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三田村
委員長 この際、
委員諸君のお許しを得て、最後の総括的な締めくくりといったような意味において、特に当
委員会として重要だと思われる一、二の問題につき、私から
政府関係当局にお尋ねいたしておきたいことがあります。
本国会における当
委員会は、
最高裁判所機構改革に関する法案審議のために会期の大半を費したため、
検察行政、
司法行政、その他当
委員会所管の
案件に関する審議、
調査を十分に行うことができなかったのであります。この点
委員長としてはなはだ遺憾に思っておるのでありますが、本日で会期も終ることになっておりますので、この際、最近特にやかましい世論となっておる青少年
犯罪の問題と、いわゆる暴力団事犯につき、
政府当局の御所見と対策をお尋ねいたしておきたいのであります。この二つの問題については、当
委員会の初めに、私から
法務、警察両
当局に
資料の提出を
要求いたしておいたのでありますが、
法務省調査の詳細な
資料がつい二、三日前提出されましたので、主としてこの
資料に基き要点を取りまとめ簡潔にお尋ねいたします。
まず、青少年
犯罪、特に二十才未満の少年
犯罪の傾向と対策についてお尋ねいたします。
法務省刑事局五月九日付
調査の
資料によりますと、少年
犯罪すなわち十四才から十九才までの少年で新しく罪を犯して
検察庁に送致された者が、二十七年が十七万三千四百二十二人、二十八年が十九万四千三百三十六人、二十九年が二十三万八千八百五十六人、三十年が二十七万三千四百十二人、三十一年が三十万七千百三十八人となっており、逐年激増の傾向を示し、この五カ年間に警察または家庭
裁判所の手を経て
検察庁に送致された少年が実に百十八万七千百六十四人の多数に達しておるのであります。この数字の中には他の
検察庁より移送されてきた者も含まれておりますから、実人員に多少重復したものがありますが、いずれにいたしましても、実に驚くべき激増の傾向であります。しかも、その四〇%ないし四五%は、肉体的に精神的に全く未成熟な十四才から十七才までの少年であります。さらに、この数字について考えられることは、この統計に現われた
犯罪少年の数は、警察の門をくぐって
検察庁に送られた者の数であって、警察の手にかからない同一傾向の少年がこれ以外にどのくらいあるだろうかということを想像いたしますと、全く心の痛む思いがいたすのであります。その上、さらに、二十才から二十五、六才までの青年
犯罪者の数を加えたならば、どのような数字になるであろうかということを考えてみなければなりません。別に提出されました警察庁の
資料によりますと、同じ少年
犯罪が、
昭和十六年を一〇〇として、いわゆる凶悪犯が、二十七年においては三五七、三十年には三七九、粗暴犯が、二十七年には三四九、三十年には四九〇となっており、いずれも大戦前の
昭和十六年に比較して三倍ないし四倍となっておるのであります。成年者の
犯罪の倍率と比較いたしますと、少年
犯罪の方が大体二倍の増加率を示しております。この統計の示すものはまことに重大なる
内容を持っており、国家の将来に思いをいたすとき、実に寒心にたえないものがあるのであります。
あらためて申し上げるまでもなく、青少年
犯罪の問題は一国の政治の上に重要な
関係を持っており、刑事政策の面から、あるいは文教政策の面から、格段の考慮を払わなければならない重要な問題であります。当
法務委員会においては、つとに、この問題の重要性にかんがみ、たゆみなき
調査研究を重ねてきておるのでありますが、私は、この際、当
委員会の名において、特に
政府及び
関係当局の深き反省を要望し、あわせて
法務、文部両大臣の御所見と御方針を伺いたいのであります。
御答弁の前に一言つけ加えますが、
昭和二十四年の第五国会において、当
委員会の発議による青少年
犯罪防止に関する決議が行われ、同年六月、閣議決定によって青少年問題対策協議会が
内閣に設置され、さらに、二十八年七月二十五日、
法律第八十二号をもって青少年問題協議会設置法が制定せられ、今日に至っておるのであります。すなわち、当
法務委員会の発議によって国会の決議となり、対策協議会の設置となり、
法律の制定を見て、常時
政府施策の重要部門として活動が行われているはずでありますが、この
法律があり、機関があり、相当の国費を費して権威ある活動が行われておるにもかかわらず、事実は逆に逐年激増の一途をたどるということは何としたことか、これでは
国民に対してはなはだ相済まぬ次第だと言わざるを得ないのであります。その原因と条件はどこにあるのか、最近の、五カ年間に罪を犯して警察の門をくぐり
検察庁に送られた約百二十万に及ぶ少年を、いかにして補導し、矯正し、健全なる社会人たらしめるかは、刑事政策の面から見ても、社会教育の面から見ても、容易ならざる重大問題であります。同時に、純真なるべき少年をこのような傷つける
犯罪者たらしめないためにはどのような対策を立てるかを真剣に
検討する必要があると思います。当
委員会においても、次期国会までに何らかの具体案を
検討いたしたいと考えておりますが、
政府においても、官庁内、形式的施策でなく、より有効にして適切なる方策を早急に御研究願いたいと思います。
文部大臣は御
出席ありませんが、
法務大臣並びに文部
当局の真摯にして率直なる御所見と御方針をこの際伺っておきたいのであります。