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1957-10-14 第26回国会 衆議院 法務委員会 第37号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年十月十四日(月曜日)     午前十一時十三分開議  出席委員    委員長 三田村武夫君    理事 椎名  隆君 理事 長井  源君       小島 徹三君    小林かなえ君       林   博君    中村 梅吉君       横川 重次君    伊瀬幸太郎君       神近 市子君    五島 虎雄君       佐竹 晴記君    田中幾三郎君       田中織之進君    辻原 弘市君       吉田 賢一君  出席国務大臣         法 務 大 臣 唐澤 俊樹君  委員外出席者         警察庁長官   石井 榮三君         警  視  長         (警察庁刑事部         長)      中川 董治君         警  視  監         (警察庁警備部         長)      山口 喜雄君         検     事         (刑事局長)  竹内 壽平君         検     事         (刑事局刑事課         長)      河合信太郎君         法務事務官         (人権擁護局         長)      鈴木 才藏君         公安調査庁次長 関   之君     ――――――――――――― 十月九日  委員田中幾三郎君辞任につき、その補欠として  帆足計君が議長指名委員に選任された。 同月十四日  委員帆足計君、淡谷悠藏君、片山哲君、武藤運  十郎君及び菊地養輔君辞任につき、その補欠  として田中幾三郎君、伊瀬幸太郎君、五島虎雄  君、辻原弘市君及び田中織之進君が議長指名  で委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  法務行政及人権擁護に関する件     ―――――――――――――
  2. 三田村武夫

    三田委員長 これより法務委員会を開会いたします。  本日は法務行政及び人権擁護に関して調査を進めます。  この際委員長より法務当局に対して一言申し上げ、かつお尋ねしておきたいことがあります。今朝の新聞を拝見いたしますと、当委員会において審議されました売春防止法に関する問題に関連して何かスキャンダルのあるような記事が大々的に報道されております。当委員会といたしましては、委員会権威のためにも、また委員会性質上、まことに重大な関心を持たざるを得ない事案であると思われます。御承知のように、当委員会裁判所法に関する立法を管掌し、また検察行政に関する調査、管掌の任務を負うております重要な立場にありますので、委員といたしましても、委員会といたしましても、その点常に大いに責任を感じて諸般審査に当っている次第でございます。あの第二十二国会における売春禁止法審査に当りましては、世上とかくのうわさが伝えられ、またそれか委員会発言の中にも現われ、さらに新聞雑誌等にも記事となって出ておりましたので、私も、当時委員であった責任上、たしか二十二国会が終る直後でありますから三十年の七月、八月ごろの暑いころだと記憶いたしますが、法務委員会理事三田村武夫の名をもって、当時の検事総長及び当時の法務省刑事局長の手元に、厳粛な捜査権発動要請した文書が提出してあるはずでございます。それは、いやしくも当委員会に対して世上何らかの疑惑が向けられておるならば、厳重な捜査要請したい、あくまでも事態の真相を明らかにして、当委員会立場一つ公明にしたいという趣旨からの要請であります。その後二、三回刑事局長をおたずねして捜査進行状況を聞いたのでございますが、なかなかはかどっていなかったようでございます。たまたまけさの新聞を見ますと同じような事案が取り上げられ、今日検察の活動になっているようでございますが、当委員会としましては、特に私、今日委員長の職を汚しておりますので、当時の責任継続と申しますか、当時当委員会権威のために私から提出いたしました捜査権発動要請、それに対する当時の御処置などを伺いたいことが一つと、それから、すでに新聞、ラジオで売春防止法審議に関する疑惑が当委員会にかけられた以上、この際徹底的な捜査要請したいと思います。この問題に対する委員諸君の御発言あとからあると思いますが、当委員会権威のために、委員長から、事件に対する捜査の御所見と、今私が申し上げました昭和三十年のたしか七月か八月ころ私の名で提出した捜査権発動要請に対する当時の御処置をこの際伺っておきたいと思います。
  3. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 ただいま委員長かり、昨夜並びに今朝にかけての新聞に報道されている売春防止法関係スキャンダルについての御発言がございはした。委員長とされましては非常に御心配を下され、私ども新聞紙を見て非常に心配をいたしている次第でございます。  先ほど委員長お話にございました、委員長理事の資格において当時の検事総長あてにお出しになりました徹底的な捜査をしろという御書簡でございますが、これはちょうだいいたしたと私も承わっております。その後の経過につきましては、時々聞いてみたりでございますが、検察当局として底徹的に捜査をいたしてみましたのでございますけれども、手をつけるようなこれという手がかりを得られないままで今日まで経過してきたような様子でございます。あるいは詳細は刑事局長から申し上げてもよろしゅうございます。  しかるに、新聞紙記事で拝見いたしますると、はしなくもこの関係横領事件が起きまして、それと関連しまして新聞紙記事のような容疑が起ったというふうに伝えられております。実は私はまだ何も報告を受けておりません。皆さんと同様ただ新聞で拝見しただけでございます。なおただいま捜査中のことでございますから、これ以上申し上げることもございません。ただ、ただいま委員長のお示しになりました、もしさようなことがあるならば徹底的に検察の手をもってこれを捜査するようにというお話でごさいましたが、これはもとより当然のことでございまして、さよういたしたいと考えてわる次第でございます。
  4. 竹内壽平

    竹内説明員 ただいま委員長から御質問の件につきましては、法務大臣かつ御答弁申し上げました通りでございまして、たしか三十年の八、九月ごろであったかと思いますが、三田委員のお名前検事総長に対しまして、とかくの風聞が流布されておるが、法務委員会権威のために徹底的に調査、――もし犯罪があるならば捜査権発動してほしいという御要望に接しまして、当時検事総長はそれを受領いたしております。その後この種の問題は、犯罪捜査一般の通例でございまして、適当な端緒をつかみませんとなかなか発展しがたいものでございますが、そのような考えのもとにその後ずっと経過を見ておりましたところ、たまたま新宿業務横領事件が発生いたしまして、それがきっかけとなりまして、さらに売春スキャンダルといわれるようなものになろうとしているのではなかろうかというふうに想像いたすのであります。事件内容につきましては、まだ正式な報告をいただいておりませんので、ここで申し上げることはできませんが、その点はいずれ明白になり次第この席上で御報告させていただきたいと思います。  なお、この種の事件処置につきましては、ただいま大臣も仰せられましたように、徹底的に捜査をいたしまして真偽のほどを明確にいたす責務を痛感いたしておる次第でございます。  さよう御了承願いたいと思います。
  5. 三田村武夫

  6. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 法務大臣に伺います。なお事務的な点につきましては適当に刑事局長をして答弁せしめられるようにせられてよろしいと思います。  委員長がただいま発言せられた点に関連するのでありますが、作目全国的な新聞報道が、いわゆる売春汚職なるものを大々的に伝えております。ことにその渦中にあるのは光法務委員会であります。昭和三十年七月、例の売春禁止法否決されましたあの前後以来、当法務委員会疑惑の中に包まれておるのであります。ことに、同名とかあるいは何十名とか、あるいは与党とか野党、ないしは眞鍋儀十君の名前さえ新聞に明白に記載されてあるのであります。そこで、この問題につきまして、私はきわめて緊急を要すると思いますので、あえて御質問をしたいのであります。  第一に、政府は、特に首相並びに法務大臣におかれましても、汚職追放をも、て最も重要な政治もしくは行政上の目標にしておるという御発言が、しばしばあらゆる機会になされております。これは当然のことであって、またそうあらねはなるまいと私も信じております。とりわけ政界官界を通じまして綱紀が弛緩し、年々国会が開かれるごとに汚職、疑嶽というものが大きく浮び上りまして、何人、何十人の人々があるいはつかまったり、あるいは疑惑を受けたりするということが繰り返されてきております。そこで、私どもほ、この問題は、ただ口頭禅的なことに終るのではなしに、宣伝的なことに終るのではなしに、ほんとうにそれをやるということがこの種の問題については最も必要なことと思います。もし、言うてしない、実効を上げない、ないしはおそれてあえて手を下さない、あるいは自己の利害あるいは自党の利害ないしは政府利害から判断いたしましてその去就をきめ取捨選択をする、あるいは捜査ないしは起訴範囲をきめるということがあるというように国民が疑いましたならば、この種の声明とか説明とかいうようなことは百害あって一利もないのであります。そんなことは法務大臣はとくと御承知と思います。でありますので、私どもは、この綱紀の粛正とか汚職追放とかいうようなことは、これはむしろ言わずして実行を先にする、何ものもおそれない厳正な態度をもって終始一貫その追放に向って邁進するというところに、この種の問題の扱い方の使命があるのではないだろうか、こうまでも考えておるわけであります。法務大臣はそのおつもりでおられることを私も信ずるのであります。かるがゆえに、以下数点についてあなたの所見を十分にただして、かつまた事態につきましてもいろいろと御説明を求めなけれ、ばならぬのであります。  そこで、第一に伺っておきますが、先国会の二十六国会が閉会いたしまして以後今日までの期間に、国会関係の者で逮捕せられた、もしくは逮捕状が出てまだ逮捕の段階に至らない、あるいは被疑者として取調べを受けたという者は何人あるのでありますか。しいて一々の名前はお答え願わなくてもよろしゅうございますが、これは重要なごとございますので、これらの点についても知らないと言うことはできまいと思います。一応その点を伺いたい。
  7. 竹内壽平

    竹内説明員 吉田先生から御指摘の二十六国会閉会以後今日までのこと、これはもちろんわかっておるのでございますが、ただいま資料を持ってきておりませんので、至急取り寄せまして御答弁いたしたいと思います。
  8. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 その程度のことは、こまかく資料ごらんにならなくても一応はおわかりでないかと思うのですが、いかがでございますか。もしこまかく御記憶にないならば、概略でもいいのです。私はこれは何も非常に重要なこととして聞いておるのではないのであります。聞かんとすることの前提として聞きおくにとどまるのでありますから、大体職務柄常識的に御記憶範囲でよろしゅうございます。
  9. 竹内壽平

    竹内説明員 はなはだ申しわけないのでございますが、本年の八月下旬に現職を命ぜられまして倉卒の間でございますので、今御指摘のような点は常識的にも知っておかなければならないことでございますが、その点お答えができません点をお許し願いたいのであります。資料に基きまして必ずお答え申し上げます。
  10. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 即刻お調べの上、私の質問が終了するまでに一つ答弁を願いたいと思うのです。  そこで、いわゆる売春汚職の件でありますが、実は私どもはこのことなきやを心配しておったのです。さっきも委員長から、二十二国会のいわゆる売春禁止法否決の前後をめぐっていろいろ世上うわさになりましたことを心配して捜査権発動要請したということも聞くのでありますが、実は私どもは当時におきまして、たとえば数千万円の金が全国業者からそれぞれ集められたとか、あるいは一戸当り千円ずつが醸金せられた、それはことごとくその禁止法を食い止めるために反対の運動に使われた、そして国会にも相当な金が流れた、あるいはここの廊下におきましても、彼に二十万円やった、彼に三十万円やった、ところが彼の態度はおかしいじゃないかといって議員をさして非難しておるような業者を、われわれの同僚も聞いたというようなことすら国会で明らかに相なってきたことでありますので、私どもといたしましては、あのおととしの七力に法案が否決せられました前後の雰囲気、当時の事情というものから察しまして、非常な心配を実はしておったのであります。でありますので、あのころの事情から考えますならば、その後の継続、発展といたしまして、当然何らかの端緒からしっぽが出るであろうということもわれわれは想像いたしておりました。はしなくもこのたび問題が表向きになったわけであります。私どもみずからもある程度資料は持っておりましたが、しかし、事の重大性と慎重を要しますことから、あえて公表することにしなかったのであります。人の名前までも実はわれわれ自身も見たのであります。こういう事実もあるのであります。そこで、これは全く近来まれな大規模の問題とわれわれは考えるのであります。といいますのは、御承知通りにかりに、一万六千の性病予防自治会の会員といたしましても、これは全国に散在しておるのであります。でありますので、全国に散在して国会を目ざしてこれを食い止める、そして否決運命に陥れよう、こういうような運動を、それぞれ業者が醵金をして、東京中央本部を設けてやっていくという限りは、これは東京だけに限るのでなしに、全国的に金を集め、運動がせられ、それらの運動東京に集約される、こういうことになりますので、これはその以前の造船疑獄なんかの、ああいう程度のものではございません。金額はそれは何億円には上らないかもしれません。しかしながら、関係した人間、そして贈収賄の資金を出した人間全国にまたがります。これは大へんなことであります。でありますので、その意味におきまして、私どもはこれは峯前の汚職疑獄事件として考えてみなければならぬと思います。今ほんの一部が表へ出ておるにすぎないと思いますけれども性質上当然そういうふうになります。全国売春業者のその動きというものは、これは東京中心にして電気のごとくに伝わり、そうしてまたそれぞれ集約してくるという組織のあることもみな常識上知ってぶるわけであります。刑事局長もその点御承知と思います。あなたも、売春防止のために、防止法の運営のために法務省の予算をできるだけ充実してとりたいために御努力になったのでありますから、そんなことはあなたも御承知なんであります。でありますので、こういう常識から考えましても、当時から今日あることを私どもほんとうは非常に憂えておったのであります。そこで、こういうような事態になって参りましたならば、われわれは第一は検察陣の強硬な態度と厳正な態度と徹底的な捜査を望まぬばならぬことはもちろんであります。もちろんでありますけれども、ただそう言ったからといって、結果を得ることはあるいは不可能な場合もあり得ます。これはもうわれわれが常識上幾たびか経験してきたところであります。私どもは、当委員会におきましても、委員会疑惑に包まれておる、委員会の中から何人かの者が金をとったということ、不浄の金をとったということが世上喧伝されることになったというふうになりました以上は、これはもう徹底的に当委員会としても究明していかねはならぬと思います。検察陣検縦陣立場においてする、われわれは国会権威維持の見地に立って当委員会あとう限りの権限を行使してこれは究明していかねばならぬと思うのであります。  そこで、最近に至りまして、新宿横領事件以来でもよろしゅうございます。横領事件以来いわゆる売春業者もしくは売春業者の団体の役員、事務員、そうした者が逮捕せられもしくは現に捜査対象になり被疑者になっておる、あるいは起訴をされた、一つこの人間名前をあげていただきたい、こう思います。
  11. 竹内壽平

