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1957-03-05 第26回国会 衆議院 本会議 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年三月五日(火曜日)     ————————————— 議事日程 第十二号  昭和三十二年三月五日   午後一時開議 第一 国土開発縦貫自動車道建設法案(第二十二  回国会本院提出)(第二十四回国会参議院送  付) 第二 外務省設置法の一部を改正する法律案(内  閣提出) 第三 労働省設置法の一部を改正する法律案(内  閣提出)     ————————————— ●本日の会議に付した案件  レムニッツァー琉球民政長官からの招請によ  り、沖繩視察のため本院から議員高岡大輔君、  同床次徳二君及び同佐竹晴記君を派遣するの件  (議長発議)  英国水爆実験に関する緊急質問岡良一君提  出)  日程第一 国土開発縦貫自動車道建設法案(第  二十二回国会本院提出)(第二十四回国会参議  院送付)  日程第二 外務省設置法の一部を改正する法律  案(内閣提出)  日程第三 労働省設置法の一部を改正する法律  案(内閣提出)  国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案内閣  提出)の趣旨説明及びこれに対する質疑    午後二時三十二分開議
  2. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) これより会議を開きます。      ————◇—————  レムニッツアー琉球民政長官から   の招請により、沖繩視察のため   本院から議員高岡大輔君、同床   次徳二君及び同佐竹晴記君を派   遣するの件(議長発議
  3. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) お諮りいたします。本年一月十四日、レムニッツアー琉球民政長官から日本国会議員団五名を沖繩視察のため派遣するよう招請がありましたので、参議院議長と協議の上、本院から五名派遣することとし、三月十一日より同十三日まで、高岡大輔君、床次徳二君、佐竹晴記君を派遣いたしたいと存じます。これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。(拍手)      ————◇—————  英国水爆実験に関する緊急質問    (岡良一提出
  5. 荒舩清十郎

    荒舩清十郎君 議事日程追加緊急動議提出いたします。すなわち、この際、岡良一提出英国水爆実験に関する緊急質問を許可されんことを望みます。
  6. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 荒舩君動議に御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。  英国水爆実験に関する緊急質問を許可いたします。岡良一君。   〔岡良一登壇
  8. 岡良一

    岡良一君 私は、日本社会党代表いたしまして、いよいよこの三月一日から実施されんといたしておりまする英国政府クリスマス海域における水爆実験強行に対しまして、原水爆反対をし、平和を守らんとする全国民の名において、政府に緊急の質問をいたさんとするものであります。(拍手)  質問の第一点は、先般の国連総会において、わが国連代表が犯しましたるところの、あのわが国自主性の放棄、しかも、終始大国に迎合して一貫性を欠いたところの不手ぎわに対して、政府責任を究明いたしたいのであります。  そもそも、原水爆禁止の要求は、昨年の二月、わが衆参両院が厳粛にこれを議決いたしまして、実に九千万国民悲願と申すべきものであります。長崎広島、さらにはビキニと、二度ならず、三度までも地上最大の犠牲を払いましたわれわれ日本国民は、すべての人類、すべての国々に向って原水爆の絶対禁止を要求するところの当然の権利を持つものといわなければなりません。いな、むしろ、われわれは人類に向って崇高なる責任を負うものといわなくてはならないのである。さればこそ、去る十二月十九日、国連加盟の日に当つて、故重光代表がこのことを加盟各国代表に訴えたときにも、加盟諸国は深い共感と支持をもつて迎えてくれたのである。しかるに、いよいよ国連加盟をいたしたわが国が、去る一月十八日、ノルウエー、カナダと共同して、いわゆる事前の届出と国連によるその影響調査を含むところ決議案提出するや、加盟各国日本のこの不徹底なる態度に対しましてはきびしい不信を表明するに至ったのである。国連加盟の門出に当り、日本自主独立に疑義を生ぜしめたことは、まことに取り返しのつかない失態と申さねばなりません。(拍手)  すなわち、わが方のこの共同提案に対し、いち早く実験禁止を提唱し、その決議案提出したソビエトとその与国が批判を加えたのはもとよりでありますが、インドネシアのハニフアー代表は、「三国決議案なるものは実験問題の核心に触れておらない。この案はむしろ実験を助長するものである」とさえも酷評をいたしておるのである。インドメノン代表は、「インドはあくまでも実験中止を要求する」と強調をし、「三国の代表に伺いたい。査察も管理もなくして、どのようにしてこの三国共同決議案が実現できるのであるか。実験中止案のみならず、軍縮全体をはばんでいるのが実にこの管理の問題である。インド政府は、特別の被害国である日本が、単に実験を登録するというだけにすぎない構想を支持しだことを、まことに遺憾に思っておる」と喝破いたしておるのである。(拍手)おそらく、この声は、公布なる加盟各国の一致した見解であろうし、少くとも原水爆禁止を決議したアジアアフリカ諸国の共通の批判を示すものと申さねばならないのである。  このようにして、わが政府提案なるものは、大国意思に屈服をして、その理不尽なる実験強行を認めることを前提といたしておるのである。しかも、全国民悲願を、このようにして、まっこうから否定をいたすばかりではない。これでは一体自主独立気魂はいずこにありやと申さなければならないのである。(拍手)しかも、さらでだに手ぬるいこの決議案は、ついにこれを総会に持ち出すことを断念し、しかも、軍縮小委員会付託するという十二カ国決議案には、みずからがその提案者となって、これに加わっておる。