給与所得者は、二十九年、三十年とも平均いたしますと一万二千円そこそこであります。二十九年も三十年も二万二千円そこそこであります。ほとんど伸びていない。これは、農村におきましても一これは国税庁の調査を私は基礎にいたしておりますが、農村においてもほとんど同様であります。勤労者や農民とも、月収二万を境にいたしますれば、この人員は大体千五、六百万――給与所得者は千五、六百万人でございましょうが、人員はともに八一%を占めておりますけれども、その所得は全体の、給与所得者では五七%、農民では六〇%であります。高額所得者ほどうんと伸びている。これが大蔵省の国税庁とあなたの方で調べた数字であります。しかも、その証拠には、大蔵省から出されました所得税の見積り、あの数字によりますと、今回の減税で失格となる者の一人当りの年収は、三十一年度が十五万一千円であるが、今回の減税の基礎となっているものは一人平均十五万五千円である。昨年もことしもほとんど変っていないのであります。これが明らかな証拠である。さらに、総理府の生産指数なり労働力の調査、こういう多くの調査もほとんど同じような結果が現われている。従って、この八割を占めている二万以下の低額所得者――大体所得税は非課税者でございましょうが、この八割の人々は、せっかくの神武景気の恩典に浴していないのである。むしろ、今度の予算によって、運賃の恩典と申しますか被害と申しますか、それを受けるだろうと私は思う。そこで、大蔵大臣は、一千億減税の財政演説におきまして、低額所得者の負担軽減を留意しながら減税を行なったと述べられております。きのうもまた同僚議員の質問に答えて、政治とは大衆の生活を向上することであるとおっしゃいました。それでは、低額所得者に対する負担軽減の施策を一つ具体的にお示し願いたいと思います。
  178. 池田勇人

    ○池田国務大臣 私は、統計の見方についてあなたの見方に賛成いたしません。それは、あなたの統計は大蔵省から出したものをお持ちになっておるかもわかりませんが、これは静的な見方、ある一定のときにどういうふうな状況になっておるかというのであります。私の見方は、同じ人が累年所得がどうなっておるかということを見ているのであります。だから、いろいろな表で、二十万円から二十五万円のところ、あるいは二十五万円から三十万円のところは、これは下から上へ上ってきた場合に、そのときにそうなるのでございますから、その数字では所得の増加ということは現われない。一定時における所得の何ぼの人が何人おる、こういうのならばその表でよろしゅうございますが、一体に所得がどういうふうにふえていっておるかということは、個々の人について言わなければいけません。だから、私は、所得の増加の条件につきましては、見方はあなたと違っております。  第二段に、低額所得者に留意しながら所得の軽減をいたした、こう言うことは、所得における低額所得者でございます。それで、所得のかからぬ方につきましては、いかんとも所得税ではいたしようがない。所得のかかる方につきましては、低額所得者に対しまして留意しながら負担の均衡をはかっておる、こう申し上げておるのであります。
  179. 井手以誠

    ○井手委員 いわゆる一千億の減税というものが、低額所得者には渡らないのであります。それでは大臣がおっしゃった大衆の生活を向上するという政治の要諦に沿えぬわけでありますが、一千億の減税に浴しない八割近くの人々に対して、いわゆる低額所得者に対してどういう恩典をお与えになったか、それをお伺いしたい。
  180. 池田勇人

    ○池田国務大臣 所得税の軽減を論ずる場合におきましては、所得税のかかる人にしか軽減のしょうがございません。また所得税のかからない方でも事業所得税のかかっている方々がおられます。その方々には個人事業税につきましては八%を六%に引き下げ、法人につきましても一〇%を八%に引き下げ、あるいはまた法人事業税につきましても相当の引き下げをいたしております。いろんな点から所得税のかかっている方々には所得税を、そうしてまた事業税のかかかっている方には事業税を、こういうふうにして、税のかかる方面につきましては税でやっております。また一般大衆におきましても、民間の労務者の方々の賃金は相当上っております。従いまして、中央、地方を通じて数百万人の公務員につきましては六・二%、平均月一千百何ぼの俸給の引き上げをやりまして、中央、地方を通じまして三百七十億円の給与の増加をやっております。また公務員でもない方につきまして、これは社会保障的に手を伸ばしていくよりほかにいたし方ございません。従いまして生活保護費を受けられる方に対しては、公務員の給与は六・二%上りましたが、生活保護費を受ける方々には六・五%と、その上げ方を多くしております。日雇い労務者につきましても、日に二十円上げております。こういうふうにやり、そういう人でない人には今度は医療貸付制度を新設するとか、あるいは厚生年金貸付金その他各般の社会保障制度でいっておるのであります。(拍手)こういうやり方は、今まで私もたびたびやりましたが、今回くらいやったのはないのでございます。
  181. 井手以誠