    竹内説明員 ただいままでに捜査対象になり、公けの手続で逮捕あるいは起訴されておりまする名前を申し上げますと、新宿カフェー協同組合安藤理事長に対しましては九月二十七日業務横領起訴をされております。次いで本月二日、会国性病予防自治会事務局長今津一雄氏が逮捕されております。さらに一昨十月十一日、同自治会理事長鈴木明、副幹事長長谷川康、この両名がそれぞれ逮捕せられておりまして、いずれも捜査中でございます。
  12. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 この売春防止法は、なお多数の刑事規定等が来年の四月にならねば実施に至らない。そこでこの実施の暁には全国売春業者は直ちに営業を廃し転業をしなければいけない。そこで全国業者は数カ月後に運命が迫っておるにもかかわらず、今なお六%しか転廃業が行われておらない。ことに東京都内におきましては、吉原地区におきまして昨年の五月に比べ本年の七月には百七十余名の従業婦を増員しておる。言いかえますならば、全国業者は、売春防止法は来年の四月には全面実施にはならないものである、必ず延期になるものである、ないしは莫大な国家補償が得られるものである、あるいは特別融資ワクが与えられるものである、こういったある種の希望を持っておるということがこの事実によって証明せられるのであります。そこで、法務大臣管下の全検察機関にいたしましても、東京都内におきまして、目前全面実施が迫り、目前売春業法律違反になるというにかかわらず、売春業者が平然としてなお多数の従業婦を増員していくという状態、これは一体どうしたものであるか、これは何者かが大きな期待を彼ら業者に与えておるということは疑う余地がないと思うのでして、そこに表裏いろいろな因果関係がてんめんしておるということを一つお考え願わなくちゃならぬと思うのであります。  そこで大臣に聞きたいのでありますが、これらの業者が依然として転廃業をしないて、むしろ全国的に見ればあちらもこちらも減りつつあるにかかわらず、政府のおひざ元である東京都、しかも全国性病予防自治会の会長、最も政府政界官界の情報の中心部を握っておるところの鈴木明氏が主宰するこの組合が、一年間に百七十名も増員をしておる、一体こういう事実を何とごらんになりますか。ここに大きな根本的なあやまちがひそんでおるということも考えねばならぬのであります。大臣の御所見はいかがですか。
  13. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 御承知のように売春防止法刑判規定は来春の四月一日から実施されることになっております。私ども就任以来当然四月一日から実施されるものと考えて参ったのでございますが、遺憾ながら業者のうちにはあるいは四月一日からの完全実施が延期されるんではないかというようなあだな希望を抱いておる者がありまして、そのために自発的に転廃業方面に向っての努力が足りなかったような情勢がございまして、まことに遺憾に存じておったのでございます。そのために、すでに方針といたしましては四月一日ときまっておるにもかかわらず、再三再四政府といたしましても、また法務省といたしましても、四月一日の刑罰規定実施は絶対に延期しないということを声明いたして、そして注意を喚起したようなわけでございます。で、ごく最近に至りまして、業者の側におきましても、これはとうてい四月一日の実施は延期される見込みがなさそうだということにようやく気がつきまして、そうして自発的に転廃業の方に心配し出した者があるやに承わっておりまして、まことにけっこうだと思っております。政府といたしましては、補償の問題はできませんけれども、その他でき得る限り転廃業のできますように助けていきたい、かように考えておるわけでございます。  なお、ただいま御指摘になりました、このおひざ元のある地区で四月一日の転廃業を控えながらかえって従業婦の数がふえておる、けしからぬではないかというおとがめでございまして、私もまことに同感でございます。そのことにつきましては、私ども幾日か前にその数字の報告を受けましたから、これはいかにもひどいじゃないかということで、さっそく注意をいたしました。ところが、その後承わっておりますところでは、これは何か人数の数え方に行き違いがあったというようなことも承わっておりまして、いずれにしても、かりに人数がふえるようなことがあってはいけないから、断然これは取り締ってくれということを申し渡してはございますが、真実は頭数の数え方がちょっと手違いがあったというようなことも承わっております。これらのことにつきましては、実際に当った方面からありていに申し上げた方がよかろうと存じております。
  14. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 その点は都合であとで聞きます。問題の中心点を進めたいと思いますので、あと一つ言って下さい。  そこで、伺いたいのですが、こういう点は一つ問題点だろうと思うのですが、売春防止法実施になり、これをめぐりまして赤線業者には国家補償をしなければならぬというような言説が相当流布されたのであります。それからもう一つ、来年四月には諸般の準備が整わない等によって当然延期することが妥当である、あるいはさらに第三には、特別ワク三百億円の融資政府にせしめて、そうして全国売春業者転廃業資金に充てることが至当である、ないしはその金額は百三十億円でもいずれでもよろしい、ことに先般自民党内部風紀対策委員会におきまして売春防止法についていろいろと御決定になりましたそのあと新聞の伝うるところよりますと、百三十八億円という特別融資の問題がその内容に含まれておるやに聞くのであります。そこでこういうような事実が一体あったのでありましょうかどうか。つまり、放府側において三百億円の特別融資ワク、百三十数億円の融資あるいはその他の資金、そういう業者国家補償ということが財政的にできるできないは二段にいたしまして、国会会関係方面においてそういうような言動があったということは、これは御承知だろうと思うのでございます。大臣国会議員であられるのですが、ことに重要な法務行政の首長であります。この点についてはどうでございますか。
  15. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 ただいまのお尋ねの、ワクをきめての特別融資の問題、さらに進んで補償の問題でございますが、私もただいまお話のありましたようなうわさを承わっております。しかし、政府部内といたしまして、四月一日の完全実施を控えてその事前の転廃業をどうしたらよかろうかということで関係閣僚がしばしば集まっていろいろ相談をいたします。そのときに、今の補償あるいは融資問題は厚生大臣の主管に相なっておりますが、厚生大臣からはそういうお話は出たことはございません。補償も、これはそういうことはできまい、特別のワクを作るというわけにもいくまいということで、一般中小企業転廃業と同様に助けてやるより仕方がない、こういう話は承わっておりますが、われわれ関係閣僚の中では、今のお話の三百億のワクとかあるいは百三十億のワクというような話は承わっておりません。
  16. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 私が伺うのは、政府内部におきましては、客観的に見ても、その種の融資ができないということは、これはもう常識上明らかであります。しかし、常識上明らかであるにかかわらず、世上これが喧伝せられて、そして全国業者がかなり信用しておる事実があるわけなんです。業者が信用しておるのです。必ず融資はあります。必ず相当な転廃業資金政府から貸してもらえます。そしてこれは一般中小企業とは別に特別のワクができます。こういう運動をしてもらっておる、こういうことを言いますので、そういうようなことが国会関係においてあったことを御承知かどうか、こういうのです。政府内部にはそういう話はなかったとか、あるいは厚生省から聞かなかったとか、閣議で問題にならなかったとか、そういうことよりも、私の聞きたいのは、国会関係から、そういうような話あるいは意向、希望、そういうものが、申し合せでも、個人の意見でも、委員会の決議でも、あるいは何々役、何々調査会の意見でも、何でもよろしゅうございますが、国会関係においてあったのかと開いておる。
  17. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 この問題は先ほど申し上げましたように主として厚生大臣が扱っておりますものですから、私のところへは申し出その他のことは何もございません。ただそういううわさは承わっております。
  18. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 そのうわさが非常に重要なことなんです。でありますので、全国業者は全性会といいますかあそこの理事長などを中心といたしまして、それを頂点といたしまして、あるいは国家補償、次には特別の融資ワク、次には延期、こういった目標をもって運動しつつあったということは、これまた常識なんです。だから、あなたもいろいろとうわさを聞かれたということは、これは非常に重要なことなんであります。われわれは常識的に聞いておりますので、そういう辺についてもっと率直に聞かしてもらいたい。といいますのは、かりにも客観的に希望性のないような、実現性のないようなことが国会関係においていろいろうわさに上るとか、あるいはそういうことを目標にして全国業者国会関係の者に陳情するとか、国会関係の者が動くとかいうようなことは、これはとんでもないことなんです。犯罪になるとかならぬとかいうよりも、そういうこと自体がこれは問題でありますので、ここはやはり明らかにすることが問題を究明する第一の段階でなかろうかと私は思うのであります。三十年の七月か九月でしたか、当時の三田法務委員会理事がみずから検察権の発動を総長に向って要請したということがあったが、その後何ら端緒を得ないでそのままになっておって、今日横領事件新宿に起ってそれが端緒になって燃え広がらんとするということは、少し間が抜けておる。いろいろなうわさに取り巻かれておって常識的にわかっておるような問題をなぜ一体究明していかなかったのであろうか、これが私どもふしぎにたえぬのであります。でありますので、少くとも全国的に一万五千の業者が一本になりまして鈴木理事長を先頭に立てて、――最終は延期ですよ、四月を延期してしまうということが最後の望みなんであります。そして最上は国家補償であります。でなければ特別融資ワクであります。しかなければ延期であります。延期はう大丈夫だということは、全国業者にあちらこちらで聞きましても、それは大丈夫だと思っていますとわれわれにも言うのですよ。一体何を当てにしてそんなことを言うのかと私は思った。ですから、そこが大事な点であります。全国業者が今申しましたように三本、四本の目標を持って国会に向って運動しておったという事情は御承知でなかったのでございましょうか。これは刑事局長でも、もしくは刑事課長も見えておるから、事務当局から御説明願ってもいいと思いますが、いかがでしょうか。
  19. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 いずれ詳しくは局長その他から申し上げたいと思いますが、先ほど申し上げた通りでございまして、いろいろ私も新聞紙等でも拝見し、うわさも耳にしておりましたが、転廃業ということがなかなか重大な、いろいろ困難な問題なものですから、何とかして円満に転廃業をさせたいという心持から、いろいろのやり方を考えられたのであるが、補償ということはとうていできないが、何か特別融資でもできないだろうかというような意見を持っておる個人の人もあったように承わっております。それで、いろいろ相談したが、それも今できないというようなことで、結論としては特別のワクも作らない、こういうことになったように承わっておりますが、別段決議をしたとかそれを要請したとかいうようなことは私ども承わっておりません。しかし、これは先ほどもお断わり申し上げました通り、今厚生大臣がおりませんから、私の聞き知ったことだけを申し上げるだけでございまして、これは責任大臣としては厚生大臣でございますから、そちらの方からお聞き取りを願いたいと思います。ただ、こういう際でございますから、いろいろのうわさが飛びまして、ことに四月一日の完全実施という問題などは、政府といたしまして、また私どもといたしまして、一度もちゅうちょをしたことがないのでございますが、それにもかかわらず、業者のうちには、あるいは延びるのではないかというようなあだな望みを抱くようなこともあるわけです。ですから、いろいろうわさからそういう人たちにあだな望みを抱かせたようなことはまことに困ったことと思いましたが、最近ははっきりと四月一日完全実施ということの決心がつきかけたように、その見通しのもとに転廃廃業をしたいという決心がつきかけたように見ておる次第でございます。
  20. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 そこが大事なことでございまして、そうしますと、全国業者が、これは何千万になるのか、あるいは東京だけで何百万になるのか、新宿だけでも二百四十万円といわれておりますが、全国業者はあるいは国家補償を当てにし――国会議員国家補償ということを公然と審議会において発言した委員すらあるのです。そこで、国家補償を当てにしたがだめらしい、五百億円の特別融資、これはぼろい、これを当てにしたけれどもだめだ、延期にもならぬらしい、そうすると何百万円、何千万円を投資した運動資金がどうなるのだろうか、ここにやはり問題の起る契機があるわけであります。これはジャの道はヘビで、刑事局は特によく御承知と思う。ことに刑事課長は往年の造船疑嶽もお扱いになったのでありますから、こういうことはすぐびんとくるわけであります。そこで内輪割れしたことは、これも御承知だろうと思います。内輪割れすると何もかもぶちまけてしまう、これもまた御承知通りだろうと思うのです。そこで、たとえば東京都に限ってみて、これは事務当局から伺ってみたいと思うのですが、東京都内組合におきまして、三十年七月から十月まで、十一月から十二月まで、つまり数カ月間に、第 次非常対策費、――非常対策費ですよ。第二次非常対策費、こういった予算を組んで、相当莫大な、もっと具体的に言うならば、私の得ている資料によると八百八十六万二千余円になっております。こういうようなものがあらゆる意味におきましてこの種の目標速成のための運動資金に使われたというような事実は、これは一体どうしたものでしょう。すでに捜査は重要人物の逮捕の段階にまで進んで参っております。ことに新聞は相当綿密に全国の選挙区に及ぶであろうという記事すら有力新聞に記載されておるのであります。捜査当局、法務当局だけ何も知りません、知らぬは主人ばかりというような間抜けたことは、私はないと思うのであります。そういう事実につきましては、一体どうしたものなんです。こういうような投資をしているんです。これがみんな議員のふところに入ったとは私は思いません。いろんな交通費も要りましょう、宣伝費も要りましょう、あるいは議員の監視費も要りましょう、いろいろ要るでしょうけれども、これは一体どういうものでしょう。刑事局から一つ説明願いたい。
  21. 竹内壽平

    竹内説明員 ただいま、第一次非常対策費とか第二次非常対策賢というようなものが全国から集められておるというお話でございます。そういう事実をわれわれが知っているかどうか、――私どもは存じておりません。しかしながら、捜査当局におきましてはあるいは知っておるかもしれません。そういう点につきましては、この国会で御質問に関連して、いろいろ資料をいただいておるのでございまして、捜査当局に回して十分検討していただくつもりでございます。もちろん御承知のように捜査は大衆の討議において進められる筋合いのものではないのでございまして、捜査が進められる段階に並行してその事情を明らかにするということも適当ではございませんので、私ども検察当局を信頼いたしまして、熱心な捜査、十分な捜査、慎重な適正な処理を期待いたしておるのでございます。
  22. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 しかし、法務大臣に伺いますが、かりにも現職の国会議員がまさに逮捕せられるという一流新聞記事があるのですよ。にもかかわらず、捜査当局を信頼しているからわしは何にも知らぬのだというのは一体どうしたものです。調べの状況は刻々とあなたの方に向って、つまり法務省に向って報告せられるのが当然であり、またそれが事実だろうと思う。そういう慣例になっておると思うのです。報告は受けておるけれども捜査の進展上妨げになってはいかぬので、捜査の秘密上必要であるからこれこれの事柄は言えないのだというなら、また話はわかります。しかしながら、以前の二十六国会の全購連事件のときもそうだったのです。あのときは社会党の議員名前がたくさん出たわけなんですが、その経緯については黙して語らずということになってしまった。しかし、きょうはまた一歩進んで御承知でないと言う。経過報告も開いてないと言うのではとんでもないことである。こういう重要な案件、ことに現職の国会議員がこの重要な法律の実施に当ってその前後の汚職的な疑惑を受けるという記事が出る以上は、相当の捜査状況の報告を受けることが、私は検察行政上当然のことであると思うのであります。これは当然せられておると思うのです。まずそれを聞きましょう。そんなことせぬでもいいのか、していないのか、もしくは報告があるのかないのか、この点を一つ聞いておきましょう。
  23. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 いかにもごもっともなお尋ねでございます。私は法務省の仕事には初めて携わった者でございまして、その点は全くのまだしろうとでございます。ただいま、今までのしきたり、慣例でもというお言葉がございましたが、その点を正直に申し上げてみたいと思います。  この事件につきましては、全くまだ報告もございません。それから、今日まで在任三カ月間の経験を申し上げますと、相当世間に注目されるような事件につきましては、ある程度の段落のときに報告して参ります。今度の事件を例にとってみましても、また新聞紙に伝えられているだけで、相当の段階にまで行っておらないからきっと報告してこないではないかと思います。この報告を聴取する問題、これと法務大臣検察当局関係は、私は非常に微妙だと考えております。御承知のように、私が申し上げるまでもなく、法務大臣は個々の事件については何らの指揮権を持っておりません。ただ唯一の指揮権は、御承知のような検察庁法に基いて検事総長がタッチしてやるいわゆる指揮権発動と称せられるあのもの以外にはございません。それほどに今日の制度は、検察当局の独立性と申しますか、それを認めておるのではないかと私は解釈いたしております。でありますから、概括的の訓示等におきましては、疑いのあるところはきわめて厳正にまたきわめて公平に処置をすべしということはいつも指示いたしておりますが、それから先は、今刑事局長から申し上げました通り検察当局の良心を信じ、その厳正公平な裁きを信じて仕事をある程度はまかせていく、その中道においてかれこれ指図をすることはいかがかと考えられるわけでございます。  そこで、情報でございますが、一々法務大臣のところから、新聞に出たがあれはどうだこうだということを問い合せますことが、もしこれが相手方の方に予測しないような心理的の影響でも与えまして、それが多少の影響を与えるというようなことになりますと、これはやはり検察権の純粋な発動ということにじゃまになりはしないかと思いまして、多少その点はまだはばかっていきたいという心持もするのでございます。それがつつみかくさず今の心境を申し上げた次第でございますが、しきたりから申しますと、今度の事件を例にとってみましても、私の今まで三カ月の経験では、今のところでは、報告は催促すれば教えてくれるかと思いますけれども報告にはなってこないようなしきたりになっております。
  24. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 警察庁長官に聞きますが、この事件に警察庁は関与して捜査にタッチしておるのかどうか、あなたは何らの報告を受けておらないのかどうか。これは、検察庁のみではなくして、やはり手足になっておる警察庁等が、警察庁が関与しているものと思われます。そういったときに、やはり警察庁長官として相当な報告を受けなければならぬと思うのだが、その点いかがですか。
  25. 石井榮三

