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1957-03-27 第26回国会 衆議院 法務委員会 第19号
公式Web版
会議録情報
0
昭和
三十二年三月二十七日(水曜日) 午前十一時六分
開議
出席委員
委員長
三田村武夫
君
理事
池田
清志
君
理事
椎名 隆君
理事
福井
盛太
君
理事
横井 太郎君
理事
菊地養
之輔君 小島 徹三君
小林かなえ
君
世耕
弘一君 林 博君 山口 好一君 神近 市子君 佐竹
晴記
君 坂本
泰良
君 吉田 賢一君
出席国務大臣
法 務 大 臣
中村
梅吉君
出席政府委員
検 事 (
法制局
第二部 長)
野木
新一君 検 事 (
大臣官房調査
課長
) 位
野木益雄
君
委員外
の
出席者
最高裁判所事務
総長 五鬼上堅磐君 判 事 (
最高裁判所事
務総局総務局
長) 関根 小郷君 判 事 (
最高裁判所事
務総局総務局総
務課長
) 海部
安昌
君 判 事 (
最高裁判所事
務総局刑事局
長)
江里口清雄
君 専 門 員 小木 貞一君 ————————————— 本日の
会議
に付した案件
裁判所法等
の一部を
改正
する
法律案
(
内閣提出
第八九号)
判事補
の
職権
の
特例等
に関する
法律
の一部を改 正する
法律案
(
内閣提出
第一一〇号)
裁判所法
の一部を
改正
する
法律案
(
内閣提出
第 一一一号) —————————————
三田村武夫
1
○
三田
村
委員長
これより
法務委員会
を開会いたします。
判事補
の
職権
の
特例等
に関する
法律
の一部を
改正
する
法律案
及び
裁判所法
の一部を
改正
する
法律案
を
一括議題
とし、
法務大臣
より
提案理由
の
説明
を聴取することといたします。
中村法務大臣
。
中村梅吉
2
○
中村国務大臣
判事補
の
職権
の
特例等
に関する
法律
の一部を
改正
する
法律案
について、その
趣旨
を御
説明
します。 この
法律案
は、第一審の
充実強化
を円滑に行うようにするため、当分の間の
措置
といたしまして、
判事補
としての
職権
の
制限
を受けないいわゆる
職権特例判事補
に
高等裁判所
の
判事
の
職務
を行わせることができるようにしようとするものであります。
裁判
の適正と迅速をはかり
国民
の信頼にこたえますためには、何よりも、
下級審
、ことに第一審を
充実強化
することが必要であることは、異論のないところと存ずるのであります。御
承知
の
通り
、
判事補
の
職権
の
特例等
に関する
法律
によりまして、
判事補
ですでに
判事補
、検察官、
弁護士等
として五年以上在職した者のうち
最高裁判所
の指名を受けた者は、
判事補
としての
職権
の
制限
を受けず、
地方裁判所
または
家庭裁判所
において
判事
と同一の
職務
を行うことができるものとされております。これによりまして、現在では、
相当数
のいわゆる
職権特例判事補
が、
地方裁判所
において、
単独体
で
事件
を取り扱い、または他の
判事補
とともに
合議体
に加わって
事件
の
審判
に当っているのでありますが、第一審を
充実強化
するためには、第一審にできうる限り練達な
裁判官
を配置することが必要と思われますので、可能な範囲内でこれらの
職権特例判事補
にかえるに
経験
のより豊かな
判事
をもってすることが適当と考えられるのであります。ところが、第一
審強化
のために必要とされる
経験
豊かな
判事
は、さしあたりその給源を主として
高等裁判所
に求めるほかはないのでありますが、
高等裁判所
の
判事
が
地方裁判所
に配置がえされた場合には、そのあとを補充する必要がありますので、前に述べました
職権特例判事補
に
高等裁判所
の
判事
の
職務
を行わせることができるものとし、これを
高等裁判所
の
合議体
の一員として加えることができるようにする
措置
を講ずることが適当と考えられるのであります。 そこで、この
法律案
におきましては、
判事補
の
職権
の
特例等
に関する
法律
中に新たに一条を加え、当分の間の
措置
といたしまして、
高等裁判所
の
裁判事務
の取扱い上特に必要がある場合においては、
最高裁判所
は、その
高等裁判所
の
管轄区域
内の
地方裁判所
または
家庭裁判所
の
職権特例判事補
にその
高等裁判所
の
判事
の
職務
を行わせることができるものといたしました。しかし、この場合には、これらの
判事補
は、
高等裁判所
におきましては、同時に二人以上
合議体
に加わりまたは
裁判長
となることができないものとするのが相当と思われますので、その旨の
規定
を設けることといたしました。 以上が
判事補
の
職権
の
特例等
に関する
法律
の一部を
改正
する
法律案
の
趣旨
でございます。 次に、
裁判所法
の一部を
改正
する
法律案
について、その
趣旨
を御
説明
します。 この
法律案
の要点は次の二点であります。その第一は、
最高裁判所
に
家庭裁判所調査官研修所
を置くこと、第二は、
裁判所速記官
及び
裁判所速記官補
の
制度
を設けることであります。以下各
改正点
について順次御
説明
いたします。 まず第一は、
家庭裁判所調査官研修所
の設置に関する点であります。御
承知
の
通り
、
家庭裁判所調査官
は、
家事審判法
で定める
家庭
に関する
事件
の
審判
及び調停並びに
少年法
で定める
少年
の
保護事件
の
審判
に必要な
調査
その他の
事務
をつかさどる者として各
家庭裁判所
に置かれているのでありますが、この
家庭裁判所調査官
は、その
専門
の学識及び
経験
を活用して事実の
調査
に当り、
裁判官
を補佐して
家庭裁判所
における
事件
の適正妥当な処理に寄与するという重大な職責を負うものであります。しかるに、
家庭
及び
少年
の問題に関して有用な
知識等
を修得すべき
機会
は、
学校教育
その他におきましてはこれを求めることが困難であるのみならず、
家庭裁判所調査官
は、
裁判所書記官
その他の
裁判所職員
とはその性格を著しく異にしておりますため、その
養成
、
研修
のためには、
専門
の
機関
を設置することがぜひとも必要とされるのであります。そこで、この
法律案
におきましては、新たに
家庭裁判所調査官
の
研究
及び修養並びにその
養成
に関する
事務
を取り扱わせるため、
最高裁判所
に
家庭裁判所調査官研修所
を置くこととし、また、その
職員
として
家庭裁判所調査官研修所教官
を置き、その所長は
家庭裁判所調査官研修所教官
のうちから
最高裁判所
がこれを補することといたしました。 第二は、
裁判所速記官
及び
裁判所速記官補
の新設に関する点であります。戦後、
民事訴訟法
及び
刑事訴訟法
の
改正
によりまして、
証人等
の
尋問
につき
交互尋問
の
制度
が採用されることになり、ことに、
刑事
におきましては、
公判中心主義
の徹底に伴い、事実審の
手続
は著しく丁重となるとともに、証拠に関する
規定
も厳格なものとなりましたため、
証人等
に対する
尋問
及びその供述の内容は、おのずから複雑かつ詳細なものとならざるを得ないことになったのであります。従いまして、複雑困難な
事件
について
審理
する場合などにおきましては、従来の
裁判所書記官
の作成する
調書
のみでは不十分なうらみがあり、
速記者
による
速記録
を
調書
に引用添付する等の方法により、詳細かつ正確な記録を整備する必要があるものと考えられるのであります。
最高裁判所
におきましては、右に申し述べましたような
理由
から、つとに
機械速記
を
専門
とする
裁判所職員
の
養成
を開始し、すでに若干の者が
重要事件
の
審理
について
速記
に従事しているのでありますが、現在の
裁判所法
には、これらの
職員
の身分に関する定めがないのであります。そこで、この
法律案
におきましては、
裁判所
の
職員
として新たに
裁判所速記官
を設けることとしてその
裁判所速記官
は、
裁判所
