○関
説明員 田中
委員さんの御
指摘のような事実であるならば私もはなはだ遺憾であると思います。そこで、事実と
経過の問題につきまして私の方から詳しく御
説明申し上げまして、一応立ちらの言い分をよく聞いていただきまして、また御判断をいただきたい、このように実は思うのであります。
まず冒頭に申し上げますが、私
どもがいわゆる全自労というものを破防法の容疑団体であるという考え方で
調査するというようなことは全然ありません。これは破防法上の容疑団体に当るというようなことは考えられません。その点だけは十分御理解をいただきたいと思います。当面のところ、日本共産党以外、労働
組合が当るなんということはとうてい考えられないのであります。その点だけは私
どもの誠意を十分におくみ取りいただきたいのであります。私も破防法の立案に参加いたしました。その当時の
国会の論議も十分
承知いたしております。何が
問題点であるかということも私は十分
承知いたしております。その点をよく部下職員に指示いたしまして、およそ破防法に規定するような団体以外は、いわゆる破壊容疑団体として調べてはならない、こういうことは厳命を下してあるわけであります。五年たちまして、その思想は全庁に徹底しておると私は考えておるわけであります。
そこで、今田中
委員が御
指摘のような外形的事実はありました。私の方の本田という
調査官が八月二十日に協力を依願して、全自労の中の小野田という
組合員に二回ほど会いまして、最後の日に共産党員によって警察に連行された、こういう外形的事実はその
通りであります。ところで、ここで若干御
説明いたしたいのは、私
どもの方の本田
調査官がまず第一に小野田に会ったのは何の目的であるかということなんであります。全自分の和歌山分会の中には共産党の細胞があるわけであります。そうして小野田は実は党員であるという疑いは私の役所は持っておるわけであります。これはそれ相当の
資料の上に築かれた疑いなのであります。そこで、破壊的容疑団体は、その組織構成員とその活動の全般についてこれを明らかにいたしたい、規制について
調査する、そうでなければ
委員会ないしは裁判所において十分な審判ができない、こういうことに相なりますから、今のような問題について活動の全般について
調査するということに相なるわけであります。
なお、ここで私
どもの苦心をおくみ取りいただきたいのは、最近京都その他の二、三の裁判所におきまして、破防法違反の刑事
事件についてアメリカの裁判所がとっているところのいわゆる明白かつ現在的危険の原則を打ち出してきている。これは裁判所の御意見でありますから、われわれはその御要望にこたえるような
調査をいたさなければならないのであります。まあ
調査の外
ワクは大体そんなところが今考えられるところであります。
そこで、本田
調査官が小野田氏に依頼したのは、実はそこの中におけるところの共産党の勢力の伸張、その細胞の動き方がどんなことかということで情報をくれと言った。それ以外には他意はありません。実は、私は、この問題が非常に大きな問題になりまして、九月二日以降のことでありますが、
責任ある係官を派遣いたしまして、本田氏等について厳重なる
調査をいたしました。もし事実そんなようなことがあるならば、これは明らかに破防法の三条違反でもあろうし、脅迫罪になるかならないかは別問題としまして、私は田中
委員と全く同意見であります。この全自労という労働
組合を破壊的容疑団体として調べたかいなかという点を係官をして十分に
調査いたしまして、その
調査の結果により本人に念入りに
質問したりいろいろいたしましたが、そんなことはありません、私はやはり本庁指示、局長指示の
通りに破壊的容疑団体だけ調べ、その活動が自労組織内にあるか、その
内容等を調べたい、そしてなお、本人は、第二回目の
調査のときには明らかにそのことを言っております。共産党はどういうようなことをやっておるか情報をくれ、こういうふうに言っておるわけであります。というふうに本人は申し述べております。
そこで、全般的な問題といたしまして、私が今まで申し上げましたように、およそ今日のところ労働
組合などを破防法の破壊的容疑団体として調べるというようなことは、これは条件が成立しておりません。四条の条件というのは、要するに内乱を起すということであるとか、あるいはいわゆる政治的な殺人であるとか、きわめて社会的に見て危険きわまる社会攪乱の行為でありまして、そういうものを現在の労働
組合でするということはとうてい考えられません。また情報的にもありません。ない以上は破防法の破壊容疑団体と考えることはとうていできないのであります。その点だけはどうぞ私
どもの善意を
一つ御信頼いただきたいと私は思うのでございます。これが一点。要するに自労を調べたその意味はどこにあるかという問題なのであります。
第二点は、これは田中
委員さんの
お話によりますと、要するにおれに協力しなければ妹の就職にふためなことが起きるぞ、退職でもさしてやるぞというような脅迫めいた言辞がそこにあったのではないか、そういうことになって