    ○石井説明員 昨今新聞紙上に伝えられております売春関係汚職事犯につきましては、東京地方検察庁におかれまして担当せられて捜査を進めておられるように聞いております。従いまして、直接これに関与いたしておらない関係上、私は本件の推移につきましては今のところ正式な報告には接しておらないのでございます。今後東京地検の捜査に関連をいたしまして警察当局にも協力を求められるということがあるいはあり得るかと思いますが、その場合には警察庁といたしましてもこれに協力しまして捜査を進めていく、こういうことになろうかと考えております。
  26. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 法務行政及び検察行政の観点からもう一度大臣にだめを押さなければいけません。臨時国会開会が間近くなっております。そこで、たとえば名前を、眞鍋代議士と新聞に出ておるからあえて申しますが、眞鍋代議士逮捕近しという記事もあるわけです。そこで、かりにも臨時国会間近しというときに売春汚職疑獄が国会に及んでおるということが常識上考えられ申す。そういうときに、検察の独立を思うて、それを信頼するのゆえに何らの報告も求めておらぬ、また来ておらない、あえてすれば心理的な影響を相手に与えてもいかぬといった、そういうことでいいのでありますか。たとえば逮捕が適当かどうかというようなことについて、国会に向って逮捕について許諾の請求があるということになつてから、あわててあなたの方は報告を求めるということになる。一体そういうようなことでいいのであるかどうかと私は申すのであります。何も国会議員が特別に偉い地位にあるとかいう意味ではなくて、ともかく国会の審議権――今日まさに臨時国会が目睫に迫るような重要な段階に進みつつあるときなんであります。こういうときに全然知らないというのでは、これは、あなたが就任後数カ月にしかならぬとおっしゃるけれども、それは一体どうしたものでしょう。そういうようなことで、心理的の影響を与えるとか、何かはれものにさわるようなことをしなければ検察庁の独立というものはないのですか、どうですか。あなたの方は検事総長に向っても指揮権の発動をする権限をお持ちになっておる。だから、それぞれの関係におきまして検察庁と法務省関係というものは相当緊密でなければならぬと思う。報告を求めたら心理的影響を与えないかと心配して、そういう心配から検察庁の独立を案じるといったような、そんなか弱い検察庁であろうか。逆に言うならば、法務大臣がちょっと何か言うと検察庁がぐにやっとしてしまって、大物が逃げて小物だけがつかまってしまう過去の例がしばしばあったように、国民はそれを疑うのです。だから、法務大臣が何を言おうとびくとも上ないというくらいな内部の強靱な体制が当然なければならぬと思う。にもかかわらず、今の報告によりますと、全然報告も受けていないし、また受けようともしていない。受けることは相手の心理的影響を心配する、そんなことでいいのだろうかと思うのです。重ねてその点についてはっきりして下さい。私どもはあなたの硬骨を信ずるのです。ぐにゃぐにゃしてないことを信ずるのです。ことに、申し上げまするが、当時の法務委員には前の検察首脳部の人も入っておるのです。その後の法務委員にも司法の首脳部の人も入っておるのです。こういうことを思いますと、十数人とか十名とか数名とか与党とか野党とかいうようなことまでいわれるときですから、大へんな問題です。そのときに、まだ報告受けておりません、検察庁の独立のためにあえて何も聞かないというような、そういうことでは一体これは職責を果しておられるんたろうか。大臣、しっかりして下さい。ほんとうに私どもは何もあなたに敵意はないのです。敵意はないけれどもほんとうに名実ともに法務大臣の厳正な職権の行使を求めるのです。ほんとう検察陣の独立を要請するのです。だから、何ものもおそれないでどんどんと調べなさったらいいんです。要求なさったらいいんです。そんな要求をしたら、ぐにゃぐにゃして心理的影響を受ける、事実はそんなものじゃありませんよ。そんなに腰の弱い、ふぬけた検察首脳部ではなかろうと私は思う。全くそれは私ども意外なお言葉なんです。これはもっとはっきりと答弁しておいてもらいたいのです。
  27. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 私がただいまいろいろと報告を求めて、こちらの予測しないような影響を与えるようなことがあってはいけないという心配を申し上げたことについての御非難でございますが、私は、ともかく司法、裁判というものは一切の政治的な影響から独立して蒸溜水のように厳正公平に行われていかなければならぬし、そういたしたいものだと、こういうことを考え過ぎるあまりかもわかりませんが、私はさようなことを自分としては注意をいたしているつもりでございます。さようなことはしろうとの言うことで絶対心配がないということであってほしいのでございまするし、また吉田さんのただいまのお話通りさようなものでないということを承わりまして、まことに安心をいたしておるわけでございます。検察当局と申しましても、今扱っておりまするのは東京の地検でございますけれども、さらにその上には東京の高検もございますし、それから検事総長の率いている最高検もございます。これらの人たちは検察のエキスパートでございまするから、私は検事総長以下のこれらの検察陣を完全に信用いたしておりまして、しばらくこの人たちの処置を待ってみたい、かように考えるわけでございます。これは今度の事件ばかりではございません。いつも、ある一段落のついたときに、かようかようの処置をしたということの報告を受けておるわけでございます。それが実情でございます。
  28. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 それならば、あなたは検事総長に向って検察庁法上指揮権をお持ちになっておるのでありますから、この際検事総長に向ってこの事件の状況について報告を求められて、可能な範囲国会報告する、そういうことをせられてはいかがですか。どういうふうになさいますか。
  29. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 私がかたくなに皆様の御要求に対して報告を求めない、従って報告しないということを申すのではございません。今日までのところ、まだ何も報告を受けておりませんし、そうしてそれが今までのしきたりでございます。ただ新聞には大きく出ておりまするけれども、まだその段階でございまして、まだそれを受け取っておりませんから、それを今申し上げたわけでございます。今までのお尋ねでよくお心持はわかりましたから、この事件につきましても、よく調べまして、報告を求めて適当な機会に申し上げるつもりでございます。
  30. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 そこで、私は具体的に直蔵簡明にあなたに求めます。あなたは検事総長に向って、事の重要性を御認識の上、報告を求められて、当委員会に向って可能な範囲でお知らせ願いたい、こういうことであります。しかし、何も言えないというのであれば、またそれはそのときのことにします。この程度のことは申しますというのであれば、それもまた聞きます。いずれにしましても、検事総長に向って指揮権があるのだから、その現場の諸君に一々聞いたり地検に向って報告を求めないならそれでよろしゅうございます。あなた個人は国会とのつながりにおいてきわめて重大なお立場でございますから、その点を明白にしてもらいたい。検事総長に向って報告を求めて、当委員会に対して可能な範囲報告をしてもらいたい。いかがですか。
  31. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 ただいま仰せの通りにいたすつもりでございます。
  32. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 それならばさらに進んで伺いますが、新聞紙によれば、与党議員、野党議員合せて二十名ということになっているのです。大へんなことであります。それで金を出したところは全国ということになっている。まるで全国の選挙区に関係するかもわからない。これは国民は大へんな衝撃を受けるのです。だから、あなたの刀がこのような案件をいいかげんにほおかぶりして、検察庁がひょろひょろやるようなことに終ってしまったら、日本の司法権というものは地を払います。大へんですよ。だから、いかがです、ほんとうに全検察能力を発揮してこの問題の究明に徹底的に当る。それは与党であろうと野党であろうと、閣僚であろうと前閣僚であろうと、政党の幹部であろうとないしは重要な現職の役職員であろうと、公務員であろうとえらい勢力を持った業者であろうと、そんなことにとんちゃくなく徹底的に究明いたしまして、検察の独立の目的を逃せなければいかぬと思うのです。法務委員会がねらうところはそこなのですよ。それで、よしんば法務委員の諸君で先輩であろうと何であろうと、かりにも疑いを受けるような者がありましたならば、法務委員会の名誉保持と権威保持のためにわれわれは徹底的にこれを究明しなければならぬと思うのです。その覚悟を持って捜査を徹底的におやり下さるかどうか、指揮されるかどうか、検事総長に向っても命令せられるかどうか、この煮について法務大臣態度所見を明らかにしておいてもらいたい。
  33. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 重ねてのお尋ねでございます。お話通りでございまして、私どもといたしましては、検察当局に対して、徹底的に捜査をいたしまして、しかも厳正にまた公平に捜査をいたしまして、そうしてこの事件の真相を明らかにして、理非曲直、真偽のほどを明瞭にするように申したいと考えております。
  34. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 最後にもう一点伺っておきます。やがていろいろと具体的になり、あるいはならないかもしれませんが、これはいろんな人が登場してくるとわれわれは考えるのであります。そこで、あなたが検事総長報告要請せられるときのために、私はあなたに対して希望を申し上げまして、そしてあなたのこれに対する考えもぜひはっきりしておいてもらいたいと思うのであります。といいまするのは、これはおととしの七月に例の売春禁止法否決されますその以前から今日まで実は継続しておるのであります。そこで事は容易でないのであります。といいまするのは、今日まで継続しておりまするので、今日国会的効果をあげようと思うならば、現職の議員に全部当らねばならぬ。ことに前歴が、あるいは法務大臣であるとかあるいは検事総長であったとかあるいは元閣僚であったとか、そういうような人々には特に私どもは効果が大きいと思うのであります。あるいは政党の領袖幹部になるとなおさらそういう点については政党的な効果があると思うのです。そこで、今新宿事件に端を発してだんだんと内部的に広がりつつあるようでありまするが、そうしますと、過去のそれからきょうまでずっと続いておるというのでありますから、いわば内閣にとりましても容易ならざることであります。与党ということがここで出るのでありますが、伝うるごとくに与党の議員が相当数で、もしその中に重要な役職の議員があるということになりましたならば、これは内閣の運命にもやがてかかわってくるわけであります。そういう意味において実は容易ならざることであります。過去のことだけを調べるというのではないのであります。でありますので、あなたにおかれましても、これはほんとうに相当な決心をしてもらわなければいけません。私は私なりに持っておる材料はありますけれども、この材料はきょうは出してあなたと問答しようと思いません。あなたが検事総長からいろいろの点を聞かれて報告になりますその町分は、もっと常識的な材料が世上に出ると思いまするので、そのときのことにいたしまするけれども、きわめて重要なところまで波及する可能性もあるものと私は信じております。従って、あなたの方の検察庁が持っておる証拠物件につきましても、これはやはり十分に捜査資料にしてもらわにゃならぬと思いまするとともに、このような重要性がありまするので、あなたの方は横車総長からの報告を当委員会報告せられるときには、できるだけその疑惑を解くとともに、重要な、政局の運命にもかかわっていくような関係にあることも考慮せられまして、しかしそれは独立した法務大臣のお立場から、一つ十分に関係事項を聴取してもらう、そしてできるだけこれを当委員会にも明らかにしてもらうようにぜひしてもらいたいと思います。これを一つぜひお願いしておきたいのであります。それから、もう一つの点でありまするが、たとえば外国へ旅行するときのせんべつに名を借りましていろいろ出すような金、あるいは顧問料とかいうようなもので受け取る金、こういうものがありとしまするならば、そのような点につきましても、あなたの方は、できるだけ、国会関係におきましてはわれわれの疑惑を解くという意味におきまして、資料として十分な見解も一つ明らかにしておいてもらいたいと思うのであります。これらのことをめぐりまして、私はあなたの次の機会を待ちまするが、検事総長に対しまして相当具体的なものをぜひとも報告せしめて、そうして当委員会に向ってこれを明らかにしてもらうということを強く要請したいのであります。その点につきまして、事の重要性にかんがみまして、あなたの御決意をはっきりとしておいていただきたいと思います。
  35. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 先ほども申し上げました通り、御報告いたすつもりでおります。ただし、私の申し上げまするまでもなく、事件捜査中でございますから、その関係においては申し上げない点もある、つまり御報告申し上げることに限度があるということだけはあらかじめ御承知おきを願いたいと思います。
  36. 三田村武夫

    三田委員長 佐竹晴記君。
  37. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 ただいま吉田委員よりいろいろお尋ね申し上げましたが、私は、報告さえも受けていないということでありまするのでこの際あまり多くを申し上げることは差し控えましょう。ただし、先ほど法務大臣のお答えには、大臣検察当局を信頼してその推移を見る、こういうお話でありますが、果してそれだけで法務大臣としての職責を十分尽しておるものと言えるであろうかどうか、私は一つの疑問を持たざるを得ないのであります。ただいまお述べになった通り、本件は東京地方検察庁がその捜査の衝に当っておる、その上には最高検があり検事総長が控えておることはその通りであります。しかし、検事総長はあなたの監督に服しておることも間違いございません。ところが、その監督を受ける検察当局が、議員逮捕する段階に至っている旨を、これはおそらく漏らしたものでありましょう。漏らさなければ新聞に出るわけはありません。議員逮捕する段階にある旨を捜査当局が漏らしたじゃありませんか。しこうして新聞にでかでかと書かれておる。部下の行動によって天下にすでに周知されておるが、監督者には一言の報告もないということで、それでも報告があるまでその推移を待ちましょうといって拱手傍観をしておることが、いわゆる監督者としての責任を尽しておるものと言えるかどうか、この点を伺っておきたいと思います。
  38. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 なるほど、お話通り法務大臣検事総長を通じて全検察陣へ指図をすることができるようになっておりまするけれども、個々の事件については検事総長以外の者に指図してはならぬという規定もありまする通り、この法務大路と検察当局との関係というものは非常に私は微妙であると考えておるわけでございます。その意味におきまして、今度の事件をとつてみますると、今日までの段階におきまして、私が指図をいたしませんでも、十分検事総長以下の考え方によって捜査の実をあげ得ると考えておるわけでございます。  なお、新聞紙に掲載されましたことにつきましては、これは真相はよくわかっておりません。あるいは新聞社が独自の材料、独自の勘によりましてお書きになる場合もございましょうし、あるいは私どもの方としてのあやまちで検察当局から漏洩したという場合もまたなきにしもあらずでありますが、今度はどういうことで新聞が掲載することになりましたか、私は存じておりません。もし検察責任者の側から漏れているというようなことでありましたならば、これは将来ともいましめねばならぬ、かように考えております。
  39. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 個々の事件についてあなたがかれこれと常に指図をすべきでないことは、これはもとよりその通りでありましょう。しかし、非常に重大なる事件については必ず上長官に報告をするように、そうしてさらに法務省へもそのことを報告し、かつ法務省は常にその処理方について協議にあずかっておりますることはもちろんであります。それは監督権を有するがためであります。しこうして、さきの検察庁法十四条により某政党の最高幹部に対し逮捕状を出すことは延期せよというのは、これは個々の事件に対して個々の指揮権を発動したものであります。その指揮権発動は、個々の事件に対して権利を持っていること、あなた自身が先ほどからよく御説明通りであります。かくのごとく最も重要なる事件について、ことに議員逮捕するといったような段階に至る案件については、少くともこれを報告を受け、その逮捕の適否、その起訴、不起訴政界に及ぼす状況等については、法務大臣として考察をすべきはけだし当然のことであると言わなければなりません。前に検察庁法十四条を発動して逮捕を延期なされたのもそのゆえであろうと考えます。かくのごとき案件についてすでに新聞にでかでかと書かれ、これが公知の事実になっておるのにかかわらず、吉田君の言葉じゃありませんが、知らぬは亭主ばかりなりとあっては、それは主人公の責任が尽きておるものとは私は申されません。事こういう段階に至りましては、単に弁解これ努むることなくして、進んで報告を求められると同時に、この案件についてはもっと積極的な態度をもって監督権を御行使なさる御意思はございませんか。私はただこの一言だけを聞いておきます。
  40. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 先ほどもたびたび申し上げました通り、この案件につきましては、十分検察当局に申しまして、徹底的に捜査の手を進めて、事の真偽を明らかにしたいと考えております。
  41. 小島徹三

    ○小島委員 先ほどの吉田委員質問の中に、この法務委員会には以前顕職についておった者、たとえば検卒総長であるとかその他相当の顕職についた者がおる、そういう連中が場合によれはこの問題と含まれておって、そのために政局に影響するというようなことがあるかもしれぬという言葉があったのでございますが、そういうことは、ややもすると、それがどういう人かということはすぐわかるわけでございまして、個人々々をさして予断をもって非難することになると思いますから、そういう言葉については取り消していただきたいと思います。
  42. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 私は取り消す必要はないと思います。法務委員の中には法務行政上重要な役職についておられた方があるわけであります。それは事実であります。これは小島君も御承知通りであります。そこで、法務委員が数名とか本数名とかいうものが疑惑の中に包まれておる。かような重要な役職の方もあるのでありますから、――だれがどうということはそれはわかりません。わかりませんけれども、そういうこの委員会でありまするから、委員会性質上、構成メンバーの経歴、閲歴の重要な方等々からいたしまして、国民が当委員会を信頼しないということにでもなるようなことになりましたならば、それは委員会だけの問題ではありません。国会の問題あるいは政府の問題等に波及することは私は必至だと思います。だから、そういう意味において、国会が信頼を失うということになれば、当然これは政局に影響することは、これは当りまえであります。でありますので、そういう意味において申し上げておるのでありますから、当委員会が全部潔癖ならんことをこいねがうのあまり申し上げておるのでありますから、どうぞ誤解のないようにしてもらいたい。
  43. 小島徹三

    ○小島委員 私の申し上げたのはそうではないのでありまして、お言葉のうちに、言葉として、どうもそういう人をさして、これらがこの問題に含まれておるのではないかという言葉のように聞えましたから、私はそう申し上げたのであって、法務委員会の中にそういう方がおられるということは事実でございますから、法務委員会全体としてのお話をしておられるのならば私は何も申し上げませんが、もしそういうことではないということでございましたならば、しかるべく委員長において訂正していただきたいと思います。
  44. 三田村武夫

    三田委員長 吉田君に申し上げますが、小島委員の申されたことは、吉田委員の御発言の中に、吉田委員発言経過として、何か疑惑に包まれておる中に前検事総長とかなんとかいう人があるやに小島委員は聞かれたんですね。そういう意味の小島委員の御発言でありますから、そういうふうに速記録がなっておるならば、小島委員の御発言まことにごもっともだと思います。これは速記録を十分調べますが、ただいまの吉田委員の御発言委員長はこういうふうに伺いました。当委員会の構成は検事総長をした人もあり、また法務大臣をした前歴者もいる、そういう意味から、もし委員会そのものが疑惑のうちに包まれるとするならば、事きわめて重大である、ひいては大きな政治問題にもなる可能性がある、であるから十分徹底的な捜査を要望する、こういう御発言でありますか。
  45. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 その通りです。
  46. 三田村武夫

    三田委員長 それならば異議はない、小島君の御発言もそのようでございますから、そのように一つ委員長も了承いたします。御了承願いたいと思います。
  47. 竹内壽平

    竹内説明員 先ほど吉田委員から冒頭に御質疑がありました二十六国会終了後において起訴された国会議員は何名あるかという点、並びに容疑者として取調べを受けたのは何人あるかという点につきましての調査の結果を御報告いたしたいと思います。  今年六月以降九月までの四カ月間に国会議員起訴を受けました者の数は六名に上っております。容疑者が何人あるかという点につきましては、これは単に参考人である場合もありまして、集計の資料を持っておりませんので、お答えできないのでございます。
  48. 三田村武夫

