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1957-05-17 第26回国会 衆議院 本会議 第43号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年五月十七日(金曜日)     ━━━━━━━━━━━━━   昭和三十二年五月十七日    午後一時 本会議     ━━━━━━━━━━━━━ ○本日の会議に付した案件  岸内閣不信任決議案淺沼稻次郎君外四名提   出)  青函隧道実現に関する決議案三木武夫君外六   名提出)  日本国とノールウェーとの間の通商航海条約の   批准について承認を求めるの件(参議院送   付)  関税及び貿易に関する一般協定改正に関する   諸議定書受諾について承認を求めるの件(   参議院送付)  貿易協力機関に関する協定受諾   について承認を求めるの件(参議院送付)  所得に対する租税に関する二重課   税の回避及び脱税の防止のための日本国とア   メリカ合衆国との間の条約補足議定書の締   結について承認を求めるの件(参議院送付)  旅館業法の一部を改正する法律案   (内閣提出参議院送付)  接収貴金属等の処理に関する法律案(第二十四   回国会内閣提出)    午後二時二十八分開議
  2. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) これより会議を開きます。      ――――◇―――――  岸内閣不信任決議案淺沼稻次郎君外四名提出)     (委員会審査省略要求案件
  3. 山中貞則

    山中貞則君 議案上程に関する緊急動議提出いたします。すなわち、淺沼稻次郎君外四名提出岸内閣不信任次議案は、提出者要求通り委員会審査を省略してこの際これを上程し、その審議を進められんことを望みます。
  4. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 山中君の動議に御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。岸内閣不信任決議案議題といたします。提出者趣旨弁明を許します。河上丈太郎君。     ―――――――――――――  岸内閣不信任決議案   岸内閣不信任決議  衆議院は、岸内閣を信任せず。 右決議する。     ―――――――――――――   〔河上丈太郎登壇
  6. 河上丈太郎

    河上丈太郎君 私は、ただいま議題と相なりました岸内閣不信任決議案に対しまして、日本社会党を代表して提案趣旨を弁明せんとするものであります。(拍手)  まず、決議案の案文を朗読いたします。     決議  衆議院は、岸内閣を信任せず。   右決議する。   〔拍手〕  岸内閣は、石橋内閣のあとを受けて、保守政権遺産相続者として登場したものでありまするが、成立以来いまだ三カ月を出ていないのであります。通常の常識をもっていたしますれば、三カ月間の実績しか持たない内閣不信任理由があるべきはずはないのでありまするけれども、岸内閣に限っては、とうていわれわれの許しがたい多くの理由が存在するのであります。(拍手)  まず第一に、岸内閣は正当に生まれた内閣ではないと私は思っております。(拍手民主主義のルールに基く嫡出子ではないと私は考えているのであります。(拍手)われわれは、石橋内閣の出現したときにも、民主主義の常道にのっとって選挙の洗礼を受くべきことを要求したのでありまするけれども、岸内閣に至っては、石橋内閣の代用品として登場し、そのまま居すわってしまったのでありまして、国民としては、全く予期せざる内閣の出現であるのであります。(拍手)従って岸内閣としては、何をおいてもまず国民の信を問うべきであるのにかかわらず、これをほおかぶりして、国会内における多数を頼んで、国民承認せざる内治、外交路線を傍若無人に驀進せんとしているのであります。これもわれわれの断じて承認せざるところであって、不信任の第一の理由はここに存するのであります。(拍手)  ことに、私が遺憾にたえないことは、岸内閣成立以来、二つの選挙が行われました。一つは山口県の知事の選挙であり、一つは大阪の参議院補欠選挙でありまするが、この二回の選挙があったにかかわらず、岸総理は、選挙区から熱心なる依頼があったにもかかわらず、選挙戦に臨まなかったのであります。聞くところによると、総理が出て行って選挙に負けたならば岸内閣の株が暴落するであろうという口実のもとに、彼は選挙に出なかったと伝えられておるのであります。(拍手)私は、もしも岸君が民衆政治家であったならば、自己の政治的信念国民に訴うべき絶好の機会としてみずから進んで選挙戦に応援すべきであると私は信じておるのであります。(拍手)この点においても、岸君が選挙戦に行かないのは、民衆批判を彼がおそれておるからだと私は信ずるものであります。(拍手)私は、この点において、岸君は民主的政治家としての適性を欠いておるのであって日本政治の前進のために、岸君の退陣要求せざるを得ないのであります。(拍手)  次に、岸内閣不信任する第二の理由は、岸内閣反動性にあるのであります。岸君は、その半生の経歴の示すように、商工官僚として出発し、軍閥と妥協し、これと結びついてその政治的進路を開拓してきた政治家であるのであります。(拍手)岸君にまつわるものは、抜くべからざる官僚性とその反動性にあると、私は言いたいのであります。(拍手)最近わが国政治がややもすれば統制経済時代の陰うつな空気に包まれんとしているのは、主として岸内閣官僚性反動性によるものであると断ぜざるを得ないのであります。(拍手憲法改悪して、再軍備徴兵制への道を驀進せんとするがごときはその一例であり、核兵器保有を合理化せんとするのもその一例であり、労働法規改悪して労働運動の取締りを強化せんとするがごときこれらの事態は、みなその現われであると私は思うのであります。(拍手)しかも、今回、岸君が、国民に諮ることなくしてアメリカに参り、アメリカの新国防政策の一翼をになわんとしておることは私たちとして断じて許すことができないのであります。われわれは、岸君の過去の閲歴に徴して、すでに何をなしたかというよりも、これから何をなさんとしているのかということが、岸内閣のこれからの政治的路線に対してより多く不信任を生ぜざるを得ないのであります。(拍手)  第三に、われわれが岸内閣不信任する理由は、岸外交の逆コースについてであります。岸君は、口を開けば、経済外交を説き、東南アジアとの国交緊密化を説いていました。その言葉の限りにおいては、われわれとしては反対すべき理由はごうもございません。しかし、その言うこととその行うこと、言行一致しないのが岸内閣の正体であると私は思うのであります。経済外交東南アジアとの国交を説く以上、わが国貿易に対する重大なる圧迫となっているのはココム制限チンコム制限でありますけれども、チンコム撤廃ココム緩和のために積極的なる態度政府はとらない。これはどうしたものであるかと私は言いたいのであります。また、東南アジア諸国との経済提携について、どれだけ積極的な意図を示したでありましょうか。ただ、アメリカ訪問のためのカムフラージュとして、おざなりに東南アジア諸国を回ることによって、どれだけの成果が期待できるでありましょうか。私は岸君の東南アジアの旅行にけちをつけようという考えはありません。しかし、東南アジア諸国民の間にほうはいとして沸きつつあるところの民族主義とその独立主義精神を理解せずして東南アジアに行っても無意味だと私は思うのであります。(拍手)  対米外交につきましても、私が岸君の注意を喚起したいことは、わが国政治家で、米国を訪問して重い荷物を背負わされずに帰ってきた者は一人もないということであるのであります。吉田総理はいわずもがな、池田君の池田ロバートソン会談といい、重光君の重光ダレス会談といい、日本はこれらの政治家の渡米によって負担し切れない重荷を押しつけられてきたのであります。(拍手)岸君は、今渡米して、何らの荷物を背負わされずに帰ってくるという自信があるかどうか。岸君は、おそらくは、アメリカに行って何かのおみやげを持って岸ブームを起し、それを機会に、内閣の改造、総選挙を行う考えでありましょうけれども、かかる岸構想は、将来日本に過般の戦争当時のような災厄を再び招来するのではないかと私は心配をして、岸君に心から警告を発するのであります。(拍手)  この国会の当初において、アメリカ国防当局日本沖繩原子機動部隊を移駐せしむることを検討中であるという言明がありましたに対し、当時、わが社会党は、直ちに政府にこの反対を申し入れました。当時、政府もこの問題を重要視いたし、米原子機動部隊日本駐留は認めがたいと決定し、岸総理国会答弁においてもその旨を言明しました。しかるに、その後、国会の論争が進むにつれて、静岡の化学教育部隊原子戦争被害対策細菌戦毒ガス戦準備対策を行なっていることが明らかにされ、また、ナイキ、コーポラル、オネスト・ジョンなどの誘導弾新兵器日本自衛隊への供与方を申し入れていることなどが明らかにされたので、日本国民は、今さらのごとく、あぜんといたしたのである。さらに、五月七日に至ると、岸総理みずから、かつての公約を無視して、将来自衛用核兵器を備えても憲法違反ではないと、驚くべき言辞を発するに至ったのであります。われわれは一度は耳を疑ったのでありますが、これが岸君がアメリカに行く目的と何か一脈の関連性を持つことを考えるに至って、今さら国民は不安と疑惑の念に満たされておるのであります。こういうことは日本の平和にとって致命的な挑戦であると私は信じておるものであります。(拍手)のみならず、日本の運命を左右する重大な問題であるとも考えます。日本国民は、原水爆兵器実験に対して心からなる怒りを感じ、クリスマス島における実験反対し、ソ連実験中止方を申し入れ、政府また、この世論に押されて、英米ソ各国に対し実験禁止の働きかけをいたしましたが、いずぐんぞ知らん、これはただ日本国民世論に追従する見せかけであって、真意は全くその逆であったのであります。(拍手)われわれは、ここに、岸内閣の本質を見、その危険なる性格を看取するがゆえに、あえてその萌芽を取り去る意味において岸内閣退陣要求せざるを得ないのであります。(拍手)  第四に、私たち岸内閣不信任するのは、その経済政策失敗が今やあまりにも明白になったからであります。(拍手)本年度予算編成の基礎となった内外経済見通しについて、わが党は、始終、政府の判断のずさんと甘さについて警告して参りました。すなわち、政府が一枚看板としておる一千億減税、一千億施策のついに不可能となるべきこと、そうして、経済政策の破綻はまず国際収支の悪化となって現わるべきこと、政府施策が実行に移されるときは、まずインフレ懸念となって現われるべく、もしこれを人為的にためんとするならば極端なデフレ政策に移行せざるを得ないこと等を指摘して、政府に追ったのである。(拍手)しかし、政府は、われわれの言うことに耳を傾けない。しかるに、最近の事情は、幸か不幸か、われわれの見通し一つ残らず的中したではございませんか。(拍手)  われわれが警告した国際収支は、昨年十二月末の外貨保有量十四億三千五百万ドルから、去る四月末には十一億六百万ドルと、三億二千九百万ドルの減少を見たのである。しこうして、この十一億ドルのうちに、焦げつき債権二億七千万ドル、ユーザンス等の借り入れ約四億七千万ドル等を差し引くときには、純保有量は三億六千六百万ドルに減少したのである。しかも、貿易前途はどうかというならば、輸入信用状の開設は月に三億ドル台を記録し、前途、改善の見込みはありません。それで、対策として政府は、国内的には再度にわたる日銀公定歩合引き上げを行い、直接輸入阻止のためにポンド・ユーザンス制限を開始いたしました。これは、明らかに、政府がつい本国会の初頭にとっていたインフレ政策からデフレ政策に転換した証拠であると私は思うわけである。(拍手インフレ懸念なしと手放しで強弁しておった政府は、これを何と見るのでありましょうか。あわてふためいて、金融引き締め、デフレ政策によって、おそらくは、中小企業の倒産は相次いで起るでありましょう。その責任政府はどうしてとろうとするのでありましょうか。私は、かかる無定見なる経済政策責任をとる意味においても、すみやかに岸内閣退陣してみずからの不明を国民の前に謝すべきであると信ずるのであります。(拍手)  岸内閣不信任する第五の理由は、岸君が依然として胸の奥に小選挙制案を隠して時あらばこれを実現しようとすることであると思うのである、伝えられるところによるなれば、自民党内の党内対立は今なお根強いものがあり、これを解消するためには小選挙区以外にはないとの考えをもってこの実現の機会をねらっているといわれておるのである。岸内閣は、石橋内閣遺産を継承して、そのまま今日に至っておるのであるが、派閥抗争を絵にかいたようなこの内閣は、最近における最も粗末なる内閣であると私は思うのであります。(拍手)私は個々の閣僚につきとやかくは申しませんけれども、国会答弁を通じてこれを見まするならば、現下の重大なる内外情勢に対処するには、あまりに貧弱であり、あまりに無能であると私は思うのである。(拍手)ことに、労働行政経済企画厚生行政等について、その所属閣僚の定見のいかにも貧弱なことには、世人はあぜんたるものがあるのである。私は、岸内閣はかかる弱体閣僚を擁する意味においても、すみやかに退陣すべきものと信ずるものである。(拍手)  およそ内閣性格は首班の性格によって代表せられるのであるが、岸首相は、先ほど申した通り、生まれながらの官僚であり、反動的な政治家であることは、岸内閣の色彩をいよいよ陰うつなるものといたしておるのであります。その最も露骨なる現われが労働政策に表現されると思うのであります。(拍手)すなわち、岸首相労働運動に対する何らの理解も持たないのみか、順法口実のもとに労働運動を積極的に弾圧せんとしておるのであります。しかしながら、諸君順法の第一義は何であるか。憲法を守ることであると私は言いたいのであります。(拍手岸内閣憲法を守っておるでありましょうか。私の見るところによると、わが現行憲法進歩性の象徴は、第九条の絶対平和主義立場と、第二十八条の労働基本権――団結権罷業権団体交渉権基本的人権と認めたものであると信ずるのである。(拍手)しかるに、岸内閣は、この憲法の二大美点を果して守っているでありましょうか。これを改廃しようとしての陰謀を企てているではありませんか。(拍手)  私は最後に申し上げます。私は個人的には岸君とは多年の友人でありまして、私情において忍びがたいものがあるが、大義親を滅してあえて国民のために岸内閣不信任案提案をする次第であります。(拍手)各位の御賛成を求め、私の趣旨弁明を終ります。(拍手
  7. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 討論の通告があります。願次これを許します。倉石忠雄君。   〔倉石忠雄登壇
  8. 倉石忠雄