    ○井手委員 所得増加の数字につきましては、これにはっきり書いてある。あとでお読み願いたいと思います。給与の引き上げについては、これは私は当然だと思う。むしろ少な過ぎると思う。あなたがおっしゃった失対事業の賃金を二十円引き上げた、あるいは生活保護費を若干引き上げた、引き上げられたけれども、ここで問題なのは、日雇い労務者は今でも毎月々々若干ふえておるのです。ふえたものを二万五千人もことしは減らしておる。生活保護費においても同様です。若干保護費は引き上げられておりますけれども、対象人員を引き下げておる。希望者は非常に多いけれども、標準を厳格にして対象人員を落しているというこの事実を見ますと、決して要保護者に対しても、日雇い労務者に対しても、恩典を与えていないのであります。あるいはあなたはいろいろおっしゃいましたが、わずか二億か三億くらいの社会保障費で、片一方、一千億の減税、片一方二億、三億の社会保障費では、これは片手落ちだと思う。  そこで続いて地方財政についてお尋ねをいたします。大蔵大臣はただいままで申しました通りに積極財政をうたっておられます。そういう予算を編成されておるようでありまするが、地方財政には非常に冷淡であるといわれておるのであります。予算編成の仕上げに地方財政が最後まで難航したということは、私はこの間の事情を物語るものだと思うのであります。そこにいらっしゃる田中自治庁長官は、あんまりひどい大蔵省の削減に対して、あなたは地方財政確立要望の六団体のたくさんの代表者に対して胸をたたいて、池田勇人はおれが押える、おれにまかせておけと(笑声)あなたはぶたれたことを私は聞いております。そうでしょう。大いに奮闘されたかいがあって若干ふえてはおりますけれども、地方から切望されておりまする公債費の元利補給、この問題と国税の減税に伴う三.百八十数億円の補てんはどうなさいましたか。
  182. 田中伊三次

    ○田中国務大臣 お答えを申し上げます。国税の減税に伴う税のはねっ返りをでき得るだけ避けようと努力をいたしました。そこで避ける方法はいろいろございますが、まず一番端的に無理のない避け方というものはどうすればよいかというと、これは交付税率の引き上げということ以外に無理のない方法はないわけであります。このほかに、いや地方税を逆に上げて財源の確保をしてはどうかというようなことがないとは言えませんが、これは私の断じてとらざるところであります。そこで交付税率の引き上げを理想といたしますと、皆様御存知じの通りに百分の三を引き上げることを理想といたします。詳しい計算では百分の三・〇五を引き上げるということを理想といたすと考えて、私はその点の見解を持ったわけでございます。しかしこれはいろいろ財源の都合等によりまして――財源の都合ばかりでなしに、もう一つは、本年新年度には地方財政において地方税収それ自体にも、ここに相当額の増収が見込まれる、こういうことが計算の結果、大蔵大臣ばかりの主張でなしに、私みずからもこれを得心することのできる相当額の増収がございますのにかんがみまして、まあ増収のあるときでもあるし、財源も窮屈だし、一向これという理屈はないのですが、三引き上げようというのを一だけ引き上げることで今年はがまんしよう。こういうことで、同時にこれを補てんをする意味とは全く性質は違いますが、補正予算を最近におきまして組み、その補正予算によって百億の交付税が追加をきれる、この追加されたものを財源として、臨機応急の処置として公債費の処置をしたい。こういうふうに考えまして、まことに不完全な措置ではございますが、これで何とかやり切れないものでもなかろう。こう判断をいたしましたので、これを決定したようなわけであります。
  183. 井手以誠

    ○井手委員 最初は脱兎のごとく、終りは処女のごとくなどといわれておりますが、きわめて不完全な措置だと私は思う。ただいまおっしゃったこと、補正予算で百億の措置、これは三十三年度には当然もらえるはずのもので、それを繰り上げてもらっただけであって、元利補給にはなりません。そこで結局私は計算をいたしますると、交付税関係において百四十億の欠陥が生ずると思う。これはあなたもお認めになると思うんですが、いかがでございますか。これをどうなさいますか。
  184. 田中伊三次

    ○田中国務大臣 百分の三を引き上げることが計算上妥当であるとの見解を前提にいたしますと、一しか上らないわけでございますから、百四十四、五億円の不足をそこに生ずる、こういうことは言い得ると存じます。
  185. 井手以誠