    三田委員長 それでは引き続いて人権問題に対する調査を進めます。田中幾三郎君。
  49. 田中幾三郎

    ○田中(幾)委員 私は、和歌山市の公安調査庁の役人が労働組合組合員に対してスパイを強要したという事件をめぐって、破防法の解釈並びに運用あるいは暴力主義的破壊活動団体に対する政府の措置等について御質問申し上げたいと思うのでありますが、私ども調査したところによりまして事実をきわめて簡単に申し上げておきます。  昭和三十二年、ことしの八月二十日に、全日本自由労働組合和歌山分会の執行委員の小野田勝康という者が道路を歩いておりますと、見知らぬ人から呼びかけられて、そこらでお茶か御飯でも一緒にして下さいという依頼を受けたるに始まって、お菓子や食事のごちそうを受けた。そのときに、自分の仕事に協力してくれないかということで、君には経済上のこともあるし、また妹がほかに勤務をしておる、それらの将来のこともあるから、ぜひ自分の仕事に協力してもらいたい、こういうことを頼み込んだのであります。続いて二回目の会見のときには、別れるときに千円の金を封筒に包んで、これを持っていってくれということで、断わるのを無理にポケットに押し込んで行った。これがきわめて簡単な事件の概要であります。  このことは和歌山市で非常に問題になりまして、二回目の会見を知ったほかの労働組合員は非常に激高いたしまして、この公安調査庁の本人を和歌山の西警察署に任意同行いたしまして、職権乱用罪、脅迫罪で告発をいたしたのであります。さらに、この公安調査庁の役人というのは、自分は太田という者だと言って氏名を詐称いたしましてこの行動に移ったのでありますが、後によく調べてみますと、和歌山地方公安調査局の第一課係長の本田幾松ということが判明をいたしました。  これは単に一つの事実でありますけれども、これに類似のケースが全国にあるやに承わっておりますし、この事実がほんとうであるとするならば、破防法制定当時に非常に憂慮されました、破防法の第二条、「公共の安全の確保のために必要な最小限度においてのみ適用」するという条項、第三条の「いやしくも権限を逸脱して、思想、信教、集会、結社、表現及び学問の自由並びに勤労者の団結し、及び団体行動をする権利その他日本国憲法の保障する国民の自由と権利を、不当に制限する」行為をやってはならないという、制定当時非常に憂慮された事態が、今やこの事件をめぐって実現しておるものと私は存ずるのであります。従いまして、こういうことが各地に行われまするならば、労働者の権利も国民の自由もあるいは思想も非常に制限されるという、憲法の趣旨をじゅうりんすることが官庁の権力によって行われていくであろうということをわれわれはおそれるのであります。  この事実に基きまして私は質問をいたしたいのでありますが、これらの点につきましてはまた後にお伺いをいたすといたしまして、まず前提といたしまして、一体破防法にいう暴力主義的破壊活動団体というのは何が対象であるか、労働組合はこの対象でなかったことは制定当時の記録にも明らかであります。本件によりますと、これは全日本自由労働組合の幹部であります。でありまするから、一体政府は、この取締りの対象としておるところの団体はいかなる団体であり、また現在どういう団体を対象として取り締っているのであるかということをまずお伺いいたしたいと思います。
  50. 関之

    ○関説明員 お答えをいたします。破防法によりまして破壊的容疑団体として破防法の所定の条件に該当するのではないかという疑いをもって私どもが調べているのは日本共産党なのであります。もちろん、ただいま田中委員の御指摘になりました労働組合のごときは全然考えておりません。また考えられもいたしません。
  51. 田中幾三郎

    ○田中(幾)委員 それでは、今までにこの法律の規定によって解散を命じた団体もしくは処分をした団体がありましたならば承わっておきたいと思います。
  52. 関之

    ○関説明員 今日まで、――公安調査庁長官におきまして公安審査委員会に処分を請求する、そうすると公安審査委員会においてこれを決定する、こういうことになるのでありまして、その関係におきましては、処分の請求をいたした事件は一件もありません。
  53. 田中幾三郎

    ○田中(幾)委員 それでは、今日まで、昭和二十六年法律制定以来何もこれに該当する団体かなかった、処分をしたものはないということですが、そうしますと、この法律はできてもずっと眠っておったということになりますか。
  54. 関之

    ○関説明員 そうではありません。破防法に該当する容疑の団体につきましては、公安調査庁が訓育いたさなければならないのであります。処分を請求するかいなかはいろいろな角度から考属すべき別個の問題でありまして、今申し上げたように、日本共産党は当面の破防法に該当する容疑の団体といたしまして調査をしているわけであります。すなわち、この調査活動というのは破防法に基く調査活動なのでありまして、決して眠っているのではないのでありまして、大いに調査の面において働いている、こういうことに相なるのであります。
  55. 田中幾三郎

    ○田中(幾)委員 私はそこに疑問を持つのです。この調査権の発動または開始は一体いかなることがあった場合に活動開始をするのであるか、設置法の第八条によりますと、御承知通り第一部の職権が掲げられております。第九条には公安調査庁第二部の職権が規定してあるのであります。それを見ますと、調査第一部においては「法第四条第一項第一号に掲げる暴力主義的破壊活動を行った団体に関する調査に関する事務」、こういうふうに掲げられております。第九条も同じことを規定してあるのであります。それから、破防法二十七条によれば、公安調査官の権利といいますか義務といいますか、それは、「法律による規制に関し、第三条に規定する基準の範囲内において、必要な調査をすることができる。」、これは調査範囲を制限してあるだけだと私は思う。そこで、今の第八条によりますと、破壊活動が現実に行われて初めて破壊活動というものが既遂になる。その破壊活動が行われた後においてこの事件調査するということが起っていくのであって、あなたのおっしゃるように、破壊活動も何もないのに事前にこれを調査するというようなことができるのかどうか。これは私は、この破防法のやはり最初にこのことを憂えて、破壊活動が起った後にこれを処分し規制するために調査するならいいけれども、ただそういう疑いがあるからということたけによって調査を開始されたのでは、やはり自由、人権というものに制限を加えることになりはしないかという心配があるから、この破防法の三条、三条は念入りに規定をした。ですから、一体破防法にいう調査権の発動または開始は、あなたののおっしゃるようなふうに、予備的調査のようなことをやっていいのでありますかどうか。もしやってよければ、法的な根拠はどこにありますか。
  56. 関之

    ○関説明員 公安調査庁の調査官の持つ調査権限の基礎は、これは破防法第二十七条によるものであると考えます。そして、この設置法の方の問題は、条文によりましては多少妥当でないところもありましょうけれども、根本は、立案の経過からしまして、やはり二十七条がその基礎であるというふうに私どもは考えておるわけであります。そこで、二十七条の解釈になりますが、これは私もこの法律の制定に関係いたしまして、長い国会の論議をここで繰り返して御説明申し上げるような結果になりますが、結論だけ申し上げますと、二十七条は、要するに公安調査官はこの法律による規制に関し必要な調査をすることができる、要するに、問題は、「規制に関し」ということが問題になるわけであります。「規制に関し」ということは、この法律の規制の考え方は、暴力主義的破壊活動が性格的になった団体を規制する、調査をする、こういうことになります。これは少し講釈めいて恐縮でありますが、ある特定の団体がここにありまして、これが暴力主義的破壊活動をして、長く継続または反復してそれをやる可能性がある、こういうときに公安調査庁長官は処分を請求をするわけであります。そして規制に関する調査というのは、要するにそれらのことは委員会からさらに行政訴訟として裁判所に係属することに相なるわけであります。そうしますと、委員会審査ないし訴訟において必要とされるような事態は、全部公安調査庁において調べなければならぬ。そうして、そういうことに発展するおそれがあるというように考えられることは、やはりこの法律に基いて調べられる。こういうふうに私どもは考えているわけであります。これらの点は国会の審議におきましても一つの最も重大な論議になった問題でありまして、それらの点は、私はそのように御説明申し上げまして、御審議を願い、国会の御議決と相なったわけであります。
  57. 田中幾三郎

    ○田中(幾)委員 もう一度今の点について、この二十七条ですが、二十七条で、第三条に規定する基準ですか、第三条には非常に基準の問題をむずかしく書いてある。その調査範囲をどこへ標準を置くかということの限度をきめたのがこの二十七条であって、私は、公安調査庁の調査権の発動ということは、やはり設置法の第八条により、行なったというこの具体的な事実の基礎がなければ、たといその標準の範囲において調査をやっても、調査権の発動はできないのだというふうに解釈しておるのですが、その点をもう一度伺いたい。
  58. 関之

    ○関説明員 これは実は一般の立法例にならった表現なのであります。あえて破防法独特のものではありません。各種の特殊の行政立法にありまして、何々に関し必要な調査をすることができるという、これが役所において調査ということができるという基本的な形になっているわけであります。そのような立法の形式において調査権の発動ができるということが一般の立法例に明らかになっておるわけであります。
  59. 田中幾三郎

    ○田中(幾)委員 そうすると、この規定は、具体的の破壊活動がなくても抽象的に規制に関し必要な調査ができる、こういうふうに御解釈になっておるわけでありますね。
  60. 関之

    ○関説明員 その抽象的、具体的のニュアンスがなかなかむずかしい問題であると私は思います。それだから、破防法四条に規定するような暴力主義的破壊活動、これは現実の実行行為と、そして中には予備、陰謀、教唆、扇動、さらにその前段階として内乱の正当性を主張した文書の配布というようなことが破壊活動になっておるわけであります。従って、そういうような現実的な行動に出るということをまず第一に調査する必要がある。それを頭から、そういうことを考えたり、あるいは思想の範囲の問題であるとか、そういうような段階では、これに対してそれを破壊容疑団体と規定して調査を正式にやるということは、どうも思想の自由の問題でむずかしい問題がある。現実に何らかの団体があって、そのように現実的な行動に出る明らかな徴候が出てきておるということが調査権を発動させる第一の前提であると考えております。
  61. 田中幾三郎

    ○田中(幾)委員 そうしますと、二十七条の調査を開始するということは、刑事訴訟法の百八十九条、すなわち犯人及び証拠の捜査とは追うのですか同じですか。
  62. 関之

    ○関説明員 刑訴の考え方は、何がしかの犯罪が既遂になる、行われたということが前提だろうと思います。そこで、破防法の考え方では、大体それに近い考え方で、ある団体があって、何がしかの現実的な行動に出たということが、やはりその団体を破壊容疑団体として認めるということの一番の根拠になるということは間違いのないところだと思っております。
  63. 田中幾三郎

    ○田中(幾)委員 そうしますと、この破防法においては、ただいま申しました通り、設置法による第八条の具体的現実的に暴力主義的破壊活動があったというときに、この刑事訴訟法の捜査にかわるに、その基準の範囲において必要な調査ということでよいのですか。捜査というものはまた別にやるのですか。
  64. 関之

    ○関説明員 この設置法の規定は、これらの破防法の実体的な問題を規定した規定の各種の権限を、どこにどういうふうに配属させるかという点を主として規定したものでありまして、その規定の条件であるとか内容等の問題については、やはり破防法に基いて解釈すべきものであるというふうに考えております。これは破防法と設置法との関係のみならず一般行政立法がやはりそのようになっておるわけでありまして設置法でああいうふうに事務の配分配属というようなところを観点として考えておるわけであります。そこで、たとえばここにある「管理」というような言葉の解釈によりまして、そこらはいろいろな伸縮ある解釈をいたすことに相なるわけであります。  そこで、破防法においては、今申し上げたように、特定の団体があって、四条所定のような破壊活動に出た、そういうような何がしかの現実的な行動がそこに出てくると、破防法上の容疑対象団体として調べることができる、こういうふうに私は思っております。
  65. 田中幾三郎

    ○田中(幾)委員 そこで、話を具体的な問題に移して刑事川長にお尋ねいたしますが、今私の申し上げた事実、すなわち、きょうだいの将来の仕事にも影響する、協力しなければ地位も危ないぞということをもって、一種の畏怖心を起させて協力を求めた。それから、そのことのために現金の千円の金を提供したということですが、それで和歌山の検察庁に対して、破防法の四十五条、職権乱用の規定に基いて告訴をいたしてあります。それから、私どもも党の代表として調査に伺いましたときに、検事正にも会いまして、これはこういう緊急な事態で公安調査川に毎日抗議を申し込んでおる事態なんだ、ですから早くこの件については審理を進めてもらいたいということを要請して帰ってきておるわけであります。その後何かこれにつきまして御報告がありましたでしょうか、その点をお伺いいたしたいと思います。
  66. 竹内壽平

    竹内説明員 御指摘のような告訴、告発がありましたことの報告をいただいて知る程度でございました。この告訴、告発が実は二つ出ておるわけであります。御承知だと思いますが、一つは告訴、告発がまず司法警察職員になされて、司法警察職員の捜査の結果、事件が送致になっておるという事件、それと、直接検事正に対する告発があります。前者は内容は同一でございますけれども、罪名は、一つは刑法の規定を適用する、一つは破防法四十五条を適用するといったようなことになって、まずそういう事実の告訴、告発が出ておるということが、とりあえず大臣報告されておるのでございますが、事柄の性質上早い機会に処理をするということでございますので、近く結論を得ることと考えております。
  67. 田中幾三郎

    ○田中(幾)委員 刑事問題の告発の点は、これは法的にも事実のお調べを願わなければならぬし、また解釈についても範囲の問題についてもいろいろありましょうから、今ここで結論をすぐ出せと言っても無理でありましょうけれども、少くとも私の申しました事実は、つまり破防法の第二条、第三条、あれに違反したところの行為である。刑事問題として脅迫罪、職権乱用罪が成立するかしないかは別問題でありますけれども、少くとも行政的に見まして、ああいう行為は第二条、第三条の行き過ぎであろうというふうに私どもは考えて、実は局長に抗議を申し込みに行った。ところが、局長は門を閉ざしてちっとも会わないという事態を生じた。これは私ども非常に不都合であると思うのであります。そこで、国会議員がたとい職務でなくても、あることについての調査に行ったら、少くとも玄関をあけて面会すべきではないかと思うのですけれども、バリケードまで作、て、面会をする名刺を窓口からやりとりしなければならぬというような始末だった。これは刑務所なら金綱を隔てて面会をするけれども、公安調査局の局長ともあろう者が、金網で国会議員と名刺のやりとりをするというようなことは前代未聞であるということで帰ったわけであります。それはそれとして、今のこの問題は、私が申し上げました通り、刑事事件が成立するかどうかは別問題として、少くともこれは行き過ぎであるということに私ども考えておりますが、これについて公安調査庁なり法務大臣の御見解をお聞きしたい。
  68. 関之