の
事件
に関する
速記
及びこれに関連する
事務
をつかさどるものとし、また、
裁判所速記官
の
事務
を補助する者として
裁判所速記官補
を置くことといたしたのであります。 以上が
裁判所法
の一部を
改正
する
法律案
の
趣旨
でございます。よろしく御
審議
のほどをお願い申し上げます。
三田村武夫
3
○
三田
村
委員長
以上で
提案理由
の
説明
は終りました。
質疑
は次回に譲ることといたします。
三田村武夫
4
○
三田
村
委員長
次に、
裁判所法等
の一部を
改正
する
法律案
を
議題
とし、その
審議
を進めます。
質疑
の通告がありますので、順次これを許します。
池田清志
君。
池田清志
5
○
池田
(清)
委員
裁判所法等
の一部を
改正
する
法律案
は、
現行日本国憲法
に淵源をいたしておりますることは申すまでもございません。ところが、
日本国憲法そのもの
は
日本
が占領されている
時代
にできたものであり、
裁判所法そのもの
もその当時にできたものでありますところから、私はこの際
日本国憲法
につきまして数点の
お尋ね
をさしていただきたいと思うものであります。
憲法
第九十九条には、「
天皇
又は摂政及び
国務大臣
、
国会議員
、
裁判官
その他の公務員は、この
憲法
を尊重し擁護する
義務
を負ふ。」とあります。
憲法
は国の
基本法
でありますから、何人もこれを尊重し擁護すべきことは当然のことであります。ところが、ここに例挙してありまするこういう者は、いわゆる
立法
、
司法
、
行政
の
三権
に属するところの者であります。こういう者のみがこのの
憲法
を尊重し擁護する
義務
のあることを
憲法
は明らかにいたしております。しからば 一体、その他の者はどうなのか、
憲法
を尊重し擁護しなくてもいいのかどうかというところに疑問を有するものでありまするが、この第九十九条の
立法
の
趣旨
について
政府
の御
所見
を
お尋ね
します。
中村梅吉
6
○
中村国務大臣
私も
立法
当時のいきさつを詳細に心得ておりませんが、いやしくも国の
基本法
たる
憲法
でございまする以上は、
国民
ひとしく、
本質論
といたしましては、
順法精神
にのっとって順守すべきものであることは申すまでもないと思うのであります。従いまして、第九十九条は、いわゆる念のために
規定
された、当然のことを条文に明記いたしました
一種
の
訓示規定
のように
解釈
をすべきではないか、かように心得ております。
池田清志
7
○
池田
(清)
委員
中村法務大臣
の
お答え
によりまして、第九十九条は、こういう者は特に
憲法
を尊重擁護する
義務
があることを書いたものである、
国民
はひとしく何人もこれを尊重すべきことは申すまでもないことだということを伺いまして、私は当然のことであると思う次第であります。 この
憲法
を反省し
調査研究
することが、
憲法
九十九条の
規定
のありますところから、あたかも
憲法
の
趣旨
に反するがごとき
議論
をする方があるのでありますが、一体これは正しいことであるかどうかを私は疑問としておるものであります。なるほど、
現行憲法
を
改正
いたしますまでの間は、
現行憲法
として尊重し、擁護すべきは当然であります。九十九条の
規定
するところです。しかしながら、
現行憲法
を
調査研究
すること
自体
が第九十九条に反するがごとき
議論
というものが、私には納得ができないのであります。
日本国憲法自体
においても、第九十六条においては、将来この
憲法
を
改正
することを予想し、その
手続
を
規定
しておるところから考えましても、
現行
の
憲法
について反省、
調査研究
することが必ずしも
憲法
第九十九条の
趣旨
に反するものではない、こう深く確信をするものでありますが、
政府
の御
所見
を
お尋ね
いたします。
中村梅吉
8
○
中村国務大臣
池田委員
の御意見と全く同感でございます。
憲法
の
調査研究
をすること
自体
は、たとい
国家
の
基本法
を
国民
ひとしく順守すべきものであるにいたしましても、それを顧みて反省し、あるいは
研究
し
調査
をすることは自由でなければならないと考えております。
池田清志
9
○
池田
(清)
委員
先ほ
ども
申し上げましたように、
日本国憲法
は、
わが国
が占領されておる
時代
にできたものであります。この
憲法
を
外国
の方々も評して、
外国製
の
憲法
である、
外国製
の
文章
である、あるいはまた、衆議院の本
会議
でも問題になりましたように、
マッカーサー憲法
である、こういうような
表現
もあるわけなのでありますが、こういうような
表現
が妥当であるかどうかは存じませんが、要するに、こういうような論評のありまするゆえんのものはどういうところにありますか、
政府
の御
所見
を
お尋ね
いたします。
中村梅吉
10
○
中村国務大臣
よく、押しつけられた
憲法
というような言葉も世間で耳にいたすのでありますが、果してそういうことが妥当であるかどうかは別問題といたしましても、とに
かく
、
日本
の国が、また
国民
が、全く自由の
意思
に基いて立案し成文化し、また
制定
の
手続
を終ったものとは、当時の情勢から見て考えられないのでありまして、当時は、申すまでもなく、
軍事占領
という
占領下
におけるごとでありますから、私
ども
は、
独立
をかち得ました今日、当時を顧みて再
検討
を加えるということは、かつて
憲法調査会法制定
のときにも
国会
において繰り返された論議でありますが、私は、あってしかるべきである、かように考えておる一人であります。しかしながら、
現行
の
憲法
が存続する限りは、われわれとしては、あくまで
国家
の
基本法
としてこれを順守することに努めなければならない責任を、九十九条に明記された者はもとより、
国民
全体がその責めを負うべきものである、かように考えております。
池田清志
11
○
池田
(清)
委員
ただいまの
中村法務大臣
の
お答え
によりまして、
日本国憲法
が
軍事占領下
にできたものである、
日本国
としての
自由意思
のない
時代
にできたものである、さればこそ、
外国製憲法
、
外国製文章
、あるいはまた
マッカーサー憲法
と論評せられてもしかたがあるまいじゃないかという
趣旨
の
お答え
を伺ったのでありますが、私もこれに同感する一人であります。 申すまでもなく、
わが国
が
ポツダム宣言
を受諾いたしまして、
連合国
は
わが国
全体を
戦時占領
をいたしたのであります。そこで、
マッカーサー
を総
司令官
といたしまして
占領政治
を施行することに相なったのであります。今から考えますと、
マッカーサー総司令官
が、直ちに
軍政
と申しますか、
日本
の
天皇
及び
天皇
の統轄する
日本政府
を無視しないで、これらの
存在
を是認して、これを通じて
占領政策
を行なったということは、
日本
の社会に
混乱
を来たさなかったことであり、私は幸いに考えております。もしそれ、
マッカーサー総司令官
がこれらの
存在
を無視いたしまして、直接
国民
に対し
マッカーサー
の手による
軍政
を施行したでありましょうならば、
日本
の
混乱
が増大するであろうことを懸念していた私
ども
といたしましては、
天皇
及び
天皇
の統轄する
日本政府
を是認したということにおいては幸いであったと思うものであります。
かく
のごとくいたしまして、
マッカーサー
は、
日本
の
占領政策
を徹底いたしまするためにその目的を達しまするために、軍備を撤廃いたしましたり、非
軍事化
の
政策
をとったり、非
産業化
の
政策
をとったり、非
集中化
の
政策
をとったり、あるいは
民主主義化
の
政策
をとる等、いろいろなる施政を行なって参ったのであります。その結果は、従来の
日本
とは変ったところの
法律制度等
が現われて参ったことは御
承知
の
通り
であります。その中におきまして、いわゆる
大日本帝国憲法
を初めといたしまして、その他の
法律制度
の姿が変ったわけです。現在の
日本国憲法
