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1957-03-22 第26回国会 衆議院 法務委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年三月二十二日(金曜日)    午前十一時二十六分開議  出席委員    委員長 三田村武夫君    理事 池田 清志君 理事 椎名  隆君    理事 福井 盛太君 理事 横井 太郎君    理事 菊地養之輔君       犬養  健君    小島 徹三君       小林かなえ君    高橋 禎一君       林   博君    松永  東君       山口 好一君    横川 重次君       神近 市子君    佐竹 晴記君       田中幾三郎君    古屋 貞雄君       吉田 賢一君    志賀 義雄君  出席国務大臣         法 務 大 臣 中村 梅吉君        国 務 大 臣 大久保留次郎君  出席政府委員         警  視  監         (警察庁警備部         長)      山口 喜雄君         法務事務官         (矯正局長)  渡部 善信君  委員外出席者         検     事         (刑事局公安課         長)      勝田 成治君         検     事         (刑事局参事         官)      川井 英良君         専  門  員 小木 貞一君     ————————————— 三月二十二日  委員清瀬一郎君及び片山哲君辞任につき、その  補欠として小島徹三君及び古屋貞雄君が議長の  指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  法務行政及び人権擁護に関する件     —————————————
  2. 三田村武夫

    ○三田村委員長 これより法務委員会を開会いたします。  法務行政及び人件擁護に関して調査を進めます。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。古屋貞雄君。
  3. 古屋貞雄

    古屋委員 前回の当委員会で審議いたしました菅生事件についてだんだん調べて参りますと、非常に問題が重大性を帯びてますので、詳しい具体的事実について関係当局から御答弁を願いたいと思います、が、先に法務大臣にお尋ねいたしたいと思いますのは、本件真相が明らかになりまして、国民の持っておりまする疑惑が解明できませんと、第一に捜査機関に対する国民信頼を失うという重大な結果が起きるわけなんです。さらに、その結果、国民の従来持って参りました裁判に対する絶対的な信頼というものにひびが入るというような重大な関係でございますので、どうか慎重な態度で御答弁をいただきたい。  と申しますのは、私どもが調査いたしました事実並びに本件被告でございまする後藤秀生新聞並びにその他で発表いたしておりまする事実を総合して結論を申しますならば、まず第一に、土地解放に関する菅生村の地主小作組合との闘争が原因をなしまして、警察地主が結託をして後藤生命を奪うというような計画が行われた。そうして、二十七年の一月十二日には、暴漢を雇って参りまして、後藤秀生殺害すべく、後藤秀生の家を襲撃さしております。従いまして、襲撃はいたしましたけれども後藤は不在でございましたので、後藤父親の彦馬という人は、暴漢からかまでみけんを切られ、その他暴漢のために全身に大きな負傷を受けまして四ヵ月間入院いたしまして、現在は回復はいたしましたけれども不具者になってしまった。こういう事実が一つあるわけであります。そうして、その次に起りましたのが本件警察爆破事件、それから、その次に後藤殺害されようとしましたのは本日御質問申し上げまする大分刑務所の中で、しかも死刑囚の入っておりまする房に一緒に入れられておる事実、警察官を三人殺害いたしましてしかも刑務所を脱走いたしました安藤という暴漢、しかも死刑囚のこの人間を使って刑務所の中で後藤殺害計画され、殺害をしようといたしまして、後藤刑務所の中で数回にわたって一ヵ月以上の傷を加えられた、こういうような経路後藤は述べております。果してさようなことがあったかどうか、しかも、後藤その他の関係者が非常に疑問を持ちますのは、みずから市木と称する偽名を使って現職当時の戸高巡査部長共産党に近寄って、しかも、後藤秀生に言わせますと、そのダイナマイト菅生駐在所に打ち込んだのは当時の市木春秋であって、戸高巡査部長であるということを極力主張しておりますが、本件事件がございました翌日からついこの間まで、戸高巡査は家族四人で東京に住まいしたことが前の委員会で明らかになりました。国家警察警備課に勤めておったということが明らかになりました。さような関係から総合して、果してこれはさような計画をもって戸高巡査を使って背後にあるものが日共弾圧のために活動したのであるかどうか。不幸にいたしましてさような事実だといたしますならば、これは重大な問題であります。国家司法権に対する信頼捜査機関に対する信頼に重大な関係を持ちますので、この点について私は法務大臣に承わりたいと思うのであります。  まず私が申し上げたいことは、これは本日は検事総長にも御質問申し上げて明快な御答弁をいただきたいと思うのでありますが、少くとも被告後藤秀生起訴いたします起訴状の中に、氏名不詳の者からダイナマイト後藤たちが受け取っておるということが書かれておる。その氏名不詳人間というのは、すなわち当時の市木であり、今回はそれが戸高巡査であるということが明確になっておりますので、かような場合において爆発物の授受をいたしたことは、すでに、当時捜査されました広石検事後藤秀生外四名に対しまする爆発物取締罰則違反起訴いたしますときに、氏名不詳人間ダイナマイト後藤に渡したということは明らかになっております。それから、その後、当時被疑者でありました菅忠愛調べ検事さんから、市木がしたためたという脅迫状を示されて、市木春秋という者が菅生駐在所脅迫状を送ったということも明らかになっておる。こういう工合に明らかになって参りまして、しかも、一審の証言の中から、村田というダイナマイトを売った人間証言がございますし、菅忠愛はこれがために二年の懲役を言い渡され、五年の執行猶予になっておりますので、菅忠愛の手に渡りますまでの爆発物そのものダイナマイトが、どういう経路忠愛のところに預けられ、忠愛が処罰を受ける関係になったか、という経路から申しますと、これまた氏名不詳の者ということになっておりますが、当時検察官においても警察においても、戸高巡査すなわち市木春秋なることは明らかになっておったのであります。従いまして、法務大臣に承わりたいのは、爆発物取締罰則違反に基くりっぱな被疑者として戸高巡査が照明をされておる姿に相なっておると私は思います。また、本人がこの十四日に共同の新聞記者にお会いしたときに、ダイナマイト自分関係があることを認めております。かような関係から申しますならば、これは当然に被疑者として捜査線上に浮んで参りましてこれをつかまえなければならぬと私は信ずるのであります。しかるに、先日山口警備部長は、会うことは会ったし、相談を受けたことはあるけれども、どこへ行っているのかわからぬというような、当委員会における私の質問に対する答弁を受けたのですがいかがでございましょうか、捜査過程においてかような事実が明らかになったような場合においては、たといそれが警察官であろうと、どなたであろうと爆発物を受理したという事実が明らかになれば、被疑者として即刻これは捜査線上の人物として逮捕しなければならぬ、逮捕の手続司法警察なり検察庁はすべきだと思うのですが、法務大臣のお考えはどうでありますか。
  4. 中村梅吉

    中村国務大臣 御質問の中には、警察担当の大臣からお答えを申した方がよろしいと思います点もございますが、私どもの所管に関することを申し上げます。  実は、この事件につきましては、いろいろ被告からも抗弁が出ております。法務当局といたしましては事件真相を、たといどういうことがあろうとも、できるだけ明確にすることが法務当局任務であると心得ております。かような観点から実はすでに御承知のことと思いますが、この事件当時大分県の警備部長をいたしておりました小林という警備部長検察官から証人に申請いたしまして、この二十五日の公判にこの小林警備部長証人として取調べを受けることになっております。なお、問題の戸高何がしという者も、先だって検察官から証人申請手続をいたしまして、二十五日に取調べになるか、あるいはその次になるかは裁判所の都合でありますが、いずれ近く戸高本人についても公判廷で取調べがあるはずになっております。われわれ法務当局といたしましては、すでに事件公判に付されておりますので、公判の審理を通して真実を明らかにすることがわれわれの任務である、かように考えて取り進んでおる次第でございます。  なお、後藤が、未決勾留死刑囚一緒の房に入れた、こういうことを言っておるという話でございましたが、この点は、私の方で取り調べたところによりますと、死刑囚ではありませんで、安藤何がしという者は、警察官殺害した事件でありますので、なるほど死刑を予想されるような被告人ではありますが安藤と同じ棟の房に後藤が入っておったことは事実のようであります。しかしながら、同室ではないので、後藤は同じ房と言っておるように今お話でございましたが、私の方の取り調べたところによりますと同じ棟の房でありまして、部屋は違うようでございます。  さような事情になっておりますので、この点をお答え申し上げておきたいと思います。
  5. 古屋貞雄

    古屋委員 私が先刻同一房だと言ったのは誤まりでございます。  第一に、戸高に関する関係については、裁判中であって、証人だということであるから、それによって明らかにしたい、この点はごもっともだと思うのでありますが、その点を大久保国務相並びに警察山口警備部長が参りましてから十分詳しくお調べの結果をいただいて、なるほどさようならば縛らなければならない状況に置かれておるのだということは法務大臣も納得いくことと思いますから、それはあと回しにいたしまして、ただいまの刑務所の問題を、私、お尋ねしたいと思います。  まず第一に、これは渡部矯正局長からの御答弁でけっこうでありますが、私が一々具体的な御質問を申し上げますから、これに対する御答弁を願いたいと思います。と申しますのは、後藤被告は当時未決におったのですが、数回殺されようとした事実がございますから、この点を私は申し上げます。なお、同一房ではないが、同一舎に、第一拘置所ですか拘置舎ですか、そこにおられて、私が御質問申し上げたいのは、安藤文雄という、今の警察官を殺した殺人前科のある男が、後藤の房をかぎを持ってきてあけて、あばれ込んで暴行を加えておるという事実があるから、私は承わりたい。  第一は、昭和二十八年の十二月二十日のことであります。これははっきり申し上げましょう。その安藤文雄というのが、当時相被告でありました石松信夫、この石松信夫は第二舎の方の別の房に収容されておったのですが、両方からやられたのでありまして、その安藤後藤を、運動場において、つべこべ言うからお前を殺しちゃうぞと言っておどかした事実があります。それから、もう一つは、運動場バットでなぐられたり、運動場ですから輪を投げて遊ぶところらしいのですが、その輪投げ台で非常に強くからだ中をぶんなぐられた。これは刑務所の中でありますから、一分か二分間はやむを得ないといたしましても、五分も十分もこういう現場が続けられるはずはないのですが、それが続けられまして、一ヵ月の傷を受けておる。これがまず第一の事実。看守が三人ここに立ち会ってはおったけれども、これを制止しようとしなかった事実。従って、だれがとめたかと申しますると、同僚の他の被告が出てきてとめたということです。従って、この事実について上司抗議を申し込みまして、かようなことをされたんでは、未決勾留をしておる他の被告たち生命が危い、何のために一体看守がついておるのかということで抗議を申し込んだ事実があります。上申書もあるそうですから、それはお調べ願えればわかると思います。この第一の問題は、二十八年の十二月二十日のことなんです。さらに、二十九年一月二十八日にも、それと同じようなことが繰り返されておる。さらに、これは同じ二十九年の二月六日です。このときは、安藤文雄から両眼をやられ、急所をけられて、非常に大きなけがをいたしました。しかも、後藤が長い髪の毛であったので、わしづかみにつかんで引きずり回した。五、六百本の頭の毛が抜けてしまって、あとで非常に血が出てくるという状況だそうですから、相当なことだと思うのです。そういうような事実が第二回目にある。そこで園田という看守部長にそのことを申し出て、自分がこんなに刑務所の中で暴行を加えられておるのに、看守さんどうしてこれをとめてくれないか、どうしてやった男を処罰してくれないか、こういうことを要求いたしましたけれども、仕返しがこわいから、お前仕方がないじゃないかということで葬られてしまったという事実があるようです。ところが、その安藤の言うには、おれはどうせ死刑囚なんだ、死刑をされるんだ、巡査を殺しておるし、監獄を逃げ出しておる、しかしお前だけは殺してしまうぞというようなことでしょっちゅう何かのすきには暴行を加えられた。一番ひどいのは、昭和二十九年四月二十一日、この日は、——後藤の房は独房であって四〇室です。ところが、安藤の房は一七室です。相当離れておるところです。一七室の安藤が四〇室に入っております後藤に対して、かぎをあけてこの中にあばれ込んできて暴行しておる。この点は、私は、運動場において多少の暴行が加えられるということはあり得ると思いますけれども安藤かぎをあけて後藤部屋の中に入り込んで暴行を加えたというのは、何か計画的な、しかも看守がこれを監督しておりますところの上司からの了解を得なければできないことだと思う。房の中で非常に大きなけがをさせられた。しかし、後藤が幸いに相当気性の張った男ですから、反撃をいたした。しかもこれは二十分も経過するまで他の者が出てこない。そこでようやく後藤が助かったことは助かったのでありますけれども後藤担当看守は一向これを制止することができずして、このときも二週間以上三週間になんなんとするけがをさせられて、そうして非常に後藤は苦しめられた。  ここまでの経過を見ますというと、後藤に言わせるならば、警察がみずから駐在所を爆破して、その人間をどこかに逃がしてしまって、隠してしまって、その捜査過程に、当時の市木春秋警察官がおるにかかわらず、それを逃がしておいて、その留守に自分刑務所に引っぱられて、そうして、自分殺害してしまえばこの事件はうやむやになる、第一審の判決通りになってしまうというような疑惑後藤が持つことは、私はこれは無理からぬことだと思う。後藤共産党のキャップだから、後藤秀生を殺し——、まず第一に、この事件の前に自分の家を襲撃されて、父親はかたわになった。しかも、今度は自分刑務所に来れば、こういう目にあわされる。数回にわたってあわされておる。こういうような考えを持って、本日私は法務委員会事務の方にお調べを願うということで調べていただきましたが、本人自身は、この法務委員会に、この当時の被害状況を詳しく書いて、被害状況申立書を出しておるということですが、こちらには出ておらぬということになれば、刑務所付近でなくした。私はその控えを持っておる。この中に暴行のことは全部書いてある。そうなりますと、後藤がそういうように思うことは当然じゃないでしょうか。法務大臣、どうでしょう。この点の具体的事実があったかなかったかということは別といたしまして、おそらくその事実を調べた者が——本人控えを持っておる。法務委員会に三十年九月二十八日付で出したと言っておりますけれども法務委員会に来てないですから、そうすると途中でなくなったものと思いますが、こういうような、計画的か何か知りませんが、経過を見たときに、後藤がそういう疑いを持ち、後藤の入っている房に一緒未決勾留されている人たちが持ち、後藤弁護人並びにその他の関係者が持つことは無理からぬことではないかと思うのですが、さような経過から判断いたしまして、後藤考えることはひねくれているとお考えになるか、すなおに考えているような関係になるのか。ちょっと無理でしょうが。今私の申し上げたような具体的事実があったとするならば、法務大臣のお立場からは、——私はこれは自由を奪われている後藤立場からいたしますとそう考えるのが当然ではないかと思うのですが、いかがでございましょうか、その点を御答弁願いたいと思います。
  6. 中村梅吉

    中村国務大臣 矯正局長から事実関係について先に答弁するようにいたしたいと思います。
  7. 渡部善信

    渡部(善)政府委員 大分刑務所後藤未決として収容されております間に安藤それがしから暴行を受けたという点でございます。この点は、後藤昭和二十七年九月二十五日に大分刑務所収容されているのでございますが、昭和三十年の六月五日には福岡刑務所移監されているわけであります。その間のできごとなんでありますが、この件につきましては、実は、後藤の方から、昭和三十年九月十三日、福岡刑務所移監になってからあとでございますが、大分地方検察庁の方に告訴が出まして、ただいまお申しのような点につきまして検察庁で詳細に捜査をされたわけであります。いずれもその事実なしとして、昭和三十年十二月二十九日に不起訴処分に相なっておるのでございます。  大体の点を申し上げますと、後藤未決として大分刑務所収容中、やはり未決で入っておりました安藤文雄、これは強盗殺人、同未遂というような罪名収容されておったのでありますが、その者といざこざを起しまして、と申しますのは、この安藤という者は前に殺人前科もある男でございます。従いまして、殺人傷害前科犯があるわけでございますが、それがまた強盗殺人等罪名で入って参りまして、自分としては刑務所で幅をきかすという考え方で、同囚の者を相当牛耳ろうというような考え方を持っておったようであります。ところが、あとから後藤が参りまして、後藤は、自分はこういうところに入ってくる者じゃない、おれが入ってきたのは政治犯で、お前らとは事が違うというようなところから、態度安藤に一目置くところがなかったために、安藤といたしましては後藤態度を相当快からず思っておったようであります。さようなことで後藤安藤との間の感情の行き違いがあったようでありますが、それが原因いたしましてかような同囚間の争いを起したようであります。  第一番のただいまお話しの件でありますが、二十九年の一月の二十九日——二十八日と仰せになりましたが、私どもの方の記録では二十九日になっております。この日に、運動に出ました際に、後藤との間に争いを起したのであります。これは、運動の際に、フリー・テニスといっているようでありますがほんとうのテニスじゃなく、狭いところでテニスのボールをお互いに打ち合いをして運動するわけであります。その際に、後藤テニスのカウントを誤まったらしいことから、後藤安藤とが口争いをいたしまして、そして安藤後藤テニスの棒で——これは板でございます。それを持ってなぐりかかっていったのであります。そこで、そこに立ち合っておりました看守園田部長ほか二名が直ちに制止いたしまして、その場はおさまったのであります。ところが、その運動が終りまして居房に帰ります途中、安藤後藤に追いすがって参りまして、こぶしで後藤の顔を一、二回なぐったのです。そこにおりました看守がそれを制止いたしまして事なきを得たわけでありますが、これがただいまお説のごとバットでなぐって一ヵ月の負傷を負わしたということに相なっておるのでありますが、事実はさような状況であります。決して安藤後藤にさような大けがをさしたというようなことではなかったわけであります。  それから、さらに、二十九年の二月六日に、やはり運動の際に、安藤後藤の頭の髪を数百本引き抜いた、そしてみけんやそれから左の目の方をなぐって全治一ヵ月の傷を負わしたということでありますが、実は、これは、午後二時に、やはり運動あとでのできごとでありますが、当日午前中に入浴をいたしたのであります。その入浴の際に、後藤が、立ち会っておりました看守の言うことを聞かなかったために、一緒入浴している君たちが約数分間裸のまま立ち往生をさせられたそうであります。そういうようなことを根に持ちまして、運動の際にまた後藤安藤との間にいさかいが起こりまして、安藤後藤の頭の毛をつかみましてなぐろうとしたのであります。そこで、そこに立ち合っておりました職員が直ちにそれを制止しまして、その場は事なく済んだのであります。ところがこれも部屋に帰ります途中で、安藤後藤に追いすがって、頭の髪をつかんで平手で殴打いたしたのでありますが、これも看守が直ちにそれを制止いたしましてやんだわけでありますが、決して髪の毛が数百本も抜かれ、一ヵ月の重傷を負ったというようなことはなかったのであります。このことがさように大きく伝えられておるわけであります。  それから、二十九年の四月二十一日に、かぎのかかっております——かぎがかかっているわけではありませんが、安藤後藤居房の中に入り込んでニヵ月重傷を負わしたという点であります。これはちょっと聞きますと大へんなことのようでありますが、実は、朝の九時、これは居房単独室になっておりますので便器を入れておりますが、その便器の取りかえのために各居房かぎをあけまして便器を掃除をいたすのであります。ちょうどその間隙をねらわれて安藤後藤部屋に入り込みまして後藤をなぐろうとしたのでありまするが、これも直ちに看守安藤をとめまして事なく済んでおるのであります。従いまして、頭の髪を数百本も抜かれたとか、あるいは顔面、腕、足等に一ヵ月の重傷を負ったというようなことも、これはさほどのこともなくして済んだわけであります。  かようなことのありましたことは、やはり、刑務所看守の管理の面において、結果的に見ますれば、もう少し何とか気をつける風がなかったのかというふうにも感じられるのでありまするが、何分たくさんの収容者収容いたしておりまするために、ついさような事故を起しましたことはまことに申しわけないと思っておるのでございます。しかしながら、ただいま申し上げましたようなことで、結局この点は十二分に検察庁において捜査をなされたわけでございます。なお、この検察庁捜査に対しましては、不起訴処分につきましては後藤の方から大分地方裁判所審判請求を三十一年の一月十一日に行われておるのであります。しかし、これも三十一年の三月一日付をもちまして大分地方裁判所で棄却の決定がなされておるのでございます。従いまして、決してさような事犯があったわけではないのであります。ことに、刑務官安藤を使嗾して後藤殺害しようとしたということは全然ないことでございますので、さように御了承願いたいと思います。
  8. 中村梅吉

