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1957-02-05 第26回国会 衆議院 本会議 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年二月五日(火曜日)     —————————————  議事日程 第四号   昭和三十二年二月五日    午後一時開議  一 国務大臣演説に対する質疑                 (前会の続)     ————————————— ○本日の会議に付した案件  人事官任命につき同意を求めるの件  公正取引委員会委員任命につき同意を求めるの  件  国務大臣演説に対する質疑                 (前会の続)    午後三時十五分開議
  2. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) これより会議を開きます。      ————◇—————  人事官任命につき同意を求めるの件
  3. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) お諮りいたします。内閣から、人事官神田五雄君を任命したいので、国家公務員法第五条第一項の規定により本院の同意を得たいとの申し出があります。右申し出通り同意を与えるに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、同意を与えるに決しました。      ————◇—————  公正取引委員会委員任命につき同意を求めるの件
  5. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 次に、内閣から、公正取引委員会委員中村清君を任命したいので、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律第二十九条第二項の規定により本院の同意を得たいとの申し出があります。右申し出通り同意を与えるに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、同意を与えるに決しました。      ————◇—————  国務大臣演説に対する質疑            (前会の続)
  7. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 国務大臣演説に対する質疑を継続いたします。太田正孝君。   〔太田正孝君登壇〕
  8. 太田正孝

    太田正孝君 私は、ここに、政府与党たる自由民主党を代表し、政府施政方針に対して質疑をいたしますとともに、政府をして、施政方針演説の足らざるを補って、国会を通じて国民に対する説明の機会を得るようにいたしたいと思うのであります。  申すまでもなく、内外の情勢は目まぐるしいほど動いております。問題も山積しております。すなわち、外に対しては、世界情勢推移に対処する適切なる自主外交を推進すべく、内に向っては、いわゆる神武景気といわれるうちにあって、この恩恵に漏れたるものをも含みつつ、財政経済施策に遺算なきを期せねばなりません。  この意味において、質問の第は外交問題であります。質問の第二は財政経済問題であります。質問の第三は、二大政党発展のためにする議会政治根本理念についてでございます。私は、民主政治は、国民をして、その生業に対し、その生活に対し、その政治意欲を遂行するに対し、安心感を高めるにあると信じているのであります。この見地に立ちまして、外交と、財政経済と、政治運営問題について質疑を進めるのでございます。  まず、外交問題について質問をいたします。  昨年の秋、スエズ運河の閉鎖以来、いわゆる中東問題やハンガリー問題を中心として、米ソの対立は一段と深刻なるものがあります。一方に、アイゼンハワーは、その強硬政策意味する、いわゆるアイク・ドクトリンを推進せんとし、他方に、ソ連は、中共周恩来と結んで、再びスターリン主義へ転回せんとする傾向を示しています。この間、イギリスにおけるイーデン内閣の退陣や、中東諸国の動きなどを見ますると、底気味の悪い、四海波穏やかならざるものもあるやに見受けられるのでございます。外務大臣世界情勢の底に流れる緊張の度がゆるやかになっておると判断せられておりますが、その根拠を御説明願いたいのであります。  また、わが国として国連加入足場としてなすべき重大なる義務があり、外務大臣国連外交を強調されていますが、この世界外交に対する所信を承わりたいのであります。  それにつけましても、アメリカわが国原子力支援部隊を設けたいとの海外報道が、昨日、鈴木委員長に対する外務大臣答弁において、そのしからざることを聞いて、国民も安心されたことと存じます。同時に、イギリスが近く太平洋上クリスマス島において原爆実験を行わんとすることについては、それが直接に漁業者の利益に重大な関係を持つ上におきましても、広く人道主義見地からいたしましても、いかなる交渉をされていますか、その経緯を示されたいと思うのでございます。  外交施策のうちにあって特に力を置くべきは、経済外交の線を推し進めることでございます。世のいわゆる神武景気といわれるものの主力は、貿易の好調なることにあります。このときに当りまして、アメリカにおける景気推移は、国防予算増加等により一段の好況を続けることと思いますが、最近アメリカわが国よりする別珍等綿織物輸出を制限することは、わが国中小企業等に少からざる打撃を与えておりまするし、また共産主義国に対するいわゆるココム方式による輸出制限を強化せんとする現われなど、まことに寒心にたえざるものがあります。外務大臣は、自由陣営との協調を推進すると申しておりまするが、対ソ外交の開始とも関連して、最も重視さるべき対米外交をいかに推進せんとするのでございますか。外交わが国立場相手国に向って率直に反映せしめるにありと言われましたが、これらの問題につき、果してアメリカをして納得せしめていますかを伺いたいのであります。  また、中共貿易促進経済外交の重点でもありますが、貿易の実体が民間にあるにいたしましても、輸出品目拡充通商代表部の設置と支払い決済の三点は、民間を離れ、外交の線を通じて行うべきものであると信じますが、これまた、アメリカ態度等に顧みまして、よくわが国立場を納得せしめつり、その目的達成に遺算なきを期しておられるかどうか、外務大臣施策をお伺いするのでございます。  さらに、スエズ運河向う五、六カ月にして開通せんとし、欧州共同市場は、この二月中旬、すなわち旬日にして結成が行われ、関税同盟も出現を見んとしておるのであります。そうなりますると、わが国の対欧州貿易はもちろん、ヨーロッパ諸国よりする東南アジア並び中東貿易との関係にも影響するところ少くないと思われます。このとき通商貿易対策と並んで打つべき外交施策はいかがあるべきでございましようか。  なお、日ソ漁業交渉は、出漁準備の問題もあり、取り急ぐべきものでありますが、その交渉経緯を示していただきたいのであります。  さらに、日韓国交回復は、わが漁民等の送還という切実なる問題にもからみまして、いかに解決せんとするのでありますか。  これらの諸点につきまして答弁を煩わしたいのであります。  ここに一言いたしたいのは、外務大臣外交方針として外交国内政治の一本化を強調せられておることは、私も双手をあげて賛成するところでございます。(拍手)これによって官僚外交を排除されまして、国民をして外交に近づけしめます。国民をして、平和の維持に、経済発展に、安心感を抱かしめるからであります。ひたすらその実現を期待してやみません。  次に、財政経済問題の質疑に入ります。大蔵大臣、その演説におきまして、過去三カ年にわたる健全化政策と、世界経済の空前の繁栄とにささえられて、わが国経済基調が安定し、ここに拡大経済を推進するに至ったことを述べられております。思えば、この三年間粒々辛苦して財政作業を続けられた世のいわゆる一兆円予算時代を、ここに拡大予算時代に切りかえ、一方に一千億円の減税を行い、相並んで一千億円の積極施策を行い、ややもすれば相矛盾せんとする減税積極政策との二つの目的を達成せんとするのでございます。いわば、一度谷の底まで下って固めた足場から高い山に登らんとするにもたとうべきものと思われるのでございます。(拍手)それが、わが党にとり、わが政府とり、愉快きわまる目標であることはいうまでもございません。(拍手)同時に、この目的を達成するには万全の用意を持ってするのでなければ、その意図する健全財政を台なしにしないとも限らないのでございます。この意味におきまして昭和三十二年度予算の本質を検討し、国民をして信頼感を得せしめるために、次の三点に留意して答弁せられんことを願うのでございます。  すなわち、その一つは、歳入における自然増収景気の見通しでございます。その二は、主として歳出に関連いたしまして、世のいわゆるインフレ要因に対し、断じてこれに陥らざる対策ありやということでございます。その三は、国家財政地方財政とが相待って一体となって推進されなければならぬということでございます。  まず、歳入見積りが妥当であるかの問題は、財政問題審議の第一前提であります。しかるに、近来この点に関する論議がとかく一般におろそかにされていることは、私の遺憾にたえないところでございます。かつて、昭和年度の有名なる井上準之助氏による財政がその点を閑却いたしましたため、ついに財政上の赤字なる新しい言葉さえ生み出されているのでございまして、今日に至るまで、これが通語となっている次第であります。明年度財政が、一方に減税他方積極施策を行わんといたしますのも、その財源といたしまして、財政投融資関係は別とし、二千億円に近い自然増収を見込み得るものとしたからでございます。この自然増収は、とりもなおさず、向う一カ年間における経済の動向、すなわち、俗にいう景気判断基調として算出されたものであります。また、予算そのものにおきましても、向う一カ年間物価は横ばいをするという立場をとっており、わずかに人件費の単価において六・二%、物件費におきまして五・二%のわずかなる引き上げを見込み、おおむね前年度見積りに準じて作成されたものでございます。申すまでもなく、景気判断作業は困難なるものと思います。また困難であったと思います。世のいわゆる神武景気を築き上げているものは、貿易の好調であること、豊作が二年も続いたということ、設備投資の盛んであることの三点に集約され、また指摘されておるのでございます。果して今日の好況が持続するやいなやの判断もまたこの三点に置かれねばなりません。(拍手)  まず、貿易関係はどうでございましょうか。貿易が好調を続けるためには、特に輸入に関連する国際収支とも関係いたしますが、内にあっては、物価が上らない、技術が向上する、よく国際間の競争に耐え得る力のあるとともに、関係外国わが国に対する態度いかんにかかっておるのでございます。しかるに、アメリカにおいて、依然として農産物を初めわが国関係のある国内産業保護の声が消えておりません。また、ヨーロッパ諸国におきましても、特恵関税による共同市場が築かれんとしております。中共貿易またこれを拡大することの容易でないことなどを考えますると、大蔵大臣は、外交施策なり通商施策なりとにらみ合せて貿易の好調が続くものとされた、その根拠を示されたいのであります。  次に、農作物に関しましてほどうでございましょうか。豊作は二年以上続かないと昔から伝えられておりますが、今日における農業技術の非常なる進歩といい、肥料や農薬などの高度の発達などを考えますと、古い人たちの言われた言葉を直ちに今日に移すことはできませんが、もし不作となりましたときは、昭和二十八年度食糧緊急輸入のやむなきに至ったことも思い出され、これまた景気観測上の困難なる作業であると思います。もしそれ設備投資による景気に至りましては、資金の放出と融通を主力といたしておりますが、隘路を開かんとして新たなる隘路を生ずるなどのことを考えますと、これまた景気判断の困難なるものがあります。よって、大蔵大臣は、以上の三点に留意され、自然増収を算出された基本観を申し述べていただきたいのであります。もとより、財政における自然増収の多いということは、苛斂誅求をするというような場合は別といたしまして、私たちの望むところであり、大蔵大臣もこれが国民の努力によるものとして感謝されているのでございます。言うまでもなく、二千億円の自然増収は、これまでの制度のままで、減税のないときに比べましてのことでございます。二割見当の増収といいましたならば、わが国もとより、諸外国にもその例に乏しいほどであります。また、三十一年度の、現年度自然増収が一千億円であるということを考えましても、その倍率に当る大きいもので売ります。私は、万が一にもこの見積りに誤算を生ずることがありましたならば、予定の収入を得られないときに、税務官吏予算上の収入を得んとして苛斂誅求となることを憂えるのでございます。(拍手)一方において減税を受くる者がある反面に、他方において苛斂誅求を受け、しかも、それが減税の恩典を受くることの薄い中小企業者等に及ぼすことのないように念願してやまないのでございます。(拍手)従って、景気観測出発点として、この自然増収の確実なることを国民に知らしめるために、国民をして安定感を得せしめるために、御説明を願いたいと思うのでございます。  なお、この自然増収の中には、従来の滞納が、景気の上昇につれまして、国庫に入ったものがあるではないかと思いまするが、もししかりといたしましたならば、徴収の公平という立場、税を納めた正直者がばかを見てはならないという意味からも、滞納整理成績を示されたいのであります。