○岡
公述人 東京弁護士会の岡辨良であります。
私は、今回本案が政府案として提案されたことにつきましては多大の感銘と感謝をいたす次第であります。長い間本問題が法制審議会で論議せられ、また
日本弁護士連合会が
委員会を設けましてすでに五年間その研究をしてきた問題でありまして、たびたび本法務
委員会にも参りまして各位の御
意見も伺ったのでありますが、ここに
裁判所法の一部改正
法律案と
刑事訴訟法の一部
改正案が提案されまして、国権の
最高機関において論議されることに相なったわけでありまして、いわゆる日の目を見た次第であります。私
どもの再びはこれに越すものがないのであります。しかしながら、本案を詳細に拝見いたしましたところ、多少の修正をぜひお願い申し上げたいと思う点がございますので、それを少し述べきしていただきたいと思うのであります。
第一の御諮問事項でございますが、この問題は、昭和二十七年当時、
最高裁判所に七千件以上の
事件が停滞して、
事件の審理が遅延して、世論がやかましくなったので、
日本弁護士連合会ではその実態調査をするとともにその解決案を研究したのでございます。その当時の解決案といたしまして五つの案があったことは御承知の通りであります。
一つは、現状の機構で調査官を増長して一件の審理を促進する案、次は、初等
裁判所に
上告部を設置して審理を促進する案、それから、高等
裁判所に
審査機関を設けて、
上告が適法かいなかを
審査し、
憲法違反と
判例違反を
理由とするもののみを
最高裁判所に移送する案、それから、
最高裁判所に代行
裁判官を置いたらどうかという案、最後は、
最高裁判所の
裁判官を増員する案というのであったのであります。
右のうち在野法曹は
裁判官の増員案を
主張して参ったのでありますが、この増員案は朝野大方の御同意を得るに至ったものであると私
どもは信じておったのであります。その
一つのきっかけといたしまして、たまたま昭和二十九年の六月一日に
最高裁判所における
民事上告事件の審判の特例に関する
法律が失効することになっていたので、同年の国会において
民事訴訟法の
上告に関する
規定の改正が行われ、
上告理由に
法令違反を加えることになったので、
上告裁判所である
最高裁判所が、十五人の
裁判官ではとうてい
民事訴訟法の
上告理由拡大後の審判をすることは不可能であるとの世論が圧倒的となって、増員案が支持せられるに至ったのでございます。
民事訴訟法の
上告理由の拡大は
法令違反であって、
刑事訴訟法においても、このときから、その均衡上当然
法令違反を
上告理由に加うべきものであるとの議論が一そう強くなった次第であります。それで、
刑事訴訟法の
上告に関する
規定の改正と
最高裁判所の機構の改革案とは同時に不可分のものとして研究されるに至ったのでございます。たしか、法制審議会におきましても、この両
委員会は合同して進行するように相なったことに心得ておるのであります。
まず
刑事訴訟法の
上告の
規定の改正では、在野法曹といたしましては、
民事訴訟法の
上告の
規定と同様に、
判決に
憲法の解釈の誤まりあること、その他
憲法の違背あること、または
判決に
影響を及ぼすこと明らかなる
法令の違背あることを
理由とするときに限るとなすべきであると
主張して参ったのでございます。しかし、当時、本案のように、
憲法違反と
判例違反とのほかに、
法令違反を左記のように
制限して加うべきであるとの
意見があったのであります。それは、
判決に
影響を及ぼすこと明らかな
法令違反があって原
判決を破棄しなければ著しく正義に反することを
理由とするときというのであったのでありますが、私
どもは、
判決に
影響を及ぼすことが明らかな
法令違反というしぼりをかけただけでその
制限は十分であると
考えておったのであります。本案によりますと、原
判決を破棄しなければ著しく正義に反することという
制限がさらに加重しておる次第であります。
次に、
最高裁判所判事の増員案につきましては、在野法曹といたしましては、判事の数を十五名増員いたしまして三十名とし、
民事法廷を三つ、
刑事法廷を三つ、各
法廷の
裁判官は五人ずつの合議体とする、別に
民事連合
法廷、
刑事連合
法廷、民刑連合