みずから提案者となった決議案をたな上げにいたしておるようなものであって、これでは全く首尾一貫を欠くもはなはだしいと申さねばならない。(拍手)  英国や、アメリカや、フランスや、ソ連や、カナダや、これらの国々をもって構成されておるところ軍縮小委員会がいかなる結論を出そうとするのであるか。政府はこれに何の期待をかけておるのであるか。この五カ国小委員会こそは、原水爆禁止の問題をめぐって、常に力による平和の維持とすりかえることにきゅうきゅうとしておった大国の宣伝の場にすぎないのではないか。このようにして、国連におけるわが方の提案は、全く独立国日本の面目をまるつぶれにしてしまい、世界世論から不信を買い、しかも、アジアアフリカ諸国からも手きびしい批判を浴びておる。  しかもである。しかも、その上に、英国がわが方に水爆実験を予告したのは一月七日である。わが方が水爆実験やむなしとの提案国連にいたしたのは十八日である。これをたな上げにしたのは二十四日であって、三十日に至って通告を受けてから三週間以上も経て、やっと実験中止申し入れをいたしておるのである。これでは、政府が何回中止申し入れをいたしても、英国が受け付けるはずはないのである。むしろ、政府中止申し入れこそは、英国に対するよりも、国民を欺瞞せんとするところのから手形と申しても過言ではないのである。(拍手内閣総理大臣は、このような責任をいかにして明らかにされんとするのであるか、この点を明確にいたしていただきたいのである。  質問の第二点は、今後強行せられんとするこのクリスマス海域における水素爆弾中止に対し、政府はいかなる対策を用意いたしておるのであるか。原水爆実験禁止は、ひとり日本国民悲願たるにはとどまらない。あるいは、国際赤十字委員会も、バンドン会議も、社会主義インターの大会も強くこの禁止を要求し、すでに全世界において原水爆禁止の署名は十億にもなんなんといたしておるのである。まことに、原水爆反対の声は、民族を越え、国境を越え、男女と年令を越えた人類一大平和運動として、世界のすみずみからわき起っておるのである。人間の知恵の力はあくまでも人類の福祉と文明の発展のために役立たしめなければならない。今日いわゆる究極兵器の出現を迎えて、この大きな旗じるしこそは世界平和のための最も力強いとりでと相なっておるのである。この国境を越え思想を越えた平和のとりでに対する挑戦、それこそはクリスマス島における英国政府の理不尽なる水爆実験にほかならないのである。国際連合はすみやかに緊急総会を開いてこの中止英国に勧告すべきである。日本こそ、水爆に対する歴史的使命の自覚に立って、堂々総会の開催を要求すべきである。それを、何ぞ。政府国連代表の引き揚げを命令しておる。政府はこの際古色蒼然たる外務官僚をもってするところ国連代表の人事を刷新し、真に国民代表国連に送り、きぜんたる態度をもって、原水爆禁止に関し、緊急総会英国実験中止の勧告を採択すべく努力すべきではないか。外務大臣の明快なる御所信を承わりたいのである。(拍手)  第三点として、私は、この際、わが国がすみやかにアジア太平洋地域科学者をもってする実験影響調査委員会の創設を提唱いたしたい。この各国科学者協力のもとに、アジア科学の力によって、ともすれば大国政治的配慮に動かされんとする国連科学委員会を監視する必要を私は感ずるのである。  現在、水爆実験によるストロンチウム九〇の大気中における濃度は著しく増大いたしておる。原水爆による死の灰の中でも最も減衰期の長いストロンチウム九〇、しかも、骨髄に沈着をして不断に人体造血機能を破壊し、現在も長崎広島に見られる死亡者の病気のもとをなしておるこのストロンチウム九〇は、昭和二十八年には、わが国土において地表一平方キロに三・五マイクロキューリーであったのが年ごとに増加をいたし、昭和三十一年には四一・三マイクロキューリー昭和三十二年には八一・一マイクロキューリー推定をされるに至っておるのである。すでに、このストロンチウム九〇は、自然には存在するはずもないところの死者の骨にまでも証明をされることとなり、現にこうして生きておるわれわれの体内において、刻々にストロンチウム九〇が命を脅かしておるのである。  アメリカリビー原子力委員は、「ストロンチウム九〇が許容の限度に達するには、広島型の原爆で五十五万発、ビキニ型の水爆で五百五十発を必要とするであろう」と言明をいたしておるが、これは地球をめぐる大気に平等に放射能の灰が拡散した場合の推定にすぎないのである。彼らが実験場に選ぶ太平洋にしても、あるいはシベリアにしても、近接をするアジア太平洋地域の住民に対しては、このような楽観論は断じて安心をしてはおられないのである。アメリカ原爆計画に参加をしたラップ博士は、「これまでの実験回数の率を将来に当てはめて考え、五年後の一九六二年には、成層圏に積み上げられたところストロンチウム九〇の量は、内輪に見ても人体骨格内の許容量を越えるであろう」と言明をいたしておるのである。われわれは、アジア太平洋増減科学者がこの際渾然協力態勢を作り、しこうして、これらの影響調査を厳密に実施し、これらの資料をもって、来たるべき国連総会においては、原水爆実験のみではない、さらにはその製造、使用、貯蔵の絶対禁止を堂々と訴うべきものと信ずるのであるが、この点についての外務大臣所信を伺いたいのである。(拍手)  以上をもって終ります。   〔国務大臣岸信介登壇