もっとも、滞納による収入回復は、その年限り一年度限りのものであることは注意されなければなりません。  もう一つ申したいことは、この自然増収の予想が予算編成中に次第に高められたと記憶しております。また、同じ租税収入見積りにつきまして、国税地方税との間に同じ方向で行われたかということであります。国税見積りは次第に増大してきました。しかるに、地方税見積りは、大蔵省が一千億円と見たことが、自治庁当局との交渉により、七百億円に減ぜられておるということは、いかなる理由によるものでございましょうか。地方税において、政府設備を拡大する政策などによって、当然増大すべき船舶や家屋などの固定資産税等の見込みに双方の間に差があったからではないかと思いますが、一方に国税見積りを増し、他方地方税見積りを減額したというその経過もあわせて示されて、自然増収見積りの断じて過大にならざることを御説明願いたいのであります。(拍手)  次は、歳出インフレ対策の問題であります。ここに提出された予算案に対し、これがインフレを刺激するのではないかという世間の批評があります。これまでの財政施策は、インフレに対して中正であった。物価を高めずに貨幣価値を維持したというのに対する新予算に関する世間の批判であります。しかして、そのインフレ要因として指摘せらるるものは、おおむね次の点、すなわち、減税給与引き上げによる消費力増加によってインフレを招くのではないか、鉄道運賃ガソリン税引き上げによってインフレに導くのではないか、さらに、積極施策による歳出放出によってインフレとならぬかなどの問題であります。この点については、学者の間にも実際家の間にも観測を異にしていますが、経済財政施策の局に当る政府として万全の措置を講ずべきことを期待し、あくまでインフレを紡ぎつつ健全財政を堅持し得ることにつきまして、国民信頼感を得せしめるようにありたいと存ずるのであります。(拍手)  積極政策と申しますが、一千億円中、給料引き上げ等増加を別にすれば、半額の五百億円以下であります。わが党の要求する積極施策は、政府との交渉過程に見る通り、いまだ満たされざるものが巨額であります。すなわち、社会保障における生活保護関係や、農林業中小企業対策や、完全雇用のいわゆるフィジカル・ポリシーの具現化など、満たされざるものが巨額にあるのでございます。わが党による積極施策をこの上とも進めていく上においても、インフレに断じて陥らざるよう切に期待してやまないのでございます。(拍手)ことに、この点は、職として財政金融との調整に当るべき大蔵大臣の精進を願わなければならぬのであります。  それにしても、経済企画庁の一月の経済月報におきまして、さしあたりはインフレを警戒すべく、行く先はデフレを警戒すべき旨を公けにされております。その臨機の措置に出ずべきことは、これは正しいことでございますが、表現が刺激的ではないかと思います。ことに、二月という租税納期関係や、輸入関係で、財政引き揚げ超過が二千二百億円にも及ぶであろうと考えられますときに、現に、金融機関の窓口にかけつけて、早く借りたい、金利の安いうちに借りたい、買いだめもできるならばしたいという金融の忙しい昨今、刺激的の文句は差し控えられたく、特に職として金融調整の任に当る大蔵大臣に御注意を促す次第であります。雨が降るなら、かさを持つべきであります。それはどの雨でもないのに、外套を持て、長ぐつをはけというのも考えものではないかと私は思うのでございます。(拍手)要は、インフレを防止することについて国民信頼感を高めしめたいということにあります。もちろん、インフレ対策政府のみの力で及ばぬ点があります。事業界や、金融界や、一般消費階級の全面的の協力を要することであります。大蔵大臣演説中にも、この点に関する言葉を差しはさまれておりまするが、この点については、広く民間に対し一段の要望を強調されるのがしかるべきことかと存じます。あえてつけ加えて申し上げる次第でございます。  大蔵大臣に対する質問は、国家財政地方財政との調整についてでございます。よく中央、地方を通ずる財政とか税制とかいわれますが、実は国家財政本位に事が進められまして、いつもいつも地方財政のことがおろそかにされてきたということは、私の残念しごくに思うところであります。(拍手)明けて一昨年末の臨時国会が、地方財政運営がどうにもならず、百八十億円に及ぶ巨額交付税交付金国家財政から穴埋めしてしのいだことも考えねばなりません。申すまでもなく、国家予算の一兆円余に対し、地方財政もそれをこす同じく一兆円余でありまして、しかも、国の予算の四、五割というものが地方を通じて行われるのでございます。かくのごとくに、地方財政は、自治体のみずからの力、自治体自主性によって運行されるとは申しながら、国家財政と並ぶ車の両輪にたとうべき重要な役割を占めておるのでございます。総理大臣大蔵大臣は、その演説におきまして、地方財政も健全に向っていると言われておりまするが、また、新規に公営企業に対する金融公庫を作らんといたしまするのは、数年来の地方要望に沿うものとして、私の賛意を表するところでありまするけれども、全体としてこれを見るときには、少からず地方財政安定性もしくは健全性について疑義を抱くのでございます。すなわち、この予算は、国税減税するために地方財政にはね返る点を深く考えられていないのではないかと思われるのでございます。私は、現在、所得税法人税と酒税という三大国税の四分の一に当る二割五分を国が交付税として地方団体に出しているということには、ある意味の限界に来ているのではないかとさえ思っておりますが、しかし、それは、国税減税した場合に、現在額を低下することはいけないという意味でございまして、地方交付税へのはね返りを満たすことを考えずに、交付税を一分増して二割六分としただけで事を済ますべきものではないと思うのでございます。これは、せっかく立ち直りつつある自治体のために考うべきことではないでしょうか。私は、決して、地方財政に対して甘い考えで、これを放漫に導こうとするものではございません。それどころではない。地方自治体にあっては、人員も整理し、昇給もせず、昇給を見送るものが少くないなど、まことに涙ぐましい状況を現実に見ておるからであります。  もう一つは、地方債整理の問題であります。それも、明年度分については、交付税を通じ、給料関係公共事業関係などの地方債に対する利子補給をするとのことでございますが、かかる金繰りだけで一時をしのぐことをせず、きっぱりと根本的に地方債問題を解決すべきものではないかと思うのでございます。(拍手地方団体といたしましては、とまどいすることになるのではないでしょうか。また、新市町村建設促進のことは、政府予算編成方針にも出ている唯一の項目でありますが、前年度町村合併費と合せて十億円でありましたものが、促進費として少し増額して十四億円となっているのであります。一町村に対する事業費をわずか四百万円に査定し、その半額を補助するということでございますが、今の新市町村基準人口を構成している一万四、五千人と相対してみますると、事業費が一人当り三百円にも満たないのでありまして、その半額国庫から出すということであります。御承知のごとく、この三月を期して、新市町村計画は一段落をいたします。これは明治二十一年以来七十年近い同にわたる自治制度の大改革であります。これを出発点として、郡制府県制、あるいは道州制にも及ぶ地方制度の改革が進められんとする重大時期であります。しかも、現在は、町村が合併し、区域を広げたというだけであります。新たに町村のなわ張りができただけでありまして、その中身は整っていないのであります。消防自動車の通らないような道路の整備や、学校の統合や、通信連絡機関拡充など、それもこれもと目を見てやらなければならぬことが多いのであります。それとも、この点については私の知らない予算措置でもあるというのでございますか、承わりたい。私は、民主政治発達地方自治体基調とする見地からも、以上の諸点はとくと考えられたいと思うのでございます。  ちなみに申し上げます。大蔵省事務当局財政技術は巧妙であるかもしれませんが、もともと予算は、国民から税を取り、これを支出するという、入った金と出る金を明示すべきものであります。すべては国民の金であります。国民のわからない予算収支はあるべきはずのものではございません。この意味におきまして、今回食糧管理特別会計赤字のまま提出されたこと、三十一年度に予定する剰余金による財源のあること、少くとも三十年度の決算は確定し、その赤字も明らかであることなどから見まして、了解に苦しむ次第であります。いわんや、問題が政治問題化されんとしておるからでございます。これらの点は、減税施策における間接税に関する考え方等、残されたる幾多の問題とともに、同僚の方々なり、予算委員会等において、ただされることと存じます。  終りに、政治問題について内閣総理大臣質問いたします、総理施政方針の第一は、国会運営正常化であります。両党が互いに話し合い、政治に対する国民の信用を回復せんとすると言われています。最近における国会運営経過に見て、当然過ぎるほど当然なことであります。また、国会運営は、国会法の改正を中心といたしまして、国会みずから処理すべき問題であります。また、わが党が、みずからも、世評にかんがみ、改むべきことを改むることについては、きわめて謙虚でなければなりません。しかし、ここに日本社会党と話し合ってと申していますが、その中心となるべき課題は、議会政治の確立、さらに議会中心主義の堅持ということであると信じます。(拍手)私は他党の運動方針などかれこれ申すものではありませんが、わが党として、政府として、議会政治を守り抜き、議会中心主義を高揚すべきことは、いかに強調しても足らないとさえ思うのでございます。(拍手議会政治は暴力を排します。議会中心主義革命的行動を絶対に排除するのであります。(拍手)言論によって外交政治経済に関する施策を批判し、国会をして文字通り国政の最高峰に推進しなければならぬのであります。私は、二大政党発展を期待する意味におきまして、政府の話し合いの中心となるべきものが、徹頭徹尾議会政治を守り抜く議会中心主義であるべきことの、政府としての信念を抱いておるかをただしたいのであります。とりもなおさず、議会政治を守り抜き、議会中心によって政治を運行していくことこそ、国民に対し政治上の安心感を与える第一義であると信ずるからであります。(拍手)  要するに、外交に、経済に、政治に、国民安心感を高めしめる意味において、私の質問を貫いたのでございます。(拍手
  9. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 内閣総理大臣臨時代理岸信介君。  〔国務大臣岸信介君登壇〕
  10. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 国会運営正常化について御質問がございました。国会運営正常化は、両党共通の広場を多くして、両党の話し合いによって公正に国政についての論議を十分に尽すようにいたしたいと思うのであります。(拍手)これがためには、当然のことではありますが、両党とも、民主主義政党として国会政治を守り、これを確立する信念に徹することが必要であると思います。(拍手)これによって国会に対する国民信頼感安心感は高まるものと考えます。(拍手
  11. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 外務大臣岸信介君。  〔国務大臣岸信介君登壇〕
  12. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 外務大臣に対する太田君の御質問にお答えをいたします。  第一は、国際情勢についての私の見解でございます。御承知のように、昨年起りました幾多の事件は、従来国際緊張緩和の方向に著しく進んでおると考えられておった世界情勢が一時逆転したような状況になっておることは、御承知の通りであります。しかし、私は、すでに三巨頭会談によってやられたジュネーヴの会議や、その後における、特にソ連のとってきております政策がこの緊張緩和の方向にありますがゆえに、今日直ちに以前のようなあの先鋭化した冷戦へ再び復帰するということは、私は考えることはできないと思うのであります。この意味におきまして、やはり世界の底流は緊張緩和の方向に進みつつあるものと考えることが適当である。もちろん、部分的にいろいろな事態が生ずることもありますし、また、それがひいて世界の大事にならないとも断言できませんので、この意味においては、十分にわれわれは情勢に対してこれを観察し検討して対策を考えなければならぬ、かように考えております。  いろいろあげられました、イギリスの原子爆弾に対する実験についての日本側の考え、措置、あるいはアメリカから原子部隊の日本への移駐の問題等のお話がありましたが、私どもは、すでに国会において議決されております原水爆の使用禁止、従って、その実験の禁止は、全国民の希望であり、決意でございます。従って、この考えをあらゆる機会に貫徹するように努力することは私どもの務めであると考えております。(拍手)従いまして、イギリスに対しましても、アメリカに対しましても、この実験を行う場合におきましては、これをやめるようにわれわれは要望して参っております。イギリスに対しましても、その見地から厳重な抗議を申し込んだわけであります。また、原子部隊の問題につきましては、これは新聞の誤まった報道がいたく国民の気持を刺激したと思いますが、責任ある国務省及び国防省は、これは事実ではないということを言明いたしております。(拍手)また、そういう場合におきましては、すべて日本政府と話し合いをすることになっております。私どもは、あくまでも、日本国民の考えや、各種の日本の自主的な立場から、この問題に対する日本の態度をきめたいと考えております。  