    倉石忠雄君 私は、ただいま上程せられましたる内閣不信任案に対し、自由民主党を代表して反対の意思を表明せんとするものであります。(拍手)  ただいま提案者の御趣意を承わりますると、第一には、政府昭和三十二年度予算編成方針及びその後のわが国経済についての批判を加えられておりますけれども、三十二年度予算は、御承知のごとく、わが国財政史上まれに見る好景気民主安定予算であります。第一次大戦中も、わが国は非常なる好景気にめぐまれ、財政も膨張いたしたのでありまするが、これは戦争という不安定な要素に基因したものでありました。しかも、一たび戦争が終結を告げまするや、たちまち世界的大恐慌を招いたのであります。しかるに、現在のわが国経済の好調は、かつての戦争景気のごとき不安定なものではなくて、安定性持続性のあるものであることは御承知通りであります。(拍手)すなわち、この基盤の上に立って編成せられましたる昭和三十二年度予算の特色は、一方においては、一千百億円に及ぶ大規模なる直接税の減税であり、他方においては、一千億円に近い政策費の増額と、六百八十億円余りの財政投融資の拡大であります。社会党は、党利党略立場から、インフレ予算などと逆宣伝に努めておりまするけれども、われわれといえども、決してこの点について手放し安心感を持っておるものではありません。ことに、昨今の国際収支状況等を勘案してみましたならば、われわれはこの点については深い憂いをいたしておるものでありまするけれども、御承知のごとく、幸いに、政府日銀の適切なる措置等もあり、生産は引き続き順調に伸び、物価の基調も平静であることは、国民とともにまことに同慶にたえない次第であります。(拍手)  さらに、不信任理由一つに、「岸内閣は、自ら公労法に基く仲裁裁定をじゅうりんしながら、国鉄以下公企業労働者に対して、七百名にあまる処分を行い」云々とありまするけれども、この不信任案理由書を作成されましたる社会党責任者は、国鉄等の公社の労働組合に対する処分権政府に存在するものであるとの錯覚の上に立っての立論でありましょう。(拍手)法律的に申しましたならば、このことは全くのナンセンスであります。(拍手)しかしながら、私は、今しばらくこのことは問題にしないことといたしまして、今般のいわゆる総評春季闘争中、国鉄労働組合等に対する断固たる処分要求する声は、およそ天下の世論であります。(拍手)しかるに、社会党は、この非合法の実力行使をあえて支持されたるのみならず、組合がその処分に対するいわゆる抗議ストを行わんとするや、社会党議員諸君が、みずからその違法なるスト行為の前線に立ち、国会審議を放擲して組合違法行為を援護したる態度は、(拍手)まことに言語道断と申すべく、巷間伝うるところ、社会党総評の一政治部局であるといわれておりまするけれども、身いやしくも立法の府に席を連ねながら、あえて違法行為援護者たらんとする諸君政治的良心を私は疑わざるを得ないのであります。(拍手)  さらに、また、不信任理由一つにいわく、政府憲法調査会発足等憲法改悪意図を明らかにし云々とございますけれども、われらの政府及びその与党の念願とするところは、憲法改悪にあらすして、その改正であります。(拍手)そもそも、わが国は、敗戦の結果、連合軍に占領せられ、憲法以上の強い力によって政治経済教育等、あらゆる面において、当初連合国が予定したプランの通り強くゆがめられたことは、御承知通りであります。今や戦後十年、われらは幸いにして独立を回復し、日本民族自身の血の中に流れる祖国愛同胞愛基調としたる新しき民主主義を自由に打ち立てることのできる立場に立ったのであります。今や、この純潔なる民族意識に根をおろした庶政一新を断行すべきときであります。(拍手)この意味において、国家の基本法たる憲法に対してもまた日本人みずからの深き英知と反省の上に立って再検討をなすべき段階であるというのが、憲法調査会制定精神であります。(拍手社会党諸君も、この意味においておおらかな気持を持ってこの調査会に参加せられ、十分に諸君の意見を表明せらるべきであると思うのであります。社会党諸君は、今や、われわれが、日本民族の再出発に当り、憲法に対する反省検討をなさんとするとき、この呼びかけに対しては、かたくからを閉ざしておられますけれども、社会党は、諸君が将来政権を担当し得る場合あわとせば、みずから憲法改正を断行することを表明しておられたではありませんか。(拍手)すなわち、左派社会党諸君が公表せられておりますその綱領の第三には、諸君承知のごとく、「中央議会では安定した絶対多数に立って、社会主義の原則に従って憲法改正し、基本的な産業の国有化、又は公有化を確立し、行政、司法の諸機関や、教育、新聞、出版、放送などの諸機構を、社会主義の方向に適応させる。」と言っておられるではありませんか。(拍手)すなわち、これは、今日の社会党諸君の実態を考えてみまするならば、私は、諸君といえども、この憲法改正に対して国民が熱情を持つことには、きわめて同情を持たれる必要があると思うのであります。  また、一九五三年の三月二十三日付の日本タイムスの報道するところによりまするならば、御承知のごとく、当時、ラングーンにおいてアジア社会党大会に御出席なさいましたる鈴木委員長が、この大会に参っておりまとたUPの記者のレオナルド・ファーマンという男と単独会見をなさいました記事が報道せられ、諸君もごらんになったでありましょう。これによれば、社会主義政党政権をとったときには再軍備考えられるということを述べておられます。(拍手諸君、かつて当時の社会党諸君は、再軍備戦争に通ずる道であるとなして、「青年よ、銃をとるな」、「婦人よ、夫や子供を戦地に送るな」と、まことに里耳に入りやすきスローガンを全国津々浦々に張りめぐらした諸君行動と、諸君委員長が国外において言明せられたるこのこととを、いかに調整なさるのでありましょうか。かくのごときは、実に、みずからの良心をみずから欺き、純朴なる国民大衆を愚弄すること、これよりはなはだしきはなしといわなければならないのであります。(拍手)  さらに、また、社会党は、その統一政策大綱の中において、日本を中心とする関係諸国、なかんずく中共ソ連との間に個別的不可侵の取りきめに努め、日米中ソ主要国とする集団的不可侵及び安全保障条約を結ぶと強調しておられるのでありまするが、現実国際情勢を前にして、果してそのようなことが考えられるでありましょうか。社会党に比較的好意的であると見られている言論機関の者ですら、現実離れのした社会党警告を発しておるのも、けだし、この辺の消息を物語るものでありましょう。(拍手)  また、社会党は、その外交政策の中で、わが国国際連合の中に立つことを認めており、国連に加入し得たことを大いに賛成せられたのでありまするけれども、しからば、国連安全保障理事国の中に国民政府が存在いたしておる現実も当然御承知のはずであります。国民政府反対いたしましたならば、わが国は今なお国連に加入できなかったことも御存じのはずであります。(拍手)しかるに、昨日、この壇上において勝間田清一君は、わが国吉田内閣がそもそも国民政府外交関係を結んだことが大失敗であると大声疾呼せられたのでありまするけれども、その仰せられるところ、まことに論理一貫せず、現実を全く無視した空論であります。(拍手国際連合においては、朝鮮戦争以来、中共に対して侵略国たるの烙印を押し、これを国連に加入せしめざるの決議を行なっておるのでありまするが、この国際連合のいわゆる侵略国国交を回復することが世界の平和、日本の平和を招来するゆえんであるというのが、日本社会党外交方針であります。  これを要するに、社会党の主張と行動は全く支離滅裂、われわれの了解に苦しむところであります。(拍手諸君、二大政党対立わが国国会において、われらの反対党としては、かくのごとき社会党一党だけが存在するのみであることを考えますときに、われわれの責任の重かつ大なるを痛感せざるを得ないのであります。(拍手)  私は、この際、最後岸内閣総理大臣及びその閣僚諸公に希望いたします。今や数十分後においては、政府はここにあらためて国権の最高機関たる衆議院において新しき信任投票を与えられるのであります。(拍手)このことは、近く友邦諸国訪問に旅立たれる総理大臣に対しては、何ものにもまさる美しきはなむけであります。(拍手政府は、今日をもって新しきスタートをされ、国民代表によるこの新たなる信頼に対して深き責任を感ぜちれ、この国民の負託にこたえられまするよう、一そうの努力と精進を切望いたしまして、私の反対討論といたす次第であります。(拍手
  9. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) ただいまの倉石君の発言中、もし不穏当の言辞があれば、速記録を取り調べの上、適当の処置をとることといたします。  猪俣浩三君。   〔猪俣浩三登壇
  10. 猪俣浩三