  9. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 岡君の御質問にお答え申し上げます。  原水爆使用禁止につきましては、すでに、国会におきまして、日本国民意思はきわめて明白に表明をされております。すでに、この国民的意思は、直ちにアメリカイギリスソ連等原水爆を有しておる国に対してわれわれの意思が通達され、その注意を呼び起すように努めております。今日、この原水爆実験あるいは使用というものを禁止せしめるのには、私は、どうしても国際的に強い世論が起らなければならぬ、日本は、あらゆる機会に、これを実験しようとする国に、われわれの意思を明確に伝えて、その反省を求めるとともに、国際的世論を起さしめて、これを禁止するということが必要であると考えております。この意味において、あるいは国際連合におきまして、あるいは今回のクリスマス水域におけるイギリス実験に対しましては、われわれが出した抗議を直ちに公表いたしまして、広く国際的世論を起すことに努めております。去る国連総会におきまして、澤田代表が、原水爆国際連合において管理するという意味において登録制提案したということは、言うまでもなく、あの澤田代表の演説にも現われておるごとく、日本国民の念願であり、われわれの強い意思であるところ使用禁止に向っての一つの段階としてこれを主張したものでありまして、決してその実験を是認するという立場に立つものではないのであります。クリスマス水域におけるイギリス実験に対しましては、すでに二回われわれは抗議イギリス政府申し入れ日本国民の気持をきわめて明確にいたしておりますが、二回目に対しては、まだわれわれは返事に接しておりません。しかし、私は、さらに、クリスマス島におけるイギリス実験に対しまして、これを中止するようあらゆる手段を講じたいと考えておりまして、いろいろと駐英大使にもわれわれの方から指示を与えておりますし、さらに政府としても善処したい考えであります。  なお、最後の御質問の、アジア諸国技術者協力して、ストロンチウム九〇を中心としてのいろいろな資料を整え、また、あらゆる面における協力をするという考えは、私はきわめて賛成でありますが、やや専門的な点に属しますので、宇田国務大臣より詳細は答弁をしてもらうつもりでありますが、とにかく、国連のこれに関する機構等をわれわれはさらに強化し、その協力態勢を進めていくということが必要であると考えております。  以上であります。(拍手)   〔国務大臣宇田耕一登壇
  10. 宇田耕一

    国務大臣宇田耕一君) クリスマス島における水爆実験影響調査につきましては、原子力委員会でも検討中でありますが、今回の水爆実験は非常に上空で行われるというのでありまして、それが水面あるいは日本に対する影響というものは、直ちに調査をしても調査の効力はないではないかというのが、専門的立場考えであります。従ってこれの調査方法につきましては、長期にわたってわれわれは計画的に技術的な調査を開始しなければならない、それについては、アジア太平洋諸国と連合してこれを行うというのみでは不十分であろうというのが、原子力委員会の方のただいまの考え方でありまして、むしろ、国連本部における科学特別委員会が来たる四月七日、八日のころに開かれまして、ストロンチウム九〇に対するところ日本報告檜山教授を通じて行われます。ストロンチウム九〇に対するところ調査に関する権威は、世界的には日本が第一というふうにもいわれておりますから、そういう面から考えまして、科学特別委員会等国連機構とあわせて、われわれは新しくストロンチウム九〇を中心とする水爆影響調査を考究いたしたいと考えております。      ————◇—————  日程第一 国土開発縦貫自動車道建設法案(第二十二回国会本院提出)(第二十四回国会参議院送付
  11. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 日程第一、国土開発縦貫自動車道建設法案議題といたします。委員長報告を求めます。建設委員長薩摩雄次君。   〔薩摩雄次登壇
  12. 薩摩雄次

    薩摩雄次君 ただいま議題となりました国土開発縦貫自動車道建設法案につきまして、建設委員会における審査経過並びに結果を御報告申し上げます。  本案は、去る第二十二回国会におきまして本院を通過以来、参議院において継続審査となっていたものでありますが、第二十四回国会におきまして修正議決され、国会法第八十三条の四の規定により衆議院に送付され、自来本院において継続審査となっていたものであります。  参議院における修正のおもなる点は、第一には、本案の対象となっている国土開発縦貫自動車道定義について、道路運送法定義を引用しているのを改め、この法律目体定義するものとする、第二には、国土開発縦貫自動車道予定路線本案別表に掲げるところによるものとしているのを改め、別表で定める路線を基準として別に法律で定めるものとすること等が、そのおもなるものであります。  本案は、去る二月二十六日本委員会付託せられたのでありますが、参議院修正点その他につきまして、第二十四回国会以来慎重に審査いたし、また、今国会におきましても、数次の理事会において十分検討いたしました結果、去る二月二十七日の本委員会におきましては、別に質疑もなく、二階堂進君より同君外六名提案の次のごとき修正案提出されたのであります。  すなわち、国土開発縦貫自動車道予定路線中、小牧市付近より吹田市に至る区間については、すでに計画も完了し、昭和三十二年度予算案においても予算措置がとられているので、同区間については、別に法律で定めることなく、本法自体で定めるものとすること、及び、国土開発縦貫自動車道を初めとする今後の高速自動車道の発達に伴う道路交通取締りの変革に対処するため、国土開発縦貫自動車道建設審議会委員国家公安委員会委員長を加えるものとすること等が、そのおもなるものであります。  本案に対する内閣の意見としては、南條建設大臣より、修正は機宜な措置であり、すみやかな成立を望む旨の開陳があり、次いで、原案及び修正案を一括して討論に入りましたところ日本社会党代表して、前田榮之助君より、参議院意思を尊重しつつ、来年度における事業の円満なる遂行をはかるものとして、賛成の旨が述べられたのであります。  かくて、修正案及び修正部分を除く原案についてそれぞれ採決の結果、いずれも全会一致をもって可決すべきものと決定した次第であります。  右、御報告申し上げます。(拍手
  13. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 採決いたします。本案委員長報告修正であります。本案委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  14. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、本案委員長報告の通り決しました。(拍手)      ————◇—————  日程第二 外務省設置法の一部を改正する法律案内閣提出)  日程第三 労働省設置法の一部を改正する法律案内閣提出