法廷を設けて、
判例の抵触を防ぐことにいたしたいと
考えておったのでありますが、この点は最近に至りまして在野法曹といたしましてはかような結論に達したのでありまして、二十八年ごろ在野法曹として世上に発表いたしました案は必ずしもこれとは違うのでありますが、本案が御提出になりました後に、かような機構にすることが適当であるのではないかということに私
どもは修正
意見をまとめたのであります。
それからまた、
裁判官の任命に当っては
裁判官任命諮問審議会に諮問しなければならないものとするという
意見で、あったのでありますが、当時、私
どもの
最高裁判所の判事の数を増員する
意見に対しまして、反対に、
最高裁判所の判事を九人に減資して、別に
上告裁判所を設置して、
法令違反をもっぱらにこの
裁判所で審理、
裁判するという
意見があったのであります。これに対しましては、在野法曹は、
最高裁判所のはかに設置する
上告裁判所の
性格がはなはだしく不明であるのと、もしその
裁判所が
下級裁判所であるならば、四審
制度が実現して、明治以来の三審
制度がくつがえり、
訴訟事件はその一審だけさらに遅延するものと相なりますので、
訴訟促進に逆行するものという
理由で、強くこれに反対して参ったのであります、このたび御提案になりました本案は、
最高裁判所の
裁判官を減員する案を採用されたものであるようであります。従って、
法令違反を審理、
裁判する
上告裁判所の
性格がきわめてあいまいであると思われるのであります。名前から
最高裁判所小法廷といい、
最高裁判所かと思うと、
下級裁判所であるといい、
下級裁判所かと思うと、
法令違反の
上告裁判所で終審
裁判所であるといい、終審
裁判所かというと、
憲法違反があればさらに大
法廷に
異議の
申し立てができるというのでありまして、学者はこれを中二階言っておるのでありますが、それほど不可解な
裁判所であります。大体、
最高裁判所の受理
事件が増加して少数の判事では審判しきれないという場合に、判事の数を減員するということくらい矛盾した話はないと思うのであります。少数の判事で審理、
裁判しきれないとすれば、判事の数を増加することが常識であろうと
考えるのであります。中二階的な小
法廷なる
裁判所を設置しても、三十人の判事を任命するといたしますれば相当の予算を組まなければならぬと思われるのであります、むしろ
最高裁判所に適当な判事を増員する方が予算的にも経済であると
考えられるのであります。
次の諮問は、
刑事上告の門は狭きに失するきらいがありやしないか、あわせて控訴及び第一審の構造に触れながら
意見を述べよということでございます。
刑事上告については、
刑事訴法四百五条二項として、本案では、「
判決に
影響を及ぼすことが、明らかな
法令の違反があって原
判決を破棄しなければ著しく正義に反することを
理由とする」ときに
上告の
申し立てをすることができるということに拡大されたのでありますが、
民事上告では、「原
判決を破棄しなければ著しく正義に反する」などという
制限はないのであります。本案の逐条説明を拝見いたしますると、
当事者の権利
関係に実質的な
影響を及ぼすような場合であると言っておられますが、必ずしもそれは明確でないし、「
判決に
影響を及ぼすことが明らかな
法令違反」としぼることによって十分その
制限はついているのではないかと思うのでありまして、かように
制限をもう
一つ加盟する必要はないと
考えるのであります。もっとも、従来のように、四百六条の
事件受理の
制度、また四百十一条の職権破棄の
制度、かような
上告裁判所という
制度から見ますると、
上告裁判所の義務として
審査することになった点におきましては、
訴訟当事者の救済に一歩前進したものと言えると思うのであります。ただ、ここで一言付加いたしたいと存じますのは、
民事上告には
判例違反というものはないのであります。
刑事にのみ
判例違反が存続したということは、ずいぶんこれは論議されたのでありまするが、本日もこの点に触れた
公述人がございましたけれ
ども、これは私は
民事上告、
刑事上告ともに統一せらるべきではないかと
考えるものでございます。
それから、控訴審、第一審に触れて申し上げてみたいと思うのであります。