    猪俣浩三君 私は、日本社会党を代表して、岸内閣不信任決議案に賛意を表するものであります。(拍手)  特に、岸総理不信任の賛成の理由について、以下、説明したいと思います。  岸総理は広い世界にただ一人の人であります。第二次世界大戦の結果、ドイツ、イタリア、日本等はむざんな敗戦国となりましたが、この敗戦国の戦争を引き起した責任者は、大てい、裁判の結果刑死したか、テロにやられたか、病没したかで、現存する人は少いと思います。いわんや、追放解除後数年ならずして国会議員に選ばれ、大政党の幹事長となり、一躍一国の総理大臣になったというがごとき人は、ただの一人もおりません。(拍手)その意味において、岸総理の存在は世界注目の的でありましょう。(拍手わが国民、特に保守政党の民主政治運用に関する知能の測定課題として、民族心理学、政治学の興味ある研究題目でありましよう。(拍手)  岸総理が、戦時中、日本国及び満州国においてどんな考えを持ち、どんな行為をやっていたか、私も二、三知っていることがあります。(拍手岸総理戦争責任は、法律的にはとにかく、道義的には重大で、深刻であります。(拍手)しかし、今はそれを申しますまい。岸総理自身のよくおわかりのことだと存じます。(拍手)だから、岸総理は、民主政治のために努力すると誓われました。岸総理が戦時中の行動責任を償う道は、日本の反動化、軍事化を阻止し、わが国民及び世界人類の平和確立のために最善を尽すことであります。(拍手岸総理が真に反省しているならば、この平和達成の道にどんなに努力しても切りばないはずであります。(拍手)  しかるに、岸総理の言動はどうでありましょうか。自由党の憲法調査会の会長としては、明治憲法まがいの軍国主義復活の改正案を発表し、幹事長としては、憲法改正に熱心な余り、選挙改正し、ゲリマンダーといわれる小選挙区制を持ち出し、自民党議員を三分の二以上獲得し、その憲法改悪の野望を達成せんとし、自民党総裁としては、自民党議員をして紀元節の復活を提案せしめ、総理としては、労働組合春季闘争に対して、かつてなき大量の処分を強要し、(拍手)ついに核兵器の保持も憲法違反にあらずと断言するに至り、日本国憲法第九条を完全に抹殺する解釈をとっておるのである。(拍手)前総理である吉田茂、鳩山一郎両氏においてすら否定しておりましたところの解釈を敢然としてとったその態度は、東条内閣時代の勇姿をしのばせるものがあります。(拍手)  憲法は、国の基本法であり、大体を規定しておるのであるから、その条文も抽象的な文言が多いのである。従って、憲法の解釈には、解釈する人の立場、世界観、人世観によって、いろいろ違った解釈が出てくるのであります。真に平和を愛好する人は、憲法第九条をすなおに受け取って、ゆがめた解釈はしないはずであります。しかも、日本においても、良心ある人は、核兵器の使用を禁止すべきことを真剣に考えておるのであります。湯川博士を初め、日本の物理学者二十五人が、西ドイツの著名な物理学者十八人による。いわゆるゲッチンゲン宣言を支持する声明を出しております。ゲッチンゲン宣言には、原水爆などの戦略的核兵器ばかりでなく、小爆弾と呼ばれる戦術的核兵器でさえ広島に投下された原爆と同様な破壊力を持つことから、核兵器の生産、実験、使用にはどのような方法でも参加する用意はないと宣言しておる。歴代首相があえてとらなかった核兵器の使用は憲法に違反しないという新解釈をとった岸総理態度は、岸総理自身の世界観の現われとして重視しなければなりません。(拍手)岸総理大臣は、やはり、東条内閣時代の岸商工大臣とあまり違わない立場に立っておられるのではないかと、われわれは理解せざるを得ないのであります。(拍手)  かかる印象は日本国民だけではないのでありまして、岸総理が訪問されようとする東南アジアの人々はどう思うでありましょうか。この原水爆禁止問題は大きなアジア各国の共通の議題ではありませんか。しかも、松下特使を派遣された趣旨と全く矛盾する態度をとられたことは、心ある諸国民に不信の念を与え、そして、松下特使の目的と全く相反する影響を英米に与えております。  読売新聞のロンドン特派員の報ずるところによれば、「防衛用の原子兵器の所有は憲法違反にならないとの岸声明は、クリスマス島の実験に対する内外からの反対で、うしろめたい立場に追い込まれたマクミラン政府に、側面から大きな援助を与えた形で、(拍手)保守党筋の間にも旱天に慈雨を得たような安心な色が浮び出ている」、こうなっています。イギリスは、水爆実験の期日を予想よりひどく早めて、去る十五日夜やったようでありますが、春秋の筆法をとるならば、岸総理憲法解釈の声明がこの実験を早めたともいえるのであります。(拍手)  同じく、最近の新聞の解説には、「岸首相は、実験禁止は、言明問題とは別で、継続して行うと言い、一方、核兵器の持ち込みは拒否すると言っているが、国際的に見れば、いずれも説得が困難になったことは確実で、今後の核兵器をめぐる対米英関係は受身の立場に立たされることになったわけである。東南アジアの反響はまだはっきりしていないが、最も注目される岸・ネール会談での原水爆問題が印象を弱くしたことは間違いないようで、一般的にも東南アジア諸国の対日警戒心を思い起させる危険が多い」と論じております。(拍手)  そもそも、自衛のためには戦争してもいいし、どんな兵器を持ってもいいという考え方は、国家の自衛権なるものの国際法上の意義を知らないところからくるのであります。国家の自衛権という概念は、近代国際法の概念として、ほぼ確定したものでありますが、それによれば、国家の自衛権とは、国家または国民に対し急迫不正の侵害がある場合にやむを得ずこれに反撃する権利ということになっています。国際法上、自衛権の概念が発達しなかったころには、国家に自存の権利があるとし、自存の権利の内容には、急迫な侵害に対する反撃する権利も、将来起るかもしらない侵害に対し軍隊、軍備、同盟などの用意をすることをも、国家の自存権として認められていたのでありますが、近代自衛権の概念の発達に伴い、かような説をとる学者はなくなり、結局、自衛権とは個人の正当防衛権と同趣旨のものと意義されるようになったのであります。近代の自衛権の内容には、常時戦力を保持することや、防衛の設備を持つことなどは入っていないのであります。国家には自衛権があるから、自衛のためには戦争に訴えても核兵器を持ってもいいのだという議論は間違いであって、自衛の方法は、その国の憲法や法律によって規定されております。日本は、憲法第九条によって戦力の保持も、自衛権の発動として戦争に訴えることも、ことごとくできないようになっております。自衛戦争と侵略戦争と、一体、諸君はどうして区別するのであるか。(拍手)日清、日露戦争を初め、満州事変も、太平洋戦争も、みんな自衛戦争であったではないか。(拍手)満州事変については国際連盟の調査団派遣がありましたが、日本はどこまでも自衛権の発動だと言い張ったことは、当時東条英機とともに満州国の三羽ガラスとうたわれたところの岸総理自身がよく知っているはずである。(拍手)不戦条約に自衛戦争を禁止しなかったことが、この条約戦争防止に何の役にも立たなかった原因であります。  最近できたアメリカにおける最小の核兵器といえども、広島の原爆の二十分の一くらいの威力があるそうで、数千、数万の大砲に匹敵します。太平洋戦争において、あの激しい空襲であっても、日本内地に投下せられた爆弾の全量は十六万トンでありましたが、B52により運ばれる水爆は、実に一発にして二千万トンの爆発力があるのである。(拍手)この敵機の侵入を防ぐには、自分の国の基地の飛行場からでは不可能であるということは、イギリス政府の国防白書によっても明らかだし、専門家が立証しているところであります。ソ連は、原子兵器の基地には原子兵器でお見舞いすると警告を発しておる。アメリカの陸軍大佐ラインハルトは、日本と西ドイツをソ連の原爆攻撃の吸収地たらしめるのであるということを言っておる。(拍手)かかる時代に核兵器を持つことは、どういう意味があるのであるか。無意味なることを知りながら、しかして、持つ意思がないならば、何ゆえに核兵器を持つことは憲法に違反しないなどということを、今日、東南アジア及びアメリカ行きを前にして言明したのであろうか。(拍手岸総理のごとき憲法解釈をする思想の人が総理の地位のままにアメリカに行かれることは危険千万と思います。(拍手)  アメリカが、日本を原水爆基地として、自衛隊を核兵器を持つ部隊たらしめたいと念願していることは、世界公知の事実であります。アメリカには、ダレスなどという老獪な人が控えております。岸総理の言明を喜んでおる。このアメリカの支配階級に対し、どんな抵抗をしようとするのでありましょうか。岸総理がどんなうまいことを言おうが、岸総理の全身から発散するところの体臭は、国民の鋭敏な嗅覚にかぎとられて信用しません。(拍手)  本日の新聞投書欄にも、かようなことがある。「岸内閣は、一方では、特使を英国に派遣しながら、他方、国連では実験を認める登録制を提唱し、さらに日本への核兵器持ち込みを考えているという。それは私たちが最初からおそれていたことだった。この調子では、渡米する岸首相が、米国の予算教書にあった、日本及び沖繩への原子部隊の配置の内約束をしてくるのではないかとの不信を強めざるを得ない」ということが投書欄に出ておる。(拍手)  本日、大隈講堂には、五千の学生が、この原爆実験に対する反対の声明と、岸内閣に対する反撃の声をあげておる。日比谷音楽堂の前には二万の大衆が集会しておる。今、国会を包囲するでありましょう。かような、ほうはいたる世論を、よく諸君考えてどうか――昨日の岸総理の渡米目的を聞いてみましても、大した確たる自信もなく、何の目当てもないような答弁でありました。そんな大した目標でもないならば、この際だから、行くのはやめてほしい。行ったら、ろくなことにならぬのであります。(拍手)必ずや大へんなおみやげを持ってくるのではないか。  諸君は、わが党の鈴木委員長が再軍備でもいいと言うたなんという、とほうもない議論を言っている。今、鈴木委員長が一身上の弁明にここへ立つというのを、私はとめて、私がかわる――さようなことは絶対にない。鈴木委員長は言っていない。これは、諸君がもしゼントルマンであるならば、一応、鈴木委員長に、かような新聞記事があるが、君は果してかようなことを言ったかどうかを確かめて、しかる後に、初めて「言った」ということになるならば、ここにそれは発表すべきものである。しかるにかかわらず、外国の新聞を何ら確かめもせず、さようなことをここに揚言するということは、不謹慎もはなはだしいと、私は憤激にたえないのであります。(拍手)  以上をもちまして、岸総理大臣の渡米を前にして、私は、行きたいなら一人で行っていただきたい。総理大臣という資格になっておいでになることは、私は極力とめたいと思うて、この不信任案に賛成するのであります。(拍手
  11. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) これにて討論は終局いたしました。  採決いたします。この採決は記名投票をもって行います。本決議案に賛成の諸君は白票、反対諸君に青票を持参せられんことを望みます。閉鎖。  氏名点呼を命じます。   〔参事氏名を点呼〕   〔各員投票〕
  12. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 投票漏れはありませんか。――投票漏れなしと認めます。投票箱閉鎖。開匣。開鎖。  投票を計算いたさせます。   〔参事投票を計算〕
  13. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 投票の結果を事務総長より報告いたさせます。   〔事務総長朗読〕  投票総数 四百   可とする者(白票)   百五十一   〔拍手〕   否とする者(青票)  二百四十九   〔拍手