    ○井手委員 地方財政のガンともいうべき公債費の問題、これに私は若干触れておきたいと思う。前の自治庁長官であった太田さんは、うしろにいらっしやるのですが、在任中よほど身にしみたと見えまして、さっそく本会議においては、公債費をどうするか、こう質問なさったのであります。現在地方公共団体が持っておりまする公債は五千三百億、五千三百億にも上る公債費の重圧、すなわち来年度の公債元利支払いは七百三十億になるのであります。起債は六百億を大体認めよう。しかし、一方においては元利償還七百三十億円を戻さなくてはならぬ。私は、これでは地方財政の健全化ということはあり得ぬと思う。  そこで、これは大蔵大臣にもお尋ねいたしますが、国におきましては拡大均衡予算、ところが地方におきましては六百億円に上る借金予算です。国の予算と地方予算とは表裏一体でなくてはならぬのであります。ところが、どちらも一兆円を若干越えるこの予算において、一方は拡大均衡予算、一方は借金予算、これでは片ちんばではございませんか。こういう財政の組み方では、いかに大蔵大臣が健全財政を確立するとおっしゃいましても、これは名前だけだと思う。この財政の状態に対して、大蔵大臣はどのようにお考えになっておりますか。
  186. 池田勇人

    ○池田国務大臣 四、五年前の地方財政の状況昭和三十二年度を比べますると、よほどよくなって参りました。地方の五千億前後の公債も私知っております。しかし、公営事業その他の採算の合う方面への地方債もあるのでございます。しこうして、私の見るところでは、昭和三十二年度における地方税固有の税の増収、が、地方税の減税をしない場合においては六百九十億ある。そうしてまた交付税も、昨年に比べて二百四十億円ふえておる。日本の経済が拡大して、所得税、法人税あるいは酒税がもちと出てくるならば、そうしてまた公債のうちで公営事業関係の地方債を除いてやってみるならば、地方財政の将来は相当明るいのではないか、また明るくするようにしなければいかぬと考えております。今の地方債のうちには公営企業の分がございます。それから国でも、電電公社あるいは国鉄、その他関係機関におきましては公債を発行しておるのであります。問題は公債がふえてくる。元利を支払わなければならぬというが、その内容について考えなくてはいかぬ。今までは公営企業でない分の地方債も相当あったかと思いますが、これは今後の問題として処理していかなくてはいかぬ、計画を立てていかなくてはいかぬと思います。しかし、国の経済が伸びたことによって、今までと違って地方財政もかなりよくなってきたということは言えると思います。
  187. 井手以誠

    ○井手委員 私も失礼ながら地方財政のことについては少々承知しているつもりであります。公営企業のものと一般会計の起債のものとの区別は承知を.いたしております。地方財政が、だいぶ明るくなったとおっしゃいましたけれども、明るくなった原因は、道路には砂利も敷けない、せっかく中央からもらった事業費も、県の裏づけができなくして返上している事例が非常に多いのであります。学校は寄付金によって建設している。これは岸さんにもお尋ねしますのでお聞き願いたいと思いますが、この三月末には各府県において二百人ないし三百人の教職員の首切りが行われようとしております。そういう犠牲の上において――仕事はやらない、首は切る、こういう犠牲の上に地方財政が再建されているという事実を、大蔵大臣はよく承知してもらいたいと思う。石橋内閣は、いわゆる五つの誓いの中に福祉国家の建設を掲げられている。申すまでもなく、福祉国家の基盤と申しますのは、私は府県や市町村であると思う。一兆円をこえる地方公共団体の予算、それに国から回ってくる四割あるいは五割近くの金を実際に使うのは県や市町村でございます。そして民生安定の仕事をやっている府県や市町村の基盤が弱くなって、砂利も敷けない、学校も建てられない、こういう自治体でどうして福祉国家が建設できましょう。私は、こういう観点から一つ首相臨時代理の岸さんに御所信を承わっておきたいと思います。
  188. 岸信介

    岸国務大臣 三十二年度の予算につきましては、しばしば説明されております通りに、やはり国、地方を通じてこれの均衡をとり、健全な形を作り上げるという考えのもとに編成されております。個々の問題に至りますとあるいは十分に行っておらぬ分もありぼしょうけれども、全体としてはその観点を貫いているのであります。市町村、地方公共団体の財政につきましても、やはり先ほど自治庁長官や大蔵大臣の説明いたしております通り、これをもって十分なりとは言えますまいけれども方向としてははっきりと国、地方を通じてやはり福祉国家の建設に向っての考え方を貫いているとか、、一うに出石えております。
  189. 井手以誠