  15. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 日程第二、外務省設置法の一部を改正する法律案日程第三、労働省設置法の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。委員長報告を求めます。内閣委員長相川勝六君。   〔相川勝六登壇
  16. 相川勝六

    相川勝六君 ただいま議題となりました二法案につきまして、内閣委員会における審査経過並びに結果を御報告申し上げます。  まず、外務省設置法の一部を改正する法律案について申し上げます。  本案は、外務省機構について二つの改正を行おうとするものであります。第一は、外務本省において、欧米局を廃止し、新たにアメリカ局および欧亜局を設け、第二に、在外公館一つとして、ジュネーヴに在ジュネーヴ国際機関日本政府代表部設置し、その長には時命全権公使をもづて充てることとしております。  まず、欧米局を廃止してアメリカ局欧亜局設置することについて申し上げます。外務省において地域別の政務を担当する局といたしましては現在アジア局欧米局二つがありますが、これらの機構サンフランシスコ平和条約が締結された当時に作られたものでありまして、その後日本国際政治上の地位は著しく向上し、外交活動の面におきましても五カ年前とは面目を一新するに至りました。従って、今日では、欧米局一局で、従来のごとく欧州、米州、アフリカ中近東大洋州というはなはだ広範な地域を担当することは、外交活動の万全を期するに遺憾の点が少くないのであります。このような実情にかんがみ、欧州中近東アフリカ及び大洋州の諸国に関する事務については別に独立の一局をもってこれに当らせることとし、このため現在の欧米局アメリカ局欧亜局二つに分離することといたしたのであります。  また、在ジュネーヴ国際機関日本政府代表部設置につきましては、ジュネーヴには、御承知のように、国連欧州事務局を初め、種々の国連専門機関国際機関があり、このため、同地に置かれてある日本の総領事館は、領事事務の範囲を越え、国際機関ないし国際会議に関する外交事務がその大半を占めているような次第であります。加えて世界主要国もすべてジュネーヴ外交機関として政府代表部設置しておりますので、この一際、わが国も、諸外国との関係上、ジュネーヴに在ジュネーヴ国際機関日本政府代表部を設け、その代表部の長には特命全権公使をもってこれに充てんとするのであります。  以上が本法律案提案理由並びに内容の概略であります。  本法律案は、二月十八日国会提出、即日本委員会付託となり、二月二十日政府より提案理由説明を聴取するとともに審査に入った次第であります。  ここに質疑のおもなる点を申し上げますと、本案は、現内閣重要方針である行政機構簡素化趣旨に逆行するのではないかとの質問がございましたが、これに対し、政府からは、国際連合への加盟といい、あるいはソ連及び東欧諸国との国交回復といい、五カ年前とは全く面目を一新した今日のわが国外交にとつで、本案による機構改革実情に合致した適切なる措置と思われる旨の答弁がありました。その質疑の詳細は会議録によって御了承いただきたいと存じます。  かくて、二月二十八日質疑を終了し、三月一日討論省略採決に入りましたところ全会一致をもって本案原案通り可決すべきものと決定した次第であります。  次に、労働省設置法の一部を改正する法律案について申し上げます。  本案労働省官房長を置こうとするものであります。すなわち、労働行政におきましては、最近総合的な見地において検討を必要とする事項が増大しましたので、省内各部局にわたりその事務の調整に当らしむるため、他の省の例にならい、労働省にも官房長を置こうとするものであります。  本案は、二月十九日国会提出、即日本委員会付託となり、二月二十日労働大臣から提案理由説明を聴取するとともに審査に入った次第であります。  ここに質疑のおもなる点を申し上げますと、第一に、労働省官房長を置かねばならぬとする政府提案理由は簡単に過ぎるとの質問がありましたが、これに対し、政府からは、完全雇用問題その他給与政策、中小企業問題、職業訓練等労働行政における多くの部門は、現在国の長期的な経済計画の一環として総合的に調整検討せざるを得ない状況に置かれておるので、官房長を置く必要を生じたとの答弁がございました。次に、官房長あるいは参事官等の新しい官職が最近行政部内において無秩序、不統一に作られていく傾向があるが、この点に対する政府の所見はどうかとの質問に対しましては、現在政府部内においてこの問題が検討されており、政府方針が決定した暁は、その決定に基いて善処するとの答弁がありました。その質疑の詳細は会議録によって御了承いただきたいと存じます。  かくて、三月一日質疑を終了し、討論省略採決の結果、全会一致をもって本案原案通り可決すべきものと決定した次第であります。  以上、御報告いたします。(拍手
  17. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 両案を一括して採決いたします。両案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  18. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、両案は委員長報告の通り可決いたしました。      ————◇—————  国有鉄道運賃法の一部を改正する   法律案内閣提出)の趣旨説明
  19. 園田直

    園田直君 議事日程追加緊急動議提出いたします。すなわち、この際、内閣提出国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案趣旨説明を聴取し、これに関する質疑を許されんことを望みます。
  20. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 園田君の動議に御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  21. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、動議のごとく決しました。  国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案趣旨説明を求めます。運輸大臣宮澤胤勇君。   〔国務大臣宮澤胤勇君登壇