  14. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 右の結果、岸内閣不信任決議案は否決されました。(拍手)     ―――――――――――――  淺沼稻次郎君外四名提出岸内閣不信任決議案を可とする議員の氏名       阿部 五郎君    青野 武一君       赤路 友藏君    赤松  勇君       茜ケ久保重光君    淺沼稻次郎君       足鹿  覺君    飛鳥田一雄君       有馬 輝武君    淡谷 悠藏君       井岡 大治君    井谷 正吉君       井手 以誠君    井上 良二君       井堀 繁雄君    伊藤卯四郎君       猪俣 浩三君    池田 禎治君       石田 宥全君    石野 久男君       石橋 政嗣君    石村 英雄君       石山 權作君    稲富 稜人君       稻村 隆一君    今澄  勇君       今村  等君    受田 新吉君       小川 豊明君    大西 正道君       大矢 省三君    岡  良一君       岡本 隆一君    加賀田 進君       加藤 清二君    風見  章君       春日 一幸君    片島  港君       勝間田清一君    上林與市郎君       神近 市子君    神田 大作君       川俣 清音君    川村 継義君       河上丈太郎君    河野  正君       木下  哲君    木原津與志君       菊地養之輔君    北山 愛郎君       久保田鶴松君    栗原 俊夫君       小平  忠君    小牧 次生君       小松  幹君    小山  亮君       五島 虎雄君    河野  密君       佐々木更三君    佐々木良作君       佐竹 新市君    佐竹 晴記君       佐藤觀次郎君    坂本 泰良君       櫻井 奎夫君    志村 茂治君       島上善五郎君    下川儀太郎君       下平 正一君    杉山元治郎君       鈴木茂三郎君    鈴木 義男君       田中幾三郎君    田中織之進君       田中 武夫君    田中 利勝君       田中 稔男君    田原 春次君       田万 廣文君    多賀谷真稔君       高津 正道君    滝井 義高君       竹谷源太郎君    楯 兼次郎君       辻原 弘市君    戸叶 里子君       中井徳次郎君    中居英太郎君       中崎  敏君    中島  巖君       中原 健次君    中村 高一君       中村 時雄君    中村 英男君       永井勝次郎君    成田 知巳君       西尾 末廣君    西村 榮一君       西村 彰一君    西村 力弥君       野原  覺君    芳賀  貢君       長谷川 保君    原   茂君       原   彪君    日野 吉夫君       平岡忠次郎君    平田 ヒデ君       福田 昌子君    帆足  計君       穗積 七郎君    細迫 兼光君       細田 綱吉君    前田榮之助君       正木  清君    松井 政吉君       松尾トシ子君    松平 忠久君       松原喜之次君    松前 重義君       松本 七郎君    三鍋 義三君       三宅 正一君    水谷長三郎君       武藤運十郎君    門司  亮君       森島 守人君    森本  靖君       八百板 正君    八木 一男君       八木  昇君    矢尾喜三郎君       安平 鹿一君    柳田 秀一君       山口シヅエ君    山口丈太郎君       山崎 始男君    山下 榮二君       山田 長司君    山花 秀雄君       山本 幸一君    横錢 重吉君       横路 節雄君    横山 利秋君       吉川 兼光君    吉田 賢一君       和田 博雄君    渡辺 惣蔵君       川上 貫一君    小林 信一君       志賀 義雄君  否とする議員の氏名       相川 勝六君    愛知 揆一君       青木  正君    赤城 宗徳君       赤澤 正道君    秋田 大助君       足立 篤郎君    荒舩清十郎君       有田 喜一君    有馬 英治君       五十嵐吉藏君    井出一太郎君       伊東 岩男君    伊藤 郷一君       生田 宏一君    池田 清志君       池田 勇人君    池田正之輔君       石井光次郎君    石坂  繁君       一萬田尚登君    稻葉  修君       犬養  健君    今井  耕君       今松 治郎君    宇田 耕一君       植原悦二郎君    植村 武一君       臼井 莊一君    内田 常雄君       内海 安吉君    江崎 真澄君       小笠 公韶君    小笠原三九郎君       小川 半次君    小澤佐重喜君       越智  茂君    大石 武一君       大久保留次郎君    大倉 三郎君       大島 秀一君    大高  康君       大坪 保雄君    大野 市郎君       大野 伴睦君    大橋 武夫君       大平 正芳君    大村 清一君       大森 玉木君    太田 正孝君       岡崎 英城君    荻野 豊平君       奧村又十郎君    加藤 精三君       加藤 高藏君    加藤常太郎君       加藤鐐五郎君    鹿野 彦吉君       上林山榮吉君    神田  博君       亀山 孝一君    唐澤 俊樹君       川崎末五郎君    川崎 秀二君       川島正次郎君    川野 芳滿君       菅  太郎君    菅野和太郎君       簡牛 凡夫君    木崎 茂男君       木村 俊夫君    木村 文男君       菊池 義郎君    岸  信介君       北  昤吉君    北澤 直吉君       吉川 久衛君    清瀬 一郎君       久野 忠治君    草野一郎平君       楠美 省吾君    倉石 忠雄君       黒金 泰美君    小泉 純也君       小枝 一雄君    小金 義照君       小坂善太郎君    小島 徹三君       小平 久雄君    小林  郁君       小林  錡君    小山 長規君       河野 一郎君    河野 金昇君       河本 敏夫君    纐纈 彌三君       佐々木秀世君    佐藤 榮作君       齋藤 憲三君    櫻内 義雄君       笹本 一雄君    笹山茂太郎君       薩摩 雄次君    椎名悦三郎君       椎名  隆君    重政 誠之君       島村 一郎君    首藤 新八君       正力松太郎君    白浜 仁吉君       周東 英雄君    須磨彌吉郎君       杉浦 武雄君    助川 良平君       鈴木周次郎君    鈴木 善幸君       鈴木 直人君    薄田 美朝君       砂田 重政君    瀬戸山三男君       關谷 勝利君    田口長治郎君       田中伊三次君    田中 角榮君       田中 彰治君    田中 龍夫君       田中 久雄君    田中 正巳君       田村  元君    高岡 大輔君       高木 松吉君    高瀬  傳君       高橋 禎一君    高橋  等君       高見 三郎君    竹内 俊吉君       竹尾  弌君    竹山祐太郎君       千葉 三郎君    中馬 辰猪君       塚田十一郎君    塚原 俊郎君       辻  政信君    堤 康次郎君       綱島 正興君    徳田與吉郎君       徳安 實藏君    床次 徳二君       内藤 友明君    中垣 國男君       中川 俊思君    中嶋 太郎君       中曽根康弘君    中村 梅吉君       中村三之丞君    中村庸一郎君       中山 マサ君    永田 亮一君       永山 忠則君    長井  源君       灘尾 弘吉君    夏堀源三郎君       並木 芳雄君    楢橋  渡君       南條 徳男君    二階堂 進君       野澤 清人君    野田 武夫君       野依 秀市君    馬場 元治君       橋本登美三郎君    橋本 龍伍君       長谷川四郎君    畠山 鶴吉君       八田 貞義君    濱野 清吾君       早川  崇君    林讓  治君       林   博君    原 健三郎君       平野 三郎君    廣瀬 正雄君       福井 順一君    福井 盛太君       福田 赳夫君    福田 篤泰君       福永 一臣君    福永 健司君       藤枝 泉介君    藤本 捨助君       淵上房太郎君    船田  中君       古井 喜實君    古川 丈吉君       古島 義英君    保利  茂君       保科善四郎君    坊  秀男君       星島 二郎君    堀内 一雄君       堀川 恭平君    本名  武君       眞崎 勝次君    眞鍋 儀十君       前尾繁三郎君    前田房之助君       前田 正男君    牧野 良三君       町村 金五君    松浦周太郎君       松浦 東介君    松岡 松平君       松澤 雄藏君    松永  東君       松野 頼三君    松本 俊一君       松本 瀧藏君    松山 義雄君       三浦 一雄君    三木 武夫君       三田村武夫君    水田三喜男君       南好  雄君    宮澤 胤勇君       村上  勇君    村松 久義君       粟山  博君    森   清君       森下 國雄君    森山 欽司君       八木 一郎君    山口喜久一郎君       山口 好一君    山崎  巖君       山下 春江君    山手 滿男君       山中 貞則君    山本 勝市君       山本 粂吉君    山本 正一君       山本 猛夫君    山本 利壽君       山本 友一君    横井 太郎君       横川 重次君    吉田 重延君       米田 吉盛君    渡邊 良夫君       亘  四郎君      ――――◇―――――
  15. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) この際暫時休憩いたします。    午後三時四十一分休憩      ――――◇―――――    午後九時十六分開議
  16. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 休憩前に引き続き会議を開きます。      ――――◇―――――  青函隧道実現に関する決議案(三   木武夫君外六名提出)      (委員会審査省略要求案件
  17. 山中貞則

