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1957-03-27 第26回国会 衆議院 法務委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年三月二十七日(水曜日)    午前十一時六分開議  出席委員    委員長 三田村武夫君    理事 池田 清志君 理事 椎名  隆君    理事 福井 盛太君 理事 横井 太郎君    理事 菊地養之輔君       小島 徹三君    小林かなえ君       世耕 弘一君    林   博君       山口 好一君    神近 市子君       佐竹 晴記君    坂本 泰良君       吉田 賢一君  出席国務大臣         法 務 大 臣 中村 梅吉君  出席政府委員         検     事         (法制局第二部         長)      野木 新一君         検     事         (大臣官房調査         課長)     位野木益雄君  委員外出席者         最高裁判所事務         総長      五鬼上堅磐君         判     事         (最高裁判所事         務総局総務局         長)      関根 小郷君         判     事         (最高裁判所事         務総局総務局総         務課長)    海部 安昌君         判     事         (最高裁判所事         務総局刑事局         長)      江里口清雄君         専  門  員 小木 貞一君     ————————————— 本日の会議に付した案件  裁判所法等の一部を改正する法律案内閣提出  第八九号)  判事補職権特例等に関する法律の一部を改  正する法律案内閣提出第一一〇号)  裁判所法の一部を改正する法律案内閣提出第  一一一号)     —————————————
  2. 三田村武夫

    三田委員長 これより法務委員会を開会いたします。  判事補職権特例等に関する法律の一部を改正する法律案及び裁判所法の一部を改正する法律案一括議題とし、法務大臣より提案理由説明を聴取することといたします。中村法務大臣
  3. 中村梅吉

    中村国務大臣 判事補職権特例等に関する法律の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明します。  この法律案は、第一審の充実強化を円滑に行うようにするため、当分の間の措置といたしまして、判事補としての職権制限を受けないいわゆる職権特例判事補高等裁判所判事職務を行わせることができるようにしようとするものであります。  裁判の適正と迅速をはかり国民の信頼にこたえますためには、何よりも、下級審、ことに第一審を充実強化することが必要であることは、異論のないところと存ずるのであります。御承知通り判事補職権特例等に関する法律によりまして、判事補ですでに判事補、検察官、弁護士等として五年以上在職した者のうち最高裁判所の指名を受けた者は、判事補としての職権制限を受けず、地方裁判所または家庭裁判所において判事と同一の職務を行うことができるものとされております。これによりまして、現在では、相当数のいわゆる職権特例判事補が、地方裁判所において、単独体事件を取り扱い、または他の判事補とともに合議体に加わって事件審判に当っているのでありますが、第一審を充実強化するためには、第一審にできうる限り練達な裁判官を配置することが必要と思われますので、可能な範囲内でこれらの職権特例判事補にかえるに経験のより豊かな判事をもってすることが適当と考えられるのであります。ところが、第一審強化のために必要とされる経験豊かな判事は、さしあたりその給源を主として高等裁判所に求めるほかはないのでありますが、高等裁判所判事地方裁判所に配置がえされた場合には、そのあとを補充する必要がありますので、前に述べました職権特例判事補高等裁判所判事職務を行わせることができるものとし、これを高等裁判所合議体の一員として加えることができるようにする措置を講ずることが適当と考えられるのであります。  そこで、この法律案におきましては、判事補職権特例等に関する法律中に新たに一条を加え、当分の間の措置といたしまして、高等裁判所裁判事務の取扱い上特に必要がある場合においては、最高裁判所は、その高等裁判所管轄区域内の地方裁判所または家庭裁判所職権特例判事補にその高等裁判所判事職務を行わせることができるものといたしました。しかし、この場合には、これらの判事補は、高等裁判所におきましては、同時に二人以上合議体に加わりまたは裁判長となることができないものとするのが相当と思われますので、その旨の規定を設けることといたしました。  以上が判事補職権特例等に関する法律の一部を改正する法律案趣旨でございます。  次に、裁判所法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明します。  この法律案の要点は次の二点であります。その第一は、最高裁判所家庭裁判所調査官研修所を置くこと、第二は、裁判所速記官及び裁判所速記官補制度を設けることであります。以下各改正点について順次御説明いたします。  まず第一は、家庭裁判所調査官研修所の設置に関する点であります。御承知通り家庭裁判所調査官は、家事審判法で定める家庭に関する事件審判及び調停並びに少年法で定める少年保護事件審判に必要な調査その他の事務をつかさどる者として各家庭裁判所に置かれているのでありますが、この家庭裁判所調査官は、その専門の学識及び経験を活用して事実の調査に当り、裁判官を補佐して家庭裁判所における事件の適正妥当な処理に寄与するという重大な職責を負うものであります。しかるに、家庭及び少年の問題に関して有用な知識等を修得すべき機会は、学校教育その他におきましてはこれを求めることが困難であるのみならず、家庭裁判所調査官は、裁判所書記官その他の裁判所職員とはその性格を著しく異にしておりますため、その養成研修のためには、専門機関を設置することがぜひとも必要とされるのであります。そこで、この法律案におきましては、新たに家庭裁判所調査官研究及び修養並びにその養成に関する事務を取り扱わせるため、最高裁判所家庭裁判所調査官研修所を置くこととし、また、その職員として家庭裁判所調査官研修所教官を置き、その所長は家庭裁判所調査官研修所教官のうちから最高裁判所がこれを補することといたしました。  第二は、裁判所速記官及び裁判所速記官補の新設に関する点であります。戦後、民事訴訟法及び刑事訴訟法改正によりまして、証人等尋問につき交互尋問制度が採用されることになり、ことに、刑事におきましては、公判中心主義の徹底に伴い、事実審の手続は著しく丁重となるとともに、証拠に関する規定も厳格なものとなりましたため、証人等に対する尋問及びその供述の内容は、おのずから複雑かつ詳細なものとならざるを得ないことになったのであります。従いまして、複雑困難な事件について審理する場合などにおきましては、従来の裁判所書記官の作成する調書のみでは不十分なうらみがあり、速記者による速記録調書に引用添付する等の方法により、詳細かつ正確な記録を整備する必要があるものと考えられるのであります。最高裁判所におきましては、右に申し述べましたような理由から、つとに機械速記専門とする裁判所職員養成を開始し、すでに若干の者が重要事件審理について速記に従事しているのでありますが、現在の裁判所法には、これらの職員の身分に関する定めがないのであります。そこで、この法律案におきましては、裁判所職員として新たに裁判所速記官を設けることとしてその裁判所速記官は、裁判所事件に関する速記及びこれに関連する事務をつかさどるものとし、また、裁判所速記官事務を補助する者として裁判所速記官補を置くことといたしたのであります。  以上が裁判所法の一部を改正する法律案趣旨でございます。よろしく御審議のほどをお願い申し上げます。
  4. 三田村武夫