は、まさに、そういう
時代
に、そういう過程によってでき上ったものであります。すなわち、
昭和
二十一年の一月七日、
アメリカ政府
におきましては、
日本
の
憲法
を
改正
するという腹をきめたようであります。これを受けまして、
マッカーサー
は、
昭和
二十一年の二月三日、
日本
の
憲法
を
改正
するということをしっかりと腹にきめました。その翌日の二月四日には、
ホイットニー
を呼びまして、
日本国憲法
の
草案
を作れという
命令
をいたしております。
ホイットニー
は、ケーディスその他数人の者と一週間かかって
日本国憲法草案
を作り上げ、二月の十日にはこれを
マッカーサー
に示しました。
マッカーサー
は、これを認めまして、二月の十三日、
ホイットニー
を使いとして、その
ホイットニー等
の作りましたところの
日本国憲法
の
草案
を
日本政府
に手渡しをいたしまして、
日本
の
政府
に、この手渡したところの
草案
によって
日本国憲法
の
草案
を作れということを
命令
をいたしているのであります。当時の
状況
からいたしまして、
日本
の
政府
としてはこれを受諾をせざるを得なかった次第なのであります。すなわち、
日本
は
マッカーサー総司令官
によって治められているのであり、
天皇
及び
天皇
の統轄する
日本政府
はありましたけれ
ども
、つまり、
日本
の
自由意思
というものが無視されている
時代
でありますから、
日本
の
政府
といたしまして、
マッカーサー
のこの主張を取り入れざるを得なかった次第なのであります。ここにおきまして
日本
の
政府
は、当時厳存しておりましたところの
大日本帝国憲法
の定
むるところによって憲法
の
改正
の
手続
を始めたものであります。すなわち、まず、
マッカーサー
の示しましたところの横文字の
憲法草案
を
縦書き
に直しまして
マッカーサー
に示しましたところ、
マッカーサー
は、これを
許可
いたしました。
日本国政府
といたしましては、
マッカーサー
の
許可
を受けましたところのその
日本国憲法
の
草案
を、
大日本帝国憲法
の定めます
規定
により、勅命によって、当時の
帝国議会
に
提出
をいたしました。
帝国議会
でありますから、その
構成員おのおの
は自由の
意思
があり得るわけなのであります。しかしながら、残念ながら
日本
が占領されており、
日本
の
自由意思
というものが認められない
時代
の
帝国議会
でありますから、その
憲法草案
に対し何ら
自由意思
を発動することができなかったのであります。修正をいたしますにつきましても
マッカーサー
の
許可
を要したということは、皆様御
承知
の
通り
であります。
かく
のごとくいたしまして、
日本
の
自由意思
の
存在
していない
時代
にこの
日本国憲法
が生まれておりますことは御
承知
の
通り
であります。 ところが、幸いに
日本
が
独立
を回復をいたしまして、
日本
の
自由意思
というものが
最高
に現われて参りましたところの今日においては、先ほど来
中村法務大臣
も
お答え
になりましたように、
日本
の
自由意思
によってこの
日本国憲法
を
調査研究
するということは当然なことであり、しかし、また、
憲法
第九十九条の
趣旨
に反するものではないと深く信じているものであります。 されば、
わが国
会といたしましては、第二十四
国会
におきまして、御
承知
のように
憲法調査会法
というものを成立をいたさせました。すなわち、
内閣
に
憲法調査会
を設けて、その
調査会
において
日本国憲法
を
調査研究
しようということに
日本国
の
意思
がきまっており、すでに発動をいたしているのであります。私といたしましては、その
憲法調査会
の
趣旨
に従って十分活動し、なるべく早くこの
憲法
を
調査研究
した結果をお示しをいただきたいということを念願しているものでりまするが、現われているところによりますと、
憲法調査会そのもの
はまだ実動に入っていないやの観がございます。なるほど、
事務当局
といたしましては整備されておりまするけれ
ども
、実態を
調査研究
するところの
憲法調査会そのもの
がまだ不完全であるという
状況
です。これではまことに残念でありますから、この際この
憲法調査会
の
実質的充実
を期せられまして、早く実動していただくようにお願いをするのでありますが、これにつきまして、
政府
御
当局
の準備、御
意向等
を伺います。
中村梅吉
12
○
中村国務大臣
申すまでもなく、
憲法
は
国家
の
基本法
として
国家存立
の根底をなす重要なものでございますので、この
調査研究
をいたしまする
憲法調査会
というものは、
法律
によって、設置せられることにきまったのでありますが、この
憲法調査会
の運営は、私
ども
としては、努めて超党派的に国内の総意を反映し得るような機構であることが望ましいと思うのであります。さような見地に立ちまして、
憲法調査会法制定
以来、歴代の
内閣
はそういう
趣旨
にかなった
憲法調査会
の
発足
を意図いたしまして
努力
をいたしてきておるのでありますが、いまだその機が熟しませんで、せっ
かく
法律
ができましたが、
憲法調査会
の
発足
を見ないことは、まことに私
ども
も遺憾に存じておるのであります。われわれ現在の
政府
といたしましても、努めて
憲法調査会
の
発足
をすみやかならしむることに一そうの
努力
をいたし、最善を尽したい、かように考えております。
池田清志
13
○
池田
(清)
委員
日本国憲法
はいわゆる
三権分立
の
制度
を確立をいたしております。すなわち、
立法
につきましては
国会
が国権の
最高機関
としてこれに当ることにいたし、
行政権
は
内閣
に属するとし、
司法権
は
最高裁判所
及び
下級裁判所
に属するといたしておるのであります。 ここでちょっと
お尋ね
を申し上げげまするのは、
三権分立
の
制度
、そして、これらの
三権
の
おのおの
の
機関
というものは、いわゆる対等であり、いわゆる
独立
であり、そして三
者鼎立
をしておる、こういうふうに抽象的ながら考えるのでありますが、これにつきまして
政府
の御
所見
はいかがでございましょうか。
中村梅吉
14
○
中村国務大臣
三権分立
の
制度
といい、その他、現在の
日本国憲法
の中には、かねがね民主的に
日本国民
の要望いたしておりました
事柄
は多く取り入れられておりまして、われわれとしては、将来ともこの
精神
をますます重視して参らなければならぬ部分も非常に多くあると思うのであります。要するに問題は
占領下
に
制定
されました
日本国憲法
でありますから、われわれといたしましては、
法律
で定められました
憲法調査会
を
発足
させまして、そして、
憲法調査会
でこの
憲法
の各
条章
にわたって十分の
検討
を加えて、
検討
いたしました結果すべて現在の
憲法
の各法条そのままでよろしいということにかりになるにいたしましても、この
機会
に自由をかち得て、そうして
独立
をいたしました今日、
憲法
について再
検討
して、ほんとうに自主的な
憲法
たらしめるということが、われわれ
日本国民
として考えるべきことではないか、かように私
ども
としては考えておる次第であります。
池田清志
15
○
池田
(清)
委員
昨日もこの点に触れたことでありますが、
司法権
というものの限界と申しますか、
司法権
とは何ぞやということがよく問題になるのであります。その
解釈
につきましてはいろいろあろうかと思いますが、
民事
、
刑事
の
裁判
をすることである、あらゆる
法律
上の具体的な
訴訟
を
裁判
する
権限
であるとか、いろいろあるのでありまするけれ
ども
、昨日も、
中村法務大臣
の
お答え
によりまして、
最高裁判所
というものは
司法裁判所
である、こういう
お答え
があったのでありますから、それでよくわかったのであります。が、この点をもう一ぺん
お答え
をお願いしたいと思います。
中村梅吉
16
○
中村国務大臣
憲法
第六章の
規定