    ○関説明員 田中委員さんの御指摘のような事実であるならば私もはなはだ遺憾であると思います。そこで、事実と経過の問題につきまして私の方から詳しく御説明申し上げまして、一応立ちらの言い分をよく聞いていただきまして、また御判断をいただきたい、このように実は思うのであります。  まず冒頭に申し上げますが、私どもがいわゆる全自労というものを破防法の容疑団体であるという考え方で調査するというようなことは全然ありません。これは破防法上の容疑団体に当るというようなことは考えられません。その点だけは十分御理解をいただきたいと思います。当面のところ、日本共産党以外、労働組合が当るなんということはとうてい考えられないのであります。その点だけは私どもの誠意を十分におくみ取りいただきたいのであります。私も破防法の立案に参加いたしました。その当時の国会の論議も十分承知いたしております。何が問題点であるかということも私は十分承知いたしております。その点をよく部下職員に指示いたしまして、およそ破防法に規定するような団体以外は、いわゆる破壊容疑団体として調べてはならない、こういうことは厳命を下してあるわけであります。五年たちまして、その思想は全庁に徹底しておると私は考えておるわけであります。  そこで、今田中委員が御指摘のような外形的事実はありました。私の方の本田という調査官が八月二十日に協力を依願して、全自労の中の小野田という組合員に二回ほど会いまして、最後の日に共産党員によって警察に連行された、こういう外形的事実はその通りであります。ところで、ここで若干御説明いたしたいのは、私どもの方の本田調査官がまず第一に小野田に会ったのは何の目的であるかということなんであります。全自分の和歌山分会の中には共産党の細胞があるわけであります。そうして小野田は実は党員であるという疑いは私の役所は持っておるわけであります。これはそれ相当の資料の上に築かれた疑いなのであります。そこで、破壊的容疑団体は、その組織構成員とその活動の全般についてこれを明らかにいたしたい、規制について調査する、そうでなければ委員会ないしは裁判所において十分な審判ができない、こういうことに相なりますから、今のような問題について活動の全般について調査するということに相なるわけであります。  なお、ここで私どもの苦心をおくみ取りいただきたいのは、最近京都その他の二、三の裁判所におきまして、破防法違反の刑事事件についてアメリカの裁判所がとっているところのいわゆる明白かつ現在的危険の原則を打ち出してきている。これは裁判所の御意見でありますから、われわれはその御要望にこたえるような調査をいたさなければならないのであります。まあ調査の外ワクは大体そんなところが今考えられるところであります。  そこで、本田調査官が小野田氏に依頼したのは、実はそこの中におけるところの共産党の勢力の伸張、その細胞の動き方がどんなことかということで情報をくれと言った。それ以外には他意はありません。実は、私は、この問題が非常に大きな問題になりまして、九月二日以降のことでありますが、責任ある係官を派遣いたしまして、本田氏等について厳重なる調査をいたしました。もし事実そんなようなことがあるならば、これは明らかに破防法の三条違反でもあろうし、脅迫罪になるかならないかは別問題としまして、私は田中委員と全く同意見であります。この全自労という労働組合を破壊的容疑団体として調べたかいなかという点を係官をして十分に調査いたしまして、その調査の結果により本人に念入りに質問したりいろいろいたしましたが、そんなことはありません、私はやはり本庁指示、局長指示の通りに破壊的容疑団体だけ調べ、その活動が自労組織内にあるか、その内容等を調べたい、そしてなお、本人は、第二回目の調査のときには明らかにそのことを言っております。共産党はどういうようなことをやっておるか情報をくれ、こういうふうに言っておるわけであります。というふうに本人は申し述べております。  そこで、全般的な問題といたしまして、私が今まで申し上げましたように、およそ今日のところ労働組合などを破防法の破壊的容疑団体として調べるというようなことは、これは条件が成立しておりません。四条の条件というのは、要するに内乱を起すということであるとか、あるいはいわゆる政治的な殺人であるとか、きわめて社会的に見て危険きわまる社会攪乱の行為でありまして、そういうものを現在の労働組合でするということはとうてい考えられません。また情報的にもありません。ない以上は破防法の破壊容疑団体と考えることはとうていできないのであります。その点だけはどうぞ私どもの善意を一つ御信頼いただきたいと私は思うのでございます。これが一点。要するに自労を調べたその意味はどこにあるかという問題なのであります。  第二点は、これは田中委員さんのお話によりますと、要するにおれに協力しなければ妹の就職にふためなことが起きるぞ、退職でもさしてやるぞというような脅迫めいた言辞がそこにあったのではないか、そういうことになって調査協力方をおどしてやった、こういうようなお言葉かと思いますが、どうもその点も私の方の調査によりますると非常に違っておるわけであります。もちろんこれは、本件におきまして、もしそのようなことがありますならば、これは破防法の三条違反はもとよりのこと、実は刑法上の問題が当然そこに考えられてくる問題だと思うのであります。そこで、大へんな問題と実は私も思いまして、係官にその点も厳重に調べてこい、どういうような問題であるかよく調べてこい、こう言ったのであります。ところが、小野田と私どもの本田との間のいわば水かけ論、こっちはこう言った、あっちはこう言ったというようなところに結局落ちつきますが、私ども調査官の申しますには、こういうことを言ったというのであります。調査官は、小野田は親がなくて、きょうだい三人で、小野田と三人はそれぞれ戸籍を異にしておる、そしてそれぞれ就職をしておる、こういう事実は一応大体のところはわかっておるのでございます。そこで、あるところへ一緒に来てもらって、話のついでとして、お母さんたちはどうなりましたとか、妹さんはおありですね、妹さんはどんな工合ですか、妹さんは就職されてけっこうですね、こういうような話はいたした、こういうふうに申しているわけでございます。それ以上進んで、私に協力しなければ妹の就職に不利益がくるであろうというようなことは、どういつでも出てこないのであります。それで、私は、両者の水かけ論的な言葉はどちらがほんとうか、小野田君が言ったことがほんとうか、あるいは私ども調査官が言ったことがほんとうか、これはすでに事件検察庁に係属しておりますから、その公正なるところの御判断のもとに私は従うつもりでありますが、ただ一点つけ加えて申し上げたい点は、どう考えても小野田と本田との間の対話でそういうことが出る自然さがない。話のついでといたしまして――協力を依頼する、一面識か二面識ですから、なかなか話が結びつかない、結びつかないからして、そこで家庭問題をいろいろ話をする。話を進める筋道としてそういうことがあるわけであります。その一つの筋道としてそういう話が出た。出てきたとすると、妹さんはどうですか、妹さんは就職されてけっこうですというような話が出たというふうに申しております。どうもその方が自然さがあって、本田調査官の言うことをそう一がいに私としては否定できないのであります。そういうことが私の方から申し上げたい点であります。さっき申上げたように、この点はすでに検察庁に先方から告訴告発されておりますから、いずれ司直的な御判断が下されるであろうが、もちろんこれに従いまして私どももまた考えてみるつもりなのであります。  次に千円札を封筒に入れて本人のポケットに入れたという問題なのであります。この点は確かに本田調査官が二日目の日に小野田氏のポケットの中に入れて、それを持って出ていったということであります。これは本田調査官は、二回も面識もないのにわざわざ来てくれた、そうして時間もつぶしたし、またそのときにお願いもし、将来の協力というような意味で、車賃その他もこめて差し上げた、こういうような意味合いに私は思うのでありまして、そういうような意味合いにおいてしたのでありまするからして、千円そこでやったということは、破防法の調合活動上において、そこには何も悪いことはないというふうに考えておるわけであります。  次に、太田と氏名を詐称した点を御指摘になりましたが、それもその通り、詐称といいましょうか、太田という名前を使っております。これは本田のペンネームであります。そこで、なぜそのようなことをするか。正々堂々と本人の名前を申す、これは一番常道で正しいやり方と私も思います。しかしながら、初めから公安調査調査官何がしと正々堂々と名乗っていきますれば、それだけで相手にならないわけであります。だから、最初のときは近づいて。そうしていろいろ向うにお話をしてその人間の協力を得るというような手段、道筋のため、必要やむを得ざる場合にペンネームなどを使用する、こういうことはあり得ることでありました、そういう意味合いにおいてやむを得ない一つの方法であろう、そういうふうに考えているわけであります。  以上のような次第でありまして、私は、派遣いたしました責任ある係官の報告を聞きまして、事実上の問題といんしまして、どうもこれは私の方の非は考えられない、私どもとしては、破防法のこれは正当なる調査権の範囲であって、そこに非はどうも考えられないではないかということが、ただいまの私の信ずるところなのであります。いずれ今のこれらの問題につきましては検察庁の御決定がありましょうから、それがありますれば、もちろんそれに服するわけでありますが、大体事実上の問題につきましては、そのように私は現地派遣の係官から報告を受けまして、なお念入りにそういうようなことを調べた結果、そういうことになるのであります。どうかそういうふうに私の方からは申し上げることができるという事実をいま一度御判断いただきましてお考えをいただきたい、このように存するのであります。
  69. 田中幾三郎

    ○田中(幾)委員 今の刑事問題は先ほど申しておる通りですが、しかし、今の点はきょうだいの勤め先もちゃんと知っていて協力してくれ、妹さんのこともあるしというようなことを暗に役人がほのめかしてやるということは、そのときの態度にもよりますれども、われわれの方は一種の脅迫であると解釈しておるので、これは検察庁にまかしますが、今の氏名詐称の点は、たといペンネームであってもどうであっても、これがもし調査官のやる調査行為であったならば、三十四条に、「公安調査官は、職務を行うに当って、関係人から求められたときは、その身分を示す証票を呈示しなければならない。」、こういう規定がある。これはスパイを頼んだわけではありますが、しかし一種のこれは調査の段階だろうと思う。そのときに、何べんも、名前も打ち明けて下さい、身分を打ち明けて下さいと言っても、顔なじみであったかもしれぬけれども、この法規によるところの正当な手続をとっていない。かりに私の方が譲って、そういう脅迫がましいことがなかった、ただ依頼を受けたということにしても、調査官の調査活動のうちに、一般の人を頼んでこれに協力させるというようなことは、やはり調査官の一種の行き過ぎである。刑事罰になるならぬは別問題として、これは行き過ぎである。しかも、どこから出たか知りませんけれども、千円という金をつかまして、そしてそういう秘密行動をとらせるということは、秘密警察の復活である。こんなことをやられておったのでは一般の国民は安心しておれません。いつどこで呼びとめられてどういうことをされるかわからぬということになる。こういうことがあるから、この問題の破防法の成立のときにはこの点が非常に問題になっておったわけです。ですから、その点は、あなたの方は、もしかりに刑事上の責任はないとしても、この本田君のとった行為というものに対しては、これは正当な行為と認めますか。今の証票、身分の証明を出すこと、金を出すことも合せて、少くとも正当な行為と言えますかどうか。
  70. 関之

    ○関説明員 私は、この具体的なケースに現われた行為は破防法上やはり認められる範囲である、こういうふうに考えております。特に今御指摘になりました証票呈示の問題でありますが、これはなるほどそういうふうにそこに規定が書かれてありまして、請求があれば出さなければなりませんが、それは接触の過程のいずれかの段階においては結局身分を明らかにし、そしてやることに相なると思いますから、その場合においてそういうような要件を満たせばよろしいと考えます。いわば接触して協力を得るかいなかの予備的な瀬踏み的な段階がそこにあるのでありますから、そのような場合には、今申し上げたような、初めから堂々とやると警戒せられてなかなか会えないという場合には、やはり必要やむを得ないものとして瀬踏み的な段階においては一応認めざるを得ない、こういうふうに考えております。
  71. 田中幾三郎

    ○田中(幾)委員 それでは身分証明を出すと出さないとは調査官の任意でいいというわけですか。必要的条項ではないというわけですか。
  72. 関之

    ○関説明員 これはもちろん調査官に対する義務として規定されているわけであります。義務として規定されておりますが、たとえばこれを出すと断わられるというような心配があるとか、いろいろな場合におきましては、その間において若干の酌量があり得る、こういうふうに考えております。
  73. 田中幾三郎

    ○田中(幾)委員 それではちょっと観点を変えて伺いますが、公安調査庁の三十二年度三十一年度の予算は幾らか、その内容を大ざっぱな項目でよろしいから一つ……。
  74. 関之

    ○関説明員 三十一年度を申し上げます。人件費が五億二千万円、旅費が六千百万円、庁費が五千三百万円、調査活動費が一億九千万円、あとの数はこまかいですから削ります。昭和三十三年度は、人件費が五億七千万円、旅費が六千百万円、庁費が五千二百万円、調査活動費が三億一千万円と相なっております。
  75. 田中幾三郎

    ○田中(幾)委員 そうすると、この人件費だけをとってみましても一億七千万円、それに対して調査活動費というものは三億ぐらい。これは機密費を含んでいるのですか。
  76. 関之

    ○関説明員 今日は機密費というものがございません。すべてこれは調査活動費、公安調査官の調査の活動に要する費用ということに相なっておるわけでございます。
  77. 田中幾三郎

    ○田中(幾)委員 そうしますと、先ほどの本田君が渡した千円の金のようなものも、これは調査活動費のうちへ入っているのですか。
  78. 関之

    ○関説明員 さようでございます。
  79. 田中幾三郎

    ○田中(幾)委員 これは非常に奇怪千万だと思うのです。内容は一種の機密費だろうと思うのです。ただ人をたのんで来てもらって相談にあずかったからというので千円も二十円もポケットに入れて渡すというような、受け取りの取れないような金をこのうちから出しておるということは、私は非常に不明朗だと思う。こういうものがあるから行き過ぎの調査活動になると私は思う。これはもう少し実態を明らかにしてもらわないと、この調査活動費というものはふえればふえるほど今のような行為がだんだんできてきて、国民の自由なり権利というものが非常に制限されていくだろうと私は思う。その点承わったから、またよく私の方で検討いたしまして申し上げますが、今のような受け取りも取れないような金を出して、そうして正当でない調査活動費に流れておるということは、私は納得できません。  それから、ただいまの具体的の問題は、あなたの方では、刑事の問題としては検察庁にまかせてある、それから、本田のやった行為については別に不当でないというふうな御主張でありますけれども、私どもは、これは非常な行き過ぎである、かように考えておるわけでありまして、なおここに現地の衆議院議員もおりますけれども、現地におきましてもなおその後調査もしておりますから、われわれもその調査報告を聞いてもう一度検討してみたいと思います。  そこで、法務大臣に破防法そのものについて一つお伺いしたいのですが、破防法の成立当時の事情はよく御存じだろうと思いますが、木村国務大臣の趣旨の説明をここで反覆いたしますと、「現下国内の治安状況を顧みまするに、御承知のごとく、あるいは集団暴力により、またあるいはゲリラ戦法により警察及び税務署等を襲撃して、放火、殺傷等の犯罪をあえてする暴力主義的破壊活動が、ひんぴんとして各地に行われておるのであります。しかも、これらの破壊活動の背後には、憲法及びそのもとに成立した政府を武装暴動によって転覆することの正当性を主張し、またはその準備的訓練として暴力の行使を扇動する不穏な文書が組織的に配布されているのであります。」かように説明されておるのでありまして、しかも当時をいわゆる非常事態と見た人もあるのであります。しかし、あのときの速記録を見ますと、改進党の大西正男議員のごときも、果して現在は非常事態であるかどうかということを質問いたしまして、非常事態にあらずという結論を下されておる。それから、参議院におきまして修正案が出ましたときには、修正案の説明に、「私どもは、ここに鑑みるところあり、国情安定に至るまで、この破防法を以て国家社会の安全弁たらしむる必要を認め、適切妥当なる修正を施し、その通過を念願する次第であります。そうでありますけれども、この法律は飽くまで過渡的暫定的措置法でありまするから、今日の社会不安が一掃せられたる際は、即時これを廃止すべきでありましょう。」、かように述べておるのであります。そこで、法務大臣は、この法律ができてから一つも解散されたような暴力主義的活動を行なった体もないし、その他の規制を受けた団体もない、いわば予備的審査のようなことをやったということを今公安調査庁も申されましたけれども、しかしほんとうにこの法律の通用によって規制されたところの具体的な破壊活動の動きがないのでありますし、しかも、この成立の当時におきましては、ただいま私の申しましたようなことでそういう事態に至らないときにはこれはすぐに廃止すべきであるということすら国会において述べられておるのであります。でありますから、昭和二十七年にできてから実質的には眠れるがごとき法律でありますから、今日この破防法が制定された当時の情勢にかんがみましてこれを廃止する御意思はありますかどうか。
  80. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 ただいま、破防法は今日の情勢にかんがみてその必要がないからこれを廃止する意思があるかどうかというお尋ねでございました。私は、今日といえども破防法制定当時の不安はなお解消しておらないと考えておりまするから、これを廃止する意思はございません。
  81. 田中幾三郎

    ○田中(幾)委員 それでは、そういう破壊活動の具体的な動きがある、非常事態とまではいかぬでも、社会不安がなお残っておるということになりますならば、その具体的な事件一つお示しを願いたいと思います。
  82. 関之

    ○関説明員 破防法制定のときに、国会に提案理由として提出いたしましたのは、ただいまお読みの通りなのであります。当時の疑いといたしましては、日本共産党をバックとするある組織的な破壊的な活動、反乱、まあ申しますると、明らかに革命を意図する一つの動きがあったわけであります。これは一つの現実として私どもは認めなければならぬのであります。それが、諸般の国内、国際的な革命退潮期の戦術によって最近やや穏やかになりました。また、最近におきまして、日本共産党は綱領の問題をやや改正いたしまして、かっての綱領の暴力革命不可避論の立場に立っておったのを若干修正いたしたのであります。しかし、修正いたしたとはいいながら、基本的性格として、対象の出方いかんによって暴力革命を推進するもまたやむを得ないという考え方は、依然としてその本質に堅持していると考えざるを得ないのであります。このような状態と同時に、このほうはいたるところの国際共産主義の勢力というものを考えてみますると、やはりその危険性が存在しておる刻下では、なかなか安泰でないというのが私どもの考え方でございます。
  83. 三田村武夫

    三田委員長 辻原弘市君。
  84. 辻原弘市

    辻原委員 ただいま同僚の田中委員から提起されたスパイ強要事件に関する点につきまして、今田中さんから指摘されたのはスパイを強要したという本質的問題についてでありましたが、私は、この問題については、地元議員としてつぶさに当初からそれなりの調査もいたしましたし、事件の外貌について関係方面の意見も聴取いたしましたので、精細に承知いたしておるつもりでございます。その中で、この本質的問題を別にいたしましても、特にわれわれが看過できないのは、公安調査庁並びにそれらの職員のいわゆる行政公務員としてのあり方の問題であります。従って、われわれが当委員会事態を明らかにするについては、二つの問題、本質的なスパイ強要事件、いま一つは公務員としてのあり方、この点について言及しなければ相ならぬと思います。  そういう点から逐次質問をいたしたいのでありますが、おおよその点については今田中委員から指摘がありました。それらに対する関次長の御答弁ははなはだもってわれわれ了解するに足りません。しかも核心を突いておりません。もちろん非常にデリケートな問題がありますから、当事者でないあなたがここで答弁せられるということについては、むしろ私はある意味においては当を得ないと思うのであります。しかし、破防法の逆用に当る責任者であるあなた方の態度を明確にしておかなければ、全国的にかような問題が発生いたしますると、幾らここで言葉において正当づけたといたしましても、現実においてスパイ活動――思想なりあるいはその人の自由なる行動を阻害するという人権問題が派生してくることは事実であります。そういう点から事態はまことに重大であると考えます。まして、あなたはこの席上で、本田幾松なる調査官のとった行動を是認しております。これらのことが是認せられるとするならば、いかようなことであっても調査行為ということに名をかりて行い得ると思う。すなわち、あなたは繰り返して、破防法の運用に当ってそれが対象とするのは日本共産党の活動である、こう言われた。しかもまた、本田調査官に中央より係官を派遣して種々問い合わしたところによれば、あくまでも本田調査官は共産党の情報を入手するためにその協力を求めたということを言ったという。ところが、八月二十日に和歌山市に起きた――自由労組の組会員である小野田君を尾行して、酒食を供応し、金品を提供し、さらにはまた家庭についての事柄にまで波及をし、しかもそのきょうだいの一人は女子であります。これまた県庁に勤めている公務員であります。そういうことまで及んで調査活動をやったという事実、これが果して正当なる調査官の調査行為であると常識的に言えるであろうか。私はここに重大な問題があると思います。しかも小野田君は自由労働組合組合員であります。小野田君に会って言ったことはあなたも否定はせられまいと思います。自由労組の組合員である小野田君をつかまえて、よしこれが共産党員であるという容疑があろうとも、言っていることは、この夏における自由労組の夏期手当の問題をめぐってその情報の端緒をつかもうとしている。すなわち、市当局に対する交渉がかなり活発なものである、従って、そういうことはどういうところから起きたのか、それぞれの情報を知らせてもらいたいと言っていることは、これは明らかに労働組合としての自由労組の活動を調査している結果になる。とするならば、このような活発な行動が他の労働組合でもとられ、たまたまその労働組合の中に共産党員とおぼしき者もいる、――労働組合は政党に所属する自由を持っている者が組合を構成しているとするならば、ただ自由労組に限らず、国鉄労働組合であろうが、あるいは全逓の組合であろうが教員組合であろうが、いずれの場合においてもそれらの調査が可能であるということを前提にすると私は思う。そうして共産党ということに名をかりてそれらの労働組合の動きを探知することはきわめてやすい。こういうふうに判断せざるを得ないのであります。従って、労働組合対象とするそういう条件が破防法においては兵備しておらぬ、こうあなたはおっしゃるけれども、事実においてそれと同様のことが行われ、また行われる可能性を持っているということをあなたはお認めになりますか。これはいかがでありますか。
  85. 関之