国連に加盟いたしまして、われわれは非常に重大な責任を持つことになったのでありますが、言うまでもなく、国連憲章を忠実に順守して、今日東西の緊張ができるだけ緩和されるようにわれわれは努力をしていき、また、国連内部におけるところのいろいろな対立につきましても、常に公正、中立なる主張を、建設的に、積極的に主張して、そうして世界の平和を増進することに努めたいと考えております。  アメリカとの関係につきまして、今申しましたような問題とともに、貿易上の問題が御指摘のごとくございます。綿織物に対しましては、両国の当事者の間に自制的な申し合せができまして、一応片づいた形になっておりますが、しかし、アメリカは何といっても日本の大きな輸出市場でありますし、また、これに対しては、綿織物以外にも問題を生ずるおそれのあるものもございますので、これらにつきましては、国内における業者の自制と、アメリカ側に対して日本の産業事情を十分に了解せしめるような措置とりたいと思います。  ココムの制限緩和の問題につきましては、われわれは一貫してこれを合理的に緩和する方向に努力をいたしております。  スエズ運河の再開によりまして、いろいろ貿易上の変化があることは当然であります。また、欧州において共同市場の問題がございますが、これらは最後的にはガットの会議において決定されることになっておりまして、われわれとしては、あくまでも、貿易上日本の公正平等な立場を得るように、あらゆる機会に努力する考えであります。  韓国との外交につきましては、国交が正常化せないことは非常に遺憾でございますが、私どもは、まず第一に、韓国に抑留されておるところの漁夫を釈放するという問題は、人道的な立場から、これはすべての問題に先だって解決されなければならぬという見地に立って交渉いたしております。もしもこの問題が解決すれば、その他の懸案事項について話し合いを進めていくところの用意があるのであります。  日ソ漁業交渉の問題につきましては、昨年末ソ連より委員をよこすことになっておりましたが、これがおくれまして今月の八日前後にモスクワを出発するという情報が届いておりますが、いずれにしましても、できるだけすみやかに委員会を開きましてそうして本年の漁期に間に合うようにこの問題を解決したい、かように考えております。(拍手)  〔国務大臣池田勇人君登壇〕
  13. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 太田さんの御質問にお答えいたします。  まず第一、租税の自然増収でございます。私は、昨日財政演説で申しましたごとく、世界の景気はなお高水準を続けていくものという前提に立っております。従いまして、貿易におきましても年々増加の道をたどっておりまするが、来年度、三十二年度におきましても、輸出を二十八億ドル、輸入を三十二億ドルと計算し、輸出におきましては三億ドル余の増加を見込んでおるのであります。  次に、豊作の問題でございまするが、もちろん天候に支配されることは大きいのでございまするが、最近のこの米の増産は、農民各位の非常な御努力によることはもちろんでございまするけれども、農薬、あるいは肥料、あるいは耕作技術の進歩、あるいは品種の改良等に基くものも相当あるのでございまして、私は過去二年間の実績を続けていかれると強い期待を持っておるのであります。  次に、設備の拡張についてでございまするが、昨年春以来、急速な設備の拡張が行われております。私は、この設備の拡張による産業の合理化、近代化にマッチいたしまして、積極財政によってそのネックを埋めようとしておるのでございまするから、生産の増強あるいは品質の向上は期待し得るものと考えております。(拍手)従いまして、では二千億円の自然増収を見たのはどういう根拠かというお話でございます。昨年、経済企画庁におきましては、当初鉱工業生産は前年に比べて七分一厘の増加を見込んでおったのであります。七分一厘の増加で、三十一年度当初予算は八千二百六十七億円と予定いたしました。しかるに、七分二厘の生産の増強が二割一分にまでふえてきております。この結果が、本年度におきまして九百数十億円の自然増収が出るのでございます。しこうして、経済企画庁の調査によりますと、昭和三十二年は、今年度に比べまして、鉱工業生産は一割二分五厘の増加を見ておりまするので、現行税法でいくならば、本年度に対しまして九百九十億円の増収を見込み得るのでございます。従いまして、減税せずとせば来年度は一兆百八十七億円の租税収入を期待し得るところを、九千四百六十九億円といたしております。だから、日本の生産が、ことに鉱工業生産が、三十年度に比べまして三十一年が二割一分も増加をしており、また、三十一年度に対しまして三十二年が一割二分五厘その上に増加するというので、こういうふうに相なってくるのでございます。これは私は決して見そこないではないという強い確信を抱いておるのでございます。(拍手)もちろん、物価、賃金その他につきましてもある程度の移動を見ておりまするが、これを常に勘案いたしております。また、直接税につきましてはそうでございまするが、間接税におきましても、最も大きい酒類につきましては、清酒は昨年の三百万石に対しまして三百三十万石を予定いたしております。ビールは今年度の二百三十万石に対しまして四十五万石の増加の二百七十五万石を予定いたしております。合成清酒は今年通り、しょうちゅうは百六十万石を百四十万石と見込んでおるのでございます。また、砂糖におきましても、揮発油におきましても、最近の消費状況を見まして、適当な、確実な見方をいたしておる次第でございます。  なお、次に、インフレに陥る懸念はないかということでございます。財政規模が昨年に比べて一千二十五億円増加したので驚いておられるかもわかりませんが、日本の経済は、想像以上に、何と申しまするか、発展拡大いたしたのでございます。私は、昭和二十八年のあの国際収支赤字を見まして、一兆円予算ということを主張いたしました。しかし、三年間の努力によりまして、先ほど申し上げまするように、非常に拡大いたしたのでございます。当初の見込み、すなわち今年度予算一兆一千三百七十四億は、国民所得の八兆二千億に対しまして、一三・九%でございます。昭和三十一年度予算は、国民所得に対しまして一四・八%というワクに相なっておるのであります。一千二十五億円ふえましても、国民所得の増加に比べれば、まだまだワクは低いと言い得ると思います。(拍手)また、インフレに陥ることを防止いたしまする根本の問題は、先般お話し申し上げましたごとく、財政が中立性であること、均衡であることが第一でございます。また、財政が均衡であるがごとく経済金融も均衡でなければなりません。財政が均衡であっても、経済金融が不均衡であったならば、インフレは必至でございます。従いまして、私は、一方におきましては、国民各位の強力なる貯蓄増加をお願いいたしますると同時に、貯蓄せられた預金の範囲内、資本の蓄積の範囲内で設備投資をやるべきだと思います。ことに、最近のごとく設備投資が拡大いたしまして、電力その他の運輸交通関係がおくれておる場合におきましては、民間におきましても、まず第一、このネックに貸し出しをやっていただき、それから後に一般の投資をお願いいたしたいのであります。財政が均衡であり、経済金融が健全であったならば、これは鬼に金棒でございます。(拍手)決してインフレは起りません。ただ、問題は、生産が伸びるか伸びないかでございます。財政が生産拡大に意を用い、また、金融がネックを解消し、設備の合理化をすれば、生産が増強されることは理の当然でございます。今までの歴史を見ましても、鉱工業生産その他は急速に増強いたしまして、昨日お話し申し上げましたごとく、昭和二十八年に比べて三七%と、世界にドイツ以外には例を見ないほどの生産増強でございます。従いまして、私は、この三つがそろえば、物価も安定いたしまして、自然増収が確実に現われてくると確信しておるのであります。(拍手)  次に、租税の問題につきまして、滞納あるいは徴収状況はどうかとおっしゃいました。戦後におきましては相当滞納件数も滞納税額もございましたが、最近では滞納税額は非常に年々少くなって参りまして、一昨年の十一月三百二万件ありましたのが、昨年の十一月は二百三十六万件と、六十六万件件数が減っております。また、滞納税額は五百五十二億円あったのが一年間に四百二十七億円と、百二十五億円減っております。しこうして、終戦当時のごとく税務行政が非常にむちゃくちゃであった時代を脱却いたしまして、最近では苛斂誅求の声を聞くことが非常に少くなったことは喜ばしい状態と思っております。(拍手)  次に、地方税に関する問題でございまするが、地方税につきましては、経済界の好況に原因いたしまして、地方税自体の自然増収が七百億円近くを見込まれるのでございます。また、交付税率の引き上げは一%といたしましたが、前年の交付税額に比べまして二百四十億円の交付税額増額でございます。しこうして、また、補正予算で御審議願っておりまするがごとく、当面百億円を見込み、今後におきましても数十億円の交付税増額を見込み得るのでございます。従いまして、よほど以前よりは財政状況もよくなって参りました。従いまして、公共事業の事業費増加あるいは行政水準の向上のために、単独事業におきましても二百億以上の前年に対しての増加を見込み得る状況に相なったのであります。もちろん十分ではございません。地方財政の重荷である地方債の問題、今後の税収入の問題、交付税の問題もございまするが、十分検討の上、今後恒久的な政策を来年度中に考えたい所存でおるのであります。(拍手
  14. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 河野密君。   〔河野密君登壇〕
  15. 河野密

    ○河野密君 私は、日本社会党を代表して、石橋内閣に対して、内治、外交の重要路線につき二、三の質疑を試みんとするものであります。(拍手)  昨年十二月、鳩山首相がその宿願の通り政界を引退いたしまするや、総裁の公選によって石橋湛山君が自由民主党の総裁に選ばれ、第二十六回国会の劈頭に当って首班に指名されて、石橋内閣の成立を見たのであります。病鳩山首相の痛々しい姿に二年間焦燥を感じていた国民も、久しぶりに健康首相を見得ることに消極的な喜びを感じたと存ずるのであります。(拍手)しかし、かくして生まれた石橋内閣も、その組閣に当っては、まず派閥抗争につまずき、引き続いて予算編成の不手ぎわによって国民の信頼を失い、今また石橋首相の国会欠席によって前途の多難なることを思わしむるものがあります。(拍手)われわれも、石橋首相なき石橋内閣に対して質疑を試みるのは、いささか的なき的を射るがごとき拍子抜けの感がいたすのでありまするが、私は、石橋首相がすみやかに快癒されて、堂々とわれわれの質疑に答えられんことを希望してやみません。  私の質問いたしたいと思う第一の点は、現下の国際情勢について政府はいかなる見通しを有しているかの点であります。昨年秋、ポーランド及びハンガリーの内乱があり、引き続いて英仏連合軍のエジプト侵入が起るなど、国際情勢はとみに緊迫の度を加えて参りました。ことに、英仏連合軍のエジプト侵入に対しては、ソ連が警告を発し、英仏両国がエジプト侵略を続けるならばソ連もまた義勇軍を派遣するであろうと声明するに及んで、世界はまさに第三次世界戦争の危機に直面したのであります。幸いにして国連の機宜を得た処置によって一応事なきを得ましたが、本年一月五日、米国のアイク大統領は、中東政策に関する特別教書を発し、中近東がソ連の脅威にさらされる場合は米国もここにおいて戦う決意であることを表明し、またまた国際緊張は蒸し返されて参りました。いわゆるジュネーヴ精神として、平和と共存のそよ風が吹くかに見えたのもつかの間で、世界は再び冷たい戦争の中に閉じ込められ、熱い戦争にまで発展しかねない警戒すべき現状であります。この国際情勢の緊迫に対して、政府はこれをいかに判断し、いかに対処せんとせられるのでありましょうか。  われわれの見るところによれば、現下国際情勢の緊迫しておる最大の原因は、過去数世紀にわたって植民地もしくは半植民地として迫害され来たったアジア及びアフリカの諸国民が独立と自由を戦いとらんとしておることに対する帝国主義的諸国の無理解に基因するものと存ずるのであります。(拍手)従って、わが国としては、これらの諸国民の独立運動に対して深き理解と同情を表明するとともに、国連を通じて無理解なる反動政策と戦うべきであると信じまするが、政府の見解はいかがでありましょうか。(拍手)少くとも、わが国としては、国際緊張の最大原因である両陣営に対して自主独立の路線を歩むべきであり、その限りにおいて、同じ路線を歩みつつあるアジア・アフリカグループとの関係をより緊密化すべきであると考えまするが、政府の見解を承わりたいのであります。(拍手)  第二に私の質問せんとするのは、原子力部隊の駐屯についてであります。去る一月十六日、アイゼンハワー米大統領は議会に予算教書を送り、歳出七百十八億ドルという、平時最高の予算を要求いたしました。しかも、その六三%は防衛関係予算でありまするが、これによって原子力部隊の構想が表面化され、対ソ戦略拠点六カ所に原子力部隊を配置することが明らかとなったのであります。これは、かねて米国防当局が計画していたニュー・ルック政策の推進であり、いわゆるヒット・エンド・ラン政策の具体化であるといわれておりまするが、その原子力部隊の基地が日本及び沖繩に設けられんとしておるのであります。一般新聞紙の報ずるところによれば、アメリカ政府は日本及び沖繩に対して原子力部隊の駐屯を要求し、これを条件として駐日米軍の引き揚げを敢行せんとしつつあると伝えられまするが、事の真相はいかがでありまするか。