  22. 宮澤胤勇

    国務大臣(宮澤胤勇君) 国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。  日本国有鉄道の財政の再建につきましては、国会におきましてもしばしば御論議をいただいたところでありますし、また、政府におきましても、臨時日本国有鉄道経営調査会を設置して、広く民間有識者の意見を聴取いたしましたが、国鉄の現状は、累積した老朽施設、車両の取りかえ等を急速に行なって輸送の安全を期さなければなりませんし、また一方、最近の国内経済の活況を反映いたしまして急速に増加いたしました輸送需要に対しまするための輸送力の増強をも行わなければならず、さらに、電化その他鉄道の近代化をはかってサービスの向上、経営の合理化を促進すべき段階にきているわけであります。これがための資金の調達をいかにして行うかが、国鉄財政の大きな問題であり、ひいては国鉄再建のかぎともなっているのであります。これらに要します資金総額は向う五カ年間でおおむぬ六千億円程度の巨額に達しますが、このうち約四三%に当りますものは従来の固定資産の維持に充当されるものでありまして、残りの約五七%が経済拡大に伴います輸送力の増強その他電化工事等鉄道の近代化に充当されるものであります。  この後者に属します資金の調達は極力外部資金に依存すべきでありますが、輸送力増強のための資金といいましても、必ずしも採算に乗るものばかりでなく、他方、外部資金の調達にもおのずから限度がありますので、これらを勘案いたし、さらに、過去の償却不足を特別償却するという意味を含めまして、減価償却費のほかに、ある程度自己資金による資金の調達をも考えることといたしたのであります。  以上のような次第で、老朽資産の取りかえを可能ならしめる減価償却費の計上と、採算のとれない輸送力増強施設のための経費に充当すべき自己資金の捻出のために、やむなく運賃値上げを決意いたしたのであります。  運賃値上率の決定に当りましては、国民生活並びに物価への影響を十分に考慮いたしまして、国鉄の申請案を慎重に検討されました運輸審議会の答申を尊重いたし、さらに、収入においていま一そうの努力を要請するとともに、所要経費につきましては、世論にこたえ、徹底的な経営の合理化による節減を求めることといたしまして、最小限度の一割三分にとどめることにいたしたのであります。なお、この一割三分のうち約三分は、国有資産等所在市町村交付金及び納付金に関する法律に基き、国鉄が納付金として各市町村に納付するものでありまして、実質的に国鉄の収入増になりますものは大約一割増ということになります。  次に、運賃改訂の内容についてでありますが、まず旅客と貨物の関係につきましては、従来の運賃改訂の経緯及び今後の投資計画の内容等をも検討して、旅客、貨物ともに、おおむね同一率の増収が得られるようにいたしました。  旅客運賃の改訂内容について申し上げますと、普通旅客運賃の賃率はおおむね一割三分程度の植上げでありますが、寝台料金、特別二等車料金及び特別二等船室料金は、今回はこれを据え置くことにいたしました。  定期旅客運賃につきましては、現存その割引率が戦前に比べまして相当高率になっておりますので、最高割引率につきまして若干の修正をいたすことにしたのでありますが、学生定期につきましては、現在の学生の生活環境を考慮いたしまして、現行の割引率をそのままに据え置くことにいたしたのであります。  次に貨物運賃についてでありますが、貨物賃率の遠距離逓減率につきまして、海陸の輸送調整等、政策上及び鉄道の輸送原価の点等をも考慮いたしまして修正を加えることにしました。しかしながら、その結果として遠距離貨物で、値上げ率が大きくなり、国民生活に急激なる影響を与えるおそれのあるものについては、個々具体的に検討して、割引その他特別の措置をとることにいたした次第であります。  青函航路及び関門トンネルの貨物営業キロ程をそれぞれ短縮しましたほか、重量減トン制度の改正、着駅変更など、荷主の指図に応ずる場合の運賃計算法の改正、その他諸制度の改正をいたすことになっておりますが、これら運送制度の合理化については、多年荷主側から強い要請がありますので、これにつきましては利用者の利益となるようにいたしたのであります。  以上が今回の改訂のおもな点であります。今日、国民各位に幾分でも負担の増加を願うことは心苦しい次第でありますが、この運賃改訂によって得られます増収額は、これをあげて輸送力の増強に資することといたした次第で、国鉄の輸送力を飛躍的に増大して、いわゆる輸送の隘路を打開いたしますとともに、国家の産業経済活動、国民生活により大きな貢献をするものであること少くないと信ずるのでありまして、運賃改訂も必要やむを得ざる措置であると考えた次第でございます。  最後に、本法案実施は来たる四月一日からと予定しております。  以上が国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案趣旨でございます。(拍手)      ————◇—————  国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案内閣提出)の趣旨説明に対する質疑
  23. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) ただいまの趣旨説明に対し質疑の通告があります。これを許します。中居英太郎君。   〔中居英太郎君登壇
  24. 中居英太郎