    ○井手委員 地方財政の窮乏については、とくと一つ調査を願いたいと思います。東京ばかりにいらっしゃってはなかなかわからぬのであります。特に農村県が、農村自体がいかに困っておるかということを一つ調査のほどをお願いして、この問題については打ち切ります。  次に食糧問題。井出さんにお尋ねをいたします。井出農林大臣は、就任に当って河野前農林大臣が商業的農政をやっておったものを、これを修正して、食糧増産に力を入れようとする談話を発表されたことを、私は新聞で拝見いたしたのであります。当然のことだと私は存じております。そこで、来年度、三十二年度の予算は、大蔵省の原案ではずいぶんひどい削減を農林省は受けました。七百億円そこそこではなかったかと思うのでありますが、結果においては食糧増産対策費がわずかばかりふえて二百七十億円。農政の中心は何と申しましても食糧の増産であると存じますので、この二百七十億円をもって米換算どのくらい増産なさろうと期待されておりますか。
  190. 井出一太郎

    ○井出国務大臣 お答えいたします。食糧自給度を向上させる、このことはやはり日本農政の基本でなければならぬと考えておるのでありまして、幸い井手委員の御共鳴も受けたわけでございます。そこで、本年度の食糧増産関係の予算が非常に少いという御指摘であり求すが、これはこの間この席で川崎委員にもお答えをいたしましたように、過去の、たとえば昭和二十七年、八年などと比べまして、その当時は災害でございまとすか、あるいは農業保険の関係などでありますとか、その他いろいろございまして、実質の食糧増産経費というものは、ここ数年それほど変ってはおらないつもりでございます。しかし、これをもって決して満足しておるわけではございませんので、この限られた予算をいかに重点的、効率的に使うかというのが、われわれの当面の問題であろうと思うのでございます。そこで、米に換算いたしました増産予定量は百十一万石、こういうことでございます。
  191. 井手以誠

    ○井手委員 数字だけでけっこうでございます。続いてお尋ねいたしますが、毎年農地の壊廃が三万町歩ぐらいあろうかと思います。人口も相当ふえているようでありますが、農地壊廃による減産量、あるいは人口の増加に伴う食糧の必要量、これは合計してけっこうでございますが、どのくらい必要でございますか。
  192. 井出一太郎

    ○井出国務大臣 お答えいたします。ただいまここに明確な数字を持ち合せておりませんが、今御指摘のように農地が壊廃する、それから人口が自然増加して参る、果してこれを増産計画においてカバーできるかどうかというところに問題のポイントがおありだろうと思うのです。私は日本現状を勘案いたしますときに、なかなか自給態勢を確立するということは容易でございませんので、年々三百万トンないし四百万トンの外国食糧を輸入しなければまかなっていけないという一つの宿命的な条件さえも持っておるわけでありまして、戦前は御案内のように、朝鮮、台湾から、合せて約二千万石くらいの糧食が入って、ようやく顧かなっておったわけでありますが、今後自給度を可及的に増すと申しましても、ここ当分の間は、相当量の外国食糧の輸入ということはやむを得ないものと存じておるわけであります。
  193. 井手以誠

    ○井手委員 農林大臣非常に懇切な答弁で感謝いたしますが、時間の関係もございますので、尋ねた点だけお答え願いたいと存じます。  農地壊廃による減産量は、大体年間七、八十万石、人口増による増産必要量はこれ顧た七、八十万石、あわせて年間百五十万石は増産をしなくては、いわゆる経企長官の得意のとんとんにはならぬのであります。そうしますと、おっしやるように二百七十億では百十一万石の増産、そういたしますと、大体四十万石は毎年々々不足していくという結果になるのでありまして、今の二百七十億円そこそこの食糧増産対策費では、増産ということは全然見込めないわけであります。これは農林大臣もお認めになることだと思う。それで私は話を進めますが、先の三十一年度に策定されました経済五カ年計画によりますと、米換算八百二十三万石を増産させるために一千七百億円の財政支出が必要であると発表されました。これは一年間に見ますると三百四十億円の財政支出になるであります。かつて広川構想の食糧増産計画によりますと、当時の物価で一千五百六十四万石を増産するには、四千二百億円を見込んでおりました。かりに五カ年計画の財政支出で増産が期待されるといたしましても、あなた方保守党の食糧増産は、計画を下回っておる。五カ年計画では食糧増産に一カ年三百四十億円財政支出をしなくちゃなりませんのに、二百七十億円、これじゃ計画を下回っておるということになるのであります。従って増産には一向なっていない。むしろ毎年々々食糧が不足してくるということになるのであります。鳩山内閣から引き続いて、石橋内閣の農村の食糧増産に対するこういう熱意が足りませんために、この経済計画の大綱によりますると、鉱工業の生産の大きな伸びに対しまして、農林生産はここ二、三年全く停滞いたしております。生産指数は伸びておりません。明年は鉱工業の一二・五%の増産計画に対して、農林生産はわずかに〇・四%しか増産を予定されていないのであります。これはこの数字を見ればはっきりしております。一般計画と財政投融資における鉱工業、大企業への莫大な投資に比べて、農村の食糧増産に対しましては、わずかに二百七十億の食糧増産費、これじやあまり片手落ちじゃございませんか。この計画を下回る財政支出と、食糧増産が伸びないということに対下る経済企画庁長官の御所見を承わりたい。
  194. 宇田耕一