政府はかかる交渉を受けているのであるか、受けているならばいると、はっきりお答えが願いたいと存ずるのであります。(拍手)  もしアメリカがかかる部隊の駐留を日本に要求したとするならば、その条約上の根拠はどこにあるのでありましょうか。いわゆるMSA協定といわれる相互防衛援助協定の第九条には、日本国憲法を尊重し、その範囲内においてのみ相互援助の義務があることを規定しているのであります。また、安保条約及び行政協定においては、わが国を防衛する限度においてのみ米軍の駐留を認めるものであり、日本国憲法が厳然として存する以上、日本国内に原子兵器を持ち込むことは許されないのであります。(拍手)向米一辺倒といわれた吉田内閣すら原子兵器の持ち込みを認めずと言っていたのに、アメリカ政府は何を根拠として原子力部隊の駐留を要求してきたのでありましょうか。石橋内閣は当然これを拒否すべきものと信じまするが、岸外相はいかなる態度をもってこれに対処されんとするのか、承わりたいのであります。(拍手)  この原子力部隊については、日本国民がこれを知る前にソ連がこれを知り、一月二十三日のプラウダ紙は、日本に原子力部隊の基地ができ、そこから原子兵器をもって攻撃してくるならば、ソ連もまた同じ武器をもってその基地を攻撃する、と警告を発しました。これは、過去三たびにわたって原爆の洗礼を受けた日本国民としては、ゆゆしき大問題であります。(拍手)日本が原子力部隊の基地を提供することは、みずから来たるべき原爆戦争の渦中に投ずることに相なるのであります。緊迫しつつある国際情勢の中にあって、日本がみずからを守る道は、世界のいずれの陣営に対しても自主独立の立場を守り、ある特定の国に対して経済的にまた軍事的に結合をしないということにあると信じます。(拍手)条約により、軍事協定によって、そういう特定の国と結合することは最も危険な道であり、従って、この際は、安保条約及び行政協定、MSA協定に対して根本的に再検討を加うべき段階にきておると考えまするが、政府はこれに対していかに考えるのであるか、政府の所見を承わりたいのであります。(拍手)  次に、私が主として質問せんとするのは、石橋内閣経済財政方針についてであります。  世間では、石橋内閣が成立するや、石橋首相が財政経済畑の出身であり、岸外相ももともと経済人であり、加えて自信の強い池田蔵相を擁するがゆえに、石橋内閣すなわち財政経済内閣と早合点し、これに多大の期待を寄せているかの観があります。石橋内閣もまた、この世間の期待にこたえるかのごとく、次々に経済施策を発表して参りました。しかし、私は、石橋内閣が打ち出された財政経済政策に対し、決してこれを高く評価することはできません。残念ながら、その施策の多くに対しては反対せざるを得ないのであります。(拍手)  石橋内閣の打ち出した財政政策を見ると、減税と積極財政と、この矛盾せる二つの政策を同時に行わんとしておるのであります。これは明らかに矛盾であります。最近発表されたアメリカ予算すら、減税を一年見送りにして歳出の拡大をはかっているのであるが、日本ではこれを瞬時にやろうというのであります。しかも、池田蔵相は、さらにこの方針をもっともらしく説明されまして、一千億減税、一千億施策と称し、一千億の減税を行いつつ一千億の積極施策を行うと打ち出したのであります。しかし、諸君、一千億の減税をやって、しかも予算の規模を一千億拡大しようということは、尋常の考え方でできるものではございません。これには二つのからくりがあるのであります。一つは、一千億の減税といって、実は七百二十億円の減税をしかやっていないということ、(拍手)いま一つは、自然増収を大きく見込むということ、特に三十二年度において、自然増収を千九百二十二億、約二千億円と測定しておることが、あらゆる財政政策の手品の種となっておるのであります。(拍手)しからば、昭和三十二年度において何ゆえに二千億円の自然増収を見込むことができるのでありましょうか。ただいま、大蔵大臣は、太田君の質問に答えて、ここでるると述べましたが、それを要約してみまするならば、本年度においても約一千億円の自然増収があった、だから来年度も二千億円自然増収があるはずだ、あるだろうもそういうこと以外に何らの根拠がないのであります。(拍手)あったら示していただきたい。  およそ、自然増収の生ずる原因は三つあると思うのであります。一つは、税務官吏の徴税のさじかげんによるものであります。いま一つは、予算決定以後における物価の値上り、ベース・アップ等、主としてインフレ高進の影響によるものであります。第三は、経済活動の活発化による収益率の上昇によるものであります。この三つが自然増収の原因であります。自然増収財政的に歓迎すべき点があるとするならば、この第三の場合に限られるのであります。三十一年度自然増収の場合は、わが経済活動の活発化に伴うものであり、ある程度われわれもこれを容認するにやぶさかでありません。しかし、三十二年度においても同じ比率をもってこれを期待し得るということは、どうして証明できるでありましょうか。三十二年度において二千億の自然増収があるためには、日本の経済が今年度と同様の上昇率を持たなければなりません。三十年度におけるわが国経済上昇の支柱は貿易の拡大でありました。三十一年度のそれは民間設備投資の活発化でありました。しかるに、三十二年度の支柱は一体何でありましょうか。同じ政府が策定した明年度経済計画によると、国民総生産において前年度の一一・二%の伸びに対して七・四%の伸びである。国民所得において前年度の一二%の伸びに対して七・五%の伸びである。鉱工業生産において、前年度の二一%の伸びに対して一二・五%の伸び、輸出において、前年度の一八・四%に対して一二・九%の伸びと、いずれも鈍化の傾向にあることを政府みずからが立証しておるのであります。(拍手)同じ政府にあって、経済計画の責任者がかかる内輪の経済計画を立てているのに、ひとり大蔵当局だけが自然増収二千億という過大なる数字を捻出しているのは、果して妥当であるかどうか。(拍手)  仄聞するところによりますると、石橋首相は積極財政一本やりであり、池田蔵相はまず減税をという減税論者である。この間の調整のために、一千億減税、一千億施策の折衷案がとられたとのことであります。従って、自然増収も最初は一千四百億と見積られ、次いで一千六百億と見積られて、最後に池田君の要求によって一千九百二十二億円に落ちついたのでありまして、(拍手もともと減税予算規模につじつまを合わせるために作り上げられたものにすぎないのであります。  しかも、私が驚かざるを得ないのは、すべてを仮定の自然増収に託して一千億減税、一千億施策と打ち出した池田君が、これを健全なる積極財政と呼んでいる心臓の強さであります。(拍手)私は断言いたしまするが、池田君は、この予算を施行する過程において、必ずや、早晩、減税を貫くか、積極財政を貫くか、二者その一を選ばざるを得ない場面に逢着するに違いないと思うのであります。(拍手)その場合、犠牲となるのはいずれであるか、石橋であるか、池田であるか、減税であるか、積極財政であるか、われわれは刮目をしてこれを見守っているのでありますが、これに対する池田蔵相の率直なる御見解を承わりたいのであります。(拍手)  次に質問をいたしたいのは、この予算インフレとの関係であります。政府が提出した三十二年度予算案は、その総額が一兆一千三百七十四億円でありまして、前年度に比較して実に一千二十五億円の増大であります。池田君は、この予算に対して説明を加え、たとい予算の規模が拡大しても、歳入歳出の均衡が保たれておる限り、断じてインフレの危険性がない、と言われております。それに、また、池田君は、先ほども申されましたように、来年度においては国民所得は八兆一千八百億に達するのであり、これに対する一般会計予算の比率は一三・九%であるがゆえに、予算の規模は心配するに当らない、と申しております。しかし、私はこれに対して疑問を持つのであります。予算の規模の急激なる拡大はインフレの危険性を伴うものと考えます。いわんや、現在のごとく、潜在的にインフレ傾向が経済界の基調として存在するときは、予算規模の拡大がインフレをあおり、刺激的な材料となることは言うまでもないのであります。(拍手)  さらに、私が政府の今回の予算案インフレ要因を多分に含む予算案なりと断ずるには、なお多くの理由がございます。  その第一は、予算の実質的規模が一兆一千三百七十四億よりはるかに大きく、私の見るところによれば、一兆一千四百八十数億とも言えるし、また一兆一千五百八十数億とも言えるということであります。それは、軍人恩給等八十数億円を三十一年度の補正予算に組み入れておる。当然一般予算に計上すべきものを、土地改良、多目的ダム、公営企業公庫などの特別会計に入れておるからであります。また、地方財政への交付金を三十一年度の補正予算に組んでいるのも同じ趣旨と解すべきであり、これまた当然予算規模の拡大を紛飾しておるのでございます。(拍手)  その第二は、財政投融資資金を、三千二百四十六億円と、前年度に比して六百七十三億円増大しているほか、三十一年度の補正予算において三百億円を産投会計に投入し、その半分を三十二年度において使用するなど、八百二十数億円の財政投融資の増大を予定しているからであります。財政投融資の資金は生産拡充の資金であり、現実に生産拡充を伴うならば一応インフレ要因とならないもののごとくでありまするが、現在わが国の実情は、石炭、電力、鉄鋼、輸送等、多くの隘路を持ち、単に資金を注入したから解決するというがごとき安易なものではございません。(拍手)いたずらに資金を注入すれば、逆に需給の混乱を生ずるおそれすらあるのであります。しかるに、政府は、物資需給の根本に対して何らの施策を講ずることなく、単に財政投融資を拡大することによって積極財政なりと考えているところに大いなる錯覚があると信じます。真の健全なる積極財政たるためには、金を裏づける物、物の計画と資金の計画とを適合せしめなければならないにかかわらず、これを全く無視するか、金だけを出して、あとは民間の自由裁量にまかせるというがごとき、安易な態度をとっているところに、インフレの危険性が多分にあると考えるのであります。(拍手)現に大蔵当局の考え方と通産当局の考え方との間には大いなる開きがあることを諸君は知らなければならないと思うのであります。(拍手)  その第三は、防衛費及び賠償費千六百二十六億円、恩給関係費九百六十億円、官庁経費千八百六十億円など、直接生産に関係のない経費があまりに多過ぎることであります。しかも、恩給関係費は年々増大の一途をたどり、三十二年度においてはその一部を社会保障費に繰り入れる等の小細工を弄したほどであり、また、防衛費は表面上の増額はわずかに四億円でありまするが、予算外契約の形において二百億円を計上しているなど、この面におけるインフレ的傾向は顕著であると存じます。池田君はこれでもなおインフレの危険性なしと強弁せられるのでありまするか、明確にお答えが願いたい。  石橋首相のごとく、年来のインフレ論者であるならば別でありまするが、池田君のごとく、健全なる財政を説きながら、以上のごとき予算を編成し、しかもなお健全財政健全財政と強弁せられるがゆえに、私は断じてこれを承服し得ないのであります。(拍手)池田君もあらゆる機会に、自然増収財政支出に流用するのはインフレになると言ってきたはずであります。減税もまたインフレだと言ったではありませんか。その池田君の持論と今度の予算とは、あまりにもはなはだしい相違であるがゆえに、私はあえて池田君の真意を問うのであります。これでもなお池田君はインフレ予算にあらずと強弁せられるのでありまするか。強弁せられるならば、その理由をはっきりと承わりたいと思うのであります。(拍手)  次に問題といたしたいのは、一千億施策というその施策がいかなる方向に現われているかの点であります。すでに述べましたように、三十二年度予算案一般会計だけでも一千二十五億円の増加でありまするが、これらのうちで、政府が新しい施策として打ち出したものはきわめて少い。大部分は、制度上当然の義務的増加、たとえば賠償、恩給、地方交付税交付金、公務員の給与等々であり、防衛費、公共事業費等の準義務的の支出増であります。政府の新しい施策を盛ったものといえば、科学技術の振興費とか、社会保障費のある部分、たとえば国民健康保険の拡大とか、結核予防対策とか、精薄児童のためのセンターとか、ろうあセンターとか、母子福祉対策とか、あるいは大部分を財政投融資に仰ぐ住宅政策拡充等々にすぎないのであります。その金額は、私の計算によれば、一般予算においてはたかだか二百億、あるいは二百四、五十億を出でないのであります。昨日、岸首相代理は、施政演説の中で、堂々と、「国民生活の環境を改善整備し、この面においても、明るい国民生活の実現を期したいと考えている」と述べておりまするが、この国民生活の環境を改善するために一体幾らの金を出しているか、環境改善費とは、蚊やハエを退治するための費用三千六百万円、下水、汚物処理のための補助金六億八千余万円のことであって、これをわざわざ総理大臣が施政演説の中で取り上げるとは、あまりにも芸がこまか過ぎると申さなければなりません。(拍手)これで政府はおこがましくも一千億施策などと言えるでありましょうか。羊頭を掲げて狗肉を売るとは、かくのごとき予算のためにあらかじめ用意された言葉であると思うのでありますが、政府の所見を承わりたいのであります。  ここで、私は、石橋内閣、特に池田蔵相の責任を追及すべき二つの問題について質問をしたいと存じます。一つは言うまでもなく米価の問題であり、一つ国際収支の問題であります。  