調査協力方をおどしてやった、こういうようなお言葉かと思いますが、どうもその点も私の方の
調査によりますると非常に違っておるわけであります。もちろんこれは、本件におきまして、もしそのようなことがありますならば、これは破防法の三条違反はもとよりのこと、実は刑法上の問題が当然そこに考えられてくる問題だと思うのであります。そこで、大へんな問題と実は私も思いまして、係官にその点も厳重に調べてこい、どういうような問題であるかよく調べてこい、こう言ったのであります。ところが、小野田と私
どもの本田との間のいわば水かけ論、こっちはこう言った、あっちはこう言ったというようなところに結局落ちつきますが、私
どもの
調査官の申しますには、こういうことを言ったというのであります。
調査官は、小野田は親がなくて、きょうだい三人で、小野田と三人はそれぞれ戸籍を異にしておる、そしてそれぞれ就職をしておる、こういう事実は一応大体のところはわかっておるのでございます。そこで、あるところへ一緒に来てもらって、話のついでとして、お母さんたちはどうなりましたとか、妹さんはおありですね、妹さんはどんな工合ですか、妹さんは就職されてけっこうですね、こういうような話はいたした、こういうふうに申しているわけでございます。それ以上進んで、私に協力しなければ妹の就職に不利益がくるであろうというようなことは、どういつでも出てこないのであります。それで、私は、両者の水かけ論的な言葉はどちらが
ほんとうか、小野田君が言ったことが
ほんとうか、あるいは私
どもの
調査官が言ったことが
ほんとうか、これはすでに
事件は
検察庁に係属しておりますから、その公正なるところの御判断のもとに私は従うつもりでありますが、ただ一点つけ加えて申し上げたい点は、どう考えても小野田と本田との間の対話でそういうことが出る自然さがない。話のついでといたしまして――協力を依頼する、一面識か二面識ですから、なかなか話が結びつかない、結びつかないからして、そこで家庭問題をいろいろ話をする。話を進める筋道としてそういうことがあるわけであります。その
一つの筋道としてそういう話が出た。出てきたとすると、妹さんはどうですか、妹さんは就職されてけっこうですというような話が出たというふうに申しております。どうもその方が自然さがあって、本田
調査官の言うことをそう一がいに私としては否定できないのであります。そういうことが私の方から申し上げたい点であります。さっき申上げたように、この点はすでに
検察庁に先方から告訴告発されておりますから、いずれ司直的な御判断が下されるであろうが、もちろんこれに従いまして私
どももまた考えてみるつもりなのであります。
次に千円札を封筒に入れて本人のポケットに入れたという問題なのであります。この点は確かに本田
調査官が二日目の日に小野田氏のポケットの中に入れて、それを持って出ていったということであります。これは本田
調査官は、二回も面識もないのにわざわざ来てくれた、そうして時間もつぶしたし、またそのときにお願いもし、将来の協力というような意味で、車賃その他もこめて差し上げた、こういうような意味合いに私は思うのでありまして、そういうような意味合いにおいてしたのでありまするからして、千円そこでやったということは、破防法の調合活動上において、そこには何も悪いことはないというふうに考えておるわけであります。
次に、太田と氏名を詐称した点を御
指摘になりましたが、それもその
通り、詐称といいましょうか、太田という
名前を使っております。これは本田のペンネームであります。そこで、なぜそのようなことをするか。正々堂々と本人の
名前を申す、これは一番常道で正しいやり方と私も思います。しかしながら、初めから公安
調査庁
調査官何がしと正々堂々と名乗っていきますれば、それだけで相手にならないわけであります。だから、最初のときは近づいて。そうしていろいろ向うに
お話をしてその
人間の協力を得るというような手段、道筋のため、必要やむを得ざる場合にペンネームなどを使用する、こういうことはあり得ることでありました、そういう意味合いにおいてやむを得ない
一つの方法であろう、そういうふうに考えているわけであります。
以上のような次第でありまして、私は、派遣いたしました
責任ある係官の
報告を聞きまして、事実上の問題といんしまして、どうもこれは私の方の非は考えられない、私
どもとしては、破防法のこれは正当なる
調査権の
範囲であって、そこに非はどうも考えられないではないかということが、ただいまの私の信ずるところなのであります。いずれ今のこれらの問題につきましては
検察庁の御決定がありましょうから、それがありますれば、もちろんそれに服するわけでありますが、大体事実上の問題につきましては、そのように私は現地派遣の係官から
報告を受けまして、なお念入りにそういうようなことを調べた結果、そういうことになるのであります。どうかそういうふうに私の方からは申し上げることができるという事実をいま一度御判断いただきましてお考えをいただきたい、このように存するのであります。