    山中貞則君 議案上程に関する緊急動議提出いたします。すなわち、三木武夫君外六名提出青函隧道実現に関する決議案は、提出者要求通り委員会審査を省略してこの際これを上程し、その審議を進められんことを望みます。
  18. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 山中君の動議に御異議ありませんか。  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  19. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。  青函随道実現に関する決議案議題といたします。提出者趣旨弁明を許します。五十嵐吉藏君。     ―――――――――――――   〔五十嵐吉藏君登壇
  20. 五十嵐吉藏

    ○五十嵐吉藏君 ただいま議題となりました青函隧道実現に関する決議案について私は、自由民主党並びに日本社会党を代表いたしまして、その趣旨を説明申し上げます。(拍手)  まず、案文を朗読いたします。     決議案   青函隧道の貫通は、北海道と東北を直結し、さらに本州との連けいを緊密にし、国土総合開発の一環としての北海道並びに東北開発の進展を期する唯一最良の方策であって、今日わが国の現状にかんがみ、はたまた本院院議の趣旨にかんがみ、まさに国家の緊要事である。   よって、政府は、万難を排して青函隧道の実現にまい進せられたい。    右決議する。   〔拍手〕  さて北海道並びに東北地方開発の国家的緊要性については、さきに本院の決議があり、今さら言を要せざるところでありますが、この雄大なる開発計画は、北海道と東北を直結し、本州との有機的な緊密なる連係のもとに融合せしめることによって、相待って初めてその発展を期待することができるのであります。しかるに、両地域は、海峡を隔てて地勢的に隔離せられ、しかも、連絡設備また不完全なるため、従来、北海道、本州の経済的、社会的結合を著しく阻害し、近時勃興せる開発機運に伴って、とみに激増せる貨客の輸送のごときも、また渋滞と混乱とを来たし、国土開発、国民経済発展の一大禍根となっておるのであります。今日、これらの地域がかくのごとき状態にあることは、わが国の現状にかんがみるも、はたまた、本院院議の趣旨にかんがみるも、一日も放任すべからざる問題であって、すみやかにこれが打開策を樹立し、万全の策を講じなければならないのであります。従って青函隧道の貫通こそは、北海道と東北とを直結し、これらの問題を抜本的に解決する唯一最良の方策であると信ずるのであります。(拍手)しかも、本隧道の完遂は、技術的にも、資金量においても、すでに関係当局の確信を有するところであって、何ら疑いなきところとされておるのでございます。よって、政府は、この際万難を排して青函随道のすみやかなる着工と、その実現を通じて国家百年の大計を立つることに邁進せられんことを、強く要望する次第であります。(拍手)  私は、今ここに本問題に関するこれまでの経過について、きわめて簡単に申し上げたいと存じます。  終戦後、北海道総合開発計画が国策として取り上げられるに至りまして、いよいよ北海道と本州との連絡について基本的な調査が進められるに至り、昭和二十八年の第十六国会におきましては、青森県三厩付近より渡島国福島に至る鉄道が、鉄道敷設法の別表に追加されて本格的な調査が進められ、今日まで累計約一億円になんなんとする調査費が投ぜられ、たまたま昭和二十九年の秋、洞爺丸外三隻の客貨船沈没という大事故が起り、世論は急速に青函隧道の完遂を要望するに至ったのであります。  国鉄当局としても、前述のごとき本格的調査の結果、去る昭和三十年二月、日本国有鉄道津軽海峡トンネルは掘さく可能であり、その工事期間十カ年、その総工費は約六百億円と推定されるという結論を発表したのであります。国鉄の計画によれば、このトンネルは、青森県津軽半島の龍飛岬と北海道渡島半島の白神岬を結ぶもので、トンネル全延長三十六キロ五分となり、このうち実際海底トンネル区間は二十二キロ五分であるが、水面下の最深部が百四十メートル以上もあり、トンネルはそれよりさらに百メートルも下を掘るという、わが国としては前例のない大工事であるとのことであります。しかしながら、国鉄当局としては、多年にわたって多額の国費と技術の粋を集めて、その可能なるゆえんを責任を持って天下に公表したのであります。私は、その間における政府当局の熱意と、わが国科学技術の高度の発展とに対しては、深甚なる敬意を表するものであります。  今や、わが国経済は、戦後の困難を克服して刮目すべき発展を遂げつつあるのであります。すなわち、この際このときこそ、国土総合開発の真意に徹して多年国民待望の津軽海峡隧道完遂のために、すみやかに具体的計画を樹立し、着工せられんことを強く要望いたしまして、趣旨の説明を終ります。(拍手
  21. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 討論の通告があります。これを許します。竹谷源太郎君。   〔竹谷源太郎君登壇
  22. 竹谷源太郎

    ○竹谷源太郎君 ただいま議題となっておりまする青函隧道実現に関する決議案につきまして、私は、日本社会党を代表して、賛成の意思を表明せんとするものであります。(拍手)  戦争によって領土は半減し、狭い国土におきまして乏しい資源をもって経済の自立を達成し、膨大な人口を養い、進んで国民生活の向上をはかるためには、北海道、東北地方などの開発と、これが資源の活用こそ、急務中の急務といわなければなりません。北海道は、特に原材料の供給地として物資の移出多く、最近の統計によれば、旅客の出入りの数は二百三十万人、貨物において四百四十万トンに達しております。本年度からは第二次北海道総合開発五カ年計画の実施に入ったのでありまするが、この数字は年々増加の一途をたどるでございましょう。十カ年後の推計によりますると、北海道から出ていく通過のものだけでも、旅客百九十万人、貨物三百九十万トンに上るものと見られております。船舶をもってしては、現在の青森、函館の港湾施設では、もちろん、とうていさばき切れません。旅客船は六時間、貨物船による輸送はまる一日を要します。しかも、昭和二十九年に襲った台風による洞爺丸事件のごとき事故発生の危険は、台風による場合に限らず、冬期はもちろん、その他の時期におきましても、常時海難の危険は存在するのでございまして、輸送の安全確保の見地からも、現状打開の必要はきわめて痛切であります。  さきに、昭和二十八年、第十六国会において三厩から北海道の福島に至る鉄道は、鉄道敷設法による鉄道予定線路となったのでございます。また、昭和三十一年の五月には、かねて日本国有鉄道部内に設けられておりました津軽海峡連絡隧道技術調査委員会から、トンネル建設は技術的に可能であるという結論が出されております。しこうして、その工事費は六百億円かかるというのでありますが、工事期間を十カ年とすれば、国費で三分の一の経費を負担するか、あるいは利子補給をいたしますならば、建設完了後二カ年にして国鉄営業の収支は償うという計算となっているのでございます。  今、北海道と並んで、東北地方開発計画が推し進められております。北海道から東北地方への物資の移出は北海道総移出高の二二%であり、東北から北海道への移入は北海道総移入物資の三四%に上り、この両地方の相互依存度はきわめて高いのでございます。未開発後進地域としての北海道、東北の生産力の発展は、相互の物資、資材の円滑な交流の上にささえられるべきでございまして、津軽海峡の距離の短縮、いな、海峡の抹殺は、両地方を直結せしめ、その開発を促進し、相互産業の構造的拡大発展をも招来すること必至であります。  今や関門国道トンネルは完成を見ようとしており、明石海峡と鳴門海峡に橋をかけて、四国と本州を陸続きにしようという決議は、先年、本院において議決されているのでございます。ことに、数国会にわたって継続審議中でございました国土開発縦貫自動車道建設法は去る三月二十九日通過成立いたしまして、全国を貫く大自動車道は本年度からいよいよ着工せられることとなったのでございます。  その昔、悲劇の英雄源義経が伊勢の三郎等を従えて青森県三厩から蝦夷の国へ渡ったという伝説が語り伝えられ、三厩には義経の使ったといわれるうまやが三つ、それから義経寺というお寺があるそうでございます。この因縁深い三厩から青函トンネルが始まり、北海道は渡島国福島の坑口まで延長三十五キロ半、そのうち、海峡の部分は二十二キロ半であります。  青函トンネル掘さくに当りましては、まず、海峡部に、先進導坑と呼ぶ試掘坑道を掘らなくてはなりません。ところが、せっかく掘りましたこの先進導坑は、本隧道が完成した暁には廃坑となるのでございます。そこで、三メートル直径で十分な先進導坑をば、初めから、一メートルだけ大きく、すなわち直径四メートルに掘りまして、この先進導坑が不要となったときは、自動車を乗っけて走るところのフェリー・トレーン、すなわち渡し船列車用のトンネルとして、この廃坑を転用することができるのでございます。青函トンネルは、その設計によれば深さ二百メートルでございますから、青森県北端の海岸のところで自動車をエレベーターで二百メートルおろし、フェリー・トレーンに乗せて海峡の下を通り、北海道南端の海岸で再びエレベーターで自動車を平地まで上げます。自動車は、今度は、自動車道を自分で走る。かくいたしますならば、鹿児島から北海道の稚内まで、縦貫自動車道の全行程三千キロメートルをば時速百二十キロで走れば、二十五時間をもって、一つの同じ自動車で旅行をすることができるようになるわけでございます。(拍手)  こうしたときに当り、国有鉄道東北線の電化、複線化と相呼応して、青函トンネルが貫通しますならば、北海道、東北の総合開発は顕著な進展を見るでありましょう。両地方の産業は勃興し、その生産する豊富なる資源は最大限度に活用せられることとなり、日本経済の飛躍的拡大発展と、人口問題の解決に寄与することまことに甚大であることは、多言を要しません。  以上述ぶるところの、そして、その他もろもろの理由によりまして、本決議案に満腔の賛意を表する次第であります。(拍手
  23. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) これにて討論は終局いたしました。  採決いたします。本案を可決するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  24. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、本案は可決いたしました。  この際、運輸大臣から発言を求められております。これを許します。運輸大臣宮澤胤勇君。   〔国務大臣宮澤胤勇君登壇
  25. 宮澤胤勇