石橋内閣は一月八日の閣議において昭和三十二年度予算編成方針を決定しましたが、その中には、減税の実施及び社会保障の充実を機として内地米配給価格の引き上げを行うとともに、国内産麦の価格体系を調整し、食糧管理を合理化する、と明記してあります。これによって、政府は、食糧管理特別会計赤字、三十年度における三十億、三十一年度における百六十五億、三十二年度に予想される百三十三億を補てんするために、消費者米価一升当り八円五十銭を引き上げることを決定して発表したのであります。しかも、池田蔵相は、しばしば、減税をやる以上、米価、運賃の引き上げをやらなければならない、と言ってきたのであります。しかるに、米価問題は、与党内部の意外な伏兵にあって、ついにこれを打ち切らざるを得なくなりました。私は池田君にお尋ねするのでありますが、閣議決定をして堂々と天下に発表した米価の値上げ、しかも、予算編成方針の重要なる一環をなしておる米価問題をむぞうさに打ち切って、池田君は果して政治的の責任を感じないのでありますか。(拍手)私はもとより米価の値上げに反対であり、また、わが党としては値上げ反対を政府に申し入れたのでありますが、かかる重大なる問題を軽々しく決定し、また軽々しく引っ込めるというがごとき軽率なる態度に対して、私は、政府、特に池田君の政治的責任を追及しなければならないと思うのであります。(拍手)しかも、米価の値上げを中止したまま、食管特別会計の赤字には一指も触れておりません。そのままになっております。これを池田君はどう始末されようというのでありましょうか。さしあたりは食糧証券によって糊塗せんとせられる腹のごとくでありまするが、結局は一般会計よりしりぬぐいをするか、いま一度米価の問題を蒸し返すか、いずれかの道を選ぶほかはないでありましょう。よもや、選挙目当ての米価据え置きで、選挙が済んだら米価の値上げをやろうという、欺瞞手段を弄する所存ではないと思いまするが、政府の明確なる方針を承わりたいのであります。(拍手)  いま一つは、国際収支の均衡についてであります。今わが国経済にとって最も重大なる問題は、国際収支の均衡が得られるかいなかの問題であります。明年度予算インフレになるかならぬかも、この点にかかっておると存じます。従って、池田君もこれを重要に考えられ、本年初頭においては、あらゆる機会に、積極財政インフレ財政ではない、このことは、別の言葉でいえば、常に国際収支の均衡を確保して、国際的に自立のできるような体制で経済運営していかなければならないということです、国際収支赤字になるような姿にしたのでは何にもなりませんと、国際収支の均衡を強調してこられました。ところが、いよいよ予算が確定して、予想以上に膨大な数字に上りますると、たとえば日本経済新聞の一月二十九日付において、国際収支はとんとんになるように努力しなければならない、しかし、物価安定のためとか輸出増大のために、ときには赤字が出ても、赤字の原因が消費物資などでなしに、生産財や輸出物資の原材料にあるならば何ら差しつかえないと称して、必ずしも国際収支の均衡にこだわらない言辞を弄しておるのであります。これはきわめて重大なる発言であると考えます。日本の経済の健全なりやいなやは国際収支がバランスを得るかいなかにあるのでありますが、蔵相の国際収支に対する考え方も、予算編成の動きにつれて動揺し、次第々々に変化を来たしておるが、これは全くの御都合主義と言うほかはございません。(拍手)われわれは、この点に関する蔵相の信念のほどを承わりたいのであります。  現政府部内でも、国際収支の見通しについては、必ずしも意見の一致を見てはおりません。昨日の経済企画庁長官の本壇上における演説と池田君の財政演説とは、この点について必ずしも一致をしておるとは申されないのであります。経企長官は、きわめて自信のない態度で、輸入は三十二億ドル、輸出は二十八億ドル、貿易収入を考慮して三十六、七億ドルで、バランスがとれるだろう、と言っております。しかし、経済企画庁の出しました経済計画によりますと、受け取りが三十六億八千万ドル、支払いが三十七億三千万ドル、差引五千万ドルの赤字となっておるのであります。これはいかなるわけでございましょうか。経済計画でははっきりと赤字が出ておるものを、経企長官はぬけぬけと、ここでバランスがとれるだろうと強弁するとは、あまりにも無責任なる言辞と言わざるを得ないのであります。(拍手)さらに通産相に伺いましょう。通産省は、明年度の物資需給計画から輸入を四千億ドルと見込み、国際収支は一億ドルないし三億ドルの赤字と見ております。大蔵大臣と通産大臣とは全く意見が違っておるのであります。(拍手)これを池田蔵相はいかに考えられるのでありますか。昭和三十二年度予算実施上、これに対していかに対処せられんとするのでありますか。国際収支に対するはっきりとした態度を表明せられたいと思うのであります。(拍手)  以上、私は、政府の提出した三十二年度一般会計予算案中心として、これに対する私の率直なる見解を述べ、政府の所信をただしたのでありますが、これを要約いたしますれば、一、石橋内閣の提出した予算案インフレの要因を含むインフレ予算案と断ぜざるを得ないが、政府の見解はどうか。  二、インフレになるならぬは、この予算実施に伴う政府施策にも関連すると思うが、政府には、さしあたってインフレを警戒する施策一つもない。逆に、鉄道運賃の値上げ、ガソリン税引き上げ等々、物価騰貴を刺激する政策をとっているので、物価は上昇するの一途をたどると思うが、見解いかん。(拍手)  三、減税と積極財政との相反する二兎を追うものが政府予算である。結局これは破綻せざるを得ないと思うが、政府の見解いかん。  四、政府は一千億減税、一千億施策というスローガンによって国民をつろうとしているが、実質的に減税は七百二十億、しかも、この減税の恩沢は鉄道運賃等々の値上りによって大いに相殺されるものと思うが、政府の見解いかん。  五、経企庁の経済計画によれば、明年度国際収支は五千万ドルの赤字であるが、この予算を実施するならば、国際収支はさらに赤字を招き、日本経済を不健全化すると思うが、どうであるか。池田君は、ときに国際収支赤字は問題でないと言い、ときには国際収支を重大視すると言い、きわめて首尾一貫を欠いているが、真意はいずこにあるのか。  六、一千億施策の内容が、施策というに全く当らないほどのみじめなる内容であるが、これに対する弁解があるならば、政府の弁解を承わりたい。(拍手)  最後に私がお尋ねいたしたいのは、政治上の問題についてであります。先般の自民党の総裁公選についてであります。総裁公選という画時代的のことの行われましたのは、私はけっこうだと考え、自民党に対して敬意を表するにやぶさかではございません。しかし、これにまつわる世間の疑惑は、今日に至るもなかなか解けないのであります。と申しますのは、この総裁選挙に当って莫大な資金がばらまかれたということであります。(拍手)さるアメリカの雑誌は、この総裁選挙の報道を載せて、投票のために莫大なわいろが提供されたという報道の中で、鳩山首相が清潔なる投票をしてくれと説き、代表者は次々に壇上に登って投票した云々、と書いてあります。日本の新聞雑誌にかかる記事が出てさえ、われわれは苦々しく思うのでありますが、ましてやアメリカの雑誌にまで公々然と、わいろによって投票が行われたと書かれたことは、決して日本の名誉ではないと存じます。(拍手)石橋首相、岸外相はこれに対していかに考えられるか、承わりたいのであります。(拍手)石橋首相は、先般、年頭の誓いとして、政界、官界の粛正を言われましたが、政界、官界の粛正を説かれる石橋首相は、この事実に対していかなる感想を持たれるのか、承わりたいのであります。(拍手)私は、あえて、特定の政党、特定の政治家を責めるために、また、単なる党派心によって、かかることを申し述べているのではございません。日本の名誉のために、日本の政界の粛正のために、先ほど御質問のあった日本の民主主義の前進のために、あえて石橋首相以下の心境を伺っているのであります。(拍手)自民党がはずかしめられることは、ひとり自民党だけの問題ではありません。石橋君がはずかしめられることはひとり石橋君だけの問題ではありません。日本の政界革新のために、日本の民主主義を前進せしめるために、私はあえてこれを質問するのでありまして、明白にして真剣なる御回答をわずらわし、私の質問を終る次第であります。(拍手)   〔国務大臣岸信介君登壇〕
  16. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 河野君の御質問に対してお答えを申し上げます。  第一は国際情勢の問題でありますが、これは、昨年相次いで起ったハンガリアあるいはスエズの問題等に関連しまして、国際情勢がさらに緊張の度を増してきたことは事実でございます。この両事件は、それぞれ相手国も違いますし、事情も違っておりますが、河野君の指摘されたごとく、われわれは、スエズ問題においてアジア・アラブの諸国が民族独立とその自由の獲得のために戦っておる民族主義に同情すると同様に、ハンガリーにおける民族が自由のために戦っておることに対しましても心から同情するものであります。(拍手)  原子部隊の問題に関しましては、この壇上よりしばしばお答えを申し上げました通りアメリカの責任ある国務省及び国防省は、かかる新聞記事に出たような事実はないということを言明しておりますし、わが外務省はそういう申し出を受けた事実は全然ございません。(拍手)  米価問題につきましては、御指摘のごとく、予算編成の過程におきまして、一度閣議で決定をいたしましたけれども、その後、世論の動向をも考え、問題の重大性にかんがみて、内閣に権威のある調査会を設けて、その調査、審議に基いて善処したいと考えております。(拍手)  最後に、昨年行われました自由民主党の総裁の公選につきましては、私自身がその候補者の一人でありまして、御指摘のごとき事実が全然なかったということを、ここに言明申し上げます。(拍手)   〔国務大臣池田勇人君登壇〕
  17. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 河野さんの御質疑に対しましてお答えを申し上げます。  まず第一に、千億減税、千億施策はうそではないかというお話でございまするが、あの一般に言われておりまする千億減税所得税のことをさしておるのであります。従いまして、これは標語として使っておるのでありまして、もし正確にいうならば、平年度では千二百五十億にも相なるのであります。しかし、初年度では御指摘の通り所得税は千九十億円にとどまりました。千億施策と申しましても、御指摘のように、歳出増加は千二十五億円でございます。その点は一つの標語として御了承願いたいと思います。  次に、租税収入の見込みにつきまして、だんだんのお話でございまするが、御承知の通り昭和三十年度におきましては、租税収入は七千九百億円でございました。それが当初は七分二厘の鉱工業生産の増加と見たのでありまするが、二割一分ふえましたので、私は、三十一年度租税収入は千二百九十億円ばかりふえまして、今年度の見込みは九千百九十七億円程度に相なると思うのであります。そうして、二割一分ふえた上に、それを基本として一割二分五厘ふえるのでございますから、三十年度に比べたならば三割五分の増に相なるのであります。皆さん、こういう計算でやって参りますと、決して誤まりはございません。ふえた上に——ふえた率が減っても、ふえたところを基準にしてふえるのでございまするから、計算上は間違いないと御了承願います。(拍手)  なお次に、千億減税と千億施策をやったことは矛盾ではないかと言われまするが、これは国民の努力のおかげでございます。国民の努力によりまして、生産が伸び、ほんとうに国の経済が拡大したから、普通にはできないことができたのでございます。(拍手)ただにはできないことができたのでございます。私が国民とともに喜びたいということを財政演説の当初に申し上げたゆえんはここにあるのでございます。  次に、補正予算を組むか、あるいは減税はやめるか、どっちか。これは国会で御審議願ったことでございますから、減税もやめませんし、予算も変更いたしません。御審議の通りにやって参ります。  なお、電力、輸送に金を入れても生産増強にはならぬとおっしゃいまするが、電力、輸送に金を入れて、その他にも入れて生産増強をするのでございます。金が入っても生産が増強できないということは、インフレ時代にはいえるかもわかりません。今は安定しておるときで、金を入れればどんどん生産ができることは経済の原則と考えておるのであります。  次に、米の問題で、閣議決定したのを、むぞうさにやめるということでございますが、決してむぞうさではございません。閣議でも、党の意見を十分聞きまして、慎重に考えて、特別調査会の結論を待つことにいたしたのであります。  次に、食管会計に赤字を置いているじゃないか。これは米の問題がきまりませんので、きまりましてから一括して善後処理を講ずる考えなのでございます。  なお、国際収支につきましていろいろお話がございましたが、財政というものは、また経済というものは、生きものでございますから、そのときどきに手を打たなければなりません。私は、大体、昭和二十四年にはデフレ政策をやりました。二十五、六、七年はディスインフレ政策でいったのであります。それが過去三年間に非常に地盤ができましたから、今では、ディスインフレ政策でもなければ、デフレ政策でもない、健全な積極政策にいっておるのであります。(拍手)これは、常に国際情勢、国内の状況を見ながら、そのときどきに手を打つことが財政当局者としての立場であると思います。(拍手)従いまして、ディスインフレ時代におきましては、国際収支は常に黒字が望ましかったのであります。しかし、拡大均衡して経済の拡大をしようとする場合におきましては、いたずらに黒字をのみ追求するべきじゃございません。私は、原則としては、長い目で黒字でなければなりません、しかし、一時的には、将来伸びることを考えて赤字が出るのも、気にかける必要はないというだけで、赤字を望んでおるわけでは決してございません。従いまして、過去三年間は黒字を続けて参りました。今昭和三十一年度におきましても、十二月の暮れまでは一億六千数百万円の黒字でございましたが、一月には相当の輸入超過がございまして、昭和三十一年度国際収支は少しくらいの黒字だと思っております。しこうして、三十二年におきまして、各省とも意見は一致しております。各省の事務当局が試算のうちにやった数字は、われわれは当てにしておりません。経済企画庁、通産大臣と私とが十分話し合ってきめたのは数字に変りはないことを、ここで御披露いたしておきます。   〔国務大臣水田三喜男君登壇〕