    中村国務大臣 先ほど古屋委員から、事実の有無は別として後藤の言う通りであるとすれば法務大臣はどう思うかという御質疑がございましたが、大体、法務当局といたしましては、ただいま矯正局長から説明されたことが真実であると考えておるのでありますが、確定しない仮定の上に立ってお答えをいたしますとあるいは誤解を生ずるおそれもありますから、仮定の上に立ってのお答えはこの際差し控えておきたいと思います。  なお、最後に矯正局長からもお答え申し上げましたように、この事件につきましては、後藤は今古屋委員からお話のようなことを従来申し述べてきたようであります。さような関係で、告発が出まして、地区の地方検察庁におきまして慎重審査をいたしました結果、起訴に値しないものとして事件は不起訴処分に付されまして、その後後藤本人は、刑事訴訟の二百六十二条によりますと、公務員のこうした事件につきましては関係者から審判請求ができることになっておりますので、後藤は、不起訴処分がありましてから後に、検察当局の不越訴処分に対してさらに大分地方裁判所に対して審判請求いたしました結果取り上げるべきものにあらずということで棄却をされて、棄却の決定が確定をいたしております。この棄却の決定に対しては後藤は抗告等の手続をいたしておりませんので、従って、後藤自身も、今日なおどういうことを言っておるか知りませんけれども裁判所の判断を、訴訟法上認められた最終的な手続をいたしまして、その手続裁判所の審査の結果棄却になったことに対しては、その後不服がないのではないかと、私どもは実はこういう実情を調べまして考えておるわけでございます。  なお、先ほど古屋委員から、法務委員会に対して後藤が実情をしたためた上申書を出しておる、ところがこれが届かないのはどういうわけかというお話がございましたが、この点につきましては私どもまだ調査をいたしておりませんので、どういう事情で出したものが届かないのか、この点はよく調査をいたしまして、しかるべき機会にお答えを申し上げるようにいたしたいと思います。
  9. 古屋貞雄

    古屋委員 私は驚くべき答弁を今承わったのですが、刑務所の中で安藤後藤に傷害を加えた事実は明らかですね。これが一体日本の処罰は受けないのですか。どういう処置をやったか、私は検察官がどういう処置をしたかわかりませんが、一ヵ月もあるいは三週間もの医師の診断を受けたことは事実ですね。今の渡部矯正局長の御答弁ですよ。一体、刑務所の中でこれだけのけがをさせたものが不起訴になるのですか。普通のところでは、けんかしても両方起訴されるのです。やったことの処置の問題、あるいは今後藤がどう考えて、知るかは別です。刑務所の中で、いやしくも自由を奪われている被告が、他人から暴行を加えられて一ヵ月の傷を受けておる。これは一体日本の犯罪にならないのですか。この点を承わりたい。
  10. 渡部善信

    渡部(善)政府委員 ただいまも申します通り、一ヵ月の傷害を受けておるわけではないのです。暴行の事実は認められるのでありますが、これは刑事処分にまで至らずして、所内の規律を乱すという、ところから懲罰は受けておりますけれども、刑事上の処罰まではいたしておらないわけであります。
  11. 古屋貞雄

    古屋委員 その前にこういう事実をあなたはお調べになりましたか。担当看守から、安藤暴行をして困るから、安藤に対して警護しなければならない、注意しなければならないという上申書自分の保安課長のところへ出ておる事実があるはずですが、その点をお調べになったことがあるかどうか。それほどまでになっておるのに、安藤に二度も三度も傷害を与えさせるようなことをしておる。これが問題なんです。いかがですか。担当の看守上申書を出しておるかおらないか、その点をまず承わりたい。
  12. 渡部善信

    渡部(善)政府委員 仰せのごとく、担当の方にさような申し出を後藤がいたしたかどうか、ちょっとその辺明らかでございませんが、さようなものがないといたしましても、さような争いが事実ありましたならば、当然刑務所としては十二分にその点に気をつけて、さような事故が再びないように取り計らっていかなければならないのは当然だと私は思っております。その点で、ただいまも申しますように、たくさんの被告を取り扱い、手落ちがあったということにつきましては、まことに申しわけないと思っておるのですが、当然これは刑務当局としてはその点十二分に気をつけなければならなかったと私は思っておる次第であります。
  13. 古屋貞雄

    古屋委員 気をつけておるではない。あと安藤は殺されておるではありませんか。これはもっとあとで承わりますが、今の答弁、これは後藤からじゃないのです。後藤担当看守から、保安課長に向って、安藤暴行を加えるから特別な戒護をしてもらいたいという報告書というか要求書が出ておるはずなんです。その点はどうなんです。それを伺います。  刑務所の中のことは、刑務所人たちが、大きいことをみんな小さいようにしてあいまいに片づけておる。そういう意思でやられておれば、それは検事起訴しません。傷害を暴行と言っているんですから。髪の毛をつかんで引きずり回して血が出ているんです。これは傷害じゃないですか。これでも暴行ですか。さっきおっしゃったように、一ヵ月の傷を受けている。これは傷害をやっているじゃありませんか。一体この事実が犯罪にならぬですかどうですか。しかも後藤は自由を奪われているんです。普通自由を奪われないわれわれが社会生活をしている場合でも、一ヵ月の治療を要するけがを受けた場合は傷害なんです。検事起訴をしていないのはおかしいからここで言っているんです。不審に思うのはここにあるわけなんです。後藤なるがゆえにかまわぬというような態度で扱うことに私は問題があると思うのです。その点はどうです。二十八年から三十年までに四回も大きなけががあるのです。これは今法務委員会後藤が出てきて証言したらわかるのです。後藤一緒に入っていた連中が来ればわかるのです。これは委員会ですからはっきりして下さい。暴行の程度だったか、傷害でしたか、どうです。
  14. 渡部善信

    渡部(善)政府委員 ただいまも御説明申し上げましたように、われわれの方では、傷害の程度まではいっていない、ただ頭の毛をつかんでなぐったという程度で傷害は起ってないというふうに考えておるわけでございます。なお、この点につきましては、ただいまも申し上げましたように、検察庁の方で十二分にお調べを願ったわけであります。その結果不起訴の決定をなされたわけであります。私は、検察庁におきまして、いやしくもかような点がありましたならば、ただいま仰せのごとく社会から隔絶された場所における事案でございますから、最も厳重に処理されなければ世の疑惑を招くと考えております。さような意味合いから申しまして、検察庁においても決してさような事案についてあいまいな御処置はなさるべきものではないと私は考えております。従って、この事案につきましてさような傷害の事実があったようなことは、私は絶対にないというふうに考えております。
  15. 古屋貞雄

    古屋委員 それでは具体的に申しましょうか。後藤は水がめでぶんなぐられたのですが、水がめがこわれたとか、そういうような事実をお調べになっていますか。これは器物を欠いて備品がなくなるのですから、はっきりわかると思うのですが、あなたの方でお調べになったかどうか。水がめでなぐられておる。寝ておるやつに水がめをぶつけたのですから、それが暴行になるかどうか知りませんが、その水がめのこわれたことを調査したかどうか、この点はどうなんです。
  16. 渡部善信

    渡部(善)政府委員 水がめがこわれたかこわれなかったか、その辺はちょっとはっきりいたしませんが、ただいま申し上げましたように、便器の取りかえのときなんであります。このときの事案でありまして、ちょうどその房をあけております際に安藤が飛び込んで参りまして、そうして水がめを振り上げたときに、田口看守と、そこに使っている雑役が飛び込んで、これを抱きとめて制止いたしたということになっておりますので、これが本人に当ったということには相なっていないのであります。なお、安藤は職員に足をとられて引き出されたわけであります。この報告によりますと、安藤後藤に対しましてほとんど一指だに触れることなく、完全に阻止されて、暴行傷害の事実はz全然発生していなかったということに相なっているのであります。従って、さような事実は、私はなかったものと確信いたしております。
  17. 古屋貞雄

    古屋委員 そういうでたらめになっておる報告だからそうおっしゃるでしょうが、水がめのふたを投げてぶつけたという事実になっておる。二週間の傷を受けておる。はっきり申しますと、左目の横のところに傷をしておる。それから頭に傷をしておる。それから腕にけがをしておる。水がめを振り上げたことはあなたも認めておるが、ふたがありますね。ふたが相手にぶつかったと言うておりませんか。そういうことが問題になると思うのですが、その報告をしないで、そうして、検事にそういう証言をしなければ——おるのは安藤後藤だけだから。そういう形式的な調べだけよりも安藤が飛び込んできて水がめを振り上げたことはあなたはお認めになる。それだけでもけしからぬと思う。田口看守から、安藤後藤暴行をしばしば加えておるから、安藤については特別な監視をしてもらわねばならぬという上申書が出ておることを、あなたの方では一つもお調べになっていないようですね。後藤ではなくてあなたの方がお使いになっておる部下から出ておるのです。田口看守から、どうもしばしば暴行を加えられてけしからぬ、それで、今申し上げたような、特別な処置をしてもらい、安藤を厳重に監視してもらわなければ困るという申し入れをした書類の出たことはどうですか。これは文書で出ておるからわかると思いますが、どうですか。その点はお調べになりましたか。
  18. 渡部善信

    渡部(善)政府委員 その点は、私の手元にちょっとございませんので、よく調査いたしますが、ただいまも申し上げました通り、この事案につきましては傷害の事実が全然発生いたしていないということに相なっているのであります。この点は検察庁でも十二分にお調べになっていただいたわけでありまして、かような結果、もしも傷害の事実まで発生しているということならば、検察庁当局においても決して不起訴処分というようなことはなかったと私は確信いたしております。従いまして、この事案に関しましては、さような傷害の事実はなかったものと私は考えております。
  19. 古屋貞雄

    古屋委員 そういう独断をされると私どもは納得がいかないのですが、田口さんからは、安藤の動静を注意して万全の戒護処置をしてくれということですが、そういう書面を出しておるのです。あなたの方ではそれを抹殺しておる。それを調べたことはない。これが重大な問題なんです。予告までしておる。また、するのが当然だ。二十八年から九年に安藤から相当やられておるのです。安藤看守の目を離れて暴行したり、あるいは傷害したりということをしばしばやっておるのですから、後藤の係の看守からそういう書面が上司に出るのは当然でしょう。その書面をあなたはまだおわかりになっていないというのです。そういう書面を見ない先に、あなたは確信を持っておるということを言っておる。それで私はお尋ねする確信が持てないじゃありませんか。はっきり、本人が出てきて、それからまたやられたのを現認した人たちが出てきたらどうですか。あなたが言っておるのは三回ですが、加えられたのは四回でしょう。後藤がうそを言うはずはないでしょう。そのときに書いた被害事実の申し書というものがあるのですから。刑務所で没収したかどうか覚えていないけれども、これは法務委員会に出てきておるのです。本人が出てきてはっきりわかったことなんですから、本人をこの委員会へ呼べば一番わかることなんです。これは重大な問題なんです。数回ですよ。一回ならあまりしつこく言わないが、あなたがおっしゃっただけでも三回。全部で四回。  それから、もう一つ承わりますが、安藤文雄刑務所で死んだのですか死なないのですか、それを先に聞きましょう。
  20. 渡部善信

    渡部(善)政府委員 安藤は三十年の九月十五日に居房内で溢死をいたしております。
  21. 古屋貞雄

    古屋委員 それでは承わりますが、これは後藤をこの法務委員会に呼べばわかるのです。後藤は見ておるのです。数十人の看守にぶんなぐれて、死にそうになって連れていかれたのを現認した人がおるわけです。これは、少くとも数十人の看守によってぶんなぐられて、へとへとになって、そうして連れていかれるところを後藤が見たと言っているのです。これは法務委員会に連れてきて聞けば一番わかる。まだほかの人もたくさん見ておる。もう一人後藤の弟分の石松信夫も、これを同じようにやられたということがありますから、石松は生きていますから、これを法務委員会がお調べになればわかると思います。大体、私は、安藤が死んでおる事実、安藤後藤の見ている前で非常に暴行されて、へとへとになって死にそうになって連れていかれた事実があるのですが、これは自殺という結果になっているのでしょうが、獄則を守らず、監獄法を守らず、手におえずに数十人の人でぶんなぐった、安藤に対して暴行したということはどうなんです。
  22. 渡部善信

    渡部(善)政府委員 安藤が自殺いたしました前々日ですが、三十年の九月の十三日であります。夜間に監房を破壊しようといたしまして暴行いたしましたために、罰則事犯取調べのために、特に皮手錠をかけられまして、特別独居房収容されておったわけであります。ところがこの十五日に看守の間隙に乗じまして溢死を遂げたのであります。これは発生当日の午前十一時ごろでありまするが、宮地という副看守長が安藤居房を巡回いたしましたところが、本人が着衣の交換方——ゆかたでありますが、交換方を願い出ましたので、衣がえをさせようといたしたのでありますが、ちょうどそのとき十一時過ぎでありました。昼食が切迫いたしておりましたので、昼食の後に着物を着かえさせてやるということで、本人に伝えました。そうして、その昼食の支度の方に回ったのであります。そこで、昼食後、本人から買ってくれというふうに申し出のありましたミカンのカン詰を食べたいということを願い出ましたので、ちょうど午後零時三十二分ころでありまするが、担当の田口看守がミカンのカン詰を与えましたそれを食べたのであります。それを食べ終ってから、交代の福田看守が交代に来まして、その人員の引き継ぎをして、午後零時三十二分に交代をいたしたのでありまするが、その後交代看守が次に回って参りまする間にかような事故が発生いたしたのであります。それで、直ちにこの事故を発見いたしました。医務課長も参りましてさっそく人工呼吸等の手当を加えたのでありまするが、ついに蘇生するに至らず死亡いたしたのであります。これにつきましては、直ちに検察庁にも連絡をいたしまして、検察庁から検視をしていただき、本人の自殺であるということを確認されて、検視調書を作っていただいたわけであります。  なお本人、がなぜそのような自殺を決意したかということでありまするが、これは、本人の、ただいまちょっと申し上げましたような警察巡査殺害いたした事件でありまして、この事件の審理がちょうど三十年の七月四日に最終公判で求刑という段取りまで運んでいっておったのでありまするが、当日はこの取調べだけで検事の求刑までには至らなかったようであります。次回期日が八月二十二日ということになったのでありますがこの八月二十二日も裁判所の関係で九月の二十六日に変更に相なったのであります。さようなことから、この公判を目前にいたしまして本人が自殺を決意したというふうに考えられるのでありまするが、何ら遺書等も残っていないものでありますから、的確な死の原因が何であるかということはつかみ得ないわけでございます。
  23. 古屋貞雄

    古屋委員 この事件は、今のような答弁では私納得がいきません。これはただいま矯正局長からの御答弁では、死因がわからない、——わからないはずだと私は思います。少くとも、もう死の直前までくらいの暴行を加えられた事実は、今お隠しになって申しておらぬのですが、これと同じようにその当日、先刻申し上げました石松信夫も、やはり看守の方から今のような数十人で暴行を加えられて、これは命は助かったわけであります。従いまして、この問題につきましては、もう少し詳しい調査をして御報告願いたいと思うのです。というのは、後藤は現認したと言うっているのですから、見て目の前でやられたと、言っているのですから、この点は詳しく調査して御報告願いたいと思うのです。これは人命に関する問題ですから、法務大臣にもお願いした、と思うのです。いやしくも警察官を殺し、これだけの殺人罪をやっておるような男が、何らの死因がわからずに自殺する、刑務所の中で死ぬなんということは、想像もできないことです。その数日前には、現に数十人の看守から木刀で死ぬほどなぐられた事実を見た人がある。後藤が、生き証人があるのですから、これをお取調べ願いたいと思うのです。  そこで、矯正局長は、暴行の程度だ、検事調べたけれども起訴しなかったと言うのだけれども、もう一つ、これは具体的に傷害罪の証拠のある問題を承わりますから、御答弁願いたい。安藤一緒におった房の第一舎か第二舎か知りませんけれども刑務所の舎を変えられて、後藤は別の舎に行った。別の舎には、今の安藤の兄弟分である、一緒にやった共犯者である、警察官殺害いたしましたいわゆる石松信夫がおったわけですね。石松信夫からも、お前は殺すぞといって暴行を加えられ、水をかけられ、房の中に石を投げ込まれ、けがをした事実がある。これはちゃんと刑務所のお医者さんに治療をしてもらった。長さ七センチの打撲傷を負って、それから六ヵ所に傷を受けたということの事実が、これは診断書をお取り寄せになればわかるはずですが、こういう事件をお調べになったことはありますか。これはよもや暴行とはあなた方も答弁しないはずだ。もう診断書、刑務所の医者のところにきちんとカルテはあるはずです。長き七センチの打撲傷六ヵ所、これは石松信夫から舎を変えられてから後に傷害を受けた一つの事実です。この点はどうでしょう。御答弁を願いたいと思います。日を申しましょう。二十九年の九月九日です。
  24. 渡部善信

    渡部(善)政府委員 この事件は、ただいま仰せのごとく、三十年の九月九日の午後一時ごろのことでございます。これは、ただいま仰せのごとく、石松信夫と申します安藤との共犯者でございますが、百メートルも離れているところから自分のところにやってきてそして三十四、五分の長時間にわたって計画的な暴行を受けて、ただいま仰せのごとく、二ヶ所の傷害、大腿部に七センチの打撲傷を負わせたという事実を告訴をいたしておるのであります。しかしながら、取調べの結果、これも事実に相違いたしておるのであります。ちょうど石松信夫運動中におけに水をくみまして手を洗っておったそうでありますが、その際約二十メートルばかり離れておりました後藤居房に向って突然小石を投げ込み、そして続いてよごれた水を投げ込んだそうであります。そして直ちに運動に立ち会いしておりました担当の看守は石松を制止いたしました。そしてそれを取り押えたわけでありますが、このために傷害を与えられたというふうに後藤は申しておりますけれども、医務課長の診断の結果は、大腿部にきわめて軽微な擦過傷、かすり傷の跡があっただけで、他にさような傷は認められていない、こういうことを申しておるのであります。これが医務課長の診断の結果でありまして、さような大きな、七センチの打撲傷を負ったというようなことは記録には載っていないわけであります。さような事実があったことは間違いありません。
  25. 古屋貞雄