    ○国務大臣(宮澤胤勇君) ただいまの御決議に対しまして、政府の所信を申し上げます。  青函隧道の問題は多年の懸案でありまして、ことに、戦後、北海道の重要性にかんがみまして、政府におきましても、これが調査研究を重ねて参ったのでありますが、最近に至りまして全く技術上可能であり、かつ、海底地層は隧道に最も適するということが明白となりましたので、今日御決議趣旨に従いまして、すみやかに諸般の準備を進めて、御期待に沿うよういたしたいと考えております。(拍手)      ――――◇―――――
  26. 山中貞則

    山中貞則君 議案上程に関する緊急動議提出いたします。すなわち、この際、日本国とノールウェーとの間の通商航海条約の批准について承認を求めるの件、関税及び貿易に関する一般協定改正に関する諸議定書受諾について承認を求めるの件、貿易協力機関に関する協定受諾について承認を求めるの件、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とアメリカ合衆国との間の条約補足議定書の締結について承認を求めるの件、右四件を一括して議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
  27. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 山中君の動議に御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  28. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。  日本国とノールウエーとの間の通商航海条約の批准について承認を求めるの件、関税及び貿易に関する一般協定改正に関する諸議定書受諾について承認を求めるの件、貿易協力機関に関する協定受諾について承認を求めるの件、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とアメリカ合衆国との間の条約補足議定書の締結について承認を求めるの件、右四件を一括して議題といたします。委員長の報告を求めます。外務委員長野田武夫君。     ―――――――――――――   〔野田武夫君登壇〕     ―――――――――――――
  29. 野田武夫

    ○野田武夫君 ただいま議題となりました日本国とノールウェーとの間の通間航海条約の批准について承認を求めるの件、関税及び貿易に関する一般協定改正に関する諸議定書受諾について承認を求めるの件、貿易協力機関に関する協定受諾について承認を求めるの件並びに所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とアメリカ合衆国との間の条約補足議定書の締結について承諾を求めるの件につきまして、外務委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。第一に、日本国とノールウェーとの同の通商航海条約について御説明申し上げます。わが国とノールウェーとの間の通商航海関係は、明治四十四年に締結された両国間通商航海条約等によって律せられておりました。戦後ノールウェーはこの条約を復活させる意向はなく、これにかわる新しい条約の締結を希望して参りましたので、昭和二十八年十二月から両国間に新条約締結の折衝が行われ、今年二月二十八日、東京においてこの条約の署名調印を見るに至ったのであります。  この条約は、両国民の間の貿易上及び通商上の関係を促進するため、無条件の最恵国待遇及び内国民待遇の相互供与を基礎とするもので、その内容並びに形式においても、戦後わが国が結びました唯一の通商航海条約であります日米間の通商航海条約にのっとったものであります。両国間の通商航海関係は、この条約により初めて安定した基礎の上に置かれ、両国民間の一そう緊密なる経済関係に資するところが大きいものと認められ、また、この条約の締結が、わが国が行なっております他の諸国との通商航海条約の締結交渉をも促進することになる次第であります。  第二に、ガットの改正に関する諸議定書について申し上げます。  関税及び貿易に関する一般協定、すなわちガットは、国際通商の分野における代表的な国際協定として一九四八年に発足したのでありますが、その後の国際経済情勢の進展にかんがみ、これを全面的に再検討する必要が認められたのでありまして、一九五四年末、第九回ガット締約国団会議におきましてガットの規約改正の討議が行われ、その結果、一九五五年三月十日に至り、ガットの改正に関する諸議定書が作成されたのでございます。  諸議定書とは、第一、ガット第一部第二十九条及び第三十条改正議定書、第二、ガット前文、第二部及び第三部改正議定書、第三、ガットの機構上の改正に関する議定書の三つであります。これらの議定書は、国際収支上の理由に基く数量制限の緩和、輸出補助金の撤廃等、通商障壁の除去を目的とする改正を行うものであり、また、貿易協力機関成立に伴い必要とされるガットの技術的修正を行うものであります。  改正ガットの趣旨は、国内産業に急激な打撃を与えることなく、漸進的に通商上の保護措置の減少をはかることにあり、国内生産者保護の道は保障されておるわけであります。他面、輸出貿易に依存するわが国としては、改正ガットに基く各国の通商障壁の撤廃によって益するところははなはだ大であると認められますので、ガットの改正議定書受諾することはきわめて有益な措置であると考えられるのであります。  第三に、貿易協力機関に関する協定について申し上げます。  ガットは、現在事実上設けられている締約国団会議、会期間委員会及び事務局により運用されておりますが、その運用に関して明確な規定を欠いております。一九五四年のガット第九回締約国団会議においてガットの規約改正が討議された際、あわせてこの問題が取り上げられ、その結果、翌一九五五年三月十日にこの貿易協力機関に関する協定が作成された次第であります。この協定により設立される貿易協力機関はガットの運用を主目的とする国際機関でありまして、その成立の際は、前に述べましたガット締約国団会議、会期間委員会及び事務局は、それぞれこの機関の総会、執行委員会及び事務局に引き継がれるものであります。この機関は、ガット締約国の対外貿易総額の八五%を占める締約国により受諮された時に効力を生ずることになっており、所在地はジュネーヴに決定されることが予定されております。  わが国は、この機関への参加を通じ、国際通商部門におけるわが国の地位の擁護をはかることができ、特に新たに設置される執行委員会の一員に選任される可能性が大であるので、その上は貿易上のわが国の利害主張をより有効に反映できることが期待されるのであります。  最後に、日米所得税条約補足議定書について申し上げます。  わが国とアメリカ合衆国との間には、昭和二十九年に締結されました、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための条約、すなわち日米所得税条約がありまして、両国間の経済活動及び人的交流の円滑をはかっているのでありますが、このたび、日本輸出入銀行及びワシントン輸出入銀行が、相手国内の源泉から取得する貸付金または投資の利子に対しまして、その相手国における課税を免除するため、この条約を補足する議定書を締結することとなり、三月二十三日、東京においてこの議定書が署名調印されました。  もちろん、現状におきましては、日本輸出入銀行はアメリカに対して投資を行なっておらず、ワシントン輸出入銀行が主としてわが国の電力会社等に対して借款を供与している状態でありますが、将来わが国の輸出入銀行が取得する利子について免除されることとなる道を開くとともに、ワシントン輸出入銀行が取得する利子を免税することによって、わが国への投資の促進をはからんとするものであります。  以上四案件は、三月二十八日、四月一日、四月一日及び四月一日、それぞれ予備審査のため外務委員会に付託され、参議院において承認後、五月六日、四月十九日、四月十九日及び五月六日、それぞれ本委員会に付託されましたので、政府提案理由の説明を聞き、質疑を行いましたが、その詳細は会議録により御了承を願います。  質疑終了の後、今五月十七日、第一、第二、第三の案件を一括して、討論は省略して採決の結果、いずれも全会一致をもって承認すべきものと議決いたしました。続いて、第四の案件、すなわち、日米所得税条約補足議定書について討論に入り、日本社会党松本七郎君から反対の意向が表明され、直ちに採決の結果、多数をもって承認すべきものと議決いたしました。  以上、御報告申し上げます。(拍手
  30. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) これより採決に入ります。  まず、日本国とノールウェーとの間の通商航海条約の批准について承認を求めるの件、関税及び貿易に関する一般協定改正に関する諸議定書受諾について承認を求めるの件及び貿易協力機関に関する協定受諾について承認を求めるの件の三件を一括して採決いたします。三件は委員長報告の通り承認するに御異議ありませんか。   [「異議なし」と呼ぶ者あり]
  31. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、三件は委員長報告の通り承認するに決しました。  次に、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とアメリカ合衆国との間の条約補足議定書の締結について承認を求めるの件につき採決いたします。本件は委員長報告の通り承認するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  32. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 起立多数。よって本件は委員長報告の通じ承認するに決しました。(拍手)      ――――◇―――――  旅館業法の一部を改正する法律案   (内閣提出参議院送付
  33. 山中貞則