    ○中居英太郎君 私は、日本社会党代表いたしまして、ただいま説明せられました日本国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案、すなわち運賃値上げに対しまして、岸総理大臣並びに関係閣僚に、それぞれその所信をただしたいと思う次第でございます。(拍手)  日本国有鉄道は、その職員四十五万人を擁し、年間収支三千億円をこえる、わが国最大の企業体でありまして、しかも、輸送を通じまして国民生活にきわめて密接な関連を持っておることは、今さら申し上げるまでもないところであります。それゆえにこそ、国民は国鉄に対しまして大きな関心を抱いております。輸送力の強化をこれに求め、施設の改善、サービスの向上を望みながらも、なおかつ低廉な運賃を国有鉄道に期待いたしておるのでありまするが、国民がこのようなことを国鉄に期待したといたしましても、国鉄が国民のものである限り、何の不都合も矛盾もない、むしろ当然のことであろうと私は考えておるのであります。(拍手)しかし、反面、国有鉄道は一つの企業であります。国鉄が公共企業体であるという立場から経営の面をながめて見ますならば、そこにはまたいろいろな意見なり言い分なりが出てくることもやむを得ないと思うのであります。このように国民的な立場と経営者的な立場という相反する二つのものを、運賃という媒介体によりまして、どのように調整するかということは、まことに重要なことでありまして、それゆえにこそ、今日、運賃の決定が財政法の規定に基きまして、国会の議決権限にゆだねられておると思うのであります。  ところが、近来、国鉄は、すでに国権によるところの独占事業ではない。従って、財政法の拘束を解くべきであるという意見が伝えられております。また、運賃も物価の一種である、こういう意見が企業体であるという意見と重なり合いまして、運賃の決定を政治的に論議することは不当であり、これを国会の議決権限から引き離して運輸大臣の許可事項にすべきであるということが伝えられておるのであります。しかも、このような意見は、ひとり国鉄や政府部内にとどまらず、先般なされました経営調査会の答申もその旨を主務大臣にいたしておるのでありますが、この点につきまして、総理大臣は一体いかなる所見をお持ちであるか、お伺いしたいと思うのであります。(拍手)  さらに、私は、国鉄運賃のあり方と今回の運賃値上げの根拠について、運輸大臣にお尋ねいたしたいと思うのであります。御承知のように、運賃法の第一条には、公正妥当なものでなければならぬこと、原価を償うものであること、そして、産業の発達に資し、賃金、物価の安定に寄与するものでなければならないと書いてあるのであります。これがすなわち運賃決定の四原則であります。産業の発達に貢献し、賃金、物価の安定に寄与するという前提に立ちまして、しかも、国鉄経営を確保するに必要な運賃とは一体どの範囲までの経費をもって算定の基礎にすることが公正妥当なものであるかという点であります。論理的には、経営的な経営費、減価償却費、債務関係費、あるいは平均的な災害引当金、退職金等をもって算定の基礎にすることには、だれ人も異論がないと思うのであります。ところが、毎年の予算審議に当りまして、大蔵当局は、国鉄も一つの企業である限り、投下資本に対する一定の利益を見ることは当然である、そして、これをもって施設の増強等に充当せしめなければならないと主張し、この利益率をも原価構成の一要素に加えるべきであると主張しておるのであります。今回の値上げ案の内容を個々に検討してみますと、明らかに大蔵当局のこの見解によって貫かれておるということがわかるのであります。国有鉄道の運賃原価に、一体利益率というものを算入するのが当然であろうかどうか、この際、主務大臣たる宮澤運輸大臣の見解を承わっておきたいと思うのであります。  近年、しばしば国鉄の危機ということが伝えられております。それとともに、国鉄が赤字であるか黒字であるかという点が久しい間論議せられて参りました。しかし、この問題は、減価償却費をどの程度見るかということによって異なった結果を生ずることは、これまた皆さん御承知の通りであります。事実、年間三百億円程度しかこれに充当することができなかった過去数年の国鉄経理は、まことに憂慮すべきものがあったと私は思うのであります。二兆円の総資産を有しまして、一兆六千億円の償却資産を保持しながら国鉄経営を続けるためには、四百五十億円程度の償却費を適正なものといたしました経営調査会の意見も、さらにはまた、この計上不足額百五十億円程度の金額は運賃の増収に待つべきものであると結論をなすこの意見も、その限りにおきましては、私は否定のできない一つの理由を持っておったと思うのであります。すなわち、これが運賃改訂の一つの根拠であり理由でもあったのであります。  ところが、わが国経済の好況は、本年度におきましては約二百億円の運賃の増収を国鉄にもたらしました。さらに明年度におきましては三百億円の増収が期待できると、政府みずからが予算説明書に明記いたしておるのであります。この増収額をもって減縮償却の不足額に充当するならば、赤字、黒字の論争はおのずから解消するのでありまして、現在の運賃ベースこそが原価を償う公正妥当なものであるということが明らかになるのであります。この点についての運輸大臣の御意見を承しりたいと思うわけであります。  さらに、私は、今回提案になっております一三%の値上げ率についてお尋ねしたいと思うのであります。このうち五%に相当する金額は、先ほど大臣の説明にもありましたように、特別償却費という名のもとに過去における償却不足を償うところの資金に充当せへれるものであります。過去における償却不足は、戦争という至上命令が国鉄を酷使した当然の結果であります。さらに、戦後の物資不足がこれに重なり合ってもたらされたものであるのであります。いわゆる戦災復旧という立場からも、政府責任において償われるべき性質のものでありまして、断じて運賃値上げの要素として今後の利用者に転嫁せしめるべきものではないと思うのであります。  さらに、次の三%は、固定資産税に相当する国庫納付金に充当せられる額であります。国鉄が一つの金業体でもる限り、他の私鉄等と何ら税法上の差別を与える必要はないという税制調査会の答申を政府は取り入れておるのでありまするが、もしも、この税制調査会の答申を取り入れて、七十億、八十億に上るところの納付金制度を実施しようとするならば、まず、現在の国君鉄道の性格なり、あり方なりというものに対しまして、根本的な改正を加えることが前提でなければならないと思うのであります。また、国鉄側がこんな理不尽な要求を易々と了承しましたその腹の中には、これを一つの踏み台として運賃値上げを合法化しようとする考え方が強く働いておったのであろうということを、私どもは容易に想像できるのであります。地方財政の確立は、もちろん焦眉の急務であります。