全体を通じ、また、第七十六条から見まして、
最高裁判所
を初め各
下級裁判所
は
司法裁判所
であって、
具体的事件
について
審理
、
裁判
をする使命を持っておるものである、かように考えます。
池田清志
17
○
池田
(清)
委員
最高裁判所
及びその他の
裁判所
がいわゆる
権限
として現在の
憲法下
において持っておりますものは、第七十六条の
規定
と第八十一条の
規定
かと思います。ただいまの
中村法務大臣
の
お答え
といたしましては、第七十六条の関係における
司法権そのもの
についての
権限
を有するところの
最高裁判所
といたしましては、それは
司法裁判所
であるというような意味に解したのでありますが、
憲法
の
規定
から申しますと、本来の
司法権
というものは、いわゆる
裁判所
という
機関
が所管するところのものであるというふうに考えるのであり、
憲法
第八十一条の
規定
は、たまたま、
司法権
というものの範疇には入らないけれ
ども
、特に
裁判所
をしてこれを処置せしめるところの
権限
を
憲法
によって特に与えるものである、こういうふうにも
解釈
をするのでありますが、この点はいかがでございましょうか。
中村梅吉
18
○
中村国務大臣
八十一条は、先日も申し述べましたように、私
ども
といたしましては、
一種
の
裁判事項
の
管轄
に属する
事柄
を、しかも非常に重要なことでありますから、
憲法
で明記をされたものであると思うのであります。本来、本質的には、これは
訴訟法
に記載をせらるべきものであるかと思うのでありますが、しかしながら、
事柄自体
が非常に重要な点でありますので、
憲法
の
条章
において、八十一条所定の
事項
については
最高裁判所
が
終審裁判所
として判断しなければならないということを明記した条項である、かように考えておる次第であります。
池田清志
19
○
池田
(清)
委員
憲法
の第九十八条第一項、「この
憲法
は、国の
最高法規
であって、その条規に反する
法律
、
命令
、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。」、こういう
規定
がありまするところから、
憲法
に適合しないところの
法律
等はすべて無効であるわけであります。ですから、神様から見ますならば、
憲法
第八十一条の
規定
しておりますようなことはあり得ないわけなのであると私は思うのです。しかしながら、残念ながら、人の力をもっていたしましては、抽象的に
憲法
違反の
法律
等がすべて無効であるといいながらも、現実にその有効無効を見分けることができないことでありまするところから、たまたま
憲法
第八十一条を
規定
をいたしまして、そういうようなものについては
裁判所
の決定するところに従う、こういう意味を書いたものであると思うわけでありますが、この点はいかがでございましようか。
中村梅吉
20
○
中村国務大臣
池田委員
のお考えと同様に考えております。
池田清志
21
○
池田
(清)
委員
憲法
第八十一条に
規定
しておる
事柄
について二、三
お尋ね
をいたしますが、「一切の
法律
、
命令
、規則又は処分が
憲法
に適合するかしないかを決定する」と書いてあるところに、いわゆる処分という
規定
がありまするが、この処分は、
司法
処分、
裁判
、いわゆる
司法権
によって行う国の行為そのものも入るかどうかという点を明らかにお願いします。
中村梅吉
22
○
中村国務大臣
すべての
行政
、
司法
に関する処分が含まれておる、かように
解釈
をいたしております。
池田清志
23
○
池田
(清)
委員
同様なる
お尋ね
でありますが、ここに文言としては表われておりませんけれ
ども
、条約そのものはいかがでございましょうか。
中村梅吉
24
○
中村国務大臣
従来から条約は入らないものと
解釈
されておるようであります。
池田清志
25
○
池田
(清)
委員
憲法
第八十一条の
規定
の中で、
最高裁判所
は
終審裁判所
であるということを明らかにいたしております。この
規定
の半面からいたしまして、いわゆる
下級裁判所
もまたこの
権限
を有すると解するのでありますが、この点はいかがでありましょう。
中村梅吉
26
○
中村国務大臣
八十一条におきましては、
最高裁判所
が
終審裁判所
でなければならない、こういう
趣旨
を明記いたしておるのでありますから、
下級裁判所
ももちろん判断の
権限
を持っておると思います。
池田清志
27
○
池田
(清)
委員
先ほど来の
中村法務大臣
の
お答え
によって明らかに拝承いたしたのでありますが、このいわゆる違憲
訴訟
というものを何人が出すのか、つまり提訴者はどういう者であるかというのであります。つまり、先ほど来
お答え
をいただいておるように、この違憲
訴訟
そのものも、個人の基本的人権が、本来無効であるべき
法律
等の適用によって侵害せられたとする場合において提訴ができるわけだと思うのでありますが、そうすると、いわゆる提訴し得る者は基本的人権を侵害されたと称する個々の人である、こういうことに相なろうかと思うのでありますが、この点はいかがでございます。
中村梅吉
28
○
中村国務大臣
当事者は、結局
法律
、
命令
、規則あるいは処分等によって権利、利益を侵されたことを主張する利害関係人であるべきだと思います。私
ども
古い
法律
観念でありますが、
訴訟
については、昔から、利益なければ訴権なしという当然の原則がございますから、今日もこの原則は貫かれておるものであろう、かように考えております。
池田清志
29
○
池田
(清)
委員
提訴をする者が、無効であるべき
法律
等によって基本的人権を侵害せられたとする個々の者である、そして、
事柄自体
も個々の
事件
である、そして、
裁判所
はこれによって
憲法
に適合するかいなかを決定する、こういうことに相なるわけでありますが、さよういたしますと、本来無効であるべきところの
法律
等そのものは、
裁判所
によって決定があった後においてもなおかつ
存在
するということに相なるのでありまするか、この点はいかがでございますか。
位野木益雄
30
○位
野木
政府
委員
御
承知
のように、違憲判決の効力については見解が分れておるのでございますが、
政府
としては従来から個別的な効力説をとっておりますので、違憲の判決がありましてもその法令が失効するということにはならないというふうに考えております。
池田清志
31
○
池田
(清)
委員
今、位
野木
政府
委員
の
お答え
でありますと、本来そういう
法律
等そのものは
憲法
第九十八条によって無効である、それにもかわらず、その適用によって基本的人権の侵害を受けた者が
具体的事件
についてのみ救済を求めるのである、その結果は、違法であり無効であるべきところの
法律
等はずっと将来においてもその
改正
を見ない限りは存続する、こういう
お答え
になったわけでありますが、こういうことは、国から考えました場合において好ましくないことであると思うのです。というのは、前に
裁判所
の決定によりまして、
憲法
に適合するかどうかということの
具体的事件
の解決は得たのでありますけれ
ども
、本来無効であるべきところの
法律
等が現存することをそのまま認めておる限りにおいては、将来同じ
事柄
がやはり
裁判所
に提訴される、こういうことになるのでありまするが、私は、
憲法
上の問題といたしましては、本来無効であるべきところの
法律
等は、
法律
等そのものを無効ならしめるようにいたすべきである、そしてまた、
改正
する必要のある場合においては
改正
するようにいたすべきである、こういう考え方を持っておるものでありますが、この点については
政府
はいかがでございましょうか。
位野木益雄
32
○位
野木
政府
委員
個別的な効力説をとる場合でありましても、一たん違憲の判決が出ますと、
国民
は、将来同じような
事件
が出た場合に同じような判決が下るであろうということは期待できるわけでありますから、それに従って
司法