    三田委員長 以上で提案理由説明は終りました。  質疑は次回に譲ることといたします。
  5. 三田村武夫

    三田委員長 次に、裁判所法等の一部を改正する法律案議題とし、その審議を進めます。質疑の通告がありますので、順次これを許します。池田清志君。
  6. 池田清志

    池田(清)委員 裁判所法等の一部を改正する法律案は、現行日本国憲法に淵源をいたしておりますることは申すまでもございません。ところが、日本国憲法そのもの日本が占領されている時代にできたものであり、裁判所法そのものもその当時にできたものでありますところから、私はこの際日本国憲法につきまして数点のお尋ねをさしていただきたいと思うものであります。  憲法第九十九条には、「天皇又は摂政及び国務大臣国会議員裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。」とあります。憲法は国の基本法でありますから、何人もこれを尊重し擁護すべきことは当然のことであります。ところが、ここに例挙してありまするこういう者は、いわゆる立法司法行政三権に属するところの者であります。こういう者のみがこのの憲法を尊重し擁護する義務のあることを憲法は明らかにいたしております。しからば 一体、その他の者はどうなのか、憲法を尊重し擁護しなくてもいいのかどうかというところに疑問を有するものでありまするが、この第九十九条の立法趣旨について政府の御所見お尋ねします。
  7. 中村梅吉

    中村国務大臣 私も立法当時のいきさつを詳細に心得ておりませんが、いやしくも国の基本法たる憲法でございまする以上は、国民ひとしく、本質論といたしましては、順法精神にのっとって順守すべきものであることは申すまでもないと思うのであります。従いまして、第九十九条は、いわゆる念のために規定された、当然のことを条文に明記いたしました一種訓示規定のように解釈をすべきではないか、かように心得ております。
  8. 池田清志

    池田(清)委員 中村法務大臣お答えによりまして、第九十九条は、こういう者は特に憲法を尊重擁護する義務があることを書いたものである、国民はひとしく何人もこれを尊重すべきことは申すまでもないことだということを伺いまして、私は当然のことであると思う次第であります。  この憲法を反省し調査研究することが、憲法九十九条の規定のありますところから、あたかも憲法趣旨に反するがごとき議論をする方があるのでありますが、一体これは正しいことであるかどうかを私は疑問としておるものであります。なるほど、現行憲法改正いたしますまでの間は、現行憲法として尊重し、擁護すべきは当然であります。九十九条の規定するところです。しかしながら、現行憲法調査研究すること自体が第九十九条に反するがごとき議論というものが、私には納得ができないのであります。日本国憲法自体においても、第九十六条においては、将来この憲法改正することを予想し、その手続規定しておるところから考えましても、現行憲法について反省、調査研究することが必ずしも憲法第九十九条の趣旨に反するものではない、こう深く確信をするものでありますが、政府の御所見お尋ねいたします。
  9. 中村梅吉

    中村国務大臣 池田委員の御意見と全く同感でございます。憲法調査研究をすること自体は、たとい国家基本法国民ひとしく順守すべきものであるにいたしましても、それを顧みて反省し、あるいは研究調査をすることは自由でなければならないと考えております。
  10. 池田清志

    池田(清)委員 先ほども申し上げましたように、日本国憲法は、わが国が占領されておる時代にできたものであります。この憲法外国の方々も評して、外国製憲法である、外国製文章である、あるいはまた、衆議院の本会議でも問題になりましたように、マッカーサー憲法である、こういうような表現もあるわけなのでありますが、こういうような表現が妥当であるかどうかは存じませんが、要するに、こういうような論評のありまするゆえんのものはどういうところにありますか、政府の御所見お尋ねいたします。
  11. 中村梅吉

    中村国務大臣 よく、押しつけられた憲法というような言葉も世間で耳にいたすのでありますが、果してそういうことが妥当であるかどうかは別問題といたしましても、とにかく日本の国が、また国民が、全く自由の意思に基いて立案し成文化し、また制定手続を終ったものとは、当時の情勢から見て考えられないのでありまして、当時は、申すまでもなく、軍事占領という占領下におけるごとでありますから、私どもは、独立をかち得ました今日、当時を顧みて再検討を加えるということは、かつて憲法調査会法制定のときにも国会において繰り返された論議でありますが、私は、あってしかるべきである、かように考えておる一人であります。しかしながら、現行憲法が存続する限りは、われわれとしては、あくまで国家基本法としてこれを順守することに努めなければならない責任を、九十九条に明記された者はもとより、国民全体がその責めを負うべきものである、かように考えております。
  12. 池田清志