訴訟手続に
法令の違反があって、その違反が
判決に
影響を及ぼすことが明らかであることを
理由として控訴の
申し立てをすることが三百七十九条で認められておりますし、また、三百八十条では、
法令の適用に誤まりがあってその誤まりが
判決に
影響を及ぼすことが明らかである場合というのがあるのでありますが、その均衡上から、
上告の
法令違反の
判決に
影響を及ぼすことが明らかであるとだけでは適当でないと申されるのでございますが、元来、控訴審は、
刑事でも
民事と同様に締審主義にすべきであると私
どもは
考えておるのでございます。
訴訟においては事実の認定が一番大事であることは申しすまでもないと信ずるのでございます。今日の実際においても、東京、大阪あたりの大都市の控訴
裁判所におきましては、大
部分が証人調べや実地検証をやって事実の審理をしているのでございます。その結果原
判決を破棄しておる例が多いのであります。第一審
判決を顧みますると、今日のように単独判事で
裁判している時代に、事実調べを一審限りとして、控訴審では
法令違反、
理由不備、事実誤認、量刑不当等がある場合に限って控訴を許すということは、
訴訟当事者にすこぶる不満の念を与えるものであると
考えるのであります。第一審の充実ということは、今日の予算の範囲内では、建物の面から申しましても、判事の数の面から申しましても、とうていこれを補充することは困難であるように思われるのでございます。従って、控訴審を続審として事実審を丁重に
裁判するはかはないと
考えておるのでございます。
それからまた、
上告審が、
最高裁判所小法廷という
下級裁判所で
違憲訴訟以外の
事件を扱うという本案の建前は、控訴審が二つできたというような感じになるのでありまして、小
法廷は終審
裁判所ではないのでありますから、
法令違反等の可法
裁判をする
裁判所を二つ設置したような感じがいたします点において、このたびの四審
制度がはなはだしく不適当だということに帰着するのではないかと
考えるのでございます。
刑事でも
民事と同様に控訴審は続審とすべきであると
考える次第であります。
最高裁判所として、
上告審は、
憲法違反と
法令違反を審理
裁判して、
憲法八十一条の
違憲審査並びに
司法裁判所としての
法令の解釈の統一の面と、二つを兼ね備えて審理、
裁判すべきではないかと思うのであります。この御提案の本案は、結局国民が司法上の
裁判を受ける機会を
制限し制奪しようとしているように感ぜられますので、にわかに賛成できないと
考えるのであります。
それから、次に第三の点でありますが、本案による
上告審の構造はすこぶる複雑化しているように思われるが、
訴訟促進の面を考慮しながら
意見を述べよということであります。本案による
上告審は第八条の三で
最高裁判所と
最高裁判所小法廷とが同一の
裁判権を有するということをまず第一の建前といたしまして、「
当事者の
主張に基いて、
法律、命令、規則又は処分が
憲法に適合するかしないかを判断するとき」、それから「懸法に適合しないと認めるとき」及び前の
判例に反するときには小
法廷には
裁判権がないということでありまして、その他の場合には全く同一の
裁判権があるということになっておるようであります。また、第十条の一項では、「小
法廷は、第八条の三第三項の場合においては、事事を大
法廷に移さなければならない。」としておりまするし、それから、第十条の三項では、「大
法廷は、小
法廷から
事件が移された場合において、小
法廷において
裁判をすることができる場合に該当すると認めるときは、
事件もをさらに小
法廷に移すことができる。」ということになっているようでございます。かように
事件を二度もやりとりする期間というものは、これは実に相当の日子を要すると
考えるのであります。この期間をいつか
最高裁判所で伺ったことがありますが、受付から担当判事のところまで参ります期間だけでもなかなか相当の期間を要するという御説明を承わったことがございますが、二度
事件の移送をしておるというような場合には著しく期間を要すると思うのでありまして、
訴訟遅延がはなはだしくなる
一つの原因であると
考えられるのであります。