    ○関説明員 辻原委員の御議論になるところは、私も、その通りのことが起るであろう、運用のいかんによっては起る可能性がないではないと思っております。これは破防法の立案の当時すでに問題になったところでありまして、特に参議院において著しくその点が論議されたわけであります。全然破壊的団体と関係のない団体の中にある、たとえば破壊的団体の細胞とか、いろいろのものを調べるときにどうするかという問題が、そのときの問題であったわけであります。しかし、その細胞その他破壊的団体の意図を受ける運動、破壊的団体がその中に勢力を拡張せんとする動き、これらは破防法によって破壊的団体の活動を明らかにする意味において調べなければならないわけでありますが、率直に申しまして、破防法運用の一番の苦心の存するところは実はその辺でありまして、私も辻原委員と同じような点について十分に今日まで考えて参りました。よくその点は職員にも指揮をいたし、あやまちのないようにいたしております。ただいま本田君が小野田君に言った言葉としてそういうようなことを言ったかどうか、私は具体的にまだ開いておりませんが、それも結局二日目に明らかに、自分は実は調査庁の者である、共産党のことを調べる、こういうことをはっきり言っておりまして、それとの関連において本田は考えたものであろうと私は考えておるわけです。
  86. 辻原弘市

    辻原委員 前段の、このような形における調査活動というものは、全般に労働組合の自由なる活動を調査することができるという点は、あなたもお認めになりました。そこで伺っておきたいのは、しかしながら、今回の本田調査官のとった行為というものは適法であり、また調査官あるいは公務員としての職務分限において誤まりがなかったとあなたは先ほどの田中委員質問に対して答弁をせられておる。ということは、現在において和歌山におけるこの種の問題にとどまらず、すでに全国各地に配置せられたる調査官が同様の方法でもって同様の活動を行なっておるということを、これは事実において裏書きするものじゃないかと思うのでありますが、現実にそういったような類似の調査活動を今日調査官が行うことを、いわゆる本庁におけるあなた方が認められておるのかどうか、その点はどういうふうになっておりますか。
  87. 関之

    ○関説明員 お尋ねの点は大へん重要な点でありますから、ちょっとお尋ねを返しますけれども、要するに、お尋の要旨は、労働組合などを破壊的団体とは無関係に私ども調査官がそういうことにカムフラージュして利用して調査しているかどうか、こういうことを本庁は認めているかどうか、こういうお尋ねでございますか。
  88. 辻原弘市

    辻原委員 そうです。
  89. 関之

    ○関説明員 絶対にさようなことはいたしません。調査ということは、要するに、外形的な行為と目的、まず第一に目的があるわけであります。目的は破防法二十七条によって規制に関し必要な調査、――規制に関し必要な調査ということは、破壊的団体の存否、その活動の全般ということになるわけであります。すでにそのことが私ども調査の基本の目的であり、その目的に沿って動き、いやしくもその目的を逸脱するようなことはあり得ない、こういうふうに私は考えております。
  90. 辻原弘市

    辻原委員 今あなたはないと断言せられたのでありますが、同様の事件がこの事件が起きた前後の八月二十一日にも起きているのであります。八月二十一日に――これは御承知のいわゆる原水爆禁止協議会が全国的に起党派的な形において設けられております。その和歌山市の事務局の職員である向井米一君に対して同様の情報提供を依頼しているという事実がやはりあるのであります。原水爆禁止協議会というものは直接に日本共産党というあなたがたのいわゆる団体でないことは明らかであります。しかも自由民主党に所属する県会議員も入っている。あるいは社会党に属するわれわれも入っている。ないしは共産党の方々も加わっておるのでありましょう。しかし、それらについて情報提供を依頼しているということは、やはり原水協それ自体の一つの行動というものを、その依願によって、――言葉は日本共産党のいわゆる党員の活動を云々ということにあるとあなた方は言われるかもしれませんけれども、しかし、実際問題としてはその当該の団体の行動を探知しようということになっているのであります。そういう事例がこの和歌山においてもすでに二件出ている。本田君の事件が表面化して初めて他にも類似の事件があるのではないかという若干の調査においてこのように判明してきているのであります。それから類推しますると、あなたが今絶対さようなことはありませんという断言についてはわれわれとしてはいささかそのまま受け取りがたい。このままにおいては了承しがたい点がある。これはおそらく今お聞きの同僚委員の方々も決して私が無理にこじつけて言っているのではないということを御了察願えると思う。いかがですか。
  91. 関之

    ○関説明員 絶対という言葉はあるいは少し妥当でないかもしれませんが、しかし、今の原水協の問題は、日本共産党がその団体に対して強力に働きかけ、これを通じてその影響下に何とか持ち来たそうということがあることは、疑わざるを得ない事実なのであります。こういうことは、破壊的活動、破壊的団体を調べるという意味において行なっておるのであります。
  92. 辻原弘市

    辻原委員 今の問題は私は非常に重要な問題であると思います。全国的に、あるいは世界的にも、たとえば私の選挙区の市においても、市当局が責任者であり、あらゆる人がそれに加わっている。それに共産党が強力に働きかけている、しかもそれが共産党の指導下にあるということの印象をにおわされたということは、これは非常な問題であろうと思う。そういうことならば、過般日本において行われた世界大会において与党の諸君あるいは政府の最高責任者である総理大臣がいかような理由でそのメッセージを送ったかということも問題だ。これは私はきわめて重大な発言だと思うので、法務大臣からそれについての見解を承わっておきたい。さようなことを軽々に公式の当委員会において、しかも現下のわが国の重要な問題になっておる原水爆禁止起動に対して公務員が水をさすがごとき発言をなしたということは、重要だと思う。法務大臣はどういうようにお考えになりますか。
  93. 関之

    ○関説明員 大臣の御答弁の前に私から私の説明をいま一度繰り返して申し上げたいと思います。私は、原水爆の団体がどういう団体であるとか、それからいろいろの者が参加しているとか、そういうことを言っておるのではありません。要するに、その団体に向って共産党が働きかけているということは否定できません。従って、それを調べるのは破防法による破壊的活動の全容を明らかにする意味において必要なのであります。
  94. 辻原弘市

    辻原委員 大臣の御答弁は、私がちょっと質問してからお願いいたしたいと思います。あなたがそのようなことを言うならば、関さん、よく考えてもらいたいと思う。原爆協議会であろうが、あるいは平和擁護委員会であろうが、あるいは国鉄労働組合であろうが、全逓労働組合であろうが、およそ政党であらゆる諸般の活動を行わないという政党はない。自由民主党であっても同じである。青年団体を組織して全青年に働きかける。それは自由民主党もやれば社会党もやるんだ。共産党もやるんだ。そういう論法をもってすれば、原水爆協議会のみならず、あらゆるものに対してその調査活動をその内容において行わなければならぬということになるのではないか。そのことは一体どうなんですか。
  95. 関之

    ○関説明員 実はお尋ねの点がやはり今日における最も重大な問題であろうと私ども思います。共産主義の活動というものが人間の全生活に浸透せんとし、また浸透していることも現実であります。そういたしますると、破防法第三条の線に沿って調べることはやむを得ざることだと思います。しからざれば破壊活動の防止はできません。
  96. 辻原弘市

    辻原委員 そこで、破防法の二十七条をあなたは非常に云々されるのであります。先ほど、和歌山の問題について、この二十七条の規制に関して必要な調査だと認めて、その規制の範囲内であるという形において調査権を発動した、こういうふうにおっしゃった。一般論としてのあなたの所論を承わりますると、これは破防法それ自体についてわれわれが以前に持っておったより以上の疑義または懸念された点が現実に起るという可能性、また現実に起っておるという事実をあなたの最後に開き直った言葉で私は痛切に感ずる。しかし、そういう一般論をここでいわゆる最高責任者でないあなたから承わってもいたし方ない。そのことは大臣からまたあとで御所見を承わりたい。問題は、和歌山の事件について、それ以外には絶対ないとあなたは言う。あとで絶対ないというのは取り消されましたけれども、ともかく、ないということを強調され、和歌山のこの自由労組の問題だけが特異な問題であるということを言われた。そういったような調査活動は他に数例はないのだとするならば、そのあえてないケースを破って調査しなければならぬ理由がそこに存在するわけです。その理由が、しかも二十七条でいう規制の範囲内であるということをあなたは言われた。とするならば、その規制の範囲内で特筆すべきいわゆる破壊活動の予備的行為、ないしは、あなたが先ほど田中委員に示された、そういう破壊活動がかつて起って、それが継続的にさらに企画されないしは陰謀されるか、さらに新たなる一つの予備行為というものを提起、企画しつつある、こういうような具体的な事実があったに違いないと私はあなたの言から判断する。そういう具体的な事実がありましたか。いかなる現実の具体的な事案をもってこの規制の範囲内において和歌山だけにそのことをやったということが言い得るか。従来からの私の調査においてはその点については何ら確証を得ることはできません。あなたから克明に承わりたい。
  97. 関之

    ○関説明員 私の御説明に対して辻原さんは少し誤解があるようでございますから、私の御説明をいま一度繰り返してみたいと思います。まず、和歌山の事例は公安調査官の調査活動として認められるか、これは私の方の責任者が行って調べてきたその事実をよく聞いてみると、その範囲ならばやはり適法であり、こっちに手落ちがない、この範囲ならば認められる、こういうふうに私は考えておるわけであります。それで、どうも辻原さんの今のお言葉は私にはわからないのですが、私がそういうことはないと言ったのは、私の方は、およそ破防法に基くのは、要するに破壊的団体の規制に関する調査しかできない、それ以外はできない、従って、たとえば自由労組とかあるいはほかの団体を破防法上の破壊容疑団体として調べるということは、とにかく五年間もたっておる今日、破防法の趣旨、性質もよく徹底しているから、調査官がそんなことを誤解してやっておるということは考えられない、あるいは個々の調査官に絶対ないとはちょっと言い切れない問題かもしれませんが、その点だけが実は調査官の調査のめどをきめる上においての今日までの最大の問題でありまして、われわれは口をすっぱくし、あらゆる方法を通じて、調査の目的がどこにあるか、それは破壊的団体の規制にある、規制に関する調査とはどういうことであるか、そういう点を何回も何回も、あるいは人を派し、あるいは文書により、さまざまな方法によって調査官に念を入れて教えてあるから、現在破防法上の破壊的容疑団体であるかどうかについてわからない者は全調査官においてはおよそ一人もいない、こう申しても差しつかえない、そういう意味のことを実は申し上げたわけであります。
  98. 辻原弘市

    辻原委員 その点が私はわからぬ。その点がおかしい。論理に矛盾があると私は指摘しているのです。というのは、私の承わり方が悪いのではなしに、あなたの受け取り方がおかしい。和歌山の自由労組の内部に対して調査活動をやったわけなのです。そしてそれが規制の範囲内だ、こうおっしゃる。二十七条にいういわゆる規制の範囲を逸脱しない調査官の調査活動であった、こう言われる。私が他にそういうことをやっておりませんかと言ったならば、あなたは、多少あいまいになりましたけれども、確率から言うとほとんどないという表現でしたでしょう。そこで私は疑問が起る。あなたの強調されていることは、共産党の容疑を持っておる、だからそれについては調査をやったんだ―。とするならば、自由労組というのは、あなた方が一つの自由労組というものに目を向けられているように私は判断したから、かりに一つの例として言うのですけれども、これは和歌山にも自由労組があれば奈良にも自由労組がありますし、大阪にも自由労組があります。さらにそれ以外にも各地にあります。失対事業を起しているところには全部あるはずです。とするならば、その程度の理由であるならば、あなた方の職務分限からいって、全部に対して行う必要が生じてくるのじゃないかと私は言うのです。むしろ私はあなた方の立場に立って言っている。そういう必要は他にはありませんということになれば、和歌山には一体具体的にはどういう事実がありましたかと私は聞いている。その点をお聞きしているのです。この二十七条の規制の範囲内でどうしても調査をやらなければならぬ特筆すべきような理由がどこに存在しておったかということを聞いておる。その点についてお答えを願いたい。
  99. 関之

    ○関説明員 これは破防法の構成のまた構成解釈になりまして大へん恐縮でございますが、御説明申し上げたいと思います。  破防法において破壊的団体と認め、そして破壊的容疑団体として調べる、こういうことはどういうことかと申しますと、破防法第四条の内乱の扇動であるとかあるいは政治的な殺人行為であるとかいうような、こういう危険な活動の実行行為をしたり、あるいはその以前の段階として予備、陰謀、教唆をやっておる、こういうことが暴力主義的破壊活動として規制されるわけであります。そこで、そのような行為をした団体がここにあった、そういたしますと、まず規制の第一の要件を満たすわけであります。破壊活動をした団体がそれを継続または反覆してかような行為を行う危険性がある、こういうような団体に対して調査官は調査するわけであります。そこで、現実の問題として、日本共産党は明らかに二十六、七年ごろ破壊活動をしたことがあるわけであります。そうしてその後においてその基本的な性格の変更なしと私は考えるわけであります。そうしますと、その後における一切の行動については、われわれはその破壊的容疑団体の活動の全般について知らなければならない。そういう考え方から、和歌山自由労組内における共産党の細胞活動を明らかにする必要がある。それがすなわち二十七条の規制に関し必要な調査と相なるわけであります。
  100. 辻原弘市

    辻原委員 そういうことはもう百もわかっている。あなたの言うのは、私がさっき言ったように一般原則なんです。日本共産党が、これは人によって違いますけれども、あなた方の言ういわゆる破防法の対象とする破壊活動のあれだということは、それはわかっておる。しかし、やったのは自由労組なんですよ。その中に党員があろうとなかろうと、その実体は自由労組の中を調査したわけです。自由労組の中の共産党の活動を調査した。だから、それを類推すると、共産党員の所属するのは和歌山の自由労組だけじゃないでしょう。またあなたがさっき言った、外から働きかけをやられている団体というものは、和歌山の自由労組だけじゃないでしょう。ないのに、なぜ和歌山だけをやったのか、こう言っているのです。和歌山だけをやる必要があるとして、あなた方もそれを是認するならば、その論法をもってするならば、他の、党員があり党細胞の活動が若干でも見受けられるところは、全部同様な手段をもってやっているのじゃないかという疑いを持つのです。それは一体どうなのかというのです。そうでないならば、もう少しこの自由党組の調査をやったことの具体的事実、――破防法四条にいういわゆる予備、陰謀か何か知りませんけれども、あるいは現実には破壊しているその事実が何かあれば、それは一つの理由でしょう。あなた方は職務分限を持っている。とするならば、それは一つの理由でしょう。だから、他にやっていないならば、特筆すべき和歌山のそういった具体的事実をあなた方の方であげることが当りまえじゃないか、こう申し上げておるのです。
  101. 関之

    ○関説明員 私の前の御説明で御質問の点は御理解いただけることと思うのであります。要するに、破壊的容疑団体の組織構成員とその活動の全体を調べる。そういたしますと、そのある特定な団体の中に破壊的団体の細胞などがあって活動しているということになると、それだけを調べる。ですから、和歌山だけの問題ではございません。それはあえて自治労だけの問題でもありません。あらゆるところに、もし共産党の活動が伸びていくならば調べる。あらゆるところに組織が伸びていけば、その限りにおいては調べる。これはやはり規制に関し必要な調査となるわけであります。
  102. 辻原弘市

    辻原委員 そうすると、私が最初お尋ねしたのとちょっと趣きが違ってくる。これはだんだん語るに落ちた感がある。やっておりませんかというと、最初は絶対にやっておりませんとおっしゃる。そうして、私が原水協の例をあげれば、絶対ということは言い過ぎであったとおっしゃる。それから、他に当然そういうことが起り得るだけの論理的な可能性を持っているじゃないかと言えば、共産党のあるところ至るところ調査を行う必要があると、だんだんなってくる。そういうことになりますと、結局あらゆるものを調査するということになるんです。そうですか。あらゆるものを調査できるのですか。それが労働組合や原水協、自由民主党の中に共産党員とおぼしき者が入ったとするならば、自由民主党も調査する、あるいは社会党の中に怪しき者があればそれを調べる、極端に言えば、あらゆるもの、あらゆる団体に対し調査できるのが今日の公安調査庁の調査官の職務権限である、こういうふうに私が断定してもいいですか。
  103. 関之