    池田(清)委員 ただいまの中村法務大臣お答えによりまして、日本国憲法軍事占領下にできたものである、日本国としての自由意思のない時代にできたものである、さればこそ、外国製憲法外国製文章、あるいはまたマッカーサー憲法と論評せられてもしかたがあるまいじゃないかという趣旨お答えを伺ったのでありますが、私もこれに同感する一人であります。  申すまでもなく、わが国ポツダム宣言を受諾いたしまして、連合国わが国全体を戦時占領をいたしたのであります。そこで、マッカーサーを総司令官といたしまして占領政治を施行することに相なったのであります。今から考えますと、マッカーサー総司令官が、直ちに軍政と申しますか、日本天皇及び天皇の統轄する日本政府を無視しないで、これらの存在を是認して、これを通じて占領政策を行なったということは、日本の社会に混乱を来たさなかったことであり、私は幸いに考えております。もしそれ、マッカーサー総司令官がこれらの存在を無視いたしまして、直接国民に対しマッカーサーの手による軍政を施行したでありましょうならば、日本混乱が増大するであろうことを懸念していた私どもといたしましては、天皇及び天皇の統轄する日本政府を是認したということにおいては幸いであったと思うものであります。かくのごとくいたしまして、マッカーサーは、日本占領政策を徹底いたしまするためにその目的を達しまするために、軍備を撤廃いたしましたり、非軍事化政策をとったり、非産業化政策をとったり、非集中化政策をとったり、あるいは民主主義化政策をとる等、いろいろなる施政を行なって参ったのであります。その結果は、従来の日本とは変ったところの法律制度等が現われて参ったことは御承知通りであります。その中におきまして、いわゆる大日本帝国憲法を初めといたしまして、その他の法律制度の姿が変ったわけです。現在の日本国憲法は、まさに、そういう時代に、そういう過程によってでき上ったものであります。すなわち、昭和二十一年の一月七日、アメリカ政府におきましては、日本憲法改正するという腹をきめたようであります。これを受けまして、マッカーサーは、昭和二十一年の二月三日、日本憲法改正するということをしっかりと腹にきめました。その翌日の二月四日には、ホイットニーを呼びまして、日本国憲法草案を作れという命令をいたしております。ホイットニーは、ケーディスその他数人の者と一週間かかって日本国憲法草案を作り上げ、二月の十日にはこれをマッカーサーに示しました。マッカーサーは、これを認めまして、二月の十三日、ホイットニーを使いとして、そのホイットニー等の作りましたところの日本国憲法草案日本政府に手渡しをいたしまして、日本政府に、この手渡したところの草案によって日本国憲法草案を作れということを命令をいたしているのであります。当時の状況からいたしまして、日本政府としてはこれを受諾をせざるを得なかった次第なのであります。すなわち、日本マッカーサー総司令官によって治められているのであり、天皇及び天皇の統轄する日本政府はありましたけれども、つまり、日本自由意思というものが無視されている時代でありますから、日本政府といたしまして、マッカーサーのこの主張を取り入れざるを得なかった次第なのであります。ここにおきまして日本政府は、当時厳存しておりましたところの大日本帝国憲法の定むるところによって憲法改正手続を始めたものであります。すなわち、まず、マッカーサーの示しましたところの横文字の憲法草案縦書きに直しましてマッカーサーに示しましたところ、 マッカーサーは、これを許可いたしました。日本国政府といたしましては、マッカーサー許可を受けましたところのその日本国憲法草案を、大日本帝国憲法の定めます規定により、勅命によって、当時の帝国議会提出をいたしました。帝国議会でありますから、その構成員おのおのは自由の意思があり得るわけなのであります。しかしながら、残念ながら日本が占領されており、日本自由意思というものが認められない時代帝国議会でありますから、その憲法草案に対し何ら自由意思を発動することができなかったのであります。修正をいたしますにつきましてもマッカーサー許可を要したということは、皆様御承知通りであります。かくのごとくいたしまして、日本自由意思存在していない時代にこの日本国憲法が生まれておりますことは御承知通りであります。  ところが、幸いに日本独立を回復をいたしまして、日本自由意思というものが最高に現われて参りましたところの今日においては、先ほど来中村法務大臣お答えになりましたように、日本自由意思によってこの日本国憲法調査研究するということは当然なことであり、しかし、また、憲法第九十九条の趣旨に反するものではないと深く信じているものであります。  されば、わが国会といたしましては、第二十四国会におきまして、御承知のように憲法調査会法というものを成立をいたさせました。すなわち、内閣憲法調査会を設けて、その調査会において日本国憲法調査研究しようということに日本国意思がきまっており、すでに発動をいたしているのであります。私といたしましては、その憲法調査会趣旨に従って十分活動し、なるべく早くこの憲法調査研究した結果をお示しをいただきたいということを念願しているものでりまするが、現われているところによりますと、憲法調査会そのものはまだ実動に入っていないやの観がございます。なるほど、事務当局といたしましては整備されておりまするけれども、実態を調査研究するところの憲法調査会そのものがまだ不完全であるという状況です。これではまことに残念でありますから、この際この憲法調査会実質的充実を期せられまして、早く実動していただくようにお願いをするのでありますが、これにつきまして、政府当局の準備、御意向等を伺います。
  13. 中村梅吉

    中村国務大臣 申すまでもなく、憲法国家基本法として国家存立の根底をなす重要なものでございますので、この調査研究をいたしまする憲法調査会というものは、法律によって、設置せられることにきまったのでありますが、この憲法調査会の運営は、私どもとしては、努めて超党派的に国内の総意を反映し得るような機構であることが望ましいと思うのであります。さような見地に立ちまして、憲法調査会法制定以来、歴代の内閣はそういう趣旨にかなった憲法調査会発足を意図いたしまして努力をいたしてきておるのでありますが、いまだその機が熟しませんで、せっかく法律ができましたが、憲法調査会発足を見ないことは、まことに私どもも遺憾に存じておるのであります。われわれ現在の政府といたしましても、努めて憲法調査会発足をすみやかならしむることに一そうの努力をいたし、最善を尽したい、かように考えております。
  14. 池田清志

    池田(清)委員 日本国憲法はいわゆる三権分立制度を確立をいたしております。すなわち、立法につきましては国会が国権の最高機関としてこれに当ることにいたし、行政権内閣に属するとし、司法権最高裁判所及び下級裁判所に属するといたしておるのであります。  ここでちょっとお尋ねを申し上げげまするのは、三権分立制度、そして、これらの三権おのおの機関というものは、いわゆる対等であり、いわゆる独立であり、そして三者鼎立をしておる、こういうふうに抽象的ながら考えるのでありますが、これにつきまして政府の御所見はいかがでございましょうか。
  15. 中村梅吉

    中村国務大臣 三権分立制度といい、その他、現在の日本国憲法の中には、かねがね民主的に日本国民の要望いたしておりました事柄は多く取り入れられておりまして、われわれとしては、将来ともこの精神をますます重視して参らなければならぬ部分も非常に多くあると思うのであります。要するに問題は占領下制定されました日本国憲法でありますから、われわれといたしましては、法律で定められました憲法調査会発足させまして、そして、憲法調査会でこの憲法の各条章にわたって十分の検討を加えて、検討いたしました結果すべて現在の憲法の各法条そのままでよろしいということにかりになるにいたしましても、この機会に自由をかち得て、そうして独立をいたしました今日、憲法について再検討して、ほんとうに自主的な憲法たらしめるということが、われわれ日本国民として考えるべきことではないか、かように私どもとしては考えておる次第であります。
  16. 池田清志

    池田(清)委員 昨日もこの点に触れたことでありますが、司法権というものの限界と申しますか、司法権とは何ぞやということがよく問題になるのであります。その解釈につきましてはいろいろあろうかと思いますが、民事刑事裁判をすることである、あらゆる法律上の具体的な訴訟裁判する権限であるとか、いろいろあるのでありまするけれども、昨日も、中村法務大臣お答えによりまして、最高裁判所というものは司法裁判所である、こういうお答えがあったのでありますから、それでよくわかったのであります。が、この点をもう一ぺんお答えをお願いしたいと思います。
  17. 中村梅吉

    中村国務大臣 憲法第六章の規定全体を通じ、また、第七十六条から見まして、最高裁判所を初め各下級裁判所司法裁判所であって、具体的事件について審理裁判をする使命を持っておるものである、かように考えます。
  18. 池田清志