また、第十条の四項を拝見いたしますと、「小
法廷の
裁判に対しては、その
裁判に
憲法の解釈の誤があることその他
憲法の違反があることを
理由とするときに限り、大
法廷に
異議の申立をすることができる。」ということになっておりますが、この点で、小
法廷が
下級裁判所でありますから、四番
制度となったものでありまして、小
法廷の上に大
法廷の審理、
裁判があるので、一審だけ
訴訟が延長することに相なるのでありまして、この点だけでも一年ないし二年の延長を来たすおそれがあるのでございます。あるいは、大
法廷は
違憲審査のみを審理、
裁判するので四審にはならないと言うのでありましょうが、真に
違憲審査だけをいたしますならば、いつか
違憲事件だけの御報告を承わったことがありますが、それによりますと、年間に
民事事件においては三件、
刑事事件においては六十件のみであると聞いておるのでありますが、もしさような少い
事件を九人の判事が
最高裁判所として大きな予算と機構とを持って審理、
裁判をしておるということは、常識的に
考えて、はなはだむだなことであるのではないかと
考えるのでありますが、しかし、実際は、
憲法の解釈に誤まりがあるといい、また
憲法に反すると申しましても、
法令違反はことごとく
憲法違反になるのであります。それは、
憲法第三十一条を見ますると、「何人も、
法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。」とありまして、
法律の定める手続ということが刑罰の前提要件であるのでありますから、その
法律の手続に違背し、その
法律の解釈を誤まった
裁判は、
法律の定める手続によらないのであるから、
憲法第三十一条違反になることは明白であります。およそ、
法律に違反した手続による
裁判はみな
憲法違反であって、
最高裁判所に
異議の
申し立てができることになっているのであります。本案によってかように二、三年運営いたして参ります場合には、小
法廷はなるほど多数の判事によって
事件は処理し得るのでありましょうが、
最高裁判所はとうてい
事件を審理、
裁判し切れなくなり、
事件はまた五千件、六千件と累積して、国民の非難の声が起るものと思われるのでございます。もし
事件が山積した場合に印刷物などで却下決定などをなさることに相なりますと、
最高裁判所の威信はそれこそ地に落ちるに至るということをおそれるのであります。
また、本案によりますと、農商
裁判所は終審
裁判所として
違憲審査をすることによって、
憲法八十一条の要件を満たしたのでございますが、
憲法第七十六条の
司法権については
下級裁判所である小
法廷にその
権限を譲ったと見られるのでありまするが、何ゆえに国民が希望する
法律の解釈の統一という重大な使命を
最高裁判所自身がやらないのであるか、この点は本案の重大なる欠点の
一つであると信ずるのであります。
刑事ではともかく、
民事では、本案で言うように
最高裁判所が
違憲審査のみをすることになれば、ほとんど
最高裁判所とは絶縁することになるのではないかと
考えられるのであります。
民事事件では国民は
最高裁判所の判断を受ける機会はほとんどなくなると言っても過言ではないと思うのでございます。小
法廷という
下級裁判所を作ることは、この点からも適当でないと言えると思うのでございます。
それから、四番目の御諮問でありますが、いわゆる増員論に対する所見を述べろということでございます。
いわゆる増員論というものは、先ほど申し上げましたように、昭和二十六、七年当時、
最高裁判所に七千件の
事件が累積して、新件などはいつ手がつけられるかわからないという国民の不安がやかましくなりまして、
最高裁判所の
裁判官十五人を増員して
事件の審理を迅速にしてもらいたいという要望が朝野に起ってきたのが増員論であると思うのでありますが、これに対する反対論は、
最高裁判所は終審として
憲法審査をする
裁判所であるから、全員が合議体となって審理
裁判をしなければならない、いわゆるワン・ベンチ論であります。十五人以上に
裁判官を増員すると合議ができない、また適当の人が得られない、また
憲法の解釈が区々になるというようなことで、増員に反対された方は減員論を