関係が処理されていくということが期待されるわけであります。のみならず、
行政
的、
立法
的に、それぞれ
行政
機関
、
立法
機関
においてその判決に応じて適当な処理がとられるというふうに考えております。
池田清志
33
○
池田
(清)
委員
ただいまの
お答え
でありまするけれ
ども
、本来無効であるべき
法律
等が、廃止するかあるいは
改正
しない限りは存続をする、こういう
お答え
になってしまうわけなのです。それではおもしろくないから、私は、本来無効であるべきところの
法律
等そのものをなくするように、あるいは
改正
するようにすべきである、こういう考え方を持っておるものでありますが、現在の
日本国
の
憲法
のもとにおいてはそのことは望まれないのだという
お答え
に集約されるのではないかと思うのです。すなわち、
裁判所
、ことに
最高裁判所
は
司法裁判所
である。そしてまた、違憲
裁判
そのものも、基本的人権を侵害せられたと称する者が個々の
事件
についてのみ救済を求めるものである。従って、それは個々の
事件
の解決でありまして、本来違法であり無効である
法律
等は現存するのである、こういうふうに
お答え
が集約されるのでありますが、私が主張いたしますように、
憲法
に違反するところの
法律
等そのものは現存することには間違いないのである。これは、私の考えといたしましては、その
憲法
に違反する
法律
等そのものの無効を宣言するようなことにいたすべきであると思うのでありますが、
現行憲法
のもとにおいてはそのことはできないのだ、こういうふうに今までの
お答え
で理解したのでありますが、その点もう一ぺん明らかに願います。
位野木益雄
34
○位
野木
政府
委員
今の
池田委員
の御意見は、
具体的事件
に即訴えを起こした場合のことを言われるのですか、あるいは、抽象的にある
法律
、
命令
が
憲法
に適合するかどうかについての判断を
裁判所
に求めるということが
現行憲法
上許されているということを意味するのでございますか、どちらですか。
池田清志
35
○
池田
(清)
委員
私の考えておりまするところは、
日本国憲法
第九十八条に
規定
いたしまするように、
憲法
に適合しない
法律
等は無効であるというのでありまするから、その無効なる
法律
がありましても、これは役に立たないことである、適用すべきではない、こういうふうに思うの、でありますけれ
ども
、それが人間としてわからないから、そういう無効なる
法律
によって基本的人権を侵害された者が救済を求める道として、
日本国憲法
第八十一条があるのである、——個々の
事件
について
裁判所
が決定をするということは今までの御
説明
でわかったのでありますが、私は、さらに進んで、無効であるべき
法律
等はすべてそのものがなくなるようにいたすのがよろしい、こう考えるのです。その点につきまして、今御説がありましたように、抽象的なる訴えということに当るかもしれぬと思うのでありますが、抽象的なる訴えということになった場合においては、
日本国憲法
の
現行
のもとにおいては、これを処理する権能は
最高裁判所
にはないのだ、こういうふうに承わりたいのでありますが、この点はいかがでございますか。
位野木益雄
36
○位
野木
政府
委員
いずれの場合におきましても、
現行憲法
ではむずかしいというふうに考えるのであります。特に、抽象的な違憲審査権、個別的な
事件
に即しないで抽象的にある法令が違憲であるかどうかということの審査を求めることが
裁判所
に対してできるかという問題につきましては、これはすでに先ほど
法務大臣
から
お答え
申し上げたように、
現行憲法
では許されないというふうに考えております。
池田清志
37
○
池田
(清)
委員
位
野木
政府
委員
の
お答え
によってわかったのでありますが、
法制局
が見えておりますから、
お答え
に違いはないと思いますけれ
ども
、
立法
に関与しておられます。
法制局
のお考えをこの際伺いたい。
野木新一
38
○
野木
政府
委員
最高裁判所
におきまして
憲法
第八十一条によりましてある
法律
、が違憲であるという判決が下った場合に、その違憲であるとされた
法律
はどうなるかという点につきましては、すでに御
承知
のように学説も分れておるようでございますが、
政府
といたしましては、従来から、いわゆる個別的違憲説と申しましょうか、
最高裁判所
の判決があっても、それによって当然
法律
がなくなってしまうものだ、失効して全部廃止になってしまう、そういうような考えではなくて、
裁判所
はその
事件
についてはその
法律
が違憲であるから適用しないという種の、いわゆる個別的違憲説の見解をとっている次第であります。従いまして、その跡始末といたしましては、まず、一般の関係人や
国民
などは、
最高裁判所
で違憲と判断した以上、同じような
事件
は同じように判断せよということで処理されるし、また、
政府
なり
国会
なりは、その
最高裁判所
の判決を尊重するなりして
法律
の
改正
なり廃止の
手続
をとっていく、そういうことになるのではないかと存じておる次第でございます。
池田清志
39
○
池田
(清)
委員
法務大臣
並びに
政府
委員
及び
法制局
の
お答え
を総合いたしましてよくわったのでありますが、これを繰り返して簡単に申しますと、
現行
の
日本国憲法
のもとにおきましては、抽象的な違憲
訴訟
というものは提起することができないのだ、こういう態度を
政府
はとっておるものだというふうに伺ってよろしいのですか。
中村梅吉
40
○
中村国務大臣
その
通り
であります。 それから、なお私からも申し添えておきますが、結局、先ほど御指摘のありましたように、個々の
具体的事件
について
司法裁判所
に訴えが起きまして、これが
最高裁判所
で最終的な判決があって、その
法律
、
命令
の違憲かどうかについて判断が行われた場合におきましては、直ちに
法律
がその効力を失うものといたしますと、
三権分立
の
精神
から申しまして、
司法
が
立法
機関
に優位するような形になってくるのではないかと思います。従いまして、先ほど
法制局
からも
お答え
がありましたように、
行政
機関
並びに
立法
府といたしましては、
最高裁判所
が最終的に違憲かどうかについて
憲法
に関係した判断を下しました場合には、良識をもってそれを尊重して、それに該当する部分については、適当の
機会
に
法律
の
改正
または廃止の
手続
をとるというのが
三権分立
の
精神
に合致するのではないだろうか考えております。
池田清志
41
○
池田
(清)
委員
ただいままでの
お答え
によりましてよくわかったのでありますが、私は、この際この問題について理想を申し上げます。ならば、やはり
法律
、処分等が現実に
憲法
に違背することがあり得るというふうに考えるものであります。違背するものがありまするならば、それは、
三権
の
おのおの
のところにおいて、すなわち、
法律
でありますならば
国会
において、
行政
処分でありますならば行
政府
において、
司法
処分でありますならば
司法権
の範囲においてこれを是正するようにした方が筋道であると思うのであります。さらに、一歩を進めまして、これらの
憲法
に違反する
法律
等の無効宣言をするような
機関
を置く必要があるとまず仮定をいたしまするならば、その
機関
は
司法権
だけに属するものであってはならない。何となれば、
裁判官
は
憲法
及び
法律
によって拘束をせられておるわけであります。
法律
によって拘束を受けるところの
裁判官
そのものが
法律
そのものについての違憲を判断するということは、
国会
は国権の
最高機関
であるということを侵害するやに思うのであります。先ほど来
中村法務大臣
が言われましたように、
三権分立
の建前から申しましても、
司法
機関
のみが
立法
府、行
政府
の上にあるがごとき考えが起るのでありますから、
法律
等の無効を宣言する
機関
を必要とするならば、その
機関
は、
司法権
にも属せず、
立法