    池田(清)委員 最高裁判所及びその他の裁判所がいわゆる権限として現在の憲法下において持っておりますものは、第七十六条の規定と第八十一条の規定かと思います。ただいまの中村法務大臣お答えといたしましては、第七十六条の関係における司法権そのものについての権限を有するところの最高裁判所といたしましては、それは司法裁判所であるというような意味に解したのでありますが、憲法規定から申しますと、本来の司法権というものは、いわゆる裁判所という機関が所管するところのものであるというふうに考えるのであり、憲法第八十一条の規定は、たまたま、司法権というものの範疇には入らないけれども、特に裁判所をしてこれを処置せしめるところの権限憲法によって特に与えるものである、こういうふうにも解釈をするのでありますが、この点はいかがでございましょうか。
  19. 中村梅吉

    中村国務大臣 八十一条は、先日も申し述べましたように、私どもといたしましては、一種裁判事項管轄に属する事柄を、しかも非常に重要なことでありますから、憲法で明記をされたものであると思うのであります。本来、本質的には、これは訴訟法に記載をせらるべきものであるかと思うのでありますが、しかしながら、事柄自体が非常に重要な点でありますので、憲法条章において、八十一条所定の事項については最高裁判所終審裁判所として判断しなければならないということを明記した条項である、かように考えておる次第であります。
  20. 池田清志

    池田(清)委員 憲法の第九十八条第一項、「この憲法は、国の最高法規であって、その条規に反する法律命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。」、こういう規定がありまするところから、憲法に適合しないところの法律等はすべて無効であるわけであります。ですから、神様から見ますならば、憲法第八十一条の規定しておりますようなことはあり得ないわけなのであると私は思うのです。しかしながら、残念ながら、人の力をもっていたしましては、抽象的に憲法違反の法律等がすべて無効であるといいながらも、現実にその有効無効を見分けることができないことでありまするところから、たまたま憲法第八十一条を規定をいたしまして、そういうようなものについては裁判所の決定するところに従う、こういう意味を書いたものであると思うわけでありますが、この点はいかがでございましようか。
  21. 中村梅吉

    中村国務大臣 池田委員のお考えと同様に考えております。
  22. 池田清志

    池田(清)委員 憲法第八十一条に規定しておる事柄について二、三お尋ねをいたしますが、「一切の法律命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する」と書いてあるところに、いわゆる処分という規定がありまするが、この処分は、司法処分、裁判、いわゆる司法権によって行う国の行為そのものも入るかどうかという点を明らかにお願いします。
  23. 中村梅吉

    中村国務大臣 すべての行政司法に関する処分が含まれておる、かように解釈をいたしております。
  24. 池田清志

    池田(清)委員 同様なるお尋ねでありますが、ここに文言としては表われておりませんけれども、条約そのものはいかがでございましょうか。
  25. 中村梅吉

    中村国務大臣 従来から条約は入らないものと解釈されておるようであります。
  26. 池田清志

    池田(清)委員 憲法第八十一条の規定の中で、最高裁判所終審裁判所であるということを明らかにいたしております。この規定の半面からいたしまして、いわゆる下級裁判所もまたこの権限を有すると解するのでありますが、この点はいかがでありましょう。
  27. 中村梅吉

    中村国務大臣 八十一条におきましては、最高裁判所終審裁判所でなければならない、こういう趣旨を明記いたしておるのでありますから、下級裁判所ももちろん判断の権限を持っておると思います。
  28. 池田清志

    池田(清)委員 先ほど来の中村法務大臣お答えによって明らかに拝承いたしたのでありますが、このいわゆる違憲訴訟というものを何人が出すのか、つまり提訴者はどういう者であるかというのであります。つまり、先ほど来お答えをいただいておるように、この違憲訴訟そのものも、個人の基本的人権が、本来無効であるべき法律等の適用によって侵害せられたとする場合において提訴ができるわけだと思うのでありますが、そうすると、いわゆる提訴し得る者は基本的人権を侵害されたと称する個々の人である、こういうことに相なろうかと思うのでありますが、この点はいかがでございます。
  29. 中村梅吉

    中村国務大臣 当事者は、結局法律命令、規則あるいは処分等によって権利、利益を侵されたことを主張する利害関係人であるべきだと思います。私ども古い法律観念でありますが、訴訟については、昔から、利益なければ訴権なしという当然の原則がございますから、今日もこの原則は貫かれておるものであろう、かように考えております。
  30. 池田清志

    池田(清)委員 提訴をする者が、無効であるべき法律等によって基本的人権を侵害せられたとする個々の者である、そして、事柄自体も個々の事件である、そして、裁判所はこれによって憲法に適合するかいなかを決定する、こういうことに相なるわけでありますが、さよういたしますと、本来無効であるべきところの法律等そのものは、裁判所によって決定があった後においてもなおかつ存在するということに相なるのでありまするか、この点はいかがでございますか。
  31. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 御承知のように、違憲判決の効力については見解が分れておるのでございますが、政府としては従来から個別的な効力説をとっておりますので、違憲の判決がありましてもその法令が失効するということにはならないというふうに考えております。
  32. 池田清志

    池田(清)委員 今、位野木政府委員お答えでありますと、本来そういう法律等そのものは憲法第九十八条によって無効である、それにもかわらず、その適用によって基本的人権の侵害を受けた者が具体的事件についてのみ救済を求めるのである、その結果は、違法であり無効であるべきところの法律等はずっと将来においてもその改正を見ない限りは存続する、こういうお答えになったわけでありますが、こういうことは、国から考えました場合において好ましくないことであると思うのです。というのは、前に裁判所の決定によりまして、憲法に適合するかどうかということの具体的事件の解決は得たのでありますけれども、本来無効であるべきところの法律等が現存することをそのまま認めておる限りにおいては、将来同じ事柄がやはり裁判所に提訴される、こういうことになるのでありまするが、私は、憲法上の問題といたしましては、本来無効であるべきところの法律等は、法律等そのものを無効ならしめるようにいたすべきである、そしてまた、改正する必要のある場合においては改正するようにいたすべきである、こういう考え方を持っておるものでありますが、この点については政府はいかがでございましょうか。
  33. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 個別的な効力説をとる場合でありましても、一たん違憲の判決が出ますと、国民は、将来同じような事件が出た場合に同じような判決が下るであろうということは期待できるわけでありますから、それに従って司法関係が処理されていくということが期待されるわけであります。のみならず、行政的、立法的に、それぞれ行政機関立法機関においてその判決に応じて適当な処理がとられるというふうに考えております。
  34. 池田清志