    山中貞則君 議案上程に関する緊急動議提出いたします。すなわち、この際、内閣提出旅館業法の一部を改正する法律案議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
  34. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 山中君の動議に御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  35. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。  旅館業法の一部を改正する法律案議題といたします。委員長の報告を求めます。社会労働委員長藤本捨助君。   〔藤本捨助君登壇
  36. 藤本捨助

    ○藤本捨助君 ただいま議題となりました旅館業法の一部を改正する法律案につきまして社会労働委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。  近年、健全なレクリエーションの普及、観光事業の振興等に伴い、旅館業はとみにその重要性を加えて参りましたが、現行旅館業法は、単にその施設面について、しかも、主として公衆衛生上の見地からのみ規制を行なっておるのでありまして、旅館業本来の性格から考える場合、これをもって必ずしも十分とは言い得ないものがございます。よって、今回、営業施設の水準の向上を期するとともに、風紀面をも考慮し、健全な旅館業の育成指導をはかるため、所要の措置を講じようとするのが、政府の本法案提出理由であります。  次に、その内容のおもなる点について申し上げますれば、第一は、旅館業によって善良の風俗が害されることがないよう、公衆衛生上の見地以外に風俗的見地をも加味し、必要な規制をあわせて行い得るよう法目的を改めたことであり、第二は、施設の構造、設備について全国的に水準の向上をはかるため、その基準を政令で規定することとし、また、営業の健全化を期するため、施設の使用方法、広告方法等、その利用方法の基準を政令で定めることとしたことであります。第三は、営業許可の基準について物的施設面のほかに人的要件をも加えて営業者の質的向上をはかることとしたほか、営業者が刑法等風紀関係の法令に違反したときは、営業許可の取り消し、停止等の行政処分を行い得るようにしたことであり、第四は、学校の敷地の周囲おおむね百メートルの区域内で旅館が設けられることにより、その教育環境が著しく害されるおそれがあると認められるときは許可を与えないこととするとともに、特に、この場合、都道府県の教育委員会等の意見を求めるなど、この区域内においては教育機関の意向が十分反映されるよう、教育環境の清浄化を確保しようとしたこと等であります。  本案は、四月二十六日本委員会に付託せられ、五月十四日神田厚生大臣より提案理由の説明を聴取した後、昨十六日審議に入り、本日質疑を終了し、採決に入りましたところ、本案は全会一致原案の通り可決すべきものと議決いたした次第でございます。  以上、御報告申し上げます。(拍手
  37. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 採決いたします。本案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  38. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告の通り可決いたしました。      ――――◇―――――  接収貴金属等の処理に関する法律案(第二十四回国会内閣提出
  39. 山中貞則

    山中貞則君 議案上程に関する緊急動議提出いたします。すなわち、この際、第二十四回国会内閣提出接収貴金属等の処理に関する法律案議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
  40. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 山中君の動議に御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  41. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。  接収貴金属等の処理に関する法律案議題といたします。委員長の報告を求めます。大蔵委員長山本幸一君。   〔山本幸一君登壇
  42. 山本幸一

    ○山本幸一君 ただいま議題となりました接収貴金属等の処理に関する法律案につきまして、大蔵委員会における審議の経過並びにその結果について御報告を申し上げます。  終戦後、連合国占領軍は、本邦において、政府及び民間から金、銀、白金、ダイヤモンド等の貴金属等を接収したのでありますが、平和条約の発効と同時に、これらの貴金属等を日本政府に引き渡したのであります。そこで、さきに接収貴金属等の数量等の報告に関する法律によって貴金属等を接収された者から必要な報告が提出せられ、その内容の調査が行われるとともに、連合国占領軍から引き渡された貴金属等の調査が実施せられ、その状況も明らかになりましたので、今回これら接収貴金属等について返還その他の処理をいたそうとするのが、この法律案の目的であります。  次に、本法律案の概要を申し上げますと、まず第一に、貴金属等の被接収者または所有者が返還を請求する場合の手続を定め、第二に、大蔵大臣が返還の請求に対してその貴金属等の種類、形状、品位及び個数または重量を認定することについて規定し、第三に、この法律により返還される貴金属等については、国、公共企業体、地方公共団体及び日本銀行の所有にかかるものを除き、返還を受けた価額の一割に当る金額を国に納付することとし、第四に、交易営団、中央物資活用協会または金銀運営会が政府の委託によって民間から回収したもの、あるいは金属配給統制株式会社または軍需品の製造に従事していた者が買い入れたもの等は、すべて国に帰属させるとともに、これらの者に対しては交付金を交付することとし、第五に、以上の認定、返還その他の重要事項の処理の万全を期するため、大蔵省に接収貴金属等処理審議会を設けることといたしております。以上が本法案の内容の概要であります。  接収貴金属等の処理に関する法律案は、第十九国会以来三回にわたり提出され、終始、慎重に審議いたしましたが、いずれも審議未了または継続審査となり、今国会に至ったものであります。  本案につきましては、自民党の小山長規君及び社会党の平岡忠次郎君より、それぞれ修正案が提出いたされました。小山長規君提出の修正案の内容は、別途提出された国有財産特殊整理資金特別会計法案の成立に伴い、附則中の規定について字句の整理を行おうとするものであります。また、平岡君提出の修正案の内容は、おおむね次の諸点であります。すなわち、第一に、接収貴金属等で特定しないものについては、政府原案ではこれを返還することになっておりますのを、たとい返還の請求がありましても、これを棄却して返還しないこととする。第二に、返還される貴金属等についての納付金を一割から八割に改める。第三に、一般会計に所属する貴金属等の売り払いについての規定を設けるとともに、売払代金に相当する金額は、社会保障、科学その他の学術の振興等に充てるため、別に法律の定めるところにより設置する資金に繰り入れる。以上でございます。  次いで、質疑を打ち切り、討論に入り、社会党を代表して沖田委員が反対討論をいたしました。  次いで、修正案の採決に入り、まず両修正案の共通部分について採決いたしましたところ、全会一致をもって可決をいたされました。次に、平岡君外十三名提出の修正案について、共通部分を除く修正案を採決いたしましたところ、起立少数をもって否決いたされました。さらに、両修正案の共通部分を除く原案について採決いたしましたところ、起立多数をもって可決され、よって、本法律案は修正議決いたされました。  以上、御報告を申し上げます。(拍手
  43. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 討論の通告があります。これを許します。横山利秋君。   〔横山利秋君登壇
  44. 横山利秋