権だけでも専用せず、あるいはまた
行政権
だけに専属をするというものであってはならず、
三権分立
の建前から申しまして、これら
三権
の上にあってそういうことをいたすべきものであると考えておるものであります。これは私の理想の考えでありまするから、
お尋ね
するのは何でありますけれ
ども
、
現行憲法
を離れて考えた場合において、
中村法務大臣
はいかにお考えになっておられましょうか。
中村梅吉
42
○
中村国務大臣
結局、
三権
の上にあるものは、主権在民の今日におきましては、
国民
以外にはないのではないか、また、あり得ないのみならず、そういう
機関
を作ることについては、これは根本的な問題があろうかと思います。従いまして、
現行憲法
のように、
三権分立
の
精神
をできるだけ貫きまして、一般
司法
を通して
司法裁判所
がそういうような
法律
の適否につきましても判断をいたしまして、その最終的判断が行われました場合においては、一つの判例としてある程度の既判力を持ち、また、
行政
機関
や、
立法
機関
であるところの
国会
等は、これをせいぜい努めて尊重するという建前をとって、主権在民、かつまた
機関
としては
三権分立
の
精神
を貫いていく、こういう行き方以外にはないのではなかろうか、かように感ずる次第であります。
池田清志
43
○
池田
(清)
委員
国民
審査の問題でありますが、
最高裁判所
裁判官
は、
政府
、が任命をいたしました後、
国民
審査を受けることに相なっておるわけであります。ところが、
わが国
のように、人口が多く、そしてまた、遺憾なことではありまするけれ
ども
、
国民
の
司法
に対する関心の乏しいところにおいては、この
国民
審査
制度
そのものは効果がないのだという説を聞くのであります。
現行
の
憲法
のもとにおいてはこれをどうすることもできないのでありまするけれ
ども
、こういうような試験済みの問題は、
憲法
改正
の
機会
等においてはいさぎよく適当に改めらるべきである、こういう考え方を持っておるのでありますが、
政府
におかれましては、こういう点についてはどういう御
所見
でございましょうか。
中村梅吉
44
○
中村国務大臣
憲法
施行以来、また、
最高裁判所
が構成をされまして以来、人選等につきましても、そう
国民
の指弾を受けるようなできごとはございませんでしたし、また、
裁判官
自身に
国民
の大きく指弾を受けるようなできごとも幸いございませんが、しかしながら、人間の行いまする人選でありますし、また、
裁判官
に就任いたしました人も自然人であって人間でありますから、私は、万一に備えて、この
国民
審査という
制度
は、——従来は何も具体的なものにぶつかっておりませんから、
国民
審査は価値がないように言われる向きも相当ありますが、私自身といたしましては、万一に備える手段といたしまして、この
規定
の価値は相当あるものである、かように考えておる次第であります。
裁判官
におきましては、一たび就任をいたしましたならば、定年に達するまで免職その他の方法もございませんし、一にかかって万一のときがありました場合、——ないことを望むのでありますが、ありました場合における方法として
国民
審査の
憲法
の
条章
というものは相当本質的には意義があるのではないか、かように考えます。もう一つは、
裁判官
の数が現在は十五名でございますし、どういう人が
裁判官
であるかすら一般
国民
に周知徹底していない向きもありますが、これは、今回御
審議
をいただいておりまする法案のように人員が減員されて参りまするならば、
国民
審査の価値も一そう向上してくるのではないだろうか、かように考えておる次第であります。
池田清志
45
○
池田
(清)
委員
御
承知
のように、
日本国憲法
は、
下級裁判所
という
法律
上の言葉を、五ヵ所ですか、明らかに
規定
をいたしております。御提案になっておりまする
裁判所法等
の一部を
改正
する
法律案
におきましては、すべて
下級裁判所
という文字を削ってあります。このことは、
憲法
そのものが期待と申しますか望んでおるところの
下級裁判所
というものが、
法律
の上においては用語としてなくなってしまうということになるわけです。ただ、ここに一つ、
昭和
二十二年の
法律
第六十三号の
下級裁判所
の設立及び
管轄区域
に関する
法律
においては
下級裁判所
という
法律
上の言葉が残っております。そしてまた、
最高裁判所
小法廷というものは、
中村法務大臣
並びに
政府
委員
の
説明
によりますと、
下級裁判所
ということを言うておられるのであります。そういたしますと、
裁判所法
におきましては
下級裁判所
というものが何ら
法律
用語としてなくなってしまっておるところから考えまして、
憲法
の期待し予想しておるような
趣旨
にもとるのではないかと思うのでありますが、この点はどういうことでございましょうか。
位野木益雄
46
○位
野木
政府
委員
改正
後の
裁判所法
におきましても、
下級裁判所
の字句はなくなっておりません。第一条もそのままでございますし、六十九条、八十条等でも
下級裁判所
という言葉は残っております。ただ、ほかの条文で今まで
下級裁判所
という言葉があったのを
改正
しようとしておるものがありますが、これは、新しく設けられます
最高裁判所
小法廷というものを条文上
規定
するための技術的な必要においてそういうようにいたしたのであります。
池田清志
47
○
池田
(清)
委員
最高裁判所
小法廷は
下級裁判所
である、——
下級裁判所
でありまするならば、
昭和
二十二年
法律
第六十三号によりまして、少くともその
管轄区域
については明らかにせられるべきではないかと思うのであります。
高等裁判所
以下の——以下と言っては語弊がありましょうが、
高等裁判所
、
地方裁判所
、
家庭裁判所
、簡易
裁判所
は、それぞれ
管轄区域
があるのでありますが、なぜそういうのがあるかというと全国を幾つかにわけまして、数個のこれらの同等の
裁判所
かあるからであると思います。
最高裁判所
小法廷は一口に
最高裁判所
小法廷と申しまするけれ
ども
、
法律案
によりますると六つの法廷を作られることになっております。その六つの法廷
おのおの
が
最高裁判所
小法廷であると伺うのでありますが、さすれば、その六つの小法廷は
おのおの
対等
独立
である。さすれば、ここに数個の同格の
下級裁判所
があることになりまするので、理論から申しますと、やはり
管轄区域
というものが明らかにせらるべきではないかと思うのでありますが、この点はいかがでございましょうか。
位野木益雄
48
○位
野木
政府
委員
最高裁判所
小法廷は、第二条の第一項に、
最高裁判所
小法廷、それと、第八条の二におきまして、小法廷は小法廷
判事
で構成する、こういうような字句がありますが、こういうような字句から、国法上も一つの
裁判所
であるというふうに考えております。この第八条の二の
規定
は、たとえば、今の
裁判所法
の十五条をごらんになると、同じような字句になっております。「各
高等裁判所
は、
高等裁判所
長官及び相応な員数の
判事
でこれを構成する。」、これは結局、小法廷いうのは全部まとまって一つの国法上の
裁判所
を構成しているということを意味しておると考えております。そういたしますと、上告
裁判所
の性質と、それから
最高裁判所
に付属しているということからして、当然
管轄区域
が全国に及ぶと考えております。
最高裁判所
につきましても、現在は
管轄区域
がどこというような
規定
はないわけです。性質上当然そういうことになると考えておりますので、同じようなことと考えております。
池田清志
49
○
池田
(清)
委員
最高裁判所
は、いわゆる
最高
である、そしてただ一つである、この意味におきまして、
日本国
全体を
管轄
するということが当然に考えられるという御
説明
はよくわかります。しかしながら、
最高裁判所
小法廷なるものは
下級裁判所
である、こういうふうに言うておられるわけでありますし、ただ一つの