    ○宇田国務大臣 お答えいたします。食糧関係で、われわれのところで国全部の経済からみますると、鉱工業生産、特に第一次、第二次産業それぞれ雇用量その他経済の伸びに応じて、われわれは財政の配分計画を立て、統一計画を立てておるの.でありまして、食糧増産の面におきましては、技術その他の点において、従来よりも底力が弱っておるとは考えており顧せん。従って農業方面における生産は、工業方面におけるわれわれの輸出規模の拡大化に対して、われわれは財政的配慮というものは、本年度の規模においては、あれで適当と考えております。
  195. 井手以誠

    ○井手委員 だから石橋内閣が農村に対して冷淡だといわれるゆえんである。それははっきりしておるじゃありませんか。今の御答弁ではっきりしておる。  そこで私はこの際臨時首相代理にお尋ねをいたします。わが日本社会党は年間一千億近い食糧増産費を投じまして、大々的な開墾をやり開拓をやる、開拓と土地改良、畑作改善と畜産振興の大きな計画を私どもは用意いたしておるのであります。農村を基盤と称する保守党こそ、私はもっと農業保護政策密やるべきだと思うにもかかわらずこのような冷淡な事実、私は特に御注意申し上げたいのでありますが、保守党もこの際一つ思い切って農村保護政策に転換いたしまして、農村にうんと力を注ぐ御用意が臨時代理におありになるかどうか、この点をお尋ねいたしたいと存じます。
  196. 岸信介

    岸国務大臣 保守党はあくまでも現実に即して、現実をもととして実行のできる案を立てて実行いたしておるわけでありまして、目標は今農林大臣や経企長官の申したようなことであります。
  197. 井手以誠

    ○井手委員 けっこうでございます。現実に即して金が回せないから農村を冷している。社会党といえどもやはり財源の裏づけを持っていつも約束をいたすのであります。そこで農林大臣にお尋ねをいたしますが、開拓地方面から非常に切望されております開拓営農の特別振興法案、それから現在危機に立っておりまする農業共済制度の改正案、この二つの法律案はこの国会に御提出になる方針でございますか、いかがでございますか。
  198. 井出一太郎

    ○井出国務大臣 ちょっと一言補足さしていただきますが、先ほどの食糧増産の問題でございます。土地改良の問題と同時に耕種改善の問題がございまして、私は過去二年の豊作はもちろん気象条件もよかったでございましょうが、やはり多年研さんをして参りました技術が実を結んだ、こういうふうにも考えておるのでございまして、あながち食糧増産の前途をそれほど悲観をしておるものではございません。  それからただいま二つの法律案を出すかというお問いでございますが、すでに開拓営農振興法案は諸般の手続を完了いたしました。これは開拓営農民の非常な福音であると考えております。それから農業災害補償法の改正でございますが、これは鋭意研さんを遂げまして、この国会中には皆様方の御審議をわずらわしたい、こういう予定で進んでおるわけであります。
  199. 井手以誠

    ○井手委員 予算の説明によりますと、米の配給は希望配給密加えまして三十二米穀年度には二十日、三十三米穀年度――明後年は十五日を予定されておるのであります。今日のような食糧増産対策の状態では、私はこの程度しか望めないと思う。今日まで外米の自由販売、希望配給、労務加配米の廃止等々、なしくずし的に食糧管理制度がくずされておる。しかし今農林大臣もおっしゃいましたように、食糧増産の前途はなかなか困難であるといわれた。さように考えて参りますと、統制撤廃などというものは、食糧増産がうんと進まない限り、私は困難だと考えておるのであります。昨日和田さんの質問に答えて農林大臣は一応お答えになりましたが、ことし、明年という近い年ではなく、食糧増産に一千億の投資をする社会党が政権を樹立するまでは、私は統制継続の食糧管理の必要があると考えますが、ここ当分の、かなり長い間の見通し一つお聞かせを願いたいと思います。
  200. 井出一太郎

    ○井出国務大臣 このこともしばしばお答えをいたしておりますが、た、だいまの食糧管理の方式は、これをにわかに変更するなどということは非常に危険である、こういうふうに考えておる次第でございます。
  201. 井手以誠