    池田(清)委員 ただいまのお答えでありまするけれども、本来無効であるべき法律等が、廃止するかあるいは改正しない限りは存続をする、こういうお答えになってしまうわけなのです。それではおもしろくないから、私は、本来無効であるべきところの法律等そのものをなくするように、あるいは改正するようにすべきである、こういう考え方を持っておるものでありますが、現在の日本国憲法のもとにおいてはそのことは望まれないのだというお答えに集約されるのではないかと思うのです。すなわち、裁判所、ことに最高裁判所司法裁判所である。そしてまた、違憲裁判そのものも、基本的人権を侵害せられたと称する者が個々の事件についてのみ救済を求めるものである。従って、それは個々の事件の解決でありまして、本来違法であり無効である法律等は現存するのである、こういうふうにお答えが集約されるのでありますが、私が主張いたしますように、憲法に違反するところの法律等そのものは現存することには間違いないのである。これは、私の考えといたしましては、その憲法に違反する法律等そのものの無効を宣言するようなことにいたすべきであると思うのでありますが、現行憲法のもとにおいてはそのことはできないのだ、こういうふうに今までのお答えで理解したのでありますが、その点もう一ぺん明らかに願います。
  35. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 今の池田委員の御意見は、具体的事件に即訴えを起こした場合のことを言われるのですか、あるいは、抽象的にある法律命令憲法に適合するかどうかについての判断を裁判所に求めるということが現行憲法上許されているということを意味するのでございますか、どちらですか。
  36. 池田清志

    池田(清)委員 私の考えておりまするところは、日本国憲法第九十八条に規定いたしまするように、憲法に適合しない法律等は無効であるというのでありまするから、その無効なる法律がありましても、これは役に立たないことである、適用すべきではない、こういうふうに思うの、でありますけれども、それが人間としてわからないから、そういう無効なる法律によって基本的人権を侵害された者が救済を求める道として、日本国憲法第八十一条があるのである、——個々の事件について裁判所が決定をするということは今までの御説明でわかったのでありますが、私は、さらに進んで、無効であるべき法律等はすべてそのものがなくなるようにいたすのがよろしい、こう考えるのです。その点につきまして、今御説がありましたように、抽象的なる訴えということに当るかもしれぬと思うのでありますが、抽象的なる訴えということになった場合においては、日本国憲法現行のもとにおいては、これを処理する権能は最高裁判所にはないのだ、こういうふうに承わりたいのでありますが、この点はいかがでございますか。
  37. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 いずれの場合におきましても、現行憲法ではむずかしいというふうに考えるのであります。特に、抽象的な違憲審査権、個別的な事件に即しないで抽象的にある法令が違憲であるかどうかということの審査を求めることが裁判所に対してできるかという問題につきましては、これはすでに先ほど法務大臣からお答え申し上げたように、現行憲法では許されないというふうに考えております。
  38. 池田清志

    池田(清)委員 位野木政府委員お答えによってわかったのでありますが、法制局が見えておりますから、お答えに違いはないと思いますけれども立法に関与しておられます。法制局のお考えをこの際伺いたい。
  39. 野木新一

    野木政府委員 最高裁判所におきまして憲法第八十一条によりましてある法律、が違憲であるという判決が下った場合に、その違憲であるとされた法律はどうなるかという点につきましては、すでに御承知のように学説も分れておるようでございますが、政府といたしましては、従来から、いわゆる個別的違憲説と申しましょうか、最高裁判所の判決があっても、それによって当然法律がなくなってしまうものだ、失効して全部廃止になってしまう、そういうような考えではなくて、裁判所はその事件についてはその法律が違憲であるから適用しないという種の、いわゆる個別的違憲説の見解をとっている次第であります。従いまして、その跡始末といたしましては、まず、一般の関係人や国民などは、最高裁判所で違憲と判断した以上、同じような事件は同じように判断せよということで処理されるし、また、政府なり国会なりは、その最高裁判所の判決を尊重するなりして法律改正なり廃止の手続をとっていく、そういうことになるのではないかと存じておる次第でございます。
  40. 池田清志

    池田(清)委員 法務大臣並びに政府委員及び法制局お答えを総合いたしましてよくわったのでありますが、これを繰り返して簡単に申しますと、現行日本国憲法のもとにおきましては、抽象的な違憲訴訟というものは提起することができないのだ、こういう態度を政府はとっておるものだというふうに伺ってよろしいのですか。
  41. 中村梅吉

    中村国務大臣 その通りであります。  それから、なお私からも申し添えておきますが、結局、先ほど御指摘のありましたように、個々の具体的事件について司法裁判所に訴えが起きまして、これが最高裁判所で最終的な判決があって、その法律命令の違憲かどうかについて判断が行われた場合におきましては、直ちに法律がその効力を失うものといたしますと、三権分立精神から申しまして、司法立法機関に優位するような形になってくるのではないかと思います。従いまして、先ほど法制局からもお答えがありましたように、行政機関並びに立法府といたしましては、最高裁判所が最終的に違憲かどうかについて憲法に関係した判断を下しました場合には、良識をもってそれを尊重して、それに該当する部分については、適当の機会法律改正または廃止の手続をとるというのが三権分立精神に合致するのではないだろうか考えております。
  42. 池田清志

    池田(清)委員 ただいままでのお答えによりましてよくわかったのでありますが、私は、この際この問題について理想を申し上げます。ならば、やはり法律、処分等が現実に憲法に違背することがあり得るというふうに考えるものであります。違背するものがありまするならば、それは、三権おのおののところにおいて、すなわち、法律でありますならば国会において、行政処分でありますならば行政府において、司法処分でありますならば司法権の範囲においてこれを是正するようにした方が筋道であると思うのであります。さらに、一歩を進めまして、これらの憲法に違反する法律等の無効宣言をするような機関を置く必要があるとまず仮定をいたしまするならば、その機関司法権だけに属するものであってはならない。何となれば、裁判官憲法及び法律によって拘束をせられておるわけであります。法律によって拘束を受けるところの裁判官そのものが法律そのものについての違憲を判断するということは、国会は国権の最高機関であるということを侵害するやに思うのであります。先ほど来中村法務大臣が言われましたように、三権分立の建前から申しましても、司法機関のみが立法府、行政府の上にあるがごとき考えが起るのでありますから、法律等の無効を宣言する機関を必要とするならば、その機関は、司法権にも属せず、立法権だけでも専用せず、あるいはまた行政権だけに専属をするというものであってはならず、三権分立の建前から申しまして、これら三権の上にあってそういうことをいたすべきものであると考えておるものであります。これは私の理想の考えでありまするから、お尋ねするのは何でありますけれども現行憲法を離れて考えた場合において、中村法務大臣はいかにお考えになっておられましょうか。
  43. 中村梅吉