    古屋委員 こういう事実があっても、これは不起訴になってもいいのでしょうか。これは法務大臣にもお聞きしたい。刑務所の中に自由を奪われておる被告が、これで四回目なのです。殺すという言葉で強迫されたことはしょっちゅうなのです。安藤と石松二人からやられておった。この事実、こういう事実が日本の刑務所の中で行われているということは、これは今お認めになった。これで、刑務所の中の秩序、並びに自由を奪われた被告が安心して刑務所の中で過ごせるかどうかという問題に思いをいたすと、重大な問題だと思う。これは刑務所の中のことですから、刑務所の中の人たちが証明をしない、証拠があがらない、だから不起訴にした、こういう形式論だけでは見のがすわけにいかない事件だと思う。他の人々もあるかどうか知りませんが、後藤自身が傷を受けていることは明らかなのです。しかも、後藤は病気で腰が痛んで、そして休んでおった、ことも、これはもう医者が証明しておるのでおわかりと思います。病人のところに石を投げ込んだり、泥水をかけたり、同じ刑務所におります他の被告からこういうことをしばしば加えられておるというところに、私は問題があると思うのです。手に負えないような石松あるいは安藤かもしれませんが、それにはそれの処置をしなければ、——被告刑務所の中に数年間自由を奪われて過しておる、しかも後藤は四年半の刑務所の生活をさせられておるのですよ。満四年半保釈をいたさない。その間にこういうことがしばしば行われている。このされた者の不安定な気持に思いをいたすときに、やはりこれはあなた方監督をする立場の人がこれを見のがしておるということ自体——暴行でもけっこうです。不起訴にはなったのだけれども、あなたの方の行刑上の取締りから言ったら、この関係者を相当処罰して、明らかにこういうことを繰り返さないようにすることが、あなた方の職務だと私は思うが、これはどうですか。これは法務大臣に承わりたい。
  26. 中村梅吉

    中村国務大臣 被告といえども、判決が確定いたしますまでは、同じ身柄の拘禁はいたしておりましても、まだ既決囚とは違うのでありますから、おのずからこういう未決の期間における処遇については十分注意すべきであると私は考えます。ことに、今矯正局長から申し上げましたような、石松信夫という同じ刑務所に入っておりました人間が、運動場から人の房の方に向って石を投げるとか水をかけるとかいうような事実があったといたしますならば、これは施設の上においても十分改善をすべきものと思います。いずれ刑務所収容され、既決の場合においても往々ございますが、未決の場合におきましても、ああいうところに拘禁されております人間は、精神的にいろいろすさんだり、その人間の性分によっていろいろなこともありましょうし、また、同じ被疑者なり被告として同一の刑務所収容されている人間の中に、社会人としてその地方で生活している間に感情問題があったり、いろいろした結果、さようなことは起る可能性もあるのでありますから、かりにそういう気持のすさんだ人間がおりましても、あるいは感情的に対立した人間がおりましても、それらが他の人間に対して、こういう自由を拘禁された場所において、人の房に石を投げたり水をかけたりできるような状態に置くということは、これは施設の上においても欠陥があると思いますから、今後十分注意いたしまして、運動場から人の房に石を投げるようなことのできないような措置を運動場の周辺にするとか、そういう点については、私どもといたしましては、十分過去の事実を検討いたしまして、今後について善処いたしたいと思います。
  27. 古屋貞雄

    古屋委員 なお、法務大臣の、安藤文雄のなくなりました死因についての御調査を私は要望いたします。これは重大な問題だと思うのです。と申しますのは、現に、ただいまお聞きの通り後藤の見ておる前で非常な暴行を加えられて、もうへとへとで連れていかれたという現認者があるわけです。その数日後に死んでおるわけです。この点を御調査願いたいと思います。  なお、私、大久保さんも山口さんも見えたので、なお質問を続けたいと思いますが、志賀君から一応簡単な質問があるそうですから、それが終りましてあと、私ら続けてやらしていただきたいと思います。
  28. 三田村武夫

    ○三田村委員長 ちょっと委員長からく二点お尋ねしておきたい点があるのです。ただいま古屋委員の発言並びに矯正局長の御答弁を伺っておりますと、行刑上相当重要な問題が含まれておるように思われるのです。実は私も刑務所の経験を持っている一人でありまして、矯正局長の御答弁の中にふに落ちない点が一・二点あるのであります。まずお尋ねいたしますが、大分刑務所ですか、これは……(志賀委員「そうです」と呼ぶ)この今の古屋委員質疑の中に登場して参ります被疑者、これの収容されている場所は独房ですか。
  29. 渡部善信

    渡部(善)政府委員 さようでございます。
  30. 三田村武夫

    ○三田村委員長 独房と申しますと、大体政治犯は独房に収容するようですし、いわゆる重要犯罪ですね。殺人とかあるいは強盗とか、いわゆる凶悪犯罪に関係する被疑者収容されているように思います。私もその独房に入っておったのですが、先ほど矯正局長は、便器の取りかえ云々、その場合に後藤の独房に安藤が入った、こう言われましたが、私はそういうことはあり得ないと思う。ということは、便器の取りかえは各独房別個にやるので、安藤部屋後藤部屋も同時にかぎがあけられて、他の独房に収容されておる被疑者が別に収容されておる被疑者の独房の中に入り得ることはあり得ないと思う。——これは独房の性質上。今伺っておると、ずいぶん刑務所の中にもトラブルがあるようです。なぐったとか暴行を加えたとか、そういうことのないために独房という施設がある。私はそういう刑務所の中の秩序とか施設というものは十分整えられておると思う。そうでなければ完全な矯正とうものは行われないのであります。私も、巣鴨の独房におりまして、その経験を持っておる一人でありますが、どう考えてみても、今矯正局長の御答弁のように、隣の部屋に入っていくようなすきはない。便器の取りかえのときは、独房を個々別々にやる。一緒に並んだ独房をだってあけてしまって一ぺんにやるということはあり得ないと思うのですが、その点はどうでしょう。
  31. 渡部善信

    渡部(善)政府委員 ただいま仰せのごとく、独居拘禁に付しております者は、あるいは本人の性格の点から、あるいは他との通謀関係事件関係、あらゆる点から、他人との接触を不都合とする収容者を独居拘禁にいたしております。従いしまて、その取扱いにつきましては十二分に気をつけて参らなければならないわけでございますが、ただいまちょっと申し上げましたように、看守の勤務の状況その他から、一つをあけて済んでぴしゃっと締めてから次の房のかぎをあけるというところまでの心使いが足らなかったのにつけ込まれたものと考えられるのであります。その点に十二分の配慮が欠けておったと思います。
  32. 三田村武夫

    ○三田村委員長 この問題についてはさらに他の委員からも御質問があると思いますが、委員長からも申し上げておきます。矯正上重要な問題でありますから、十分御調査の上、もし刑務所内の秩序が今ここで伺っておるように保ち得ない状況であるならば、ただいま法務大臣答弁のように、その施設なりあるいは人的配置の面において十分考慮される余地があるのではないかと思います。十分御調査の上、しかるべき時期にまた御説明を願います。  志賀義男君。
  33. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 大久保国務大臣と山口警備部長が来ておられるので午後質問を続行することとして、その前にちょっと報告を願いたいことがあります。それは、昨年の十二月十三日の当法務委員会で私の質問に対して、山口説明員として、「この前の法務委員会でそういう趣旨の御発言がありましたので、大分県の方に照会いたしましたが、昭和二十七年の六月三十日まで警察官であったのであります。」、つまり、そのとき退職した、こう言っておられましたね。そして、「なお、その後の戸高の住所について探しておるかというお話でございますが、いわゆる警察捜査という意味でなくして、どこに行ったかということは、われわれも探したい、かように考えております。」こう答えております。つまり、大分県でやめた、その後は捜査をしておった、こういうことですね。ところが、ここに写真があります。これは昭和三十年度の警視庁職員録ですが、その中に戸高公徳というものがはっきり出ております。これは、課勤務という中に、最後のところに、「巡査部長(警察庁派遣)戸高公徳、大分」と書いてあります。こういうふうに拡大した写真があります。警視庁から警察庁に派遣されている。職員録にもちゃんと出ております。あなたのところにおったのでしょう。あなたのところにおったのを、どこを探すというのですか。そうなりますと、この戸高が東京に出てきてからの警察官としての動きを公文書に基いて——こういうものその他あなたのところにいろいろ記録があるでしょう。それに基いてここで報告して下さい。午後の質問関係がありますから。あなたはとんでもないうそを言っているんですよ。
  34. 山口喜雄

    山口(喜)政府委員 御質問の要点がちょっとわかりませんでしたが……。
  35. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 あなたは、大分県に照会したけれども昭和二十七年の六月三十日でやめた、その後は捜査という意味でなく探しておるがまだわかりません、こう言っておる。ところが、職員録にはこの男の名前がちゃんと出ている。だから、この間戸高がある報道機関のために発見されたあと小出しに言われましたが、この事件は、今後の警察行政及び検察行政、それから今古屋委員質問しました矯正行政の面で非常に重大な問題でありますから、東京に来てあなたのところにいて、警視庁から警察庁へ行っているのだから、警察の履歴がどういうふうになっておるのか、それをはっきり言って下さいというのです。
  36. 山口喜雄

    山口(喜)政府委員 本人の経歴を申し上げます。本人は二十七年六月三十日にやめまして、その年の九月ごろ、当時の小林警備部長の紹介で、この前申し上げましたように、私の方の警備一課の資料を整理する係がある、その係は相当の人数を要しますので、昔で言えば臨時雇、今の言葉で申しますと非常勤職員ということで勤務をしておりました。そして、二十八年の九月二十五日に警察官に復活をしまして、東京都本部に勤務をいたしておったのであります。その後、御承知のように自治体警察が廃止になりまして、東京都本部と警視庁が一緒になりまして、警視庁の警察官ということに自然に身分が変っていったわけです。そして三十年の四月十六日に警察庁派遣、これはいわゆる臨時の応援ということでございます。それで来ておりまして、三十一年の四月十五日に本人は退職をいたしております。  この前のお尋ねは、本人が今どこにおるかということをお尋ねになったと思うのであります。私は、昨年の十二月十三日は本人の所在はもちろん存じておりませんし、お話がありましたから、私の方でも探しておりますということをお答え申し上げた次第であります。
  37. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 あと質問は午後にいたします。
  38. 三田村武夫

    ○三田村委員長 午前中の会議はこの程度にとどめ、暫時休憩いたします。  午後は一時半から再開いたします。    午後零時五十一分休憩      ————◇—————    午後三時二十五分開議
  39. 三田村武夫

    ○三田村委員長 これより再開いたします。  午前中に引き続き法務行政及び人権擁護に関して調査を進めます。質疑を許します。古屋貞雄君。
  40. 古屋貞雄

    古屋委員 大久保公安委員長がいらっしゃいましたから、お尋ねいたしたいのですが、その前に、午前中に矯正局長にお尋ねしたのですが、先刻矯正局長の方から後藤殺人前科があるようなことをおっしゃったが、私の聞き間違いかもしれませんけれども、そういう事実があるのですか。
  41. 渡部善信

    渡部(善)政府委員 それは安藤の間違いでございます。
  42. 古屋貞雄

    古屋委員 それから、なお、後藤秀生は三年半大分刑務所におったのですが、その間一度も処罰を受けたようなことはないと思うのですけれども、何かございましたかどうか、その点も……。
  43. 渡部善信

    渡部(善)政府委員 その辺、ちょっと調べておりませんのでわかりません。
  44. 古屋貞雄

    古屋委員 それから、安藤文雄関係ですが、これは、私の方の調べによりますと、さっき詳しく申し上げなかったのですが、非常にたくさんの看守からなぐられて、非常な出血をしまして大騒ぎして、バケツを持ってきて、そのコンクリートの上に流れておる血を洗ってしまったというようなことを承わっておるのですが、さような事実があったかどうかということと、なお一つは、安藤文雄の着ておる着物に非常に血がついておった、こういうことを現認したと後藤が言っておるのですが、その着物などのことはどういうことになっておるのですか。着物に血がついていなかったのかどうか、その点どうなんですか。
  45. 渡部善信

    渡部(善)政府委員 ちょっとお尋ねしたいのでありますが、その事実はなくなりました九月十五日の直前でございましょうか。
  46. 古屋貞雄

    古屋委員 その二日前です。
  47. 渡部善信

    渡部(善)政府委員 それから、その暴行を受けた事実を後藤秀生は見ておったというのでございましょうか。
  48. 古屋貞雄

    古屋委員 遠くから見ておったというのです。
  49. 渡部善信

    渡部(善)政府委員 ちょっと私その点解しかねるのでございますが、後藤秀生はたしか昭和三十年の六月五日に福岡刑務所の方に移監になっておるはずでございます。なくなりましたのは三十年の九月十五日でございます。後藤がそれを見ておった、ということは、私はどうして見たのかわかりかねるのでございますけれども、さような事実は私はなかったと思います。と申しますのは、安藤文雄が溢死を遂げましたその後直ちに、午前中申し上げましたように、検察庁の方に連絡をいたしまして、検察庁から検察官がお医者を連れて現場に直ちに臨みまして、その安藤の死体をつぶさに検案をいたしたのでございます。そたで、もしも直前にさような暴行を受けて血の流れたのを流したというようなことがございましたならば、おそらく、なくなりました安藤の死体にさような傷が残っていなければならないはずなのでございますが、この死体検案書には、首をくくりました索溝のほかには外傷を認めずとなっておるのでございます。おそらくそれは何かの間違いじゃないかと私は考えております。
  50. 古屋貞雄

    古屋委員 後藤福岡刑務所に送られたのは何日ですか。死んだ二日前じゃありませんか。
  51. 渡部善信

    渡部(善)政府委員 六月の五日ということになっております。
  52. 古屋貞雄

    古屋委員 私の方の調査では二日前ということになっておる。これは調べたらすぐわかる、と思うのですがね。  それから、皮の手錠をはめさせられたというのは懲罰ですね。
  53. 渡部善信

    渡部(善)政府委員 皮の手錠じゃなくて、金手錠です。
  54. 古屋貞雄

    古屋委員 先刻皮と言ったのじゃありませんか。
  55. 渡部善信

    渡部(善)政府委員 間違いでございます。金手錠です。
  56. 古屋貞雄

    古屋委員 それでは、そのときに安藤は懲罰を受けたのじゃないですか。
  57. 渡部善信

    渡部(善)政府委員 さようでございます。
  58. 古屋貞雄

    古屋委員 懲罰を受けた者に、一体本人の希望するカン詰などを食べさせるということが実際行われているのでしょうか。私ども調べたのでは、懲罰を受けた者には絶対に官給品以外のものは食べさせないということがあそこでは厳重に行われているはずなんですが……。
  59. 渡部善信

    渡部(善)政府委員 これはまだ懲罰にまでなっていないのであります。そのための取調べ中でございます。従いまして、決して懲罰として受けておるわけではありませんので、その点、懲罰の執行中とは取扱いが異なると思います。
  60. 古屋貞雄

    古屋委員 それから、なお、あそこは新しい刑務所ですね。一体首をつるような場所があるのですか。私ども見たのでは、絶対にそこには首をつるようなところはないと思うのです。首の付近にきずがあったということをお認めになったようですが、首をつって死ぬには相当な設備がなければできないと私ども思うのですが、その新しい刑務所の中に首をつるような場所があるのですか、どうでしょうか。
  61. 渡部善信

    渡部(善)政府委員 仰せのごと安藤のなくなりました刑務所は新しくできた大分刑務所でございます。ここは金網を張っておるのでございますが、その金網にかけまして首をつったのでございます。
  62. 古屋貞雄

    古屋委員 その点はさようにいたしまして、先刻後藤から準起訴手続をしたということをおっしゃいまして、そうして審理した結果、そういう事実がない、こういう御答弁がありましたが、審理はせずに、形式的な手続が違法だというので却下されたのではないですか。これには弁護人がついていないのです。普通の県の委員長か何かが代理行為でやった行為で、従って、法律上考えるならば手続の違法である。従って、形式的な手続上の問題、書類の不備でもって却下されたので、審理の内容に入っていないということが事実ではないか、その点いかがですか。そういたしますと、あなたの御答弁のように、審理の内容に入って審理をした結果、裁判所側がそういう事実がなかったという確定的な事実を結論づけているというのではないのでありまして、それは手続上の違反による却下ではないですか。
  63. 渡部善信

    渡部(善)政府委員 これは三十一年の一月十一日に大分地方裁判所審判請求ということになっておりまして、三十一年の三月一日に棄却決定ということになっております。裁判所の方でどういうふうにお調べになりましたか、その内容の点は私存じませんが、さような決定がなされたという事実を申し上げたのであります。
  64. 古屋貞雄

    古屋委員 そういたしますと、先刻御答弁があったような、そういう事実はなかったという結論は出てこないのですね。手続上に不備があれば却下しますよ。実際上これは弁護人がついていないから、本人に対する代理行為は県の委員の方がやったから、資格がない、そういうので却下になったので、その点は十分お調べを願いたいと思うのです。従いまして、それに対しては、刑務所の中に本人がおるものですから手続ができなかった、こういうのです。その点は記録に残しておきますから十分お調べ願いたいと思います。  そこで、警察の方がいらっしゃいましたから、御質問を申し上げるのですが、この問題を特に私大臣にお尋ねいたしまする前に申し上げたいのは、この問題はすでに日本中の大きな問題になっておりまして、一つは裁判に対する国民信頼の問題、一つは国を代表して捜査いたしまする捜査権に対する国民信頼の問題が、この法務委員会における審議の過程において事実が明らかになりまして、捜査機関に対する不信というものがきゅう然として国民の中に起って参りまする事件であると私は信じます。のみならず、最近の新聞を拝見いたしましても、特に普通の主婦の方たちからもこの問題は非常に重要視されまして、非常な疑惑を持った事件になっておるわけです。その点につきましては、私あとから申し上げて世論の帰趨を明らかにしたいと思うのでありますが、本年の二月二十七日の大分新聞にも、特に、「菅生事件の背後をも究明せよ」という社説まで出て、この警察のやったことに対しまして非常な疑惑を持たれておることは明らかなんです。この点につきましては特に論説があるばかりでなく、大分新聞の本月十六日に、「反響呼ぶ県民の声」という見出しでありますが、その中に、県の婦連の参与である岩久ツナさんという方がこういうことを述べております。「戸高自分は爆破していないと語っている……」、この点は、十三日だか十四日に東京において戸高公徳が出て参りまして自分が当時偽名を言っておった市木春秋であることを確認し、そうして自分は爆破に関係してないということを言ったあと新聞らしいのですが、「自分は爆破していないと語っているまではよいが」、——そのあとなんです。爆破することを事前に知っておったということを言っておる。そうすると、「爆破することを事前に知っていたと言われると、あいた口がふさがらない。私は警察の本質は事故を取り締るのでなく、防ぐことだと思う。爆破事件を予知しながらそれを防ごうとせず、事故を起させて犯人を捕えるなどは映画、小説だけにしか許されぬことだ。ましてダイナマイトの持ち運びをしたような口ぶりに至っては、論外のさただ。警察が犯罪の製造所とでもいうのだろうか。身ぶるいがとまらぬほどの恐ろしさだ。」、こういうことを言っておる。これは新聞に書いてある主婦の言葉です。それから、さらに、あとの方に行って、「こんなことでは戸高爆破事件に一役、しかも主役を演じたのでは……という疑いが国民の間で広まるのは当然だ。この上は、すみやかに戸高を初め警察当局など関係者がすべての真相をぶちまけてざんげすることが、惑わされている国民へのせめてもの」罰滅ぼしだ、こういうことを言っておる。こういうような言葉は単に主婦だけの問題ではないと思う。これは重要な問題でございますから、どうか真剣に真相を明らかにしていただくための御努力を願って、自分の部下にけが人が出るとかあるいは、不始末があったということはどうかたなに上げられまして、日本の大きい捜査権に対する国民信頼をつなごうという大きな襟度から私の質問お答え願いたい。これを私は最初にお願い申し上げますが、さようなお約束はもう当然のことと思いますから、さような前提に立って私は質問したいと思うのです。  まず第一に私が山口さんにお尋ねしたいことは、あなたはこの間、戸高がどこへ行ったかわからぬということを答弁されておるのですが、当時佐々淳一という名義で春風荘に隠れておりました本名戸高公徳が共同通信の新聞記者に発見され、そうして数時間の間つけ回された結果、あなたの方に連絡をきれて、そうして、十四日にあなたのところの三輪第一警備課長が立ち会いの上で新聞記者戸高に会っておるという事実を私は承わっておるのですが、そういう事実はないのですか。あなたはこの間、初めてことしの正月になって当時の上司小林から聞いて知ったのだ、小林君も知らなかった、ということを言っておりましたが、そういう事実についてはどうですか。
  65. 山口喜雄

