○井本
説明員
暴力立法の問題でございまするが、あらかじめお断わり申し上げておかなければなりませんのは、
立法をするということと、
取締りをするということと、必ずしも関連が強いわけではないのでありまして、現在の
法律をフルに活用して
取締りを厳重にするというのも
一つのやり方だと私は考えております。しかしながら、今の
法律をフルに活用するにいたしましても、なお足らざる部分も相当ありますので、その点につきまして、私
どもは、どうやればこの
暴力の一掃ができるかということを検討しておるわけでございます。
ただいま大臣から御
答弁がありました通り、
刑法全体の問題といたしましては、とにかく
暴力がいかぬということは
刑法の二百四条以下の条文にもはっきり書いてあるのでありまして、これを厳重に
適用すれば相当程度の
取締りができるものと私は考えております。先ほどお示しのお礼参りでございまするが、
被害を受けた者のところに加害者である被告が保釈出所後にお礼をしに行くというようなことは、これはりっぱな
脅迫罪になる場合が多いと私は考えるのであります。
脅迫になるというようなことでありますれば当然
刑法の罰条を受けるのでありまして、それを検挙、
取締りをするということは、もちろんやらなければならないのでございます。しかし、同じ
被害者のところに会いに行くにいたしましても、本人が非常に悔悟いたしまして、心から
自分の非行をおわびするというようなことで面会に行くということもなきにしもあらずでございまして、さようなことがもし
脅迫であるということになりますれば、これはまた本人に対しましては非常にお気の毒な事情になるわけであります。しかしながら、一般的の例にいたしますと、被告が
被害者のうちに行くというようなことはあまり好ましくありませんので、最近では、保釈の際などには被告は
被害者のうちに行ってはならぬというような保釈の条件がつけてあるのが多いようでございます。さような条件を犯しますると、直ちに保釈の取消しの理由になるということで、本人がまた刑務所に入らなければならぬというようなことになることが往々にございます。全体の問題といたしましては、刑事訴訟法では、
椎名先生御承知の通りに、軽い
犯罪につきましては権利保釈の制度になっておりますが、八十九条の第五号には、もしその
被害者などのような参考人、証人たるべき者に畏怖心を与えて
犯罪の立証を妨害するというようなおそれが十分である場合には保釈をしなくてもいいという規定がございます。われわれの方でも、このおそれが十分であるというようなことは少し条件が厳重過ぎるから、おそれがある程度ではどうかというようなことで、
暴力の問題につきましては、八十九条の五号等権利保釈の制度をこの辺で少し考えようではないかというようなことがさしあたり問題になっております。
それから、御承知の通り、
暴力、
暴行事件につきましては、
刑法の二百八条でございますが、
刑法改正前には親告罪になっておったのであります。その親告罪は、二十四年でございますか、改正の際、親告罪から落しまして、その前には
暴力行為等処罰に関する
法律で、
暴力団のような
暴力行為につきましては親告罪からはずしてしまったのでございます。さような親告罪の規定がはずされておるわけでございますが、それと同様に、
刑法の二百六十一条の一般毀棄罪につきましても、親告罪の規定をはずして親告罪でなくしようというような話があるのでございますが、全般的にさような一般毀棄罪につきまして告訴を条件としないということがいいか悪いか、相当
刑法上の問題といたしましても議論がありまするので、さような点を
暴力団取締りにからめて検討しておるようなわけであります。
なお、
寄付の強要でありますとか、押し売りでありますとか、あるいは理由がなしに
日本刀を所持するというような点につきまして、行政
取締り法規な
どもこの際もう一度検討いたしまして、
別府に起りました
暴力な
ども、いま少しく
取締りが厳重にできるようにした方がいいのではないかということも問題になりまして、さような点を一括いたしまして、この際いま一度検討しようということで、寄り寄り検討を進めているようなわけでございます。
成案がうまくまとまりますれば、何とか大臣にお願いいたしまして
立法の手続に進めたいというように考えておるわけであります。