    ○関説明員 現実の問題といたしますれば、現実に共産党の組織などが伸びている団体は調べる、そういうものがない団体は調べない、こういうふうに申し上げれば簡単明瞭におわかりになると思います。
  104. 田中織之進

    ○田中(織)委員 関さん、それは非常に重大な答弁だと私は思うのです。ことしの五月十五日の外務委員会で、公安調査庁の藤井長官がいわゆるあなたの言われる共産党が働きかけておる団体として日中友好協会あるいは平和擁護委員会その他の団体も破防法の調査対象であるかのごとき言明をしたことが問題になりました際に、現在本委員会委員であります中村法務大臣が出られまして、藤井長官もまじえまして、いろいろこういう事態についての明確な答弁を最終的に明確にしておいた方がいいという立場で答弁を伺ったのが速記録に残っておるのです。破壊活動防止法、破防法を拡張解釈することは誤まりであり、共産党あるいは党員を何でも全部調べるというのはいけない、思想のいかんで調査対象とするのは行き過ぎであるということを中村法務大臣が過ぐる五月の十五日の同じこの衆議院外務委員会で答弁をされておるのです。また、あなたは、先ほど同僚田中幾三郎委員質問に対しまてやはり立法の趣旨から見てきわめて厳密な解釈をすべきであるという点を答弁されておったにもかかわらず、今辻原君の逆問的な質問に対して共産党員のあるところすべて調べるんだと言う。そういうことになれば、いわゆる破防法制定のときに厳に国会の意思として禁じておるところのきわめて拡張した解釈のもとに現実にあなた方が活動しているということになるので、これは私はきわめて重大な問題になると思うのですその点は少くとも五月の十五日に――その当時から次長であったかどうかわかりませんけれども、中村法務大臣は藤井長官以下公安調査庁との間に十分打ち合せされて国会で答弁されたものでございます。それと本質的に著しく違うような答弁を公安調査庁の一次長にすぎないあなたが今日答弁するということは、きわめて重大な問題だと私は思うのです。その点いかがですか。あなたは、あくまでその点についてあなたの――これは閉会中のことでもありますし、調査庁次長といっても、われわれはやはり従来の例から見て政府委興並みの取扱いをいたしておりますけれども、単なる説明員なんで、その点から見れば決定的な答弁は法務大臣から願わなければならぬことにもなるので、もしこのことが記録に残って出るということになると、政府の法解釈に対する見解が明らかに二途に出るということになって、私は国政運用の面から見ても適当でないと思うのですけれども、その点委員長の方でこの問題についての事態を明らかにすることの取扱いについても御配慮を同時にわずらわしたいと思います。
  105. 三田村武夫

    三田委員長 委員長から申し上げますが、先ほど来辻原委員質問に対する関次長の御答弁、それから今田中委員の御発言の中にもありましたが事人権に関する重要な問題でありますから、法務当局におかれても公安調査庁と十分御連絡、御検討の上、しかるべき機会に正しい――正しいというと語弊があるかもしれませんが、統一ある御見解、御方針を明らかにしていただきたいと思います。私はここで委員長席からずっと伺っておったのですが、関次長の御説明の中に言われる趣旨もわかります。辻原委員、また先ほどの田中委員の御質問の趣旨もよくわかるわけです。これは事務当局には事務当局としての主観というと語弊があるかもしれませんが、そういう立場があり、客観の中にわれわれが見る場合にはまた別な生きたものを扱う立場がありますから、その点事務当局の方でも十分御検討の上、法務大臣から一つ適当な時期に方針を明らかにしていただきたいと思います。
  106. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 ただいま委員長からのお言葉がございますから、その趣旨に沿うていずれ適当な機会に申し上げたいと思います。ただ一言私からも申し上げてみたいと思うのでございますが、この問題はあの和歌山県に起きた事件から起きた論議でございますが、これはだんだんお聞きの通り、当人であるところの本田調査官と小野田という方との申し分が違っております。そのために自然これに対するいろいろの御批評も違ってくるわけでございます。これはいずれ検察当局において厳正にまた公平に調べた結果が出ることと思いますが、もし田中さん、また辻原さんの仰せのような事実がございますれば、これは私どもの力といたしましてはもう将来とも戒めなければいけないことと考えております。ただ、事実が、見方が違っておりますものですから、今結論が出ないわけでございます。  それから、先ほど関次長の話で、共産党の勢力の及ぶところ至るところ調査することは自由であるというような意味にまであるいはおとりになったかもしれませんけれども、私ども常々話をしておって理解しておりますところによりますと、御承知のように共産党が一応の容疑団体になっております。この共産党は、党本来の使命に基いて、社会の各層、各団体、それが有力であればあるほど、りっぱな団体であればあるほどそれに触手を伸ばそうと試みておることもお認めをいただけるかと思うのでございます。そういたしますと、この容疑団体の活動を調査するということがこの公安調査庁に課せられた仕事でございますから、自然どうしても共産党の手の伸びていくところまで調査の手を伸ばさなければならぬという必要に迫られてくるのでありまして、法の解釈といたしましてもそれはやり得る、こういうような解釈を申し述べたようなわけでございます。ただ、いかに共産党の触手が伸びて参ったといいましても、全く共産党に緑のないいろいろの団体の内部のことについて共産党がどういう触手を伸ばしておるかというようなことを調べるのでございますから、これはよほど快しまなければならないし、よくよく必要がなければやってはならないし、また必要の限度を起えてはならぬ、こういうことは常々調査に当っている者に申し聞かしているわけでございまして、その点も先ほど関次長がるる申し述べた通りでございます。でありますから、理論をただ理論としてだけ解釈いたしますれば、その調査範囲も相当広く伸びますけれども、実際これをやりますときには十分な警戒を加えていかなければならぬということを常日ごろ申しつけているのでございますから、従いまして、他にはさような事件はあるまいと想像するのもそういうわけでございます。私はさように存じているのでございまして、ただいま委員長からの御注意もありましたから、いずれ適当な機会によく話し合いましてお答えをいたしたいと思っております。
  107. 辻原弘市

    辻原委員 今委員長のお計らいがありましたので、その点についての大臣所見をこの場において求めることはいたしません。しかし、委員長お話もありましたごとく、また大臣お話もありましたごとく、事人権に関し、また事は憲法に保障せられたるそれぞれの団体構成の権利、活動の自由、こういう問題に触れる実に深刻な問題でございます。従って、私どもが声を荒げてこの問題を追及いたすのもその点にあるのであります。ただ言葉の一時的な言い回しというようなことではなしに、百歩譲って、法律が制定され、それぞれの必要に応じての調査活動の権限が法律によって認められておるという現実に立って考えてみましても、その調査は万人が認める公正妥当なものでなければならぬということは、私は常識だと思うのです。万人が認める真の調査活動において、初めてそれが行き過ぎでなかったということになる。そういう一つの観点に立って私は今回のこの和歌山の事件を取り上げているのです。だから、酒食を供応し、偽名を用い、他に必要もないことを言って――このことは御本人同士の対決がなければ明らかにならないでありましょうけれども、しかしながら、その大部分は認めているのです。お金を千円渡したことも認めておる。われわれもお金を入れた封筒の写真まで持っている。しかも飲食店にいざなって酒を飲ましたということがあるのであります。そういうことがいわゆる公正妥当な範囲を逸脱せざる調査活動であると強弁されるならば、私はまた逆に伺いたくなるのです。どういう行為が逸脱した行為かと言いたくなる。どういう行為が破防法四十五条あるいは刑法によって定められたるものを逸脱した行為であり、職権乱用の行為であるかということを伺いたくなる。私どもの理解によりますれば、これは、国会の長い論議を通じ、しかもその後においても委員会においてしばしば、行き過ぎ是正、あるいは行き過ぎのないようにということの警告が行われております。しかも、今田中委員からの発言がありましたように、五月の委員会においても中村法相からはっきりとこの点についての言明があった。ところが、現実はさにあらずして、事件が表面に大きく出れば、いかなる行為もあたかも正当であるかのような御答弁をなさる。それでは、私どもは幾ら大臣が言明をなさっても、幾ら破防法にそのことを戒める規定が書かれようとも、それは何ら意味がないということを申し上げておる。せめて、法治国であるなら、法律において配慮をした条項が書かれ、重ねてそのことを戒めておる条文が法律の中にあるならば、私はもっと留意をされた取扱い方があろうと思う。そのことを私は今日指摘をしておる。これはおそらく大臣も同僚委員の各位もおよそこのことについては同感であろうと思う。大臣は、私が今申し上げましたようないわゆる調査活動の行為について、今私の申し上げたような事件について、何らか行き過ぎのあるようにお考えになりませんでしょうか。
  108. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 先ほども申し上げました通り、事実の異相について二つの見方がございますので、私どもの方で受けている報告によりますと、この程度のことはいたし方ないと考えておりますし、それから、先ほど来田中さん、辻原さんのお話のような事実でございますれば、これはまことに遺憾なことであったと考えるわけでございまして、さような事実がございますれば、これは行き過ぎであったと存ずるのでございます。しかし、すべて検察当局の今捜査にゆだねられておりますから、事実の真相はそれによって明らかになることと思うのでございます。
  109. 辻原弘市

    辻原委員 これはもちろん当事者から告発をせられている事件であります。その結審を待ってということをしばしば言われるのでありますが、私は、法律上の責任と同時に、かりにその法律の責めを負わなくてもいいという結審が出たとしても、これらの行為について看過することのできない幾つかの行き過ぎたるもの、法律の処罰に至らざるも行き過ぎたる行為であることを確信を持って言い得る。そういう意味合いにおいて、すべては法律の定めに従って裁判の結審を待ってという問題ではないと思います。かりにその責めを免れたといたしましても、当然、公安調査庁として世論に納得を与える調査活動をしてないとするならば、その調査活動を行なった調査書に対してはしかるべく処理をとることが行政上正しいやり方ではないか、こういう意味合いをこめて申し上げているわけであります。大臣も今お話になりましたが、われわれの申したことが事実であるとするならば行き過ぎであるとおっしゃる。もし行き過ぎであるという事実が判明いたしましたならば、あなたとしてはどういうような処断をおとりになる考えであるか、この点承わっておきたいと思います。
  110. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 ただいまのお話のように、両委員のおっしゃったような事実があったと判明いたしましたならば、これは適当に処置をして将来を戒めなければならぬと考えております。
  111. 三田村武夫

    三田委員長 ちょっと辻原委員に御相談申し上げますが、だいぶん時間がおそいので、実は小島徹三委員から発言の通告がありますので、もし長くなるようだったら暫時休憩いたしたいと思いますが……。
  112. 辻原弘市

    辻原委員 もう一問で終ります。  いろいろ具体的に入って関次長からも伺いたいのでありますが、委員長から御注意もありましたので、一問で終りたいと思います。終るということは本日終る意味でありまして、これは今後も継続していろいろ申し上げたいと思いますが、それは、同僚田中委員からも詳細にわたってそのことに触れられたと思いますが、私が冒頭に申しましたように、このスパイをやったという行為それ自体の以外に、本田幾松調査官、さらにその責任者である山本公安局長、これらの方々がこの事件発生以来とってこられた態度は、私は公務員として、また行政官庁として見のがすことはできないのであります。具体的なことは田中委員から指摘があるだろうと思います。私は、その中で、一当事者として実に慨嘆にたえなかったしかも和歌山市の私の地元においては心ある官庁がすべてその行為に対して児戯に類する行為であると笑っているのであります。そういうことでどうして世間から信頼を受け、世論から信頼を受けた形においてこの公安調査庁が存在できますか。私は国政にあずかる一人としてまことに慨嘆にたえなかったのであります。われわれ国会議員が、その紛争を見るに見かねて、何とか話し合いをすれば――今あなたがおっしゃった通りなんです、当事者の話を聞かなければわからない。われわれは片やの話を十分聞きました。しかし片やの公安調査庁の話並びに本田君自体の話を聞かなければわからぬから、お互いに誤解の点があれば十分話上合いをすればよかろうというあっせんの労を私はとった。それを何ぞや、ここに石井長官もおられますけれども、警察官を動員して窓を閉ざし、そうして鉄条網を張りめぐらし、――写真もありますよ。そうして、祝日でもないのに、七十二時間、今日に至るまでも日の丸の旗を掲げて、あたかも誇示するようにしておる。そういった態度でもってどうして調査局としての役目が果せますか。しかも、わが党における調査に対して、いんぎんな辞を尽して事前に打ち合せをやろうとしても、それを門前においてとびらをあけないで拒否するという事実、私はこういうことがもし公務員に許されるとするならば、民衆はだれもこういった官庁、こういった役所についての信頼感は持てない、ただいたずらに反感を助長するはかりだということのみを本日は申し上げておきます。それらの点についてもあなたの方で十分調査されることがよかろうと思います。以上でもって終ります。
  113. 三田村武夫

    三田委員長 田中織之進君。
  114. 田中織之進

    ○田中(織)委員 スパイ強要事件の問題は、人権の問題としてきわめて重要な問題でありますが、田中幾三郎委員並びに辻原委員からそれぞれ質問がありましたので、私はその点には触れませんが、ただいま最後に辻原委員指摘をいたしました行政官庁としての和歌山公安調査局の、本件が起りましてから現在に至るまでのあり方については、これでいいとお考えになっておるのかどうか。あなたの方は調査官を派遣せられたことと思うのでありますが、私はここに写真を持っております。実は私は八月の十八日から国会から派遣せられ、まして外国へ旅行して、和歌山へ帰ったのは今月の四日であります。四日新聞記者会見が終って、そうして党の事務所へ参ります道すがらでありますが、私県連会長をいたしておりますが、とにかく一ぺん会長見て下さい。――外国へ私参りますと、日本の公館は、やはり日本国の象徴でありますから、執務時間には日本の公館には日の丸の国旗は掲げております。また各官庁、学校等が国のいわゆる祝日、休日等に国旗を掲げることも事実です。私は数日前に和歌山に出発したのでありますが、この写真の通りに、本件が起りまして以来公安調査局が日の丸の旗を掲げておる。それはまあよろしいでしょう。ところが、それには有刺鉄条網を張っておる。しかも、九月の二日でありますが、ここにおられる田中幾三郎委員、田万廣文委員、いずれも法務委員会のレギュラーのメンバーであります。それにわが党の五島虎雄君あるいは加賀田進君等、労働組合に対する公安調査局の強要事件ということで社会労働委員会の諸君がまず党から実情調査に参ったのでありますが、そのときには、この写真にありますように、公安調査局の表玄関を閉ざしまして、そうして横のガラス戸をあけて、そうして首実験をする。そこでの問答は、この公安調査局の玄関の上にいわゆる聴音機をつけまして、中でそれを聞いているのです。そういう事態が今日まで続いておるのです。関さんが先ほど言われたように、いわゆるスパイ強要事件のために相当な責任がある調査官を現地へ派遣されて、調査官はその点はいやというほど見てきていると思うのです。少くとも正常なる執務状態ではないということは、ただいま辻原委員指摘したように各官庁が申しておるのです。それだけではありません。この公安調査局は、関さん御承知通り行政管理庁の出店である和歌山の行政監察局の建物の一部を借り受けておったものであります。事件の当日には、いわゆる県警外部の機動隊の出動を公安調査局が求めて、機動部隊も下都合だと思いますが、行政監察局には管理者がおるにもかかわらず、武装警官が無断で行政監察局をじゅうりんいたしまして、この公安調査局の面会に参りました者を、これは傷害問題も起っておるのでありますが、つまみ出したというような事態が起っておるのでありますが、そういう関係から、行政監察局に対して、同じ行政機関としての公安調査局のあり方が正常であったかどうかということについて、われわれは法の規定に基いて現在請願をいたしております。その請願に対して、沼本行政監察局長は、これは数日前私が回答を伺いに参ったのでありますが、請願はきわめて妥当なものとして行政監察局としては取り上げておる、しかもこれは正常な行政官庁の執務ではないという点から見て公安調査局に対して勧告するに値する事案であるということも言明されておるのであります。現在これは近畿の管区局長との間に協議をされており、中央の行政管理庁の方に指示を仰いでおる問題でありますが、少くとも行政機関は人民に奉仕する機関としていかにあるべきかという建前から、いわゆる人民の行政機関に対する苦情を受け付けるところの行政監察局としては、その苦情は当然であるということで取り上げるような事態になっておるのでありますが、この点は、関さんの関係で現地に参りました調査官が、和歌山の公安調査局の現状について、公安調査局の行政活動を進める上において正常なものであるか、何ら支障のないものであるかどうかということについてどういう報告をされたか、この際承わりたいと思います。
  115. 関之