    山口(喜)政府委員 十三日でありましたか、本人がおりますところから、新聞社の者に連れていかれたことは、ただいま申し上げた通りであります。なお執拗に本人に対していろいろなことを聞きますので、私の方にはその事前に——話が戻りますが、私の方のある部員のところに、本人から、実は今自分はこういうようになっていると連絡があった。場所等は全然わからなかった。いろいろ探しましたが、結局わからぬ。そうこうしておりますうちに、夜おそくなりまして、新聞社が関係しておるということ、がわかったのであります。そこで、本人を直ちに釈放といいますか放すように強く折衝いたしたのであります。新聞社としては、どうしても放さない、この問題について自分の方で記事を何したいということであったのであります。その後新聞社の者に会いましたときに——今おっしゃいました三輪一課長が立ち会ったかどうかという点につきましては、私はその当時は存じませんでした。あとでそういうことは聞きました。これは、しかし、本人がすでに出てくることを明らかにした以上は、警察としては当然の措置であった、かように考えております。
  66. 古屋貞雄

    古屋委員 もっとはっきり承わりますと、十四日に某所で三輪さんが立ち会って会いましたときには、新聞社の方には、戸高の意思はどっちにも明確に聞かずに、あなたの方の部下が、それでは面会させよう、会おうという経路を経てお会いしたということでありますが、そういう事実はないですか。
  67. 山口喜雄

    山口(喜)政府委員 今申し上げましたように、本人の身柄をどうしても放さないということでありましたので、放してもらいたい、どうしても放さないということから、そういうように再び会って話をすることになった。これは、もちろん、本人も、この前申し上げましたように、自分公判廷に出てはっきりするという決意をすでにずっと前にしておるのでありますから、これはもちろん本人の意思もそこにあったものと私は考えます。そうでなければ、十四日に本人は出てくることもなかったろう、かように思います。
  68. 古屋貞雄

    古屋委員 それから、もっと驚くべきことが一つあるのですが、十三日に、ここには、戸高新聞記者の諸君がお会いしたときには、電話で呼びつけられて後藤の弁護人である正木臭弁護士が立ち会っておる事実、そのときに、あなたの方の部下は、あなたは知らなかったかどうか知りませんけれども、監禁罪あるいは強迫罪で引っちばるぞと言っておどかしたという事実、そこで、新聞記者の方では、今まさに非常な混迷に陥っておりまするいわゆる市木こと戸高、これは今裁判をしています後藤裁判の第二審における証人としての重要な人間であるし、これを出すことに協力をすることがむしろ捜査官に協力をしておるのだ、共同通信の新聞記者は、これを一体監禁罪であるとかあるいは脅迫罪で縛るということでおどかしたことは逆ではないかということで、——またそう言うことが私は筋だと思うのです。当らないと思う。検察官にしましても、司法警察官にしましても、真実発見のために努力する義務を負っている。だから、今まで半年も前から探し歩いている人間が発見されたのですから、新聞記者は、これの住所を尋ね、真相を聞こう、そして真相新聞に発表して真実の発見に持っていこう、こういうことは新聞記者に与えられた職務的な権利でもあり、国民としての義務を果しているので、監禁罪だとかあるいは脅迫罪が成立するものではないと私は思うのですよ。そういうように、一体警察の方たちが、お前たちは脅迫罪で引っぱるぞというようなことを言って、努めて新聞記者戸高公徳と会話をし自由に話をすることに高圧的な弾圧をくれた、こういうことを承わっている。こういう事実はあったかなかったか。
  69. 山口喜雄

    山口(喜)政府委員 どなたからそういうことをお聞きになりましたか存じませんが、当日は私の方の警察官はだれも先方の新聞記者に会っておりません。会っておれば場所がはっきりするわけですから、私の方は適当な措置を講じたはずであります。私どもは、新聞社にそういうようにされているとは初め思っておりません。従って、あとの話で、実は、あのときは、不法監禁か何かで、大体目星はおよそついておりましたが、その場に所轄の警察署をやって、現場を踏み込ませて、本人を解放してやるよりほかに方法はないかなと考えたことはございます。また、あとの話で、そういうことまで実はわれわれは考えたんだということを言ったことはあると思いますが、当日新聞社の者に警察官はだれ一人会ってもおりませんし、そういうことを話す筋合いのものでもなし、第一そういう話をしたというようなことをどなたからお聞きになりましたか存じませんが、もう少し事態をはっきりさせていただきたいと思います。
  70. 古屋貞雄

    古屋委員 そうすると、山口部長さんはよく知っておったんですね。——今おっしゃることを聞くと。今までは知らぬと言っておった。私や志賀君に対する答えでは、全然知らないとあなたは言っておったのですね。  それから、もう一つ承わりましょう。これははっきり申し上げますが、正木弁護士は立ち会ったんですがね。正木君から、それならお前の方はおれの方で告訴するぞ、後藤の弁護人として告訴するぞと言われて、引っ込んで、そういうおどかしをやめた。これは正木弁護人にこの法務委員会に来てもらって承わればよくわかりますが、この問題は、私の方の坂本代議士にも共同通信から電話がかかってきておる。猪俣委員にもかかっておる。代議士は立ち会わぬ方がいいだろう、弁護人である、当の後藤の利益を保護すべき当然の職責を持っておった正木さんが、立ち会った方がいいだろうというので、その晩立ち会っておる。これは明らかな現実の事実です。その事実を知らぬはずはないのです。前から知っておったのだから、あまり白ばくれなんで、はっきり言って下さい。そうして、私のところにも、新聞社やその他の関係者が、どうも警察からおどかされて困るからと相談に来た事実もあるのですよ。——私がこの事件質問をいたしましてから後に。それは、あなたの方で何と言おうとも、そういうことをしたということ。あとで話を聞いたんじゃない。現実にやったという事実なんだ。その事実が証明された場合に、あなたはどういう責任を負いますか。あなたがないと言ったって、あったという証人が出たらどうなりますか。
  71. 山口喜雄

    山口(喜)政府委員 私が知っておったのでないかというのは、当日本人新聞社の者に連れていかれたという事実でございますか。
  72. 古屋貞雄

    古屋委員 一切の事実です。
  73. 山口喜雄

    山口(喜)政府委員 それは私存じておりました。この前も、存じておらないとは一切申しておらないつもりでおります。これは速記録をよくお調べ願えば、私は知っておりますからこそ、この前の答弁ではっきり申し上げたわけでございます。  それから不法監禁云々というのは、これはあとの話で私聞いたのですが、むしろ新聞社の方がそれを非常に心配したのですね。このままにしおけば不法監禁で……(「自分たちがおどしておる」と呼ぶ者あり)いや、これはほんとうのことは申し上げておるのですから一つよくお聞きを願いたい。新聞社の者をここにお呼びになって、一つお聞きを願いたい。それは、自分たちが、このまま置いておけば不法監禁だということで問題にされはしないかということで、非常に心配をして、一部では早く放した方がいい、だろうということを言った者もあるように私は聞いております。ところが、現場では、やはり新聞記者としての感覚から、これはやはり放さないでいろいろ聞いた方がいいということでなかなか放さなかったということを聞いております。  しかし、私の方の警察官がそういう現場で向うの者に会って、あるいは正木弁護士に直接お会いしたというような事実は全くございません。
  74. 古屋貞雄

    古屋委員 知らないという人が知っておったことがだんだん明らかになってくるから申しますが、そうすると、今戸高のおる住所をあなたは知らないのですか。家族四人の生活をして、あなたの部下として東京において働いてから四年間、その生活上の問題、——家族四人の行方がわからないとあなたはこの間おっしゃったが、わからないということは事実ですか。
  75. 山口喜雄

    山口(喜)政府委員 戸高君は福岡の高等裁判所に証人として検察側から申請されております。その申請の際の場所は、この前新聞社に来られましたあの場所であります。従って、戸高君はあそこを住所にしておるものと私は思うのでありますが、それならば現在どこにおるかということにつきましては、私は存じておりません。
  76. 古屋貞雄

    古屋委員 私の方の調べによりますと、これは間違っておるか知りませんが、十四日の日に検事から申請が出ていますね。だから、自分みずから出たので、検事の方が進んで証人申請をしたのではないでしょう。共同通信に見つかっちゃって、世間で、新聞に書かれちゃってどうにもならないから、早くやらなければ自分の責任だというので検事局の方であなたの方と連絡して申請したとわれわれは想像するのです。ところが、十五日になって住所を明らかにした、こういうことなのですが、一体、本人がみずから進んで出ようという——あなたのこの間の御答弁によると、二月二十六日のラジオ東京の放送を聞いてこれでは自分が出なければ事実が明らかにならぬと決意したと言っておるが、それじゃおかしいじゃないか。逃げ歩いて逃げ歩いて、新聞記事の自分市木春秋とか同一人であることを隠して逃げ歩いて数時間後ですよ。新聞社の諸君はこれと同行していったが、別に軟禁も何もしておらぬ。ただ肩を並べて歩いていただけだった。新宿のあるバーに行ったときに、あなたに電話をかけて救いを求めて、それであなたの方は飛んできたこれは事実なんです。こういう事実から考えますと、あなたの方ではどうしても初めから知っておったという事実あなたの方が隠まっておったということを想像する方が無理でしょうか、想像してはいけないのでしょうか。私は想像する方が当然だと思うが、いかがでしょうか。
  77. 山口喜雄

    山口(喜)政府委員 十四日に証人申請を急いでした、十三日の日に本人新聞社の者に見つかったのであわててしたというようにお考えになるのも、これも無理でないと思います。しかし、この前私がこの委員会ではっきりと御答弁いたしましたように、これは福岡の方をお調べ願えればわかると思いますが、すでに三月一日に、あるいは二日ごろだと思いますが、検察庁の方から裁判所には本人証人として尋問してもらいたいということは、書面ではしてなかったかと思いますが、はっきりと申し入れがしてございます。この点は一つお調べを願いたい、かように考えております。
  78. 古屋貞雄

    古屋委員 それは当然でしょう。二月の二十五日に検事証人で写真を見せつけられて、市木こと戸高だと否定した人は、六人の証人の中で一人もなかった。そして三人ははっきりそうだと言われた。あとの二人は、知らない、こう言っておる。あとの一人はあいまいな証言をした。そうなれば、一人でもこれを否定しておればともかく、これはそうでないということが明らかになった以上は、検事がみずからやるのが当然でしょう。どんなばかな、あほうな検事だって、こんな証人申請くらいはやれますよ。それとどういう関係があるのですか。二月二十六日にラジオ東京の放送を聞いてびっくりした、背馳した事実があるからびっくりしたと言われたが証人に出ろということをあなたが言われたのはいつですか。そうしてあなたはいつそういうことを知ったのですか。
  79. 山口喜雄

    山口(喜)政府委員 この点は、この前のこの委員会で私からはっきり申し上げたつもりでありますか、三月の上旬に私は知っておったということを申し上げております。それから、本人がそういう申し出をしましたので、自分証人として公判廷に出てはっきりしたいと言いますので、私の方から検察庁に御連絡をして、証人として呼んでいただきたいということを裁判所の方に検察庁から申し入れをしたということも、ただいま申し上げた通りであります。先ほどの御質問は、お前の方は、十三日に戸高か見つかったので、うろたえて証人申請をしたではないか、こういうようにお尋ねになりましたので、私は、そうでない、すでに三月の初めに私の方としては証人申請を、書面ではございませんが、手続をお願いしてある。従って、本人が二十六日のラジオ放送を聞き、公判廷に出たいということで、その後は私の方としてもとるべき措置ははっきりとっておるつもりでございます。
  80. 古屋貞雄

    古屋委員 そうしますと、非常に詳しく知っておりますが、そこで私は承わりたい。三月の上旬に知っておったといのですね。一体、市木こと戸高、これはあなたの方で知っていなくちゃならないのですが、現に私はこれを聞きたいから前提として聞いておる。爆発物の所持をしたことは明らかになっておる。もう一つは、この間私どもがお尋ねした押収第七号の脅迫状です。自分が書いて菅生駐在所にぶち込んだことも明らかなのです。爆発物を持った事実、脅迫状を投げ込んだ事実、しかもそれが三月の初めに市木こと戸高ということがわかっておるのだから、これを捜査して、さっそくひっちばらなければならぬが、あなたの方として、司法権として——もっとはっきり申しましょうか、菅忠愛は今この爆発物所持によってひっちばられて起訴されて二年の懲役の判決を受けておりますよ。それから、市木ダイナマイトを渡したという村田もひっちばられて四十何日もとめられ起訴されて、これも執行猶予になっておる。この二人だけはひっちばられてしまった。いいですか。この点も日本中の人が疑惑を持つ。あなた方がこれを隠しておるのじゃないかという疑惑を持つのです。爆発物を所持した者はどういう処罰をされるか、あなたは知っておるでしょう。所持しただけでひっちばるところの犯罪になる。警察官なるがゆえにひっちばらないでいいということはない。それが一つ。それから、今どこにいるかわからぬというが、はっきり本人からこの事実を聞いておる。私からもっとはっきり言うならば、あなたの方では小林末喜を呼んでおる。あなたは聞いておるでしょう。末喜からあなたは一部始終を聞いておるはずです。公判廷において証言した村田は、ダイナマイトを、——そのときは市木と言っておりますよ。起訴状の中にも某氏と書いてありますよ。某氏の手を経て後藤のところへ行ったということを検事起訴状の場合は書いてある。検事もおかしいですよ。検事も逮捕状を出さないことはおかしいのだ。ここに検察行政と警察行政の問題があるわけです。この点をはっきりしていただかなければ国民は安心いたしません。  それで、参考に申し上げますが、三十年くらいの弁護士の経験を有する私だけがそう思うかというと、そうではない。学者も言っておる。九大の井上教授が三月十五日の西日本新聞にこういうことを書いておる。これはあなたに答弁していただく場合の参考のために一応読み上げましょう。「戸高警官にききたいことは彼がやったかどうかだ。もし彼がやったとすれば、これほど恐るべき謀略はないし、政府対共産党をめぐる三鷹事件など、戦後のもたらしたどこか割り切れない事件がこれを契機に全部すっきりする。そうした意味からこの菅生事件は重大なものを含んでいる。こんご問題になる細目は1、戸高警官がもし爆破はやっていないとすれば、これほど騒いでいる事件で、しかも所在のはっきりしているものを捜査当局はなぜいままで出さなかったのかと疑問がわく。アメリカの検察官は攻撃一点張りだといわれているが、そのアメリカでさえ捜査官が被告人に有利な事実を知っていて法廷に出さなかった場合はその裁判はすべて無効になる。まして日本の公判廷でなぜ早く戸高を出さなかったのか、立証の都合がどうのごうのといった逃げ口上だけでは回避できぬ重要な検察庁側の責任が発生したことになる。2、戸高ダイナマイトの件を部分的に認めている。これは日共のいうように爆発物取締法違反にかかる容疑が十分である。一般市民がそのていどの容疑でもあればすぐ逮捕されるのであるから国家戸高をすぐ逮捕するかどうか、そして市民と平等の扱いをするかどうかをわれわれは注目せねばなるまい。3、戸高警官の取調べに当たって、戸高にほんとうのことをしゃベらせると捜査機関に不利になるかもしれないと考えられる。捜査機関が果たしてこの矛盾した立場でどう公平に処理できるか、これも十分監視せねばならぬところ。4、かりに戸高を逮捕もしないし、取調べもせず単なる証人として法廷にでる場合、戸高はもちろん「爆破はやらぬ」といいはるだろう。そのとき弁護団側がどんな弁護技術を駆使してしゃべらせるだろうか、そのテクニックは見ものといえよう。5、最後に戸高の発見を知って自分は非常に捜査機関に疑念をもつようになった。というよりこれほどはっきりした証人をいままで知らっぱくれていた捜査当局の厚顔無恥さかげんに、非常な憤りと悲しみを感ずる。戸高の出現も捜査当局の十分に計算された、そして舞台を着々と進めている不真面目さの一端だと断ぜざるをえない。」、こういうことを九大の井上教授は新聞に発表を行なっております。  こういうことを私考えるときに、どう考えましても、これは被疑者としてさっそくあなたの方では縛らなければならぬと思う。あなたの方は縛らなくともいいという御判断をされておるのですか。されておるなら、その理由を承わりたい。
  81. 山口喜雄

    山口(喜)政府委員 戸高君が村田という人のところにダイナマイトを受け取りに行ったかどうか、これは本人公判廷においてはっきりすることと思います。従って、私は、その点についてはこの席ではお答えを差し控えたいと思います。ただ、この点は御了承を願いたい。それは、この前も申し上げましたように、全国的に当時日本共産党が軍事活動を盛んにやって、各地でいろいろな事件が起っております。大分県においても同様であります。しかも、大分県の中で、菅生付近を解放地区と指定して、有力な党員を続々とあの中に送り込んでおる。そして、その中核自衛隊員の一人が、二十七年の三月十七日に不審尋問で尋問された際に、ダイナマイトに信管をつけたものを所持しておるのを現行犯で逮捕いたしております。そこで、警察としてはこれは何か考えてやろうとしているんだということで、いろいろ情報を収集してみたが、どうもうまくいかない。そこで、やむを得ない事情のもとに、戸高君を当時の警備部長が党に接近させた。この点は、私は、いわゆる一般論としてでなしに、あの具体的な事情のもとにおいては、やむを得なかったものと考えております。そうして、戸高君は党に接近をして、党のいろいろの会議にも出席するようになったのであります。その間に得ましたいろいろの情報は、直接小林君の方に報告してある。そうして、これは村田という人の公判における証言でありますが、その前に後藤被告と村田氏が会ってダイナマイトの受け渡しについてある種の話をしておる証言が出ておるのであります。符号を用いまして、たとえば、男の人夫と言えばダイナマイトのことであり、女の人夫と言えばカーバイドのことであるというような略号を用いて、爆発物の受け渡しをするような話し合いをしておる。そうしてこれから先は私の推測でございますが、おそらくもし戸高君が村田氏のところにダイナマイトを受け取りに行ったと、かりにそういう事実がありと仮定いたしますと、おそらくこれは後藤氏の指令を受けて取りに行ったものと、私は推測いたすのであります。ただし、これは全く私の推測でありますから、この点は本人公判廷で明らかにするだろう。そうして、戸高君はそういう事実を明白に当時の警備部長に報告をいたしておるのであります。従って、こういう捜査方法が妥当であるかどうか、さらに爆発物所持とかということについて犯罪が成立するかどうか、そういう使命を帯びてやった場合に違法性が阻却されるかどうか、こういう点については、これは裁判所なり検察庁で御判断されることと思うのであります。もちろん、戸高君も法廷に証人として出ると言っておる以上は、この点についてみずからの立場を明らかにするでありでしょうし、あるいは検察庁その他のお取調べがあれば、それに快く応じて参ることと、私はかように思っております。
  82. 古屋貞雄