    ○横山利秋君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま上程になりました接収貴金属等の処理に関する法律案に対し絶対反対するとともに、社会党提案した修正案に賛成するものであります。(拍手)  惨たんたる敗戦をあとにして十二年になりますが、全国津々浦々には今なお戦争の傷痍のいえぬ不具の人々があり、夫を失い、遺児をかかえて苦闘しておる未亡人があり、私どもが朝夕通る九段の神社には、日ごと遺族の人々が一ぱいであります。国会は、生活の再建のできない引揚者の人々の補償についても完全なことができず、大きな不満を買っておるのが実情であります。しかるに、政府は、同じ戦争の関係の被害者ではあるが、これらの人々と異なり、ほとんどが生活に困っていないであろう、わずか百四十八の法人と百九十三人の個人、計三百四十一の少数者に、四十六億に上る膨大な接収貴金属を、所有権の帰属を明らかにするとの理由をもって返還しようとしているのであります。これは実に不公平きわまりない措置といわなければなりません。(拍手)  戦争中に、政府は、ぜいたく品所持の禁止と戦力の増強の名目で、全国の隣組を動員し、市価よりもわずかに高い価格で、強制的に貴金属を買い上げました。今返還しようとしております貴金属は、この供出品が回り回って工場や会社にあって、そこから接収されたか、あるいは、供出をサボって隠匿していた一部の会社や個人が接収されたかでありまして、いずれにいたしましても、強制的とは言いながら、純真に国のためと思って供出した人々には返還も補償もされず、当時の言葉でいえば非国民であった三百四十一の会社、個人に恩恵を与えるということは、法理以前の問題として、断じて承服できないところであります。(拍手)  しかも、この貴金属の問題は、昭和二十七年十月、衆議院行政監察特別委員会が取り上げて以来、幾多の疑惑に包まれたままでありまして、それらの諸点は今なお国民の脳裏に明らかであり、これが解決されないままに処分を決定するようなことがあれば、政治に対する国民の不満と不信は大きな危険にさらされることを考えなければならぬのであります。(拍手社会党がこの法案に反対する第一の点は、まさにここにあります。  全総額七百三十億円以上に上る貴金属にからまる疑惑は幾多にわたっているのであります。終戦の翌々日、すなわち八月十七日、軍需省が交易営団の幹部を招いたとき、三井信託の地下室において、十万六千五百カラットのダイヤが間違いなく九つの魔法びんに詰めかえられたであろうかという疑惑が第一であります。  次には、中央物資活用協会が、終戦直後、その保有する金、白金、ダイヤモンドの没収を免れるために埼玉県の共和村の青木理事宅に疎開させたという証言を行い、数日を経ずして、記憶違いといって取り消したという疑惑であります。  さらには、陸軍航空本部及び第一陸軍造兵廠にからまる横流れ事件であります。海軍技術研究所は、また、二千カラットの上質ダイヤが栃木県の指定商の加島という男の自宅のニワトリ小屋の地下に埋蔵され、その後何らの受領証もなく連合軍に引き渡されたということにからまる疑惑であります。  次は、皇太后陛下のお手元品である女官用の英国製王冠並びに首飾りのうち、五個の大粒ダイヤが宮内省の金庫の中でいつの間にか消えてなくなったという事件である。しかも、これが、昭和二十七年の七月、行政監察特別委員会の職員によって、大阪心斎橋の時計店で紋章入りケースの中に発見された瞬間、その直後、再び姿を消したというのであります。  次は、占領軍が接収中に起った事件であります。接収が一部無理やりに行われた結果、これに関する受領証もなく、特に二十年十月十八日、三井信託から、ダイヤ十万二千九百十七カラット、プラチナ二百四十キロ三百八十一グラム、金、銀、貴金属四百五十九キロ九十七グラム等を持ち去った、総司令部のカッツ大尉なるものは、一体何者であるか、今なお判明せず、その数字も、その後、営団側にまって、奇怪にも変更されたということがあります。  マレー大佐事件は、マレー大佐が接収貴金属を勝手にアメリカに持ち帰ろうとし、米国へ到着寸前発見され、官職を剥奪された事件であります。接収解除され先後は、また、占領軍の鑑定をしていた者が再び再鑑定に当り、あるときには売り手の立場で鑑定し、あるときには買手の立場で鑑定し、ダイヤ一カラット平均四万円と鑑定していますが、その若干の後の記録によれば、特級のものは三十五万円、一番安いものでも三十二万円であったことを考えると、この鑑定人が業会の連合会長をしていたことを思い合わせ、大蔵省のあり方に深い疑惑が集中したのは、けだし当然であります。(拍手)  これらの諸点はその一例にすぎません。かつ、権威ある行政監察特別委員会の報告の引用であります。われわれが問題とすることは、この報告に対し、政府がその後これらの疑惑に何らり措置をしていないことであり、問題の事件で処分を受けたのは、何とアメリカ人であるマレー大佐ただ一人であるという不可思議なる事実であります。(拍手国民は、断じて、かかるばかげた結果を承認しないのであります。行監の努力も権威も、また、やみからやみへ葬り去られているのでありまして、本法案の審議に当って、政府が、行監の勧告にかかわらず、その経緯について、みずから明らかにしないことは、怠慢というよりも、一そう深い疑惑を持たざるを得ないのであります。(拍手)不当にしてかつ不法な方法でこの貴重な貴金属を持ち去った者は、この法案の通過をあざ笑い、胸をなでおろしておることでありましょう。かかる事態を放置して、断じてこのような法案を許してはなりません。(拍手)  私が根本的問題として反対する第二の理由は、法理的立場であります。政府原案は、問題のあった交易営団などから接収された貴金属については、返還請求があっても国に帰属するものとして、紛争の一つにピリオドを打ちました。もし政府がこの決定をするならば、これらの営団や物資活用協会、金銀運営会、金銀製商連盟などは、政府機関でなくして民間団体でありますから、もしこれらに返さないとするならば、同じ民間であって、同様の条件で接収された法人や個人三百四十一社にのみ返還するということは矛盾もはなはだしく、理解に苦しむところといわなければならぬのであります。しかも、かりに証拠があっても、現物のあるものは全部返して、現物のないものは按分比例で少し返すというに至っては、小学校の子供でも算術が間違っていはしないかと首をひねるに違いないでありましょう。(拍手)  そもそも、昭和二十年九月と二十一年五月、占領軍が貴金属を接収した経緯を考えてみまするならば、これは賠償に充てるために没収したと見る方が正しいと考えられるのであります。  一九四七年七月の極東委員会対日貿易十六原則に、金、銀その他の貴金属及び宝石のストックにして、明らかに日本人所有のものと立証されたものは、終局的には賠償物件として処理すべきである、それに至るまでの間にかかる日本人資産については、その価値を保有すべきであるが、右資産自体は、日本平時経済の生産力回復に貢献するように仕組まれた生産計画に対する金融を助ける外国為替の獲得手段として使用するも差しつかえないと言っているように、明らかに接収は没収の観点に立っているのであります。  中には、この点について、ヘーグの陸戦規則によったとみなされるから、この規定によって、敵国内といえども私有財産は没収し得ない、従って、所有権は被接収者に残っていると言う者がおります。しかしながら、接収がヘーグ陸戦規則によったか、無条件降伏のポツダム宣言によったかについては議論が分れるところでありまして、かりにヘーグの陸戦規則によったとしても、ポツダム宣言と矛盾する部分は、無条件という立場にあるポツダム宣言をとらざるを得ないのではないかと思われるのであります。(拍手)しかも、占領軍が接収を解除した経緯は、明らかに接収当時の政策を変更したものでありますから、これをもってしても、接収当時の判断をすれば、返還の理由なしと判断すべきでありましょう。百歩譲って、右の諸点を認めたにしても、営団などには返さない、その他の会社や個人には返すということ、並びに、現物のあるものは返す、現物のないものは按分比例で返す、あるいは、占領軍のした行為であって、被接収者個人の責任によらないことであるのに、接収のときの米軍の発した証拠書類などがあるものは返す、ないものは返さないぞということは、矛盾撞着の積み重なった措置でありまして、断じてとるべきではありますまい。(拍手)さらに突き詰めて、憲法に示された私有財産不可侵の条項があるから返すべきであるとしたにいたしましても、かくのごとき場合は、社会党修正案のごとく、万人ともに認める証拠があり、同時に現物があり、かつ、何よりも大切なことは、その返還によって生ずる実益というものが他の戦争犠牲者との間の公平の立場から行われるのでなければ、全国民は承服することはないと断言してはばからないのであります。(拍手)  最後に、政府原案の各条項について反対立場を明らかにいたします。  この案が、第一に、実体論として、返還を受ける者の中の多くは、供出をサボり、貴金属を隠匿した者や、終戦後旧軍用財産を横領した者などで接収されたものでありますが、この矛盾を防御する方法が保障されないのは、いかにしても不十分といわなければなりません。  第二に、返還すべき証拠のないものについて、客観的に立証する方法がありません。  第三に、返還者に対して一割の納付金を納めしめるからというのでありますが、わずか一割では、戦時補償特別税が一〇〇%課税された経緯や、十二年たった今日、突如として収益が増加するという点、並びに、これらの人々がほとんど困窮者でないという諸点から考えるも、まことに国民の手前だけをつくろう、お粗末な案と言うより言いようがないのであります。従って社会党修正案のごとく、八割とすることによってこそ、国民は心から理解し得るであろうと確信をいたします。(拍手)  第四に、重大なことは、これによって国庫に入る七百億に上る巨額な金について、使途を法律をもって明らかにしない点であります。七百億の貴金属は、八千万国民が、戦時下、空襲と配給と家族離散の苦しみの中から、強制力と愛国心の矛盾にもだえつつ、血を吐く思いで供出し、しかも、今や返らないものであります。一方では特定の人々には返っていきます。もしそれ、七百億の金が漫然と予算に配付され、中には汚職の泥沼に使用されるともなれば、これは、法律や理屈にあらずして、国民の怒りは一そう爆発するでありましょう。(拍手)この感情はすでに数年前よりちまたに語り伝えられておるのでありまして、政府がこの国民感情を洞察することもなく、この法案に織り込まなかったことは、口で国民とともにと言っても、その正体見えたりといわなければならぬのであります。(拍手)われわれは、この金は、ことごとく、与野党が一致した行政監察委員会の決定のごとく、戦争に傷つき倒れた人々、生活に呻吟する未亡人などに愛の手を差し伸べる社会保障に、また、再びかくのごときことを繰り返さないための平和な日本建設のためのいしずえとなるべき学術、科学の振興のためにのみ使用さるべきであると、強く主張してやまないところであります。(拍手)あらゆるものは、その使われる目的によってこそ、いよいよ光を放つのであります。日銀の地下に十数年目の目を見なかった莫大なダイヤモンドや白金は、それによってこそ、さん然たる光を放ち、本来の目的を達すると確信をいたすのであります。(拍手)  以上、政府案を批判しつつ、私は社会党考え方を述べました。国会が本問題を取り上げて以来、すでに五年になります。しかも、事態は今なお国民の納得を得るに至っておりませんのに、政府、与党は、本国会において、何を企図してか、今日どうしても通さなければならないという絶対条件もないのに、全力をあげて本法案の通過をはかろうとしていますことは、その意図がいかなるところにあるか、怪しまざるを得ません。与党の諸君が、この点について、今ちまたに沸き上りつつある新しい疑惑について、心静かに反省されんことを望みたいのであります。(拍手)しかも、与野党が満場一致行政監察委員会において行なった五項目の決議を、ここに政府、与党がみずから踏みにじり、法案を強行通過させることは、国会を軽視し、みずからまた天につばするも同様の結果となることを警告いたしたいのであります。よしや国民の声に法理上多少の問題がありましょうと、ものには順序がある。この貴金属を返すなら、在外資産を正確に保障せよ、供出した指環を返せ、燃えた家を返せ、死んでいったかわいいわが子を、わが父の命を返せという庶民の声は、理屈を越えて、さらに一そうほうはいとして全国にみなぎり渡るに違いないのであります。(拍手)しかも、大蔵委員会は、その審議半ばにして、今なお多くの疑点があるのに、今夜強行採決されたのであります。  私は、ここに、与党の心ある諸君のその政治的良心に訴え、すべての誠実な国民の名において、政府原案に反対し、社会党修正案に賛成し、討論を終るものであります。(拍手
  45. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) ただいまの横山君の発言中、もし不穏当の言辞があれば、速記録を取り調べの上、適当の処置をとることといたします。  これにて討論は終局いたしました。採決いたします。本案の委員長の報告は修正であります。本案を委員長報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  46. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 起立多数。よって本案は委員長報告の通り決しました。      ――――◇―――――
  47. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 明十八日は会期終了日でありますから、午前十時より会議を開きます。  本日はこれにて散会いたします。    午後十時十八分散会      ――――◇―――――  出席国務大臣         内閣総理大臣         外 務 大 臣 岸  信介君         法 務 大 臣 中村 梅吉君         大 蔵 大 臣 池田 勇人君         文 部 大 臣 灘尾 弘吉君         厚 生 大 臣 神田  博君         農 林 大 臣 井出一太郎君         通商産業大臣  水田三喜男君         運 輸 大 臣 宮澤 胤勇君         郵 政 大 臣 平井 太郎君         労 働 大 臣 松浦周太郎君         建 設 大 臣 南條 徳男君         国 務 大 臣 石井光次郎君         国 務 大 臣 宇田 耕一君        国 務 大 臣 大久保留次郎君         国 務 大 臣 鹿島守之助君         国 務 大 臣 小滝  彬君         国 務 大 臣 田中伊三次君  出席政府委員         内閣官房長官  石田 博英君         外務政務次官  井上 清一君         厚生政務次官  中垣 國男君         厚生省公衆衛生         局環境衛生部長 楠本 正康君      ――――◇―――――