裁判所
であるということの御
説明
はわかったのでありますが、
下級裁判所
であるという点において、ただ一つの
裁判所
であるにいたしましても、当然にこれが全国を所管するということは生れてこないように思うのですが、これはどうでしょうか。
位野木益雄
50
○位
野木
政府
委員
先ほど申しましたような
理由
から、特に全国を
管轄
するというふうに書かなくても、
管轄区域
について疑いを生ずるおそれがないと考えております。これはまた書いてもいいのですが、第二条の二項でも、これの反対
解釈
からいたしますと、言えないことはないというふうに考えております。書いてもよろしいのですが、書かなくても、先ほど申しました上告
裁判所
という性質、
最高裁判所
に付置される、そうして共同して上告
事件
を処理するというふうなことから明瞭であると思います。
池田清志
51
○
池田
(清)
委員
最高裁判所
小法廷が下級の
裁判所
であるということはよくわかって参りました。その
裁判所
は、
高等裁判所
、
地方裁判所
と同じような意味におきまして、これまた
裁判所
においては
独立
であるわけです。
裁判所
として有しまする権能そのものは、いずれもこれを具備しなければならないわけ合いのものであると思うのです。ところが、
改正
せんとする法案によりましては、
裁判所
としてのいろいろな機能を具備していない点が多々あるのであります。たとえて申しますと、違憲
事件
についての実質的な
裁判
権というものはないと言うても過言ではないと思うのです。
憲法
違反の
事柄
でありまするならば
最高裁判所
に移すということになっておりまするところから、抽象的には
裁判
権がある、こう言われましても、実質上は違憲
裁判
権はないのではないかということを私は疑問としておるものでありますが、この点はいかがでありましょうか。
位野木益雄
52
○位
野木
政府
委員
御指摘の
通り
、新しく
憲法
判断をするという場合、あるいは違憲の判断をする場合には、小法廷は
事件
を
最高裁判所
の方に送らなければならぬ、ということになっておりますが、これは、上告
事件
を合理的に処理するために分担をした、そういう点は
最高裁判所
でやる、それ以外の
事件
は小法廷で分担をしろ、こういうふうな考え方でありますので、特に小法廷について違憲審査権を奪うと申しますか、不当に権能を狭めるためにやるというふうな
趣旨
ではない、それ以外の上告
事件
についてはもう
最高
の
権限
を持っておるというふうな考え方であります。合理的な
理由
に基いて、そういうふうにすることはむしろ至当である、そういうふうに考えます。
池田清志
53
○
池田
(清)
委員
最高裁判所
小法廷が
憲法
第八十一条によりまして違憲についての決定をする
権限
を有するということは、先ほど来
お尋ね
をいたし、
お答え
を得ておるところであります。ところが、上告についての
裁判
権のありますることは明瞭に伺っておるのでありまするが、肝心な違憲
裁判
については、抽象的には持っておるとは言うても、実質的には持っていないのじゃないか、こういうことを懸念いたします。このことは、つまり、
最高裁判所
小法廷というその
裁判所
の
裁判
権について、
憲法
第八十一条の望んでいることが実現していないじゃないかというふうに考えるわけでありますが、もう一ぺん
お尋ね
いたします。
三田村武夫
54
○
三田
村
委員長
位
野木
君にちょっと申し上げますが、
速記
席に聞き取れない点があるようですから、もう少し高声に御答弁願います。
位野木益雄
55
○位
野木
政府
委員
憲法
八十一条は、御
承知
のように、
最高裁判所
の
権限
を
規定
いたしております。小法廷は
憲法
上の
最高裁判所
ではございませんから、八十一条は直接には小法廷に適用がないわけであります。
池田清志
56
○
池田
(清)
委員
この点はお説の
通り
です。ところが、先ほど
お尋ね
いたしまして
お答え
を得ておりまするように、
最高裁判所
は終審の違憲——違憲と言っちゃ語弊がありますが、違憲
事件
を決定する
権限
を有する
裁判所
である、こういうことを表面に打ち出しておるのであります。その反面といたしまして、いわゆる
下級裁判所
も違憲
事件
について決定をする
権限
があるのでありますな、という質問に対し、さようである、こう言われたところから申しまして、
最高裁判所
小法廷なるものが
憲法
八十一条の予想するような
憲法
事件
についての
裁判
権を持っていないのではないかということを
お尋ね
しているわけです。もう一ぺん一つ伺いたい。
位野木益雄
57
○位
野木
政府
委員
失礼いたしました。問題点を十分理解しておらなかったのでありますが、八十一条は、各
下級裁判所
がすべて違憲審査権を持たなければならないというところまでも保障しているものとは考えないのであります。合理的な
理由
があれば、たとえば、ある
憲法
問題を含む
事件
については、
地方裁判所
に訴えを乗せるということについて、簡易
裁判所
では扱わないということについてあえて差しつかえないというふうな考え方を持っておりますが、同様な
理由
で、小法廷で新しく
憲法
判断をするという場合、あるいは違憲の判断をする、という場合には、大法廷でやるということにして、小法廷にそういうことをさせないということにしても差しつかえないという考え方を持っております。
池田清志
58
○
池田
(清)
委員
裁判所法
によりますと、
高等裁判所
、
地方裁判所
、
家庭裁判所
、簡易
裁判所
、
おのおの
職務
の代行を
命令
する
権限
を有しております。ところが
最高裁判所
小法廷については、その
権限
が、同じ
裁判所
でありながら剥奪されておる。これはつまり
最高裁判所
小法廷というものの
裁判所
としての機能にこれだけ欠けておるものであると思いますが、いかがでしょうか。代行を
命令
する下命権です。
位野木益雄
59
○位
野木
政府
委員
これは、各場合の
司法
行政権
をどのように配分するかという問題でありまして、この
最高裁判所
小法廷というものは、
最高裁判所
と非常に密接な関係があるということから、それから、そのほかの合理的な
理由
から、
司法
行政
事務
は小法廷で
独立
して扱わせないで、最小限度のものを除いて
最高裁判所
に扱わせた方が適当であるというふうな考え方をいたしておりますので、その建前に従って
最高裁判所
に処理させるという考え方であります。
池田清志
60
○
池田
(清)
委員
裁判所
は
司法
行政
事務
もつかさどっておりますことは、申し上げるまでもございません。
裁判所法
によりますと、
高等裁判所
も、
地方裁判所
も、
家庭裁判所
も、簡易
裁判所
も、
おのおの
法律
的根拠によりまして
司法
行政
事務
をつかさどっております。ところが、
最高裁判所
小法廷におきましては、本来の
裁判所
としてのフルの
司法
行政
事務
をつかさどらしめないで、ほんの一部分の
司法
行政
事務
だけつかさどらせることにして、あとは
最高裁判所
で行うことに相なっておりますが、これは、
最高裁判所
小法廷というものが
独立
の
裁判所
であるという点から考えまして、
司法
行政
事務
を執行するところの権能なるものをひどく
制限
しておると思うのですが、いかがでしょうか。
位野木益雄
61
○位
野木
政府
委員
最高裁判所
小法廷も
裁判
機関
としては
独立
の
機関
でございますから、
最高裁判所
と全く
独立
いたしまして、別個の、たとえば上告
裁判所
とでも申しますか、そういうふうな名称をつけて、全く別個の
独立
の
裁判所
とするということも考えられるわけです。しかしながら、そういたしますと、別にやはりそれぞれの
司法
行政
機関
を置かなければいけない。たとえば、
事務
局を置く、あるいは長官なんかも置く必要がある、だろうというふうにもなってくるのでありますが、この
最高裁判所
小法廷というものは、
最高裁判所
と共同して上告
事件
を処理する、いわば
最高裁判所