    古屋委員 まことに驚くべきことをあなたは言ってるんですね。一体、あなたの推測なんかどうでもいいんです。所持した事実を認めるでしょう。所持してる事実があれば、捜査するのが当然じゃないですか。公判において宣誓して村田が言ってるんです。第一審の判決にもそういうことは書いていますよ。それから起訴状にも書いておる。その某氏が市木こと戸高であることがはっきりしておる限り、あなたの方は進んで縛らなければならぬはずじゃないですか。その関係と同じように預かったばかりの、どういう事実があるか知りませんけれども菅忠愛は預かったばかり、それも自分は預かったとは言わない。市木こと戸高が置いて行ったと言ってる。それでも縛られております。爆発物所持がはっきりしてるにかかわらず、——あなたはその事実を認めてる。それでも証人に出ればいいというようなことで、日本の捜査ができますか。弁護人が本職の私が言うだけじゃないです。今読み上げたように、しろうとの人でさえ、これは怪しい、なぜ引っぱらないかということを言ってるんです。告訴しなければ引っぱらないという捜査方針ですか。あなたの部下だから別扱いするという考えですか。ほかの者は二人ともやられてますよ。村田も菅忠愛も処罰されておる。引っぱられておる。市木こと戸高がはっきり自分で自白しておる。あなたにその事実を話した以上、あなたは即座に引っぱらなければならぬじゃないですか。しからざれば、その事実を係検事に申し出て、さっそく捜査にかからなければならぬ。これは、この間からあなたに聞きますと、知らなかった知らなかったと言ってる。だんだん追い詰められて、知ってると言ってる。それでは言いますが、あなたの部下ある小林末喜を呼んで、なぜすっかり事情を聞かなかったのですか。聞いてるんじゃないですか。市木こと戸高を預かったんじゃないですか。みなそういう疑いを持ってる。あなたが隠してるんだ、捜査官が隠してる、こういうことをみな言っております。これは私が言うのじやない。世論です。それで、あなたは推測のことを言って、所持した事実を認めながら、なぜこれを調べ手続をしないのですか。あなたの言明では国民は納得しませんよ。その点どうですか。
  83. 山口喜雄

    山口(喜)政府委員 私が申し上げましたのは、仮定の事実のもとに私の考えを申し上げたのであります。その考えといいますのは、そういう状況のもとに党の活動といういろいろな不法事案が起っておることを内偵するために党に接近することを命ぜられました場合に、中核自衛隊の責任者の指示に従って、そういう物を使いとして取りに行ってきて責任者に渡したということは、当時の事情からそういう捜査方法がやむを得ないものとすれば、私は、違法性を阻却するものではないか、かように考えておるのであります。ただ、先ほども申し上げましたように、この点についての御判断は裁判所なり検察庁にしていただくことに考えておりますが、私としてはさように考えておるのであります。ただし、これは、先ほど申しましたように、その事実関係がどうであるかということは、私、戸高君に会ったわけでもありませんし、話を直接聞いたわけでもありませんので、本人から公判廷において明らかにする、こういうことを申し上げた次第であります。
  84. 古屋貞雄

    古屋委員 私の承わっていますのは、公判廷で明らかにするとかしないとかいう問題じゃないのです。疑いのあることは事実でしょう。あなたの部下の小林末喜さんから、戸高の身柄を頼まれたのですから、詳しく聞けば一晩のうちに聞けるでしょう。ここでわれわれがあなたに質問したその晩でも、明確になるじゃないか。自分の部下にはそういう想像をして縛らない。新聞に書いておる通りなんです。一般市民に疑いがあれば、とっくに縛ってしまう。ダイナマイトなんですよ。ダイナマイトを持ち歩くことが上司の命令ですか。こんなことが職務の執行になりますか。ダイナマイトを持ち歩いて、そうしてこれをどこへどうしたか、これは今からわかりませんが、持ったことは事実でしょう。あなたはそれを知らぬと言っている。しかし、そういうようなあなたの頭の感覚で、一体部長が勤まるか。勤まらなかったら警備部長をやめたらどうですか。私だってわかりますよ。しろうとがみんな捜査当局は怪しいと言っているじゃないか。当然調べるべきでしょう。即刻調べて、天下に、これはこうなんだ、捜査機関には何も怪しいことはないという言明をする義務があなたにあるんじゃないですか。大久保長官、どうですか。今の御答弁に対して私は納得できませんよ。これは単なるおとり事件じゃない。警察官が偽名を使ってよその家に働いておって他人の人権をじゅうりんすることをやっているじゃないですか。こんなことは公務員のやるべきことじゃない。いかに共産党がどうだこうだとあなたが言っても、共産党といえども合法政党として日本で認めている政党ですよ。ほんとうの驚くべき社会悪をやる場合にはとがむべきでしょうが、この事件は、駐在所が爆撃されることは前の日にわかっておった。小林さんの内報で、桑原さんの指揮下でその現場に行って、百数十人の警察官が今か今かと思って爆発するのを待っていた。この事実は明らかでしょう。これを否定するのですか。ミナ子さんという駐在所の奥さんすら、主人から言われ、警察官の妻であるからこれを外部に漏らすわけにはいかない、それでおそろしいけれども奥の茶の間にふとんをかぶって寝ておったということは、この前も私が申し上げた通りです。あなた方もそれは十分知っているはずなんです。小林末喜さんが戸高をあなたのところに頼みに来たのだから、あなたが知らぬはずはないと思うのです。これでも、あなたは、証人に出て証拠が明らかになればいいというので、捜査官は手をこまぬいておっていいのですか。国民生命、財産を守る警察官、犯罪を予防する警察官が、ぶち込まれることを知っておって黙って見ておったという。この点は婦人会の女の方が新聞にはっきり言っておる。これは国民の声ですよ。国民の声を無視して、あなたの方で想像して、捜査しなくてもいいということをあなたはおっしゃっておる。調べてみれば犯意を阻却するかもしれぬというが、そういうことで私は国民は納得しないと思う。捜査をしないところに疑問があるから、私は承わっておる。まだあなたは、捜査しないでもいい、証人に出て、高等裁判所ででも証言して明らかになりさえすればいいというお考えなんですか。明確な御答弁を願いたい思うのです。
  85. 山口喜雄

    山口(喜)政府委員 私は、先ほどから、それでいいとは申しておらないのでありましてそういう点について、私の方は、これは裁判所、検察庁の御判断におまかせいたします、かように申し上げてるのであります。私の方で調べたのではまた皆さんにいろんな御疑問も生ずるおそれもありますから、これは公平な第三者に調べていただく、それが私は普通だろうと思います。  それから、駐在の巡査大戸の奥さんがこの事実を知っておったという前提のもとにお話しになっておられるようでありますが、公判廷における証言ではそういうふうになっておらないのであります。それから、当時聞いて書いたという毎日新聞の記者の方も、どうも正確に記憶はないが、そういうような話を聞いた、しかし、正確に一言一句あのときに書いたその通りであるとは、今自分は記憶はない、こういうように言っておられるのであります。この点は、前々から申し上げましたように、あそこにはいろんな事件が起っておるのであります。しかも各地で当時警察署あるいは駐在所を襲撃された事件も相当あるわけであります。従って、あの前後には、夜警団を作って警戒をする、あるいは近所の村から駐在員を引き揚げてきてあの村に配置をするというような事態ですから、おそらく駐在としてはいろいろな注意をして警戒しておったことは間違いなかろうと思います。それから、この前も申し上げましたように、六月一日のお昼ごろ戸高君から小林君のところに連絡があって、どうもきょうやるらしいという情報に基きまして、現地にいました責任者がそれを聞いて警察官を配置いたしたのであります。おそらく、私は、これは本人には話してない、それは話さないのがこういう場合の、特に共産党関係捜査には大切な点でありますから、おそらく話してなかろうと思います。しかしながら、いろいろな情勢から、警戒をしておったということがあっても、私は、決して不思議ではない、かように考えております。
  86. 古屋貞雄

    古屋委員 あなたは、裁判所や検察官がきめていいというなら、あなたの職務をやめたらいい。警察官は要らぬのです。裁判所や検事局でものを明らかにしてもらえばいいというなら、あなた方の職務は要らぬと思うのだ。そうでしょう。あるからいけないのだ。あなたの方は疑いがあれば調べるのじゃないのですか。あなたは非常に内容を知っていますよ。公判廷の証言の内容をあなたは知っているじゃないですか。それなら、公平な立場から、はっきりと戸高が持っていったという事実の証言もあるのだから、一応調べるのが当りまえじゃないですか。それから、なお、公判廷で、市木脅迫状を書いて駐在所に投げ込んだことも明らかになっておるし、こういう明らかな事実があるなら、いずれにいたしましても、あなたのような結論が出るにいたしましても、あなた方の方では捜査しなければいかぬじゃないですか。国民はこの問題を言っているのですよ。あなたは、検察官裁判所で明らかにするから、法務委員会においてはあなた方の職務ではどういう答弁をしてもかまわぬとおっしゃるのですか。その点を承わりたい。法務委員会においてこそ、あなたが誠意をもって進んで万全の措置をとりましたという御報告を私どもは受けたいのだ。それがまた当りまえのあなたの義務じゃありませんか。法務委員会において法務行政の国政調査の立場から考えますと、あなた方の職務が完全に行われたかどうか、人間には間違いがありますから、万が一間違いがあってはならぬから私は聞いておるのです。しかし、私だけの意見ではない。一主婦も一般市民も学者の方も私と同じ意見で、どうも捜査当局に疑いがあると言っているのだ。あなた方は三月の初めにそういう事実を聞いた以上は、あなた方は進んで捜査をして、法務委員会には、この通りでございますという報告をする義務がある。さようなことによってのみあなた方は国民の疑いを解明することができると思う。今日になってもあなたはまだ、捜査しなくてもいい、裁判所と検察官にまかせるというお考えを持っているが、検察官は知らないと申しておりますから、みずから立ってこれを解明し、国民の納得するような御、報告をすべきだと思うのですが、あなたはまだ捜査しないと言うのですか。念のために承わります。
  87. 山口喜雄

    山口(喜)政府委員 私は、先ほど、仮定の問題を取り上げてこれはその通りでないかもわかりませんが、そういう場合には違法性を阻却するものと思いますということを申し上げたのであります。これは御承知のように元の警察官で世間から問題として現在取り上げられておる事件関係しておることでございますので、これはやはり、われわれの方で取り調べるよりも、裁判所や検察庁で事情を明らかにされた方が世間の疑惑を招かない、私はそう考えております。
  88. 古屋貞雄

    古屋委員 みずから調べて後にそういうことをおっしゃるならけっこうですよ。あなたの方はなおさら詳しいお調べをしてから結論を出すべきじゃないでしょうか。一体警察官の職務とは何でありますか。私は、日本国民生命財産を保護して、安寧秩序の上に平和な暮しができるようにする職務を持っておると思う。公判廷における証人証言、一審の判決、関係者の判決をごらんになればわかることなんです。戸高がその物を持って運んだ事実は明らかになっておる。阻却するかしないかは、調べなくちゃわからぬじゃないですか。あなたは想像して結論を言っているけれども調べずにわかりますか。そんな仮定でもって、手をこまぬいて、裁判所と検察官にまかせればいいということを、日本じゅうの警察官の取締りをしている警備部長がはっきりおっしゃっておりますが、そういうことになれば、私は大臣に承わらなければならぬ。あなたの信念をいま一回聞きます。あなたも知っているように、宣誓した証人証言を見ますと、戸高ダイナマイトを持っておったという事実がある。警察脅迫状を投げ込んだ事実がある。こういうことは十分疑われる事実だと思う。疑いがあればあなた方は捜査するのですよ。日本じゅうの大きな問題になって、いやでもおうでも証人に出なければならないように追い回されて、結論がこうなってきたら、それは証人に出ればいいということをおっしゃっているけれども、そういうことなら、国民の非常な疑惑であるところの四人の生活は東京でどうしておるか、これが問題になる。戸高新聞記者に発見されるまでアジトに偽名を使って入っておったところの事実、戸高自身がラジオ東京の放送を聞いて証人に出ようという意思があるならば、さっそくこれは手続が出るはずです。上司に相談をしたと、言っているし、裁判長の名前が新聞に出ておるのですから、柳田裁判長にはがき一本出せばわかることなんです。そういうことをしていない。  なお一つ申し上げましょう。親族は、親族会議を開いて非常に心配しているのです。これも参考になる重要な問題です。深田定光という人が新聞に語っているのをごらんなさい。あなた方から抹殺されて殺されやしないかということを心配していることが書いてある。「私は仕事の関係警察関係の人達と懇意にしていました。その一人が県警本部警備課の小手川警部−現竹田署次席、菅生事件後藤、坂本両被告の逮捕状請求者−に紹介してくれた。その時小手川さんは戸高さんと一緒に仕事をしている、よろしく頼むといった。事件前日も私の自宅に刑事が来て、明日は大捕物があるぞと教えてくれた。だから事件を聞いた時も驚かなかった。だが市木戸高であることは全く知らなかった。しかしこれほど新聞で書かれながらも戸高が出て来ないのは、出て来ないのではなくて警察が出さないのだろう。このままでは戸高が消される(殺されるの意)怖れもある。先日も戸高の叔父−後藤一馬さん−に会ったが親族はみんな心配している。」、こういうことを言っている。これほどまでに関係者の親族が言っているのに、まだあなたの方はみずから解明してこういう事実だということを言って親族を安心きせなくてもいいとおっしゃるのですか。この点どうですか。
  89. 山口喜雄

    山口(喜)政府委員 ちょっと御質問の趣旨がわかりませんので……。
  90. 古屋貞雄

    古屋委員 要するに、こういうことです。警察官戸高を隠しているのだ、本人は出たいのだけれども出さないのだろう、このままほうっておくと消されてしまう、——ということは殺されてしまうということなんです。うちの親戚の戸高警察に殺されてしまうだろうということが新聞記事になっている。これはずっと前の新聞ですよ。あなたの方は知らないはずはない。このくらい親族が疑いを持っているのだから、あなたの方は、この疑いを解明して安心させ、捜査機関には不届きはないんだ、公明正大だということを国民に証明する行動をとるべきではないですか。捜査をしてどういう結果が出るか知りませんけれども、あなたの方の信念において捜査された結論を国民に発表するということが当然だと思う。こういう要求を国民がするのは当り前だし、私どもはそれを要求した。ところが、あなたは、裁判所と検察官にまかせればいいんだとおっしゃるから、私どもの方は、それは捜査機関捜査すべき義務があるにかかわらず捜査をしないんだ、不十分だ、戸高をかくまっているんじゃないかという疑いを受けるのも当然ではないかと思うので、今後この捜査を明らかにする決意がないかどうか承わっているのです。
  91. 山口喜雄

    山口(喜)政府委員 親戚の方がいろいろと御心配になるのは、これは無理からぬことと思いますし、警察から消されてしまいやせぬかというような記事があるようですが、さようなばかばかしいことはとうていあり得ないことは、御承知の通り事実が証明をいたしていると思うのであります。私が先ほど申し上げましたように、私どもは、戸高君のしました行為は、これは当時の情勢上犯罪捜査の必要から全くやむを得なかったものであると思うのであります。そして、いろいろと党に接近しまして、自分の活動しましたことは逐一情報として県の警備部長の方に報告されてきているのであります。私どもは、かりに彼、がそういうダイナマイトの−指示を受けて運搬しておったといたしましても、これは違法性を阻却するもの、さように考えているのであります。従って、今お話のように、私の方で捜査をやれとおっしゃいますが、私の方はそういうように思っております。しかし、これはまた、ほかの見方からしますればいろいろの御意見もあろうと思いますから、その点は裁判所なり、検察庁の公正な御判断に従います、こういうことを申し上げている次第でございます。
  92. 古屋貞雄

    古屋委員 でたらめなことを言っている。あなたがそう考えるということは、国民には納得できません。  大臣に承わりますが、一体警察の職務とはどういうものでしょうか。今のようにあらゆる方面からそういう疑いをかけられた警察が、今のような事態であなたの方でいいとおっしゃるのですか。私は、警察というものは、疑いを受けたならなおさら進んでみずから清めなくてはならないと思う。前に、ニクソンというアメリカの副大統領が、自分が涜職罪の疑いを受けたというので、みずから進んで関係者を全部調べて、国会に、私はこれほど清廉潔白で疑いの事実はありませんということを積極的に述べておる。しかも警察官はわれわれ国民生命財産を保護すべき立場にある。司法警察官として犯罪の疑いをかけられた者は捜査をすみやかにしなければならぬ。しかも、この事件においては、同じように持ち歩いた一般人が処罰されて、戸高調べないうちに、警備部長が知らないでおいて、自分はそう思うのだ、犯意を阻却するのだ、こういうべらぼうなことでは、裁判所は要らぬですよ。あなたの方の都合がいいときは阻却する、都合の悪いときは縛るということでは、憲法のいう基本的人権も民主主義もへちまもないと考えるが、大臣のお考えはどうですか。
  93. 大久保留次郎

    ○大久保国務大臣 ただいま長い時間の間古屋さんの御質問を聞いておりまして、あなたの方の考えと部長の考えといろいろ問答に食い違いがあるようであります。一般論として、犯罪の疑いがあればこれを捜査するのが警察官としては当然の任務であります。捜査しなければならぬことは原則であります。ただ、この事件の起った発端を考えてみますと、事の起りは昭和二十七年でもう五年近くになっておる古い事件である。しかも、第一審の判決が済んだばかりでなく、この事件は普通の事件と違って現行犯で逮捕しておる。現行犯で逮捕した以上は、被告人がはっきりしておるばかりでなく、証拠は必ずついているに相違ないと思います。そこで、この問題を再び、黙って警察が進んでやるということは、事件としてどうだろうか。もしかりに捜査が不十分である、新しい事実が出たというような疑いありというならば、検事なりあるいは裁判長の指示があれば別でありますが、指示がない限り、やはりこちらから進んでするというのは少し出過ぎではないか。原則論としては承知しますけれども、この事件に限って私はそういう感じがします。もし、警察官なり裁判所の当事者からこの事件捜査でこの点は不十分だという点があれば、当然私は調べなければならぬと思います。
  94. 古屋貞雄