    ○井手委員 政府は食糧管理制度合理化のため、特別調査会を設置されるようであります。今日すでに、これはもう早くから公式の米価審議会というものが、米価をきめる――正式決定じゃございませんけれども、大体そこで審議される公式の機関である米価審議会があるにかかわらず、何ゆえに内閣の諮問機関としての調査会を設けられようとするのであるか。私は屋上屋ではないかと思う。従来もこの米価審議会というものは、よく有名無実、無視されて参りました。これは農林大臣もよく御承知であろうと思います。銀行の頭取や、あるいは大会社の重役などを集めて農村問題を研究されておる、そういうことがしばしばあったのであります。今度は国会議員は避けて、米価審議会とは別に諮問機関を設けられようとするその御趣旨を私は承わっておきたいと思います。
  202. 井出一太郎

    ○井出国務大臣 お答え申し上げます。米価審議会は、農林省設置法に基きます機関として米麦価の諮問を受けまして、従来ともその機能を発揮しておりましたことは、井手委員承知の通りでございます。そこで今回構想しております臨時の特別調査会は、いわばそれ以前の段階におきまして政府の腹がまえをすると申しましょうか、さような意味において、単に価格問題のみならず、食糧管理のあり方あるいは合理化、健全化と申してもよいと思いますが、そういった広範な問題にまで検討を加えよう、こういう機関でございますので、御承知置きを願いたいと思います。
  203. 井手以誠

    ○井手委員 各方面の権威者を集めた公式の米価審議会、これがあるのに、その事前の話し合いをするというのは、これは不可解であります。しかしお作りになることは、われわれはとめるわけには参りませんが、この調査会はいつ発足して、いつごろまでに結論をお出しになるおつもりか、結論を期待されておるのか、もし結論が一般会計より繰り入れを必要とすることになれば、補正予算をお組みになるお考えであるか、この点を承わっておきたいと思います。
  204. 井出一太郎

    ○井出国務大臣 特別調査会はなるべく早目に発足をいたしたいと考えておりますが、その結論は政府としては十分に尊重して参りたい、このように存ずる次第であります。
  205. 井手以誠

    ○井手委員 お答えが落ちておりますが、この広範な食糧管理制度を調査する調査会によって、やはり一般会計から繰り入れなければならぬという結論が出ますならば、補正予算をお組みになる御用意があるかどうか、補正予算を組まないという前提でありますならば、赤字のままでお済ましになるお考えであるのか、あわせてお尋ねをいたしたいのであります。
  206. 井出一太郎

    ○井出国務大臣 その結論の出るのを待ちまして、政府部内で十分に検討をいたして処理する所存でございます。
  207. 井手以誠

    ○井手委員 しかし結論は、二重価格制度によって一般会計からの繰り入れを必要とするのか、あるいは米の消費者価格を引き上げてトントンにしようとなさるのか、引き上げぬでもトントンになるようなことをお考えになっておるのか、私は三つに一つしかないと思う。結論が一般会計からの繰り入れを必要とするという場合には、どうなさるかということをお尋ねしておるのであります。
  208. 井出一太郎

    ○井出国務大臣 その結論の出るのを.待ちまして、これはもちろん十分に御検討をいただくわけでございますが、これを尊重してやって参りたい、そして今おっしゃるように赤字を補てんする必要が出るというような場合には、これは政府部内で十分に検討して、処理をいたしたいと考えております。
  209. 井手以誠

    ○井手委員 政府部内で十分検討するということは、どういう場合が予想されるのでございますか。どこからか金を持ってくるという何か便法でもあるのですか。
  210. 井出一太郎

    ○井出国務大臣 その処理の仕方はいろいろあろうと思いますが、財政当局とも十分に相談をし合って処理をいたす考えであります。
  211. 井手以誠

    ○井手委員 農林大臣もずいぶん苦しそうですから、私は武士の情としてこれ以上深追いすることは避けたいと思います。どうも、ただいままでの印象では、値上げされるような気配が私はいたすのであります。  そこで私は食糧問題の最後に農林大臣に御注意を申し上げておきたいと思いますが、最近食糧管理制度について独立採算があまりに強調されておると思う。この不足しておる日本の食糧問題、この国民食糧という重大な問題と私は一緒にして考えなくちやならぬと思う。そこに必要があれば一般会計から繰り入れるという二重価格制度、これが食糧管理制度の本質であると私は考えておりますので、外麦の買付の方法とか、あるいは輸入商社の手数料の問題とか、食糧証券の利子の問題とか、いろいろあるでありましよう。食糧管理制度という建前をくずさないように、食糧自給の向上という大きな問題から一つ善処されるように御注意を申し上げておきたいと思う次第であります。  次に厚生大臣に在外資産の補償について若干お尋ねをいたしたいと存じます。これは先般川崎委員に対しましてもお答えがあったのでありますが、厚生大臣は本会議におきまして、在外資産の補償は、公債発行後これを担保として国民金融公庫より二十億円ほど借入れで奉るよう準備しておると述べられておりますが、二十億円というのは大体発行額の何割くらいに当るでしょうか。
  212. 神田博