のある面におきましては代理
機関
というふうな見方もできるような非常に密接な関係にある。そういうものは、むしろ、別のものにしないで、
最高裁判所
の傘下に置いて、これに付属して設置するということが適業ではないかというふうな考え方をいたしたのでありまして、そうして、その
司法
行政
事務
も別にやらないで、最小限度のものを除いて
最高裁判所
が一緒に取り扱うということにした方が便利である、その方が合理的であるというふうな考え方でおるわけであります。
池田清志
62
○
池田
(清)
委員
日本国憲法
によりますと、第七十七条、
最高裁判所
は
司法
事務
につきましての
立法
権を有します。その第三項によりまして、その
立法
権は
下級裁判所
に委任することができると相なっておりますが、現在この
司法
立法
権についての委任の
状況
はいかがでございますか。
位野木益雄
63
○位
野木
政府
委員
この点については委任の実例はないようであります。
三田村武夫
64
○
三田
村
委員長
ちょっと
委員長
から発言いたしますが、ただいま
池田委員
の御質問に対する御答弁を伺っておりますと、わからない点があるのです。
行政
上の便宜のためということをよくお使いになりますが、ここは
立法
をやっているのでありまして、
行政
上の便宜のために
立法
上の建前がゆがめられてはいけない点があると思います。今の
池田委員
の御質問に、
最高裁判所
小法廷は
独立
の
裁判所
だという御答弁であります。同時に、
最高裁判所
の
司法
行政
上の便宜のために
司法
行政
の一部分は
最高裁判所
でやるんだというような御答弁があったようであります。この点一つはっきりと、位
野木
政府
委員
の立案者の立場からと、
最高裁判所
は実際に
司法
行政
を担当されておる立場からと、この
司法
行政
上の便宜のためじゃなくて
裁判
司法
の立場から一つはっきり割り切った御答弁をしていただきたいと思います。
中村梅吉
65
○
中村国務大臣
先ほど私の
お答え
いたしました点で一部訂正を必要とする点がございますので、申し上げておきます。 先ほど、
憲法
第八十一条の違憲関係の
事件
についても
最高裁判所
のほかに
下級裁判所
もひとしく
裁判
をする権能を持っているか、こういう御質問に対して、その
通り
でありますと
お答え
をいたしたのでありますが、今回提案をいたしております
最高裁判所
小法廷は、かねがね申し上げております
通り
一種
の
下級裁判所
でございますが、この
最高裁判所
小法廷は、大局的に申しますと、本質的には
最高裁判所
と
最高裁判所
小法廷とは全体として上告
事件
を取り扱う、こういう建前でございます。ただし、
憲法
に違反をしておる、
法律
、
命令
、処分等が違憲の疑いがある、また当事者からも原
審判
決は違憲であるという主張をされたものについては、小法廷はみずかち判断をしないで、
最高裁判所
に
事件
を移すというのがこの提案の
趣旨
になっております。また、判例の統一に関するような
事件
も、
最高裁判所
に判断をしてもらって小法廷は判断しないという建前をとっておりますから、本質的には
下級裁判所
に相違ありませんが、
一種
の特殊の
下級裁判所
でありまして、そういう意味から申しますと、問題別に、
最高裁判所
と小法廷は、上告
事件
全体のうちから、そういう特殊の重要な案件について
最高裁判所
が
裁判
権を持ち、その他の一般上告
事件
について小法廷が
裁判
権を持つ、こういう建前に本質的にはなると思うのであります。従いまして、端的に申しますと、この
最高裁判所
小法廷は、
一種
の
下級裁判所
ではありますが、
高等裁判所
、
地方裁判所
等のような
下級裁判所
ではありませんで、特殊の
下級裁判所
である、こういうことでございます。この
趣旨
を、先刻の御質問の際には、
下級裁判所
という従来の
高等裁判所
、
地方裁判所
、
家庭裁判所
等の
下級裁判所
という考えで、お説の
通り
であるという
お答え
をいたしましたが、その点は、内容的に分析いたしますと、今申し上げたようなことになりましたので、ここにあらためて、先刻の
お答え
のうち、今申し上げました部分について訂正をいたしておきます。
位野木益雄
66
○位
野木
政府
委員
どうも
説明
が不十分で申しわけありませんが、別の
裁判所
として必要な
司法
行政
事務
も普通のほかの
下級裁判所
と同じ程度にやらせる機構も作ることはできるのでありますが、特別のものでありますから、これをそういうふうにしないで、
最高裁判所
に付属しておいて、
司法
行政
事務
は最小限度のものを除いて
最高裁判所
にやらせるということにする方が、
司法
行政
事務
と申しますか、これを全般的に
独立
きせるよりは合理的である、そういうふうなことを申しておるのでありまして、そういうふうに
立法
する方がベターである、こういうふうな考え方をしております。
池田清志
67
○
池田
(清)
委員
最高裁判所
小法廷につきまして数個の角度から
お尋ね
を申し上げたのでありますが、
お答え
によってやや明らかになりましたように、
最高裁判所
小法廷は
下級裁判所
である、
独立
の
裁判所
である、こう申しながら、その
独立
の
裁判所
としての権能、機能というものが数個の点において制約をせられておるわけであります。
最高裁判所
小法廷は
下級裁判所
である、
独立
の
裁判所
である。こう申しながら、その
独立
の
裁判所
としての権能、機能というものが数個の点において制約をせられておるわけであります。しかも、
最高裁判所
小法廷は上告の
裁判所
である。普通の
事件
でありまするならば、これこそ
最高
の
裁判所
であるわけであります。そういうような大事な
裁判所
であるにかかわりませず、その機能に制約されておるということは、どうも妙に考えるのであります。されば、この
改正
案においては、三審
制度
であると言うし、あるいはまた四審
制度
であると言う等、異議の申し立ての
事柄
についてもなかなか
議論
の多いところであり、
最高裁判所
小法廷は、いわゆる中三階とでも申しまするか、そういう状態で、
法律
上から見まして不徹底である、すっきりしないものであると私は考えるものでございます。
最高裁判所
そのものは
憲法
の
規定
するところでありまするから、それにつきましての機構等をそう簡単に改めるということもどうかと思しまするし、一方また、
事件
が輻湊する関係からいたしまして、それを解決する方法として
最高裁判所
小法廷案なるものを考案されて提案されておる
趣旨
はよくわかるのであります。その
改正
案につきましては、私は、先ほど申し上げまするように、不徹底である、不明確である、こう申し上げておるのでありますが、私見といたしましては、現在
最高裁判所
において大法廷と小法廷というものが現存しておる、そうして、その法廷において取り扱う
事柄
も明らかにされておる、
最高裁判所
小法廷そのものも
最高裁判所
でありまして、
現行
のもとにおいてはいわゆる三審
制度
というものが維持されておるのであります。そこで、思うに、大法廷と小法廷という現在の
制度
が
最高裁判所
の中にありまするそのものをそのまま認めまして、ただ大法廷は全員をもって構成するということを改めて全員でなくて、
最高裁判所
裁判官
のうちのある人数をもって構成するようにいたし、そうしてまた、その小法廷は、これまたある人数で構成するようにするということになりまするならば、先ほど来私がいろいろと指摘しておりまする
事柄
がより明瞭に解決せられることに相なると思うのであります。これは私見でありますから、この段階におきましては
政府
御
当局
の
お答え
を受けるまでもありませんが、またそのほかいろいろと質問の
事柄
はありまするけれ
ども
、時間も相当進みましたし、今日はこの程度で打ち切らしていただきます。
三田村武夫
68
○
三田
村
委員長
本日はこの程度にとどめ、次会は公報でお知らせすることとし、これにて散会いたします。 午後零時三十八分散会