    中村国務大臣 結局、三権の上にあるものは、主権在民の今日におきましては、国民以外にはないのではないか、また、あり得ないのみならず、そういう機関を作ることについては、これは根本的な問題があろうかと思います。従いまして、現行憲法のように、三権分立精神をできるだけ貫きまして、一般司法を通して司法裁判所がそういうような法律の適否につきましても判断をいたしまして、その最終的判断が行われました場合においては、一つの判例としてある程度の既判力を持ち、また、行政機関や、立法機関であるところの国会等は、これをせいぜい努めて尊重するという建前をとって、主権在民、かつまた機関としては三権分立精神を貫いていく、こういう行き方以外にはないのではなかろうか、かように感ずる次第であります。
  44. 池田清志

    池田(清)委員 国民審査の問題でありますが、最高裁判所裁判官は、政府、が任命をいたしました後、国民審査を受けることに相なっておるわけであります。ところが、わが国のように、人口が多く、そしてまた、遺憾なことではありまするけれども国民司法に対する関心の乏しいところにおいては、この国民審査制度そのものは効果がないのだという説を聞くのであります。現行憲法のもとにおいてはこれをどうすることもできないのでありまするけれども、こういうような試験済みの問題は、憲法改正機会等においてはいさぎよく適当に改めらるべきである、こういう考え方を持っておるのでありますが、政府におかれましては、こういう点についてはどういう御所見でございましょうか。
  45. 中村梅吉

    中村国務大臣 憲法施行以来、また、最高裁判所が構成をされまして以来、人選等につきましても、そう国民の指弾を受けるようなできごとはございませんでしたし、また、裁判官自身に国民の大きく指弾を受けるようなできごとも幸いございませんが、しかしながら、人間の行いまする人選でありますし、また、裁判官に就任いたしました人も自然人であって人間でありますから、私は、万一に備えて、この国民審査という制度は、——従来は何も具体的なものにぶつかっておりませんから、国民審査は価値がないように言われる向きも相当ありますが、私自身といたしましては、万一に備える手段といたしまして、この規定の価値は相当あるものである、かように考えておる次第であります。裁判官におきましては、一たび就任をいたしましたならば、定年に達するまで免職その他の方法もございませんし、一にかかって万一のときがありました場合、——ないことを望むのでありますが、ありました場合における方法として国民審査の憲法条章というものは相当本質的には意義があるのではないか、かように考えます。もう一つは、裁判官の数が現在は十五名でございますし、どういう人が裁判官であるかすら一般国民に周知徹底していない向きもありますが、これは、今回御審議をいただいておりまする法案のように人員が減員されて参りまするならば、国民審査の価値も一そう向上してくるのではないだろうか、かように考えておる次第であります。
  46. 池田清志

    池田(清)委員 御承知のように、日本国憲法は、下級裁判所という法律上の言葉を、五ヵ所ですか、明らかに規定をいたしております。御提案になっておりまする裁判所法等の一部を改正する法律案におきましては、すべて下級裁判所という文字を削ってあります。このことは、憲法そのものが期待と申しますか望んでおるところの下級裁判所というものが、法律の上においては用語としてなくなってしまうということになるわけです。ただ、ここに一つ、昭和二十二年の法律第六十三号の下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律においては下級裁判所という法律上の言葉が残っております。そしてまた、最高裁判所小法廷というものは、中村法務大臣並びに政府委員説明によりますと、下級裁判所ということを言うておられるのであります。そういたしますと、裁判所法におきましては下級裁判所というものが何ら法律用語としてなくなってしまっておるところから考えまして、憲法の期待し予想しておるような趣旨にもとるのではないかと思うのでありますが、この点はどういうことでございましょうか。
  47. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 改正後の裁判所法におきましても、下級裁判所の字句はなくなっておりません。第一条もそのままでございますし、六十九条、八十条等でも下級裁判所という言葉は残っております。ただ、ほかの条文で今まで下級裁判所という言葉があったのを改正しようとしておるものがありますが、これは、新しく設けられます最高裁判所小法廷というものを条文上規定するための技術的な必要においてそういうようにいたしたのであります。
  48. 池田清志

    池田(清)委員 最高裁判所小法廷は下級裁判所である、——下級裁判所でありまするならば、昭和二十二年法律第六十三号によりまして、少くともその管轄区域については明らかにせられるべきではないかと思うのであります。高等裁判所以下の——以下と言っては語弊がありましょうが、高等裁判所地方裁判所家庭裁判所、簡易裁判所は、それぞれ管轄区域があるのでありますが、なぜそういうのがあるかというと全国を幾つかにわけまして、数個のこれらの同等の裁判所かあるからであると思います。最高裁判所小法廷は一口に最高裁判所小法廷と申しまするけれども法律案によりますると六つの法廷を作られることになっております。その六つの法廷おのおの最高裁判所小法廷であると伺うのでありますが、さすれば、その六つの小法廷はおのおの対等独立である。さすれば、ここに数個の同格の下級裁判所があることになりまするので、理論から申しますと、やはり管轄区域というものが明らかにせらるべきではないかと思うのでありますが、この点はいかがでございましょうか。
  49. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 最高裁判所小法廷は、第二条の第一項に、最高裁判所小法廷、それと、第八条の二におきまして、小法廷は小法廷判事で構成する、こういうような字句がありますが、こういうような字句から、国法上も一つの裁判所であるというふうに考えております。この第八条の二の規定は、たとえば、今の裁判所法の十五条をごらんになると、同じような字句になっております。「各高等裁判所は、高等裁判所長官及び相応な員数の判事でこれを構成する。」、これは結局、小法廷いうのは全部まとまって一つの国法上の裁判所を構成しているということを意味しておると考えております。そういたしますと、上告裁判所の性質と、それから最高裁判所に付属しているということからして、当然管轄区域が全国に及ぶと考えております。最高裁判所につきましても、現在は管轄区域がどこというような規定はないわけです。性質上当然そういうことになると考えておりますので、同じようなことと考えております。
  50. 池田清志

    池田(清)委員 最高裁判所は、いわゆる最高である、そしてただ一つである、この意味におきまして、日本国全体を管轄するということが当然に考えられるという御説明はよくわかります。しかしながら、最高裁判所小法廷なるものは下級裁判所である、こういうふうに言うておられるわけでありますし、ただ一つの裁判所であるということの御説明はわかったのでありますが、下級裁判所であるという点において、ただ一つの裁判所であるにいたしましても、当然にこれが全国を所管するということは生れてこないように思うのですが、これはどうでしょうか。
  51. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 先ほど申しましたような理由から、特に全国を管轄するというふうに書かなくても、管轄区域について疑いを生ずるおそれがないと考えております。これはまた書いてもいいのですが、第二条の二項でも、これの反対解釈からいたしますと、言えないことはないというふうに考えております。書いてもよろしいのですが、書かなくても、先ほど申しました上告裁判所という性質、最高裁判所に付置される、そうして共同して上告事件を処理するというふうなことから明瞭であると思います。
  52. 池田清志