    ○神田国務大臣 お答えいたします。国民金融公庫に預託いたしました二十億が、給付公債として発行する総額の何割に相当するかという御質問でありましたが、給付公債を一体どれだけ出すかということにつきまして、目下厚生省におきまして十分検討中でございまして、また成案を得るまでに至っておりませんので、同割かということにつきましてはお答えしかねるところでございます。
  213. 井手以誠

    ○井手委員 二十億円という数字もそう根拠がなくて出てきておらぬと私は思います。それは過去の遺族に対する公債の例もあるでしょう。大体何百億かきまっておるのじゃございませんか。それを基礎にして二十億という数字が私は出てきたと思うのでありますが、一つあまりいろいろなことはお考えにならぬで御発表願いたいと思います。
  214. 神田博

    ○神田国務大臣 先ほどお答え申し上げた通りまだきまっておりません。
  215. 井手以誠

    ○井手委員 この在外資産の補償問題は、施政方針演説でも首相臨時代理が必ず処理するという言明をなさっております。引揚者の方は粒々辛苦して築き上げた財産を、自分の責任ではなく、あの敗戦という犠牲で引き揚げてこられた。そして全然資産のない、仕事のないところから、今日立ち上られようとしておる。十一年にも二伸にもなります。もう戦後ではないなどと経済白書では言われておりますけれども、この戦争犠牲者、引揚者に対してはまだ処理が済んでおりません。従って最近は全国からたくさんの人が集まって、涙ぐましい陳情運動を続けられておる。もう私は解決きるべき段階であると思います。  そこで大蔵大臣にお尋ねいたしますが、今度の予算に利子を組んでおりますが、その元本はどのくらい予定されておりますか。
  216. 池田勇人

    ○池田国務大臣 元本はまだきまっておりませんので、一応の目安の利子だけであります。
  217. 井手以誠

    ○井手委員 元本がきまらずに利子だけおきめになるというのは、財政当局の責任者としてはおかしいと思うのです。必ず数字があると思う。多分あなたは八百億とか考えられておるというように承わっておりますが、いかがでございましょうか。
  218. 池田勇人

    ○池田国務大臣 この問題につきましては、厚生大臣が今御研究になりまして、私は何も意見を言ったことはございません。そうして元本がきまらないのに利子を組めるかどうか。こういうことでございますが、元本がきまりましてもいつ発行するかによりまして利子は違うのでございます。従いまして一応ある程度の利子のみを目安として考えております。
  219. 井手以誠

    ○井手委員 その目安としてきめられた利子予算は、これは結論は大蔵省できめられたのでしょうけれども、大体根拠はあなたの方で作られたのでございますか。厚生大臣の方からのお話で組まれたわけでございますか。
  220. 池田勇人

    ○池田国務大臣 どれだけ組んだか、一応こういう利子は見ておかなければいかぬぞということを主計局長に言っておきました。従いまして私は、金額はまだ何も言っておりません。主計局長から返事をきせます。
  221. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 交付共債によることになるのではないかと存じておりますが、その金額をどの程度にするかということにつきましては、ただいま両大臣から御答弁がありました通り、まだ決定いたしておりません。しからばなぜ十億の利子を組んだかということでございますが、これは交付公債の発行の時期もございますし、また利率もございますし、支払い時期等の関係でいろいろに動くわけでございます。初年度といたしましては全然これは出しようがないのでありますが、一応の見込みで十億を算入いたしたのでございますが、今後決定をいたすに伴いまして、具体的にどれだけ必要になるか。おそらく十億とぴたっと合わないとは思いますが、大体の見込みでこういう金額を計上いたした次第でございます。
  222. 井手以誠

    ○井手委員 かねてこういう利子などを組む場合には、大蔵省当局は非常に厳格なのであります。根拠を非常にむずかしくおっしゃっておる。その大蔵当局が十億を組まれておるということは、私は根拠があると思う。八百億なら八百億、千二百億なら千二百億を出して大体何月ごろからやろう。そうすれば大体十億になるという私は目安があると思う。なくては利子金額は組めないと思う。   〔「根拠を説明しなければ審議はやめだ」と呼ぶ者あり〕
  223. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 交付公債の元本が幾らになるかということにつきましては、先ほど来申し上げました通り決定いたしておりません。ただ御承知のように先回遺族公債を発行いたしましたときの例等にかんがみましても、決定いたしましても、その発行までの間には調査にも時日を要しまするし、全部が一緒に出るわけでもございませんので、いろいろ時期的な関係で延びることもあるわけでございます。そういたしますと、初年度に幾ら支払われるか。その辺のところは、今からはっきりした積算をいたすわけにいかないわけでございますので、一応十億程度のものを算入いたすということで予算の積算をいたしております。
  224. 井手以誠