  18. 水田三喜男

    国務大臣(水田三喜男君) 今年度国際収支をどう見るかという問題につきまして、当初関係各省の間において十分論議が尽されたことは事実でございます。私どもの目標は、今年度の輸出を二十八億ドルにしたい、果して輸入が三十二億ドル程度でまかなえるか、これによって日本の物価を上げないで済むようなことになるか、あるいは産業拡大を阻害する結果にはならぬか、これがおもな議論の中心でございましたが、御承知のように、今、日本は原材料を相当たくさん手持ちしております、五億ドル以上の物資を持っておりますので、これを十分に活用することによって、そうたくさんの輸入をしなくても、あるいは済むんじゃないか。そういう結果落ちついたところが、大体輸入見込みが三十二億ドルということで、そうして全体として国際収支赤字は避け得られる、こういうことに関係省が一致しまして、今年度の計画において閣議で決定した。こういう事情でございますので、御指摘のような対立とか見解の相違というものは全然ございません。(拍手)    〔国務大臣宇田耕一君登壇〕
  19. 宇田耕一

    国務大臣(宇田耕一君) お答えいたします。  三十二年度経済計画大綱を経済企画庁から提出いたしてあります。その中には国際収支に対する見通しがありますが、国際収支に対する見通しは、米穀のごとく、天候に支配されるものによってわが国の作柄が違った場合に、輸入に関する数字が変ってくるのは当然であります。従って、われわれは、国際収支に対するところの形式上の収支は、当然そういうふうな特別な天候の異変等の起らない限りは、とんとんであると考えております。(拍手
  20. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 八木一男君。    〔八木一男君登壇〕
  21. 八木一男

    ○八木一男君 私は、日本社会党を代表いたしまして、社会保障、労働、農林関係の重要諸問題に関し、内閣総理大臣臨時代理並びに関係閣僚に対し質問を行わんとするものであります。(拍手)   〔議長退席、副議長着席〕  まず最初に、社会保障に関して伺います。社会保障の急速な拡充が必要でありますることは、今さら私が申し上げるまでもない、明らかなことでございます。この問題は、わが日本社会党が早くから熱心に主張して参ったことは周知の通りでございます。保守党においても、おくればせながら、この問題を取り上げられ、最近の衆参両院の選挙において明らかに公約をされているのであり、特に鳩山内閣社会保障拡充を大きな看板としておられたのでありますが、この間、その公約が完全に裏切られたばかりでなく、健康保険料率の引き上げ生活保護の締めつけ、失業保険の改悪等々、その逆行さえ行われていたことは明らかな事実でありまして、国民のため憤激にたえないところであります。(拍手)石橋総理大臣は、年頭の公約で、社会保障の推進をさらに高めた福祉国家建設を唱えられており、また、時まさに自然増収財源をもちまして、この問題に大きく取り組むことができる状態にありまするので、国民の中には今度こそ石橋内閣が自民党の公約不履行を償ってくれるのではないかと期待をしておった人もあったのであります。ところが、でき上りました予算案は、あけてびっくり玉手箱でございました。全く、これでは、一体公約というものをどう考えるか、まことに理解に苦しむものでありまして、私は、これから漸次各項目にわたってお伺い申し上げ、問題を明らかにいたしたいと考えるものでございます。(拍手)  まず第一に、国民皆保険について伺います。  政府は、約二千七百万の社会保障の未適用者に対し国民健康保険を適用せしめるために、昭和三十五年度までに国保を全国各市町村に完成させる御方針のようであります。その言やよしというべきであり、われわれも大賛成でございます。しかし、方針はよくても、それを実行するための有効な方法がとられておらなくては何にもならないのでございます。適当な実行方法を用意せずに、かけ声だけかけたのでは、国民を欺瞞したことになるわけでございます。国保の普及しない理由、さらに、一たんでき上ったところでもつぶれたところがある理由は何かと申しますると、まず第一に、その給付が劣悪、不十分であるということであります。医療給付に対し平均五割の給付では、重病の場合、裕福でない人は、残り半額の自己負担にたえることができないで、医療を断念する場合が多いのであります。そうして、その場合、その人の納めた保険料はかけ捨てになるのでありまして、そのことが、国保に対する関心を高めることの障害になり、国保普及や維持をはばんでおるのであります。第二に、さらに大きな理由は、各保険組合の財政状態が非常に悪いということであります。第一の点で申し上げました、かけ捨てというようなことがありながらも、近年、医療の進歩により、支出が増大し、収入これに伴わず、赤字で動けなくなっている組合が相当にあるのでありまして、このことが、まだできていない市町村への普及を妨げておるのでございます。この状態において国民皆保険をほんとうに推進しようとすれば、被保険者層の家計から考えて、どうしても相当の国費をつぎ込んで、保険財政を確立し、給付率や給付の内容をよくして、被保険者が実際に満足して医療を受けられるように、また、医療担当者が責任ある診療行為を行いやすいようにしなければなりません。国民皆保険をほんとうに推進できるかどうかは、政府が本腰で資金を投入するかどうかにかかっているのであります。奨励、勧奨等の口頭禅では、それをなし得るものではございません。しかるに、政府の皆保険に対する予算はわずかに三十億、そのうち大部分が、国保の普及が増大した部分に対し従来通り国庫負担を行うための費用でありまして、何ら国保推進の新しい条件を作る性質のものではございません。では、一体どうして推進するのかと、ウの目タカの目で予算書を探してみますと、わずか、口先だけで勧奨する費用が、普及促進補助費という名前で二千三百万円計上されているのにすぎないのでございます。このようなわずかな費用で国民皆保険を唱えるのは、大ぼらも大ぼら、まことに鬼面人を欺くものといわなければなりません。(拍手政府は、このようなやり方で実施市町村を急速に増大できると思っているのかどうか、また、かりに口先だけで作られた国民健康保険組合があったとしても、その運営が健全に維持できると思っているのかどうか、さらに、被保険者が満足すると思っているのかどうか、総理大臣並びに厚生、大蔵両大臣から明確に御答弁を願いたいのでございます。  われわれは、国保の発達のため、国保に対する国庫負担率を増大し、さらに、支出の多くの部分を占める結核治療費負担を、抜本的な結核対策の樹立により、これからはずすことによりまして、国保財政を根本的に確立し、給付率を高めて国民が国保に満足する状態を作り、全国の国保創設を強制化して、国民皆保険を完全に実現すべきものであると主張するものでありまするが、政府は、虚心たんかい、われわれの主張を取り入れ、今からでも本腰で皆保険に推進する熱意があるかどうか、(拍手)また、それだけの勇気がない場合でも、少くとも三割国庫負担だけでもすみやかに実施して、ごくわずかでも公約の裏づけをなす誠意があるかどうか、あわせて伺いたいのであります。(拍手)  次に、五人未満の事業所の労働者に健康保険の適用の意思があるかどうかについてお伺いいたします。政府のやり方を見ますると、国民健康保険適用を考えておられるようでありまするが、これは間違った考え方であります。零細企業の労働者も、中以上の企業の労働者も、労働者であることは何ら変りはないばかりでなく、零細企業の貧困な労働者こそ健康保険の必要性はさらに大であります。(拍手)その人たちを雇用主半額負担という条件からはずして、本人の場合でも半額給付であり、傷病手当金のない国保の対象として考えることで足れりとすることは、まことに当を得ておりません。貧しい労働者が重い病気にかかったときに、傷病手当金がなければ生活ができません。まして、半額自己負担分を用意することはきわめて困難でございます。このことはもちろん国保の被保険者にも言えることでありますが、特に労働者の場合顕著でございます。田畑や店舗を持たない、蓄積を持たない妻子がいかに努力しても、生活費と半額の医療費を作り出すことは至難というべきでありましょう。以上の考え方からして、健康保険の対象を五人未満の事業所の労働者に急速に拡大する必要があると思うが、政府のお考えはいかがでありましょうか。事務的に捕捉が困難でございますというような根底のない言いのがれでなしに、明らかな御答弁を願いたいのであります。さらにまた、同様の見地もとに、日雇労働者健康保険法に本年度なぜ傷病手当金を新設しようとなさらなかったか。また、今後急速に給付を向上すべきであると思うが、それに対するお考えをあわせて伺いたいのであります。  次に、政府提出の健康保険改正案、ほんとうの意味では改悪案を直ちに撤回されるべきであると思うが、そのお考えを伺いたいのであります。(拍手)一部負担、標準報酬額の引き上げ、扶養家族の締めつけ、継続給付要件の強化、二重指定、審査、監査の官僚統制の強化等々、多くの改悪点を含んだ、いわくつきの悪法を、なぜ撤回しないのか。ただ一つ政府側の実質的な論拠であった健康保険の赤字も、昨年度政府案当時の見積りよりも、三十一年度は二十億も減少しております。かような今日において、まだ改悪のせんぶりつき法案に固執していることは、理解に苦しむのであります。意地っぱりの強い官僚の意見に押されないで、改悪の解消をこいねがう国民の切実な声を率直に聞き、改悪点を全部変えた、国庫負担のみ確立する法案にして出し直すべきであります。これこそ、現内閣が、官僚の政府でなく国民政府であろうとするならば、当然とるべき道であると考えまするが、いかがでございましょうか。(拍手総理代理、厚生、大蔵の両大臣より御答弁願います。  次に、結核対策についてお伺いをいたします。政府は、結核対策の推進を唱え、予防費の国庫支出を計画されております。われわれもこれに賛成するものでありますが、たった二億円の支出増では、ほんとうに効果的に実施できるのか、危ぶむのでございます。予防はさておきまして、最も大切な治療面についてどうして積極的な政策を打ち出されなかったかについて責任を追及いたさなければなりません。即時入院を要する者百七十三万人、療養を要する者二百九十万人、家族を合せれば千数百万人にも及ぶ多数の人々の苦しみを考えるとき、この国民病の治療対策を考えなくて、どこに結核対策があるかといわなければなりません。政府は、結核予防法の中で三剤併用等を認めて二億円出したと答えられるでありましょう。しかし、それは、問題の大きさに比べて、あまりにも微々たるものであります。現在の結核予防法自体が、財政の裏づけがはなはだしい不足で、半身不随の状態であることは、周知の事実でございます。結核撲滅のためには、社会保障制度審議会の勧告では、年間三百億円の金が絶対に必要とされております。それだけの費用が必要である治療面の施策を立てないで、比較的お金の要らない予防面だけで問題を糊塗するのは、財政的にはいかにも楽でございましょう。しかし、それでは結核をなおすことはできず、国民は助かりません。現在苦しんでいる患者や家族のことを考えないで予防面だけを考えることは、社会保障の精神からいえば、さか立ちをしていることになるのでありまして、政府のやり方は冷やかな衛生行政上のみの立場をとったとしかいえないのでございます。(拍手)しかも、衛生行政上の立場から考えても、現在の患者の治療をあわせて実行しなければ、底抜けのコップに水を注ぐようなものであります。(拍手)  国民病である結核をなおす方法は、現在医学的には完成をいたしております。問題は金であります。この長期療養や大きな手術を要する病気をなおすことは、個人の経済を越えた問題であり、また、各社会保険経済でもむずかしい問題であります。国家が強い決心を持って、国費をもってこれに当ることがどうしても必要でございます。(拍手)三百億は大きな金と思われるかもしれませんが、一般会計予算のわずか三%であります。千数百万人の国民の言うに言われない苦しみのこと、さらに、全国民が伝染の危険性から免れることを考えるならば、そしてまた、わが国全体が結核による莫大な労働上、経済上の損失を断ち切ることができることを考え合せれば、断じてやり抜かなければならないことでございます。(拍手財政の面から考えましても、この支出はいつまでも続くものではございません。五年も過ぎれば減少に入る。十年も経過すればほとんど不要に相なるでありましょう。財政的に苦しいときでも、ぜひ考えなければならないことであるのに、本年のような余裕のあるときに、この施策を推進しようとしておられないことは、まさに政府の重大な責任と考えるものでございます。(拍手政府の御所見をお伺いいたしたいと存じます。  