主張されたのであります。
しかし、私
どもの
考えるところによりますると、全員が合議体として審理、
裁判をしなければならないと命じた
憲法の
規定はないと
考えるのであります。八十一条並びに七十九条が問題の条文でありまするが、七十九条は
最高裁判所の全
裁判官の数をきめたのでありまして、
最高裁判所を構成する
裁判官をきめたのでありまして、決して合議体の
裁判官を何人にしろということを命じた条文ではないのであります。八十一条にはさようなことの見らるべき点は
一つも見られないのであります。ただ、八十一条によって
最高裁判所の
裁判官は
憲法違反にはみな関与する権利があるのだということが
最高裁判所の
裁判官諸公の御見解のようでありまするが、私
どもは、
最高裁判所の
裁判官の
憲法に関与する権利を剥奪しようなどとは夢にも思わないのであります。全員がいかなる機会にか
憲法判断に関与する機会を常に持ってもらうということは心配をいたしておるのでありまして、剥奪するというようなことは
考えていないのでございます。
それから、十五人になると合議ができないと申しまするが、これは、先ほどの
公述人の方のお話にもありましたように、運営の巧拙の問題であると
考えるのであります。合議の話もずいぶん伺いましたが、ただいまの合議の運営は、失礼ながらあまりお上手にはできていないように
考えられるのであります。これは運営の巧拙の問題であって、合議ができないという不可能の問題ではないと
考えるのであります。
それから、
最高裁判所の
裁判官が幾つかの部に分れて合議をし
裁判をするということは、先ほど来申し上げますように
一つも支障のないことと
考えるのであります。それから、戒能
公述人も申されましたように、適当な人がないという御議論に対しましては、私
どもは従来からたくさんあるということを申して参っておるのであります。
もう
一つ一番大事なのは、
憲法の解釈が区々になるおそれがあるという御議論でありますが、この点に対しましては、私
どもは、連合部を設けることによって
憲法の解釈が区々にわたらないようにすることが十分にできると思うのであります。そこで、在野法曹といたしましては、
最高裁判所の
裁判官は三十人とし、五人ずつの合議体を六つ作り、
民事、
刑事各三つずつの
法廷とし、
憲法違反もこの各
法廷でそれぞれ審理、
裁判をする、別に連合部を作って、
民事連合
法廷、
刑事連合
法廷、民
刑事連合
法廷を設けて、
判例の抵触を防ぐことにいたし、それから、長官を除く
裁判官はみな同様の資格のものといたしまして、国民
審査を受けるものとすることに
異議はないのであります。つけ加えて申し上げたいと思いますのは、大
法廷、小
法廷というような区別はむしろない方がよいのではないかと
考えるのであります。
それから、
裁判の最も遅延を来たす原因でありまする少数
意見というものは、国民
審査のときに必要だということでありまするが、国民
審査に少数
意見を見て投票する人はほとんどまれでありまするから、かような
制度は廃止することがよいのではないかと
考えるのでございます。
それから、任命
制度につきましては、いわゆる
審査会に諮問することは、在野法曹の年来の
意見でありまして、これは本案に御採用になっておるのであります。
最後に一言申し上げたいと思いますのは、本案は国民の権利の伸張と
人権の擁護とに直接重大なる
関係のある法案でございますから、きわめて慎重なる御審議を賜わり、八千万国民の不幸とならないよう立法せられんことをお願いするのでありますが、本案における最大の欠点は、四審
制度となることであります。すなわち、
最高裁判所小法廷という
裁判所を設置することそれ自身が非常な欠点であると
考えるのであります。もう
一つは、
最高裁判所が
法令の解釈の統一という重大なる職責を尽さない点であります。これは
最高裁判所が終審としてぜひやっていただきたいと思うのであります。いずれにいたしましても、本案は
訴訟の促進ということが前提で問題になってきておるのでありまするから、
訴訟促進を妨げるごとき案にならないように、何とぞ十分なる御審議をお願い申し上げたいということを付加いたしまして、私の
公述を終りたいと思います。