    ○井手委員 これはわかっておるはずだと思うのですがね。森永さん、あなたはわかっておるでしょう。大蔵大臣から言われておるはずだと思う。今も大蔵大臣は、自分が言ったとおっしゃった。(「それを言わなきゃいかぬ、審議ができない」と呼ぶ者あり)それでは、あなたは、金はどこからお出しになるつもりですか。
  225. 池田勇人

    ○池田国務大臣 引揚者の方々に対しまして、できるだけ誠意を持ってお出しすることにはさまっております。しかしそれが幾らで、どういうふうな方法でということは今研究中でございます。従いまして来年度そういう方々に対しまして交付公債ということになれば、利子を今から見積っておかなければなりません。その利子の見積り方をどこへ持っていくかということは、交付公債であれば国債費へ持っていくことが適当であろうと思って、国債費へ持っていったのであります。  しからば十億円の根拠はどうかということでありますが、全体の金額がきまりませんし、交付の方法がこれからきまりますので、財政当局といたしましては一応つまみ金と言っては語弊がございますが、一応十億円として計上してあります。そうして決定した後におきまして適当な措置をとることが至当であると考えたのであります。   〔「つまみ金とは何だ」と呼ぶ者あり〕
  226. 井手以誠

    ○井手委員 子供が先に生まれるということはおかしな話でございます。なるほど引揚者、在外資産所有者のあの熱望にこたえるために何らか予算に措置しなければならぬという意思は、それはよくわかります。わかりますけれども、あのやかましい大蔵当局のやり方としては、元本がきまらぬで、積算の基礎がなくて利子だけ計上するということは許せないことだと思う。    〔「つまみ金はいかぬ」と呼ぶ者あり〕
  227. 池田勇人

    ○池田国務大臣 つまみ金とは言っておりません。一応十億円を入れたのでありますが、大蔵当局といたしましても、今厚生大臣の方でお考えになっておるのでございますから、それがきまりまして措置をとろう。しかしこれを予算上うたっておかないというといけませんから、一応十億にしておるのであります。きまりましてから適当な方法を講じたいと思います。
  228. 井手以誠

    ○井手委員 それは大蔵大臣の引揚者に対する気持はわかりますけれども、財政法上はこれは許せないと思う。気持は、今の状態はわかります。わかりますけれども、この予算委員会における審議としては、これは許すわけには参りません。ここではっきりおっしゃることができませんならば、休憩してもよろしゅうございます、ほかの方法をとってもよろしゅうございますけれども、積算の基礎を何してもらいたい。もし後日必要であるならば、予備費で組まれることもできましよう。それを国債費で、はっきりした費目でもって計上しておるということであれば、積算の基礎を私ども承知しなくては、このまま審議を続けるわけにはいかぬと思う。もしこの公開の席上で工合が悪いとおっしゃれば、また方法もあるでありましょう。一つその点の御配慮を私は委員長にもお願いしたいと思います。
  229. 池田勇人

    ○池田国務大臣 先ほど申し上げた通りでございまして、今総額を研究しておられますのでございますから、その総額がきまりましてから、適当な措置がとれるのでございます。
  230. 柳田秀一

    ○柳田委員 議事進行について。ただいま予算問答を聞いておりましても、一応利子を計上するからにはやはり元本の目安がなければならぬ。腰だめなら腰だめとはっきりおっしゃればいいのをつまみ金、そんなものはあるわけはない。実際腰だめなら一応予備費でちゃんと組むこともできる。一応款項目をはっきりした以上は、利子が十億円ならば十億円の一応目安がある。目安はあるけれども、今後厚生省において在外資産の問題をさらに検討した結果、多少の変更もあるかもしれぬというのならわれわれは了承するのです。それがまだそこまできまっておらぬ――われわれは何ら無理を要求しているのではない。ただ何でも了承しろ、ただごまかしてほおかぶりして通そうとするならば、私は承服できない。そういうような態度をとるならば、私は暫時休憩しなければならないと思う。社会党は今まで協力して予算の審議に応じてきましたけれども、これ以上は協力できない。われわれの協力には限度がある。
  231. 山崎巖

    山崎委員長 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  232. 山崎巖

    山崎委員長 速記を始めて。暫時休憩いたします。    午後六時九分休憩      ――――◇―――――   〔休憩後は開会に至らなかった〕