だからといって、みずからの責任を国鉄財政にしわ寄せさせまして、運賃値上げを前提とする納付金制度を強制することは、どのような詭弁を弄しましても、決して国民の納得を得るところでないと思うのでありまして、(拍手)本制度のごとき納付金制度はすみやかに廃止してしかるべきものであると私は思うのでありますが、これに対する自治庁長官の御所見を承わりたいと思うのであります。  さらに、残された五%は輸送力の増強の資金に充当するというておられます。国有鉄道は、経済企画庁の計画に基きまして、いわゆる国鉄五カ年計画を策定いたしまして、約六千億の予算をもって、旅客におきましては二六%増の四十八億人、貨物におきましては二〇%増の一億九千万トンの年間輸送量を確保しようといたしております。今日の国鉄輸送力が、わが国経済の一つの障害になつておる限り、万難を排しましてこれが解決に当られなければならないことは、たれ人も異論のないところでありましょう。しかも、輸送力の増強、国鉄五カ年計画が国家的要請に基くものである限り、これに要する投下資本は政府責任で果さるべき性質のものでありまして、断じて利用者に二重負担せしむべきではないと思うのであります。国民は、でき上った施設を運賃によって利用すべきものでありまして、これが企業者と利用者との常識的な関係ではないかと私は思うのであります。  以上申し上げました三つが運賃値上げ一三%の実態でありまして、どの一つを取り上げてみましても、原価を償うものでなければならぬとする運賃算定の基礎に入るべき何らの根拠も存在していないのでありますが、(拍手)運賃法の原則に照らしまして、運輸大臣の御答弁をお願いいたしたいと思うのであります。  さらにまた、岸総理大臣に本法案の再検討の御意思があるやなしやを伺いたいのであります。昨日、総理は、予算委員会におきまして、わが党議員の質問に対しまして、この運賃値上げは経営調査会あるいは運輸審議会の結論であるから撤回の意思はないと言明せられておるのであります。しかし、経営調査会といえども、著しく客観情勢の変化いたしておる今日、国鉄経営の内容を検討しましたならば、おそらく、あのような結論は出さなかったであろうと私は考えておるのでありまして、(拍手)重ねて岸総理のこれに対する所懐を承わりたいと思うのであります。  さらに、宇田長官に、運賃値上げが物価に及ぼす影響についてお尋ねしたいと思うのであります。国鉄当局は、運賃値上げがもたらす物価との関係をきわめて過小評価いたしまして、むしろ、物価の変動は、他の客観情勢、すなわち需要供給の関連によって左右せられると言い切っておるのであります。しかし、この意見は、単なる物価変動の比較論でありまして、決してこのことをもって運賃値上げが経済に及ぼす影響を否定する根拠にはならないと思うのであります。原材料から消費に至るまで平均五たび輸送の関門をくぐるという統計は、いかに消費価格に占める運賃の負担が大きいかを如実に示しておると思うのであります。輸送の根幹たる国鉄の運賃値上げは必然的に私鉄運賃の値上げを伴うでありましょう。揮発油税、軽油税の増徴は当然自動車輸送費の値上げを招くでありましょう。さなきだに秩序なき財政計画と赤字見込みの国際収支とが不気味なインフレの要因を包蔵しておる今日の経済下におきまして、一切の運賃値上げが演ずる役割はインフレ扇動以外の何ものでもないことを私は憂えるのであります。(拍手)減税の恩典にも手の届かない、政府の施策にも取り残された多くの人たちは、ただいたずらな物価値上りの波に押しまくられて、さらに困窮の度を深めていくであろうことが想像できるのであります。運賃値上げが物価に及ぼす影響について、長官の所信を承わりたいと思うのであります。  さらに最後にこの機会に申し上げたいことは、国鉄をめぐる醜聞の数々であります。血のにじむような努力を続けてきたという当局者の言明にもかかわらず、一年、三百六十五日、よくも種切れすることなく、恥ずべき話題の数々を国民の前に提供し続けて参りました。国民は、いかにその内部機構が腐れ切っておるかということに、今さらのごとく怒りを押えることができないのであります。国民のこの感情は理論を越えた大きな反発となって国鉄に向けられておることを、国鉄当局者は強く反省してみなければならぬと思うのであります。私は、このことを多く申し上げる時間を持っていないことを遺憾に思います。しかし、物資の購入、工事入札制度、財産管理等々、くもの巣のように張りめぐらされた大小無数の外郭団体との因縁情実関係を整理することは、それ自体莫大な経費の節減を伴うだけではなく、失われた信用を国民の中から呼び戻すためにも緊要の急務であるということを、私は当局者に申し上げまして、私の質問を終了したいと思うわけであります。(拍手)   〔国務大臣岸信介登壇
  25. 岸信介

    国務大臣岸信介君) お答えをいたします。  国有鉄道の運賃の決定の問題につきましては、一昨年政府に設けられました臨時公共企業体合理化審議会及び昨年運輸省に設けられました国有鉄道経営調査会の答申によれば、いずれも、これは、政府に特別の審議機関を法律をもって設置して、その議を経て政府において決定するのが適当であるという答申をいたしております。私は、この運賃の問題は、御指摘のごとく、国民生活及び国民経済にきわめて重大な関係を持つものでありますから、これが決定につきましては、よほど慎重にしなければならぬことは言を待ちません。従って、こういう答申もありますので、あらゆる角度からこれを真剣に検討して、そして政府としての意見をきめたい、かように考えております。  第二の、この案を撤回する意思はへいかというお話でありますが、この中自体は、すでに提案の理由でも申し上げておりますように、この結論を得ますためには、今申し上げましたような機関の調査、審議を経ております。のみならず、今日、輸送の隘路が国民経済の発展に非常な支障を来たしております。国民生活上も各種の不便をもたらしておるという現状にかんがみまして、私は、この運賃の値上げをして、これによって輸送力を増強することが現在の状態においては必要である、かように考えております。(拍手)   〔国務大臣宮澤胤勇君登壇
  26. 宮澤胤勇