    古屋委員 なお私はどうしても納得がいきませんが、いかない点をもう一つ申し上げましょう。本件では証拠がなくなっているのです。警察官の手に渡したと石井長官は言っておるし、警察は、自分の方の領置調書にはあるが、その物件がないのだ。これはいわゆる市木の書いた脅迫状なんです。もう一つなくなっておりますのは、その当夜現場でつかまった人間を毎日新聞の写真班が写真にとっておるのです。これを尋問のときに見せつけられたといって尋問調書に残っておるのは菅忠愛です。菅忠愛に示しておるその写真が出てくれば、現場におったことが明らかになる。犯人はだれか知らぬけれども、だれでもいいですけれども、そういうような非常に込み入った事件になっておる。だから、検察官の指揮を受けて警察捜査すべきである。まかせておけばいいというような事件でないですよ。日本じゅうの問題になっております。九州では大騒ぎしておる。県会でも質問をしております。こんな疑惑裁判が済むまで待てばいいというようなことを公安委員長までお考えになっておるとすると、私は、とんだことになると思うのですけれども、世論の声を聞いて下さい。事実はどうあろうと、警備部長の独断において、これはそう思うということで片づけるべき事件ではないと私は思う。四年の間東京におって、今までの警備部長答弁から見ても、自分の部下におった小林末喜から頼まれた経歴書を見ておるはずなんです。そういうことをわれわれは繰り返して言うのは長くなりますから省きますが、少くとも自分の部下に使っておったことは明らかです。前にわれわれに答弁したことはうそなんです。そうして、しかも、この間おるところがわからないとおっしゃっておる。こういうようなことを委員会に出て白々と言っても、われわれは承服できません。それほど大事な証人に出す戸高であるならば少くともあなたの方でこれを保護して、どこどこにおりますと言って裁判所に申し出るのが当りまえだと思います。どこにおるかわからないと言っておる。しかしながら、家族は四人ですよ。夫婦に子供が二人で四年間も郷里の方に帰っていないというので心配しておる。こういうようなことに疑いを持っておるのですよ。戸高がどうしてもやらなければけっこうです。けっこうですけれども、やらないということは、今のように警備部長の想像だけでおっしゃらずに、そういう事実を調べたけれどもないということでなければ、国民は納得できないと思います。はっきり申し上げますが、もしもこれと逆の結果になってこの事実が明らかになった場合にはどうなりますか。あなたの方で責任をとっても仕方がない。そのために長い時間苦しめられた人々、国民の不安、特に大分県の県民の不安に対するこの事態の責任というものは償うことができないですよ。これが日本の政治上における、日本の捜査機関に対する不信を招くことをおそれるのです。従いまして、あとから他の同僚からも質問がございますから、私はこのくらいで引き揚げますけれども、少くとも警察を指揮する長官が今のような態度でいらっしやるならば、われわれは納得いきません。おそらく、明日の新聞にしても、日本じゅうの世論そのものは納得がいかないと思います。調べてから後にこれは違うというなら納得が参りますが、調べないで自分の推量で言っておる。初めから終りまで、山口君の答弁を聞いておると、みなでたらめです。初めから知っているのです。われわれから見ると、少くとも小林末喜から頼まれておるのだから、知っておるはずです。これはどういう関係か知りませんが、本件は今までの被告の二人がやったものであるか、それとも市木もこれの相談を受けて共犯でやったのであるか、あるいは市木個人一人だけがやって、二人でこれをやらせたごとくに装っておるのか、これは今後の裁判に待つことにいたしましょう。しかしながら、少くとも国民に非常な不安を与えていることは事実である。この、不安を解明して取り除くことが捜査機関としての義務ではありませんか。これは最初に大臣に答弁を願いたい。本件の具体的事実についての国民の不安をおとりにならずに、このままでよろしいとおっしゃるのか、これについて何らかあなたの方で努力して積極的におやりになって国民の不安を解明しようとする努力があるのかないのか、これだけを承わります。
  95. 大久保留次郎

    ○大久保国務大臣 なかなか複雑な問題でありますけれども、とにもかくにも第一審が済みまして第二審にかかっておるわけであります。これをこちらが進んでさらにどうこう捜査するのもいかがかと思います。しかし、私どもの職権としては捜査するのが当然のことであります。さっき申しました通り検察庁においてこれをしろということであれば進んでいたしたいと思っております。
  96. 古屋貞雄

    古屋委員 どうも不誠意な答弁ですが、これはあなたの方から検事総長に相談する手もありましょう。それから現地の検事正に相談する手もあります。ついこの間まで知らぬ存ぜぬと言って逃げておいて、十三日に市木が同一人であることを本人が認めてからこれが問題になっておるんですよ。前には知っておったかどうかわかりません。けれども検事正なり検事総長に相談すれば、向うの指揮を受けられまして捜査ができるはずなのですよ。そういうことをやってはいけないということはないのです。新聞を拝見しますと、福岡高等裁判所においても従来の審理方針を根本から変えたということを新聞に書いておりますが、これは事実か事実でないか、私にはわかりませんが、そういう言葉が書いてある。いずれにいたしましても、戸高調べることは当然じゃありませんか。阻却するしないということを警備部長が勝手に想像して、阻却するだろう、だからあれでもいいというのでは、ますます国民からの疑惑があなた方に集中されてしまう。あなた自身はいいけれども、あなたの部下の捜査機関に対する国民信頼が薄れていくことを憂えている。あなた一人があしたやめようがあさってやめようが、そんなことは問題にしていない。日本の捜査機関がはっきり国民から信頼を失われることをおそれるからです。あなたは個人じゃないのです。あなたは捜査機関の日本一の指揮官です。それを私は申し上げておる。そういうような手配をする意思もないのでしょうか。検事総長と相談をしてこれに対する事実を究明すること、そうして国民を安心させること、——裁判所の裁判などは四年も五年もかかりますよ。五年もかかってどうあっても、これは問題にならない。今自体が問題なのです。委員会が心配するのはそれなのですよ。何も委員会であなた方をいじめようとするのではないのです。委員会は、重要な日本の捜査機関信頼をどうするかということを問題にしておる。一人や二人やめることは問題じゃないのです。もっと誠意あるそういう処置をとるかとらぬか。  それから、なおこれは山口さんに承わりたいのですが、ラジオ東京に対して何かあなたの方からかれこれ問題を起して、自由な編集をすることに対する抗議がましいことを申しておるかどうか。おらなければけっこうだけれども、私の方で承わっておるのは、そういうことをうわさで承わっておる。ラジオ東京の編集者に対する関係において、どうもいやなことを言っている、自由な職務執行ができないようないやなことを言っているということを私自身は承わっておる。警察の諸君の方から、公平なる事実の報道をする新聞社に対していやなことを言っている、また国民の目となり耳となるラジオ放送の編集にもいやなことを言っている、あなたは勝手に自分で判断をして、私は犯意を阻却する、と言っている、こういうことが積み重なってくると、一そうあなたの方に疑惑が深まってくることは当然だと思う。私がこういうことを承わるのは、ささいなようでございますけれども、あなた方の報道機関の自由な報道をじゃまする態度が、相当これは問題になる。そういうことがなければけっこうですが、そういうことに似よったような行動をあなたなりあなたの部下の方でとったことがあるかないか、これもあとから御答弁願いたいと思う。
  97. 山口喜雄

    山口(喜)政府委員 大事な点ですから、私からお答え申し上げます。  最後の点は、全然私に心当りありません。この前この委員会を出るときに、どなたかラジオ東京の方が私のところに見えて、君は今、ラジオ東京の一方的な被告側に立った放送を聞いて本人が非常に事実を曲げておるといって憤慨をして、自分公判廷に出たいといって申し出てきたということを言っている、——その点についてその方が私に言われたのは、その入口です。私の方の録音班があなたのところに——私のところですが、私のところに、あの二十六日の録音の前に来たのに、あなたは何も言わなかったじゃないか、こういう抗議があったわけです。それで、私は、あの当時、これは現在公判中の問題であるから、私から何も申し上げるわけにいきませんといってお断わりしたのですということを申し上げました。その後、その記者であろうと思いますが、私の留守中に、お会いをしたいといって電話がかかってきたことは私は知っておりますけれども、お会いしたこともなければ、私からラジオ東京のどなたにも電話をしたこともなければ 何も関係はありません。問題はどうもそういうところに私はあるように思う。何か事が非常に曲り曲って、私どもが何かやると、すぐラジオ東京に編集上制約を加えるようなことをしたのではないかという御質問を受けるのであります。われわれはそういう誤解を受けますことは全く迷惑に存じております。もしその方が、私があるいは私の方の関係者がそういうようなことをしたと言われるならば、いつでもここにお呼びを願いたいと私は考えております。  もう一点お問いがありましたから追加いたしますが、先ほど私は、犯罪事実といいますか、当日戸高氏がどういうことをしたかということは公判廷において本人が申し上げると思います。従って私がここで戸高氏がどうしたこうしたということは申し上げません、ただ仮定の問題として、こういう場合にはというように申し上げて、私どもの見解を申し上げたのでありますから、その点は一つ古屋さんも御了承を願いたいと思うのです。お前はすぐ仮定の問題でとやかく言っておるとおっしゃいますけれども、これはどうも、私としては、直接戸高君に関することでもあります、本人ではないのでありますから、仮定の上に立った質疑応答をせざるを得ないことは一つ御了承を願いたいと思います。何も私ども調べていないということではなしに、そういう仮定の事実に基いて、違法性を阻却するもの、私はそう思いますということを申し上げておるのであります。なお、これに対して、検察庁裁判所の方でこれは調べる必要があるということであれば、その調べ本人も喜んで受けることと私は考えておる次第でございます。
  98. 古屋貞雄

    古屋委員 大臣が御答弁しなしようですが、私はそんなことでは承諾できません。数々の疑いが捜査機関にうんとあるのです。まず第一に、今申し上げたように、押収した物件がなくなっておる。写真がなくなっておる。これだけでも重要な疑いです。それに、今のように、四年間戸高はあなた方の国警に籍を置き警視庁に籍を置いておったことは事実なんです。  そこで、私は大臣に伺いますが、たとい日共といえども、刑事が偽名して普通の家に寝泊りをして、一緒に働いている人々をだまして日共の行動の情報をとろうということ事態も、私は、官吏として、捜査機関として非常に警察法の精神に違反するところの問題であると思う。この点は大臣はいかがお考えになりますか。これはおとり捜査ではありません。
  99. 大久保留次郎

    ○大久保国務大臣 警察官が犯罪を捜査する場合にあたりまして、自分の名前を偽わってするということはよろしくないと思います。平生の捜査の場合においてしかりと思います。ただ、本件事件考えてみますとちょうど二十六年、二十七年は、皆さん御承知の通り、火炎びんが日本を横行した時代であります。あるいは警察駐在所を焼かれ、あるいは警察官が殺され、あるいはアメリカの兵隊が堀ばたに投げられるというような工合に、全国がこぞって暴力的行為に満たされておった時代です。この影響を受けて、大分県の菅生事件等、ひんぴんとして暴行脅迫の事件が起ったのです。そこで、当時の大分県の警察部は、治安を維持する意味において、全くやむを得ずに出た手段であろう、こう思いまして、その点だけは大目に見てやらなければいかぬのじゃないかという感じを持っておる次第であります。原則としては、今申した通り反対であります。
  100. 古屋貞雄

    古屋委員 今のそういう場合はかまわない、大目に見るべきだという限界が問題なんです。そこで、もう一つ、これは大臣に承わりたいんだが、あなたの方でそういうことをやられた結果、被告は四年半刑務所に入れられて、その間被告は自由を奪われておった。これは午前中法務大臣に承わりましたが、刑務所で数回殺されようとしかかった。その前には後藤被告父親暴漢から襲撃を受けてかたわになってしまった。これは後藤を殺しに行ったのですが、後藤は留守で助かった。それから、今度は、数年間その警察官が行方をくらまして裁判に出ない。出なかったのです。こんなことは九州の新聞ではもう半年も一年も前から大げさに騒いでおったのですから、ラジオ東京の放送を聞いてびっくりしたなんということはとんでもないことなんです。なぜ自分の家に帰らなかったか。親類じゅうが心配するほど帰っていない。後藤が四年半たって保釈になって初めて出てきたときに、後藤被告が一番発生当夜の事情を知っておるから、自分でないという確信のもとに探し歩いたという。これは被告の心理かどうか知りませんけれども、その点初めて新聞紙上に載り、写真が出てきて、本人であるかどうかということもだんだん明らかになってきた。こういう経路を経て今日に至っておる状況だから、普通の事件経路とは違っております。これをもう少し長く保釈を許されぬでおれば、おそらくこの事件は葬られておったでございましょう。どういう結果が出るかは別といたしましても、今言ったように、戸高巡査が爆弾を持っていた、ダイナマイトを持っていたことは事実、偽名を使って人の家に行っておって共産党諸君の情報を取った、これは犯罪捜査とは違いますよ。それでは、この爆薬事件以外に後藤は一体被疑者になっておったかどうか、犯罪の疑いがあったかどうか。何もないでしょう。あったらこれはあとから答弁して下さい。あるならば捜査になる。それならその問題を集中して捜査すればいいんであって、これが不幸にいたしまして、被告の言っているように、勝手に戸高巡査が爆破したんだということになりますと、これは問題なんです。大臣はこの問題はいいとおっしゃいますけれども、こういう経過を経て今日、こういう疑惑国民に与えた今日だから、私は、あなたの方で、この事実だけ、捜査でなければこの事実の調査くらいはして、国民に発表する義務はあると思う。あなたの部下が爆弾を警察に投げ込んだと言う人がおるのですから、これは裁判ではっきりわかるようになることは当然でございましょうけれども、あなたの職責の範囲においてこの調査をすることはできるでしょう。この調査をされておったかどうか。調べておったらこれを御報告願いたいと思います。これは山口君でも大臣でもけっこうです。
  101. 山口喜雄

    山口(喜)政府委員 最後の点をちょっと……。
  102. 古屋貞雄

    古屋委員 あなたの方で今までの経過を、捜査にあらずして、あなたの職務執行の立場に立って事実調査をしておったかどうか。こういう疑惑を持っているんだからすべきでしょう。本件における裁判所での経過状況刑務所において後藤が苦しめられた事実、あなたの方の戸高巡査が東京へ来てどういう経路を経てどういうことをしておったか、一切を法務委員会に御報告願えるはずだと思うんです。東京に来ておったのは家族四人でしょう。あなたの方で使っておったことは明らかです。それから、あなたの想像の結論を、出す前に、戸高の足取り、どういうことを戸高がしてきたのか、小林末喜からどういう命令を受けたのか、上司としてあなたの方で調査ができるはずです。そういう詳しい調査報告がこの委員会になされるべきだと思うのです。調査されたのですか、これはどうです。これはもう一昨昨年から問題になって、戸高がやったんだ、ということを言われているのですから、この足取りや事実の調査はすべきだと思うのですが、その報告ができますか。できればこの法務委員会で報告してもらいたい。
  103. 山口喜雄

    山口(喜)政府委員 後藤被告刑務所の中において何か非常に迫害を受けたという事実は、私ここで初めて承知いたしました。それから、当時の小林警備部長本人を党に接近せしめる際に指示いたしましたのは、武器収集などの党の軍事活動の実態を正確に把握し、報告すること、こういう命令を出しております。  なお、後藤被告についてはほかに犯罪の容疑があったかという御質問でございましたが、この前も申し上げましたように、当日は、戸高から情報の入ります前から、牛の窃盗事件によって、これは後藤らがやったということがわかりましたので、令状をもらって検挙に向うことになっておったのであります。その矢先に、戸高からそういう駐在所の爆破が計画されておるという情報が入ってきたということを申し上げたのであります。  なお、御参考までに申し上げますと、七、八件後藤氏についてはほかに容疑事実があります。もし御必要ならば、その容疑事実について……。とにかく、当時村の各方面の有力者に対して非常な脅迫をしたり あるしはとび口、木刀等で人をなぐって二十日くらいの傷を負わしたり、いろいろな犯罪容疑はございます。ただいま私がここに持っておりますものでも八件ばかりございます。
  104. 古屋貞雄

    古屋委員 そのあと戸高の足取りの方が重要ですから、それはどうですか。そんなことはわかっていますよ。なお、戸高は四年間一体どういう費用で生活しておったか。これはりっぱに家族四人おったことは事実になっています。あなたが使っているときに家族は四人なんです。どういう収益でどういう生活をしてきたのか、どこをどういうように足取りをやったか、その調査をされたかということを私は聞きたいのです。これは重要な問題です。これは、きのうやきょうこの問題が世間に明らかになったのなら、私の言うことも無理だと思いますけれども、半年も前からこの問題は明らかになっているんです。警察官がやったんだということを共産党が発表したのも昨年なんです。本人はずっと前から言っているんです。従いまして、戸高の足取りなんかはあなたの方で調査ができるはずでしょう。  それから、なお、小林末喜からは、どうせ法務委員会に来てもらって聞こう、と思っているんですが、単なる大分県の巡査部長だけれども、頼むと言われたのか、こういう事情でこういう身分の立場におるから頼むということで、あなたの方で頼まれて使ったものか、その点が私ども納得がいかないのです。大分県の巡査がこちらへ来てあなた方に使ってもらう、しかも、先制志賀君から質問のように、名簿には明らかに大分県とあり、しかも大分県の巡査部長という経歴が明らかになり、大分県では大きな問題ができておる、こういう因果関係がありますから、この足取りのことについてあなたが調べておったかどうか、おったらそれを御発表願いたい。
  105. 山口喜雄

    山口(喜)政府委員 足取りといいますのは、先ほども申し上げましたように二十七年の九月ですか、東京に出て参りまして、福生の町に本人は住んでおった、そうして臨時雇として約一年間警備一課の資料の整理の仕事をして、それから東京都本部に警察官として復職をし、さらに自治隊警察の解消の際に警視庁の警察官になった。四年間とおっしゃいましたが、本人は昨年の四月中旬に警察官を退職いたしておりますが、それまでは御指摘のように警視庁の職員名簿にも本名が堂々と載っておるのであります。別にどこにも逃げ隠れもしておらない。普通に警察官として勤務をしておったのであります。偽名を用いて何かやっておったというわけではありません。従って、昨年の四月に退職しますまでのことは御了承願えると思うのです。  昨年の四月退職しましてからは、われわれの方との関係がなくなっておりますので、本人がどういうようにしてどこに住んでおったかということは、私は、この問題が明らかになって一月に小林君から聞くまでは存じておりません。三月に本人公判廷に出たいということを申し出ました際に、現在自分はここにおるということは部員のある人に連絡がありましたので、私はそれを聞くべきであったかと思いますけれども、こういう問題については、私があまりいろいろな問題について聞くことよりも、聞かない方がよかろうと思って、私は事実本人の住所はつかまるまで知らなかったのであります。  現在の住所は、先ほども申し上げましたように、新宿のこの前のアパートになっておりますが、じゃ今どこにおるのかと私に聞かれましても、現在ただいまどこにおるということは私は存じません、こういうことを申し上げたわけであります。
  106. 古屋貞雄

    古屋委員 それでは、こまかいことまで言うようですが、月給は幾ら出しておったのですか。
  107. 山口喜雄

    山口(喜)政府委員 巡査部長をしておったのですから……。あと調べお答えいたします。
  108. 古屋貞雄

    古屋委員 それは、私の方で調べましたのは、三十一年の十月一日までは西荻窪の二丁目三十八番地に家族四人がおったのですね。このころが一番やかましく法廷で戸高を探しておる時代です。そうするとこれまでは米の配給を受けておった。それから先は行方かわからない。今、山口警備部長は、あとを詳しく聞かなかったと言うけれども、これほど騒がれておるのだから、聞かないのはむしろ逆におかしいと思う。むしろ聞かないのはおかしい。疑いを持つのが当りまえでしょう。そこでどういうように生活しておるのだ、こういう問題があるんだぞ、こういう重大な事件が出ておるのだぞということは、あなたは知っておるのだから聞かなければならぬのですが、私から申し上げるならば、こういうこまかいことの御報告を承われば、これは実際戸高に対する解明ができるわけなんです。  そこで、一つ承わりたいが、あなたの方に川島という方はおりませんか。あるいは富田、あるいは山本、それから児玉という方が、あなたの警備関係の方にはいらっしゃいませんか。
  109. 山口喜雄