    池田(清)委員 最高裁判所小法廷が下級の裁判所であるということはよくわかって参りました。その裁判所は、高等裁判所地方裁判所と同じような意味におきまして、これまた裁判所においては独立であるわけです。裁判所として有しまする権能そのものは、いずれもこれを具備しなければならないわけ合いのものであると思うのです。ところが、改正せんとする法案によりましては、裁判所としてのいろいろな機能を具備していない点が多々あるのであります。たとえて申しますと、違憲事件についての実質的な裁判権というものはないと言うても過言ではないと思うのです。憲法違反の事柄でありまするならば最高裁判所に移すということになっておりまするところから、抽象的には裁判権がある、こう言われましても、実質上は違憲裁判権はないのではないかということを私は疑問としておるものでありますが、この点はいかがでありましょうか。
  53. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 御指摘の通り、新しく憲法判断をするという場合、あるいは違憲の判断をする場合には、小法廷は事件最高裁判所の方に送らなければならぬ、ということになっておりますが、これは、上告事件を合理的に処理するために分担をした、そういう点は最高裁判所でやる、それ以外の事件は小法廷で分担をしろ、こういうふうな考え方でありますので、特に小法廷について違憲審査権を奪うと申しますか、不当に権能を狭めるためにやるというふうな趣旨ではない、それ以外の上告事件についてはもう最高権限を持っておるというふうな考え方であります。合理的な理由に基いて、そういうふうにすることはむしろ至当である、そういうふうに考えます。
  54. 池田清志

    池田(清)委員 最高裁判所小法廷が憲法第八十一条によりまして違憲についての決定をする権限を有するということは、先ほど来お尋ねをいたし、お答えを得ておるところであります。ところが、上告についての裁判権のありますることは明瞭に伺っておるのでありまするが、肝心な違憲裁判については、抽象的には持っておるとは言うても、実質的には持っていないのじゃないか、こういうことを懸念いたします。このことは、つまり、最高裁判所小法廷というその裁判所裁判権について、憲法第八十一条の望んでいることが実現していないじゃないかというふうに考えるわけでありますが、もう一ぺんお尋ねいたします。
  55. 三田村武夫

    三田委員長 位野木君にちょっと申し上げますが、速記席に聞き取れない点があるようですから、もう少し高声に御答弁願います。
  56. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 憲法八十一条は、御承知のように、最高裁判所権限規定いたしております。小法廷は憲法上の最高裁判所ではございませんから、八十一条は直接には小法廷に適用がないわけであります。
  57. 池田清志

    池田(清)委員 この点はお説の通りです。ところが、先ほどお尋ねいたしましてお答えを得ておりまするように、最高裁判所は終審の違憲——違憲と言っちゃ語弊がありますが、違憲事件を決定する権限を有する裁判所である、こういうことを表面に打ち出しておるのであります。その反面といたしまして、いわゆる下級裁判所も違憲事件について決定をする権限があるのでありますな、という質問に対し、さようである、こう言われたところから申しまして、最高裁判所小法廷なるものが憲法八十一条の予想するような憲法事件についての裁判権を持っていないのではないかということをお尋ねしているわけです。もう一ぺん一つ伺いたい。
  58. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 失礼いたしました。問題点を十分理解しておらなかったのでありますが、八十一条は、各下級裁判所がすべて違憲審査権を持たなければならないというところまでも保障しているものとは考えないのであります。合理的な理由があれば、たとえば、ある憲法問題を含む事件については、地方裁判所に訴えを乗せるということについて、簡易裁判所では扱わないということについてあえて差しつかえないというふうな考え方を持っておりますが、同様な理由で、小法廷で新しく憲法判断をするという場合、あるいは違憲の判断をする、という場合には、大法廷でやるということにして、小法廷にそういうことをさせないということにしても差しつかえないという考え方を持っております。
  59. 池田清志

    池田(清)委員 裁判所法によりますと、高等裁判所地方裁判所家庭裁判所、簡易裁判所おのおの職務の代行を命令する権限を有しております。ところが最高裁判所小法廷については、その権限が、同じ裁判所でありながら剥奪されておる。これはつまり最高裁判所小法廷というものの裁判所としての機能にこれだけ欠けておるものであると思いますが、いかがでしょうか。代行を命令する下命権です。
  60. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 これは、各場合の司法行政権をどのように配分するかという問題でありまして、この最高裁判所小法廷というものは、最高裁判所と非常に密接な関係があるということから、それから、そのほかの合理的な理由から、司法行政事務は小法廷で独立して扱わせないで、最小限度のものを除いて最高裁判所に扱わせた方が適当であるというふうな考え方をいたしておりますので、その建前に従って最高裁判所に処理させるという考え方であります。
  61. 池田清志

    池田(清)委員 裁判所司法行政事務もつかさどっておりますことは、申し上げるまでもございません。裁判所法によりますと、高等裁判所も、地方裁判所も、家庭裁判所も、簡易裁判所も、おのおの法律的根拠によりまして司法行政事務をつかさどっております。ところが、最高裁判所小法廷におきましては、本来の裁判所としてのフルの司法行政事務をつかさどらしめないで、ほんの一部分の司法行政事務だけつかさどらせることにして、あとは最高裁判所で行うことに相なっておりますが、これは、最高裁判所小法廷というものが独立裁判所であるという点から考えまして、司法行政事務を執行するところの権能なるものをひどく制限しておると思うのですが、いかがでしょうか。
  62. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 最高裁判所小法廷も裁判機関としては独立機関でございますから、最高裁判所と全く独立いたしまして、別個の、たとえば上告裁判所とでも申しますか、そういうふうな名称をつけて、全く別個の独立裁判所とするということも考えられるわけです。しかしながら、そういたしますと、別にやはりそれぞれの司法行政機関を置かなければいけない。たとえば、事務局を置く、あるいは長官なんかも置く必要がある、だろうというふうにもなってくるのでありますが、この最高裁判所小法廷というものは、最高裁判所と共同して上告事件を処理する、いわば最高裁判所のある面におきましては代理機関というふうな見方もできるような非常に密接な関係にある。そういうものは、むしろ、別のものにしないで、最高裁判所の傘下に置いて、これに付属して設置するということが適業ではないかというふうな考え方をいたしたのでありまして、そうして、その司法行政事務も別にやらないで、最小限度のものを除いて最高裁判所が一緒に取り扱うということにした方が便利である、その方が合理的であるというふうな考え方でおるわけであります。
  63. 池田清志