    国務大臣(宮澤胤勇君) お答えをいたします。  御質問の第一は、運賃法の四原則というものの立場からして、原価以上の利益をもって国鉄の輸送力増強等に充てることは、その四原則に違反するものではないかという点につきましては、このたびの値上げは、この四原則の個々の条件から見ましても、また、これを総合いたした点からいたしましても、この程度の運賃の増強及びその収益というものは、この運賃法の定める精神に沿ったものであるというふうに了解して、この措置をいたした次第であります。(拍手)  次に、このたびの一割三分の値上げが一体適正であるかどうか、現在の運賃率が適正であって、一割三分の値上げというものは、これは不適正ではないか、こういうお尋ねでありますが、この点につきましては、ただいまの御質問のうちにもありました通り、今日までの収益をもってしては、国鉄の減価償却というものが十分にできておりません。そのために、この国鉄の安全性もしくは適正な運行というものに支障を生ずる段階にきております。ことに、特別償却に至りましても、これは、今日までの運賃収入というものが非常に低くして、これをまかなうことができなかったからして、やむを得ずこれを残してきた次第でありまして、この機会において、どうしても、この国鉄の経営というものを、運賃の収入と、借入金と、それから自己資金の経営合理化による捻出によって適正な方向に持っていきまして、今日の経済拡大の要請に応じようとするものであります。  なお、国鉄の輸送力増強その他につきましては国費をもってやるのが当然ではないか、こういうようなお話で、ありまするけれども、これをもし国費をもってまかなうといたしますれば、将来国民の負担というものは重大な結果を来たすことになるのであります。やはり、これは、国鉄が独立企業体であるという本質にかんがみまして、適正なる運賃と、そして自己資金の捻出と、その負担に応ずるところの借入金をもってこの経営をするということが適正であると考えて、このたびの措置に出た次第であります。  納付金の問題はいずれ自治庁長官からお答えがありましょうが、最後に、今日国鉄の一部に起っております、疑惑を受けておる幾多の問題が生じておりますることは、まことに遺憾にたえません。決算委員会その他において各位から御指摘もありまして、これは、国鉄としても、私どもとしても、一つ厳重な処置をとらなければならぬと思います。ことに、ただいま問題になっておりますところの賃借をさせておりますものの価格が適正であるか。実は、これは、国鉄法によりまして、国鉄固定資産の問題は、いつでもこれは賃貸ししたものを取り上げることになっております。いつでも取り上げるということになっておるから、少し安い値段で貸しておる。これが、実際問題としては、一度貸したものは、取り上げるということにはなっておるが、なかなか取り上げられないのであります。従って、これは一つ方針を改めて、何らか新しい考慮を加えなければならぬということも感じております。また、今日、非常に不正、不適当に行われておるものは、国鉄内部にこの賃借の問題に関する調査会を新たに設けまして、その調査会によりまして個々の問題を取り上げまして、一つ適正な措置をとりたい、かように考えておる次第であります。(拍手)   〔国務大臣田中伊三次君登壇
  27. 田中伊三次

    国務大臣(田中伊三次君) 私に対するお尋ねは、国鉄から納めてくれる納付金制度を全廃する意思はないかという一点でございます。これは、申し上げるまでもないことでございますが、国鉄のみならず、電電公社からも、専売公社からも、同じ納付金をいただいておるばかりでなく、いやしくも、国有の資産からも交付金をちょうだいしておりますばかりでなく、さらに、地方自治体の、市町村以外の府県の持っておりまする住宅関係からも、それぞれ交付金をいただいておるという現状にありまして、国鉄の納付金だけをこの際全廃するということは、地方財政を大きく圧迫することになりますので、これは大へん困難なことと存じます。従って、これを撤廃する意思はございません。かくのごとくに、各関係の交付金、納付金というものをいただいておりまして——あらゆる税額を総計いたしましても五千億円に満たない税収でございまして、地方自治体の全体の一カ年度の財政需要額は一兆一千四百億円をこえるのであります。半ばに満たざる税金的な収入でございますので、これを撤廃することはまことに困難な事情にあるということをここでお答えを申し上げて、御了承をいただきたいと思います。(拍手)   〔国務大臣宇田耕一登壇
  28. 宇田耕一

    国務大臣宇田耕一君) 今回の運賃の値上げの率は、わが国経済の隘路の一つであります輸送力の増強のために必要な最小限度の措置と思っております。貨物運賃の物価に及ぼす影響は、値上げはしても、物価水準の大幅な引き上げにはならないと考えております。国民生活の面につきましては、来年度は国民所得水準の向上すること、あるいは明年度の減税の実施等がありますから、企業所得あるいは家計所得の増大を考慮いたしますと、家計負担は大きくならないと考えます。従って、この程度の負担は、日本経済の将来への発展のために、国民各位の御協力を得たいと考えております。(拍手
  29. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) これにて質疑は終了いたしました。      ————◇—————
  30. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 本日はこれにて散会いたします。    午後三時四十八分散会      ————◇—————  出席国務大臣         内閣総理大臣  岸  信介君         外 務 大 臣         厚 生 大 臣 神田  博君         運 輸 大 臣 宮澤 胤勇君         労 働 大 臣 松浦周太郎君         建 設 大 臣 南條 徳男君         国 務 大 臣 石井光次郎君         国 務 大 臣 宇田 耕一君         国 務 大 臣 田中伊三次君  出席政府委員         経済企画庁調整         部長      小出 榮一君         科学技術庁長官         官房長     原田  久君         運輸省鉄道監督         局長      權田 良彦君         運輸省鉄道監督         局国有鉄道部長 細田 吉藏君      ————◇—————