次に、生活保護についてお伺いをいたします。生活保護費の増は、わずかに二億円余でございます。この総予算が大きく拡大をしているときに、実に驚き入ったことでございます、基準を六%余引き上げたと言われるでございましょうが、前々からもっと大きく引き上げなければならないところを、今になってごくわずか引き上げただけでありまして、予測される物価の値上りによりまして、前よりも生活が苦しくなるおそれが多分にあることを考えますると、さらに基準の増加が必要でございます。  ここでけしからぬことは、生活保護の対象者の人数を削減していることでございます。昨年秋から減ってきていると言っておられるようでありますが、昭和三十二年度に予測されまする物価高の影響で、生活保護層に転落する気の毒な人々のおることを考えに入れておかなくてはなりません。さらに、基準引上げによって新しく保護階層に入るボーダー・ラインの人々の数を考えれば、対象数の減少などはとんでもないことであります。いかなる理由でこのような予算を組まれたか、厚生大臣の責任ある御答弁を要求するものであります。(拍手)  次に、失業対策について伺います。政府は賃金のわずかな値上げを得々と述べるでありましょうが、これまた、生活保護と同様、当然もっと早く大幅に引き上げるべきところを、今回やっとわずかな実現をはかろうとするだけであります。物価の値上りによって実際の生活は前よりよくなる見通しは少いといわなければなりません。しかも、経済拡大によって失業者が減少するといたしまして三億七千万円減の予算を組まれているようでありますが、これはもってのほかのことでございます。現在、一世帯に二人以上失業者があった場合、一人しか日雇い労働者としての登録を許しておりません。その他種々の条件をつけて登録を制限しているのであります。このようなことをしておりながら、対象減少を見込んで予算を削減するというようなことは、失業者の状態を全く考慮しないものといわなければなりません。これらの点につきまして労働大臣の明確なる御答弁をお願いしたいのでございます。(拍手)  このほか、福祉対策に微々たる政策しかとっておられない。年金は調査等でごまかしているというような点がございまするが、これは省略をいたしまして、社会保障関係予算総体についてお伺いをいたします。政府社会保障費が九十一億増加していると呼号しておられますが、昨年度予算に比較いたしまして約八%の増にしか当らないのでございます。ざらに、そのうち二十一億円は恩給局関係のものをただ移しかえただけでございまするので、実質的な増は七十億であり、その比率は六%にすぎないのでございます。特に生活保護費は〇・六%、失業対策費に至っては減少すら示していることは、先ほど申し上げた通りであります。一般会計予算だけの増加率でも九・八%増加をいたしておる今日は、この増加率は不当に低いものでございます。たとい社会保障拡充という立場をおとりにならなくても、この支出のおもな対象者が、減税の恩恵にあずかることのない人たちであり、また、物価高により生活を特に脅かされる人たちであることを考えれば、少くとも他の項目よりもはるかに多い割合で増加をさせなければならないはずでございます。(拍手)さらにまた、社会保障拡充をほんとうに実行するつもりでございましたならば、他の部門よりも数倍の増率をはかるべきであります。にもかかわらず、このような予算を組んだことは言語道断であります。その結果、総予算に対する割合は、前年度一〇・九%から実質的に一〇・六%に逆行していることを考えると、この公約違反の責任をどのように考えられるかの明確なる御答弁を、関係閣僚に要求するものであります。(拍手)  国民皆保険の推進を唱えて何ら有効な実行方法をとらず、逆に健康保険の改悪を強行しようとしている政府の態度、結核撲滅対策を放置して病人を見捨て、失業対策や生活保護対策を置き去りにして、恵まれない人たちのことを顧みていない政府のやり方は、まさに公約を裏切り、国民を欺瞞するもはなはだしいと断ぜざるを得ないのであります。予算組みかえをして出直す意思があればよし、もしそれがないのならば、直ちに社会保障拡充の看板を引きおろすことを、国民の名において要求するものでございます。この点について特に総理代理の御答弁をお願い申し上げます。  次に、労働問題に入り、雇用、賃金等の問題についてお伺いをいたしたいと存じます。  石橋総理大臣は、就任早々、かねがね社会党の主張しておりました完全雇用の問題を取り上げて、これを実現したいと言われました。まことによいことでございまして、われわれもこの早期実現を熱望するものでございます。が、しかし、石橋内閣がほんとうに曲りなりにでもやってくれるかということになりますると、全くまゆつばものでございます。われわれは断じて信用することはできないのであります。経済規模の拡大で雇用は相当に増大するでありましょうが、これだけでは完全雇用はできるものではございません。神武以来の好景気といわれる今日、五十六万の完全失業者がおり、七百万から一千万といわれる潜在失業があることは、これを明らかに立証いたしております。完全雇用は社会主義計画経済もとにおいて初めて完成することができるものであり、(拍手)利潤追求を目的とした資本家の悪意にまかした投資方法によっては、完全雇用はできるはずはないのでございます。かりに百歩譲って、資本主義体制のもとにおいてそれに近いものができるとしても、それをやるには、やはり雇用増大のための計画経済をやることが絶対に必要でございます。それはルーズヴェルト大統領のとりましたニュー・ディール政策の例をもっても明らかでございましょう。政府はこのような計画をお持ちでないと考えまするが、お持ちであったらお答えを願いたいと思います。もしまだお持ちでない場合には、すみやかに計画を樹立されるべきであります。実現する力を持っておられない企画庁の机上プランのようなものでなしに、ほんとうに実現する裏づけを持った計画を近日中に発表される御意思があるかどうか、はっきりとした御答弁を、総理並びに企画庁長官あるいは労働大臣からお願いしたいのでございます。(拍手)  次に、最低賃金制の問題について伺います。完全雇用とは、量の問題ばかりでなく、質の問題もそこに含まれておらなくてはなりません。すなわち、完全雇用とは、雇用を完全化することをいうべきであって、最低の生産すらできない賃金でも職があればよいというのでは断じてないのでございます。この意味において、石橋総理は、公約を守る気持があれば、即時内容のよい最低賃金制を実施する責任があるわけでございます。(拍手)  最近、政府及び日経連は、賃金較差の拡大を指摘して、賃金闘争を阻止しようと宣伝していますが、これは全くけしからぬことでございまして、賃金較差を縮小しようとすれば、まず最低賃金制の実施をすべきでございます。ニュージーランドが最低賃金制を実施してよりすでに半世紀を過ぎ、労働基準法が最低賃金を規定してより十年の歳月を経ているのに、いまだにその実施を見ないのは、歴代保守党内閣の重大な怠慢でございます。(拍手)石橋内閣は、この保守党の失態を償うため、直ちに最低賃金制を確立する責任があります。しかも、神武以来の好景気といわれる今日、最低賃金制を実施するには最もよい条件にございます。政府は直ちにその推進をなさるべきと考えるのでありますが、総理並びに労働大臣の御所見を承わりたいのでございます。  次に、松浦労働大臣の組合行政につきまして、一点だけお伺いをいたします。本年一月十四日、労働次官通牒として、「団結権、団体交渉権その他の団体行動権について」と題する労働教育指針なるものが出されております。その内容は、簡単に申し上げますと、わが国の組合の産報化を目ざしているものでございます。実に許しがたいことでありまして、われわれは断じてこれを即時取り消さるべきものと考えているのでございますが、労働大臣はいかにお考えか、明らかに御答弁を願いたいのでございます。(拍手)  次に、農林省関係に移り、まず食糧政策についてお尋ねをいたします。  政府は当初消費者米価を引き上げることを閣議決定されたようでありますが、その後に至りまして、世論の反撃にあってこれを取りやめて、調査特別委員会の検討にゆだねることを決定されました。だが、これはきわめて政治的な取扱いでございまして、問題の結論を一時引き延ばしたにすぎないのでございます。政府は食管特別会計の赤字をそのまま持ち越していかれるようでありますが、これは食糧証券が赤字公債として運用されると同様でありまして、それだけインフレ要因になることは申すまでもございません。また、いつまでも赤字を持ち越すことはできないはずでございます。そこで、結局は消費者価格あるいは生産者価格をいじって食管会計の収支を均衡させるか、あるいはまた一般会計から赤字分を補てんするか、そのいずれかの方法にようなければならないわけであります。消費者価格の引き上げは勤労者の生計費の高騰を招き、また一般物価の上昇を促進することは明瞭でございまして、断じてなすべからざることでございます。他方、生産者価格を引き下げるならば、直ちに農林所得の減少をもたらし、農民をいよいよ苦境に突き落すことになるのでありまして、引き下げどころか、引き上げがぜひ必要な現状でございます。そこで、わが党は、一般会計からの繰り入れによって食管会計の損失を補てんすることが最も適切な方策と考えるのでありまするが、政府の御見解をお伺いをしたいのであります。国民生活を安定させ、国民経済の基礎を安定させるという食糧政策の観点からいたしますれば、一般会計から食管会計へ一定額の資金を繰り入れるということは、異常なことというよりも、むしろ当然のことと考えるべきであって、過去数年間の前例はこれを証明しているのであります。(拍手)日本に比べて農業の比重の軽いアメリカにおいてさえ、農産物価格支持制度のため多額の財政資金を使っていることを見れば、わが国において食糧政策運用のための財政支出を決して惜しむべきではないのであります。農林大臣、大蔵大臣の御答弁を願いたいと存じます。  次に、食管会計の赤字については、食糧政策上やむを得ざる赤字と、食糧管理の不手ぎわのために生じた赤字とを厳重に区別する必要がございます。(拍手)わが党は食糧政策上必要やむを得ざる赤字一般会計から繰り入れることを主張するものでございまするが、同時に、食管会計のむだ、不正は徹底的にこれを追及し、その公正にして合理的な運営を要求するものであります。この点について政府の御見解をお伺いしたいと存じます。(拍手)  また、政府は最近麦の払い下げ価格の引き下げをなさったわけでありますが、これに伴なって麦の政府買い入れ価格を引き下げるのかどうか。私どもは断じて引き下げてはならないと思うのでありまするが、この点を明らかにしていただきたいと存じます。  最後に、農林予算の総額についてでありまするが、昭和三十一年度予算に比較いたしまして、三十二年度予算の総額は九・八%増大しているのに対し、農林予算は二%の増大にしかすぎません。予算総額のうちに占める農林予算の比率は、八・四%から七・九%に減少いたしているのでありまして、昭和二十八年度一六・五%もあったことから見れば、まことに隔世の感を禁じ得ないのであります。保守党の農林政策が年々後退していることの明らかな証明にほかなりません。申すまでもなく、最近国際農業の圧迫はきわめて強いものがありまして、日本農業の将来を非常に脅かしております。このときに当って、わが国農業に対して強力な施策を加え、これに対抗できる力を養うことが絶対に必要でございます。このような施策を放棄して、日本農業を国際的な過剰農産物の攻勢にさらすならば、大部分の農民は国際競争に敗れて没落するに至るでありましょう。日本の人口の半数近くが農村人口であることを思えば、これがわが国社会の安定と秩序を根本的にくつがえすことは火を見るよりも明らかであります。政府の喧伝される減税にしても、これによって利益を受ける農民はごくわずかであり、むしろ、運賃、諸物価の値上りによる不利益は農村にしわ寄せをされることになるでありましょう。私は、ここで、政府の深刻なる反省を要求いたしまして、強力なる農林政策の推進について政府の見解を、総理大臣並びに農林、大蔵の両大臣よりお伺いをいたしたいのでございます。(拍手)  以上が私の質問でありますが、その内容は、お聞き及びの通り、労働者、農民等、働く人々の問題であり、失業者、生活困窮者、病人等、気の毒な人たちの問題でございます。神武以来といわれる好景気を作るために下積みにされ、搾取をされ続けてきた人々の問題、ぜいたくな世相の中で片すみにほったらかしにされた人々の問題でございます。総理大臣初め各閣僚は、これらの人々のために考えることのあまりに少い政策を反省なさいまして、改めるべきものはこの質問に対する答弁で即座に改めるという率直な気持を持たれるべきであると存じます。生活に苦闘しつつ、その向上を心から求めている多くの国民の名におきまして、政府の明確にして責任のある答弁を強く要求いたしまして、私の質問を終る次第であります。(拍手)   〔国務大臣岸信介君登壇〕
  22. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 御質問にお答えをいたします。  まず第一に、社会保障制度の問題でありますが、国民生活向上を目ざして各種の施策に力を入れております石橋内閣といたしましては、社会保障制度の問題につきましては特に全面的に力を入れておることは当然であります。医療保障制度を初めとして、各種の問題について、われわれはそれぞれ施策を強化いたしておりますが、その詳細につきましては関係閣僚から御説明することといたします。  また、完全雇用の問題に関しましても、これまたわが内閣の重要政策一つでございまして、われわれが積極政策とり、できるだけ働く場所を多くして、そうして完全雇用に近づいていこうとしておる努力につきましても、また関係閣僚よりその詳細を申し述べることといたします。(拍手)   〔国務大臣池田勇人君登壇〕