    池田(清)委員 日本国憲法によりますと、第七十七条、最高裁判所司法事務につきましての立法権を有します。その第三項によりまして、その立法権は下級裁判所に委任することができると相なっておりますが、現在この司法立法権についての委任の状況はいかがでございますか。
  64. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 この点については委任の実例はないようであります。
  65. 三田村武夫

    三田委員長 ちょっと委員長から発言いたしますが、ただいま池田委員の御質問に対する御答弁を伺っておりますと、わからない点があるのです。行政上の便宜のためということをよくお使いになりますが、ここは立法をやっているのでありまして、行政上の便宜のために立法上の建前がゆがめられてはいけない点があると思います。今の池田委員の御質問に、最高裁判所小法廷は独立裁判所だという御答弁であります。同時に、最高裁判所司法行政上の便宜のために司法行政の一部分は最高裁判所でやるんだというような御答弁があったようであります。この点一つはっきりと、位野木政府委員の立案者の立場からと、最高裁判所は実際に司法行政を担当されておる立場からと、この司法行政上の便宜のためじゃなくて裁判司法の立場から一つはっきり割り切った御答弁をしていただきたいと思います。
  66. 中村梅吉

    中村国務大臣 先ほど私のお答えいたしました点で一部訂正を必要とする点がございますので、申し上げておきます。  先ほど、憲法第八十一条の違憲関係の事件についても最高裁判所のほかに下級裁判所もひとしく裁判をする権能を持っているか、こういう御質問に対して、その通りでありますとお答えをいたしたのでありますが、今回提案をいたしております最高裁判所小法廷は、かねがね申し上げております通り一種下級裁判所でございますが、この最高裁判所小法廷は、大局的に申しますと、本質的には最高裁判所最高裁判所小法廷とは全体として上告事件を取り扱う、こういう建前でございます。ただし、憲法に違反をしておる、法律命令、処分等が違憲の疑いがある、また当事者からも原審判決は違憲であるという主張をされたものについては、小法廷はみずかち判断をしないで、最高裁判所事件を移すというのがこの提案の趣旨になっております。また、判例の統一に関するような事件も、最高裁判所に判断をしてもらって小法廷は判断しないという建前をとっておりますから、本質的には下級裁判所に相違ありませんが、一種の特殊の下級裁判所でありまして、そういう意味から申しますと、問題別に、最高裁判所と小法廷は、上告事件全体のうちから、そういう特殊の重要な案件について最高裁判所裁判権を持ち、その他の一般上告事件について小法廷が裁判権を持つ、こういう建前に本質的にはなると思うのであります。従いまして、端的に申しますと、この最高裁判所小法廷は、一種下級裁判所ではありますが、高等裁判所地方裁判所等のような下級裁判所ではありませんで、特殊の下級裁判所である、こういうことでございます。この趣旨を、先刻の御質問の際には、下級裁判所という従来の高等裁判所地方裁判所家庭裁判所等の下級裁判所という考えで、お説の通りであるというお答えをいたしましたが、その点は、内容的に分析いたしますと、今申し上げたようなことになりましたので、ここにあらためて、先刻のお答えのうち、今申し上げました部分について訂正をいたしておきます。
  67. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 どうも説明が不十分で申しわけありませんが、別の裁判所として必要な司法行政事務も普通のほかの下級裁判所と同じ程度にやらせる機構も作ることはできるのでありますが、特別のものでありますから、これをそういうふうにしないで、最高裁判所に付属しておいて、司法行政事務は最小限度のものを除いて最高裁判所にやらせるということにする方が、司法行政事務と申しますか、これを全般的に独立きせるよりは合理的である、そういうふうなことを申しておるのでありまして、そういうふうに立法する方がベターである、こういうふうな考え方をしております。
  68. 池田清志

    池田(清)委員 最高裁判所小法廷につきまして数個の角度からお尋ねを申し上げたのでありますが、お答えによってやや明らかになりましたように、最高裁判所小法廷は下級裁判所である、独立裁判所である、こう申しながら、その独立裁判所としての権能、機能というものが数個の点において制約をせられておるわけであります。最高裁判所小法廷は下級裁判所である、独立裁判所である。こう申しながら、その独立裁判所としての権能、機能というものが数個の点において制約をせられておるわけであります。しかも、最高裁判所小法廷は上告の裁判所である。普通の事件でありまするならば、これこそ最高裁判所であるわけであります。そういうような大事な裁判所であるにかかわりませず、その機能に制約されておるということは、どうも妙に考えるのであります。されば、この改正案においては、三審制度であると言うし、あるいはまた四審制度であると言う等、異議の申し立ての事柄についてもなかなか議論の多いところであり、最高裁判所小法廷は、いわゆる中三階とでも申しまするか、そういう状態で、法律上から見まして不徹底である、すっきりしないものであると私は考えるものでございます。最高裁判所そのものは憲法規定するところでありまするから、それにつきましての機構等をそう簡単に改めるということもどうかと思しまするし、一方また、事件が輻湊する関係からいたしまして、それを解決する方法として最高裁判所小法廷案なるものを考案されて提案されておる趣旨はよくわかるのであります。その改正案につきましては、私は、先ほど申し上げまするように、不徹底である、不明確である、こう申し上げておるのでありますが、私見といたしましては、現在最高裁判所において大法廷と小法廷というものが現存しておる、そうして、その法廷において取り扱う事柄も明らかにされておる、最高裁判所小法廷そのものも最高裁判所でありまして、現行のもとにおいてはいわゆる三審制度というものが維持されておるのであります。そこで、思うに、大法廷と小法廷という現在の制度最高裁判所の中にありまするそのものをそのまま認めまして、ただ大法廷は全員をもって構成するということを改めて全員でなくて、最高裁判所裁判官のうちのある人数をもって構成するようにいたし、そうしてまた、その小法廷は、これまたある人数で構成するようにするということになりまするならば、先ほど来私がいろいろと指摘しておりまする事柄がより明瞭に解決せられることに相なると思うのであります。これは私見でありますから、この段階におきましては政府当局お答えを受けるまでもありませんが、またそのほかいろいろと質問の事柄はありまするけれども、時間も相当進みましたし、今日はこの程度で打ち切らしていただきます。
  69. 三田村武夫

    三田委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は公報でお知らせすることとし、これにて散会いたします。    午後零時三十八分散会