    山口(喜)政府委員 名前までお伺いしなければわかりませんが、そういう名前の者はかつておったことはございます。
  110. 古屋貞雄

    古屋委員 児玉さんという方がかつておったのですか、どなたがおったのでしょうね。私が承わりたいのは、私の方の調べによると、新聞の書いたところによると、戸高証人に出るか出ないかについて上司と相談をした、こういう方たちが戸高の相談相手になって相談しておったということを私の方では調べ上げたのです。これは事実か事実でないかわかりませんが、そういうようにあなたの方におった部下が戸高の相談相手になっておったということを疑うわけなんです。だから、児玉という人がさらに一緒におったような事実はおわかりになりませんか。
  111. 山口喜雄

    山口(喜)政府委員 児玉というのはちょっと記憶にございませんが、今お名前をあげられたような者、そのうちの何名かは、同じ姓の者が私のところにおったことがございますが、今度本人が出てくるについて連絡をして参りまして相談をしたのは全然別の人間でございます。
  112. 古屋貞雄

    古屋委員 それはどなたでしょうか。
  113. 山口喜雄

    山口(喜)政府委員 名前を申し上げることは差し控えたいと思います。
  114. 古屋貞雄

    古屋委員 名前は言えないそうですから、私はあえてこれは承わりませんが、少くとも私はこの事件について今までお尋ねいたしました御答弁では納得がいかないのです。従いまして、おそらくこれと反対な事実が法務委員会で明らかになってきました場合に——それはあなた方の責任を問うとかなんとかいう問題じゃない。そうして、本件真相が明らかになって、幸いに捜査機関は全然関係がないのだ、国民信頼を失墜するような事実がないとなればけっこうでございますが、私は納得がいきませんので、あなた方にこの間お願いしたように、この事実の真相に対してあなた方の職務上できる範囲のお調べをして、法務委員会に御報告願うことができるかできないか。これは法務大臣にこの間お尋ねして、法務大臣はお約束していただくことになったのですが、これもあらためて法務大臣、大久保所管大臣、山口警備部長に、本件に関して皆さんのお立場調べられるだけの事実調査を法務委員会で約束できるかできないか承わりたい。そうして私の今までの本件に対する質問はこれで打ち切りますが、ただ、私は、国民と同じように数々の疑惑を持っております。から、その御報告を願いますればさらにまた考えてみたい、かように存じまして、これで私の質問は本日は打ち切りますが、御決意を承わりたい。
  115. 大久保留次郎

    ○大久保国務大臣 この問題につきまして、先日も申し上げておきましたが、もしこういう点をどうなっておるか調べろということでございましたならば、あなたの方から指図していただけば、できるだけ調べます。それだけお答えいたしておきます。
  116. 中村梅吉

    中村国務大臣 私うっかりしておりまして、どういう質問でしたかわかりませんので……。
  117. 古屋貞雄

    古屋委員 本件に関して午前中私が質問したように、刑務所における行動はわれわれはどうも正常なやり方でないと思う。この問題を法務委員会としても調べていただかなければならぬと思いますけれども、その関係と、それから、捜査機関がなすべきことをなしたかどうかというようなことを、御職掌柄、捜査なりあるいは調査できる範囲の調査したものを当委員会に御報告願いたい、こういう要求を申し上げているわけです。
  118. 中村梅吉

    中村国務大臣 刑務所における状態につきましては、先ほど矯正局長から逐一御説明申し上げた通りでございますが、なお古屋さんの御意見でございますから、私どもの方といたしましても、もう一度この点を念を入れて確かめて御報告するようにいたしたいと思います。それから、本件事件関係につきましては、御承知の通り、検察当局といたしましては、これは検察の立場で当時十分捜査をして起訴しておりますので、その起訴事実の通り以外には、あらためて調査いたしましてもないと思いますが、ただ、公判の進行過程を通しまして、二月の公判でいろいろ証人調べ、写真の照らし合せ等をいたしまして、主任の検察官としても事件についていろいろ解明すべき点があるものと認めまして、そうして検察官から当時の小林大分警備部長証人に申請し、さらに、ただいまの戸高といいましたか、これを証人に申請いたしております次第でありますから、これらの証言を通して、公判廷の当事者間における十分の審理を通して事態を明確にいたしますことについては最善を期したいと思います。
  119. 古屋貞雄

    古屋委員 そこで、この前これは検察当局にお願いしておったのですが一審に出た証拠、廣石検事が示して菅忠愛調べたときの証拠物件の押第七号という脅迫状です。それから、本件の事案が発生しました当夜、毎日新聞の記者が写真をとった。つかまった被告に言わせると、それは当時の市木である、今の戸高公徳であるという写真が、これも捜査樹上に出て参りまして、それを示して菅忠愛調べられている証言がありますので、これは本件かぎを握る重要な証拠なんです。この二つのありかは、警察の方におありになるのか、あるいは検察官の方にあるのか、いずれにいたしましても警察官の領置調書には載っているのですから、これをお出しになるように、どこにあるかという所在だけはお出し願いたい。これはもちろん裁判長からもやかましく出せということを要求されると思いますし、なお被告の弁護人からも要求があると思いますから、所在がわかるように御配慮願いたい。
  120. 山口喜雄

    山口(喜)政府委員 今の写真のことをこの前御質問になりまして、私も答弁を忘れておりましたが、そういう写真は私が聞きましたところではないということであります。どうしてもとられたということであれば、これは当時とったという方に証人にでも出ていただいて調べていただくよりほかに方法がないんじゃないか。そういう写真があって、それがどこかでなくなったというような事実、そういうようなことはございません、たしかそういうように報告を受けました。
  121. 古屋貞雄

    古屋委員 その点は志賀君から具体的に質問をいたしますから……。
  122. 三田村武夫

    ○三田村委員長 志賀義雄君。——志賀君に御相談申し上げますが、法務大臣は参議院の方で補正予算の審議が始って出席の要求があるそうですから、法務大臣に御質問がありましたならばこの点御考慮の上お願いいたします。
  123. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 午前中こちらでやることになっておったのを特に参議院に大臣の出席を譲ったようなこともありますから、参議院も多少は譲ってくれた方がいいと思います。あなたも委員長の権威としてそこは配慮をしていただきたい。  午前中に戸高公徳の東京に来ての警察官としての履歴の大要を報告してもらいましたが、警視庁にいるときの仕事のことは山口警備部長から話がありました。警察庁では何をしておったのですか。いつもあなたは自分のところのことはぼかすんだ。警視庁のことはよろしい、警察庁で何をしておったのですか。
  124. 山口喜雄

    山口(喜)政府委員 警備関係の資料の整理でございます。
  125. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 退職したのは三十一年四月、一身上の理由でと、この前報告されましたが、そのときの官職は何でしたか。巡査部長ですか。
  126. 山口喜雄

    山口(喜)政府委員 これは御承知の通り派遣ですから、身分関係は警視庁が持っておるわけです。ですから、当時の階級は巡査部長であったと思いますが、あるいは警部補試験に合格して警部補になっていたかもしれません。身分関係は向うが持っておりますから、私の方は派遣を受けてやっておったのであります。
  127. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 では、私の方から言いましょう。昨年二月に警部補試験を受けて及第して任官しております。そうして四月に退職しております。警部補の試験を二月に受けて四月に一身上の理由で退職するということは、普通の場合おかしいことではありませんか。どういう一身上の理由ですか。
  128. 山口喜雄

    山口(喜)政府委員 この一身上の都合というのは、本人に聞いてみなければわからぬと思います。
  129. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 警察官はそんなことでは済まないはずですがね。いいですか、春風荘に隠れておったときに、戸高が外出する。そうして、そのときに、もし電話をかけるときにはここにかけてくれといって、春風荘の女主人、門永亮子さんに言っておる。ところが門永亮子さんがあるとき用事があって電話をかけた。名刺には東大文学部研究生佐々淳一という名前であそこに入っておった。電話をかけてみたら、向うの交換手が、はい、警察大学ですと言った。そうすると、退職したあとでも戸高警察大学と連絡があったということになりますね。これはどうです。
  130. 山口喜雄

    山口(喜)政府委員 それは新聞記事に何にか書いてあったものに基いての御質問でありますか。
  131. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 そうです。
  132. 山口喜雄

    山口(喜)政府委員 その点についてこの前も古屋委員から御質問がございましたので、私の方でアパートのおかみさんに真相を聞きにやりました。ところが、そういうことを話した覚えはないと本人は言っております。そうして、聞きますと、記事が間違っておるので本人新聞社に抗議を申し出に行ったそうでございます。警視庁が調べに行きましたのは一昨日の朝であります。その前に新聞社の方に抗議を申し出に行っておる、こういうことを私は報告を受けました。  なお、つけ加えて申し上げますと、かりに戸高が前からお話のような行動をしておるとしますならば、自分が留守の間の電話の連絡先を警察大学を教えていくということは、普通の場合考えられないことだろうと思うのです。おれは警察大学に行っておるということを証明するようなことでございまして、そういうことは、今までいろいろ御質問がありましたように、戸高が非常に逃げ隠れておった、あるいはほんとうに警察大学と関係があるということであれば、そんな電話を教えるというのはよほどどうかしておる、私はそう思います。
  133. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 今山口警備部長は・そういうことを言った覚えはない、新聞社が誤まった記事を書いたから新聞社に抗議に行ったと言いましたね。それで、おとといあなた方はそれを調べた。とんでもない。それはうそですよ。つまり、あなた方は、自分の都合の悪いことは新聞社の誤まった記事におっかぶせようとしておるのでしょう。その門永亮子さんは、その新聞社に行って何を言ったのですか。私は主人からしかられました、お前がうっかりほんとうのことを言うからこういうことになるのだ、それで今離婚問題が起っておる、(笑声)これでは困りますから何とかして下さいということを新聞社に相談に行っているのですよ。うその記事だから取り消してくれと言っているのじゃない。あなた方は権力を持って、捜査権を持って何を調べておるか。なぜそんなうそっぱちばかり言うのです。世の中に、完全犯罪というものを考えてやっても、どこにか抜けたところがあるもんだ。あなた方は今日までこの戸高を隠してうまくやっていこうと思っておったけれども、今の私とあなたの質疑応答でも、もうボロが出ておるじゃありませんか。ボロだらけなのだ、この事件は。山口警備部長一代の知恵者のつもりで今日までやってきたけれども、さんざんボロが出ておるじゃありませんか。今の門永亮子さんのこと、だってそうだ。あなたは先ほど、ラジオ東京のことでも、ではこの次参考人を呼んでくれ、こう言った。それから、その新聞社も呼んでくれ、こう言った。大ていの場合は委員の方から参考人を呼ぶものですが、あなたは何とかたけだけしいというか、逆にあなたの方から参考人を呼んでくれと言っているのだから、委員長、これはぜひ呼んで下さいよ。山口警備部長の切望するところですからね。その点はどうかお忘れのないようにして下さい。
  134. 山口喜雄

    山口(喜)政府委員 お答えいたします。本人が、そういう電話をかけたら警察大学校にかかったというようなことは、そういう事実はありません、これははっきり言っておる。そして新聞社に抗議を申し入れに行ったことも事実なんです。それから、一方において、今お話しのように何か夫婦の間で悶着が起っているということも私は聞きました。聞きましたけれども本件関係ございませんから申し上げないのであります。私どもが何かうそを、間違ったことを報告しておられるようにおっしゃるのは、はなはだ私は遺憾にたえないと思います。私が申し上げておりますことは、警視庁の警部が行きまして聞いたことでありまして、間違いはございません。それは聞き間違えれば別でございましょうけれども、私はそういう報告を受けております。  それから、先ほど言いましたように、警察大学に、自分が行くからここに連絡してくれというようなことは、よほどうかつなことである、もし戸高の行動が今までおっしゃったようなことであれば、ということを申し上げたのであります。  それから、新聞社のことは、私から希望いたします。
  135. 三田村武夫

    ○三田村委員長 志賀君にちょっと申し上げますが、志賀委員山口警備部長委員会運営の秩序をお守り願いたい。私語をなさらないように要望いたします。  それから、傍聴人に御注意いたしますが、御静粛に願います。
  136. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 私は何も警察大学に行っているから警察大学の番号を教えると言ったというのじゃないんですよ。本人が東大の研究生だと言っていて、ここへ電話をかけてくれと言ったから、大学だと思っていたら、官庁の交換手というものは非常に多忙ですからね、すぐ、はい衆議院です、はい警察大学と言うのです。そのことを言っているのですよ。それほど戸高がうかつであり、またそれを指揮しておった山口警備部長がうかつであるとは私は思っておりませんから、その点は御安心願いたい。  そこで、あなたの方では、四月に退職してその後は知らないと言っておりますが、昭和二十七年六月末で大分県の警察を退職したというのだが、西日本新聞の記事によりますと、昭和二十七年十月九日付で依願退職、退職金も受け取っておる。これは大分警察本部を調べたときにこういうことが明らかになった。あなたの言うところによると、九月には警視庁に臨時雇で入っているというのですね。これは一体どういうことです。
  137. 山口喜雄

    山口(喜)政府委員 退職の日にちは、県本部に照会をしまして、書類に基いた報告でございますから、私のお答えしたので間違いないと思っております。
  138. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 それで、この前、あなたも警察長官も、特に警察長官は、手抜かりであった、小林から頼まれて就職さして、こういうことに関係があると疑われるような人物を知らなかったのはうかつだと言っておるけれども大分警察本部は、同じ西日本新聞によりますと、退職警官が再び警察署に入る場合、もとの警察署に数回身元調査の照会があるはずだ、そんな問い合せはなかった、退職後のことは一切不明だ……。これは戸高の場合に限って非常に粗雑な取り扱いをされたのですね。小林君から就職のなにをするときに照会されましたか。また、臨時雇から本官に直すときに詳細に調べられましたか。
  139. 山口喜雄

    山口(喜)政府委員 警察官として採用する場合には、御承知のように身元調査なり身元照会をいたします。これは東京都が採用するときは大分県本部にいたしております。それから、資料整備のために臨時雇として入ります場合には、そのもとのところまでは普通は照会はいたしません。そのときは、小林君の紹介で来ておりますから、身元もわかっておるということで採用したものと思います。東京都本部に採用の際には、これは大分県に照会を出しておるものと私は思います。
  140. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 おかしい。向うは何ら照会を受けなかった、と言っておる、そうすると、あなたの言うことと大分警察本部が言うことと、違いますね。——この新聞の記事によりますと、どっちがほんとうですか。
  141. 山口喜雄

    山口(喜)政府委員 私の申すことが間違いないと思っております。
  142. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 よろしい。それならば、その点はいずれまた参考人を呼ぶときにはっきり調べましょう。  そこで、昨年の十二月五日の法務委員会で、東京の住所は、米穀手帳によって、警察大学と同じ中野区囲町二丁目一番地、ここに配給受けることになっておった。これは警察大学の所在地です。それ以外の建物はないはずですが、これはどういうことですか。
  143. 山口喜雄

    山口(喜)政府委員 その番地は新聞に出ましたので私も調べてみたのでありますが、警察大学のあるところと省線電車との間に何かアパートがございますが、そのアパートも同じ番地のように聞いております。まあこれはお調べ願いたい。私も聞いた程度であります。
  144. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 あなたの方で調べられた……。
  145. 山口喜雄

    山口(喜)政府委員 私の方で調べたのでは、その付近がそういう番地でございます。
  146. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 去る三月十五日の委員会でもちょっと聞いたのでありますが、昨年の九月二十八日にこの菅生事件の弁護団の方から、警察官がこの事件の真犯人だということを発表し、その氏名はもう少し待ってくれということを記者会見のときに発表しております。ところが、戸高はこの囲町二丁目一番地から次に西荻窪に移って、転出証明書が出ておることになりますが、出ておるにもかかわらず、そこに入らなかった。その入らないのは十月一日です。隠れておった場合、また公然と警察に奉職しておる場合に、九月二十八日に現職の警官が真犯人だと言われたその三日あとに、今度は転出証明書先に行かずに姿を消してしまったのです。こういうことは普通の事件でありますか。私どもの推察するところではいよいよ危ないから隠れろという指示を受けて戸高がいわゆる転出証明書も要らないように行方をくらましたとしか思えないのですが、その点はどうですか。
  147. 山口喜雄

    山口(喜)政府委員 私どもは別段そういう指示をいたしておりません。それからまた本人がいつどういうようにして住所を変えたか、これは本人公判廷に出ますれば明らかにすることだと思います。私はちょっとわかりませんのでお答えいたしかねます。
  148. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 あなたはさっきから、古屋委員に対しても、公判廷に出て公判廷に出てと言う。事は警察行政に関することを質問しているのですよ。あなたは、昨年の十二月十三日の委員会で、私に答弁してこういうことを言っている。「なお、その後の戸高の住所について探しておるかというお話でございますが、いわゆる警察捜査という意味でなくして、どこに行ったかということは、われわれも探したい、かように考えております。ということを当法務委員会で、私にはっきり明言された。ところが、この前、戸高がラジオ東京を聞いていよいよ証人に出る決心をした、それがいつのことか、三月の中ごろのように思っておったところ、三月一日ということを先ほどあなたは言われた。——あなたの部下のことを、それを聞いたら、あなたはそれを知っているはずです。法務委員会において探しているということを明言された以上、法務委員会でその行方を追及している以上、あなたはすぐ文書でもって法務委員長に連絡して、ただいま戸高の方から連絡がありました、お知らせいたしますという報告の義務があると思います。そのとき報告されましたか。
  149. 山口喜雄

    山口(喜)政府委員 報告はいたしておりません。なぜかと申しますと、これはもう国会の議事運営の一つの慣例、ならわしだと思いますが、われわれは委員会が開催されて質問事項があるから出頭せよというお呼び出しを受けまして出て参りまして、お答えをしておるのであります。私は、私が事情を知りましてから以後委員会があれば、いつでも事実を明らかにしよう、かように思っております。
  150. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 委員会への報告はここに呼び出されたときに報告するだけではない。追って文書をもって報告いたしますという場合も多々あるのです。非常に重大な事件なのに、こっちから問い詰められるまではあなた方は隠しておるでしょう。  そこで、私は次の問題に移りたいと思いますが、情報活動のために戸高小林警部の指揮で入れたということになっておったのですが、それ以上の上司は知らなかったのですか。また、あなたの方でも知らなかったのですか。
  151. 山口喜雄

    山口(喜)政府委員 本部長は党に接近させたあと報告を受けておるということであります。それから、私の方には報告はございませんでした。
  152. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 情報収集をやったという戸高は、その手記なるもので、後藤秀生が交番爆破をやるということを何度も聞いたということを言っておる。それからまた、手記では、特に、私は交番爆破の大体の期日を探り当局に通報した、事件当日は現場には足を向けず家にいたと言っております。この手記というものは、三月十四日、前の晩共同通信社に所在を突きとめられてから、翌日あなた方と相談されてこの手記を作ったが、実はこの手記はあなたの方の主張を根本からくずすものだということはお気づきにならないでしょうか。もし情報活動というなら、こんなにはっきり——現場には百数十名の警官が行っておる。なぜ犯罪を未然に予防しなかったか。できたはずでしょう。なぜこれを予防しなかったのです。そのことについてどうですか。
  153. 山口喜雄