  23. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 厚生大臣と私とにお聞きになった問題が多いのでございますが、厚生大臣からお答えになることが適当である問題を除きまして私からお答えいたしたいと思います。  国民皆保険の実現は、四、五年のうちにやりたいと思ってスタートを切ったのでございます。  給付内容を三割程度国庫負担にしてよくしろというお話でございまするが、私といたしましては、まず第一に皆保険を実現すべく進むのが適当であろうと考えております。  なお、問題になっておりました被保険者一人当りの事務費が非常に少うございまして、これは、六十八円なんぼというのを、八十五円に上げました。三十三年度におきましては、これを全額、調査の上負担するつもりでおるのであります。  それから、五人未満の事業所の従業員に対して健康保険というお話がございましたが、私の見解といたしましては、健康保険よりも、先ほどお話し申し上げました国民健康保険でいくのが合理的だと私は考えておるのであります。  日雇い保険につきましては、国庫負担を一割から一割五分にいたしておりまするし、傷病手当制度につきましては、本年度調査費を出しまして、調査の上実行いたしたいと考えておるのであります。  結核対策につきましては、予算をふやしまして、公費負担等を多くしまして、できるだけ早期に撲滅する政策でいっております。  生活保護費の方は、基準額を上げておるのでございますが、経済界の好況によりまして人員が減って参りますので、こういう格好に相なったのであります。  健康保険法の改正案を撤回する意思はないか。これは撤回する意思はございません。  食管会計の繰り入れにつきましては、特別調査会の結論を待ちましていきたいと考えております。(拍手)   〔国務大臣神田博君登壇〕
  24. 神田博

    国務大臣(神田博君) 八木議員の御質問にお答え申し上げます。  国民皆保険の普及宣伝費が非常に少くて、所要の成果を上げることが困難ではないかというお尋ねが第一点でございました。これは、御承知のように、皆保険制度が、もうここ数年経過しておりますので、各市町村におきましてもその機運が熟して参っておりますことが第一点。さらに、今年度におきましては、約二千三百万ほどでございまするが、所要の経費も計上いたしまして、この普及をさらに徹底いたしたい。今大蔵大臣からの答弁もあったようでございますが、事務費一人当りの単価も相当増額いたしまして、なお三十年度分の不足額につきましても今年度の補正予算に計上することに相なっておりまして、そういういろいろな手を打ちまして、皆保険をこの三十五年目標にぜひ実現いたしたい、かように考えております。  それから、五人未満の事業所の従業者に対する健康保険の問題でございますが、これは、今大蔵大臣答弁がございましたが、目下医療保障委員において検討中でございまして、この答申がございますれば、この答申に応じて、すみやかに決定いたして参りたい、(「答弁が違うじゃないか」と呼ぶ者あり)かように考えております。  それから、日雇い労働者の健康保険につきましても、今大蔵大臣から答弁があったわけでございますが、一番問題になっております傷病手当につきましても、これは、今年度は間に合わなかったのでございますが、昭和三十三年度におきましては必ず実現をはかりたい、かように考えております。  次に、継続審議中の健康保険法の改正案を撤回したらどうかというお尋ねでございましたが、これも、御承知のように、健康保険法の改正案提出の理由にもあります通り、健康保険の運営の合理化をはかろうという建前になっておりますので、政府といたしましては、大蔵大臣から答弁もありましたように、撤回する意思は持っておりません。  それから、次に結核対策でございまするが、御指摘のように、これはまことに重大な問題でございます。一昨年法の一部を改正いたしまして、健康診断の対象を大幅に拡大して実施しておりますが、昭和三十二年度におきましては、さらにこれらの経費を全額国庫負担として、実施の向上をはかりたいと存じております。結核の医療につきまして、公費負担の治療範囲を拡大して、また、学会の答申に基きまして、最新の結核治療の進歩を取り入れまして、結核医療の基準を変えて実施する等、所要の予算を計上いたしまして、結核の医療を大いに推進して参る所存でございます。  それから、生活保護の対象人員が少い、基準引き上げでボーダー・ライン層が新しく対象になるのでありますから、増加しなくてはならないではないかという意味のお尋ねでございましたが、最近における被保険人員は、各種の好条件に恵まれまして、月平均一%を上回るような減少傾向でございます。明年度においても各種施策の整備が行われるので、この傾向が同様に続けば、人員が百四十一万人程度となる見込みであるのでありまして、一方、明年度における保険基準の改訂、母子加算の増額による対象人員の増加が見込めましたので、生活扶助人員は、三十一年度末実績より若干増加しまして、百五十万人を予定しております。なお、これらの増加人員に対する一人当りの支給額は、ほとんど基準引上額以内にとどまるのでありますが、これは、安全を見て、従来の実績単価を採用しているので、この面からも十分ボーダー・ライン階層からの新しい対象増加をも処理し得る、こういうふうに考えております。  それから、社会保障予算につきまして、一般会計の増加率が九・八%に対して、実質桂会保障関係費の増率は六%にしかすぎない、これは社会保障充実の公約に対して実質的無視ではないかというお尋ねでございましたが、社会保障関係費の前年対比増加率は御承知のように約八%でありまして、このうち、遺家族援護費の二十億円を移しかえをすると、その率が今御指摘のような六%になるのでありますが、これは主として失業対策費減少によるものでございまして、いわゆる労働省の主管でございまして、当省主管社会保障関係費は、前年度に比べまして、御指摘の六%よりも、その倍、一二%に増額計上になっておりますことを御了承願いたいと思います。(拍手)   〔国務大臣松浦周太郎君登壇〕
  25. 松浦周太郎

    国務大臣(松浦周太郎君) 八木委員にお答えいたします。  完全雇用の達成のために、いかなる計画を持っているかというお問いでございますが、わが国の雇用問題の重要性にかんがみまして、政府は、今国会に雇用審議会設置法案を提案いたし、これに基きまして今後設置せられるところの雇用審議会を活用いたしまして、わが国における雇用の実態を徹底的に究明するとともに、目標となるべきわが国完全雇用の態様及びこれの達成の具体的方途を考えるつもりでございます。また、昨日来政府が表明し、諸君が質問応答せられました三十二年度予算の拡大によりまして、これが積極的な事業が拡大せられますから、いわゆる公共事業あるいは財政の投融資、その他各般の産業及び事業が拡大せられますから、これによって吸収せられるものも相当大きな数字になるのであります。来年度以降におきましても、やはり、この積極的な政策によりまして、これを吸収していくという考えを持っております。また、一面においては、雇用効果の高い新規事業の育成、中小企業の振興に努めるとともに、社会保障、職業別関連諸制度の充実改善措置を講ずることによりまして、完全雇用の達成の具体的方法を講じたいと思っております。自由主義経済下におきましても必ず完全雇用ができますから、どうか御安心を願いたいのであります。(拍手)  第二の問題は、最低賃金の問題でございます。最低賃金の問題につきましては、わが国の産業、企業の現状からかんがみまして、当面は、輸出産業を中心とする中小企業に、業種別、地域別の自主的業者間の協定により、実質的な最低賃金方式を導入することが最もよい方法だと思いまして、労働問題懇談会においても御検討を願っておるのであります。近くその結論が出されますから、これによりまして、今後その線によって適切なる措置を講じていきたいと思っている次第でございます。(拍手)今直ちに全企業一律に最低賃金制を法制化することは考えておりません。  第三のお問いは、一月十四日付労働次官の通牒を撤回する考えはないかどうかという問題であります。今後の労働組合運動が民主的な国家としてのわが国にふさわしい形で発展していくことは、国民ひとしく願うところであります。これを啓蒙することは労働教育行政の使命であります。今回の通牒は、労働関係の基本的なあり方について体系的な考えをまとめたのであります。労働教育の指針として地方に通達したのでございます。これは、労働運動、労使関係の望ましいあり方について、国民及び労使関係者の理解と納得を得るようにするのであります。別段労働運動を抑圧するというような性質のものではありませんから、今直ちにこれを撤回する考えは持っておりません。さらに啓蒙を強化していきたいと思っております。(拍手)   〔国務大臣宇田耕一君登壇〕
  26. 宇田耕一

    国務大臣(宇田耕一君) 八木議員の、完全雇用の具体策ないし完全雇用に関する計画を示せとの御質問にお答え申し上げます。  今後十年間は生産年令人口は増加の傾向をたどると、こう見ております。従って、雇用機会の増大をはかっていかなければなりませんが、これがためには長期にわたって均衡のとれた経済拡大を持続させる必要がある、こういうことであります。それで、この経済規模の拡大によって年々の新しい労働力を吸収していくといいますことは、もちろん、所得水準の上昇とも相待ちまして、雇用関係の好転を積極的にはからなくてはなりませんが、この三十二年度国民の所得は約八兆二千億という計算でありまして、三十一年度に比べて七分五厘の伸びと見ております。また、国民の総生産は、三十二年度におきましては九兆八千五百億でありまして、昨年に比べて七分六厘の伸びという計算を持っております。従って、これによりまして七分五厘を持続して参ります場合には、十年を経て初めて所期の目的完全雇用をわれわれの思想の立場においても達成し得る、こういう考えになります。そうして、経済自立五カ年計画を一昨年立てましたけれども、それは国民所得の伸びを五%と見ておりましたので、現在の日本の経済の拡大の伸び率には少し少い感じがありますので、計算を正しくいたしました結果、ただいまその改訂に着手いたしております。基本線は、七分五厘の国民生産の伸び、国民所得の伸びを中心として、そして労働力人口の質的変化をはからなくてはならないような経済規模を考えなくてはなりませんので、その線に沿って新たな五カ年計画を立てて、完全雇用の基本線の解決に入りたいと考えております。(拍手)   〔国務大臣井出一太郎君登壇〕
  27. 井出一太郎

    国務大臣(井出一太郎君) お答えをいたします。  御質問は大体三点にわたっておったと思いますが、食管特別会計に一般会計から繰り入れるかいなか。この問題は予算編成の過程におきましても種々議論されたところでございます。米の消費者価格を含めまして、内閣に特別調査会を設け、慎重に検討いたしまして、その結論を待って決定をいたしたいと考えております。  次に、麦の買い入れ価格の問題でございますが、現在の麦類管理の運営は売り渡し価格が買い入れ価格を下回っておりまして、いわゆる逆ざやの現象が出ておるわけであります。その原因は、買い入れ価格はパリティに基いて法律できめられておる、一方売り渡し価格の方は需給関係を考慮してきめる、こういうふうなことから、ただいま権衡を失するような点が現われておるわけでございます。そこで、政府買い入れ価格の引き下げは、麦作農家にとりましては非常な影響があるわけでございまして、慎重に検討をさせる必要がございます。本年産麦につきましては、従来通りパリティ価格を堅持する、こういう方針でおります。  さらに第三問でありますが、農林関係予算が少いが、国際農業の圧迫を受ける日本農民の苦境をどうするか、こういう御質問だったと思います。最近における世界的な農産物の過剰傾向及びこれを反映した価格の低落傾向に対しまして、わが国農業の国際競争力を強化するという必要のあることは申すまでもございません。この際特に農業生産基盤の拡充と生産性の向上を強力に推し進めますとともに、農業所得の増大と農業経営の安定をはかるための施策に重点を置いて、本年度予算を策定いたしたわけでございます。三十二年度の農林関係予算は昨年よりも絶対数字で十七億余りふえておりまして、さらに農林漁業金融公庫の資金ワクが三百五十億という大幅な増大を見ております。その上、特定土地改良特別会計、こういうものも新設いたしましたので、全体といたしましては、これは事業量も相当にふえました。これを重点的、効率的に運用いたしまして、国際農業の圧力に抵抗力を持ち得るような日本農業を作り上げて参りたい、こう考える次第であります。(拍手)      ————◇—————
  28. 荒舩清十郎

    ○荒舩清十郎君 国務大臣演説に対する残余の質疑は延期し、明六日定刻より本会議を開きこれを継続することとし、本日はこれにて散会せられんことを望みます。
  29. 杉山元治郎

    ○副議長(杉山元治郎君) 荒舩君の動議に御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  30. 杉山元治郎

    ○副議長(杉山元治郎君) 御異議なしと認めます。よって、動議のごとく決しました。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時五十六分散会      ————◇—————