    ○関説明員 お答えいたします。ただいま御指摘通り、私どもの和歌山公安調査局の現状ないしは非常に多くの抗議を受けた八月終りから九月初めの状態が少し異常であったということは、私も全くそのように思っております。それで実は、有刺鉄線、日の丸、あるいは特にこちらから行かれた田中さんその他の国会議員の皆さんにお会いしなかったというようなことについては、それには私も驚きました。どういうわけでそういうことが起きたのか、通常では考えられないことであったのであります。それで、それらの問題もありまして、実は直ちにその一日あと責任ある調査官を現地に派遣いたしまして調査いたしたわけでありますが、この和歌山は近畿の公安調査局の指揮を受けておりまして、近畿の局長も和歌山の局長も、そこにどういう理由があるのか、普通ではちょっと考えられないと申しており、私もそのように思っております。そこで、こちらの方の係官が現地に参りましていろいろと事情を聞いてみますと、次のような事情でそういうようなことになったのだと思うのであります。それは要するに、抗議とかいろいろな問題で百人、二百人、三百人と来るが、私の方の役所はきわめて小さいところで、たしか三十坪前後の役所で道に面しておる。そこで、早い話が、室内へ入ってこられた場合、そこには調査のいろいろな秘密の書類がたくさんあるので、そこらも危機に瀕しはしないか、あるいはそのほか何か、ごく小さいものでありますから、少しの人数で占拠されるというようなことが起りはしないか、こういうような現実的な危惧を抱いた。そういうふうに私の方の現地の者が情勢判断をいたしたということが、問題の根本であったというふうに知ることができたのであります。しからば、そういうようなことに私の方の者が情勢判断をいたすに至った経過でありますが、これはくどくどしくここで申し上げるまでもなく一十四日ごろまでは、ほとんど三十人前後調査局の中に入ってきまして、そこで、局長室は小さいのでありますから、いろいろな調査上の貴重な書類のある調査の事務室でもっていろいろ、交渉、討議をいたした。ところが、考えてみると、これは大へんな問題である、そういう事務室でもって三十人、四十人、いろいろ立場を違えた方々がお入りになって、そこでいろいろなことをやると、これは調査上いろいろな書類のいろいろな問題もあるから、これはできないということで、ここあたりから制限いたし出したのであります。私はやはり、交渉の大体の関係としては、あの小さい役所に三十人も四十人も入れることは大へんであるから、それ相当に数を制限してお目にかかる、こういう考え方をとるのは、これまた当然のことであると思うであります。それから二十六、七、八日と続きまして、二十九日に、例の、私の方から申しますと、入口のドアのガラスが破壊されて、そこでここに若干の建造物の損壊という事態が起きて、そして相当数の人が中に入った。こういう事態で、私どもの方のためにも、また相手方の抗議される方においてもまことに不慮の不幸なできごとであった。そういう事態が起きて参ったのであります。これは官庁に対する抗議の一つの事例としても希有な事例で、役所といたしましても、国民の皆様に対する立場におきまして、まことに悲しむべき一つのできごとであったのであります。そういうようなできごとが起きましたが、外部的な抗議とかあるいはその他の問題は少しも勢いを減らさない。どんどんふえる。あるいは百人が二百人になり、二百人が三百人になる。そういう事態に相なったのであります。そこで、その小さい役所の中に十人ばかりがおりまして、そして道ばたでやっている。これをどうするか。上司に対する責任から、役所が占拠されたりあるいは窓でもこわされて中に入られたら大へんなことになる。そういうような責任を果す意味で、これは何とかしなければならぬという意味合いで有刺鉄線を張ったというような経過のようであります。そこで、問題は、結局そういうような事態においてどうするかということに相なるのでありますが、その現地の責任者の考えの変化、どうしてそういうことをしたかという過程は実はそういうところにあるわけであります。そういうようなことが発展いたしまして、九月二日、こちらからわざわざ田中さん初め多くの代議士さんがおもむかれたにかかわらず、また二十九日と同じようなことになってはいけないというような心配から、あらかじめお会いできないということは御連絡申し上げましたが、そういうような事態になって、せっかくおいでになったのにお会いしなかったということになってしまったわけであります。そこで、問題は、現地の責任者がどうも大へんなことになるという危険性の判断が非常に過敏になりまして、それらの点が、そういうふうな御指摘を受けるように、申しわけないというか、あとから考えますと確かに考え過ぎたことがそこに起きまして、私ども、その点は、どうもあとから見れば、何もそれまでやる必要はないし、あるいはせっかくおいでになった田中さんその他の代議士さんにはお会いするのが当然である、お会いすべきであったというふうに考えておるわけであります。  まあ次第はそのような次第でありまして、どうぞその点は、そういうような次第で、非常に事態を危機に感じ過ぎたと申しましょうか、現地の者のそういう判断がしからしめたということで、今日から見ますれば、私ども十分に反省すべきいろいろなものがあるように考えておるのであります。
  116. 田中織之進

    ○田中(織)委員 そこで、関さん、どうでしょうか。問題は法務委員会で正式の問題として取り上げて、先ほど委員長からも法務大臣にも要請していただいて、本件についての法務省としてのさらに事実について――私は、やはり本省から見えたら、私らの方も和歌山県から二名の代議士を持っておる党の事務所でございます。少くとも本省から責任がある調査官が見えたら、自分たちの出店の言い分だけを聞くのではなくて、せめて私らの党本部にでもたずねられて、第三者がどういうふうに事態を見ているかということについての調査もやられることが、これは当然のことだと思うのです。そういう意味で、問題は、現実にこうして相当長時間にわたって、はなはだ政府関係あるいは同僚議員諸君には恐縮でありますけれども、また国会議員には恐縮でありますけれども、こうして問題が正式に国会の問題になったのでありますから、従って今後の話し合いの問題については正常な軌道に私は乗ることと思う。ことに、警察庁長官がおられるから私は申し上げるのではありませんけれども、和歌山の西警察署と目と鼻のところなんです。もし一朝不慮の事態が起るというようなことがありますれば電話一本で和歌山西署から警備を求めるということもきわめて可能な場合に、あたかも戦時状態にあるかのごとき状態で、国民から協力を求めなければならないし、しかも職務の性質から見てきわめて隠密性を要さなければならない役所が、何か異なる存在を示すような態度は、これは大臣がおられるわけでありまするが、一つ公安調査庁の首脳部としても、正常な執務状態に戻すようにさっそくせられることの方が、やはりあなた方が事態を真剣に考えているということになると思うのでありますが、まずその点についてのお考え、配慮がなされ得るかという点についてこの機会に――和歌山ではきょうの法務委員会がどういう成り行きになるかという点を、この事件について公安調査局をひいき目で見る人も、あるいは労働組合側をひいき目に見ている人たちも注目しているときですから、やはり国会で正式な問題になって取り上げて、真剣に調査が進むという段階になれば、やはり正常な状態に戻ったということが、行政機関としての権威を国民に理解してもらうためにも必要なことだと思うのですが、まずこの点についての何かの御処置をこの機会に明らかにしていただくわけには参りませんか。
  117. 関之

    ○関説明員 お尋ねの通り調査庁の有刺鉄線とかその他のものはやや正常からははずれております。そこで、もちろん正常な姿に適当な時期に戻すべきものであると思っております。善後措置を今までも考えて参りましたし、きょうのこの御討議の機会に一そう真剣にこの問題を考えていきたいと思っております。
  118. 田中織之進

    ○田中(織)委員 それから、自余の問題については、また次回に法務当局からの統一した破防法の運用についての御意見も伺うことにいたしますが、人権問題としてゆるがせにできない問題といたしまして、実は当の小野田君が最近あるメリヤス工場に、まだ正式のいわゆる雇員というわけではありませんが、常雇い的に実は仕事がきまったわけであります。ところが、毎日のように――公安調査局と職業安定所は目と鼻のところであります。ここからそこのトイレへ行くくらいの距離しかないのでありますが、そこへ、何者がなさるのか知りませんけれども、夜陰に乗じて――安定所に約千数百の登録失業者が集まるわけでありますがそこへ小野田君の個人中傷のビラが配られるのであります。私もよく調べてはおりませんけれども、彼は、戦前であるかどうか知りませんが、前科があるというようなこと、こういうようなビラが張られる関係から、せっかくある綿会社で常雇い的になにしたのでありますけれども、そういう人は使うわけろいかないということで、一たん断わられたわけなんです。それではこの問題のために気の毒だということで、私らの党の諸君や市会議員の諸君が心配をいたしまして、その経営者に理解をしていただいて、現在引き続いておるのでありますけれども、ビラを張ることは依然としてやまない。それで非常に私は残念だと思いますが、この問題が起って以来、和歌山の右翼団体、実際に団体員を持っておるかどうかわかりませんけれども、そういうものが、実は十月の一日でございますか、和歌山の市民会館で公安調査局を弁護した立場で、今度のスパイ強要事件ということで騒いでおるのは日本共産党のやり方だ、社会党も非難しておるわけであります。それから、労働組合の幹部あるいは私らの方の事務局において、これは名前を申し上げてよいと思いますけれども、盛んに半ば脅迫めいて、公安調査局との間の話をつけろという意味の申し入れがひんぴんとして続いておるのです。私らはまさか公安調査局がそういう町の右翼のチンピラのような者と連絡をとってやっているというようなけちな考えは毛頭持っておりません。持っておりませんけれども、やはりそういう事態は依然として正常ならざる状態で、付近の人は異様な感じを持って――あそこには和歌山県立の医大の病院もあります。その他国民金融公庫があり、かなり人の往来の激しいところであります。全く異様な感に打たれるだけに、やはりそういうビラがほかの人たちの目に見えると、事実であるかどうかという点でも問題になる。こういうような状態が続いていることはよくないので、その点については、私らの党といたしましても、ビラを張る人を、一晩か二晩徹夜すれば、だれであるかということはわかるから、一ぺんよく調べた上で、そういうつまらぬ、また町の清掃にも美観にも妨げになるようなことをやめろということの話し合いをするように私は事務局に指示してきたのでありますけれども、そういう点から見て、引き続き調査局が今そういうような状況にあることが一つの刺激を与えるというような形になるのでありますから、正常な状態に一つ戻してもらいたい。実は、私らの方から告発あるいは告訴をいたしました件につきましては、過般和歌山の検事正にも会いまして、早急に結論を出していただくように要請もいたしております。しかし、私らの方の市会議員で弁護士の中谷君、あるいは県会議員数名が、いわゆる二十九日の問題でありますが、公安調査局へなだれ込んだ、これは先ほどの次長の話でありますけれども、前日やはり私の方の県会議員等が中に入りまして、代表者を十名にしぼって話し合おうということになって話をしているものを、局側が何かの行き違いで一方的に会見を打ち切ったところから混乱が起ったのであります。ところが、実はそういうわれわれの方の労働組合関係その他で本名ばかりが公安調査、局から告発をされて、検察庁の方に取調べを受けております。しかしそれはいずれ検察庁の方で公正な結論をつけることだと思うのでありますけれども、私は事件の本質の点については触れませんけれども、やはり公安調査庁の現在のあり方というものを正常に戻していただきたい。外国から帰ったばかりで、もし何らかの事態があるということになるならば、来月臨時国会が召集されるまでは、私の地元でありますから、私は身を挺してでもそういう事態のないように、それは責任を持ってよろしい。その意味でやはり正常な状態に戻していただかないと、これは和歌山市のためにも、和歌山県のためにも、また日本のためにもよくないと思うので、一つその点について即刻格別な配慮をしていただくようにお願いして、私の本日の質問は一応打ち切ります。
  119. 三田村武夫

    三田委員長 小島徹三君。
  120. 小島徹三

    ○小島委員 私は、もう時間がだいぶ長くなっていますから、ごく簡単に一言お願いして私の質問を終りたいと思います。  実は、最近と申しますか、数日前に、公務員の選挙運動について注目すべき判例が最高裁判所から下されたのであります。と申しますのは、これは公職選挙法でも起訴さたたようでありましたが、例の恩赦によって許されてしまって、公務員法違反だけの問題になったのでありますが、その中で注目すべきことは、人事院規則にいう特定の候補者というのは、届出をしてから初めて特定の候補者ということになるのであって、それ以前は特定の候補者ということでないから、国家公務員がその人のためにいろいろな選挙運動をしても、公職選挙法違反になる場合は別として、それは公職選挙法で処分されるけれども、公務員法違反にはならぬという判例が下ったのであります。私は新聞だけで見たのでありますから詳しいことはわかりませんが、大体そのように新聞でも書いております。そこで、なるほど特定の候補者という言葉は公職選挙法にはないのでありまして、公職選挙法には候補者とかあるいは候補者になろうとする者というような言葉がありますが、しかし、私たちの常識から申しますと、特定の候補者という場合に、届出前といえども候補者になるべき人はすでに選挙運動をしておるのは事実でございます。われわれ、公務員の選挙運動というのは、公職選挙法にいういわゆる選挙の事前運動となるとか、あるいは選挙法違反になるという行為以外に、公務員たる資格におきまして相当強い影響力を持つものでござまして、そういう者が公職選挙法違反にならぬ限りのあらゆる権力を用いて公然と何でもしていいのだということになると、これは非常に選挙の公平が疑われると思うのでありまして、従いまして、法務当局において、もしこの特定の候補者というものはあくまで最高裁判所の判決例のように届出前のは特定の候補者でないのだ、その人のために何してもいいのだということになりますならば、法律の改正を考えていただかなければならぬと思うのでありまして、一体法務当局としてはどういうふうにお考えになっておるのか。最高裁判所の判決通りの今までお考えであったのかどうか。そうでないとすれば、候補者になろうとする者もこの中に含まれるのだということでありますならば、この際解散がいつあるかわからぬという状態でございますので、臨時国会においてこの法律の改正をしていただきたい、かように思いますので、一応その点についての御意見を承わりたいと思います。
  121. 竹内壽平

    竹内説明員 ただいま小島委員からお話のように、本月九日の最高裁判所の判決におきまして、公務員の選挙運動につきまして特定の候補者という解釈問題からして公務員法違反にならないという判決があったのでございます。大体その判決の趣旨は小島委員がおっしゃった通りでございますが、なお判決につきましてその部分だけを申しますと 国家公務員法百二条の一項の委任によって制定せられた昭和二十四年九月十九日人事院規則の十四の七――これは政治的行為というのでございますが、十四の七の五項の中に、政治目的の意義として第一号に、規則十四の五に定める「公選による公職の選挙において特定の候補者を支持し、又はこれに反対すること」とある「特定の候補者」とは、法令の規定に基く正式の立候補届出または推薦届出により候補者としての地位を有するに至った者をいうものと解釈すべきであり、いまだ正式の届出をしない、原判決のいわゆる立候補をしようとする特定人のごときは、右国家公務員法および人事院規則の適用の関係においてはこれを包含しないものと解するを相当とする、こういう判決でございまして、御指摘通り、いまだ届出をしていない公務員のために公務員が選挙活動したことについて、公務員法違反の点については無罪ということになったのでございます。この点につきましては少数意見が四人出ております。最高裁判所の長官田中耕太郎、齋藤悠輔、池田克、垂水克己、この四人の少数意見がついておりまして、それを除く全員の意見というのがただいま読みました判決の趣旨でございます。この点につきましては、ほとんど本件と時を同じゅういたしまして、結局判決は早くせられるのでございますが、同種の判決が昭和三十年三月一日第三小法廷でございました。かように両者の判決を見て参りますと、少数意見はあるのでございますけれども、もはやこの特定の候補者の解釈につきましては争い得べくもないものであるというふうに解せざるを得ないのでございます。もちろん、この特定の候補者につきましては、従来法務省におきましては、立候補しようとする特定人をも含むものであるという解釈のもとに起訴もいたしまして、原審は一審、二審とも有罪の判決をしておるのでございますけれども、最高裁でこのような判決を見、すでにもう一件同種の判例を出しており、この両者の判例からして、もはや法務省が当初考えておりましたような線で将来起って参ります事件を処理いたしますことはすこぶる困難である、もうほとんど不可能であるというふうに考えるのでございます。このような点、公職選挙法におきましては選挙の自由公正を保護するのでございますけれども、公務員法による政治活動の禁止につきましては公正な政治的中立性を保護するのでありまして、両者若干法益の差異があると思うのでございます。この職員の公正な政治的中立性をどうして担保していくかということにつきまして、このような判決の結果を見ましては今後これを担保しようがないではないかという議論になるわけでございまして、結論といたしますと、法律の解釈としてはやむを得なかったといたしましても、このような措置、つまり届出前の政治活動は自由であるというような意味において買収行為も差しつかえないというようなことに相なりますならば、これはゆゆしいことでございます。この点は、結局先ほど申しました人事院規則十四の七の第五項第一号の規定を改めるかどうかということに帰着すると思うのでございます。この点につきましては、人事院とも協議いたしまして、法務省としてもできるだけ善処いたしたいというふうに考えております。
  122. 小島徹三

    ○小島委員 公職選挙法と公務員法とはその守るべき法益が違うことははっきりいたしておりますけれども、しかし、結果から見ると、国家公務員法の法益を守ることが公職選挙法の公正を守ることになるのですからして、全然関係がないとは言い切れぬので、むしろ公務員が職権を乱用して実際の政治活動をしているということが多いのでありまして、それが選挙に与える影響は非常に大きいのでありますから、至急これについて善処していただきたいと思います。
  123. 田中幾三郎

    ○田中(幾)委員 先ほどの和歌山の事件に関しまして、きょうは御審議を進めていただいたけれども、別に結論を得るに至らず、このままではどうもちょっと工合が悪いかと思いますので、現地から当人なり局長なりを当委員会に呼んで参考人として意見を聞くか、それともこちらから現地へ行ってその上で一つ実情を調査せられるように、委員長において何分のお取り計らいを御考慮願いたいと思います。
  124. 三田村武夫

    三田委員長 田中君の御発言に関しましては理事会に諮って決定したいと思います。  本日はこれにて散会いたします。    午後二時五十七分散会