    山口(喜)政府委員 この点は、御指摘のように、未然にこれを防止するのが警察本来の務めであると私も思います。ただ、当時戸高君からそういう情報は受けておりましたが、果してその日にやるかどうかということ、これはまだ警察としても確信を持っておりませんし、未然に防止するといいましても、ただとめればよろしいというわけではない。未然に防止するということは未然に検挙するということであります。従って、どこの段階で手をつけるか、これはなかなか現場においてはむずかしい判断であり、事柄であろうと思うのであります。不幸にしてダイナマイトが投ぜられましたその直後、襲いかかって現場で逮捕したというのが事実でございます。事前において未然に、ダイナマイトの投げられる直前になぜ逮捕しなかったかということは、私も同感でございます。まことにその点は遺憾に存じております。
  154. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 現にその前に後藤なんかと戸高は会っておる。そうして駐在所の周囲には警官隊を張りめぐらしておる。どうして未然に防止できないのですか。あなた方は、警察法第二条にはどういうことが書いてあるのか、よく御存じだと思う。「警察は、個人の生命、身体及び財産の保護に任じ、犯罪の予防、鎮圧及び捜査被疑者の逮捕、交通の取締その他公共の安全と秩序の維持に当ることをもってその責務とする。」、第二項は、「警察の活動は、厳格に前項の責務の範囲に限られるべきものであって、その責務の遂行に当っては、不偏不党且つ公平中正を旨とし、いやしくも日本国憲法の保障する個人の権利及び自由の干渉にわたる等その権限を濫用することがあってはならない。」、そして、第三条では、その服務の際に宣誓することになっております。現にそういう現地の状況になっておるのに、あなたは期日はわからぬと言う。現にその場に居合せて、駐在所を包囲していたのじゃないですか。これがどうして未然に防止できませんか。これは明らかに仕組んだ芝居でしょう。それに、問題は脅迫状のことでありますが、脅迫状が領置調書に出て、第一審では菅忠愛という被告に示されておることは、これは記録の示すところであります。しかるに、それも紛失しておる。それよりももっと重大なことは、広石検事でありますか、検事かだれかが行って一葉の写真を示した。これが後藤でもない、また上坂本でもない、第三の人間であります。その検事が示した写真、これによって菅忠愛にいろいろ供述をさせておるであります。この写真を考えるならば、——この写真は弁護団の方から請求しておるが、一向出てこない。どうもこういうふうに手をやっておるの−でよくわかりませんが、これが市木春秋だということを菅忠愛は言っておるのです。しかし、これは裁判の問題ですから、これはまた検察庁の方が来られたときに聞きますが、その第三の人間があるということは、毎日新聞の記者も証言しておる。被告たちは、それが市木春秋であると言い、その市木春秋戸高であるということは先日彼みずから、が述べているところであります。それだのに、あなたは現に戸高が、どこにいるのか知らないと言う。いいですか。あなたはさっき何と言われた。法務委員会が開かれたときには報告します。——十二月十三日には探しておりますと言ったでしょう。そして十四日には三輪課長も立ち合っておる。そういう事実のあったあとならば、今日あなたがこの法務委員会において戸高が現在どこに住んでいるかわかりませんなどと答弁できますか。あなたが昨年の法務委員会で探しておりますと言った以上は、今日戸高がどこに住んでおるかわかりませんなどというずうずうしい答弁ができますか。その点答えて下さい。
  155. 山口喜雄

    山口(喜)政府委員 先ほど申し上げましたように、本人証人を申請します場合には住所はこの前の新宿のアパートであるということをはっきり申し上げた。従って、本人の住所はそこだと思います。現にどこにいるかとお聞きになりましても、私は正直のところ存じませんと申し上げているのであります。本人とは、あのアパートに連絡すれば、私は連絡がつくと思います。
  156. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 ところが、翌日もうそこにいないんですよ。どこにいるかわからない。あなたの方にはわかっているでしょう。今ここで、便所へ行っているか。パチンコをやっているか、そんなことをだれが知りますか。そんなことを聞いているんじゃないのです。春風荘は名義上の住所です。新聞社に突きとめられた翌日からどこに住んでいるか。それを、あなた方は、探しておりますと言った以上、ここに報告をする義務があるでしょう。なぜそれが報告できないんです。それを報告して下さい。
  157. 山口喜雄

    山口(喜)政府委員 私はそういう報告を受けておりませんので、存じませんと申し上げました。私が知っておるかという御質問でございますから、存じませんと申し上げるのであります。
  158. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 あなたの部下に連絡があったでしょう。それならば、法務委員会であなたが、十二月十三日に、目下探していると言っております以上、部下に対して、自分法務委員会でこういう答弁をしたから探してくれということを、新聞社が突きとめたあとはなおさら言うべきでしょう。そういうことをあなたは言わなかったのですか。それを答弁して下さい。
  159. 山口喜雄

    山口(喜)政府委員 本人の所在が依然としてわからないという状態であれば、私どもとしましても極力探してなにしますが、本人公判廷に出ると言っておるのであります。別にまたどこかに姿を隠してしまって出てこないという状態でもないんですから。本人公判廷に出ると言っておる。それまで自分はあまりいろんな人の目に触れたくないと言うならば、これはまた本人の人権の問題だろうと思います。従って、それを私が無理に調べ上げてどうしても報告をしなければならないと言われましても、やはり本人立場もその場合はお考え願いたい、かように存じます。本人が逃げ隠れするというのなら別でありますが本人公判廷に証人として出るとみずから名乗って出ておるのであります。そういう御心配は要らないと私は思います。
  160. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 当法務委員会市木春秋を呼ばなければならないと思います。それだのに、あなたは、どこにいるかわからない、あそこに連絡すればそれでできる、こういうふうに言っておる。それで、今はどこにいるかわからない、そんなふまじめなことがありますか。  そうして、先ほどは大久保国務大臣も言ったように、あなたも言ったように、当時の状態ではやむを得なかったと言っております、が、警察官というものは法律に基いて行動すべきものでしょう。戸高ダイナマイトを所持しておる、これはいかなる法律的根拠がありますか。その点をはっきり言って下さい。
  161. 山口喜雄

    山口(喜)政府委員 所持したかどうか、私はここで申し上げる立場にございません。これは、何回も申し上げましたように、戸高君が法廷で明らかにすると思いますから、かりに所持しておったとしてどうだという御質問でありますならば、私は、あの状態のもとに党に接近をして情報を収集することはやむを得なかったものであると思います。
  162. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 その法律的根拠を言って下さい。
  163. 山口喜雄

    山口(喜)政府委員 そうして中核自衛隊の責任者から、お前取りに行ってこいと言われたので、その指示に基いて取りに行って直ちに渡した、そうしてその旨を当時の上司に報告してあるということであれば、私は正当な職務行為として違法性が阻却されるものと思います、かように申し上げた次第でございます。
  164. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 さっきからそれは何度も聞いているから、違法性の阻却云々という問題じゃないのです。警察官ならばダイナマイトを村田克巳からだまし取ってもいい、そういう法的根拠はどこにありますか、それを言って下さいと言っている。あなたの主観だけを言っちゃだめだ。私はこう思います、私はこう思います、あなたも警察庁に奉職する者でしょう。警察官が法律に基いてやるべきことはよく知っておりますね。ダイナマイト警察官がそういうふうにしてだまし取ってもいい、それを所持しておってもいい、人に預けてもいいかどうか。また、それを預けられた本人には、預かったのじゃないと言っているんでしょう、菅忠愛には。それがやはり法廷に引っぱり出されて判決を受けておるのですよ。村田克巳も判決を受けている。それならば、なぜ市木春秋こと戸高公徳だけはあなたのめがねから見て違法性を阻却することができるのか。その法的根拠があるならはっきり言ってごらんなさいというのです。
  165. 山口喜雄

    山口(喜)政府委員 私は違法性を阻却するものと思うといいますのは、正当な職務行為ですから、刑法三十六条に出ております。
  166. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 それじゃあなた方は、警察官に対してはそういう片手落ちな大目に見ることをします。そして、村田克巳と菅忠愛、この両方に対してそういうことをする。今刑法三十六条と言った。憲法の問題もありますよ。現に菅と村田とは未決にぶち込まれて、ブタ箱にぶち込まれて判決を受けたりしているのですよ。みんなこれは戸高のためにやられていることなんです。そんな職務をしていいという根拠はどこにありますか。警察法の第二条に違反するじゃありませんか。憲法を守ってない。憲法にも違反しておるじゃありませんか。全くあなたのきょうの答弁はめちゃくちゃだ。そうして、あなたは、当時あそこで中核自衛隊が活動しておったとか、いろいろなことがあったとか、現に牛どろぼうをやっておるとか言うけれども、はっきり言いますが、牛どろぼうというのは、農村で共産党やその他社会運動をやるとき、警察がつかまえようとするときに、いつでも牛どろぼうがあるからと言っておる。東京都でもそういうことがありました。常套手段だ。特に、そのときに破防法が国会で難航しておった。これを通すために、あなた方は政府を踊らせ、国会を踊らせ、国民の目をおおうためにこの事件をでっち上げたということは、私はこの前言いました。そればかりじゃない。ここは基地になる予定地であった。現に、パーソンという人が警察官をこの地域で集めて相談をしておるという事実もある。そういうふうに私ども聞いております。これらの事実を総合すると、この事件というものをあなた方がでっち上げてかかったということは、もはや疑いのないことであります。現に、もう弁護団では、なくなった脅迫状というもの、これはもう今まで紛失しておることは隠れもない事実です。もし今度出てきたと言われたら、それが偽造されたものではないだろうか、そうなると大へんだ、こういう心配までしておるありさまであります。  そこで、さらに、いかに法律を踏みにじっておるか、現に東京に出てきてからも東大研究生いって氏名を詐称しておる。それから転出証明書、米穀通帳、それから住民登録、こういうものも無視しておる。こういうことをする人間がここにいるのですよ。この男が現にこの事件の真犯人として疑われておるのですが、さて、最後に新聞社で戸高の所在が明らかになったんですが、私どもそれで初めて戸高の所在を知ったのでありますが、警察戸高の所在を知らないと、あなたはこの前の言われましたね。なお、当夜電話連絡があって、——これは去る三月十五日の法務委員会ですがあなたこういうふうに答弁している。「従いまして、私の方では、至急に警察官を集めまして——すなわち、電話がかかってきましたその電話をもとにして、心当りのところを百方探しました。で、ここではなかろうかと思われるような場所もあったのでありまして、実際あの日は百方手を尽して私ども調べたのであります。しかしわからなかった、これが真相でございます。」、こういうふうに言っております。あなたの部下に電話がかかってきたとさっき言われた。だれに電話がかかってきたのです。
  167. 山口喜雄

    山口(喜)政府委員 名前は申し上げることを差し控えます。
  168. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 初めは新聞社でないと思った、別の方の者が戸高を監禁したと思った、こうあなたはさっき言われました。別の方とは、だれがやったと思ったんですか。
  169. 山口喜雄

    山口(喜)政府委員 別の方の、新聞社以外でありまして、別にただいまここで申し上げる必要はなかろうと思います。
  170. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 それで、警官を集めて出動して逮捕に向わせる準備もしておりましたな。どこにいたかわからなかったというけれども、それは新宿の「白鳥」という酒場です。その酒場で戸高は電話をかけております。その電話の内容は何かと申す、警察の方へかけて、自分が今新宿の「白鳥」という酒場にいる、そういうことを詳細に場所まで言っている。あなたの方で百方手を尽して探したが突きとめられなかったと言うけれども、これはどういうことになります。
  171. 山口喜雄

    山口(喜)政府委員 本人が電話をかけてきたことは事実、これは私が申し上げたことであります。ただ、場所は、こちらで聞いた者がどうしても聞き取れなかった。何かハク何とか言ったということは私も聞きました。それから、あの辺のハク何とかというところを、新宿を全部調べてみたのですがなかなかうまく見つからないということはあったんです。もう少しはっきり言ってくれればいいのですが、何しろ回りに五、六人おって、その統制下に、制約下に電話をかけさせられておるのですから、これは、本人も、新聞社であると言われておるけれども、果して新聞社であるかどうかわからない。新聞社と思うのか、こちらからこう聞いたら、本人も、いやどうもわかりません、こう言ってる状態なんです。だから、場所がはっきり私の方に聞き取れておれば、これはそんなにあの日時間はかからなかっただろうと思います。
  172. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 それはうそですよ。現に、そこで新聞記者戸高が会っていた回りを張り込ませたでしょう。そういう事実はありませんか。
  173. 山口喜雄

    山口(喜)政府委員 何でも人の言うことを頭からうそだとかなんとかおっしゃることは、これは一つ御遠慮願いたいと思います。これは、われわれの方で、いなくなりましたから、極力捜査をして、これはいろいろなにをして、ここに間違いなかろうと、ようやくこれは探し求めて張っておったのであります。それはおそらく当っておっただろうと思います。当っていなかったかもわかりませんが何でもうそを言うとかなんとかという、きわめて断定的なことでおっしゃることはお控えを願いたい。
  174. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 私も法務委員ですからね、頭からうそだとは断定しませんよ。語るに落ちるということがあるが、いいですか、うそだとは今言わないでしょう。うそだということは一つも、速記録調べたって言ってやしない。私も法務委員です。あなたが語るに落ちるようにしゃベってもらうように質問しているのです。あなたは今、全然わからなかったと言った。最後にやっぱり警察官がそこを張っていたことを認めたじゃありませんか。どうして全然知らなかったなんと言うのです。
  175. 山口喜雄

    山口(喜)政府委員 それは、この前も申し上げましたように、私の方は、ここがそうじゃないかと思って、そこに踏み込んで間違いなら間違いでよろしい、尽そうと考えておったということを申し上げておる。それは当っておったかどうか、私も聞いておりませんから知りません。しかし、ある個所を私服で固めたことは事実でございます。
  176. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 それじゃ私の方からはっきり言いますが、共産党がやったと思ったのでしょう。そうして午後十時から警察の首脳部は会合をその晩持って対策を講じたでしょう。そういう事実はありませんか。
  177. 山口喜雄

    山口(喜)政府委員 共産党かどうか存じませんが、とにかく戸高を組織的に非常に追及しておられるところがあったように聞いております。だから、われわれとしましては、新聞社ならば、これはすぐ私の方の宅や何かへ電話があるときがございますけれども、当日は私そんな電話は受けておりませんし、新聞社以外のところかと、そういうようなことを考えめぐらしたとは事実でございます。それは否定いたしません。この前申し上げた通りであります。
  178. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 その晩どういうふうにして警察の各方面に電話が通じたかということは私もよく存じません。あなたが希望されるように、この次に参考人に新聞社の人を呼んでくれば、その点はすべてはっきりするでしょう。だから、その点はこの次に残しておきます。  要するに、きょう古屋委員、私が質問したこと、並びにこれまでに質問したことでも、捜査権を持つ警察として、あるいは検察庁として、尽すべきことは何も尽さずにおいて裁判にかけておるこういうことなのです。だから、委員長も先ほど言われたように、この問題はきょうだけでなく今後もやられることでありますから、私は、きょうこれで——自民党は五時から何か会があるそうでありますから、あと一分ありますから、最後に一つ質問いたします。  あなたは、先ほど、うしろから耳打ちされて、刑法第三十六条をひっぱられましたね。あれは正当防衛に関する条項でしょう。ところが、そこにダイナマイトを持っていいということは一つもないですね。警察官ダイナマイトを持って歩いていいということは一つもない。これは正当行為になりますか。職務の遂行上の問題ですか。
  179. 山口喜雄

    山口(喜)政府委員 それは、ただ、正当の業務によると書いてあるだけであります。ダイナマイトを持っていいとは書いてありませんけれども、そういう行為が正当な業務と認定されるかどうかというところに問題がある。結局裁判所の認定されることだろうと思います。
  180. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 ダイナマイトを警官が持っているのは正当な行為ですか。事件も予防できないような者がダイナマイトを持っている、これほどあぶないことはないでしょう。
  181. 山口喜雄

    山口(喜)政府委員 この条文は、本来犯罪行為なるべきようなものについても、法令または正当の業務によりする場合は違法性を阻却するという規定であります。従って、例をあげられる事例は、すべて犯罪行為に該当すべきものをおあげになるのが適当であろうと私は考えます。
  182. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 とにかく、あなたが何と言われようと、警官が携帯すべき武器というものはちゃんときめておる。警官がダイナマイトを持ってよろしいしいうことは、日本国中どこへ行ってもない。この場合だけだ。事件も予防できないような者がダイナマイトを、だまし取って、何が正当防衛だ。これは重大な問題だ。あなたが言われたことは、山口警備部長としては、当時から警察庁にいて事件関係があるから、あなたは必死なんだ。しかし、問題は、先ほど古屋委員から言われたが、あなたがやめようがやめまいが、そんなことは問題じゃない。もっともっと問題は大きいのですよ。あなたとして必死になってやるのも、その心情はわかりますが、問題はあなた個人の問題じゃない。それだけのことを申し上げまして、やめておきます。
  183. 古屋貞雄

    古屋委員 私の質問に対しても名前が言えないということを言っていますが、今の志賀委員質問にも言えないという。これはどういうわけで言えないのか。当法務委員会は、あなたが秘密の問題であるから言えないというなら、書面で出していただく。たとえば、重要な戸高証人に出る出ないについて上司に相談をした、だれに相談したのかと言ったら、あなたはその名前は言えぬとおっしゃった。今、戸高捜査をしたときに、新聞記者が立ち会ったときに、どういう人がわからないかどうかということになったら、これも言えない、——これは職務上言えないのですか。上司の許可を受けなければ言えないのか。それとも、秘密にすべき事項であるから言えないのですか。これは捜査に何の関係もないのですね。戸高新聞記者と会っていること戸高国民の義務を果すべく証人に出ようと相談をした上司の名前は言えない、——これは秘密事項でも何でもないですね。これはどういう理由か承わって、ここでは今言えないけれども、書面でお出しになるのだというならば私どもそれ以上は追及いたしませんが、その点はどうですか。
  184. 山口喜雄

    山口(喜)政府委員 証人に出ようとして相談をしたのではなしに、証人に出たいということの連絡をしてきたものです。なお、これは警備についていろいろの問題がございますし、この問題につきましては私が責任を持って答弁に当っておるのでありますから、この点は一つ御了承を願いたいと思います。
  185. 古屋貞雄

    古屋委員 名前が言えないというのは、捜査関係ではないでしょう。法務委員会はそうばかにされてもいいのですか。それならまた問題にしますが、法務委員会で言えない、——捜査に関する秘密があるから言えないということなら仕方がないが、法務委員会は国政調査をしているのですよ。権限であなたに聞いているのですよ。いいですか。あなたは今の志賀委員質問についても、その人は言えない、——これも捜査にも何にも関係ないことですね。当法務委員会質問に対して、それは言う必要がないとあなたがおっしゃって答えないなら、答えないでけっこうです。秘密があるのですかどうですか。
  186. 山口喜雄

    山口(喜)政府委員 申し上げることを差し控えたいと思って、御了承を得ることをお願いいたしておるのです。
  187. 古屋貞雄

    古屋委員 了承してない。それが重要だから聞きたいのです。了承していないのですから、ここで言えなければ後刻書面で出していただいてもいいということを言っているのですが、書面で出せませんか。
  188. 山口喜雄

    山口(喜)政府委員 私の一存では決しかねますので、後刻お答えをいたします。
  189. 古屋貞雄

    古屋委員 では、あとでけっこうです。
  190. 三田村武夫

    ○三田村委員長 本日はこの程度にとどめ散会いたします。  次会は公報をもってお知らせいたします。     午後五時五分散会